2023年度徒然

2022年度徒然

2021年度徒然

2020年度徒然

2019年度徒然

2018年度徒然

2017年度徒然

2016年度徒然

2015年度徒然

2014年度徒然

2013年度徒然

(2012年度徒然【2007年度4/13から】)

2012.12.28(金)【事後開示義務と清算結了】(金子登志雄)

 お歳暮のお礼状………申し訳ありません。過去、現在、全くに近いほど出して
おりません。金子という男はそういう男だと思ってお付き合いくださいますよう、
お願いします。なぜか、昔から、大の苦手です。きっと、お心「ず」けとか、お
気「ず」かいという誤字をするのが怖いのかもしれませんね。現代仮名「ず」か
いなど知りませんので………。

 さて、とうとう、本年最後の徒然になりました。終わりに相応しく、清算結了
の話題にいたしましょう。

 清算結了は全ての義務を終了しないとできませんが、某所より、「吸収分割会
社は吸収分割後6か月の間、事後開示をしなければならないから、その間は吸収
分割会社は清算の結了ができないのか」と聞かれました。

 「できないわけがない」とは答えたものの、その理由をどう説明してよいのか、
ずっと考えていましたが、やっと、それなりの理由を考えつきました。

 清算人の仕事は、@現務の結了、A債権の取立て及び債務の弁済、B残余財産
の分配の3つです。

 事後開示は条文からもお分かりのとおり、株主や債権者等に情報を開示し、必
要な場合には吸収分割無効の訴えを起こさせるためです。

 ところが、上記の清算人の職務のAで、債権者も労働債権者も新株予約権者も
不在になりますし、Bで株主も株主権を主張することことができなくなります。

 要するに、目的を達成し事後開示を継続する意味がなくなります。これで、6
か月未満でも、現務の結了になると私は考えましたが、いかがでしょうか。

 振り返って、本徒然では、会社法のネタがないときは時事問題などを話題にい
たしましたが、一貫して、私の「ものの見方、考え方、捉え方」がテーマでした。

 日本の教育程度は世界1だと思いますが、あまりに知識(書籍に書いてあるこ
と)や外部からもたらされる情報に対して、無防備で、主体的に自分の頭で考え
る人が少なすぎると私は思っています。弁護士や司法書士でも、権威の見解を無
批判に振りかざす人が少なくありません。

 ここでは、明年も、相も変わらず、学者の見解や大マスコミのいい加減な情報
にかみついていこうと思っておりますので、本徒然をよろしくお願いいたします。

 よいお年を。


2012.12.27(木)【たかがお礼状、されどお礼状】(富田太郎)

 先日の連休中、ずっと「お歳暮のお礼状」を書いていました。この「お礼状」
簡単のようで、実は難しいのです。

----------------------------------------------------------------------
 三木 卓(みき・たく。詩人、小説家)曰く、
 礼状にはパーソナルな要素が入らなければいけません。その人と自分との間
にしかないようなつながりが、どこかで出ることが大事だと思います。
----------------------------------------------------------------------

 う〜ん。難しい。
 サラリーマン時代は、もっぱらお歳暮を贈る立場だったので、お礼状をよく
貰いましたが、ありきたりの文章しか書いていないので、ほとんど読まなかっ
た記憶があります(すいません!)。

 売れないといえども、私も「物書き」の端くれです。私のお礼状は、「絶対
に読んでもらいたい(きっぱり)!」

 ということで、内容は単なるお礼にとどまらず、「富田事務所始末記」と題
し、事務所であった面白い話などを書き、「封筒、便せん」も「桜や竹の絵柄
の入った和紙」を使っています。

 これは意外に好評で、中には「面白かった♪また、読みたい♪」と言って、
わざわざ、ご連絡をしてきてくれる方もいます。

 たかがお礼状、されどお礼状。
 皆さんは、お礼状、どうされていますか??

‐追伸:こぼれ話「誤字?礼状悲話」‐

 今は昔、麻生太郎という首相がおりました。麻生氏は、バレンタインのお返
しに、女性番記者たちに、直筆でお礼状を書きました。

----------------------------------------------------------------------
 その麻生氏の手紙に「御心ずかい」という一文があったのですが、マスコミ
曰く、『「×ずかい」ではなく「〇づか(遣)い」が正解である!』(注)と、
----------------------------------------------------------------------

 マスコミは、麻生氏の礼状の拡大写真を掲載し、無知を指摘していました。

 批判のために、面白おかしく礼状を晒す………(汗) 礼状をも、攻撃の材料
に使うマスコミのしたたかさに、驚愕した覚えがあります………(ハイエナみ
たいですね)。

 お礼状の誤字には気を付けましょう!

----------------------------------------------------------------------
(注)なお、有識者によると、これはマスコミの認識・勉強不足で、昭和20
年に示された内閣告示(第33号)で、現代仮名遣いでは「づ」ではなく、
「ず」を用いると定められた。しかし、その後の昭和61年に「遣い」の表記
は「づかい」に変更された。
 つまり、麻生元首相の世代は「ずかい」で習った世代になる。以上から、
「麻生氏は漢字を知らない」と言えないことになる。
----------------------------------------------------------------------

 本年はお世話になりました。よいお年を。


2012.12.26(水)【校正疲れ】(金子登志雄)

 3連休中は来年1月出版の『ずばり解説』の校正をしていました。最終段階の
3校目です。市販本であれば通常は2校でやめますが、協同組合本は丁寧に3校
までいたします。

 3度もチェックしたら、誤字脱字のミスはないだろうというのはとんでもない
話で、何度チェックしようが見落としはあるものです。市販本の初版に更正漏れ
が多いのは、無理からぬことです。

 原稿に書いた「就任承諾を証する書面」を条文どおりに「就任の承諾を証する
書面」に訂正しようとしましたら、条文は「就任を承諾したことを証する書面」
でした。これでは字数の増加に伴い行数が増えてしまい、隣のページまで越境し
てしまうため、直すのをやめた、などという作業を繰り返していたわけです。

 ちなみに、退任の場合の条文は「退任したことを証する書面」ではなく「退任
を証する書面」です。就任承諾と統一がとれていません。執筆作業の余禄は、こ
ういうことに気がつくことでしょうか。

 また、私の場合は「です。」や「ます。」の「す。」だけが次の行に来て1行
をとるのも、もったいないと思い、どこかを削って行数調整をすることが少なく
ありません。これは、結構、頭を使うので好きな作業です。

 それよりも、校正するたびに、よくもまぁ、こんなに書いたものだとあきれて
(感心して?)しまいます。書いているときは、一歩一歩山に登っているため、
そう気にならないのですが、校正の段階に至ると、短時間に急坂に登っているか
のように疲れます。

 また同じ山に登るのかという思いが疲れを増すのか、それとも、書く作業は料
理を作るのと同じく創造的作業であるのに、校正は後片付けみたいなものだから
でしょうか。

 こういう経験を何度かしていますと、雑誌の原稿程度(数ページもの)は、少
しも苦痛に感じません。月報司法書士12月号の「特集 株式会社の会計」でも、
学者先生などの間に混じって、「貸借対照表上の資本金の額の変更」について6
頁弱を書いていますので、ぜひご覧ください。


2012.12.25(火)【選挙を終えて】(島根・根来川弘充)

 12月16日、衆議院議員選挙が終わりました。結果は、自民党の圧勝でしたが、投
票率が低かったという点は、今回の選挙の大きな特徴だったと思います。

 私の住む島根県での投票率は、今回約66パーセントでした。全国的に見れば高い方
ですが、戦後最低なのだそうです。

 この投票率が低い原因の一つとして、若い人の投票離れが良く指摘されます。テレビ
報道では、「未来の日本を支えるのは若い人だから、積極的に参加してほしい」と呼び
かけも数多く聞きました。

 ところで、今年9月に厚生労働省は、認知症にかかっている患者数を、300万人と
発表しました。日本の人口の約3パーセント弱になりますが、有権者の割合でいけば、
もっと高くなります。今後、この数字は、ますます高くなることが予想されます。

 少子高齢化社会を迎えるということは、高齢者の一票の責任は、ますます重くなると
いうことなのだろうと思います。

 そう思うと、「未来の日本を支えるのは若い人」と言い切ることは、現実を正しくと
らえているものなのか、大きな疑問を感じます。


2012.12.21(金)【就任日登記】(金子登志雄)

 商業登記簿には、取締役の登記は、次のようになっています。

 ―――――――――――――――――――――――――――――
 | 取締役 金子登志雄  | 平成24年12月1日就任 |
 |            |----------------------------|
 |            | 平成24年12月3日登記 |
 ―――――――――――――――――――――――――――――

 取締役には任期があるので、その就任日も登記する必要があるわけですが、設立の
時には、これが記載されません。言い換えれば、就任日登記の部分が白紙ということ
は、設立時の役員だということになります。

 特例有限会社が株式会社に移行する場合も、形式上は、株式会社の設立登記の形式
を採用するため、われわれは、「年月日就任、年月日登記」部分を白紙で申請します。
しかし、そうすると、任期計算に支障が生じますので、登記官が職権で、この「年月
日就任」部分を埋めます。

 株式会社が解散すると、清算人の登記がなされますが、やはり「年月日就任、年月
日登記」の部分は白紙にします。別の部分の解散の登記の年月日で、この就任日が分
かりますし、そもそも清算人には任期がないので、就任日を記載する必要性もありま
せん。また、それ以前に「清算株式会社」のスタート(設立)だからでしょう。

 では、この清算株式会社が会社継続で普通の株式会社になるときは、取締役の就任
年月日は登記されるでしょうか。

 以上の流れからすると、会社継続の日が別の部分で分かるから登記不要、あるいは
登記官が職権で記入すると答えたいところですが、申請人が就任年月日まで申請しま
す。

 何か、統一性を欠くように思いますが、会社継続は事業会社の再設立ではなく、旧
事業会社の復活(清算の取消)と立法者は考えたのかもしれません。


2012.12.20(木)【特殊な無対価合併】(金子登志雄)

 下記のような甲乙兄弟会社があります。


    A(70%)B(30%)
        /\
       /  \
      甲    乙

 この場合も無対価合併が可能です。株式を発行しても発行と同時に株式を併合
して、もとの株数にすれば、無対価と同じ結果になるからです。

 しかし、適格合併にはなりません。法人税法施行令でいう「【一の者】が被合
併法人及び合併法人の【発行済株式等の全部】を保有する関係」にないためです。

 解釈で適格合併にしてもよいと思うのですが、AとBの二人では「一の者」と
いえないとされてしまうようです。

 「一の者」………これ、「イチのもの」と読むのでしょうか。そうであれば、
国語辞典によると、「第一人者」(最も優れた者)という意味です。

 A・Bは〇〇分野の第一人者だから、適格税制の適用があると主張したら、認
められるかもしれませんね。税務の素人である司法書士なら、そのくらい主張し
なければ………。

(参考:田中良紹さんも、他の評論家と同様に、一人で非民主的に解散を決めた
野田氏にだいぶお怒りでした。しかし、船橋市民は野田氏を圧勝させました。)

  
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/12/ 


2012.12.19(水)【暇つぶしの選挙分析】(金子登志雄)

 会社法解釈も社会事象の分析も私にとっては、「ものの本質を探る」訓練の1つ
ですから、今回は、暇に任せて、第3極の「維新」は、なぜ大阪であれだけ強いの
かを探ってみました。

 下記で大阪1区から順にみますと、公明党が立候補しているところには維新も自
民も立候補せず(全国共通です)、維新が立候補しているところには公明党が立候
補していません。この選挙協力があったから、維新は堅い学会票の一部にも支えら
れて、浮動票を上乗せしたのでしょう。今回の自公、維新の大勝利は、投票率が悪
かったことも味方し、個人後援会を含め固い組織票が効果的に機能したわけです。

 
http://www3.nhk.or.jp/senkyo/

 続いて、この視点で、他の選挙区で民主と「未来」の票が伸びない理由を探って
みましたところ、両者ともリベラル勢力が支持基盤でありながら、2つに分断され
たことが分かります。不人気の民主も労組票に支えられて、それなりの得票でした
が、労組票を失った未来の得票は下位に位置していました。

 これでは、勝てるわけがありません。100m競争で、自公・維新は30mから
スタートしたのに、民主・未来はスタートラインの50m後ろからスタートしたよ
うなもので、ハンデが違いすぎます。

 反対派を追い出す純化路線を採用した野田戦略が裏目に出たのか、自民党野田派
といわれるくらいですから、最初から予定の行動だったのかは、まだ不明です。

 昔の自民党は党内にさまざまな意見をもつ方がおり、ある意味、国民政党でした。
反対派を追い出すどころか、金権政治のイメージがついた田中首相の後は、クリー
ンイメージの三木首相にし、党が国民から見捨てられないように上手に動きました。
社会党も、右から左まで網羅していました。

 2大政党制の米国でも、共和党と民主党はさまざまな考え方をもった人の集団で
す。せっかく日本でも2大政党制がはじまるはずだったのに、その芽が潰れたこと
は日本の歴史にとって不幸なことだと私は思いますが、10年後、20年後の歴史
はどう評価するのでしょうか。


2012.12.18(火)【忘年会】(金子登志雄)

 昨日は出版関係の方と忘年会でした。

 会場である居酒屋の席では、あちこちで「昨日の選挙は………」という話をして
いるのが耳に入りました。

 話の内容までは分かりませんでしたが、選挙結果に意外感をもった方が多いよう
です。ご自身や周囲の感覚と相違し、自公が勝ち過ぎたせいでしょう。小選挙区制
のなせる業です。

 さて、まだ早いですが、皆様にとって今年はどんな年でしたか。

 私のところに電話をくださる司法書士と雑談する範囲内では、皆さん、だいぶ仕
事が減ったという話です。不況のため顧客が業績悪化に陥ったり、不動産登記でも
昔は「担保抹消、所有権移転、担保設定」と一連の仕事だったのに、いまは所有権
移転のみの仕事が増えたとか。

 私の場合は、前々から仕事が多くないので、仕事が減ったという感覚はありませ
んが、会社法専門司法書士としては、いまが、一番、脂が乗っている年代のためか、
数は少なくても、いくつか、よい仕事に恵まれました。

 ただ、会社法大好き人間ですから、複雑な仕事を受けると嬉々として深夜まで仕
事をしてしまい、すぐに終わってしまうのです。ある方の言ですが、下りのエスカ
レーターを駆け上がるごとく集中的に仕事をします。その結果、もっともっと楽し
みを味わいたいのに、1日で終わってしまうのです。あとは退屈です。

 この点、執筆活動は、楽しめる時間が長続きします。2か月間はずっとその仕事
に集中できます。

 「ずばり解説!株式と機関」も2か月で仕上げました。もんもんと何か書くネタ
はないかと考えるのも、そのときは大変でしたが、終わってみると楽しいものです。
現在、第2回目の校正中であり、1月下旬には予定どおり出版されますので、いま
しばらくお待ちください。お申し込みは、上記TOPICSのとおりです。


2012.12.17(月)【選挙結果】(金子登志雄)

 終わりましたね。当選した方には「おめでとうございます」、落選した方には「残念で
した」と申し上げておきましょう。

 事前の私の勝手な予想は、民主は4分の1の惨敗で70、維新は3倍の30、未来は新
人が多いため半減の30、みんなは倍増の15、その他は不明(想定せず)というもので
したが、数字上は、まぁまぁ合格点をとれましたが、個別の想定理由から考えると、実際
は、大外れも同様でした。

1.投票率戦後最低
  こんな大事な選挙に投票率が戦後最低のようです。天気がよかったので浮動票の出足
 は悪いとは思っていましたが、これほどまでとは思いませんでした。いまの政治に危機
 感を感じている国民が少ないのでしょうか。

2.反原発・反消費税が全く争点にならない
  私の大外れの原因はこれにあります。マスコミが石原・橋下氏の見解の相違などを面
 白おかしく取り上げるばかりで、原発問題や消費税問題を取り上げなくなったことが、
 逆に国民の反感を買っており未来が伸びると見込んでいましたが、結果は、被災地の福
 島県でも自民の圧勝でした。大飯原発のある福井県も同様です。
  原発推進、消費税賛成が国民の意思と思われても仕方ないでしょう。

3.民主惨敗
  参議員の輿石さんが「集団自殺の解散」といったようですが、私も無理心中株式の全
 部取得条項付種類株式を思い出してしまいました。

  消費税の3党合意が種類株式民主に全部取得条項を設定する議決でした。小沢グルー
 プは反対し買取請求権を行使し離党しましたが、残った民主株主は野田総理による無理
 心中(解散という全部取得の実行)に進んでしまいました。

  あおりを食らって、衆議院議長の横路さん、前首相の菅さん、大物の仙谷さんまで落
 選してしまいました(比例復活の有無は執筆時点では不明)。

  このあたりは半分は予想されていたことですが、最も責任の重い野田総理の断トツの
 圧勝には驚きました。同じく民主党惨敗の責任がある前原、玄葉氏など執行部の松下政
 経塾出身者も逆風の中でも圧勝でした。このあたりの事情は、私の理解をはるかに超え
 るので、何ともいえません。

4.維新善戦
  マスコミの風が後半、維新に若干冷たくなったので、思ったほど伸びない、特に、関
 西地域以外は泡沫候補も同じとみていましたが、大阪を固めて、他の地域でも、大善戦
 でした。マスコミに好意的に扱われたとはいえ、新人が多いというハンデを考えると、
 すごいです。同じく新人の多い未来と比較すれば、大活躍といえます。

 金曜日には、「私の関心は、マスコミが作った風潮どおりの結果になるのかどうかが中
心です」と書きましたが、そのとおりになりました。チュニジアやエジプトの例から日本
でも少しはネットの力が発揮されるかと思っていましたが、全国隅々まで新聞やテレビが
普及しているマスコミ先進国の日本では、前者の圧倒的力だけを思い知らされる結果とな
りました。結果からみると、維新の石原・橋下氏の内輪もめも、マスコミへの登場回数が
多くなったという意味で、マイナスには働かなかったようです。


2012.12.14(金)【視点】(金子登志雄)

 昨日の自分の投稿を再読しながら、やはり、知識よりも知恵(ものの見方、考
え方、捉え方)のほうが重要だと再認識してします。

 会社法の講演でも、会社法の思考方法を話すことがあります。

 1.会社法は発行価額ではなく払込価額で、商法とは逆の方向から構成されて
  いる。
 2.会社法はデジタル思考である。準備金の資本組入れも、準備金の減少と資
  本金の増加の2つだ。
 3.これから合併するのではなく、効力発生日から過去を振り返って、総会決
  議は済んだか、公告は済んだかと、商法とは逆の方向から構成されている。

 皆様も、ぜひ、さまざまな視点からみる習慣をつけてください。想像力だけで
すから、お金は一切かかりません。

 例えば、次のような裏側から視点も、たまにはいかがですか。

 1.忠臣蔵………真夜中に徒党を組み、無関係な人にも残虐なことをした集団
 2.水戸黄門……最後には権威をかさにして威張り出すおじいちゃん
 3.桃太郎………異国に攻め入り、財産を奪った乱暴者
 4.牛若丸………京の五条の橋の上で弁慶おじさんに遊んでもらった幼児
 5.金太郎………動物しか遊び相手のいない孤独な子供

 また、石原さんや安倍さんが中国で生まれて中国に住む中国人だったら、きっ
と今頃「国防だ。日本に核を落とせ」などと叫んでいるだろうな、とか考えてみ
ることも必要でしょう。

 さて、いよいよ明後日は、今後の日本の行く末を決める非常に重要な選挙です
ね。3極の維新、みんな、未来が組めば、既成勢力対改革勢力の激突として面白
い選挙になったでしょうが、維新が石原さんと組み、前者の補完勢力であること
が明らかになり、激突はなくなってしまいました。

 私の関心は、マスコミが作った風潮どおりの結果になるのかどうかが中心です。
いずれにしろ、自立した人間として、自分で考えて投票いたしましょう。

(土日にどうぞ:裏視点(?)ブログで面白いですよ)
 
http://latache1992.blog56.fc2.com/


2012.12.13(木)【第4の権力の信頼度】(金子登志雄)

 立法、行政、司法の3権に対して、マスコミのことを第4権ということがあり
ます。それだけ、影響力があるということです。

 ある掲示板に「マスコミに国民を誘導する力はあるのか」というご意見がのっ
ていましたが、これは、難しい質問です。

 40年前に読んだ政治学の教科書には、比喩でいうと「マスコミには右を向い
ている人をもっと右に向かせる力はあるが、左を向いている人を右に向かせる力
はない」とありました。

 しかし、世論の「風潮」を作るという力が絶大であることは、小泉フィーバー
や最近の維新フィーバー、あるいは過去のロッキード事件、リクルート事件、最
近の陸山会事件でも明らかです。

 前にご紹介しましたが、検察用語で「風を吹かす」という言葉があります。マ
スコミを利用して狙った獲物に極悪人のイメージをつけ、「正義の味方の検察」
を演じ、世論をあおることです。これも、マスコミには、そういう力があること
を前提としています。

 問題は、一般の方があおられていることを意識しないことが日本の最大の問題
点ではないでしょうか。日本人の7割はマスコミ情報を信じます(権力と戦って
きた歴史をもつイギリスの庶民は14%程度に過ぎないようです。後記「資料」
参照)。

 日本人の教育程度は高いのに、異常な数字ですが、権力者の一画である水戸黄
門や大岡越前、遠山の金さん、暴れん坊将軍というテレビ番組をこよなく愛する
日本人らしい数字ではあります。

 もっとも、最近は、ネット情報が力をつけてきて、メディアに影響されない人
も増えてきました。下記の意見に対する賛否はともかく、こういう視点でメディ
情報を捉えられる人は少ないと思いご紹介する次第です。

 
http://www.janjanblog.com/archives/86715

(「資料」)
 
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-democ14060...html


2012.12.12(水)【地震国なのに】(金子登志雄)

 立花さん、いつも投稿感謝です。先日の地震は、揺れている時間が長かったの
で、東京でも大変でした。周囲では、あわてて、立ち上がり、書棚などを押さえ
る人が絶えませんでした。

 私は、雷が多く自然が暴れ出すことに慣れている群馬県出身のためか、「なる
ようになれ」で居直って、ずっと椅子に座ったまま様子をみていましたが、こう
いう時に真っ先に思ってしまうのは、やはり「福島原発は大丈夫か」です。これ
は、福島の風下に位置する関東人みな共通の感覚でしょう。当社には、茨城県に
支店がありますから、なおさら脅威を感じてしまいます。

 ここ数年、地球の中が活発に活動し始めていることは明白であり、火山の噴火
や地震が多発していますが、それより怖いのが原発による2次災害です。

 いま、選挙で、脱原発か、原発推進かを問われていますが、世界の潮流は、間
違いなく前者です。にもかかわらず、前者に対しては「現実的ではない、ポピュ
リズムだ」などという論が日本では強いようです。そんなことをいうなら、ドイ
ツ人はみな非現実的なポピュリズムということになってしまいます。

 国をあげて原発を忌避するドイツでは、そんなに地震が多いのかと調べてみれ
ば、下記のとおりです。

 
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4380.html

 表で最も地震の少ない国がドイツです。日本は4番目に多い国ですから、ドイ
ツの数倍も反原発になってもおかしくないのに、現実は、オメデタイ状況です。
選挙の争点も、TPPや反中国、反北朝鮮問題に誘導され、肝心の反原発、反消
費税の争点隠しが行われているとしか私には思えません。

 こうしている今も、フクシマでは放射能が垂れ流されており、他国にも迷惑を
かけているのに、こんな忘れやすくオメデタイことでよいのでしょうか。



2012.12.11(火)【渋滞】(仙台・立花宏)

 先日の夕刻、三陸沖を震源とした大きな地震がありました。身体を突き上げられ
るような揺れは、あの東日本大震災を思い起こさせるものでした。

 東日本大震災の経験があるから、少し大きな地震があっても落ち着いて行動でき
るだろうと自分では思っていました。しかし、その過信はもろくも崩れ去りました。

 地震が起きたとき、事務所でパソコンに向かい、キーボードをたたいていました。
不気味な地響きと揺れに身がすくみ、立ち上がることもできません。

 さいわい、東日本大震災ほどの揺れではありませんでしたし、停電にもなりませ
んでした。しかし、なにか不安な気持ちでいっぱいです。揺れがおさまるとすぐに
ラジオをつけ、地震の情報を聞きました。

 事務所の中は特に被害はありませんでしたので、仕事を続けようと思えば続けら
れる状況でした。しかし、気持ちが落ち着かず、仕事が手につきません。しばらく
は、ラジオから流れる地震のニュースに耳を傾けて、情報を収集することしかでき
ませんでした。

 ところで、地震当時、車で沿岸部に出かけていた同僚の話をあとで聞いたところ、
地震直後から、幹線道路は大変な渋滞となっていたようです。

 また、知人から聞いた話では、ガソリンスタンドに行列ができていたそうです。
きっと、東日本大震災の時のことを思い出したのに違いありません。迅速な避難は
大切です。また、東日本大震災後、しばらくはガソリンの入手に苦労したのも事実
です。

 しかし、災害時の避難の際は、混乱をさけるために徒歩が原則です。車での避難
は年配の方や障害のある方が優先で、それ以外の方は車での避難は避けるべきだと
思います。

 また、ガソリン給油も緊急車両等が優先でしょう。

 幹線道路の渋滞やガソリンスタンドでの行列の話を聞いたとき、あまりよい気持
ちはしませんでした。

 誰しも、災害の際は不安な気持ちになります。でも、冷静な行動を心がけるべき
じゃないだろうか、と、非難めいた感情が湧いてきました。

 しかし、そのとき、はっとしました。自分はどうだったろうか、と。
 地震直後、家族の安否を確認しようと、すぐに電話をかけていたはずです。すで
に電話はつながりにくい状況で、なかなか家族と連絡がとれませんでした。電話が
つながらないため、一度ならず、二度、三度と家族の電話番号に発信した記憶があ
ります。

 そんな行動を思いだし、恥ずかしくなりました。

 ひとつひとつは小さな行動でも、それが積み重なれば、全体に大きな影響を与え
ます。不安な気持ちの中でも、自分本位な行動は慎まなければ・・・。
そんな反省をさせられた出来事となりました。


2012.12.10(月)【議員選任権付国民権】(金子登志雄)

 寒くなったのに、ただいま熱い選挙中ですが、知識よりも「モノの見方、考え方、捉
え方」を重視する会社法大好き人間の私は、さまざまなことを会社法に絡めて思考する
ことがあります。

 種類株式で取締役選任権付株式というものがあり、「甲種株式は2人選任することが
できる、乙種は1名選任することができる」などと定めますが、現在の小選挙区制はま
さしく、この種類株式だと思いませんか。東京1区株式は衆議院議員1人を選ぶことが
できる、東京2区は1人を選ぶことができる………というわけですから。

 ここで皆さんの中には、同じ1人を選ぶなら、同一内容の同種株式ではないかと疑問
を持つ方もおられるでしょう。

 しかし、この選任権は2次的内容であり、既に甲種、乙種と異種類の株式があること
を前提に、そこに選任権を付加するのを基本としています。したがって、東京1区の選
挙民、東京2区の選挙民という第1次的種別があるので、同じく1人しか選べなくても、
異種類の権利になります。

 報道によると自民党が圧勝ということのようですが、脱原発8割、反消費税6割とい
う世論の傾向と自民党の圧勝がどうも私には結び付きません。きっと、政策よりも、党
や人のイメージなんでしょう。

 また、実質は多くの方が述べているように自民の圧勝ではなく、民主の惨敗が正しい
のでしょう。自民が圧勝したとしても安倍新政権には、「憲法改正、国防軍、原発推進、
消費税アップが支持された」とは決して思い込まないよう願いたいものです。

 もっとも、依然として支持政党なしが最大の勢力ですから、結果は全く予想つきませ
ん。今年の風はどう吹くことやら………。

 皆さん、アナーキストでない限り、必ず選挙に行きましょう。行けば、数年後に、や
はりオレの選択は間違っていなかった、あるいは、何という愚かな選択をしてしまった
のかと反省できます。選挙に行かないと、数年後にこの感覚を味わえず、いつまでも無
責任な外野の評論家(誰だって同じだよ)で終わってしまいます。

(父を超えてみせる!:いやー、驚きました。その意気込みに拍手です)

 http://www.youtube.com/watch?v=-OzRhIOAfyU


2012.12.07(金)【話術】(金子登志雄)

 丸田さん、投稿ありがとうございました。『法科村塾』は年30回ですか。実質、毎週
のようにあるわけですね。その準備も大変でしょう。恐れ入りました。

 話術といえば、5日は東京司法書士協同組合で忘年会があり、お誘いを受け、参加して
きましたが、余興として組合員のご友人である講談師による「講談」がありました。

 抑揚をつけた話しぶりに引き込まれました。ポイントで、例の扇子で、「バチ!」と絶
妙の効果音でした。

 思わず、次の私の講演には、扇子を持ち込もうかなと思いましたが、会社法の講義では
ストーリーが作れません。丸田さんのように歴史に詳しいわけでもないので、歴史話で、
受講生の気を引くこともできません。

 政治家の演説では、かつての中曽根首相が抜群に上手でしたが、最近では野田首相では
ないでしょうか。有名なシロアリ演説、どじょう演説などがありました。

 話術のへたな私は、別の面で特徴を出すため、受講生の方から新しい視点や知識が3つ
以上得られたといわれることを重視しています。これは著作でも同じであり、最初の法律
本の書き出しに「これは役立つ、と思えた部分が3つもあれば、実務書としては成功だと
思っています。本書は、あなたにとって、いくつ役立つ内容があるでしょうか。きっと、
10個以上あったといってもらえるとの確信のもとに、本書を世に問います」と書いたと
おりです。

 あれ、今日は金曜日ですね。たまには(?)、会社法の話題にしなければなりません。
先日、某受験予備校の先生から、次の質問を受けました。

 「譲渡制限設定決議→新株発行→譲渡制限の効力発生」の場合に、新株主の利益保護の
ため、譲渡制限設定の登記申請が受理されないとされているが(昭和51・3・18民四
2157)、どう思うか。

 皆様はどう思われますか。新株の発行ではなく、新株予約権の行使や取得請求権の行使
の場合は買取請求や種類株主総会という保護がありますが、新株の場合にはないので、先
例の気持ちは分かりますが、一旦有効に決議したものが、のちの決議(ましてや、取締役
会決議)で効力を否定するのは行き過ぎではないでしょうか。新株主に対する損害賠償等
の問題にすべきであって、登記拒否の問題にすべきではないでしょう。

(小沢流川上作戦:土日にどうぞ)
 愛媛県上浮穴郡久万高原町……読めますか。「かみうけなぐん・くまこうげんちょう」
と読むのだそうです。人口1万人もいない小さな町ですが、小沢氏が選んだ最初の演説場
所として、ネットで一気に有名になりました。少しも眠くならない演説でした。

 
http://twitcasting.tv/loveholic629/movie/7582921


2012.12.06(木)【私の眠くならない講演】(福岡・丸田幸一)

 金子ファンの皆さん、始めまして。福岡の丸田です。富田先生の「眠くなる講演を
するコツ」に触発され、初めて投稿させていただきます。

 私は、講義をするのが大好きで、毎月手弁当でやっている市民公開無料法律セミナ
ー『法科村塾』を始め司法書士会内外で、年間30回前後講義をしています。司法書
士歴19年なので、延べ数百回の講義をやってきたように思います。

『法科村塾』のご案内は、こちらです。

http://shi.shigyo.info/maruta/?m=pd&did=286&PHPSESSID=045165d2eb45646aa6fbae410c641515

 やはり多いのは、「裁判業務」に関する講義が多いのですが、実務経験談をふんだ
んに、「歴史タイム」と「笑い」を織り込むのが定番です。

 黒革の司法書士手帳には、長年「ギャグ」を書き貯めていて講義の5分前には、必
ずこの手帳でその日のネタを確認しています。

 というわけで、先生方のように高尚な法律の理論は喋れませんが、受講者を眠らせ
ない自信はあります。

 ちなみに、自分が受講している時は、金子先生の講義以外は、ほとんど寝ています。
研修単位の8割は、睡眠中にとっているかも知れません。

 ところで、担当中の福岡県司法書士会の総務部長もあと半年となりました。いよい
よ、私が崇拝する金子先生に追いつき追い越すべく、来年から死に物狂いで「会社法」
「商業登記法」そしてその実務に邁進していきたいと考えています。

 10年後を目標に金子先生に追いつきたいと思っています。それが、長年、私の商
業登記実務を支えて下さった金子先生への恩返しだと思っています。

 これまでも、あらゆる商業登記実務を一生懸命やってきましたが、実務先行という
現状は否めません。今後、理論もバリバリ押さえていきます。来年以降、時々、会社
法ネタを投稿したいと思います。

 レベルが低いかもしれませんが、皆さん、宜しくお願い申し上げます。


2012.12.05(水)【眠くなる講演その2】
(金子登志雄)

 富田さん、勘違いですよ。先日の講演がうまく行ったとしたら、受講者が実務家
ばかりだったからで、義務で出席している新人研修であったら、こうはなりません。

 私の講演は、「ものの見方、考え方、切り口」が中心なので、実務家の方は、自
分の知識や切り口と比較して、「なるほど、そういう方向から攻めればよいのか」
と感動してくれますが、新人には比較対象がないので、「ふ〜ん」で終わってしま
うことでしょう。

 これでは話す気も失せてしまいますので、新人研修や素人相手は、可能な限り、
お断りさせてもらっています。講師が私である必要もありません。

 外部の経営セミナーなどでは、最後に感想のアンケートをとるのですが、私が講
師の場合は、「非常によかった」と「全然分からなかった」の真っ二つ分かれ、中
間の「ふつう」がありません。

 これに対して、司法書士鈴木龍介さんの講演は、「非常によかった」「よかった」
ばかりです。一緒に講演したくないほど、全員に好評なんです。鈴木さんが話し上
手の点は横に置くと、基礎から丁寧に話しているからです。これぞ、本物です。

 私は受講生は基礎が分かっていると思ってしゃべってしまう傾向があり、この丁
寧さという点で講師失格ですから、結果的に、講演先も基礎の分かっている実務家
研修ばかりになってしまいます。

 四国や名古屋で講演した時、「年に何度くらい講演するのか」と聞かれ、「5、
6回」と答えたところ意外に少ないと思われてしまいましたが、その理由は、上記
です。

 富田さんも、プロレスファンや時計オタクを対象に講演すれば、拍手喝采ですよ。
お互い、性にあわないことはしないことですね。引き続き、新人研修はお断りしま
しょう。


2012.12.04(火)【眠くなる講演をするコツ】(富田太郎)

 私、富田も先日の金子先生の講義(「最近の商業登記問題と改正要綱」)を受講
致しました。

 感想は、
・「同業者である司法書士に、よくここまで惜しげもなく秘伝?を教えるなぁ〜。」
・「具体例が多く、聞き手は目を輝かせて聞いており、また、講演術(話し方、テ
 ンポ)が素晴らしい。」
ということでした。

 ところで、自称「金子門下」一番弟子の私にも、ごく、ごく、稀に講演の依頼が
来ることがあります。しかし、すべてお断りしています(きっぱり)。
 理由は………忙しい?? いいえ、聞き手を眠らせてしまうからです。

 実は過去3回ほど、講演・発表を行ったことがあります。
--------------------------------------------------------------------------
★(1回目)東京司法書士会「判例研究の発表」
 はじめての講演であったためか、緊張のあまり支離滅裂………。

 あの辛口の金子先生に「徐々に慣れていけばよいから………」と慰められた記憶
があります。
--------------------------------------------------------------------------
★(2回目)東京司法書士会 新人研修の講師
 テーマは「ストックオプション」。
 得意分野だったため、レジュメはP150ほど作り♪、適格税制の話までしたも
のの、マニアックな論点をたくさん話しすぎて、気がつけば、受講生の半分を爆睡
させてしまいました………(汗)。

 金子先生曰く「前よりはよかったけど、人には向き不向きがある。富田さんは執
筆の方で頑張ればよい」と慰められた記憶があります………(涙)
--------------------------------------------------------------------------
★(3回目)住宅新報社の講演
 テーマは「司法書士の職務内容」。
 しかし、受けを狙っているうちに、途中からテーマと関係のない「私は、なぜ司
法書士になったか」という内容に変わってしまう始末。おまけに時間配分を誤り、
司法書士を目指す前のサラリーマン時代の話で終わりました………(恥)。
--------------------------------------------------------------------------

 要は、私の場合
 @ 論点を盛り込みすぎ、「テーマが不明確」かつ「一つの論点が長い」。
 A 具体例が少なく、観念的な話が多い。 
 B 興奮すると、ヒトラーのように独善的に話し、聞き手の反応を無視する。
という点が、爆睡させる原因のような気がします。

 そんなある日、『講演のプロという方々』の雑誌の特集を読みました。
-------------------------------------------------------------------------
★駄目な講演とは
 @ 主張が明快でない(テーマを盛り込みすぎ&結論が不明確)。
 A 具体例が少ない。
 B 聴衆を見ていない。
-------------------------------------------------------------------------
 この3つだそうです………。
 なんと!………すべて私に当てはまっています………(汗)

 なるほど〜、聞き手は爆睡するはずです………。
私は、どうやら「眠くなる講演をするコツ」を熟知しているようです………(恥)。

 どうりで、1回講演すると、2度と同じところから依頼が来ないわけですね…
……(涙)。


2012.12.03(月)【男対女の闘い】(金子登志雄)

 今度の衆院選挙は完全に、「勇ましい男」対「女」の選挙になりました。

 男組は、憲法改正・国防軍を唱える安倍自民党、反中国で核武装論者の石原維
新で、女組は、国民の命や足下の生活こそ最優先課題だと、反原発・反消費税・
反TPPを唱える嘉田(かだ)未來の党です。それだけでなく、国家の品格まで
主張するとは、品性に欠けた発言の多い男組側に対する痛烈な皮肉を感じました。

        
http://nippon-mirai.jp/

 言い換えれば、極右路線と中道路線の闘いでしょうか。外交問題優先派と内政
問題優先派の闘いでもあります。

 選挙の仕方も男組は、応援団のマスコミを利用しての空中戦を得意としていま
すが、女組は、ひたすら辻立ちで訴えるどぶ板です。司法書士の姫井女史も、新
天地の千葉で、ボランティアに支えられて頑張っているようです。人手不足で、
悲鳴をあげているようですけど。

        
http://ameblo.jp/yumiko-himei/

 利権維持のマスコミは、ずっと男組を支援してきたため、当初は、民主・自民
対維新の男組内の闘いのように報じて、第3党である小沢新党や本来の選挙の争
点である反原発・反消費税から国民の目をそらしてきましたが、国民生活最優先
の側が嘉田未來の党に大同団結したため、やっと本来の争点が浮かび上がってき
ました。弱者の味方の亀井さんも活躍の場ができて喜んでいることでしょう。鳩
山さんも未來の党にご執心のようです。

 女組の大同団結は男組にとっては相当ショックだったようで、男らしくもなく
急に主張を変えてみたり、ちょこっと表に顔を出した小沢叩きに必死ですが、や
はり原発被害で故郷に戻れない人々や子供への放射能被害を恐れるお母さん方、
就職もできない若者であふれている時代に、憲法改正や核武装でもないでしょう。

 男と女の間に位置する民主党と公明党も困りました。幹部連中は男組の連立与
党に入りたいようですが、民主党の支持母体である連合(労組)や、創価学会の
婦人部が、極右路線を受け入れるか疑問です。「民主がっかり、自民こりごり」
(鈴木宗男氏の言らしい)の無党派層や労組票のかなりの部分が未来の党に流れ
るのではないでしょうか。野田さんのように、比例重複立候補で保険をかける幹
部も出てくる始末です。

 今後の日本の行く末を決める天下分け目の関ヶ原はもうすぐです。

(石原さんの橋下評ですが、実に面白い)  
   
http://tanakaryusaku.jp/2012/12/0005727 


2012.11.30(金)【自己株対価なのに資本金計上?】(金子登志雄)

 醍醐さん、27日はお世話になりました。また、過分のご講評を賜り、恐縮で
す。

 千代田支部セミナーは、上場会社を顧客に持つような司法書士も集まるので、
私も話しやすいです。受講者の反応がよいというのでしょうか。結構、高度な話
をしたのに、眠っている人もいませんでした。

 最後に受けた質問も高度な内容でした。

 「合併等の対価として自己株式のみを利用したのに、なぜ資本金を増加するこ
とができるか。自己株式処分差益は、その他資本剰余金への計上ではないのか」

 こういう質問は、企業法務の最前線にいる人しか出せません。

 計算規則35条2項や37条2項をご確認ください。自己株式対価オンリーで
も資本金を計上することができます。

 これは、組織再編で株主資本を再設計する場面だからです。自己株式処分差益
とは言わずに、株主資本等変動額の配分の問題になります。理屈をつければ、い
ったん、その他資本剰余金に計上し、同時に、それを資本組入れしたと考えれば
よいでしょう。

 新株式のみを対価にした場合も、資本金に計上しなくて済む理由は、いったん、
資本金に計上し、同時に、債権者保護手続をしているので、資本金の額を減少し
たと考えれば、ご納得いただけると思います。債権者保護手続をしない株式交換
では、その他資本剰余金に計上することができません。


2012.11.29(木)【千代田支部セミナー☆大盛況】(醍醐 香)

 みなさん、こんにちは。2年ぶりの登場です。

 さて、現在、私は東京司法書士会千代田支部で、セミナー担当をしていますが、一昨
日の27日は、地元の日本教育会館に於いて金子先生に講義していただきました。

 相変わらず、金子先生のセミナーは受講者の出足も良く、300名定員の会議室は受
講生で埋め尽くされ、大変盛況でした。

 本欄を閲覧なさっている方の中には、実際にご参加いただいた方も多いかと存じます
が、「最近の商業登記問題と改正要綱」をテーマにQ&A形式、豆知識なども交えて大
変充実した素晴らしいご講義で、3時間があっという間に感じられました。

 セミナー終了後のアンケートの感想では、

「いつもながら具体的事例に沿って説明して戴けたので大変勉強になった。」
「レアなケースの話が聞けて考え方の引き出しが増えた。」
「目からウロコが落ちる内容(特に講義内容の「会社法及び商業登記の論点」)ばかり
だった。」

 など大変好評をいただきました。

 先生は、「毎年の講師では、ネタ切れ」とご冗談をおっしゃっていましたが、今から
既に次回のご講義が楽しみです!! 次のテーマは何でしょうか!!!


2012.11.28(水)【総選挙を控えて】(島根・根来川弘充)

 今月16日衆議院が解散されました。

 時期については、「突然」「予想通り」と、評価が分かれたように思います。

 そして、与党である民主党が分裂し、また新党も前回の総選挙からは増え、小
規模な政党が乱立する様子です。

 どの政党も政策で結束していくこと自体は歓迎なのですが、いずれも単独で過
半数をとる見込みがないことには、不安を覚えます。なぜなら、各政党の主張で、
共有しやすい主張でまとまりやすいのではないかと思うからです。

 おそらくは、経済問題、国際問題、財政問題という大きな問題では、すでにそ
れぞれが対立しているのですから、これらの問題に対する主張で多数の党が、ま
とまっていくことは難しいでしょう。

 とすると、それ以外の主張で、何か共有できることがあれば、それでまとまっ
ていく危険があるのではないかと思うのです。

 この主張として、一つあげたいのが、「憲法改正」の問題です。これについて
は、積極的な発言をする党首が多いように思われます。

 国家の根幹にふれる問題であるだけに、国民全体を巻き込んだ、慎重かつ充分
な議論が必要だと思います。

 しかし、各政党がこの主張で、まとまっていくことがあれば、軽率に改正され
るのではないかと、とても不安に思うのです。

 数年後振り返ってみて、「憲法改正解散」などと、評価されないことを祈り、
投票したいと思います。


2012.11.27(火)【講師初体験】(仙台・立花宏)

 先日、地元司法書士会の研修会で、講師という役割をはじめて体験いたしました。本当
は私の勤務している事務所の所長に依頼があったようです。しかし、依頼を受けた所長が、
自分ではなく立花にやらせる、と講師役を譲ってくださったのです。

 依頼内容は、医療法人やNPO法人などの法人登記手続について、というものでした。
法人登記は、株式会社を中心とした商業登記よりも絶対的な件数が少なく、司法書士でも
精通している方は少ないように思います。特に若手の司法書士には苦手意識をもっている
方も多いように感じます。自称若手の私も、けっして得意とはしていません。今回は、そ
の法人登記を苦手としている若手を対象とした研修ということでした。

 「所長はどうして、私に講師役を譲ってくださったのだろう。」

 経験の少ない私がはたしてどこまでできるのか、と不安を抱えながら、2ヶ月ほど前か
ら準備を進めました。準備を始めると、案の定、どうしてこのような手続をするのか、な
ぜ、そのように考えるのか、など、自分の中で十分に理解できていないところがたくさん
出てきました。

 自分が理解できていないことを、他人が理解できるように伝えることはできるはずがあ
りません。講義用の資料を作成しながら、わからないところがでてきたり、疑問に思った
ことがあったりすると、そのたびにいろいろな資料にあたって調べる、という作業を繰り
返しました。

 そうして、ようやく資料が完成したところで、説明の練習をしました。説明の練習をは
じめてみると、思ったほどうまく説明できない、わかりやすく説明できないということに
気づきました。もちろん、説明の仕方がうまくないということもあるでしょう。しかし、
一番の理由は、説明したい内容を十分に理解しきれていないということでした。わかった
つもりになっていても、実はわかっていなかったのです。

 他人に説明するには、本当に理解していることが必要です。今回の講師を引き受けたこ
とで、自分がいかに法人登記を理解していなかったかを実感することになりました。きっ
と、所長は、私にそのことを理解させたかったのに違いありません。

 これからは、なにかを理解できたか、を判断する基準として、そのことを他人にわかり
やすく説明できるか、ということを意識したいと思いました。

 ところで、地元司法書士会の次回の研修会は1月です。内容は会社法、講師は“超大物
と聞いています。きっと、すばらしい講義を聴くことができると思います。たくさんのこ
とを吸収できるよう、気合をいれて研修に臨みたいと思います。



2012.11.26(月)【敵を見誤るな】(金子登志雄)

 3連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。私はいつもどおり、PCとにらめっこでし
た。この歳になっても、休みの日にやることがあるとは、ありがたいことです。

 さて、反論を許さない民主党に粛清され、不出馬に追い込まれた鳩山元首相の不出馬の
挨拶です。

  
http://www.hatoyama.gr.jp/activity/detail.php?id=144

--------------------------------------------------------------------------------
 私が愛した民主党の同志たちには、どうか、結党の理念を思い、弱き者、小さき者の声
に耳を傾ける政治をしていただきたい。
 見えない放射能におびえる、若い母親たちの気持ちに、心を寄せる政治をしてもらいた
い。それは、理屈や数字だけの事柄ではないのです。
 経済や金融をもてあそび、ここでも勇ましい発言を続け、先祖返りをしようとしている
人びとや、目先の人気取りで離合集散を繰り返す人びとと、きちんと闘って下さい。
 敵を見誤らないように。
 敵を見誤らないために、繰り返します、常に、弱者の声に耳を傾ける政治を心がけて下
さい。
--------------------------------------------------------------------------------

 いろいろ批判もありましたが、鳩山氏は戦後初めてアメリカの言いなりにならないよう
に動いた勇気のある首相でした。辺野古なんて地名も知らなかった沖縄問題を全国に知ら
しめた人でした。弱者の味方でした。一時は沖縄から猛反発を受けましたが、いまでは沖
縄県民から絶大な人気があります。

 アメリカに従属した日本の政治をほんの少しアジア重視に切り替えようとした民族独立
派だったために、同じ方向の小沢氏とともに、アメリカ一辺倒の検察やマスコミから猛烈
なバッシングの集中砲火を浴び、無念の首相退陣を余儀なくされました。いまでも思い出
します。毎週のように恣意的な世論調査が行われ、「ほれ、世論はあなたを支持してませ
んよ」と突きつけ、鳩山氏を追い詰めました。徐々に庶民も鳩山氏よりも世論を誘導した
マスコミにまんまと乗せられてしまいました(これはいまでもいえます)。

 それを目の当たりにした管氏や野田氏は、アメリカや財務省、マスコミに逆らわないの
が政権延命の方法だと学び、結党の理念を捨てました。うそつき民主党の始まりです。政
治が大きく混乱し、中国をシナと呼び、核武装まで主張する勇ましい発言をする前都知事
や、反官僚といいながら実質は末端の公務員いじめをして拍手喝さいを浴びる攻撃型市長
が庶民の人気を得るようになりました。

 鳩山氏の「敵を見誤るな」は、われわれ自身にも向けられた言葉でしょう。言い換えれ
ば、「真実を見抜け」ということだと私は理解しました。偏向した大新聞とテレビでしか
情報を得ていない多くの方々には、鳩山氏の真意が読み取れたでしょうか。


2012.11.22(木)【踏み絵その2】(金子登志雄)

 まず、これを見てください。やや古く、昨年10月現在ですが「TPP交渉参加に反対
する請願に賛同した民主党国会議員」の氏名一覧です。

  
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111025-OYT1T01057.htm

 続いて、昨日発表された民主党の第1次公認候補を下記から開いてください。

 
http://www.dpj.or.jp/article/101624/%E8%A1%86%E9%99%A2%E7%B7%8F%E9%81%B8%E6%8C%99%E3%81%AE%E7%AC%AC%EF%BC%91%E6%AC%A1%E5%85%AC%E8%AA%8D%EF%BC%92%EF%BC%93%EF%BC%97%E4%BA%BA%E3%82%92%E7%99%BA%E8%A1%A8   
 
 茫然自失の思いでした。

 私の住所地(選挙区)から出る民主党のS議員は、反TPPの論客だったのです。野田
民主党が「反TPPの者は公認しない」と明言したため、S議員はどうするのかと思って
調べたわけですが、第1次公認候補者として名前を連ねているところをみると、節操を曲
げて「踏み絵」を踏んだのでしょう。

 公認候補をみると、元社会党、元鳩山派、元小沢グループなど、消費税やTPPに反対
してきたはずの面々がずら〜り………。

 みてはいけないものをみてしまったような気分です。権力というのは、こんなにも恐ろ
しい力を持っているのでしょうか。野田さんも、つい1年前までは少数派閥のトップだっ
ただけなのに、いったん総理になると、こうも力を持つのでしょうか。

 S議員をはじめ、実際のところは「面従腹背」に過ぎないのでしょうが、政治家たる者
が日和見しては選挙民から信頼されません。仮に私がTPP賛成派でも、こういう節操の
ない人には投票したくありません。

 こういうのをみると、鳩山氏が節操を曲げなかったのは、私が思っている以上に、勇気
のあることだったのかもしれません。節操だけでは生きていけないという風潮がはびこり
そうですね。いやな社会になりました。


2012.11.21(水)【踏み絵】(金子登志雄)

 野田民主党は、党内に反対の多いTPPに賛成しない人は公認しないと明言しました。
消費税に賛成しない者も同様です。これらの発言からしても、野田戦略は、よく言えば
松下政経塾出身者らによる民主党の右寄り純化路線であり、悪く言えば、潤沢な民主党
資金(政党交付金)の独り占めでしょう。

 彼は選挙での敗北を覚悟し、これを逆手に取り、なかなか民主党を離党しない鳩山氏
らも追い出し、数が減ればたんまりある民主党の資金を自分と志を同じくする議員に配
れるし、選挙後に50名程度の少人数になっても、分母が少なくなった分、負け比率が
減少する、選挙後に自民党と公明党と連立政権(別名、翼賛体制)を組み、再び与党に
なろうという戦略を描いているのでしょう。起死回生の自分達だけの生き残り戦略です。

 解散も、幹事長を含め民主党幹部の大多数が反対しているのに、たった1人で決めて
しまいました。その剛腕ぶりは、剛腕小沢をはるかに超える非民主的独裁ともいうべき
ものです。財務省や大マスコミの後ろ盾があるからだとの専らの噂ですが、世論を無視
し、人に恨まれることを恐れない点では、歴代首相になかった部分であることは間違い
ないようです。

 これで石原さんや橋下さんのように大衆を巻き込むアジテーターの能力があったら、
ヒットラーになっていたでしょうから、太ったヒットラーはあり得ないし、一見、紳士
であって、よかったというべきでしょうか。

 ここまで徹底すると、権力亡者という面では、ご立派というか、すごい人です。逆に、
哀れなのが、民主党の創業者の鳩山氏です。大人の世界ですから、乗っ取られたとは言
いませんが、完全に破壊されてしまいました。そろそろ逆襲して意地をみせないと、ご
本人自身の選挙にも影響すると思うのですが、いつ動くのでしょうか。このままでは公
認なしの無所属立候補でしょう・・・と、昨日書いたのですが、今朝のニュースによる
と、立候補断念とか。踏み絵を踏まずに信念を通したのは立派ですが、一矢報いる逆襲
くらいはみせてほしかった。


2012.11.20(火)【話題の女性議員】(金子登志雄)

 小沢氏の無罪が確定しましたが、今日の新聞で、どの程度の大きさで取り上げるか、ぜ
ひ注目してください。というのは、東京新聞を除く大新聞は、国民の目を石原・橋下連合
にそらして、できるだけ小沢氏及び国民の生活が第1のことを報道しないようにしている
というのがネットの論調だからです。民主、自民に次ぐ第3位の政党で、公明党よりも議
員数が多いのにもかかわらずです。

 さて、飛行機に乗ると、時々、有名人に会います。今回の高松行きでは、岡山の民主党
の指導者で管前首相の後見人である江田五月議員が1人で乗っていました。元裁判官だけ
あって、品のよい紳士という雰囲気でした。

 この人と折り合いが悪かったのが、わが司法書士界からの唯一の国会議員である姫井由
美子議員ですが、男女問題のスキャンダルから、やんちゃ姫のイメージが強かったのに、
先日の有楽町駅前での演説が力強く、ネットで実に評判がいいのです。

(姫井議員演説)
  
http://youtubu.tv/watch?v=2JzJw12LSB8

 「皆さん、どう思いますか」「そう思いませんか。皆さん」と、念を押すように力強い
演説をなさるのですね。報道から受けるイメージとの相違に驚いてしまうと同時に、つい
聞き惚れてしまいました。

 参議院から鞍替えして今度の衆議院選挙に出ることは知っていましたが、てっきり岡山
から出るのだとばかり思っておりましたら、まだ選挙区は決まっていないようです。あの
しゃべりは、無党派層向き(都会向き)だなと思いました。

 わが母校(高校)のある群馬県の高崎では、石田博英さんの孫である三宅雪子議員のツ
イッターが評判で、私も注目していましたが、何と野田首相の対抗馬として千葉県の船橋
から選挙に出ることになったようです。大変な勇気ですね。これでマスコミは生活党のこ
とを取り上げざるを得なくなりました。

(三宅議員ツイッター)
  
https://jp.twitter.com/miyake_yukiko35

 三宅議員は2度目の首相への対抗馬ですが(前回は福田首相)、姫井さんといい三宅さ
んといい、国民の生活が第1には、女性軍が育っているようです。引き続き注目していき
たいと思っています。「そう思いませんか。皆さん」。

(民主党に残った女性議員は、哀れにも、こんな役割をしています)
  
http://www.youtube.com/watch?v=cnXKudas5cQ&feature=youtu.be


2012.11.19(月)【高松訪問】(金子登志雄)

 土曜日は、香川県高松市に行ってまいりました。司法書士会四国ブロックでの会社法
の講演でした(ご担当の松本先生ほか皆様お世話になりました)。せっかく呼んでいた
だいたので、サービス精神が働き、盛り沢山のレジュメにしたため、全部を話しきれな
かったのが心残りです。

 翌日は、以前訪問して松の美しさに見とれた栗林(りつりん)公園を再度訪問し、か
ねてから疑問だった「松で有名なのに、なぜ栗(くり)の栗林公園というのか」を入り
口にいた案内人のおじさんに聞いてみました。「その質問はよく受けるんですよ。昔は、
栗林で鷹狩りの場所で、栗林荘というものがあった」とのことでした。

 時間があったので、そこから電車に乗り、金刀比羅さんに行ってみました。長い石段
で有名なため、想像するだけで疲れてしまい、運動(疲れること)大嫌いな私としては
敬遠していたのですが、香川県を3度も訪問し、1度も訪れないのでは、バチアタリと
思い直し、行ってまいりました。

 急坂の長い石段だとばかり思っていましたが、実際は、下記のとおり、なだらかな坂
の石段で、10段くらい上ると、おどり場になり、意外に上りやすかったのですが、長
い、長い、………少しもゴールに達しませんでした。

 
http://www.kuraryoko.com/kagawakoto.html

 90キロの体重で重いパソコンを背負っていましたから、100キロ以上を支えて長
距離を歩くには、私の足はひ弱すぎます。ましてや栗林公園を1時間もかけて歩いてき
た後です。よほど途中で戻ろうかと思いましたが、5歳くらいの子供から、赤ちゃんを
抱いたお母さん、私より年配の方が頑張って上がって行くのに、大の男の私が悲鳴をあ
げるわけには行きません。何とか休み休み頑張りました。

 非常に疲れました。よって金刀比羅さんのことは一生忘れません。会社法の講演でも
徹底的に聴衆を疲れさせたら、一生忘れないで勉強になるのかなと思いましたが、これ
は無理ですね。



2012.11.16(金)【効力発生日の前日問題】(金子登志雄)

 民主党から離党が相次いでいますが、離党して自民党に行く人までいますので、その
節操のなさにはあきれてしまいます。しかし、それもこれも我々国民が選んだ人です。
天に唾を吐いても仕方ありません。筋を通した政治家は誰か、約束を守れる政治家は誰
かと、今度の選挙の参考にするしかありませんね。

 さて、合併等の組織再編では、効力発生日の前日までに株主総会の承認を得よと規定
しているのに、資本金の額の減少や株式譲渡制限の設定、株券の廃止などは、そのよう
な規定もなく、効力発生日に株主総会を開催してもかまいません。これはなぜか、と質
問されました。

 私の想像ですが、組織再編では「他社との関係で数字を締める」という発想があった
のだと思います。

 4月1日合併であれば、3月31日24時の財産内容を4月1日0時に承継するため、
31日24時までに全部を終わらせないと困るが、資本金の額の減少や定款変更では、
自社単独の問題であって、財産の移転はありません。決議と同時に効力を生じるのが原
則です。

 解散についても「数字を締める」ことが重要ですが、これは他社との関係ではなく、
言い換えれば「財産の移転」という問題が生じませんから、原則どおりなのでしょう。


2012.11.15(木)【大人気ない言説】(金子登志雄)

 急に解散風が吹いてきました。第3極の準備が整わないうちに解散してしまえ、
年内解散なら小沢新党にも政党交付金が渡らないから、カネの面でも圧倒的有利だ
という計算のようです。

 さて、小沢無罪判決後に記者会見した指定弁護士の大室俊三氏が「検察は小沢捜
査を早々とあきらめていて、本来、取っておくべき捜査資料がなくなっていた」と
敗北の弁を述べたようです。

 すごい言い分ですね。「私は検察が明らかに無罪とあきらめた人を資料がないの
に強制起訴をいたしました」という「犯罪行為」の自白じゃないですか。

 これでも法律家といえるのでしょうか。「ひとえに我々の力不足です」と上手に
ごまかす(?)大人の能力もないのでしょうか。

 野田民主党の大幹部の前原氏が、近々に出版する『政権交代の試練 ポピュリズ
ム政治を超えて』では、あのマニフェストは小沢が主導で作ったもので、自分は当
初から反対だったと述べているようです。

 これもすごい言い分ですね。当時、自分も党の幹部だったことを横に置き、「だ
って、小沢君が悪いんだもの。ボクには責任はありません」といっているわけです。

 子供だましのニセメール事件に引っ掛かり、大恥をかき、民主党を壊滅に追い込
んだのを小沢氏に救われ、大臣にもなれたのに、何たる言い草でしょうか。「口先
番長」といわれるだけあって、発言が軽すぎます。

 昨日書いた安倍自民党総裁の無実と裁判所の無罪は違うという弁といい、公明党
の山口氏の「小沢氏には説明責任が残っている」という弁といい、何か、大人気な
い発言が多すぎます。日本全体が劣化しているのでしょうか。

 出版といえば、こんな本を1市民の方が出すようですよ。この方は確か定年退職
後にネットを覚え、政治のことに関心がなかったのに、小沢問題に疑問を持ち自ら
検察審査会を統括する最高裁事務局まで足を運び、何度も何度も繰り返し質問した
人だと記憶しています。

  



2012.11.14(水)【4041対1347】(金子登志雄)

 この比率は何だと思いますか。平成19年の公認会計士試験合格者数と今年の合
格者数です。

 
http://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/ronbungoukaku_24h.pdf

 一昨日の11月12日に合格発表があったようで、今年の合格者は1347人で、
平成19年の4041人のちょうど3分の1でした。たった5年で、こんな大きな
変化では、生まれた年の運・不運が大きすぎるのではないでしょうか。

 アメリカの圧力で弁護士や会計士を増やした結果がこの始末です。日本にはアメ
リカにはいない税理士や司法書士、行政書士が存在することを全く無視して、会計
士数や弁護士数を比較しても何の意味もないことは当時から指摘されていたのに、
ひどい結果です。「責任者出てこい!」ですね。

 昨日お会いした弁護士資格者の方は「旧司法試験合格者」だと、わざわざ「旧」
をつけていましたから、今後は、公認会計士でも、「公認会計士です。平成19年
合格のバブル会計士ではありません」と自己紹介してくるかもしれませんね。

 しかし、それでも、今年の会計士試験の合格率は7.5%です。合格率3%以下
の司法書士試験受験生からみれば、実にうらやましい数字ですね。



2012.11.13(火)【2審も無罪】(金子登志雄)

 予想通り、小沢氏は2審も無罪でした。小沢氏の政治的影響力をそぐための政治
弾圧でしたから、当然ですね。かろうじて、日本の司法の権威も保たれたというこ
とでしょうか。

 最初の西松建設事件はあっさり検察が白旗を揚げ、偽証の前科のある水谷建設の
怪しい証言を頼りに1億円問題を攻撃材料にしたのですが、これも証拠がなく勝ち
目がなかったので、最後は、検察審査会を裏から操っての謀略裁判でした。

 陸山会は秘書社宅用に9月に農地を購入し仮登記しましたが、その本登記を翌年
にしたため、経理処理も翌年にしたわけですが(会計問題の権威の弥永教授はこれ
が正しいと裁判で証言)、これを検察審査会の補助弁護士(誰が任命したかも疑惑
だらけです)が無理やり汚い金を隠すための操作だとして、やくざの犯罪に使う共
謀共同正犯の論理で小沢氏を被告にした事件でした。私に言わせれば、有罪だとし
ても駐車違反やスピード違反以下のばかばかしい事件内容でした。

 自民党の安倍総裁は「多くの国民は裁判での無罪と無実というのは別だと思って
いると思う」と述べたようですが、何たる人権感覚でしょうか。その後も小沢氏以
上に黒い疑惑が自民党のあの人も民主党のあの人もこの人も報道されたのに、逮捕
のタの字もない有様なのに、実に不公平な対応です。小沢支持者でなくても、検察
や司法、政治家、マスコミの対応は異常だと思った国民が多いのに、安倍氏の感覚
を疑います。

 裁判はこれで終わりだと思いますが、この数年間の政治的空白の責任をとるべき
東京地検特捜部の小沢問題の担当検察官幹部は、さっさと退職金をもらって辞任し
てしまいました。今月も1人辞任しました。

 顔をさらしている政治家とか芸能人は、何かあると本人が責任をとりますが、顔
のみえない公務員は、集団的無責任で誰も責任を取りません。

 政治家は、このアンバランスをもっと問題にすべきですが、次期首相ともいわれ
る安倍氏がこの感覚では、覆面公務員の暴走はやまないことでしょう。



2012.11.12(月)【商魂】(金子登志雄)

 パソコンを買い替えたために、土日はパソコン操作に四苦八苦でした。

 数年前に購入した時は、ウインドウズ7だったか、ビスタだったかが主流の時で
したが、使いやすいXPにバージョンを落として使ってきたため、今度購入したウ
インドウズ8は、全く別世界の製品でした。

 使い慣れたメールの Outlook Express 6 は使えないようですし、パソコンにつ
いても同じ会社の同じ製品にしたのに、旧製品の電源コードが使えませんでした。
前はパソコンの左側から電源を差し込んだのに今度のは右側からでした。机の上の
配置を変えなければなりません。

 これも商魂なんでしょうね。古いものがそのまま使えたら新しいものが売れませ
ん。そこで、わざと大幅改良して、前のものを使えないようにしてしまうのでしょ
う。ひどい話ですが、これも資本の論理の1つです。

 テレビショッピングで有名な「日本直販」が倒産したようですが、これも、木の
枝ばさみなど、壊れない製品を扱っていたため、限界がきたのだとか。

 良心的な商売は長続きしないのでしょうか。どおりで、金子事務所は、10年以
上も司法書士を継続しているのに、いまだに1人事務所なわけです(その代わり、
道の真ん中を歩けます)。

 会社法のバージョンアップである改正要綱も、機能ばかり増やし使いにくい改正
になっています。われわれの世界からいえば、ここをこう改正すれば使いやすくな
るのにといえる部分が大量にありますが、残念ながら民間の司法書士の声は、雲の
上にまで届きません。審議会などにも司法書士の代表はおりません。

 特に受験生が気の毒です。全く使われない機能(特別取締役制度など)のことま
で、試験に出てくるおそれがあるため勉強しなければならないのですから………。


2012.11.09(金)【登記はアートである】(金子登志雄)

 平成6年だったでしょうか。自宅マンションを買い換えました。都市整備公団の
中古マンションです。私は、まだ司法書士になっていません。

 売主はAさん(公団の担保あり)でしたが、担当司法書士が次のような手続をい
たしました。

 @ 1月3日売買契約(所有権は私に移転)。私は新自宅に住所移転。
 A 1月17日一部の現金授受。Aは公団担保抹消。
 B 1月26日に行われた登記の順序は、Aの担保抹消→@の所有権移転の順序
でした。

 法律を知っている私は、この登記に大いに驚きました。1月17日の所有者は私
ですから、担保抹消権者も私であるべきで、Aではないからです。A→@の順序で、
@と同時にAの登記をすれば、Aの抹消権利者がAであるというのは虚偽申請であ
ることがばれてしまうだけでなく、@とAの登記は矛盾してしまうはずだと思った
からです。

 しかし、今はわかります。登記は書面主義であり、申請ごとに書面上の整合性が
とれていればよいのです。上記の@とAは別の登記であり、@をみてAの登記を判
定してはなりません。Aの申請の段階では、「登記簿上」の所有者はAのままです。
この登記で問題ないのです。

 公団の担保抹消という特殊事例かもしれませんが、この登記の芸術を知って大い
に驚き、登記の勉強を始めたわけです。商業登記でも、昔のみずほグループの再編
など芸術としかいえない再編の登記(拙著「数社合併」に所蔵)が沢山あります。

 登記は知識ではなく知恵で行うものです。政治もそうですよね。田中さん。

 
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/11/post_322.html#more


2012.11.08(木)【門地とネトウヨ】(金子登志雄)

 日本国憲法14条に「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、
社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されな
い」とあります。門地とは、家柄や出自のことです。

 アメリカで黒人のオバマ氏が再選されたことは、表向きだけだとはいえ、アメリ
カ人の平等感の表明という意味で、実に素晴らしいことですね。

 アメリカという国は、国外では傍若無人にふるまうくせに、国内では、民主的な
ところがあり、それがアメリカ人のダイナミズムを産んでいるようです。

 オバマ氏に負けずに、わが国でも、橋下市長やソフトバンクの孫社長が出自問題
に関するネット上の心ない誹謗にも負けず頑張っています。

 誹謗する方は、中国・朝鮮に対する排外的ナショナリズムの思想を持った方(い
わゆるネトウヨ=ネット右翼)が多いようで、私がよくみる政治問題の掲示板でも、
小泉元首相から小沢氏、橋下氏、創価学会の池田氏など有名人はみな門地は日本人
ではないことにされています。思考停止のレッテル貼りです。

 ヨーロッパでは、元植民地からの移民が多いため、ネトウヨの力が相当強いよう
ですが、人は自分の不幸や貧しさを誰かのせいにしないと生きていけない生き物な
のでしょうか。

 情けないことですが、「誰かのせいにして心のバランスをとる」のは、われわれ
自身にも多かれ少なかれある感情です。これを乗り越えないと、大人とはいえない
でしょう。


2012.11.07(水)【1月1日再編の公告期限】(金子登志雄)

 11月のいま頃になると、1月1日を効力発生日とする合併等の組織再編の話が
舞い込み、日程表を作るのですが、いつも合併公告等は11月29日や30日掲載
で大丈夫なのかと不安になります。

 11月29日に合併公告を掲載しますと、民法142条により、期間の満了日が
12月29日になり、この日が休日扱いだと休日でない日まで満了日が延びるとさ
れています。

 民法142条は、「期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休
日【その他の休日】に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、
期間は、その翌日に満了する」という内容ですが、この「その他の休日」に12月
29日や30日、31日が該当すると、公告期間の1か月を満たさないわけです。

 民事訴訟法95条3項には「期間の末日が……、12月29日から12月31日
までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する」とあり、行政機関の休日
に関する法律1条1項では「12月29日から翌年の1月3日までの日」を休日に
しています。こういう規定があるので、余計に不安が募ります。

 しかし、結論から言いますと、登記や法定公告の世界では、カレンダーどおりで
す。12月29日、30日、31日は、日曜日でない限り休日ではありませんから
(今年の30日は日曜日ですが)、11月29日や30日の公告でも1月1日再編
に支障がありません。

 ちなみに、期間計算は翌日から起算しますが、年齢の数え方だけは「年齢計算ニ
関スル法律」により出生の日から起算します。11月29日生まれは翌年の11月
29日午前0時に満1歳です。そうしないと、30日になるまで「誕生日、おめで
とう」といえないからでしょう。


2012.11.06(火)【株式発行割合】
(金子登志雄)

 募集株式の発行等の「資本金の額の計上に関する証明書」につき、法務省のHP
に、次のようにあります(抜粋です)。

--------------------------------------------------------------------------
 @ 払込みを受けた金銭の額 金○○円
 A 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における
   当該財産の価額                      金○○円
 B @+A                          金○○円
 C 株式発行割合
          発行する株式の数○株
      ――――――――――――――――――――――――=○○%
      発行する株式の数○株+ 処分する自己株式の数○株
 D B×C                          金○○円
 E 自己株式処分差損                     金○○円
 F 資本金等増加限度額(D−E)               金○○円
--------------------------------------------------------------------------
 
 このCですが、これは計算してはいけないようです。

 例えば、新株89株、自己株10株だったら、株式発行割合(89/99)
は、0.898989………となって割り切れません。

 ところが、計算しないで、Dを書くと、

 1株の払込金額×(89+10)×(89/99)で、分母が消えるのです。

 もっとも、金子式計算式は、株式発行割合も計算せずに済みます。

 Eが(自己株式帳簿価額−B×自己株式処分割合)ですから、

 F=D−E
  =B×株式発行割合−(自己株式帳簿価額−B×自己株式処分割合)
  =B×(株式発行割合+自己株式処分割合)−自己株式帳簿価額
  =B×(1)−自己株式帳簿価額
  =B−自己株式帳簿価額

 つまり、「総収入額−仕入れ値」に過ぎません。


2012.11.05(月)【巨人ではなく読売では】(金子登志雄)

 日本シリーズは巨人が勝ったようですね。プロ野球には全く関心がありませんが、
小中学生の頃は野球少年でしたので、少しは分かります。長嶋・王の時代でしたが。

 私の世代では運動神経のよい男子はみな野球部に入りました。3つ下の私の弟の
世代からはサッカーに人気が出てきて、野球を知らない人間も増えましたが、野球
人気は、依然として廃(すた)れていないようです。

 たぶん、日本人に合っているのでしょう。日本古来の歌舞伎でも相撲でも食事を
しながらみる演劇でありスポーツでしたから、野球の間(ま)がこれに合っている
わけです。チャンスやピンチでもない限り、投手と捕手が動いているだけですから、
十分に食事も会話も楽しめます。

 サッカーは食事しながら観戦できないのに、なぜ流行ったのかという私なりの分
析は、お祭り好きの国民性に合ったのではないでしょうか。ボール1つあれば済む
スポーツなので、世界中で流行っているのも、不思議ではありません。

 ところで、「巨人、日本ハムに勝利」というマスコミ表現に違和感を感じません
か。日本ハムに合わせるなら「読売、日本ハムに勝利」というべきです。巨人に合
わせるなら、「ジャイアンツ、ファイターズに勝利」とすべきでしょう。長すぎる
なら、「G軍、F軍に勝利」でしょうか。

 もし、読売新聞系列以外の全てのマスコミが巨人のことを「読売」と表現したら、
数年後には、巨人ファンが半減しているかもしれません。しかし、フェアな報道と
いう意味では、他のチームは「1企業、1地方チーム」だが、巨人は「国民チーム」
だといった不公平なイメージ表現は避けるべきではないかと思っています。


2012.11.02(金)【減資増資と増資減資】(金子登志雄)

 日本を代表するパナソニックにシャープが巨大赤字、ソニーも赤字………と暗い
ニュースばかり続きます。これから大リストラがはじまることでしょう。

 せっかく成長中の中国を中心とする東南アジアとの貿易で儲けてきたのに、最大
の顧客である中国のことを「シナ」と蔑視してはばからない、あの公私混同の暴走
老人が火をつけた尖閣問題による影響の損害はどの程度でしょうか。この暴走老人
を鬱積した政治の救世主のごとくヨイショするマスコミにも少しは責任を感じてほ
しいものです。

 さて、企業再建策の1つである100%減資は、資本金が1億円であれば、減資
で0円にし、全株式を消却し、増資で例えば2億円を再建主から調達します。全額
が資本金に計上されるとすると、登記簿には、「資本金1億円→減資で0円→増資
で2億円」と表示されます。

 減資増資の同時実行ですが、同時ですから、先に増資の登記を申請すると、「資
本金1億円→増資で3億円→減資で2億円」になります。

 どうせ2億円の増資があるなら、最初から減資額を2億円にして、増資を先に登
記し「資本金1億円→増資で3億→減資で1億円」という登記ももちろん可能です。
この場合は、現在の資本金額が減少しませんので、取締役会決議で可能です。

 しかし、この場合に先に減資の登記を申請しようとすると、「資本金1億円→減
資で△1億円→増資で1億円」となり、マイナスの資本金が介在しますので、登記
することができません。会社法447条2項で、資本金の額の減少につき、「その
効力を生ずる日における資本金の額を超えてはならない」と規定しているからです。

 同じ登記なのに、順序を変えると、できる登記とできない登記が生じてしまうわ
けですが、何か不思議な感覚です。

(土日を前に)
 生活党の東議員の国会演説がネットで大好評です。モノ静かな正論の力でしょう
か、ヤジ1つなく、与野党がシーンと聞いています。実に不思議な光景です。30
分程度ですから、土日にどうぞ。
  
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=vprr_GNE2u4


2012.11.01(木)【四半期配当】(金子登志雄)

 四半期ごとに配当するには、どうしたらよいのかという質問を受けました。会社
法では年に何回も配当することができますが、そのたびに基準日公告して株主総会
を開催するのかという疑問のようでした。

 答えは、会社法459条です。
--------------------------------------------------------------------------
第459条(剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定め)
 会計監査人設置会社(取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度
のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設
置会社であって監査役会設置会社でないものを除く)は、次に掲げる事項を取締役
会が定めることができる旨を定款で定めることができる。
 ◆4 第454条【剰余金の配当に関する事項の決定】第1項各号及び同条第4
   項各号に掲げる事項。ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株
   主に対して金銭分配請求権を与えないこととする場合を除く。
--------------------------------------------------------------------------

 四半期配当会社として有名な本田技研工業の定款は、次のようになっています。
--------------------------------------------------------------------------
( 取締役の任期 )
第21条 取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度に関する定時株主
 総会の終結の時までとする。
( 剰余金の配当等の決定機関 )
第37条 当会社は、取締役会の決議によって、会社法第459条第1項各号に掲
 げる事項を定めることができる。
( 剰余金の配当の基準日 )
第38条 当会社の剰余金の配当の基準日は、毎年6月30日、9月30日、12
 月31日及び3月31日とする。
  当会社は、前項のほか、基準日を定めて剰余金の配当をすることができる。
--------------------------------------------------------------------------


2012.10.31(水)【選挙立会人をして】
(島根・根来川弘充)

 10月21日(日)、私の住む島根県安来市で市長選挙が行われました。事前に、
市役所の人から、「投票所のある地域の自治会長に順番でお願いしておりますので、
していただけませんか」と、電話がありました。

 今年、不幸にも(?)私が自治会長をしていた上、今回の順番に当たってしまっ
たという訳です。

 選挙日当日、6時半に投票所である近くの保育所に集合しました。7時に開所と
同時に、最初の投票者に、投票箱が空であることを確認していただき、立会人とし
て施錠をしました。

 その後、20時までの13時間、投票所から出てはいけないとのことでしたが、
当日は、生憎、葬儀が入ったため、2時間程度、抜けなければならなくなりました。
私がいない間、代わりの者に立ち会ってもらいましたが、その引継の都度、不審な
ことはなかったなど、書面で引継の手続きを行いました。

 投票が締め切られると、タクシーが迎えにきたため、投票箱をもって、管理委員
とともに開票所に行きました。

 開票所でチェックを受けて、またタクシーで送っていただき、ようやく任務を終
える事になりました。

 とても長い時間、パイプ椅子は苦痛でしたが、民主主義の原点である大事な任務
です。国政は、混乱しておりますが、手続きが法にもとづき安心して行われる国に
いることは、素直に喜んで良い気がしました。


2012.10.30(火)【国情の相違とはいえ】
(金子登志雄)

 イタリアで大地震を予知できずに安全宣言を出した学者が禁固6年だそうです。

 
http://mainichi.jp/select/news/20121024k0000m040073000c.html

 刑事犯罪に問うとは驚きです。原発は安全だと言い続けてきた日本の原子力村の
住人達はイタリアでは、みな死刑レベルでしょう。

 一方、国民の生活が第1の小沢党首などがドイツの原発事情を視察してきました。
その小沢氏の報告によると、「ドイツではチェルノブイリの事故による放射性のド
イツへの影響が問題になって以来、原発に懐疑的だったが、フクシマの事故を目の
当たりにして、消極的賛成から一挙に全面廃止を決めた。官民みな原発廃止に賛成
している。ドイツでは、日本で稼働していない原発が増えたことを高く評価してお
り、さすがは日本だと評価していた。しかし、原発推進者が政治家でも財界人でも
多いと話すと、目を丸くして驚いた顔をしていた」とのことです。

 このような小沢氏のドイツ視察に対しても、日本のマスコミは、「小沢氏の狙い
は何か(選挙対策に決まっている)」と、すぐに政局問題にすり替え、日本は、原
発に対してどう対処すべきかという本質的議論をしません。

 あの人とこの人の仲はどうの、石原は小沢嫌いだから組まない、どうのこうのと、
人間関係で政治の動きを報じるばかりで、石原氏の政治、橋下氏の政治、安部氏の
政治………という本質的な議論をマスコミ自身が避けており、そのくせ、自身の報
道の仕方を棚に上げ、政局の政治家はダメだと、もっともらしいことばかりいって
います。

 同じ元敗戦同盟国でも、こうも差がついてしまいました。この際、裁判官はイタ
リア人に限る、政治家はドイツ人に限る、という憲法改正を提唱したいくらいです。
とにかく、日本のマスコミの低レベルが情けない。


2012.10.29(月)【石原新党の行方】(金子登志雄)

 ニュース報道は、石原都知事の国政進出ばかりですね。そのため、小沢新党の結
党政治資金集めのパーティはどこかにはじかれてしまったようです。

  
http://tanakaryusaku.jp/2012/10/0005445

 会費が1人2万円なのに、4000人の参加とは驚きました。ネット人気では、
ダントツの1番だとは知っていましたが、これほどとは思いませんでした。つい、
売上は欠席者を含めても1億円を超えたかなと下衆の勘ぐりをしてしまいます。
政党交付金が一切ない貧乏新党にとっては、一息ついたことでしょう。
 
 もう一方の石原老人のパワーも、すごいですね。週2回しか都庁に出勤しないの
で、やる気を失くしているのかと思っていましたが、尖閣以来、また、元気が出て
きたのでしょうか。

 新党を設立するようですが、長男の伸晃氏と3男宏高氏は自民党ですから、この
関係はどうするのか気になります。盟友の亀井静香さんにも、「いまさら何だ」と
拒絶されたようですし………。

 しかし、下記を読むと、だいぶ子煩悩のお父さんのようです。マスコミの大勢と
は異なる田中良紹さんの見方には、いつも感心してしまいます。

 
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/10/post_321.html#more


2012.10.26(金)【変更更正登記】(金子登志雄)

 あるとき、不動産登記(所有権移転仮登記)の問題で「平成24年8月1日売買」
を「平成24年8月1日売買予約」と更正登記する問題があったので、

 更正後の事項
  原因 平成24年8月1日売買予約

 といたしましたら、解答は、

 更正後の事項
  原因 売買予約

 だけで、年月日が省略されていました。

 商業登記では、事業目的のほんの1部を変更・更正しただけでも、全部を書き直す
のに、不動産登記は違うようです。付記登記で更正されるため、部分的な修正だけを
登記するからでしょう。

 ところで、現実の種類株式の登記事項は分量が多いのですが、このほんの1部を更
正すると、何と全面書き直しです。目的と同じです。ところが、新株予約権について
は、部分的変更・更正で済みます。

 種類株式や目的はパターンが決まっていないためで、単なるコンピュータ処理上の
問題と思いますが、新株予約権と種類株式に差があり過ぎるような気がいたします。


2012.10.25(木)【使命】(仙台・立花宏)

 先日、大好きな作家、池井戸潤さんの「ルーズヴェルト・ゲーム」という作品を
読みました。伝統ある社会人野球チームが舞台の物語です。

 バブル景気崩壊後、企業スポーツもそのあおりを受け、運動部を廃部にする会社
も多くなっています。舞台となる社会人野球チームも、最近の成績は低迷しており、
また、会社の業績不振の影響で、廃部にすべしという意見が会社の中で大勢となっ
てきます。

 そんなチームに1人のピッチャーが加入します。そのピッチャーは、飛び抜けた
才能をもっていましたが、高校時代にある事情から野球を断念しました。そして、
派遣社員としてその会社で働いていたのです。ところが、あることをきっかけに、
チームの監督にその才能を見出され、迷いながらもチームに加入します。

 強力なエースピッチャーの加入もあり、大会に向け、盛り上がるチーム。しかし、
業績不振の会社には、ライバル会社との合併の話も持ち上がり、会社の存亡の危機
に見舞われます。はたして、会社は、そしてチームはどうなるのか。

 といった内容で、ご興味がある方はぜひ、ご一読ください!
 (話の続きを期待した方、どうもすみません!)

 今日の話は、その作品に登場する、ある経営者のお話です。

 その経営者は、バブル景気の始まる前に、街の景色を見下ろせる土地を購入しま
した。サラリーマン世帯向けの建売マンションを建設するためです。

 しかし、マンション建設に着手する前に、世の中はバブル景気になります。その
土地の値段は瞬く間に倍、そして、そのまた倍になり、最終的には6倍にまで値上
がりします。その土地を売れば、大きな利益を得ることができます。しかし、その
経営者は売りませんでした。

 やがてバブル景気が崩壊し、土地の値段は下がり始めます。そして、ようやく沈
静化したのを見計らって、その経営者は当初予定していた通りのマンションを建て
たのです。マンションは瞬く間に売れました。

 それを聞いた他の経営者が、「欲を掻いてもっと値上がりするのを待っていたの
だろう。」とその経営者の行為を笑います。

 しかし、その経営者は答えました。「土地は建物を建てるために買ったんであっ
て、売るために買ったんじゃない。あの土地に素敵なマンションを建て、街を見下
ろす部屋でささやかかもしれないけど幸せな家族が暮らす。それでいいじゃないの、
何の問題があるのか」と。

 このような生き方をしていると、まわりからは変わり者と見られるかもしれませ
ん。でも、本当にそうでしょうか。

 仕事をしていると、周りの言葉に気持ちが揺れたり、感情に流されたりしそうに
なることがあります。

 自分の役割はなにか。自分のするべきことはなにか。司法書士としての自分の使
命はなんなのか。それを見失わないようにしなければならない。

 “ぶれない”司法書士にならなければ! と考えさせられた言葉でした。


2012.12.24(水)【橋下型と小沢型】(金子登志雄)

 大阪市長の橋下氏が週刊朝日で、その出自のことなどを書かれ、烈火のごとく怒
っており、記者会見やツイッターで週刊朝日等を「鬼畜集団」と罵倒しています。

 明らかに週刊朝日の行き過ぎですから、橋下氏の怒りは十分に理解できますし、
マスコミ嫌いの私としては橋下氏を応援したくなりますが、品性を欠いた罵倒につ
いては、つい引いてしまいます。

 これに対して、週刊文春で奥様のニセ手紙らしいものを出された小沢氏は、その
後も一切無視です。名誉棄損で訴える気配さえありません。「人の悪口はいわない、
言い訳をしない」という小沢家代々の家訓を見事に守っています。

 橋下氏と小沢氏のどちらが正しいというつもりはありません。橋下氏をみている
と中国や北朝鮮のように敵を徹底的に罵倒しますから、こちらのほうが国際的スタ
イルであって、小沢氏のほうが土着日本人型かな、いや関西型(信用重視の商人型)
と東北型(黙々と働く農民型)の相違かな、はたまた、新人類型と昔の政治家型か
なという点に興味があります。

 昔の大物の政治家は、田中角栄氏を筆頭に、「マスコミは政治家の悪口をいうの
が仕事だ。彼らの仕事を妨害してはならない」と鷹揚で、何を書かれても、反撃し
ませんでした(佐藤栄作氏は違いましたけど)。小沢氏も、このタイプなのか、あ
れほどウソ情報を含めて悪口を言い続けてきた朝日新聞やTBSのインタビューに
も、堂々とにこやかに登場しています。

 最近の政治家では、例えば、仙谷氏がセクハラ発言を週刊誌に書かれて名誉棄損
で訴えるなど(1審は敗訴で逆効果でした)、すぐに過剰反応してしまうようです。

 イギリスでは平気で王室批判をするマスコミもあるくらいですから、情報化社会
になったとはいえ、成熟した社会の政治家や公人は、やはり、不動心で構えていて
ほしいものです。たかが週刊誌記事じゃないですか。


2012.10.23(火)【真犯人の意図】(金子登志雄)

 PCの遠隔操作だったのに、誤認逮捕された方は、警察の過酷な取調べに抗せず、
ウソの自白をしてしまいました。真犯人が黙っていれば、起訴され、有罪判決に進
んでいたことでしょう。恐ろしいことです。

 どうもよく分からないのが真犯人の意図です。結果として、警察の捜査がいかに
いい加減で、見込みで自白を強要する取調べであったことを白日のもとにさらした
わけですが、まさか、警察の取調べのデタラメぶりを広報するためにしたわけでは
ないでしょう。
 
 多くの方が、今回の事件では、こんなにも簡単にウソの自白をしてしまうものか
と驚いたことでしょうが、そう思うのは安全地帯にいるからです。密室で圧力をか
けられれば、白を黒といってしまうのが普通の人間です。私もあなたも一緒です。

 比較的強い人間である政治家も、友人や家族まで取調べを受けると参ってしまい
ます。鈴木宗男氏の件ではガンで闘病中の女性秘書が取り調べられましたし、小沢
秘書の石川氏の件では無関係な女性秘書が何時間も拘束され保育園の迎えにも行か
せてもらえませんでした。佐久間福島県知事の件では弟さんの事業が破産に追い込
まれてしまいましたし、無関係な支持者まで容赦なく取調べを受けてしまいました。
リクルートの江副さんのときも著名経済人まで続々と調べられてしまいました。

 自分一人では頑張れても、周囲まで巻き添いにされると、耐えられる人はそうは
いないでしょう。

 恐怖心や弱みにつけ込んで自白をさせようという前近代的な取調べは、結果的に
警察や検察不信に跳ね返るわけですから、そろそろ全面的な取調べの可視化や弁護
士の立会などを認めるべきではないでしょうか。企業のコンプライアンス以前に、
司法のコンプライアンスこそ、優先課題です。


2012.10.22(月)【株式会社は株式製造販売会社】(金子登志雄)

 金曜日は福岡出張でした。司法書士会福岡西支部主催のセミナーで「会社の計算」
の講義でした(寺崎先生、大八木支部長、お世話になりました)。120名程度の
参加でしたでしょうか。盛況でした。

 このテーマは、過去に福岡で講演済みのため、「また、同じ内容か」といわれか
ねませんので、他の話題を挿入したり、説明の順序を変えたりしたため、違和感を
持たれないようにしましたが、大丈夫だったようです。2度目の方も、さらに理解
を深めてくださったようです。

 会場が狭からず広からずで、ちょうど話しやすい広さだったためか、私のほうも、
いつもと違い、「え〜と」が少なく、テンポよく話せました。

 株式交付の計算(増資や自己株式処分、吸収合併等)では、株式会社を株式製造
販売会社に見立てて、自己株式100万円を120万円で販売した場合は、売上が
120万円、仕入れ値が100万円で、儲け(自己株式処分差益)は、資本取引の
利益として、その他資本剰余金に計上されるが、新株式を120万円で販売したと
きは製造コストを0円と考え、まるまる120万円が資本金と資本準備金に配分し
て計上される、と話しました。

 この「株式会社は株式製造販売会社だ」という表現は、我ながら気にいっていま
す。居眠りしている人がいなかったので、きっと趣旨が伝わったのだと思います。
ややこしい「会社の計算」の話は、同じ内容でも、何度か聞いたほうがよいのかも
しれませんね。

 老後は、「昔の話題で出ています」と講演CDでも出そうかな。

    
http://www.youtube.com/watch?v=Au4_b7MPcPI


2012.10.19(金)【総株主の同意書の閲覧】(金子登志雄)

 10月初旬は司法書士業務に多忙でハッピーな気分でしたが、全てが片付くと、
また傘貼り浪人生活に逆戻りです。商業登記専門は月の半ばは、ヒマなものです。

 私にとっての傘貼りは、もちろん、孤独なモノ書き作業です。これは、1つの注
文を片付けるのに、数か月かかることもよくありますので、こうして毎日、毎日、
パソコンの前に座っているわけです。

 しかし、たまに新発見します。今日の発見は、組織変更の総株主の同意書や、合
併対価が持分会社の持分であるときの総株主の同意書の閲覧はどうなっているのか
ということでした。

 319条の株主総会の省略の場合は、「総会決議があったものとみなす」関係で、
議事録の形式を作成しなければなりませんし(施行規則72条)、個々の同意書に
ついても、本店に備え置いて、株主や債権者の閲覧に供さなければなりません。

 しかし、総株主の同意の場合は、そういった規定がみつかりません。なぜでしょ
うか。

 319条の場合は、議決権のない株主を含みませんし、株主総会の代用のような
ものですから、一種の「議事」扱いです。これに対して、総株主の同意は「議事」
ではありません。

 きっと、議事の場合は賛成〇〇個、反対△△個となるから、債権者達にもそれを
示す必要があるが、総株主の同意が要件とされている場合には、本当に皆が同意し
たのかまで示す必要はないという配慮でしょう。また、319条と相違して、同意
の形式を問わないことも大きな理由でしょう。少なくとも、株主は閲覧する意味が
ありません。


2012.10.18(木)【定款の変更と定款を変更】(金子登志雄)

 昨日の延長ですが、会社法466条には、「株式会社は、その成立後、株主総会
の決議によって、【定款を変更する】ことができる」とされているのに、他の部分
の全部が「定款【の】変更【を】する」になっており、大量にあります。

 「組織変更をする」は納得することができますが、「定款の変更」を1語として
「定款の変更をする」は、きっと国語の先生からみると悪文でしょう。「変更する、
変更しない」という使い方をすべきであって、「定款【を】変更する」が正しい日
本語だと私は思っています。

 これも「悪貨は良貨を駆逐する」の一種でしょうか。いや、法律文書になると、
「悪貨は良貨【の】駆逐【を】する」と書かれそうですね。


2012.10.17(水)【効力が生ずる日】(金子登志雄)

 「効力【が】生ずる日」と「効力【を】生ずる日」の相違にこだわっていたのは、
会社法219条のためです。

 株券提出手続について規定する同条には「株券発行会社が次の各号に掲げる行為
をする場合には、当該行為の効力【が】生ずる日までに当該株券発行会社に対し当
該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を当該日の1箇月前ま
でに、公告し」とありますが、次の2点で、悪条文です。

 第1点:次の各号に掲げる行為の中に新設合併や株式移転など設立登記を効力要
  件とするものが加わっていること。

 設立の登記は、決まった日にしなければならないものではありません。いつか分
からない日までに株券を提出せよという公告は、考えるまでもなく、実におかしな
内容です。

 旧商法368条は、債権者異議申述公告と同様に、1か月以内に株券を提出せよ
という内容でした。なぜ、これを踏襲しなかったのでしょうか。

 第2点:効力発生日の当日までに提出せよという内容で、効力発生日の前日まで
  に提出せよいう内容になっていないこと。

 旧商法の主流は「1か月以内に株券を提出せよ」ですが、359条は「株式交換
の日の前日迄に株券を会社に提出すべき旨」でした。

 このため、4月1日に株式交換の効力発生日を定めても、会社法219条では、
4月1日になっても、まだ株券提出手続が終わっていないことになります。設立登
記にあっては、その先も登記する日の24時までは全手続の完了はありません。

 この点は登記の通達で救済措置が採られましたので、実務上の支障はないのです
が、立法者は「当該行為の効力が生ずる日まで」とは午前0時までと思っていたの
かなと思い、「効力を生ずる日」との相違を探っていたわけです。

 いま分かっていることは、「効力【を】生ずる日」というときは、「以下、『効
力発生日』という」とされることがありますが、219条のように「効力【が】生
ずる日」という場合は会社の設立日を含むということです。

 きっと単に、条文作成者が別人だったというだけでしょうね。


2012.10.16(火)【生ずると生じる】(金子登志雄)

 今日は、どうでもいいお話です。

 さて、「生ずる」と「生じる」は、どこが違うのでしょうか。文語風か、口語風
か程度の相違ですよね。ですから、1つの書きもので、混在するのは感心しません。

 会社法:全て「生ずる」で、混在せず。

 施行規則:58条の見出しに「………端数が生【じ】る場合」とある以外は、全
     て「生ずる」でした。31条、32条、33条の見出しは「………端数
     が生【ず】る場合」です。

 計算規則:「生じる」が7個、「生ずる」が10個で、統一性なし。

 こういうのをみると、国会で決定する法律については、法案の立案担当者も真剣
にチェックするが、規則は手抜きしていることが、よく分かりますね。施行規則の
58条は、きっとチェック漏れでしょう。

 ところで、会社法で「【が】生ずる」と「【を】生ずる」が同じ数近くあります。

 当該行為【の】効力【が】生ずる日
 当該行為【が】効力【を】生ずる日

 どこが違うのですかね。ずっと考えていたのですが、これを書いたのを機にやめ
ます。それにしても、パソコンって便利ですね。一瞬にして、検索できます。



2012.10.15
(月)【名古屋訪問】
(金子登志雄)

 土曜日は早朝から名古屋に行き、久々に司法書士会中部ブロックでのセミナー講
師を務めてまいりました(磯貝会長ほか皆様お世話になりました)。
 
 中部地区の司法書士会は進取の気性に富んでいるのか、会社法施行以前の商法改
正の頃からよく呼んでいただきました。足もとの東京、関東ブロックでは、簡単に
権威者である大学教授を呼べる地理的環境にあったせいか、私には支部セミナーで
しか声がかかりませんでしたので、早くから広域のブロック単位で招聘してくださ
った中部には今も感謝の気持ちが続いています。

 テーマの一部は会社法改正要綱でしたが、私を含め、実務家は実際に立法化され
ないと関心が薄いので、それは1時間弱にして、最近の商業登記の諸問題につき話
してきました。

 改正要綱の目玉である「監査・監督委員会」という新しい機関については、「監
査役会を廃止し、監査役全員を取締役にして社外監査役を社外取締役に変えたよう
なもの」と話しましたので、ニュアンスは通じたと思います。

 社外取締役を増やせと米国等の海外から圧力があるようですが、米国には監査役
がいないのに、日本には社外監査役までいるのです。このうえ、社外取締役まで求
めるのは、司法書士や税理士がいるのに(米国にはいない)、弁護士を増やせとい
うかつての圧力と同じで、国情を無視した要求で、成功するのかについては、私は

疑問符です。


2012.10.12(金)
【黄色い帽子のチィチィパッパ】(金子登志雄)

 読んでいませんが、「週刊ポスト」に権力の魔力に負けたのか、政権側にすり寄
った田中真紀子さんが親しかったはずの小沢氏について「政治のことはロクにわか
りもしない黄色帽子の“チィチィパッパ(1年生議員)”」と批判したとか。

 いやぁ、驚きました。内容はともかく、素晴らしい表現力ですね。天才です。漫
才師のビートたけしさん並です。私に、これだけの表現力があれば、もっともっと
本が売れるのですが………。

 さて、超大企業が総資産額の0.1%にも満たない小さな小さな黄色帽子のチィ
チィパッパ分割(新設分割)を行う際には、取締役会決議が必要でしょうか。

 取締役会規則によれば、こんなものは代表取締役の権限にすぎませんが、商業登
記法では「取締役会議事録」を添付せよとなっています。

 会社法では株主総会の承認決議が不要とあるだけで、必ず取締役会の決議が必要
だとはありません。

 このように、会社法ではよいことも、商業登記法や登記の通達で否定されてしま
う事柄がいくつかあります。

 せっかく会社法で規制緩和したのに、登記が障害になってしまうのは避けたいと
ころですが、なぜか、会社法の改正ではマスコミも大騒ぎするのに、商業登記法の
改正を主張することはありません。商業登記法は、チィチィパッパ法で、大人の人
は見向きもしないのでしょうか。それとも、黄色帽子だから、近寄らないようにし
ているのでしょうか。



2012.10.11
(木)【秋の研修会】(金子登志雄)

 各地の司法書士会で秋の研修会があるのか、声をかけていただいております。中
には、会場を早期に押さえる関係で、来年の日程の依頼もあります。

 当方としては、もうネタ切れ………と思えど、研修委員の方にとっても、何かを
題材に研修会をしなければならないわけで、彼らご自身も何をテーマにしようかと
お迷いのようです。

 私が研修委員になっても迷います。司法書士倫理、不動産登記、会社法、成年後
見………、みなネタ切れでしょう。会社法では改正要綱が出ていますので、これは
よいネタになりますが、実務家は立法されないと真剣になれませんので、1時間が
限度のテーマでしょう。

 しかし、声をかけていただくだけでありがたいことですから、懸命にネタ探しを
しております。ネタもないのに、この徒然を5年間毎日書いてきたのですから、せ
っぱ詰まれば、アイデアも出てくるでしょう。

 それにプロの司法書士相手のセミナーは嫌いではありません。素人相手と相違し
て、「なるほどー」と感動してくれますし、時には貴重な質問をしてくれるからで
す。その質問が次の講演のネタになることもよくあります。

 次回は、どんな質問をしてくださるか楽しみに研修の日を待つことにしましょう。


2012.10.10(水)【法人番号は本籍主義】(金子登志雄)

 世はノーベル賞の話題一色ですね。また、野田さんが政治利用しそうで、山中先
生がお気の毒です。
 
 さて、この10月に2つほど、本店移転をしましたが、いまは、法人番号が変わ
らないので、何か慣れません。5月21日からのようです。

   
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00068.html

 例えば、かっては東京法務局管轄では、0100−01−000001などとい
う法人番号でした。0100が東京法務局で、01は株式会社です。港区に本店移
転すると、0104−01−………と、下6桁を含め、番号が変わりました。

 いまは全国どこへ行こうが、現在の法人番号が変わりません。いわば、現住所主
義から本籍主義に変わったわけです。有限会社が株式会社に商号変更しても、02
のままだと聞いています。

 きっとコンピュータ管理しやすいというのが理由でしょうが、これで出身地や、
ルーツ(元・有限会社)がばれてしまいますから、嫌がる人も出てくるでしょう。


2012.10.09(火)【リニューアル】(金子登志雄)

 10月の登記の書き入れ時も過ぎましたので、気分転換で、このホームページを
リニューアルしました。もちろん、パソコン音痴の私にできるはずもありませんか
ら、管理人に一切お任せです。不評でしたら、すぐに変えましょう。

 10月の登記の仕事が一段落して、執筆の仕事が中心になると、1日中、机に座
ってパソコンとにらめっこしているのに、なぜか、多忙という意識になれません。
モノ書き作業については、仕事の意識がないためでしょう。いつでも休憩できるか
らかもしれません。

 執筆というのは、料理と同じで、献立(テーマ)が決まっていればすぐにできる
のですが、本の著作のように献立から考えるのは結構大変です。読者に飽きられる
ので、昨日も今日もカレーライスというわけにはいかないのです。

 一方で、テレビの水戸黄門などは、何十年もワンパターンなのに、飽きられてい
ませんね。ニセ黄門が出てきたり、いくつかの筋書を交代で使っているだけです。
偉大なるマンネリといえるでしょう。

 ドラえもんのポケットを開発するのは無理ですから、私もマンネリあるいはリニ
ューアル技術を磨かないと、そのうち飽きられて、「あの人は今」と司法書士会で
いわれかねませんね。

 ところで、あの司法書士は今、何しているのですか。


2012.10.05(金)【組織再編と自己株式の消却】(金子登志雄)

 10月1日には、久々に株式移転の登記をいたしました。今回は、子会社で自己
株式の消却もありました。9月30日付の消却です。

 子会社の発行済株式の総数が1000株で、株式移転親会社の株式が1:1の比
率で交付されるとすれば、1000株が子会社の株主に交付されます。自己株式と
して所有する100株が消却されると、交付する親会社の株式数は900株になり
ます。

 このあたりの関係が子会社のほうでは気がつかないこともありますので、事前に
自己株式を消却する場合は必ず連絡をくれるように伝えておかなければなりません。

 同時に、早く自己株式の消却を決議した取締役会議事録を準備してもらうよう話
しておく必要があります。上記の例でいえば、「登記に添付する子会社の登記簿謄
本では発行済株式の総数が1000株になっているが、登記時点では900株であ
ること、設立会社の発行する株式数もそれに対応した数であること」を証明するた
め、この議事録が添付書面として必要になるからです。

 先に子会社で自己株式消却の登記を申請するのが理想的ですが、取締役会議事録
を子会社の管轄法務局に預けてしまうと、株式移転の登記の際に、親会社の管轄法
務局で、それを使えなくなるという事態が生じますので、担当司法書士としては、
上手に立ち回らなければなりません。

 株式移転に限らず、組織再編では、たまにこういうことが生じますので、事前に
十分にシナリオを作って動くしかありません。迷ったら、自己株式の消却は、株式
移転の登記が終わってからにすればよいでしょう。


2012.10.04(木)【一段落】(金子登志雄)

 10月1日の登記の完了時期がみえてきて、一段落している司法書士も多いこと
でしょう。私も同じですし、相談にのっていた司法書士の方からも、続々と「無事
に済んだ」という朗報が舞い込んでおり、喜んでいるところです。

 たかが登記でも、その背後には登記が無事に終わらないと入札に参加できない、
社会保険の手続ができないなど、大勢の生活に影響しますので、責任は重大です。
完璧を期したつもりでも、どこかに漏れはないかと多方面にアンテナを張っていな
ければなりません。

 登記申請書だけみると、随分と簡単な仕事のようにみえるでしょうが、これでよ
いのだと結論づけるまでには、さまざまな検討を経ているわけです。

 今日の東京法務局は、やはり、登記申請の窓口はそれほど混雑していませんでし
たが、登記簿謄本の窓口は混雑していました。登記が終わり、収穫に来た人が多い
のでしょうか。

 補正の窓口は誰も座っていませんでした。会社法施行直後は、ずらーっと並んで
いたものですが、施行後7年を経て、十分に浸透してきたのでしょう。たまに、補
正の席に座っている人をみると、司法書士ではなく、本人申請の方のようにみえま
した。

 何はともあれ、一段落しましたので、ゆっくり休みましょう。


2012.10.03(水)【大山登山】(島根・根来川弘充】

 9月はじめになるのですが、大山を登山しました。

 大山というのは、こちらで一番高い山で、1700メートルを超える高さがあり
ます。もちろん山の中腹から登山道があるのですが、その登山道の道のりは2キロ
ちょっとあります。

 私は過去に2度登ったことがあるのですが、はじめての方も一緒に登ることにな
りましたので、時間は登りだけで4時間みて、朝の7時からの登りはじめました。

 登りはじめて10分ちょっとで、息があがってしまったのですが、予定した時間
を30分ほどオーバーしながらも、なんとか無事登頂することができました。

 前に登頂したのが、約10年くらい前なのですが、景色が変わっていておどろき
ました。

 9合目あたりから、植物があまり無かったと記憶していたのですが、今回は、ほ
ぼ頂上付近まで緑が広がっていたのです。さらには非常に蝿が多かったです。

 登った時期は、おそらく前回と一緒であったと思います。地球温暖化の影響であ
れば、大変な変化だと感じました。


2012.10.02(火)【昨日の東京法務局】(金子登志雄)

 昨日は4月1日と双璧の商業登記の書き入れ時でしたので、私も朝1番で東京法
務局に申請に行くなど、あわただしい1日でしたが、大阪の田中司法書士や身内が
雑用的な仕事を手伝ってくれたため、何とか、全てを予定どおりに進行させること
ができました。

 東京法務局は、午前と午後の2度も顔を出したのに、思っていたほど混雑してい
ませんでした。係の方と立ち話をしたところ、「電子申請が増えて、法務局に来る
人が減ったためでしょう」とのことでした。

 それはいえますね。パソコンに弱い私ですら、100%電子申請にしており、近
い東京法務局以外は郵送で済ませていますから………。

 田中さんから指摘されて気づきましたが、受領証は各法務局によって個性がある
ようです。東京法務局(本局)は受付番号や受付日が印刷された用紙に「上記、書
面は受領した」ですが、墨田法務局は、申請書と添付書面の合計枚数と同じものを
つけて、最後に「上記、書面は受領した」でした。

 大阪法務局(本局)では「別添のとおりの登記申請書及びその添付書類について
平成〇年〇月〇日受付第〇〇〇号をもって受領したことを証する」だそうです。

 さて、試験は終わりました。数日後の合否の発表を待つばかりですが、こればか
りは何年経ても、慣れないものです。補正電話がないことを祈るばかりです。


2012.10.01(月)【後期の開始】(金子登志雄)

 今日から、3月決算会社は後期が開始ですね。そのためか、本日付の商号変更や
役員変更等の仕事を何件か受けており、久々に私も多忙の日になりそうです。

 朝一番で申請する案件もあったので、昨日は午後9時には床についたのですが、
平素の習慣で眠りにつけず、起きだして、これを書いています。眠れなかったのは、
本徒然を忘れているぞとの神様からのお知らせだったのかもしれません。完全に忘
れていました。

 土日はいつもながら原稿書きでした。現在書いているのは「株式」と「機関」が
テーマですが、株式については、もう過去に書きつくしているので、新ネタ探しに
苦労しています。執筆仲間からは、同じことの焼き直しでも、かまわないのじゃな
いかとアドバイスしてもらっていますが、性格なのか、それができません。

 ん、昨日は中間期ですよね。半期と中間期と第2四半期はどこが違うのかなども
ネタになるかもしれませんね。会社法454条5項の中間配当は、中間期に限らな
い、年のどこで配当しても中間配当というのだというのもいいかもしれませんね。

 人生の中間期も遠に過ぎ、人生の後期に入りましたが、頭の柔軟さだけはまだま
だ十分にありますので、今後も好きな会社法で頑張って行きたいと思っています。

2012.09.28(金)【株主総会と出席役員】(金子登志雄)

 昨日は当社(アクモス)の定時株主総会でした。例年、遠方の方も出席しやすい
ようにと午後1:30開始にしていましたが、今回は昼食時間もあろうかと考え、
午後2時開催にいたしましたら、例年よりも参加者が増えていました。設立以来、
ずっとオープン型の株主総会にしています。

 議案の中に「取締役1名選任の件」、「監査役1名選任の件」がありましたが、
いずれも重任で、役員席(いわゆるひな壇)に座っていましたので、役員席で立ち
上がり、「就任を承諾いたします」という発言がなされました。

 これを株主総会議事録に記載すれば、「株主総会に出席した役員」として氏名も
記載されていますので、出席したことが明らかですから、株主総会議事録を就任承
諾書の代用として使えます。別途、就任承諾書を添付する必要はありません。

 では、新人役員の選任で、株主総会終結後に就任の効力が生じる場合において、
株主総会の株主席に待機し、その場で「就任を承諾いたします」と発言した場合は、
どうでしょうか。

 役員席に座っていなくても、会場にいたことが明らかでであれば、何の問題もな
く株主総会の議事録の記載を就任承諾書の代用として使えるというのが古くからの
登記実務の運用です。

 ところが、登記情報2011年9月号の「登記官の目」に「就任承諾書として援
用するには『出席した役員』としての氏名の記載が必要である。この記載は『出席
した役員』として氏名を明記するのが望ましく、『被選任者が即時就任を承諾した』
旨、『被選任者がその場で就任を承諾した』旨の出席したことが伺われる記載では
不十分と考える」とあり、これが発端になったのか、一時期、一部の法務局で、従
前の運用と相違し、就任承諾の援用と認めず、問題になったことがあります。

 再度、「登記官の目」を読みなおしてみましたが、この方は、こういう新人も会
社法施行規則72条3項4号の「株主総会に出席した役員」と勘違いしているのか
もしれないと思いました。

 会社法314条に「取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、
株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な
説明をしなければならない」とありますから、「株主総会に出席した役員」とは株
主総会中の役員であるとみるべきでしょう。


2012.09.27(木)【王政復古?】(金子登志雄)

 下にも挨拶をしない石原、上にも下にも挨拶しない石破、上にも下にもペコペコ
する安部という揶揄が自民党内でいわれていたようですが、大本命だった石原氏は、
しゃべればしゃべるほど失言で支持が落ちて、最後は3位ですか。これも、マスコ
ミにちょっとでも批判されると、急速に支持が落ちる典型例ですね。

 長州の安部さんが自民党総裁に復活し、思わず、自民党のRestoration(王政復
古)かと思ってしまいました。ご承知のとおり、山口県出身の首相がダントツのト
ップです。
    
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5237.html

 岸信介と佐藤栄作は兄弟で、安部氏は岸の孫にあたります。父親は外相でしたか
ら、政治家一家ですね。石破氏や石原氏を含め自民党総裁選に立候補した5人とも、
政治家2世ですから、あきれたものです。

 これでは、地盤も看板もない野心家が自民党から立候補しようとしても、狭き門
でしょう。その野心家達が自民党に相手にされず仕方なく民主党に流れたのが松下
政経塾出身者ではないかと私は思っています。彼らは、出世が目的で、何かをした
いからという理由で政治家になったわけではないので、簡単にマニフェストや約束
を破ってしまうのでしょう。

 2世のおぼっちゃま自民党となり上がりの民主党というところでしょうか。それ
を選んだのはわれわれ国民です。日本の将来は暗いですね。日本もポルトガルと一
緒で、かつての栄光から急速に衰退していくのでしょうか。


2012.09.26(水)【Restoration】(金子登志雄)

 Restorationという英語をご存知ですか。

 私は知りませんでした。事業再構築あるいはクビ切りのリストラ(restructuring)
と違うことだけは分かりました。

 実は、新党「日本維新の会」の英文名のようで、ただいま、これが波紋を呼んでい
ます(下記のロゴの下にあります)。

 
http://sankei.jp.msn.com/politics/photos/120913/stt12091300080000-p1.htm

 外国人からみると、革新や革命の「維新」ではなく、イギリスの「王政復古」のイ
メージが強いらしいのです。例の清教徒革命後の王政復古です。

 明治維新のことを英語で、Meiji Restorationというようですから、そこから採
用したのでしょうが、明治維新も確かに徳川家に奪われていた天皇親政の王政復古で
すね。

 最近は、橋下維新も一時のブームが去り、人気が急落しているようですが、国政進
出の出足から躓いてしまったようです。

 しかし、橋下党首は変わり身が早いと同時に、こういうことには頑固そうですから、
国政への進出の目玉候補である前宮崎県知事の芸名のように「そのまんま」にするの
でしょうね。


2012.09.25(火)【襷(たすき)をつなぐ】(仙台・立花宏)

 先日、地元青年司法書士会の有志と、ある駅伝大会に出場しました。

 駅伝大会といっても本格的な競技会ではなく、障害のある子供たちへのチャリティ
を目的とした大会です。この大会には、地元青年司法書士会が有志を募り、毎年、参
加してきました。私も昨年に引き続き2度目の出場です。

 チャリティが目的の大会ですから、競争することが目的ではありませんが、大会は
大会です。優勝を目指し、本気で走るチームもあります。逆にコスチュームに工夫を
するチームや、景色を楽しみながら完走することが目標のチームもあり、チームカラ
ーはバラエティに富んでいます。

 今年の私たち青年司法書士会チームは若手が多く、上位をねらえるメンバーです。
私も気合をいれて大会に臨みました。

 さわやかに晴れた秋空のもと、地元出身の歌手、さとう宗幸さんの合図でレースは
スタートしました。選手は会場となった2キロ弱のコースを1周し、スタート地点に
戻ってきます。

 選手が戻ってくると、その選手が所属するチームのメンバーが、「がんばれ! も
う少しだ!」といった声援を送ります。

 私たち青年司法書士会チームも、戻ってくるチームメートが視界に入ると他のチー
ムに負けないくらい大きな声を出して声援を送りました。そのおかげか、表彰台まで
あと少しというポジションをキープしたまま、私の出番になりました。私の出番は最
終区。アンカーです。

 仲間がつないできた襷を受け取り、勢いよくコースへと飛び出しました。気合が入
りすぎていたのか、すこしオーバーペースのように感じました。5人の仲間がつない
できた襷です。大切にゴールまで届けなければなりません。呼吸を整え、ペースを落
ち着かせました。

 すると、気持ちまで落ち着いてきて、ふと、先日、読んだ本のことを思い出しまし
た。事業承継に関する本です。日本には長寿企業が多く、100年以上続いている企
業が数万社あるのだそうです。それだけ続いているということは、その企業は一代限
りでなく、何世代も承継されてきているはずです。承継のたびに、つなぐべき“襷”
をつないできたことでしょう。

 そのつなぐべき“襷”とはなんなのか。名前なのか、組織なのか、財産なのか、そ
れとも技術なのか。その“襷”の中身がなんであれ、きっとその“襷”にはいろいろ
な思いが詰まっていたはずです。それを100年以上もつないできたということはす
ばらしいことだな、と思いました。

 そんなことを考えていると、仲間が待ち受けるゴールが近づいてきました。私は襷
を高々とかかげ、ゴールへと飛び込みました。残念ながら、表彰台にはあと一歩、届
きませんでしたが、仲間がつないできた襷を無事、ゴールに届けることができました。
全体で10キロくらいのレースでしたが、全員で襷をつなぐことができたことを誇ら
しく思いました。


2012.09.24(月)【支持率の欺瞞】(金子登志雄)

 土日は、毎月中旬の年中行事である帰省をし、田舎でパソコンとにらめっこして
いました。やっと、ど田舎の故郷でも無線電波が順調に入るようになり、パソコン
作業も快適でした。

 21日には予想どおり、野田さんが民主党代表選で圧勝しましたね。赤字国債発
行法案と選挙制度改革法案の成立だけは片付けてくれないと、後任が困りますから、
順当なところでしょう。

 しかし、民主党員・サポーター32万のうち、投票したのは33.7%の11万
しかなかったようです。7万票で野田さんの圧勝だとしても、これでは本物の支持
かどうかあやしいものですね。国政選挙でもないのに、66.3%が棄権したのは、
ちょっと異常ではないでしょうか。

 ところで、過去どんなに不人気な首相でも、国民からの支持率は20%くらいあ
ります。この数字を鵜呑みにして、「ヘー」と感心してよいのは20代までで、そ
れを越えたら、「まさか」と疑わねばなりません。

 おそらく、突然、新聞社あたりから電話がかかってきて、「アンケートに協力く
ださい」といわれ、その内容が「現首相を支持しますか」というものでったら、多
くの人が、適当に「はい、はい」と答えてしまうのではないでしょうか。

 私も、1、2、3のどれにしますかと聞かれれば、面倒だと思い、全部1と答え
てしまう可能性が大です。アンケートとはいえ、見知らぬ人からの電話に対しては、
当たり障りのない返答をしてしまうのが普通でしょう。

 鳩山政権時代の調査は「普天間問題でアメリカから不信感を持たれているようで
すが、貴方は、鳩山政権を支持しますか」「秘書が逮捕されましたが、貴方は小沢
幹事長を支持しますか」などと「前置き」付きで支持率調査をしていましたが、野
田政権の支持率調査には、その前置きをしていないようです。

 こういう日本のマスコミに、まともに回答する人はいないでしょう。よって、誰
でも支持率20%は確保できます。


2012.09.21(金)【監査・監督委員会は普及するか】(金子登志雄)

 会社法の改正要綱案が示している「監査・監督委員会」という新しい機関設計は、
監査役会設置会社と委員会設置会社の中間で、監査役のいない簡素な委員会設置会
社のようなものです。

 業務執行機関と監督機関の分離の一環ですが、譬えていえば、プロ野球の現場と
フロントと関係みたいなもので、現場があまりに強くなりすぎたので、フロントを
強化しようという動きの1つです。

 この委員会には最低3名の取締役が必要で、過半数は社外取締役でなければなり
ません。そうすると、委員会に加わらない取締役を入れて、最低4名の取締役が必
要です(監査役は不要です)。

 現状では、取締役最低3名、監査役最低3名(うち2名は社外監査役)で計6名
の役員が必要です(監査役会設置会社を前提)。

 いまの体制をやめて、監査役を取締役にして、社外監査役を社外取締役にすると、
2名を役員から減らすことができるわけです(現場のほうが少ないことは現実には
あり得ないでしょうけど)。

 これで、外部からの社外取締役のいないコンプライアンスのしっかりしていない
会社という批判も回避できます。これは大きい効果ではないでしょうか。何せ、国
策に沿った機関構成ですから………。

 現状の委員会設置会社ですら日本に100社もありませんから、新しい機関設計
を提案されても流行るわけがないと私は思っていましたが、上記の社外取締役を置
かない会社といわれずに済む効果を考えると、思っていたよりは増えるかもしれな
いという気がしてきました。

 改正案が施行されると、上場会社等は社外取締役を置かない理由を事業報告等に
書かなければならないのです。まるで弁解調書です。屈辱です。

 このように、国策で社外取締役を推し進めれば推し進めるほど、監査・監督委員
会設置会社に逃げ込む会社が増えるかもしれないなと思いました。何せ、日本社会
は建前の社会で、うわべだけでも取り繕うことが重要ですから………。

(無関係な出来事)
 街頭演説から逃げ回っていた野田首相が仕方なく街頭演説に臨んだら、こういう
結果になりました。
 
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=ig6i1BVF06Q


2012.09.20(木)【ドキ、電子申請】(金子登志雄)

 ここのところ、いつもとは違う電子申請のことで、「ドキ!」とすることが2回
ありました。

 先般は、連件申請の順位番号で、あせりました。

 東京のAが大阪のBを吸収合併するときには、「@Aの合併申請、ABの解散申
請」の2つを同時にAの管轄である東京の法務局に申請します。連件申請です。

 その際には、「@に1、Aに2」と番号を振って連件申請であることを示して申
請することになっていますが、パソコンの画面でAが@の上にあったため、うっか
り「Aに1、@に2」として申請してしまいました。

 申請直後に気づき、@とAは同時申請だから、問題なく許されるだろうと期待し
て、管轄法務局に電話しましたら、「こういう例はないので、どう対応すべきか調
べなければならない。時間がかかる」とのことでした。それは困りますので、すぐ
に取下げし、再申請したことはいうまでもありません。

 後ほど、東京法務局に電話で確認しましたら、やはり取下げ、再申請がベストの
方法のようです。コンピュータは、こういうとき、融通が利かないですね。

 昨日は、添付書類の内訳表で、あせりました。

 上記の例で言うと、@もAも東京法務局に申請し、Aだけが審査後に東京法務局
から大阪法務局の転送されます。いわゆる経由申請です。

 この添付書類を申請先の東京法務局に届けるため、「書面により提出した添付書
類の内訳表」というものを印刷しましたら、Aの申請については、「大阪法務局 
御中」と印刷されるではないですか。「あれ、東京法務局に申請したつもりが、大
阪法務局に届いてしまったのか」とあせりましたが、どうも、最終の法務局が自動
的に印刷されるようです。

 いま頃気づいたのかと思う司法書士もいるかもしれませんが、いままでは「書面
により提出した添付書類の内訳表」というものがあるのを知らなかったため、それ
を添えて提出していませんでした。受付表を添えていました。

 しかし、繁忙期ではない時に、こういう経験をしておくと、あとが楽ですね。書
き入れ時の4月1日や10月1日の夕方あたりでしたら、もっとあせっていたこと
でしょう。


2012.09.19(水)【株主総会議事録作成者】(金子登志雄)

 会社法施行規則72条により、株主総会の議事録は、取締役が議事録作成者とな
り作成することになっています。

 では、株主総会終結と同時に取締役ABC全員が退任し、DEFが選任されたと
した場合に、この株主総会議事録作成者は誰でしょうか。
 
 松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』では、株主総会開催中に取締役
であった者が作成するのは当然だからABCだとありましたが、立法担当者だった
葉玉氏は退任した取締役には作成権限がないから、DEFに権限があるとの見解の
ようです。総会時点説と議事録作成時点説の相違というべきでしょうか。

 松井本によると、総会中にABCが辞任し、総会中にDEFが就任すると、議事
録作成者はABC・DEFだそうです。

 しかし、これはおかしいです。例えば、議題が「第1号議案/取締役改選の件、
第2号議案/取締役報酬額改訂の件」で、第1号議案は総会開始10時から30分
で終了し、第2号議案が10時半から閉会時間の11時までだったとすると、AB
Cは10時半には取締役ではないのです。松井説では、第2号議案につき、ABC
には議事録作成権限がないということにならないのでしょうか。

 もっとおかしいのが、解散と清算人選任を決議した場合の株主総会議事録です。
解散が可決されたと同時に取締役ABCは取締役でなくなるのに、清算株式会社の
株主総会議事録を作成することになります。ここは、清算人が作成するのが当然で
はないでしょうか。

 辞めてしまった人間に、これをせよといっても無理な話ですし、辞めた側でも無
給でなぜ、そんなことをしなければならないのかという心境になるでしょう。ここ
は、作成時点の取締役・清算人が議事録作成権を有するとの葉玉説のほうが実務家
に受け入れやすいのではないでしょうか。


2012.09.18(火)【尖閣問題の責任】(金子登志雄)

 久々の3連休でしたが、相変わらず部屋に閉じこもって、原稿書きでした。よく
休みもなく「大変ですね」とかいわれますが、頼まれ仕事とはいえ、好きなことを
しているだけですから、少しも苦痛ではありません。嬉々として、やっています。
唯一のよくないことは、喫煙量が平常時の倍になることでしょうか。

 執筆に疲れると、ネットニュースなどをみるようにしていますが、台風の点以外
は尖閣問題で火を噴いた中国の反日デモが中心でした。中には反日など、どうでも
よく政府批判や生活に対する欲求不満からのデモ参加も多いでしょうが、日本とし
ては見過ごせない事態であることに変わりがありません。

 日中友好条約の際に中国が「棚上げ」でかまわないといい、日本が実効支配して
きたのですから、現状維持(既成事実の積み重ね)が一番有利なのに、中国嫌いで
戦争大好きの石原都知事が都知事の立場なのに国政に口を出し、紛争を煽っている
のですから、中国進出の日本企業は、都に損害賠償を求めたい心境でしょう。

 野田政権も20億の価値など疑問なのに素早く購入し、紛争に油を注ぎました。
きっと、中国や韓国との紛争を上手に利用し、支持率アップに使いたいのでしょう。

 これで、またもや、オスプレイの配備は絶対に必要だ、原爆開発能力を見せ付け
るためにも原発は必要だ、アジアとの友好を重視する小沢・鳩山に国政は任せられ
ないという世論操作がマスコミを通じてなされることでしょう。現に、野田内閣の
支持率が少し上がってきたようで、「近いうちに解散」も、参院で問責決議を受け
たことも、どこかに飛んで行ってしまいました。いつまでも操られる国民のままで、
いいのでしょうか。


2012.09.14(金)【条文番号は定款内容か】(金子登志雄)

 単元株式制度を採用していない上場会社では、平成19年11月27日に全国証
券取引所が公表した「売買単位の集約に向けた行動計画」のため、株式分割と同時
に単元株式制度の採用が強制されています。会社法でも、1株を100株に分割し
た際には、定款変更の決議でありながら、取締役会の決議で、発行可能株式総数を
100倍まで拡大し、1単元100株まで設定できるとされています。

 そこで、各社がどういう定款の変更をしたかと調べてみましたら、最近は、次の
方式がほとんどです。

--------------------------------------------------------------------------
(旧定款)
 第6条 当会社の発行可能株式総数は3万株とする。
 第7条 ………自己株式の市場買取………

(新定款)
 第6条 当会社の発行可能株式総数は300万株とする。
 第7条 当会社の単元株式数は100株とする。★新設
 第8条 ………自己株式の市場買取………   ★条文番号繰下げ
--------------------------------------------------------------------------

 びっくりしました。無関係な旧7条以下の条文番号の繰下げまで、取締役会で決
議しているのです。いままでの考え方では、条文番号もりっぱな定款の内容だから、
それを繰り下げたり繰り上げたりするのは株主総会の特別決議が必要だとされてい
たからです。

 いくら会社法で株式分割のときは、単元株式数を取締役会だけで定めてよいとあ
っても、無関係な条文までは動かせないと考えるのが通常ではないでしょうか。

 どうも平成22年あたりからこの方式が流行ってきたようです。それまでは、第
6条の2や、第6条第2項を新設して単元株式数の条文にしていたからです。

 しかし、考えてみれば、この条文番号は単に順序を示しただけで、定款内容とは
無関係だという考え方もできますので、私は、この際、この方式がもっともっと普
及することに賛成です。従来の通説には反しますが、定款とは株主総会の特別決議
で変更するほど価値のある部分に限るという考えをしたいからです。これを契機に、
学者の間でも、この考え方が普及していくことを望んでいます。


2012.09.13(木)【定型表現】(金子登志雄)

 登記申請の委任状に、委任事項として「復代理人の選任の件」と加えると、顧客
から「先生が自ら登記してくれないのですか」と聞かれ、「登記申請の取下げ、登
録免許税又は手数料の還付又は再使用証明の手続及びその受領に関する件」と加え
ると「登記申請を取り下げられては困るのですが」といわれることがあります。

 会社の設立で定款の作成を依頼されたので、定款に「当会社の株式につき質権の
登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の書式による請求書に当事者
が署名又は記名押印して提出しなければならない。その登録又は表示の抹消につい
ても同様とする」という条項を設けると、「100%子会社の設立なので、質権等
を設定することはあり得ませんが」といわれることがあります。

 いずれも、ごもっともな意見であることは司法書士も重々承知しておりますから、
私は「万が一のためです」とか「株式譲渡で100%子会社でなくなる場合もない
とはいえないじゃないですか」などと無粋な反論はせずに、「決まり文句です。印
刷文字と思って気にしないでください」と答えることにしています。

 こういうことは世の中に多数ありますね。100%子会社などの株主総会議事録
で、よく「満場一致により賛成可決した」という表現をみますが、はじめて議事録
をみた方は、非常に驚くようです。株主が1名なのに「満場一致」とはどういうわ
けだという感覚ですが、慣れてしまうと、何も感じなくなります。

 感じなくなった人をベテランというようですが、こんなことでいいのですかね。


2012.09.12(水)【利札】(金子登志雄)

 会社法697条2項に「社債券には、【利札】を付することができる」とありま
すが、この「利札」は何と読むでしょうか。

 債券の下にくっ付いている小さなクーポン券のことです。
http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E5%88%A9%E6%9C%AD

 私は、ずーと、「りふだ」と読んでおり、信じて疑いもしませんでしたが、ある
受験テキストに「りさつと読む」とありましたので、驚いてしまいました。

 「りふだ」ではいけないのかとネット検索しましたら、結論としては、どちらで
もよさそうです。

 当社の役員で銀行の元役員だった方に聞きましたら、「りさつ」と使っていた記
憶があるとのことでしたし、簿記の本でもそうだという人がいました。大学時代の
商法の教授が「りさつ」と読んでいたと教えてくれた仲間もいました。しかし、法
律用語辞典に「りふだ」とあったという人もいました。

 会社法の教科書である江頭本や前田本を調べましたら、ルビがふってありません
でしたが、あいうえお順の索引のところをみると、明らかに「りさつ」としか読め
ないようでした。

 専門用語としては、「りさつ」なのでしょうか。ちょうど、遺言を法律家は「い
ごん」と読むように(遺書の「い」ですから)。

 徐々に自信を失ってしまいました。いままで、札付きの悪を「ふだつきのワル」
と読んでいましたが、これも、「サツ付きのアク」が正しかったのでしょうか。お
金で悪さして、サツに捕まる悪党ですから………。


2012.09.11(火)【今こそ重厚長大に】(金子登志雄)

 自民党の谷垣さんが、幹事長の石原さんとの調整ができずに、総裁選出馬断念に
追い込まれました。

 野田首相に「近いうちに解散」と騙されるようでは党総裁は無理なので、自業自
得でしょうけど、谷垣さんを支える立場の幹事長である石原さんも同罪ではないで
しょうか。どうも、長老連中が扱いやすい石原さん支持に回ったので、谷垣さんも
あきらめたようです。

 しかし、これで「近いうちに解散」という約束はなかったことにされ、口先だけ
の松下政経塾支配がさらに続くことになりそうです。

 マスコミは「嘘つきは政治家と弁護士の始まり」と著書に堂々と書いた弁護士の
橋下さんをヨイショしてばかりしていますし、今後も、口先だけ達者な軽量級の人
材が日本を支配し続けるのかと、暗澹たる思いです。
 
 弁護士は、その場を口先で取り繕い、相手を攻撃するのが商売ですから、かつて
のオウム真理教の「ああいえば、上祐(じょうゆう)」と同じで、大局感をもって
動く人達ではないので、私は政治家には不向きな職業だと思っています。

 これでは、過酷な権力闘争に勝利してきたプーチン、胡錦濤、オバマ氏らと対等
に渡り合えるとは思いません。

 昭和50年代から、盛んに「重厚長大から軽薄短小に」と産業構造の転換が叫ば
れましたが、政治家までが、これほど軽薄短小になるとは思いもよりませんでした。

 それを選んだのは、テレビのワイドショーと思考を同じくしてしまう我々国民自
身ですね。ますます悲観的になってしまいます。


2012.09.10(月)【郷原著『検察崩壊』】(金子登志雄)

 元検事さんの郷原信郎(のぶお)著『検察崩壊』が猛烈に売れているようです。
出版されたばかりなのに、アマゾンでも簡単に入手できないようです。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%B4%A9%E5%A3%8A-%E5%A4%B1%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%AD%A3%E7%BE%A9-%E9%83%B7%E5%8E%9F-%E4%BF%A1%E9%83%8E/dp/4620321478/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1347167707&sr=1-1

 一応、法律家のはしくれである私は、出版前から予約していましたので、土日に
4分の3だけ目を通しました。

 巻頭特別対談は、検察の不祥事に指揮権を発動しようとしてクビになった小川前
法務大臣と郷原氏の対談でしたが、ここは、まだ読んでいません。

 第1章は小沢秘書だった石川議員との対談で、検察の脅迫やウソが生々しく語ら
れていました。

 第2章は大阪地検特捜部長だった大坪氏(ただいま裁判中)との対談でしたが、
大阪の人間には簡単にシッポ切りをし、刑事裁判の被告人にまで追い込みながら、
もっと罪の重い東京地検の佐久間元特捜部長や田代元検事には戒告程度の軽すぎる
処分に、猛烈に怒っていました。東京地検の不祥事はシッポ切りで済まないくらい
上層部に影響するので、組織防衛をはかった様子がよく分かります(検察株式会社
にこそ、外国人の社外取締役を義務づけるべきだという私の平素からの主張がご理
解いただける思います)。

 第3章は検察の不祥事を追及する市民の会の代表で歌手の八木さんとの対談でし
た。検察のクーデターで、民主主義が破壊されたことを相当怒っていました。確か
に、あのとき検察が民主党政権潰しに動かなければ、小沢総理になり、今とは随分
と違う日本になっていたことでしょう。歴史まで変えてしまいました。

 (市民の会)
   
http://shiminnokai.net/

 不謹慎ながら、面白かったのは、検察は最後の手段として「奥さんを呼び出して
取り調べるぞ」と脅迫することが多いのですが、石川議員は独身で、その手を使え
なかったという部分と、検察に不都合な人間には痴漢の冤罪で捕まえてしまうこと
が多いのですが、八木さんは女性で、その手が使えなかったとあった点です。

 ウソの検察情報を垂れ流して小沢バッシングをし、いまだに何の反省もせず、今
も反小沢の野田政権を応援している毎日新聞が、この本を出版する無節操さには、
あきれてしまいますが、いずれにしろ、いまだに検察は正しいと信じている方には、
実にショックな本であることは間違いないでしょう。

 郷原氏も東京地検特捜部にも勤務したことのある元検事ですが、東大の理系出身
で、「理に合わないこと」が許せないことと、検察を愛するゆえの真実追及本です。
法律家だけでなく、民主主義を守りたい人や自由主義者にとっては、必読の書だと
思いました。ぜひ、ご一読を。


2012.09.07(金)【株券は無記名式?】(金子登志雄)

 金曜日ですね。会社法の話題にしましょう。

 会社法216条(株券の記載事項)には、次のようにあります。
----------------------------------------------------------------------------
 株券には、次に掲げる事項及びその番号を記載し、株券発行会社の代表取締役がこ
れに署名し、又は記名押印しなければならない。
 1 株券発行会社の商号
 2 当該株券に係る株式の数
 3 譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを
  定めたときは、その旨
 4 種類株式発行会社にあっては、当該株券に係る株式の種類及びその内容
----------------------------------------------------------------------------

 商法225条(株券の記載事項)には、「株券には………、【株主の氏名】を記載
し」とありましたのに、会社法では消えています。

 これをもって株券は無記名式になったということがありますが、無記名式新株予約
権や無記名式社債の無記名式とは意味が異なりますから、正確な表現ではありません。
本来の無記名式とは、原簿(株主名簿、新株予約権原簿、社債原簿)にも氏名が載ら
ないものであるのに対し、株主名は株主名簿に記載されるからです。

 では、なぜ、会社法216条のような中途半端な規定を設けたのでしょうか。『論
点解説 新・会社法』220頁よると、記載する必要性が乏しいこと、記載を求める
と株券発行事務を遅滞させる一因とっていたことも考慮されたとのことです。

 これによると、無記名式ではなく記名不要式というのでしょうか。余計な規定を設
けて、混乱させただけのような気がしないでもありません。


2012.09.06(木)【社外の要件】(金子登志雄)

 資本関係のないA社とB社が10月1日に共同株式移転でCホールディングスを
設立し、兄弟会社になります。同時に人事交流し、B社の代表取締役社長XをBの
取締役から辞任させ、A社の社外監査役にしたいのですが、可能でしょうか。

 Xは、過去にA又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人そ
の他の使用人となったことがないため、現在の会社法では可能です。意外ですが、
XがB社の代表取締役社長を継続中でも可能です。

 ところが、会社法制の見直し要綱案によると、兄弟会社の業務執行取締役若しく
は執行役又は支配人その他の使用人でないことが「社外であること」の要件に追加
されます。そうすると、無理でしょうか。

 しかし、『論点解説 新・会社法』289頁に次のようにあります。
--------------------------------------------------------------------------
 当該株式会社の子会社に該当するか否かの判定は、当該者が業務執行取締役等で
あった時点において行う。すなわち、A会社の取締役が、B会社の業務執行取締役
であった期間中、B会社が1度でもA会社の子会社であった時期があれば、現在は
B会社がA会社の子会社でなくなっているとしても、当該取締役については、社外
性は認められない。
 逆に、当該取締役がB会社の業務執行取締役であった時点においてB会社がA会
社の子会社でなかったならば、現時点で子会社であるとしても、社外性は認められ
る。
--------------------------------------------------------------------------

 これによると、XはB社から離れたので、大丈夫そうですね。しかし、企業再編
が増加し、かつ会社法の改正で、親会社や兄弟会社の業務執行取締役は社外取締役
になれないとなると、さまざま問題が発生しそうです。兼任禁止ではなく、社外だ
ったのに社外でなくなる案件が増えることでしょう。


2012.09.05(水)【CT検査】(島根・成瀬公平)

 先月はツツガムシに噛まれたかもしれないと心配していた成瀬です。

 その後、ツツガムシに噛まれた症状は出ませんでした。それでも、暑いせいなの
か、アルコールのせいなのか原因はわかりませんが、体調は悪く、先日、ついにダ
ウンしました。

 あまりにも頭の痛みが酷いため病院へ行き頭の検査をすることになりました。検
査は生まれて初めてのCT検査です。頭が酷く痛みますので、悶絶しているうちに
あっという間に検査は終わりました。

 すぐに検査結果を医師から聞くことになり、病院のパソコンの画面にCT検査の
画像が表示されました。

 その画像が表示された途端に思わず吹いてしまいました。なんと、子供の頭の
「形」と同じ画像が表示されていました。実はわたしの子供の頭の形は、芸術的な
斜め45度の絶壁です。赤ちゃんのときの寝かせ方が悪いとこれまで嫁さんを責め
ていましたが、原因は私の頭の形にあることが判明しました。嫁さん、申し訳あり
ませんでした。

 頭の形の画像を見てからは何だか体調が良くなりました。CT検査は、頭の検査
だけでなく、頭の痛みにも効くようです。


2012.09.04(火)【いじめとメッセージ】(島根・根来川弘充)

 私は、最新のニュースを知るのに携帯電話を利用する事が多いです。もっとも、
自らサイトを開くわけでなく、勝手にニュースが送られてきます。(もちろん、
このようなサービスを利用しているためですが・・・)

 ただ、その中には、「これがニュースなのか?」という記事も含まれています。
例えば最近では、いじめについて、著名人がメッセージを発信するというもので
す。

 いじめをしている子供、いじめられている子供、どちらでもない子供、それぞ
れに対するメッセージが、ニュースとして送信されてきます。見ていて、なるほ
どと思うところはあるのですが、このようなメッセージで、いじめが減るかと思
うと、そうでも無い気がしてしまいます。

 私ごとながら、子供時代は、いじめる側もいじめられる側も、多かれ少なかれ
経験してきました。振り返って見ると、いじめる側にあったとき、それが本当に
悪い事だと分かっていなかったと思います。

 大人になるにつれ、いろいろな経験を経て、本当に悪い事をしたと、いまさら
ながら思うのです。逆に言えば、良い事なのか悪い事なのかが分からないから、
子供だとも思うのです。

 私は、いじめの大きな問題は、人を狂気に走らせることにあると考えています。
幸いにも、私の場合はそこまでいたることも無かったのですが、何故そうならな
かったかは、特に理由は思い当たりませんので、きっと、その危険性はいつでも
あったのだろうと思います。

 ただ、よく考えてみると、大人の世界でも狂気なのではないかと思うことを良
く目にします。例えば、戦争やテロといったものは、その代表でしょうが、匿名
によるインターネットへの書き込みなどにも、それを感じることがあります。

 「人をどうすれば狂気に走らせないか」を問題にするならば、メッセージが必
要なのは、子供ではなく、大人の方ではないかと思えてしまいます。


2012.09.03(月)【後任、補欠、増員】(金子登志雄)

 金曜日の問題提起はいかがだったでしょうか。

 その後もいろいろ考えているのですが、「後任、補欠、増員」は日常用語との
関係もあり、実にややこしい問題を含んでいます。

 日常用語では、野球の例のように、「定員」があって、定員の補充が補欠で、
定員枠の拡大が増員ですが、取締役や監査役の任期計算の場面では、定員は無関
係のようです。

 しかし、この「定員」につき、取締役会設置会社であろうと「1人」と考える
と、AB2名のところ、ABとも任期途中で退任した場合は、後任であるCは定
員の補充だが、Bのみが退任した場合は、後任であるCは、前任者であるBとの
関係では補充だが、定員の面では増員といえるのではないでしょうか。

 では、退任したBの補充として、CDEを選任するのは何というのでしょうか。
1人が後任で、2人は増員だという考え方もあるでしょうが、私は全員が後任で
あり、任期計算は増員扱いだと考えます。

 なお、このように「後任」は前任者数と相違してもかまわないと思いますが、
「補欠」の場合は、「前任者数=補欠」ですから、CDEの誰がBの補欠かを決
めねばなりません。

 ますます、ややこしくなりましたが、お時間のある方は、このクイズ問題に、
ぜひ挑戦してみてください。


2012.08.31(金)【補欠と増員の狭間】(金子登志雄)

 今日は、本欄閲覧の司法書士の皆様に、最近発見した重要な問題をプレゼントい
たしましょう。私の解答を読む前に、ぜひ、ご自身でご検討ください。

--------------------------------------------------------------------------
 取締役会の存在する某社では「取締役ABC、監査役P」でしたが、つい最近の
臨時総会でCPが辞任し、後任として取締役D、監査役Qが選任されました。決算
期が8月なので、10月の定時総会でABの任期が満了します。Pも在任していれ
ば任期が満了するはずでした。
 さて、この会社の定款には、補欠取締役又は増員取締役の任期は前任者又は在任
取締役の任期満了時期と同じ、補欠監査役も前任者の任期を引き継ぐという定めが
ありますが、新人の取締役Dと監査役Qの任期は、いつまででしょうか。
--------------------------------------------------------------------------

検討1:DQは補欠ですか。
検討2:補欠でないとすると増員ですか。
検討3:取締役3名を欠いた状態でも増員といえますか。

 ここから下は、ご自身で検討した後に読んでください。
=====================================
(ご参考=すぐに解答が目に入らないための目くらましです)
 野球の員数は9人です。補欠要員をABとします。
9人の誰かに事故があると、A又はBが参加します。補欠とは【交代要員】です。
補欠がABの2人では不十分だというときに、補欠にCを加えることが増員です。
増員とは現存員数に追加することです。
=====================================

 DQは補欠になりません。補欠であることを明示していないため、単なる後任に
過ぎません。勘違いしている方が非常に多いので、ご注意ください。

 増員は現存員数に追加することですが、取締役の現存員数を3人と捉えると増員
になりませんが、私は現存員数は2人とみます。もし、3人だとすると、監査役の
Qも増員監査役になってしまいませんか。そういう考え方はありません。

 また、Cの辞任とDの選任が1か月空いたとしたら、誰でも取締役がAB2人の
ところにDを増員させたとみるでしょう。同時でも同じだと考えられませんか。辞
任が総会終結後だとしても、Dを増員者として予選したとみればよいでしょう。

 結局、【補欠とは前任者との関係】でいう用語、【増員とは在任者との関係】で
いう用語であり(在任者がゼロのQは増員ではない)、本件Dは、補欠として選任
されることも、増員として選任されることもあり得るのであって、今回は増員とし
て選任されているのでABと同時に任期満了退任するというのが私の結論です。

 本問の難しさは法定員数(3人)を欠いた状態だから、欠員の補充であって増員
ということに抵抗があることだと思いますが、任期を計算するための増員の基準は
【現存】員数であって、法定員数の問題ではありません。


2012.08.30(木)【ガバナンスの崩壊】(金子登志雄)

 竹島、尖閣で日韓中が騒々しいようですが、もし、急成長しそうな韓国企業や中
国企業があったとして、皆様は投資したいと思いますか。

 投資する・しないの基準は、あの国が嫌いかどうかではなく、儲かるかどうかで
しょう。かの国の企業のコーポレートガバナンス(企業統治)がしっかりしている
かどうかは、投資リスクとしては考慮しても、それがために投資を控えることはな
いと思いますが、いかがでしょうか。リスクなくして大儲けはできません。

 さて、愛する会社法の見直し案の背景に、日本企業はコーポレートガバナンスが
しっかりしていないから、外国人からみれば怖くて投資できないという理由が述べ
られています。

 しかし、前記したように、本当にそれが理由とは思えません。日本企業への投資
が減っているのは、日本はもう青年ではなく老人になってしまい、発展しないと思
われているからでしょう。要するに、魅力が減ってきたのです。

 にもかかわらず、社外取締役を増やせ、業務執行と業務執行のお目付け役は組織
的に分離せよなど学者先生はおっしゃるのですが、実業界の人間からすれば、何を
ピント外れなことをとしか感じないのではないでしょうか。

 そもそも、法律を最も遵守すべきは、日本の政府や検察組織・最高裁判所、学者
先生の所属する教育界のはずなのに、そのガバナンスの崩壊ぶりは、ご承知のとお
りの体(てい)たらくであり企業社会の比ではありません。ウソツキやペテン師に
道徳を説かれても聞く気がしません。

 また、これまで米国の圧力で日本はさまざまな改革(?)をしてまいりましたが、
うまくいった試しがありません。弁護士や会計士の合格者を増やした結果がどうな
ったでしょうか。大規模店舗の解禁は地方をシャッター街にし、製造業の派遣まで
自由化した結果はワーキングプアを増加させ格差社会を産み出しています。

 欧米文化とイスラム文化の戦いは戦争にまで発展していますが、各国には各国独
自の歴史や文化がありますから、その歴史や文化を大事にして、欧米の制度や仕組
みが正しいという前提の干渉(法改正)は、少なくとも日本国内だけを市場にして
いる企業(圧倒的多数)にまで求める必要はないでしょう。防衛すべきは領土だけ
ではなく、文化もあることを忘れたくないものです。


2012.08.29(水)【問責決議案】(金子登志雄)

 奥方様からしょっちゅう問責決議されている皆様、たまには憲法の勉強でもいか
がですか。

 自・公が参議院で野田総理の問責決議案を出したようです。なぜ、不信任決議案
といわないのでしょうか。憲法69条が根拠です。

--------------------------------------------------------------------------
 内閣は、【衆議院】で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したと
きは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
--------------------------------------------------------------------------

 参議院の問責決議は法的効果がありません。そのため、問責決議後には「問責決
議を受けたお前が出てくる限り、審議には協力できない」と審議を拒否して抵抗す
るしかありません。

 これで予算案を執行する法律である特例公債法案も今国会での通過は絶望的とな
りました。わが国経済は地獄に向かって進むことになります。

 庶民の出身でありながら、景気や国民生活がどうなろうと全く興味もないかのよ
うな野田総理の一連の対応やしぶとさには怒りを越して、感心してしまいます。こ
ういうことも、松下政経塾で教えてくれたのでしょうか。

 また、自・公も衆議院では「近いうちに解散」という野田総理のヤルヤル詐欺の
約束を信じて不信任決議に欠席で協力したばかりなのに、今度は問責決議案の提出
とは………。実に情けないことですが、それを選んだのはわれわれ国民ですよね。
もっと、私を含め国民は賢明にならないといけないようです。


2012.08.28(火)【韓流スターの受難】(金子登志雄)

 竹島問題で、韓国メディアに韓流スターがいじめられていますが、なぜ、「君た
ちはよくやった。あの日本から、大金を巻き上げたのだから。今後も、ますます精
進して日本から金を貢がせてほしい」とならないのでしょうか。

 昔、イギリスにビートルズという髪の毛は伸ばし放題で、服装もけばけばしく、
音楽も騒々しいだけ(当時の大人はそう思っていました)の4人グループのロック
バンドがあり、世界中の若者を虜にしました。

 イギリスの中ではイギリスの恥だという意見も多かったようですが、外貨を稼ぎ
まくったため、エリザベス女王から大英帝国の勲章を授与されました。

 そこまでしなくても、韓流スターの日韓親善に果たした役割は非常に大きいもの
があるのに、それも全てご破算になってしまいました。

 なぜ、こういう差が生じるのでしょうか。儒教の国で真面目な国民性だから? 
1民族だから? 成功している人間の足を引っ張って落としたいという嫉妬心? 
日韓親善を許せないから?

 まぁ、よく分かりませんが、韓国の庶民がいろいろな意見を持つのは自由ですが、
マスコミが焚きつけてコトを大きくするのは、日本も韓国も同じですね。


2012.08.27(月)【日韓中の成熟度】(金子登志雄)

 土日は帰省し、久々にワードショーなる白痴化番組をちらっとみましたが、ほと
んどが、竹島、尖閣問題でした。

 韓国では、2国間のTPPともいうべき米韓FTAも不平等条約だと評判が悪い
ようですし、韓国経済も相当悪くなっているとの話もあります。また、李大統領の
親族の不正も問題になっているようですから、竹島問題は明らかに大統領が失政を
ごまかし、目を日本に向けさせるための周到に計算された人気挽回策でしょう。

 それに乗せられた韓国マスコミが、韓流スターに踏み絵を踏ませていじめている
ようですが、韓国もまだまだ大人の社会にはなっていませんね。九州への観光旅行
もキャンセルばかりだそうです。反日のポーズをしないと、非国民扱いされてしま
うのでしょう。反日のリーダーになった李大統領の支持率も急上昇とのことです。

 もちろん、日本も韓国を批判することができません。反小沢かどうかの踏み絵の
世論調査ばかりされた後には、「絆」、「ひとつになろう日本」などという標語に
乗せられ、大震災や原発問題の責任追及をうやむやにされ、何となく日本人全部の
総ざんげ問題にされてしまい、それを理由に消費税アップの口実に使われてしまい、
三党合意に至ると、今度はオリンピックに目をそらされ、いまや、反中国、反韓国
に目を向けさせられ、韓流スターを日本に入れるななどという小児病患者まで出て
くる始末です。尖閣問題も軍用機オスプレイの配備に誘導されそうです。

 領土問題は一朝一夕に解決するような問題ではないのですから、もっと大人の対
応をすればよいのにと思いますが、日本や韓国、中国の文化度では、私も非国民の
一人になるのでしょうか。

 ここまで書いて、ネット検索していたら、田中良紹さんがブログを更新していま
した。日本では李大統領が頭がおかしくなったという論評が多いのに、彼も、李大
統領の計算づくの行動だという見方でした。いつも、アメリカさんの意向を気にし
ながら動くのは国際政治の現実のようです。

 
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/08/post_312.html#more


2012.08.24(金)【株主平等原則】(金子登志雄)

 22日は、某大手経営コンサルタント会社で会社法109条2項の属人的定めに
ついて講義及び議論してまいりました。

 事前に学者の解説を読んで行きましたが、何をいいたいのかさっぱり分かりませ
んでしたし、明らかに間違いだと思われる箇所もみつかりましたので、無視して、
自説を述べてまいりました。

--------------------------------------------------------------------------
第109条(株主の平等)
@ 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わ
 なければならない。
A 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号
 に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で
 定めることができる。
B 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項
 の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第
 5編の規定を適用する。
--------------------------------------------------------------------------

 2項に「前項の規定にかかわらず」とありますから、1項の例外であることは明
らかですが、株「主」平等原則の例外がであるかについては、疑問があります。

 1項は、株「式」の平等を定めたもので、2項は、組合的な小規模閉鎖会社を前
提に株「主」を基準に、株主の平等の限界と定款自治を定めたものだともいえるか
らです。

 議論は、主に「株主甲に限り1株につき議決権100個とする」と定めるときに、
残りの乙丙丁など全員の同意を要するのか、309条4項の特殊決議でよいのか、
「1株につき1万個」という極端な場合はどうか、「株主乙に限り議決権なし」と
定める場合はどうか、不利益を被る反対株主に買取請求があるかなどという点を巡
ってなされました。

 私の見解の披露は長くなるので控えますが、全員の同意が必要であれば309条
4項の存在意義がなくなるため、原則は不利益を受ける者全員の同意は不要であり、
一部の学者が反対株主に「買取請求あり」というのは間違いだと思っています。そ
れを許容する明文上の根拠もありません(上記の3項は「定款の定めがある場合」
の話であって、これから定款に定める場合には適用されません)。

 結局、規定がはっきりしないから利用は避けようと動くか、不明朗だからこそ利
用価値が高いと思うかは、その人の個性であり、利用する人ごとに異なる取扱いが
なされてしまいそうです。


2012.08.23(木)【仕事をするということ】(仙台・立花宏)

 「きっと君たちは、机に向かって問題と答案用紙を配られたら、誰にも負けない
いい点数をとるんだろう。だが今回の試験は、まず解くべき問題を探してくるとい
うところからはじまっていたようなものだ。君たちは、その肝心な勝負に負けた。
その結果、君たちは、間違った問題を解き、間違った答えを出した。」

 これは、「ロスジェネの逆襲」(著者:池井戸潤)という小説の中に出てくる言
葉で、自らの誤った判断により失敗をおかした部下が見苦しい言い訳を始めたこと
に対して、上司が述べた言葉です。

 厳しい言葉のようにも思いましたが、でも、仕事をするということの難しさを的
確に表現しているなあと感じさせられた言葉でした。

 受験生時代は、司法書士になるための試験はとても実務的な試験と聞いていまし
た。

 しかし、試験に合格し、いざ、実務を行うようになると、仕事をするということ
は、試験問題を解くのとはまるで違うということを思い知らされました。

 試験問題は、問題を解くための前提となる条件や、回答すべき論点はすべて問題
文を読めばわかるようにできています。それに対して、実務では依頼者等から聞い
たり、資料を丹念に読み込んだり、条件や論点をすべて自分で集めたり見つけ出し
たりする必要があります。

 依頼者等からの聞き取りや資料の読み取りを誤ってしまうと、“間違った問題を
解いてしまう”ということにもなりかねません。

 司法書士試験に合格し、実務に就いた後、スムーズに実力を発揮する人もいれば、
なかなか実力を発揮できず、苦労しているように思える人もいます。もしかしたら、
“解くべき問題を探す”というところで差がでてきているのかな、と思います。

 実はいま、ある研修会の企画に関わっています。商業登記の担い手である司法書
士が企業法務の観点から、東日本大震災からの復興にどのように関わっていけるの
かを考えています。約1時間弱の寸劇という形になる予定です。

 “解くべき問題を作る”という難しい作業、がんばりたいと思います。 


2012.08.22(水)【喫煙者のオアシス】(金子登志雄)

 富田さんに限らず喫煙者は、どこに行っても、まずは喫煙場所を探します。それ
だけ少なくなりました。追い詰められてきています。

 分煙ではなく全席とも喫煙できる喫茶店は、どこも混雑しています。喫煙者にと
って居心地がよいため、そこに長く滞在するからです。回転率は悪いでしょうが、
コーヒーだけでなくトーストなども注文するため、採算に合うのでしょう。

 喫煙者は、歩いていても、喫煙場所のある公園でも見つけると必ず立ち寄ります。
砂漠でオアシスを見つけたような感動があります。生き返ります。

 ところが、数か月後には、そのオアシスが撤去されているのです。おそらく心の
狭い狭い反喫煙者が「税金の無駄だ」なんて行政にクレームをつけたのでしょうが、
真意は税金の問題ではなく、喫煙自体に強い不快感をお持ちなのでしょう。

 ここ毎日、電車の中などで、腕や背中にタツーをしている人をみましたが、不快
感を持つ方には、タツーがみえないような服装をせよといいたくなるだろうなと思
ってみていました。

 きっと憎い喫煙者を滅ぼした後は、心の狭い人はタツ―攻撃を開始することでし
ょう。タツーの後は「犬を連れて歩いてはいけない」「道を3人以上で横に並んで
歩いてはいけない」「電車の中で化粧をしてはいけない」などという法律ができ、
最後はイスラム圏の女性のように「全て国民は不快を与える顔を露出してはいけな
い」ということになるかもしれませんよ。

 冗談を………と思いでしょうが、風俗雑誌(いわゆるエロ本)などが青少年の育
成によくないという理由で過激に規制された後には、政治思想への統制がはじまる
といわれておりますから、風俗は思想の自由の防波堤になっている部分があります。

 同様に喫煙に寛大であることは、自由社会を守ることに通じるのですが、分かっ
てくれる人が少ないのですよね………。


2012.08.21(火)【万国の●●●よ、団結せよ!】(東京・富田太郎)

 ここ数か月、全国行脚の日々でした。

 書類を客先でいただき、そのまま法務局へ直行することもあり、はじめて行く
地方の法務局もありました。

 また、法務局と言っても千差万別で、各法務局により、大きな違いがあること
に気がつかされました(つくづく)。

 僭越ながら、下記が私の各法務局の評価です。

◎◎・・最良  ◎・・優良    ○・・可   ×・・不可
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 東京法務局   本局       ◎◎
 東京法務局   港出張所      ◎
 東京法務局   品川出張所     ◎
 東京法務局   新宿出張所     ○
 東京法務局   渋谷出張所     ×

 名古屋法務局           ◎◎
 仙台地方法務局           ×
 大阪法務局             ×
 新潟地方法務局 新発田出張所    ×
 福岡法務局   北九州支局     × 
  (以下省略) 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 なんの評価??

 商業登記に詳しい法務局の評価?? 対応の良かった法務局???

 いえ、そうではありません。
これは『タバコを吸うことができる法務局か否か』の評価です(きっぱり)!

ちなみに、
 東京法務局新宿出張所は、喫煙室はなく法務局の外にバケツが一つ置いてあ
り、そこでしかタバコが吸えないので○。

 港出張所は喫煙室がありますが、『タバコは健康の害です』みたいな無粋な
ポスターがはってあるので、◎一つです。

 ここで、心配なのは、上記『優良法務局』も、『邪悪な非喫煙者』の投書・意
見によって、喫煙所が撤去されるのでは?という恐怖です。

 恐る恐る資料を調べてみると、やはり法務省の『国民の声』(法務省への意見
窓口)には次のような投稿があったようです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 『東京法務局1階ロビーに喫煙所を設置しているが撤去していただきたい。
一部喫煙者のためだけに喫煙設備を設けるのは税金の無駄である。』
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

税金の無駄???

 タバコの売上げは、税金の一部(注)になっているのに、阿呆で、教養のない
方のようですね(冷笑)。

(注)1箱410円のうち264円が税金
  (たばこ税法/昭和59年8月10日法律第72号)

これに対する法務省の回答は

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 『当該喫煙所を利用される来庁者は少なくなく、仮に喫煙所の撤去を行った場
合には禁煙区域における喫煙やそれに伴う火災・事故等の発生が懸念されること
から、現時点において、喫煙所の撤去は難しいものと考えます。』
(平成23年6月27日 取組全体の自己評価(案)/法務省予算監視・効率化
チーム)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
 さすがぁ〜法務省ですね♪
 
 ・・・・・・・・・・・・

 んん????『現時点において〜』・・・・・・(汗)

 毅然と『未来永劫、撤去は難しい(きっぱり)!』と
言ってほしかったのに………。

 『万国の喫煙者よ、団結せよ!』です!


2012.08.20(月)【商業登記倶楽部夏季セミナー/in札幌】(金子登志雄)

 18、19の土日は、商業登記倶楽部の夏季セミナーが倶楽部の創業20周年を
記念して札幌で行われたため、同倶楽部5人委員会の私も、鈴木龍介さんと一緒に
参加してまいりました。

 会場は中島公園の近くでしたが、この公園の周囲はホテルばかりでした。郵便局
やコンビニよりも多いでしょう。

 遠い九州はじめ全国から名だたる司法書士が100名以上も参加していましたか
ら、商業登記倶楽部のパワーにはすごいものがありました。もちろん、マスコミを
代表して(?)、キンザイも取材に来ていました。日司連会長もお祝いに来てくだ
さいました。

 主宰者の神ア(こうざき)先生の執念であった近日発売の下記の『商業・法人登
記六法』をはじめ、非売品の重要な資料その他も大量に配布されましたので、参加
者には大いに価値あるセミナーになったことでしょう。

(商業・法人登記六法)
http://www.biz-book.jp/%E5%95%86%E6%A5%AD%E3%83%BB%E6%B3%95%E4%BA%BA%E7%99%BB%E8%A8%98%E5%85%AD%E6%B3%95/isbn/978-4-502-05910-0

 メインゲストは中央大学の野村修也教授で、会社法の改正方向に絡んで日本企業
のコンプライアンスを中心に1時間40分ほど話してくれました。さすがに話はう
まく、聴衆を魅了していました。

 私も20分ほど話しましたが、根がひねくれていますから、「会社法の改正の勉
強をする前に現在の会社法を十分に理解しましょう」と、旧商法と会社法の考え方
の相違を中心に話しました。

 商法時代は、これから何をしようという発想で規定ができていたが、会社法は現
時点から過去を振り返って、あれも済んだ、これも済んだということで効力を発生
させている。また、準備金の資本組入れが、準備金の減少と資本金の増加に因数分
解されるなど、デジタル思考になった。親会社と子会社の関係も、親は親、子は子
だったが、今後は、多重代表訴訟をはじめ、「AはA、BはB」という考え方が見
直される可能性が高い。しかし、子は親の一部なら、子会社の決算公告はしなくて
よいなどということも考えないとおかしい………なんて、平素の考えを述べてまい
りました。

 夜は懇親会、2次会に続いて、地元のK先生から夜でも行列のできる札幌ラーメ
ンのお店に案内していただきました。K先生、ご馳走様でした。

 さぁ、今日から、また、行列のできた試しのない当事務所を開きます。


2012.08.17(金)【株式会社と清算株式会社】(金子登志雄)

 「すべての株式会社は取締役を1人以上置かなければならない」………〇か×か。

 100人の法律家の100人又は99人が〇にするでしょう。会社法326条に
も「株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならない」とありま
す(注:「1人又は2人以上」とは数学的には1人以上ですが、「単独又は複数」
という会社法用語です)。

 しかし、ふと考えると、会社が解散して清算段階に入ると、取締役が不在になり
ます。

 おかしいなと思いませんか。よくみると、会社法476条に「清算をする株式会
社(以下「清算株式会社」という。)は、清算の目的の範囲内において、清算が結
了するまではなお存続するものとみなす」とあります。

 要するに、会社法は「株式会社」と「清算株式会社」を別物と把握しています。
事業報告も事務報告という用語になります。きっと、設立時株式会社、通常時株式
会社、清算時株式会社という区分けの発想でしょう。

 これに関連して、電子公告による決算公告の5年間継続義務を規定している会社
法940条をみますと、主語が「株式会社」になっています。

 ということは、解散して清算株式会社になると、5年間継続義務がなくなると解
釈してよいのではないでしょうか。

 なぜ5年間も継続義務があるかというと、取引しようとする人や株主になろうと
する人が業績の推移を調べるのに便利だからでしょう。有価証券報告書の最初の頁
である「企業の概況」も過去5年間の推移を記載するようになっています。

 解散したら、取引したいとか株主になりたいという人は登場しませんから、極論
したら、清算人が「現務の結了」の一環として、決算公告をホームページから消し
てしまってもよいといえないでしょうか。

 合併による解散は清算が不要で清算株式会社にはなりませんが、それ以前に株式
会社でもなくなるため、決算公告の5年間継続義務は会社の消滅とともに消滅し、
合併で引き継がれることはあり得ないというのが私の主張です。

 大手法律事務所の森・濱田松本の『組織再編』7頁には、合併で承継されるとあ
りますが、深く考えた上での見解とは思えません。


2012.08.16(木)【伝説の男】(金子登志雄)

 お盆休みはいかがだったでしょうか。私は例によって、頼まれ原稿に対する執筆
三昧で、オリンピックも旅行も帰省も全く他人事でした。

 唯一、ニュースで、ウサイン・ボルトの100mと200m制覇をみましたが、
まさに超人ですね。カール・ルイスや東京オリンピック時代のマラソンのアベべな
どと同様に、後世に語り継がれる快挙でした。

 本人も「伝説の男」であることを証明したと発言していましたが、日本人がこれ
を発言したら、相当なバッシングが生じたことでしょう。日本人だったら「応援し
てくださった皆さんが背中を押してくださったおかげです」とか、たわいない発言
でもして、飛んできそうな矢を避けるところでしょうか。これじゃ、世界に通じる
発言はできませんね。

 200mでは、3位までが同じ服装のジャマイカでした。なぜ、こんなに強いの
でしょうか。

 ジャマイカはキューバと同じ西インド諸島にあるのに、スペイン語ではなく英語
を使うと聞いたので、さっそく調べてみましたら、やはり、もともとはスペイン領
だったのに、イギリスに追い出されてしまったようです。

 スペインやイギリスの植民地として過酷な労働を強いられ、かつアフリカから連
れてこられた奴隷も多かったようで、弱い肉体は自然に淘汰され、また混血に次ぐ
混血で優秀な肉体をもつ民族に育ったのかもしれませんね。

 ちなみに、デバラの今は誰も信じてくれませんが、私は中学校のとき、200m
の選手で、群馬県の某市の全中学校が集まる陸上競技大会で1番でした。

 県大会では予選落ちでしたが、ボルトをみていると、自分の若い頃をみるような
心境です………というのは大ウソで、高校からは全く運動をせず、いまも「せっか
く神様からいただいた体をいじめるのはよくない」とスポーツとは無縁に生きてい
ます。長生きして、スポーツは体に悪いことを実証すれば私も伝説の男になれるか
もしれませんね。


2012.08.10(金)【本欄のお盆休み】(金子登志雄)

 野田内閣不信決議案はあっさり否決で、ちょっと拍子抜けでした。独特の政局感
を持ち、喧嘩に強い小泉元首相らの剣幕に押されて谷垣さんも一旦はこぶしを振り
上げたのですが、あせった財務省やマスコミ勢力になだめられて、最後は、3党の
仲良しこよしが復活したようです。

 「近い将来」の解散の約束が「近いうちに」解散という方向に変わったから谷垣
さんも了承したとの報道がありますが、危機を乗り越えた野田さんが、そう簡単に
解散するとは思えません。また、いま解散したら民主党は壊滅するため、党が許さ
ないでしょう。

 そうなると、今度は自民党内が内輪もめしますが、今回、党の方針に逆らって賛
成票を投じた小泉ジュニア(進次郎)氏ら7人を自民党は処分することができるの
でしょうか。処分しないと、3党合意に逆らった小沢らを処分せよといっていたこ
とがブーメランとして自民党に戻ってきます。

 これで終わらず、まだまだ、波乱がありそうですね。

 さて、来週はお盆休みのところが多いようですが、24時間365日年中無休の
コンビニエンス事務所である当事務所は、休みません。ただし、神田小川町の事務
所ではなく、思い切り喫煙のできる別の場所で仕事をする予定ですので、面会をご
希望の方は事前にご連絡ください。

 また、本ホームページ管理者にも休みをとらせますので、この徒然も13−15
日は休みます。「人に頼まずに自分で更新すればよいじゃないか」と思われた方も
多いでしょうが、そういう現場の作業は事務所の所長である私の仕事ではありませ
ん(ほんとは、更新の仕方を知らないのですが)。

 それでは、また16日に本欄でお会いいたしましょう。


2012.08.09(木)【童謡:ふるさと】(金子登志雄)

 国会情勢が風雲急を告げてきましたね。三党合意で板挟みの自民党の谷垣さんも、
「つつがなしや谷垣」とはいえなくなっているようです。

 名曲、童謡「ふるさと」の歌詞です。
--------------------------------------------------------------------------
 うさぎおいし かのやま  こぶなつりし かのかわ 
 ゆめはいまも めぐりて  わすれがたき ふるさと

 いかにいます ちちはは 【つつがなしや ともがき】
 あめにかぜに つけても  おもいいづる ふるさと

 こころざしを はたして  いつのひにか かえらん
 やまはあおき ふるさと  みずはきよき ふるさと
--------------------------------------------------------------------------

 この3番の「こころざしを はたして いつのひにか かえらん」というのは、
実に日本人らしいですね。米国人や中国人などは、故郷に錦を飾りたいという心境
は薄いのではないでしょうか。

 まだ父母が健在中の話のようですから、これ、東京に出て予備校通いしている受
験生の歌みたいに読めませんか。

 仕送りしてくれているお父さん、お母さん、お元気ですか。ボクは、きっと東大
に合格し、財務省に入り、財閥の娘と結婚し、いつの日にか、運転手付の車で、ふ
るさとに帰るぞ、といった自分を励ます歌のようにも読めてしまいます。

 いやですねぇ、挫折ばかり繰り返しており、志を果たせなかった人間は、つい、
こういう皮肉な読み方をしてしまいます。

 いずれにしろ、日本社会の成長神話も終わり、立身出世を望む時代は終わりまし
た。桃太郎のように異国を征服して略奪する人よりも、金太郎のように、原発も求
めず、熊や自然と調和して生き、共生する生き方を大事にする時代ではないでしょ
うか。童謡「ふるさと」も歌詞全体では、自然に対する賛歌ですから、反原発運動
で歌われることもあるようです。

 いつまでも「やまはあおき みずはきよき ふるさと」でありたいものです。


2012.08.08(水)【OB会】(金子登志雄)

 4日の土曜日には、慶応大学新田研究会(民法ゼミ)のOB会があったので、参
加してきました。

 マイペース人間の私は、団体生活が苦手で徒党を組むも大嫌いなため、いわゆる
三田会などという会には可能な限り逃げ回って参加しないのですが、この会だけは、
恩のある先生への感謝の気持ちから、できるだけ参加しています。

 学生時代のゼミの運営が、事例問題を出し、翌週までに解答のレポートを作成し、
そのレポートをもとにディベートし合う形式でしたから、1年間で相当鍛えられま
す。どこかの説の受け売りのようなことを言えば、すぐに追及され、ボロがでてし
まいます。

 2週連続でレポートの提出をサボると退会処分を受けるルールでしたので、大学
の授業には出ずに雀荘にいることの多かった私もさすがにゼミだけは真面目に出席
いたしました。

 こういうゼミだったので、ゼミ員皆が先生に感謝しており、毎年のOB会も盛況
です。私は4期生ですが、後輩には弁護士や政治家が多いのも、討論で鍛えられた
からでしょう。裁判官も大学教授もいます。

 今回は、多忙なのに民主党の長妻昭君も主賓として参加し、30分くらい講演を
してもらいました。

 残念ながら、政局の裏話はありませんでした。名刺交換や挨拶も控えました。主
賓さんに、「最近の民主党は評判悪いぞ」といってしまいそうでしたので………。
やはり、思ったことを口に出してしまう私は集団生活は無理ですね。今後も、孤独
な一匹羊として司法書士業務や執筆業務に精を出すしかないようです。


2012.08.07(火)【懇親会】(金子登志雄)

 姫井講義の後の懇親会の席で、姫井さんと名刺交換しました。

 名刺を出して「司法書士です」と申し上げましたら、「私も」といわれ、親しく
会話できましたが、会社法で有名な金子先生(?)を存じてくれてはいないようで
した。無理もありません。県会議員8年から国会議員へという経歴が示すとおり、
彼女の本職は司法書士よりも議員です。会社法どころではなかったでしょう。

 雑談で「尖閣諸島を20億円も出して買うなら福島の被災地の土地を買えばいい
のに、民主党はパーフォーマンスばかりで、ほんとにダメですね」といいましたら、
「尖閣の時価は〇〇〇円で、頑張れば私だって買える値段なのに………」と疑問を
提示していました。

 選挙区である岡山の江田五月さんとの確執、新党「国民の生活が第一」のことな
ども聞いてみましたが、しっかりしたお考えを持っており、マスコミ報道から受け
るヤンチャ姫のイメージとは相違しました。コンビニ経営者達からは強い期待を受
けていることも今回知りました。

 その後は、亀井静香さんに詳しいフリーライターの高橋清隆さんと雑談しました。
亀井さんも、マスコミから受けるイメージと相違し、実際は神経が細やかでシャイ
な方だそうです。亀井さんの尊敬する人物は、大塩平八郎、西郷南洲、チェ・ゲバ
ラであり、共通点は負けると分かっていても生命を賭して信念を貫き、後世にその
生き様を残したことだそうです。亀井さんの平素の発言も、このまま米国やCIA
にやられてなるものかという悲壮な覚悟のものが多いといえます(米国は国内では
民主的ですが、こと外交に関しては残酷で恐ろしい国といわれています)。

 高橋さん達、フリージャーナリストの生活もコンビニ経営者と同じく大変なよう
で、同業の岩上安見さんや田中龍作さんのように支援募金で動く人、上杉隆さんの
ようにゴルフジャーナリストという副業を持つ人などさまざまなようです。高橋さ
んもアルバイトをしながら、ジャーナリストとして生きているとのことでした。

 真実を伝えたいという彼らのジャーナリスト魂を身近で触れるにつけ、テレビ局
のシナリオどおりにコメントを発するお気楽で恥知らずの御用コメンテーター達と
の人間性の差を強く感じざるをえませんでした。


2012.08.06(月)【姫井:コンビニ改造論講義】(金子登志雄)

 今日は原爆記念日ですね。広島の資料館も長崎の資料館も訪問したことがありま
すが実に悲惨なものでした。根こそぎといった感じでした。フクシマでも、そのう
ち記念館が作られるでしょうが、こういうことは真実を後世に伝えねばなりません。

 議事録さえ作らなかった日本政府の動きに対して米国では膨大な資料が残された
ようです。臭いものに蓋をする文化としない文化の差だとしても、真実を直視せず、
建前と本音を使い分け、歴史に学ぼうとしない日本文化には問題ありですね。何度
も同じ過ちを繰り返しますし、現に繰り返しています。

 さて、24時間365日年中無休のコンビニ経営では、儲かっているのは本部ば
かりで、現場の店は「働けど働けど………」の富田事務所状態であることは、知る
人ぞ知る事実です。

 これに関連して、なぜか、政治学者で全く面識もない岩渕美智子さんという方が
主催する「未来社会研究会」というところから、「コンビニ改造論と最近の政局」
というテーマで、7月31日夕方から、姫井由美子参議院議員の講義があるという
案内が当事務所のFAXに入りましたので、姫井さんをみてみたいという好奇心も
あり、参加してきました。

(岩渕美智子さんのHP)
 
http://sites.m-iwabuchi.com/

 行ってみましたら、顔見知りの司法書士が3人いました。聞けば、司法書士政治
連盟からの参加で、司法書士でもある姫井さんには、当業界がだいぶお世話になっ
ているとのことでした。

 講義では、姫井さんだけでなく、コンビニ経営者の数名が現状を訴えておりまし
たが、その1人の方(コンビニの親会社出身の方)が「コンビニ経営者は奴隷だ」
とおっしゃっていました。銀行出身の経営者の方も、いらっしゃいましたが、口ぐ
ちに本部の不当性を訴えておりました。儲かってくると、近所に同じ系列店が出店
してしまうようです。

 本部にさまざまな改善を訴えると、契約の解消を迫られるので、怖がってユニオ
ンにも加盟しないようです。

 コンビニ経営者は一応は経営者であるため、労働者としての権利も主張できず、
経営者でありながら、仕入れも値引き販売も自由にできず、深夜の客がない地域で
も24時間営業を強いられ、その人件費も馬鹿にならないようです。

 その他の詳細は、参加していたフリーライター高橋清隆さんに報告してもらいま
しょう。

 
http://www.janjanblog.com/archives/78341

 その救済に孤軍奮闘しているのが姫井議員だそうですが、スキャンダルを乗り越
えて頑張ってほしいものです。


2012.08.03(金)【ツツガムシ】【島根・成瀬公平】

 みなさま、連日の猛暑の中、つつがなく日々をお過ごしでしょうか。

 先週の金曜日から2泊3日のキャンプをしてきました。設営場所は、電気・ガス
・水道はもちろん下水道もなく、山道を30分ほど歩かなければならない人郷から
離れた海岸でした。景色は素晴らしく、山からは小川が海へ流れ込むとても風情の
ある場所でした。

 キャンプにあたって地元の人とお話をする機会がありました。誰からも言われる
のは、キャンプ地周辺では「ツツガムシ」に気をつけなさいということです。ツツ
ガムシとはダニの一種で、噛まれると死ぬこともある怖いダニとのこと。長袖長ズ
ボンを着用すること、活動した後にはお風呂に入ること、テントで寝ることなど注
意を受けました。冒頭の「つつがなく日々をお過ごしでしょうか」の「つつがなく」
はツツガムシに噛まれることなくの意味だとも教えてもらいました。

 さて、キャンプが始まってみると、半袖半ズボンしかなく、お風呂はない、さら
にテントの数が足りず新聞を被って外で寝るというあり得ない設営となりました。
案の定、次の日には体の至る所が虫に刺されています。ツツガムシに噛まれると黒
い刺し口になるそうで、新聞を被って寝た者一同は恐怖を味わうことになりました。

 月曜日から仕事に復帰し、お客様と「つつがなくはツツガムシのことですよ」と
自慢げに話をしていたところ何人目かのお客様がその語源を否定されました。そこ
で事務所に帰ってから辞書を調べてみると、確かにつつがなくはツツガムシが語源
ではないとあります。なんと俗説とのこと。

 人に話をするときは何事もきちんと調べたうえで行わなければ恥をかくことをあ
らためて感じる出来事でした。

 ちなみに、今日まで生きていますのでツツガムシには噛まれておらず大丈夫かな
と思っていたところ、辞書を調べるうちに潜伏期間が1週間ということがわかりま
した。みなさまにまたお会いできることを切に願っています。


2012.08.02(木)【日本人はなぜデモをしないのか】(金子登志雄)

 昨日の根来川さんの投稿を参考に、表題について考えてみました。

 法を無視した検察の反対派への横暴、財務省の税務当局を使っての反対派への嫌
がらせ(政府批判の新聞社もこれでやられています)、国民主権を無視した菅政権
以来の民主党政権の横暴ぶり………、これだけの材料があれば、海外では暴動が起
きているところなのに、なぜ日本人はデモなどの行動に移さないのかという問題が
雑誌やネットに多く取り上げられるようになりました。

 古くは秀吉の刀狩りで牙を抜かれたからだという人もいますし、徳川300年の
平和な時代で、政治はお上がやるもので庶民は無関係だという考え方が浸透してい
ると述べる人も、島国を理由にする人もいます。周囲を海で囲まれ、政治亡命する
こともできない環境だからです。

 全て一理あると思いますが、やはり富国強兵の明治政府以来続いた官僚主権国家
(マッカーサーも改革に手を付けなかった)が、それなりに成功してきたことが原
因でしょう。

 厳しい割に裁量の余地のある法律をたくさん作り、国に逆らう人間には、政治資
金規正法だ、脱税だと襲いかかり、国に協力的な人間には、目こぼしし、水戸黄門
や暴れん坊将軍を代表するテレビ番組で、権力側にもいい人は多いと宣伝し、政治
は汚いもの、政治家は悪い人、政治を話題にする人は変な人という風潮を長年にわ
たり作ってきましたし、また、この環境は庶民にとっても実に居心地がよかったた
め、日本人全体がぬるま湯に浸かってきたためでしょう。

 本来「政治とは日々の生活そのもの」ですが、政治と生活は別物だと思っている
人が日本には多いようです。

 しかし、居心地のよかった環境の背景には、日本経済が高度成長し、三種の神器
(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)を揃え、マイホーム、マイカーを求めることに庶民の
関心が強かったことがあると私は思っています。いまや、失われた10年、20年
という不景気が長期に続いていますから、日本人も徐々に変わってくるのではない
でしょうか。

 毎金曜日の官邸前の反原発デモは、やっとマスコミも取り上げるようになりまし
たが(これも海外メディアが、NHKはじめ日本のマスコミはおかしいと言い始め
たのがきっかけです)、この数年、全国で小沢支持(反検察デモ)が何度も行われ
ていること、野田さんや枝野さん、菅さんの地元で、「〇〇を落とせ」デモが何度
か行われていることなどは、ネット市民であれば知っていることです(皆様は、ご
存知ですか。それほどネットと新聞・テレビは相違します)。

 都合の悪いことは「知らしめず」、仕方なく知らしめる場合も、20万人を1万
数千人と小さく伝えたり、あのデモのバックには左翼の扇動家がいるとコメンテー
ターに語らせる紙やテレビ電波の時代から、ネットやツイッターの時代になり、後
者が前者を凌駕する頃には、日本も大きく変わることでしょう。あと何年後、いや
何十年後でしょうか。


2012.08.01(水)【五輪の影で】(島根・根来川弘充)

 ロンドン五輪が開幕しました。
 日本人選手に是非がんばってほしいです。

 ところで、新聞でも当然のように、五輪ニュースが取り上げられます。
もはやスポーツ欄だけではなく、社会欄、地方欄にも大きく取り上げられています。

 そうすると一方では、五輪がなければ大きく取り扱われていた記事が、小さく取
り上げられることになります。こうした記事が大きく取り扱われたらと思って、新
聞を見直しますと、気になることが出てきます。

 特に最近、気になりました記事は、7月29日に反原発のデモ隊が国会議事堂を
取り囲んだというものです。

 その記事の中でも、デモの主催者が人数が20万人と発表しているのに対し、警
視庁が1万数千人と発表しているという点がとても気になりました。

 両者で、こんなにも数字の開きがあるのは何故なのかと思うのです。さらには、
これだけ違いがあるにも関わらず、それをそのまま記事にすることにも気になりま
す。何故、裏付け調査をしないのだろうかと。

 最近では、インターネットでも容易に写真や動画が手に入る時代です。そこで、
調べれば容易にどちらが正しいかわかると思います。

 容易に現場を想像できない記事は、私のような一市民にとっては混乱のもとです。
それならば、いっそ記載しないでほしいとも思います。

 この反原発のデモは、五輪後も続くと思われます。今後も、新聞記事にどのよう
に取り扱われるか、気にしたいと思います。


2012.07.31(火)【大阪市の刺青問題】(金子登志雄)

 汗が目に入るほどの暑さに辟易し、駅から家までたどり着けず、喫茶店で一休み
してしまいました。

 さっそく喫煙室でパソコンを開けてみると、大阪市職員の刺青問題が掲載されて
いました。まだ終わっていないのですね。

  
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120730-00000106-san-soci

 私もヤクザや刺青は大嫌いですが、他人がすることには、とやかくいいたくあり
ません。世界には刺青が崇高な文化だと思っている国もあることでしょうし………。
橋下さんのコスプレ浮気と同じで、個人の自由でしょう。

 ふと、背中に本格的な刺青をしていた大阪市の元助役で弁護士の大平光代さんは
いまどう思っているのだろうかと気になって、検索してみました。

 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%B9%B3%E5%85%89%E4%BB%A3

 再婚していましたが、お子さんがダウン症や白血病のようですから、大変ですね。

 彼女の本(だから、あなたも生きぬいて)は読んだことがありますが、同じ刺青
でも極道がする刺青は本格的で、皮膚呼吸も困難で長生きも無理のようですが、最
近流行りのタツ―は、掘りも浅く、ファッションの域を出ないそうです。

 少なくとも老人性のシミで苦労している年配者からみれば、若い女性のタツ―く
らいどうでもよいと思うのですが、橋下さんは。なぜこんなことを目の敵にするの
でしょうか。


2012.07.30(月)【飯田候補善戦】(金子登志雄)

 毎日、暑いですねぇ。ずっと冷房を控えていたためか、いい年して、上半身がア
セモだらけになってしまいました。仕方なく、冷房をつけるようになったら、今度
は風邪気味になってしまいました。どうも、行き過ぎる傾向があるようです。

 それよりも、日本全国で冷房をつけて、オリンピックをテレビで観戦していると
いうのに、少しも停電しませんね。電力会社の原発がなければ電力不足になるとい
う言い分は、やはり意図的なウソだったのでしょう。

 注目の山口県知事選は、反原発の飯田候補が岩国へのオスプレイの配備で追い風
も吹き善戦しましたが、自・公の推す山本候補には及ばなかったようです。

 しかし、野田民主党に近い高村候補には圧勝したようですから、野田さんは社会
党を潰した村山首相と同じく、民主党を潰した首相として歴史に残ることは、ほぼ
確定でしょう。

 ところで、山口県知事選の飯田候補、実は、ある方の紹介で、4年前に登記の相
談で当事務所に来たことがあります。そのとき、雑談で「飯田さんも、テレビに出
たりして、自然エネルギーの専門家として売りだしたらどうですか」と失礼なこと
を言ってしまいました。返事はもちろん「とっくにマスコミにはよく登場しており
ます」でした。

 まさか、これほどの全国的な有名人になるとは、当時、想像もしておりませんで
した。きっと当事務所に来たことがよい切っ掛けになったのでしょう。

 全国の選挙立候補予定者の皆様、お布施を持って、当事務所にお越しください。
当選までは保証できませんが、善戦までは実績付きですよ。


2012.07.27(金)【商業登記の即日原本還付】(金子登志雄)

 各地に講演に行った際に、「ここでは即日原本還付がなされていますか」と確認
することにしています。

 原本還付とは、登記の添付書面である合併契約書とか株主総会議事録の原本を提
出する代わりに、「原本に相違ない」と記載し押印した原本の写しを提出すること
ですが、原本と写しが同じものかを登記所にチェックしてもらうため、いったんは
両方とも提出し、原本だけが還付される方式です。

 都内では、申請と同時に窓口係が原本と写しを照合し、すぐに原本を回収するこ
とができるのですが、地方では、登記が完了するまで、原本も預けたままの状態に
置かれているようです。

 これは実に困ります。申請と回収のため、2度も登記所に行かねばなりませんし、
原本を他で使いたいこともあります。補正の電話があり、「議事録にこう書いてあ
るが」といわれても、原本もないのですから、確認もできません。

 なぜ、こういう差が生じるかというと、扱う分量の差と多忙さでしょう。都内の
登記所では扱う分量が多いため、原本と写しの2つを登記所に保管する場所もない
し、紛失という問題も生じたら困るので、さっさと返却してしまうのだと思います。

 登記所が原本を預かるということは、審査も細かくなります。印鑑が薄いとか、
割印(契印)がないとか、つまらないことを言ってくる傾向があります。おそらく、
都内の登記所では、1件当たりの審査時間が平均10分だとすると、地方では、そ
の倍をかけていることでしょう。

 登記所の効率化のためにも、原本還付は即日にしてほしいものです。また、地元
の司法書士会と登記所との協議の場で、それを提案してほしいものです。


2012.07.26(木)【オリンピックへの関心度】(金子登志雄)

 明日からロンドン・オリンピックだというのに、少しも盛り上がりませんね。私
の周囲でも全く話題に出ません。

 やはり、オリンピックは国威発揚の場で、もう十分に世界に知れ渡っている日本
では、国威発揚の必要性がないということでしょう。

 東京オリンピックのときは高校1年生でした。マラソンの円谷、バレーボールの
大松監督と河西を代表する東洋の魔女、重量挙げの三宅、体操の小野・遠藤、柔道
の猪熊、水泳の山中………と、選手の名前を結構いえたものですが、今回はほとん
どいえません。かろうじて水泳の北島ならいえますけど。

 しかし、国民のメダルへの期待度が少なければ、選手もプレッシャーに押しつぶ
されずに済み、のびのびと活躍してくれるかもしれません。間違っても、第2の円
谷選手にはならないでほしいものですが(意味不明の方は、円谷幸吉で検索してく
ださい)、現代っ子は、最初から気にしていないかもしれませんね。女子サッカー
のなでしこは、プレッシャーが大きいかもしれませんが………。

 勝っても無残に負けても、何十年後には誰も話題にしなくなりますから、選手の
みなさんには、悔いの残らないよう力を発揮し、成果が出ずとも、ロンドンで思い
きって楽しんできてくださいといっておきましょう。


2012.07.25(水)【SPC】(金子登志雄)

 「SPCを設立したいのですが………」という相談を受けたことのある司法書士
も多いことでしょう。

 私も、たまに、SPCとLLPとLLCと、どこが違うのかなどという質問を受
けますが、「オレは日本人だ。日本語で話してくれ」といいたくなってしまいます。

 このSPC、ほんと曲者です。SPCといわれたので、資産流動化法を根拠とす
るものかと思うと、どうも話が違い、ある会社をMBO(経営者による企業買収)
するための会社など、単に、特定の役割をもっただけの会社のこともあります。
 
 NETで調べたら、最近は、前者をTMK(tokutei mokuteki kaishaの頭文字
をとった日本語です)といったり、SPCだがSは、specific であって、後者の
special ではないとして区別したりで、混乱中です。

 AKB48はアキバで、KSD49は「国民の生活が第1」の49士だそうです。
このまま行くと、年末にはAKR47というタイトルのテレビ映画ができそうです
ね(赤穂浪士47人衆)。

 どうも、われわれおじさん族は、アルファベットが弱いなと思っていたら、不動
産登記の世界にも、不動産番号と家屋番号と地番があります。もう、勝手にしてく
れですね。

 あ、しまった。わがグループもアルファベット3文字でした。本徒然のネタで始
終苦労していますから、最近はやりの数字を入れて、ESG49と改名しようかな。


2012.07.24(火)【会社の合併】(仙台・立花宏)

 私たち司法書士は会社登記の専門家ですので、会社の合併手続に関与することが
あります。その際、会社が作成した合併契約書を拝見したり、また、合併契約書案
を作成したりすることもあります。

 でも、ある合併契約書を目にしたとき、なにか特別な気持ちが湧きました。それ
は、私が以前、勤めていた会社の合併契約書でした。

 その会社に勤務していたとき、私はその会社の従業員持株会に入会していました。
十数年勤めた後にその会社を退職する際、持株会から株式を受け取り、それからず
っと、その会社の株式を持っています。

 今回、その会社が合併することになり、株主総会の招集通知が届きました。その
招集通知に、合併契約の内容が記載されていたのです。

 上場している会社ですので、合併契約の内容等は、顧問弁護士の先生や、もしか
したらどなたか合併手続に詳しい司法書士の先生にも相談しているでしょう。その
内容について、私のような駆け出しの司法書士が言うべきことはありません。

 ただ、その合併契約書を見たとき、かつての上司や同僚、後輩の顔が眼に浮かび
ました。“彼らは、この合併をどのように受け止めているのだろう。”

 合併を行う理由として、両会社の技術力・営業力・コスト競争でシナジーを発揮
し、事業分野の強化と効率化を推し進める、とありました。

 もちろん、組織の見直しも進められるでしょう。かつての上司や同僚、後輩だけ
ではありません。相手の会社に勤務している方達も、不安な気持ちでいるに違いあ
りません。

 会社の合併は、その会社の従業員や関係者等にも、いろいろな影響を与えます。

 “いままで、自分が合併登記の仕事をした際、そのようなことを意識していただ
ろうか。”“登記手続を無事終わらせるということばかりに目を向けていたのでは
ないだろうか。”

 今回、かつて自分が勤務していた会社が合併することになり、はじめて会社が合
併するということを身近に感じることができたような気がします。


2012.07.23(月)【岐阜講演と再び「席上」問題】(金子登志雄)

 21日の土曜日は岐阜県司法書士会で「募集株式、自己株式、種類株式」につい
て講演してまいりました(飯沼会長はじめ、みなさまお世話になりました)。これ
で岐阜での講演は3度目です。繰り返し呼んでいただけると、前の講演が不評では
なかったと分かり、うれしいものです。

 会場は岐阜高山でも第2会場が設置され、WEBで同時配信され、さながら大手
上場会社の株主総会のような気分でした。

 思わず上場会社の株主総会のやり方(議案の一括上程方式など)から説明し、就
任承諾書の代用となる株主総会議事録に「席上、就任承諾した」で十分かどうかの
話題につなげました(7月7日本欄の話)。

 これについては、東京港区の元支部長原田さんも5回にわたり話題にしていまし
たし、司法書士ブログで閲覧数日本1の京都の内藤さんも取り上げていました。

 
http://shihoushoshi.main.jp/blog/

 
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/04c9cea5ad053e5a5d2953ea5d073842

 いまや、司法書士業界のホットな話題になってしまいましたが、私は、東京法務
局見解と同様に、「席上」とあれば全く問題ないという意見です。「その場で就任
承諾した」でも同じです。

 厳しいのは名古屋法務局のようで、講演後の懇親会では、「先週、名古屋法務局
で『席上』だけではダメだと就任承諾書を要求された」と話してくれた方もいらっ
しゃいました。まだ、同法務局のローカルルールは変わっていないようです。

 しかし、「席上」というのは、「会議の席で」という意味であって、株主総会は
株主の会議ですから、役員が座るひな壇の席とは限らないはずです。

 したがって、株主総会後に就任となる役員候補者であっても、「席上、就任を承
諾した」とあれば、その株主総会に参加しており、会議の場で就任承諾したという
意味ですから、出席していることは明らかであり、就任の承諾を証する書面として
肯定するのが正しいというべきです。

 法務局のローカルルールに合わせて司法書士のわれわれのほうが注意すべきこと
ではなく、ローカルルールのほうを改めるべきだと思っています。 


2012.07.20(金)【ブラックジャーナリズムの採算】(金子登志雄)

 13日本欄で、権力側は小沢氏を民主党から追い出したので、今度は、次の選挙
で大活躍しそうな大阪維新の橋下氏を狙い撃ちし、女性問題が週刊誌に出るという、
ちょっと信憑性のある噂をそれとなく紹介しましたが、予想どおりでしたね。隠し
子ではありませんでしたが。

 
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120719/lcl12071908280000-n1.htm

 しかし、橋下さんはマスコミからはそう嫌われていませんし、マスコミ対策も上
手ですから、先手を打ったようです(野田首相に対して、急にヨイショしはじめた
のも、橋下さんの危機感の裏返し、又は防衛策でしょう)。

 小沢夫人のニセ手紙のときも思いましたが、なぜ、週刊誌は自誌の品位を落とし
てまで、また、名誉棄損で訴えられることを覚悟の上で、こういう野蛮な行為をす
るのでしょうか。橋下さんの家庭に波風を立たせるような内容でもないのに……。

 採算計算してみてください。この記事で10万部がいつもより売れたとします。
1冊350円で、3500万円の儲けです。経費はいつもの部数(70万部程度と
か)で賄えるでしょうから、まるまる儲けです。

 橋下氏の元愛人さんに仮に数百万円の謝礼を支払い、橋下氏から裁判で訴えられ
負けても、たかだか百万円程度の損害賠償でしょう。

 ということは、ウソであろうと何だろうと、3000万円の儲けです。私の勝手
な計算では、小沢夫人のニセ手紙では、ひょっとして1億円近い儲けだったかも。
これでは、雑誌の品位よりも儲けを優先したくなります。

 まるで昔の総会屋のようですね。週刊文春も品が落ちたものだと思いますが、そ
れを育てているのは、われわれ一般市民です。ネットで内容は分かりますから、買
わないのが一番です。

 それ以前に、政治家に対しては、正しい政治をしているかどうかを基準に判断す
べきであって、そのプライバシーを基準に評価しないことです。政治家は、カネと
オンナにクリーンであるべきだという考え方は、有力政治家を貶めるための日本独
自の考え方であって、世界標準ではありません。しいて言えば、女をみる目がなか
ったことを政治能力として問題とすべきでしょう(これは、ちょっと酷かな)。 


2012.07.19(木)【女性パワーに期待】(金子登志雄)

 民主党参議院議員の女性3人が離党し元国民新党の亀井亜紀子さんと「みどりの風」
を設立しました。

  
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120717-00001044-yom-pol

 新党「国民の生活が第1」にも、森ゆうこさんや、やわらちゃん、ただいまネット
世界で人気急上昇中の三宅雪子さんなど女性多数が含まれており、筋を通してぶれな
い点は、すぐに立場やあと先を計算をしてしまう男と違って、女性の長所でしょうか。

 検察の不祥事につき、検事総長をまで告発してしまう勇気ある団体「健全な法治国
家のために声をあげる市民の会」の会長も八木啓代(のぶよ)さんという女性です。

 これに対して、野田さんや前原さんなど松下政経塾出身者には、どこの党でもいい
自分が出世できるなら………という、きわめて男性的(?)な野心を感じます。きっ
と、政治家になろうと決意したとき、政権党だった自民党が立候補させてくれなかっ
たので、仕方なくベンチャー政党だった民主党から立候補したのでしょう。自民党野
田派といわれても、違和感を感じません。

 こういう男性の筋の通らない悪しき野心に辟易したのか、いまや国民のうち支持政
党なしが70%近くです。政治に対する失望の現れであり、危険な数字であり、国民
が独裁者の登場を願ってしまいかねない状況です(橋下人気にもこの傾向があります)。

 こんなときに、筋を通す女性達が多数前面に出てきたことは、非常によいことだと
思っています。このパワーに押されて、優柔不断な男どもも動き出し、よい方向に進
んでくれることを願っていますが、どっちつかずの鳩山さん達はいつ行動するのでし
ょうか。


2012.07.18(水)【取締役の一致】(金子登志雄)

 昨日もうだるような暑さでした。群馬の館林市では39度だったとか。日中に卵
を外に出しておくと、ゆで卵ができるかもしれませんね。

 こんな暑さにもかかわらず、代々木公園で行われた16日の反原発10万人集会
には、大飯原発再稼働に危機感を持つ一般市民が17万人も集まりました。

 まさに、Keeping silence after Fukushima is barbarian(福島の事故後も沈黙
しているのは野蛮人だ)と立ち上がった人々でしょう。

 さて、話変わって、商業登記法46条1項に「登記すべき事項につき株主全員若
しくは種類株主全員の同意又は【ある取締役若しくは清算人の一致】を要するとき
は、申請書にその同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならな
い」とありますが、この「取締役の一致」とは何でしょうか。

 意味不明ですよね。調べましたら、会社法と同時に改正されて、整備法で、そう
いう用語が挿入されました。

 前の文章が株主【全員の同意】ですから、ここは取締役【全員の一致】と読むの
が素直ですが、会社法のどこにも、それを要求する規定がありません。

 「一致」で商業登記法を検索しましたら、「発起人全員の同意又はある発起人の
一致」(47条)、「取締役の過半数の一致」(80条など)とありましたから、
これは会社法348条2項の「取締役が2人以上ある場合には、………取締役の過
半数をもって決定する」の意味のようです。

 要するに、非取締役会設置会社の「取締役の決定」の意味のようですが、通常、
一致とは全員の一致を意味し、過半数の一致を意味しませんので、紛らわしい用語
を挿入したものです。きっと、「【ある】取締役の一致」としたことで、「一部の
取締役の一致」を表現したのでしょうけど………。


2012.07.17(火)【株券一部提出公告】(金子登志雄)

 3連休は暑かったですねぇ。群馬県の館林(たてばやし)市では、37.6度に
もなったとか。また、北九州のほうでは集中豪雨で大変でしたね。テレビをみなが
ら、呆然としておりました。心から、お見舞い申し上げます。

 さて、出不精の私は、故郷の群馬県に帰省しましたが(東の館林とは正反対の西
のほうです)、いつもながら、一歩も外に出ず、パソコンの前で頼まれ原稿の執筆
三昧でした。

 ちょうど株券提出公告の会社法219条の部分に関係する原稿でしたが、そこに
は、1.株式の譲渡制限設定、2.株式併合、3.全部取得条項付種類株式の取得、
4.取得条項付株式の取得、5.組織変更、6.合併、7.株式交換、8.株式移
転の8つの場合に株券提出公告が必要である旨が規定されています。

 この中で全部の株券を提出せよとなっていない規定がありますが、どれだかお分
かりですか。

 株式併合ではありません。旧商法時代は10株を1株に併合するような場合に、
10で割り切れる10株券や100株券は提出不要とすることができましたが、会
社法はこのような便宜を認めていません。

 答えは、取得条項付株式の取得ですが、一部だけの株券を提出せよと公告する場
合に、どのように、その一部を特定するのでしょうか。そのような事案が生じたら
困るでしょうね。

 なお、拙著にたまに書きますが、条文からしても株券【提出】公告が正しいのに、
法務省の通達では伝統的に株券【提供】公告と表現しています。表現にこだわる法
律家らしくないので、早期に改めるべきだと思っています。


2012.07.13(金)【合併と社外監査役】(金子登志雄)

 「小沢新党 孤立深める船出」、小沢新党の船出に対する毎日新聞の見出しです。

 新党が誕生した時くらい、お祝いの1つもいうのが日本的美風だと思うのですが、
社の方針なんでしょうが、大手新聞は相変わらず小沢憎しですね。

 小沢の次は大阪の橋下市長を貶めるために、隠し子騒動が週刊誌に登場するとい
う噂もありますが、おかしな社会になったものです。

 さて、A社がB社を吸収合併した場合に、B社の取締役をA社の社外監査役に選
任することができるかという質問を受けました。

 「妥当性は別として会社法の定義からすれば問題ないと考えます」と答えました。
会社法の定義では、社外監査役は「株式会社の監査役であって、過去に当該株式会
社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人と
なったことがないものをいう」です。

 返答後にお客様から「千問の道標」402頁に「問題ない」とあるようなので、
該当頁を送ってくれといわれましたので、そうしましたが、あっさりと社外監査役
の要件に該当しないと書いてありました。

 しかし、そんな単純なものではなく、「合併=人格合一説」からいえば、「合併
会社=AB合同会社」ですから、定義規定から、はねられるはずです。

 「合併=現物出資説(法人は合体しない)」によってはじめて、合併会社はA社
であって、解散したB社とは違うという解釈となり、「千問の道標」402頁のよ
うな回答になるはずです。

 いずれにしろ、古い商法時代の通説であった「人格合一説」は、完全に滅びたよ
うです。


2012.07.12(木)【政界再編の幕開けか】(金子登志雄)

 とうとう、小沢新党「国民の生活が第1」が船出ですね。これで民主党は「国民
の生活が第1」と宣伝できなくなってしまいました。党名を変えるなら、「日本シ
ロアリ党」か「何でも一任党」がよいとからかわれているようですから、第1ラウ
ンドは新党の勝利ということでしょうか。

 小沢氏の改革に恐怖を抱いているマスコミ等では、新党を意識的に過小評価して
いるようですが(追い詰められて結党とか)、反消費税や反原発の多くの国民は、
民・自・公の翼賛政治に行き場のない怒りを感じているため、選択肢が増えたこと
は日本の民主主義の発展のためにも素直に評価すべきことではないでしょうか。

 私の勝手な想像ですが、政界大再編の幕が切って落とされた日として、7・11
は歴史に残る日になると思っています。おそらく今後は、北海道の大地、名古屋の
減税、大阪の維新だけでなく、あちこちに地方政党が出現し、合従連衡の戦国時代
がしばらく続くことでしょう。混乱は困りますが、新しい時代が生まれる過渡期で
すから、これは避けられないと思っています。

 私の個人的感触ではマスコミの評価と正反対で、小沢新党は相当伸びると予測し
ています。理由は勝手連的な熱心な支持者が全国に多く、しかも政治意識が高いた
め、マスコミが流す風に影響されずに、必ず選挙に行く人達が多いからです。

 これもマスコミや霞が関が小沢氏を非民主的に貶めようとし過ぎたことや、国民
を恫喝し過ぎたために(日本がギリシャのようになるとか、停電してもいいのかな
ど)、逆に政治無関心層を覚醒させてしまい、新党支持者を増やしてしまったとい
う皮肉な結果が出るであろうと思っています。


2012.07.11(水)【言葉遊び】(金子登志雄)

 松下政経塾出身の「ノーだ」総理はどうしちゃたんでしょうか。突然、尖閣列島
の国有化などを言い出し、中国・台湾に喧嘩を吹っかけたり、何かに取り憑かれて
しまったかのようです。垂直に離着陸できる米国の軍用機オスプレイの配備につい
ても強引で、このまま行けば「本土の沖縄化」が進みそうです。

 ところで、オスプレイって、鷹の種類の名前(ミサゴ)のようですが、別名、未
亡人製造機というようです。当初は、何の意味かさっぱりわかりませんでしたが、
しょっちゅう事故を起こし、乗組員を死亡させ、未亡人を大量に作っている欠陥機
という意味のようです。いかにも、米国式のブラック・ユーモアですね。日本人の
未亡人を作ってほしくないものです。

 言葉遊びといえば、「ドラえもん歌弁解」というのを昨日知りました。不祥事を
起こした場合に今後の対策を述べるときに「基本的に」「原則として」などという
文章を挿入し、いつでも逃げられるようにすることをいうようです。つまり、やる
気もなく、「こんなこといいな、できたらいいな♪」とほざくことらしいです。

 取調べで「ぶっ殺すぞ、この野郎!」と暴言を吐いたことを裁判で正直に話し、
検事をやめた市川寛弁護士(3月26日付の本徒然参照)のツイッター内にあった
言葉ですが、彼個人の言葉か、検察全体に通じる用語かは不明です。

 市川ツイッターをまとめたものです。
  
http://sun.ap.teacup.com/souun/8001.html

 ほんと、ドラえもんに助けてほしい時代になりました。「こんなこといいな、で
きたらいいな♪」。


2012.07.10(火)【種類株式の登記事項】(金子登志雄)

 種類株式の登記をいたしました。定款には、次のようにありました。

--------------------------------------------------------------------------
1.〜5.(略)
6.議決権
  A種優先株主は、株主総会においてA種優先株式1株につき1個の議決権を有
 する。
7.役員選任権等
 (1)A種優先株主を構成員とする種類株主総会において、取締役2名を選任す
   ることができる(残りの員数は、普通株主と共同して選任する)。
 (2)A種優先株主を構成員とする種類株主総会において、本定款に定めるオブ
   ザーバー2名を選任することができる。
8.拒否権
     〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(中略)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 (j)取締役の選任(ただし上記7.に基づく取締役の選任を除く)及び解任
--------------------------------------------------------------------------

 6など登記する意味もありません。「1株1議決権」は原則どおりだからです。
しかし、登記しないと、6が欠番になってしまいますし、7と8を繰り上げると、
下の方の「上記7.に基づく」も「上記6.に基づく」に変えねばなりません。こ
れは行き過ぎだと思い、任意的記載として認めてくださるようにお願いして登記し
てもらいました。

 7の(2)は、会社法が定める種類株式の内容ではないので、これは私のほうで
登記申請事項から外しました。会社法が定めるのは、取締役又は監査役の選解任に
限定しているからです。

 8の(j)に関しては、取締役の選任は全て7の種類株主総会によるのだから無
意味ではないかというご意見もあろうかと思いますが、A種優先株式の全部が自己
株式になって7が効力を失う場合等も考えられるため、意味のある規定でしょう。

 このように種類株式や新株予約権では、どこまで登記すべきか迷う内容が少なく
ありません。だから、種類株式等は面白いのだともいえますが………。


2012.07.09(月)【特別決議要件】(金子登志雄)

 金曜日の官邸前は、相変わらず、全国からすごい集まりだったようですね。

   
http://tanakaryusaku.jp/2012/07/0004649 

 これでも頑強に報道しない大手新聞やテレビは政府の広報誌というべきでしょう
が、新聞やテレビしかみない人と、ネットもみる人の小沢氏に対する意識調査で、
評論家の板垣氏が改めて驚いていました。お互い、前者の情報弱者にならないよう、
気をつけましょう。

 
http://blog.goo.ne.jp/itagaki-eiken/e/6d67680f91dec1640e652740896b0088

 さて、7月の第2日曜日だと思っていた司法書士試験は先週の7月1日開催でし
た。カリスマ講師の山本浩司先生から問題を送ってもらいましたが、今年の商業登
記記述式試験は、有限会社Aが有限会社Bを吸収合併する問題でした。

 存続会社である有限会社Aの株主総会議事録です。
--------------------------------------------------------------------------
第1号議案 定款一部変更の件
 (有限会社のままでは合併存続会社になれないので、株式会社へ移行するための
  定款変更決議です)。
第2号議案 役員選任の件
 (株式会社移行後の役員選任です)
第3号議案 合併契約承認の件
第4号議案 役員選任の件
 (合併と同時に役員を追加するものです)
第5号議案 定款一部変更の件
 (合併と同時に定款を変更します)
--------------------------------------------------------------------------

 株式会社の場合は定款変更等の特別決議は「過半数の議決権が出席し、出席した
議決権の3分の2以上の賛成」が必要です(会社法309条2項)。上記のような
特例有限会社にあっては「総株主の半数以上が出席し、総株主の議決権の4分の3
以上の賛成」が必要です(整備法14条3項)。

 不思議な気がしました。上記の第3号・5号議案は株式会社に移行した後のこと
を決議しているのに、移行後の定款規定による会社法309条2項の規律ではなく、
有限会社の特別決議要件が必要だとの前提で試験問題が作られているのです。

 それで間違いないのでしょうが、株式会社に移行したことを条件に決議している
のだから、移行後に決議した場合と同様に、会社法309条2項の規律に従ってよ
いという見解があってもよいと思うのですが、いかがでしょうか。

 私が受験生であったら、ここで10分以上も考えてしまったことでしょう。改め
て、こういうことにすぐ拘るから、私は実務向けで試験向きの性格ではないことを
再確認してしまいました。


2012.07.06(金)【就任承諾表現】(金子登志雄)

 金曜日ですから、商業登記の話題にいたしましょう。 

 さて、ただいま、6月の定時株主総会の後始末で、役員変更登記を受託している
司法書士も多いことと存じますが、就任承諾文言の取扱いで苦労していませんか。

 株主総会議事録に「第〇号議案/取締役及び監査役選任の件」とあり、ABCを
選任したところ、就任承諾がなされたので、「なお、被選任者はその就任を承諾し
た」との記載があれば、就任承諾書を登記の添付書面に付ける必要はなく、「就任
承諾書は議事録の記載を援用する」という取扱いが「原則として」可能です。
 
 「原則として」という意味は、被選任者がこの株主総会に出席し、株主総会の開
催中に総会議場で「就任を承諾した」と発言した場合に限られ、その旨が議事録上、
明白でないと、この対応ができないからです。ここは会社法施行以降、厳格に取り
扱われるようになりました。

 それでは、次の表現では、いかがでしょうか。

1.「被選任者は【直ちに】その就任を承諾した」………議事録文章の脈絡次第で
 総会議場にいると判断されたり、いないと判断されたりで、この表現にはリスク
 がありそうです。

2.「被選任者は【席上】その就任を承諾した」………「席上」とは「会議の場に
 おいて」という意味ですから、これはOKです。最近、一部の法務局で、勘違い
 から否定的運用がなされたようですが、平成19年に東京法務局が東京司法書士
 会からの問い合わせに対して、この表現でOKと明白に回答しています。当然で
 しょう。「席上」というのは、そういう意味ですから。

 全国のどの法務局でも通じさせるためには、「なお、【本総会に出席中の】被選
任者はいずれも直ちにその就任を承諾した」と書くか、出席役員欄のところに、出
席役員候補の氏名も列挙しておくことでしょうか。

 うるさ型の法務局に出すときは「なお、【誰がみても本総会に出席していること
が明らかな被選任者は、〇〇法務局の登記官にも届くような大声で】、その就任を
承諾した」とでも記載したら、いかがでしょうか。

 そういうお遊びが嫌いな方は、「なお、被選任者は会場で立ち上がり、議長席及
び会場に向かって、深々とお辞儀をした後に、『未熟ではございますが、就任を承
諾いたしますので、今後ともよろしくお願いします』と丁重に就任承諾の挨拶をし
た」と、ありのまま(?)正確に書いたらいかがでしょうか。


2012.07.05(木)【離党組の偉大な功績】(金子登志雄)

 民主党を離党した中村哲治参議院議員の【7月3日】のブログです。

 
http://tezj.jp/blog/

---------------------------------------------------------------------------
 昨晩、懇意にしていた労働組合の幹部から「申し訳ないが、あなたには失望しま
した。あなたに期待して動き回ったわが組合員の無償の汗を思い浮かべたことがあ
りますか? 残念です。」というメールをいただきました。
言葉もなく、「申し訳ございません。中村哲治」と一言返すのがやっとでした。
---------------------------------------------------------------------------
 
 1つの決断は、ある人には大歓迎され、別のある人には罵倒される………、政治
家や経営者は日々この繰り返しですから、私は政治家や経営者の苦労に目が行って
しまい、安全地帯の外野席から彼らをからかってばかりいる無責任なマスコミや評
論家という人種が大嫌いなわけです。

 こういう度重なる締め付けを跳ね返して信念を貫いた50名の政治家は、やはり
偉大だと素直に評価したいと思っています。

 とくに、少数の反対派を村八分にする3党合意の翼賛政治という政治状況の下で、
消費税反対派は無力感で政治不信になるところに、新しい対立軸や選択肢を作り、
政治への期待感を持たせた功績は特筆すべきものがあります。政治に失望し、もう
2度と選挙には行かないと決めていた方も、これで戻ってくることでしょう。

 しかし、どこの労働組合か知りませんが、労組も消費税賛成、創価学会員などの
庶民を票田にし弱い者の味方のはずの公明党も消費税賛成………では、消費税反対
の一般庶民はやりきれないですね。


2012.07.04(水)【未支給年金】(島根・根来川弘充)

 先日、成年被後見人が亡くなられました。

 後見人の事務は、被後見人が亡くなれば、原則無くなるのですが、現実は、死亡
届等、様々な事務を行う必要があります。

 今回は、国民年金に関して社会保険庁に死亡の届け出をしたときのお話です。
社会保険庁の受付窓口で、

 「未支給の年金がありますが、生計を同一にされる親族の方はおられますか。」
と聞かれました。

 私は、この質問に疑問をもちましたので、次の質問しました。
 「同居でなくとも、相続人は受け取る権利はあるのではないでしょうか?」
すると、受付窓口の回答は、
 「いえ受け取ることができません。国民年金法に未支給年金を受け取る権利のあ
る人が定めてあります。」とのことでした。

 目の前で法律を見せていただきましたが、国民年金法第19条に次のとおり、規
定されていました。

(未支給年金)
 第19条 年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給す
べき年金給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、
子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であつて、その者の死亡の当時その者と生計を
同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することがで
きる。

 例え相続人であっても、「生計を同じく」していないと、未支給年金は、受け取
れないようです。「親の面倒をきちんと見ましょう」という目的なのか、しかし、
相続権を制限するこの規定には疑問が残ります。

 今回受付していただいた被後見人には、「同居していない」相続人がおられます。
残念ながら、相続人は、未支給年金は受け取れないようです。


2012.07.03(火)【愚直】(金子登志雄)

 昨日は新事業年度が開始した当社のキックオフミーティングでした。役員変更登
記の書き入れ時でしたが、役員の職責を全うするため、仕事用のノートパソコンを
片手に出席してまいりました。

 そこで、社員全員で5つの行動指針を唱和したのですが、その中の1つに「正し
いと思うことを愚直なまでに誠実にやり続けます」というのがあります。

 ふと、民主党を飛び出した、あるいは追い出された50人の「愚直者」のことに
思いが行ってしまいました。与党にいれば、たとえ、非主流派でも、良い目に合う
ことが多いのに(陳情が多いし、官僚からの応対も丁寧になり、選挙に有利です)、
損得抜きに「愚直」や「信念」を選んでしまったようです。党員資格停止処分を受
けることがはっきりしたので、飛びださざるを得なかったのでしょうか。

 離党届を撤回した2人は2人とも弁護士でした。選挙区事情などもあったのでし
ょうが、頭の良い人は、良い意味でも悪い意味でも、「計算」が先走って「愚直」
になれないところがあるようです。ふと、キューバの前首相カストロ(弁護士でも
ありました)の「戦わないための口実は、いかなる時期にも、いかなる環境のもと
でも、常にありあまるほどある」という名言を思い出してしまいました。

 しかし、これで民主党でも亀井さんを追放した国民新党と同様に、クーデターが
成功してしまいましたね。創業社長の鳩山氏もそのうち党員資格停止の座敷牢入り
でしょうが、「力こそ正義だ」の嫌な時代になったものです。

 そんなことを思っていましたら、以前、本欄で紹介したラテン音楽の女性歌手・
八木啓代(のぶよ)さんが代表を務める「健全な法治国家のために声をあげる市民
の会」が、自浄作用のない検察に見切りをつけて、検事総長らを犯人隠避罪で告発
したというニュースが飛び込んでまいりました。ここにも愚直なまでに信念を貫く
人達がいました。

  
http://nobuyoyagi.blog16.fc2.com/blog-entry-653.html


2012.07.02(月)【反原発集会に20万人?】(金子登志雄)

 土日は、これからある司法書士会での会社法講演レジュメを作って過ごしました。
2日では完成することはできませんでしたが、いつもオリジナルで作成し、どこか
で使ったレジュメをそのまま使うということはしていません。

 土日、休日も一切無関係に、ここ10年以上、ほぼ毎日、パソコンの前に座って
おり、疲れると、ネット検索して気分転換をしています。今回のネット検索では、
反原発集会の次に興味を持ちました。

http://twitter.com/akahataseiji/status/218663988702089216/photo/1/large?tw_p=twt

http://tanakaryusaku.jp/2012/06/0004591

 主催者発表では20万人の参加ということですが、話半分でもすごいですね。前
回の22日は4万5000人の参加だったようですから、それをネットで知った人
が多数参加したようです。

 原発賛成、消費税賛成の大手マスコミは、こういうのを会社の上層部の方針で意
識的に報道にしませんから、こういうことが行われていることさえ知らない方が多
いようです。さすがに今回の人数は無視できず、一部のメディアは取り上げたよう
ですけど。

 たった11人の消費税賛成派議員が反対派議員の処分を求めて官邸に乗り込むと、
「そうだ、そうだ、造反者(小沢ら)を許すな」と遠回しに記事にするくせに(反
対派のことを「造反者」と表現すること自体が印象操作の1つです)、名もなき庶
民が10万人以上集まっても、1行も記事にしない日本のマスコミは、もう報道機
関とはいえないでしょう(外国メディアは早くから取り上げていました)。

 世論誘導機関ですね。それだけ既得権側のマスコミも世の中の新しい潮流に必死
に抵抗しているのでしょうか。インターネットの開発は産業革命ですし、旧報道機
関VS草の根ネットだけでなく、原発VS環境、消費税(国家主義)VS地域主権
等々で、日本を2分する戦いがはじまったように感じます。


2012.06.29(金)【倫理の崩壊】(金子登志雄)

 民主党の57人の消費税反対派に対して、賛成派議員の一部が「ぼくらも反対し
たかったのに、しがらみで反対できなかった。小沢君や鳩山君達だけ、ええかっこ
して、ずるいよ。校長先生、小沢君や鳩山君達を厳しく処分してよ」と校長室(官
邸)に乗り込んだよい子達(?)がいたようです(あえて名前は書きません)。自
分の信念を貫かずして、他人の処分を求めるとは、これでも国民の代表でしょうか。
まさに、唖然呆然です。

  
https://twitter.com/aritayoshifu/status/217977998064889856

 一方、どさくさにまぎれて、陸山会事件で捜査報告書を変造した田代主任検事や
それを指示したといわれる佐久間元特捜部長に対する処分がでました。

 どの程度の処分だったと思いますか。参考までに、もっと軽度の大阪地検の不祥
事では、主任検事も上司の特捜部長も懲戒免職で、懲役1年6月の起訴でした。主
任検事だった前田氏は、既に上訴もせず服役中です。今後、弁護士にもなれません。

 何と、東京地検の不祥事は、大阪地検よりも悪質で、民主党政権の崩壊を推進す
るほど歴史や社会に甚大な影響を与えただけでなく、検察上層部に対してもウソの
報告をしたのに、主任検事には6か月の減給処分、特捜部長には戒告のみで、不起
訴でした。へたに処分すると検察の組織的犯罪が明るみにでてしまうという配慮で
しょうが、組織防衛のためとはいえ、まさに「田代君や佐久間君達ばかり、エコひ
いきして、ずるいよ」と大阪の検事さん達はいいたいことでしょう。
 
 全く、法の平等も、法治国家も、倫理もあったものではないですね。この倫理な
き組織防衛の傾向は、社会全体が乱れ始めていますから、まだまだ数年以上、続く
ことでしょう。これも日本が生まれ変わるための歴史の1コマなのか、日本没落の
序章なのか………。

(参考までに悪い子の鳩山君の言い分です。土日にどうぞ)
 
http://www.hatoyama.gr.jp/activity/detail.php?id=92


2012.06.28(木)【57という数字】(金子登志雄)

 ネットでは、田中真紀子も、海江田万里も予想に反して消費税に賛成したのに、
あの薬害問題の長崎の福田衣里子は信念を貫いた、偉い、という福田株が急騰中の
ようです。

 それにしても、民主党の中から反対者が57人しかいないとは、少な過ぎます。
選挙時に話していたことと違う行動をとって恥じないのでしょうか。

 そんな感じを持つのが普通だと思うのですが、「これでいいのだ。どうせ反対し
ても3党合意で可決するのは間違いないので、賛成しようが反対しようが大きな意
味はない。もし、反対派が100名を超えるような事態になったら、党が完全に分
裂して、それこそ野党の自民党の思う壺だ。かといって、30人程度なら、反対派
は出て行け、除名だとなるから、『分裂せず、除名できず』の数字として57は実
に見事な数字だ。だから、小沢氏も、これ以上の反対派を集めなかったのだろう」
との意見や見方もあります。

 もし、そうであれば、反対した人と海江田万里氏らが顔を合わせても、お互いに
気まずい雰囲気にもならず、「やあやあ。先日はご苦労さん」と会話できるのでし
ょうか。

 われわれ庶民の世界では、「あいつは、そういう人間か」と思うと、2度と付き
合わなくなりますが、数が重要な政治の世界では、排除の論理では、永久に少数派
ですから、きっと「昨日の敵は今日の友」で、そんなことにこだわっていられない
のでしょう。ある意味では、大人の世界といえますが、純な人間には向いてない世
界ですね。


2012.06.27(水)【363:96(79:21)】(金子登志雄)

 皆さんは、消費税アップに賛成ですか。

 国民の間では7:3あるいは6:4で反対が多いようです。それはそうですよね。
誰も負担が多くなることを歓迎しません。

 プロの経済学者にアンケートをとれば、おそらく、9.9:0.1くらいで反対
が多いでしょう。あの竹中平蔵元大臣ですら反対しています。この不況のときに消
費税を上げるなどということは、経済の自殺行為だからです。経済の常識です。

 消費税を上げて最も喜ぶのは財務省でしょう。自分達の給与を民間並みに下げる
必要がなくなるだけでなく、予算で配分するカネが増えて財務省の権限が強化され
るからです。ますます官僚主権が強まり政治家の権限は低下します。

 なのに、衆議院議員の間では、約8:2で賛成が多いのは、愚かを超えて異常と
いえないでしょうか。国民の意思も、経済の常識も通じない世界がそこにあるので
す。世も末に近い異常事態だと思いますが、皆様の感覚はいかがでしょうか。

 民間では、経営が思わしくないので、やむをえず商品を値上げしようとするとき、
取締役会で値上げやむなし派の賛成と断固反対派の比率が8:2になったとすると、
「それほど反対するのなら、商品を値上げせずに済むという確たる信念があるのだ
な。試しに、お前、責任者になってやってみろ」と、2割側にチャンスが回ってく
るものですが、国会では、それさえもなく、消費税賛成派の大手マスコミを含めて、
「反対派を切れ、処分せよ」の大合唱です。大手マスコミは異常です。

 なぜ、野田さんが消費税アップに熱心になったかというと、財務省に洗脳された
からという意見が多いようですが、私は、自民党の政策に抱きつき、争点をなくし、
政権を長期に維持するためだと読んでいます。これで、自民党は、内閣不信案を出
しにくくなりましたし、選挙で民主党を非難することができなくなりました。野田
さんが小沢氏など反対派を追い出せば、野田さん自身の長期政権が無理になります。

 この消費税アップで一番喜んだのは財務省で、一番損をしたのが自民党だと私は
みていますが、さて、野田さんは反対派を追い出して墓穴を掘る(自民党が最も喜
ぶ)ことになるでしょうか。


2012.06.26(火)【板ばさみ】(金子登志雄)

 いよいよ今日は消費税値上げが衆議院を通過する日ですね。天下分け目の関ヶ原
になるかと思っておりましたら、数の上では野田氏の圧勝のようです。無理と思わ
れた法案につき、よくここまでこぎ着けたもので、野田首相のごり押し、あるいは
剛腕ぶりは剛腕小沢氏のはるか上を行くものでした。

 党内議論も十分に行わず、「一任されました」と強行採決を繰り返し、党議決定
に逆らうと処分するぞと脅かすのですから、無茶苦茶です。やはり財務省を中心と
する官僚と大手マスコミの強力な支援があったから、無茶を押し通せたのでしょう。

 「民主党は国民生活第1の原点に戻り、マニフェストを守れ」という政権交代の
立役者である小沢氏側は、消費税賛成側から、小沢夫人による「離婚しました」、
「小沢には隠し子が」などという週刊文春の紙爆弾(怪文書?)を全国会議員や小
沢氏の末端の支持者にまでばらまかれるなど、仁義なき攻撃にさらされました。

 (ご参考:紙爆弾の真偽に関する筆跡比較)
 
http://twitter.com/lllpuplll/status/216583394178506752/photo/1

 人を貶(おとし)めるには、カネとオンナが定番ですが、カネ問題で小沢叩きが
無理と分かったら、今度は苦し紛れのオンナ問題を消費税政局のこの時期に持ち出
してくるとは、あまりに卑劣で、手が古すぎますが、「勝てば官軍、これが政治だ」
ということでしょうか。すごい世界です。

 困ったのは中間派です。与党や権力のうまみを味わってしまったところに、官邸
側からのアメとムチにさらされ、小沢の味方と思われるとマスコミから叩かれそう
だという計算もあり、信念との板ばさみに苦しみ、最後は楽な道(寄らば大樹)に
走ってしまったようです。

 わが後輩のミスター年金・長妻君も、いまや地元の支持者から裏切り者扱いされ
ているようですから、野田さんの剛腕ぶりも罪深いものです。
 
 その他の中間派といわれる方々の多くも、賛成派に妥協したようです。「国民生
活第1」という民主党の看板は菅政権以降「与党議員生活第1」に変わったのでし
ょう。いまはよくても、国民との約束(4年間消費税はあげない。シロアリを退治
するのが先だ)を反故したことで、次の選挙は大丈夫なのでしょうか。


2012.06.25(月)【重畳的債務引受】(金子登志雄)

 土日は、4月からずっと不動産登記の解説文を作っています。といっても、すで
に詳細な解説文はあり、その要約版を作っているだけです。会社法法令集のミニ解
説作りのようなものです。きっと、難しいことをコンパクトにまとめ、分かりやす
く説明する技術を買われたのでしょう。

 さて、抵当権者をAとし、債務者をBとする抵当権につき、Cが重畳的(ちょう
じょうてき)債務引受をした場合の抵当権変更登記ですが、解説には「BCは連帯
債務者になる」とありながら、登記申請書では「変更後の事項 連帯債務者C」と
しか記載してありませんでした。

 これ、きっと初心者の人は迷うのではないでしょうか。BCが連帯債務者になる
のなら、「変更後の事項」は「連帯債務者BC」とすべきではないかと思うはずだ
からです。

 そこで思いましたが、この場合は本来の連帯債務とは違って、Bの債務に対して
Cが一方的に連帯する関係(片面的というか、追加的というか)であって、Bの立
場は従前どおりではないでしょうか。そうでなければ、Bも普通の債務者から連帯
債務者になったことを登記簿にも表すため、、「変更後の事項 連帯債務者BC」
とすべきだからです。

 一般社会でも、重畳的債務引受(併存的債務引受)は、連帯保証をしたのと同視
されており、相互に同じ立場の連帯債務者になったとは考えていません。

 例えば、甲社が乙社に対して吸収分割し、移転する債務に併存的債務引受をする
ということは、移転債務に連帯保証するのと同じで、甲の会計帳簿からは債務が消
え、帳簿の欄外に注記するのではないでしょうか。もし、真正の連帯債務であった
ら、このような会計処理は無理でしょう。

 不動産登記は商業登記以上に不明朗な部分が多いように感じています。


2012.06.22(金)【定款のこぼれ話】(金子登志雄)

 もう1回、定款の話にします。

 100%といってもよいほど、会社の定款の第1条が商号で、第2条は事業目的
か、エーザイのように経営理念です。

 では、会社法の規定では、何が1番でしょうか。

 次のようになっています(ついでに、民法も参考に取り上げます)。
--------------------------------------------------------------------------
 会社法27条(株式会社)   | 民法37条(社団法人)
   1 目的         |  1.目的
   2 商号         |  2.名称
   3 本店の所在地     |  3.本店の所在地
--------------------------------------------------------------------------

 このように商号よりも先に目的が来ます。

 目的とは、営もうとする事業のことです。人は、まず「〇〇事業をしたいなぁ。
〇〇屋さんで生きて行きたいなぁ、儲かりそうだし、私に合っているかもしれない。
よし会社を興そう」と先に目的があって、その後に作る会社の名前を決め、事業所
探しをしますから、商号よりも目的が先行します。

 「当社は〇〇と△△事業を営みたくで創業し、もって××と名乗ることにした」
という流れで書けば、目的が筆頭に来ても違和感がないでしょう。エーザイが経営
理念を定めたのも、こういう発想があると思います。

 ところで、皆様の中でエーザイの定款の「本会社は………」という表現に違和感
を感じた方はいらっしゃいませんか。ほとんどが「当会社は………」とするのに、
エーザイは「本会社」です。

 実は、昔は「本会社」が主流であり、東京電力も日本電気も新日鉄も「本会社」
です。老舗の証(あかし)でもあります。
 いつから「当会社」が主流になったのかは知りませんが、定款をみなれていると、
こういう微妙な違いに気づくものですが、いかがでしたか。


2012.06.21(木)【変わった定款規定】(金子登志雄)

 定款の話題になったついでに、変わった定款規定を定めている会社があります。

--------------------------------------------------------------------------
  第8章 定款の変更
第37条(定款の変更)
 本定款の変更は、本定款第14条第2項に従い、株主総会の決議をもって行う。
ただし、次の場合は、取締役会の決議で、変更又は字句及び表現を修正することが
できる。
 1.法令の規定で認めているとき
 2.法令の改廃により定款に定めがあるとみなされたものを本定款に記載又は記
  録するとき
 3.法令の改廃により定款の定めが無効とされたものを本定款から削除するとき
 4.法令の改廃により本定款の用語又は表現を改めるとき
 5.その他、条数の組み換え、句読点の位置の変更、縦書き化、横書き化など、
  定款の実質的内容の変更を伴わない形式的変更を行うとき
--------------------------------------------------------------------------

 上場会社の定款変更議案で、「但し」を「ただし」に直すことや、句読点の位置
まで、株主総会の特別決議の承認事項にしているのをみると、上記のように定めて
おけばよいのにと思うことが多々ありませんか。

 こんなことを定める会社は法務に余程詳しいのでしょうね。アクモスという会社
ですが、監査役が司法書士らしいですよ。


2012.06.20(水)【定款に経営理念その2】(金子登志雄)

 立花さん、投稿ありがとうございました。

 定款に経営理念を掲げる会社で有名なのは、エーザイです。全国の司法書士の参考に
なると思いますので、目的を含めて、ご紹介します。

------------------------------------------------------------------------------
(商号)
第1条 本会社は、エーザイ株式会社と称し、英文では Eisai Co., Ltd. と表示する。
(企業理念)
第2条 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット
   向上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもとヒューマン・ヘルス
   ケア (hhc) 企業をめざす。
  A 本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもた
   らされ、この使命と結果の順序を重要と考える。
  B 本会社は、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の活動の根幹に据え、
   社会的責任の遂行に努める。
  C 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主の皆様お
   よび社員である。本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの価値増大をは
   かるとともに良好な関係の発展・維持に努める。
   1.未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安
    全性と有効性を含む有用性情報の伝達
   2.経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元
   3.安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会の充実
(目的)
第3条 本会社は、次の事業を営むことを目的とする。
   1.医薬品の研究開発、製造、販売および輸出入
   2.その他適法な一切の事業
------------------------------------------------------------------------------

 このように、第2条に企業理念を定めるのが一般ですが、私は、自社グループの会社
に、日本国憲法のように前文に定めて格調高いものを作ったことがあります。しかし、
業績が悪く、すぐに閉鎖しました。

 企業理念を定めるなら、立花さんの顧客のように、十分に会社が落ち着いてからのほ
うがよさそうですね。衣食足らないと格調高さが恥になりますから。

 ちなみに、今回初めて知りましたが、エーザイの語源は「衛材」だそうです。


2012.06.19(火)【経営理念】(仙台・立花宏)

 少し前、あるお客様から、会社の定款を見直したい、とのご依頼をいただきまし
た。会社の設立後、数年が経過し、会社の規模も少しずつ大きくなってきたので、
組織の見直し等も含め、会社の状況にあわせて、定款も見直したいということでし
た。

 会社の定款に定める内容の打ち合わせをしていたところ、そのお客様から、経営
理念を定款に定めたい、というお話をいただきました。

 何年か前に受けた研修で、定款に経営理念を定めることを勧めていたので、一度、
機会があったら、お客様に提案してみたいと思っていたところでした。

 打ち合わせが終わり、後日、定款案を作成して、説明させていただくことになり
ました。

 定款に経営理念を定めたいなんて、洒落たことをおっしゃる方だなあ、と思った
のですが、話を聞くと、どうやら東京都の猪瀬副知事が、テレビ番組で発言した内
容が影響していたようです。

 その発言は、東京都が、東京電力の株主として、定款に経営理念を定めることを、
定時株主総会の目的とするように、東京電力に提案するというものでした。

 興味が湧いて、東京電力のホームページを見てみると、今年の定時株主総会の招
集通知が掲載されていました。そして、第6号議案に、そのお客様がテレビで見た、
東京都が提案したと思われる内容がありました。

 そして、その議案の後ろには、東京電力の取締役会が、その議案に反対する旨が
記載されていました。定款には、主として会社の組織、事業目的、株式等の基本的
事項について、具体的かつ明確に規定するものであり、経営理念のように多義的に
解釈されうる事項を定款に規定することはなじまない、ということが理由のようで
す。

 そういう考え方もあるのか、と思ったのと同時に、お客様に提示する定款案はど
うしようか、と悩みました。

 定款に経営理念を定めたいというお話をいただき、ぜひ、やりましょうと、返事
をしてしまっていたからです。

 東京電力の取締役会がおっしゃるように、定款は、主として会社の組織、事業目
的、株式等の基本的事項について、具体的かつ明確に規定するものかもしれません。
でも、まず、どのような企業でありたいか、どのような志のもとに会社を経営して
いくのか、という理念があり、それを実現するために組織、事業目的、株式等の基
本的事項を定めるのではないだろうか。だから、経営理念を定款に定めることは、
けっして、おかしなことではない、そう自分に言い聞かせました。

 数日後、お客様に提示した定款案には、お客様の思いを込めた経営理念を記載し
ました。お客様も大変、満足してくださり、定款案の内容は確定し、無事、株主総
会で承認されました。

 さて、東京電力の株主総会では、どのような結論がでるのでしょうか。
 結果に注目したいと思います。


2012.06.18(月)【民法でいう合併】(金子登志雄)

 会社法2条の吸収分割の定義によると、「株式会社………がその事業に関して有
する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させること」ですから、吸収
分割【承継】会社が他社から権利義務を受けることは吸収分割とはいいません。す
なわち、吸収分割とは、分割する会社の行為です。
 
 ところが、吸収合併の定義では「会社が他の会社とする合併であって、合併によ
り消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるもの」とあり、
合併存続会社の行為も含むのかどうか、いまいちはっきりしません。

 そんなことをずっと思っていたとき、民法第398条の9(根抵当権者又は債務
者の合併)を読み、新発見しました。

--------------------------------------------------------------------------
@ 元本の確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は、合併の
 時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が
 合併後に取得する債権を担保する。
A 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根抵当権は、合併の
 時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が
 合併後に負担する債務を担保する。
--------------------------------------------------------------------------

 根抵当権者のA社(存続会社)がB社(消滅会社)を吸収合併するとき、上記第
1項が適用されるように読めてしまいませんか。

 しかし、この民法規定は、合併による【根抵当権の移転】の規定ですから、上記
はB社が根抵当権者であるときの規定です。

 吸収合併とは合併消滅会社の行為であって存続会社の行為ではないと、私は旧商
法時代の大昔から学会の通説に逆らって主張し続けていましたが、何と、こんなと
ころにも強力な根拠が条文の形で規定されていたとは………。


2012.06.15(金)【株主提案権】(金子登志雄)

 株主総会のピークが近づき、すでに上場会社の株主総会招集通知を手にした方も
多いのではないでしょうか。

 総会のピークは27日か28日でしょう。問題の東京電力は、株主数が90万人
で代々木の国立競技場で27日開催です。

 株主47万人の野村ホールディングスは、ホテルオークラで27日開催ですが、
そこでの株主提案の議案が18個もあり、その第12号議案がいま話題になってい
ます。
 
 
http://www.nomuraholdings.com/jp/investor/shm/2012/data/report108.pdf

---------------------------------------------------------------------------
 第12号議案 定款一部変更の件(日常の基本動作の見直しについて)
 
 提案の内容:貴社のオフィス内の便器はすべて和式とし、足腰を鍛練し、株価四
桁を目指して日々ふんばる旨定款に明記するものとする。

 提案の理由:貴社はいままさに破綻寸前である。別の表現をすれば今が「ふんば
りどき」である。営業マンに大きな声を出させるような精神論では破綻は免れない
が、和式便器に毎日またがり、下半身のねばりを強化すれば、かならず破綻は回避
できる。できなかったら運が悪かったと諦めるしかない。
---------------------------------------------------------------------------

 ノーコメントにしておきましょう。


2012.06.14(木)【所有権保存登記の順位番号】(金子登志雄)

 司法書士の皆さん、次のように質問されたら、何と答えますか。

--------------------------------------------------------------------------
 不動産の登記簿には「権利の部」というのがあって、そこに順位番号1番で真っ
先に登記されるのが「所有権保存登記」だと聞きましたが、これには例外がないと
いうことでよろしいですか。
--------------------------------------------------------------------------

 おそらく、100人のうち、99人から100人が「そのとおりだと思います」
と答えてしまうでしょうが、何と、甲区2番で登記されることがあることを知りま
した。

  法務省の登記記録例
 
http://www.e-profession.net/tutatu/h210220m2_500_besshi_kenri.pdf

 この36頁の登記記録例324をみると、不動産工事先取特権(さきどりとっけ
ん)で甲区1番に登記義務者の表示がなされています。では、所有権保存登記は、
どこに記録するのでしょうか。

 不動産登記法87条1項には、建物を新築する場合における不動産工事の先取特
権の保存登記をした場合において、「建物の建築が完了したときは、不動産の所有
者は、遅滞なく、所有権保存の登記を申請しなければならない」とあります。

 これは、新規に登記用紙を起こして、先取特権の登記記録を閉鎖するのだろうと
いう気もして、司法書士仲間に問い合わせましたら、不動産登記規則162条によ
り、先取特権で作った登記記録をそのまま所有権の登記にも流用するようです。

 ここまでは分かりましたが、それでも、甲区1番の登記義務者につき、順位番号
も含めて抹消し、新1番として所有権保存登記をするのかもしれないと推測しまし
たが、こういうことに詳しい、土地家屋調査士をも兼ねている島根の渡部先生から
(最近、本欄に登場しませんねぇ)、順位番号2番で所有権保存登記をするのだと
教えていただきました。

 こんなこと司法書士のほとんどが知らないだろうと思っていたら、受験指導界の
カリスマ講師である山本浩司先生から、あっさりと「こういう珍しいことは、受験
生なら知ってますよ」といわれてしまいました。先生の受験用著書にも載っている
ようです。

 知らないのがベテラン司法書士の証(あかし)のようです。私は超ベテラン司法
書士であることを確認できました。


2012.06.13(水)【弱い附合と強い附合】(金子登志雄)

 民法242条に「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権
を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない」と
あります。

 この本文の附合(昔はこう書きました)とは、不動産と一体化し、不動産の構成
部分になってしまい、これを切り離すには、余計な費用がかかるから(社会経済上
の不利益)、これを不動産所有者の物にしようというものです(あとはカネで清算
します)。

 これにつき、昔から「弱い附合、強い附合」ということがいわれており、例えば、
次のネットのように、植えた木は強い附合で、置いた庭石は弱い附合だとあります。

    
http://www.mainiti3-back.com/g/194/

 私にいわせれば、庭石のように直ちに取り外せるものは「附合」していないので
あり、そもそも民法242条の適用の前提を欠くというべきです。賃借人が建物に
付けた造作ですら、独立の所有権の対象であり、附合とは扱われていません。だか
ら造作買取請求できるのであって、附合とは相違します。

 民法242条ただし書は、附合して1個の合成物になったけれど、権原によって
附合させた場合には、例外的に所有権が留保されるという規定です。建物賃借権は
権原には含まれません。借りた建物を勝手に増改築する権利など、あるはずがない
からです。

 いまだに、大昔の支配的見解であった「弱い附合、強い附合」に洗脳されている
人が多いとは驚きですが、もっと自分の頭でごく普通に考えましょうよ。私のよう
に、マスコミと学者のいうことは信じなければ、仕事で大きな失敗をしないで事故
なく生きていけますよ。


2012.06.12(火)【司法書士議員の危機】(金子登志雄)

 我ら司法書士出身の唯一の国会議員である姫井由美子さんが次回の選挙で危機の
ようです。民主党公認を外されるようです。民主党の看板は地に落ちているので、
どうでもいいといえば、そのとおりですけど………。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/upper_house_election_okayama/?1339343886

 確かに男性問題でひんしゅくを買ったことは事実でしょうけど、もう過去の事実
ですし、そんなことはプライベートな問題ですから、これが天下の公党が行う仕打
ちかについては、私は疑問に思うと同時に、別の理由だろうと邪推しています。

 というのは、周知のとおり、岡山といえば菅首相の後ろ盾で、小沢追い落とし派
の有力者である江田五月議員の牙城です。にもかかわらず、姫井さんはここのとこ
ろ小沢支持を鮮明にしており、江田さんとの確執が取りざたされていました。

 姫井さんの地元の後見人である江田さんからしたら、面倒をみていたかわいい子
に反旗を翻させられたようなものですから、これは許せないでしょう。このあたり
が公認外しの真意ではないかと私は推測しているわけです。

 江田五月さんというと私の世代では社会党右派で社民連を作った江田三郎さんの
ご長男で元裁判官というイメージのほうが強いのですが、若い方からは、元参議院
議長というイメージでしょうか。いずれにしろ、政界の中では良識派でクリーンな
政治家というイメージでした。一時の菅さんと同様に、市民派の代表と受けとめら
れていました。

 しかし、最近は、菅さん人気の急降下とともにご本人の印象も悪化し、元人権派
弁護士といわれる仙谷由人さんと合わせて司法権力と結託して裏工作する人という
ダーティーなイメージも持たれてきたようです(それだけ大物になったともいえま
すけど)。最高裁長官と小学校時代から一緒だったことも関係しているようです。
また、昔は財界が権力とされてきましたが、いまは司法権力のほうが怖い存在です
から、そこに近いというだけで警戒の目でみられてしまうこともあるでしょう。

 いずれにしろ、姫井由美子さん、あなたの生き様が問われています。へたに妥協
せずに信念を貫いてください。昨日紹介した森ゆうこさんのように、女性は男より
強いから心配はしていませんが………。


2012.06.11(月)【森ゆうこ著「検察の罠」】(金子登志雄)

 小沢支持の超元気なおばさん議員「森ゆうこ」さんのことを知らない方はいない
でしょう。

 「何だ、あのおばさんは………」と世間ではみられているようですが、私は、前
々から、日本の民主主義を守るために計算抜きに必死に頑張っている日本のジャン
ヌダルクか、女・鈴木宗男かという印象を持っていましたが、どういう素性の方か
は全く知りませんでした。

 彼女の著書が出ましたので、さっそく購入し、先週、帰宅電車の中で読んでみま
した。

http://www.amazon.co.jp/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E3%81%AE%E7%BD%A0-%E6%A3%AE-%E3%82%86%E3%81%86%E3%81%93/dp/4537259418/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1339259954&sr=1-1

 いや、素晴らしい本でした。文章が力強く、テンポがよく(プロのライターの支
援があったのでしょうけど)、彼女の生き様及び家族の支援にも感銘します。

 もともとは家業のディスカウントチェーンを手伝う普通の大学生だったようです
が、家業が忙しく大学は8年で卒業し、結婚もし、子供もでき、社会と触れ合うう
ちに、周囲に勧められて町会議員になり、労組等の支持母体もカネもないのに、実
力で参議院議員に2回も当選しているようですから本物中の本物です。

 彼女の有名な言に、「私に何かあったら、ホウソウ関係者を疑ってくれ」(法曹
と放送を引っかけたダジャレです)とあるとおり、命がけで司法権力や大手マスコ
ミと戦っているのは彼女くらいでしょう(ネットの世界では、ウソ報道で有名な朝
ズバ、みのもんたさんの政敵扱いです)。

 彼女に小沢問題でインタビューに来る記者のうち、大手新聞社の記者は実に不勉
強だが(NHKの有名キャスターを含む)、スポーツ紙や日刊ゲンダイなどの記者
のほうがよく勉強しているとも書いてありました(小沢氏がフリー記者や外国人記
者には愛想がよいのに、大手マスコミの記者には仏頂面になる理由もこれです)。
 
 圧巻は「森ゆうこに鉄槌を下す」と影で発言していた法務省幹部との直接対決の
場面でしょうか。

 検察審査会は司法に属すため、司法が起訴し司法が裁判する前近代的な遠山金さ
んの世界になっていることや、マスコミの利権は官僚以上であることなどにも触れ
てありました。

 彼女を支持するかどうかは別にして、日本社会の問題点がよく分かりますし、ア
マゾンの読者感想でも5つ☆が多いようですから、私も一読をお勧めします(本に
は実名が多く登場するため、この本を「暴露本」と感じる方もおられるでしょうが、
これは常に脅迫され狙われている彼女の防衛策だと理解すべきでしょう)。


2012.06.08(金)【司法への政治介入?】(金子登志雄)

 陸山会事件における検察の捜査報告書の捏造問題につき、小川前法相が検察に自
浄能力がないと判断し、指揮権の発動を検討していたことにつき、「政治の司法介
入はよくない」という愚かな論調が多いようです。

 私にいわせれば、実にとんでもないことで、司法が政治に介入してばかりいるこ
との方が問題であって、指揮権の発動は当然に行われるべきだと思っています。ま
してや、検察は準司法とはいえ、行政に属します。

 ここで何度か書きましたが、小沢事件の本質は、既存の司法権力が政権交代を阻
止するために、マスコミを利用して、民主党代表の小沢氏を狙い撃ちしたものです
(政権取り後は鳩山氏も母親からの献金問題で狙われました)。

 小沢氏の事件内容である西松建設問題は検察の大敗北に終わり、あわてて別件の
陸山会事件を持ち出しましたが、これでも勝てずに捜査報告書まで捏造して、検察
審査会を利用しているのに、これほど重大な「司法の政治介入」を不問にし、「政
治の司法介入はよくない」などとは、よくいえたものです。

 国民の多くが「司法は正しく、政治は悪」という非民主的な宣伝(司法神話)に
洗脳されていますが、政治家は、われわれ自身が選んだ「国民の代表」ではありま
せんか。公務員である検事さんよりも、政治家の方が偉いのだという考え方をしな
い限り、民主主義とはいえません。

 政治家にはさまざまな党派がありますから、相互に抑制し合っている限り怖い存
在とはいえませんが、検察は軍隊と同じで、トップ1人の命令で一斉に動く組織で
す。どちらが怖いかといったら、後者に決まっています。だからこそ、政治で抑制
しなければならないのです。

 過去の指揮権発動は造船疑獄事件において犬養法相が抜いたものしかありません
が、これも検察が暴走しすぎて、自分では止められなくなり、検察自らが政治にお
願いして発動してもらったものです。その結果は、「政治は悪、検察は正義」とい
う検察神話になったわけですから、政治がはめられた事件とでもいうべきでしょう。

 自民党政権が下野してから、いろいろな真実がみえてきました。日本の支配者は、
明治時代からずっと「霞が関」であり、自民党政権はそれに乗っていたお神輿にす
ぎませんでした。野田民主党政権も同じです。

 マスコミも誰が日本の支配者かをよく知っており、国民の大多数が反対している
消費税にさえ、国民の側ではなく支配者側に立って報道しています。大手マスコミ
も日本式権力構造にどっぷりと組みこまれていますから、日本は世界に冠たる官僚
主導の管理国家だといえましょう。

 ただ、ここ数年は、この日本式権力構造が時代に合わなくなり、改革派と守旧派
の熾烈な権力闘争が行われている最中だというべきでしょうか。


2012.06.07(木)【同意と承諾】(金子登志雄)

 「同意」と「承諾」について、どのように使い分けるのか真剣に考えたことはあ
りませんが、次の条文をみて考え込んでしまいました。

--------------------------------------------------------------------------
民法第398条の12(根抵当権の譲渡)
 @ 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の【承諾】を得て、
  その根抵当権を譲り渡すことができる。
第398条の14(根抵当権の共有)
 A 根抵当権の共有者は、他の共有者の【同意】を得て、第398条の12第1
  項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
--------------------------------------------------------------------------

 ほとんど同じ文章なのに、前者は「承諾」で、後者は「同意」になっています。

 おそらく、「同意」は事前にするもので、「承諾」は主として事後に行うものだ
が事前でもよいという国語的な意味合いだけでなく、承諾は同意より重たい概念と
いうイメージを感じないでしょうか。根抵当権設定者の承諾は原則的に必要なもの
だが、共有者の同意は本来は不要だが例外的に必要だというニュアンスを私は感じ
ましたが、皆さんは、いかがですか。

 会社法ではどうかなと思い調べようとしましたが、「承諾」と「承認」はどこが
違うのかという別な疑問も生じてしまいましたので、後日の宿題にしておきましょ
う。そんなことを調べ始めれば、あっという間に1時間は使ってしまいますから。


2012.06.06(水)【財布の中身】(金子登志雄)

 テレビ番組で、芸能人の財布の中身をみせるコーナーがありましたが、たまたま
家族と一緒にみていたところ、私の財布の中身を聞かれましたので、「今日は10
万円近く入っている。定款認証費用で5万円が必要だから」と答えましたところ、
何といわれたと思いますか。

 「危険だ。そんなのカードで支払えばいいじゃないの」

 全く考えてもいませんでしたが、公証人役場や登記所内の印紙売場でカード払い
は可能なのでしょうか。きっと無理だとは思うのですが、挑戦してみる価値はある
かもしれませんね。無理だと思っていたJRの切符がカードで購入できましたので、
こちらも、ひょっとしたら、ひょっとするかもしれませんから。

 何でもカード時代ですね。銀行のキャッシュカード以外にも、健康保険証カード、
印鑑証明書カード、病院の診察券カード、ビル入室用セキュリティカード、買い物
のポイントカード………と、私の財布の中も訳の分からないカードばかりです。こ
ういうカード類は、写真付でないため身分証明書にはなりません。

 ちなみに、司法書士の会員証は写真付カードですが、公的機関の発行したもので
はないため、世間では身分証明書としての価値を認めてくれません。司法書士にな
ったばかりで、うれしくて、「オレは司法書士だ」と誇りたいために、会員証を出
すと、きっと、寂しい思いをするはずですよ。

 というわけで、私は運転もしないのに写真付身分証明書として運転免許証だけは
更新していますが、カードがないと何もできない時代になり、何かおかしいですね。


2012.06.05(火)【よく分からないこと】(島根・根来川弘充)

(野球に詳しくない方には、すいません。)
 現在、プロ野球は交流戦がまっただ中ですが、先日、友人との雑談ででた質問で
す。

 「走者がいるとき、内野ゴロで進塁するケースがあるが、これはバントのように
犠打扱い(打数に入らない)にならないのか?」

 私は、「バントは、最初から送ろう(犠牲になろう)という意思しかないから、
その意思の違いだろう。」と答えました。

 ところが、そう答えて、はっと気づきました。
(犠牲フライは、ヒットやホームランもねらっている!!!)
犠打の定義とは何なのか、よくわかりません。

 仕事では先日、一般社団法から目的変更登記申請の依頼をうけました。

 目的変更の効力発生日は、認可書の到達日になると考えていいたのですが、とこ
ろが、目的変更をした定款には、「○年○月○日から施行する」と附則がついてい
ました。

 目的変更の効力発生日は、附則にさだめた日までさかのぼるのか、少ないながら
手元にある文献を調べてみましたが、残念ながら見つかりませんでした。

 もし、効力発生日が認可書到達日と考えると、この附則の効力は目的変更に及ば
ないことになります。

 附則も認可を受けているのだから、効果も及ぶだろうと考え、附則にさだめた日
で申請しました。

 結果は・・・、残念ながら認可書到達日でした。(補正です)

 附則で定めておきながら、登記では違う日が変更日として記載されます。依頼者
には、よくわからないことだろうと思います。


2012.06.04(月)【同時申請の委任状】(金子登志雄)

 効力発生日を6月1日とするAがBを吸収合併する登記を同日に申請しましたが、
事前にお客様側のコンサルタントから、「B社からの登記申請委任状を要求されて
いなかったが、ほんとに大丈夫か」という電話質問がありました。

 司法書士の皆様、何と回答するのが正しいでしょうか。

 「必要ありません。6月1日午前0時にB社は消滅しており、委任したくてもで
きません。B社の権利義務を包括承継したA社の合併委任状がB社の委任状を含ん
でいます」・・・で通じますでしょうか。

 昔、司法書士になる前ですが、この合併の経験から同時申請には委任状は1通で
よいものと思い込んでしまい、自社グループの管轄外本店移転で移転先への委任状
を添付せずに補正になったことがあります。思わず、「え、必要なんですか」と聞
いてしまったものでした。

 それ以来、理由を考えるようにしていますので、吸収分割では分割会社も消滅し
ないため委任状がそれぞれ必要で、管轄外申請の場合は、会社実印を押し印鑑証明
を添付する必要があることもすぐに分かりました。

 ところで、A社の合併委任状は5月29日付になっていました。安全のため、6
月1日に訂正しましたが、合併効力発生前の5月29日付でも予約の委任状として
有効だとして、登記実務上は無事に受け付けてくれるものでしょうか。ご経験者は
いらっしゃいませんか。


2012.06.01(金)【新株予約権付社債の発行決議】(金子登志雄)

 司法書士が新株予約権付社債(通常は転換社債型新株予約権付社債)の発行案を
依頼されることは、会社法になって、すっかり減ってしまいました。会社法のせい
ではなく、長引く不況が原因でしょうけど。

 先日、非公開会社(譲渡制限会社)における転換社債型新株予約権付社債につき
相談されましたが、次の点について、皆さんはどうお考えですか。

 これは社債だから、株主総会の承認は不要ではないか。

 確かに社債ですが、新株予約権付社債と考えずに、社債付新株予約権と考えた方
が実態に即しており、非公開会社であれば、株主総会決議が必須です。

 では、株主総会決議と総数引受契約をすれば取締役会決議を省略できるか。

 募集株式や募集新株予約権の発行であればそのとおりですが、これは新株予約権
付の社債なんです。社債の発行に取締役会決議を省略することはできません。

 要するに、新株予約権付社債は、新株予約権と社債の2つであり、同時発行と考
えることが必要です。商法時代はこんなことを考えずに済んだのですが………。


2012.05.31(木)【目黒法務局廃止】(金子登志雄)

 とうとう、東京にも法務局統廃合の津波が押し寄せてきました。目黒区の法務局
が渋谷区の法務局に統合されます。統合されるのなら世田谷区かなと予測していま
したが外れました。6月11日からですから、渋谷から目黒へ、目黒から渋谷へ本
店移転を考えている方は、それ以降にしたほうが登録免許税も安上がりです。

 
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/frame.html

 法務局の廃止に「残念」などという発言は禁句ですね。地方ではもっと進展が早
く、お隣の千葉や埼玉では商業登記庁が1つ、神奈川では2つに集約されてしまっ
ているのに、東京では、まだ23区内のほとんどの区に存在しています。

 法務局が統廃合すると、一般の方が近くの法務局に気楽に相談に行けず、専門家
に任せようと行動するため、司法書士にとっては、不都合ばかりではありませんが、
電子申請に乗り遅れている年配司法書士にとっては、廃業の危機かもしれません。

 私も年配司法書士の1人で、ネットにはからきし弱いのですが、電子申請だけは、
周囲の応援を得て、問題なく使いこなしています。

 ところで、司法書士会の支部はどうなるのでしょうか。法務局単位で支部が作ら
れている傾向があるので、東京でも目黒支部は渋谷支部に統合するのでしょうか。
司法書士会も無関係ではいられないことでしょう。


2012.05.30(水)【泥だらけの権利証】(仙台・立花 宏)

 先日、相続登記の手続を依頼したいという方が事務所にお越しになりました。

 依頼者は年配の女性で、亡くなられたご主人の名義になっている土地と建物のう
ち、土地のみを、自分の名義に直したいというのです。

 相続人はその女性と、長男、長女、次男の4人で、その4人で話し合いをして、
その女性が不動産を相続すると決めたのだそうです。

 その女性は、「不動産の資料です。」と言いながら、鞄から書類を取り出し、私
に手渡しました。

 それは権利証でした。受け取った瞬間、手触りに違和感がありました。なにか、
表紙が埃っぽく、ざらざらしています。そして、ゴワゴワしています。

 “もしかしたら・・・”

 私は、あることを想像しました。

 私の様子を見ていたその女性は、口を開きました。

 「昨年の震災のときに津波で流されたんです。でも、1か月くらいしてから、警
察の方が泥の中から見つけて、届けてくれたのです。」

 “やっぱりそうだったのか。”私はそう思いながら、女性が続けて鞄から取り出
した戸籍に目をやりました。亡くなられたご主人の欄を見ると、“平成23年3月
11日推定午後4時死亡”との記載がありました。

 ひととおり、手続等の説明を終えると、その女性は私に言いました。

 「この権利証はもう使わないでしょうから、処分していただけませんか。」

 その女性がどのような気持ちで、権利証の処分を依頼しているのか、私には判断
がつきかねました。

 “もしかしたら、気持ちを整理したいのかもしれない・・・。いろんなことを思
い出してしまうから、もう見たくないということだろうか・・・。”

 私が沈黙して思案していると、女性は言いました。

 「こんなことをお願いするのは筋違いですよね。すみませんでした。」

 そして女性は続けました。

 「主人がローンを組んで、ようやく手に入れた自宅でした。ローンの支払いが終
わったと思ったら、震災で、その自宅も主人と一緒に流されてしまいました。権利
証は、主人のお墓に主人と一緒に入れてあげるのがよいのかもしれませんね。」

 私はなんと返事をしてよいかわかりませんでした。

 “こんなとき、ベテランの先生方は、どのように答えるのだろう・・・。”

 まだまだ、司法書士として、力不足であることを実感させられました。


2012.05.29(火)【整備法136条19項】(金子登志雄)

 法務省の登記記録例によると、新設分割のとき設立会社の登記簿には次のように
記録されます。
--------------------------------------------------------------------------
 東京都台東区上野一丁目1番1号台東商事株式会社から分割により設立
                         平成19年10月1日登記
--------------------------------------------------------------------------

 ところが、分割会社のほうは、次です。
--------------------------------------------------------------------------
 平成19年10月1日東京都千代田区大手町一丁目1番1号千代田商事株式会社
に分割
                         平成19年10月8日登記
--------------------------------------------------------------------------

 登記した日が違っているのは法務局の管轄が違うせいですが、それは横に置くと、
前者には「平成19年10月1日」が文頭にありませんが、後者にはあります。

 これは、前者は設立登記であって登記が効力発生日だから、「平成19年10月
1日登記」の部分で設立の日が分かるので、二重に効力発生日を記載する必要がな
いという配慮です。純粋の設立のときも、単に「設立」とするだけであって、「平
成〇年〇月〇日設立」と登記しないのは、このためです。

 これに対して、吸収合併や吸収分割など登記を効力発生要件としない場合は、単
純な「変更登記」ですから、変更年月日を文頭に置きます。

 ところが、特例有限会社を株式会社に移行させるときは、登記が効力発生要件で
ありながら、次のように登記します。
--------------------------------------------------------------------------
 平成19年10月1日第一電器有限会社を商号変更し、移行したことにより設立
                         平成19年10月1日登記
--------------------------------------------------------------------------

 明らかに、文頭の「平成19年10月1日」は余計です。伝統的な登記手法から
逸脱しています。

 これは整備法136条19項に「特例有限会社の商号並びに商号を変更した旨及
び【その年月日をも登記しなければならない】」と規定されているので、上記のよ
うな年月日の二重記載が生じてしまったわけですが、その理由は、整備法立案者が
登記のことを全く分かっていなかったからだというしかありません。


2012.05.28(月)【ヨムよりカクがいい】(金子登志雄)

 ウイスキーの瓶の話ではありません。自分で書くよりも、他人の原稿をチェック
するほうが数倍疲れるという話です。

 私の仕事の中で、この原稿チェック仕事は結構あります。株主総会招集通知(事
業報告から)をチェックしてほしい、役員変更議事録案等をチェックしてほしいな
どという会社からの依頼だけでなく、書籍の原稿のチェックの仕事もあります。

 長時間この仕事を続けますと、目と背中が疲れ、文字がかすんできますが、不思
議なことに、自分で原稿を書くときは、もっと長時間になっても疲れません。

 他人(ヒト)に言わせると、「他人に合わせるのは、そりゃ疲れるよ」というこ
とですが、私の場合はそういうことではなく、自分の原稿の場合は、五感の全部を
使って集中しているのに対し、他人の原稿をチェックする場合は、頭と目しか使っ
ていないからだと思っています。

 つまり、一部分が疲れるから、全身が疲れたように感じるが、自分の原稿の場合
は全身運動なので疲れないのだと思います。その代わり、頭の中がカッカと燃え盛
り、興奮のためかすぐには寝付けません。

 どちらも困ったものですが、人様の原稿をチェックする際にも、もっと集中して
やれば疲れないのだと信じているのですが、何かよい集中する方法はないものでし
ょうか。


2012.05.25(金)【故意の立証】(金子登志雄)

 21日の夕刻に渋谷駅で刺傷事件があったことはニュースでご存知と思いますが、
事件の30分後か1時間後か分かりませんが、私も報道陣でごった返す渋谷駅を降り
しました。

 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120523-00000065-mai-soci

 幸い、被害者は死に至らなかったようですが、単に見知らぬ人と体がぶつかった
程度で刺されてしまうとは怖い世の中ですね。貧困と格差を作った小泉改革以来、
世相が殺風景になっているようで、自殺者数も増えているようです。

 さて、この犯人は「殺意はなかった」と供述しているようですが、殺人の故意と
は「こうすれば人は死ぬであろう」と認識するだけでよく(認識説)、「死んでほ
しい」と希望すること(認容説)までは不要ですし、刃渡り30センチのサバイバ
ルナイフで刺しておいて殺意がないとは到底無理な主張でしょう。

 昔、司法試験を合格し司法修習中の友人に聞きましたが、検察での研修で、タク
シーへの無賃乗車の男の取調べを担当させられたのだそうです。ところが、犯人は
頑として故意を認めず困り果ててしまったところ、指導検事から「自白させようと
しないで、タクシーに乗る時、財布の中身がいくらだったかを聞くなど、周りから
攻めねばダメだ」と教わったとのことです。

 もっとも、以前、ある元地検特捜部の検事さんに、この話をしましたら、「簡単
ですよ。これこれこうでしたとこちらで作文し、密室で署名をしろと迫ればいいん
ですから」といわれてしまいました。

 現場の検事は故意の立証に苦労しているのに、エリート揃いの特捜部の検事さん
は思い描いたストリーを被疑者に押しつける傾向があるようです。逮捕された大阪
地検の前田検事も、「小沢事件は東京地検の妄想だ、現場は厭戦気分だ」と法廷で
供述しましたが、こんな話を聞くと、捕まって取調べを受けるなら特捜部ではない
ところを願いたいものですね。


2012.05.24(木)【異議がなかった旨の証明書】(金子登志雄)

 合併や減資の際に、債権者に異議がないかと公告や催告をしますが、商業登記法
によると「異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相
当の担保を提供し………を証する書面を添付しなければならない」とありますから、
異議がなかった場合は何も添付しなくてもよいと読めてしまいます。

 しかし、そうすると、法務局にとっては、異議があったのか、なかったのかも分
からなくなってしまいますから、法律上の添付書面にはなっていませんが、申請書
に「異議はなかった」と書くか、その旨の証明書を提出する慣例になっています。

 さて、A社がB社を6月1日に吸収合併するにあたり、B社の債権者保護手続で
異議がなかったと証明するのは誰でしょうか。

 旧商法時代はB社が証明していましたが、会社法では、証明日次第になります。

 旧商法では吸収合併も「登記」が効力発生要件でしたから、B社が証明すること
で全く問題がなかったのですが、会社法では効力発生日(ここでは6月1日の午前
0時)に合併の効力が発生するため、6月1日付けでBの証明書が作成されるとま
ずいのです。なぜなら、午前0時にBは合併解散し、会社が消滅しているはずだか
らです。

 そこで、6月1日付けの証明書にするなら、A社が「B社ではこれこれのとおり
債権者保護手続をしましたが、異議はありませんでした」と証明することになりま
すが、自社分だけでなくB社の分についてまで証明するため、時々、「これ同じも
のが2つあるよ」とお客様に言われてしまいます。内容がちょっと違うのですけど。


2012.05.23(水)【余事記載登記】(金子登志雄)

 先日、資本金5億以上の未公開の某社の登記簿謄本をみておりましたら、社外取
締役が登記され、2年ごとに重任登記がなされていました。

 ところが、登記簿のどこをみても、@委員会設置会社である、A特別取締役の定
がある、B社外取締役の責任軽減の登記がある、ことになっていません。

 登記に関する会社法911条をみていただけばお分かりのとおり、社外取締役の
登記は、@かAかBの場合に限り登記することができるのであって、それ以外は登
記することができません。商法時代とは相違します。

 人材不足の地方の法務局であれば、登記官自身も知らなかったということもある
でしょうけど、都内23区内のそれなりの法務局でした。

 批判しているのではありません。常日頃から、誰にも迷惑にならない商業登記に
あっては、これくらいの寛容さが法務局にあってもよいと思っていますので、何と
なく、うれしい気分です。

 そもそも、間違って「取締役A」に「取締役A(社外取締役)」と登記してしま
っても、虚偽の内容ではありませんし、余事記載の無益で無効な登記であっても、
違法で有害な登記とは思えません。単に、登記簿に法的には無用なことが記録され
ているに過ぎません。

 余事記載がいけないというなら、種類株式や新株予約権の登記では、余事記載だ
らけで、全く余事記載がない完璧な登記のほうが珍しいくらいです。

 上記の会社の定時株主総会後の登記を引き受けましたが、専門家の私が余事記載
登記を白昼堂々と申請するわけにもいきませんので、今回から「取締役A」で登記
しますが、真面目で融通の利かない司法書士の方であれば、過去に遡って更正抹消
を求めたりするのでしょうね。


2012.05.22(火)【太陽と月】(金子登志雄)

 昨日は、会う人ごとに「見ましたか」という時候の挨拶が繰り返されたようです。
金環日食のことです。

 面倒くさがり屋の私はもちろん見ていません。その時間帯は、執筆の疲労で寝て
いました。

 さて、金環日食とは無関係ですが、ここ何年も、月であるはずの会社法(商業登
記)ばかりに日があたり、太陽の民法(不動産登記)を後ろに置いてきましたので、
4月から不動産登記のおさらいをしています。もちろん、仕事の関係です。

 司法書士試験の択一試験並の問題を次々と解いていますが、試験から離れて15
年以上経つのに、正解率9割以上ですから、まだ腕は衰えていないようです。自転
車と同じで、いったん乗れるようになったら、一生、乗れるのかもしれません。

 というよりも、会社法を深く理解するには民法の知識が前提となるので、意識せ
ずとも、民法から離れていなかったのでしょう。逆に言うと、不動産登記や民法を
中心にしている人は、下流(?)の会社法に疎くなりがちだということになります
が、多くの司法書士のみなさん、いかがですか。

 昔、民法学者の恩師が「会社法学者は分からない点があると民法に戻れば済むが、
民法学者は哲学にまで戻らねばならない。時効の学者は『時とは何か』と哲学して
しまう」と話していたことがありますが、「民法学者は下流を研究しないので、ど
うしてもビジネス社会から遊離してしまう」ともいえそうですね。


2012.05.21(月)【裁判員制度3年目】(金子登志雄)

 5月21日の今日で裁判員制度がはじまって、ちょうど3年目です。

 私はこの制度に賛成でした。国民主権の学校だと思っていたからです。仮に、間
違った評議をしたとしても、それを痛みに感じれば、少しずつ国民も学習していく
だろうと思っていたからです。

 その効果が出たかどうかは、今後、検証しなければなりませんが、同じく市民参
加の検察審査会が見事に検察やマスコミに操られていた実態をみるにつき、市民参
加には反対しませんが、予断をもって判断しやすい素人参加には強い疑問をもつよ
うになりました。

 せめて、年齢制限を置き、昔の集落や部族の長老会議のように、人生や世の中が
分かっている人間だけを裁判員にするような制度はできないものでしょうか。司法
書士が裁判員になれないのも行き過ぎのように思います。

 ところで、最近のテレビドラマで冤罪をテーマとするものが増えてきたように思
いますが、私の気のせいでしょうか。

 土曜日のテレビ朝日のドラマスペシャル「灰色の虹」もその1つであり、冤罪で
服役していた若者が出所後に、担当捜査官、担当検事、担当弁護士等に復讐する内
容でした。

 なかなか見応えのある内容でしたが、常に正義の警察官や検事が登場し、事件を
解決して行く姿はウソっぽく、正義は常に勝つとは限らないのが現実社会であるこ
とを知っている熟年者には、ややもの足りませんでした。

 冤罪被害者が裁判員に復讐しないためには、裁判員制度よりも、捜査の可視化の
ほうがずっと重要ではないかと思った次第です。


2012.05.18(金)【4月1日就任取締役】(金子登志雄)

 3月決算の上場会社では、6月の定時株主総会の準備をはじめたようですが、そ
の子会社も連動して、最近、定時株主総会の準備をはじめたようです。

 ここで会社も司法書士も気を付けねばならないのは、「平成23年4月1日就任
取締役」の存在です。上場会社の子会社では3月下旬(例えば29日)に臨時株主
総会を開催して、4月1日付で取締役を選任していることが多いのです。

 この場合に、定款に「取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のう
ち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」と定めているとすると、
任期は何時まででしょうか。

 選任された平成23年3月29日の2年後は平成25年3月29日です。それ以
内の最終の事業年度は平成24年3月31日までです。その定時総会は平成24年
6月開催の定時株主総会になります。よって、今回の定時株主総会で任期満了退任
します。取締役就任期間は1年3ヶ月にも満たない結果となります。

 株主総会決議では「【選任】の効力が平成23年4月1日」としたのだから、平
成23年4月1日から計算すべきではないかと思わないでもありませんが、会社法
立案担当者は、この選任を事実行為としての選任と解釈しており、登記実務もこれ
に従っています。

 なお、平成23年3月31日選任の場合は、選任後2年が平成25年3月31日
になりますので、セーフになりますから、ややこしいですね。やはり、登記は商業
登記のプロに頼みましょう。


2012.05.17(木)【東高西低】(金子登志雄)

 といっても、源氏と平氏の話ではなく、東の検察と西の検察の格差の話です。

 最近の報道によりますと、民主党の政権取り妨害のため、西の石井一民主党議員
を狙った大阪地検特捜部の郵便不正事件(通称、村木厚子事件)で証拠のフロッピ
ーを偽造した前田恒彦元検事が懲役1年6月を終わり、15日に満期出所したそう
です。しかし、今後10年間は弁護士にもなれないそうですから厳しいものです。

 この事件では上司の大坪元特捜部長と佐賀元副部長も懲役1年6月の求刑で現在、
裁判中です。

 これに対して、東の小沢一郎民主党議員を狙った東京地検特捜部の事件では、捜
査報告書を捏造したといわれる田代検事に対しては、16日の新聞報道で嫌疑不十
分で不起訴だとのことです。上司だった方々も、これでまずは一安心でしょう。

 こういう報道に対して関西の方々はどんな心境になるのでしょうか。関西の新聞
は何もコメントしていないのでしょうか。東に住む私ですら、ちょっと露骨過ぎて、
西の皆様に申し訳ない心境になってしまいます。

 もう1つ、驚くニュースがありました。東西の検察の暴走を強く批判をしていた
元検事の郷原信郎氏が上記の大坪氏の弁護人に就任したそうです。ということは、
大坪氏が法廷で何らかを暴露する可能性が出てきたということでしょう。

 これが怖いので、東の田代検事をうっかり逮捕できないのだとしたら、田代氏や
上司の方々は、西の方向に足を向けて眠ってはいけないでしょう。


2012.05.15(水)【単元未満株式の権利】(金子登志雄)

 学生が就職面接に会社訪問している姿をよくみましたが、皆、同じ色の同じ服装
ですね。特に女性は例外をみることがほとんどありません。情報化社会になり個性
重視の時代になったというのは幻想かもしれません。

 さて、上場会社の定款をみると、次のような条項が入っていることが少なくあり
ません。
---------------------------------------------------------------------------
第*条 当会社の株主は、その有する単元未満株式について、次に掲げる権利以外
  の権利を行使することができない。
(1)会社法第189条第2項各号に掲げる権利
(2)会社法第166条第1項の規定による請求をする権利
(3)株主の有する株式数に応じて募集株式の割当ておよび募集新株予約権の割当
  てを受ける権利
---------------------------------------------------------------------------

 (1)の会社法第189条は単元未満株式の権利に関する規定ですから納得できる
のですが、(2)の会社法第166条第1項は取得請求権付株式の取得請求について
の規定です。

 周知のとおり、上場会社のほとんどが種類株式発行会社ではありません。取得請求
権付株式を発行していないのに(2)を定めているのです。

 なぜ、こんなことをするのかと調べましたら「将来、取得請求権付株式を発行する
かもしれないから」などというもっともらしい解説がありましたが、その程度の理由
であったら、取得請求権付株式を発行することができる旨の定款の定めを置くときに、
一緒に定めれば済むことです。

 真意は、他社が定めているからという「横並び思想」でしょう。学生だけでなく、
企業も金太郎飴です。異分子を排除するのが日本の伝統文化とは思いたくありません
が、何か怖い文化ですね。皆と一緒でないと不安でならない社会に、いつからなった
のでしょうか。


2012.05.15(火)【平氏と平家】(金子登志雄)

 「東の源氏、西の平氏」と私も思い込んでいましたが、ネットで調べたところ、
これは間違いのようですね。平氏の中で西で活躍したのが平清盛を中心とする伊勢
平氏であって、これが俗にいう「平家」であって、東の平氏(坂東平氏など)は、
源氏側に付いたようです。

 確かに、「遠くの親戚より近くの他人」ですから、東国に居住しながら、源氏に
逆らうのは得策ではありません。東の平氏が源氏側に付くのも自然でしょう。

 で、関東人であるわが先祖はどうしたのかなと、金子姓の起源を調べましたら、
武蔵国入間郡金子村が起源(ルーツ)であることは分かりましたが(JRの八王子
と群馬県の高崎をつなぐ八高線=はちこうせん=の駅に金子駅があります)、源氏
や平氏以前から存在する氏のようで、はっきりしませんでした。

 もっとも、ご承知のとおり、金子姓は全国各地に広範囲に分布しており(繁殖力
だけはよさそうです)、武蔵国入間郡金子村が起源というのも怪しいものです。

 今日は(今日も?)、ネタ切れでつまらない内容でしたね。明日からは、法律ネ
タでも探しましょう。


2012.05.14(月)【平家の落人部落伝説】(金子登志雄)

 土日は瀬戸内海の小豆島近辺を小旅行してまいりました。相変わらず小リュックで
重いノートPCを背負い、同伴者の後ろに付いていっただけですけど………。
 壇ノ浦で滅びた平家の本部があった屋島にも行きました。

 平家というと子供の頃から悪役イメージを植え付けられてきましたが、最近では、
NHKの大河ドラマで平清盛を取り上げ、歴史の歯車を進めた「武士社会の創業者」
と評価しているようですから、時代も変わったものです。

 屋島では売店のおじさんが、平氏は武家だが貴族化してしまったのに対し、源氏は
体力のある農民中心だったから、平氏は源氏に勝てなかったと説明していましたが、
面白い見方ですね。と同時に、平家には高貴な家柄というイメージもあるようです。 

 これに関連して、全国各地の僻地(へきち)に「平家の落人(おちうど)部落」と
言い伝えられる場所がありますが、あれのほとんどがウソだそうです。

 昔の新聞記事に掲載されていましたが、先祖代々にわたり辺鄙な地域に住む人は、
「先祖がこんな辺鄙なところに居を構えたのは、きっと深い訳があるに違いない」と
自分を納得させて生きてきたが、それがいつしか、「ここは先祖の平家が逃げ隠れ住
んだところ」に代わり、代々と伝承されてきたというのが本当のところのようです。

 こういうインセンティブ(?)はお金がかからなくていいですね。


2012.05.11(金)【ムネオ日記から】(金子登志雄)

 昨日の件で、同じく政治的迫害を受けた鈴木宗男氏は、どんな意見かと、久々に
ムネオ日記を覗いてみましたら、やはり強い批判をしていました。

 
http://www.daichi.gr.jp/diary/diary_top.html

 鈴木氏の受けた迫害は、小沢氏どころではなく、国会で議員辞職勧告決議を受け
るなど、四面楚歌の状態でしたし、収賄罪・政治資金規正法違反・議院証言法違反
(偽証罪)で有罪を受けたのに、逞しく生き残り、今や北海道では絶大な人気があ
ります(マスコミで報道されたムネオハウスなどは裁判で全く問題とされず、別件
での有罪です)。

 「こういう犯罪者を当選させるなんて、地方の人間は何を考えているのだ」と若
い頃の私は思っていましたが、還暦も過ぎて世の中が少し分かってきた今は全く逆
の見方です。

 今は、「地方の方は自営業であったり農家であったりし、足を地につけて働いて
いるから、ワイドショーを代表とするうわついたマスコミ報道に影響されることも
少なく、自分の頭で考えて行動するのに対し、サラリーマン家庭の多い都会は、生
きて行くうえで周囲との協調性が重要なのか、一番楽なマスコミを通じて流される
風や空気でモノを判断する傾向が強い」という見方であり、都会人の思考のほうに
批判的です。

 鈴木氏は私と同世代ですが(学年は私より1つ上)、駅の階段ですら、ふうふう
いいながら昇っている私からは、あのパワーと不屈の精神だけは、憧れてしまいま
す。本欄と違って、ムネオ日記は土日も休まずです。これ、たいへんなんですよ。

(参考)
 小沢グループから声明が発せられました。小さい文字で、老眼にはきついので、
土日にでもゆっくり吟味してみます。
  
http://www.shinseiken.jp/index.html


2012.05.10(木)【驚きの控訴】(金子登志雄)

 民主党政権になってから、検察や司法の政治化が顕在化し、いわゆる法治国家や
司法の常識が全く通じなくなっていましたが、またですね。有罪の見込みがないの
に、指定弁護士が控訴を決定したようです。

 これで、本件はよくいわれているように司法や法律問題ではなく、小沢氏という
政治改革派の実力者に力を発揮させないことが目的の政治的事件であることがます
ますみえてきました。有罪にする必要はなく、彼に活動させないことが真の目的で
しょう。フェアではありませんが、これが権力闘争の現実です。

 小沢復権、消費税値上げストップか、国民生活が第1の政治に戻るか………など
というマスコミの論調をみながら、小沢氏は予想以上に怖がられているな、これは
控訴もあるかもしれないと2割程度の確率でみていましたが、まさか本当になると
は思いませんでした。

 マスコミの宣伝の成果か、小沢氏は悪い奴だと思っている方が国民の7割以上も
いるようですが、少なくとも小沢氏一人で今でも共産党や社民党などよりも支持率
の高い政治家です。民主党国会議員の中では3分の1が支持している有力政治家で
すし、岩手県を中心とする東北地方では、東日本の復興のために、小沢氏に対する
期待度はものすごく大きいものがあるようです。

 これほどの実力者を働かさせないなど、大変な国家的損失だと私は思うのですが、
日本はまだ近代国家ではないということでしょう。30年後、40年後の日本国民
が現在の日本社会の民主主義の成熟度をどう評価するのか、長生きして、ぜひ、そ
れを知りたいものです。

(参考)
 鋭い見方をする評論家の田中良紹さんの論評を知りたいと思っていましたら、さ
っそくブログを更新していました。ネットの政治意見を代表する見解でした。

 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/05/post_299.html#more


2012.05.09
(水)【思へば遠く来たもんだ】(富田太郎)

 GWの前半は、仕事を休み(正月以来の休みでした♪)、サラリーマン時代の上
司・同期の方々と会食をいたしました。

 これまでに、何度か書きましたが、私は元々サラリーマンで、40歳の時に司法
書士の道に入りました。司法書士としては13年目、開業してからは7年目。よう
やく中堅に入るか否かぐらいの業歴です。

 よって、自分の中では、「まだまだ、これからだなぁ・・」と思っていたのです
が、サラリーマン時代の上司は、既に定年退職し隠居生活(羨ましい)。また、同
期だった方々も、あと何年か経つと定年。

 話題は、「老後、いかに過ごすか? 貰える厚生年金の額は●◆で〜△◆。定年
後、子会社に残れるかなぁ〜?etc」などが中心で、「びっくりする!」ととも
に、何やら、「自分も人生の後半にさしかかっているのだ」と改めて実感しました。

その夜、書庫にあった『中原中也の詩集』をパラパラ〜とめくると、
≪頑是ない歌≫ /中原中也『在りし日の歌』より抜粋

 『思へば遠く来たもんだ
  十二の冬のあの夕べ  港の空に鳴り響いた汽笛の湯気は今いづこ
   (中略)
  それから何年経ったことか 
  汽笛の湯気を茫然と 眼で追いかなしくなっていた
  あの頃の俺はいまいずこ

  思へば遠く来たもんだ
  此の先まだまだ何時までか 生きてゆくのであらうけど
  (以下略)』

 そうだよなぁ・・・。今の状況に満足しているわけではないが、不満だらけとい
うわけでもない。でも、もう昔には戻ることはできないよなぁ〜・・・・。めずら
しく感傷的な気分になってしまいました。

 ≪後日談≫
 GWの後半は、いつものとおり、コンビニ弁当を食べながら事務所で仕事。
そんな折、同年代の某社社長から仕事のTELがあり、余談で、「(前記の)人生
後半の話」をしたところ

 社長曰く、
「大丈夫ですか(笑い)! 
 富田センセ??? もしかして、GW前半、休みましたかぁ?
 なれないことするからですよ!

 センセは、あと10年たっても、事務所でコンビニ弁当食べながら徹夜している
と思います(きっぱり)!
 それより、先週お願いした〜△◆●〜」

 ・・・・・・・・・・・・・・・(汗)

 詩人には、到底なれそうもない富田でした・・・・・(涙)。


2012.05.08(火)【農地の移転】(島根・根来川弘充)

 先日、ある方から、兄から田畑を譲り受けたいのでどうすれば良いかと相談を受
けました。対象の田畑は、島根の山間地にあります。

 登記簿による所有者は、その相談者の兄で、現在は都会に出られているそうです。
今、田畑の管理はこちらに住んでおられる弟さんがしているのですが、兄もいよい
よ年をとって、こちらに帰ってくることがなくなったので、登記名義を変えたいと
いうことでした。

 ところが、農地の移転には、農地法により農業委員会の許可がいります。その要
件として、譲り受ける側がある程度、農地を所有等していないといけません。移転
ができない大体のケースが、この要件に引っかかります。

 今回ご相談いただいた件も、残念ながらこの要件に引っかかりました。相談者に
その旨を伝えましたところ、
 「国は山間地の農業の効率化をすすめながら、一方で流通を妨害している。」
 「誰も手がつけられない農地を増やして、誰が農業を支えるのか。」
 「先生方も実情をご存知なら、行政に働きかけをしてほしい。」
と言われました。なるほど、もっともなことです。

 農地法で規制された当初は、水利などの問題もあり、農地の分散を防ぐことは、
意味があったと思います。しかし、今日はこちらの方で、担い手は減る一方で、
農業ができない所有者は、自らの田畑を荒廃させる訳にはいかないのですから、
他人に手間賃を払っても作っていただいているという実情があります。田舎では、
農業をしてくれるという人が出てくるだけで、大変ありがたいことです。

 立法事実がないのであれば、法律は無効であると考えても良いのではと思いまし
た。「法律はこうなっていますので」と杓子定規につい考えてしまっていた自分に、
強く喝を入れられた思いでした。ものを言ってくれる依頼者はありがたいものです。


2012.05.07(月)【ロシアからの驚愕メール】(金子登志雄)

 連休も終わってしまいました。1日だけ、都内で各地の花祭りツアーをしました
が、その他は、いつもどおり、気分転換にマスコミやテレビの表層的な世界とは異
なるネット世界の意見などを味わいながら(?)、モノ書き作業をしていました。

 さて、本日の題目の「ロシアからの驚愕メール」をみて、ぴんと来た方は、かな
りのネット政治世界の住人でしょう。

 八木啓代(のぶよ)さんというラテン音楽の歌手の方が会長の「健全な法治国家
のために声をあげる市民の会」に、なんと、ロシア語のメールが入り、そこに検察
の捜査報告書や石川議員の隠し録音の文字おこしが添付されており、ただいまネッ
トの政治世界は大騒ぎです。

  (市民の会)
   
http://shiminnokai.net/index.html

  (捜査報告書)
   
https://docs.google.com/open?id=0ByWdni-HzzdgV0RMV0o5WWNiTlk

  (石川録音)
   
https://docs.google.com/open?id=0ByWdni-HzzdgQkl3Z0w2cTdiNXM

 検察の内部告発かどうかは分かりませんが(これ以前に関係する国会議員やマス
コミの一部には漏れていますから)、検察審査会に届けられた捜査報告書をみると、
特捜部も自分では起訴できず、素人の検察審査会に強制起訴させようという意図が
みえみえで(アンダーラインまで引いて強調しています)、内容面を含め、今後、
大きな問題に発展しそうです。

 虚偽の工作をしても、いつかはばれるものですね。小沢さんの言ではありません
が、お天道様はみています。


2012.05.02(水)【知識量と記憶力】(金子登志雄)

 5月になったら急に陽気がよくなりましたね。野には花が咲き、女性が美しく見
える今日この頃です。

 さて、先日、久々に仲間の司法書士と会食しましたが、合併再編の拙著を読んだ
はずなのに日が経つと記憶に残っていないという話になりました。ところが、私は、
こと会社法の話題であれば、1読しただけで、確か商事法務に弁護士が書いていた
はずだ程度の記憶は確実に残ります。なぜでしょうか。私は記憶力は特別によいほ
うではありません。

 学生時代、民法のゼミに入っていましたが、何か言えば、先生が「その論点は誰
々先生の本に詳しいですね」などと出版されたばかりの本の内容のことまで話すこ
とに驚いたことがあります。

 そこで分かったのですが、10の量の知識しかなければ1の新しい知識を覚えて
長期に記憶に残らせるのは至難の技ですが、100の量の知識のある方は、1や2
の新しい知識を即座に自分のものにし、長期に記憶に残すことが容易だということ
です。100のうちの既存の知識と無意識に関連づけていますから、記憶が強化さ
れるわけです。

 私も会社法や商業登記の新しい知識であれば、「なるほど、全く気づかなかった
論点だ」とか、「これ今後は使えるな」とか、既存の知識と関連づけるだけでなく、
新知識に対して感動を感じるため、記憶が強化され半永久的に覚えてしまいます。

 何をいいたいかといいますと、早く10の知識量から20、30、40と増やし
ましょう、さすれば「読んだのに記憶に残っていない」ということがなくなります
よということですが、私も会社法や商業登記のこと以外については、10以下の知
識しかありませんから、人のことはいえません。関心のない草花や寿司ネタの名前
などは、1時間後には忘れています。やはり、1番は関心があるかどうかですね。

 なお、上記「お知らせ」のとおり、「会社法」法令集が改訂されました。そろそ
ろ書店に並ぶ頃です。おかげさまで、第9版になり、条文集としては長期ベストセ
ラーの地位を保っています。9版には、中間試案も掲載されていますし、1年以上
経過しての改訂ですから、ぜひ、新板にお取り換えなさるようお勧めいたします。


2012.05.01(火)【判決文を読んでみました】(金子登志雄)

 連休の谷間ですが、サービス業の手前、休むわけにも行かず、今日も仕事です。

 さて、連休前半の3連休は、いつもどおり、帰省し、ネットでドラマをみたり、
ニュースをみたりして過ごしていましたが、先般の小沢判決について、大手マスコ
ミの論調が判決理由は小沢真っ黒だ、指定弁護士は控訴すべきだなどという意見だ
ったので、ほんとかいなと思って、私もネットで判決文を探して読んでみました。

 衆議院議員の階猛(しなたけし)氏のHPに掲載されていました。氏は東大卒、
長銀・新生銀行出身の弁護士でもあり、小沢氏と同じ岩手県選出です。

(判決文)
 
http://shina.jp/a/wp-content/uploads/2012/04/ozawa.pdf

 100頁弱もあったので、流し読みしただけですが、感想は、階猛氏とほぼ同じ
でした。氏のHPから引用すれば、「裁判所は、結論として、虚偽記載は認めつつ
共謀がないという理由で無罪にしたのですが、この虚偽記載が悪質ではないことも
しっかり認定しています。まず虚偽記載の動機については、やましい金を隠すため
などではなく、小沢さんが資産家であることを公にしたくなかったとか、マスコミ
の批判的な報道を先送りしたかったためだとしています。そして、収支報告書の虚
偽記載は計画的になされたというより、正しい記載をするつもりが方針変更や事務
処理の誤解、手違いなどもあって生じた面があることを認めています」ということ
です。

 当然でしょう。検察は、4億円がゼネコンからの裏献金かという見込みで30億
円もかけて捜査したのに、それが見つからないので、いやいや(?)不起訴にした
のですが、素人の検察審査会が、経理処理の違いという実に馬鹿馬鹿しいことに共
謀共同正犯というヤクザにしか使わない論理で強制起訴したのですから………。

 小沢氏を嫌うのは自由ですが、事実も正確に把握せず、判決文も意図的に曲解し
て、「あいつを潰せ」と相も変わらず世論を煽る人達の人権感覚が信じられません。
国民大衆を馬鹿にしています。

 私は、そういう人が小沢氏と同じ目にあっても、その人を支援するつもりなんで
すが、私のほうがお人好しでおかしいのでしょうか。

 なお、この検察審査会のメンバーがどこの誰かどころか、生年月ですら一切秘密
のベールに包まれており闇に隠されています。にもかかわらず、先般はTBSテレ
ビの「クロス23」とかいう番組にメンバーの1人が登場し、議決は正当であった
と述べたようです。どうやって、TBSテレビは、その人を探り当てたのでしょう
か。これでは、全日空ホテルでの5000万円手渡しの衝撃映像と同じく、「やれ
せのTBS」という世間の評価のほうを信じてしまいます。


2012.04.27(金)【小沢無罪判決に思う】(金子登志雄)

 無罪でしたね。

 法律的には誰がみても完全無罪の事件でしたが、もともとはマスコミを巻き込ん
での民主党の政権取り阻止を目的に始められた政治事件でしたから、3割くらいは
有罪の可能性を否定できないと思っていましたが、さすがに、無茶な判決は出せな
かったようです。

 私が政治裁判でも7割の無罪可能性を予測しはじめたのは、石川氏の隠し録音で
流れが大きく変わってきたこと、検察が起訴した事件ではないため裁判所も無罪を
出しやすかったであろうこと、もし有罪にしたら、高裁段階で、ますます検察や最
高裁事務局の不正が暴かれしまう可能性があったので(最近は、検察審査会は会合
していないという疑惑まで出ていました)、そろそろこの問題を収束させたいとい
う意識が司法当局に出てきていると読んでいたためです。

 小沢氏支援者の中には、公訴(起訴)棄却にしなかったことなどを非難する向き
もあるようですが、この点は裁判所が指定弁護士側にある程度の花を持たせただけ
でしょう。そうでもしないと、負けた側が怒りで控訴(上訴)してしまいますから、
それを避けたのだと私はみています。

 反小沢氏側からは、無罪判決が出ても、政治的道義的責任は免れないとか、4億
円の説明責任を果たしていないなどといまだに責める向きもあるようですが、あき
らめの悪いことです。単に10月に購入した農地の仮登記を本登記にした翌年1月
に経理処理しただけの実にたわいもない事件ですし、小沢氏が相続財産などで個人
として4億円を持っていたからといって、その説明責任などあるはずがありません。
〇〇代議士が〇〇万円しか持っていないことに説明責任がないのと同じです。

 4億円程度は自由に動かせないで、オバマ大統領やプーチン首相、あるいは、あ
の北の将軍様と、対等に渡り合えるはずがありません。政治家に清貧を求めるのは
経営者に経営能力を求めないのと同様に間違いです。

 それよりも、こんな馬鹿げた事件に検察が30億円も使ったことのほうが余程問
題にすべきだと私は思うのですが、検察から情報を欲しい大手マスコミ記者クラブ
は一切無視のようです。これも困ったものです。マスコミに反省を求めるのは間違
いなのでしょうか。 


2012.04.26(木)【立花さん、お大事に】(金子登志雄)

 ぎっくり腰ですか。たいへんですね。

 私は、なったことがないので、ぎっくり腰のイメージがわきません。40代の頃、
急に腰が痛くなり、かがんでしか歩けない状態になったことはありますが、数日で
直りました。あれがそうだったのでしょうか。

 40肩、50肩は、2、3度経験しましたが、いずれも利き腕ではないほうでし
たので、どうということはありませんでした。

 花粉症も煙草を吸っているので(?)なったことがありませんし、ここ10年以
上、眼科・歯科・耳鼻科以外は無縁であり、丈夫な体をもらったことを親に感謝し
ています。

 もっか気にしているのは、メタボが1番です。生涯で一番太っており、3桁体重
まで、あと5キロに近づきました。

 運動は体に悪いという固い信念をもっていますから、やせるために、さまざまな
サプリメントを試してみるのですが、サプリメントを飲んでいるから安心だという
気持ちが先行してしまうのか、かえって太ってしまいます。

 しかし、太れるということは健康な証拠と思い、今日も不規則な生活をしようと
思っています。

 「健康とは健康のことを意識しない状態である」(金子)
 
 うん、我ながら名言です。


2012.04.25(水)【手すり】(仙台・立花 宏)

 先日、落としたタオルを拾おうと床に手を伸ばしたとき、不意に、腰に違和感を
感じました。ぎっくり腰です。

 多少、痛みはあったものの、最初はそれほどひどくなかったので、痛みを我慢し、
腰をかばいながら、仕事をしていました。

 ところが、時間がたつにつれ、症状がひどくなり、椅子から立ち上がるのにも、
苦労する状態にまでなりました。

 一日の仕事を終え、家路に就くころには症状がさらに悪化し、腰が痛くてまっす
ぐ立つこともできません。また、普段は、持つのにそんなに負担を感じない通勤用
の鞄も、その重みがズシリと腰にひびきます。鞄はあきらめ、事務所に置いたまま
帰ることにしました。

 いつもは、事務所から家まで、約30分かけて徒歩で通勤をしていますが、さす
がに無理と思われたので、バスに乗って帰ることにしました。

 しかし、バス停までのほんの短い距離を歩くのにも一苦労です。すいすいと歩い
ている周りの人達の流れにのれず、歩道の端をのろのろと歩きます。ちょっとした
のぼり坂や段差も負担です。

 また、階段をのぼるときには、腰にかなりの負担がかかり、階段の手すりに縋り
つくようにしてのぼりました。これまで、これほど階段の手すりが有難く感じられ
たことはありません。

 そのように苦労してその階段をのぼるうちに、法律にかかわる私たち司法書士に
は、法律に関する手すりのような役割もあるのではないか、という思いが湧いてき
ました。

 私たち司法書士に仕事を依頼してくださる方はもちろん様々です。中には、急に
法律に関する手続をしなければならなくなり、その手続を負担に感じ、苦痛すら感
じて依頼される方もいらっしゃるのではないかと思います。階段の手すりのように、
ささえになり、その苦痛を少しでも和らげる。司法書士には、そんな役割も期待さ
れているのではないだろうか。そんな風に感じられたのです。

 そして、その役割を果たすためには、安心して縋(すが)りつけるよう、しっか
りとした手すりでなければならない。縋りついてみたら、ミシッと軋んでしまうよ
うな手すりだったら、安心して縋りつけません。

 法律に関する手すりのような役割を必要とする方に、安心して身をまかせてもら
えるよう、しっかりと役割を果たせる司法書士でありたい、そんな思いを強くした
出来事でした。


2012.04.24(火)【株式併合の株主通知】(金子登志雄)

 株式併合の質問を受けましたので、何かよい事例はないかとネット検索いたしま
したら、こんな質問をみつけました。

---------------------------------------------------------------------------
 株式の併合をする場合、20日前までに反対株主に買い取り請求権を与えるため
の通知が必要ですが(116条)、改めて2週間前までに通知を要する(181条)
理由が分かりません。
---------------------------------------------------------------------------

 皆さんだったら、どうお答えしますか。ネット上の回答は、次のとおりであり、
会社法のミスだというものでした。
 
   
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7271857.html

 この質問に正しく答えられる方は、会社法に関しては、中級以上でしょう。ネット
の質問も回答は、会社法が施行された平成18年や19年ならともかく、現時点では
初級並としか評価できません。

 そもそも会社法116条(1項3号)は種類株式発行会社で、ある種類株式の株式
併合を決定する場合に、その決定で不利益を受ける種類株主の種類株主総会の決議を
要しない旨の会社法322条2項を根拠とする定款の定めがある場合に限っているこ
とを全く分かっていません。

 例で説明しましょう。

 種類株式発行会社ではない普通の会社が株式併合するときは、株主総会の決定と会
社法181条の効力発生前2週間前の株主通知が必要です。116条は無関係です。

 普通株式8と優先株式2を発行している会社が優先株式を併合するときは、株主総
会の決定と株式併合により議決権や優先配当で不利益を受ける優先株主の種類株主総
会が必要であるところ、322条2項の定款の定めがあれば、この種類株主総会が不
要になります。

 これでは種類株主の利益を守れないから、買取請求という問題に発展するわけです
が、種類株主総会をしなくても株主総会で決議するのだから、いいじゃないかとは思
わないでください。普通株式8と優先株式2では、株主総会で負けてしまいますから。

 なお、これが優先株式の株式分割の話だったとすると、買取請求できるのは普通株
式になります。株式分割の対象となった優先株式に不利益はありません。


2012.04.23(月)【上手な叱られ方】(金子登志雄)

 先週は小沢一郎氏の秘書だった現・衆議院議員石川知裕(ともひろ)さんの最新
著書である『雑巾がけ』を読んでみました。彼は、裁判費用を工面するため(もち
ろん親分?は1円も出してくれません)、一生懸命に本を書いていますし、先般、
あの5000万円事件の全日空ホテルで、結婚式をあげたばかりなので、お祝いの
意味もありました。といっても714円ですが。

  
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4106104660.html

 内容は、学生時代から政治家を志し、卒業後憧れの小沢事務所で書生生活をした
ことやその後の秘書時代の修行の内容が中心でしたが、2点ご紹介しましょう。

 あるとき、小沢氏が宴席で不在の時、渡部恒三氏から電話があったので、電話に
出た書生の石川氏が「後でかけ直すよう伝えておきます」と返事をしたところ、帰
ってきた小沢氏に「俺が嘘つきになるじゃないか」と怒鳴られたとのことです。

 小沢氏は酒を飲んだ後は判断ミスをする可能性があるので緊急時以外は絶対に電
話しないのだそうです。さすがは一流のプロ政治家ですね。約束とウソに関しては
異常なほど厳しい人であることは小沢氏を支持する方の間ではよく知られた事実で
すが、ここまでとは驚きました。

 参考になったのは、石川氏の勧める「上手な怒られ方」の部分でした(以下は、
要約です)。
--------------------------------------------------------------------------
 相手が怒っているときには一区切りがつくまでは絶対に反論しないこと。ついつ
い、「でも」「しかし」と口を挟みたくなるが、絶対にやってはいけない。
 正論を述べて反論しても、相手は納得しない。「それはそうかもしれないけど、
そもそもお前の態度が悪い」と、別のところに矛先を向けてくるからだ。
--------------------------------------------------------------------------

 新入社員に教えておきたい内容ですね。


2012.04.20(金)【瑕疵の治癒?】(金子登志雄)

 会社法32条1項に次のように定められています。
--------------------------------------------------------------------------
 発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除
く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
 1 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
 2 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
 3 成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
--------------------------------------------------------------------------

 さて、AB夫婦が各50万円を出し合って2人で株式会社を設立するにあたり、
定款作成日が4月1日、Aが50万円を振り込んだ日が4月2日、Aに50株、B
に50株、1株あたりの払込金額は1万円、資本金は100万円と上記に従い定め
たのが4月3日、Bが50万円を振り込んだ日が4月4日だったという書面を提出
したとき、この会社設立登記は無事に終わるでしょうか。

 残念ながら、補正になります。理由は、4月3日にAの分は50万円だと定めた
のに、それより前にAが自分の分は50万円だと勝手に思い込み支払うのはおかし
いじゃないかという理屈です。

 しかし、Aが勝手に思い込んだのであっても、ABで事前に打ち合わせていたと
しても、Aは自分の分は50万円になるという想定のもとに先払いしただけで、結
果も予想どおりになったのですから、実体法的には、瑕疵(?)の治癒と判定され、
問題視されることはないでしょう。

 合併等の組織再編では、効力発生日までに全手続が済んでいれば、その順序は問
わないとされているのに、会社の設立手続だけは、こういう杓子定規な運用がなさ
れているのです。

 われわれ司法書士は慣れていますけど、弁護士さんあたりだったら、怒りまくる
ところかもしれませんね。弁護士さん、健康のため、登記は司法書士に任せたほう
がよいですよ。


2012.04.19(木)【商業登記専門司法書士】(金子登志雄)

 昨日の話題で思い出しましたが、不動産登記専門で商業登記を一切しない司法書
士、債務整理専門で登記を一切しない司法書士等は珍しくありませんが、商業登記
専門で不動産登記ですらしない司法書士というのは日本で何人いるのでしょうか。

 1人だけ私より年長の方を知っていますので、日本では私と2人かなと思ってい
ましたら、ある時、某駅で見知らぬ若い司法書士さんから挨拶されました。聞けば、
時折、私に質問電話(というより私の意見を聴取)してくる方でしたが、若いのに
商業登記専門だそうです。大事務所の中で商業登記を専門にしている方は何人か知
っていますが、独立開業しながら商業登記専門は、私の知る限り、これで3人にな
りました。

 いや、私よりすごいです。私のような兼業業務(会社役員やモノ書き業)をせず
に、包丁1本で生活しているわけですから。

 司法書士ならお分かりのとおり、商業登記で数十万円の報酬になることはめった
にありません。組織再編とか種類株式発行の大口増資でも頻繁に受託できればよい
のですが、役員変更等ばかりでは、よほど顧客数を確保しておかないと生活も大変
でしょう。

 しかし、不動産と違うのは、1回限りの客ではなく、リピーター客が多いという
ことです。特に子会社をいくつか持っている会社を顧客にすると、子会社からの相
談もあるので助かります。

 が………、ここ数年の合併再編で子会社の数がめっきり減らされてしまいました。
合併再編の仕事はうれしいけど、その後は見通しが暗くなります。やはり、私は、
兼業業務を捨てられそうもありません。


2012.04.18(水)【楽学/不動産登記法】(金子登志雄)

 不動産の「登記済証」(いわゆる権利証)制度が廃止され、「登記識別情報」に
変わった平成17年の不動産登記法の改正以来、不動産登記とは、ほぼ無縁に生き
てきました。不動産に関しては、年に1件か2件程度しか仕事がなかったので、新
しい制度に対する勉強意欲もわかなかったからです。

 ちょうど、多くの司法書士が、商業登記に関しては年に数件しか仕事がないので、
会社法に対する勉強意欲がわかず、今日に至っているのと同じようなものです。

 しかし、司法書士の看板を掲げながら、「登記識別情報」や「登記原因証明情報」
等の新しい用語に十分な知識がないのも恥ですから、遅ればせながら、富田氏の名
著『楽学司法書士不動産登記法』で、総論部分だけ目を通してみました。

 漠然としかイメージがつかなかった「登記識別情報」につき、やっと実感をもっ
て理解することができました。当該不動産に関する登記義務者かどうかの識別情報
であって、登記済証(権利証)に代わるものということですね。

 ついでに、抵当権・根抵当権の一部についても目を通しましたが、抵当権の処分
など分かりにくい部分まで具体例で説明してあり、実によくできた本でした。表紙
に「わかりやすく、されど深く」とあるとおりでした。

 昔とった杵柄で、普通の人の数倍の早さで目を通せますので、今週中にも全文に
目を通すつもりです。


2012.04.17(火)【恩人】(金子登志雄)

 昨日は、久々に中央経済社の拙著の前・担当編集者(定年退職済み)S氏とお会
いし、昔話を肴に、一杯やりました。

 S氏は、私どもの出版を快く引き受けてくれ、私や富田氏の名前を全国に売り込
んでくれた恩人です。彼なくして、いまの私もESGもありません。

 たまに読者の方から「どうやって中央経済社に接触したのか」と質問されますが、
特別なことは何もせず、ごく普通に中央経済社のホームページ上のメールに「私は
これこれしかじかの者ですが、商法改正の本を書いておりますので、出版をお願い
できますか」と入れただけです。

 それでS氏が当事務所を訪ねてきたのがご縁でした。当事務所と中央経済社が歩
いて10分の距離であったことと、私が過去にM&Aの本を2冊出していたことが
幸いしたようです。

 そこで書きかけの原稿をみせましたら、すぐにOKしてくれました。ありがたい
ことです。

 実をいうと、中央経済社の前に他の出版社に売り込んだところ、断られてしまい
ました。理由は、学者や弁護士の書いた商法の本が数百冊ある中で、格落ちの司法
書士ふぜいが商法の本を出しても売れるわけがないという判断のようでした。

 ところがS氏は、そういう考え方を全くせず、私の原稿を数枚みただけで、これ
は面白いと思ってくれたようです。

 ベテラン編集長でしたので、品のない題名である『これが新商法だ!これが新登
記だ』も社内の反対を抑え込んでくれました。

 その本のはしがきの最後に「気掛かりはただ一つ、………全国的な知名度に欠け
るわれわれの出版を快く引受けてくれた中央経済社のS法律編集部編集長のお立場
を悪くしないかと祈る心境でいる」と書いたのは本心です。もし、売れなかったら、
彼の出世にも響いたでしょう。

 S氏とのコンビで出した『親子兄弟会社の組織再編の実務』も先日7刷(7回目
の増刷)になりましたし、『「会社法」法令集』も第9版が印刷に入りました。よ
い相棒が退職し寂しいものです。


2012.04.16(月)【取締役選任権付株式】(金子登志雄)

 金曜日の夜から土曜日の朝にかけて、定款に種類株式を定める作業をいたしまし
たが、A社(非公開会社)に出資しようとする種類株主予定者(B)からの要求事
項(定款変更案)に「第1種優先株主を構成員とする種類株主総会において、取締
役2名を選任することができる」という条項があったので、さまざま考えてしまい
ました。

 BとしてはB側の取締役を2名送り込むから、残りは株主総会で選任してほしい
ということでしょうが、会社法はこれを認めていません。このような場合は全取締
役を種類株主総会で選任しなければならないからです。したがって、残りは普通株
主との共同の種類株主総会で選任するよう提案しました。

 一番考えてしまったのは、A社の既存取締役abcdの身分はどうなるのかです。

 旧商法では、このような種類株式を定款に定めると、既存取締役は任期満了退任
することになっていましたが、会社法には、そのような規定がありません。したが
って、株主総会で選任されたabcdは、このような種類株式が発行された後も、
やはり株主総会で解任することになるのでしょう(※このあたりにつき解説本があ
りましたら、ぜひお知らせください)。

 A社では、定款変更と同時に、新取締役efgを選任したいとのことでしたが、
定款変更の効力発生が先であれば、種類株主総会で選任しなければなりませんので、
ここは、定款変更の効力の発生を後日とし、株主総会で選任するよう提案しました。

 種類株式を発行する会社は少なくありませんが、会社も出資者も種類株式を十分
に理解しているとはいえないのに、使いこなせるのでしょうか。法務局さえ十分に
理解していないので、おかしな登記も多々ある状況です。


2012.04.13(金)【代表取締役選任決議の効力】(金子登志雄)

 昨日に関連した問題ですが、A社には取締役甲乙丙丁(甲は代表取締役)がおり、
平成24年3月31日をもって甲が取締役を辞任するというので、平成24年3月
30日の取締役会で乙を代表取締役に選任し「選任の効力は平成24年4月1日」
とした場合に、この選任は認められるでしょうか。

 商業登記倶楽部の実務相談室によると、4月1日時点で甲が取締役ではないので、
選ぶ権利のない者が参加していたことになるから、この決議には問題ありという某
登記事務官の意見があったそうです。

 とんでもない意見です。この意見の行き着く先を考えると、期限付総会決議は株
主に異動があったから無効ということになりかねません。

 乙代表取締役を選任する決議時点では、甲も取締役で選任権限を持っていたわけ
ですから何の問題もなく有効な決議のはずです。

 上記の見解は、取締役の任期切れ以前に取締役の重任を前提に任期切れ後の代表
取締役を予選した場合の先例と混乱したものでしょう。


2012.04.12(木)【任期計算の「選任後」】(金子登志雄)

 旧商法時代は、取締役や監査役の任期は「就任後〇年」という定め方でしたが、
会社法になってからは、「選任後〇年」と起算日が変わりました。就任時期は、被
選任者次第で変わりますから、選任機関側の行為を基準にしたわけです。

 では、定款に会社法332条1項本文と同様に「取締役の任期は、選任後2年以
内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとす
る」とある3月末日を決算期とする会社(A社)があったとします。

 A社で、平成24年3月30日の臨時株主総会でに取締役甲を株主総会で選任し
「選任の効力は平成24年4月1日」とした場合は、甲の任期はいつまででしょう
か。

 「選任の効力は平成24年4月1日」なら、任期は平成26年5月か6月の定時
株主総会終結までだと思うでしょうが、登記実務は、「選任後」を「選任決議後」
と解釈し、起算日を平成24年3月31日にしますので、満2年後の平成26年3
月31日午前0時以前に終了する事業年度末日を基準に、任期は平成25年の定時
株主総会の終結時までだとします。

 すなわち、「選任後」とは、選任決議の効力発生後ではなく、事実行為としての
選任(予選)決議時以後という解釈のようです。

 これに対しては、松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』などで疑問を
呈していますが、補欠監査役の任期の起算日などとの整合性から、「選任決議後」
で実務は運用されています。

 今年の4月1日は日曜日でしたので、3月中に株主総会を開催し、「選任の効力
は平成24年4月1日から」とした会社が多数存在しますが、来年の定時株主総会
で任期切れに気づくでしょうか。


2012.04.11(水)【先駆け(登録免許税)】(金子登志雄)

 4月には会社の設立(組織変更、新設分割や株式移転等を含む)が多いのですが、
その中でオンライン申請を実行した司法書士の方のうち、かなりの数が「補正」に
なったと思います。私もやってしまいました。

 株式会社の設立の登録免許税は原則として15万円のところ、オンライン申請で
は4000円安くなるはずだったため、いつもどおり、金146,000円で申請
いたしましたところ、担当法務局から「4月からの値引き額は3000円だよ」と
いわれてしまいました。

 
http://www.moj.go.jp/content/000011324.pdf  の(※9)です。

 きっと法務局内部では、注意せよという連絡網が回ったのでしょうが、司法書士
会では回ったのでしょうか。

 上記をみると、不動産登記でも値引き額が変わりましたから、補正の「先駆者」
は多かったことでしょう。

 私も名誉の先駆者になれました。まさに「先駆け」です。

 本欄をみた全国の司法書士の皆さん、お気をつけくださいませ。


2012.04.10(火)【橋下ツイッター】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、大阪の橋下市長と朝日新聞がケンカをはじめたようですね。
朝日新聞の4月4日付社説が消費税増税をめぐり反対する小沢グループを批判した
ことに対し、橋下氏は朝日新聞を「狂っている」と批判したとか。

 4月6日のツイッターには、こんな文章もありました。
--------------------------------------------------------------------------
 朝日、読売は自分たちの声こそが絶対に正しいという思い上がりも甚だしい。選
挙を通じた民主政を選択している以上、たとえ不合理であっても国民の生の声を軸
にするのは当然だ。それをポピュリズムと呼ぶなら、北朝鮮のような専制体制を選
べばよい。日本の学者は民主政を軽視する人が多くなった。

 今の朝日と読売は、自分たちが正しいと思っていることをとにかく政治にやれと
要求する。日本最大の圧力団体だ。政治もそれに屈する。朝日と読売の考えは国民
の考えを代弁していない。そして国民の生の声を政治が汲もうとすると朝日と読売
はポピュリズム!と批判する。

  
http://twilog.org/t_ishin/asc
--------------------------------------------------------------------------

 ご立派の一語です。聞くところによると、政治家は大手の新聞記者にぺこぺこす
るようですが、橋下氏は、面と向かって戦いを挑んだわけですから、すごい勇気で
す。

 「朝日と読売の考えは国民の考えを代弁していない。」という部分は全くそのと
おりですが、朝日と読売が書くことによって、それが国民全体の考えと勘違いし、
無意識に同調しようという国民性があることも事実です。それで、意図的な質問を
ぶつけて毎週のように世論調査をし、「ほれ、内閣支持率はこんなに減りましたよ」
と、鳩山内閣を追い込んだのも大手新聞でした。

 さすがにこの追い込みの手法はネアカの橋下さんには通じませんし、笑い飛ばさ
れてしまうことでしょうが、何を発言しても、大手新聞にも恨まれずにいるとは、
橋下さんは実に得な個性をしています。

 ぜひ大新聞から、あの小沢さん並に総攻撃されるよう橋下さんにも頑張っていた
だきたいものです。

 さっそく、橋下ツイッターをお気に入りに登録しましたが、毎日、膨大な分量で
すから、どこまで目を通せますか………。


2012.04.09(月)【理の崩壊】(金子登志雄)

 国民新党の分裂騒ぎをみていますと、権力側である与党にいたいという権力の魔
力は想像以上に強いのでしょうか、とうとう、恩のある亀井代表を追い出してしま
いました。まるで、戦国時代の下剋上をみる思いです。

 判官びいきの国民性からは、筋を通した亀井さんに対する応援が多いようですが、
一時的とはいえ、負けは負けでしょう。ネットでは筋を通した女性の亀井さん人気
が急上昇のようです。

 それにしても、最近の政界を中心とした風潮は、勝てば官軍で、理念も筋も道徳
もどこかにすっ飛んでしまったようです。

 消費税は4年間上げない、その前に行政の無駄を省く、シロアリを退治して、マ
ニフェストを「命がけ」で守れと絶叫していた民主党がいまや党首自ら「命がけ」
で消費税アップに邁進中です。党の決定も強行採決以上の非民主的なものでした。

   
http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo

 権力の横暴をチェックする使命を持つマスコミが公約違反の民主党執行部を叩く
べきなのに、全く逆で、消費税に反対し執行部に逆らうのはあの悪党(?)集団の
小沢グループだという政策ではなく人間関係の政局問題に歪曲している始末です。
少なくとも、自民党政権時代の新聞は、反権力というポーズをとっていましたが、
いまは、それさえしておらず、なりふりかまわずという無謀ぶりです。

 仮想敵を作り、その敵を手段を選ばず(上手にマスコミを巻き込み)徹底的に叩
き、仮想敵が正論を主張しようと、それに味方する奴は非国民だという風潮が小泉
さんの時代から出てきたようです。

 国全体から見れば野党的な立場ですが、大阪市長の橋下さんの手法もこれと同じ
であり、権力に逆らうと、いつ仮想敵側に回されるかと、生きにくい時代になりま
した。

 しかし、逆に言えば、いま日本は、旧制度が制度疲労し、新しい日本になるため
の産みの苦しみを味わっているのかもしれません。政権交代によって、誰が本当の
権力者か、誰が本物の政治家かがあぶり出されてきたようです。

 こういう変化の激しい時代には、目先の利益を求めても(目先の勝ち馬に乗って
も)、数年先には大失敗の結果を招きかねません。「生きにくい時代=慎重な選択
が必要な時代」と言い換えておきましょう。


2012.04.06(金)【中間試案への論評その15(最終回)】(金子登志雄)

 最終回の論評その15は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■いわゆる人的分割における準備金の計上
 吸収分割株式会社又は新設分割株式会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分
割設立会社の成立の日に剰余金の配当(配当財産が吸収分割承継会社又は新設分割
設立会社の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合には,会社法第44
5条第4項の規定による準備金の計上は要しないものとする。

■発行可能株式総数に関する規律
@ 新設合併等における設立株式会社(会社法第814条第1項)の設立時発行株
 式の総数は,発行可能株式総数の4分の1を下ることができないものとする。た
 だし、設立株式会社が公開会社でない場合は、この限りでないものとする。
A 公開会社でない株式会社が定款の変更により公開会社となる場合には、当該定
 款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数は、発行可能株式総数の4
 分の1を下ることができないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 人的分割(分割型会社分割)は、会社法の構造では、「会社分割+剰余金(=受
領株式又は持分)の配当」ですが、この現物配当でも、その1割を準備金に計上せ
よという会社法445条4項は、あまりにも行き過ぎだという反省に基づく改正案
が前者であり、後者の@は立法の不備の修正、Aは行き過ぎの調整でしょう。

 上記の@については、気付いていましたか。確かに、会社法814条は4倍制限
の規定である37条を適用除外しています。こういう中間試案をみますと、いまの
うちにやっておけと読んでしまう方も少なくないことでしょう。


2012.04.05(水)【Tセンセとバッタリ】(金子登志雄)

 昨日、横浜市内の某公証人役場に行きましたら、背中から、突然、「金子先生」
と呼ばれてしまいました。

 一応、私は司法書士業界では有名人のためか、法務局等の場所で、よく声をかけ
られるので、一瞬、「声を掛けてくれた人の名前を失念していたらどうしよう」と
不安が先走りましたが、ふり向けば、何と、すぐに名前が出てくる、あのプロレス
大好きおじさんのTセンセではありませんか。

 こんな偶然というのがあるのですね。Tセンセとは頻繁に会っていると思われて
いますが、1年に数回しか会っていません。その人に、はじめて訪問した東京都内
ではない場所で会ってしまったのです。

 私は、定款認証の用事であり、いつもは別の公証人役場を使っているのですが、
一昨日の強風雨のためか、公証人が早帰りしたらしく(無理もありません。当社も
午後3時には閉店しました)、認証は翌日になるといわれ、別の役場にし、電子申
請し、昨日、委任状等を届けてきたというわけです。

 Tセンセとは喫煙仲間でもありますから、公証人役場の近所の飲食店で軽食をと
りながら、ニコチンを充填してきたことはいうまでもありません。

 私はその足で横浜地方法務局に行ってまいりましたが、ビルの管理が厳しくなっ
ていましたね。通行証(?)をもらって、中に入りました。


2012.04.04(水)【中間試案への論評その13】(金子登志雄)

 飛ばしてしまった論評その13です。

--------------------------------------------------------------------------
■募集株式が譲渡制限株式である場合等の総数引受契約
 募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合
(会社法第205条)であって、当該募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式
会社は、株主総会の特別決議(取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議)に
よって、当該契約の承認を受けなければならないものとする。ただし、定款に別段
の定めがある場合は、この限りでないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 取締役会設置会社である非公開会社が譲渡制限株式を第三者割当てにより募集す
る際は、次の順序です。

 @ 株主総会で募集決議(Aさんに声をかけようという199条の決議)
 A Aさんに申込まないかと声掛け(203条1項)
 B Aさんから株式申込み(203条2項)
 C 取締役会でAに割り当てるという決議と割当通知(204条)
 D Aは株式引受人となる(206条)
 E Aは払い込み(208条)、株主となる。

 ところが、会社法205条の総数引受契約だと、「契約=申込み+承諾(割当)
だから、A〜Dを省略できます。

 とすると、Aが株主として相応しいかの取締役会の判断(C部分)が省略されて
しまい、譲渡制限株式の譲渡(新株主の参加)に会社の承認を要するという建前か
らして、まずいじゃないかということで、中間試案の考え方が生じるわけです。

 しかし、現実には、誰と総数引受契約を締結するかは、株主総会決議の段階で明
確にされていることがほとんどであり、実務上の不都合はありません。法の体系整
備の1つにすぎない改正案です。司法書士の立場からは、登記の添付書面が1つ増
え(取締役会議事録)、面倒だなという気がします。


2012.04.03(火)【4月1日付役員変更】(金子登志雄)

 3月決算会社にとっては、一昨日が年初だったため、一部の役員を交代する例が
少なくありませんでした。

 単に取締役の辞任や就任であれば、3月中の総会で新役員を選任し、選任の効力
を4月1日にすれば足りますが、困ったのは、代表取締役たる取締役Aが3月31
日に辞任し、後任のBが4月1日付で選任され、かつ4月1日付で代表取締役に選
任する場合です。

 Bが取締役に就任していない3月に取締役会を開催し代表取締役を選任すること
はできません。取締役でない者を選任することになるからです。4月1日に取締役
会を開催する場合には、日曜日のため出席人員を確保できるかどうかという問題だ
けでなく、退任済みのAを参加させて会社実印を議事録に押すことができないので、
取締役会出席者全員の個人実印の押印とその印鑑証明書の添付という問題が生じま
す(商業登記規則61条)。

 この対策に、Aの辞任を4月1日の後任代表取締役の就任後にしたり、逆にBの
選任等を3月30日にしたりと各社とも苦労していました。

 本欄読者の皆様なら、日曜日に電話会議をすればよいじゃないかと思うかもしれ
ませんが、その設備を設けている会社は、まだ多くありません。会社法370条の
書面による取締役会決議にすればよいじゃないかというご意見もあるでしょうが、
日曜日に書面を交付し回収するのは困難ですし、そもそも定款にこれを許容する条
項が必要です。

 ああだ、こうだという工夫をして、ノウハウは生まれて行くものですが、皆様の
場合は、どんな工夫をいたしましたか。


2012.04.02(月)【サツカン(新人研修)】(金子登志雄)

 今日は、当社の入社式です。新入社員が一生忘れない日になるだろうと思えど、
私自身は入社式のことを覚えていません。

 新人研修のことはよく覚えています。大学の先生と違い、実務家講師のしゃべ
りは具体的で分かりやすいと思ったものでした。

 不動産や株式(証券)に興味があったため、信託銀行に入社したわけですが、
お札のニセ物を使って、枚数を数える訓練は忘れられない思い出です。

 あれ、一般の方は、感心してみてくださいますが、1週間でできるようになり
ます。

 下記↓ですが、ヨコカンもタテカンも、この動画の早いと遅いの中間くらいの
スピードで、私はいまでも数えることができます。

(早い)
  
http://www.youtube.com/watch?v=WoxZoft6LMA

(遅い)
  
http://www.youtube.com/watch?v=R-U1K1MmTlI&feature=fvwrel

 上記の動画のヨコカンは、1度に5枚単位で50枚なら10回、100万なら
20回ですが、私のいた信託銀行では、1度に4枚ずつ数えました(1度に手に
する枚数は50枚程度にせよともいわれました)。このように、各銀行によって
流儀の相違があります(上記の動画でもヨコカンで親指を起点に扇形にするのか
の相違がありますし、確か郵便局方式は、動画とは逆方向に扇形を開く方式だっ
たと思います)。

 私のいた頃は、機械が正確でなかったこととニセ札を指の感触で探すため、手
で数えていたわけですが、いまは機械も正確になったようで、見事なサツカンを
みる機会もなくなりました。さびしいものです。


2012.03.30(金)【基準日と反対株主の範囲】(金子登志雄)

 昨日のお客様から、「中間試案の論評その12から、いきなり14に飛んでいる
よ」との指摘を受けてしまいました。論評13を飛ばしてしまったようです。それ
は来週に掲載しましょう。

 さて、会社が行おうとしている一定の事項〈例えば、吸収合併)に反対の株主は、
株式の買取請求ができます。

 では、反対株主とは、どういう人をいうかというと、吸収合併存続会社でいえば、
次のとおりであり、合併以外でも同様の規定ぶりです。

--------------------------------------------------------------------------
1号 吸収合併等をするために株主総会の決議を要する場合 次に掲げる株主

 イ 当該株主総会に先立って当該吸収合併等に反対する旨を当該存続株式会社等
  に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該吸収合併等に反対した株主
  (当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)
 ロ 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

2号 前号に規定する場合以外の場合すべての株主
---------------------------------------------------------------------------

 吸収合併承認の決議が6月の定時総会で、株主を確定させるための基準日が3月
31日だとしたとき、基準日後の4月1日に株主甲から株式を譲り受けた乙は、基
準日後の株主のため、定時株主総会に出席できません。株主総会で合併に反対する
ことができないわけです。

 では、Bは、1号ロあるいは2号で、買取請求を行使できるでしょうか。

 条文からすると、1号が株主総会を開催する場合で、2号はそうではない場合
(簡易合併や略式合併)と読めますから、2号には該当しないようです。

 1号ロに該当するかについては争いがあります。

 否定説は、1号イは議決権株式、1号ロは議決権制限株式を意識した規定であり、
乙は1号株主だから不可(譲渡人甲が株主総会に出席してしまう可能性もある)と
説き、肯定説は、文字どおり、乙は「当該株主総会において議決権を行使すること
ができない株主」だと主張します。

 私は否定説ですが、乙が株主になった後の5月に合併が決まったのに、総会にも
出席できず、買取請求もできないのは気の毒だという気がしないでもありません。

 合併議案だけ特別に臨時株主総会にし、5月末日あたりを基準日にすれば、こう
いう不都合の多くを避けて通れるのですが、総会開催の経費が余計にかかるので、
企業は採用しないでしょう。もうちょっと、明確な規定にしてくれるとよいのです
が………。


2012.03.29(木)【中間試案への論評その14】(金子登志雄)

 論評その14は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■監査役の監査の範囲に関する登記
 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会
社について、当該定款の定めを登記事項に追加するものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 これ、どんな登記になるかと考えると、

   監査役 〇〇〇〇
    (会計限定)

 などという社外監査役型の登記ではなく、

   監査役設置会社(会計限定)

 などという機関設置の登記でしょう。

 中小企業の大多数が会計限定監査役でしょうから、影響の大きい改正案であり、
登録免許税3万円の新たな負担が課せられますので、いまさら何だと思わざるをえ
ません。

 弁護士会は、取締役の責任を追及する代表訴訟の際に、監査役に「取締役を訴え
よ」と請求してよいのか判断つかないから(会社法386条)、この中間試案の提
案に大賛成のようですが、監査役の権限の範囲を知りたかったら、定款を閲覧した
り、会社や監査役に問い合わせれば済むことですから、これだけの理由では、登記
の必要性があるのか疑問です。

 落とし所は、登録免許税を無料にすることと、登記懈怠に対する緩和策でしょう
が、前者の権限は財務省管轄ですから、難しそうですね。

 この不況のときに民主党執行部はマニフェスト違反の消費税を決め、法務省筋は
新たな登録免許税を課そうと中間試案を発表する………庶民及び零細企業には、厳
しい時代が来そうですね。


2012.03.28(水)【中間試案への論評その12】(金子登志雄)

 論評その12は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
会社分割等における債権者の保護
■詐害的な会社分割における債権者の保護
 分割会社が承継会社等に承継されない債務の債権者(「残存債権者」)を害する
ことを知って会社分割をした場合には、残存債権者は、承継会社等に対して、承継
した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるものとする。
ただし、吸収分割の場合であって、吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時
において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。
(注)分割型を除く。
--------------------------------------------------------------------------

 債権者甲   乙
     \ /
      A社―――――――――→B社

 A社が一部の事業(事業債務として乙からの債務あり)をB社に吸収分割すると
き、債権者乙に対しては、債権者保護手続がなされますが、甲にはなされません。
なぜなら、乙にとっては債務者がAからBに変更する不利益がありますが、甲にと
っては依然Aが債務者であり、Aは吸収分割の対価を受領するため、Aの純資産額
も変わらないからです。中間試案でいう残存債権者とは、甲のことです。

 しかし、この吸収分割が甲に不都合な場合には、甲は民法424条の詐害行為取
消権(債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁
判所に請求することができる権利)を行使できると解されています。

 それにもかかわらず、中間試案が残存債権者甲の保護を会社法に定めようとして
いるのは、民法424条の要件効果では甲の保護として不十分だということです。

 趣旨には賛成ですが、組織再編を推進する私の立場からは、規定を設けることで、
会社分割への委縮効果にならないかが気になるところです。


2012.03.27(火)【桜の季節】(仙台・立花宏)

 先日、不動産決済の立会に向かうため、駅で地下鉄を待っていた時のことでした。
きれいな桜色のスプリングコートを羽織った若い女性が、携帯電話で誰かと話をし
ているのが目に入りました。

 「受かってたよ。うん、ありがとう。」本当にうれしそうに話をしています。ど
うやら、大学の合格発表か何かの帰りなのでしょう。仙台では桜のシーズンはまだ
少し先ですが、一足先に、満開の桜を見ることができたような、そんな気持ちにな
りました。

 「ああ、この季節なんだなあ。」となにか懐かしいような気持ちになりました。
そして、ちょっとだけさびしい気持ちになりました。

 桜色のスプリングコートを羽織った若い女性を見て、予備校で出会ったあの女の
子が思い出されたのです。

 20年以上前のこの季節のことです。私は大学受験に失敗し、周りに対して、必
要以上にコンプレックスを感じていたように思います。世を拗ねる、そんな気持ち
だったと思います。おそらく、大学受験に失敗しただけでなく、予備校のクラスを
決める試験の結果、同じ高校の同窓達より1ランク下のクラスに入学することにな
ったことも影響していたのでしょう。極力、高校の同窓達に会わないようにさえし
ていたと思います。

 予備校のクラスごとの入学ガイダンスが行われたとき、私は暗い気持ちで席に座
っていました。一通り、説明が終わったので、高校の同窓達に顔を会わせないよう、
そそくさと帰宅しようと準備していると、隣に座っていた女の子が明るく声をかけ
てきました。

 「来年、どこを受けるんですか?」
その女の子は、きれいな桜色のカーディガンを着ていました。

 「地元の○○大学教育学部だよ。」
と無愛想に答えたような気がします。○○大学は地元では難関大学とされていまし
た。私が入学した予備校のクラスは、その○○大学より下のランクの大学を対象と
したクラスとされていましたので、なんとなく答えにくいな、と感じながらそう答
えました。

 「あっ、一緒だ。じゃあライバルだね。これからよろしくね!」

 その時から、私はその女の子を意識するようになりました。

 その女の子は、いつも桜色の衣服を身に着けていたように思います。

 きっと桜色が彼女の好きな色だったのでしょう。

 その女の子は成績がよく、本来、上のクラスにいるべき生徒だったように思いま
す。カリキュラムの区切りのタイミングで行われる模擬試験では、その女の子はい
つもクラスでトップでした。

 「どうだった?」

 試験のたび、その女の子は声をかけてきました。

 高校の同窓達や周囲の人達と距離をとっていた私にとって、その女の子は、予備
校時代、唯一、会話をする人間だったかもしれません。

 「あんまりよくなかった。」

 いつも無愛想に、そんな答えしかできない自分が情けなく思えていました。

 その女の子に追いつけるよう、私はそれまでにないくらい一生懸命勉強しました。
そして、その女の子が「これ、いいよ!」と言ってくれた参考書を使ったりもしま
した。

 あっという間に季節は巡って、予備校のカリキュラムは1月に終了となりました。
予備校のカリキュラムの最後の日、

「じゃあ、大学で会おうね!」

 と、その女の子に声をかけられました。

「うん、約束だよ!」

 それまで、その女の子に声をかけられても、いつも無愛想な態度をとっていた私
は、初めて素直に言葉を返したように思います。

 そして、そのときもその女の子は桜色のカーディガンを着ていたように思います。

 3月の合格発表の日、私は、大学のキャンパス内に掲示された合格者の名前の中
に自分の名前を見つけました(当時は、合格者の名前も発表になっていました。)。
しかし・・・。

 その女の子の名前は見つけることはできませんでした・・・。

 それ以来、私はこの季節になると、その桜色が似合う女の子のことを思い出すの
です。

 そして、ちょっとだけ、さびしい気持ちになるのです。

 一足先にそのキャンパスで咲くはずだった桜が咲かなかったことを思い出して…
……。


2012.03.26(月)【市川寛著『検事失格』】(金子登志雄)

 日曜日はわが母校(群馬県立高崎高校)が甲子園に登場したので、テレビで応援
しましたが、残念ながら完敗でした。私の高校時代は野球部員が9人いないので、
試合のときは臨時要員を募集していたくらいですから、選抜であれば、出られるほ
どになっただけで十分でしょう。

 さて、表題の本を読んでみました。

 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4620321141.html

 前々から題名に興味を持ち、購入済みでしたが、何となく一連の検察の不祥事に
関する便乗商法かと思い、目を通さないでいたのですが、とんでもない真面目な本
でした。

 著者は、野心家(検察の世界では政治家や公務員を起訴し有罪にすると出世でき
る)の上司がはじめた冤罪事件(佐賀市農協背任事件)に、部下として主任検事を
やらされ、冤罪と知りながら、取調べで「ぶっ殺すぞ、この野郎!」と暴言を吐き、
虚偽の自白をさせた元検事でした。

 この程度の暴言が取調べで日常的になされていることは冤罪に関心のある方なら
誰でも知っている事実ですが(よく行われるのは椅子を蹴飛ばされたり、壁の前に
顔をつけるように長時間にわたり立たされること)、市川氏は裁判の証人になった
際に、偽証せずに正直に暴言を認めたことで有名になってしまいました。だから、
検事を辞めざるをえなかったわけです。

 その後、隠れるように静かに生活していたのに、一連の検察不祥事で、またもや
表に出されてしまったようですが、下の写真のとおり、まだ40代です。検事にさ
えならなければ、平和で穏やかな生活を送れたことでしょう。

 
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/8078

 日本人が外国人から恐れられているのは、個人の道徳観が組織の論理の背後に隠
れ、組織になると平気で悪行を行うことです(あるいは組織を守ることが日本人の
道徳観になっています)。

 検察組織も同様で、人権よりも道徳よりも、組織の論理(無罪は検察の恥、無罪
を出すと出世できない)で、真面目な若者が改造されて行く過程が実に生々しく書
かれていました。この人も「運命の人」の1人のようです。

 会社勤務経験のある方なら、他人事ではないでしょう。組織に抵抗できないのな
ら、自分の所属する組織(会社)を選ぶことが道を誤らないコツかもしれません。
その点、自由業の司法書士は、組織の束縛がないので気楽です。

 なお、佐賀市農協背任事件の被害者側の本は、下記です。

 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/488345049X.html


2012.03.23(金)【「運命の人」最終回】(金子登志雄)

 昨日登場させた佐藤栄作元首相のノーベル平和賞の受賞に最も腹を立てた人は、
毎日新聞の西山元記者ではないでしょうか。

 彼は、佐藤内閣時代の沖縄返還の日米密約をすっぱ抜いた特ダネのために、国家
機密の漏洩で逮捕され、有罪となり(一審は無罪)、毎日新聞も辞めざるをえなく
なり、長年、運命を翻弄された人でした。

 彼をモデルとしたテレビドラマ「運命の人」は今週が最終回でした。その最終回
では、沖縄で少女が米軍に暴行されたとき、沖縄の新聞は被害者のプライバシーを
重んじて小さな記事にしたのに、本土のマスコミが被害者の人権などを無視して大
騒ぎした部分が特に印象に残りました。

 オセロ中島さんの問題でもそうですが、芸能人や弱い人(及び決して名誉棄損な
どで訴えないあの大物政治家)の人権などは一切無視して、あることないことを記
事にする日本のマスコミは異常です。リクルート事件の江副氏の場合も、知り合い
の女性が「江副の女」にされたり、佐藤優さんも「鈴木宗男の運転手」にされたり
(ご本人は運転免許を持っていない)、水谷建設が全日空ホテルで小沢秘書の石川
氏に1億円を渡す現場をみたなどという人が登場し再現シーンをテレビ放映したり
と、常軌を逸しています。訂正すらいたしません。

 背景には、売れればよい(視聴率が上がればよい)というマスコミの姿勢がある
のでしょうが、それを喜んで受け入れるわれわれ自身の人権尺度にもおおいに問題
があるでしょう(そのため、いま、反マスコミの姿勢を示すため、意識的に新聞を
購読しない、テレビはみない、情報はネットで、という人が急増中のようです)。

 米軍基地問題で沖縄を犠牲にし続けてきた日本は、原発問題でこれからはフクシ
マを犠牲にし続けるのではないかと危惧してしまいますが、そういうことを考えさ
せてくれただけでも「運命の人」はよい番組でした。毎日新聞系のTBSだったか
ら放映したのかもしれませんが………。再放送でもあったら、ぜひどうぞ。


2012.03.22(木)【造船疑獄事件】(金子登志雄)

 検察神話が生まれたのは、のちにノーベル平和賞をもらった佐藤栄作氏の収賄事
件で犬養法相による指揮権発動がなされてからですが、実は、検察が捜査に行き詰
まり、指揮権の発動を懇願したのが真相だとされています。

 ここまでは私も知っていましたが、米国CIAが絡んで同じ自由党の緒方竹虎氏
による吉田内閣への弱体化の意図があったことは、今回の「国会探検」を読むまで
知りませんでした。
 
 
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/03/post_294.html#more

 ここに田中良昭さんの言として、「国民から選ばれた政治家を『巨悪』(という
ことは国民は巨悪なのだ)、それを摘発する検察を『正義』と考えるマインドコン
トロールに冒され、国民は民主主義とは真逆の論理を信じ込んでいる」とあります
が、この視点について、皆様はどう思われますか。

 反論もあろうかと存じますが、私は実に鋭い見方であると同時に、これを「鋭い」
と評価しなければならないことに、日本の政治評論家やマスコミのレベルの低さが
あると思い、情けない思いを感じています。

 庶民のモノの見方には、「成功者(特に政治家・経済人)はきっと悪いことをし
たから成功したのに違いない、成功者が叩かれ潰されるのは、いい気味だ」という
嫉妬心があると私はみています(それを煽りたてるのがマスコミです)。

 「金儲け又は成功=悪」と信じる考え方の行く付く先が、「政治=悪」、「株式
投資=悪」、「不動産業やゼネコン=悪」になるのでしょう。マスコミ論調そのも
のです。

 金儲けや成功が悪なら、自由競争社会は否定されます。株式市場も自由経済の根
幹です。金儲けや成功者を好きにならなくても一向にかまいませんが、少なくとも
成功者の足を引っ張ることに喜びを感じる哀れな人間にはなりたくないものです。


2012.03.21(水)【小沢事件最終陳述】(金子登志雄)

 19日は小沢事件に関する被告人側の最終陳述が行われました。

 
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120319/k10013824111000.html

 小沢氏は「東京地検特捜部による本件強制捜査は、政権交代を目前に、野党第一
党の代表である私を政治的・社会的に抹殺することが目的であり、それによって政
権交代を阻止するためのものだったと考えられる」と述べたようですが、そう思っ
た人も多いようで、この事件で、検察司法神話が崩れ、小沢氏への支持者が増えた
のは皮肉な展開でした(マスコミ報道を鵜呑みする一般の方は「小沢=悪人」と思
い込んだ人が多いようですが、その一方で、小沢氏はそんなに悪い奴なのかと小沢
氏に関心を持ち調べた方は、逆に小沢ファンに向かったようです)。

 記憶に残るのは佐藤優氏の見立てでした。検察が2度も小沢氏を不起訴にしたと
き、ほとんどの専門家が「これで終わり」と評価したのに、佐藤優氏は「検察は、
『検察対民主党』の戦いを避けて、『国民対小沢』の戦いを仕向けて検察審査会を
利用する」と警告していたことです。石川議員に隠し録音を勧めたのも佐藤優氏で
したが、彼の先読み能力には、今更ながら驚嘆してしまいます。

 4月26日に判決が出るようですが、法律のプロの見立ては完全無罪ですが、小
沢秘書裁判で、推認に継ぐ推認で有罪にされた例があるので、全く予想もできませ
ん。この事件は、司法問題というより、政治裁判ですから、どちらに転んでも不思
議ではありません。
 
 有罪説は、裁判長が無罪を出したら権力から命を狙われるから無理だろうといい
(この場合の「権力」が何かについては諸説あります)、無罪説は、秘書裁判と違
って検察が2度も不起訴にしたのだから、裁判長も検察に気遣いする必要がないの
で無罪を出しやすいだろうというものです。

 どういう判決になるか全く分かりませんが、日本の司法どころか、日本の民主主
義にとって歴史に残る判決になることは間違いありません。


2012.03.19(月)【「会社法」法令集のルーツ】(金子登志雄)

 中央経済社の「会社法」法令集がそろそろ改訂時期なので、手にとって最後の頁
を開いてみましたたら、「2006年3月1日第1版第1刷発行」とありました。

(「会社法」法令集=2006年3月1日第1版発行)
 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502048801.html

 「あれ、おかしいぞ。平成17年に出版したはずなのに」と思い、調べましたら、
それは次のものでした。

(会社法(平成17年6月成立)=2005年7月5日発行)
 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502933406.html

 いや、間違いました。次が正真正銘の最初でした。

(会社法「現代化」法案=2005年4月15日発行)
 
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502929506.html

 7年前のいま頃に現代化法案が発表され、6月に法律として成立し「会社法」と
なり、法務省令が翌・平成18年に発表されたので、「会社法」法令集に書名を変
えたのでしょう。青字のミニ解説担当者なのに、そこまで気づいていませんでした。

 当時、中央経済社の編集者S氏から会社法の条文集を出したいという話を聞いた
私が「そんなの国が作った条文を写すだけで、出版とはいえないじゃないか。商事
法務も出すだろうから、競争で負けるのは明らかなので、やめたら」とからかいま
したところ、「じゃあ、どうすればいいんだ」と怒られてしまいました。

 その剣幕に押され(S氏は、商法との新旧対照表を入れ、差別化を考えていたよ
うです)、「判例付六法が売れているので、それを真似て、ミニ解説付にしたらど
うか」と提案しましたところ、「それができる人はいない。先生やってくれるか。
とにかく早く出した方が勝ちだが、何日でできるか」と聞かれましたので、「1週
間くれ」と答えてしまいました。

 その後、現代化法案が発表され、みましたら、すごい分量でしたが、約束した手
前、徹夜に継ぐ徹夜状態で1週間で仕上げ、出版されたのが上記の「現代化」法案
でした。私もまだ50代で徹夜する元気がありました。

 中央経済社も「ここが勝負どころ」とみたのか、採算度外視の680円(税抜き)
で売り出し、新旧対照表もあり、ミニ解説もありで、一挙に市場を抑えてしまいま
した。

 「会社法なら中央経済」というイメージ作りに、この条文集の果たした役割は実
に大きいと思いますが、私もそこに関われて幸せでした。こうして、いまでは定年
退職したS氏とは「戦友」であり、時々、昔話を酒の肴に飲みに行く関係です。 


2012.03.16(金)【新株予約権対価と分配可能額】(金子登志雄)

 取得請求権付株式の株主が会社に対して、定款に定めた株式の内容に従い、株式
X株を第Y回新株予約権〇〇個と引換えに取得してくれなどと請求すると、その株
式は自己株式となります。

 定款の定めにより対価が社債であってもかまいませんが、会社法166条による
と、この対価たる新株予約権や社債の「帳簿価額が当該請求の日における第461
条第2項の分配可能額を超えているときは」、この請求ができないことになってい
ます。

 この条文をはじめてみたときは、対価に帳簿価額があるということは、自己新株
予約権や自己社債を対価にするのかと迷ってしまいましたが、新規発行の新株予約
権や社債を含む概念として立法されたようです。

 ここまではよいとして、対価が既存財産の現金ならともなく、新株予約権や社債
を対価にして発行するのに、なぜ分配可能額の制限が生じるのかと疑問に思う方が
多いようです(何も気づいていない人のほうが多いでしょうけど)。文献をみても、
学者先生が訳の分からない解説をしています。

 思うに、この話は実に単純であり、対価が株式や無償でない限り、取得請求後の
貸借対照表の純資産の部に「自己株式/△・・・円」と計上されるからです。

 例えば、分配可能額として、その他利益剰余金のみが80万円と計上されている
とき、100万円の価値ある取得請求権付株式の取得請求がなされ、100万円の
価値ある新株予約権が対価として交付したとするなら、純資産の部は、

 その他利益剰余金   80
 自己株式     △100
 新株予約権     100

 となり、分配可能額は、△20になってしまいます。

 対価が100万円の社債であれば、

 負債(社債)    100
 その他利益剰余金   80
 自己株式     △100

 で、やはり分配可能額は減少するのです。このように、対価の方向からではなく、
取得請求権付株式が取得請求の結果として自己株式になることから攻めて行けば、
分配可能額制限も容易に理解することができるのではないでしょうか。


2012.03.15(木)【中間試案への論評その11】(金子登志雄)

 論評その11は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■ 簡易組織再編等における株式買取請求
  存続株式会社等において簡易組織再編の要件を満たす場合(会社法第796条
 第3項)及び譲受会社において簡易事業譲渡の要件を満たす場合(同法第468
 条第2項)には、反対株主は、株式買取請求権を有しないものとする。

■ 組織再編等の差止請求
  略式組織再編に加えて、それ以外の組織再編(簡易組織再編の要件を満たす場
 合を除く。)についても、株主が当該組織再編をやめることを請求することがで
 きる旨の明文の規定を設けるかどうかについては、次のいずれかの案によるもの
 とする。
【A案】当該組織再編が法令又は定款に違反する場合であって,消滅株式会社等の
  株主が不利益を受けるおそれがあるときは、消滅株式会社等の株主は、消滅株
  式会社等に対し、当該組織再編をやめることを請求することができるものとす
  る。存続株式会社等についても、同様の規律を設けるものとする。
【B案】明文の規定は、設けないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 簡易組織再編とは、小規模の再編をする場合ですから、株主地位を左右するほど
の重大な場面ではないため、株式買取請求を認めないのは賛成です。

 問題は通常の組織再編に対する差止請求のほうですが、真に法令又は定款に違反
する場合であれば決議無効などの救済策もありますし、明文の規定を設けることに
よって、組織再編の妨害行為として使われないかという危惧を私は持ってしまいま
す。皆様はいかがでしょうか。


2012.03.14(水)【中間試案への論評その10】(金子登志雄)

 論評その10は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■特別支配株主による株式売渡請求等
@ 株式会社(以下「対象会社」という。)の特別支配株主は,対象会社の全ての
 株主(特別支配株主及び対象会社を除く。以下「売渡株主」という。)に対し,
 その有する株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求することができるも
 のとする。
--------------------------------------------------------------------------

 A社の株主構成において、議決権の9割以上を甲が所有し、残りを乙丙丁………
という少数株主が保有していた時、甲が少数株主から強制的に購入できるようにし
ようというものです。

 弁護士さんあたりは、財産権の侵害だといいそうですが、生命や思想信条等の精
神的な人権と相違し、少数株式という財産権ですから私は賛成です。

 というのは、甲がA社につき思いきった改革をしようにも、会社を売却しように
も、少数株主の異議で、チャンスを逃すことが多いことを実務家として目の当たり
にしてきたためです。M&Aコンサルタント上がりの司法書士としては、A社の幸
せが第1であり、決して甲の横暴や乙丙丁の我儘が基準ではありません。

 ただ、1つの会社に議決権シェアで9割以上も持っている株主が存在することは、
同族経営の中小企業でも少なく、多くの場合が企業買収した場合です。企業買収の
際には、売り手のオーナーからの経営の引継ぎを円滑にするため、全部の株式を買
収せずにオーナーに1割を残し、残り9割を購入することが少なくないのです。売
り逃げを防止する効果もあります。

 したがって、この特別支配株主による株式売渡請求等は、身近なようでいて、身
近な手続にはならないと私は見込んでいますが、どうでしょうか。


2012.03.13(火)【「絆」から卒業】(金子登志雄)

 根来川さん、投稿ありがとうございました。「絆」に対しては被災者でない私も
違和感を持ちました。

 特に、「ひとつになろう日本」という標語には、本質から目をそらし、「日本人
全体の連帯責任」だといわれているようで、「絆」以上に抵抗を感じた方が少なく
ないようです。

 大震災による津波が20mに達することを気象庁がキャッチしていたのに、それ
を公表しなかったミスも、大手マスコミでは報道されず、全て想定外の災害とされ、
「がんばろう日本」の嵐にかき消されてしまいました。

 ひねくれ者の私は、私や家族が寄附したカネは、今どこに消えたのかという疑念
のほうが大きい震災1年目でした。十分に被災者に届いていないことは、周知のと
おりです。

 一般論ですが、大きな金が動くところには必ず官僚が登場し、自分の金ではない
のに、これを取り仕切り、「先生の選挙区にはこれだけ金を回しましたから、先生
のお手柄にしてください」などと政治家に恩を売り、官僚の権限(力)を強化する
ので、今回もそれがあるのだろうかと疑ってしまいます。

 今でも復興が第1の優先課題なのに、政府もマスコミも、目くらましのように、
消費税だ、TPPだという話題で紙面を占領させ、大震災や原発問題から国民の目
をそらせようとしているとしか思えませんが、われわれ国民自身も、少々どころか
相当忘れやすく、おめでたいので、うまく利用されてしまっているようです。

 確実にいえることは、権力に対しては、欧米先進国並、いや全世界の圧倒的多数
の国と同様に、疑い深く、しつこく、ひねくれ者が多い社会にならないと、日本は
同じ過ちを何度でも繰り返すということでしょうか。


2012.03.12(月)【2012年3月11日】(島根・根来川弘充)

 この日は、東日本大震災からちょうど1年になるのですが、全国青年司法書士協
議会の総会が、山形市にて開催されました。また、前日には全国大会が開催され、
震災をテーマに講演会がありました。

 講師は、被災地で子供の支援にあたっておられる大学の博士で、自らの実体験を
もとにして話されました。

 その内容は、報道では規制のため、なされることがない被災地の悲惨な実情でし
た。

 例えば、

 町中にいたるところにある犠牲者のご遺体の数々。それを日常として受け入れざ
るを得なかった子供たちが、惨い話を日常会話で普通に話していること。 
 被災地の孤児となった子供たちと、親族をなくした子供たちとの間の経済的、精
神的支援の格差。
 などであり、話がすすむにつれ、心は重くなっていきました。

 中でも、印象に残りましたのは、昨年、「今年の漢字」に取り上げられた「絆」
という言葉についてのお話です。この言葉、被災地の皆様の中には、『嫌悪感』を
抱いておられる方が、かなりおられるとのことです。

 報道では、規制の問題もあり、すべての事実が伝えられることはありません。
それだけでなく、「分かりやすく伝えたい」ためか、「テーマ」を設けて、それに
沿って、事実が構成されています。

 大災害の様々な問題を、簡潔にして社会が受け入れてしまうことに対する『嫌悪
感』といったものが、被災者の皆様にはあるのだろうと感じました。

 改めてこの災害の問題の大きさを実感し、自分として何ができるのかを、考えな
ければならないと思いました。


2012.03.09(金)【実力派弁護士】(金子登志雄)

 ニュースでご存知のとおり、東京電力に5兆5045億円という史上最高額の代
表訴訟が起こされました。

  
http://www.youtube.com/watch?v=SKFhO-EmEU4

 すごい金額というか、これでも不十分だというべきかは横に置いて、この原告側
弁護士の河合弘之氏は、中部電力の浜岡原発の原告側弁護団長ですから、原発問題
には、本気で取り組んでいるようです。

 河合氏は、民事紛争問題では実力派弁護士として著名な方であり、かつてはボラ
ンティアで帰国子女の国籍取得問題等でも活躍されていましたが、M&A弁護士と
しての知名度が一番高く、過去の名だたるM&A事件のほとんどに登場しているの
ではないでしょうか。

 被告側の大企業が著名な大手法律事務所に弁護を依頼すれば、原告側で成長過程
の中堅中小企業は、対抗上、河合事務所のような中堅規模の実力派事務所に依頼す
ることが多いため、攻めに強い弁護士というべきでしょうか。今回も原告側です。

 私も司法書士になる前は、M&Aコンサルタントでしたから、同業の関係で、彼
とは面識がありますが、私より年長なのに、すごいバイタリティだといつも感心し
てしまいます。

 彼は、かつて「取締役は、形式上は株主総会で選ばれるが、現実は社長が取締役
を指名している。こういう現実を知らないと、正しい弁護はできない」といってい
ましたが、これは司法書士にもいえますね。

 実務に強くなるためには、教科書の知識だけでは不十分だということです。知識
よりも知恵が重要だともいえます。


2012.03.08(木)【子会社間合併なのに略式合併】(金子登志雄)

 一昨日の『ずばり解説!会社の計算』出版記念講演会において、新宿のT先生か
ら、面白い情報を教えていただきました。

T:「100%子会社同士の合併なのに略式合併と説明している上場会社があるが、
  これはおかしくないか」

私:「略式合併というのは、合併相手が特別支配会社(つまり親会社)のときに使
  う用語ですから、子会社同士ではあり得ません」

T:「でも、あるんですよ」

私:「よかったら、資料を送ってください。上場会社のミス事例として保存してお
  きたいので………」

 昨日、T先生からメールで送っていただきました。まさかと思っていましたが、
本当でした。ついでに、ネット検索してみましたら、もう1つ、みつかりました
(その会社に悪いので、社名はここに書きませんが、興味のある方はネット検索し
てください)。

 念のため、下記も見出しに「子会社間の合併」とあり、中味に「会社法第784
条第1項に定める略式合併であるため、合併契約承認株主総会を開催いたしません」
とあるため、「これもそうだ」と思ってしまいましたが、よく読むと、子と孫の関
係でした。これは正しいですね。

 
http://www.ut-h.co.jp/news/pdf/20110524GP.pdf


2012.03.07(水)【出版記念講演】(金子登志雄)

 昨日は、東京司法書士協同組合主催で『ずばり解説!会社の計算』出版記念講演
会でした。

 出席者は東京の司法書士ばかりで商業登記を行っている方が多いので、資本取引
と損益取引の話もいたしました。

 兄弟会社間の合併で資本金等を合算する計算規則36条の合併によって増加した
「その他利益剰余金」は、貸借対照表を基準とした資本取引なので、それを資本金
に組み入れることができるが、子会社を吸収合併して得た利益(抱き合わせ株式消
滅益)は、損益計算書に計上される利益(特別利益)なので、資本金に組み入れる
ことはできないなどといった話です。

 会社法の条文をよくみると、損益計算書に計上される経過利益は「期間の利益の
額」とされ(会社法461条2項2号イ参照)、剰余金とはいいません。剰余金に
なれるのは、貸借対照表に計上されてからです。

 こんな話を数年前にしたら、聴衆の半分は、チンプンカンプンだったという感想
になったことでしょうが、昨日は、多くの方に通じたようです。それだけ、会社の
計算を理解している司法書士が一時よりずっと増加したということです。

 岐阜、富山、東京と、ここ数日間、講演が続きましたが、うれしいことに居眠り
する人がほとんどいないのです。私のしゃべりがうまくなったのか、聴衆の司法書
士が計算を理解しだしたのか………、きっと後者でしょう。分かる内容なら、居眠
りしないものですから。


2012.03.06(火)【富山の薬売り】(金子登志雄)

 JRの富山駅の前に、次のような銅像がありますが、何だかわかりますか。

    
 
 年配の人には懐かしい姿だと思いますが、いわゆる富山の薬売り(薬の行商人)
です。私が育った群馬県の深い山奥にまで、来ていました。

 各家庭に薬箱を置き、1年に1度(だったと思います)、薬売りが来て、使った
ものだけを補充し、代金を支払うシステムですが、昔は(とくに田舎では)、近く
にコンビニも薬局もなかったので、ほとんどの家庭で富山の置き薬をしていました。
わが家も例外ではなく、腹痛や風邪などで世話になったものです。

 富山から来た薬売りの方は、お客の家に泊めてもらったりして、行商していたわ
けですが、越中富山から上州(群馬県)の片田舎まで来るということは、おそらく
全国津々浦々まで網羅していたのでしょう。

 風呂敷で包んだ背中の柳行李(やなぎごおり)の中身を全部売り払って富山に戻
り、また行商に出るのでは非効率この上ないことですから、どこかに卸問屋みたい
な中継基地があったのでしょうか。

 また、上州担当の販売員が少なく見て300人いたとすると、関東地域だけでも
うん千人でしょう。中部地方で、うん千人、関西で、東北で……と計算すると、た
いへんな情報網だと思うとともに、富山に男性がいなくなってしまいませんか。

 きっと農繁期は富山、農閑期に行商だったのでしょうが、昔のこととはいえ、そ
の流通システム等に興味がつきませんね。

 全国の皆さん、セミナーの置き箱の会社法講師に空きが出たら、いつでも行商に
まいりますので、ぜひ呼んでください。 


2012.03.05(月)【富山訪問(配当優先株式)】(金子登志雄)

 土日は、日本司法書士連合会中部ブロックの北陸地域主催で、「増減資と種類株
式の基礎」について講演のため、富山市に行ってまいりました(幹事の皆さん、お
世話になりました)。

 2008年に講演で訪問した際は、新潟県経由で電車で行ったため、日本海側か
らの強風でお約束の時間ぎりぎり到着でしたので、今回は飛行機にしました。雲の
上から富士山もみえ、よい眺めを堪能できました。

 種類株式では、旧商法時代と相違し、「1株当たり年300円を限度として」
と定め、X年は年300円、Y年は200円の配当の株式を発行するなどといった
融通が利かなくなったことへの理解がやはり難しいようでした。

 拙著(『募集株式と種類株式の実務』)143頁に書いたとおり、会社法のもと
では、優先配当額が異なれば株式内容が異なるので、異種類の株式になるからです。
登記の基本通達(平成18年3月31日民商782号)にも、「会社法に基づき発
行される各種類の株式については、定款でその内容の要綱を定めた場合でも、当該
種類の株式を初めて発行する時までに具体的な内容を定めることを要するため、1
の種類の株式につきその発行時期に応じて異なる優先配当額を定める取扱い(旧商
222条3項、平成2年12月25日法務省民四5666号当職通達参照)は、す
ることができない」とあります。

 ただし、年300円の配当と決めた優先株式につき、Y年は業績が悪かったので、
その一部である200円しか払えなかったというのは認められます(差額が翌年に
累積するかどうかは定め方次第)。しかし、300円か0円かというオール・オア・
ナッシングが実務だと聞いています。


2012.03.02(金)【素人の誤解】(金子登志雄)

 先日、「新株予約権を発行したいが自己株式を交付することも可能ですか」との
質問を受けました。公認会計士の方からです。

 当然に「OKですよ」と返答したわけですが、どうも納得できない様子の顔でし
た。雑談の過程で理由が分かりましたが、彼は「新株」の予約権だから、「自己株
式」は除外されると思いこんでいたわけです。

 「新株」の「予約権」と2つに分けずに、「新株予約権」で1語であり、新株式
に限らないと思ってくださいなどと説明しましたが、いまになって思うと、「新株
の【代用】として自己株式も認められています」と説明すれば、容易に納得してい
ただけたかもしれません。

 このように、われわれにとっては常識であることが、専門外の一般の方には、通
じないことが多々あるようです。

 会社の事業目的を変更したので登記してほしいという委任状の委任事項に「定款
変更による登記の件」などと書かれてしまうことも少なくありません。決算期を変
更したので、登記してほしいという依頼もあります。

 しかし、人のことはいえません。私も無職の頃、JRの駅で「あの〜、無職なの
ですが、通勤定期を買えるのですか」と聞いて、笑われたことがありますから……。


2012.03.01(木)【したたか風見鶏】(金子登志雄)

 先日、ある時事問題に関する評論家(A氏)のセミナーに参加してきました。質
疑応答の際に、ある聴衆が「あれほど小沢バッシングに熱心だった朝日新聞が最近
になると小沢さんへのインタビューを1面に取り上げたりしているのは、どうして
でしょうか」という質問をしました。

 ネットでは、朝日新聞が小沢氏の復権を見越して軍門に下った(あるいは手打ち
した)せいだという意見が多いのですが、A氏も「マスコミは権力に弱い」といっ
ていましたので、その見方自体は否定しませんでしたが、主たる理由として、一言
「商売です。いままでは小沢氏を叩くと新聞が売れたが、いまは叩かない方が新聞
が売れると計算したから」という趣旨の返答をしましたので、笑ってしまうと同時
に、実に鋭い指摘だなと感心してしまいました。

 同じことですが、いままでは小沢氏を叩くと出世できると思い、検事も新聞記者
も一生懸命に、あることないことを問題にして叩いてきたわけですが、石川元秘書
が検事の取調べを隠し録音したあたりから、こりゃ検察の方が悪いことがばれてし
まった、へたに小沢氏を叩くと「正義の味方」というスタンスが取れず、新聞も売
れなくなるかもしれないという計算をし出したようです。

 そのせいか、相変わらず新聞では小沢氏を叩いても、系列の週刊誌では小沢氏を
持ち上げる動きが目立ちます。ラジオも前々から、テレビと違い、小沢氏支持論調
が少なくないとラジオ好きな人から聞いたことがあります。

 マスコミもシタタカですね。新聞と週刊誌、テレビとラジオを上手に使い分けて、
風見鶏をやっているわけです。


2012.02.29(水)【閏年】(金子登志雄)

 今日は2月29日、閏年ですね。この日になると、平成16年に冷や汗をかいた
ことを思い出します。

 平成15年の暮れのことでした。新規顧客のA社から「3月1日に合併するには、
合併公告をいつまでにすればよいのか。ぎりぎりの日を教えてほしい」といわれた
ので、平成15年のカレンダーをみながら、「このまま行くと1月31日が土曜日
ですから、1月30日に合併公告を出せば大丈夫です。2月は28日しかなくても、
債権者保護手続上は1ヵ月計算されますから大丈夫です。28日は土曜日ですが、
合併公告の満了日として問題ありません」と答えていました。

 暮れぎりぎりの2度目の会合でも「ほんとに1月30日の公告で大丈夫か」と念
を押されたので、半分不安に思いながら、自信満々の口調で「大丈夫です」と答え
ました。お客様に不安を与えてはいけないからです。

 翌16年の1月4日、合併の準備をしようと、新しいカレンダーをみたら、びっ
くり仰天! 2月が29日まであります。それも日曜日です。

(平成16年カレンダー)
 
http://www.to-yama.com/i/kare16.html

 冷や汗がどっと出てきました。公告期間の満了日が日曜日であるため、1日ずれ
てで3月1日が満了日になるのです。

 当時の法律では、合併登記が合併の効力の発生だったため、債権者異議申述期間
の満了日以降の3月2日に登記すれば何の問題も生じないのですが、合併期日であ
る3月1日午前0時前に期間を満了させないのはプロの手続とはいえません。

 正月早々、「申し訳ありません。合併公告のぎりぎりセーフの日は1月30日で
はなく28日です。2月が閏年で、しかも29日が日曜日である偶然が重なってい
ることに昨年は全く気づいていませんでした」とお詫びのメールをいれましたが、
そのとき以来、翌年のカレンダーが手元にない限り、うっかりしたことは絶対にい
わないようにと肝に命じました。

 A社はいまは上場しており、私の優良顧客の1つになっています。


2012.02.28(火)【生年月は個人情報か】(金子登志雄)

 当社がまだ小中学生並みの実力しか持ち合わせていないとき、取締役管理部長と
して、情報開示を担当しておりましたが、業績予想の大幅下方修正の発表など都合
の悪いことの開示は実に嫌なものでした。予想が違っていた申し訳なさとともに、
発表後に株主の方からのお叱り電話やメールが押し寄せるからです。

 しかし、どんなに不都合なことでも即座に正確に発表し、聞かれたら答えること
がわれわれの責務だと信じていましたので、臭いものに蓋をせずに、発表し答えて
きました。上場会社は私物ではないので、投資家やご主人様である株主には正しい
情報を知らしめねばならないからです。

 公的機関と国民との関係も同じだと思います。国民の税金で公的機関が成り立っ
ているわけですから、情報開示の要求があれば、可能な限り開示するのは公務員の
当然の義務だといえましょう。もちろん、他の法益との調整が必要ですが………。

 例の小沢検察審査会問題で、2度の議決とも、メンバーが相違するのに、平均年
齢が34.55歳だったことに疑問を持った市民がメンバーの生年月日の開示を求
めたところ、生年月日は個人情報だから開示できないと拒否されたので、「それで
は生年月まででいいから、教えてくれ」と請求しました。

 その解答は、下記でした。

>検察審査員及び補充員選定録.pdf他4枚
http://civilopinions.main.jp/items/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E5%93%A1%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%A3%9C%E5%85%85%E5%93%A1%E9%81%B8%E5%AE%9A%E9%8C%B2.pdf

 会社法制の見直しに関する中間試案などでもお分かりのとおり、民間には情報開
示を強く求めながら、裁判所を含め官の側の意識は上記のとおりです。それとも、
生年月を開示すると何か都合の悪いことでもあるのでしょうか。


2012.02.27(月)【岐阜講演(欠損と損失)】(金子登志雄)

 土曜日は岐阜市司法書士会のお招きで「会社の計算」の講義に行ってまいりまし
た(伏屋支部長ほか皆様、大変お世話になりました)。

 講義自体は居眠りする方も1人もいらっしゃらなかったので、好評だったのかな
と期待していますが、欠損と損失の相違に関しては、全員の方には通じなかったか
もしれません。

 きっと、参加者の中には、本徒然をみている方もいらっしゃるでしょうから、再
度、説明しておきますので、私の代わりに説明してください。

 損失・・・資本と利益のうち利益(その他利益剰余金)がマイナスの状態
 欠損・・・資本と利益とは無関係で、剰余金(分配可能額)がマイナスの状態

 したがって、

  資本金      1000万円
  その他資本剰余金  500万円
  その他利益剰余金 △400万円

であれば、損失は400万円だが、分配可能額は100万円のため、欠損ではあり
ません。その他資本剰余金から400万円をその他利益剰余金に振り替え、損失を
ゼロにすることが「損失の処理」です。また、欠損があり欠損のてん補のためには、
資本金や準備金の取崩しが必要です。

 翌日曜には、岐阜城(齊藤道三や織田信長の居城)を訪れてきました。難攻不落
の山城として有名だけあって、山の頂上にありますから、途中まではロープウエイ
です。ロープウエイから降りてからも少し登りますので、平素から体を大事に扱い、
決して運動で体をいじめるような不埒な行為をしない私にとっては、実にきつい登
りでしたが、天守閣からみる下界の街並みや長良川は絶景でした。

 今日からまた、長良川の鵜飼の鵜のように、せっかく仕事をしても腹が膨れない
下界の生活に戻ります。


2012.02.24(金)【気持ちの良い挨拶】(仙台・立花宏)

 みなさんは、何か、身体に良いことしてますか?

 私は、健康維持のため、週1回のジョギングを習慣にしています。日頃、机の前
に座って仕事をすることが多く、体を動かす機会が少ないので、3年ほど前から続
けています。

 ジョギングといっても、散歩の延長のようなもので、のんびりと景色を楽しみな
がら5〜6キロ、調子がよいときは10キロくらいの距離を走ります。身体を鍛え
る、というよりは、ストレス解消がおもな目的かもしれません。

 決まったコースはなく、気分によっていろいろなところを走ります。

 先日は、自宅から2キロくらいのところにあるお寺のあたりまで、気持ちよく走
ってきました。そこには、230段くらいの石段があり、高校時代はよくクラブ活
動でトレーニングに使ったものです。

 石段の前でひとやすみしてから、石段を登り始めました。

 そのとき、その石段では、地元高校の野球部が、ひとりひとり石段を駆け上がる
トレーニングをしていました。

 一番上まで行き、また、上から駆け下りてきます。さすが、高校生だけあって、
たいした体力です。

 野球部員たちは駆け下りてくる途中、のんびりと歩いて石段を登っていた私とす
れ違います。

 驚いたことに、最初の野球部員が、すれ違う際に立ち止まり、気をつけの姿勢を
とって、深々とおじぎをし、私に、「こんにちは。」と大きな声で挨拶したのです。
野球部員たちは、一定の間隔で、順に駆け下りてくるのですが、最初の野球部員だ
けでなく、全員、同じように挨拶をするのです。結局、20人以上の野球部員と挨
拶をしました。

 その野球部員たちは、私に対してだけでなく、その石段を登っている方々、全員
に同じように挨拶しているのです。

 トレーニングという目的があるにもかかわらず、それよりも挨拶を優先するとい
う高校生の行動に感心しました。高校の運動部というと、勝利優先、体力、技術優
先といったイメージがあったのですが、こういう、精神面の指導もしっかりとされ
ているのだなあ、と、とてもうれしい気持ちになりました。

 そして、思いました。

“私は、いつもこのような気持ちの良い挨拶ができていただろうか?“

 司法書士として、お客様に対して失礼のないような対応を心掛けているつもりで
した。しかし、この高校生たちのように、仕事の途中、出会った人たち全員にまで、
立ち止まって、きちんとした挨拶するような行動がとれていたか、と問われたら、
言葉に詰まるかもしれません。

 “お客様や仕事の完成という、石段の頂上にばかり気をとられて、もしかしたら、
その途中ですれ違う人たちには、礼儀がおろそかになっていたかもしれない・・・。”

 ちょっぴり反省もさせられた出来事でした。


2012.02.23(木)【中間試案への論評その9】(金子登志雄)

 論評その9は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■親会社等の責任
 株式会社とその親会社との利益が相反する取引によって当該株式会社が不利益を
受けた場合における当該親会社の責任に関し、明文の規定を設けるかどうかについ
ては、次のいずれかの案によるものとする。
【A案】次のような明文の規定を設けるものとする。(略)
【B案】明文の規定は,設けないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 親会社が事業会社のとき、子会社との役割分担では、子会社では製造や輸入を担
当し、親会社に転売し、親会社が外部(消費者など)に販売することが多いように
思います。

 このように親会社と子会社の取引は頻繁にあり、この取引に着目し、利益相反か
どうかを検討するとしたら、収拾がつかないということにならないでしょうか。

 また、この取引の範囲をどう限定するのでしょうか。親子会社間の吸収分割取引
は資本取引として除外するが、事業譲渡取引は含むということでよいのでしょうか。

 この規定を設けることによって、新たなもめごとが生じるのではないかと危惧し
てしまいます。


2012.02.22(水)【中間試案への論評その8】(金子登志雄)

 久々に中間試案への論評ですが、その8は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■ 多重代表訴訟
【A案】株式会社の親会社の株主が当該株式会社の取締役等の責任を追及する訴え
  (多重代表訴訟)を提起することを認める制度を………創設するものとする。
【B案】多重代表訴訟の制度は、創設しないものとする。

■ 親会社による子会社の株式等の譲渡
   株式会社は、その子会社の株式の全部又は一部の譲渡をする場合であって、
  次のいずれにも該当しないときは、当該譲渡がその効力を生ずる日の前日まで
  に、株主総会の特別決議によって、当該譲渡に係る契約の承認を受けなければ
  ならないものとする。
   @ 当該譲渡により譲り渡す株式の帳簿価額が当該株式会社の総資産額の5
    分の1を超えない場合
   A 効力発生日において,当該株式会社が,当該譲渡により譲り渡した株式
    を発行する株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合
-------------------------------------------------------------------------

 持株会社が解禁され、「〇〇ホールディングス」という社名の会社が増えました
が、持株会社からみれば、子会社は1事業部門も同じようなものです。

 したがって、親会社の株主も子会社の取締役に対して代表訴訟を起こせるように
したり、子会社の株式を譲渡することをもって親会社の事業譲渡扱いすることは、
納得できます。

 私の心配は、親子関係であろうが、独立した別会社という伝統的な扱いをここで
壊してよいのかという点です。法人税だって別々にとるのに、上記の時だけ、子会
社を独立の会社として扱わないことに納得できません。
 子会社株式と親会社の事業も法的見地からは差が大きすぎます(事業債権者が存
在するか、従業員の所属先、税務上の取扱いなど)。

 この問題は短兵急に結論を出してはいけないでしょう。
 

2012.02.21(火)【言論のテロ】(金子登志雄)

 普段は全くテレビをみませんが、田舎に帰った時だけは、することもなく、土日
もテレビ三昧の怠惰な生活を送ってしまいました。

 テレビ報道は、個人の問題であるオセロ中島さんのマインドコントロールの問題
ばかりで、民主主義の根幹の問題である小沢裁判で石川知裕議員ら元秘書の取調べ
段階での供述調書の大半を裁判所が検察による圧力によるもので信用できないと証
拠採用しなかった点は軽くあしらわれていました。

 検察審査会に検察から提出された石川議員の供述証拠は、検事の作文だっただけ
でなく、小沢氏に有利な証拠(70のゼネコンが小沢事務所にカネを渡したことが
ないと供述したメモなど)は意図的に検察審査会に提出されていなかったことが既
に判明していますし、検察審査会の審査員や担当弁護士を小沢氏に不利になるよう
に意図的に選んだ疑惑までがネットや一部の週刊誌(先週のサンデー毎日など)で
も明らかにされているのに、テレビはその報道を避けているようでした。

 ところで、オセロ中島さんに家賃不払いで立退請求している大家さんの本木雅弘
さんが主役の「運命の人」というテレビドラマをご存知ですか。

 私は1、2回しかみたことがありませんが、1970年代に毎日新聞の西山記者
が沖縄問題の密約をすっぱ抜いたために、国家機密の漏洩で逮捕され起訴された事
件です。

 本来なら国民を騙した政府が糾弾されるべきですが、頭のよい検事さんが起訴状
に意図的に、「女性(外務)事務官とひそかに情を通じ、これを利用して」、秘密
を漏洩させたという文章を挿入したために、密約問題あるいは国民の知る権利の問
題が一転して男女の下半身のスキャンダルにすり替えられてしまいました。

 週刊新潮をはじめ、当時の愚かなマスコミも、報道の使命(権力の監視)をすっ
かり忘れ、下半身のスキャンダルで毎日新聞と西山氏を追い詰めて行きました。

 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 あれから40年以上も経過しているのに、リクルート事件や小沢問題をみると、
日本のマスコミも国民も少しも成長していないようです。

 確かに自分とは無関係と思う一般国民からは他人のスキャンダルほど面白いもの
はないでしょうが、標的にされた方の立場、人権や信用を考えると、われわれ自身
も「言論によるテロ」の共犯者になっていないでしょうか。 


2012.02.20(月)【日本一の寒さ】(金子登志雄)

 土日は、故郷である群馬県の田舎に帰省していましたが、寒い寒い。雪は降らな
いし降っても積もらないところですが、暖かい東京と雪国の新潟県や長野県に挟ま
れた中途半端な場所であるため、事実上は、日本で一番寒いところの1つではない
かと密かに思っています。栃木県の宇都宮に2年ほど勤務していたことがあります
が、やはり同じように思いました。

 群馬のもうちょっと先の新潟県や長野県などの雪国まで行きますと、家の作りも
柱も実に頑丈で、部屋の中には備え付きのストーブがあり、部屋の中を暖かくして
あるのに対し、雪の積もらない群馬県や栃木県の大部分では隙間風の入ってくる家
の作りですし、暖房設備も十分ではありません。私の子供の頃はコタツしかありま
せんでした。

 ふと、ここで司法書士を開業したら、どんな仕事が多いのだろうかと考えてみま
したが、会社はほとんどありませんし、マンションの類も1つもないド田舎ですか
ら(今は合併で市になっていますが、実際は郡部地区です)、きっと農地転用とか、
債務整理しか仕事がないことでしょう。子供相手の学習塾でも経営しながら細々と
司法書士をするしかなさそうです。

 やはり会社法大好き人間の私には、最前線の大都会で働くしかなさそうですが、
いまは交通機関も発達していますから、仕事場所は大都会でも、自宅の場所として
は田舎暮らしもよいかもしれませんね。ただし、暖かいところに限りますが。

 さぁ、今週も頑張りましょう。あれ、予定を記載した手帳が真っ白だ。懐が寒い。


2012.02.17(金)【合併比率と転換比率】(金子登志雄)

 株式会社甲と乙の合併比率が1:1に決まると、これが固定され、合併比率を変
更するときは、改めて、合併契約書の締結から、やり直すのが一般的です。合併比
率は合併契約の中心的要素だからです。

 これに対して、新株予約権の行使価額や取得請求権付株式などでは、転換比率等
を決めていても、株式分割や併合があった場合のほか、現在の株価よりも安い価額
で株式が発行された場合の対策として、付随的に次のような加重平均の調整式を定
めておくことが多いといえます(加重平均方式のほか、フルラチェットという調整
方法も有名ですが省略します)。

          既発行 調整前 新発行 1株当たり
          株式数×転換額+株式数×払込金額
  調整後転換価額=―――――――――――――――――
            既発行株式数+新発行株式数
 
  (注)新株予約権の場合は「転換」を「行使」に変える。

 現在の株価よりも安い価額で株式が発行された場合以外でも、合併を決議したら、
株式交換を決議したら………と、あらゆる場合を想定し調整できるようにしていま
す。まさに、雨が降ったら………、みぞれの場合は………、大雨の場合は………、
大雪の場合は………といった書き方です。人間不信の欧米から輸入された制度だか
らでしょうか。

 しかし、このような場合は、その都度、新株予約権の行使価額や取得請求権付株
式の普通株式への転換比率を株主総会の決議で変更できるように定款に定めておけ
ば、こんな面倒な調整式などにつき定めておく必要はありません。

 株主数の少ない中小企業では、定款変更のための株主総会の開催も難しくはない
ので、一度、そんなことも提案してみようかなと思っていますが、きっと「他の会
社と違うことをするのはどうも不安だ」という反応をされてしまうことでしょう。

 種類株式の希釈化防止条項(調整式)のことを考えていたら、合併比率との落差
に思いが至ってしまいました。

 なお、転換株式はなくなり、現在は取得請求権付株式などと言いますから、転換
価額ではなく取得価額というべきですが、いまでも「転換」と使うことが多いよう
です。新しい概念が「取得」されず概念の「転換」には時間がかかるのでしょう。


2012.02.16(木)【分りやすく、されど深く】(富田太郎)

 先日、都庁でNPO法人設立について打ち合わせの後、ご担当の方と雑談をしま
した。

 富「都庁で出されている『特定非営利法人ガイドブック』♪ この本は素晴らし
いですね。」

担当「わかっていただけますか♪ 我々の苦心の作です(ニコニコ)♪」

 富「これがあれば、法律知識のない方でも書類が作れますね。」

担当「そうなのです♪ 市販のNPOの本より、分りやすく書かれていると思いま
す。」

 富「しかも、値段は520円! 凄いなぁ〜。」

 実はこの『特定非営利法人ガイドブック』、都庁で販売されているのですが、平
易な言葉で解説され、かつ図表満載。この本があれば、誰でも書類が作れるのでは
と思わせる内容です♪

 常々思っていたのですが、なぜ法律書、他の官庁の申請マニュアルは、あのよう
に難しく、分りにくいのでしょうか? 深遠なる法律の世界と言われればそれまで
ですが・・・・。

 そもそも、経済学部出身の私にとって、法律書自体が、不親切で分りにくいもの
でした。

 私が大学時代に学んだ経済学の世界では、「分りやすい教科書を書ければ一流の
証」という金言がありました。

 サムエルソン(Paul A. Samuelson)の「経済学」(注)などは、その代表的な本で
す。なのに・・・・・法律書ときたら・・・・。

(注)サムエルソン「経済学」とは!
 ★名著、内田貴「民法」(東大出版会)の初版本の前書きにも、「経済学の教科書
ではサムエルソンのような分りやすい&深い本があるのに、法律書の教科書は・・・
(涙)。だから私はこの本を書こうと思った。」という趣旨のことが書いてあります。

 ★経済音痴の菅直人氏も首相時代、サムエルソン「経済学」を読んで勉強している
と広言! 国会で、自民党の林氏に「本当に読んだのか?」と問われると、菅氏曰く
「10ページだけ読んだ・・・」と爆笑をかった。

 ちなみに1000ページぐらいの本です・・・・(汗)

 ところで、作家「井上ひさし」の創作のモットーは、『難しいことを分りやすく、
分りやすいことを深く、深いことを面白く』だそうですが(劇団「こまつ座」の機関
誌「the 座」より引用)、これは、すべてについて言えることではないでしょうか。

 その意味で、『特定非営利法人ガイドブック』のような誰にでもわかる本。
私も、いつかこんな本を書きたいものです〜♪

PS
 ご存知かと思いますが、本年4月1日より改正NPO法が施行されます。これまで、
2以上の都道府県に事務所があるNPO法人は内閣府(NPO法人室)が所轄官庁で
したが、今後はそのよう場合でも、主たる事務所がある都道府県が所轄庁となります。
くれぐれもご注意を!


2012.02.15(水)【取締役選解任権付株式】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、1種類の株式しか発行していない非公開のA社が取締役選解
任権付株式を発行しようとすると、例えば、次のように定めます。

--------------------------------------------------------------------------
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、普通株式〇〇〇株、A種株式〇〇株と
   する。
  A 普通株式の株主は、その種類株主総会で取締役を3名選任できる。
  B A種株式の株主は、その種類株主総会で取締役を1名選任できる。
--------------------------------------------------------------------------

 この場合も、いままでは普通株主が取締役を自由に選任できたのに、以後は3名
に限定され、権利が小さくなるわけですから、会社法322条1項1号ロ(株式の
内容の変更)に従い、普通株主の種類株主総会が必要でしょうが、昨日の例のよう
に、2段階の定款変更と構成できません。

 しかし、おそらく、次のような想定だと考えます。
--------------------------------------------------------------------------
(第1段)
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、………とする。
  A A種株式は、・・・・の種類株式とする。

(第2段)
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、………とする。
  A 普通株式の株主は、その種類株主総会で取締役を3名選任できる。
  B A種株式の株主は、その種類株主総会で取締役を1名選任できる。
--------------------------------------------------------------------------
 
 つまり、配当優先株式とか議決権制限株式とか新規に定めただけで単独で種類株
式になるものと相違し、取締役選解任権付株式は、既に種類株式であるものの2次
的属性であり、それゆえに普通株式を巻き込む内容になるのでしょう。

 かねてより、そのような仮説を持っていましたが、昨日の例を通じてやっと取締
役選解任権付株式の性格のしっぽを掴めたように思いました。


2012.02.14(火)【種類株式の発行方法】(金子登志雄)

 1種類の株式しか発行していないA社が議決権制限株式(A種株式とする)を発
行できるようにし、かつ既存の株式(普通株式とする)の内容も同時に次のように
変更したいときは、どのような手続が必要でしょうか。

--------------------------------------------------------------------------
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、普通株式〇〇〇株、A種株式〇〇株と
   する。
  A 普通株主は、剰余金の配当を受けることができない。
  B A種株式の株主は 、株主総会で議決権を行使できない。
--------------------------------------------------------------------------

 定款変更が必要であることは間違いありませんが、問題は普通株主の種類株主総
会の要否です。

 私は、会社法322条1項1号ロ(株式の内容の変更)に従い、必要説ですが、
条文には「種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合」とあり、本事例はそれ
に該当しないのではないかという疑問も生じることでしょう。

 しかし、上記は次の2段階の定款変更をまとめただけです。
--------------------------------------------------------------------------
(第1段)
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、………とする。
  A A種株式の株主は 、株主総会で議決権を行使できない。

(第2段)
第*条 当会社の発行可能種類株式総数は、………とする。
 【A 普通株主は、剰余金の配当を受けることができない。】
  B A種株式の株主は 、株主総会で議決権を行使できない。
--------------------------------------------------------------------------
 
 つまり、第1段で種類株式発行会社になり、それを受けて第2段で種類株式発行
会社が種類株式の内容を変更したのです。

 ただ、A種株主がこの段階では不在ですから、株主総会の構成メンバーと普通株
主の種類株主総会の構成メンバーが完全に一致しますので、この株主総会は普通株
主の種類株主総会を兼ねたものとみて差し支えありませんから、種類株主総会の議
事録も添付せよなどというヤボなことは法務局も要請してこないと期待しています。


2012.02.13(月)【転換型から交換型へ】(金子登志雄)

 先週の土日には、商業登記法の全条文を読んでみました。

 その58条に「取得請求権付株式の取得と引換えにする【株式の交付】による変
更の登記の申請書には、当該取得請求権付株式の取得の請求があつたことを証する
書面を添付しなければならない」とありましたが、ちょっと不親切な規定だなと感
じませんか。

 さて、商法時代の転換株式は、AがBに変身するものであって、Aは消滅してい
ました。1対1の転換比率では、株数に変化がありません。

 ところが、会社法では、このような転換(変身)構成はとらず、Aを会社に引き
渡す代わりにBを会社から交付されるものになりました。すなわち、交換構成です。
あるいは、会社からみれば、Aを取得して、代金の代わりにBをもって支払うとい
う対価の発想です。

 交換型・対価型ですからAは消滅せず会社に保有され自己株式になります。対価
のBが新株式であれば、B株式の数が増えるため、発行済株式の総数の変更登記が
必要ですが、会社が保有済みの自己B株式を交付する場合には、株数に変化がない
ので変更登記は必要ありません。Aも自己株式になるだけ(持ち主が代わるだけ)
ですから、登記事項に変化がありません。

 商業登記法58条の【株式の交付】とは、新株式の発行と自己株式の交付のこと
ですが、自己株式を交付する場合は変更登記事項が発生しないのですから、ここは
【株式の発行】と規定すべきだったのではないでしょうか(59条や60条等も同
じです)。誤解を招く紛らわしい規定です。


2012.02.10(金)【企業性悪説】(金子登志雄)

 相変わらず、法律雑誌は会社法制の見直しに関する中間試案をテーマに、いろい
ろ趣向を凝らしています。

 企業統治が主たるテーマですから仕方ない面もありますが、登場する論者の中に
企業性悪説を前提に論じている方が少なくないことが気になります。

 権力は腐敗する→権力を分散せよ→業務の決定と執行と監視の三権を分立せよ

 という自由主義の発想で株式会社制度が出来ていますから、企業性悪説自体は正
しいと私も思っていますが、M&A業務あるいは司法書士業務を通じて多くの会社
をみてきた私にとっては、性悪の段階まで進めた大企業は、ほんの一部であって、
多くが収益の向上に必死となっている中小企業(上場会社を含む)ばかりです。

 権力を握った官僚はいけないが、一般の公務員がいけないわけではないというの
と同様に、権力者となった大企業は性悪だから企業統治をしっかりせよとはいえま
すが、一般の企業は、そこまで行っていません。権力者になる努力中ですから、こ
こで規制されてしまいますと、企業のやる気も失せてしまいます。

 企業統治をしっかりせよと主張する学者さんや弁護士さんも、一度、自分で会社
を起こし自宅を担保に借入れでもしてみれば、きっと企業統治どころか、経営の維
持に必死になることでしょう。

 「衣食足りて礼節を知る」といいますが、いま日本企業は衣食のことで頭がいっ
ぱいですから、常識の範囲内のモラルを維持している限り、礼節を説くのは、好況
の時にしてほしいものです。

 ところで、土日を前にして、もし、皆様の中で、「政治家性悪説」に凝り固まっ
ている方がおられましたら、8日付けの「国会探検」でもいかがですか。巨悪政治
家とされる田中、金丸、小沢3名の事件がまとめて書いてあります(ここには書い
てありませんが、佐藤栄作氏の造船疑獄も同じ構造です)。いまやネット社会では
常識的な知識ですが、一般社会の常識とは大きく乖離した内容です。

 
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2012/02/post_289.html#more


2012.02.09(木)【中間試案への論評その7】(金子登志雄)

 論評その7は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
(2) 発行可能株式総数に関する規律
 @ 株式会社が株式の併合をしようとするときに株主総会の決議によって定めな
  ければならない事項(会社法第180条第2項)に、効力発生日における発行
  可能株式総数を追加するものとする。
 A @の発行可能株式総数は、株式の併合が効力を生じた時における発行済株式
  の総数の4倍を超えることができないものとする。ただし、株式会社が公開会
  社でない場合は,この限りでないものとする。
 B 発行可能株式総数についての定款の定めは、効力発生日において、@の株主
  総会の決議に従って変更されるものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 現行会社法は、「株式併合は株式併合、発行可能株式総数は発行可能株式総数」
というデジタル思考ですから、株式併合しても、発行可能株式総数に影響しません。

 旧商法時代は、株式併合のみを決議したときは、自動的に同一比率で発行可能株
式総数も減少するというアナログ思考でした。

 上記の中間試案は、発行済株式の総数1000株、発行可能株式総数3000株
の公開会社A社が2株を1株に併合し、発行済株式の総数を500株にしたときは、
発行可能株式総数も、その4倍の2000株以下に定めよという内容です。発行可
能株式総数は株式併合と同一比率の1500株にまで自動的に減少するというもの
ではないため、旧商法そのものとは相違しますが、それに近い内容で、旧に復帰す
る改正案といえましょう。

 A社が種類株式発行会社で、普通株式600株、甲種株式400株を発行し、そ
れぞれ発行可能種類株式総数が1500株、1500株のとき、普通株式の3株を
1株に併合したとき、発行済株式の総数は600株(普通株式200株、甲種株式
400株)ですから、その4倍は2400株です。

 発行可能株式総数を2400株以下にしないといけないわけですが、発行可能種
類株式総数はそのままでよいでしょうから、種類株式発行会社では、株式併合で発
行可能株式総数と発行可能種類株式総数の合計数が不一致の会社が多くなることで
しょう。

 法律上は何の問題もありませんが、世間一般からは奇異な感じを持たれてしまい
そうです。

 同時に、発行可能種類株式総数も変更すればよいわけですが、これについては、
「定款一部変更の件」という議題にしないとまずそうです(発行可能株式総数の減
少は「株式併合の件」の中で決議すれば、定款変更とみなされます)。


2012.02.08(水)【合併理解度テストその2】(金子登志雄)

 お待たせしました。下記の6頁の最もおかしな部分です。

  
http://www.moj.go.jp/content/000057730.pdf

 2条2項に「甲が発行する株式数の合計に1株未満の端数株式が発生した場合に
は、これを切り上げることとし」とありますが、2条1項と矛盾しませんか。

 具体例で考えましょう。乙の発行済株式の総数が40株で、内訳はA11株、B
13株、C15株、乙の自己株1株だとして、乙の1株に甲の0.5株を割り当て
る合併だといたしましょう。

 乙の自己株式には割り当てられませんから、割当て対象は乙の39株です。これ
で計算しますと、合併対価は「39株×0.5=19.5」になりますが、会社法
234条の端数処理により、0.5株は切り捨てられ、結局のところ、合併対価は
19株です。

 具体的には、A5.5株、B6.5株、C7.5株になるところ、端数の合計が
1.5株となり、この合計の端数を切り捨て、A5株、B6株、C7株とし、切り
捨て後の端数合計の1株を売却処分し(234条2項)、その代金をABCに配分
します。

 このように合併対価は甲株式19株(5+6+7+1)が正しいのに、上記の契
約書では、19.5株を切り上げて20株だというのです。

 合併対価が20株だとすると、「乙の1株に甲の0.5株を割り当てる合併」で
はなく、「乙の39株に甲の20株を割り当てる合併」になります。最初からこう
いう合併であるなら、契約書2条1項の書き方と矛盾が生じます。

 いずれにしろ、法務省の内部で練り上げた契約書ではなく、合併に不慣れな方の
作文を公表してしまったのでしょう。

 もう慣れっこになってしまいましたが、小泉改革あたりから、官庁も手抜きが増
えました。自分の身は自分で守りましょう。


2012.02.07(火)【合併理解度テストその1】(金子登志雄)

 法務省のHPに合併契約書の見本があるというので、みてみました。下記の6頁
でしたが、この頁を一読して、おかしいところをみつけてください。貴方の合併あ
るいは会社法に対する理解能力がわかります。

  
http://www.moj.go.jp/content/000057730.pdf

 何かみつかりましたか。 

 まず、合併契約書2条3項に「本合併に際して発行する甲の新株式に対する利益
又は剰余金の配当は、効力発生日から起算する」とあります。

 この「利益又は剰余金の配当」という表現は、利益が剰余金でないような書き方
で不適切です。会社法では、「利益の処分としての配当」という考え方を捨て、配
当は会社財産の払戻しと構成しています。したがって、その他利益剰余金を原資と
する配当とその他資本剰余金を原資とする配当は、ともに剰余金の配当です。

 また、この条項の記載では、配当の起算日を効力発生日としており、日割配当を
肯定するもので不適切です。会社法454条3項でも、株数に応じて割り当てよと
あるだけで、いつから株主になったかを基準としてはいません。会社法は日割配当
を禁じているということです。

 次に、3条ですが、合併で受け入れる合併効力発生日時点の株主資本等変動額は、
予想数値で、かつ概算でしか分からないはずなのに、「増加するその他資本剰余金
の額 金○○万円」と具体的数値で書いています。株主資本等変動額と合併契約書
3条の合計額との差は、どこに計上されるのでしょうか。その他利益剰余金などに
はなりません。会社計算規則35条2項本文に「利益剰余金の額は変動しない」と
あるとおりです。

 会社法749条1項2号イに「資本金及び準備金の額に関する事項」とあるとお
り、いくらになるか不明な「その他資本剰余金」については額を記載する必要がな
いのです。

 おそらく、この見本を作成した方は、合併契約時点の消滅会社のその他資本剰余
金の額をここに写して、その後の変動は、のちほど調整すればよいとでも思ったの
でしょうが、この合併契約の内容は、明らかに会社計算規則35条1項の合併です
から、消滅会社の利益勘定も含んだ株主資本等変動額から増加資本金と増加準備金
を控除したものがその他資本剰余金になります。

 今日のところは以上ですが、実をいうと、もっとおかしな部分があります。それ
は明日に回しますので、それまで皆さんも明日の内容を想像してください。


2012.02.06(月)【著書の「推薦の辞」】(金子登志雄)

 「会社法を司法書士の手に!」を合言葉に、全国の多数の司法書士を会員とする
「商業登記倶楽部」(神ア満治郎先生・主宰)のHPをみていましたら、「主宰者
からのお知らせ」欄で、会員を対象に、先生が『ずばり解説!会社の計算』につき、
推薦の辞を書いてくださっていることに気づきました。ありがたいことです(会員
向けのため一般の方にはみえません)。

 (商業登記倶楽部)
 
http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/STClub2.htm
  
 そこにもありましたが、会社法以降、登記申請の添付書面として「資本金の額の
計上に関する証明書」や「一定の分配可能額又は欠損の額が存在することを証する
書面」が加わったため、司法書士は嫌でも会社の計算を勉強せざるをえなくなって
しまいました。

 具体的には、吸収合併等で資本金の額を増加させる場合に、その額が株主資本等
変動額の枠内であること等を証明する必要がありますし、分配可能額や欠損の額ま
で計算することができないと商売にならなくなったのです。

 本欄読者で非司法書士の方はきっと「そんなことは会計の専門家である公認会計
士や税理士さんに計算してもらえばよいじゃないか」と思いませんでしたか。

 ところが、「株主資本等変動額」「分配可能額」「欠損の額」といっても、ある
意味で会社法上の専門用語ともいえますから、意味も通じない会計事務所さんが多
いのです。

 それどころか、平成13年の商法改正(いわゆる金庫株改正)から登場した「そ
の他資本剰余金」についても、何のことか意味も通じない街の会計事務所・司法書
士事務所・法律事務所が圧倒的多数でしょう。

 そんなことを知らずとも十分に暮らせる方はうらやましい限りですが、そのうち、
「そんなことも知らないのですか」と顧客の経理部や総務部にいわれる時代も遠か
らず到来することでしょう。会社法施行後6年が経過する本年5月1日までには、
ぜひマスターしていただきたいものです。

 ただし、司法書士の皆さん、私より詳しくなることだけはやめてくださいね。相
撲でいう「恩返し」を歓迎したいのですが、私はまだ引退したくはありません。


2012.02.03(金)【普通株式は種類株式か】(金子登志雄)

 先日、ある会社法関係の法律のプロフェッショナルと種類株式発行会社の定款に
ついて議論になりましたが、彼は、いまでも「普通株式は種類株式ではない」と思
いこんでいました。会社法施行後5年になろうというのに、まだ、こういう方がい
るのですねぇ。

 私作成の定款に「普通株主の種類株主総会」という表現があることに、どうも納
得しかるようでしたので、手持ちのパソコンで下記を開いて示しましたところ、
やっと納得していただきました。

  
http://ir.chip1stop.com/pdf/C1S_Soukaishousyuu_20111026.pdf

 そもそも、【普通】株式という用語自体が【普通でない】株式を前提としており、
1種類しかないのであれば、単に「株式」といえば済むことです。

 著書にも書きましたが、工業高校や商業高校という専門課程の高校があるから、
普通高校があるので、「普通」も「普通という種類」に過ぎません。工業立国の国
であれば、ひょっとして工業高校を普通高校と名づけ、非工業・非商業の高校は、
文科高校とでも名づけられるかもしれないのです。

 普通株式も株式の種類ですから、A種種類株式などと名称を変更することも可能
です。

 種類株式のセミナーや会社の計算のセミナーでは、こういうABCから説明をは
じめるのですが、突然、想定外の話を聞くようで、驚かれる方も少なくありません。
今月も1つセミナー講師を引き受けていますが、そろそろレジュメを作らねば……・ 


2012.02.02(木)【新年会】(島根・根来川弘充)

 歳相応なのか、今年の1月から地元の青年団体の会長になることになりました
(30数名の小規模な会です)。今まで、長という役職は、小学校の学級委員長を
1回くらいしかしたことがない私も、会の代表として、他の団体の新年会に出席す
ることになりました。

 そこである団体の新年会で、来賓の方の挨拶で聞いたのですが、辰年というのは、
景気が良くなる年なのだそうです。2000年の時は、IT関連で上向きに、その
前は、バブル景気がはじまり、その前は、オイルショック後から上向きにと、昨年
は、大震災もありましたので、今年は、是非、復興景気で日本に活気がでるよう期
待したいということでした。

 言われてみて、なるほどとは思いましたが、新聞をみると国内は消費税増税、国
外はユーロ危機。年明けからあまり明るい材料がありません。ただ、何か分からな
いものに期待はしたいと思います。

 ところで、他の団体の新年会に出席させていただいて、席次や次第は、会ごとに
違うということがわかりました。自分の団体も含めて、数団体出席しましたが、そ
のすべてが大なり小なり、違っていました。おそらくはどれが正しいというわけで
もないのだと思いますが、長というものを委ねられると、細かい事が気になります。

 今年一年は、昨年以上に気をつかう年になりそうです。


2012.02.01(水)【ずばり解説!正誤表】(金子登志雄)

 東京司法書士協同組合のHPに、『ずばり解説!会社の計算』に関する校正漏れ
一覧(正誤表)を掲載してもらいました。

  
http://tsknet.jp/doc/topics/zubari_keisan3.pdf

 こういうものは、顧客本位の出版社のHPに掲載されていることが多いのですが、
これをみて、「なぜ、こんな子供でも分かることを校正段階で発見できなかったの
か」と思いませんか。

 「及び」が「及ぴ」になっていたり、「 」とすべきところが[ ]になっていた
り、情けない限りですが、本では容易に発見できることも、校正ゲラの1枚、1枚
では、意外に見つからないものなんです。

 そのため、一般論ですが、市販本の初版には多くの誤植等が付き物であり、著者
の多くが、「ああ恥ずかしい、早くあの本がこの世から消えないかなぁ(あるいは、
早く増刷になり、間違いを直せたらなぁ)」などと思うものです。ひどいのになる
と、表紙に誤植があったりします(昔の拙著にもありましたが、ほとんどの方が気
づかなかったため、内緒です。富田センセの本にもあったとか)。

 市販本に比して、東京司法書士協同組合の出版物は、誤植が非常に少ないといえ
ます。それは、校正の回数(初校、2校、3校などといいます)を市販本より多く
しているからです。

 法律の制定などは、校正を何度繰り返すのでしょうか。ほとんど間違いがないの
は脅威です。

 念のため、商業登記法91条92条は、株式会社による株式交換や株式移転で新
株予約権を引継ぐための規定ですが、商業登記法126条2項は、これを合同会社
に準用しています。合同会社も株式交換の完全親会社になれますが、株式会社では
ないため新株予約権を引き継げるわけがありません。この誤植にお気づきでしたか。


2012.01.31(火)【自己株式の無償処分の可否】(金子登志雄)

 某MLで「自社株の寄附は可能か」という点が議論されていましたが、自己株式
の【無償】処分は、新株の無償発行と同様に、会社法が想定していません。

 会社法199条以下には払込期日等が定められていますし、新株予約権に関する
会社法238条1項2号のように無償を前提とする規定もありませんし、株式の無
償割当てという制度も別に定められているからです(同185条参照)。

 新株のゼロ円発行も自己株式の無償処分も不可能であるということは、いわゆる
有利発行の最下限は総額で1円ということになりますが、なぜ、無償が不可かとい
うと、そもそも募集株式の発行等は資金調達を目的とするものですから、無償では
意味がないということです。

 資本勘定(資本金・資本準備金・その他資本剰余金)にマイナスがないのと同様
に、株式価値にはマイナスもゼロ円もないという前提もあるでしょう。どうしよう
もない債務超過会社の株式であっても、株主有限責任の関係で何の義務もない限り、
無価値ということはありません。

 それに、自己株式は会社にとって財産ではありません。純資産の部の控除項目と
して計上されているのがその証拠であり、いわば純資産を払戻した見返り品であり、
新株発行の代用品でもあります。自己株式を外部に放出することは議決権を無償で
交付することと同じですから、この意味でも無償は不可能というべきです。

 さて、以上のとおり、いつもは「自己株式の無償処分は無理だ」と答えていたの
に、今度の『ずばり解説!会社の計算』111頁では、「株式の無償割当ては自己
株式の【無償処分】や自己株式の消却と同様に、その他資本剰余金の減額になりま
す」と無意識に書いてしまいました。株式の無償割当てと自己株式の処分を対比し
たいという気持ちが先走ってしまったようです。

 拙著の熱心なファンである司法書士さんから「先生は、この前、自己株式の無償
処分はできないといっていたのに、今度の本の111頁にはできるような書き方に
なっていますよ」と指摘されてしまいました。

 なお、この部分を含め、『ずばり解説!会社の計算』の校正漏れ一覧を今日明日
にも、東京司法書士協同組合のHPに開示いたしましょう。


2012.01.30(月)【種類株主総会の設置】(金子登志雄)

 種類株式発行会社の設立にあたり、上場会社の真似をして、定款で次のように
定めることにしました。

------------------------------------------------------------------------
(機関構成)
第4条 当会社には、株主総会及び取締役ほか、次の機関を置く。
    1.取締役会
    2.監査役。ただし、監査役の権限は会計に関するものに限定する。
------------------------------------------------------------------------

 しかし、この会社は種類株式発行会社ですから、一瞬、「当会社には、株主総
会、【種類株主総会】及び取締役のほか、次の機関を置く」という表現にしなく
てよいのかという不安が走りました。

 調べたところ、種類株式発行会社である上場会社も、上記第4条のような定款
の定め方になっており、種類株主総会に触れていません(例えば、雪印)。

 会社法を再確認したところ、第2編第4章「機関」第1節の見出しが「株主総
会及び種類株主総会」なのに、次の第2節は「株主総会以外の機関の設置」とあ
り、「株主総会及び種類株主総会以外の機関の設置」となっていません。

 一見、種類株主総会も株主総会の一種と考えて第2節のように定めたのかのよ
うですが、そうであれば第1節の見出しと矛盾しますから、おそらく種類株主総
会は種類株式発行会社にした後に登場する第2次的必須機関(条件付必要機関)
なので、第2節の見出しに記載しなかったのでしょう。

 同じことが、委員会設置会社の執行役にもいえます。もっとも、こちらは執行
役は委員会設置会社に含まれることが理由だともいえます。

 結局、「株主総会及び取締役のほか、次の機関を置く」という意味は、全ての
の株式会社を前提とした基本的な定めであって、任意に種類株式発行会社にした
場合や委員会設置会社にした場合の必須機関まで記載する必要はなく、上記のよ
うな定款の定めで問題ないとの結論にいたしました。


2012.01.27(金)【2種類の取締役】(金子登志雄)

 中間試案の論評は一休みして………、
 ある税理士さんが「会社法によれば、非取締役会設置会社の取締役が2人以上あ
るときの【業務】の決定は、取締役の過半数で決定することになる」と表現したの
で、私が「それは【業務の決定】ではなく、【業務執行の決定】というべきでしょ
う」と申し上げましたところ、何と、「条文では【業務執行】ではなく【業務】に
なっている」と反論されてしまいました。

 会社法の条文を確認しましたところ、確かに会社法348条2項には、「取締役
が2人以上ある場合には、株式会社の【業務】は、定款に別段の定めがある場合を
除き、取締役の過半数をもって【決定】する」とありました。

 ところが、取締役会設置会社に関する会社法362条では「【業務執行】の決定
は取締役会」とあるのです。

 整理いたしますと、次のようになっています。
--------------------------------------------------------------------------
【取締役会設置会社】
  業務執行の決定………取締役会
            ★【業務】の決定も含むのでしょう。   
  業務の執行……………代表取締役等の選定された業務執行取締役
  
【非取締役会設置会社】
  業務の決定……………取締役の過半数の決定
  業務の執行……………取締役(例外は定款の別段の定め)
            ★【執行】の決定もこちらでしょうか。
--------------------------------------------------------------------------

 こうしてみると、本来、取締役は取締役というだけで【業務執行】の決定も執行
もできるが、具体的に何をするかという【業務】の決定は、多数決で決定するのが
原則だということでしょうか。

 つまり「何を」するかは取締役の過半数の決定だが、決められた業務を「どう執
行するか」は取締役各自の権限であるのが原則だということでしょう。

 これが取締役会を設置すると、頭脳部分は取締役会になり、実行する手足部分が
業務執行取締役になるようです。

 旧商法・有限会社法時代は、有限会社では取締役と業務執行は分化していないが、
株式会社では分化していると説かれましたが、株式会社と有限会社が一体化した会
社法のもとでは、上記のように、取締役と業務執行は分化していないが、取締役会
を設置すると、取締役の業務執行権限が制限されると1元的に説明することになり
ます。

 しかし、やはり、われわれには、会社法施行以前のように、取締役会設置会社の
取締役と非設置会社(有限会社型)の取締役とは別の種類と2元構成で考えたほう
が分かりやすいですね。今更ながら、株式会社と有限会社を1つの法典に統一した
のは無謀だったのではないかと思ってしまいました。

 有限会社型株式会社を基本とする会社法に、企業統治だ、親子会社法制だ、など
という巨大企業の規律を加えようとする中間試案も、無謀だと思いませんか。


2012.01.26(木)【中間試案への論評その6】(金子登志雄)

 論評その6は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
2 株式の併合
(1) 端数となる株式の買取請求
  @ 株式会社が株式の併合(単元株式数に併合の割合(会社法第180条第2項
  第1号)を乗じて得た数が整数となるものを除く。)をすることにより株式の
  数に一株に満たない端数が生ずるときは、反対株主は、当該株式会社に対し、
  自己の有する株式のうち端数となるものを公正な価格で買い取ることを請求す
  ることができるものとする。
 (注2)買取請求をしなかった株主の有する株式のうち端数となるものの処理は、
   会社法第235条に定める手続によるものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 株式併合とは3株を1株にするなど、株数を減少させる会社の行為です。これを
すると、1株主、2株主、5株主………など、3で割り切れない部分の端数が生じ
ますが、この端数は会社がまとめて売却などをして、その代金を端株の生じた株主
に分配するのが現行法の方法です。

 これでは安く売ることを強制することになるので、公正な価格での買取りも認め
ようという提案です。

 この差額がどの程度になるのか私には分かりませんが、端数部分の値段ですから、
それほど大きな金額にはならないのではないかと私は思っています。

 私の想像どおりであれば、買取請求を認めて、株式併合を複雑な手続にする必要
があるのかと思っています。

 どうも、中間試案はやたらと物事を複雑にするばかりだという印象があります。
素人に縁遠い会社法になれば、私の存在価値が増して商売繁盛になるかもしれませ
んが、愛する会社法が論理の一貫性を失い複雑怪奇になることには抵抗があります。


2012.01.25(水)【中間試案への論評その5】(金子登志雄)

 論評その5は、次の提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
1.支配株主の異動を伴う第三者割当てによる募集株式の発行等
(1) 株主総会の決議の要否
  公開会社が、ある引受人(当該公開会社の親会社等を除く。)に募集株式を割
 り当てることにより、当該引受人が総株主の議決権の過半数を有することとなる
 ような第三者割当てによる募集株式の発行等を行う場合に、株主総会の決議を要
 するものとするかどうかについては、次のいずれかの案によるものとする。
【A案】原則として株主総会の普通決議を要するものとする。ただし、取締役会が
  当該募集株式の発行等による資金調達の必要性、緊急性等を勘案して特に必要
  と認めるときは、株主総会の決議を省略することができる旨を定款で定めるこ
  とができるものとし、そのように定めた場合には、総株主の議決権の100分
  の3以上の議決権を有する株主が一定期間内に異議を述べない限り、当該定款
  の定めに基づく株主総会の決議の省略が認められるものとする。
【B案】総株主の議決権の4分の1を超える数の議決権を有する株主が一定期間内
  に当該募集株式の発行等に反対する旨を通知した場合には、株主総会の普通決
  議を要するものとする。
【C案】現行法の規律を見直さないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 増資の結果、第三者の傘下にはいることもあるので、株主の意思を確認すべきだ
という提案に反対する理由はないのですが、なぜ、いまさら、このような規定を設
けるのか不思議です。

 昭和25年改正の旧商法の時代から、ずっと公開会社の増資は取締役会の権限と
されていました(授権資本制の採用)。ここで例外を設け、更に定款でその例外を
定められるなどとしたら、例外規定の継ぎはぎだらけで、会社法がますます迷路状
態になります。

 授権資本制の原則を活かして、このような増資は取締役会の3分の2や4分の3
の賛成を要するとか、発行可能株式総数の発行済株式の総数に対する4倍制限を2
倍制限程度にして、株主割当てを除く大幅な増資は株主総会の開催を必須にするな
どの方策も検討したのでしょうか。

 提案の背景は理解できますが、もう少し検討の余地があるように思います。


2012.01.24(火)【ずばり解説!ずばり返答!】(金子登志雄)

 東京司法書士協同組合から『ずばり解説!会社の計算〜基礎から応用まで〜』が
予定どおり出版され、昨夕はこれに関わった組合役員の方々と打ち上げでした。

 事前予約注文数をお尋ねしたところ、思いのほか多く、本の中身も不明な段階で、
これだけ多数の方が予約をいれてくださったのかと、たいへんうれしく思いました。
本欄読者の皆様もきっと多数加わっているものと思い、御礼申し上げます。

 予約注文者はほとんどが司法書士のようですが(当然ですね)、市販されている
私の著書の読者は会計事務所が多いので、ぜひ、会計事務所にもご紹介をお願いし
ます。会計事務所にも新しい会社の計算をマスターしていただかないと、司法書士
との協働作業も円滑に進みませんので………。

 午後6時から打ち上げをはじめたためか、途中で私の顧客3箇所から携帯に電話
がありましたが、組合の方から「お客さんが携帯に電話してくるのですか」と驚か
れてしまいました。

 そうなんです、私は自他共に認める「携帯司法書士」です。ただし、事務所も持
てない貧乏司法書士という本来の意味(?)ではなく、人を待たせるのも人に待た
されるのも嫌いですから、不在や行き違いのない携帯電話を仕事の中心に置いてい
るということです。

 企業法務に従事して、もう20年以上ですので、ほとんどの質問は近くに六法や
マニュアル本がなくとも即答できますので、私にもお客様にも携帯電話が便利なん
です。

 まさに、「ずばり返答!会社法の質問〜携帯電話の活用〜」といったところです
が、携帯PCといい、電子申請といい、ものぐさで出不精の私には、実によい時代
になりました。おかげで、すっかりメタボになってしまいましたが………。


2012.01.23(月)【梅酒】(仙台・立花宏)

 15年以上前に閉じられ、それから開けられることのなかった蓋を開けると、中
に入っているその液体は、周囲にやわらかな甘い梅の香りを漂わせた。

 昨年末に、自宅の物置を片付けていたところ、昔、仕込んだ梅酒の瓶が目に入り
ました。成人になって、お酒を好んで飲むようになってから、一時期、果実酒造り
に凝ったことがありました。もう16,7年も前のことです。

 凝ったといっても自己流で、あまりおいしくは出来なかった記憶があります。普
通の梅酒じゃつまらないので、焼酎は芋焼酎、砂糖は和三盆と変なところにこだわ
って作ったのですが、素人が変にこだわるとあまりいいことはないようで、分量の
バランスが良くなかったのでしょうか。作ったのはいいものの、ほとんど飲まなか
ったような気がします。

 今回、蓋を開けたのは、そのとき作ったうちの1本で、飲めるのだろうか、腐っ
てはいないだろうかとおそるおそる蓋を開けたのですが、どうやら、大丈夫そうで
す。

 年末に、物置で目に入ったときは、おいしかったという記憶がなかったので飲も
うという気がおきなかったのですが、正月明け、とある新年会から帰宅して、なに
か一杯飲みたいなあ、と思ったとき、物置の梅酒のことが思い出されました。

 そこで、梅酒の瓶の蓋を開けたのですが、グラスに注ぎ、口に含むと、さわやか
な梅の香りが広がりました。そして、透き通った梅酒の甘さが快感でした。

 自分の味覚が変わったのでしょうか。でもそれだけでもないでしょう。きっと、
15年以上の月日が、少しずつ少しずつ、梅酒を変化させてきたのだと思います。
また、あの震災を乗り越えた梅酒だと思うと、感慨深くもありました。

 そして、思いました。この15年で、自分はどのように変化してきたのだろうか、
と。自分では変わっていないつもりでも、きっと、少しずつ変わってきたはずです。

 この梅酒のように、良い方向に変わってこれたのだったらいいな、と思うのと同
時に、これからの15年で、どのように変わっていけるだろうか、と心配になりま
した。

 司法書士としてはもちろん、人間としても、良い方向に変わっていけるよう、大
切な時間を積み重ねていきたいな、と思いました。


2012.01.20(金)【法務雑誌は中間試案特集】(金子登志雄)

 旬刊商事法務の新年合併号に引き続き、明日あたりに発売になるビジネスロ
ー・ジャーナル誌もビジネス法務(中央経済社刊)も、中間試案特集のようで
す。書店でお手にとってご参照ください。
 
 ビジネスロー・ジャーナル誌は、弁護士、大学教授、企業人、司法書士(私)
に対するインタビュー記事が中心でした。

 ビジネス法務はどうかと思い、中央経済社の親しい知り合いに電話し、確認
しましたところ、いくつかの大手法律事務所の弁護士さんを中心とする座談会
が中心のようです。

 もちろん、司法書士を座談会に登場させなかったビジネス法務には、冗談め
かして、クレームを申し上げておきました。

 中間試案の内容が国際的大企業を前提にした企業統治や親子会社法制につい
てですから、コメンテーターとして、大手法律事務所の弁護士さんが中心とな
るのは仕方ないとしても、おそらく、弁護士全員と司法書士全員に会社法のテ
ストを実行すれば、平均点は司法書士のほうが上でしょうから(会社法の事件
が少ないため街の弁護士さんは会社法に無関心であるのに対し、司法書士は商
業登記を通じて必須科目だからです)、今後は司法書士も、ぜひ座談会に登場
させてほしいものです。

 もっとも、大企業を顧客にし会社法に詳しい弁護士さんは、若くして司法試
験に合格し米国に留学した超エリートの方が多く、やたらと英語表現(スクイ
ーズ・アウトなど)を乱発する傾向がありますから、中小企業を顧客にしドメ
スティック(国内)専門の司法書士とは、会話が成り立たないかもしれません
ね。私も、会社法論議では負けなくとも、英語力で負けそうです。

 なお、参考までに、ビジネスロー・ジャーナルをざっと読んだ限りは、コメ
ンテーターの方々の多数意見は「総論賛成、各論反対」でした。つまり、「改
正の趣旨はよく理解できるが、この内容では……」という意見ばかりでした。


2012.01.19(木)【中間試案への論評その4】(金子登志雄)

 昨日届いた「旬刊商事法務」の新年合併号で中間試案を座談会で取り上げてい
ました。例の弥永教授や有名な中村直人弁護士らが出席し、難しい会話を繰り返
していました。

 しかし、ここでも議論の前提として想定している会社が1部上場会社など巨大
企業のように思われました。

 何度も繰り返しますが、わずかの数の会社のために、会社法のあちこちを増改
築する必要があるのでしょうか。かの中央経済社ですら、上場会社でありながら
資本金5億円以下で、従業員数100名以下の中小企業に過ぎません。

 さて、論評その4は、中間試案の「監査役の監査機能」に関する提案です。
--------------------------------------------------------------------------
■監査役の監査機能
1 会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定
【A案】 監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)及び監査委員会は、
     会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等についての決定権を有
    するものとする。
【B案】 監査役(監査役会設置会社にあっては、監査役会)及び監査委員会は、
    会計監査人の選解任等に関する議案等についての決定権及びその報酬等
    についての同意権を有するものとする。
【C案】 現行法の規律を見直さないものとする。
2 監査の実効性を確保するための仕組み
  株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制について、監査を支える
  体制や監査役による使用人からの情報収集に関する体制に係る規定の充実・
  具体化を図るとともに(以下、略)
--------------------------------------------------------------------------

 上記をみて、多くの方が「業務執行を決定する取締役が会計監査人候補を選び、
その報酬を決定しているのでは企業統治にならないから、監査役にその権限を移
譲することはよいことだ」と思ったことでしょう。

 しかし、これを認めると、「業務執行の決定は取締役会、監査役は業務監査が
任務」という伝統的な会社の統治構造が崩れるという反対意見があります。私も
監査役が株主総会の議案まで決定することに、現行会社法の建前が認めているの
かという疑問を持っています。

 そもそも監査役の人選ですら取締役会で決定し株主総会で選任するのです。そ
れを横において、会計監査人については監査役に決定させようとしても根本的な
解決にはなりません。監査役に人選能力があるかも疑問です。

 企業統治の強化のために会計監査人の権限を強化すれば会社の費用負担が増し
ますし、ほんと困ったものです。


2012.01.18(水)【中間試案への論評その3】(金子登志雄)

 論評その3は、中間試案の「社外取締役及び社外監査役に関する規律」の提案を
取り上げます。

--------------------------------------------------------------------------
■社外取締役及び社外監査役に関する規律
(1) 社外取締役等の要件における親会社の関係者等の取扱い
  社外取締役の要件に、株式会社の親会社の取締役等でないことを追加しようと
  する提案
(2) 社外取締役等の要件に係る対象期間の限定
  社外取締役等の要件である過去に取締役等でなかったことの期間制限を設けよ
  うという提案
(3) 取締役及び監査役の責任の一部免除
 (1)のような見直しをすることとする場合には,次のとおりの見直しをする。
  @会社法第427条第1項に定める契約(責任限定契約)を締結することがで
   きる取締役及び監査役は,次のとおりとするものとする。
   ア 取締役のうち,株式会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その
    他の使用人でないもの
   イ 全ての監査役
--------------------------------------------------------------------------

 現行の社外取締役・社外監査役の定義では、親会社の取締役も社外性を有するだ
けでなく、1度でも取締役や従業員になると、社外性を永久に失うため、これでは
範囲が広すぎる・厳しすぎるという難点がありますので、この見直しは私も必要だ
と思っています。

 司法書士として気になるのは、上記(3)の非常勤取締役も社外監査役でない監
査役、つまり、「非業務執行」役員(非常勤取締役と監査役)であれば誰でも責任
限定契約を締結できるようにする部分です。

 このこと自体には賛成ですが、現行会社法の建て付けは、責任限定契約が定款に
定めてあれば、社外取締役や社外監査役の登記が必要だというものです。上記のよ
うな改正があれば、社外役員の登記につき責任限定契約を前提とする必要がなくな
るはずです。

 にもかかわらず、この点に関して、中間試案は一言も触れていません。このまま
改正されたら、登記に関する会社法911条との整合性が問題となるのではないで
しょうか。


2012.01.17(火)【中間試案への論評その2】(金子登志雄)

 論評その2は、中間試案の「監査・監督委員会設置会社」という新たな機関構成
を設けようという提案についてです。

--------------------------------------------------------------------------
■監査・監督委員会設置会社制度
 取締役会の監督機能の充実という観点から、自ら業務執行をしない社外取締役を
複数置くことで業務執行と監督の分離を図りつつ、そのような社外取締役が、監査
を担うとともに、経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たす
ものとするための制度として、次のような機関設計を新たに認めるものとする。
(1) 監査・監督委員会の設置
 B 監査・監督委員会設置会社には、【監査役】並びに指名委員会,監査委員会
  及び報酬委員会を置かないものとする。
 C 監査・監督委員会設置会社には,会計監査人を置かなければならないものと
  する。
--------------------------------------------------------------------------

 要するに、監査役をなくして監査は社外取締役に委ねるという新たな機関設計を
設けようとするものです。委員会設置会社の簡易版とでもいうべき設計でしょうか。

 採用は任意ですから、反対する必要もないのですが、「これ以上、会社法を複雑
にしないでくれ。会社法は専門家のお遊びの道具じゃないよ」というのが私の意見
です。パソコンと同じで機能ばかり増やしても使いこなせるものではありません。

 わが国には、株式会社が100万社以上ありますが、そのうち委員会設置会社は
わずか100社足らずです(1万分の1足らず)。この監査・監督委員会設置会社
を採用する会社は、もっと少ないであろうというのが私の予測です。新し物好きの
会社がへたに採用しようものなら、「御社は悪い役員が多いから、企業統治に不安
があるのですね。たいへんですね」と皮肉をいわれかねません。

 いずれにしろ、企業統治は制度の改善でうまく行くものではありませんし、その
必要があるのなら、上場会社等を対象に特別法で定めるべきで、100万社以上を
対象とする会社法で定めるべきではないと考えています。国民の会社法が専門家の
会社法になってしまいます。


2012.01.16(月)【中間試案への論評その1】(金子登志雄)

 せっかくですから、少しずつ「会社法制の見直しに関する中間試案」の内容をこ
こでご紹介しましょう。

  ◇企業法務部の皆様、本欄を社内報告書用の参考にしてかまいません◇

 中間試案の最初は次の内容ですが、皆様はどれに賛成しますか。
--------------------------------------------------------------------------
■社外取締役の選任の義務付け
【A案】監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)
   において、1人以上の社外取締役の選任を義務付けるものとする。
【B案】金融商品取引法第24条第1項の規定により有価証券報告書を提出しなけ
   ればならない株式会社において、1人以上の社外取締役の選任を義務付ける
   ものとする。
【C案】現行法の規律を見直さないものとする。
--------------------------------------------------------------------------

 最大の問題点は、会社の立場からは、「これでは余計な経費がかかるじゃないか、
うちは過去一度も不祥事を出していないのに、余計なとばっちりはやめてくれ」と
いうことでしょう。株主の立場からも会社の儲けが減ることは歓迎しないでしょう。
上場会社の株主総会でも「監査役4人は多過ぎる」というクレームを出す株主が少
なくありません。

 顧客企業サイドに立つことを重視している司法書士の私としては、当然に【C案】
に賛成です。

 ところで、【A案】又は【B案】賛成の方で、「社外取締役を選任すれば、それ
が登記され、この会社は企業統治に熱心なことがわかってよいことだ」と思った方
はいらっしゃいませんか。

 これはとんでもない誤解であり、会社法911条3項をよくみてください。特別
取締役制度採用会社(こんな会社が現実に存在しているのかも私は知りません)か、
定款に社外取締役の責任軽減を定めている会社でなければ、社外取締役である旨の
登記はされません。

 私の顧客の上場会社でも、社外取締役が存在しながら登記簿に表示されていない
会社がありますが、理由は上記です。

 ですから、社外取締役を登記したければ、責任軽減を定款に定めることも必要で
あり、【A案】【B案】の会社を前提とすると、役員登記と責任軽減登記の2つで
登録免許税が6万円かかります。年あたりの役員報酬を加えると、社外取締役1人
につき、少なくとも年間300万円以上の経費負担でしょうか。この1人が欠ける
と臨時株主総会を開催して後任を選任しなければなりませんから、補欠社外取締役
の選任も必要でしょう。この不況期には、実に痛い出費です。株主が100人なら、
1人3万円の負担です。

 こういうことを分かって会社法制部会は提案しているのでしょうか。ちなみに部
会には司法書士の代表は加わっていません。司法書士を会社法制【社外】部会委員
(?)に選任すると余計な経費がかかるからかもしれませんね。

 もっとも、企業社会の感覚を十分に分かっていない司法書士が多いので、人選を
誤ると、【A案】又は【B案】のほうが司法書士の仕事が増えてよい(表向きは、
企業統治の強化は正義だ)などと主張しかねませんけれど。

 参考:本文とは無関係ですが、貴重映像がネットに登場しました。どこの誰だか
  知りませんが、マニフェストを命がけで守れと、街頭で消費税アップの首相に
  異を唱えています。

   
http://www.youtube.com/watch?v=y-oG4PEPeGo


2012.01.13(金)【中間試案へのコメント】(金子登志雄)

 正月早々、先週の5日(木)にビジネスロー・ジャーナル誌から、「会社法制の
見直しに関する中間試案」について、コメントがほしいということで、インタビュ
ーを受けました。もちろん、私に対してだけでなく、学者や弁護士にも意見を求め
ているようですから、いわば私は司法書士の代表として声をかけられたのでしょう。

(ビジネスロー・ジャーナル誌)
       
http://www.businesslaw.jp/

 事前に予告があったので、にわか勉強しておきました。

(中間試案の内容)

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080089&Mode=0


 さて、当然ながら教科書や解説書はありません。つまり、権威ある誰かさんの意
見を参考に、いかにも自分の意見のように言うことはできません。

 白紙状態で中間試案を読み込み、内容を理解し、この内容で誰が得をし、誰が損
をし、どういう影響があるかなどを推理してコメントする必要があります。

 我田引水ですが、私の最も得意とする分野です。長年の読書嫌いの成果か、推理
力だけは鍛えられました。

 会社法制定時も、条文を読んだだけで、推理力でミニ解説を書いてしまいました。
それが下記「『会社法』法令集」の青字コメントです(あまり知られていませんが、
ここの「重要条文ミニ解説」は当ESG作です。「本書の利用にあたって」の部分
をご確認ください)。

(「会社法」法令集)
  
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502048801.html
  
 今度の中間試案に対するコメントも、試案を繰り返し読み、意味不明の部分は補
足説明を読み、コメントさせていただきましたが、少々、辛口のコメントになって
しまいました。一言でいえば、誰も困っていないのだから、微修正以外の会社法制
の見直しは不要である、というのが私の意見でした。

 他のコメンテーターは、どんな意見を出すのか、いまから興味津津です。21日
あたりの発売のようですから、ぜひ参照してください。恥ずかしながら、写真入り
登場です(眉毛まで白くなったせいか、老けた顔で写っています)。


2012.01.12(木)【福袋】(大阪・田中利和)

 新年あけましておめでとうございます。

 今年もテレビのニュースでもとりあげられていましたが,いろんな福袋があるよ
うですね。限定3名,お見合いができる福袋などもあったようです。

 さて、正月には、国道沿いにある大型の釣り具店に行って参りました。釣り具店
でも福袋が売られています。新春の大安売りです。ただし,私の目当ては,ダウン
ジャケットでした。

 ダウンジャケットは,デザインも重要ですが,どちらかといえば性能重視です。
シンプルでいて,釣りにも使え,街の中でもおしゃれに着れる,それが私の理想の
ダウンです。

 当日は,午前10時開店とほぼ同時に店に突入しました。私以外にも多くの釣り
バカたちが店に入ってきました。

 ダウンジャケットは,店の3階に売り場がありますので,私は,一気に3階まで
駆け上がり,他の釣りバカたちを置き去りにしました!

 売り場に着いて,すぐに,価格も手頃なダウンジャケットを見つけました。メイ
ドインジャパン! シンプルなデザイン! ダウンとフェザーの割合も,9対1!

 さわった感触も,薄手のペラペラではなく,相当,ダウンが詰まっているように
思えます。どこのメーカーのものか定かではありませんが,試着してみると,相当
暖かく,色は,やや光沢のある黒で,ジッパーの部分に赤色のストライプがあるだ
けです。これなら,シンプルで,釣りにも使えそうです♪

 しかし,シンプルなのは良いのですが,ゴミが入ったゴミ袋を,まとっているよ
うにも見えます(苦笑)。これでは,街の中でおしゃれに着るどころか,ゴミの日
に,これを着て外で寝ようものなら,ゴミと間違われてゴミ収集車に放り込まれか
ねません。

 散々悩んだあげく,今年の運がダウンしても困りますから、そのゴミ袋ダウンは
諦めて,福がアップするように福袋を買って帰りました。

 今年も皆様に福が来ますように。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


2012.01.11(水)【法第25条を鋭く分析する!】(富田太郎)

 皆様、本年もよろしくお願い致します。

 昨年末は、名古屋、大阪、福岡、仙台・・・etcと仕事で全国行脚をしており
ました。もちろん、WP(ワーキングプア)の私なので、すべて日帰りという日程
で、各地の風情を満喫するなどは無縁でした。

 ところで、今回「東北新幹線」に生まれて初めて乗りましたが、このJR東日本
(注)、こんなにも恩知らずの会社とは思いもよりませんでした。

 実は! タバコを吸えなかったのです(怒、怒)!

 ・JR東日本の新幹線は全面禁煙
 ・駅には喫煙ルームなるものがありましたが、非常に狭く、人がごった返してお
  り、とてもタバコを吸える状態ではありませんでした(通勤ラッシュの混雑し
  た電車の中でタバコを吸う雰囲気でした)。

 (注)なお、「たばこ特別税」は、旧国鉄債務に充当されている。

 調べてみると、JR東日本は、2007年から新幹線・特急列車の全面禁煙化を実施
しており、これは2003年に施行された「健康増進法」第25条を根拠にしているよう
でした。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
--------------------------------------------------------------------------
 健康増進法(平成14年法律第103号) 
 第五章 第2節 受動喫煙の防止
 第25条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、
    官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、こ
    れらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境におい
    て、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要
    な措置を講ずるように努めなければならない。
--------------------------------------------------------------------------

25条を読むと、あくまでも「受動喫煙を防止する〜努めなければならない」とあり、
「喫煙の全面排除の義務」とは書かれてはいません。

 つまり、元々の法の趣旨は「分煙の配慮義務」の訓示規定に過ぎないのに、いつ
のまにか「全面禁煙の義務化」であるとする解釈の歪曲化が横行し、合法であるはず
の喫煙行為は、あたかも犯罪行為であるかのように扱われています。

 一方、私は車を運転しませんが、車の排気ガスは、酸化窒素や浮遊粒子状物質によ
る大気汚染等、タバコの比ではなく深刻な問題なのに、ドライバーは喫煙者に比べか
なり寛大な措置が取られています。

 これぞ現代の魔女狩りです!

 金子先生!
 今年のESGは、会社法ではなく、この法第25条問題についての徹底的な勉強会を
しましょう!

  ・・・・・

 参加者(喫煙者)は二人しかいないので、無理かな・・・・。

 ところで、年初め、事務所の大掃除をしたところ、パソコン、窓、いたるところに、
タバコのヤニがついていました。

 あぁ〜いつも、換気扇の下で吸っているのに・・・・・(汗)。
 受動喫煙かぁ・・・・なるほどなぁ〜。

 ・・・・・・・・・・・・・・

 そうですよね。
 どんな正当な論理・美辞麗句を振りかざしても、やはり嫌煙家にとって、タバコは
嫌ですよね・・・・(反省)。

 まわりを気にしながらよりも、一人、事務所で気兼ねなく、「のんびり〜と吸う♪」
タバコが一番美味しいですね(つくづく)。

 今年も、タバコを吸いながら執筆に仕事に頑張っていきたいと思います♪


2012.01.10(火)【年末大掃除】(島根・根来川弘充)

 新年おめでとうございます。

 さて、昨年の話ですが、私の事務所では、29日を大掃除の日としました。

 私の中では、「大掃除」と普段の「掃除」で、分けている点が一つあります。
それは、「大掃除」の際は、廃棄か保存か迷ったときには、思いきって「廃棄す
る」ということです。

 仕事を始めた当時は、なかなか捨てきれなかったものが、10年目になると、
結構思い切り捨てられるようになりました。

 しかし、それでもやはり捨てきれないものがあります。それは、やはり専門書
などの書籍です。

 あまり、目を通さないうちに、法律が変わって役に立たなくなってしまう書籍
があったりするのですが、やはり、簡単には捨てれません。ということで、結局
は毎年保存する物が増えているというのが実情です。

 一昨年は、新たに物置を購入したのですが、すでに昨年末に捨てきれなかった
物で、半分近くが埋まってしまいました。このまま20年も続ければ、一軒家が
必要になりそうです。

 電子化された資料が増えているはずなんですけど、こういうときに、あまり実
感がありません。

 きっと、本年末も大量に捨てられない物が増えていることでしょうが、本年も
気持ち新たにがんばりたいと思いますので、よろしくお願い申しあげます。


2012.01.06(金)【忠臣蔵と企業統治】(金子登志雄)

 年末あるいは正月になると、テレビ映画に必ず登場するほど、日本人は忠臣蔵が
大好きですね。今年もありました。

 私も作り物の映画としては喜んでみていますが、子供の頃と違って大人になった
今は、場所もわきまえず、背中から無抵抗のお年寄りに刃物で切りつける殺人未遂
事件を犯した短気なお殿様をもったご家来衆は実にお気の毒なことだという考え方
のほうが強いです。

 家来も家来で、真夜中に凶器を準備し(凶器準備集合罪)、徒党を組んで他人の
家に押し入り(住所侵入罪)、目指す相手だけでなく無垢の多数に対してその寝込
みを襲って殺人罪を犯すなどもってのほかと思っていますが(赤穂の皆さん、ごめ
んなさい)、当時の道徳観では、そうでもしないと臆病な不忠臣と蔑まれ肩身が狭
かったのでしょう。吉良邸で巻き沿いで殺された多数の人々のことまでは、その後
の劇作等では完全に無視されているようです。

 さて、会社法改正の中間試案では、上場会社等に社外取締役を義務付けようとい
う動きがあります。不祥事を事前に防止するため、業務執行を監視させようという
企業統治の見直しの1つです。

 しかし、社外取締役候補を決めるのは取締役会(経営陣)ですから、監督される
側が監督する人を選ぶ限り、企業統治(法令遵守)に効果的かどうか疑問ですし、
それ以前に組織やその長が行き過ぎた行為を行っても、それを隠し続け、外に漏ら
さないのが組織に対する忠義という文化がある限り、問題の解決は遠いのではない
でしょうか。内部告発者に対する世間の目も極めて冷たいようです。

 法令遵守のエキスパートの集まりである日本の検察組織ですら、小沢・村木事件
では、証拠のフロッピーを偽造する、上司に対する報告書を捏造する、無関係な女
性秘書を10時間も拘束して保育園にも行かせないなど、組織に忠義(?)を示す
検事さんがいました。そうでもしないと組織の中で出世できない文化が日本社会の
組織文化になっていないでしょうか。

 所属組織よりも担当職務に対する忠誠心が優先し、宗教色の強い西欧の道徳観は
「神の意思に反しないか」のようですが、日本では「組織を裏切らないか」です。
こういう国で企業統治を推進するには、社外取締役は外国人や宗教家に限るしかな
いのではないかと、つい悲観的に思ってしまいます。

 本年は、間違った組織の指示を拒否し、臭いものには蓋をせずに根元から断つこ
とが真の組織愛だという道徳観(正しい忠義=企業統治)に切り替え、所属企業に
対してよりも企業統治への忠臣が少しでも増えてほしいものです。


2012.01.05(木)【謹賀新年】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。本日より、徒然日誌を再開いたします。
 
 さて、年末及びお正月休みは、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は、例年ど
おり年末は群馬に帰省し、正月は横浜の自宅でのんびりと本年のことなどを考えて
いました。

 本年が政治的にも経済的にも激動の年になることは間違いないでしょう。
 
 政治的には、世界各国で指導者の交代時期になります。3月にはロシア、4月は
フランス、11月は米国、12月に中国だといわれています。日本でも首相が交代
するでしょう。4月には、検察・司法神話の崩壊を招いた小沢裁判の判決があり、
その結果次第では、今後の日本の民主主義の行く末に大きな影響があるでしょう。

 経済的には、ギリシャからはじまったヨーロッパ危機です。世界経済を牽引して
いる中国も一時の勢いを欠いてきました。日本国内でも震災復興が遅々として進ん
でいません。ここに冷や水をかける消費税アップが可決すれば、消費マインドは冷
え込み、ますます不況が進行することでしょう。

 しかし、そうはいいながら、街に出れば、皆、いい服を着て、居酒屋は混雑して
います(12月28日は事務所近辺の居酒屋のほとんどが満杯でした)。日本経済
の体力は、まだ余力があるのでしょうか。

 また、激動の時代こそ、既成秩序が崩れ、実力ある方にとっては、成功への絶好
のチャンスです。実力者揃いの当ESGメンバーにとっては、好機です。

 企業も生き残りをかけたグループ再編を促進するでしょうから、組織再編専門の
私にとっても、実力を示せる好機の年だと思っていますが、その前提として、営業
力に欠ける私や当ESGメンバーに、そういう仕事が舞い込むかどうかですね。

 ESG諸君、おそらく本年も「食わねど高楊枝」あるいは「働けど働けど……」
になりそうですが、志だけは高くもって生きましょう。

 本年も、やせ我慢メタボと自称ワーキングプアで構成される当ESGをよろしく
お願い申しあげます。

(2011年度)

2011.12.28(水)【仕事納め】(金子登志雄)

 今日で法務局も店仕舞いであり、われわれ司法書士も意に反して(?)仕事納め
です〈不動産や相続の仕事が中心の司法書士は無理かもしれませんが………)。

 詳細には検討していませんが、本年を振り返ってみますと、大震災の影響かどう
かは不明ですが、設備投資の縮小で、司法書士は、皆、仕事の件数(量)が減少し
たのではないでしょうか。

 私も例年より手持無沙汰な時間が多かったように思います。ただ、幸いなことに、
大口の仕事が何件かありましたので、何とか無事に年を越せそうです。被災地の方
を思うと、これだけで十分に幸せですね。

 本徒然も、自分の都合では一度も休みませんでした。どんなに飲んで帰ったとき
も、旅行中であっても、決して休みませんでした。無理したわけではありません。
単に、1度休むと、気が緩んでサボり出しかねないので、休まないようにしただけ
です。

 ずっと続けていることとしては、お中元やお歳暮を過去1度も送ったことがなく、
いただいてもお返しもせず、失礼させていただいていることがあります。どうぞ、
金子は、そういうことを大の苦手とする人間だと思って、お許しください。

 全く季節感のない人間です。盆もクリスマスも正月も一切関係なく生きています。
明日も会社の関係で出勤しますし、明後日以降も事務所に行かないだけで、携帯電
話やパソコンは常時臨戦体制にしておきますので、どうぞご遠慮なく、ご連絡くだ
さい。元旦でも一向にかまいません。

 本年はお世話になりました。来年は、本年以上に厳しい年になりそうですが、当
ESGをよろしくお願い申し上げます。


2011.12.27(火)【収束宣言】(仙台・立花宏)

 先日、不覚にもインフルエンザに罹ってしまいました。

 毎年、インフルエンザの予防接種も受けていましたし、最後にインフルエンザに
罹ったのも中学生くらいだったと思います。また、健康にも気をつけているつもり
でしたし、もう、罹ることもないだろうと勝手に思い込んでいましたので、自分と
しては“想定外”の出来事でした。

 医師からは最低5日間、熱が下がってからも2日間は周囲に感染する危険がある
とのことで、その間は外出禁止です。

 自宅から出ないようにはしていましたが、当然のことながら、引継のため、所長
や事務所のメンバーから、私が抱えていた仕事の内容や状況の確認の電話が入って
きます。もし、自分ひとりで独立して仕事をしていたのだとしたら、こうはいかず、
お客様にもっともっとご迷惑をおかけしていただろうなあ、と思いました。
 そして、いつも以上に所長や事務所のメンバーに感謝の気持ちがわいてきました。
(この気持ちは忘れないようにしないといけませんね!)

 ですが、休みも3日目になると、事務所のメンバーから「体調はどうですか?」
「熱は下がりましたか?」との確認の電話が入り始めました。もしかしたら、いつ
から出勤できるのだ、という催促かもしれません。皆もたくさん仕事を抱えている
上に私の抱えていた仕事も割り振られたのですから、結構大変な状況のはずです。

 3日目の夕方にもなると、薬のおかげもあって、最高40℃近くあった熱も、平
熱まで下がっていました。のどをひどくやられたので、声はまだガラガラですが、
4日目には出勤しようと思えばできるような体調まで戻っていました。

 ”しかし、だからといって事務所に行ってもよいものだろうか。“

 私は、これで、熱も下がったとして、インフルエンザが治ったと収束宣言をして
よいものか迷いました。
 やはり、自分の体調だけでなく、インフルエンザを他人に感染させてはいけない
という社会的な責任もあります。安易な収束宣言は、周囲への危険を顧みない行為
ですし、また、周囲の人達を不安な気持ちにさせてしまうことになりかねません。

 結局、事務所のメンバーには申し訳ないと思いましたが、今週一週間は休む!と
宣言しました。

 ところで、先日、政府は、福島第一原発の冷温停止を発表し、事故の収束を宣言
しました。

 事故の収束は誰もが皆、待ち望んでいたことです。まして、現地の厳しい状況下
で働いている方々の大変な苦労を思うと、安易なことは言えません。

 しかし、原子力のことや、現地の状況等についてまったくの素人である私には、
判断しかねますが、事故発生からこれまでの発表を見ていると、今回の収束宣言を
信じてよいものか、やっぱりまだだったという発表があったりしないのか、個人的
には、まだまだ不安な気持ちです。

 この収束宣言が、本当に安心できるものであることを心より祈っております。


2011.12.26(月)【中間試案と江頭4版】(金子登志雄)

 北の将軍様は、予想どおり、死亡日が怪しくなってきましたね。わが国を含め、
どこの国でも、大本営発表については、まず、その内容の真偽につき、疑ってかか
ることが重要なようです。

 さて、3連休でしたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は、のんびりパソ
コンで昔のドラマ(海外の海賊版?)を楽しんでいましたが、仕事がら、「会社法
制の見直しに関する中間試案」の勉強をはじめました。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080089&Mode=0

 会計限定の監査役であることが登記事項になるようですが、既存の会社に、どう
登記するのかという経過措置が気になるところです。経過措置次第では、せっかく
任期を10年にし、これで当分の間、登記をいじらなくてよいのかという想定が狂
ってしまいかねないからです。

 中間試案の結果を経て会社法が一部改正されますと、会社法の教科書も改訂版に
なります。ということは、教科書筆頭の江頭会社法はこの12月に第4版になった
ばかりで、私も購入したのに、来年中には第5版になるということでしょう。

 http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641136090

 有斐閣もうまい商売をしますね。第4版と第5版の両方を買わせようという魂胆
でしょうか。

 一般の方は第5版まで待って購入すればよいのでしょうが、われわれモノ書き、
あるいはセミナー講師は、執筆にあたり、「江頭憲治郎著『株式会社法〔第●版〕』
〇〇頁」などと引用する関係で、常に直近の版を手元に置かざるをえないのです。
これも必要経費として割り切るしかなさそうです。


2011.12.22(木)【弥永教授がこんなところに………】(金子登志雄)

 北の総書記の死亡につき、下記をみてください。

 http://www.youtube.com/watch?v=pSWN6Qj98Iw

 まるで、玉音放送を聞く終戦時の日本国民のようですが、人間って弱いものです
ね。ここまで洗脳されてしまうようです。この国では、インターネットも普及して
いませんから、海外の情報も入らないので、仕方ない面もありますが、それにして
も、ここまで………と思ってしまいます。

 この録画をみて、北の国民は自分の頭で考えないのかと思った方も多いことでし
ょうが、日本国民とて、マスコミ報道に影響(洗脳)されていないとはいえないで
しょう。

 私も、若い頃は、鈴木宗男や小沢一郎は金権まみれの悪い奴だと洗脳されていま
したが、いまは、世の中の仕組みも少しわかってきましたし、ネットの情報と大手
マスコミの情報を比較できますので、そう簡単には洗脳されなくなりました。

 そんなことを思っていた時、会社法や会計学の世界で知らぬ者のいない弥永真生
筑波大学教授(著書の『リーガルマインド会社法』は会社法の教科書になっていま
す)が小沢裁判で小沢側の証人に立ったようですね。本欄で小沢問題を時々取り上
げていましたが、会社法とは全く無縁の問題と思っておりましたら、こんなところ
に接点があったのかと驚きました。

 若い弥永教授(50歳)は、60代の江頭教授などの存在で、会社法では権威と
まではいわれていませんが、会計の世界では、権威のようで、それがゆえに、大手
マスコミの産経ニュースで大きく取り上げられたのでしょうか。 

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111220/trl11122022180007-n1.htm

 検察審査会の議決の根拠になった捜査報告書が虚偽だったことにつき、とうとう
郷原信郎・元検事(56歳)も、一部の組織的な動きに堪忍袋の緒が切れたようで
すし、今年は、信じていたことが信じられなくなる想定外のことがよく起きる年の
ようです。

  http://www.comp-c.co.jp/pdf/111219.pdf

 無関心が一番平和でいられることは重々承知していても、北の国民のようにはな
りたくないものです。


2011.12.21(水)【総書記の死亡発表】(金子登志雄)

 マスコミ報道は、北朝鮮の金正日総書記の死去一色ですね。10月には、リビア
のカダフィ大佐が死亡しましたし、今年は歴史の大きな変わり目のようです。

 東西冷戦時代が終わり、同じアジアの社会主義国である中国やベトナムが市場経
済を取り入れ急速に発達しているというのに、頑固者の総書記の国は相変わらずの
軍事優先の計画経済で国家破綻状態です。しかも、総書記の死亡で重石を失ったた
め、今後、あの国がどこに向かって走り出すのかと不安が募ります。

 ところで、17日の深夜に死亡したというのに19日正午の発表では遅すぎると
思いませんか。28日の葬儀に外国の弔問団は受け入れないことも、不思議です。
ひょっとして、ほんとは、もっと前に亡くなっていたのをずっと隠し通していたが、
後継者の確定に意見がまとまったので、やっと発表したのではないかという一部の
推理に、私もやや傾いていますが、実際のところは、どうなのでしょうか。いずれ
にしろ、今後の推移を見守るしかありません。 

 さて、年末が近づきましたので、登記申請をお急ぎください。今日21日申請の
場合には年内に完了する(謄本が取得できる状態になる)と思いますが(商業登記
の場合です)、22日申請になりますと、法務局によっては、来年になる可能性が
生じます。法務局は28日までです。


2011.12.20(火)【剰余金処分の件】(金子登志雄)

 『ずばり解説!会社の計算』から、1つ問題を出しましょう。

Q:定時株主総会で剰余金の配当を決議するとき、「第○号議案 剰余金処分の件」
 とすることが多いのですが、なぜ、「剰余金配当の件」としないのですか。

--------------------------------------------------------------------------
A:剰余金の配当のみが議案であれば、「剰余金配当の件」でかまいませんが、同
時に別途積立金を取り崩したり、逆に繰越利益剰余金の一部の積立てを決議する
ような場合は、より広義の「剰余金処分の件」にしなければなりません。そのた
め、剰余金の配当のみが議案の場合も、「剰余金処分の件」とすることが多いの
です。

【剰余金処分議案の例】

 第2号議案 剰余金処分の件

  議長は、当期の期末配当及び剰余金の処分に関して、以下のとおりとしたい旨
 を述べ、議場に諮ったところ、満場一致でこれを承認可決した。

 1.期末配当に関する事項
  (1)配当財産の種類 
      金銭
  (2)株主に対する配当財産の割当に関する事項及びその総額
     当社普通株式1株につき金200円 総額200万円
  (3)剰余金の配当が効力を生じる日 
     平成〇年6月30日
 2.剰余金の処分に関する事項
  (1)増加する剰余金の項目及びその額
     別途積立金 100万円
  (2)減少する剰余金の項目及びその額
     繰越利益剰余金 100万円 
--------------------------------------------------------------------------


2011.12.19(月)【計算書類とは何か】(金子登志雄)

 上記「お知らせ」にご案内のとおり、1月下旬発売の拙著『ずばり解説!会社の
計算〜基礎から応用まで〜』が発行元の東京司法書士協同組合のHPのTOPIC
Sに掲載されています。

 目次をみればお分かりのとおり、私の講義レジュメと同様に「計算書類とは何か」
からはじまります。

 さて、計算書類には4つありますが、いくつ答えられますか。

 1.0個
   この段階の方が多数ですので、悲観する必要はありません。たぶん、計算書
  類の意味が通じないのでしょう。定時株主総会で承認する決算書類とか、財務
  諸表といえば、1つか、2つ、出てきませんか。

 2.1〜2個
   企業社会に属している方なら、2個は答えてほしいところです。

 3.3個 
   税理士や経理部員並です。

 4.4個
   勉強家です。

 もったいぶらずにお答えしますと、@貸借対照表、A損益計算書、B株主資本等
変動計算書、C個別注記表の4つですが、BとCは、会社法施行以降の新用語です
からともかく、@とAは常識的な計算書類だといえましょう。

 発売まで、あと1ヵ月。もう少しお待ちください。

 ★お客様各位★
  本日は、電波の悪いところに行っております。電話が通じない可能性がありま
 すので、できましたら、明日以降にご連絡くださいますようお願いします。


2011.12.16(金)【「望」年会】(金子登志雄)

 忘年会のピークですね。私も何度か経験しました。

 しかし、今年は東日本大震災や原発の惨禍でいまだに生活もままならぬ方が多い
ため、忘年会などしていてよいのかという気持ちがどこかに残ってしまいます。

 そんなことを会社の喫煙室で、同じ愛煙家に話しましたら、「来年はよい年にな
りますようにという希望を込めた【望】年会と思えばよいのではないでしょうか」
という返事がきました。さすがは愛煙家です(?)、いつも、あちこちで肩身の狭
い思いをさせられているためか、自分の慰め方を知っています。

 先週の金曜日の9日は、さまざまな打ち合わせを兼ねて、商業登記倶楽部主宰者
の神ア先生、司法書士会の有名人・鈴木龍介先生、受験界のカリスマ講師・山本浩
司先生などと【望】年会でした。

 神ア先生と鈴木さんは、「今度は何をしたい(何を出版したいなど)」と、いつ
も希望に溢れており、お元気そのものでした。私のように「もうネタ切れです。書
くものはありません。面倒くさいことは避けて通りたい」という後ろ向きの老人病
とは無縁のようでした。

 面倒くさがり屋だが、頼まれると頑張ってしまう私の性格を神ア先生も鈴木さん
もよくご存知のようで、「今度、金子さん、一緒にこれをやりましょう」と誘って
くださいますので、私も、つい「いいですねぇ。こういうふうにするといいかもし
れませんね」と応じてしまいます。企画・構成などという面倒なことをお二人が引
き受けてくださり、私は、職人の仕事をするだけなので、「それならば」というわ
けです。

 お二人に引っ張られて、来年も「(希)望年」になるよう頑張りましょう。

 なお、ESG諸君、私は面倒くさがりですし、富田氏などは土日もないワーキン
グプアですから、これじゃ忘年会は無理だとあきらめていましたが、地方のメンバ
ーが上京した折には、歓迎を兼ねて「望年会」をしましょう。来年になるかもしれ
ませんが。

 ★お客様各位★
  19日の月曜日は、電波の悪いところに行っております。電話が通じない可能
 性がありますので、20日以降にご連絡くださいますようお願いします。


2011.12.15(木)【健康診断】(仙台・立花宏)

 先日、毎年受けている健康診断を受診してきました。
 
 健康診断の受診項目のひとつに、胃の内視鏡検査があります。いわゆる、胃カメ
ラです。私はこの胃カメラを大の苦手にしていて、これがあるために、毎年の健康
診断が近づいてくると、憂鬱になります。

 とはいえ、何年か前の健康診断で精密検査が必要との診断を受け、胃の内視鏡検
査を受けて以来、毎年、この検査を受けています。精密検査の結果、異常はないと
の診断を受けたのですが、胃に粘膜下腫瘍というこぶのようなものがあり、経過観
察が必要との診断を受けたからです。無実とはいえないかもしれないが、無罪だと
いえばよいのか、それとも執行猶予といえばよいのか、とにかく、すっきりしない
状態です。

 さて、今年の健康診断も順調に進み、いよいよ最後の胃の内視鏡検査になったと
きのことです。私は医師の指示に従い、ベッドに横たわりました。まさに俎板の上
の鯉の状態です。

 「はい、カメラを、コクンって感じで飲んでくださいね。」

 という医師のアドバイスを受けますが、毎年のごとく、私ののどは、私以上に胃
カメラを苦手にしているようです。やはり今年もすんなりとはいきませんでしたが、
医師の巧みなカメラさばきにより、何度目かのトライでなんとかのどを通りました。
するするとカメラが食道を通り、胃の方へと進んでいくのがわかります。ここまで
くればひと安心です。

“このカメラは、少し前に話題になった、あの会社のものだろうか” などと考え
る余裕も出てきました。

 それと同時に、先日、設立した会社のことが思い出されました。

 依頼者が唯一の出資者で、依頼者のみが取締役の会社です。私は定款に定める取
締役の任期は法律上最長である、10年以内に終了する事業年度のうち最終のもの
に関する定時株主総会の終結の時までにしてもよいのではないかと思い、依頼者の
意向を確認しました。

 すると、依頼者は言いました。

 「私は長年、技術畑のサラリーマンをしてきて、会社の経営のこともわかりませ
んし、法律のことも素人です。会社の健康診断のつもりで、定期的に司法書士の方
にも、いろいろ相談にのってほしいですし、もう少し短くできませんか? そうい
う機会でもないと、ド素人の私は、知らないうちに法律違反をしてしまいかねませ
ん。ご迷惑かもしれませんが、設立手続きが終わったあとも、定期的にお付き合い
ください。」

 結局、その会社の取締役の任期は、2年以内に終了する事業年度のうち最終のも
のに関する定時株主総会の終結の時までと設定することになったのですが、私は正
直、驚きました。

 取締役の任期が来れば、たとえ取締役の方に変更がなくとも、登記をしなければ
ならず、費用がかかるため、任期はできるだけ長くしたいという依頼者がほとんど
です。もっとも、最初は短く設定しておいて、任期がくる前に任期を伸長するよう
に定款変更すれば、在任中の取締役の任期も変更されるため、登記をする必要はあ
りません。しかし、実際にそうする依頼者はほとんどいません。

 役員改選の手続きのタイミングでいろいろな相談をいただくことがあるのは確か
ですし、また、会社の方が持参された議事録や他の資料を拝見する中で、アドバイ
スできる点を発見することもあります。

 私は、これまで、依頼者と同じような会社の設立のご依頼をいただいた場合、依
頼者の意向もあり、任期をなるべく長く設定することが多かったのですが、
“もしかしたら、その会社の健康診断(の一部だとは思いますが)を受ける機会を
少なくしてしまっていたのかも知れない。そう思うのは思い上がりだろうか。“

 そんなことを考えていると、胃の方から胃カメラがのどの方へと戻ってきて、の
どをスルリと通って、検査は終了しました。

 検査結果は、特段の変化がないため、今年も経過観察となりました。

 あまり楽しいものではありませんが、健康診断は自分の健康状態の確認のためで
す。来年もすすんで受けなければいけないですね。反省!


2011.12.14(水)【企業内士業】(金子登志雄)

 昨日発行の日刊ゲンダイの記事に、弁護士の卵の3割が弁護士事務所への就職に
あぶれており、企業内弁護士を望む人が増えているとありました。その記事で知っ
たのですが、企業内弁護士の任意団体で「日本組織内弁護士協会」というのがある
のですね。2001年(平成13年)の設立だそうです。

     http://jila.jimdo.com/

 同協会の直近の調べによると、企業内弁護士数は588人、三菱商事の14人が
筆頭だそうです。

 この数字が大きいものか、小さいものかは人によって見方が異なるでしょうが、
少なくとも、企業内税理士、企業内会計士よりは圧倒的に少ない数字であることは
間違いありません。私自身も企業内税理士・会計士さんとは何度か名刺交換したこ
とがあります。

 企業内司法書士も数人面識があります。しかし、想像ですが、全国で100人も
いないことでしょう。その代わり、企業内司法書士【有資格者】は1000人を超
えるのではないでしょうか。試験に合格し資格を取得しても、独立業より会社員を
選択する若い人が多いですし、開業中の司法書士も廃業してから企業に勤めるだろ
うからです。

 これは、司法書士法で、「司法書士は事務所を設けなければならない」とあるた
めか、企業内司法書士に司法書士会が否定的であることも関係していると思います
(最近は運用がだいぶ緩和されているようですが、実情は知りません)。

 私が平成8年に東京司法書士会に登録する際も、私の兼任業務をみて、「勤めな
がら司法書士を登録することはできません」と拒否されそうになりました。私が怪
訝な顔をしたところ、すぐに気づいてくれ、「あ、失礼、貴方の場合は、従業員で
はなく会社の役員ですね。これなら問題ありません」と訂正してくれましたが、税
理士などと相違し、厳しいなと思ったものでした。

 私は企業内司法書士に肯定的です。圧力団体としての司法書士会の力を強めるに
は人数が多いほどよいですし、人数が増えれば自動的に司法書士会費が下がるだろ
うと期待しているからです。不純な動機ですが、企業内弁護士が法廷に立たないよ
うに、企業内司法書士も勤め先の登記申請に関与していない実情から、開業司法書
士にとって脅威の存在とは思えないからです。


2011.12.13(火)【TPP問題】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、TPPに関するゲストスピーカーの1人は民主党の首藤信彦
議員(神奈川)でした。

 氏によると、民主党議員の8割がTPP参加反対派(4割)と慎重派(4割)で、
推進派は2割だそうです。氏は、「菅VS小沢」代表選のとき菅側についた人です
から、この問題は、「小沢VS反小沢」の問題を超えた日本の進路の問題であるこ
とがよく分かります。現状では、大手マスコミは推進派のようですが、地方自治体
や地方紙のほとんどが反対だそうです。

 氏は、TPPの勉強のため、米韓FTAを調べているようで、アメリカのFTA
履行法には、「アメリカの法律に触れるすべてのFTA規定はどのような状況にあ
ってもすべてのアメリカ人において無効である」と規定されているとのことでした。

 そこでの話ですが、日本では国際条約は憲法と並ぶくらい重要なものですが(日
本国憲法の国際協調主義)、アメリカでは州法が国の憲法や条約よりも上位にある
とのことでした。確かに、アメリカは合「州」国であり、日本の江戸時代のように、
各藩が独立国家のように行政に携わっている集合国家ですから、州法が頂点にある
という話も頷けます。

 またラチェット条項とか様々な不平等規定があり、例えば、TPPでも、アメリ
カにない車検を日本でするのはおかしいとか、遺伝子組換食品という表示はいけな
いとか、米国産牛肉に狂牛病が発生しても輸入を中断できないとか、日本の技術が
優れていたためにアメリカ製品が売れない場合にはアメリカ側のみ関税を課せられ
るとか………。

 こういう話はTPP推進者(為政者)としては不都合のため、ほとんど報道もさ
れず、「自由貿易はいいことだ、米が安くなることはいいことだ、平成の開国だ」
という論ばかりなのはなぜかという点で、原発、TPPに続く議論のテーマの最後
が日米関係になったわけです。

 結論から言えば、アメリカは自国の制度や文化を他国にも求める国だというだけ
でなく、盟主のアメリカ様を後ろ盾にして自身の権力を維持したいという日本人が
多いということのようです。

 東西冷戦時代ならともかく、これからは、それぞれ独自の文化を持つアジアの時
代だというのに困ったものですが、最大の問題点は、戦後60年間以上の平和が続
いた島国のため、日本国民自身の将来に対する危機感が薄いことでしょうか。


2011.12.12(月)【IWJの饗宴】(金子登志雄)

 忘年会時期ですが、10日土曜日は、IWJの饗宴に参加してきました。

 というと、どこかのプロレス団体のお祭りみたいですが、フリージャーナリスト
岩上安身さんを中心とする情報媒体の設立1周年記念パーティです。

  http://symposion.iwj-beta.com/

 上記のとおり、「原発、TPP、日米関係」などの時事問題に関心のある人間か
らみれば、NHKの紅白かと思えるほど知る人ぞ知る著名スターが続々と登場しま
すので、私もミーハーぶりを発揮し、第2部のパーティまで参加してまいりました。

 パーティは400人程度の参加者でしたでしょうか。主宰者の想定を超える参加
数だったようで、立食パーティなのに食い物にありつける余裕は、大人しい私には
ありませんでした。

 混雑でゲスト参加者との直接の会話は無理でしたが、間近で著名人をみることが
できました。その中で最も有名人は社民党党首の福島みずほ氏でしょう。想像以上
に小柄な方でしたが、原発問題を熱く語っていました。

 私の目当ての第1は、「真の法律家」の1人である理系頭の郷原信郎氏(元検事
でコンプライアンスの権威。陸山会問題や九州電力のやらせメール問題で活躍中)
を間近でみることでしたが、演説はなく、サックスの演奏での登場でした。

 目当ての第2は、「真のジャーナリスト」の1人である上杉隆氏でした。怖いも
の知らずで、不当な取調べをした検察官を実名で報道したりするため、痴漢等の冤
罪で、いつ権力から抹殺されるかと日々警戒し、電車に乗らないジャーナリストと
しても有名な方です。岩上氏とどちらが先に逮捕されるかという掛け合い漫才風の
挨拶に笑いと拍手が起こっていました。

 都合で出席できずビデオ画面での挨拶に登場したトップバッターは鈴木宗男氏で
したが、登場した途端、たいへんな拍手が一斉に起こりました。世間一般の常識世
界からみれば、犯罪者に拍手が起きるなど、異様な空間に思えることでしょうが、
既存メディアの報道に懐疑的な参加者からは、鈴木氏も政治犯の一人としてみられ
ているようでした。

 今回の饗宴に関心のあるのは年金生活者で時間とカネに余裕のある60歳代と思
っていましたが、参加者には30代、40代の若い方が多く、それも4割程度は女
性だったのが私には意外でした。おそらく原発問題で、子供の健康を守りたい女性
達の参加が多かったのでしょう。ゲストの矢ケア教授も、内部被曝こそ問題で、広
島・長崎の原爆症認定集団訴訟でも肯定されているのに、御用学者等はそれを認め
ていないと発言していました。


2011.12.09(金)【山あり谷あり】(金子登志雄)

 立花さんの投稿をみて、私も妹が欲しかったなと思いました。私は男3人兄弟の
真ん中です。おにぎりを落としたら、「半分寄こせ」と弟のを奪う関係だったかな。
これじゃ、感動を与えられませんね。

 さて、年末のNHKの紅白は、もう何十年もみていませんが、今回の出場者の発
表をネットでみて、びっくりしました。

 http://www.oricon.co.jp/music/special/2011/kohaku/index2.html

 第1に、芦田愛菜ちゃん(7歳)の出場です。

 こんなところにまで出させてはいけませんよね。働き過ぎですから大晦日くらい
は一家団欒で、のんびりさせてあげればよいのに………。

 愛菜ちゃんの推定年収は1説によると4億円とか。私の何十倍になるか計算する
気にもなれません。しかし、愛菜ちゃんも、振り返ってみれば、7歳が人生のピー
クだったということにならないように、今後の生き方が難しいですね。周囲で十分
に気をつけてあげてほしいものです。

 第2に、北島三郎さんの48回出場です。20代後半から連続出場ですから、偉
大というしかありません。企業で48年間も、ずっと頂点であり続けたところがあ
るのでしょうか。

 わが人生を振り返ってみれば、人並みに山あり谷ありでしたが、私の山は低く、
谷も浅いのに対し、↓の方の山と谷は、高く深いですね。

 http://www.youtube.com/watch?v=RvExVRpWQB4

 私に元気をくれる同世代の星ですから、また頑張ってほしいものです。


2011.12.08(木)【相談業務のあとで・・・】(仙台・立花宏)

 先日、ある団体が主催する登記相談会に、相談員として参加してまいりました。

 登記の相談会といっても、登記手続の相談だけというわけでもなく、その周辺の
相談を受けることも多くあります。

 その中で、遺言に関する相談がありました。

 内容は、現在、自分が住んでいる土地と建物が母親名義になっており、母親に、
その土地と建物を自分に相続させる内容の遺言を書いてもらいたいが、遺言書の作
り方を教えてほしい、というものでした。

 なんでも、兄弟姉妹が4名いるが、兄弟姉妹は大学卒業後、家からでて自由気ま
まに暮らしており、自分はずっと、父と母の面倒をみてきたが、数年前、父がなく
なり、母も高齢になってきた。そこで、万が一の場合に、その土地と建物を自分が
相続できるようにしておきたい、ということのようです。自分は大学卒業後、地元
に残り、ずっと父と母の面倒をみてきたし、家を守ってきた。だから、自分が相続
するのは当然だと思う、とのことでした。

 ただ、お話をお伺いしていると、どうやら、遺言のことはまだ、自分の思いつき
の段階のようで、遺言をしてもらうという当の母親にも、その遺言のことはまった
く話していない状態のようでした。

 私は、遺言のことや遺留分のことを説明した上で、当然のことながら、母親にそ
の意思がないと、遺言はできないことをお伝えしました。

 相談者の気持ちもわかるような気がしますが、そのことを相談されたら、母親は
どのような気持ちになるのだろうか。

 相談が終わり、そんなことを考えながら、相談会場の前の公園に出て、缶コーヒ
ーを飲みながら一休みしていると、目の前のベンチに、母親が作ってくれたのであ
ろう、おにぎりを頬張ろうとしている兄妹が座っていました。

 おそらく、お兄ちゃんは小学校の低学年、妹は幼稚園くらいでしょうか。

 ほほえましい光景だったので二人の様子を観察していました。

 すると、なにかの拍子に、お兄ちゃんが、これから頬張ろうというおにぎりを地
面に落としてしまいました。

 困った様子でおにぎりを見つめるお兄ちゃん、そして、さらに困った様子でお兄
ちゃんを見つめる妹の姿が目に入りました。

 私は、どうするのだろう、と二人を見ていました。

 「半分、あげる。」

 たどたどしい手つきでお兄ちゃんのために、おにぎりを半分に割ろうとしている
妹の姿がありました。

 「ぼく、食べたくない。」

 お兄ちゃんのプライドなのでしょうか。お兄ちゃんが小さな意地をはっています。

 「でも・・・。」

 妹の方は、どうしてよいのかわからず半べそ状態です。

 その時、私と同じように、二人の様子を見ていたおばあさんが笑って言いました。
「お兄ちゃん、妹さんが困ってるよ。食べてあげなよ。」
すると、お兄ちゃんはびっくりしたように妹を見ました。

 「半分、もらってもいいの?」
 「うん!」

妹は嬉しそうに答えました。

 しばらくして、その二人のお母さんらしき人が、やってきました。
「あれ、おにぎり落としちゃったんだ。でも、ちゃんと二人で分けて食べてたんだ。
お利口さんだね。」と、お兄ちゃんが落としたおにぎりを拾いながら、やさしく言
いました。

 母親は、仲好くおにぎりを食べている二人を見て、とても嬉しそうでした。

 親というものは、いつまでも子供達が仲好しでいてほしいと願っている。そして、
兄弟姉妹だって、お互いに幸せを願っているはずです。

 “さっきの遺言の相談の人も、きっと大丈夫だよ。”

なんの根拠もありませんが、目の前の親子を見ながら、私は自分自身に言い聞かせ
ました。


2011.12.07(水)【さすがプロの著作家♪】(富田太郎)

 先日、ある出版社のお手伝いで、合格体験記の選別作業を行いました。

 そこで感じたのは、
 ・自分に酔いしれているの??
 ・もう少し、読む人のこと考えたら???
 ・あくまでも、人に読ませるものだよ??
でした。

 人間、誰しもナルシスト的なところはあると思いますが、そのようなものは、
自分個人の日記などに書くもので、市販本には、もう少し「第三者に読まれるこ
と」を意識してほしいものだ・・・と痛感しました。

 ところで、先日、ある本に「与謝野晶子」の歌が出ていました。

 日露戦争末期の頃の歌の
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「ああ弟よ、君を泣く。君、死にたまふことなかれ。
  
   (中略)

 親は刃(やいば)をにぎらせて、人を殺せと教えしや」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
は有名で、歴史の教科書には、当時の反戦歌として取り上げられています。

ところが、その後、自分の四男が太平洋戦争に出陣する時には、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 「水軍の大尉となりて、わが四郎、
 み軍(いくさ)に征く猛く戦へ」

(注)1.大意→海軍の大尉となって出征するわが子よ。猛々しく戦え。
   2.与謝野晶子の4男・c(いく)は、東京帝国大学工学部から海軍に
    入った(学徒出陣ではない)当時のエリートである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

などと、結構勇ましい歌を書いています。

 一部では、「彼女は厳しい国家権力の弾圧を受け、転向したのだ」と書かれてい
ますが、そもそも、この歌を書いたのは、太平洋戦争開戦直後の頃です(短歌雑誌
「 冬柏 」昭和17年1月号に掲載)。

 思うに、彼女はプロの著作家!
反戦思想家でも、好戦思想家でもなく、
『そのとき、そのときの時流を先に読み取り、いかに世間・読者に受けるか?』
 そのような観点で、書いたのではないでしょうか?
さすがプロですね♪


011.12.06(火)【福岡出張記その2】(金子登志雄)

 4日は博多駅周辺をちょっとばかり徒歩で観光してまいりました。まず行ったの
は、ラーメンスタジアムで有名なキャナルシティ博多です。ホテル、劇場、ショッ
プ、レストランなどがある巨大な商業施設ですが、お店が多過ぎてどこへ行ったら
よいやも分からず、ラーメンスタジアムだけみて退散しました。

 ラーメン店も10くらいありましたが、これも多過ぎて、どのお店がよいのやら
選択することもできず、また行列ができていましたので、これも早々と退散し、近
くの櫛田神社に行きました。ここは博多祇園山笠が奉納されている神社であり、以
前、丸田先生からもご案内されたことのあるところでした。

 続いて駅ビルに戻って、食事をし、丸善があったので、会社法コーナーに行って
みましたが、書名に「会社法」がつくものばかりで、合併等の各論の本はありませ
んでした(別の場所にあったのかどうかは未確認です)。書店の店員も会社法関係
の本のどれがよいのかを選ぶ能力がないので、書名に「会社法」がつくものを置く
しかないのでしょう。

 そこで思いましたが、いまの時代は、お店もラーメン店も書籍も、多品種過ぎて
素人には何がよいのか選択できなくなっているということです。ラーメンはラーメ
ンではないのです。〇〇店の〇〇ラーメンか、△△店の△△ラーメンは、別物だと
いうことです。

 昨日の話につながりますが、株式の種類も多種多様、組織再編も多種多様………
のため、専門家でないと、どれがよいのか選択できない時代になったことが、会社
法に対する勉強意欲を失わせている最大の理由ではないかと考えてしまいました。

 最近、同世代の人と、駅のトイレでさえ、使い方の説明書が張られている時代と
なり、和式トイレしか知らないでいると、流し方(最近はボタン方式が多い)にも
迷ってしまう時代になったねと話したことを思い出してしまいました。

 あれ、話が流れなくなってきてしまいましたが、まだ飛行機の時間に間に合った
ので、近くの承天寺(うどんやそばの発祥地のようです)と東長寺(福岡藩主黒田
家の菩提寺で空海創建のお寺のようです)の高さ16メートルの木造仏像などをみ
て、地下鉄の祇園駅から福岡空港に行き帰ってまいりました。


2011.12.05(月)【福岡出張記】(金子登志雄)

 土日は九州の福岡に行ってまいりました。当ESG会友の丸田幸一先生を中心と
する地元の司法書士有志の皆さんが運営している会社法ゼミナール(「金子ゼミナ
ール」と呼んでくださっているようで、ありがたいことです)での講義のためです。

 丸田幸一先生といっても、全国的には知らない方も多いでしょうが(ご本人も関
門海峡から東には関心がないと冗談をいっていましたが)、九州では、商業登記や
裁判事務などジャンルを問わず、専門家として有名な方です。

http://shi.shigyo.info/maruta/?mon=2010/02&PHPSESSID=5d31381558bc3e45dfe30af166ef1367

 上記のブログでお分かりのとおり、先生の主催する「法科村塾」では、歴史の話
題も挿入しており、その博識ぶりには、いつも驚かされます。私が先般訪問した福
井の歴史上の人物も、私はもう名前を忘れているのに、先生はスラスラと出してい
ました。

 丸田先生とも意見が一致したのですが、司法書士会等で熱心に研修を行い、商業
登記の知識の底上げをはかっていても、仕事として受ける案件が少ないために、町
の司法書士は「役員変更、設立、増資」までで、それを超えた複雑な内容は商業登
記専門の事務所でないと対応できなくなりつつあるという現状認識でした。

 会社法の施行以降、資本減少や組織再編で「会社の計算」の知識も必要になった
こと、種類株式や新株予約権は「会社の経営戦略」としてなされるため、ある程度、
経営への知識が必要になったことも原因でしょう。

 しかし、対応できないのは町の司法書士に限ったことではなく、弁護士も行政書
士も税理士も同じです。社会がIT化され年配者がついていけなくなったのと同じ
ようなもので、会社法手続も法律知識だけでは済まなくなってきたということです。

 時代が変わりつつあるわけですが、いずれ丸田「法科村塾」から高杉晋作や伊藤
博文が出てきて改革してくれることを期待しましょう。


2011.12.02(金)【司法書士と税理士】(金子登志雄)

 100%子会社同士の合併は、現在、無対価合併が主流ですが、それを司法書士
が行ったところ、会社の顧問税理士から「資本金合算方式でないと適格合併になら
ないから、更正登記をせよ」といわれて困ったとの話を某司法書士から聞いたこと
があります。

 会計に強い税理士のA先生にその話をしたところ、そう思っている不勉強な税理
士は、まだ相当程度存在するのではないかとの話でした。

 それを先日お会いした別の税理士B先生にぶつけたところ、「そういうことをい
う税理士は疑問に感じただけ、まだマシですよ。大部分の税理士は、会社がそうし
たのなら、きっと問題ないのだろうと思いこんで手続を進めてしまいますから」と
のことでした。

 怖い話ですが、気持はわかりますね。私も専門外の仕事を受けたら、とにかく無
事に終わることだけを最優先し、この機会にこの件に詳しくなろうなどと真剣に勉
強することはないでしょうから………、要するに、対処療法で済ませてしまいます。

 しかし、B先生とも話したのですが、全てに専門家になるのは不可能ですから、
こういう問題はあの先生、別のこういう問題は別のあの先生とジャンルごとに専門
家の知り合いを作っておき、いざという時に、その支援を得られるネットワークを
持っていないと、いつか事故を起こしてしまうのではないでしょうか。

 なぜ、税理士さんが勉強不足で済むかというと、法務局審査と税務署審査の時期
の差が大きいと思います。

 登記では、内容に不備があると受付されませんが、税務署ではとにかく受け付け
られて、数年後に過去の分までまとめて調査・審査されます。これでは、減資や合
併等の会計に関しては、司法書士のほうが税理士一般よりも詳しくなっているのも、
自然でしょう。

 そこで優秀な司法書士は相談する税理士を選ぶようになります。税理士が会社法
に詳しい司法書士を選ぶように………。ま、お互い様ですね。選ばれる司法書士に
なりましょう。


2011.12.01(木)【後見制度支援信託】(島根・根来川弘充)

 皆様「後見制度支援信託」というものをご存知でしょうか?
昨今、後見人が被後見人の財産を不正に流用する事件が多発しておりますが、度重
なる不正事件への対策として裁判所が積極的に導入を検討しているものです。

 概要は、被後見人の財産を信託させて、動かせないようにし、不正事件を予防し
ようというものです。

 様々な点で問題であると指摘はされていますが、それとは別に、信託という一業
種を国が支援することになることに、私個人として大きな不安を感じております。

 この制度により、大きな財産が集中することになろうと思います。大きな財産は、
市場経済では、大きな資本になります。

 現在、行き場のない資本が原油高騰を招いて経済の混乱を招いております。加え
て、EUをはじめとするヨーロッパ各国の経済危機もあり、将来の見通しはきわめ
て不透明だと思います。

 そこに被後見人の財産が、大きな資本となって影響を与えるとなると、あまり良
い結果を想像することができません。予想する最悪の結果は、金融の崩壊です。

 金融資産の価値がなくなってしまった場合、その損失を国が補填できるのでしょ
うか? どうしても「想定外の事態により・・・」という対応が予想されてしまい
ます。

 もちろん私の不安が行き過ぎているかも知れません。
しかし、「神話」がないということは、今年の大きな震災による一番の教訓として、
とどめておく必要があると思うのです。


2011.11.30(水)【ネクタイ】(金子登志雄)

 昨日の本欄は、富田センセにしては、めずらしくプアーな内容でしたね。バカに
なりきる練習でしょうか(17日本欄参照)

 さて、先日の某会議では、私の面前3メートル先に座っている方の時計が輝いて
おり、いかにも高級そうで、これが「金持ちかどうかは時計と靴をみよ」といわれ
るアレかと思いました。

 もっとも、その方はスタイルもよい弁護士さんでしたから、金持ちというよりも
オシャレで品の良い信頼感溢れる先生にみえました。今度お会いした時には、時計
の値段を聞いてみましょう。「夜店で買った」といわれるかもしれませんが。

 私も講演などをしますから、家内に「もっとオシャレしたら。ワタシが恥ずかし
いじゃないの」などといわれますが、面倒くささが先に立ち、服も時計も靴も庶民
派そのものです。その代わり、雨に打たれようが、泥がつこうが、買い換えればよ
いと思っていますので、気になりません。仕事に集中できます。

 オシャレといえば、大震災以降、節電対策のためネクタイをしないことが一般化
しましたが、いま皆様はどうしていますか。

 サラリーマン社会ではネクタイ着用に完全に戻ったようですが、自由業で、かつ、
ずぼらな私は、つい最近まで、ノーネクタイでした。8か月間、ずっとです。しか
し、最近は、さすがに首筋が寒くなり、ネクタイをするようになりました。

 ノーネクタイのときは、自分で自分の首を締めるなどもってのほかと思っていま
したが、ネクタイをするようになった今は、人に首を絞められるよりは自分で締め
るほうがマシだと自分を肯定するようになりました。

 場当たり的ですね。富田さんの真似をして、「プアーな内容で、失礼いたしまし
た(猛省)」。


2011.11.29(火)【名古屋出張記】(富田太郎)

 私は、福井ではなく名古屋出張記です。このところ、仕事で全国を飛びまわって
おり、先日は名古屋に行ってまいりました。

 私事で恐縮ですが、名古屋は高校時代1年間、新入社員時代(金融機関)の3年間
を過ごした懐かしきところです♪
 思えば、人生の一番多感な時期を過ごした場所です。

―某月某日(金曜日) ――――――――――――――――――――――――――

 朝9時、名古屋駅着。
(お客と)駅前のビルで打ち合わせ&会議・・・所要時間:2時間
終わると同時に、新幹線に飛び乗る。

 帰りの新幹線の中では、ただ、ただ、爆睡! 気がつくと、品川駅。
14時には事務所(東京都新宿区)に戻っていました。
・・・・・・・・・・・・・。

 名古屋の感想・・・・何もなし・・・・・(汗)。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 12月は、大阪、福岡、名古屋、仙台に出張予定です。
日帰りですが・・・・(汗)。

 皆様、その折には、また出張記を書く予定です♪
楽しみに、お待ちください!

 ・・・・・・・・・・・・・・

 誰も、読みたくないですね・・・・。
こんなプアーな旅行記・・・・。

 金子先生のように宿泊付なら、書く材料もみつかるのでしょうし、また、その日
に選挙でもあれば、それを上手につなげて文章を作れるのですが、その日には何も
ありませんでした。

 皆様からは「多感な時期を過ごしたのなら、それを書けばよいのに」といわれて
しまいそうですが、とりあえずは、現在、仕事に追われ、無味乾燥な日々を送って
いますとのご報告です。

 ・・・・・・・・・・・・・・

 これが一番、私らしいですね・・・・(つくづく)。

 プアーな内容で、失礼いたしました(猛省)。


2011.11.28(月)【福井市訪問の余韻】(金子登志雄)

 土日はセミナー講師のため福井市に行ってまいりました。福井県司法書士会での
商業登記の講義です(幹事の皆様、たいへんお世話になりました)。

 福井市は若い頃に車の一人旅行で能登から鳥取に行く際に素通りした程度ですか
ら事実上の初訪問でした。

 飛行機を利用して福井市を訪問するには、石川県の小松空港を利用することにな
ります(この空港自体は、M&Aコンサルタント時代に、M&A案件の調査のため
何度か利用したことがあります)。

 小松空港から福井市まではバスで約1時間でした。宿泊でしたので、講義の翌日
の日曜日には、ちょっとばかり市内観光をいたしましたが、福井市は、さすがに幕
末の松平春獄で知られる城下町でした。

 勇壮な城跡(県庁)をはじめに養浩館庭園、織田信長の重臣・柴田勝家を祭った
神社(そこに織田信長の妹・お市との再婚で柴田の娘となった後の淀君である茶々
・初・徳川2代将軍の妻で大奥を作った江=ごう=の三姉妹神社もありました)な
どをみて、電車で滋賀県米原市経由で帰宅しましたが、帰宅後は福井市訪問の余韻
でNHKの大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」の最終回をみたことはいうまでもあ
りません。

 その番組後のテレビ・ニュースは大阪維新の会が勝利した大阪府知事選、大阪市
長選一色でしたが、戦国時代の近代兵器である鉄砲に類する現代の兵器は、テレビ
などマスコミではないかと思いました。

 現代は、マスコミを上手に利用できる者が天下取りの勝利者になれる時代のよう
ですが、選挙結果をみて、本当の実力者が天下を取れる戦国時代の方が公平だった
のではないかと思ってしまったのも福井市訪問の余韻でしょうか。


2011.11.25(金)【「町」の法律家】(金子登志雄)

 東京会の新人研修は13日間で、そのうち多い順にいうと、不動産登記4日間、
商業登記2日間、債務整理2日間でした。

 メイン業務のはずの商業登記が単独2位の地位を保てなかった理由の1つは、会
社法になって役員の任期が10年までとなり、めっきりと商業登記案件が少なくな
ったためでしょうか。

 債務整理と同じコマ数とは時代の流れを感じます。これから開業する人にとって
は、不動産の仕事はベテラン事務所にがっちり抑えられており、かつ商業登記案件
が少ないとなれば、債務整理でも始めざるを得ないのでしょう。債務整理から徐々
に裁判事務や簡易裁判所事件にかかわる司法書士も増えてきたと聞いています。

 商業登記2日間のうち、1日目が設立と変更登記、2日目が増減資になっており、
私の専門の組織再編までは含まれていませんでした。ますます、組織再編は司法書
士の中でも特殊な人間のする仕事になってきたということでしょうか。

 よく司法書士(行政書士)の宣伝文句として「町の法律家」といいますが、債務
整理や会社の設立等は、まさしく「町の法律家」の仕事だといえましょう。しかし、
この「町の」の意味が「依頼者は個人(住民)」という前提があるように思います。

 司法書士以上に「町の(ヨロズ)法律家」として活躍している税務会計事務所に
とっての「町の」の意味は、個人事業者や中小企業であって、司法書士の顧客層と
は必ずしも重なっていないように思います。

 司法書士が税務会計事務所と同様に、「中小企業」「個人事業」の顧客開拓に精
を出せば、もっと職域を拡大できると思うのですが、残念ながら、新人研修の商業
登記のコマ数でも分かるとおり、司法書士会全体の関心がそちらに向いていないよ
うです。

 貸借対照表などの勉強も必要で面倒だからという理由もあると思いますが、一番
大きい理由は、研修担当幹部の皆さん自身が企業法務にそれほど関心がないのでは
ないでしょうか。

 これ以上言うと、「じゃあ、お前が率先してやれ」となるので、やめておきます
が、新人の皆さん、税務会計事務所は企業法務に詳しい司法書士を求めていますよ。
商業登記のことも忘れずに頑張ってください。


2011.11.24(木)【新人研修講師】(金子登志雄)

 東京司法書士会のHPをみておりましたら、11月30日から新人研修が始まる
ようです。もう、そんな時期なんですね。

 講師は当ESGの初瀬さんなど、そうそうたるメンバーでしたが、新人さんに、
その価値が伝わりますかどうか。

 私は、新人研修の講師は頑として拒否しています。いろいろ理由はあるのですが、
私の講義内容は、実務で苦労した方を対象にしたものであることと、金子の話を聞
きたいという人にしか話したくない(義務で仕方なく参加する人達を相手にしたく
ない)という実にわがままな理由が主たるものです。

 こういうと新人をド素人扱いしている上目目線のように思われてしまいますが、
これは全くありません。新人には会社を定年退職した方など講師以上に人生経験の
豊かな方々もおられますし、私自身、48歳で新人研修を受け、司法書士としては
新人でも企業法務従事歴は講師以上に豊かだという自負がありましたから、一部の
講師の方々の「君達は………」などの発言に対して、反発したものでした。

 学校を出たばかりの新人から、企業法務コンサルタントから司法書士に転身した
方など多種多様な新人の方を相手に話すのは、実にたいへんだと思います。

 昔、学習塾の講師をしたとき、学長が「皆さんは生徒のことをいつか忘れますが、
生徒は一生忘れません。十分、気をつけるように」といわれましたが、私も新人研
修の際の講師の皆さんのことは、よく覚えています。

 講師の皆さん、事実上のボランティアなのに、嫌われたら損ですよ。上目目線だ
けは、やめましょうね。


2011.11.22(火)【公告文案】(金子登志雄)

 会社法2条に各組織再編の定義がなされています。例えば、吸収分割とは「株式
会社又は合同会社【が】その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後
他の会社【に承継させること】をいう」とあります。

 株式交換も同様に「AがBに〇〇させる【こと】をいう」という文章形式です。
ところが、吸収合併と新設合併は特別で、吸収合併なら「会社が他の会社とする合
併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承
継させる【もの】をいう」となっています。

 お気づきでしたか。

 「………【こと】をいう」と「………【もの】をいう」は、どこが違うのかと考
えてみたことがありますが、単なる文章形式の相違でしょう。

 「合併」については説明不要という前提に立ち、吸収合併の場合は、合併の中で
「消滅会社の権利義務の全部を合併後存続会社に承継させるもの」と定義しただけ
ですから、Aが解散消滅しBに権利義務を吸収させる場合も、「BがAと吸収合併
する」という表現が不可能ではありません。

 ところが、吸収分割は「AがBに〇〇させる【こと】」という文章形式ですから、
吸収分割するのはAだけであって、「BがAと吸収分割する」という表現は不適切
だとされています。

 その関係で、債権者異議申述公告の「左記会社は合併して………」という公告は
よいけれど、「左記会社は吸収分割して………」という吸収分割公告はおかしいの
ではないかとのご批判を承りました。

 しかし、公告文案作成者の一人として説明させていただけば、ここは「左記会社
は吸収分割関係になって………」という意味に過ぎません。ここをこだわると、吸
収分割承継会社が単独で公告する場合を「吸収分割公告」という見出しにすること
自体も間違いになってしまいます(「吸収分割承継公告」というべきでしょう)。

 そもそも「合併公告」という表現自体に対しても「株主に向けた公告」と受け取
られるから「合併異議申述公告」とすべきではないかとの批判も大昔からあります。

 公告文案は、さまざま検討の上での結果であることをご理解くだされば幸いです。

(参考)
 明日は休みですね。大手マスコミには登場しない対談の視聴でもいかがですか。
  http://kochi53.blog.ocn.ne.jp/blog/2011/11/tv_efab.html


2011.11.21(月)【プロ野球には興味はないが】(金子登志雄)

 土日は家族が野球ファンなので、一緒に、プロ野球の日本シリーズ(ソフトバン
ク対中日)をみて過ごしました。私自身は野球には関心がないため、なぜ野村監督
が解説しているのかとか、ソフトバンクの帽子のマークがSBではなく、Snにみ
えるのはなぜかなどと関係ないことばかりを注目してしまいました。

 ソフトバンクの大昔の前身が南海ホークスだったので、野村監督を解説に呼んだ
のかなとも思いましたが、あまりに古い話ですね。長島、王、金田の時代の話です
から………。
 ひょっとして、中日の落合監督と「恐妻家兼名監督」という共通性のせいかなと
も思いましたが、これはきっとうがった見方でしょう。

 帽子のマークは最後まで分からず、ネットで調べましたら、Snではなく、Sh
だそうです。ホークスのhでしょう。SBだとカレー屋さんと間違えられてしまう
せいでしょうか。

 しかし、今回の日本シリーズは、巨人騒動ですっかりかすんでしまいました。こ
ちらの騒動も私には全く関心がありませんが、しいていえば、騒動で名があがった
登場人物の中で渡邉恒雄氏と江川卓氏の動きには、ちょっと興味がありました。

 ナベツネ氏は自民党の大物(派閥の長)である大野伴睦の番記者を務めてから、
メキメキ力をつけ、政界のフィクサーとまでいわれるようになった人物ですが、な
ぜ、フィクサーになれたのかに興味があります。

 勝手な想像ですが、思想・考え方が偏っていないからでしょう。若い頃は共産党
員だったようですし(当時の真面目な若者としてはよくあることでした)、同じく
思想に融通性のある中曽根康弘・元首相と仲がよいことでも分かります。意外なこ
とに、靖国神社参拝問題では、参拝するなという立場のようです。

 エガワ氏は、巨人入団時の「空白の1日」で、すっかり悪役イメージがついてし
まいましたが(強引に自分の意見を押し通すことを当時は「エガワる」といいまし
た)、当時の記者会見で、記者連中が若いエガワ氏に食ってかかるような態度だっ
たのに、「まぁまぁ、落ち着いて」と発言するなど、穏やかに対応していました。
大学を卒業したばかりの若造なのに、何という大物かと驚いたものでした。

 ナベツネ氏もエガワ氏も、その存在感はすごいですね。その分、敵も多いことで
しょうが、マンガの登場人物として描かれることが多いところをみると、愛される
人物でもあるようです。

 あれ、本欄でもソフトバンクの優勝が巨人騒動でかすんでしまいました。ソフト
バンク優勝おめでとうで、締めておきましょう。 


2011.11.18(金)【取締役は誰が選ぶのか】(金子登志雄)

 昨日の投稿の「利益相反」ですが、昔、司法試験の勉強中に、そういう事件性の
ある問題ばかりを勉強していました。

 これこれこういう説と、こういう説があるが、私はこう考えるといった論述の勉
強ばかりでした。私がいまでも「自説の確立」にこだわり、人にも「登記の先例を
探す以前に、貴方はどう考えるのか」と求めるのは、この頃の影響でしょう。それ
が法律(解釈学)の勉強の王道だからです。

 しかし、反面で、司法試験の勉強には、会社の設立手続、相続の手続、根抵当権
手続など事件になりにくい手続問題は試験に出ないためか、弁護士さんがこれらの
手続に弱いのは、よく理解できます。

 私も、実務家養成試験である司法書士の勉強をしてはじめて、会社の設立や相続
というのが「実感」として分かった気がしました。足が地について来た感じでした。

 しかし、これでも、実務家として不十分です。 
 
 ところで、本欄を閲覧している法律家の皆様、株式会社の取締役は、誰が選任す
るものですか。代表取締役の場合は、どうですか。

 「取締役は株主総会が選任し、代表取締役は取締役会が選任します」というのは、
建前です。現実には、社長が「今度は〇〇君を役員にしよう。後任の社長は、△△
君にしよう」と決めるのです。株主総会や取締役会は、それを追認する儀式です。

 これがいけないことだというつもりはありません。こういう社会の実情を十分に
分かったうえで、それにどっぷりとつからずに、適切な法務アドバイスをできるよ
うにしましょう、法律だけでなく社会勉強も怠りなく、ということを若い先生方に
いいたかっただけです。

 あれ、若い先生が本欄に登場すると、すぐに小舅根性がでてしまうようです。そ
ういう嫌味な老人にはなりたくないと、ずっと思ってきたのですが………。


2011.11.17(木)【駆け出し司法書士/利益相反取引を考える】(仙台・立花宏)

 取締役が自己または第三者のために、株式会社と取引をしようとするときは、株
主総会(取締役会設置会社においては取締役会)の承認を受けなければならないと
されています。

 これは、取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図ることを
防止する趣旨であるとされています。

 私は会社関係の登記の手続きをさせていただく割合が多い関係から、会社が所有
する不動産に関する登記手続きのご相談を受けることもあります。

 その場合、利益相反取引に該当し、会社の承認手続きを行っていただいた上で、
登記手続きをさせていただく機会もわりとあるのです。

 しかし、私のような地方で仕事をしている司法書士がお付き合いする会社は、大
株主が代表取締役で、他の株主がいたとしても、その代表取締役の家族のみといっ
た個人経営の会社がほとんどです。そのため、利益相反取引に該当するといっても、
代表取締役の利益イコール会社の利益のような状態なので、会社の承認が得られな
いはずもなく、正直なところ、あまり利益相反取引に関して会社法が規定した趣旨
が実感できずにいました。

 そんなある日、以前、勤務していた会社の元上司から、不動産登記のご依頼をい
ただきました。元上司が父親から土地の贈与を受けるという内容です。

 もともと、元上司は会社の法務関係を担当していたため、こういった不動産関係
業務についても詳しく、なんの前触れもなく私を訪ねてきたにもかかわらず、登記
に必要な一連の書類をすべて揃えてもって来ました。

 そして、その書類をポンと私に手渡すと、「じゃ、これで登記手続きをやっとい
てくれ。」と言って、事務所を後にしようとしました。

 「あ、部長、一度、お父様にもお会いさせていただけますか。本人確認、意思確
認が必要です。」

 「かたいこと言うなよ、立花。親父ももう年だし、足も弱ったのか、最近、あん
まり外出しないんだよ。」

 元上司には、以前、勤務していた会社で大変お世話になり、また、会社を辞めた
今も、ときどき、飲みに連れて行ってもらったりしています。

 司法書士として仕事を受任する以上、本人確認、意思確認を省略するのはもって
のほかです。しかし、お世話になっている元上司から依頼です。まして、誰からも
信頼される、誠実な方なのです。お父様の意思に反して勝手に手続きをするような
人ではありません。

 “どうしようか・・・。” 悩んでいる私がいました。

 司法書士としての私と、元上司の期待に応えたい私との間で、葛藤が続きました。
そんなとき、会社法が利益相反取引について規定していることが思い浮かびました。

 もちろん、会社法が規定している状況と、私のおかれた状況はまったく異なりま
すが、相反する2つの立場で物事を考えなければならないということは、こういう
難しい状況なのか、と思ったのです。

 こんなとき、司法書士としての私が「本人確認、意思確認は省略してよし。」と
承認したら、元上司の期待に応えたい私は、本人確認、意思確認を省略していたか
もしれません。

 会社法の規定は、前述のように取締役が会社の利益を犠牲にして自己または第三
者の利益を図ることを防止することが趣旨とされています。

 しかし、もしかしたらその他に、会社の承認を受けることにより、2つの立場の
間で、思い悩み、苦しい思いをする、そんな状況から取締役を解放してあげる、そ
んな意味もあるのではないか。そんな勝手な想像をしながら私は元上司に答えまし
た。

 「部長、本人確認、意思確認を省略するわけにはいかないんです。」

 私は司法書士です。本人確認、意思確認の省略を承認できるはずがありません。

 「そうか、立花を困らせるわけにはいかんな。じゃあ、今度の日曜日、自宅に来
てくれ。夕食を用意しておくから、どうせなら一緒に飲もう。」

 日曜日、元上司の家に伺い、元上司のお父様の本人確認、意思確認を無事終える
と、元上司のお父様も一緒に食事をして、思わぬ楽しい時間を過ごしたのでした。


2011.11.16(水)【氏名又は名称及び住所】(金子登志雄)

 会社法の条文の中に「氏名又は名称及び住所」という表現が多々登場しますが、
氏名とは個人(自然人)を前提としており、名称は法人を前提としています。

 商業登記法54条3項によると、法人の名称変更には証明書類が要求されている
のに、自然人の氏名の変更には証明書類が要求されていません。なぜでしょうか。

 どこにも明瞭な説明はありませんが、たぶん、法人は人工的な生き物で、名称が
違えば別人格という社会的なコンセンサスがあるためでしょう。鈴木〇子さんが結
婚して佐藤〇子さんになっても、〇子さんは〇子さんですが、松下電器産業とパナ
ソニックは、同一会社というイメージがありません。法人は合併等によって、大変
身することも可能だからです。

 次に、「氏名又は名称及び住所」という表現からもお分かりのとおり、法人につ
いても「住所」と使います。合併等の規定にも「存続会社等の商号及び住所」など
とあります。

 ところが、登記について規定する会社法911条では「本店及び支店の所在場所」
とあり、「本店及び支店の住所」と規定していません。これはなぜでしょうか。

 これについては、私を含め、多くの法律家が疑問に思いながら放置しているよう
ですので、本稿のついでに、疑問の解消を意図してみました。

 ★★司法書士各位は、ここで読むのをやめて、一緒に考えてください★★

 10分間考えた私の結論(推理)は、以下でした。

 会社法4条で「会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする」と規定して
います。この所在「地」とは、市町村(東京23区を含む)までですから、住所と
は、「〇丁目〇番〇号」という場所まで含んだ概念です。

 とすれば、「住所=所在場所」とも考えられますが、会社法911条が定めてい
るのは、「会社」の住所のことではなく、「本店」と「支店」の場所です。つまり、
本店と支店は会社の部分であって、会社そのものではありません。「会社の住所は、
その本店の所在地に」ありますから、支店の所在場所のことを住所といってはいけ
ません。同様に、会社の一部に過ぎない本店も住所といってはいけないのでしょう。

 いかがでしょうか。
 金子はヒマだなぁと思われてしまったかもしれませんが、せめて、本欄のネタ探
しで、毎日、大変なんだなと思ってくだされば幸いです。


2011.11.15(火)【任期は選任時からか】(金子登志雄)

 期間の定め方には「いつからいつまで」と「いつまで」という2つの方法があり
ますが、次の場合は、どちらだと思いますか。

1.会社法806条3項:
  消滅株式会社等は、第804条第1項の【株主総会の決議の日から2週間以内
 に】、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設
 分割会社又は株式移転完全子会社及び設立会社の商号及び住所を通知しなければ
 ならない。

 これは、株主総会の決議の日から2週間以内という期限(締切日)を定めただけ
で、株主総会の決議の日から通知しなければならないという意味は含まれていない
とされています。

2.会社法332条1項:
  取締役の任期は、【選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関
 する定時株主総会の終結の時まで】とする。

 これをつい、任期は【選任時から………定時総会の終結時まで】と読んでしまい
ませんか。教科書にも「任期の起算点は選任時」などと書かれています。

 しかし、11月15日に選任され、11月17日に就任承諾したら、17日から
任期中になるのであって、15日は任期の終期である「定時株主総会の終結の時」
を計算するための起算日に過ぎません。

 選任時を任期の起算日だという表現は間違いではありませんが、選任されても取
締役になるまでは、任期中とはいえないわけですから、選任時は任期の【終期の】
起算日だと表現するのが正確だということに気づきました。

 言い換えれば、上記2つとも「いつからいつまで」型ではなく「いつまで」型で
すね。


2011.11.14(月)【重任概念】(金子登志雄)

 ここ1ヵ月ほど「重任とは何か」などにつき、商業登記倶楽部5人委員会(神ア
代表)や当ESG内部で、議論してまいりました。

 「重任」とは、商業登記特有の概念で「任期満了退任と同時に就任」した際に、
退任の登記と就任の登記の2つをせずに、重任という1つの登記で済ませてしまう
省エネ登記方式のことです。「辞任と同時に就任」した場合は重任とはいいません。

 たったこれだけの差ですが、いろいろ問題が生じます。

1.取締役は定時株主総会の終結と同時に退任するため(会社法332条)、その
 定時株主総会で再任を決議すれば、同時の退任・就任といえますが、代表取締役
 は取締役の退任と同時に任期切れし、その定時株主総会終結後の取締役会で再任
 しても、同時の退任・就任といえないじゃないかという勉強初期に誰でも感じる
 疑問があります。
  これについては、代表取締役の場合の「同時」とは「同日」も含むと割り切る
 しかありません。重任とは省エネ登記方式に過ぎませんし、もともと代表取締役
 自身には独自の任期というのがありませんから、登記の慣例とでも考え、深く考
 えないことです。

2.辞任と同時の就任の場合は、辞任によって、そこで任期を清算し、ゼロから新
 たな任期が始まるというイメージがあるのに、重任の場合は、「任期の延長」と
 いうイメージがあります。
  これが解釈に影響してきますが、その内容については、キンザイ「登記情報」
 の1月号に議論の成果を発表しますので、お待ちください。

(参)7日付本欄の【「すべて」か「全て」か】につき、仲間が理由を見つけてく
  ださいました。
  http://www.clb.go.jp/info/other/houreiniokerukanji.pdf

(参)8日付本欄の【BKD】につき、中野先生の演説場面を見つけました。実に
  面白い演説ですが、街頭演説なので、やや聞き取りにくいのが残念です。
  http://www.youtube.com/watch?v=fHz1dka-0u0&feature=player_embedded


2011.11.11(金)【報酬額の法則】(金子登志雄)

 数人の司法書士も同意してくれましたが、実際の司法書士報酬額には、次の法則
があるようです。

 1.不動産登記専門司法書士の会社登記報酬は安い。
 2.会社登記専門司法書士の不動産登記報酬は安い。

 この理由を考えますと、次になると思います。

 1.専門外の領域については、自信がないから、控えめの請求額になる。
 2.報酬額の相場もよく分からない。
 3.専門外の領域は付録の仕事であり、それで生活しているという意識がない。

 この「自信がない、それで生活していない」という意識は意外に大きいように思
います。

 専門領域で自信のある仕事であれば、「何でも質問してくれ」、「この議事録は
ここが変わっているなぁ。ここをこうすればよかったのに」などという感想を持ち
ながら、依頼者の要求に応えるため、仮に登記申請のみに関与しただけであっても、
議事録チェックなどをコンサルティングしたという意識あるいは誇りがあります。
「安心、安全」の登記申請サービスを提供したという自負があります。

 これに対して、専門外の仕事の場合は、預かった書類を下にマニュアル本をみな
がら申請書を作って登記しただけだという「代行」の意識が強く、いわば書類を代
わりに届けただけで、仕事をしたという意識が持てません。その結果、控えめの請
求額になってしまいます。

 司法書士であれば誰でも、「前の司法書士の先生は、〇〇万円だったのに」とい
われて困惑した経験があると思いますが、前の司法書士にとっては専門外の仕事だ
ったので、安かったのに過ぎず、事故のリスク付きだったわけです。

 専門領域の報酬額には「安全・保証付き」という保証料が含まれていますから、
前の司法書士より高いのは当たり前です。

 というわけで、会社登記専門司法書士の私に不動産登記の仕事を依頼してくださ
れば、ぐっとお安くできるのですが、来ないですねぇ。


2011.11.10(木)【日割り配当】(金子登志雄)

 3月決算会社が11月1日に新株を発行したとすると、この新株主に対する配当
金は11月から3月までの5か月分でしょうか。

 旧商法時代は、それが株主の平等だと考えられていましたが、会社法はこれを禁
じています(454条3項)。

 11月1日に株式譲渡や自己株式の処分で「新株主」になった者が1年分を受け
られるのに、新株の発行で新株主になった者が5か月分では不公平だともいえるか
らです。

 ここまでは企業法務に精通している者にとっては常識(?)ですが(皆さん、大
丈夫ですか)、先日、初めて優先株式を発行した会社から、「優先株式については、
日割計算でよいのですよね」と聞かれ、一瞬、不意打ちを食らったように、答えに
窮してしまいました。

 これは株式の種類が違いますので、「年365日計算」などと定めてあれば初年
度は日割り計算ですね。その定めがなかったら、どうするのでしょうか。たぶん、
種類株式の解釈(会社の合理的意思)で初年度は日割りでよいのでしょう。

 「日割り計算は11月1日からですか、翌日からですか」という質問もありまし
た。民法の翌日起算の例外は午前0時から始まる時と、年齢計算だけでしょうから、
11月2日起算で3月31日までの日数を計算し、365日で除すのでしょう。

 続いて、「来年は閏年ですが、2月29日も含めるのですか」という質問が来ま
した。

 ほんと、勉強になります。

 「顧客は最良の教師である」と、本欄上部にある『マンガ司法書士&開業成功』
の抜粋でK先生がいってますね。

 (まだまだ多くの論点があるのですが、それは別の機会に譲りましょう。)


2011.11.09(水)【利益処分案と株主資本等変動計算書】(金子登志雄)

 会社法立案担当者の解説によると、旧商法時代の利益処分案と損失処理案は、会
社法の株主資本等変動計算書に吸収されたということになっています。

 私も納得し、著書でも、そうに書いてまいりましたが、一昨日ご紹介した公認会
計士・税理士の有田先生から「1期ずれるじゃないか」という強烈な疑問を提示さ
れてしまいました。

 例えば、3月決算会社が平成23年6月の定時株主総会で株主配当を決議すると
き、旧商法の利益処分案・損失処理案は、平成23年3月期の計算書類ですが、会
社法では、この株主配当・損失処理は平成24年3月期の計算書類である株主資本
等変動計算書に記載されるわけです。

 旧商法時代も平成23年3月期の貸借対照表に配当済み・損失処理済みとされた
わけではありませんので、結果は同じですが、期ずれの指摘は鋭いですね。こうい
う指摘のある文献はあるのでしょうか。

 その他、貸借対照表は1時期の「財【産】状態」を表すものだという私の説明に
対して、会計の世界では「財【政】状態」と表現しますとの指摘を受けましたが、
これもプロの世界からの指摘だなと妙に感じ入った次第です。

 こういう知人・友人をもっていると、何かと助かりますので、企業法務に専門的
に従事したい方は優秀な会計士・税理士との交友も必要ですね。


2011.11.08(火)【BKD】(金子登志雄)

 10月31日の本欄(投稿者:田中司法書士)に「CEO(最高経営責任者)は、
比較的、よく耳にするのですが、COO、CFO・・・知りませんでした(汗) 
AKB・・・なら、知ってます(キッパリ!)」とありましたが、CIOやCTO
まであるらしいですね。

  http://nplll.com/archives/2005/12/ceocoocfo.php

 CEOやAKBをご存知の田中センセは、Bで始まるBKDをご存知でしょうか。
1月20日付本欄の【衝撃のTPP解説】に登場するTPP反対の論客・中野剛志
(タケシ)先生(元官僚で経済ナショナリズムの専門家)の命名だそうで、TPP
賛成議員を指すようです(昨日の日刊ゲンダイによる)。

 AKBがアキハバラなら、このBKDはバイコクドということだそうです。演説
中に冗談で発した言葉のようですけど………。

 この中野センセ、私は好きですね。御用学者が多いのに、物事をありのまま素直
に捉えて、「ダメなものはダメだ」と叫ぶ姿に、幕末の志士の姿がみえます。

 最近は、TPPが日本に不利なことは明らかなのに、こんなやさしいことをなぜ
分かってくれないのかとイライラが募っているようで、先般のフジテレビでの出演
でも、怒鳴ってしまったようで、ネットで批判されていました。

 さっそく、その動画をみてみました。

 http://commonpost.boo.jp/?p=18319

 「マスコミはいつもこうだ」とマスコミの世論誘導の姿勢に激したのだろうと私
にはみえました。

 小沢問題・九電問題の郷原信郎(ノブオ)弁護士(元検事、コンプライアンスの
専門家)といい、TPPの中野先生といい、正論を主張し、国を憂える志士が増え
れば、わが国ももっとよい国になれると思うのですが、敵も多いので、政治的暗殺
にお気をつけくださいと祈るしかありません。


2011.11.07(月)【「すべて」か「全て」か】(金子登志雄)

 土日は1月下旬に出る『ずばり解説!会社の計算』のゲラ校正をしておりました
が、1人では勘違いもあるため、いくつか共著書のある公認会計士有田賢臣(まさ
おみ)先生にもお手伝いをお願いしていましたところ、「株主資本等変動計算書は
新会計基準によると、『当期首残高』と当期末残高を比較するもので、『前期末残
高』と当期末残高の比較ではない」と指摘されてしまいました。

 計算規則96条7項にも「前期末残高」とあるため、まさかと思ってEDINE
Tで、当社(アクモス)、ソニー、新日鉄の株主資本等変動計算書を調べましたら、
やはり「前期末残高」と表記されていました。

 不思議なこともあるものだと、再度、有田氏の指摘を考えていましたら、「新会
計基準によると」とあったので、「計算規則の改正があったのだろう」と気づき、
確認しましたら、案の定、本年3月の改正で「前期末残高」が「当期首残高」に変
更されていました。

 その改正で、よく使う合併に関する計算規則35条等では、「すべて」が「全て」
に改正されていました(以前は「規定する」が「定める」に改正されたことがあり
ます)。

 こういう改正について、どう思われますか。
 「前期末→当期首」「すべて→全て」という内容面以外の改正で、市販されてい
る会社の計算本のスベてが、改正を反映していない古い本というイメージがついて
しまうのです。

 母体である会社法の条文では、「全て」ではなく「すべて」ですから(例:取締
役会は、すべての取締役で組織する)、なぜ会社計算規則を改める必要があったの
かと、大いに疑問です。生まれてまだ5歳なのに、もう反抗期なのでしょうか。


2011.11.04(金)【デモシカと学卒司法書士】(金子登志雄)

 今週の本欄は、久々に東京以外の司法書士の連続投稿でしたが、それぞれ内容に
も文章にも個性があり、楽しんでいただけたと思います。

 司法書士業界は地味ですが、タクシーの運転手と同じく、技術一本で生きられる
世界ですから、私を含めて、さまざまな業界からの参入者(吹き溜まり?)がおり、
みなさん個性的です。リーガルスターという司法書士劇団をみると、プロの出身か
と思われるほど演技が上手な方もいらっしゃいましたし、昨年の東京司法書士協同
組合の忘年会の余興には、何とドラーマーまでが登場していました。

 中には、なりたい職業への夢が破れ、あるいは生涯にわたりサラリーマンという
生活設計に予定外の事情が発生し、「仕方ない、司法書士でもなろうか」と勉強し
てなったデモシカ司法書士も少なくないことでしょうが、合格率2%台という難関
な国家試験ですから、「司法書士【でも】なろうか」ではなく、「司法書士になる
【しか】ない(他の道は考えられない)」といった筋金入りのデモシカのほうかも
しれません。

 共通点はみなさん地味で真面目で、政治家になろうなどという目立ちたがり屋や
野心家が少ないことでしょうか。逆に言えば、目立ちたがり屋などは、司法書士を
目指さないのかもしれません。

 デモシカであっても司法書士になったことを後悔している方はないと思いますが、
学校を卒業後何の仕事経験もなく司法書士になった若い人の中には、超零細な3坪
事務所に将来の夢を持てず、知らない世界である綺麗なオフイスで同僚が多数のサ
ラリーマン生活に対する羨望もあるようです。

 そんなときは脱サラのデモシカ先生に聞いてみることですね。明日の生活の不安
はあっても、嫌な上司がいないだけで十分に幸せだと説かれ、「こっちの水は甘い
ぞ、あっちの水は苦いぞ」といわれることでしょう。しかし、これじゃ人生勉強や
社会見聞にはなりませんね。


2011.11.02(水)【被災地の司法書士のつぶやき】(仙台・立花宏)

 先日、ある不動産取引の決済の立会をしてきました。

 不動産の購入者は、3月11日の東日本大震災で、住んでいらっしゃった自宅に
被害を受け、大規模半壊の判定を受けました。全壊ではないものの、とても住める
状態ではなく、これまで、親戚の家に身を寄せていらっしゃったそうです。

 こういったケースの場合、一定の要件がそろえば、今年4月27日に施行された
「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下、
「震災特例法」という。)が適用となり、あらたな建物の取得(その建物の敷地の
取得も含みますが、面積等の要件があります。)とその建物等を取得する資金の融
資を受ける際の抵当権設定に係る登録免許税の免税措置が受けられます。

 今回のケースの場合も、震災特例法が適用にならないかを検討し、法務局に照会
もしましたが、適用を受けることはできませんでした。

 というのも、震災特例法は、被災して滅失した建物の代替の建物を取得する際に
適用になるため、震災特例法の適用を受けるためには、震災により、被災建物が全
壊したか、または、損壊したためにその建物を取り壊していること(取壊しが完了
していることが必要)が要件となっています。

 しかし、今回の購入者の方は、大規模半壊の判定は受けていますが、被災した自
宅を、まだ取り壊していなかったのです。

 自宅が大きく被災したことと、震災時の津波の浸水地域でもあったため、新しい
生活のための中古の建物とその敷地を購入した、という事情だったのです。

 立会の際、購入者の方に登記費用の説明をしていると、仲介の不動産会社の方が、
「なぜ、震災特例法がつかえないのですか。」と、私を責めるかのように質問して
きました。

 事前に見積書を提示の上、震災特例法は適用にならないことは説明済なのです。
おそらく、不動産会社の方は、こちらが見積書を提示する前に、震災特例法が適用
になると購入者の方に説明していたのだろうと想像しながら、私は心の中で苦笑し
て、購入者の方に理由を説明しました。

 しかし、説明していると、不動産会社の方の言いたいこともわかるような気がし
てきました。購入者の方の被災した自宅は、取り壊す予定なのです。解体業者の方
に依頼はしているものの、解体業者の方も震災対応のため、なかなか都合がつかず、
解体できない状態なのです。

 被災地である私の地元では、被災して住居をなくされたりした方が自宅等を建築
するための建築工事の需要が高まっており、その工事をする技術者が不足していま
す。日本全国から技術者が集まってきているようですが、それでも足りない状況の
ようです。今、建築工事の請負契約をしても、工事を着工するのは来年中旬以降、
という建築会社もあるようです。

 私の自宅も、幸運なことに大きな被害はありませんでしたが、屋根瓦がこわれ、
屋根が損傷を受けました。その修理が完了したのはつい先日です。一部、崩れ落ち
たブロック塀はまだ、修理の目途がたっていません。4月上旬に建築会社に依頼し
てもこの状態です。

 また、屋根の修理についてはこれでも早かったほうです。周辺では、まだ応急措
置で屋根に青いシートがかかったままの家屋が多数あります。

 解体工事だって、きっと、同じ状況のはずです。

 はたして、このような状況でも、被災した建物の取壊しが完了していないと、震
災特例法は適用できないものでしょうか。

 私の説明後、その不動産の購入者の方は言いました。
 「司法書士さん、仕方ないよ。決まりだもの。私は幸運な方さ。知り合いには、
仮設(住宅)に入っていて、まだ、行き先の決まらない人も結構いるんだから。」

 決済の立会は無事、終わりましたが、私はなんともいえない無力感を感じながら、
事務所への帰路についたのでした。


2011.11.01(火)【サイバー攻撃と登記】(島根・根来川弘充)

 最近、大手企業及び官公所のコンピューターが、サイバー攻撃を受けていたとテ
レビ等で報じられました。大手企業にいたっては、軍事機密が漏えいした可能性も
否定できないのだそうです。

 また、こちら(島根)の地方紙では、金融関係でインターネットバンキングを利
用する際、情報が不正に取得され、被害がでているという記事も目にしました。

 このようなニュースを見ますと、インターネットが絶対安全であるという時代は、
まず来ないであろうと考えた方がよさそうです。なぜなら、防ぐ技術の進歩が、同
時に侵入する技術の進歩につながるという悪循環が必ず存在すると考えるからです。

 今、私達司法書士が業務としている不動産及び商業の登記は、データ化されてお
り、インターネットによる電子申請をすることが原則となっております。万が一、
いや、億が一にも不正に侵入されることがありましたら、不動産の権利が奪われた
り、会社が不正に乗っ取られたりされかねません。

 そのような事態になったときを考えますと、「想定外」だったと、解決に何もつ
ながらない発言をする時の指導者や責任者たちの姿が、安易に想像できるだけに、
不安が大きくなるばかりです。

 大震災による原発事故によって、「安全神話」が崩れました。「想定外」のこと
が起こった場合にどうするのか。

 これを考えることが、今後ますます重要な社会になるだろうと思います。


2011.10.31(月)【COO・・・・・・】(大阪・田中利和)

 すっかり,朝晩が冷え込む季節になってきましたね。

 先日,本欄にも書いた,「●●●●を紹介するポータルサイトの運営」を事業目
的とする設立登記が無事に完了しましたので,ほっと胸をなでおろしていました。

 実は,依頼者曰く,TPPに備えるために設立した会社でした。備えるといって
も,実際のところ,どうなるかはわかりませんが,事業が順調にいくことを願って
います。

 さて,設立登記が完了し,その余韻にひたっていた時,「議事録を作成したので
確認してください」という依頼がありました。

 早速確認したところ,

「・・・下記のとおり選任したので・・・・
        
       記 
 取締役副社長 甲野太郎 COO」

ん・・・・ ”COO” これはロゴ? なにかのマーク? 

 確認したところ,「これはマークではありません。シーオーオーです」とのこと。

 ”Chief Operating Officer”の頭文字をとって ”COO”というそうです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E9%AB%98%E5%9F%B7%E8%A1%8C%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E8%80%85

 ”CEO”(「シーイーオー」最高経営責任者)は,比較的,よく耳にするので
すが,COO,CFO・・・知りませんでした(汗)
 AKB・・・なら、知ってます(キッパリ!)

 最近は頭文字をとったものが多いので困ります。というか,単なる私の勉強不足
ですね。

 ところで,”ESG” 皆様,大丈夫ですよね(^_^;)


2011.10.28(金)【2階は書斎】(金子登志雄)

 田中さん、立花さん、私の笛に応えてくださりありがとうございました。

 田中さん、
 ポータルサイトに限らず、コンピュータや通信関係では、やたら意味不明のカタ
カナ用語を使うので、事業目的の登記においても認められるのかと迷いますね。先
般は、事業目的にM&Aという単語があり、このままで登記されるか若干の不安が
ありましたが、何の問題もなく登記が完了しました。以前は、「企業買収」さえ否
定されていましたから、会社法以後、相当、緩和されたことが分かります。

 立花さんwrote:
 「私たち司法書士も同じではないかと思いました。二階で研究したことを一階の
仕事に反映し、一階の仕事で生じた疑問やアイデアを、二階で研究する、そんな生
活をしてはじめて、一人前の仕事ができるのだと思います。
 おそらく、金子先生や富田先生も、(後略)」

 はい、私や富田センセにとっては、1階が司法書士業務で2階が書斎(モノ書き
部屋)です。執筆活動で気づいたことを1階の実務で実行し、実務で疑問に思った
ことを2階で研究します。

 実務書や受験本を書くということは、ふだん勉強していない部分まで勉強しなけ
ればなりませんし、分かっていることも更に分かりやすい表現は何かと工夫を重ね
なければなりません。執筆量の多い富田センセや鈴木センセは、土日も休まず2階
に閉じこもっているようですよ。

 執筆など止めて本業に専念せよという方もいらっしゃいますが、立花さんのおっ
しゃるとおり、2階での研究があるために、他と差別化した仕事ができるのだと思
っています。たまに講演の機会に話しますが、私の上場会社の顧客の約半分は1階
建の司法書士が中途半端な知識でミスし、会社が困り果て、まわりまわって私のと
ころに駆け込んできた先です。中途半端な理解は何も知らないより、大きなミスを
するものです。

 中途半端な理解かどうかは、そのことに関する論文を書いていれば自分で気づき
ます。そこで自問自答がはじまり、解決すれば、1段とレベルアップできます。若
い立花先生も、ぜひ2階にいる時間を増やし、それを外部に発信してください。そ
れをみた私のような 小舅(こじゅうと)連中が「それは違うよ」と矢を発します
から、ますます立花先生の勉強が深化します。

 田中さんも立花さんも本欄への投稿もぜひ増やして下さい。たかが20行程度の
内容でも、1時間以上を費やしていることでしょう。何度も書き直すことが重要で
す。その時間の積み重ねが血となり肉となることは間違いありません。

 ※全国の若手司法書士で2階を充実させたい方の投稿を歓迎します。
  反論ややっかみの矢が飛んでくるかもしれませんが、命は保証します。


2011.10.27(木)【二階建ての家】(仙台・立花宏)

 「仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食
うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮
屈だ。だから仕事には夢がなきゃならないと思う。それが二階部分だ。夢だけおっ
かけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。」

 先日、書店に立ち寄った際、ふと目にとまり、今年の直木賞受賞作「下町ロケッ
ト」(著者:池井戸潤)を購入しました。読み始めると、とても面白く、一気に最
後まで読み切りました。

 主人公佃航平は、かつてロケットエンジン開発研究者として宇宙への夢を追って
いましたが、ロケット打ち上げ失敗の責任を問われ、研究者の道を断念します。

 そして佃は父親の経営するエンジン製作会社である町工場を継ぎますが、ロケッ
トへの夢を捨てきれずに、会社の中に、ロケットエンジンに通用する部品の開発研
究をする部門を設け、その研究で培った技術を、一般のエンジン製作に活かすこと
により、会社の業績を伸ばします。

 そのような中、佃の会社が取得していたロケットエンジンの部品に関する特許が、
大企業が計画するロケット計画に不可欠なものであることが判明し、その大企業か
ら、佃の会社が所有している特許を売却するように求められます。

 経営者としては、特許を売却すれば特許は手放しますが、大きな利益を得ること
ができ、会社の経営は安定します。しかし、特許を売却するのではなく、自分の会
社でその特許を使用した部品を製作し、その大企業に納品すれば、ロケット打ち上
げの成否という大きなリスクは伴いますが、自分たちの作った部品で、ロケットが
宇宙への飛び立つという大きな夢を見ることができます。

 経営をとるか、夢をとるか。佃の気持ちは揺れます。

 冒頭の言葉は、そんな状況の中、特許を売却して経営の安定をとるべき、との態
度をとる従業員に対し、佃が述べた言葉です。

 読み終わった後、ずっと、この言葉が頭から離れませんでした。

 もし、自分の趣味として研究を続けるのであれば、二階建の家の二階ではなく、
現実の世界を離れて、極端にいえば、別荘で行った方が集中してできるし、楽しい
のだろうと思います。

 なぜ、二階で行うのか。

 二階で行えば、二階での研究を一階での仕事に反映させるも容易ですし、一階の
仕事で生じた疑問やアイデアを、二階の研究に活かすこともできます。

 近い場所で行ってこそ、両者を密接に関係させるからこそ、夢も追えるし、生活
もできるのだ、ということなのだと思います。

 私たち司法書士も同じではないかと思いました。二階で研究したことを一階の仕
事に反映し、一階の仕事で生じた疑問やアイデアを、二階で研究する、そんな生活
をしてはじめて、一人前の仕事ができるのだと思います。

 おそらく、金子先生や富田先生も、そのように、公私の区別なく研究や仕事を行
っているからこそ、第一人者として活躍されているのだろうと想像します。

 いつか私も、金子先生や富田先生のようになれるよう、がんばりたいと思います。

 でも、そのまえに・・・。生活のための1階をしっかりさせたいと思います。


2011.10.26(水)【オチのないポータルサイト】(大阪・田中利和)

 先日,株式会社▲▲▲を商号とし,「●●●●を紹介するポータルサイトの運営」
を事業とする会社を設立したいとの依頼がありました。早速,同一商号を調査し,
準備を進めているところです。

 ところが,この「ポータルサイト」の意味がわかりません。依頼者に聞いても,
ピンときません。調べたところ,なんとかその意味が理解できました。

 ポータルとは、港(port)から派生した用語だそうです。門や入口を表し,特に
豪華な堂々とした門に使われた言葉で,Webにアクセスするために,様々なコン
テンツを有する,巨大なサイトをポータルサイトというようになったそうです。

 なお、Web全般を対象とした総合的なポータルサイトの他に、特定のジャンル
に特化し、そのジャンル内における各種情報を総合的に案内するタイプのWebサ
イトを、ポータルサイトと形容する場合があるそうです。

http://www.weblio.jp/content/%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88

 さらに調べていましたところ,●●●●が商標登録されています。しかし,この
事業は,設立した会社が,その会社の広告媒体として商標を使用するわけでもなく,
商標自体を広告(紹介)しているので問題はなさそうですし,商標の権利を有して
いる者の了承も得られるようです。

 ところで,閲覧者の皆さん,本徒然の難しさはここからなのです。決して笑いを
狙っているわけではありませんが,ここからオチにつなげるまでが非常に難しいの
です!!

 私がこのようなことを言える立場ではありませんが,金子代表の徒然は,すばら
しいオチにつながっています。

 何の話でしたっけ? ポータルサイトですね。

 ん? そうか,この徒然が私を宣伝するポータルサイトとも言えますね!!
今後は,笛を吹かれたら(18日付本欄参照)、オチがなくても踊ってゆきたいと
思います(^_^;)


2011.10.25(火)【ヨモヤマ話】(金子登志雄)

 渡部さん、商業登記の神様といわれるコウザキ先生をカンザキ先生と読んでは、
イカンザキですよ。渡部さんに「ワタベさん」と呼びかけるようなものです。

 私の勝手な推測では、もともとは「カミザキ」だったのが(カミザキさんも存在
します)、いつしか訛って、「カムザキ→カンザキ」になった地域と、「カウザキ
→コウザキ」になった地域があるのではないでしょうか。あるいは、上崎さんとの
混同を防止したのかもしれません。戸籍には、ルビがふってありませんから、コウ
ザキ先生も、今日からわが家は「カミサキと称する」と宣言すれば、孫や曾孫の世
代では、「ウチはカミサキです」となるはずです。

 コウザキ先生は法務局ご出身ですから、「そもそも、“コウザキ・ミツジロウ”
さんの著書によれば………」と、法務局と戦っても名誉にこそなれ、被害はないで
しょうが、時々、「そもそも、“カネコ・トシオ”さんの著書によれば………」と
法務局で論争する方もいるらしく、これでは私は法務局から嫌われてしまいます。

 ところで、私は、「コウザキ先生と似ている」とよくいわれます。どうも、商業
登記や会社法が本当に好きなんだなというオーラを出しているらしいのです。

 昔、大阪で講演したとき、紹介者の司法書士土井万二さんから「酒の席でも商業
登記の話しかしない先生(と評判です)」と紹介され、苦笑してしまったこともあ
りますが、司法書士相手では、確かにそれはいえますね。

 しかし、酒の席でコウザキ先生や私の近くに座る司法書士が商業登記の話題を振
ってくるので、そう思われてしまうところもあります。今度は、ぜひプロレスの話
題でも振ってください。誰かさんに聞かされた耳学問は学習効果はありませんが、
政治プロレスの話なら興味があります。

 あの北海道出身のエネルギッシュな実力レスラーも権力闘争の犠牲で今や刑務所
内ですし、岩手出身の超実力レスラーもマスコミの扇動による魔女狩りリンチでリ
ングに上がることさえできない状態のため、政治プロレス・ファンとしてつまらな
い思いをしているところです。

 大男の米国人レスラーと対等に渡り合える国益重視の実力日本人レスラーを同じ
日本人の観客が足を引っ張っているのですから、実に愚かなことです。広島出身の
実力レスラー(カメイ)も、もっとリングにあげて働かせてほしいものですが、オ
バマ・レスラーが国内不人気を何事も言いなりになる日本への圧力で挽回しようと
しているので、TPPも寄り切られてしまうのでしょうか。


2011.10.24(月)【神ア満治郎先生】(島根・渡部浩義)

 もう二十数年も前の昭和の時代のことです。
 大学在学中の私は司法書士受験を志し、九州地方の司法書士事務所でアルバイ
ト補助者(本当はそんなことしてよかったのか?)として日々近傍の登記所を回
っていました。

 受験勉強も熱を帯びてきて知識も新鮮だったというより若気の至り、「剣術覚
えたての新撰組」のようなもので、提出した申請書類に貼られた補正付箋をめぐ
り調査係官や登記官によく論戦をしかけていました。

 どこの登記所であったかは今となっては記憶さだかではありませんが、間違い
なく商業登記申請での補正をめぐり受験生補助者としては引き下がれないことが
あり、「そもそも、“カンザキ・マンジロウ”さんの著書『図説 商業登記法』
によれば、そんな書類は添付する必要がないはずです! 」と調査係の職員さん
相手に熱弁をふるい、相当熱い論戦になりました。

 その私たちのやり取りの一部始終を横の机で聞いていた登記官氏が口を開き、

登:「わかったよ、おにーさん。アンタがそこまでいうなら添付なしでよかっ
  チャろーたい。」の言葉の後、「おい、そのまま登記記載に回せ。」と調査
  係氏に対する指示。

私:(その一言を聞き、内心『今日もやったーっ!』と喜び勇んでおりました。)

登:「でもね、“コウザキ・ミツジロウ”を“カンザキ・マンジロウ”と読んで
  いるようでは、残念ながら今年もまだ試験には受からんチャねー。」と笑顔
  で続けられ、

登:「そこのとこはコウザキさんの出身地管轄法務局としては是非とも補正して
  欲しいチャねー。」

私:「・・・・・。(えっ、そうなの、、、【わき腹に冷たい汗】。)」

 その後も神ア先生前掲の著書『図説商業登記法』は、「あのボリュームで、こ
の価格」ということもあって、版を重ねられるたびに購入して夜な夜な読み込ん
だ記憶があります。そして私たちの受験時代には誰もが読んでいた先生のペンネ
ームによるもうひとつの商業登記の名著も。今日、私が司法書士を名乗れている
のも神ア先生のおかげによる部分が大きいことは間違いありません。

 私が神ア先生にはじめてお目にかかったのは、島根に帰郷して開業した後の平
成の世になってからのことです。「こんなに精力的な方なのか・・・・!」とい
うのが強く印象に残っています。

 『サ行』の発音に独特の発音をもつ島根・出雲地方出身の私は、同じく『サ行』
に独特の発音がある学生時代をすごした北部九州地方に、とても親しみを覚えま
した。そしてご出身の神ア先生にもその独特の『サ行』発音があることに、失礼
ながら勝手に親近感を感じます。

 初めてお目にかかってから15年以上も経つと思いますが、今日もその精力的
な講義、執筆活動には圧倒され続けています。どうも最近、私は仕事がうまくい
かなくなり疲れてくると、頃合いよく神ア先生や金子代表にお目にかかる機会に
恵まれ、元気をもらって地元に帰るという傾向があるようです。


2011.10.21(金)【自己株式を処分しても分配可能額は不変】(金子登志雄)

 来年1月下旬出版の新著から1つご紹介しましょう。
臨時決算を経ない限り、自己株式を処分しても分配可能額は不変という原則です。

 ★分配可能額(100)=剰余金(200)−自己株式簿価(100)

において、自己株式80を【100】で処分すると、剰余金が20増えて(自己
株式処分差益)、自己株式が80減少しますから、

 ★分配可能額=220−20=200

です。自己株式80を【50】で処分すると、剰余金が30減少し、自己株式が
80減少しますから、

 ★分配可能額=170−20=150

です。いずれも分配可能額が処分価額(自己株式対価額といいます)の100又
は50だけ増えてしまいます。

 ということは、自己株式を処分すれば分配可能額を増やせることになりますの
で(純資産額が増えます)、こりゃまずいということで、自己株式処分があった
場合の分配可能額は、

 ★分配可能額=剰余金−自己株式簿価−自己株式対価額

になります(臨時決算を経た場合は、その必要がありません)。

 会社法461条2項の臨時決算部分を除くと条文が次のようになっています。
1号から3号と4号を控除してください。
-----------------------------------------------------------------------
 1 剰余金の額
 2 ………
 3 自己株式の帳簿価額
 4 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式
  の対価の額
-----------------------------------------------------------------------


2011.10.20(木)【地域格差】(金子登志雄)

 渡部さん、投稿ありがとうございました。

 確かに、地方の郡部地区には会社の数が少なく、商業登記の事件数も限られます
ね。バブルの頃は、地方からも東証マザーズなりの上場会社が登場したりして、地
元の司法書士があたふたしたこともあるようですが、最近は、そういう話も聞かな
くなりました。

 では、会社数の多い都市部の司法書士は、大量に商業登記案件を受託しているか
というと、そうとは限りません。多くの事件が老舗の事務所や営業力のある事務所
に流れてしまい、全く商業登記案件のない事務所も多数あると聞いています。

 東京のど真ん中に事務所を構える当事務所など、さぞ大量に扱っているだろうと
勘違いされている部分もありますが、もし、そのとおりでしたら、当事務所も大事
務所になっていることでしょう。いつも頼んでいる司法書士事務所がヘマでもしな
い限り、他の優秀な事務所に切り替えるなどという行動は、義理固い日本の企業は
しないものです。

 ところで、格差といえば、いま世界中で貧富の格差に対する抗議デモが起こって
います。日本でも、行きすぎた市場原理主義(新自由主義、小泉改革が典型例)で、
中間層がいなくなり、かつ地方が疲弊してしまったようです。

 これをもって構造改革が不十分だったとの見解もありますが、日本的な従業員を
大事にする終身雇用制や、地方を重視する政策が、ことごとくグローバルスタンダ
ードに合わないと米国から突き上げられ、大手マスコミもその尻馬に乗り、経済政
策で失敗した面も少なくないでしょう。製造業の派遣が認められて、正社員と派遣
社員という身分格差も生じました。TPPで、また失敗しそうですね。

 こういう面からみると、商業登記庁の統廃合も地域格差を増大させる一因なので
しょうが、都会にはオンライン申請に長けた司法書士が多いので、この際、東京法
務局を島根県に移転せよと渡部さんが頑張るなら、応援しますよ。


2011.10.19(水)【商業登記スペシャリスト養成塾】(島根・渡部浩義)

 一週遅れての報告です。
 過日の連休は、都内で行われた神ア満治郎先生主宰“商業登記倶楽部”の『商業
登記スペシャリスト養成塾関東教室』で“生徒”を務めてまいりました。
(2011.10.11付 金子代表投稿文参照)

 盛況でした。日本全国各地からの熱心な同職の参加者に交じり、久しぶりに神ア
先生はじめ当ESGの金子代表、会友である鈴木龍介先生らの講義を拝聴しました。

 司法書士の世界に身をおいた者であれば、上記いずれの先生の著作を見たことが
ない、話を聞いたことがないという人は稀でしょう。これらの先生方の精力的な生
講義を連続して伺えるのですから贅沢な時間を過ごしたことになります。

 私は勝手に、「神ア節」、「金子節」、「鈴木節」と呼ばせてもらっていますが、
どの先生も講義の運びのうまさはもちろんのこと、聞く者を惹きつけるそのしゃべ
り方(話術)にはそれぞれ独特のものがあります。こうした講義を年に何度もこな
される場数の多さや扱われた案件数の豊富な経験に裏打ちされている部分も大きい
とは思うのですが、練習されてどうのこうのではない、生来の持ち合わされた素質
によられる部分も大きいと思います。

 せっかくの名講義の連続であったにもかかわらず、商業登記所がはるか遠くに去
ってしまった田舎町から出掛けた昭和の合格者(私のことです)には、講義内容に
ピンとこないことが多くなりました。

 『商業登記所80庁化は司法書士にとってのチャンス』と唱えられる神ア先生あ
たりからは叱責をいただくのかもしれませんが、人数少なく高齢化の進んだ田舎で
は間違いなく商業登記案件はなくなりました。商業登記に関する相談案件すらここ
のところ私にはありません。
 
 私自身の地元での人気の低さ、営業活動のまずさもあるのかもしれませんが、田
舎の周囲環境をみれば如何ともしがたく、もはや最低でも市制を敷くような人のい
る場所でなければ商業登記案件は無いかのような錯覚すら覚えます。また、今回い
ま一人の講師であった草薙智和先生※のような若くて優秀な方の話を伺うと、間違
いなく東京という場所の“威力”と自分が過去の者になりつつあることを感じざる
を得ません。

 3日間毎日、講義が終わると宿泊先までの帰路、賑やかな夕方の東京の街をなん
となく地下鉄2駅分ほども歩きながら、『私自身の商業登記とのこれからの関わり
合い方もこの研修で見定めたい。』そんな思いも頭の中をよぎり始めました。

 まったくもって「スペシャリスト養成塾」や平素の「ESG法務研究会」の看板
に申しわけのない末席の“生徒”となりました。

  ※草薙智和先生のブログ http://shoshi-kusanagi.cocolog-nifty.com/blog/


2011.10.18(火)【笛吹けども踊らず】(金子登志雄)

 富田さんは人気者ですね。昨日の閲覧数もいつもよりぐっとアップでした。

 それでいて「この『徒然』が大の苦手です。読み手の感想・望んでいるものが分
からず、正直、書く内容・路線が絞れないのです」などとは………。

 「相手がワルツを踊ればワルツを踊り、ジルバを踊ればジルバを踊る。相手の動
きがみえなければ1人で優雅に舞う」を実践しなければ………。

 本欄も、ブログや掲示板形式にすれば、閲覧者から直接さまざまなご意見をいた
だけるのでしょうが、それに丁重に反応していると時間がとられ本業にも影響しそ
うなので、それは今後もしないつもりです。

 もともと本欄は、勉強熱心な若い司法書士を応援しようと、彼らの広報欄のつも
りではじめたのですが、皆さん、忙しいのか、あるいは書くのが苦手なのか(これ
は想像以上に多いようです)、投稿が少ないので、それならばと私1人でも続けよ
うと、日々思い付いたことを書いているだけです。

 こういうのは「笛吹けども踊らず」というのでしょうが、私は、他人の意見を知
るよりも自分の意見を打ち立てることのほうが重要だと思い、読むこと(受信)よ
りも自問自答しながら書くこと(発信)のほうを重視してきましたが、多くの方は
前者こそ勉強だと思っているようです。書いて発表し、恥を書くことのほうが余程
よい勉強になると思うのですが………。

 さて、この2か月間、試行錯誤して書いた来年1月下旬発売の新著(東京司法書
士協同組合刊)の題名は、『ずばり解説!会社の計算〜基礎から応用まで〜』とな
るようです。『ずばり解説!』シリーズ第2弾目ということでしょう。

 皆さんの苦手な会社の計算に、ずばり切り込みました。易しいことを難しく表現
しているだけであることを具体例で説明しました。これを読んで会社の計算に詳し
い司法書士が増えると私は困りますが、分かりやすい本にしないと、私の評価が落
ちる………ジレンマを乗り越え、いつもどおり後者を最優先して相当踏み込んだ内
容にしましたので、司法書士各位は、「ずばり購入!」でお願いします。

 ※本欄に書いてみたいという意欲のある方は、メンバーに声をかけてください。
 

2011.10.17(月)【「へんなことに博識で〜 」失礼ですね(怒)!】(富田太郎)

 14日の徒然に、
「もちろん、へんなことに博識で、プロレス大好きT先生も驚いていました。」

へんなことに博学?? 金子先生! 失礼ですね(怒)! 困ります!


 ところで、本徒然も平成19年4月から始まり、もう4年半がたちました。土日、休日を除
き、毎日欠かすことなく継続しており、これはある面では凄いことではないでしょうか? ひ
とえに、文章好きの金子先生、島根のWさんのご尽力によるものだと思います。

 私などは、この「徒然」が大の苦手です。読み手の感想・望んでいるものが分からず、正直、
書く内容・路線が絞れないのです。

 ところで、ちょっと余談ですが、私の文章遍歴を・・・。

 初めて、公?の文章を書いたのは、勤めていた金融機関の社内報でした。新入社員だった私
は、社内報に、『プロレスの美学』というエッセイ(個人的にもらったプロレスラー「デスト
ロイヤー」からの手紙、プロレスラーの流血写真まで載せ♪ 村松友視ばり名文!)を書き、
「次号に続く!」としました。

 しかし、発刊と同時に、役員に呼びつけられ、「新人のくせに、わが社内報に、(下劣な)
プロレスのことを書くとは!(怒、怒)」と、その場で連載打ち切り・・・・(涙)。
(まぁ・・高尚な?『文藝春秋』に広告を出す会社だったからなぁ・・・・。そんなセンスだ
から、倒産したのかな??)

 いずれにせよ、そこで学んだのは、「読み手を意識した文章」を書かなければならないとい
うことでした。

 そして、本格的に書き始めたのは10年前。「法律受験雑誌」の連載でした。6年ほど連載し
ましたが、この雑誌、毎号、読者投票による「人気順位」が発表され、読者の嗜好にあわせる
ため、路線修正の連続で、まさに死に物狂いの執筆でした。

 ここでも学んだのは、「読み手を意識した文章」でした。

 ところが、ESGの徒然は、読者からの反響が分からず、修正のしようがないのです。そん
な折、先週、本徒然を愛読している友人からメールがありました。

 (私の文章に対する賛美・賞賛かな♪♪)

「最近の富田さんの徒然は、なにやら知識をひけらかすような引用が多すぎる。ようは、バカ
になりきれていない。『おれはバカなことを書いているけど、本当は知識あるのだよ』という
のが、ハナにつく」・・・・そうです・・・・(汗)。

 そうかなぁ・・・・? 心外だなぁ・・・・???

 あっ!!

へんなことに博識で〜」・・・・・

・・・・・・・・・

 なるほど!!

 確かに・・・誰も知らない本とかの引用が、このところ多すぎましたね。以後、注意します
・・・(猛省)。

 しかし、反省はしますが、「へんなことに博識で〜〜」は、ないですよね!(怒)。


2011.10.14(金)【自身の登記がないのに印鑑証明がとれる】(金子登志雄)

 表題は信じられない方が圧倒的多数でしょうが、あり得るのです。最近、経験し
ました。

 ある行政書士さん経由で、個人事業者Aさんから支配人Bの登記をしたいとの相
談を受けました。A個人は商号の登記をしていないそうです。

 会社の登記では、支配人は会社の登記簿にしますが、個人商人の支配人の登記は
独立の登記であって、個人商人の登記とは別です。したがって、何となく個人商人
の登記をしていなくても、支配人の登記はできるのだろうなと想像いたしました。

 ところが、支配人の印鑑届に対し、商業登記規則で「商人が支配人の印鑑に相違
ないことを保証した書面及び当該書面の印鑑につき登記所の作成した証明書で作成
後3月以内のもの」を添付書面として要求しているのです。

 上記のAさんに「登記所の作成した証明書」を要求するには、Aさん自身の商号
の登記が必要ですから、やはり、実務上は、支配人Bの登記に、本人Aの登記が必
要なのかと考えてしまいました。

 なら、印鑑届をしなければよいのか、その場合、支配人の解任の登記は誰がする
のかと考えて、ハタと気づきました。支配人の登記は支配人がするとの間違った思
い込みをしていたわけで、支配人の登記申請は使用者Aが申請するのでした。

 商業登記規則をよくみると、印鑑提出者の部分に「商号使用者、………、又は支
配人を選任した商人(会社である場合を除く。)」とあるではないですか。

 支配人の登記には「支配人を選任した商人」の印鑑届が必要で、その印鑑で支配
人の登記を申請すればよく、事前に個人商人の登記をしておく必要はないというこ
とです。支配人自身が印鑑を届けたいときにのみ、使用者の個人商号登記が必要と
いうだけでした。

 であれば、「自身の登記をしていないのに、印鑑証明がとれる」となります。き
っと、司法書士の数%も知らないでしょう。もちろん、へんなことに博識で、プロ
レス大好きT先生も驚いていました。

 なお、支配人の登記には、商号が不要です。記載欄もありません。では、どうや
って、ネットの「登記情報提供サービス」で謄本を取るのでしょうか。試しに支配
人の名前で検索してもダメでした。

 登記所に聞いたら、支配人の名前でよいそうです。私の場合は、たまたま支配人
の氏が「橋」(仮名)だったので、外字が理由で不成功だったようです。タカハ
シでは取れましたから。

(土日ヒマな人に)

 法律も生活も社会の1部です。貴方も、リトマス試験を受けてみませんか。

 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/10/post_278.html#more


2011.10.13(木)【有償無償抱き合わせ増資】(金子登志雄)

 某著名大企業のストック・オプション(新株予約権)の開示に「剰余金の額を減
少して資本金または準備金を増加する議案が当社株主総会において承認されること
を条件として株式分割が行われる場合………」という文章が挿入されており、びっ
くりしてしまいました。

 なぜ、こんなことをすると思いますか。

 きっと、額面株式時代の発想でしょう。

 昔はほとんどの会社が、「額面×株数=資本金」でした。
 「額面5万円×2000株=資本金1億円」の会社が剰余金を100万円資本金
に組み入れると、「額面5万円×2000株<資本金1億100万円」になってし
まい、格好悪い(?)ということで、2000株を株式分割して2020株にする
ことなどが昔はあったのです。

 表題の有償無償抱き合わせ増資というのは、額面5万円で100株増資するとき、
1万円分は剰余金や準備金の資本組入れで補うから、1株4万円だけ払ってくれれ
ばよいなどという増資方法でした。

 その著名大企業の場合は準備金を増加する議案についても定めているため、額面
株式時代の発想だとは断定できませんが、剰余金を資本金や準備金に組み入れて、
同時に株数を増やそう(株式分割)などと考える会社があるのでしょうか。

 額面株式がなくなってから、この10月1日で、ちょうど10年です。世の中は
変われど、人の意識は容易には変わらない1つの例でしょうか。


2011.10.12(水)【代書屋冥利に尽きる】(金子登志雄)

 10月1日合併等の登記が終わる時期となり、依頼者から、あるいは相談にのっ
ていた司法書士等から続々と御礼のメールや電話をいただき、ただいま会社法・組
織再編専門司法書士「冥利に尽きる」という実感を味わっているところです。

 これは司法書士等の専門職がみな感じる感覚でしょう。感じたことがないとした
ら、貴方の仕事は単なるメッセンジャー(使者)並であり、専門家の裁量で、確実
・早期に仕事を完了させていないことになります。

 これに関して、代書屋という表現が司法書士の蔑称として使われることがありま
すが、私は代書屋という表現が嫌いではありません。弁護士の「代言人」に対して、
「文章で勝負する職業」というイメージがあるからです。

 登記申請書はパターンが決まっていますから、そう頭を使いませんが(連件申請
を除く)、議事録案や合併契約書案、定款変更案などで、どういう表現を用いるか、
どう簡潔にまとめるか、どういう順序・配列にするか、この会社ではどこまで詳細
な内容が必要かなどなど、結構、頭を使います。決して、書式を写しているわけで
はありません。

 大企業では、よく「この合併契約は、この定款案は複数の法律事務所のチェック
を受けていますから………」というのですが、われわれの目からは、つけ込み所が
満載のものが少なくありません。

 われわれは、数多くの合併契約や定款をみていますので、「目利き能力」が肥え
ていますし、それ以前に、弁護士さんの仕事は紛争回避(無効原因はないか、裁判
にならないか)であり、われわれの仕事は、それと同時に公証人役場や登記所とい
う関所をいかに通過するかであって、着眼点が違います。

 手形がなくても芸人などは芸を披露すれば関所を通れたとか。われわれは手形を
持っていますが、それと同時に芸を披露すると、関所の審査も簡単に済み、通過時
間を短縮できるものです。皆さん、芸を磨きましょう。


2011.10.11(火)【会社法446条1号】(金子登志雄)

 連休は都内で行われた神ア満治郎先生主催の商業登記倶楽部の関東教室の講義で
講師を務めてまいりました。

 相変わらずの盛況で、北海道や沖縄からも参加があり、久々に会友の鈴木龍介さ
んや島根の渡部浩義さんとも会ってまいりました。

 鈴木さんの講義はいつもながら流暢なのに、私の話は思いつくままあっちこちに
飛び、レジュメも誤植が多く、恥ずかしい思いでしたが、渡部さんによると、これ
が金子節なんだそうです。

 一番受けたのは、次の会社法446条(剰余金の額)1号の解説でした。
--------------------------------------------------------------------------
 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまでに掲
げる額の合計額を減じて得た額
  イ 資産の額
  ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
  ハ 負債の額
  ニ 資本金及び準備金の額の合計額
  ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額
の合計額 
--------------------------------------------------------------------------

 これ、結論をいうと、イ・ロ・ハ・ニは何でもよいのです。ホに関する法務省令
(計算規則149条)の中に、「(イとロ)から(ハとニとA)を減じた額」とあ
るのです。

 つまり、イ・ロ・ハ・ニの全部が相殺されて、最終的にA(その他資本剰余金と
その他利益剰余金)だけが残り、会社法446条が上記のようにイ・ロ・ハ・ニを
規定した意味がないのです。まるで、社長がした約束(会社法の規定)をなかった
ことにしますと、単なる経理担当社員(会社法の下位法である法務省令)に反故に
されたようなものです。

 「馬鹿にするな! と暴動でも起こしたくなりませんか」と説明したら、受けて
くれました。


2011.10.07(金)【1号合併差損と2号差損】(金子登志雄)

 流れに任せて、今週は会社法795条2項1号と2号の特集にしましょう。

 旬刊商事法務1769号25頁によると、1号は次の@、2号は次のAに書き直
せます(この書き直し経路は、東京司法書士協同組合から来年1月中旬に出る拙著
で説明しています)。

 0>純資産増加額+合併対価(株式・新株予約権は除く)………@(1号)
 0>純資産増加額+社債対価………A(2号)

 @で合併対価があれば、純資産増加額がマイナスでも合併差損にならないことが
あるとしているのに、Aのほうで社債以外の合併対価を加算していませんから、合
併差損になります。な〜んだ、@の存在意味がないじゃないかと即座に思った方は、
相当に頭脳明晰な方でしょう。私には無理でした。

 その頭脳明晰な貴方にお尋ねします。@の存在理由を述べてください。これは、
推理能力です(こちらのほうは、私は即座に気づきました)。
 
 お気づきになられたでしょうか。

 合併対価がマイナスのときです。@で合併対価がマイナスであったら、Aで合併
差損にならなくても、@のほうで合併差損になるということです。

 では、合併対価がマイナスとは、どういうことかと、次に進みますが、社債など
負債項目の話ではなく、ここは「簿価債務超過事業」を合併対価にした場合です。

 めったにどころか、全くに近いほど、生じない事態でしょうけど、@の存在理由
はあるということです。
 
 会社の計算の権威である郡谷本などには何の説明もなく、通常の場合は、Aだけ
検討すればよいと書いてあるのは、以上の意味でしょう。

 会社の計算は、なぜか説明不足の本ばかりですから、推理力テストとでも思って
読むしかありません。知恵の輪か、クイズとでも思わないと、楽しめませんが、合
併差損では、もう2週間も楽しませて(?)もらいました。それでも、まだ、完全
には解けていませんので、しばし休憩し、延長戦に入ります。


2011.10.06(木)【株式、社債、新株予約権】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、本欄読者から「会社法コンメンタール(商事法務)の解説に
よると、金銭等から株式、新株予約権、社債を除く理由は、分配可能額が減少しな
いから、との解説がありました」とのご連絡をいただきました。

 ご連絡ありがとうございました。しかし、せっかくのご好意ですが、私には意味
が分かりません。株式を対価にし、債務超過会社を吸収合併すると、その他利益剰
余金が減少するのですが、これは分配可能額の減少とはいわないのでしょうか。

 合併対価から株式、新株予約権、社債を除く理由は、既存財産が減少しないから
であって(そのため、この3つには新設型再編の対価能力があります)、「承継」
資産・負債に含まれないからです。

 しかし、社債は「負債の増加」に繋がります。社債対価による「のれん」の計上
を通じて承継財産にも影響します。

 おそらく会社法795条2項の合併差損の規定が「承継」負債・資産となってい
るため、承継していない社債を除外したのでしょうが、「既存財産の減少」と「負
債の増加」に差を設ける合理的な理由があるのかというのが、私の疑問です。
 
 なお、株式であっても、有利発行なら、会社が損をするので、株式だって同じだ
と考えた方はいらっしゃいませんか。これは間違いです。有利発行で困るのは既存
の株主であって、会社自身ではないのです。国債を発行すると国の痛みが増えるか
ら、増税という株式を発行し、国民に痛みを回してしまえという、どこかの増税論
者の考え方は、ここに根拠があります。

 ちなみに、コンメンタール(逐条解説)というのはドイツ語だそうですね。どう
りで、私には理解できないはずでした(英語では、コメンタリーだそうです)。


2011.10.05(水)【2号合併差損と数学能力】(金子登志雄)

 突然ですが、0>X+Y において、Yがプラスだとしたら、Xはマイナスでし
ょうか、プラスでしょうか。

 数学が苦手な方でも前者だとすぐに分かりますよね(試しにYに適当な数字3を
入れてみると、0>X+3 から、△3>Xが導けます)。

 さて、会社法795条2項2号の合併差損は、

  「合併対価(株式等を除く)>承継純資産額」

のときであり、株式等に含まれる社債を除外するのはおかしいと書きましたが(3
日付け本欄)、この規定は、最終的に、

  「0>純資産増加額+社債対価」

と書き直すことができます(旬刊商事法務1769号25頁。その証明は煩雑なの
で省略します)。私流に言うと、「0>株主資本等変動額+社債対価」と同じ意味
です(対価の一部を株式にした場合を前提にしています。そうでないと、のれんが
登場し、原則として純資産額に変動はありません)。

 やはり、おかしいですよね。株主資本等変動額がマイナスになれば、その他利益
剰余金が減少するのであって(計算規則35条2項)、そこに社債を足してプラス
になったら、「合併で純資産額は減少するけど、合併差損ではない」ということに
なってしまいます(社債を加算して株主資本等変動額自体をプラスにするわけでは
ありません)。

 社債によって生じた差損を救済するのなら分かりますが(どんな場合かは不明で
す)、現実には、社債がなければ差損なのに、社債を加算したために、総会の承認
決議を回避できるという逆効果になっているのではないでしょうか。

 念のため、会社法の母体になった現代化要綱試案には、「合併対価の存続会社の
簿価が承継する純資産額を上回る場合」とあるだけで、合併対価から社債を除外し
ていません。

 マイナーな部分ですが、私が何かとんでもない勘違いをしているのか、ぜひとも
専門家のご意見を伺いたいと思っているところです。


2011.10.04(火)【10月1日合併】(金子登志雄)

 昨日は10月1日合併・再編の登記申請日でした。ありがたいことに、3か所の
法務局で、数件の組織再編の登記を申請してまいりました。

 実は今年4月1日付の組織再編登記の受託がゼロでした。3月31日合併などの
仕事はあったため、実質はゼロとはいえないのですが、組織再編登記の書き入れ時
である4月1日に「組織再編の金子」が申請件数ゼロとは、実に情けなく、いよい
よ斜陽の始まりかと覚悟していたのですが、後半になりましたら、私が大好きな込
み入った複雑な再編の仕事がいくつか入ってきて、当事務所も活気づきました。

 吸収合併と種類株式による増減資・減準備金に、大幅な役員変更と本店移転、そ
れに株式交換や吸収分割、社外役員問題などが絡んでくると、楽しくなってしまい
ます。いずれも過去に何度か経験した内容で、私には目新しいものではありません
が、たまにしかお目にかかれないので、「ようこそ、いらっしゃいました。首を長
くして、貴方様をお待ち申しあげておりました」という心境です。
 
 複雑な再編の登記の仕方は、登記の順序をミスしたらアウトです。AB、BCが
合併するのに、ABを先に申請し、Bを解散させてしまえば、BC合併ができなく
なります。実体法的にみれば、AはBの権利義務承継者だから、AB合併を先行さ
せて、後にAC合併にしてもよいではないかと思いますが、登記では、おそらく認
めないでしょう。閉鎖したBの登記簿に「Cを合併」とは記載できないからです。
もとよりAの登記簿に「Cを合併」と記載するのも不自然です。

 とはいえ、登記申請は受験と同じで、合格発表があるまでは、落ち着きません。
こればかりは「慣れ」はないのかもしれません。今日から数日間は、法務局から電
話が来ないことを祈るばかりです。あれは事由の如何を問わず、ドキっとし、どこ
をミスしたのかと不安に襲われ、健康によくありません。過去の経験から、単なる
問い合わせでしかないことが多く、これが理由で、調査官がひっかかりそうな部分
につき、事前に説明書を添付するようになったという次第です。


2011.10.03(月)【2号合併差損】(金子登志雄)

 合併差損について規定する会社法795条2項について、真剣にその意味を探索
した方はほとんどいないと思います。私も同じでしたが、本を書くため、挑戦して
みましたが、同2号の「交付する金銭等(吸収合併存続株式会社………の株式等を
除く)の帳簿価額が承継資産額から承継債務額を控除して得た額を超える場合」の
意味につき、ここ1週間ほど悶々と考え続けてしまいました。よき参考資料がなか
ったためです。

 交付する「金銭等」とは合併「対価」のことですから、「合併対価>承継純資産
額」なら会社に入ってくるものより出て行くもののほうが大きいから、合併で純資
産額が減少することは誰でも分かります。

 不明点は、なぜ合併対価から「株式等を除く」のかでした。特に、社債を除く理
由が分かりませんでした。

 株式等とは「株式、社債及び新株予約権」のことですが(107条2項2号ホ)、
株式や新株予約権は貸借対照表の資産・負債ではないため、除外する理由は分かり
ますが、社債は負債項目です。

 吸収合併で受け入れる純資産額が100なのに、新規社債120を対価として交
付すれば、20の純資産額が減少するはずなのに(実際はのれんが登場するため相
当複雑です)、なぜ除外するのでしょうか。

 いろいろ考えた結果、社債は新たに会社で発生させるもので、既存の財産ではな
いため、「承継」純資産とはいえないことが根拠だとしか考えられませんでした。
会社法795条に「承継」資産・債務とあり、合併で変動(増減)する資産・負債
と表現していないのは、そのためのようです。

 資産に計上されている自己社債を対価にした場合も、既存資産の減少ですが、同
時に外部からの負債に変化するため、新規社債と同様に考えるようです。

 しかし、現金を対価にし、未払い現金を直ちに準消費貸借で負債に変更した場合
と大差がないと思いますので、社債を特別扱いする理由は、いまだ納得しかねてい
ます。


2011.09.30(金)【同一住所・同一商号】(金子登志雄)

 ご承知のとおり、現在では、類似商号は禁止されておらず、同一住所・同一商号
だけが禁じられています(商業登記法27条)。株式会社ABCとABC株式会社
は、マエ株とアト株という大きな相違がありますので、同一商号ではありません。
株式会社AbCとも同一とはいえないでしょう。

 これに関して、先般、面白い経験をいたしました。株式会社渡辺商店を株式会社
渡邊と変更したので(注:仮名です)、早速、登記を申請したのですが、誤って株
式会社渡「邉」で申請してしまいました(第1申請)。

 過ちに気づき、電子申請で行った第1申請の登録免許税が納付前であったことを
幸いに、また、急ぎの事情があったので、すぐに、株式会社渡邊で再申請しました
(第2申請)。

 この場合に、第1申請を却下してほしいと思ったのですが、未納付が確定するに
は時間がかかりますし、第1申請と第2申請が同一商号ということで、第2申請を
却下されても困りますので、法務局に相談しましたら、第1申請を誤字による補正
を理由に取り下げればよいといわれ、そうしました。

 @第1申請→A第2申請→B第1申請の取下げの順序です。

 しかし、Bの段階で辻褄があったとしてもAの申請段階では第1申請と同一商号
だから、厳密にいえば、却下事由になるのかもしれないと考えてみました。

 いや、渡「邉」と渡「邊」では同一商号とはいえないからセーフかな、いやBの
時点で同一商号問題の瑕疵が治癒されたと考えるのだろうかなどとも考えましたが、
登記所の運用を知ろうと元登記官で商業登記界の大御所の神ア先生に電話質問しま
したら、「取下げによって第1申請はなかったことにされるから(遡及効)、瑕疵
の治癒と考えるまでもない」とのことでした。

 登記は無事に終わりましたが、登記所が株式会社渡「邉」と株式会社渡「邊」を
同一商号と判定するかどうかについては、いまだ不明です。斎藤と齋藤はどうでし
ょうか。富田と冨田もありますね。


2011.09.29(木)【計算規則39条2項ただし書】(金子登志雄)

 株式交換で債権者保護手続が不要である新株式のみを対価にした場合は、計算規
則39条2項ただし書によって、払込資本のうち、資本金・資本準備金にしか計上
できず、その他資本剰余金に計上することができません。

 私の本でそう信じていた税理士で友人のT先生、改めて計算規則39条2項ただ
し書をみたら、あれ、「その他資本剰余金」が生じるじゃないかと思ったようです。

 次の規定です。【 】は私の挿入です。
--------------------------------------------------------------------------
 株式交換完全親会社の資本金及び資本準備金の増加額は、株主資本等変動額に対
価自己株式の帳簿価額【0円】を加えて得た額に株式発行割合【100%】を乗じ
て得た額【すなわち、株主資本等変動額】から株主資本等変動額までの範囲内で、
株式交換完全親会社が株式交換契約の定めに従いそれぞれ定めた額とし、当該額の
合計額【株主資本等変動額と0円との合計額】を株主資本等変動額から減じて得た
額をその他資本剰余金の変動額とする。
--------------------------------------------------------------------------

 T先生に、次のように返しました。
--------------------------------------------------------------------------
 株主資本等変動額から株主資本等変動額までの範囲内で定めた額とは、100か
ら100までの範囲内だから、100しか定められないという意味です。
 当該額の合計額である株主資本等変動額を株主資本等変動額から減じて得た額は
ゼロですから、「その他資本剰余金の変動額は、0円」とするという意味で、計上
できないという意味です。
--------------------------------------------------------------------------

 【 】部分がないと、T先生と同様に思ってしまう方も多いことでしょう。
 我ながら、こういう難解なデジタル表現をよく解読したものだと今更ながら思い
ますが、慣れてくると、知恵の輪を解くように面白いものです。こういうデジタル
表現だと減資も負の増資と表現しかねませんね。


2011.09.28(水)【相手がワルツを踊れば、ワルツを踊り〜】(富田太郎)

 先日、直木賞作家である村松友視の『私はプロレスの味方です』を30年ぶりに
再読しました。その本によれば、『プロレスの美学』とは、

「相手がワルツを踊れば、ワルツを踊り、ジルバを踊ればジルバを踊る」
(By ニック・ボックウィンクルの言葉)

の言葉に代表されるように、

「たとえ対戦相手が3くらいの実力しかなくても、(相手のスタイルに合わせ&よ
さも引き出し)8くらいの実力があるように見せてあげ、その上で10の力で勝つ」

ということのようです。

 そのような芸当ができるには、相当の実力が必要ですが、なにやら我々の仕事・
人生にも使える話だと思いました。

 ところで、常日頃、「政治家は自己顕示欲の塊で、少しは『プロレスの美学』を
勉強すればよいのに」と思っていました。

 前首相の菅直人が2010マニフェストで書いた『菅直人HISTORY』(市
民運動から総理へ)を読むと、自己賞賛・自己の業績美化一色で、自己顕示欲が相
当強い人間だと思ったことがあります(だから、党内がまとまらなかった)。

 さて、皆さん♪ ここで問題です。下記は野党時代のある民主党議員の発言です
が、誰だか?お分かりになりますか?

<2003年有事関連法案の審議問題>

 有事法制の問題で与党とやり合っている時に、横やりが入ったことがある。
せっかく『ストロングスタイル』の試合で熱くなっているのに、『魔界倶楽部』
が乱入してきた。

※大意⇒有事関連法案を当時の与党自民党と真剣勝負の議論をしているときに、密
室政治に持ち込まれた。

<2008年民主党代表者選挙(無投票選挙)>

 今回の民主党代表選挙も 、『雪の札幌』 を思い出しました。藤波辰爾の待つリ
ングに向かう長州力が藤原嘉明のテロに遭い、試合ができなかった。
 私もぜひとも小沢代表と正々堂々と戦いたかった。リングに上がる前に、引きず
り下ろされてしまいました。今でも無念です。
「(俺は)かませ犬じゃない。」 なんてね。

(以上出典:東京スポーツ2008年9月4日号)

 『ストロングスタイル』『魔界倶楽部』『藤原嘉明のテロ』『かませ犬じゃない』
・・・・・この方は相当のプロレス通です。

 実は、これ『野田佳彦』(現首相)の発言なのです。
そうなんです!野田首相、知る人ぞ知る『プロレス通』として有名な方です。

 『プロレスの美学&虚実皮膜の世界』を知っている野田首相。
もしかしたら、相当の人物かも知れません! 期待大です♪

PS
 この話をESGの仲間全員にメールしたところ
 賛同者続出!話題騒然!と思いきや
 次の日、誰からもメールが返ってきませんでした・・・(汗)。
 我がESG、『会社法のお勉強』ばかりでなく、野田首相を見習い、もう少し
『プロレスのお勉強』もしたほうがよいのではないでしょうか(きっぱり)!


2011.09.27(火)【研修旅行紀】(島根・根来川弘充)

 大きな台風がつづいております。被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げ
ます。

 先週、全国青年司法書士協議会の全国研修会で、浜松に行ってきました。少し大
まわりなのですが、島根から東京に一旦飛行機で出て、そこから新幹線で浜松に向
かいました。

 浜松までは、ひかりですと約1時間半でつきます。
 
 思うに、鉄道が出来たのが、明治時代といいますから、現在まで、わずか1世紀
ちょっとの間に、これだけのインフラが整備できた日本という国は、本当にすごい
国だと思います。

 あと半世紀後には、リニアモーターカーで、東京大阪間が1時間でいけるのだそ
うです。なんとか死ぬまでに一度は乗ってみたいと思います。

 行きの飛行機と帰りの新幹線では、富士山をみることができました。飛行機から
見る富士山は、小さい姿なのですが、あたり一面が雲に覆われていて、とても雄大
に見えました。

 また、新幹線から見る富士山も、いうまでもなくとても雄大でした。

 日本人の力、そして、日本の自然、改めて、どちらも本当に偉大だと思います。

 今年は、本当にいろいろな災害があります。これからもいろいろな災害があろう
と思いますが、きっとこの国は、立ち直ることができるだろうと、強く思いました。

 研修の内容は・・・、それはまた、機会があればということで(汗)。


2011.09.26(月)【台風15号とTwitterによる情報?】(富田太郎)

 皆様、9月21日の台風15号は、大丈夫だったでしょうか?
『東日本大震災』での教訓は、生かされましたでしょうか?

 企業などは早めに従業員を帰宅させたようですが、時すでに遅く・・・夕刻から
各鉄道機関が運転を見合わせた影響で、私の事務所のある新宿では、『帰宅難民』
の方々で溢れかえっていました。

 小田急沿線に自宅のある私も、運転再開と同時に、新宿駅に行ったものの、大混
雑しており殺気立っていました・・・(汗)。

・改札口の開放と同時に人々がなだれ込み、女性の悲鳴の声
・男同士のケンカも勃発

 一時は大混乱でした。
 結局、小田急はすぐに改札規制を行い(賢明な処置です)、その長蛇の列をみて、
私は帰宅を一時あきらめ、事務所に戻り仕事をしていました。

 ところで、昔は、交通機関等の情報・ニュースは、ラジオ・TVしかありません
でしたが、今は『Twitter 』などで生の情報が入手できるので、本当に便利な時代
になりました。事務所にいながら、『Twitter 』の投稿をみれば、小田急新宿駅の
生の情報が分かる♪

★夜11時過ぎ、女性らしき方の『Twitter 』

 『新宿駅をあきらめ、南新宿駅(注)まで歩いて行ったら、駅はガラガラ♪ 
来た電車もガラガラ♪ 私って勝ち組♪』

 の投稿を読み、半信半疑? で『南新宿駅』まで歩いて行ったら、本当に閑散と
しており、電車もガラガラ♪ 座って帰れました♪ なんだったの?? あの新宿
駅の混雑??

 なにやら、新宿駅で並んで待っている方々に申し訳ない気持ちで一杯でした・・。


(注)南新宿駅・・・新宿駅から徒歩6分ほどの隣駅。東京都統計年鑑によれば、
   東京都内では最も利用者数の少ない鉄道駅。

<後日談>
 今、『Twitter 』で話題になっているのは、台風当日の電車のアナウンスです
(真偽のほどは確かではありませんが・・・)。


★「皆さん申し訳ございません。私、運転士はこの仕事を選んだプライドがござい
 ます!皆さまを無事送り届けるまで頑張りますので、どうぞよろしくお願い致し
 ます。」(さすがプロ♪ 乗客感激!)

★「ただいま列車は多摩川の上空を通過しております・・」(台風かよ・・・?)


2011.09.22(木)【抱(き)合(わ)せ株式】(金子登志雄)

 甲が乙を吸収合併するとき、甲が乙の株式を持っている場合があります。これを
一般に「抱合せ株式」と呼びますが(会社法用語ではありません)、なぜ、こうい
う表現をするのかと、ネットで検索しましたら、こんな解説が目にとまりました。

--------------------------------------------------------------------------
 抱合せ株式とは、合併会社が保有する被合併会社の株式をいう。
 合併にあたり抱合せ株式に合併新株を割り当てることについて会社法上明文の禁
止規定がない。抱合せ株式に合併新株を割り当てた場合、その合併新株は自己株式
になる。なお、法人税法では、………
   http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_3667.html
--------------------------------------------------------------------------

 この「合併にあたり抱合せ株式に合併新株を割り当てることについて会社法上明
文の禁止規定がない。抱合せ株式に合併新株を割り当てた場合、その合併新株は自
己株式になる」は、完全な間違いです。

 合併対価の割当てに関する事項について規定する会社法749条1項3号に「吸
収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び【吸収合併存続株式会社を
除く】)」と明白に規定されています。

 「会社法上」を「商法上」に直すと正しい内容になりますが、会社法が施行され
て、もう4年以上も経過しました。旧商法のことを全く知らない新人司法書士も増
えているのに、こういう文章をこの時点で目にするとは思いませんでした。

 なお、合併対価を割り当てられない合併消滅会社の自己株式と抱き合わせ株式の
ことを会社計算規則で「先行取得分株式等」といいます。抱合せ株式を吸収合併前
に先に一部を取得していたとみるのは理解できますが、消滅会社の自己株式がなぜ
「先行取得分」なのでしょうか。合併を見越して先に自己株式にしていたわけでは
ないでしょうに………。


2011.09.21(水)【急ぎ案件】(金子登志雄)

 会社の設立や合併登記案件は急ぎ案件が多いものです。慣れた法務局は気を利か
せて設立や合併案件を早期に終了させてくれますが、出張所や地方の法務局では、
こちらからお願いしないと、いつものペースにされてしまいます。逆に、面倒なも
のは後回しにされかねません。

 しかし、同職の方の申請と比較すると、私の申請は相対的に早期に終わるようで
す。同職からは「金子さんの知名度効果ですよ」といわれていますが、そうではな
く、審査で登記官が引っ掛かりそうな部分につき、先例のコピー等をつけて申請し
ますし、登記事項は、こことここですよと鉛筆で知らせるなど、サービス精神旺盛
な申請を心がけているからと信じています。

 その先例の添付や私のメモ連絡等で、「この代理人は十分に、この案件を研究し、
分かっているな」と安心してくれ、審査が円滑に進むのだと思っています。

 われわれは十分に調べて登記申請に臨みますし、意味の不明な点があれば顧客に
質問することもできます。ところが、法務局は、いきなり書面を出されて申請され
るわけで、ゼロから審査しなければなりません。議事録等に意味不明な部分があっ
ても、見知らぬ申請人や代理人に容易に質問できる立場にありません。そこに、こ
こは、こういう意味ですよ、ここはお迷いでしょうが、こういう先例がありますよ
と資料がついていれば、法務局の審査が円滑に進むのは当然のことです。

 登記を早く終わらせたいなら、自分が調査官になったつもりで、どこが分かりに
くいか、引っ掛かりやすいかを吟味して提出すると、いつもよりは1日くらい早く
終わるかもしれません。


2011.09.20(火)【敬老の日】(金子登志雄)

 連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。

 私は、脇目も振らず、頼まれ仕事の次の著作(会社の計算の本)のことをやって
いました。出版するのはよいが、1冊の本になるだけの分量を書けるか不安だった
ため、ここ1ヵ月ほど、ずっと試し書きを続けていたのです。

 新聞もテレビもメールもほとんどもみずに、ただひたすら書いていたため、やっ
と明るい兆しが見えてきました。200頁超えの目処がついてきました。

 ところで、昨日は敬老の日だったのですね。しかし、昔と違って、今は老人も若
い、若い。加藤茶さんなど68歳で再婚です。実にうらやましい。

 何かのテレビでみましたが、京塚昌子さんが「肝っ玉かあさん」で母親役をやっ
たのは40代初期だそうです。当時(1970年代)は、40代でおばさん扱いだ
ったのです。

    http://www.youtube.com/watch?v=LrjkBBtoIao

 ところが、黒木瞳さんの登場で、40代は、魅力ある世代に変わり、おばさんで
はなくなりました。

    http://www.youtube.com/watch?v=gKTc11doIyY

 いまや、アラフォーなどといって、人も羨む世代になりました。

 私の世代は、アラカンというのだそうですが(アラウンド還暦世代ということで
しょうか)、アラカンといわれ、鞍馬天狗のアラカン(嵐寛寿郎)しかでてこない
私は、精神的には敬老世代なのでしょうか。


2011.09.16(金)【支店廃止と登記所統廃合】(金子登志雄)

 先般、本支店一括申請で支店廃止の登記をしたことを書きましたが、でき上がり
の支店廃止登記の謄本をみて、びっくりしてしまいました。

 東京を本社とするA社には、北海道に札幌支店と室蘭支店がありました(本欄用
に場所を変えています)。札幌法務局に札幌支店の登記記録があり、室蘭の法務局
には室蘭支店の登記記録があるはずです。

 東京法務局に申請した支店所在地での登記内容につき、

 「登記記録に関する事項」
  平成23年9月1日札幌市・・・号の支店廃止

としました。

 この「登記記録に関する事項」に記載するということは、登記記録を閉鎖すると
いう意味になります。

 したがって、私の想定は札幌法務局の登記記録は閉鎖されるというものでしたが、
でき上がりの謄本は閉鎖されておらず、札幌支店に抹消線が引かれ、ないはずの室
蘭支店が記載されているではないですか。

 そうです、室蘭の登記所の商業登記部門が札幌法務局に統合され、札幌法務局の
登記記録に2つの支店が記録されていたのです。これでは、登記記録を廃止しては
いけません。

 札幌法務局の方が気を利かせて、私の申請内容を登記記録中の一部分の抹消と判
断してくれたものですが、登記所の統廃合は登記申請においても要注意ですね。神
奈川県ですら、商業登記庁は、いまや2つしかありません。


2011.09.15(木)【新株予約権の帳簿価額】(金子登志雄)

 新株予約権を行使し株式を手にしたときの株式の払込金額は、会社計算規則17
条により「新株予約権の帳簿価額+行使価額」です。

 問題は、この「新株予約権の帳簿価額」というものが、われわれには理解できな
いことです。

 当初から新株予約権自体が有償で発行されたのなら、例えば、1個100円とし
て発行されたのなら、100個発行した場合に1万円だと分かりますが、ストック
オプション目的で無償で発行されたときも、帳簿価額が生じるのです。

 例えば、「割当日から2年経過後から行使できる」という内容の場合には、これ
を「2年間真面目に働いたら、この権利をあげるよ」というインセンティブ報酬と
みて、その報酬を計算し2年間で按分し、当期分として決算期に1万円なりと計上
したものがこの帳簿価額です。

 比喩で言えば、給料のほかに2年分の報酬として100円分の新株予約権を支払
ったが、会社から100円が出たわけではないので、決算期ごとに当期に対応する
分をあたかも株式払込金の一部前受け分として純資産の部に計上しておくというこ
とでしょうか。

 このインセンティブ報酬の計算が高等数学のようで、司法書士には手に負えない
のです。専門の公認会計士さんに聞いても、○×■△………と答えるだけで、ご本
人もよく分かっていないようです(だから、聞くのは失礼になります)。

 ということで、ある方がおっしゃったように、新株予約権は誰にも分からないブ
ラックボックスですね。


2011.09.14(水)【自己新株予約権の消却】(金子登志雄)

 昨日、ご案内のように、自己株式の消却はその他資本剰余金の減少ですが(計算
規則24条)、自己新株予約権の消却や消滅は、どうなると思いますか。

 たとえば、自社発行の新株予約権(帳簿価額100円)を120円で購入すると、
純資産の部の控除項目として、△120と計上されます(新株予約権と相殺しない
計上方法の場合)。これを消却したときに、120円はどうなるかという問題です。

 会社計算規則には、自己新株予約権をゼロにせよといったようなことしか書いて
ありません。新株予約権は株主資本に属さないので、その他資本剰余金の減少とい
うこともあり得ません。

 会社法立案担当者だった中央経済社刊・郡谷氏の『会社法の計算詳解』(第2版)
247頁によると、

   新株予約権     100 / 自己新株予約権 120
   自己新株予約権消滅損 20 /

とありますから、損益計算書上の損益になります。

 しかし、こんなことを本に書いても、司法書士読者は「登記に関係ないですね」
という反応でしょう。私も、読者目線でない本は書きたくありません。司法書士読
者が喜ぶ「会社の計算」の原稿、今日も、ネタ探しに苦労中です。
 

2011.09.13(火)【自己株式の消却差益?】(金子登志雄)

 どこの誰だか知らない方に、「自己株式を消却したとき、簿価で消却するのか、
消却時点の時価で消却するのか。後者の場合に、差益が生じたら、その他資本剰余
金に計上することでよいのか。分かるなら早急に返事をくれ」というメールをいた
だきました。

 「この無礼者め!」と返事しようと思いましたが、実は、うつらうつら状態の夢
の中の出来事でした。

 頼まれている「会社の計算」の原稿のことをずっと考えているため、半夢の中に
も「会社の計算」が登場してしまいます(皆さん、原稿を書くということはこうい
う状態なんです。一時も頭から離れません)。

 真面目な質問だとしたら、ちょっと面白い問題ですね。

 この質問が愚かだなと思うのは、簿価100の自己株式を時価120で消却した
ら、その他資本剰余金は100を超えて120も減少するのです。差損が生じると
いうべきなのに、質問者は、自己株式の処分と混乱して、差益と思いこんでいるよ
うです。

 うん、時価が80のとき消却したら、20の差益が生じるじゃないかという質問
でしょうか(実際に書き始めると、こういう問題に気づいてきます。書くことで、
さまざまな発見ができ、実に勉強になります)。

 しかし、もともと100で取得したときに、資本の払戻し扱いされ、倉庫に置か
れている状態の株式ですから、消却に差損益の問題が馴染むのでしょうか。

 質問の答えですが、条文がありまして、会社計算規則24条3項に「株式会社が
自己株式の消却をする場合には、自己株式の消却後のその他資本剰余金の額は、当
該自己株式の消却の直前の当該額から当該消却する自己株式の帳簿価額を減じて得
た額とする」と規定されています。簿価基準であって、時価基準ではありません。


2011.09.12(月)【吸収合併の性格】(金子登志雄)

 吸収合併の性格については、平成9年の合併法制の改正までは、甲法人と乙法人
が合体して1つになるものだという「人格合一説」が通説でした。この極端な説に
よると、甲の資本金と乙の資本金も統合・合算するのであり、合併後の資本金を合
算額より少なくするには、同時に資本減少の手続をしなければならない、合併公告
も「合併並びに資本減少公告」とするのだと解かれていました。この極端な説を商
事法務という雑誌に発表したのが法務省のお役人だったために、残念ながら、登記
実務もこれに従っていました。

 その9年改正で、合併会社の資本金は、合併で受け入れた純資産額の範囲内で自
由に決めてよい(額面株式を発行しなければ増加資本金0円でもよい)とされ、吸
収合併とは、現実の事業を包括的に承継するものであって、資本金など計算上の数
値を承継するものではないという現物出資説が勝利を治めました。現物出資説だっ
た私も、やっと日蔭から日のあたる場所に出てこられました。翌年から、講演その
他で「正しい合併」について普及活動に従事したことはいうまでもありません。

 この人格合一説は、形のない「法人組織の統合」に着眼し、「甲と乙が法人統合
するから乙が解散する」と考えるのに対し、現物出資説は、現実に存在する「事業」
の取得に着眼して、「乙が解散して裸になった現実の事業が甲に吸収される」と考
えるものですが、吸収合併では定款も会社形態も承継されないことは明らかですか
ら、後者が正しいというべきでしょう。

 以上は、いずれも合併対価が株式に限られていた時代の話ですが、合併対価が柔
軟化された会社法の下では、合併対価は金銭でもよいわけですから、合併存続会社
甲の立場からは「事業の取得」、合併消滅会社乙の立場からは「事業の譲渡」とい
う現物出資の思考が基本であることはいうまでもありません。

 ちなみに、会社計算規則12条に「会社は、吸収分割、株式交換、新設分割、株
式移転又は【事業の譲渡の対価として株式又は持分を取得】する場合において」と
あります。事業譲渡(昔の営業譲渡)で株式を取得することなどあり得るのかと思
いませんか。この株式が取得会社の発行する株式の場合は、まさに事業の現物「出
資」のケースです(合併が加わっていないのは、会社が消滅するためです)。


2011.09.09(金)【本支店同時一括申請】(金子登志雄)

 今日は、司法書士以外の方には、たいくつな話です。
 
 さて、商号を変更したら、本店だけでなく全支店の所在地〈以下、全て管轄登記
所が相違するという前提です)でも登記が必要です。

   本店………………商号変更登記
   ABC支店………商号変更登記

 一部の支店を廃止したら、本店だけでなく該当する支店所在地でも登記が必要で
す。
   本店………………A支店廃止登記
   A支店……………A支店廃止登記(登記記録を閉鎖)


 これらを電子申請で登記申請する際には、「本支店同時一括申請」(本店経由で
支店での登記も一括して申請できる新しい仕組み)でできることは、商業登記専門
司法書士なら、みな知っている事実です。

 では、商号と目的を変更した場合には、本店の登記内容を商号及び目的の変更に
しますが、全支店の登記内容は商号変更のみにし、一括申請が可能でしょうか。支
店では目的の登記が必要ないため、本店と支店で登記内容がぴったり重ならないが、
一括申請に支障がないかという疑問です。

   本店………………商号変更、目的変更登記
   ABC支店………商号変更登記

 A支店の廃止(商業変更より先の日に廃止)とD支店の設置が加わった場合は、
どうでしょうか。

   本店………………商号変更、目的変更、A支店廃止、D支店設置登記
   A支店……………A支店廃止登記
   BC支店…………商号変更登記
   D支店……………D支店設置登記

 登記所に電話確認しましたら、OKだそうです。本店での登記と、個々の支店で
の登記事項に一部の重なりがあればよいのでしょう。

 若干の不安はありましたが、申請しましたら、翌日、登記所から電話がありまし
た。「あれ、OKと言ったじゃないか」と身構えて電話に出ましたら、「申請人の
社長の住所が違っているが、住所を移転したのか」という問い合わせに過ぎません
でした。「12号」を「20号」と誤記していたようです。


2011.09.08(木)【イメージチェンジ】(金子登志雄)

 野田新内閣の支持率が平均すると6割を超えているようですね。野田さんは不人
気の菅内閣の財務相でしたから、その責任の一旦もあるはずですが、それらを一切
忘れ、急に支持の方向に舵を切るわが国民のオメデタイ思考経路は、いったいどう
なっているのでしょうか。

 支持するにしろ、不支持にするにせよ、まだ野田内閣は何もしていません。支持
率調査をするマスコミもマスコミですが、支持するかどうかの材料があまりに不足
しています。

 支持率アップの原因は、何といってもイメージチェンジに成功したことでしょう。
徹底して党内最大勢力の小沢・鳩山グループを敵視し党内対立を煽った菅・仙谷路
線を捨て(表面上?)、挙党体制を築き、党内融和路線を敷いたことが好感をもっ
て迎えられたようです。

 口だけ達者で格好よい「金魚」路線よりも、泥臭い「どじょう」路線を表明した
のも庶民には好感されたようです。

 要するに、野田さんは不人気の菅さんの反対の行動をほんのちょっと採用しただ
けですから、これで支持率大幅アップでは、国民も舐められてしまうことでしょう。
逆にいえば、日本人の国民性を読んだ野田さんはお見事でした。

 私は支持に関しては保留中です。党内融和路線には一安心しましたが、そのうち
鎧の下に隠していた増税路線を打ち出すのではないかと危惧しています。不況の時
に増税では景気が悪化するばかりです。先般の煙草値上げでも、税収が20%も落
ちたとか。予想どおりです。
 
 また、何も知らない素人ばかりを大臣にした点に強い疑問を持っています。どう
せ素人を大臣にするなら、私を厚生労働大臣にしてほしかったですね。就任早々、
煙草の大幅値下げをぶち上げて、愛煙家のオジサン・お姉さん達の支持率をもっと
アップしてあげられたのに………。


2011.09.07(水)【二十歳の遺言】(岡山:山本直樹)

 以前、NHKで「青年の主張」という番組がありました(正式には下記サイト参
照ください)。二十歳の青年にテーマに沿った主張をしてもらうものでした。

http://ja.wikipedia.org/wiki/NHK%E9%9D%92%E6%98%A5%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8

 先日、二十歳の青年に「主張」ではなく「遺言」を書いてもらいました。

 青年は、事業承継の関係から祖父から「父が経営する会社の株式」の贈与を受け
ることになりました。当初は、祖父に青年に対して株式を相続させる旨の(青年は
祖父と養子縁組済)公正証書遺言を作成してもらう予定でしたが、株価の問題(贈
与税の問題)もクリアーできそうなので、生前に贈与を受けることになりました。

 私は「株式の譲渡」に関する書類を作成しながら、何か足りないなぁ、何かもれ
てるなぁという違和感を抱えていたのですが、遺言作成用に提出していただいた戸
籍を見てその正体がわかりました。

 青年のご両親は、離婚をしていました。株を譲りうけた青年(現在未婚)が死亡
した場合、相続権は実親及び養親にあります。しかし離婚をした実親間では事実上、
遺産分割の協議が難しいと思われます。

 通常、二十歳は遺言を書く(考える)年齢ではないのですが(注:民法961条
により15歳になれば遺言能力は認められています)。しかし、会社の株式という
重要な財産を譲り受けるためには、会社にとって必要なリスク管理をしなければな
りません。青年には、相続の手続の話をして、納得して遺言を書いてもらいました。
もちろん結婚して子供ができたら、遺言を作成し直す約束をして………。


2011.09.06(火)【原本還付】(金子登志雄)

 登記申請の添付書面(合併契約書や議事録、就任承諾書など)は、原本そのもの
を提出することになっていますが、原本の謄抄本(写し、コピー)に「原本(の内
容)に相違ない。申請代理人/司法書士〇〇〇〇・印」とし、原本とともに提出す
れば、原本を返してもらえます。これを原本還付といいます。

 商業登記に関して言えば、東京法務局や横浜法務局では、申請窓口で原本との照
合をしてくれ、即座に原本を返してくれますが、多くの法務局では、登記が完了す
るまで預ける慣習になっているようです。

 これにつき、20年近く前のことでしたが、東京地方裁判所で、ある非訟事件の
書類の届出を代行したとき(使者、一種の配達人役です)、裁判所書記官らしき方
から、「写しの提出で結構だから、原本は持ち帰っていいですよ」といわれました。

 私が、「すいません、私、弁護士ではないので代理権がありませんから、原本証
明できないのです」と応じたところ、「あなたねぇ、この書類とこの書類が同じ内
容であるという事実の証明に資格も何も関係ないでしょ(馬鹿なことをいうな)」
といわれてしまいました。

 ちょうど、書類の写しだけでなく、三文判も持っていたので、即座に「原本に相
違ない。金子登志雄・印」として原本を持ち帰ったことはいうまでもありません。

 この記憶がありますから、たかが事実証明のことに窓口還付を認めず、原本と写
しとの照合を登記の調査官の担当にするのは大げさすぎると私は思っています。
 
 窓口還付が認められないと、申請と原本の取得のために、2度も法務局を訪問し
なければなりません。司法書士の1時間当たりの単価は、うん万円ですから、実に
もったいない話です。全国の法務局で窓口還付がなされるよう、頑張りましょう。


2011.09.05(月)【熊本講演】(金子登志雄)

 金・土と熊本に行ってまいりました。熊本県司法書士会での会社法の講義のため
です(松本会長、今井研修部長はじめ、皆様、たいいへんお世話になりました)。

 台風のため、飛行機が欠航しないかという強い不安がありましたが、ラッキーな
ことに台風の間隙を突くことができ、羽田も熊本も曇り状態で助かりました。

 講義テーマは「計算の基礎と会社分割」という人気のないものでしたから、出席
者が少ないかもしれないと予想していましたが、例年になく良い出席率だったとの
ことで、私もほっとしました。

 参加者の皆さん、
 @株主資本、株主資本等変動計算書、株主資本等変動額の意味については、もう
  大丈夫でしょうか。
 A分配可能額、欠損の額、損失の区別は、いかがですか。
 B損失の処理も任意積立金の取崩しも剰余金の処分ということは大丈夫ですか。
 (以上、本欄を閲覧の方はいかがですか)。

 ABは今後の課題としても、@の「株主資本」は会社の計算を理解する上で、最
重要のキーワードですから、これだけは、今回で、ぜひマスターしてください。

 過去、九州は何度か訪問していますが、熊本ははじめてでした(これで全県を訪
問したことになります)。道路が広く、路面電車も走っており、開放感のある実に
良い町でした。市内には、加藤清正の熊本城、細川藩の水前寺成趣(じょうじゅ)
園もありますし、熊本県庁の敷地はまるで緑の公園でした。100メートル競走の
練習ができるほどの贅沢さでした。

 緑の多い町は落ち着きますね。都心にも皇居や日比谷公園があるので、救いにな
っています。


2011.09.02(金)【株主資本等の定義】(金子登志雄)
 
 会社計算規則2条3項30号では、株主資本等の定義として「株式会社及び持分
会社の資本金、資本剰余金及び利益剰余金をいう」とあります。

 株主資本には自己株式を含むはずなのに、なぜ、自己株式を加えていないのでし
ょうか。

 この理由につき、閃きました。やっと分かったような気がしました。

 8月25日の本欄で、要旨、次のような趣旨を書きました。
--------------------------------------------------------------------------
 会社法施行規則の定義規定に、計算書類等とは、「各事業年度に係る計算書類及
び事業報告(監査報告又は会計監査報告を含む。)」とありましたので(2条3項
12号)、私は、附属明細書は含まないものと思いこんでいました。

 会社法442条(計算書類等の備置き及び閲覧等)では、附属明細書を含みます
が、条文に「この条において「計算書類等」という」とありますので、「この条」
だけの例外かと思っていました。

 ところが、これは会社法施行規則内でのみ通じる定義であって一般化はできない
ようです。
--------------------------------------------------------------------------

 株主資本等も同様であり、会社計算規則の条文に出てくる「株主資本等」の定義
に過ぎず、そこでは自己株式を加える必要がありませんでした。

 株主資本等とは、「株主資本+等」であり、「株主資本と社員資本のこと」と思
い込んでいた私の誤りのようです。

 会社計算規則2条3項に、「【この省令において】、次の各号に掲げる用語の意
義は、当該各号に定めるところによる」とありますから、会社計算規則に文句をつ
けても仕方ありませんが、計算書類等と同様に誤解を誘導する定義ですね。きっと、
会社法立案者と法務省令の立案者が別人なのでしょう。


2011.09.01(木)【模擬体験をしよう】(金子登志雄)

 27日(土)は、商業登記倶楽部の夏季セミナーで「会社の計算」について講師
を務めてまいりました。

(商業登記倶楽部)
    http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/Introduce.htm

 北海道や沖縄からも飛行機で参加する方、参加者の中には80歳を超える方も数
人おられ、その熱心さに、いつも驚嘆してしまいます。

 私の講義内容は、毎度お馴染みの内容で、参加者の方から、もう聞きあきたとい
う非難があるかと恐れていましたが、全く逆で「金子先生の講義は、実に分かりや
すく、その日には『分かった』と満足するのですが、そのままにして何日かすると
忘れてしまいます」という声をよく聞きました。

 ありがたいことです。こういう方ばかりだと、来年も再来年も同じ講義内容にで
きます………というのは冗談ですが、上記の心境はよく分かります。ちょうど、パ
ソコンの操作の講義を受けて、「何だ、簡単じゃないか」と分かっても、自分で実
際にパソコンを何度か操作してみないと、知識が身に付かないのと同じだからです。

 そこで、ぜひお勧めしたいのは、お時間のあるときに、官報の資本金の額の減少
公告や合併公告で同時公告(横に貸借対照表が掲載されている公告)を眺めながら、
いろいろ推理して遊んでみてください。

(資本金の額の減少公告)
http://kanpou.npb.go.jp/20110826/20110826g00187/20110826g001870053f.html

 例えば、上記3段目の欠損てん補目的らしい資本金の額の減少公告は、資本金が
1000万円なのに資本金の額の減少額は2000万円です。きっと4000万円
の増資をし(2000万円の増資と思った方は推理力が足りません。登録免許税が
無駄です)、資本準備金への計上額2000万円は、次の定時株主総会で欠損添付
するのだろうかと推理してください。

(合併公告)
http://kanpou.npb.go.jp/20110826/20110826g00187/20110826g001870059f.html

 上記の合併公告でも、存続会社と消滅会社の住所が同じ、あるいは社長が同一人
物である点から、これは共通支配下関係の簿価合併だな、兄弟会社だとしたら、親
子会社だろうかなどと考えて、その手続を予想し、模擬体験していると、自然に知
識が身に付いてくるものです。へたな教科書を繰り返し読むよりも、ずっと実戦的
知識として身に付きますよ。


2011.08.31(水)【演説と文章のスタイル】(金子登志雄)

 29日のお昼にパソコンのスイッチを入れたら、ちょうど動画のユーストリーム
とやらで民主党代表選の中継をしていたので、みてみました。海江田さんの演説が
終わって、野田さんの演説でした。

 両親の生い立ちやら、貧乏だったやらの苦労話で、聴衆を飽きさせない話術はさ
すがだなと思いましたが、政策の話題が全く出ませんでした。大震災も消費税も演
説に登場せず、「これじゃ、プロの評価は厳しいだろう」と想像していましたら、
あにはからんや、第1回目の投票で前原さんより多い102票を獲得とは………。

 もし、これが論文(文章)だったら、どうでしょうか。著者が「私は、どこどこ
で生まれ、両親はこういう人で、子供の頃はこんな貧乏生活だった………」と延々
と書かれると、読者は「お前個人のことはどうでもいいから、早く本題に入れ」と、
いらいらしてしまうものです。

 こういう文章、多いですよね。まえがきが長く、いかにも、原稿を依頼されたこ
とが名誉でうれしくて仕方ないという雰囲気を醸(かも)し出している全く読み手
を意識していない独りよがりの文章です。

 少なくとも文章では、即本題に入るべきですが、演説の場合は、本題に関係なく、
体験を語る部分も、聴衆が頭を使わずに聞ける内容として、広く受け入れられてい
る現状があります。

 今週も私は某県で会社法の講義をしますが、試しに時間の8割を私の生い立ちや
苦労話にしてみようかな。少なくとも「難しくて分からなかった」という反応はな
いことでしょう。その代わり、袋叩きに合って、無事に帰れなくなる危険はありま
すね。

(ご参考)
 野田首相の評価は今のところ財務省(勝栄二郎事務次官)のカイライ内閣といわ
れてしまっているようですが、この勝次官こと、あの勝海舟のひ孫さんです。いつ
の日か、財務省を無血開城してくれることを期待しましょう。
    http://d.hatena.ne.jp/reds-suppo/20100731/1280550098


2011.08.30(火)【品性と知性と感性が同時に低レベルにある人?】(富田太郎)

 皆様、お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか?
私は、1日だけ休み、読書三昧の日?を送らせていただきました。

 面白かった本は『プロレス少女伝説 文春文庫(故)井田真木子』でした。
いろんなプロレスラーの生き様にスポットを当てたスポーツノンフィクションなの
ですが、その中で印象に残った言葉の使い方がありました。

 あるレスラーが、私的にも確執のある対戦相手に対して、
『試合中、(対戦相手のレスラーの)心を折ろうと思った。』
というフレーズでした。

 『心を折る』………もちろん、国語辞典にはでてこない新語で、もともとは『妥
協する。方向へ曲げる。気弱になる』(注)という意味で使っていた時代もあった
ようですが、ここでは『相手から気力を徹底的に奪い、立ち直ることの難しい心の
状態にする』という意味で使っているようです。 

 本来の使い方とは違うのでしょうが、うまい表現ではないでしょうか!
やはり、レスラーのような感性で生きている人間は、『生きた言葉を使う』と感心
した次第です。

(注)昭和初期の川端康成の小説『抒情歌』には『父は母の死に心折れて、私達の
  結婚をゆるしてくれましたの』とあり、『気弱になり妥協する』という意味で
  使っています。

 なお、前記『プロレス少女伝説』は、大宅壮一賞を受賞したそうですが、調べて
みると、選考委員の一人である『立花 隆』氏のみ、猛反対したそうです。

 立花 隆氏 曰く
『プロレスというのは、品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが、熱中
できる低劣なゲーム。そんな題材を扱った本作品は受賞にふさわしくない』

・・・・・・・・・・・・・・・

 プロレスファンである私は、知性もなく、低レベルで低劣ですか………(涙)。

 もともと、小説家を目指していた『(プロレスを理解できない)立花 隆』氏が、
ルポ・評論の道に行ったのもわかるような気もしますね(つくづく)。

 いえ、知性もなく、低レベルでもいいのですが………(涙)。


2011.08.29(月)【2011年発 米騒動???】(島根・根来川弘充)

 震災の影響で、古米の相場が高騰し、米の先物取引の相場が72年ぶりに復活し
たそうです。

 経済を勉強していたことが少しばかりあるのですが、農作物の価格というのは、
取れればとれるほど安くなるものなのですが、需要と供給の差が広がるほど、一気
に跳ね上がってしまうという性質があるそうです。

 私の実家は幸い少ないながら田んぼをもっており、米は一応はあるのですが、食
べ物は、生活に直結するだけに、今後、騒動が起きるまでの混乱が起きないことを
切に願っております。

 ところで、昨今、農業を始めたいと会社から相談を受けることがあります。もっ
とも、会社によって、効率性が上がって収益がでるから・・・というよりも、経営
を多角化して、いろいろなことを挑戦してみよう、というベンチャー的な理由であ
る方が多いです。

 皆さん周りの目では、「農業では儲からないよ」と言われているそうですが、私
は、農業に明るい希望を持っております。なぜなら、世界規模では食糧難という現
実があるからです。

 いまでこそ、他国から安い農作物が入って価格競争になると、国産は弱い面があ
りますが、他国の生活水準があがれば、すべての価格があがるのですから、相対的
な差もなくなっていきます。

 特に、振興著しい中国は、十数億という莫大な人口を抱えています。中国国民の
生活水準が上がれば、とても他国に輸出をするどころでなくなると思うのです。そ
うすれば、輸入が減るのですから、国産の価値が高まります。

 今後、農業に目に付けている会社が、順調に発展をしていくことが、健全な日本
を示す、一つのバロメーターになるのではないでしょうか。社長の方々には、是非
頑張ってほしいと、これも切に願っております。


2011.08.26(金)【はじめての合同会社設立】(金子登志雄)

 都会では合同会社のニーズが少ないのでしょうか。私も私の仲間も経験していな
い人のほうが多いようです。

 地方都市での設立で都内ではありませんでしたが、今回、はじめて経験しました。

 最大の不安は定款でした。
 株式会社ではないため、公証人の認証は不要ですが、書面で定款を作成しますと
印紙4万円が必要のため、電子定款の作成にしたのですが、このまま法務局に提出
しても、ご本人の押印がないため、法務局から有効な定款でないと判断されるので
はないかという不安でした(株式会社も同じですが、公証人がチェック済みです)。

 そのため、本人の押印がある電子定款の代理作成の委任状を設立登記申請に添付
すべきではないのかと疑問を持ちましたが、これは、登記先例で、添付しなくても
よいとされていました。これは少々びっくりでした。

 第2に、定款で、「社員1名=業務執行社員=代表社員」と定めたのですが、本
人作成の定款であれば、自身で押印しているため、「業務執行社員=代表者社員」
の就任承諾書が不要なことは分かりますが、提出されるのは代理人である私作成の
電子定款です。就任承諾書が必要ではないかと考えましたところ、仲間から、その
とおりである旨の「登記研究」(雑誌)の回答を示されました。

 続いて、出資金の払込みは、代表社員が社員である自分から出資されたという自
作自演の証明書でよいのか、株式会社のように口座振込みが必要かにつき不安があ
りましたが、これも前者でよいことが分かりました。

 法務解釈の点では、このように、次々と疑問が解消したのですが、電子定款は、
ワードをPDFにして、私が代理署名(電子署名)し、CDに保管すればよいこと
までは分かっていましたが、その保管方法が大のパソコン音痴である私には分から
ず、困ってしまいました。

 USBにPDFの文章を保管するのと同じだと想定していましたが、そうではな
いのですね。説明する能力がありませんが、IT専門会社である当社の総務部長に
保管方法を教わり、保管いたしました(これがあるから、私は会社から離れて自立
できないのです)。

 テレビ番組で、小さい子に「はじめてのお使い」をさせるものがありますが、私
の「はじめてのお使い」も、親切なおじさん達のおかげで、無事に帰宅することで
きました。

(法務省の作成例に注意)
 合名・合資会社の設立登記の作成例に「公告をする方法」が抜けていることに気
づきました。法務省に「補正」通知を出す方法を知りませんので、ここに書いてお
きます。
 http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/0101.txt
 http://www.moj.go.jp/MINJI/MINJI50/0102.txt


2011.08.25(木)【計算書類「等」とは】(金子登志雄)

 会社法で計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別
注記表の4つをいいますが、計算書類「等」の「等」とは何を指すのでしょうか。

 会社法施行規則の定義規定に、計算書類等とは、「各事業年度に係る計算書類及
び事業報告(法第436条第1項又は第2項の規定の適用がある場合にあっては、
監査報告又は会計監査報告を含む。)」とありましたので(2条3項12号)、私
は、附属明細書は含まないものと思いこんでいました。

 会社法442条(計算書類等の備置き及び閲覧等)では、附属明細書を含みます
が、条文に「この条において「計算書類等」という」とありますので、「この条」
だけの例外かと思っていました。

 ところが、最近、一般社団の法律129条に「計算書類等(各事業年度に係る計
算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第124条第1項又は第2項の規
定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)」とあるこ
とを知りました。

 会社法と違うわけがないので、改めて、計算書類「等」の意味につき、調べてみ
ましたところ、次のようなことが分かりました。
--------------------------------------------------------------------------
1.書類作成や監査対象の場面、株主や社員の閲覧書類の場面
  →→計算書類、事業報告、【附属明細書】、監査報告(会計監査報告)

2.株主や社員への提供場面(定時総会に提出)
  →→1から附属明細書を除外。

3.組織再編の事前備置書類で相手会社の計算書類等
  →→2と同じく附属明細書を除外。

4.裁判所の提供命令の対象
  →→計算書類及び附属明細のことで事業報告や監査報告は含まない。
--------------------------------------------------------------------------

 こうしてみると、会社法施行規則の定義は3の場合を意識した定義で、一般化は
できないようです(合併等では自社の場合は1で、他社の書類が3になります)。

 何のことはない、計算書類「等」とは計算書類「など」あるいは「ほか」という
ことで、場面ごとに書類の範囲が異なるようです。会社法施行規則の定義は、誤解
を誘導する定義ですね。


2011.08.24(水)【業務執行と決定と社外取締役】(金子登志雄)

 先週17日付本欄の【責任限定契約と取締役会】を読んだお客様から、業務執行
と業務執行の決定の相違につき、質問をいただきました。

 非常に難しい質問で、専門家のわれわれ自身が明確に区別しているとはいえませ
んが、会社法の規定は、次のようになっています。

 1.業務執行には、業務執行の「決定」と「実行」の2つが想定されている。
 2.非取締役会設置会社にあっては、業務執行の決定も実行も原則として取締役
  の権限とされているが、取締役が複数のときは、業務執行の決定は協議事項に
  なっている(会社法348条)。同様の配慮から、取締役会設置会社にあって
  は、業務執行の決定は取締役会で、実行は代表取締役(及び業務執行取締役)
  の役割とされている(会社法362条、363条)。

 これだけ読むと、取締役会設置会社においては、全ての決定(判断、頭脳部分)
は取締役会の権限で、代表取締役は、それを忠実に実行するロボット・手足だから、
責任限定契約も取締役会の決定で契約を締結すべきだということになりそうです。

 しかし、代表取締役はロボットでも手足でもありません。お店の売り子が、この
人に商品を売ってよいかなどの様々な決定を日常的に行っているのと同じく、代表
取締役は日々の業務執行を大量に決済しています。

 この全部を業務執行の「決定」だとして、取締役会に付議していたら業務が円滑
に進行しません。そこで、【重要な】業務執行の決定は取締役会に付議しなければ
ならないが、それ以外の日常業務の決定や非重要な決定は、代表取締役に委ねられ
ていると解釈すべきことになります。その重要かどうかの基準は、取締役会規則に
定めておくのが通常ですが、その定めを作っていない会社にあっても、暗黙の了解
事項と考えてよいでしょう。

 責任限定契約の締結権限は会社法自体が取締役会マターとしていないと説明した
のが先般の内容でしたが、現実の会社の運営では、社長(代表取締役)がOKであ
れば、その部下である専務や常務や平の業務執行取締役で構成されている取締役会
での決定は、追認という儀式に近いところがあります。

 これではいけないということで、コンプライアンス(法令遵守)の見地から、昔
は業務執行の適法性を監督する監査役の地位を強化することで対応してきたのです
が(例えば任期を3年から4年に)、現在では、それも限界に達し、社外取締役制
度が設けられ、それで対応するようになっています。いうまでもなく、社外取締役
とは、「非業務執行取締役」で「社長の支配下にいた経験のない者」です(当社で
非常勤取締役の私は後者の点で当社の社外取締役になれません)。

 責任限定契約が取締役会決議事項かどうかを判断するにおいても、社外取締役を
含めた判断に委ねるほどの重要な事項かどうかという視点でも捉えられるでしょう。


2011.08.23(火)【報酬請求と持病】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、報酬請求は、ほんとにむずかしいものです。

 とくに私の場合は、会社法務手続の経験が長いため、お客様に「そんなの簡単で
すよ」と、つい漏らしてしまうため、あとで、「あの男は簡単なことに、こんなに
請求してきた」と思われたくない気持ちが働き、高額の請求ができません。

 思い起こせば、はじめて自分で自分が役員となる会社の設立手続をした際は(昭
和58年頃で、まだ資格は持っていませんでしたが、当時から法律は詳しかったほ
うです)、日本法令のマニュアルをみながら、多くの疑問が生じ、友人の司法書士
に電話で相談しながら、数日かかって、やっと設立したものでした。

 今なら、会社の設立手続も全ての内容が決まっているという前提であれば、書類
作成だけなら1時間でできてしまいます。お客様に「何日かかるか」と聞かれれば、
午前中に公証人役場、午後に法務局で、「1日でOK」と答えてしまいます。

 もっと、もったいぶってもよいと思うのですが、報酬のことよりも職人かたぎが
前面にでてしまい、「私にお任せください」と胸を張りたくなってしまうのでしょ
うか。カネよりもプライドにこだわってしまうようです。

 前にも書いた記憶がありますが、昔、ある本で読んだことがあります。

 ある家庭で高級電気機器が動かなくなり、専門業者を呼んで直してもらったとこ
ろ、たったの5分でねじの1つが抜けていることを発見し、修理し、例えば5万円
を請求したそうです。

 依頼者は「たったの5分で5万円とはひどい」と怒ったところ、専門業者は落ち
着いて「お言葉ですが、この機器の故障箇所を5分で発見できるまでに、私は過去
これこれしかじかの勉強をし、経験を積んでまいりました。それがなければ、修理
に何日かかったか分かりません」。

 こんな余計な言い訳をするくらいなら、電気機器を預かって事務所に持ち帰り、
5分で修理し、わざと1週間後に「1週間もかかってしまいましたが、やっと直り
ました」とでもいって届ければ、お客様も「1週間で5万円、何と良心的金額」と
思ってくださるのでしょうが、そういうハッタリができていれば、当事務所も大事
務所になっていたことでしょう。会社法オタクで、先祖から受け継いだ職人かたぎ
(父方の祖父は江戸の桶屋職人)という遺伝子に組み込まれた病気のようですから、
死ぬまで直らないとあきらめています。


2011.08.22(月)【コンサルティング系事務所】(金子登志雄)

 19日の金曜日は、商業登記界の大御所である神ア満治郎先生のお誘いで、鈴木
龍介、山本浩司という、これまた業界の有名人と一緒に暑気払いでした。

 共通の話題はいつも、商業登記を通じて会社法専門家としての司法書士の地位の
向上であり、登記「作業」請負人に終わらず、会社法務コンサルタントを目指そう
ということです。

 当の私は、昭和62年に創業したM&Aコンサルタント会社時代からの延長で、
最初からコンサルティング中心であり、10年前までは珍しい司法書士の一人でし
たが、最近は、鈴木事務所や富田事務所はじめ、社外監査役に就任したり、上場会
社の法務やグループ再編の企画にまで進出している事務所も、都内では、そう珍し
い存在ではなくなりました。

 それでも、コンサルティング系「司法書士」事務所は、仕事を完成させないと報
酬にありつけないという成功報酬・請負業的要素が強く、公認会計士さんの監査業
務や弁護士さんの扱う紛争事件のように仕事の成功・不成功を問わず、働いた時間
分の報酬を請求できる委任契約的要素は少ないようです。

 成功報酬ですから成功までは必死に頑張りますが、コンサルティング系事務所だ
ったから無事に成功したのか、他の作業系司法書士でも容易に成功できたことかは
外部からは全くみえないため、「報酬額」については、十分に評価されないことも
コンサルティング系事務所の共通の悩みです。

 責任をもって安全かつ確実に仕事を終わらせたことと、たまたま無事に終わった
こととは、自ずから評価が大きく異なってよいはずですが、商業登記の司法書士報
酬はいつも数万円程度という思い込みに囚われている会社の担当者に遭遇すると、
コンサルティング系事務所の報酬は高く感じるようです。それを言われると、神聖
で真摯な努力を汚(けが)されたようで実に腹立たしい思いに駆られてしまいます。
思わず、報酬はいらないと怒鳴ったこともありました。

 逆に、弁護士さんや公認会計士さんを使い慣れている会社からは、司法書士に対
しても同じ専門職として遇してくれ、請求書を出すと、弁護士等の高額な報酬額が
頭にあるせいか、「こんなにも安くしていただき、申し訳ない」といわれることが
少なくありません。こういう会社の担当者に遭遇すると、1を依頼されても2や3
の仕事をして、その気持ちにお応えしたいと張り切ってしまいます。

 いずれにしろ、「貴事務所に頼んで、ほんとによかった」といわれることが私ど
もの次の「やる気」につながりますので、プライドの高いコンサルティング系事務
所は上手におだてて使うに限ります。


2011.08.19(金)【成仏できない事業年度】(金子登志雄)

 3月決算のA社の定時総会が6月29日に終わり、7月31日に解散しました。

   3月末                          7月末
――――|――――――――――――――――――――――――――――|―――
                      ↑定時総会

 さて、A社の最終事業年度は「平成22年4月1日から平成23年3月31日」
と、「平成23年4月1日から平成23年7月31日」のいずれでしょうか。

 8月1日からは「清算事務年度」というので、つい、後者が最終事業年度と思っ
てしまいますが、会社法によると、前者です。

 会社法2条24号によると、最終事業年度とは、「各事業年度に係る第435条
第2項に規定する計算書類につき第438条第2項の承認(…中略…)を受けた場
合における当該各事業年度のうち最も遅いものをいう」とあります。

 すなわち、最終事業年度といえるためには、その事業年度の計算書類(貸借対照
表や損益計算書等)が定時株主総会で承認を得ていなければなりませんが、「平成
23年4月1日から平成23年7月31日」については定時株主総会が必要とされ
ていません。解散時点の貸借対照表の作成は必要で、かつ、株主総会の承認も必要
ですが(会社法492条)、これは定時株主総会ではありません。

 最終事業年度の「最終」には計算書類の「確定」という意味が含まれているわけ
です。

 このA社が8月に合併契約を締結したとすると(解散会社でも合併消滅会社にな
れます)、事前開示書面たる計算書類も、最終事業年度のものではなく、492条
のものになります。合併公告に掲載する「計算書類に関する事項」も、「清算株式
会社です」と記載すればよく、貸借対照表の要旨を掲載する必要がありません。

 こうしてみると、「平成23年4月1日から平成23年7月31日」は、事業年
度を全うできず、「第何期」ともいえない挫折した中途半端な事業年度ということ
になりますね。成仏できるのでしょうか。


2011.08.18(木)【無対価株式交換と債権者保護】(金子登志雄)

 会社法799条1項3号によると、「株式交換完全子会社の株主に対して交付す
る金銭等(注:対価のこと)が株式交換完全親株式会社の株式………のみである場
合以外の場合」には、株式交換であっても親会社になる側で債権者保護手続が必要
だとされています。

 例えば、A社がB社を株式交換で完全子会社化する場合に、B社の株主にA社が
現金を交付する場合です。現金1000万円がA社から出ても、その代わりにB社
株式が1000万円分入ってくるのですから、A社の純資産額に変更がなく、債権
者を害することはないじゃないかとも思いますが、会社法は、B社株式を過大評価
することもあり得るとして、債権者保護手続を必要としたものです。

 対価の全部がA社株式であれば、A社の既存財産は減少しませんので、債権者保
護手続は不要です。

 さて、条文には、債権者保護手続が必要な場合を「対価が株式のみである場合以
外の場合」としましたので、無対価も含むでしょうか。

 含むという考え方は、次の発想です。

 株式対価
 非株式対価………無対価を含む。

 しかし、私は次のように考え、含まないという説です。
   
 対価あり
   株式(自己株式を含む)対価
   非株式対価
 無対価

 条文も「株式対価以外の全部」という意味ではなく「交付する対価が株式以外
の場合」と読むのであり、何らかを交付した場合と読めます。立法趣旨も、株式
以外の対価の場合は、過大評価をしてしまう場合があるからというもので、無対
価を前提としていません。

 なお、無対価の会計処理の原則は非株式対価扱いです。ややこしいですね。


2011.08.17(水)【責任限定契約と取締役会】(金子登志雄)

 取締役会が置かれた会社の「重要な業務執行」は取締役会の決議で決定し、代表
取締役の一存で決めてはいけないことになっていますが(会社法362条4項)、
何が重要な業務執行かについてははっきりしません。

 あるML(メーリングリスト)で、社外取締役等との責任限定契約の締結には、
取締役会の決議が必要かという議論になりました。

 真面目な方は、「契約=大事なもの」と発想するのか、あるいは責任を限定する
ことは会社に不利益になることだと発想するのか、取締役会決議必要説でした。

 しかし、会社法の条文をみますと、426条は「定款での定め+取締役会決議」
ですが、427条は「定款での定め+責任限定契約の締結」であり、取締役1人の
会社でも可能だとされています。

 また、「重要な業務執行」を例示している362条4項の7号には426条が記
載されていますが、427条は記載されていません。

 したがって、私は不要説でしたが、何か強力な支援材料がないかと探しましたら、
ありました。会社法立案者の葉玉匡美氏のブログ(会社法であそぼ)に、次のよう
にありました。
--------------------------------------------------------------------------
Q21
 会社法第427条第1項の責任限定契約を締結できる旨の定款変更を行った後に
責任限定契約を締結する場合に、責任限定契約の締結について取締役会決議が必要
でしょうか? 会社法第362条第4項の「その他の重要な業務執行」に当たるの
でしょうか?
 投稿 ロニー | 2008年8月 5日 (火) 09時36分
A21
 私は、当たらないと思います。
--------------------------------------------------------------------------


2011.08.16(火)【仕事はカレーライスのごとく】(金子登志雄)

 今日まで、お盆休みの方も多いことでしょうが、残念ながら、私ども司法書士は、
法務局が休みでない限り、ゆっくり休むこともできません。当グループのお仲間も、
みな事務所に出ていたようです。

 とはいいながら、私は昨日は事務所に出ていません。携帯電話と携帯PCで仕事
をすることが多く、私のいるところが事務所ですから、約束した来客や重要な郵便
物でもない限りは、事務所に行く必要もないからです(会社法務専門事務所だから
出来ることですね)。そのため、土曜日から昨日までは、生まれ育った上州(群馬
県)の田舎で、たいくつな時間を過ごしていました。

 数年前であれば、田舎であろうと、改正商法や会社法の著作を嬉々として睡眠時
間を減らしてまでやっているところですが、もう、ほぼ書き尽くしてしまいました。
「趣味=仕事」の私は、休みのほうがたいくつで疲れます。

 37歳の時でした。銀行時代の先輩に誘われて、一緒に投資顧問業を始めたので
すが、この仕事、人手が要りません。出勤しても私のすることがなく、居心地の悪
いことといったらありませんでした。それ以来というわけではありませんが、振り
返ってみると、「忙しい、忙しい」と不平たらたらの時間が誰かさんのように頭髪
で悩むヒマもなく、一番充実して幸せな時間だったように思います。

 今は、どんなに忙しくとも、嫌な上司もいない個人事業ですから、不平は全くな
く、健康と明日の仕事があるかどうかだけが心配の種ですから、もっともっと忙し
くなりたい心境です。

 T先生からは「金子先生は仕事が特別に早いから、いつもヒマだと感じているだ
けですよ。普通の司法書士が数日かかる仕事を1日で完成してしまうのだから」と
よくいわれますが、当然です。仕事を好きになれば、貴方も1日で片付けられます。
大多数の日本人(又は子供)のように、大好きなカレーライスであれば、2皿3皿
でも、簡単に食えてしまうのと同じことです。T先生がウーロンハイなら1日何杯
でも飲めるのと同じです。


2011.08.15(月)【8.15に思う】(金子登志雄)

 66回目の終戦記念日ですね。新しい日本が始まった年でもあります。あの敗戦
から日本は驚異的な復興を果たしました。

 日本人の底力だけが理由ではありません。東西冷戦時代にあって、米国が日本を
反共の防波堤にしようと支援したからであり、朝鮮戦争の特需もあったから、目覚
ましい復興を果たせたわけです。私の高校時代は、ベトナム戦争でした。ベトナム
が共産主義に落ちると、インドシナ半島全部が共産主義になるというドミノ理論が
猛威を振るっていました。

 しかし、東西冷戦が終わると、経済戦争の時代となり、日本は米国の強力な敵と
なってしまいました。いわゆる貿易摩擦問題です。日本はずるい国だといわれ、日
本の終身雇用制などの日本的美徳まで悪とされ、結局は経済の弱った米国に奉仕す
る役割を求められました。

 日本自身も米国の傘の下にいることの居心地のよさに安住し、常にお兄さんの後
に着いて行く自主性のない国になってしまいました。戦後政治も一貫して、米国に
守ってもらい、経済の成長を国是としてきました。カネは出すが命は出さないのが
日本の方針になってしまいました。

 通常であれば、日本も自前の防衛力を持って普通の国になれと米国が求めてきて
もよさそうなものですが、日本の平和憲法は米国にも都合がよく、何かあれば、ほ
ら中国や北朝鮮が日本を攻めてくるぞと脅かし、米軍基地の存在感を宣伝し、居座
ることができるのです。

 時代の趨勢をみて、日本の自立を進めようとした最初の偉大な首相が田中角栄氏
でしたが、米国の頭越しに中国と国交回復したりしたため、「ジャップめ!」と、
米国に嫌われ、世界中のどこの国も問題にされなかったロッキード事件で、潰され
てしまいました。その先兵が似非クリーン主義のマスコミであったのは現在と同様
です。

 その後をみても米国一辺倒の中曽根政権、小泉政権は長期政権を維持できました
が、普天間問題等で自立を目指した鳩山政権は袋叩きにあい、あっさりと潰されて
しまいました。それをみて長期政権を目論んだ管さんが自立派の小鳩勢力を排除し
TPPを言い出したのも、米国やマスコミを味方にしたかったからにすぎません。
 
 今年の3月11日、日本は第2の敗戦(国難)を迎えてしまいました。しかし、
もう戦争特需などはありません。米国も欧州も自国の経済危機で頭がいっぱいであ
り、円高に苦しむ日本を支援する気も力もありません。

 3・11敗戦は、8・15と相違し、すべてを失ったわけではなく、かつ、いま
だに原発放射能汚染は現在進行形で進んでいますから、内科的惨禍であり、自覚症
状が薄く、ここからの立ち直りは、相当厳しいように感じますが、少なくとも、お
めでたいワイドショー政治(ポピュリズム)から脱却し、自分の頭で世の現実を見
極めて、パートナーの米国とも上手に交渉し(米国も一枚岩ではありません。そこ
が米国の魅力です)、日本の復興を目指したいものです。


2011.08.12(金)【定款の作成日とは】(金子登志雄)

 先月、今月と、いくつかの株式会社の設立登記に関与しました。関西、中部、東
北地方での設立もあり、現地の知り合いの司法書士の協力を得て、公証人役場で、
電子定款の認証をいたしました。
 
 その際の電子定款の認証のとき、われわれは定款の最後を次のように締めます。

--------------------------------------------------------------------------
 以上、〇〇株式会社の設立のため、発起人の定款作成代理人である司法書士金子
登志雄は、電磁的記録である本定款を作成し、電子署名する。
 【平成23年8月1日】
     発起人 東京都・・・・ 〇〇〇〇
     上記発起人の定款作成代理人
          東京都千代田区神田小川町三丁目26番地
                   司法書士 金子登志雄 【電子署名】
--------------------------------------------------------------------------

 さて、この電子署名をしたのが8月12日だったとき、定款の作成日は8月1日
でよいのかが仲間内で話題になりました。署名した12日が作成日だとすると、8
月10日に出資金を口座に振り込んでしまった場合に、定款作成後の出資とならず、
登記申請に支障が生じてしまいます。

 会社法26条によれば、「発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名………
しなければならない」とされていますが、上記の問題意識を踏まえて考えた結果、
後日からみて署名がなければ有効な定款とはいえないが、作成日と署名日は当然に
異なってよいのではないかと思うようになりました。

 説明の便宜上、他の書類等を検討すると、次のとおりです。

(1)取締役会議事録
 取締役会議事録では、8月1日に取締役会で決議し、8月12日に議事録を作成
し、出席取締役全員が署名したとしても、議事録の作成日は決議日である8月1日
にします。

(2)新設分割計画
 新設分割計画や株式移転計画は、閲覧用に書面化することはあっても、内容の決
定自体を「作成」と表現しています(会社法762条ほか)。8月1日に代表取締
役が新設分割計画を決定したら、あとは取締役会や株主総会で承認するだけです。
この場合の「作成」は、計画を作ることをいい、作成日は内容の決定日です。

(3)株主総会議事録
 株主総会議事録では、8月1日に決議し、8月12日に議事録作成担当取締役が
議事録を作成した場合に、作成日を8月12日とすることが少なくありませんが、
それとは別に決議日を8月1日と明記します。

 こうしてみますと、本来の作成日は内容を発起人が決定した日であり、書面を作
成した日でも、その書面に署名した日でもなさそうです。

 考えてみれば、8月1日に登記申請し、8月12日に登記簿に記入された場合に
も、登記の日は8月1日です。

 定款の場合も、代理人が電磁的記録にしたのが8月12日というだけで、定款の
作成日は発起人が定款内容を確定させた8月1日が正しいというべきでしょう。

 別の言い方をしますと、作成には「内容の確定」と「書面化(電磁的記録化)」
と「書面への押印」の3段階があり、株主総会議事録の例でもお分かりのとおり、
後者の書面化や押印は本人でなくてもよいから、それを基準に作成日とするのは適
当ではないということです。

 したがって、上記の電子定款の文章は、株主総会議事録と同様に、「以上、〇〇
株式会社の設立のため、【発起人が8月1日に定款を作成】し、電磁的記録化の代
理人である司法書士は、本日(8月12日)、電磁的記録化したので、電子署名す
る」という意味でしょう。


2011.08.11(木)【0円出資の可否】(金子登志雄)

 ここ数日の暑さは、異常ですね。異常な汗かきであるTさんなどは、さぞ苦労し
ていることでしょう。

 私は、首筋に汗をかくタイプで、首がかゆくなり、夜中によく目を覚まします。
あせもクリームを塗って、かゆみを止め、扇風機を回して、再度、眠りにつきます
が、何とかエアコンだけは我慢しています。いつまで我慢しきれますか………。

 さて、商業登記倶楽部の実務相談室に、債権の回収が困難で価値のない金銭債権
の現物出資となる「時価0円出資」(資本金は増えないが新株は発行される)は認
められるかという質問がありました(デット・エクイティ・スワップの事例)。

 皆様はいかがお考えですか。私は無理という意見です。

 おそらく質問者は、親会社が子会社に「債務超過」事業を出資することは認めら
れているから、マイナスはよくて、ゼロはいけないというのは理解できないという
心境でしょう。

 しかし、この「親会社が子会社に債務超過事業を出資」は「簿価」であり、「事
業価値」としてはプラスを前提としていると私は考えています。

 そもそも募集株式の発行は資金調達を目的とするものであり、新株を発行し財産
を増やすためのものです。「簿価」でのマイナスやゼロは許されても(時価では財
産が増加)、「時価(又は価値)」でのマイナスやゼロを許容したら、制度趣旨に
合いません。

 もし、ほんとうに時価でも価値がないとお思いなら、ぜひ当グループに無償で譲
ってほしいものです。みんなで毎日、電話して、5%くらいは回収しようと思って
いますので………。


2011.08.10(水)【期間計算と「〜日まで」】(金子登志雄)

 セクシーにハゲた渡部さんとお会いできるのは、いつの日でしょうか。私の悩み
は髪ではなくイビキですから、私もセクシーにイビキをかくように努力しましょう。

 さて、新株予約権の行使期間が平成23年7月31日にまでになっていたが、こ
の日は日曜日であるから、民法142条に従い、満了日は翌日まで延びるのかとい
う質問がありました。第142条には「期間の末日が………休日に当たるときは、
………期間は、その翌日に満了する」とあるからです。

 皆さんはどう思われますか。

 これについては月刊「登記情報」578号(2010年1月号)に書いたことが
あり、私の意見は、「〜から1か月以内」、「〜から10日間」などという場合は
民法142条の適用があるが、「〜から平成〇年〇月〇日まで」と満了日を期日に
した場合は、民法142条の適用はないというものです。

 増資の払込期日は日曜日でもよいとされていますから、払込期間を「〜平成23
年7月31日まで」とした場合も、期間を伸長する必要はないでしょう。

 新株予約権の行使期間も十分に「期限日」を知って新株予約権者になったわけで
すから同じ解釈が可能だと思います(ただし、債権者異議申述期間の場合は、会社
が勝手に定めた期限であるため、民法142条の適用があると解されています)。

 ところで、7月31日が満了日だとすると、登記実務では「8月1日行使期間の
満了」と登記します。期間満了の効果が発生したのは、8月1日の午前0時だから
です。「満了日」と「満了の効力発生日」の違いです。

 しかし、「7月31日行使期間の満了」と登記するのが正しいのではないかと、
いまも思い続けています。8月1日以降にならなければ登記できないことは認めま
すが、平成22年の満了日は12月31日であって、平成23年1月1日と解釈す
るには違和感があるからです。


2011.08.09(火)【合格後の副作用−ハゲ−】(島根・渡部浩義)

 再び、暑くなってきました。暑いときに暑苦しさ炸裂の長篇です。

 親族の結婚式での集合写真が送られてきました。人相が悪いことは生来として、
私も御髪についてはいよいよ覚悟を決めなければならないようです。

 齢七十を超える父は白髪ながらもまだフサフサ、祖父も濃くはありませんでし
たが、ハゲではありませんでした。司法書士試験に受かるというのも、もともと
人生の予定にはありませんでしたが、自分がハゲるというのも全く人生の予定に
はありませんでした。『禿(ハゲ)』なんて他人ゴトのはずでした。

 最近、くだらない夫婦ゲンカの私の“売り言葉”に、家内が「だいたい、私は
お義父さんの頭髪を見て、『この人は絶対にハゲない』と思って結婚したのに、
わが親父ハゲ(注―家内の実父は薄い)で、わが亭主までハゲるなんて聞いてな
い!、詐欺だ!」と胸に突き刺さる“買い言葉”を文字どおり間“髪”いれずに
のたまい、『やっぱり、そんなこと思っていたんだ』と、相当に凹(へこ)みま
した。

 考えてみれば、司法書士試験に受かってから何かにつけ私の人生の方向が大き
く変わっていったというべきでしょうか。ハゲに関しては、その予兆は試験に受
かり有資格補助者として勤務していた頃に確かにありました。仕事が面白くも忙
しい、そして田舎出身の若輩者が扱うには高額で複雑、緊張する案件が続いてい
たバブル絶頂の二十数年前のあの頃・・・・。

 久しぶりの休日に床屋へ行くと、「あれー、この髪は白髪になる髪なのに、ハ
ゲの抜け方してますよ。最近何か悩み事でもあります? えらい、よーけ抜けま
すな。」と、突然そこの主人に言われました。

 『そんな馬鹿な・・・。』

 そのときは、さして気にもしなかったのですが、その後、たまに浴びる(基本
的に忙しく、あまり風呂に入らない生活をしていた。薄汚かったー。)シャワー
の折に、やけに肩や背中を髪の毛が伝い流れていくのを感じつつ、排水溝にたま
る髪の毛がさすがに無視できなくなりました。

 ある日、スーパーに買い物に行った折、薬局の前で賑やかに並んでいる育毛剤
の特売POPが目に入りました。

 『将来の守り代わりに一本試してみようか・・・。』
 ただ、二十代半ばの青年(私のことです。)にとって人目のなか育毛剤を買う
というのはかなり勇気のいる行為でした。また、ほかの薬品とは違って、育毛剤
はどれもが五千円以上とかなり高額なのです。懐具合のまだ怪しい若者(私のこ
と)にとっては、未来の髪の毛も大切ですが、明日の食費も大事なのです。

 結局、「新発売! 新成分配合でこの価格!! 育毛の科学を信じたい!!!」とい
うフレーズに誘われ、比較的手ごろ価格だった忘れもしないL社の『●●●デカ
ン』という育毛剤を買い、もやし・ネギなどとともに買い物袋に入れて、スキッ
プしながら帰路につきました。

 帰るなり、早速シャワーを浴び、いつになく念入りにシャンプーの後、買って
きたばかりの『●●●デカン』を頭皮にふりかけ、「これで将来の髪の毛も保証
されてたかな・・。」などとハミングなどして頭皮をマッサージしていると、流
れていた夕方のテレビのニュースが、「L社は薬事法に反してデータを捏造し、
『●●●デカン』を回収する・・・・云々」と、今まさにその商品の不祥事を伝
えているではないですか。

 「・・・・・・・!」 
 あまりに出来すぎではないのか。あの時、ケチらずに高い『カロヤン』にして
おけばよかった。
 「もう、育毛剤なんて買わん!」
 
 ちなみにそれから二十数年後の現在における先の夫婦ゲンカの折に家内の“買
い言葉”に対して応酬した私の再びの“売り言葉”は、「ハゲてやる。よりセク
シーにハゲてやる! ラテン系の世界では口ひげも相まって大モテだ。」と言う
のが精一杯でした。

 個人的には、結婚できたし、世継ぎも設けました。これ以上何を望むというの
でしょう。でも、この業界に生きる若い皆さんへ。どんなに忙しくても風呂には
入り、頭皮は清潔に保ちましょう。ないよりはあったほうが良いことは間違いあ
りません。たぶん。

 御髪も立派な、金子代表、T氏がうらやましい・・・・。


2011.08.08(月)【特別利害関係】(金子登志雄)

 7月22日付の本欄で、定款で定める株式譲渡の承認機関が代表取締役のとき、
代表取締役自身が譲渡する場合あるいは取得する場合は、利益相反問題は生じず、
承認不要ではないかと書きました。

 これにつき、利益相反の問題ではなく、代表取締役は、そのことに特別の利害
関係を有する者として、やはり承認できないのではないかとのご意見(異論)を
いただきました。
 このご意見には決定的な誤謬があるのですが、お気づきでしょうか。

 こういう問題は受験生のほうが強いかもしれませんが、会社法の条文をみても、
「【決議について】特別の利害関係を有する」(取締役、委員、者)とあり、特
別利害関係は会議体の決議の公正を担保する制度であって(369条2項など)、
株主総会、取締役会、委員会の決議の問題であって、株式譲渡の承認機関が会議
体でない場合には適用されません。

 「取締役の過半数の一致をもって承認」と定めても、これは会議体ではありま
せんから、適用されません。協議して決定する必要はなく、過半数の賛成があれ
ばよいという意味です(「互選」も協議は必須ではありません)。

 一歩譲って、会議体の決議だけでなく、業務執行機関の決定自体の中立性・公
正性を担保するものだと拡張解釈しても、「決定してはいけない」という事前予
防の効果を持たせるのは行き過ぎです。株式会社は営利法人であり、自己の利益
を追求して決定することは当然の行為だからです。

 それで不都合があれば定款を変更すればよいことで、特別利害関係の解釈でこ
の問題を解決すべきではないでしょう。


2011.08.05(金)【刑事裁判実務入門】(金子登志雄)

 土日を前にして、たまには、刑事裁判実務の勉強でもしませんか。講師は弁護士
でも大学教授でもなく、鈴木宗男氏の「階段」(ステップ)として逮捕され、懲役
2年6月(執行猶予4年)の刑を受けた佐藤優氏です。聞き手は、小沢一郎氏への
「階段」として逮捕され、先般の論告求刑で禁錮2年の求刑を受けた石川知裕氏に
お願いしましょう。

http://www.ustream.tv/recorded/16268248#utm_campaign=synclickback&source=deniedbyhost&medium=16268248  

 お2人には申し訳ないが、実に面白い。特に佐藤講師の話術は優れており、獄中
での生活の手引きだけでなく、自殺した松岡利勝元農水大臣との秘話をはじめとし
て疑惑を受けた方が追い詰められて行く様子や心理についても説明していました。
とにかく、その環境(マスコミにあることないことを書かれ、何を言っても誰にも
信じてもらえない自身の存在価値さえわからなくなる状況か)から、1日も早く脱
したくなるようです。

 小泉八雲の短編「はかりごと」の話(憎悪の目先を変えさせること)から、「菅
首相=ナルシスト論」もあり、1時間の授業ですが、全く飽きさせませんでした。

 石川氏への禁錮2年の求刑は、検事が最初から執行猶予でよいと思っており、禁
錮3年6月の求刑を受けた大久保秘書に対する検察の意図は実刑ということです。
(刑法25条により、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」が
執行猶予の条件です)。

 また、佐藤講師によると、裁判費用(弁護士報酬等)は2500万円程度もかか
るため(最高裁まで行く場合)、それが原因で、戦わずして冤罪を受け入れてしま
う方が少なくないようです。執行猶予であれば早く終わらせた方がよいとの打算で
す。これは、よく理解できます。普通の社会人は執行猶予を選択するでしょうから。

 過去の経歴が重視される政治家である石川氏は最後まで頑張ると決意したため、
『悪党』の本を出版し、裁判費用の足しにしようと思ったとのことでした。

 石川氏が逮捕されるとは誰も思っていなかった時期に、佐藤氏は逮捕間違いなし
と予言した人です。西松建設事件が生じる前に、民主党は政権をとれるが小沢一郎
代表は既得権力の妨害で総理になれないと予言したオランダ人の日本研究科ウオル
フレン氏といい、その社会の仕組みの本質を見抜く洞察力はどこから来るのでしょ
うか。学校の勉強では決して学べない能力ですが、ここまで優秀な頭脳を持ってし
まうと、権力側からは目障りでしょうね。地動説のガリレオのように………。


2011.08.04(木)【遅滞なく】(金子登志雄)

 立花さん、投稿ありがとうございました。

 立花司法書士から、「会社法499条で解散公告は解散後『遅滞なく』とあるが、
解散後どの程度の期間を空けてよいのか」と質問されたことがあります。

 会社法には、「遅滞なく」のほかに、「直ちに」(203条5項など)「速やか
に」(940条3項3号)という表現があります。

 いずれも国語の意味としては「すぐに」ですが、「直ちに」は、「何はさておい
ても、すぐに」で、「速やかに」は「準備ができ次第、早急に」、「遅滞なく」は
「準備ができ次第、なるべく早く」といったニュアンスでしょうか。「遅滞なく」
のほうが「速やかに」よりも若干遅めに感じます。

 解散公告は「遅滞なく」ですから(決算公告もそうですね)、解散直後に「直ち
に」公告する必要はなく、解散後のドタバタの整理がついてから、あるいは、弁済
余力があるのなら、必要な債務を弁済して債権者数を少なくしてから、公告をして
もよいと私は考えています。

 そのような理解でもしておかないと、商業登記規則第38条「登記官が申請書を
受け取つたときは、【遅滞なく】、申請に関するすべての事項を調査しなければな
らない」に違反した登記所ばかりになってしまいます(もっとも、調査は「遅滞な
く」しているが、それ以後の「交合」や「記入」で遅滞が生じているのが現状のよ
うですけど)。

 ところで、靴を知らない島があったとき、靴が売れると感じるか、売れないと感
じるかは、人それぞれですが、同様に、若いうちは、「遅滞なく公告しなければな
らない」を「遅滞なくしなければならない」と規制の方向から解釈する傾向がある
のに対し、私のようなベテランになりますと、「ねばならない」のは公告のことで、
これは「公告しなければならないが、直ぐにである必要はない」と規制緩和の方向
で解釈してしまいます。これは退化でしょうか。


2011.08.03(水)【木を見て森を見ず・・・】(仙台・立花宏)

 皆さま、はじめまして。仙台の飯川洋一司法書士事務所に勤務しております司法
書士の立花宏と申します。

 地元の司法書士会主催の研修会で金子先生に講師をお願いした際、研修会の担当
をさせていただきましたのがご縁で金子先生と面識を得ることが出来た幸運な登録
4年目の新米司法書士です。

 その金子先生から徒然日誌に原稿を載せてみないかというお誘いをいただき、ほ
んの少しもためらわなかった怖いもの知らずの図々しい新米司法書士でもあります。
どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、早速ですが、新米司法書士ということで、勤務している事務所に入所した
ばかりの頃の失敗エピソードをご披露させていただきます。

 とある会社から解散登記の依頼を受けて、無事、登記が完了し、依頼者に完了後
の謄本等の書類といっしょに請求書をお届けした時のことです。

 会社の登記を担当したのはこれが初めてだったので、とてもドキドキして会社を
訪問した記憶があります。

 依頼者から、無事、手続が完了したことに感謝の言葉をいただいたので、調子に
のった私は、「費用はなるべく早く、お振込みください!!」とお願いしました。

 すると、その会社の担当者は困惑したように、笑いながら言いました。
「すみません、すぐに支払えるものなら支払いたいのですが・・・。お支払いまで
はちょっと時間がかかるかもしれません。」

 いまほど図々しくない純真だった本当の新米時代だったので、その理由を聞くこ
ともできず、「登記が無事完了して、喜んでくれていたのになぁ・・・。」と不思
議に思いながら事務所に戻りました。

 その顛末を事務所の所長に報告したところ、目を丸くして、「本当に司法書士試
験に合格したの?」という顔で、あきれられました。

 ご存知の方も多いと思いますが、会社が解散すると、会社法第500条により解
散公告期間中は、裁判所の許可を得なければ債務を弁済することができません。そ
の会社も、債務の弁済を制限されている期間の真っただ中だったのです。

 司法書士に成り立てで、登記手続のことばかりに頭がいってしまい、その周辺の
法務について全く考えなかったお恥ずかしい失敗談です。

 以後、登記というのは全体の流れの一部分で、常に全体像を意識しながら仕事を
しなければならない、と肝に銘じた出来事でした。


2011.08.02(火)【待ちどおしい】(島根・渡部浩義)

 法務省所管試験は年に1回のみ開催で、しかも結果発表までの時間が長い。合格
レベルにおられる今年の司法書士受験生の皆さんは、受験後の何ともいえない日々
をこのところ送っておられるのではないでしょうか。
 今回も冗長で他愛もないワタナベのバカ話です。

 かつて私は司法書士試験の受験者でもありましたが、その後、土地家屋調査士試
験の受験者である時期もありました。両方の試験を受験してみての感想は、同じ法
務省の試験で、同じ「登記」という事象を扱う資格のそれであっても、まったくそ
の指向や思考方法が異なる試験であるというものでした。

 さらに続ければ、調査士試験は日曜日1日限りの試験であっても“ひやかし”で
受験する人が司法書士試験に比べれば極端に少なく、技術系の人々が会場にひしめ
く独特の雰囲気がありました。(合格率などという数字のトリックにだまされては
いけません。個人的には調査士試験のほうが難しいと思いました。)

 もともと文系で、司法書士試験から転じた私にとっては、とにかく暑い中での数
学的思考、計算能力の強化が課題でした。現在は、関数電卓の持ち込みも認められ
ていますが、当時はなんと“そろばん”と“計算尺”しか持ち込みが認められてい
なかったのです。すでにパソコンが広まりつつあった世であったのに。
 
 今年の司法書士試験では、記述式問題の論述事項が多く、解答時間が足りなかっ
たことがこのコーナーでもとりあげられていましたが、最後まで解けない、解答時
間が足りないというのはかつての調査士試験では常識でした。というか調査士試験
は、受験時間内には基本的に全部解答できないように問題を作ってあるということ
を、合格後に元試験委員の方から伺いました。

 当時合格レベルにあった人たちの常識は、@択一問題は必ず一読一発で解答を出
す、再読、見返している時間はない、そんな時間があれば、記述式問題にあてる。
A記述式問題中、建物問題は必ず満点をとる。B土地の記述式問題はできるところ
まで解答用紙が回収されるまで解き続ける、というものでした。およそ土地問題が
最後まで解けた者はなかったと思います(中には怪物もおられましたが)。何とか
図面を引き終え、汗まみれで面積計算をしていると、必ずタイム・アップ、ゲーム
オーバーになるのです。

 合格のレベルにあった者は大体こんな様子だったとも思います。ではどうやって
最終的に合否判定がついていたのでしょう。その元試験委員氏によれば、択一足切
り後の記述式解答採点の際に、その受験者が残した試験問題を見ていたというので
す。

 当時は現在と違って試験問題の持ち帰りはできず会場で回収をされていました。
受験番号、氏名を記して机の上に残していかなければなりませんでした。これが採
点の際に合否を分ける有力な資料だったというのです。対象受験者が問題文中の図
形に書き込んだ補助線や、余白に書いている演算プロセス、数字等を見て、基本的
にわかっていたのか、センスがあるのか否かを判定されていたらしいのです。

 そういえば、どこかの大手企業の面接試験において、面接試験官は、面接室で面
接している人事担当者ではなく、試験待合室前の廊下を掃除していた“掃除のオバ
ちゃん”こそが真の試験官だった、という真偽のほどは相当あやしい笑い話もふと
思い出しました。

 最後まで頑張ったか、自分なりに“隙”はなかったか。20数年前の受験生の常
識が、果たして現在の試験にも通用するのかわかりませんが、時間が足りなかった
のは多分誰もが同じはずです。往々にして、「出来た!」と思っていたときほど結
果が悪く、「しまった!!」と思っていると比較的結果がよいというのは、現在でも
変わらぬ試験においての“法則”でしょう。

 発表が待ちどおしい・・・。みなさんの吉報を期待しています。


2011.08.01(月)【商号変更と改印】(金子登志雄)

 8月になりました。1日は商号変更の登記が多いのですが、A社がB社に商号を
変更し、印鑑をA印からB印に変更するとき、司法書士の皆さんは、次の3つのう
ち、どんな手段を使っていますか。

 @ 先に従来のA印で商号変更登記を完了させる(「B社=A印」の状態に)。
  続いて、B印に改印する(「B社=B印」となる)。
 A 先にA社名で改印する(「A社=B印」の状態)。続いて、商号変更登記を
  完了させる(「B社=B印」となる)。
 B 先にB社名で「B社=B印」を届け出る。続いて、B印で、A社をB社に商
  号変更登記を申請する。

 @とAは、届出印を押して登記しているわけで、何の問題もありませんが、実務
上はBの方法が圧倒的多数でしょう。私も、合併と同時に商号を変更し、改印する
など、数え切れないほど経験しましたが、ふと、なぜ、この方法が許容されるのか
という疑問に襲われてしまいました。

 登記の面からみれば、まだ商号変更の登記が終わっていませんから、A社です。
そう考えると、A社の登記申請にA社の届出印を押さずに、無印のまま強引に商号
変更登記を完了させ、あとで辻褄を合わせただけではないかという疑問です。

 いや、申請人をB社にして「AからBに商号変更した」という登記を申請するの
だから、改印と考えずに申請人B社の印鑑を新規に届けたと考えればよいのだ(た
ぶん、この思考でしょう)、いや、A社の改印だが、商号変更登記申請と【同時】
にB印を届けたと考えればよいのだなどと、例によって、ああでもない、こうでも
ないと試行錯誤してしまいましたが、改印という前提に立った場合にも、やっと私
なりの結論がでました。

 「A社の印鑑としてB印を届けた」とか「B社の印鑑としてB印を届けた」とい
う発想自体をせずに、「法人番号〇〇〇〇番の会社の印鑑としてB印を届けた」と
考えればよいわけです。すなわち、「登記申請対象の【その会社】の印鑑を改印し
た」というだけで、「AことB、BことA」であり、「A社=B社」です。Aさん
が名前を変えてBさんになっても、同じ人であることに変わりがありません。

 A社とB社を別人と思ったから、おかしな迷いが生じたわけで、A社名で届け出
しようが(上記A)、B社名で届け出しようが(上記B)、いずれも可能であり、
どうせなら変更後のB社名で届け出るほうが事務上も便利だということでしょう。

 皆さんは、ふと、こんな疑問に取りつかれることはないでしょうか。解決がつく
までは便秘になったような憂鬱な気分ですが、解決すると、すっきりさわやかです。


2011.07.29(金)【文系表現と理系表現】(金子登志雄)

 会社法や計算規則をみるたびに、実に論理的表現だなと思うと同時に、因数分解
(デジタル化)し過ぎじゃないかと思わないでもありません。立案者に東大工学部
出身で理系頭の郡谷大輔氏〈現弁護士)がいたことの影響が大きいのでしょうか。

 剰余金の資本組入れは「剰余金の減少」と「資本金の増加」となり、減資は「資
本金の減少」と「資本剰余金の増加」になりました。損失の処理も「その他利益剰
余金の増加」と「その他資本剰余金の減少」の2つに分解され、転換株式の転換も
「A株式の取得請求」と「B株式の交付」に分解されました。

 しかし、この思考に慣れると結構面白く、増資や組織再編の計算でも、ちょうど
バランスシートの貸借を合わせるように論理を積み重ねて行く作業が必要となり、
ミスの防止になります。論理が一貫していないと、バランスが合いませんし、法務
局ではねられます。そこに感情が入り組む余地はありません。

 ところが、株主総会招集通知などで株主に増資や組織再編を行う理由を説明する
ときは、説得するシナリオを作って、「なぜ、いまこれが必要か(賛成していただ
かないと困る)」と株主の心情に訴えるような表現をします。さすがに文学的な表
現まではしませんが、株主の賛成を誘導するような文章にもなりがちです。

 法務局や裁判所では、法律のプロ同士の会話になりますから、いくら「……と思
われる」「……と推認される」などといっても、何の証拠や根拠も明示しなければ、
それこそ馬鹿にされてしまいます。まさに「出直してこい」です。ただし、法廷で
それをすることは、プロには通じなくても、素人の聴衆やマスコミには、「なるほ
ど、そうか」と思わせる宣伝効果はあります。

 情けないことに小沢秘書裁判は、どうもこの類に成り下がり、検察の面子にかけ
た世論に訴えるプロパガンダの場所になっているようです。東大理学部出身の理系
頭の元検事郷原信郎氏(コンプライアンスの日本の権威)が、この文系表現の論告
を痛烈に皮肉っていました。

    http://www.twitlonger.com/show/btqm95

 われわれも、理系頭の人間に馬鹿にされないよう、論理的な文章を心がけないと
いけませんね。 

(注)郷原ツイッターの中に出てくる「切り違え(尋問)」とは、AにはBが白状
したよとウソをつき、BにはAが白状したよとウソをつく取調べのことで、違法証
拠収集の典型的手段のことです。取調べを担当した前田検事〈村木厚子事件でCD
を偽造し逮捕)の行っていた方法です。


2011.07.28(木)【氏名の更正登記】(金子登志雄)

 商業登記法132条2項によると、「更正の申請書には、錯誤又は遺漏があるこ
とを証する書面を添付しなければならない。ただし、氏、名又は住所の更正につい
ては、この限りでない」とされています。

 先月も東京法務局で監査役の「【管】直人」さんを「【菅】直人」と更正登記し
ましたが(もちろん本欄用の仮名であり、どこかの国の首相とは一切関係ありませ
ん)、本条ただし書に基づき証明書類を添付しませんでした。

 取締役会設置会社の取締役や監査役の就任登記においては、氏名について何の証
明書類も不要であるため(非設置会社では印鑑証明書が必要)、この手の更正は少
なくありません。「橋下」さんを「橋本」で、「安部」さんを「阿部」さんで登記
してしまう類です。私の名も、よく「登志【男】」と誤記されてしまいます。

 この手の事例につき、商業登記倶楽部の会員情報で、何を勘違いしたのか、ある
法務局で証明書類を要求する登記官があったとのことですが、それは論外として、
商業登記倶楽部主宰者の神ア先生が「甲野一郎」を「乙野二郎」に更正する場合は、
相違が大きいので、証明書類を要求されても仕方ないだろうとおっしゃっていたの
が気になりました。

 これは「氏」と「名」の両方であれば証明書類が必要だという意味ではありませ
ん。「氏、名又は住所」という「A又はB」というときは「A or B」だけでなく、
「A and B」を含むからです。

 「甲野一郎」と「乙野二郎」では、更正前と更正後で同一人と推測できないとい
う意味であって、島根の「渡部浩義」さんを「渡辺弘義」と誤記した場合とは相違
します。住所でも、「横浜市中央区……」を「横浜市中区……」と証明書類なくし
て更正できても、「東京都中央区……」と更正する場合は証明書類が必要のことが
多いでしょう。

 なお、この「氏、名又は住所」とは個人限定で、法人は含みません。法人の場合
は「名称、商号」ですし、「主たる事務所、本店」だからです。しかし、組織再編
に関する会社法の規定(749条など)は、会社でありながら「住所」とあり、登
記に関する911条では「本店の所在場所」としています。会社法749条などの
表現は、更正しなくてよいのでしょうか。


2011.07.27(水)【山中で考え改め………】(島根・渡部浩義)

 暑かったのですが急に思い立って、休日に中学生の息子を従え、先祖からの山林
の手入れに出かけました。

 拙い我流の方法ながらも、親子で下草を払い、間伐や枝打ちをしました。作業の
合間に谷川のほとりに腰をおろし、それまでの作業の成果をみれば手放しで気持ち
がよいものです。最近はまともに口も利かなくなり、出かけるときは不機嫌そうな
顔をしていた息子ですが、一体何を思ったでしょう。

 「これからは、これをお前の持ち物として使うように。」
 今から30数年も前に、頻繁に一緒に造林山行きをしていた私の祖父から、手鋸
(のこ)と鉈(なた)を渡されました。私がまだ小学校の高学年の頃の話ですが、
大人から一人役の手間数として認められたような気がして、素直にうれしかったこ
とを思い出しました。

 当時は所有山林の手入れに来る人々で、山の中も結構にぎやかだったように思い
ますが、このだびは誰にも会うことはありませんでした。人も入らなくなり、山の
中は荒れました(もっとも、自然本来の山の姿に戻りつつあるというべきでしょう
か。)。人づてに聞く、隣と境界を争って薪を切り、木を植えていたとう時代がう
そのようです。

 休憩中の眼中に入ってくる、ありがたくも樹木が茂り、木漏れ日の谷川に水が流
れる景色を眺めていると、最近読んだ書物にあった記述が思い出されました。
 
 それによれば、ペリーが来航した当時の関東地方は薪を切りつくしてハゲ山の連
なる国だったとか、また別の書物よれば、人口60億超の世界が水を奪い合う日が
そう遠くない未来に到来する(あるいは既に到来している?)という記述です。

 そのほかにも山の中の様子を見れば、「世の中(環境)は本当に大丈夫か?」と
思われる変化をたくさん見つけることができます。

 少し昔のことは忘れて、今現在「潤沢にある」、「得意である」と思っている事
柄が案外“脆い”ということは、このたびの震災以後、国民の誰もが感じたことだ
と思います。

 平素の私の業務を省みても、1uあたり数十円という人間の勝手な「評価額」に
慣らされ、また、「効率」という言葉に代表されるような現在の経済的価値観・尺
度にのみとらわれて「評価や経済的効用の低い山林の相続や売買の登記などに、そ
んなに費用をもらえるものか」とずっと思っていました。が、山林を所有し管理す
ることにも大きな社会的意義もあるのではないかと、最近考えを改めつつあります。

 せめて私が日常業務であたる書籍や使用する用紙のパルプ分にはなるくらいの石
高(こくだか)の木材は育てたいものだと思いながら、休憩後の作業に戻りました。 
最近は、お金を払って汗を流す世の中のようですが、時々は額に汗して我が家の将
来のしかけも作っておきたいと思います。


2011.07.26(火)【監査役の性格的適任姓】(金子登志雄)

 地デジの関係で、先日からテレビがみられません。これで、とうぶんの間、テレ
ビ情報が得られなくなりました。まぁ、平素、テレビや大手新聞は日本を悪くして
いる元凶だと批判していますから、どうでもいいことですが………。

 さて、法律問題ではなく、性格面での監査役の適格性としては、協調性に欠けて
いることも含まれるかもしれません。皆が右だと言っているときに、「待て、右は
危険だ。いまは左だ」と言えなければ、監査役は務まりません。

 私自身は、飲み食いの付き合いもよく、協調性はあるほうだと思っていますが、
集団行動は大の苦手です。組織に合わないから司法書士という自由業を営んでいる
とも言えるのであり、案外、このひねた性格は監査役に合っているかもしれないと
も思っています。

 そんなことを思っているとき、これを読みました。

 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/07/post_268.html#more

 覚えている方も多いでしょうが、当時は薬害エイズ事件の安部医師は極悪人扱い
でした。いまでは、冤罪扱いされています。

 あの頃は、マスコミの煽りを受けて、日本中が「安部を吊るせ」と集団ヒステリ
ーになっており、安部医師の味方は1人もマスコミに登場しませんでした。マスコ
ミを無批判に信じていた私自身も、安部医師へのリンチに加担していたようなもの
でした(やはり、テレビは悪の権化です!)。

 いまは大手マスコミとは違う情報がネットで流されますから、小沢問題もホリエ
モン問題も、原発問題も、多様な情報や意見の中から選択できますが、テレビや大
手新聞しか読まない真面目な方は、一方的な偏った情報しか入手できないわけで、
無意識に集団ヒステリーになっていないでしょうか。

 真面目であることは、時にして犯罪です。当社の監査役に就任するにあたり、ま
すますひねた性格の長所を発揮して監査しようとの思いを強くいたしました。

 ところで、ネットのない時代には、このような社会的関心ごとの事件に関与した
検事は、退官後、皆、大手企業に高額な顧問料で迎えられていましたが、先般の日
刊ゲンダイによると、小沢事件を主導した検察幹部の大鶴氏は、大手法律事務所へ
の就職にも苦労しているとか。冤罪捏造事件の首謀者を迎えた法律事務所と思われ
たくないようです。

 「善」だと思われていたことが、たったの数年で「悪」に変わる時代にあって、
道を誤らないことは至難の技ですが、ひねた目が再認識される時代になったともい
えそうです。大いに、ひねましょう。


2011.07.25(月)【監査役と司法書士】(金子登志雄)

 6月定時株主総会後の登記実務も終盤時期です。ほとんどの会社で登記が終わっ
ていると思いますが、会社の方でも司法書士に任せきりにせずチェックを怠らない
ようお願いします。前年の申請書に上書きしたために、平成23年を22年で申請
し、そのまま登記されてしまったり、荻原さんが萩原さんになっていたりのケアレ
スミスは、意外に多く、司法書士も法務局も見過ごしてしまうものです。

 さて、私が当社の取締役から監査役に代わることにつき、「金子も歳だから、前
線から外されて、監査役に変わったのだろう」と思った方も少なくないでしょう。

 業務執行の適法性の「お目付け役」で、監査役の権限は想像以上に強大ですから、
ある程度の年齢が必要であることは否定できません。

 監査役の権限のうち、他の監査役の選任に対する同意権は、黄金株と同じく拒否
権と解されていますし(会社法343条)、地位の安定のため、任期も徐々に伸長
され、平成5年の改正で、2年から3年に、平成14年だったかの改正で、3年か
ら4年になっています。

 上場会社では、最近は、コンプライアンスの観点から、専門知識を持った弁護士
や公認会計士が「社外監査役」になる傾向が少なくないようですが、残念ながら、
司法書士はまだまだ少ないようです。弁護士・会計士は全国で3万人以上だが、司
法書士は2万人程度という「数」の事情もあるでしょうが、まだまだ世間からの認
知度が低いのでしょう。

 上場会社でありながら、法定公告を忘れて株式分割や会社分割ができなかった会
社をみると、もっともっと司法書士の監査役への参入を認めるべきだと私は思って
いますが、肝心の司法書士サイドでも、会社の実情に強い方が少なく受入れ体制が
整っているといえるかは疑問です(それでも、会社法手続については、平均的弁護
士さんより平均的司法書士のほうが圧倒的に詳しいといえます)。

 いや、重責の監査役になるくらいなら、気楽な抵当権抹消や役員変更登記の仕事
を増やしたほうが利口だと思っている司法書士が多いのかもしれませんね。それは
それで、極めて賢明な選択と私も思いますが、チャレンジしない人生は面白くない
ともいえます。

 監査役になり取締役会に出席することで、企業がどのような仕組みで動いている
のか、企業法務はどの程度の位置づけにあるかなどがよくわかり、司法書士業務に
も深みが増しますので、積極的にチャレンジしましょう。


2011.07.22(金)【代表取締役の譲渡承認】(金子登志雄)

 最近、「株主1名で取締役も1名」という個人会社の設立の仕事を何件かいた
しました。

 譲渡制限規定は、「当会社の株式を譲渡により取得するには、【株主総会】の
承認を受けなければならない」がよいか、「当会社の株式を譲渡により取得する
には、【代表取締役】の承認を受けなければならない」がよいかと確認しますと、
多くのケースが後者を選択します。

 さて、後者の場合に、代表取締役自身が譲渡人や譲受人になるときは、その承
認はどうなると思いますか。

 ほとんどの法曹が、これは利益相反だから、代表取締役自身は承認することが
できず、本則に戻って、株主総会の承認になるとの見解のようです。

 私は、その見解には当初から批判的であり、こういう場合は承認があったと考
えればよいという考え方です。定款に定めた趣旨からも、そういえると考えてい
ます。

 そもそも、利益相反というのは、自己が利益を得て会社自身が損をする可能性
のある行為をすることですが、株式譲渡の承認は総会屋など会社の好まない者が
株主となることを防止するための「既存株主」保護の制度であって、「会社」自
身の利益を守るものではありません。ここで、なぜ利益相反という問題が生じる
のか私には理解できません。

 おそらく、反対説は「会社の利益=既存株主の利益」と考えるのでしょうが、
やはり、会社と株主は人格も利益も別の存在というべきでしょう。

 とはいえ、このような反対意見がありますので、依頼があれば、私は「当会社
の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。
ただし、代表取締役が譲渡又は取得する場合は、承認(を)したものとみなす」
と定めるようにしています。

 もっと簡単に「当会社の株式を【代表取締役以外が譲渡又は取得するには】、
代表取締役の承認を受けなければならない」としてもかまわないのですが、譲渡
制限株式の定義からして、「承認を要しない」よりも「承認(を)したものとみ
なす」という表現が適当です。


2011.07.21(木)【一人事務所(または職人肌事務所)VS 大手事務所】(富田太郎)

 先日、某上場会社の法務部の方が、面白いことを話されていました。

 「有名&大弁護士事務所・司法書士事務所等の場合、事務所が有名でも、担当の
センセによって、実力差があります。だめな担当(センセ)に当たると一苦労です
〜。その点、富田センセの事務所は一人なので(きっぱり!)、担当が代わること
もないので安心できます。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ほめ言葉か否かは、微妙ですが、『職人肌のセンセ♪』と言っていただけたのだ
と解釈しています。

 まぁ〜、一人事務所は、『仕事・知識・技術』に専念していればよいので、私に
は最適かもしれません。

 もっとも、この手のタイプの事務所は、まずは大きくなることはなく、また、人
を雇うと悲劇となるケースも稀にあります。

 私が、最初に勤務した司法書士事務所のボスは、かなり『勉強家&自信家の方』
でしたが、絶えず、事務所スタッフと知識を競うので、事務所は殺伐としていまし
た。

 ところで、話はかわって、先日、ある本(『究極の人間洞察力』小林吉弥・講談
社文庫)を読んでいたら、田中角栄の次の言葉が出てきました。

 「赤坂、新橋でも、料亭の女将で店を大きくするのは、どんな奴か分かるか?
『仲居さん』『女中さん』あがりだ。ダメなのは『芸者さん』あがりだよ。」
(原文ママ)

 この言葉、同時代の政治関連の本(『自民党戦国史』伊藤昌哉・ちくま文庫)に
も出てくることから、田中の言葉というより、当時の派閥の経営者(首領)の間で
は、かなりポピュラーなものであったと思われます。

 つまり大意は、

 「芸者あがりの経営者は、なまじ『顔に自信』があるため、いつまでも店の若い
娘と競おうとする。だから、店(経営)は、絶えずガタガタしている。
 その点、仲居さんあがりは、経営だけに専念するため、店も順調に発展していく」
ということだそうです(BY『自民党戦国史』による解釈)。

 この言葉、司法書士事務所経営にも通じる、非常に含蓄のある言葉だと思いませ
んか?

 ・・・・・・・・・・・・・・

 もっとも、Kセンセのように、会社法研究には興味あるけれど、事務所を大きく
することに興味のない方にとっては、何の意味のない言葉ですが・・・・。


2011.07.20(水)【デジタル残酷物語 其の壱】(島根・渡部浩義)

 「国の方針により、2011年7月24日正午をもって渡部家からテレビがなく
なります。これで勉強に身が入る環境がやってきます!」
 そう子供に父(私)は伝えていたのに、世のジジ・ババはまったく孫にろくなこ
とをしません。地デジ対応型液晶テレビが続けて3台も我が家にやって来ました。

 『アナログ放送終了まであと●日』という、最近画面左下にでる字幕が邪魔だと
思いながらも相変わらずアナログブラウン管電視台を私が視聴していると、廊下を
挟んだ隣の祖母の部屋から聞こえてくるデジタル波電視台の音声が明らかにワンテ
ンポ遅れて聞こえてくることに気づきました。

 後日、その筋に詳しい顧客P氏に、その疑問をぶつけると、「地デジは遅れるで
ー!」の一言。私はどうも明瞭に説明が出来ないのですが、どうもデジタル放送電
波(12セグ)を画像・音声処理するにあたっては受信機(テレビ)の処理エンジ
ンの能力の差がでるらしいのです(詳しい読者の皆さんは、このわかったようなよ
くわからない私の説明を笑ってください。)。さらに、CATVなどで受信してい
る世帯などにあっては、CA局での受信機器のスペック(処理能力)によって、さ
らに音声画像が遅れることもあるらしいのです。

 私:「では、デジタル放送で流れている時報は遅れた誤った時報なのか?」と
   続ければ、
 P:「最近、7時とか12時のニュースの始まりに『プッ、プッ、プッ、プー』
   という発信音付秒針付時計映像の時報がテレビで流れてるかー?」との一言。

 そういわれてよくよく気をつけて見ると、あのお馴染みの時報映像は最近ありま
せん。朝夕とも7時のニュースは、いきなりアナウンサーの第一声またはテーマ音
楽とともに始まるのです。

 私:「じゃあ、私たちがデジタル放送で見せられている画面左上の時刻表示は、
   正確には、遅れた誤った表示なんですか?」
 P:「たぶんね。でも、誰もが携帯電話や電波時計を持つこのご時勢で、テレビ
   の時刻表示が数秒遅れて誰が困る?完全地デジ化完了後には、あるいは送信
   元で予め遅れを計算して早め時刻表示を送波するかもしれんが、そんなこと
   は総務省コールセンターにでも聞いてくれ・・・・。」
 私:「・・・・・」

 どうやら『デジタル』ならなんでも『アナログ』に優位ということでもないよう
です。私など、『デジタル』と聞いただけで、控えひれ伏してしまうような傾向が
ありますが、その考え方もどうやら誤った物事の捉え方のようです。

 ところでデジタル波になると、特に都市部で難視聴世帯が増えるとか。放送内容
の質のことといった小難しいことはさておき、テレビも満足に視聴できない新たな
地域の発生という『残酷物語』も発生しそうです。

 それにしてもアナログ放送は本当のところどうなるのか、来る7月24日正午が
少し楽しみです。山あいのシホーショシは今からコーフンしながらその時を待って
います。ヒマだからでしょうか。


2011.07.19(火)【冥利に尽きる】(金子登志雄)

 連休中は、なでしこジャパンのW杯優勝という明るい話題がありました。清楚な
なでしこどころか、ひまわりのように燦々と輝いていましたね。お見事でした。

 さて、13日から、「今度は監査役ですか」というメールを数人のお客様からい
ただきました。

 日本経済新聞で、上場会社の人事異動の情報をみている方が思っていた以上に多
いようです。そこに、当社(アクモス)の人事異動の情報が小さく新聞に載っただ
けですが、あの人も、この人も、私が9月下旬の定時総会で取締役を任期満了し、
監査役に変わることを知っていました。

http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10106888/20110712199102.pdf

 この異動は会社が成長し、人材も増え、「業務執行」の面で、私を必要とする場
面が少なくなったという意味ですから、創業役員冥利に尽きます。

 思い起こせば、平成8年に株式公開したとはいえ、赤字の零細企業で将来性だけ
で公開させてもらったため(そういう制度がありました)、役職員も総勢10人程
度でしたから、総務も広報も株主対応も総会運営も私1人で行っていました。業績
が思うように伸びず、株式掲示板で「死ね」などとも書かれ、毎日のように株主か
らの電話に対応しておりました。

 それが社長(公認会計士)の才覚で、株式交換等を駆使して異業種に進出し、今
は総勢200人以上で黒字体質になっています。総務も広報も株主対応も総会運営
も別の担当者がおり、私の役割は唯一、法務チェックだけになっていましたので、
取締役である必要はなくなりました。これで、今以上に、好きな司法書士業務に邁
進できますし、他社の支援にも動きやすくなりました。

 ところで、私と同時期に補欠監査役になる西山氏は、私と似た経歴で、20年近
く前に大手都市銀行の副支店長の地位を捨て、M&A業界に飛び込み、M&Aや株
式公開を支援する業務を長く続けてきた方です。つい最近まで、上場会社の役員だ
ったのに、今は前々から親しいモノコキューテックスというベンチャー企業の管理
本部長に転身しています。

 同社は、つい先日も日経産業で取り上げられたばかりの優秀な省エネ技術をもつ
会社で、看板等の照明の節電を得意分野とする将来が期待できる会社ですので、ご
紹介いたします。ぜひ、ご支援ください。

   http://www.monoco.co.jp/img/data/news_110713.pdf
  (会社HP)
   http://www.monoco.co.jp/index.html
 
 登記だけでなく、一緒に成長しようと思えるお客様が増えてくると、企業法務専
門司法書士冥利に尽きるというものです。


2011.07.15(金)【レトルトカレーの教え】(金子登志雄)

 13、14と仕事で宮崎県に行ってまいりました。9日の青森行きといい、久々
に「私は、全国区の司法書士」という気分を味あわせていただきました。

 宮崎は、蒸し暑くなく過ごしやすいところですね。南国に「避暑」に行ったよう
な不思議な気がしました。

 さて、小沢一郎秘書だった石川知裕議員が『悪党・小沢一郎に使えて』を出版し
ましたので、世界に通じる傑出した政治家で悲劇の男小沢一郎に興味が尽きない私
としては、早速、購入して読んでみました。もちろん、「悪党」とは、既成権力か
らみた表現で、ここでは褒め言葉として使われています。

 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4022508914.html
 
 石川氏は小沢一郎に20年間も仕えていたので、最も「人間・小沢一郎」を知る
人物ですが、この本によると、「元側近」「元番記者」の語る小沢評は都市伝説の
類で、ほとんど間違いのようです。

 小沢の心臓病の持病の程度や、中国批判者であること、なぜ外国人秘書を多く抱
えているのか、飲み食いの行き付けの店は居酒屋「庄や」である理由など、ここま
でばらしていいのかと思うほど様々なことを石川氏が語っていました。

 人間小沢につき、こんな話もありました。
--------------------------------------------------------------------------
小沢がいきなり怒り出した。
「おまえ、まだ、これ、大丈夫じゃないか」
小沢はゴミ箱から未開封のレトルトカレーを取り出した。
「でも、先生、それは賞味期限切れていますよ」
「何を言ってんだ。まだ食えるだろう」
(中略)
「おまえはこれからいろんな人と出会う。人と付き合っていると、悪口を言う人も
いれば、いいことを言う人もいる。だが、人がどう評価しようと最後は自分で判断
しなければならない」
(中略)
「あのレトルトカレーだってそうだろう。賞味期限は人が決めた基準だ。温めてみ
て食べて大丈夫だったらそれでいいじゃないか」
--------------------------------------------------------------------------

 面白いことを言うオジサンですが、還暦世代以上は、だいたい、こんなものです。
賞味期限など昔はなかったため、自分の鼻と舌で判断していました。そもそも、賞
味期限というのは、消費期限とは意味が違い、もう食えないという意味は含まれて
いません。

 今、「小沢はもう終わった」という評価を小沢を恐れる守旧派のマスコミが意図
的に流していますが、さて、小沢一郎氏自身の賞味期限は、どんなものでしょうか
(裁判自体は、秘書の供述調書を裁判所が検察の意図的誘導として却下したため、
無罪が確実な情勢になっています)。


2011.07.14(木)【会社法319条,株主の提案?】(大阪・田中利和)

 受験生の皆様,お疲れ様でした。
司法書士の試験の話題が出ましたので,私も続きたいと思います!

 7月2日,私は,以前に勤めていた事務所の所長に,「今年の受験生の慰労会は,
7月8日(金)にしましょう」と提案したところ(その事務所には受験生が2人い
ます),7月4日に「どこもいっぱいで予約がとれません」と返事がありました。

 さらに,「7月6日,7月7日,7月12日,13日あたりの都合はどうか?」
という連絡があり,私は「いずれも動けそうにありません」と返事をしました。

 その後,待てど暮らせど連絡がありません。心配をよそに,翌日,メールが届き
ました。

 「きっと,店を探しておられたんだ♪ どこの店に決まったのかな?」と思いつ
つメールを開封すると,
 「今回は他のメンバーの都合もあり,7月7日に決定しました。せっかく連絡を
くれたのに申し訳ない」とのメールが・・・・。

 「えええええええええ,慰労会を提案したのは私なのに,その提案者の都合に合
わせてくれないなんて(涙)」  

 しかも,私は大阪,他のメンバーは京都,店も京都のはず・・・。仕事を終えて,
京都へ駆けつける予定だったのに・・・。

 ところで,会社法319条には,「取締役又は株主が株主総会の目的である事項
について提案した場合において,当該提案につき株主の書面又は電磁的記録により
同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったも
のとみなす。」と規定しています。

 私もESG法務研究会のメンバーの”はしくれ”,今回の件を,上記規定にあて
はめてみました!

 私の提案(7月8日の開催) → 他のメンバーの一部不同意 → 他のメンバ
ーからの新たな提案(7月7日又はその他の日に開催)→ 私は,当初から不同意
のはず! 

 そうだとすると,7月7日に開催する”決議”があったものとみなされませんよ
ね!

 といっても,,”後の祭り”・・・。会社法の理屈はとおらず,予定どおり開催
されていました。

 7月17日(日)は,京都・祇園祭りの山鉾巡行です。
 そうだ! 気を取り直して,”前の祭り”に行ってこよう♪

 http://www.union-net.or.jp/cu-cap/atonomaturi.htm

 受験生の皆さん,クールダウンも必要です。今はゆっくり休んでください。


2011.07.13(水)【司法書士試験】(島根・根来川弘充)

 7月3日(日)に、司法書士試験が開催されました。島根は、松江一か所が受験
会場なのですが、100人前後の受験者がいたそうです。

 今年の試験は、書式の問題が大変難しかったらしく、また、時間のかかるものだ
ったと聞いております。

 一年に一回しかなく、また筆記でほぼすべてが決まり、合格率が2.数パーセン
トと言われる難関な試験。
 いつ出口があるのかわからない試験に挑みつづけることは、受験される皆様には、
精神的、肉体的、経済的に、大変な負担があると思います。私も数度経験したから
こそ、もう二度としたくないと思います。

 振り返ってみますと、私が合格した年は、合格者の正解率は、60パーセント代
だったと言われる試験でした。私は、おそらくそのギリギリでしたので、正解率が
低かったからこそ、運よく合格できたのと思います。(しかし、実力なく合格した
ものですから、その後が日々勉強で大変なのですが………)。

 最近、司馬遼太郎作『坂の上の雲』を読み終えました。日露戦争の日本海海戦の
際、旗艦出雲の参謀をつとめた者が、この海戦の勝因を「6割は運、4割も運。た
だし、残りの4割は、人間の力で開いた運」と言っています。

 考えてみれば、勝敗がつくものは、「運」でしか決まらないものかもしれません。
合否が必ずつく試験も、きっと同じなのだと思います。

 今回、もし、不合格だった方は、「運」が悪かったと割り切って、次の「運」を
切り開くべく、勉強を頑張ってほしいと思います。


2011.07.12(火)【2つの国・青森】(金子登志雄)

 土曜日は青森県司法書士会のお招きで会社法の講義に行ってまいりました(西
澤会長ほか皆様、お世話になりました)。

 会場は青森市ではなく弘前市でした。青森県は、地域が広いので、県庁所在地
で県司法書士会の研修をするとは限らないようです。また、宿泊する会員が多い
様子でした。

 地域が広いという意味では、青森県の西部地区は旧・津軽藩で、八戸(はちの
へ)などの東部地区は旧・南部藩の領地だったそうです。

 帰宅後ネットで調べましたら、津軽藩(正しくは弘前藩)のほうが南部藩(中
心は盛岡藩)よりも「機を見るに敏」だったようで、豊臣秀吉対北条氏では秀吉
側につき、関ヶ原では徳川側、戊辰戦争では新政府側で、広域の南部藩より地位
が高くなったようです。情報収集力と判断力に長けていたのでしょうか。

 その居城・弘前城を歩いて観光し、続いて特急で青森駅に行き、駅前の新鮮市
場で海鮮丼を食し、8月のねぶた祭りのねぶた作りの準備と青函連絡船の跡地を
観光し、飛行機で帰ってきました。

 あのねぶた、製作費が2000万円もかかるものがあるとのことでした。祭り
が終われば廃棄処分です。実にもったいない話ですが、だからこそ、みる価値が
あるというものです。
 
 8月2日−7日がねぶた祭りです。このあたりに青森で仕事があればよいので
すが………。
  http://www.nebuta.or.jp/
 

2011.07.11(月)【私的『平成23年度 司法書士試験』の感想】(富田太郎)

 先日、『地獄の黙示録・特別完全版』(フランシス・F・コッポラ)のDVD
を見ました。

 この映画、公開時(1979年)は、2時間ほどの映画でした。

 元々は4時間ぐらいの長さだったのですが、あまりに長すぎ『商業ベースにの
らない』ということで2時間に短縮したそうです。そのため、『内容的には、哲
学的な部分が、分かりにくく、意味不明の場面』が多々ありました。

 ところで、『特別完全版』は53分の未公開シーンが追加されていたため、監督
の真意が、よく分かるものでした。

 ただし、『よく分かったけど・・・・・長かった。』

 初公開時、観客のことを考え、2時間に短縮したのは、正解だと思いました。

 でも、作り手の気持ちは、よく分かります。
私も入門書なのに、P1000に及ぶ本を作ってしまったり・・(汗)。

 完璧で、内容のあるものを作ろうとすると、長くなってしまうのです・・・。
芸術肌のコッポラも、作っているうちに、完璧を求め、観客のことを忘れたのか
も・・・。

 えっ??『お前が芸術肌? コッポラと一緒にするな!何様だぁ!』 
・・・・・失礼しました!(反省)。

 ところで、7月3日は司法書士試験でした。

 今回の商業登記書式、実に良い問題でした。
問題文を読んだだけでは、全体像が把握できず、後半の別紙を、じっくり読み込
むうち、徐々にキーポイントが分かる仕掛けでした。

 『解いていて、ワクワク♪ まさに、長編推理小説!稀に見る良問でした。』

 が、受験生の評判は『量が多すぎる。時間がなかった。分かっていたけど解け
なかった。』と、私の感想とは裏腹に、『不評』でした。

 なるほど、私は時間をかけて解いたのですが、受験生にしてみれば、『限られ
た時間で、あの膨大な内容を解く』のは、かなり無理がありますね。

 ・・・・・・・・・・

 もしかして、今年の商業登記書式の出題者は、『コッポラ』のように、『観客
(受験生)のこと&時間配分』を忘れ、完璧な問題を作るのに没頭し・・・・芸
術肌の方だったのでしょうか?

 本当に、『客観的なものを作る』ことは、難しいものだと思いました(つくづ
く)。


2011.07.08(金)【定款条項と想像力】(金子登志雄)

 いくつかの会社の定款を同時にみる機会がありました。中には、株主数名の未公
開中小企業でありながら、定款に次のように定めていました。

--------------------------------------------------------------------------
第*条
 A 会社法第309条第2項に規定する株主総会の決議は、【議決権を行使する
  ことができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し】、出席した
  当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。
--------------------------------------------------------------------------

 これに付き、貴方の感想は、次のどのタイプですか。

A:「珍しい内容だが、定足数の原則は議決権の過半数なのに定款で3分の1まで
  緩和できるのだから、会社法を知り尽くしたよくできた定款内容だ」。
B:「よくみかける内容で何が問題なのかよくわからない」。
C:「こんな定めは実態を知らない愚かな内容だ」。

 「珍しい内容か、よくみかける内容か」の論では、Bの勝ちです。上場会社のほ
ぼ100%がこの内容でしょう。

 なぜか。個人株主や外国人株主が増えて、定足数を満たさず、定款変更議案が流
れてしまうこともあったので、商法を改正し、平成15年4月から定足数の緩和を
認めたものです(拙著『これが新商法だ!これが新登記だ!』157頁)。

 従って、定足数の充足に苦労していない中小企業では定める必要がないどころか、
定めてはいけません。株主甲の持株比率60%、乙丙各20%のとき、甲が海外出
張中に乙丙だけで定款変更も増資もされてしまったら、乗っ取りが完成です。こう
いう想像力もないA説は、法務コンサルタントして失格であり、私はC説です。

 では、続いて、次の定款内容に問題がありますか。
--------------------------------------------------------------------------
第*条 補欠取締役の選任決議は、当該決議後【10回目に開催する定時株主総会
   の開始の時まで】効力を有する。
--------------------------------------------------------------------------

 これも愚かです。

 補欠役員とは欠員が生じた場合のベンチに座っているピンチヒッター役員のこと
ですが、なぜ補欠役員を予選しておくかというと、上場会社のように株主が何千人、
何万人といる会社では容易に総会が開催できないからです。すぐに総会を開催でき
る株主数名の中小企業では補欠役員制度は不要です。

 また、「当該決議後【10年以内に終了する事業年度うち最終のものに関する定
時株主総会の開始の時まで】とする」と定めたつもりでしょうが、上記の定め方で
は、年2回決算の会社や、事業年度を変更し、1年に2回定時総会を開催した場合
に、予定とは異なった結果になります。

 この「〇回目に開催する………」は、上場会社の定款にもありますが、分かって
いるのでしょうか。法律の運用も着き詰めれば、知識ではなく、使う人のセンスや
想像力のように思います。

 もっとも、センスや想像力があっても仕事が豊富に来るかどうかは、別の能力が
必要ですから、世の中、うまくできていますね。


2011.07.07(木)【任期計算】(金子登志雄)

 取締役の任期につき、次の問にお答えください。

--------------------------------------------------------------------------
(問)12月決算だった甲社(定款に任期の定めはない)は、平成23年2月の定時
 総会で決算期を4月に変更した。続いて、この平成23年4月期の定時総会は平成
 23年6月12日に開催された。
  @平成22年2月20日重任の取締役Aの任期はいつまでか。
  A平成22年5月1日就任の取締役Bの任期はいつまでか。ただし、Bは平成
   22年2月20日の合併承認総会兼定時総会で選任され合併の効力発生日の
   5月1日に就任した者である。
--------------------------------------------------------------------------

 これ、3日に行われた司法書士試験記述式問題のほんの一部を取り出したもので
すが、つい、「取締役の任期は2年だから昨年就任したばかりの取締役の任期満了
時期は来年であり、今年ではない」という思い込みにとらわれてしまいます。

 しかし、よく考えると、平成22年2月20日の2年後は平成24年2月20日、
その直近の最終の決算期は平成23年4月、その定時総会は平成23年6月12日
です。@のAは、この6月定時総会で任期満了です。
 任期計算は「選任時」基準であって「就任時」ではありませんから、AのBも同
じく平成23年6月12日開催の定時総会の終結と同時に任期満了です。

 落ち着いて考えれば、どうという問題ではありませんが、緊張している試験会場
で、これに気づかないと、パニックになってしまうことでしょう。

 さて、私の顧客で、9月決算を3月決算に変更し、この6月に定時総会を迎えた
会社がありました。その議事録によると、平成22年4月1日就任の取締役Cが再
選されているのです。

 会社に問い合せましたら、「12月開催の定時総会と今回の定時総会で2回目の
定時総会だから、任期満了になる」と思っていたようです。「選任後2年以内に終
了する………」を「選任後2回目の」と勘違いしていたわけです。

 しかし、さらに話を聞けば、就任は平成22年4月1日でも、選任は3月でした。
ということで、結果オーライで、会社の議事録は正しかったのです。

 4月1日とか、1日付就任の役員の選任時期には、警戒信号を発令させるよう気
をつけないといけませんね。


2011.07.06(水)【会計監査人の重任登記】(富田太郎)

 6月の定時株主総会が終わり、このところ、毎日のように登記申請をしていま
すが、いつも焦ってしまうのが大会社(主に上場会社)で毎年必要な会計監査人
の重任登記です。

 重任登記の際に添付する(会計監査人)の資格証明書である登記事項証明書は、
「その監査法人が実在していること」が分ればよく、膨大な役員区まで記載され
たものまでは不要とされています。

 が・・・毎年、この時期、なぜか『有限責任あずさ監査法人』は、登記中で、
いつも重任登記に添付する登記事項証明書が取得できず、イライラしてしまいま
す。

 そこで、今年こそは!と、例年の反省に立ち、7月1日の朝、「有限責任あず
さ監査法人」の一部事項証明書を取得しました♪

 聞くところによれば、同日午後、同法人は、なにやら登記申請をしたようで、
その後は、昨日まで登記事項証明書を取得できなくなったそうです。

 ぎりぎり、セーフでした♪ 

 しかし、この「有限責任監査法人」の登記事項証明書の添付、何とかならない
かなぁ〜。実在を証するために添付するのなら、法務局が調べればすぐ分かるこ
となのに・・・・。

【おまけ:素朴な疑問】
 インターネットの登記情報で検索すると『あずさ』と入れても該当なし?
なぜか????『有限責任あずさ』と入力すると、でてきます。
『あずさ』を除く
『有限責任』『監査法人』の部分は、株式会社にあたる法人格?のようなものだ
と思っていましたが・・・・。
 これも、毎年、同じ失敗を繰り返し、焦ってしまいます・・・(涙)。


2011.07.05(火)【会計監査人【設定】会社】(金子登志雄)

 昨日は閲覧件数が急上昇したと思ったら、カリスマ講師の山本先生のブログから
でした。
    http://plaza.rakuten.co.jp/yamamotokoji/

 受験生の皆様、ようこそ。

 3日の商業登記記述試験は分量が多過ぎて、たいへんでしたね。専門家の私でも
時間内に終わらせるのは無理です。「それが試験だ」といわれれば、それまですが。

 内容面については、面白い内容が多かったので、おいおい本欄でも取り上げるつ
もりですので、たまには閲覧してください。

 さて、昨日の続きですが、負債が200億円以上になると大会社になりますから、
会計監査人の設置が義務づけられます(会社法328条)。

 そこで、
「会計監査人設置会社に関する事項」
「原因年月日」平成23年6月●●日設置

 と登記申請しましたら。法務局から電話がありました――「【設置】で申請され
ていますが、登記記録例によると【設定】になっていますので、修正してよろしい
ですか」。

 もちろん、私にとっても顧客にとっても、どうでもいいことですから、「ご指摘
いただきありがとうございます」との御礼とともに、即座に承諾しましたが、これ
「いやだ」と答えたら、【設置】で登記してくれるのでしょうか。

 おそらく、【定款に】会計監査人の【定めを置いた】という意味で「設定」にな
るのでしょうが、「設置」でも間違いだとは思えません。もし、「設定」が正しい
というのなら、「セッテイ」や「せってい」も間違いでしょうか。

 調べてみました。
「設置」……支店、外国会社の営業所、株主名簿管理人
「設定」……〇〇設置会社、株式の譲渡制限に関する規定

 株主名簿管理人も会計監査人との比較でいえば「就任」としたいところですが、
株主総会で選任するわけでも、役員でもないことが影響しているのでしょう。

 株式の譲渡制限に関する規定も、本来であれば、他の種類株式と同様に「変更」
とすべきところ、ずっと「設定」にしてきたという理由でしょう。

 これらは理屈ではなく、運用又は慣例の問題ですが、以前に会計監査人を設置し
たときは、私も「設定」で登記していました。今年は、慣れてしまい、登記記録例
をみずに、「設置」と思いこんでしまったのでしょうが、こういう経験をすると、
2度と間違わなくて済みますね。

 紛らわしいので、私の頭の中に、しっかりと、〇〇【設置】会社ではなく、〇〇
【設定】会社とインプットしておきました。


2011.07.04(月)【負債200億円大会社】(金子登志雄)

 フランス大統領選の有力候補でIMFの前専務理事ストロスカーン氏(62歳)
がホテルで女性客室係(32歳)に性的暴行をしたとして逮捕されていましたが、
やはり冤罪の疑いが濃厚になりました。女性の証言のウソが目立ってきたからです。

 これ、私、最初から冤罪だと思っていました。理由は簡単です。同世代だから分
かりますが、62歳ともなると、そんな元気がないからです(ああ、情けない!)。
ましてや、地位も名誉もある方が面識のないホテルの客室係などに引っ掛かるわけ
がありません。地位も名誉もない私ですら、電車の中では、痴漢の冤罪にならない
ように気をつけているくらいですから。

 小沢潰しの日本の陸山会裁判といい、政治的謀略による「オンナまたはカネ」の
冤罪は、各国共通なんでしょうね。真実を見抜く目を持ちたいものです。

 さて、資本金が5億円未満でも、負債が200億円以上であれば「大会社」とさ
れていますが、これを「とんでもない赤字会社」と捉えるのは、冤罪そのものです。

 先般も登記に関与しましたが、ほとんどが不動産関係の会社であり、不動産業界
では、100億や200億の取引も少なくなく、当然、借入れも大きくなり、借入
れが大きいということは、それだけ事業活動が活発だということです。

 司法書士になる前(平成年度の初期)、私はM&Aコンサルタント会社の法務担
当役員でしたが、当時、M&Aの取引(ディール)で数十億円動けば、日本国内の
M&Aとしては、相当規模の大きい案件でした。

 そのとき著名不動産会社の担当者が「ほう、われわれの業界では100億といっ
ても、誰もびっくりしません」といっていましたが、不動産取引では、100億円
の土地に90億円の担保が付いていても、100億円で取引し、負債は引き継がれ
ないのに対し、企業売買では、負債を引き継ぐという相違もあるでしょう。

 バルブ期には、不動産の地上げで急成長したバブル紳士の社長が、「この間、銀
行の人に会ったら、カネを借りてほしいというので、名刺代わりに100億円を借
りてあげた」などと私に話してくれたこともありました(その方はいまは消えてい
ます。自己破産?)。

 いずれにしろ、負債が200億円以上となり大会社になったら、お祝いと会計監
査人をつけなければなりません。譲渡制限会社であれば監査役会までは不要です。
いったん会計監査人設置会社になったのですから、翌年に負債が減少し、大会社で
なくなるような恥ずかしいことをしないよう(?)、しっかり応援しましょう。


2011.07.01(金)【組織再編と社外性の喪失】(金子登志雄)

 1日です。全国で合併等の組織再編が大量になされていることでしょう。え、組
織再編専門家のお前はどうかですって………。ノーコメントです(傷口に塩を塗る
ような質問には答えられません)。

 さて、社外取締役とは、株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会
社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去
に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他
の使用人となったことがないものをいいます(会社法2条15号)。

 まだ登記の経験はないのですが、この社外取締役が社外性を喪失したとき、例え
ば、業務執行に従事することになったり、子会社の使用人になったときは、「平成
〇年〇月〇日業務執行」とか、「平成〇年〇月〇日子会社の使用人就任」などとし
て、社外取締役の登記を抹消申請することになっています。

 では、A社がB社と合併し、B社の子会社であるC社がA社の子会社になったと
き、Aの社外取締役が10年前にC社でアルバイトしていたことが判明したとき、
何と表現するのでしょうか。

 合併の効力発生日をもって「平成〇年〇月〇日子会社の使用人就任」でしょうか。
でも、就任したのは10年前です(雇用関係なのに「就任」はおかしいじゃないか
という問題は横に置きます)。したがって、「平成〇年〇月〇日合併により過去に
子会社の使用人就任」でどうかと法務局と相談することになるでしょう。

 同一企業グループ外との組織再編が増えてきましたので、いつかこういう登記が
問題になるであろうと予測していますが(社外監査役が定員に満たなくなり、困る
企業も出てくるかもしれません)、ご本人としては、合併の結果として過去の犯罪
がばれてしまったよう不思議な気分に陥ることでしょう。

 このように社外性の要件は大昔の過去まで問うので、厳しすぎるように思います。
せいぜい、過去10年間程度にとどめるべきでしょうし、使用人についてもアルバ
イト程度は除外すべきでしょう。

 私、40年以上前の学生時代に日本通運で、宛名書き程度のアルバイトをいたし
ました。現行の会社法を前提とする限り、もう、私は、日本通運の社外取締役にも
社外監査役にも永久になれません。どおりで、日本通運から声がかからないはずで
す。あのアルバイトは大失敗だったのかと悔まれてなりません????。


2011.06.30(木)【プロは1日にしてならず】(金子登志雄)

 6月最後の日になりましたが、鳩山さんとの合意文書を反故にして、菅さんは居
座ったままですね。お得意のウソで危機を乗り越え菅さんはますます元気で、鳩山
さんの負けというのが、マスコミ上での定説ですが、自分の頭で考える皆さんは、
どう思いますか。

 メディアは政治音痴で、菅さんはますます追い詰められているとみるのは、ジャ
ーナリストの田中良昭さんです。大勢の意見に迎合しないで、自分の頭で考える田
中さんの見方は、「独立した自由人の思考」という意味で、参考になります。

 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/06/post_266.html#more

 さて、元男性の自由人・カルーセル麻紀さんの入院に関するネットニュースの下
に、彼女のオフィシャルブログのタイトル名が掲載されておりました。

 「女は1日にしてならず」
  http://ameblo.jp/carrousel-maki/

 「ローマは1日にしてならず」をもじったものとはいえ、小さい頃からの偏見と
闘い、やっと、りっぱな女になった人だからこそ使える言葉だなと妙に感心してし
まいました。

 これに関連して、先日のお客様は、元銀行員の方でした。当然、司法書士につい
ても詳しく、用件は、現在お勤めの会社で企画中の組織再編の相談でした。

 「はじめてのことで、何からはじめてよいか分からない」

 こういう質問を受けたときの私の返事はいつも同じです――「ハンコを押すだけ
です。契約書も公告も私が全部の案文を作りますから」。

 私としては、「ご心配なく」と安心させるための発言でしたが、元銀行員さんの
反応は、「へー、司法書士さんというのは登記だけするのかと思っていた」。

 いわれてみれば、そのとおりであり、昔はそれが普通でした。今は、そういう古
きよき時代ではなく、相次ぐ商法改正・会社法の制定で、実体法の比重が高くなっ
ていますし、当ESGメンバーのお仲間のように合併契約書(案)どころか、株主
総会の招集通知(案)まで作り、会社の非常勤役員まで兼ねてしまう今風の司法書
士もぼちぼち登場してきています(この点は、当ESGが先鞭をつけたと自負して
います)。

 登記申請だけでなく、登記の前段階から関与していますと、お客様から登記と無
関係なことも、さまざま質問されますので、それに即答できなければ、頼りない司
法書士で終わってしまいます。「ちょっと、お待ちください」といって別室で本を
調べ、答えるようではダメです。

 そのためには、多くの経験を積むだけでは不十分であり、次に起こるであろう問
題点を先読みし、解決策を想定できるだけの推理力も必要ですから、日々鍛錬し、
腕を磨かねばなりません。

 その方法としては、司法書士という第三者的地位に安住せず、自分が当事者にな
ったつもりで、「この場合はどうしよう、あの場合はどうしよう」と自分の問題と
して、1日24時間、それに集中することだと私は思っています。

 まだまだ私も修行中ですが、女だけでなく「プロも1日にしてならず」ですね。


2011.06.29(水)【定時株主総会集中日】(金子登志雄)

 今日は3月決算上場会社の定時株主総会の集中日ですね。東証傘下の上場会社の
うち41.2%が本日の開催のようです。

 なぜ、集中日は6月最後の30日ではなく、1日前の29日であるのか、お分か
りですか。有価証券報告書の提出期限が6月30日だからです。

 さて、定時総会の報告事項ですが、ほとんどの会社が次の方式です。
--------------------------------------------------------------------------
報告事項
1.第☆期(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)の事業報告及び連結計
  算書類並びに会計監査人及び監査役会の連結計算書類監査結果の報告の件
2.第☆期(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)計算書類報告の件
--------------------------------------------------------------------------

 連結計算書類を作成していない会社では、次のようになります。
--------------------------------------------------------------------------
報告事項
 第☆期(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)事業報告及び計算書類報
 告の件
--------------------------------------------------------------------------

 上場会社は会計監査人設置会社ですから、上記のとおり計算書類が報告事項にな
っているのであり(会社法439条)、会計監査人設置会社でない中小企業では、
計算書類につき株主総会で承認しなければなりません。時々、上場会社の真似をし
て、計算書類を承認議案にしていない会社がありますが、気をつけましょう。

 ついでですが、計算書類は4つあります。貸借対照表、損益計算書と何と何でし
ょうか。答えは計算規則59条1項にあります。

  http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18F12001000013.html


2011.06.28(火)【簡易合併の要件(最終回)】(金子登志雄)

 猿の駆除中に猿だと思い猟銃で撃ち人を殺してしまった気の毒な事件が和歌山で
ありました。刑法の勉強で出てくる(異なる構成要件間の)「客体の錯誤」であり、
故意の殺人罪に問うことはできず、(業務上)過失致死罪になります。

 さて、簡易合併の登記申請の添付書面でないのに、添付書面と思い込む「解釈の
錯誤」につき、昨日まで4回にわたって説明してまいりましたが(ネタ切れしてま
したので助かりました)、5回目となる最終回の今回は、法令の構造や証明責任の
点から検討してみましょう。

 簡易合併に関する法令の構造は次でした。
--------------------------------------------------------------------------
 会社法796条
 3項:合併で受け入れる純資産額が5分の1以下のときは、株主総会の決議を要
    しない。ただし、負債超過の受入れの場合は、この限りではない。
 4項:株主の一定数が反対したときは、株主総会決議を必要とする。
--------------------------------------------------------------------------
 
 証明責任の原則からすれば、規定の「本文」は原告が証明する本証事由であって、
「ただし書」部分は被告側が証明する反証事由だとされています。言い換えれば、
申請会社は、本文の簡易合併が可能である旨の「積極的要件」である純資産額要件
を証明すれば足り、特別事由でも生じない限り、株主総会を開催しないことの有効
性が推定され、簡易合併ができない旨の「消極的要件」である負債超過問題の証明
責任はないということです。

 ところが、簡易合併に反対株主が登場すると、特別の事情が生じるので、上記の
4項については証明が必要だということになるでしょうか。まさに商業登記法80
条2項の規定内容そのものです。

 公開会社の募集株式の発行を思い出してください。いわゆる有利発行のときは、
取締役会で増資を決議できませんが、「有利発行でないこと」は登記申請の添付書
面ではありません。

 こう考えても、負債超過かどうかの問題は、合併の事前備置書面の閲覧で分かる
ことですし(「債務の履行の見込み」についても開示事由です)、反対株主の買取
請求という防衛策もありますから、株主に不利な解釈とはいえないでしょう。

 私も、簡易合併の登記申請の際には、「なお、合併差損は生じません」と書くこ
とが多いのですが、「書かないより書いたほうが丁寧」ということと、「書かない
と違法だ」ということとは、厳格に区別しなければなりません。


2011.06.27(月)【簡易合併その4】(金子登志雄)

 23日に根来川さんが、「政治家は危機感が足りない」と書いたのに、最も危機
感の塊でいてほしい原子力安全・保安院の西山審議官に女性問題が発覚………。

 個人的には、あの年齢でも、あの顔でも、若い女性が相手をしてくれるのだと、
世の男性に自信と勇気を与えてくれた西山氏に感謝していますけど、世界に対する
日本の顔になっている現状を踏まえると、もっとTPOをわきまえてよ、といった
ところでしょうか。

 さて、簡易合併に関する下記の@式は、残念ながら、存続会社のA社が債務超過
であれば、A式に直せません。
-------------------------------------------------------------------------
   100株×A社の1株当たり純資産額   1
   ――――――――――――――――― ≦ ―  ・・・・・・@
        A社の純資産額        5

 「A社の純資産額=発行済株式の総数×A社の1株当たり純資産額」より

   合併対価の株数100株   1
   ――――――――――― ≦ ―  ・・・・・・・・・・・・A
   A社の発行済株式の総数   5
-------------------------------------------------------------------------

 その理由は、A社が債務超過だと、次だからです。
1.1株当たりの純資産額の最低額は、0円とされている(会規25条3項)
2.純資産額の最低額は500万円とみなされている(会規196条)

 つまり、存続会社であるA社が債務超過の場合に、分子も分母もマイナスであっ
ては困るため、分子の「A社の1株当たり純資産額」がマイナスの場合は、0円と
し、分母が500万円未満のときは500万円とされています。

 500万円を発行済株式の総数で除しても、0円にはなりませんから、分子と分
母の基準が異なり、@式はA式に書き直せないということになります。

 ここで面白い問題が生じます。
 発行済株式の総数200株のA社が合併新株を400株も発行する大きな合併で
も、A社が債務超過で公開会社であれば、@式の分子はゼロになるため、簡易合併
の要件を備えてしまいます。

 簡易合併とは合併存続会社からみて相対的に小さな合併だから、株主総会の承認
を得ずに済むというのが簡易手続のはずですが、こういうケースもあるのですね。

 簡易合併に反対する株主が大勢出現するでしょうから、制度的な歯止めはなされ
ていますけど、簡易合併の要件の分子である「合併対価の株数×1株当たりの純資
産額」において、「株数0株」(無対価)ばかりに着眼し、「1株純資産額0円」
に誰も着眼しないことについては、私は不思議でなりません。やはり、私が変なの
でしょうか。それとも、どこかに見落としがあるのでしょうか。


2011.06.24(金)【簡易合併の要件その3】(金子登志雄)

 合併存続会社がA社で合併対価がA株式のみのとき(仮に100株とする)、
簡易合併の主たる要件は次でした。

   100株×A社の1株当たり純資産額   1
   ――――――――――――――――― ≦ ―  ・・・・・・@
        A社の純資産額        5

 この式をみて、数学的頭脳をお持ちの方は、

 A社の純資産額=発行済株式の総数×A社の1株当たり純資産額 より、
上記@式は、

   合併対価の株数100株   1
   ――――――――――― ≦ ―  ・・・・・・A
   A社の発行済株式の総数   5
  
と書き直せるのではないかと思ったはずです。

 1株当たり純資産額も分母の純資産額も合併契約時が基準(会社法施行規則25
条、196条)とされていますから、対価が株式のみであれば、原則として、書き
直しが可能だといってよいでしょうし、現に、対価が株式しか認められなかった商
法時代の簡易合併の要件は、この株数基準でした(ただし、比率は20分の1)。

 なぜ、会社法で純資産額基準になったかというと、合併対価が株式に限られなく
なったためです(対価の柔軟化)。また、平成13年の金庫株改正で自己株式の存
在が大ぴらに認められ、自己株式を計算の外に置く商法時代の基準が合わなくなっ
たことも背景理由でしょう。会社法における純資産額は自己株式を控除項目とした
数値ですし、1株当たりの純資産額も自己株式を除いた数値とされているからです
(会社法施行規則25条)。

 さて、会社法で合併対価を商法時代と同様に株式に限定したとしても、A社の事
情次第では、上記@式をA式に書き直すことには問題があります。
 それは月曜日の話としましょう。


2011.06.23(木)【「危機管理」より「危機感」を】(島根・根来川弘充)

 昨今の新聞の一面は、管総理の退陣についてばかりです。批判は、もっぱら管総
理に対するものが多いのですが、退陣した後、どうなるのかが見えず、その後も迷
走が続く気がします。

 内閣不信任決議案が提出された頃、「大連立」構想も同時に騒がれていました。
個人的には、少し期待をするところがありました。

 今回の大災害は、各党ともに予測できたものではありません。ですから、当然そ
れぞれのマニフェストにも書かれているところはなく、非常事態に接し、全政党が
何ができるかを考え、速やかに、かつ、効果的に政策を打ち出すことに何の支障も
ないだろうと思っていました。

 しかし、残念ながら、大連立には、「『期限』や『政策合意』が必要だ」とのこ
とで、結局実現することはなさそうです。

 今回の被害は、死者行方不明者は25000人を超え、また、原発も考えると、
何万人、何十万人にも及んでいます。戦後の日本で、最大の被害と言えるとも思い
ます。

 もし、これが戦争による被害であったとしても、政争は起こったのでしょうか。
私は、おそらくそれは起きなかったのではないかと思います。

 災害なら起きるが、戦争なら政争が起きないとしたら、何の違いでそのような結
果になるのでしょうか。

 戦争であろうが、災害であろうが、被害を受けた多くの方がいる事実に変わりは
ないのですから、国民の生命財産を守ることが政治の使命であるなら、同じ結論が
出てしかるべきだと思います。

 被災地では、今後の生活に目処が立たず、自ら命を絶つ人まで出てきています。
原発事故等、災害に対する内閣の危機管理が間違っていたことで、多くの被害を出
している責任を追及されていますが、政争による政治空白で、さらに被害が拡大す
る責任は誰が誰を追及するのでしょうか。

 未曾有の非常事態でありながら、政争をおこなう政治家には、とても危機感があ
るとは思えてなりません。


2011.06.22(水)【簡易合併の要件その2】(金子登志雄)

 昨日の説明は、分かりにくかったかもしれません。簡単にまとめますと、次のと
おりです。

1.簡易合併の要件としては、@会社法796条3項本文の純資産額5分の1要件、
 A同ただし書の負債超過ではないこと、B同ただし書の対価が譲渡制限株式で存
 続会社が非公開会社でないこと、C同4項(簡易手続に反対の株主が一定数存在
 しないこと)の4つが必要である。

2.しかし、商業登記法80条2号は「会社法第796条第3項本文に規定する場
 合には、当該場合に該当することを証する書面(同条第4項の規定により吸収合
 併に反対する旨を通知した株主がある場合にあつては、同項の規定により株主総
 会の決議による承認を受けなければならない場合に該当しないことを証する書面
 を含む。)」と規定し、1の@とCの証明しか要求していない。

 以上のとおり、明文上、1のBを証する書面は、登記の添付書面でないことは明
らかです。

 したがって、「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」という表題は、正確
ではなく、正しくは「簡易合併の要件を【一部】満たすことを証する書面」という
べきでしょうか。

 ところで、負債超過でないことの意味については、昨日も書きましたが、消滅会
社の貸借対照表の話ではなく、合併直後に貸借対照表を作成したら、存続会社の純
資産額が減少していないかという基準です(会社法施行規則195条)。

 その際の証明が必要だとしたら、次のような証明書になるでしょうが、数字が固
まらない間に、この証明を要求すると、数字の正確性を重んじる会社は困るのでは
ないでしょうか。

 (1)合併直後総資産額          金〇〇円
 (2)合併直前総資産額          金〇〇円   
 (3)合併直後総負債額          金〇〇円
 (4)合併直前総負債額          金〇〇円
 (5)(1)−(2)−{(3)−(4)}  金〇〇円≧0円

 さて、皆さん、兄弟会社間の合併で、消滅会社の貸借対照表は次だったとします。
    
  資産 800万円 | 負債         900万円
           | 資本金       1000
           | その他利益剰余金 △1100

 存続会社は合併対価として、現金200万円を交付しました。負債超過の合併に
なるでしょうか。

 兄弟会社の合併だから簿価で受け入れ、しかも100万円の債務超過だから、簡
易合併が無理なことは明らかじゃないかと思いませんか。

 間違いです。次の仕訳です。

    受入れ資産 800万円 | 受入れ負債 900万円
    のれん   300   | 出た現金  200 

 このように、負債超過かどうかは一筋縄では行きません。会計処理によっても大
きく異なるのです。負債超過でないことの証明を登記に求めたら、街の司法書士で
は対応が困難でしょう。法務局も審査ができるかどうか………。

 簡易合併については、まだ続きますが、明日の徒然担当は、根来川さんです。


2011.06.21(火)【簡易合併を証する書面】(金子登志雄)

 司法書士界で最も有名な横綱ブログといえば、京都の内藤先生のブログです。閲
覧数では、東京の新保先生のブログも知る人ぞ知る幕内クラスです。ブログ形式で
はありませんが、本徒然など閲覧数では足元にも及びません。序二段クラスです。

 今日は別の話題にする予定でしたが、上記2大ブログで、登記に必要な「簡易合
併を証する書面」の必要的記載事項につき、意見が異なったようですので、本徒然
も、急遽、予定を変更し、序二段の身分もわきまえず、参戦することにしました。
というのは、新保先生のブログに茶々を入れた責任が私にあるからです。

 まずは、下記をお読みください。

(新保先生のブログ:6月17日) http://blog.goo.ne.jp/chararineko/

(内藤先生のブログ:6月20日) http://blog.goo.ne.jp/tks-naito

 会社法796条3項ただし書に該当しない合併であること(負債超過の合併でな
いこと、抱きわせ株式消滅損の発生しない合併であること)が「簡易合併を証する
書面」の必要的記載事項かどうかで、意見を異にしています。

 新保先生は、当初、負債超過について触れるのは面倒だと書いていましたので、
私が書かなくても問題ないと指摘しました。新保先生も理解してくださりブログを
修正しました。私には、その責任があるわけです。

 論点は、商業登記法80条の「会社法第796条第3項【本文】に規定する場合
には、当該場合に該当することを証する書面」の解釈です。

 会社法796条3項の該当部分を要約すると次のようになっています。
--------------------------------------------------------------------------
【本  文】:
  会社法第795第1項から第3項までの規定は、純資産額要件が5分の1を超
 えない場合には、適用しない。
【ただし書】:
  会社法第795条第2項各号に掲げる場合(負債超過)は、この限りでない。
---------------------------------------------------------------------------

 内藤先生は、「会社法第796条第3項【本文】に規定する場合」を「簡易合併
が可能である場合」と解釈なさるようで、ただし書の負債超過でない旨も証明事項
だとのお考えのようですが、それだったら、商業登記法80条がわざわざ「第3項
【本文】」と規定するとは思えません(略式合併の場合も、会社法第796条第1
項【本文】に規定する場合」と、【本文】である旨を明記しています)。

 商業登記法80条は、文字どおり「株主総会を開催しなければならない場合の会
社法795条1項から3項までの規定は、純資産額要件が5分の1を超えない場合
には、適用しない」という意味であって、あえて言えば、負債超過でも簡易合併は
可能だという内容です。そして、ただし書で、負債超過の場合を否定しているので
あって、ただし書の内容を本文と一体化して読む必要はないと考えます。

 こう解釈することは、旧商法時代の解釈とも整合します。旧商法・旧商業登記法
では、消滅会社が債務超過でなければ簡易合併も可能だとされ、抱きわせ株式消滅
損の発生しない合併であることの証明は不要でした。現行商業登記法もこの延長に
あるというべきです。

 例えば、A社がB社を1000万円で設立し、100%子会社のB社の純資産額
が800万円のとき無対価で吸収合併するときは、旧商法時代には債務超過会社の
合併ではないので、問題なく簡易合併が可能でした。A社が受け入れたのは、プラ
ス800万円の財産だからです。

 会社法では会社法施行規則195条があるために、受入れ財産ではないのにAの
有するB株式(抱き合わせ株式)が合併で消滅することを理由として、最終的にA
の純資産額が200万円減少することを根拠に、簡易合併を不可としました。

 合併とは本来、直ちにAの貸借対照表を変動させる取引とされていますが、この
200万円は損益計算書の特別損失であり、本来であれば決算期に他の損益と通算
した純損益としてA社の貸借対照表に反映するものです。その意味では、旧商法の
取扱いが会計処理としては妥当なのでしょうが、結果は不合理だと考えて、合併に
よる損益を合併手続に反映させるために会社法施行規則195条が設けられたもの
です(と私は推測しています)。

 正真正銘の負債超過で共通支配下関係の兄弟会社間合併であれば、資本金計上証
明書や株主資本等変動額の面から、負債超過かどうかが判明します(無対価の場合
は無理ですが)。

 また、第三者を吸収合併する「支配取得」の案件では、消滅会社が簿価債務超過
でも、のれんを計算して負債超過の合併とは扱いません。

 このような沿革や会計処理の基本からしても、会社法796条3項が「本文」と
「ただし書」を使い分けていることが理解できるのではないでしょうか。
 
 簡易合併でも債権者保護手続はなされますし、負債超過かどうかの証明には合併
登記で近づかないというのが商業登記法の一貫した姿勢だと私は解釈しています。


2011.06.20(月)【種類株式と単元株式その3】(金子登志雄)

 今週は、3月決算会社の定時株主総会が順々に開始される大事な週だというのに、
知らないうちに昨日から左肩を筋違いで痛めてしまいました。40肩・50肩とい
いたいところですが、アラ(ウンド)還(歴)世代ですから、それは過ぎました。

 まぁ、パソコンも右手の中指1本で打つ何事も自己流人間ですから(これで本も
書きました)、仕事には全く支障ありません。

 さて、自己流人間は、時として人の気づかないおかしなことを考えてしまいます。

 種類株式発行会社の単元株式数は、

 単元株式数 | 普通株式 1000株
       | A種株式  100株

などと登記しますが、

 単元株式数 | 普通株式 1000株
       | A種株式 取締役選任議案については、10株
              それ以外は、100株

というのは、認められないのでしょうか。

 単元株式数 | 普通株式 1000株
       | A種株式  100株
         ただし、株式分割又は併合をしたときは、次の算式による。
         新単元株式数=分割・併合前単元株式数×分割・併合の比率

という調整式入りは、いかがでしょうか。

 どの本にも書いてないでしょう。

 上記の議案別の単元株式数については、単元未満株式とはどちらをいうのか不
明になりますし、調整式入りも、「算定方法」を肯定する規定がないため、おそ
らく「ノー」と当局は答えるでしょうが、こういう質疑応答がないのも不思議な
気がします。やはり、私が変なのでしょうか。


2011.06.17(金)【種類株式と単元株式その2】(金子登志雄)

 逮捕され起訴猶予になったロック歌手・内田裕也さんが弁護士料を払えない言い
訳として、「ロックの宿命で経済的に貧困状態」と言ったそうです。71歳でこれ
ですから、幸せな人生ですね(周囲はたいへんだ!)。

 さて、「会社法専門司法書士の宿命で経済的に貧困状態」の私がした昨日の質問
――A種株式を普通株式に転換(取得請求)するときは、転換比率をA種株式1株
につき普通株式10株とする。だから、A種株式の議決権は普通株式の10倍にし
たいが可能ですか――の回答ですが、

 この質問に、「可能だ」と答えるためには、「1単元0.1株」を肯定しなけれ
ばなりません。しかし、これは法の想定外であり、認められません(【普通】株式
が1単元1000株であるところ、【A種】株式につき10倍の議決権である1単
元100株にするような場合は肯定することができます)。

 元来、単元株式制度は、株主管理コストの節減を目的とした制度(たった1株し
か所有しない株主にも株主総会の招集通知を送るのはコスト負担が大変だ)であり、
1単元100株などと定めることによって、議決権の個数を減らそうというもので
す。「1単元=複数の株数」でなければならず、1株の議決権を増やしては本末転
倒です。

 「1単元2.5株」といった小数も認められないでしょう。1株1議決権が原則
であり、整数の複数株式(複数議決権)を1個の議決権にしたのが単元株式数だか
らです。

 ついでに、次の質問です――「普通株式 20万株、A種株式 800株」のと
き、A種株式1単元1000株と定めることは、可能ですか。A種株式の議決権が
なくなりますが………。

 会社法施行規則第34条により単元株式数の上限は、「千及び発行済株式の総数
の200分の1に当たる数」です。分母は発行済株式の総数で、発行済【A種】株
式の総数ではありません。もう結論はお分かりですね。

 来週こそ、「会社法専門の宿命で経済的に貧困状態」の老人司法書士に福の神が
舞い込みますように………。皆様もご一緒に祈ってください。


2011.06.16(木)【種類株式と単元株数】(金子登志雄)

 こんな質問を受けました――A種株式を普通株式に転換(取得請求)するときは、
転換比率をA種株式10株につき普通株式1株とする。だから、A種株式の議決権
は普通株式の10分の1にしたいが可能か。

 私の回答は――議決権については議案ごとにあるかないかを定めることはできて
も(例えば、役員選任議案には議決権がない)、議決権0.1個というような分量
的制限はできません。このような場合は、単元株式制度を採用し、1単元10株と
A種株式に定めることになります。

 ここでハタと迷いました。われわれ実務家は常にゴールを見据えて動きますから、
A種株式1単元10株をどう登記するのかという疑問です。会社法188条に「単
元株式数は、【株式の種類ごとに】定めなければならない」とあるからです。

 この解釈につき、旧商法時代の法務省の回答では、【全種類の株式それぞれに】
との意味合いだと捉えているようで、この見解を前提にすると、「普通株式1単元
1株、A種株式1単元10株」と定めることになります。

 しかし、【株式の種類ごとに】とは、【株式の種類に応じて個別に】という意味
に過ぎないでしょうから(例えば、会社法199条5項の「募集ごとに」)、無関
係な普通株式に触れずともよいとは考えられないでしょうか。仮に【全種類の株式
それぞれに】という意味だとしても、「普通株式には単元株式数を定めない」と定
めることも可能ではないでしょうか。

 旧商法時代に、「1単元1株」と定めることは、端株制度を不採用という意味が
込められていましたが、端株制度が廃止された会社法の下では、その意味もありま
せん。また、仮に1単元1株と無意味な定めをするのに、わざわざ株主総会による
定款変更決議までは不要ではないかという疑問もあります。

 と書いたところで、単元株式に関する別件で仲間内にメールしたら、富田氏から
松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』40頁に、私の見解で問題ないと
あることを教わりました。法務省見解に変化があったようです。全くの別件での連
絡だったのですが、偶然に「単元株式といえば、こういう議論がある」と彼から教
えてもらったものです。

 勉強嫌いの私は何もみずに、条文だけで、ああでもないこうでもないと考える省
エネ・タイプですが、受験指導本を書く富田氏は、多数の文献に目を通し、権威あ
る根拠のあり場所をよく知っているので、非常に助かります。

 さて、私から皆様に質問です――A種株式を普通株式に転換(取得請求)すると
きは、転換比率をA種株式1株につき普通株式10株とする。だから、A種株式の
議決権は普通株式の10倍にしたいが可能ですか。


2011.06.15(水)【冊子株券】(金子登志雄)

 ただいま、種類株式を定款に定める準備をしておりますが、原案は法律事務所が
作成したものですから、あらゆる場合を想定した長文の内容になっています。

 新株予約権に関して5月17日付け本欄で書きましたが、この種類株式にも他の
株式への転換条項につき、決まり文句の「当社が合併、会社分割又は株式交換を行
う場合及びその他これらの場合に準じて株式数の調整を必要とする場合は、当社は、
取締役会において必要と認める株式数の調整を行うことができる」といった内容も
記載されていました。

 しかし、こういう漠然とした内容では、会社法が許容する「算定方法」(例えば、
会社法108条2項5号ロ)としては耐えられる内容ではありませんから、ほとん
ど無意味な定めです。それでも、横並びの悪慣例の決まり文句ですから、定めてお
かないと不安があるのか、挿入しておくことが多いようです。

 この長文を登記簿に表すと、2頁程度を占めてしまうと思うのですが、登記記録
には分量の制限がないので、まぁ、よしとしましょうか。

 問題は株券です。株券には「株式の種類及び内容」を記載することになっていま
す(会社法216条)。A4用紙並の大きさの株券に小さな文字で書きこまない限
り収まらないでしょう。

 ということで、われわれ司法書士は、登記簿記載を前提に可能な限り簡潔明瞭な
内容にしようと思ってしまいますが、リスク管理が重視される今日では、すべてで
長文になる傾向がありますから、この際、保険証券のように「冊子株券」にするの
も1つの手かなと思い直しました。また、そうせざるをえないでしょう。

 一体、どんな株券を作るのかなと楽しみにしておりましたら、残念なことに、種
類株式を設定するのを機に株券を廃止したいという依頼を受けてしまいました。

 種類株式発行会社の株券を巡る裁判では、そのうち「株券何頁によると………」
という陳述が登場するのかもしれませんね。


2011.06.14(火)【1発屋芸人】(金子登志雄)

 たまたま土曜日にテレビをみておりましたら、一発屋芸人の収入を話題とする番
組をやっており、流行っていた頃は月収が何百万円だったが、ブームの過ぎた今は
20万円以下という方がほとんどでした。

 浮き沈みの大きいたいへんな職業だなという思いとともに、注文があってナンボ
の司法書士であるわれわれも、その他の受注産業も、飲食業も、多かれ少なかれ同
様の部分がありますので、笑ってみていることができませんでした。

 不動産バブルの頃は不動産専門の司法書士は、笑いが止まらず、これが永久に続
くだろうと思っていたことでしょうし、つい最近では、債務整理専門の司法書士が
脱税で捕まるほど儲けていたのに、いまやブームも去り、お先真っ暗であろうと推
測します。

 浮き沈みの高低は、不動産や債務整理ほどではありませんが、私のような会社法
案件・商業登記専門司法書士も、あの一連の商法改正時代や会社法施行直後を思い
出し、「あの頃はよかったなぁ」と過去を懐かしがっている始末です。

 やはり行きつくところは、こつこつと地味な努力で生活の糧を得るということで
すが、当ESGメンバーも全員が途中廃業もせずに、人並みの生活を送れているの
は、不動産であれ、商業登記であれ、顧客に真面目な努力が評価されているためで
しょう。

 司法書士の仕事のよいところは、日々の積み重ねである経験が財産になるという
ことで、こと仕事の面においては、「あの若い頃が懐かしい」と思う必要がないこ
とでしょうか。

 そのためにも、流行りすたりを超える腕(技術)を磨かねばなりませんが、その
腕には表現力や文章力も含まれます。本徒然に積極的に投稿して、それを鍛えよう
とするお仲間が少ないのは、ややもったいない気がしないでもありません。


2011.06.13(月)【政治評論家という職業】(金子登志雄)

 先週の週刊誌は、内閣不信任案に関するドタバタ特集の感がありました。

 記事は、おおむね「政治評論家の〇〇氏によると………」といった具合で、複
数の政治評論家のコメントを中心に構成されていました。いつものパターンです。

 しかし、そんな名前の政治評論家の存在は全く知りませんし、コメント内容が
ひどいものでした。単に菅・鳩山・小沢氏らに対する漠然としたイメージや好き
嫌いで評論しているだけで、ジャーナリストように足で取材したとか、経済評論
家のように何らかの資料に基づいて分析したというものが全くありません。井戸
端会議での声の大きいオバサンの域を全く出ていませんでした。テレビのワイド
ショーと同じです。

 こういう有名でない政治評論家さんは何で生活しているのでしょうか。あの程
度の内容で、報酬がもらえるとは、到底思えませんでした。

 もっとも、マスコミに登場する政治評論家も大差ないですね。元政治記者が多
いようですが、政局に対して、いかにも裏事情を知っているかのように適当なコ
メントをしているだけで、議会制民主主義に精通しているとか、欧米の政治状況
と比較して日本の政治を論じているとかの知的要素が全く感じられません。単に、
傍若無人に政治を断じて視聴者のうっ憤晴らしに協力している、いかがわしいオ
ジサン達に過ぎません。

 傾聴に値する意見を出す評論家やジャーナリストは、時の政権に批判的な意見
をいうことが多いため、テレビ等のマスコミの世界では敬遠して登場させません。
日本のような巧妙な「思想管理社会」にとっては、政治評論も「口によるプロレ
ス」になり下がってしまったのでしょうか。

 あ、まずい、本物のプロレスに失礼じゃないかと、愛好家のあの方に叱られそ
うです。今週も、無難に会社法運用評論家として、会社法でも断じましょうか。


2011.06.10(金)【補欠監査役と後任監査役】(金子登志雄)

 会社法336条3項に、「定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠
として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとするこ
とを妨げない」とあるため、多くの会社がこれを定款に定めています。

 では、たった1人の監査役Aが任期を2年残して辞任し、交代にBが就任すると
きに、このBの任期はいつまでかというと、そう単純ではありません。

1.補欠監査役として選任
 
 Bが「補欠監査役」として、予選されていれば、この定款の定めによりBの任期
は、あと2年です。

 会社法329条2項に「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役
員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる」とあ
るとおり、「補欠監査役」は、法律や定款で定めた員数を欠いた場合の補欠であり、
予選で定めておく監査役の待機者です。Bもこれに該当します。

 予選で定めておくことによって、改めて臨時株主総会を開催し、欠員を補充する
必要がなくなります。逆にいえば、株主総会招集回避型の補欠です。

2.退任監査役の補欠として選任

 「本総会の終結をもって監査役Aが辞任するので、その補欠としてBを監査役に
選任したい」と株主総会で選任した場合は、どうでしょうか。

 予選ではないため会社法329条の「補欠監査役」ではありませんが、補欠とし
て選任されていますので、定款の定めにより、このBの任期も、あと2年です。

 念のため、1の場合の株主総会の議案は「補欠監査役選任の件」ですが、2では
通常どおり「監査役選任の件」となります。監査役の法定(又は定款)員数を欠い
た場合でなくとも可能です(監査役が甲乙のところ、乙が辞任するので丙をという
場合など)。

3.退任監査役の後任として選任

 株主総会で定める際に、「本総会の終結をもって監査役Aが辞任するので、その
後任としてBを監査役に選任したい」と選任した場合は、どうでしょうか。

 専門家の司法書士を含め勘違いしている方が非常に多いのですが、後任として選
任するだけでは補欠として選任したことになりませんので、このBの任期は、通常
の任期となります。


2011.06.09(木)【補欠監査役の選任議案】(金子登志雄)

 3月決算会社の上場会社の定時株主総会が近づき、各社の総会議案が分かるよう
になってきましたが、最近は、監査役を4名以上の体制にする上場会社が多いのか、
補欠監査役の選任議案のニーズが少なくなった印象があります。

 その最大の理由は、毎年、補欠監査役の選任を議案にすることが面倒だからでし
ょう。会社法施行規則96条3項本文に「補欠の会社役員の選任に係る決議が効力
を有する期間は、定款に別段の定めがある場合を除き、【当該決議後最初に開催す
る定時株主総会の開始の時まで】とする」とあるからです。

 しかし、よく読むと、「定款に別段の定めがある場合を除き」とあります。定款
で定めれば、毎年、選任する必要はないのです。

 では、その期間は、何年間有効かと申しますと、公開会社の「監査役の任期は、
選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結
の時までとする」(会社法336条1項)が補欠監査役にも適用されますから、公
開会社にあっては、一般に「補欠監査役の選任に係る決議の効力は、選任後4年以
内に終了する事業年度うち最終のものに関する定時株主総会の開始の時までとする」
と定めます。

 その4年間に補欠監査役の人柄などに問題が生じることもありますから、選任決
議の取消も可能です(会社法施行規則96条2項6号)。

 監査役会設置会社では、半数以上が社外監査役であることを要しますから(会社
法335条3項)、監査役が4名であっても、社外監査役が2名の場合には、補欠
監査役を選任したほうが安全です。ご検討ください。


2011.06.08(水)【人間力】(金子登志雄)

 とうとう経団連も菅首相を見限ったようですね。その某新聞報道の締めの言葉と
して「政治には力強いリーダーシップが必要だ」との米倉経団連会長の言葉を取り
上げていました。

 新聞も無責任ですね。力のあるリーダーの下には、ヒトもカネも集まるのが自然
の成り行きなのに、やれ「あの集めたカネは黒いカネに違いない。カネで子分を集
めるのは邪道だ。クリーン政治を」などと、成功者に対する庶民の嫉妬心を煽って、
力のあるリーダーを次々に潰してきたのは、マスコミ自身ではないでしょうか。

 さて、力のあるリーダーの1人である小沢氏について、雑誌等に小沢は海部総理
のことを「担ぐ御輿は軽くてパーがいい」といったとんでもない奴だなどと批判し
てきた政治評論家・田崎史郎氏が、なぜか、こんな論考を出しました。

--------------------------------------------------------------------------
 政治家には、人に仕えるタイプと、ポストに仕えるタイプがいる。菅の周りにい
る人たちはほとんど、その役職に就いているから菅を支えるというポストに仕える
タイプだ。これに対し、小沢の周りにいる人たちは小沢に惚れ込み、仕えている。

 その求心力をもたらしているのはおそらく小沢の「人間力」だ。菅の人間力はな
いに等しいが、小沢には十分にあると見なければ、この政局における議員の動きを
理解することができないのではないか。

      http://gendai.ismedia.jp/articles/-/7447
--------------------------------------------------------------------------

 確かに、菅執行部に党員資格を停止され閉門蟄居の身でありながら、今回、不信
任案賛成者を70名以上も集めたのですから、カネ以外の力というべきでしょう。

 私も、2年前の西松建設事件以来、小沢氏に興味をもち、本欄のネタ探しを兼ね
て、小沢氏の著作などを読みましたが、常に批判に晒されている政治家にはよくあ
ることですが、マスコミが作った虚像とは大違いで、実に魅力に溢れる人でした。

 腹が立つほど私と正反対なんです。決して人の悪口をいわない、弁解もしない、
弱音も吐かない、人のせいにしない、愛妻家で結婚記念日には家に早く帰る………。

 私が勝てるのは、せいぜい善人「顔」くらいでした。私と同様に、小沢氏の力強
さを感じる人が多いのか、こんな題名の本さえ出ています。

(泣かないあいつが憎らしい)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?KEYWORD=%8B%83%82%A9%82%C8%82%A2%82%A0%82%A2%82%C2

 また、日本国憲法を実によく勉強しており、西欧の人権感覚をもっていると同時
に、付き合いもよく義理人情に厚い人でした。「頭は西洋人だが、首から下は土着
日本人」と郷里の岩手ではいわれているようですが、この土着日本人的部分が田崎
氏のいう「人間力」なのかもしれません。

 唯一、愚かな質問をする不勉強な記者に対しては冷淡な対応をするので、それが
評判を悪くしている理由の1つになっていますから、ひょっとして、田崎氏も、若
い頃に、冷たくされて小沢嫌いになったのかもしれません。

 ちなみに、「担ぐ御輿は軽くてパーがいい」といったのは、小沢氏の盟友の平野
貞夫氏です。それでも、「それは平野が言った」ともいわないで今日に至ります。
どこかの首相のように、すぐに他人のせいにする人だと、私も少々優越感を感じる
ことができるのですが………。
 

2011.06.07(火)【解散会社の定時株主総会】(金子登志雄)

 菅首相の退陣が決まったら、マスコミは早速、次期首相は枝野か岡田かなどと
言い出しました。普通に考えれば、辞任詐欺の共謀共同正犯の責任を負う方々で
あって、到底あり得ないことだと思うのですが、何を考えているのでしょうか。

 さて、その話は横に置きまして、3月決算会社の定時株主総会の時期が近づき
ましたが、5月に解散した会社の定時株主総会の準備はどうすると思いますか。
例えば、監査役は監査報告を作るべきでしょうか。

 3月末日の決算期を過ぎて解散したのだから、当然に監査報告を作り、定時株
主総会を開くべきだと、つい思ってしまいます。

 しかし、解散すると、会計監査人設置会社の場合には、会計監査人も自動的に
不在になり、監査役は会計監査に困ってしまいます。また、解散すると取締役が
1人もいなくなり清算人と交代します。株主総会の招集を決定する取締役会もな
いこととされ、総会を招集する代表取締役もいなくなります。

 清算人が招集を決定し招集すればよいじゃないかとも思いますが、清算人には
そのような権限がありません。

 清算会社にも定時株主総会というものがありますが、それは清算「事務」年度
(事業を行わないので事「業」年度とはいいません。解散の翌日からスタートし、
1年間ごとです)の決算の承認の問題です。

 いろいろ考えますと、通常の事業年度を前提とした定時株主総会は開催しなく
てよいことになります(税務申告は別問題)。

 会社法509条によると、決算公告に関する会社法440条3項が適用される
とあり、一瞬、びっくりしますが、これは解散前に定時株主総会があった場合の
ことでしょう。

 こうしてみると、解散した途端に別会社になると考えた方がよさそうですね。
 

2011.06.06(月)【百術は一誠に如かず】(金子登志雄)

 菅さんの退陣偽装問題がたったの数日で予想どおりの展開になってきました。

 当初は、一杯食わされた鳩山さんの友愛に対する非難が大きかったようですが、
勝負はあの1日で終わりません。案の定、菅さんは追い込まれてきました。

 「してやったり。これで政権の危機を乗り越えた」と、当初は、ほくそ笑んで
いた菅さん側に対する鳩山さんの怒りは大きく、それが津波のように与野党議員
を巻き込み、いまや菅さんは四面楚歌の状態です。もう、菅さんは解散もできま
せん。最大の武器を鳩山さんに奪われたわけです。

 信じがたいのは、菅さんを取り巻く政権幹部の人心を読めない戦略です。この
ペテン(?)作戦は、菅・岡田・仙谷・枝野さんらが前日夜に練ったようですが、
当初は何を勘違いしたのか、「勝てば官軍」で、「松木だけでなく欠席した小沢
も除名せよ」などと実に威勢がよかったのに、ここ数日のあまりの逆風に、最近
では「夏までには辞任するだろう」と、風よけの発言が目立つようになりました。

 やはり「百術は一誠に如かず」(小沢さんの座右の銘)で、市民運動家(菅さ
ん)や弁護士(仙谷・枝野さん)さん特有の口先勝負の百術が世論からも見破ら
れるようになってしまったのでしょう。口先で小沢攻撃をしていた頃は、それな
りに世論の支持があったのに、口先が保身や他者への責任転嫁に変わり、とうと
う詐欺・ペテンとまで非難されるようになってしまい、さすがの菅応援団(実は
反小沢・鳩山)のマスコミも手を引きはじめたようです。

 「国民生活第1」の旗を降ろし、口先ではノーサイドといいながら、挙党体制
を構築せず、民主党を泥沼の内戦に導いたのは、小沢攻撃・鳩山排除をすれば、
マスコミが応援してくれて、長期政権になると目論んでいた菅さん側ですから、
ここは、いさぎよく辞任してくれないと、民主党どころか、国民が不幸です。国
難のいまは、なおさら早期収束が必要です。

 反小沢・鳩山のイエスマンで周囲を固めた報いとはいえ、最後(PSの論評で
は「最期」が使われていました)は、イエスマンにも見捨てられそうな菅さんを
みていると、憐れを感じます。次期総理には、「信義のある政治」を行える人を
望みたいものです。

(PS)
 この非常時に権力闘争とは何だと怒っている貴方に。
------------------------------------------------------------------------
 この国では「民主主義」をまともに教えていないから、民主政治について国民
の多くはとんでもない勘違いをしている。「政局はけしからん」とか「権力闘争
ばかりしてなんだ」と言うが、民主主義政治とは国民を守るために権力闘争をす
る事を言うのである。国民に主権があると言う事は、自分たちの生活を守ってく
れないと思ったら、権力者を「ころころ変える」権利があるという事である。
------------------------------------------------------------------------
 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/06/post_264.html#more


2011.06.03(金)【三方一両損】(金子登志雄)

 菅内閣不信任案は土壇場で否決され、何とも後味の悪い結末でしたが、いったい、
だれが勝ったのでしょうか(以下、敬称は省略します)。

1.居座ることに成功した菅が勝った――でも、大勢の前で辞任表明させられまし
 た。もう、誰もいうことを聞かなくなります。不信任案が可決寸前で人望がない
 ことも世界中に知れ渡ってしまいました。

2.辞任表明に追い込んだ鳩山が勝った――でも、土壇場で反対に回り、筋を通さ
 ない人というマイナスイメージが残りました。「一定のめどがたったらやめる」
 などという菅の偽言に、またもや、はめられたお人好し、あるいは、またもや、
 小沢を2階に上げて梯子をはずした人というイメージを持たれてしまいました。

3.辞任表明に追い込んだ小沢が勝った――不信任案賛成派を70人以上も集め、
 さすがは小沢という評価が、不信任案を可決できず、一転して、小沢は終わった
 という評価に変わってしまいました。ご本人も悔しい思いでしょう。

4.辞任表明に追い込んだ谷垣自民党が勝った――大差で否決されたので、何のた
 めの議決だったのかと思われてしまいました。谷垣も立場がなく、影が薄くなっ
 てしまいました。

 もし、不信任案が可決したら、最もメリットのあるのが谷垣自民党でしたから、
それを回避したという点では民主党の成功だったのでしょうが、菅も鳩山も小沢も、
上記のとおりダメージを受けました。

 三方一両損で、大人の決着としては、妥当なところかもしれませんが、菅が鳩山
の描いた想定どおり早期にやめれば「妥当な落とし所」といえても、しぶとい菅は、
「一定のめど」は、まだついていないと、今後も長期に居座り続け、小沢・鳩山排
除に向かうのではないかという気もします。

 結局、私も判断がつかず、「一定のめど」がついたら、コメントしましょう。


2011.06.02(木)【内閣不信任案の提出】(金子登志雄)

 昨日の夕方には、自民、公明、たちあがれ日本の3党による菅政権に対する内閣
不信任決議案が衆議院に提出されました。

 根拠は憲法69条です。
--------------------------------------------------------------------------
 第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決し
たときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
--------------------------------------------------------------------------

 なぜ、憲法は、内閣総理大臣の「解任」あるいは「解職」という用語を使わなか
ったのでしょうか。

 内閣に対するものであって内閣総理大臣に対するものではないからという理屈も
あるでしょうが、「内閣は、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣で」
組織され(憲法66条)、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これ
を指名」し(憲法67条)、「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する」ものですから、
実質は同じです。

 おそらく、「国会」が内閣総理大臣を指名するのであって、「衆議院」が指名す
るわけではないこと、また国会がするのは「指名」であって、「任命」は天皇の権
限とされているため(憲法6条)、あえて「クビ」を意味する用語を避けて、「辞
職」を待つ形式にしたのでしょう。

 今日の午後にも採決されるようですが、報道では、とうとう与党のあの人(小沢
氏ではありません)も賛成に回る見込みとか。

 誰が賛成で、誰が反対かは、今後の政局に大きく影響することでしょう。政界再
編の幕開けになるかという、国の将来に大きな影響のある採決ですから、しっかり
と注視していきたいと思っています。


2011.06.01(水)【法令の拗音・促音、ついでに木へん】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、商業登記法の条文で、「もって」を検索してみてください。
「よって」でも、「あって」でもかまいません。

 附則には登場しますが、本文には登場しません。「もつて」「よつて」「あつて」
で、「つ」が大きい文字になっています。これに対して、会社法はすべて「もって」
「よって」「あって」です。

 「以テ」なら見慣れていますが、「もつて」までは気づきませんでした。「昭和
63年7月20日内閣法制局総発第125号内閣法制局長官総務室から内閣官房内
閣参事官室あての通知」が原因だと教わりました。

 http://www5d.biglobe.ne.jp/Jusl/Bunsyo/yayuyotu.html

 「もつて」を大書き、「もって」を小書きと表現するのですね。

 この関係で、刑法は「もって」ですが、刑事訴訟法は「もつて」でした。

 ところで、学校では、手へんは下がはねるが、木へんははねないと教育しますが、
先般、函館(古くは箱館)旅行したとき、古い木の看板で「箱」の字の木の下がは
ねていました。私の自宅の近くにある平安時代からの由緒あるお寺さんの木の看板
の「櫻」の字の木へんも下が思い切ってはねていました。共に、相当古い時代から
の看板です。

 もともとは書体の差のようですが、時代が変われば、おかしなルールが増えるも
のですね。木だって根っ子が地上に飛び出すことがよくあるので、下がはねるのは
当然だと私も思います。国家は、はねあがり(者)を嫌うのでしょうかね。


2011.05.31(火)【商号の「ジ【ヤ】パン」】(金子登志雄)

 商号に「ジャパン」をつける会社が少なくないのですが、中には「ジヤパン」と
わざわざ「ヤ」を大きい字で書く会社も少なくありません。かつての類似商号調査
で見落とさないように注意したものです。
 その他、インフ「オ」メーションとか、テ「ィ」やフ「ァ」、フ「ィ」ではなく、
テ「イ」、フ「ア」、フ「イ」を使う会社も少なくありません。

 これにつき、ウィキペディアの「商号」に、登記上の商号につき、こんな説明が
ありました。
--------------------------------------------------------------------------
 以前はカタカナのャュョッァィゥェォも使用が認められなかったため、登記上の
社名をヤユヨツアイウエオに置き換えたケースもある(例:ジャパンタイムズ→登
記上は株式会社ジヤパンタイムズ)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%95%86%E5%8F%B7#2002.E5.B9.B410.E6.9C.8831.E6.97.A5.E4.BB.A5.E5.89.8D
-------------------------------------------------------------------------

 まさかと思い、商業登記界の大御所で元法務局長の商業登記倶楽部主宰者・神ア
(こうざき)先生にお尋ねしたところ、「初めて聞く見解です」と驚いていました。

 調べましたところ、シェル石油やタカキューは、昭和20年代からの商号のよう
ですから、ウィキペディアの明らかな誤りだと思います。

 その後、なぜ、「ジヤパン」などが多いのかと、いろいろ考えました結果、戦前
の大人相手の文章表現では、「ゃゅょ」(拗音)や「っ」(促音)を用いないこと
が慣例でしたから(「しょーゆ」や「しょうゆ」ではなく、「しようゆ」と書いて
いました)、おそらく、この影響でしょう。

 ちなみに、電子機器のキ「ヤ」ノン、マヨネーズのキ「ユ」ーピーであることを
今回知りました。ただし、キヤノンの理由は、見栄えの面から「ャ」を避けたよう
です。
   http://web.canon.jp/about/mark/index.html
 

2011.05.30(月)【5000万円の誘惑】(金子登志雄)

 陸山会事件の先週の小沢秘書の裁判では、例の5000万円をホテルで石川秘書
に渡したのかという件につき、実行者の川村(元)社長と、渡すことを指示した上
司の水谷(元)会長らの証人尋問がありました。

 新聞等では社長証言のみを取り上げ、相変わらず「小沢は悪い奴だ」と煽ってい
ましたが、ネット上では、会長や運転手の証言まで正確に紹介されていました。

 社長証言
  1.04年10月15日にホテルで石川秘書に5000万入りの紙袋を渡した。
  2.1人で渡し、何の受け取り証ももらっていない。石川はすぐ帰った。

 会長証言
  1.川村が大久保に渡すというので了承したが、あとで大久保ではなく石川秘
   書に渡したことを報道で知り驚いた。
  2.社内ルールで、裏金を渡すときに見届け人を付けないことはあり得ないし、
   指定人である大久保秘書以外の人間が来たときにはその場で確認の電話を入
   れるのが普通である。川村はそれをしていない。
  3.裏金を渡した成果は出ていないので、渡したのかも疑問だ。川村には親し
   い女性がいたので、そちらに渡したのかもしれない。

 (参考)
   http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011052400781

 社長車運転手証言
  1.その日に社長をホテルに送ったという記憶はない(検察官の前では送った
   と無理やり証言させられたが訂正をしてくれなかった)。

 ずいぶんと証言が違うものですね。

 さて、自分には愛人がいた。金がかかる。自分に5000万円の裏金を届ける役
目が回って来た。裏金だから、途中で消えても、会社から横領で告訴されることも
ないだろう。誰もみていない、チャンスだ、ばれる可能性はない………。

 川村社長はこんな誘惑に負けたのか、それとも、忠実に社長の職務(?)を実行
したのか………(あるいは、石川秘書がネコババしたか)。

 貴方が同じ立場になったら、どうしますか。少なくとも、金のかかる愛人は持た
ないほうが迷わずに済みそうですが、そういう女性がいるなら、私も欲しいなぁ。

(ご参考:小沢一問一答)
 こういう国難のとき、菅・仙谷さんに座敷牢に閉じ込められた小沢さんはどんな
心境でいるのでしょうか。インタビュー記事がありました。

   http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_242207


2011.05.27(金)【原子力損害賠償法】(金子登志雄)

 「原子力損害の賠償に関する法律」3条によると、「その損害が異常に巨大な天
災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは」、損害賠償の責任はない
と規定されています。

 安全だ、安全だといっていたわけですから、責任が生じるわけがないのに、ある
いは原発のような危険なものに、なぜ無過失責任を規定しなかったのか不思議でな
りませんでしたが、どうも、地震の多いわが国でこれを定めないと損害保険の契約
が成り立たないからのようです。つまり、原発推進のために、こうしたようです。

 今週の週刊朝日でエコロジストの田中優さんがこんな発言をしています。
 「1970年から00年にかけて震度5以上の地震のあった数は、イギリスが0。
フランスとドイツが2回。で、アメリカが、あの広大な面積で322回。日本は、
このちっちゃな面積で3954回です。しかも悪いことに、1900〜2008年
までのデータを見ると、00年あたりに世界中の地震が突然増えているんですよ。
地球は地震の活動期に入ったようです。そういう状態で、地震国日本で原発を無保
険で動かすというのはむちゃな話ですよ。」

 原発をやめたドイツが2回で、原発推進の日本が3954回の地震、ほんとかい
なと思って、ネット検索しましたら、こんなのがありました。

    http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4380.html

 日本は上から4番目の地震大国なのに、ドイツはビリでした。「勝った」と喜ぶ
わけにはいきません。ワースト順位ですから………。

 やはり地震大国の日本で原発の推進は、異常としか思えません。パフォーマンス
であろうと横須賀基地の米軍を守るためであろうと何だろうと浜岡原発を休止させ
たのは、菅さんの英断の1つでしょう。

 いま地球が地震の活動期に入ったことは、日本に居住していれば、誰でも実感で
分かります。そのうち、お金持ちは、日本を脱出し、ドイツにでも居住するように
なるのでしょうか。ドイツで、日本の法律を知っての司法書士業務が可能であれば、
私もそうしたいところですが、こればかりは無理な相談ですね。独身の息子にドイ
ツ女性と結婚し、かの地に逃げ場所を作れと頼むしか、私には手がなさそうです。

(追伸)
 子供を放射能から守れと頑張っていた俳優の山本太郎さんが、案の定、番組から
干されました。これが日本の民主主義の現状です。

  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110526-00000021-flix-movi


2011.05.26(木)【大きな組織】(島根・根来川弘充)

 今月、9・11テロの首謀者とされるビンラディン容疑者がアメリカ政府によっ
て、殺害されました。大震災により、国際情勢に関するニュースは影にかくれた感
もありますが、大変大きなニュースだったと思います。

 「容疑者を他国で、逮捕することなく殺害する。」
 ビンラディン容疑者が、いくら悪いことをしたと言っても、この手法が、国の判
断として正当化されるのか疑問に思いました。

 さらに、ノーベル平和賞をとったオバマ大統領が、揚々と記者会見を行う姿には、
大きな違和感がありました。

 個人で決断したことであれば、許されないことが、大きな組織であればと許され
るということなのでしょうか。

 今回の地震で、福島原発の事故は、今後とも被害が拡大することが予想される大
変大きな問題です。

 これによって生じる損害は、到底、一企業である東京電力では負えそうもありま
せん。報道では、各電力機関や国まで負担をする仕組みになるようです。

 こちらは、一企業であれば到底負担できないものを大きな組織であれば負担がで
きるということなのでしょうか。しかし、電気代や税金により、結局、個人が負担
をすることにもなるようです。

 組織は、大きくなるほど、「許されることが増え、責任は軽くなる」という本質
を感じました。


2011.05.25(水)【東京電力の会社規模】(金子登志雄)

 昨日の本欄ではありませんが、東日本限定の地震・津波被害だけでなく、全国規
模の原発・計画停電被害まで含めると、確かに「ますますご清栄」の人などおりま
せんね。

 毎日、放射能に汚染され続けている日本人は、放射能被害の人体実験のモルモッ
トのようなものであり、放射能を吸って鉄腕アトムやウランちゃんになれるわけで
はありません。

 にもかかわらず、テレビを見ると、相変わらず御用学者が「人体に影響しない」
とか、「津波がなければ問題なかった。原発は安全だ」などと、われわれの無知を
非難するような高飛車の言動をしており、驚くばかりです。

 「〇〇がなければ安全だ」という仮定の議論が許されるなら、安全でないものは
この世に存在しないでしょう。

 さて、話題の東京電力とはどの程度の規模の会社なのかと思い、ヤフーファイナ
ンスとEDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関す
る電子開示システム)で調べてみました。

 テリトリーが関東地区中心なのに、従業員(連結)数は5万3000人程度でし
た。これは全国をテリトリーとする新日鉄の連結従業員数5万9000人に近い数
字ですから、相当な数です。もっともパナソニックや日立製作所は36、7万人、
トヨタ自動車の従業員は32万人でしたから、産業構造の変化により、上には上が
あるものです。

 何といっても東電がすごいのは株主の数です。ほぼトヨタ並みの60万人強でし
た(パナソニックや日立でも40万人未満です)。東電の株主は年金生活者が「銀
行預金よりは配当がよい」などという理由で退職金をつぎ込んで所有した傾向が強
いため、今回の事故で株価が4分の1以下に下がってしまいましたから、いまどん
なご心境でしょうか。それこそ想定外だったことでしょうが、こればかりは自己責
任です。

(株価チャート)
   http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=9501.T

 JALといい、東電といい、親方日の丸のマンモス企業は、意外にリスク管理に
弱いものですね。国がバックにいると気が緩むのでしょうか。その代わり、情報隠
し、資金力に任せての情報操作などは得意技のようですから、今後もしっかりと注
視しておきましょう。


2011.05.24(火)【東日本大震災と株主総会招集通知】(富田太郎)

 6月は定時株主総会の季節です。

 いつもは、参考書類については、念入りに作成しますが、招集通知の頭書きの
文言(あいさつ文)は、毎年、同じものを使用しています。

 通常は、次のような文言ではないでしょうか?

 『拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。
  さて、当社第●回定時株主総会を下記により開催致しますので〜』

 しかし、辞典などを調べてみると、
 この、『拝啓 ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。』
とは、『ますますご繁栄されているとのことで、喜ばしいかぎりです』
との意味のようで、

 『東日本大震災で、被害者を受けた方のことを考えると、配慮に欠けている? 
相応しくないでは? 文言を変えるべきでは?』

との質問を総会担当者から受けます。

 そこで、今のところ(大企業等、株主が多い会社)、

【パターン1】
 拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 このたびの東日本大震災の被災者の方々には心よりお見舞い申しあげ、被災地
の1日も早い復興をお祈り申しあげます。
 さて、当社第●回定時株主総会を〜

【パターン2】
 拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、当社第●回定時株主総会を〜

のような文言を使う会社が多いようです。

 長年、司法書士業務を行なっていると、「法律的に正しければよい。」と考え
てしまいますが、被災者の方々のことを考えると、もう少し文言に気を使わなけ
ればと反省する次第です。

 たかが、『あいさつ文』、されど、『あいさつ文』ですね・・・。


2011.05.23(月)【イマジネーション能力】(金子登志雄)

 20日付本欄では読者の方の感想文をご紹介いたしましたが、そのご指摘のとお
り、イマジネーション(想像)能力の欠如した頭のよい方が多過ぎます。学校で学
んだ知識は十分にあるのでしょうが、深みがなく、現実への対応力といった意味の
「知恵」あるいは「経験」が決定的に不足しているようです。

 最近設立されたある上場会社の子会社(資本金1000万円)の定款をみました
ら、監査役の権限が会計に限定されておらず、公告方法は電子公告になっていまし
た。小規模閉鎖会社の実情に詳しい司法書士であれば、監査役の権限は会計に限定
し、公告方法は最も公告代の安価な官報にしていたでしょう。必要により、取締役
会や監査役も非設置にしたかもしれません。

 なぜこんな中堅公開会社並みの定款にしたのかと聞いてみましたら、証券会社が
紹介した弁護士に定款を作ってもらったということでした。

 数千万円程度の資本金の新興ベンチャー企業がVC(ベンチャーキャピタル)に
種類株式を発行するとき、VC紹介の弁護士が定款変更案を作成することが少なく
ありません。

 そのとき彼らが何をするかというと、マニュアルに従い、一流上場会社並の標準
的な定款を左に置き、対象会社の定款と比較し、ここが漏れているからこれを追加
せよなどと指導してくるのです。

 種類株式の内容だけで1頁以上のものにしてきますし、今後数年は赤字が続くで
あろう小規模閉鎖会社なのに、中間配当の規定から何から何まで定めてくるのです。

 「人を見て法を説け」という諺もあるのに、まるで立ち食いそば屋の店舗の改装
に、一流フランス料理店の設備を要求するような愚かさです。今後、会社の成長に
合わせて、必要の都度、定款を変更して行けばよいという発想もないのでしょうか。

 一般論ですが、弁護士さんは喧嘩の助っ人が商売ですから、会社組織の実情には
疎いのに、依頼した証券会社やVC自身がそのような想像力の欠けた定款をありが
たく受け取り、顧客に対して「あの事務所は超一流ですよ」などと自慢しているよ
うですから、証券会社やVC自身の見極め能力にも大いに問題があります。

 あ、やばい。証券会社やVCは私の重要な顧客候補です。ヨイショしておかない
と、仕事が減ってしまう………。


2011.05.20(金)【新株予約権は無法地帯その5】(金子登志雄)

 取締役に対する株式報酬型ストックオプション(新株予約権)の話に戻しますが、
これは一般に金銭報酬債権と相殺したものだから、無償付与ではないと説明されて
います。

 江頭本3版420頁から421頁でも、要旨、次のように説明されています。
--------------------------------------------------------------------------
 「取締役の職務執行の対価として新株予約権が付与される場合には、『ストック
・オプション等に関する会計基準』によると、会社は、当該新株予約権の付与日現
在における公正な評価額を、対象勤務期間の費用として計上しなければならない。
この会計処理は、たとえば公正な評価額が100万円の新株予約権を職務執行の対
価として取締役に付与する場合であれば、いったん同人に対し現金で100万円の
報酬を支払い、その現金を払い込ませて当該新株予約権の割当てをしたに等しい」
--------------------------------------------------------------------------

 しかし、この説明では、誤解をまねきます。いったん現金で100万円の報酬を
支払うのなら、これは現金報酬そのものであって、新株予約権の現物給付報酬とは
いえないからです。

 にもかかわらず、このような表現で新株予約権の発行を開示している上場会社は
多数にのぼり、ご丁寧にも支払期日まで定めているのです(会社法238条1項5
号)。ほとんどが「割当日=支払期日」としています。

 そうすると、商業登記法65条により、この支払い(あるいは相殺)を証明しな
いと登記申請できないはずですが(富田センセが過去、さんざん悩んだ部分です)、
現実には、証明が省略されているようです。

 現金での支払いは比喩だとしても、以上の考え方は、100万円分を前払いして
新株予約権を付与したことになりますが、上記の会計基準では、対象勤務期間(例
えば、1年後に任期満了退任だと1年間)の費用として按分するのであり、1年後
に初めて、新株予約権の全額が支払われたと考えます。

 つまり、いま100万円の新株予約権を付与するが、今後1年間の職務(労務)
で払ってねというのが会計基準の根拠であり、半年後に決算となれば、この場合の
新株予約権の帳簿価額は50万円になります。

 この後払い説なら、支払期日は行使期間の初日の前日(会社法246条1項)の
はずですが、どういうわけか、上記のように割当日を支払期日に定める例が非常に
多いし、行使期間も割当日の翌日に設定する例が実に多いのです。

 会計基準(及び会計処理)の後払い説と現実の法務実務(前払い説)は、このよ
うに大きく異なっていますが、その原因は、おそらく、実務は、「過去」の頑張り
に対する「褒賞あるいは慰労金」として付与しているのに対し、会計は、ストック
オプションの理念どおり、「今後」の頑張りのインセンティブ「報酬」として捉え
ているからでしょう。

 その他、まだまだ、おかしいところは多々ありますが、富田センセも褒めてくれ
なくなったので、このへんで打ち止めにしておきましょう。

 昨日、消滅寸前のトキの私に同情したのか、富田センセの代わりに、本欄読者の
企業法務部の方が感想文を寄せてくださいました。
--------------------------------------------------------------------------
 新株予約権の定めも、物事を定めるのに、どれだけイマジネーションを駆使して、
どれだけ具体的に考えているのか・いないのかの良い例だと思いました。
 学歴のある、賢い人たちの作文ですら、こうなのですから、世の中が摩訶不思議
なのは、当然なのでしょう。
-------------------------------------------------------------------------

 全くそのとおりですね。着地点を考えずにマニュアルどおりに動く偉い先生が多
過ぎます。ゴルフでいえば、グリーンやホールの位置、風向きも考えずに、打って
いるようなもので、ラフに飛び込むことは目にみえているのですが、それさえも意
識せず、「私のスイングは美しいでしょう」と自慢してくるのです。

 そういう人が多いと、われわれは実に仕事がやりやすいので、もっともっと美し
いスイングを自慢してもらいたいものです。


2011.05.19(木)【新株予約権は無法地帯その4】(金子登志雄)

 調子に乗って、第4弾です。 

 下記のような定めで、1株を3株に分割してください。
--------------------------------------------------------------------------
 新株予約権1個当たりの目的である株式の数(以下、「付与株式数」という)
は10株とする。なお、当社が株式分割又は株式併合を行う場合、次の算式によ
り付与株式数を調整し、調整の結果生じる1株未満の端数は、これを切り捨てる。

  調整後付与株式数=調整前付与株式数×株式分割・株式併合の比率

 各新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、当該各新株予約権を行
使することにより交付を受けることができる株式1株当たりの払込金額(以下、
「行使価額」という)に付与株式数を乗じたものとする。
 1株当たりの行使価額は100円とする。ただし、当社が株式分割又は併合を
行う場合は、次の算式により行使価額を調整し、調整の結果生じる1円未満の端
数は切り上げるものとする。
                      1
 調整後行使価額=調整前行使価額×――――――――――
                  株式分割・併合の比率
--------------------------------------------------------------------------

 当初は、1個10株で1000円(行使価額100円×10株)でした。

 これを1株を3株に分割すると、1個30株はよいとして、
                      1
 調整後行使価額=調整前行使価額100円×――=34円(端数切り上げ)
                      3
より、1個30株1020円(行使価額34円×30株)になります。

 あれれですね。1個1000円のはずが、1個1020円に値上げされてし
まいました。

 上記で当初の定めが「1個1株、行使価額1株当たり1000円」だったと
して、1株を1.2株に分割すると、切り捨ての結果として1個1株のままと
なり、行使価額は1000÷1.2=834円になります。

 今度は、1個1000円のはずが、1個834円になりました。

 1個当たりの払込金額は変わってはいけないのが原則なのに、上記のとおり
です。

 この理由は、新株予約権は本来「個数」を基準に考えなければならないもの
なのに、「株数」を基準に立案しているからです。行使価額ですら、新株予約
権1個の行使価額ではなく、1株単位の行使価額にしています。

 実は、これがわが国の実例の多数派です。株数基準であった新株引受権時代
からの影響ですが、いまだに、改まる気配がありません。


2011.05.18(水)【新株予約権は無法地帯その3】(金子登志雄)

 またもや、富田センセに昨日の内容を「面白い」と褒めていただきましたので、
調子に乗って、第3弾です。

 新株予約権1個につき何株とするかは、上場会社のほとんどが最低取引単位にし
ています。1単元1000株の会社は、新株予約権1個につき1000株とするわ
けですが、単元制度を採用していない新興企業の場合は、1個につき1株とし、次
のように定めるのが普通です。

--------------------------------------------------------------------------
 新株予約権1個当たりの目的である株式の数(以下、「付与株式数」という)は
1株とする。なお、当社が株式分割又は株式併合を行う場合、次の算式により付与
株式数を調整し、調整の結果生じる1株未満の端数は、これを切り捨てる。

   調整後付与株式数=調整前付与株式数×株式分割・株式併合の比率
--------------------------------------------------------------------------

 よーく考えてください。この定めは、おかしくありませんか。司法書士の方は、
以下を読まずに、最低3分間考えてください。

 分かりましたでしょうか。この会社は2株を1株に株式併合すると、1個0.5
株となり、1株未満なので切り捨てられ、1個0株になってしまうのです。新株予
約権は目的の達成が不可能となり、抹消登記の運命に陥るのです。

 従って、現実には株式併合を決議することをしないと思いますが、こういう小学
生並みの算数能力もない内容を堂々と記載している現状が多数あるのです。

 では、株式分割なら意味があるのかというと、意味があると思った司法書士の方
は、再度、3分間、お考えください。

 意味があると思った方は、株式分割を1株を2株や3株にすることだと思ってい
るからでしょう。そうではなく、上場会社の現状の株式分割の多数は、1割無償と
か2割無償といって、1株を1.1株や1.2株にすることです。

 とすると、新株予約権1個1.1株や1.2株となり、端数を切り捨てる結果、
1個1株に戻ってしまいます。これでは調整式を定めた意味もなく、やはり立案者
の算数能力に疑問符がついてしまいます。

 会社法236条1項9号には、「新株予約権者に交付する株式の数に1株に満た
ない端数がある場合において、これを切り捨てるものとするときは、その旨」を定
められるとありますが、これは、新株予約権1個ごとに切り捨てろという意味では
ありません(そのように定めることは可能ですが)。

 会社法の趣旨は、例えば、1個0.5株(これでも有効です)のときに、3個や
5個を行使すると、1.5株や2.5株となるため、この端数の0.5株に対して、
本来であれば、金銭を交付すべきところ(283条)、この端数を切り捨てて、金
銭を交付しないこともできるよという意味です。
 
 というわけで、小学生並みの算数ができる人は、無法地帯では少数派に属し、佐
渡のトキのように絶滅の危機に瀕している現状です。

 どうぞ、この世界のトキである私ほか算数のできる希少価値の司法書士に、大量
のえさ(仕事)を与えて、手厚く保護してください。


2011.05.17(火)【新株予約権は無法地帯その2】(金子登志雄)

 無法地帯の話は昨日だけのつもりでしたが、富田氏から「面白いから、もっとや
れ」と、けしかけられましたので、第2弾です。

 新株予約権1個につき何株という新株予約権の目的たる株式数の調整で、行使す
ると取得できる普通株式に株式分割や株式併合があったら、次の算式で付与株式数
を調整すると定めるのが一般です。

 「調整後付与株式数=調整前付与株式数×株式分割・株式併合の比率」

 例えば、「新株予約権1個につき100株」と定めたのに、後日、1株を2株に
する株式分割があったら、「1個につき200株」、2株を1株にする株式併合が
あったら、「1個につき50株」に調整しないと不合理です。株式分割に準じて、
株式の無償割当てがあった場合も同様でしょう。

 ここまではよいのですが、多くの事例に「当社が合併、会社分割又は株式交換を
行う場合及びその他これらの場合に準じて付与株式数の調整を必要とする場合は、
当社は、取締役会において必要と認める付与株式数の調整を行うことができる」と
記載されているのです。

 この文章から、どんな場合が想定できるでしょうか。

 会社法によれば、会社分割とは「権利義務を承継させる」ことであって分割会社
の行為です。株式交換も「発行済株式の全部を取得させる」ことであって、株式交
換完全子会社の行為です。しかし、それらは、相手のある行為ですから自社で勝手
に新株予約権を調整することはできません。したがって、上記の文章は、合併存続
会社、吸収分割承継会社、株式交換完全親会社の行為に限定されます。

 おそらく、時価よりも安く株式を発行した場合と同様に、合併等で不平等な契約
をし、株式が稀釈化した場合には、新株予約権者を保護するため、目的たる株式数
を調整するというものでしょう。

 しかし、株式の稀釈化を回避できなかったのに、新株予約権だったら、できるの
でしょうか。逆にいえば、当社に有利な合併比率のときは、新株予約権だけ株式数
を減らしてもよいのでしょうか。

 会社法も、株式数の「算定方法」を定められるとは規定していますが、「合併等
をするときは、取締役会が新株予約権の目的たる株式数を調整する」なんて内容が
算定方式といえるでしょうか。

 では、なぜ、こんな無意味で愚かで無用な定めを置くのでしょうか。

 答えは簡単です。会社法以前の古い新株引受権の時代からの決まり文句であり、
「右に倣え」の心理です。著名大企業と同じことを書いておけば安全だ、いや、も
っといえば、他の会社と同じことしないと不安だ、という心理です。

 腹が立つのは、会社のほうは詳しくないため、そういう無意味な文章を挿入しな
いことに何の感想もないのに、外部コンサルタントや弁護士・司法書士・会計士が
意味も分からず、「他社例と同様に、入れておいたほうがよいですよ」とアドバイ
スすることです。ひどいプロになると「漏れてますよ」とまでアドバイスします。

 正しい指摘をする人は、いつも少数派で、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
という無法地帯なんですね。
 

2011.05.16(月)【会社法の無法地帯】(金子登志雄)

 先週は、株式報酬型ストックオプションの相談を受け、調べるのが楽しくてなり
ませんでした。会社法案件に限定ですが、難しい案件の相談を受けると、うれしく
なります。

 株式報酬型というのは、一般に、取締役報酬を現金で与えたことにし、それと新
株予約権の払込金額とを相殺させるものですが、主として退職金制度を廃止した見
返りに付与するものです。

 その関係で取締役の報酬決議として株主総会に付議する必要が生じますが、最近
は持株会社が多くなり、取締役報酬といっても、子会社の取締役が対象に加わった
りするため、やや混乱中です。

 中には、子会社の取締役を対象とするときは、これを通常型ストックオプション
と名付けている会社もあり、決議に関しても、わざわざ有利発行の決議をするとこ
ろもあり、まちまちでした。

 報酬と相殺する場合に、例えば、1個の公正価値が1万円としたとき、登記内容
の「募集新株予約権の払込金額若しくはその算定方法又は払込を要しないとする旨」
に、どう記載するのかというと、多くが1万円(あるいは、それを導く算定方式)
を登記していましたが、子会社の取締役に付与する場合には「無償」あるいは「払
込みを要しない」と登記する例もありました。

 報酬と相殺することは「払込みを要しない」ことと同義かを調べましたところ、
会社法238条には「金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨」とあ
りますから、確かに「金銭」の「払込みを要しない」に該当しそうです。

 しかし、246条をみますと、会社の承諾があれば、金銭の払込みに代えて現物
給付も可能だとあり、どうも報酬債権との相殺は「金銭の払込みを要する」場合の
1つのようです。したがって、「払込みを要しない」とは、旧商法でいう「無償」
のことでした。

 では、債権者に金利を負けてもらう代わりに新株予約権を交付するような場合は、
これを「無償」といってよいのかという問題もありますし、有償だとしても金利減
免と相殺できるといえるのかという問題が生じそうです。

 ある方が新株予約権は無法地帯で何が何だか分からないとおっしゃっていました
が、そのとおりですね。もっとも、私は、そういう無法地帯であれば、乗り込むの
が大好きです。まだ、野次馬であって、法を適用できる保安官にはなりきれていま
せんが………。


2011.05.13(金)【無対価と準備金】(金子登志雄)

 連休前ですが、「無対価株式交換と会計処理」に関する論考を中央経済の「ビジ
ネス法務」(6月発売号)に掲載するため、書いてみました。本欄4月19日付の
内容をベースにした4頁ものです。

 その事例で、会計士さんの中には、無対価の株式交換といっても新株の発行を省
略しただけだから資本準備金になるという方もいらっしゃいましたが、これは無理
でしょう。株式交換の対価が「新株」とは限りませんし、1株も株式対価を交付せ
ずして、資本金や資本準備金が計上されることを会社法は想定していないからです
(いわゆる資本組入れの場合は別問題)。

 株式交換に関する会社法768条1項2号イでも「当該金銭等(注:対価のこと)
が株式交換完全親株式会社の株式であるときは、………当該株式交換完全親株式会
社の資本金及び準備金の額に関する事項」とあり、対価が株式のときに限り、資本
金と準備金への計上額を株式交換契約書に記載することになっています。

 逆にいえば、資本金や準備金が変化するのは、株式が交付されたときに限るとい
う意味が込められています。

 面白いことに、このように、会社法は「資本金及び準備金の額に関する事項」と
規定しており、「資本金及び資本準備金の額に関する事項」とはしていません。

 これは立法ミスでしょうか。いや、きっと、資本金等の株主資本の内訳まで引き
継ぎ、その結果として利益準備金を引き継ぐ会計処理も吸収合併や吸収分割にあり
ますから(計算規則36条、38条)、それを意識し、あえて「資本準備金」とし
なかったのではないでしょうか。

 この結果、会社法条文に忠実に、合併契約書や株式交換契約書に「増加する資本
金の額/000万円」「増加する資本準備金の額/0円」だけでなく、「増加する
利益準備金の額/0円」と記載する例も少なくありません。

 会社法からすれば、記載するのが本来の形でしょうが、資本金等の株主資本の内
訳まで引き継ぐ会計処理とは無縁な株式交換においては、利益準備金が増減するこ
とはあり得ないのに、やはり記載しなければならないのかという疑問が生じてしま
うところです。


2011.05.12(木)【資本金0円会社の設立】(金子登志雄)

 現金による会社の設立のときに限り、なぜ、資本金の計上に関する証明書が登記
に不要なのかという質問がありました。
 なぜだと思いますか。

 次の3つの理由です。
1.設立だから自己株式の処分ということがあり得ません。
2.現金出資で現物出資ではないため、簿価マイナスの出資もあり得ません。
3.設立費用の控除も計算規則の附則11条で禁じられているからです。

 したがって、現金100万円の出資であれば、このうち半額の50万円以上が資
本金に計上されることになると自動的に計算できるのです。

 話変わって、費用控除が認められないため、組織再編の設立ではない純粋の設立
では資本金0円会社の設立は無理だといわれていますが、これはウソです。純粋の
設立でも現物出資であれば、資本金0円会社が作れます。

 たとえば、「資産30、負債100」の事業を現物出資して子会社を設立する際
には、簿価で計算しますから、子会社の資産と負債も「資産30、負債100」と
なります。差額の純資産額は△70ですが、これを株主資本にどう計上するかとい
うと、「資本金0円、その他利益剰余金△70」にします。すなわち、資本金0円
会社が設立されます。

 新設分割での資本金0円会社の設立は経験済みですが、現物出資では、まだ経験
がありません。たぶん、マイナスを出資して会社が設立できると思っている方がほ
とんどいないからでしょう。

 挑戦したい方はぜひ金子事務所にどうぞ。


2011.05.11(水)【定款と権威】(金子登志雄)

 定款というのは、ご承知のとおり会社の「憲法」であります。

 しかし、これは株主多数の正真正銘の会社の話であって、株主1人や同族の数人
といった圧倒的多数の個人企業と大差のない中小企業では、定款をみせてください
といっても、「え? どこにいったかなぁ」といった程度のものに過ぎません。

 必要があれば、すぐに株主全員が集まって定款を全面変更できるのですから、そ
の感覚も実態にあっており、決して非難すべきことではありません。

 定款の価値あるいは重さに関するこのあたりの知識は、現場に詳しい法務局や司
法書士の世界では、常識といっても過言ではありません。口では建前どおりに話し
ますけど、実態が違うことは重々承知の上です。

 ところが、設立定款を認証する公証人役場では、裁判官や検察官出身の公証人が
多く、学校で学んだとおりに定款を憲法と同視し、株主が1名であろうと、内容は
もとより、内容以外でも相当に厳しい対応をしてきます。

 数年前も東北の某県で私が電子認証した定款を代理人に取りに行かせようと思い
ましたら、代理人宛ての委任状に私の個人の実印を押して印鑑証明書と司法書士の
会員証の写しをつけよとまでいわれました。今般、関西でも同じでした。代理人が
司法書士でも、この厳しい対応です。

 代理といっても契約など法律行為の代理ではなく、単なる書類の受領行為に過ぎ
ません。クロネコ・ヤマトやサガワの配達・回収と同じようなことを依頼しただけ
です。

 いったい誰が公証人手数料の5万円まで払って、他人には全く価値のない認証済
みの定款を盗もうとするのでしょうか。もう少し、手続を緩和してくれてもよさそ
うなものですが、それをすると、きっと公証人の権威が保てないのでしょう。

 司法書士の皆さん、われわれも、もっと権威を高めましょう。今後は、登記が終
わって依頼企業の社員が取りに来るときには、委任状には実印を押して印鑑証明書
と社員証の写しをつけよと厳しく要求しましょう。ただし、2度と仕事が来なくな
っても責任は負えません。


2011.05.10(火)【生モノと干物】(金子登志雄)

 昨日の本欄に続いて、私も「先生」ネタにしましょう。ちなみに、私は、学生時
代からアルバイトで家庭教師や学習塾の講師をすることが多かったので、先生と呼
ばれることに特別な感覚はありません。

 さて、日刊ゲンダイの連休特集号に、辛口評論家で有名な佐高信さんが大震災の
復興構想会議(五百旗頭=イオキベ=議長)を皮肉ったのか、「現場は『生モノ』
で現場を知らない学者は干物だ。震災は『生モノ中の生モノ』なのに干物をトップ
に充ててどうするのか」といった疑問又は感想を語っていました。

 面白い譬(たと)えだなと感心すると同時に、私も同様に思いました。経営学の
学者が実際に会社の経営をできないのと同様に、大震災の後始末や復興については
「人を動かす」能力に長けた知事経験者とか、ゼネコン経営者のほうが圧倒的に有
能だと思うのですが、どうも菅政権は有識者の「先生」を集めた会議がお好きなよ
うです。これでは、現場を知らない社外監査役に会社再建策の立案を頼むようなも
ので、その効果には疑問を持ってしまいますが、もう20個以上も何とか会議を作
ったようですね。

 われわれ実務家が扱う仕事は常に「生モノ」です。生肉など正真正銘の生モノで
あれば、いま問題になっているように、人の生死に係る食中毒までを起こしてしま
います。それほど現場には現場の厳しい掟があり、安全地帯から学者の先生やジャ
ーナリストなどの有識者に、とやかく評論されても意味がありません。

 私の専門の組織再編手続も「生モノ」ですから、株式交換が吸収分割に、吸収分
割が事業譲渡に変化したり、合併でも無対価のはずが株式の発行に切り替わったり
と変化することも多々あり、その都度、即断即決で善後策を講じなければならず、
賞味期限の長い干物のようなわけにはいきません。

 やはり、「生モノ」を扱うには、その道の通に任せるべきでしょう。司法書士で
ある私ですら、不動産登記は不動産専門の司法書士の「先生」にご依頼するくらい
ですから。


2011.05.09(月)【先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし???】(富田太郎)

 私のような、サラリーマンから司法書士になった人間にとって、一番、奇異に
感じるのは、お客さんから「先生」と呼ばれるときです。

 お金をもらっているのに、なぜ「センセ」????

 ちなみに、先生の言葉の意味を調べてみると(現代新国語辞典 学研)、 

★言葉の意味★ 
【先生 せんせい】
@自分が師事する学問・芸術・芸能の指導者。師匠。
A教師・医師・代議士などの職業についている人に対する敬称。
Bからかい、親しみの気持ちをこめて人をさす言葉。

だそうです。
 もっとも、つきあいが長くなり、お互い気心が知れてくると、「富田さん」と
呼ばれるようになってきますが♪

 ところで、今は昔。
 サラリーマン時代、多くの司法書士、弁護士等のセンセ稼業の方々と付き合っ
ていました。
 
 思えば、面前では「先生!」と呼んでいましたが、これは、心より尊敬してい
たのではなく、名前をいちいち覚えるのが面倒で、「先生」と呼んでいれば、ま
ずは無難ということからでした(当時の方々、すいません)。

 また、仕事を依頼していた司法書士さんは、年配で、不動産登記は得意だけど、
会社法(当時は商法)が全く駄目な方で(注)、その方の前では、センセと呼ん
でいたものの陰では、部下に「早く、アレに電話して、登記、いつ完了するか聞
いとけ!」などといっていたものです・・・・・(反省)。

 その後、自分もアレ(司法書士)になってしまうのに・・・・。

 あっ!!!

 もしかして、私も陰では「アレ」といわれているかも・・・・(汗)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 因果応報ですね・・・・・(反省)。

(注)多くの司法書士は不動産登記がメインで、会社法などを得意とするのは、
K先生(※この「せんせい」という言葉は、上記★言葉の意味★@の意味で使
っています。誤解なきように!)など、限られた方々なのだということは、司
法書士になってはじめて分かりました。

 よって、当時の司法書士さんが会社法(商法)苦手だったのは、今なら分か
ります。また、弁護士さんも、分野がかなり広いため、得意・不得意分野があ
るということも、実務を経験してはじめて分かりました。


2011.05.06(金)【司法書士バッヂ(五三の桐)】(富田太郎)

 先日、我がESGの内部で、司法書士バッチが話題になっていました。実はこの
司法書士のバッヂ、「五三の桐」をあしらった非常に高貴なものです。


 ところで、「桐紋」には、いわゆる「五三の桐」「五七の桐」などありますが、
「五七の桐」は、元々、天皇家が(嵯峨天皇AD786〜842の時代から)「菊
紋」と併用して使っていました。

 ただし、「五七の桐」は、天皇家から、その時の権力者(足利尊氏・織田信長・
羽柴秀吉、等々)に下賜されることが多く、そのため『政権担当者の紋章』という
認識がついたようです。
 現代では、首相官邸も「五七の桐」のマークを使用しています。

 これに対して、「五三の桐」はどちらかと言うと、桐の紋章に憧れた庶民に多く
使われていたようです。

 そこで疑問なのが、何ゆえ「司法書士」が「五三の桐」のマークを使っているの
か?

 文献等を調べましたが、由来ははっきりしませんでした。ただ、推測ですが、
「法務省」も「五三の桐」をマークにしており、その関連から、法務省管轄の国家
資格である司法書士も使用しているのではないでしょうか………。


【閑話休題(5年前のある客先での出来事)】

 お客「とみたセンセ?? その背広につけているバッヂ? 何ですか?」
 私 「ニヤリ♪ これは司法書士バッヂで、『五三の桐』というもので、
    ▲■〜♪」
 お客  「へ???? それが桐??枠しかないですよ???」

 よく見ると、バッヂの中の『五三の桐』は、どこかにいったのでしょうか?
見事に剥がれ落ち、「枠だけのバッヂ」になっていました………(恥)。

 以来、私のバッヂは、ずっと机の中にあります。

 「桐」のウンチクを、ぐだぐだ〜偉そうに語ってないで、早く修理しろよぉ!
………ですね………(反省)。


 ※補足
 東京司法書士会会則
 「司法書士会員は、業務を行うときは、会員証を携行し、かつ、司法書士徽章を
着用しなければならない。」

 はやく修理しないといけませんね………(汗)。


2011.05.02(月)【復興税】(金子登志雄)

 原子力安全委員会の委員長は「斑目」さんで、東日本大震災の復興策を検討する
政府の復興構想会議の議長は「五百旗頭」さん。

 マダラメ、イオキベと読むようですが、珍しい姓でないと、偉くなれないのでし
ょうか。ありふれた姓の佐藤や鈴木はすぐに逮捕されてしまいますし(佐藤栄佐久、
佐藤優、鈴木宗男………)、小沢姓の方は閉門蟄居、堀江姓の方は、とうとう収監
されることに………、ありふれた姓の私としては、少々ひがみたくもなります。

 もっとも、珍しい姓はすぐに覚えられてしまいますから、行動の自由がなく気の
毒(?)です。田舎の教師の息子であった私も、「先生の家の子供」という世間の
評価から、小中学生の頃はいたずらもできませんでした。

 さて、このイオキベさん、防衛大学の学長で景気や財政の専門家でもないのに、
いきなり復興税を提唱し、かねてより消費税アップを目論む菅政権を喜ばせている
ようですが(以心伝心でしょうけど)、皆様は復興税についてどう思われますか。

 報道によると、善良な国民の過半数が復興のためには仕方ない、賛成だと考えて
いるようですが、本当にそうなのでしょうか。菅政権のお友達の大手マスコミによ
る宣伝や「頑張ろう日本」の風潮に影響されているところはないでしょうか。私に
は、原発災害は国民全体の連帯責任だといわれているようで、いやな気分です。

 国民の過半数が賛成だとしても、それは消費者(私人)としての意識であり、冷
静に景気対策その他国全体のプラスマイナスを意識した上での意見とは思えません。

 橋本内閣で消費税を上げたときも、消費が冷え込み、税収の増大につながらなか
ったようですし、タバコ税についても、同様な結果がでているようです。これは、
当然のことで、企業において商品を値上げしたら、売上が上がるとは限らない理屈
と同じです。司法書士も値上げすれば、顧客が去って行くものです。

 いま景気が冷え込んだら、長期化は避けられません。地震や津波の災害は、外科
手術で早期に回復しても、内科の災害である原発、それによる計画停電は、想像以
上に深刻な事態です。日本は底力があるから、すぐに景気回復するといった希望的
観測は今回は無理です。東西冷戦で朝鮮戦争特需やベトナム戦争特需があり、米国
が西側の弱小国家の日本を支援していた時代とは違うのです。

 財政赤字がいわれて久しいですが、総資産の割には負債の大きさはそれほどでは
ないとも聞きますし、ギリシャと違い債権者は外国ではなく国民です。企業でいえ
ば、株主から借金しているようなものですから、深刻度はレベル7ほどには至って
いないともいわれています。

 それ以上に、消費税アップの負の作用で行政改革や公務員の給与改革がおろそか
になるおそれはないのでしょうか。広い意味の国庫(特別会計)には、積立金の性
格を持つ埋蔵金もあるようです(原発関係で3兆円とか)。なぜ、それらを使わな
いのかという指摘もなされています。

 社会全体の富(景気)を回復させて税収を上げることこそ景気回復の王道であり、
安易に消費税を上げるなと主張している有力な政治家が与野党に多数存在しますか
ら、それほどいうなら、その方々に国家経営を委ねればよいと思うのですが、なぜ
そうしないのか、私には不思議でなりません。


2011.04.28(木)【必見:孫正義の覚悟】(金子登志雄)

 ソフトバンクの孫社長が個人の立場で、大震災の被災者に対して100億円を寄
附したほか、脱原発を表明しはじめたことは、皆様ご存知のとおりですが、今度は
個人資金10億円で自然エネルギー財団設立だそうで、4月22日に自由報道協会
に招かれ、記者会見をしていました(大手メディアは無視か?)。

 さすがは経営者です。単に「原発反対」というだけでなく、ガイガーカウンター
をもって現地に乗り込み、たっぷり放射能を浴びてきていますし、経営者の立場で、
原発は採算に合わない、安い自然エネルギーを導入するには、国家的政策として、
どうあるべきかなどを実に分かりやすく理由付で説明していました。ご本人も、こ
こ1か月ほど真剣に勉強したようです。

 それだけでなく、ITの会社の社長が余計なことに口出しするな、金持ちの道楽
の寄附だ、などという心ないバッシングも毎日のように彼のツイッターに寄せられ
ているだけでなく、ご自身も情報革命の推進を生涯のテーマとしていたのに、ここ
で原発問題にのめり込むことの是非に相当お悩みのようでした。

 フリーの記者からも、国策あるいは既成権力に立ち向かうことで、孫さん自身が
潰されるのではないかという心配や、逆に孫さんへの過剰な期待が寄せられていま
した。

 しかし、知って何もしないのは罪だ、それでも正義を貫かねばならないときがあ
ると彼の不退転の覚悟が記者会見で語られていました。彼の一流会社の社長の立場
(守らなければならないものが多数ある立場)を思うと、悲壮な決意だと思います。

 私も彼が佐藤栄佐久前福島県知事などのようにならないかと不安でなりませんが、
彼は坂本龍馬が大好きな人ですから、きっと自分も志のために生きることを選択し
たのでしょう。

 記者会見は、1時間半以上もありますが、損得抜きの孫さんの覚悟は本物で、実
に感動ものでした。連休の期間に、ぜひ全部をご視聴ください。
 今週号の週刊ポストにも別の面からのインタビューが掲載されています。

  http://www.ustream.tv/recorded/14195781


2011.04.27(水)【震災に思うこと】(島根・根来川弘充)

 東日本大震災の経済的影響は、島根県でも確実に出始めております。資材・材料
が入ってこないので、仕事ができないと、個人経営の業者の方が嘆いておられると
いう話を身近に聞くようになりました。これから、ますます深刻化していくものと
思われます。

 震災当時の報道を目にする度に、実際に自分の身の上に起きた場合、どうしたら
良いのだろう と考えてしまいます。

 真っ先に不安になるのが飲料水と食料です。どこにも品物がない上に、連絡もと
れないのであれば、それらを求めて、スーパー、ディスカウントストア、コンビニ、
地元小売店・・・と、知りうる限りの場所を探さなければならないと思います。そ
う考えますと、「物がいろいろな所にある」ということは、災害が起きた時に大変
大事なことではないかと思います。

 現在、大量生産の時代が見直され、余分な在庫をできるだけ減らそうとすること
が善とされる時代です。しかし、今回のような災害を考えると余分な在庫があるこ
とは、それなりに意味のあることだと思います。

 今日、経済だけでなく、政治においても、事業仕分け等、無駄を削減することが
奨励されています。それ自体は歓迎なのですが、何が「無駄」なのかについては、
もう少し吟味されても良い気がします。


2011.04.26(火)【編集者能力】(金子登志雄)

 鈴木さん、『Q&A東日本大震災と登記実務』の編著、お疲れ様でした。こうい
う編集作業は、司法書士界広しといえども、鈴木さんなど1部の方しかできないこ
とですので、われわれは、つい傍観者になってしまいました。

 さて、鈴木さんとは、著作や講演活動で、よく一緒に行動するのですが(実は、
ほとんどが鈴木芸能プロダクションのお世話で、私がタレント活動しているだけで
す)、面白いもので、全くタイプで違います。

 私は、商業登記や会社法の論点につき「論ずる」ことしか関心がありませんが、
鈴木さんは、ジャンルの幅が広く、不動産登記でもなんでも、それらを分かりやす
く解説することが得意です。講演においても、私は「えーと」とか「あ、そうだ」
を乱発し、あちこち横道に外れて思いつくまましゃべりますが、鈴木さんは自分で
作成したシナリオどおりに語り続けます。

 こういうタイプの相違がありますから、一緒に書いた『法定公告の手引』(商事
法務)でも、総論部分は鈴木、各論は金子の役割になりますし、『商業・法人登記
300問』(テイハン)のように商業登記界の大御所の神ア先生が総論を担当する
ときは、種類株式や組織再編という論点豊富で面白い部分は私が担当し、設立とか
機関というたいくつな部分を鈴木さんが担当してくれています。

 要するに、鈴木さんはマネージャーや経営者タイプであり、私は職人タイプとい
うことです。職人タイプの私は、他人(ヒト)に書いてもらうくらいなら自分で書
いたほうが楽だと思ってしまうタイプですから、編集者にはなれませんし、人を育
てるのも面倒だと思ってしまいます。

 事務所も大きくすることができないタイプですから、開業して10年を超えるの
に、いまだに従業員もおりません。人並みに事務所を大きくしたいと思うこともあ
りますが、大事務所の経営者である鈴木さんのように、人の採用から、人事査定な
どの雑務をするのかと思うと、いまの気楽な生活が一番だと思い直してしまいます。

 還暦過ぎたら、ストレスのないのが一番ですね。還暦前なのに、気楽な1人事務
所で、酒とプロレスをこよなく愛し、土日も出勤し、頑張っている奇特な人もいま
すけど。きっと、原稿の締切りやストレスもこよなく愛しているのでしょう。こち
らのお方にも、お疲れ様です。


2011.04.25(月)【緊急出版『Q&A東日本大震災と登記実務』】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは
 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。
 本当にひさしぶりの登場です。

 このたび、商事法務から『Q&A東日本大震災と登記実務』という書籍を緊急
出版いたしました。

   http://www.shojihomu.co.jp/kinkan/1874.html

 震災から1か月経った今も、解決の糸口さえみつからない原発、繰り返される
余震、進まない被災者救援といった中で、とにかく司法書士として、プロフェッ
ションとして何かしなければいけないという思いで筆をとりました。

 私にしては、珍しく頑張りましたが、金子代表をはじめESG法務研究会の皆
様にも、いつも以上に、いろいろとお手伝いいただきました。感謝です。

 そろそろ書店にも並ぶようですので、手にとっていただけますと嬉しく思いま
す。

 本書の私の思いにつきまして、「はしがき」を要約して紹介させていただきま
す。
====================================
 まさに目を覆うばかりの惨劇が刻々と伝えられる中、いまだに被害が増え続け
ている状況に、居ても立ってもいられないという思いに駆られた方は少なくない
と思います。私自身、連日流されるテレビのコマーシャルではありませんが、
「今、私にできること」を、あの震災の日から今も絶えず考え続けています。

 節電をすることや義援金を贈ることは、もちろん重要で必要なことであること
は間違いありません。一方で、この国家的危機に瀕して、国家から資格を与えら
れた資格者としてできること、やるべきことがあるのではないかとも考えました。

 そのような時に、この震災からの復旧、復興のために役立つ書籍を緊急で刊行
するという企画をいただきました。
 当初は、時間的にも能力的にも困難であると固辞しましたが、プロフェッショ
ンとしての使命感から浅学非才の身でありながら筆をとることにいたしました。

 しかしながら、1週間で1冊の本を書き上げることは至難であることは明らか
です。

 そこで知己の司法書士、土地家屋調査士、公証人の方々に助力をお願いしたと
ころ、趣旨をご理解、ご賛同いただき、本書を完成させることができました。
このような厳しいスケジュールの中で、執筆、校閲にご尽力いただきました皆様
にはあらためて感謝申し上げます。

 本書が、被災者の方々、そしてそれを支援する皆様に少しでもお役に立てれば、
私としては望外の喜びです。

 本書の執筆や校閲に携わっていただいた皆様と相談いたしまして、本書につい
ての印税等については、義援金として贈呈することといたしました。

 最後になりますが、一人でも多くの被災者の皆様の救済と、一日も早い復興を
祈念いたします。
====================================


2011.04.22(金)【吸収合併と商号変更】(金子登志雄)

 同一住所のAがBを4月1日に吸収合併しAが同時に商号をCに変更したとしま
す。この場合は、通常、次の順序で2つの(2社の)登記を申請します。

  @A社の登記申請
   平成23年4月1日、商号を「C」に変更
   平成23年4月1日、東京都・・・Bを合併
  AB社の登記申請
   平成23年4月1日、東京都・・・【C】に合併して解散

 ところが、松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』546頁には、B社
の登記申請が「【A】に合併して解散」となっているが、金子方式と松井方式のど
ちらが正しいのかという質問が商業登記倶楽部の実務相談室に寄せられました。

 松井本をみたら、確かにそうなっていました。この方法は20年近く前に実例で
知り、「なるほど、こういう方法もあるのか」と気づいていましたが、まさか松井
本に記載されているとは思いませんでした。

 その実例は、AがBに商号変更するものでした。私は、堂々と「BはBに合併し
て解散」という登記にしましたが(当時の私が開発した額面50円化の登記テクニ
ックの1つでした)、類似商号禁止の時代に、まさかそんなことができるとは思わ
なかった司法書士があえて「BはAに合併して解散」という申請をしたのだろうと
推測できました。

 周知のように、Aの合併とBの合併解散は同時申請です。ここにAの商号変更が
絡んできたとき、同時申請ですから「A商号変更→A合併→B解散」と考えても、
「A合併→B解散→A商号変更」と考えてもよいわけです。したがって、金子方式
も松井方式も両方とも成り立ち、どちらが正しいとはいえません。

 先般、吸収分割の事案で、某法務局で「@→A」の順序で申請したのなら申請ど
おりに、「【C】に分割」が正しいとのコメントをいただきましたが、これはその
担当者の個人的意見にすぎず、同時申請ですから、@がAに先行するとはいえませ
ん。松井方式も決して間違いではないのです。

 もっと前に松井本546頁を知っていれば、その担当者にみせて、「【A】に分
割」でも問題はないと説明できたのですが残念です。

 なお、後日、B社の解散謄本から合併会社を探すときに、松井方式だと商号変更
したA社を探しにくいという難点がありますので、依頼者から特段の要請がない限
り金子方式をお勧めします。


2011.04.21(木)【原発事故は防げた(佐藤栄佐久)】(金子登志雄)

 「想定外」がすっかり流行語になってしまいましたが、法律関係のわれわれから
は、この言葉は「過失(注意義務違反)があったのか」あるいは「過失があっても
防げなかったのか(不可抗力だったのか)」という意味になります。

 私自身は、地震と津波は想定外だといえても、それを起因とした事故については、
安易に想定外というべきではないと思っています。

 たとえば、原発の安全性についても、専門家10人が10人とも90%以上の安
全性を保証していたのであれば、想定外だといえるかもしれませんが、少なくとも
10人中の2人や3人は、かねてより安全性に問題があることを指摘していたので
はないでしょうか。原発差し止訴訟さえ提起されていることは、安全性に強い疑問
をもつ方や、それを応援する専門家も少なくないということです。

 「安全だ、いや危険だ」というのは、民主主義や多数決の問題ではないのに、原
発推進派と反推進派という党派的な色分けで、ことを論じることに強い疑問をもっ
ているのは私だけではないでしょう。

 原発推進という国策に逆らったために冤罪で逮捕されたといわれる佐藤栄佐久前
福島県知事も、自民党の政治家で原発に反対ではなかったのに、途中から福島原発
のずさんな動きに危険性を感じた方でした。

 佐藤氏は、いまや原発事故を想定していた「時の人(行政官)」として、あちこ
ちのテレビ番組で引っ張りだこになってもおかしくないのに、全く、日本の大手メ
ディアは取り上げません。わずかに、フリージャーナリストが取り上げた程度です。

 これに対して、海外メディア(外国特派員協会)は、講演にまで招聘しています。

  http://www.videonews.com/asx/press/110418_sato_300.asx

 都合のよい情報しか流さず世論を誘導しようとする日本の大手メディアは安易に
信用できないという私の主張も、日本では多数派でないことが日本の政治を悪くし
ている要因の1つだと思っていますが、独りよがりでしょうか。

 なお、佐藤氏の冤罪は、水谷建設からの賄賂問題でした。この会社、ご存知のと
おり小沢事件の4億円に登場する会社です。冤罪事件の有名な脇役キャストです。


2011.04.20(水)【一枚の絵】(富田太郎)

 3月20日付、ニューヨークタイムズ日曜版に掲載された漫画家「水木しげる」
の絵が話題を呼んでいます。

 ニューヨークタイムズから、「今回の地震と津波による大災害についての『水木
しげるさんの個人的な考察』を絵で描いてもらえないでしょうか?」というオファ
ーがあり、それで描いた絵だそうです。

http://presspopinc.blogspot.com/2011/03/new-york-times-op-ed-page-this-sunday.html

(今回の掲載を仲介した「PRESSPOP GALLERY」という版権マネージメントやプロデ
ュースを行う会社の3月20日付ブログ記事参照)

 『水に飲み込まれる断末魔の苦しみ』?あるいは『最後まで諦めず、希望を求め
る手』とみるのか?

 人により受け止め方は千差万別でしょうが、一部では、不謹慎という声もあるそ
うです。

 しかし、生死をさまよい&貧困生活が長かった「水木しげる」氏の過去を知る人
ならば分かると思いますが、私には、『生き抜く力』というメッセージが感じられ
ました。

 実は、氏のメッセージは、一見分かりやすいように見えて、趣旨が全く別の意味
であることが多いのです。

 有名な「のんびり、やりなさい! なまけものになりなさい!」
という名言があるのですが、

 当初、私はこの意味を
「あくせく働いてもしょうがないよぉ〜♪」
という意味ととらえていたのですが、その後、エッセイ集等を読むと、全く違う意
味であることに気がつきました。

 ----------------------------------------------------------------------
 水木氏曰く

 「水木さんは、才能もお金もあるから、怠けられるのです。怠けていても、食え
るような人間になりなさい。才能のない人は、働かないと餓死するだけですよ」

 「いいですか、人生はずっと苦しいのです。でも、苦しさを知っておくと、苦し
み慣れする。これは強いですよ。」

 ----------------------------------------------------------------------

 このような言動から推察すると、今回の絵、「苦しくても、生き抜く」というメ
ッセージに見えませんか???


2011.04.19(火)【無対価株式交換の会計処理】(金子登志雄)

 完全子会社同士(AB)で株式交換する場合に無対価処理が可能になったのかと
聞かれました。次の図でAがBの株式全部を取得しながら(株式全部を出資されな
がら)、AがBの株主である「親」に新株も何も交付しないケースの問題です。

                   親
     親             |
    / \     →      A
   A   B           |
                   B

根拠として、次が示されました。

 http://akahige-management.seesaa.net/article/136278044.html

 しかし、私は前々から、この処理をすることは時期尚早ではないかと応えていま
す。私の根拠は次です。

 第1に、吸収合併や会社分割は「事業(財産)承継型」の組織再編であるのに対
し、株式交換は会社の外に存在する株式という単品を承継する「株式承継型」の組
織再編という性格的差があります。
  
 そのため、会計処理も前者は事業の現物出資と同様に出資額の全額がAの資本勘
定になる処理と、法人と法人がそのまま結合したのと同様に資本金等の株主資本の
内訳までそのまま合算(会社分割では貸借対照表をそのまま分割)し、利益剰余金
の引継ぎを認める処理の2つがあります。すなわち、出資型と法人格結合型(BS
合算型)です。

 会社計算規則の条文でいえば、吸収合併には35条(出資型)と36条(BS合
算型)が、吸収分割には37条(出資型)と38条(BS分割型)があるのに対し、
株式交換には39条(出資型)しかありません。

 吸収合併や会社分割の無対価は、上記のBS合算・分離型の1範疇とされていま
す(36条2項、38条2項)。その結果、利益剰余金の引継ぎが可能ですが、株
式交換は出資型の構成ですから、無対価の規定もなく、利益剰余金の引継ぎもでき
ません。
 
 第2に、肯定説は会社計算規則39条2項ただし書を根拠にするようですが、同
条は第1項に「対価の全部又は一部が………株式である場合」とあり、無対価につ
いては適用されませんし、そもそも株主資本等変動額という用語は株式が交付され
た場合にしか使われません。

 第3に、もし出資型の株式交換で本件のようなケースに無対価を認めると、行き
付く先は、無対価増資を認めなければなりません。100%子会社が親会社から追
加出資を受ける際に株式を発行する意味もないからです(発行して株式併合すれば
元の株数に戻ります)。
 もし、株式交換によって受け入れる財産額の全部をその他資本剰余金にしたいの
であれば、株式交換で増加した資本金や資本準備金を同時に減資すれば済む話です。
無対価株式交換は、現行の会社法の体系からいえば、債権者保護手続の脱法行為に
なるおそれさえあります。

 第4に、税務の世界では無対価株式交換についての規定があるようですが、その
前提としての会計処理が認めているものかどうか不明です。

 ということで、株主資本等変動額の全額をその他資本剰余金に計上する無対価株
式交換は、会社計算規則及び会計基準の「想定外」であり、通達などで肯定されな
い限り、私は勧めることに躊躇しますが、会計士さんや税理士さんは、度胸がおあ
りのようです。法律関係の皆さまはどう対応なさいますか。


2011.04.18(月)【レベル7】(金子登志雄)

 先週の13日水曜日は、東京司法書士協同組合刊『ずばり解説!事例で読み解く
商業登記』出版の打ち上げ会でした。出席者は組合の役員の方々に著者である私と
神ア先生(商業登記倶楽部主宰者)でした。

 その席で、H先生が「地震はレベル7が上限でそれ以上はない」と発言しました
ら、一斉に「原発事故の深刻度と勘違いだよ。この間の地震は9だったじゃないか」
という反論がでました。私も同様に思いました。

 ところが、帰ってネットで確認すると、H先生の発言は間違いではありませんで
した。下記をみてください。

    http://www5d.biglobe.ne.jp/~kabataf/sindo.htm

 H先生が「レベル7」などという表現をしたので、皆、勘違いしてしまいました
が、各地域での揺れ具合である「震度」は、確かに「7」が上限でした。東日本大
震災の9はマグニチュードの話だったわけです。

 震度7よりも原発のレベル7のほうが余程怖いですね。いまだに復旧の目処さえ
ついていませんが、時間がかかっても、これ以上の災害にならないよう願いたいも
のです。

 大震災から1か月以上も経た今日、政権の無策ぶりが顕著になり、大連立どころ
か、自民党からも「首相自ら出処進退を判断する時期に来ている。これ以上、この
体制で行くことは国民にとって不幸だ」といわれてしまう始末で、政権党内外から
退陣要求が噴出していますので、現政権の深刻度もレベル7でしょう。

 ところで、日本が犯した地球環境への犯罪に対して、ドイツや台湾はじめ世界各
地で反原発デモが行われています。

 (ドイツ)
   http://www.youtube.com/watch?v=6WH0kjmkbSc&feature=related
 (台 湾)
   http://www.youtube.com/watch?v=hp7YA6lTa9U&feature=related

 もちろん、日本でも全国で反原発デモが行われていますが、残念ながら、海外よ
りも参加者が少ないようです。それは、CMのスポンサーである東電に遠慮してい
るのか、大手メディアがほとんどデモのあること、あったことを取り上げないから
でしょう。日本のマスコミの劣化度もレベル7のようです。

 (日 本)
   http://www.youtube.com/watch?v=UzPeD6sAteo&feature=related

 先般、ソフトバンクの孫社長が個人で反原発を表明したことをご紹介しましたが、
城南信用金庫は企業としても脱原発を表明しました。徐々に経済界にも脱原発の声
が上がってきたようです。

    http://www.youtube.com/watch?v=CeUoVA1Cn-A


2011.04.15(金)【株式会社と有限会社の代表権】(金子登志雄)

 司法書士会の掲示板(NSR2)の議論で面白いことに気づきました。

 取締役会のない会社で、定款に「代表取締役は取締役の互選で定める」という規
定が設けられていない場合に、取締役としてABを選任すると、自動的に代表取締
役の登記がなされます。次のとおりです。

====================================================
   取 締 役 A   平成23年 4月 1日就任
----------------------------------------------------
   取 締 役 B   平成23年 4月 1日就任
----------------------------------------------------
  東京都・・・
   代表取締役 A   平成23年 4月 1日就任
  ----------------------------------------------------
  神奈川県・・・
   代表取締役 B   平成23年 4月 1日就任 
====================================================

 取締役と代表取締役の地位が一体ですから、このBが代表取締役だけ辞任するこ
とは原則として許されませんが、例外として、Bを選任した株主総会の承諾があれ
ば、辞任も許されます。その場合は、上記の最後の枠が辞任を理由に抹消されます。

 ところが、特例有限会社の場合は、旧有限会社法時代からの沿革上の理由で、複
数の取締役の中から特定人を代表取締役に選任しない限り、代表取締役の登記はな
されません。最初の例は次のように登記され、取締役自体に住所がつきます。

====================================================
  東京都・・・
   取 締 役 A   平成23年 4月 1日就任
  ----------------------------------------------------
神奈川県・・・
   取 締 役 B   平成23年 4月 1日就任
====================================================

 これでも代表権を有しますからABともに代表取締役であることに変わりがあり
ません(会社法47条1項カッコ書参照)。

 さて、ここで株式会社の例と同様に、Bが株主総会の承認を得て代表取締役の権
限のみを辞任したら、どういう登記になるでしょうか。

 辞任の登記をしようにも代表取締役の登記がなされていないのです。したがって、
この辞任承認総会(4月15日開催とする)の実質はAだけを代表取締役として選
任する決議として扱い、次のような登記になります。

====================================================
  東京都・・・
   取 締 役 A   平成23年 4月 1日就任
----------------------------------------------------
  神奈川県・・・
   取 締 役 B   平成23年 4月 1日就任
----------------------------------------------------
   代表取締役 A   平成23年 4月15日就任 
====================================================

 つまり、Aの隠れていた代表権が代表取締役でない取締役が生じたことで顕在化
します。ならば、「15日就任」ではなく「1日就任」ではないかというご意見も
あろうかと思いますが、あたかも登記簿上も代表取締役として表示される者を15
日に選任したような形になります。だからといって、Aが1日から代表権を有する
取締役だったことを否定するものではありません。

 実体法的には、株式会社と有限会社で全く同じことを決議しているのに、株式会
社では【登記を減らす】辞任の登記となり、有限会社では【登記を増やす】就任の
登記になるという差が生じるわけです。この結果、後者では印鑑届を新たに提出す
べきか、商業登記規則61条4項は適用されるのかなどという問題が生じます。

 
2011.04.14(木)【事業承継の3つの対策】(愛知・和出吉央)

 いわゆる、未上場企業の事業承継対策とは、大きくは3つの問題を解決すること
です。

 第1は、「人の対策」
 第2は、「資本政策」
 第3は、「税金対策」

 よく「ヒト」「モノ」「カネ」といわれる場面に出くわしますが、事業承継対策
にも通ずるものがあるということです。

 具体的には、

 「人の対策」
   ・・・後継者を誰にするか?どう育成するかということです。
 「資本政策」
   ・・・自社株をどうするか(どう動かすか)?ということです。
 「税金対策」
   ・・・どうしたら節税できるか?納税資金が準備できるか?ということです。

 以上のうち、我々司法書士は会社法を武器に第2の「資本政策」の仕事に従事し
ています。

 この資本政策をきっちり行うことによって、結果、第3の税金対策にも対応する
ことができます。

 絶対に間違ってはいけないのは、この第1、第2、第3の順番です。

 よく決定的に間違ってしまうのは、第3の税金(節税)対策にばかり目がいって
しまい、第2と第3の順番が入れ替わってしまうことです。

 結果、良からぬ人に自社株が渡ってしまい株主の権利を行使され、最後には会社
が倒産してしまうということさえあるのです。

 事業承継対策は、オーナー・経営者の最も重大な責務であると心得ておくことが
必要です。


2011.04.13(水)【ずっとウソだったのか】(金子登志雄)

 福島原発の深刻度がとうとう2段階アップされて最悪のレベル7になりました。
放射性物質の放出量の多いことが原因のようです。

 では、われわれはどうしたらよいのでしょうか。

 「その質問は原発を推進してきた人たちに聞いてください。なぜなら、こういう
事態になったときに対処できないから私は原発に反対してきたのです。対策がある
なら反対しません。」(広瀬隆、週刊朝日4月15日号23頁)、

 あれれ、手の打ちようがないようです。ならば、いたずらに不安がっても仕方あ
りません。「矢でも鉄砲でも持ってこい」と、居直って元気に暮らしましょう。

 ところで、飛行機事故の後は同じ過ちを繰り返さないように徹底した原因の究明
がなされますが、今回の事故についても、そうしなければならないのに、「想定外
だ」とか、「みんなで乗り切ろう」などと原因の究明がおろそかにされかねない雰
囲気を「頑張ろう日本」の標語から感じてしまうのですが、私だけでしょうか。

 こういうときは、いつものお人好しの日本人である必要はありません。戦後のド
イツがナチスの残党を何年も追いかけまわしたように、執拗に犯人捜しをしなけれ
ば、また同じ過ちを繰り返すでしょう(念のため、誰かを罪に問えということでは
ありません。司法取引をしても原因の究明こそが重要です)。

 いまネットで話題の「ずっと好きだった」の替え歌「ずっとウソだった」です。
斉藤和義さんという有名な歌手のようですが、オジサンの私は知りません。

  http://www.youtube.com/watch?v=nBe2Mn1sF34


2011.04.12(火)【CMパロディー】(金子登志雄)

 統一地方選は民主党の惨敗に終わりましたが、菅政権になってからは、誰も責任
をとらないのが慣例化してしまったようで、教育によくないですね。

 マスコミも、鳩山政権のときは、「鳩山やめろ、小沢やめろ」と内閣支持率調査
をもとに責めまくっていたのに、マスコミと親しい菅政権になったら、さっぱりで
す。これも教育によろしくありません。

 そんな欲求不満が積もっているのか、ただいま、菅政権を皮肉ったCMの替え歌
が政界で流行っています。

 まずは、次の「見える気持ちに」のパロディー。

  http://www.jimaku.com/company_cm/ac/ac102.html

 「心」は誰にも見えないけれど、(震災利用の)「下心」は見える。
 「思い」は見えないけれど、「思い上がり」は誰にでも見える。

 続いて、次の「こだまでしょうか」パロディー。

  http://www.ad-c.or.jp/campaign/self_area/03/index.html

 「大丈夫?」っていうと、「大丈夫」っていう。
 「漏れてない?」っていうと、「漏れてない」っていう。
 「安全?」っていうと、「安全」って答える。
 そうして、あとで怖くなって「でも、本当はちょっと漏れてる?」っていうと、
 「ちょっと漏れている」っていう。
 こだまでしょうか。
 いいえ、枝野です。

 政治家や有名人になると、常時、こうやってからかわれるのですから、気の毒
といえば気の毒ですね。普通の神経ではつとまりません。でも、責任の所在くら
いは明確にしてくれないと、また同じ悲劇が生じてしまいますので、私も戯れ歌
を1つ。

 「原発の責任は?」っていうと、「東電だ」っていう。
 「選挙の敗因は?」っていうと、いつも「政治とカネ(小沢)だ」っていう。
 いつも他に責任をなすりつけるのは、こだまでしょうか。
 いいえ、菅政権です。


2011.04.11(月)【統一地方選挙結果】(金子登志雄)

 昨日は、東京都知事選挙をはじめ、統一地方選挙の日でしたが、大震災の影響も
あって、全く盛り上がりませんでした。

 横浜市民である私も無風の県知事選だけだったら投票に行こうかどうか迷ったと
ころですが、同時に県議会議員と横浜市議会議員の選挙がありましたので、国民の
権利を行使してきました。

 唯一注目されていた東京都知事選は、思いのほか東国原氏が善戦したようですが、
結果は石原氏の圧勝でした。こういう国難の非常時には、石原氏のようなリーダー
は有利なので、予想どおりというべきでしょうか。

 政治のプロが注目していたのは与野党対決の三重県知事選です。民主党の岡田幹
事長のおひざ元ですから民主党としては絶対に負けられない戦いでしたが、結果は
民主党候補の敗北でした。それも弱冠36歳の候補に敗北でした。

 菅政権になってから、枝野前幹事長、岡田現幹事長による選挙運営は民主党の敗
北続きですから、大震災及び原発への対応の不手際を含め、また与党内部から政権
批判が復活しそうです。

 もう1つの注目は静岡市長選挙でした。こちらは大政党と新興勢力(河村名古屋
市長の減税日本)との戦いでしたが、新興勢力は一歩及びませんでした。

 異色の新興勢力である竹原前阿久根市長も県議選で落選したようです。

 いずれにしろマスコミの世論調査とは相違する正真正銘の民意の結果がでました。


2011.04.08(金)【新株予約権の内容と契約内容】(金子登志雄)

 久々にストックオプション目的の新株予約権の発行の登記を申請しました。取締
役に対するものです。

 税制適格にするため、割当契約には「行使価額の年間(暦年)の合計額につき、
金1200万円を超えてはならない」とか、「譲渡できない」とかを定めました。
また、権利者が「破産したら会社に返却したものとする」なども定めました。

 ある司法書士は、前者を行使条件として、後者を取得条件として登記申請すると
いっていましたが、本欄を閲覧している司法書士の皆さんはいかがですか。

 実はこれらは(債権)契約の内容であっても、新株予約権の内容そのものではあ
りません。債権と物権の相違のようなものです。

 前者は租税特別措置法29条の2の要請に基づき、契約に定めることが必要であ
っても、新株予約権の内容自体にする必要はありません。後者についても、契約当
事者間を拘束する契約内容であって、新株予約権の内容自体ではありません。

 どこが違うのかといえば、物権と債権の相違といえばわかるでしょうか。あるい
は、制度と個別の取り決めとの相違といえば通じるでしょうか。物権や制度は何人
にも通じる内容で、債権や個別の取り決めは契約当事者間のみに通じるものです。

 なお、3月11日の本欄で、次の内容は登記できないと説明しましたが、これも
種類株式の内容そのものではないからです。
------------------------------------------------------------------------
(株式の併合、分割又は無償割当て等)
第*条 当会社は、法令に定める場合を除き、A種株式について、株式の併合若し
   くは分割、株式無償割当て又は新株予約権無償割当てを行わない。
  A 当会社は、A種株主に対して、募集株式、募集新株予約権又は募集新株予
   約権付社債の割当てを受ける権利を与えない。
------------------------------------------------------------------------


2011.04.07(木)【代表者の交代】(金子登志雄)

 4月1日に登記申請したうちのいくつかが代表取締役の交代の事案でした。代表
取締役を追加するものもありました。

 取締役ABC、代表取締役(社長)Aの取締役会設置会社において、Bを代表取
締役社長に選定し、Aを代表取締役会長に格上げさせ、いままでAが使用していた
会社届出印をBが使うことにしました。印鑑カードはBが引き継ぐことにしました。

 このとき、Aに印鑑廃止届が必要なのをご存知でしょうか。印鑑カードは引き継
げても印鑑自体は引き継げません。もとより、AとBで同一の印鑑を届け出ること
はできません。Aが印鑑を廃止し、はじめてBが印鑑を届け出ることができます。

 上記でAを代表権のない取締役会長にすると、印鑑は自動廃止ですから、Aの印
鑑廃止届は不要です。

 さて、取締役会議事録に「Bを代表取締役社長に、Aを(代表権のない)取締役
会長に選定し、ABともにその就任を承諾した」という記載がありました。

 Aの「取締役会長の就任承諾の意思表示」に代表取締役の辞任の意思を読み取れ
るでしょうか。

 前後関係から、Aは代表取締役(社長)を辞任し後任のBに引き継ぎ、自らは取
締役会長に就任したことが読み取れても、書面審査の登記所では、「これでは代表
取締役の辞任」とは認められないといってくることでしょう(解任の可能性もゼロ
とはいえませんから)。

 追加で代表取締役の辞任届をお願いしましたが、「そのつもり」で作成した議事
録も相手に通じるかの判断は、これに限らず、むずかしいものですね。

 (参考)某MLで紹介されていました。やはり花見はしたほうがよいようです。
    酒を飲んで東北の産物を食し、被災地を応援しましょう。
     http://www.youtube.com/watch?v=UY0FtSqrMBc


2011.04.06(水)【100億円の義援金】(金子登志雄)

 3月29日の本欄で、ノーブレス・オブリージュと題して、このたびの大震災に
対して、ユニクロの柳井社長が10億円………、などと書きましたら、何とソフト
バンクの孫正義社長が桁違いの高額を義援金として提供すると発表しました。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110404-00000016-impress-mobi

 あるところにはあるものだと思うと同時に、彼にとっても100億円は、相当な
覚悟が必要な金額だったことでしょう。今後の引退までの役員報酬まで義援金に回
すなど並みの人間にできることではありません。頭が下がります。

 ご承知のとおり、ソフトバンクはベンチャー企業の雄であり、人気の高い会社で
す。私も、株主総会の運営の勉強のために、同社の株主になり、定時株主総会に出
席したことがありますが(平成9年頃)、他の会社が総会屋対策のために、ほとん
ど審議をしないまま株主総会を終わらせているのに対し、ソフトバンクは2千名以
上の参加者の個々の詰まらない質問にも孫社長自ら丁寧に回答していました。

 その姿をみて、すっかり孫さんのファンになってしまいました。当社の株主総会
の運営は、ソフトバンクを見本としたことはいうまでもありません。

 孫さんは在日3世で、子供の頃は「安本」と名乗っており、日本を脱出し米国に
留学し、帰国後、事業を始めて成功した人ですが、国籍のハンディがあったにもか
かわらず、「安本」を止め、「孫」姓を名乗り、その名前で日本に帰化しました。
まさに挑戦者です。

 こういう有能な経営者が経団連などの幹部になって日本を改革してくれる日がい
つか来ると期待していますが、彼の成功の一因は、リクルートの江副さんや、ライ
ブドアの堀江さんと違い、政治と一定の距離を置いたからかもしれません。

 しかし、彼にしても、原発問題に関しては黙っていられなかったようで、踏み込
んだ発言をしています。

   http://www.youtube.com/watch?v=cqiqkr9JKsE


2011.04.05(火)【入社式と花見】(金子登志雄)

 4月1日は全国で新入社員を歓迎する入社式でした。

 当社も例外ではありません。私も役員の一人ですから、新入社員の門出を祝うた
め司法書士業がどんなに忙しくとも時間を調整して毎年出席していましたが、今年
は無理でした。当社の主要な事業所が茨城県にある関係で、新入社員も茨城県人が
多く、千代田区の本社で入社式を行おうにも、交通事情で来られないため、今年の
入社式を茨城県で行ったためです。

 新入社員にとっては、未曾有の大震災の影響で、一生忘れられない入社式になっ
たことでしょう。

 入社式のあとは新人研修、続いて各部署に配属になって、各部署からの歓迎会で
もなされることでしょうが、ちょうど花見の季節になるので、大いに騒いでほしい
ものですが、最近は自粛ムードが多いので、これまた気の毒といわざるをえません。

 被災者のことを思い、苦しみを分かち合って花見も自粛するのが正しいのか、今
後の復興のために元気な日本にするためにも、例年どおり、花見に興じてよいのか
と幹事さんは難しい判断に迫られることでしょうが、自粛ムードによる売上減で、
商店も飲食店もタクシーも悲鳴を上げているでしょうから、少なくともあえて後者
を選択した方々に対して、白い目でみることだけは避けたいものです。


2011.04.04(月)【4月1日の法務局】(金子登志雄)

 4月1日は会社登記の書き入れ時でしたから、私も東京法務局品川出張所と本局
の2つに顔を出しました。混雑時を避けた午後の訪問だったため、思っていたほど
混雑はしていませんでした(あとで勘違いに気づきますが)。

 午後3時半頃に訪問した東京法務局(本局)でも待たされることもなく、すぐに
申請できましたが、謄本請求及び受領の窓口だけは、満席で立って待っている方も
大勢存在し、謄本を請求して受領できるまでに約1時間待ちの状況でした。

 しかし、この混雑は、この日から窓口での謄本取得が1通1000円から700
円に代わり、しかも登記印紙ではなく、収入印紙での請求が原則になったための混
乱だったかもしれません。

  http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/tesuuryouitiran2.pdf

 いずれにしろ、このご時世に活気があるので、何となくほっとする部分もあり、
待たされる辛さはありませんでした。

 1時間待って謄本を取得し、登記申請の原本還付の窓口を振り返ってみれば、何
と部屋の外にまで続く数メートルの行列ができているではありませんか。たまたま
私が訪問した3時半頃がラッキーな時間帯にすぎなかったようです。

 東京法務局(本局)の場合は、4月1日午後申請の登記完了予定日は2週間後の
15日ということです。出張所の多くが11日ですから、本局だけ特別に申請が多
かったことがわかります。

 それでも東京の場合は商業登記を担当する法務局が各地にあり仕事が分散されま
すが、被災地の福島県では統合により1つしかありません。東京以上に混んでいた
のでしょうか。登記どころではないということで申請も少なかったのでしょうか。
気になります。


2011.04.01(金)【年度末と年初】(金子登志雄)

 昨日は3月決算会社の年度末だったため、「3月31日辞任」の役員変更登記の
依頼が重なり、久々に来客が多く多忙感を味あわせていただきました。

 会社登記専門の私の場合は、月初と月末近くに仕事が集中する傾向があります。
ただし、夜型ですから、仕事は専ら夜の作業であり、日中はお客様との約束がない
限りは、いつも昼行灯(ひるあんどん)状態です。

 まるで夜になると急変する必殺仕事人の中村主水(もんど)のような生活ですが、
私も依頼された仕事に対しては必殺を心がけています。

 深夜には、どこからも電話がなく、うしろの時間が無制限であるため、仕事の完
成の目処がつくまで時間無制限で頑張ることができます。下りのエスカレーターを
駆けあがるかのごとく休みなく一挙に片付けます。実に効率的な時間です。

 40代までは、皆さまと同様に、定時に出社していましたし、子供を保育園に送
って行ったりと、人並みの時間拘束生活を送っていましたので、いまが一番自由に
仕事をできる幸せを感じています。

 さて、今日から多くの企業が新年度ですが、計画停電の影響で事業計画も立てら
れないことでしょう。戦後最大の危機であることは間違いありませんが、危機こそ
チャンスだと考える人もいますから、その方々に負けずに頑張りたいものです。

(参考)中村主水でニヒルな役を演じていた藤田まことさん、刑事役も多かった方
ですが、元来はお笑い芸人だったことをご存知ですか。わが家にはじめてテレビが
入って、兄弟で夢中でみたのがこれでした。
    http://www.youtube.com/watch?v=0-HWU-GGZx0


2011.03.31(木)【節電生活】(金子登志雄)

 もう節電生活には慣れましたでしょうか。お店の看板は電気が消され、駅の下り
エスカレーターは止まり、蛍光灯は間引きされて、もう何日目でしょうか。すっか
り慣れてしまいました。

 節電は東京電力管内だけの問題なのに、中部・関西など東京電力管内以外の地域
でも節電をしないと白い目でみられるということはありませんか。

 実をいうと、東京電力管内でも、電気は蓄電できませんから、電力需要のピーク
となる朝の9時頃や夕方時以外の時間帯は節電効果が薄いようですね。

 しかし、気は心で、24時間節電中の方が多いことでしょう。私も「もったいな
い」の感覚を持った世代ですから、いつも以上に電気はこまめに消しています。

 群馬の片田舎で育った子供の頃(昭和30年代前半)は、雷の鳴る夏の夕食時に、
よく停電がありました。電柱のトランス(電柱に乗せてある変圧器)が雷に反応し
たのでしょうが(時間でいうと、30分以内のことが多かったと記憶しています)、
そのたびに、親が蝋燭(ろうそく)を出してきて、マッチで火をつけたものです。
ライターなどという高級品は家庭にはありませんでした。

 電気は明かりとラジオのためのものであり、テレビはなく、冷暖房は人力による
団扇(うちわ)か炭団(たどん)によるコタツ、水は井戸水、風呂は薪………、懐
かしく思い出しますが、炭に火をつけ、井戸水を汲み出し、薪を割っていた親は、
さぞたいへんだったと思います。

 電気の便利さ、ありがたさを再認識した今回の節電生活ですが、同時に、その便
利さが原発によるものだと知った今日、節電にさらに真剣に取り組まないといけま
せんね。

(参考:どうでもよいことですが、当時の子供のヒーローはバイクやスクーターに
   乗って参上していました。テレビがなかったので、みたことはありませんが、
   歌は流行っていました)
    http://www.youtube.com/watch?v=BrLa1CpMK6w&feature=related
    http://www.youtube.com/watch?v=gTeJAB_-46Y&feature=related


2011.03.30(水)【株主資本承継消滅会社】(金子登志雄)

 新設合併に関する会社計算規則46条に「株主資本承継消滅会社」という用語が
登場しますが、これはどういう意味かと聞かれました。共同新設分割の計算で、本
条が準用されているためです(会社計算規則51条)。

 会社計算規則2条3項46号によると、株主資本承継消滅会社とは、「新設合併
消滅会社の株主等に交付する新設型再編対価の全部が新設合併設立会社の株式又は
持分である場合において、当該新設合併消滅会社がこの号に定める株主資本承継消
滅会社となることを定めたときにおける当該新設合併消滅会社をいう」とあります。

 この定義は一見して実に不親切だと感じないでしょうか。「新設合併で、これこ
れのときに、株主資本承継消滅会社になると定めた会社」という内容では、ESG
法務研究会って何ですかと聞かれて、私が「ESG法務研究会になると決めた司法
書士グループのこと」と応えたようなものです。

 翻訳しますと、「対価の全部を設立会社の株式(又は持分)とする新設合併の際
に、設立する会社に自社の資本金や準備金などの株主資本の内訳をそのまま引き継
がせると決めた合併消滅会社」という意味です。

 簡単にいえば、合併で貸借対照表をそのまま受け継がせるのと同様に、資本金も
資本準備金も利益剰余金もそのまま合併設立会社に引継がせる会社のことです。吸
収合併の36条に対応したものといえば、通じるでしょうか。

 これに対して、46条の「非株主資本承継消滅会社」というのは、株主資本の合
計額は設立会社の株主資本として引き継ぐが、その内訳(資本金額がいくらで資本
準備金がいくらか……などの明細)までは承継しないものです。吸収合併の35条
(ただし簿価引継ぎの場合)に対応したものということになります。


2011.03.29(火)【ノーブレス・オブリージュ】(金子登志雄)

 ノーブレス・オブリージュ(フランス語)という用語を聞いたことがあると思い
ます。欧米社会における基本的な道徳観で「身分の高い者はそれに応じて果たさね
ばならぬ社会的責任と義務がある」(ヤフーの辞書による)という意味です。

 こういう場合にも使うのか不明ですが、このたびの大震災に対して、ユニクロの
柳井社長が10億円、キャスターの久米宏さんが2億円、野球のイチローが1億円
………、続々と著名人からの高額寄附が寄せられており、実に素晴らしいことです。
  
  http://matome.naver.jp/odai/2130014991848753501
 
 「どうせ金持ちの道楽だ」「売名行為だ」としか感じない貴方、いけませんよ。
売名行為だろうと何だろうと、よいことはよいことですし、そういう嫉妬心こそが
貴方の成長を阻んでいる心の姿勢ですから。

 われわれ庶民の場合は、貧者の一灯という用語のほうが適当でしょうが、心はノ
ーブレス・オブリージュで社会的責任を果たしたいものです。

 ところで、日本人も助け合い精神にかけては決して欧米人に引けをとらないのに、
残念ながら、官僚制社会が寄附の文化の発展を妨げているところがあります。

 企業や外国人がちょっと政治家に寄附しただけで法律違反(それも刑事罰)にし、
福祉団体に寄附しても税額控除できない制度になっていたりで、国民が寄附を通じ
て勝手なことをするのを官僚制社会は嫌がるのです。

 すべて官僚の許可を得なければならない仕組みになっていますから、海外からの
救援物資も都内の倉庫に眠ったままなどといった被害が報じられていますし、東京
都の消防局が早くから原発の近くに行っていたのに、国の機関ではないということ
で待機させられ、効果のなかった自衛隊や警察機動隊による放水を先行させる結果
になったとも報じられています。

 この反省を機に、日本でも寄附やボランティアの文化を育て、何でもかんでも国
に許可を得る社会を改革したいものですが、そういう社会を目指した剛腕政治家や
ノーブレス・オブリージュの貴族政治家はマスコミを総動員した既得権力によって
寄ってたかって潰されてしまいました。

 まだまだ日本社会の古い仕組み(アンシャン・レジーム)が改革されるには時間
がかかりそうですが、一歩一歩前進させたいものです。


2011.03.28(月)【大震災】(島根・根来川弘充)

 この度の東北地方太平洋沖地震の被害に遭われた皆様には、謹んでお見舞い申し
上げます。

 当日、幸い島根県松江の事務所では、まったく揺れを感じることがありませんで
したので、同職からのメールで、大震災があったことを知りました。

 どのくらいの規模だったのか気になり、午後4時ごろにテレビをつけましたら、
上空から津波が押し寄せる映像が繰り返され、被災直後の現地の映像が、何度も映
し出され、驚きのあまりテレビにしばらく釘付けになりました。

 中でも驚きましたのは、「○○町が壊滅状態である」と、時折入る現地のレポー
トでした。

 「町が壊滅する」という表現を、映画ならまだしも、現実に聞くことがあるとは
思いませんでした。それだけに、後日、映像や写真が報道されてはいるのですが、
もっと、現地は凄惨な状況であると想像しています。

 今回の大震災は、その被害はもちろんのこと、原発の問題、さらには、電力の問
題など、日本全体にも大打撃を与えています。管総理が会見で、「未曾有の国難」
と表現されたようですが、本当に、今回の大震災は、戦後の日本にとって、最大の
危機ではないかと思います。

 この最大の危機には、「震災担当大臣」などといわず、「震災復興内閣」によっ
て、最優先させて取り組んでも良いのではと思います。

 一国民として、非力ながら自分でできることは何かを考え、積極的に取り組んで
いきたいと思います。


2011.03.25(金)【社長交代と印鑑証明書】(金子登志雄)

 相変わらず関東地方では余震が続いていますが、意識が深刻な原発及び放射能被
害に向かっているためか、地震には驚かなくなってしまいました。

 さて、3月下旬ともなると、4月1日付の役員変更の相談が増えてきます。特に
社長交代の人事については、個人の印鑑証明書の要否がむずかしいといえます。

 ちょうど、今月発売の雑誌「ビジネスロー・ジャーナル」に「グループ会社のた
めの定時株主総会の実務」という特集があり、登記分野(「グループ会社ではここ
だけ押さえる! 登記実務のポイント」)を担当しましたので、「社長交代登記と
印鑑証明書の要否」ついて、ご説明しましょう。

    http://www.businesslaw.jp/contents/201105.html

 要約すると、次のとおりです。
--------------------------------------------------------------------------
【印鑑証明書の要否の基準】
@就任者の印鑑証明書
 代表取締役の就任承諾書に印鑑証明書の添付が必要。ただし、再任は不要。
A選定者の印鑑証明書
 代表取締役を選定する取締役会議事録には選定者全員の印鑑証明書が必要。ただ
 し、前代表取締役が出席し、その者が会社届出印を押している場合は不要。
---------------------------------------------------------------------------

 したがって、取締役ABCD(代表取締役A)という取締役会のある会社におい
て、Aが取締役も辞任した後に、BCDで取締役Bを新代表取締役に選定すると、
Bにつき@で、BCDにつきAで印鑑証明書が必要になります。

 Aが代表取締役のみを辞任し、ABCDで取締役Bを新代表取締役に選定し、A
の横に会社届出印を押すと、Aの部分の印鑑証明書の準備が不要になります。

 その他の詳細は、「ビジネスロー・ジャーナル」をご参照ください。 


2011.03.24(木)【カップ麺は何処に???】(富田太郎)

 皆さま、地震は大丈夫でしたでしょうか? 今回の地震、東北地方の被災者の方
々の無事を祈るのみです。

 ところで、東京では地震の影響でしょうか? 『カップ麺、トイレットペーパー、
缶詰、レトルト食品』などが瞬く間に売り切れ、コンビニ・スーパーの棚には何も
ありません。

 日頃、『コンビニ弁当&カップ麺』を常食としている私としては、泣きたくなり
ます。

 このカップ麺等が消えた光景をみて、ある一定の年代の方は、オイルショック時
の「トイレットペーパー騒動」を思い出した方も多かったのではないでしょうか?

--------------------------------------------------------------------------
【トイレットペーパー騒動とは】
 1973年、アラビアの産油国が原油価格70%値上げをしたため、当時の通産大臣
中曽根康弘氏が、「紙節約」を呼びかけたことが発端でした(注=パニックがおき
るまで日本の紙生産は安定していたにもかかわらずです)。
 このような時代背景のとき、千里ニュータウンの某スーパーが、「宣伝用特売広
告に(激安商品だから、すぐ売れてなくなるよ!という意味で)、「本トイレット
ペーパー!売り切れ必至!」と書いたところ、読んだ千里ニュータウンの住民は、
「やはり紙不足到来なのか!」と行列になり、瞬く間に売り切れてしまいました。

 次の日は普通の商品を出したところ、これも行列、行列・・・。 
 さらに悪いことに、この行列風景を、新聞、TVが報道したため、全国的に「や
はり紙不足到来なのか?」となり、全国で大パニック(トイレットペーパー不足)
になりました。

 ちなみに、原油と紙との製造・流通過程における直接的な関連はありません。
--------------------------------------------------------------------------

 私も当時中学生の時でしたが、トイレットペーパーを買うために並んだ記憶があ
ります。群衆心理、マスコミの影響・・・恐るべしですね。

 ところで、今回のカップ麺の不足問題、不思議なことに、コンビニにはカップ麺
がないのにかかわらず、その横のラーメン屋では売り切れることもなく、本物のラ
ーメンがちゃんと食べることができます??
  ・・・・・・・

 日頃、カップ麺&コンビニ弁当を常食としている私ですが、この地震の影響で? 
皮肉なことに、料理店できちんとした食事をとっています・・・。

 くれぐれも流言飛語には惑わされないようにしましょう!


2011.03.23(水)【帰ってこいよ!−旅立ちの春−】(島根・渡部浩義)

 (金子=本稿は大震災前に渡部さんからいただいた投稿です。)

 司法書士事務所にはめったにない、学生服姿の男子3人組の訪問を受けました。

 「今日、卒業式でした。オジさんのこないだの話がおもしろかったので、お礼に
きました。都会の洗礼を受けて、頑張って勉強して、必ず帰ってきます。国の借金
900兆は僕たちが返します! これ、よかったらどうぞ。」と、ニキビ顔の一人
の彼がくたびれた学生服のポケットから紙に包まれた岡山名物“きびだんご”を3
つ、朴訥に掴み出して、はにかんで私に差し出してくれました。

 「私に?」
 「はい、僕たちのおやつで悪いですけど・・・・」

 予期せぬことで、とっさにどう応えていいのか、いい大人が狼狽してしまいまし
たが、この突然の訪問者の皆に思わずこちらも顔がほころんでしまいました。

 今年も、『学生のための法律教室』と銘打って司法書士会有志と地元高校に出前
講座に出かけてきました。そのときに会場にいた生徒さんだったようです。毎年の
ことながら、私の持ち時間は与えられたテキストからは完全に脱線し、私が彼らと
同じ地元高校を卒業してから今日まで日本各地を転戦して、受けた洗礼の数々、失
敗の過去を『日経ビジネス』ではありませんが、「敗軍の将、兵を語る」とばかり
に遠慮なく披露してきました。

 この法律教室も、既に5年以上も引き続いて出かけさせてもらっていますが、毎
年「このことは伝えておきたい」と思う事柄が変化してきていることに気づかされ
ます。初めて行ったころは、商工ローン問題に代表されるような多重債務問題が一
段と激しさをましている頃でした。

 「消費者金融には手を出すな、クレジットカードはできることなら使うな。」と
喋っていたように思いますが、ネットを仕事に使う者には、ここ数年でいよいよク
レジットカードやデビットカードなしには満足な仕事もできない世となりました。
司法書士業務も例外ではないことからも明らかです。話す内容も時代の趨勢に無神
経ではいられません。

 多重債務問題がクローズアップされてからか、“借金”というだけで、生活や事
業を営んでいくうえで必要かつ有用な借入行為までもが、すべて負のイメージでと
らえられつつあるこのところの世の風潮も、このような場で喋る機会があると気に
なります。

 さて、訪ねて来てくれた彼ら、聞けば大阪、神戸、広島でそれぞれの新生活がは
じまるとのこと。つきなみですが、健康第一に活躍を願いたいと思います。そして、
笑顔で話してくれた、「必ず地元に帰ってきます!」という言葉を信じたいと思い
ました。先行きが見通せない混迷の世ですが、これからは間違いなく「君達の時代」
です。

 ちなみに“きびだんご”お返しに、渋色が目にやさしい『マイルドライナー』を
1本ずつ進呈しておきました。これを使って、各自よーく勉強するよーに!

 (ゼブラ マイルドライナー)
 http://www.zebra.co.jp/pro/mildliner/index.html

 渋い色が中年の目に優しい、なかなかのすぐれモノだと思います。


2011.03.22(火)【安全よりも安心を】(金子登志雄)

 3連休だというのに、恒例の群馬の帰省先に帰らず横浜の自宅でじっとしていま
した。電車が途中の駅までしか行かないので、仕方ありません。

 不安だった原発問題は依然として予断を許しませんが、応急措置の放水による冷
却で小康状態のようです。テレビも娯楽番組を復活させました。

 しかし、あの放水騒ぎは、いったい何だったのでしょうか。自衛隊のヘリによる
命がけの上からの放水だって、2階から目薬をさすようなもので、素人目にも成功
確率の低いものでした。

 その後、機動隊のデモ鎮圧用の放水がなされましたが、水が届かず、最後には、
消防庁や自衛隊のビル火災や飛行機火災用の近代的な放水車が登場し、やっと放水
が成功したようです。

 命がけの作業には本当に頭が下がりますが、そのような設備があるなら、最初か
らそれを使い、上空からのヘリは必要だったのかという疑問を持ちますが、とにか
く右往左往状態で、何でもしなければならない危機的状況だったのでしょう。

 米軍は放射能専門部隊を450人も日本に派遣したようです。日本の発表を大本
営発表(わが軍の損害は軽微なり)と全く信じていないのかもしれません。原発事
故は過去何度も電力会社が情報を隠してきましたし、枝野官房長官も冷静にと心構
えを説くだけで、具体的な数値を世界に発信しているとはいえません。国際的にも
正確な情報が求められています。

 こんな状態なのに、菅さんは、笹森連合会長に「ボクはものすごく原子力に強い
んだ」と、東工大応用物理学卒の経歴を誇ったとか。これに限らず、生半可な知識
が一番困るので、こういう発言は控えて、マネジメントに徹してほしいものです。

 また、経団連の米倉会長は、記者団に対し、「1000年に1度の津波に耐えて
いるのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べたとか。

 科学的にはそのとおりかもしれません。しかし、いくら安全だといわれても、結
果がすべてです。われら無知な庶民の不安が消え去るまでには至りません。特に小
さい子供を抱えた家庭は気が気ではないでしょう。

 これを機に、「安全よりも安心」(原発行政に懐疑的で冤罪で逮捕された元福島
県知事佐藤栄佐久氏の言葉)の日常生活を送れるよう原発行政の方向転換を強く求
めたいものです。

(注)今週から徐々にいつもの「徒然」に戻します。


2011.03.18(金)【今朝は無事か】(金子登志雄)

 毎朝、目覚めると即座にテレビをつけ、被災状況に大きな変化がなかったかと確
認してしまいます。

 東北の避難所にいる方は、テレビをみる余裕もないことでしょう。何の情報も得
られない方々のことを思うと、申し訳ない気がしてしまいます。

 司法書士会の情報によると、宮城・岩手・福島3県で80名以上の司法書士が安
否不明とのことです。率にして1割以上ですから、真に被災による安否不明は、そ
こまでの数に至らないと思いますが、すでに岩手県では1名の死亡が確認されてお
り、自宅及び事務所が全壊した司法書士も少なくありません。

 原発の問題についても、予断を許しません。政府やマスコミは「心配するな」と
説明していますが、外国政府は厳しい見方をしていますし、福島県の現地では避難
民に対して、スクリーニング(放射線被害検査)をしています。そんな検査をされ
ては、「心配するな」というのが無理というものです。

 昨日は、いつもの通勤の道を歩いていましたら、裏通りに違法駐車がありました。
そこに張り紙があり、「福島県いわき市から避難してきました。しばらくここに置
かせてください」。

 まるで、「戦争難民」か、「戦争疎開者」のようにみえました。

 尋常でない事態が続いていますが、われわれには、じっと事態の推移を見守るし
かできません。この週末に事態が少しでも改善することを祈っています。


2011.03.17(木)【余震】(金子登志雄)

 大地震から5日間も経過したのに、毎日のように余震があり、落ち着かない日々
が続いています。

 同時に、被災地では、いまだに避難者への救護活動が十分でなく、水も暖房もガ
ソリンも情報手段も整備されていないようですから、二次災害が心配でなりません。

 原発問題に関しても、菅首相と枝野官房長官あるいは東京電力の担当者の話が食
い違っていたり、風評に十分に対抗できているとは思えません。

 政権与党を上げて、国家を上げて、この国難に立ち向かうべきなのに、菅さんや
枝野さんなど、素人の少数の人間だけで動いているようです。

 それで成功しているのであればよいのですが、報道によると自衛官の出動を5万
人や10万人と指示したのも、現場との打ち合わせもなく、菅さんの思いつきのよ
うですし、避難の指示も当初は原発から3キロ周囲だったのが10キロになり20
キロ、30キロに拡大していきましたが、危機管理のプロによると、初めは広く指
定しておき徐々に狭めるのが正しい指示の方法だとのことです。

 その20キロ周囲内に、避難できない被災者が多数存在するのに、支援物資のト
ラックが入れないように指示してしまったことにもなるようですから、犯罪的です。

 情報も十分に公開されないので、原発のプロや放射能のプロも、海外勢も、アド
バイスなりの対応もできず、いらいらしているようです。現場の写真くらい何枚も
取っているでしょうに………。

 とはいいながら、現時点で政権を批判したり、東電を批判しても仕方ありません。
「菅さん頑張れ、東電頑張れ」ですから、菅政権も情報を1人占めしないことを願
わざるをえません。


2011.03.16(水)【計画停電】(金子登志雄)

 計画停電のため、都市機能が麻痺しています。都心部では、多くの会社が17時
で仕事を閉めています。

 しかし、民間会社である東京電力が電気の供給をちょっと絞っただけで、これほ
どの影響が出るとは、日本経済も脆弱なものです。電気に関しては、JR東日本が
ダメなら私鉄に乗るといった選択の余地さえありません。

 東京電力が東北電力のテリトリーに作った福島の原発問題も、深刻な問題に発展
してきました。

 原発の安全性に熱心だった佐藤栄佐久・元福島県知事が冤罪で辞任していなけれ
ば、こんな大きな問題に発展しただろうかと、いまさらながら残念でなりません。

 佐藤事件は、江副氏のリクルート事件と同様に、朝日新聞の誤った報道キャンペ
ーンで東京地検特捜部が動き出し、冤罪といわれる事件に発展したものでした。

   http://eisaku-sato.jp/blg/works/

 とにかく、早く事態が収束し、戦後の驚異的復興と同様に日本人の底力を発揮で
きる環境に戻ってほしいと祈らざるをえません。


2011.03.15(火)【14日の東京事情】(金子登志雄)
 
 昨日の日中の東京は静かでした。節電のため、都心周辺しか電車が走っておら
ず、開店休業の会社や事務所が多かったためです。

 私も都内で寝泊まりし出勤しましたが、会社の同僚はほとんど出勤しておらず、
手持無沙汰でした。

 夕方の5時や6時に会社を閉めたところが多かったのか、主要駅には人が溢れ、
改札口には行列ができていました。道路も、節電に協力するお店が多く、いつも
の明るさがありませんでした。

 コンビニやスーパーの棚には食料品がほとんどありません。非常時を想定し、
インスタントラーメン等を備蓄する会社や家庭が多いためです。

 今日15日も同じでしょうが、私の世代は、停電には慣れていますので、この
程度は何とも思いませんが、この先いつまで続くのか、原発は大丈夫なのか……
については、情報不足のため不安を感じてきています。

 こんなとき最も必要なのは正確な情報ですが、首相官邸は相変わらず大手メディ
ア(記者クラブ)以外のフリー記者や外国人記者を排除しているようです。流言飛
語が飛び交わないためにも、情報のオープン化がぜひとも必要なときなのに、困っ
たものです。
  http://fpaj.jp/?p=771


2011.03.14(月)【大地震】(金子登志雄)

 東北関東大地震により被害を受けられた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 
 都内では、帰りの足がなくなり、会社や事務所に寝泊まりした程度の被害で済み
ましたが、東北地方など大被災地にいる親戚や友人、お客様のことが心配でなりま
せん。私も、仙台市には親戚、福島県にはお客様………と、東北地方には多数の知
り合いがおりますが、いまだに連絡もとれません。

 ぐらっと来たのは、私が約1坪程度の会社の喫煙室で一服しているときでした。
すぐに火を消し、喫煙台を押さえていましたが、いまから考えると、閉じ込められ
ないように即座にドアを開けておくべきでした。

 会社で寝泊まりしたのは、私を含め約10人でした。自宅が遠方でも何とか帰宅
した者のほうが多かったのですが、残留組に女性が3人おりましたので、法務担当
役員の私が先に帰るわけにも行きません。みなが寝静まって後も、ずっとパソコン
でニュースをみておりました。

 大津波には言葉もありません。
 一夜明ければ、今度は福島の原発問題………。

 今週は、無事だったわれわれに何ができるかを考える必要がありそうです。


2011.03.11(金)【種類株式の設計】(金子登志雄)

 金曜日ですので、会社法の話題です。

 上場会社(とくに銀行)発行の優先株式の定款内容に次のような条項があるの
が一般的です。

------------------------------------------------------------------------
(株式の併合、分割又は無償割当て等)
第*条 当会社は、法令に定める場合を除き、A種株式について、株式の併合若
   しくは分割、株式無償割当て又は新株予約権無償割当てを行わない。
  A 当会社は、A種株主に対して、募集株式、募集新株予約権又は募集新株
   予約権付社債の割当てを受ける権利を与えない。
------------------------------------------------------------------------

 会社法施行以前は、上記についてまで登記されていましたが、現在は108条
の株式の内容に属さないので登記は無理でしょう。

 では、なぜ、そんな登記もされないことを定款に定めるのかと疑問に思いませ
んか。これは自分で種類株式の設計をしているとわかります。

 この優先株式を普通株式に転換する際は、当初は優先株式1株につき普通株式
1株の割合での転換とするのが普通ですが、普通株式に分割や併合、あるいは時
価よりも低い価格での新株の発行があると、優先株式1株につき普通株式X株に
なるよう調整式を定めておくのが普通です。

 ここまではよいとして、もし、優先株式についても株式の分割や併合等がある
と、この転換比率の計算が実にややこしくなり、調整式が複雑な内容になります。
そこで優先株式については、固定しておくわけです。

 軸がぶれていけないのは、ゴルフも種類株式も同じですね。人生もこうありた
いものです。


2011.03.10(木)【メディアウォール】(金子登志雄)

 今週の週刊ポストに「メディアウォール」という用語が登場しましたが、ヤフー
の辞書にはありませんでした。簡単にいえば、都合の悪いことを知らしめない情報
の壁のことでしょうか。

 今後、流行りそうな言葉ですが、週刊誌がこの言葉を取り上げたのは、日本の政
治状況を既成権力側(「政官財報」連合で増税・中央集権側)と、改革派(減税・
地方主権・脱官僚)の戦いの構図と捉え、前者の大手マスコミの情報操作を批判す
るのに便利な用語だったからかもしれません。

 この構図は、従来の「親小沢VS反小沢」という人間関係あるいは派閥対派閥の
政局的見方(55年体制時代の古い見方)を超え、政策論や時代の流れの方向から、
政治の対立軸を捉えており、正しい見方だと思いました。

 ところで、このメディアウォールに関連して、情報独占の「記者クラブ制度」に
果敢に戦いを挑んでいるフリーの記者たちによる「自由報道協会」の活躍は素晴ら
しいものがあります。まさに「ベルリンの壁」の崩壊を求める自由戦士の集団かの
ようです。
 
  http://fpaj.jp/

 HPによると、これまでに記者クラブの敵である小沢氏や堀江氏だけでなく、東
京都知事に立候補する渡邉美樹氏や松沢成文氏、あるいは布(ふ)川事件などの冤
罪事件についてまで記者会見を主催していました。大手メディアでは決して報道さ
れることのない内容が多いので、私の好奇心を満足させてくれています。

 その中から、フリー記者の岩上氏のHPで、竹原阿久根前市長と仙波前副市長の
記者会見をみてみました。

http://www.ustream.tv/recorded/13151716#utm_campaigne=synclickback&source=http://iwakamiyasumi.com/ustream-schedule/ustream2&medium=13151716

 不謹慎ながら、大手マスコミの狼藉ぶりなどを具体例を取り上げて名指しで非難
しており、実に面白い内容でした。

 この竹原市長に対して、私は、自衛隊出身のめちゃくちゃな市長というイメージ
を持っていましたが、どうも、私も大手マスコミの報道に洗脳されていたようです。
氏の人間観察も優れており、市民は正確な情報(不正行為)を知るのを嫌がってい
る(知って何もしないと共犯者になり辛いから)との発言には、考えさせられまし
た(学生運動時代の標語「自己否定」に通じるものがありました)。

 仙波副市長は愛媛県で警察の裏金問題を告発した成績優秀な警察官として知られ
ていますが、1円も副市長の報酬をもらわずに、「出る杭」の竹原氏が逮捕されな
いようにガードしていたようです。

 お2人とも、阿久根市で不要なら、ぜひわが町の長に招聘したいくらいです。

 録画は1時間半もありますので、時間が自由な人以外は、土日にでもゆっくり視
聴してみてください。


2011.03.09(水)【学歴民主主義と罪刑法定主義】(金子登志雄)

 前原大臣の辞任については、諸説入り乱れています。偽装献金疑惑の追及から
逃れるための自作自演劇から、次の首相候補を追い落とす官邸陰謀説、前原氏の
北朝鮮ルートに警戒したCIA陰謀説まであります。いまのところ、確度の高い
のは、部下である外務官僚のチクリ説だと思っていますが、前原氏の脇の甘さは
否定できないようです。

 さて、昨日と違って今日は、日本は最高の民主主義国家だという話です。

 ただし、学歴民主主義です。ヨーロッパ社会は靴屋の息子は靴屋にしかなれな
ところがあるのに対し、わが日本では、どんな貧乏人も成績が優秀であれば、東
大に入学し、エリート官僚になることも、総理大臣になることもできます。

 中国の科挙制度から来たものでしょうが、貧乏人もエリートになれる点で、日
本は素晴らしい民主主義国家です。これは素直に評価してよいと思います。

 発展途上国では軍人民主主義があります。貧乏人でも有能であれば軍人となり、
クーデターで国家元首にもなれます。

 学歴民主主義の弊害は、官僚国家となり、エリート官僚が国民や国民から選ば
れた政治家を馬鹿にして、抑えにかかることでしょうか。また、日本の針路を決
める政治課題に対して、冒険をしないことでしょう。既成秩序維持で動きます。

 こういう学歴民主主義についていけなかったのか、先般は、京大入試のカンニ
ングで予備校生が逮捕されましたが、カンニングについて「偽計業務妨害罪」と
は驚きました。

 昨日、「日本では、(法律の)条文内容も曖昧で、既成秩序を維持するための
ツールとしてしか利用されていない」とウォルフレンさんの見方を紹介しました
が、「偽計」なんていう曖昧な用語では、いくらでも拡大解釈ができてしまいま
す。

 条文内容が明確で、ここまでは安全だが、これを越えると犯罪になると示すの
が「罪刑法定主義」の自由主義機能です。そこを越えない限り、自由に活動をで
きると国民が判断できるからです。

 カンニングペーパーでも同罪でしょうか。大相撲の八百長も相撲という業務に
対する偽計業務妨害罪になるのでしょうか。調査を警察に依存し、「偽計」の拡
大解釈のきっかけを作った京都大学に私は批判的です。


2011.03.08(火)【出る杭は打たれる日本】(金子登志雄)

 カレル・ヴァン・ウォルフレンをご存知でしょうか。オランダ人のジャーナリス
ト兼大学教授で、優れた日本研究家です。細かいことを含めて、日本の知識人より
も、ずっと日本の実情に詳しい方です。

 知識よりも「ものの見方、考え方」に関心の強い私は、ネット上で彼の見解を知
り興味を持っていましたので、彼の新著『誰が小沢一郎を殺すのか』(角川書店)
を、さっそく購入し、土日に読んでみました。
   
  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/404885089X.html

 日本国内での見方、米国からみた日本と違うヨーロッパ人からみた日本論・日本
人論ですが、根底には、日本人に対する愛情が溢れた良書でした。内容は、日本の
権力システムや米国への従属を徹底的に批判するものですが、よくもまぁ、日本人
を馬鹿にしないものだと、へんな感動を覚えてしまいました。

 彼が小沢氏をヨーロッパにも存在しないオバマ大統領以上の優れた改革派の政治
家だと高く評価していることはよく知られた事実ですが、小沢嫌いの皆様も、第三
者であるヨーロッパ人の見方を知る上で、たまには彼の著作をいかがですか。

 私の専門の法律でいうと、彼の主張は、西欧では法律は国民の権利を権力から守
るものとして機能しているが、日本では、条文内容も曖昧で、既成秩序を維持する
ためのツールとしてしか利用されていないとのことでした。

 先日、ある人に「日本の民主主義は、いま危機的状況にある」と画一的で金太郎
飴報道の大手マスコミ批判をぶちましたら、「これまでの日本は民主主義国家(法
治国家)だったのか」と反論されてしまいました。

 ウォルフレンさんも、同じように応えるかもしれません。日本は、法治国家とい
うよりも不文律の伝統(既成秩序や慣習)が支配する国だ(だから、改革派が力を
持つとスキャンダルを出して潰しにかかる。リクルートの江副氏もライブドアの堀
江氏もそうだ)というのが彼の主張でした。「出る杭」にもなれない力不足のわれ
われは心配無用のようですが………。

(参考:上記本105頁から財政健全化に対する彼の意見)
--------------------------------------------------------------------------
 菅氏も日本も、財政赤字削減を重視する世界的な流れの被害者だと言えよう。そ
れはアメリカの富裕層を益する政治グループや経済理論に触発された主張であり、
日本のみならず、ドイツ、イギリス、オランダ、フランスでもきわめて強い影響力
を誇っている。
 だがいまの日本が必要としているのは独自の政策である。日本に特有な状況や、
国力を考慮したうえでの政策が必要なのである。赤字というのはもちろん好ましい
ものではないが、その削減は急を要する問題ではない。さまざまな変化によって複
雑化した国際社会や、国内人口の構造的な変化など、産業界が困惑するような新た
な状況が生まれるなかで、海外で考案された処方箋を日本に導入することは得策で
はない。なぜならこれらは現地においてさえも、いい成果を上げているわけではな
いからだ。
--------------------------------------------------------------------------


2011.03.07(月)【故意と違法性の意識】(金子登志雄)

 何の証拠もない小沢氏の「政治とカネ」の問題で、ずっと偉そうなコメントをし
ていたお子ちゃま大臣(田中康夫氏の命名)の前原氏がとうとう「誠司とカネ」で
追い詰められ(これを「ブーメラン」というようです)、辞任を表明しました。

 問題となった外国人からの献金問題は、次の条文です。
--------------------------------------------------------------------------
政治資金規正法22条の5
 何人も、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人であ
る団体その他の組織(略)から、政治活動に関する寄附を受けてはならない。
--------------------------------------------------------------------------

 前原氏が寄附者を「在日」の外国人だと知っていたとしても、「故意がない」と
の擁護の論調も多いようですが、これは法律的には、難しいように思います。
(献金され たことを実際に知らなかったのであれば別ですが)。

 刑法38条3項に「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す
意思がなかったとすることはできない」と規定されていますし、日本の裁判所は刑
事犯罪に「違法性の意識」を要求していないからです。

 また、故意とは「事実を認識」していることであって、「わざと」という意味は
含まれないというのが明治時代からの裁判所の見解です。

 しかし、そうはいっても、私は、この問題に関しては、前原氏に同情的です。相
手は支援者で知り合いのおばちゃんであり、外国人といっても在日の方です。刑事
罰を課すほどの問題とも大臣を辞任するほどの問題とも思いません。

 そもそも、政治資金規正法から刑事罰を除外すべきだというのが私の主張です。
これまで何度も検察の恣意的運用で、検察が狙った政治家だけを逮捕し、「司法の
政治化・党派化」あるいは「検察国家」を推進してきた悪法だと思うからです。

 有能な政治家ほど、政治資金が集まるものです。そういう有能な政治家を潰すた
めにあるのが政治資金規正法になってしまっている現状をみると、小沢氏の場合と
同様に前原氏に同情してしまいます。

 ただ、もう1つの暴力団筋からの偽装献金問題は、悪質で、こればかりは同情で
きません。石川裁判の期ずれなどとは比較にならない不祥事です。菅・前原応援団
の大手マスコミも(注)、こればかりは、かばいきれないでしょう。
 
 偽装献金問題については、前原・野田・蓮舫氏とも、「返金する」と応えていま
すが、問題先に返金するよりも福祉団体にでも寄附した方がよほど政治家らしいと
思うのですが、なぜそうしないのかと、いつも不思議に思います。

(注)同じ問題につき、大手マスコミとネットで、こんな違いがあります。どちら
  か一方のみでは、正しい判断ができないわけです。
 (共同通信・読売もこれでした)
  http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011030501000354.html
 (フリー記者)
  http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/189056760.html


2011.03.04(金)【ずばり講義】(金子登志雄)

 昨日は、東京司法書士協同組合主催の上記『ずばり解説!………』出版記念の
会社法の講義を行いました。会社法ブームが落ち着いたこの時期にしては、まぁ
まぁ盛況で、ほっとしました。

 質疑応答の際に、100%子会社が親会社を吸収合併する場合について質問さ
れました。

 こういう合併も、たまに存在しますが、親が有する子の株式が合併後に自己株
式になるので、それを合併後に消却するか、あるいは同時に合併対価として利用
するかのどちらかであり、それ以外は普通の子会社同士の合併と大差ないと返答
しました。

 なお、講義の際に「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第15条
第2項の規定による届出は、平成〇〇年〇〇月〇〇日受理された」の根拠は、商
業登記規則110条だと話しましたが、次の内容です。
------------------------------------------------------------------------
第110条 (合併、会社分割又は株式移転による登記の申請書の記載)
 合併、会社分割又は株式移転につき私的独占の禁止及び公正取引の確保に関す
る法律 (昭和22年法律第54号) 第15条第2項、第15条の2第2項若し
くは第3項又は第15条の3第2項の規定による届出をした場合においては、合
併による変更若しくは設立の登記、吸収分割承継会社がする吸収分割による変更
の登記若しくは新設分割による設立の登記又は株式移転による設立の登記の申請
書には、届出をした年月日を記載し、………なければならない。
------------------------------------------------------------------------


2011.03.03(木)【裁判傍聴記】(金子登志雄)

 渡部さんは何ごとにも熱心ですね。私は高校生の頃、前橋地裁で、ある刑事裁判
を傍聴したら、ドアが何センチ空いていたかなどということを延々と議論している
場面で、すっかりばかばかしくなり、興味を失いました。

 裁判の傍聴記をネットでみることはあります。ちょうどいまは、小沢秘書だった
石川議員の裁判が始まり、その傍聴記がネットに登場するようになりました。

 http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/02/post_738.html

--------------------------------------------------------------------------
 大久保さんに不動産会社に土地の購入を1月まで延期するように言ってもらった
が、不動産会社に断られた。だが、不動産会社に紹介された司法書士は、10月29日
は仮登記にし、翌年1月を本登記にすれば正式な所有権の移転は1月7日になると
言われた。司法書士は法律のプロなので、(それを疑わずに)「そうしてほしい」
と言った。
--------------------------------------------------------------------------

 この不動産会社とは、仲介者ではなく売り手です。対象の土地は畑で、農地(農
地委員会への届出や許可がないと所有権を移転できない)だったのですが、市街化
区域だったので届出で済み、年内に所有権を移転しようとすればできたが、司法書
士のアドバイスで、原則どおり「仮登記→本登記」にしたということでしょうか。

 いまになってみれば、司法書士のアドバイスが政治史を変える事件になってしま
いましたが(おお、こわい!)、私が担当司法書士でも、売買両当事者から「代金
は前払いしておくが、所有権移転日は1月にしたい」といわれれば応じたことでし
ょう。石川議員にも、司法書士にも、法律上も道義上も、問題はないと考えます。

 その他の人の石川裁判傍聴記などを読んだ限りは、どうも、われわれの確定申告
と同様に、提出直前に突貫工事で石川議員が陸山会の政治資金収支報告書を作って
いたようで、小沢氏と相談して、コトを進めるほど、緻密にはやっていなかったよ
うです。ましてや、石川秘書は他の仕事も兼任で忙しかっただけでなく、「簿外」
の意味も知らないほど会計の素人でしたから(ひょっとして、「農地=仮登記」の
意味も知らなかったかも)、これでは、小沢氏との共謀の余地もなく、検察審査会
による強制起訴の前提が崩れてしまったようです。

 それでも、民主党は小沢氏を問答無用の「党員資格停止処分」にしました。規定
によると最長6カ月間という制度のようですが、今回に限り、裁判の結果がでるま
での無期限のようです。民主党執行部自体も、魔女狩りをしており(朝日新聞が菅
さんに勧めたといわれています)、これで法治国家の政権党といえるのかと、実に
情けない思いです。

(注)ジャーナルの傍聴記に「石川氏の女性秘書がダマし聴取された時の様子」と
ありますが、これは次(週刊朝日記事)のことです。
  http://honnosense.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-7dd4.html


2011.03.02(水)【法廷傍聴−東京出稼ぎ外伝−】(島根・渡部浩義)

 “東京出稼ぎ3部作”の最終章です。

 最近は、北尾トロ氏らの著作等により裁判傍聴が一種のブームのようですが、
平日の上京の折には時間があると、仕事の後に、書店、文具店、美術館めぐりと
並んで裁判傍聴も私のお決まりのコースのひとつです。やはり東京の裁判所の事
件量には圧倒されます。どうしても地方では体験できないボリューム、事件種類
があります。

 結婚して間もないころ、家内と上京し、都内観光の合間に、「帝国ホテル」に
は案内できそうになかったので、日比谷公園をはさんだ反対側の「裁判所」に案
内したことがあります。

 「裁判所ってこんなに簡単に入れるの………。」と、当時アフリカの奥地にも
行こうとしていた家内が、庁舎内廊下で耳打ちしました(まだ、オウム事件の前
だったので、現在のような入口でのボディ・チェック、持ち物検査もありません
でした。)。

 また、何気なく入った地裁刑事合議法廷が、「殺人罪」の審理法廷でした。い
かにもそれらしい(?)雰囲気の被告人が手錠に腰縄のスタイルで入廷してきて、
傍聴席にいる私たちを睨んでいます。完全にビビッていた家内でしたが、起訴状
朗読後、審理が進むにつれて次第に事件内容がつかめてきたのか、相当に熱心に
メモまでとり出しました。

 その後、地下の食堂で“ちゃんぽん”などを食しながら、「ひょっとしたら、
私も犯罪者になるかもしれない。」と、家内が一言。「そう、いろんなことが紙
一重のような気がする。」と、私。 そんな会話をしたような気がします。

 世の中が変わって、私も訴訟代理人として簡裁の民事法廷に立てるようになっ
てからは、その法廷傍聴の意味合いも「人間観察」、「世の様子の観察」にあわ
せ「法廷技術の見学」の意味合いも出てきました。

 このたび傍聴した東京簡裁での初老の「原告代理人」氏は激しかった! ドア
の開閉からはじまって、法廷内での言動、立ち振る舞い、どれも本当に「ケンカ
腰」なのです。被告消費者金融会社の担当者も苦笑い、裁判官も憮然としていま
す。よくよくみると原告代理人の胸のバッジは同職ではありませんか。

 そういえば、金融会社の担当者に連日電話で怒鳴られていた、ほんの10年前
の頃のことなども思いだされてきました。今では立場がいよいよ完全に逆転して
いるようです。

 平素は山あいの簡裁で、裁判官や書記官から手取り足取りの訴訟指揮、アドバ
イスを受けながらのどかに「代理人」をしている者にとっては、少々刺激の強す
ぎる「原告代理人」氏を目の当たりにした今回の法廷傍聴でした。

 私たち司法書士、大丈夫でしょうか………? なにか、「紙一重」のような気
もします。 
 

2011.03.01(火)【年齢と商業登記】(金子登志雄)

 島根の渡部さんは、まだ40代半ばでしたか。若くてうらやましい限りですが、
私も、ついこの間まで同じ年代でした。
 「え?」と思われるかもしれませんが、17年前なんて、つい昨日のことのよ
うに思い出せます。あれから1日しか経っていないのと同じです。

 年齢といえば、代表取締役の就任承諾書に添付される印鑑証明書で、われわれ
司法書士は、その代表者の年齢を知ることができます。

 昔は、私より年長者が社長になっていたのに、最近では私の弟の年代の方が代
表者になるようです。時代の趨勢なのか、なぜか、不思議です。

 私の方が年長のせいか、商業登記についても、コンサルしやすくなったように
感じています。やはり、商業登記は、ある程度の年齢を経ていたほうがよいので
しょう。私は、ウエスト周りも十分にありますから、顧客の社長に負けない貫録
もついてきたようです。

 年齢を経ることは、商業登記の仕事では、決してマイナスではありません。

 商業登記ではありませんが、この方は63歳の誕生日になっても、元気いっぱ
いでした。

  http://www.tokyo-sports.co.jp/hamidashi.php?hid=12097

 もうすぐ(3月5日)誕生日の三宅雪子さんのブログによると、彼女のお母さ
ん(石田博英の娘)は「田中真紀子さんとサッチーとデビ夫人と細木数子さんと
和田アキ子さんを足して5で割って×10した感じ」の貫禄だそうです。ぜひ、
ご意見番として、テレビにでも、ご登場いただきたいものです(三宅さんは表現
力がありますね。毎日のブログの更新も自然体です)。

 http://yukiko-miyake.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-da19.html


2011.02.28(月)【『本棚』−東京の仕事のその後で−】(島根・渡部浩義)

 テレビのニュース番組等で、専門家が本棚(書架)の前でコメントを述べるとい
うのは“お決まり”ともいえるスタイルですが、この瞬間、私はこの先生が何を述
べるかということより、その画面背景に映し出される本棚にある書籍の背表紙の方
に注目がいってしまいます。

 「このセンセイ、どんな本読んでおられるんだろう・・・」と。

 実際に読んだか否かは別として、その本を自分の本棚に並べるということは、そ
の人、その時々の指向(嗜好)や興味、流行を如実に表わすことにほかならないよ
うな気がします。

 また、たまに書架の入れ替えをすると、『以前はあんなこと考えていたのだ、こ
んな分野に興味を持ってたんだ・・・』と、その時々の自分自身の移ろい(?)を
感じ、気恥ずかしくなってしまうことも多いのですが。

 公私にかかわらずよそ様を訪問させていただき、通された部屋に「本棚」がある
と失礼ながら自然とそこに目が向きます。いやらしい気もしますが、人様の本棚に
興味をひかれるのは私だけでしょうか。

 「東京の仕事」も終わり、つかの間の開放的な気分に浸りながら足は自ずと『丸
善丸の内本店』に向いていました。目的は、その4階にある松岡正剛センセイ監修
の『松丸本舗』(注1)の「本棚」を見に行くことです。

 (注1)松丸本舗 http://www.matsumaru-hompo.jp/index.html

 松岡セイゴオ氏については、今さら私ごときがコメントさせていただくまでもな
く、現在を生きる知の巨人の一人であることは誰もが認めるところでしょう。同氏
の手にかかるこの『松丸本舗』の本棚に囲まれた空間にはじめて身をおいたとき、
私は間違いなく“身震い”がしました。 

 『しばらくココにいたい!島根に帰りたくない!』

 比較するのもおこがましいかぎりですが、あまりにもうちの、私の本棚が貧相に
見えました。齢四十を越えていつまでも、『●●術』や『〜しなさい』の類の本、
法律関係書一辺倒のものを嬉々として本棚に並べておく場合ではないのです。

 今まで「本棚」をして、「私バカです(もっとも、利口でもありませんが)、さ
して何も考えてもいません。」と外に向かって開けっぴろげに言っていたようなも
のだったと気づかされ、ズカーンと頭を後ろから殴られたような衝撃さえ覚えまし
た。

 『うちにもカッコイイ「本棚」を作りたい!』

 以来、上京の機会があれば、目の保養と参考のための『松丸本舗』通いが続いて
います。「本棚を写真に撮っていいですか?」と女性スタッフの方に尋ねれば、
「どうぞご存分に。」との笑顔での答え。参考写真も数知れず。模倣から本物は生
まれます、きっと・・・。

 田舎の住まいのこと、幸いにして「本棚」を作るスペースはわが家にもあるので
す。あとはひたすら本の選定眼を養い、読み、はたまたそれを支える資力を涵養す
ることでしょうか。鬼に笑われながら、あと15年ほどで私にも還暦がやってきま
す。おそらく、すぐです。 


2011.02.25(金)【その他資本剰余金】(金子登志雄)

 「その他資本剰余金」を配当原資に利用できるのかという質問を受けました。

 本欄を閲覧している方の中には、「何だ、それは?」と思った方もいらっしゃ
るでしょうが、平成13年10月の商法改正以降に認められた資本性の勘定科目
です。

 それまでは、資本金を減少すると減資差益は「資本準備金」になるとされてい
ましたが、いまは、この「その他資本剰余金」になるとされています。自己株式
の処分差益も同じです。
 言い換えれば、資本性の剰余金(資本剰余金)は、「資本準備金」と「その他
資本剰余金」に分解しました。

 ややこしいのは、会社法の条文で「剰余金」というときは、「その他資本剰余
金」と「その他利益剰余金」のことで、準備金を含みません。会社法では、「資
本金、準備金、剰余金」という分類しかないのです。

 会社計算規則で、会計基準に従い、「資本金、資本剰余金(資本準備金とその
他資本剰余金)、利益剰余金(利益準備金とその他利益剰余金)」という分類が
登場します。

 したがって、会社法で「剰余金の配当」とあるときは、「その他資本剰余金」
を配当することを含むわけです。

 資本性の勘定は、もともと株主が出資したものですから、その他資本剰余金の
配当は、自分で積み立てた預金を下ろすようなもので、儲けの配当にはなりませ
ん。資本金や資本準備金が減るわけではないので、債権者保護手続は不要です。

 講演の際に、私は資本金と準備金は定期預金であり、下ろすときに銀行(債権
者)の承認がいるが、剰余金は普通預金だから、いつでも自由に下ろせると話し
ていますが、ニュアンスは通じたでしょうか。
 

2011.02.24(木)【東京の仕事】(島根・渡部浩義)

 すこしいやらしい題名そして内容となりますが、「東京」で仕事をさせてもらい
ました。

 朝、10時30分に東京駅丸の内北口を出て、周辺2kuの範囲を3時間ほど歩
いただけで、私が平素、ひと月以上かけても稼がせてもらえるどうかというような
私にとっては高額な報酬を頂戴しました。本当にありがたいことです。
 
 何がありがたいといえば、物事がすべてビジネスライクに進むことでしょう。
私の日ごろは、認印ひとつ貰うにも依頼人宅まで出向き、この頃の天気はどうだの
農作物の作柄がどうだのといった社交辞令の挨拶に始まり、出されるお茶を延々と
頂きながらの依頼人であるおじいさん、おばあさんの世間話に付き合い、ようやく
署名・調印となる日常であることは以前にも書いたとおりです。

 丸の内界隈では時間術のビジネス書あたりに解説してあるように、本当に15分
単位で皆さんのスケジュールが動いているのですね。このたび訪問させていただい
た方々は、「では、○時15分に。」、「▲時45分はいかがでしょう。」と時間
を指定してくださいました。(本に書いてあるとおりだ・・・・(喜々!))

 そして今回は、東京駅周辺の新しいオフィスビルばかりを訪問させていただきま
したが、これがまた“おのぼりさん司法書士”にとってはスリリングなのです。
最近のこうした建物は、代表受付が上層階にあり、そこでパス(通行証)を貰って
それでゲートをこじ開け、別エレベーターで下層部にあるオフィス階へ下っていく
“訪問者知能お試し「迷路」方式”が採用されているのですね。

 「島根さん(私のこと)、行きはよいよい、帰りは怖いですよ・・・」と、件の
パスをかざして開けるゲート前でおろおろしていた私に親切にしていただいた守衛
さんに声をかけられました。文字通りの“コンクリート・ジャングル”でこそ、初
対面の方とのコミュニケーション能力は必要のようです。(その能力をくれた、両
親に感謝したいと思います。)

 その後も、目的のオフィス階層の面談ブースにおいて、私の前で繰り広げられる、
NHK『サラリーマンNEO』や、ホイチョイプロの『気まぐれコンセプト』に出
て来るような光景の連続にワクワク・ドキドキの数時間でした。

 一方で思うに、普段私が田舎での営業で頂いている報酬というのは、日常生活に
おいて人交じりが難しく、外部情報も少なく寂しい依頼者の『話伽(はなしとぎ=
話し相手)料』ではないかというような気が改めてしました。
 どこかで聞いたことのある、寂しい老人相手の訪問販売型の悪徳商法と基本的に
同じビジネスモデルのようです。


2011.02.23(水)【『ガイドブック会社の計算』】(金子登志雄)

 18日の金曜日は、神奈川県司法書士会主催の「登記法務学校」で、会社計算規
則を中心とする会社法の講師を務めました(研修担当の皆様、その節は、たいへん
お世話になりました)。

 会社計算規則の実戦的な内容を主に話しましたので、ひょっとして難しかったか
もしれませんが、おおむね好評だったようで、ほっとしているところです。

 しかし、「欠損と損失の相違」「分配可能額の計算」「抱き合わせ株式の消滅損
と簡易合併」などメジャーな論点については、まだまだ十分に浸透していないこと
もわかりました。専門の会計士さんや税理士さんですら、曖昧な理解しかしていな
い現状ですから、司法書士だけに詳しくなれといっても無理でしょう。

 そんなとき、今月は『ガイドブック会社の計算(M&A編)』という会社の計算
の入門書が商事法務から出版されました。

http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/s/?@0_mall/book/cabinet/7857/78571844.jpg

 著者は立法にも関与した小松弁護士と和久会計士のお2人ですから、さっそく購
入して、ただいま半分ほど読んだところです。会計基準と会社計算規則の関係につ
き十分に記載されていますので、会社の計算に関心のある方には、お勧めです。

 ただし、我田引水ですが、会計基準に親しんでいない弁護士・司法書士の法律関
係の方は、下記『これが増減資・組織再編の計算だ〔第2版〕』を十分に咀嚼して
から、『ガイドブック』をお読みした方が抵抗も少なく理解が早いと思います。

http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/s/?@0_mall/book/cabinet/5029/50298530.jpg

 思い出せば、会計士の有田さんの協力を得て、会社の計算についてはじめて出版
したのは平成19年11月でした。当時は、会社の計算に関する入門書もない頃で
したが、計算ど素人の私が、あの難解な計算規則を推理でよく解読できたものだと
今更ながら自分を褒めてあげたいくらいです。

 『ガイドブック』についても、私の推理に誤りがなかったかの検証を兼ねて読み
始めたわけですが、半分ほど読んだ段階では、1つも間違っていなかったようです。
安心して『これが〜』をガイドブックの前座としてお使いください。


2011.02.22(火)【獅子身中の虫】(金子登志雄)

 先週は、民主党衆院比例区選出の16人が「民主党のマニフェストで当選させて
もらったので、公約破りの菅政権をこれ以上支持できない」と会派離脱届を出した
ニュースが大きく取り上げられていました。
 
菅政権支持の大手マスコミは、さっそく「小沢氏系造反―異様な行動に理はない」
(朝日新聞社説)などと、相変わらず人間関係の政局問題に歪曲していましたが、
ネット上では、逆に16人の決断を支持する意見のほうが多いように感じました。

 菅執行部にとっては、とんでもない「獅子身中の虫」の登場ということになるの
でしょうが、「我らこそ国民との約束を守る本来の民主党」を名乗る16人にして
みれば、菅執行部のほうが真正民主党の理念を放棄した「獅子身中の虫」というこ
とになるのでしょうか。

 さて、金曜日は、別のところの「獅子身中の虫」に2時間以上も苦しめられてし
まいました。先週の14日からはじまった新オンライン申請システムに巣食う小虫
です。

 20項目以上もある事業目的を記載したのですが、何度繰り返しても、半角があ
るためエラーの表示がでるのです。従来であれば、「.、。」などが半角になって
いたとか、「イロ ハ」と「ロ」と「ハ」の間に半角スペースが紛れ込んでいたと、
すぐに発見できたものですが、今度ばかりは、何をしてもだめでした。

 時間切れであきらめ、他の者にバトンタッチしたところ、すぐに原因がわかりま
した。下記の●部分に半角スペースが紛れていたのです(従来のシステムでは、こ
の部分は無関係だったのでは??)。同業の皆さんは、お気をつけください。
--------------------
「目的」
●1.・・・・・
●2.・・・・・
●3.・・・・・
 (中略)
10.・・・・・
11.・・・・・
--------------------


2011.02.21(月)【後見人と横領】(島根・根来川弘充)

 成年後見制度がはじまって10年が経過しました。

 法定後見人は、判断能力がない方のために財産管理や身上監護を行うことを職
務とし、家庭裁判所によって選任され、また監督されます。

 主に認知症のお年寄りが利用することが多く、後見人には実際に身の回りのお
世話をしている親族がなるケースが多いです。

 お年寄りの財産を守るために後見人がついているのですが、昨今、後見人によ
る横領事件が増えており、その対策としてか、監督機関である家庭裁判所は、刑
事告発をどんどんするとの方針を打ち出しているのだそうです。

 しかし、実際は、横領なのかそれとも本人のために使ったものなのかの判断は、
非常に難しいだろうと思います。

 「疑わしきは告発」へ

 どこかで聞いたなあと思っていましたら、このサイトで、金子先生が書かれて
いる小沢議員の起訴の話と一緒ですね。
 これで本当に正しいのか疑問に感じています。


2011.02.18(金)【株式の併合と分割】(金子登志雄)

 @「3.3株を1株に併合することは可能か」という司法書士からの質問があり
ました(今度の『ずばり解説!………』に所蔵)。
 
 皆さまはどう思われますか。
続いて、次はどうですか。

 A3.3株を2.2株にすることはできるか
 B2.2株を3.3株にすることはできるか

 結論は、いずれも可能です。

 @は、33株を10株に「併合」するのと同じ。
 Aは、33株を22株に「併合」するのと同じ。
 Bは、22株を33株に「分割」するのと同じ。

 このように整数比に直すと理解しやすいですし、「併合」か「分割」かは、単に
数を減らすか、増加するかという差でしかありません。1株を1.1株にするのは
「分割」であり、1.1株を1株にするのは「併合」です。

 株式分割といえば、昔、ホリエモンのライブドアが1株を100分割し、錬金術
だと批判されていましたが、ホリエモンによると「株式市場の民主化」だったのだ
そうです。1株当たりの単価が安くなれば、庶民も投資に参加しやすくなりますか
ら、この見解には一理あります(現在は証券取引所自体が売買単位の引下げを推進
しています)。

 さて、土日がたいくつでヒマな方は、次の岩上チャンネルにある2月15日のホ
リエモンへのインタビューなどいかがですか。社会批評として面白い内容でした。
こういう優秀で希有な人材を包み込む度量が日本社会に欠けていることが残念です。
  
     http://iwakamiyasumi.com/archives/date/2011/02


2011.02.17(木)【短い言葉の弊害】(金子登志雄)

 『目からウロコ!そうだったのか!これが〜だ!』

 平成15年2月からはじめた、この本のキャッチコピーは大成功し、シリーズも
のになりました。

 各地の講演会で司法書士の方から「これがシリーズ楽しみです。次は何ですか」
とよく聞かれたものですが、いまは目的を達して、弊害を感じはじめましたので、
やめました。

 最初の目的は、学者本や弁護士本に対する挑戦でした。それまでは司法書士が実
体法の本を出すことがなかったので、富田氏たちと相談し、出版を考えはじめたら、
某出版社から、いわれてしまいました――「いま、商法の本がどれだけ大量に出て
いるのか知らないのですか。(リストを出して)これだけですよ。いまさら出して
も売れるわけがないじゃないですか」。

 要するに、「東大教授など偉い学者や著名な弁護士たちが大量に商法・会社法の
本を出しているのに、いまさら司法書士風情が本を出して売れるわけがないじゃな
いか。身の程を知ったらどうか」と、いわれてしまったわけです。

 この無礼者のいうことなど十分に承知していましたから、「従来の学者の本は役
立たないぞ。これこそが本物の実務本だ」という挑戦を込めて、最初の本に「これ
が新商法だ!」と名づけたわけです。挑発のしすぎで、生意気かなと思い、「これ
が新登記だ!」を追加し、題名を和らげましたが、中央経済社も、この題名をよく
受け入れてくれたものです(担当者が実力者だったのが幸いしました)。

 表紙も私が考えました。まるで「週刊誌の吊り革広告」のようだといわれました
が、新しい表紙のスタイルだと、好評でした。
   http://bookweb.kinokuniya.co.jp/imgdata/large/4502907502.jpg

 この題名の挑発が効いたのか、対話調がわかりやすかったのか、表紙がよかった
のか、はたまた内容がよかったのか、おかげさまで、実務書にしては大変なヒット
になりました。

 それでシリーズ化したわけですが、だんだん知名度が上がってくると弊害を感じ
はじめました。アマゾンの読者コメントに、次のようなものが登場しました。
--------------------------------------------------------------------------
 題名と装丁でどこか怪しげな雰囲気があったので購入をためらったが、ところが
どっこい、他のどの新会社法関連の書籍よりもわかりやすくて感動した。
--------------------------------------------------------------------------

 この「どこか胡散臭さ」のために、大企業の法務部や学者・研究者が購入しよう
としないことに気づいたのです。

 いまは『親子・兄弟会社の組織再編の実務』から、いかにも「真面目そうな本」
の体裁を採用していますが、司法書士や税理士、弁護士以外の読者(企業法務部な
ど)も買ってくれるようになりました。実務書のため、学者・研究者が買ってくれ
ているのかは、いまだ不明です。


2011.02.16(水)【短い言葉の力】(富田太郎)

 「一生懸命やって、能力ないのが一番タチが悪い(怒)!」
やはり、金子先生のご発言でしたか!(14日付徒然参照)

 実は、当ESGの代表である金子センセには数々の名言? 迷言? キャッチ
コピーがあります。

 ★金子語録★
 『一生懸命やって、能力ないのが一番タチが悪い』
 『顧客は、最良の教師である』
 『グループ再編手続なら任せろ!プロの極意!』(本のキャッチコピー)
 『目からウロコ!これが新増減資だ!』(本のキャッチコピー)

 いつも驚くのは、「キャッチフレーズ・キャッチコピー」が非常にお上手とい
うことです。

 一般に、人にアピールするには、
「コンパクトな言葉で、いかに表現するか!」ということがよく言われます。

 あの「小泉純一郎」元首相も数々のキャッチフレーズで、国民一般から人気を
勝ち取りました。

 ★小泉語録★
 『私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力だ』
 『改革なくして成長なし』
 『人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろだ』

 今読み返してみても、「名キャッチフレーズ」だと思います(但し、政治家と
しては嫌いでしたが)。

 これに対して、私の尊敬する「大平正芳」元首相は、一部有識者からは理論的
といわれていましたが(注)、やはり「短い言葉」でアピールすることができず、
国民からの人気はいまひとつでした。

(注)論敵だった共産党の不破哲三氏は「(大平の)国会での答弁にしろ、討論
会での発言にしろ、議事録を起こしてアーウーを抜くと、きちんと筋の通った文
章になっている。なかなか信頼できる協議相手でした。」と回顧しています。

 でも、これも「一つの才能」なのだと思います。
 私も、本につけるキャッチコピーを考えるだけで、1週間ぐらいかかってしま
います(涙)。

 こればかりは、もって生まれたものだから仕方がないですね・・・・。

 ちなみに、「金子語録」の中で一番嫌いな言葉は、
 『締切りは手形と同じですよ』・・・・です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この言葉で、何度慌てたことか・・・・・(涙)


2011.02.15(火)【全共闘世代】(金子登志雄)

 大統領の辞任表明でエジプト情勢が少し変化してきたようですが、民衆が警官隊
に投石する姿をみると、不謹慎ながら、いつも思い出してしまうことがあります。

 40年ほど前(昭和40年代前半)、いわゆる「全共闘運動」など日本で学生運
動が盛んなとき、フランスの学生街(カルチェ・ラタン)でも同様に闘争が勃発し、
デモや警官隊に対する投石が激しく起こりました。

 しかし、子供の頃から野球で鍛えた日本の学生と違い、野球を知らないフランス
では、投石の命中率が非常に悪かったのだそうです。きっとエジプト人の命中率も
ひどいものでしょう。

 ところで、かつての全共闘運動に対しては、いまだに左翼運動と誤解している方
が多いようですが、その世代末期の私にいわせれば、あれは、一種の文化革命・意
識革命であり平和活動であり、一部の先端(連合赤軍など)を除いて、左翼運動で
はありませんでした。

 この世代は、ベトナム戦争世代でもありますから、平々凡々と学生生活を送るこ
とはベトナム戦争に加担していることになるという犯罪者意識があり、それが運動
の原点でした。「自己否定」という言葉が流行ったのも、その意識の裏返しでした。

 全共闘の闘士だった菅さんや仙谷さんが、いまや権力亡者になっていることをみ
ても、全共闘運動を左翼運動とみると本質を見失うと思っています。

 昨日の報道によると、元全共闘の闘士は、相変わらず小沢氏を党員資格停止処分
にしようと頑張っているようですが、闘士でなかった全共闘世代(現在の60代前
半)は、逆に、小沢問題を人権侵害問題あるいは民主主義の危機と捉えており、ネ
ットで呼びかけて、全国各地でデモをしています。若い頃からの習性で、マスコミ
の一面的な報道に危険な匂いを感じ、居ても立ってもいられないのでしょう。

 12日の大阪デモは下記でした。大手新聞とテレビ報道しか知らない方には、ま
さかの異様な光景に映ることでしょうが、ネットでは、珍しい光景ではありません。

http://www.ustream.tv/recorded/12637562#utm_campaigne=synclickback&source=http://sassanarimasa200.blog59.fc2.com/&medium=12637562


2011.02.14(月)【プロの礼儀作法】(金子登志雄)

 「一生懸命やって、能力ないのが一番タチが悪い(怒)!」

 あの温厚で羊のようなK氏が、こんな発言をするのですか、信じられませんと
いいたいところですが、Kこと私は、確かに発言しましたね。何年も前のことで
すが、Tさんも、よく覚えているものです。

 著作の本の顔である表紙をどうするかというときに、出版社の担当者が選んだ
デザイナーさんがあまりにひどく、著者が男で法律の本なのに、花柄模様の表紙
を提案してきたりしたので、「なぜ、こんなデザイナーを選んだのだ。何度やり
直しても、ピンボケの出来栄えじゃないか」と担当者にクレームをいいました。

 やり直しの効かない真剣勝負の世界に、お稽古ごとの竹刀(しない)で割りこ
まれた気分でした。

 ところで、八百長問題で大相撲が揺れていますが、もし、皆さんが関取で勝ち
越しているとき、いつもお世話になっている大先輩の関取が7勝7敗で皆さんと
対戦せざるを得なくなったとき、冷酷に勝負に打って出ますか。

 日本の村社会では、こういうときは黙って負けるのが美徳という部分がないで
しょうか。「ご配慮」です。

 しかし、この美徳にどっぷりつかってはいけないのです。相手もプロなんです
から、負けてあげることは、相手に対してたいへん失礼なことです。冷酷に勝っ
て、ここまで成長しましたと、「恩返し」するのも日本人の美徳の1つです。

 「一生懸命やって、勝てないのが一番悪い。そろそろ引退時だ」といってあげ
るのが、プロの世界の礼儀作法というものです。

 とはいいながら、相撲とか、われわれ個人事業主の世界では、プロに徹するこ
とができても、和や長幼を重視する村社会の会社などでは、こういう対応をする
と、「明日から来なくていいよ」といわれかねませんね。気をつけましょう。


2011.02.10(木)【表紙は本の顔】(富田太郎)

 土日は『楽学 商業登記法 改訂版』の校正を行っていました。

ところで、出版社といつも揉めるのは「本の表紙」です。

 『楽学 商業登記法』の初版本の表紙は、「おばさん?がスキップしている絵」
で、正直、ガックリくるものでした・・・(泣)。

 本業の激務の中、土日もなく、900ページにものぼる執筆の後、できあがっ
た表紙を見たときは、「今までの苦労はなんだったのか?」と泣きたくなりまし
た(号泣)。

 いつも雑誌に「近日発売」と出ながら、執筆が遅れに遅れる私は、出版社に強
く言える立場ではないのですが・・・、あの表紙だけは・・・・・(涙)。

 つまり、「本の表紙」とは「本の顔」なのです。

 あの植草甚一さん(注)は、あるエッセイの中で、
「表紙がよい本は中身もいいと思う。本を買う時、表紙が気にいって買うことも
少なくないのでは・・・。」
と書いていましたが、蓋し名言ですね。

(注)植草甚一(うえくさ じんいち、1908年8月8日 - 1979年12月2日)、
  欧米文学、ジャズ、映画の評論家。洒脱なエッセイは、一世を風靡した。

 「作家の文章」と「表紙の絵」で、本の価値がさらに上がる場合もあります。
有名なところでは、「山口瞳&柳原良平」「村上春樹&安西水丸」のコンビなど
は、まさに相乗効果で本の価値を高めています。

 ところで、以前、K氏という方が、本の表紙をめぐって、出版社の方と言い合
いをしているのをみたことがあります。

 K氏「この表紙はなんですか(怒)! △■●〜」
出版社「こんなに一生懸命やっているのに、そこまで言わなくてもいいじゃない
    ですか!」
 K氏「一生懸命やって、能力ないのが一番タチが悪い(怒)!」

・・・・・・・・・・・・・

 その後、出版社の方は、怒りながら帰っていきましたが・・・・。

 お互い信頼関係があるからそこまでいえるのでしょうが、まさにプロ対プロの
真剣勝負でした。

 あぁ〜。私も早く、K氏のように強く言いたいものです(きっぱり)!

・・・・・・・・・・・・・・

 その前に、『締切りを守れ!』ですよね・・・・(猛省)。


2011.02.09(水)【岡田式選挙と小沢式選挙】(金子登志雄)

 名古屋選挙で河村さんがあまりに勝ちすぎたためか、面白くない大手マスコミや
反対派から、早速、トリプル選挙は邪道だ(片山総務相)、ポピュリズム(大衆迎
合主義)だ(某大学教授)などという批判が起きているようです。

 しかし、あの小泉フィーバーも、小沢辞めろコールの魔女狩りも、みなポピュリ
ズムの結果であり、今回だけ、それをやり玉にあげても説得力はありません。

 選挙は勝たねばなりません。そこで、連戦連敗の(枝野)岡田幹事長式の選挙と、
連戦連勝だった小沢元幹事長式の選挙を比較すると、次のエピソードで雰囲気がわ
かると思います。

--------------------------------------------------------------------------
 アンチ小沢の急先鋒、時事通信の田崎史郎の見方が面白い。
 「岡田さんが地方回りで青森へ行ったとき、県連の人がぜひ食べてもらおうと、
わざわざ大間のマグロを取り寄せて準備していたそうです。しかし、やってきた岡
田さんは『私、コンビニでカロリーメイトを買いますから』と言って、箸もつけず
に帰ってしまった。
 小沢さんは岡田さんとは対照的に、どこへ行っても地元の人たちと酒を酌み交わ
す。だから、ある若手議員が言ってましたが、岡田さんには7回きてもらったけれ
ど、1回だけ来た小沢さんのほうが、はるかに効果があったと。小沢さんは、地方
へ行くと、その日集まって酒を飲んだ支持者の名前と住所を、後で全部教えてもら
うんです。それで全員に手紙をだす。そういう人を動かす上での配慮は、政治家に
とって一つの大きな力になります」(週刊現代2011.01.19/26)
(情報源)
   http://www.the-journal.jp/contents/futami/2011/01/post_33.html
---------------------------------------------------------------------------
 
 泥臭さを嫌う都会型の岡田さんやオリジナル民主党の菅さん、枝野さん達は、駅
前など人が大勢集まるところで、選挙民に訴える「風」任せの選挙を行うため、風
を吹かすマスコミを重視する傾向があります。マスコミ出身者が菅支持者に多いの
もこれでしょう(安住、生方、小宮山氏など)。

 これに対して、「頭は西洋人だが首から下は土着日本人」といわれる小沢氏の選
挙戦術は、田舎重視で、辻説法や握手など選挙民との直接接触を重視します。だか
ら、小沢支持者には野武士が多く、逆風に強いところがあります。

 河村流はおそらく後者でしょう。方言丸出しの河村さんに対しては、気楽に一杯
どうですかと誘えそうな親しみやすさが感じられます。河村さんに対抗できるのは
野球の星野監督しかいないといわれるのもわかる気がします。

 以上の話、商売の仕方に通じませんか。
 残念ながら、当事務所の営業は、岡田方式以下で、駅前で宣伝もせず、ただひた
すら長屋で傘を張りながら、お客様を待っているだけです。これでは、司法書士会
の役員にも当選しませんね。


2011.02.08(火)【民衆による政変時代】(金子登志雄)

 「名古屋の名物は手羽先だけじゃない、民主主義も名物にする」、選挙に勝利し
た河村市長の言ですが、さすがにうまいことをいうものですね。

 民主党王国の愛知県で6日に行われた名古屋市長選挙、愛知県知事選は、元民主
党の河村氏及び河村氏の支援する前自民党代議士の大村氏の圧勝に終わりました。
既成政党の神通力(じんつうりき)が全く及ばなかった選挙として象徴的な結果に
終わりました。

 河村氏は「税金を払うほうが苦しく、税金を食べる方が楽をする政治を根本から
変える」と減税を公約にしただけでなく、公然と国民生活第1の旗を掲げる小沢氏
を擁護する発言をしていたため、消費税アップや小沢氏排除を目指す菅政権には皮
肉な結果になりました。

 まさに、党派を超えた「名古屋・愛知の乱」(社民党前代議士保坂展人氏の言)
でしたが、今後は、各地方で、愛知・名古屋モデル、橋下知事の大阪モデルと、さ
まざまな地方自治のモデルが出現する切っ掛けになりそうです。再選はできません
でしたが鹿児島の竹原・阿久根市モデルも、別の地で復活するかもしれません。

 民衆のパワーによる政変としては、エジプト問題からも目を離せません。日本で
は、「民主化運動だとしても、イスラム原理主義者にエジプトが支配されたらたい
へんだ」という論調が多いようですが、いま、それに反論しているエジプト人のタ
レント・フィフィさんのブログがネットで話題になっています。

--------------------------------------------------------------------------
 野党であるムスリム同胞団の事が度々メディアで紹介される際に、この同胞団を
過激派とイコールに誤解して解説する人がいますが、ちゃんと勉強した上で話をし
ていただきたい。…中略…、ムスリム同胞団は孤児院や病院などを設立し古くから
民衆をサポートしてきた団体、組織であって、過激派とは全く異なる。むしろムス
リム同胞団をアルカイダなどのように扱って世界にその誤解を広めたのはアメリカ。
その方がアメリカに取って都合がよかったから。
   http://ameblo.jp/fifi2121/entry-10788441634.html
--------------------------------------------------------------------------

 内情は知りませんが、愛知県や名古屋市の選挙では、国が民衆の求めているもの、
エジプトの政変では、国(ムバラク政権)やそれを支援するアメリカがエジプトの
民衆の求めているものに無頓着だったことに起因することだけは確かなようです。

 辛卯(かのとう)の今年は、時代の変わり目で、各国とも政変に揺れるのでしょ
うか。国民の目をそらすために、この時期に公表されたのではないかといわれてい
る大相撲八百長問題に、目を奪われないようにしたいものです。


2011.02.07(月)【雪降ろし】(2月1日執筆分、島根・渡部浩義)

 前回の投稿では西の雪国ののどかな日常の様子を投稿してしまいましたが、前回
の原稿投稿日から約10日後の現在、雪による私の周囲の様子は大きく変わりまし
た。(もっとも東北、北陸地方のご苦労には遠く及びませんが。)

 この10日間というもの、私はおよそ収入に結びつく仕事というものをしていま
せん。朝から晩まで雪をかまって(雪かきして)過ごしているというのが正直なと
ころです。

 ご承知のとおり、山陰地方はこの年末年始には記録的な大雪に見舞われましたが、
降雪被害の大きかった沿岸部はその後積雪もなくなりました。が、元々積雪地域で
ある私のいる山間部は、その後も断続的に降り続いた雪と低温気象で現在かなりの
積雪量になっています。最近では、昭和38年の豪雪に次ぐ積雪量ではないかとの
地元での話になっています。

 今週は、ようやく天気予報にもお日様のマークが現われてホッとしていますが、
先週末ごろには、自宅屋根のきしむ垂木の様子を見て、少し“危機感”さえ覚えて
いました。この日、月曜日と、わが家は家族総出で屋根の雪降ろしをしました。

 「経済効率」が叫ばれる世にあって、一銭の稼ぎも生み出さないこのような作業
を、小学生の子供から70歳を超えた年寄りまでが手をそろえて日がなやらざるを
得ない様子は、雪のない地域の皆様方にはいつものことながら摩訶不思議で、非効
率的な情景でしょうか。

 それでも、家族総出で雪降ろしのできる世帯はまだ良い方で、到底そうすること
ができない独居老人や高齢者世帯の堆く雪の積った隣近所の屋根を尻目に作業をし
なければなりません。時々そうした気の毒な家の中から、賑やかに作業している我
が家の様子を見上げられると、少し申しわけない気持になります。

 「あんたのとこは若さん(私のこと)にいい仕事があっていいな、うちには田舎
に仕事がないけん戻らせるわけにはいかんのよ・・・。」
 こんなことを近所のお年寄りからよく言われます。なんと応対したらよいでしょ
う。「司法書士になられたら。」とでも答えるべきでしょうか。

 最近は、雪降ろし中の転落事故のニュースが相次いで届きますが、そのおよその
ものが高齢者の方がほかに方法なく、家を守らんと屋根に上がられ事故に遭われて
いる痛ましい内容だと思います。

 昨夏は、お盆にあわせて「田舎の墓の手入れ」をこのコーナーでお願いしたよう
に思いますが(2010.08.18掲載)、冬には冬のお願いがあります。雪国に親御さん
や家族を残されている皆さん、近々にお休みがあれば家を見に帰ってあげてくださ
い。そこで目の当たりにされる様子を見てわかったり、思い出されることがきっと
あると思います。

 この春も、これ機会に雪国を後にされる世帯がまたいくつあるのでしょう………。


2011.02.04(金)【無理心中株式】(金子登志雄)

 『ずばり解説!事例で読み解く商業登記』での質問の中には、100%減資には
全部取得条項付種類株式を利用するものだと思い込んでいるものがありました。
 
 ここで100%減資といっても、資本金を0円にするだけでなく、既存株式の全
部を消却(消滅させること)する意味を含んだ概念です。

 たとえば、資本金1000万円、発行済株式の総数200株のA社があり、債務
超過で回復の見込みがないとき、ホワイトナイト(救済してくれる会社)としてB
社が現れたとき、Aの既存株主全員に責任をとらせ、発行済株数0株、資本金0円
にし、同時に、Bに新株を発行し、株数〇〇株、資本金〇〇円にするものです。

 このとき、A社の既存株主のうち1人でも、この減資に反対すると、株数0にで
きません。価値がないとはいえ、強制的に株主でなくさせることができないからで
す。

 ところが、種類株式であれば、最初からそういう内容を持った株式だから、株主
でなくされても我慢しなければならないとされ、こういう種類の株式を全部取得条
項付種類株式といいます。株主総会の多数決(特別決議)で、その種類の全株式が
会社に取得されてしまう内容です。嫌だという株主が存在しても、強制力があるた
め、私はあえて「無理心中株式」と呼んでいます。

 そこで、A社の既存株主のうち、この減資に反対しそうな株主がいるときは、既
存株式を全部取得条項付種類株式に変更して、強制的に株数0にしてしまうわけで
すが、A社の既存株主全員が最初からこの減資に賛成してくれれば、わざわざ無理
心中の準備をする必要がありません。株主全員が持株全部をA社に寄付し、自己株
式として消却すればよいだけです。

 株主数の少ない中小企業では、ほとんどのケースがこれで済んでしまいます。
「100%減資=全部取得条項付種類株式」との思い込みは、そろそろ捨てなけれ
ばならないということです。


2011.02.03(木)【用語に神経質になろう】(金子登志雄)

 上記のお知らせのとおり、東京司法書士協同組合刊で『ずばり解説!事例で読み
解く商業登記』を今月末に発行します。

 本書は、全国の司法書士から「商業登記倶楽部」に寄せられた質問に私が答えた
ものですが、質問内容をみると、改めて、用語の使い方が雑だなと感じました。

 (商業登記倶楽部=会員司法書士数百人の大組織)
   http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/STClub2.htm

 たとえば、新設分割なのに、「分割契約書」とか「承継会社」と使ったり(正し
くは「分割計画書」「設立会社」)、「その他資本剰余金」を「資本準備金」と表
現したりする例がいくつかありました。小会社(資本金1億円以下の株式会社)、
無増資合併(資本金を増加しない合併)などと旧商法時代の用語を使う方もいらっ
しゃいました。

 本欄閲覧の非司法書士の方は、「ふ〜ん」と思うだけで、他人ごとでしょうが、
皆さんも友人とのメール等で、時事問題を語るとき、「管首相、仙石元官房長官、
足利(あしかが)事件の菅谷さん」などと書いていませんか。

 いずれも、私が、本欄でワープロの変換ミスで間違ってしまった文字ですが、正
しくは「菅」、「仙谷」、「菅家」です。

 もの書きは、こういう誤字をすると、読者から非難され、内容まで価値が低くみ
られますから、結構、神経質です。そのための校正でもあります。

 昨日も本欄でTPPをTTPと書いてしまい、島根「県」司法書士会のお仲間か
ら、すぐに忠告が来ました。ありがたいことです。

 ちなみに、東京「都」司法書士会とはいいません。神奈川は「県」付きで、埼玉
は「県」なしです。名称ですから、深い意味はないでしょう。


2011.02.02(水)【検審起訴とサッカー】(金子登志雄)

 陸山会事件がとうとう起訴されました。31日に起訴されると事前に報道されて
いましたが、誰がリークしたのか、「情報管理」が全くなっていないという非難は
ともかく(株の世界では明らかなインサイダー取引ですね)、検事役の指定弁護士
の記者会見をみると、半身の構えで、辛そうでした。

 3人中2人からは、こんな発言がありました。
--------------------------------------------------------------------------
 「必ずしも、有罪だと確信したから起訴するのではなくて、起訴することが法令
で決まっておる。その中で、起訴しない条件はなかった、と判断したから起訴した
ということです」。

 「私も別に有罪を獲得できると思ったから起訴したというよりは、起訴が議決さ
れたから起訴した、ということではありますけども、」。

(文章)
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/articles/2011013100029.html?iref=chumoku

(録画=300Kをクリックする)
http://www.videonews.com/press-club/0804/001656.php
-------------------------------------------------------------------------

 検察審査会の起訴議決は、仮に議決後に無罪だと判明しても、起訴しないといけ
ないことになっているようです。制度の不備でしょう。

 マスコミでは「小沢被告」と呼び、実にうれしそうに悪人報道をしているため、
政治問題に明るい中高年に多い小沢支持者はさぞガックリきているだろうとネット
で支持者らしき方の意見を閲覧してみましたら、意外にも、「これで捜査や検察審
査会の疑惑が表に出てくる」と歓迎していました。そういう見方もあるのですね。

 私自身は、西松建設からの迂回献金問題も、水谷建設からの裏金問題も、検察の
徹底調査で嫌疑がないことに確定し、小沢問題の中心部分は終わっているだから、
単に帳簿の記載が1年ずれた程度のことで(仮に有罪でも主犯役の石川議員は罰金
刑程度でしょう。小沢氏については、さらに共謀共同正犯関係の立証という大きな
壁があります)、大騒ぎするのは、いい加減にしてほしいという意見です。景気対
策や消費税、TPP、エジプトの混乱のほうがよほど重大です。

 もっとも、ことの本質は刑事問題ではなく、小沢氏を代表するアジア重視の自立
派(反対派からいわせると反米・親中派)を裁判問題に押し込めて動きを封じてお
くのが目的で、有罪か無罪かはどうでもよいのでしょう。

 サッカーのようにフェアに戦えよというのは、スキャンダルが大好きで、みのも
んたさんをオピニオンリーダーとするワイドショー政治の日本では、まだ無理なの
でしょう。ちなみに、サッカー先進国のイタリアでは、首相に少女買春の疑惑が起
こっているのに、国民は平静のようです。私もイタリアに生まれたかった。

  http://www.cnn.co.jp/fringe/30001564.html 


2011.02.01(火)【「李」選手、お見事!】(金子登志雄)

 私が子供の頃は、野球全盛時代で、サッカーは流行っていなかったため、いまだ
にサッカーには疎いのですが、土曜日の深夜は、世の話題に遅れてはなるまいと、
アジアカップの優勝決定戦をみました。

 結果は、見事なチームワークで、途中出場の李忠成選手が左足でボレーシュート
を決め勝利しました。右利きなのに、左足で蹴るなんてことは、野球の世界からは
信じられないことです。お見事でした。

 スポーツは、政治家の世界と相違し、マスコミの横やりもなく、正々堂々と戦え
るので、みていて気持ちがよいものですね。と同時に、あんなに走り回って、格闘
技のようなぶつかり合いでは、想像以上に、たいへんなスポーツだと感じました。
30代前半までしかできないでしょう。

 ところで、李選手の李姓は韓国と中国(ベトナムにも)にある姓のため、どちら
のルーツなのかなとネットで検索したところ、韓国系4世で自ら日本に帰化したと
のことです。祖先の姓を日本名にするなど、若いのにりっぱですね。ソフトバンク
の孫社長も祖先の姓を誇りに、帰化しても孫姓を名乗っています。

 人種のるつぼである米国では、名前で〇〇系と分かりますから、日本でも、徐々
にそうなり、100年後あたりには、「スミス太郎」さんも「プーチン花子」さん
も、ご近所に登場することでしょう。

 ついでに、菅首相の「菅」姓を調べましたら、古くからある日本名のようですが、
秋田県では「スガ」さんになるようです。

 米国のレーガン元大統領は、大統領就任までは「リーガン」を名乗っていたのに、
「正しくはレーガンです」とご本人が言い出してから「レーガン」になりました。
菅首相も「正しくはスガです」と言い出しておけば、「空き缶」と呼ばれずに済ん
だのに、もう遅いですね。

 あれ、いつの間にか苗字の話に変わってしまいました。私は、国債の格付けどこ
ろか、サッカーにも疎いため、その話題は数行しか書けなかったということです。


2011.01.31(月)【ストーブ】(島根・渡部浩義)

 またしてもまったく司法書士業務には関係ありません。

 初めてパソコンを手にした20年前、「パソコンは湿気を嫌うので、部屋の暖房
はストーブは避けてエアコンで、ストーブの上に“やかん”をかけておくなんても
ってのほか!」とパソコンショップ(当時はそういった。)の店員さんに注意説明
を受けた記憶があります。

 そして今日この頃、パソコンも性能が格段によくなったのでしょう、あわせて私
がずぼらになったことも相俟って、今日も我が事務所のストーブの上では“やかん”
がシューシューいっていますが、私の愛機(パソコン)は何の変調もなく働き続け
てくれています。

 最近は“やかん”どころか、ストーブの上には“鍋”がかかるようになり、その
中身は、おでん、ビーフシチュー、ぶりの粗(あら)、カレー、ゆずの皮、牛すじ、
そう調査士の現場外業から帰ってからの職員さんとストーブを囲んでの『釜揚げう
どん』というのもありました。特にコトコトと煮込む料理は本当に上手に煮えます。
ファンヒーターではこうはいきません。

 こうして最近の渡部事務所は、コーヒーの香りはもとより日替わりで醤油やデミ
グラスソース、はたまたカレー等の香ばしい香りが渾然となって充満しており、
「ここは一体何屋さん?」の状態となっています。

 都市部のインテリジェントオフィスビルに事務所を構えられている同業の先生方
からは、「一体何やってんだ。真剣にやれ!」とあきれられるかもしれませんが、
こちらは最近、外は大雪。当方から顧客先に出かける以外には事務所を訪ねてくる
人もめったになく、およそ誰にも迷惑はかかりません。

 不景気、不景気と言われながらも、滞りなく灯油が買えて、ストーブにかかった
鍋から立ち上る湯気ごしに窓の外の降りしきる雪を時折眺めながら、暖かい室内で
の内業で何がしかの報酬までいただける喜びや、外業で芯まで冷えた体をストーブ
で炙り、南米あたりのコーヒーなどを温かくいただける喜びをいつにもまして感じ
ているこの正月です。日本に生まれてよかった。司法書士・調査士になれてよかっ
た。

 今年は、こんな身の回りの些細なことに幸福を感じながら生きることにしたいと
思います。本稿を打っているうちに、何となく今年の目標、過ごし方が見えてきま
した。『徒然日誌』、ありがとうございます。

 ちなみにある日は、母が手作り蒟蒻(こんにゃく)の灰汁(アク)出しをストー
ブのうえの鍋で始めましたが、このときだけはその強烈な匂いに耐えられませんで
した。主婦司法書士の皆様、コンニャクの灰汁出しだけは換気扇のある台所でやり
ましょう。


2011.01.28(金)【日本自由報道記者クラブ協会設立】(金子登志雄)

 金曜日は法律ネタのつもりでしたが、昨日、「お!」と思うニュースが飛び込ん
でまいりましたので、この話題に変更します(大手メディアでは、取り上げないで
しょうから)。

 昨日、フリーの記者が大手メディアの情報独占に対抗するため、「日本自由報道
記者クラブ協会」を設立したとのことです。

    http://diamond.jp/articles/-/10911
 
 かねてより本欄で取り上げておりましたが、日本は「情報独占社会」です。あち
こちに大手メディアだけが加入できる記者クラブ制度があり、官庁等で無料で場所
を与えられ、情報を独占してきました。記者会見もこの記者クラブ主催であり、官
庁側の主催ではありません。有名なニューヨークタイムズなどの海外メディアでさ
え、記者クラブ様に逆らうと記者会見にも出席できないのです。

 大手メディアは情報が欲しいから官庁と親しくなり(夜討ち朝駆けを含む)、時
たま情報のおこぼれを頂戴し、特ダネを手に入れ、官庁側は官庁側で記者クラブを
広報宣伝の場と考えるため、ここに持ちつ持たれつの癒着が生じ(いわゆるリーク、
世論操作)、マスメディアの本来の役割である権力の監視を怠ってきました。大手
メディアの情報が金太郎飴で、週刊誌やネット情報と相違するのは、このためです。

 番(バン)記者というのも、特定の大物政治家に近づき、かわいがられて情報を
もらう係ですから、権力者たる政治家批判など、もってのほかです。検察庁の記者
クラブは検察の応援団である従軍記者クラブだとまで批判されてきました。

 首相日程によると、12月23日には、首相が東京芝公園の日本料理店「とうふ
屋うかい」で、朝日新聞の星編集委員、毎日新聞の岩見客員編集委員、読売新聞の
橋本特別編集委員と会食しましたが、こういう慣れ合い関係も、海外メディアでは
あり得ないことです(ちなみに、末端の法務局職員は、司法書士と会食することさ
え避けています。これも極端ですが)。

 経済だけでなく情報の独占も禁止し、多様な情報を国民及び企業が知り、正しい
判断をしないと、日本の成長も日本経済の成長もありません。

 情報には独占禁止法は効力が及ばないので困ったものだと思っておりましたとこ
ろ、この「日本自由報道記者クラブ協会」の設立は、うまく行けば、日本を欧米並
みの情報の自由な国にする先兵になる可能性を秘めていると考え、私はビッグニュ
ースだと捉えたわけです。

 大手メディアは、新聞もテレビ局も支配しているため(海外では新聞社がテレビ
局を経営することを禁止しています)、フリーの記者の抵抗がどこまで届くかは未
知数ですが、日本の将来のためにも、応援したいものです。


2011.01.27(木)【司法書士試験追加合格】(金子登志雄)

 採点ミスで、追加合格者1名ということです。

 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00040.html

 この方の心境は、どんなものでしょうか。

 9月下旬の筆記試験の発表でがっくりしていたところ、突然、福の神が舞い込ん
できた思いか、あるいは、合格を確信していたのに不合格扱いされ、怒り心頭で自
分で再調査を依頼していたのか。
 いずれにしろ、結果がよければ、途中経過は許せてしまうものです。

 日本社会は、試験に関しては実に公平でオープンですね。試験委員の氏名どころ
か、最近では、試験内容まで法務省のHPで公表しています。

 出願者数が33,166名なのに、受験者数は26,958名で、6,208名
も戦わずしてあきらめたこともわかります(社会人の受験生でしょうが、受験料は
1人6,600円のため、4,000万円以上です。ああ、もったいない)。
  
  http://www.moj.go.jp/content/000062325.pdf

 これに対して、裁判(司法)は面子の塊です。国側の負け戦であることが明らか
でも、無理やり起訴や上訴し、面子を保とうとします。小沢氏秘書の大久保氏の西
松建設問題の裁判では、検察側の証人が検察に不利な証言をしたため、何と起訴内
容を変更(訴因の変更)し、別事件にしてしまいました。やり過ぎですね。

 司法書士試験追加合格者の方は、試験委員が面子にこだわらなくて、ほっとして
いることでしょう。おめでとう。

 同時に、過去に遡って採点ミスの調査をしないことを祈ります。私の知り合いの
あの人は、採点ミスで合格したとしか思えませんので………。私は大丈夫かなぁ。 


2011.01.26(水)【私の高価なコレクション本】(富田太郎)

 土日は、「楽学商業登記法」「まんが司法書士開業入門」(住宅新報社)の改訂
版の執筆作業をしていました♪

 著者にとって、改訂版までいくということは、ある程度売れたことになり、出版
社への責任も果したことになります。

 もっとも、改訂版が出されると、(私の書いた)初版本は、全く価値がなくなり、
アマゾンなどでは、100円ぐらいで中古本として売り出されたりします(失礼な
!)。

 高価な値段がつく、「有名な小説家の初版本」とは、大違いです。

 ところで、皆様は『高橋和巳』という小説家をご存知でしょうか?

--------------------------------------------------------------------------
★『高橋和巳』(たかはし かずみ)★
 全共闘時代、カリスマ的な人気のあった小説家。1967年、京大文学部助教授に就
任。おりからの大学紛争のなかで学生側から支持を得るも、やがて心身ともに疲労
し辞職した。その後、39歳の若さで死去。

 作風は、屈折したインテリの苦悩を描いたものが多い。
 主な著作は、「黄昏の橋」「孤立無援の思想」「悲の器」など。
--------------------------------------------------------------------------

 私は、高校時代から、『高橋和巳』の絶大なるファンで、多くの本を持っていま
す。なかでも、「黄昏の橋」「孤立無援の思想」の初版本を持っています!!

(聞いていますか? タカハシカズミの初版本ですよ!凄いでしょう♪)

 きちんと、表紙にラミネート加工をし、30年以上たった今も、きれいな保存状
態です。

 たいした財産など持っていない私ですが、これら初版本は名実ともに、私の価値
あるコレクションです(ニヤリ)♪

そんなある日、神田の古本屋街を散策していたところ、
なんと! 上記『高橋和巳の初版本』があるではないですか!

値段を見ると????・・・・・・・300円でした・・・・(汗)。

 そうですよね・・・。
今の時代、あんな固い内容の小説、読む人なんかいないですよね・・・。
 ・・・・・・・・・・

 別に、高くなることを考えて、所持していたわけではないのですが、
30年間大切に、(今や300円の)初版本を保存していた私って・・(号泣)。


2011.01.25(火)【書店街でネット文化に思う】(金子登志雄)

 通勤で降りる地下鉄の神田神保町駅から事務所に着くまでに、神田書店街(古本
屋街)を通過します。

 出不精で書店にすらめったに立ち寄らない私も、自著がいまどんな状態で販売さ
れているのかと、書泉グレンデと三省堂書店を覗いてみました。

 会社法書籍の棚に行きましたら、書名に「会社法」とつく教科書やコンメンター
ル的な書籍ばかり陳列され、「合併」とか「減資」とかの分野別の専門書的なもの
は、ほとんどありませんでした(あってもみつけにくい状態でした)。これでは売
れません。

 結果的に、アマゾンなどのネット書店で、「合併」「減資」などと検索して、目
指す書籍を購入することになります。これは、他のジャンルの本でも同じです。

 書店の「有限のスペース」とネットの「無限大の領域」との差は、いかんともし
がたく、街の書店の経営の先行きに他人事ながら悲観的になりました。ショーウイ
ンドウ機能さえ、ネットにかないません。

 同じことが「新聞」と「ネット情報」にもいえます。新聞のスペースは有限です
し、大手各紙がほとんど同じ記事で金太郎飴の情報ばかりであるのに対し、ネット
では、その新聞内容どころか、フリーの記者の情報、諸外国のメディアや地方新聞
のニュースなども閲覧でき、比較対象することができ勉強になります。
 
 若い世代は紙媒体の新聞を定期購読しませんし、中高年も最近の大本営発表の怪
しい記事やスキャンダル報道ばかりの既存メディアに嫌気がさして新聞の購読を止
めており、脚色のないネット情報に移っているようです。

 現時点の日本では、既存マスメディアのほうが力がありますが、諸外国では、ツ
イッターやフェイスブック等のネット文化が発達しており、チュニジアでは政権を
倒したほどの勢いがあったといわれています(「ジャスミン革命」)、いずれ日本
も、そういうネット全盛の社会になるのでしょうか。

 ネットで活躍するフリーの記者も増えてきました。有名どころでは、上杉隆、岩
上安身、田中龍作氏などですが、彼らは、よい仕事をしないと、読者の応援もなく、
取材費用の捻出もままならぬようですから、真剣です。
 われわれと同様に、明日の生活の保証もない自由業者ですので、頑張ってほしい
ものです。

(上杉隆)
 http://diamond.jp/category/s-uesugi
 http://twitter.com/uesugitakashi

(岩上安身)
 http://iwakamiyasumi.com/
 http://twitter.com/iwakamiyasumi

(田中龍作)
 http://tanakaryusaku.seesaa.net/


2011.01.24(月) 【今年もシャングリラ?】(島根・渡部浩義)

 子供達にようやく3学期が訪れました。
 いまさら言っても仕方がないように思いますが、最近は土曜日も休み。年末には
天皇誕生日が入るようになり、この冬休みは曜日と休日の配置からわが子たちは感
覚的には19日間もの長い冬休みでした。

 年末にいただきものの手帳を子供達に渡し、来年(今年平成23年)は、一体何
日学校の休みがあるのかと一緒に数えてみると、改めて驚くべき数字になりました。

 義務教育期間もわずかになった愚息に、この年末年始は私のルーチンワークを少
し手伝わせてみたのですが、漢字が書けない、数学ではなく算数ができない事には
本当に参りました。ひとえに親の責任です。

 「週休二日」や「ハッピィー・マンデー」が当たり前の時世ですが、いよいよ
「日本は本当に大丈夫かいな」と思います。世がシャングリラになると、そこに住
む人は・・・・。

 かくいう私も今現在あまり無理のできない体になってしまい、不甲斐ない姿しか
子供達に見せることができず、なんとも歯がゆいかぎりなのですが。

 そもそも特にこの田舎においてはもともと詰め込み教育などなく、“ゆとり”の
なかに生活があったのですから、あの時さらにゆとりなど必要はなかったと多くの
人が指摘するように私も今さらながらに思います。

 「うちのまちの公立学校は、かつての時代のように半ドン土曜日出校でいきます
!」なんて首長現れないものでしょうか。過疎の田舎にあっては、あるいは人口流
入(増加)の要因となる有力施策になるかもしれません。

 うちの子供どもよ、今年は父ちゃん、爺ちゃん、少々厳しいよ。 覚悟しておく
よーに。


2011.01.21(金)【資本金計上証明書の押印者】(金子登志雄)

 新設分割の登記では設立会社の資本金計上額を証する書面を提出しますが、この
書面は、設立会社の代表者が押印して提出するのか、分割会社の代表者が押印して
提出するのかという議論があるのを司法書士各位はご存知でしょうか。

 一昨年の3月までは、下記の書式で設立会社の押印でした。
   
    http://www.kaishasetsuritsu.co.jp/download/051.pdf

 ところが、会社計算規則の一昨年4月からの改正により、現在は、下記です。

    http://www.moj.go.jp/content/000057791.pdf

  (参考:新設合併の場合)
    http://www.moj.go.jp/content/000057790.pdf

 新設分割なのに新設合併のように「設立の登記の際に登記所に届け出る印を押印
する必要がある」という表現ではないため、分割会社が押印する書式になっている
わけですが、私は、これはケアレスミスだと思っています。本来は申請人たる設立
会社が証明するものだからです(商業登記法47条参照)。

 同じように、合併等で債権者から異議がなかった旨の証明書は、債務者たる会社
が証明するのか、申請人たる会社が証明するのかという議論もあります。

 しかし、よくよく考えると、どちらでもよいというのが私の結論です。なぜなら、
資本金計上証明書を分割会社が作成しても、債権者から異議がなかった旨の証明書
を合併消滅会社が作成しても、申請人たる設立会社・合併存続会社が提出しますか
ら、証明の主体は申請人になります。つまり、その証明文書(証拠品)を自己証明
で出すか、他社作成の証拠品で提出するかというだけの話です。

 では、なぜそんなどうでもいいことを書いたかというと、分割会社の証明書でな
ければだめだといわれたときに(現実に某法務局であったと聞いています)、反論
できないと困るからです。

 法務局から法務省掲載の書式をみせられて、「あ、そうですか。ごめんなさい。
すぐ直します」などという子供の使いをされてしまうと、他の司法書士に迷惑をか
けてしまいます。

(土日を前に、その他)
 団塊の世代の皆様、気になっていたわが世代を代表する粘り強い男は相変わらず
元気のようです。東スポに載ったようです。

 http://blog.goo.ne.jp/tarutaru22/e/12a5a1429941b712a6d9e386954260b5


2011.01.20(木)【衝撃のTPP解説】(金子登志雄)

 唐突にTPPが時事用語になりましたが、Trans Pacific Partnership の略
で、日本語では、「環太平洋戦略的経済連携協定」とも、「環太平洋パートナー
シップ協定」ともいわれます。

 環太平洋地域の協定参加国の関税等を全面撤廃し自由貿易にすることで、米国
の要請を受けて菅政権が参加を決意したこと。菅政権は、日本の農業には影響が
あっても、製造業には大いにメリットがあり、「平成の開国」になると宣伝して
いる。経団連も歓迎している………といった程度の知識しか私は持ち合わせてお
りませんでした。

 そんなとき、ネット検索で、下記を知り、視聴してみました。池上彰さん並み
の素人にも実にわかりやすい説得力のある解説に驚きました。要約版であり、短
時間(12分程度)ですから、ぜひ視聴してみてください。日本人論(国民性論)
にも通じるところがあります。

(中野剛志先生のよくわかるTPP解説)
 http://www.youtube.com/watch?v=RlyluxDfjMo

 要するに、結果的に日米2国間の関税障壁が撤廃されるだけで、日本には製造
業を含めて何のメリットもなく、ますますデフレが加速するだけだということの
ようです。逆にいうと、米国のメリットは甚大だということです。

 解説の後半にある「幕末、明治に外国の圧力で開国した日本は、その後、関税
自主権を奪い返すための戦いだった」というのは、歴史的事実でしょう。

 郵政民営化もその資金を必要とする米国の要求であり小泉さんがこれを推し進
め、反対派の亀井さんを切りました。パクリや政策の抱き付きが上手な菅さんは、
TPPで小泉さんの真似をして反対派を切り、米国の庇護で長期政権を狙ってい
るのでしょう。

 果たして、米国は本当に日本のよきお父さんなのか、日本にたかるダメ親父な
のか………。皆さんはどう思われますか。

 国益重視の国際舞台では、お人好しの拙速だけは避けてほしいものですが、い
まだに冷戦時代の発想から抜け切れていない日本の世論(自立した国になろうと
せずに長いもの=米国=には巻かれていれば安心という大手マスコミの論調)を
みていると、日本の将来に悲観的になってしまいます。 


2011.01.19(水)【解釈と運用】(島根・渡部浩義)

 昨年暮れから期限付解散決議の取扱いについて熱い議論が続いています。

 ESGの会友として末席をあたためているからではありませんが、問題の火種に
なった法務省の雑誌論稿や事務連絡の中に示された取扱い、またその取扱いにおよ
ぶにあたっての法の解釈、そもそもの連絡の発布方法にも昭和の司法書士合格者
(私のことです。)は、疑問を感じています。

 会社案件の取扱事件数も、実務情報も少ない田舎にいて、かねがね思うのはなぜ
まだ生まれて新しい『会社法』法制下においても、このように解釈や運用につき現
場が混乱するのかということです。

 もちろん、世にある法律や契約書の類に文言完璧なものなど存在しないこと、そ
れらが一人歩きを始めた瞬間からそれを扱う人によって、様々な解釈が発生しうる
ことは重々承知のうえでの疑問です。

 会社法が施行されてからようやく満4年と数ヶ月。私が存じ上げているかぎりで
も会社法立法担当の歴々は各方面でお元気にご活躍のはずです。その方々の「そこ
のところはこういう趣旨で条文規定を作りました!」の一言があれば会社法の『解
釈』についてはすぐに解決できないものかと考えてしまうのですが、あまりにも素
人の戯言でしょうか。

 また、そうした立法担当者にお出ましいただいてコメント願い、法の安定的な運
用をはかり、無用の紛争、実務界の混乱を回避せんとすることは、そもそも『三権
分立』の大原則にも反することになるのでしょうか。

 新しい法律だから解釈や運用に疑問や混乱が生じるのだ、という一般論もあるで
しょうが、制定施行後間もないだけに、立法者の立法趣旨を正確にトレースするこ
とが可能だと思います。
 
 あらためていうまでもなく法律は国民(実社会、実務界)のためあるはずで、立
法担当者の生の声で立法趣旨を聞いたうえで、国民(実務界)の側からみて、誤っ
ていたのは立法趣旨の方なのか、法律の解釈・運用の方なのか検証のうえ、法律そ
のものさらにはその運用が、国民(実務界)のためによりよく修正されることを望
みたいと思います。
 もちろん誰がその一連のトレース、修正作業をするのかという大問題はの残りま
すが。

 商業登記所を集約して会社法・法人関係法専従の職員さんを配置しなければなら
ない世の流れを目の当たりにするにつけ、また、私自身の会社法に対する体たらく
を省みるにつけ、結局、『会社法』になってその解釈と運用はますます難しくなっ
てしまい、生半可な取組みでは多くの者が会社法を使いこなすことができていない
という現実がここにあるように思います。


2011.01.18(火)【合併公告と貸借対照表】(金子登志雄)

 土曜日は仙台で会社法の講演でしたが(宮城県司法書士会主催)、信号故障で東
北新幹線が一時全面ストップし、えらい目にあってしまいました(仙台の皆さん、
ご心配をおかけしました。また、お世話になりました)。

 東京駅で2時間も足止めされ、復旧後は満員の自由席で立ったまま仙台に到着し、
電車内で予定していたレジュメのチェックも食事もできないまま1時間半も遅れて
の講義の開始でした。ヘビースモカーなのに、5時間以上も、禁煙の拷問を受けて
しまいました。

 さて、講義では、有限会社が株式会社に移行した直後に合併公告を掲載する際の
最終貸借対照表の掲載については、最終貸借対照表が有限会社時代のものだから、
「計算書類の公告義務はない」と記載することでよいのではないかという質問を受
けました。

--------------------------------------------------------------------------
(例)22年9月末(決算期)  有限会社
   22年12月(定時総会) 有限会社(決算公告義務なし)
   23年1月7日      株式会社に移行
   23年1月11日     合併契約締結
 この合併公告で、最終貸借対照表をどう開示するか、開示不要かの問題
--------------------------------------------------------------------------

 質問は受けませんでしたが、株式会社になってから1度も決算を迎えていないた
め、「最終事業年度はない」と記載してもよいという意見があってもよさそうです。

 しかし、これらはいずれも誤りです。有限会社の株式会社への移行は、株式会社
の新規設立ではありませんから(設立年月日は有限会社を継承する)、最終事業年
度は存在しますし、その最終事業年度の貸借対照表につき公告義務がなかったので
あれば、貸借対照表の要旨を合併公告に記載しなければならないからです。

 有限会社であれば「公告義務はない」と開示できますが、株式会社として合併公
告を掲載する限り、最終貸借対照表の開示が必要です。

 また、この合併公告は「合併公告+決算公告」の2つではなく、合併公告の中身
の1つとして最終貸借対照表のことに触れよ(例外として決算公告しているときは、
その開示方法として決算公告の頁の記載でもよい)という意味ですから、法定の決
算公告をしていないときは、原則に戻って最終貸借対照表の要旨を掲載しなければ
なりません。


2011.01.17(月)【権力の魔力】(金子登志雄)

 先週は、民主党大会や内閣改造という大きな政治の動きがありました。日本の先
行きが心配な私は、結構関心をもってみていましたが、それにしても「権力」とい
うのは、私の想像以上にすごい魔力があることを再認識させられました。

 党内基盤の弱い菅さんは、代表になるまではノーサイドや412人内閣といいな
がら、いったん権力を握ると手の平を返したように、トロイカ体制のお仲間だった
小沢派や鳩山派を敵視し、党大会も質疑を全く受け付けず強行突破………。

 権力を維持するためには、小泉内閣と同様に、米国や官僚・マスコミの支援を受
ける必要があるため、それに反対する勢力(日本の自立を求める小沢・鳩山派)を
駆逐する必要を感じているのでしょう。「政治とカネ」などは口実にすぎません。

 ふつうなら、多数派の小沢派や鳩山派あるいは輿石氏の参議院側の逆襲にあうと
ころですが、権力を握ると「重戦車」を手に入れたかのごとく、反対派を蹴散らす
パワーがあるようです。党の資金も内閣の資金も、権力側の使い放題です。

 昨年の正月には、↓な関係だったのに、権力はこうも人を変えてしまうのでしょ
うか。
   http://octhan.blog62.fc2.com/blog-entry-41.html

 今後、中国を「悪しき隣人」と評した枝野官房長官で、対中国との関係はどうな
るのか。内閣の内部や野党との関係では、海江田大臣(鳩山派)と同じ選挙区の宿
敵で自民党を除名になった与謝野氏を大臣に抜擢して大丈夫なのでしょうか。

 国会の長(議長)だった江田氏を総理の配下の法務大臣にして、憲法の三権分立
の理念に反しないのでしょうか。弁護士の江田さんご自身は、この点をどう思って
いるのでしょうか。

 素人の私でも攻めどころ満載の不安定な人事にみえるのですが、それでも、大手
新聞の調査では、支持率が34%(読売新聞)、29%(毎日新聞)にアップし、
不支持率が減少したとのことです。ヤフーのネット調査では依然として10%台で
すが、皆様の感覚では、どちらの調査が実情に近いと思いますか。

http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizresults.php?poll_id=6284&wv=1&typeFlag=1

 いずれにしろ、権力には、われわれの知らない魔力があり、人の信条も節操も変
えてしまうということでしょうか。

 それほどのものなら、私も、一度は、権力亡者になってみたいものですが、狭い
わが家ですら権力を握れていない実情では、無理ですね。それとも、菅さんも伸子
夫人の前では、権力をふるえないようですから、私にも資格があるでしょうか。


2011.01.14(金)【甲乙丙丁…子丑寅】(金子登志雄)

 電子公告をみておりましたら、何と41社合併の事例がありました。

  http://www.route-inn.co.jp/company/pdf/101224gappeikoukokuRIJ.pdf

 こんなに多数の同時組織再編は、平成19年11月のコムスンの40社以上の会
社分割以来ではないでしょうか。日本全国の会社を統合するときに(あるいは全国
に会社分割するときに)、こういう数になります。
 
 個人では日本で一番数多く組織再編の手続を経験していると自負している私も、
ここまでの多数は経験していません。私の顧客は、関東地域で一本化、関西地域で
一本化などの方策を採用し、一挙に日本全国での一本化をしなかったからです。

 司法書士の方は、数の多い合併は、このように「甲、乙1、乙2、乙3………」
とするとよいことを学んでください。定番の甲乙丙丁戊………では、10社が限度
ですから。

 ところで、みなさんは、甲乙丙丁………と10個の全部をいえますか。

 甲乙丙丁戊(ぼ)己(き)庚(こう)辛(しん)壬(じん)癸(き)です。手帳
の年齢・干支(えと)早見表のところに、掲載されています。

 ある日の官報に、12社合併につき、甲乙丙………で足りず、甲乙丙丁戊己庚辛
壬癸の後を「子(ね)丑(うし)」にしている事例が掲載されていました。ひとこ
と相談してくれれば、「みっともないから、ABCDEFGHIJKLにせよ」と
アドバイスできたのですが………。

 ちなみに、子丑寅………は12個であり、4で割り切れますから、うるう年(オリ
ンピックのある年)は、ネズミ年、タツ年、サル年になります。


2011.01.13(木)【優先株主に株主割当て】(金子登志雄)

 会社法322条1項によると、ある種類株主への「株主割当て」により、他の種
類株主(ここでは普通株主とする)に「損害を及ぼすおそれがあるとき」は、普通
株主の種類株主総会の承認決議が必要だとされています。

 昨年、普通株式と優先株式の2つを発行している会社で、優先株主に株主割当て
する事案を取り扱ったとき、これが問題となりました。

 このときは、株主割当てでも優先株式の「時価」発行だったので、私は、規制対
象とされていない優先株式の「第三者割当て」と同様に普通株主に損害を及ぼすお
それはないと考えたのですが、関係方面に問い合わせたところ、「断定はできない。
何らかの損害を及ぼすのではないか」という曖昧な返事ばかりでした。

 こういう対応が一番困ります。ちょうど、「小沢は、検察が不起訴にしたことで、
シロらしいが、きっと何らかの悪いことをしているに違いない」というのと同じで、
怪しい嫌疑で「何らかの損害を及ぼすに違いない」といわれても、具体論でないた
め反論もできません(何もないことの証明は「悪魔の証明」といって不可能です)。

 このとき思いましたが、学者など無責任な外野は「一概にいえない」、「個別案
件にはお答えできない」などと逃げられますが、個別案件を扱う法務局や当事者で
あるわれわれは、グレーをシロかクロかと判断しなければならない立場です。法律
事件の最前線におり、逃げることができないのです。

 最前線にいる法務局に相談したところ、「登記申請人がシロだと主張し登記申請
しているのに、法務局が明確な根拠でクロだと反論できない限り、書面審査の法務
局としては登記を受理せざるをえない」との回答でした。

 すばらしい回答です。私が学者やマスコミ、評論家を嫌う理由(実務家の言動に
肩入れする理由)も、これだなと思いました。最前線で戦っていないくせに、安全
地帯の外野席で無責任なことばかりいう人種だからです。

 上記の案件に関しては、実務家で会社法立案者の葉玉匡美氏が自身のブログで、
シロと書いてくれていたことを知り、これを全国に知らしめねば、怪しい嫌疑で苦
しむ人が増えると思い、きんざい「登記情報」1月号に、「株式の発行と種類株主
総会決議の要否」という題名で投稿しました。ぜひご参照ください。


2011.01.12(水)【恭賀新年−どこかで呼ばれていたような・・】(島根・渡部浩義)

 遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
 
 『あの人は今』という週刊誌の年末恒例企画がありますが、このコーナーにおけ
る今の私にピッタリではないでしょうか。

 「島根のワタナベというヤツは、厚顔にもあんなに徒然に出現していたのに、昨
年盆明け頃からすっかり出なくなった。どうも金子代表との確執が鮮明になったら
しい・・・・」と、そんな周囲からの声もまわりまわって聞こえておりましたが、
政権与党内部のような確執問題の実体はまったくなく、当の本人は口ほどにもなく
病院、自宅のベッドの上で多くの時間を過ごしておりました。

 このコーナーで、金子代表はじめESGの他のメンバーからそれとなく呼ばれて
いたようにも思いましたが、如何せん私の身体が・・・・。
 半年あまりも“オーバー・ホール”に努めておりました。

 T氏ばかりではなく、私も昨年年初ごろの“決意”、“目標”など跡形もなく崩
れ去り、金子代表指摘のとおり“自己嫌悪感”のみが残った昨年でした。

 多くは望みません。人並みの健康を取り戻して機首を立て直す今年一年にしたい
と思います。が、結局のところ中学生の頃から、私は予定・計画を毎年、毎学期、
毎晩、書き直す人生が続いているように思います。

 ありがたいのは、私の繰出す駄文でも、『読者』の方がいらっしゃったという事
実です。励ましや安否を問うお声を頂きました。この場をお借りてお礼を申し上げ
たいと存じます。

 また、私の“とんちんかんカラー”で、金子代表らの熱く、骨太な論稿の合間の
“冷却緩衝材”となるべく、このコーナーに投稿させていただきたいと思います。

 改めまして、どうぞよろしくお願いします。


2011.01.11(火)【謹賀新年】(島根・根来川弘充)

 「謹んで初春のお慶びを申し上げ・・・」たいのですが、私の住む島根県東部で
は、近年まれに見る豪雪に襲われました。

 大晦日から元日までのたった一晩の間に、腰の高さまでも積り、景色はまったく
違ったものになっていました。

 例年ですと家族で出雲大社に初詣に行くのですが、車を動かすなど無謀きわまり
なく、雪をかき分けながら近所の神社へ初詣するのがやっとでした。

 車が使えないことは、私だけでなく誰も同じで、新聞は夕方にならないと来ませ
んでした(年賀状にいたっては3日にならないと来ませんでした)。

 今回の豪雪のため、災害も多数発生しております。交通網、電線が寸断され、孤
立した集落も多数あったようです。

 被害にも驚いたのですが、これらの被害の実態の詳細を知るのに、同じ県内にい
ながら結構時間がかかったことには、違う驚きがありました。

 少し考えてみれば、あたり前のことなのですが、道が寸断されれば、伝える人が
いませんし、電気が使えなければ、インターネットも無力です。

 日頃当たり前と思っているものへの大切さに改めて気づかされた年始でした。

 気を引き閉めて今年もがんばろうと思うとともに、被害にあわれた皆様には、心
よりお見舞い申し上げます。


2011.01.07(金)【新年の抱負:前へ進む。されど、焦らずゆっくりと・・】(富田太郎)

 皆様、お正月はいかがお過ごしだったでしょうか?
私は、相変わらず事務所で仕事をしていました・・・(汗)。

 ところで、「ESG徒然」において、昨年の正月、私自身が書いた抱負は以下の
ものでした。
--------------------------------------------------------------------------
 2010.01.07 (木)【謹賀新年(新年の抱負)】(東京・富田太郎)
 
 皆さんは、新年にあたり「今年の目標・抱負」として、何を計画されたでしょう
か?
 私は、今年こそは、
 @土日はきちんと休み、WP生活から脱却すること
 A単行本「楽学 会社法」を完成させること
--------------------------------------------------------------------------

 結果は、・・・・・・・・・・・・(汗)。

 思えば、
@昨年は、正月3日間は休んだものの、その後、年間を通じて休んだのは1日でし
 た・・・(汗)。
A単行本『楽学 会社法』????? 何でしょうか? その本・・・・(汗)

 考えてみると、どれも全く実現できませんでした(恥)。

 そもそも、具体的なことを書くから、実現できないのです(きっぱり)!

 ということで、今年の抱負は「前へ進む!」です。
これならば、必ず実現できます♪

 実は、このお正月には、『星の王子さま』で有名な「サン・テクジュぺリ」の小
説『夜間飛行』(新潮社文庫)を30年ぶりに読み返しました。

 その中で、出てきたフレーズがこれです。
--------------------------------------------------------------------------
 「わかるだろうか・・・・。この人生には解決法なんてないんだよ。
あるのはただ、前進していく力だけだ。その力を創造しなければならない。
 そうすれば解決策などひとりでに生まれてくる。」
                サン・テグジュペリ『夜間飛行』(新潮文庫)
--------------------------------------------------------------------------

 実にシンプルで、あまり「人生」を深く考えない私にぴったりな言葉だと思いま
した。

 この1年、前へ前へと進んでいきたいと思います。
されど、焦らずゆっくりと・・・。

 本年もよろしくお願いいたします!


2011.01.06(木)【謹賀新年】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。

 多数の年賀状ありがとうございました。年賀状の中には、この「徒然」の感想を
書いてくださった方もあり、ありがとうございました。また、住所移転で戻ってき
た方には、改めて、おめでとうございます。

 さて、本年最初の徒然ですので、「今年は〇〇を目標」と高らかに決意表明した
いところですが、へたに決意すると、挫折し、己に対する嫌悪感しか残らないこと
を十分に知っておりますので、それはやめておきましょう(この達人の域に達して
いないT氏の昨年正月の決意表明の悲惨な結果は、明日公表されます)。

 本年も、自然の流れに任せて、適職である「長屋の傘張り浪人」らしく、束縛の
少ない自由人として生きて行くつもりですが、唯一、「浪人」に似つかわしくない
太り過ぎについては、「なんとかならんかねぇ」(注)と思っています。

 もっとも、現代では、「貧乏人ほど太っている」というのが先進国の相場のよう
ですから、「出腹」こそ「現代の浪人」の証(あかし)かもしれません。

 その意味で、「出腹」で一向にかまわないつもりですが、持っている服がほとん
ど着られないという非常事態が生じていますので、昨年12月には、一念発起し、
「1駅分歩く」という課題を自らに課しましたら、2日目にして風邪を引いてしま
いました。やはり、運動などで大切な体をいじめてはいけないと再認識(?)した
次第です。

 こうなりゃ、神仏祈願でダイエットするしかありません。今年の初詣は、「本年
は、ぜひとも冷や汗たらたらの痩せる思いの難しい仕事や大量の汗をかく多忙な仕
事をお与えくださいますように………」とお願いするつもりです。
 
 私的事項以外では、日本国民を金太郎飴にする「記者クラブ制度」(日本だけに
存在する大手マスコミの「情報独占」制度であり、公権力などの情報提供者と記者
が癒着する弊害あり)が廃止され、欧米先進国並みの「情報の自由化」がはかられ、
多様な情報や意見を取捨選択できる真の自由社会になってほしいと願っています。

 この件につき、いまネットで話題の二見伸明氏の論考では、「世論の支配から法
の支配へ」と実にうまい表現をしていました。

 (参考:二見論考)
  http://www.the-journal.jp/contents/futami/2011/01/post_32.html

 ということで、本年も相変わりませず、本欄で、会社法では多数意見、それ以外
では反ファシズム(似非世論ファシズム、クリーンファシズム)の少数意見(国際
的には多数意見のつもりです)を述べることになりそうですが、自由社会の多様な
意見の1つ(ごまめの歯ぎしり)として、受けとめていただければ幸いです。

(注)「なんとかならんかねぇ」
 M1準優勝の「スリムクラブ」の漫才、「なんとかならんかねぇ?」「民主党で
すか?」が笑い話として、政界で話題になっているようです。

(2010年度)

2010.12.29(水)【年末年始休暇のお知らせ】(金子登志雄)

 「あれ、法務局が御用納めなのに、この徒然は今日もあるのか」と思った方も
おられるでしょうが、兼業の当社(アクモスG)は、今日が仕事納めです。昔、
信託銀行員のときは、大晦日まで仕事でしたので、そう気にはなりません。

 さて、今年の司法書士業界としては、ご多分に漏れず、相当厳しいようで、弁
護士や公認会計士と同様に、仕事のない同業者が増えてきたようです。特に、バ
ブル状態だった債務整理に特化していた司法書士事務所が不動産や商業登記の歌
を忘れたカナリヤ状態で、転身に苦労されているようです。

 会社法及び商業登記に特化している私は、会社法制定の特需はなくなりました
が、合併等の会社再編の仕事や難しい会社法問題の「駆け込み寺」の仕事が時た
ま舞い込んできますし、仕事の性格上、一定の固定客がありますので、今年もウ
シロのお山に捨てられずに済んでおります。著作も「改訂版」の時期になり、本
年も何冊か出版できました。

 おかげさまで、本年も事故もなく無事に終わりそうです。私以外のESG会員
・会友各自は、この不況にもかかわらず、ますます腕を磨き着実に成長している
ようで、これも実に喜ばしいことだと思っております。

 全国で司法書士は2万人しかいません。特色を出せば、まだまだ活躍できる場
はあるでしょう。来年も頑張りますので、当ESGをよろしくお願いします。

 本徒然は、当社と同様に、【12月30日−1月5日】までお休みいたします
(外注先のHP管理者の休暇のためです)。1年間、閲覧、ありがとうございま
した。よいお年をお迎えください。

(注)仕事大好き人間の私には、仕事納めがありません。昼夜問わず年365日
無休ですので、必要な場合には、ご遠慮なく携帯電話やメールにお願いします。


2010.12.28(火)【期限付解散その8(最終回)】(金子登志雄)

 昨日は移転先の新事務所で執務でした。新ビルの流行りなのか、壁のコンクリー
トがむき出しのままで、どうも落ち着きません。時間が解決してくれるでしょう。

 さて、昨日まで7回にわたり期限付解散について論じてきましたが、皆様には、
会社法学者と実務家の見方の相違を感じていただけましたでしょうか。

 一般論ですが、日本の学者は「取引の安全」が何か、消極説だと実業界にどうい
う影響を与えるかなどを実証せずに机上で無責任な自説を構築する傾向があるので、
私は敬遠しています。

 法務省は典型的な実務家側ですが、こと本件に関しては、学者の見解の影響を受
けた昭和34年の先例が根っ子にありますので、そのしがらみ(先例の拘束)があ
り、容易に積極説を打ち出せないのかもしれません。昭和34年当時は、法令解釈
においては、学者の権威が法務省の役人のそれを上回っていたわけです。

 ところが、会社法の制定は、時間がなかったせいもあるでしょうが、法務省参事
官室の若手の方々が学者の見解を棚上げし、思い切った改革を実行しました。将来、
学者になる気のない方々ですから、学者の見解に遠慮がありません。

 まさに既存の権威の真反対をし、同じことでも「譲渡」は「取得」、「発行」は
「払込み」に変えました。大原則であった資本充実原則が建前でしかないことを見
破り、資本金ゼロ円を認めるなど、画期的な改革を実行しました。

 その当時は「積み重ねた学説を無視した横暴だ」という意見もありましたが、私
個人は、実務を知らずに勝手なことばかり論じている学者の見解では、無視されて
も仕方なく、学者の自業自得だと、冷めた目でみていました。

 会社法の制定は、ある意味、既存の権威に対するクーデターのようなところがあ
りましたが、あれから4年で、一部、突出した部分が見直しされました。利益の資
本組入れの復活などが、その例です。

 最近は、悪くいえば、既存の権威の巻き返しなのか、昔ながらの「管理」の思考
で法令を解釈する傾向もでてきたようですが、いずれにしろ、数か月先の期限付解
散など「管理」する必要もない事柄です。その決議が取引の安全を害するなどとい
う大げさな問題とは思えません。期限付解散の無効説は、「時計の針」を逆回転さ
せるものだといえましょう。実に残念なことです。(「完」)。


2010.12.27(火)【期限付解散その7(現場の混乱)】(金子登志雄)

 本日をもって、当事務所及び当社(アクモスグループ各社)は、上記のお知ら
せのとおり、神田小川町に移転しましたので、よろしくお願いします。「オガワ
チョウ」ではなく「オガワマチ」と読みます。

 さて、期限付解散と登記の問題は、旧商法時代の古くからあった問題ですが、
長引く不況で解散する会社が増えてきたためか、ここ数年に問題が顕在化してき
ました。

 われわれが在野実務家の立場から、数か月程度なら登記は受理されるべきだと
雑誌「登記情報」(キンザイ)や単行本『300問』(テイハン)に書いたせい
もありますが、この問題は、まだまだ尾を引きそうです。

 というのは、われわれ司法書士は、期限付解散は「登記上、やばい」と知って
いますが、弁護士、税理士、会社法務部は知りません。
 私が本年に担当した登記も、会社の顧問公認会計士が主導した株主総会決議で
あり、1か月半後の期限付解散決議でした。その公認会計士も会社も、何の疑問
も持たず、期限付解散を決議していました。

 こういう事例に対しては、登記所も本当にお困りのようです。われわれ司法書
士が申請代理人であれば、登記所も「これ、困るんだよなぁ」といえても、弁護
士や会社法務部の申請の場合には、まさか期限付解散が登記所から無効扱いされ
るとは想像すらしていない相手に話が通じずに、調査官も板ばさみで、対応に苦
慮なさるからです。

 私が担当した案件も、もし却下するなどということになったら、会社あるいは
公認会計士が登記所に「納得できない」と交渉に赴いたことでしょう。私も、同
じ意見なので、それを阻止することに躊躇してしまいます。

 昔、「会社法の趣旨は企業のしたいことを邪魔しないことだ」と会社法立案担
当者のお一人である著名な郡谷大輔氏が司法書士会(近畿ブロック)の講演で質
問に答えていましたが、会社法下の新しい商業登記実務の運用も、そういう方向
に進んでほしいものです。(続く)


2010.12.24(金)【期限付解散その6(条件付解散)】(金子登志雄)

 「マスコミを使ったアングル」、いいですねぇ。私もプロレスを見直しました。
大人の世界ですね。ここまで来ると、八百長も「芸術」です。

 同時に、理解できました。「菅、仙谷、岡田」の仮免3兄弟が白昼堂々と無役の
小沢老人に向かって暴走しているのは、政治のプロの小沢老人の考えた「当時無力
の政治家であった後輩を売り出すための演出」だったのですね。

 おやおや、脱線しそうです。お約束の宿題を先に片付けねば………。

 会社法471条(解散の事由)
  株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
  1 定款で定めた存続期間の満了
  2 定款で定めた解散の事由の発生
  3 株主総会の決議

において、3号の株主総会の決議による期限付解散が不可というなら、2号と3号
の関係から、条件付解散決議も不可とせざるをえないでしょう。

 「平成23年1月及び2月の月次損益がともにマイナスのときは3月31日をも
って解散する」と12月の臨時株主総会で決議した場合にも、定款で解散の事由と
して定めなければいけないということになりそうですが、この決議は条件付であり、
かつ期限付です。どうやって登記するのでしょうか。

 商業登記規則の別表によりますと、「存続期間の定め」と「解散の事由の定め」
は、それぞれ別枠に記載し、まとめて登記することができません。

 存続期間/平成23年3月31日まで
 解散の事由/平成23年1月及び2月の月次損益がともにマイナスのとき

と分けて登記すると、2月末の月次損益が確定したときに解散することになって、
正しい公示になりません。

 株主総会決議による場合は、次のような登記で、見出しも「解散」です。

 解  散/平成23年3月31日株主総会の決議により解散

 商業登記規則からも、1〜3号は、それぞれ別の登記であることが明白です。

「2号は2号、3号は3号」として別々に取り扱わないと、今度は、2号と3号
の新宿伊勢丹前での白昼堂々の争いにまで発展してしまいます。(続く)

(追記)
 本欄でのキャンペーンも効果なく、残念ながら、数か月後の期限付解散は受理
できないという補佐官の回答がでたとのことです。

  http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/mp2/mp2039.htm

 ただ、これでも、数か月後と2週間の間のグレーゾーンは、どうなるのか不明
ですので、あと2回キャンペーンを続けます。


2010.12.22(水)【マスコミを使ったアングル】(東京・富田太郎)

 最近のマスコミをみていると『集団ヒステリー』のような気もします。年金問題
で厚生省をたたき、資金問題で小沢をたたき、挙句の果ては歌舞伎役者の私的な喧
嘩をも裁く………。

 なにやら不祥事があると、『正義・倫理』という神輿(みこし)を盾に、ピラニ
アのように獲物を食い散らかしているようにも思えます。

 朝日新聞のコラムで、天野祐吉氏が最近のマスコミについて、
『センセーショナリズムとスキャンダリズムはマスコミのお家芸だが、近ごろはそ
れがエスカレートして、集団ヒステリーのようになっていませんかね』

 と苦言を呈していましたが、まさにそのとおりです。

 ところで、12月10日の本欄で、金子センセは
「海老蔵様も、朝青龍様も、T様の愛するプロレスラーだったら、お詫びせずに済
んだのに」と書かれていましたが、

 お詫びせず??

 それどころか『プロレスの世界』では、逆に世間・マスコミを利用するしたたか
さがあります。

 1973年、かの「タイガー・ジェット・シン」は、倍賞美津子(当時の猪木夫
人)と買物中だったA・猪木を、新宿伊勢丹前で白昼堂々と襲撃し、流血騒ぎとな
る事件を起こしました。

 このときは、警察沙汰の事件となり、週刊誌のほか当時の一般新聞も傷害事件と
して大々的に報道しました。

 この報道後、『シンは本当に狂っているのではないか?』という印象を強く与え、
観客は増え、またシンも『客を呼べる一流悪役レスラー』になっていきました。

 実はこれは、A・猪木の考えた『当時無名レスラーであったシンを売り出すため
の演出』だったそうです(プロレス業界における隠語で『アングル』という)。

 出典:『流血の魔術 最強の演技』講談社 Byミスター高橋(注)
 (注)著者は当時の新日本プロレスのレフリー

 確かにプロレスで、刃物を使った凶器攻撃があるのは知っていましたが、マスコ
ミをも利用した場外乱闘?をするとは………。

 リング内だけでプロレスをするのではなく、世間・マスコミを使ってプロレスす
る。このバイタリティー見習いたいものです。

<後日談>
 ちなみに当時、管轄の四谷警察署は、真剣に事件として調査していたものの、途
中から疑問を抱き(笑い)
 ・「本当の喧嘩であれば、猪木はシンを傷害罪(刑法第204条)で告発し、被害届を
   出せ」
 ・「嘘ならば、道路交通法違反(道路無許可使用)で新日本プロレスを処分する」
という厳しいものだったそうです。


2010.12.21(火)【鳥インフルエンザ】(島根・根来川弘充)

 私が住んでいる島根県安来市内の養鶏場で、残念ながら鳥インフルエンザにかか
った鳥が見つかりました。

 新聞記事によれば、原因は渡り鳥からの感染なのだそうです。

 この時期、こちらの渡り鳥といえば、まず白鳥が想像されます。白鳥は、昼間は、
稲刈りが終わった後の田圃に舞い降りて餌を食べ、夕方になると寝床としている中
海や宍道湖に帰ります。

 地元では、「白鳥ロード」や「白鳥海岸」と呼ばれるところがあり、また宍道湖
の遊覧船で「はくちょう号」と命名されたりと、大変馴染みのある鳥です。

 当然、他にも渡り鳥は来ますので、「今回の事件の犯人が白鳥である」と決まっ
たわけではないのですが、いつもは歓迎する鳥も、今年ばかりはそのような気分に
なれません。

 幸い今のところ、他の養鶏場に感染したということは聞かないのですが、いくら
徹底して消毒をし、陸上の人の往来を制限しても、空からウィルスが降ってきては、
打つ手がありません。

 このまま、被害が拡大しない事を願うばかりです。


2010.12.20(月)【メディア・リテラシー】(金子登志雄)

 期限付解散の問題はまだ数回続きますが、根来川さんと富田さんからの投稿を待
機させていますので、小休止しましょう。

 さて、土日に、こんな記事を発見しました。

   http://diamond.jp/articles/-/10485

 これをみても、人を貶(おとし)めるのは「オンナとカネ」が常套手段だという
ことがよくわかります。ウィキリークスのアサーンジ氏は、強姦罪で狙われ、そう
いう悪い奴のしたことだから、彼のいうことは信用するな、という情報操作が世界
中でなされているわけですが、それに影響されないメディア・リテラシー(情報を
正しく判断する能力)のしっかりした国があるとは驚きました。

 昔、沖縄密約問題を暴いた毎日新聞の西山記者が色仕掛けで機密文書を取得した
として、起訴状に「情を通じ」と書かれ、密約問題よりも取材方法の適否問題にす
りかえられてしまいました。毎日新聞自体がメディアでありながら、検察や政府と
の「情報戦」に敗北し腰砕けしてしまいました(読売新聞が記者を見捨てた事件と
しては、1986年刊本田靖春『不当逮捕』が絶品です)。

 竹中さんの論敵である植草さんも痴漢でやられました。真相はわかりませんが、
当時の彼は、りそな問題等の批判で、政府に都合の悪い人間だったことは確かです。
今は、ネットで大活躍のようです。

   http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/

 若い年代だとオンナ問題でやられ、小沢さんのように還暦過ぎると、カネで貶め
られるのでしょうか。それとも、小沢氏や鈴木宗男氏の顔では、女性にもてるわけ
がないという理由で、カネ問題でやられるのでしょうか。

 よくわかりませんが、小沢の「政治とカネ」といっても、いつのどこの部分が怪
しいのか誰も具体論で述べず、スローガンだけが飛び交っている現状です。

 菅政権も、自分たちの失政(尖閣、問責、茨城県議選敗北など)から世間の目を
そらせるために、小沢問題を取り上げて政治倫理審査会への出席を煽りたてている
としか私にはみえません。小沢を叩けば、マスコミが味方をして支持率が上がると
いう計算でしょうが、今のところ、その尻馬に乗る愚かなマスメディアが多いので、
一定程度は成功しているようです。

 企業社会でも、マスコミ利用は当然のこととされていますが、こうも金太郎飴の
報道ばかりなされると、そのメディアを視聴している我々のほうで、メディア・リ
テラシーを養わねばなりませんね。株式投資の金言に「人の行く裏に道あり花の山」
というものがありますが、金太郎飴情報の裏側を探ってみるのも、「花の山」への
近道かもしれません。


2010.12.17(金)【期限付解散その5(会社法の論理)】(金子登志雄)

 周知のとおり、会社法は、「AはA、BはB」というデジタル思考です。株式
の有償減資は、「減資は減資、株式の取得は取得、株式の消却は消却」となり、
「合併に因る定款変更」も「合併は合併、定款変更は定款変更」となりました。
準備金の資本組入れも、「準備金の減少と資本金の増加」の2つに因数分解され
ました。人的分割も「物的分割と株式の現物配当」の2つです。

 なのに、なぜ、会社法471条1号(定款で定めた存続期間の満了)と3号(
株主総会の決議)については、「1号は1号、3号は3号」と思考しないのでし
ょうか。

 私自身も、「定款で存続期間を定めて一定期間の満了で解散することも、いき
なり解散することも会社法で認めているなら、その中間領域の期限付解散が認め
られないわけがない(数年後と「いきなり」がOKなら、数か月後も当然にOK
だ)」と主張してまいりましたが、これは相手の土俵で戦うための論陣であって、
私側の土俵での主たるポイントは、「1号と3号の解散事由には優先順位がない
はずだ」のほうにあります。

 会社法471条の読み方は、長期は1号、短期は3号という「量」の問題の前
に、解散事由には、「定款で定めた事由」と「株主総会の決議による解散」とそ
れぞれ別の2種類の解散事由があるというべきであって、

 定款で定めた存続期間 0(ゼロ)超〜期限満了日
 株主総会の決議    0(ゼロ) 〜期限満了日

と、それぞれ個別に考えるべきです。

 もちろん、長期と短期の役割分担という量の問題が背景にあることを否定しま
せんが、定款で存続期間を「平成23年3月31日まで」と定めることは、それ
が定款記載事由として相応しいかは別として可能であることは間違いありません。
「平成22年12月31日まで」でも、「明日まで」でも「明後日まで」でも定
款に存続期間として定められます。 
 
 株主総会の決議の効力は、毎年、定時株主総会の開催がなされることを考える
と、少なくとも1年間はあるはずです。会社法200条3項の募集株式発行の委
任期間も、定時株主総会における補欠役員の予選の効力が次回の定時株主総会の
開始時期までであるのも(会社法施行規則96条3項)、1年基準です。

 したがって、1年未満の数か月後の解散は当然に会社法471条3号の範囲に
属し、定款に定めた解散事由とは、別に考えるべきであって、「1号があるから
3号は………」という論理設定自体に問題があると思っています。

 消極説の論理からいえば、あまりに短期間(例えば3日)の存続期間を定款に
定めたら、「3号に株主総会の決議による解散があるのに、定款にこんな超短期
の存続期間を定めるのは違法だ」ということにならないのでしょうか。

 「1号は1号、3号は3号」として別々に取り扱わないと、正妻と3号との争
いは永久に終わりません。(続く)


2010.12.16(木)【期限付解散その4(却下事由)】(金子登志雄)

 12月中に、株主総会の決議で「平成23年3月31日をもって解散する」と
決議し、3月31日に「株主総会決議により解散」を登記申請した場合に法務局
の対応は、大きく分けて、2つになります。

 この問題に限りませんが、登記官には2種類あり、却下事由に該当するかどう
かという純法律的見地を重視する正当派の「法律家型」と、先例等の趣旨を受け
て、問題があるというだけで、取下げを求める職務に忠実な「公務員型」です。

 前者の方の意見は、勉強になることが多々ありますが、後者の方の場合は、違
法かどうかよりも、先例の趣旨にかんがみ、受理するのが「望ましいか」どうか
という曖昧な基準で動きます。本件でいえば、3か月先の期限付解散であれば、
存続期間の定めの登記をするのが「望ましい」から、「株主総会決議により解散」
の登記は受理できないという対応をなさる傾向があります。

 そこで、本件の却下事由を検討すると、商業登記法24条10号の「登記すべ
き事項につき無効の原因があるとき」に行き着きますが、期限付解散が無効であ
るかどうかは、そう簡単に決められることではありません。既述のように旧商法
時代から、無効だという考え方もあるという程度です。最終的には、個別案件ご
とに裁判所が決めることです。

 無効説を前提にしても、数か月先はだめだが、1か月や2か月先ならよいのか、
20日先ならよいのかと、何の基準もありません。『実務相談株式会社法』等に
は、登記の猶予期間の2週間が示されていますが、これは3日や1週間ならOK
という結論を導くための理由であって、2週間以上は不可とはされていません。

 登記が受理されないと、株主総会で決議して解散したのに、登記されず、かえ
って取引の安全を害することになり、商業登記法の趣旨に反すると私は思うので
すが、いかがでしょうか。(続く)


2010.12.15(水)【期限付解散その3(取引の安全)】(金子登志雄)

 続きですが、数か月先に解散することを登記で公示しないと取引の安全を害す
るというのが折衷説(民事月報等)の主要な根拠です。

 しかし、会社法471条3号で、株主総会の決議で、いきなり解散することを
認めていること自体で、解散期限と取引の安全は、それほど強い関係があるとは
思えません。解散したところで、清算会社として企業は存続しますし、会社財産
が減少するわけでもなく、債務不履行になるわけでもありません。解散には債権
者保護手続も必要とされていません。存続期間の定めの登記は、主として、これ
から株主になる人に向けられたものだとも考えられます。

 また、民事月報説のように、数か月先の3月末に解散すると決議した場合に、
いまから存続期間の定めの登記をせよというなら、経費と効率重視の実業社会は、
解散決議を3月末までに延期してしまいます。

 下記の例は、事実上の期限付解散ですが、消極説が存在するため、解散直前に
株主総会で決議するのでしょう。実業界は、そういう動きをしてしまうものです。

(1月21日親会社で決定、8月31日解散)
 http://www.nishitetsu.co.jp/corporate/ir/briefing/100121_01.pdf

(6月5日親会社で決定、9月30日解散)  
 http://www.bridge-salon.jp/tekiji/upload/9616_00008610.pdf

 期限付解散決議が認められるなら、さっさと決議して、取引を希望する人に対
して、「すいません。株主総会で3月末に解散することを決議済みのため、それ
までの取引になりますが、よろしいですか」と対応することができますが、これ
が不可というなら、3月末に解散決議することになり、2月や3月に取引を開始
した人に対して、3月末に不意打ち解散決議という冷や水を浴びせることになり
ます。現実には、どちらが取引の安全に資するかは明白ではないでしょうか。

 従業員にとっても、3月に解散することがわかっていれば、3か月間を転職先
探しに使えますが、不意打ち解散では、いきなり路頭に迷わされます。

 さらにいえば、期限付の定款変更は認められていますから、「平成23年3月
31日まで」という存続期間の定めの定款変更につき、その効力発生日を同3月
31日にしたら、それまで登記する必要もないことになりますが、これも認めら
れないのでしょうか。

 いろいろ考えますと、なぜ、期限付解散がいけないなどという論がでてくるの
か私には理解できませんし、折衷説はさらなる混乱を登記現場に引き起こすこと
になるような気がします。(続く)


2010.12.14(火)【期限付解散その2(決議要件)】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、民事月報には、「しかしながら、株主総会における解散の
決議も定款変更の決議も決議要件は同じであり(会社法第309条第2項第11
号、第466号、第471号第3号)、また、定款変更の効力が生ずるためには、
書面としての定款(形式的意義の定款)の書き換えを要しないことにかんがみれ
ば、設例の決議をもって当該株式会社の存続期間の定めを設ける定款変更の決議
がされたものと考えることも可能である。このように考えることは、株式会社の
存続期間が登記すべき事項とされた趣旨、すなわち、これを公示することにより
取引の安全を図ることにも沿うものと考えられる」とあります。

 内容面での新鮮味はありません。古くからある『実務相談株式会社法(1)』
や『注釈会社法(13)』所蔵の内容と、ほぼ同じです。

 ここに「株主総会における解散の決議も定款変更の決議も決議要件は同じであ
り」とありますが、これについて、当ESG会友の山本浩司先生が実に鋭い指摘
をしました。
「定款変更につき議決権を制限された株主は、期限付解散を決議できないのか」
と。

 さすがは、全国の国家試験受験生に名を知られたカリスマ講師です。私は、こ
こまで気づきませんでした。たとえば、

 発行済株式の総数      900株
  各種の株式の数
   普通株式        600株(内訳:ABCDEF各100)
   定款変更議決権制限株式 300株(内訳:GHI各100)   
  
の会社において、全員が株主総会に出席したとすると、「解散」の決議は、上記
のDEFが反対しても他の全員が賛成すれば、合計の600株で特別決議の要件
(3分の2以上)を満たして可決しますが、定款変更の効力は生じません。存続
期間の定めを「定款に設定」する場合には、これに関して議決権のある普通株式
600株の3分の2である400株が賛成に回る必要があるからです。

 これでは、存続期間の定めの登記はできません。違法登記で犯罪にもなります。
こういうケースもあるので、登記所の審査も解散の決議要件と定款変更の決議要
件の2つを慎重に吟味せざるをえないでしょうが、存続期間の定めの登記を審査
するのに、なぜ、解散の決議要件を審査するのかという審査上の矛盾が生じます。

 他方、解散の議案に、ABCDのみが賛成し、他の全員が反対したら、解散の
議案としては否決されますが、定款変更の決議要件は満たしますから、存続期間
の定めの登記を申請してもよいのでしょうか。これは違法登記にはならないので
しょうか。

 こういう検討をしてみると、「株主総会における解散の決議も定款変更の決議
も決議要件は同じ」とは、少なくとも種類株式発行会社においては、いえないよ
うに思いますが、いかがでしょうか。
 
 種類株式がほとんど存在していない古き商法時代の『実務相談株式会社法』や
『注釈会社法』の解説を根拠に、種類株式が流行りだした会社法の下で、この問
題を同一に論じるのは、やはり無理があると考えます。(続く)


2010.12.13(月)【期限付解散その1(定款)】(金子登志雄)

 期限付解散については、いまだに各法務局で取扱いがまちまちのようです。
そこで、今週は、この問題につき、検討してみます。

 会社法471条(解散の事由)
  株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
  1 定款で定めた存続期間の満了
  2 定款で定めた解散の事由の発生
  3 株主総会の決議

 さて、当12月中に、株主総会で「平成23年3月31日をもって解散する」
と決議した場合に、3月31日に解散の登記を申請して認められるでしょうか。

 消極説(登記実務の基本的スタンス)は、すぐに解散しないのなら、1号の存
続期間によるべきだと説き、この株主総会決議を無効とするものですが、積極説
は、1号は定款事由だから、「設立後〇〇年」とかの年単位を前提とした規定で
あり、たかだか数か月後に解散する程度なら、3号で十分だというものです。

 オール・オア・ナッシングの上記の説に対して、最近の法務省発行の民事月報
(9月号)に折衷説が登場しました。江頭教授など、学説では古くから存在した
説ですが、法務当局の見解としては、はじめてかもしれません。

 折衷説は消極説を基本とし、数か月先の解散決議を便宜1号の決議とみなし、
存続期間の登記をし、それが満了したら解散の登記をすればよいというものです。

 これは、「定款に定めたものではないが存続期間の定めの登記を認める」とい
う趣旨ではありません。登記の事由として、会社法911条3項4号に「株式会
社の存続期間………についての定款の定めがあるときは、その定め」とあります
ので、「定款に定めたもの」としない限りは、違法登記になるからです。

 実に便利な説ですが、2回も登記し登録免許税が3万円も余計にかかるという
難点があるだけでなく、定款に存続期間を定めるという会社の明白な意思がない
のに、それをみなしている点に、われわれ在野実務家は、躊躇してしまいます。

 何かあったときに、実際に存続期間を定款に定めていないため、違法登記とし
て公正証書原本不実記載罪(刑法157条)に問われたり、司法書士倫理でも、
刺されることは絶対にないといえるのでしょうか。

 法務省の雑誌で肯定されたので大丈夫だとは思いますが、これが原因で会社の
内紛に巻き込まれる可能性もありますし、登記面での不安もあります。
 
 登記面での不安は、存続期間が満了して解散と清算人の就任登記を申請する際
に、定款を添付しなければなりませんが、その定款に存続期間の定めをどう書く
のかという問題です。解散を決議した株主総会では、定款何条にこう定めると決
議していないので、司法書士が勝手に定款の附則あたりに追記するわけにも行き
ません。勝手にしたら、それこそ、懲戒処分ものです。

 解散公告についても、「株主総会の決議により解散しました」とするのか、
「存続期間の満了により解散しました」と書いてしまってよいものかと悩みます。

 実業社会に片足を置く私は、もちろん積極説です。解散するには、数か月程度
の事前準備期間が必要なことを十分に承知していますし、会社法471条の解散
の事由に優先順位はないと思っているからです。

 そもそも、定款は会社の「憲法」です。数か月先に解散する程度のことは、わ
ざわざ憲法に定めるほどの内容とは思えません。江頭教授などに、定款は、会社
運営「規則」程度の存在なのかと聞いてみたいところです。(続く)


2010.12.10(金)【海老蔵様謝罪会見】(金子登志雄)
 
 テレビをめったにみない私が、たまたま早く帰宅した7日に、夜の9時のNHK
ニュースをつけたら、なんとトップニュースが海老蔵の暴行被害記者会見でした。
結構長い時間を占めていました。

 こんなもの酔っぱらいの喧嘩であり、個人の問題であり、トップニュースにする
価値があるのでしょうか。これがNHKを代表とするテレビ世界の知能程度で、平
和日本のおめでたさかと呆然としました。自分でモノを考えない衆愚を大量生産す
るテレビは、やはり、みないほうがよいようです。

 例によって「世間の皆さまに多大なご迷惑を………」といった謝罪会見で、お詫
びする内容は、暴行自体ではなく、個人的事情で世間を騒がせたことです。

 しかし、私は少しも迷惑を受けておりません。迷惑を受けたのは、暴行相手、暴
行場所のお店、仕事関係や海老蔵公演を予約していた人達でしょうから、そこに向
けてお詫びすれば十分です。

 迷惑どころか、海老蔵事件の経済効果は、うん億円………と考えれば、世間は、
菅首相に代わり、日本経済に貢献した海老蔵様に御礼をいうべきでしょう。私も、
本欄のネタを提供していただき、感謝しています(金曜日は会社法ネタのつもりで
したが、海老蔵様の事件を来週に回しては、賞味期限が切れてしまいます)。

 ロシアの元大統領エリツィン氏の酒乱ぶりなどはケタ違いで、おしっこをわざと
側近にひっかけるなど有名なエピソードが多数ありますが、世間の皆様にご迷惑を
かけたと謝罪の会見を開いたとは聞いていません。

 日本社会では、末端の従業員が事件を起こしただけで、社長が謝罪会見を開いた
りで、本来は「個」の責任なのに、「個の所属集団」の責任にされてしまうようで
す。まるで高校野球の社会であり、エセ真面目主義です。海老蔵様も坊主頭でした。

 クリーンとか、リンリという言葉が「世間体」や「建前」と同義語に近づいてお
り、歪められていると感じるのは、私だけでしょうか。

 民主主義の基本は個人主義(個人の尊厳重視)です。もっと「個の確立」を重視
すべきであって、世間にお詫びしないと村八分にする集団の力は危険です。海老蔵
様も、朝青龍様も、T様の愛するプロレスラーだったら、お詫びせずに済んだのに。


2010.12.09(木)【インターネットと「国際社会」】(島根・根来川弘充)

 少し前のことになりますが、尖閣諸島沖での衝突事件の映像がインターネットで
流出しました。

 「百聞は一見に如かず」の言葉のとおり、映像ではどちらの国に非があったのか、
明確に判断できるものだったと思います。
(それが証拠に、映像流出後は、中国政府は、事件を直接非難することはありませ
ん。)

 流出自体の是非は、いろいろな意見があるでしょうが、「一個人の行動が、国家
を黙らせた」という事実は、今後の政治において大きな影響を与えるものだと感じ
ました。

 そう感じておりました矢先、今度はウィキリークスと呼ばれるサイトで、外交機
密文書が公開され、大きなニュースになりました。

 ウィキリークスの代表者は、インタビューにおいて、国家権力と個人が対等にな
る時代が来ている旨の発言をしていました。

 「国際社会」といえば、私は正直、「国家間レベル」という構図でしか描いてい
なかったのですが、これから改めて、違った視点も必要なのだろうと感じました。


2010.12.08(水)【離婚をする、その前に………(続)】(愛知・和出吉央)

 ちょっと間があいてしまいましたが・・・前回(10月21日掲載)の続きです。
前回、離婚をする際に最低限合意しておくべき項目として、

 ア)子供の親権者になるのはどちらか?
 イ)子供の養育費はいくらにするか?
 ウ)親権者にならなかった親と子供との面会はどうするのか?
 エ)慰謝料は発生するのか?発生する場合、その額は?
 オ)財産分与(結婚生活中に2人で築いた財産の分割)をどうするのか?
 カ)年金分割をするのか?

をあげさせていただきましたが、以下もう少し踏み込んだお話しをます。

 ア)について

 子供がいる場合、母親が親権者になることが断然多いです(8〜9割がそうな
のではないでしょうか)。ちなみに、離婚に際して父親が親権を主張する場合に
は、親権を巡って苛烈な争いになることが多いです。

 父親として親権を勝ち取ろうと思う場合には、母親ではなく父親の方こそが親
権者にふさわしいという事実を丹念に主張していかなければならないこととなり
ます。

 イ)について

 子供の養育費については、相場を定める一覧表にのっとって定められるのが通
常です。例えば、父親が年収1000万円(額面)、母親が年収100万円(額面)で、
10歳の子供が1人いるという場合には、一覧表によれば、月額8万円〜10万円程
度、子供が16歳の場合には、月額12万円〜14万円というあたりが相場となってい
ます。

 ウ)について

 親権者にならなかった親(通常は父親)と子供との面会は、月に1回〜2回く
らいとするのが通常です。

 エ)について

 慰謝料は常に発生するわけではなく、離婚の原因が一方にある場合にだけ発生
します。典型例としては、浮気や暴力が挙げられます。慰謝料については、一般
の認識よりよりは、低額となっています。アメリカの某トップゴルフプレイヤー
は、何十億?もの慰謝料を支払わされるそうですが、我が国では200万円〜300万
円という数字が多くなっています。

 オ)について

 財産分与については、結婚生活中に築いた財産を1:1で分け合うのが原則と
なります。夫婦といえども結婚生活中に築いた財産がどれだけあるのか分からな
い場合もあり、このような場合には、まず、自分たちがどのくらいの財産を持っ
ているのかを把握する必要があると言えます。

 カ)について

 通常、年金分割を行ったほうが奥さんに有利になります。その割合は、特別な
事情がない限り、1:1となります。

 繰り返しになりますが、本当に適正条件での合意なのかどうか、実際に合意を
してしまう前に、実務専門家である司法書士・弁護士等にご相談されることをお
すすめします。


2010.12.07(火)【合併と吸収合併】(金子登志雄)

 土日は、会社法322条に関する論文を書いていました。

 さて、同条1項7号から13号に、次のように規定されていますが、何か、違和
感がありませんか。
--------------------------------------------------------------------------
 7 合併
 8 吸収分割
 9 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は
   一部の承継
 10 新設分割
 11 株式交換
 12 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得
 13 株式移転
--------------------------------------------------------------------------

 そうです。会社分割は8、9、10号に、株式交換と株式移転は11、12、13号に記
載されているのに、合併は7号にしか記載されていません。

 では、7号の合併とは、吸収合併と新設合併のことかと思うと、会社法2条の定
義によると、吸収合併も新設合併も「会社の権利義務を承継させる」行為であって、
承継する行為を含むのかはっきりしません。

 あれれ、と思い、調べましたら、会社法立案担当者が商事法務1752号に「合
併については、従来からその概念の大枠が固まっており、会社法において特にその
意義の明確化をする必要性が乏しいものであることから、それ自体の定義規定につ
いては設けないこととしたものである」と書いていました。

 さらに、会社法の条文を細かくチェックしましたら、会社法471条4号には、
「合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る)」とあり、474条1号
には、「合併(合併により当該株式会社が存続する場合に限る)」とありました。

 というわけで、会社法322条1項7号の合併とは、「消滅会社の吸収合併、新
設合併、吸収合併による他の会社の権利義務の全部の承継」の全部を含んだ概念の
ようです。

 会社分割については、「従来からその概念の大枠が固まって」いないので、8号、
9号、10号の3つに分けて規定したということでしょう。

 以上の点については、どこの文献にも記載されていないと思います。著名教科書
の江頭、前田、神田、弥永にもありません。会社法立案担当者の本にもありません。
誰も疑問に思わなかったのでしょうか。


2010.12.06(月)【団塊世代の星】(金子登志雄)

 今日は、団塊世代の星、鈴木宗男氏(62歳)がとうとうムショに入る日です。

 同じ世代でありながら、フルマラソンも走り、精神的にも肉体的にも私と正反対
のタフでエネルギッシュな彼は、常に気になる存在でした。

 2日の鈴木氏に対する「送り出し会」には、森元首相や鳩山前首相ら、そうそう
たるメンバーが集合してくれたようです。あの佐藤優氏が「毎日手紙を書きます」
とまでいってくれたとか。人望も人並みではないですね。

    http://www.muneo.gr.jp/html/diary201012.html

 世間では、ムネオハウスなどマスコミ報道された事件で収監されると思っている
ことでしょうが、それらは一切事件にならず、やまりん事件などの全くの別件で無
理やり裁判にされたのですから、気の毒といえば気の毒です。検察も嫌疑なしの不
起訴にすれば、マスコミを代表する世論から叩かれるので、何かを事件にし、起訴
せざるをえなかった面も大いにあるでしょう。

 ちょうど、小沢氏を西松建設や水谷建設で捕まえられなかったので、無理やり政
治資金規正法の虚偽記載という微罪で検審に起訴させたのと同じようなものです。
背後には、常にマスコミで作られた「冷静でない危険な世論」の後押しがあります。

 村木裁判が無罪になったため、鈴木氏や小沢氏に対する評価が見直される機運と
なり、また、菅首相の支持率が落ち目になり、小沢待望論が増えてきたかと思うと、
最近のマスコミ論調がまた小沢(及び鳩山)バッシングに傾いてきたようです。先
の衆議院選挙のとき、91人の候補者に合計4億4900万円を陸山会から支援し
たのは、カネに汚ない証拠だとか………。何としても、復権を阻止したいようです。

 あの当時は、麻生首相に選挙が引き延ばされ、民主党の候補者がカネに困り果て
ていた時期ですから、小沢氏が4億円以上も自分のポケットに入れずに、他の人の
支援に当てるなど、立派なものだと思わないのでしょうか。91人中10人は、先
般の代表選で菅支持に回った人です。仙谷・前原派もいます。
 
 カネを集める能力もない政治家に国政を任せられないというのが世界の常識です
が(オバマ氏も企業献金のほうが多い)、わが国では、マスコミが世論を主導しま
すから、カネを集められない無能な政治家がクリーン政治家として評価されてしま
うようです。これでは、北朝鮮、中国、ロシアに舐められるのも当然でしょう。

 ところで、政治家ではありませんが、カネを集める能力がない点では、誰にも負
けない超クリーン司法書士の私は、なぜ評価されないのでしょうか。私が収監され
るときは、妻さえ、見送りに来ないで離婚届を送ってくることでしょう。わが身に
引き換え、鈴木ムネオさん、あなたは、すごい!。やはり、団塊世代の星です。


2010.12.03(金)【額面株式】(金子登志雄)

 1日(水)は東京司法書士協同組合の忘年会に招待され、参加してきました。本
年、最初の忘年会でした。

 そこで、若い司法書士から、額面株式時代のことがイメージできないという話を
聞きました。無理もありません。9年以上前の平成13年10月になくなった制度
ですから………。

 ということで、額面株式の基礎講座です。

 最低額面は、昔は20円とか50円でしたが、昭和25年から500円になり、
昭和56年から5万円になりました。

 資本金1000万円の会社を設立するときは、額面5万円株式200株の発行が
通常でした。

 中小企業では、このように「額面×株数=資本金」でしたが、プレミアム発行を
行う上場会社では、「額面×株数≦資本金」でした。この関係を崩すことはできま
せんでした。

 「額面5万円×1000株≦資本金6000万円」
の会社において、資本金を4000万円に減資すると「額面×株数≦資本金」が成
り立たなくなるため、「減資→株数の減少」が必要だったわけです。

      額面×株数≦資本金
          ↓   ↓
         減少  減少

 この会社が他社を吸収合併し、200株を発行すると、額面5万円株式の新規発
行ですから、合併で資本金を1000万円以上増加しないといけないという論理に
なりました。

 この額面がないと、株数と資本金との間が無関係になります。だから、平成13
年10月以降は、減資しても株数はそのままでよく、合併新株を発行しても1円も
資本金を増加しなくてよいとなったのです。

      株数≠資本金

 それを徹底したのが会社法ですが、会社法になってから、合併新株を発行しても
1円も資本金を増加しなくてよいとなったわけではなく、平成13年10月に無額
面株式に一本化されてからです。

 こんな革命的なことを保守的で前例踏襲の官僚ができるわけがないと思いません
か。そのとおりであり、平成13年の商法改正は議員立法でした。


2010.12.02(木)【離婚と遺言】(岡山・山本直樹)

 10月21日付の本欄で、和出さんが「離婚」について書かれていましたが、当
事務所でも、年末近くになると離婚相談が増えます。
(ある相談者曰く、年末年始に相手方の実家に行くことを想像すると苦痛になり、
嫌悪感が倍増するようです………)。

 会社を経営されている方からの離婚の相談もあります。経営者になりますと、
大変年収の多い方もいらっしゃいますので、「養育費」等が高額になり、なかな
か離婚の協議が進まないケースが散見されます。

(養育費に関する参考サイト)
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/pdf/youikuhi_santei_hyou/youikuhi_santei_hyou.pdf http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou.html

 離婚の相談をいただいたときに、当然「離婚に伴い決定すべき事項」について
は詳細にヒアリングをしますが、問題点の聞き取りが終わった後、「経営する会
社の株式に関して『遺言』を書いていただく」ことをお勧めしています。

 相談者は、最初ピンときてはいないのですが(離婚という感情的な問題を抱え
ていますから仕方ないのですが)、万が一、離婚協議中に相談者が死亡した場合
には、会社の株式は妻と子供が相続する旨(妻と離婚が成立していても、子供に
は相続権があり、母親が親権を行使する旨)を説明させていただき、経営者(大
株主)の相続が原因で、会社経営が混乱するリスクがあるので、会社の代表後継
予定者の方が安心して経営できるように遺言を書いていただいています。

 「事業承継」検討の際に、「遺言」を書くことを検討される経営者は多いかと
思いますが、配偶者との離婚を考えられている経営者の方も、「遺言」について
頭のスミに置いていただければと思います。
(もちろん離婚しないのが一番ですが)。


2010.12.01(水)【東京法務局に一番近い男から脱落】(金子登志雄)

 残念、無念、とうとう天下の東京法務局に一番近い名誉ある司法書士の地位を明け
渡すことになりました。
 上記のお知らせのとおり、事務所を移転します。会社が引っ越すので、行動を共に
するためです。

http://www.c-direct.ne.jp/public/japanese/uj/pdf/10106888/20101029190422.pdf

 現在の地に移ったのは、平成12年5月ですが、その後、東京法務局のほうが大手
町から当事務所に近づいてきたのです。これが私のひそかな自慢でした。

 当事務所だけ近くに部屋を借りる手も考えましたが、会社には、公認会計士も税理
士もパソコン功者も英語堪能者もいますので、近くにいると、何かと便利なんです。
特に、実業界の空気に触れていられますし、苦手なパソコンの操作を教えてもらえる
ので助かっています。

 同時に、この会社で私は創業役員です。設立登記から携わっていますし、この会社
が休業中には、額面5万円を額面50円にする実験にも利用させてもらいましたし、
日本で最初の株式交換契約書を作ることもできました。純粋持株会社にすることも、
株式分割と新株予約権の株主割当てをセットで行うことなども、独創的な公認会計士
の社長の片腕として、数々の法務アイデアをいち早く実行することができました。

 育て育てられた関係ですから、強い愛着があります。そう簡単には離れられません。
私の主な役割も終えたので、数年前から非常勤にさせてもらっていますが、「常駐」
非常勤を名乗っており、間仕切りした片隅で司法書士事務所を営んでいます(念のた
め、家賃を払っているだけでなく、通勤費さえもらっていません)。

 こういう中途半端の立場だから、司法書士開業10年以上なのに、補助者を1人も
雇えないのかもしれませんが、あるときは司法書士、あるときは会社役員、あるとき
は会社法の宣教師という3つの草鞋(わらじ)は、私に合っているようです。

 というわけで、年末に引っ越しますので、今後ともよろしくお願いします。事務所
の電話番号も変わりますが、ケータイ司法書士を続けますので、番号が変わらないケ
ータイにお願いします。


2010.11.30(火)【福岡講演】(金子登志雄)

 土曜日は、ご案内済みのとおり福岡に会社法の講義に行ってまいりました。

 関東人は、つい「福岡→南国→暖かい」と連想してしまいますが、ちょっと肌寒く
福岡は九州でも日本海側なんだということを身にしみて感じてきました。
 
 セミナーは有料でしたが、遠く福岡県外から宿泊付きで私の講義を聞きに来てくだ
さった方もおり、うれしく思いました。主催者の丸田先生、お世話になっただけでな
く、翌日は、市内観光までしていただき、ありがとうございました。
 
 出席者は若い司法書士が多く、どこまで商法時代との比較の話が通じたかわかりま
せんが、講義で話した古い商法時代(平成9年以前)の合併公告は、次のようなもの
でした(発行済み200株で資本金1000万円同士の甲乙が合併比率2:1で合併
し500万円資本金を増加した場合)。

【合併並びに資本減少公告】
 平成〇年〇月〇日開催の甲及び乙の臨時株主総会において、左記会社は合併して甲
は乙の権利義務一切を承継して存続し乙は解散すること、この合併に伴い乙の株式2
株に対し、甲の株式1株を割当交付し、甲乙の合併直前の資本の合算額2000万円
を500万円減少し、合併後の発行済株式総数を300株に、資本の額を1500万
円にすることを決議したので、この合併並びに資本減少の決議に対し異議のある債権
者は、本公告掲瑚の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。

 これは、合併とは、複数の企業が1つに統合することであり、貸借対照表もそのま
ま合算するものだから、合算した資本金額より合併後の資本金が少なければ、これは
減資となり、公告の表題も「合併並びに資本減少公告」とせよとされていたのです。
その減資の根拠として、乙の株式併合(2株を1株に)がなされたと考えるわけです

 いまだに税理士さんに根強く残っている「資本金は合併で合算するもの」という発
想ですが、無額面株式に一本化された現在では合併で株式を発行しても資本金を1円
も増加させる必要はありませんし、合併も、解散して権利義務の全部を承継させるも
のであって、必ずしも資本金等の計数を引き継がせるものではないというのが会社法
の基本的思考です。

 言い換えれば、合併とは、他社を解散させて、その現実の積極・消極財産を包括的
に承継する、いわば財産相続制度であって、資本金等の現実に存在しないものを受け
継ぐものではないということになります。



2010.11.29(月)【最短最速合格法】(金子登志雄)

 金曜日・土曜日の本欄について、最短最速で試験に合格するコツを教える受験界
のカリスマ講師である山本浩司センセから、次のようなコメントをいただきました。

--------------------------------------------------------------------------
試験では、条文以外のことは考えないのです。
そこで、次のように答えるところです。

特別取締役の取締役会には監査役全員が出席することが必要とはされない。
→会社法383条1項ただし書

会計参与は会社に対して忠実義務を負わない。
→会社法355条は会計参与に準用されていない。

と、以上のことしか考えないのが、試験における「正解」というものです。
--------------------------------------------------------------------------

う〜ん、です。脇目を振らず余計なことを考えず、最短最速コースを進まないと、
最短最速で合格しないのだそうです。

 私にはできそうもありませんが、そのエッセンスが積み込まれた本は、ないかと
聞きましたら、これだそうです。

(山本浩司の司法書士最短最速合格法)
 http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102984132/subno/1
 
 合格済みの私には、もう必要ありませんが、これから受験しようと思う方には、
きっと大いに役立つことでしょう。いや、最短最速で出世しようという思う方にも、
よいヒントがあるかもしれませんよ。真面目なウサギは、カメより数倍も早いので
すから、ゴールしてから、ゆっくり居眠りすればよいのです。

 とはいっても、脇目と道草ばかりの受験生の皆さん、決して、その経験は無駄で
はありません。合格後の苦労や経験を先にしているだけですから。


2010.11.26(金)【会計参与の忠実義務】(金子登志雄)

 会社法355条に「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株
式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」とあります。いわゆる忠実
義務を規定したものです。

 この意味については、多数説や判例は、「通常の委任関係に伴う善管義務とは別
個の、高度な義務を規定したものとは解することができない」と説明しています。

 さて、昨日の続きですが、公認会計士の勉強をしている学生から、会計参与は会
社に対して忠実義務を負うのかと聞かれました。

 私の回答は、「会計参与なんて、一度もお目にかかったことがない。だから、わ
からないけど、会計参与というのを君は監査役や会計監査人のような立場だと思っ
ているらしいけど、会社法では、会計担当取締役という位置付けになっている。任
期も取締役と同じだ。だから、忠実義務を負うと思うよ。きっと準用条文があるは
ずだ」というものでした。

 調べましたら、残念、執行役と清算人には準用されていましたが、会計参与には
準用されていませんでした。

 のみならず、「取締役」の責任免除につき定款で定める際や、責任免除を取締役
会で決議する際には監査役全員の同意が必要だとされながら、「会計参与」の責任
免除については、監査役の同意は不要になっていました(会社法426条2項)。

 「社外取締役」との責任限定契約を定款に定めるときと、「会計参与」との責任
限定契約を定款に定める際も、同様に差が設けられていました(会社法427条)。

 これだったら、忠実義務は委任に関する善管注意義務と同じという多数説判例よ
りも、取締役の地位利用を禁止した取締役固有の義務と考えたほうがよさそうです。

 こう考えれば、取締役の義務や責任だけ監査役の監視にかからしめる会社法の体
系がスムーズに理解できます。

 それにしても、試験というのは、マイナーな細かい部分から出すものですね。実
務家は総崩れでしょう。


2010.11.25(木)【特別取締役】(金子登志雄)

 特別取締役という用語が会社法に存在することは、ご存知でしょうか。

 特別取締役というのは、取締役の員数が多数の株式会社では、取締役会の開催が
たいへんなので、「重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財」に限って、選ばれ
た3人以上の特別取締役の会議で決定してよいという制度です。

 昔の「重要財産委員会」のことですが、公認会計士の勉強をしている学生から、
特別取締役の取締役会には監査役全員が出席することが必要かと聞かれました。

 そういう問題が試験に出るのだそうです。

 実務家の私にいわせれば、「そんなこと知るか。委員会設置会社ですら、全国で
100社程度なのに、特別取締役制度を定めた会社など、あるのかも知らない。そ
んな勉強する意味はない」と答えたいところですが、試験というのは、落とすため
にあるのであって、実務の知識として必要であるかを問いません。

 仕方なく条文をみましたら、会社法383条1項に「特別取締役による議決の定
めがあるときは、監査役の互選によって、監査役の中から特に同条第2項の取締役
会に出席する監査役を定めることができる」とありました。

 これだけでは、「本来は監査役の全員が出席する必要があるが、この定めがある
ときは、特別に出席する監査役を定められる」という意味なのか、「本来は監査役
は出席する必要がないが、出席する監査役を定めることもできる」という意味なの
か不明瞭ですが、2度、3度読みすると、「同条第2項の取締役会」という表現に
気づきます。

 どうも、特別取締役の会議も「取締役会」の1つのようです。373条の見出し
をみましたら、「特別取締役による取締役会の決議」とありました。

 いまさらですが、会社法では、特別取締役の会合も本来の取締役会の1つになっ
ているのですね(前身の「重要財産委員会」は取締役会の1つではありませんでし
た)。そうであれば、原則は、監査役全員が出席しなければならないということに
なります。

 試験って、なんて、つまらない問題を出すのでしょうか。私が即答できない問題
は、実務には不要ですと断言したいくらいです。


2010.11.24(水)【冤罪は素人が作る】(金子登志雄)

 朝鮮半島情勢がきな臭くなってきました。あの国では、いまだに戦争が終わって
おらず(38度線は国境ではありません)、防空壕などというものが身近に存在し
ていることを思うと、日本の政治家の能天気ぶりが情けなくなります。
 小沢、亀井、鈴木などという交渉上手の乱世の実力政治家は、みなマスコミに潰
されてしまい、身動き取れず、困ったものです。

 さて、昨日の休みは、寒い群馬の田舎に帰省し、購入したまま未読状態だった郵
便不正事件の村木厚子さんを取り上げた『私は無実です』(副題:検察と闘った厚
労省官僚村木厚子の445日、朝日新聞出版)を読みました。著者は村木さんでは
なく、週刊朝日の記者です。

 取調べ検事から、「大した罪ではないから、早く白状せよ」などといわれたよう
で(これは、早く保釈してほしくないのか、罪を認めれば裁判で執行猶予にしてや
るという懐柔策です)、その際の村木さんの法廷での発言は次でした。

 「私は、『検事さんにとって大した罪とは何ですか?』と聞きました。すると、
国井検事は『殺人や傷害だ』と言った。私はこんな罪に問われるなら、恋に狂って
殺人に問われたほうがよっぽどましです」

 男性が次々と検察の圧力や誘導に屈していく中で、5か月間も拘置されたのに、
最後まで信念を貫いた類(たぐい)稀(まれ)な冷静な女性と思っていましたが、
こういう情熱的な発言もなさるのかと、ちょっとびっくりしました。彼女にとって
は、不正行為は破廉恥な罪だという強烈な自尊心があったのでしょう。

 「役所を知らない人がつくった事件だと思います。検事のつくったストーリーは
役所の事務とかけ離れている。霞が関にいる人間が聞いたらわかります」

 この発言には、政治家の口利きがあれば、役所は何でも従うものだという検事や
われわれの思い込みに対する反論も含まれていることでしょう。いまは、そんな時
代ではないということのようです。

 リクルート事件の江副さんの本にも、検事が株に無知なことを嘆いていました。
佐藤栄佐久・元福島県知事の本にも、鈴木宗男氏の本にも、行政や政治の世界を知
らない検事やマスコミの思い込みや単細胞ぶりを嘆いていました。

 同じ世界に生きる者に対しては、容易に通じることも別世界の人には何度繰り返
して話しても通じないものです。裁判員制度も検察審査会制度も、いわゆる汚職事
件には、不向きであることは明らかです。

 願わくは、こういう局面に遭遇したくないものですが、もし、検事さんに取り調
べられたら、どこかの法務大臣のように、「個別の事案については、お答えしかね
ます」と答えようと思っていますが、きっと怒鳴られ、保釈が遠のくのでしょうね。


2010.11.22(月)【大学ゼミの思い出】(金子登志雄)

 土曜日は久々に年1回行われる大学のゼミのOB会に参加してきました。

 民法の新田敏(専門は物権法)ゼミで、先輩、後輩には、弁護士、裁判所判事、
学者(司法書士界では有名な七戸教授)、政治家(石破氏と長妻氏)などがずらり
と並んでおりますが、私の期だけは、なぜか並みの頭脳持ちばかりで、谷間になっ
ています。

 室員15人中、司法書士2名、公務員3名、あとはサラリーマンといったところ
でしょうか。全員男性で、付属高校出身の直参旗本はおらず、外様ばかりでした。
土佐でいうと上士(じょうし)はおらず、下士(かし)と地下侍(じげざむらい)
家庭出身ばかりでした。

 ちょうど、私の世代は、全共闘世代でしたし、マージャン全盛期の時代でしたか
ら、私を含む下士階級は、悪政の改革と「チー、ポン」などの中国語の勉強に忙し
く、授業は全く出席しませんでしたが、このゼミだけは、2回続けて休むと退会処
分を受けるので、まままあ真面目に出席しました。

 3年生のときは、毎回、事例問題を出され、翌週に、それをレポートにまとめな
いといけないので、結構たいへんでした。その各自のレポートをもとに、議論する
のがゼミの時間でしたが、活発な議論となり、結構、面白かった記憶があります。

 熱心に書いた最初の私のレポートには、採点がついていませんでした。先生いわ
く「採点対象に値しませんから………」。

 3回目あたりのレポートで、コツがわかり、Bの成績となり、徐々にAをとれる
ようになり、5週連続Aをとり、レポート提出免除になりました。免許皆伝です。

 そのときに先生に「カ・ネ・コ・ク・ンは、司法試験を狙うのですか」と聞かれ、
「滅相もありません。勉強は苦手です」と答えましたが、この先生の言葉で、自信
がついたことを覚えています。

 不思議なもので、ここでリーガル・マインドが少しは養われたのか、大学4年生
の授業は全く出席しないわりに(なぜか、駅と大学の間に中国語の学習塾、マージ
ャン店があるのです! 大学の向こう側に店を置けばよいのに!)、他科目の試験
であっても自分でも驚くほどよい成績でした。この頃から、知識もないのに苦しま
ぎれに推理だけで解答してしまうコツを覚えたようです。

 このゼミがあったから、法律の面白さを知り、いつか法律を職業にしたいと思う
ようになったわけで、新田先生は、私の恩人の1人です。そう思う生徒が多いため
か、OB会は、盛況でした。人生、めぐりあわせですね。


2010.11.19(金)【募集事項の均等】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、増資で、普通株式〇〇株に、優先株式〇〇株を発行したい場
合には、第1号議案と第2号議案に分けよというのが会社法の立場です。

 ですから、会社法199条5項に「募集事項は、第1項の募集ごとに、均等に定
めなければならない」とありますが、これは種類株式内部での均等制の要求であり、
第1号議案の普通株式は1株1万円、2号議案の優先株式は1株2万円であっても、
この均等制の要求には反しません。

 では、普通株式に応じる出資者で、金銭を出資する者と現物出資をする者がいる
場合に、この均等制の要求をどう定めるのかと疑問に思う方もいるようですが、こ
れは無関係です。

 募集株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をともに
払込金額といい、差を設けていませんし(会社法199条1項2号)、払込期日で
も、金銭と金銭以外の財産で差を設けていません(会社法199条1項4号)。
旧商法280条ノ3でも「株式の発行価額其の他発行の条件は発行毎に之を均等に
定むることを要す」という内容で、出資財産が金銭か金銭以外かで差を設ける内容
ではありませんでした。

 疑問に思ったら、会社法の条文をみる。旧商法まで調べて疑問を解決する。

 プロなら当然のことですが、会社法を専門としなければ、やってられませんね。
やってもらうと、私の商売が成り立たなくなるので、どうぞ、今後も、私に任せて、
相変わらず勉強しないでいただきたいと、お願いしたいものです。


2010.11.18(木)【株式の種類ごとの数】(金子登志雄)

 増資する際の会社法199条1項1号と、設立の際に株主を募集する募集設立の
58条1項1号の「募集株式の数」については、次のような表現上の差があります。

(199条)
 募集株式の数
 (種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数)
(58条)
 募集株式の数
 (種類株式発行会社である場合にあっては、その種類及び種類ごとの数)

 「にあっては」と「である場合にあっては」は、すでに種類株式発行会社か、こ
れから設立するのかという表現差にすぎませんが、後者には「数」の前に「種類ご
との」が加わっていることにご注意ください。

 これ、意外に重要な差であり、設立時には、普通株式〇〇株に、優先株式〇〇株
などと種類株式ごとの数を発起人が一括して決めればよいが、会社成立後には、株
主総会(あるいは取締役会)で、「1種類の株式〇〇株」としか決められないとい
うことです。

 普通株式〇〇株に、優先株式〇〇株を発行したい場合には、それぞれ別々の事柄
だから、第1号議案と第2号議案に分けよということです。会社法立案担当者も、
「複数の種類の株式を発行する場合には、複数の募集の手続を同時に行うこととな
る」と解説しています(商事法務1741号22頁)。

 では、設立時には、種類株式ごとの格別の差を設けなくてよいのか、普通株式も
優先株式も1株を同じ値段で発行することになるのかと疑問が生じますが、58条
3項には「種類及び当該募集ごとに、均等に定めなければならない」とあり、その
歯止めの規定が設けられています。

 漏れが生じないように、うまく出来ているものだと改めて感心した次第です。


2010.11.17(水)【1か月225頁】(金子登志雄)

 東京司法書士協同組合の出版事業に協力するため、この1か月間、土日も一切な
しに会社法・商業登記のQAを書き続け、昨日、「終わりました」と届けました。

 われながら、集中力を切らさず、よく頑張ったなと思っていましたが、振り返っ
てみると、「225÷30=7.5」で、1日7.5頁しか書いていないわけです。

 感覚的には、1日30頁は書いていたように思うのですが、この差は、いったい
何でしょうか。

 おそらく、資料探しやチェックをしていたのでしょう。いつも、面倒だなと思い
つつ行っている作業に、松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』〇〇頁と
か、『論点解説 新・会社法』〇〇頁とか、商事法務〇〇号〇〇頁だとかの出典を
明示をしないと、専門書の価値がでないので、それをしていたのだと思います。

 学者や弁護士の論文をみると、最後の注記に、参考にした書籍や論文が数頁にわ
たり掲載されていますが、あれ、ほんとに読んだのでしょうか。

 もし、事実だとしたら、数頁の論文に1か月はかかるでしょう。彼らにいわせれ
ば、1日7.5頁は、脅威のスピードかもしれません。

 きっと価値観が違うのでしょう。私は、自分はどう考えるか、それを人に伝える
にはどうしたらよいかを重視しますが、学者さん達のは、これだけ調べて書いたと
伝えることが学者の評価につながるかもしれません。 


2010.11.16(火)【椅子を取れました】(田中利和)

 お陰さまで、椅子取りゲームに勝ちました! 

(この頁の上部左を)ご覧のとおり、私の本も回っています!

 そこで、もう一度だけ、本の宣伝をさせてください。

 この本は「働きながら合格する」を信念に、特に社会人受験生のために書いたと
いっても過言ではありません。

 働きながら受験するのは本当に大変です。合格するため、つまり、勝つためには、
必要な勉強量が存在すると思います。

 ところが、その勉強量を蓄える途中で、体調を崩したり、精神的にもしんどくな
ったりすることがあります。

 そんなとき、ここ一番の踏ん張りには、「絶対に合格するんだ!」という強い精
神力がものをいうような気がします。

 もちろん、1年に満たない受験期間で合格される方もおられようですが、大半の
受験生はそうではありません。少なくとも3年程度は費やすことが多いように思い
ます。

 何度も受験し、不合格になると、気が滅入ってきますし、受験する気力も失せて
きます。そんなとき、私の本を読んでみてください。

 名著「楽学 不動産登記法」(富田太郎氏著)と比べると、内容も薄く、ページ
数も少ないうえに、若干ではありますが高い値段が付いていますので、相当の割高
感がありますが、ぜひとも読んでいただきたいのです。

 そのとき、必ず”はしがき”から読んでほしいのです。本文は「この中の論点が
一つ出題されたらラッキー」という程度で、新聞や雑誌を読むかのごとく、なんど
も読み流してください。

 きっと、いい結果が得られると信じています。


2010.11.15(月)【臨時決算】(金子登志雄)

 司法書士の皆さんは、有価証券報告書というのをみたことがありますか。検索す
れば、すぐに出てきますので、みてください。
 例えば、こういうものです。

  http://eir.eol.co.jp/EIR/View.aspx?cat=yuho_pdf&sid=1410918

 この最初に「主要な経営指標等の推移」があります。上記の会社では6頁です。

 ご覧のように、毎期の業績比較が出ています。当期純利益又は当期純損失の欄を
毎期比較すると、この年度は儲かったが、翌年は損失だったなどということが一目
瞭然でわかります。

 なぜ、こんなご紹介をしたかといいますと、土日に皆さんからの商業登記相談事
例集をみておりましたら、臨時決算すれば(会社法441条)、利益も損失も確定
し、期中の利益を資本金に組み入れることも、期中の損失をその他資本剰余金で処
理することもできると思い込んでいる人が意外に多いことに気づいたからです。

 臨時決算しようが、しまいが、期の途中でその期の利益を持っていかれたり、損
失を処理されてしまったら、毎期ごとの比較ができません。「主要な経営指標等の
推移」など何の意味もありません。

 臨時決算というのは分配可能額の計算に影響させる手段であり、年度利益や年度
損失を左右するものではないということです。

 この際、株式投資をしてみませんか。こういう問題に強くなりますよ。ただし、
高額な授業料を支払う羽目になっても、責任は負えません。


2010.11.12(金)【欠損と損失】(金子登志雄)

 司法書士会千代田支部のセミナーで話題にした上場会社の失敗事例では、公告の
ミスと分配可能額のミスが多かったように思います。

 取締役会で決議するときに、社外取締役や社外監査役として弁護士や会計士がい
ても、こういう手続には全く関心がありませんし、他の業務執行取締役も、どうせ
総務部でちゃんとやるのだろうと思い込み、相互チェック機能が働きません。

 頼りの監査法人も、聞かれれば、ちゃんと調べて答えるのでしょうが、聞かれな
いので、見過ごしてしまうのでしょう。

 もっと早く、身近な司法書士に相談してくださればよいのですが、インサイダー
情報を外部に漏らすなという意識があり、相談もしてきません……、これではミス
するのが当たり前です(司法書士自体が頼りにされていない面もあることは、素直
に反省しなければなりませんが)。
 
 そもそも、「欠損」と「損失」の区別を理解している上場会社がどれだけあるの
でしょうか。これは司法書士にもいえますが、数%も、あやしいところです。

 A社の純資産の部は、次のようになっていました。

   資本金       5000万円
   資本準備金     2000万円
   その他資本剰余金   100万円
   その他利益剰余金  △500万円
   自己株式     △1200万円

 この場合、損失は500万円で、欠損は1600万円です。損失は利益の問題で
あり、欠損は株主資本を食いつぶしているかどうかの問題であり、意味が違います。

 さらに深いことは下記をご参照ください。会計事務所に好評のようです。
 
http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-98530-0




2010.11.11(木)【真相って何】(金子登志雄)

 根来川さん、私も山田さんの話を聞いてみたかったです。検察が不起訴にしたの
に、善良な(?)市民による検察審査会が不起訴不当にし、23年間も被告人扱い
され、人生をめちゃくちゃにされた山田さんの心境は、想像もつきません。

 これが、検察審査会の議決要旨です。
 http://www.jca.apc.org/kabutoq/DATA/kenn_sinnsakai.htm
 
 「本件について、被疑者を灰色にしておくことは被疑者の人権に関する重大事で
あり、………もう一度捜査をやり直して、真相究明すべきと判断した」。

 捜査のやり直しが被疑者山田さんのためだというのです。何という偽善でしょう
か。「真相究明」という名のもとの人権蹂躙事件です。真相を知りたかったら、山
田さんを呼び出して聞けばよいのに、それもしていません。密室での取調べがどう
いうものかも知らないで議決しています。

 人は、自分は無関係だという安全地帯にいると、時にして残酷なことを平気です
るものだということがよくわかります。

 たぶん、以上につき、多くの国民が賛同してくれるでしょうが、その同じ国民の
8割が、いま、「小沢を証人喚問に引き出せ、議員をやめろ」と魔女狩りに加担し
ているのです。甲山事件や先般の村木裁判の教訓は、どこに行ったのでしょうか。

 成人の平均年齢が52歳なのに(鳩山問題の検察審査会の平均年齢はこの程度で
した)、小沢検審に限り30代、それも第1回議決と第2回議決でメンバーが違う
はずなのに平均年齢がコンマ二桁までぴったり一致。いつ会合を開いたのかも、何
度、開いたのかも一切公表も説明もしない暗黒裁判並み………。

 検審のほうが、よほど疑惑が深いのに、国民の8割が説明責任を求める先は、検
審ではなく小沢氏に向かうのです。私には、集団リンチとしか思えません。

 人は、時にして集団になると、無責任になり、残酷なことを平気でするものだと
いうことがよくわかります。

 相手が小沢氏であろうと、仙谷氏や谷垣氏であろうと、こういう人権は普遍的な
ものであり、絶対に守らねばならないもののはずなんですが、検察を批判する人は、
テレビから締め出され、「検察審査会を批判する識者はたわけ。小沢からカネを貰
っていることを明言させていただく」(辛坊治郎)とまで公共の電波を使って暴言
を吐かれてしまう始末………。

 菅政権の中枢も野党も、小沢を叩けば支持が増えると、人権よりは政局重視……。
この国は、いま、正気なのでしょうか。成熟した大人の社会なんでしょうか。米国、
中国、ロシアにも、すっかり子供扱いされて、舐められています。

 でも、絶望はしません。国民の2割は、正常のようです。マスコミは意図的に全
く取り上げませんが、ネットの呼びかけで、マスコミ批判のデモが2回も行われた
ようです。名もなき人の呼びかけで、全国から1000人以上も集まるようです。

   http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/168413161.html


2010.11.10(水)【甲山事件】(島根・根来川弘充)

 先月の話になりますが、青年司法書士の研修会で、「甲山(かぶとやま)事件」
で無罪になった山田悦子さんの話を聞く機会がありました。

 「甲山事件」とは、1974年(昭和49年)に兵庫県で2人の園児が園内の浄
化槽から死体で発見され、当時、保育士をしていた山田さんが殺人の容疑者として
逮捕された事件です。

 裁判の結果は、一度も有罪判決がでることなく、山田さんは冤罪だったのですが、
山田さんはその一連の経緯を淡々と話されました。

 捜査が進むにつれて、園児を預けている親族の対応が変わっていったことや、ま
た、取調べでは、自分も知らなかった親の過去について知らされたこと、いろいろ
な証言をもとにして作られた起訴状の膨大な起訴事実を目の当たりにして、絶望を
感じたことなど、いろいろな体験を語られ、それらはいずれも、国家権力の前での
一市民の無力さをまざまざと感じさせるものでした。

 山田さんは、日本の刑事司法に対して、容疑者の段階でありながら、監獄に留置
される代用監獄(現「代用刑事施設」)の制度をいまだに改善出来ていない点、さ
らに、人権に配慮を欠いたと感じられる所持品検査がある点、など、改善すべき点
があることを指摘されるとともに、「国家が責任を取らない体制」に、根本的な問
題があることも指摘されました。

 最後の方で、先だって無罪で釈放された菅家さんの件に触れられて、「菅家さん
みたいに好感のもてるしゃべり方ができたらよかったけど」と、関西弁で冗談交じ
りに話された姿は、何か神々しささえ感じるところがありました。


2010.11.09
(火)【生(なま)金子先生】(醍醐 香)  

 皆様、はじめまして。千代田区の司法書士醍醐(だいご)と申します。先日5日
の東京司法書士会千代田支部のセミナー後の会合で、金子先生や富田先生をはじめ
とするESGの皆様にお会いいたしましたら、何か書いたら、この欄に掲載してあ
げるといわれましたので、早速、書いてみました。

 このセミナーでは、遂に!「生(なま)金子先生」を拝見することができました。
新人司法書士のため、これまでは、先生のセミナーと無縁だったためです。

 私の中では、先生の外観は、きっと、

  @ちょっと弱々しい A小柄で Bやや気難しげな Cおじいちゃま

だろうと勝手にイメージしていましたので、@〜Cに該当する方がセミナー会場に
入ってくると「あの人かな!?」と胸をときめかせ、「なま金子先生」捜しで目が
しばしばしちゃいました。

 現れた本物の金子先生は、私がイメージしていたタイプとは全く違う方で、大柄
で気さくな方でしたが、感想は「やっぱりオーラがあるよね!」でした。

 講義の内容は、久しぶりに「勉強したぞ〜!!」という充実感がありました。つ
いていけず、ひたすらメモを取っていた部分もあったので、復習しなくちゃです。

 特に、増資の際の資本金計上額を定める会社計算規則14条1項の難解な規定を
分解して、やさしく読み替える説明は、「ミラクル!」ものでした。あとで、みる
と、本欄の8月23日、25日、31日にも、書いてありますね。

 このように、複雑な内容をひも解き完全に理解し、自分のものにしてしまえれば、
人生、もっと快適になるのですが………。

(金子)
 醍醐さん、ヨイショありがとうございました。身長177センチですから、小柄
とはいえませんね。ウエストと体重は、いま若さあふれる成長期のようで、体重で
は、とうとう90キロに達しました。これ以上、成長したくない………。
また、投稿、お願いします。


2010.11.08
(月)【選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり】(富田太郎)

 田中さん。本の出版おめでとうございます。拝読いたしましたが、アイディア満
載の工夫を凝らした本ですね。お世辞抜きで、素晴らしい本です♪

 初めての本。私も思い出しますが、「他人には、その他多くの中の一冊。たかが
本」でしょうが、本人にとっては、宝物です。
 私など、初めて出版したときは、「自分が死んだ時、この本をいっしょに棺桶に
入れてほしい」とまで思ったものです。

 もっとも、「この本は、自己の生きざまを発露したもの♪ 世間の誰もが出版デ
ビューできるわけでもない♪ されど、この本の反響は??? よもや内容に不備
はないだろうか???」と「有頂天な気分」と「不安」のあい半ばするものでした。

 まさに、あの有名な言葉

  『選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり』

の心境でした。

 ちなみに、この言葉、皆さんもご存知のとおり?

 前田日明(プロレスラー)が、新団体「UWF」旗揚げ時に、自己の心境を吐露
した言葉として有名ですが、勿論、元々は、前田の言葉ではなく、フランスの詩人
ヴェルレーヌのもので、

 原文:『J'ai l'extase et j'ai la terreur d'etre choisi.』
   (『叡智』byポール・マリー・ヴェルレーヌ フランス詩人)
 
 訳文:(撰ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり) 

 太宰治の小説「葉」にも引用詩(堀口大学訳)としてでてきます。
もっとも、ヴェルレーヌは、「上記のような初々しい詩」を書いているものの、そ
の後は、残念なことに「怠惰に過ごした」とも述べています。

 田中さん! 今の初々しい気持ちを忘れず、執筆活動に励んでくださいね!
特に『締切りは、手形と同じです』(注)。出版社に迷惑かけず、締切りを必ず
守ってくださいね。
 ………

 締切りを守らない私に言われたくないですよね………(汗)。
失礼しました………(涙)。

 ※(注)『締切りは手形と同じです』
 金子センセが、私、富田に「原稿の締切りの大切さ」を説いた名言。
これに対し、富田は、「金融機関出身の私から言わせれば、手形はジャンプする
ことができます♪」という迷言で返答し、本気で怒られたことがあります(涙)。


2010.11.05(金)【椅子取りゲームに参戦】
(田中利和)

 私ごとで恐縮しますが、昨日の本欄でご紹介いただきましたとおり、このたび、
著書を出版いたしました。11月の第2週には、書店の店頭に並ぶと思います。

 今思えば、平成18年の会社法施行の際、全国の司法書士のメーリングリストに当
ESGの金子代表が商業登記書式の予想問題の作成者を募集したのが、そもそもの
お付き合いの始まりでした。

 その募集に手をあげたのは、全国でたったの3人。その後、2名が辞退し、結果、
運よく私だけが残りました。

 その後、富田太郎氏と出会い、同氏の紹介を通じて出版社とかかわりを持つこと
ができ、今回、出版する運びになりました。

 これで、予想問題作成の際には、ろくでもない問題を作り、困らせたしまった金
子代表と出版社とのパイプを作ってくださった富田氏には、少しは恩返しができた
のかな、と思っています。

 ところで、当ESGのホームページ(HP)の左上には、金子代表と富田氏の書
籍が、くるくると回っていることはご承知のとおりですが、昨日から、何度もしつ
こく”クリック”しているにもかかわらず、私の本が見当たりません(涙)

 よく見ると回っている書籍には共通点が存在するようです。そうです! 会社法
と商業登記法です!!

 私が出版した本の題名は,『楽学 不動産登記法記述式』です。会社法と商業登
記法とは別ものです。名著、『楽学 不動産登記法』(富田太郎氏 著)の楽学シ
リーズに仲間入りできましたが、当HPの書籍が回っている”椅子”には、座れそ
うにありません。

 今回の出版をバネにして、ぜひとも次回は、”椅子”を確保し、回ってみたいと
思います。

(※金子より訂正)
 昨日本欄の丸田さんの「カネのかかる仕事だけでは、かっこ悪い」を、
「カネになる仕事だけやるのは、かっこ悪い」に訂正いたしました。


2010.11.04
(木)【あの人は今】(金子登志雄)

 きんざいの「月刊登記情報」11月号では、当ESGのお仲間である佐々木、尾
原、山本、鈴木の4人の先生が揃って登場でした。

   http://store.kinzai.jp/magazine/AT/index.html

 10月28日読売新聞夕刊1面(九州版?)の「この人この一言」には、福岡の
丸田先生の活躍ぶりがデカデカと紹介されていました。
 
 皆よく頑張っているなぁと思っていたら、予想外のところから、大阪の田中司法
書士が初出版の快挙でした。

  http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102988362/subno/1

 田中氏自身、ホテルマンからの転身組ですから、脱サラ受験生などを応援する受
験用書籍のようです。

 たかが執筆や出版と思わないでください。外部に発表するものですから、書いて
は書き直しで、相当の時間がかかるものです。田中氏も、半年から1年はかかって
いることでしょう。その間、仕事で多忙なことも、体調不調なことも、気分が乗ら
ないことも多々あるのに、乗りかかった船をゴールまで運ぶ続けることは、容易な
ことではありません。

 丸田氏も、無料法律セミナー「法科村塾」を1年以上も続けています。「カネに
なる仕事だけやるのは、かっこ悪い」と、ボランティア活動を継続なさっているよ
うです。

 この徒然日誌も、もう3年半以上です。ボランティアでもなんでもありませんが、
「継続は力なり」と黙々と続けています。

 ちょっと、かっこよすぎますね。本音をいうと、これをやめたり、出版をやめる
と、1年後や2年後に「あの人は今」といわれそうなので、頑張っているところも
あります。


2010.11.02
(火)【悪文(会社法32条)】(金子登志雄)

 悪文その2です。

 Aさんが1人で株式会社を設立することにしました。現金を80万円用意し、パ
ソコンセットを20万円と評価し、現物出資することにしました。

 そこで、定款に、現物出資額20万円、これに割り当てる株式数として20株と
書きました(全部で100株を発行するつもりのようです)。金銭の80万円につ
いては、定款に記載しませんでしたので、発起人の決定書に書くことにしました。

 さて、皆さんは、次の会社法32条1項1号と2号を読んで、Aさんの代わりに、
発起人の決定書を作ってください。慎重に読んでください。

--------------------------------------------------------------------------
 第32条(設立時発行株式に関する事項の決定)1項
 発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除
く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
 1 発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数
 2 前号の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額
--------------------------------------------------------------------------

 真面目なAさんは、「定款に定めがある事項を除く」とあるから、現物出資分の
20株は、「発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数」には記載してはいけな
いのだな、2号に「前号の設立時発行株式………」とあるため、1号は、金銭出資
分の80株についてだけ書くのだなと読みました。

 どこか、おかしいですか。おかしくないですよね。

 しかし、会社法の意図は、「発起人ごとの割当数や1株当たりの払込金額は、定
款に定めていないのなら、発起人の全員で定めよ」というものです。設立時の発行
株数は、旧商法では、定款の必要的記載事項だったものを、会社法で、この規定や
58条に持ってきたものです。

 会社法に限らず、法律条文は、条文の背景を知らないと勘違い読みをしてしまう
ものです。それがまた楽しいと思わないと、この世界で脱落します。

(注)11月5日の千代田支部セミナー(講師:私)ご参加者へ
 当日、『募集株式と種類株式の実務』を販売いたします。
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-99880-5


2010.11.01
(月)【悪文?(会社法349条3項)】(金子登志雄)

 会社法349条3項に「株式会社は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又
は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる」と
あります。

 司法書士Aさんによると、この後半を「定款の定めに基づく取締役の互選」又は
「定款の定めに基づく株主総会の決議」と読む登記所職員がいるとの話でした。
その結果、総会で代表取締役を選任したら、定款を添付せよというのだそうです。

 まさに「う〜ん???」です。そう読まれても仕方ない文章です。みなさまが司
法書士だとしたら、どう反撃しますか。即座には、思い付きませんよね。

 前身の旧有限会社法27条は、「定款若は社員総会の決議を以て会社を代表すべ
き取締役を定め、…又は定款の規定に基き取締役の互選を以て会社を代表すべき取
締役を定むることを妨げず」でした。これなら誤解されませんから、日本語能力は、
旧有限会社法の勝ちですね。

 しかし、「旧有限会社法は旧有限会社法、会社法は会社法だ」といわれたら、こ
の反撃では弱過ぎます。そこで、理論的な反撃を考えると、会社法295条1項で、
非取締役会設置会社の株主総会は「株式会社に関する一切の事項について決議をす
ることができる」とされており、万能の決議機関ですから、定款の定めがなくとも、
代表取締役を定められるのだから、そう読むべきでないのは明らかだ、と主張する
ことになります。

(注)11月5日の千代田支部セミナー(講師:私)ご参加者へ
 当日、『募集株式と種類株式の実務』を販売いたします。
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-99880-5


2010.10.29(金)【同時公告の正しい意味】(金子登志雄)

 昨日、某県の司法書士Aさんから電話がありました。

「官報で同時公告し、催告書には、その同時公告の頁を利用し『貸借対照表はいつ
いつの官報の何頁に掲載している』と書いて催告書を発送したのだが、これは違法
な催告だという意見があるのを知り、たいへん心配になった。大丈夫だろうか」。

 同時公告というのは、次の例のように、減資公告や合併公告の隣に貸借対照表の
要旨を掲載するものです。合併では、会社法施行規則188条です。

http://kanpou.npb.go.jp/20101028/20101028g00227/20101028g002270118f.html 

 この会社の「定款で定める公告方法」が官報であれば、これで適法に決算公告を
したことになるから、催告書には、その頁を書けばよいわけです。「合併公告」と
「決算公告」を同時にしているから、同時公告と一般に呼んでいます。

 ところが、違法説の根拠は、条文に「公告の日又は催告の日のいずれか早い日に
おける次の各号に掲げる場合の区分に応じ」同じものを掲載せよとあるから、上記
の方法では、官報では「貸借対照表の要旨」を掲載し(188条7号)、催告書に
は「官報の決算公告」を掲載しているから(188条1号)、区分が異なり、条文
に反するということのようです。

 これは、勘違いです。上記の同時公告は左の「決算公告」を先に掲載し、右側で
「当該官報の日付及び当該公告が掲載されている頁」を書く代わりに、「左のとお
り」と書いたと読むのです。プロの皆様に通じる言い方をしますと、官報公告でも
7号公告ではなく1号公告をしたと取り扱うのです。

 すごい詭弁だといわれそうですが、商法時代には、7号の貸借対照表の要旨を並
べる方法がなく、この方法をもって、「官報で公告をしているときは、当該官報の
日付及び当該公告が掲載されている頁」(商法施行規則195条)を掲載したもの
と商業登記の実務で扱っていたのです。

 よって、公告でも催告でも1号公告したことになり、区分は一緒です。
Aさん、心配しなくていいですよ。

 以上、なるほど、と思ってくださった方は、上記のことは書かれてていませんが、
また旧『これが新増減資だ種類株式だ』のリニューアル版ですが、来週後半に書店
に並ぶ『募集株式と種類株式の実務』(中央経済社)¥2940(税込み)を買い
ましょう。富田センセとの共著です。Aさん、予約受け付けました。

 (ネットで画像がでました)
  http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102987187/subno/1


2010.10.28(木)【自己新株式】(金子登志雄)

 いきなり、ぶっそうな話ですが、母体から赤ちゃんが出てくるとき、いつ人間に
なるかによって、殺人罪か堕胎罪に分かれます。

 では、手形はいつ手形になるでしょうか。振り出したときか、受取人に交付され
たときか………。

 30年以上も前に勉強したことで、うろ覚えですが、手形を中心とする有価証券
学説の1つとして創造説というものがあります。いまでも根強いようです。

 通説は、有価証券は発行して受取人に交付されてはじめて有価証券になるという
ものですが、創造説は、作った段階で有価証券になるというものでした。最初の所
有者は受取人ではなく自分だという発想です。

 これを募集株式の新株に応用しますと、会社が新株の発行を決めると、自社が最
初の所有者になります。いわば自己【新株式】ともいうべきものになりますから、
新株の【発行】は、自己新株式の【処分】ということになります。

 こう考えると、新株式の発行と自己株式の処分は、募集株式の【処分】として統
合されます。会社法199条の背景には、この思想があるはずです。

 株式の処分とは、株式の売却のことですから、「株式の募集行為は取引だ」とな
り、この資本取引の差益(儲け)を資本金にいくら計上してよいのかという流れに
なります。合併も合併【対価】や無【対価】合併というように、取引です。

 創造説というより、会社を製造業とみて、新株を製造して、新株を売ると考えた
ほうがわかりやすいかもしれませんね。もちろん、儲けは損益計算書ではなく、貸
借対照表に直接に計上され、株主資本を動かします。

 会社の計算の根本思想がわかってきたような気分になりませんか。うん、うん、
と納得した方は、来週後半に書店に並ぶ『募集株式と種類株式の実務』(中央経済
社)¥2940(税込み)を買いましょう。富田センセとの共著です。

 (ネットではまだこの状態で、中央経済には掲載されていません)
  http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1102987187/subno/1


2010.10.27(水)【残りもの代表取締役】(金子登志雄)

 取締役A一人の会社があります。一人ですから会社を代表する取締役、すなわち
代表取締役です。

 この会社で、BCを平取締役として選任することにしました。

 さて、会社法349条3項に、取締役会を置かない株式会社では、「株主総会の
決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる」とありますが、
この会社では、どうやって代表取締役を選ぶのでしょうか。

 文字どおりだとすると、「当社の取締役は、BCを加え、ABCの3名になるが、
代表取締役はAにする」とでも決議するのでしょうか。すでに、Aは代表取締役で
すが………。

 どうも、この規定は「取締役の中から代表取締役【でない者】を定めることがで
きる」と読んでもよく、それが通常のようです。つまり「BCを代表権のない取締
役」として選任すれば、それでよいらしいのです。

 消去法ですね。

 「ABCのうちAを代表取締役にする」というのと、「ABCのうちBCを代表
権のない取締役にする」というのは、数学的に一致するのでしょうか。

 「あなたは選ばれました」と「あなた以外は全員が外されました」とどこが違う
のか。あとの方法だと、あなたも外れる可能性はないのか………。

 取締役一人なら、その人が代表取締役です。残りもの代表ですね。


2010.10.26(火)【代表取締役】
(金子登志雄)

 会社法47条1項に「設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設
置会社である場合には、設立時取締役の中から株式会社の設立に際して代表取締役
(株式会社を代表する取締役をいう。以下同じ。)となる者を選定しなければなら
ない」とあります。「代表取締役(株式会社を代表する取締役をいう)」という部
分に注目してください。

 一方、会社法349条1項には「取締役は、株式会社を代表する」とあります。
取締役会のない会社で取締役がABの2人だとすると、定款に特別な定めがない限
り、このABは取締役でありながら株式会社を代表する権限があります。

 47条には「代表取締役とは、株式会社を代表する取締役をいう」、349条に
は「取締役は、株式会社を代表する」とあるわけですが、さて、このABは代表取
締役でしょうか。

 349条1項には「取締役は………」とあって、「代表取締役は………」とあり
ませんので、代表取締役であるわけがありませんよね。ましてや、47条は取締役
会のある会社の話です。しかし、「代表取締役とは、株式会社を代表する取締役を
いう」などと、あたりまえのことを定義するものです。

 ………と、会社法の内容が発表されたときは、みな、そう思いました。私も、最
初はその1人でした。

 しかし、後日わかったことは、47条を「代表取締役とは、株式会社を代表する
取締役をいう」と当たり前に読むのではなく、「株式会社を代表する取締役を代表
取締役という」と逆から読むのだそうです。また、「以下、同じ」とあるので、取
締役会のない会社にも通じる定義規定なのだそうです。

 この結果、ABも代表取締役になります。47条1項には「選定しなければなら
ない」とありますが、このABは「選定されない代表取締役」に該当します。

 ちなみに、選定とは、選任された中から、また選任されることらしいのですが、
この代表取締役AとBにつき、「選任」と書くのか「選定」と書くべきか、いまだ
に迷う日々です。

 会社法は、ややこしいでしょ。おかげさまで私の商売が成り立っているわけで、
痛し痒しです。


2010.10.25(月)【男の美学】
(金子登志雄)

 土日は帰省し、例によって、愛用のノートパソコン(レッツノート)で、もの書
き三昧でした。

 さて、ここ数年、いやそれ以前からか、通勤途中や通勤帰りの中年男が背広姿に
リュックを背負っている姿をよくみかけるようになりましたが、みなさんは、あの
姿をみて、どう思われますか。

 私は、申し訳ないけど、「男の美学はどうしたのか、みっともない、情けない」
と、ずっと思っていました。そもそも、仕事という戦場に向かう戦士が、楽しい遠
足に行くような姿をしてよいのか、と批判していました。

 ところが、つい最近から、私も同じ格好をするようになりました。

 重いノートパソコンを持ち歩いているため、前々から、手提げでなく肩から下げ
るバッグを好んでおりましたが、試しに、1か月ほど前から、リュックにし、右肩
のみにかけて利用していたところ、時々、ずり落ちるので、両肩で背負いましたら、
何と楽なこと………。

 しかし、まだ、こだわりがあり、恥ずかしさをあり、人通りの少ない場所でしか
両肩で背負っていませんが、これも時間の問題のようです。

 群馬への帰省ももちろんリュックを背負って新幹線に乗ってきました。人の目を
気にする歳でもありません。

 というわけで、私の「男の美学」は、冬でもステテコをはかないことだけにとど
めることにしました。


2010.10.22
(金)【印影】(金子登志雄)

 お客様から、時々、こんな質問を受けます。

1.株式会社Aが商号を変更し株式会社Bになったが、会社届出印は従来のA会社
 の印鑑を使ってよいか。

2.取締役の鈴木〇〇子さんが結婚し田中〇〇子さんになったが、取締役会議事録
 の記名押印は従来使っていた鈴木という文字の入った印鑑を利用してよいか。

 こういう質問があったとき、私どもは「かまいません」と答えるのですが、みな
さん一様に半信半疑になるようです。

 1の場合は「当社の印鑑はこれです」と法務局に届けたものが会社届出印であり、
その印影は問いません。会社の届出印として社長個人印を利用している会社もあり
ますし、有限会社から株式会社に移行しても、そのまま有限会社時代の届出印を利
用にしている会社もあります。必要でしたら、私の印鑑を使ってもかまいせん。

 逆に、私どものほうでお客様にお願いしたいのは、シャチハタ印はやめてくださ
いということです。シャチハタはスタンプであって、押印になりません。

 ………といった後に、仲間内で会話したことがありますが、シャチハタに朱肉を
つけて押せば印影になるのじゃないか、そうだそうだ、イモ判を作って朱肉をつけ
て押してもよいのだ、なんて結論に至りました。

 まるでスタンプのような印影で取締役会議事録を作ってくる会社もありますが、
印影かどうかは、朱肉で決まるということにしておきましょう。どうぞ、たっぷり
朱肉をつけて、スタンプらしさを消してください。


2010.10.21(木)【離婚する、その前に………】
(愛知・和出吉央)

 昨今は離婚率も上昇し、我々司法書士・弁護士等の専門家が、日常、離婚問題に
ついて相談を受ける機会が多くなっているように感じます。

 背景には、核家族化(大家族の減少)によって、若年層にとって「離婚をする」
ということが“家の問題”ではなく、“自分たちのだけの問題”と捉えられ、心理
的ハードルが低くなっていることがあるのかもしれません。私は、32歳ですが、
実際、同年代の友人等でも、すでに複数回目の結婚をしている人が何人もいます。

 また、少し前にテレビドラマやニュースでも取沙汰された「熟年離婚」の影響も
あろうかと思います。

 ちょっと前置きが長くなりましたが………、今回は、誰にでも身近になった離婚
について、以下、実際に離婚をする際に法的に気をつけるべきことを、簡単にお話
しします。

 ほとんどの方が、「離婚をする」というだけで満足してしまい、その他の条件に
ついてはほとんど定めないまま離婚をしてしまいます。当事者の精神状態から察す
るに、ある意味、これは致し方ないこととも言えます。しかし、離婚に際しては、
これまでの結婚生活をきちんと清算する必要がありますし、何より、

  『離婚後の生活がきちんと成り立つ』

ように考えておく必要があります。そのために、離婚に際して最低限合意しておく
べき項目としては、以下のものがあります。

 ア 子供の親権者になるのはどちらか?
 イ 子供の養育費はいくらにするか?
 ウ 親権者にならなかった親と子供との面会はどうするのか?
 エ 慰謝料は発生するのか?発生する場合、その額は?
 オ 財産分与(結婚生活中に二人で築いた財産の分割)をどうするのか?
 カ 年金分割をするのか?

 以上の合意は、当事者たちだけで決めることができます。
(合意内容等の詳細については、次回、お話しします。)

 注意すべきなのは、相手の言いなりで合意しないことです。本当に適正条件での
合意なのかどうか、実際に合意をしてしまう前に、専門家にご相談されることをお
すすめします。そして、その合意は必ず書面に残すようにすべきです。その場合、
公正証書にしておけば一番良いでしょう。証拠力も万全ですし、合意内容に反する
場合には公正証書を根拠に強制執行することができます。

 また、当事者たちだけで話し合いがつかない場合、家庭裁判所を通じた調停手続
を行う場合もよくあります。この段階から専門家に依頼をする場合もよくあります
が、専門家に依頼しない場合に、気をつけて頂きたいことがあります。それは、調
停の場での調停委員からの提案の中には、

  『相場や一般の感覚からかけ離れた提案となっている場合がある』

ということです。
(これには色々な原因があり、調停委員を責めるわけではありませんが………)

 このような提案に安易に合意してしまわないために、やはり、合意の前には、実
務専門家である司法書士・弁護士等にご相談されることをおすすめします。


2010.10.20(水)【折り合い場所】
(金子登志雄)

 会社法や商業登記の論点に関して、解説を書く際に、最も重視していることは、
現在の登記実務の大勢の考え方を前提に、多くの方にご納得いただける内容にする
ことです。学者と違って、身勝手な自説を展開するわけにはいきません。

 ところが、時たま、実務の大勢のほうが、おかしな見解であることがあります。 

 例えば、取締役会のある会社が、定款変更して取締役会を廃止し、取締役の互選
で代表取締役を選任する会社に変わったとすると、従前の取締役ABC(うち代表
取締役A)の立場はどうなると思いますか(会社法は何も規定していません)。

 世間常識に染まっている私は、本欄をみている非法律家の多くの皆様と同様に、
たかが定款変更したくらいで、取締役や代表取締役の立場に変化が生じるわけがな
いじゃないか、Aは依然として代表取締役であり、BCは平取締役のままだという
考え方です。変わるのは、以後はAが互選による代表者として扱われる程度です。
決算期を変えたら、自動的に任期が変わるのと同じようなものです。

 ところが、登記実務の大勢は、これを会社の種類の変更(一種の組織変更)のご
とく取り扱い、Aを互選で代表取締役に選任し直せというのです。そういいながら、
Aの任期は切れないから、登記も不要であり、その互選議事録を提出する必要もな
いというのです。実に歯切れの悪い中途半端な見解ですが、会社法施行時から採用
している考え方です(当時の担当者の見解が前例になっているためでしょう)。

 こういう場合に、自説と登記実務との折り合い場所、落とし所を懸命に探さなけ
ればなりません。次に書き進められないからです。

 以上については、最終的に、登記実務の主張する「選任し直せ」は、代表権が互
選代表に変質したことを受け入れる儀式(新体制移行への進水式)だと私は結論づ
けています。これなら、儀式が必要かどうかという、どうでもいいことで登記実務
の大勢と自説が相違するだけで済みますから、対立関係になく、筆が進むようにな
ります。


2010.10.19(火)【代表者の2段階登記】
(金子登志雄)

 会社法では、「取締役は、各自、株式会社を代表する」のが原則です(349条)。
登記は、次のように2段階になります。代表者には住所が入ります。

     取締役   A  平成〇年〇月〇日就任 ………@

   東京都千代田区………
     代表取締役 A  平成〇年〇月〇日就任 ………A

 こういう登記のみのある取締役A1名の会社において、追加でBを取締役に選任
したとき、

    取締役    B  平成〇年〇月〇日就任 ………@

 という登記のみ申請したら、登記は受理されるでしょうか。

 登記実務の主要見解は、Aの登記を申請しない証明として、定款を添付せよとい
うものです。その定款に「代表取締役は取締役の互選で選ぶ」などといった条項が
あれば、「代表権のない取締役」を肯定できるから、登記もOKだというわけです。

 しかし、各自代表だろうと互選代表だろうと、@とAを同時に申請しなければな
らないという根拠があるのでしょうか。Aの登記は後日の問題として、@だけを受
け付けることはできないのでしょうか。

 おそらく、増資で資本金の登記だけして株数の増加を漏らしてはいけないのと同
様に、各自代表の場合も、@とAがワンセットの登記だというのでしょう。

 ここまでは何とか理解できるのですが、互選代表制の会社ならば、ABの互選で
Aを代表者に再選任せよ(登記はそのままでよい)というのです。

 では、Bを10月1日に選任し、互選が10月5日だったら、この5日間、Bの
地位はどうなるのでしょうか。

 何だかんだで、ここ数日、悶々としています。登記に配慮せず会社法が制定され
たことが原因ですが、ただいま、この問題の原稿と格闘しているため、落とし所を
みつけなければなりません。今週いっぱいは、ああでもない、こうでもないと続き
そうです。


2010.10.18(月)【特別支配会社】
(金子登志雄)

 会社法で「特別支配会社」とは、「ある株式会社の総株主の議決権の10分の9
以上を他の会社が有している場合における当該他の会社」のことです(468条)。

 これを受けて、会社法796条1項に、合併存続会社の株主総会の承認決議が必
要だとの規定は、「吸収合併消滅会社が存続株式会社等の特別支配会社である場合
には、適用しない」と規定されています。いわゆる略式合併というものです。

 いま、親会社Aが100%子会社Bを吸収合併しようとしたら、Bが債務超過で
簡易合併ができないので、この796条1項で略式合併にすることにした………と
いう文章につき、正しいでしょうか。

 以前、某弁護士に上記をいわれ、びっくりした経験がありますが、土日に司法書
士からの質問事例集をみていましたら、結構多くの司法書士が勘違いしていること
に気づきました。

 796条1項は、消滅会社が存続会社を支配している場合に、存続会社の株主総
会を省略する規定であって、書き直すと、「親会社が消滅会社で子会社が存続会社
のとき(子が親を吸収するとき)、子会社の株主総会を省略できる」という規定で
す。子会社は、「被」特別支配会社です。

 要するに、親子合併においては、子会社で株主総会しても、可決するのは当然だ
から無意味な総会を省略してよく、それは子会社が消滅会社になるときであっても
(784条1項)、存続会社のときであっても(796条1項)、同じだというこ
とです。

 もし、勘違いしていた方は、2度と間違えると、恥ですよ。
 


2010.10.15
(金)【唖然・呆然(期限付解散ほか)】(金子登志雄)

 A社では、定款で許容していないのに、取締役会ではなく株主総会で代表取締役
を特別決議で選任してしまいました。

 これを定款違反の無効決議と解釈しないで、「当会社の代表取締役は株主総会で
選任する」と一時的に定款変更したと解釈することはできないものでしょうか。
 まず、無理でしょう。定款変更しようという意思がないからです。

 ところが、先般の民事月報(法務省の職員向け会報誌)では、「6か月後に解散
する旨のいわゆる期限付解散決議をした株主総会議事録を添付して存続期間の定め
に関する変更の登記の申請があった場合、当該登記の申請を受理することができる
か」という設問に対して、「株主総会における解散の決議も定款変更の決議も決議
要件は同じであり、また、定款変更の効力が生ずるためには、書面としての定款の
書き換えを要しないことにかんがみれば、設例の決議をもって当該株式会社の存続
期間の定めを設ける定款変更の決議がされたものと考えることも可能である」とし
て設問を肯定しました。

 解散を決議したのであり、存続期間の定めを定款に置くとも決議していないのに、
これを定款変更として肯定したのです。会社法の権威である江頭先生の教科書が肯
定説のため、それを受けたものと思われますが、決議内容との不一致をここまで認
めてよいのでしょうか。なぜ、端的に解散の効力を肯定しないのか不思議でなりま
せん。

 この決議をして、6か月後に解散の登記を申請したところ、期限付解散は認めら
れないと拒否されたら、「じゃあ、一緒に存続期間の定めの登記を申請するから、
それで手を打ちましょう。過料はなしですよ」という交渉をしてみたいものです。

 ところで、先般、小沢問題の検審メンバー11人の平均年齢が30.9歳とご紹
介しましたが、37歳を1人足し忘れて11で割ったとのことで、33.91歳だ
と訂正されましたので、ここでも訂正しておきます。

 しかし、(30.9×11+37)÷11=34.26となるはずであり、なぜ
33.91になるのか理解できません。平均年齢が33.91歳になるためには、
(30.9×11+X)÷11=33.91より、X=33.11歳のはずです。

 どこかで発表資料を改ざんしたのでしょうか。故意か過失かはわかりませんが、
刑事司法の世界における唖然・呆然の日はまだまだ続きそうです。

 (追記)平均年齢はまた変更されていました。今度は34.5歳だそうです。 http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3E1E2E7E38DE3E1E3E2E0E2E3E29188EAE2E2E2;at=ALL  


2010.10.14(木)【10月の税制改正】
(島根・根来川弘充)

 先日、公認会計士さんの今月から改正される税制について講演を聴く機会があり
ました。

 今月からは、清算所得課税の制度が廃止されたのだそうです。私は、残念ながら、
「清算法人は、税の面で優遇されている」くらいしか知りませんのでしたので、廃
止された制度についての説明することはできません。

 ただ、大きな問題点として、記憶に残りましたことは、今般、廃止されたことに
より、これからは資産譲渡や債務免除について、課税が生じるケースが出てきたの
だそうです。

 たとえば、清算法人が、簿価よりやすく不動産を安く処分しても、簿価取引が原
則だそうでして、簿価で売却した上で、差額を寄付した扱いになるのだそうです。
それを聞いて、譲渡した側だけではなく、受けた側も大きな税金がかかるかも知れ
ないとも思いました。

 一般的に会社を解散するというケースは、流動資産がほとんどないケースが多い
ものですから、その際に税金がかかるということは、会社にとって、大変大きな問
題になります。

 会社を終わらせるのも簡単にいかなくなったようです。

 皆様、ご注意くださいませ。


2010.10.13(水)【合併による利益】
(金子登志雄)

 11日の大阪のセミナーでは、「債務超過会社が合併して得た利益で、期中に損
失処理ができるか」といった高度の質問を受けました。
 
 実によい質問ですので、具体例で考えましょう。その他利益剰余金が△50のA
社があったとします(利益準備金はありません)。

 A社が兄弟会社などと会社計算規則35条で合併した時の合併利益たる剰余金は、
その他資本剰余金です。仮に、200を計上したとすると、株主総会決議で、その
うちの50をその他利益剰余金に振り替え、損失処理することができます(会社法
452条)。

 会社計算規則36条での合併であれば、消滅会社のその他利益剰余金を引き継ぎ
ますから、合併自体で損失処理がなされます。

 ところがです。このA社が100%子会社を吸収合併して、抱き合わせ株式消滅
益200を計上しても、その他利益剰余金の△50と相殺できません。

 理由は、兄弟会社間の合併など横の合併は資本取引であって、貸借対照表の株主
資本を直接に変動させるのに対し、子会社の吸収合併は、損益取引であって、損益
計算書の特別利益になるだけだからです。事業年度末日に貸借対照表に計上される
のであって、期中での処理はできません。

 この合併における資本取引と損益取引を勘違いして、分配可能額がないのに自己
株式を取得してしまった上場会社もありました。



2010.10.12(火)【時限爆弾と匿名犯罪】(金子登志雄)

 連休の最終日の昨日は、商業登記倶楽部のセミナーのため、大阪で講師を務めて
まいりました。その話は後日にしまして、この大阪の地において、民主党つぶしの
村木事件における証拠捏造の実行犯・前田検事が「FDに時限爆弾をしかけた」と
発言したことが報道されていましたが、取調べ側の最高検の伊藤次長検事にジャー
ナリストの岩上さんが質問したところ、次のような回答だったそうです。

   http://twitter.com/iwakamiyasumi/status/26529773830

 何と、マスコミの「みてきたようなウソ」報道だったということです。匿名に隠
れてマスコミがいつもしていることとはいえ、相変わらず、ひどいものです。

 時限爆弾といえば、小沢検審の議決内容にもありました。04年に記載すべき事
実が05年に記載されたというつまらない被疑事実の共謀に対して検審が開かれた
のに、個人からの4億円が不記載だったという無関係な事実が犯罪事実として追加
されて起訴相当議決がされており、これで議決無効の可能性が生じたようなのです。

 検審の大チョンボです。企業だったら、担当者はクビか左遷でしょうが、検審メ
ンバーは、やはり匿名であって、誰も責任をとらされません。「国民の責任におい
て」起訴したと豪語したのですから、氏名を明らかにするとともに、税金から支払
われた日当8000円くらいは返してほしいものです。

 メンバー11人の平均年齢が30.9歳と報道されましたが、男女比は5:6と
のこと(1回目の起訴時は、平均年齢34.8歳、男女比4:7のようです)。
 なぜこういう年齢構成、男女比率になったのか不思議でなりませんが、結果とし
て、20代の女性中心のイレブンに、小沢氏はやられてしまったわけです。女性に
不人気な男にとっては、いかんともしがたく、若い女性蔑視だと非難されそうです
が、「小沢さん、もうちょっと2枚目なら、受難を避けられたのに………」。

 日本で政治家を志すなら、いまから整形しておいたほうがよさそうですね。整形
外科医からも、「民主党さんなら、前原顔にしますか。自民党さんでは、小泉ジュ
ニア顔が人気ですが」とでも聞かれるのでしょうか。

 なお、お時間のある方は、次の田中氏の論評をご検討ください。相当怒っていま
すが、世間一般でいわれているのとは別の視点であり、民主主義とは何か、政治と
は何か、法律とは何か、マスコミの存在理由は何かを考えるのに、よい教材です。

 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2010/10/post_235.html#more


2010.10.08(金)【疲れる校正】(金子登志雄)

 2日・3日の土日は、『これが新増減資だ種類株式だ』の株式部分を取り出して
リニューアル化した新著『募集株式と種類株式の実務』の最後の校正に時間を使い
ました。前著に引き続いて、富田氏との共著です。

 240頁程度ですが、この校正は意外に疲れます。特に表が2頁に渡らないよう、
数行の加筆をしたり削除したりの作業に頭を使いました。

 あとは、出版社の校正担当者から、「この頁では『商法改正』や『持株比率』に
なっているが、別のところでは『改正商法』や『持分比率』になっている」とか、
「第〇〇条か、単なる〇〇条でよいか」などと指摘された部分や、自分で気づいた
部分(あれ、ここは『気付いた』になっていたなど)を修正します。

 ところで、みなさん(あれ、別のところでは『皆さん』になっていたなど)、公
用語では、動詞のときは、「申し込む」「払い込む」ですが、名詞では、「申込み」
「払込み」になります。

 そこで、ここは名詞だからと思い、「申込み期日」「払込み取扱い場所」などと
書いておりましたら、「申込期日」「払込取扱場所」ではないかとの指摘を受けて
しまいました。

 よくよくみると、会社法では、「申込み【の】期日」「払込み【の】取扱い【の】
場所」であって、「名詞+名詞」のときは、「漢字+漢字」で申込期日、払込取扱
場所とするか、「名詞+【の】+名詞」としなければならないようです。

 もちろん、「申込み期日」で間違いというわけではありませんが、こういう表現
に無頓着だと、「あの出版社は文章表現に鈍感だ」と出版のプロの間で評価されて
しまうようで、出版社も気になるようです。

 10月下旬あるいは11月初旬には、出版されます。「申込み【の】期限」はあ
りませんが、お楽しみに。


2010.10.07
(木)【運と努力】
(金子登志雄)

 小沢検審問題につき、会計事務所中心のML(メーリングリスト)では、政治家
だから疑わしいのは罰してよいのだなどという人権無視の無責任極まる意見も出る
など、さまざまな意見が飛び交っているのに、司法書士連合会のネット掲示板では、
いまだに「無言」が続いています。法律家にとっては関心の強い時事問題ですから、
この話題に飛び付くかと想像していましたが、実に不気味です。

 法律家だから、プロ中のプロが懸命に捜査し2度も不起訴にした事件を20歳代
中心の11人の素人が簡単に覆したことの「重苦しさ」がわかるのでしょうか。
 日本は法治国家なのだろうか、小沢氏及び小沢総理を期待していた多数の支持者
の心境はいかばかりか、日本の今後の政治経済に与える影響はどうか………、真面
目な法律家であれば、軽率な発言はできません。

 小沢氏の問題は、政治権力闘争の問題であって、「運が悪い」こととは別だと思
いますが、同じく検察に運命を翻弄された鈴木宗男さんの日記(10月3日付)に
「運」の字につき、コメントがありました。

 運とは、軍(いくさ)がシンニョウ(はしる)と書く。努力しないと闘っていな
いと、運は無い。私の人生観である。………とのことでした。

   http://www.muneo.gr.jp/html/diary201010.html(10月3日分)

 鈴木氏といい小沢氏といい、私より年長なのに、また、小沢氏は心臓病の持病を
持ち、鈴木氏は過去にガンが発見された体なのに、粘り強く闘い続けており、その
エネルギーには脱帽です。

 この「努力」ですが、一般には、「我慢、我慢………」に近い感覚で捉えられて
いますが、私は、「無理せず淡々と思うことを継続すること」だと理解しています。
つまり、鈴木氏も小沢氏も、淡々と多忙に逆境と闘っており、闘い自体が日常生活
になっているため、われら庶民と違って、挫折することもなく、闘い続けてこられ
たのだと思います。無理な努力であれば、継続も困難であり、挫折しかありません。
芸能評論家の梨本さんも、死の直前まで仕事をしており、挫折するヒマもなく他界
して行きました。

 小沢・鈴木は無理でも、せめて梨本さんには近づきたいものです。


2010.10.06(水)【未成熟社会】
(金子登志雄)

 大阪地検の証拠捏造問題で犯人隠避に問われた特捜部の佐賀前副部長が「検察の
ストリーには乗らない」とか、取調べの可視化を要求していることが報道されてい
ます。
 
 笑ってはいけませんね。いまは逆に取り調べられる側ですから、彼の権利を守ら
ねばなりません。そもそも、この情報の出所も、最高検のリークであり、情報操作
ですから、軽率に鵜呑みにしてはいけません。こういう情報リークで、「あいつは
悪人だ」という「風が吹かされ」(「風を吹かす」は検察用語です)、多くの犠牲
者が出てきたわけですから………。

 小沢問題の検察審査会11人の平均年齢は30.9歳だそうです。こんな若い層
では、「小沢=悪」という検察のリーク、それを誇張したマスコミ報道に影響され
ても仕方ないでしょう。

 もし、この平均年齢が通常の成人を基準とした50歳代であれば、おそらく、不
起訴相当の結果になったと思います。中高年になると、報道されている小沢氏の悪
行につき、「何だそんな程度でどこが悪いの。なぜ、小沢だけやり玉にあげるの」
などと思ってしまうわけですし、若い方から反論されても、説得できるだけの知識
も経験もある中高年が1人はいるでしょうから………。
 
 名古屋市の河村市長を応援し、わずか1カ月で市議会の解散請求の署名を46万
人も集めたのは、年金生活の中高年の熱心な協力があったからのようです。
 中高年、まさに私の世代ですが、年金生活で時間はたっぷりある、新聞やテレビ
の報道に影響されないだけの経験がある、………で、最近の世の中の劣化に、つい
黙っていられなくなるようです。

 菅内閣の閣僚の発言を聞いていても、あまりに稚拙・幼稚であって、一般企業で
いえば、課長・係長レベルじゃないかと、つい中高年は、自分が係長程度だったく
せに思ってしまいます。

 企業社会は成熟しているのに、政治も一般社会も大人になれていないのは、なぜ
でしょうか。


2010.10.05(火)【刑事司法の危機】
(金子登志雄)

 周知のとおり小沢氏は、大方の予想に反して、検察審査会から再度の起訴議決を
受けました。民主党の石井議員を最終ターゲットとした大阪地検特捜部の証拠捏造
事件が判明する前の9月14日(民主党代表選の日)の議決のようですが、情報漏
れがあって、代表選には影響がなかったのでしょうか。

 その議決要旨の最後に、「検察審査会の制度は、………嫌疑不十分として検察官
が起訴に躊躇した場合に、いわば国民の責任において、公正な刑事裁判の法廷で黒
白をつけようとする制度であると考えられる」とありました。

 体調が悪そうだから医者にかかってみよというのとは違い、怪しければ起訴して
裁判で白黒をつけよという論のようですから、たいへんな暴論です。

 怪しいことは世の中に大量にあります。長屋の傘張り浪人のはずの金子の預金通
帳に100万円の残高があるのも実に怪しいし、富田氏が有名予備校で2位の成績
だと言っているのも実に怪しいことです。2位なら平成8年に楽々合格したはずだ
という状況証拠さえあります。400番ですら合格すると証言する人もいます。

 検察官が黒の確信を抱いて公平な裁判で確定させるのが刑事裁判であるのに、黒
と思っていないのに裁判を起こせというのです。これでは起訴した検察官自身も自
信をもって裁判に臨めません。冤罪を大量生産する人権無視の暴論の行く先は、小
沢氏は議員辞職せよなどという論に発展し、政治的死刑に繋がるのです。小沢氏に
対する好き嫌いの問題ではありません。人権問題です。

 元検事で真の法律家と思う郷原氏が「誰が弁護人でも無罪」と断言する程度の事
件なのに、小沢総理の芽を潰してしまったのです。もし、裁判で無罪になったら、
検察審査会のメンバーは、政治的死刑の責任をとってくれるのでしょうか。
     
     http://twitter.com/nobuogohara

 議決内容をざっと読んだ限りは次の点に疑問を感じました。

1.もともとは西松建設からのダミー献金問題からはじまり、それが無理と分かる
 と水沢建設からの4億円の裏金問題となり、それも無理と分かって、検察の面子
 からか、政治資金収支報告書の虚偽記載という罰金刑程度の微罪で「別件」が問
 題とされた極めて【政治的事件】であることを不問としている。

2.該当する世田谷区の土地は【農地】であり平成16年10月に仮登記し、17
 年1月に本登記したため、所有権移転は17年度のはずだから、17年の収支報
 告書に記載するのが当然であり、これについても一切触れていない。

3.個人資金4億円の貸付を銀行借入に変更したことを不自然だというが、企業で
 はそれが普通である。【個人と企業は会計を別】にすべきだからである。そうで
 なければ、小沢氏は4億円を個人で使えないという被害を受ける。

4.トップが経理処理の内容を知らないはずはないというが、【社長が経理処理を
 経理部長に任せるのはごく自然】である。零細金子事務所でも、経理は身内に任
 せて、所長の金子は詳細を知らないでいるのに。

 検察審査会のメンバーは公表されていませんが、刑法どころか仮登記と本登記も
知らない素人、億単位のカネを動かしたこともない経営の素人で、政治家のカネの
管理の常識についても知らないことでしょう。それもたったの11人です。
 この11人によって、個人の人権も、日本の政治の行く末も左右されてしまう検
察審査会制度には強い疑問を感じざるを得ません。

 小沢支持者でなくても検察審査会が政争の道具に使われていると思っている国民
も多い現状です。小沢支持者(民主党の党員・サポーターでは4割)は、これまで
小沢氏を「政治犯」とみて応援してきたようですが、今後は「殉教者」とみるので
はないでしょうか。

 大阪地検の証拠捏造事件ともども、「検察制度の政治化」は、刑事「司法」の危
機であり、「司法」書士としては、残念でたまりません。


2010.10.04(月)【ブルペンエース??】
(富田太郎)

 9月30日の本欄で、金子先生が、

 「私が合格した年(平成8年)にも、当時のトップ予備校である日本司法学院で
1位の成績だった人が不合格でした。確か、姓のイニシャルが「T」の人だったと
記憶していますが、いまは何をしているのでしょうか。」

 と書かれていましたが、そのT氏、現在は立派に♪司法書士として活躍されてい
ます!

  ………………

 はい………イニシャルTとは、私、富田のことです………(号泣)。

 ただし、一部修正しますと、その年(平成8年)は、「1位の成績ではなく2位
で、翌年の合格した年が1位」でした。

 答案練習会では、他を寄せ付けず満点答案を連発するも、本試験では落ちる……
…、まさに『ブルペンエース』(注)でした。
 
(注)ブルペンエースとは、「野球の投手で、練習場(ブルペン)では、もの凄い
  球を投げるが、本番の試合では実力が発揮できず、めった打ちに」あうこと。

 いずれにせよ、物凄〜く「効率の悪い合格」のしかたです(涙)。400番台で
も合格している方もいたのですから………。

 また、その学校では、毎年「答案練習会 総合成績上位10名全員合格!」と広
告を出していたのですが、平成8年は私、富田のせいで、そのような広告を出せま
せんでした(涙)。

 さらに、合格の年の新人研修でも、

 「(前年好成績でありながら落ちた)あの富田という人間は、どんな奴だ?」と
有名人?と化していました………(涙)。

 ………あんまり自慢にはなりませんね。

 しかし、今となっては、これでよかったのではと思っています。

 実務についてからは、細やかな先例等を知っていたおかげで、あまり苦労せず仕
事をこなすことができました。
 また、その年、落ちたからこそ、翌年、偶然に「合併・組織再編の研修(講師: 
金子登志雄」を受講したり、東京司法書士会「判例研修室」に入室し、金子先生と
知り合い、その門下となることができたのですから♪ まさに落ちたのは『天命』
だったのです!

 受験生の皆さん!落ちたことを嘆くなかれ!
1年、2年遅くなっても、その分、実力をつけてください。逆に、(早く合格した
方より)実務では逆転できますよ!

 私、富田及び金子センセが断言します(きっぱり)!

  ………………
 
 でも、『ブルペンエース』より、やっぱり早く合格したいですよね………(汗)。


2010.10.01(金)【総会日に新設型再編の登記申請】
(金子登志雄)

 「大至急、分社型新設分割したい」などという依頼を受けることがありますが、
株主が同族ばかりだとか、100%子会社であるなどの事情があれば、「お任せ
ください」と自信を持って応えています。

 さて、皆さん、10月1日に分社型新設分割を株主総会で決議し、10月1日
に登記申請できるでしょうか。債権者保護手続や株主総会前の事前備置、反対株
主の買取請求期間などの問題は、すべてクリアしているとします。

 これにつき、商事法務1753号39頁の会社法立案担当者の解説、登記研究
715号の質疑応答7857、森・濱田松本法律事務所編『組織再編』221頁
の解説などは、反対株主の買取請求期間中に株主総会を開催しなければならない
ので、株主総会の決議の日の登記申請は認められないというのです。

 天下の商事法務・登記研究・大法律事務所がこぞってダメだというのですが、
この方々は、新設型再編の登記時期を規定している会社法922条・924条の
1項1号や925条をどう解釈するのでしょうか。

 そこには、「第804条第1項の株主総会の決議の日」や「第806条【反対
株主の株式買取請求】第3項の規定による通知又は同条第4項の公告をした日か
ら20日を経過した日」などの日の「いずれか遅い日」から2週間以内に設立の
登記をしなければならないとあるのです。

 これらの規定からは、株主総会の日が株式買取請求の行使期間満了日より遅い
日である場合が当然にあり得ることがわかります。

 このような反論をキンザイ「登記情報」10月号に書きました。登記研究の質
疑応答で取り上げて、上記の不可とする見解が普及しないようにしてほしいもの
です。
    http://store.kinzai.jp/magazine/AT/index.html


2010.09.30(木)【司法書士筆記試験発表】(金子登志雄)

 会友の山本さんのブログをみたら、昨日、司法書士試験の発表があったようです。
コメントがたっぷりでした(口述試験は落ちないので、これで決まりです)。

 http://plaza.rakuten.co.jp/yamamotokoji/diary/201009290000/#comment

 この試験、合格率は2%台ですが、実際は競争率3倍というのが私の感覚です。
すなわち、合格圏内にいるのが3000人で、そのうち1000名が試験内容など
の「運・不運」を理由に合格しますから、確率は3割です。

 言い換えると、合格圏内に入っても、運・不運で1回目に受かるか、3回目に受
かるかわからないということです。

 どんなに実力があっても、その年に合格するとは限りません。私が合格した年に
も、当時のトップ予備校である日本司法学院で1位の成績だった人が不合格でした。
確か、姓のイニシャルが「T」の人だったと記憶していますが、いまは何をしてい
るのでしょうか。

 逆に、試験向きの頭脳の人は、実力がなくても、運が味方して、合格に滑り込む
こともあるのがこの試験です。その代わり、実務についてから、相当苦労しますか
ら、トータルの運・不運はみな一緒でしょう。

 不合格だった受験生の皆さん、とにかく合格圏内に入る実力を身につけてくださ
い。その実力さえ備わっていれば、3回の挑戦は、働きながらでも大丈夫です。あ
せらず着実に前に進みましょう。


2010.09.29
(水)【ビジネス法務11月号】
(金子登志雄)

 中央経済社刊行の雑誌「ビジネス法務」で先月号に続き、拙稿を掲載しています。
今月号(11月号)では、「新株式対価の株式交換と債権者保護手続」をテーマに
しました。

 株式交換による資本金等の計上額について規定している会社計算規則39条によ
りますと、対価が新株式で債権者保護手続をとっている場合は、受入れ株式の価額
(いわば現物出資額)を親会社の資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に
配分できるが、債権者保護手続をとっていない場合には、資本金と資本準備金にし
か計上できないとあります。

 要するに、株式交換のような「株式」という単品を承継させる場合には、通常の
現物出資の増資と同様に、資本金と資本準備金にしか計上できないが、債権者保護
手続をしていれば、同時に減資が行われた場合と同様に、その他資本剰余金にも計
上できるという、極めて当然の規定です。

 この債権者保護手続をとれる場合は、会社法799条1項で限定されており、対
価の一部にでも株式以外が加わっている場合と、対価の全部が株式でも新株予約権
付社債を承継した場合です。

 にもかかわらず、会社法の大御所・江頭教授の教科書には、対価の全部が新株式
でも、とにかく債権者保護手続をすれば、その他資本剰余金に計上してよいという
のです。これを受けたのか、某上場会社がこれを実行してしまいました。

 そこで、「その解釈はおかしい、条文に反する」と大御所に噛みついた内容を投
稿したわけです。こういう権威に逆らうのは勇気が要りますが………と自慢したい
ところですが、実はお上(会社法立案担当者)の意見は私と同じです。
 
 よろしければ、書店でお手にとってみてください。


2010.09.28
(火)【定時株主総会無事終了】
(金子登志雄)

 昨日は、私が平成3年の創業以来、役員を務めているアクモス株式会社の定時株
主総会でした(6月決算です)。現在は非常勤だとはいえ、この日ばかりは、私も
商売道具の携帯電話やノートPCの電源を切り、司法書士であることを完全に封印
します。

 株主総数は約3800人、現実に出席した株主(議決権行使書を除く)は約1%
というところでしょうか。平日なのに、ありがたいことです。

 この会社、赤字だったのに、将来性を買われて平成8年12月に株式公開いたし
ました。その当時から、ベンチャー企業を育てる株式公開制度がはじまり、そこに
うまく乗れたわけです。

 年商も確か3億円程度でした。従業員数も20名弱で、その辺にある町工場以下
の規模でした。

 公開後も事業が順調に発展したわけではありません。創業時の事業と現在の事業
は全く違います。経営戦略担当の公認会計士の社長が優秀だったため、M&Aや株
式交換の技術を駆使して、何とか企業を維持してまいりました。いまでは、売上も
従業員数も10倍以上になり、やっと中堅どころの会社になれました。

 この会社の管理部長として、株主総会を仕切ったり、日本で最初に株式交換を実
行し、その契約書を作ってきたりしたことが、いまの司法書士活動に非常に役立っ
ています。第三者の司法書士という立場ではなく、当事者として企業活動の前線で
仕事をしてきたからです。脱サラ司法書士が会社法務にしぶといのは、きっとこう
いう経験があるからでしょう。

 総会が無事に終わりましたので、また今日から、腕はよさそうだが稼ぎは悪い長
屋の傘張り浪人の生活(司法書士)に戻りましょう。


2010.09.27(月)【一定割合と持株比率】
(金子登志雄)

 土日には、我ながら驚きの発見をいたしました。

 某社の株主構成は、次だったとします。

  甲98株、乙96株、丙92株、丁14株(4名、計300株)

 さて、一番少ない株主の持株数が14株なので、14株に1株の新株の無償割当
てをすることにいたしました。

  甲…………98/14= 7        →7株
  乙…………96/14= 6.85・・・・・→6株
  丙…………92/14= 6.57・・・・・→6株
  丁…………14/14= 1        →1株
 合計………300/14=21.42・・・・→21株

 合計の端数である0.42は切り捨てられて21株となり、内訳は、甲7株、乙
6株、丙6株、丁1株、残りの1株は裁判所経由で任意売却処分され、端数の生じ
た乙と丙に現金が交付されます(会社法234条)。

 続いて、株主割当増資で21株を発行することにしました。持株比率に応じて、
個々の株主の申し込める株数が異なってきます。

  甲………21×(98/300)=6.86 →6株(端数は個別切捨て)
  乙………21×(96/300)=6.72 →6株(端数は個別切捨て)
  丙………21×(92/300)=6.44 →6株(端数は個別切捨て)
  丁………21×(14/300)=0.98 →0株(端数は個別切捨て)

 ということで、現実には、18株の発行となります。

 端数切捨ての差はともかく、甲と丁への割り当てる株数が無償割当ての場合と相
違します。おかしいと思いませんか。

 この原因は、無償割当ては株式併合や株式分割と同様に、「一定割合」で計算す
るのに対し、株主割当増資は「持株比率に応じて」計算するためかと思いましたが、
さらによく考えると、無償割当てでは、1/14(0.0714…)を掛けている
のに、有償割当てでは、21/300(0.07)を掛けているためですね。
 
 かといって、募集株式の数を21株ではなく、「300/14」株と分数あるい
は小数で表すのも違和感があります。

 どこから出発するかという計算の仕方で、こうも変わるということで、意外な盲
点でした。


2010.09.24
(金)【エリート検事の不祥事】(金子登志雄)

 村木裁判の前田恒彦検事(捜査検事)が証拠捏造の疑いで逮捕されましたが、ま
だ43歳。事実だとしたら、人生まだ先があるのに、もったいないことです。出世
に影響しても、そこまで裁判での勝ちにこだわる必要はなかったのに………。

 今後はぜひ「私だけではない、特捜検事の違法な取調べ」という告発本でも書い
て贖罪してほしいものです。小沢秘書の取調べなどの実態も知りたいものです。

 検事や弁護士の不祥事が多いのは、最難関の国家試験である司法試験を勝ち抜い
てきたというエリート意識が強く、周囲からちやほやされ「自分がこの世で一番偉
い」「オレは何をしても捕まることはない」と思い込んでしまうところにも原因の
1つがありそうです。

 東大出身で弁護士の仙谷由人官房長官は、すっかり黒幕気分で上司の菅さんより
も偉そうにしており、すべての人を呼び捨てにするだけでなく、私大出身で司法試
験に合格しなかった小沢氏を馬鹿にし、「オレ様」という態度だと、週刊誌などで、
からかわれています。

 検事も特捜部(自ら捜査に着手できる検事のエリート集団)になると、相当高慢
ちきになるようで、森総理誕生に関与した5人組の一人である村上正邦氏のKSD
事件での取調べでは、「あんな馬鹿な総理を作ってお前は責任を感じないのか」と
までいわれたという有名な実話があります。もっとも、いわれた村上氏も「馬鹿な
総理」という表現には、いたく納得したという笑い話もありますが………。

 私のような、2流の法律家扱いされる司法書士では、高慢ちきになりようがあり
ませんが、幸いにも、司法書士試験は合格率2%程度の難関試験ですから、卑屈に
なることもありません。

 これが一番幸せですね。一番でないから風当たりは少ないし、分からない仕事が
来たら「それは弁護士さんに聞いてください」といって逃げられます。

 若い皆さん、こうやって自分を慰める老人のたわ言には耳を貸さず、一番を目指
しましょう。「自分がこの世で一番偉い」、こう思えたら、きっと最高ですよ。


2010.09.22(水)【司法書士の知名度】
(金子登志雄)

 同窓会では「東京で行政書士しているんだって?」とよく聞かれました。「いや、
行政書士でなく司法書士です」と答えても、怪訝な顔をされるだけでした。司法書
士が何たるかを知らないからです。

 全国に1万8000人しかいないわけですから、知名度が低いのは当然………、
と書こうと思って、確認のため日本司法書士連合会のHPを開きましたら、今年の
8月1日現在で、2万人の大台を超えていました。徐々に増えているようです。

  http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/shiho_shoshi_list.php

 ついでに行政書士を調べましたら、思っているほど多くなく、4万人でした。こ
ちらは、廃業者が増えているようです。一番の顧客である建設業者が小泉改革以来、
減少したためでしょうか。


  http://www.gyosei.or.jp/unit/kaiin-list.html

 2万人と4万人の差しかないのに、司法書士に限り、こんなに知名度が低い最大
の理由は、仕事内容が地味でマスコミに取り上げられることが少ないからでしょう。

 「法律学者や弁護士に対抗して一般向けの出版をして『司法書士ここにあり!』
と世間にアピールしよう」とESGを立ち上げて8年経過しましたが、会社法分野
では、司法書士の存在感を示すことに、それなりに貢献できたと思っています。
 
 いまでは、各地の司法書士がそれぞれの専門分野につき、ブログや出版で、司法
書士の存在感を示しています。

 あとは、一般の方に司法書士を知らしめることですが、知名度が上がれば世間か
ら叩かれる機会も増えますので、顧客やプロの世界で存在感を示せれば、十分かも
しれません。「出る杭は打たれる」ですから、誰かさんがいわれるように「しばら
く静かにして」いるのも、よいかもしれません。

 (注)昨日ご紹介した妙義山は、本頁、上部の写真の山です。



2010.09.21(火)【同窓会】(群馬・金子登志雄)

 連休は、群馬県の高崎市内で中学生時代の同窓会がありましたので、帰省のつい
でに出席してきました。

 卒業した中学校自体は、妙義山と浅間山がみえる風光明媚な郡部地区(現在は安
中市に統合)にあり、全員の名前を覚えられる1学年150人程度でしたから、同
窓生のまとまりもよく、50人弱が集まりました。すごい出席率です。

 念のため、本欄で、田舎度(?)を競っている島根の渡部さん!、私はこの地区
に小学校6年生のときに転校したのであり、熊や猿の出るド田舎で育ったというの
はウソではありませんからね。

 還暦過ぎたとはいえ、こういう会に出席できるだけあって、みな元気そのもので
した。中には、40代にしかみえない男女もおり、みなから、うらやましがられて
いました。

 私の場合も、この60年間、いつでもどこでも(授業中でも会議中でも)居眠り
ばかりしてきましたから、目覚めていた時間で計算すれば、まだ40代なのですが、
白髪まじりと、2年ほど前からはじまった自慢の「出腹」度合いから40代にはみ
えないようで、うらやましがられる対象にはなれませんでした。

 不思議なもので、中学校時代には大人しかった人も、大人になると変わるようで、
カラオケなどでは人一倍活躍していました。私は全く逆で、中学校では県大会にも
出るほどの運動選手で、生徒会長もしたのですが、大人になってからは、すっかり
大人しくなり、スポーツは健康に悪いと、外出もしなくなりました。カラオケなど、
とんでもないことです。何1つ、歌えません。

 人生は、バランスをとるのでしょうか。であれば、わが人生は、不運と敗北の連
続の60年間でしたから、今後は、きっとよいことばかりがわが身に起こりますね。


2010.09.17(金)【清算結了と税金】
(金子登志雄)

 清算結了のとき、財産や負債が残っていれば、結了できません。最後のバランス
シートは、資産も負債もゼロでなければなりません。

 では、未払いの法人住民税などがあったら結了できないのかと、よく話題になり
ましたが、調べましたら、会社法施行規則には、規定が設けられていました。

--------------------------------------------------------------------------
第150条第1項(要約)
 法第507条第1項の規定により作成すべき決算報告は、次に掲げる事項を内容
とするものでなければならない。
 1 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
 2 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
 3 残余財産の額(★支払税額がある場合には、その税額及び当該税額を控除し
   た後の財産の額)
 4 1株当たりの分配額
--------------------------------------------------------------------------

 なるほどです。未払い税額があっても、それを控除したものが残余財産額ですか
ら、「最後のバランスシートは、資産も負債もゼロでなければなりません」を満た
します。

 念のため、事例豊富な東京法務局に電話で「未払い税金があるのだが、清算結了
登記に支障はないか」と問い合せましたら、「税金なら問題ない」との返事をいた
だきました。

 ところが、今度は仲間内から、税金の還付金があるのだが、還付されるまで清算
できないのかとの質問を受けました。金額が確定しているならそのとおりでしょう
が、専門的にいうと、何税の還付金か、会社が解散後清算結了までに生じたものか
など、いろいろあるらしいですね。ここまでくると、司法書士には、お手上げです。


2010.09.16(木)【空気の選挙】(金子登志雄)

 民主党のホームページに選挙区別の党員・サポーター投票結果が載っていました。
皆様の選挙区は、菅・小沢の比率はいかがですか。わが事務所のある東京1区では、
583:547で菅さん勝利でしたが、51.5%にとどまりました。

  http://www.dpj.or.jp/news/files/100914touin-touhyou.pdf

 小沢さんの地元の岩手と、普天間問題で沖縄も小沢支持というのは理解できますが、
石川・富山で小沢氏全勝というのには、ちょっとびっくりです。

 世間一般の常識からすれば、刑事被告人になるかもしれない金権体質の古い政治家
といわれる小沢氏がポイントを獲得すること自体が信じがたいことですが、これらの
地域では、マスコミの報道が偏っているとみる人が多いのでしょうか。

 日本人は「空気」で動くとよくいわれます。自分の意見や信念ではなく、周囲や環
境の空気に同調して動くという意味です。そうしないとKYと馬鹿にされ、変人扱い
されるのが関の山です。この空気を実に巧みに利用したのが小泉さんでした。批判者
に対して抵抗勢力というレッテルを張り、勧善懲悪の小泉劇場を作りました。

 この空気は1つではなく、岩手には岩手の空気があり、ネット社会にはネット社会
の空気があります。国会にも国会の空気があります。国会議員票では小沢有利という
下馬評だったのに、最後の段階まで日和見を決め込んでいた中間派が、選挙区の空気
(小沢を支持したら次の選挙が危ない)や菅さん優勢の空気を素早く察知し、皆で一
斉に勝ち馬に乗ったのも極めて日本人らしい行動様式でした。

 逆に言うと、「小沢は信念に基づき行動するクリーンな政治家」という「空気」が
蔓延しない限り、小沢総理の目は永久にないともいえそうですが、今回の代表選は、
日本の政治文化自体がリセットされるかもしれないという意味で興味のつきない選挙
でした。

 結果は、やはり、マスコミ報道で作られた空気には、剛腕の小沢さんも勝てなかっ
たわけです。かといって、あの小沢さんがテレビのバラエティ番組やクイズ番組に登
場して、愛想を振りまき人気取りに励むのも似合いません。悪役はエネルギーの消耗
が大きく、たいへんだと思いますが、負けたとはいえ、最後まで私の嫌いなマスコミ
の敵役に徹して、今後も頑張ってほしいものです。


2010.09.15(水)【民主党代表選結果】(金子登志雄)

 全く結果を読めなかった民主党代表選が終わりました。結果は、周知のとおり、

             菅:小沢(721:491)
   国会議員      5:5 (412:400)
   地方議員      6:4 ( 60: 40)
   党員・サポーター  5:1 (249: 51)

で、菅さんの圧勝でした。

 しかし、菅さんも喜べません。

 第1に、党員・サポーター票だけみると、小沢氏がいかにも不人気のようですが、
これは300の選挙区で「小選挙区制」が採用されているためです。例えば、東京
1区で、100票:99票でも、1ポイント全部が菅さんになります。そういう意
味では、あの激しいマスコミの小沢バッシングや菅さん側からの下ネタを含むネガ
ティブ・キャンペーンの大逆風の中で、6つの選挙区中の1つの選挙区で小沢票が
菅票を上回ったわけで、予想以上に小沢氏側が善戦したともいえそうです。

 第2に、支持内容をみると、「3ヶ月で総理を変えるのはよくない」が菅支持の
トップの理由のようであり、「菅さんしかいない」という積極的な支持ではないよ
うですから、菅さんも積極的支持の多い小沢票を無視できないでしょう。

 第3に、菅さんが勝利した途端に、円が急騰したとおり、菅さんの経済音痴ぶり
等々が今度の代表選でますます世界中に知れ渡ってしまいました。
 また、菅さん周囲の国会議員等が小沢氏が何の理由で検察審査会から起訴相当と
されたのか(単なる帳簿の記載時期の問題であり、ゼネコンからカネをもらったと
いう嫌疑ではない)も知らずに、小沢氏のカネ問題を批判していることが小沢氏側
に知れ渡ってしまい、小沢支持者との間に修復困難な亀裂が生じてしまいました。

 その他、人事の手形を切り過ぎたため、挙党体制を作りにくくなったなどがあり
ますが、反小沢のマスコミがこれまでは菅支持に回っていましたが、今後は、菅批
判に来ることが明らかです。きっと、内閣支持率調査で叩いてくるでしょう。

 政治及び経済の混乱は、さらに続きますが、本欄で何度もいうとおり、マスコミ
は、もう政治と経済のことで横やりを入れないでくれというだけです。政治家が米
国からの円高圧力や普天間問題で頑張ろうにも、いつも分け知り顔で世論を煽って
妨害するのがこの人達ですから。

(追記)
 党員・サポーター票は菅代表が137,998票、小沢前幹事長が90,194
票の3:2とのことです。


2010.09.14(火)【愛煙家は、かく語りき】(東京・富田太郎)

 まもなく10月1日・・・そうです!タバコの値上げの日です。
 ESGの中では金子御大と並ぶ、『愛煙家』の私にとっては辛いことです。

 値段は上がる・・・しかも『タバコ』は世間一般から諸悪の根源とみなされる始
末です。街を歩いていても、仕事の商談中でも、とても『タバコ』など吸える雰囲
気ではありません。

 話は変わって、先日『ケ小平』について書かれた書物を読みました。ケ小平は、
『パンダ』という中国タバコを愛用し、「ヘービースモーカー」として有名でした。

 確かに、ケ小平の写真を見ると、『タバコ』を手にしている写真が数多く残って
います。また、外交交渉の際は、開口一番、タバコの話題をもちかけ、(タバコを
吸える雰囲気に持込み)、おもむろに吸っていたようです。

 ジョージ・ブッシュ氏(父の方・対中国特命全権公使時代)との会談の際、ケ小
平は、妻の卓琳が体調を崩して出席できなかったことを詫び、

「(妻は)私と違って『タバコ』を全然吸わないので、健康状態がよくないのです」

などと強引に説明し、その後(ブッシュの了解も得ず)タバコをプカプカ吸い始め
ています・・・(汗)。

 ここまで来ると、なんでもタバコを吸う口実になってしまいますね・・・。
でも、私には分かりますよ!ケ小平さん!
 なんでもいいから、とにかく吸いたいのですよね♪分かります♪分かります♪

 私も、先日、街でも「歩きタバコ」をしたいので♪、ニコチンなしの『電子タバ
コ』なるものを購入しました(結構、高価でした)。
 この『電子タバコ』、水蒸気の煙が出て、本物そっくり、されど無害です♪♪

 これで問題解決♪と思いきや・・・・、街で「歩き電子タバコ」をしていると、
再三再四、注意されるのです・・・(汗)。
 「これは、『電子タバコ』と言って、健康には害がなく〜」と毎回説明していま
したが、もう面倒です・・・・。

 結局、この『電子タバコ』・・・・、駅のそばの喫煙所で吸っています。
え???  意味がないじゃないか!って????
 そうですよね・・・。でも、高かったし使わないのも、もったいないし・・・。
・・・・・・・・・・・・・。

 周りが本物の『タバコ』を吸っている中、喫煙所で『電子タバコ』を吸っている
阿呆は、私ぐらいでしょうね・・・・(涙)。


2010.09.13(月)【男は「女」次第】(金子登志雄)

 郵便不正事件の村木厚子さんの裁判で無罪判決がでました。164日間の拘留に
耐えたのですから、りっぱです。改めて女性は強いなと思いました。

 菅伸子首相夫人が夫を助けるために、支持集めの電話攻勢をかけているようです。
出しゃばりなどと批判はありますが、男は、妻に背中を押されて頑張るものです。

 鈴木宗男議員の有罪が確定しました。日本の司法制度では、法廷での証言よりも、
密室で行われた検事の前での供述調書(検面調書)が証拠として大きな比重を占め
るようですから、こうなることは予測されました。

 それでもブログを更新する逞しさです(8日以降をご覧ください)。
   http://www.muneo.gr.jp/html/diary201009.html

 彼の著書を何冊か読みましたが、拘留中に精神的に疲労困憊し、検事の甘言に妥
協しようか(検事の誘導に従いウソの自白をして釈放されようか)と思い、弁護士
に相談したら、弁護士経由で、奥様から「最後まで頑張れ」という強いメッセージ
をもらい、頑張れたようです。お嬢様からの励ましも、力になったようです。

 こんなとき、奥様やお嬢様に泣かれてしまったら男はイチコロです。奥様らの力
強い支援があればこそ、男は能力を発揮できます。

 報道で袋叩きされている小沢さんの奥様も心の底から亭主を信じているようです。
「あの笑顔がかわいい」とのろけるようです。プロ野球の野村前監督も落合現監督
も奥様からの影響が強いようですし、龍馬伝では、お姉さんの影響が強いようです。
 
 本欄をみている独身の男性のみなさん、伴侶を選ぶ際には美人かどうかよりも、
こういう男性に力をくれる女性を探しましょう。

 え、私ですか。弱い母に弱い妻です。だから、いまだに、大物になれず、しがな
い司法書士をほそぼそとやっております。


2010.09.10(金)【取締役社長は代表取締役社長より重い】(金子登志雄)

 先般の鹿児島における会社法の講義で、古くからある公開会社に株式譲渡制限を
つける質問を受けましたので、

「その会社は昭和30年代の設立でしょう。株式譲渡制限が定められたのは、昭和
41年の商法改正ですから………」と答えたり、

「旧商法ではこうでしたが、会社法では………」と、何度か発言しました。

 あとで、「若い受講生は、旧商法といっても、通じましたかね」といわれてしま
いました。

 それはそうですね。もう、会社法施行から4年以上、経過しました。

 しかし、会社法も商法会社編の延長ですから、旧商法のことも知る必要がありま
す。私自身、昭和41年の商法改正のことなど知りません(当時18歳)。

 商法の最初の大改正は、昭和25年ですが、これだって当然に知りません(当時
2歳)。実務に従事しながら、なぜ、こうなったかを勉強していて、昭和25年の
大改正(ここから額面500円になった)や昭和56年の大改正(ここから額面5
万円になり、単位株制度と端株制度ができた)を知る必要に迫られ、覚えていった
だけです。

 この結果、会社法の解釈でも、立体的にモノをみることができるようになりまし
た。

 たとえば、昭和25年大改正で、取締役会と代表取締役制度ができたため、それ
以前は、代表取締役が存在せず、取締役は各自代表権をもっていました。会社法は、
あたかも昭和25年以前に回帰したかのようなところがあります。

 取締役の中の業務執行従事者のトップを「社長」ということが多かったので、昭
和25年以前から存在する会社にあっては、定款でトップのことを「取締役社長」
と定め、「代表取締役社長」とはいいません。

 彼らからすると、「代表取締役社長」は青二才の会社であり、「取締役社長」の
ほうが伝統の重みのある価値ある呼称なんです。東証1部上場会社が、この口です。
大手銀行のトップも「取締役頭取」であって、「代表取締役頭取」ではありません。


2010.09.09(木)【よい文章の3か条とは?】(富田太郎)

 皆さん!「下読み」という「お仕事」をご存知でしょうか?

 先日、仲間の飲み会で、偶然、「文学賞の下読み」を経験された方と知り合い
ました。

 世の中には、大きな文学賞がいくつかありますが、その選考委員は、超一流の
作家であることが大半です。しかし、投稿作品の全てを選考委員が読むわけでは
ありません。 

 通常、「一次選考」を担当し、問題外の作品を落とす仕事をしているのが、
『下読みさん』と言われる方々です。この『下読みさん』は、主にフリーの編集
者・評論家・新人作家の方々が、アルバイト?お手伝いとして行うことが多いよ
うです。

 えっ??じゃぁ?優秀な作品が、本来の選考委員の目に触れることなく、落と
されているのではないかって???

 いえ、彼らの仕事は、優秀な作品を選ぶことではなく、最低限のレベルに達し
ていない作品を落とすことだそうです

 その『下読みさん』曰く、「落とされる作品・悪い文章は共通点があります」

@ 既成作品の物まね
(↑仲間内の同人雑誌でやってください。)

A 読み手を意識せず、自己陶酔型文章
(↑最近は、なぜか、作者自身が登場人物に出てきたり、作者のウンチクが
  延々と書かれているものが多いそうです・・・・汗。)

B 「テーマに反する」もの
(↑ストーリーが、「文学賞のテーマ」から明らかに逸脱したもの。例えば、
  「TVゲームの魔法物のRPG」のようなもの。)

 なるほど〜・・・・。特にAの「読み手を意識して書く」というのは「文章の
書き手の最低限のルール」ではないでしょうか(きっぱり)!

 私は以前、5年ほど専門雑誌に連載をしていました。この雑誌、毎号、毎号、
「読者の人気投票」なるものがあり、読み手を意識しない文章を書くと、必ず、
ランク外になりました。

 この苦労の中から、私は必ず「読み手」を意識し〜、
そして、よい文章とは●△■で〜
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 えっ??「お前(→富田)は、いつも本徒然の趣旨に反し、法律に関係ないこ
とばかりを書いている」って??
  ・・・・・・・・・

 確かに、よくよく考えると、私は、いつも上記Bに該当していますね・・・
(つくづく)。
  ・・・・・・・・・・・

 偉そうに、本当にすいませんでした・・・・・(涙)。


2010.09.08(水)【風向きの変化(民主党代表選)】(金子登志雄)

 次期総理を決めるのも同様の民主党代表選は、国民の1人として無関心ではいら
れませんが、4日は東京の新宿、5日は大阪の梅田で、菅・小沢候補一緒の立会演
説会があったようです。

 そこで、期せずして小沢コールが沸き起こったとのことです。
   
   http://www.youtube.com/watch?v=RxZjCT4Vsms

 あたかも世間の白い目にじっと耐えてきた隠れキリシタン(小沢ファン)が、最
後の聖戦に立ちあがったのか、あるいは、菅氏の変節に対する怒りが小沢支持に向
いたのかはっきりしませんが、何か、少々、風向きに変化が生じてきたようです。

 その理由としては、

 1.「政治とカネ」問題に国民は、もう辟易しはじめた。とくに、政治に関心の
  強い国民(民主党員やサポーター)は、いわゆる小沢問題を既得権力との権力
  闘争による「冤罪」と受けとめているので、小沢氏の悲壮感をもった覚悟の立
  候補の心意気に感じ、ここで応援しないと………という心境になった。

 2.無口で愛想のないと思われていた小沢氏が頻繁にテレビ出演をはじめ、にこ
  やかに雄弁に政策を語り、いやな質問にも、冷静に答え、好感度が増した。

 3.日本経済の再生をどうする、公務員改革をどうする、普天間をどうするとい
  った問題に対して、副作用のある劇薬かもしれないが小沢氏の剛腕に期待する
  層が増えた。
  
 4.これに対して、菅氏側は、横綱の立場でありながら、小沢氏へのネガキャン
  ばかりして具体的な政策を語らないので、評価が急に下がり始めてきた。
   
 5.菅氏側も政権をとって目立つ立場になると、さまざまな醜聞が出てきて、ク
  リーン・イメージが薄まった。市川房江を出すのも逆効果だった。 

 6.菅政権になってから、「勝てば菅軍」で、人事や資金面で露骨な小沢グルー
  プへの締め付けがなされ、挙党体制が崩れ、小沢・鳩山グループに民主党破滅
  の危機感が生じた。菅軍の裏の総大将である仙谷氏への反感が強まった。

 といったところでしょうか。

 菅氏側の明らかな稚拙行動による戦略ミスだと思います。正月には小沢邸を年賀
の挨拶に訪問した人が同じ人物に品のない攻撃をしては、大いにまずいでしょう。

 草の根市民のネットや一部の週刊誌では、小沢氏圧勝という見方ですが、小沢総
理では電波利権などの既得権益を潰されると怖がっている大手マスコミは、依然と
して菅氏側を応援する報道をしていますから、最後の結果は、予測つきません。

 門外漢としては、傍観するしかありませんが、学校のクラス委員長の選挙ではな
いのですから、円高対策、消費税対策、普天間問題などの政策で戦い、それを理由
に投票してほしいものだと民主党員やサポーターに期待したいものです。


2010.09.07(火)【戸籍の宿命】(島根・根来川弘充)

 最近戸籍で生存不明の100歳以上の方がたくさんいるとマスコミで取り上げら
れています。
 
 しかし、職業がら相続登記の依頼で、他人の戸籍を見ることが多い私としては、
稀ですが、このような戸籍に出会ったことがあり、「何をいまさら取り立てて騒ぐ
ことがあるだろう?」と疑問に思っています。

 そこで、改めて戸籍を考えてみると、

 もともと法によって戸籍が出来たのは、明治時代からで間違いないはずです。そ
して、それは江戸時代より寺社が作成していたものが元になっていると聞いていま
す。

 江戸時代の戸籍とは、身分制社会の封建制度を支える一つの手段だったのでしょ
う。明治時代になって、身分制は残りますが天皇主権の法治国家になりました。そ
して、戦後、国民主権になり、身分制はなくなりました。

 つまり、戸籍制度とは、封建社会と市民社会をまたいできた制度であり、時代の
矛盾を抱えることが宿命づけられた制度ではないかと思うのです。

 先の「100歳以上、古くは江戸時代の人がまだ生きている」とマスコミは面白
がるかもしれません。

 しかし、江戸時代から明治時代へとは劇的に変わる時期だったわけですから、そ
のようなことがあっても何等不思議ではありません。
(明治に制定された民法は、その点も当然予想して、
『不在者財産管理人制度』や『失踪宣告制度』があったのだと思います。)

 今般問題になってきている夫婦別姓の問題、あるいは、代理母等不妊治療で問題
が出てきている親子の問題、これからも戸籍制度は時代の矛盾を抱えてきっと強く
生きていくのでしょう。


2010.09.06(月)【分配可能額と欠損】(金子登志雄)

 土曜日は、鹿児島県司法書士会で会社の計算を講義してまいりました。みなさん、
お世話になりました。また、日曜日に龍馬とお龍の新婚旅行先などを観光案内して
くださいましたK先生、S先生、いつもながら、ありがとうございました。

 講義では、分配可能額、欠損、損失の差を中心に話してまいりました。

 さて、次の株主資本のA社があります。分配可能額はいくらでしょうか。言い換
えれば、何円まで配当に回せるでしょうか。

(A社)
    資本金     1,000,000(千円)
    資本準備金     720,835
    利益準備金     100,300
    その他利益剰余金   45,569
    自己株式     ▲199,767

 A社は、4556万円もあると考えて(その他利益剰余金)、2500万円の配
当を定時株主総会で決議し、実施いたしました。

 しかし、1か月過ぎに、間違えましたと発表しています。
 この分配可能額とは配当だけでなく自己株式取得原資でもありますから、自己株
式も計算に含めなければならないのです。

 単純計算では、

 分配可能額=その他資本剰余金+その他利益剰余金−自己株式簿価

 という式が成り立ち、

      =0       +45,569  −199,767
      =▲154,198

 となります。

 このように、分配可能額が負になると、欠損といいます(損失は、その他利益剰
余金が負のこと)。

 欠損の場合は、配当ができません。

 A社は上場会社でした。ちょっとお粗末でした。もし、本欄をみておりましたら、
次回から、ぜひ当ESGメンバーにご相談くださいといいたくなる事案でした。


2010.09.03(金)【設定していないのに設定登記?】(金子登志雄)

 取締役会のある株式会社が株主総会決議で解散すると、事業を廃止したわけです
から、不要となった取締役や取締役会設置会社の登記などが法務局の職権で抹消さ
れます(商業登記規則72条)。

 しかし、「取締役会を置く」という定款の定めまでが抹消されたとみなされるわ
けではありません。この定款規定は、冬眠状態になるだけです(規定は存在しても
効力がないため、一般に「空振り規定」と呼ばれます)。

 解散しても清算結了するまでは、株主総会の特別決議で事業会社に復活できます。
これは「会社の継続」といいます(会社法473条)。

 その際には、取締役を改めて選任しなければなりませんが、取締役会設置会社に
ついては、すでに定款に定めてありますので、改めて定める必要がありません。

 では、職権抹消されていた取締役会設置会社の登記は、どうなるのでしょうか。

 昨日、電話で質問されましたので、調べましたら、法務省のHPに、次のような
書式例がありました。

    http://www.moj.go.jp/content/000011611.pdf

 当然のごとく、上記の書式例でも、株主総会決議で定款変更を決議していません。
にもかかわらず、登記申請内容に、「取締役会設置会社/平成〇年〇月〇日設定」
とあります。

 設定なんかしていないのに設定登記とは、どういうわけでしょうか。
 冬眠から目覚めただけですから、「設定」という表現にも馴染めません。また、
頼んでもいないのに当局が職権で抹消したのですから、職権で回復してくれるのが
筋ではないでしょうか。

 無料でしたら、われわれ司法書士も、いくらでも協力を惜しみませんが、この取
締役会の設定登記で、登録免許税が3万円も余計にかかるのです。最近は会務多忙
で本欄にご無沙汰のW先生の数日分の稼ぎにも匹敵する金額になるそうです。
 
 この結果、ごく普通の中小企業が会社を継続すると、全部で7万円の登録免許税
となります。継続3万、役員1万、この登記3万です(商法時代は、取締役会設置
の登記は不要でしたから4万円でした)。

 ちょっと、暴利すぎるように思いますが、過払い問題専門の司法書士さん、お国
相手に何とかなりませんでしょうか。私も、この仕事を受けたら、自慢の桜吹雪を
出して、啖呵の1つも切るつもりです。しまった! 昨日の本欄で、桜吹雪を消し
てしまった。


2010.09.02(木)【金さんの桜吹雪】(金子登志雄)

 ときどき、メールで「金さん」と呼ばれます。つい、「キンさん」と呼ばれたよ
うな錯覚を覚えます。

 というのは、私の背中には、みごとな桜吹雪が舞っているからです。同居の家族
からは、「老人性のシミでしょ。もう歳よ」といわれるのですが、30歳代の若い
頃からのものですから、私は自然にできたホクロの芸術と固く信じています。

 ところが、還暦も過ぎると、誰も芸術品と評価してくれなくなったため、何かの
ついでに医者にかかった折、「先生、この桜吹雪、何とかなりませんか」と聞いて
みるのですが、病気ではないため、全く相手をしてくれません。

 あるとき、皮膚科で液体窒素なるものでシミやほくろを殺してはがす方法を採用
した人から、その方法を勧められましたので、さっそく近所の専門医に行ってみま
した。一種の美容整形外科みたいなところです。

 感激です。はじめて真剣に応対してもらえました。いままでの医者と違いました。
「こりゃ、みごとだ。ただし、こんなに量が多いと、液体窒素では無理だ。それに
跡が残る。レーザーで行こう」ということだったので、やってもらいました。

 レーザーというのは、てっきりレーザーのメスがあり、グサっとやられるのかと
思っておりましたら(周りから馬鹿にされました)、レーザーの鉄砲で患部を撃た
れるのですね。

 過去、何度も、人に背中を撃たれてきたので(?)、慣れたものでした。2回目
からは、麻酔(といっても、トクホンを張るようなもの)を拒否し、思い切り、連
発銃で撃たれましたが、入院も何もいらず、楽なもんでした。

 もうすぐ、「金さん」を「カネさん」と素直に読めそうです。私には無縁(?)
のシミ、そばかすにもいいようですよ。ただし、心のシミには効果がないようです。
あしからず。


2010.09.01(水)【ドキッ! 誤字?】(金子登志雄)

 ネットで情報チェックをしていたら、「泥仕合」という単語をみて、「ドキッ!
先日の本欄で『どろ試合』と書いてしまった………」と、ヒヤッとしましたが、泥
試合でもよいようで、ほっとしました。

 恥ずかしながら、私は、こうやって漢字を覚えてきました。小中学生の頃から、
本は嫌い、漢字も大嫌いで、国語の成績はよくありませんでした。ただ、作文を書
いたり、手紙を書くのは、それほど苦痛と思ったことはありません。

 そこで、作文や手紙を書いた後、数日後数か月後に、今回と同様に、何かの拍子
に、「あ、あの時、間違った字を書いてしまった、間違った表現をしてしまった」
と気づき、すごく恥ずかしい心境になり、これが積み重なって今日に至ります。

 自分の意見を公表するということは、大勢の人の前で裸になるのと同じで、実に
恥ずかしいものです。本欄を書くことや出版をすることで、私の能力自体をみなさ
んに、押しはかられてしまうのです(だからこそ、こちらも勉強になります)。そ
の能力は、会社法の知識だけでなく、一般教養や文章表現力から漢字能力、誤字脱
字をしない能力まで含みます。

 (芸能人や政治家はその発言や生活態度まで裸にしなければならないので、私が
徹底した反マスコミで有名人擁護をするには、こういった理由もあります。顔も出
さず戦っていない人は戦っている人を非難すべきではないと思っています)。

 著作の前のほうでは「あり得ない」とし、後ろのほうでは「ありえない」になっ
ている、この頁では「第三者割当て」だが、別の頁では「第三者割当」で「て」が
ついてないなども気にし、著者も出版社の編集担当者も、数度チェックするのです
が、出来上がったものをみると、見落としが多々あります。ゲラでは気づかないこ
とも、本になると、やけに目につくものです。

 最後は子供のように居直ります。学者の教科書だって、大手法律事務所の本だっ
て、いくつも間違い内容や誤字脱字があるじゃないか………と。だから、他人の本
で間違いをみつけると、仲間を発見して、うれしくなります。

 先般は、会社法立案者が会社法を解説した商事法務の内容に間違いがあるのを発
見しました。登記記録例にも形式上のミスがあります。前者については、今月末発
売の「登記情報」に緊急投稿が許されました。ネタをもらったと同時に私の精神の
安定に貢献してくれて、しかも原稿料までもらえ、感謝です。


2010.08.31(火)【まやかし】(金子登志雄)

 予想どおりというか、またもや、怪しい自作自演の世論調査なるものがマスコミ
各社に登場してまいりました。

 さんざん特定人に対して根拠のない疑惑を取り上げて非難し世論を煽っておいて、
その後に真っ当さを装った世論調査なるものをして、「ほれ、世論がこれだけ貴方
に不信感をもっている」と責め立てる構図は、民主党政権になってからの大手マス
コミの常套手段になったかのようです。

 菅さんも小沢さんにではなく、大手マスコミに対して「しばらく静かにしておれ」
と言ってくれていれば、もっと人気が上がったのに………。

 こういうまやかしが先般ご紹介した計算規則14条です。今日は、裏からご説明
しましょう。

1.株式の募集も「取引」であり、仕入れたものを売るのと同じである。

2.自己株式を保有しており、株式の募集の際に、それを処分することは、仕入れ
 値が自己株式の簿価で、売値が処分価格である。
 「純利益=処分価格−自己株式簿価」となる。

3.自己株式の処分と新株の発行を同時に行ったときは、
 「純利益=新株発行による調達額+自己株式処分価格ー自己株式簿価」
 となる。

4.これを法律的に表現すると、
 「資本金等増加限度額
 =総調達額×新株式発行割合+総調達額×自己株式処分割合−自己株式簿価」
 となる。

5.ここで自己株式をまとめると、
 「資本金等増加限度額
 =総調達額×新株式発行割合−(自己株式簿価−総調達額×自己株式処分割合)」

6.カッコ内が負だとすると、
 「資本金等増加限度額
 =総調達額×新株式発行割合−自己株式処分差損」
 となり、計算規則14条1項の式ができました。

 2の式も6の式も同じなのに、まやかしのように感じませんか。株式発行割合も自
己株式処分割合も計算する意味がないのです。計算する意味があるのは、自己株式処
分差損が生じない場合(ゼロ評価)のときだけです。

 こういうまやかしは、おもちゃの「知恵の輪」を解くように楽しいものですが、世
論調査のまやかしに気づいている方が少ないのは残念なことです。


2010.08.30(月)【どろ試合】(金子登志雄)

 民主党代表選は、残念ながら、どろ試合になってきました。正々堂々と政策で戦
ってほしいのですが、外野席の大手マスコミが、またもや使い古された「政治とカ
ネ」の問題で、小沢・鳩山攻撃を始め、菅さん側もそれに悪乗りし、争点がぼけて
きてしまったようです。

 それにしても、イラ菅といわれ、元気・溌剌とした菅社長はどうしたのでしょう
か。つい、この間までは、鳩山・菅・小沢のトロイカ体制といわれ、鳩山前社長と
小沢専務が検察・マスコミ・米国連合に追い落とされてしまったため、その後を継
いで念願の社長になったはずなのに、社長になった途端に、脱鳩山、脱小沢路線を
敷いてしまいました。それだけならまだしも、脱・事業計画(マニフェスト)まで
進んでしまいました。

 これでは、創業株主の鳩山さんや筆頭株主の小沢さんが怒るのも無理ありません。
もともと、市民運動出身で弁理士の菅社長、弁護士の仙谷副社長・枝野専務という
自由業コンビでは、司法書士の私同様に、人のいうことを聞かない唯我独尊の傾向
があり、経営に不向きだと思っておりましたが、当たってしまったようです。

 当初は菅社長の脱小鳩路線をポーズと思って菅社長を支持していた民主党株主も、
菅社長の変質に気づいて怒り始めたので、その声に押されて筆頭株主の小沢さんが
やむにやまれず立候補したのだろうと私はみていますが、朝日新聞は「あいた口が
ふさがらない」と社説で酷評したようです。マスコミは、よほど、小沢社長では困
る理由があるのでしょうか。

 ………などと書くと、またもや「金子は小沢シンパか?」なんて思われてしまい
そうですが、私は、大手マスコミの社会の混乱を煽る世論誘導が許せないだけです。
せめて、マスコミに良心というものあるのなら、似非正義を振りかざして、民主党
の内紛を煽るようなことをやめて、菅さんと小沢さんがこの国をどうしたいのかを
取り上げて、どろ試合にならないように監視しろよ、といいたいのです。いっても、
無駄ですね。

 こんなブログがありました。欧米のマスコミの評価からすれば、日本のマスコミ
報道は、ばかばかしくてニュース価値もないということのようです。

 http://sumichi7878.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-0eb4.html


2010.08.27(金)【発行する株式の内容】(金子登志雄)

 会社法107条は単一種類の株式しか発行していない会社の発行する株式につい
ての特別の定めとして、譲渡制限株式、取得請求権付株式、取得条項付株式の3つ
を定めています。

 譲渡制限株式は、株式をこの人に譲渡したいが、OKかと会社の承認を求める必
要のある株式であるのに対し、取得請求権付株式は、会社で引き取ってよと請求で
きる株式、取得条項付株式は、会社の方から強制的に引き取れる株式です。

 いずれも、株式の移転に関する内容であるため、会社法で、はじめて認められた
内容ですが、このうち、取得請求権付株式と取得条項付株式は、登記簿の「発行す
る株式の内容」という欄に記載されます。

 21日土曜日の商業登記倶楽部のセミナーで、「発行する株式の内容」という欄
のある登記簿を見たことがない、どなたか見たことのある方はいらっしゃいますか、
と質問してみましたら、今週お2人の方から、実物を送っていただきました。とも
に、取得条項付株式の内容でした。

 実例があるんですねえ。登記の位置は種類株式と同じく、資本金の欄の下でした。
内容は、ともに、役員や従業員が退職したら会社が株式を強制的に引き取れるとい
う取得条項でしたから、これならニーズがあるかもしれないなと思った次第です。

 ということで、現時点では、取得請求権付の事例による「発行する株式の内容」
の欄のある登記簿は見たことがないということになりました。

 ここまで来たら、自分で登記してしまったほうが早いかもしれませんね。これだ
け円高が進むと、会社に有利なように、「株主は、いつでも1株1米ドルで会社に
取得を請求できる」なんて定めるのはどうでしょうか。


2010.08.26(木)【親子げんか?】(岡山・山本直樹)

 暑い日が続きますね。
 いつもは温厚な方でも、いらいらしてしまう猛暑です。

 さて、先日、親会社の担当者から子会社の変更登記手続の依頼を受けました。

親会社担当者A「子会社の社長と話をすすめて書類を準備してください」
山 本    「了解しました。連絡します」

〜子会社へ連絡〜

山 本    「親会社のAさんから商業登記の依頼がありましたので、ご連絡
        しました。これこれしかじかで………(内容説明)」
子会社社長  「そんな内容のことは聞いてないぞ。勝手にきめるなよ(怒)」
山 本    「そうなんですか(汗) Aさんに確認します………」


〜親会社へ連絡〜

親会社担当者A「子会社の担当者には言っているんだけどな。しかも、株主は
        こっちなんだから、言うこと聞かないといけないだろう
       (ほんの少し怒)」
山 本    「お話がまとまったら連絡ください(逃)」 
 
 結局 兄弟会社の社長が、親子会社間の連絡の行き違いについて仲裁に入られ
たようでことなきを得ました。
(親会社の担当者が詫びをいれたようです………)

 子会社(子供)の独立性をどこまで重んじるか。
なかなか難しい問題だなぁと思いました。
 
 しかし、会社でも人間でも親子げんか? には仲裁役は必要ですね。


2010.08.25(水)【計算規則14条の思考】(金子登志雄)

 23日(月)の投稿は、それなりに衝撃を与えたようですが、要するに、会社法
は、「取引(売買など)」の思考でできているということです。合併新株のことを
合併「対価」と呼ぶのが典型例です。

 自己株式の簿価が3万円で、これを2万円で処分したら、1万円が自己株式処分
差損として、その他資本剰余金が減額されますが、これは、仕入れ値3万円の自己
株式を損を覚悟で2万円で売ったので、差額の1万円が損失として、資本性の剰余
金から減額されるということです。

 新株を2万円で発行した場合には、仕入れ値が0円ですから、売値が2万円なら、
全額が儲けになります。これは、特別な儲けとして、資本金と資本準備金に計上す
るというだけです。

 新株1株と自己株式1株を同時に合計4万円で売却したら、仕入れ値3万円で、
売値が4万円になるので、通算した合計の儲けは1万円だから、これを資本金と資
本準備金に計上するというのが計算規則14条1項です(注)。

 なお、司法書士業務につき、仕入れ値がないから、新株の発行と同じじゃないか、
実によい商売だなと思われるかもしれませんが、こういうことを説明できるまでに、
また登記を円滑に完了させるまでには、多くの勉強時間と高額の費用を使ってまい
りました。それでも司法書士になれず、無念の涙を流した方も大勢います。

 自己投資という高額な仕入れ値がありますので、決して仕入れのない新株の発行
と同じというわけではありません。また、当ESGメンバーの仕事ぶりは、お客様
から0円で原材料を仕入れても、匠の技で加工し、見事な製品にして、お届けして
おります。ちょこっと申請書類を書いて、法務局に横流ししているわけではなく、
建築加工業と同じ困難な作業をしておりますので、ご理解くださいますよう、お願
いします。

(注)種類株式の発行と、普通株式の自己株式処分による差損とでは、同時に行わ
れても、株式の種類が異なり、2つの取引(募集行為)となるので(会社法199
条1項1号かっこ書)、通算できないということになりそうです。これ、ちょっと
不合理な気しますので、何か、これにつき、ふれてある文献がありましたら、教え
てください。めったにないことなので、実務上の支障はないでしょうけれど………。


2010.08.24(火)【武蔵でないのに………】(金子登志雄)

 土曜日は、司法書士界の大勢力である商業登記倶楽部の夏季セミナーで種類株式
につき、講演してまいりました。札幌や沖縄からの参加者もあり、相変わらずの盛
況でした。

 その後の懇親会の折、またもや、「先生のところで会社法実務を修業したいとい
う人がいるのだが、人は募集していないのか」と聞かれました。最も、よく質問さ
れ、頼まれる内容です。
 
 全国には、まだ、金子事務所は総勢30名以上の大事務所と大いなる勘違い(善
意の誤解)をしている人が少なくないようです。本欄をみている方はおわかりのと
おり、知名度と事務所が流行っているかとは全く無関係であり、私は、相変わらず
の1人事務所で、長屋の傘張り浪人と同じ生活です。

 そこで、思い出しました。司馬遼太郎の短編小説に確か、「なぜ徳川幕府は、武
蔵を剣術指南に雇わなかったか」という内容があり、その理由として、「武蔵の剣
は武蔵独自の剣法であり、人に伝承できない。これでは徳川幕府も雇いたくても雇
えない。これに対して、千葉周作の剣法はマニュアル化されているので、北辰一刀
流は全国制覇できた」とありました(記憶に基づくもので内容は保証できません)。

 私の会社法実務は、金子独自の流儀とはいえ、十分に他に伝承できる内容にして
あるのに、なぜ、私は大道場経営の千葉周作になれず、暮らしぶりだけの浪人暮ら
しの武蔵と同じ境遇なんでしょうか。

 つらつら、考えるに、やはり、もの書き業などを兼任している「二刀流」がいけ
ないようです。気の毒に、私の一番弟子を名乗ってくれる富田センセも、もの書き
と二刀流で、やはり、1人事務所から脱皮できないようです。

 でも、富田さんよ、もの書きのおかげで、数少ないとはいえ、われわれは超一流
の顧客に恵まれました。二刀流だからこそ、吉岡道場の追っ手にも勝てたのです。
国家公認の北辰一刀流の法務局職員集団と1人で渡り合うには、二刀流しかありま
せん。顧客の依頼を達成した「成果」こそわれわれの財産ですから、今後も、さら
に腕を磨くしかないようです。


2010.08.23(月)【計算規則14条1項の計算のまやかし】(金子登志雄)

 会社計算規則14条1項によると、新株の発行と自己株式の処分を同時に行い、
自己株式処分差損が生じる場合には、資本金等増加限度額(資本金と資本準備金
に計上できる限度額)を次のように計算し、登記の際にも、この計算の証明書が
必要だとされています。

(具体例)
 1株1万円で新株80株と自己株式20株の合計100株を募集したとすると、
株式発行割合は80%、自己株式処分割合は20%です。
 金銭で80万円、現物で20万円を調達し、自己株式の簿価は1株あたり2万
円とします。自己株式処分では1株あたり1万円、総額20万円の損失です。

------------------------------------------------------------------------ 
        【資本金の額の計上に関する証明書】
@ 払込みを受けた金銭の額(会社計算規則第14条第1項第1号)金80万円
A 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財
 産の価額(会社計算規則第14条第1項第2号)        金20万円
B @+A                         金100万円
C 株式発行割合
         発行する株式の数80株
  ―――――――――――――――――――――――――=80%
  発行する株式の数80株+処分する自己株式の数20株
D B×C                          金80万円
E 自己株式処分差損(会社計算規則第14条第1項第4号)   金20万円
F 資本金等増加限度額(D−E)               金60万円

 募集株式の発行により増加する資本金の額○○円は、会社法第445条及び会
社計算規則第14条の規定に従って計上されたことに相違ないことを証明する。
                       〇〇〇株式会社
                       代表取締役〇〇〇〇 印 
------------------------------------------------------------------------

 資本金等増加限度額は60万円となり、資本金には30万円から60万円まで
計上でき、残りが資本準備金です。

 実は、このケースでは、株式発行割合を計算する意味が全くないことにお気づ
きでしょうか。

 自己株式処分差損とは、「自己株式の簿価−総収入額×自己株式発行割合」の
ことです。

 したがって、上記の式は、
 100万円×80%−(40万円−100万円×20%)であり、このカッコ
を外すと、
 100万円×80%−40万円+100万円×20%
=100万円×(80%+20%)−40万円
=100万円−40万円

 となります。これは、「総出資額−自己株式簿価」であり、株式発行割合を計
算する意味がありません。

 ということを、ただいま発売中の「ビジネス法務」に書きましたので、ご関心
のある方はぜひみてください。秋に発売になる『(仮称)募集株式と種類株式の
実務』(『これが新増減資だ種類株式だ』の株式部分の改訂増補版)にも詳細に
書きましたので、出版はいましばらくお待ちください。                 


2010.08.20(金)【取締役会の決議によらなければならない】(金子登志雄)

 会社法の条文のいくつかに、「取締役会の決議によらなければならない」と規定
しながら、取締役会のない会社では、誰が決定するのかにつき、何も規定していな
い箇所がいくつかあります。

 典型例が自己株式の消却である178条ですが、株主総会で自己株式の取得枠を
決定した後に、具体的な取得方法につき決定する157条もそうです。

 会社法学者の江頭先生や前田先生の本によると、ある個所では、取締役が決定す
ればよいとしながら、別の場所では株主総会だとし、統一がとれていません。また、
両巨頭で意見が違う箇所がいくつもあります。

 しかし、私にいわせれば、考えすぎじゃないでしょうか、ということです。

 常識からして、上位機関である株主総会が決定することを下位機関の取締役会で
決議することも「できる」と定めるならともかく、株主総会を差し置いて、「取締
役会の決議によらなければならない」と規定するとは考えられません。取締役会設
置会社の代表取締役ですら、定款で定めれば、株主総会で選任できます。

 この表現は考えるまでもなく、本来は取締役や取締役会が決める業務執行行為だ
が、ことの重要性に鑑みて、取締役会があるなら、会議体で決定し、代表取締役だ
けで決めていはいけないという意味でしょう。取締役会がないなら、当然に取締役
が決めることだという考えが裏に隠れています。

 会社法157条には、「前条の株主総会の決定に従い株式を取得しようとすると
きは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない」とあります。

 これを前条の株主総会の決定を受けて、また株主総会で、その都度、決定せよと
いうのでしょうか。そんなことをわざわざ規定するでしょうか。にもかかわらず、
江頭本も前田本も、株主総会で決定すべきだと主張しています。

 私は、もちろん、取締役会がないのなら、取締役の過半数で決定せよと読みまし
た。まともに読んでしまう性格のため、私は、学者に不向きのようです。


2010.08.19(木)【『常勤・非常勤』と役員報酬】(愛知・和出吉央)

 先日、若手の税理士さんから、
 「A社の常勤(平)取締役Xが、B社の代表取締役に就任してもよいのか?」と
いうご質問を受けました。

 我々のように、会社法を中心に考える専門家からしてみれば、この質問に対し、
 「会社法上、XがB社の代表取締役に就任することは何の問題もありません。」

と答えることと思います(競業・利益相反取引については度外視します。以下同じ)。
それは、会社法上も商業登記法上も、「常勤・非常勤」という区別はないからです。

 しかし、この若手税理士さんの質問の意図は違うところにあったのです。
つまり、税理士さんの真の意図は、

 「代表取締役というのは、会社の最高責任者であり、かつ、毎日業務を執行する
とともに、従業員の管理・監督もするのだから“非常勤”は考えにくい。その場合、
Xは、A社とB社の両者の“常勤”であるという前提で、役員報酬額を決めること
になるが、実態重視の税務の考えからすると、決定された報酬額に対し税務署から
待ったがかかる可能性が高いのではないか?」

 いうことだったのです。

 代表取締役社長が会社に出勤しなくても、携帯電話やノートパソコンがあれば、
どこでも仕事ができる時代ですし、実際も、何社もの代表取締役に就いている方は
山ほどいるわけですから、“常勤”にこだわる必要はまったくなさそうです。

 問題は、税務署が、XがA社とB社から受け取る報酬“額”を損金として認めて
くれるか否かという点です。

 なお、取締役以外の株主さんが存在する場合は、説明のつく報酬額を設定しなけ
ればならいことはいうまでもありませんね。

 このあたりの、実際の仕事量・売上げ貢献度等を加味した、税務署・株主・銀行
等のステークホルダーを意識した役員報酬額の決定が、今回の若手税理士さんの腕
の見せ所というわけですね。


2010.08.18(水)【お盆】(島根・渡部浩義)

 既にお盆も終わり、皆さまのほとんどが仕事に復帰された頃だと思います。いか
がお盆休みを過ごされましたでしょうか。

 つい先日、【謹賀新年(マニア)】(2010.01.06掲載)という文章を投稿したと
思いきや、今年も既に立秋を過ぎ、暦のうえでは秋となり、盆を迎えてしまいまし
たが、我が家は、8月10日の朝には、早朝から家族3世代で盆を迎えるための墓
そうじに勤しみました。

 親子でああだこうだといいながら近傍の竹やぶに入って、竹を切り出して、不細
工ながらも新しい「花立て」や「線香立て」をこしらえて墓所に立て、草をとり、
少々新しい砂を入れ、石塔を洗えば、日ごろ不信心な私でも手放しに気持ちが良い
ものです。

 私どものところは、もともと土葬慣習のある地域でしたので、わが家の墓所は人
家のあるところからやや離れた場所に、近所数軒のものとともに集団で存在してい
ます。

 わが家は幸いにして上記のように今のところは賑やかに墓所の手入れもできます
が、周囲の墓所にはここ何年も雑草が生い茂ったままのところや、いつの間にか石
塔がなくなった(片付けられた)墓所が目立つようになりました。また一方で、田
舎においても『墓守(はかもり)ビジネス』が結構盛況のように聞きます。

 田舎の墓の風景ひとつとっても、現在の日本の社会の現状がみえるようです。こ
れは田舎の『限界集落問題』に呼応して都会に『限界団地問題』があるように、都
市部の墓所でも同じことが起きているのでしょうか?

 誰もがこの世のお家にいる時間よりも、あの世のお家にいる時間の方がおそらく
は長いでしょうから、皆さんお墓は大事にしましょう。

 今回はいつもに増して余計なことを書きますが、田舎にしばらく墓所を放置され
ている方がおられれば、たまには手を入れに帰ってあげてください。ご出身地の現
状やご自身を見つめなおすことのできる絶好の機会となるはずです。人寂しい田舎
に住む者からの差し出がましいお願いです。


2010.08.17(火)【併せて登記する義務】(東京・金子登志雄)

 お盆休みは、いかがでしたでしょうか。
え、休みじゃなかった? 

 それは失礼しました。われわれ司法書士も同じでした。法務局が開いているのに、
司法書士が休むわけには行きません。もっとも、来客もなく、電話も少なく、事実
上の開店休業状態でしたけど。

 さて、昨日の和出さんの投稿は、結局、「取締役会を置く」と定款に定めた時か
ら「取締役会設置会社」だが、取締役3人以上の存在と同時に登記を申請しないと
登記が受理されないということでしょう。

 これを、われわれの世界で「併せて登記する義務」といいますが、当局によって
拡大解釈されてきた歴史があります。

 たとえば、一時は、取締役会設置会社が解散したら、取締役会も自動的になくな
るのだから(登記簿から登記官の職権で抹消されます)、株式譲渡制限の「取締役
会の承認を得なければならない」という部分も手直ししなければ登記を受け付けな
いなどという見解が出されたこともあります。

 これは誤った解釈です。解散によって、取締役会は冬眠状態になるだけで、なく
なるわけではないからです。会社の継続を決議すれば、冬眠から目を覚まします。

 いまでも、取締役会のない会社が株式譲渡制限を廃止し公開会社になるには、取
締役会を設置し併せて登記しなければならないなどと主張されています。名著『商
業登記ハンドブック』245頁ですら然りです。

 しかし、取締役会設置会社には、定款での任意設置会社と、法律上の義務として
「取締役会を置かなければならない株式会社」の2種類があり(会社法2条7号)、
公開会社は後者です。定款に取締役会を置くと定める前から、取締役会設置会社で
あり、このことについては、会社法立案者が旬刊商事法務で明言していることです
(第1774号91頁注13、94頁)。

 したがって、取締役会の設置は後回しにして、譲渡制限の廃止だけでも当然に登
記できるというのが会社法の立場です。「併せて登記する義務」の拡大解釈は、避
けたいものです。


2010.08.16(月)【登記可能要件】(愛知・和出吉央)

 取締役(A)1名の非公開会社(取締役会非設置)が、平成22年7月1日開催
の臨時株主総会にて、

   第1号議案 取締役会設置(定款一部変更)
   第2号議案 取締役B・Cの2名(追加)選任

 の決議をしましたが、諸般の都合上、BとCの就任承諾が”7月15日”になさ
れました。

 そこで、一瞬、以下の疑問点がわいてきました。

@ 会社法第331条4項には、「取締役会設置会社においては、取締役は、3人
 以上でなければならない。」とあるが、上記の場合だと、第1号議案の取締役会
 設置の効力は、取締役B・Cの就任承諾がなされ、会議体(3人体制)である取
 締役”会”が機能することによりはじめて発生し、次のようになるのか?

 「平成22年7月15日 取締役会設置」
 「平成22年7月15日 取締役B・C就任」

それとも、

A 就任承諾するか否かは当人の意思表示しだいであり、第1号議案自体は、承認
 可決されているので、次のようになるのか?

 「平成22年7月 1日 取締役会設置」
 「平成22年7月15日 取締役B・C就任」

 Aであれば、手続上も実体上も、取締役会設置会社における取締役であることに間
違いないので、商業登記法61条3項が適用され、B・Cの印鑑証明書は不要になり
ますが、@だとすると、第2号議案の“承認可決”時点では、取締役会非設置である
ので、商業登記法61条3項でなく2項が適用されて、B・Cの印鑑証明書が必要と
なるかもしれない
  ・・・と思ったのです。

 「かもしれない・・・」というのは、@はもとよりAの場合であっても、結局、法
務局への申請は7月15日の、B・Cの就任の効力発生を待った上で、取締役会の設
置とB・Cの就任登記を同時に申請しなければならず、その時点では、@でもAでも
取締役会設置会社であるということになりますので、商業登記法上要求される印鑑証
明書は不要であるからです。

 つまり、実体上の取締役会設置の効力は、7月1日に生じているが、登記可能要件
が、7月15日になって生じたということです。

 実際、Aにて登記完了済みであり、法務局への取締役の印鑑証明書の添付は不要で
した。

 類似論点については、『商業登記全書 組織再編の手続〜法務企画から登記まで〜
金子登志雄先生 著』P441〜442に書かれていますので、そちらもご参照いただ
ければと思います。



2010.08.13(金)【世界記録更新か!140歳の戸籍!(その2)】(富田太郎)

 昨日のA氏の140歳の戸籍も、実は50年以上前に行方不明になり、そのまま
にしていたことが原因でした(ただし、墓だけは作っていたそうな・・・)。

 この場合、勿論、『失踪宣告の手続き』を行わなければならないのですが、

 『それでは芸がない!不可能なことを可能にするのがプロの仕事だ!』

 ということで、私はある秘策?をもって、死亡届を受理してもらうべく、市役所
と交渉することにしました(ニヤリ)♪

 それは、
 『世界最高長寿者(フランス人女性:ジャンヌ・ルイーズ・カルマン122歳)
の記載のあるギネスブック』と
 『A氏の墓の写真』でした。

 本件当事者達(弁護士・相続人)が嘲笑する中、ギネスブック片手に、市役所へ!

 市役所曰く、
 『世界最高長寿ですら122歳。140歳なんて生きているわけがない。確かに
気持ちはわかります。でも、ギネスブックと墓の写真では、駄目です。
 まてよ? 墓があるということは・・・・。そのお寺に過去帳があるはず!』

 富田、
 『そうです。過去帳には、亡くなった日が書かれています。』

 市役所、
 『そうか! では、その過去帳の写しを持ってきていただければ、前向きに検討
いたします!』

 この結果をもちかえったところ、当初、私を嘲笑していた当事者達も、

 『さすが、富田センセは、生きた法律を知っている♪ やはり、どこか違う方だ
と思っていました♪』

 と、手のひら返しの賞賛の嵐!

 翌日、お寺の住職に事情を話し、問題の「過去帳」を見せてもらいました。

 そこには!

 『A氏、昭和●●年頃行方不明。生死不明』

としか書かれていませんでした(涙)。

  ・・・・・・・・・・・。

 かくして『私の深遠なる交渉』は、無意味と化し、当事者達の間で、

 『ギネスブックを根拠に、死亡届を出そうとした変な司法書士?』

という『笑い話』だけが残ることになりました・・・・(汗)。

・ ・・・・・・・・・・・・・・

 今でも着眼点はよかったと思うのですが・・・・・(ため息)。


2010.08.12(木)【世界記録更新か!140歳の戸籍!(その1)】(富田太郎)    

 金子先生!

 6日付本欄での影武者のご指名ありがとうございます(笑い)。

 そこで、金子先生が『120歳程度は生きたいので〜』と書かれていましたが、
120歳どころか、私は140歳の生きた戸籍を見たことがありますよ!

 数年前、相続(兄弟姉妹相続)の案件で、戸籍を収集していたところ、死んでい
るはずの直系尊属A氏(生きていれば140歳!)の生きた戸籍がでてきて、びっ
くり!したことがあります。

 通常、死亡した旨を戸籍に記載するには、『死亡診断書』が必要です。事故・突
然死の場合のように、かかりつけの医師の死亡診断書を出してもらえないときは、
警察管轄(警察医)の『死体検案書』を出してもらうことになります。

 これに対し、行方不明の場合は、『失踪宣告』の手続きをとらなければなりませ
ん(民法第30条)。家庭裁判所に申し立ててから、普通失踪では8ヶ月くらい後
に、失踪宣告がなされ、法的にその人物の死亡が認定されます。

 勿論、この失踪宣告の手続きは、義務ではありませんが・・・・ほっておくと、
ギネスブック更新もの!の戸籍が残ります。

 実際の『長寿者戸籍?』の中には、行方不明になったけど、『失踪宣告』の手続
きなど面倒!ということで、ほったらかしにされた戸籍が、かなりあるではないで
しょうか。

(注)その他に『高齢者消除』という戸籍整理手続きもありますが、実際の運用例
  は稀なようです。


2010.08.11(水)【七人の出資者】(島根・根来川弘充)

 私は、ドラマを見ると次回が気になるので、あまり見ないようにしています。
でも、今NHKで放映されている「ゲゲゲの女房」は、主役の武良布枝さんが、
私の地元である安来出身ということもあり、見ています。

 物語は、水木しげるさんの極貧生活がずっと続いていたところ、ようやくそこ
から抜け出して多忙になっていくという展開にさしかかっているのですが、プロ
ダクションを立ち上げるところで、ちらっと、「信頼できる司法書士の先生を紹
介しましょう」と出版社の方が水木さんに勧めるシーンがありました。

 「会社」と言えば「司法書士」と取り上げていただけたようで、少し嬉しい気
分になりました。

 また、ドラマでは、「出資者が七人いる」というセリフも出てきました。今で
は1人でも会社を設立できますが、当時は、そんな時代だったのかと思いつつ、
その後の水木さんの活躍を誰もが知っているだけに、会社の株式の価値があがる
につれて、出資者間で問題にならなかったのか気にもなりました。

 仕事柄、創業して40年、50年という会社のお手伝いをすることがあるので
すが、設立当時とは比べ物にならないくらい会社の価値が上がっています。

 これらの会社も、大抵が7名以上の株主ですし、当然亡くなられている方もい
るケースがあり、速やかに株主が変わっているというわけではなかったようです。

 一方で、今まで私が関わった会社で7人以上の出資者での設立された会社は、
一つもありません。40年、50年後は、あまり気にならない問題になるのかも
知れません。

(参考)平成2年の商法改正までは、設立発起人は7人以上が必要でした。


2010.08.10(火)【本人確認】(岡山・佐藤典子)

 ご無沙汰しております。岡山の佐藤です。

 最近の本欄で、カムイ伝のカムイが双子だったという話や、司法書士業界でも
コンプライアンスに関する研修が多くなったなどという金子先生の投稿を読んで、
知り合いの金融業者Aさんの話を思い出しましたので、久々に投稿させていただ
きます。

 さて、最近は、銀行に行っても、市役所に行っても窓口に来た人が本人である
ことを確認するために、必ず運転免許証等の提示を求められますが、皆様もそう
されたご経験があることと存じます。

 われわれ司法書士も、所有権移転登記や抵当権設定登記の業務を行う際して、
登記義務者の意思を確認すると同時に、印鑑証明書、実印、登記済権利証書のほ
かに、運転免許証を提示して貰って目の前におられる人が本人であることを確認
させていただいております。

 やはり、そういうことの必要な金融業者のAさんも、運転免許証の写しも貰い、
いつも通りの手順で本人確認をしたのだそうです。

 ところが、あとでわかったことには、本人が双子で、来た人は替え玉だったの
だそうです。免許証の写真と来た人は、双子だから当然そっくりで見抜けなかっ
たという世にも恐ろしい話ですが、それ以来、Aさんは、本人に戸籍謄本等も持
参して貰い、双子でないことを確認するようにしているそうです。

 私が業務を行っていると、免許証の写真と目の前の本人がちょっと違うような
気がすることもありますが、免許証の写真と目の前の本人の顔を見比べながら、
「本物ですか〜?」とは、なかなか聞きづらいものです。


2010.08.09(月)【かわらぶき】(島根・渡部浩義)
 
 お恥ずかしながら時々この欄に登場させる齢90才をすぎたウチの祖母ですが、
この方とても“筆まめ”です。また、書く文章を見ると旧字体の漢字をビッシリ
織り交ぜたペン一発書き文章で、およそ誤字脱字というのも見当たりません。
こうして日本各地にいる子・孫・知人様へ、暇さえあれば手紙を書いています。

 パソコンを使い漢字変換、コピー&ペーストを駆使しても起承転々々、誤字脱
字、変換間違いだらけとなる私などは穴があったら点々々の心境です。
 祖母は尋常小学校しか出ていないそうですから、戦前の教育が素晴らしかった
のか、学んだかつての子供たちが素晴らしかったのか・・・。
 
 ところで、文化審議会は6月7日、常用漢字に196文字を追加、5文字を削
除して常用漢字を合計2136文字とする改定常用漢字表を文部科学大臣に答申
しました。パソコン変換が多用される今日の事情も考慮されての今回の久々の大
幅改定答申のようです。

 あいにく私もヒマでしたので、新聞に掲載された上記追加196文字を、久し
ぶりに万年筆なぞを取り出してヌラヌラと書いてみました。久しぶりの手書き文
字は字の体裁にならないものですね。恥ずかしい。

 そういえばカネのない学生時代に友人らと「りんご」「ぶどう」「ユーツ」等
の小賢しい漢字がどれくらい書けるかなどという空腹凌ぎの遊びをやっていまし
た。新聞等では「鬱」の字が上記196文字の中に入っていることが大きく取り
上げられましたが、私が意外にも今ごろ(?)と思った漢字には、「瓦」「亀」
「丼」などがあります。

 話し転じて最近の建物登記記録の表題部構造欄には、永年の表記方法を改め
「かわらぶき」・「スレートぶき」などと表記されています。みなさんはどのよ
うな印象を持たれているのでしょうか。

 これらの表記は最近の通達によってその表記方法が改められたものです。この
ごろ申請書を作成していていつも思うのですが、確かに万人が読めるための親切
といえば親切かもしれませんが、不動産を取得して登記手続でもしようと思うよ
うな人がおよそ「瓦葺」が読めないとは思えません。

 やっぱり『かわらぶき』は『瓦葺』とするべきで、『かわらぶき』表記は公文
書をもって暗に最近の日本国民は総体的にバカ化してます、といっているようで
私は違和感を今だに感じるのですが暴論でしょうか。ただ、登記完了後の建物登
記事項証明書を成果品の一部として依頼者に交付すると、「最近は役所から出る
書類に勿体(もったい)がないね。」との指摘をたびたび受けますので、強(あ
なが)ち暴論ではないような気がします。

 常用漢字に『瓦』もめでたく加えられたようですので、登記記録に『かわらぶ
き』ではなく『瓦葺』表記の復活を望みたいところです。暴論のついでに、そも
そも常用漢字の括りなど取り払って、漢字使用の適所には使える人はどんどん知
ってる漢字を使えばいいと思うのですが、こんなこと書くとどこかの業界の「魑
魅魍魎」に糾弾を受けることになるのでしょうか。

 さて、今回の稿には誤字脱字、変換ミスはありませんでしたでしょうか?
連日の猛暑に冒されており、それのみが心配です。


2010.08.06(金)【合併解散とは】(東京・金子登志雄)

 100歳以上の長寿者として記録されていたが、実は、生存していなかったなど
という話がニュースになっています。

 これ、いいですね。私も戸籍上だけでいいから、120歳程度は生きていたいの
で、息子に私の死亡を隠し続けるようにいおうと思っています。影武者は、富田君
とその後継者にお願いしようと思っています。ESGは永遠に不滅です。

 さて、昨日は8月1日合併の登記が無事に終わった日でした。合併解散した会社
に、改めて合掌です。通常の解散と相違し、合併解散は清算手続がないので、8月
1日が命日になります。

 にもかかわらず、7月決算会社なら、10月までには定時株主総会を開催すべき
だ、7月過ぎて合併したのだから決算公告をすべきだなどと言い出す方が法律家の
中にもいます。合併存続会社が代わってやるべきだというのです。

 きっと、昔の通説である「人格承継説」の亡霊が、解散会社も合併存続会社の中
で生き続けているとでもいわせているのでしょうが、これではいつまで経っても解
散会社が成仏できません。

 本欄で何度か書いていますが、合併というのは、解散消滅し、残った財産(権利
義務)の全部を合併存続会社に相続させるものであって、定時株主総会開催義務や
決算公告義務などという非財産的なものまでを引き継がせるものではありません。
貸借対照表や資本金なども会社の解散とともに消えてしまい、その中身が承継され
るだけです。

 法務局に合併の登記を申請するのは、役所に死亡届を出したのと同じです。いま
だに生きているようなあきらめの悪い解釈から早く脱却し、事実を事実として受け
入れましょう。


2010.08.05(木)【40歳を過ぎてはじめておもしろくなる??】(富田太郎)

 『20歳の顔は、自然の贈り物。
  50歳の顔は、あなたの功績。
  人は40歳を過ぎてはじめておもしろくなる。
  かけがえのない人間となるためには、いつも他とは
  違っていなければならない。』
            (BY ココ・シャネル
             出典:『シャネル−スタイルと人生』文化出版局)

 先日、知人のAさんから上記の本を戴きました。
その本と一緒に、上記「ココ・シャネルの言葉のしおり」が入っていました。
要は、「40歳からが人生の勝負」ということでしょうか?

 ココ・シャネルという人物、ファッションには無縁の私ですが、驚くほど劇
的で興味ある人生を送っています。

 12歳の時に母親が他界。父に捨てられ、孤児院や修道院で育ち、苦労の末、
パリで「シャネル・モード」という帽子専門店を開店。

 その後、ヨーロッパ有数のブランドにまでなるも、第2次世界大戦のとき、
シャネルは親独のヴィシー政権下で、ドイツの軍人と愛人関係になったりして
います。

 当然、戦後、激しいバッシングにあいますが、不屈の精神で、アメリカに進
出し、巨大ブランドを確立。

 最後は、87歳で亡くなるも、前日まで、パリの「コレクション」の準備中
だったそうです。

  ・・・・・・・・・・・ 

 なるほど、このような人物であれば、40歳など、まだまだこれからだった
と思います。

 ところで、「あわて者のAさん」!
この本、もうあと10年早く、私に贈って頂ければ、よかったのに・・・。

 そう! 私は既に「50歳」を超えてしまっているのです・・・・(汗)。

 「50歳の顔は、あなたの功績」・・・・・ですか? 確かに・・・。

 この本を40歳の時に読まなかったからでしょうか?
私は、「なんの功績もない顔」になってしまいましたが・・・・(涙)。


2010.08.04(水)【Kさんへの返信】(東京・金子登志雄)

 昨日の本欄に対して、さっそく、西日本在住の若手司法書士Kさんから、中小企
業向けの種類株式や持株会あたりをテーマにした本のリクエストが入りました。
 Kさん、メール、ありがとうございました。

 種類株式については、3年前に『これが新増減資だ種類株式だ』を出版していま
すが、そろそろ改訂時期なので、何か考えています。中小企業の持株会については、
内容が種々雑多すぎて本に馴染むかという不安があるため、期待しないでください。

 ところで、Kさん、持株会は「権利能力なき社団」でなく、「民法上の組合」を
名乗ります。なぜでしょうか。

 税金の関係です。社団で課税され、組合員個人で二重に課税されては困るので、
ストレートに個人問題に帰着させるためです。投資ファンドも、投資事業組合も同
じです。にもかかわらず、株主名簿上は1人とカウントします。

 こんなことなら、いつでも書けますが、毎月、給与から天引きする厚生福利活動
の一環としての持株会から、単に株を買わされた持株会まであり、実態はまちまち
のようです。

 某日のKさんのブログには「………に記事を掲載させて頂きました。たいした内
容でもなく、たかだが1頁なのですが、想像以上に大変でした。専門的な内容の本
を書かれる方は本当に凄いなぁと思いました」とありました。

 わかっていただきありがとうございます。「想像以上に大変」で、命を削ります。
出版すればするで、「あ、あそこはこう書けばよかった」などと反省ばかりですし、
「ここは間違いじゃないか」という問い合わせが出版社に入ることもあり、気を抜
けません。読者の評価も気になります。

 うれしいのは、問い合わせが一段落し、出版社から「好評のため増刷します」と
いう連絡が入ったときです。削られた命が回復します。

 いずれにしろ、建築家や芸術家と同じで、自分の作品が形になることはうれしい
ものです。Kさんも、ぜひ「作品」を世に問うてください。協力します。


2010.08.03(火)【8月の作業】(東京・金子登志雄)

 お盆休みがある8月は、仕事の閑散期だという業種が多いようですが、みなさま
のところは、いかがでしょうか。

 会社法・商業登記専門の私のところも、例外ではなく、ぐっと仕事が減ります。
3月決算会社の定時株主総会が6月下旬に終わり、7月初旬はその登記で多忙にな
りますが、その反動が8月に来ます。

 無趣味で、仕事大好き人間の私としては、ヒマを持て余す辛い時期ですが、例年
何をしてきたのかと振り返ると、非常勤役員を務める会社の決算期が6月のため、
9月の定時株主総会に向けた総会招集通知の準備などがありました。また、秋の著
作を集中的に執筆していました。

 しかし、もう著作も20冊近くになり、ネタ切れ気味です。そこで、新しい試み
として7月中旬から社会人のための会社法入門のようなものをぼちぼち書き始めて
みましたところ、中央経済社のベテラン編集者から、いわれてしまいました。

 「おやめなさい。全国の金子本ファンががっかりします。先生の本は、『目から
ウロコ! ああそうか、なるほど』と専門家に思わせきたところが評価されてきた
のに、その道を外したら、『あの男も堕落した』といわれますよ」。

 そんなもんですかね。それだけでなく、いかんせん、既定路線ではないため、売
れるかどうか、さっぱり予測がつきません。

 昔、売れると思って出した本が、さっぱり売れずに出版社に迷惑をかけたことが
あり、それがいまだにトラウマになっています。

 で、相変わらず、「昔の名前ででています」や、何十年もシナリオが変わらない
「水戸黄門」路線で行きましょうか。早く、由美かおるの代役を探さねば………。


2010.08.02(月)【季節感のない長屋生活】(東京・金子登志雄)

 暑中お見舞い申しげます。

 季節がら、皆様からは、ご丁寧にも、お中元や暑中見舞いを賜り、いつもいつ
も、ほんとうにありがとうございます。

 と同時に、毎度のことですが、私からはお世話になっている方を含め、どなた
に対しても、一切、お中元も暑中見舞いも出さず、失礼させてもらっています。

 恥ずかしながら、私には季節感がありません。いつまでが暑中で、いつから残
暑になるのかも、これを書くにあたり意識した程度の社会人として欠陥人間です。
だからこそ、気配りが重要な商人世界から自由気ままな長屋の職人生活に亡命し
たともいえますが………。

 欠陥人間でも、礼状くらい出すのが礼儀だとは重々承知しておりますが、それ
もしていません。いまや、「金子はそういう男だ。亡命者の金子に礼状は似合わ
ない」と皆様に思っていただくしかないと思っています。完全に居直り状態です。

 季節感がないといえば、小学生時代は、同級生の9割が農家という片田舎に育
ったのに、稲穂と麦の区別もつかず、いつ頃が収穫期かも知らずに育ちました。
国語の授業で、俳句の季語についてもめっぽう弱かった記憶があります。早い話、
その頃から、季節には一切無頓着のようでした。

 「三つ子の魂百まで」。この男は、もう治りません。今後も、季節感のない長
屋生活を維持しますので、ご了承くださいますようお願いします。


2010.07.30(金)【無配当の定款の定め】(東京・金子登志雄)

 会社法の105条2項には「株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分
配を受ける権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない」とあり
ます。

 この反対解釈から、「株主に剰余金の配当を受ける権利のみを与えない旨の定款
の定めは許される」のかという議論が司法書士の掲示板にありました。

 文章からすると「A及びBは不可」は「AだけならOK」という意味になりそう
ですが、必ずしも、そうだと断定することはできず、私は否定説です。

 理由は、剰余金の配当は典型的自益権であり、株式の内容であることに疑いの余
地はないのに、会社法107条がそのような内容の株式を認めていないからです。 

 また、沿革につき、商事法務1739号35頁に、商法時代に完全無配当の種類
株式が認められるかの議論があったので、105条2項が設けられ、そのような内
容の株式を認めたとあります。会社法108条1項1号・2号に対応して105条
2項が設けられているとも記載されています。

 したがって、種類株式であればともかく、全株式あるいは全体を規律する内容と
して「株主に剰余金の配当を受ける権利を与えない」旨を定款の定めることは許さ
れないというべきでしょう。

 105条2項は、一般社団の法律11条の「社員に剰余金又は残余財産の分配を
受ける権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない」と対比して解釈し、
会社の営利性を宣言したものと解釈することにとどめるべきです。


2010.07.29(木)【世間という怪物】(東京・金子登志雄)

 昨日と同じような内容ですが………。

 相撲における野球賭博問題など何か不祥事が発覚すると、「世間をお騒がせして」
あるいは「世間にご迷惑をおかけして」という謝り方がなされます。そのたびに、
私は、この国では、世間という得体の知れない怪物が王様なのかと強い違和感を覚
えてしまいます。

 世間の1員である私にとっては、相撲取りが賭博に関わろうと、芸能人が覚醒剤
に関わろうと、私個人は迷惑を受けていませんので、謝ってもらう必要は全くない
のですが、世間の代表者を気取るマスコミは、「説明せよ、謝れ」と追及し、お詫
びを引き出させようとします。まるで、マスコミに謝らせているかのようです。

 公益法人にあるまじき行為だとか、相撲ファンの子どもの教育に悪いという問題
があることはわかりますが、相撲でも芸能でも地方巡業の関係で地元の興業を手配
する暴力団とのつながりは切っても切れない関係にあったわけですから、そういう
仕組みをどう改善するかこそが重要であって、いたずらに特定の相撲取りや芸能人
を批判し、世間様に頭を下げさせても何の解決にもなりません。

 西欧はキリスト教の文化ですから、世間に迷惑をかけたかどうかよりも、神との
約束に反したかどうかが悪いことかどうかの基準なのに、江戸時代の檀家制度や明
治以降の町内会制度の発達した日本では、自分の属する集団(村や会社)に迷惑を
かけたかどうかが「いけないこと」の基準のようです。

 相互監視(村八分)の世間に囲まれている日本社会の仕組みは、それはそれで犯
罪率の少なさに通じる長所の面もありますが、それほど大騒ぎする問題でもないこ
とに過剰に反応し、有名人の足を引っ張りすぎているような気がしてなりません。

 一番の安全策が似非(えせ)世間であるマスコミの餌食にならないように、相撲
取りにならないこと、政治家にならないこと、有名人にならないことというのであ
っては、日本の将来に希望がもてません。
 あれ、やわらちゃんは、スポーツマンで政治家で有名人だ。三つ巴攻撃に、どう
切り返すのでしょうか。日本をダメにするマスコミを投げ飛ばしてほしいものです。


2010.07.28(水)【倫理研修】(東京・金子登志雄)

 司法書士が落し物をしないって? まさか! 
 あちこちで、「信用」「能力」という落し物をしている司法書士がいるじゃない
ですか。

 そのせいか、24日の土曜日は、司法書士会館で、5年に1度の義務研修でした。
休日出勤手当はありません。研修テーマは、もちろん「倫理」です。

 ほんと、ここ数年、リンリ、リンリ、コンプライアンスと鳴く暑苦しい夏の虫が
猛威をふるっていますが、みなさまの所属する組織ではいかがでしょうか。

 日本社会は、たった1人が不祥事を起こすと、全員に影響し、研修が課せられ、
個人責任から連帯責任に転嫁され、75日を過ぎた最後はうやむやに終わります。
社会の「高校野球化(表面真面目主義)」ともいうべき嘆かわしい傾向です。

 コンプライアンス研究の第一人者で、小沢問題でも活躍した郷原信郎(ごうはら
のぶお)元検事の『法令遵守が日本を滅ぼす』の中に、次のような感想があります。
経済社会にも片足をおく私も同意見です。どの社会にもある少数者の不祥事よりも、
社会全体の活性化こそ重要な時期なのに………。

--------------------------------------------------------------------------
世の中が「法令遵守」に埋め尽くされる状況の中で、多くの賢明な組織人達は、
法令遵守という意味のコンプライアンスが、多くの弊害をもたらしていることに気
づき始めています。抽象的に法令遵守を宣言し、社員に厳命するだけの経営者の動
機が、命令に反して社員が行なった違法行為が発覚した場合の「言い訳」を用意し
ておくことに過ぎないこと、法令遵守によって組織内には違法リスクを恐れて新た
な試みを敬遠する「事なかれ主義」が蔓延し、モチベーションを低下させ、組織内
に閉塞感を漂わせる結果になっていることを感じています。
--------------------------------------------------------------------------


2010.07.27(火)【司法書士の宿命とは】(東京・富田太郎)

 今は昔。司法書士事務所に入って、最初に言われたことは、
「大きく頑丈な『カバン』を買いなさい。」ということでした。

 仕事柄、「権利証、登記識別情報、印鑑証明書」等々、様々なものをお預かりす
るため、司法書士は、『カバンが命』です。
 また、職業柄、絶えず重要書類を持ち歩いているため、『落し物』をしないよう
に注意する癖がついています。

 私など、カバンを置いた後、次の場所に移動するときは、「下よし!左よし!右
よし!」と手で確認作業をする習慣がついてしまいました(苦笑)。

 そのせいでしょうか?? 法務局で、『落し物』をよく見つけます。
(どこかの新人事務員さんが落としたのでしょうか? 帰ったら所長に怒られるぞ
ぉ〜。正直者の私に見つけてもらって感謝しなさい)。

 ・権利証 2回
 ・収入印紙 100万円相当   
  ・・・・・・・・・・・・・等々。

 もっとも、拾えば、拾うほど、今度は自分が落とすのでは? と心配になってし
まいます。

 話は変わって、先日、お金をおろすため、某銀行に行きました。
席で待つこと10分。暑いので、場所を移ったところ、隣のおばさんに注意されま
した。次のような会話です。

 「あんた『キャッシュカード』落としたわよ!」(←店内中に聞こえる大きな声)
 「へ????すいません………(汗)。」
 「注意しなさいよ!くどくど〜暑さでボケてるの!」(←結構憎たらしい口調)
 「すいません………………(恥)。」

が???
手に取ると、私のものではなく、なにやら女性の名前の書いたカードでした???
結局、銀行の行員さんに「落し物」として渡しました。

ところが、さらに10分後。なんと!あの「おばさん」が、

「私のカードがない!ない!ない! 落としたのかしら(絶叫)!」

店内中、大騒ぎ!です。

 どうやら、先ほどの『キャッシュカード』、「おばさん」のものだったようです
(笑い)。銀行のお客・行員らが爆笑する中、一人喜劇を演じた?「おばさん」、用
件が済むと、ダッシュでお帰りになりましたが………。

 おばさん。覚えておいてくださいね。
司法書士は、絶対に物を落とさないのです(きっぱり)!
そのように宿命づけられた職業なのです!

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そんな訳ないですね。皆さんも、くれぐれも『落し物』にはご注意を!


2010.07.26(月)【地方の成年後見人】(島根・根来川弘充)

 司法書士の業務という訳ではないのですが、成年後見人に選任され、お年寄りや
障がい者の方の財産管理をされる方が増えています。

 しかし、島根県では成年後見人のなり手が少ない実情があります。問題はいろい
ろあるかと思いますが、私は以下の点が主にあげられるであろうと思っています。

 @ 絶対的に人数が不足していること
 A 高齢者の割合が高いこと
 B 福祉サービスが十分にないこと
 C 資産価値が低いこと

 これらは、いずれも「都会地と比較して」ということで共通します。つまり、総
じて「地域格差」が大きな問題であると言えると思います。

 成年後見制度を必要とするお年寄りがいたとして、島根県では、まわりに選択で
きるほど十分な福祉サービスがあるわけでありません。また、仮にあったとしても、
選択できるほど財産を保有しているわけではありません。

 そこに成年後見人がついたとしても、現状受けている福祉サービスを如何にして
継続するかで精一杯です。事務としては、施設入所の方で身上監護の面ではまず心
配いらない事案であったとしても、医療や福祉などの様々な制度の手続きがあり、
通帳を保管さえしていれば大丈夫というわけではありません。また、事務所から遠
方の方もおられ、一つの事務をするのに半日あるいは一日かかるケースもあります。

 そして、これらの事務に対する報酬は家庭裁判所により決定されます。被後見人
の保有資産が少ないと、それに比して報酬も少なくなります。ケースによっては、
「月○千円」ということもあります。

 資産がない方も当然制度を受ける必要があれば、当然選任されなければならない
のであり、このあたりは、やはり行政の支援がなければできないと思います。

 乱暴な議論かも知れませんが、「相続税がかかるほどの財産をもっておられる方
が、資産を持っておられない方を支援すれば、税額が減額される」なんて、仕組み
ができないものかとも思ったりします。

 某元首相の贈与税額を聞くと、あるところにはあるのですから、是非、うまくま
わしていただきたいものです。


2010.07.23(金)【何の年月日?】(東京・金子登志雄)

 不況のためか、解散の依頼が増えていますが、平成22年7月31日の株主総会
で解散を決議し、清算人及び代表清算人を選任すると、

 登記簿に、「平成22年7月31日株主総会決議により解散」
 登記申請書に、「平成22年7月31日清算人及び代表清算人選任」

 と記載します。

 では、平成22年7月23日に平成22年7月31日をもって解散すると決議し
たら、次の●●に何が入ると思いますか。

 登記簿に、「平成22年7月●●日株主総会決議により解散」
 登記申請書に、「平成22年7月●●日清算人及び代表清算人選任」

 つい、「23」と思ってしまいますが、次のように並べ方を変えて記載したら、
●●に何が入るでしょうか。

 「株主総会決議により平成22年7月●●日解散」
 「清算人及び代表清算人平成22年7月●●日選任(効力発生)」

 「31」が入ることが容易にわかります。

 つまり、この年月日は株主総会決議の日のことではなく、解散の日であり、清算
人及び代表清算人の選任の効力が発生する日です。

 紛らわしい記載慣例を無視して、「株主総会決議により平成22年7月31日解
散」と年月日の位置を変えて申請してみようと思っているのですが、どこかにそん
な事例はありませんか。


2010.07.22(木)【カムイ伝】(東京・金子登志雄)

 「ガロ」とはなつかしいですね。私の世代が高校生や大学生の頃に流行った漫画
雑誌です。貸本屋で何度か借りたことがあります。

 「ガロ」といえば白土(しらと)三平の「忍者武芸帳」「サスケ」「カムイ伝」
などの忍者ものが有名でしたが、テレビ番組にもなったので、作品名を聞いたこと
のある方も多いことでしょう。

 「カムイ伝」は、私が大学受験浪人中に毎月配本の単行本になり(全21巻)、
本屋に注文し、浪人仲間の間で回して熱心に読んだものです(そのためか、受験で
はみな悲惨な結果に終わりました)。

 全21巻中、後半になると、配本がいつか不明という状態になり、全巻とも揃え
られなかったこと、読めなかったことが、いまでも残念に思うくらい、長編の素晴
らしい作品でした。

 何と第1巻で、主人公のカムイが殺されてしまいます。信じられないことが起き
ました。第2巻以降はどう続くのでしょうか。

 待ちに待った第2巻で、カムイが再登場します。生き返ったのかと不思議に思い
ましたが、主人公のカムイがいいます「弟よ、バカな死に方をして………」と(私
の想像の表現です)。

 つまり、カムイは双子だったというわけです。確か、「忍者武芸帳」でも主人公
がすぐに倒され、代わりの主人公が同じ格好をして登場します。

 「主役=不死身」というあり得ないウソをこの方法で解決したわけですが、その
発想に大いに驚かされたものです。忍法の種明かしもしますし、なぜか突然に狼が
登場し、狼の話が延々と続いたり、とにかく従来の漫画を超越した時代小説でした。

 テレビ番組の「カムイ伝」は単なる面白い漫画ですが、単行本には思想が入って
いました。カムイの出自は、いわゆる部落民です。恥ずかしながら、「カムイ伝」
によって日本にそういう差別問題が根強く存在することをはじめて知りました。私
の世代では、学校でそのことを(あえて?)教えなかったからです。

 いまでもブックオフにあるのか知りませんが、もし見つけたら、若い男性はぜひ
手にしてください。間違いなく夢中になり徹夜してしまうことでしょう。


2010.07.21(水)【一番じゃないと駄目なんですか?】(東京・富田太郎)

 先日、司法書士の本試験が終わりました。
 本年度の商業登記法の記述式問題は、「新設分割」でしたが、昨年と異なり、問
題自体に大きな欠点もなく、よくできた問題だったのではないでしょうか?
 もっとも、ごく一部には、「(出題)予想を外した言い訳なのか?」「自分の権
威を守るためなのか?」、問題内容に批判をされている方もいますが………。

 ところで、話は変わって、水木しげるの短編マンガに「一番病」という名作があ
ります。話の筋は「プライドの高い日本一を自負する棺桶職人が、昼夜休まず働き、
挙句の果ては、過労死し、自分の作った棺桶に入って死ぬ」というストーリーです。  

 この棺桶職人、「自分が日本一の棺桶職人だ、棺桶界の王者だ(一番病・エリー
ト病)」とプライドの高い人間として描かれています。実はこの作品、水木が、時
の漫画界のbP「手塚治虫」を皮肉った作品なのだそうです。

 当時(1960年代)、水木は「ガロ」という雑誌で妖怪ブームをおこしたので
すが、業界bPを自負する手塚は、これが気に入らない。

 手塚はある出版社パーティーの席で全く面識のなかった水木に話しかけ、
「あなたのマンガの絵は、雑で汚い」
「あなたの漫画くらいは、僕はいつでも描けるのですよ」
と言い放ったそうです。

 水木はその場では全く反論せず、のちにこの体験をもとにして、「自分が世界で
一番で無ければ気がすまない棺桶職人」を主人公にした短編「一番病」を書いて、
手塚を風刺したそうです(あっぱれ!)。

【後日談】
 手塚の死後、手塚治虫文化賞特別賞を水木が受賞。
 水木の周辺が「本当に賞を受け取るの?」といったところ、水木曰く、「だって
賞金もらえるんだよ♪」

 う〜ん・・・・大人ですね。
 私も、単に批判するだけではなく、水木氏のように大らかに生きたいものです。
もっとも bPは………私にはまったく無縁の世界ですが………(涙)。


2010.07.20(火)【先輩、後輩】(東京・金子登志雄)

 14日の本欄で、平成8年から司法書士だと書きましたら、あちこちから意外感
をもたれました。改めて、私はそれほど大きな顔をしてきたのかと反省しました。

 開業して1年も経たないのに、東京司法書士会の渋谷支部で平成9年の合併法制
の改正について講演しましたし(ここの聴衆に富田氏がいたと彼のマンガにありま
した)、同時期の千代田支部全体の合併法制に関する検討会では、新人でありなが
ら、手をあげて「それは違うんじゃないですか」などと大勢の前で発言してしまっ
たため、それ以来、目立ってしまったようです。

 通常なら「生意気な新人」して干されるところでしょうが、幸い、年齢が年齢で
したので(当時は40代後半)、「態度が大きい」と非難されることもなく、無事
に済みました。また、司法書士会自体に、「先輩、後輩」を重視しないオープンな
ところがあることに助けられた面もあります。

 これに対して、弁護士さん同士が名刺交換するときは、「何期(合格)ですか」
という会話ではじまり、それを聞いて、お互いの距離を測る傾向があります。遅れ
て資格をとった人間には、この挨拶は苦痛でしかないでしょう。
 
 司法書士は資格をとれば即開業できるためか、サラリーマンを定年退職した後に
資格をとって開業する方がいたりで、さまざまな業界からの参入がありますし、独
立開業するのに、弁護士ほどの年数を必要としないため、お互いのキャリアには、
あまりこだわらないようです。「ボス弁、イソ弁」という用語はあっても、「ボス
書士、イソ書士」(イソは居候という意味)は、今後もなさそうです。


2010.07.16(金)【会社とは何か】(東京・金子登志雄)

 先週のみずほ総研での講演でもそうでしたが、一般社会人向けの講演のときは、
できる限り「会社とは何か」から話すように心がけています。

 そこで、「会社も社団法人だ」というと、多くの方が驚かれるようです。正確に
いうと「営利社団法人」であり、この「営利を目的とする」点が会社の特徴であり、
一般社団法人や公益社団法人と相違するところです。

 「営利目的というが、一般社団法人も宗教法人も司法書士法人ですら、どぎつい
金儲けに走っているじゃないか」といわれそうですが、金儲け目的と営利目的は意
味が違い、儲けた金を構成員(社員=社団の構成員)に分配できるようになってい
ないと「営利」とはいいません。

 会社法には「株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利
の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない」(105条)とありま
すが、非営利の一般社団の法律には、「社員に剰余金又は残余財産の分配を受ける
権利を与える旨の定款の定めは、その効力を有しない」(11条)となっています。

 まとめると、次のとおりです。

 「営利」………儲けを構成員に分配する目的。利益配当が可能。
 「社団」………人の集合体(団体)の意味。構成員が1人でも(100%子会社
     など)、明日は複数になれるので社団性を失わないとされる。なお、構
     成員を「社員」というが、株式会社の株主がこれにあたり、従業員を意
     味する「(会)社員」とは相違する。
 「法人」………権利義務の主体になれる。法人でないと共有扱い。

 この営利社団法人を経済的側面でみると「事業組織」であり、その事業組織に属
する「権利義務」を直接・間接に他に移転させるが組織再編行為です。吸収合併も、
権利義務を承継するものであって、社団法人自体が統合するものではないと説明し
たとおりです(昨日の本欄参照)。


2010.07.15(木)【合併とは何か】(東京・金子登志雄)

 「4月1日に合併して消滅したのだが、消滅会社の決算につき存続会社で承認す
るのか、その後に決算公告を存続会社が代わってするのか」という質問をときどき
受けます。

 プロである弁護士や司法書士でも、必要だと思っている方が少なくありません。
それは吸収合併が消滅会社の全部をまるごと引き受ける包括承継(一般承継)だと
信じているからです。

 「合併とは複数の会社が1つになること」「法人格が統合すること」などという
説明からは、何でもかんでも承継されるように誤解されてしまいますが、合併は、
法人の中身である財産上の現実の権利義務を承継するものであって、法人自体を承
継するものではありません。

 その結果、法人と不即不離の定款、役員の地位、許認可などは承継されません。
現実の財産を承継するため、財産に当たらない貸借対照表も資本金も承継しません。

 私は、これを「合併して解散するのではなく、解散してから合併するのだ」と説
明しています。会社が解散すれば、定款も役員の地位も貸借対照表も消えてしまい、
現実の財産だけが残ります。この権利義務が包括的に承継されるのが合併です。

 会社が解散したのですから、実務家の私は、こんなことは考えるまでもなく、当
然のことと「実感」で感じていますが、残念ながら、こういう基本的なことを書い
ている教科書や参考書は、全くといってよいほどありません。学者の怠慢なのか、
合併をわかっていないのか、どちらかですが、困ったものです。


2010.07.14(水)【法務キャリア】(東京・金子登志雄)

 今年の司法書士試験(4日に実施)の商業登記書式問題は「新設分割」が出たよ
うです。組織再編に関係する出題は、これまでほとんどなかったため、組織再編専
門司法書士を名乗っている私としては、うれしいものです。

 私が合格した平成8年は、吸収合併に絡んだ問題でしたが、吸収合併そのもので
はありませんでした。

 問題文にA社の株主が、株主甲〇〇株、株主乙社〇〇株、株主丙………などと列
挙されていたのですが、何も感じず、読み飛ばし、次々と問題を解いていたところ、
確か登記できない事項を聞く設問があり、あてずっぽうで「監査役」とまでは想像
ついたのですが、理由が全くわかりませんでした。

 試験後にわかったことは、上記の持株数から、乙社がA社の親会社であることを
読み取らせ、親会社である乙社の監査役が子会社であるA社の取締役に就任できな
いことを発見させる問題でした。

 これで不合格を確信し、合格発表も見に行かなかったのですが、ありがたいこと
に、筆記試験の合格者にだけ送付される口述試験の案内が葉書で来たので、そこで
はじめて合格したことを知りました。あわてて、口述試験の勉強をはじめたのはい
うまでもありません。

 もし、あのとき、運命の分かれ目である葉書が来なかったら、翌年も受験してい
たことでしょう。そこで合格したら、富田さんと同期になれましたが、不合格なら、
いま頃、富田「先輩」には口も聞いてもらえなかったことでしょう。

 そうなんです。彼とは合格年次が1年しか違いません。ここに登場する島根県の
渡部さんなどは、司法書士としては私の大先輩です。

 ただ、私の場合は、それまでも勤務先のM&A専門会社で法務担当の仕事をして
いたので、それを通算すると法務キャリアは私のほうがずっと長いため、偉そうな
顔をさせてもらっているという次第です。


2010.07.13(火)【四半期選挙の弊害】(東京・金子登志雄)

 「参議院を制する者は国を制する」などといわれます。法律案も衆参で一致しな
いと成立しないからです。したがって、昨年の民主党の大勝で政権交代が行われた
というのは正確ではなく、今回の参議院で民主党が過半数を占めてはじめて政権交
代が完成するというべきでしたから、民主党の大敗の結果、政権交代はとん挫しま
した。参院議長も第一党の自民党になる可能性が高く、各委員会も同様でしょう。

 原因は民主党のオウンゴールが主でしょうが、地力では、自民党と公明党連合軍
(1人区)のほうが上回っていますから、揺り戻しは当然であり、実力どおりの結
果というべきでしょうか。

 この結果、いま実質的に政権を握っているのはどの党かといわれると、むずかし
いところです。こういう状態になると、実務を仕切る官僚の力がますます高まるこ
とになり、躍進したみんなの党が標榜する公務員改革も逆行することでしょう。

 ご承知のとおり、上場企業は欧米式に四半期(3ヶ月)ごとの短期間に業績を開
示し、投資家の判断を仰がざるをえず、長期的視野に立った経営が難しいといわれ
ていますが、こと政治に関しては、もっとひどく、毎日のようにマスコミから取材
を受け、毎週のように世論調査なるものをされ、その内容も、業績計画(マニフェ
スト)の進行具合ではなく、現社長(総理)への支持率、次期社長に相応しい人は
………なんてものばかりですから、誰が社長になっても長期政権は難しいでしょう。
これでは、株価(国力)があがるはずがありません。

 ところで、こんなときにこそ登場すべきはずの次期社長に最も相応しいとマスコ
ミ評価が高かったあの方は、どこに行ったのでしょうか。あの方もマスコミに潰さ
れた被害者のような気がしてなりません。


2010.07.12(月)【選挙結果】(東京・金子登志雄)

 参議院の選挙結果は、衆参ねじれ国会ということになりました。都市部の2人区
以上では得票数で与党の民主党もよく頑張ったようですが、地方の1人区で自民党
の底力に負けたようです。また、菅さんの不用意な消費税発言の影響も小さくなか
ったことでしょう。

 東京での蓮舫さんの得票数はすごかったのに、神奈川の千葉法務大臣の落選の理
由は何でしょうか。華(ハナ)があるかどうかの差でしょうか。また、比例区など
の結果をみると、政党別得票数では民主党が1番と思いますが、当選者数では自民
党がトップになったのは、選挙制度の問題でしょう。

 いずれにしろ、これで民主党は衆議院で300議席をもっていても、参議院で法
律案が拒否され、安倍・福田・麻生自民党政権と同様の塗炭の苦しみを味わうこと
になりました。今後、首相がころころ変わる可能性を否定できません。

 衆参のねじれは、日本人的バランス感覚といいたいところですが、会社でいえば、
社長(衆議院)と専務(参議院)の経営方針が異なり、内紛状態ということですか
ら、国家の運営の見地からは決して望ましいことではありません。同じバランス感
覚なら、民主党に4年間任せて、それでだめなら、4年後にまた政権の交代という
のが、政治の王道ですが、予算以外は衆参対等の2院制度ではこれはむずかしいの
かもしれません。

 本欄らしく会社法の話でいいますと、取締役会のある株式会社では、取締役の最
低員数が3人になっている理由はなぜかということです。2人や4人の偶数であれ
ば、賛成・反対が同数になり、何も決まらないが、奇数であれば、決着がつくとい
うことです。

 国会も2院制をやめて、参議院を廃止するか、あるいは参議院を2つに分けて、
3院制にしないと、何も決まらないという最悪の事態になりますが、これには憲法
の改正が必要です。現実には無理ですから、日本は今後も暗闇から抜け切れそうも
ありません。新しい社会の産みの苦しみはまだまだ続きます。


2010.07.09(金)【組織再編手続業務】(東京・金子登志雄)

 先日の7日は、みずほ総研主催の組織再編のセミナーで、1日講師を務めまし
た。参加者は上場企業の経営企画部などの方を中心に約60名程度でした。

 講義の折に、個人的な興味があったので、「このセミナーの前から、私の名前
を知っていた方は」と聞きましたところ、約1割の方が手をあげてくれました。
想像していたよりもずっと多く、たいへんうれしく思いました(その割に、私に
回ってくる仕事が少ないのはどういうわけでしょうか)。

 そこでは、「弁護士さんは、けんかの助っ人が商売だから、問題が起きた時に
役立つ人であって、合併などの平和的な手続は得意分野ではない。組織再編の手
続は、相手の土俵で相手のルールに従って動かなければならないため、必ず司法
書士を介在させなければならない」と力説してきました。

 合併手続の書籍は大量にありますが、いざ手続をする場合には、債権者異議の
催告書には押印が必要か、この書面の印鑑は実印か認印か、会社名の前に住所が
必要かなどなどにつき、質問されても、実際に手続を経験していないと即答でき
ることではありません。

 公告を忘れて組織再編ができなかった上場会社、実務が認めていないのに学者
の見解で組織再編を実行してしまった上場会社、商法時代の知識で会社法では不
可能な簡易合併を強行してしまった上場会社………、いずれも「餅は餅屋」に依
頼しなかったゆえの失敗であることを話してきました。

 少しは司法書士の宣伝になったと思っています。
(司法書士会の幹部のみなさん、ESGのメンバーは会務には参加しなくても、
こうやって司法書士の広報・宣伝に頑張っていますよ。こういう活動=出版を含
む=も評価基準に加えていただけませんか)。


2010.07.08(木)【また会計監査人】(東京・金子登志雄)

 6日に某上場会社の会計監査人の重任の登記を申請する際に、登記情報と照会番
号を取得し、その照会番号をもって、会計監査人の資格証明書としました。

  http://www1.touki.or.jp/gateway.html

 ところが、翌日(昨日)、法務局から、「ただいま、〇〇監査法人は登記中のた
め、申請された登記の完了が〇〇日まで遅れます」との連絡がありました。
 
 つまり、6日には登記中でなかったが7日には登記中になってしまったというわ
けです。こんなことがあるんですね。

 これでわかったのは、「6日、照会番号………」と申請書に書いても、6日付の
登記内容が法務局に知れるのではなく、法務局が確認した日の登記内容で伝わると
いうことです。代表者事項の照会番号では、法務局が確認したら、その時に代表者
でなくなっていたなんてこともあり得るのでしょうか。
 
 いずれにしろ、今月は、会計監査人の登記との相性がよくないようです。来年か
らは、7月の会計監査人の登記については、照会番号をやめるしかなさそうです。


2010.07.07(水)【中(なか)株】(東京・金子登志雄)

 あずさ監査法人が有限責任あずさ監査法人と名称変更したことで、「有限責任」
と「監査法人」を分離した位置に置いてよいのかと驚いた人も多いようです。

 その中で、条文まで調べた人は何人いたでしょうか。当ESGでは、2人いまし
た。私と富田センセです。
 
 私は彼に「さすが一番弟子」と声をかけましたが、彼は「さすが暇人のセンセ」
と返してきました。

 公認会計士法によりますと、「有限責任監査法人たる監査法人は、その名称中に
有限責任を使用しなければならない」(法34条の3、同施行規則18条参照)と
あるだけで、名称中の有限責任の位置までは規制していませんでした。

 ですから、「もう有限責任です監査法人あずさ」でもよいのでしょう。

 ちなみに、株式会社も商号の中に必ず「株式会社」を入れなければなりませんが、
「株式会社法務センターESG」(前株)でも、「法務センターESG株式会社」
(後株)でもよいだけでなく、「法務センター株式会社ESG」(中株?)でもか
まいません。東京の新宿区に実例もあります。

 という話を仲間内でしましたら、会社法6条に「商号【中】に株式会社という文
字を用いなければならない」とあるので、中株が正規の方法だという意見が登場し
ました。う〜ん、なるほどです。



2010.07.06(火)【近くでの統廃合(その2)】(島根・渡部浩義)

 参院選が公示され巷では激しい(?)選挙戦が繰り広げられつつあるようですが、
私の地元自治体ではこの選挙に絡み、登記所の統廃合問題とは別のショッキングな
統廃合問題がありました。
 
 なんと、いままで町内各集落地域にほぼ均等に配してあった『選挙投票所』を効
率よく運用(?)するため相当数統廃合するというのです。廃止される投票所近傍
の集落に住む自らでの交通移動手段のないお年寄り方は、どうやって『自由な意思
(志)による投票』をすればよいのでしょう。まったくもって不可解、そして残念
な措置です。常に高い投票率を誇っていた島根県での選挙でしたが、これでは投票
率も軒並み下がることでしょう。

 http://www1.pref.shimane.lg.jp/contents/shichoson/45sousenkyo/suii.html

 「もう、ワシらは国の頭数に入っていないみたいだ。絶対に投票には行かん!」
と登記委任状に印鑑をもらいにお邪魔したさる宅にて、お茶飲み話にそのおじいさ
んは語気を強められました。

 「参政権・選挙権は日本国憲法に………、」なんてまどろっこしいことを言うつ
もりはありません。またこうした今日の状況を作ったのも、他ならぬ私やこのおじ
いさんをはじめとする国民であることも間違いない事実でしょう。ただ、小さな地
域集落の小さな投票所の維持すらできないというのが、どうやら現在の日本国の本
当の『国力』であることは間違いないようです。

 こうした地域に住む私たちの眼前で、「地域の声を、実情を、しっかり国政の場
に伝えます!」などと参院選候補者に絶叫されても、私たちは齢を重ねた老人や幼
い子供と手を繋いで顔を見合わせ、下を向いているほかありません。

 「こうして地域やそこに暮らす人たちは次第に元気を失い、ひいては国そのもの
も元気を失っていくのだろうな………」などと、誰もいなくなった夕方の事務所で
思い耽っています。


2010.07.05(月)【登記中でも抄本をとれる】(東京・金子登志雄)

 2日の金曜日も某上場会社の6月に行われた定時株主総会で決まった役員変更の
登記を申請するつもりでした。

 すべて書類を作成し、あとは会計監査人である新日本有限責任監査法人の資格証
明書をオンライン申請で取得するだけだと思い、さっそく操作しましたら、なんと、
【登記手続き中】の表示で謄本をとれません(注:オンライン申請で取得したもの
自体は証明書類になりませんが、照会番号付のものを取得し、その照会番号を添付
書面の代用に使う方法があります)。

 この時期に【登記手続き中】にして顧客の登記を妨害するなんて、なんという会
計監査人だと腹が立ちました(もっとも、トーマツも、あずさも同じでしたから、
監査法人も役員変更時期なんでしょう)。

 これでは今日の登記申請ができません。困ったなと思いましたが、新日本有限責
任監査法人の管轄法務局は、当事務所のすぐ近くの東京法務局です。さっそく訪問
して、登記簿抄本を取得してまいりました。

 あまり知られていませんが、登記中の項目以外の内容であれば登記事項証明書を
取得できるのです。ただし、管轄法務局以外では、どの部分が登記中かを知る方法
がありませんので無理です。管轄の法務局であれば、役員につき登記中とわかりま
すから、その他の事項については証明書を発行してくれます。会計監査人の重任登
記であれば、新日本が監査法人であり実在しているという証明だけでよいため、す
ぐに発行してもらえました。

 これは会社でも同じであり、増資の登記中に代表者の資格証明書や印鑑証明書を
取得することも可能ですから、覚えておいて損はない知識でしょう。


2010.07.02(金)【監査法人の名称変更】(東京・金子登志雄)

 きのうは、3大監査法人の1つである「あずさ監査法人」(東京都新宿区)が、
新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツに続いて有限責任監査法人
となり、名称を「有限責任あずさ監査法人」と変更した日でした。

 この結果、6月下旬(たとえば28日)に定時株主総会をした上場会社で「あ
ずさ監査法人」を会計監査人としているところは、「6月28日(あずさ監査法
人)重任」と「7月1日あずさ監査法人の名称変更」という2つの登記をしなけ
ればなりません。

 2回に分けて登記すると登録免許税は6万円、まとめて7月1日以降に登記す
ると3万円で済みます。

 というわけで、私も、6月中に重任の登記をせず、きのうは、あずさ監査法人
の名称変更登記をじっと待っておりました。新宿法務局でそれが終わらないと、
名称変更を立証する書面が準備できないからです。

 「1日で登記が完了するわけがないじゃないか」と思われるでしょうが、過去
のトーマツなどのケースでは、その日の早くに登記が終わっていたのです。全国
の企業に影響することですから、監査法人が管轄法務局と十分に事前に調整して
いたのでしょう。

 その記憶(先例?)があるので、今度も同じだと思って待っていたわけですが、
残念ながら、今回はそういう調整がなかったのか、午後4時過ぎに私もあきらめ、
「重任」だけ登記を申請しました。その日のうちに登記申請したい事情があった
ので仕方ありません。後日、「名称変更」だけの登記をしますが、忘れられない
3万円になりそうです。


2010.07.01(木)【近くでの統廃合(その1)】(島根・渡部浩義)

 八丈島の登記所が東京都心の登記所に統廃合される時代です。いまさら最近また
進むの登記所統廃合の流れに反対したところで仕方のないことでしょう。

 私の事務所所在地管轄登記所(法務局支局)も、来年3月を目処に廃庁され、最
寄登記所(さらに約30Km先)へ統合される旨の内示が過日ありました。これで
島根でも内陸部の登記所はなくなり、残存する登記所は、すべて沿岸部に位置する
ことになります。

 私は開業来17年間に、2度目の管轄登記所の統廃合を経験することになるよう
です。もっとも、近傍には開業来30余年、今回で4度目の統廃合経験というご同
業もおられます。

 約10年前の前回の登記所統廃合の折には、私もその反対運動にかなり熱を上げ
ましたが、今回は正直なところ、もはやその気力もありません。地元自治体等にお
いても、強く大きな反対運動の機運の盛り上がりはなさそうです。

 もっとも反対したところで、すでに方針が決定し、全国ですでに実施されている
『商業登記所80庁化』への流れや、庁舎統廃合の基準となる処理事件数を引き合
いに出されれば、当県の実績数では、松江地方法務局全体そのものが近傍庁へ統合
されてもよい状態です。

 そして最近は『オンライン申請を基本とする新しい登記法制』という強い味方が
国にはついています。「いまごろ何を寝言いってるの・・・。」と世の大勢からバ
カにされるのがオチでしょう。

 「採算や受益者規模を度外視してもやらなくてはならない『国のシゴト』がある。
ナショナル・ミニュマム保障だ!」なんて思っていましたが、普通の国民なら生涯
めったに利用することのない登記所の配置のことなどは、『事業仕分け』に象徴さ
れる時代にあっては“小さなこと”なのかもしれません。過日は、時機よく「国の
出先機関は原則廃止」などという見出しが新聞紙面に踊りました。

 昭和の末期、登記簿コンピュータ化パイロット庁として指定された某登記所の地
元説明会にて、「昭和76年までに全国1192箇所の全登記所の電算化を終え、
コンピュータによる登記事務を実施します。」と、血気盛んに説明されていた某法
務局民事行政調査官の言葉が、前後の脈略もなく急に思い出されてきました。

 いまさらながら残念ですが、世のうねりを受け入れるほかない、というのが最近
の心境です。人寂しい田舎での次の対応はどうあるべきでしょうか?


2010.06.30(水)【脳は10%しか使われていない???】(富田太郎)

 最近、物忘れが酷くなってきました。

 ある日のこと。
 合併の書類を作ろうとしたところ、なんと、官報原本が見当たらず(汗)。
 探すこと1時間。いつものキャビネットにない、ない、ない………。

 紛失したのか………………(涙)。どうしよう………。
 意気消沈して、机に戻ったところ、目の前に「官報原本」が置いてありました。
私もボケてるなぁ………。

 ということで、「脳を活性化する本」を読みました。なんと、あの天才科学者の
A・アインシュタインによれば、

     『私たちの脳は10%しか使われていない』

そうなのです!

 なるほど! あと90%全てを有効に使えれば、どれほど凄い能力を発揮できる
でしょうか!

 ニヤリ♪ 『脳のトレーニング』をすれば、会社法において、あの金子先生に勝
てるかもしれない♪

 ということで、その本に書かれている脳のトレーニングなるものを試してみまし
た♪

 1週間後………………………気のせいでしょうか???
あんまし、「会社法」が理解できるようになったとも思えない………。

 ほんとに、A・アインシュタインはそんなこと言ったのだろうか???

 ということで、万巻の書物を読み漁ったところ(注)、
どうも、アインシュタインが、直接言ったのではなく、また仮に言ったとしても、
『もっと頭を使え!』程度の意味だったようです。

 そして、後年、この言葉が一人歩きして、自己啓発セミナーなどで「根拠?と
してアインシュタインも言っているよ!」などと、利用されてきたようです。

(注)A・カラプリス「アインシュタインは語る」/W・ヘルマンス「アインシュ
タイン神を語る」

 なお、科学的には、「脳は使われていない部分があるわけではなく、領域によっ
て強弱はあるものの、脳は全体各所で活動しているそうです。」

    ………………………

 脳トレーニングして、会社法を理解しようとした私って・・・・・・・(恥)。


2010.06.29(火)【組長が書いた本】(東京・金子登志雄)

 土日は、いま話題の山口組傘下の武闘派・後藤組の組長だった後藤忠政氏による
『憚りながら』(宝島社)を読んでみました。印税の全額が福祉に寄付されるとい
うことですし、法律を職業とする者として、こういう本は、必修科目だと思ったか
らです。

       http://tkj.jp/book/?cd=01754701

 暴力を否定しない姿勢には違和感がありましたが、「憚りながら」とはいえ、刑
務所入り8回の経験者で指詰めしている元やくざの組長が政界・創価学会・芸能界
の面々を「道徳的」に批判する内容が意外に面白く、一挙に読んでしまいました。

 暴対法の施行以後、やくざ組織も相当追い詰められ自主規制しているようで、何
か事件を起こすのは、末端の末端のようです。確かに、「オレの背後には○○組が
いる」と脅迫していても、組のほうでは知らないことも多いでしょう。相撲の野球
賭博は、どのあたりがしていることなんでしょうか。

 148頁の次の文章は私も全面的に賛成です。
--------------------------------------------------------------------------
 マスコミってのは、人を傷つける仕事なんだ、サツでもないのに、人を追い詰め
て、追い詰めて、最後には命まで取っちゃうんだからな。ヤクザでも、仇でない限
り、そんなことはしない。それで散々人を傷つけといて、会社を倒産させといて、
その記事が間違ってたら、数行で「すみません」なんて謝る。テレビだと番組の最
後に「お詫びして、訂正します」ってこれだけだ。そんなもんで済むのかよって、
いつも思ってるよ、俺は。
--------------------------------------------------------------------------

報道で世論を煽っておきながら、「ほれ世論もこういっている」とマッチポンプ
で有能な政治家や企業を追い落とし、政治や経済を混乱させる大手マスコミは、ほ
んとにタチが悪いと思っています。やくざに批判されても仕方ないでしょう。 


2010.06.28(月)【任意設置会社の強制】(東京・金子登志雄)

 会社法328条により、公開会社で大会社(資本金5億円以上の株式会社)は、
「監査役会及び会計監査人を置かなければならない」とされています。
 
 会社法2条の定義規定により、監査役会設置会社には、「監査役会を置く株式会
社」(任意設置会社)と「この法律の規定により監査役会を置かなければならない
株式会社」(強制設置会社)とがありますが、大会社は強制監査役会設置会社とい
うわけです。同様に、会計監査人設置会社にも任意設置会社と強制設置会社があり、
大会社は後者です。

 ですから、上場企業でも、資本金5億円以下であれば、監査役会も会計監査人も
置く必要がありません。

 ところが、JASDAQ(注:昔の店頭登録)等の上場会社は大阪証券取引所の
規則(JASDAQ等における企業行動規範に関する規則の特例)で、任意設置を
強制され、定款変更を余儀なくされました。

 (例)
  http://jds.jasdaq.co.jp/documents/tekiji/DMOPEYGTXVHIMDAA.PDF

 (規則)
  http://www.ose.or.jp/rules/ki_data/ki50.pdf

 会社法では「任意」だが、証券取引所の規則で「強制」されたわけですが、これ
で監査役は3名以上が強制されるなど、企業側の費用負担も増大することでしょう。

 経済の活性化が叫ばれているのに、世の中の動きは、規制、コンプライアンス、
企業倫理………という腹の膨れない束縛ばかりです。弁護士や会計士、司法書士に
とっては、飯の種になりますが、何かおかしいと感じるのは私だけでしょうか。


2010.06.25(金)【親子合併なのに買取請求】(東京・金子登志雄)

 上場会社が100%子会社を吸収合併することにしました。さて、あなたが上場
会社の株主だとして、こういう合併に反対しますか。

 しませんよね。外にある1事業部門を部屋の中に入れるだけの話ですから。した
がって、私も株主に反対されたという話は耳にしたことがありません。

 ところが、次をみてください。

  https://www.release.tdnet.info/inbs/140120100610032605.pdf


 総額で27億円を超える買取請求でした。

 これ、きっと合併に反対なのではなく、株を売りたいが量が多すぎるため、売り
出せば自分で株価を下げてしまうため、このたびの合併をチャンスとして、会社に
買い取ってもらったのでしょう。

 合併に賛成だけど買取請求………、へんな制度ですね。27億円を払える会社も
たいしたものですけど。


2010.06.24(木)【「辞任」できない取締役?】(島根・根来川弘充)

 先月、役員変更登記申請の依頼を受けたのですが、昨年12月末までに定時総会
を開かなければならなかったのに、遅れて今年4月○日に開いて新たな役員を選任
したという会社からの依頼でした。

 取締役の人数は、定款で定めた数の最低数である3名だったのですが、今年3月
にそのうち1名から辞任届を提出されているとのことでした。
 また、3名とも任期は、「任期中の最終の事業年度(平成20年10月1日〜平
成21年9月30日)にかかる定時総会終結」までとなっていました。

 会社の担当者の方は、「(定時総会終結までなのだから)総会を開いた4月○日
まで任期がある」と思われていたようですが、定時総会は、一般的に定款で開催す
る日が定められています。
 私が依頼を受けた会社は、「事業年度の末日から3カ月以内」と定められていま
した。
 もし、定めた期間以内に開催をしなかった場合は、その期間末日をもって、任期
が満了になり、退任したことになります。

 そして、期間を超えた場合は、定款で定めた期間満了日をもって退任したことに
なります。
 そのため、取締役3名は、総会を開いた今年4月○日でなく、昨年12月31日
をもって任期満了により「退任」したことになります。

 では、今年1月1日から総会を開いた4月○日まで役員は不在???
・・・ところが、そういうことにはなりません。

 法律では、取締役が辞任や退任をしても、定款で定めた員数を欠くことになる場
合、次の取締役が選任されるまで、引き続きその地位を引き継ぐことが義務付けら
れています。

 つまり、このケースでは、3名とも今年4月まで取締役であったということにな
ります。

 しかし、実際に登記が終わると、旧取締役は「平成21年12月31日退任」、
新取締役は「平成22年4月○日就任」と登記されてしまい、平成22年1月1日
から平成22年4月○日まで、あたかも、取締役がいなかったかのように見えてし
まいます。

 担当者の方は、登記完了後の登記事項証明書を見て、「法律で取締役であること
が義務付けられるのであれば、『平成22年4月○日退任』で良いのでは」と疑問
の様子でした。

 確かにそうかもしれませんが、法務局にとっては、「昨年12月末までに選任を
しなかった」という事実の方が重要ということなのでしょう。

 また、今年3月に辞任届を会社に提出した取締役も、その時点では、法によって
強制された取締役なのですから、実際には「辞任」は無効であったということにも
なります。

 会社に「辞任届」を出せば「辞任」したことにならないケースもありますので、
辞任された役員の方は、登記簿まできちんと確認されることをお勧めします。


2010.06.23(水)【総会議事録の作り方】(東京・金子登志雄)

 昨日あたりから、3月決算会社の定時株主総会が目白押しになりました。平素
はヒマな当事務所にも、「定時株主総会が終わったから役員変更登記を頼む」と
いった電話が入りはじめました。商業登記案件が最も多くなる時期です。

 さて、株主総会議事録の作り方ですが、商法時代は「議長及び出席したる取締
役之に署名することを要す」と規定されていましたが、会社法になった現在は出
席役員の氏名と議事録作成取締役の氏名を記載するだけでよくなりました(実際
には議事録作成者が押印することがほとんどです)。

 しかし、それなりの企業は規定が改正されたことを知りながら、相変わらず商
法時代の議事録作成方法に従っているようです。議事録を重々しくするためでし
ょうか。

 この場合に、出席取締役全員を議事録作成者とすれば会社法方式にも適合しま
すが、実際には、議長(社長)を議事録作成者とし、それ以外の取締役は単に記
名押印しているにすぎない例が多いようです。

 確かに、議長だけの記名押印では、「ほんとに総会を開催したのかいな」とい
う疑問をもたれてしまうことでしょう。それでも、出席取締役の記名押印さえ不
要にしたのは、株主総会は株主が出席しているので、ウソの議事録は作れないし、
取締役の発言の責任に影響する場面ではないという理由です。

 この方式は、実は会社以外の総会議事録では、そうめずらしいことではありま
せん。私の居住するマンション管理組合の総会議事録も議事録署名人を選任して
おり、理事は署名していません。会社法方式では、議事録作成者を取締役に限定
していますが、たぶん、会社以外の法人の議事録の作成法が頭にあって、商法時
代の方式を変更したのでしょう。今は抵抗のある会社でも、便利さに変えられま
せんから、徐々に普及していくものと思われます。


2010.06.22(火)【24時と0時の違い(その3)】(金子登志雄)

 会社の存続期間や新株予約権の行使期間が「平成22年7月1日まで」とあった
ら、「平成22年7月●日存続期間の満了により解散」、「平成22年7月●日行
使期間満了」などと登記します。

 さて、この●には、何が入るでしょうか。

 普通に考えれば、期限の満了した「1(日)」だと思うでしょうが、登記実務で
は「2(日)」にします。1日の24時に満了するのだから、効力は2日0時に発
生するという理屈です。「期間の満了日」(締切日)と「満了の効力発生日」(解
禁日)を使い分けているわけです。

 しかし、理屈から考えても「1日24時」が満了時ですから、1日には登記でき
ないが、2日以降に「1日満了」として登記するのが筋ではないかと今でも思って
います。

 「1日まで」が「2日」と登記されるのなら、「2日から」は「1日まで」とい
ってもよいではないか、「効力発生日に、その効力が生じる」も「効力発生日の前
日の最終」といってもよいではないかと、相変わらず、17日の本欄の問題に引っ
かかっている私でした。


2010.06.21(月)【24時と0時の違い(その2)】(金子登志雄)

 17日の本欄で「効力発生日の前日の最終時(24時)」は「効力発生日の最初
(0時)」と解釈できないかと提言しましたが、別のところで同じ問題がありまし
た。

 株主総会の招集通知は原則として会日の2週間前に発送しなければなりません。
6月30日(水)が定時株主総会であれば、発送日は15日(火)以前であって、
同じ水曜日の16日では不可です。なぜなら、発送日と総会日との間に14日間が
必要であり、16日発送では「24時間×14日」に不足するからです。つまり、
「2週間前」とは「中(なか)14日」という意味です。

 では、7月1日を効力発生日とする吸収合併につき、「効力発生日の20日前ま
でに公告せよ」という会社法797条4項の場合は、いつまでに公告しなければな
らないでしょうか。

 やはり、「中20日」必要のため、6月10日までに公告する必要があります。
ところが、電子公告の実例をみると、6月11日を公告開始期間にしている例が多
いのです。

 つい先日まで、これはまずい公告だと思っていました。しかし、電子公告は、午
前0時には有効ですから、6月11日掲載でも「中20日」は満たしています。

 つまり、20日前までの24時までに公告しなければならないのに、20日前の
日の0時に公告しているのです。これでも、「20日前までに」というのでしょう
か。これがよいのであれば(よいのでしょう)、株主総会の招集通知も16日付で
発送し、「0時に発送しましたが、いけませんか」といえるかもしれませんね。


2010.06.18(金)【合併と決算公告】(東京・金子登志雄)

 決算公告をホームページや電子公告でした場合には、定時総会終結後5年間掲載
し続ける義務があります(会社法440条3項)。

 では、この会社が途中で合併により消滅した場合には、残りの期間を存続会社が
引き継いで掲載し続けなければならないものでしょうか。

 この点に関しては、私は、『親子兄弟会社の組織再編の手続』(87頁)でも、
『商業・法人登記300問』(336頁)でも、否定説を主張してきました。

 ところが、先にご紹介した大手法律事務所の『組織再編』7頁には、「消滅会社
が負っていた会社法上の義務(10年間の会計帳簿保存義務、電子公告ないし会社
法440条3項に規定する措置による決算公告の5年間継続義務等)についても存
続会社が承継し、これを履行する義務を負う」とありました。

 あまりに、あっさりと書かれているので、深い意味はなく包括承継を説明しただ
けだと信じたいのですが、真意は不明です。
 
 思うに、合併とは複数の会社が1つに統合することではなく、合併のため解散し、
残った積極消極財産(会社法では「権利義務」)の全部を他社に承継させるもので
す。解散したわけですから、法人固有の定款や役員だけでなく、事業に関係する法
人固有の貸借対照表や資本金などという非財産的なものも一緒に消滅します。会計
帳簿は有形の資料として承継されますが、権利者不在で消極財産ともいえない決算
公告継続義務まで引き継ぐとは思えません。

 利害関係者が過去5年間の事業成績を比較したいから、5年間の義務が課されて
いるのであって、合併であろうと何であろうと、会社が消滅したら、比較する意味
も価値もありません。役割を終えてしまいます。

 合併によらない通常の解散にあっても、会社消滅後(清算結了後)には、清算人
が会計帳簿を保存しますが、意味のない決算公告継続義務までは負っていないと考
えられます(会社法508条参照)。

 合併による会社の消滅でも、同様に考えないと、決算公告継続義務未了の会社を
吸収合併したら、存続会社の役員に義務違反の罰則の恐れが生じないでしょうか。
存続会社の公告方法が官報であったら、解散した他社の過去の決算を官報で公告せ
よというのでしょうか。

 なお、葉玉ブログ2008年4月27日Q10も当然ながら否定説でした。

 http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/04/post_e3fc.html   


2010.06.17(木)【24時と0時の違い】(東京・金子登志雄)

 合併消滅会社や株式交換完全子会社の株主が合併や株式交換に反対で、株式の買
取請求を行使すると「効力発生日に、その効力を生ずる」とされています(会社法
786条5項)。したがって、この反対株主には合併対価等を割当てできません。

 であれば、ほとんどの会社が商法時代からの慣例で合併契約書等に、

「効力発生日【前日の最終】の乙の株主名簿に記載された乙の株主に対して………
 割り当てる」

と定めているのはまずいのではないかということが、今年になってから主張されて
います(商事法務1893号17頁以下、一昨日ご紹介した『合併ハンドブック』
82頁以下、『組織再編』23頁以下など)。

 買取請求を行使した反対株主も前日最終の株主に含まれ、割当対象になってしま
うように読めてしまうからです。

 この合併契約の典型的表現については、私も『組織再編の手続』を執筆中に(平
成19年)、別の観点から、このままの表現で著作に掲載してもよいのかと大いに
迷いました。それは、効力発生日の前日を基準日として定めたことになり、基準日
公告が必要だという論に発展しないかとの不安でした(会社法124条3項)。

 最終的には、もし、読者から、そういう疑問や批判が寄せられたら、「前日の最
終とは、効力発生日の最初」という意味だから、効力発生日の株主という意味であ
り、効力発生日の株主を確定するために別の日を基準日に定めたわけではないと主
張し反論するつもりでした。

 これと同様に、株式買取請求の効力発生時である効力発生日の0時は効力発生日
前日最終時(24時)ですから、合併契約書等に上記のように規定しても、買取請
求をした反対株主には割り当てる必要はないと解釈できるのではないでしょうか。
つまり、「効力発生日前日の最終の乙の株主名簿に記載された乙の株主」には、こ
の反対株主は当然に含まれないという暗黙の了解が前提とされているはずです。

 合併契約等を締結した当事者の真意や趣旨からの勿論解釈で、裁判でも勝てると
思っていますが、もし、買取請求を行使される恐れのある上場会社等では、合併契
約の条項を疑義のないようにしておく必要があるでしょう(もっとも、このような
会社が合併消滅会社や株式交換完全子会社になるケースは、ほとんどありません)。


2010.06.16(水)【サッカー世代と野球世代】(東京・金子登志雄)

 世は、サッカーのワールドカップの話題一色ですね。カメルーン戦の勝利につい
ては、飛車角落ちの戦いだったと揶揄する傾向もありますが、素直に勝利を喜びた
いものです。

 さて、この話題にもっとふれたくとも、残念ながら、私の世代(団塊の世代)は、
サッカーよりも野球に夢中になった世代であり、サッカーに対する関心はそれほど
高いとはいえません。

 長島や王選手にあこがれた小学校時代でしたし、中学でもサッカー部というもの
はありませんでした。スポーツに堪能な者は、みな野球部かバスケット部でした。

 私の弟の世代(昭和26年生以降)あたりから、徐々にサッカーブームになりま
した。昭和43年のメキシコオリンピックで釜本や杉山選手の活躍で銅メダルをと
ったことにより、ブームが急加速されました。

 いまから考えると、日本人の気質が変わってきたのでしょうか。
 日本ではスポーツや芸能観戦は、飲み食い、かつ、おしゃべりしながらするもの
でした。相撲も、歌舞伎もそうでした。野球もそれが可能です。ここは注目だよと
いう場面になると、それを教えてくれるスポーツです。

 ところが、イギリスのスポーツであるサッカー(やボクシング)は一瞬も目をそ
らせません。ちょっと目をそらした隙に、「ゴール!」なんてことがあります。隣
の人と雑談し飲み食いしているヒマはありませんし、選手も野球と違って、「タイ
ム」ともいえません。

 サッカー世代のESGメンバーは、みな土日も走り続けているようですが、野球
世代の私は、いまだに「タイム」ばかりです。年寄りには、野球道のほうが助かり
ます。


2010.06.15(火)【新刊・大手法律事務所本】(東京・金子登志雄)

 この土日は、先月発売になった『合併ハンドブック』(商事法務)と『組織再編』
(中央経済社)を約半分程度読んでみました。前者は大手法律事務所の長島大野常
松法律事務所、後者は森・濱田松本法律事務所の先生方が執筆者です。

 やっと出たかという思いです。学者や大手法律事務所の先生方は、保守的で、大
量の文献や論文を吟味し、検討したうえでないと、出版しない傾向があるからです。
お立場上、些細な間違いや勇み足を避けるようです。

 無理もありません。会社法案の発表直後に、一部譲渡制限会社は非公開会社だと
雑誌に書いて、大恥を書いた学者先生もいらっしゃいました(当時はそういう説も
少なくありませんでしたが)。

 この点、会計士・税理士さんは、失礼ながら、怖いもの知らずで、会社法の解釈
が十分に煮詰まっていない段階でも平気で解説本を出してしまいます。専門外のこ
とですから、間違っても平気なのでしょうか。

 私は、法律の世界に生きていますから怖いもの知らずにはなれませんが、解釈が
十分に煮詰まっていない段階でも本を出す点は、会計士・税理士さんと同じです。

 これは、私の性格が、大量の文献や論文を吟味し検討するよりも、何も読まずに
条文と経験だけで「ああだ、こうだ」と自問自答し解釈するのが自分に合っている
こと、人真似が嫌いで他説よりも会社法の「見方、考え方、捉え方」のほうに興味
があること、出版社の過酷な要求に喜んで応じてしまうことのせいでしょう。

 これまでも、会社法が発表されれば、直ちに『会社法法令集』のミニコメントを
書いてしまいましたし、法務省の解説本『1問1答』より先に『これが新発想の会
社法だ』を出版してしまいました。平成19年には、まだまだ解釈が煮詰まってい
ないのに、本格的な組織再編の本(商業登記全書『組織再編の手続』)を出してし
まいました。

 こうして、拙著には果敢に攻めた斬新な内容がある半面で、勘違いや勇み足部分
が生じる傾向があります。プラス面とマイナス面でプラスが大であればよいと思っ
て書いたわけですが、出版後には些細なミスも気になってきますので、これから、
上記2冊を通読し、拙著との見解の相違や勇み足部分を探そうかと思っています。

 なお、上記2書は、第三者間かつ上場会社の組織再編の解説が中心であり、拙著
『親子兄弟会社の組織再編の実務』とはバッティングしませんので、ぜひどうぞ。


2010.06.14(月)【勝てば「菅」軍】(東京・金子登志雄)

 田中真紀子さんが講演で「新しく首相になった人が『クリーンでいきましょう』
と言っているが、洗濯屋じゃないんですから。クリーンだけど何もできない人がリ
ーダーなんですか」と、クリーン政治を皮肉ったようですね。

 テレビでは、名古屋の人気市長河村さんが、インタビューされて、「(菅さんの
小沢排除政治につき)そんなに嬉しいですか。新しいとか、反小沢とか、小沢さん
の親戚でもないのに関係ないでしょ。いつまでこういうことをやってんのか」と、
堂々と発言していました。

 同じことを他の人が言うと、非難ごうごうになるのに(あの評論家の森永卓郎さ
んのキャラクターでも、テレビでの小沢擁護発言に対し、氏のブログに抗議の嵐だ
ったようです)、真紀子さんらは得な個性ですね。

 こういう世間の異様な空気を市民運動上がりの菅さんはキャッチする能力がある
のか、「小沢さんはしばらく静かにしていてほしい」などとストレートに発言し、
人事もマスコミ受けする配置をし、支持率のV字回復を成し遂げました。

 しかし、半面で小沢擁護の方々には、「そこまで言うか」と菅さんの憲法感覚や
人権感覚に疑問をもたれてしまったことでしょう。部外者の私ですら、偽メール問
題でじり貧になった民主党をここまで建て直した功労者に対して、もうちょっと礼
を込めた言い方があったのではないかと思ったくらいです。

 と同時に、そんな甘い感情を示したら、支持率のV字回復もなかったでしょうか
ら、「勝てば『菅』軍」の政治の非情をみるようでした。猿は木から落ちても猿で
すが、代議士は選挙に落ちれば只の人です(大野伴睦)。

 そのうち私も、ESGのメンバーから「金子さんはもう過去の人、しばらく静か
にしていてほしい」とストレートにいわれる日が来るのでしょうか。本欄への支持
率(閲覧数)が急アップしたりして………。


2010.06.11(金)【ライツ・イシュー】(東京・金子登志雄)

 昨日、某上場会社の情報開示担当役員をしている友人と昼食をとったところ、
ライツ・イシューについて質問されました。

 時々、政治談議もする友人でしたから、え、なに? ライス・イッシュー? 
米国のライス前国務長官が日米関係で何か言い出したの? 
 
 え、ライト一周? 野球でヘマしてライトまで走らされること? 

 などとは発展しませんでしたが、よく話を聞くと、「rights issue」のことで
した。株式投資に強い関心のある方はすぐにおわかりだと思いますが、無関心な
皆さんは、何のことだと思いますか。

 ヤフーの翻訳で、「right issue 」と打ち込むと、何と「正しい問題」と翻訳
されました。「ライトイッシュー」で検索したら、どうも「株主割当有償増資」
のことらしいとでます。
 ヤフーの翻訳で、「rights issue」と打ち込むと、「新株の株主割当発行」と
出ました。

 この「right」は、名詞であり「権利」という意味で、「issue」には「出版、
発行」といった意味がありますから、直訳すると「権利発行」ということになり
ます。要は「株主割当増資」のことですが、日本の証券市場や新聞では「新株予
約権の株主無償割当て」の意味で使うことがほとんどです。

 公募増資や第三者割当増資では既存株主の権利が希釈化しますので(もらえる
配当が少なくなったり………)、ここのところ注目されている資金調達手段です。

 私が役員を勤める会社でも、数年前に「株式分割+新株予約権の株主無償割当
て」を実行しましたが、当時は、ライツ・イシューなどといいませんでした(私
が知らなかっただけかもしれませんが)。

 また、イシューではなく、イッシューではないかという気がしますが、「ライ
ツ・イシュー」が行き渡っていますので、司法書士の皆さんも頭に入れておく必
要がありそうです。


2010.06.10(木)【会社分割と根抵当権】(東京・金子登志雄)

 不動産登記からは足を洗った私ですが、先週は、司法書士仲間に、表題の件で議
論を吹きかけました。

 会社分割というのは、事業譲渡の組織再編版であり、A社が事業を分離して外に
出し会社を設立したり、その事業を他社に渡すものですが、民法の根抵当権の規定
では、会社を2つに分解するものだという発想に立っています。

 根抵当権というのは、特定債権を担保する(普通)抵当と相違し、債権額が変化
する不特定の債権を担保するものです。一時的に債権額がゼロになっても、権利は
消滅しません(根保証も同じような意味です)。

 さて、A社がB社に吸収分割し、C銀行からの銀行取引債務の全部を承継させた
とすると、既存のCA間の根抵当権関係はどうなるでしょうか。

 民法398条の10第2項によると「元本の確定前にその債務者(A)を分割を
する会社とする分割があったときは、根抵当権は、【分割の時に存する債務】のほ
か、分割をした会社(A)及び当該分割をした会社がその事業に関して有する権利
義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社(B)が分割後に負担する債務を
担保する」とあります。

 次の図です。
                A 分割後銀行取引
               /
  A――――――――――――
   【分割の時に存する債務】\
                B 分割後銀行取引
          
 つまり、「C−A」間の銀行取引上の債権関係が分割時までは従前通りで、分割
後は「C−A・B」という関係になり、Bが債務者として追加され、次のような登
記がなされます。

  @登記の目的  何番根抵当権変更
   原   因  年月日会社分割
   変更後の事項
     債務者  何市何町何番地 株式会社A
        何市何町何番地 株式会社B

 続いて全債務をBに承継させたので、用済みになったAを債務者から外すため、
次のような登記をするのだと一般的にいわれているようです。

  A登記の目的  何番根抵当権変更
   原   因  年月日変更
   変更後の事項
     債務者  何市何町何番地 株式会社B
     債権の範囲 銀行取引
          【年月日債務引受にかかる債権】  

 ほんとかいなと思いました。
 このAの登記の発想は、【分割の時に存するAの債務】は、会社分割の債務引受
の効果として根抵当の「債権の範囲(銀行取引)」から除外されたので、改めて特
定債権として債権の範囲に加えなければならないというものです。

 つまり、@の登記のAの銀行取引に属していた【分割の時に存する債務】を抜き
出して外に出し、Bの銀行取引以外の「債権の範囲」に加えたという登記です。

 私は、そうではなく、Aの銀行取引債務がBの銀行取引債務に移動しただけだと
考えました。つまり、上記民法規定の【分割の時に存する債務】とは「分割時まで
はAの債務(既発生債務)」というだけで、それが分割当事者のBに帰属しても、
@の登記の「銀行取引」の中に属しているので、【年月日債務引受にかかる債権】
などを追加する変更登記は全く必要ないと考えました。

 民法規定の意味はどちらなのか、いまだはっきりしていないようです。会社分割
を「法人の分割」と捉えた民法規定に問題があると当初から主張していましたが、
その思いを新たにしたところです。


2010.06.09(水)【ネコでも分かる乗数効果】(東京・富田太郎)

 昨日の本欄を受けて、経済学部出身を証明します。
 
 乗数効果とは?

@ 政府が、公共事業をして1億円使うとしましょう。

 そうするとこの公共事業を受注した建設会社A社には1億円の売上げが発生しま
す。この時点でGDPは1億円増えます。ところが話はこれで終わりません。
 この1億円のうち、一部はA社の貯蓄になるでしょうが、一部は建設のための原
材料購入のセンメント等の消費になります。

A ここで「限界消費性向(Marginal Propensity to Consume)」という用語が登
 場します。

 なにやら難しい用語のようですが、1億円収入が増えたら、そのうちいくら消費
にまわるか?ということです。

 1億円収入のうち、7000万円をセメント原材料に使うのであれば、この消費
性向は0.7になります。そして、A建設会社は7000万円を消費(セメントの
購入)にあてたとします。
                   ↓

B 受注を受けたセメント会社であるB社には、7000万円の所得が生じます。
  
 B社には、7000万円の所得が生じますが、消費性向が0.7とすると、同様
に、4900万円の消費を行い、その消費を受注したC社は、4900万円の新た
な所得を生みます(第三次波及)。そしてこの波及はゼロになるまで続くことにな
ります。

 つまり、1億円が公共投資として支出されると、その効果は、単に1億円に留ま
らず、次々と波及して行きます。このような、効果を乗数効果といいます(ケイン
ズ経済学の理論の一つ)。

 実は、当時、このケインズ経済学をはじめて学んだ私は、感激したものでした。
経済学とは何と面白いのだと♪

 文系であるにもかかわらず、この経済学を勉強するために、「微分方程式」等を
勉強し、アホな私は、得意絶頂となり、まわりに自慢しまくったものでした♪

 もっとも、ようやく理解したと思ったら、『M・フリードマンらマネタリスト』
によって、ケインズ経済学否定理論が主流となり、トホホ……の状態になりました。

 経済学とは何と冷酷な学問なのだ!


2010.06.08(火)【正直な菅新首相】(東京・富田太郎) 

 私自身は、現在は司法書士ですが、大学時代は法律とは無関係で経済学部の生徒
でした。

 先日、大学時代の仲間と飲んだところ、「菅直人新首相」の話題になりました。

 「経済が全く分からない。菅直人で大丈夫だろうか?」

 そうです! 
 今年1月、自民党の林芳正氏の質問を受け、不安になるような答弁を行っていま
した。

 林氏に「乗数効果」「限界消費性向」を聞かれた菅氏………全く答えられません
でした。当時、財務大臣なのに………(涙)。

 乗数効果と限界消費性向については、明日の本欄で説明しますが、微分方程式を
使ったりします。

 最近の菅直人氏は、「私は、微分方程式を、勉強している♪♪」と吹聴している
そうです………(汗)。

 一部には、「今頃、何を言ってるんだ(怒)」と批判があるようですが、私には、
分かります♪ 分かります♪ 

 微分方程式を勉強しているのですよね!
 一度、基礎が分かるようになると、深く勉強したくなりますよね♪ 菅さん♪

 自ら「微分方程式を勉強している」と吹聴する菅直人氏! 「イラ菅」どころか、
「素直で正直な方」と思いませんか?


2010.06.07(月)【菅総理誕生】(東京・金子登志雄)

 市民運動出身で弁理士(特許関係の国家資格)だった菅さんが総理になりました。
最近では、めずらしく政治家2世ではありません。

 内閣支持率も民主党支持率も急回復ということですから、民主党参議院候補者も
ほっとしていることでしょう。

 いまのところマスコミ向けの人事は成功のようですね。検察とマスコミに小鳩体
制が潰されたと思ったのでしょうか、いち早く「脱小沢」宣言をし、マスコミ受け
がよい反小沢といわれる仙石さんや枝野さんを幹部に抜擢しました。

 仙石さんや前原さん、枝野さんは、失礼ながら党内では人気がいまいちなのに、
マスコミ受けするのは、反小沢だからというよりも、都会的センスが感じられるか
らではないでしょうか。親小沢の方々には、泥臭い土着日本人のイメージがあり、
女性や浮動票に支持されにくいようです。都会を選挙区とする菅さんは、このあた
りをよくみているようです。

 ところで、菅さんの秘書だった松田光世という方が、現在、ジャーナリストをし
ており、いつも貴重な情報をツイッターで流しています。

    https://twitter.com/matsudadoraemon
 
 私も毎日みていますが、彼の見立ては、衆参同日選挙だそうです。総理が変わっ
たのだから選挙の洗礼を受けるべきだという建前論だけでなく、衆参同日選挙だと
政権選択の選挙になり、政治とカネの問題が吹っ飛んでしまうこと、かつ、自民党
に衆議院選挙の準備ができていないことだそうです。

 まさかとは思いますが、さて、菅総理は大ばくちを打つかどうか。


2010.06.04(金)【定款についての誤解】(東京・金子登志雄)

 3月決算会社の定時株主総会が近づいたためか、会社の憲法ともいうべき定款に
ついての質問がちらほら舞い込むようになりました。そこで、今日は、基本知識の
おさらいです。

 ときどき、「定款変更したのだけど登記を頼む」という依頼を受けます。話をよ
く聞くと決算期等を変更しただけのことがあります。これは登記不要です。つまり、
商号とか事業目的など登記事項に係る定款変更したときだけ登記が必要だというこ
とです。

 登記後に「現在の定款を取得してほしい」という依頼もあります。法務局に定款
が備えられていると思っての依頼です。残念ながら、法務局は定款まで管理してい
ません。外部に当社の定款として提出するときは、「以上は当会社の定款に相違あ
りません」と代表者が証明して提出すればよいだけです。

 「定款を変更したので公証人役場で認証の手続をしてほしい」という依頼もあり
ます。しかし、設立定款以外は公証人の認証は不要です。

 以上は司法書士にとっては常識的知識ですが、一般の方には馴染みのない知識の
ようです。そもそも会社の定款や登記簿謄本などみたことのない方のほうが圧倒的
多数だと思います。私もサラリーマン時代に、自社及び他社の定款も登記簿謄本も
みた覚えがありません。
 
 経営者や総務部に配属にならない限り、このような知識を知る機会も必要もない
でしょうから、私どものお相手は、専ら経営者か総務や庶務の担当者になります。
たまには営業部長や工場長などともお会いしたのですが、会ったところで、「よい
お天気ですね」しか話題がないかもしれません。


2010.06.03(木)【重苦しい辞任】(東京・金子登志雄)

 今日は法律ネタにしようと思いましたら、突然の首相辞任という政変で驚きまし
た。無血革命などと酔いしれた昨年の秋の政変から、たった8ヶ月での辞任です。
志半ばで、さぞ無念だったことでしょう。

 首相になって以来、官僚・マスコミ・米国と既成権力と戦ってきたのに、ここに
きて、自らの対応のまずさもあって、社民党や身内の沖縄出身議員、参院議員から
も強い批判を受け、続投が困難になってしまったようです。

 最後の辞任演説は名演説でしたが、「クリーンな民主党を」と叫び、小沢幹事長
や北海道の小林議員まで名指しで辞任のまき沿いにした点については、憶測を呼ん
でいます。

 まるで小沢・小林はクリーンじゃないといっているようでひどいじゃないかとい
う見方と、これでマスコミなどの敵からの攻め手を奪って参院選挙に勝利しようと
いう戦略だという見方もあり、最後まで真意不明の不思議な発言をする方でした。

 次の総理は菅さんが最有力候補のようですが、また、カネや女性問題などのスキ
ャンダルで撃ち落とされるのではないかと心配です。

 諸外国では、公私混同しない限り、カネや女性問題で政治家を引きずり降ろすこ
とは決してしません。イタリアのベルルスコーニ首相などは、買春疑惑をものとも
せず頑張っています。フランスのサルコジ大統領も失言が多いのですが、「政治と
カネ、オンナ」程度のことでは、政治的失脚にはつながりません(小沢さんも生ま
れた国を間違えたのでしょう)。

 政治家に異常なクリーンさを求める日本の政治風土では、大物政治家は育たない
のではないでしょうか。クリーンしか能のない人は、無能な政治家よりも有能な司
法書士を目指すべきです。


2010.06.02(水)【借金の額を減額などとは………】(愛知・和出吉央)

 最近、新聞、テレビCM等で、見聞きすることが多くなったためか、中小企業の
社長・オーナー様から、よく次のキーワードに関するご質問を受けます。

   “借金の額を減額”“過払い金が戻ってくる”

 その際、私は次のように答えるようにしています。

 「借金についての正しい知識を得られれば、借金を減額できたり、更には、貸金
業者に過払い金返還請求できたりすることがあります。
 また、過去に完済して現在は借金が無い方であっても、完済から10年経過して
いなければ、過払い金の返還を請求し、支払ったお金(の一部)が戻ってくること
があります。」

 では、“借金の額を減額”“過払い金が戻ってくる”とは、どういうことでしょ
うか?

 「金利」が重要なキーワードになります。

 金利を規制する法律には、「利息制限法」と「出資法」という2つの法律があり
ますが、利息制限法においては、金利は年15〜20%であるのに対して、出資法
では年29.2%と定められています。

 金利に関して、なぜこのような2つの法律があるのか、その理由の説明はここで
は割愛させていただきますが、裁判では、原則として利息制限法の年15〜20%
の利息までしか認められていません。

 これに対して、数年前までの消費者金融の金利は、出資法の29.2%を基準に
金利が設定されていました。

 そこで、29.2%の金利を払っていた方が、弁護士又は司法書士に任意整理を
依頼すると、今までの取引をすべて15%〜20%に引き直して計算し、「それを
超える利息を返してくれ」と請求することができます。

 その結果、借金の額が減る、過払い金が発生しお金が戻ってくる、ということが
ある訳です。

 ただし、一つ注意しなければならないことは、過払金が発生したとしても、全額
戻ってくる保証は無いということです。昨今の過払い金返還請求の増加や法律改正
等により、貸金業者の業績は悪化しており、大手貸金業者であっても戻ってくる額
は50〜80%、中小の貸金業者となると、数%しか戻ってこないこともあります。

 6月18日に改正貸金業法が全面施行され、今後ますます、貸金業者の資金力も
低下することが予想されます。


2010.06.01(火)【罷免と解任はどこが違うか】(東京・金子登志雄)

 社民党の福島さんは「悪いことはしていないので辞任はしません。罷免してくだ
さい」と頑張ったようですが、効果抜群でしたね。すっかり筋を通した英雄になり、
社民党も党首が罷免されたと一致結束しました。半分は選挙対策の計算づくでしょ
うが、さすがは党首ですね。

 しかし、株主総会で個々に選ばれた取締役と相違し、大臣は総理に任命された立
場です。任命権者と意見が相違したら、潔く辞任するのが筋で「嫌なら罷免せよ」
と啖呵を切るのは法律専門家(弁護士)の福島先生らしいとは思えませんでした。
連立の解消と大臣の罷免を混同しているのではないでしょうか。

 また、鳩山首相の不信任決議にも賛成するとか。昨日までのお友達にそこまです
るのは、やり過ぎではないでしょうか。民主党支持者の反感を招くでしょうから。

 さて、なぜ「解任」と使わずに「罷免」というのでしょうか。

 憲法に理由がありそうです。すなわち、公務員、国務大臣、裁判官に「罷免」と
いう用語を使っています。憲法で言う公務員は、選挙で選ばれた公務員を意識した
用語であり、一般の公務員には「免職」という用語を使いますから(国家公務員法
など)、「罷免」は専ら大臣や裁判官に使うと思ってよいでしょう。

 天下り取締役の解任の登記に「年月日罷免」とできないかなと会社法を調べまし
たら、やはりありませんでした。その代わり、「支配人は、他の使用人を解任する
ことができる」とありましたが、ここは一般用語では「解雇」ですね。

 念のため、使用「人」は雇われる側で、使用「者」は雇う側です(民法625条
など)。日本語は難しいですね。


2010.5.31(月)【政局不安】(東京・金子登志雄)

 この土日は政局が大きく動きました。普天間問題で、鳩山政権は米国及び米国一
辺倒の外務・防衛官僚に押し切られたのか、政治主導に期待していた多くの沖縄県
民を失望させただけでなく、社民党との連立も潰してしまいました。

 鳩山首相も、官僚の協力もなく孤軍奮闘で県外を模索していたようですが、どこ
も他人事で受け入れそうもなく(「普天間の火の粉を全国にばらまくのか」と怒っ
た知事もいたとか)、同盟で結ばれた米国に「出ていけ」というわけにも行かず、
取り巻きは岡田外相も北澤防衛相も辺野古派ばかりで、閣内には社民党という強硬
な辺野古反対派がおり、しかも5月中に結論を出さねば、米国議会へのグアム移転
の予算提出が困難となり、米国との信頼関係が決定的に悪化するというタイミング
での辛い決断でした。

 「あちらを立てれば、こちらが立たず」でトップとしては辛い決断だったでしょ
うが、この試合はまだまだ続いています。埋立案には知事の許可が必要ですし、環
境アセスメントの問題もあります。どんなに罵倒されようとも、放り出すことはで
きません。放り出されたら後任が不幸ですし、いまのところ、鳩山氏以上に沖縄に
力を入れた首相も見当たりません(期待が大きかっただけに、その信頼も地に落ち
た感じですが)。

 ベストは無理でも、さらにベターを求めて邁進してほしいものですが、このまま
では、参議院選挙を前にして、一波乱ありそうです。こんなときは、政治力に長け
た小沢幹事長の出番なのでしょうが、検察・マスコミ・世論の包囲網で動きがとれ
ず、剛腕を期待できそうもありません(純法律的見地からは西松建設問題も水谷建
設問題も政治資金規正法も完全に無罪と思えますが、如何せん、すっかり大悪党の
レッテルを貼られてしまい表舞台に登場しにくくなっています)。

 政界の一寸先は闇。政治の不安定(それによる景気の後退)がまだまだ続きそう
ですが、「米国」対「日本」の外交交渉には与党も野党もなく、諸外国では反米機
運が盛り上がり政府の後押しをするところですが、日本のマスコミは、米国と一緒
になって政府の足を引っ張り、政治家をからかい、混乱を煽ってばかりでした。早
く辺野古にしないとアメリカ様が怒るぞと煽っていたマスコミには、思いどおりに
なったわけで喜びこそすれ鳩山批判する資格はないと私は思っています。


2010.05.28(金)【解散手続の報酬】(東京・金子登志雄)

 ここ1、2年、景気の後退のためか、会社の設立よりも解散を依頼されることが
増えました。

 解散を決議し清算人を選任し、解散公告をするというのが最初の手続です。解散
公告というのは、下記のようなものです。

http://kanpou.npb.go.jp/20100527/20100527g00111/20100527g001110098f.html

 なぜ、合併公告や減資公告のように、決算公告に触れないのかと疑問に思いませ
んでしたか。理由は、異議申述公告ではなく、債権申出を呼び掛ける公告だからで
す。期間も2カ月です。

 意外に知られていませんが、この公告期間中に債務の弁済はできません(会社法
500条)。

 ここで疑問に思うのが、じゃあ、電気代も水道代も家賃も支払えないのか、支払
うためには裁判所の許可を得なければならないのかという点です。

 実際には支払っているようですが、法的に問題なしといえるのかははっきりしま
せん。単にトラブルになっていないだけかもしれませんし、こういう対価性のある
ものは同条の「債務」から除外されるという考え方もあろうかと思います。

 もっと、身近なのは、解散と清算人の登記をした司法書士報酬や解散の公告代で
すが、この支払いを2カ月間拒否されては、われわれも困りますので、時には、先
払いをお願いするなりの方策が必要かもしれません。


2010.05.27(木)【悲惨な独立開業】(東京・金子登志雄)

 某ML(メーリングリスト)に、せっかく弁護士になったのに、勤め口もなく仕
方なく独立開業したが、年収が100万円にも満たないという悲惨な話が掲載され
ていました。

 いきなり開業しても仕事がないのは当たり前ですが、気の毒なのは収入の話では
なく、仕事を覚え修行する場所も、人脈を形成する機会もない点です。それがない
限り、今後の飛躍もむずかしいでしょう。

 当ESGのお仲間には、いきなり開業した人はいないようです。多くが先輩事務
所で修業し、数年後に独立しています。私の場合は、形式的にはいきなりの開業で
したが、司法書士の仕事内容は十分に知っていましたし、いまでも継続している会
社役員の間にそれなりの人脈も形成できていました。また、役員報酬もあったので、
当初数年間の司法書士収入が200万円以下でも生活に支障はありませんでした。

 もう1つ問題なのは、司法書士は「仕事がありませんか」と営業できるのに対し、
弁護士さんはできない点です。常に「武士は食わねど高楊枝」でいないと、顧客か
ら信頼されません。

 一般の私人が弁護士に依頼することは一生に一度もありません。住宅ローンその
他で司法書士に依頼することは、かなりの確率であり得ます。税理士はもっと高い
確率です。経理部等への勤務も可能でしょう。

 しかし、会計士や税理士も飽和状態だという話もよく聞かされますので、資格商
売を目指す若い人には気の毒な社会になりました。世代の運・不運は、資格商売に
も通じるようです。


2010.05.26(水)【毒饅頭】(東京・金子登志雄)

 野中広務元官房長官が1か月前のテレビの番組で、歴代の自民党政権が官房機密
費を政治評論家などのマスコミ人に配って世論操作していたことを暴露したのに、
大きなニュースになっていませんね。いまこそお得意の「説明責任」の見本をみせ
てほしいものですが、マスコミ業界では触れられたくない話題のようです。

 毒饅頭に日本人は弱いですね。いただいたお土産に現金が入っていても返すと角
が立つなどと、つい都合よく自分に言い聞かせてしまいます。いや、それ以上に、
とうとうオレも、こういうお土産をもらえる身分になったかと、かえって喜んでし
まうかもしれません。

 しかし、ことは世論形成や民主主義の問題です。商取引の問題ではありません。
政治情報の伝達がカネで汚されているということです。絶対にあってはならないこ
とです。

 この件に関しては、週刊ポストでジャーナリストの上杉隆さんが追及をはじめて
います。今週の同誌の書き出しは呆然とするものでした。広域汚染です。

 以下、要約です。
 テレビ局の大幹部から電話があった。「ウチの局で使っている評論家やコメンテ
ーターが該当しているのかチェックしなければならない」、(リストをみせてくれ
ないのなら)「何人か名前を挙げるから該当しないかだけいってくれないか」
 私は渋々応じた。彼がテレビによく登場する著名な言論人の名前を挙げる。私は、
そのたびに、「ハイ」「ハイ」「ハイ」と頷いた。彼のうなだれた様子が、電話越
しにも伝わってきた。

   (ご参考)
     http://diamond.jp/articles/-/8183


2010.05.25(火)【沖縄基地移転問題】(島根・根来川弘充)

 鳩山首相が、5月決着をつけると言っていたこの問題ですが、大方の予想どおり、
あまりよろしくない方向に進みそうです。
 内閣支持率の一層の低下は避けられないとして、私自身は多少の意味があったの
ではと思います。

 今までこの問題が取り上げられると、沖縄の方とそれ以外の都道府県の方と受け
取り方が違っているのではないかと感じるものがありました。

 これは私の感覚によるもので具体的根拠があるものではありません。したがって、
誤解は多分にあるものと承知の上で述べますが、どこか自分には縁の遠い話と受け
取っている方が多かったのでないかと思うのです。

 鹿児島県の徳之島が移転先の候補にあげられると、この島の町長らは一斉に反対
を表明しました。これがもし他の都道府県だったとしてもきっと同じ対応だったと
思います。

 しかし、この対応は沖縄の県内移転であったとしても、日本全国で同じ対応がと
られるべきでないでしょうか。

 日本に軍事基地があります。しかも他国の基地が。

 冷戦構造がなくなってその役割は明らかに当初の目的と変わっているはずです。
今、他国の基地が存在しなければならない理由は何なのかには疑問があります。

 少なくとも、戦後の異常な事態が当たり前のようになってしまっていた現状に、
今回の問題は一石を投じたのではないでしょうか。


2010.05.24(月)【印影】(島根・渡部浩義)

 ご無沙汰しておりました。 

 さて、オンライン申請、電子認証の時代に「何をいまさら!」との声をいただ
くかもしれませんが、最近、法務局から交付される印鑑証明書の印影が悪いと感
じるのは私だけでしょうか。

 特に大規模庁(局)において発給される日本を代表する大企業のものがよくな
いように感じます。不動産登記の立会いの現場等に会して、その企業の担当者が
もってこられた印鑑証明書と捺印書類を照合する段になり、「うっ、照合できな
い。」、「照合が極めて困難!」という機会が増えたような気がします。

 かつて法務局で印鑑証明書を取得するという作業は、かなり神経を使う「仕事」
でした。相当に高い確率で、「証明できない!」と窓口の認証係官に証明申請書
を返されることがあったからです。

 このHPをご覧の皆さま方で、かつて直接証明方式の印鑑証明書を法務局で取
得した経験があるという方はどれくらいおられるのでしょうか。直接証明方式と
は、印鑑証明書の交付のための委任状を添え、申請書と交付を受けようとする通
数枚の証明書用の台紙に実際に印鑑を押印して法務局窓口にもって行き、それに
証明認証してもらうというヤツです。

 私が駆け出しのころ感じたこの印鑑証明書の認証係の方々に対する印象は、
「およそ性悪説にたって仕事している悪魔のような存在!」というものでした。
(当時の担当官の方々、本当にごめんなさい。)

 申請書に押してある印鑑印影は、法務局印鑑ホルダーの中に収納してある届出
印鑑紙に押印された印鑑印影とは別のものである、今窓口を訪れている者は申請
人会社代表者または委任状に記載された申請代理人とはまったくの別人である、
といわんばかりの審査だったような気がします。

 ある日の夕刻の人影がまばらになった法務局窓口で、「だいぶハンの押し方が
上手になったな。」と、近傍法務局の中では厳しくて有名だった初老の担当官に
声をかけられたことがあります。「妙な証明書を出せば、困るのはアンタ達だろ
う………。」

 あれから約20年。「間接証明方式」そして「カード式」と、印鑑証明書ひと
つとってみてもその制度環境は大きく変わりました。現在の制度におけるクリア
な印鑑証明書の交付を受けるための肝は、『印鑑(改印)届出』書の提出が必要
な手続の際に、手続をする者が鮮明な押印をするか、そして法務局担当者がそれ
を可として受け付けるかという点のみにかかっています。

 妙なこだわりや厳格すぎる審査は、商業登記所集中化の時代の繁忙大規模庁に
おいては事務の停滞を招くのかもしれませんが、依然として独特の印鑑照合の商
慣習や手続法制度をもつわが国にあっては、“形式面への配慮やこだわり”も今
一度見直す必要があるように思います。

 「困るのはアンタ達だろう・・・」
 あの名物担当官、たぶん本当はとてもやさしい人だったような気がします。


2010.05.21(金)【決算公告の決算内容】(東京・金子登志雄)

 こんな質問を受けました。一緒にお考えください。中小企業の事案です。

 「6月の定時総会の第1号議案で決算を承認し、第2号議案で損失処理(その他
資本剰余金を負のその他利益剰余金に振り替えること)を決議するが、決算公告に
は損失処理後の貸借対照表を掲載すればよいのか」。

 もし、おわかりにならない場合には、次の事例はどうですか。

 「定時総会の第1号議案で決算を承認し、第2号議案で剰余金の配当を決議する
が、決算公告では配当後の貸借対照表を掲載すればよいのか」。

 もう、おわかりですね。

 この会社の事業年度末が3月31日だとすると、損失の処理も剰余金の配当も、
それ以降に生じた事項であり、翌期(つまり当期)である平成23年3月期の決算
に反映する事項にすぎません。結論として、決算公告の対象は第1号議案で確定し
た内容までです。

 なお、決算公告の貸借対照表(の要旨)には、「(当期純利益〇〇円)」を付記
するため、純然の貸借対照表とはいえません。これは、損益計算書の公告を省略す
る代用として、この付記を求めているためです(計算規則142条)。


2010.05.20(木)【打撃の錯誤】(東京・金子登志雄)

 きのうご紹介した三宅議員転倒問題ですが、甘利議員にとっては三宅議員が転倒
するとは全く予期せざることだったという前提に立ちますと、これを刑法学説では
「打撃の錯誤」といい、甘利議員に故意の責任を問えるかという問題があります。

 他の例でいいますと、AがBを狙い、殺意をもって銃を撃ったら、手もとが狂い、
全く予期せぬCを殺害してしまったという場合に、AはCに対して殺意がないのに
殺人罪を問えるかという問題です。

 多数説(法定的符合説=団藤刑法など)は、「人を殺害しようとしてそのとおり
になったのだから殺人罪だ」と説きますが、有力説(具体的符合説=平野刑法)は、
「Cに対しては故意がないので、Bに対する殺人未遂とCに対する過失致死罪だ」
と説きます。

 数学的思考をする私は、若い頃から、「相手が誰であっても、およそ人を狙った
限り」という大雑把な多数説の考え方には違和感をもっており、「およそ人」では
なく、相手は「狙ったターゲット」でなければならないという立場の有力説を採用
していました。

 この考え方からは、甘利議員は三宅議員に対して故意を問うことができず、過失
(不注意)の責任が問題になります。

 もっとも、以上は「予期せぬ対象(C)」に打撃を与えた場合であり、三宅議員
転倒問題では、予期の範囲内の目の前に存在するCだったため、本件は、打撃の錯
誤の事案には該当しないというべきでしょう。


2010.05.19(水)【三宅議員転倒事件】(東京・金子登志雄)

 ご存知、三宅雪子議員の転倒問題ですが、なんと、あれは自作自演だという意見
が結構あるのですね。私の身近な友人にもいたので、さらに驚きました。そんなこ
とで、つい本欄で取り上げてしまいました(ネタ不足のため、ご了承を)。

 家に帰って、もう1度みてみました。これがスロービデオです。

  http://www.youtube.com/watch?v=LPpY_-fA-v0

 みなさんは、どう思われますか。 

 さて、あなたは裁判官です。次の当事者の主張を吟味し、どちらが正しいかをご
判断ください。

  (甘利議員)
  http://www.amari-akira.com/act/20100514-1.html

  (三宅議員)
  http://yukiko-miyake.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-52bf.html

  (甘利側証人=馳浩議員ブログ)
   議員会館のエレベーターに、民主党の三宅雪子さん、松葉づえ姿で乗り込ん
  でくる。えらいものものしい。
  「どないしたの?」
  「昨日の内閣委員会の強行採決で転んじゃって・・・」
  と、痛々しい包帯姿。
  「運動不足なんですかね、自分で転んじゃって、恥ずかしい・・・・」
  と三宅さん。

 スロービデオの最後の方の画面をみると、海老反りになって、足が惰性で高く上
がっています。これは、自作自演ではできないでしょう。女性にとっては、恥ずか
しい姿です。私には、押された男性の影響で足がもつれてバランスを崩し、顔から
つんのめったとしか思えませんでした。

 甘利議員が三宅議員を直接倒したのではなく、三宅議員が転倒したのだというと
ころまでは認められても(その転倒の原因は甘利議員でしたが)、自作自演でわざ
と転倒したとみるのは、あまりに彼女に気の毒だと思いました。三宅議員が馳議員
に話したことも「あのような場面で立っていられず転倒した。恥ずかしい」という
話であって、自作自演で自ら転倒したという話とは違うと私は判断しました。


2010.05.18(火)【文字の記載間違い】(東京・金子登志雄)

 きのうは不思議な経験をしました。「艾」(もぐさ・よもぎ)という字で申請し
たら、法務局から電話があって、そんな字はないといわれました。現に、こうして
パソコンで出てくる字です。

 古い広辞苑や漢和辞典を引きましたら、草冠の下が「父」の字の右上の「ヽ」を
とったもののようです。法務局のコンピュータは、そちらの字のようでした。

 先日は、お客様のパソコンでは「辻」の左上の点が2つでしか出ないといわれま
したし、パソコンソフトによって違うのでしょうか。いろいろありそうです。

 商業登記申請では、こういう「字」の問題は結構悩みの種です。とくに、事業目
的の登記の記載ミスには神経を使います。「コンピュータ」か「コンピューター」
か、「フイルター」か「フィルター」か(イの大きさ)など………。

 登記が終わると謄本がとれる状態になりますが、取得したらその場でチェックし
なければなりません。法務局側で登記漏れや間違い登記ということもあるからです。

 法務局が手入力で登記簿に記入していた時代や、OCR用紙をスキャナーで読み
取っていた時代には、法務局側のミスも少なくなかったのですが、最近流行りの電
子申請になってからは、ミスの大半が申請人側の問題になってしまいました。

 私も、つい最近、「平成22年辞任」というところを「平成21年」で申請して
しまい、更正登記をしたばかりです。

 ケアレスミスといえばそのとおりですが、十分に注意しても、申請人も法務局も
依頼人の会社も気づかないこともあります。永久に気づかないでいただければ、何
の問題もないのですが、数年後に誰かが気づいてしまいます。

 まぁ、政治資金規正法と違って、虚偽記載で政敵に告発されないだけマシかもし
れません。費用2万円(登録免許税)で更正できますから。


2010.05.17(月)【説明責任】(東京・金子登志雄)

 みなさんは、浮気したことがありますか。残念ながら、私は強い願望を持ち続
けてきたのに、神様は一度も機会を与えてくれませんでした。

 さて、貴方の留守中の自宅に、「奥さん、気をつけてください。ご主人が部下
の〇〇と浮気しています」という告発の密告電話があったとします。

 次のような言い争いになることでしょう。

「貴方、浮気したでしょ。どうも帰りが遅いと思った」
「何、馬鹿なことをいうのだ。毎日、家庭のために夜遅くまで働いているのに」
「全部が仕事とは限らないでしょ」
「たまには同僚と一杯飲んで帰ることもあるけど」
「同僚って誰よ。名前をいいなさい。オンナでしょ」
「えーと、この前は、〇〇君と〇〇君だった」
「何で、即答できないのよ。ちゃんと説明してよ」

 しかし、いったん疑われたら、何を説明しても無駄です。最後は「そう思いた
ければ、勝手にしろ」で終わりでしょう。深い溝ができました。

 こういうときは、次のようにしましょう。

「失礼じゃないか。なぜ君は僕を信じられないのだ。浮気したというなら、いつ、
どこで誰と浮気したとはっきりいえ!」
「………」
「いえないのか!」
「同じ職場の〇〇さんよ」
「彼女に失礼じゃないか。で、いつどこで浮気したというのだ」
「………」
「具体的に質問してくれなければ、説明もできないじゃないか。〇〇と何もない
ことをどうやって説明したらいいんだ」

 「ない」ことの証明は「悪魔の証明」といって証明不可能ですから、このよう
に逆襲するのが一番だと私は思っています。小沢氏も、同じ気持ちでしょう。

「なぜ、君らはそういう疑いをもったのか説明せよ」
「え、〇〇情報? その情報は信用できる筋か。その情報源がなぜ僕に疑いをも
つのか君らは考えなかったのか」と、小沢氏が疑う側の説明責任を求めたら、ど
うなるでしょうか。

 最後は、「いや〇〇情報だけでなく、△△情報でもそうだ。ほれ、このとおり、
世論調査でも8割が疑っている」。

 これでは疑う者の説明責任が果たされていませんね。結局は、堂々巡りで何も
解決しません。さらに溝が深まるだけで意味がないと私は思うのですが、「説明
責任」という錦の御旗の魔女狩り用語は、どうも好きになれません。


2010.05.14(金)【損失の処理と剰余金の処分】(東京・金子登志雄)

 会社法452条に「損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分」
とありますが、さて、「損失の処理」は「剰余金の処分」でしょうか。

 損失なんだから剰余金であるわけがないと考えた人は否定説で、いや損失も負
の剰余金だと考えた人は肯定説でしょうか。

 では、「損失の処理、任意積立金の積立てその他剰余金の処分」と書いてあっ
たら、いかがでしょうか。

 迷うと思いますが、実は、「その他」と「その他の」がキーワードです。

 必ずしも厳密なものではありませんが、一般的に法令用語で「A、Bその他の
C」とあると、A、BはCの例示であり、「A、Bその他C」とあると、AとB
とその他Cは、並列関係です。

(「その他の」の例)
 執行役又は支配人その他の使用人
 株主名簿の作成及び備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者
 相続人その他の一般承継人

(「その他」の例)
 株式会社の資産状態その他一切の事情
 株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項
 命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者

 したがって、「損失の処理、任意積立金の積立て」は「剰余金の処分」の例示
にすぎません。損失処理の次に「、」があるので、つい、「損失の処理」と「任
意積立金の積立てなどの剰余金の処分」と勘違いしてしまいますが、損失の処理
とは、「その他資本剰余金からその他利益剰余金への振替え」のことですから、
これも正真正銘の「剰余金の処分」です。


2010.05.13(木)【小沢不動産問題の本質】(東京・金子登志雄)

 司法書士の掲示板で検察審査会で問題となった小沢氏の不動産問題を議論した
ところ、だいぶその全貌がみえてきました(もちろん一部は推測です)。

1.秘書社宅として世田谷区によい分譲物件があったので購入を決定したが、陸
 山会ですぐにはカネを準備できず小沢氏個人から4億円弱を借りた。一時立替
 金です。

2.陸山会では自前のカネを集めて銀行で定期預金を組んで、それを担保に4億
 円を借りた。小沢氏への立替金は用済みとなったので返済した。

 ここで問題が生じました。陸山会は「権利能力なき社団」であり、印鑑証明も
用意できないため、債務者になれないのです。そこで、借入れ名義は代表者個人
とし、小沢氏個人名義で借り、そのまま陸山会に又貸ししてもらった。
  
 ここの実質は「陸山会」の借入れですから、帳簿にも「銀行借入4億円」と書
いてもよいと思うのですが、収支報告書には、生真面目に「小澤一郎から4億円」
と書いてあります(戸籍上は「小澤」です)。
        
3.マスコミ報道にはでてきませんが、対象物件は地目が「畑」でした。
  
 ここで問題が生じました。所有権移転には農地法上の手続が必要だからです。
そこで、契約は「売買予約」にし、登記も仮登記にしました。登記上の制約から
陸山会名義にできないため、「小澤一郎」名義です。

 登記簿には、次のようにあります。

  平成16年10月29日 所有権移転請求権「仮」登記
              原因:平成16年10月5日売買予約
  平成17年 1月 7日 所有権移転「本」登記
              原因:平成17年1月7日売買

 本来であれば、1月7日に代金を支払えばよいのですが、売り手にせかされた
のか10月29日に支払いました。同日に売り手の担保が抹消されています。

4.上記からは、実質的には代金前払いの平成16年10月29日に所有権が移
 転したといえても、法律的には、売買予約の完結権を行使した平成17年1月
 7日に所有権が移転したわけですから、陸山会の収支報告書に当該土地を資産
 として計上できるのは平成17年1月7日からです。

5.ただ、検察審査会は、上記のような複雑な処理は、小沢個人が大金をもって
 いることを隠すためで、わざわざ金利年450万円まで支払って偽装している
 と断じました。

6.しかし、小沢氏からの一時立替金を隠す必要もありませんし、小澤一郎から
 借入金4億円と記載されているので、いかにも小沢氏個人が4億円をもってい
 るような記載もあります。

 また、実質は陸山会の借入れですから、銀行に陸山会が金利を支払うのは当然
のことです。定期預金担保なんかせずに、そのまま支払えというのは企業の資金
繰りを知らない人の論理ですし、個人からの借入金のままにし、小沢氏個人に金
利を支払えばよいじゃないかというのは、個人と団体との利益相反や財産の峻別
の点で、コンプライアンス上も望ましくありません。

 以上のように、陸山会の処理は極めて適切なのに、結局は、権利能力なき社団
の不動産取得(それも農地=仮登記)、銀行借入れ方法、登記方法を知らない方
々が、いかにも財産隠匿したかのように勘違いしてしまったのが本件の本質では
ないかと私は考えましたが、いかがでしょうか。

 なお、司法書士で興味のある方は「世田谷区深沢八丁目28番5、同番19の
土地」を登記情報提供サービスで閲覧してください。


2010.05.12(水)【五輪VSプロ野球】(東京・金子登志雄)

 この表題をみて、ピンときた方も多いことでしょう。そうです、民主党の参議
員候補はオリンピック選手(柔道の谷亮子、体操の池谷幸雄、競輪の長塚智広=
茨城選挙区)なのに対し、自民党はプロ野球選手(堀内恒夫、石井宏郎=秋田選
挙区)です。ついでに、自民党の分派・たちあがれ日本はやはりプロ野球の中畑
清です(敬称略、以下同様)。

 偶然でしょうか。きっと、プロ野球は、巨人及び読売新聞のドン渡辺恒雄氏の
影響で、自民党筋との関係が深いのでしょう。

 過去をみると、アナウンサー(宮田輝、高橋圭三)、作家(石原慎太郎、青島
幸男)、俳優(山東昭子、扇千景、森田健作)、落語(立川談志)、漫才(横山
ノック、西川きよし)、プロレス(アントニオ猪木、大仁田厚)、ゴルフ(横峯
良郎)、テレビ有名人(大橋巨泉、丸山和也)、五輪(橋本聖子)………と、い
ろいろ思い出されますが、プロ野球界は誰かいたのでしょうか。

 きっと、野球はチームワークのスポーツで、目立ちたがり屋には不向きなので
しょう。政治家になりたいと思うには、目立ちたがり屋でなければなりません。

 政治家になるためには、政治家2世は別にして、官僚コース、地方議会からの
たたき上げコース、業界団体(労組含む)コース、政治家秘書あがりコースのほ
かに、上記のコースが開発されたわけですが、どれも難コースですね。一芸に秀
でなければなりません。

 あ、もう1つありました。松下政経塾コースですが、こちらは入塾が難しそう
です。

 こうしてみると、司法書士が政治家になるには、たたき上げコースしかなさそ
うですね。同職のみなさん、まずは地方議会で頑張りましょう。私には、そんな
元気がありませんけど。

 ※宮田輝、高橋圭三って誰と聞かれそうですが、NHKの看板スターでした。


2010.05.11(火)【まだまだ知らないことばかり??】(東京・富田太郎)

 「投資事業有限責任組合の登記」というものがあります。VC関係の仕事をして
いると、頻繁に依頼のある登記です。

 実はこの登記、ちょっとした矛盾点があります。

(1)「投資事業有限責任組合の登記」の無限責任社員が会社の場合、

    東京都中央区日本橋一丁目3番5号
    無限責任社員 ESGインベストメント株式会社

 と登記されます。
 無限責任社員である「ESGインベストメント株式会社の代表者」は登記事項で
はありません。

(2)かたや、この投資事業有限責任組合の印鑑証明書には、

    無限責任社員 ESGインベストメント株式会社
           代表取締役 小林一郎

 と無限責任社員の『会社の代表者名』がでます。無限責任社員である会社の代表
者名は登記事項でないにも係らず、印鑑証明書には、記載事項となってしまってい
る………。ちょっとした、矛盾点ではないでしょうか?

(3)変更登記は不要でも、印鑑届出書の変更は必要

 つまり、無限責任社員であるESGインベストメント鰍フ代表者が変わった場合、
「変更登記」の申請は不要ですが、「印鑑届出書」(廃印届と新代表者名の印鑑届)
を提出する必要があります。

 つい、登記事項でないため、この印鑑届出書の提出については、忘れがちです。
 私自身、司法書士になって、いろんな登記を経験していると自負していますが、
この論点については、いつも、忘れてしまい、その時になって、慌てて調べなおし
たりしています。

 あぁぁ〜。何年経っても、まだまだ知らないことばかりです、私は………(涙)。

★話は変わって★

 ところで、先日、鎌倉時代の禅宗の高僧『無学祖元』(鎌倉時代に宋から来日。
仏光派の祖、鎌倉円覚寺を開山。時の執権「北条時宗」などに影響を与えた)に関
する本を読みました。
 
 今まで、この『無学』とは「学がない」と言う意味だと思っていたのですが(な
るほど、人間、一生修行だよなぁ〜)、 本を読むと、全く違い、この「無学」と
は………「もはや、もう学ぶものなし」(注)との意、だそうです(汗)。 

(注)無学………仏教の真理を得て、迷いがなくなり、学ぶべきなにものもない最
       高の境地

 『もはや、もう学ぶものなし』………そんな意味とは知らなかった………(汗)。
  
  ………………

 私も、早く、司法書士会の『無学祖元』になりたいものです(つくづく)。


2010.05.10(月)【株主“総”会を“争”会にしないために………】(愛知・和出吉央)

 前回(4月7日本欄)、株主総会を開催しないことによる『怖さ』についてお話
しさせていただきましたが、今回はその『怖さ』を現実化させないために、最低限
『どうしたらよいか』についてお話させていただきたいと思います。

 @ケース1 
  株主総会決議が『存在しない』ものと扱われないようにするために………

  →必ず株主全員(議決権のある株主に限る)に対して招集通知を発送し、総会
   当日には株主総会を開催する。

 ポイント次のとおりです。

 ○原則として、株主総会開催日の1週間前(譲渡制限規定がない会社は2週間前)
  までに書面にて招集通知を発送。
 ○毎年の定時株主総会(決算承認等)の場合は、法定の貸借対照表・損益計算書
  等の書面を必ず添付する。
 ○出席できない株主のために、議決権行使の委任状も添付する。
 ○出席する株主がいないことが濃厚である場合(株主全員が委任状提出の場合も
  含む)でも、急遽出席する株主を想定し、必ず開催日時に開催場所を確保し、
  役員は待機する。

 なお、会社法上、株主全員の同意を得た上で、書面によって株主総会を開催した
ものとみなす制度もあります(会社法第319条)。

 Aケース2 
  株主総会の決議の内容や手続が『定款や法令に違反する』ものと扱われないよ
 うにするために・・・

  →社内の者の判断のみならず、弁護士・司法書士・税理士等の専門家に内容の
   相談やチェックをあおぐ。

 定款や法令に違反する内容になる(可能性がある)ということは、親族間・株主
間にてすでに争いが勃発しているケースが多いので、『冷静な判断』という意味で
も第三者的立場の専門家の意見を聞くことは重要だと考えます。また、ケースごと
の細かい判断は判例や先例等が重要となりますので、経験豊富な専門家の判断が重
要だと考えます。

 招集通知すら発送していなかったり、開催日時に開催場所を確保していなかった
りとなると(ケース1)、原則として、将来的に無期限で株主総会の無効を主張さ
れることになります。
 つまり、今、現時点での株主ではなく、将来、相続や譲渡等によりあらたに株主
となった株主から、法律違反を蒸し返される危険性があるのです。

 弁護士・司法書士等の会社法専門家が増加の一途をたどり、インターネットで一
定の情報が入手できる今、株主に付け入る隙を与えるということは、会社の存続に
かかる問題に発展する可能性すらあるのです。


2010.05.07(金)【株式交換の対価】(東京・金子登志雄)

 A社がB社の株式全部を取得し、100%子会社にする組織再編行為を「株式交
換」といいます。

 このとき、B社の株式の取得の見返りにB社の株主に支払う対価は、A社の株式
でも、現金でも、新株予約権でも何でもかまいません。これを「対価の柔軟化(自
由化)」といいます。

 ところが、対価がA社株式のときは、A社で債権者保護手続をしなくてよいのに、
A社の株式以外(現金など)のときは、必要だとされています(会社法799条1
項3号)。

 これは、取得するB社株式の価値が100だとした場合に、それを過大評価して
150の現金を支払えばA社の財産が50も減少するが、対価がA社の株式であれ
ば、増資と同様にA社の既存財産の減少がないからだと説明されています。

 ここまでは会社法に詳しい方であれば、どなたでもご存知の知識です。

 先日、ふと対価がA社の新株予約権でも、これから発行して渡すだけだから、A
社の既存財産が減少しないじゃないか、なぜ債権者保護手続をする必要があるのか
と疑問に思ってしまいました。

 で、『自己株式の実務処理』の共著者である有田会計士と高橋税理士に疑問を投
げかけ、お二人とのメール交換で、次のようなことだろうと結論づけました。

 対価の性格にありそうです。つまり、新株予約権が対価のときも、A社の財産が
減少しないが、新株予約権を発行後直ちにA社で購入すれば、対価を現金にしたと
きと同じ効果を発揮できるので問題だ。つまり、脱法行為に利用されかねない。株
式を対価としたときは、自己株式取得の規制があるが新株予約権にはこのような規
制がない。よって、この点では、新株予約権は株式よりも、社債に近い性格がある
ので、新株予約権を対価にしたときも、債権者保護手続が必要だとしたのであろう
………、ということです。

 立法者がここまで考えていたかは不明ですが、確かに株式対価と新株予約権対価
は同一には論じられませんね。


2010.05.06(木)【笑顔がかわいい共謀共同正犯】(東京・金子登志雄)

 小沢氏に対する検察審査会の決定に「共謀共同正犯」という用語が登場しました
が、この意味はご存知でしょうか。

 まず、犯罪を実行したものを「(実行)正犯」といいます。複数で犯したときに、
これを「共犯」といいますが、犯罪を起こす気にさせたものを「教唆犯」、見張り
など補助的に関与した者を「従犯」あるいは「幇助(ほうじょ)犯」といいます。

 実行自体を複数で行った場合、例えば、1人がはがいじめにし、もう1人が殴る、
蹴るをすれば、暴行罪の共同正犯(「実行共同正犯」)になります。

 以上が基本ですが、やくざの親分が子分と謀議し、あいつをヤレと指示したのに、
子分が正犯で親分が教唆犯というのはバランスを欠くという発想から、親分を正犯
にするために判例で認められたのが「共謀共同正犯」です。直接に犯罪の実行行為
をしたわけではありませんが、それに等しいということでしょう。

 つまり、検察審査会は、小沢氏を絶対権力者(親分)とみて、小沢氏が政治資金
収支報告書の虚偽記載に主導的に関与した疑いがあると判断したわけです。
 ただし、その内容は、秘書社宅としての不動産購入が04年なのに、政治資金収
支報告書への記載が05年になっていたという期ずれの問題にすぎません。

 これを意図的な虚偽で犯罪とみるのか、単なる記載間違いにすぎないとみるか、
あるいは政治団体たる陸山会の収支としては05年が正しく記載間違いでもないと
みるのかは議論のあるところですが、政治資金の収支結果を透明にする目的の政治
資金規正法(規「制」法ではありません)に、この親分・子分の共謀共同正犯概念
が登場したことに私は驚きました。審査会のメンバーには、小沢氏が大悪党でやく
ざの親分並みにみえたのでしょうか。
 
 確かに、あの迫力は、やくざ映画では親分が似合うかもしれませんが、フリーラ
ンスの渡辺乾介著『小沢一郎嫌われる伝説』を読むと、悪党の親分に似つかわしく
ない小沢夫人ののろけが記載されています。

 「メディアも世間もひどいと思いません? だってそうでしょ。私の主人の人間
性がどうの、目つきや顔つきがどうだっていうじゃありませんか。私、かわいいと
思います。笑うととってもかわいいんですから、そう思いません? かわいいんで
すもの」。結婚記念日には何があっても早く帰る愛妻家だそうです。


2010.04.30(金)【資本取引と損益取引】(東京・金子登志雄)

 明日から連休ですから、今日はちょっとむずかしい話です。

 ときどき、「資本取引と損益取引」の定義につき、資本金や資本剰余を増減させ
るのが前者で、後者は利益剰余金を増減させるものだなど説明されていますが、こ
の定義は間違いだと思っています。吸収合併で利益剰余金が増減することもありま
が、まさか、この合併取引を損益取引とはいわないでしょう。

 私は、両者の区別を損益計算書を通じた取引かどうかにおいています。わかりや
すくいえば、直接に貸借対照表(の株主資本)に変化を生じさせるのが資本取引で
あり、株主資本を元手に営業活動によって利益を得ようとする取引が損益取引です。

 両者の接点は、原則として決算期末にしかありません。損益計算書の当期純利益
(又は当期純損失)が貸借対照表の株主資本の「その他利益剰余金」に組み込まれ
るからです。

 したがって、3月決算の会社が4月から9月までに1億円の利益を上げたとして
も、この利益は「期間の利益」(会社法461条2項2号イ)に過ぎず、確定した
ものではなく、貸借対照表に計上されていませんから、純資産の部の内部での勘定
科目の振替えである「利益の資本組入れ」はできません。

 ところが、この会社が10月1日に合併消滅して貸借対照表を合算する会社計算
規則36条の合併を行うと、この1億円の利益も合併会社の「その他利益剰余金」
に組み込まれ(会社法446条7号、計算規則150条1項5号)、その後であれ
ば、「利益の資本組入れ」が可能になります。

 ただし、同じ合併でも、親会社が子会社を吸収合併したときに生じる抱き合わせ
株式消滅益は、合併会社の損益計算書の特別利益とされ、合併会社の株主資本変動
要因とされていませんので、この利益は資本組入れの対象にできません。


2010.04.28(水)【起訴相当と歴史の評価】(東京・金子登志雄)

 小沢氏の陸山会問題につき、検察審査会は11人全員一致で「起訴相当」の判
断を下しました。これには実に驚きました。私が法律家のはしくれで、市民感覚
とずれているのでしょうか。非法律家の方の感想はいかがでしょうか。

 事前予想では、世論調査の6割が小沢幹事長は辞めるべしという意見だったた
め、6:5か7:4の過半数で「不起訴不当」になる可能性もあるが、警察が被
疑者だった明石歩道橋事件などと相違し、今回は、検察としては起訴したいけど
嫌疑不十分で不起訴にしたのだから、これでは小沢嫌いでも「不起訴相当」にせ
ざるをえないだろうとの意見が多数でした。ふたを開けてみれば、全員一致で真
反対の結論です。

 反小沢のマスコミには、予想以上の歓迎すべき結論でしょうが、客観的にみて、
今週の週刊朝日で、郷原元検事が「4億円不記載という政治資金規正法違反とい
うのは、そもそも刑事責任を問うような問題ではない」と述べていますし、この
事件を小沢氏を狙い撃ちした権力闘争と捉える見方が少なくないのに、11人の
中には1人もいなかったのでしょうか。

 おそらく審査会の見解は、これだけ疑惑が報道されているのだから、白でも黒
でも、法廷で真相を解明すべきだというものでしょう。これが市民感覚のようで
すが、ことは刑事事件です。「疑わしきは裁判で」というのは近代刑事司法の大
原則に反します。有罪の確信を持ってこそ、起訴相当になるはずです。これでは、
裁判員制度も、マスコミの影響下に置かれた人民裁判になってしまいます。

 残念ながら、日本社会では、推定無罪は無視され、「起訴=極悪人扱い」です。
数年後に裁判で無罪になっても遅いのです。小沢=有罪の前提で、7月の参議院
選挙への影響も少なくないでしょう。いわゆる甲山(かぶとやま)事件では、不
起訴不当という審査会の決定に対して、裁判所では一度も有罪判決がなされず、
無罪の確定までに25年もかかりました。

 有名なリクルート事件は、いまでは、朝日新聞をはじめとするマスコミの異常
な報道により、本来、事件でないものが事件にされてしまった事件として評価さ
れています。それによって生じた政治的混乱(竹下内閣総辞職、参院選で自民党
惨敗)や日本経済の損失は、はかり知れません。

 このように自民党自体がマスコミに煽られた世論によって大被害を被っていま
すから、ことは小沢支持か、反小沢かの問題ではありません。こういうのを政争
の道具に使ったのが、あの社会党ですが、いまの野党は建設的野党を目指すなら、
真似をすべきではありません。

 米国でもただいま常軌を逸したオバマバッシングの嵐のようですが、10年後、
20年後の歴史は、いまの世相や今回の決定に対して、どういう評価をするので
しょうか。


2010.04.27(火)【安全地帯からの批判】(東京・金子登志雄)

 民主党の小沢幹事長は決して人の悪口もいわない人として有名ですが(家訓だそ
うです)、私は、人の悪口は大好きです。ストレス発散になりますし、私の健康法
の1つです。ちょうど、サラリーマンが飲み会で上役の悪口で盛り上がるのと同じ
ようなものです。

 しかし、「責任ある立場の人」を悪くいうことだけは意識的に控えています。こ
れは、主にM&A業務を通じて、経営トップという立場がいかに辛いものかを目の
当たりにしてきた経験からです。 
 
 経営トップというものは、われわれ「外野席の人間」と相違し、大量の情報をも
とにして経営判断し、その判断を誤れば責任をとらねばなりません。オーナーであ
れば、個人保証のため自宅まで失いかねない立場です。そういう責任をかけたぎり
ぎりの決断に対して、外野席の無責任な立場から、あれこれ論評することは失礼だ
と思っています。

 同様に、政党のトップである鳩山首相批判や谷垣総裁批判も私は好きではありま
せん。きっと、自分も同じ立場に立ち、同じだけの情報をもとにしたら、同じ判断
をするのではないかという気がするからです。

 で、私の悪口の矛先は、誤った報道をしても全く責任を取らないマスコミや、安
全地帯の外野席で勝手に吠えている無責任な人達に向かいます。

 不思議なことに、こういう人達に限って、マスコミ人気が高く、テレビへの露出
も多いのです。誰とはいいませんが、すぐに政治家や評論家、コメンテーターの名
前がいくつか出てきませんか。

 しかし、あのマスコミ人気の高い野党の政治家M氏は外野席から少数政党のトッ
プになったので、今後は批判を避けようと思っています。たぶん、今後は選挙や政
党維持のおカネで相当苦労するでしょうから………。

 何はともあれ、われわれ庶民はボールの飛んでこない安全地帯で憂さを晴らすし
か術(すべ)はありませんが、せめて「責任ある立場の人」の苦労には思いを致し
たいたいものです。


2010.04.26(月)【事業承継の視点】(岡山・山本直樹)

 書店に行くと数多くの「事業承継」に関する書籍があります。その多くは、現経
営者から見た法務・税務を取り扱った内容になっています。

 先日知人の紹介であるセミナーを受講しました。

 講師は、父親からホテルの経営を20代で承継し、倒産させた人でした。後継者
候補者でいた頃は、経営者にもなりきれないし社員にもなりきれない漠然とした不
安をかかえ受身の状態だったそうです。
 実際に会社を継いでからすべての問題に直面しました。そして会社は倒産しまし
た。

 考えてみると、よくある事業承継のケースだと思います。何がいけなかったので
しょうか?

 それは、事業承継を「後継者の視点から見る」という視点が欠けていたことです。
事業承継のキーパーソンは、経営者ではなく後継者であり、経営者はそれを支援す
る関係であることをよく認識し、ボタンの掛け違いを防ぐことが大切なようです。

「事業承継」とは、
「後継者が価値を生み出すために価値あるものを受け取る超友好的な乗っ取りであ
る。」
 (出典 後継者の軍師http://www.k-gunshi.co.jp/

 会社を継がせる人、会社を継ぐ人によく考えてもらいたい視点でした。


2010.04.23(金)【期限付解散】(東京・金子登志雄)

 古い登記先例によりますと、株主総会で会社の解散を決議し3日後に解散する
のはOKとか、1週間後ならOKとあり、10日後や1か月後あるいは3か月後
はどうなのかについてはふれていません。あたかも不可のニュアンスです。

 この先例は、解散事由に「定款で定めた存続期間の満了」というものがあるの
で、株主総会決議より数か月先の解散なら、それによるべきだとの学者の見解の
影響を受けたものです。

 しかし、基準がさっぱりわかりません。1か月後がだめなら、29日まではよ
いのでしょうか。

 また、合併解散なら、6月の定時株主総会で決議し、翌年の4月1日付解散と
いうことも可能なのに、通常解散だけは、そのような間を空けてはいけない理由
が不明です。「期限付」ではなく「条件付」なら、よいのでしょうか。

 こんなことを疑問に思っていたため、「登記情報」570号(昨年5月号)で、
3か月先でも問題はないかという質問に対し、「問題はない(ただし、担当法務
局と相談し実行してほしい)」と「商業・法人登記Q&A」で答えました。

 今般、1か月半先の解散の登記を申請しましたところ、やはり、この点が問題
になりましたが、「登記情報」の見解を示し、受理していただきました。

 その間に官報をみましたら、この程度の期限付解散事例は、大量にありました。
とくに、4月1日版官報の号外に大量に掲載されていますので、同じ目に遭遇し
がちの司法書士は、インターネット版官報を閲覧し、必要なものを保存しておく
とよいでしょう(5月になると閲覧できません)。法務局への説得資料に使えま
す。

 また、インターネットで検索すると、上場会社が子会社を解散する場合には、
3か月以上前に子会社の解散を親会社で決定し、情報開示し、子会社の総会を解
散日直近にしているだけでした。

 やはり、解散には数か月の猶予期間が必要であり、上記の先例や考え方は実態
に全くマッチしていません。株主総会日から次の定時株主総会までの間なら(最
長1年)、何の問題もないというべきです。


2010.04.22(木)【経由申請と完了通知】(東京・金子登志雄)

 一昨日の富田さんの事例が次で、昨日の根来川さんのいうオンライン申請だった
とします。

 3月 1日、甲法務局に@A社の登記、AB社の登記を申請
 3月12日、審査が終了し、@の登記完了、Aを乙法務局に送付
 3月16日、Aが乙法務局に到着
 3月19日、Aの登記が完了(謄本がとれるという意味)

 この3月12日には、申請代理人のわれわれに@とA両方の完了通知が来ます。

 そこで、「やっと終わったか」と思い、12日(金)又は15日(月)にA社と
B社の登記簿謄本を請求しますと、取得できたB社の登記簿謄本には、予定した登
記がなされていないことになります。

 これで失敗した人も少なくないようです。とくに合併では、B社の解散謄本のは
ずが、まだ生きている謄本になってしまいます。

 @とA両方の完了通知とは、甲法務局での完了を意味し、乙法務局の完了の意味
を含んでいないのです。乙法務局へは直接の申請はしていないので、乙法務局から
完了通知はきません。

 コンピュータシステム上のこととはいえ、実に紛らわしいのですが、1度失敗す
れば、すぐに覚えます。

 なお、本支店一括申請の場合も、「全部」につき完了登記が来ますが、支店での
登記はその日には終わっていません。


2010.04.21(水)【オンライン申請】(島根・根来川弘充)

 今、登記は、インターネットによる申請、いわゆるオンライン申請(電子申請)
が可能になっています。

 登記には、不動産登記と商業登記の二種類がありますが、不動産登記は、オンラ
イン申請が原則で、書面申請が例外的な扱いとなっているのに対して、商業登記は、
書面申請が原則で、オンライン申請が特例扱いとなっています。両者に違いはある
ものの、今現在は、どちらも書面で申請されていることが多いのではないかと思い
ます。

 近々、私が住む島根県では商業登記の窓口が一か所になることが決まりました。
なぜ、商業登記ばかりがそうなるのかという点については、おそらく不動産登記に
比べて、申請件数の絶対数が少ないためと思われます。

 このため、商業登記の申請ができなくなる法務局を管轄とする司法書士は、交通
費をかけて窓口申請をするか、電子申請をするか、郵送申請をするか、あるいは管
轄法務局の司法書士に復代理を委任して申請をするか、いずれかの選択を迫られる
ことになります。

 このようにデメリットばかり増えるのですから、商業登記の窓口がなくなった司
法書士は、依頼を受ける事件の数が少なくなると危惧する方もおられます。

 しかし、商業登記については、司法書士に頼らず本人で申請されている方も多い
です。

 ですので、本人で申請している方の場合は、我々専門家以上に不便になったと実
感されると思います。

 でも逆にいえば、本人が頼るところが減るのですから、ますます司法書士のニー
ズが高まるのではないかと期待するところもあります。

 申請受付場所の減少は、いずれにしても結局はユーザーに負担を求めることにな
り、あまり喜べる状況ではありませんが、この逆境を機会として、企業にとって司
法書士の必要性が高まると良いと思います。


2010.04.20(火)【2週間以内の登記】(東京・富田太郎)

 先日、金子先生が2週間以内の登記について書かれておられましたが、私は「あ
る事案」で、顧客にクレームを受けたことがあります。

 事案は、某上場を目指す企業の株式交換でした。担当者からは、「必ず、法で定
められた2週間内に登記申請をして欲しい」といわれていました。

 勿論、効力発生日の3月1日に申請♪

【事案】
 株式交換完全親会社  A社(管轄 甲法務局)
 株式交換完全子会社  B社(管轄 乙法務局)

 通常、株式交換に関する変更登記は、B社においては、株主が変わるだけなので、
登記事項に変更はないのですが、今回はB社の新株予約権に代え、A社の新株予約
権を交付するため、B社においては、既存の新株予約権の消滅登記を申請しなけれ
ばなりませんでした。

【登記申請】
 @A社の株式交換による変更登記
 AB社の(株式交換による)「新株予約権の消滅登記」

 この2つの登記は、甲法務局に申請し、審査が終わった後、AのB社「新株予約
権の消滅登記の申請」は、乙法務局に転送されます(経由申請)。
 また、このB社の(登記簿上の)登記の日は、乙法務局に届いた日です。

 実は、今回の登記,記載内容が膨大であったため、登記申請内容には問題がなか
ったものの、甲法務局内での記入に時間がかかり、Aの登記が乙法務局に届いた日
は、3月16日でした。
 そうです。B社の登記簿には、「3月16日登記」と記載されたのです………。

 完了後のB社登記簿を見た、A社、B社の法務部は大騒ぎ!
「先生!! あれだけ2週間内に登記申請してくれと言ったのに(怒、怒)!」

 勿論、司法書士ならば、たとえ、経験皆無の新人司法書士であろうと、「経由申
請のため、登記期間に問題はない。」と誰でも分かる事案です。
(経由申請のため、登記簿の登記日の記載が3月16日であろうと、申請したのは
3月1日。よって、勿論、登記懈怠ではない。)

 しかし、登記手続のプロではない当事者にとっては、当然、驚くべきことであっ
たのかもしれません(その後、両社に、経由申請について説明し、事なきを得まし
たが………。)

 ところで、この登記期間の2週間以内。
 最近、これには無理があるのではと思っています。小さな同族会社の書類ならい
ざ知らず、上場会社やその100%子会社など、取締役が多忙で、議事録捺印に時
間がかかったりします。

 以前、取締役会をTV会議システムで行ったのはよいのですが、取締役が、日本、
アメリカ、カナダにおり、取締役会議事録の捺印に時間がかかったことがあります。

 登記申請の内容により登録免許税は異なります。また、役員変更登記も、会社の
資本金の規模により異なります。なのに、登記期間は同じって………(涙)。

 やはり、登記期間も会社の規模・案件の内容によって定めていただきたいもので
す。


2010.04.19(月)【書面により反対】(東京・金子登志雄)

 4月1日の合併等では電子公告をした会社も多いことと存じますが、その簡易合
併公告では、決まり文句のように、下記のように記載されています。

               記
1.本合併に対し反対の株主は、会社法第796条第4項に基づき、本公告掲載の
 日から2週間以内に【書面により】、その旨をご通知下さい。
2.株式買取請求権を行使される株主は、会社法第797条第1項に基づき、合併
 の効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に、【書面により】、
 株式買取請求権を行使する旨及び株式買取請求に係る株式の数をご通知下さい。
3.本合併に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から1箇月以内にお申し
 出下さい。

 これをみて、若手の優秀な司法書士から問い合わせがありました。

 「会社法の条文を何度も検討しましたけど、会社法第796条第4項にも、会社
法第797条第1項にも【書面により】とありません。なぜ、上記の3には書面と
ないのに、1と2には書面とあるのでしょうか。会社法に反しませんか」。

 この問いに答えられる司法書士は何人いるでしょうか。

 簡易合併が認められた平成9年商法改正以後の新聞公告の主要は下記でした。

               記
1.この合併は商法第408条第1項に定める株主総会の承認を得ずに行いますの
 で、この合併に反対の株主は、本公告掲載の翌日から平成〇年○月○日までに書
 面によりその旨をお申し出ください.
2.この合併に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から平成○年○月〇日
 までにその旨をお申し出ください、、

 もう、おわかりでしょう。商法では、簡易合併への反対も、反対株主の買取請求
も「書面を以て」と規定されていたため、その名残りです。債権者の異議について
は、商法時代から、そのような規定はありません。

 会社法では書面に限定していないのに、「書面にて」というのはおかしいではな
いかと思う方もおられるでしょうが、これは「お願い」と考えれば問題ありません。


2010.04.16(金)【『会社法務書式集』出版】(東京・金子登志雄)

 そろそろ大手書店にも並び始める頃でしょうか(ネットのアマゾンや楽天には
登場したようです)、中央経済社から、『会社法務書式集』を出しました。

http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-99260-5

 これは、司法書士や税理士に好評の下記のリーガル書式集CD版所蔵の書式の
うち厳選した247書式につき、解説を加えたものです。

   http://www.legal.co.jp/products/syosikisyuu/kaisyahou.htm     

   http://www.legal.co.jp/products/syosikisyuu/kaisyahou2.htm

 単なる議事録類や合併契約書書式などにとどまらず、定時株主総会招集通知や
議決権行使の委任状見本まであり、実務に非常に役立ちます。

 お客様から、「あれはないか」と聞かれれば、該当頁をファックスすればよい
ので、サムライ業にとっては、この上なく便利なものでしょう。CD版と相違し、
4200円で済みますので、ぜひご利用ください。

 しかし、あんまり売れてほしくないなぁ。これで私の仕事がまた減りそうです。
最近、よくいわれます。「全く経験がなかったのですが、先生の『親子兄弟会社
の組織再編の実務』などを利用したところ、誰に相談することもなく1人で合併
を無事完了することができました。ありがとうございました」と。

 「名を売って収入を減らす」、これも天国へ行くための修行の1つです。


2010.04.15(木)【虎の威を借る狐】(東京・金子登志雄)

 人を脅迫するとき、「オレのバックには、〇〇組がいる」と匂わす輩がいます
が、最近、腹の立つのが、「世論調査によれば」というマスコミ論調です。いか
にも、「オレのバックには、国民世論がある」といっているようなものです。

 余計な枕詞を使わずに「当新聞は、これこれしかじかの理由で、鳩山内閣の政
策に反対する」あるいは「谷垣自民党はここがいけない」などと主張すればよい
のに、「世論調査によれば」と、世論のせいにして、政党批判をするのです。ま
るで、「みんなそういっているよ」という子供の論理ではないでしょうか。

 そもそも、頻繁に行われる世論調査はあてになるのでしょうか。たとえば、首
相にしたい候補として、舛添氏が圧倒的1位という調査結果は、ほんとなんでし
ょうか。私の周りには、パフォーマンスの舛添氏よりも誠実さが感じられる谷垣
氏支持のほうが多いように感じますが、皆さんの周囲では、いかがですか。

 世論調査の方法についても、「鳩山内閣は政治とカネや普天間問題で迷走して
いるとの批判もありますが、あなたは鳩山内閣を支持しますか」あるいは「自民
党の役割はもう終わったとの意見もありますが、あなたは谷垣自民党を支持しま
すか」などと聞かれて、「はい、私は支持します」と答えるわけがありません。

 どの党を支持するかどうかに関わらず、世論の御旗のもとに、政治不信の風潮
を煽る日本のマスコミのレベルの低さに、ほとほと情けなくなります。

 なお、この人(↓)は、私より過激でした。
 http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2010/02/post_209.html


2010.04.14(木)【事後設立】(東京・金子登志雄)

 株式会社Aが現金で株式会社Bを設立しました。Bの設立後2年以内に、AがB
に事業の一部を譲渡しました。これを事後設立といいます。事業の一部でなく、財
産の一部の場合にも事後設立といいます。

 商法時代は、設立における、いわゆる財産引受の脱法行為になりかねないという
理由で、株主総会の特別決議と財産評価につき裁判所の選任する検査役の調査が必
要だとされていましたが、会社法になり規制が緩和され、株主総会の特別決議だけ
でよくなりました(会社法467条1項5号)。

 とすると、B社では株主総会の特別決議だけでよさそうに思いますが、立法担当
者による『論点解説/新・会社法』(いわゆる「千問」)659頁によりますと、
それさえも不要だとされています。

 理由として、親子間の事業譲渡だから、略式手続が可能だというものです。略式
手続とは、親子間の合併等において、子会社での株主総会を省略できる制度です。
開催しても親会社の議決権行使で可決するのは目にみえているためです。

 これは間違いではないかと、会社法に強い弁護士さんから質問されましたが、私
も間違いだと思います。

 第1に、千問が根拠とする会社法468条1項は、条文から明らかなとおり、事
後設立の467条1項5号に適用されません。いいかえれば、「事業の譲渡等」と
は、467条1項1号から4号までであり、5号を含みません。これは468条1
項本文カッコ書からも明らかです。

 第2に、子会社での株主総会を省略できる略式手続は、事業譲渡と組織再編に限
定され、事後設立を含みません。もし、含むなら、事後設立にも、反対株主の買取
請求権を認めねば不公平です。

 第3に、事業の一部譲受けは、全部譲受けと相違し、「事業の譲渡等」に含まれ
ていません。したがって、本来は、Bの株主総会の決議が不要であり、事後設立の
場合のみ株主総会の特別決議が必要とされています。

 と、ここまで書いて、「千問」の最新の増刷版では、会社法319条を根拠に総
会不要に訂正されていることを知らされました。無駄な内容になりましたが、訂正
前の千問をお持ちの方が圧倒的多数と思い、このまま掲載しておきます。


2010.04.13(火)【2週間以内の登記】(東京・金子登志雄)

 お客様から、よく「いつまでに登記しなければならないのか」と質問されます。
たとえば、「4月1日付で役員に変更があったのに、書類の準備が遅れている。
いつまでに登記しなければならないのか」といった内容です。

 こういう質問を受けたとき、司法書士の深層の意識は、「少しくらい遅れても、
どうってことないですよ。1、2カ月遅れの登記はざらです」というものですが、
これは違法なので、「一応、2週間以内とされています」と建前で答えることに
しています(会社法915条1項など)。

 登記簿にも、
        平成22年 4月 1日変更
        平成22年 4月●●日登記

 などと記載されますので、2週間以内に登記していないことがばれてしまいま
す。

 ところが、担当法務局の管轄外への本店移転では、2週間以内に登記したかど
うかが登記簿からみえません(管轄外の合併による「解散」なども同じです)。

 東京のA社が4月1日に大阪に本店移転し、東京法務局に4月14日(2週間
以内)に登記申請したところ、21日に審査が終わり、大阪法務局に書類が転送
され、大阪法務局に23日に到着し、大阪での審査が27日に終わり、その旨の
通知が東京法務局に28日に到着したとします。

 大阪に移転したA社の大阪の登記簿には「平成22年4月1日東京都………か
ら本店移転/平成22年4月【23】日登記」、A社の東京の登記簿には「平成
22年4月1日大阪府………に本店移転/平成22年4月【28】日登記/平成
22年4月【28】日閉鎖」と記載されます。

 東京法務局に4月14日に登記申請したのに、登記の日が28日とされてしま
うわけです。もちろん、法務局の受付簿では、2週間以内に登記したことが判明
しますが、登記簿からはみえません。

 大きな声ではいえませんが、コンプライアンス重視の上場会社でも、少しくら
い遅れて本店移転登記しても、大丈夫かな? もっとも、上場会社の本店移転の
多くが管轄法務局管内での移転です。


2010.04.12(月)【たちあがれ日本】(東京・金子登志雄)

 こんな文字を目にしたとき、これを政党名と思った人がいるでしょうか。石原
都知事がバックの平沼・与謝野新党だと聞いてびっくりしました。必ず、「党」
という用語をどこかで使うものかと思い込んでいましたから………。

 調べましたら、「改革クラブ」も政党でありながら、「党」を使っていません。
古くは、青島幸男氏の「二院クラブ」や徳田虎雄氏の「自由連合」もありました。
これらは、何となく政党らしい名称のため違和感がなかったのでしょうが、「た
ちあがれ日本」では、標語のようで、組織というイメージさえもありません。

 やはり、「新党たちあがれ日本」などと、「党」の字を入れればよかったのに
と思うと同時に、自由民主党を自民というように、略称はどうするのでしょうか。
「たち本」では、書店の人にハタキで追いかけられそうです。

 私だったら、「日本再生党」とか漢字を使うところですが、「みんなの党」を
意識し、ひらがな名にこだわったようです。

 ネーミングだけでなく、メンバーが老人ばかりで新鮮味がないと批判されてい
る点については、私も老人の1人として、反論したくなります。私自身、40代
や50代の鼻たれ小僧の頃よりも、60代のいまのほうが判断力も仕事の能力も
上回っています。体力も減退した自覚はありませんし(昔からなかったから)、
ウエスト周りなどは周囲の人が感心するくらい、飛躍的に成長しています。

 この際、当ESGも、明日から「たちあがれ司法書士」、略称「TSG」に変
更しましょうか。メンバーの鼻たれ小僧どもが反対するかもしれませんが。
 
 念のため、ESGとは、表向きは、「エキスパート司法書士グループ」の意味
ですが、Eは、エキサイティングや、エンタープライズ(企業法務の企業)など、
いろいろな意味を込めています。


2010.04.09(金)【種類株式は設置か変更か】(東京・金子登志雄)

 先日質問を受けた会社の商業登記簿謄本には、会社法107条の取得請求権付株
式につき、「発行する株式の内容」に内容とともに「年月日【設定】」と記載され
ていました。

 法務省の登記記録例によりますと、「年月日【変更】」です。新たに種類株式発
行会社になり、会社法108条による純粋の種類株式を「発行可能種類株式総数及
び発行する各種類の株式の内容」に登記する場合も「年月日設定」ではなく「年月
日変更」になっています。

 私も「設定」ではなく「変更」が正しいと思っています。なぜなら、すでに株式
を発行済みであり、それの内容を変更したり、今後発行する株式につき、株式の内
容を「追加変更」するだけだからです。

 後者の1種類の株式を2種類にするときは、旧内容に新規内容を追加設定したと
いう側面はありますが、「発行する株式の内容」の内訳を1種類から2種類に変更
しただけで、既存の「発行する株式の内容」に、新規の「発行する株式の内容」を
追加設定し、「発行する株式の内容」を2つにしたわけではありません。

 ところが、非譲渡制限の既存株式に譲渡制限の内容を加えると「株式の譲渡制限
に関する規定」という登記項目には「年月日設定」となります。

 正しい意味では、「発行する株式の内容」の変更ですから、「年月日変更」とす
べきですが、譲渡制限株式は旧商法時代には種類株式とされていませんでした。ま
た、登記簿の項目が「株式の譲渡制限に関する【規定】」となっているため、「年
月日【設定】」のほうが語呂が合います。

 登記記録も歴史上の産物ですから、これは妥協するしかないでしょう。

 取締役会は「設置」で、「設定」はダメなのでしょうか。なぜ、取締役の死亡や
辞任を「年月日退任」でダメなのか、まぁ、いろいろあります。世の中、理屈どお
りには行かないものです。


2010.04.08(木)【法務局職員と司法書士】(東京・金子登志雄)

 4月になり法務局でも人事異動があったと思いますが、いつも法務局職員総体の
優秀さに驚かされます。

 司法書士は難関な国家試験を突破してきたのに、こと登記実務になると、法務局
職員のほうが詳しいことが少なくないのです。

 原因はやはり実務経験(分量)の差でしょうか。
 
 法務局職員は商業登記の調査の部署に配属になると、毎日、何件も同じような申
請をチェックし、わからなければ先輩や本局に問い合わせるなどして、1日8時間
も商業登記三昧の生活を送ります。

 その多くが役員変更や商号等の変更、本店移転、設立などでしょうから、毎日、
基本動作を繰り返すため、自然に体で覚えます。

 かたや、司法書士は、案件を受託したら、のんびり書式集でも見ながら、申請書
等を作成し、申請すれば、それで終わったという意識になり、体で覚えるほどには
なりません。

 したがって、文書(メール含む)による相談ならともかく、電話による登記相談
などでは、司法書士よりも法務局職員のほうが正しい回答を出せるのではないかと
想像しています。なにせ、彼らは、登記簿という将棋盤が頭に入っているため、あ
の部分をこうして、別の部分をこうすれば王手だと読めるからです。

 ただし、司法書士も経験を積めば、将棋盤が頭に入りますし、数年で部署が変わ
る法務局職員よりは分量の点でも実務経験が多くなります。電話相談でも、即断即
決が可能になります。

 ベテランの私はこの域に達していると自負していますが、司法書士のあなたは大
丈夫ですか。


2010.04.07(水)【株主総会は開かなければならない?】(愛知・和出吉央)

 表題の答えとして、もちろん、「開かなければいけない」です(以下、話を簡
略化するため、いわゆる書面決議の話は度外視します)。

 といっても、実際には、未上場中小企業では株主総会を開催していない会社は
たくさんありますし、形式上開催しているものの、法的手続き踏んでいない会社
もたくさんあります。

 このような会社は、家族経営であったり、経営が順調であったり、株主間の関
係が良好であったり・・・ということで、実際には株主総会の不開催や手続不備
を問題視する者がいないので、法律違反が浮き彫りになりません。

 しかし、一度経営が傾いたり、株主間の関係が不仲になったりした場合は、深
刻な法的紛争を生じさせる危険があります。

 例えば、議決権70%保有のA(代表取締役)と、30%保有のB(取締役)
とが不仲となり、株主総会でBが取締役を解任されたとしましょう。このとき、
BがAに対して反撃する材料として、それまでの株主総会の不開催や手続不備を
とりあげ、裁判沙汰にするということがよくあります。

 このような場合、Bの狙いは、実は裁判で勝つことではなく、Aを面倒な裁判
に巻き込むことによって、Aから譲歩を引き出し、『Bにとって有利な解決』を
はかることにあります。

 具体的には、Bは、解決(和解)の条件として、Aもしくは会社に対し、保有
株式を高額で買い取ることを要求するのです。訴えられたAもしくは会社として
は、法的に対抗する手段がまったくありませんので、Bの要求を泣く泣く受け入
れざるを得ないということになります。

 優良な企業であればあるほど、(知らぬ間に)株式の価値は高額となっていま
すので、今回のような30%の買い取りとなれば、会社のキャッシュフローに大
きな影響を来たすのは必須でしょう(ただし、場合によっては会社法461条の
財源規制の問題はあります)。

 実際に私は以前、「設立から現在まで(約10年)の役員報酬決定の株主総会
決議不存在確認の訴え」を起こされた会社からご相談を受けました。

 弁護士さんを紹介し、何とか、最終的には和解となりましたが、これまでの約
10年間で内部留保がかなり積みあがっていたのに、一度も配当を行ってこなか
ったこともあり、当初の予想を遥かに上回る値段での株式買取りという結末とな
りました。

 今は良くても将来のことは誰も分かりません。法律はきっちり守って株主総会
を開催しましょう。


2010.04.06(火)【馬糞の川流れ】(東京・金子登志雄)

 品のない表現ですが、“まぐそ”の川流れという言葉をご存知でしょうか。永
田町用語で、求心力を欠き、散り散りばらばらになることです。いまは、権力と
いう求心力がなくなった自民党を指す用語として使われることが多いようです。

 半永久政権と思われていた自民党も、奢(おご)れるもの久しからずの「盛者
必衰の理」に逆らうことができなかったのか、政権陥落後、離党者が続出してい
ます。「腐っても鯛」の踏ん張りくらいはみせていただきたいものです。

 もっとも、民主党の鳩山、小沢、岡田氏らも、もともとは自民党の旧田中派出
身ですから、親米一辺倒の清和会(旧福田派)支配の自民党から政治改革を目指
して飛び出した独立派(アジア重視派)の経世会(旧田中派)の一部が民主党の
看板で盛り返し、逆転したともいえそうです。鳩山首相が普天間問題で米国の恫
喝に屈せず、素直にシッポを振らないのも、この流れで捉えられます。

 政界の一寸先は闇といわれていますから、7月の参議院選挙はどうなるかわか
りませんが、盛んに既得権力の大手マスコミが民主党へのネガティブキャンペー
ンをしている割には、野党勢力が弱体化していますし、農協や医師会等の業界団
体が与党になびいていますので、いまのところは組織票で与党有利な結果に終わ
るだろうというのがプロの見立てのようです。

 選挙というのは一種のお祭りですから、大手マスコミもスキャンダルと人間関
係ばかりに焦点をあてて、各党の内紛を煽り、政治不信を醸成するようなことを
やめて、国民全員がお祭りに積極的に参加できるよう、煽ってほしいものです。


2010.04.05(月)【独占の禁止】(東京・金子登志雄)

 4月1日は久々に独占禁止法の届出が必要な合併登記を申請しました。グルー
プ内の合併ではないという意味です。

 この場合は、登記の事由に「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第15条第2項の規定による届出は、平成22年〇月〇〇日受理された」と記載
します。根拠は、商業登記規則の110条です。

 さて、「情報」に価値のある現代社会では、「情報の独占」にも多くの関心を
示す必要が生じています。

 日本社会では、「記者クラブ」制度というものがどこにもあり(東証の兜倶楽
部が有名)、大手マスコミだけが加入でき、週刊誌やフリーのジャーナリスト、
外国メディアの記者は、記者会見にも出席できません。言い換えれば、大手マス
コミが1次情報を独占し、世論のリーダーシップをとっているわけです。そこに
権力とマスコミの癒着が生じ、権力はマスコミを利用しようとし、マスコミはそ
の見返り(特ダネなど)を求めます。情報のリークもその1つです。

 それだけでなく、新聞社がテレビ局をも保有できるクロスオーナーシップ制度
が認められていますから、われわれ国民は、新聞とテレビで同一見解、同一情報
を垂れ流されているわけです。

 これは非常に危険であり、情報の公正取引に反し、世論操作さえ可能になりま
す。民主党の支持率低下も、大手マスコミが一斉に「政治とカネ」ばかりを問題
にし民主党をバッシングしていることが大きな原因だといえましょう。もちろん、
社の方針でしょうが、個々の記者が「政治情報=政権党内の人間関係」と捉える
55年体制から抜け切れていないところもありそうです。

 3月26日、とうとう鳩山首相の記者会見がオープン化され、「記者クラブ」
独占に風穴があきました。ここに至るのに、半年もかかりました。
 
 http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/201003/26kaiken.html

 これは、歴史に残る実に画期的なことでしたが、抵抗勢力の大手マスコミは、
面白くないのか、小さな記事しか掲載しないか、Y新聞のように無視に徹したと
ころもありました(全部、ネット情報でばらされています)。

 早く全省庁(検察や警察も)で情報のオープン化がなされれば、われわれ国民
も、大手マスコミを通じた「情報操作」の対象ではなく、主権者国民として積極
的な意志形成ができますので、今後も「情報の独占禁止」をしっかりと見張って
いきたいものです。


2010.04.02(金)【原本還付窓口の独占】(東京・金子登志雄)

 4月になり、東京では桜も満開に近く、いかにも春という気候になりましたが、
昨1日は、商業登記の書き入れ時であり、久々に法務局に行列のできる日でした。
東京法務局でも、原本還付専用の窓口が作られていました。

 原本還付とは、登記の添付書面である議事録や合併契約書などの原本を示して、
コピーを提出して、原本を回収する手続です。合併等の申請では、添付書面が多い
ため、ちょっとした時間が必要です。

 私も東京法務局管轄の合併が1件ありましたので、その手続を30秒程度で終わ
らせ、登記申請窓口にコピーを提出してまいりましたが、私の後続には、何と1人
で原本還付窓口を独占している事務所がありました。10件以上の申請をどさっと
出したためです。床に置かれたカバンには、溢れるほど大量の原本還付用の書類が
詰め込まれていました。

 思わず、みとれてしまい、数分間、見学させてもらいました。「書き入れ時だと
しても、1日に10件以上も申請するほど流行っているとはすごいなぁ。どこの事
務所だろうか」という興味です。少なくとも、あの富田事務所でも、大手の鈴木事
務所(ESGの会友参照)でもないことだけは確かでした。

 残念ながら、事務所名はわかりませんでしたが、事務所の知名度と流行っている
(稼いでいる)かどうかとは全く別問題であることが、ここでもわかります。

 知名度はなくてもよいから、私も、次の書き入れ時期の10月1日には、原本還
付窓口を独占してみたいものです。


2010.04.01(木)【合併公告の今昔】(東京・金子登志雄)

 きのうは、野暮用があって、何年ぶりかに公告屋(東京官報販売所)さんを訪
ね、いろいろ昔話をしてまいりました。

 たとえば、100%親子会社の合併でいうと、昭和59年から平成9年までは、
次のようにしていました。

 【合併並びに資本減少公告】
 平成○年〇月○日開催の臨時株主総会において、左記会社は合併して甲は乙の
権利義務一切を承継して存続し乙は解散すること、また、甲は乙の全株式を所有
しているので、この合併にあたり乙の全株式を無償消却し、合併による新株の発
行及び甲の資本の額の増加は行わないことを決議したので、この決議に対し異議
のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出下さい。

 この公告内容の背景には、合併とは2つの会社が1つに統合することだから、
資本金も合算し、乙の株主も甲の株主として迎え入れなければならないのであり、
それをしたくない場合には、資本減少と株式の消却になるという極端な人格合一
説がありました。

 人格合一説は当時の支配的見解でしたが、私は「甲固有の資本金が減らないの
だから減資ではない。乙株式に甲株式を割り当てないことは株式の消却ではない」
と抵抗していましたが、官報屋さんから「登記が通らなくても知りませんよ」と
いわれ、不承不承、いうとおりにしていたものでした。

 もう1つ疑問だったのは、なぜ「平成○年〇月○日開催の臨時株主総会におい
て」などと記載しなければならないのか、債権者に向けた公告なのに、いつ株主
総会を開催したかなどを説明する必要はないというものでしたが、いまの会社法
は、この点に関しても、私の考え方と一致していますので、合併公告の内容に対
するストレスはなくなりました。公告漏れに対するストレスは相変わらずですが。



2010.03.31(水)【老後をどうする?】(東京・金子登志雄)

 土日を利用し観光で沖縄県の石垣島に行ってきました。東京とのあまりの寒暖の
差のためか、ただいま鼻風邪気味です。

 石垣島は緯度がハワイとほぼ同様のようで(沖縄本島よりも台湾に近い場所にあ
ります)、海はきれいで、人口が増加中とのことでした。もちろん、定年退職し、
石垣島に居住する人が増えたためです。隣には、西表(いりおもて)山猫で有名な
西表島があります。

 私の知り合いに老後をニュージランドで生活している人がいますが、今後は、こ
ういう大橋巨泉さん的生き方がますます増えることでしょう。タイあたりもブーム
になるかもしれません。

 ふりかえって、還暦を過ぎたわが身はどうすべきかを考えましたところ、私は職
人タイプですから、やはり日本で一生働き続けるのが合っているようです。幸い、
司法書士には定年がありませんから、健康でありさえすれば、仕事も可能でしょう。

 ただし、こちらに仕事をする気があっても、顧客の方が、年寄りは相手にせずと、
自然に離れていく可能性が大きいため、その対策のためには、いずれは若く優秀な
イケメン司法書士と共同事務所でも構えないといけないかなとも思っています。

 いや、まだ、こんなことを考えるのは早いですね。67歳で元気いっぱいの国家
公安委員長もいるくらいですから、私も、余計なことを考えずに、路上チューの相
手でも探しましょう。


2010.03.30(火)【微罪の冤罪】(東京・金子登志雄)

 3月26日、17年半ぶりに足利事件の菅家利和さんの無罪が確定しました。
17年半という重たい時間ですから、気軽に「おめでとうございます」などとも
論評できません。

 冤罪というと、死刑や無期懲役事件が話題になりますが、実は、重大犯罪以外
の冤罪は相当数あります。これは何かの弁護士アンケートにあったと記憶してい
ますが、典型例が微罪の痴漢でしょう。

 逮捕され、拘束され、否認すればいつまでも保釈されず、とうとう、どうせ罰
金刑で済むことだからなどと自らを納得させ、妥協の結果として嘘の自白をして
しまうわけです。

 自白が必要な単純な贈収賄罪もこれに近く、贈収賄の前に別件逮捕で使われる
政治資金規正法違反も同じようなところがあります。単純ミスの書き漏れも、故
意の虚偽記載にされてしまいます。どうせ執行猶予だと、自分を納得させてしま
うわけです。
 
 おそらく、これを読んだ方は、自分の場合は最後まで戦えると思いでしょうが、
自白しないと、同僚や顧客、親兄弟・子供まで取り調べられてしまう事態に遭遇
して信念を貫けるでしょうか。きっと、「自分だけで済むのなら」と妥協してし
まうことでしょう。私が読んだ政治家関連の冤罪の本では、みなこれでした。  

 困ったことに冤罪を監視する任務のメディアが警察や検察以上に、「悪人」の
イメージを再生産し、事件とは無関係な眉唾のスキャンダルをも垂れ流し、法律
の処分の前に社会的制裁を加えてしまうことです。それを信じた庶民が、さらに
集団リンチに走る………、その世論の前に検察も立場上不起訴にできなくなる…
……、怖いものです。

 いま問題になっている北海道の民主党小林議員にかかわる事件でも、オオム事
件で一躍有名になったジャーナリストの江川紹子さんによれば「政党支部宛の政
治献金であれば合法なのに、違法な政治家個人宛に献金すること自体が理解不能
です。金をくれると言っている人から泥棒するようなもの」と事件性に疑問を投
げかけていますが、こういう疑問はメディアには決して登場しません。

 菅家さんの無罪判決を機に、少なくとも真相がはっきりするまでは、メディア
と一緒になって集団リンチすることだけは避けたいと改めて自戒した次第です。


2010.03.29(月)【決算期と役員任期】(東京・金子登志雄)

 企業で最も多い3月の事業年度末が近づきました。
 旧商法では「決算期」といいましたが、会社法では、「事業年度」といい、決
算期という用語を使いません。

 さて、上場会社では、取締役の任期を1年とする例が多く、定款では「取締役
の任期は選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主
総会の終結の時までとする」と定めています。「就任後」ではなく「選任後」と
するのは、会社法の規律に従ったものです。

 では、決算期を変更したときは、上記の取締役の任期はどうなるでしょうか。
 
 3月決算を9月決算に変えただけなら(事業年度期間6カ月)、定款に従い、
任期は9月決算を承認又は報告する12月あたりの定時株主総会の終結までです。

 当期を来年の9月30日まで(事業年度期間1年6カ月)にした場合は、どう
でしょうか。意外に知られていませんが、会社法では、事業年度の変更にあたっ
ては、会社法435条2項及び会社計算規則59条2項により、変更後の最初の
事業年度の期間は1年6カ月まで認められています。

 このように決算期を変更すると「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最
終のもの」が存在しないことになります。したがって、定款変更時に任期満了す
ると解釈されています。

 そうすると、定款変更と同時に取締役を選任したら、選任と同時に任期満了し
て退任してしまうじゃないかという疑義が出るのは時間の問題でした。

 これについては、もうすぐ発売されるキンザイ「登記情報」4月号で会計監査
人の任期について解説しますが、結論からいうと、最初の取締役の任期は「選任
後1年6か月以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の
終結の時まで」という定款変更があったとみるしかないでしょう。


2010.03.26(金)【大会社】(東京・金子登志雄)

 資本金5億円以上の会社は大会社とされ、監査法人等の会計監査人が必須とさ
れています。 

 先般、3月決算の資本金5億円以上の株式会社の減資の効力が3月に発生し、
資本金が1億円になりました。

 さて、この会社の会計監査人に関する次の@ABは、正しいでしょうか。

 @ 会計監査人は、減資の効力発生と同時に地位を失う。
 A 会計監査人の廃止の定款変更をすれば即座に廃止できる。
 B 定時株主総会の終結と同時に自動的に廃止される。

 いずれも正しくありません。会社法では決算期に資本金が5億円以上であれば、
大会社ですから、途中で減資しても、次の決算期の確定貸借対照表上に資本金が
5億円未満と計上されるまでは、大会社であり続けます(@とAは×です)。ま
た、大会社でなくとも、任意に会計監査人を設置できますから、定款から、会計
監査人設置会社を外さない限り、会計監査人は継続します(Bも×です)。

 旧商法時代は、資本金が5億円未満になると、そのとき大会社ではなくなるが、
「その後最初に到来する決算期に関する定時総会の終結の時までは、大会社特例
規定を適用する」などとしていましたから、Bは正解だったのですが、会社法で
は定款の効果として会計監査人が継続することになりました。

 次の定時株主総会で会計監査人設置会社を廃止する定款変更が必要です。
 
(ご参考)
 いまネットで、中央公論に掲載された「日本政治再生を巡る権力闘争の謎」
(カレル・ヴァン・ウォルフレン)が話題になっています。ヨーロッパ人からみ
た日本社会のシステムについての優れた論文です。
 話題の1つとして、土日にでも、ご参照ください。

(その1)
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100319-01-0501.html
(その2)
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100319-02-0501.html
(その3)
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20100318-03-0501.html


2010.03.25(木)【既存メディアvsネット】(東京・金子登志雄)

 私はみていませんが、22日のNHKで、「激震マスメディア〜テレビ・新聞の
未来〜」と題して、討論番組があったようです。ネット人口の増大で、既存メディ
アがあせりはじめたのでしょうか。テレビも見ない、新聞も読まないという人が増
えてきましたから………。

 昔は、「ネット=若者」というイメージでしたが、いまや「ネット=年金世代」
というべきではないかと思うほど、老人達のネット能力が飛躍的に向上いたしまし
た。というより、ネットを利用できる世代が老人になってしまったというべきでし
ょうか。私を含む「団塊の世代」が還暦を過ぎていますから。

 この世代は、子供の頃にテレビを知り、学生時代から新聞を熱心に購読していた
ため、テレビ情報、新聞情報、ネット情報を十分に比較できます。
 
 即時性ならテレビよりもネットですし、多種多様な意見を知ろうにも、既存メデ
ィアの情報は、一色の色付きですから、参考になりません。ニュースも、情報源に
よる昔の「大本営発表」に近いところがあります。

 これに対して、ネット情報も色付きですが、赤、青、緑………とさまざまな色が
あり、比較対象できる点で、知的好奇心を満足させてくれます。1つのニュースも、
あらゆる角度から検討できます。

 一例をあげれば、既存メディアでは、鳩山首相は普天間問題に優柔不断とされて
いますが、アメリカに対する「のらりくらり」の戦略であり、決してアメリカの恫
喝に屈しない胆力のある人とのプロの評価もネットには登場します。大阪地裁で行
われている郵便不正事件は、ほぼ冤罪であることが、既存メディアに登場するかな
り前から詳細なネット情報で発信されていました。

 ネット検索とメールしかできない私ですが、ネットを馬鹿にすると、情報格差が
ますます広がる感じで、暇さえあればパソコンの前に座っています。会社法の解釈
に関する質問情報などが、ネットにめっきり減ったことは、やや退屈ですが………。


2010.03.24(水)【理系頭脳と東大頭脳】(東京・金子登志雄)

 テレビによく登場する元検事の郷原信郎(のぶお)弁護士の著作を読み始めま
したら、東大の理学部出身であることを知り、驚きました。三井鉱山出身で退職
して2年程度で司法試験に合格してしまったようです。

 会社法制定に深く関わった郡谷大輔弁護士は東大工学部出身で通産省に入省し、
法務省に出向中に働きながら司法試験に合格しています。

 やはり、理系の頭脳は法律の学習に合っているのでしょう。法律の論理は、数
学の解法に似た部分があります。

 私も、どちらかといえば、理系の頭なので、法律が好きですが、司法試験は残
念ながら論文で何度も落とされました。これは理系頭の問題ではなく、東大頭と
私大頭の相違だと思っています。

 なぜ、東大出身者が司法試験に合格しやすいかというと、どんな論文問題を出
されても、分からないなりに、落とされないように、うまく解答する能力がある
ことだと私は思っています。

 典型的な私大頭の私は、問題の意味が分からない場合には、「時間がない、え
ーい、きっとこういう出題意図だろう、いけー!」と解答してしまうため、うま
く当たればホームランですが、そうでない場合には、玉砕してしまいます。こう
いう性格では、決して試験に合格するわけがありません。

 その代わり、実務では、分からないときは、お客様に「どういう趣旨ですか」
と聞けますし、時間も十分にありますので、ユニークな私大頭のほうが問題解決
能力はあると思っていますが、負け惜しみでしょうか。


2010.03.23(月)【小泉進学塾と鳩山大衆塾】(東京・金子登志雄)

 30代の頃、やむを得ず、進学塾に勤めたことがありますが、1か月も経ないう
ちに、あっさりと理由も告げられずクビになりました。あとで知った話では、私の
教え方が成績のよくない子の面倒をみる大衆塾型にあったためのようでした。

 ご承知のとおり、進学塾は、有名校に何人入学させたかが勝負のため、優秀な子
供の成績を向上させることしか関心がなく、優秀でない子は単なる月謝をもってく
る生徒としてしか扱われません。過酷な競争社会ですが、優秀な子には、よい環境
だといえましょう。

 最近、思うのですが、あの小泉構造改革は、進学塾型であって、一部の優秀な企
業の成績をさらに伸ばせば、ダメ企業は潰れる代わりに、産業構造が変わり、国全
体が富むようになるという発想だったのではないでしょうか。

 しかし、結果は、ヒルズ族などが登場した反面で、貧富の差がますます広がり、
ワーキングプアや就職できない人が溢れてしまいました。地方も疲弊し、田舎の商
店街はシャッター通りになってしまいました。いわゆる「負の遺産」です。

 それが原因で政権交代がなされ、民主党政権の政策は、ヨーロッパ型の「もちつ
もたれつ」の大衆塾路線になったようです。
 
 どちらの路線も行き過ぎると不幸ですが、貧困や自殺者、犯罪がこれだけ増えた
現状では、どの政権でも大衆塾路線を採用し、国民全体の生活の底上げを目指すし
かないでしょう。

 ところで、弁護士業界も、人が増え(3万人弱)、貧富の差が激しくなってきた
ためか、先般の会長選では、番狂わせの政権交代がありました(地方の反乱で、サ
ラ金問題等で有名な宇都宮健児氏が会長に当選)。

 どの業界も国も、時代の転機ですね。坂本龍馬がもてはやされる時代です。


2010.03.19(金)【単元株式のルーツ】(東京・金子登志雄)

 1単元1000株というのは、1口1000株で1議決権という制度です。こ
れで小口株主には株主総会招集通知を出す必要もなく、株主総会を効率的に運営
できます。

 この単元株式制度は、額面株式時代は単位株といいましたが、昭和56年商法
改正で認められたものです。
 その改正で、額面を5万円にしたのを機に、それまでの額面50円会社(上場
企業のほとんど)で、1000株以上所有していないと議決権がないということ
にしたのです。

 とすると、それまでは上場会社の株主総会に参加する権利があったのに、それ
以後は参加できなくなったわけですから、既得権の剥奪であり、民主的といえな
いじゃないか、ひどい! 気の毒だ! と感じた方もおられるかもしれません。

 実は、これは総会屋対策だったのです。たった1株しか持たずに、総会荒らし
が横行したので、総会屋等に対する利益供与の禁止規定とともに、この単位株制
度を設けたわけです。以後、総会屋は急速に消滅に向かいました。

 昭和56年生まれの方は今年29歳です。つまり、29年前です。こういう背
景を知って、会社法を解釈できる人材も減ってきました。私のような年寄り司法
書士は、ますます希少価値になる、いいことですね。 


2010.03.18(木)【髪型】(東京・金子登志雄)

 私は古い人間であり、若い人のようなバサバサ髪には、抵抗がありますから、髪
は、きちんと7・3に分けています。典型的な右利きですから、右手で櫛をもって、
頭の左側から分けています。

 ところが、右利きでありながら、7・3の右分けをしている方も少なくありませ
ん。みなさんの周囲にも、いるはずです。なぜでしょうか。つむじの問題だとは思
えません。

 先日、試しに、右から分けてみようとしましたが、何度やっても、うまく行きま
せんでした。まさか、左手を使うのではないでしょう。

 世の中、広いもので、野球のスイッチ・ヒッターのように、右にも左にも自在に
分ける器用な人がいるのですね。

 この人でした。↓ ひょっとして、生来は左利き(?)。

  http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010020801013

 左の旧社会党から右の旧自民党や旧自由党出身者までも、まとめてしまう人です
から、頭髪くらいは、お手のものなのかもしれません。

 枝野さんの事業仕分けは、左から7・3でしょうか、右からでしょうか。反小沢
だからといって、ともに否定し、オールバック(全部後退)だけは勘弁してほしい
ものです。そうなったら、丸刈りですね。

 今日は、どうでもいいお話でした。


2010.03.17(水)【裁判員制度がはじまって】(島根・根来川弘充)

 私の住んでいる安来市は島根県の一番東にあり、鳥取県米子市と隣接していま
す。

 先月末から今月頭にかけて、その米子市で起きた大きな事件について、裁判員
制度がはじまって初の死刑が求刑されるかという裁判がありました。

 事件は、税理士の方とその同居人が、自らが雇っていた事務所職員に殺害され
たというものです。

 強盗殺人の罪に問われれば、「死刑」または「無期懲役刑」、殺人の罪に問わ
れれば、上記に「5年以上の有期懲役刑」が加わります。

 検察側は、強盗殺人を主張したのに対して、弁護側は、長い間、被害者から不
当な扱いを受けたことに精神的に追い詰められたことによるためということで、
強盗目的ではなく、殺人罪であるとして争いました。

 結局、裁判では、検察側は、強盗殺人でも、死刑ではなく無期懲役を求刑した
ことに対して、裁判員と裁判官も、強盗殺人であると判断して、検察の主張のと
おり、無期懲役刑の判決を下しました。

 「被告人に強盗目的があったのか否か」

 これがこの事件の大きな争点であったと思います。しかし、これは被告人本人
の認識の問題であり、被害者が殺されたという事実からだけでは、決して見るこ
とができません。

 殺害された状況、そこに至った経緯等、いろいろな証拠から想像して、裁判員
の方々は、「もし、自分が被告人と同じ行動をとったならば、その時、強盗する
意図があっただろう」と判断されたのだと思います。

 自分を被告人と仮定して、思いをめぐらすことは、大変な心労をともなったこ
とと思います。

 一方で裁判員でなかった方々は、新聞等の報道で事件を見守ったことと思いま
す。そして、「もし自分が裁判員だったらどう判断したか」ということに、思い
をめぐらせたことと思います。

 裁判員制度とは、「もし自分が○○だったら………」ということを誰もに問い
かけている制度なのだろうと感じました。


2010.03.16(火)【大政党は法人だった】(東京・金子登志雄)

 「自民党や民主党は法人である」………〇ですか、×ですか。

 私を含む弁護士・司法書士等の法律専門家の99%が×と答えるでしょうが、調
べましたところ、実は、〇でした。「政党交付金の交付を受ける政党等に対する法
人格の付与に関する法律」により、法人格を取得できるのでした。

 もちろん、登記もされ、自民党の登記簿謄本には、谷垣総裁と大島幹事長が代表
者として登記されていました。民主党の幹事長は代表権がないのか、鳩山代表だけ
が登記されていました。

 目的は、自民党が「党の使命、綱領及び政策を実現すること」、民主党が「民主
党のめざすもの、基本理念等の実現を図る」であり、ともに1行でした。司法書士
からすると、これで目的の明確性があるのかとケチをつけたいところですが、他に
書きようがありませんね。

 これで合点がいきました。自民党の借金は120億円以上といわれるのに、法人
でなくて、どうやって銀行融資を受けられたのかと疑問に思っていたからです。
 
 与党であればともかく、野党のままで、この借金を返せるのかと、人ごとながら
気になります。昨日も、鳩山邦夫氏が離党しましたし、今後も与謝野氏などが続く
としたら、ますますじり貧傾向でしょう。

 盛者必衰の理とはいえ、世の中、敗者には厳しい現実が待っています。いままで
マスコミは「集団リンチ」で民主党を叩いていましたが、風向きが変われば、「集
団いじめ」で、溺れる者に石を投げるのもマスコミですから。


2010.03.15(月)【資本金の額と増加した資本金の額】(東京・金子登志雄)

 会社の登記の登録免許税は、登録免許税法の別表に規定されており、項目ごとに
決まっています。設立の場合は………、増資の場合は………というわけです。

 吸収合併の登録免許税は、別表の「ヘ」の項目であり、「増加した資本金の額の
0.15%であり、これで計算した結果、3万円に満たない場合は3万円」だとさ
れています。

 では、吸収合併で資本金の増加額が0円だったら、上記に従い、3万円でしょう
か。

 これ、よく勘違いされますが、資本金の増加額が0円であれば、資本金の額の増
加とはいえないため、この項目は適用されず、商号変更や目的変更と同様に、別表
「ネ」の「その他の登記事項」の項目に該当し、3万円です。商号変更や目的変更
と同時に吸収合併した場合には、一括して「ネ」の項目に該当し、合計3万円とな
り、「ヘ」と「ネ」の2項目で合計6万円になるわけではありません。

 資本金の額の「増加」とはいえないため、いわゆる「資本金の額の計上に関する
証明書」も、添付不要です。

 ところが、新設合併(別表「ホ」)や新設分割(別表「ト」)の設立登記の登録
免許税は、「資本金の額の0.15%又は0.7%であり、これで計算した結果、
3万円に満たない場合は3万円」とあり、資本金の額0円を含みます。設立登記で
すから、商号変更や目的変更と同時ということはあり得ません。

 では、資本金0円の設立であっても、「資本金の額の計上に関する証明書」の添
付は必要でしょうか。いまのところ、不要だとの先例もなさそうですから、添付し
たほうが無難です。


2010.03.12(金)【確定申告】(東京・金子登志雄)

 確定申告の締切り日が近づいてきましたが、みなさまは、もうお済みですか。私
は身内に外注して、もう終わりました。

 身内からは、「喜べ、税金が減ったぞ」と報告を受けましたが、その主たる原因
は売上の減少ですから、喜べたものではありません。ただし、その前年にはビッグ
な仕事があり、その反動が生じただけですから、まだ運のよいほうです。

 この程度で深刻な顔をしたら、不動産登記専門事務所に、叱られてしまいます。
不動産登記専門事務所は、リーマンショック以来、相当の落ち込みのようですから。

 また、弁護士も、人数が急膨張し、最近は、ノキ弁(軒先を借りて開業)やケー
タイ弁(事務所もなくケータイ電話で仕事)が増え、一部を除き、「弁護士=高収
入」という神話が崩壊してしまったようです。

 その食えない新人弁護士さんが大量に司法書士の業務に進出してくるだろうと、
わが業界では恐れられていますが、多重債務や簡易裁判所の業務には影響があって
も、登記の分野では、大量の先例を知っている司法書士の独壇場であることに変わ
りはないでしょう。弁護士でも容易に進出できるものではありません。

 会社法務を専門とする私の分野も、幸いなことに、経験が重視される分野ですか
ら、そう心配していません。かえって、弁護士さんが大量に進出してくれば、報酬
の相場も私の希少価値も上がるだろうと、私は歓迎です。

 いずれにしろ、いまのご時世は、収入のことよりも、職があるだけで幸せですね。
司法書士は仕事がなくても「無職」とはいえません。これは幸せなんでしょうか。


2010.03.11(木)【出る杭を打つな】(東京・金子登志雄)

 昨年秋に出版された、いま話題の元福島県知事佐藤栄佐久著『知事抹殺』、元リ
クルート社長江副浩正著『リクルート事件・江副浩正の真実』を読んでみました。
法律職の1人として、「読んでいません」とはいいにくいですし………。

 佐藤優氏の『国家の罠』でも感じましたが、不思議なことに、取調べの密室で検
事に怒鳴られたり、壁に向かってずっと立たされたりの過酷な仕打ちを受けたのに、
佐藤知事も江副氏も最後には担当検事と友情で結ばれる関係になっていました。

 敵と味方の関係とはいえ、真剣に向き合った奇妙な同士的結合が生じてしまうよ
うです。味方の弁護士とは1日30分程度しか面会できないのに、敵の検事とは土
日を含め夜の10時頃まで密室で向かい合います。この世に、人間は2人しかいな
いことになり、奇妙な連帯感が生まれるようです。これは、真剣にののしり合うほ
ど喧嘩した夫婦にだけ通じる奇妙な信頼関係に似た関係かもしれません(わが家で
は冷戦しか経験していませんので、わかりませんが)。

 夫の側の検事のほうも、妻たる被疑者に、実に正直に「あなたは気の毒だ。けれ
ども、これだけマスコミが騒いでいる限り、このまま終わりにはできない。執行猶
予で終わらせるようにするから、とにかく、この筋書を早く認めたほうがよい」、
あるいは「上のほうがこう言っているから、すまないが、これを認めてほしい。私
の立場もわかってくれ」などと懇願することもあるようです。徐々に被疑者もこの
程度なら夫に協力しようという気になり、虚偽の自白をしてしまいます。これが大
間違いなのですが、それをしないと、いつまでも保釈されません。

 筋書は上層部が作り、担当検事の仕事は、その筋書にそって自白調書をとること
のようです。筋書は、大物狙いが多く、リクルート事件の最終ターゲットは中曽根
元首相だったようですが、途中から、官房長官の藤波孝生氏に変わります。

 読後の感想としては、名知事、名経営者、名官房長官(将来の首相候補)………
などなどが、ちょっとしたボタンの掛け違いからつぶされてゆくのは国家的損失だ
と思いました。

 江副氏も就職採用問題や未公開株などの仕組みについて、検事や裁判官がいかに
無知かを嘆いていました。株価チャートの月足なども知らなかったようです。

 マスコミを代表する政治や経済の素人がプロの政治家や経済人の平常の行動様式
も知らず、「株式投資=悪」「不動産所有=悪」「業者との付き合い=悪」「政治
献金=悪」「急激な企業成長=悪」などの世相(「妬み、僻み、やっかみ」の国民
世論?)に便乗し、有能な人材への集団リンチを煽るのは、まるで社会の混乱を求
める無政府主義者の破壊活動のようで、日本の将来が不安です。「出る杭はもっと
引張れ、応援しよう」という社会にはなれないのでしょうか。


2010.03.10(水)【プロキシーファイト】(東京・金子登志雄)

 プロキ(または「ク」)シーファイト(proxy fight)という用語をご存知でし
ょうか。株主総会における委任状争奪戦のことです。

 3月30日開催のサッポロホールディングスの定時株主総会を前に、同社の筆
頭株主である米国投資ファンド「スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラ
テジック・ファンド(オフショア),エル・ピー(2008年12月31日現在
では17.55%所有)」が10人の取締役の選任を求めて、株主提案し、委任
状の勧誘をしかけました。

   http://spjsf.weblogs.jp/jp/

 現経営陣側も当然、防戦しています。

   https://www.release.tdnet.info/inbs/140120100305037084.pdf

 これでサッポロ対スティールの戦いは3度目ですが(2度とも会社側勝利)、
スティールは、昨年、アデランスで勝利していますので、会社側も油断できない
ことでしょう。

 これ、選挙に似ていると思いませんか。与党と野党が支持を求めて舌戦してい
るようなものです。選挙「戦」などというよりも「ファイト」のほうが、何とな
く、ボクシングなどのスポーツのようで、公正で明るくっていい用語だなと思っ
ています。

 プロキシーファイトは、公職選挙ではありませんから、WEBでの戦いが自由
です。夏の参議院議員選挙も、WEB、ブログ、スイッターの戦いを認めてもよ
いと思うのですが、国政選挙で認められる日はいつになるのでしょうか。


2010.03.09(火)【公正証書遺言作成のすすめ】(愛知・和出吉央)

 前回(2月3日本欄)、前々回(1月13日本欄)と遺言書のうち、“自筆”証
書遺言をテーマにお話しをしてきましたが、今回は“公正”証書遺言についてのお
話です。

 ここで改めて、なぜ我々専門家は遺言書の作成をおススメするのでしょうか。

 通常、ある人の相続人は、複数いる場合がほとんどです。その場合、相続人間の
財産の取得割合(相続分)が大きな問題となります。

 民法では、法定相続分として一定の割合を定めています。
 例えば、配偶者と子のみが相続人のときは、それぞれ1/2ずつ相続し、子が複
数いれば子の相続分である1/2を子の数で均等に分けます。

 民法に規定があるので、必ず法定相続分で分割しなければいけないと思われてい
る方も多いようですが、決してこの法定相続分で相続を行わなければいけないとい
うことはありません。

 遺言者が遺産分割の方法や相続分を遺言書で指定していれば、遺言書による相続
が優先することになるのです。

 ただし、民法では、各相続人の最低限保証された財産の取り分を認めた遺留分と
いう制度があり、遺言がある場合でもこれを侵害することはできません(遺留分の
請求は、原則として相続開始から1年内に行わなければなりません)。

 “法定相続(分)に優先する”つまり、『遺言者の最後の意思を実現することが
できる』という効果が、遺言書の最大のメリットと言えます。

 そして、この『最後の意思を実現する』ための手段として、前回までの“自筆”
証書遺言に比べて、安全かつ確実な方法が、“公正”証書遺言なのです。

 公正証書遺言の場合、各法務局に所属する“公証人”という法務大臣から任命さ
れた元裁判官や検察官、弁護士、司法書士といった法律のプロが、遺言者から聞き
取った遺言内容をもとに遺言書を作成し、その遺言書の原本を公証人が保管すると
いう最も「安全」で「確実」な遺言書です。

 よって、前々回お話した自筆証書遺言の次の四つの問題点はすべてクリアするこ
とができます。
 @遺言の内容・財産の特定が不明確になりやすい。
 A法律上の形式要件を満たしていないことがある。
 B遺言執行者の指定がされていないことがある。
 C検認手続きが必要となる。

 人生最後の一大事は、公正証書遺言で決めてみてはいかがでしょうか。


2010.03.08(月)【アリバイ】(東京・金子登志雄)

 「平成16年2月25日午後1時に何をしていましたか。」

 これに答えられる人は、まず、いないでしょうが、みなさんは、過去の手帳でも
みれば、おわかりでしょうか。

 先日行われた元厚労省の女性・村木氏の法廷で、証人になった衆議院議員の石井
一氏は、「平成16年2月25日午後1時に倉沢被告と会っていただろう」との問
いに、「その日は成田市のゴルフ場にいた。メンバーは誰と誰で、スタートは何時
で」と事細かく説明して、「会っていない」ことを完璧に証明したようです。

 年間6冊も手帳を買い替えるほど、あの顔に似合わず(失礼!)、その日の出来
事を几帳面に手帳をつけているようで、倉沢被告と会ったのは、平成16年に2回
とまで手帳からわかるようです。

   http://www.hajimeishii.net/

 勝手に名前を使われかねない政治家・企業経営者などの有名人は、常にリスク管
理していないと身を守れないのでしょうか。

 当の私は、先週のことですら、わかりません。一応、手帳は常時携帯しているの
ですが、今後の予定や面会の約束を忘れないために、「3時役員会」「5時半〇〇
さん」などというメモに使うだけで、予定外のことは書きません。予定がなければ、
当然に、その日は白紙です。アリバイを証明できません。
 
 しかし、たまに、全く知らない方から「〇〇会社の△△です。先般から、お願い
している登記の件ですが………」などという意味不明の電話が私にもかかってくる
ことがあります。私も、勝手に名前を使われているのでしょうか。

 ………きっと、自意識過剰ですね。東京には、金子姓の司法書士が9人いますの
で、どなたかと勘違いされたのでしょう。リスクは9分の1です。まだ、事細かく
手帳に記載する身分にはなっていないようです。


2010.03.05(金)【議事の運営】(東京・金子登志雄)

 国会の予算員会で、肝心の予算を審議しないで、「政治とカネ」の問題ばかり質
疑応答していることに違和感はありませんか。

 この不況に景気対策を議論しないで、何をやっているのだという庶民の意見が多
いのに、どうも、昔からの慣例? のようです。

 では、株主総会で同じようなこと、つまり、議題に無関係な質問がなされたら、
どう対応すべきでしょうか。

 会社法第315条(議長の権限)
 @ 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
 A 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す
  者を退場させることができる。

 したがって、「ただいまのご質問は本日の議題に関係がありませんので、却下し
ます」と議長がいえば済むことです。

 議長がいわないのなら、答弁に立った社長が「お答えしかねます」といってもよ
いですし、何度も質問されましたら「先ほどご回答したとおりです。議題に関係の
ある別の質問をお願いします」ときっぱりと拒否すれば足ります。

 議場での野次がひどければ、議長が「そこの方、退場を命じます」といってもか
まいません。

 株主総会が近づきますと、上場会社の総務部では、想定問答を作ったり、このよ
うな練習をするため、予算委員会をみていると歯がゆくてなりません。

 育ちのよい鳩山首相の馬鹿丁寧な応対が優柔不断にみえ、支持率も下がっている
ようですから、たまには、「何度もお答えしたとおりです(うるせえな、何度も同
じことを聞くな!)」と、毅然(?)として答えたら、強い首相のイメージが出て、
少しは支持率もアップするかもしれませんね。

 ただし、翌日の新聞1面に「首相、とうとう居直る!」と出て、さらに支持率が
下がっても、私は責任を負えません。


2010.03.04(木)【センベツのご指導】(東京・金子登志雄)

 富田さん、「よいしょ」投稿、ありがとうございます。相変わらず、クスッと笑
わせる文章が上手ですね。感心します。

>「餞別のご指導」だったのでしょうか?

 よく、わかりましたね。そのとおりです。

 ただし、「餞別」ではなく「選別」です。教えてすぐに理解できる人には、1を
聞かれたら、3まで教えています。また、他の面では、私が教えを請う立場ですか
ら、もちつもたれつです。

 おかげさまで、『親子兄弟会社の組織再編の実務』は、昨日また増刷になりまし
た。専門書ですから、小説類と桁が違う恥ずかしい冊数ですけど………。

 それでも、企業法務部や企業法務専門弁護士というプロの専門家に好評のようで、
「プロに評価される本」を目指してきた身としては、うれしいものです。

 重要部分につき、あたりさわりのない内容では、「何だ、やはり司法書士の本だ
な。内容が薄い」などと評価されてしまいますから、表のノウハウについては、包
み隠さず書いています。

 また、ノウハウなど隠しても、いつかは誰かが気づくものです。その誰かさんが
「このノウハウはオレが一番先に発見した」などと得意げに講演でしゃべったり、
本を出すと、私としては面白くありません。出版に携わる前は、過去、何度かこん
なケースがありました。

 とはいえ、本には書きにくいノウハウもあります。いつか実行しようと思っても、
それに適した仕事の依頼がないので、実行できないノウハウもあります。

 そうなんです。金子事務所の最大の課題は、複雑で難解で筋のよい(トラブル案
件でない)会社法・商業登記案件が、まだまだ十分ではないことです。そういう仕
事がもっともっと来れば、新たな発見や新ノウハウの開発が進むのですが………。


2010.03.03(水)【プロの世界とは】(東京・富田太郎)

 先日、ある「将棋関係の本」を読みました。

 弟子は、師匠の家に住み込みで修行を積み重ねることになるのですが、意外だっ
たのは、将棋の師匠は、弟子に稽古などをつけないことが普通で、将棋を指すとし
ても、回数的には1〜2回程度。弟子は、ひたすら師匠の身の回りの世話をしなが
ら、「師匠の技術」を目で盗んで成長していくそうです。

 また、師匠も弟子に才能がないと分かると、「1局、将棋を指してあげよう」と
言うそうですが? 実は、この1局の意味は、

 「あなたは才能がないから、将棋をやめて故郷に帰れ!」
  (「お別れの餞別の将棋」)という意味だそうです。

 厳しい世界ですね………(汗)。

 将棋に限らず、職人・落語家・料理人等のプロの世界ではよく聞く話です。

 師匠の技術を目で盗んで成長していく。また、師匠としても、長年かけて得た技
術・秘伝など簡単に教えることなどできないでしょう。これは、プロの世界の掟か
もしれませんね。

 ところで、話はかわって、先日ある有名企業のA社法務部から、合併の案件がき
ました。

 行ってみると、法務部担当者の方は『親子兄弟会社の組織再編の実務』(金子登
志雄著・中央経済社)をお読みになっていました(本にアンダーラインが一杯!)。

 担当者曰く「この本は素晴らしい。多くの合併関係の本は、ありきたりのことば
かりで、本当に知りたいことが書いていません。この本は、知りたいこと・疑問に
思っていることが書かれています。まさに、合併案件のバイブルともいえる本です。」
 と大絶賛されていました。

 実は、私もこの本にはずいぶん助けられています。ご自分の「長年のノウハウ」
を惜しみなく書かれています。

 しかし、普通、プロは「自分の長年の秘伝を惜しみなく書く」ことなど、できな
いのですが………、いずれにせよ、「合併のバイブル」ともいえる本ではないでし
ょうか??

(PS)
 ある休日のこと。

 『相互保有状態にある合併案件』で、疑問が生じたので、わが師、金子先生に質
問したところ、お休みにもかかわらず、懇切丁寧に教えていただき、詳細な説明、
資料まで一杯戴きました♪  さすが! わが師匠です。感謝♪ 感謝♪
 ・・・・・・・・・・・・・・・・
 あっ!! ひょっとして、まさか
 
 「あなた(富田)は、会社法の才能がないから、もうやめなさい!」

 という、「餞別のご指導」だったのでしょうか???………(汗)。


2010.03.02(火)【騙されない年齢】(東京・金子登志雄)

 先月26日には、事務所の近くで開催された、ある政治シンポジウムをみてきま
した。パネリストとして鈴木宗男議員や、人権派弁護士として有名な安田好弘弁護
士が参加していましたので、生でみたいと思ったからです。

 そこで、鈴木宗男議員が面白いことを発言しました。
 「昔、私は、疑惑のデパートといわれ、現地の人達が『ムネオハウス』と呼ぶ豪
邸を作ったなどと糾弾されました。しかし、ロシアでは英語が通じると思いますか。
ハウスなんていうわけがないじゃないですか。あれはこれこれで………」

 いわれてみれば、そのとおりですね。聴衆も大笑いでした。

 ロッキード事件の田中元首相に渡った5億円も、英国大使館の裏の路上でとか、
公衆電話ボックスのところで授受されたと報道されましたが、あれも「面倒だから
どこでもいいや」と被告人側が検事の誘導に応えた結果のようです(田原総一朗氏
による)。

 最近では、「石川議員に全日空ホテルの喫茶店で紙袋にいれた5000万円を渡
した」との報道がありましたが、そんなまずい金を目立つ場所で渡すわけがありま
せんし、紙袋では重くて無理であることは明らかです(約5キロです)。

 われわれ法務の世界でも、有名な学者の本に、荒唐無稽な解釈があっても、それ
を信じてしまう人が少なくありません。

 人のことはいえません。私も若い頃は活字になったことや報道されたことに疑い
をもつことは少なかったように思います。
 
 還暦を過ぎた今は、どんな偉い学者や評論家が何をいおうが、メディアでごく自
然に報道されようが、「まさか、常識的にみて、それはおかしい」と反応できるよ
うになりました。
 みなさんは、いかがですか。早く、歳をとりましょう。


2010.03.01(月)【官報公告の豆知識】(東京・金子登志雄)

 合併公告や資本金の額の減少公告は、会社債権者に対して、「この合併(又は資
本金の額の減少)に異議があれば述べよ」という内容です。

 債権者を名宛人にしますから、定款に定める公告方法が日刊新聞紙であろうと、
電子公告であろうと、必ず官報に掲載しなければなりません。

 官報には、本紙と号外があり、文章だけの合併公告等は本紙に掲載され、貸借対
照表の要旨と一緒に合併公告等をするときは、号外に掲載されます。そのため、本
紙の場合は1週間前に掲載を依頼すれば足りますが、号外では2週間前に依頼する
必要があります。

 2月26日掲載で文章だけの資本金の額の減少公告を依頼していたため、同日の
午前にインターネット版官報の本紙で、「どれどれ間違いなく掲載されているかな」
とチェックしましたら、何と掲載されていませんでした。

     http://kanpou.npb.go.jp/

 あせりました。いまから掲載依頼しても、公告日数が足りず、予定の期日に登記
はできない………、困った………。

 すぐに、親しくしている公告窓口の担当者T氏(公告に非常に詳しい人でESG
ではいつもご指名しています)に電話しました。

 T氏、「あ、ごめんなさい。営業日で2月の最後の日は、公告掲載数が多いため
(注:4月1日合併が多いためでしょう)、文章だけの公告も号外に一部を回しま
す。ご依頼の公告も、号外の〇〇頁に掲載されています。」

 「そんなことがあり得るのですか。本紙の頁数を増やせばよいじゃないか。」

 「本紙は32頁と決まっているんですよ。」

 ………はじめて知りました。2月最終日だけの特例でしょうか。

 なお、解散公告は文章だけでも、号外に掲載されることにご注意ください。1週
間前の予約では無理ということです。


2010.02.26
(金)【「品位」に思う】(島根・根来川弘充)

 先月相撲のことを書いて、今月は書く予定でなかったのですが、横綱朝青龍の引
退という大きな事件がありました。しかもバンクーバー五輪での某代表選手の服装
問題とあり、両者に通じるものを感じましたので取り上げたいと思います。

 両者が受けた批判はいずれもスポーツの実力とは別のものに対してでした。スポ
ーツである以上、競技者は頂点を目指すことは当然のことです。

 両者はいずれも競技のルールに従わなかったわけではありません。むしろ結果を
出しているのですから、他の者よりも真摯に取り組んでいた証だと思います。

 では、なぜ批判されなければならなかったのでしょうか?

 私が思うにはスポーツの理念が彼らを拘束したのだと思います。それぞれのスポ
ーツの組織にはそれぞれ理念があります。その理念はいずれも崇高なものです。

 一競技者としてならば、その理念を感じることはないのですが、トップに立つと
その競技の顔になります。それはその組織の顔でもあります。

 トップに立った者の一個人の行為は、組織として捉えられてしまうため、批判の
対象になってしまうのだと思います。

 今回当事者となった二人は、「そんなことを後から言われても…」と思うかもし
れませんが、おそらく入会手続きをするときになんらかの署名をしていると思いま
す。(つまり、組織の規約などを承諾しているということです)。

 「理念が個人の自由な行為に拘束を与える」という点について、この問題をかえ
て、その是非を考えると、どこかほっとするものを感じます。

 もし、強者がどんどん行為を許されてしまうならば、弱者はそれを抑える術を持
ちません。「理念」が強く働いたことは健全な社会の証だと思います。


2010.02.25
(木)【マスコミの説明責任】(東京・金子登志雄)

 今週の「週刊朝日」を購入したところ、起訴された石川知裕衆議院議員へのイン
タビュー記事が掲載されていました。数日前は、確か日刊ゲンダイにも掲載されて
いました。

 実に不思議です。

 酒井法子事件や押尾学事件では、テレビのワイドショーはじめ、あれほど本人を
追いかけまわしていましたし、朝青龍問題でも、ハワイにいてどうのこうのとマス
コミで取り上げているのに、あれほど大騒ぎした政治資金規正法違反の石川議員問
題では、三大新聞もテレビも、本人が釈放されたというのに、全くインタビューし
ていません。なぜでしょうか。

 まさに「いまこそ説明責任を果たせ」とテレビに引張り出せばよいのに、週刊朝
日と日刊ゲンダイを読んでいない多くの国民には消化不良が残ります。

 小沢・石川問題につき、これまでのマスコミの姿勢をみていると、日刊ゲンダイ、
週刊朝日、東京新聞、海外マスコミ(米ニューヨークタイムズほか)などが検察捜
査に批判的であり、その他の日本の大手マスコミ全部が検察寄りでした。

 いまこそ報道の中立性を証明するために、石川議員にインタビューすべきなのに、
全く動きがありません。これは反小沢の急先鋒の人からみても、その人が自由主義
者である限り、不公平に思うことでしょう。

 週刊朝日によると、小沢氏に対するテロの危険があるとのこと(これは私も前々
から感じていました。1月21日付本欄【物騒な世相】)。小沢氏は毎週、記者会
見しているのに、いまだに説明責任の場を設けないと攻撃されています。

 テロを誘発しかねない大手マスコミの報道姿勢に対して、魔女狩りによる人権侵
害の怖さを感じているのは私だけでしょうか。昔のイエスの方舟事件や豊田商事事
件の反省はマスコミにはないのでしょうか。説明責任はマスコミにも求められます。

(参考)
 イエスの方舟事件=千石イエスという宗教家が家出娘たちをたぶらかして逃亡生
活を送っているとマスコミで大キャンペーンがなされましたが、事実は、家出娘が
千石のおじちゃんを巻き込んで親から逃亡していた事件。
 豊田商事事件=悪徳商法の豊田商事非難のマスコミ報道に誘発されて、その社長
が白昼堂々とテレビカメラの前で殺害された事件。犯人は英雄気取りでした。


2010.02.24
(水)【新聞−ここにも格差?−】(島根・渡部浩義)

 唐突ですが、島根には全国紙の夕刊が配達されません。

 現在、日本全国に夕刊の配達されない地域はどれくらいあるのでしょうか。
また、島根は東部地域は大阪から、西部地区は九州から新聞が配送されます
(ただし、日経は全県下、九州から配送)。同一県内で、配送元が違う新聞を読
んでおられる県は、全国にどれくらいあるのでしょうか。

 しかし、最近はネットの時代。ネットによるニュースの配信によってか、新聞
各紙ともに紙媒体の新聞発行部数は減少傾向にあるようです。確かに全国紙、地
方紙問わず新聞各社は、リアルタイムで新しい記事をネット配信もしており、パ
ソコンを使いこなせる人には紙の新聞をとる必要はないのかもしれません。

 私は、出張の折には、そこで必ずその地域の地元紙と、我が家で取っている全
国紙を買うことにしています。これを家に持ち帰ってゆっくりと読むのが楽しみ
です。

 地方紙には、その地域の特色ある話題や独自の問題が記事になっており色々と
参考になることが多く、唸らさせられることしきりです。では、家にもある全国
紙もなぜ買って帰るのかといえば、出かけた地域のそれと、我が家に配達された
ものが、その日どれくらい紙面構成が異なっていたのかを比べながら読むのが好
きだからです。

 ご存知のように、新聞は同じ工場出荷分でも、ニュースの入稿状況と印刷・出
荷時間(版)によって、かなり紙面構成が異なってくるようです。工場から遠い
地域への出荷分は、当然に印刷時間が早くなるわけですから。私も、我が家に届
いていたものと一面から紙面構成が随分と違うものも、過去何度か手に持ち帰り
ました。

 子供のころ、我が家に届く新聞のスポーツ欄のプロ野球試合結果は、およそ
「7回」以降が空欄で「試合経過中」の文字があったように記憶していますが、
最近は編集・印刷技術や道路整備状況など配送環境も良くなったからでしょうか、
延長戦の試合でも全経過結果が載ったものが配達されています。

 ただ、残念に思うのは、やはり東京あたりで手にする新聞と島根の私の家に配
達される新聞とでは読み比べると、今でも随分と情報量に開きがあることや、同
一紙でも内容・論調まで違った記事があったりすることです。

 たとえば日経。これは、前日の夕刊を読んでいることを前提とした翌朝刊の記
事が多々ありますし、土曜日の附属紙『日経PLUS1』など、うちに来るそれ
の中央8〜9面は全面が通販広告なのに対し、東京駅で手にするそれは、同一面
にわかりやすくて身近な生活経済情報が満載!

 また、同紙の地方面に目を転ずれば、かたや疲弊する地域経済と破綻寸前の財
政記事、かたや好調な企業の特集記事や潤沢な財政指標に関する記事が目白押し。
 やはりこんなところでも都市部(首都圏)優位なのでしょうか?


2010.02.23
(火)【急ぎ働き(いそぎばたらき)】(島根・渡部浩義)

 池波正太郎の人気小説『鬼平犯科帳』によると、「急ぎ働き」とは盗賊一味が、
目的の店(たな)に周到な準備もなく正面きって押し入り、そこに居合わせた人々
を問答無用で殺傷し、金品を奪って逃げ去る強盗手法をさすようです。

 私たち司法書士も、関係者を殺傷することはないにせよ、時々「急ぎ働き」を依
頼者から求められることがあります。

 「とにかく急いで、急いで、」を連発される依頼者は、その裏に事情を抱えてお
られることが多く、私たち資格者は注意をしなければならない案件ということにな
ると思いますが、過日もこの「急いで!」を連発される地元出身の相続案件の依頼
者がお見えになりました。

 「相続人の間の話は整っている。『相続放棄』手続をとってもらったうえで、相
続登記手続をお願いしたい。できれば1週間以内に。」とまくしたてられ、私も、
「事情を伺ったかぎり、必要な戸籍類の収集・調査だけでも急いでも3週間はかか
ると思います。ご兄弟(相続人)も多いようですので、急がれるのであれば、各相
続人さんの戸籍等抄本や住民票は、各自で取ってもらって下さい。被相続人様に関
する必要な戸籍・除籍類は、こちらで収集しますが、これも蓋を開けてみないとど
れだけの書類が必要になるのかわからず、絶対的な時間のお約束はできませんが…
……」と答えると、「わかったから、とにかく早く!」と依頼者。

 案の定、この被相続人氏は、生前に日本各地に転籍を繰り返しておられ、私も各
地役場との間で速達郵便による職務上請求を繰り返すこととなりました。そして、
依頼者にもやはり時間がかかる「見込み」を伝えました。

 数日後、事務所に届いた郵便物の中に、この依頼者からの書留郵便があることに
気づき、開封してみると、「〜貴殿が相続書類の調査に手間取っている間に、株式
市場は混迷を極め、特にJAL株にいたっては『紙くず』となり………。もとより
田舎の不動産にはすでに財産的価値はなく、当方も興味をもってはおりません。
………もはや貴殿との信頼関係もなく、依頼を解除したい………。」

 JAL株のことなどこちらも聞いていません。うちの応接で依頼者から出た話は、
専ら不動産と僅かな預貯金があるという相続の話であったはずです。

 「急げ!急げ!」の裏にある真の事情を充分にインタビューできていなかった、
準備している図表を用いてした相続放棄手続の流れの説明も理解してもらえてはい
なかったようです。

 私の聞き取り能力や、説明能力が決定的に不足しているのでしょうか?
相続手続に株式相場変動や一企業のその時々の特殊事情を出されても、ただ困惑す
るばかりなのですが………。田舎司法書士、無力なり。 


2010.02.22
(月)【世論】(東京・金子登志雄)

 19日金曜日は、神奈川県司法書士会で会社法の講義でした。神奈川県では会社
法施行後はじめだったため、うれしく思いました。私も県民ですから。

 さて、みなさまは、「世論」を何と読みますか。

 私の小学生時代は「セロン」と教わりました。「ヨロン」は、「輿論」と書くか
らです。しかし、最近は、「世論=ヨロン」が一般化したようです。国語検定でも、
ヨロンというルビで合格するのでしょうか。

 ネット検索によると、「輿論は多数意見」、「世論は全体の気分」という意味で、
本来は意味が相違したが、1946年の当用漢字表の公布によって、輿論が使えな
くなり、以来、輿論も世論に吸収されたようです。

 最近は、内閣支持率や政党支持率などで頻繁に世論調査の結果がでますが、マス
コミ不信による調査拒否も多いようですので、結果は確固とした「多数意見」では
なく、「世間の風潮(空気)」ではないでしょうか。

 この程度でしたら、私の周囲の数人に聞けば容易にわかりますが、残念なのは、
意見のうちの多くがテレビのワイドショーあたりからの受け売りで、真に自分で考
えた意見なのか疑問な点です。

 ユニークで面白い意見を出すのは、自分の意思でテレビもみない、新聞も購読し
ないという年金生活者の中高年の意見です。彼らは、一日中、インターネットで、
さまざまな意見や情報を収集し、海外メディアの意見まで調べているため、ワイド
ショーのコメンテーターあたりを軽蔑し、確固とした自分の意見をお持ちのようで
す。あたかも、町の研究家のようです。

 さらに最近は、ツイッターとかいうもので、即時に情報が全国に流れるようにな
りました。情報源がワイドショー程度の方の意見では、ヒマで時間たっぷりの中高
年の前では、全く歯が立たないようになってきたようです。ネットやツイッターに
よる井戸端会議が世論を先導する時代も、そう遠くないのかもしれません。


2010.02.19
(金)【「分割」の概念】(東京・金子登志雄)

 1株を2つに分けることなどを株式分割といいますが、これだけだと、0.5株
と0.5株にするのか、あるいは0.6株と0.4株もよいのかなどと感じないで
しょうか。

 そうではなく、1株を2株(や3株あるいは1.2株)にするなど株数を増大さ
せる行為を株式分割といいます(逆が「株式の併合」)。
 とすると、今度は、誕生日が同じ株式が2つできるのかと思いませんか。

 これも間違いで、正しくは、同じ内容の株式を「追加発行」して1株の価値を薄
めるのが株式分割です。内容は同じ株式でも、誕生日は違う株式が発行されるわけ
です。旧株と新株との関係は、母と子の関係ですが、身長も体重も一致します。

 会社分割(新設分割を前提)も同じです。本によっては、「会社を2つに分ける
こと」などと説明されていますが、正しくは、誕生日の違う会社をもう1つ追加で
新設することです。母と子の関係です。

 ただし、株式分割は細胞分裂のようなものでDNAも一致しますが、会社分割の
場合は、母の一部分を外に出したのであり、「分離」行為です。A事業とB事業を
営む会社がB事業を独立させる分離行為です。DNAは、母と子では一致しません。
身長も体重も違います。

 では、りんごの分割はどうか。これは、誕生日も一致します。
 「分割」という概念は、多義的です。


2010.02.18
(木)【私の少数意見】(東京・金子登志雄)

 昨日の投稿で思い出しましたが、政治資金で不動産を買うことは、ほんとにいけ
ないのでしょうか。どうも、背景に「不動産=悪」(土建屋=悪も同じ)という風
潮があるようで、不動産登記で飯を食っている業界の1人としては、違和感を禁じ
えません(私は会社登記専門ですが)。
 
 インターネット上では、「私は政治資金収支報告書を3度もチェックしている」
と国会で豪語した自民党の町村信孝氏までが政治資金で不動産を購入していたこと
をばらされ、非難されていました。たった1000万円程度の物件です。

 私は、政治家が事務所や秘書の住宅として賃借するより購入したほうが有利だと
判断したのであれば、それを認めたいと思います。政治資金にゆとりがあれば、定
期預金でなく、株式投資や不動産投資にも回したくもなるでしょう。才覚があるの
なら、どうぞご自由にと私は思います。

 話変わって、冬季オリンピックのスノボーの國母選手の服装や態度が非難されて
いますが、私には、開会式にチューイングガムを噛みながら行進する外国選手のほ
うが気になりました。

 しかし、私は、そこで考えを止めます。「あいつを参加させるな」という論には
決して与しません。高校生時代に、テレビではじめてビートルズをみたとき、「何
だ、あのだらしなさは。日本のテレビなんかに登場させるな」と思ったことがあり、
その苦い反省がありますし、生き様や文化は人・国それぞれだと思うように心がけ
ているからです。

 「あれもいけない、これもいけない」といわれれば、世の中、息苦しくなります。
本心を隠し、表面上だけのいい子になってしまいます。「私には関係ない、私は私、
人は人」でよいのではないでしょうか。でも、きっと、少数意見でしょうね。


2010.02.17
(水)【登記からみた「小沢一郎・陸山会問題」】(富田太郎)

 最近の新聞によると、小沢一郎氏の資産の不透明さについて報道されています
(以下、本年2月9日付毎日新聞による)。

 東京南青山のマンションは、
 @元々、小沢一郎個人が2000年12月に取得。
 Aその後、2001年12月、小沢一郎が同氏の政治団体『陸山会』に
  3320万円で売却。
 Bしかし、2009年6月、またもや『陸山会』から小沢氏に売却

 つまり、不動産の物権変動は、小沢一郎→陸山会→小沢一郎と移転したことにな
る。 
 Cただし、登記簿上は、小沢一郎のまま

と報道されていました。

 先日、この件で、友人から

「なぜ、ずっと登記名義が小沢一郎のままだったのだろう? 確認書なんか作らず、
きちんと、登記していれば疑惑も晴れたのに? 不動産の移転費用・登録免許税と
かケチったのかなぁ?」

 という質問を受けました。

 実は、法律上、一部の学会・学校の同窓会など、法の規定がないため法人格を与
えられていない団体を「権利能力なき社団」といい、今話題の政治団体「陸山会」
もこれに該当します。

 このような「権利能力なき社団」も、不動産を取得できますが、「陸山会」とい
う名義で登記することができません。つまり、「陸山会」自体が法人として登記さ
れていないからです(法人登記されていないため、登記申請に必要な住所証明書・
印鑑証明書とかを添付できない)。

 この場合、陸山会が、不動産を取得した場合、次の@かAの方法で登記するしか
ありません(通常は@の方法で登記することが一般的です)。

 @陸山会の代表者個人名義(「小沢一郎」個人名義で登記。
  「陸山会代表者 小沢一郎」のような肩書き付の登記はできない。)
 A構成員全員の共有名義

 よって、実体上「小沢一郎個人から陸山会に」と不動産が移転しても、登記上は、
「小沢一郎→小沢一郎」になってしまうため、このような移転登記は受理されない
ことになります。つまり、登記簿上は、ずっと「小沢一郎」のままです(参考:登
記研究572号 テイハン)。

 でも、権利能力なき社団であっても、その名で供託はできます(供託規則14条
3項)。
 また、民事訴訟法29条によれば、代表者の定めがあれば、訴訟法上の当事者能
力が認められています。

 なにゆえ、不動産登記だけは、登記名義人になれないのでしょうか・・・。
難しい問題ですが、大いに議論の余地があるのではと思いませんか?

 ・・・・・・・・・・・・・

 すいません。今回は笑いがなく、真面目な話でした・・・・・(汗)。


2010.02.16
(火)【「会社法」法令集第7版】(東京・金子登志雄)

 おかげさまで、当ESGがミニ解説を担当している中央経済社刊の『「会社法」
法令集』が第7版になりました。

http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-99150-9

 会社計算規則の改正があったために改訂されたわけですが、会社法の条文集の中
では、一番売れており、われわれも喜んでいます。司法書士業務にとっては、第6
版でも十分ですが、税込2520円ですから、ぜひ最新のものに切り替えてくださ
いますようお願いします(著書とまではいえませんから私欲ではありません)。

 思い起こせば、このシリーズの最初は『会社法「現代化」法案』でしたが、中央
経済社から会社法の条文集を出すと聞かされた私が、「そんなの出版とはいえない
じゃないですか。法務省案を本にするだけなんだから。やめたら」と冷水を浴びせ
たところ、担当者からも、「何とか特徴を出したい」といわれ、「1行解説のミニ
コンメンタールはどうですか。そういう条文集があれば私もほしい」といったのが
はじまりでした。

 法律家の間で最も売れている判例付き六法である『模範六法』(三省堂)の判例
部分をミニ解説に置き換える方式であれば、売れると思ったわけです。

 そこまではよかったのですが、「先生、やってくれますか」といわれ、引くに引
けず、徹夜に続く徹夜状態で頑張りました。

 それを中央経済社が何と採算度外視で680円で売り出しました。これには本当
にびっくりしました。出版社ですから、著者のいない本を高く売れないというプラ
イドだったのでしょうか。

 以後、会社法施行規則なども加わり現在に至りますが、会社法本なら中央経済社
というイメージが付くことに、本条文集は大いに貢献したのではないでしょうか。


2010.02.15(月)【宗教家の強さ】(東京・金子登志雄)

 土日は群馬県に帰省しました。久々に雪景色でした。

 行き帰りの電車の中がたいくつなので、途中のブックオフで本を探していたら、
たまたま有名な『国家の罠ー外務省のラスプーチンと呼ばれて』(元外交官・佐藤
優著)があったので、遅ればせながらと思い、購入し、読み始めましたら、検事と
の奇妙な友情や真剣勝負に引き込まれてしまい、一気に読んでしまいました。

 そこでは、検事が「これは国策捜査だから、戦っても無駄だ」「国策捜査は『時
代のけじめ』をつけるために必要だ。あなたは運が悪かった」とまで話すくだりも
登場し、そこまで種明かしをしてくれるのかと驚きました。
 ここでいう「時代のけじめ」とは、森内閣から小泉内閣になり、国際協調路線か
ら、親米かつ排外的ナショナリズム路線になり、前者の鈴木宗男氏や佐藤優氏を人
身御供にしたことを指します。

 イスラエルとロシアが近い関係にあるなど優れた分析や内容が多々ありましたが、
驚きなのは佐藤氏の記憶力のよさ(映像が頭に焼きつくタイプのようです)と意志
力の強さです。他の被疑者がみな検事のストーリーを簡単に認めたり、人のせいに
して逃げるのに対し、彼は保釈も希望せず、532日も独房で頑張って否認し続け
ました。それも無理せずに、独房生活を人生の経験として受け入れていました。

 彼自身は宗教家かどうか知りませんが、大学は神学部ですし、独房生活でも聖書
を愛読したようです。

 日本人の文化は「和」や「調和」であり、「他人(隣近所や同僚)の目」ですが、
宗教家や西洋の文化は人の目よりも「神の目」を意識するのか、他人にどう思われ
るかよりも、「神の意思=良心」に反しないことを優先するから、強いのでしょう
か。

 いずれにしろ、宗教家に限らず信念が日常生活に溶け込んでいる人は、強く逞し
いものだと思いました。法律解釈は、時代の流れ(国策)で変化するところもあり
ますので、専門が民事・刑事に限らず、法律家にはお勧めの本だと思いました。


2010.02.12
(金)【法律解釈の多様性】(東京・金子登志雄)

 司法書士や弁護士に対して、「あの六法全書の条文をすべて覚えたのですか」な
どと聞く方が少なくありません。「法律の勉強は記憶である」と誤解されているよ
うです。

 覚えることが多いことは事実ですが、法律学の中心は「解釈学」であって、相手
を説得するための理論構成です。裁判も、原告と被告が直接議論するのではなく、
それぞれが「当方の主張はこうで相手の主張のここがおかしい」と、裁判所を説得
する争いです。

 法律解釈の手法も人それぞれです。理系頭の私は条文相互間の論理で解釈します
が、歴史頭の方は条文の生まれた背景などから論じます。会社法で言えば、私は企
業活動の自由を推進する方向から解釈するのに対し、企業は悪という発想で規制の
方向から解釈する人もいます。温厚に解釈する方も、原理主義で解釈する人も、完
全に自分に都合のよいように勝手に解釈する人もいます。

 このたびの石川衆議院議員起訴の問題でも政治資金規正法の解釈につき、それぞ
れの立場から解釈が出されています。

1.もともと、政治資金のオープン化を求める法律であって、小沢氏個人と陸山会
 との資金の出入り(立替金など)の記載漏れなどは、うっかりミスの形式犯に過
 ぎず処罰の対象にならないという考え方(従来はこの運用でした)。

2.政治資金の流れを正確に書く必要があり、それを書かなかったことは「虚偽記
 載」であり、民主主義の根本の法律に違反した重罪だという考え方。

 テレビ番組などでは、元検察官の間でも、1の石川議員無罪説と2の重罪説とで
激論がなされていることは周知のとおりですが、最近のインターネット情報による
と、菅副総理の元政策秘書でジャーナリストの松田光世氏(政治資金規正法の改正
にも関与していたようです)が、次のような解釈を打ち出しました。
 
 松田氏のtwitterから抜粋です。
--------------------------------------------------------------------------
 そもそも「規制」法ではなく、「規正」法。政治資金そのものを規制するのでは
なく、政治資金の自由を確保しつつ、収支を公開することで、衆人環視の下で政治
がゆがめられることのないようにするのが立法の趣旨。

 政治資金規正法は、すべての「寄付」を記載することを義務づけているが、「借
入金」は、政治資金規正法4条の定義でいう「財産上の利益供与」ではないので
「寄付」ではない。規正法上は政治団体の保有資産等報告に書けばいい。

 「入出金」は、政治団体の帳簿に記載することが義務付けられているが、収支報
告書には、寄付のみを抜き出して記載する。そこには違いがあるのは当然で、そこ
まで公表すると政治活動の自由が損なわれるという与野党の暗黙の了解の下で、政
治資金規正法は運用されてきた。検察は今回、その一線を越えた。
--------------------------------------------------------------------------

この松田見解によると、「立替金=収支」という前提に立つ従来の激論は根底か
ら崩れます。新解釈ではなく、最初からそうだったという解釈ですから、衝撃でし
た。いままでの議論は、政治資金規正法の素人同士の議論だったのでしょうか。

 さて、皆様はどう思いますか。ここで、政治資金規正法の条文を確認したとして
も、その人の思想や経験・知識あるいは性格や立場が解釈に微妙に影響してきます。
 法律解釈というのは、一筋縄では行かないことをご理解いただけたでしょうか。


2010.02.10
(水)【【取締役の2年確定任期(その2)】(田中利和&梅田幸志)

 田中:きのうの続きですが、会社法第332条第1項には、「取締役の任期は、
選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結
の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮する
ことを妨げない」と規定されています。

 さて、「取締役の任期を2年とする」と確定任期を定款に定めることは、この
「ただし書」に該当するでしょうか。

 梅田:きのう話しましたとおり、確定任期と不確定任期とでは、どちらが長期か
短期かは簡単には比較できません。例えば、選任後2年を過ぎて本条1項本文の株
主総会が開催された場合には、株主総会日(法定期間)よりも前に任期満了するた
め、短縮規定となり、選任後2年よりも前に本条1項本文の株主総会が終結した場
合には伸長規定になります。

 田中:具体例でいいますと、3月決算会社で平成20年6月25日に選任された
取締役の任期は平成22年6月25日までですが、今年の定時株主総会が6月26
日以降に行われれば「短縮」になりますが。6月25日以前に行われれば、短縮に
ならないということですね。

 梅田:そういうことです。したがって、短縮となった場合には結果的に何も問題
が生じないでしょうが、伸長となってしまった場合には、不適法な定款の定めとな
ってしまいます。委員会設置会社でも、会社法第332条第3項により、「取締役
の任期を1年とする」と定款に定めたい場合には、同様の問題が生じます。

 田中:そんなに脅かさないでくださいよ。

 梅田:われわれの顧客である非公開会社では、会社法第332条第2項により、
この問題は生じません。短縮も10年以内の伸長も自由だからです。ご心配は無用
です。


2010.02.09(火)【取締役の2年確定任期(その1)】(田中利和&梅田幸志)

 会社法第332条第1項には、「取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事
業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定
款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない」と規定され
ています。
 
 この「2年以内に終了する」は「定時株主総会」ではなく、「事業年度のうち最
終のもの」を修飾し、定時株主総会が2年以内に行われる必要はありません。

 さて、みなさん、「取締役の任期を2年とする」と定款等に定めることは、この
「ただし書」で許容されるでしょうか。 

 こんな疑問が生じ、次のような会話をいたしました。
 
 田中:突然ですが、梅田さん、この332条ただし書きの「短縮」とは、どうい
った場合のことをいうのでしょうか。

 梅田:面白い問題なので、検討してみました。

 結論から言うと、取締役の任期を、1年とか2年とかという確定期間で定めるこ
とは、一見、短縮規定のように思われるでしょうが、そうでない場合もあり得ます。
本条ただし書の「短縮」の対象である「任期」には、次の2種類の概念があるため
です。
 
 @ 確定期間………1年(間)とか、15か月(間)とか。 
 A 不確定期間……定時総会の終結時までとか。
   
 田中:会社法の規定は、A型ですね。

 梅田:したがって、「取締役の任期を2年とする」と確定期間を定めた場合に、
Aの不確定期間と、どちらがより長期か、短期かは簡単には比較できません。

 田中:言われてみれば、確かにそうですね。では、「取締役の任期を2年とする」
という確定期間と、会社法第332条第1項本文の不確定期間とは、どちらが長期
又は短期になりますか。

 梅田:本欄読者の司法書士のみなさんにも考えてもらいたいので、この答えは明
日にしましょう。

 田中:いいですね。いつも、管理人の金子代表に、せっかく書いた投稿をボツに
されていますから、1回では引き下がれませんからね。


2010.02.08(月)【欠損と損失】(東京・金子登志雄)

 5日の金曜日は東京司法書士会第2ブロック(江戸川支部など)のセミナーで講
師を務めました。テーマは、いつもどおり会社計算規則の改正です。

 力を入れたのは「欠損」と「損失」の相違です。これに関しては、どこにもはっ
きりとした解説がなく、混乱気味ですが、目下の私の理解は次です。

 次のような「純資産の部」があったとします。

    資本金       1000万円
    資本剰余金     1000万円    
     資本準備金     (1000万円)
     その他資本剰余金       (−)・・・・A
    利益剰余金     △600万円    
     利益準備金      (200万円)
     その他利益剰余金  (△800万円)・・・・B
    自己株式      △100万円・・・・・・・C

 欠損というのは、剰余金の分配可能額(昔流にいうと利益配当限度額)が負の場
合であり、分配可能額は上記でいうと「A+B+C=△900万円」ですから、欠
損の額は900万円です。

 損失というと、一般的にBを指し、損失補てんとは「A→B」の振替えをいいま
すが、利益勘定の合計が600万円なのに、資本勘定から利益勘定に振り替える損
額が800万円というのは不当ですから、600万円ということになります。
 つまり、損失額は800万円なのに、損失補てん額は600万円というべきなの
か、損失概念自体が利益準備金を含んだ概念で600万円なのかは、はっきりして
いません(後者で考えた方が妥当だと考えています)。
 
 いずれにしろ、上記の例で欠損てん補の名のもとに、利益準備金から200万円、
資本準備金から600万円を取り崩す事例が多いようですが、正確な意味で「欠損」
てん補するなら、資本準備金から自己株式分を含め700万円まで取り崩せます。
自己株式の存在する会社での欠損てん補の場合は、この点に気を付けるべきです。


2010.02.05
(金)【3種類の商号変更】(東京・金子登志雄)

 たまたま同時期に、@有限会社の合同会社への組織変更、A有限会社の株式会社
への移行、B有限責任中間法人の一般社団法人化の相談を受けたことがあります。
いずれも法人としての同一性は維持されるのですが、登記手続上は三者三様です。

 @「有限会社の合同会社への組織変更」

 有限会社は株式会社の一種であり、合同会社は持分会社の一種です。したがって、
「動物」が「鳥類」に変化するほどの会社の種類の変更となります。
 「変更」とは、旧が消滅し、新が生成することでもありますから、法律上も、解
散と設立となり、有限会社の登記簿を閉鎖し、合同会社の新登記簿を起こします。
その結果、印鑑カードも新規に作成し、旧カードは失効します。ただし、実質は、
商号変更に過ぎないため、法人としての誕生日は維持されます。

 A「有限会社の株式会社への移行」

 有限会社も株式会社の一種ですから、同じ動物界の中の変化であり、猫が虎にな
るようなものです。法律上も名実ともに「商号変更」とされています。ただし、商
法時代から登記簿が有限会社と本来の株式会社のそれとで別々になっていたため、
登記手続上は、旧登記簿の閉鎖と新登記簿の作成が必要となり、@と同様です。

 B「有限責任中間法人の一般社団法人化」

 法令に基づく名称変更であり、登記簿をそのままに名称だけを変更します。「虎
太郎」改め「トラオ」になるようなもので、登記上の法人番号も引き継がれます。

 実質はすべて同じですが、@ではガラッと会社形態が変更され、Bでは単なる名
称が変わるだけなのに対し、中途半端なAは、移行前の平取締役には住所が記載さ
ているが、移行後には住所が抜かれるなどの差が生じ、最もややこしい手続になり
ます。事業目的を同時に「変更」し、同時に増資したのに、登記上は「設立」です
から変更年月日を記載しないなどという問題も生じます。


2010.02.04
(木)【執筆者としてのプライド(パート2)】(東京・富田太郎)

 ある日のこと、『不動産登記の仕事』で銀行に行きました。いつものように、登
録免許税等をもらい、お札を数えていたところ、懇意にしている銀行の担当者から、

 「あれっ???富田さん。金融機関のご出身じゃなかったのですか??」

 つまり、「なに、この人?? 金融機関にいたのに?? 札束、数える手先が、
ぎこちない??」と、あまりの私の不器用な? お札の数え方に、思わず目を疑っ
たようでした(涙)。

 私は金融機関出身といっても、総合リース会社出身で、在職中はお札など数えた
ことがありません。銀行員さん!不器用で悪かったですね!(怒)

 話は変わって、昨年のNHKの大河ドラマで有名になった「直江兼続」には、次
の有名な話があります。

 その昔、江戸幕府の頃、江戸城の応接の間にて、各大名が雑談をしておりました。
そのとき、かの『伊達政宗』が、手に入れた「珍しい小判」を自慢し♪これを順に、
各大名にまわし、見せびらかしていました。

 が、『直江兼続』のところに、まわってきた時、なぜか、彼は直接手には取らず、
扇子の上に小判を載せました???

 正宗曰く (兼続は陪臣のため、遠慮しているのか? と思い) 
      「苦しゅうないぞ、直江殿、手にとってご覧あれ!」
 兼続曰く 「私の手は『戦の指揮を取る軍配』を持つためのもの(きっぱり)!
       かかる卑しきもの(小判)など、手に取りたくはありません!」

 兼続は、そういうと、扇子の上の小判を、ポンポンと宙に跳ね上げたのちに、さ
らに勢いをつけて伊達政宗に投げ返したそうです(ご立派!)。

 この有名な話、細かな部分が異なったりすることから、後世の創作だと思います
が、この兼続の「崇高な気持ち」、私にはよく分かります。

 私の手は、「お札を数える」ためのものではなく、『神聖な著作を執筆する』た
めのものです!
 ふん!「お札を上手く数える」ことなど、全く興味もありません(きっぱり)!!

 銀行員さん!お分かりになっていただけたでしょうか(ニヤリ)???

・・・・・・・・・・・・・

 すいません。不器用な人間の「負け惜しみ」ですね・・・・。
司法書士の不動産業務では、頻繁にお札を数える局面があります。
あぁぁ〜、私もお札を、かっこよく、上手く数えてみたいものです(涙)! 


2010.02.03
(水)【裁判例からみた自筆証書遺言の問題点】(愛知・和出吉央)

 前回(1月13日本欄)、「自筆証書遺言の不備」というテーマで自筆証書遺言
の「怖さ」をお伝えしました。今回は、その「怖さ」を、裁判例を通してさらに具
体的にお伝えしたいと思います。

     ―偽造が問題となった事例(一澤帆布工業事件)―

 自筆証書遺言が偽造されたのではないか!?この点が問題となった最近の事例に、
一澤帆布工業事件があります。この事例を単純化すると、以下のとおりです。

 舞台は、京都の人気老舗かばん屋です。先代が亡くなったのですが、顧問弁護士
が先代から預かっていたという自筆証書遺言には、「三男に家業を継がせる」旨記
載されていました(「@遺言」とします)。三男は先代とともに会社に入っていま
したから、この遺言は順当なものに思えました。

 ところが、約4か月後、某銀行に勤める長男が、新たな自筆証書遺言があると主
張をしたのです。そして、その新たな自筆証書遺言には、「長男に家業を継がせる」
旨が記載されていたのです(「A遺言」とします)。

 2つの遺言が出てきて、一澤帆布工業は大騒ぎとなり、長男と三男の争いは裁判
所へ持ち込まれました。裁判では、A遺言が偽造されたものかどうかが最高裁まで
争われた結果、“A遺言は偽造されたものではない”という結論に至りました。つ
まり、長男が勝利したのです。

 これで一件落着かにみえましたが、実はこの事件はこれでは終わらなかったので
す。敗れた三男に代わり、今度は三男の妻が長男を訴えました。訴えた理由は、
「A遺言は偽造されたものである」。つまり、三男の妻は、三男と長男が裁判で激
しく争った争点を、三男に成り代わってもう一度裁判で争おうとしたのです。

 この新たな裁判もまた最高裁まで争われました。以前、長男の勝利という判決を
下した最高裁ですが、何と今回は「A遺言は偽造されたものである」と判決を下し
ました。つまり、三男(の妻)が勝利したのです。

          ―結局何が言いたいかー

 『もし、この2つの遺言が公正証書遺言だったら・・・』
 長男と三男の争いは裁判にまではならなかったに違いありません。

 公正証書に偽造という事態は起り得ません。法的には、あとに残した公正証書遺
言が有効となるのです。

 一澤帆布工業事件は、結局、三男が勝利した形で終結しましたが、一連の争いに
よって、親族関係のみならず、経営面でも大打撃を受けてしまいました・・・。

 残された家族へのラブレターが、紛争を生んでしまわないよう、しっかりと公正
証書にて遺言を残したいものです。


2010.02.02
(火)【女子の涙】(岡山・山本直樹)

 先日、弟の家に遊びに行ったところ、2歳になる姪(めい)から、夕食もそこそ
こに「遊んで〜遊んで〜」とせがまれたため、一緒にたっぷりと遊んであげました。
結構、疲れるものです。

 姪も喜んでくれたのか、帰り際に、玄関先でわんわんと泣いてくれました。
・・・「本当に帰って欲しくないだなぁ。なんだか嬉しいなぁ。若い女の子を泣か
せちゃった」と、なんともいえない幸福感に浸りました。

 後日、知人に姪の写真を見せながらその話をすると、
「なに馬鹿なことを思っているのですか。山本さんね、おもちゃ売り場で、子供が
泣いているの見たことあるよね? あれ何で泣いてるか分かるよね?
 そう、おもちゃ買ってもらえないからです。おもちゃが手に入らないからです。
要するに、山本さんの姪が泣いたのは、『おじさん』という『大きなおもちゃ』が
手元から離れていくからですよ!!! それだけのことです」

 何という説得力ある説明でしょうか。私は、大きなおもちゃにすぎませんでした。
いつも真実は見えにくいものです。若い女の子の涙には気をつけねばなりませんね。


2010.02.01(月)【職業と品格】(東京・金子登志雄)

 朝青龍がまた事件を起こしたようですが、横綱をやめさせるべきでしょうか。

 相撲に関心のない私は、「ヒール(悪役)がまた世の中をお騒がせしたか」と思
うだけで、それ以上に発展しませんが、報道では厳しい制裁(マスコミ制裁)がな
されているようです。

 同じスポーツでもプロレスの世界では、ここまでは厳しい制裁を受けないでしょ
うから、品格が要求される職業の厳しさを感じてしまいます。

 実にまずいことに(?)、司法書士法第2条にも「司法書士は、常に品位を保持
し」とあり、われわれにも、「品位」が求められています。それも「常に」です。

 同僚諸君、酔って大声を出したり、電車の中でいかがわしい週刊誌を広げるのは、
司法書士法違反ですぞ。

 ところで、非司法書士の皆様は、司法書士に品位や品格を求めていらっしゃいま
すでしょうか。弁護士・税理士に対してはどうですか。
 おそらく弁護士に対しては、「少々品格は欠くが実力のある弁護士」を優先し、
「品格は十分だが実力は不十分な弁護士」には依頼しないでしょう。勝つか負ける
かの勝負の際には、どうしても実力が優先されてしまいます。

 念のため、当・金子事務所は、実力はそれなりに備わり、最低限の品格も備えて
いるつもりですので、どうぞご安心ください。

 というよりも、たまには品格を踏み外したくとも、酒も弱く若気の至りとも無縁
の年齢になってしまいました。ただひたすら、高級傘張り浪人の道に精進しており、
いまや、剣の道も忘れ、酒の席でも会社法の話しかしない面白みのない奴といわれ
ています。 



2010.01.29(金)【株主全員と総株主】(東京・金子登志雄)

 会社法の条文を仔細に読むと、@「株主の全員の同意」、A「株主全員の同意」、
B「総株主の同意」という3種類の言い回しが登場します。

 どこが違うのでしょうか。法律条文は無意味なことをしませんから、背景に何ら
かの理由があるはずです。調べたことがあります。

 @「株主の全員の同意」・・・株主総会招集の手続を省略する場合や、総会決議
  を省略する書面決議に使います。ただし、この株主は、議決権株主など一定の
  株主を指します。

 A「株主全員の同意」・・・・主に定款変更の条件に使うようです。たとえば、
  株主総会の特別決議で定款変更するだけでは足りず、追加して株主全員の同意
  を要するなどという場合です(取得条項付株式への変更など)。この株主は、
  定款変更で不利益を受ける株主を指します。

 B「総株主の同意」・・・・・多数決(株主総会決議)で決定してはだめだとい
  うときに使うようで、組織変更や取締役の責任免除のときに使います。この場
  合は、議決権に関係なく全ての株主を指します。

 沿革的理由もあろうと、旧商法を調べましたら、@については、「全ての株主の
同意」とあり、Bの責任免除が「総株主の同意」とあるだけでした。それ以外は、
会社法で新設された規定だからです。

 まとめると、次の関係です。
 @「株主の全員の同意」・・・株主総会の一部又は全部の省略の場合
   ★注:この場合の「株主」は議決権の存在が必要。

 A「株主全員の同意」・・・・定款変更の特別決議の補完
   ★注:不利益を受ける株主保護規定のため、議決権は無関係

 B「総株主の同意」・・・・・多数決に馴染まない場合
   ★注:議決権は無関係

 Aの定款変更ですが、全員の同意を得るのなら、株主総会決議を必要としなくて
もよいように思うのですが、B型の規定ではないため、形式上は必要なのでしょう
(相澤ほか『論点解説 新・会社法』80頁)。@の書面決議と兼ねさせることに
なるでしょうか。

 ちなみに、合名・合資会社などの持分会社では、Aの定款変更も「総社員の同意」
です。なぜなら、持分会社には「社員総会」というものがありません。基本中の基
本ですが、旧・有限会社法に「社員総会」とあったため、いまだに勘違いしている
方が少なくありません。ESG諸君は、大丈夫ですよね。


2010.01.28(木)【政治とカネ】(東京・金子登志雄)

 「政治とカネ」の問題が騒がしいようですが、それとは全く無関係に、友人との
会話中に評論家の「小室直樹」氏の名前が出ましたので、よく名前は聞くが、どん
な人かとネット検索しましたら、Wikipediaに、次のようなエピソードが
紹介されていました。ロッキード事件の田中元首相に絡んでのテレビ発言です。

 「政治家は賄賂を取ってもよいし、汚職をしてもよい。それで国民が豊かになれ
ばよい。政治家の道義と小市民的な道義はちがう。政治家に小市民的な道義を求め
ることは間違いだ。政治家は人を殺したってよい。黒田清隆は自分の奥さんを殺し
たって何でもなかった」

 仰天でした。テレビでこんな乱暴な発言を堂々とする知識人がいるとは………。

 しかし、人生の達人である年配者の中には、本音では同じように思っている人も
多いのが現状です。「黒猫も白猫もネズミをとる猫はいい猫だ」というわけです。
会社経営でも、程度問題ですが、少々は公私混同しても、会社の業績を上げている
社長のほうが、清廉潔白だが会社の業績を上げられない社長よりは、よい社長と評
価されるでしょう。

 政治評論家の田中良紹(よしつぐ)さんのブログ「国会探検」にも、次のように
ありました(1月19日付「成熟政治と未熟政治」)。

 「私が知る限り先進民主主義国で政治家に求められているのは『悪人であること』
である。何故なら国家の富を狙う他国から国家と国民を守るため、『騙し』や『脅
し』が出来ないようでは安心して政治を任せられないからである。国民の暮らしを
守り、外国と渡り合える力を持つ政治家なら、多少のスキャンダルなど問題にしな
い。それが『成熟』した国の考え方である。」

 1月27日付「権力闘争の構図」でも、ロッキード事件では世界中に賄賂がばら
まかれたのに、要人が逮捕されたのは日本だけだと嘆いていました。

  http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2010/01/post_206.html

 以上の考え方には異論も多いでしょうが、政治や企業経営には、そういう要素が
大きいことも事実ですね。みなさんは、どう思われますか。きっと、年代によって
意見が大きく異なるのではないでしょうか。

 なお、以上は、小沢問題とは全く無関係ですので、念のため。


2010.01.27(水)【がんばれ!「隠岐の海」】(島根・根来川弘充)

 本年初投稿です。本年も皆様よろしくお願いします。

 さて、大相撲の初場所では、朝青龍が優勝して盛り上がりましたが、わが島根県
では、別の力士で盛り上がりました。それが「隠岐の海」です。今場所は、十両の
2枚目で10勝5敗と好成績を残し、来場所の新入幕が確実になりました。

 新聞によれば、郷土力士の新入幕は88年ぶりだそうです。この88年の間に、
島根県出身の総理大臣が二人誕生していますから、如何に珍しいことか分かってい
ただけると思います。

 この「隠岐の海」、順調に番付が上がっていったわけではありません。幕下1枚
目で好成績を残し十両確実といわれたときには十両に上がれず、そこで奮起して次
の場所、幕下全勝優勝して十両昇進を決めました。

 しかし、怪我をしてしまい二場所連続負け越して再び幕下へ………。そこから一
場所で十両に復帰して二桁勝利。そして先場所、2勝6敗くらいまでいって、「今
場所は負け越しか」と思っていましたら、そこから勝ち越しました。

 今場所は、なんと初日から6連勝!!! これは十両優勝も…なんて期待をした
ら、その後3連敗………。

 いままでは、残念ながら結果を新聞でみるしかない状況でしたが、それでもドキ
ドキしながらみていました。これからは、ダイジェスト放送(幕内以上を深夜にし
ています)でみることができそうです。

 名前のとおり、隠岐の島町出身で24才。まだ若いですし、大銀杏も似合うなか
なかの男前で、スター性を感じています。是非、新入幕と言わず、大関、横綱と駆
け上がって欲しいものです。
 みなさんも是非、注目してください。


2010.01.26(火)【執筆者としてのプライド】(東京・富田太郎)

 その昔、俳優の『田宮二郎』は、映画界から追放された時期がありました。原因
は、彼の主演映画『不信のとき』(大映)の映画ポスターの「名前の順列問題」でし
た。

 何と!! 主演であるはずの『田宮二郎』は、当初の映画ポスターの「名前の順
列」は4番手扱いでした。この順列に不満を抱いた彼は、当時の大映『永田社長』
と喧嘩をし、その結果、映画界を追放されたのです。

 この行動については、人により評価が分かれますが、私は、『俳優のプライド』
として立派なことだったと思います。

 話は変わって、本欄で紹介されましたとおり、『商業・法人登記300問』(神
崎満治郎、金子登志雄、鈴木龍介編著 テイハン)が出版されました。

   http://www.teihan.co.jp/new/newtitle0912.htm

(皆様、お読みなられたでしょうか? 素晴らしい本なので、是非ご覧ください。
私、富田も2問ほど担当させていただきました)。

 但し、本を手にしたときの、正直な感想は、私は、たった2問しか担当しておら
ず、その他大勢の執筆者の中の一人にしか過ぎず、「口が裂けても、私も書いた」
とは公言できないなというものでした。これは、執筆に従事する者としての「私の
プライド&美学」です(きっぱり)!

 ところで、先日、某法務局の相談コーナーへ行きました。
 
 なんと、なんと! 目の前の相談員の方の机に『商業・法人登記300問』♪
が、置いてあるではないですか!

 お聞きしてみると、相談員さん「自費で買いました。内容もしっかりしています
ね。」

 富田:「ニヤリ♪ 実はその本、私も!! 私も!! 書いているのですよ♪ 
     ほんと、大変だったなぁ〜♪♪ (←よく、言いますね)」
 相談員さん:「富田さんも書かれているのですか??」
 富田:「はい!! 私も書きました(きっぱり)!!」

  ・・・・・・・・・・・

 私は、卑怯者ですね・・・・(汗)。あぁ〜、私は到底、『田宮二郎』には、な
れません・・・・(涙)。


2010.01.25 (月)【法律家への神話】(東京・金子登志雄)

 注目の「検察対小沢氏」の天下分け目の直接対決は、23日に第1回戦が終了し
ました。大手メディアの報道ではサンズイ(汚職)の大疑獄のような取扱いですが、
今のところ軽罪である政治資金規正法問題しか表面化していませんから、まだまだ
第2回戦も第3回戦もありそうです。

 これ以上の政治的混乱はうんざりですが、今回ほど検察(及びマスコミ)に対す
る信頼が失墜したことがあったでしょうか。応援団のはずの検察OB(郷原信郎氏)
や、自民党の河野太郎氏のブログ(ごまめの歯ぎしり)、佐々木知子元自民党参議
院議員(元検事)のHPでも批判されている始末です。

 同じ法律の世界(司法)で生活するものとして、検察への信頼の失墜は残念な限
りですが、西松建設がだめなら水谷建設と次々に変わる検察のシナリオや、強引な
捜査では、批判されても仕方ないでしょう。

 冤罪確実な足利事件でも「検察=正義」という神話が崩れつつありますが、身近
なところでは「弁護士=全法律のプロ」という神話も、この数年の消費者問題や会
社法問題で崩れつつあるようです。よく「弁護士さんに会社法の相談したら、詳し
くないので驚いた」という話を聞きます。

 しかし、これは、弁護士さんなら、法律の全部に詳しいと思う方がおかしいので
あって、どの弁護士さんにも外科・内科と専門分野がありますから、その専門分野
以外を質問しても期待した答えを得られるわけがありません。

 もっとも、会社法専門の私も、「司法書士=不動産登記のプロ」という神話をが
たがたに崩している張本人の一人です。神話は、情報社会には合わないようです。


2010.01.22(金)【会社法319条の提案権者】(東京・金子登志雄)

 会社法319条によると「取締役又は株主が株主総会の目的である事項について
提案をした場合に、株主の全員がその提案に同意すれば株主総会の決議があったも
のとみなす」(要約)とあります。

 この規定につき、会社法の教科書では最も権威があるといわれる江頭『株式会社
法[第3版]』338頁に、この取締役の提案は取締役会決議によらねば総会決議取
消の瑕疵(かし)を帯びるとあるが、本当かとの質問を受けました。

 確認しましたら、そのとおりでした。しかし、天下の大御所の意見に対し、私は、
実務家の立場から、その必要はないと回答しました(商法時代から立法担当者見解
も同じです)。

 株主総会は、               
 @取締役会による招集の決定(298条4項)
 A代表取締役による招集手続(299条)  
 B開催・審議(議論)
 C多数決による決議(309条)

と進行します。

 本規定は、
 A:取締役又は株主が議案を提案
 B:株主全員が個々に同意

であって、上記@ABCを省略し、Cがあったとみなすものです。いわば、一連の
手続を不要とした「略式株主総会」ともいうべきものです。

 言い換えれば、「会議体である株主総会ではない」のに株主総会の決議があった
ものとみなすものですから、議案の決定を含む@も不要です。それゆえにこそ、株
主の提案についても、株主総会の場合に必要な「総株主の議決権の100分の3以
上の議決権」を保有していることや「裁判所の許可」を要件としていません。

 それどころか、提案者の株主は議決権なき株主でもよさそうです。株主全員の同
意に主眼があって、極論すれば、提案者が誰であるかに重きが置かれていません。
 
 会社法(旧商法も)で「取締役」とあるときは、代表権を有する取締役を指すこ
とが多いのですが、ここは、株主総会の関係者として取締役と株主が提案者として
規定されているだけでしょう。


2010.01.21(木)【物騒な世相】(東京・金子登志雄)

 静かに穏やかに暮らしたいのに、なんとなく物騒な世相になってまいりました。
マスコミの小沢バッシングに触発されたのか、インターネット上では、辞めろコー
ルが飛び交い、とうとう民主党に銃弾が送られたようです。先般は、高崎駅で愚か
者が小沢氏に接近し、「おらぁ、山形に帰れ」と怒鳴った事件もありました。

 小沢氏が岩手であることも知らないこの手の愚か者は、報道による世間の空気の
変化を察知し、誤った義憤のもとに行動を起こすのでしょうが、小沢問題を「政治
改革派VS官僚主権派(霞が関)」の関ヶ原の戦いとみる人が多いのに、早とちり
には困ったものですが、それ以上に、その早とちりをけしかけるような報道ぶりに
恐怖を覚えてしまいます。

 そういえば、その昔、鈴木宗男議員に対するバッシングのときも、ソ連のムネオ
ハウスがどうのこうのとか、師である中川一郎を自殺に追い込んだ裏切り者などと
報道されたなと思い出し、鈴木氏のホームページをみてみましたら、やはり報道に
怒りをぶつけていました(19日付)。

 「私の場合も、検察は最初から『鈴木ありき』で、『ムネオハウス』、『北方領
土での三井物産ディーゼル発電供与』、『アフリカODA』で捕まるとリークし、
鈴木は悪い奴だと世論誘導した。8年前のやり方と今回の石川代議士、小沢幹事長
の件も同じではないか。裏付けのとれない一方的リークを載せること自体、公平で
ない。」

    http://www.muneo.gr.jp/html/diary201001.html

 当時は、私も鈴木氏を極悪人と思い込んでしまったので、上記の愚か者と大差あ
りませんでしたが、昔の「イエスの方舟事件」等の経験を踏まえ、過熱報道の際は、
意識的に冷めた目で判断するように心掛けています。幸い、いまはインターネット
でマスコミ報道と相違する情報も大量に得られるようになりました。

 かの米国では、ただいまタイガーウッズ・バッシングのようですが、やはり噂の
たぐいや、あることないことを記事にしていることも多いことでしょう。マスコミ
は、嫉妬心の強い庶民のニーズ(?)に応えて、芸能人や政治家あるいは各界の成
功者のスキャンダルやバッシングが大好きのようですが、こうして有能な人たちが
次々にマスコミの餌食になって潰されていく姿をみると、いやな世相だなとつくづ
く思います。


2010.01.20(水)【常任代理人】(東京・金子登志雄)

 上場会社が100%子会社を吸収合併する際は、簡易合併という制度を利用し、
株主総会の決議を経ずに行うのが一般です。その代わり、株主には、〇〇会社と合
併しますよという通知を公告をもってし、株主に異議があれば、「合併に反対だ」
とか「株式を買い取れ」という権利が与えられています。

 100%子会社を吸収合併するのに異議があるわけはない、もし、合併に反対で
あれば市場で売却すればよく、わざわざ面倒な会社に対する買取請求を行使するこ
とがあるわけがないと、ずっと思われていました。

 ところが2年ほど前から、簡易合併する旨の情報開示をすると、ほぼ確実に「合
併に異議を出す場合の手続について教えてくれ」という問い合わせが株主から入る
ようになりました。

 担当者としては、真っ青です。想定していないことが起きて、今後どうしようか
とパニックになります。

 実は、これは外国に居住する株主等の日本国内における代理人(常任代理人とい
います)の仕業(しわざ)であり、株主本人が反対した場合の手続を事前に知って
おきたいというだけの話です。

 なら、「私は御社の株主の代理人で〇〇といいますが、株主本人に簡易合併のこ
とを詳細に連絡したいので、異議を出す場合の手続等につき、知りたいのですが」
と丁重に連絡すればよいのに、いきなり「いつ合併に反対すればよいのか」などと
いわないでほしいものです。

 これから3月や4月に合併する会社の方は、もし、そういう電話がありましたら、
「電話のかけ方の勉強をしてから、出直してこい」と怒鳴りつけてもかまわないの
ではないでしょうか。


2010.01.19 (火)【新株予約権と株式分割その2】(東京・金子登志雄)

 15日金曜日の本欄で「新株予約権1個1株3万円につき、1株を3株に株式分
割すると、株数のみが変わって、1個『3』株3万円になる」と書きました。

 では、新株予約権1個1株1万円の場合は、1個3株1万円になるということで、
よろしいでしょうか。

 通常の感覚であれば、そのとおりということになりますが、実例では、そうなり
ません。というのは、株式分割があった場合の行使価額が「新株予約権そのもの」
の行使価額の調整式になっておらず、「新株予約権の目的となる株式1株あたり」
の行使価額の調整式になっているからです。

 本件でいうと、株数は3倍の3株、「1株」あたりの行使価額1万円は3分の1
である3333.33………となるところ、小数点以下を切り上げて、3334円
にすると定めるのが圧倒的多数です。そうすると、1個3株1万2円となり、株式
分割したために、1個あたりの行使価額が2円も増えてしまいます。

 当初から、これはおかしい、新株引受権から新株予約権に変わって何個と数える
ようになったのだから、行使価額の調整式も新株予約権自体の行使価額の調整式で
あるべきだと個人的には思ってまいりましたが、私の知る限り上場会社の実例の全
部が新株引受権時代からの慣例で「1株あたり」の行使価額の調整式になっている
ため、最近では、慣行優先で私自身も対応するようになりました。やはり、お客様
には、他社と変わった特別なことをお勧めできません。

 上記についても、『商業・法人登記300問』に記載済みです。
  http://www.teihan.co.jp/new/newtitle0912.htm


2010.01.18 (月)【すごいぞ!プレートル氏】(島根・渡部浩義)

 私は楽譜はまったく読めず、楽器も弾けませんが、たまには、音楽の話でもいか
がでしょうか。

 近時の元旦の夜に楽しみにしている番組に「ウィーン・フィル ニューイヤーコ
ンサート」中継があります。

 特にここでのアンコール曲の定番になっている『ラデツキー行進曲』(作曲:ヨ
ハン・シュトラウスT世)の演奏が、音楽素人の私には楽しみです。今年のコンダ
クターは、ジョルジュ・プレートル氏であり、昨年の元旦に続いての登場でした。

http://www.universal-music.co.jp/classics/release/m_topics/umcl200801/uccd1203.html

 もう、ジョルジュといったら、大きな身振りやタクトはさして使わず、茶目っ気
たっぷりに片手5本の指先の動きと、唇の動き、左右に軽く振る腰の動き、そして
必殺のウインクで、奏者らはもとより何百人という会場の聴衆の手拍子をも操って
しまうのです。見事としかいいようがありません(御歳すでに85歳!さすがフラ
ンス人!)。会場にいる奏者、聴衆の誰もが楽しそうで幸せそうです。

 このジョルジュ氏の指揮の様子は、平素、ESG金子登志雄、富田太郎の両氏ら
が『会社法』に取り組み、これを操る様子に通じるものがあるように思えましたが。

 命あるうちに一度は、自称“サックスプレーヤー”の家内とともに、仕立てのよ
い服を着て、ウィーンの古い石畳の町並みを散策し、ホール全体が芸術品のような
ウィーン楽友協会大ホールのシートに腰掛け、ニューイヤーコンサートは無理にし
ても、ウイーン・フィルのコンサートに接してみたいものです(そういえばウイー
ンでは、かのフェルメールの傑作の1枚『絵画芸術[Tbe-Art of Painting]』も、
私を待っているはずです。)。

 私も、プレートル氏のように洒脱な“身のこなし”で操れるような仕事の上での
「得意分野」を何かひとつ開拓したいと念じた今年の正月休みでした。

 おかあちゃん、今年は「女房『笛吹き』、亭主『ホラ吹き』。」との地元での私
に対する評価も変じさせて、少しでも“ウィーン”に近づけるように仕事を頑張る
からね。


2010.01.15(金)【新株予約権と株式分割】(東京・金子登志雄)

 新刊の『商業・法人登記300問』につき、さっそく知り合いから「他の本に書
いてない視点が数多くあるので、助かる」と、お褒めの言葉、要するに、お世辞を
いわれました。

 1つご紹介しましょう。

 Q88 新株予約権と株式分割(その1)
 当社は1個につき1株を与える新株予約権を発行していますが、このたび、1株
を3株にする株式分割を実行することにいたしました。これで3個3株になると理
解してよろしいでしょうか。

 A 
 新株予約権の個数は不変です。1個3株になるだけです。

【解脱】
 株式分割は株数を増加させる方法であって、新株予約権の個数を増加させるもの
ではありません。
 
 「発行する新株予約権の総数/〇〇個 なお、新株予約権1個あたりの目的とな
る株式数は1株とする。ただし、……に定める株式の数の調整を行った場合は、同
様の調整を行う」
 などと定める例が多いのですが、これは「株式の数」の調整であって、新株予約
権の個数を調整するものではありません。
 
 たとえば、1個1株で、1個あたりの行使価額が3万円だったとします。これが
3個3株3万円になるとすると、行使価額が1個1万円に減額してしまいます。株
式分割前は、1個につき3万円を用意しなければならなかったのに、株式分割後は
1個につき1万円というのは、不当というべきでしょう。

 よって、1個3株3万円になり、「1株」あたりの行使価額は1万円になるが、
「1個」あたりは3万円のままであると考えるべきです。
                               〔金子登志雄〕


2010.01.14(木)【『中小企業の法務リスク対策』の紹介】(岡山・山本直樹)

 私の知り合いに中小企業のサポートを熱心にしている司法書士がおり、昨10月
に『中小企業の法務リスク対策』を上梓しましたので、ご紹介させていただきます。

http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-98730-4

 中小企業の抱えるトラブルを未然に防止するための考え方・ノウハウが書かれた
書籍であり、あるときは法律を武器に、またあるときは法律の常識を超えたアイデ
アで問題を解決(問題が発生しないよう対策を)していく内容です。

 「経営者と相続」に関しては、種類株式の活用や遺言の活用方法が、「株主」に
関しては名義株や行方不明株主対策など実務的に非常に悩ましい問題に関する解決
指針や株主間契約の活用など新しい提案もされています。

 また株式の譲渡に関する課税の考え方がストーリー仕立てでわかりやすく説明さ
れています。

 中小企業の経営者はもちろんのこと、中小企業をサポートする資格者にもぜひ読
んでいただきたい書籍です。

 本書籍にも書かれていることでありますが、どんなに形式上よい制度設計をして
も、中小企業の経営環境においては、会社と株主間に争いがあったり、経営権をめ
ぐる紛争が発生した時点で、経営的には敗北であり、制度設計をする上で、会社と
株主あるいは株主同士の利害を適切に調整し、紛争予防や経営方針の合意形成に主
眼をおくべきであることを心がけてアドバイスしたいものです。


2010.01.13(水)【自筆証書遺言の不備】(和出吉央)

 先日、相続登記の仕事で、自筆証書遺言の記載内容をめぐって法務局とひと悶着
ありましたので、今回は「自筆証書遺言の不備」というテーマで、一般的なお話を
します。

 自筆証書遺言は手軽に作ることができるというメリットがある反面、以下のよう
な形式上・手続上の問題点やデメリットがあります。

@遺言の内容・財産の特定が不明確になりやすい

 例えば、「私の所有する自宅裏の土地を長男○○に与える」という遺言だった場
合、どの不動産を与えるのか特定できないので、名義変更(登記)もできないとい
う可能性があります。

 類似事例で、今、法務局へ問い合わせ中です。

 実務的な話になりますが、結局、相続全員の実印押印+印鑑証明書添付の「この
土地に違いない旨」の上申書で登記を通してもらうことになりそうです。
(せっかく遺言を作成して手続を省略化しようとしたのに・・・)

A法律上の形式要件を満たしていないことがある

 法律で定められた形式要件に反する遺言は無効とされます。

【無効例】
  * ☆押印(認印可)がない。
  * 1枚の紙に夫婦が共同(連名)で遺言をしている。
  * 日付の記載はあるものの「平成○年○月吉日」となっている。
  * 訂正があるが、その部分に署名押印がない。

B検認手続が必要となる

 家庭裁判所にて検認手続を済ませなければ、不動産の名義変更(登記)等、一定
の手続ができません。また、長い間検認申立をしないままですと、遺言書の隠匿に
あたり、相続欠格事由に該当する可能性もあります。

 上記のように、自筆証書遺言には形式上の多くの問題や落とし穴があります。
 
 さらには、誰にも知られない(第三者が関与しない)が故に、裁判例に見られる
ように、筆跡(偽造)問題・意思(能力)問題等がつきまとうこととなります。
 
 次回、裁判例を取り上げた一歩踏み込んだお話をしたいと思います。


2010.01.12(火)【『商業・法人登記300問』出版】(東京・金子登志雄)

 テイハンという登記関係の書籍では老舗で権威のある出版社から、表題の単行本
が出版されました(今週中には全国の大手書店に並ぶことでしょう)。

    http://www.teihan.co.jp/new/newtitle0912.htm

 私もお誘いを受け編集側の1人として名前を連ねていますが、自分でも多数の項
目を執筆しただけでなく、当ESGの会員・会友の大勢のメンバーにもご協力をお
願いし、執筆していただきました。その結果、1年以上もかかって、やっと出版に
こぎつけた苦労の結晶です。

 こういう書籍は、通読する必要がなく、問題点ごとに検索して利用できる点で、
司法書士や法務局職員等のニーズに合っていると思います。とくに、法務局の相談
コーナーにあると便利だと思いますが、ありがたいことに、すでに都内の某法務局
では、法務局職員が自腹でご購入済みだとの話も伺っております。

 昔、実力派の某司法書士が「法務局職員が読む書籍は必ず購入せよ、さすれば電
話で〇〇本の何頁をみよで話が通じる」と話していたことがありますが、テイハン
の出版する本には、この要素が多く、本書も、その1つになることでしょう。ぜひ、
司法書士各位には、事務所に一冊必備をお願いしたいものです。

 なお、登記の本とはいえ、登記の周辺部分についても、多くの論点を挿入しまし
たので、法律事務所や会計事務所あるいは企業の法務部にも役立つ本だと思います
ので、ぜひ、書店にてご検討くださいますようお願いします。 


2009.01.08(金)【自然体が一番】(東京・金子登志雄)

 昨日の富田氏の投稿ではありませんが、精神の安定には大望(?)を抱かず、「頑
張らないこと、無理しないこと」が一番です。

 「1年の計は元旦にあり」と努力目標や無理な計画を定めても、どうせ3日坊主で
できないことは明らかで、「何と意志薄弱だ」と後悔するくらいなら、最初から、目
標も計画を立てないに限るというのが私のオレ流です。

 生活面においても、現状をありがたく受け入れています。
 私の子供の頃は、テレビもなし、トイレは家の外で汲み取り式、飲料水は井戸水、
風呂は薪、冷蔵庫もなし………でしたが、今は、蛇口をひねればお湯が出てくる、ト
イレは水洗、深夜でもコンビニが開いている………、もう別世界の天国です。ありが
たいことです。

 いつも、こんな調子で生きていますから、司法書士になって10年以上なのに、い
まだに1人事務所です。開業以来一貫して、のんびり助走中で、飛び立つ気配さえあ
りません。

 先日、上場会社の総務部長さんがわざわざ来所してくれたのに、お茶出しの従業員
もおらずで、申し訳ない思いをいたしましたが、それを仲間に語ったところ、「金子
先生の理想は、上級傘張り浪人(職人)でしょ。浪人に従業員がいたらおかしいです
よ」と慰められました。

 そうでした。私の生きざまは、どこにも仕官せず、ひたすら傘張り技術を磨くこと
でした。「健全なる法務能力は、健全なる1人事務所に宿る」です。誰も相談相手が
いないからこそ、必死で考える………、これが勉強になるのでした。


2010.01.07 (木)【謹賀新年(新年の抱負)】(東京・富田太郎)

 皆さんは、新年にあたり「今年の目標・抱負」として、何を計画されたでしょう
か?

 私は、今年こそは、
 
 @土日はきちんと休み、WP生活から脱却すること
 A単行本「楽学 会社法」を完成させること

です♪

 ところで、正月休み中、久々に古典を読んでいました。そのなかで、面白かった
のが、「デキムス・ユニウス・ユべナリス」(Decimus Junius Juvenalis 古代ロ
ーマ時代の風刺詩人)に関する本でした。

 ユべナリス?? 誰? その人??

 彼のことを知らない人でも、彼の次の有名な言葉はご存知でしょう♪

 ☆『健全なる精神は健全なる身体に宿る』

 ・・・・が、どうもこの言葉、諸説はありますが、本来のユべナリスの主張する
ものとは、全く違うものだったようです。

 元々の彼の言葉は(『風刺詩集』第10編)、

 ★『健やかな身体に健やかな魂が願われるべきである』

 というもので、大意は、「美人、金持ちになることを祈っても、なかなか手に入
りにくい。また、たとえ手に入ったところで、かえって、心配事が増えるだけ。
(もし、願うとすれば)『慎ましく心身の健康だけを願う』といった程度にしてお
きなさい。」といった意味のようです。
 または、詳細は省略しますが、他にも『当時の若者が筋肉ばかり鍛えていて、精
神の鍛錬を怠っているのを嘆き、それを皮肉った風刺』の意味もあったようです。

 ・・・・・・・・・・・・・

 なんと!!もともとは「大望を抱くな!」という意味だったようです。
 それが、時代を経ていくうちに、ナチス・ドイツを始めとする軍事政権がスロー
ガンとして「健全なる精神は健全なる身体に宿る」(身体が健全であれば、精神も
また健全である。よって、身体を鍛えなさい。)の意味で使い出し、戦後は、スポ
ーツ指導者達によって、世間に流布されていったようです。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 なにやら、「立派な格言」と信じていたのに、本来の意味は「大望を抱くな」と
は・・・。

 すいませんでした・・・。正月から、気の抜ける話で・・・・(汗)。

(PS)
 年末、我がESGの御大からメールがありました。
 その内容は、「昔は、病気になっても近くに医者はなし。ひたすら安静にするの
みだったが、今は便利になって天国です。これ以上、何を要求する必要があります
か。欲があるとすれば、このささやかな天国を満喫したいのみ。」
 この「ささやかな天国」とは、きっと「会社法」のことでしょう。

 この御大、まさに、現代の『ユべナリス』ではないでしょうか・・・・(汗)。


2010.01.06 (水)【謹賀新年(マニア)】(島根・渡部浩義)

 みなさま明けましておめでとうございます。よいお正月を過ごされたことと思い
ます。今年は「寅駈ける」、よい意味で躍動的な年となりますように願いたいもの
です。

 さて、何でも“1番”を目指し、獲得したいというのは普通の人間の心理だと思
います。唐突ですが、公職選挙法に基づく選挙投票が行われる際、その投票所にお
いて、最初に投票する人に与えられる“ある特権”をご存知でしょうか。

 それは、その投票箱の中が空っぽであるということを立会人と確認することがで
きる(しなければならない)ことだそうです。

大学生時代にこの話を聞きつけ、初めての国政選挙(たしか衆議院議員選挙だっ
たと記憶します)において一番乗りをめざし、投票開始時刻の午前7時よりも1時
間も早い6時ごろ、友人達とにぎやかに投票所に出かけましたところ、既にそこに
できている長蛇の列に唖然としたことがあります。

 「にいちゃん達、若いのに早起きやなー。しかも、選挙に来るとはたいしたもん
や。」と並んでいるお父さんに声をかけられました。「あのーっ、1番になるには
何時ごろ並べばいいんでしょうか。」と尋ねれば、「箱の中が見たいんかい? だ
ったら、昨夜のうちに並ばなーな、難しーでー。」  「・・・・・・・。」

 ところで、私が司法書士の業界に勤務者として入った20年以上も前、「今年は
何箇所の登記所で登記の当年第1号の受付番号を取得できるか、」ということに燃
えていた頃がありました。不動産登記のみならず商業登記でもダブルで取得したい。
提出先が大規模庁か否か、何時ごろ庁舎玄関前に並べばよいか、付近にどのような
同業の事務所があり、そこにどのような職員がいるか、また、数庁狙いたいときは
どのように行程をとるか...。 若かった!

 が、この“受付第1号取り”にも思わぬ“伏兵マニア”が存在していたのです。
某登記所における私のライバルは、さる大学の教授でした。この方、権利の得喪を
きたさない自分の所有地の『合筆登記』を、毎年御用始めの日に提出され、まんま
と第1号登記証を取得の後、間髪入れずに『合筆抹消登記』を提出されるのです。
そして、毎年この繰り返し...。 完全に脱帽です。

 当時、1120庁あった登記所も、現在では484庁(不動産管轄庁−2008.
9.1現在)。しかも、当時と決定的に違うのはオンライン申請制度が導入されて
いることです。狙って第1号は取れなくなっています。今年も、昨年12月28日
の午後5時15分から午後8時までの間にオンライン申請された登記申請が、コン
ピュータのお導きにより、多くの登記所において本年第1号の受付番号を取得した
ことでしょう。

 今年も、島根からよろしくお願いします。


2010.01.05(火)【謹賀新年】(東京・金子登志雄)

 新年おめでとうございます。

 正月の天気は大荒れでしたが、ご家族とともに穏やかな日々を過ごされた方も多
いことと存じます。

 わがESGのお仲間もそれぞれの休暇を満喫したようですが、私も高校時代まで
育った群馬県(北部ではないため雪は積もりません)に帰省したり、家族と一緒に
食事に外出したりで、正月ばかりは、いつもの「一人マイペース」を封印いたしま
した。

 さて、正月のテレビによると、初売りの福袋に長い行列ができている様子が大き
く取り上げられ、不況はどこの国の話だという感じでした。

 思わず、当ESGグループも福袋を出すと、行列ができるかなと思ってしまいま
した。本年は、昨年の後半からの延長で企業の基盤を固めるための増・減資とグル
ープ再編が増えそうですから、「増減資、組織再編、それに伴う不動産登記」など
の安売り券や司法書士指名券を入れた福袋などはいかがでしょうか。各種のプロが
揃っており、全国の司法書士とも提携できますが………。

 しかし、テレビに映る行列は若い女性ばかりでした。司法書士業務の商品(?)
は、女性に魅力がなさそうですから、イケメンの独身司法書士を揃えても、行列は
無理そうですね。

 小細工をせずに、本年も地道に王道を歩みましょう。本年も、相変わりませず、
当ESGグループをよろしくお願いします。




(2009年度)
2009.12.28(月)【よいお年を!】(東京・金子登志雄)

 今日は官庁の御用納めです。法務局も、「行政機関の休日に関する法律」の規定
に基づき、明日から正月3日まで年末年始休暇に入ります。

 振り返って、今年の最大の変化はやはり「本格的な政権交代」でしょうか。背景
には経済危機が一因にあると思いますが、景気回復のために大量の国債を発行すべ
きか、財政再建かと新政権も難しい舵取りに直面しているようです。

 このような状況下で、今年は収入減になった司法書士が少なくないようですが、
仕入れのない職種ですから、わがESGのお仲間も全員が何とか無事に来年を迎え
られそうです。

 来年はさらに厳しい年になると思いますが、私の場合は、幸いにも登記だけでな
く、増減資や組織再編の企画・立案・相談の仕事が中心ですし、本年9月に上梓し
た『親子兄弟会社の組織再編の実務』も企業サイドに好評であるため、何とか仕事
にはありつけるだろうと淡い期待をしています。

 仮に大幅な収入減になっても、1本20円になるといわれる煙草を自由に吸えて、
吉野家で大量の生姜入り牛丼を時々食える生活(これが私の「健康で文化的な最低
限度の生活」=憲法25条=です)だけは維持できるよう、頑張りたいと思ってい
ます。

 皆様にも、ささやかな贅沢が引き続き可能な年でありますように………。

(注)本欄は4日までお休みさせていただきますが、季節感のない金子事務所の
  メール等は年中無休です。ご遠慮なくどうぞ。


2009.12.25(金)【締切り】(島根・渡部浩義)

 かねがね新聞や、週刊誌に連載をもたれる作家の皆さん方の「締切り」という事
象に対する向き合い方について大変興味を持っていました。おそらく好きではじめ
られた“商売”だとは思いますが、毎日、毎週それを克服されているのには敬服の
念を抱かずにはいられません。

 私たち、司法書士にも「締切り」や「時間との闘い」がないわけではありません。
むしろ、「時間との闘い」については、他の職種よりも頻繁に接している業種かも
知れません。が、われわれの業務の大半を占める不動産登記業務においては、「雛
形主義」と揶揄されるように、当事者・物件等は入れ代わりがあるとはいえ、基本
的に登記申請は、その雛形にそって進めればよいところが、日々新しいものを創作
されていかなければならない作家の皆さん方と決定的に違うところでしょう。

 とはいいながら、最近は、司法書士も、「創作力」・「企画力」が試される分野
が多くなってきたように思います。その際たるものが企業法務でしょう。自由度が
増した会社法の施行によって個々の会社にあった定款の策定、機関設計、企業再編
等の企画立案、スケジューリングなど、当事者会社とそれを手伝う士業が共に知恵
を出し合って新しい会社組織を作っていくことが求められるようになりました。し
かもそれらのほとんどが決定した動かせない期日(締切り)付です。

 また、一方で訟務分野でも、特に『準備書面』の起案などしていると、どうして
自分はこんなに語彙がないのだろう、もっと上手く相手方や、裁判官を納得させら
れる表現や、構成ないものかと悶々としてしまうことが度々あります。これまた新
聞、週刊誌の連載ほどではないにしてもおおよその提出期日(締切り)がついてま
わります。

 これらの克服には、法律学習はもちろんのこと、やはり上手い文章に数多くあた
り、拙くても文章を書き続けて練習するしかなさそうです。最近ビジネス書の世界
において密かにブームとなっている『本多静六氏』(※)あたりは、一日原稿用紙
一枚の文章起案を自らに課していたようですが、私もESG本欄に島根あたりから
投稿させてもらえるようになって一年以上が経過しました。

 「締切り」はおおらかな、このコーナーで文章練習をさせてもらえることにただ
感謝するばかりですが、これが私の本年最後の投稿になります。拙い文章に一年お
付き合いいただき感謝いたします。皆様よいお年をお迎えください。

(※)本多静六

     http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E5%A4%9A%E9%9D%99%E5%85%AD


2009.12.24(木)【何ゆえ、windows?】(島根・根来川弘充)

 今月モバイルパソコンを手に入れました。特に購入予定があったわけではありま
せん。同職の人が手に入れていたのを見て即断しました。

 理由の一つは、いままで使っていたデータ通信端末より、はるかに早いものが出
ていたこと。そして、もう一つは、それを新規契約するとモバイルパソコンが3万
円も値引きになることでした。

 「パソコンを3万円引いたところで元が高いのだから………」と思われるかもし
れませんが、3万円台でも結構たくさんあるのです。つまり、モバイルパソコンが
数千円で手に入れることができたのです。

 もちろん、今後の通信料がかかりますが、いままで使っていたものと差額を考え
ていても、4、5年の差額で新たなパソコンが手に入ったと思えば、そんなに悪い
買い物ではありません。

 ただ、安い中でもいろいろありましたが、ウィンドウズが入っていると性能的に
劣っており、ウィンドウズでないものが性能的によかったので、それに決めました。

 最初に手に入れた同職の人が電気店の店員さんに聞いた話では、ウィンドウズで
ないから「安い」のだそうです。また、「立ち上がりも早くて、本体が熱くならな
い」、「省エネなので電池も長持ちする」のだそうです。

 「ウィンドウズでないと、アプリケーションソフトが使えないのでは」と思う方、
ご安心ください。オープンソフト(無償)で、メール、ブラウザ、表計算、ワープ
ロの各ソフトはすでに入っていますので、私の仕事で使うには、充分すぎるくらい
です。

 このパソコンのOSは「Ubuntu」というのだそうです。ご存知の方はたくさんお
られると思いますが、「すばらしい」と思うことは、このOSの開発者の理念です。
「ソフトウェアは無償で利用できるべきであり、………利用者はソフトウェアを好
きなようにカスタマイズ及び改変する自由を持つべきである」。

 現在、登記申請はオンライン申請といって、インターネットを使って申請するこ
とが原則になっています。それはそれで良いのですが、OSはウィンドウズでない
と操作できません。

 ウィンドウズは、マイクロソフト社がその権利を持っています。何ゆえ、国が一
つの企業を支援しなければならないのでしょう?

 「バージョンアップ」という言葉で、それぞれのソフトは変わっていきますが、
その都度費用がかさみます。さらに表計算やワープロソフトにいたっては、前より
使いにくくなっていることさえありませんか?

 もし、国がこの無償ソフトを後押ししたら、国も費用が減ると思いますし、ユー
ザーとしても費用がかさまなくて大助かりです。同じ支援をするのであれば、是非、
こちらのOSを支援いただきたいと思います。



2009.12.22(火)【ローカルルール】(島根・渡部浩義)

 登記申請の添付書面として原本の写しを提出する際に、その添え書きに「原本に
相違ない」ではなく、「原本の写しに相違ない」とすべきではないかと本欄(10
月16日付)にありましたが、当事務所では、研修時代の事務所の流儀を真似て、
後者の方法を採用しています。

 こんなことでも、各事務所にそれぞれの流儀があるように、全国各地域の登記所
にも、それぞれの流儀があります。いわゆるローカルルールです。

 登記事務完了後、すぐに謄本(登記事項証明書)等を交付してもらいたい場合に、
ある地域では、登記申請書と一緒に出す登記事項証明書の申請書に「登記後謄本」
と記載するところもあれば、「本件下り」などと記載するところもあります。
 また、最近では、ネット申請率を上げるため(?)に、そもそもこの登記申請と
登記事項証明書の同時申請の取扱いを認めず、事項証明書だけでもオンライン申請
をして欲しいと促す地域もあるようです。

 原本還付の方法にしても、印鑑証明書と照合しなければならない書類や印鑑証明
書(権利登記外において)は、特段の事情がないかぎり原則として窓口での提示還
付を認めず、庁舎内での調査事務が完了するまで原本を法務局に提出しておかなけ
ればならないところもあります。

 個人的に大変興味があるのが、商業法人登記事務における登記懈怠(けたい)処
理の問題です。どの程度の遅れになったら、その庁で、商業登記規則第118条に
基づき、裁判所に通知しているのかです。
 どうやら繁忙庁とそうでない役所とではこの通知事務の取扱いに大きな差がある
ようですが、実際のところどうなのか、全国の司法書士の皆さんが会して情報交換
してみたいものです。


2009.12.21(月)【休日が効力発生日の組織再編】(東京・金子登志雄)

 19日の土曜日は、仙台で会社法の講演でした。4月に会社計算規則が改正され
たためです。主催は、宮城県司法書士会でしたが、鈴木会長ほか皆さん、たいへん
お世話になりました。

 そこでは、会社法が施行されて以来、手続の専門家である司法書士の地位が企業
社会の中で上がってきたことを話しました。

 というのは、トラブルになることが少ない会社法の手続では、「紛争事件」への
対応を専門とする弁護士さんは勉強意欲が沸かないようですし、意外に会社法に詳
しい会計士・税理士さんも、日常業務以外になると、会社法に疎くなるからです。
また、何といっても、司法書士は、法務手続のゴールである登記に関する豊富な先
例を知っています。これは司法書士の財産であり強みです。

 さっそくですが、来年2月1日も3月1日も月曜日です。いいかえれば前日が日
曜日ですが、反対株主の株式買取請求期間の末日が休日でも、手続上は問題ないで
しょうか。1月1日も休日ですが、「効力発生日まで」とされている株券提出期間
の末日が休日であることは、組織再編の効力に影響しないでしょうか。

 期間の末日が休日の場合は満了日が翌日まで延びるという民法142条との関係
で不安に思う会社がすでに出はじめていますが、本年末あるいは年初に発売される
「登記情報」の「実務家による商業・法人登記Q&A」で、この問題を取り上げま
した。ご参照のうえ、司法書士法務のきめ細かさを依頼者にアピールしてほしいも
のです。



2009.12.18(金)【減資と同時増資】(東京・金子登志雄)

 11日の官報で改正会社計算規則が公布されていましたが、同日の会社公告には、
「資本金及び準備金の額の減少公告」という表題のもとに、「当社は、資本金の額
を〇〇〇万円、資本準備金の額を〇〇〇万円減少することにいたしました。ただし、
同時に株式の発行により増額いたしますので、効力発生日後の資本金の額及び資本
準備金の額は同日前を下回ることはありません。そのため、株主総会の決議を経ず
に決定しております。この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から
一箇月以内にお申し出下さい」という、減・増資同時公告が散見されました。

 不況で銀行借入れが厳しくなっているため、中小企業も資金調達に頑張っている
のでしょうか。

 同時に増資し、結果は減資がなかったのと同じだから、このような債権者保護手
続の公告は不要だと思い込んでいる勉強不足の学者や法曹も多いようですが、減資
と増資は別の行為ですから、減資につき、上記のように債権者に向けた公告が必要
です。単に、株主総会決議までは必要とされていないだけです。登記も、減資の登
記と増資の登記の2つを行い、登録免許税も減資分・増資分として、しっかり計算
されます(差引で計算してくれません)。

 一方、株主総会決議を省略できるだけで実に便利な制度ではないかと思う方も多
いでしょうが、それは上場会社(公開会社)にいえることであって、株式譲渡制限
会社である非公開会社では増資決議に株主総会の特別決議が必要ですから、減資決
議だけ取締役会決議にする意味は少ないといえます。

 したがって、株主総会で決議する限り、減資と増資の効力発生時期をあえて同時
にする必要はありません。どちらが先になっても結果は同じです。

 同時にする場合によく質問されるのは、減資は効力発生日の午前0時に効力が発
生するのに、増資は払い込んだ時間(午前9時以降が一般)だから、同時とはいえ
ないではないかというものですが、減資の時期を増資時期にすると条件をつければ
同時になります。その条件をつけ忘れても、条文内容からして「同時とは同日の意
味」と解釈できそうですから、支障はないでしょう。



2009.12.17(木)【忘年会時期】(東京・金子登志雄)

 12月も中旬になり、忘年会時期になりました。あちこちの忘年会で多忙の方も
多いようですが、みなさまはいかがでしょうか。当の私は、「自由業=孤独業」の
ためか、あるいは交際範囲が狭いためか、ほんの数件あるだけです。

 思い起こせば、バブル時代の今頃は、帰りのタクシーをつかまえるのも一苦労で、
1時間待ち、2時間待ち………、面倒なので、また飲みに………などしたものでし
たが、昨今は、タクシーのほうが乗客探しで一苦労のようです。

 老いも若きも、ゴルフに熱中し、会員権は数千万円もしました。マンション1戸
の値段です。株式投資も300万円以上の投資資金を保有していないと、ごく普通
の銘柄さえ買えませんでした。

 あれから20年以上、様変わりですね。飛ぶ鳥落とす勢いの元気な企業もめっき
り少なくなりました。

 こんな話をしても、若い人には、通じないほどの年数が経たわけです。きっと、
「また、じいさんの昔はよかったという話がはじまった」とでも思われるのでしょ
う。こんな私も、昔は「今の若い者」の1人だったのですが………。

 やはり「忘(昔)年会」は必要のようですが、忘年会では、ぜひ、未来・夢を語
りましょう。

 昨年の忘年会で、私は来年(つまり今年)の夢として、3つをあげました。すべ
て達成いたしました。それは、「1に、タバコを吸い続けて納税するぞ、2に、体
重は90キロ以上、3に、ウエスト回りは1メートル以上にするぞ」というもので
したけど………。恥ずかしながら、私は、まだ体が成長しているようです。


2009.12.16(水)【時にはバレーダンサーのように】(東京・金子登志雄)

 昨日の本欄ですが、「土地家屋調査士⇒外業」の意味は通じたでしょうか。

 土地の登記簿謄本であれば、「地目、地積(土地面積)」などの部分と、所有権
や抵当権などが記載された部分がありますが、前者(表示の登記)が土地家屋調査
士の仕事であり、後者(権利の登記)が司法書士の仕事です。

 前者の仕事で、対象が土地の場合には、測量作業が絡むので、外での仕事が多く
なるわけですが、確かに、冬場には、アンダーウェアを着用しなければ、寒くて仕
事も捗らないことでしょう。積雪の多い渡部さんの地元ではなおさらです。

 しかし、格好悪い「ももひき」のイメージが強いためか、雪国でない地方の仲間
内からは、「抵抗がある」との声が上がりました。私にも抵抗があります。年寄り
じみたイメージがあるためです。

 しかし、渡部氏の返事は、「“こころ”を開きなさい。ボリショイバレイ団員に
なった気分になればよい」というものでした。

 素晴らしい回答です! 思わず、ラララ………と心の中で踊ってしまいましたが、
仲間の各自がバレーダンサーになった姿を決して想像してはならないようです。耐
えがたきを耐え、気分をボリショイバレイ団員にしなければなりません。

 こういう場合、「スケート選手になった気分」では、ちょっと意味合いが違って
しまいますね。あれは、アンダーウェアじゃないでしょうから………。

 みなさんも、ボリショイバレイ団員になりませんか。私も、時には検討してみま
しょう。


2009.12.15(火)【当世男性下着事情】(島根・渡部浩義)

 朝晩、めっきり冷え込んできましたが、寒さ対策は万全でしょうか。

 貧乏くさい話ですが、私は極度の「冷え性」で、冬場の外業(兼任の土地家屋調
査士業務)には相当辛いものがありました。もちろん防寒具を着て外に出るのです
が、内から冷えることはどうすることもできず、手先、足先はかじかみ、寒さから
の頭痛までしょっちゅう起こすタイプでしたが、やっと「救世主」が現れました。

 今夏たまたま家内と歩いていたスーパー内で、女性下着売場の横に男性用アンダ
ーウエア(ステテコ)が陳列してありました。横にある女性下着群に気後れしなが
らそのステテコを手に取ると、結構いい値段がしています。

 「だまされてと思って買ってみてください。」と背後から店員さん。「今、売れ
ていますよ。単に涼しい、蒸れないだけでなく、パンツ(スラックス)を汗で痛め
ません。」

 その一言にやられ一枚買ってみました。はいてみてその快適性に唸ってしまい、
翌日もう3枚、今度はタイツスタイルのものも買いました。ステテコなんていい歳
のオヤジの代物だと思っていたのですが、そんな垣根、先入観はメーカーが完全に
取り払っていました。

 もちろん、冬には冬用のものがあり、自身の発汗水蒸気を熱に変え暖かく過ごせ
快適です。各メーカーが同様の機能を備えたものを発売しているようですが、いず
れもすぐれ物ぞろいですが、特に下半身は、タイツスタイルのもがいいような気が
します。

 おかげで、通年私は本当のパンツとズボンの間に何か一枚つけていることになり、
娘達からは評判が悪いのですが、本人はいたって快適です。元手があれば、この発
売メーカーに株式投資したいところです。事実、このアンダーウエア発売元各メー
カーの株価は堅調に推移しているようです。あえてその社名は記しませんが………。

 男性諸氏も、たまには下着売場なども歩いてみられたらいかがでしょうか。もち
ろん、男性下着売場ですよ。 



2009.12.14(月)【「規定する」と「定める」】(東京・金子登志雄)

 12月11日付官報(号外第260号)によると、また、会社計算規則の改正が
ありました。ただし、われわれの実務には、影響がなさそうです。

 その改正内容をみますと、「〇〇中『規定する』を『定める』に改める」とか、
「『より』を『従い』に改める」などとありますが、「規定する」と「定める」は、
一体どこが違うのでしょうか。

 当初は、「規定する額」「定める額」などと不統一表現が散見されたので改めた
のかなと思いました。ずいぶんと細かい点に配慮するものだと感心しながら、よく
よくみると、「規定する方法」と「定める方法」は混在したままになっていました。
が、さらに仔細に観察すると、何と、「前号」や「第1号」という場合は、「(前
号に)規定する方法」となり、「各号」の場合は「(各号に)定める方法」となっ
ていました。

 この流れからすると、「同号」の場合は「規定する」のはずですが、「同号に定
める額」とありましたし、「前号に掲げる額」も「各号に掲げる額」も混在してい
ました。

 会社法施行規則には、「次号に規定する(場合)」と「次号に定める(もの)」
とあり、会社法には、「各号に定める場合」(802条)も「各号に規定する場合」
(782条・803条)もあります。会社法116条には、同じ条文でありながら、
「各号に規定する株式」と「各号に定める株式」とが混在していました。

 結局、何が何だか不明であり、このままでは迷路にはまりそうでしたので(何と
いうヒマ人だと思われた方も多いことでしょうが、法律解釈には、こういうこだわ
りが重要なんです)、おそらく規律を意味するときに「規定する」と使用し、条文
の用語(単語)や金額等の場合に、「定める」や「掲げる」を使うのであろうと、
勝手に結論を出し、調査を終わらせました。

 それよりも、この部分は改正のパブリックコメント案にはなく、公布ではじめて
登場しました。前回もこれがあり、不意打ち改正に面食らったものです(7月3日
付本欄【会計監査報告も招集通知に添付】参照)。

 不意打ち禁止をルール化して「規定して」いただきたいものですが、ここは「定
めて」いただきたいと表現すべきなのでしょうか。迷うところですが、こういうと
きは、安全策として「規定して定めて」いただきたいと表現してリスクを回避する
のがプロの技かもしれません。


2009.12.11(金)【新株予約権の調整式】(東京・金子登志雄)

 上場会社の新株予約権には、ほとんどの場合、調整式とともに「時価を下回る払
込金額で株式の募集がなされたときは、新株予約権の行使価額を調整する」と定め
てあります。
 いわゆるマーケットプライス方式というもので、株式の低廉発行に連動して新株
予約権の行使価額を下げようとするものです。

 いかにも公平な規定のように思えてしまいますが、昨今の時代には、もう少し詳
細な内容にし制限を設けておく必要があるのではないかと思えてきました。
 
 というのは、この不況で支援してくれる他社との資本提携を模索している企業が
多く、時価より若干低い価格で第三者割当増資を行うニーズが高まっていますが
(いわゆる「新株の有利発行」のニーズ)、この場合に、一般株主の多数は会社の
存続あるいは将来のために、このような株式の発行を我慢せざるをえないのに、新
株予約権者は何もせずに、制度的に地位の保全を保てるわけです。

 株主と相違し新株予約権者の意思を問う場面がないため、ある意味では妥当な制
度ともいえますが、極端に低廉な価格で新株が発行されることは少ないため、株主
とともに少々の痛みを分かち合ってもらうためには、調整式の発動を「時価を2割
以上下回る場合」などと限定を設けてもよいのではないかと思った次第です。

 未公開会社の場合は、時価が不明なため、新株予約権の行使価額を下回る低廉発
行の場合に限定しているのが一般ですが(コンバージョンプライス方式)、時価が
行使価額を大幅に上回る場合にも調整が可能なマーケットプライス方式は、新株予
約権者に有利でもあります。

 右肩上がりの経済を前提に設計された制度の問題点が不況になってはじめてみえ
てきた事例の1つかもしれません。


2009.12.10(木)【禁じ手封印解除】(島根・渡部浩義)

 出張先の駅にて中途半端な待ち時間があったのがいけませんでした。生憎と本を
一冊もバックの中に入れておくのを忘れていたのもいけませんでした。一番いけな
かったのは不用意に書店に足を踏み入れてしまったことでした。

 そこには、前から欲しかった1冊の本が「ちょっと手にとってみてね〜。」と言
わんばかりに書店員さんのピンク色のPOP文字も鮮やかな立て札とともに平積み
にしてありました。
 本の題名は、『STATIONERY HACKS!」(小山龍介・土橋正共著
マガジンハウス刊)です。とうとう年内は本の購入を禁じ手にするという自らの誓
い(本欄2009.11.19)も忘れ、いとも簡単にその封印を解いてしまいました。

 ところで、私は、“書店訪問マニア”であるだけでなく、“文具店訪問マニア”
でもあります。業務終了後の夜のひととき、蛍光灯の下で光を放つ新しく求めたア
イテムに、一人ほくそ笑み、その性能(書き心地、色栄え、切れ味等)を法律実務
書あたりを相手に試してみる喜びは、司法書士・土地家屋調査士になってよかった
と思える数少ない瞬間です。

 病的でしょうか? 友人、家人あたりからは「沢山の人々と酒を飲んだり、タバ
コを吸ってる方がまだ健康的だ。」と指摘を受けることも多いのですが………。

 文具・調度品の中で、私が一番贅沢しているのはおそらく椅子だと思います。開
業当時に文具店を営む友人から、だまされたと思って買ってみろと勧められた椅子
ですが、当時定価十数万円もする代物でした。「安い椅子と、一体どこがどう違う
のだ。」と友人に尋ねれば、「椅子くらい値段で、身体負担に差が出るものはない
んだ。」との話。

 この椅子は、いまでも快適ですから、本当に安い買い物をしたような気がしてい
ます。もっとも、先輩調査士から、「調査士が、座り心地のよいイスに一日中座っ
ているようでは...」と厳しい言葉を賜っていますけど。


2009.12.09(水)【喫煙者に尊敬の念を!】(東京・富田太郎)

 11月30日付本欄で、金子先生は、冗談めいて「タバコを吸っている人に対し
ては、必死に納税に協力している姿勢を評価してほしいのです。」と主張していま
したが、まさに、正論です!

 平成21年度の「タバコの税収」見通しは、2兆795億円です。2兆円です! 
喫煙者は、何と愛国的なのでしょうか!

 歴史的にみても、喫煙者はいつも、国家の難局・財源に協力してきました♪

 @ 平成18年の値上げ(1箱30円増税)は、児童手当拡充のため
 A 平成15年の値上げ(1箱20円増税)は、企業減税の財源捻出のため
 B 平成10年の値上げ(1箱20円増税)は、旧国鉄の長期債務返済のため

なのに、なのに・・・・・・・・・・。

 JRは当時の恩を忘れ、「駅の喫煙コーナー」はいつの間にか?撤去されました。
それでも、文句も言わず、「国家の財源確保」のため、ただひたすらタバコ吸う我
々・・(涙)。

 あぁ〜、本当に「尊敬の念」をもって欲しいものです♪

 ところで、当初、1箱500円〜1000円とか言われていましたが、政府も後
ろめたさを感じたのでしょう。今月3日、政府税制調査会は、たばこ税率を1本あ
たり2〜4円程度引き上げる方向で調整にはいったようです。

 私がESG「徒然」で、「値上げ反対キャンペーン」「タバコ擁護論」を書いた
からでしょうか? やはり、『正義のペンの力は強い』ものですね♪
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 そんなわけ、ないですね・・・。失礼致しました・・・・。



2009.12.08(火)【新株予約権の行使価額】(東京・金子登志雄)

 新株予約権の「行使価額」というと、つい新株予約権「1個」あたりの払込金額
を意識してしまいますが、実務では、「1株」あたりの払込価額をいうと新株予約
権の発行要領で定義していることのほうが多いといえます。

 新株予約権1個を行使し、10万円を払い込み、10株を手にできるとすると、
「行使価額」は1株基準の金1万円というわけです。

 なぜ、新株予約権を基準に、行使価額10万円といわないのかは、ひとえに、新
株予約権の前身である新株引受権の影響と思われます。新株引受権は何株を取得で
きるかが基準で、何個と数えなかったからです。

 ここで、面白い問題が生じます。「1個10株(合計10万円)」でスタートし、
1株を3株に分割すると、「1個30株(【合計10万円】)」になるはずですが
(株式だけが分割されたので3個30株にはなりません)、株式分割があった場合
の行使価額の調整式で四捨五入を決めているのが通常であり、1株あたりの行使価
額は金1万円から金3334円に変わります。

 とすると、30株で【10万20円】です。1株を3株とする株式分割の結果、
1個あたりの払込価額が20円も増額してしまいます。

 1個の行使価額を10万円と定めておけば、このような事態は生じませんが、上
場会社を始め、実務の多数が1株基準にしています。「赤信号、みんなで渡れば怖
くない」とはいえ、こんなことでいいのかなと、もう5年以上も思い続けています。


2009.12.07(月)【限界団地】(島根・渡部浩義)

 「限界集落」(過疎化や少子化などで人口の半数以上が65歳以上の高齢者になり、
社会的共同生活の維持が困難になった地域)の問題は、私の住む田舎町だけのことか
と思っていましたら、どうやら、都会の団地でも、同様の問題があるようです。これ
を「限界団地」というようです。

 高度成長期、こぞって大都市圏近郊に建設された俗にいうニュータウンの名称を持
つ団地住宅。2DKを基本的な間取りとして、当時としては最先端を行く台所・風呂
設備等を備え、一方で核家族を推し進めたとの批判もあったのでしょうが、地方から
都市部での労働を目指した人たちにとって、当時、そうした団地に入居することは一
種の“ステータスの証し”だったのでしょう。しかし、いまや、そこには、若者や働
き盛りの世代がいません。
 
 私にしてみればそれは至極当然のような気がします。こうした団地の作りが、数世
代が同居して住めるような間取りになっているわけではありませんし、若い世代は、
舅、姑のいないある意味で自由気ままにやってきた親の背中を見て育ってきています。
そうした世代が、どうして不自由な同居生活を選ぶでしょうか。

 このことを先日、大阪近郊の巨大団地内に居を構えられ亡くなられた方の宅に弔問
に訪れてた折、つくづく感じました。すべて私たちの田舎の通りにとは申しませんが、
あまりにも無機質なご親族(息子さんご夫婦)の対応に驚きました。

 居間の片隅の簡単なテーブルの上におかれた遺骨と位牌、このような団地住宅の間
取りでは、仏壇もしつらえることができそうにもありません。その団地ではほとんど
子供たちの歓声らしきものも全く聞こえませんでした。

 「どうぞ、お茶を。」と私の前に出されたペットボトルのままのお茶にも困惑しま
した。せめてもの救いは、故人の奥さんが、「若いときは勝手しましたが、できるこ
とならこの人の故郷に遺骨の半分を埋めてあげたい。」といわれたことでした。

 ペットボトルの表面に浮く露を見ながら、これからの高齢化社会、日本全体どうな
るのだろうと、少し暗たんたる気分にもなりました。都市には都市の、田舎には田舎
の高齢化社会問題があるようです。

 われわれ司法書士も益々こうした高齢者社会の問題に向き合っていかなければなら
ないのでしょうか。


2009.12.04(金)【来年の手帳】(東京・金子登志雄)

 お客様からカレンダーや手帳を頂きました。もう、そんな時期ですね。

 いつも利用している「司法書士手帳」には、来年の1月末日までの日々のページ
がありますが、1月だけは、大安とか仏滅というのが記載されていません。来年の
3月合併や4月合併の日程表を作成する際に、適宜、大安や友引の日を選んで、た
たき台の日程案を作りたくとも、今年の手帳では情報不足です。

 今から来年用の手帳を使い始めれば何の問題もないわけですが、さまざまなメモ
を書き込んで愛着のある今年の手帳をそう簡単には手放せないものです。

 手帳とカレンダーの関係では、昔(商法時代)、冷や汗をかいたことがあります。

 12月中旬に、重要顧客から、「来年3月1日に合併したいのだが、合併公告を
ぎりぎり、いつまでに掲載しなければならないのか」と聞かれましたので、「2月
は30日間なくても、1ヵ月とカウントされますから、1月31日までです。余裕
をみて30日掲載を予定してください」と答えて安心していました。

 合併公告掲載日と合併する日との間には、最低1ヵ月を空けねばなりませんが、
1月31日掲載の場合は、2月1日から2月末日までで、ちょうど1ヵ月の公告期
間を満たします。1月30日掲載の場合も、2月には30日がありませんから、同
じく2月末日までです。

 顧客からは同じことを2回も聞かれ、その都度、「問題ありません」と答えなが
ら、ひそかに、その年の手帳のカレンダーをみながら、来年の2月末日は、このま
ま行くと土曜日のようだから、2月だけで1ヵ月とカウントされることに問題はな
さそうだと頭の中で計算していました。当時持っていた私の手帳には、翌年のカレ
ンダーが載っておりませんでしたので、今年の手帳のカレンダーで計算したわけで
す。

 ところが、新年になってカレンダーを部屋に張ってみたら、恐ろしいことに2月
の最終日が29日で日曜日になっていました。合併公告期間の末日が休日の場合に
は翌日の3月1日に満了日がずれます。言い換えれば、3月1日の合併は困難です。

 冷や汗が出て、慌てて正月早々、お詫びと訂正のメールを出しました。やはり、
そろそろ、来年用の手帳に切り替えないとまずそうですね。


2009.12.03(木)【会社の設立理由】(岡山・山本直樹)

 司法書士は、会社の設立手続の依頼をいただきますが、依頼者の設立の理由は、
さまざまです。

 最近の主な設立理由は、

1.リストラされたので会社を起業したい。無職であるのは辛いし肩書がほしい。
2.会社がよく儲かったから節税対策にもうひとつ会社を作ろう。
3.企業再編の手続上受け皿会社が必要だ。
4.事業承継対策に新会社を利用したい。

 先日ご相談があった建設業を営んでいる方は、入札事業の獲得のためというも
のでした。入札が完全に「くじ引き」で行われるようで、当選確率をあげるため、
会社を設立するというものです。

 ただ建設業の許認可の関係上、会社役員を誰にするのがよいのかという点で制
約があり、役員の人選には大変苦慮されていました。

 節税対策や事業承継対策に会社を設立したいという方が存在する一方で、仕事
を獲得するために会社を設立する方がいるという両極端になってきたようです。

 これも格差社会の1つの現れでしょうか。


2009.12.02(水)【売掛金回収の基本について】(愛知・和出吉央)

 ここ名古屋は、トヨタ自動車系の部品製造メーカが多いせいか、今年になってか
らは「何とか売掛金を回収したい。」「倒産間近じゃないのか不安だ。」というご
相談をよくいただいています。そこで、いつもの株式のお話からはいったん離れて、
今回は、売掛金回収の全般(基本)について注意すべき点を述べたいと思います。

1 売掛金発生から回収までの流れ

 @取引の開始→A売掛金の発生(売掛金管理)→B売掛金の回収

 実際に売掛金の回収が問題となるのは、Bの時点ですが、Bの時点でうまく売掛
金が回収できるかどうかは@やAの時点の努力にかかっています。

2 「@取引の開始時」に注意すべき点

 まずは“契約書を作成する”ということです。未上場(中小)企業では、契約書を
作成していないケースが非常に多いのが実状です。「支払う義務は無い」という相
手方からの主張に対し、きちんと対抗できるように契約書を作成することが不可欠
です。

 次に“(物的)担保をとる”ということです。会社代表者に保証人になってもらう
方法ですと、通常、会社とともに代表者も倒れてしまいますので効果は期待できま
せん。難しいかもしれませんが、代表者以外の人にも保証人になってもらったり、
不動産もしくは価値のある動産に担保をつけられればベストです。

3 「A売掛金の発生(売掛金管理)時」に注意すべき点

 まずは“売掛限度額を設定しそれを守る”ということです。取引先から注文され
るままに商品を出荷してしまい、売掛金の額が増大してしまったところで、倒産さ
れてしまったら目も当てられません。取引先の体力に見合った売掛限度額を設定し、
この限度額は必ず守るようにしたいものです。

 次に“消滅時効に注意する”ということです。通常、取引で生じた売掛金の消滅
時効は5年ですが、売掛金の種類によってはそれよりも短い消滅時効期間が定めら
れています。大切な売掛金が時効で消滅してしまうことは絶対に避けたいところで
す。


4 「B売掛金回収時」に注意すべき点

 ア)任意の回収(話し合い)→イ)担保による回収→ウ)強制的な回収(裁判)
という流れになります。

 まずア)任意の回収の時点では、とにかく、“請求書を出す”ことが重要です。
その上で、支払約束の書面を作成させたり、所有財産から任意に支払いを受けたり
したいところです。なお、後の「詐害行為による取消し」への懸念があるかもしれ
ませんが、実際に詐害行為に該当するか否かは裁判所が判断することであり、売掛
金回収の現場で判断することは困難です。回収できそうであれば、1円でも多く回
収するという姿勢で臨むのが良いでしょう。

 最後に、ウ)強制的な回収には様々な複雑な手続が絡んできますので、この段階
まできた場合は、専門の弁護士や司法書士等の法律家に相談されることをおすすめ
します。


2009.12.01(火)【地域の沈静化】(島根・渡部浩義)

 とうとう、今年もあと1ヶ月になりましたが、今年も周囲の景色が大きく変わり
ました。

 過日、ある地方中堅都市に出かけるため、車で3時間ほど一般国道を走りました。
紅葉の頃合いもよく、気分のよい出発でしたが、目的地に近づくにつれ、久しぶり
に走る国道の沿線の景色に次第に私の顔を曇らせずにはいられませんでした。

 恐らくはかつての誘致企業とおぼしき工場建物の廃屋や、廃業・閉店して野ざら
しとなったままのガソリンスタンドやコンビニ、飲食店建物など道路沿線には気分
が滅入るような景色の連続でした。すさんだ景色のほんの200mほど後ろ側には、
収穫を終えたのどかな田園風景、里山の光景が広がっているというのに………。

 「地域の活性化」という美名のもと、中途半端な計画による開発や、妙な補助金
等に踊らされた人々の姿が見え隠れするようです。子供のころ、この沿線を父の車
で出かけると、その沿道の賑やかさ、活気にわくわくしたものでしたが、その頃の
活気や面影は、まったくといってよいほど残ってはいませんでした。

 一方、最近の町づくりの典型的な手法は、かつての街の中心部から郊外に向かっ
て幅員の広い道路を建設し、その沿道に大型ショッピングモールを誘致建設し、そ
の周囲に大型駐車場を備えた商業施設を集積する方法ではないでしょうか。

 まったくもって、日本は画一的でつまらない町並みが増えたように思います。同
様な感想は、時々の出張の折りに移動手段として使う電車の車窓を流れる風景にも
覚えます。

 そういう意味で、中途半端な開発の手が入らず、沿道に里山の風景が残っている
わが島根県仁多郡奥出雲町は幸せな場所なのかもしれません。政権も交代して、地
方地域はよい意味で沈静化すべきでしょう。わが愛する町には、これ以上、人が来
て荒らしてほしくない心境です。



2009.11.30(月)【提言:納税専用タバコ】(金子登志雄)

 愛煙家でヘビー・スモーカーの私ですが、富田氏(27日付本欄)と違って、私
はタバコ増税に条件付で賛成です。

 条件は、全ての銘柄ではなく、納税専用タバコ(デザインは「葵のご紋入印籠」
がいいですね)を作り、これを高額(たとえば1箱1000円)にすることです。
1本1本のタバコにも「葵のご紋」をデザインし、色をつけ目立つようにし、他の
タバコと区別できるようにします。

 そして、このタバコを吸っている人に対しては、熱烈な嫌煙家も「納税ご協力あ
りがとう」と頭を下げ、尊敬の眼差しで接することとし、決して嫌な顔をしてはな
らないと、政府で広報してくれることです。自らの健康を害しても、寿命を縮めて
も、必死に納税に協力している姿勢を評価してほしいのです。 

 いま流行りのポイント制にし、5年以上、この銘柄を吸い続け、一定数のポイン
トが貯まった人に対しては、勲章とまではいいませんから、財務省から納税感謝状
を出してくれるのもいいですね。

 さすれば、愛煙家も、少なくとも外出時には、「葵」のタバコにするでしょうし、
必要であれば、「葵」タバコ以外の銘柄の味を落とすのもいいかもしれません。私
も、外では、キャスターマイルドをやめて、「葵」にします。

 愛煙家に対するお中元、お歳暮も、こぞって「葵」のタバコを送るようになれば、
少しは国家財政に寄与できるでしょう。

 とにかく、「愛煙家=非国民」というナチスばりのファシズムを排し、「愛煙家
=少数民族の人権重視」という真の民主主義を根づかせるのが、われわれ少数民族
の悲願です。


2009.11.27(金)【タバコ増税論に異議あり!】(富田太郎)

 『タバコ増税論』が世間をにぎわせています。

 ESG法務研究会において、金子先生と並ぶ数少ない愛煙家の私としては、戦々
恐々としている毎日です。

 昨今の増税論を聞いているとなにやら、ヒトラーの『反タバコ運動』を連想させ
るほど、愛煙家にとっては、不自由な時代になってきました。

 ちなみに、日本においては、『タバコ』は、いつの時代も「税金という十字架」
を課せられていました。

 『タバコ』が専売制になったのも、日清・日露戦争の軍事費を調達する一手段と
して、『たばこ専売法』を公布したのがはじまりだそうです。
(文献によると、当時、『タバコ』による収入は、年間の国家収入の10%を占め
る重要な収入源だったそうです。)

 ところで、学生時代から真面目だった私ですが、『タバコ』だけは、早くから吸
っていました(反省)。

 実は、当時、読んでいた小説『けんかえれじい』(現在は、岩波現代文庫から出
版 鈴木隆著)に、『スリーキャッスル』(英国タバコ)という『タバコ』がでて
きて、実に「エレガント&美味しそうな♪」感じがして、つい・・・、それが喫煙
のはじまりでした。

 今でも、原稿を書いている時、『タバコ』さえあれば、よいアイディア・原稿が
書けます(きっぱり)! 
 これは、文章を書く者の共通意見ではないでしょうか♪

 そうです!『文化人』の中には、数多くの愛煙家がいます。かの直木三十五も、
「煙草は、『スリーキャッスル』のマグナムに限る。但し、金がないとバットにて
も可」と書いています。

 その他、菊池寛=キャメル、坂口安吾=ピース、芥川龍之介=ゴールデン・バッ
ト、富田太郎(←この方は、文化人ではないですね)=マイルドセブンDスペック
・・・。

 こうしてみると、『タバコ』と『文化人』には相関関係があるのかもしれません
ね♪
 ・・・・・・・・・・・・・。

 こんな独善的なこと書くから、嫌煙家から、怒られるのでしょうね・・(反省)。

(参考)
 金子登志雄=キャスターマイルド 


2009.11.26(木)【残忍な事件に思う】(島根・根来川弘充)

 私の住む島根県で痛ましい残虐な事件が起きてしまいました。浜田市での県立女
子大生殺害事件です。

 島根県は東西に長い県で、西の浜田市は私の実家である東の安来市からは、車で
約3時間はかかりますので、私の日常生活の範囲ではありません。

(浜田市の位置) 
 http://houmukyoku.moj.go.jp/matsue/static/click_map01.html

 しかし、会議等で年に1、2回は訪ねることもあり、町並みはよく知っています。
まして、浜田市に本部がある島根県立大学は、研修でよく使う会場の近くであり、
身近な存在です。おそらく、私の実家と環境に大きな違いはないと思います。

 都会と違って、小さな町かもしれませんが、日常で、顔見知りでない方とも出会
うこともたくさんあります。ただ、誰かしら県民の方と関係のある方だと思うと何
かしら安心感はあるものです。それだけに住民の方の不安は、いままでになかった
ものでないかと思います。

 犯罪が起こったとき、それを犯人が異常であると犯人だけに責任を求めることは
簡単です。しかし、そういった犯人が生まれたという事実を社会として考える必要
があると思います。

 私は、年に一回くらい親族等が亡くなられる場面に出会います。もちろん皆さん
丁重に見送られています。亡くなられた方に刃物を向けるという行為を発想するこ
とは、私にとっては、まったく異次元といっていいともいえる発想です。

 どうしてこのような行為が犯人にはできたのでしょう。そのような人間を生み出
した社会的背景は何だったのでしょう。

 一刻も早い犯人の逮捕を願うとともに、安心して暮らす社会をつくるために、こ
の点についても原因を追究する責任が社会にあると思います。


2009.11.25(水)【古い除籍謄本】(島根・渡部浩義)

 相続の仕事に従事していますと、時々、昭和50年代前半以前に作成された「相
続証明書」をもって来所される依頼人がおられます。

 この方々が持って来られる「相続証明書」も当然に有効なのですが、この証明書
の一部として編綴されている除籍謄本の中には現在では記載があってはならない身
分に関する記載が残っているものがあります。

 現在、こうした除籍等の個人の身分に関する記載等は、現行の日本国憲法の趣旨
に則り、市町村役場において丹念に「塗抹」の処理がなされており、最近取得する
除籍には、個人の身分制度の関する記載を見つけることはおよそできません。

 そのためか、こうした所要の手入れがしてない除籍類が「相続証明書」の一部と
して登記所に提出されると、調査担当官あるいは登記官から、対象除籍を、「しか
るべき処理」がしてある除籍と差し替えさせて欲しい旨の申し入れがあります。

 基本的には、私はこの申し出に応じるようにしていますが、この旨を一応依頼人
に伝えると、中には「古いものには古いものとしての歴史的経緯があり、偽らざる
我が家の姿を現しているのだから、仮に現在の法律にそぐわなくなっていたとして
も提出した古い除籍そのものを返してもらってほしい。」とはっきり答えられる方
もおられます。

 こうなると、登記所側も強制的に回収・交換することはできず、提出した古い除
籍謄本類を申請人に返却することになります。最近は、こうした登記所内でのゴタ
ゴタを回避するために、依頼人が持参された相続証明書に該当の除籍謄本等が存在
していれば、新規に現在の差し支えのない除籍謄本を市町村役場で取り直して登記
申請用にはそれを添付し、依頼人には持参された古いものと、新規に取得したもの
双方を返却記載のするようにしています。

 ところで、最近私ども地元のTBS系ローカル局で、夕方、東野英治郎氏が黄門
役を演じている30年以上も前の『水戸黄門』の再放送を連続してやっていますが、
これなどよく見ていると、時々、現在では放送用語として適当ではないとされる台
詞がかなりの頻度で出てきます。が、なぜか現在放映中の里見黄門よりもリアリテ
ィーある芝居を感じてしまいます。

 物議をかもし、最近また出版が再会されたように聞いています私たちが子供のこ
ろ慣れ親しんだ「ちびくろサンボ」(※)の廃刊問題なども上記の問題に相通じる
部分があるのでしょうか。はたまた、まったく異次元の問題でしょうか。

 ※ちびくろサンボ問題
  http://homepage1.nifty.com/forty-sixer/Sambo.htm


2009.11.24(火)【初の沖縄訪問】(金子登志雄)

 20日から22日まで、司法書士界の一大勢力である「商業登記倶楽部」の沖縄
セミナーで、会社法の講師を務めるため、那覇に行ってまいりました(司法書士の
石川さんはじめ、みなさんお世話になりました。また、ご馳走様でした)。

 (商業登記倶楽部)
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/STClub2.htm

 会場である沖縄県司法書士会館には、「会社登記の専門家・司法書士は企業法務
をサポートします」と、垂れ幕が下がっており、会社法手続に力を入れているよう
で、頼もしく感じました(下記HPにも写っています)。

 (沖縄県司法書士会)
   http://www.okinawa-shiho-shoshi.net/

 セミナーには、遠く埼玉県、千葉県、広島県からも参加者があり、非常に盛況で
したが、私の講演は、いつも、教科書的な話をしないので、「非常によかった」と
「全然わからなかった」の真っ二つの評価を受ける傾向があります。今回もきっと
そうだったと思いますが、後者の方には、ごめんなさいというしかありません。

 はじめての沖縄でしたので、最後の日は、半日観光で、駆け足で、那覇市内(国
際通り)、首里城、金城石畳道、ひめゆりの塔、平和記念資料館などを回ってきま
したが、いまだに沖縄には、不発弾が多数発見され、戦争の傷跡が強く残っている
ことを知りました。那覇空港近くの旧海軍司令部壕は、必見場所だと思いました。

 (1日2件も届けられる不発弾)
  http://www.aarjapan.gr.jp/lib/act/act0910-2okinawa.html
 (旧海軍司令部壕)
  http://kankou.e-pon.jp/kaigungou/


2009.11.20(金)【負の株式の発行】(金子登志雄)

 4月に会社計算規則が改正になったため、ありがたいことに「会社の計算」に対
する関心が司法書士や税理士の間で高まりつつあります。おかげさまで、9月下旬
に上梓した「これが増減資・組織再編の計算だ」(第2版)も増刷できそうです。

 さて、商法時代(平成18年4月まで)は、マイナスの出資で株式が発行される
などということは、太陽が西から出るのと同じくらい、あり得ないこととされてい
ましたが、会社法では太陽が北から出てきてしまいました。

 それはどんな場合かというと、たとえば親会社が子会社に「債務超過の事業」を
出資する場合などです。事業の現物出資の1つですが、親子関係(同一企業グルー
プ内)ですから、帳簿価額のまま財産が移転するため、マイナスの出資になります。

 この場合の額が「差引き△1000万円」で、子会社から100株が発行された
とすると、子会社の資本金に対する影響はどうなるのでしょうか。

 資本金が1000万円減ると考えたいところですが、減資の手続をしない限り、
資本金は減少しません。子会社の繰越利益を1000万円だけ減少させます。この
あたりは、資本勘定にマイナスはあり得ないため、やむを得ずといったところでし
ょうか。

 では、「△1000万円」の対価である子会社株式100株を取得した親会社は、
その子会社株式100株を貸借対照表に、どう計上するのでしょうか。株式の帳簿
価額もマイナスにするのでしょうか。

 資産に「子会社株式△1000万円」と計上したいところですが、資産にマイナ
スは想定されていません。
 計上場所がないじゃないかと思ってしまいますが、理系の頭脳の立法者はいとも
簡単に、「負債に株式1000万円と計上すればよい」と決めました。資産に計上
されている既存の子会社株式の簿価との調整が必要ですが、子会社設立であれば、
1000万円全額が負債に計上されます。

 会社計算規則の理解には、既成概念にとらわれない理系の思考が必要のようです。


2009.11.19(木)【もういくつ寝ると−】(島根・渡部浩義)

 先日の夕食の時間に、娘どもが「あと●日でクリスマスだ。楽しみだ。」などと
はっきりというものですから、カレンダーを数えてみると本当にそうでした。

 まだまだ今年も「日にち」や「時間」があるように思っていましたが、肝に命じ
て計画的に事を進めなければ、予定の仕事、目標は達成できそうにありません。あ
る意味で「注意喚起」の機会をくれた娘たちには感謝しなくてはならないようです。

 あれもしたいし、これもしたい毎日の連続でしたが、最近なぜか時間の有限性を
ひしひしと感じるようになり、思っていることの半分もできませんでした。そうな
らないよう固く誓った年初だったのに...。

 仕事の方は、もちろんこなさなければなりませんのでここでは語りませんが、私
的なところで気になっているのは事務所や自宅の自分の机の周りに積み上げてある
未読の本の山です。ざっと数えても今年の残り日数以上の冊数があり、どうしたも
のか。その題名はどの本も、未だに魅力的なものばかりなのに。でも早く読まない
と、本の風味も落ちるような...。

 最近は、私のような田舎に住む者でもネットショップで簡単に本の注文ができて
翌日には届くという、ありがたい世の中になっています。そのせいか、本のネット
ショップの画面をあけながら、新聞、雑誌を読むという妙なクセがついてしまい、
それらの書籍の広告欄、書評欄を見ては衝動的に『カートに入れる』をクリックし
てしまいます。どうりで、懐が寒いはずです。

 私の学生の頃の夢の一つに、「ふらっと入った本屋で欲しい本があれば、躊躇な
く買えるだけのお金は常に財布の中に入れて歩ける大人になる!」というのがあり
ましたが、なんとか買えても読む時間がない、という今の現実。(速読派、「でき
る人」派からは時間を作ろうとしないからだ、という声も聞こえてきそうですが、
もうクタクタになっていることも多い私です。)

 もう年内は、『カートに入れる』を禁じ手とすることにします。だから私は、
『できる人』の仲間入りができないのかもしれません。 


2009.11.18(水)【必殺仕分け人】(金子登志雄)

 公開裁判だ、鳩山劇場だ、財務省が裏にいるなどといった皮肉な批判もあります
が、やっていることはいいことです。連日の事業仕分けのバトルのことです。

 そのバトルの内容をみると、これまでの政治がいかにいい加減だったかと思わざ
るをえません。4日目にして、1兆円以上の無駄が見つかったとか。
 
 いったん無駄な仕事を作ると、それで生計を支える人が生じますから、族議員等
とのしがらみもあり、廃止や縮小が困難になり、それが長年積み重なってきたもの
でしょう。

 それを元から「断つ」ためにも、政権交代は吉とでたようです。事業を始めた前
政権が自ら損切りすることは期待できないからです。新政権において無役だった枝
野議員も蓮舫議員も、活躍の場を与えられ、張り切って頑張っているようです。

 それにしても、「必殺仕分け人」などとは、マスコミが喜ぶ命名をしたものです。
政権交代の印籠を出しても無駄の廃止がうまく行かないときには、きっと中村主水
が登場してくるのかなと期待をもってしまいますが、主水こと藤田まことさんは、
肺疾患でそれどころではないようです。やはり、最後は、鳩山首相が登場し、片肌
脱いで、「このTATOO(10月29日本欄参照)がみえないか」と啖呵の1つ
も切り、政商の「越後屋」ともども、ばっさりと最後まで「仕分け」して、庶民の
うっぷんを晴らしてほしいものです。

 なお、全く関係ない話で恐縮ですが、司法書士新人研修の講師を予定されている
先生方は、レジュメを見直してください。簿記では「仕訳」ですよ。無能な講師と
して「仕分け」られないようご注意ください。


2009.11.17(火)【脳が腫れるほど...】(島根・渡部浩義)

 10月27日の本欄にて金子代表から「カツマーVSカヤマー論争」を引き合い
に私や富田会員の走りっぷり(?)に一言いただきましたが、私は個人的には香山
派(カヤマー)です。カツマーを目指すなら、おそらく田舎に生活や経済活動の本
拠を求めてはいけないはずですし、「司法書士」という職業自体が、経済的成功を
目指すカツマーが本来就(つ)くべき職業ではないように思います。

 ところで、最近その走りっぷりが気になる方のひとりに「ミスター年金」こと長
妻昭 厚労相がおられます。その急激な痩せられ方や朝から晩まで奔走される姿が
話題となっていますが、各メディアの評価も手厳しいものから、長い目で見守ろう、
という論調のものまで様々のようです。

 ただ、厚労省という役所自体がもともと厚生省、労働省という二つの役所が合併
した役所である以上、その守備範囲も相当に広範囲に及ぶようです。得意な年金問
題同様に他の所管問題についてもエキスパートになるべく長妻大臣は日々奮闘して
おられるのでしょうか。そして何より民主党政権にはその公約において“脱・官僚”
という大命題があります。何かのインタビューにて長妻大臣は「本当に脳が腫れそ
うなくらい...」と答えられていましたが、恐らく偽らざるところでしょう。

 司法書士の世界においても、登記、訴務、供託、相談業務、その取扱業務すべて
について真のエキスパートになろうと思えば、おそらく寝食を忘れて「脳が腫れる
ほど」研究を続けなければならないことは間違いありません。

 私などは最近、電話の鳴らない週末の日、朝から活字に触れていると、たった1
日で夕方には「目の奥の凝り」と「脳が腫れた」ような感覚を覚えます。恥ずかし
ながら、最近は施行後の3年あまりが経過した『会社法』を今一度基礎的なところ
からやり直しています。もっともよく意志半ば途中で睡魔に破れ、寝すぎた結果、
起きたとき「脳が腫れた」ような感覚を覚えることもありますが。

 勝間女史や長妻大臣には笑われるでしょうか。



2009.11.16(月)【釜揚げ讃岐うどんの食し方】(金子登志雄)

 14、15の土日は香川県司法書士会で会社法の講演をしてきました(宮ア会長
ほか、みなさん、たいへんお世話になりました)。

 高松ははじめてでしたので、日曜日は市内を散策してきましたが、道路脇の歩道
がしっかりしており、実に歩きやすく、きれいな街でした。

 もともと景色よりも人間の息ぶきを感じるところに興味があるほうですので、高
松法務局、高松駅、県庁、繁華街を中心に、庭園で有名な栗林公園や高松城跡の玉
藻公園などをみてきました。

 香川というと讃岐うどんが有名ですが、昼食にご馳走になった「ざるうどん」、
1人で繁華街で食べた「釜揚げうどん」では、麺の長さにびっくりです。

   http://www.rakuten.ne.jp/gold/kijoan/new/howto.html

 冷たい「ざるうどん」は、そう苦労しませんでしたが、熱い「釜揚げうどん」で
は、箸でつまんだ部分だけを汁につけると、つままないほうが長く重いので、麺が
釜に戻ってしまい、上手に食せません。箸でうどんを切ろうにも、数本まとめて切
れません。せっかくのご馳走なのに、これは悔しいものです。

 飛行場に向かうタクシーの運転手さんに、「独自の食べ方があるのか」と聞いた
ところ、「1本をつまんで、くるくると回して(ちょうどホークでスパゲティを丸
めるように)食べるんですよ」と返答されましたが、あるネットにも次のようにあ
りました。

---------------------------------------------------------------------------
 どんぶりからうどんを割り箸で取る時、つい2〜3本を箸でつまみます。さぬき
うどんの場合は、うどん1本の長さが長いので、椅子からお尻をあげて立らんと、
どんぷりからうどんが取り出せません。
 それを、つけだしの入った器に入れると、たいていの場合、うどんが多すぎて器
からはみ出してしまします。
 しょうがないきに、割りばしでうどんを切ってから食うことになります。
 合理的な?つけだしで食べるうどんの食べ方は、割りばしでうどんを1本だけ取
り出してつけ出しの入った器に入れてから食うと、口の中でちょうど良い量になり
ます。----- そうめんやそばと食い方が違うんやがなぁ!
   http://www.setouchi.ac.jp/~udon/udon2.htm
---------------------------------------------------------------------------

 そうだったのか! この悔しさは次回で晴らすぞ。


2009.11.13(金)【株式会社の組合的意思決定制度】(金子登志雄)

 会社法319条に「取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をし
た場合において、当該提案につき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思
表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす」
とあります。

 この規定を、【株主全員の同意】⇒【株主総会決議(の代用)】という点に焦点を
あててしまうと、取締役会で株主総会の招集決議は必要ではないかと思ってしまいま
す(この点は不要とされています)。

 また、決算の承認議案などでは、監査役の監査報告をどうするのか、監査役の追加
選任議案の場合には既存監査役の同意が必要ではないか(会社法343条1項)など
と考えてしまいます。

 そうではなく、この規定を、【株主全員の同意】⇒【株主総会は不要】という点に
焦点をあてれば、株主総会を開催した場合に必要な監査報告も監査役の同意も必要あ
りません。

 私は後者の見解です。条文の見出しにも「株主総会の決議の【省略】」とあります
し、株主提案による全員同意さえ肯定しているからです(いわゆる株主提案の「議題
提案権」は取締役に対して株主総会の議題にせよと提案するものです)。 

 合名・合資会社や合同会社という持分会社には、社員総会制度がなく、社員全員の
同意などによって会社の重要な意思を決定します。会社法319条も、これと同様に、
【株主全員の同意】=【組合的意思決定の許容(株主総会の省略)】と考えても、差
し支えないでしょう。

 つまり、株式会社の意思決定は、本来であれば株主総会で決議すべきところである
が、株主の全員が個別に賛成した議題なら、わざわざ集まって株主総会で決議するま
でもないという当然の規定だと考えます。

 監査役の株主総会への報告を無視できないから、定時株主総会の省略はできないと
いう少数意見もありますが、私見からは、賛成できません。株主の1人でも監査役の
報告や同意がほしいと考えた場合には、同意を拒否すれば足りるため、私見の立場で
も特段の支障は生じないでしょう。


2009.11.12(木)【高齢化社会の仕事】(金子登志雄)

 市橋容疑者逮捕ですっかりかすんでしまいましたが、一昨日、俳優の森繁久弥さ
んが他界しました。何と96歳でした。

 最近いただく喪中はがきは、病死以外の場合は、90代での親の死亡が多いです
し、渡部さんのおばあさんだけでなく、私の母も90代で元気そのものです。「東
京だよ、おっかさん」と案内する必要もなく(10日付本欄)、1人で東京のどこ
へも出かけられます。

 例の婚活詐欺女性の祖父も90代で現役で働いているようですし、先般行われた
司法書士のある会合でも90代の方が挨拶されていました。私よりも元気そうで、
入れ歯でもなさそうでした。

 いまや、90代は少しもめずらしくなくなりましたが、共通点は、おそらく何ら
かの仕事や役割をもっていることだと思います。それがあれば、年齢のことなど意
識する暇もなく、日々頑張ることができます。

 高齢化社会になり、高齢者の生き甲斐を何に求めるかは、非常に重要な問題です
が、第2の人生を農業に求める方も増えてきたようです。農業であれば、世話をす
る対象がありますから、日々の張り合いもあることでしょう。

 田舎には、農業を捨てて都会に出た方が多く、土地はたっぷり余っていますから、
元気なうちに、気候の温暖な地に引越し、作物作りも悪くないかもしれません。

 農業に興味のない方は、司法書士資格狙いはいかがでしょうか。本年度の合格者
の最高年齢は69歳だそうです。90代まで、まだ20年も働けます。



2009.11.11(水)【閣内不一致と婚活詐欺】(金子登志雄)

 鳩山政権は相変わらず高支持率のようですが、マスコミは、やれ閣内不一致だ、
やれ献金疑惑だ、二重権力だ、闇将軍だと騒がしいですね。

 閣内不一致など、当たり前のことで、皆が皆、同じ意見であることのほうが怖い
くらいです。

 わが家などは、夫婦の意見不一致、親子の意見不一致は日常茶飯事であり、民主
主義の最先端を走っているというのに、報道記者の家庭も、仕事場である編集部や
報道局も、全員意見が一致しているのでしょうか。

 週刊誌の報道もワンパターンで、「政治評論家の〇〇氏によると、」「政治学者
の〇〇教授によると、」と、記者に都合のよいように他人に語らせ、面白おかしく
記事をまとめているだけです。

 面白おかしくするためには、権力闘争とスキャンダルに焦点をあてるに限るとい
うのがミエミエで、そろそろ、うんざりしてきました。

 と思ってきた頃、最近は、マスコミの関心が、30代女性による婚活詐欺のほう
に移ってきたようです。

 ある週刊誌で女性作家が「こんなデブの女が婚活詐欺とは」と驚き嘆いていまし
たが、これはやや被害者の男性に気の毒な見方だと思いました。

 男は、詐欺女がスレンダーな美人だったら、「まさか、こりゃ裏がある」と警戒
するものですが、デブ女であれば、警戒センサーが作動しないからです。

 私も、ヤセた女性よりも、ふくよかな女性の方に好印象を抱く傾向がありますし、
男社会の中で育ったため、異性に対する免疫がありませんから、すぐにだまされて
しまうタイプです。

 私が無事でいるのは、ひとえにネットに弱いのとカネがないことですが、これが
身を守る手段として機能しているとは、我ながら情けないものです。 


2009.11.10(火)【東京だよ、おばっつあん!】(島根・渡部浩義)

 今回は、息抜きの内容です。

 さて、島根の山奥に住む私が言うのもなんですが、皆さん(特に東京在住の)は、
東京駅が始発駅となる直前のJR中央線の東京側の始発駅はどこにあったのかご存
知でしょうか。

 過日の週末、従妹の結婚式に参列するために、健脚を誇る今年92歳になる祖母
及び親戚一族共に上京しました。結婚式では末席をあたためていたはずのその祖母
の健丈ぶりばかりが参列者の目を引き、本来の主役である新婦をすっかりかすませ
てしまったようです。

 翌日は、祖母自らが「これが見納め。」と言うものですから、いわゆる『東京名
所めぐり』というのを、怪しい「おのぼりさん親族ご一行様」にて観光ジャンボタ
クシーを借り切って行いました。

 私も時々は上京しますが、ほとんどが仕事の用向きであり、目的地から目的地へ
ピンポイントを移動するばかりで、恥ずかしながら、皇居や東京タワー、浅草寺、
国技館、最近の人気スポット?お台場など、初めてゆっくりと「観光」しました。
そもそも、都内移動はこれまでほとんどJRと地下鉄によることがほとんどで、車
で都内を移動したことがないことにも気がつきました。

 タクシーの運転手さんも商売柄とはいえ車運び、道選びが上手、そして運転しな
がらその瞬間、瞬間に車窓に流れ、またピンポイントで現れる風景に関するガイド
が抜群です。なんでも運転手さんのお母さんと、うちの祖母が同じ年恰好なのだそ
うで、随分と割り増しのリップサービスがあったように思いました。これで計8名、
6時間しめて金45,000円は安いと思いましたが...。

 やはり、大正生まれの祖母は皇居では御所の方に向かい手を合わせ、そして東京
駅にて辺りを見渡し「どこから、こんなに人が出てくるのかねぇ。」と一言。祖母
を見ていて、つくづく「健康」というもののありがたさを感じずにはいられません。

 そうそう、冒頭の中央線旧始発駅の件ですが、これは今の秋葉原駅に近い万世橋
(まんせいばし)のたもとに「万世橋駅」※としてあったそうで、その駅舎は旧交
通博物館建物の隣付近にあったようです。現在でもその赤レンガの遺構が中央線沿
いにあることを車窓から見ることができました。

※万世橋(まんせいばし)駅
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%87%E4%B8%96%E6%A9%8B%E9%A7%85#.E5.9B.BD.E9.89.84.E4.B8.87.E4.B8.96.E6.A9.8B.E9.A7.85

2009.11.09(月)【マンガ】(島根・渡部浩義)

 このHPで、まず目に飛び込んでくるのがESGの「書籍執筆隊」の面々が世に
出した数々の書籍紹介のコーナーです。先日、金子隊長が中央経済社から上梓され
た2冊の著書は、噛み応え十分にて同業者をはじめとした実務家に受け入れられ、
堅実な売れ行きのようです。

 また一方、富田太郎会員が最近改訂された『マンガはじめて司法書士会社法(4
訂版)』もなかなかの評判のようです。島根の奥地に住む私のところにも、当ES
Gとは関係のない同資格者からその評判が耳に入るのですから間違いありません。

 ところで、皆さまは「マンガ(まんが)」という言葉にどのような印象を受けら
れるのでしょうか。幼稚、猥雑、子供もの読み物………etc。 各個人がもっておら
れる「マンガ」に対する心象はさまざまでしょうが、かつて世間ではあまりプラス
のイメージはなかったように思います。が、最近は「マンガ」や「コミックス」と
呼ばれるものの中に社会現象を巻き起こすまでの「名作」と呼ばれるものが多数輩
出されたせいか、社会のそれらに対する受けとめ方は数年前とは明らかにに変わっ
てきていると思います。

 名作といわれる「マンガ・コミックス」には、細かい取材、丹念な勉強・研究に
基づいたその後ろにある膨大な情報量に圧倒され、さらに限られた紙面でのコマ割
り、ストーリー展開に唸らされ、いや、正確には知らず知らずのうちに内容に引き
込まれ、読み終えさせられていることに気がつきます。

 富田氏の前出の著書にも、会社法の全体像をざっくりとつかませ、いまさら聞け
ない業界では一般となった専門用語や手続の流れについても『ツカサくん』たち登
場人物が、自ら勉学する立場となってやさしく教えてくれます。

 まさに「マンガ」と思って、侮る勿れ(あなどるなかれ)です。ただし、皆さん
が読者となり忌憚のない批評を著者に送られれば、益々の名著になると思います。
一度、私もその創作の現場に足を踏み入れたいものですが、こればかりは個々の企
業秘密。いかにESG会友といえどもシャットアウトでしょう。


2009.11.06(金)【やっかいな「等」】(金子登志雄)
 
 会社法の条文には、やたらと「等」がでてきます。金銭等、株式等などなどです。
随筆や日常の文章では、「………など」「………等」と書いても、それで放置でき
ますが、疑義があってはならない法律文章では、必ずといってよいほど、「等」に
ついて説明されています。

 例をあげますと………

 1.金銭等(金銭その他の財産をいう。)
 2.金銭等(金銭に限る。)
 3.金銭等(当該株式会社の【株式等】を除く。)
 4.金銭等(吸収合併存続持分会社の持分を除く。) etc.

 5.株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。)
 6.社債等(社債及び新株予約権をいう。)
 
 法律というのは説得の学問であり、揚げ足を取られてはいけませんから、このよ
うに几帳面にその範囲を明確にしておくわけですが、それでも、上記2の「金銭等
(金銭に限る。)」は、端的に「金銭」とのみ記載してもよかったのではないでし
ょうか。
 社債等も、対象が2つだから、「社債及び新株予約権」でよいと思いますし、社
債等のままにするなら、株式等については、「株式及び【社債等】をいう。」とす
べきではなかったのか(上記3のように)と、揚げ足を取りたくなります。

 合併対価など「対価」のことを「金銭等」ということが多いのですが、合併対価
としては自己株式も認められています。とすると、貸借対照表の資産にも負債にも
計上されていない自己株式も「その他の財産」の範疇に入るのかと新鮮に感じる方
もおられることでしょう(入るということで私は問題ないと考えています)。

 こういう揚げ足取りを間違い探しのクイズと同じように面白いと感じたとしたら、
法律家に向いているかもしれません。


2009.11.05(木)【秋祭り】(島根・渡部浩義)

 農作業が一段落したこの時期、この田舎では日替わりで各々の集落の氏神様の秋
祭りのときを迎えます。かつては、鎮守の杜の境内では、奉納神楽や相撲などの催
物が賑やかに執り行われ、各々の家庭では盛んに親戚の間で客として招き、招かれ、
家の間を行き来したものでした。が、このところの少子高齢化、人口減少、限界集
落問題は地域の「お祭り」のありようにも少なからず影響をおとしています。

 祭りの日が近づくと収穫したての新米で餅をつき、それを携えて親戚宅に赴き、
祭りの晩の宴に来訪されるよう案内するのが私たちの地域の習慣でした。子供の頃
は、朝早くから父や祖父が威勢よく振り降ろす杵が臼にあたる音で目が覚め、家族
の者が餅をついている土間のところまでいき、「おばあさん、あん餅にする前のあ
ん玉をひとつ頂戴。」などといまでは考えられないようなカワイイ声を出して、貰
ったあん玉が美味しかったことは今でも忘れられません。

 かつては賑やかだった秋祭りの行事も今では次第に廃れ、人々の往来、親戚の間
での行き来とても年寄りのみが多く残った最近ではだんだんに少なくなってきまし
た。

 最近、一人の神主さんが複数の神社へ掛け持ちで代表役員(宮司)に就任される
案件にあたらせてもらいました。少し前には同じように一人の和尚さんが複数のお
寺に掛け持ちで代表役員(住職)に就任される案件もありました。

 法人承継の問題は、どうやら会社に限ったことではなく地域のお宮、お寺といっ
た宗教法人でも深刻な問題のようです。「いくつ掛け持ったところで、この田舎で
は神職、住職のみの収入では食べて行けんのだ。登記料、高いなーっ。渡部、もう
少しやすうにせい」。この方、かつて私が学生時代にお世話になった学校の先生
(教職)でした。

 このHPの冒頭には、「合併再編等会社法手続の実績は最大級!【ESG法務研
究会】」とありますが、私が住んでいるような限界集落地域において今後、合併再
編手続が必要なのは『会社』ではなく、こうした地域の『宗教法人』ではないのか。
宗教法人法にも各法人がもつ規則(会社の定款に相当)にも一応の合併予定規定も
あるようだし...。

 そんなことがふと頭の中をかすめた今年の秋祭りのシーズンでした。地域のお宮
さん、お寺さんを登記手続上のこととはいえ、「合併」するなんて畏れ多いことで
しょうか。


2009.11.04(水)【未上場株式の買取請求】(和出吉央)

 ある未上場企業に、設立当初(発起人7名・株式引受人1名以上の時代)出資し
た方の相続人から、今までの株主総会不開催、配当の不実施等を理由に、弁護士さ
んを通じて株式の買取要求の内容証明郵便が届きました。
(最初は、口頭による本人からの「お願い」だったのですが、それを無視したため、
弁護士さんが出てきました)。

 どうにか抗弁したいところですが、株主総会の議事録(実際は不開催)以外に株
主総会に関する資料はもなく、かつ、配当は設立以来、20年以上一度も実施して
いないため、まったく打つ手がありません。最終的な判断としては、「相手方の要
求を受け入れてすぐ株を買い取る」ということになりました。

 “未上場企業の株式=市場のない株式”の買取り金額で裁判になると、多くのケ
ースでは、まずは、いわゆる“時価純資産価額”をベースに話が進み、合意となら
ない場合は、その後、審理の過程でお互いの側の株価鑑定人(会計士・税理士等)
がそれぞれに有利な「株価鑑定書」を提出するという流れになります。

 そして、最終的に裁判所が金額を決定することになりますが、これまで見てきた
ほとんどケースで、この決定金額は、時価純資産価額の8割〜9割くらいに落ち着
いているのですが、今回は、幸いなことに、相手方の買取要求金額は、時価純資産
価額の6割程度という比較的安価でした。

 そこで、裁判所を関与させると金額が上がってしまう可能性が高いという判断の
もと、後継者が買取ることで事実上の和解が成立しました。
 後継者は、一部借金で買取資金を補填することになりましたが、それでも万々歳
だと思います。

 会社法上、特段の事情もない状況で、(合併等へ反対の株主の買取請求等は可)
株主に株式買取請求権という権利はありませんが、毎年の株主総会の開催や配当実
施等の株主対策をきっちりしていないと、事実上、会社やオーナーに対する株式買
取請求を免れることは困難です。しかし、この買取要求も、場合によっては、「株
主からの株式買取請求=買い取れる絶好のチャンス」と捉えることができるのです。

 そのためには、確かな知識や信頼できる専門家のバックアップが必要となります。


2009.11.02(月)【心は広くありません】(金子登志雄)

 9月下旬に出版した『親子兄弟会社の組織再編の実務』の評判がどうしても気に
なり、よくネット検索で確かめています。

 商業登記倶楽部の夏季セミナーで名刺交換した広島のKさんのブログでは、「組
織再編等における法務・会計について教科書的なものを超えた他にはないことが多
く学べます。これだけのノウハウを公開されるなんて、なんて心が広いのだろうと
思ってしまいました」とありました。

        http://sssh.jp/kosaki/

 Kさん、掲載にご承認いただきありがとうございます。ただし、私は心の狭い人
間です。これがいまだに異性にもてない理由です。顔は民主党の小沢さんに勝って
いると思っていますが、金子ガールズは、望むべくもありません。

 なぜ、ノウハウを書くのかは、ESGの創立目的が、学者本や弁護士本に対抗し、
司法書士の地位向上をはかることにあるからです。薄っぺらな内容の本を出版し、
「何だ、司法書士の実力はこの程度か」と思われたら、同僚のみなさんに申し訳な
いと思うからです。ESG本は、司法書士等に対する啓蒙書というよりも、司法書
士を含むプロの評価に耐える本であることを最低限の目標としています。

 また、私自身が「論じる」のが好きだということです。そろそろ、うまく行けば
1万部などという部数がでる一般大衆向けの本を書いて、お金儲けに走りたくても、
書いていると、ついつい論述をはじめてしまい、書けないのです。素人相手は、私
には向いていないようです。新人研修の講師をお断りしているのも、そのためです。

 ESGの創立目的からして、これまでにずいぶんと学者の見解に対して、反論し
てきました。「増資には、募集と第三者割当てと株主割当ての3つの方法があると
教科書に書いてあるが、これはうそだ。条文をよく読めば、株主割当てと株主割当
て以外の2つしかない」、100%減資でも資本金0円は最低資本金制度に反する
という学者の見解に対しては、「減資して増資するのではなく、増資して減資する
と考えれば、何の問題もない」とか………。

 いまでも学者の教科書に、「合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会
社になること」とあると、いまだに人格合一説(昔の通説)の亡霊から抜け出せな
いのかとがっかりします(お手元の教科書でお調べください)。だから、合併して
解散するのではなく、解散して合併するのだと私は繰り返し主張してきたわけです
が、残念ながら、一部の先生を除き、多くの学者は、拙著(及び実務書)に興味が
なく読む気もなさそうです。法律学は「実用の学問」のはずですが………。


2009.10.30(金)【取締役選任権付株式】(金子登志雄)

 株式譲渡制限会社に限り、「A種種類株式は取締役を3人選任できる」、「B種
種類株式は2人選任できる」などといった種類株主総会のみで取締役を選任できる
種類株式を発行できます。この株式を発行した限り、株主総会では取締役を選任で
きません。

 この種類株式は実に変わり者で、その性格がはっきりしません。

 会社法の条文によりますと、「取締役を選任することについて異なる定めをした
内容の2種類以上の種類の株式」ということですが、「A種種類株式は取締役を2
人選任できる」「B種種類株式は2人選任できる」と同数の選任員数を定めた場合
に「異なる内容の定め」をした2種類の株式といえるのでしょうか。

 おそらく、議決権の差で肯定できると思います。たとえば、A種種類株式の株数
が200株、B種種類株式の株数が100株なのに、ともに2人ずつ選任できるの
であれば、1株1議決権の原則に差がありますから、これをもって「内容の異なる
定め」だといえるからです(議決権制限株式の1種?)。

 次に、商法時代は、「全部の種類」に取締役を何名選任できるのか定めよとあり
ましたが、会社法には、その旨の明白な規定がありません。会社法347条を何度
読んでも、株主総会を「各種類」の種類株主総会と読み替えているだけです。

 このため、A種とB種の2種類を発行している会社において、「A種種類株式は
取締役を3人選任できる」とのみ定めた場合は、B種種類株式では1人も選任でき
ないのか、定めがないのだから、定款に反しない限り、何名でも選任できるのか、
あるいは、定めないこと自体が違法かについてはっきりしません。

 これに関連して、「A種種類株式は取締役の全員を選任できる」と定めたときは
「B種種類株式は取締役を選任できない」と定める必要はない、定めても登記する
必要はないとの見解もあります。

 立法趣旨及び会社法の制定経過からは、商法時代の制度を会社法に移入しただけ
だと思いますが(この場合は「選任できない」も登記事項です)、文章表現を変え
てしまったために、不明確さが拡大してしまったといえましょう。


2009.10.29(木)【TATOO(タトゥー)】(金子登志雄)

 通勤途上にある小さなお店の前に、「TATOO」という縦書き・縦置きの看板
がでています。何のことか興味もないし、意味も考えなかったのですが、例の酒井
法子さん事件のおかげで、その意味を明白に知りました。横書きでなかったため気
づきにくいのですが、若い女性のファッション(?)ともいうべき「刺青」のこと
ですね。

 お店が「TATOO」という看板にしているのは、まだ理解できます。「刺青屋」
という看板なら、怖がって誰も近づかないでしょうし、看板を出すこと自体も憚れ、
商売にならないからです。

 しかし、テレビでは、こんなハイカラな魅力的用語を使うべきではありません。
ちょうど、かっこいい「暴走族」という用語を「珍走団」と呼んで魅力をなくすよ
うに、「刺青」「刺青」「刺青」と連呼すべきだったと思います。

    http://chinsou.hp.infoseek.co.jp/whatchin.htm  
 
 ………どうも私の中に、多くの皆様と同様に「刺青=ヤクザ=忌まわしいもの」
という感覚が強くあるようです。

 亀井大臣が「郵政の社長が元官僚だからといって、背中に(くりから)紋々(も
んもん)があるかのようにいうのはおかしい」とテレビでいっていましたから、私
と紋々嫌いは同じかもしれません。

 しかし、文化の1つであるという国もあることでしょう。日本でも昔は、真面目
な職人でも刺青をしていました。銭湯でよくみたものです。

 最近の男のピアスより、ずっとマシかもしれませんが、ピアスはとれば済みます
が、刺青は消せません。おばあさんになっても、手や足に、かわいいTATOOは
恥ずかしいことでしょう。せいぜい、シールで済ませてほしいものです。


2009.10.28(水)【路上喫煙禁止条例】(富田太郎) 
      

 ノンポリの私ですが、最近、政治欄を注意深く読んでいます。

 富田が、政治に興味??

 いえ、先日、菅直人副総理・国家戦略相が、たばこ税について、「欧米並み」の
引き上げに賛成の考えを示唆したからです。

 欧米並み・・??(恐怖)。まさか 一箱1000円になったら、どうしよう……
…(涙)。

 1000円に値上がりすると、税収が4兆円増えるそうです。財源に四苦八苦し
ている民主党政権なら、実現させるかもしれません………(汗)。

 愛煙家の私にとっては、とんでもない話です。

 ところで、先日、横浜のトンネルのような人気のない道(全長200メートル)
をタバコを吸いながら歩いていました。いけないこととは知りつつ………(反省)。

 100メートルぐらいにさしかかったとき、向こうから、なにやら15人くらい
の人達が行列をなして歩いてきました?? 何だろう?? あの集団??

 くわえタバコをしながら、まじかで目を凝らしてよく見ると?? 仕事を終えて
事務所に戻る途中の「歩きタバコ監視員さん」達の集団でした(涙)。

 踵を返して、走って逃げるわけにもいかず、謝りに謝りました。

 寛大な?監視員さん達は、にこやかに「今後、気をつけてくださいね」の一言の
み? 罰金は徴収されませんでした♪

 これも私のもって生まれた『人徳』でしょうか♪♪ そういえば、以前、事務所
(新宿区)のそばの路上で注意されたときも、罰金は取られませんでした(千代田
区などは2000円の過料)♪

 『人徳』とはありがたいものですね♪

[後日談]
 事務所に戻り、路上喫煙禁止条例(「横浜市空き缶等及び吸い殻等の散乱の防止
に関する条例」「新宿区空き缶等の散乱及び路上喫煙による被害の防止に関する条
例」)を調べると、なんと、横浜市と新宿区は、過料罰則規定がないようです。

 何だ………。『私の人徳』ではなかったのか………。

 いえ! 今後は、絶対『歩きタバコ』をしません(きっぱり)!


2009.10.27(火)【カツマーVSカヤマー論争】(金子登志雄)

 「人生のコツは休まないことだ。一度大きく休むと、また元に戻すのに膨大なエ
ネルギーが要る」………、昨日の渡部さんの投稿を読んで、カツマーVSカヤマー
論争を思い出しました。

 勝間和代さん流の「向上心をもって頑張る生き方」がよいのか、精神科医の香山
リカさん流の「しがみつかない生き方」がよいのかという問題です。

 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091005-00000002-aera-soci
 
 結論は簡単であり、ずぼらで頑張らない人には「カツマーたれ」、頑張ってばか
りでお疲れの人には「しがみつくな」といえば済むことで、どちらが正しいとはい
えません。

 ESGでいえば、金子君には「カツマーたれ」、頑張り屋の富田君・渡部君には
「そんなに急いでどこ行くの、しがみつくな」でしょうか。

 わが団塊の世代のスターであった加藤和彦さんにも、「しがみつかない生き方」
をしてほしかったですね。「おらは死んじまっただ」という「帰って来たヨッパラ
イ」や「水虫の唄」などを歌い、みるからに飄飄然とした人でしたので、まさか、
あのような最期を選択するとは想像もできませんでした。

      http://www.youtube.com/watch?v=6-O24msoOac

      http://www.youtube.com/watch?v=f8Znlr9aBw4

 加藤氏のように真面目な人が年取って時間が自由になり、ヒマになると、いろい
ろなことを思い出し、考え出し、徐々に鬱状態になるものです。

 団塊の世代に対しては、「再度、カツマーを目指せ。人生のコツは休まないこと
だ。一度大きく休むと、また元に戻すのに膨大なエネルギーが要る」のほうが効果
的かもしれません。


2009.10.26(月)【休日の過ごし方】(島根・渡部浩義)

 人間も動物である以上、まったく休息をとらないわけにはいきませんが、皆さん
は休日をどのように過ごしておられるのでしょうか。大企業、役所、学校関係は、
土曜日も完全に休日となり、世の中の風潮、労働基準法等も週休2日が当たり前の
ようになっていますが、顧客先である中小企業等は、日曜日あるいは週1休制のと
ころがまだまだ多いような気がします(ちなみに私の事務所もそうです。I君、過
酷な労働環境に耐えてもらっていることに感謝しています)。

 「人生のコツは休まないことだ。一度大きく休むと、また元に戻すのに膨大なエ
ネルギーが要る」という言葉を学生時代に何かの書物で目にして、「なるほどな」
と、いたく納得し、受験勉強時代から勤務資格者時代、独立開業後もずっとほぼ休
みなくやってきました。

 ところが、これまた型にはまったように近年身体を壊してしまいました。基本的
に仕事が面白くて、面白くて調子にのっていたところがあったのですが、循環器系
の病気を病み、あわせて心身のバランスも崩してしまいました。

 主治医となられた先生に、上記の「人生のコツは休まないことだ」をモットーに
日々やっていますと青白い顔をして診察室で答えたら、「バカ者!」としかられま
した。

 この2〜3年というもの、実はこれまでの私の人生の中で最も時間的にゆとりの
ある生活を送らせてもらっています。もちろん、顧客の皆さんに迷惑をかけている
ことは必然で、申し訳のないことの連続です。

 休日だからといって、普段の生活習慣を大きく狂わすような過ごし方はやはりま
ずいと思いますが、今思えば、休日には休日のスケジューリングに基づく生活をす
べきであったかなとも反省しています(窮屈な考えでしょうか?)。

 仕事勘やモチベーションの維持とリフレッシュ、身近で難しい問題だと思います
が、「休日の過ごし方」、皆さまどのようにお考えでしょうか。


2009.10.23
(金)【申込みと承諾の先後】(金子登志雄)

 契約は、先に申込みがあって、その後に承諾があるはずですが、大勢の利害関係
者が存在し集団的規律が必要になる会社法の世界では、この関係がいささかあやし
くなります。

 典型例が第三者割当増資です。

 新株を20株(100万円分)Aさんに割り当てると株主総会で決議し、Aさん
が100万円出資すると、これを「会社が申込みし、Aさんが承諾した」と思って
しまいますが、会社法では、「会社がAさんに申し込まないかと勧誘し、Aさんが
申込み、これに対して会社が割り当てた(承諾した)」という構成になっています。

 取締役等の選任もこれに近い関係にあります。

 会社法の構成では、株主総会でBさんを取締役に選任し、その後にBさんが就任
を承諾するという関係になっていますが、実際には、株主総会の前に、Bさんの就
任承諾の意思を受けておき(内定しておき)、株主総会で、それを確定するだけで
す。事前承諾があって、選任という申込み行為をするのであって、承諾が先行しま
す。株主総会を招集する際に「就任の承諾を得ていないときはその旨」を参考書類
に記載せよなどという規定さえ存在します(会社法施行規則74条)。

 なぜ、こんな規定になっているかをつらつら考えるに、やはり株主総会まで開催
し株主に無駄な時間をつかわせてはならないという判断があるように思います。

 Aさんに新株を割り当てると決議したのに、あるいは、Bさんを取締役に選任す
ると決議したのに、あとで、AさんやBさんから、「そんな話は初耳だ」では、株
主総会を開催した役員の責任問題でもあります。


2009.10.22(木)【M&Aと政権交代】(金子登志雄)

 民主党政権になって1ヶ月ちょっと。副大臣や政務官までが連日の大活躍で、国
民からは高い支持率ですが、マスコミの評価は相変わらず厳しいですね。

 ちょっと何かあると、閣内不一致だ、官僚にもう取り込まれた………。あるいは、
景気対策が先だから国債を発行しろ、いや国債発行は公約違反だ………。

 元大蔵官僚の斎藤氏を日本郵政社長に起用したら、さっそく脱官僚の公約に反す
ると批判していましたが、亀井大臣が「オレだって元おまわりさん(警察官僚)だ」
と答えていたのに、笑ってしまいました。過去官僚だと批判されている古川内閣府
副大臣も、大蔵省に6年勤めていただけだとか。

 こんなマスコミの論調をみて、ふと、M&A従事時代を思い出しました。
 M&Aの世界では「企業買収は手段に過ぎない。買収後の経営こそ重要であり、
進駐軍になるな」といわれています。企業買収後に新経営陣(進駐軍)が乗り込ん
で、矢継ぎ早に強権を発動すると、従業員等から猛反発され、買収後の経営に失敗
しがちだということです。

 政権交代も手段に過ぎませんから、マスコミがいうような「何やっているんだ、
もっと官僚を叩け」で臨んだら、面従腹背で、サボタージュされるばかりで、国家
経営に失敗するのです。それは国民にも不孝です。

 マスコミ人も外野席から無責任な批判をせずに、自分が政権の一員になった場合
に、どのように経営するかに思いをめぐらせ、批判すべきではないでしょうか。

 もし、私が首相だったら、国交省大臣だったら……、難問山積で、考えるだけで
眠れません。マスコミからの猛批判に対しても冷静さを失わずに応対できる鳩山首
相らの能力はすごいですね。福田さんや麻生さんのように、たまには、ぶちきれて
もよいのに………。


2009.10.21(水)【「知恵の泉」】(金子登志雄)

 先日、会社計算関係の本の共著者である有田公認会計士・税理士がそのHPで、
拙著『親子兄弟会社の組織再編の実務』の宣伝をしてくれていることに気づきまし
た。

--------------------------------------------------------------------------
 実務書の多くは、「一生懸命勉強して、一通り満遍なくルールを整理しました」
という域を出ませんよね。もちろん自分もルールブック以上の本を書けるわけでは
ありませんけど。その点、金子先生の本は、ルールブックを超えていて、読み進め
ていくと、いままで断片的だった知識がつながっていくような、そんな感じです。
無対価組織再編なんて、我々の実務のストライクゾーンど真ん中なのに、無対価組
織再編の実務が知りたいという要望に応えてくれる本って知ってますか? この本
なら、応えてくれますよ。
          http://wiki.livedoor.jp/aritax/
-------------------------------------------------------------------------
 この、「実務書の多くは、ルールブックにすぎない」という説明に笑ってしまい
ました。

 読者の多くが実務書については、実務経験者が書いていると思い込んでいるかも
しれませんが、実際には、未経験の実務家が「勉強のため」に書いているのが多い
のです。とくに多数参加の共著書に多いようです。これは弁護士さんの本も例外で
はありません。

 これは批判ではありません。「書く」という作業は、自問自答の繰り返しですか
ら、ほんとに勉強になるのです。それを前提の上で、有田さんは、実務経験がない
とルールブック以上のものを書くのはむずかしいという当然の感想を述べたにすぎ
ません。

 『親子兄弟会社の組織再編の実務』の表紙の折り返しに、出版社が「教科書で知
り、覚えたことは貴重だが単なる『知識』に過ぎない。それを実戦で役立たせるの
が『知恵』である。本書は、あくまでも実務優先、常に実務に即した『知恵』の泉
である」と書いてくれましたが、ルールブックで知った知識をもとに、実戦で試行
錯誤を繰り返すと、「知恵」を出さざるをえないものです。

 「知恵の泉」……プロは上手な表現をしますね。この表現、気に入っています。


2009.10.20(火)【取扱説明書】(島根・渡部浩義)

 日々使用している“パソコン”や“携帯電話”、これらの機器が最近持ち備える
機能を、皆さまはどれぐらい使いこなしておられるでしょうか。

 レバレッジシリーズで出版界を席巻する本田直之氏の著書の中にあったと記憶し
ていますが、「面倒くさいから取扱説明書は読む」という趣旨のセンテンスがあり、
その内容に「なるほどなー。」と随分、納得と感銘を受けた記憶があります。

 最近は商品機器本体よりも“ズドン”という圧倒的存在感で付いてくる『取扱説
明書』ですが、私は、それを真剣に読むことはほとんどありませんでした。

 考えてみれば、読まないことによって所持機器の機能を充分に使い切っていない
わけですから、本田氏が指摘のとおり、もったいない話ではあります。こま切れ時
間を見つけては、『取扱説明書』を読むことをここに宣言します!
 (これ、ビジネス書によく書いてある手法ですね。外部に宣言して退路を絶ち、
成果をあげる−というヤツです。)

 私たちが機器の取扱いに苦労しているというのに、子供たちは一体どうしたこと
でしょうか。先日も、私が「パソコンの調子が悪い。」といえば、愚息は中学生の
くせに私の見たこともないような画面を開き、何やらカチャカチャ...。
 朝から「携帯のアプリケーションの設定がわからん、」とイライラしていれば、
「ちょっと貸して...、はい、どうぞ。」 
 
 携帯もパソコンも子供には持たせてはいないのに一体どうしてなのでしょうか。
おお、台所では家内が『i−pot』の使い方がわからないと、小学生の娘に教え
を請うているではありませんか。世代が一世代進むと、(父母たちのための)『取
扱説明書』は必要なくなるのでしょうか。

 将来、「法的知識はあっても、『取扱説明書』が読めないので、登記申請や支払
督促手続ができない!」などという事態の到来だけは避けたいものです。


2009.10.19(月)【最近の時事問題に思う】(金子登志雄)

 いまは会社の法務担当役員と司法書士業務が生活の中心ですが、昭和62年から
平成6年頃までは、企業買収(M&A)の法務コンサルタント業務を中心に営んで
いました。

 そのときの経験ですが、企業の売り手と買い手の値段交渉の際に、売り手のオー
ナー社長から、「そんな値段は冗談ではない。この会社をここまでするのに、どれ
ほど苦労し、犠牲を払ってきたことか」という発言が飛び出すことがよくあります。

 この発言が飛び出すと、私の出番はなくなります。この話はまとまらない可能性
が大きくなるからです。ビジネス以外の私情が反映してしまい、買い手が白けるか
らです。

 買い手にとっては、企業の客観的価値と企業買収後の買収先の将来性こそが重要
であり、過去の苦労話は無関係です。せいぜい、プレミアムとして、いくらを上乗
せするかの問題としてしか評価できません。

 八ツ場ダムや羽田のハブ空港化問題をテレビでみるにつき、「ここまでなるのに、
どれほどの苦労をし、どれだけの犠牲を払ってきたことか」という発言が頻繁に登
場しますから、この問題の根の深さがわかります。

 オリンピックの誘致に失敗した石原都知事も、プロ野球の楽天の野村監督も「こ
こまでこぎ着けるのに、どれほどの苦労をしてきたことか」という強い思いがあり、
さぞ無念なことでしょう。

 そのお気持ちは十分に理解できますし、過去の苦労を「歴史」と言い換えると、
売り手側に対する尊敬の念をもった対応が絶対に必要ですが、そうであっても、ど
うしようもないことです。

 最後の決断は、過去ではなく今後のことが基準であって、10年、20年後にど
ちらの判断が正しかったかという先を見越した冷静な対応策しかありません。頭を
冷やす時間が必要のようです。 


2009.10.16(金)【原本に相違ない】(金子登志雄)

 時々、お客様から、株主総会議事録や取締役会議事録のコピーに「原本に相違な
い」(会社実印押印済み)と記載したものを渡され、登記を依頼されることがあり
ます。

 残念ながら、これでは登記できません。登記には原本そのものが必要だからです。
原本と原本の写しを一緒に出して、同じ内容であることを示して、原本を還付する
ことはできますが、やはり原本自体が必要です。

 原本証明があるのだから原本の写しだけでもよさそうですが、商業登記法に「議
事録を添付しなければならない」とあり「決議があったことを証する書面」などと
いう遠回しな表現がなされていないため、原本が必要になります。

 原本の写しであることの証明文としての「原本に相違ない」という表現につき、
最初は違和感がありました。「これが原本です」という表現だからです。正しくは
「原本の写しに相違ない」と記載すべきだからです。

 で、写しそのものである商業登記簿「謄本」は、どう表現しているかと確認しよ
うと思いましたら、いまは法務局のコンピュータの中に原本(正しくは「情報」)
があり、それを打ち出したものですから、登記事項の証明書であり、謄本とはいい
ませんでした。抄本は、一部事項証明書です。これは戸籍も同じです。

 そのうち、お客様が、株主総会議事事項全部証明書を作ってきて、これで登記し
てくれといってくる時代が来るかも知れませんね。謄本という用語から早く卒業し
なければなりません。



2009.10.15(木)【運動音痴のその後】(島根・渡部浩義)

 一昨日(10月13日)の金子代表の本欄記事を読んで、声高らかに笑ってしま
いました。

 私も、「現在、運動をしていない。」ということでは一致しているものの、運動
とのかかわりあいについては、金子代表とまったく逆の境遇の人生でした。

 足も遅く、平衡感覚も悪く、概ね体育の時間は不愉快な時間でした。明日が運動
会ともなろうものなら、「学校が火事にならないだろうか」「暴風雨か大型台風の
襲来により運動会が中止にならないだろうか...」そんなことを心ひそかに、し
かも「強く」願っていました。

 金子代表とは逆に、私は1番でバトンを受け取っても、ゴールはおよそビリでし
た。しかも私の姓は「わたなべ」です。出席番号順のレースの大体最後のあたりに
出走するものですから、チームには取り返しのつかないダメージを与えていました。
全く下を向いているしかありませんでした。

 ところがです、最近この様相が変わってきました。このごろ地域の運動会のリレ
ー種目等に参加すると、私はタバコを吸わず、また不思議と太らなかったせいか小
学生の頃と変わらずに身体が動くような気がします。
 
 一方、当時運動会等でブイブイいわせていた友人達は、タバコ、お酒におかされ、
そして摂理のとおりの中年体型になり、さらになまじ昔速かった残像が脳裏をかす
めるのでしょうか、皆、前につんのめってバタバタ転ばれます。こちらはふつうに
走っているだけなのに上位でゴールすることが多くなりました。まったく人生何が
幸いするかわかりません。

 「商法の時代の会社関係法令には強かったのに、会社法になってからは...」
なまじ、商法時代に深い知識があったため、会社法になってからの日々の研鑽を怠
り、今でも昔を引きずりつつ...。
 笑ってばかりはいられない『金子文章』であることに、今しがた気づきました。


2009.10.14(水)【また、出雲の片田舎から】(島根・渡部浩義)

 ここのところ朝晩の冷え込みが急に厳しくなり、この連休、我が家はストーブと
コタツを出しました。90歳を超える同居の年寄りがいることもさることながら、
私達や小学生の子供たちまで4世代、それらがあって悪くはありません。それらの
周りに、ついつい寄り付いてしまいます。

 ただ、日中は太陽さえ出れば、まだまだ汗ばむような陽気です。幸いにして連休
は天気がよかったので、一家総出で畑物の収穫や収穫した作物の貯蔵作業に終われ
ました(我が家は、稲作は外部に小作をお願いしているので、稲刈り等の田んぼ仕
事はありません)。

 イモ類の収穫・乾燥、豆類の天日干し、漬物用野菜の収穫・水洗い・天日干し、
とうがらしの収穫・天日干し、我が家の狭い庭は鮮やかな紅色、深紅、緑、白、泥
色、紫色など色とりどりの農作物の色に飾られています。

 というわけで、「登記業務、訟務、ちょっとタンマ、タンマ!」の状態のこの連
休でした。

 なお、10月10日は、よく晴れる特異日だという気象統計により(但し、この
特異日説には諸説あり)、この日が東京オリンピックの開会式の日となり、その後
も永らく「体育の日」として親しまれていたわけですが、「体育の日」という休日
からははずれても、よく晴れる日であるということには変わりがないようです。

 また、今年の10日は土曜日で、子供たちは休日でした。「こんなに連休が続い
ていたら、お前たち本当に頭がどうにかなるぞー。」と親の心配をよそに、そそく
さとどこかへ出かけてしまいます。それでも、この3連休は毎日半日は農作業の手
伝いをしてくれたので良しとしなければならないのかもしれません。

 あっ、申し遅れました。最近、「帰農?」とか「起農?」の特集を組む経済雑誌
がやたらと目につきますが、少々の規模の百姓では今の日本においては食べてはい
けません。都市部にお住まいで、最近まとまった退職金等を手にされた方々、誤解
なきように。 



2009.10.13(火)【スポーツ嫌い】(金子登志雄)

 昨日は体育の日でしたが、天気にも恵まれ、全国の小中学校で運動会でも開催さ
れたのでしょうか。

 皆様は、健康のため、運動をなさっていますか。私は、高校を卒業以来、全くに
近いほどしていません。

 いまでは誰も信じてくれませんが、こんな運動嫌いの私も小中学生時代は運動会
のスターでした。かけっこは学年で1番早く、リレー競争で3番目にバトンを受け
取っても、ゴールでは1番でした。郡部地区の大会や県大会にも、学校の代表で参
加しました。

 その記憶が鮮明に残っていたためか、銀行員時代の各支店対抗の運動会で、リレ
ー競争で3番目にバトンを受け取ったときは、「2人も追い抜ける。またスターに
なれる」と喜んだものでしたが、結果は、後続の全員に追い抜かれ、ビリでした。
周囲からおおいに馬鹿にされたものでした。

 銀行をやめ、一時、実家で数年間無職の生活を送りましたが、このときも全く外
出せず、食っては寝ている生活でしたが、たまに外出するとき、歩き方がぎこちな
くなります。右足と左足の交互の出し方がスムーズではないのです。太陽もまぶし
すぎました。

 それでも全く反省せず、いまだに「スポーツは体に悪い。せっかく神様からいた
だいた大事な体をいじめるのは犯罪だ」と、うそぶいていますから、始末に終えま
せん。

 とはいうものの、そのうち体力の低下を思い知らされ、喫煙もやめ、マラソンで
もしはじめるかもしれませんが、そのときは、時すでに遅いということになりそう
です。

 その後悔をしないために、いまから運動をすべきか、いや、運動をせずに自業自
得、自己責任の覚悟の訓練をしておくべきか。後者になりそうです。


2009.10.09(金)【合併挨拶状ほか】(金子登志雄)

 先の10月1日には、某大会社から合併の挨拶状が届きました。いつものことな
がら、予想していなかったため、ドキッといたしました。その合併は、その日に私
が登記申請したばかりで、まだ完了していないからです。

 自信はあっても、もしどこかにミスがあって登記が終わらなかったら、どうしよ
う、会社に大恥をかかせてしまうことになると心配になります。

 法律上は登記と無関係に効力発生日に合併の効力が生じますが、登記が完了して
はじめて法律上の手続が終了します。

 かといって、登記が終わるまで、挨拶状の発送は待ってほしいとはいえませんの
で、こればかりは、居直るしかありません。

 幸い、私は、こういう心配を日常的にしていますので、ミスがあっても事前に気
づき、いまのところ大きなミスをすることもなく今日に至っていますが(挨拶状が
来た合併も無事に完了しました)、他社の官報の合併公告や、上場会社の情報開示
などでは、時たま大ミスを発見します。

 あとで情報開示担当者がお困りになるだろうと、親切心で、メール等でお知らせ
ていますが、残念ながら、いままで返信をいただいたことがありません。面子にか
けて、ミスを認めたくないのでしょうけど、名前も素性も名乗ってメールしている
のに、残念です。



2009.10.08(木)【祝!リオデジャネイロ】(根来川弘充)

 2016年夏期五輪開催地が、ブラジルのリオデジャネイロに決まりました。
私は、オバマ大統領が演説をしたシカゴで決まるだろうと思っていただけに、一回目
の投票で落選したのは、正直大変驚きました。

 石原都知事は、「別の力が働いた」と嘆いたようですが、リオデジャネイロは3回
目の挑戦でようやく開催にいたったにもかかわらず、東京は、わずか1回目の挑戦で
は必ずしもそうでないように思います。
 むしろ、150億円という大金をつかって1回目で選ばれていたなら、他の国から
「お金こそすべてだ」と日本の悪いイメージを与えたのでないかと考え、内心ほっと
しております。

 思うに、東京、ソウル、北京と、五輪開催を期に目覚しい経済発展をとげています。
飢餓や暴力からの開放には、経済的発展が一番効果があると聞いたことがあります。
リオデジャネイロは、スポーツのすばらしさを伝え、貧困や暴力から人々を救い、オ
リンピックは、国の健全な発展に寄与することをアピールされたとのことです。五輪
開催を期に、ブラジルがより良い国に発展することを期待します。

 ところで、東京は、開催にあたって環境をアピールしていました。鳩山首相の国連
演説もあって、この問題で日本が世界各国から、非常に注目されていることを感じま
した。国際社会の中で、日本の影響力というのは私が思っている以上にあるのかもし
れません。

 「環境問題」とならんで、国際社会の大きな問題として、「核問題」があります。
核武力からの開放は、世界各国が共有できる問題だと思います。
 この問題に関しては、日本は唯一の被爆国であり、国際社会でもイニシアティブを
とることができると思います。

 日本国として、今後、五輪開催を望むのであれば、東京よりもむしろ広島か長崎の
方がアピール性も高く、選ばれるのではないでしょうか。


2009.10.07(水)【経験こそ財産】(金子登志雄)

 渡部さんの投稿にある「“経験”とは何ごとにも変えがたい“凄み”となる」とい
うのは、至言ですね。

 はじめて会社の登記を経験したのは、確か昭和58年でしたが(銀行の先輩と一緒
に作った投資顧問業の設立登記でした)、当時の登記用紙の目的欄に目的事項を記載
した後に線を引くのかどうかなど、迷いに迷ったものでした。どこの本にも書いてな
いのに、見本には線が引いてあったからです。

 それ以来、自分が総務・法務担当役員を務める複数の会社の登記を司法書士に外注
せずに自分でするようになりましたが、額面5万円を50円に変更してみたり、結構、
遊ばせてもらいました。

 こんな経験を重ね、司法書士ではないのに、これなら無事に登記所という関所を通
過できるが、これは無理だという感覚が少しずつ身についてきました。こういうのは、
経験によるところが大きく、本の知識では、決してマスターできません。

 経験というのはほんとに重要なものですが、私の誇れる経験は、やはり合併をはじ
めとする組織再編経験です。もう20年以上も、M&A手続や組織再編手続に従事し
ていますから、取扱い件数は、日本1でしょう。それらのコンサルティングにおいて
も、過去の銀行員経験、司法試験受験経験、不動産業経験、投資顧問業経験、株式上
場経験………全部が役立っています。

 こういえるのも私が年齢を経ているからです。若い人には、20年以上の経験があ
るとは絶対にいえない言葉です。

 経験も財産の1つですから、若い人には、もっともっと長老の知恵に学んでほしい
ものですが、わがESGの若手は、長老を大事に扱っているだろうか。長老のゾンビ
議員さえ大事に扱う自民党を見習ってほしいものです。


2009.10.06(火)【雲、出ずる国より“経験”考】(島根・渡部浩義)

 「暑さ寒さも彼岸まで。」と言いますが、この時期(季)の空を見上げると、夏
の名残りの雲と、いかにも秋らしい雲が交互に現れます。学生時代に山岳部だった
私は、“気象”という分野に一時期とても興味をもっていました(ちなみに、今で
も天気図を書かせると上手いですよ)。

 当時、山に出かけると、これ以上もないやさしさ、温かさをもって私たちを包ん
でくれていた空模様が、一夜にしてこれが同じ空のすることかと思われるほど暴力
的な形相をみせ、その気象摂理の前では人間のなんと小さなことか思われる場面に
多々遭遇しました。

 私の住む山陰地方は、おそらく日本で最も天気の安定しない地域のひとつだと思
います。「出雲(島根県東部地方の旧名)」とは、古代、都からみて雲がわき出ず
る不気味な方向をさして、この名前がついたとか。私も学生時代の山行きや、社会
人になってからの各地訪問のたびに思うのですが、この出雲の国ほど短時間のうち
に現れては消えていく雲のバリエーションに富んだ地域はないと思っています。

 先日、『日本の空をみつめて』(倉島厚著・岩波書店)という本を手にしました。
著者の倉島氏は私が“気象”という分野に興味をもつにいった時期に大変影響を受
けた方です。ご記憶の方も多いと思いますが、NHK『ニュースセンター9時』や
『テレビ気象台』という番組でお天気キャスター、コメンテーターとして独特の取
材や切り口で活躍しておられました。近年は、随分と体調を崩されていたように聞
いていましたが、上記の著書を手にして読み進めるうちに、「私が昔あこがれてい
た倉島さんの切り口だ」と一気に読了しました。

 天気に大きく、そして厳しい影響を受けながら生活している人々に、『気象予報
士』の肩書きを背負って、スタイリストに飾られたいでたちと舌足らずな発音で、
まったく生活感のない棒読み天気情報を伝える最近のお天気お姉さんたちとは、気
象という事象に対する向き合い方、経験量が違うということはあまりに明らかでし
た。

 「“経験”とは何ごとにも変えがたい“凄み”となる」、実務家にとって改めて
考えさせられる私にとっての倉島著書でした。

 ※当研究会代表が先に上梓された新著も豊富な経験に裏付けられた知識が配され
ている著書です。この田舎地方でも、私が懇意にさ
せてもらっている弁護士事務所、
会計事務所の書棚に、早速その本を見つけたときには少々ビックリしました。  


2009.10.05(月)【大阪出張】(金子登志雄)

 3日(土曜日)は、大阪司法書士会主催(近畿司法書士会連合会共催)の会社計
算規則の講演で久々に大阪に行ってまいりました。研修担当の皆さん、研修及び懇
親会ではお世話になりました。

 会社法が施行されて3年、やっと「会社の計算」の重要性が浸透してきたようで、
司法書士の関心も高く、出席者も予想以上の多数でした。また、土曜日にもかかわ
らず参加し、居眠りもせずに、熱心に聞いてくださいました。ありがたいことです。

 ご参加者の皆さん、株主資本、抱き合わせ株式、共通支配下関係というキーワー
ド用語はマスターしてくださいましたか。応用編の株主資本等変動額や株主資本等
変動計算書は大丈夫ですか。
 
 出席者の1人である当ESGの田中さんは、「非常によくわかった」と評してく
れましたが、何度か合併等の手続を経験しているためもあったでしょう。そういう
経験をしていなかった人には、頭ではわかっても、実感として理解しにくい部分も
多々あったかもしれませんが、株式を発行する合併も増資(募集株式の発行)の特
殊な形態と推理力を発揮すれば、実感に近い理解が可能だと思いますので、ぜひ、
身につくまでレジュメを味わってください。



2009.10.02(金)【グレーゾーン】(金子登志雄)

 昨日の10月1日は4月1日と同様に合併や会社分割等の登記が多い日でした。
普段は比較的ヒマな私も、この日ばかりはちょっと忙しくなります。

 今回の合併の登記には、「この合併に異議がないか」と催告した債権者リストに
大量の債権者名が記載されていましたが、この債権者リストをみるにつけ、催告後
に登場した債権者には催告しなくてよいのか、効力発生日までに弁済してしまう債
権者には催告しなくてよいのかなどなどと気になります。

 簡易合併の通知先の株主についても同様です。通知・公告時点の株主に限るのか、
基準日を設ければ、その日の株主に限ってよいのかなどなど、はっきりしないこと
ばかりです。

 会計や税務の面でも、合併等の組織再編では、「こうだ」と決められない部分が
少なくありません。

 それは、めったにない手続のため、また、当事者の方も自主規制で安全な方法を
採用してきたため、対応策が発展してこなかったことが原因です。最後は、どこか
で、「エイヤー!」と決めねばなりません。

 その意味では、経験者が有利な手続ですが、考えるまでもなく、世の中すべてそ
うですね。黒か白かといえないものばかりです。八ツ場ダムは進むべきか、撤退す
べきか、亀井大臣のいうモラトリアムは、ゴーかストップか………。合併手続のグ
レーゾーンなど、かわいいものです。新大臣も苦渋の決断で、エイヤーとやるので
しょうか。



2009.10.01(木)【法の日と司法書士】(金子登志雄)

 今日は「法の日」ですが、これに合わせたのか、昨日は司法書士筆記試験の合格
発表があったようです。合格者は925人のようで、年々増加傾向にありますが、
合格率だけでみれば(たぶん、2%台)、日本で一番狭き門の試験であることに変
わりありません。

 「法の日」の「法」というと、社会の常識・ルールを成文化した法律から、税法
や行政法規まであり、かなり広い概念になりますが、「司法書士」の「司法」とい
うと、立法、行政、司法という3権の1つですから、「法」よりも、若干、狭い概
念になります。

 司法書士と行政書士の違いも、前者は裁判所や法務局での仕事が中心となり、後
者は行政官庁での許認可手続(建設業や宅建など)がメインの仕事になります。

 登記も行政行為じゃないかといわれそうですが、権利関係の対抗問題(この不動
産の真の所有者は誰かなど)に関係し、紛争予防機能がありますから、法務局管轄
とされ、われわれ司法書士の中心的な仕事とされています。

 ここ何年か、行政書士の方が商業登記の仕事を行政書士にも開放せよという声を
上げているようですが、この声を上げている行政書士さんの中には、司法書士事務
所勤務の元補助者で、不運にも司法書士試験に合格しなかった方や、司法試験受験
経験者が少なくないようです。

 司法書士以上に実力も経験もある人がいることは認めますが、「司法書士試験の
難易度を下げて合格しやすくせよ」という要求ならともかく、「試験に合格しなく
ても仕事をさせろ」というのでは、過酷な試験を乗り越えてきた司法書士に反発さ
れても仕方ないでしょう。


2009.09.30(水)【中間期、半期、第2四半期】(金子登志雄)

 今日9月30日は3月決算会社の事業年度が半分経過する日です。これを皆さん
は、何と表現しますか。
 中間期末あるいは半期というのが多いことでしょう。

 従来、3月決算の上場会社は、定時株主総会終了後の6月下旬に、期末の業績開
示として「有価証券報告書」を提出し、中間期末の業績については、11月頃に、
「半期報告書」というものを提出していました。

 しかし、金商法の改正で、この業績開示が3ヵ月ごとに必要になり、いまは、第
1四半期(3月決算会社なら6月30日まで)、第2四半期(9月30日まで)、
第3四半期(12月31日まで)と3回も提出せねばならなくなっています。

 とすると、「半期報告書」の呼び名は従来どおりでよいのか、「(第2)四半期
報告書」というべきなのかと気になるところでしょうが、どちらだと思いますか。

 当初、私は、事業年度の中間時点の業績を開示するものですから、前者のままで
よいと思っていましたが、これは間違いだと気づきました。なぜなら、半期という
のは、「4月ー9月」ですが、第2四半期は、「7月ー9月」です。「時点」では
一緒でも、会計期間が異なりますから、「(第2)四半期報告書」が正しいという
ことになります。「4月ー9月」の業績も、第2四半期報告書で開示しますが、そ
れは、期首からの累計期間の業績として開示するのであって、四半期そのものの開
示ではありません。

 ところで、4分の1(4等分)を表すのに、なぜ「四半」というのでしょうか。
これでは、4分の1と2分の1を掛け合わせた8分の1のように思えてしまいます。
 中学生の時、音楽の先生に「4分の3拍子と8分の6拍子はどこが違うのか」と
質問して、笑われたことを思い出してしまいましたので、追究は止めましょう。

 なお、中間配当の中間は、半期あるいは第2四半期とは無縁の用語であり、1事
業年度の途中のいつでもよいという概念です。


2009.09.29(火)【司法書士の業績予想】(金子登志雄)

 先週の25日(金)は、1年のうちで最も緊張する当社の定時株主総会日でした。
とくに今回は、リーマンショック以降の環境変化で当社の業績も低迷し、強いご批
判があるものと覚悟して臨みましたが、株主様からの質問は1つもなく、法務担当
取締役としては、ほっといたしました。

 しかし、社長や相談役からは、株主総会終了後に、「株主から1つも質問がなく、
業績を何とかせよ、株価を何とかせよというお叱りも受けなかったのは、当社が見
捨てられたのも同じで残念だ。より一層、業績向上に奮起せよ」という厳しい叱責
がありました。

 さすがは、当社の経営トップです。定時総会での社長の事業報告も、業績悪化の
原因を景気や環境のせいにせず、実にりっぱでした。上場会社によくあるサラリー
マン経営者とは全く違いました。

 さて、年末を決算期とする私個人の司法書士業務ですが、本年は例年に比し、売
上げが減少しており、上場会社であれば、そろそろ業績予測の修正を開示する時期
かもしれません。

 その開示に、私はきっと、「会社法特需がなくなりました。会社法の講演も急減
しました。新著もネタ切れで1冊に終わりました」などと、言い訳ばかりするかも
しれません。

 当社の社長や相談役の経営姿勢を見習い、「営業も一切しないで、すべて傘張り
浪人の地位に満足していた私の努力不足です」と自己責任を前面に出して、反省し
なければなりませんね。

 このように、司法書士業務も業績予想を発表すると面白いですね。ESGの諸君
は、当期は増額修正ですか、減額修正ですか。まさか、債務超過に落ち込む見込み
の人は、いないでしょうね。「働けど、働けど………」と、いつもぶつぶついって
いるTさんは大丈夫かな。



2009.09.28(月)【未上場企業の自社株式をめぐる争い(要因)】(和出吉央)

 未上場企業(特に優良と呼ばれる)において、オーナー株主の相続をきっかけと
する自社株式をめぐる争いが増えてきています。そこには、以下のとおり、自然と
争いになってしまう大きな三つの要因があるように思います。

@株式の財産的価値

 未上場企業の株式というのは市場取引価格がありませんので、通常、自分が持っ
ている株式の価値を知る機会がほとんどありません。
 しかし、オーナー株主に相続が起こって、相続人達で“遺産を分割する”段階に
なると、「いったいこの株はいくらの価値があるのか?」という話になります。そ
して、多くの場合、オーナー株主の全財産価値の内訳として、この株式の比率が非
常に高くなっていて、それ以外の現金や預貯金、上場株式等の分割しやすい(換金
性の高い)財産の比率が低いため、後継者以外の相続人へ“株式”を分割せざるを
えない・・・という状況に陥ってしまうのです。


A兄弟・親族の心情

 自分の親が亡くなった後の話になりますので、どうしても、これまで溜まってい
た兄弟間・親族間の不平不満が吹き出してきます。また、“家業(家督)は長男が
継ぐもの”という時代にマッチしない考えも根強く残っています。これらの心情が
争いに拍車をかけます。


B専門家の存在(合格者の増員)
 
 借金問題を解決(債務整理)する弁護士や司法書士のTVCMが多く見られるこ
とから、「裁判の弁護」や「登記の代理申請」の仕事の競争化がはじまっているこ
とを読み取ることができます。にもかかわらず、毎年の弁護士の合格者は2000
人超となり、司法書士も昨年は931人という合格者が出ています。

 弁護士や司法書士は、当然、依頼者にとってベストな結果となるようにという強
い気持ちがありますし、法律上は忠実義務や善官注意義務がありますので、“依頼
者のために全力で業務に取り組む”ことになります。

 法令遵守アレルギーの未上場企業は、株主(や弁護士等)から株主総会不開催等
の虚を衝かれたら・・・即、白旗を上げて、株式買取りによる和解等を余儀なくさ
れるでしょう。

 最近の事例でいえば、本年6月に最高裁で確定した“一澤帆布 お家騒動事件”
(ご参考Webあり)が有名です。上記Aが主な要因だったようです。“家業は長
男が継ぐもの”という考えが根底にあり、その他様々な心情や@の要因も加わり、
約8年もの間、骨肉の争いを繰り広げたのです。

 この事件では、“遺言書の真贋”に注目が集まりましたが、そもそも、生前にき
っちりとした対策を取らなかったことが原因で裁判にまで発展したのです。

 税金対策のみならず、相続財産から株式を除外する対策や会社法の遵守/活用、
後継者以外への遺留分の配慮等、法律専門家によるアドバイスやコンサルティング
が必要です。

(ご参考)
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=STXKC0657%2023062009&g=K1&d=20090623


2009.09.25(金)【新刊本及び改訂版のお知らせ】(金子登志雄)

 『親子兄弟会社の組織再編の実務』という本を出版しました。そろそろ、全国の
書店に並ぶ頃だと思います。

  http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32315259

 組織再編に関しては、平成19年7月に『組織再編の手続』を出していますので、
「もう、ネタ切れで書くものはない」と、出版社からの新刊本の依頼を断っていた
のですが、とうとう熱意に負けてしまい、5、6月に一気に書き上げました。もち
ろん、普段から、ネタを集めていましたので、ネタ集めの時間は含んでいません。

 題名からもお分かりのとおり、親子会社間や兄弟会社間の合併や会社分割に特化
した内容です。現実の組織再編のほとんどがこれですから、ニーズは高いと思って
いますが、さて、売れ行きは、どうなりますやら。

 役立つ内容かどうかという意味では、これまでに大量の組織再編手続に関与して
きた実績がありますので、他書よりは圧倒的に優位な内容だと思っていますが、こ
れも自己満足に終わりますかどうか。

 表紙の折り返しに出版社が次のように書いてくれました。
-------------------------------------------------------------------------
 教科書で知り、覚えたことは貴重だが単なる「知識」に過ぎない。それを実戦で
役立たせるのが「知恵」である。本書は、あくまでも実務優先、常に実務に即した
「知恵」の泉である。09年9月、会社法務担当者待望の書が出た。
-------------------------------------------------------------------------

 その他、『これが増減資・組織再編の計算だ』につき、今年の4月から会社計算
規則が改正になったため、改訂しました。

  http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32311637

 あわせて、書店で閲覧していただけましたら、幸いです。


2009.09.24(木)【文章読本】(富田太郎)

 時計マニアの私ですが、最近、時計の趣味が変わりました。長らく、時計を収集
しているうちに、『ロレックス』のような派手・華美な時計よりも、「シンプル」
なものが好きになってきました。

 最近、気に入っているのは『ラドー ゴールデンホース 復刻版』♪ あまり高
価ではなく、また、無駄な装飾も一切なく、実にシンプルなデザインなのですが、
一貫した主張が、垣間見える時計です。

 まさに名作!『シンプル イズ ビューティフル』といったところでしょうか。
このことに、気がつくまで、なんと20年もかかりました(涙)。

 ところで、最近、文章読本なるものを読みました。売れない本ばかり書いている
私ですが、ここらで「我流の文章」を修正し、「もう少し、ましな文章を書かなけ
れば………」という反省の意味で………。

 『文章読本』。実に多くの文筆家が書いています。谷崎潤一郎、三島由紀夫、丸
谷才一 、井上ひさし、本多勝一(注1)、川端康成、菊池寛(注2)等々。

 その中で、何冊かの文章読本を読みました。
三島本は『ぺダンチック(Pedantic)な文章・内容』が鼻につき、5分で
読むのを諦めましたが、谷崎本は、まるでエッセイのように、スラスラ読め、なる
ほど♪と思いました。

 ★自分の言いたいことを「易しい言葉」をもちいて書き進めていくこと。
 「難しい言葉」で、読者を煙にまくような文章は悪文にほかならない。

 ★「言葉を削れ。書き過ぎる弊に陥るな。」極力、無駄な文章は削ること。

 なるほど、蓋し名言です。良い文章も、時計と同じで、『シンプル イズ ビュ
ーティフル』といったところでしょうか?

 えっ????お前(富田)の徒然に書く文章は、無駄が多く、まさに「悪い文章
の見本」だって???
 はい………(汗)、反省しております………(号泣)。

 注1:我がESG代表が推薦する本。『日本語の作文技術』 (朝日文庫)
 注2:川端康成、菊池寛の文章読本は、一説によれば(『文章読本さん江』斎藤
 美奈子 ちくま文庫/向井敏『文章読本』向井敏 文春文庫)、代作疑惑がある。


2009.09.18(金)【シルバー・ウィーク】(島根・渡部浩義)
 
 政権交代のセレモニーも一段落しましたので、お休み前の金曜日でもありますか
ら、金子代表に代わって、法律の話題です。本年6月11日にこの欄でお約束いた
しましたとおり、来週の連休がなぜ4連休になるのかをお話しします。

 来週は、20日(日)、21日(月)、22日(火)、23日(水)と日本全国
で休日です。20日の日曜日はともかく、残りの3日間は、なぜ休日か、カレンダ
ーをみずに、お答えできますでしょうか。

 21日の月曜日は、以前は9月15日でした。そうです、敬老の日です。敬老の
日は、祝日法(国民の祝日に関する法律)で、「多年にわたり社会につくしてきた
老人を敬愛し、長寿を祝う」日だとされていますが、この法律の改正で、今は、ハ
ッピーマンデーのひとつとして9月の第3月曜日に変わっています。

 23日の水曜日は、ご存知、秋分の日です。宇宙摂理、暦のしくみが決定する日
ですから、私たち凡人が口を挿む余地はないでしょう。祝日法では、「祖先をうや
まい、なくなつた人々をしのぶ」日とされていますので、おじいさん、おばあさん
の手を引き、墓参りくらいはしましょう。彼岸の中日(秋分の日)に家族連れで魚
釣りなどに出かけ生き物の殺生などももってのほかです。

 問題は間の22日ですが、何の日でしょうか。そのものズバリで、祝日と祝日に
はさまれた日です。祝日法3条3項に、「その前日及び翌日が『国民の祝日』であ
る日は、休日とする」とあります。

 この連休を5月のゴールデン・ウイークに対抗して俗に「シルバー・ウィーク」
ということがありますが、敬老の日が含まれているため、シルバー・シートのシル
バーという意味合いも含まれているともいわれています。

 しかし、残念ながら、このシルバーは長寿ではなく、たまたま敬老の日である第
3月曜日が21日だったために、こうなっただけで、来年も4連休というわけでは
ありません。

 本年限定の大事な4連休ですから、しっかりと英気を養う日にしたいものです。


2009.09.17(木)【官僚が最も嫌がる大臣】(金子登志雄)

 やっと新閣僚が決まりました。

 最も世間の関心が高かった財務相は、下馬評どおり藤井さんでした。民主党1の権
力者の小沢さんが西松建設問題で代表の辞任を求めた藤井氏の就任に異議を出したた
め、この話はなくなったという報道は、ためにするものだったのでしょうか。

 また、報道によると、ミスター年金の長妻さんが厚労相になる可能性はないとされ
ていました。理由は、官僚の憎しみの対象であり、彼が大臣では、円滑な行政推進の
妨げになるからというものでした。ふたを開けてみたら、長妻大臣でした。これも、
ためにする報道だったのでしょうか。

 長妻大臣も、郵政担当の亀井大臣も、短気で「イラ菅」といわれる菅副総理も、官
僚からは、上司になってほしくない大臣の1人であることは間違いないでしょう。私
も、長妻さんはともかく、亀井さんや菅さんは怖そうですから、上司になってほしく
ないですね。「こら! 居眠りをいいかげんにしろ!」と怒鳴られそうです。

 でも、官僚のみなさん、上司が田中真紀子さんや田中康夫さんになったことを考え
れば、長妻上司や亀井上司のほうが、まだ我慢できるのではないですか。

 長妻さんといえば、15年以上前ですが、彼が日経BP(だったと思います)に勤
めていた頃、取材を受けたことがあります。M&Aに関する私の講演を聞いてくれ、
私の言葉を雑誌の巻頭言か何かに取り上げたいという要望でした(実際に掲載された
かどうかは知りません)。

 そのときの私の感想は、「私ごときの言葉を雑誌に取り上げたいなどと、この記者
の仕事ぶりは大丈夫かいな」というものでした。
 が、いまや、彼は大臣。私は、彼の能力を見抜けなかったようです。

 偶然ですが、彼は大学の同じゼミの後輩であり、同窓会で時々、遠くから精悍な顔
を拝見していました。ご活躍を願っています。



2009.09.16(水)【政権取りと気楽な野党暮らし】(金子登志雄)

 今日は、歴史的な日になりますね。戦後初の本格的政権交代が発表される日です。

 野党暮らしに慣れていた旧社会党や旧民社党の面々よりも、政権取りに情熱を燃や
していた自民党脱藩組の小沢、鳩山、岡田氏らにとっては、感慨ひとしおでしょう。

 雌伏していた野党時代に、「いつか政権をとったらこうしよう、ああしよう」と思
い続けてきたことがやっと実現できる立場になったわけですが、張り切りすぎて、失
敗することのないようにと願わずにはいられません。
 
 民主党の政権担当能力については未知数ですが、少なくとも政権ボケした最近の自
民党の面々よりはマシだと期待しています。

 自民党政権は、昔の佐藤(安部元首相の祖父である岸元首相の弟)内閣あたりから、
当選年次による派閥順送り人事と大臣の粗製乱造がひどくなり、仕事は官僚がするか
ら、大臣は上に座っているだけでよいという悪習慣にどっぷりと浸かってきました。
若手の伸びる芽を悪家老(派閥の長)が摘み取っていました。

 これを機に、自民党若手にも、心機一転、政権取りを目指してほしいものですが、
ひょっとしたら、世襲議員あたりは、口ではともかく、かつての社会党のように「野
党暮らしは気楽でいい」という心境に陥る可能性も高いでしょう。小泉ジュニアさん
は、どう思っているのでしょうか。



2009.09.15(火)【説明責任と有名税】(金子登志雄)

 比例で当選した美人・小沢ガールズの田中美恵子氏が風俗のルポライターをして
いた、映画でヌードになったという過去が明らかになったことで、メディアは盛ん
に「説明責任」を問題にしています。

 しかし、こんなことが説明責任の対象になるのでしょうか。私を含め、その映画
のシーンをぜひ拝見したいと願う男性は多いでしょうが、なぜ、そんな仕事をした
ことを話さなかったのかと詰問したい人は少ないでしょう。単に珍しい仕事にかか
わっただけだからです(好奇心が旺盛な方なのでしょうか)。

 単に、酒井法子の釈放が遅れ、話題がネタ切れしてきたので、田中氏がメディア
の標的にされただけかもしれません。

 スキャンダルが生じたときの対応ですが、女性同伴で熱海にゴルフ旅行した鴻池
前官房副長官は、形勢不利とみるや、すかさず入院し、メディアから隠れました。

 これが正解ですね。ニュース価値がなくなるまで、逃げるが勝ちです。16日に
組閣があれば、メディアの関心は新閣僚に向かいますから、それまでの我慢です。

 へたに(誠実に?)説明責任を果たせば、理解してくれるどころか、次々と粗探
しをされ、ゴシップ記事の餌食にされるだけでしょう。

 9年連続で200本安打の偉業を達成したイチロー氏も、ひところは、チームの
勝利に貢献していないとバッシングされていました。それにもめげず、偉業を達成
した精神力こそプロです。

 政治家、スポーツマン、芸能人という有名人がメディアに支払う有名税は高すぎ
るように思います。もう少し、減税してもよいのではないでしょうか。有名人でな
い庶民としては、「お気の毒に。プロなんだから、めげずに頑張ってね」というし
かありません。


2009.09.14(月)【「民意」とは?】(島根・根来川弘充)

 先の8月30日衆議院議員総選挙において、民主党は308議席を獲得し、政権交
代が実現することになりました。

 ある文面では、これを「お月様とお日様がひっくりかえる」程の議席を獲得したと
表現していました。なるほどうまい表現だと思いました。

 ところで、先の選挙は、「マニフェスト」選挙であるとも言われていました。
「マニフェスト」とは、政権公約であり、政権をとった政党は、これを実現する義務
があるというものです。

 政権をとった政党からすれば、「マニフェスト」を掲げて選挙に出て、当選したの
だから、自分の政党の「マニフェスト」が民意だという理論が出てきます。

 しかし、ここには大きな問題があります。それは、「票の差が反映されていない」
ということです。

 たとえ一票差であったとしても、勝った方の「マニフェスト」が民意になってしま
うのです。

 これは、選挙制度の問題ですが、これをクリアできる選挙制度が今後できるという
明るい展望はなく、現時点での限界といえるかもしれません。

 では、民意を政治に反映させるためにはどうすればいいでしょうか?

 私は、政権政党が他の政党に配慮をすれば、ある程度クリアできるのではないかと
思います。他の政党に入れた票も民意であることに違いはないのですから、その票に
最大限配慮することは、主導権を握った政権政党の義務だと思うのです。

 反対の見方をすれば、主張が修正されることが余儀なくされるのですから、「ぶれ
ている」と言われるかもしれません。

 しかし、「民意」とは「単一均質」なものではなく、「多種多様」であるものです。
そして、「多種多様」であることこそ、民主主義の根源なのであり、「単一均質」な
ものにしてしまうことは、民主主義の否定にもつながる危険があります。

 次の政権政党には、「民意」だからと声高々と突き進んで、国の根幹を揺るがさな
いようにしていただきたいものです



2009.09.11(金)【利益と期間利益】(金子登志雄)

 渡部さん、「文章とお姿のイメージが違いますね」とは、きっと、「謙遜した文
章と違って、こんないい男だとは思いませんでした」という意味ですよ。

 渡部さんが参加した都内で開催された商業登記関係の研修会では、ちょっとだけ
講師を務めました。4月に改正された会社計算規則で「利益の資本金への組入れ」
が認められたため、その解説を主に行いました。

 論点は、「期中の利益を資本金に組み入れられるか」です。たとえば、3月決算
会社が、この9月までに大儲けした場合に、4月から9月までの利益を資本金に振
り替えてよいかという問題です。

 講義では、もし、それができるとしたら、今期の利益が10月から来年3月まで
の半年分の利益になってしまい、前期との比較もできなくなるし、3月までに大損
する可能性もあるから無理ではないかと考えてから、条文がどうなっているのかを
探すのであって、最初から、条文をみて、条文がこうなっているから、こうだと結
論づけてはいけないと話しました。

 えらそうに話しましたが、私自身、無理だとは思っていましたが、条文に書いて
あるかどうかまでは調べていませんでした。

 調べたところ、会社法では、利益(剰余金)と期間利益を使い分けていることが
わかりました。

 会社法461条2項1号に「剰余金の額」とあり、2号イに「期間の利益の額」
という用語が登場します。前者は主に決算承認を受けた3月期末の剰余金(利益)
のことであり(会社法446条)、後者は4月からの利益です。

 結論として、会社法においても、貸借対照表に計上されている剰余金(利益)は
資本金に振替えることができるが、いまだ損益計算書に計上途上の期間利益は、貸
借対照表に計上されている利益とはいえず、資本金に組み入れできないということ
になります(詳細はキンザイ「登記情報」9月号41頁以下に記載しています)。


2009.09.10(木)【こんな容姿でごめんなさい】(島根・渡部浩義)

 『整理術』、『仕事術』という言葉に弱いことは以前にも書きましたが、同じく
らい『研修会』という言葉にも弱い私です。

 研修会の案内が来れば、すぐに気になり、興味のある分野のそれであれば放って
おくわけにはいきません。

 8月最後の日曜日も、「お父ちゃんばっかり、東京ずるい。」と責める子供や、
ミセス・ワタナベはじめ家族のご機嫌伺いをした後に、都内で開催されていた商業
登記関係の研修会に泊り込みで参加しました(もちろん、総選挙の期日前投票は済
ませての参加です)。

 今回の研修会は参加してみてビックリでした。

 「あなたが渡部さんですか、あのドラえもんのことをESGの徒然に書いた……
 (4月13日掲載分)」

 「いやーっ、田舎での活動の様子が微笑ましいですね。でも文章とお姿のイメー
 ジが違いますね。」

 「アンタかな、ワタナベっーのは。裏日本の様子を伝えてくれて結構。結構。」

と、初対面の同職の方々に随分と声をかけていただきました。

 まったく恐るべし「ネット社会」そして「ESG徒然活動日記」です。ありがた
いことです。

 夏休み最後の日曜日なのに、家庭サービスや子供の宿題の総仕上げに付き合わず
上京した後ろめたさも、実のある研修会の受講と同職の方々との新たな出会いによ
り、少し癒されました。でも、「文章とお姿のイメージが違いますね。」とは、ど
ういう意味でしょうか。



2009.09.09(水)【特別国会】(金子登志雄)

 16日召集の特別国会での首相指名選挙で、自民党は、麻生総裁に投票するのを
嫌がり、白票もみっともないということで、若林正俊両院議員総会長に投票するこ
とを決めたようです。自民党再生は、前途多難のようです。

 さて、国会の「常会」「臨時会」は、会社でいえば、定時総会、臨時総会みたい
なものですが、「特別国会」に対応する特別総会というのはないなと思い、憲法を
開きましたら、次のように規定されていました。

 第52条:国会の常会は、毎年1回これを召集する。

 第53条:内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。

 第54条:衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員
     の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなけれ
     ばならない。

 特別国会というのは、取締役全員が退任し、後任の役員を選任する臨時株主総会
のことですね。

 第70条:衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、
     総辞職をしなければならない。

 麻生「首相」といえるのも、あと1週間です。


2009.09.08(火)【厳島神社】(佐藤典子)

 岡山の佐藤典子です。25年ぶりに広島県にある厳島神社に行ってきました。
四半世紀の歳を重ねた私を、厳島神社は、荘厳かつ優美な姿で迎えてくれました。
現在の竜宮城のような社殿は、平清盛が隆盛を極めた平安時代に造営されたそうで
す。

 当時、海に社殿を建築するなんて、清盛の卓越した発想力がうかがえます。
厳島神社はその後2度の火災に遭いましたが、鎌倉時代に再建され、毛利氏や豊臣
氏らの庇護を受けて今日に至り、平成8年12月に世界遺産に指定されたことを考
えると、歴史の重みが感じられます。

 また、以前は気付かなかった新しい発見もありました。

 宮島桟橋近くの要害山という小山には、戦国時代に毛利元就が厳島合戦で陶氏と
戦ったときに拠点とした宮尾城址があります。そこからは、陶氏が拠点を構えたと
いわれる(現在は五重塔のある)塔の岡がよく見渡せます。

 初秋の風に吹かれながら、五重塔の横にある豊臣秀吉が建立したという豊岡神社
(別名千畳閣)を眺めていると、目の前に仲の良さそうな3頭の鹿が現れました。
まるで、元就の3人の子(隆元、元春、隆景の3兄弟)のようであり、元就が自分
の子供に結束を求めたという有名な「3本の矢」の話を思い出しました。

 翌日は、毛利元就発祥の地である吉田郡山城の本丸跡を目指しました。

 続きはまた後日、徒然なるままに書かせて頂くつもりです。


2009.09.07(月)【時間との勝負】(島根・渡部浩義)

 「権利登記は時間との競争だ!」、司法書士なら誰でも、そう感じ、またそのこ
とに細心の注意を払っています。順位1番の抵当権の登記になるか、2番目になる
かは大きな問題であり、われわれ自身の責任問題にもなります。

 しかし、高齢化が進む過疎地に住む最近の私の業務では、競争しなければならな
い相手が、「競合登記」ではなく、依頼者やその家族の「命」になってきました。

 「もうすぐ仏さんができそうだから、早くお墓を作って欲しい。分筆登記、地目
変更登記、墓地の設置許可申請を急いで欲しい。」

 「本人が遺言を作って欲しいといっている。ここ一週間がヤマだから息のあるう
ちに、病院へ出かけてもらって、しっかりしたものを作ってやって欲しい。」

 「・・・・・。」

 依頼者の方からは、「早く、早く」と連呼されるのですが、こちらも身体は一つ。
それだけでなく、他にも官公署等の許認可が必要であったりと、物理的に最低限必
要な「所要時間」というものもありますし、拙速に処理して、いい加減な成果品を
渡すわけにもいきません。

 私も40歳を超えて、最近ようやく「できません。」が言えるようになった気が
します。早く処理して差し上げられない、すべての方の要望に応えられないことは、
本当に断腸の思いですが、辺鄙な場所にて限られた人数の資格者で、こなせる仕事
量には限界があります。

 若い頃は「迅速」という言葉をモットーにしていましたが、私も間違いなく年令
を重ね、親になり、地域のしがらみも増え、体力的にも、時間的にも、精神的にも
開業当初の頃のようにはいかなくなりました。 
 
 ご期待にお応えできないことは、本当に辛いことですが・・・。


2009.09.04(金)【選挙結果報道と嫉妬心】(金子登志雄)

 今週の新聞、週刊誌は選挙結果特集のようですが、中身をみると、あれだけの支
持を受けた民主党に対して、まだ内閣も組成していないのに、相変わらず小沢支配
がどうのこうの、故人献金問題がどうのこうの、外交問題がアキレス腱などと、批
判調、評論家調が多く、大きな時代の流れや方向性の変化を分析しているものは、
少ないようです。ほとんどが小沢チルドレンの話題を筆頭に、近視眼的な人間関係
の噂話で盛り上がっている感がします。

 民主党政権は大マスコミに特権を与える「記者クラブ」制度の廃止も打ち出して
いるようですから、今後も、ますます足を引っ張られることでしょう。

 昔、テレビの取材を受けたとき(会社への取材でした)、担当記者と話しました
が、「マスコミは常に成功者の足を引っ張り、大衆のうっぷんを晴らすことを報道
姿勢としている。そうしないと視聴率がとれない」と真顔で説明されましたが、そ
れは、取りも直さず、われわれ国民自身が嫉妬心の塊なのかもしれません。

 「麻生さんも鳩山さんも大金持ちのボンボンじゃないか」、「汚いカネを手にし
て、あそこまで成り上がっただけだ」「あいつは、風に乗って当選しただけで実力
はない」……金持ちの息子でもなく、きれいなカネさえ手にできず、風にも乗れな
い庶民は、こうやって、うっぷんを晴らし、精神の安定を保つわけです。

 風だけで当選したとしても、その風に乗る能力を認めねばなりません。漢字が読
めなくとも総理になれたのは、それ相当の能力と運があったからでしょう。宇宙人
といわれる鳩山さんも、あの民主党を上手にまとめています。それは有能というこ
とです。

 マスコミに要求しても無理なことですが、まだ何もしていないうちから、揚げ足
を取らずに、未曾有を「みぞ(う)ゆう」と読んでから、足を引っ張っても遅くあ
りません。

 成功者や勝者に嫉妬せず、さらなる成功を願い、溺れるもの(自民党?)に対し
ても、その再起を願う人間でありたいものです。

 あれれ………、がらにもなく優等生発言でしたが、これは「かくありたい」とい
う願望であって、私も嫉妬心の塊です。決して嫉妬しないから、わが事務所にも風
が吹いてほしいと願っている日々です。


2009.09.03(木)【未上場企業における議決権の意識】(和出吉央)

 未上場企業のオーナー社長様から、A社、B社、C社、その他関連会社(以下、
「A社グループ」という)の資本関係の整理をしたいとご相談を受けたときの話で
す。

 A社グループは、いわゆる持株会社(A社)方式をとり、M&Aで買取った会社
あり、その下にぶら下がる会社あり…等で、資本関係が複雑化してきたことや財務
体質の改善のため、資本関係を整理したいとのことでした。

 持株会社であるA社(株式は100%オーナー社長様所有)は、B社の議決権の
3分の2以上を有し、他のB社株主はB社の取締役数名という株主構成です。そし
て、B社は、A社グループの中でもっとも売上げを伸ばしているC社の議決権の過
半数を有しています。

 オーナー社長様からのご相談の概要は次のとおりです。

 「財務コンサルのコンサルティングを受けて、主に財務体質の改善(貸付金と売
買代金との相殺)のため、A社が3分の2以上を有するB社株式の全株をB社が自
己株式として取得することになったのだが、何か問題はないかね?」
(なお、会社法第461条の分配可能額内の要件は満たしています)

 愕然として言葉につまりました・・・。

 B社が自己株式として取得するということは、取得した株式分の議決権は“ゼロ”
ということになり、相対的に、B社の他株主であるB社の取締役数名の議決権が増
加することを意味します。つまり、A社(=オーナー社長様)が支配していたB社
は、一瞬にして、B社の取締役数名の支配下となってしまうのです。さらに、稼ぎ
頭であるC社も間接的にはB社取締役数名が支配することになります(B社がC社
の議決権の過半数を有している)。

 幸い、B社の取締役会でいったん決議された自己株式の取得は、再度の取締役会
で中止決定となりました。結局、(オーナー社長様も含め)B社取締役全員が、
「自己株式に議決権はない」ということを知らなかったため、すんなり、自己株式
取得の中止が決定されましたが、今はインターネットで検索すれば、すぐ情報が得
られる時代ですので、もし自己株式の取得がそのまま実行され後に他取締役が議決
権のことに気がついたら・・・目も当てられない状況になっていたことでしょう。

 未上場オーナー企業の中には、株主総会が形骸化していることもあり、議決権に
対する意識がここまで低いこともあるのか・・・、そして何より財務コンサルは何
をしているんだ(キャッシュフローにしか目が行かない??)!!と考えさせられ
る事件でした。


2009.09.02(水)【電話の鳴らない8月お盆】(島根・渡部浩義)

 選挙に明け暮れた8月も終わりました。

 8月といえば、お盆ですが、皆さまは田舎に帰省なされたでしょうか。
 田舎に住む司法書士(私のこと)は、専ら故郷に帰ってこられる皆さまを迎える
立場に徹し、本年1月13日付の本欄拙稿に書きましたとおり正月同様に、帰省さ
れた皆さま方に印鑑をいただきに歩く仕事(相続、境界立会い)に徹していました。

 毎年のことですが、世の中がお休みモードに入ると、事務所にかかってくる電話
は随分と少なくなります。まったくもってバチが当たりなことを書きますが、最近、
この『電話が鳴らない』ということに、とても『安らぎ』を感じるようになりまし
た。

 電話が鳴らないと、溜め込んでいた仕事の処理がかくも進み、片付くものか、そ
して精神的に余裕ができて、調べものや事務所の整理まで...。まったく「世の
お休みモードありがたや。」の心境でした。
 電話での「注文」がなくなれば、仕事がなくなり、ご飯がいただけなくなること
に他ならないのに人間とは身勝手なものです。

 開業当初は、電話がめったにならず、うちの新しい電話器壊れているんじゃない
だろうかと、電話器をひっくり返してみたりしていましたのに・・・。

 こうして、開業後17度目のお盆は、あっという間に過ぎ去りましたが、気づい
てみれば、静かな政治革命が起きていました。めまぐるしい変化ですが、今月は、
19−23日という連休もありますので、また英気を養い、新しい時代への対応を
ゆっくりと考えたいと思います。


2009.09.01(火)【惨敗、刺客の読み】(金子登志雄)

 昨日の「未曾有」の読み方ではないですが、麻生さんは、文章を書かない人だと
思います。

 富田氏や私のように、売れない本を書いている者でも、誤字・誤読は一生の恥で
すから、辞書を引いて確認して書いています。
 
 先般も、出版社の編集者と「ありエる」ではなく、「ありウる」が正しいと思う
ので、「ありえる」をやめて「あり得る」にしましょうかなどと議論したばかりで
した。

 9月に出す著書の「はしがき」に「渾身の力を込めて」と書いた後に、ふと不安
になって、辞書を引きましたら、「渾身の力を振り絞って」のほうがよさそうだと
思い、修正いたしました。

 ところで、皆さんは「自民党が惨敗した」の「惨敗」は何とお読みですか。私は、
「ザンパイ」と読んでいましたが、ふと不安になって、ネット辞書を調べましたら、
「サンパイ」でも誤読ではないようです。

 では、「刺客」はどうお読みですか。「シキャク」ですか、「シカク」ですか。
改まって質問されると、わからなくなるものですが、どちらでもよいようです。

 昨日の富田投稿には、遺言につき、法律家は「イゴン」と読むが、日常用語は、
「ユイゴン」だとありましたが、「遺書」を「ユイショ」とは読みません。遺訓、
遺産、遺品、遺贈・・・みな「イ」です。

 地名や人名は、特にむずかしく、私の事務所の所在地である「神田神保町」も、
普段は私も「カンダジンボウチョウ」といっていますが、ふと、「カンダジンボ
チョウ」が正しいのかもしれないと不安になります(前者で正しいようです)。

 女刺客の「エリのクマ退治」で落選した長崎2区の久間(きゅうま)元防衛大臣
の「久間」も、所が変わると「クマ」さんになるようです。

 漢字の読みはほんとにむずかしいですが、麻生首相の誤読は頻繁(ハンザツ?)
すぎました。自民党の低迷(テイマイ?)につき、責任の有無(ユウム?)を問わ
れても仕方ないでしょう。自民党の再生は焦眉(シュウビ?)の課題です。

 http://www.bestshop.co.jp:80/1-osusumeeikaiwa/06_asoutarou.htm


2009.08.31(月)【未曾有は「みぞうゆう」でよい?】(富田太郎)

 とうとう自民党政権が崩壊しました。
 政治にはまったく興味のないノンポリの私ですが、麻生総理は、気の毒でした。

★『未曾有(みぞう)→(みぞうゆう)』(注)
と読み間違えたことで、「阿呆」扱いされる始末・・・。

 本来の総理の資質よりも、漢字の読み書きで判断されるなんて???
そんなこと言ったら、総理たるもの、まずは「漢字ドリル」の勉強から始める必要
があります(苦笑)。

 思えば、私も新入社員の頃(金融機関)、
■『相殺(そうさい)→(そうさつ)』
と読んでいた時代があります・・・・(恥)。
そうです!誰だって、読み間違いはあります!

 そんな話をしたところ、我がESGの「島根の刺客」渡部さんから「一部の商慣
行の世界では、(そうさつ)と読むケースもある」との指摘を受けました。
国語辞典等を調べたところ、

■『相殺(そうさつ)・・・(そうさい)の慣用読み』
とあり、必ずしも間違った読み方ではない!ことが判明。

 なるほど、我々、司法書士は、法律用語として『遺言(いごん)』と言いますが、
世間一般では、(ゆいごん)と読みます。
・・・・・・・!!

 そうすると、『未曾有(みぞう)』だって、もしかすると、(みぞうゆう)と読
むケース、読む時代があったのでは??

 そんな思いでいた先日の晩のこと、『人間の條件』(1959年松竹映画、時代
背景:第二次世界大戦、原作:五味川純平)の映画(DVD)を見ていたところ、
なんと登場人物が、『国家、未曾有(みぞうゆう)の難局にあり、皇軍の〜』・・
・・と言っているではないですか♪ ニヤリ♪ 私の推論は正しかったかも♪

 あとは資料で立証するのみ♪
 その晩、徹夜して、国語辞典、広辞苑、戦争当時の記録本等あらゆる書籍を漁り
ました。が・・・・・・全く立証できず・・・。

 徹夜明けの朝、窓を開けると一匹のカラスが、こっちを見て「カァ〜」と鳴いて
いたのが、「アホ〜」と聞こえました・・・・(涙)。
 確かに、『麻生支持者』でもないのに、何をやっているのだろう・・・。
私は・・・・。

(注:後日談)
 金子代表に、この原稿を送りましたら、麻生さんは「みぞうゆう」でなく、「み
ぞゆう」と読んだのだから、この徒然は、訂正が必要ではないかと指摘されました。
  http://www.bestshop.co.jp/1-osusumeeikaiwa/06_asoutarou.htm

 しかし、朝日新聞には上記のように「未曾有」を(みぞうゆう)と読んだと書か
れていました(H20年12月13日朝刊4面)。確かに、他の一部メディアによ
ると「みぞゆう」と誤読したと書かれていますが、平成20年11月16日のテレ
ビVTRを検証すると、首相は「みぞうゆう」と発音しておりました。よって、本
コラムでは、「朝日新聞説」をとっている旨を連絡し、了解してもらいました。

 ここまで、徹底して調べた私は、やはり、「おたく」でしょうか・・・。金子代
表からは、「超がつくオタクです。自覚がないようなので、コメント不能!」とい
う返事が返ってきましたが・・・(汗)。


2009.08.28(金)【盗作疑惑???】(富田太郎)

 TVによく出演する弁護士A氏の書いた「債務整理に関する入門書」について、
盗作疑惑がおこっています。   

 報道によると「原告B氏側(弁護士5人)は、自分達の本の著作権を侵害してい
るとして、約630万円の損害賠償と本の販売中止などを求める訴訟」を名古屋地
裁に提起したそうです。原告B氏側の主張は、自分達の著作から「過払い金返還請
求から実際に金が戻るまでの流れを書いたチャート図」をA氏が盗作したとのこと。

 本業のかたわら、著作物を書く私にとっては、興味ある報道でした。

 両者の著作を読んでいないので、事の真偽は判断できませんが、「小説」「絵画」
「自説を述べる高邁な専門書」と異なり、「法律の入門書」、特に「手続法に関す
る入門書」の場合、自然と内容が似てしまうことがあります。

 手続法は、最初から流れが決まっているため、チャート図など、誰が書いても同
じようになる可能性があります。また、原稿を書いていると、以前読んだ専門書の
内容が無為意識のうちに出てきてしまったり・・・・(汗)。

 これなど、執筆するにあたって、要注意であると、いつも自分を戒めています。

 かなり昔、私はある受験雑誌に3年間ほど「商業登記記述式 予想問題」を連載
していたことがありました。最初の頃は、論点にも苦労せず、スイ、スイ〜と書い
ていたのですが、さすがに、3年も書いていると、最後の頃は、目新しい論点も書
きつくし、もはや書く内容が全く思い浮かばず、まさに地獄の苦しみでした。

 そんなある日のこと、原稿を書いていると、なぜかその日に限って論点が次々思
い浮かび?? 短時間の間!に、我ながら惚れ惚れするような予想問題ができあが
りました♪

 ニヤリ♪ これは、読者からの絶賛間違いなし♪♪ 私って天才かなぁ〜♪

 が・・・・・、雑誌が発売されると、来るは、来るはクレームの数々!!(汗)。

 盗作??? いえ、実は、(私自身が)『連載当初に書いた予想問題』と、全く
同じような内容を、また書いてしまったのです・・・・。ただ、ただ、ひたすら謝
るのみ・・・・。

 道理で・・・・、スイスイ書けたわけです。
 でも、自分が以前書いたことすら、忘れてしまう私って・・・・・(涙)。


2009.08.27(木)【暦】(島根・渡部浩義)
 
 刺客の渡部です。今日は、暦の話です。

 梅雨の前ですが、当事務所に来所された老依頼者の話によると、今年は、なんと
5月が2回あったのだそうです。閏(うるう)5月というものがあったそうなので
す(旧暦の併記あるカレンダーをご使用の方はご参照ください。)

 われわれは、一般に、太陽暦(グレゴリオ暦)で生活していますが、田舎では、
種々の伝統・慣習行事や漁業・農作業は、依然として『旧暦(太陰暦)』によって
行われていることが多々あります。特に漁業では、潮の干満、大小を相手にされる
ことから太陰暦は、今でも日常的な暦のようです。

 太陽暦が基本的に4年に一度、2月に1日(29日)閏日を入れることによって
暦を調整するのに対し、太陰暦はおよそ3年に一度、一年を13ケ月にして暦を調
整するのです。その余分な一ケ月を何月にするのか、これも独特の配置方法がある
ようです。(この10年間および向こう20年間に置かれる旧暦閏月は、ほとんど
夏の時期に置かれ、また置かれるようです。)

 太陰暦
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%B0%E6%9A%A6

 グレゴリオ暦
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%AA%E6%9A%A6  

 明治政府が、太陽暦を採用したのは、役人の月給を13月(回)ではなく、安定
的に12月(回)の支払としたいという財政的事情が大きな動機となったという歴
史的背景があったとの解説にも、『財政』がいつの時代も政治を大きく左右すると
いう点で、『政局の夏』にぴったりの話題だったでしょうか。





2009.08.26(水)【選挙予測の読み方】(金子登志雄)

 新聞、雑誌は選挙と酒井法子の話題ばかりですね。後者は全く関心ありません。
法律を遵守する子に育ってほしいと「法子」と名付けたのかな程度の興味です。名
前負けしてしまいましたね。

 選挙記事は、野次馬の1人として、結構、興味をもって読んでいます。

 面白いもので、媒体によって、激戦区の予想が大きく異なります。媒体あるいは
記者の主観や性格が入っているせいでしょう。安全思考の記者は、まさか、あの大
物が落選するわけがないと思えば、▲を△にしてしまうからです。予想がはずれた
場合の逃げを打っておくわけです。

 そんなときは、○△▲印よりも、記事の表現に着目するとよいようです。たと
えば、次のような按配です。

 「BがAを急追(又は追い上げ)」……Bの当選は相当むずかしい。
 「AとBは互角の戦い(又は接戦)」……先に名前のあるAがBよりも優勢。

 もちろん、「優位」「有利」「水をあけ」「抜け出し」……などは、当確という
意味に近いでしょう。

 ちなみに、当ESGの代表選は、人気の富田候補が実績の金子候補を急追中です。
徒然書き手選挙は、金子候補と島根からの刺客の渡部候補が互角の戦いです。


2009.08.25(火)【島根は札幌・福岡より遠い】(島根・渡部浩義)

 島根に住んでいる私にとっては、ネットの時代とはいえ、新鮮な情報を手にする
ためには、近傍の中堅地方都市に行くよりも、上京したほうが、すばやく、正確で
大量の情報を手にすることができるとの結論に達しています。

 問題は上京の折の交通手段です。

 飛行機の利用では、羽田空港第1、第2ターミナル共に「どうしてこんな場所に
降ろされるの」というような到着ゲートからはるか彼方に降ろされ、バスに乗らさ
れ、延々と「動く歩道」を歩かされ、やっと到着ゲートです。

 帰りの搭乗の際も、同じ試練が待っています。
 大阪、福岡、札幌あたりの皆さんは、出発20分前の空港到着で悠々でしょうが、
私たち山陰の者たちの空港への20分前到着は、「決死の覚悟」を意味します。手
荷物の手続をして、出発ゲートをくぐり、すぐに搭乗できる大阪、札幌、福岡行き
ジャンボ機を横目に、急げ、走れーっ。

 時間ぎりぎりで機内に駆け込み、機内から割れんばかりの拍手で迎えられたこと
数知れず。もう、恥ずかしいといったらありません。

 こんなこともあって、最近は、もっぱら「新幹線派」に転じ、時間に追われず、
出発直前まで、丸善丸の内本店や東京駅内松栄堂書店さんで優雅に本を眺め、しか
る後、大丸東京店地下の柿安さんにて牛めし弁当+シーフードサラダ盛合せを購入
後、新幹線に乗車することにしています。

 自宅近傍の駅まで約5時間半の時間を弁当食べながら、収集した情報整理と、読
書の充実した時間に充てています。

 実に優雅ですが、5時間半です。東京都心へ2時間程度でアクセスできる地域の
方々と比較して、不平等ですよね。



2009.08.24(月)【選挙予想と鉛筆転がし】(金子登志雄)

 総選挙まで、あと1週間に迫りましたが、20日の朝日、21日の読売と日経、
22日の毎日と続いた大新聞の選挙予想には驚かされました。いずれも300を超
える民主党の圧勝とか。俄かには、信じがたい数字です。

 数週間前からの週刊誌やタブロイド紙の予想とほぼ近かったのですが、権力寄り
にならざるをえないといわれる大マスコミで報道されると、インパクトの大きさが
違います。

 「まさか、あの候補までが」と、いろいろと個別の感想を書きたいのですが、た
だいま選挙中で、「〇〇候補は………」などと書くと、公職選挙法に違反すること
もあるらしいので、法律職のわが身としては、うっかりしたことを書けません。

 で、選挙予想にスポットをあてて、ほんとに当たるものかと「選挙、予想」で、
ネット検索しましたら、昨年の内容ですが、こんなのがありました。

  http://officematsunaga.livedoor.biz/archives/50713585.html

 何と、雑誌の選挙予想は、鉛筆を転がして決めるのだそうです。こちらのほうが
当たるかもしれませんね。

 昔、親しい大証券会社の役員級の幹部の方から、こんな話を聞きました。
 「金子さん、当社のアナリストに、オレは新聞の株式欄めがけて、ダーツを投げ
て、当たった銘柄に投資するから、どちらが儲かるか勝負しようといったら、何と
答えたと思いますか。『負けるから勝負は嫌だ』といわれました。アハハハ」。

 いずれにしろ、半永久的に倒れないと思われていた日本の権力構造(ベルリンの
壁?)が崩れはじめたことだけは確かなようです。戦後60年以上も経過しました
から、半永久の期間が満了したのかもしれません。

 今年は歴史の大きな転換点になりそうですね。8月30日、もうすぐです。



2009.08.21(金)【株主資本と法定準備金】(金子登志雄)

 金曜日ですので、法律の話題にいたしましょう。

 「株主資本」という用語には、もうお慣れでしょうか。会社法になってからは、
株主資本等変動計算書、株主資本等変動額など、盛んに使います。

 簡単にいえば、昔の貸借対照表の「資本の部」のことであり、いわゆる自己資本
のことです。会社法になって、「資本の部」が「純資産の部」と用語が代わり、資
本とはいえない新株予約権などが加わったため、自己資本に属するものを株主資本
というようになりました。

 現在の「純資産の部」は「株主資本」と「新株予約権等の株主資本以外のもの」
で構成されています。

 では、株主資本はどのようなもので構成されているでしょうか。

 それなりに教養のある方は、きっと「資本金、準備金、剰余金」と答えるのでは
ないでしょうか。昔は、この順序・配列だったのです。いまは、次の右側のとおり、
資本と利益を区別する配列になっています。


     <昔>              <今>

     資本金             資本金
     法定準備金           資本剰余金
      資本準備金           資本準備金
      利益準備金           その他資本剰余金
     剰余金             利益剰余金
                      利益準備金
                      その他利益剰余金

 ということで、「株主資本とは、資本金、資本剰余金、利益剰余金」をいうと定
義され、「資本金、準備金、剰余金」をいうとは定義されていません。「法定準備
金」という用語も、耳にしなくなりました。さびしい限りです。


2009.08.20(木)【ニュースの大きさ】(根来川弘充)

 今年は梅雨明けも全国的に遅く、天候不順により、大きな水害事件が続きました。
どれもが死者もでるニュースでしたが、取り扱われ方は、まちまちでした。大きく
取り扱われたり、小さく取り扱われたりです。それは、他にも大きなニュースがあ
るか否かで左右されてしまいます。

 ニュースの「大きさ」は、受け手によっても異なります。水害に遭われた人にと
っては、水害の情報でしょうし、裁判に関心のある人にとっては、初の裁判員裁判、
広島、長崎の人にとっては、原爆記念日だったでしょう。

 ニュースを発信する主体(メディア)によっても大きく左右されます。

 新聞やテレビというメディアは、「第4の権力」と言われるくらい影響力があり
ますから、公平で誰もが安心して暮らせるよう、何が正しいかを社会に問うことで
世論を形勢する大事な役目をもっているはずですが、営利企業ですから、より多く
の人が関心を寄せる事件を取り扱わなければ、スポンサー企業や市場からも見放さ
れ、存続すら危ぶまれてしまうという側面も併せ持っています。

 最近の芸能人の薬物問題のニュースなどは、大きなニュースとは思えませんが、
視聴者の関心が高いとの判断でしょうか。その分、他の大きなニュースが小さく扱
われてしまっているようです。

 怖いのは、われわれ自身がマスコミ報道を無意識に受容し、ニュースの大きさを
計ってしまうことです。報道で大きく取り上げられていたから、それが一番重要な
ことと勘違いしてしまうことです。

 無意識・無批判なニュースの受け手になってしまわないよう、注意したいものだ
なと思うこの頃です。



2009.08.19(水)【飲んだ後はしじみラーメン】(田中利和)

 旅はつれづれ,出張のあとは徒然です。
 今日も高知に出張したときの話を書いてみたいと思います。

 高知には,美味しいお酒を飲める店がたくさんあります。
飲み方はこんな感じです。

 まず,”おちょこ”に酒を注ぐ。注がれた酒を飲み干して,酒を注いでくれた者
に空の”おちょこ”を渡し,酒を注ぐ。これを延々と同席者全員と繰り返す。
 
 それゆえに高知県出身の方は酒豪が多いのでしょう。

 私も,依頼者から,同じ”洗礼”受けました。手加減をしてくれましたが,アル
コールにそれほど強くない私にとっては,非常に辛いものがありました。
 そのあと,2軒”はしご”して,仕上げは「しじみラーメン」です。

 しじみには,タウリンの含有量が多く,二日酔いの元凶といえるアセトアルデヒ
ドを排除する働きがあるといわれているようで,依頼者の話によると「酒を飲んだ
後は,必ず,しじみラーメン!」だそうです。

 まずは,ひとくちスープを飲んでみました。しじみから出たエキスがスープの味
を引き立てています♪

 そのおかげでしょうか,二日酔いをすることもありませんでした。


2009.08.18(火)【トイレ考察】(島根・渡部浩義)

 土地家屋調査士の業務で、新築や増改築をされたお宅にお邪魔する機会が多いの
ですが、最近は、どちらの一般家庭でも、トイレをはじめとして、すばらしい水回
り設備になってきました。水洗下水設備については、田舎の方がむしろ文化的かも
しれません。

 ということで、今回は、経験に基づくトイレの考察という雑ネタですが、食事中
の方がいらっしゃいましたら、ごめんなさい。

 まず感激したのは、過日訪れた首相官邸のトイレでした。外国要人のゲストを考
慮たのか、やけに男性便器の設置位置が高いのです。
 「ブッシュさんあたりも、ここで用を足されたのかいな」と想像が膨らみ、感激
と〇〇の快感にうち震えながら用を済ませました。東京に進出攻勢中の外資系ホテ
ルも、男性便器の設置位置が高いように思います。

 そして華々しいのは飲食店のトイレです。先日入った中華料理店では、手洗場の
シンク(流し)も男性便器も中華鍋の形状をしていました。シンクのほうはさてお
き、さすがに鍋形状の便器の方は用を足すのに躊躇してしました。少し悪ノリが過
ぎるように感じました。

 別の割烹居酒屋では、男性便器に一杯の氷が盛ってありました。ここまでする必
要があるのでしょうか。

 最後に新幹線のトイレ。
 最近の新型新幹線N700系はトイレにも新機構を導入してあり、排水すると、
「シュパッツ」という歯切れのよい音がします。「真空循環式トイレ」というのだ
そうですが、あらかじめタンク内に薬液と水の混合液を溜めておき、真空機構を使
って吸い込み、汚水をろ過後に、再度この薬液を循環利用する仕組みだそうです。

 トイレだけは、全ての人が生涯お世話になるものです。たまには、こんな話題も
よいかと思い、取り上げてみましたが・・・。



2009.08.17(月)【時々公務員の司法書士】(島根・渡部浩義)

 お盆で帰省なさった方も多いと思いますが、帰省先が田舎になると、消防団とい
う組織があります。非常勤の公務員職ですが、私もこの春まで15年経験しました。

 ※消防団 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B6%88%E9%98%B2%E5%9B%A3

 なによりも苦痛だったのが、仕事を終えてからの訓練でした。特に、「操法(そ
うほう)訓練」に多くの時間が割かれました。実際の火事現場を想定して、消防ポ
ンプ、消防自動車からホースを延長し、放水をして、しかる後に器具撤収までを事
故なく、正確、迅速に展開する訓練です。
 
 もはやこの操法訓練はスポーツ性を帯びた「競技」となっており、このタイムと
正確性を競う全国大会もあり、田舎におけるもっともエキサイティングなスポーツ
にもなっています。

 ※訓練風景例 http://www.youtube.com/watch?v=ig1D1EAIHR8

 あってはならないことですが、事務所にて、深刻極まりない相談を受けている真
っ最中に出動サイレンが鳴り、相談者を事務所に残し、ネクタイにスラックス姿で
へルメットをかぶって消防自動車に乗車、赤信号を公然と突っ切って火事場にいっ
たこともかなりの回数ありました。

 また、行方不明者が出れば、その捜索で、山や川へ。大雨、台風となれば、その
警戒へ・・・。都市部の方から見れば、なんと非生産的でアホらしくみえるかも知
れませんが、これも職業警察、職業消防人の配置が少ない田舎に暮らす者には、欠
かせない地域活動なのです。

 「消防なもんで...。」この一言に随分と業務の遅延を待って貰ったことがあ
ります。ある日も抵当権設定申請の準備真っ最中に出動サイレンが鳴り、銀行支店
長から「何も言うな、速やかに出動して。」と、先方から電話を貰ったこともあり
ます。

 みんなが助け合って生活しているところが、私の仕事場です。
 こんな司法書士も日本にはいることを知ってください。


2009.08.11(火)【旅はつれづれ,出張のあとは”徒然”】(田中利和)

 先月の金曜日,土曜日は,高知県に出張でした。
仕事を終えたのは,金曜日の午後5時ころです。

 一連の手続きが一段落ついたので,慰労会を兼ねて,依頼者と食事をすること
になりました。

 そこは,高知駅にほど近い歓楽街から少し離れた場所にある,静かで,落ち着
きのある,小粋な和食の店です。

「お品書き」の中から適当に依頼者が注文しました。
高知といえば,酒,鰹,柚子といったところが,すぐに思いつきます。

 何がでてくるのか,楽しみに待つこと10分。

 最初に出てきたのが,「どろめ」と「鰹」「いさき」の刺身の盛り合わせです。
「どろめ」とはカタクチイワシの稚魚のことで,ちりめんじゃこに加工する前の
ものをいいます。いずれも絶品でした♪

 そのあとも,高知県で採れる食材をふんだんに使った料理に舌鼓を打ちました。
仕事を終え,美味しい酒を飲み,美味しい料理を食べる。まさに至福のひととき
でした。

 また,今こうして,鰹やお酒の味を思い出し,徒然を書く。
こういった内容の徒然は何度書いてもいいものです♪

 皆さんも、お盆休みは、田舎で、あるいは旅行先で、舌鼓でしょうか。

 ※12−16日はHP担当者が休暇のため、徒然はお休みします。
  携帯司法書士で自動販売機商法の金子事務所は年中無休です。


2009.08.10(月)【細かいことですが・・・】(岡山・山本直樹)

 司法書士は、依頼者から住民票や印鑑証明書を提出してもらい書類を作成するこ
とがあります。

 住民票どおりの記載で書類を作成し、依頼者に書類を渡すと、「私の名前って正
式にはこういう字だったんだね!」と、たまに依頼者にびっくりされます(たとえ
ば本人が「高橋」のつもりだったが、住民票上は「橋」だったとか)。  

 ところで、コンビ二大手のセブンーイレブンのロゴについて、
 「7-ELEVEnの最後のnが小文字」というのをご存知でしたか?

 山本は、経営コンサルタントの小宮一慶さんの「ビジネスマンのための発見力養
成講座」という本でそのことを知りました。

  http://www.komcon.co.jp/book/book_5.html#04

 wikipedia の「セブンーイレブン」の概要には次のように書かれています。

 7-ELEVEnの最後のnが小文字である理由は『「7 ELEVEN」として登録を行った際、
一般名詞(この場合は数詞)として捉えられ商標登録できない可能性があるから』
とされているが、実際のところロゴの作成から時間が経ち過ぎているためセブン-
イレブン側もよく分からないと言っている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%96%E3%83%B3%E3%82%A4%E3%83%AC%E3%83%96%E3%83%B3

 細かすぎです〜。しかし細かいことに気がつく人は、ほんとに気がつくのです
ね(感心)。

 山本の場合、細かいチェックばかりやっていると、粗探しをしているような気
分になり、これ以上性格が悪くなったらどうしようと心配になります(苦笑)。
 これも職業病なのでしょうか?



2009.08.07(金)【登記申請予約】(金子登志雄)

 来週はお盆休暇の方が多いようです。そこで、依頼者から「お盆明けの登記申請
書類を先に預けておくから、委任状を送ってほしい」といわれることがあります。

 いまはメールに添付ファイルの時代ですから、委任状の送付などお安い御用です
が、あまりにお安い御用過ぎて、失敗することがあります。

 それは、お盆明けに商号変更したり、本店(本社)移転する登記であって、登記
の委任状には、委任者として新商号・新本店を記載しなければならないのに、つい
現商号・現本店で作成し、添付ファイルで送ってしまうことです。

 依頼者の方で私の送付した委任状にミスがあると気づくことは、まずありません。
「これから商号変更し、これから本店移転するのだから、現商号・現住所で委任す
るのは当然ではないか」と思っているからです。

 ところが、登記は「終わった結果」を登記に表すものですから、商号変更後、本
店移転後にしか登記できないだけでなく、かつ委任状も商号変更後、本店移転後に
委任する慣例になっているからです。

 したがって、現時点でも、商号変更済みである、本店移転済みであるという想定
のもとに、先日付で委任状を作成しなければならないわけですが、つい、現時点の
意識で委任状を作成してしまい、「ごめんなさい」となるわけです。
 
 いまから、お盆明けであると思えと自己に言い聞かせても、こればかりはむずか
しいものです。もらっていない報酬をもらっていると思うことが困難のように。


2009.08.06(木)【「汗かき人間」失敗伝】(富田太郎)

 辛い『夏の季節』です。
 私は、毎晩大量のお酒?水?コーラー(ただし、ペプシに限る)?を飲むせいか、
我がESGにおいて、O君と1、2を争う『汗かき人間』です。

 この時期、客先を訪問すると、しばらくは、(大量の)汗が止まらず、お客様に、
「誰か!先生に冷たい水とタオルを持ってきて!! 先生!しばらく、涼んでから
仕事の話をしてください!」と言われる始末です。

 その『汗かき人間』である私は、先日、大失敗をしてしまいました。

 登記所から、『取締役会議事録の会社実印の捺印部分が不鮮明』といわれたため、
職員の方と論争しようと、登記所に乗り込んだところまではよかったのですが、
「鮮明だ! いや不鮮明だ!」と言い争っている最中に、運悪く、私の(大量の)
汗が議事録に滴り落ち、肝心の捺印部分が滲んでしまいました・・・・(汗)。

 あぁ〜やっちゃったよ・・・・捺印部分が、ぼやけてしまったよぉ・・・(涙)。 
 結局、会社に事情を話し、再度捺印してもらい、事なきをえましたが・・(情け
ない)。

 ところで、かのリチャード・ニクソン元大統領(Richard Milhous Nixon)も
『汗かき人間』だったそうです。

 その昔、ニクソンが、ジョン・F・ケネディと大統領の座を争った時、そのディ
ベートがTVで生中継されました。その時、『汗かき人間』ニクソンは顔に大粒の
汗を大量に流し、答弁は自信がなさそうに写り、これが全米の視聴者に悪印象を与
えました。

 結局、大量の浮動票が、(若々しくTV写りの良い)ケネディに流れてしまい、
それまで『ニクソン有利♪』と見られていた大統領レースが一気に逆転してしまっ
たそうです(ご存知のとおり、その後ケネディが大統領に当選)。

 ※ケネディの当時の選挙参謀によると、事前にニクソンが「汗かき人間」だとい
  う情報を入手し、(ニクソンのTV映りを悪くするため)、事前にスタジオの
  空調機の温度を上げに上げたそうです。汚いなぁ・・・・。
 
 (以上の出典『Just How Stupid Are We? 邦題「アメ
  リカ人は嘆く われわれはどこまでバカか」リック・シェンクマン 扶桑社』)

 でも、ニクソンさん! 私は分かりますよ。「汗かき人間」の辛さが・・・・。
暑いので、汗が凄く流れたのですよね。仕方がないですよ・・・・。

  ・・・・・・・・・・・

 ニクソンの失敗に比べれば、私の失敗なんか、小さいです♪
されど、夏は、『汗かき人間』には辛い季節です・・・・(涙)。



2009.08.05(水)【司法書士試験雑感(2)】(島根・渡部浩義)
 昨日に続き、司法書士試験の話です。

 現状の司法書士試験の難易度は、私たちの頃の20年前に比すれば格段に難しく
なっているようです。近年の度重なる関係法令の改正に対する対応は、受験生はも
とより、試験問題を作成される側にも相当な負担とご苦労があると思います。

 難易度が増し、ますます「総力戦」で取り組まねばならない試験でありながら、
残念ながら、私も手にした本年度の不動産登記記述式問題は、人生の貴重な時間を
かけて、人生の将来を賭して受験にくる人々に対してあまりにもひどい設問と言わ
ざるを得ませんでした。

 試験は水物と言われますが、基本的には、真面目に学習を重ねた者が順当に合格
していける司法書士試験であって欲しいと願ってやみません。試験委員の方々もか
つては、いずれかの国家試験受験生であったはずです。日々努力を重ね、辛い受験
生活を送っておられる受験生や、彼らを支える家族の皆さん方にも思いを馳せて、
どうぞ丁寧な作問をお願いしたいと思います。

 受験生の皆さん、皆さん方は、私の受験の頃と決定的に異なり、試験問題が持ち
帰れるようになっているのですから、今年度試験に対する客観的な合否の見込みは
既に立ったことだと思います。今年残念だった方、怪しい方は、悶々としてる時間
はありません。即、来年への受験準備へ気持を切り替えてください。不必要な受験
期間の長期化は、皆さん方の貴重な人生を狂わすだけです。受験回数を限定して、
短期総力戦を挑まれることをお勧めします。 既に地獄の三丁目の門を叩かれてい
るのですから...。

 日曜日試験だからといって、『ひやかし受験』などは、もってのほかです。



2009.08.04(火)【司法書士試験雑感(1)】(島根・渡部浩義)

 本欄7月16日の富田会員、7月17日の金子代表の徒然で、司法書士試験の話
題が取り上げられていましたので、つい、20年前を思い出してしまいました。

 昭和63年10月8日に簡易書留ハガキよる筆記試験合格通知が、私のもとに届
きました。
-------------------------------------------------------------------------
                通   知
 1.昭和63年度司法書士試験筆記試験に合格したから通知する。
 2.昭和63年度司法書士試験口述試験の受験票(裏面)を送付
   するから、受験の際持参されたい。
                             広島法務局長
------------------------------------------------------------------------
 
 このハガキを手にしたとき、私は、本当に天井に頭が届かんばかりにジャンプし
て、手放しで合格の喜びをかみ締めました。うれしかった。

 そして、口述試験終了後の最終合格発表日たる同年11月28日に地元法務局掲
示板に自分の名前(当時は、名前の掲示がなされていた。)を見つけて、身体の力
が抜けていったことを、今でも鮮明に覚えています。

 合格者名の公告のある『官報』を求め、家族にそれを見せながら、それまでの協
力、支援に対する感謝の気持を、自分でも信じられないくらい素直に伝えました。
父は『官報』をまじまじと眺め、「これが、日本国か。」と、一言だけこたえてく
れました。

 これといって、子供のころから勉強ができたわけでもなく、田舎高校を卒業し、
大学時代も概ね不真面目な学生だった私が、当時1万8500人前後の人が受験し
て400人程が合格する、合格率2%台の試験に挑んだのですから、田舎者の私や
私の家族にとって、司法書士試験は、ある意味で「総力戦」の試験でした。


2009.08.03(月)【裁判員制度と一般人の感覚】(島根・渡部浩義)

 いよいよ場所によっては裁判員制度による公判が始まるようですが、過日、県外
に住む友人から、「裁判員の候補者名簿に載ったようだが、何とか辞退する方法は
ないものか」という相談を受けました。相当深刻な声でした。

 裁判員裁判の対象は、映画「それでも僕はやっていない」のような痴漢行為等を
含む犯罪の全てではなく、@死刑又は無期の懲役・禁固刑にあたる罪、A法定合議
事件で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪となっています。

 つまり、殺人事件などの重罪に限られ、そのほとんどが、命が奪われ、血が流さ
れた犯罪ばかりですから、裁判員になると、その事件現場の写真等を嫌でも目の当
たりにせざるをえません。

 そのとき、テレビドラマ主人公のように冷静に推理をめぐらせ、その社会的背景
等にまで思いを寄せる対応が平凡に生きてきた一般の方に可能なのでしょうか。

 それよりも、過日、某新聞記事にて、「裁判員に心のケア充分に」と題する記事
が掲載されていましたが、裁判員の方が受ける心理的負担のほうが心配です。

 「市民の生の声を織り込んだ、迅速で適切な量刑の刑事裁判の実現!!」・・・、
司法の民主化の一環だとしても、一般市民の誰が望んだのかという問題はいまだに
残ります。

 ビックリしたのは、高名な刑事法学者の手による裁判制度を解説した書籍に「裁
判員に参加することは、ほとんどの国民にとっても『楽しい』ものになると考えら
れることです。」との一節を見つけたことです。もうこれは、市民感覚から遊離し
た完全に職業病的記述だと思います。

 裁判員制度については、われわれの間でも賛否両論がありますが、少なくとも、
現状では、国民に具体的で充分な制度周知をさせることなく、拙速に運用が開始さ
れんとしているように私には思えてなりません。


2009.07.31(金)【過酷な就活】(金子登志雄)

 不況で就職も厳しい状況ですが、衆議院議員の先生方もとうとう就職先が閉鎖さ
れ職を失いました。

 マスコミ報道によりますと、与党の先生方の就活がとくに厳しいようで、大物と
いわれる方々もドブ板に徹しているようです。

 会社の同僚ともおしゃべりするのですが、私が「すごいね。辻立ちのため朝早く
起きるだけでもたいへんなのに、日中も暑さをものともせず、あちこちに移動し、
演説し、握手し・・・、私には絶対に無理だ」というと、同僚は「たった1ヶ月頑
張れば、4年も身分保障されるのだから、ボクなら頑張るよ」。

 皆様はどちらでしょうか。

 私は、生来のものぐさのためか、体を動かすことには全く意欲がわきません。ス
ポーツなど、とんでもないことで、せっかく神様からいただいた体をいじめてはい
けないという固い信念のもとに生きています。お付き合いゴルフすら15年前にや
めました。自分で打った球を探し回るくらいなら、打たないほうがよいと思いませ
んか。

 こういう私ですから、議員立候補者の皆様のあのエネルギッシュな姿には、党派
を超えて羨望の念さえ感じます。

 あのエネルギーがあれば、私も、もっと事務所を大きくできたのでしょうが、開
業して10年以上も経つのに、相変わらずの傘張り司法書士です。しかし、司法書
士という職業があるので、就活する必要がないのは、幸せかもしれません。


2009.07.30(木)【カーテン】(島根・渡部浩義)
 
 どうでもよいことですが、首相官邸の記者会見場のひな壇のバックには、3枚の
カーテンがあることをご存知でしょうか。

 2枚は内閣総理大臣用、残り1枚は内閣官房長官用、官房長官は、通常、午前と
午後1回ずつの定例会見を薄い青緑色のカーテンを背にして行われます。そして内
閣総理大臣は、深紅と濃い青色の2枚のカーテンをもち、国家や皇室の慶事の折は
深紅のカーテンを背負い、平時やあまり良くない出来事の折には青い色のカーテン
を背負って、記者会見に臨まれるルールだそうです。
 
 私は、かつて首相官邸内部の見学の機会を得て、記者会見場はじめレセプション
ルーム、組閣後の写真撮影で有名な玄関正面の階段等を見学したことがあり、その
折にこのカーテンのことも知りました。

 一番ビックリしたことは、首相官邸は一般国民は、しかるべき手続を踏めば比較
的簡単に見学ができるそうですが、国会議員のセンセイ方は基本的に首相官邸には
入れないそうです(これ、そのとき官邸で取材準備をしているテレビ局の人に聞き
ました。)。
 
 過日の衆議院解散後の麻生総理の記者会見は、深紅のカーテンでしたね。衆議院
の解散は、国家の慶事なのでしょうか?

 前回の小泉郵政解散の折も、小泉氏は深紅のカーテンを背にしてました。不思議
なのは、「解散直後」ということもあるのでしょうが、この紅のカーテンを背され
ると、平素はあまりと感じる御仁も、顔が紅潮して話に迫力が出ることです(その
話の内容はさておき)。

 麻生首相は、かねてより、「しかるべき時期に私の判断で解散を決定します。」
と重ねて口にされていましたが、私も学生時代から疑問が解けないのが、解散権は
内閣総理大臣の専決事項かという問題です。憲法第7条または69条の条文を素直
に読めば、解散権は内閣総理大臣の一身に専属していないような気がしてなりませ
ん(有名な苫米地事件においても、結局、裁判所は憲法判断を回避しています。)

 いずれにしても麻生首相は、念願の解散を実行されたわけですから、ある意味で
自己の力の大きさの感激に打ち震えて目に涙されたのかも知れません。でも、憲法
施行当時の首相であったおじいちゃん(吉田茂氏)は、当初この首相解散権に疑問
を呈し、野党にも根回しをした上で、実は慎重に解散を実行されたようなことを、
ものの本で読んだ記憶があります。

 暑い夏、実質40日に及ぶ選挙戦が繰り広げられますが、皆さんカレンダーの8
月30日には印をつけておき、選挙には必ず行きましょう(不在者投票も、現在は
手続至極簡単です)。


2009.07.29(水)【私的継続革命論??】(富田太郎)

 最近、中国の「文化大革命時代」を分析した書籍を読みました。この時代、人々
は階級闘争を強いられ、現在では非劇の時代といわれています。この、文化大革命
のバックボーンとなったのが、毛沢東の「継続革命論」でした。

★継続革命論とは★  
 『革命により、「資本主義」から晴れて「理想とする社会主義の世の中」♪にな
ったとしても、常に昔の資本主義復活の危険性が存在するため、常に階級闘争を行
っていかなければならない。』

 ・・・えぇぇ!これでは人々は常に(永遠に)、闘争を行っていなくてはならず、
平和と安らぎの時間がないことになる???

 勿論 この理論は毛沢東死後、1981年6月中国共産党第11期6中全会で、か
の『歴史決議』が発表され、今では公式に否定されています。

 よかった、よかった♪

 ところで、私は本業のかたわら、何冊かの受験書を出しています。もともとは、
私は本業重視で、受験書等は、自分の人生の記念?生きざま?のつもりで書いてい
ました。また、私の著作などは印税もしれています。
 よって、数冊を書いた時点で、「晴れて自分の夢は達成」♪あとは本業に戻る予
定でした。

 が・・・・、一冊が終わると、新たな企画。人々が人生を楽しむ中、私は土日も
なく、コンビニ弁当を食べながら、やっとの思いで何冊か書き上げると、なんと!
今度は、既に出した本が、「法改正によって陳腐化」!慌てて改訂をすると、今度
は別の本が法改正によって、またもや陳腐化・・・(汗)。

 切りがない・・・(号泣)。こんなはずでは・・・もっと『優雅な生活』を夢見
ていたのに・・・。

 これでは、いつまでたっても執筆・改訂作業を行わなければならず、平和と安ら
ぎの時間がないことになります。

 あれっ???? 知らず、知らずのうちに私は『継続革命論』を実践していたよ
うです・・・(汗)。
 私の『歴史決議』はいつ来るのでしょうか・・・・・(涙)。



2009.07.28(火)【親会社の横暴&政権への期待?】(和出吉央)

 先日、親会社(上場企業。子会社の株式を100%所有)の恐ろしさをマジマジ
と感じました。

 親会社は、具体的な用件も告げずに自社へ子会社の取締役を全員呼びつけ、会社
法297条(株主による招集の請求)の手続を踏まず、いきなり臨時株主総会を開
催し、取締役の入れ替えを強行したのです。

 たしかに、株主も取締役も“全員出席”の状態での株主総会ですので、結果的に
は適法な株主総会の開催となるのでしょう。

 しかし、上場企業たる者がコンプライアンスを無視し、自社のエゴ丸出しにいき
なり“取締役の首切り”を実行してしまう姿に、強い憤りと恐怖感を覚えました。

 100%株式を所有する親会社であれば、任期満了まで(あと数か月だった)待
てば同じ結果を得られたわけですし、会社法に従ったとしても(少々時間と手間は
かかりますが)、確実に同じ結果となったはずです。

 聞けば、親会社は外国の資本がかなり入っているとのことです。

 低下したとは言え、主要上場企業40社における外国人投資家の持株比率平均が
40.7%という現状からしてみれば(2009.3末時点)、さほど驚くことではない
のかもしれませんが・・・コテコテの日本人からして見れば、驚きと怒りを感じず
にはいられませんでした。

 このような事件、未上場企業の数(約270万社)・労働者雇用数・外国資本率
等からも、やはり日本における未上場企業というのは、“JAPAN”を支えるも
のすごく大きい力を秘めているのだなあと改めて思いました。

 JAPANを支える未上場企業が、少しでもスムーズに(負担の少ないよう)事
業を承継していけるよう、会社法・民法・税制・税法等の改正等が相次いで実施さ
れていますが、どれも抜本的な解決のためのツールにはなっていないように感じま
す。

 政治への過度な期待は裏切られることばかりですが、ついつい、未上場企業にと
って“頼もしい政権”の誕生を期待してしまいます。

(ご参考)
http://company.nikkei.co.jp/news/news.aspx?scode=8253&NewsItemID=20090525NKE0265&type=2


2009.07.27(月)【日食は西から】(島根・渡部浩義)

 去る7月22日には、46年ぶりの皆既日食という天体ショーがありましたが、
皆さまの地域ではどのようにご覧になれたでしょうか。

 島根の山間部たる私の事務所周辺では、うす曇りのなか、比較的よく観察するこ
とができました。島根では、最大約8割強ほど太陽が欠けたでしょうか。これくら
いの欠け具合でも、なんとなく周囲が薄暗くなることに太陽の偉大さや、そもそも
日食という現象を起こす宇宙摂理の絶妙さ、荘大さを感じずにはいられません。

 私は、46年前の皆既日食の折にはこの世にまだ生はなく、前回がどのような騒
ぎであったか知る由もありませんが、今回は、夏休み期間中ということも相まって
か、日本全国かなりのヒートアップではなかったでしょうか。

 私は、土地家屋調査士の業務の一環として、以前から太陽観測による真北(しん
ぼく)測定という作業をしている関係上、太陽を観測するためのキットを持ってお
り、事務所前にキット装着のトータルステーションを低く据え付け、道行く子供さ
ん方に開放しました。レンズを覗いてくれた皆さんは老若男女を問わず、歓声をあ
げてもらえました。

 ところで、日食から話題転じて真北測定、ある位置からの真北を出す作業がなぜ
世で必要になるのか。これは色々な利用方法があります。一番ニーズが高かったの
はマンション等の高層建築現場におけるものでした。周囲に対する『日照』の確保
のため、真北の方向出しは重要な仕事でした(ただし、田舎に引っこんでからは、
このような仕事の依頼はありません)。

 いまひとつの大きな利用方法は、基準点(図根点)測量において、既存基準点の
位置が一点しか分からないとき、真北方向を算出することで、不明な基準点や、
法14条地図上の境界位置を復元するのにも利用できます(この作業もGPS機の
汎用化により今ではあまりやらなくなりました)。

 また、真北方向を算出する方法としては、北極星観測による方法もあります。こ
れは太陽観測によるそれよりも数段上の技能を要し、夜の気象条件にも大きく左右
されますが、成果は太陽観測のものよりも格段に良い成果が出ます。

 ちなみに、一口に『北』といっても、測量の世界では『真北』、『座標北』、
『磁北』など色々な『北』があります。詳しいことは、また別の機会に譲ります。

 机上の登記実務・学習に行き詰ったときは、外に出て、空を見上げるのが一番で
す。22日も一日中建物の中に籠もりっぱなしだったESGのメンバーがいたのな
ら、既に末期症状です。人間や法律の制度なんて、宇宙摂理に比すれば小さいこと
ですから。

(補記)
 7月21日(火)の拙稿【Mrs.Watanabe】に関して、ここで問題と
なっている「Watanabe」は「渡辺」さんであって、あなたの「渡部」さん
ではない、とのご丁寧なご指摘を読者の方からいただきました。これで、私も安心
して業務に邁進できます。 ありがとうございました。


2009.07.24(金)【特例有限会社の1人取締役】(金子登志雄)

 株式会社で取締役が1人(A)のときは、自動的にAが代表権を有しますから、
次のように2段階で登記されています。

---------------------------------------
    取 締 役 A
---------------------------------------
 東京都千代田区神田神保町三丁目23番地
    代表取締役 A
---------------------------------------

 ところが、株式会社の1種とされた有限会社では、1段階登記で、次です。

---------------------------------------
 東京都千代田区神田神保町三丁目23番地
    取 締 役 B
---------------------------------------

 これは、商法時代の有限会社の登記の仕方を会社法に準じさせると、修正作業
がたいへんなので、登記の特例として、従前方式のままでよいとされたものと思
われます。
 
 では、この有限会社が公告するとき、「取締役B」と表記するのか、「代表取
締役B」と表記するのかが問題となります。

 私は、代表権を有する取締役は、会社法で自動的に「代表取締役」と扱われる
ことになったのだから、「代表取締役B」と公告に表記するのが正しいと理解し
ていますが、ここで別の問題が生じました。

 「登記簿は『取締役B』なのに、その公告は間違っているじゃないか」といわ
れかねないことです。会社法に不慣れな地方の法務局で、そういう疑問を提示さ
れて、登記が遅れる可能性もあります。

 こんなことで、いちいち反論するのも面倒なので、官報販売所の担当者と相談
し、「取締役B」で公告することにしました。
 「登記簿謄本どおりだ。文句あるか」ということです。

 こんなことも登記を円滑に終わらせるテクニックの1つなんでしょうね。



2009.07.23(木)【未公開株詐欺事件 パート2】(富田太郎)

 以前、徒然に書きましたが、最近また「(数年後上場間違いない)未公開株を買
わないか」との勧誘電話がかかってきました。

 @未公開株の販売できるのは、当該未公開株会社や登録を受けた証券会社に限ら
  れること(ただし、グリーンシート銘柄以外の未公開株の勧誘は原則として禁
  止されている)。

 A非公開会社の株式の譲渡には、当該会社の取締役会の承認がいる。

 等の話をしたところ、またもや、突然電話を切られてしまいました(苦笑)。

 仮に詐欺師だったとすれば、もう少し会社法及びその関連知識を勉強してから、
勧誘電話すればいいのに・・・・(笑い)。

 やはり、人を騙すにも、最低限の知識は必要です。

 ところで、最近「サンジェルマン伯爵」に関する書籍を読みました。
 このお方、18世紀のフランスに突然現れ、当時の社交界を賑わした謎の人物で
す。10カ国以上の言語を自由に話せ(と自称)、化学・錬金術・古今東西の古典
・学問にも精通しており、時の貴族は彼の話に魅了され、またルイ15世とも親交
を結ぶほどでした。

 が、このお方、少々怪しいのは、「ダイアモンドの傷を消す秘法」「不死の秘法」
を唱えたり、また、「(秘薬の)丸薬とパンと麦しか口にせず、年齢300歳」と
も自称していました。

 ある日、この話を怪しいと思った貴族が、サンジェルマン伯爵の従者に
 「伯爵が300歳なんて嘘だろ!」と問い詰めたところ、

 この従者曰く
 「私は伯爵にお仕えして、まだ、たった100年にしかならないので、伯爵が
200歳なのか300歳なのか? さぁ〜て、その辺の真偽は、私にも分かりかね
ます。」

 ・・・・・・・・・・・・・。

 ここまで、徹底していれば、当時の人々は、皆、信じただろうな?? と思いま
した(笑い)。

 私を騙そうとした、詐欺師さん! この「サンジェルマン伯爵」の本を読むよう
にお薦めします♪ 是非、勉強してくださいね。



2009.07.22(水)【59歳と79歳】(金子登志雄)

 59歳のワトソンがゴルフの全英オープンで、もうちょっとで優勝だったことに、
中高年の星として喝采をあびています。

 一方で、竹下・小渕・橋本派の流れを汲む自民党の名門派閥・平成研究会の会長
津島雄二氏(青森1区)による7月19日の突然の引退声明が政界に波紋を広げて
います。平成研も、今後は、鳩山邦夫グループや石破茂グループに分裂してゆくの
でしょうか。

 79歳ということですから、この暑い夏に40日も選挙活動したら、身が持ちま
せんから、賢明な選択だったのかもしれません。引退する河野洋平氏(72歳)や
小泉元首相(67歳)よりも、ずっと上の年齢ですから。

 面白いものですね、かたや年寄りが頑張ると絶賛され、他方ではマイナス評価で
す。ゴルフなどのスポーツは、わが身の生活と無関係だから、年寄りが頑張ると勇
気をもらい喝采できるのに対し、政治などわが身の生活と関係する問題では、邪魔
だと思い、年寄りに冷たくなるのでしょうか。

 同じスポーツでも相撲は寿命が短く30代で引退です。サッカーもそうでしょう。
水泳はもっと寿命が短く、逆にプロレスやゴルフは、40代でも活躍できそうです。
剣道や馬術も寿命が長そうです。

 政治家や企業のトップは60代が多いように思います。私の職業である司法書士
も、私自身の勝手な見込みですが、私や多くのESGメンバーのように職人タイプ
の場合には60代が最も脂の乗り切った年代だと思っています。40代の頃には、
みえなかった問題もみえるようになりました。

 司法書士業務でも全英オープンをやってほしいですね。会社法部門なら、私も決
勝に残れる自信があるのですが・・・。



2009.07.21(火)【Mrs.Watanabe】(島根・渡部浩義)

 今さらこの欄で、というのも遅ればせながら、私は「わたなべ・ひろよし」と申
します。「わたべ」ではありません。

 ところで、先日ある会合の懇親会の席上、「お宅の奥さんは、アメリカの投機筋
あたりでは随分と名を馳せておられるようだが、細君は一体いくらぐらい儲けたん
だ。」と、十年来のお客様から話題をふられました。

 恥ずかしながら、私はその話の趣旨が飲み込めず、『一体何のこっちゃ?』状態
です。「一家四世代、毎月食べていくのに精一杯ですが...」と真面目に答えれ
ば、先方は「亭主の知らないところで、どれくらい稼いでいるのか、夜にでもイン
ターネットで『Mrs.Watanabe』を検索して、ついでに奥さんにもハッ
キリ尋ねてみな。」と、いたずらな笑みを浮かべておられます。

 早速、その夜、その御仁に言われたとおり検索してみると... http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&aq=0h&oq=Mrs.&hl=ja&ie=UTF-8&rlz=1T4DAJP_jaJP281JP281&q=mrs.watanabe
 『なんじゃこれは...。』
 でるわ、でるわのMrs.Watanabe(ワタナベ夫人)達。本当に亭主の
知らないところで、いや公認でかどうだか、あなたたち一体何してるの、そんなに
お金が余っているの、それともヒマなの...。

 そもそも、なぜ『Mrs.Watanabe』なのか、日本を代表する姓ならば、
どうしてSatou,Tanaka,Suzukiではないのかも全く不可解です。

 7月14日にFX(外国為替証拠金取引)投信のカリスマディーラーといわれて
いた資産運用会社の女性代表社員らが金融商品取引法違反容疑で摘発を受けたこと
がマスコミに大きく取り上げられていましたが、個人投資家から集めた金銭の扱い
高や、被害額を聞いて、田舎在住の頼りない夫君(私のこと)は、足がすくむばか
りです。

 人間の欲には際限がないということなのか、世の多くが生活が苦しくて(?)
一攫千金を狙ったのか、はたまたやはりお金ももてあましておられるということな
のか、今の世の中は本当に不景気なのか、実は...なのか、全くワケがわからな
くなってきました。

 商売柄、「株式」という出資権にも無縁でもなく、株式投資をはじめ各種投資行
為が資本主義の世の中においては重要な要素行為であることはなんとなくわかりま
す。ただ、ひとつだけ言えることは、最近は「額に汗して働き、稼ぐ。」なんてい
う当たり前と思っていたことは流行らない世の中になっていたのでしょう。

 ちなみに、その夜の家内の所持金は、金1万と数千円あまりでした。
「今週の生活費なんだから手を出さないでよ!」と、こわい顔で釘をさされました。
わが家は厳しいリアリズムの中で生きています。  

 とりあえず、うれしいような、悲しいような。



2009.07.17(金)【マンゴー王国、前褐繚梶z(金子登志雄)

 昨日の徒然ですが、天下の国家試験である司法書士試験に「株式会社マンゴー王
国」という社名が登場したとは驚きました。

 東国原宮崎県知事がテレビに出ていたので、そのまんま思いついたのかもしれま
せんが、真剣勝負である国家試験問題としては、適切な社名だったとは思えません。
一般の方からも、しょせん司法書士試験はその程度と軽くみられてしまいます。

 試験中はそんなことも考えるヒマもないでしょうが、ひねくれ者の私なら、社名
に「王国」をつけてよいのなら、「株式会社マンゴー共和国」「株式会社マンゴー
合衆国」「株式会社マンゴー連邦」どころか、「株式会社マンゴー大学」「株式会
社マンゴー消費者庁」も、法務局は商号として受理するのだろうかと連想してしま
います。「ラーメン大学」の類かもしれませんが・・・。

 ところで、政局が動いてきましたね。マンゴー知事さんも、一時の前鰍フ勢いが、
後鰍ノなってしまいました。全国知事会で提案した政党支持の表明も賛成ゼロで、
浮き上がってしまったようです。

 こうなりゃ、社名を変更し、再出発するしかありません。知事さんも宮崎県重視
の姿勢を前面に出し、米国で大活躍しているイチローを口説いて、「マンゴー一路
株式会社」など、どうでしょうか。それでも衆院議員になりたいなら、「株式会社
マンゴー党」でも旗揚げして、地方分権を訴えることでしょうか。

 しまった! 
 天下の徒然に不適切表現をしてしまった。しょせん、ESGはその程度と軽くみ
られてしまいそうです。代表として不信任決議を出されてしまいそうですが、その
ときは、高らかにESGの解散宣言をします。


2009.07.16(木)【前鰍ニ後梶z(富田太郎)

 先日、出版社を通して、新刊本「楽学 商業登記法」の熱心な読者から質問があ
りました。

【読者の質問】

 商業登記法27条に、「同一本店所在地における同一商号の禁止」というものが
あります。これは、既に『(本店)東京都新宿区新宿一丁目1番1号(商号)株式
会社ESG』と登記されている株式会社がある場合に、上記同一本店所在地で、全
く同じ商号の「株式会社ESG」の登記(設立・本店移転)はできないというもの
です。

 ところで、私の本には、たとえ同一本店所在地でも、「ESG株式会社」であれ
ば、同一商号とみなされず登記できると書きました。つまり「株式会社ESG」と
「ESG株式会社」は、前梶A後鰍フ違いがあるので、登記上は同一商号とはみな
されず、登記申請は受理されます。

 読者の質問は、「本当か? もしかして、この部分は本の誤植ではないのか?」
との質問でした。

(失礼な!)「ちゃんと通達に基づいて記載しており、今後、試験の論点になりま
すよ。」と答え、事なきを得ました♪

【7月5日は司法書士本試験でした】

 話は変わって、数日後の7月5日に司法書士本試験が行なわれました。
なんと!「不動産登記法記述式 本試験問題」をみると、先の論点が出ているでは
ないですか!

 つまり、問題文には、「株式会社マンゴー王国」と書いてあるのですが、問題文
別紙登記簿には「マンゴー王国株式会社」と前鰍ニ後鰍フ違いがあるのです!

 見破ったぞ! この2つは別会社だ! ニヤリ♪ 先の論点を使ったひっかけ問
題だ♪ さすが私です♪ 「先見の明」がある♪

 ???????

 が、問題文を深く読むと、どうやら、単なる本試験問題のミス・誤植だったよう
です・・・(涙)。

 はぁ〜・・・・いいのです。私の単行本だって、誤植はありますから・・・。
でも、新手の論点だと思ったのに・・・。


2009.07.15(水)【司法書士は「法律家」?】(島根・渡部浩義)

 「司法書士は、法律家か?」こんな議論が、私がこの世界に入った約20年前に
は、特に若手司法書士の集会の場で、盛んに行われていたように思います。

 今日このごろは、そのような議論はほとんど聞かなくなりました。司法書士が簡
易裁判所民事代理権を得たからでしょうか。それとも意外なところでは現在では司
法書士試験に「憲法」が試験科目として科されるようになっているからでしょうか。

 今現在、司法書士を目指して辛い受験生活を送っておられる皆さんや、近年試験
に合格されて司法書士となられた方々は、このあたりどのような考えをお持ちです
か。

 かつて大学在学中の受験時代に、お世話になっていた教官と雑談を進めるうちに
司法書士試験には「憲法」が受験科目にない、と私が言うと、「えっ。」と絶句さ
れたことがあります。

 教官も当時から司法試験同様に、司法書士試験の合格率の異常とも思える数字に
は認識があったようですから、法律職の一種として司法書士試験にも当然「憲法」
が試験科目として存在すると思われていたのでしょう。

 簡裁代理権の特別研修においても、「憲法」や「要件事実論」に対する割り当て
時間、そもそも制度研修期間がおそろしく短いことに、私(昭和の時代の試験合格
者)は、一種の大きな不安感をおぼえました。
 「習うより慣れろで、新しい海原に漕ぎ出しなさい。」と、地図も羅針盤も与え
られずに未知の海原に放り出されたようでした。今でもその不安感は払拭できませ
ん。

 「法律家論争」盛んな先の頃にも批判覚悟で言わせてもらえれば、私は「そのよ
うな議論は下らない。」と思っていました。そもそもが、元来、司法書士は基本的
に『幸福産業』であったはずとの思いが強かったからです。

 簡裁代理権取得をはじめ、取扱業務も、業務周辺環境も大きく変わり、『辛い仕
事』、『人様の不幸を相手にする仕事』が増えたような気がします。これらの仕事
を得た引き換えに、私たち司法書士は「法律家論争」をしなくて済むようになって
いたのでしょうか。



2009.07.14(火)【都議選の定員】(金子登志雄)

 都議選の開票状況をみておりましたら、千代田区が定員1名で、世田谷区や大田
区が8名という状況で、その差の大きさに、ちょっと驚きました。

 東京のど真ん中の千代田区の人口が少ないことは容易に想像できますが、痩せて
も枯れても、国会も政党本部も存在する日本の中心地であり、当事務所が存在する
ところでもあります。東京23区では新宿支部に継ぐ司法書士数を誇る司法書士事
務所密集地です。

 で、ネットで人口を調べましたら、千代田区の人口は、約4万5000人(平成
18年11月現在)に対し、世田谷区は81万7000人(平成18年5月現在)、
大田区は67万5000人(平成21年6月現在)でした。桁まで違う圧倒的差で
した。

   http://tamagazou.machinami.net/tokyo23.htm  

 千代田区では1万票に満たないのに当選し、世田谷区では2万6000票で落選
していました。千代田区は、会社数は多くても、人口が極端に少ないわけです。

 350名近くの司法書士が千代田区で開業していますが、住所まで千代田区とい
う人は、ほとんどいないでしょうから、これは仕方ないですね。私も神奈川県民で
あり、都民ではありません。

 千代田区の定員が1名のため、自民党の大物が落選したようですが、世田谷や大
田区なら、8名の中に入ったことでしょう。

 将来、都議選に立候補したい司法書士は、世田谷区か大田区に事務所を移しまし
ょう。



2009.07.13(月)【「○○県民党」誕生?】(根来川弘充) 

 注目の都議会議員選挙は、民主党の勝利に終わったようですが、昨今は、選挙、
特に衆議院議員の解散総選挙の話題が多いようです。  

 昨今といっても、麻生首相の就任当初から、この話題は出ていたのですが、いよ
いよ任期満了が近づくにつれ、現実味が増してきた感があります。

 麻生首相がサミットで各首脳と並んでいる姿をニュースで見たのですが、一番端
でニコニコされている姿を見て、他の首脳から相手にされていないのでは? と感
じたのは私だけではないと思います。

 さて、今回の解散選挙にあたって、いままでと違って少し気になる動きがありま
す。それは、地方分権を訴える一部の知事等の自治体トップの方々の動きです。

 彼等は、「各政党のマニフェストを見て、支持政党を決めるか否かも含めて検討
する」というのですが、もし仮に、支持政党を決めた場合、知事としてこれをどの
ように実行するのでしょう?

 各自治体職員に支持を要請をするのでしょうか? それとも、広く、市民にも支
持を要請するのでしょうか?

 政党支持とは、政治活動になると思うのですが、いつから自治体は、政治団体に
なったのでしょう? たとえ、自治体の支持そのものが、各自治体職員及び市民を
強制するものでないとしても、何らかの拘束を与えるのではないかと危惧します。

 自治体職員及び市民は、国政の政党支持まで各首長に委託したでしょうか? 委
託していないにも関わらず、拘束されるのであれば、そこには、各自治体が、人権
侵害をおこなうという重大な問題をはらんでいると思います。

 そもそも、地方自治とは、日本国憲法にその制度根拠があります。憲法に定めが
あるということは、国政があやまった方向に行かないよう、その抑止力としての役
割が地方自治体にはあるということです。

 しかし、「各自治体の首長になれば、あたかも一政党の党首になる」というよう
なことが一般化すれば、もはや地方自治は、国政の一部署にすぎず、その役割を果
たせなくなります。つまり、地方自治の存在意義を失い、不要ということになるで
しょう。

 今、ある地方自治のトップに立った方は、国政のトップまで、視野に入れていま
す。「地方分権」を大儀としていますが、実は、それによって、注目を集め支持を
獲得し、その反対の方向を目指しているようにしか私には見えません。



2009.07.10(金)【専門家】(島根・渡部浩義)

 資格者として駆け出しの頃は、「オールラウンド・プレーヤー」という言葉に私
は随分と憧れました。
 野球で言えば、内・外野グラブもつけるし、ファーストミットにキャッチャーミ
ットだって、打撃でもスイッチヒッターとしてもOK、そんな状態になれることに
憧れていました。

 登記の専門家を標榜する私たちが登記実務を執るうえで、特に苦手意識を覚える
分野に「税務に関する知識」があります。もちろんこれは、皆さまご存知のとおり、
「税理士」・「公認会計士」の専門分野になりますが、依頼者の方々からは、登記
の依頼時に「この登記をすることによって、税金はどれくらい負担することになる
のか?」という質問をセットでよくいただきます。

 登記に関係する税務については、不動産、商業登記問わず一応の課税のしくみは
説明できるつもりでいますが、「税額がこれだけです。」と自信をもって答えるこ
とは、改正が毎年のように行われる税法の性格からも、私には毛頭対応ができませ
ん。

 登記簿の字面(じづら)をいじることは比較的容易であっても、そのことによっ
て後にかかる税金のことに確信的な判断が出せず、登記の受託を躊躇して、依頼者
に、まず税理士さんへの相談を勧めることが度々あります。

 「世の中で、一番実益的で、強い資格は何か。」などという議論を資格者仲間で
交わすことがありますが、どうやら「税務関係の資格」ということに落ち着くこと
が多いような気がします。ただ、これにも税務資格者側からは異論があって、「や
はり法律職資格だ。」といわれることもあります。結局、「結論は出ず!」です。

 金子代表執筆の8日の徒然において、「相手が司法書士でも、テーマが『会社の
計算』になると...」との一節がありましたが、これはまさに現在の私たち司法
書士界の現状を言い得た一節でしょう。(ですから、当ESGの「会社の組織再編」
や「会社の計算」を得意とする金子代表はじめ一部のメンバーは、司法書士界にお
いてもかなり特異な存在です。)

 「法務、税務、諸届等の『ワンストップ・サービス』」という言葉が世で叫ばれ
るようになって久しくなりますが、周辺近傍に隣接資格職の存在も少なく、私のよ
うな僻地部の開業者は、あらゆる手段を講じて取得できる情報を手にしても、残念
ながら「オールラウンダー専門家」にはなれず、「一科目専門バカ」になれてなん
とかようやく、というのが最近身にしみて感じている現実のようです。


2009.07.09(木)【抱き合わせ株式】 (金子登志雄)

 抱き合わせ株式とは、合併で生き残る会社(存続会社甲)が有する合併で消滅す
る会社(消滅会社乙)の株式のことであり、よく使われる用語です。

 甲が乙(発行済み100株)の株式10株を持っているような状態です。合併で
乙は消滅しますから、甲の財産である乙株式(抱き合わせ株式)も消滅するので、
その分、甲に増える財産も減少します。

 典型例が、親会社が子会社を吸収合併する場合ですが、乙から受け入れる財産が
抱き合わせ株式の簿価より小さければ、抱き合わせ株式消滅「損」が生じるなどと
使います。

 本を執筆する際、これまでは、「抱合わせ株式」と書いてきましたが、今度の本
では「抱き合わせ株式」にしました。
 ところが、法人税法では「抱合株式」、企業会計基準では「抱合せ株式」です。

 「抱合株式」、「抱合せ株式」、「抱合わせ株式」、「抱き合わせ株式」の4つ
の書き方のうち、どの記載法を採用するかという、どうでもよい話ですが、書く方
としては気になります。

 「抱合株式」なら、「だきあわせ」なのか「だきあい」なのか、「ほうごう」な
のか、わかりません。

 それよりも、なぜ、こんな用語を使うのかという根本的疑問があります。「持合
(持ち合い)株式」からきた用語のように推測しますが、上記の例をみても、一方
的に持っているだけで抱き合っていないじゃないかと思います。

 ちなみに、こんどの改正計算規則では、「先行取得分株式」ということになりま
した。こちらのほうがわかりやすいですね。 


2009.07.08(水)【債務超過】(金子登志雄)

 土日は、2日がかりで、7月23日の東京司法書士会千代田支部での講演レジュ
メを作成していました。4月に施行された新・法務省令(会社法施行規則、会社計
算規則)の解説です。

 会社法施行後3年を経過しましたので、私への講演依頼やセミナー講師依頼も激
減していましたから、久々のお声がかりです。

 相手が同じ司法書士なので、気が楽です。共通言語を自由にしゃべれますので。
これが経営者やサラリーマン相手だと、「持分会社の社員が・・・」などといえば、
「社員=会社員」と伝わってしまい(正しくは「社員=会社の持ち主」)、言葉を
慎重に選んで話さねばならず、疲れます。

 ただし、相手が司法書士でも、テーマが「会社の計算」になると、経営者相手よ
りも疲れます。資本金や準備金などにつき、頭ではわかっていても、実感がわかな
いようだからです。

 債務超過もそうです。経営者であれば、会社はカネが回っている限りつぶれない
という感覚がありますが、法律家は、「債務超過=会社に価値がない=株式価値ゼ
ロ」という見方をしてしまいます。

 これは質屋の発想です。担保価値の発想です。
 企業は生命体ですから、いまは体力がなくとも、明日は大儲けするかもしれませ
ん。いまの債務超過は、先行投資の結果かもしれないのです。将来性を買って、企
業価値を把握しなければなりません。

 もっとも、先行投資の債務超過と、先行きのないそれを区別できないのが普通の
人間です。株式投資で失敗しないためには、「債務超過=会社に価値がない」と思
っていたほうが安全かもしれませんね。大儲けはできませんが、大損もありません。



2009.07.07(火)【役員変更登記ほか】(金子登志雄)

 3月決算会社の定時株主総会も終わり、役員変更登記等のピークですが、他の司法
書士のみなさんの多忙ぶりは、どんなものでしょうか。

 私の場合は、独立系の中小企業の顧客は任期を延長しているところが多いので、登
記依頼はなく、数少ない顧客である上場会社及びその子会社の役員変更ばかりでした。
上場会社の子会社では、任期は従前どおり、取締役は2年、監査役は4年というとこ
ろが多いようです。

 上場会社自身でも、私が思っていた以上に、役員がよく変わります。役員が交代し
ないと部長も交代しない、部長も交代しないと課長も交代しないで、下がつかえてし
まうからでしょうか。風通しをよくする日本企業の知恵かもしれません。

 法務局もよく人が変わりますが、これは困ります。新しい赴任者が張り切って、昨
日までよかったものを急にダメにすることがあるからです。その逆はまずありません。

 特に困るのが不動産登記の担当者が商業登記の担当者に代わったときです。
 不動産登記は、相対立する利害関係者(売り手と買い手など)が存在するため、印
鑑が濃い・薄いなどまで慎重にチェックしますが、商業登記には、そのような関係が
ありません。登記が無事に済めば、みんなが喜ぶ関係にありますから、違法な手続以
外の形式的部分は、そう厳しいチェックは不要といえます。

 にもかかわらず、不動産登記の審査ばりに、商業登記書面の審査がなされると、ど
うでもよいと思える部分にまで、ダメ出しされることもあります。

 大手法務局では人が多いので、「その程度はいままでOKにしていた」などと前例
が伝わりますが、小法務局では、そうは行きません。

 相手(書類を提出する先)に応じて対応を変える・・・これもベテラン司法書士の
技術かもしれませんが。



2009.07.06(月)【静岡地方法務局】(金子登志雄)

 どうやら静岡県知事選は下馬評のとおり民主党の勝利に終わったようです。麻生
首相は、自らの手で解散できるのでしょうか。

 政治向きの話は横において、静岡県庁のすぐ横に静岡地方法務局があります。何
年か前に、合併の登記で訪問したことがありますが、目の前が駿府公園で、実に環
境のよいところでした。

 http://houmukyoku.moj.go.jp/shizuoka/table/shikyokutou/all/0800.html

 駅からも歩いて行ける距離で、こんな環境で仕事をしてみたいなと思ったもので
す。

 このように各都道府県で中心となる法務局は、交通の便がよいところにあります
が、出張所になりますと、駅からバスやタクシーに乗らねばならないところが少な
くありません。そのため、必ず法務局に行かねばならないとされていた当時は、小
さな登記でも半日以上を要することが少なくありませんでした。必然的に、補助者
(従業員)のいない零細事務所は、留守がちになり、たいへんでした。

 現在は、電子申請が主流であり、法務局を直接訪問する機会は、めっきり減りま
したが、私も、昔は、よく出かけたものです。北は北海道の稚内、南は大阪法務局
まで行っています。ここ数年、お腹周りが太ってきたのも、電子申請のせいかもし
れません。  

 目を都内に落とすと、東京23区では、江戸川出張所は、一度も行ったことがあ
りません。単に、私の顧客がそこを本店所在地にしていないというだけの理由です
が、私よりベテランの人は、都内の全法務局を踏破しているのでしょうか。

 法務局に訪問した印のスタンプでも置いてくれれば、わがESGメンバーも、ス
タンプ・ツアーを競ったのでしょうけど。


2009.07.03(金)【会計監査報告も招集通知に添付】(金子登志雄)

 当ESG法務研究会が重要条文のミニ解説を担当しております『「会社法」法令
集〈第6版〉』は、順調に売れており、御礼申し上げます。

  http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4502979902.html

 さて、すでにお買い求めいただいた方に、中央経済社のHPに、訂正箇所がアッ
プされましたので、お知らせします。

  http://www.chuokeizai.co.jp/information/978-4-502-97990-3.html

 法務省の法令データシステムや公表資料と照合していないのかと思う方もいらっ
しゃるかもしれませんが、そちらも漏れがあることもあり決して完璧ではありませ
ん。官報で公布されたものだけが正式なものですから、条文集の編集では、常時官
報をウオッチし、それをもとに丹念に精査しておりましたが、行き違いで4箇所に
漏れを生じてしまったようです。  

 条文部分ではない訂正箇所5番目の、計算規則133条のコメント、

「旧法同様に会計監査権限のみの監査報告は株主に提供不要」  
            ↓
「会計監査権限のみの監査報告も株主に提供が必要になった。」

は、私の読み取りミスでした。

 監査役の監査報告を定時総会の招集通知に添付するかという旧計算規則161条
(現133条)の文言の監査役設置会社のあとに「(監査役の監査の範囲を会計に
関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。次号において同じ)」
というカッコ書が追加されたわけですが、1月29日公表された改正原案(パブコ
メ案)にも、その条文は改正予定とされておらず、突如、3月27日の確定法案の
内容に盛り込まれました。

 それは承知していたのですが、改正案の解説には、実質的改正はないとまで説明
されていましたので、単なる補足事項の追加と油断していましたが、この「次号に
おいて同じ」という追加文章のために、旧商法の古い時代からずっと不要とされて
いたものが、逆転し、必要に変わったことに気づくのが後れてしまいました。

 立案者は、小さい改正と判断し、説明する必要もないと判断したのかもしれませ
んが、不意打ちを食らった思いでした。

 この改正に気づいている方は、ほとんどいらっしゃらないようですので、総会開
催時期になりましたら、思い出してください。  



2009.07.02(木)【未上場企業における持株制度】(和出吉央)

 ここ最近、未上場企業における自社の持株制度に関するお問い合わせをいただく
件数が増えてきています。中でも一番多いご相談は、退職時の自社株買取りに関す
るトラブルについてです。

 以下、ある会社の経理部長さんからのご相談内容です。

 「これまで役員や従業員が入社・退職するたびに、その役員・従業員が自社株の
購入・売却を繰り返してきたのだが、先日、退職する従業員から、  

 “これまで配当はほとんどなかった(実際は約20年で一度だけ)のだから、購
入(出資)期間の利息や株価値上がり分の意味合いも含めて、1株5,000円
(購入金額の5倍)で買い取って欲しい”

 と言われちゃったんだけど、いったいどうすればいいかなあ?」

 この会社は、会社の慣習上、役員・従業員の中で、オーナー社長が指名した者
(気に入った者?)のみが自社株を購入できるという制度を採用しており、運営上
は、購入者(出資者)へ代金の「預り証」を発行するのみです。代金の移動につい
ては、会社名義の銀行口座を通しています。

 株価は概算で1株あたり純資産価額が約23,000円とのことです。ちなみに、
この会社は過去一度も株主総会を開催したことはありません。

 この会社が、持株会制度(民法上の組合)を採用し、適法な財源に基づき配当を
実施していれば、少数株主(非支配株主)として配当還元価額(500円)での取
引が税法上も適正価格であると認定できたのでしょうが、実体を認識しがたいフワ
フワした持株制度を採用していたため、株式代金の移動のみを見れば、会社が自己
株式の取得と処分を繰り返していると認定される可能性も否定できません・・・
(当然、会社法上の手続は履践していません)。

 このご相談に対する回答は「他の株主には5,000円で買取ることを内密にす
ることを条件に、ご希望どおり、1株5,000円で買取らせてもらいます。」と
言って、即金支払いがベターです。

 株主総会を一度も開催したことがないような会社ですから、紛争に持ち込まれた
ら・・・ひとたまりもありませんね。


2009.07.01(水)【上から読んでも下から読んでも】(金子登志雄)

7月になりました。選挙がきな臭くなってきましたが、麻生首相も都議選の応援に
がんばってますね。

 応援のときには、「はじめて、生(なま)麻生をみた人手を挙げて」「上から読
んでも下から読んでも生麻生・・・」と笑わすとか。ぜひ、生で聞いてみたいもの
です。橋下知事や東国原知事の漫談演説と、どちらが面白いのでしょうか。

 それにしても、最近の自民党はカラ元気ばかりで、かつての迫力や、権力をもっ
た者の怖さを感じさせませんね。東国原知事にも、「総裁候補にするなら」といわ
れてしまいました。

 戦後60年以上も経過し、制度疲労し役割が終わりつつあるのでしょうか。それ
とも、小選挙区制になって、派閥の力学が働くなったせいでしょうか。

 小泉元首相のお膝元の横須賀市長選でも、神通力が利かず、現職の市長が破れ、
33歳の新人が当選しました。

 もう、かつての政党や個人あるいは年寄りが支配する「上から読んでも下から読
んでも同じ」ことが尊ばれる時代ではなく、若さや「チェインジ」が必要な時代の
ようです。明治維新のときも、現在、歴史上の人物になっている偉人は、当時みな
20代、30代でした。

 生麻生さん、「上から読んでも下から読んでも」などと聴衆を笑わしているとき
ではありませんよ。かちかち山のタヌキと同じ背中に火がついてますし、「わたし
負けましたわ」と上から読んでも下から読んでも敗北宣言しているようなものです
から。



2009.06.30(火)【不知】(岡山・山本直樹)

 先日あるお客様が裁判の相手方から提出された「答弁書」をもって来所されまし
た。答弁書には、「○×の事実については、不知」と書いてあります。

 「○×の事実について知らないとは何事だ(怒)
 私の頼んでいる弁護士は、相手とちゃんと話をしているのか!」
とお客様はご不満の様子。。。。

 どうもお客様は「不知」を「そんなことは聞いたこともない」と解釈したようで
す。確かに、裁判用語で使う場合の「不知」は、「知らない」という意味ですが、
イエス(認める)やノー(認めない)という明確な返事をできないので、「あなた
の主張をする事実に関してはよくわからない。事実関係は、あなたの方で証明して
ください」という意味合いです。

 念のため、イエスという返事のことを民事裁判用語で「自白」といいます。もち
ろん、不利益な事実を認めることですが、犯罪を自白したようなイメージですね。

 訴えられた側については「被告」といいます。これも「被告人」(犯罪被疑者)
扱いされたとのイメージがあり、一般の方の把握しているニュアンスと異なります。

 一般用語としての意味と裁判用語の違いはなかなか難しいものですが、国民が刑
事裁判に参加するという「裁判員制度」はうまくいくのでしょうか?! と心配に
なりますが、裁判員制度は、一般素人の意見を裁判に反映することですから(その
ため司法書士は裁判員になれません)、徐々に用語のほうが見直されるかもしれま
せんね。詳細は「不知」ですが。


2009.06.29(月)【裁くのは俺だ!(I, the Jury!)】(富田太郎)

 このところ、定時株主総会関係の仕事に追われ、悪戦苦闘の毎日でした。

 一般的に司法書士は、会社の作成した議事録に従い、登記のみをするのが仕事と
思われていますが、実際には、株主総会スケジュール立案・招集通知・参考書類の
作成あるいは助言など多岐にわたっています。

 会社が作成してくる場合、その書類(株主総会関連書類)を見ると、その担当者
の実務能力がよく分かります。

 やはり、上場会社の場合、弁護士事務所・信託銀行・証券会社等の指導・資料も
あるため、素晴らしい内容です。こんな職場環境にいたら、総会関係に限れば、弁
護士以上のスペシャリストになれるだろうなぁ・・と思ったりします。

 もっとも、注意すべきは上場会社の子会社です。  

 以前、某サービス業関連の上場会社の子会社(資本金1億円。会計監査人非設置
会社。会計監査限定の監査役設置会社。)の招集通知案をみると、親会社の招集通
知・参考書類を真似たのでしょうか? あるいは親会社の法務部が作成したのでし
ょうか?

 ・計算書類が承認事項でなく、報告事項になっている・・・・(汗)

(えっ???設立以来一度も、決算承認してなかったの???)

 ・会計監査限定の監査役設置会社なのに、「取締役等の責任免除」の定款変更を  
  行なっている・・・・・・(汗)。

 『上場会社の書式は絶対じゃないよぉ〜。会社の規模によって、決議事項等変わ
るのだよ。勝手に法律作らないで〜!』と言いたくなりました。

 ミッキー・スピレインのハードボイルド小説に、      

    『裁くのは俺だ!』(原題:I, the Jury!)

 というのがありましたが、こと株主総会の決議内容については、あくまでも会社
の規模・形態に基づき、会社法に従わなければなりませんね♪

PS
 『楽学司法書士 商業登記法』富田太郎 P975(住宅新報社)が
発売になりました♪        

     http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32271141

 ご興味のある方は、是非、書店でご覧ください。


2009.06.26(金)【有限責任監査法人の代表者事項】(金子登志雄)

 聞くところによると、某大手監査法人も、7月1日から「有限責任監査法人」に
なるようですが、この有限責任監査法人が会計監査人の場合には、その重任等の登
記において、気をつけねばならないことがあります。

 こういう書き方をすると、もうおわかりのように私も失敗経験者です。

 先日、会計監査人である新日本有限責任監査法人の重任登記に必要だと思い、顧
客の株主総会招集通知に掲載されている監査報告書をみて、そこに記載されている
3名の公認会計士の一番上にある公認会計士の代表者事項証明書を電子申請で申請
しました。

 いつもなら、10分以内に「金〇〇円です」という表示がでるはずなのに、2時
間待っても何の表示もでません。公認会計士が何百人もいる監査法人だから、その
名前を探すのに手間取っているのかなと思っていましたら、突然、「代表者にその
ような者はいないので却下」という表示がでました。

 たかが謄抄本等の申請とはいえ、「却下」とは気分がよくないものです。電話の
1本もありませんでした。

 その後、富田司法書士などの協力を得て調べた結果、「有限責任監査法人」にな
ると、法人の代表権は一部の限定された公認会計士のみにするようです。監査報告
書の筆頭に公認会計士とか業務執行社員とか、指定有限責任社員とあっても「法人
の代表権」を有するとは限りません(監査自体では代表権があるらしいのですが)。

 たぶん、ここ数日で私と同じ経験をした方も少なくないことでしょう。来年の6
月には、もっと増えそうです。会計監査人設置会社の顧客がある司法書士は、お気
をつけください。



2009.06.25(木)【外へでよう−三角点余話2−】(島根・渡部浩義)  

 前回に続き、ESG専門分野から少し距離を置く、三角点余話です。

 一等から三等三角点までは、基本的に明治時代の測量成果に基づくものですから、
現在の技術をもってすれば大きな誤差が生じていたことは、仕方ないことです。

 近年、国土地理院においては、それまで採用していた測量に用いる基準となるべ
き地球の形状(準拠楕円体)を変更し、GPS等新しい技術を利用して、新しい運
用に基づく基準点の測量、再計算を行った測量成果を「測地成果2000」として、
現在、公開・利用しています。

 また、基準点については、三角点のみならず新たに「電子基準点」というものが
全国に配置され、GPSによる終日観測、また主要三角点についてもGPSにより
再観測がなされ、位置の再計算成果が提供されています。

 ようやく、登記測量も原則的には、この基準点数値成果を利用することが求めら
れるようになりました。

 戦前は、国家基準点測量は軍事機密とされ陸軍測地測量部という機関が、戦後は
国土地理院が管理を担ってきたものであることは前回も述べましたが、戦前の陸軍
時代の成果品も、私達は今なお現在の国土地理院の各地方測量部で閲覧・謄写する
ことができます。

 また、前回紹介した映画の題名中に「点の記」という文言がありましたが、これ
は、その三角点の所在位置、付近状況見取り図や、誰が選点し、測量したのか等を
簡略に記載し、後日その基準点を使用しようとする者の便に供するための書類です。

 それをみると、あらためて、記録、登録(登記)、文書といった「レジストレー
ション」・「ドキュメント」の力強さを感じずにはいられません。



2009.06.24(水)【外へでよう−三角点余話1−】(島根・渡部浩義)

 皆さんは、いずれかの場所(特に登山の折の山頂など)で『三角点』というもの
をご覧になったことがありますか。次のようなものです。

 【三角点 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%A7%92%E7%82%B9

 このなかでも、一等三角点から三等三角点までは、そのほとんどが明治時代にそ
れまで人が分けいったこともないような奥山に眺望を求めて測量者が入り選点、測
量されたものです。当時、公の測量成果、地図は軍事機密扱とされていたため、陸
軍の管理下にありましたが、いまは国土地理院が管理しています。

 明治時代の測量計算については、もちろんコンピュータの無い時代のことですか
ら、全国を14の区域に分け、計算尺、そろばん、対数表、三角関数表等を用いて
位置計算がなされています。  

 先人達が、今日と異なり物資も乏しく、交通の便も悪い時代に、基準点位置を選
定し、標石の埋設された三角点そのものを、今現在仕事で使用するとき、ある感慨
に耽ってしまうのは私だけでしょうか。

 ところで、先の明治時代の、陸軍陸地測量部の三角点設置・観測作業に携わった
男達のドラマが映画化され、今月20日より全国ロードショーが始まっています。
映画の名前は「剱岳 点の記」(原作−新田次郎・監督−木村大作)ですので、ぜ
ひご覧になってください。

       http://www.tsurugidake.jp/



2009.06.23(火)【登記情報提供サービスの検索機能】(金子登志雄)

 登記情報提供サービスをご存知でしょうか。有料ですが、全国の会社や不動産の
謄本を閲覧できる便利なものですから、司法書士や金融機関、不動産業者等が利用
しているものです。    

    https://www.touki.or.jp/GLIN.html

 さて、先週は、会計監査人の重任登記に必要なため、著名な大手監査法人である
千代田区の「新日本有限責任監査法人」の登記簿を閲覧しようとし、登記情報提供
サービスで「新日本有限責任監査法人」と打ち込み、クリックしましたところ、エ
ラーとなり、「請求のあった会社・法人等の記録はない」と表示されました。まさ
かと思い、何度、繰り返しても、エラーです。

 事務所を移転したはずもないのに、おかしいなと思い、「前方一致」にし、「新
日本」で検索したら、今度は、該当するものが100件以上もあるから、もっと詳
細な情報を示せと出ます。それはそうでしょう。新日本製鐵はじめ、多数の法人が
新日本を名乗っています。

 そこで、「前方一致」「新日本有限」にして検索したら、やはり、そのような法
人は存在しないとのエラーになるのです。

 「新日本有限責任」にしたり、何度も何度も挑戦したのですが、無理でした。ギ
ブアップし、仲間の司法書士に応援を頼みましたら、数分以内にみつけてくれまし
た。「法人」「新日本」「前方一致」で検索したら、すぐに出て来たようです。私
は、「商業・法人」「新日本」「前方一致」で検索したため、100件以上だから
再検索せよという表示になったわけです。

 もう1つわかったことは、たとえば、いろは商店株式会社であれば、「いろは」
「いろは商店」で検索し、「株式会社」も「株式」も入れてはいけないようです。
同様に、「有限責任監査法人」であれば、「有限」も「有限責任」も検索の際は含
めてはならないということです。「有限責任監査法人」全部が「法人種別」だから
です。

 いま、改めてみてみましたら、
 注1) 「1商号・名称」又は「2ヨミカナ」の場合は、会社法人種別は入力しな
いでください。

 と注意書きがありました。私がいけないのでしょうか。



2009.06.22(月)【外へ出よう−権利の客体−】(島根・渡部浩義)

 私は、土地家屋調査士の末席もあたためている司法書士との兼業者です。

 土地家屋調査士は、よく測量士さんと勘違いされますが、不動産登記簿の最初の
頁(表題)にある土地の面積とか建物の構造とかの登記を担当する仕事であり、所
有権や抵当権という権利の仕事を担当するのが司法書士です。
 「表示の登記」と「権利の登記」の違いです。

 さて、司法書士の先生方で、表示に関する各登記に必要な添付情報(書類)を漏
れなく理解され、また依頼者からこれらの情報を徴求できる方はどれくらいおられ
るのでしょうか。

 先日も、土地の分筆を依頼されたある老司法書士に「何度も現場にでかけ、何を
同じことガチャガチャやっているんだ。地図の上に線を一本入れてくれればいいん
だ。」とキッパリいわれてしまい、いまだにこのような認識の同職者もおられるの
だと、少し気持ちが萎えました。

 あらためて指摘するまでもなく、表示に関する登記は、表題登記にはじまり現場
において目に見える不動産を物理的に相手にするものであるし、権利の登記は、登
記簿(登記事項証明書)上でこそ、その内容は文字で確認できるものの、あくまで
観念的なものであることは指摘するまでもありません。

 司法書士が「権利、権利、対抗力」と叫んでも、その客体の位置や、大きさ、筆
界線がグラグラしていれば、権利も何もないと思うのですが...。

 昔から、表示(題)関する登記は、不動産登記の世界の中ではどちらかといえば、
軽んじて扱われてきたきらいがあります。そこから派生した過去のイイ加減な仕事
に今日の土地家屋調査士は、苦労を強いられているといってよいでしょう。
 その点は後日の問題にしましょう。


2009.06.19(金)【定時株主総会】(金子登志雄)

 来週は、3月決算会社の定時株主総会のピークです。商業登記の書き入れ時です
が、上場会社を含め、今年の登記は役員変更しかなさそうです。平成18年の会社
法施行直後のような神風は吹いてくれませんでした。

 取締役の任期は原則2年とされていますので、上場会社によっては役員変更もな
い会社も少なくないだろうとお思いの方も多いでしょうが、ほぼ確実に役員変更が
あります。買収防衛の関係で、取締役の任期が個別に計算され、一斉に任期満了に
なるようにしていないためです。

 任期を1年にした上場会社も増えています。仮に、取締役・監査役に任期満了や
異動が一切ないとしても、会計監査人の任期が会社法により1年とされていますの
で、その再任登記が必要です。このため、毎年、必ず登記が必要です。

 この会計監査人は自動再任ですから、議案としては不要ですが、では、会計監査
人のいる上場会社で、配当もしない、定款変更もしない、役員の誰も任期が満了し
ないといった場合に、定時株主総会の議案には何があるでしょうか。

 決議事項は何もありません。計算書類の承認は会計監査人の存在する会社では、
原則として不要です(439条)。旧商法時代は利益処分案(又は損失処理案)の
承認が必要でしたが、会社法では、計算書類の一部である株主資本等変動計算書の
問題になりましたので、不要になりました。

 とすると、事業報告や計算書類の報告だけのための定時株主総会の開催になりま
すが、報告するだけですから、わざわざ手間と時間をかけて開催する必要があるの
でしょうか。あくびの出そうな総会になりそうです。


2009.06.18(木)【初めての報酬】(島根・渡部浩義)

 私が自らの法律知識で初めて『報酬』を頂戴したのは、独立開業後でなく、学生
時代であり、大学内で司法試験受験生相手に『浩義の根抵当権講義、全10時間』
を行ったときでした。  

 根抵当権制度は、古くから実務界において利用されてきた制度を、後から民法の
中に規定したものであり、手続的性格が強く、しかも司法試験においては出題され
る可能性が低いため、司法試験受験生の弱い部分だったのです。

 たとえば、「共同根抵当権」について、「〇〇の規定は、根抵当権については、
設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨
の登記をした場合に限り、適用する」とありますが、この規定の意味がなんのこと
やら、まるで分からないようでした。

 そこで、自己の勉強も兼ねて、ある債権の担保としてA不動産とB不動産があり、
それぞれ単独の根抵当権設定の場合と、共同根抵当権設定の場合とでの相違を実際
の登記申請書記載例や登記簿記載例を示し、「共同根抵当権のときは、登記申請書
においては『共同』根抵当権設定と『共同』の2文字を入れることが必要だが、登
記簿においては『共同根抵当権設定』とは記載されず、各担保不動産に共同担保目
録の記載が入る」などと説明しました。

 報酬は、「学食での昼食日替わりランチ1週間分」でした。私も若く、懐も寒く、
胃に歯が生えているような頃のことだったので、とてもありがたく、忘れられない
よき思い出です。



2009.06.17(水)【最年少市長とカラケン】(金子登志雄)

 弱冠31歳の市長が誕生しました。全国最年少です。ご存知のように千葉市です
が、31歳を優に上回る年齢の皆様は、市長に立候補する自信がありますか。

 市長、知事、社長・・・トップの職務は総合的な知識がなければ務まりません。
法律、経済、税務、福祉、地域事情、業界事情・・・、議会や株主総会で追及され、
「わかりません」と答えられない地位です。

 実際には、「その件につきましては、担当の〇〇にお応えさせます」と対応すれ
ばよいわけですが、そのためには、何を質問されたか程度のことは理解していなけ
ればなりません。

 というわけで、党派を超えて、こういう若い政治家の勇気・度胸には感嘆するば
かりです。米国大統領のオバマさんもそうですね。景気の建て直しから、イラク、
北朝鮮、中東問題・・・、何でも一定の知識を持っていなければなりません。
 麻生さんのように、ウズベキスタンとカザフスタンを間違っては、資質を問われ
てしまうのです。   

 ふりかえってわが身に照らすと、私など司法書士会の会長ですら務まりません。

「会長、カラケンについて質問させていただきます」
「はぁ?、カラケンって何のことでしょうか」
「あなた、ほんとに司法書士ですか。それで、司法書士会会長が務まりますね」
などと、すぐに資質を問われてしまいます。

 実は、つい最近、司法書士仲間との会話で、「カラケンも知らないのか」と驚か
れたばかりです。

 ちなみに、カラケンというのは、中国(唐)の武道(拳法)でも、カラオケ検索
のことでもなく、不動産業界用語で、カラ(空)の権利のことだそうです。これで
もわかりませんよね。所有権が移転済みで権利がカラになった権利「証」などのこ
とだそうです。



2009.06.16(火)【水木しげるの戦争マンガ】(根来川弘充)

 「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な水木しげるさん。妖怪マンガはあまりにも有名です
が、戦争マンガでも大変有名な方です。

 水木さんの戦争マンガでは、兵士が戦死していくシーンがいくつもでてきます。
そのシーンはどれもが残虐なものばかりで、ここで表現するのも憚られるのですが、
水木さんの独特のタッチのためか、どことなくコミカルで軽快ささえ感じてしまい
ます。

 しかし、これが逆に、毎日まわりの誰かが死んでいくことが日常になっている戦
争の悲惨さをよりリアルなものに感じさせます。

 水木さん自身、戦争に片腕を奪われています。もう一方の腕でマンガを描き続け、
戦後から今にいたるまで第一線で活躍されているその力には、ただただ、敬服する
ばかりです。

 水木さんの話では、戦争マンガを描くときには、「多くの戦死者の霊たちが自分
にマンガを描かせるのだ」そうです。人並みはずれた力の源として大変説得力があ
り、まさに水木さんは「化け物」なのではと疑ってしまいます。

 今の時代は、人が殺されれば新聞に載る大変な事件になります。逆に言えば、一
人の命の重さを尊ぶ常識があるということで、このことは大変歓迎すべきことだと
思います。それと同時に、この常識を引き継いで行くことは戦争を知らない世代に
かせられた大きな使命であると思います。

 昨今、ソマリア沖への自衛隊派遣など、憲法9条の立場からきちんと議論がされ
たか疑わしい法案が国会を通過しています。

 批判はあるかもしれませんが、私自身は、憲法9条は、戦争による大きな犠牲が
あったからこそ、この国が手に入れることができた尊いものだと思っています。で
すから、憲法9条が軽視される度に、戦争の犠牲者の声が聞こえる気がします。

 昨今は、少し沈静化しましたが、憲法改正の動きは着実に進んでいます。戦争の
犠牲者の悲鳴が聞こえないものであってほしいものです。



2009.06.15(月)【学術書と受験書】 (島根・渡部浩義)

 以前の徒然にも書きましたように、開業してからは、学術書や体系書といったも
のよりも、ある特定分野の実務書ばかり購入していますが、最近の法律の体系的学
術書をと取り巻く事情はどのようになっているのでしょうか。

 先日、大型書店に立ち寄った折に、書架をマジマジと見ると、たとえば民法は、
全編にわたって同一の編著者の手によるものは、いわゆる我妻本を中心として、私
の学生の頃とあまり事情は変わっていないようでした。  

 それに、こうした学術書も、以前とは違い、表紙は紙のみのソフトカバーの装丁
本が断然多くなっています。これは、書籍代を安く上げるための出版社の配慮でし
ょうか。基本法の法改正が頻繁に入り、そのたびに改訂をしなければならない今日
の事情を反映したものでしょうか。

 そして、学術書、実務書書架の隣にはその倍以上はあろうかというスペースに司
法試験をはじめとした各種受験対策用に編集された参考書籍類が所狭しと並べられ
ています。

 そのスペースの前で本の品定めをしていた「受験生」とおぼしき若い人たちに、
「最近は、民法あたりの基本書は何を読んでいるの?」と、遠慮もなく突然尋ねて
みれば、「そんなの読みません。しいていえば学校あたりの講義では内田貴さんの
T〜Wを使っていることが多いみたいですけど。受験勉強には非効率です。やはり
それより効率的に編纂された受験指導者の書いた受験参考書を読みます。」との返
答でした。

 結局、私もその日は、二、三の実務書と法律雑誌を買ったのみで、書店を後にし
ましたが、若い皆さんにも、効率ばかりを求めずに、がっちり噛み応えのある学術
書にも挑んで欲しいと感じましたが、このような考え方は、もはや古いのでしょう
か。


2009.06.12(金)【株主総会参考書類】(金子登志雄)

 6月の定時株主総会の日が近づいてきたためか、株主総会招集通知に関する質問
が増えてきました。会社法施行規則に細かく記載事項が定められているからです。

 しかし、質問の会社の多くが未公開の中小企業です。上場会社でない限り、書面
投票制度(委任状ではなく「議決権行使書」システム)や電子投票を定めない限り、
会社法施行規則の参考書類の適用はありません(会社法301条)。

 書面投票や電子投票を定めたときは、株主総会に参加せずに、参考書類の内容だ
けで賛否の投票をできるため、細かい内容の情報提供が必要なのであって、ほとん
どの株主が株主総会の出席を前提としている中小企業にとっては、重要な議案につ
いて、議案の概要を記載しておくことで足ります(施行規則63条7号参照)。

 とはいえ、株主にベンチャーキャピタルなどが存在すると、上場会社並みの総会
招集通知内容を要求されることもありますので、アドバイスも、相手がどういう立
場の会社かを知って話さないと、有益なアドバイスになりませんから、答える私も
相手に応じて答えています。

 いずれにしろ、いまだに、総会招集通知の招集を「召集」と誤記することが多い
ようですので、お気をつけください。召集は天皇が国会を「しょうしゅう」する場
合に使う用語です(召集令状もそうでした)。
 「上から目線」の総会「召集」通知では、支持率も下がりますよ。



2009.06.11(木)【六法全書で遊ぶ】(島根・渡部浩義)

 受験時代のことですが、資格試験勉強も煮詰まってくると、勉強仲間の間で、六
法全書を使って妙な遊びが始まったりしました。

 「一番、条文数の少ない法律は何か?」
 「たった2条、『建物保護ニ関スル法律』※!」
 「なんのなんの、たった1条『失火ノ責任ニ関スル法律』。」
 「うーん残念!」「今度、1条でもっと短文の法律を見つけてきてやる。」
 数日後・・・
 「あった、たった1条、31文字『商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律』※!」
 「・・・・。」

 (筆者注ー上記※印のニ法律は、現在廃止されています。)

 くだらないといえばくだらない『遊び』ですが、六法全書全体を、ざっと見渡す
のには、実益(?)も兼ねた『有意義な遊び』でした。

 ところで、みなさんは今年のゴールデンウイークは、どうして5月3日から6日
までの連休になったかご存知でしょうか?

 これらの祝日は、『国民の祝日に関する法律』に根拠があります。その第2条に
「祝日の内容」として各祝日ごとにその意義が規定されています。

 ・5月3日 憲法記念日・・・日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。
   【渡部注:−海外旅行なんかに行っている場合ではありません。】

 ・5月4日 みどりの日・・・自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな  
               心をはぐくむ。  
   【渡部注:−みどりの日って、ついこの間まで、4月29日ではありません
    でしたっけ。休日を増やす、弾力性を増すような法改正の仕事は、立法担
    当者、国会議員の先生方も仕事が早いのですね。】

 ・5月5日 こどもの日・・・こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかると
               とに、母に感謝する。 
   【渡部注:−なんと「こどもの日」は、母にも感謝する日でもあったのです
    ね。世のお母さん方は次の日曜日の母の日と続けて感謝してもらえること
    になります。世のお父さんは、法律のうえでも肩身が狭いのですね。】

 ・5月6日・・・・・・・なぜ、この日が休日になるのか?これは平成17年に
    この法律第3条第2項が、「国民の祝日」が日曜日にあたるときは、【そ
    の翌日を休日に】する。という文言から、【その後においてその日にもっ 
    とも近い「国民の祝日」でない日を休日に】すると改正されたことによる
    ものでした。
     はたして、6日の休日の意義は何であったのか。単なる日曜日、国の成  
    長の期待、自然への感謝はたまた子供の人格尊重か母への感謝か...。

 今年は9月にも、4(5)連休がありますね。これもその折に、なぜそのような
連休となるのか一緒に考えましょう。5月の連休とは異なる連休の根拠がそこにあ
ります。      



2009.06.10(水)【学生コンパ】(島根・渡部浩義)

 お酒さえ飲めれば、私の人生はきっと違ったモノになっていたであろうことは断
言できます。あるいは「司法書士」という職業についていなかったかもしれません。
お酒を飲める人をほんとに羨ましく思います。

 ところで、過日の京都教育大学の学生6人が、学生コンパでの一気飲み競争から
酩酊した女子学生を集団準強姦した容疑で逮捕された事件を、みなさまはどのよう
に受止められましたでしょうか。

 私の学生時代(約20年前)から、いやそれより以前から、このコンパにおいて
「一気飲み」を何かにかこつけ、参加者へ順番で容赦なく強要するという習慣は、
どこの大学でもあったことだと思います。

 日本は、大学生のやることにはとても寛大な、ある意味で本当に不思議な国だと
思います。「まぁ、学生さんのやることだからー。」こんな言葉に私自身も随分と
助けられたような気がします。

 この事件も「体育会のコンパ」であったようですので、その構成メンバーに「未
成年者」も多数参加していたことでしょう。この被害者女性も19歳であったとか。

 私の場合は、結局、酒を飲めるようになることはできず、体育会サークルを去り、
最後には資格受験勉強に対する覚悟を決めるため、毎夜宴会の開かれていた学生ア
パートも自ら去りました。

 お酒が飲めない私からすれば、お酒を飲める人を羨ましく思いますので、どうか
飲める方も、お酒は楽しく飲んでください。日本の酒に対する寛容な習慣をもとに、
一生後悔しないためにも・・・。


2009.06.09(火)【国民性と自白】(金子登志雄)

 「小さい時から、人からものを言われると何も言えなくなってしまう。相手の機
嫌を損ねることが嫌い」と自己分析したのは足利事件の菅家さんでした(読売新聞
による)。

 「相手の機嫌を損ねることが嫌い」なのは、ほとんどの日本人に共通する傾向で
はないでしょうか。職場では上司の、家庭では伴侶のご機嫌を損ねないよう日々努
力している方も多いことでしょう。

 それだけでなく、日本人は「和」を重んじます。神の意見よりも、周囲に同調し
て行動する傾向にあります。これがマイナス方向に進むと「ノー」といえなくなり
ます。迎合してしまいます。

 典型的日本人である私も、無実の罪で逮捕され、大勢に囲まれて攻められれば、
嘘の自白をして精神の平穏を求めてしまうかもしれません。「ノー」といい続ける
自信は全くありません。菅家さんも自白することによって、いじめから解放された
かったのでしょう。

 その結果が無期懲役では、たまったものではありませんが、外部から遮断された
取調室の環境では、自白することが精神の平穏を保つ生活の知恵だったのだと思い
ます。

 取調官がいけなかったともいえません。職務に忠実だっただけでしょう。

 冤罪を避けるには、個々の人柄に期待するよりも、制度で防止する必要がありま
す。民主党が取調べの様子の可視化(録画・録音等)をかねてから求めているよう
ですが(だから検察から狙われているという話もあるようですけど)、平成の時代
ですら、こういう冤罪が明らかになるとその必要がありますね。

 裁判員ならぬ、捜査員制度を提案する方もおられるようです。同じ失敗を避ける
ためには、成果を出してほしいものです。


2009.06.08(月)【自分の本】(島根・渡部浩義)

 「名工は道具の手入れを怠らず、常に『刃物』を切れる状態にしておく」とは、
よく聞く話です。

 ところで、司法書士にとってのこの『刃物』にあたるものは何でしょうか。それ
は、積み重ねられた実務経験や日々の研究に裏打ちされた「知識」と「行動力」と
いったところでしょうか。

 そういえば、最近『自分の本』というものを作っていません。ESGの金子登志
雄代表や富田太郎氏のように自らが執筆された本のことではありません(むろん、
私には一冊の単行本を執筆するような能力もありません。)

 私が、ここでさす『自分の本』とは、実務に必要な、いわゆる専門書、権威本と
よばれるものを、精読、熟読し、目次や本文へのアンダーライン入れ、頁の余白部
分に対照頁や参照書籍名、感想、ひらめき、疑問点等のリファレンスやヒントをど
んどん書き込み、さらに書き込めない補足や図表をメモ紙に記入して本に貼り付け、
場合によってはハサミで本に切り込みも...。
 そして読了したころには、手垢に汚れ、厚みも増した世界に2つとない『自分の
ために加工された本』のことです。

 こうした本の加工方法は、私が資格受験生時代に通っていた図書館(本徒然3月
25日拙稿参照)において、休憩時間にたまたま閲覧室で経済雑誌をめくっている
と、かの経済学者J.M.ケインズ氏の特集記事があり、母校のケンブリッジ大学
に保存されている同氏が研究のために使用していた書籍の写真をみて、そこから
「本を加工する」という行為のヒントを得ました。

 氏の研究用書籍には、その余白に鉛筆(ファーバー・カアステル社製「B」の鉛
筆を愛用していたようです)で、目一杯の書き込みが、それも私達がままするよう
な殴り書きではなく、丁寧に整然と、そしてビッシリ書き込みが施してありました。 
もちろん書籍への接し方は、百人百様であるとは思いますが..。

 つい最近までは、目先の仕事の忙しさにかまけて、本格的な専門書・実務書など
は目の前の問題解決のため、必要な箇所のみを辞書的な部分読みするだけでした。

 もう、じっくり熟読、精読する時間なんてないよ、と思っていましたが、これは
自分に対する詭弁だったようにも思います。

 いかに場末長屋の傘貼り内職浪人でも、『勝負(現場)勘』や『脇のもの』まで
錆びさせてはいけません。



2009.06.05(金)【辞任と伝聞証明】(金子登志雄)

 ある商業登記の先例集に「株主総会議事録中役員が辞任した旨記載がある場合は、
辞任届の添付を要しない」とあります。

 これを信じて「取締役Aは平成21年5月31日に辞任したので、後任としてB
を選任したい」と株主総会の議事録に記載すると、この議事録が「退任を証する書
面」としてAの辞任登記が受理されることが多かったといえます。

 しかし、2年前あたりからだめになりました。実は、この先例集がいけないので
あって、登記申請では伝聞での証明を認めません。この記載は、法務局からすれば、
「Aが5月31日に辞任したそうですよ」という「また聞き」証明です。

 証明のためには、権限ある者の証明が原則であって、辞任については辞任者自ら
の証明が必要です。Aが株主総会に出席し、口頭で辞任を表明したという記載があ
る株主総会議事録であれば、これを辞任届の代用に使えますが、出席していないの
であれば、代用能力がありません。

 就任承諾も同様であり、Bから就任を承諾する旨の意思表明を受けていると株主
総会議事録に記載しても伝聞事実ですから不可であり、総会に出席中のBから「席
上就任承諾がなされた」とあれば、これをもってB本人の就任承諾書の代用になり
ます。

 司法書士のネットで、そんな議論がありましたので、本徒然にも書いてみました。


2009.06.04(木)【名義株の思い出】(金子登志雄)

 今日は和出さんの指摘した名義株の話題です。

 平成2年以前は、株式会社の通常の設立方法には、発起人7名と株式引受人1名
の計8名の名前が必要でした。

 さて、Aさんが200株を発行する株式会社を設立する際に、みなさんが担当司
法書士であったら、ABCDEFGHの8名に、この200株をどう配分しますで
しょうか。BCDEFGHは、もちろん名義だけです。妻のBや友人です。

 きっと、A40、B40、CDEFGH各20などとすることでしょう。これで
は、Aが妻のBを含めても過半数に達しないからまずいとでも考えた人は、A70、
B40、CDEFGH各15株にするでしょうか。いかにも、本当らしくみえるか
らです。これなら、定款の認証の際も、登記申請の際も、怪しまれることがありま
せん。

 ところが、ベテランになりますと、A193株、BCDEFGHは各1株にしま
す。名義貸しがミエミエですが、後日のトラブル防止には、名義株であることをわ
かる株数にするほうがよかったのです。

 定款認証の公証人役場も、登記所も慣れており、「この持分比率は嘘でしょう」
などとは言ってきません。

 和出さんが問題にしたのは、前者のいかにも本当らしいという名義貸しが今にな
って問題化しているわけです。
 もちろん、私は後者の方法で作成しましたといいたいところですが、当時は、M
&Aコンサルタント会社の法務担当であり、司法書士ではありませんでした。



2009.06.03(水)【共有山】(金子登志雄)

 渡部さんの指摘した地方特有の共有林などの共有地の問題は、私には全く関係な
い話だと思っておりましたら、何と当事者であることが判明しました。

 私の父は、戦争疎開で群馬の山奥に引越し、そのまま居ついてしまった口ですが、
その地域20数世帯の住民で、ある山の入会権(共同で使用収益できる権利)を取
得したようです。その後、町中に引っ越した際に、その権利をお世話になったAさ
んに譲渡してきたらしいのですが(50年以上も前の話です)、その譲渡につき、
他の権利者が認めないと反対したらしいとかの話は、昔、聞いたことがあります。

 父は20年前に亡くなりました。
 ところが、今年になってAさんの孫から、入会山の権利につき何とかしてほしい
と私の実家に電話が入りました。

 調べましたら、何と登記不要の「共用」ではなく、地域24世帯の主(あるじ)
24名の「共有」であり、登記までされていました。

 登記簿をみると、24世帯で引っ越した方はみな他の23名に譲渡し、新世帯が
加わると、全員がその方に権利の一部を譲渡し、全員の持分が一致していました。
これでは、父の「Aさんに譲渡した」は認められるわけがありませんし、未登記で
は対抗力もありません。

 たぶん、父は登記されていることも知らなかったでしょう。公務員の勤労者でし
たから、山に関心もなく、お付き合い参加した程度に思っていたでしょうから。

 現在の共有名義人24名中、引越しで連絡もとれない共有者が数名いるようです。
見つかっても世代交代していることでしょうから、相続登記を経ない限り、権利の
整理ができません。3世代交代で相続人が10名以上ということもあるでしょうし、
直系の相続人がいなければ兄弟姉妹が相続し、その兄弟姉妹も存命しているかどう
かというぼう然たる事態です。しかも、共有不動産に価値はなく、費用倒れの登記
です。

 ということで、ただいま自費で父の共有持分の相続登記の準備中です。それが終
わりましたら、権利譲渡の手続です。  

 共有持分の時効取得の特例措置の立法が絶対に必要ですね。



2009.06.02(火)【未上場企業における名義株問題】(和出吉央)

 未上場企業の株主総会や事業承継に関する法務に従事していると、いわゆる『名
義株』というものにたびたび出くわします。

 この『名義株』というのは、一般的に、株式に対する出資者等の真の株式所有者
と株主名簿上に記載の株主とが相違する株式のことを指します。

 『名義株』が発生する主な要因としては、平成2年の商法改正前までは、発起人
として7名以上必要であったことから、名義貸しが頻繁に行われていたことの名残
りがあげられます。

 他には、税法上の同族会社判定をのがれるため、本当は株主でないにもかかわら
ず、同族外の者を株主名簿上(申告書の別表二)へ記載してしまったというケース
も多くあるようです。

 ご存知のように、未上場企業においては、これまで一度も株主総会を開催したこ
とがなく、また配当も実施したこともないというケースは少なくありません。

 ところが、相続による株式承継問題に巻き込まれたこと、会社法施行や弁護士人
員増加等をきっかけに、今後はきっちり会社法を中心とした企業にまつわる法律を
遵守し、会社防衛に注力していきたいといった声が、特に後継者等の若い世代から
多く上がってきているように感じます。

 では具体的に株主総会の開催、配当の実施をしようといった場合、『名義株』が
存在することにより、どのような弊害が起こるのでしょうか。

 株主総会の招集通知は原則として会社法の規定に従い、株主名簿上に記載の株主
の住所等へ発送しなければなりません。  

 しかし、そのまま通知を受けた者が株主総会で議決権を行使したり、配当を受け
たりすることにより、会社(オーナー)側としては「実質的には株主でない」と理
解していたとしても、外見上の会社側の取り扱いからすれば、「真の株主である」
と(税務署や裁判所の)認定を受けることがあります。

 さらには、その株主の退社や死亡等、会社との関係性が希薄化するのをきっかけ
に『真の株主は誰なんだ?』という争いに発展するケースが多く見られます。

 その結果、本当は株式に対する出資をしていない者が真の株主として君臨し、そ
の者から高額(時価)で株式を買取らなければならないという最悪の事態に陥る可
能性もあります。

 このような最悪の事態を避けるため、『名義株』が存在する場合は、まずは早急
に話し合いによる解決をしなければなりません。
(税法上の問題もクリアしなければなりません)。



2009.06.01(月)【共有不動産の相続登記】(島根・渡部浩義)

 相続登記を受託する際に気をつけていることのひとつに、「被相続人の所有物件
を漏れなく申請する」という点があります。

 当たり前のことですが、私達の農村、山間部では、地方特有の共有林・共有地の
存在によって、これがなかなか難しいのです。集落の入会山(造林・薪、牧草採取
・放牧用途など)、墓地、火葬場、農耕用のため池、集会所などの様々な顔を持っ
た不動産があり、この共有持分の相続登記が漏れてしまうからです。

 問題の原因の一番は、その共有不動産の存在の検索の難しさにあります。現在の
各市町村における固定資産の管理は、所有者(納税義務者)ごとに名寄台帳を編成、
電算管理されていると思います。従って個人単独所有物件または家族のみの共有物
件に関しては、この被相続人名義の名寄台帳写しの取得または固定資産評価証明書
の取得により申請漏れはおよそなくなります。

 ところが、田舎では、「A某外90名」などという名寄台帳、固定資産評価台帳
が多数存在するのです。最先端の優れた電算システムを導入している市町村では、
上記の例ならば、外90名の中に例えば被相続人「渡部浩義」なる人物が存在して
いれば、申請人「亡 渡部浩義」を入力すると、共有者91名の中からヒットさせ、
証明書を出してくれるところもあるようですが、多くの市町村ではそこまで進んで
いないと思います。

 ならばどうするか。@相続人やその家族に対する聞き取り調査(被相続人が共有
地を持っていなかったかどうか)をする。Aその家庭に保管されている過去の登記
済証等を丁寧に調査する。B地元の共有地の登記事項証明書(登記簿謄本)を、事
件のあるごとに保管し、事務所内に資料集積していく(これが新生事務所と伝統あ
る事務所の実力の差となったりする)。このような手立てに頼るしかありません。

 ここで手掛りがつかめなければ、その場面ではそのままの放置になってしまいま
す。そして、後日、なんらかの事業遂行をするにあたり、または偶然に、その共有
不動産の存在が明らかとなり、慌てて相続登記の追加申請をしたり、再度相続人の
「判の取り直し」などという事態に追い込まれます。

 私の地元あたりでは、特に共有地の形態をとった『墓地』は、他人に取られる可
能性がおよそなく、法的に差押の対象からも外れていたからでしょうか、伝統的に
相続登記が何代にもわたって放置してあることが多く、「こんな土地、見つけなけ
ればよかった。」と、依頼者には聞こえてはならないような、泣きごとも言いたく
なることが毎度あります。(土地柄、それ1筆だけ数次相続を見つけて申請して
も、高額な報酬請求は難しいことが多いからです。)

 世のお父さん、お母さん方、あかの他人と財産を共有でお持ちの場合は、それを
リレーされるはずのご子息・令嬢方にはその共有財産の存在を、しっかり伝えてお
いてあげましょう。どうやら、世の中で肝要な会話が一番少ないのは意外にも親子
の間のようですから。



2009.05.29(金)【ノウハウの公表】(金子登志雄)

 富田氏のマンガでも再度紹介されていましたが、平成16年に出した「これが数
社合併だ/同時分割だ」で、9社のグループ内合併では、合併契約書に「9通を作
成し各1通を保有する」と書くと、4万円の収入印紙が9枚、計36万円必要だか
ら、ここは「本書1通を作り、他は原本の写しを保有する」と記載すると、32万
円が節約できると書きました。

 平成18年の某著名大企業の11社合併で、これが採用されたためか、かなり普
及したようで、最近の合併契約書や吸収分割契約書の半分近くが、この型になって
いることに気づきました。2社合併でもそうです。

 100%子会社同士の無対価合併も、われわれの本(平成15年「これが減資だ
合併・再編だ」)で紹介したところ、いまでは、ほぼ100%がこの型になってい
ます。

 こういうのに実用新案権でもあれば、私と富田氏は、今頃、悠々自適、地中海で
ヨットを浮かべて、ワインでも飲んでいるところですが、それがなくても、建築家
が「あの評判の建物はオレが設計したものだ」と密かに喜びを感じるのと同じで、
結構うれしいものです。

 本に独自のノウハウを書くのは損だといってくれる方も多いのですが、書かない
と、「何だ、金子や富田は、この程度か」とバカにされそうな気がしますし、いつ
か誰かが気がついて書くであろうから、「俺たちが先だ」と記録を残しておきたい
気もあります。

 メロンパンもいらない、酒の誘いもいらない、本のネタ(ノウハウの開発)のた
めにも、私は複雑困難な組織再編の仕事がほしい。



2009.05.28(木)【「マンガ司法書士開業入門」後日談】(富田太郎)

 作家「五木寛之」には、エッセー(「ゴキブリの歌」)の中で『私は、メロンパ
ンをこよなく愛する』と書いたために、講演会、サイン会の場所、場所で「メロン
パン」が山のように届けられたという逸話があります。

 極めつけは、ある講演中に突然メロンパンが客席から投げ込まれたたそうです(こ
の部分は、氏の創作臭いですが・・・)。

 いずれにせよ、本の影響力とは大きいものです。

 ところで、私は最近、「飲み会のお誘い」が急に増えました?? そのお誘いの相
手も、老若男女問わず・・・・幅広く?? 

 なぜ、急にもてるようになったのだろう???
 最近、つけだした香水(『ドルチェ&ガッパーナ ライトブルー』)の効果かなぁ♪
(ニヤリ)。

 理由はすぐに判明しました。
 先月出版した「マンガ司法書士開業入門」(住宅新報社)を多くの方に寄贈したの
ですが、実は、このマンガの主人公、キャラクターを『お酒大好き♪』という設定に
したため、「マンガの主人公=私」と思われ、「富田にお酒を飲ませたら面白いので
は?」ということで、お誘いがかかるようになったようです・・・(汗)。 

 本の影響、恐るべしです・・・・。私も五木寛之並みですね!
・・・・・・・・・・・・。

 もっとも、五木寛之と大きく違うのは、氏の本は大ベストセラーですが、私のマン
ガは、ごく、ごく一部の方にしか読まれてないという点です(当たり前ですが)。

 あぁ〜、大きな違いですね・・・・(涙)。



2009.05.27(水)【童謡/しゃぼん玉】(岡山・山本直樹)

 ♪しゃぼん玉

 「しゃぼん玉 飛んだ 屋根まで飛んだ
 屋根まで飛んで こわれて消えた

 しゃぼん玉消えた 飛ばずに消えた
 生まれてすぐに こわれて消えた

 風 風 吹くな しゃぼん玉 飛ばそ」

 童謡「しゃぼん玉」の歌詞です。
子供のころにこの歌を覚えたときは、無邪気に明るい歌だと思っていました。

 先日ある作家の講演会で、作詞家の野口雨情さんのお子様が生後まもなく亡くな
ってしまい、この歌は子供への鎮魂歌なのだというお話を聞きました。

「生まれてすぐに こわれて消えた」
鎮魂歌なのだと思って聞くと物悲しい響きになります。長い間誤解をしていました。

 山本が理解している会社法の解釈も、背景を知らずに、誤解をしている箇所があ
るのかなぁとふと心配になった一瞬でした。


2009.05.26(火)【「登記申請補正」雑感−その3】(島根・渡部浩義)

 最近、どうも登記申請という仕事に疲れが溜まってきたようです。以前ほどの熱
が入りません。なぜなのか、自分なりに無い頭で考えてみました。

 それは、「登記の仕事に以前ほどの『緊張感』がなくなった」ということにつき
るのではないかと思っています。

 『緊張感』をそいだ原因は何であったのかと考えてみると、読者の皆さんの失笑
を覚悟のうえで、列挙すれば...

 ・登記所から交付され顧客に返却する成果品に申請代理人に起因する差が出なく
  なった。
 ・役所の係官の顔が見えにくくなった。
 ・軽微な補正につき、いちいち補正をする必要がなくなった。
 ・登記申請事務知識の造詣より、コンピューター知識の造詣の方が重用されるよ
  うになった。  

 これらは、登記簿の電算化、ネット申請の原則化、そして総務省あたりから出さ
れた迅速な行政サービスの提供の名のもとの軽微補正(事後補正)の廃止等々を多
くの原因とするものでしょう。

 「登記所という役所は、細かいことにこだわる役所だ。一文字間違ってもゴチャ、
ゴチャ言われる。いまだに時代遅れの数文字を使っている」と民間の人に言われ、
登記済に真っ赤な大きな印判を振り回しているころの登記所が私は好きでした。

 私も、年取ったのでしょうか。それとも、司法書士業務歴20年で、疲れがでて
きたのでしょうか。まだ、40代なのに、早過ぎますね。    



2009.05.25(月)【マスク問題その後】(金子登志雄)

 5月12日の本徒然で「新型インフルエンザの予防にマスクは有効か」と書きま
したが、やはり、感染者が人に移さないために必要なものであって、移されない効
果はないようです。

 そんなことは素人でも容易に推測がつくことですが、最近になって、マスコミの
論調も国民に冷静さを求めるものに変わってきました。繁華街に閑古鳥がなくよう
になり、為政者もマスコミも「脅かしすぎた」と、あわてはじめたのでしょうか。
保育園の閉鎖は、働くお母さんに気の毒すぎます。  

 この例に限らず、われわれ国民は、従順すぎますね。私のように、ひねた人間は、
すぐに「こりゃ、マスク屋の陰謀じゃないか」と思ってしまいます。

 相場のプロであれば、「人の行く裏に道あり花の山」で、メキシコで新型インフ
ルエンザが流行った段階で、マスク銘柄に投資していたことでしょう。  

 真実を求めるには、マスコミの論調や多数意見に影響されないことが重要です。
これは、政治の世界でも、法律解釈の世界でも同じです。  

 ………と、偉そうにいいましたが、私も典型的日本人です。「人の行く表に道あ
り安楽の山」で、薬局に寄ったついでに、「マスクはありませんか」と聞いてしま
いました。

 少々弁解じみていますが、私がそう聞いたのは、「エチケット」としてマスクが
いずれ必要になるかもしれないと思ったからです。マスクをしていないと、電車に
乗っても、周囲の人から白い目でみられる日が来そうな予感がしたからです。

 幸か不幸か、薬局にあったのは、ピンク色の欧米から輸入したマスクで、耳でな
く、頭から紐でかけるマスクでしたので、買いませんでした。

 買っていたら、今日の徒然は、恥ずかしくて書けませんでしたね。



2009.05.22(金)【過去の算定方式の公示】(金子登志雄)

 「平成20年12月各日の平均体重の1.05倍を基準に太ったかどうかを判定
する」とあった場合に、いま60kgです。さて、この方は太ったでしょうか、痩
せたでしょうか。

 これに答えられる人はいないでしょう。基準自体が調査しない限り判明しないか
らです。
 実は、現在これが一部の法務局でまかり通っています。  

 上場会社が、新株予約権を5月に発行するに際し、行使価額を「平成21年4月
各日の平均市場価額に1.05を乗じた価格」と決めていたとします(この方法が
一般的です)。

 過去の結果ですから、発行日には、例えば1株1000円などと算定結果がでて
います。
 なのに、1000円でなく、「平成21年4月各日の平均市場価額に1.05を
乗じた価格」と、そのまま登記しなければならないといわれはじめました。従来は、
1000円で登記していましたが、新方式でないと、書面内容どおりの申請ではな
いので却下するとまでいわれています。

 新株の発行価額などについても算定方式でよいとされていますが、算定結果がで
ているのに「平成21年4月各日の平均市場価額に1.05を乗じた価格で払込み
ください」ということはありません。

 登記簿をみた人が何もわからないことを登記しても公示の意味がありません。書
面内容どおりの申請といっても、別の書面(委任状など)に、「平成21年4月各
日の平均市場価額に1.05を乗じた価格は、1000円と確定しました」と書け
ば済むはずです。

 とはいいながら、こういうわけのわからない登記なら、後日、株式分割や株式併
合しても行使価額の変更登記をすべきかどうかという議論から解放されますので、
企業サイドからすれば、便利な登記かもしれません。太ったかどうか気にしなくて
済む登記ですから、メタボ女性にも大歓迎でしょう。


※お知らせ
 お待たせしました。4月からの法務省令の改正を織り込んだ「会社法」法令集が
発売されました。
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-97990-3
 


2009.05.21(木)【基準株式数】(大戸早規子)  

 塩漬け状態株式の配当を、金銭でしか受け取ったことのなかった私は、恥ずかし
ながら、「基準株式数」というものを、今回のことで初めて知りました。

 ある会社のオーナー社長は96パーセントの株式を保有していますが、その昔、
資金繰りに窮した際、親戚のおじさん、おばさんが援助をしてくれたので「株」を
お渡しし少数株主として存在しています。経営努力のかいあって、今では、それな
りの配当をしているようです。

 その会社が、このたび、分割型分割で新設分割をすることになりました。しかし、
おじさん、おばさんには、新しい会社の株主にはなって欲しくないということで、
少数株主に新設分割設立会社の株式を渡さずに、金銭交付で処理することができる
かどうかを探ってみることにします。   

 ご存知のように、会社法における新設分割では、分割会社から承継する事業に関
して有する権利義務の対価として分割設立会社が交付する株式は、すべて、分割会
社(だけ)に割り当てられるとしています(会社法763条1項6号)。さらに、
その分割会社が得た株式を「剰余金の配当」という手続きを使い分割会社の株主に
割り当てる(同763条1項12号ロ)ことにより、従来の人的分割と実質的に同
様な「分割型分割」となります。

 それでは、剰余金の配当決議で定めることになっている「株主に対する配当財産
の割当に関する事項」(同454条1項2号)の割当比率の操作によって、少数株
主に1株も割り当てがないようにすることは可能でしょうか。

 そして、そうした場合に、1株に満たない株主に金銭を交付して権利を保護する
という規定はあるのでしょうか。端株の処理が明記さている会社法第234条を読
んでみましたが、「剰余金の配当」に関してのものは見当たりません。

 ところがです。会社法の剰余金の配当に関するところを読み進めていくと、
第454条第4項第2号に「基準株式数」なるものを発見しました。
 「金銭以外が配当財産の場合で、一定の数未満の数の株式を有する株主に対して
配当財産の割当てをしないこととするときは、その旨及びその数を株主総会決議で
定めることができる」とあり、第456条には「基準株式数を定めた場合には、株
式会社は、基準株式数に満たない数の株式を有する株主に対し、(中略)相当する
金銭を支払わなければならない。」と書いてあるではありませんか。

 灯台下暗しとはよく言ったものですね。
(正直に申しますと、灯台の下を照らして下さったのは金子先生です。)


2009.05.20(水)【安いことは良いこと?】(根来川弘充)

 ゴールデンウィークが終りましたが、皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。
今年は、各観光地で高速料金の割引のためか、自動車を利用される方が多かったよ
うです。しかし、観光客が増えたところであっても、思うようにお金が落ちず、そ
の経済効果に思うように反映されなかったようです。

「観光といえば、デジタルカメラやビデオカメラは必需品です!!!」

 連休中に見たテレビショッピングで声高にセールスがされていました。これが、
最新式ですが想像以上に安いことに驚きです。買う側からすれば、大変うれしいこ
とかもしれませんが、私自身、何か不安にさせられるものがありました。

 品物が安くなる→企業の収入が減る→コストが削減される→給料が下がる→消費
者の購買力がなくなる→安いものを好むようになる

 これは非常に悪い循環だと思います。特にコスト削減にいたっては、賃金に安易
に手がつけられる傾向が感じられ、特に不安にさせられます。

 企業の業績は、株価が一つの指標になります。良い株とは配当が多い株というこ
とになるでしょう。そして配当とは利益が資金源になります。

 企業が、商品の価格を下げながら利益を生み出すということは、コスト削減が求
められるということになり、一番コストのかかる人件費に手をつけるということは
容易に想像できてしまいます。

 極論ですが、今の経済のしくみは、労働賃金を配当金に変えているだけではない
でしょうか。そうであれば、配当金を労働賃金に変える方法はないものでしょうか。

 「労働者が株を所有する」
 「配当金に課税をして、失業者対策に充てる」
 「労働者への福祉に対して多く拠出した企業には法人税率を下げる」
  ・・・

 中学生のとき、「物は多いところから少ないところに流れるのが自然の法理なの
だ」と教えられました。

 『お金が多いところから少ないところに流す仕組み』

 できるか否かは別にして、まだまだたくさんあると思います。安易な価格競争だ
けにならないでほしいものです。



2009.05.19(火)【「登記申請補正」雑感−その2】(島根・渡部浩義)

 自分でいうのも少し恥ずかしいのですが、私は、勤務有資格者時代から現在に至
るまで、登記申請の「補正→取下」が少なかったほうだと自負しています。もちろ
ん多くの先輩・友人同職者、アシスタントにも随分と助けられました。

 17年前の登録時に購入した『取下書』・『印紙再使用証明申請書』の各用紙も、
いまだに一冊目を使いきっていません。

 もっとも、取り扱い事件の総数が、都市部の同職の皆さま方に比べれば、圧倒的
に少ないわけですが、それでも、「取下」はおろか「補正」の指示を書いた付箋を
私の提出した申請書に貼られることが許せない時期もあり(完全に若気の至り、い
きがっていました。〜名投手江夏氏が若い頃、先発に汚されたマウンドに上がるの
が我慢できないと言ったそうですが、それに似た感情だったのかもしれません〜)、
自分の提出申請書に赤や緑の付箋が貼ってあると、意気消沈したり、ときには自己
嫌悪に陥入り、不合理と思える付箋には、調査係官や登記官に議論を吹きかけてい
たものでした。

 話は前後して、今でも、各地の法務局において、その扱いはまちまちなのでしょ
うが、過去の、私の研修場所の法務局では、原則として登録司法書士本人でなけれ
ば、どのような軽微な補正でも、その補正を補助者はおろか登録のない研修司法書
士有資格者にさえもさせてもらえない地域がありました。一面においては、正しい
取り扱いなのかも知れませんが、私では手を出せないことに、悔しい思いをしたこ
とを覚えています。

 でも、それが本職の値打ちであり、日本の登記の制度を一定レベルに保つ生命線
だったのかもしれません。(申請人側に緊張感を持たせる意味で・・・)

 私が故郷に帰って、開業した最初の地元管轄登記所は、職員総勢4名の山あいの
のどかな出張所でしたが、幸いなことに職員さんの年齢構成が若く、皆さんがよく
勉強もしておられ、事務処理も早くて正確な登記所でした。そして、職員さんと申
請代理人側の庁舎内での何気ない日常会話においても、登記全般につき色々と発展
的な議論をしていたように思います。

 そのような法務局出張所の中でも、補正⇒取下書を促されると、私は厚顔にも、
「あまり取下をしたことがないもので、『取下書』の書き方が分かりません。」と
か、「フレンドリーな登記官、アットホームな登記所、この案件はどうしても取り
下げるわけにはいきません。どうか記入・校合、前へ。」などと、わけの分からな
いことを言って、「帰れ!」と職員さんからは一応言葉を投げつけられるものの、
『取下』ではなく、『補正』で処理してもらったことが一度や二度ではありません
でした。ただ、感謝するばかりです。

 今思えば、ほんの15年前のことなのに、本当に古きよき時代でした(44歳に
して『懐古主義者』の私です)。

 それからまもなくして、登記所の本格的な統廃合が始まり、法務局も支局大所帯
化し、あわせて局職員さんと我々職業代理人との日常の関係も次第に事務的かつ希
薄になり、事務処理も機械的・無機質になされるようになっていった気がします。

 『官々接待』などという言葉がニュースの時間に飛び交うようになった頃からの
ことでしょうか。



2009.05.18(月)【司法書士会の定時総会】(金子登志雄)

 土曜日は、東京司法書士会の定時総会でした。代議員としてはじめて参加してみ
ましたが、何と午後1時スタートで終わりは午後8時過ぎでした。来賓挨拶で1時
間必要でしたから、正味では6時間です。

 もめたわけではありません。議題がそれだけ多かったということです。いわゆる
株主提案と同じ形の司法書士からの議題提案を含め合計で15議題もあり、審議に
時間を要したことと、採決も賛成何人と正確に数えていたためです。

 総会資料によりますと、次のとおりだそうです。

1.東京の司法書士数は、4月1日現在で3024名。  

 非司法書士の方からみると、税理士さん等と比較して、そんなに少ないのかと思
う数字ではないでしょうか。しかし、司法書士からみると、あちこちで同業者と顔
を会わせますから、少ないという印象はありません。 

2.1人頭の平均受託案件数は年々減少し、昨年は年443件(うち8割以上が不
 動産登記)だそうです。

 1件2万円の報酬とすると、年収は886万円。1件1万5千円なら664万円
で、そこから事務所家賃等の経費を控除すると、給与生活者の平均所得と大きな差
はなさそうです。

 まぁ、法律職の平均所得は、こんなものでしょうか。弁護士も一部の特別高額所
得者を除けば、平均値では、そう大きい所得にはならないようですから。

   http://note7.com/bengoshi/

 もっとも、所得に変えられないものが自由業にはあります。どんなに不況になっ
ても仕事が全くなくても、「無職」「失業中」と言わなくて済むことです。職安で
仕事を斡旋してくれないのは残念ですが。



2009.05.15(金)【私の口述試験】(金子登志雄)

 渡部さんの口述試験は、23歳のときでしたか。試験官が将来を期待できる若者
にいろいろ聞いてみたかったわけですね。

 私は渡部さんとは正反対の「遅れてきた司法書士」で48歳のときでした。たぶ
ん、試験官に、この男は、苦節うん十年の受験生活で、やっと合格したのだろうと
思われたことでしょう。

 年齢が年齢でしたし、口述試験は1人も落ちないと聞いていましたので、落ち着
いて対処できました。

 「それでは、私から質問しますが、株式会社が解散した時の清算人はどのような
人がなるのですか」という質問からはじまりました。

 「はい。定款に定めがあればその人であり、株主総会で選任すれば、その人にな
ります。法定清算人も裁判所で選任する清算人もあります」

 試験官は、マイナーなところを質問し、上手に答えられなかったら、4種類の清
算人があることを追及しようとしたのでしょうが、先手を打って、4種類を全部答
えてしまいました。不動産登記の質問を含め、他の質問に対しても、すらすら答え、
試験官に「15分の質問内容が10分で終わってしまいました。もう聞くことはあ
りません」といわれました。

 あとは雑談でした。どこで開業するのか、筆記試験の出来はどうだったかなど。

 自慢話と受け取られてしまったかもしれませんが、その試験当日ですら、私は企
業法務に従事して10年のキャリアでしたから、23歳のド素人の若造(?)とは
一緒にしてほしくありません。実務に必要な質問なら、なんとか答えられる自信が
ありました。

 事前に予備校の口述試験の模擬体験を受けましたが、「受験番号は」などという
質問を受け、「忘れました」と答え、予備校講師からお叱りを受けましたが、そう
いう業務に不要なバカな質問は100%ないと信じていました。

 口述試験は社会人受験生にとっては、楽しい時間だったのではないでしょうか。



2009.05.14(木)【「登記申請補正」雑感−その1】(島根・渡部浩義)

 このゴールデン・ウイークは、思わぬ静養生活を送ることになり、好天を窓越し
に眺めながら、点滴や、読みためていた恐怖の『整理術』の本(4月30日出稿)、
『仕事術』の本などを読んで静かに過ごし、試験合格から今日までのことなど思い
出したり、反省したりしていました。

 昭和63年10月26日(水曜日)、窓越しに秋晴れの太陽の光に映える黄色く
染まった銀杏の葉が美しい、広島法務局庁舎の一室にて。

 先ほどから司法書士口述試験受験生である私の時間は止まったままです。それと
いうのも、一通りの口述試験の質疑応答を自分なりに無難にこなしたつもりで、も
う終わりかと安堵していたところ、二人座っておられた試験官のうちそれまでずっ
と黙っておられた副官と思われる方から、

 「ところで渡部さん、あなたはよく勉強され、23歳と大変お若くして司法書士
試験に通られんとされているわけですれども、登記申請の場面においては、登記所
側が下す「補正」と「却下」という二つの処分がありますね(旧不登法第49条・
旧商登法第24条)。
 では、この「補正」と「却下」という二つの処分の「境界線」というものは、一
体どのあたりに引けばよいのでしょうか。若い方の意見を是非とも伺ってみたいの
ですが...。」

 『こんなの想定問題集や過去問にはなかったぞ、どうしたものか...』
そうこうしているうちに時間ばかりが過ぎていきます。

 「渡部さん、この問題は、私が少々あなたに意地悪をしています。形式や言葉に
とらわれないで、若いあなたの言葉で、あなたの忌憚のない意見を聞きたいと思い
ます。例えばあなたは、実務の現場で、登記官や係官に「補正だ」、「却下だ」と
言われれば、すぐにそれに応じますか?」

 何か答えねばなりません。

 「まず問題を整理しなければならないのは、当該申請が、絶対的却下事由に該当
するか否か、この絶対的却下事由(管轄違い、登記不能事項の申請)の場合は補正
の余地はなくなるわけですが、それでも実務的な運用としては、この場合も登記の
迅速な処理の要請、安定的な処理の運用という観点から、「取下」という手法にて
申請人側の選択を優先させて貰っているのではないのでしょうか。

 一方、補正ということになってくると、文字を間違えたというような単純な種類
の補正もあれば、申請代理人側、法務局側において法令、通達等の理解・見解の相
違からくる補正であるときもあると思います。後者ときは、ありとあらゆる持ちま
えの資料や、なけなしの知識、理論を駆使して、登記所側と協議して登記申請手続
きが迅速に安定的に処理され、登記を受ける皆さんが安心して利用してくれる、世
界でも最も精度の高い、記載間違いの少ないといわれている日本の登記制度をこれ
からも維持していくことが、職業代理人となる司法書士の役割だと思います。」

 というようなことを、支離滅裂に身振り、手振りを交えて述べて、やっと、私の
口述試験は終わりました。

 試験が終わって、廊下で待っていただいていた控室と試験室の間を案内いただい
た係官の方に「随分と試験時間が長かったですね。」と尋ねられ、少し狼狽しまし
た。

 「主査と思われる方の質問には、比較的スムーズに答えられたのですが、最後の
眼鏡の副官の方の質問に手こずりました。」

 「ああ、訟務検事が質問されましたか。それは大変でした。もう一方のグループ
は既に全員終わっておられます。」

 「僻地部で開業される志をお持ちだとうかがいました、思慮深い司法書士になっ
てください。期待しています。」
 試験室を後にしようとする直前に、かの試験官副官にその厚い眼鏡の奥から笑み
を浮かべられながら言葉を添えられました。

 その言葉は、今でも私の『宝物』です。ただ、今現在その言葉や期待に応えられ
ているのかは、大変疑問です。

 今回の徒然を書いていて、あの口述試験の頃を思い出し、初心に帰りました。
また、「補正」の基準も明らかに20年前と電算化の進んだ現在とでは変わったこ
とに隔世の感があります。



2009.05.13(水)【スキャンダルと説明責任】(金子登志雄)

 民主党の小沢さんがとうとう辞任しました。そのことよりも、マスコミの報道の
仕方に関心がありました。

 辞める前は、辞めろコールだったのに、言われたとおりに辞任すると、今度は、
「なぜ、この時期に。無責任だ。説明責任を果たしていない・・・」と責め立てて
います。

 辞めないで西松建設問題につき説明したら、どうなっていたでしょうか。きっと、
「弁解だ」「居直りだ」と、バッシングがさらに増幅したことでしょう。

 で、どうすればよかったかというと、事件が明らかになったとき、「私の不徳の
至りで、皆様にご迷惑を・・・」と、ひたすら低姿勢にし、何も説明しないのが上
手な方法だったのかと思わざるをえません。

 というようなことを、会社法立案者のお1人である弁護士の葉玉氏が3月6日に
書いていたので、読み返してみました。

 http://kaishahou.cocolog-nifty.com/blog/2009/03/post-c2ad.html

 葉玉氏の見立ては、あたっていましたね。

 浮気が発覚した時も、どこの誰で、しかじかの事情があって・・・と説明責任を
果たすと、ますます夫婦仲は悪くなるので、ひたすら謝るのが上手な方法だとか。  

 残念ながら、私は、ひたすら謝るチャンスに1度も恵まれませんでした。民主党
の岡田さんよりもクリーンです。



2009.05.12(火)【マスク】(金子登志雄)

 豚インフルエンザの関係で、マスクが売れているようですが、テレビ報道により
ますと、日本特有の現象のようですね。
 諸外国では、医者自体がマスクの効果を否定しているようですし、マスクが容易
に入手できない国も少なくないとか。

 確かに、人に移さないという効果は多少はあるかもしれませんが、自分が罹らな
いという防衛効果は、どんなものなのでしょうか。

 マスクをしてうがいして手を洗って………、子供の頃から、しっかりと教育され
てきたためか、日本人特有の真面目さのせいかはわかりませんが、「皆一斉に」と
いう点には怖いものさえ感じます。

 日本人論の本によく書かれるようですが、修学旅行でも団体旅行でも、旗の一振
りで一斉に行動を起こす統一をとれた国民性は日本特有のもので、外国人からみる
と、軍国主義国民のようにみえてしまうとか(当ESGメンバーは、私が旗を振っ
ても、誰も反応してくれませんから、この日本人論にも疑問がありますけど)。

 感染しても死亡に至る確率は大きくないようですし、感染自体の確率も、交通事
故に巻き込まれる確率よりはよほど少なそうですから、もっと冷静に対処してもよ
いのではないでしょうか。

 感染者の疑いのある方に対する診察拒否などの人権問題のほうが私には気になり
ます。

 そういえば、年金問題であれだけ大騒ぎしていた日本人はどこへ行ってしまった
のでしょうか。批判に「マスク」だけはいただけません。


2009.05.11(月)【美しい町に魅せられて・・・】(大戸早規子)

 「虹の地平を歩み出て 影たちが近づく 手を取り合って
  町ができる 美しい町が・・・♪」  

 GWにこの美しい町へ行ってきました。
自然との調和をいたるところで感じられる、実に素敵なところでした。      

 市街地は石狩平野の南西部に位置し、石狩川の支流の豊平川の扇状地を中心に
広がっていて、その西部・南部は手稲山・円山・藻岩山などの山岳・丘陵地によ
って囲まれています。

 平たんな扇状地だからなのでしょう、大通公園の最東端にあるテレビ塔の展望
台からは、ほんの地上90m(東京タワーは150m)しかないというのに、都
心の街並みだけでなく、遠くには手稲(テイネ)の山並みや石狩湾が360度の
大パノラマとなって広がります。

 そんなテレビ塔から真っすぐに西を見据えると、ラージヒルの「大倉山ジャン
プ台」が真正面に向き合っているのです。もちろん、ジャンプ台の展望台にもリ
フトで上りました。

 そりたつ壁のようなアプローチやランディングバーンを間近で見ると、「こん
なところを滑り下りてくるなんて人間業じゃない!」と思わずにはいられない反
面、「踏み切る瞬間、眼下に広がる街へと飛び立つ鳥になって、すっごく気持ち
いいんだろうなぁ・・・」とかすかな興奮を覚えてしまうから不思議です。  

 それに、わずか30分で、一番の繁華街「すすきの」から市電に乗って、標高
531mの藻岩山(もいわやま)へ行けます。アイヌ語名は『インカルシペ』、
その意味は「いつもそこに上って眺望する所」だそうです。

 山麓駅からロープウェイと無料シャトルバスを乗り継ぐと山頂です。夜景を見
に行った私ですが、宝石を散りばめた様な幻想的な世界を目の当たりにして、す
っかり、この美しい町の虜になってしまいました。

 「生まれかわるサッポロの地に
  きみの名を書く オリンピックと・・・♪」

 そう、私が魅せられた美しい町は「札幌」です。



2009.05.08(金)【GWとベトナム語】(金子登志雄)

 GWも終わりましたが、7・8日も休みの方も多いようです。うらやましいなと
思いましたら、この不況で生産調整も1つの理由になっているようです。こうなり
ますと、たいへんですねというしかありません。

 ただ製造業は、昔から長期休暇が可能であり、サービス業種の方からは、うらや
ましがられていました。

 われわれ司法書士は「時間」自由業ですから、GWもいつもとそう変わりません。
司法書士仲間の間では、いつもどおりメールが飛び交っていました。

 それでも休みには事務所に行く必要がありませんから、私も群馬に帰省しました。
偶然ですが兄弟3人が久々に集合しました。話題は、「老化」の話ばかりで全く面
白くありませんでしたが・・・。

 高崎から東京までのUターンの電車の中で、日本生活3年のベトナム人2人から
話しかけられました。甲府に行くにあたり、新宿に行く方法を尋ねられただけです
が、鈍行電車で2時間も一緒だったため、いろいろ話しました。

 どうも駅名その他が漢字で読めないため、不安だったようです。ベトナム文字は、
アルファベットに近いため、漢字は全く読めず、カタカナも読めず、難儀していた
ようです。

 それはそうですね。韓国旅行でハングル文字が読めず、難儀した日本人と同じで
す。 
 年齢は30歳程度の方でしたから、ベトナム戦争は全く知らなかったようです。
私にとっては、つい昨日のことなんですが・・・。

 5月1日には会社法が施行されて3年が経過しましたが、そのうち商法も全く知
らない人が増えるのでしょう。すでに、額面株式を全く知らない人も増えてきまし
た。つい、この間(平成13年10月)、廃止されたばかりなのに。


2009.05.07(木)【自分の文章に責任を】(富田太郎)

 GW♪ いかがお過ごしでしたでしょうか?
 私は、事務所で「楽学 商業登記法」の校正を行っていました(涙)。

 この校正作業と言うのは、とても骨の折れる作業なのです。何度も何度も、自分
の文章を見直し、訂正していく………。さらに、外部の方にも見てもらう………。
 ある面では、執筆より「骨の折れる作業」です。

 今回は、出版間際になって「会社法施行規則、会社計算規則」の改正があったり、
執筆当時は正しい見解だったのが、突然見解が変わったり………。ほとほと泣きた
くなりました。

 そんな校正作業中に、とんでもない事件・ニュースがありました。某出版社の某
資格本について、「215か所もの間違い」が見つかり、大騒ぎになっています。

 215箇所???凄い量です。真偽は確かではないですが、どうやら、監修者が、
下請けの方?に書かせ、そのチェック・監修が甘かったようです。

 ただし、私自身は、この監修者を非難する資格もありません。
 「怖いなぁ〜。自分自身は、このようなことにはなりたくない………。」。ただ
それだけです。それだけ校正作業はたいへんであり、ゲラ段階では気づかないこと
も多々ありますから………。
 これは、本を執筆している人間の共通の感想ではないでしょうか?

 ところで、今回の事件で、唯一助かったのは、出版社の督促に対して、
「あの事件ご存知ですよね………。校正だけはしっかりやりたいのです。だから、
遅れていますが、『締切り』もう少し待ってください(絶叫)!!」
と、言い訳?の材料ができたことです………(恥)。

 えっ??? また、『締切り』を延ばしているのか??って………。
 はい………(汗)。  

 私には、他人を非難する資格がありませんね………(涙)。



2009.05.01(金)【空振り規定】(金子登志雄)

 空振り規定という用語を聞いたことがおありでしょうか。規制の対象が存在せず、
効力の生じる余地がないという意味です。最近では、定款でよく使います。

 上場会社では、株券電子化の関係で、本年1月5日をもって、株券を発行する旨
の定款の定めを廃止する定款の変更決議をしたものとみなされましたが、株券の存
在を前提とする他の規定までは「みなし廃止」の対象にされませんでしたから、定
款の文面に有効に残っています。定款に「株券の種類」や「株券の分割」とあれば、
これが空振り規定(文言)になります。

 いつ頃から使われたのかははっきりしませんが、立法担当者などの間では、相当
の昔から使われていたようで、例えば、法令に「政令で定める」とあっても、その
政令が見当たらないこともあり、この場合に、「それは空振り規定だ」などと使う
ようです。

 勝手な想像ですが、強制執行や差押えが空振りに終わったなどと、よく使います
ので、このあたりの使い方が語源になったのではないでしょうか。

 さて、取締役会設置会社の定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、取
締役会の承認を得なければならない」とあるとき、この会社が解散したり、取締役
会を廃止したら、譲渡制限規定もあわせて定款変更しなければならないかという問
題が会社法施行以来、登記実務上の大きな問題になってきました。

 登記実務は定款変更必要説ですが、私は、今月号の月刊登記情報(570号)で、
相澤哲=松本真「商業登記実務のための会社法Q&A(4)」(登記情報541号)
28頁の注4を援用し、変更不要説を主張しました。単なる「空振り状態」になる
だけで、変更義務に通じるものではないとの主張です。登記実務家は必見の内容の
つもりですので、ぜひご覧ください。  

   http://store.kinzai.jp/magazine/AT/index.html

 なお、ついでで恐縮ですが、「ビジネス法務」の6月号(4月21日発売)には、
改正計算規則につき、拙稿の解説が掲載されています。下記の画像を拡大すると、
私の名前が登場します。連休にでも、目を通していただけましたら、幸いです。   

   http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/


2009.04.30(木)【整理術】(島根・渡部浩義)

 今回も『金子徒然』とは違って、『息抜き徒然』です。みずからの道化師的立場
を逆手にとっての拙稿に、笑ってください、誰にも遠慮はいりません。

 さて、私には昔から弱い書籍の題名キーワードがあります。『仕事術』と『読書
術』、そして『整理術』です。

 書店に立ち寄るたびにビジネス書、生活書コーナー付近に直行し、棚の中や、平
積みになっている本の題名に上記『三術』の関連文字が躍っていると、思わず手に
とってしまい、衝動買いすることたびたびです。その中でも『整理術』の本。

 私の大学生時代は、「いしい ひさいち」氏のマンガに出てくるような、風呂、
トイレ共同の「○○荘」アパートで、私ほか11名の入居者と共に生活を送ってい
たのですが、本当に医学的根拠があるのか否かは別として、「B型−爆破(整理が
できずモノ散乱状態)部屋」、「O型−大爆発部屋」とか、「B型の万年床の敷布
団の下には“カビ”が生えているが、O型の敷布団の下には“キノコ”が生えてい
る。」と、特にA型を中心としたグループの友人らにはバカにされていたものでし
た。

 ただ、「B型」の私自身からみても、友人らの指摘は、一面において真実なので、
反論の余地がありません。

 いいオトナになった現在も、なんとかして私の執務机周辺のスペースを整然とモ
ノのない整理された状態にしようと、書店での「投資」の結果、『整理術』関係の
本だけでも、現在、私のもっとも近くにある書棚からピックアップすれば...  

 『掃除以前の整理収納の常識』、『24時間ですっきり!ぐちゃぐちゃデスクの
シンプル整理術』、『「超」整理法・活用術』、『「捨てる」・「片付ける」で人
生が楽になる』、『少ないものでゆたかに暮らす』、『お金とモノから解放される
イギリスの知恵』、『「できる人」の時間整理術&片付け術』、『発想の転換でぐ
んぐん片づくモノを捨てる技術』、『ビジネスマン奇跡の整理術・時間活用術』、
『ビジネスマンのための図解整理の技術!』、『キッパリ』、『すごい!整理術』、
『頭のそうじ 心のそうじ』、『だから片付かない。なのに時間がない。』『片付
けられらないから忙しいです。』、『クリアホルダー整理術』、『3分で部屋が片
付くミラクル整理術』、『初めてのGTD ストレスフリーの整理術』、『「しく
み」整理術』、『整理法』、『「超」整理法』、『「超」整理法・時間編』、
『「超」整理法3』、『達人達が伝授する「超」情報整理術』、『佐藤可士和の超
整理術』(いずれも著者、出版社等略)。

 このように、今では、『整理術』本こそが、私のスペースの整理を邪魔し、古本
屋でもはじめればよいような状態です。

 結局、今現在、私が達した「整理」するために必要な行動の要点は、@「モノを
大切に!」などとロマンチシズムにとらわれずに不要なモノは、どんどん捨てる。
A不要なモノは買わない。Bモノを使いながら片付ける。Cモノを平積みにしない、
立てて整理する。という、おそらく皆さんにとっては至極当たり前なこと。

 にもかかわらず、相変わらず私の机周りは、常にカオス(混沌)状態で、対照的
に職員さんの机周りは整然としています。

 毎朝、あれがない、これがない、とモノを探しまわっているうちに私が失ってい
る時間の総計たるやいかばかりのものでしょう。(これは上記列挙の本の多くが、
「整理できないこと」の弊害として指摘しています。)

 皆さん、仕事の依頼は、事務所がキレイに片付いている“センセイ”のところを
選びましょう。

(金子)渡部さん、台所のきれいな家庭は料理が下手だといいますよ。机周りがカ
オスの人は実力があるのです。B型の私も同じ実力者です。仕事の依頼は、事務所
が片付いていない“センセイ”のところに限ります。


2009.04.28(火)【わいせつ】(金子登志雄)

 SMAPの草なぎ君が「わいせつ罪で逮捕された」という一報を聞いたとき、思
わず、その「わいせつ」の響きから、ファンの女性にでも、みだらな行為をしたの
かと思いましたが、事実は、単に酔っ払って全裸で公園で大声を出していただけの
ようです。

 これでも「わいせつ」なのでしょうか。刑法174条によると、「公然とわいせ
つな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しく
は科料に処する」とあり、この「わいせつ」については、裁判所が「いたずらに性
欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観
念に反する」ことと定義しています。

 全裸でイチモツを見せびらかしたのであればともかく、公園で大声を出していた
程度で、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ」るとは到底思えません。それをみ
た人も、酔っ払いに不快感を感じても、性的羞恥心を害されることはないでしょう。
深夜の公園では、「公然」といえるのかについても疑問です。

 これで家宅捜査を受け(裁判所が捜索令状を出すほどの事案だったとも思えませ
ん)、CMを干され、何年経っても、「あの事件の・・・」といわれ続けるわけで
すから、お気の毒というしかありません。一般人であれば、誰にも知られず、一晩、
トラ箱に泊められて終わったのに・・・。



2009.04.27(月)【めざせ!『春の顔』】(富田太郎)

 鈴木さん、金曜日の徒然で、「マンガ 司法書士開業入門」のご感想ありがとう
ございました。

 さて、当ESGのメンバーは本業のかたわら、執筆活動をされている方が多数い
ます。土日も事務所で執筆を行っているためか、休みの日も、ESGの仲間からメ
ールがあります♪

 察するところ、土日も働くことに快感を覚えている?のではないかとさえ思いま
す(笑い)。

 ところで、先日は、井上靖の『北の海』という小説を読み返しました。その中で、
4つの季節に分けて人間分析(もって生まれた、その人の性格)をしている場面が
あります。

【人間には春の顔も、秋の顔も、冬の顔も、夏の顔もある】

『冬の顔』:いつもしかめ面をして、不平不満ばかり言っているタイプ
『夏の顔』:年中、汗を流し働き続けている。     
     「実り」よりも、ただ、ひたすら「働く」ことに喜びを得ているタイプ
『秋の顔』:苦労性で他人のことばかり心配して、自分自身は恵まれないタイプ
『春の顔』:苦労が苦労にならない、のびのびしていて屈託がないタイプ

 興味深い考察です。

「家に帰らず働く友人の役員」、「原稿の締切りに追われるESGの一部の仲間」
・・・・、「コンビニ弁当食べながら徹夜生活をしている私」などは、さしずめ、
『夏の顔』のような気もします・・・(汗)。嫌だなぁ・・・できれば『春の顔』
がいいのに・・(笑い)。

 皆さんは、どの季節のタイプでしょうか??


2009.04.24(金)【「マンガ 司法書士開業入門」を読んで】(鈴木龍介)

 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。久しぶりの「徒然」、大阪から
の出張帰りの新幹線です。

 今回は、ESGのエースであられる富田さんの「マンガ 司法書士開業入門」を
拝読して徒然なるままの”感想文”です。   

    http://item.rakuten.co.jp/book/6021921/

 本書は、我が司法書士業界とその周辺を率直に語られていますが、実はそれって
しがらみやらがあって、いろんな意味で結構難しいことだと思います(蛮勇?)。
ということもあって、これから司法書士を目指すなんていう方々には、実情を知る
という意味でも是非手にとっていただきたい1冊だと思います。

 ちなみに、この仕事そんなに儲かりませんし、予想以上に大変ですが(私が言っ
てるんですから・・・きっぱり)、断固たる決意と地道な行動で富田さんのように
自分ワールドを作れるかも知れません。このあたりが、この本の真骨頂で、それぞ
れの「個性」を大切にせよということと勝手に解釈しています。

 そうなんです。何をもって成功かということだって1人1人違いますし、それを
柔らかに、そしてきちんと主張されていいるところに、富田さんの優しさと懐の深
さが行間からににじみでています(マンガでも行間はあるのです)。

 末筆ですが、私も何冊か書籍を出版させていただいていますが、マンガはまだで
す。長年のマンガフリークとしては、先を越されて結構悔しい&羨ましいところで
すが、あらためまして出版おめでとうございます(私は、池上遼一(画))を希望
していますが、今のところどこの出版社からもオファーはありません・・・)。



2009.04.23(木)【取締役の任期の起算点】(山本直樹)

 岡山の山本直樹です。
 先日ある会社から質問を受けました。

 その会社は、平成20年12月20日の臨時株主総会で、「現取締役全員の辞任
に伴う後任取締役の選任」の決議をしており、後任取締役の選任の効力発生時期を
平成21年1月1日として決議しました。
(事業年度は、毎年1月1日から12月31日です。)

 総務担当者の疑問は、後任取締役の任期の起算点はいつになるのか? というも
のでした。

 旧商法では、役員の任期の起算点は「就任時」(被選任者の就任承諾の時)とさ
れていましたが、会社法では「選任時」(選任の決議をした時)とされています。

 これは、任期の起算点を就任時とした場合、株主総会決議と就任承諾の間に長期
間のタイムラグが生じた際に、役員任期の終期に関して株主の意思がきちんと反映
されない可能性があり、任期の起算点を選任時にすることによって株主総会で役員
任期の終期をコントロールできるようにしたものです。

 今回のご質問は、会社の意思で選任の効力発生時期を遅らせた場合に任期の起算
点はどうなるのだろうか?という疑問から発せられたものでした。

 この点につき、会社法の立法担当者は、「株主総会の決議で、選任決議の効力発
生時期を遅らせることとしたとしても、任期の起算点については、選任決議の日と
解すべきである」としています。 (参考文献 論点解説 新・会社法 商事法務)

 登記簿の記載だけを見ていると任期満了時期をまちがいそうなケースもあるかと
思います。みなさまお気をつけください!



2009.04.22(水)【資格者の挑戦その2】(島根・渡部浩義)

 司法書士の大きな業務分野となった「消費者問題」に関して、私にとって忘れら
れないセミナーがあります。

 それは、平成13年10月6,7の両日、静岡市で開催された「第30回全青司
静岡全国研修会−正念場−」という全国青年司法書士協議会主催のセミナーです。
最近でこそ、このようなセミナーにはかなりのボリュームのレジュメの配布は当然
のことのようになりましたが、このときに事前配布されたレジュメは当時としては
圧巻でした。

 私は、いまだにこのときのレジュメを執務資料として使わせてもらっています。

 判例等の変遷や、司法書士に簡裁代理権が与えられたこともあり、このレジュメ
が作成された当時とは周辺環境は大きく変化しましたが、このレジュメを作成され
るにあたって、静岡の青年司法書士会の皆さん方の消費者問題解決のために注がれ
た情熱は、いまだに「色褪せ」を感じさせないのです。

 その後、この静岡会の歴々が執筆され各出版社から相次いで出版された書籍を、
実務の指針にされている同職は数多いと思います。

 ところで、このセミナーの予定分科会終了後に、特別分科会として〜『債務者一
揆』過払い金返還請求訴訟〜と題する分科会が開催されました。私の記憶によれば
予定分科会の終了後であったため、さほど多くの出席者ではなかったように思いま
すが、その分科会の報告内容に驚きを禁じ得ませんでした。

 すなわち、「消費者が支払った過払金は不当利得なのだから、これを金融会社に
蓄財させる必要は全くなく、吐き出(返却)させるべきだ。今の、消費者金融業者
の財務諸表の分析をすれば、収益に対する貸倒引当金の比率は、これだけ破産を申
し立てても、銀行の数十分の一に過ぎない。「破産申立」をわれわれがいくらして
も、彼らには痛くも痒くもない。」

 「ところが、過払金返還請求はわけが違う。一度利益として取り込んだものを吐
き出させることになるので、消費者金融会社の会社体力に与える影響の大きさ、そ
して回収金員を消費者の生活の建て直しに利用できるというメリットに注目してく
ださい。」

 事実、静岡会では、県下各裁判所にこの「不当利得返還請求」を本人訴訟の形で、
裁判所側の難色にもめげず、既に一斉に提訴されたとのこと。  

 「利息制限法規定解釈をめぐるかつての最高裁の判例で、金融業者と事業者間の
利息制限法超過利息収得につき、不当利得としてこの返還請求を求めた判例がある
ことは受験知識としてはなんとなく知ってはいました。でも、こうした一般消費者
と、消費者金融業者間の取引においても、正面きって『不当利得制度』を利用する
なんて...。」

 入れ代わり立ち代わり登壇して報告される静岡青年会のメンバーは、誰もが『挑
戦者』の顔立でした。そうした挑戦者たちのおかげで、今では当たり前になった実
務の常識や取扱いがあることを私たちは忘れてはならないと思います。

 このように、資格者たる司法書士が、これまでの常識にとらわれずに『挑戦』を
するべき分野は、不動産登記、商業・法人登記、付随業務はじめ我々の取扱業務の
随所に、まだまだたくさん眠っているのかも知れません。

 この静岡会において消費者問題の中心的な役割を果たしておられ、多くの著書を
残されていた芝豊司法書士が過日、急逝されました。私、渡部も数度ほど会話を交
わしたことがありますが、「田舎でこそ、頑張って欲しい。」と励まされました。
この場を借りて、芝司法書士のご冥福をお祈りいたします。


2009.04.21(火)【資格者の挑戦その1】(島根・渡部浩義) 

 一時期ほどの峠は越したものの、私たちの業界は、いま「過払金特需」だといわ
れています。

 「過払金」とは、簡単に言えば消費者(借入者)が、貸金業者に対して、「約定
利息」として利息制限法所定の「法定利率」を超えて支払った金員です。そして、
貸金業者が法律の原因なく不当に利得した金員ということになると思います。

 この消費者が支払った「過払金」を貸金業者から取り返す業務が、司法書士をは
じめ、弁護士の業界でも活況(?)を呈しています。

 司法書士の業界だけに目を向ければ、司法制度改革に伴う、平成15年の簡裁代
理権の取得や、消費者側に有利な下級審から最高裁までの近時の判例の蓄積、例え
ば、訴訟合意管轄約定の問題決着や、「みなし弁済」規定の実質的空文化、「消滅
時効期間の起算点」の明確な判示など重要な判例が相次ぎました。そして、時を前
後して、ついには出資法、貸金業法や利息制限法の改正へと、若干の問題点、争点
はまだあるものの流れは消費者側に有利、といってよい状況だと思います。

 この問題に関する国民の意識も高まりを見せているのか、市中の書店には、私た
ち資格者ではなく、一般の人たちを読者として想定した「過払金回収ノウハウ本」
もかなりの種類のものが見受けられます。

 最近は、電車をはじめ公共交通機関等のつり広告に、相変わらずの消費者金融の
広告と、これに負けず劣らずの弁護士事務所や司法書士事務所の、この過払金回収
をはじめ債務整理を受託します旨の広告、そしてTVをはじめとするマスコミ・コ
マーシャルもにわかに増え、皆さんもこうした広告に接された方も多いのではない
でしょうか。

 不謹慎な言い方ですが、司法書士にとって平成15年以降の簡裁代理権取得後、
この過払金(不当利得)返還請求訴訟は、ある意味で法廷諸活動のうってつけの訓
練の機会となったと思います。そして、なによりもその成功報酬の平均額が、回収
額の2割といわれるコストパフォーマンス。誰しもが、こぞってこの業務を受託す
るようになったのは、無理もないことかもしれません。

 ところで、今を去ること30年程前のこと、まだ司法書士に簡裁代理権もなく登
記業務がその主たる業務であった時代においても、今よりもはるかに高利な利率が
出資法に規定されていた時代から、深刻な消費者金融(サラ金)問題はありました。

 昭和50年代に、元来、法人破産向けに立法されていた「破産法」を個人の破産
にも利用しようというという、動きが一部の弁護士からあったように聞いています。
それまでの常識や、慣例にとらわれず、今ある法律(知識・道具・勇気)を駆使し
て、依頼者の要望に応える、救済をはかる。まさに、『資格者の挑戦』と呼べるも
のでしょう。

 こうした比較的早い時期の消費者破産申立の仕事にも、わずかながら私も関与し
ました。司法書士に認められていたのは「裁判所に提出する書類の作成」という権
限のみでしたが・・・。  

 私:「督促をすぐにとめて欲しい。一体いくら債権額があるのか正確な金額を教
えて欲しい。」  
 業者:「代書人風情が、何の権限があってこんな電話して来るんだ、あんたらは、
登記の代書でもしてりゃいい。借りた物は返す、これ道徳だろ!」と、夕方の事務
所での激しい罵声の応酬。

 結局、当時の解決方法としては、債務者の記憶に基づく残債務の積算額を総債務
額として破産を申し立て、「破産決定」、「免責決定」をもらって業者からの激し
い督促をやめさせればよしとする、そんな時代でした。

 また一方で、当時は、「こんなことをさせるためにお前を司法書士にしたのでは
ない。この、すさんだ事務所の雰囲気をどうするんだ。」と、自らの家族からも厳
しく抗議されるような時代でした。



2009.04.20(月)【負ののれんは特別利益】(金子登志雄)

 4月からの新・会社計算規則11条には、「会社は、吸収型再編、新設型再編又は
事業の譲受けをする場合において、適正な額ののれんを資産又は負債として計上する
ことができる」とあります。
 吸収型再編とは、吸収合併、吸収分割、株式交換のことであり、新設型再編とは、
新設合併、新設分割、株式移転のことです。

 のれんとは、組織再編や事業の譲受けをする際に、財産の受入れ側が受け取った財
産の計上額と支払った対価との差額勘定であり、これを計上することによって、貸借
対照表の貸借が一致します。要は、等価取引を擬制するための差額勘定です。  

 たとえば、受け取った財産が90で支払った対価が100であれば、受け取った財
産は「財産90とのれん10」と考え、資産にのれんを計上します(正ののれん)。

 これに対して、受け取った財産が100で支払った対価が90であれば、受け取っ
た財産は「財産100とのれん△10」と考え、負債にのれん10を計上するという
のが従来の考え方でした。

 しかし、この「負ののれん」については、「企業結合に関する会計基準」が昨年末
に改正され、現在では、原則として「特別利益」に計上することになりました。これ
を受けて、新・会社計算規則88条2項でも、特別利益の区分として「負ののれん発
生益」を加えています。100のものを90で取得し、差額の10を儲けたという発
想でしょう。

 法務の立場からは、債権者がいない負債勘定には違和感があったため、負ののれん
を特別利益にした改正は理解しやすいといえますが、ついでに、新11条も「適正な
額ののれんを資産又は【利益】として計上することができる」と改正してくれれば、
もっと分かりやすかったのですが・・・。ちなみに、「負債として計上することがで
きる適正な額」は、0円ということになります。



2009.04.17(金)【申請ミス(補正)と効率】(金子登志雄)

 4月1日合併等の組織再編のピークも終盤に近づきました。

 先日、会社分割で質問を下さった司法書士の方から、無事に全部が完了したと御
礼の電話がありました。数十個の会社分割で一切ミスもなく無事に終わったとか。

 これは驚異であり素晴らしいことです。普通は、どんなに慎重にしても、5%程
度の小さなミスをしてしまうものです。「萩」原社長が「荻」原社長になっていた
り、議事録の発行済株式総数が増資前の数になっていたり・・・。  

 司法書士が議事録案を作成した段階では正しい内容でも、会社のほうで適宜変更
したのを気づかずに、そのまま申請して、補正になることもあります。  

 補正の少ない事務所に「なぜだ」と聞いてみましたら、@必ず複数の人間で何度
もチェックする、A急いで登記しない、などといわれたことがあります。  

 私も、長文の事業目的などは複数の目で読みあわせをしますが、合併・再編等の
登記は銀行の口座名義の変更、従業員の社会保険の手続などの関係で、急ぐ必要が
あるため、Aに関しては、どうしても効率を最優先してしまいます。

 合併効力発生日である4月1日の午前中に取締役会を開催し、合併会社の新社長
を選定することもよくあるので、4月1日の4時過ぎに資料をもらい、大慌てで申
請することも少なくなく、こればかりは仕方ないことです。

 先に文案だけもらっておけばよいじゃないかといわれそうですが、議事録に就任
承諾の有無が書いてあるか、就任承諾書は別途か、個別か連名かという問題もあり
ますし、印鑑証明書が送られてきたら、山「崎」が山「ア」だった、渡「辺」か渡
「邊」だったなどといった問題もあり、事前に申請書を作成しておくと、かえって
ミスする可能性も高いといえますので、ケースバイケースで対応せざるをえません。

 スピードを加味すれば当事務所はミスが少ないほうです。「複雑で困難な登記を
すばやくしてしまう」のも当事務所の「売り」ですから、今後もミスの少ない効率
優先の登記をさらに追及していきたいと思っていますが、夜の12時まで電子申請
を受け付けてくれるなら、慌てずに済み、ミスも半減できるのですが・・・。



2009.04.16(木)【恥ずかしながら、夫婦考その2】(島根・渡部浩義)

 天皇・皇后両陛下、ご成婚50年の記者会見をご覧になった方は多かったと思いま
す。天皇制や皇室のあり方等の云々についての議論は、今回はさておき、両陛下を単
純に『夫婦』としてみたとき、その記者会見を拝見していて
「仲睦まじく、羨ましい。」というのが、偽らざる素直な私の感想でした。

 50年後に私は家内に、両陛下が言われたように、「感謝状を、」とか
「努力賞を、」と人目はばかることなく言ってやれるかどうか。
 もちろん今現在、私たちは子育て真っ最中の共働き、子供に声を張り上げたり、夫
婦同士の衝突もしょっちゅうですが、晩年は、どうか穏やかな日々が訪れることを願
わざるを得ません。

 ところで、昨年の夏、受託していた相続登記案件において、不在者財産管理人を選
任しなければならない案件があり、その選任にあたり、被相続人の住所地管轄の松江
家裁と、不在者の住所地管轄たる大阪家裁の間で連携をとって進めなければならない
案件がありました。

 8月の暑い大阪への出張。大阪家裁での書記官、調査官との協議、「審判官と協議
しますので、しばらく待合室でお待ちください。」と、書記官に促されて待合室にて
しばし休息。ただ、家裁の庁舎に入ったときから感じていたのですが、庁舎内にやた
らと子供さんの姿が多いのです。ある待合のスペースには、絵本や簡単なオモチャも
おいてあります。

 私の座っているシートの横で歓声を上げている兄弟とおぼしき二人に、  

 私:「僕たち、今日は何しにここにきたの?」とたずねれば、
兄弟:「おとんと、おかんに連れてこられた。」
 私:「それで、お父さんと、お母さんは今どこにいるの。」
兄弟:「おとんはあっちの部屋で、おかんはあっちの部屋にはいっとるねん。」

 彼らのさす指の先には、『調停室5』、『調停室6』の部屋表札が。
『ひょっとして離婚調停?このにぎやかな子ども達の両親すべてがそうなの..!』

 私も再び書記官から呼ばれ、私の案件につき、書記官、調査官と共に家事審判官と
今後の方針について協議を終えて、書記官と廊下を歩いているとき、それとなく書記
官ににぎやかな子ども達のことにつき聞いてみました。

 「夏休みの期間中は、離婚調停のシーズンでもあるんです。」との書記官の一言に
驚きを禁じ得ませんでした。

 離婚者数は、ここ数年は減少に転じているようですが、それでも、一年間に25万
組強の夫婦が離婚をしています。    

  http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei08/index.html

 離婚される夫婦には、それぞれにそれぞれの事情があるのでしょうが、一番の犠牲
となるのはやはり子供たちです(もっとも、私にも子どもさんのために離婚を勧めた
例が、過去にはありますが、)。  

 また、司法書士であれば、相続登記事務を執っていて「戸籍読み」をしていると、
不謹慎な表現ですが、『離婚の家系は、離婚を繰り返す。』という法則に、必ずやた
どり着かれると思います。育った環境が、『離婚』ということにさしたる抵抗のない
人間を育てるのでしょうか。

 ところで、別の統計において、離婚の多い職業を順にあげると、@無職、A専門職、
Bサービス(飲食・接客)業の順、逆に低い職業の順は、@保安職(警察・消防・自
衛官)A管理職B農林水産業となっているようです。

 一応、専門職に分類される『司法書士』の皆さん、大丈夫ですか。おっと、他人事
ではありませんね。お互い、気をつけましょう。



2009.04.15(水)【恥ずかしながら、夫婦考その1】(島根・渡部浩義)

 この春、私の長子である息子が中学校に上がりました。私が家庭を顧みない父親で
あることは、過日のこのコーナーでも書きましたが、本当に、同居の爺・婆(私の両
親、さらに祖母)、そして、ご近所の皆さまのおかげで大きくしてもらいました。こ
れが、数少ない田舎暮らしの良いところかもしれません。四世代の同居暮らしに当た
り前に応じてくれた私の家内にも感謝をしたいと思います。

 ただ、この愚息君たるや、やや大きくしてもらい過ぎたらしく、いつの間にか一重
瞼、二重顎、三段腹ならぬ四段腹になって父の体重を既に抜き去っていました。
 家内と本人が入学前の準備品注文に行き、制服の採寸をすると、係りの方に「息子
さん、お難しい体型でいらっしゃいますね。」との一言があったと、情けない顔をし
て家内が帰って来ました。しかし、これは爺・婆のせいではなく、やはり両親に責任
のある事柄でしょう。ただ長男が中学に上がり、いつの間にか私たち夫婦も幾多の危
機を乗り越え、結婚生活15年目に突入していました。

 話はまったく変わって、先日は、仕事で神奈川県・葉山町に出かけてきました。乗
客もまばらな早朝と夜の新幹線、そして、うららかな春の日差しの中の横須賀線に乗
り、各々の車中にて、城山三郎著「そうか、もう君はいないのか」・「どうせ、あち
らへは手ぶらで行く」(新潮社刊)の、同氏の晩年2冊の単行本をじっくりと読みま
した。

 城山氏の著作は、経済、企業組織小説・戦争小説においては、ダイナミックな攻防
や展開を繰り広げるものが多いのですが、私小説は、全く色合いが異なっていること
は、氏の本を読まれたことがある人ならばご承知のとおりだと思います。

 私は、たまたま昭和63年の司法書士口述試験終了後の広島市内の書店にて同氏翻
訳の「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」(キングスレイ・ウォード著・
新潮社刊)を手にして不用意にもすぐに読み始め、移動中の電車内にて人目をはばか
ることなく泣いてしまった記憶があります。その後、「城山三郎」と名前のつく本は、
乱読しました。

 今回手にした二冊の本も、春の朝日の中や、夜の帳を引き裂いて走る新幹線の中、
また日中のやわらかい日差しの中をいく横須賀線の電車の中で読むのには、うってつ
けの本当に心に染み入る本でした。

 城山氏の良い仕事の後ざさえには、同氏の日常生活の中で、先立たれた夫人の存在
がいかに大きいものであったかが記されています。

 私も、特に相続登記を受託する場面で、「伴侶との別れ」を目の当たりにした奥さ
んや、旦那さんとの会話を持つ機会が多いのですが、話し言葉は乱暴でも、亡くなっ
た相方のことを悪くは言われない家庭では、およそ相続登記もスムーズに進みます。
これは、私のわずか20年弱の実務での経験則です。
 たかだか14年間しか結婚生活を送っていない者が、書くのもおこがましいのです
が・・・。



2009.04.14(火)【顧客は最大の教師】(金子登志雄)

 富田著のマンガに「顧客は最大の教師」とありますが、これは顧客のさまざまな
要望に応えようと努力していくと、自然に実力がアップされるという意味です。

 額面株式時代ですが、顧客から「100%子会社を吸収合併するのに、なぜ株券
提出公告が必要なのだ。引き換える株式も発行しないじゃないか」といわれ、「そ
れはそうだな」と思い、調べましたら、「不要」という先例がありました。会社法
のもとでは、会社法219条の文理から、また「必要」だとされましたが、形式的
すぎます。会社法のもとでも、否定説が正しいと私は信じています。

 別の顧客から「100%子会社同士で合併するのに、なぜ株式を発行する必要が
あるのか」と聞かれ、「それはそうだな」と思い、法務局と相談し、無対価合併を
実行しました。日本初の兄弟合併の無対価でした。

 証券会社の顧客から、「額面50円会社はないか」と何度も聞かれ、自分で作っ
てしまえと、当時では非常に珍しい無額面株式の発行を利用して、日本初の「額面
500円会社を額面50円会社に作り直し」をしたのも日本初でした。

 額面株式時代(平成13年9月末日まで)や商法時代は、規定が不整備でしたら
工夫の余地が多々ありましたが、会社法になってからは、規定が細かく整備され、
新テクニックを発明(?)する機会も少なくなってしまいました。

 しかし、全部取得条項付種類株式を利用した少数株主の排除策など、種類株式利
用の高度テクニックは、まだまだ未開発でしょう。こういうアイデアも机上から思
いつくのではなく、「顧客のなんとかならないか」という要請から思いつくもので
す。まさに、「顧客は最大の教師」です。


2009.04.13(月)【ドラえもん−親子の春休み−】(島根・渡部浩義)

 この徒然読者の皆さまは、パソコンのワープロソフトで『どらえもん』と入力し
て変換すると、ちゃんとかの藤子プロのキャラクター商標のとおり『ドラえもん』
と変換されることをご承知でしょうか。「銅鑼右衛門」や「ドラエモン」とは、お
よそ変換しません。
 それぐらい『ドラえもん』はすごいのです。

 昭和40年以降の生まれの「司法書士の業界」に足を踏み入れた人なら、資格者
本人であると、職員さんであるとを問わず、必ずや実務で遭遇する抜き差しならな
い状況に、「ドラえもん、頼むからどこからか出てきて、胸のポッケからこの状況
を救ってくれる珠玉のアイテムを出して助けてくれーぃ。」と、いいオトナが声に
出す出さないは別として、真に心の中で願ったことは一度や二度ではないはずです。

 私事、平素は、本当に家庭を顧みない三児の父親ですが、折り悪く、世は「春休
み」の真っ最中。「この春休みも何もしてやれなかったでは父親失格だ。と私の父
母に尻を叩かれ、ちょうど神戸に私の所用もあり、娘二人と父(私)とで日帰り珍
道中の小旅行に出かけることとなりました。

 私の用事はすぐに済み(神戸地方法務局某支局の職員の皆さまに感謝)、予定外
のまとまった時間ができました。娘たちは、これ幸いに「絶対に、映画ドラえもん
2009を見る。」と譲りません。三ノ宮駅前にある映画館にて次回上映時間の予
約チケットを買うも、まだ時間まで2時間もあります。その間本屋めぐりや動物園
漫遊に誘うのですが、「もう、不必要にうろうろしたくない!」と、家では見せた
こともないようなきっぱりとした態度で意志表示をします。第一、「不必要に」な
んて言葉、小学校1年生がどこで覚えた。

 三ノ宮駅近傍のスタンドコーヒー店、駅コンコース、駅前ベンチの上、そして映
画館ロビーで時間を潰し、ようやく2時間経過。定番のポップコーンとドリンクを
手に場内へ、「お父ちゃん、映画館が松江にあるのとはちがって大きいね。」など
とこれまたわかったようなことをいう娘に、「ああ。」と生返事の父親。

 ところがです。大音響と共にはじまった「映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開
拓史」に引き込まれていたのは、むしろ父親のほうでした。よく練られたストーリ
ー構成、そして登場キャラクターの創作など、こんなことを考える脚本家たちクリ
エーターは、おそらく日々「生みの苦しみ」に悶々として、見る者から笑いや涙を
引き出すのだろうな、そして、創作のためのバックボーンとして一体どれほどの知
識習得するのだろう、なんて余計なところに想像がいき、平素、「安全・安心・ひ
な型主義」とも揶揄られかねないような仕事ばかりしている者(私のこと)には、
ある意味でクラクラするような2時間余でした。

 ただし、映画そのものも、もちろん楽しめ、感動もしました。最近、涙腺のゆる
くなった父親司法書士は、娘から「お父ちゃん、泣いてる?」と尋ねられ、「目に
ホコリが入った。」とも言えず、そのままトイレへ行き、顔を洗うこととなりまし
た。

 『ドラえもん』は、やはりすごいのです。
恐るべし『藤子・F・不二雄』なのです。『司法書士』なんて小さい。小さい。


2009.04.10(金)【電子申請と復代理】(金子登志雄)

 ただいま、ある上場企業の全国にある子会社の組織再編の登記を受託中ですが、
電子申請のおかげで非常に助かっています。

 電子申請のない数年前でしたら、現地の司法書士を復代理人に選任し、事前に登
記書類を送付しておき申請しない限り、自分で全国に飛ばねばなりませんでした。
合併の登記で、北海道の稚内まで飛んだこともあります。

 たまには出張ができてうれしいものですが、同じ日に北海道と沖縄の登記がある
ときには対応できませんから、復代理人に頼らざるをえませんでした。

 復代理人とは代理人が選任する代理人ですが、直接本人を「また」代理する権限
を有し、代理人の下請けというわけではありません(だから、「復」代理であって、
「副」代理ではないわけです)。

 復代理人制度も便利なものですが、せっかく復代理をお願いしたのに、現地の復
代理人が商業登記に詳しくなく「これでは登記できない」などといわれたり、やた
らに質問攻めにあったりで、面倒でもありました。
 復代理報酬も、人によってまちまちでした。

 こういう面倒さも今は昔です。東京の事務所にいながら、ワンタッチで全国の申
請をでき、書類は郵送すれば済むのですから、楽なものです。登録免許税も電子納
付という制度があるため、自動的に口座引き落としされます。

 ただ、唯一、復代理制度が勝る部分があります。それは、添付書面にミスがあっ
た場合です。現地に復代理人がいれば、すぐに対応してくれますが、電子申請では、
郵送による書類の差し替え等の手間がかかります。
 何ごとも一長一短ですね。



2009.04.09(木)【投了】(島根・渡部浩義)

 新年度を迎え、世の中の多くの皆さん方が心機一転、新しいスタートをきられん
とするこの時期に、このような話題もいかがなものかとも思いましたが、これも偽
らざる資格者稼業の一場面と、あえて記させていただきます。

 4月に入ってから立て続けに、私の仕事が終了いたしました。正確には、依頼者
から委任を「解除」されました。すべて、私が兼業する土地家屋調査士がらみ、す
なわち表題に関する登記を伴う案件でした。

 自分では、精一杯やっていたつもりでしたが、気がつけば受託から数年越し、い
かんせん仕事が前に進みませんでした。不思議なことに金縛りにあったように体も
動きませんでした。

 依頼者の依頼に応えられなかったことは、なんとも申し開きの余地もありません
が、疲労困憊のうえの投了でした。

 私は、出身地たる田舎特有の土着性の強い地域で開業することを目指していたこ
ともあり、「登記は、ゆりかごから墓場まで(表題部から権利部すべて)」を自己
のキャッチフレーズに、土地家屋調査士資格も自分なりに相当の苦労の末に取得し
て開業いたしました(拙稿『登記情報547号』P106以下〜わたしの成功体験
記〜)。

 土地家屋調査士開業後、しばらくはこの兼業開業は大いに奏功していましたが、
次第に表題部に関する登記申請にあたる機会が増えてくると、私の開業地独特の悪
条件に悩まされるようになりました。戦後間もない役場職員の手による地籍調査に
よる法14条(旧17条)地図と現地現場との整合の問題、先輩同職および官公署
職員の残していった各種図面、特に「地籍測量図」との接合問題。

 『殺人を犯しても公訴時効は25年と規定されているのに(刑事訴訟法第250
条)、なんでこんないい加減な図面が永久保存なんだ・・・』

 今回の案件も、この人の地籍測量図を私の職印で取り込み(訂正し)、前に進む
のか。誰に報酬もらえばいいのか、私がいじりたい部分(依頼を受けた場所)は、
「こちら側」ではなくて「あちら側」なのに、なんでここまで直さなくちゃいけな
いのか。そして、一番したいのは、その後に控える権利登記なのに、いつになった
らそこにたどり着けるのか...。 

 ほとほと疲れ、もはや「迅速な処理」などというモットーも忘却の彼方、寸前で
した。1人で、何度も、くさったものです。

 次第に、「表題に関する登記の依頼」を受託することに嫌悪感を覚えるようにな
りました。そして、その受託に際する嫌悪感は、腫瘍が転移するように権利登記や
商業・法人登記を受託する際にも及ぶようになっていたのかもしれません。

 「申し訳ないけど、書類を引き上げさせて欲しい。」
 そう依頼者から言われて、『自分が本当にやりたい仕事・分野は何だ。』と、自
問しなければならない、情けない17年目の年度始めでした。  

 うららかな春の日差しとは、うらはらに、今しばらく心静かにして、気持ちを整
理する時間が必要なようです。また、がんばります。


2009.04.08(水)【平家物語】(根来川弘充)

 先日、後見人の届け出をするため郵便局に行きました。そこの雑誌コーナーに
「平家物語(抜粋)」という小冊子があり、思わず目が止まり、読んでみました。

 「祇園精舎の鐘の声・・・」ではじまる冒頭3行くらいは、いまでも覚えていて
口に出すことが出来るのですが、実際の意味が何であったのか、古文など大学入試
以来離れていて何のことやらさっぱりです。

 その小冊子は、上段に原文を、下段に現代語訳と分けて書いてありましたので、
当然、私は下段から読みました。

 先ほどの冒頭のくだりは、「どんな栄華を極めたものも、いつかは滅びることが
世の中の道理である。平清盛は、歴史上どんな人物にもまして栄華を極め、その振
る舞いは目に余るものであったが、清盛を含めた一族の末路はひどいものであった」
という形で結んでありました。

 この小冊子の中でも特に印象に残った場面を二つほど挙げたいと思います。

 先ずは、清盛が死んでいく場面。
 清盛は、「水をかければ、たちまち湯気になり部屋に立ち込めた」というくらい
高熱にうなされて死ぬのですが、死ぬ間際になっても頼朝の首を求める姿は、何か
に取りつかれたような姿を想像させられました。

 もう一つは、壇ノ浦での入水の場面。
 安徳天皇の祖母が、「この世はとてもひどい世界です。極楽浄土に一刻もはやく
行きましょう」とわずか8歳の安徳天皇をさとすのですが、これに安徳天皇もこた
えて、伊勢神宮の方向(東)と天竺の方向(西)と健気に手を合わせた後、祖母と
ともに入水します。

 過去の権力者の血を引き継ぐものの宿命なのでしょうが、なにかやりきれない思
いにさせられました。

 ところで、現実にもどって、昨今の社会情勢を見ますと、ガソリンと不動産への
過剰な投機マネーで経済不安を招いた本人たちが政府にすがりついています。

 平家物語の「諸行無常」は何か共感を持つことができるのですが、つい最近まで
栄華を極めていた方たちが、安易に政府にすがりつく有様に、共感できるものは何
もなく、むしろ見苦しささえ感じてしまいます。

 また、最近のニュースでは、「今年も自殺者は3万人を超えた」と報じられまし
た。政府にすがりつくことさえできなかった人たちは、この中で、何人いたことで
しょう。こちらは、「諸行無常」で片付けてはいけない問題だと思いました。



2009.04.07(火)【登録時の思い出】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、私は資格を取得したら、すぐに登録しました。少なくとも商
業登記実務については、開業司法書士以上に詳しかったので、開業しても大丈夫だ
という自信があったからです。新人研修よりも前の登録でした。

 偶然にも、登録番号は、当社(M&Aコンサルタント会社=その後合併解散)の
電話番号と一致しており、妙な縁を感じました。  

 東京司法書士会の入会手続の際に、「まだ、合格証書が渡ってないはずですよ」
といわれましたが、ちゃんと持参しました。神奈川県での受験だったため、東京で
の受験組の人より先に入手できたからです。このあたりに、昔は、都道府県単位で
試験がなされていた名残りがあるようです。登録番号も都道府県単位であり、全国
を通じた番号ではありません。

 私の経歴をみて、「会社勤めの方は、登録できませんが」ともいわれましたが、
「あ、役員ですね。それならかまいません」で済みましたが……。
 なぜ、サラリーマンは登録できないのか、いまもって不明です、司法書士法には
ないと思うのですが。

 東京司法書士会の総務部長らしき人から面接されました。そのとき、いわれた言
葉は「私と同じくらいの年齢なのに、よくがんばりましたね」でした。私は48歳
でした。年齢が年齢だっただけに、苦節うん十年と勘違いされたようです。

 開業した翌年の東京司法書士会の新人研修では、講師の方から、「君たちも数年
後に、ぜひ新人研修の講師をしてください」などという発言が多かったように記憶
しています。
 講師よりも年齢は私の方が上ですし、社会人経験も上でしたから、「もうちょっ
と、言葉使いに気をつけてしゃべれよ」と妙に反発して聞いていたものです。

 あれから、12年経ちました。最大の変化は、やはり登記のコンピュータ化でし
ょうか。「印鑑ビラ」といっても、もう通じない人も多いでしょう(印鑑届用の画
用紙の小片のようなものです)。



2009.04.06(月)【私の幸運な司法書士開業】(金子登志雄)

 上記の富田著のマンガを読みながら、自分は、なぜ司法書士を開業したのかと改
めて振りかえってみました。

 切っ掛けは、平成6年の自宅の買い替えでした。担当の司法書士さんに、日頃、
思っていた疑問をぶつけてみました。

 「先生、抵当権の抹消のときは登記原因は『弁済』なのに、根抵当権では、なぜ
『弁済』と使わないのですか」
 司法書士の先生の返事は、「根抵当権は、債権額がゼロでも成り立つからです」
というものでした。

 これで、ガーンとやられました。それまでは、オレは基本的な法律には相当詳し
いと自負していたのですが、私のような司法試験崩れは、根抵当権と相続に弱いこ
とを改めて思い知らされたからです。

 そこから、独学で勉強をしはじめて平成8年に合格しました。商業登記は、だい
たい分かっていたので、「合格、即開業」でした。たぶん、平成8年合格組では最
初の開業者でしょう。

 ただし、私にとっては、独立よりも、成長途上の会社のほうが重要でしたから、
単に会社の名刺の肩書に「司法書士」を加えただけでした。
 開業後5年間程度の司法書士業務の年間件数は100件にもなりませんでした。
営業も一切しませんでした。司法書士専用電話もありませんでした。

 ところが、平成13年からの相次ぐ商法改正に伴い、「M&Aコンサルタント会
社の法務担当役員金子」あるいは「赤字のまま上場した会社の管理部長金子」より
も、「司法書士金子」としての知名度が徐々に上がり、会社も私がいなくても大丈
夫なようになりましたので、司法書士業務の比重を増やしていきました。

 いまは、司法書士専用電話もコピーもいれ、事務所家賃も会社に支払っています。

 以上のとおり、相次ぐ商法改正という「神風」に、うまく乗れただけで、何の開
業の苦労もしていません。その代わり、相変わらず、茶封筒司法書士で補助者ゼロ
ですが………。

 何年か前に当事務所の近くに東京法務局が移転してきましたし、司法書士開業後
の私は、幸運が続いているようです。

 「人生、塞翁が馬」ですから、そろそろ身を引き締めないとまずいですね。身を
引き締めるほど儲かっていませんから、大丈夫という意識もありますけど。



2009.04.03(金)【利益の資本組入れの復活】(金子登志雄)

 ご存知の方も多いことと存じますが、この4月から利益の資本組入れが復活しま
した。

 旧商法時代には、定時株主総会で当期純利益が確定すると、それを資本金に計上
できたのですが、平成18年5月施行の会社計算規則によって、資本と利益は峻別
すべきだという考えから、不可になっていたものです。

 会社法も会計基準も、この点については、何ら変化がないのに、なぜ復活したの
かと考えましたところ、「資本と利益の峻別」の趣旨は、「資本剰余金と利益剰余
金の峻別」あるいは「資本の利益化の禁止」であって、資本金にまで及ばないとい
うことでしょう。

 利益配当したものを再出資すれば資本金になるわけですから、それを中間省略し
たと考えれば、「利益の資本化」は肯定してよいと考えます。  

 改正に対しては、「利益剰余金→資本→資本減少→資本剰余金」はまずいじゃな
いかという意見も強かったようですが、そこまで資本と利益の峻別を徹底する意味
があるとは思えません。

 結局、下記のように変化したわけですが、この際、資本金という名称を「資本利
益金」と名称変更するとよいかもしれませんね。

        (従来)            (改正)

   資 本 金                  資 本 金
    |                  /     \  
  資本準備金    利益準備金    資本準備金    利益準備金  
    |        |        |        |
 その他資本剰余金 その他利益剰余金 その他資本剰余金 その他利益剰余金



2009.04.02(木)【悪い夢】(渡部浩義)

 平素の行い、自己研鑽がよくないせいか、先月は夜中に「悪い夢」に起こされる
ことが続きました。 〜夢は心を写す鏡です。

【其の一:司法書士資格更新試験】

 この資格「更新」の夢は、同業者において昔から聞く「資格者の悪夢」の代表的
・古典的(?)なものです。試験場に到着できない。問題が解けない等々。
 私の見た夢はこうですー。

 平成○年×月△日 某所にて、会社法施行前の試験合格資格者は、再度、現行会
社法・商業登記法法規により資格更新試験を行うことになり、試験実施。問題は、
「次の履歴事項全部証明書が公示している事柄・内容を、各区を時系列順よって横
断的にすべて簡略に記載説明しなさい。」

 と比較的単純なもの。商号区、目的区、ここまではよし。うっ、以下の「株式・
資本区」以降が読めない..。正確には、書いてあることの意味がわからない。
「時間です。不合格の方は、資格を取り消します。」と、青白い顔の試験官の一言。
 「うわーっ。」  ー 夢だった。

【其の二:第一回口頭弁論期日】

 ある日の夕方5時10分、明日のスケジュール確認のため手帳をみていると、
「あっ!今日はA被告代理人として貸金請求事件の第一回口頭弁論期日だった。」
厚顔にも、裁判所に確認電話。『どうか、原告も欠席していてくれー。』 「本日
13時30分の平成21年(ハ)第○○号事件は、どうなりましたでしょうか。」 
「ちょっと待って下さい、記録見てきますー。ああ、被告欠席で結審していますね。
ところであなたはー?」と係官。「数十ページにもおよぶ自信の答弁書だったのに、
どうしよう控訴? 弁護過誤...。」
「うわーっ!」  ー 夢だった。(ただし、実際は答弁書が出ていれば..。)

【其の三:不動産取引の立会】  

 某日、某銀行応接室にて。私:「それでは、おめでとうございます。どうぞ、代
金のご決済をなさってください。」 買主:「何がおめでとうございます、だよ。
今しがた5分前に入った「差押」の登記はどう処理するんだよ。それにあんたは
『権利証』を確認したけど、この不動産は『登記識別情報』が出てるだろう。それ
でいいのかよ。」 

 私:「はい?」 
買主:「ほら、おれのパソコン見てみろよ!」たしかに買主
持参のパソコンを見ると権利部の最終欄に差押登記が。でも、こちらも取引直前に
確認してきたぞ。念のため私も持参のパソコンで登記情報提供サービスへ接続して
みると、ない。どこにも差押登記なんてないじゃないか。それと、そもそも売主に
関する登記記載事項が違う。受付年月日から何から..

 私:「あの−、私のパソコンでは、このように表示されましたが...」 
買主:「センセ、あんた一体どこにアクセスしてんだよ。」
 私:「民事法務協会の登記情報提供サービスですが。」
買主:「ほんとに司法書士かよ、今どき法務局の登記簿へ直接アクセスするのが常
    識だろー。」  
 私:「法務局の登記簿へ? 一体、いつからそんなことが可能に?」
銀行:「やめ、やめ。このヒト、司法書士ではないよ。あーっ怖い。」 
 私:「...。」

「うひゃーっ!!」  ― 夢だった。

 どこまでが夢で、どこまでがホントなのか寝汗びっしょりの『千夜一夜物語(司
法書士編)』が連夜続きました。 「知識」は身体と精神を助け、そして安寧な夜
をくれます。ご用心、ご用心。



2009.04.01(水)【登記印紙】(佐々木大介)

 印紙というと、普通は契約書や領収書に貼る収入印紙があります。抵当権抹消登
記や役員変更の登記の申請書には、登録免許税を収めるため、印紙を貼るのが普通
ですが、この印紙も、収入印紙です。

 これに対して、法務局で登記簿謄本を取るときは、登記印紙を貼らなければなり
ません。
 現在、登記簿謄本は1000円、印鑑証明書は500円ですので、1000円や
500円の登記印紙を通常は使っています。

 ところが先日、債権譲渡登記の登記事項概要証明書というものを請求することに
なりましたが、必要な登記印紙は300円でした。そこで近くの小さな郵便局に行
き、100円の登記印紙を3枚買おうと思ったのですが、100円の登記印紙はな
いといわれてしまいました。

 郵便事業会社の支店となる郵便局ならあるという話でしたので、少し離れている
支店に行き「100円の登記印紙3枚お願いします」と言ったところ、窓口の人が
探してくれたのですが手元にないようで「200円ならあるのですが……100円
の登記印紙は倉庫から取ってきます」と言われてしまいました。

 100円の印紙をわざわざ倉庫まで……と思いつつ、200円の印紙を2枚買っ
て貼り、100円損するのも嫌なので、100円の登記印紙を3枚お願いしました。
しかし、大変な時間を待つことになってしまいました。

 ただ、登記印紙というのは、私自身、法務局の印紙売場にしか置いていないと思
いこんでいましたので、郵便局に登記印紙が置いてあるというと聞いた時は、少し
驚いた記憶があります。また、登記印紙は、どこの郵便局にも置いてあるというの
ではなく、町の普通の郵便局ですと、置いている所もあれば、置いていない所もあ
り、まちまちです。

 このような登記印紙ですが、今、インターネットで登記事項証明書を請求するよ
うになり、私は使うことが少なくなったように思います。

 この登記印紙、登記特別会計という法務省独自の収入となるためあるようですが、
その登記特別会計が平成22年度をもって廃止されるようです。そうすると、この
登記印紙も平成23年の3月31日をもって使えなくなるそうです。まさに年貢の
納め時と言うことでしょうか?


2009.03.31(火)【一期は夢よ ただ狂へ】(富田太郎)

 このところ、司法書士試験合格者の方々から、「合格をしたものの、今のサラリ
ーマン生活を辞め、司法書士になっても大丈夫か?」との相談を受けます。

 正直、その方の人生もかかっているだけに、この質問は答えようがありません。

 かの、戦国大名「毛利元就」は、『酒好きの客が来れば、酒の効用を説き、酒を
飲ませ』、逆に、『下戸の客には、酒の弊害を説いてお饅頭を出した』という話が
残っています。
(ただし、資料によれば、元就自身は、酒害で早世した父弘元、兄興元を見てきた
だけに、酒害への強い警戒心を持っていたようですが・・・)。

 私も「元就の教え」に従い、躊躇している方には、その大変さを説き再考を促し、
逆にやる気満々の方には、
「何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ」(「閑吟集」室町時代に編集され
た歌謡集)
(大意:何を悩んでいる!どうせ、一生は儚い夢だ。ただ、好きなようにやればよ
いではないか。)
と決意を促すことにしています。

 もっとも、以前ある合格者から、1週間、富田さんの事務所に体験入門し、それ
から判断したいといわれたときは、困惑しました・・・(汗)。

 コンビニ弁当生活、土日もなく働く徹夜生活・・・・、これでは、誰も司法書士
なんかになりたくないですよね・・・(苦笑)。

PS
 住宅新報社から「マンガ 司法書士開業入門」を出版しました。脱サラして、司
法書士になるか否かお悩みの方、是非、書店でお求めください(笑い)。

  http://store.shopping.yahoo.co.jp/7andy/32224638.html


2009.03.30(月)【受取人指定預金はないの?】(梅田幸志) 

 正式な遺言書に「甲銀行の預金は長男Aに相続させる」とあったので、Aさんは
遺言書を示して預金を引き出そうとしました。
 さて、皆さん、引き出しは可能でしょうか。

 残念ながら、現状では、甲銀行はAさんに預金を払い出してはくれません。他の
相続人全員の同意書(印鑑証明書付)か遺産分割協議書(印鑑証明書付)を持って
来るようにと言うのです。
 これでは何のための遺言書なのかと思ってしまいますが、銀行からすれば、
「もしも、お客様がお持ちの遺言書よりも後の日に作成された遺言書が存在する場
合には、後のものが有効(民法第1022条、1023条)だということは、ご存知かと…
……。」
「それから、大変申し上げにくいことですが、お客様がお持ちのものが、法的には
有効でないということもあり得まして………。」 と、主張したくなるわけです。

 しかし、Aさんにしてみれば、“手元の遺言書の他には有効な遺言書は存在しな
いという証明・・・”これは、世界中のどこを探しても存在しないという証明です
から、不可能なことです。
 また、手元にある正式な遺言書について、今以上の正当性を付与することも、や
はり無理な話です。

 そうすると、この問題は、解決手段がないようにも思えます。
「ん〜、いちいち裁判(勝訴)するしかないのか!? そんな殺生な………」
 でも、実際に金融機関から拒否された場合には、裁判で争うしか方法があり
ません。

 そこで、私は考えてみました。
 例えば、同じような金銭債権でも、保険金の場合にはこんなに難航してはいない
のではないかと。
 その理由は、保険の場合には、預かる際に死亡時の受取人についての定めを置い
ている(受取人記入欄がある)ので、預金におけるような争いはかなり避けること
が出来ているのではないかと推測できます。

 であれば、預金の受け入れ時においても、同様の手順を踏んでおけば、相続時の
払い戻しがもっとスムーズにいくと思われるのですが、如何でしょうか。

 この世が丸く収まれば、天国へ逝かれた仏様も安心ですしね。


2009.03.27(金)【イチロー・デー】(金子登志雄)

 25日は、まさにイチロー・デーでした。

 1人は、もちろん、調子が悪かったのに、最も重要なところでヒットを打ち、日
本をWBCでの優勝に導いたサムライ・ジャパンのイチロー選手です。

 「役者が違う」ということでしょうか。ほんとは調子が悪くなかったのに、わざ
と見せ場が来るまで隠していたのかいなと、冗談も言いたくなるほど絶妙なタイミ
ングでのヒットでした。

 ああいう絶妙な場面を引き寄せるのも実力のうちなのでしょうか。ご本人も照れ
くさいのか「神が降りてきた」とか、「最後においしいところだけいただきました。
本当にごちそうさまでした」と挨拶し、爆笑を誘ったようです。

 もう1人は、ご存知、政界のイチロー氏です。球界のイチローが「狙い打ち」し
たのに対し、こちらのイチロー氏は、「狙い撃ち」されてしまったのか、勝利を目
前にして、絶妙なタイミングで、足をすくわれてしまいました。

 なぜか順調すぎると、こういうドンデン返しがよくありますね。塞翁が馬とは、
よくいったものです。

 ご本人も、あたかも収賄犯人、あるいは金権体質の権化のようにマスコミに叩か
れ、支持率は急減……、悔しさ溢れる無念の記者会見でした。起訴容疑に、検察の
隠し玉も出てこなかったので、政治や法律のプロからは、検察への批判も強いよう
ですが、今後、どういう展開になりますことやら。

 切っ掛けはともかく、ますます日が当たる人と急に試練に立たされた人………、
世の中の風の流れや民主主義の成熟度を含め、いろいろ考えさせられた日でした。
KYの人が一番幸せでいられるのかもしれません。


2009.03.26(木)「贈与税は私が払うの?」(山本直樹)

 先日、確定申告の時期も終わりましたが、贈与税等の納税義務のある方もきちん
と申告はすまされましたでしょうか?

 後継者への事業承継のために、毎年一定の株式を後継者に譲渡されている方の話
です。

 今年は自社株の評価が下がったので、思いきっていつもの年より多くの株式を譲
渡することになったそうなのですが、贈与税の非課税枠(暦年制を採用)を超えそ
うです。

 「贈与税はもらう人間が払うのだから、贈与税は息子(次期社長)が払えばいい
んだよな?」と社長から聞かれましたので、

 「もちろんそのとおりです。個人間の贈与の場合、贈与者側に対する課税はあり
ません。しかし、息子さんが贈与税を納めない場合は、社長(贈与者)にも贈与税
の納税義務が生じますよ。(相続税法34条、相続税法施行令11条参照)」と答
えましたところ、

 「え・・・。」

 「この場合、贈与税の資金援助も、新たな現金の贈与ですから、贈与税の課税対
象になりますよ。」

 「え・・・。」

 という会話が続きました。

 息子さんは、税金を納めるのをかなり嫌がる方なのですが(当たり前ですが)、
親子間で協議していただき、息子さんが贈与税を納めることになりました(当たり
前ですが)。

 贈与した方、あげた相手がちゃんと納税しているか確認しましょう。



2009.03.25(水)【20年前の図書館の指定席】(渡部浩義)

 世の中の経済情勢が不安定になってくると「資格試験」志向が高まると言われま
す。100年に一度の経済不況といわれる昨今の世の中、またこの志向は、高まり
をみせるのでしょうか。

 ところで私事ですが、私は大学在学中の昭和59年ごろから司法書士試験の受験
勉強を始めました。法学部に在籍し、少し真面目に勉強に取り組んだ者は、一種の
「はしか」のように皆一度は司法試験を志すのでしょうが、私は当初から「司法書
士試験」を目指していました。

 当ESGの会員・会友のなかにおける情報交換の場においても、家族が司法書士
でもないのに在学中から「司法書士」という資格を知っていたこと自体が凄い、と
いった旨の指摘を受けます。

 確かに司法書士試験合格者は、司法試験合格者に比べ、圧倒的に前職歴を経験さ
れておられる、「転職組」の方々が多いと思います。

 私の受験時代に話を戻すと、当時最も力のあると評判の受験指導校の週末の答案
練習会に出席してみて、その出席者の顔ぶれ、年齢構成に驚きました。
 わが父と同年代より上と思われるような年配者から私と同じ大学生風の者まで、
特に、サラリーマン風の方や年配者の方の真剣味が、私たち若輩者とは全然違うの
です。「不退転の決意。」その後ろにはそれぞれの「ご家族」や待ったなしの「事
情」がそうさせていたのでしょう。

 「これは大変なことになった...。」

 ヘラヘラと自分の気の向いたときに勉強したって合格するものか。あんなに人生
を賭した真剣なオジサンたちを向こうに回し競争しなければならないのだから。

 私の大学は、高校に毛の生えたような小さな大学でしたが、その付属図書館の自
習室へ開館時間からから閉館まで通うことにしました。通うようになってみてわか
ったのですが、毎日来る決まった顔があり、それぞれが次第に自習室内に自分の指
定席を形成していくのです。時々、机から顔を上げると仕切板の向こうのそれぞれ
の角度にいつもの同じ顔が見えます。「ニヤッ、」と今日もアイコンタクト。

 ちょっと息抜きにロビーに出ると、顔馴染み達も出てきます。80円のカップコ
ーヒー片手に、それぞれが勉強している内容の情報交換。税理士を目指す者、公認
会計士を目指す者、社会保険労務士、司法試験、大学院受験、公務員受験、それぞ
れがそれぞれの目的のために。このロビーでの10分間ほどの「雑談」がなかなか
役に立つのです。

 たまに、この公の図書館自習室に「珍客」が現れます。その方が一定の仲間の
「指定席」に座ろうものなら、他の仲間が「あんた、申し訳ないけどその席遠慮し
て。」と一言。その顔のあまりの真剣さに、「珍客」の方も圧倒されてすぐに他の
席へ。

 その後、あの自習室仲間がどのようになったか、残念ながら音信をもっていませ
んが、過日、久しぶりに母校を訪ねると既にあの図書館もなくなっており、他の施
設も見違えるほど立派になっていました。

 立派になった新しい図書館を前に、かつての図書館の閉館時刻になると流れてい
たケニー・ドリュートリオ『朝日のようにさわやかに』が、やたらと頭の中で聞こ
えてきました。    



2009.03.24(火)【週末のグリーン車指定席】(渡部浩義)

 過日の週末、相続案件で「岐阜」へ出かけた帰りに、「名古屋」から新幹線に飛
び乗りました。仕事の疲れから、どうしても座って帰りたかったのでかろうじて取
れた指定席へ行くと、どうしたことか親子3人連れが既に鎮座され、おいしそうな
「牛肉弁当」、「鶏そぼろ弁当」に舌鼓の真っ最中でした。

 私の席番がちょうど小学生とおぼしき女の子の掛けている席だったので、あるい
はと思い確認すると、この御母堂様が烈火のごとく「ここは、この子の席です!」
と、すごい剣幕で水戸黄門の印籠のようにチケットを見せ付けられます。こちらも
困窮していると、次第に周囲もザワザワしはじめ、JR東海・車掌氏の登場です。

 このお母さん、登場の車掌さんにも、こちらがクラクラするほどのヒステリック
な抗議を続けられます。もう私も立って帰る気力もなく、車掌氏にそっと「追加料
金を支払うので、グリーン車に座らせてもらえませんか。」とお願いの耳打ちをし
ました。

 「お客さん、何も言わずにただ黙って私について来てください。」と、小声でそ
の車掌氏。連れていかれたのは10号車4番A席(グリーン車)でした。

 「いやー、大変なお母さんでしたね。ご迷惑おかけしました。岡山まで大丈夫か
無線確認して来ますので、掛けていてください。」。数分後、「お客さん、岡山ま
で押さえましたので、この席でお寛ぎください。」と車掌氏。
 こちらが、「グリーン料金の追加代金はいくらでしょう?」と聞いても、「いや、
こちらの発券システムのミスですので、結構でございます。それよりも、込み合っ
た車内で、『オトナの対応』をしていただいて感謝しております。ありがとうござ
いました、それでは。」と応じてくれました。

 私は、これまで基本的にグリーン車はホーム側から窓越しにみる車両だと思って
いましたが、読書灯、フットレスト、深いリクライニング、おおっ、こんなところ
にコンセントまで...まるで場違いな『おのぼりさん』状態。確かに読書も、パ
ソコン入力も、うとうと睡眠までもまるで質が違いました。

 後日、JRに勤務する大学時代の後輩に事の一部始終を話し、なぜ、私がグリー
ン車に通されたのか尋ねると、考えられる選択肢として、
 @靴を含めお召し物がしっかりしていた(磨いた靴、誂えの紳士服、シャツ等)。
 Aさる筋の方々と判断された(ヒゲ、スキンヘッド、強面等)。
 B何かしらの徽章(バッジ)をつけていた。
 C車掌持ちの普通車指定席が既に一杯で、他に方法がなかった。
 D担当車掌の機嫌が単によかった。運が良かった。   

 あの車掌さんが、神が、私に対して下した判断はどれだったのでしょう。 


2009.03.23(月)【従業員の退職と取得条項付株式】(金子登志雄)

 「一定の事由」が生じることを条件に、会社が株主から株式を強制取得できる株
式のことを「取得条項付株式」といいます。取得の主語は会社です。

 優先株式等の種類株式に、この条項を定めることがありますが、一番多い内容は、
上場が決まったときに、その種類株式全部を会社が取得し代わりに普通株式を交付
するというものです(昔でいえば強制転換株式)。上場するのは会社ではなく「株
式」であり、普通株式しか上場しないのが一般だからです。

 この取得条項付株式として「A種種類株主のうち従業員である者が退職したとき
は、当会社は〇〇円で、その所有するA種種類株式全部を取得できる」と定める例
があります。社外の株主が存在することを会社が嫌がるからです。  

 私は、かねてより、このような人によって差別する内容では種類株式とはいえな
いと考えていますが、先般の大学教授の講演でも、何の問題もないような話でした。

 しかし、これが可能としたら、次も可能ではないでしょうか。
1.A種種類株主のうち従業員株主が死亡したら、会社はその者から取得できる
 →相続人への売渡し請求を定める会社法174条以下は不要になりかねません。
2.A種種類株主のうち従業員株主が風邪を引いたら、会社はその者から取得で  
 きる。  
3.A種種類株主のうち従業員株主が株主総会で会社提案の議題に反対したら、  
 会社は取得できる。

 剰余金の配当などの自益権や議決権などの種類株式と相違し、株式自体を奪う種
類株式の内容としては、もっと慎重であるべきで、かつ、この「一定の事由」は、
その種類株主全員に効果を及ぼさないと種類株式とはいえないというべきです。

 したがって、「A種種類株主のうち従業員である者が【1人でも】退職したとき
は、当会社は〇〇円で、A種種類株式を取得できる」と定めるのなら、問題ないで
しょう。一斉に全員に効果を及ぼすから人的内容だとはいえません。その後に、退
職した者から優先して取得できるように定めることは、種類株式の設計次第で別問
題です。

 さて、今週の27日に東京司法書士会港支部主催で「種類株式」の講演をいたし
ます。東京会会員でご興味のある方は、会員限定の「スーパーネット」で時間・場
所等をお調べのうえ、お申込みください。


2009.03.19(木)【募集株式の発行】(金子登志雄)

 募集株式の発行とは、旧商法時代の「新株発行」のことです。公募も、縁故募集
も、第三者割当ても、株主割当ても全部を含みます。株式の募集といってもかまい
ません。

 第三者割当て、たとえば、特定のAさん1人に新株100株を割り当てると決め
る場合に、なぜ「募集」というのだ、相手は1人じゃないかと疑問に思う方が多い
ようです。法律のプロのはずの弁護士や司法書士の中にも大量に存在します。

 「Aさんに新株100株を割り当てると決める」ことは、「Aさんに、出資をお
願いしよう。出資を申し込むようお誘い(勧誘)しよう」という意味なので、「募
集」になります。大勢の一般の方に出資を勧誘しよう(公募)、知り合いの人を対
象に出資を勧誘しよう(縁故募集)というのが、たまたま、特定のAさんに出資を
勧誘しようと、対象が狭まっただけの話です。

 株主割当ての場合は、株主の持分比率に応じて平等に割り当てるという決議です
が、やはり、申込みがない限り、強制的に出資をさせることができません。ですか
ら、「株主の皆様、出資のお申込みをお願いします」という募集行為(勧誘)が必
要です。募集株式の発行の1つといえます。

 株主を対象とした新株式の発行でも、割当てる権利を与えずに、縁故募集や第三
者割当てと同様の手続を採用することはもとより差し支えありません。

 「株主割当てを第三者割当の方法で実行する」……これを平成15年2月に出版
した「これが新商法だ!これが新登記だ!」に書きましたら、かなりインパクトが
あり、当ESGも全国的に知られました。いまでは、当たり前の手続になってしま
い、ESG本が切っ掛けになったことも知られていませんが。



2009.03.18(水)【未上場企業における株主総会の定足数】(和出吉央)

 未上場企業おいては、株主総会の「定足数」について認識がないことがほとんど
です。

 これは、株主総会を実際に開催している未上場企業(少ないです)のうち、いわ
ゆるオーナー(社長)と呼ばれる株主(並びにその一族)が議決権の総数の「過半
数」を有し、株主総会の議長・取締役として株主総会へ出席するため、「定足数」
について意識する必要性が薄いからです。

 また、多くの未上場企業において、その定款には「株主総会の決議は、法令・定
款に別段の定めがある場合を除き、出席した株主の議決権の過半数をもって行う」
という規定があります。
 この規定には、原則として「定足数を完全に排除する」という効果があります。

 先日、ある会社のオーナー社長が亡くなり、はじめての定時総会を迎えました。
遺産分割協議はととのい株式の準共有状態は解消され株主構成は以下のようになり
ました。

 後継者(長男・取締役)=23%
 次男(サラリーマン) =22%
 長女(専業主婦)   =22%
 投資育成        =20%
 その他(10名)   =13%

(まるで教科書に出てきそうな比率です・・・)

 毎年きっちり招集通知等の発送はしても、投資育成以外は委任状の返送はまった
くなく、実際はオーナーと他の取締役のみで株主総会開催していました。

 オーナーひとりで67%の議決権を有していましたので、法的にもまったく問題
はなかったのです。

 今回の定時総会も委任状の返送は投資育成以外まったくなかったため、いつもと
同じと思いきや、出席となる株主の議決権割合は、後継者と投資育成の合計たった
”43%”です。

 不運?なことに今回は定款変更議案があり、かつ、定款の定めとして定足数の軽
減規定もありませんでした(定款で議決権の3分の1まで軽減可)。

 総会終了後、私のところに登記の依頼がきてはじめて、さあ、どうしよう!?
43%では・・・ということになったのです。

 今回は相続により株式の分散させてしまったのが一番の原因ですが、我々司法書
士は択一試験でせっかく細かい知識を詰め込んでいるのですから、もっともっと税
理士等と協力し、未上場企業における会社法についての顧問・相談役となるべく、
日々精進していかねばと思いました。



2009.03.17(火)【僻地部での商業登記所80庁化問題】(島根・渡部浩義)

 この徒然閲覧の皆様は、「太平洋ベルト地帯」(まだ、このような表現はあるの
でしょうか? 要するに東海道・山陽新幹線沿線の賑やかな地域のこと)にお住ま
いの方が多いと仮定して・・・、

 突然ですが、島根・鳥取の位置関係を自信をもって言える方はどれくらいおられ
ますか。

 また、「島根県の県庁所在地は?」という問いかけには、島根市、松山市、松江
市、高松市、松本市...さあどれでしょう。(脱線しますが、鳥取「とっとり」
は、鳥が先であって、「取鳥」ではありません。)

 かくいう私も、逆に「群馬・埼玉・栃木あたりの位置関係と、その各県庁所在地
は?」と聞かれれば怪しいかぎりです。「法律家は常識を備えましょう。」と、3
月4日の徒然にて同郷の伊藤司法書士から指摘がありましたが、私も小学校あたり
からのやり直しが必要なのかも知れません。

 ところで、これまでの私の徒然の内容で、私が住んでいるところは相当な田舎で、
さみしい所らしいということは察していただけていることと思います。

 が、島根県の現状の認識を今一度新たにしてもらえれば、2月1日現在で県下総
人口72万3,722人(決して一市町村の人口ではありません。)大体、静岡市
一市の人口と同じくらいの人数が総県民人口です。  

 最近は、NHK朝の連続テレビ小説「だんだん」の影響や石見(いわみ)銀山世
界遺産登録の影響もあり、島根に訪れる観光客の皆さんが増加したとか。

 ただし、観光で来県された皆さん方は、その交通の便の悪さに困惑され(島根に
は、東西に長い県内を横貫する高速道路もなく、JR山陰本線は車窓、風光明媚な
れどいまだに単線で、県東部の街から西部の街まで特急で片道約2時間30分。し
かも横貫特急は一日7往復のみ。列車間の接続も極めて悪い。)、人がいない、老
人が多いという寂しさに戸惑っておられるとか。

 転じて、島根県司法書士会の3月1日現在の会員数は、全県下総数127名(こ
れまた決して一支部の会員数にあらず)です。そのうち60歳以上の会員数は81
名、全体の64%です。総会員数127人で現在理事10名、このように司法書士
会も閉塞した当県にも商業登記所80庁化(※)の波は押し寄せます。

 商業登記の事件量からいけば、当県は間違いなく1庁となることでしょう。ネッ
ト申請に対応できない司法書士はどうすればよいのでしょうか。そして、何よりも、
一般の商業登記申請者、利用者に当県のように交通の便が至極悪く、IT弱者の多
い地域の者は本当にどうすればよいのでしょうか。

 この商業登記の場面でも、国が「ナショナル・ミニマム(国民生活環境最低基準
:渡部訳)」を放棄し、地方のスポンサーを降りた、という理解でよいのでしょう
か。

 (※)商業登記所80庁化問題ー法務省は現在全国に489庁ある商業登記所を  
   全国で80庁化する計画をすでに策定済です。

★ESGよりお知らせ  
 会員の松山聡が共著書『Q&A不動産登記オンライン申請の実務』を上梓しま
 した。



2009.03.16(月)【最後の確定申告】(金子登志雄)

 今日は、確定申告の締切日ですが、手続はお済みですか。納税は国民の義務です
からお忘れなく。  

 わがESGのお仲間も税金の高さを嘆きながら、申告したようです。当の私も、
税金の高さを嘆く身分にはほど遠い存在でしたが、2週間前に申告しました。

 そのとき思いましたが、十分に稼いできた人は、この不況で、「今年もこの収入
を維持できるだろうか」と、しばし想いにふけったのではないでしょうか。今年の
収入が昨年を上回ると自信をもって言える人は、ほんのわずかでしょう。

 そういう方には、この際、発想を変えて、「来年からは、もうこんなに税金を納
めなくてよいのだ。これが最後だ。うれしいな」とでも思っていただきましょう。

 つくづく思うのですが、世代の運・不運は実に大きいと思います。今年の大学卒
業生は就職難で気の毒ですし、子供の学費と住宅ローンを抱えた30代の世代も、
今後は勤め先が安泰かどうかの不安でいっぱいでしょう。

 私の世代(団塊の世代)は、高度成長期に生きてきたので、職にはそれほど苦労
しませんでした。だからこそ、私のように、勝手気ままな自由人として生きてきた
人間が少なくないわけですが、今後は、どうかわかりません。成人した子供たちが
職にあぶれ、親元を頼ってくる可能性もあるでしょう。

 まぁ、「何とかなるさ」が、わが世代の生き方です。みんなが貧乏だった子供の
頃を思い出せば、どうってことないでしょう。  



2009.03.13(金)【清算人設置会社】(金子登志雄)

 会社法には、やたらと「〇〇設置会社」という用語が登場します。取締役会設置
会社、監査役設置会社、監査役会設置会社、会計監査人設置会社などです。

 しかし、取締役設置会社と清算人設置会社という用語は登場しません。取締役は
通常の株式会社の、清算人は解散後の会社(清算会社)の必須の機関だからです。
同様に、株主総会設置会社という用語も登場しません。株主総会の存在しない株式
会社はありえないからです。

 したがって、取締役も清算人も登記簿に存在しないことはありえないはずですが、
実はあるのです。
 解散の登記と清算人の登記を一緒に申請しなければならないとはどこにも書いて
ありませんから(現実には一緒に申請します)、清算人の登記をせずに、解散だけ
申請したら、どうなるでしょうか。
 取締役は登記官の職権で抹消されますから、取締役も清算人も登記簿上不在の会
社ができあがります。

 実例はないと思って元登記官の先生に尋ねましたら、あるそうです。びっくり仰
天しましたが、考えてみれば、休眠会社の職権解散がこの型でした。実例は大量に
あるわけです。

 ただいま、「登記情報」という雑誌に掲載する原稿に取り掛かっていますが、こ
の〇〇設置会社は実にやっかいです。

 たった1人監査役を選任しただけで、監査役〇〇と、監査役設置会社の2つを登
記しなければなりません。監査役〇〇だけで、監査役が存在することがわかります
から、「会」の字のつく、「〇〇会設置会社」だけ登記することで十分のように思
いますが、それには国会による法律改正が必要です。無理ですね。


2009.03.12(木)【高校生のための法律教室】(渡部浩義)

 胸膨らむ「春」です。 前回に引き続き研修会の講師引受けの話です。今回は、
話をさせてもらう相手が前回のような高齢者ではなく、平成生まれの若者たち、今
春卒業する県内の高校生の皆さんが相手です。

 題打って『高校生のための法律教室』。卒業を前に高校生の皆さんに、これから
世で生活していくうえで必要となるであろう世の中のしくみ、法律のしくみのさわ
りの部分の知識をレクチャーしようという企画です。  

 私の担当校は母校も含め2校。いずれの学校でも案内された教室に入ると、生徒
さん達は、神妙な面持ちで私達講師陣2名を迎えてくれました。が、教室内は熱気
ムンムン「若い醗酵する雰囲気」とでもいうのでしょうか、その雰囲気に講師陣は
のっけから押され気味です。

 島根の高校生はその大多数が卒業後、進学、就職のために県外へ出て行きます。
そして、そのUターン率はきわめて低いといわれています。私の徒然では、時々、
「島根のさみしさ」を指摘していますが、最近の島根県に関する統計を見ていると
構成年齢人口比率等は下記のようになっているようです。

   http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2007np/index.htm (表4部分参照)

 生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)が少ないというのは本当に寂しい
ものです(同表ご覧のとおり、生産年齢人口−全国最下位、老年人口−堂々首位)。

 このような地域に住んでいると、とりあえず地元の者(たとえば町内会や商工会
等)で何かを企画するにしても「元気」や「アイディア」が出ません。
 若いときには都市部で、田舎にはない刺激や競争にさらされ、知識や技能を修得
して、必ず出身地へ帰ってきて欲しいことを伝えました。

 この研修会には、当県司法書士会の講師派遣委員会により、よく練られたレジュ
メがあらかじめ生徒さん達に配布されていたのですが、お察しのとおり私は真面目
な講師ではありません。レジュメをあまり使わずに『欲望』と『お金』を軸に、私
の日常業務での経験談、そして私自身が島根の片田舎から都市部へ出て体験した苦
い経験など、また世に「計画的なご利用」などありえないこと等々、前後左右への
脱線講義をしました。

 完全に純真無垢な白布のみんなに、何色かのインクを散らして汚したみたいでし
たが、おそらく彼らが平素向きあっている家族でも、友人達でも、学校の先生方で
も話せないことが、違う環境から来た「部外者」だから話すことができたと思って
います。

 いずれにせよ、将来の時間がたくさんあるということは羨ましいことなのだなと、
改めて彼らの顔を見ていて思いました。

 ただし、最後に「是川銀蔵」さんの話をしたのは、まずかったでしょうか。今映
画で話題の「医者にして父そして革命家、『チェ・ゲバラ』」の話とどちらにしよ
うかと迷ったのですが..。講義の名手たるESG代表殿、いかがでしょう。

 以上のとおり、白熱の60分1本勝負! 熱心に聴講してくれたみんな、ありがと
う。皆さんの将来に期待します。



2009.03.11(水)【Google Earth】(根来川弘充)

 昨今、地図を調べるとき、Google Earthを使うことが多くあります。宇宙から地
球をズームしていって、知りたいところの空中写真をどこでも知ることができ、ま
さに地球を手玉にとることができます。

 測量の技術も昨今は衛星を使って計るようになっていますが、宇宙から計ってい
るにもかかわらず、今や数センチも誤差とよべないほど技術は向上しています。

 私たちの仕事では、新築の建物に関わることが多いのですが、現在の主流は、寸
法を間違うことなく作られた柱や壁や屋根が工場でつくられ、これらを現地で組み
立てるという、いわゆるプレハブ工法というものでないかと思います。

 この工法で作る利点とは、屋根が早くできるので、その下で作業をすることによ
って、雨の日でも作業がはかどるという点。そして、既製のパーツを組み立てるの
で、特別な技術を必要としない点、などからコストを安く仕上げることが出来るの
だそうです。

 しかし、この工法で建てた私の知人から、「入り口のドアが開きにくくなって最
近修理をしてもらった。」という話を聞きました。特に地盤が悪かったというわけ
でもありません。
 「まったく同じ寸法のパーツを組み立てているのに何故?」
ふと考えてみました。

 建物は四方同じ条件ではありません。雨や風邪が強くあたるところ、日の照ると
ころ、湿度が高いところ、微妙な違いかもしれませんが、何年もすれば、材質に変
化を与えるところがあるかもしれません。そもそも、地球は丸いのだから、そこに
幾何学上正確な物を建てたることに微妙な無理を生じさせたのかもしれません。

 私達が住んでいる家は、同じ日本でありながら、どの家として同じ条件で建って
いないということなのでしょう。こうしてみると、技術が進歩することによって、
安心が生まれることは確かなのですが、その安心によって、根本的なことを見失っ
ていたことに気付かされます。

 「地球を手玉に取る」なんて、大それた気分を味わっていた自分を戒めたいと思
います。



2009.03.10(火)【私の単元未満株式】(大戸早規子)

 年明けから、とうとう「株券電子化」が始まりました。
(詳細は、下崎さんが書いた昨年8月1日の徒然【株券の電子化】を参考にして下
さい。)  

 いち早く、手元にあった塩漬け状態の上場会社の株券をいわゆる「ほふり」にす
る手続きをとり、証券会社には一般口座を開設し、これで準備万端!と思っていた
私のもとに、1ヶ月程前、「特別口座開設のご案内」の葉書が届きました。

 「何かの間違いじゃないの?」と思い破り捨てようと手をかけたところ、株数欄
の「81株」が目に留まり破るのはやめました。

 「あっ、単元未満株式のことだ!」
 長年保有していたおかげ(というか、株価暴落で売るに売れなかっただけ)で、
その間に、株主無償割当てが何度かあり「1000株」が「1081株」に増えて
いたのです。配当金通知書でウスウスその存在を知っていたというのに、株券電子
化対応策を考える上では、すっかり頭から抜け落ちていました。

 「単元未満株式」とは、銘柄ごとに決められている取引所での最低売買単位であ
る1単元に満たない整数株式のことです。例えば、1単元が1000株の場合は、
1株から999株までが単元未満株式になります。
 「単元未満株式」には、議決権の行使は認められていませんが、原則(定款で権
利を制限する旨を定められますが)、配当金や株式分割を受ける権利等、その他の
株主の権利は認められています。

 もちろん、そのことは知っていました。会社法の条文を何度も読んできたし、仕
事上も大いに関係してくることですから、知識としての習得はバッチリ(?)だっ
たと思います。

 ですが、実生活に何気なく登場してくると上記のような始末です。あぁ、なんと、
情けないことでしょう・・・(泣)。

 ちなみに、特別口座に入ってしまった私の単元未満株式の対処方法ですが、証券
会社に開設した一般口座への振替、単元未満株式の買取請求もしくは買増請求(買
増制度採用会社に限定)があるようです。

 いずれにせよ、特別口座管理機関(信託銀行の証券代行部など)のホームページ
を見れば詳細がわかりますし、必要な書類のダウンロードもできます。

 えっ、私がどの方法を選んだかですって・・・? 塩漬けの味の具合を、少々、
味わってみることにしました。



2009.03.09(月)【支部研修会講師】(渡部浩義)  

 司法書士も老若男女にかかわらず、IT化への対応は待ったなしです。
 国は2011年までに登記簿謄本の取得申請も含めたオンライン申請率を57%
まで達成という具体的数値目標を掲げています。また、そのうち取り上げますが、
商業登記所の統廃合も進んでおり、周辺環境は厳しいことばかりです。

 私の所属する司法書士会支部(会員総勢10名ー平均年齢は70歳を超える)の
ような高齢化弱小零細支部においても、オンライン申請のための対応を例外なく迫
られています。

 支部会員の中で一番「若い」という、ただそれだけの理由でこの研修会の講師と
なりました。講義の準備を進めるにあたり、事前に各会員の先生方に初歩的な内容
につきアンケートをとりましたが、パソコンシステム、インターネットのかなり初
歩的な部分から、講義をする必要があることがわかりました。

 断っておきますが、私も決してパソコン・IT知識に長けているわけではありま
せん。当事務所の若い職員とディスカッションを重ね、「サルでもわかる初歩の初
歩からのパソコン講義」を企画しました。そして、外部からも専門講師も招き、プ
ロジェクターに映し出されたパソコン画面をみながら、私と外部講師で掛合い問答
で講義をすすめました。随時、待ったあり。質問受付ありです。

 当日の目標
  @ 登記簿謄本等の申請請求をできるようにする。
  A 民事法務協会の登記情報提供サービスの請求ができるようにする。     
  B 必要な先生方には業務用の法務省支援ソフトをインストールする。
  C 登記の本申請は次回以降の課題とする。

 そして講義を準備し進めていくうえで明らかになったオンライン申請に関して、
使い勝手を悪くし、わかりに難くしている一例として、手数料決済方法の不統一が
ありました。

  ・ 登記情報提供サービス ⇒ クレジットカード決済
  ・ 登記簿謄本等の請求  ⇒ ネットバンキング決済、ATM納付
  ・ 登録免許税納付    ⇒ ネットバンキング決済、印紙納付

 キャッシュカードとクレジットカードはどう違うのかの説明にも苦労しました。

 傍から見ておられる若い方々からすれば、本当に失笑をかうような内容かも知れ
ませんでが、皆一生懸命でした。でも70歳を超えておられるとは言えども、そこ
は一定の資格者、並みの70歳代とはやはり違い侮れません。かなり理解がすすん
だと思います。 

 地元法務局支局の支局長さんにも大変なご理解をいただき、会場の提供もいただ
きました。そして、講義の最後まで、支局長さん、担当職員の方にも同席いただき、
熱心に問題点等を聴講いただきました。この場を借りてお礼申し上げます。これが
小所帯支局、支部の良いところかも知れません。 
 こんな、ほのぼのとした登記所、司法書士会支部も今だに日本にはあります。

 もっとも、ネット申請を進めていくうちには、まだまだ色々な落とし穴がたくさ
ん待ち構えているわけですけれども...。
 さすがにそこまでは舌が及びませんでした。



2009.03.06(金)【合併の停止条件と解除条件】(金子登志雄)

 3月2日に、大手法務局を含む3つの法務局に申請した合併登記の全部が昨日、
無事に完了しました。こんなに早いのは、ここ10年以上、なかったことです。
不況の影響で、よほど登記申請件数が少なくなったのか、オンライン技術が効果を
発揮してきたのか・・・。

 さて、停止条件と解除条件という言葉を聞いたことがおありでしょうか。ちょっ
とした教養に必要ですので、ぜひ覚えてください。

 停止条件というのは、その条件が成就するまでは効力が停止されており、条件成
就で効力がスタートするものです。逆に、解除条件というのは、その条件成就で生
じていた効力がストップするものです。

 合併契約など組織再編の契約には、決まり文句のように「本契約は、株主総会の
承認を得られなかったときは、その効力を失う」と挿入されています。解除条件で
す。つまり、株主総会の承認を得る前であっても、甲乙間では、有効な契約として
スタートしており、甲乙の総会の承認が得られない時に、そこで終わりになります。

 ところが、某上場会社同士の合併契約に、最近の合併契約としては、めずらしい
ことに、「本契約は、株主総会の承認を停止条件とする」とありました。  

 しかし、他の条項には「甲乙は、本契約締結後効力発生日に至るまで、善良な管
理者の注意義務をもって、それぞれの業務を執行及び財産の管理運営を行う」と、
これまた決まり文句が記載されていました。総会の決議前でも、契約の効力が生じ
ていることを前提とした記載です。ちょっとした矛盾を感じてしまいます。

 合併手続においては、株主総会前に合併契約書を株主や債権者の閲覧に供したり、
必要により株主総会前に合併公告を掲載することがありますから、やはり、停止条
件よりも、伝統的な解除条件のほうが勝っていると思います。停止条件では、効力
の生じていないものを閲覧させたり、公告していることになりますので。


2009.03.05(木)【歴女】(佐藤典子)

 日経新聞に最近歴史好きの女性『歴女』がじわり増えているという記事がありま
した。

 従来、歴史は男性の好きな世界という先入観がありましたが、最近では、憧れの
武将に関連する地域へ旅行する女性も増えており、家紋入りのシールや武将のキャ
ラクター入りTシャツなどを購入する女性も増えているそうです。

 男性の趣味の領域に女性が入り込んだり、逆に男性が女性の領域に入り込んだり
する男女逆転現象(女性司法書士の増加もその例でしょうか?)は、男女雇用均等
法をきっかけにみられるようになったとその記事にはありました。

 確かに、先日立ち寄った400年の歴史をもつ熊本城(別名銀杏城)でも、雨に
もかかわらず、傘とカメラを持ち一人で観光している若い女性を見かけました。  

    http://www.manyou-kumamoto.jp/castle/

 彼女たちのお目当ては、現代に蘇った本丸御殿と昭君之間?それとも大小天守閣、
二様の石垣、武者返し、籠城に備えての120以上の井戸と銀杏?

 もしかしたら、毎日、暗いニュースしか耳にしない閉塞感のある日常を飛び出し
て、精神的な充実感を与えてくれる名将加藤清正に会いたくなったのかもしれませ
んね。



2009.03.04(水)【経験則】(伊藤崇)

 今年も早や2ヶ月が経ちました。インフルエンザのピークが過ぎたかと思えば、
次は花粉症の到来と、一難去ってまた一難です。

 さて、法律の世界では「経験則」という言葉がよく出てきます。「経験則に照ら
せば…である」などといった具合に。これは一般用語に直せば「常識」のことで、
通常考えられる判断といった意味ではないでしょうか。

 法律家が何らかの法律的に疑義のある事象を判断する際に、まずはこの経験則か
ら判断し結論を得ることが多いのではないでしょうか。そして、その理は裁判所も
同じではないかと思います。裁判官もまずは(経験則でもって)結論を得てその後
条文などの法律的根拠を求めて判決を下すのだろうと思います。

 先般、最高裁判所において、相続人から金融機関に対する被相続人名義(口座)
の取引履歴開示請求に関して、開示義務ありとの判断がなされました。金融機関と
しては相続人全員の同意がなければ履歴の開示には応じられないと主張したのでし
ょうが、最高裁はそれを認めませんでした(平成21年1月22日)。

 至極当然の結論だと考えます。相続人間に争いがある場合には全員の同意が得ら
れることは通常考えられず、金融機関が開示に応じないとするのは不合理であり、
相続人の権利行使を不当に制限する結果となるからです。おそらくこの問題を眺め
たとき法律家の多くは感覚として開示しなければオカシイと考えるのではないでし
ょうか。

 ただ、もちろんそのような感覚、経験則のみで結論を導くのは余りに粗雑で乱暴
です。いかにそれに法律的な根拠を与えることができるかが法律家の腕の見せ所で
しょう。先の例では最高裁は、確かに預貯金自体は相続人に分割されるのであるが、
これとは別に相続人全員に帰属する預貯金契約上の地位に基づき、被相続人名義の
預金口座についてその取引履歴の開示を単独で行使することができる、としました。

 このように法律家は経験則に敏感であるとともに優れた法律構成ができなければ
一人前とはいえません。おかしなことをオカシイというのは法律家以外にもでもで
きることです。それを法律的観点からもオカシイというのが法律家の役割ではない
でしょうか。

 日々精進しなければいけませんね。



2009.03.03(火)【3年目の辞任】(金子登志雄)

 きんざい「登記情報」の今月号における「商業・法人登記Q&A」の回答者は、
会友の山本浩司さんでした。メインは「取締役の辞任と定款添付の要否」です。

 会社法によると、取締役の任期は非公開会社にあっても2年が原則ですが、定款
で10年まで伸長できます。では、非公開会社の取締役Aが3年目に辞任した場合
に、任期中の辞任であることを証するため、辞任届のほかに、定款の添付が必要か
というQ&A問題でした。  

 商業登記法54条には、「退任を証する書面」が登記に必要だとあります。
 商業登記規則61条には、「定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又
は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款を添付しなけ
ればならない」とあります。

 つい、任期切れ後の辞任は無効だから、54条書面としての辞任届の他に、任期
中であることを証明するため、規則61条の定款の添付が必要のように勘違いして
しまいますが、規則61条は無関係です。任期中かどうかの証明は、「退任を証す
る書面」内部の問題だからです。

 以上については、旧商法時代から、ほぼ確定した解釈です。旧商法時代でも、原
則ぴったり2年の任期なのに、例外として2年目の定時総会まで任期を伸長できま
したから、就任後2年と数日後の辞任につき、同様の問題が生じていました。

 規則61条が無関係ということは、会社法の条文構造(原則規定か例外規定か)
とも無関係ということになります。そもそも規則61条は、役員の選任を含む会社
の行為を対象とするものであって、辞任とか就任とか個人のなす行為を対象にして
いる規定ではないというべきでしょう。

 いや、昔から、任期満了退任を証する書面として、「定款の抜粋」を添付してい
たじゃないかという方もおられるかもしれませんが、それこそ退任を証する書面の
一部として添付していたのです。規則61条が根拠なら、「定款の全文」を添付し
なければなりません。  

 退任を証する書面として、どの程度の証明が必要かは、法令に定めがありません
から、通達等が基準となります。現状では、3年目の辞任でも辞任届だけでOKと
されています。任期中だから辞任するのであって、辞任届自体が任期中の証明にな
るからでしょうか。

 重要なことは、Aは、「もう取締役ではない」ということを登記簿に公示するこ
とであって、今年の辞任なのか、昨年に任期満了していたかなどの登記原因部分は、
取引の安全に資するというの商業登記の目的からして、そう重要なことではありま
せん。一般論ですが、取締役の地位を失う辞任届に、嘘も少ないでしょうから、登
記実務は正当だね、というのが、われわれの結論でした。


2009.03.02(月)【未上場企業における株主総会の開催】(和出吉央)

 私の顧客は未上場企業がほとんどですが、その中1〜2割くらいの企業は実際に
株主総会をきちっと開催されています。
(本当は全社そうあるべきなのですが・・・)

 先日きちっと株主総会を開催されている(と思っていた会社)顧客(オーナー
社長)からお電話がありました。
 内容は、「会社が自社株を買取る場合って株主総会が必要なのぉおお???」
というものでした。

 定時総会以外にも、定款変更や役員報酬関係は(臨時)株主総会の決議事項で
あるという認識はあったものの、自己の株式の取得(会社法155条以下)は、
相対の株式の売買と同じだと勘違いされていたようです。

 ものすごい焦った口調でしたので、状況をお聞きすると、
”昨年(平成20年)、私(オーナー社長)から会社が自社株を買取ったのだが
(売買契約を締結)、今回の2月の定時総会開催時に計算書類等に関して株主か
らの問いがあり、はじめて自社株買取りの重要性を認識した”ようです。

 税理士へ事前に問い合わせたにもかかわらず・・・だそうです。

 とりあえず定時総会の決議事項はすべて可決され、無事?総会は終了したので
すが、その株主は当然「計算書類承認の件」については反対票を投じたようで不
満プンプンだったようです。場合によっては、この後決議不存在確認の訴え等を
覚悟しなければなりません。

 特定の株主からの自己株式取得については、株主平等の大原則の大例外として、
あえて会社法160条・164条等に規定があることからも、会社法自体が「と
ても重要だから絶対手続を守ってね!!」と叫んでいるように感じます。

 表現は適切ではないかもしれませんが、株主総会決議事項の中でも、「自己株
式取得」と「役員報酬」については、会社のキャッシュが流出しますので、あと
あと問題になる可能性が非常に高いように思います。

 我々司法書士は、税理士等と違い社長等に直接株主総会の重要性等についてお
話しする機会が持てないですが、私のような空気読めない(KY)若輩司法書士
は、事業承継法務という立派に見える?ものに名を借りながら、若干空回り気味
ではありますが、今後も(汗)熱く株主総会や会社法についてお話していきたい
と思います。


2009.02.27(金)【司法書士に必要な能力】(金子登志雄)

 新人司法書士の方から、「どうすれば流行る司法書士になれるのか」と質問され
ました。何を勘違いしたのでしょうか、「流行っていません」と答えるしかありま
せん。事実そのとおりで、腕には自信があっても、傘張り浪人の司法書士を標榜し
ているくらいですから。

 新人さんの質問が「営業力」に主眼が置かれていると、上記のように冷たく返答
してしまいますが、「司法書士に必要な能力は何か」と聞いてくだされば、待って
ましたとばかりに、「業務知識・応用力・表現力」と答えると思います。

 業務知識だけでは不十分です。現実の仕事は、教科書どおりの内容ではありませ
んから、対象の仕事をいかに料理し、構成するかという応用能力と、それを上手に
表現できる能力が必要です。

 表現できる能力とは、議事録や必要な公告等々に、効率よく、かつ、わかりやす
くまとめ、ごく自然に登記が終わるように表現することです。

 登記の調査官に「これはどういう意味だろう」「これは適法か」などという疑念
を持たせたら敗北であり、「また、いつもの登記か」とか、「なるほど。そういう
意味か」「先例もあるのだな」と疑念を持たせず、円滑に終わらせる能力です。そ
のためには、ここで調査官は引っかかりそうだという部分につき、先読みして説明
文をはさんだり、議事録に挿入しておかねばなりません。

 さて、会員・会友諸君、なぜ、偉そうに、こんなテーマで徒然を書いたかわかり
ますか。業務知識のインプットは当然として、表現力というアウトプットもそれと
同等に重要だから、その能力を鍛えるため、たまには徒然でも書こうよという意味
です。投稿、お待ちしています



2009.02.26(木)【本社、本店】(金子登志雄)

 「日産自動車の本店はどこか」という問い掛けに違和感はないでしょうか。銀行
やデパートでもあるまいし、「本店」とはおかしいと感じる方、あるいは、本社と
は別に本店があるのかと思った方もおられるかもしれません。

 本店とは、支店に対する用語であり、本社のことです。会社法でも、商業登記簿
でも、本店といいます。

 では、本題に戻りまして、日産自動車の本社はどこかといいますと、東京銀座と
思う方がほとんどだと思いますが、あれは「事実上の本社」であり、登記上の本店
は横浜です。

  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E7%A4%BE  

 このように、登記上の本社と事実上の本社が異なる会社は少なくありません。と
くに、旧商法時代は、同一地域での類似商号の登記禁止というルールがありました
から、本社を移転しても登記上の本社を移転できないという事例が中小企業でもよ
くありました。

 しかし、日産自動車の例などは、どちらかといえば、「登記上の本社=本籍地」
というイメージでしょうか。

 大阪が本拠なのに、「東京本社」を有する会社も少なくありません。これは、仕
事に便利だからでしょう。
 私も、横浜の本宅以外に、東京本宅を持ちたいものです。



2009.02.25(水)【戦争・占領政策の忘れ物(2)】(渡部浩義)

 20年ほど前、私が、勤務司法書士として在籍した事務所の所在地は、日本でも
有数の在日朝鮮・韓国人の方の多い街でした。初めて、在日韓国人の方の相続登記
の担当を命じられたとき、正直どうやっていいのか全くわからなかったのですが、
紙幅の関係からかいつまんで記すと、

 @−この問題の謎解きは、まず、日本の国際私法たる当時の『法例』(現在の  
   『法の適用に関する通則法』(平成18年6月21日法律78号平成19年  
   1月1日施行)という法律の規定の中にある。
 A−日本国は法例において、相続については被相続人の本国法によることを原則  
   とし、その被相続人の本国法が再び日本法(民法)を準拠法として振り戻し  
    ている場合は、『反致』というルールによって日本法が適用される。
 B−したがって、外国人の相続登記をする場合は、当該外国人の本国の国際私法  
   上における反致規定の有無の調査検討が不可欠である。

 そして上記@ABから、韓国については反致の適用なし、韓国民法の研究要す、
北朝鮮については国交もないが、判例、通達の変遷により本人の属国意思も加味し
て本国法を決定すべき...と解説書等も煮え切らない解説。

 が、いずれにせよ相続証明書として戸籍謄本、除籍謄本等の請求取得の必要があ
る、とここまでは、にわか仕立ての独学でなんとか到達しました。

 「どうして戸籍類を請求したらいいんですか?」とボスに尋ねれば、
 「ああ、白い紙に『戸(除)籍謄本下附申請書』とでも書いて本籍、筆頭者・戸
主名を記載、請求通数、使用目的を記載、日本語でいい。むこうの役所の人は、大
体日本語読めるから、それで管轄する市、邑、面長宛に司法書士名で請求、戸籍類
1通ごとに国際返信用切手7枚同封、返信用封筒も同封、以上。」

 と、極めて事務的な返答でした(注:現在は、日本語での請求は避けるのが礼儀
とされ、同封国際返信用切手も10枚程度同封が適当とされています)。

 確かに、2週間ほどで請求戸籍謄本、除籍謄本は返ってきました。でも返ってき
たものを見てびっくり、大韓民国戸籍法施行後の戸籍は、ハングル文字で横書きな
のに対して、それ以前の、除籍、改製原戸籍等は、普段おなじみの旧日本民法下で
調製されていたものと全く同じスタイルのもの。はっきり漢文調の日本語で記載が
してあります。

 明治より行われていた併合政策のなごりは、こんなところにも今尚、あまりにも
はっきり残っていました。現在、韓国に住む皆さんで日本語の読み書きができない
方は、日本語で書かれた自分たちの先祖の戸籍を読むことができないことになりま
す。また、在日韓国人・朝鮮人の方で母国語のできない方は、やはりハングル文字
で書かれたご自分の戸籍が読めないということになります。戦後の数十年もたって
依然、こんなことがあるなんて...。  

 「それが戦争、占領というものだ」といわれればそうかもしれませんが、数日間、
何かしら釈然としませんでした。


2009.02.24(火)【戦争・占領政策の忘れ物(1)】(渡部浩義)

 先週18日のこのコーナーにおける私の文章【その登記、できません】中におい
て害獣として挙げた『ヌートリア』(※)という生き物は一体どんな動物か、とい
う問い合わせが私に寄せられました。関東地方の方はご存知でないようですね。

 「これは失礼しました。」としか言いようがありません。詳しくは末尾脚注によ
りますが、この生物、水陸両用で、ほかの動物は食べないような農作物をかじりま
くり、大きさも中途半端に大きく、体毛色も個体により茶褐色、黄褐色、緑褐色と
まちまちにあまり気持ちの良い色もしておらず、駆除しようにも気持ちが悪いとい
うのが私のこの動物に関する感想です。

 これを毛皮利用と獣肉食用のために日本陸軍が日本に持ち込んだといわれていま
す。戦地において、この獣肉を食べたことのあるという筆者の近所の方によれば、
「まずくはない。」そうです。でも、ネズミの仲間です。

 戦争が終わってから、なおこのような外来生物が日本の農耕地を荒らしていると
いうのは、その原因が「人間の身勝手にある」とわかっていても嫌なものです。
 このヌートリア君、生息巣を水辺に持っているため、現在私どものところでは、
野山からはイノシシ、タヌキ、サル、川からはヌートリア君と水陸両方から多種多
様な動物たちに農作物を狙われているのです。

 戦争や占領・統治政策が遺したものは、こうした外来生物だけに限らず、現在も
運用されている人間の権利関係の諸制度の中にもあります。たとえば私たちが平素
扱う登記手続においても、それを感じずにはいられないことがあります。

 私たち司法書士が最もそれを感じるのは外国人(特に在日朝鮮・韓国人の方)の
相続登記(渉外相続登記)でしょう。次回の話題とします。

(※)ヌートリア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2

======================================
【ESGよりお知らせ】
 会友の福岡のSOCIAL司法書士事務所の丸田さんが訴訟代理人を務める事件で
勝訴し、全国のニュースに取り上げられました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090218-00000121-jij-soci
======================================



2009.02.23(月)【弁明の仕方で、人間の器量が分かる】(富田太郎)

 「ゴックンはしていない。大量服用した風邪薬と酒の相乗効果〜」云々。
 イタリア「G7」閉幕後、酩酊状態で会見をした中川前財務相の弁明は醜悪でし
た。思うに、窮地に陥ったときの弁明の仕方で、その人間の器量が分かるのではな
いでしょうか?

 その昔、三木武吉という有名な保守政治家がいました。衆議院選挙の立会演説会
で、対立候補者が、

「さる有力候補は、愛人を3人も囲って、しかも、この故郷に連れ帰っている!」  

 と、その三木武吉のスキャンダラスな私生活を攻撃しました。

 これを聞いて登壇した三木は慌てず、

「さる弱小候補が述べた『さる有力候補』とは、私のことです。愛人の数を3人と
 いっていますが、正確には5人であります。」

と笑いを取った後、今度は一転し、  

「彼女達との出会い、そして年老いた『愛人達』の生活を責任もってみるために、
 故郷に全員連れて帰ったこと」

等々を話し、観衆の心をつかみ、見事当選!(出典:佐高信著『湛山除名/小日本
主義の運命』岩波現代文庫)。

 事の良し悪しは別として、「数を訂正し笑いをとり」その後は「愛情ゆえに〜と
訴える」したたかさ。窮地に陥っても動じない人間の器の大きさが分かります。
「ゴックン大臣」にも、もう少し機転の利いた弁明をして欲しかったなぁ・・・。

 ところで、先日、出版社から私の携帯に「怒りの電話」がありました。遅れに遅
れている原稿の督促でした(涙)。
 私はとっさに「今、札幌に出張中であり、かつ、風邪をひいている〜」と、その
場しのぎの「言い訳」をしてしまいました(恥)。
 ・・・・・、偉そうに「ゴックン大臣」のこと言えませんね(反省)。



2009.02.20(金)【法令間の別居生活】(金子登志雄)

 商業登記法69条で、利益準備金の資本(金への)組入れが肯定されながら、会
社計算規則48条では否定されています。同じ国家の法令として矛盾しているでは
ないかという気持ちをわれわれ司法書士は持ち続けておりましたが、ただいま法務
省令(会社法施行規則や会社計算規則)の改正中で、4月には矛盾しない内容にな
る見込みです。

 ところが、その法務省令の改正内容が大幅で、たとえば吸収合併による増加資本
金額の計算過程などがばっさりと削除され、「受入れ額の範囲内で合併契約の定め
に従い定めた額」程度の簡略化された内容になります。

 商業登記法や商業登記規則には、「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定
に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない」とあるのに、今
後は、「会社計算規則の規定に従って計上されたこと」をどうやって証明すればよ
いのでしょうか。単に、「受入れ額が〇〇万円で、その範囲内で決定しました」で
よいのでしょうか。

 改正案の法務省令内部にも矛盾があります。改正案によりますと、会社計算規則
20条や31条が同規則から削除される見込みですが、会社法施行規則195条に
は、その条文を引用したままで、改正が予定されていません。

 施行日の4月までには修正されると思いますが、どうも、法令間の横の連絡が不
十分のように感じてしまいます。

 まぁ、仕方ないですね。わが家を含め、最も身近な夫婦間であっても意思の疎通
が不十分なことが多いのですから、法令間の意思の疎通の不十分さは、よくこの程
度で済んでいるというべきでしょうか。別居していると思えばいいわけですね。



2009.02.19(木)【乱世、転機】(金子登志雄)

 「自民党をぶっ壊す」と華々しく小泉首相が登場したのが8年前の平成13年4
月でした。最近の政治状況をみますと、やっと、その成果が大きくでてきたようで、
麻生自民党政権への支持率もとうとう1割を切ってきました。小泉さんの思いどお
りになり満足しているのでしょうか。

 無党派層の無責任な野次馬である私(いけないことです!)からすると、小泉さ
んも麻生さんも、実は小沢民主党から「自民党をぶっ壊せ」と密命を帯びて放たれ
た自民党への刺客だったのではないかとさえ勘ぐりたいほど、自民党の凋落振りが
信じがたい勢いで進んでいます。

 戦後60年経て、自民党も制度疲労したのでしょうか。最近では、まともにロレ
ツも回らないほど、ひどい状況です。絶え間なくバージョンアップして行かねばな
らないグローバル経済の時代に、地盤・看板を引き継いだ2世しか選出できないよ
うでは、仕方ありません。

 超大国では、みな、もまれて勝ち上がった人がトップの地位についているのに、
日本では、どこかの将軍様と同じで、お父様の遺産とちょっとした成り行きでトッ
プになれます(それほど、日本が平和で穏やかな国であったという証拠ですから、
一概に悪いこととは思っていませんが)。

 しかし、いまや乱世の時代に突入しました。本来なら、織田信長ばりのぶっ壊し
屋にアンシャンレジーム(旧秩序)をさらにぶっ壊していただくのがよいのかもし
れませんが、もう十分にぶっ壊されていますね。平和のうちに無血開城していただ
き、早期に日本経済の再建復興を開始していただきたいものです。もちろん、その
間に自民党も再建し、与野党でチェックアンドバランスの働く2大政党型になるの
が理想でしょう。

 いずれにしろ、時代の転機ですね。さて、どう生きるべきか。


2009.02.18(水)【その登記、できません】(渡部浩義)

 不在地主の問題が、地方の僻地部においてさまざまな影を落としていることはか
つてこのコーナーでもご紹介したと思います。今回も、その一例をご紹介したいと
思います。

 故郷を後にして、数十年になるという老兄弟が、東京から来られたという若い弁
護士さんを伴って、当事務所に来所されました。手には裁判所の「共有物分割調停
調書」を携えての来所です。

 依頼の内容は、永年故郷を留守にしていたが、皆が定年を迎え、故郷にも居所を
持っておいてもよいかということになり、兄弟6人で共同相続をしていた対象不動
産(地目−田)を南北に三分割し、2筆は共有者中A,Bが「持分放棄」を登記原
因としてそれぞれ単独所有し、残る1筆は残りの4名が共有する。さらにあわせて、
永年地元の人に耕作してもらっていた小作権を解除したいというものでした。

 早速、調停調書の内容を精読し、現場も皆で踏査しました。
 その結果、私は「この案件、お受けできません。」と伝えました。

 「どうして。 裁判所の調停も成立しており、そのとおり登記処理してもらえば
いいんです。賃借人(小作人)との契約の関係は、私の方で処理します。」と、か
の若い弁護士さんは血気盛んにまくし立てられます。

 「確かに調停は成立していますが、この調停調書のとおりに田んぼを分筆すると、
隣接の水田所有者は困られます。用水の水流れが止まってしまいます。」

 「・・・・?」、弁護士殿、私の言っていることがわからない様子。

 「確かに水田も土地であり、1筆ごと筆界を持った独立の不動産ですが、水田は
それぞれが、上の田から下の田へと用水によってつながっており、あなた方が所有
田を調書添付図面のとおり南北に分筆してしまうと、この現場で東から西方向に流
れている水田用水の流水が止まってしまう可能性があります。つまり、申請地をは
さんで、上下の水田が分断するわけです。『水利権』という権利をご存知でしょう。
農耕地で、これを甘く見ると大変な目に遭いますよ。

 それともうひとつ、この土地を引き続き耕作される意欲はお持ちですか。ご自分
の土地だから、将来いつでも宅地等に転用できると思われていたら大間違いです。
当該田んぼは、国庫金等の補助金を投入して圃(ほ)場整備(※)をした第一種農
地と呼ばれる農地で、よほどの事情がない限り農地転用の許可はおりないでしょう
し、隣接地主の承諾も得られないと思います。」

 「さらに追い討ちをかけるようですが、最近、不在地主さんが耕作放棄された荒
れた農地より出現する害虫、害獣(イノシシ・タヌキ・ヌートリア等)に、真に耕
作をしている隣接耕作者は困却しています。このあたりの事情も再検討してみてく
ださい。私の保身に言うのではないですが、ご依頼の分筆・持分移転登記を地元に
生きる私がしたと知れたら、私の常識を疑われ笑われます。 私のつたない民法観
によれば民法第1条、90条ないし92条あたりの民法の一般条項や慣習法あたり
の適用場面はこのようなところにあるような気がしますが...。 聡明な弁護士
先生、地主の皆さんの良識に訴えます。」

 その後、当該水田(圃場)をかの共有者らがどのようにされたのかは不明ですが、
耕作は放棄され、雑草が生い茂っていました。

(※)圃場整備
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%83%E5%A0%B4%E6%95%B4%E5%82%99



2009.02.17(火)【種類株式合衆国】(金子登志雄)

 先週の土曜日は、司法書士会の支部では全国で最も大きい大阪司法書士会北支部
で「種類株式」を中心に講演してまいりました(支部長ほか、みなさん、お世話に
なりました)。

 昨日は東京で、中央大学の野村教授の「種類株式」の講演を受講いたしました。
さすがは大学教授です。話しなれているのか、早口に畳み掛けるように、かつ分か
りやすい内容で、受講生も熱心に聴いていました。話があっちこっちに飛び、よど
みながらしゃべる私とは、雲泥の差でした。

 同じテーマでありながら、野村教授の講演は、種類株式の活用法でしたが、私の
話は、その後の種類株式活用の失敗例が中心でした。というのは、種類株式が便利
であることは分かっていても、経営者に一方的に有利な内容では、取引先や銀行が
支持してくれません。バランス感覚が重要です。また、それ以前に、中小企業では
使いこなせないからです。

 たとえば、普通株式1000株の会社が、従業員に無議決権株式100株を発行
したとします。さて、この会社が増資するとき、合併するとき、株式分割するとき、
新種の株式を発行するとき・・・などなどの場面で、種類株主総会が必要かどうか
を即答できるでしょうか。無議決権株式だからといって、種類株主総会には議決権
があります。

 即答できる人は、弁護士・司法書士でも、数少ない現状です。法律に詳しくない
中小企業では、対応できないでしょう。

 そんなときのために、種類株式を発行すると、株式の合衆国になるのだから、常
に、全体の株主総会と、国別に、普通株式国の種類株主総会と、種類株式国の種類
株主総会を考え、ひとつひとつ開催の可否を検討することが必要だと話しましたら、
ご理解いただけたようです。  

 しかし、それでも迷うことが多々あり、種類株式は、発行後の運営が非常にむず
かしく、あたかも、ねじれ国会のようです。種類株主総会で否決されたら、全体総
会の3分の2の再可決でOKとはいえません。



2009.02.16(月)【備えあれば...】(渡部浩義)  

 あいかわらずの実務、受験学習には直結しない私特有のバカ話にお付き合い願い
ます。息抜きしてください。  

 天候に恵まれない(天候の厳しい)地域に住んでいると、穏やかな地域に住んで
おられる方に比べ、その気候の移ろいを身の回りにある「ちょっとしたこと」で敏
感に感じ、あるときは喜び、あるときは来たるべく厳しい天気に備える準備に入っ
たりします。  

 立春も過ぎ、当地(島根の山奥)も、朝晩は依然として気温氷点下と、寒いのは
寒いのですが、それでも何かしら寒さが緩んできたと感じてます。(もっとも油断
は禁物で、過去には3月、4月の大雪を経験したこともありますので。)

 ところで、唐突ですが、首都圏をはじめとする都市部の皆さん方は、降雨、降雪
の折には「長靴」というものは履かれないのでしょうか? 時々、ニュースにて報
じられる、積雪にて転倒し、骨折して病院へ搬送されたー。また、台風接近に伴う
暴風雨のなかを、一体それに何の意味があるのかと思われるようなパンプス履き、
傘差し姿でよろめきながら通勤される女性の姿などの映像が出るたびに、僭越なが
ら、「都会の人は、長靴や合羽(カッパ)を履いたり、着たりせんのかいなー。」
などと、ニュース映像を見て笑わせてもらっています。
(事故にあわれた方には本当にごめんなさい。)  

 が、やはり長靴姿、合羽姿で山手線や中央特快、丸の内線、御堂筋線に乗ること、
またヒルズ企業などを訪問することは勇気のいることなのでしょうか。
 (そんなことをすれば変質者、犯罪者の出現と、警察沙汰になるのかもしれませ
んね。ちなみに、私は一度だけ長靴姿で新幹線に乗車したことがあります。何も起
きませんでした。さらに隣席には誰も座ろうとせず、極めて快適にパソコンを打ち
ながら移動ができました。)

 先日、当ESGの仲間から、そもそも東京あたりでは、どこに長靴を売っている
のかわからないという、私たち地方の人間の疑問を根底から覆すような指摘も受け、
再び唖然としているのです。
 男性のおしゃれの殿堂、伊勢丹メンズ館には「紳士用 長靴売り場」はありませ
んでしたっけ。

 子供のころから、祖父や父に悪天候の時は、朝の『身ごしらえ』(着る物、履く
物、かぶる物の準備や着方)を充分に準備するようにいわれました。そうすること
によって一日の過ごせ方、仕事の成果が格段に違うと...。このことは土地家屋
調査士として、外仕事に出る際、現在も私が最も注意している点です。  

  「朝の準備、マネジメントが一日を決定付ける、」

 まるで最近、書店で平積みになっているビジネス書の題名のようですね。

 なお、この駄文をご覧になり、長靴をお求めになりたいと思われたみなさま、長
靴は靴底が「耐油性」と表示されているものがすべりいにくくてよろしいかと存じ
ます。また、どこで買ってよいかわからないといわれる方は、最近流行の大手文具
通信販売メーカーのカタログをご覧ください。結構アイテムが揃っていますよ。


2009.02.13(金)【負ののれん】(金子登志雄)

 「のれん」というと、何をイメージするでしょうか。「のれん分け」とか「のれ
ん代」でしょうか。「のれんに腕押し」もありますね。

 多くの方が、価値ある看板(代)などをイメージすると思いますが、では「負の
のれん」は、いかがでしょうか。

 会社計算規則で「のれん」とは、受け取ったものと支払ったものの「差額」とい
う意味です(差額のれん)。90を受け取り、100を支払った場合に、そのまま
では、等価交換関係が成り立ちませんから(貸借対照表の貸借があいませんから)、
受け取ったのは、「90と、のれん10」だと考えて、資産にのれん10を計上し
ます。この場合は、90とはいえ実際には100の価値があると考えて、のれんで
調整するのでしょう。

 100を受け取ったのに90を支払うと、今度は支払ったものが不足したと考え
て、不足額10を負債に計上します。これを「負ののれん」といいます。受け取っ
たものは形式上は100でも実際には90しかないと考え、差額の10を負債に計
上して調整するわけです。
 いずれにしろ、のれんとは、差額調整勘定です。

 ところが、昨年12月下旬に改正された会計基準では、この「負ののれん」を、
100のものを90で仕入れたのだから、負債ではなく「利益」に計上することに
なりました。4月に改正される会社計算規則119条2項にも、特別利益として、
「負ののれん発生益」というものが加わりました。返済不要ですから、私も負債に
計上するよりは、「10儲かった、10の利益を得た」という、この考え方の方が
わかりやすいと思います。

 にもかかわらず、会社計算規則11条には、のれんは「「資産又は【負債】とし
て計上することができる」となっています。119条2項との関係は不明です。た
だいまは、案の段階ですから、いずれはっきりするでしょう。



2009.02.12(木)【古き良き制度〜家督相続〜】(根来川弘充)

 今回は、不動産登記の中でもっとも有名といえる相続登記についての雑感です。

 一田舎で相続登記の依頼を受けますと、田畑を含んでいる場合が一般的です。
依頼者の多くは、それを今後耕作し、管理される方になります。

 「生家を出た者が田畑を引き継いでも、管理なんか到底出来ないのだから、親の
面倒を見ている者が一人で引き継ぐのが当然だ。」

 この考えがこちらでは一般的ですので、これで大抵は遺産分割協議が成立します。
しかし、中には成立しない場合もあります。この場合、不動産の登記名義人は被相
続人のまま多くが放置されていくことになります。

 農業を支える人たちが減少していく中、田畑は荒廃していくところが増えていっ
ています。こうして相続登記がなされず、放置された登記簿を見ると、何か登記簿
まで荒廃しているように感じます。

 ところで、戦前の民法では家督相続という制度がありました。「人」ではなく、
「家」が中心の制度だったのですが、私は、最初にこれを知ったとき、個人は平等
なのだから、おかしい制度だと思っていました。しかし、この仕事をしてから、そ
んなにおかしな制度でないと考えを改めました。

 個人を中心に考える現在の制度は、田畑を視点に考えると、否応なしに細分化さ
れることになります。田畑は、細分化されれば生産性は落ちます。戦前当時は、田
畑は生活の基盤ですから、生産性が落ちることは、生活水準を(引いては国力を)
低下させることになったでしょう。

 「生活の基盤を支えるために田畑を守る」
 家督相続の制度は、家ではなく、田畑を中心に考えたもので、非常に理にかなっ
た制度だったと思うのです。

 翻って、今日の私達の生活の基盤とは何なのかと考えてしまいます。人間食べて
いかないと生きていけないことは、今も昔も変わっていないのだから、生活の基盤
もかわるはずがないのでは?

 田畑を現状も登記簿も荒廃させている今の社会が、何か大きな間違いをしている
ように思えるのは、私だけでしょうか?



2009.02.10(火)【アマデウス】(渡部浩義)

 不覚にも不摂生から床に伏すハメになりました。

 処方された薬に朦朧としながら退屈な病床において、しばらく見ていなかった古
いビデオのハシゴ鑑賞をしました。その中に1984年封切の『アマデウス』がありま
した。同年度のアカデミー賞を総なめした名作だったので、かつてご覧になった方
も多いと思います。

 約十数年ぶりに見るその映画の感想は、封切当時には、社会や友人らとも何の利
害関係も持たず、親の仕送りとバイト代で暮らしていた「のんきな学生」だった私
の受けた印象とは随分と異なるものでした。

 アマデウス(モーツァルト)の才能に嫉妬し、そこから殺意を抱くにいたった同
職の宿敵サリエリによって、緻密に画策されたアマデウスの殺害計画とは、アマデ
ウスに対してレクイエムの作曲を依頼する形をとり、アマデウスを精神的に追い詰
め破滅へと追いやるというもの。

 相手方サリエリが、アマデウスのトラウマのひとつである彼の父を彷彿とさせる
マスク姿にてタイミングを計ってアマデウスの仕事場に現れ、口にする言葉、「い
つになったらできる。」、「仕事は進んでいるか。」、「一体、いつまで待てばで
きるのだ。」...私の日常業務においても思わず口の渇くような場面で聞くセリ
フの連続。

 そして、その場で見せるアマデウスの表情がとても他人事とは思えず、思わず固
唾をのんで画面に見入っていました。

 正直にことの真相、進捗状況を述べ、非難されるべきは非難を甘受したのち、す
ぐに案件にとりかかればよいものを、人間はおよそ弱い。アマデウスもそうしたよ
うに、現実から逃避し、快楽に溺れ、最後に自分に嫌気をむけ、 ますます悪循環
に陥っていく。

 遅滞案件、締切案件を必要以上に抱え込んでいる現在の私にとっては、全く身に
つまされる思いでの2時間と40分でした。

 実務能力にもっと力があれば、腹を割って話し合える仕事仲間が近くにいれば・
・・、こんな言葉を自分勝手に思うことで、自分に甘えている部分が最近少し多い
のかななどとも改めて思いました。

 この映画の影響か、その夜は再び微熱が出て、少し痙攣までも。夜中にトイレに
立ったとき、アマデウスが劇中でロウソクの炎をわが子の寝顔にかざし、その安ら
かな寝顔に微笑む場面と同様に、久しぶりにわが子の寝顔をのぞき込みました。

 「健康にて、父ちゃん頑張らなきゃ。」
今回の病気、天がくれた、自分と家族を見つめ直す時間だったのかもしれません。

 「そばの出前、まだですかー?」 「すいませーん、たった今、出ました。!!」


2009.02.09(月)【独立開業にあたり】(和出吉央)

 1月30日で、名古屋の駅前にて正式に独立開業いたしました。
当初の予定では、3月末頃を念頭に進めていたのですが、年明け早々、諸事情によ
り先月末をもってということとなりました。

 そこで、渡部先生の”2009.01.26(月)【自分の顔を鏡でみると...】 ”
の徒然を受けて、「営業活動」について改めて考えてみました。

 「営業活動」・・・最近では司法書士も債務整理について、新聞やインターネッ
ト等での広告による方法が目だっていますが、中には度を超えた(品のない)もの
も目に付きますね。

 水道工事の「クラシ○ン」という会社のCMがありますが、これは事前に消費者
に告知しておくことにより、”いざというときこの「クラシ○ン」しか知らないか
ら頼もう”というようにもっていく方法なんだそうです。

 我々もそうですが、一般消費者の方にとって何をやっているのか分からない業種
は、まずは多くの方にその存在や仕事の内容を知ってもらうことからはじめなけれ
ばと考えています。

 そのために、宣伝資料を作成し、近所の中小企業に声かけ+ポスティング作業で
営業していきたいと思います。
 「あっそう言えば、あそこにいろいろ法律や税金等の相談に乗ってくれる会社が
あったな・・・」と思っていただければいいなと考えています。

 渡部先生ほど、開業即案件受注とはいきませんが、私も前法人代表の鈴木のご好
意により名古屋事務所を丸ごと引き継ぐことができ、おかげさまで既に案件をいた
だいておりますが、「今月は給料でないんだ・・・」と思うとちょっとゾッとしま
す。法務顧問先を増やしていきたいです!!



2009.02.06(金)【「支配取得」と共通支配下関係】(金子登志雄)

 Aさん経営の甲社とBさん経営の乙社が甲を存続会社、乙を解散会社として合併
しました。合併後の甲での持株比率は、Aが7で、Bは3になりました。

 こういう合併にあっても、わが国では伝統的に、甲と乙という2つの会社が共同
して1つの会社になった、すなわち「結婚」だと考える傾向が強かったといえます。

 これに対して、会社法後の合併感は、欧米流のM&A(企業買収)の発想で、甲
が乙を「買収」したのだと考えます。合併後の甲の支配者は依然としてAですから、
甲(A)が乙を買収しカネの代わりに合併新株で「支払った」とみるわけです。

 これが合併対価として、株式でもカネでも社債でも何でもよくなった理由の1つ
ですが(「合併対価の柔軟化」)、本年4月に改正予定の会社計算規則では、この
買収を次のとおり「支配取得」という用語で説明することになりました。  

 計算規則2条3項31号の2
 支配取得 会社が他の会社(当該会社と当該他の会社が共通支配下関係にある場
合における当該他の会社を除く。)又は当該他の会社の事業に対する支配を得るこ
とをいう。

 この支配取得に該当すると、甲は乙の財産を原則として「時価」で受け入れる会
計処理になります。  

 なお、上記の「共通支配下関係」というのは、「同一企業グループ内」という意
味で、本件で言うと乙もAが支配していると(甲と乙の共通支配者としてAが存在
すると)、この合併は同一企業グループ内の合併だから、「支配取得」に該当しな
いという意味です。この場合には、甲は乙の財産を「簿価」で受け入れます。


2009.02.05(木)【会社計算規則の大幅改正】(金子登志雄)

 ご存知の方も多いと思いますが、会社法施行規則と会社計算規則が4月から改正
されます。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=300080050&OBJCD=&GROUP

 会社計算規則の改正は大幅で、とくに合併等の組織再編に関係する「のれん」と
(11条〜29条)と「株式の特別勘定」(30条〜35条)は、何と1条ずつ残
されただけで、あとはばっさりと削除されてしまいました。
 ただし、実質的内容の変更はありません。要するに、詳細な説明図だった旧規則
を概略図に変更する改正です。

 今後は、改正後の規則を読んでも、実務には全く役に立ちません。会計基準を読
む必要があります。これは、弁護士や司法書士等の法律家には、きつすぎます。

 司法書士サイドの問題に限定すると、合併で資本金を増加した場合における「資
本金計上証明書」さえ、自力では作れなくなるでしょう(なんとか作れても顧客に
説明できなくなるでしょう)。

 でも、ご安心ください。作れないのは、あなた1人ではありません。みんなが作
れなくなるのですから、こんなに心強いことはありません。計算が苦手だった人に
は、歓迎すべき改正です。

 となると、独力で作れる私の評価が上がり、商売も繁盛し、傘張り浪人の地位か
ら脱却できるかなと少々淡い期待もしてしまいますが、世の中そう甘くはなさそう
です。この不景気では、どこも仕官させてくれそうもありません。

 やはり、私には、たまに寺子屋の講師をしたり、道場破りでもして、食っていく
のがあっているようです。なお、このたび、事業の多角化で、あだ討ちの助太刀も
事業領域に加えましたので、会社法登記の仕事でミスし、捲土重来を期している方
は、ぜひ声をかけてください。



2009.02.04(水)【みなし決議の議事録】(大戸早規子)

 株主総会も取締役会も、会議を実際に開催せずとも決議があったものとみなす方
法があります。会社法第319条第1項と同370条です。もっとも、取締役会の
みなし決議(会370条)の方は、定款にその旨の定めがあることが必要です。ま
た、会議は開催されなくても議事録を作成しなくてはいけません(会社法施行規則
72条4項1号、101条4項1号)。     

 さて、そのみなし決議で代表取締役を選定した場合の議事録と、選定議事録に関
する印鑑証明書の要否について規定している商業登記規則第61条第4項との絡み
についてですが、取締役会を設置していない会社が株主総会で代表取締役を定めた
場合は、その株主総会議事録に変更前の代表取締役が登記所への届出印を押印して
いない限り、つまり、代表取締役以外の取締役が議事録作成者となっているときは、
議事録作成者である取締役(のみ)が押印して、その印鑑に係る市区町村長作成の
印鑑証明書を添付すれば足ります。株主総会を開催した場合の議事録では、議長及
び出席取締役全員に求められている(規則61条4項2号)にもかかわらずです。

 きっと、同意書によって示されるのは株主の意思表示であり、会議が開催されて
いないのだから、議事録作成者以外の取締役までを関与させることは不適当と考え
るからでしょう。

 しかし、みなし決議による代表取締役選定の取締役会議事録においては異なりま
す。同意の意思表示をするのは取締役自身なので、商業登記規則第61条第4項第
3号を類推し、変更前の代表取締役が届出印で押印していない限り、たとえ会議が
開催されていなくても取締役全員の記名押印が求められ、その印鑑に係る市区町村
長作成の印鑑証明書の添付が必要となります。

 ただし、登記申請においては、議事録作成者の記名ある取締役会議事録、会社法
第370条の全取締役の同意書(各取締役の記名押印あるもの)及び同意書の印に
関する印鑑証明書を併せて添付する取扱いが認められています。



2009.02.03(火)【報酬の代物弁済】(渡部浩義)

 今回は、少しいやらしいお金の話を書きます。
 私たちも人間である以上、霞を食べて生きているわけではありません。自らの糧
を得るため、知識や技術を提供し、日々働いているわけです。  

 ところで、私たち司法書士や土地家屋調査士の報酬額というのは、一般の依頼者
からみて、随分と高額なものなのでしょうか。もちろん、東京・大阪あたりの都市
部の金銭感覚の常識と、私がいる島根のような地方でのそれとには、かなりの開き
があることは当然であると思います。

 都市部で開業されている皆さん方は、依頼者側と相当回数の取引継続等による信
頼関係の構築がない限り、報酬、登録免許税額の後払受け、立替ということはなさ
らないでしょう。ところが、田舎は(特に私の開業した場所などは顔見知りが多い
ということもあり)報酬等後払いが当然。よほど、登録免許税額が高額になれば、
その部分だけは、何とか前払い...

 私は、20才代で出身地で開業しましたが、「20才、30才代は、儲けはいい
や、とにかく業務環境を整え、報酬に対する感覚の意識を地元に植えつけよう」な
どと、「長期事業計画」的なもの考えていましたが、この考えは、甘い考えでした。
 やはり、日々投じた労力に見合うだけの報酬は、その仕事のたびに得なければ、
「元気」と次の仕事に取り組む「意欲」が出ません。

 私たちの世界も数年前から報酬額算定については、法務大臣認可規定が廃されて
フリーとなりましたが、これを、味方につけた資格者と、後ろ盾を失い困却した資
格者に分かれたと思います。

 日本人は、目に見える成果品・納品物にはそれに見合った報酬を払っても、そこ
にたどり着くために私たち資格者が依頼者の目に見えないところで投じた労力、研
究のための費用等に対しては、なかなか財布の紐が固いようです。そこをうまく説
明し、報酬額に対する理解を得るのが経営者だといわれれば、返す言葉はありませ
んが。

 ところで、私は、今までに渡した請求書記載金額に驚かれ、さまざまな物で依頼
者から報酬の『一部代物弁済』をうけたことがあります。すぐに思い出すだけでも、
「本棚」、「大根・キャベツ」、「牛肉」、「イノシシの肉」、「めったに採れな
いという山菜・キノコ(お腹が痛くなった)」、「自動車のタイヤ」など...。

 やっぱり疲れます。



2009.02.02(月)【ガッツポーズ】(金子登志雄)

 朝青龍の優勝時のガッツポーズが横綱の品格に欠けるとの論調が多いようですが、
ここまでくると朝青龍の味方をしたくなります。プロスポーツですし、誰も朝青龍
に品格を求めていないでしょうから、いいじゃないかと思うのですが・・・。
 白鳳も朝青龍も品格があったら、相撲人気も下火になろうというものです。

 プロボクシング・ヘビー級の無敵の世界チャンピオンだった有名なモハメド・ア
リ(旧名/カシアス・クレイ)は、ショーマンシップが旺盛で、試合前から、品格
とは無縁な相手を挑発する発言等でマスコミを賑わしていました。だからこそ、プ
ロボクシングに関心のない人間にまで広く名前が知られるようになったわけですし、
その功績はすごいものがあります。今では彼の偉大さをたたえる声しか聞きません。

 世界を沸かせたビートルズも、あのだらしない髪の長さ、服装、従来にない音楽
で、当初は品格がないといわれていました(生真面目な高校生だった私もそう思っ
ていましたが)。今では、音楽業界の歴史を塗り替えた彼らの偉大さをたたえる声
しか聞きません。

 ただ、モハメド・アリやビートルズには、品格を超えるベトナム戦争への徴兵拒
否や、ジョンレノンを中心に文化に対する積極的発言があったので、「偉大」だと
評価されるのでしょう。決して「勲章」をもらったからではないでしょう。

 この際、朝青龍も日本カルチャーに対する挑発的発言でもしてもらいたいもので
す。間違いなく、もっともっと批判は高まるでしょうけど、日本文化の寛容度を測
ってみたい気もします。



2009.01.30(金)【簡易事業譲渡と簡易会社分割】(金子登志雄)

 簡易合併など簡易組織再編の中で、簡易事業譲渡と簡易会社分割の2つは、ちょ
っと特殊です。すなわち、事業を出す側の簡易手続です。
 受入れ側の簡易手続は、受け入れるものが自社の「純」資産額の20%以下なの
に、出す側では、「総」資産の20%以下という基準です。

 ここまでは、それなりに勉強している方には、了解事項ですが、簡易事業譲渡と
簡易会社分割の条文の構成が大きく相違しているため、その相違までも十分に把握
している方は少ないといえます。

 簡易会社分割では、反対株主の買取請求権も株主への通知も不要である旨の規定
が存在するのに対し(会社法785条1項、3項ただし書、806条1項、3項た
だし書)、簡易事業譲渡に関する会社法469条には、その点につき、何も規定さ
れていないのです。

 そこで、つい、株主への通知が必要で反対株主の買取請求も可能のように勘違い
してしまいますが、条文を仔細に検討すると、会社法467条1項2号カッコ書に、
簡易事業譲渡は事業の重要な一部の譲渡に含まれないと規定されています。要する
に、総資産の20%以下の財産移動程度は、事業譲渡の概念に含まれず、そもそも
会社法469条の「事業譲渡等をする場合」にも該当しないのです。当然に適用さ
れません。


2009.01.29(木)【司法書士試験21世紀枠】(山本浩司)

 はじめまして。時々、この徒然で取り上げていただきました司法書士の山本浩司
です。隠れ会員から会友に加えていただきましたので、本徒然は初登場です。

 さて、正月からずっと集中して受験生用の商業登記法記述式試験対策の本を書い
ていました。オートマチックシステムというシリーズものの一冊です。

 問題を30問作成しましたが、金子先生ご指摘の100%減資の問題もその中に
入れました。

 新スポンサーに対する募集事項の決定を株主総会が取締役会に委任し、取締役会
では、第1号議案で資本金の額の減少、次に第2号議案で募集株式の発行です。

 ぼくは、受験時代に100%減資など習いませんでしたが、いまの生徒さんには
資本金の額を金0円にしてもよいことは話しています。

 でも、実際に登記すべき事項に「資本金の額 金0円」と書くのは、受験生心理
として「ホントに大丈夫?」と思うかもしれません。
 実際のところ、最低資本金にうるさかった、つい数年前まではなんだったのか?

 ぼくの出題に、次のような面白い解答が出現してくることを期待しています。

 (登記できない事項)
  資本金の額の減少

 (理      由)
  会社法は、債権者への催告を公告で代用できることも認め、債権者に内緒で  
 資本金の額を減少することを認めている。しかし、株式会社は株主に業績不振
 の責任を問えない会社であるから、そういう姑息な手段で資本金の額を減少し、
 あまつさえ金0円にするようなことがあってはならない。私には許せない。

 司法書士の本試験でも、決まりきった答えを書くのではなく、面白く、なおかつ
会社制度の本質に迫る解答に高得点を与えると、独創的で面白い司法書士が出現し
そうです。

 高校野球などの21世紀枠みたいな感じで、そういう人を募集したらどうでしょ
うか。
 どなたか、ぼくを試験委員に推薦していただけないでしょうか。

 (ESG欄)
 山本さんとは、「商業法人登記総合研究5人委員会」で、共同する機会がでまし
たので、今日から会友に加わっていただきました。
 会友ご希望者は多いのですが、ビジネスや執筆の関係がある方に限定しています
ので、ご了承ください。



2009.01.28(水)【一般財団法人の設立】(山本直樹)

 岡山の山本直樹です。

 昨年12月1日に「公益法人等に関する改正」がありました。

  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html

 早速、私にも、一般財団法人の設立の登記の依頼があり、12月1日付で設立登記
を行いました。  

 今後、一般財団法人の設立を検討される方もいらっしゃると思いますが、「定款」
を作成する上で、注意点をひとつご紹介させていただきます。

 「定款の変更」は評議員会の特別決議でできますが(法200条1項本文)、「目
的変更」「評議員の選任及び解任の方法」については、評議員会の特別決議で定款の
変更をすることができないとされています(法200条1項但書)。これらの事項は、
法人の運営に関して重要な要素であり、設立者の意向をできるだけ尊重するための方
策が採用されているからです。

 なお、「原始定款」に評議員会の特別決議で定款変更することができる旨の定めが
記載されていれば、評議員会の特別決議で定款変更することが可能です。
(原始定款に上記の定めがなく、「目的変更」をしようとする場合は「裁判所の許可」
が必要です。法200条3項)

 なお、日本公証人連合会において定款のサンプルが公開されていますので、ご参考
にしてください。    

  http://www.koshonin.gr.jp/images/zaidan.pdf


2009.01.27(火)【裁判員制度施行元年】(根来川弘充)

 本年2009年からいよいよ裁判員制度がはじまります。新聞では様々な論調で
書かれており、賛否両論ありますが、私は賛成したいと思います。

 私達司法書士は、裁判員になることができません。ある文献によれば、「国民一
般の感覚を裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨を実現する観点」から、司法
書士はなることができないのだそうです。

 司法書士は、「一般の感覚」がない??? いやそうではなく、私なりの解釈は、
法律的な思考が審議の過程で邪魔になるということなのだろうと思っています。

 法律的な思考とは、「合理的な考え方」とも言い換えられます。一般の方が、合
理的な思考をできないということは先ず無いですから、きっと問題とされているの
は、法律家だけではなく一般国民も納得できる合理的な考えなのだと思います。

 犯罪事件を知ったとき、被告人に対し「この処罰でないと許せない」と思う感情
は誰しもが持ちます。しかし、一般の方であれば、具体的な裁判の審理において、
どういう経緯で人が裁かれるのかが分りません。

 裁判員は、審理の中で、どのような行為を行ったのか、その時の被告の意思がど
うであったのかかなどが、それぞれの感覚によって、個々に判断することが求めら
れます。その結果、裁判員個々が最初に思っていた感情のとおりに裁かれるという
ことはまずないだろうと思います。

 それにより、より厳罰化に向かうと危惧する意見もあります。しかし少なくとも、
今よりは、犯罪について、多くの人が真剣に考える環境ができると言えると思いま
す。この環境が悪いものとは私には決して考えられません。

 「被告人は人間性に問題がある」と切り捨ててしまえば、それ以上の議論は進み
ません。犯罪が何故起きたのか。犯罪者を生み出した社会とは、どんな社会であっ
たのか。そのどこに原因があり、どこを改善すればよいのか。

 裁判員制度は、「国民一般の感覚」を求めているばかりでなく、「犯罪をみんな
で考える社会」を求めているのだと思います。



2009.01.26(月)【自分の顔を鏡でみると...】(渡部浩義)

 27歳で独立開業して、今年で17年目。勤務資格者時代も含めると、この業界
に20年以上いたことになります。

 私は、祖父母、父母が商売を営んでいた出身地の町で開業したため、他の皆さん
が多分やられたであろう「営業活動」ということをせずにすみました。看板を上げ
て一週間ほどで、登記依頼が数件また数件と本当にありがたい状態でした。祖父母
・父母の築き上げてくれていた「信用」という名の貯金に感謝するばかりでした。

 たとえば登記済証(権利証)や印鑑証明書を預かる際にも、私は、一体、誰でど
ういう素性の者だ、などということをいちいち説明する必要もなく、「あー、預け
る、預ける、判(実印)も置いていこうか...」なんて依頼者もありました。

 が、およそ案件依頼に来られるのは、風雪幾年月の人生の先輩ばかり、若い私に、
「なんで、できないんだ。」という場面が一番困りました。出来ない原因は農地法
にあったり、隣接所有者との境界確定不調であたっり、相続人間の分割不調であっ
たり、出来ない原因を自分なりに懇切丁寧に噛み砕いて説明したつもりでも、依頼
者は、数日後に再度来所し、「あんた、若いんだから、その若い優秀な知識と能力
で何とかしてよ...」。  

 どうやら、この世界の仕事にあたるにあたっては、若ければよいというものでも
ないということがようやくわかってきました。

 「話せばわかる」という言葉がありますが、「話してもわからない」「聞く耳を
持たない」という人は確かにおられます。 もっとも、自分の説明能力・技術に問
題はなかったか?と尋ねられれば、これもまた、今となっては自信がありません。

 この正月、久しぶりに自分の顔を「鏡」でまじまじと観察しました。
 「おいしそうじゃないなー、艶がないなー。」というのが正直なところ。日々の
積み重ねは間違いなく、その人の顔相に顕れると思います。 

 今の私に、間違いなく言えることは、四十にして、「不惑」どころか、益々惑い、
そして、「遅い高い、無愛想」のレッテルを貼られ、家族が地元に築いた信用貯金
もおよそ使いはたしてして最近の日々を送っていることです。   

 「貧すれば鈍す。」へ進むのか、「衣食足りて、礼節を知る。」方へ進むのか、
今年も正月が20日以上も過ぎました。



2009.01.23(金)【増減資の同時実行】(金子登志雄)

 株主総会決議を省略できる吸収合併を「簡易合併」といいますが、減資でも株主
総会決議を省略できる場合があります。増資と減資が同時に実行され、減資額がそ
の増資額を下回っている場合です(会社法447条3項)。

 たとえば、3月31日に5000万円を増資し、同時に5000万円を減資する
場合には(5000万円は資本剰余金になります)、減資とはいえ、株主総会の特
別決議(3分の2以上の賛成)を必要とせず、取締役会の決定で済みます。

 これをもって、何という便利な制度だと思った法曹の方は、実務感覚が不足して
います。未上場企業の場合は、原則として増資に株主総会決議が必要ですから、減
資だけ取締役会で決議する意味が薄いからです。

 こう申しあげると気真面目な方から、条文では「取締役会の決議とする」と断定
されているから、株主総会で決定しては法律違反になるのではないかとの質問がき
ます。

 条文の文言が不適切ですが、制度趣旨からは、「取締役会の決議で『足りる』」
と読むべきです(簡易合併でも同様な問題があります)。現実の実務でも、株主総
会決議でもよいとされています。

 私も、株主総会決議をお勧めしています。こうしておけば、万が一、減資公告等
の関係で、減資の効力発生日を延期した場合にも対応できます(同時増減資ではな
くなるため、取締役会決議では不可となります)。

 株主総会決議を省略できるメリットを享受できるのは、株主多数で株主総会の開
催が困難な上場会社です。簡易合併も同時増減資も、株主少数の多くの中小企業に
はメリットが少ないでしょう。



2009.01.22(木)【新年の誓い「謙虚さとは」】(富田太郎)

 皆さん、今年もよろしくお願いいたします。
お休み中は、いかがお過ごしでしたでしょうか?

 私は、この休日の間(元旦を除き)、事務所で単行本(受験書)の原稿を書いて
いました。4月頃に出版予定です

 @「楽学 商業登記法」P1000予定 住宅新報社
 A「マンガ はじめて司法書士(開業)」住宅新報社

 これで、金子先生との共著を含むと、12冊目の単行本となります♪
実務のかたわら12冊!もしかして、私は「売れっ子作家」なのでしょうか?

 そんな年明けのある日こと、某出版社から電話がありました(またか?ニヤリ)。

 「司法書士の富田先生でございますか?登記の●●出版です。実は・・・」
 「困るなぁ〜。私は超多忙で忙しいのです。」
 「すいません。 実はお願いが・・・。」
 「これ以上の『執筆』は無理です(怒)!どんな頼まれても書きません!」

 「執筆??? いえ、うちの『新刊本●●登記法』を買ってくださいというお願  
  いだったのですが・・(汗)。」

 「えっ??? 単なるセールス・・・・。」
 「はい。お忙しいところ、すいませんでした・・・。」

 電話を切ったあと、穴があったら入りたいぐらい恥ずかしかったです(恥)。
「売れっ子作家」? 誰が? 恥ずかしい・・・私は自意識過剰ですね(反省)。

 今年こそは、謙虚に、謙虚にいきたいと思います。



2009.01.21(水)【司法書士界の断層A】(島根・渡部浩義)

 前回、少々乱暴に分析・総括した業界周囲の環境の趨勢の中、私が事務所を構え
る島根あたりでは、近年、年配会員を中心に多くの廃業・退会者が出ました。

 年配であるからといって、それまで行われていた業務が、決していい加減なもの
であったとは思われません。むしろ、そうした経験豊富な先輩方が、全国津々浦々
に配されていたことが、司法書士の強みでもあっはずです。

 容赦なく押し寄せたIT化の波や、よく知らしめられることもなく切れ間なく施
行された重要法の改正の波は、我々司法書士の世界に、それに対応できた資格者と、
そうでなかった資格者の間に『深い断層』を作り、対応できない資格者の意欲を削
ぎ、暗に この世界からの「退場」を強いたことは否めない事実だと思います。

 情報量、仕事量にあふれる都市部においては、仕事の細分化、専門分野への特化
への選択も容易だったかもしれませんが、私たち僻地部で開業する者に求めらてい
る知識・技能は、浅くても、いわば町医者と同じ(内科も、外科も、整形外科も診
ること)です。

 「もう、わしらの出番ではない。」 
その言葉を残されて、数年前に廃業された先輩老司法書士の言葉が、今頃、無性に
私の頭の中で響きます。

 「小さな政府」「e-Japan 計画」は、一方で、多くの地方の財産(知的人材)を
散逸させてしまったのではないでしょうか?
(あくまで、司法書士界という小さな世界の話にすぎないのかもしれませんが?)

 たぶん、私は、幸か不幸かこの司法書士界の20年間大きなうねりを、始めから
終わりまで、あるときは都市部で、あるときは田舎町にてたっぷり体験することの
できた一人だったような気がします。

 新成人となられた皆さんは、おそらく物心つかれたときからまわりにパソコンが
ある環境に育たれ、柔軟な頭を兼ね備えられていることでしょう。
 志のある新成人の皆さん「司法書士」という職業も、一つの職業選択肢としてい
かがでしょうか。結構、噛み応えもありますよ。     

 これからの「平成」は、出典のとおり司法書士界にとっても「内平かに外成る」、
「地平かに天成る」と、じっくりと腰をえすえて業務に取り組める平和な時代であ
ることを願わざるにはおられません。  
(2009.1.8付 日本経済新聞「春秋」欄読み終えて)



2009.01.20(火)【司法書士界の断層@】(島根・渡部浩義)

 本年、成人となられる皆さんは平成元年生まれとのこと。新成人の皆さん方のこ
れからの未来に期待したいと思います。おめでとうございます。

 私は、昭和63年の司法書士試験合格者です。すなわち、昭和最後の試験合格者
です。試験合格後、勤務資格者として、「昭和六四年壱月▲日 申請」という登記
申請書も、何枚か作成しました。
 まもなく昭和天皇の崩御、有名な小渕官房長官(当時)の『平成』元号会見。登
記において、「平成1年」と表記するか「平成元年」と表記するかの通達発布、あ
れから20年。あっという間でした。
 この20年は、司法書士界にとっても、過去にも、おそらくこれからもないほど
の劇的変化をもたらした20年であったことは、改めて指摘するまでもありません。

 若い皆さん方には笑われるかもしれませんが、私なりに「効いたなー。」と思わ
れる私たち司法書士の周囲の変化にざっと思い巡らしてみると...

@【この20年の司法書士界の周辺環境の変化の少々乱暴な総括】
・申請書作成方法・器具が、手書き→和文タイプ→ワープロ→パソコンと短期間の
 うちに劇的変化。
・登記簿の電算化(登記所側のIT化)。
・度重なる商法改正(平成元年の最低資本金導入あたりまではよかったが、平成9
 年改正以後あたりからの度重なる改正に対応が怪しくなってきた)
・新成年後見制度の開始施行(平成12年4月1日)。
・簡易裁判所代理権認定制度の施行(平成15年4月1日)。
・新不動産登記法制定施行(平成17年3月7日)。
・新会社法制定施行(平成18年5月1日)あわせて改正商業登記法の施行。
・新法人法制定施行(平成20年12月1日)。
・今後、民法の抜本改正予定。基本法といえども改正対象の例外ではなくなった!

A【この20年のうちに顕著になった業務スタイルの少々乱暴な分類】
・パソコンの知識・操作技能に優れる司法書士の出現。
 (今では、パソコン知識は、有能な司法書士の一要件ともいえるでしょう。)
・度重なる商法改正期間中ないしは新会社法制定後に合格した、会社法にさしたる
 苦手意識のない司法書士の出現。
・簡裁代理権の取得を受験時代からの目標とし、合格後、簡裁代理業務およびその  
 付随業務を第一の取扱業務とする(登記事務にこだわらない)司法書士の出現。
・@の動静に左右されず、淡々と新制度に対応し、ありとあらゆる業務に対応でき
 た司法書士の出現、存在。(法人化事務所の制度化も大きい)
・@の動静に左右されず、淡々と従来からの取扱業務(主に登記事務)のみをこな
 す司法書士の存在。   

 そして、上記@でかいつまんだ世の動きは、既存の司法書士に対して、資料・情
報を自己において収集させ、膨大な研究時間を要求し、または、取扱業務の細分化
・専門家への特化を要求したといってよいでしょう。
 そして、その時代の要請がもたらしたものとは...(次回へ)


2009.01.19
(月)【3割の意味】(金子登志雄)

 先週の16日(金)は東京司法書士会千代田支部の新年会でした。会務には関心
の薄い私も出席しました。支部の場合は隣組の感覚ですし、現支部長が私と同様に
脱サラ組のため、できるだけ応援したいからです。

 懇親の場で幾人かの方に、「最近、不動産の仕事が減ったようですが、いかがで
すか」と聞いてみました。仲間の富田君から、「先生は、会社専門で不動産の仕事
をしていないからわからないでしょうが、不動産中心の事務所は、仕事の減少で大
変なんですよ」といわれておりましたので、どの程度かを知りたかったわけです。

 「不動産登記の仕事が減ったといわれますが、どの程度の落ち込みですか」
 「3割程度ですね」
 「え、3割も減少したのですか。たいへんですねぇ〜」
 「いや、3割しか仕事がないということで、7割減です」

 想像以上の返答に驚きました。その割に深刻な顔をせずに答えてくれたのは、や
はり、3割とはいえ、仕事があることでしょう。なければ、新年会などに出席して
いる場合ではないでしょうから。

 先般、身近にいる元大銀行の役員の方と雑談しました。氏のいうことには、「銀
行は3月決算だから、不良債権処理に絡んで、不動産が動きますよ。いま、底だか
ら、心配せずによい」とのことでした。
 自動車と相違し、不動産は生活必需品であり企業の必要な生産手段ですから、い
ずれは動かざるをえないでしょう。もう少し、待ちましょう。



2009.01.16
(金)【平成21年1月某日付第○○号登記済】(渡部浩義)

 新春早々、登記済証(いわゆる『権利証』)というものを登記所にて受け取りま
した。その日付も平成21年1月某日付の日付のある旧法60条1項の真っ赤な例
の印判が、ズドンと押してある「新製」のものです。

 新不動産登記法が施行されて、今年で、はや4年目が経過しようとし、全国の登
記所すべてが電子組織による指定庁となった現在、なぜそんなことがと思われるか
もしれませんが、賢明な方は、「ああっ、あの事例だな」と、すぐに気づかれたこ
とでしょう。

 そう、「事故簿」案件です。事故簿とは、種々の理由により紙の旧登記簿記載登
記事項が、現在の磁気ディスク登記簿に移記されずに紙登記簿として依然としてバ
インダーに閉じられている登記簿をさします。

 この事故簿不動産に関する登記申請に関しては、今現在も、オンラインによる登
記申請はできません。(−もちろん事故簿不動産に対する登記申請そのものは、制
度に反するものでない限り、書面申請で可能です。)

 今般、私の扱った事故簿不動産は、共有者50名以上におよぶ大共有林で、持分
を全部合算しても1分の1にならないため事故簿扱いとなったもので、この共有者
の一人の相続登記でした。(持分 6分5厘5毛と記載)

 久しぶりに『申請書の写し』を作成し、「本当に、これでよかったけ?」といさ
さか不安な心持ちで申請書提出(慣れとは、恐ろしいものです。)。
 数日後、『登記済証』(間違っても『登記識別情報』にあらず!)を受領。

 「いやー、久しぶりで、登記済証のつくりかた忘れたみたいだったよ。それと申
し訳けないけど、登記簿ずいぶん汚してね。何しろ最近の若い連中は、登記簿記載
したことないやつもいるし、すでに庁舎内にタイプもワープロもないもので..。
勘弁してね。」と、登記官殿の弁。

 見れば登記後の登記簿謄本(この語も既に懐かしい)には、カーボンペンによる、
記入担当者の左斜め下にヨレヨレになって進む手書きによる縦書きの登記事項。し
かも、校合印による訂正印だらけ。

「字画明瞭ナルコトヲ要ス」は、現在の不動産登記手続にも残されている登記制
度の基本精神なのでは。(不動産登記規則第45条あたり)
 でも、久しぶりの新しい『登記済証(権利証)』をカバンの中に入れて、なんと
なくうれしい気分で帰路につけたのはなぜでしょう。



2009.01.15
(木)【やさしい商業登記教室】(金子登志雄)

 月刊「登記情報」(きんざい)の正月号に掲載された「補欠の意味」の論稿が、
商業登記倶楽部HPの「やさしい商業登記教室」にも掲載されましたので、お知ら
せします(原稿自体の掲載のため、雑誌とは、完全一致ではありません。条文の前
に「第」がつくかどうか程度の差ですが)。
 非司法書士の方も、ご興味がございましたら、ぜひご覧ください。

  http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/cky/cky042.htm  

 この論稿は、同倶楽部内の「商業法人登記総合研究5人委員会」所属の4名(同
倶楽部主催者神崎先生、会友の鈴木龍介司法書士、受験界で有名な山本浩司司法書
士と私)で協議したうえでの結論でしたが、相互の思い込みを修正できたなど実り
の多い協議でした。  

 同倶楽部には全国の商業登記に関心のある司法書士多数が会員として参加してい
ますし、登記雑誌として定評のある「登記情報」にも大きく掲載されましたので、
これで実務の混乱も収束に向かうと思います。

 このように、会社法施行後ほぼ3年近く経過し、多くの解釈上の問題点が解決し
落ち着いてきましたが、反面で、会社法専門司法書士の私への講演依頼も激減し、
存在価値が薄くなったともいえます。著作もネタ切れしてきました。

 激論できるネタが少なくなったのは、実にさびしいものですが、幸いなことに、
会社法や商業登記に詳しくない方は、多くの解釈上の問題点が解決したことさえも
知らないでいてくれます。
 その意味では、「登記情報」の連載「実務家による商業・法人登記Q&A」は、
実にタイムリーな企画でした。

 第2回(2月号)は、鈴木龍介司法書士の担当です。「事業年度を変更し1年半
にしたら、任期1年の会計監査人の任期はどうなるのだ」などという興味深い論稿
もあります。

 え? 事業年度を1年以上にできるわけがないですって? 
 ありがとうございます。そういう方がいてくれないと、雑誌も売れません。会社
計算規則91条2項をご確認ください。



2009.01.14
(水)【雪の下の仕事−仕事の地域性A】(渡部浩義)

 しばらくは当地は、およそ雪の下に地面が隠れます。こうなりますと、土地家屋
調査士業務では、「地目変更」の現況確認は困難、「土地測量」の境界確認困難と
なります。(もちろん、雪かきをしながらやる急々の仕事もありますが...)

 降雪中は、トータルステーションによる測量も傘差しながらで、あまりいい仕事
できず、GPS器による基準点測量もマルチパス(反射波)の発生で精度もあまり
すぐれず、ぐっと外業のできる時間が制約されてしまいます。  

 結局、建物関係の登記の仕事で食いつなぐような状態ですが、「地域性」なのか、
当地あたりでは、一葉の「建物図面・各階平面図」用紙に収まりきらないような大
きな建物・附属建物棟数の多い建物(もちろん民家!)の案件が結構多く、これで
かろうじて食いつないでいます。このあたりが都市部におけるハウスメーカーの依
頼による一般的な住宅建物登記と決定的に違うところです。

 ところで、当地方には、「雪の下の仕事でさせてください。」というお願いの表
現がありますが、この意味をおわかりでしょうか。
 これは、外が雪に覆い隠されている間、屋根の下での内業として、じっくり取り
組ませてください、というお願い・受託の方法です。ですから、雪の季節は、複雑
怪奇な相続案件や休眠担保抹消、「講」名義、「何某外四名」のみ表題部に記載あ
る登記を現所有者名義に、といったような、いわゆる『「困った登記」解決強調月
間』となります。

 「出雲(島根東部)地方では、東京あたりとは違う時間が流れている。」と、作
家村松友視氏が述べられたそうですが、私も若い頃の都市部での勤務資格者の時代
と今の仕事のスタイルとの差で、同じ資格の業務でも、改めて「それぞれの地域性」
を感じています。 日本は広い!



2009.01.13
(火)【判取り季節−仕事の地域性@】(渡部浩義)

 皆様、あけましておめでとうございます。

 今年も、「陸の孤島」島根の山奥から、他のメンバーの皆様とは少し色合いの違
う話題を提供させていただければと考えています。

 さて、多くの司法書士・土地家屋調査士の皆さん方は、年末年始の「御用納め」
から「御用始め」までの間は、どのように過ごされたのでしょうか。

 当地のような高齢化率が35%も超えるような高齢化・過疎地域においては、
『年末年始』と『お盆』は町外におられる皆様方の帰省の季節となります。またと
ない相続人参集の機会となりますから、「遺産分割協議書」・「相続放棄申述申立
書」等の印鑑を、捺印者の面前でその自署と共にもらう絶好のチャンスとなります。
私も、この年末年始は、結構あちらこちらのお宅にお邪魔して、判取りをさせてい
ただきました。

 どこの地域でも同じだと思いますが、相続問題は人間模様が如実に表れます。
田舎町とて例外ではなくなりました。二つ返事で話のまとまる「笑い声の絶えない
ご家庭」もあれば、「なんで兄弟やその配偶者さん達から、そこまで言われなくち
ゃいけないのと、その場からすぐにでも遠慮させてもらいたいようなご家庭」もあ
り、本当に「人生や家庭の幸せ」とは何であろうかと考えさせられてしまいます。
 およそ司法書士であれば、誰もが経験するしている情景でしょうけれど。



2009.01.09
(金)【株券の電子化】(金子登志雄)

 旧商法時代には、株券発行が原則で、定款で不発行を定めたときに「当会社の株
式については、株券を発行しない」という登記が必要でした。  

 会社法では、これが逆転し、不発行が原則になりましたから、商法時代から存在
する株券発行会社の登記簿には、「株券を発行する旨の定め」という見出しのもと
に「当会社の株式については、株券を発行する」という記載が職権でなされました。  

 ところが会社法214条は、「株式に係る株券を発行する」という表現ですから、
わざわざ登記簿表記に逆らって「当会社は、株式に係る株券を発行する」と定款に
定める上場会社が続出しました。そういう上場会社向けのモデル定款が存在したか
らです。

 登記簿表記と意味は同じでも定款の表現が異なるから登記が必要かどうかと議論
されていたのも、つい3年前のことでしたが、とうとう、この1月5日で一斉に上
場会社の株券が廃止され電子化されました。ちょうど、いま、その登記(株券を発
行する旨の定めの廃止の登記)の真っ最中といったところです。

 上場会社の立場からは、勝手に法律が改正され、株券発行の登記がされ、今度は、
廃止の登記をお前の費用負担でせよといわれたようなものですから、腹の立つ話で
しょう。しかし、考えようによっては、当事務所のような零細司法書士事務所の救
済を目的とした公共事業かもしれません。ありがたいことです。

 もっとも、株券電子化は、上場会社にとってメリットがあります。従来は、商号
変更や株式分割の際に、株券の差替えや新株券の発行が必要でしたから、印刷代等
の費用負担がたいへんでした。今後は、その費用負担がなくなるからです。

 数年後に、また零細司法書士救済策の公共事業として、株券の復活があるかもし
れませんから、商号変更や株式分割は、お早めにどうぞ。


2009.01.08
(木)【私も社外監査役?】(山本直樹)

 みなさん、あけましておめでとうございます。 岡山の山本直樹です。

 ある会社の会社分割(新設分割)の手続の打ち合わせ中のこと。新設会社につい
て社外監査役の登記が必要になるかもしれない事案でしたので社外監査役の定義を
説明しました。

 「社外監査役」=過去に当該会社またはその子会社の取締役、会計参与もしくは
執行役または支配人その他の使用人となったことがない者をいう(会社法2条16
号)。

 新しく設立する会社ですので、当然当該会社またはその子会社の役員・使用人で
あったということはありえません。
 監査役候補者の方はグループ関係会社の方のようでしたが、「社外監査役」に該
当するということに総務の担当者の方も多少驚かれていました。

「社外」=「グループ以外」というイメージがあるのでしょうね。
 たしかに「社外!監査役」と肩書がつくと多少抵抗感があるかもしれません。

 通常のケースでは登記までは不要ですが、一定の要件(監査役会設置会社・社外
監査役の責任限定契約の定款の定めあり)を満たす場合には、「社外監査役」の登
記が必要となります(会社法911条3項18号・26号参照)。気をつけてくだ
さい。


2009.01.07
(水)【事業計画】(梅田幸志)

 あけましておめでとうございます。

 さて、世間の会社では、定期的に「事業計画」を発表しており、我々も企業法務
の一環として、その文書化等に協力しておりますが、こと司法書士業界内では、こ
のような計画をあまり見聞きしませんでした。そして、そのことについて特に違和
感も持っていませんでした。

 先般、ある超有名な司法書士のS法人では、この計画を策定しているという話を
耳にして、私は大変びっくりしました。
 「あっそうか!!」 「我々の業種でも企画・立案をした方がイイんだ!!」
そんな当たり前のことに、他人事でないということに、初めて気づいたからです。
 目からウロコならぬ花火です。

 話は20年前にさかのぼりますが、私が開業したころ(平成2年)の典型的な司
法書士のメイン業務は不動産登記でした。商業登記も定型的なものが多く、しかも
税理士さんからの受身の仕事、という形態が珍しくありませんでした。
 ですので、業務といえば「登記」のことでしたので、ことさら「事業計画」を立
てる必要性もあまり感じませんでした。

 ところが、昨今では、その業務範囲は多岐にわたり、登記・供託・裁判・後見・
信託・ABL(※)・社団・財団・企業法務・事業承継・事業再生・M&Aなどな
ど、大変広い分野に広がってきています。そのうえ、どの分野でも、高度化し複雑
化しています。
 それで、自分がどの分野で生きていくか、どうすれば確固たる地位を築けるのか、
といったことを戦略的に問い直すことが求められるようになって来ているのです。

 というわけで、今年の正月は、私も「事業計画」なるものに挑戦です。
 今まで、のんびりと?「計画」なしでやってこられた私や一部の司法書士は、
とても幸せだったということでしょう。ねっ、K先生!!。

(※)ABLとは、企業の持つ製品在庫や売掛金あるいは新技術などの「企業価値」
  を担保として、資金を調達する金融システムのことをいいます。


2009.01.06
(火)【「補欠の意味」の反響】(金子登志雄)

 月間「登記情報」(きんざい)の読者の皆様、正月号がお手元に届いていること
と思います。8頁以下の商業法人登記総合研究5人委員会の論稿「補欠の意味」に
ついては、最も力を入れた部分ですので、ぜひ、じっくりと、ご検討ください。

 そこでは、協議のうえで、次のように結論づけました(A説)。  

 ★329条2項補欠(役 員)= 予選補欠 =「法定・定款定員」割れ限定
 ★336条3項補欠(監査役)=非予選補欠=「現状員数」割れを含む   

 ありがたいことに、早速、反響があり、松井信憲著『商業登記ハンドブック』
(商事法務)432頁は、明らかに次の見解(B説)だが、これについてふれてい
ないとのご指摘を頂戴いたしました。

 ★329条2項補欠=336条3項補欠=「法定・定款定員」割れ限定   

 しかし、われわれが本件を最重要の協議問題として取り上げた動機こそが、この
松井見解の受け止め方であり、十分に検討済みです。

 ぜひ、次の3つの文章を比較対照してください(発行順です。【  】及び★注
は、金子が挿入しました)。

@『実務相談補遺「株式会社法」』220頁(松井秀樹弁護士)
 「監査役の員数が法令または定款に定める員数を欠くに至らない限り、複数の監
 査役のうち1名が欠けた場合であっても、【あらかじめ選任されていた】補欠監
 査役は監査役に就任することができない。」
  ★注:旧商法時代の平15・4・9民商第1079号についての解説です。

A相澤・論点解説305頁Q422(【「欠員」の意義、329条2項関係】)
 「定款に『取締役は5名以内とする』との定めがあり、現に取締役が5名選任さ
 れている株式会社において【選任】された補欠取締役は取締役1名が辞任した場
 合に、取締役に就任することができるか。」(回答は、できない)。
  ★注:この【選任】は、辞任前の予選であり、329条2項補欠のことです。

B松井信憲著『商業登記ハンドブック』432頁
 「法律又は定款で定めた役員の員数を欠くに至らない場合 (例えば、5名以内の
 監査役を置くという定款の定めのある監査役会設置会社において、5名いた監査
 役のうち1名が死亡し、1名を補充する場合等) には、【従前の解釈と同様に】、
 これを補欠監査役とみることはできず、任期を法定の期間より短縮することはで
 きない(【相澤・論点解説305頁】)」。

 上記は、すべて会社法329条2項(@は、その前身である民商第1079号)
についての同一趣旨の説明と思われますが、Bを単独で読むと、また、前後の文脈
から、「現状の員数を欠いた場合の補欠」(会社法336条3項の補欠)のことを
述べているようにも読めてしまいます。  

 この読み方がA説とB説の差として生じたわけですが、もし、Bが336条3項
の補欠についての説明だとしたら、【従前の解釈と同様に】は明らかな誤りになり
ます。旧商法273条3項では、「現状の員数割れ補欠」が肯定されていたからで
す(商事法務1270号36頁)。
 したがって、ここでいう「従前の解釈」は、「民商第1079号の解釈」と読ん
ではじめて、末尾の(相澤・論点解説305頁)とも整合性がとれるわけです。

 いずれにしろ、『商業登記ハンドブック』432頁を根拠に、松井見解はB説で
あるとの断定は困難だと考えます。

 ご参考までに、@の221頁には、「ここでいう補欠監査役は、監査役が欠けた
場合にその後任として株主総会で選任され補欠として直ちに就任するという意味で
の補欠監査役とは異なる」、Aの306頁でも、「336条3項の「補欠」は、旧
商法273条3項を受けたものであり、329条2項によって予選された補欠取締
役だけでなく監査役が任期途中に辞任した場合等に株主総会で監査役として選任し
た者の任期を短縮する場合についても適用がある」と明記されています。

 旧商法時代の解釈先例(上記商事法務1270号36頁)が変更されたという情
報もありません。明らかにB説を採用している文献も見当たりません。

 以上より、現状では、A説が定説であるといって、さしつかえないでしょう。

 なお、その他のご批判ですが、われわれの論稿には、複数の監査役の任期を揃え
る意図は一切ありません。補欠の任期とは、前任者の任期を引き継ぐものであって、
他の監査役と任期満了時期を揃えるものではないことは当然の前提です。また、補
欠概念の拡大もしていません。旧商法時代からの定説に従っただけです。

 (2008年度関連徒然)
    06.27【補欠と後任】、10.28【補欠監査役の解釈】  
    10.29【補欠とは何】、11.07【補欠「時」監査役】



2009.01.05
(月)【おめでたく生きましょう】(金子登志雄)

 みなさん、あけましておめでとうございます。

 と申し上げるのも気がひけるほど、本年は、たいへんな年になりそうですが、せ
めて気持ちだけでも前向きに行きたいものです。  

 昨年は、私も無事に、干支を一周することができました。30代中旬までの独身
時代には、「妻なし子なし仕事なし、カネもなければ束縛もなし」と勝手気ままな
自由人を気取っていましたが、本年は、そういう悲惨な過去(?)のすべてをリセ
ットし、生まれ変わった気持ちになれそうです。

 干支を一周した年齢になりますと、同じ事象でも、前向きに捉えるか、後ろ向き
に捉えるかで、いかに「活力」が違うかということが経験的にわかります。すべて
を前向きに、何でも「こりゃ、ついてる」と思えば、嫌なことも、よいことのよう
に思えてしまいます。

 いつも、煙草は健康によいと前向きに捉えていますが、時節柄、その他のことで、
「こりゃ、春から縁起がいい」と思えるものはないかと探しましたら、登記雑誌と
して定評のある月刊誌「登記情報」の正月号に登場していました。  

    http://store.kinzai.jp:80/magazine/AT/index.html

 単に、たまたま「商業法人登記総合研究5人委員会」のトップバッターになり、
それが正月号だっただけですが、これも幸運の1つでしょうか。
 でも、真の幸運は、いまも健康で生きていられることだと思っています。 

 本年も、相変わらず、当ESGをよろしくお願い申し上げます。


(2008年度)

(2008年度)

2008.12.26
(金)【9連休】(金子登志雄)

 明日27日から正月4日まで、9連休のところが多いようです。こんな長期休
暇は、めずらしいのではないでしょうか。

 いろいろな人に「休みはどうなさるのですか。円高でウオン安ですから、韓国
旅行などいいかもしれませんね」と声をかけてみたのですが、「正月は家で」、
あるいは「このご時世では生活防衛が優先」などという理由で、積極的な動きは
少ないようです。
 長期休暇なのに、歓迎されていないのでしょうか。

 休暇というと、雇われていた時は、非常にうれしいものでしたが、司法書士の
ような独立した自由業になると、必要に応じて、いつでも休めるので、ありがた
みがなくなりました。ましてや、私のような仕事大好き人間、無趣味人間は、何
をしてよいのかもわかりません。結局は、いつもはできない原稿書き三昧という
ことになりそうです。

 「業務」日誌という建前の本徒然も今年の最後です。会員、会友のみなさんの
ご協力で、営業日は1日も空けずに、続けられました。ネタ枯れで、昨年の徒然
ほどの面白い話題は減りましたが、日々の閲覧数は、1.5倍になりました。

 どん底の不景気になるといわれる来年ですが、この徒然だけは、事業閉鎖せず
に続けられるようがんばります。  

 少々早いのですが、本年はお世話になりました。明年もよろしくお願い申し上
げます。
 なお、金子個人は、365日24時間年中無休の自動販売機商法ですから、ご
遠慮なく、電話あるいはメールでご指示ください。ただし、ご入金いただかない
と、機械が動きません。



2008.12.25
(木)【ストレスを溜めず生きていく方法】(富田太郎)

 今年も、残りあと僅かとなりました。 
 振り返れば、今年は正月2日間を休んだだけで、後は「仕事と原稿」に追われる
毎日でした。まさに「ワーキング・プア」街道をまっしぐら・・・・(汗)。

 先日、「顧問先である某社の女性」から言われました。
「うちの社長、最近、土日もなく、夜遅くまで仕事をして、肉体的にも、精神的に
も疲れきっているの・・・。(富田)先生の場合は、好きで夜遅くまで働いている
のでしょう? 全然違うのよぉ・・・・。」

 えっ??? 好きで〜?
 私は、まわりから、そんな風に見られていたとは・・・(涙)。

 確かに、私の場合、土日もなく働いていますが、「ストックオプションの立案」
だったり、「単行本の原稿」とかで、「従業員の生活」「会社の将来」等々、全て
を背負っている某社の社長とは切実感・緊迫感が全く違うのに・・・・。

 ところで、「紀伊国屋書店創業者の田辺茂一」の随筆に、次のような言葉があり
ました。  
  「自分しか歩けない道を、自分で探しながら、マイペースで歩け」

 これがストレスを溜めずに、生きていくコツだそうです。蓋し名言ですね。
 実は、この言葉に該当する人物を知っています。ESGの某先生です。

 来年こそは、私も、その域に少しでも近づきたいものです・・・・。

(ご参考)
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E8%BE%BA%E8%8C%82%E4%B8%80


2008.12.24(水)【有価証券と名義書換】(金子登志雄)

 非上場会社では、すでに株券を廃止した会社が少なくありませんが、上場会社に
あっても、来年1月5日から株券が電子化され、紙の株券がなくなります(自動的
に登記も変更されると思っている方がいらっしゃるようですが、登記が必要です)。

 これで、ますます株券の廃止が一般化しますが、紙の証券がないのに、それでも
株式を「有価証券」の1つとすることには、どうも馴染めません。金商法には、一
応、「有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されてい
ない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし・・・」という規定はある
のですが・・・。

 これに関連して、株券の「名義書換」という用語も紛らわしいといえます。私の
ような年配者には、株券の「名義書換」というと、株券の裏に所有者の名前を書く
こと(裏書)というイメージがあるのですが(学生時代にこのアルバイトをしまし
た。1日8時間で1000円でした)、それがなされずとも、有価証券法理に基づ
き、株券の所持者は適法な所有者と推定されますから、少なくとも「名義書換」と
は、株主名簿に所有者の名前を書くことだろうと思っていました。

 ところが、会社法では、名義書換代理人が株主名簿管理人とされ、条文からも、
名義書換という用語が消え、「当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載
し、又は記録すること」という文言になっています(133条など)。

 こうなると、定款の規定などで、「名義書換」という文言を使ってよいのかどう
か迷いますが、ただいま読んでいる会社法の本(弁護士著)には、頻繁に「名義書
換」が登場します。使ってよいのなら、会社法でも、残してほしかったですね。


2008.12.22(月)【実務家による商業・法人登記Q&A】(金子登志雄)

 表題は新著の話ではありません。金融財政事情研究会の「登記情報」という著名
雑誌に「実務家の実務家による実務家のためのQ&A」として来年1月号(年末に
発売)からはじまる連載です。
  (登記情報)
   http://store.kinzai.jp/magazine/AT/index.html

 Q&Aの回答者は、司法書士業界の一大勢力「商業登記倶楽部」の主宰者・神崎
満治郎先生、当ESGの会友・鈴木龍介さん、司法書士試験受験業界のカリスマ講
師・山本浩司さんと私の4名が中心です。
  (商業登記倶楽部)
   http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/STClub2.htm
  (司法書士法人鈴木事務所)
   http://www.suzukijimusho.com/
  (山本浩司さんのブログ)
   http://plaza.rakuten.co.jp/yamamotokoji

 19日は全員が「きんざい」に集合し、打ち合わせでしたが、それぞれ経歴も立
場も異なる面々でしたので、今後の展開が面白くなりそうです。
 トップバッターは私であり、Q1は「増資と株数」、Q2は「募集と割当て」、
Q3は「再編当事者1社の脱落」、Q4は「補欠の意味」のテーマで合計6頁です。

 登記情報は、月刊誌で年間1万円程度の費用負担で済みますから、お得です。企
業法務に従事する司法書士や弁護士には、必須の法務情報収集誌といえましょう。

 「登記情報」といえば、当ESGの初仕事が、同書の「商業登記掲示板/泣き笑
い千例集」の企画と運営でした。平成14年のことでした。  

 当時は、一介の司法書士がQ&Aに答えても権威がないし、経験を「先例」と出
すのも畏れ多いと考えて、「泣き笑い千例集」と名付けたわけですが、いまは、実
務家側も登記を超えて「会社法」の本を次々に出すほど力をつけてきました。上記
4人が一致した見解なら、単なる個人的見解として無視されることもないでしょう。

 当研究会の創立目的は「司法書士ここにあり!」と世間に存在感を示すことです。
その場を与えてくれた「登記情報」の茂原編集長に感謝です。


2008.12.19(金)【ケータイ司法書士】(金子登志雄)

 弁護士人口増大で、ノキ弁、タク弁、ケータイ弁という言葉が出てきたようです。
イソ弁(弁護士事務所で居候し修行を積む)への就職もママならず、先輩弁護士事
務所に机だけ置かせてもらうノキ弁(軒先の間借り)、それもかなわず自宅で開業
するタク弁、事務所もない最下層がケータイ弁のようです。

 私は事務所を持っていますが、仕事に関しては、ケータイ司法書士です。事務所
は、机に座って事務作業するところであり、コピーするところくらいにしか思って
いません。事務所の封筒も作っておらず、茶封筒司法書士ですし、お世話になって
いるお客様にも、お中元、お歳暮の類は一切送ったことがありません。

 こんなことでよいのかという自省は常にありましたが、いまでは、「金子という
人はそういう人だ」と思ってもらうしかないとあきらめています。  

 ケータイについては、金子事務所に電話して、事務員に「金子は留守です。何時
に戻ります」といわれるより、ケータイとはいえ、即座に本人が電話口に出て、用
件を片付けられるほうがよいのではないでしょうか。

 仕事の宿題は嫌いですし、「調べてお答えします」などと、あとまわしにするの
も嫌いです。ケータイの場合は、その場で答えられますので、宿題もない状態でい
られます。
 ケータイ弁さんも、ケータイならではの特徴をフル活用して、頑張ってほしいも
のです。


2008.12.18(木)【司法書士という肩書】(金子登志雄)

 司法書士という肩書について、司法書士会内部には、行政書士と混同されること
が多いので、名称を変更すべきではないかという意見があります。簡易裁判所の代
理権(弁護権)も取得できますから、確かに「書士」という名称は実態にあわなく
なってきていることは事実です。「代書屋」と呼ばれることを嫌がる方も多いよう
です。

 しかし、行政書士と混同されるかどうかは、司法書士という職業が認知されてい
ないからであって、これは名称変更したからといって、根本的な解決にはなりませ
ん。だからこそ、一般向けの本を書いたり、政治家になったり、脱税で告発された
り(失言です!)、司法書士を世間に認知してもらう努力をすべきなのです。そう
いう意味では、当ESGの会員や会友は、相当な貢献をしていると自負しているの
ですが、司法書士会内部での評価はどんなものでしょうか。

 代書屋という呼称は、私は結構、気にいっています。弁護士が「口」で商売する
「代言人」なら、われわれは「文書」で商売する「代書人」です。知識に裏付けら
れた文章力が勝負です。依頼者に「わが意を得たり」といわれる文章を書くことが
私の目標です。登記においても、円滑に登記を完了してもらうには、どういう文書
を添付したらよいのか、その内容は・・・と、一工夫が必要です。登記官を説得で
きる文書でなければなりません。

 「代書屋」を嫌う人は、それを蔑称と思うからのようですが、自分の仕事に誇り
を持ち、自信があれば、どう呼ばれようと平気ではないでしょうか。
 靴を投げつけられ侮蔑されても、「ただ今の靴のサイズは・・・」といえるほど、
司法書士もゆとりを持ちたいものです。イラクの反米感情は横においてですが。

 http://www.asahi.com/international/update/1215/TKY200812150004.html


2008.12.17(水)【「司法書士」「先生」という肩書】(和出吉央)

 みなさん、はじめまして。名古屋の和出吉央(わで・よしひさ)です。

 私も、金子先生と同様に、不動産登記、特に立会い業務という司法書士のメイン
業務をこれまでほとんどしてきておりません。主に、事業承継問題を扱ってまいり
ました。もちろん、事業承継は、法務問題だけでは終わりませんから、専門コンサ
ルタント会社とともに対応しています。  

 というわけで、私も、自分が司法書士であるという自覚があまりありません。事
業承継では、どうしても未上場会社の株式に関する税金の知識が必須となってきま
すので、無意識のうちに「司法書士」という肩書きを取っ払っているのかもしれま
せん。

 では、先生という肩書きの方はどうかですが・・・・。
 事業承継では、ご高齢のオーナー社長とお話しすることが多いので、最初は「こ
の若造が何をいっとるんじゃ」と思われてしまうこともあり、先生扱いされません
が、きちっと正面から誠実に会社法や作成した書類の説明をしていくうちに、徐々
に私のほうを向いてくださるようで、私としてはそこに充実感を覚えながら仕事を
しているところです。

 結果として、「先生」という肩書きは、顧客が業務内容や質を見た後に、ほんと
に「先生」として頼りにしてくれるかどうかのような気がします。  

 いずれにしろ、司法書士という肩書きだけで、特に私のような若輩者にとっては、
顧客に対し”一定の専門知識・能力を有する者である”という取っ掛かりにおける
アピールになっていることは間違いなく、助かってます。

 あとは、顧客が真に頼りにしてくれる先生になれるかどうかですが、それは、わ
れわれ次第ですから、このESGのみなさんのお力を得て、専門知識・能力の向上
に努めたいと強く思っています。



2008.12.16(火)【司法書士の恥?】
(金子登志雄)

 先般、報酬9000万円を脱税したとして司法書士が告発されました。

 http://headlines.yahoo.co.jp:80/hl?a=20081212-00000004-yom-soci

 この件に関し、司法書士の間では、当然ながら、「司法書士の恥!」という健全
な意見が圧倒的多数ですが、非司法書士のみなさまはいかが感じたでしょうか。

 私は、不動産登記という司法書士のメインの仕事をしていないせいか、あるいは
会社役員との兼業のせいか、司法書士意識が薄いようで、「へぇ、司法書士も弁護
士並みになってきたじゃないか。司法書士って、そんなに儲かるのかと、司法書士
の認知度と人気が高まるな」と、不謹慎にも他人事の感想しか浮かびませんでした。

 たぶん、この報道で、司法書士が何かを知らなかった人も、司法書士という職業
の存在を知り、中には、そんなに儲かるなら司法書士を目指そうと思った方も少な
くないでしょう。
 大歓迎です。動機は何でも結構です。異性にもてそうだという動機でも何でもい
いのです(全くもてませんが)。優秀な人がどんどん司法書士になって、新しい風
を吹き込んでもらいたいものです(念のため、合格率2%で、最難関な国家試験の
1つですから、志望して後悔しても責任はとれません)。

 こういう事件は、いままでは弁護士さんや税理士さんの専売特許でした。そこに
司法書士も参入できた(?)ということは、「弁護士や税理士だから」ではなく、
訴訟とか、債務整理とか、事件やカネにまつわる仕事をしている人は、朱に交われ
ば赤くなるの喩えなのか、あるいは、こういう誘惑にかられる機会が多いのでしょ
うか。リスクに麻痺する職業病かもしれませんね。

 事件性のない登記やカネとは無縁の企業法務コンサルティングに従事している限
り、こういう誘惑とは無縁のようです。そんなに儲かることもない仕事だという証
拠でもありますけど。


2008.12.15(月)【ソニーショック】
(根来川弘充)

 日本の代表企業であるソニーが16000人の大規模な人員削減を発表しまし
た。これも世界的な金融不安のためなのでしょう。

 整理解雇の場合、@人員削減の必要性、A解雇回避努力、B説明責任等が必要
なのですが、今回のソニーの発表は、報道で知る限りでは@しかないと感じます。
しかも、@の内容というのも、「これからかなり厳しいものになるであろう」と
いう予測が大部分を占めるものです。

 不安が不安をよぶ悪循環に陥ってしまったことは、大変危惧すべきことです。
こういうときこそ、政治が主導をとって事態の沈静化のために先手を打っていた
だきたいと思うのですが、首相は「あ、そう(ASO)」と、まるで他人事です。

 ところで、ソニーだけでなく、日本を代表する企業が足をならべて人員削減を
発表しています。これは果たして正しい選択でしょうか?
 業績が落ちると利益が出ない。利益を出すためにコスト削減にかかり、その一
番多きな割合を占める人件費に真っ先に手を出す。
 むかし、パチンコ店のドキュメント番組を見ました。開店当初と比べて、売上
げは右肩下がりで落ちているけれど、利益は維持できている。理由は、釘をしめ
て出玉を少なくしたためでした。当然、その店の客足はますます離れていきまし
た。人員削減策は、この釘締めに重なるものを感じます。

 人員削減は、企業と個人との信頼関係を破壊してしまいますし、社員の働く意
欲も減少してしまいます。中長期的にみて、はたして得策なのかは疑問です。

 一流企業には、有能な社員の方が多数おられると思います。
日本を代表する企業であればこそ、単なる解雇でなく、それらの有能な方が、独
立しやすいように支援をして、需要や雇用先をつくり、日本の景気全体を活性化
させようとする気概があってほしいものです。


2008.12.12(金)【先生という職業その2】(金子登志雄)

 渡部さん、面白く拝見しました。
ほんと、「先生」って何でしょうね。

 私は、学習塾で講師のアルバイトしたりした経験が多く、「先生」と呼ばれるこ
とになれているので、何も感じませんが、そういうことと無縁な方が、資格をとっ
た途端に、「先生」と呼ばれたら、うれしさ半分、とまどい半分だと思います。

 やはり、先生と呼ばれる理由は、そこに何らかの「権威」がないと不自然です。
資格を持つことによって、法律に詳しい、税務に詳しいなどといった権威が国から
証明されるので、「先生」となるのでしょうが、開業後何年も経ると、実際には権
威を維持できていない方が少なくないようです。

 友人の弁護士にいわれました。「金子さん、司法試験に挫折し弁護士に劣等感を
感じている人がいたら教えてくれ。ボクが紹介する数人の弁護士に会えば、すぐ劣
等感は解消できるから…」。これは司法書士や会計士・税理士にもいえそうです。
へたに紹介して、「何でオレが合格せず、アイツが合格したのだ!」と制度に対す
る恨みが増大しては困りますので、いまだ誰も紹介していませんけれど。

 なお、渡部さん、ESGのEは、建前はエキスパートですが、エキサイティング
でも何でも好きに解釈してくだされば構いません。また、エキスパートといっても、
法律のエキスパートとは限りません。大食いエキスパートでも、早食いエキスパー
トでも。
 渡部さんのように、電車の中での原稿早書きエキスパートでも、鉄道オタクでも、
プロレス・オタクでも、腕時計オタクでも、とにかく何かに卓越していればよいの
です。「人格エキスパート」は、大歓迎です。


2008.12.11(木)【「先生」と呼ばれる職業】(島根・渡部浩義)

 「師走」ですね。この師とは元来「僧侶」のことのようですが、「先生」(すな
わち学問、技芸に秀でた尊敬すべき人)との意味もありますね。全国の司法書士の
センセイ方、いい汗かいて走りまわっておられますか?

 ところで、司法書士の世界でも日常一般的に資格者を呼ぶ際に使われるこの「先
生」という呼称、はたして本当に司法書士に対して適当な呼称なのでしょうか。か
つて、高名な落語家が高座にあがり「先生と呼ばれるほどバカじゃねえ〜。」と、
まくらの部分で喋り、場内を大爆笑の渦に巻き込んだとか……。

 このことは、いうまでもなく世の中の「先生」と呼ばれる職業人には、聖職者と、
そうでない(怪しい)人達の二種類の人々がいることを、笑いのネタにしているわ
けですが、では、司法書士に付される「先生」は、どちらのグループを指しての呼
称でしょうか。

 いつの間にか私もこの業界に約20年身をおき、依頼者の方、役所関係者、同職
者から「先生」と呼ばれ、「はい。」と何の抵抗もなく返事してしまう昨今ですが、
最近ふとしたことから昔のことを思い出してしまいました。

 それは、私が司法書士試験に合格した途端に、それまで親しくふざけあっていた
勤務先の補助者(この言葉にも抵抗あり)仲間や、他の事務所の職員さんまでもが、
その日を境に突然、私のことを「先生」と呼び始め、なんとなくよそよそしくなっ
たこと、また、あからさまに私に黙って会釈をしたりして通りすぎる個人的に好意
を寄せていた(もう、時効成立!!)さる方の変貌に、参ったことを思い出しました。

 しかも、追い討ちをかけるように、私が本当の意味で師と慕っていた先輩同職者
の先生方も私のことを先生と呼び始める現実。昨日の自分と合格発表後の今日の自
分、一体何がどう違う。おしりのあたりがムズかゆくてしかたありませんでした。

 そんな中、ただ一人だけ、たぶん本当のことを言った業界関係者がいました。
「そんなの、代書人風情にほかの適当な呼び方がないから、みんなが『先生』と呼
んでるだけよ。およそ重たい意味などあるものか。聞き流せ。」

 現在、全国の登録司法書士数、約19,000人弱。その中に本当に『先生』と
呼べる聖職者、真のエキスパートは、はたしてどれくらいおられるのでしょう。
また、『先生』にかわる司法書士を指す適切な呼称はないものでしょうか。

 ところで、ESGのEはエキスパートの頭文字でした。そこのHPに嬉々として
文章を出している私。今頃すこし、スネが震えてきました。
 まだまだ続く、研修会出席のための移動列車車中にてです。


2008.12.10(水)【タブロイド紙】(金子登志雄)

 土日も無関係に夜型の私は、テレビのゴールデンタイムは、もっぱら仕事中のた
め、テレビをほとんどみる機会がありません。そのせいか、世事に疎いところがあ
ります。いまだにオバマさんのそっくりさんであるデンジャラスのノッチさんとや
らをテレビでみていませんし、NHKの篤姫も知りません。

 世事の情報収集は、もっぱら、駅売りのタブロイド紙(大衆紙)に頼っています
が、電車の中で、ざっと目を通すには、ちょうどよい大きさですね。もちろん、タ
ブロイド紙の記事のうち男性専用部分は、電車の中では読めませんので、政治面、
経済面、スポーツ面にざっと目を通すだけです。

 1面には、必ずといってよいほど麻生首相に対する辛らつな批評が載っています。
漢字も経済もわからない「KY首相」だとか…。これが、結構、面白く、物書きの
勉強になります。なるほど、こうやって、読者の興味を引きつけるかという「文章」
に対する興味です。

 読み慣れないと、よくもまぁ、ここまで辛らつに書けるものだ、名誉毀損で訴え
られないのだろうかとか、この新聞社は野党寄りなのかと思ってしまいますが、毎
日のように手を変え品を変え政府批判を掲載されると、逆に、この新聞は、こうや
って政治に対する大衆の欲求不満のガス抜きしているのではないだろうか、ほんと
は政府支持なのではないだろうかという疑いさえもってしまいます。そういう目で
みると、辛らつな批評も、大衆の溜飲を下げるのは、ちょうどよい程合いのように
も思えます。


2008.12.09(火)【行方不明7年】(金子登志雄)

 最近、やたらに「未曾有」の経済危機などと、ミゾユウ(?)という用語が目に
つきます。生きるか死ぬかの存続をかけた企業の危機意識はものすごいのに、個人
や政治家の危機意識はまだ弱いのでしょうか。支持率が急落した麻生内閣も当面は
安泰のようにみえますが、表面上だけでしょうか。

 じわじわと実体経済に影響してきましたから、今後は、夜逃げや脱サラ・ホーム
レスが増えるのではないかと危惧しています。

 もし、ご親族がそうなったら、今後どういたしますか。
 民法によりますと、行方不明7年以上で死亡扱いにできます。
 民法30条1項に「不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、
利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。」、同31条1項に、
「失踪の宣告を受けた者は、期間が満了した時に死亡したものとみなす。」とある
からです。

 でも、こう寒くなりますと、失踪する元気もでないですね。
 ちょっと古い情報ですが、この方は、失踪する「かい性」があったようです。

 http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080609/trl0806092301009-n1.htm


2008.12.08(月)【司法書士の人相】(島根・渡部浩義)

 遠方を含め、よく各地の研修会に参加していますが、こうした研修施設では、当
然、私たち司法書士だけでなく、他団体ほか一般の方々も様々に参集されています。  

 そうした会場のエレベーターに、およそ面識のない雑多な人たちばかりが、狭い
空間をしばらく共にしていると、胸の徽章を見るまでもなく、「あっ、この人、た
ぶん同職者だな。」と、ピピィと感じることが多くなりました。  

 なぜかと考えましたら、どうも「人相」のようです。
 最近は、人は見た目で決まる旨の題名を持つ本がベストセラーになっているよう
ですが、最近、司法書士という人種の人相、風貌が「悪い」ような気がします。

 先日も、さる会場のエレベーターの中で同職とおぼしき女性に「どうして私たち
の同業者はこんなに目つきが悪いんでしょうね。」と、何の前ぶれもなく話しかけ
ると、「ほんとにそうですね。」と答えが返ってきました。

 そもそも、その女性にも、そのお顔立ちから私は、「この人、司法書士」とほぼ
確信をもって声掛けしたわけですけれども……。

 「眉間(みけん)に皺よる弁護士事務所、いつもニコニコ司法書士事務所。」
 私がこの業界に入った約20年前、先輩司法書士に、よくそういわれました。
取扱業務の多様化(たとえば簡裁代理権の取得ほか)、本人確認の厳格化、複雑怪
奇、吹き上がらない世の経済情勢、まったく不透明で、辛いこと、厳しいことが多
い世の中ですが、同職の皆さん、笑いましょう。せめて穏やかな顔、立ち振る舞い
をしましょう。

 私は、とある会場で、まさに今この時、その『人相の悪い集団』に取り囲まれ、
指の運動にこの文章を打っています。頑張れ、司法書士!!


2008.12.05(金)【旅は徒然〜札幌編〜】(鈴木龍介)

 司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。この週末は札幌に行って参りました。
地方行脚といえば、「徒然」ということで久々の投稿です。

 今回は、札幌司法書士会にお誘いいただきましての研修の講師です。
12月1日に施行になりました「一般社団・財団法人」について約2時間お話しを
させていただきました。200名近い司法書士の先生方にご聴講いただき、感謝で
す。

 私なりの「一般社団・財団法人」のポイントとしては
1.「一般社団・財団法人」は、公益法人の一類型であるが、公益とは構成員に財
 産を分配しないことである(公益事業以外の共益事業も収益事業もできる)。
2.必ずしもお金を出す人(財産の拠出者等)が法人の支配者(社員等)になるわ
 けではない(要は、株式会社の株主とは違う。)。

 まだ、法律自体の理解に四苦八苦という状態ですが、何かおもしろい使い方がな
いか模索中です。  

 以下、ご参考までに法務省民事局のHPです。
 『一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A』  
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153.html
 『新非営利法人制度のパンフレット』  
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji153-1.pdf

 ついでに、当事務所メールマガジン「一般社団・財団法人」バックナンバーです。
 http://www.suzukijimusho.com/magazine/hojin.html

(おまけ その1)
 あいかわらず、鯨飲馬食してしまいました。
 最後(4軒目)の札幌ラーメンのお店を出たのは、午前1時を過ぎてました。
 お付き合いいただきました札幌司法書士会の先生方!
 ありがとうございました。そして、すいませんでした。

(おまけ その2)
 書きかけの原稿をカバン一杯つめこんで行ったのですが、結局やれたのは翌日
 締切りの雑誌のゲラの校正だけでした (予定どおり???)。


2008.12.04(木)【みなし解散】
(松山聡)

 最近は訊ねられることもなかったのですが、久しぶりに聞かれました。
「以前は、株式会社が役員改選登記をしないで5年経過すると職権で解散させられ
ていたけれど、会社法が施行されて10年になったのでしょう?」と。

 何となく正しいよう(?)ですが、徒然をご覧の方は間違いがお解かりですか。

 質問者は、取引先の状態を確認するため、定期的に登記事項証明書を取得して確
認しているらしいのですが、そうであれば、もう少し正確に理解しておく必要があ
りそうです。

 とりあえず大雑把にいえば、

・商法時代も「最後ノ登記後五年ヲ経過シタル〜」でしたので、役員に関する登記
 を5年以上していなくても、その間に別の何らかの登記をしていれば、少なくと
 もこの規定には引っかかりません。

・質問者は5年を経過すると自動的に職権解散させられると理解していたようです
 が、公告や通知などの手続きを経てからです。

・「5年を経過〜」が、(公開会社でない株式会社の役員の任期を伸長することが
 できるようになった関係で)会社法では「12年を経過〜」になっています。

 正確なところは会社法の472条に規定されています。

と、以上のような説明をすると、今度は登記事項証明書をまじまじと見ながら「と
ころで登記簿には任期が載ってないよね。任期はどうやって確認するの?任期をの
ばしたら登記所に申し出るのかな?」と次の質問。

 任期は会社の定款で確認するしかなく、任期伸長の有無は、登記(申出)手続き
があるわけでもないので、登記所に聞いても解りません。

 等々、定款のお話や任期のお話をしてきました。
今さらいうまでもありませんが、会社の定款は大事な確認対象なのです。

 ところで、この12月1日の施行により、いよいよお目見えすることとなった一
般社団法人等にも同様の規定があります。ご興味のある方は、「一般社団法人及び
一般財団法人に関する法律」の149条や203条を確認してみてください。こち
らは、「5年を経過〜」のままです。


2008.12.03(水)【26年前の無知】(大戸早規子) 

 富田先生が死に物狂いで調査をして事なきをえた「年金記録事件」(7月4日徒
然)から4ヶ月が過ぎた頃、私のところにも、ようやく「年金特別便」が届きまし
た。   

 ところが、内容を確認してみてびっくりです。
 なんと、昭和57年12月の1か月分のみですが、国民年金「未納」と書いてあ
るのですから。  

 昭和57年??? 確か、年末で勤務先の銀行を辞めて、翌年1月1日から米銀
の日本支店に転職したときだ。あわてて、年金手帳を引っ張り出して厚生年金の履
歴を見てみました。
            資格取得日           資格喪失日
  ○○銀行    昭和○○年4月1日      昭和57年12月31日
  XY銀行    昭和58年1月1日      昭和○○年○○月○○日

 資格を12月31日付で喪失しているけれど、翌日(元旦)には新しい職場で取
得していて空白期間なんてないのに、米銀だからって時差があるわけでもないでし
ょうに、なんで、わざわざ国民年金に入らなきゃいけないの?  

 すぐに、社会保険事務所に電話をかけましたところ、保険者資格は退職日の翌日
付で喪失するとの説明でした。何となくですが、私の場合、12月30日に退職し
ていて12月31日には厚生年金の保険者資格を喪失しているのだから、12月分
は厚生年金の保険料を払わなくてよいかわりに、12月31日のたとえ「1日分」
だけでも国民年金に加入して1か月分の保険料を払うべきだったらしい・・・とい
うことは理解しました。

 が、ここで、更なる疑問が湧いてきました。今まで26年間、自分は○○銀行を、
昭和57年12月31日付で退職したんだと思っていたにもかかわらず、どうして、
1日前の30日付での退職になっていたのだろうかということです。  

 先日、そんなモヤモヤした気持ちを抱えている私の事務所に、親しい社労士さん
が遊びに来ました(なんと、タイミングのよいことでしょう・・・!)。
 月末日を退職日にすると、喪失日が翌月になるということはお分かり頂けたと思
いますが、そうすると、前の会社では、退職者の退職月の保険料も給与から天引き
して翌月に納付するという手間が残ってしまうそうなのです。どうやら、私の場合、
担当者がその手間を省きたかったのかもしれません。なぁんて、自分の無知を棚に
上げて、こんなことを言ってはいけませんね。


2008.12.02(火)【代表者の住所】(島根・成瀬公平)

 最近、中央省庁のOBが狙われる事件が発生しました。この事件のニュースの関
心事に犯人はOBの住所をどのようにして知ったのかという点がありました。
 直感的に思ったのは、OBが退官後就職した先の法人の登記簿謄本を見れば住所
なんてすぐにわかるのでは・・・というものでした。そこでグーグルで検索し、該
当法人の登記簿謄本をとってみました。やはりOBの住所が記載されています。

 個人情報の保護がさかんに主張される時代にも関わらず、なぜ代表者の住所は誰
でも見ることのできる登記簿謄本に記載されるのでしょうか。登記の真実性を担保
し公示機能を果たすため、第三者の代表者への責任追及のため、過料の制裁の通知
のためその他にもいろいろと理由は考えられますが、代表者の住所を必要とすると
きに利害関係を証明することで代表者の住所が記載された証明書を取得できるとす
ることで足りるのではないでしょうか。今の社会で代表者の住所を登記簿謄本に記
載する必要性を感じません。

 ニュースによると国会図書館で職員名簿を閲覧しOBの住所を知ったとのこと。
登記簿謄本を見てOBの住所を知ったなんて言っていたら今頃大問題になっていた
かもしれません。

 トヨタ自動車の代表者の住所を知って何に使いますか? 私はお歳暮を送るくら
いしか思いつきません。


2008.12.01(月)【六法との付き合い方】(島根・渡部浩義)

 前回に引き続いて「六法」ネタです。
 私が始めて買った六法は、「模範六法/昭和58年版」でした。今だに持っていま
す。総頁数約1900頁、厚さ5cmほど、しかも、当時は現在のものより一回りサイ
ズが小さく四六変形版でした。それでも、リーズナブルだったポケット版六法とは
違って、その「どすん」といわんばかりの風格に当時は圧倒されていました。

 ところが、持ち物は立派なのに、持ち主が「とんちんかん」ときているものです
から、開いてみてびっくり。大きな文字の3段組の法律(いわゆる六法部分)は、
「憲法」「民法第四・五編」を除き、全部が漢字カタカタ混在の漢文調。
「何じゃこれは…」と途方にくれ、いっぺんに勉強の意欲の潮が引いていきました。

 「民訴は眠素」といわれていた民事訴訟法の時間など、「新旧訴訟物理論の対立」
の講義でもはじまろうものならば、その模範六法のちょうど良い厚さを机の上の枕
にして、気持よく、安らかに休ませてもらった印象のほうが強く残っています。
 刑法38条(故意・過失)2項などには「罪本重カル可クシテ...」の脇に「つみ
もとおもかるべくして...」などど鉛筆で、ルビを振っています。苦労していたので
しょう。

 また、「『模範六法』を持ってる諸君はご参照ください。最近の最高裁判例では
...」と教授に紹介される判例は、昭和39年11月18日最判...」「...昭和38年は最近
か? 俺、生まれてないよ。」と、この世界(法学)の常識(?)に、ゲンナリし
たものです。

 司法書士試験勉強を始めてからも、そこに書いてあることがわからず、この模範
六法を下宿の借間の壁に向かって投げつけたことも数知れず。もうボロボロです。

 2009年度版模範六法は、表紙もシルバーに変わり、厚さも約9cm、持ち運びは
おろか、「机の上の枕」にも少し厚くなりすぎました。
 基本法たる六法の部分も「憲法」「商法」を除き現代口語化され、ぐっと読みや
すくなっていますね。ただしこの「口語化」と「実務家の必要日常法令数・判例数
の増加」が、厚みを増した原因でしょう。

 この徒然の閲覧者に「司法書士試験受験者」は、おられるのでしょうか?
私は、合格した年、民法の指導教官に呼び出され、その面前で民法、商法、民事訴
訟法、不登法、刑法等の関係法律につきランダムに条数を指定され、ただ、条文を
読まさせられました。
 そして「試験、上がった(合格した)な。」と、その教授に一言いわれました。

 試験でも、実務でも、「条文の精読、読み慣れる」という行為は、基本中の基本
ということなのでしょう。


2008.11.28(金)【本人確認】(伊藤崇)

 みなさん、はじめまして。島根県の伊藤です。  

 さて、銀行で預金口座を新規に作成する際や解約する際に、「あなた本人か、
生年月日はいつか、免許証をみせよ」といわれ、嫌な気分になった方も多いと思い
ますが、いま全国の司法書士は、これで顧客に嫌われています。

 4月17日付徒然にもありましたが、マネーロンダリング対策を主目的としたゲ
ートキーパー法の施行で、一介の司法書士にも、銀行並みの本人確認義務が課せら
れたからです。のみならず、司法書士会内部で、それを会則によって一律に強化し
ようという動きもあり、ただいま個人情報の保護をも含め、議論が紛糾していると
ころです。  

 この本人確認は、なかなかくせものです。
 まず、電話で「司法書士の伊藤です」名乗った先から、警戒され、振込詐欺では
ないかとの疑いを向けられることもあります(そう感じてしまいます)。
 入口部分で警戒されると、最後まで不信感を持たれたままです。先日も、「あん
た! 結局、権利証預かって何するかね!」と怒鳴られました。とくに、物上保証
人(他人の債務に対して担保を提供している人)とのやり取りは一苦労です。  

 新手の振込詐欺が次々と発生しており(一日平均9千万円の被害)、その注意が
喚起され市民の警戒感が強まるのはやむを得ないことですが、その割りを食う善良
な!?司法書士はこれからますます大変になりそうです。話し方講座でも習って、
安心させる話術を身につけようかと思うこのごろです。

 先日、次期アメリカ大統領オバマ氏の演説の巧みさについての報道に接しました。
その中の一つに、「強調したいことを3回繰り返す」をいうテクニックがありまし
た。なるほど〜、と感心したものです。そこでこれからは私も「本人確認は上手に
できます。上手にできます。絶対にうまく行きます!!」と自己暗示をしてみよう
かと思っています。

 皆様もぜひ「司法書士は信頼できます。信頼できます。絶対に信頼できます」と
3回繰り返してくださいませんか。


2008.11.27(木)【知らなきゃよかった?!】(山本直樹)

 岡山の山本直樹です。みなさん、こんにちは。

 10月23日掲載分で「社外監査役」のことを書きましたが、今回も監査役ネタ
です。

 某社でのこと。
 社長様から「監査役Aが高齢になり、監査役をBに変更登記をして欲しい」旨の
依頼がありました。
 書類を準備していると、雑談の中で会社の関係者から「監査役Bは会社の従業員
である」と知らされました・・・。

 会社法第335条2項により、「会社の使用人」は「監査役」になれません。
 社長様には監査役候補者を変更していただくよう再度依頼して、登記申請をしま
した。

 社長様は、監査役になってくれる人がなかなかいないんだと嘆いていました。
小さい会社では、なかなか役員候補者を決めるのも大変なようです。
(きっと従業員を監査役にしている会社もいるはずですね 笑)

 会社法では、一定の条件のもと「監査役制度」を廃止することも可能です。役員
の候補者に困っている会社はメリット・デメリットを考慮した上で、ご検討してく
ださい。


2008.11.26(水)「10年いとむなし」
(根来川弘充)

 みなさん、はじめまして。島根県(松江)の根来川(ねごろがわ)です。

 さて、現在、リーマンブラザーズの経営破たんをきっかけにアメリカ発の世界的
な経済危機が起こっています。
 思い出せば約10年前、日本では、不動産価格が大暴落をし、多くの金融機関が
破綻しました。

 私は当時、就職活動をしておりましたが、内定を受けた企業(某○一証券)も例
外ではありませんでした。突然就職先を失い、大きな不安もありましたが、結果と
して、そこから司法書士試験の勉強をはじめ、無事、今日の仕事とすることができ、
経営破たんに感謝することになりました。

 バブル経済が崩壊して以降、企業の評価は、「AAA」や「Aaa」という格付
けが崇拝されるようになりました。
 大手の格付けが下がれば、すぐにニュースになったものですが、それも今や遠い
昔の話で、リーマンブラザーズの破たんにより、全く無価値であったことが証明さ
れました。

 一体、会社の価値とは何であったのでしょう。人々は、格付けによる虚像を見せ
られて、踊らされていたのかと思うと、寂しささえ感じます。

 振り返ると、金融とは何かを崇拝すると崩壊するという本質があるのかもしれま
せん。

 世界の経済が10年で変わったという事実があれば、この10年で天国から地獄
へと生活を一変させた人もいます。当時一時代を築いた音楽プロデューサーが5億
円の詐欺容疑で逮捕されました。「年間数億の収入があった人が何故?」と多くの
人が思ったことでしょう。お金とは、あればあるほど安心であるというのも幻想で、
あり過ぎると人間個人を崩壊させるものかもしれません。

 「お金は、何かを崇拝をして得られるものではなく、また、それ自体をあまり信
頼してはならない」
 この10年の教訓にしたいものです。



2008.11.25(火)【設立記念日】(下崎ゆかり)

 会社設立登記の依頼を受けたとき、会社の設立日となる登記申請日は、依頼者の
ご希望を伺うことにしています。

 特に、希望日はないので、「なるはや」で(なるべく早くの略語のようです。)
とおっしゃる方も少なくないのですが、「せっかくですから。」と水を向けるとほ
とんどが、「設立日だけど、できるならやっぱり大安で・・・」などと希望日の指
定をなさいます。

 人気なのはやはり、「大安」、「1日」のようですが、、キリの良い「5・10
日」、末広がりの「8日」、ラッキーセブンの「7日」、ゾロメの日・・・と何か
しらの理由を付けて、日にちを指定されているようです。
 設立メンバーやその家族の誕生日にしたいという方もいらっしゃいます。

 先日、「でしたら、なんとか妻の誕生日に設立日を間に合わせたいのですが。忘
れないように。」という依頼者が。
 なんと優しいご主人ではありませんか!そういう事ならもちろん!と、急ぎ希望
通り設立申請を行いました。

 「会社の誕生日を奥様の誕生日と同じ日になさるなんて、きっと創立日を忘れる
ことはありませんね。」
 と登記完了書類を手渡しながら、話していると、
 「いや、会社の謄本には、設立日が出るでしょ?謄本を見る機会があれば、妻の
誕生日を忘れないかと・・・。昨年はすっかり忘れて機嫌損ねちゃったから。」
「えっ??・・・・」

 忘れないようにって設立日ではなくて、誕生日のほうだったのか・・・。
妻の誕生日忘れてしまうのか・・と、女性としては、いささかショックを受けつつ、
でも、この方は、忘れないようにと会社設立日にしたんだから、きっと来年以降の
誕生日は大丈夫だろう、仕事も家庭もうまく行って欲しいものだなと気を取り直し、
仕事も一段落。

 さて、その後ふと思い出したことが・・・。
「記念にと思って、会社の設立日を子供の誕生日にしたんだけど、会社の設立記念
日のささやかなパーティーを取引先・従業員と行っていたら、子供の誕生パーティ
ーには参加できなくて泣かれましたよ。」と苦笑いしていたA社長の話。
 こうなると登記申請日も悩ましいものです。

 徒然読者の方、くれぐれもお身内の誕生日、お忘れなきようご注意くださいね。


2008.11.21(金)【2009年版手帳】(田中利和)

 19日の徒然によると、島根の渡部さんは「2009年版六法」を揃えたようで
すが、私は書店で2009年版手帳を物色(?)中です。スケジュールを事務所の
パソコンで管理している関係上、席から離れると、まったく予定が分からないので、
私にとって、手帳は必需品です。

 驚いたことに書店に並んでいる手帳のほとんどが、欧米式に「月曜日始まり」で
はありませんか?! 
 思わず、「月・月・火・水・木・金・金」という猛烈ビジネスマン専用あるいは
当ESGのメンバーの中にもいるワーキング・プア族専用コーナーかと思ってしま
いました。

 手帳は、やはり「日曜日始まり」でないと困ります。
 美女に「〇〇月の第2週の日曜日に会いましょう」と固い約束をしてもらっても、
彼女の手帳が「第1週の日曜日」になっていると、約束をすっぽかされたときの口
実にされてしまいます!

 司法書士業務にも影響します。
 例えば、会社法上、要求されている1ヶ月の公告の公告期間を計算するとき、そ
の満了日が日曜日であれば、その翌日、つまり月曜日が1ヶ月の満了日になるわけ
ですが、一番右側に日曜日があると、満了日は土曜日だから大丈夫と勘違いしてし
まいます。これで登記できないと損害賠償ものです。

 どなたか,お薦めの「日曜始まり」の手帳はありませんか。


2008.11.20(木)【振り込め詐欺】佐々木大介

 振り込め詐欺の被害が、相変わらず少なくないようです。

 先日、知り合いのAさんのお兄さんという方から突然「佐々木部長はいますか?
弟がご迷惑をかけたようで」という電話がありました。何のことやらさっぱり分か
りませんでした。

 翌日、分かったことですが、どうもお兄さんのところに、Aさんが「佐々木部長
に拉致されたので、お金を支払って欲しい」という振り込め詐欺の電話があったよ
うで、その様子確認の電話だったようです。私は人を拉致するような人間ではない
んですけど(^_^;)  

 振り込め詐欺に遭う人は、詐欺らしいと分かっていても、引っかかってしまうそ
うですね。今回の件で、その気持ちが少し分かるような気がします。電話の先で困
っている人がいると思うと「何とかしてあげたい」という心理に駆られるからです。

 この話を父にしましたら「うちにも振り込め詐欺の電話があった」と言っていま
した。父は、話も聞かず黙っていると、やがて電話を切ったそうです。相手になら
ないと思ったからでしょう。このような撃退法?もあるのかと、感心してしまいま
した。

 振り込め詐欺は、人の良心につけ込む卑劣な犯罪ですが、自分の身を守る術を身
に付けることも、大切ではないかと思います。赤穂浪士は「山」「川」という合い
言葉を使ったようですが、現代的にはテレホンバンキングのIDとパスワードのよ
うなものですね。家族の間で電話をするときも、そこでしか通用しないIDとパス
ワードを持つべきかも知れません。


2008.11.19(水)【2009年版六法】(渡部浩義)

 みなさん、はじめまして。島根県の渡部(わたなべ)です。

 さて、来年度版六法が出回るシーズンとなりました。一般の方が、私ども事務所
にこられると、まず応接スペースで目に付くのは、この書物でしょう。

「全部、内容覚えておられるんですか?」
「ええ、もちろん。」(もちろん嘘!−ただし、冗談が冗談にならないことも…)

 同職の皆さん方は、どのような六法のラインナップをそろえられたでしょうか。
わが事務所は、2009年度は次のラインナップで行くことにしました。

 @ 判例六法Professional平成21年版 有斐閣刊
 A 大きな活字の三省堂新六法2009 三省堂刊
 B 模範六法2009        三省堂刊
 C 模範小六法2009      三省堂刊
 D 詳細 登記六法 平成21年版  東京法経学院出版
 E 「会社法」法令集 第五版   中央経済社編(ただし、今までのもの。)

 @Aは事務所応接用で、Bが手元用です。Bは、昭和58年版をはじめて手にし、
いかにも「法学部生」になったような気分がしたものでしたが、21年版は頁数も
約3900頁、厚さも約9cmと厚くなりすぎました。  

 Cは、持ち歩き、自宅用。
 Dは、仕事柄、持たざるを得ない手元用。
 Eは、いわずと知れた「名著」。どなたが編纂に加わられたかは存じませんが、
「会社法」施行後、かゆいところに手が届く会社登記・法務に携わる者、必携の一
冊と言えましょう。

 都合、一金20,370円也。ちなみに、私は、電子六法は嫌いです。


2008.11.18(火)【不合格者ゼロの試験】(金子登志雄)

 試験というのは、必ず合格者と不合格者がいるのかと思いましたら、そうでない
国家試験もあります。司法書士試験の口述試験です。これは、択一と記述式試験と
いうペーパーテストの合格者に課せられる試験ですが、試験当日に欠席でもしない
限り、全員が合格するといわれています。

 これでは何のためにするのか、時間と費用の壮大な無駄ではないかと思うのです
が、司法書士法という法律に「司法書士試験は、…筆記及び口述の方法により行う」
とありますので、せざるをえないのでしょう。

 また、全国各地が試験場になりますから、不合格にできない事情もあるでしょう。
東京で受験すると不合格の可能性があるが、神奈川ではありえないとなれば、東京
の受験生は一斉に神奈川で受験します。受験予備校は都道府県別の口述試験合格率
を出して、意地悪な試験官のいる地域での受験を勧めないでしょう。これは平等と
はいえません。さりとて、同じ試験官が全員(900人程度)を面接するのは困難
です。

 受験すれば確実に合格するのですから、試験で、あがったりする必要は全くない
はずですが、他人(ひと)によると大層緊張するようです。
 私は、全く緊張しませんでした。それなりの年齢(40代後半)でしたから、誰
も落ちない試験にドキドキするほど青臭くありませんでした。唯一、不安だったの
は、試験官が自分より年下で、失礼なことをいわれたら、むっとしてしまい顔に出
てしまうかもしれないというものでしたが、幸い、私より年長者で素晴らしく感じ
のよい方でした。

 試験場では、いくつか質問の趣旨がよくわからないところがありましたが、与え
られた課題のすべてを10分で答えてしまい、あとの5分間は雑談に終始しました。
 年の功って、ありますね。こういう試験なら、何度受けても楽なものです。


2008.11.17(月)【司法書士の新人研修】(金子登志雄)

 11月初旬に司法書士試験の合格発表がありましたので、新人研修はいつなのか
と日本司法書士会連合会のホームページをみましたら、関東の場合は、全国の中央
研修が来年1月20日から1週間(東日本の場合)、関東ブロックの研修が3月9
日から1週間でした。そのあとも、時期は知りませんが、都道府県単位の研修が2
週間程度(?)続き、新人研修のフルコースが終わります。

 司法書士会のためには、大きな声でいってはいけないのかもしれませんが、私は、
全国の研修と関東ブロックの研修は、一切でていません。会社の総務担当役員でし
たから、1週間も連続して休める身分ではなかったからです(東京会の研修は夕方
6時からなので、参加しました)。

 今年も数多くの社会人が合格したでしょうが、彼らは、司法書士の研修のために、
仕事を休めるのでしょうか。生活のこともあり、いま退職すべきかと悶々としてい
るかもしれません。  

 社会人受験生にとって、司法書士資格のよいところは、試験に学歴不問、合格す
れば即開業できるところですが(弁護士などはインターン生活が必要)、こういう
研修が逆に門戸を狭めていないかと危惧されます。

 開業後にも研修はできるのですから、新人研修に参加しないと入会を認めないよ
うな運用だけは絶対に避けてほしいものです。門戸を開放して、さまざまな人材を
司法書士界に迎え入れてほしいものです。


2008.11.14(金)【債務超過と会社の清算】(金子登志雄)

 業績が悪く会社を解散させるには、親会社等に債務を免除してもらい、清算結了
するのが一般です。清算結了とは、解散後の清算手続の全部が完了し、会社が消滅
することです。  

 このときの清算結了登記にあたり、債務免除証書をつけよなどといわれることが
地方の法務局でママあるようです。
 しかし、これは実におかしな話で、そこまでいうなら他の債権を弁済した証明を
つけよというべきであって、債務の弁済も免除も債務の消滅として同じはずです。

 そこで、いつも思うのは、会社法507条が「清算事務が終了したときは、遅滞
なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない」と規
定していることです。
 この「決算報告」は、すべて清算事務が終了したという報告であって、平常時の
事業報告に対応するもの(清算事務報告)でしょうが、「決算報告」という用語か
ら、つい残余財産分配前の貸借対照表のことだと勘違いしがちなことです。

 残余財産分配前の貸借対照表を清算事務報告書の1部として提出すると、「まだ
負債が残っているじゃないか。債務免除があったと記載してあるが、それを証明せ
よ」などといわれてしまうわけです。

 登記申請は受験と同じで、減点法ですから、余計なことは書かないことです。全
債務を消滅させ、全債権を回収し、残りはゼロと法務省令に従った最低の必要事項
を書いて出せば、それで十分です。

 今日から、507条の「決算報告」を「清算
事務報告」と読み替えましょう。


2008.11.13(木)【衣替え】(金子登志雄)

 東京では、先週の土曜日(8日)から急に肌寒くなりました。その日までは夏服
で十分でしたが、いまではコートを着ている人もめずらしくありません。みなさま
の地域ではいかがでしょうか。 

 経済も衣替えなのか、トヨタが営業益を1兆円も減額修正したなどと、肌寒い話
題ばかりが続いています。日経平均株価も下の方で荒っぽい動きをしており、この
不況に地団駄を踏んでいるかのようです。

 よく自称知識人が「株はギャンブルだ」などと否定的見解をしたり顔に述べます
が、株式市場は自由経済の根幹であり、株価は経済の指標です。株価が低くなけれ
ば、資産も評価損され、設備投資も与信も抑制されます。
 不景気が続くと、犯罪も増えます。まさに、「衣食足りて礼節を知る」であり、
自由も人権もその基礎に経済(生活)がありますから、株価問題を軽視するようで
は真の知識人とはいえないでしょう。

 一方で、年内にほぼ確実視されていた政治の衣替えは、なさそうですね。この点
につき、最近の報道によると、解散先送りを主導した麻生首相と、解散風をあおっ
ていた自民党執行部は裏でつながっていたとか。さすがは政治の世界と思えど、大
芝居の裏側がみえてしまうと白けます。

  http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20081105/110011/


2008.11.12(水)【取締役会とタバコ】
(富田太郎)

 先日、ジャーナリストの筑紫哲也氏がお亡くなりになりました。
 氏は、「原稿書き」と「タバコ」が大好きで、マルボロ(赤)を1日3箱吸うほ
どの「愛煙家」だったそうですが、病後やむを得ずタバコをやめたそうです。

 同氏曰く、「原稿を書いていても、一服できないと、全然面白くない」。

 分かります!分かります!この気持ち、愛煙家である私には・・・・・。
原稿を書いているとき、タバコさえあれば、徹夜もなんのその、1本のタバコから
素晴らしいアイディアが浮かぶこともあります。

 ところで、最近、どこの客先にいっても、タバコ厳禁、あるいは高層ビルの1階
まで降りなければ、吸うところすらありません。
困るのは、2〜3時間にも及ぶ「取締役会」です。

 以前、私が監査役を務める某社の取締役会で、
「これから、会議の途中で、10分ほどの『タバコタイム』を作りましょう!」と
提案したところ、愛煙家の社長、数人の役員が大賛成♪
(ビルの1階の喫煙所まで降りるは、面倒ですが、タバコが吸える♪)

 実は、この「タバコタイム」から、数々のアイディア・経営方針が生まれました!  
 が・・・、先日、この『タバコタイム』、ある(嫌煙家の)取締役の反対により
廃止となりました。
 ビルの1階で吸っているのに? ご迷惑は、おかけしていないのに?(汗)

 反対役員曰く、
「最近、我々の知らないところ、つまり『タバコタイム』で、『会社の考え』が決
まることがあります!これは問題です!」

 だったら、「あなたもタバコを吸って、仲間になろうよ!」とは言えませんでし
た・・・。
 はぁ〜「タバコタイム」至福の時間だったのに・・・・(涙)。


2008.11.11(火)【公益法人】(佐藤典子) 

 岡山の佐藤典子です。

 10月24日付で金子先生が取り上げられていた「一般社団法人等」についての
研修会に参加してきました。
 現在日本には約25000の社団法人・財団法人(以下「旧公益法人」という)
があるそうです。

 旧公益法人に対しては、監督官庁の裁量が大きく設立が簡便でない、情報開示が
不十分、役人の天下り先になっている、などの多くの批判がありました。そこで、
新しい社団法人・財団法人の制度が設けられ、平成20年12月1日より施行され
ることとなりました。

 法律制定の背景には、行政だけでは手が回らないので「官から民へ」のスローガ
ンのもと、行政をスリム化し民間の団体に行政の一部を担ってもらいたいという現
実があるようです。

 新しい制度は、現行の公益法人に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の
判断を分離し、公益性の有無にかかわらず準則主義(登記)により簡便に一般社団
法人・一般財団法人を設立できるとしました。

 「公益法人」という名称を名乗りたい場合は、まず一般社団法人・一般財団法人
を設立してから、行政庁に公益性の認定の申請をします。いきなり公益社団法人や
公益財団法人を設立することはできません。

 これまで不透明だった公益性の認定については、民間有識者からなる委員会を設
けそこで判断し、基準を満たしていれば公益認定をすることになりました。

 来月からは、法人設立の選択肢の中に、一般財団法人・一般社団法人が加わりま
す。お客様にメリットデメリットを説明し、アドバイスできるように急いで勉強を
しなければなりません。機会があればこの徒然でも情報提供していきたいと思いま
す。


2008.11.10(月)【受講生も講師も辛い】(金子登志雄)

 先週の7日は社会人相手のセミナー講師、8日は司法書士を会員とする商業登記
倶楽部のセミナーで招待され受講する側になりました。

 普段から睡眠が浅く日中でも眠い私にとっては、受講はどうも苦手です。安定姿
勢をとると反射神経が起動し、ついウトウトしてしまいます。老人病でしょうか。
緊張を維持するため、水を飲んだりして、必死に耐えるのですが………。

 自分がそうですから、講師になった際は、できるだけ対話調にし、受講生が眠く
ならないように心がけていますが、こればかりは、うまく行ったり、行かなかった
りです。  

 この点、芸能人はほんとにすごいですね。ずっと笑わせ続けたり、時に感動させ
たりで、観客の視線を自分に集中させてしまいます。演説上手なオバマさんも、こ
の能力に秀でているのでしょう。  

 私もそうありたいのですが、私の講演テーマは、多くの人が苦手とする会社法で
す。笑いと感動とはほど遠いテーマです。「Yes,we,can.君なら会社法
がわかる!」と叫べば、冷たい視線を浴びるばかりでしょう。 

 ……というのは、私の負け惜しみであって、会社法も、わかってくると、こんな
に面白い学問はありません。会社計算規則などは、「知恵の輪」を解くような面白
さがあります。単に、それを伝える技術が私に不足しているだけです。
 こうなったら、政府が計画しているように、受講生全員(いや熱心な受講生は除
きますか)に、給付金でも交付して支持者を増やしましょうか。


2008.11.07(金)【補欠「時」監査役】(金子登志雄)

 会社法には設立時役員(たとえば設立時取締役とか、設立時監査役とか)という
用語が登場します。会社が成立する前の役員です。

 一方で、会社成立後には、役員の欠員補充を目的として、「補欠の役員」の選任
が認められています(329条2項)。たとえば、監査役が最低3名必要なのに、
1人が欠けると、その後任を選任するためだけに臨時株主総会を開催しなければな
りませんので、あらかじめ補欠を選任しておくわけです(予選)。この補欠を補欠
役員といいますが、まだ正式の役員ではありません。株主総会の議題は、「補欠監
査役1名選任の件」などとなります。

 では、そのような予選をせずに、監査役の1人が欠け、後任を株主総会で正式に
選任するときは、何というかというと、もちろん「監査役の選任」です。予備の補
欠の監査役の選任ではなく、正式の監査役の選任ですから、補欠監査役とはいいま
せん。その代わり、欠員補充として選任するわけですから、「監査役誰某の『補欠』
として選任」と説明します。

 「補欠監査役の選任」と「監査役の(補欠として正規の監査役として)選任」と
いう用語は実に紛らわしいですね。そこで、前者の監査役のことを設立時監査役と
の対比で「補欠時監査役」とでも表現したらよいのにと思いましたが、いかがでし
ょうか。

★注:本日より、会友に名古屋市の「司法書士法人 リーガルバンク」が加わりま
した。どうぞ、よろしく。


2008.11.06(木)【3人の波乱万丈】(金子登志雄)

 米国第44代大統領にオバマ氏が決まりました。米国・草の根民主主義の活力を
思い知らされた感じがします。

 とくに、政治経歴は少ないが演説が巧みな40代の1人の若者への政治カンパと
して660億円もの寄附が集まったことに驚きました。無党派層が多く、支持政党
なしを格好よいと思う日本の政治風土では考えられないことです。日本で、あれほ
どの長期間も選挙活動できるのは、麻生さんなど一握りの金持ちに限られてしまう
ことでしょう。

 破綻したとはいえ金融技術の最先端を行ったのも、オバマ氏を大統領にしてしま
うのも米国です。そのフロンティア精神は、まだまだ捨てたものではありませんね。
オバマ氏には、歴史に名を残す名大統領になってほしいものです。

 米国の成功物語のあとは、日本の成功物語です。 
 日本でも、努力の甲斐あって頂点に上りつめた人がいました。音楽関係では、あ
の小室哲哉プロデューサーですが、いまや詐欺の容疑者に転落です。
 東大出身でないのに、防衛官僚の頂点に上りつめた人もいました。守屋武昌前事
務次官です。いまや、東京地裁で懲役2年6月の判決を受けてしまう被告人の身で
す。自宅まで売りに出している窮状ぶりとか。

 おやおや、話がぐっと小さくなってしまいました。
 人生それぞれとはいえ、何が成功で何が幸せかわからないものですね。勝ち組の
成功者になったこともないわれわれには、想像もつかない人生です。


2008.11.05(水)【辞任日でわかる会社業績?】(梅田幸志)

 役員が退任する日は、定時総会の日か月の末日が一般的ですが、決算期末の数日
前に退任するケースが時々見られます。   

 なぜかと思いましたら、たまたま会社が儲かり、役員の退職金を支給できるよう
になったので、今期の経費に計上したいためだったということもありました。
 退任日を「決算期末日の数日前」とし、翌日(決算期末日まで)に支給すること
で、当該年度の経費に計上するのですね。なるほどです。

 もちろん、多くの場合は、人事その他の区切りを「決算期末日でつける」のでし
ょうが、なぜ、この日に辞任するのかという視点で、役員変更登記の仕事を受けて
みると、顧客企業の状況が少し見えてくることがあります。

 昨今、アメリカ発の金融不況が日本にも飛び火してきましたが、決算期末日近く
の「喜ばしい辞任(好景気辞任)」は減ってしまうのでしょうか。
 不動産の仕事が減ってきたと嘆いている司法書士も増えてきました。
でも、メタボで悩んでいる人が多いうちは、景気も大丈夫だと信じたいものです。


2008.11.04(火)【文化の日】(金子登志雄)

 3連休は、いかがお過ごしでしたでしょうか。社員旅行の会社もいくつかあった
ようです。

 さて、昨日の11月3日は「文化の日」でしたが、改めて何の文化のことかと聞
かれて答えられる人も少ないことでしょう。文化という言葉とどういう関係がある
のかわかりませんが、日本国憲法の公布日です。昭和21年のことでした。施行は、
昭和22年の5月3日です。
 明治天皇の誕生日でもありましたから(天長節)、「文化の日」という命名が都
合がよかったのかもしれません。

 日本国憲法は、60年以上も全く改正されていませんが、こういう憲法も世界的
には非常に珍しいのではないでしょうか。
 改正論議が盛んですが、私の世代は、この憲法に守られ、徴兵されることもなく、
いいたいこともいえる環境で生きてこられましたから、ありがたいことです。

 少々、憲法の条文をご紹介しましょう。
第54条
 @ 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選  
  挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。

 解散は遠のいてしまいました。

第59条
 @ 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したと
  き法律となる。
 A 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出
  席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

 だから、与党がこの権利を放棄したくないわけです。


2008.10.31(金)【ご相談の窓口】(金子登志雄)

 この徒然の上に「ご相談の窓口」とあり、今年からはじめました。実をいうと、
時たま無遠慮な無料相談があったので、その対策用でしたが、10ヶ月を経過した
今、全国からそれなりに真剣な相談が増えてきて喜んでおります。

 そのほとんどが「税理士がこういっているのだが、どう思うか」という質問です。
合併で言うと、税理士さんは適格合併のことしか頭になく会計を無視しているので、
司法書士側がそれに不安をもつケースです。

 不思議なもので、会計法務の相談はメールが多く、「法務局にこういわれたが、
どう思うか」という司法書士からの相談は、電話が多いようです。きっと、自信の
ある通常の登記や法務相談は電話で十分に対応できるが、自信のない会計絡みの相
談や説明資料が必要な相談はメールでということでしょうか。私との面識の有無も
大きいことでしょう。

 幸い、この仕事に従事して20年以上ですから、ほとんどの質問につき、経験済
みです。電話でもメールでも即答できるので、苦痛にはなっていません。それで、
3000円や5000円では高いじゃないかとは思う方もいらっしゃるかもしれま
せんが、他人(ひと)が1日かかって調べて答えることを即答できるまでに、私が
どれほどのお金と時間と失敗の経験を積み重ねてきたかとお考えいただき、ご了承
いただくしかありません。
 まだまだ対応のゆとりがありますので、どうぞ、ご活用ください。


2008.10.30(木)【地名の誤解】(佐々木大介)

 「京橋」と聞くと、東京にいる私は、東京駅のそば、東京都中央区の「京橋」を
思い浮かべます。大阪の方は、大阪城の北東の「京橋駅」を思い浮かべることでし
ょう。

 数年前、京橋にあるというある場所を探していたのですが、東京都中央区の京橋
付近ばかりを探していて、ついに見つからず、そのような捜しものをしたことさえ
忘れていたのですが、最近、その場所が大阪の京橋駅のそばにあることが分かり、
大阪にも京橋があるのだと、はじめて知ることができました。

 よくよく考えてみますと、違う場所にある同じ地名というのは、意外とたくさん
あります。地名の誤解が思わぬ結果を招くこともあるかも知れません。10年以上
前、「バカヤロー」というコメディ映画があり、大地康夫さんが演じるタクシー運
転手が、お客さんに「軽井沢まで」といわれ、長野県の軽井沢まで行ったところ、
そのお客さんが言ったのは横浜市の軽井沢だったので怒られていたシーンがありま
した。また、出かけるときは殆ど、インターネットで経路を調べますが、立川から
京橋で検索すると、東京の京橋駅ではなく、大阪の京橋駅に案内され「なぜ新幹線
に乗らないといけないのだろう?」と思うことがあります。

 地名の誤解は、笑い話で済むこともありますが、登記手続でこのような間違いを
犯すと大変です。もし、横浜の軽井沢の不動産登記を、長野の軽井沢と間違えて長
野県の法務局に申請したとすれば、却下されてしまいます。このような極端な間違
いはないとは思いますが、誤解が誤解を生む、ということもあり、仕事の話をする
に際しては、十分に心しなければならないと、思いを新たにした次第です。


2008.10.29(水)【補欠とは何】(金子登志雄)

 昨日の梅田さんの投稿にもありましたが、仲間内のメールで、補欠役員の議論を
していました。「補欠って何」ということです。

 補欠は、野球の補欠のように9人の一部が欠けたときの予備要員のみをいうのか、
仮に10人で野球をしているときの一部が欠けたときも補欠というのか。  

 私たちの結論は、補欠とは文字どおり定員割れ(欠員補充要員)を意味するが、
その定員とは、現状の員数をも含み、上記でいえば、10人で野球をしていたとき
に欠員が生じたときの欠員も含むということでした。

 これは登記先例も同様であり、たとえば、監査役が1名でよいのに(法定の定員
1名)、あえて2名(AとB)の監査役をおいていたときに、Aが任期中に辞任し
たときの後任Cを補欠として選任できました(商事法務1270号36頁)。

 もし、法定員数という定員が割れた場合に限るなら、この例でABの2人が同時
に辞任し、後任補欠としてCDが選任された場合には、CとDのどちらが正式の補
欠なんだという疑問が生じてしまいます。  

 効果に差がなければどうでもよいことですが、補欠と認定されると、任期が正規
の任期より定款で短縮されているケースがほとんどのため、補欠か、単なる後任か
は重要なことです。補欠合格という言葉もあるように、補欠は何らかの形で不利益
を受忍しなければならないわけです。



2008.10.28(火)【補欠監査役の解釈】(梅田幸志)

 補欠監査役の任期に関して、旧商法273条3項には、「定款を以て任期の満了
前に退任したる監査役の補欠として選任せられたる監査役の任期を退任したる監査
役の任期の満了すべき時迄と為すことを妨げず。」とありました。
 現行の会社法336条3項には、「定款によって、任期の満了前に退任した監査
役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで
とすることを妨げない。」とあります。

 この新旧の規定について、「ほとんど同一文章だが意味が違う」という説がある
のですが、その解釈に納得できるでしょうか。

 旧商法と比べ、会社法には、もう1つ「補欠」という用語が登場する規定が増え
ました。329条2項に「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役
員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。」と
あるのがそれです。

 これを受けて「監査役が1人でもよいとき(定款で監査役人数を2名以内として
いるときなど)に、ABと2人存在し、Aが任期中に辞任し、後任の『補欠』とし
てCを選任した場合、Cの任期はいつまでか」という問題が生じます。

 旧商法時代には、補欠Cの任期はAの残り任期と解釈していましたが、新解釈は、
329条2項を受けて、補欠とは定員を欠いた場合の話だから、この事例のCは、
通常の任期4年だというのです(商事法務『商業登記ハンドブック』429頁以下
はこの解釈か)。

 しかし、ごく普通の読み方をすれば、会社法336条3項は旧商法273条3項
を受けたものであり、これとは別に、役員の定員割れに備えて補欠役員を予選する
ことが329条2項で認められるようになった、というべきではないでしょうか。

 旧商法時代も定款で定めることによって、役員の定員割れに備えた補欠役員の予
選が認められていましたから、329条2項は、それが明文化されただけだとみる
べきであって、後任補欠(336条3項)の解釈まで変更するのは行き過ぎだと思
いますが、いかがでしょうか。


2008.10.27(月)【使いやすいシステム】(松山聡)

 最近は、インターネットでいろいろなものを買うことができます。値段や仕様は
もとより、その商品に対する評判も(信頼できる評判かどうかは別として)インタ
ーネットで調べることが可能です。
 実際に手にとって確認したい商品も少なくなく、必ずしもネットで購入するもの
ばかりではありませんが、今やネットで購入できないものはないのではないかと感
じるくらいネット通販は盛んです。

 我々の馴染み深いところでネット購入というと書籍があります。
 ネット上で書籍の通販サイトを検索してみると・・・・。
と、検索するまでもありません。
 ご承知のとおり、書籍について検索をすれば、有名どころのネット通販サイトが
幾つもでてきます。
 どこも自身のサイトから書籍を購入してもらいたいので、いろいろ工夫を凝らし、
どんどん使いやすくなっているようです。

 さて、書籍の購入とは別に、我々が業務として利用するインターネットサイトが
あります。○○省所轄のオンライン○○に関するサイトです。
 残念なことに、このサイトには競争相手がいないせいか、いろいろ工夫を凝らす
ことも、どんどん使いやすくなることもありません。(○○省の名誉のためにあえ
ていえば、チョッとは工夫が施され、少しは使いやすくなりつつあります。)
その上、そのサイトを利用するための準備が相変わらず大変で、一度準備しても定
期的にソフトの入替えを求められます。

 我々が業務で使うものですからセキュリティなどの要請からやむをえない部分も
ありますが、自動更新といったような気の利いたものではありません。「○日の月
曜日から新ソフトじゃないとシステムが使えないから、週末の金曜日から当該○日
までに各自ソフトの入替えをするように!」と事前告知があるだけです。

 一方で、我々ユーザーの不満に応えるべく、業務用ソフトを取り扱う業者のサー
ビスは向上しています。上記ソフトの入替えもスムーズにできるよう、いろいろ工
夫を凝らし、どんどん使いやすくなるソフトを開発してくれるのです。むろん、無
料ではありませんが。

 そうか!○○省は、こういった業者の市場を荒らしてはいけないと考えているの
でしょうね。きっと。  

★注:本日より、会友に島根県の「LAS企業法務研究会」が加わりました。どうぞ、
  よろしく。



2008.10.24(金)【一般社団法人】(金子登志雄)

 人の集まり(団体)である「社団」の憲法は「定款」、財産の集まり(基金)
である「財団」のそれは「寄附行為」という長年の伝統が今年の12月施行の
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」によってなくなります。財団で
も「定款」という名称に統一されるからです。

 いま、司法書士はこの勉強でたいへんです。収益目的でも社団法人を作れるよ
うになりますから(配当すると「営利目的」となるので、これは「会社」以外は
許されません)、会社を作るほどでもない事業やさまざまな団体が「法人化」を
目指すかもしれないからです。

 配当ができない点は役員報酬で支払うという方法もありますが、最大の難関は、
名称に必ず「一般社団法人〇〇〇」などと、「一般社団法人」を入れなければな
らないことでしょうか。「社団法人〇〇〇」だと公益法人かつ大組織のようでイ
メージがよいのですが、「一般」は、目障りですね。6文字は多いですし。

 また、設立には定款の認証が必要ですし、2年に1度は理事の役員更新の登記
も必要で(閉鎖会社のような任期を10年まで伸長できる規定はありません)、
それなら合同会社のほうがよい、いつでも株式会社にも変更できるし・・・と私
は思うのですが、一般社団法人のニーズは、どの程度あるのでしょうか。


2008.10.23(木)【社外役員にご用心?】(山本直樹)

 岡山の山本直樹です。

 司法書士は、顧客サービスとして関与させていただいている会社に、「役員変更
の時期」をお知らせさせていただくことがあります。

 先日ある会社での話です。

「今年は監査役の任期満了の年にあたりますが、監査役に変更ありますか?」
「監査役はAさんのままでよいよ。でもね、Aさんの会社破産したんだよね。大変
そうだよ。」
「えっ!たしかAさんは破産した会社の代表取締役ですよね。Aさん個人も自己破
産しているのではないですか?」
「よく知らないんだよ。悪いけど直接Aさんに聞いてみてくれる。」

 気が進まなかったのですが、後日確認しましたところ、Aさんは1年近く前に自
己破産していることが判明しました。

 「破産手続開始決定」は、民法上の委任の終了事由になり、監査役はその地位を
失うことになります。つまり会社は監査役変更という必要な登記を1年近くしてい
なかったことになるのです。  

 旧商法では「破産手続開始決定を受けて復権しない者」は会社役員になれません
でしたが会社法ではこれを欠格事由から除いていますので、あらためて株主総会の
承認があればAさんを監査役に選任することが可能です。

 会社が知らなかったので、選任懈怠や登記懈怠の過料になるのかは不確かですが、
社長には過料の請求がくる可能性があることを説明して、登記手続をすすめました。

 気が進まない登記でしたが、司法書士の職責上、知ってしまった以上、仕方あり
ません。
 みなさん、社外役員の動向には目を光らせて早く対応してくださいね(笑)。


2008.10.22(水)【携帯電話の携帯マナー】(大戸早規子)

 みなさんは、仕事で外出時、携帯電話を背広のポケットに入れていますか?
首からかけていますか? それとも、ビジネスバッグの中の取り出しやすいとこ
ろにしまっていますか?

 あるビジネスマンの小田急線での出来事です。

 人身事故で電車が遅れているせいで乗り込んだ車両は身動きが取れないほど混
雑していました。そのうち、静かな車内に携帯電話の着信音が鳴り響き始めまし
た。普通は3、4秒も待てば「持主」が慌てて止めますが、自分の携帯を確認す
る人々のカサカサという音こそしても、着信音は鳴り続けていました。

 なんと、その音は、ドア近くの網棚の上に載せたビジネスバッグの中から聞こ
えていたのです。15秒は過ぎたでしょうか、そのバッグの真下の座席で寝てい
た老婦人がたまりかねて叫んでいました。

 「このカバン誰のなの。電源、切りなさいよ!!!」

 身動きもままならない状態なのですから網棚の上の携帯に手を伸ばすことなん
てできません。もちろん、その場で名乗り出た人はいませんでした。不思議なこ
とに、そのカバンの近辺にはそれを持ちそうなビジネスマン風な人はいません。

 代々木上原で多くの人が降り、少しは動けるようになった車内で、再びバッグ
の中の携帯電話が鳴りました。すると、離れたところにいたビジネスマンが「す
みません。」とバツが悪そうに網棚に歩み寄り電源を切りました。

 きっと、彼は、網棚に荷物をのせてその前に立っていたのでしょう。しかし、
人ごみに押されるうちに車両の奥へと押し込まれバッグと離れ離れになってしま
ったのでしょうね。

 携帯電話は肌身離さず持ち運ぶのが正解かしらとつくづく思いました。
「いつでもどこでもダイヤルイン」なら(10月15日付徒然)、なおさらですよね、
金子先生!



2008.10.21(火)【神在月】(金子登志雄)

 10月は全国の神様が一斉に出雲に集まる月ですが、私も出雲の国の司法書士の
みなさんに招かれて、17日から19日まで行ってまいりました。他の国は神無月
でも、ここでは「神在月」というくらいですから、17日は神様がお住まいの出雲
大社を表敬訪問し、身も心もリフレッシュし、翌18日は会社法の講師、19日は
一般社団法人のパネルディスカッションへの参加を無事に済ませてまいりました。

 島根県に足を踏み入れたのは、若い頃に一人旅をして以来であり、実質上はじめ
ても同様でした。右も左もわからないのに、島根県司法書士会の皆様には、たいへ
ん暖かい歓迎を受け、すっかり島根ファンになってしまいました。みなさん、あり
がとうございました。

 会社法の講義では、事業承継に絡めて種類株式、不況対策に絡めて減資と剰余金
の処分の計算をメインにし、あとは商法と会社法の相違に力点をおきました。減資
で資本金ゼロにしても株式はそのままでよい、債務超過事業の出資も可能で株式を
発行できるなどなどです。

 休憩時間に簿価債務超過事業の出資で子会社を設立する際に資本金ゼロはわかる
が、1株あたりの払込金額はどう決定するのかという鋭い質問を受けました。拙著
『これが新増減資だ種類株式だ』49頁以下に書いていたので、何とか返答できま
した。実際の出資額(時価)と会計処理(資本金計上額)は相違するということで
す。合併比率の問題と会計処理の問題が相違するように・・・。


2008.10.20(月)【秋の運動会】(佐々木大介)  

 食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋と、秋はいろいろと楽しみが多い季節です。

 先週の三連休の日曜日に、我が町の運動会がありました。とても良い天気で運動
会にはぴったりの天気でした。皆さんの町やご家族の学校でも、運動会があったの
ではないでしょうか? 

 今の町に2年前に越してきた私は、初めての町内運動会でした。近所の方に声を
かけてもらったので、とりあえず見に行くだけ、と思い会場へ行きましたが、思い
がけずリレーに出ることになりました。

 150メートルくらいのトラック1周、久しぶりの全力疾走は、走っている間は
いいのですが、走り終わると、肺が痛くなり、全身に力が入らなくなり、猛烈な苦
しみが襲ってきました。天高く馬肥ゆる秋といいますが、摂取カロリー高くすっか
り肥えた私には、リレーなど無理な話でした。

 運動会が終わると、打ち上げということで、近所のカラオケ屋で飲み会がありま
した。こちらは走る方より多少は鍛えてますから、最後までお付合いできました。
話を伺うと、市内のスポーツ競技会が色々あり、町内会でも多く出ているようです。
急にお声がかかっても、苦しい思いをして怪我をするだけなので、私も鍛えておか
なければならないと、会費だけ払って行っていないスポーツクラブに、また通って
みようと思い直した次第です。

 運動会の翌日、少し鼻がむずむずするなと思いましたら、連休明けから風邪をひ
いてしまいました。全力疾走の疲労が原因でしょうか? 金子先生曰く「スポーツ
は身体に毒」というのは、もしかしたら正しいかも知れません。

 皆様も、普段慣れない運動は、身体に毒です。十分にお気をつけ下さい。


2008.10.17(金)【偉大なるマンネリ】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、福岡法務局からの照会に「・・・可能であると考えますが、
いささか疑義がありますので照会します」とありました。いわば、法務当局内部
で上位機関に照会する際の「決まり文句」のようなものです。

 各業界には、決まり文句が多いですね。
 株主総会招集通知の事業報告等の書き出しは、決まって「当期におけるわが国
経済は・・・」ではじまります。没個性もいいところで、各社横並びです。私は、
これに反発し、個性的な書き出しに苦心したものです(いまは担当を離れました
が)。

 有価証券報告書や情報開示文書の文章も、「・・・です」ではなく、10年ほ
ど前までは、「・・・であります」と表現することが多かったように記憶してい
ます。「・・・資本の充実を図るものであります」といった類です。上官に対し
て、「〜であります」というようなもので「あります」。

 こういう「決まり文句」を私は避けますが、最近は「偉大なるマンネリ」とし
て他がすることについては好意的にみるようになりました。毎年書く際に、いち
いち書き出しや文章の語尾にこだわっていては疲れるからです。

 テレビのサザエさんも水戸黄門も、あらすじは偉大なるマンネリですが、安心
してみていられます。この徒然も、偉大なるマンネリにすると、他のメンバーも
登場しやすくなるかもしれませんね。
 どなたか「当期におけるわが国経済は・・・」という書き出しでよいから、投
稿してよ。


2008.10.16(木)【授権資本制度】(金子登志雄)

 増資というのは新株主が加わることですから、昭和25年の商法大改正以前は、
株主総会の権限でした。その大改正で、取締役会や代表取締役制度が導入され、
増資も取締役会の権限とされました。増資の「資金調達」の側面が強調され、機
動的に実行できるようにしたためです。つまり、本来は株主総会の権限であるが、
下位機関の取締役会に権限を授与(授権)したわけです。ただし、大幅な授権は
問題があるので、枠を定めました。発行済株式総数の4倍までです。

 ときたま、会社のパンフレットに、資本金1億円、授権資本4億円などと表示
している会社がありますが、これが授権資本です。もっとも、正しくは、金額の
問題ではなく、株数の問題ですから、授権株式数というべきでしょう。商法時代
は、授権株式数のことを「発行する株式の総数」といいましたが、会社法では、
「発行可能株式総数」といいます。

 その後、譲渡制限会社(非公開会社)では、増資に株主総会決議が必要になっ
たため、この4倍制限が撤廃されましたが、公開会社では、依然として、残って
います。

 では、公開会社の吸収合併で、この4倍枠を超えて、新株の発行が必要になっ
たとき、どうなるのかという問題が生じますが、合併新株の発行には、株主総会
決議が必要ですから、古い時代から授権株式制度の適用はないとされていました。
私も、少なくとも20回以上は、こういう枠超えの合併手続を経験しています。

 会社法のもとでも同じはずですが、先般、そういう枠超えの合併を許容する回
答がでました(9月30日民商第2664号回答)。福岡法務局からの照会に対
する法務省民事局商事課の回答ですが、「確認」の意味の回答というべきでしょ
うか。


2008.10.15(水)【仕事に携帯電話】(金子登志雄)

 携帯電話を換えました。まだ2度目です。1度目は何年前か忘れましたが、いか
にも旧式とみえるので、人前で使うのが、はずかしかったからです。
 今回は、飛行機の予約のバーコードが携帯に入らなかったこととが主原因です。

 電話など話せればよいという姿勢でいましたが、徐々に従前のものでは、新しい
時代に対応できなくなるものです。新携帯電話では、会社のドアも「ピ!」で入れ
るようになりました。

 携帯電話は、いまや必需品ですね。中高校生のほとんどが持つ時代になりました。
私も事務所の電話以上に仕事で活用しています。
 他の司法書士にも驚かれるのは、補正用電話(登記申請書に連絡先として記載す
る電話番号)も私が携帯電話にしていることです。  

 登記申請にミスがあった場合や不明点があった場合に、法務局からの問い合わせ
に対して、いち早く対応するためですが、電話する法務局にとっても、担当の私が
留守であったり、「しばらくお待ちください」とたらい回しにされるより、本人の
私が即座に電話にでるほうがよいだろうとの判断です。

 昔は、「携帯電話=通話料が高い、プライベートなもの」というイメージが強か
ったのですが、いまでは、いつでもどこでも、ダイヤルインと考えてよいのではな
いでしょうか。非常に効率的です


2008.10.14(火)【身近な平和賞】(梅田幸志)

 ノーベル平和賞は、アハティサーリ氏が受賞したそうです。不徳にも、私は同氏
の名前すら今日まで知りませんでした。

 報道によると、この方は、世界各地の紛争において、私には信じられないほどの
和平結果を残しているようです。心から尊敬申し上げます。

 【インドネシア・アチェ独立紛争】、【ナミビア独立紛争】、【コソボ問題】、
【北アイルランド紛争】や、【ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争】、
【アンゴラ内戦】、【ソマリア内戦】など。   
  http://news.goo.ne.jp/article/sankei/life/m20081011030.html

 ところで、これらに限らず世界では争いごとや対立が絶えませんが、身近なとこ
ろでも、色々なもめごとを見聞きします。

 私たち司法書士は、仕事がら、遺産分割協議や社内紛争(役員同士の主導権争い
など)の納め役を仰せつかることがありますが、我々専門家をもってしてもなかな
か簡単にはいかないというのが実情です。
 感情の衝突には、価値観や人生観あるいは過去の積み重ねがからんでいることも
多く、当事者の怒りや不信感の元を理解することは並大抵のことではありません。

 同じように、価値観や人生観などの違いによるものに「嫁姑問題」がありますが、
この難問をみごとに解決している世の奥方の手腕には、「おみごと」というほかあ
りません。
 家庭の平和賞に値する人は、意外にも身近にいたのですね。


2008.10.10(金)【株式の消却に株券の廃棄は必要か】(金子登志雄)

 株式の消却とは、株式を絶対的に無効にすることですが、その効力発生時期はいつ
なのかを考えてみました。

 旧商法時代の株式の「任意消却」は、株式を会社が取得して、株券の廃棄などの株
式の失効手続が完了した時に消却の効力が生じるとされていました。
 また、資本減少に伴う強制消却は、株主が株券を保有していたまま株式を無効化し、
無効になった株券を回収することだとされ、株式消却の効力発生時期は株券回収の期
間満了時とされていました。

 会社法になって、この株式の消却は、「株式の取得」と「取得株式(自己株式)の
消却」の2つに完全に因数分解され、会社法のもとでの株式の消却は、自己株式の消
却のみを意味することになりましたが、依然として、株式の消却の効力は、株券の廃
棄等の株式の失効手続完了時と解釈されています。

 ところが、民事再生法では、再生計画で定めた日に株式を強制取得するとあり(民
事再生法183条1項)、株券の回収手続は不要のようです。とすると、この強制取
得した自己株式の消却には、株券の廃棄手続が不要になります。
 民事再生法の考え方は、株式と株券が有価証券として一体化していたものを再生計
画の認可で、株式と株券を強制分離して、前者だけを取得するというものでしょう。

 この考え方からすると、「株式の消却とは、株式を絶対的に無効にすることで、そ
の結果として、株券は単なる紙切れになるのであって、その紙切れの廃棄は株式の消
却の効力を左右するものではない」といえないでしょうか。こう考えたほうが株券廃
止会社になるのに株券の回収手続が不要とされていることと整合するように思うので
すが・・・。旧商法の強制消却も無効株券の回収でしたから、任意消却だけ株券廃棄
が必要だというのは、おかしいように思いました。


2008.10.09(木)【何株と何個、1個0.5株】(金子登志雄)

 先般、某社の株主総会議事録をみましたら、定足数の記載が

 「発行済株式の総数○○株/出席株主の持ち株数○○株」

となっていました。実に懐かしい思いでした。

 もうお忘れかもしれませんが、平成13年10月施行の改正商法以前は、みな
そうしていたのです。  

 その改正で、

 「総株主の議決権○○個/出席株主の議決権○○個」

 と記載すべきことになりました。株数と議決権の数につき、明白に区別するよ
うになったからです(拙著「これが新商法だこれが新登記だ」95頁)。

 話が変わりますが、新株予約権は何個、新株予約権の目的たる株数は何株と数
え、1個1株とか1個10株などと定めます。
 1株を3株に株式分割したら、1個3株、1個30株に変化します。3個3株、
3個30株にはなりません。個数は分割できないからです。

 では、1株を3株に株式併合したら、どうなるでしょうか。1個1/3株、1
個10/3株になると考えざるをえません。

 1個1/3株のように、1個あたり1未満の株数になってよいのかという疑問
もありますが、3個まとめて行使すれば1株を取得できます。4個行使すれば、
端数は端数処理の規定に従うだけです。

 そういうことなら、「3個1株」「3個10株」と登記したほうが、見栄えは
よさそうですね。登記できると思っているのですが、どうなりますか。


2008.10.08(水)【新株予約権の内容変更】(金子登志雄)

 ただいま新株予約権の内容の変更の仕事を受けています。登記先例によると、
新株予約権者に不利な内容の変更の場合には、発行時と同様に株主総会の決議で
変更し、かつ新株予約権者全員の同意が必要だとされています。

 それはそうだろうと、いままで疑問にも思いませんでしたが、いざ具体的案件
に接してみると、いくつか疑問が出てまいりました。

1.株式、たとえば、普通株式に議決権制限内容を加える不利益変更は、株主総
 会の特別決議で可能です。全員の同意が必要だとする新株予約権とのバランス
 がよくありません。

2.登記に同意書を添付させる根拠条文がわかりません。添付書面の通則である
 商登法46条には規定されていません。

3.新株予約権者が100人いたとして、99人が同意したら、99人分は変更
 されたわけなのに、たった1人のために登記できないのは不思議です。株式の
 場合と相違し、オールオアナッシングではないはずです。おそらく、この場合
 に限り種類株式と同視し、「同種の新株予約権は画一的に」という発想でしょ
 う。民法の個別法理からすれば、「新株予約権〇〇個中△△個は、次のとおり
 変更」という登記がなされてもよいはずなのに。

4.さらに、新株予約権を行使して取得できる株式の種類も新株予約権の内容で
 ありながら、その対象株式の内容を変更すること(たとえば、新株予約権を行
 使すると普通株式を取得できる場合に、その普通株式に議決権制限を加える不
 利益変更すること)には、新株予約権者の同意が不要です。対象株式に譲渡制
 限を設定するときに買取請求が認められている程度です。

 一部立法論になりますが、新株予約権の内容変更も、4と同様に、株主総会決
議のみで可能とし、新株予約権者の不利益は、買取請求で調整すべきではないで
しょうか。


2008.10.07(火)【PBR】(金子登志雄)

 PBRってご存知でしょうか。Price Book-value Ratio の略ですが、日本語
では、「株価純資産倍率」といい、株価が1株あたりの純資産額の何倍かをはか
る尺度です。
 「倍率」というくらいですから、ずっと昔から、PBR1(1倍)が株価の下
値といわれてきました。人気のない銘柄を含めてです。

 ところが、いまや、あのソニーも日産自動車も1を割り、トヨタもパナソニッ
クも1に限りなく近くなりました。当社(アクモス)も、他のジャスダックの多
くの銘柄と同様に1を割っています。1以下ということは、会社を清算して、残
余財産を分配したほうがよいという意味ですから、ひどいものです。

 株価が安いため、いま買うと配当利回りでは数%という銘柄も少なくありませ
ん。大バーゲンセール中ですが、では、購入するかというと、もっと下がるかも
しれないという恐怖の市場心理が先行し、投資行動に入りにくいものです。

 金融危機も理由となり、国会の解散も遠のいた感じです。案の定というべきで
しょうか。負けるのがわかっていながら解散する人はいないでしょう。このまま
どっちつかずの閉塞状態が続くのでしょうか。

 いずれにしろ、この徒然で景気のことを取り上げずに済むような日が来ること
を祈りたいものです。経済の健康とは、景気を意識しないで済む状態ですから。



2008.10.06(月)【若さの定義】(金子登志雄)

 昨日は、学生時代のゼミのOB会があり、久々に恩師に会いに行ってまいりま
した。もう、後期高齢者に近いというのに、実に若い、若い。いまは、第2の勤
め先も終え、新たな第3の人生に向けて、手習いをはじめたとか。

 一般論ですが、仕事をやめると急に老け込む方が多いのですが、前向きに生き
ている方は、仕事の節目を終わりと考えずに、スタートラインと考えるようです。
司法書士にも、定年退職後にゼロから勉強して合格した方が少なくありません。
合格率2%台ですから、これはすごいことです。

 恩師の話で、ふと、わが身を振り返り、無趣味で何かをやりたいという意欲も
ない私のような人間は、老後をどうしたらよいのかと思いましたが、すぐに、そ
ういうことを考えること自体、私らしくないなと思い直しました。

 昔から、「健康とは健康のことを意識しない状態」と身勝手に定義しており、
そのご都合主義の信念のもとに、これが健康によいとか、運動しなければ・・・
などと考えること自体を排除し、運動も一切せずに、ヘビースモーカーで生きて
きました。

 日中も居眠りばかりの私は、目覚めていた時間で計算すると、まだ40代です。
「若さとは年齢のことを意識しない状態」と定義し、今後も可能な限り不摂生に
徹して、生きていきましょう。


2008.10.03(金)【O、A、B】(金子登志雄)

 田中さん、えらい! 「ESGの掟」を守らない人が多いのに、異常な集中力
で遵守したのですから。この責任感の強さは、A型かもしれませんよ。

 ご指摘のように、私はO型人間ではなく、小型人間です。血液型性格について
は、全く信じていません。調子のよいときは、誰でも「自分はついている」と思
うものですし・・・。

 麻生首相は、A型です。信じられますか。福田・小泉元首相もA型のようです。
もっとも、A型にもA1型、A2型と、いろいろあるようです。

   http://homepage2.nifty.com/tabbycats/blood/big-name.htm

 子供電話相談室ではありませんが、なぜ、A型、B型と続き、CもDもなく、
突然、O型に飛ぶのかというと、O型というのは、ゼロ(無色)という意味だと
聞いたことがあります。順序からいうと、O、A、B・・・でしょうか。日本式
にいうと、無型、甲型、乙型、甲乙型でしょうか。

 甲、乙というと、つい、慣例で存続会社を甲、消滅会社を乙とする合併公告を
思い出してしまいます。10月1日は合併効力発生の書き入れ時でしたが、昨年
は、甲、乙、丙、丁、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、
癸(き)のあとに、子(ね)、丑(うし)、寅(とら)・・・と続けたユニーク
な合併公告がありました。A・B・C・・・、あるいは、甲、乙1、乙2、乙3
・・・とすればよかったのに・・・。
 こういうユニークな公告をするタイプは、何型ですか。



2008.10.02(木)【O型の特技】
(田中利和)

 最近は、インターネットで書籍を購入できるため、わざわざ本屋に足を運ぶ必要
がなくなりました。
 確かに、時間の節約にもなりますが、私は、本屋に出向きます。どのような本が
売れているのか、情報の収集源として有益と考えているからです。

 先日、本屋に行きますと、一冊の本が目に留まりました。
「O型 自分の説明書」という血液型の本です。

 内容は・・・。
 例えば、「自分はついていると思っている」「締切りぎりぎりになると、異常な
集中力を発揮する」などなどでした。ここに書いたら、きりがありませんが、自分
のことを見透かされてかのごとく、当たりにあたっていました!(笑) 

 ん? そういえば、今日は私の担当の徒然の締切日でした。
我々は、最低、1月に1度、徒然原稿を金子代表に送らなければなりません(^_^;)。
これが「ESGの掟」です(笑)

 締切りぎりぎりになって、たった今、見事に”サクッ”と完成しました(笑)  
う〜ん、我ながら、すばらしい集中力です。O型でよかった。  

 原稿に追われている富田さんは、きっとO型じゃないでしょうね。お気の毒に。
締切日のはるか前に原稿を書き上げる金子代表も、当然、O型じゃないでしょう。
異常な集中力が欠如しているとしたら、これもお気の毒ですね。



2008.10.01(水)【金銭等】
(金子登志雄)

 会社法749条に「合併存続株式会社が吸収合併に際して消滅会社の株主に対し
てその株式に代わる金銭等を交付するときは」とありますが、この「金銭等」とは、
いったい何だと思いますか。

 つい現金交付合併の規定だと思ってしまいますが、いわゆる合併対価のことで、
合併会社の株式も金銭も、それら以外の財産も含みます。
 しかし、持分会社(合資会社など)が株式会社に組織変更したときに、持分会社
の社員に交付する「金銭等」には、組織変更後の株式を含みません(746条)。
株式交付については、別のところに規定しているからです。株式会社が配当として
株主に支払う「金銭等」にも、当該会社の株式を含みません。

 一方で、持分会社(合資会社など)に関する会社法576条に、有限責任社員に
なる者は「金銭等」しか出資できないとあります。
 これも金銭以外を出資できないように思ってしまいますが、いわゆる現物出資と
して不動産なども含みます。

 「金銭等」といいながら、金銭のみを指す場合もあります(154条など)。  

 われわれ会社法を商売道具にしている者にとっても、混乱してしまう概念ですか
ら、会社法に普段から触れていない弁護士・司法書士等の法律関係者が時折、トン
チンカンなことを言い出すのも無理からぬことでしょう。

 「等」には、ほんとに気をつけねばなりません。
 なお、私の司法書士報酬は「金銭等」ではなく、金銭に限られておりますので、
お間違いなきようお願いします



2008.09.30(火)【金商法施行1年】
(金子登志雄)

 金商法(旧・証券取引法)が施行されて今日でちょうど1年経過しました。合併
等の組織再編手続には、ほとんど関係なくなったと喜んでおりましたら、有価証券
報告書提出会社(主に上場会社)には、とんでもない落とし穴がありました。

 なんと、たった1株を交付するだけでも、移転する純資産が1億円以上で相手が
上場会社等だと有価証券届出書の提出が必要だという内容に変わっていたのです。  

 有価証券の「募集」というと、従来どおり、50名以上の者に株式を交付する場
合だと思い込んでいる方も多いと存じますが、それだけではなく、株主が50名以
上の吸収分割会社や新設分割会社に株式を交付する場合を含むという内容に変わっ
ていたということです(金商2条の2第4項1号、4条1項参照)。

 この結果、上場会社等が新設分割したり、100%子会社に吸収分割する際には、
新設会社や吸収分割承継会社で有価証券届出書の提出が必要になりました。これだ
けならともかく、いったん提出すると、以後、有価証券報告書を事業年度ごとに提
出しなければなりませんので、できたら回避したい手続です。

 この問題に限らず、情報開示、投資家保護、弱者保護等々の美名のもとに、徐々
に、国家による民間への干渉が強化されているように思うのは私だけでしょうか。
せめて、簡易分割(総資産の5分の1以下の分割)を除外してほしいものです。


2008.09.29(月)【株主総会の「召集」】(佐々木大介)

 よく「株主総会の召集」となっている定款や総会「招集」通知をみることがあ
ります。単純な、変換ミスだと思いますが、ご本人は気づかないようです。

 「招」と「召」では一体何が違うのか、調べてみました。新版漢語林(大修館
書店刊)によると「招」は「まねく」という意味であるのに対し、「召」は「ま
ねく」の他に「めす」という意味があります。この「手偏」の差で言葉の意味の
微妙な違いが出てきたようです。

 「まねく」と「めす」の違いはどうかとさらに調べてみました。岩波国語辞典
第五版(岩波書店刊)によると「まねく」は「手を振って呼び寄せる」という意
味であるのに対し、「めす」は「『呼び寄せる』……を敬って言う語」だそうで
す。

 要するに対等の立場同士の間あるいは目下の人が目上の人を呼ぶときは「招」
で、目上の人が目下の人を呼ぶときは「召」を使うということでしょうか。
 ですから、先般、臨時国会を「しょうしゅう」したのは、天皇なので「召」に
なります(憲法7条)。お客様に飲食を勧める際も、「お召し上がりください」
ですね。

 株主総会を「召集」としてしまうと、代表取締役が株主よりも目上になってし
まいますし、さらに赤紙で通知を作成すると、「召集令状」になってしまい、ま
すます株主の皆様の怒りを「招」いてしまいそうです。

 手偏ひとつで相手に不快感を与えかねないというのも、漢字の使い方の難しさ
のひとつの表れではないかと思います。この文章の中でも、漢字の使い方が誤っ
ていないか、心配です。手「偏」は合ってますね。


2008.09.26(金)【92代と69代】(金子登志雄)

 面白い話題を提供しながら、内田百閧粢山人とかの教養をそれとなく示す、
富田さんは、憎い手を使いますね。うん?、「ブルーザー・ブロディー」???、
欧米の随筆家ですか。それとも哲学者? 何となく想像はつきますけど。

 さて、麻生内閣は、初代の伊藤博文から計算すると92代だそうです。これに
対して、横綱の白鵬は69代。大相撲のほうが歴史が長いのに、総理大臣のほう
が多いのかと、つい思ってしまいますが、87代、88代、89代は、同一人物
の小泉元首相です。計算の仕方が違うわけです。

 ネットで「小泉さんの前の首相は誰でしたか」という質問がありましたが、思
い出せず、歴代総理を調べたわけですが、森さんでした。では、森さんの前は?
意外に思い出せないものですね。順序どおりいえばわかることも、逆からいうと、
いえなくなるものです。

 私の世代では、記憶に残る最初の総理は岸さんでした。安部首相のおじいちゃ
んです。60年安保の騒動がいまだに記憶に残っています。

 以下、順番に書きますので、あの頃は、ああだったと思い出してください。

 岸→池田→佐藤(岸さんの弟)→田中(真紀子さんの父)→三木→福田(康夫
首相の父)→大平→鈴木(麻生首相の義父)→中曽根(弘文外務大臣の父、ご健
在です)→竹下(ダイゴの祖父)→(ここから平成年度)宇野→海部→宮澤→
細川(非自民政権)→羽田(非自民政権)→村山(当時の社会党と自民党の連合
政権)→橋本→小渕(優子少子化問題相の父)→森→小泉→安部→福田→麻生 


2008.09.25(木)【レベルの低い人間は相手にしない】(富田太郎)

 人と「ほどよい付き合い」をするのは難しいものです。「多忙な時に、お誘いが
あった場合、どのようにして断るか」、あるいは、「話の長いお客に、いかに早く
帰ってもらうか」で苦慮した経験は、誰もがあるのではないでしょうか?

 随筆家、内田百閧ヘ、「世の中に人の来るこそ、うれしけれ。とはいうものの、
お前ではなし」(★注)という狂歌を書き、玄関にぶら下げて、長尻(ながじり)
の客を撃退していたそうです。
 ★注:「世の中に人の来るこそ、うるさけれ。とはいふもののお前ではなし」    
    という、狂歌師「蜀山人」の元歌をパロディー化したものです。

 ところで、私も同様の経験があります。10数年も昔のこと、当時、私は、サラ
リーマンをしながら司法書士の受験勉強をしていました。早く帰って、受験勉強し
たいのに、飲みに誘ってくる会社の悪友・同僚達が多いこと・・・・(涙)。
 そこで、「内田百閧フ故事」?にならい、会社の自分の机の前に『レベルの低い
人間は相手にしない』(By「ブルーザー・ブロディー」)という張り紙を掲げま
した(←これぞ名案♪)。

 「効果があったか?」って・・・。いえ、何を勘違いしたのか、翌日、直属の部
長が、顔を真っ赤にして、「『レベルの低い人間』って、俺のことか!!(怒、怒)
君は何様だ!」

 私、「えっ!・・・・・・(汗)」。
 とんでもない方向に話が・・・・(汗)。名案どころか、とんだ迷案になってし
まいました。人生、計算どおりにはいかないものです・・・・(涙)。



2008.09.24(水)【進むも地獄、引くも地獄】(金子登志雄)

 自民党総裁に麻生さんが選任されました。予想を超える圧勝でした。やはり、
勝ち馬に乗ったほうが得だという周囲の計算と、衆院選挙を前に小沢民主党に対
抗するには、ネアカの麻生氏のほうがやりやすいということでしょうか。女性の
小池さんもネアカのイメージがありますが、キャリア不足だったのでしょう。地
方票ゼロは意外でしたが。

 これで2大政党の顔が決まりました。麻生さんも小沢さんも、乱世に強そうな
顔をなさっており、男性からみると魅力的ですね。女性にもてそうもない顔をし
たところが、「同志よ」と共感を覚えます。

 決戦の日はいつでしょうか。マスコミ報道によりますと、最有力は10月26
日投開票でしたが、若干延びそうです。いずれにしろ、あと1ヶ月ちょっとのよ
うですが、現在の情勢だと、自民党政権の維持が困難という予想が圧倒的多数で
す。もし、そうなると、麻生内閣は超短命に終わってしまいます。これでは受験
もしないのに不合格通知をもらうようなものですから、麻生氏も「私の政策をし
ばらくみてくれ。信を問うのはそれからだ」といいたいことでしょう。

 麻生内閣は解散要求の世論に抗しきれますかどうか。あるいは、新内閣へのご
祝儀相場を当て込んで、あえて負け戦を覚悟で打ってでますかどうか。
 進むも地獄、引くも地獄。辞任ももうできず、八方ふさがりなのに、政治家の
闘争心というのはすごいですね。


2008.09.22(月)【豚に口紅】(金子登志雄)

 米国民主党の大統領候補オバマ氏が、変革を唱える共和党候補側に対して発し
た「口紅つけても豚は豚」という発言が波紋を広げ、ニューヨークタイムズは、
自民党総裁選についても、変革を唱えても豚は豚と皮肉ったとか。

 ふと、なぜ「豚」なのかと疑問に思いました。「口紅つけても猫は猫」「口紅
つけても牛は牛」、あるいは共和党のシンボルを意識して「口紅つけても象は象」
ではだめなのでしょうか。

 東京大学の学長が、かって「太った豚より痩せたソクラテスになれ」と訓示し
ましたが、だめなものの喩えには、どうも「豚」があっているようです。
 私にいわせれば、苦悩しているソクラテスより、衛生状態の悪い環境でも健康
優良児でいられる豚のほうがよほど幸せだと思うのですが・・・。なれるならな
りたや、「馬の耳をもった太った豚」です。

 ついでですが、なぜ「口紅」なのでしょうか。「メガネかけても豚は豚」「マ
ニュキアつけても豚は豚」・・・どうもサマになりませんね。オバマ氏側は否定
していますが、やはり共和党の女性副大統領候補ペイリン氏を意識したのでしょ
うか。

 自民党総裁選を皮肉るなら、「厚化粧しても2世は2世」「大きくみせても上
げ底は上げ底」ってところでしょうか。今日、投開票のようですが、勝っても新
総裁は、金融危機とねじれ国会で、痩せたソクラテスの日々が続くことでしょう



2008.09.19(金)【単種類株式発行会社?】
(金子登志雄)

 私の先週の土日は、相変わらずのセミナー講師と書き物でした。

 セミナーでは、「譲渡制限株式を発行している会社は種類株式発行会社か」と
いう質問を受けました。
 譲渡制限株式とは、譲渡にあたり、会社の承認を必要とする株式ですが、未上
場会社のほとんど全部がこの株式を発行する会社です。

 この質問の前提には、商法時代の譲渡制限株式は、会社の性格を表すものとさ
れていたが、会社法になって、株式の内容の1つになったという教科書的知識が
あります。

 株式の内容になったからといって、種類株式になったとまではいえません。条
文で言いますと、会社法第107条の譲渡制限株式は種類株式ではないが、会社
法第108条の譲渡制限株式は種類株式であるということです。

 要は、株式の名称として、普通株式、譲渡制限株式、A種類株式といおうが、
その名称とは関係なく、会社の定款に2種類以上の株式を発行できると定められ
ていれば、相互に種類株式となります。
 この「相互に」という部分が重要であり、比較対象の株式があってはじめて
「種類」の概念も、「普通」という概念も生じるわけですから、たった1種類し
か発行できないのであれば、単に「株式」といえば済むことです。

 @譲渡制限普通株式とA譲渡制限配当優先株式も、相互に種類株式です。譲渡
制限付という意味で1種類とみるのではなく、@とAの間に、内容に異なる部分
がないかと判定します。 

 質問者が想定した会社は、譲渡制限(普通)株式のみ1種類を発行する「単種
類株式」発行会社のようですから(ほとんどの会社がこれです)、単なるごく普
通の会社であって、会社法で言う種類株式発行会社ではありません。



2008.09.18(木)【全青司大阪全国研修会】
(宮川康弘)

 岡山の宮川です。

 先週の土曜(13日)と日曜(14日)は、全青司大阪全国研修会「礎(いしず
え)」に参加してきました。
 毎年、9月のこの時期に、全国青年司法書士協議会が主催となって,2日間にわ
たり、全国の司法書士の青年会の会員が集まって開催される研修会です。  

 非常に充実した内容の研修がされるので、毎年、この時期を楽しみにしています。
特に分科会については、スケジュールの制約から2つしか選択できません。そのた
め、開催の案内が届いたら、分科会の選択について、いつも、あれこれ迷うのが通
例になっています。

 研修の内容も、非常に先駆的なテーマが多いです。たとえば、会社法関係では、
「これで安心!株式上場実務:上場手続の概略から議事録・登記まで」「会社法の
活用方法と実務上の問題点:種類株式・新株予約権の活用とその手続」の分科会が
開催されました。
 また、会社法を直接扱ったわけではありませんが、全体会の基調講演は、法務省
在職時代に会社法の立案を担当された葉玉匡美弁護士による「自ら築く『礎』:あ
たらしいを切りひらく力」でした。  

 知識は、常にアップデートしていかないと、時代の流れに取り残されてしまいま
す。毎年、先駆的な内容の研修を準備してくださる実行委員会の方に感謝するとと
もに、今後も、自らの「あたらしいを切りひらく」ために、積極的に研鑽を続けた
いと思います。



2008.09.17(水)【シブカサ】
(大戸早規子)

 昨日のNPO法人ですが、環境や貧困、教育といった社会問題解決を目的として
利用されることが多いようです。
 同様な組織に「社会企業」というのもあるようで、そんな社会企業プロジェクト
チームのひとつが運営している「シブカサ」ってご存知でしょうか?  

  http://www.shibukasa.com/index.html

 都会では「一雨500本」もの数が電車やお店などに置き去りにされていて、こ
の忘れ物の傘をおしゃれに変身させて無料レンタル傘として貸し出すプロジェクト
のことです。渋谷で行われているから「シブカサ」です。

 シブカサ提携店の渋谷近辺のカフェや本屋さんなどに置いてあり、誰でも気軽に
「無料で」借りることができ、借りた後は提携店のどこでもいいから返却すればよ
くて、この際にアースデイマネー(渋谷で使える地域通貨)50r(50円相当)
をプレゼントしてくれるということです。  

 「シブカサ」を最初に思いついたのは渋谷近郊に通う大学生たちだったようです。
残念ながら我が家の大学生たちは、渋谷とは縁のないところに通っているせいか、
「夕方雨が降るから傘を持って行きなさい。」という忠告もどこ吹く風で、我が家
の玄関にはビニール傘が10本も溜まってしまいました。  

 「もったいない!」と怒鳴りたいところですが、私も「シブカサ」を知って寛大
になりましたので、「今度雨が降ったら、この傘をさして渋谷に出かけ、運よく雨
が上がってしまったら、うっかり、どこかに忘れてきちゃいなさいね。」と優しく
アドバイスしてあげようかしらと思っております。



2008.09.16(火)【演奏会とNPO法人】(佐藤典子)

 みなさん、こんにちは。岡山の佐藤です。
 先日は、芸術文化の創造拠点としてコンサートや講演会の会場としてよく利用さ
れている「ルネスホール」に事務所の事務員さんたち3人で行ってきました。

   http://www.renaiss.or.jp/contents/index.php

 「ジャズmeets アート」と題して、フラワーアーチストの川崎景太氏と若手ジャ
ズギタリスト小沼ようすけ氏によるコラボレーション企画があったためです。
 川崎氏が舞台で、小沼氏の作り出す音を感じながら、草木を使って舞台で大胆に
新しい自然空間を作っていき、さらに、その空間の中で小沼氏が感じたことを即興
で演奏していく・・・。お二人が連鎖反応を起こし合う楽しい共演でした。

 イベント終了後、CDを買うと小沼氏のサインが貰えるというので、「こんなこ
となら、家にあるCDを持ってくればよかったね。」と言いながら、CDを1枚だ
け買い、先頭から2番目にずうずうしく3人並んでサインを貰い、握手もしてもら
って幸せな気分で家路に着きました♪

 ところで、このルネスホールは県の所有でありながら、運営は、指定管理者に指
定された、NPO法人バンクオブアーツが行っています。

 念のため、NPO法人とは、次のようなものです。

 平成10年に「特定非営利活動促進法」(以下、NPO法)が成立し、社会の様
々な分野において、ボランティア活動をはじめとした社会活動をしている民間の非
営利団体に、所轄庁の「認証」を受けて、法人格が付与されることとなりました。
 NPO法では、公益法人の設立許可のように行政裁量の範囲は広くなく、法に定
める設立要件に適合するときは、所轄庁は「認証」をしなければならないことにな
っています。「認証」されたからといって、所轄庁がその団体の活動について「お
墨付き」を与えたことにはなりません。
 法人格を取得すると、団体の名で銀行で口座を取得したり、不動産の登記をした
りすることができます。
 設立しやすいので、現在日本には、約3万5千のNPO法人があるそうです。

 みなさんの周りにもたくさんのNPO法人があると思いますので、ぜひ、関心を
もってください。


2008.09.12(金)【因数分解の弊害】(金子登志雄)

 準備金を資本金に振り替えること、いわゆる「資本組入れ」は、貸借対照表の内
部での振替えに過ぎず、株主への分配可能額にも影響せず、債権者にも不利益を与
えることではありませんから、商法時代は、「取締役会の決議に依り準備金の全部
又は一部を資本に組入るることを得」とされていました(旧商法293条の3)。

 ところが、会社法では、次のように規定されています。

 第448条(準備金の額の減少)
 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総
会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
 1 減少する準備金の額
 2 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本  
   金とする額
 3 準備金の額の減少がその効力を生ずる日

 つまり、株主総会の決議になってしまいました。  

 これには、会社法のベースが有限会社の機関構成になり、原則として決議の対象
が何であれ株主総会が決めることになったという背景もありますが、会社法が既存
の法律行為を細かく分解し、再構成した点にもあります。

 すなわち、「準備金の資本組入れ」という行為を「準備金の減少」と「資本金の
増加」という2つの行為に因数分解したために、「準備金の減少」として、株主総
会の決議が必要とされたものでしょう。
 この因数分解方式は、何のための準備金の減少かという目的別思考が抜けている
ように思います。「ただし、減少する準備金の額の全部を資本金とするときは、こ
の限りではない」と、株主総会の決議が不要と規定できなかったものでしょうか。


2008.09.11(木)【小池にはまって、さぁ大変】(金子登志雄)

 政治家というのは、時々、面白い表現を使うものです。ネット情報ですが、最近、
思わず「うまい!」とうなってしまったのは、麻生支持と小池支持に分裂した元総
理の森さん率いる自民党の最大派閥の町村派(清和会)を皮肉った次の言葉です。

 「町村派は木から落ちたドングリだな。♪どんぐりコロコロどんぶりこ、小池に
はまってさあ大変…」

 正しくは「お池」ですが、それを気付かせないほど、ツボにはまっています。

 この小池にはまったドングリとは清和会のことですが、「どじょうが出て来て、
今日は」の「どじょう」は、小池の主である上げ潮のリーダー中川さんでしょうか。
「ぼっちゃん一緒に遊びましょう」と声をかけたのですが、「しばらく一緒に遊ん
だが、やっぱりお山が恋しいと泣いてはどじょうを困らせた」そうです。

 この「お山」って、麻生炭鉱のお山のことでしょうね。森は、やっぱりお山が似
合うのでしょう。  

 今日の徒然は、「金子は暇人だなぁ。きっと仕事がないのだな」と思わせてしま
う内容ですね。これを書くのも私の仕事なんですが・・・。


2008.09.10(水)【無対価分割型分割】(大戸早規子)

 旧商法時代、人的分割を使い、100%子会社(完全子会社)間では、事業上の
権利義務を他に承継させたにもかかわらず、受け皿側は無対価で対応するという事
例(無対価吸収分割)が多かったと聞きます。両社の株主である親からみれば、左
ポケットのモノを右ポケットに移し替えたようなもので、こちらで損をしても他方
で得をしますからプラマイゼロということで損することもありませんし使い勝手が
よかったのでしょう。

 ところが、7月の研修(会社分割ー基礎から応用まで)で金子先生が「会社法で
は、無対価の分割型分割はあり得ないのでは。」と話して下さいました。

 その根拠は・・・  

 1.「分割型分割=分社型分割+株主への受領株式(承継会社交付)の分配」  
   と会社法では規定されているのに、無対価だとそもそも受領株式がないのだ  
   から分配すべきものがなく分割型の要件を欠く。  
 2.分割会社の財産が減少するが、純粋の分割型ではないから分割会社に残る債  
   権者に異議主張の規定がない。

 確かに、旧商法では、無対価の会社分割は分割型の1つとされ、残存債権者の全
員に異議主張の機会がありました(商法374条の20)。しかし、会社法では、分割
型分割を上記のように定義してしまったため、無対価分割は分割型に含まれなくな
ってしまいました。したがって、株主への受領株式の分配の定めがある場合を除き、
吸収分割後も吸収分割会社に対して債務の履行を請求できる債権者、つまり「残存
債権者」は保護対象に含まれていないのです(会789条1項2号)。

 その便利さから「無対価分割型分割」は、完全子会社同士の吸収分割・完全親会
社が子会社に対してなす吸収分割・完全子会社が親会社に対してなす吸収分割の場
合にと重宝がられてきましたが、果たして、上記の検討後でも用いられるでしょう
か・・・? タダ(無対価)ほど怖いものはないといいますし・・・。


2008.09.09(火)【元気ですか〜!】(富田太郎)

 みなさん、「元気ですか〜!」。ESGプロレス研究会会長の富田です。
このところ、毎晩の徹夜生活からか、精神的にダウンしてしまいました。
日頃の元気も、どこへやら・・・、山積みの仕事・締切りを前に、焦り、苛立ち、
不安・・・。

 そんな折、見かねた顧問先の方が、A・猪木の新団体『IGFのプロレス』の試
合観戦に誘ってくれました♪ ありがたいことです。

 65歳にして新団体設立!!どこからくるのでしょうか、このバイタリティー!。
彼は、数々の名声を築きながら、ブラジルでのバイオ事業(「サトウキビの絞りか
す」からエタノールを抽出して家畜飼料を作る事業)の失敗による大金の負債、ス
キャンダルによる国会議員の落選・・・などと続きましたが、少しもめげていない
ようです。

 その後も、「カリブ海で沈没した海賊船を引き上げる事業」や「前人未到の永久
電池の開発」を手がけたり(もっとも、成功したという話は未だ聞きませんが・・)、
まさに、人生をプロレスしています。

 大層な「ロマンチスト」なのか、品悪く言うと、「単なる山師」なのか・・・。
いずれにせよ、「大きな夢を持っている人間」は強いものだと思いました。彼を研
究していると、私まで元気づけられます(ときどき、「ウツ」になるESGの君も、
プロレス研究会に入会しませんか)。

 真面目な話、「夢があれば、明日がある」、私もめげずに、前へ、前へと進んで
いこうと思います! されど焦らず、ゆっくりと・・・。


2008.09.08(月)【自民党総裁選】(金子登志雄)

 先週は福田首相の電撃辞任がありましたが、在任中は「とにかく早くやめろ」
の大合唱だったのに、いざ辞任表明したら、「何でこんな時期に!」と批判の声
ばかり。辞めなくてよかったのでしょうか。

 この辞任は、少なくとも自民党の人気にとっては大成功のようです。マスコミ
は、すっかりジャックされてしまいました。候補者は小派閥の麻生氏、無所属の
与謝野氏をはじめ、知らない名前まで登場し、まるでお祭りのようです。

 昔の「三角大福中(三木・田中・大平・福田・中曽根)」といった、そうそう
たるメンバーからすると、だいぶ小粒になった感がいたしますが、それもこれも
小泉元首相が自民党をぶっ壊したせいでしょう。派閥の締め付けは効き目がなく
なり、親分のでる幕が少なくなったようです。

 これに対して、民主党の代表選は小沢氏の再任で決まりそうですが、マスコミ
の目を引き付けるため、民主党もお祭り騒ぎをすればよかったのにという意見も
多いようですが、野党の党首選では、マスコミの取扱いも小さいことでしょう。
 また、野党の民主党が自民党並みのお祭りをすれば、「それみろ、民主党の中
は、右も左もばらばらだ」と批判的論調をされるのが目にみえています。

 いずれにしろ、マスコミの論調やムードには流されないようにしたいものです、
といいながら、自民党総裁選の話題をこの徒然で取り上げる私も、マスコミに流
されていますね。流されても溺れたくないですね、といいかえましょう。


2008.09.05(金)【引き寄せの法則?類は友を呼ぶ?】
(富田太郎)

 1ヶ月ぶりの登場です。
 ここのところ、徹夜生活が続き、徒然への投稿もできませんでした。

 ところで、先日、珍しく自宅に戻り、ゆっくりと本を読んでいました。その本に
よれば、「引き寄せの法則」というものがあるそうです。
 つまり、「似たもの同士は引き寄せられる。ある思いを抱くと、それと類似の思
いを抱く者が、磁石のように自分に引き寄せられてくるそうです。」
 そんな、バカな・・・・(爆笑)。

 翌朝、久しぶりに自宅から事務所への通勤。ところが、運悪く、小田急電鉄が人
身事故により止まり、電車は停車したまま動かず(たまに家に帰るからこんなこと
になるのでしょうか?)。

 そんな地獄のような通勤電車の中、携帯にA社長から電話がありました。
 おかしい???

 A社長も私と同じ小田急電車での通勤なのに、なぜ朝から会社で仕事をしている
のだろうか・・・??

 富「Aさん! 小田急電車止まったままでしょう???よく、朝から会社で仕事  
   していますね???」
 A「えっ???小田急電車止まったの???知らなかった??」
 富「・・・・。もしかして徹夜??」
 A「・・・・。なかなか、自宅に戻れなくて・・・・。あれ?富田さんは、今日
   は徹夜じゃないのですか??」

 なるほど!私のまわりは、プライベートの友人も、仕事上のお客も、なぜか徹夜
生活者が多いです・・・(汗)

 私が徹夜生活ばかりしているので、全身から、物凄〜い(徹夜生活の)オーラが
出て、磁石のように同類を引き寄せているのでしょうか?
 こんな「引き寄せの法則」は、嫌ですね・・・・(涙)。


2008.09.04(木)【気付き力】(山本直樹)

梅田さんwrote:
> 山本さんのその性格は、きっと、誠実さからくるものなのでしょうね。

 いえいえ、単に、幼少のころから長男としての責任感(!?)から掃除・食事等
の類はしっかり習慣付けられたというにすぎません。

 ただ、「掃除・整理整頓」をしているためか、実用的な面ですと「探し物をしな
くて済む」というメリットは享受しています。物事を効率的に進めようとするとき
に「探し物」ほどテンションが下がるものはありませんので・・・。
 また、精神的な面ですと「小さな達成感が味わえる」「心がきれいになる(なっ
た気がする)」ということでしょうか。

 仕事などの面でも効果があり、「気付き力」の養成にもってこいのようです。私
が親しくさせていただいている税理士さんの言葉を借りますと、「掃除をすること
により汚れやゴミに敏感になります。」「食器洗いの手伝いをすればどういう風に
すれば食器がきれいになるか、アワが早くなくなるか、洗った食器をどう置くか自
ら考え気づいていきます。」「その気づく力がどうすればより売上を上げられるか、
どうすればよりお客様に満足していただけるかという原動力になります。」という
ことです。

 ぜひ、みなさん、できるところから掃除をしましょう!!


2008.09.03(水)【債務“超越”】(梅田幸志)

 昨日の徒然ですが、美徳を磨き「徳」の債務超過を避けるには、やはり「掃除」
でしょうか。掃除好きの山本さんのその性格は、きっと、誠実さからくるものなの
でしょうね。

 実は、私も掃除好きですが、山本さんのような高尚な理由ではなく、ただ単に、
掃除をせずにはいられないという衝動で勝手に手が動いてしまうタイプです。

 こんなことを仲間内のメールにしたためましたら、金子代表から「掃除に関して
は、他人任せで、もう何年もしていません。年末大掃除も逃げています。債務超過
程度はとっくに過ぎていますが、その先は何というのでしょうね。」と、返信があ
りました。
 さすがは、普段から“長屋の傘張り浪人が適職”と言っている自由人の金子代表
らしく、俗世間の常識を“超越”しています。こういう人には、「掃除=徳」とい
っても通じそうもありません。  

 ところで、世の中には、借金を踏み倒しても恨まれない人もいるようです。こち
らは俗世間のお金の問題を超越した“人生の達人”あるいは“仙人”とでもいうの
でしょうか。
 例えば、野口英世あたりがそうかも知れません。多額の渡米費用を恩師に調達し
てもらいながら、返さなかったうえに、再び、借用したそうです。ご立派!

 野口英世の資金捻出のため、終いには自ら借金までしてしまった恩師いわく、
「女に惚れてもよいけれど、男(野口)には惚れるなよ」と。
きっと、「男に投資すると、際限がないよ」の意味でしょう。

 いずれにしても、掃除の問題は別として、「お金の問題なんか、小せぇ小せぇ」
と相手に思わせてしまう人には、尊敬を込めて、“名誉称号”「債務超越賞」を授
けたいものです。とりあえず金子代表には掃除の分野で、「債務超越賞」を授与し
ておきましょう。


2008.09.02(火)【美徳とは・・・】(山本直樹)

 みなさん、ご無沙汰です。ニッパチ(2月、8月)の月も終わり、業務繁忙期と
なる9月に突入し、張り切っている岡山の山本直樹です。

 さて、先日は、倉敷で行われたイエローハット創業者の鍵山秀三郎氏の講演会に
行ってまいりました。ご承知のとおり、「掃除運動」で有名な方です。

 鍵山氏によると、日本人の心は以前に比べると非常に荒んでおり、従来日本人が
兼ね備えていた「美徳」が失われているとのことでした。

 「美徳」とはなんぞや。

 「権利をすぐに行使せず(行使しても必要最低限に限る)、義務を最大限に果た
すこと」とのことです。なんと明快な解釈でしょう。

 権利を行使するばかりでは、「徳」が減少してしまうということでしょうか。
確かに、世の中には、「徳」が減少し残りがなく、債務超過に陥っている方も少な
くないですね。  

 「権利行使」と「美徳」の両立は、なかなか難しいですが、せめて「徳」が「資
本欠損」の段階で、挽回したいものです。今月は、業務だけでなく、さっそく掃除
に張り切ります。


2008.09.01(月)【季節感】(松山聡)

 子供たちの夏休みも終わり、これから本格的な秋を迎えようとしていますが、全
国的に天気が不安定で、季節の変化を肌で感じられない日が続いています。例年で
あれば、一しきり残暑に耐えた後の一涼の風に秋を感じるのですが、今年は、なし
崩し的に秋に突入しそうな気配すらします。

 この夏は、突然の大雨に見舞われた場所も少なくないようですが、一方で、雨が
少なく水源地での水不足が深刻な地域もあるとか。やはり全国的に異常気象なので
しょうか。いずれにしても、被害にあわれた方々には、この場をお借りしてお見舞
い申し上げます。

 ところで、皆さんは、季節の移り変わりを何で感じますか?

 夏から秋への移り変わりは、お天気だけではなく食べ物やイベントなどで感じる
方も多いことでしょう。例えば、コンビニ弁当のおかずの変化で夏の終わりを感じ、
合併準備の進捗状況で本格的な秋を感じる、とか。そんな風流人もいる(?)ES
Gが、今さらながら私は大好きです。

 追伸 過日、佐々木さんが、法務省関連のキャラクターをいくつか紹介していま
したが、ESGオンライン推進対策特別室長(?)の私としては、下記のキャラク
ターを紹介しないわけにはいきません(リンク先の頁の一番下を見てください)。
 http://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/static/kengakukai.htm

 しかしまあ、それなりに愛らしくは作られていますが、どれも親父ギャグに見え
てしまうのは私だけでしょうか。


2008.08.29(金)【そのまんま計算】(金子登志雄)

 水曜日は社会人相手に「会社の計算」を講義しました。司法書士が「計算」の話
をするのは、私自身にも抵抗がありましたが、難解な「会社計算規則」という法務
省令を語れる人が少ないので、お引き受けした次第です。

 そこでは、宮崎県知事の「そのまんま東」さんをもじって、「そのまんま計算」
するだけの単純な組織再編の計算法についても話しました。

 第1に、組織変更です。組織変更とは、合資会社などの持分会社が株式会社にな
ることなどをいいますが、この組織変更で貸借対照表は原則として不変です。その
まんまで、資本金も利益剰余金も変わりません。
 会社が変わらないのだから当たり前だともいえますが、少なくとも登記上は、旧
会社が解散し、新会社に事業が移管されるという構成になっています。

 第2に、持分プーリング法という会計処理での合併です。同一規模の甲と乙が合
併する場合は、甲と乙の資本金等もそのまんま合算します。背景としては、合併は
2つの会社がそのまんま統合するものだから、組織変更と同様に貸借対照表もその
まんま統合させればよい(資本金等も合算させればよい)というものでしょう。

 第3に、この合併を元に戻したのと同じ会計処理で、分割型会社分割で採用され
ることが多く、資本金等はそのまんま2つに分解されます。

 いずれも、出資の発想をしない会計処理ですから、債務超過であっても無関係に、
そのまんま貸借対照表が引き継がれ、その内訳が合算され、分割されるだけです。

 きわめて単純な会計処理であるため、実務でも採用されることが多いのですが、
組織再編を企業統合ではなく「他企業の買収」と捉える最近の傾向と合わないため、
例外的位置付けがなされています。



2008.08.28(木)【トーキくん】(佐々木大介)

 「ひこにゃん」「せんとくん」「まんとくん」など、ゆるキャラブームのこの頃
ですが、法務省でも以前から「人KENまもるくん&人KENあゆみちゃん」というキャ
ラが活躍?しているのは、ご存知でしょうか?    
  http://www.moj.go.jp/

 また、来年から始まる予定の裁判員制度を広報するためのキャラ「サイバンイン
コ」は、鳩山法務大臣がかぶっていたので、ご存知の方も多いと思います。
  http://www.moj.go.jp/SAIBANIN/index.html

 お堅い法律制度に親しんでもらおうと、ゆるキャラが活躍の場を増やしています
が、先日、オンライン登記申請に関しても、広島法務局ですが、イメージキャラク
ターが活躍していることを知りました。「トーキくん」というそうです。マウスの
顔の頼もしいキャラです。しかしながら残念なことに、活躍の場が広島に限られて
います。
  http://houmukyoku.moj.go.jp/hiroshima/standard/011808.html

 他の法務局にもこのようなキャラがあるのか、全国50の法務局のホームページ
を調べてみました。広島法務局以外では、熊本地方法務局の「ほーみん」が活躍し
ているだけでした。何とも微妙な顔をしています。  
  http://houmukyoku.moj.go.jp/kumamoto/frame.html

 京都では名無しのキャラが存在します。大文字焼をイメージしたのでしょうか?
勇壮な大文字焼とはおよそイメージが異なる愛らしいキャラです。  
  http://houmukyoku.moj.go.jp/kyoto/frame.html

 おもしろいところでは、高知地方法務局では、坂本龍馬が活躍しています。沈黙
の中にも、何かは分かりませんが、訴えてくるものがあります。  
  http://houmukyoku.moj.go.jp/kochi/frame.html

 もし「法務省ゆるキャラ大賞」というのがあるなら、私は是非、坂本龍馬像に一
票を投じたいと思います。この存在感には、誰も敵いません。
 あっ、でも、ゆるキャラではないですね。


2008.08.27(水)【最期のメッセ−ジ】
(田中利和)

 みなさん、こんにちは。大阪の田中です。
 北京オリンピックも終わってしまいました。

 金メダルの数では日本は9個で、8位に終わったようです(1位は主催国の中
国で51個)。しかし、女子ソフトボールで9人以上いますから、この計算って
おかしくないのでしょうか。

 さて、この徒然には相応しくない内容かもしれませんが、たいへん残念なこと
に、事務所が入居しているビルの管理人の方が、先日、突然、人生を終えてしま
いました。享年70歳でした。
 「田中はん、お金ばっかり貯めんと、たまには、おいしいもん食べに連れてっ
てや・・・」と、つい先日も、声をかけてもらったばかりでしたが・・・。  

 人は、何時、死ぬか分からないから、「これは明日にすることにしよう」「ま
だ時間がある」とついつい物事を先延ばしにしていまいますが、私を含む残る人
に対して「ぼやぼやするな、精一杯生きよ!」というメッセージを残して逝った
ように思えてなりません。  

 残された者は、このメッセージを大切にし、人生で金メダルを取れなくとも、
日々、悔いのないように、精一杯生きていかねばなりませんね。


2008.08.26(火)【商登法81条6号説への疑問】(金子登志雄)

 昨日の続きです。
 「新設合併設立会社の本店所在場所は消滅会社の取締役会で決めるのだから、
商登法46条に従い、消滅会社の取締役会議事録を添付せよ」という見解のほか
に、添付書面の根拠として、ある有力法務局から「合併契約の承認その他の手続
があったことを証する書面(商登法81条6号)として決議した機関に応じて合
併当事会社の株主総会議事録又は取締役会議事録等が該当する」という説が主張
されています。

 この見解に対しては、私は、拙著(組織再編の手続)で批判的な見解を述べま
したが、説得力に欠ける部分がありました。46条説よりは、理論的だからです。
しかし、やっと、強力な反撃材料をみつけました。

 上記の「その他の手続があったことを証する書面」とは、会社法804条3項
(新設合併・株式移転における譲渡制限株式を割り当てられる種類株主の種類株
主総会決議)のことでした。

 会社法804条1項には、新設合併・新設分割・株式移転における消滅会社等
の株主総会の「承認」とあり、新設合併に関する商登法81条6号と株式移転に
関する商登法90条6号には、「会社法第804条★第1項及び第3項★の規定
による」株主総会の「★承認その他の手続があったことを証する書面★」とあり
ますが、新設分割に関する商登法85条6号には、「会社法第804条★第1項
★の規定による新設分割計画の★承認があったことを証する書面★」としか規定
されていません。
 「その他の手続があったことを証する書面」とは、会社法804条3項の書面
を指し、新設分割には適用されないからです。

 やはり、「新設合併設立会社の本店所在場所は消滅会社の取締役会で決める」
ものであっても、それは代表取締役への指示であって、登記の添付書面としては、
商登法47条説を採用し、発起人に該当する消滅会社の代表者の決定書でよいと
いうべきでしょう。


2008.08.25(月)【商登法46条説への疑問】(金子登志雄)

 土曜日は、司法書士界の中の一大勢力である商業登記倶楽部の夏季セミナーで
講師を務めました。   

 http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/STClub2.htm

 そこでは、組織再編の議事録添付の根拠条文として、次の商業登記法の構造に
ついて話しました。

 吸収合併などの吸収型再編では、
  *存続会社等の議事録――商登法46条
  *消滅会社等の議事録――商登法80条(6号)、85条、90条

 新設合併などの新設型再編では、 
  *新設会社の議事録―――商登法47条(←会社法814条)
  *消滅会社等の議事録――商登法81条(6号)、86条、91条

 したがって、吸収合併等の効力発生日を延長した場合には、議事録としては商
登法46条に従い、【存続会社】等の議事録のみを添付し消滅会社のものは添付
不要です(基本通達民商782号参照)。商登法80条に、この場合の規定がな
いから、消滅会社の議事録の添付を要求できないわけです。

 にもかかわらず、基本通達以後の当局の回答では、商登法46条を【全会社】
の議事録の規定と勘違いし、「新設合併設立会社の本店所在場所は消滅会社の取
締役会で決めるのだから、商登法46条に従い、消滅会社の取締役会議事録を添
付せよ」などというものが多いようです。基本通達の思考(商登法46条は【既
存の登記申請会社の規定】)と一致していません。

 純粋の設立の場合、たとえば、A会社が子会社Bを新設するときも、Bの代表
者の決定はAの取締役会でなされるでしょうが、登記の添付書面は商登法47条
3項に従い、発起人会社Aの代表者による決定書で足り、Aの取締役会議事録ま
で添付不要と解されてきました。
 これと同様に、新設合併設立会社の本店所在場所の決定も、商登法46条でな
く、47条により、発起人に該当する消滅会社の代表者による同意書や決定書で
足るというべきではないでしょうか。


2008.08.22(金)【負ののれん】(金子登志雄)

 お盆明けは、合併効力発生日の書き入れ時である10月1日を前にして、合併手
続の開始時期ですが、そろそろあせりだした方も少なくないでしょう。用意は周到、
準備は万端ですか。
 私も、第三者企業同士の合併を含め、恒例の親子間合併などの手続を受託してお
ります。

 こんなとき、つくづく会社の計算を勉強しておいて、よかったなと思います。簡
易合併案件かどうかだけでなく、のれんの発生についても、アドバイスできるから
です。

 のれんといっても営業権などのことではなく、承継したものと渡したものの差額
にすぎません。たとえば、時価1億円の純資産を受け入れたのに、時価1.5億円
の新株式を渡したときは、資産に5000万円を計上して、貸借対照表のバランス
をとります。これは「正ののれん」です。
 時価5000万円の新株式を渡したときは、何と負債の部に「のれん5000万
円」を計上します。「負ののれん」といわれるものです。そうしないと貸借対照表
の左右がバランスしません。(いずれも第三者間合併の話です)。

 「正ののれん」と「負ののれん」では、ほとんどの方に「のれんに腕押し」で通
じませんから、私は、「絹のれん」「縄のれん」と表現を変えるよう提唱している
のですが、「縄」にも高級なものとそうでないものがあるようで、支持してくださ
る方は皆無です。何か、よい表現はないものでしょうか。
 「横綱のれん」と「泥縄のれん」ではいかがでしょうか。


2008.08.21(木)【勝てば官軍・・・】(金子登志雄)

 北京オリンピックたけなわですが、マスコミ報道をみますと、期待どおりにメダ
ルを手にした方には何から何まで(家族のことまで)べた褒めで、期待に反した方
には、やれ調整不足だ、コーチや取り巻きが悪いと、非難ごうごうですね。お隣の
中国では、金メダルを期待されていたのに怪我で棄権した陸上選手へのバッシング
がすごいようです。

 世界の強豪が一同に参加しているわけですから、確率からいって、期待に反する
結果になるのが当たり前だと私は思っているのですが、マスコミは手のひらを返す
のが早過ぎます。その背景には、大衆心理への迎合あるいは代弁があるのでしょう
が、情けないものです。

 事前にこういうことがわかっていながら、参加する選手は本当にたくましいです
ね。もし、私が選手だったら、たとえば100mの選手だったら、ほんとは9秒6
で走れても、期待されると困りますから、10秒ちょっとで押さえておき、日本代
表を勝ち取って、オリンピックのときだけ本気を出して9秒6で走ります。

 誰からも期待されず名もない選手として参加し、金メダルをとったら、一躍英雄
でしょう。「いやー、実力以上のものが出せました。これもひとえに応援してくれ
た皆様のおかげです」なんて、平気でインタビューに応えたいものです。

 ・・・なんて寝ぼけたことをいえるのも、私が野次馬だからですね。勝手なこと
をいって責任を取らずに済む立場です。マスコミと大差ないですね。

 何はともあれ、競技が終わった選手のみなさん、お疲れ様でした。ギョーザを食
べないように留意して元気でお帰りください。


2008.08.20(水)【同期は同志?】(大戸早規子)

 中学時代の同期会に行ったら周りはみんな同い年ですよね。大学時代では年齢差が
あったとしてもせいぜい5、6歳位でしょうか。
 司法書士の「同期」の場合は、10歳、20歳違いもザラだし、親子程の年齢差が
あったりすることもあります。

 そんなことは重々承知しているのですが、飲み放題の美酒に酔いしれてしまったの
でしょうか、東京湾クルージングの夜が北京オリンピックの開会式だったもので、つ
いつい「東京オリンピック、知ってる?」と同期に聞いてしまいました。
キョトンとする面々。
「昭和39年?まだ、影も形もなかった・・・」との答えが返ってきてしまいました。

 それにしても不思議です。年齢差という壁を越えてこれほどまでに親近感を覚える
のは、司法書士試験という怪物に戦いを挑み、偶然にも時を同じくしてその敵を倒し
た同志だからなのかしら・・・?

 ちなみに、東京オリンピック当時、私は、物心がついたかどうかぐらいの歳でした
から、円谷幸吉選手の活躍の記憶はありませんのであしからず・・・。


2008.08.19(火)【同期】(金子登志雄)

 「ESG美女(?)二人に囲まれて、ご機嫌だったのは言うまでもありません。
そうですよね? 金子先生?」
 はい、そのとおりでした。左隣りも女性でしたから、3人の美女に囲まれていま
した。薄暗い夜だったためか、アルコールのせいか(?)、目の前のお2人とも、
とびきりの美女にみえ、私も幸せでしたよ。

 面白いもので、自営業である司法書士は同僚もいませんから、こういう会合にな
ると、平素のストレスから解放されて、盛り上がります。サラリーマンの終業時以
降の憂さ晴らしの飲み会に近いところがあります。

 初対面でも、同じ仕事ですから机を並べている同僚のように、すぐに親しくなれ
ます。私も久々に仕事以外の会話を堪能しましたが、とくに、下崎さん、大戸さん
は、同期の方2人とも会えて、新人時代の思い出話に花が咲いたようでした。

 同期というのはいいものですね。今年は、学生時代の同期会が2つありますので、
できるだけ参加するつもりです。1つは、中学時代の同期会ですが、唯一不満なの
が仕事をしていない女性達の近況報告と挨拶です。

 「孫何人に囲まれて幸せに・・・」

 やめてほしいものです。中学時代に戻ろうとしているのに、現実の自分の年齢を
思い知らされてしまいます。
 「先日は、デートコースのお台場でクルーザーに乗って、イケメン2人に囲まれ
て幸せに・・・」くらいは、挨拶してほしいものですが、無理な要求でしょうか。



2008.08.18(月)【クルーズ】(下崎ゆかり)

 お盆休み中は、各地の渋滞情報も聞こえてきましたが、皆様、夏休みはいかがお
過ごしでしょうか? 夏のレジャーといえば・・・混雑とは無縁の「クルーズ」で
すよね!

 われわれESG、といってもワーキングプアチーム(?)ではなく、金子代表、
大戸、下崎の3名が、東京司法書士会千代田支部企画レクリエーションのクルーザ
ーを借り切っての東京湾クルージングに参加してきました。他支部の私は、特別の
計らいで、代表の「御付き」として潜り込ませていただきました。

 最初にクルーズのお誘いを頂いたときは、司法書士支部会がクルーズ? そんな
洒落た企画ではなく、屋形船の間違いじゃないの?とかなり疑心暗鬼でした。
 ところが当日、品川埠頭についてみると、ちょうちんをぶら下げた屋形船に囲ま
れて、小振りの白いクルーザーが1隻、輝きを放っているではありませんか!
 しかもハッピに鉢巻姿の船頭さんを横目に、マリンルックも凛々しいクルーが爽
やかにお出迎えです。

 カクテル片手にデッキで夜風にあたりつつ、お台場の夜景にうっとり・・・。
まさに、デート・コースの王道ですよね!一気に気分は盛り上がります。

 そんな状態で、「御付き」の私が、一番はしゃぎまくったまま、いざ出航!
ビールで乾杯のあとは、大皿料理がテーブルに饗され、宴会の始まりです。

 気がつけば、デッキでカクテルもレインボーブリッジや東京湾の夜景もそっちの
けで、大宴会・・・・。
 これじゃあ、いけないと(本当はお腹もいっぱいになったので)、船の2階デッ
キに上がってみると、周遊コースに出待ちの屋形船でなんと海上は、大混雑です。
海の上でも渋滞と無縁ではないのですね。

 もちろん、我が代表は、お台場の華やかな夜景に負けず劣らずのESG美女(?)
二人に囲まれて、ご機嫌だったのは言うまでもありません・・・。
 そうですよね? 金子先生?

 そんなとっておきのクルーズ写真を皆様に公開!と思ったまでは、良かったもの
の、ESGの美女二人は撮られることには慣れているものの、撮ることには慣れて
いなかったようで、写真の才能は皆無であることが判明する結果となりました。  

 以上、レポートでした!



2008.08.12(火)【北京オリンピック】(金子登志雄)

 司法書士や税理士中心のいくつかのML(メーリングリスト)のメンバーですが、
この時期だというのに、全くオリンピックの話題がでません。職場でも同じです。
それだけ、日本が豊かになったということでしょうか。関心の方向が、一極に集中
しなくなっているようです。

 昭和39年(1964年)の東京オリンピックのときは(高校1年生でした)、
猫も杓子も、その話題ばかりでした。学校も職場も家庭も、体操日本がんばれ、東
洋の魔女・女子バレーがんばれ、柔道の日本がんばれで、オリンピックに無関心で
冷ややかな人間は非国民扱いされかねないほどの熱気でした。ちょうど北京オリン
ピックのいまの中国のようなもので、国威発揚の大イベントだったのでしょう。

 東京オリンピックでは、いまでも、多くの方の印象に残るのが、男子マラソンに
おける円谷幸吉選手の活躍でしょう。最後には、トラックでイギリス選手に追い抜
かれましたが、見事、銅メダルでした。  

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E8%B0%B7%E5%B9%B8%E5%90%89

 北京オリンピックでは、柔道その他で金メダルが期待されていたのに、期待に反
する結果となり、辛い思いをしている選手もいるようですが、東京オリンピック当
時の重圧からすれば、ずっと楽なことでしょう。これはよいことですね。

※13日から15日の徒然はお休みにします(仕事は休みません)。



2008.08.11(月)【新設型再編の効力発生日】(金子登志雄)

 会社の組織再編は、吸収型再編(吸収合併・吸収分割・株式交換)と新設型再編
(新設合併・新設分割・株式移転)に分類されています。後者は新会社設立行為で
すから、設立登記によって組織再編の効力が生じます。

 この点につき、先日、会社法立案担当者が編集している『会社法マスター115
講座』を開いてみましたら、新設型再編につき、「吸収型再編と異なり、効力発生
日を必ずしも定める必要はなく、新設型再編がいつ効力が発生するかは、登記がな
されるまで、当事者以外にはわからない点に特徴がある」(同書266頁)とあり
ました。

 それはそのとおりなのですが、会社法219条には、新設合併や株式移転でも、
当該行為の効力が生ずる日までに株券を提出せよと公告しなければならないと規定
されています。

 これを統一して読むと、「当事者にしかわからない効力発生日までに、当事者以
外の株主に対して株券を提出せよと公告しなければならない」ということになって
しまいます。
 真に受けて「(いつ登記するかはわからないでしょうが)登記するまでに株券を
ご提出ください」という公告をしてもよいのでしょうか。

 やはり、会社法219条の規定は立法ミスのように思います。商法時代の株式交
換(吸収型再編)には「効力発生日の『前日』まで」とあり、株式移転(新設型再
編)には、「一定期間内に」にありましたから、それを踏襲すればよかったのに、
勇み足で一律に「当該行為の効力が生ずる日まで」としてしまったのでしょう。

 ちなみに、登記予定日をもって「平成〇〇年〇〇月〇〇日までにご提出ください」
と株券提出公告し、予定日を変更する場合には、期日変更公告を出し、それを同時
に登記に添付せよということです(「登記情報」554号103頁)。



2008.08.08(金)【株式は転換しない、その2】(大戸早規子)

 昨日、宮川さんが説明して下さいましたが、ある種類の株式が別の種類に変わっ
ても、会社が取得した株式は自己株式として残ります。

 そこで、いくつか疑問が生じました。

 第1に、この対価が別種の新株式の場合に、資本金は増えないのでしょうか。
 会社法第445条第1項では、資本金の額は「株式の発行に際して株主となる
ものが当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする」とあります。

 社債が対価であれば、「自己株式〇〇円/社債〇〇円」ですから、新株式が対
価とされた場合には、「自己株式〇〇円/資本金〇〇円」のようにも思えるので
すが、この場合の「〇〇円」をどうやって計算するのでしょうか。

 第2に、仮に資本金が増えないとすると、自己株式を貸借対照表のどこに計上
するのでしょうか。「自己株式0(ゼロ)円」と計上しても意味がありません。

 調べてみました。

 第1の疑問への解答は、会社計算規則第38条第1項に定められており、「資
本金等増加限度額は、零とする」ということだそうです。商法時代の「株式の転
換」と結論を一致させたのでしょう。

 第2の疑問への解答は、資本金の額が「零」なのだから、必然的に、相手勘定
の自己株式も「零」となります。その場合は、株主資本等変動計算書に関する注
記に「当該事業年度の末日における自己株式の数」を記載することで済ませるよ
うです。

 なるほどとは思いますが、社債等を交付するときは価値があり、新株式を交付
するときは価値がないと意識的にみなすのかと、疑問はさらに続きそうです。


2008.08.07(木)【株式は転換しない】(宮川康弘)

 みなさん、はじめまして。岡山の宮川と言います。

 さて、旧商法では、ある種類の株式が別の種類に変わることを「株式の転換」と
いっていました。いわゆる転換株式です(商法時代の後半は、転換予約権付株式、
強制転換条項付株式といいましたが)。

 ところが、会社法では、「株式の転換」という概念はありません。その代わり、
ある種類の株式を会社が「取得」し、対価として別の種類の株式を「交付」するこ
とで同じことが可能になりました。これが、取得請求権付株式、取得条項付株式、
全部取得条項付種類株式といわれるものです。

 旧商法の「株式の転換」では、転換前の古い株式は、転換されることで消滅して
いましたが、会社法では、自己株式として、会社に残り続けることになります。

 では、取得対象の株式数に対して交付する別の種類の株式数の交付比率(1:2
とか)のことを何というのかといいますと、実務上は、いまだに「転換比率」とい
うことが多いようです。法務省民事局発の登記記録例も、「転換比率」でした。  

 会社法では、「株式の転換」とはいわないので、より適切には、「交換比率」な
どとでも呼ぶべきでしょうか? みなさんは、どうしてますか。



2008.08.06(水)【鳶は鷹を産める】(金子登志雄)

 「有限会社には一人又は数人の取締役を置くことを要す」と旧有限会社法にあり
ましたが、では、有限会社は、現在でも、一社又は数社の子会社を新設できるでし
ょうか。
 ちょうど、先々週、ある司法書士会での講演で、「有限会社は新設分割ができる
のか」という質問を受けたばかりです。
 答えは、「できる」です。

 講演の場では、すかさず、「有限会社は新設できないはずだ」という合いの手が
入りましたが、これは冗談での質問です。有限会社が分社で子会社を設立できると
いっても、有限会社を作れるわけではなく、ごく普通の株式会社を設立できるとい
うことです。

 実例は知らなかったのですが、たまたま官報公告をみておりましたら、ある有限
会社が3つの事業を新設分割する公告が掲載されていました。まるで、鳶が3匹の
鷹を産むかのようにみえました。

 へたに有限会社を株式会社に商号変更するよりも、こういう方法を採用すれば、
有限会社を維持できます。もっとも、有限会社は150万社以上はあるでしょうか
ら、今後、希少価値がでるかは疑問です。


2008.08.05(火)【一人又は二人以上】(金子登志雄)

 昨日の松山さんの投稿にありましたが、会社法326条に「株式会社には、一人
又は二人以上の取締役を置かなければならない」とあります。「一人又は二人以上」
とは、「一人以上」ということではないかと疑問に思い、金子・富田著『これが新
発想の会社法だ』20頁以下に理由を書きました。
 その抜粋は、次のとおりです。

 金子:条文に「取締役が二人以上ある場合には」とか、「監査役が二人以上ある
場合には」とあり、この場合は、何かを決定するに際し、全員の同意か、過半数の
決議かなどを定めなければなりません。「一人」と「二人以上」は規定の種別に必
要な用語だったというわけです。
 富田:なるほど。「一人又は二人以上」とは、単数の場合にはこうで、複数の場
合にはこうで、という規定の仕方を表現したわけですか。複数のことを新会社法用
語で、「二人以上」というわけですね。

 後日談ですが、これは会社法が初ではありませんでした。何と、旧有限会社法の
25条に「有限会社には一人又は数人の取締役を置くことを要す」とあったのです。
会社法は、この規定を受けて、「一人又は二人以上」といい換えただけでしょう。

 有限会社法時代には、「一人又は数人」に全く気づかず疑問にも思いませんでし
たが、「一人又は二人以上」と数字が並列されると、疑問に思うものですね。文章
としては、旧有限会社法が勝るように思います。「一人又は数人」なら、一人であ
る必要がないというニュアンスがでるからです。会社法も、ここまで旧法表現を目
の敵にする必要はなかったのにと思います。



2008.08.04(月)【人数の数え方】(松山聡)

 取締役の員数を定めている会社法326条に「一人又は二人以上の取締役を置か
なければならない。」とありますが、なぜ「一名又は二名以上の取締役を置かなけ
ればならない。」とされていないのかと、ふと疑問に思ってしまいました。

 「一人又は二人以上」とは、「一人以上」ということじゃないかという自然な疑
問は、金子・富田著にありましたので、のちほど投稿してもらうとして、ここでは、
「人(にん)」と「名(めい)」についての疑問です。

 原点に戻って、皆さんは人数を数えるとき、一人・二人・・と数えますか、それ
とも一名・二名・・・でしょうか?

 どちらの数え方をしても、相手にその人数は伝わるでしょうが、どうやら言葉の
持つ意味は違うようです。
 正直いって、私は、この違いをあまり意識したことがなかったのですが、インタ
ーネットで検索したところ、「人」と「名」の使い分けについて、たくさんの解説
が掲載されていました。

 まとめますと、
 ・名前がわかっているときは「名」で、名前がわからないときは「人」という。
 ・「人」は人数を数えるのに使用して、「名」は参加者や出席者を数えるのに使
  用する。
ということのようです。

 したがって、取締役の員数を問題とするときは、会社法の条文のように「一人又
は二人以上」と表現するのが適切なようです。

 確かに、定款で取締役の員数を定めるときは、私も「3人以上5人以内」などと
記載し、取締役会議事録では、「取締役総数5名、出席取締役数4名」などと無意
識に使い分けていました。

 ところで、ここまで書いてふと思ったのですが、皆さん、「員数」と「人数」は
どこが違うのでしょうか。きちんと使い分けていますか。。。。



2008.08.01(金)【株券の電子化】(下崎ゆかり)

 最近、テレビコマーシャルでも盛んに放映されるようになりましたが、来年1月
に上場会社の株券の電子化が予定されています。
 準備は、進んでいますでしょうか?

 「株券電子化」、初めてこの言葉を聞いたときは、いよいよ株券もスイカやパス
モのようにICカード化され、タッチすれば株主たる権利が証明され、携帯電話の
情報のように、赤外線通信等で「ピッ!」とばかりに簡単に権利移転ができるよう
になったのか!と思ったのは話題の「タンス株」を1枚、後生大事に保有している
私だけでしょうか。

 もちろん、株券を証券保管振替機構「ほふり」に預けてしっかり運用されてる皆
様は、そんな間違いはしていませんよね。  

 株券電子化とは、上場会社の株券をすべて廃止し、以後は証券保管振替機構と証
券会社等に開設された口座を中心としたコンピュータネットワークにより株主情報
や株式の売買情報等を電子的に一元管理することです。株券が廃止されてコンピュ
ータ管理となることから「株券電子化」と呼ばれています。

 株券電子化の最大のメリットであるコンピュータによる一元管理が、法務省のオ
ンライン登記申請システムのような突然のシステム障害がないことを祈るばかりで
す。

 さて、せっかく大事に保管してきた「タンス株」、株券無効になった後も記念に
手元に保管しておこうかな〜という考えが頭をよぎる「記念品」好きな私ですが、
株主が皆、記念株券の発行を求めてきたらそれはそれで企業も大変です。

 我が「タンス株」、確か名義書換えはしてあったので、株券電子化以後に株券発
行会社が開設してくれる「特別口座」行きとなっても株主としての権利を失うこと
はないな、とのん気に思って、念のため取り出してみると・・
 「ん??株券に印刷してある商号が違うような!!そういえば、●●ホールディ
ングスに変更していたっけ!」
 事前に「ほふり」に預けることも考えると、まずは、新株券を発行の手続きをし
てもらうか。
 さて、どこへ連絡?証券会社?いやいや、株主名簿管理人の信託銀行へ電話、電
話・・・・。

 皆様は、こんなことのないよう、早めにしっかり確認してくださいね。



2008.07.31(木)【真夏のたまらない快感】(田中利和)

 書中お見舞い申し上げます。大阪の田中です。

 さて、ESGのメンバーに加えていただいたおかげで、私にも受験関係の原稿依
頼がくるようになりました。ありがたいことです。そのために、土日がなくなって
しまいましたが・・・。  

 先輩の富田さんからは、「田中さん!苦難の道へようこそ♪ これから執筆地獄
の始まりですよ(笑)」という暖かい歓迎のメールをいただきました。金子代表か
らも、「土日もなくたいへんですね。でも、この充実感、たまらない快感でしょう」
というエール(?)をいただきました。

 人の苦労も知らないでとは思いましたが、事実、そのとおりでした。たまらない
快感です(^_^;)
 たまらない・・・たまらない・・・苦労多くしてお金もたまらない・・・。

 富田先輩の生き様を目指して、私もワーキング・プア街道に迷い込んだようです。
これで晴れて、ESGのメンバーらしくなれました。バンザーイ、バンザーイです。

 くだらないことを書いている場合ではありませんね。ちょっと背筋が寒かったで
しょうか。でも、この猛暑の季節にはぴったりですね(笑) 少しは涼んでいただけ
ましたら幸いです(^_^;)  

 明日から8月ですが、まだまだ暑い日が続きそうです。ご自愛ください。


2008.07.30(水)【勧誘電話の撃退法】(金子登志雄)

 「あっ!切るな(怒、怒)!私の話をもっと・・・。」。
 このフレーズ、大笑いしてしまいました。富田さんの文章は自虐ネタだけでなく、
自慢話も面白いですねぇ。

 私のところには、未公開株式の勧誘はほとんどなく、マンション投資が多いです
ね。私も、昔は、銀行の営業マンでしたから、営業の辛さは知っており、できるだ
け丁重に応対しようと思うのですが、ここ数年は、用件を聞いた瞬間に、「興味あ
りません。ご苦労さん。ガチャン」で対応しています。

 腹が立つのは、必ず「先生をお願いします」といわれることです。1人しかいな
い当事務所を馬鹿にしているのでしょうか。
 以前は、「ご存知ないのですか。先生は、昨日お亡くなりになりました」とか、
「先生はただいま国会の審議にでかけており、留守をしています。秘書の私でよか
ったら、ご用件をどうぞ」などと、遊ばせてもらったこともありますが、話を聞い
てくれたというだけで、次には他の営業マンからかかってくるようになりました。
敵の動きが読めたので、いまは、こういう電話は一切相手をしないのが一番と思い、
即「ガチャン」で対応しているわけです。

 ところで、最近は、親しそうに「〇〇さんですか。ご無沙汰しています。同郷の
△△です(注:高校の卒業名簿が業者に回っていたようです)。この前もお電話し
たのですが、覚えていらっしゃいますか」という商品取引の勧誘は、すっかりなり
をひそめました。金融庁の監督が厳しくなったのでしょう。不況になるわけです。
 英会話教材の勧誘も全くなくなりました。何か、日本の風物がまた減ったような
さびしい気分です。世の中清すぎると、息苦しくなりますし、少なくとも、1人事
務所のたいくつしのぎには有益だったのですが。



2008.07.29(火)【未公開株詐欺事件】(富田太郎)

 先日、事務所に、怪しげな投資顧問業者から未公開株の勧誘電話がかかってきま
した。
 聞いている暇もなく忙しかったので、即、断ったところ、今度は、勝手に資料を
送りつけてきました。

 資料には「株式会社●●! 数年後、マザーズ上場予定。幹事証券会社はA証券。
あなただけに、特別に1株●●万円で譲渡します♪」
 アホくさくなり、すぐにゴミ箱にポイと捨てました・・・・。

 ところが、数日後、また電話がかかってきました。

業者「あのぉ〜、先日送付した資料はいかがだったでしょうか〜?」
私 「『グリーンシート銘柄』以外の未公開株の勧誘は原則として禁止されている  
   し、証券会社でもない御社が勧誘していいの?それに、譲渡制限があるので、
   この会社の取締役会の承認がいるでしょ?」
業者「・・・・・。」
私 「幹事証券会社A証券は、私の顧問先だけど、そんな話聞いたことないよ?」
業者「・・・。富田さんは、なにをやっている方なんですか?」
私 「一応、会社法の専門書を出しており、△■〜あとVCとかの監査役もやって  
   おり(←得意になっている♪)、そのほか△■〜♪♪」
業者「ガシャ!!」
私 「あっ!切るな(怒、怒)!私の話をもっと・・・。」

 果して、私の博学さに恐れをなしたのでしょうか?あるいは、長々と続く自慢話
に嫌気をさしたのでしょうか? 真相は闇の中ですが、詐欺業者に嫌われたことだ
けは確かなようです・・・・(汗)。

皆さん、くれぐれも詐欺話にお気をつけくださいね!



2008.07.28(月)【攻めの会社法と受けの登記法】(金子登志雄)

 先週の23日は、東京司法書士会専門研修会主催のセミナーで、「会社分割」を
テーマに講師を務めました。300人募集のところ、約800人の申込みがあり、
急遽、会場を変更しての実施でした。
 やはり、東京です。会社分割のニーズも高く、関心の強い司法書士が多いという
ことでしょう。

 そこでは、先般、ご紹介いたしました民商1774号についても説明し、会社法
は攻めの形式だが、登記法は受けを中心に構成されていると話しました。
 というのは、会社法では、吸収合併も吸収分割も権利義務を「承継させる」もの
だが、商業登記においては権利義務を「承継する」会社を基準として吸収合併や吸
収分割を登記するからです。

 たとえば、乙丙丁が甲に権利義務を承継させる吸収型再編の登記は、受け皿会社
の甲を基準に、甲を管轄する法務局で、甲が乙丙丁から権利義務を「承継する」と
いう登記をいたします。
 債権者異議申述公告も登記と同様に、受け皿会社甲、権利義務を承継させる側を
乙丙丁とした内容になっています。

 これらからしても、手続法は最後の権利者は誰かという発想をするのに対し、実
体法は、今の権利者が何をするかという「今」を基準に構成されていることがわか
ります。こだわるようですが、手続法である登記の世界では、従来からの登記慣例
を今の時期になって変更するほどの必要性はなかったのではないでしょうか。



2008.07.25(金)【運はさびしがりや】(山本直樹)

 みなさん、こんにちは。岡山の山本です。

 さて、先日岡山の某大学で、マネックス証券(株)松本大氏の講演会があり、投
資の観点からの「株価」と「会社(企業)の価値」の関係について興味深い話を聞
いてきました。

 松本氏曰く
1 「会社とはコップである」  
  「コップ」そのものにはいろいろな種類があり、各々の「コップ」の値段が
  いわゆる「企業価値」である。
2 「投資資金は水である」
  水そのものの量は、投資家自身の経済状況・社会情勢等で変化する。
3 「各コップに入っている水の量が、時価総額(すなわち「株価」)である」

 「コップの価格」と「水の量(コップの容量)」には直接関係はなく、水は流動
性が高いので、いろいろな情報によってあちこちに移動し、その結果株価が変動す
るのである。日本の会社は、資本家に対する冨の分配率が低いので、会社に価値が
あっても(コップは高くても)株価は安いとのことでした。

 「価値」と「人気」とが必ずしも比例しないというのは、人間らしいところです
ね。
 なお、松本氏が成功の秘訣として「運が大切」ということを言われていました。
運は寂しがりやで、すぐに人に寄り添う(移る)ので、「運の悪い人とつきあって
はいけない」とのことです。みなさん気をつけましょう(笑)



2008.07.24(木)【雑感:司法書士試験】(尾原之)

 7月6日に実施された司法書士試験の不動産登記の記述式試験をみてみました。

 ここ数年の問題傾向ではなかったのが最初に驚きました。ここ数年は、問題文から
登記することのできない行為を探し当て、その理由を書かせるなどの、いわゆる考え
させて、文章で解答させる傾向が続いたのですが、本年は、大量の別紙から事実関係
を読み取らせることに主眼を置いた10年位前までの問題形式に似ていました。

 内容的には、複雑・難解な法律関係でもなかったので、落ち着いて読み取れれば正
解に至ることが出来たと思いますが、分量が分量でしたので、落ち着いて読み取るの
が困難だった可能性があります。

 総じていうと、別紙が実務家にとって慣れ親しんだ書面だったため、司法書士事務
所勤務の補助者などの受験生に有利な問題だったと思います。

 もう少し、実体判断を問う部分があってもよかったのかな〜とも思いました。とい
うのは、多くの方に誤解されていますが、登記のむずかしさは、登記という行政手続
自体ではなく、その前段階の事実関係という実体の判断であり、民法をはじめとする
実体法の深い知識と理解こそ重要だからです。


2008.07.23(水)【真夏の国家試験】(尾原之)

 先般、司法書士の本試験がありましたが、近年の司法書士試験は、7月の第一日
曜日に実施されています。
 余談ですが、私が受験した年は7月第二日曜日実施で、しかも私の誕生日だった
ので、受験日は一生忘れないでしょう(苦笑)。

 さて、なぜ、国家試験は真夏に実施されるのでしょうか。私が受験した頃の東京
における試験会場(早稲田大学)は冷房が入っていなかったので、サンダル履きに
団扇や汗拭きタオル持参でした(注:試験中は仕舞います)。暑さ及び試験の緊張
で具合が悪くなる人もおり、救急車が来た会場もありました。

 ただ、司法書士試験は、国家試験でありながら、各都道府県で試験が実施される
という特徴がありますので、わだわざ、暑さを避けて函館や札幌で受験した友人も
いました。それで不合格なら高額な受験料になってしまいますが、友人は、見事合
格しました。

 北海道まで受験に行ける人と真夏の蒸し暑い会場で我慢しなければならない人と
は、最初から不公平感がありましたが、そのような話も今は昔となり、現在では、
ほとんど(全て?)の試験会場が冷房完備で、快適な環境で問題に当たれるように
なったと聞いています。むしろ寒いくらいで肌かけが必要なこともあるという声も
あります。

 真冬の入試といい、試験には、どなたも、いろいろ思い出があることでしょう。
皆様は、いかがですか、
 いずれにしろ、今年受験した方はお疲れ様でした。良い知らせが届くことをお祈
り致します。


2008.07.22(火)【役員選任の修正動議】(金子登志雄)

 株主総会招集通知に「取締役5名選任の件」と記載し、候補者ABCDEの略歴
を示し、いざ総会にはかったところ、株主から修正動議が出たとして、招集通知に
は一言も記載されていないFGHを選任できるでしょうか。

 議決権行使書を提出し、総会には出席しない株主にとっては、FGHのことなど
何ら知らされていません。ところが、実務ではこれを認めており、先月の上場会社
(ノーリツ鋼機)の総会で実例が発生しました。

 なぜ、こんなことが許されるのかといいますと、「取締役5名選任の件」が総会
の「議題」とするなら、5名を誰にするかは「議案」だから、会社の提案であるA
BCDEを動議で修正するのは自由であるという考え方からです。総会招集通知に
記載された内容は、単に会社提案にすぎないというわけです。

 では、「取締役ABCDEの選任の件」という議題にしたら、FGHを選任する
ことは、議題に反することになるのかという疑問が生じますが、このあたりは議論
のあるところでしょう。「ABCDE」の部分どころか、「5名」についても、そ
れは議題にはならず、議案に過ぎないから修正ができるという考え方もありますし、
少なくとも「5名」は議題の一部で、6名の選任はできないなどといった考え方も
あります。

 昔(平成12年)、上記をテーマに東京司法書士会で研究発表をしたことがあり
ますが、まさか、いま頃、上場会社で実例が生じるとは予想もしませんでした。



2008.07.18(金)【会社分割の個数】(金子登志雄)

 甲と乙がそれぞれ事業を分割し共同して丙を設立することを「共同新設分割」と
いいますが、甲と乙がそれぞれ事業を分割し共同して丁に吸収分割することは、
「共同吸収分割」とはいいません。なぜでしょうか。

 先般からご紹介しております平成20年6月25日民商第1774号の背景思想
に原因があります。すなわち、上記の吸収分割は、甲丁吸収分割と乙丁吸収分割の
2個の吸収分割であり、それが一緒に行われるだけだと考えるからです。  

 これに対して、新設分割の場合は、会社の設立行為ですから、甲が丙を設立し、
乙が丙を設立する2つの設立行為だとはいえないので、「1個」の「共同」新設分
割というわけです(もっとも、計算規則82条は、それぞれ個別に設立した仮の会
社が新設合併するとみなした会計処理を定めています)。

 1個の共同「新設」分割はあっても、1個の共同吸収分割はないという考え方は、
商法時代からそうでした。また、商法時代の会社分割の条文にも「(営業を)承継
セシムル」行為とあり、主役は分割会社であり、事業の受け皿会社ではないと規定
していました。会社法と同じです。

 会社法になって、吸収合併についても「(権利義務全部を)承継セシムル」側から
定義したのは、こういった背景もあるでしょう。民商第1774号は、この思想に
あわせたわけですが、以上のとおり、商法時代と考え方がそう変化したわけではな
いため、いま頃になって、登記記載方法を大幅に変更する必要があったのだろうか
という疑問が残ります。実務家としては、原理主義は窮屈です。



2007.07.17(木)【ドラえもんソフト】(富田太郎)  

 6月下旬から7月初旬は、商業登記中心の司法書士事務所にとって、1年で一番
忙しい時期でした。3月決算会社の定時総会後の登記が目白押しだったからです。
 私も、出版社からの原稿督促に、「締め切り??この時期に、何を非常識なこと
言っているのですか!(怒)」と逆切れするほど、てんてこ舞いでした。

 多忙なときに、注意しなければならないのは単純ミスです。会計監査人の重任登
記を忘れていないか? 申請書の記載事項の打ち間違いはないか? 等々です。

 「ストックオプション・種類株式」など登記の記載事項が膨大になる場合は、と
くに打ち間違いがないよう慎重にしなければならず、ホトホト疲れます。

 そんな愚痴を、ESGの仲間である田中さんに話したところ、
「パソコン音痴の富田さん!PDFをワードやテキスト文書に変換できるソフトが
あるのを知らないのですか。紙の議事録の必要な部分をPDFで取り込んで変換す
れば、最初から打ち込む必要はありませんよ」と丁寧かつ親身になって教えてくれ
ました。

 知っていたら、徹夜して「一字一句」打つわけないですよね(汗)。

 ついでに、田中さんに「原稿の簡単なプロット、あらすじだけをインプットした
ら、完璧な原稿に変換してくれるソフトがないでしょうか?」と尋ねると、
「それは・・・・『ドラえもん』にでも頼んでください(怒、怒)!」と、いきな
り怒られてしまいましたが・・・・(汗)。

 いくつになっても、ドラえもんと友達になりたい私でした。


2007.07.16(水)【味と匂い】(佐々木大介)

 先日、洞爺湖サミットが終わりましたが、そこでは、食糧難が議題に上っていま
した。
 おかげさまで我が家は、現在のところ、食糧に困ることはありません。本当に有
難いことだと思います。

 私は、味にうるさい方ではなく、むしろ鈍感な方です。数年前、1年以上前の缶
ビールを数人で飲んだときに、私だけ「うまい!」といって、周りを凍り付かせま
した。その程度の味覚ですから、どのような食事でも有難く頂くのですが、水のに
おいだけは、どうしても気になります。

 東京の水があまりおいしくないことは有名ですが、その水を食事に使うと、その
食事に、水のにおいが出てくるように感じるのです。とはいえ、食糧難ですから、
食べるものがない人もいますので、食べられることに感謝し、有難く頂くように努
力しています。

 水のにおいが気になる私ですが、元来、鈍感な人間です。先日、担々麺を食べて、
お客様のところに行って打合わせをして、自宅に帰ったところ、家族に「担々麺の
においがする!」と言われてびっくりしました。お客様もきっと「担々麺を食べた
な」と思ったことでしょう。こういうのは、後になって急に恥ずかしくなるもので
すね。

 こんな鈍感な私に文句を言われる水にも、申し訳ないですね。今日は、水曜日で
す。水の話題を取り上げたことで、水に流してもらいましょう。


2008.07.15(火)【質問:数社合併登記の記載方法】(佐藤典子)  

 皆様、ご無沙汰です。久方ぶりに投稿させていただきます。岡山の佐藤です。  

 最近は、地方でも会社合併・分割が増えていると感じています。
 この徒然で取り上げている吸収合併登記に関する通知(平成20年6月25日民
商第1774号)には、注意しなければいけないと思いました。

 金子先生、確認ですが、今後、甲が乙丙丁3社を同時に吸収合併する事例では、
下記のように3つに区分して記載をするのですね?
 合併存続会社の発行済株式の総数が1800株(普通株式1700株、A種類株
式100株)、1つの合併で普通株式とA種類株式が100株ずつ増えるとして、
下記の@が甲乙合併、Aが甲丙合併、Bが甲丁合併です。

 @「発行済株式の総数並びに種類及び数」   
    発行済株式の総数  2000株
    各種の株式の数  
      普通株式   1800株   
     A種類株式   200株
    平成20年10月1日変更 
 A「発行済株式の総数並びに種類及び数」
     発行済株式の総数  2200株
    各種の株式の数
     普通株式   1900株
     A種類株式   300株
    平成20年10月1日変更
 B「発行済株式の総数並びに種類及び数」
    発行済株式の総数  2400株
    各種の株式の数
      普通株式   2000株
     A種類株式   400株
    平成20年10月1日変更

 また、合併と同時に資本金の額を増加する場合にも、@甲乙合併、A甲丙合併、
B甲丁合併と3つに区分して登記せよという意味ですね。

 でも、発行済株式の総数や資本金の額の増加については、同一日に効力が発生し
ていますから、登記事項を見てもどれが甲乙合併、甲丙合併、甲丁合併の結果の登
記か俄かにはわかりません(無対価合併が加わるとなおさらです)。
 また、@とAは抹消され、Bだけが残りますから、最初からBを書いたほうが効
率がいいと思うのですが、登記の世界では省エネは、流行らないようですね。

(金子)すべて佐藤さんの想定どおりです。この過剰エネルギー消費は、洞爺湖サ
   ミットでも、問題にされなかったようです。



2008.07.14(月)【合併登記記載法その2】(金子登志雄)

 「甲が乙を吸収合併する」「甲が乙を株式交換する」――日常的には、よくこう
使いますが、会社法では、「乙が甲に吸収合併する」「乙が甲に株式交換する」と
いう表現が正しいというべきです。

 会社法2条によると、吸収合併は「会社が他の会社とする合併であって、合併に
より消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に【承継させる】ものを
いう」のであり、株式交換は「株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又
は合同会社に【取得させる】ことをいう」とされています。

 会社法立案者は、商法を否定し商法の逆さまをすることに喜びを感じていたので
しょうか。譲渡制限株式ですら、譲渡側ではなく取得側から構成し、「譲渡による
【当該株式の取得について】当該株式会社の承認を要する旨の定め」のある株式だ
と定義しています。いっそのこと「取得制限株式」と名付ければよかったのに、と
思います。

 この商法時代との逆さまの思考が、甲が乙丙丁を合併することは、会社法では、
 @ 乙が甲に権利義務の全部を承継させること
 A 丙が甲に権利義務の全部を承継させること
 B 丁が甲に権利義務の全部を承継させること
の3つになったのだから、合併で発行済株式の総数や資本金の額が増大したときも、
@の場合、Aの場合、Bの場合に区分けして登記しなければならないとされたわけ
です(平成20年6月25日民商第1774号)。

 しかし、甲からみれば、乙丙丁から同時に3社の権利義務全部を承継したわけで
すから、従来のように一括して登記簿に記載したところで、会社法の考え方に反す
るとまではいえないでしょう。

 結局のところ、一括登記の是非は、商業登記の公示性の要請をどこまで貫くかと
いう問題のような気がします。何十年と続いた省エネの記載法を否定してまで個別
記載の公示性を重視する必要があったのかという疑問は、いまだ残ります。10社
合併において全部の合併で株数が増大すれば、従来はまとめて1行の記載で済んだ
のに今後は10行の記載になります。10行記載して最後の行だけ残し、9行を抹
消します。最後の結果は従来と同じです。



2008.07.11(金)【合併登記記載法の変更】(金子登志雄)

 9日付の日本司法書士会連合会のネットに、吸収合併の登記に関して法務省から
の重要な通知が紹介されていました(平成20年6月25日民商第1774号)。

 東京法務局からの質問に対する回答でしたが、内容は、例えていうと、甲が乙丙
丁3社を吸収合併する場合に、従来は、甲の登記簿の「吸収合併」という項目の部
分に「平成20年4月1日東京都・・・株式会社乙、大阪府・・・株式会社丙及び
福岡県・・・株式会社丁を合併」などと連記して登記してもよかったが、今後は、
「平成20年4月1日東京都・・・株式会社乙を合併」
「平成20年4月1日大阪府・・・株式会社丙を合併」
「平成20年4月1日福岡県・・・株式会社丁を合併」
と3つに区分けして登記しなければならないというものでした。

 東京法務局の質問は、申請まで3つに区分けしてするかのようなニュアンスでし
たが、回答は、申請は1つにまとめてよく、登録免許税もまとめて計算してよいが、
登記記載だけを上記のようにせよという内容でした。  

 変更理由は、会社法になって、この合併は明白に甲乙合併、甲丙合併、甲丁合併
の3つになったのだから、登記もそうすべきだというものです。
 しかし、それは商法時代も同じはずです。商法時代も、乙の登記簿には「甲に合
併して解散」と表示され「甲丙丁と合併して解散」などとは記載されていません。
乙がなす債権者保護手続も「甲と合併するが異議がないか」という内容であって、
「甲丙丁と合併するが異議がないか」などとはしていません。商法時代も、原則と
して、甲乙合併、甲丙合併、甲丁合併の3つと考えられていたからです。

 いまでも、合併契約書や合併公告は、甲乙丙丁連記が一般です。上場会社のダイ
エーが平成18年7月1日になした子会社11社の吸収合併をはじめ、実例のほと
んど全部が登記方法も連記方式でした。私も、何十年と、この方式で登記してまい
りましたし、今年の数社合併の登記でも、そうしてきました。

 なぜ、いま頃、急に、こんな変更をするのでしょうか。鞭打ち症になってしまい
ます。会社法施行後2年も経過しているというのに・・・。
 この件に限らず、株主割当てと第三者割当てを同時に実行した場合、募集株式の
発行と自己株式の処分(差損の発生する事案)を議案を分けて実行した場合、合資
会社の複数の有限責任社員の持分をある1人に集中させた場合など、まとめて登記
しても受理されるケースが多々あったのに、こと吸収合併に関しては、そういう融
通は利かないという回答には疑問を禁じえません。公示機能は従来型でも十分に果
たしているとみてよいのではないでしょうか。  

 この回答は、吸収分割でも同じだと思われます。「東京都千代田区内幸町一丁目
1番5号株式会社第一勧業銀行、東京都千代田区大手町一丁目5番5号株式会社富
士銀行、東京都千代田区丸の内一丁目3番3号株式会社日本興業銀行から分割」と
いう株式会社みずほホールディングの有名な登記記載例(当時は登記が効力要件だ
ったため日付は入らない)は、今後は、できないことになります。

 どうでもよいことかもしれませんが、新方式は他の登記にも影響しますし、履歴
事項の登記簿の枚数が増えることだけは確かです。こういう重要な変更については、
ぜひ、半年間程度の周知徹底期間を置いていただくよう強く希望する次第です。

 拙著(『組織再編の手続』)の読者のみなさん、150、151頁の記載法は、
何十年と続いた伝統的な従来型ですので、ご注意ください。



2008.07.10(木)【この時期に役員報酬のアップ?】(大戸早規子)

 平成2年のバブル時代に、人並みに株式投資とやらをしてみました。その後は、
お決まりの「塩漬け状態」ですが、配当だけはなされています。微々たる額だとし
ても、実に嬉しいものです。

 さて、せっかく上場株式を持っているわけですから、私も株主総会の勉強をしよ
うと、今年初めてその会社の定時株主総会に出席してみました。開始10分前に到
着した私の受付番号は6168番。ホテルの大宴会場に椅子がびっちりと並べられ、
開始と同時にひな壇の幕がまるで学芸会の劇が始まるときのように上がりました。
目にした光景はまさに6月26日の徒然に金子先生が書いたとおりでした。

 議案の審議の段階に至ると、ある株主が質問しました――「総会資料を拝見した
ところ、前期に比べると、役員の報酬等の総枠が45%もアップしているが何か理
由があるのか。従業員の給料は横ばいだというのに、役員だけそんなに貰っていい
のか。」

 なるほど。いい質問だと思い、危うく「そうだそうだ。」と賛同するところでし
た。

 アップの理由は何だと思いますか。役員の数が増えたわけではありません。
 何と、「会社法」でした。商法時代は、役員の賞与は報酬には含めておらず、別
途、利益処分案として総会に上程されていたのですが、会社法では、賞与その他の
職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益(会社法第361条第1項)を
すべて含めて「報酬等の額」としているので、報酬が45%も増えたような誤解を
株主に与えてしまったということです。

 株主総会どころか、生きた会社法の勉強までできました。一度は、株主総会に出
席してみるものですね。


2008.07.09(水)【速読と国家試験】 (金子登志雄)

 佐々木さん、どうもありがとう。助かりました。あまりに本を読むのが遅く、右
脳が全く働いていない私は、ちょうど、左手で箸をもつ練習をしようかと思ってい
た矢先でした。もちろん、佐々木さんの投稿を機に、きっぱりやめました。

 佐々木さんもご存知のとおり、6日は司法書士試験日でした。記述式問題は、例
によって分量が多く、読むのが遅い受験生には不利だったようです。私のように読
むのが遅いじっくり型は、仮に実力十分でも、最初から合格可能性がありません。
老い先の短い私はともかく、これから国家試験を目指そうとする方には、速読技術
の習得が必要でしょう。左手で文字を書く練習をしても右脳は発達しませんかね。

 なお、商業登記の記述式問題は、種類株式・種類株主総会の問題が絡めてありま
した。ESGの『これが新増減資だ種類株式だ』の読者なら、このあたりは容易だ
ったでしょう。会社法199条4項の種類株主総会の要否については、実務家も忘
れやすい論点ですが、受験生は気がついたでしょうか。

 これを機に、拙著を含む種類株式本が3万人規模の受験生に売れてくれたらうれ
しいのですが、この徒然の閲覧者には受験生はほとんどいません。読むのは遅くと
も、あきらめるのを早くする練習と思い、本の売れ行きは、あきらめましょう。

 ちなみに、新著の『これが増減資・組織再編の計算だ』も、自信作なのですが、
書店によって、会計のコーナーに置かれたり、法人税のコーナーに置かれたりし、
会社法のコーナーに置かれていないことが多いようです。売れ行きにつき、神様は、
あきらめる訓練を私に課しているのでしょうか。


2008.07.08(火)【速読はできませんが……】(佐々木大介)

 田中さん、昨日は流れ星見えましたか? 流れ星に願いをかけなくても、速読は、
きっとできたでしょうね。

 金子先生が、勝間さんのように早口の人はきっと右脳が発達しているだろうから、
速読のマスターも早いでしょうとおっしゃっていました。

 私は別の方法で、右脳を発達させようとしたことがあります。
 大学4年の時、友達が右手を骨折して、右利きの彼は箸が持てなくなりました。
ところが間もなく彼は、左手で箸を持って食事をしていたのです。

 「左利きの人は右脳人間」ということをテレビか何かをみて覚えていた右利きの私
は、左手を使うと右脳が発達するのではないかと考え、左手で箸を持つようにしまし
た。
 右手で箸を持つ形を覚え、そのイメージを忘れず、左手で箸を持ち、練習しました。
初めは非常な違和感がありながらも、ジャガイモを串刺しにして食べられるようにな
り、ミニトマトなど少しい大きいものをつまめるようになり、大豆をつまめるように
なり、次第にご飯粒もつまめるようになりました。

 確かに、左手で箸を持つことはできるようになりましたが、しかし、右脳が発達し
たか、と問われますと、そのような実感が全くありません。

 今、左手で箸を持って10年経ちましたが、気がつくと、普通に左手で箸を持って
食事をしています。所期の目的は達成できませんでしたが、妙な充実感があります。



2008.07.07(月)【星に願いを♪】(田中利和)

 最近、本屋に行きますと、やたらと、勝間和代さんの本が平積みになっているこ
とに気がつきました。テレビ番組、『情熱大陸』に出演なされたので、さらに知名
度が上がったといったところでしょうか。

 さて、私もその番組を見ていましたところ、勝間さんが本を読むシーンが出てき
ました。番組のナレーションによると、勝間さんは速読をされているようでした。

 『やはり、ここまでなるには速読も必要か! 私も速読講座を受講しよう!』と
一念発起し、先月末、一日だけの講座に行ってきました。速読は、一言でいうと、
訓練だということです。訓練次第で、ある程度の速度で読むことができるようにな
るというものです。

 1つだけ、その方法を紹介しましょう!
 読み方は、文章の字面を一文字づつ追うのではなく、文章の一塊を一気に読み取
る感じです。前者が”点”で捕らえるのに対し、後者は”面”で捕らえるといった
イメージです。自分の読み取れる限界スピードを少し超えるスピードで読み取って
いきま す。

 これを毎日一時間程度続けます。スピードが上がってきたところで、さらにスピ
ードを上げます。これを繰り返しているうちに、次第に読むスピードが速くなると
いうものです。
 要は自分の能力の限界点を少しづつ上げていき、それを超えるというものです!
 「なんだ、簡単じゃないか?」「これならできそうだ!」 確かに、出来そうで
すよね。

 ところで、田中は出来るようになったのか、ですって? 
・・・・・・・(^_^;)。

 今日は七夕です! 速読が出来るよう、流れ星に向かって祈ります(笑)


2008.07.04(金)【年金記録記入漏れ事件??】(富田太郎)

 私は資料・本などの収集癖があり、膨大な資料を整理するのが大好きです。また、
必要のなくなったものも、捨てずにファイリングし、保存しておくという無意味な
性癖?があり、家族から、よく怒られています(涙)。

 ところで、「年金記録の記入漏れ」が社会問題となっていますが、驚くべきこと
に、5000万件!にのぼる対象者の分からない年金記録があるそうです。

 私の加入歴は、「サラリーマン時代の厚生年金」、退職後、「司法書士になって
からの国民年金」と、単純なケースなので、関係ないなぁ〜と楽観視していたとこ
ろ、数ヶ月前、突然、社会保険庁より、「年金記録のお知らせ」がきました。記録
漏れの可能性のある対象者に送付されるお知らせのことです。

 みると、私が10年以上支払っていた厚生年金の加入歴が、欠落しているではない
ですか(怒、怒)。えぇぇ!サラリーマン時代の勤めていた会社は倒産し、この世
には存在しない。どうやって、証明するの(怒、怒)!

 慌てて自宅の書庫を探すと、「会社時代の資料@」というファイルに「当時の給
与明細、離職票、会社の事業報告書、会社の倒産記事」等々の膨大な資料が出てき
ました(でも、なんでこんなものファイルングしていたのか?不思議です?)。

 これらの資料を添付し、正しい内容に訂正申請し、今回は事なきをえましたが、
まさか、自分の収集癖が役に立つとは思いもよりませんでした(汗)。

 皆さんは大丈夫でしょうか??

PS
 社会保険庁からは、お詫びではなく、「修正された記録」とともに、「調査確認
をしましたので、別添のとおり回答します」という紙が郵送されてきました・・・
・。

 調査?資料を提出し、死に物狂いで調査をしたのは、私なんですけど・・・(汗)。



2008.07.03(木)【無対価会社分割の考え方】(金子登志雄)

 100%子会社(完全子会社)間で、あるいは完全親会社が完全子会社に金1億
円の純資産額の事業上の権利義務を会社分割で他に承継させ、受け皿側が無対価で
対応したとしましょう。1億円の価値を受け取ったのに、何も支払わなかったケー
スです。共通の親からみれば、こちらで損をしても、他方で得をしますから、何の
損もありません。

 この無対価を金0円の現金交付と考えると、受け皿会社には、金1億円の負のの
れんが計上され、受け皿会社の純資産額に変化が生じません。株式を交付していま
せんから、株主資本(資本金等)の変動は生じないということです。また、分割会
社では、株主に分配する受け皿会社の株式を取得していないため、分割型会社分割
にはなりません。分割型会社分割であるためには、対価として株式を受け取り、そ
れを株主に分配することが必要だと会社法で定められたからです。

 この無対価を株式0株の株式交付と考え、受領株式0株を株主に分配したのだと
無理やりみなすと、受け皿会社では、資本金の計上はともかく、その他資本剰余金
の計上や、その他利益剰余金の計上であれば認めてよいだろうということになりま
す。会社計算規則は、この立場です。そのため、このような無対価分割では、のれ
んを計上しないのが通常です。  

 もっとも、後者には2つの点で問題があります。1つは、会社の計算という局面
でみなすことができるだけで、債権者保護手続まで分割型会社分割として扱われる
わけではないことです。分割会社で財産の減少が生じるのに、分割会社に債権を追
及できる債権者の保護手続がありません。
 いま1つは、完全子会社間や完全親会社が完全子会社になす会社分割でないと、
株式0株交付の思考をしないことです。完全親子関係にないと、のれんの問題にな
ります。完全親子関係を外部株主0人とは考えないようです。

 ということで、分割型会社分割を「受領株式の分配」と構成したことに相当の無
理があるように思いますが、いかがでしょうか。(この問題に関心のある方は、5
月30日の徒然もみてください)。


2008.07.02(水)【郵政民営化】(佐々木大介)

 郵政民営化後半年以上立ちましたが、先日、株式会社の設立登記を依頼された際、
はじめて、株式払込金を発起人の郵便貯金銀行(ゆうちょ銀行)の口座に振り込んで
もらいました。

 株式の払込みは、銀行等に払い込まなければならないと規定されているため(会社
法34条2項、208条1項)、郵政民営化前の「郵便局」は、銀行等には含まれず、
株式の払込みとは認められませんでした。郵政民営化により、郵便貯金はゆうちょ銀
行に移管され、その口座への入金でも、大丈夫になったという次第です。
 といっても、初体験のため、登記が完了するまでは不安でしたが、無事完了して、
ようやく胸をなで下ろしたというのが本心です。  

 ところで、郵政民営化により変わったと思われるものに、切手があります。80円
切手、50円切手は、デザインが変わったものが出回っています。しかし私がよく利
用する10円・20円・120円・140円・270円切手については、デザインが
変わったものを目にしたことがありません(ご存知の方がいたら教えていただきたい
と思います)。何故そうなったかと考えまして、思いついたのが「よく使われるもの
から在庫がさばけて、新しいデザインのものが出てきたのだろう」ということでした。

 80円切手は封書の最低額ですし、50円切手も私製葉書や懸賞の応募などでよく
使いますので、私の仮説も、あながち間違いではないと思いますが、いかがでしょう
か。


2008.07.01(火)【同じ自己株式処分差益でも・・・】(金子登志雄)

 簿価100の自己株式を処分して120の財産を受け入れると、この「自己株式
処分差益」20は、その他資本剰余金に増額計上されます。そうでなく、80の財
産を受け入れると、「自己株式処分差損」20がその他資本剰余金から減少します。
これが基本です(@)。

 では、新株式の発行と自己株式(簿価100)処分を同時に行い、新株式で80、
自己株式で80の合計160を受け入れると、新株の80が資本金等に、自己株式
処分差損の20がその他資本剰余金から減額されるのでしょうか。
 そうではなく、一括して、「募集株式発行等の差益」60で考えます(A)。  

 × 新株分80は資本金等に、自己株式の差損20はその他資本剰余金に  
 ○ 合計額の60が資本金等に

 新株式で40、自己株式で40の合計80を受け入れると、「募集株式発行等の
差損」20は、その他資本剰余金から減額されます。  

 × 新株分40は資本金等に、自己株式の差損60はその他資本剰余金に  
 ○ 合計額の△20がその他資本剰余金に  

 次に、合併対価として簿価100の自己株式を利用し、120の財産を受け入れ
た場合はどうでしょうか。この場合の差益20も、@の自己株式処分差益と考えず
に、「合併差益」と考えて、資本金・資本準備金・その他資本剰余金に自由に配分
できます(B)。
 自己株式のみを対価にしたのに、資本金を増額できるわけです。ただし、80の
財産を受け入れた場合の「合併差損」20は、その他資本剰余金の減額です。債務
超過の△80を受け入れた場合は、合併差損180になりますが、100はその他
資本剰余金から減額され、80については、その他利益剰余金から減額されます。

 同じ自己株式に関する差損益でも、@ABという相違がありますので、ご注意く
ださい。とくに、AやBの差損益の場合は、増資差損益、合併差損益という発想が
必要で、個別に自己株式処分差損益と思考しないことが重要です。



2008.06.30(月)【これが増減資・組織再編の計算だ】(金子登志雄)

 前著に引き続き、会社の計算の本を出版しました。表題の題名であり、今週中には
全国の書店に並ぶはずです。

https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-96920-1  

 前著(「これが計算規則だ株主資本だ」)は、難解な会社計算規則を読み解けるよ
うになることを主目的にした本でしたが、今回は、日常よくある事例をターゲットに
した実務書にいたしました。あえて、仕訳(しわけ)での説明を排しましたので、計
算に弱い法律関係の方にも、わかりやすく役立つ内容になったと思います。

 前著は、会社の計算をテーマにした本の中では上位の売上げですが、残念ながら、
私の著書の中では、売れ行きの悪い部類に入り、このテーマの本は、意外にも部数が
でないことを身をもって知りました。街の会計事務所さんは、税務には関心があって
も、会社の計算には関心が薄いようです。

 冠婚葬祭と同様に非日常事件である組織再編等の計算を身近に感じていただけなか
ったのが原因かもしれません。あるいは、計算(会計)の詳細を知らなくとも、税務
の日常業務には支障がないのかもしれません。

 ということで、会社の計算については、現段階では、少なくとも私の周囲をみる限
りにおいては、商業登記中心の司法書士のほうが会計事務所さんより、先を進んでい
るように思います。

 全国の会計事務所のみなさん、今度の本は、日常的な増減資と企業のグループ再編
を中心にした実践的内容ですので、ぜひ書店でお手にとってみてください。よろしく
お願いいたします。もちろん、司法書士や弁護士にとっても、最小限、知っておく内
容です。副題を「計算を知らずして会社法を語る勿れ!」としました。挑発的すぎた
でしょうか。



2008.06.27(金)【補欠と後任】(金子登志雄)

 定時総会時期ですが、まだ任期があるのに辞任する役員がいたりするため、その後
任役員などを選任している会社も少なくありません。

 問題は、この後任役員の任期です。というのは、多くの会社が定款に補欠役員の任
期は前任者の残存期間と定めているため、この後任役員がそれに該当するかどうかの
判断で迷うからです。

 しかし、この判断は容易です。「補欠の会社役員である旨」を明示して選任しない
限りは、単なる後任役員であり、任期も通常どおりだからです。

 もっとも、商法時代は、補欠とは他の役員と任期を合わせるための制度とされ、た
とえば、「監査役Aが任期1年を残して辞任したため、後任としてBを選任した場合
には、他に監査役Aと任期を同じくする監査役Cが存在すれば、Bの任期はAの残任
期間の1年だが、監査役Aが1人だけのときは、Bは補欠になりようがなく、その任
期は、あと4年」とされていました。

 商法の規定から、なぜこんな解釈が生じるのか不思議でなりませんでしたが、会社
法のもとでは、監査役Aが1人だけのときであろうと、Bを補欠として選任した限り、
Bの任期はAの残任期間とされました。こちらの解釈のほうが正当でしょう。

 今年の総会議事録の定め方をみている限り、社外役員かどうかを明記するのと同様
に、補欠役員かどうかを明記している例が多いため、任期問題につき、今後はそう問
題になることはなさそうです



2008.06.26(木)【開かれた株主総会】(金子登志雄)

 22日の日曜日に開催されたエイベックスの定時株主総会は、会場が埼玉県のアリ
ーナで、8910名(午後は同社所属のアーチストによるショーが予定されていたた
め同伴者を含めると1万5000名)も株主が集まったそうです。こうなると、株主
総会というよりも、1年に1度の大イベントですね。

 こういう開かれた株主総会の最初はどこの会社か知りませんが、ソフトバンクあた
りではないでしょうか。11年前に出席したことがありますが、数千人の株主が出席
し、役員席には一人ひとりノートパソコンが置かれ、議長の孫さんの頭上には大きな
スクリーンが置かれ、映像で事業報告等を説明する・・・、株主の質問にはすべて孫
社長が丁寧に対応して答える・・・、月曜日に取り上げた閉ざされた総会の横浜の某
社とは雲泥の差でした。

 私が役員を務めるアクモスでも、平成8年の株式公開以来、ずっと開かれた総会に
しています。地方の株主様も出席しやすいように午後開催にもしています。理想はエ
イベックスのように日曜日の開催ですが、残念ながら日曜日はホテルが会場として貸
してくれません。結婚式優先だからです。公民館風の会場なら、日曜日開催も可能で
すが、機材の備えも不十分で、お茶も出せません。

 当ESGもこの徒然の閲覧者が毎日5万人を超えるようになりましたら、ご近所の
東京ドームでも借り切って、総会を開催してみたいものです。



2008.06.25(水)【ごあいさつ】(梅田幸志)

 みなさま、はじめまして。このたび、金子先生のはからいによりまして会友に加え
ていただいた品川の司法書士梅田と申します。

 さて、みなさまは新規加入の私のことを、「新進気鋭の司法書士の登場か!?」と
思ってくださったかもしれませんが、残念ながら、年齢50代のおやじ司法書士です。
ご期待に反して申し訳ありません。その代わり、業務歴は20年近くになりますので、
業務面ではお役に立てると思っております。

 企業法務歴20年以上の年長の金子先生とは、前々から一緒に大きな登記案件等で
動く仲(難しいことはすべて金子先生の担当です!!)で、ときどき二人三脚で仕事
をさせて頂いています。
 とくに、このESGには、司法書士にはめずらしく、上場会社やベンチャー企業に
ついて明るい方が多いので、そういう案件のときに助けられています。  

 今後は、持ちつ持たれつの関係をESG全体に広げられ、当事務所の顧客サービス
もより一層レベルアップができるかと思うと、非常に楽しみです。
 どんな問題に対しても自分のことのように真剣に取り組むことを心掛けております
ので、どうぞ、みなさま、今後ともよろしくお願いいたします。



2008.06.24(火)【私にも移せました!】(金子登志雄)

 昔、扇千景(おうぎ・ちかげ)さんという女優(のちの参議院議長)が、操作がむ
ずかしいと思われていたカメラを手に持って、「私にも写せます」とニコと微笑むテ
レビCMが人気を集めました。

 昨日は、私も思わず、「私にも移せます」と、ニコと微笑みたくなりました。

 というのは、今週は上場会社等の株主総会のピークで商業登記申請の書き入れ時だ
というのに、法務省が電子申請用システムのプログラムを変更したため、昨日中に、
その入れ替え作業が必要だったのです。

 先週まで使用していた旧プログラムの全部が無意味になるというので、パソコンに
もオンラインにも興味も知識もない私にとっては、「唖然、ぼう然」とするはずの日
だったのですが、親しくさせていただいている株式会社リーガルの「かいけつ!オン
ライン」を半信半疑で恐る恐る操作しましたら、何と、いとも簡単に、新システムへ
の移行作業を終えることができました。

 やはり、「餅は餅屋」ですね。半信半疑で疑いながらの操作を恥じ入りました。
 こういう便利なソフトを利用せず、ご自分で入れ替えた司法書士の方も多いかと思
いますが、私にとっては、クラッチ車でエンストを起こすよりは、便利なノークラッ
チ車です。おかげさまで、今週も安全運転でいけそうです。


2008.06.23(月)【定時株主総会】(金子登志雄)

 今週は3月決算会社の定時株主総会のピークです。上場会社のご担当者は、1年に
1度の大イベントにミスがないように緊張なさっていることでしょうが、いわゆる総
会屋さんの問題は、最近ほとんど耳にしなくなりました。

 10年ほど前までは、総会の開催前に地元の警察に万が一のための挨拶に行ったり
(私も会社の総務担当役員として、これを経験しましたが、担当刑事さんのほうが総
会屋よりも怖い顔をしていました)、社員(従業員)株主で役員席(いわゆるひな壇)
の前をガードしたりする企業が多かったのですが、最近はその必要も少なくなったよ
うです。

 その当時、私も株主総会の運営の勉強のために、何社かの総会に出席したことあり
ます。もちろん、株主としてです。
 横浜の某社は、上記のようなガードの固い会社でした。議長が「それでは、質問を
受け付けます」と発言したので、私も何か質問しようかなと思う間もなく、間髪を入
れず、「議事進行!議事進行!」という社員株主や取引先株主の大合唱で遮られてし
まいました。腹が立って、「もう2度と、こんな非民主的な会社の株主総会にはでる
ものか」と思ったものでした。

 後日、そのことを知り合いの総会担当の証券代行(信託銀行)の方に話しましたら、
彼がいいました――「株主にそう思わせたのなら、大成功の株主総会ですね。会社と
しては、株主に来てほしくないのですよ」。

 いまは、こんな対応の会社は、ほとんどないでしょうが、外資系ファンドの株主に
は来てほしくないというのが経営者の本音かもしれませんね。



2008.06.20(金)【同時行為の考え方】(金子登志雄)

 昨日は、辞任と退任が同時だった場合に、どちらを優先するかという問題を取り上
げましたが、こういう「同時行為」は、面白い議論を生みます。

 昔からある100%減資、たとえば資本金2000万円の会社が資本金の全額を減
資し、同時に1000万円の増資をした場合です(現行法のもとでは同時でなくとも
問題ありません)。
 これにつき、登記上は、「資本金0円→資本金1000万円」と表示していました
が、最低資本金制度のある時期は、資本金が1000万円を下回るのは違法だという
説もありました。肯定説(実務)は、同時に増資し、最低資本金未達成状態は、一瞬
もないから適法だと説きました。

 これにつき、私は、減資の登記を先にするから、上記のように資本金0円と表示さ
れるだけで、先に増資を申請すれば、「資本金3000万円→資本金1000万円」
と表示され、最低資本金未達成状態は一瞬もないことが明らかであって、違法説は、
「同時行為」を曲解(きょっかい)するものだと批判していました。

 甲と乙の合併では、甲の合併と乙の解散が同時に行われます。昔の通説(人格合一
説)は、甲と乙が1つの会社になり(資本金等も合算され)、その結果として、乙が
解散するものだと説き、有力説(現物出資説)は、会社の実体である事業を現物出資
するものであって、資本金等が引き継がれるものではないと説きました。

 私は、後者の立場から、通説は先に合併し、あとに解散と考えているが、解散して
から合併するのであって、必ず資本金等が引き継がれるという考え方はおかしいと批
判していました。現に、当時の商法には、解散の節に合併の規定が存在しました。  

 登記上は、乙の登記簿に「甲に合併して解散」と表示する慣例ですが、私としては、
いまでも、正確に「解散して甲に合併」と表示したい心境です。

★お知らせ★
 隠れ会友であった品川の梅田事務所が、表にでてくれました。どうぞ、よろしく。



2008.06.19(木)【会計監査人の総会終結時の辞任】(金子登志雄)

 資本金5億円以上の株式会社(大会社)は、公認会計士や監査法人を会計監査人と
して置かなければなりません。任期は1年で、定時株主総会の終結時に満了します。
毎年、再任(重任)の登記が必要ですから、司法書士には、ありがたい制度です。

 では、毎年、選任し直すのかというと、その必要はなく、会社法で定時総会で何も
決議しなければ、自動再任だとされています。登記の添付書類は、その何も決議して
いない総会議事録(再任日の証明にもなる)と会計監査人の資格証明書です。  

 ここで、昨年度、面白い事例がありました。監査法人から定時総会終結と同時に辞
任するという辞任届が提出されたのです。

 辞任というのは任期中でなければできませんから、これを総会終結と同時に自動再
任し同時に辞任したと考えれば、再任の登記と辞任の登記の2つをすることになりま
す。この辞任届を再任されても就任しないという意思表明だと考えると、退任の登記
になります。しかし、退任の登記に辞任届を添付するというのもおかしなものです。

 法務局と協議した結果、定時総会終結と同時に辞任したという登記でよいことにな
りました。辞任と退任が同時期に発生したわけですが、当事者の意思を優先し、辞任
が一瞬早かったとでも考えるのでしょう。
 ちなみに、これが監査役だったら、そのような辞任届があっても、任期満了を根拠
に退任の登記で処理するのが通常です。


2008.06.18(水)【住民税】(金子登志雄)

 「ウォー!」とか、「ウッシャー!」とか、ESGが動物園になったのかと思われ
てしまいそうです。

 住民税の件ですが、確かに慣れないと、不意打ちを食らった気分になりますね。給
与生活者(サラリーマン)のときは税金が月々天引されていたため意識しませんでし
たが、自由業になると天引してくれる人もおらず、4月の所得税と消費税納付で税金
問題は終わった気分でいると、突然、6月に追い打ちのように住民税の通知が来ます。
奇声の1つも発したくなります。

 給与生活者の方からみれば、だから自由業や自営業は、税金対策ができるのじゃな
いかといわれそうですが、個人業者の司法書士などは、いかに売上げを増やすかには
神経を使っても、節税対策までは気がまわらないものです。また、明日の仕事がある
か不明の受注産業で、自転車操業でもありますから、それだけの余裕もありません。

 でも、富田さん、人並みに税金を納められる身分になったことを喜びましょうよ。
勝手気ままな「超」自由業生活(傘張り浪人)を長期に謳歌してきた私にとっては、
過去に、いい歳して年収200万円以下のことも多く、友人等との会話で税金の話題
になると惨めな思いをしたものでした。  

 収入の不安定な自由業の場合には、住宅ローンを組むようなときも、悲哀を味わい
ます。安定した公務員や給与生活者に借入限度額で負けてしまいますから・・・。そ
んなときは、ちょっと、左腕のYシャツを捲り上げて、これ(カルテエ バロン・ブ
ルー)がみえないかと大見得をきるしかありません。そして、事務所で1人になった
ときに、「ウッシャー!」と自分を鼓舞するわけです。


2008.06.17(火)【ウッシャー!】(富田太郎)

 田中さん、確かに「ウォー!」などと気合をいれて仕事をするといいですね。
私も、原稿に取り掛かるときは、まず『A・猪木のテーマ曲:炎のファイター/イノ
キ・ボンバイエ』の曲をかけ、「ウッシャー!」と気合をいれてから書き始めます♪

 つい、先日も「ウッシャー!」と気合(?)をいれました。
 所得税も消費税も払い終えて、この1〜2ケ月、猛烈に働きましたので、かねてよ
り欲しかった「カルテエ バロン・ブルー」(時計)を買おうかなと思っていた矢先
に忘れていた市区町村税・県民税の通知が来たのです。

 なんだ〜ぁ!! これ・・・・・・・・・(号泣)。
 時計・・・・・それどころじゃないやぁ・・・。
 なんというタイミングだ! 思わず、「ウェー!」と泣きたくなりました。

 「ウッシャー!」「欲しがりません。払い終えるまでは!」
 「ウッシャー!」「私は我慢強いのだ!」
奇声のひとつでも発しなければやってられません。

 でも、払い終えると、また来年の税金の時期が来るのでしょうね・・・(涙)。
はぁぁ〜・・・・(ため息)。


2008.06.16(月)【ウォー!】(田中利和)

 いや〜もうすぐオリンピックですね。水泳ではスピード社のレーザーレーサーなる
ものが席巻しているそうです。水着によって成績が左右される時代なんでしょうか。  

 砲丸にしてもそうです。オリンピックの陸上競技の砲丸投げの砲丸を作る辻谷工業
社長の辻谷政久氏が作る砲丸は、他の砲丸と比べて距離が1〜2メートルも差がでる
そうです。

 でも記録を伸ばす方法は、水着や用具だけではありません。砲丸を投げる際に、
「ウォー!」とか「オォー!」と声を出す選手を見ることってありませんか?

 これって、実は、身体能力のリミッター(抑制機)を外しているそうなんです。人
間は潜在能力の一部しか使いきれていないそうです。使いきれていないというよりは、
使わないようにできているそうです。すべての力を出し切ってしまうと、身体はボロ
ボロ、骨も折れてしまうそうです。

 そこで、一瞬でも、より力を出そうと思えばリミッターを外せばいいのですが、そ
の方法が「声を出す」ということなんです。  

 水泳の場合も、「ウォー!」と、うなりながら飛び込めば、少しでも遠くに着水で
きると思うのですが、そんなことをする人いませんよね。  

 私?「ウォー」と、うなることはないのかって? 試しに、「ウォー」と、うなっ
てこの徒然を書いてみました。その結果、少しではありますが潜在能力を出すことが
でき、普段にない仕上がりになったと思います(^_^;)。  

 どうでしょう? どうですかねぇ、富田さん、この徒然の出来は?(^_^;)



2008.06.13(金)【定時株主総会の招集】(金子登志雄)

 3月決算の会社が多いためか、6月下旬開催予定の定時株主総会招集手続に向けた
質問が増えました。

Q 2週間前に総会招集通知を発送しなければならないのか。
A 株式譲渡制限会社は原則1週間前です(会社法299条)。会社法になってから
 は、定款でその旨を定めてなくとも、かまいません。

Q 27日(金)開催の1週間前なら20日(金)に発送すればよいのか。
A 20日発送だと、27日の午前0時までに「24時間×7日」に不足しますから、
 19日以前に発送が必要です。「中(なか)1週間」が必要です。

Q 30日(月)開催なら22日(日)ですね。日曜日の発送もよいのか。
A 日曜日の発送でもかまいませんが、1週間の期間満了日が29日の日曜日になり
 ますから、満了日が1日ずれます(民法142条)。21日発送にしましょう。

Q 株主が親族ばかりなので、総会招集は省略したいが・・・。
A 株主全員が承諾すれば問題ありません。株主全員が参加すれば、その瑕疵(かし)
 も治癒されます。

Q 決算書類のほかに監査報告書も同封するのか。
A 監査役の権限が会計に限定されている場合には不要です(計算規則161条)。

Q 決算については総会で報告するだけでよいのか。
A それは上場会社など会計監査人が設置されている会社の話です。そうでない会社
 は承認事項です。

Q 利益を資本組入れしたいが可能か。
A 資本と利益が厳密に区別された会社法のもとでは無理です。

Q 当期は赤字だが配当することに問題はないか。
A 繰越した剰余金(正確には分配可能額)の範囲なら可能です。


2008.06.12(木)【118番の電話番号】(佐々木大介)

 株式の種類、車内広告の種類、車両の種類と続きましたので、私は、電話番号の種
類でも・・・。
 さて、警察は110番、救急・消防は119番というのは誰でもご存知だと思いま
すが、では、118番は何だと思いますか。

 海上保安庁の緊急用の電話番号だそうです。友人のブログをみて知りました。友人
は、携帯電話から間違えて118番にかけてしまい「海上保安庁です」と出たので、
はじめて知ったそうです。

 そこで疑問が湧いたのですが、110番と119番の間の111番から117番は
どうなっているのでしょうか?

 調べてみました(私も「ヒマ人!」といわれてしまいそうですね)。

111番:着信試験用番号。発信元の電話番号が着信するか確認する番号のようです。
112番:色々調べましたが、分かりませんでした。
113番:NTTでは、電話故障等の相談受付になっています。
114番:NTTでは、相手先の電話が話し中かどうかの調査ができます。
115番:電報の申込みです。
116番:電話の引越その他のサービスを依頼できる番号です。
117番:いわずと知れた時報です。  

 111番や114番は、どういうときに使うのでしょうか? 詳しく知りたい方は、
 http://www.ntt-east.co.jp/phone/telephone/index.html
にアクセスしてみてください。


2008.06.11(水)【女性専用車両】(金子登志雄)

 大戸さん、調査ご苦労様。
 走る電車の車両の全部をチェックするのは女性にしかできないことですね。という
のは、数年前から、「女性専用車両」というものができ、男性は立入禁止だからです。
時間帯によっては立ち入れますが、あんな恐ろしい場所には、近づきたくありません。

 数年前に女性専用車両が設けられた頃、2度ほど間違って乗り込んでしまいました。
1度目は、中年女性から耳元で「ここは女性専用ですよ」とささやかれ、あわてて次
の駅で車両を移動しましたが、実に恥ずかしい思いでした。
 2度目は、急ぎのため飛び乗った車両が女性専用車両であり、すぐに気がつき、次
の駅で乗り換えようとドアの前に立っていたのですが、近くに立っていた若い女性に
強くたしなめられました。その顔は、いかにも「この痴漢風親父!」と詰問している
かのようでした。

 こんなとき、すぐに車両を移動できればよいのですが、車両の中央部分に乗ってし
まうと移動しにくく、次の駅まで居たたまれぬ思いです。目はどこに向ければいいの
か、手はどの位置に置けばよいのか・・・。

 電車とは無関係ですが、弱者保護というなら、女性だけでなく、喫煙者も保護して
ほしいものです。歩き煙草が禁止されているため、砂漠のオアシスたる公園で喫煙し
ていることに非喫煙者からの苦情が行政に殺到しているとか。そこまで追い詰めてい
いものでしょうか。煙草を1箱1000円にする話が報道されていますが、一緒にス
モークハラスメント禁止法律もお願いしたいものです。



2008.06.10(火)【電車内の広告】(大戸早規子)

 ここ数年、電車内で「債務整理を引き受けます」といった弁護士や司法書士の広告
がやたらに目につきます。同時に、「お金貸します」という債務製造(?)の消費者
金融会社の広告も従来どおり大量に目にします。

 さて、いったい、どちらの広告が多いのでしょうか。混んだ電車で広告を眺めるた
びに、いつか、実際に数えてみたいと思っていました。  

 つい先日の朝、所用があって家を出るのが遅れ、新宿行きの小田急線(各駅停車)
の最前車両に乗り込みました。中途半端な時間帯だけに、車中は、人とぶつかること
もなく歩き回れる程度に空いていました。「やった! 今日こそ決行日」です。

 まずは車両の一方に移動し、端からひとつひとつ「まど上広告」(窓やドアの上の
広告)と「中吊り広告」を確認し始めました。

 結果は4対4の引き分けでした。「債務製造」と「債務整理」が隣どうしで並んで
いるということもありませんでした。同業者同士も同じです。広告代理店の人が調整
しているのでしょうね。

 ということを発見したため、本徒然に掲載する旨をESGのお仲間に伝えましたら、
6月定時株主総会を前に多忙でひーひーいっているお仲間から「このヒマ人!」と、
お叱りを受けてしまいました。

 ひらめきました! 多忙な仲間に向けて「仕事の整理引き受けます」と広告を打つこ
とにしましょう。「ヒマなひとときをお貸しします」の広告と一緒に・・・。



2008.06.09(月)【普通株式も種類株式】(富田太郎)

 お客様にベンチャー企業が多いためか、最近、種類株式の案件が増えてきました。
特に多いのは、ベンチャーキャピタル(VC)に対して第三者割当増資をする場合で
あり、種類株式の発行がよく行われます。
 普通株式しか知らない社長からすれば、A種株式?B種株式?なんだか、会社に異
邦人が参入してくるような心境のようです。

 種類株式といえば、以前、金子先生から言われたことがあります。
「富田さん。種類株式の発行の登記自体は難しくないよ。問題は、発行後だよ!」

 たしかに・・・。先日、種類株式発行会社(譲渡制限会社)の顧客が、ストックオ
プション(新株予約権)を発行する際でしたが、全体の総会と、普通株主の種類株主
総会と、A種株主の種類株主総会・・・と、それらの要否を検討していたのですが、
種類株主総会に関する会社法322条の要件を満たさないので、全体総会だけで十分
かなと思いきや、新株予約権に関する238条によると、新株予約権行使の結果とし
て普通株式が発行されるため「普通株主だけの種類株主総会」も必要でした。こんな
こともあるので、このところ、毎回細心の注意をもってチェックに追われています。

 さっそく、顧客の社長に「今回は『普通株主による種類株主総会』も必要です。」
と伝えましたところ、「普通株式って、種類株式なんですか???」。
「はい。普通株式も『普通株式という種類株式』です。」と私。
「おぉぉ!そういうことですか!!」。驚いたように、納得してくださいましたが、
この徒然を見ている皆様は大丈夫ですか。



2006.06.06(金)【権利義務取締役】(金子登志雄)

 ニュースでご存知でしょうが、アデランスホールディングスの定時株主総会で取
締役候補9名中7名の選任が否決されました。2名だけ選任されましたので、現状
の取締役権限を有する方は11名になります。
 これは、どういうことかといいますと、以下の関係です。

1.アデランスには、ABCDEFGHIの9名の取締役がおりましたが、全員が
 今度の定時株主総会で任期満了になるため、同社では、ABCDEFG7名の再
 任とJKの新任を総会にはかりました。  
 つまり、会社の意向は、次でした。  
  前任取締役=ABCDEFG、HI の9名  
  後任取締役=ABCDEFG+JK の9名

2.しかし、後任取締役のABCDEFGが選任されませんでしたので、結果は次
 になりました。    
  前任取締役=ABCDEFGHI  
  後任取締役=JK

3.取締役会のある会社では、取締役が3名以上必要ですから、それが満たされな
 い場合には、法律上、前任取締役全員が取締役の職務を遂行する義務を依然とし
 て負うことなります。これを取締役の権利義務者といいます。  
  その結果、現在の取締役の職務遂行者は次の11名となりました。
  取締役の権利義務者=ABCDEFGHI
  純粋の取締役=JK

 上記の退任予定だったHIさんは、予定外の結果となり、どんな心境でしょうか。
また、新任のJKさんの心境はどうでしょうか。もし、新任がJKLの3名でしたら、
権利義務取締役は不要であり、ABCDEFGHI全員が退任し、選任されたJKL
の3名の中から代表取締役を選定し会社を運営していかねばなりません。そんなつも
りがないのに取締役になったわけですから、権利義務取締役制度の存在に、さぞやほ
っとしていることでしょう。
 もっとも、今後はその可能性が生じますが、ABCDEFGのうち現業の数名を執
行役員(従業員)あるいは常勤顧問にして業務を遂行していく可能性が高いと私は予
想していますが、どうなりますことやら。


2008.06.05(木)【大相撲こそ最先端】(金子登志雄)

 先般、ブルガリア国籍の琴欧洲関が大相撲で優勝しましたが、なんと幕内力士の約
4割(38%)が外国人だそうです。横綱も100%が外国人です。ハワイからモン
ゴルへ、そしてとうとうヨーロッパ勢も力をつけてきたようです。そのうち金髪の横
綱も登場するのでしょうか。楽しみです。

 大相撲というと、いまだにちょんまげを結い、親方絶対の古い体質ですが、こと実
力優先で外国人を排斥していないという意味では、最先端ですね。それが外国人の多
さに通じ、最も市場が開放されている日本の産業といえるかもしれません。

 農業も医療も金融も国の厚い保護にある産業はだめになり、自動車や家電のように
国の保護の薄い産業は国際競争力を身につけ、いまや世界のトヨタ、ニッサン、ホン
ダ、ソニー、パナソニックです。海外工場を含めれば、外国人労働者を大量に雇用し
ています。

 産業の活性化のためには、国の保護をやめれば、大相撲やサッカーのように実力あ
る外国人が押し寄せ、活気がでてくるとはいえないでしょうか。「外国資本から日本
企業を守れ」などといっている間は、大相撲の古い体質を批判できません。

 一時は、外国資本が日本を拠点にアジア進出をはかっていたのに、最近は日本や韓
国を飛び越えて中国に直接進出するようになりました。中国もオリンピックを開催で
きるまでの実力をつけました。

 やはり、国力をあげるには、優秀な外国人や外国資本を受け入れるべきでしょう。
「外国にとられる」ではなく「外国を取り込む」です。オリンピックでも日の丸がほ
しければ、金メダル候補の外国人をカネで集め日本に帰化させれば、むずかしくない
ですね。あれれ、だんだん、巨人軍の発想になってしまった・・・。



2008.06.04(水)【プール】(松山聡)

 金子先生、【別の視点】では先生の持論である「スポーツは健康に悪い」は掲載し
なかったのですか。  

 先生からは、健康法と称してそんなつらい思いを体にさせるなんて、何て罰当たり
なんだ、と言われるかもしれませんが、過日、区営のプールに行ってまいりました。
私は、水泳が苦手なのですが、子供にせがまれ渋々といったところです。

 昨今は、健康ブームで、水泳もその健康法の一つとして取り上げられることがよく
あります。私も、どうせプールに行くのなら、その効果にあやかりたいのですが、ど
うも私の場合は逆効果のようです。

 周りを見渡すと、ゆったりと、いかにもリラックスしながら延々と泳ぎ続ける方が
少なくないのですが、私は、まず浮かび続けることが大変です。泳いでいるうちに、
体が、どんどん沈んでいくのです。息も絶え絶えで、必死に泳ぐ(?)私の姿を傍か
ら見ると、溺れているのでは、と勘違いされてしまうかもしれません。

 でも、ひとしきり泳いだ(溺れた?)後は、それなりに爽快です。
仕事も、切羽詰って行うよりも、ある程度リラックスして行うほうが効率いいように、
もう少し、リラックスして泳げるようになれば(加えて、定期的に泳ぎに行く時間を
確保できれば)、もっとよいのでしょうが。
 ESGには水泳指導部がなかったですよね。。。

(金子)私は、人生を上手に泳げる練習をしたい。水泳指導部がほしいですね



2008.06.03(火)【別の視点その2】(金子登志雄)

松山さんwrote
>会社法を始め、・・・別の視点で考えることが重要なように、・・・新たな発見

 それでは、会社法のいくつかを「別の視点」で捉えてみましょう。

 株主割当増資の募集株式の発行は、「株主の皆様、ご出資いただけませんか」とい
う制度ですが、自己株式の買取りも、これに近く、「株主の皆様、株式を売っていた
だけませんか」という制度です。

 いわゆる第三者割当増資は、「Aさんに出資をお願いしよう」と決議するものです
が、株主の相続人など特定人に向けた自己株式の買取りも、「株主のAさんに株式を
売ってくれるようお願いしよう」という決議です。総会決議と取締役会決議の両方が
必要なのも、相互に関連付けて考えられます。

 また、自己株式の買取りは、出資継続契約を合意解除するものですから、一種の出
資の払戻しとなり、自己資本の減少事由になります。

 剰余金の配当も株主への無償割当てであり、吸収合併で合併新株を割り当てるのは
他社の株主を対象とした第三者割当である・・・。

 こんな捉え方をすると、会社法ってよくできているなぁ、楽しい法律だなぁ、と新
たな発見ができるものですが、学者を含め、こういうアプローチで会社法を説明して
くれる人がいないので、むずかしい法律と思われてしまうのでしょう。ESG諸君は、
大丈夫ですよね。


2008.06.02(月)【別の視点】(金子登志雄)

松山さんwrote
>会社法を始め、我々の日常業務でも、たまには別の視点で考えることが重要なよう
>に、きっと新たな発見があるはずです。

 知識よりも、「ものの見方、考え方」に興味があります。拙著のほとんどがそうい
う内容です。さて、記憶にある「別の視点」を3つご紹介しましょう。

1.石の上にも3年とは、3年経っても目がでなければあきらめよという意味だ。

 これは作家で株の神様といわれた邱永漢(きゅう・えいかん)氏の言ですが、何年
でも頑張れという定説の意味を逆手にとった視点であり、名言だと思っています。と
くに新規事業にいえるでしょう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%82%B1%E6%B0%B8%E6%BC%A2

2.少数にすれば精鋭になる。

 これは再建の神様といわれた坪内寿夫氏の言です。リストラの口実という意味では
評判の悪い言葉ですが、「別の視点」という意味で私は結構好きな言葉です。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%AA%E5%86%85%E5%AF%BF%E5%A4%AB

3.弁慶が牛若丸と遊んであげたのだ

 「京の五条の橋の上、大の男の弁慶は長い薙刀ふりあげて、牛若めがけて切りかか
る♪」・・・子供が大の男に勝てるわけがない、あれは弁慶がかわいい牛若丸と遊ん
であげたのだという別の視点です。20年以上も前ですが、確か映画評論家の佐藤忠
夫氏が何かの文章で書いていた記憶があります。面白い視点、しかもこちらが正しい
と思える視点でしたので、記憶に残っています。


2008.05.30(金)【無対価分割の計算への疑問】(金子登志雄)  

 甲会社の完全子会社として、乙、丙があったとします。乙の「資本金は2億円、株
数は2万株」で、丙のそれは「1億円、1万株」であり、甲の会計帳簿にも「乙株式
2億円、丙株式1億円」と計上されているとします。

(1)乙が丙を吸収合併(完全子会社間合併)

 昔は完全子会社同士の合併は、合併比率1:1で行っていましたが、無額面株式に
一本化されてからは資本金は増やさないのが通常になりました。そうすると、合併後
の乙は、資本金は2億円のままで、株数は1万株増えた3万株です。
 合併と同時に乙が3株を2株にする株式併合を実施すると、乙の株数は2万株に戻
ります。資本金も株数も元のとおりです。

 そういうことなら、実質的に同様な手続として、株式も発行しない無対価合併でい
いではないかという意見がでてくるのは当然であり、いまの実務は、無対価合併が主
流です。すなわち、この合併では、乙は株式も発行せず資本金も増やしません。会計
基準でも計算規則(59条)でも、この処理を肯定しています。

 親会社甲では、資産の「乙株式2億円、丙株式1億円」を「乙株式3億円」に変更
するだけです。

(2)親の甲が子の乙に純資産額1億円の会社分割(分社)

 親会社甲が完全子会社乙に正味財産1億円の会社分割(一種の追加出資と同じ)を
実施し、乙が新株1万株を発行し資本金は増やさず、乙で3株を2株に株式併合する
と、やはり乙では、資本金も株数も変わらなかったのと同様な結果となります。した
がって、この場合も実質的に同様な手続として、乙で株式も発行せず資本金も増やさ
ない無対価会社分割が少なくありません。

 なら、(1)と同様に、甲でも「乙株式3億円」と帳簿を変更するだけでよいでは
ないかと思うのですが、会計基準も会社計算規則も、ここまでは触れていません。そ
れどころか分割型の会社分割の規定(計算規則64条)に、このような無対価につい
ての規定を置き、甲では1億円の純資産の減少になるという会計処理になっています。
要は、無償で1億円を寄付したような会計処理です。今年の2月にでた旬刊商事法務
1823号51頁の解説もそうなっています。

 分割型の規定だから分割会社の純資産が減少するのは当然だとしても、あまりに形
式的であり、(1)と(2)はバランスが合わない、会計基準も計算規則も検討漏れ
だと私は思うのですが、皆様はどうお考えですか。

(注)ということで、無対価合併と相違し無対価吸収分割は危険です。1株でも構い
ませんので発行すべきです。


2008.05.29(木)【ツバメ返し】(松山聡)

 金子代表が「赤とんぼ」、富田さんが「犬」なら、私も真似して「ツバメ」を取り
上げましょう。「オウム返し」ではなく、「必殺ツバメ返し」です(金子代表の受け
売りです)。

 さて、子供のころは千葉に住んでいたこともあり、あちこちでツバメの巣を見かけ
たものですが、最近は目にしたことがありませんでした。いまは東京在住ですが、近
所の民家の軒下に、ツバメの巣があると聞きましたので、早速、出かけてきました。

 ありました。残念ながらツバメの姿までは見ることはできませんでしたが、小さな
立派な巣でした。普段は、ゆっくりと鳥などを見ることなどありませんが、たまには
いいものですね。豊かな自然や動植物は、心を和ませてくれるパワーがあるのか、そ
の日は、ほんのチョッとだけですが、心が丸くなった気がしました。

 たまの休日は、歩きなれた道を歩いても、いつもとは違う部分に目を向けるのもい
いかもしれませんね。会社法を始め、我々の日常業務でも、たまには別の視点で考え
ることが重要なように、きっと新たな発見があるはずです。

(追伸)
 ツバメというと、なぜか子供のころ(漫画で)みた『幸福な王子』の話を思い出し
てしまいます。
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B8%E7%A6%8F%E3%81%AA%E7%8E%8B%E5%AD%90


2008.05.28(水)【聖バーナード】(富田太郎)

田中さんwrote
>自慢じゃありませんが、私の受験回数は6回です。

 働きながら、たった6回で合格したという自慢話かと思いました。合格率2%台
の試験ですから、受験回数を問わず合格すれば幸運ですよね。

 さて、先週に引き続き、勘違い話です。
 30年も前の話ですが、私は文学青年で数々の小説を読んでいました。その中で、
『ノーマン・メーラー選集』のある小説で、実に感動的な場面がありました。
 雪山の中で、遭難した人間を、「聖バーナード」(シトー派の禁欲的な聖者)と
いう修道僧が、ラム酒を片手に? 突如、ウルトラマンのように、救助に駆けつけ
る場面です。

 ところが、先日、ある本によると、これは日本訳をした翻訳者の「大きな勘違い」
(誤訳)なのだそうです。この「セント・バーナード」とは、聖者「聖バーナード」
のことではなく、犬の「セント・バーナード犬」のことらしいのです・・・(汗)。
つまり、この場面は、「犬のセント・バーナードが雪中の遭難者を救いにくる場面」
なのだそうです。

 ご承知のとおり、セント・バーナード犬とは、アルプスの山深い修道院にて、雪中
遭難救助犬として使役されるようになり、多くの遭難者を救助した犬のことです。こ
のエピソードは画家などの絵により、首輪に体を温めるためのラム酒(気つけ薬)の
小樽をぶらさげたスタイルで知られているとおりです。

 http://www.photolibrary.jp/img65/15838_193701.html

 ちなみに、この修道院の名前がサン・ベルナード(Saint-Bernard)といい、この
英語読みから、セント・バーナードと呼ばれるようになったとのことです。

 そもそも、「禁欲的な聖者」が、「お酒」なんかもって、現れるはずないですよね。
30年間、感動的な場面と信じていた私って・・・(汗)。



2008.05.27(火)【私の合格の秘訣】(田中利和)

>きっと「あの程度の実力でも合格したのか」と元気をいただけるでしょう。
>〇〇さん、ご登場ください。

 金子先生、ひょっとして、私のことでしょうか? まさかとは思いますが・・・。

 さて、受験生のみなさん、こんにちは。大阪の田中です。実は、私も金子先生や富
田さんと同様に働きながらの受験であり、合格は平成12年でした。  

 自慢じゃありませんが、私の受験回数は6回です。
 1回目は、受験会場への道のりと会場の確認(笑)。2・3回目は、合格レベルと
はほど遠いレベルでしたが、みんなが受けるので仕方なくお付き合い受験(^_^;)。
4回目から本格的に合格を目指し受験し、6回目に合格しました♪

 3回目までは助走で本格的な受験は4回目以降ですが、ずっと助走に終わらなかっ
たのは、4回目の受験前に、環境が大きく変わったからです。私事ですが、そこで結
婚しました。

 結婚すると、仕事から疲れて帰っても、休日でも、自宅でのんびりとテレビを見た
りすることができなくなりました。要は自宅でくつろぐことは許されません。業務監
査役の嫁に厳しく監視されているからです(笑)。  

 これが結果的に私の合格への”近道”になりました(^_^;)
 結婚に限りませんが、ためしに環境を「監査役設置会社」(いやでも勉強せざるを
得ない環境)に変えてみるというのもいいかもしれませんよ。私みたいに(笑)

 なお、会計監査権限しかない監査役を置いても、会社法上は「監査役設置会社」と
いいません。大丈夫ですよね。ご健闘を祈ります。


2008.05.26(月)【受験生の皆様、ようこそ】(金子登志雄)

 金曜から急に当HPの閲覧件数が増えたため、不思議に思い、難事件解決で有名な
美人司法書士の松中楓(まつなか・かえで)さんに調査を頼みました。

  http://item.rakuten.co.jp/book/3985024/

 犯人はすぐにわかり、水・木曜日に取り上げた司法書士の山本浩司さんでした。
氏のブログで当HPを取り上げてくれたためです(山本さん、ありがとうございます)。

  http://plaza.rakuten.co.jp/yamamotokoji

 山本先生は、ブログでご覧のように、受験指導で有名なカリスマ講師ですから、当
HPを閲覧くださったのも受験生の方が多いことでしょう。

 受験生のみなさん、私も富田も、働きながらの受験で合格まで数年を要しました。
あの頃、スーパー講師の山本先生に教えていただいたら、もっと早く合格できたのに
と残念です。  

 最近の国家試験の多くは分量が多すぎて制限時間内にどう解くかという法律の実力
以外の能力まで求められ、たいへんですね。読むのが早くないと厳しい試験になって
しまいましたが、司法書士試験は、まだ努力すれば手に届く試験の1つです。

 受験時代は、誰でも一生受からないのではないかと不安になることがあるものです
が、その時は、現役の司法書士の方と話してみてください。きっと「あの程度の実力
でも合格したのか」と元気をいただけることでしょう。

 え、そんな現役司法書士に知り合いがいないですって。それでしたら、当ESGの
〇〇さんをご紹介しましょう。〇〇さん、ご登場ください。


2008.05.23(金)【委任状と委任状用紙】(金子登志雄)

 富田さん、笑わせていただきました。確かに、勘違いは誰でもありますよね。

 私も、税理士さん達を含めた会合で「金子先生はすごい、すごい」という声が聞こ
えたので、うれしくなって「いや、それほどでもー」と割り込もうと思ったら、どう
も私のことではなく、租税法の金子宏教授の話だったなんてこともありました。私が
いる会合で、紛らわしい会話はしてくれるなよ、と思ったものです。

 さて、3月決算会社の定時株主総会時期が近づきましたが、総会招集通知に「同封
の【委任状】に議案に対する賛否をご表示、ご押印の上、折り返しご送付ください」
などと記載していませんか。

 厳密にいうと、この「委任状」の部分は「委任状用紙」としなければならないとさ
れています。委任状方式を採用した上場会社の招集通知も、リーガルの法務書式集も
すべて「委任状用紙」となっています。委任状というのは、委任者が署名しない限り
委任状にはならないので、その部分まで本人の意思が入っていない場合は、「委任状
用紙」と正しく記載しなければならないという理由でしょう(金融商品取引法施行令
36条の2参照)。

 こんなことまでケチをつけてくる株主がいるという想定が前提でしょうが、委任状
と記載しても勘違いして受けとめる株主などいるわけがないと時々思います。われわ
れ司法書士が登記の委任状を作成しメールの添付ファイルで送付する際にも、「添付
ファイルの【委任状用紙】に押印のうえ、ご返送ください」などと書くことはありま
せん。へたに「委任状用紙を作成しましたので」と書いたら、今度は、メールなのに
「用紙」というのはおかしいといわれそうですね。



2008.05.22(木)【私も有名人?】(富田太郎)

 私も、司法書士受験業界ではカリスマ講師の一人といわれる山本浩司さん同様に、
少々知られた存在ですが、司法書士の間でも、名前だけは知られています。もちろん、
金子代表との共著『目からウロコ!これが〜』シリーズに負うところが大きいのです
が、このシリーズは法務局の職員の間でも評判で結構読まれています。 

 そんな思いでいる時、先日、朝一番、東京の某法務局の登記事項証明書の交付窓口
で登記印紙を貼り続けておりましたところ、法務局の職員から、「富田先生ですよね。
お仕事中、すいませんが、教えていただけませんか?」と声をかけられたのです。

 「え、困るなぁ……(ニヤリ)。とうとう、この法務局でも私は有名人かぁ……♪ 
まいったなぁ……(笑顔)。ストックオプションの質問かな? 合併かな? まぁ、何で
も、この私に聞きなさい!」 

 が……、笑顔で「何でしょうか」と聞いてみると、「この登記事項証明書の申請です
が、何て読むのでしょうか」。
 なんと、どこかの客の申請書の字が汚くて、名前が読めず、その汚い字を、私に読め
るか聞かれただけでした……。

 勘違いは誰でもありますけど……。



2008.05.21(水)【こんなにおもしろいゴルフの仕事】(金子登志雄)

 一昨日は、セミナーで知り合った司法書士の山本浩司さんから、『こんなにおもし
ろい司法書士の仕事(第5版)』をご恵贈いただいたため、ざっと読んでみました。

    http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=32070462

 文章が軽妙でテンポがよく、非常に読みやすい本でした。第5版になるわけです。

 こういう一般向けの本は、あたれば大きいので、私も書いてみたいのですが、試し
に会社法の入門書などを書き始めてみると、ついつい論じてしまい、どうもうまく行
きません。むずかしいものです。人それぞれ能力が違うようです。

 山本さんは、同書のあとがきによると、先輩から「ゴルフをやらなくていいのは役
人だけだ。あれは向こうから頭下げにくるから。民間はやんなきゃだめだ、民間は」
といわれ、ゴルフをはじめたとか。

 確かに、ゴルフは社交に向いています。1日がかりのお付き合いで、一緒に食事し
風呂に入り……ですから、懇親も深まります。飲み会より、ずっと効果的です。

 私も会社役員が生活手段のときは、へたなりにゴルフをしましたが、司法書士業を
主にしてからは、全くしていません。早起きし、近県の遠方に車で出かけ、歩き疲れ
るなんてまっぴらです。車の運転も数年前にやめました。

 山本さんにいいましょう。「司法書士でゴルフをやらなくていいのは、ライバルが
少ない会社法専門司法書士だけだ。あれは向こうから頭下げにくるから……」。
 唯一最大の問題は、頭を下げにくる人が少ないことですけど。


2008.05.20(火)【ものぐさ流執筆術】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、鈴木・富田さんが執筆で時間がないのと、私は執筆で時間があ
るのは、たぶん対象読者が相違するからでしょう。

 鈴木さんの書くものは、一般企業人を対象とした啓蒙的なものが多く、総論から書
き下ろす必要上、構成などがむずかしいのと、総論では興味のないことまで調べて触
れねばならないことの2点で時間がかかるのだと思われます。

 富田さんの対象は、主に司法書士試験受験生のため、間違いが絶対に許されず、先
例等の年月日も出所を明示しなければならないので、大量の資料が必要です。資料の
ない自宅ではできません。

 これに対して、私の書くものは、司法書士や税理士・弁護士等の実務家を対象に重
要論点に対して「私はこう考える」という論文的なものですから、調査時間が少なく
て済みますし、条文集さえあれば自宅でも喫茶店でもできます。
 著名な学者や法務省の見解がどうあろうが、実務家の立場からこうあるべきだと書
くだけですから楽なものです。

 子供の頃から、材料を使う理科の実験は面倒で嫌いでしたが、鉛筆1本で済む数学
は楽で好きでした。いまだに会社法論点という数学の証明問題を解いているような錯
覚を覚えます。
 会社法はできたばかりの法律のため、過去の判例・先例も少なく、ものぐさで横着
な私には合っているようです。



2008.05.19(月)【赤とんぼ】(金子登志雄)

鈴木さんwrote:
>私も、日々実務と原稿の締切りに追いまくられている状況です。いつの日か、楽が
>できる日は来るのでしょうか? 冨田さん、どうでしょうか?

富田さんwrote;
>今日も、今日とて、コンビニ弁当食べながら執筆をしています。

 お二人とも、そうですか。若いって素晴らしいですね。私は「(仕事に)追われて
みたのはいつの日か♪」と赤とんぼの心境であり、ここ何年も、相変わらずのマイペ
ースです。お二人と違い、読者の反響がみえない雑誌の原稿を断っていることと、個
人客の多い不動産登記の仕事の依頼が来ないことが時間的ゆとりにつながっているの
でしょうけど。

 しかし、マイペース生活も数年も続くと、時たま、多忙にあこがれます。私の専門
である会社法や組織再編の仕事は嫌いではないので、仕事に追いまくられ、コンビニ
弁当生活をしてみたいですね。単行本については、仕事という意識がないので、これ
ばかりは多忙という実感も持てません。いつも、出版社に約束した期限の2週間程度
前には書き終わっています。結構楽しんで書いています。

 単行本でも、富田さんの「楽学」の800頁はお気の毒です。この分量だと、一部
を手直しすると、他にも影響し、もぐら叩き状態になり、いつまで経っても終わった
気がしないことでしょう。

 まぁ、忙しい忙しいと不満がでるくらいが、風邪も引かず、嫌なことも忘れられ、
ちょうどいいのかもしれません。ぜひ、適度に頑張ってください。

 (注)童謡の赤とんぼは「負われて(背負われて)見たのは」という意味であって、
「追われて」ではありません。念のため。



2008.05.16(金)【今日も、今日とてコンビニ弁当生活】(富田太郎)

 鈴木さん!『リーガルの法務書式集(増補改訂版)』、「株主票」等の登記以外の
書式も満載で、これがあれば、仕事も楽になりそうですね♪

 私も、このところ毎晩遅くまで、単行本『楽学・商業登記法』(住宅新報社刊行
800頁予定)の執筆をしています。楽学(らくがく)とは、「楽しく学ぶ」という意
味です♪
 もっとも、昨年3月から「近日発売予定!」と広告がでること3回。なのに、未だ
500頁ほどしか終わっていません(汗)。

 ところで、初めて単行本を出版した時の喜びを思い出します。「うれしくて、うれ
しくて、夜も寝られず、私が死んだ時は、この本を一緒に棺桶まで持っていこう」と
思ったものでした。
 当時、我が師、金子先生曰く、
「最初は皆そう思うものだよ。そのうち、何冊も出すようになると感激も薄れ〜」

 その頃は、「変なことを言う方だなぁ……、感受性が弱いのか?」などと思ったも
のでしたが、今や、私も感激など全くなくなり、出版社からの督促には、「今、北海
道の山奥にいて△■●〜」、「実は、体調を崩し〜」等々、ありとあらゆるその場し
のぎのみえすいた弁解をしている始末です。

 ということで、本業のかたわらの執筆生活は、そろそろ限界だと思いつつ、今日も、
今日とて、コンビニ弁当食べながら執筆をしています。
 あぁ〜「働けど、働けど我が暮らし楽にならざり」・・・です(涙)。
 
PS★先日、「某社社長」との会話★
 ※よく土日出勤をなさる超多忙な方です。
  
 社長:「富田さん。よく、そんなハードな生活をして、体持ちますね。     
     見習いたいです。何食べたら、そんな頑丈な体になるの???」
 私 :「・・・・。コンビニ弁当・・・・・。」
 社長:「・・・・・・・・・・。」


2008.05.15(木)【法務書式集】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは。会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。
 前回の「商業登記全書」に続き、またまた、商品(CD−ROM)の斡旋です。

 先日、ESG法務研究会代表の金子さんもさらりとご紹介されていたリーガルの法
務書式集(増補改訂版)ですが、  

  http://www.legal.co.jp/products/kaisyahouH20/kaisyahou.htm   
  http://www.legal.co.jp/products/kaisyahouH20/kaisyahou2.htm

 自分でいうのも何ですが、中々良い出来かなと思ってます。登記以外の書式も相当
充実させましたので、会計士さん、税理士さんにもお奨めです。

 そもそも、この書式集の企画趣旨としては、会社法令の難解な条文を読み解いてテ
ンプレート化するのって大変だよなというところでした。「ひながた」はやっぱりあ
ると便利ですし、一から自分で作るのはしんどいですが、この書式集のフォームをア
レンジすると格段に楽ができます。空いた時間でさらに高いサービスの提供が実現で
きれば、というのが編集の1人としての偽らざる気持ちです。

 ということで、「徒然活動日誌」の愛読者の皆様に「書式集」特別割引のご案内を
させていただきます。以下ダウンロードしてお申込みください。

 http://www.suzukijimusho.com/lib/pdf/syoshiki20.pdf

 ところで、この書式集で仕事面では少し楽ができるようになりましたが、私も、日
々実務と原稿の締切りに追いまくられている状況です。いつの日か、楽ができる日は
来るのでしょうか? 冨田さん、どうでしょうか?



2008.05.14(水)【商業登記全書】(金子登志雄)  

 昨日は出版社の中央経済社で会合があり、久々に『商業登記全書』の編集者である
商業登記倶楽部主宰者の神崎満治郎先生、鈴木龍介司法書士(当ESG会友)とお会
いしました。  

 2月に出版された鈴木さんの第5巻『株式会社の機関』も、3月に出た神崎先生の
第2巻『株式会社の設立、商号・目的その他の変更』も順調に売れているようで、お
かげさまで私の第7巻『組織再編の手続』も、昨年7月に出したのに、連動して売れ
ており、助かっています。

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/reclist.cgi?SPAN=1&NDC=325.13

 会社法も施行(平成18年5月)からちょうど2年経過しましたので、解釈もだい
ぶ落ち着いてまいりましたが、登記を中心とする実務の細部については、まだまだ不
明確な部分が残っています。法務省令もこの4月に一部が改正されたばかりです。

 会社法手続については、司法書士の役割が大きいため、まだまだ煮詰めなければな
らない課題も多く、会合後の酒の席でも、話題は会社法や登記実務の話ばかりでした。
部外者からみれば、せっかくのご馳走を前に酔えない会社法の話ばかりをしているわ
れわれは、おかしな人達にみえたことでしょう。


2008.05.13(火)【投資銀行】(金子登志雄)

 昨日は、親しくさせていただいている大手証券のM&A部門の方々と一緒に飲みま
した。M&Aの苦労話や昔(私の時代)のM&Aと今のM&Aの相違などを酒の肴に
話が盛り上がり、たいへん楽しい時を過ごさせていただきました。

 面白いもので、同じM&Aの仲介でも、農耕民族である銀行のM&A部門の動きは、
銀行の顧客同士の仲を取り持ち、堅実で保守的な動きが中心ですが、騎馬民族である
証券会社の動きは、実にフットワークがよく、取引先かどうかを問わないところがあ
ります。案件の規模でも、銀行M&Aでは地域密着型の中小企業が多いのに対し、証
券会社のM&Aでは上場会社の関連会社や上場予備軍が多いといえましょう。ここに
業種の特徴があります。

 ところで、みなさんは証券会社にどんなイメージをお持ちでしょうか。株屋さんと
思ったら大間違いです。株式投資は手数料の安いネット証券にシフトしており、既存
大手証券会社は、企業情報を財産として、いまや欧米型の投資銀行に近づいています。

 投資銀行というのは、企業の資金調達(有価証券の発行など)、M&A、企業の財
務戦略等をアドバイスする機関であり、有名なところでは、ゴールドマン・サックス、
モルガン・スタンレー、メルリリンチなどがあり、日本国内でも活躍していますから、
名前は聞いたことがあるでしょう。合併比率の算定にまで顔を出すことがあります。
 また、外資系投資銀行は、若い社員でも年収1000万円を超えることなどでも有
名です。その分、仕事が超ハードのようですが……。

 英語ができないから外資系は無理だという若い方も、あきらめる必要はありません。
日本の証券会社も投資銀行業務に力を入れていますし、有資格者等の転職も受け入れ
ていますから、一度経験してみるのもよいかもしれません。ただし、インサイダー取
引で捕まると、資格も剥奪される危険がありますので、その点はご注意を。


2008.05.12(月)【シャツの着こなし】(金子登志雄)

 だいぶ暖かくなりました。休日の老若男女の服装も半そでを含めてシャツ姿が多い
ようです。
 さて、男性の皆さん、平日の働く際のYシャツは別にして、休日にはシャツをズボ
ンの中に入れていますか、上着のように外に出して着ていますか。これで年代がばれ
てしまうのだそうです。

 いまや前期高齢者の年代ともいうべき団塊の世代である私は、シャツというのは上
着ではないので、ズボンの中に入れるものだと思っておりましたら、先日、「年寄り
じみて、みっともないからやめたほうがよい」とアドバイスを受けました。確かに、
歩いてすれ違う人々のうち、ズボンの中派はみな50代中旬以上でした。

 ズボンの外に出すのは、正式な着こなしではなくみっともないという感覚がいつし
か逆転していました。ちょっとだらしないようなラフな格好が現代風らしいのです。
 昔はスーツといえば女性の上下の話でしたが、いつしか背広の上下もいうようにな
り、言葉も服装も変わるのですね。そのうち、プロ野球選手もユニホームをズボンの
外に出して野球をするようになるのでしょうか。
 ちなみに、ズボンってフランス語らしいですね。知りませんでした。


2008.05.09(金)【代表取締役が承認機関】(金子登志雄)

 定款に「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の代表取締役の承認を受
けなければならない」と定める会社が少なくありません。
 その場合に、代表者自身が株式を譲渡する場合には、その承認機関はどうなるのか
という質問を時たま受けます。

 1つの考え方としては、原則に戻って株主総会あるいは取締役会の承認が必要だと
いうものですが、これでは何のために定款に定めたのかわからなくなります。  

 質問の背景には、「そもそも、自分自身が当事者になる取引の承認を当事者の1人
がジャッジするのはおかしい」という発想があります。しかし、それを含めて(そう
いうことがあることを前提に)、定款に「代表取締役の承認」と定めたものと思われ
ますから、私は代表取締役が自分で承認してよいという意見です(実質は承認不要と
なります)。

 また、「特別な利害関係」があるから法律上もジャッジはできないという意見も耳
にしたことがありますが、それは条文からも明らかなとおり取締役会における議決機
関としての要件であり、代表取締役のジャッジや非取締役会設置会社の取締役の決定
には及びません。  

 もし、これで不都合な結果が生じたら、取締役の解任や責任追及の問題にすればよ
く、株式譲渡の会社に対する対抗力の問題にすべきではないでしょう。みなさんは、
いかがお考えですか。



2008.05.08(木)【入社面接試験】(金子登志雄)

 来春卒の採用面接時期のようですが、数週間前に何かの新聞コラムで、「君なら、
どこの会社でも採用するよ」という入社面接試験での面接官の言葉を額面どおり受け
とめて喜ぶ人がいるなどと皮肉っていました。

 しかし、これは発言の背景をみねば判断つきません。同じ不合格でも「貴方のよう
な優秀な人材が、なぜ当社のような中小企業に面接にきたのか」という素直な驚きの
こともありますし、「ぜひウチに来てくれ」という褒め言葉として発した場合もある
からです。

 転職を繰り返してきた私は面接試験を何度も受けましたし、逆に会社の総務担当役
員として、これまで100人以上を面接してきました。「貴方なら、どこの会社でも
採用するよ」と何度かいった記憶がありますが、ほとんどが「なぜ当社のような場違
いな零細企業に面接にきたのか」という褒め言葉でした。もっとも、「貴方のような
優秀な方に払えるカネはないよ」という意味も含まれており、不合格にしましたけど。

 合否の判定は、ほとんどカンであり、10分程度の面接で、その人の能力などわか
るわけがありません。いまから考えると、私が学卒で入社したときの信託銀行の面接
官は、人を見る目があったのでしょうか。マイペース人間で集団行動不適格者の私を
合格させてしまったのですから……。おかげ様で、よき社会勉強はさせてもらいまし
たけど。ちなみに、その人事担当者は、後日、頭取まで上り詰めました。



2008.05.07(水)【みどりの日】(金子登志雄)

 GWはいかがお過ごしでしたでしょうか。わがESGの仕事中毒仲間は相変わらず
事務所で仕事あるいは執筆活動だったようです。

 私も、どちらかといえば仕事中毒に近いのですが、専門が合併等の組織再編である
ため、いまの時期はそれほど忙しくはありません。いつもなら、まとまった休みは著
作活動をしているところですが、今回はそれも4月中に済ませていたため、故郷の群
馬に帰ったり、のんびりテレビなどをみて無為な時を過ごしました。

 普段は全くに近くテレビをみないせいか、テレビのクイズ番組をみていても、「ほ
ら、あれ、あれだよ」と思えど、解答の単語や人名が全くでてきませんでした。とく
に芸能人やスポーツ選手の名前は、顔は思い浮かんでも、全くでてきません。

 4月29日は「みどりの日」ではなく「昭和の日」であり、新たに5月4日が「み
どりの日」になったが、6日はその「みどりの日」の振替休日――こういう常識的知
識も、「えーと、えーと」で即座にでてまいりませんでした。歳のせいですね。関心
のないことについては、普段から「そんなの関係ねぇ(どうでもいい)」と思ってし
まう傾向があるとはいえ、いささか己のボケ具合を再認識させられたGWでした。


2008.05.02(金)【簡易合併と株主総会の開催】(金子登志雄)

 富田投稿への返信は来週にし、今日は金曜日ですので、法律の話です。  

 さて、簡易合併というのは、甲が乙を吸収合併する際に、乙が小規模なら甲の株主
総会で合併承認を決議するまでもない(取締役会の承認で足りる)という合併の方法
です。親会社が子会社を吸収合併する際に頻繁に行われています。

 では、簡易合併の要件を満たすときに、あえて株主総会で合併承認決議をしてはい
けないのかが問題となります。というのは、会社法立案担当部門(法務省参事官室)
のお1人が一昨年に株主総会決議をしても無意味だと断言していたからです。

 しかし、商法時代から、簡易合併の要件を満たす場合にも株主総会決議をすること
が多く、上記の見解だと登記実務に混乱が生じます。そこで、昨年はじめに東京法務
局に質問してみましたところ、昨年2月に「従来どおりでよい」との回答をいただき
ました(詳細は拙著『組織再編の手続』37頁)。

 それからずっと、法務省の参事官室自身の見解はどうなのかと気になっていました
が、今月号のキンザイの「登記情報」57頁で登記実務の考え方を肯定しました。結
果オーライとはいえ、このように、時々、人騒がせな見解が出され、われわれ実務家
が困ることがあります。4月18日の徒然に書きましたが、10年以上も人騒がせな
見解が実務を支配してしまうことさえあります。

 いつも思うのですが、法務省参事官室や大手法務局の見解は影響が大きいので、仮
に見解を表明する場合にも、有力なA説とB説があったら、どちらの見解でも登記は
受け付けるなどといった弾力的な運用を切に望む次第です。そのほうが当局も争いに
巻き込まれずに済み、行政の中立性を維持でき、気が楽だと思うのですが。

★お知らせ★
 リーガルの法務書式集が増補改訂版になりました。
http://www.legal.co.jp/products/kaisyahouH20/kaisyahou.htm

http://www.legal.co.jp/products/kaisyahouH20/kaisyahou2.htm


 今度のは登記だけでなく、総会招集通知や総会議案一覧などなども加わり、「法務
書式百貨」ともいうべきものになり、実に便利です。ワードに落とし、会社名などを
入れるだけです。
 ぜひ、ご活用ください。



2008.05.01(木)【A・猪木から私へのアドバイス??】(富田太郎)

 金子先生、今日の投稿を想定して、「月1回」といったのですよ。

 さて、私は受験関係の仕事もしている関係でしょうか? 時折、サラリーマン受験
生から、「会社を辞めて、司法書士で食べていけるのでしょうか?」といった相談を
受けます。う〜ん、こればかりは、本人が決めることなので・・・・。

 思えば、私も合格後(当時サラリーマン)、「会社を辞め、司法書士になるか否か」
と悶々と悩んだものでした。そんなある日のこと、見かねた友人が、「A・猪木の引
退試合」に誘ってくれました。

 引退試合後のセレモニーで、A・猪木が観客に語った詩・・・。
 「この道行けばどうなるものか、危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし、  
  踏み出せばその一足が道となる。迷わず行けよ、行けば分かるさ!」

 「迷わず行けよ!」。まさに、私だけに語ってくれたような気がしました。このA
・猪木のアドバイスで(笑い)、私は司法書士に転職。その後、会社は倒産・・ ・
(汗)。さすがA・猪木!私の「人生の師」だけのことはあります♪

(追伸)
 上記の詩は、A・猪木が、「一休禅師の詩」と紹介したことから、一休の詩として
広く流布されていますが、近時の「プロレス愛好家」の研究によれば、A・猪木の勘
違いで、清沢哲夫(宗教家・哲学者)の『無常断章』からの引用である説が有力です。


2008.04.30(水)【月に1回以上とは】(金子登志雄)

 「久々の参加、ありがとう」と富田さんにお礼メールを送りましたら、さすがは共
著での対話相手(一説によると漫才コンビ)です。すぐさま皮肉が通じたようで、「
久々の登場ですが、それでも1ヶ月に1回は登場しているんですよ!」という返しが
きました。前回は3月3日です。  

 会社法によると、3ヶ月に1回以上は取締役会を開催しなければならないことにな
っています(363条2項)。私も、当初は富田さんと同様に、これを無意識に「四
半期に最低1回」と感じていましたが、ある質疑応答に「次の開催が3ヶ月以内であ
ること」とありました。文字通りに解釈すると、そういうことになりますね。そうで
ないと、3月決算会社が第1四半期の4月1日に取締役会を開催したとすると、次は
第2四半期内の9月30日開催でもよいことになってしまいます。これは法の想定に
反します。

 というわけで、富田さん、「先月に1回登場し、今月も1回登場しました」という
のは、「1ヶ月に1回は登場している」ことにはならず、会社法にも強い富田司法書
士の発言としては、ちょっとまずいようですよ。

 しばらくは、富田投稿への突っ込みで徒然が埋まりそうです。ネタ探しの苦労を省
略でき、ありがたいことです。

★お知らせ★
 「会社法」法令集が第5版になりました。法務省令の改正が何度かありましたので、
買い替えが必要でしょう。全国の書店に並ぶのは連休明けかもしれません。
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-96560-9


2008.04.28(月)【司法書士って何をする人?】(富田太郎)

 先日、大学時代(経済学部)のある同期会に、13年ぶり出席しました。私は、も
ともと、某総合リース会社に就職したのですが、その会社は10年前に華々しく倒産
し(負債総額2兆3000億円)、今はもうありません。会社倒産後、はじめて出席
したためでしょうか? 私は一座の主役(苦笑)?でした。

 「会社が倒産して、その後どうしていたのか? 今は何をやって生活しているのか
?」等々・・。

 失礼な! 私もむきになり、「司法書士のかたわら、企業の社外監査役として、な
んとか頑張っている(きっぱり!)」旨を説明するものの、経済学部出身の仲間たち
のためか、「不動産登記」を行う司法書士がなぜ会社関係の仕事??をしているのか
納得いかないようでした。

 う〜ん。会社法専門司法書士の皆さん!やはり、司法書士というと、世間では、ま
だまだ「不動産登記」のイメージが強いようです。

(追伸)
 うちの同期会、就職当時は、勝ち組といわれた「金融機関就職組」(銀行・総合リ
ース会社・住専)は、ものの見事に大半が討ち死に(倒産)していたのにはびっくり
でした(汗)。
 逆に、就職当時は小さな会社だったのが、今や株式上場し、大きな会社になってい
たり、人生、「悲喜交々(こもごも)」です!



2008.04.25(金)【雨の日から2週間以内に】(金子登志雄)

 「雨の日から2週間以内に金10万円を支払え」といわれた場合に、雨が降る前に
支払ってはいけないでしょうか。
 文字どおりに解釈すると、雨が降らない限り、支払ってはいけないようにも思えま
すが、趣旨は、締切りの期限を定めたものであって、始期までを定めたものではない
でしょう。  

 会社法806条3項に「株主総会の決議の日から2週間以内に」株主に通知せよと
ありますが、これも同様に期限を定めたものであって、株主総会前に通知するのは一
向に差し支えないとされています。

 ところが、株主総会の「決議の日より2週間内に」公告せよという旧商法100条
や412条の解釈においては、株主総会の決議をしない限り、公告をしてはならない
とされていました。公告文案も「平成〇年〇月〇日開催の株主総会において、これこ
れを決議したので」という内容でした。しかし、旧商法のどこにも、いつ株主総会を
開催したなどと公告文に掲載せよとはありませんでした。公告の雛型文案にひきづら
れて誤った解釈が横行していたわけです。  

 こういう誤った解釈ないし常識を打ち破って軌道修正させたという意味で、新しい
会社法の立案担当者は、実に革新的で優秀な方々だったと思います。
 もちろん、会社法のもとでの合併公告などの雛型文案にも、いつ株主総会を開催し
たかなどは任意的記載事項だと明記してあり、会社法実務をミスリードさせる内容に
なっておりません。いったい、誰が文案を考えたのでしょうか(下記の最終頁の一番
下にある「制作協力者」です)。  
   http://kanpou.npb.go.jp/images/s_guide.pdf
 ついでに宣伝 http://item.rakuten.co.jp/book/4290126/


2008.04.24(木)【野村企業情報】(金子登志雄)

 インサイダー取引で企業のM&A(合併・買収)を担当する野村證券企業情報部の
元社員が逮捕されました(「証」券でなく「證」券です)。その問題はさておいて、
同部門の前身は、「野村企業情報」という野村證券の子会社であり、私には懐かしい
会社です。

 昭和62年に私どもが「日本M&A研究所」という日本最初のM&A専門会社を創
業し、翌年、山一證券出身の吉田氏が「レコフ」(新聞にでるM&Aの統計はほとん
どがここの調査結果です)を、野村證券が後藤光男氏を社長として野村企業情報を設
立しました。ともに、日本のM&A事業の創設期に一緒に苦労した同業者です。一緒
に、ある案件の仲介業務に頑張ったこともあります。

 当時の野村企業情報のパンフレットにはスタッフ全員が写真入りで登場し、略歴に
出身高校も掲載されていました。後藤社長の話では、「みた人が同郷かどうかを判断
でき、親しみを感じるから」ということでしたが、効果も大きかったようで、よいア
イデアだなと感心したものです。

 後藤社長には、同社退社後も、拙著の『実戦M&A事典』を高く評価していただき、
氏が産業能率大学の講師の際には、社会人相手の教科書にも使ってくださいました。
ありがたいことです。

 うーん、年取ると、昔話が多くなってしまいますね。反省です。ちなみに、いまの
私が裕福でないのは、企業の内部情報に近い場所にいても、インサイダー取引に手を
染めなかったからです。数千万円程度で人生を棒に振らなくてよかった。


2008.04.23(水)【管轄違い】(金子登志雄)

 下崎さん、投稿ありがとう。また、ご登場ください。マドンナは、隠れていないで、
もっとファンの前に登場しないと、人気を維持できませんよ。

 さて、法務局の引越し(統廃合)がハイピッチです。それを見落として、管轄違い
で、登記申請を取り下げた同業者も多いことでしょう。私も、過去、数度、経験して
しまいました。

 顧客の東京の某社は、静岡県清水市に支店がありました。本店で登記するたびに、
清水支店でも同様の登記を郵送で行っていました。
 ところが、数年前の某日、清水の法務局から「申請書が郵送で届いたが管轄が違う」
との電話をいただきました。
 「まさか。去年だって、そちらで登記してますよ」と私。
 「今年から、こちらでは受け付けられなくなりました」
 「でも、法務局はあるじゃないですか」
 どうも、話が通じません。
 やっと話が通じてわかったのは、清水市と静岡市が合併し、商業登記だけは静岡地
方法務局の管轄になったということでした。

 某年某月、東京司法書士会から、「埼玉県大宮市は浦和市と合併し、さいたま市に
なったので、〇月〇日以後は、旧・大宮市管轄の登記は、さいたま地方法務局の管轄
になるので注意」という通知がきました。

 某日、さいたま地方法務局にさいたま市大宮区の不動産の登記を無事に申請いたし
ましたが、翌日、法務局から「管轄違いだよ」という電話です。
 「えー、司法書士会から、そちらの管轄に変更されたとの通知が来ましたよ」
 「それは商業登記だけ。不動産登記は従前どおりです」。



2008.04.22(火)【引越し】(下崎ゆかり)

 春の引越しシーズンに遅ればせながら、池尻大橋駅前に事務所を移転しました自称
ESG隠れマドンナの下崎です。
 引越しといっても旧事務所から1キロ程度移転しただけなのですが、初めての事務
所移転経験でしたので、要領も分からず、引っ越す前から大騒ぎです。

 なんとか無事に引越しも完了し、顧客の皆様より送っていただいた心づくしの花々
の馥郁(ふくいく)たる香りに包まれ、真新しい事務所で心穏やかに業務開始!!と
なるはずが、現実には、まだ片付けきれていない段ボールに囲まれ、筋肉痛に悲鳴を
上げている状態です。
 とは言っても、やはり事務所に新しい看板が入ると心機一転、よし、頑張るぞとい
う気持ちが湧いてきます。

 さて、荷物も整理し、ようやくこれで移転完了かと思いきや、登録の変更手続きを
忘れていました!

 この春、引越しされた皆様、本店移転の手続きはお済みですか? ゲートキーパー
法の施行で、本人確認を郵送で行う場合には、原則として登録上の本店所在地等へ転
送不要の郵便を送付することで確認することになりますので、お手続きお忘れなく。

(注)移転先は当HPの会員欄記載のとおりです。電話番号は変わりません。


2008.04.21(月)【無効だが登記は可能】(金子登志雄)

 法務省民事局発表の登記記録例(登記簿書式例のようなもの)から「種類株主総会
の決議を要しない事項/株式の種類の追加をする場合においては、第一種優先株式の
株主に損害を及ぼすおそれがあるときであっても、当該種類株主総会の決議を要しな
い」という部分が削除されました(司法書士の方は、日司連のNSR2をご覧くださ
い)。  

 当ESG会員及び会友から「間違った内容を削除するのに、いまさら遅いよね」と
いう感想をいただきましたが、ほんとにそう思いますか。私は、あの内容は間違いと
は断定できないが(限定列挙説を前提)、誤解を招くので、やむなく削除したと考え
ています。

 会社法第322条第2項に「種類の株式の内容として種類株主総会の決議を要しな
い旨を定款で定めることができる」とあり、株式の内容は登記事項ですから、第2項
の列挙事由を限定列挙と考える立場からは、間違いとはいえません。
 ただ、第3項ただし書に、「株式の種類の追加の定款変更については、種類株主総
会の決議を要しないという定款の定めがあっても種類株主総会の決議が必要だ」とあ
りますから、この登記記録内容は無意味で無効です(詳細は拙著『これが新増減資だ
種類株式だ』79頁)。

 というわけで、無意味でも登記できるわけですから、私は削除不要論でした。登記
のことを考えないで会社法ができあがった貴重な証拠の1つだったのですが、削除さ
れて残念です(念のため、以上は皮肉ですよ。最近は、額面どおり受けとめる方が多
いので)。



2008.04.18(金)【人格合一説の亡霊】(金子登志雄)

 組織再編登記の書き入れ時も終わったので、ヒマに任せて登記相談事例集などをめ
くっておりましたら、「100%親子会社の合併ですが、この合併で資本金は増やし
ません。資本金の減少手続が必要でしょうか」といった相談がいくつかありました。
まだ、誤った人格合一説の亡霊が徘徊しているようです。

 吸収合併における人格合一説とは、甲と乙の2つの会社が1つになることだと説く
もので、昔の通説でした。ここまではよいのですが、これを極端にした考え方が、資
本金2000万円の甲と資本金1000万円の乙が合併すると、資本金が3000万
円の会社になるのだから、資本金を増やさないのなら、同時に資本減少手続が必要だ
というものです。

 昭和59年に、「商事法務」という権威ある雑誌に法務省民事局のS氏が上記の見
解を表明し、それ以後、平成9年の合併法制の改正まで、公告でも「合併並びに資本
減少公告」としていました。たった一人の論文が、10年以上も登記実務を支配して
いたわけです。異端者の私も、自説を曲げて、「合併並びに資本減少公告」をしてい
ました。そうしないと登記が受理されなかったからです。

 しかし、どう考えても、合併するまでは甲と乙は別々の会社です。乙は解散して財
産を甲に統合させるのであって、資本金まで持ち込むわけではありません。幸いにも、
平成9年の合併法制の改正以降は、この考え方に変わりました。異端者だった私も正
統派になれました。いまの会社法は、さらに「甲は甲で乙は乙だ」という考え方を強
めました。どうぞ、亡霊に取り憑かれている方は、早くお祓いをしてください。


2008.04.17(木)【3K法】(金子登志雄)

 3Kというと、「きつい・汚い・危険」な労働をイメージしてしまいますが、昨日
の日経新聞には「3K法」とありました。最近改正されたばかりの「金商法・建築基
準法・貸金業法」の3つの法律のことだそうです。
 頭文字がKであること以外に、この3法の共通点をあげてください。

 いうまでもなく、不況促進法です。金融商品の販売に詳細な説明が必要となり投資
信託等が売れなくなったこと、耐震構造の配慮で建築不況になったこと、必要以上の
貸金業規制で借り手中小企業の倒産が増えたこと、その他、規制大国になった日本に
失望して、外資が逃げ出してきたことなどです。弱者保護・安全重視という美名のも
とに、事前規制が厳しくなり、経済の活力を奪っているわけです。 

 マネーロンダリング対策を主目的としたゲートキーパー法(正式名は「犯罪による
収益の移転防止に関する法律」)の事前規制はすさまじく、一介の司法書士にも、こ
の4月から、銀行がしているように、顧客に「運転免許証をみせろ」などといわねば
ならなくしてしまいました。顧客の生年月日も控える必要が生じたわけです。これで
は司法書士報酬も値上げが必要となり、ますます不況になります。

 自己責任、小さな政府という自由主義の原理はどこに行ったのでしょうか。国が干
渉しすぎであることは明白ですが、国の立場からは、国民から要求されたからという
ことになるでしょう。国に圧力をかけ、国からの保護を求めるよりも、「ほっといて
くれ」というのが自由主義の原理ですから、われわれも気をつけたいものです


2008.04.16(水)【多士済々?】(金子登志雄)

 先週は、私がM&A業務に従事していた平成初期の同僚で親しい友人N氏と一緒に
飲みました。当時の社長で公認会計士の現当社(アクモス)社長を含め3名で、当時
の話題に花が咲き、一種のミニ同窓会のようでした。

 N氏はいまはマザーズ上場会社の重役です。当時の同僚で上場会社の役員は、彼を
含め、まだ数名おります。すべて自ら主導して上場を果たしたメンバーばかりなので、
これは誇れる実績かもしれません。当時の当社は、野心家が集うミニ梁山泊でした。

 一方で、M&A業務を通じて知り合った方の中には、詐欺師のような経営者、倒産
して夜逃げ中の方、名刺代わりに銀行から100億円を借りたと豪語する地上げ屋、
最先端事業で飛ぶ鳥落とす勢いだったが数年で敗軍の将になった方、マスコミに専門
家としてたびたび登場するが能力には疑問を感じる方などなど、当時の著名人を含め、
個性的な方々が私どもの周りに大量に登場しました。その中にあって、われわれ3名
は、よく、朱に交わって赤くならずに済んだものです。きっと、バランスを重視する
あまり、度胸が不足していたのでしょう。

 N氏からは、元任侠の作家・安部譲二氏の「塀の中の懲りない面々」に対抗して、
「M&A懲りない面々」を著作すると面白いといわれているのですが、品格(?)あ
る物書きを目指している私としては、躊躇してしまいます。

 バブル経済の頃は、実力以上の結果を自分の実力と勘違いしていた人が多すぎたの
でしょう。しかし、バブル時代は、みな生き生きしていました。目が輝いていました。
ジャパンアズNO1でした。いまは昔です。



2008.04.15(火)【転勤季節】(金子登志雄)

 転勤又は配置変えの季節ですね。親しい人が見知らぬ人と一緒に来ると、「ああ、
彼も転勤か」とつい思ってしまいます。案の定、転勤又は配置変えの挨拶で、後任の
方を紹介するための来訪でした。

 1つの職場に長くいると、その道のベテランになれるという長所の半面で、その部
署の主(権力者)になり別の弊害も生じかねないという負の側面があります。過去の
例をみても、銀行で使い込みをするのは、出納係一筋10年などという人でした。

 このように負の側面はありますが、ある意味では、実に不効率でもったいないです
ね。法務局でも、不動産登記に明るい方が商業登記担当になったりして、急に話が通
じなくなり、われわれも困ることがあります。

 幸いにも自営業(?)の司法書士には転勤も配置変えもありません。年数を経れば、
自動的にベテランになれます。これで地盤・看板・かばんを築ければ、いいことばか
りなのですが、こればかりは、職人タイプの性格が災いして、私には無理のようです。


2008.04.14(月)【東大の入学式】(金子登志雄)

 先週、「大学の入学式に父母同伴なんて…」と書きましたが、新聞報道によります
と、11日に東京都千代田区の武道館で行われた東大の入学式には、約3200人の
新入生に対して、約5300人の父母が参加したとか。実に驚きました。

 将来の日本を背負って立つエリートがこれでよいのかと叫びたいところですが、ふ
と冷静になって考えますと、私も子供が東大に入学したら、着いていくかもしれない
なとちょこっと思いました。なぜって、わが係累、親戚縁者は秀才にも勉強家にも努
力家にも無縁であり、東大生も東大卒も皆無ですから、これが最初で最後と思い、記
念写真の1枚もほしいと押しかけたい心境になるかもしれないからです。わが子に
「よくやった!、親もうれしいぞ」と、態度で示してやりたい気にもなるでしょう。

 もっとも、娘ならともかく、父母同伴を許容するような息子には育ってほしくない
ですね。それを入学生男子が許容したのは、受験勉強で父母ともども頑張ったという
意識があるのでしょうか。案外、親孝行なのかもしれません。

 司法書士試験も合格率2%程度の狭き門ですから(合格率だけは司法試験や公認会
計士試験より上でしょう)、合格のために父母ともども頑張った方も多いことでしょ
う。試しに、司法書士試験合格式を武道館でやってみたいですね。もちろん、そこで
父母を同伴した人は、独立自営業の適格性なしで入会拒否です。

(訂正)4月10日付徒然で、いかにも「エービーシー コンサルティング梶vとい
う余白入り商号が可能かのように書いてしまいましたが、商号については、ローマ字
のみの場合以外は余白は禁止でしたので、誤解なきようお願いします。
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html



2008.04.11(金)【種類株式は設定か変更か】(金子登志雄)  

 株式会社における登記のうち、難解なのは、組織再編、種類株式、新株予約権の3
つでしょうか。

 このうち、種類株式については、地方の会社でも定める例が増えたようです。その
ときは、登記簿の「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の部分
に、該当事項を記載し、最後に「平成〇〇年〇〇月〇〇日●●」と定款の定めの効力
発生日を記載しますが、さて、この●●には、「設定」と「変更」のどちらが入るで
しょうか。

 迷うところですが、法務省の登記記録例では「変更」になっています。おそらく、
発行する株式を単一の内容から数種のものに「変更」(追加変更)することが理由と
思われます。

 ところが、同じ株式内容の変更でも、譲渡制限株式にした場合は、「平成〇〇年〇
〇月〇〇日設定」です。なぜでしょうか。おそらく深い意味はなく、登記簿の小見出
しが「株式の譲渡制限に関する規定」となっているため、制限規定の「設定」になっ
たのでしょう。商法時代からの沿革的理由もあると思います。

 部外者の方から見れば、実につまらないどうでもよいことでしょうが、ここを間違
うと、補正になってしまいますので、司法書士としては、こういう実務の約束事も覚
えておかねばなりません。やはり、登記はプロに任せましょう。 



2008.04.10(木)【余白は文字か】(金子登志雄)

 先週だったか先々週だったか、会社の事業目的を変更する登記を申請していたとこ
ろ、法務局から電話がありました。法務局からの電話は心臓によくありません。補正
かとドキッとします。

 用件は、「議事録添付の定款変更案にも、登記申請書にも『リハビリテーショ ン』
と「ン」の前に半角スペースがあるが、そのまま登記してよいのかという確認です。
もちろん、すぐに否定しました。単なる記載ミスだからです。登記申請内容をもミス
してしまったのは、議事録の内容をそのままスキャナーで読み取り、転写したためで
した。

 ばかばかしい話と思う方も多いでしょうが、登記実務では意外に重要なことです。
たとえば、「エービーシーコンサルティング株式会社」という商号の会社を設立する
とき、「エービーシー」(6文字)と「コンサルティング」(8文字)の間にスペー
スが入るのか入らないのかは当事者にとって大きな問題でしょう。

 ふと、余白って文字かという疑問がわきました。文字であれば、余白入り「エービ
ーシー コンサルティング」を抹消すると、14字削除ではなく、15字削除になり
ます。余白は文字でないと考えると、余白を取って勝手に詰めてよいのかという問題
になりますが、「ABC Consulting」という英文商号の余白を詰められて
困ります。

 あるとき、「・・・。(改行)なお、・・・」という新株予約権の登記申請内容に
つき、登記完了後の謄本をみたら、改行のない「・・・。なお、・・・」と詰められ
ており、文章のバランス上まずいので、お願いして直してもらったことがあります。
この改行部分の数文字も文字と考えれば、間違った登記をされたことになりますが、
余白は文字でないと考えれば、申請人の意に反する登記になりますが、正しい登記と
いうことになります。

 常識で判断すればよいことですが、煎じ詰めると、余白は文字であって文字でない
不思議な存在だと思いました。さて、今日の徒然は何行でしょうか。余白行を計算に
入れましたか。



2008.04.09(水)【社長が2人】(金子登志雄)

 中古車販売大手で上場会社のガリバー(正式には株式会社ガリバーインターナショ
ナル)が社長を2人にすると発表いたしました。  

 http://www.glv.co.jp/company/investor/pdf/2008/20080407.pdf  

 副社長や専務、常務が複数人という例はあっても、社長が複数というのは、過去に
例があるのでしょうか。それは、社長以外には、管理部門担当とか営業部門担当とい
う役割分担がつきものですが、社長の場合は、多くの会社の定款に「社長は業務を統
轄し」とあるごとく、「業務を統轄」するものであって、必然的に1人に限られると
いう前提があると思われるからです。

 一方で、共同代表という制度があります。AとBの2人とも代表権を有するが、2
人で1人前という制度です。契約の場合も、2人の印が揃わないと、有効な代表権の
行使にはなりません。
 この場合は、AとBのどちらが社長なんでしょうか。2人で1人とみるのか、2人
は2人とみるのかは定かでありませんが、2人とも社長なんでしょうね。

 こういう例をみると、社長が複数でもおかしくはありませんが、ガリバーの場合は、
共同代表型ではなく、A社長の担当とB社長の担当を内部規律で定めるのでしょう。
そうでないと、株主総会の招集はどちらがするのか、外部との契約の名前はどちらの
名にするのかという問題が生じますし、2つの社長決定が矛盾したときに困るように
思います。

 なお、共同代表制度は会社法によって否定されたと勘違いしている方も少なくない
ようですが、正しくは登記事項ではなくなったというだけです。定款に定めること自
体は、いまでも否定されていません。



2008.04.08(火)【臆病な戦士】(金子登志雄)

 昨日は、事実上、登記申請の集中日であった4月1日に申請したものが無事に終わ
ったかどうかを発表される合格発表日でした。
 私も、同日には、合併、会社分割、有限会社の株式会社への移行など重要な登記を
いくつか申請していましたので、無事に合格したことを知り、ただいまほっとしてい
るところです。

 とくに、合併等の組織再編の登記は、もし、無事に予定の日に終了していなかった
ら、従業員の社会保険の切り替えも遅れる、建設業であったら入札に申し込めないな
どの不都合が生じますので、司法書士の責任も重く、簡単な登記であっても終わるま
では落ち着きません。何年経っても臆病です。

 臆病といえば、キューバ革命の英雄チェ・ゲバラが、「自分より勇敢な戦士は、み
な英雄の誉れを受けずに戦死した。最後に生き残った臆病者が英雄といわれる」とい
うようなことを著書(日記?)に書いていた記憶がありますが、登記もそうかもしれ
ません。もし、私が勇敢(?)な司法書士であったら、とっくに大失策したり、懲戒
処分を受けて消えていたかもしれません。今後も、臆病にいきましょう。



2008.04.07(月)【大学の入学式】(金子登志雄)

 先週は事務所の近くの皇居(北の丸公園)で花見をしました。花より団子の私が率
先して花見をするわけがありません。誘われてのお付き合いです。
 子供の頃、家が小・中学校のすぐ近くにあり、学校内の桜の木にのぼったり、枝を
折ったり、セミをとったりしていましたので、桜は見飽きています。

 北の丸公園内の武道館では、某大学の入学式だったようで、大勢の若い方と父兄が
来ていました。私の世代では、親が大学の入学式に来るなど、冗談じゃないという時
代でしたが、今は違うようですね。高校の運動部の試合にも、親が弁当をもって応援
に来たり、荷物運びにマイカーを駆り出したりしないと、「あの親は…」といわれて
しまうようです。何たる時代でしょうか。

 もう1つの問題点は、入学生がほとんど同じ服装をしていたことでした。個性を出
すと他からシカトされる時代になったのか、公式な場所での協調性や和を重視する日
本人の昔からの習性なのか…。

 修学旅行でも団体旅行でも、引率の旗一つで一斉に同一行動をとる日本人に対し、
外国人の目からは「軍隊のような日本人の習性」にみえ、恐怖を与えると聞いたこと
があります。
 ただ、今の若い人たちは、外面に反し内面は個性的だと思いますので、今後を期待
することにいたしましょう。数年後の入社式だけは親を連れてこないでね。



2008.04.04(金)【株券提出公告の満了日】(金子登志雄)

 合併の消滅会社、株式移転の完全子会社などが株券を発行しているときは、登記の
添付書面として株券提出公告が必要です。

 問題は公告期間の満了日です。旧商法の株式交換では、「株式交換の日の前日迄」
とされていたのに、会社法219条では「効力が生ずる日まで」とされてしまいまし
た。4月1日が効力発生日なら、同日の夜12時まで公告し続けねばならないという
ことです。

 とすると、4月1日には合併の登記ができないのかという問題が生じますが、登記
実務は4月1日登記を認めています。4月1日に公告紙(官報や日刊新聞紙)を添付
できますし、会社法の条文でも、効力は4月1日午前0時に生じるが、株券提出期間
が夜の12時までとされているだけだと読めるからです。不安であれば、4月2日以
降に合併等を登記すれば済む話です。

 困ったのは登記が効力要件の株式移転などであり、株券提出公告が電子公告でなさ
れた場合です。4月1日に登記しなければ「1日設立」になりませんし、官報などと
相違し、電子公告の証明書が2日以降でないと入手できないからです。

 構わずに4月1日に登記申請し、翌日に電子公告完了証明書を提出すれば何とかな
るだろうと思っていましたが、登記実務では、電子公告は効力発生日の前日まででよ
いとされましたので、その必要はありません。

 では、「3月31日までに提出せよ」という内容でよいのか、「4月1日までに提
出せよ」という内容だが電子公告期間が3月31日まででよいということなのかと疑
問に思うでしょうが、もちろん後者が正しいというべきです。昨日調べた実務もそう
でした。



2008.04.03(木)【次は落合】(金子登志雄)

 尾原さん、投稿ありがとう。
 さすがはお若いですね。Σ(゜ω゜;)。o○とか、ΣΣ゜Д゜≡/…という、訳のわ
からないネット世界の言語を使われると、紙の世界に生きている団塊世代としては、
どう対応してよいものかと迷ってしまいます。

 さて、組織再編等の登記のピークである4月1日がやっと過ぎました。同日付で代
表者を交代したい、合併登記をしたい、有限会社から株式会社に移行したい、などと
いうニーズが多いので、この日を乗り過ごすと、顧客と「次の落合」場所がなくなる
と、私も前日から緊張していました。

 いつもは朝寝坊の私もその日ばかりは午前6時に起き、8時には事務所で電子申請
の準備をしていました。8時半から申請できますので、第1号を狙って待機していた
わけです。

 ところが8時31分になっても、パソコンの表示は「ただいま時間外」です。何度
繰り返しても同じです。私の時計がおかしいのかと思いましたが、35分にクリック
しても同じでした。
 Σ(゜ω゜;)。o○(ぇ!?) 、ΣΣ゜Д゜≡/エェェェッ!とおおいにあせりました
が、ふと、パソコン上部にある「更新」キーに触れてみましたら、正常な画面になり
ました。せっかく早起きしたのに、ネット世界に弱い私は、パソコンに嫌われ、予定
の駅で降りられませんでした。



2008.04.02【乗り過ごし】(尾原之)

 電車で乗り過ごした…という経験はないでしょうか。乗り過ごしの原因は、ほとん
ど「寝過ごし」だと思いますが、「何故?どうして?WHY?」と言いたくなるよう
な乗り過ごしもあります。

 先日乗った地下鉄でのことです。空いていたので着席し、本を読んでいました。下
車駅(高田馬場)までは約10分です。手前の駅(早稲田)を発車するところは確認
しました。 「次だな…と思いながら」その後も本を読んでいました。 ふと目を上げ、
ドア上の電光掲示板を見ると、
「…次は 落合…」(高田馬場の次の駅)… (゜д゜)
「…つぎは おちあい…」…Σ(゜ω゜;)。o○(ぇ!?)
「…Next Ochiai…」…ΣΣ゜Д゜≡/エェェェッ!

 状況を把握する間もなく落合駅に到着。とりあえず反対側の電車で折り返しました。
私自身は寝たという認識は無く、また下車駅の高田馬場は乗降が多いので、その際の
ざわつきで通常は気付くハズなのですが、今回はまったく気付きませんでした。

 なぜ乗り過ごしたのか?普通に本を読んでいたハズ…。たぶん寝てたのでしょうね。
結局は寝過ごし…(^^;; 皆さんも乗り過ごしに気をつけましょうね!


2008.04.01【独自路線の定款】(金子登志雄)

 上場会社の住生活グループ(旧トステムとイナックス)の定款目的に変わった表現
があると同社の前会長が新聞に書いていましたので、早速調べてみました。
 定款第2条(目的)の最初に「当会社は、次の事業を営むことを目的とし、他の事
業は行なわない」とありました。住生活関連業に特化するという意思表明のようです。  

 企業理念に関しては、医薬のエーザイなどは定款目的とは別の条項を設けています。
定款目的でも、同社が先駆者となり、会社法施行後に「その他適法な一切の事業」を
設けています。同社の目的は、「1.医薬品の研究開発、製造、販売および輸出入
2.その他適法な一切の事業」と、たったの2項目です。
 「その他適法な一切の事業」には、何屋さんかわからないという批判もありますが、
それは目的の1で十分ではないでしょうか。かえって、こういう包括的目的のほうが、
M&Aの時代にはあっています。企業買収した子会社の事業目的が親会社に記載され
ていないという批判を回避できるからです。  

 住生活グループといい、エーザイといい、自信のある企業は他社との横並び行動を
とりません。いち早く委員会設置会社になったソニーも、ベンチャー企業の雄・ソフ
トバンクも然りです。常に最先端を走ることに価値をおいているからでしょう。他社
にも見習ってほしいものです。



2008.03.31(月)【決算期末】(金子登志雄)

 今日は多くの会社の決算期末です。なぜ、3月末が多いかというと、単に日本国の
会計年度にあわせただけで、世界標準というわけではありません。

 しかし、最近は、3月決算でない会社も増えました。これは、設立時期に影響して
おり、第1期をできるだけ長くしたいという理由が多いようです。たとえば、3月に
設立した場合には、2月決算にするごとくです。また、「3月決算にされると忙しい
から他の月末を決算期末にしてほしい」などという担当会計事務所の要求で、決算期
末を3月末以外にすることもあります。

 決算期といえば、旧商法にはその用語が頻繁にでてまいりましたが、会社法では皆
無です。事業年度という用語に変わったからです。決算期末は事業年度の末日という
ことになりました。まさしく年度末です。企業の大晦日です。

 とすると、明日4月1日は企業の正月元旦ですね。入社式があったりと思っていま
したが、最近は3月中に入社してしまうことも多いようです。親しい某社に電話しま
したら、「司法書士の金子です」といっても、電話をとった新人らしい人に全く通じ
ませんでした。他の方なら、「あ、どうも」という反応がすぐにあるのですが…。



2008.03.28(金)【買取請求期間短縮の可否】(金子登志雄)

 組織再編の際には、効力発生日の20日前から効力発生日の前日まで反対株主に株
式の買取請求が認められています。とすると、株主の全員の同意があっても、株式会
社を設立直後に株式交換(組織再編の一種)ができないのか、新設合併直後に会社分
割はできないのかなどという問題が発生します。20日間の所定期間を空けていない
からです。

 著名な会社法立案担当者の中には否定的見解の方もいらっしゃるようです。できる
こととできないことはすべて会社法に書いてあるので、できると書いてないのだから、
困難だという論拠のようです。

 しかし、企業所有者である株主の全員がOKといっており、公序良俗にも反しない
ことを否定するのはおかしな論理です。会社法は機動的な企業活動を妨害するために
存在するのでしょうか。

 会社法でも、組織変更や持分会社を新設合併する際など株主の全員の同意が必要な
組織再編手続には、反対株主が不在のため買取請求の規定がありません。これと同様
に、株主全員の同意があれば、買取請求の前提である反対株主自身が不在になります
から、所定の期間を空ける必要はないというべきです。こんなことは会社法に規定が
あるかないかという以前の問題です。憲法29条の所有権絶対の自由主義の論理の必
然的結果です。

 幸いなことに、実務の最前線である登記実務は期間の短縮を認めています(キンザ
イ「登記情報」2008年1月号)。私も、登記で経験済みです。どうぞ、反対意見
に惑わされず自信をもって組織再編等を企画してください。



2008.03.27(木)【現役選手の選手寿命】(金子登志雄)

 報道によると、マラソンのQちゃん(高橋尚子選手)は、日本の3大女子マラソン
とされる今年11月の東京国際、来年1月の大阪国際、3月の名古屋国際のすべてに
参加するそうです。その意気に拍手喝采です。

 Qちゃんはまだ35歳です。プロスポーツ選手ではないのですから、引退などとい
う愚かなことを考えずに、とことん生涯にわたって走り続けてほしいものです。順位
などどうでもいいことです。疲れたら休めばよいのです。

 Qちゃんのオリンピック経験は1回で終わりそうですが、マラソンのような過酷な
スポーツにとって、4年に1度のオリンピックは長すぎるのでしょう。ピークの実力
が4年も8年も続くわけがありません。

 同じ過酷なスポーツでも相撲はまだよいほうなのでしょうか。朝青龍は、もう5年
も横綱を維持しているだけでなく、まだまだ続きそうです。
 もっとも、相撲は30代で引退です。そんな若さで現役を引退し、別の職業につか
ねばならないとは、考えてみればたいへんな職業ですね。現役時代にたっぷり稼いで
おかないと、ちゃんこ鍋屋の開業資金さえ確保できません。

 ゴルフや馬術は現役選手の寿命が長いので、より一層、マラソンや相撲の過酷さを
感じました。動くことが嫌いな私は現役選手の寿命とも無縁で幸せというべきか。



2008.03.26(水)【直接選挙】(金子登志雄)

 お隣の国・台湾の総統(大統領みたいなもの)に野党国民党の馬英九(マー・イン
ジウ)氏が圧勝しました。テレビや新聞でご覧のとおり、端正なマスクをした57歳
のエリートです。直接選挙ですから、玄人好みの政治家よりも人気面では有利ですね。

 日本でも知事は直接選挙です。石原都知事、橋下大阪府知事、東国原宮崎県知事の
例をみても、著名人は圧倒的に有利です。それだけでなく、若い政治家志望者に有利
です。橋下氏は39歳、東国原氏は50歳、また間接選挙ですが、国民を巻き込んだ
予備選挙を行う米国民主党の大統領候補オバマ氏は46歳です。

 長老が頑張っている国は落ち着いていて安定している証拠ですから、一概に若さが
好ましいとは限りませんが、いまは時代の変わり目ですから、「変化=若さ」が必要
でしょう。この際、わが国でも直接選挙を行ったら、政権交代もたやすいように思い
ます。

 ところで、私の持論ですが、首相と閣僚は日本人は一切不可という法律はいかがで
しょうか。日産自動車のゴーン社長の例をみるまでもなく、日本の企業が外資のノウ
ハウで蘇った例は多いですし、委員会設置会社と同様に、経営の監視は国民代表が行
っても、舵取りは執行役というプロに任せればよいのです。

 米国のクリントン元大統領も英国のサッチャー元首相も、お暇なようだから、日本
再生の執行役でもやってくれませんかね。とりあえず、日銀総裁にグリーンスパン氏
を招聘したいものです。



2008.03.25(火)【プロの技(わざ)】(金子登志雄)

 先々週、司法書士関係のソフトで有名な株式会社リーガルの「かいけつ!オンライ
ン」というソフトをインストールしている際に、わからない部分がでてきたため、親
しくさせていただいている同社の営業部長Oさんの携帯に電話をさせてもらいました。

 30分も電話でやり取りしましたが、当方は画面を見ながらなのに、O氏は外出先
で何の資料もないのに、「次に、こういう画面が出てきますから、エンターキーを押
して」と答えてくるので、びっくりすると同時に感動しました。これぞ、プロです。
将棋のプロが将棋盤がなくても指せるのと同じです。O氏が「怪傑黒頭巾」のおじさ
んにみえました。  

 私も、合併等の会社法手続のことでしたら、「怪傑黒頭巾」のおじさんになれます
が、かといって将棋盤にあたる登記簿謄本が頭に入っているわけではありません。そ
こまでは必要ないからです。民法学の大家である故・我妻栄東大教授が講演で「民法
は全部で何条あるのですか」と聞かれ答えられなかったという逸話がありますが、こ
れは恥ずかしいことではありません。知っていても何の役にも立たないことだからで
す。

 英会話でも、電話で自在に会話できるようになったら本物だといわれます。電話で
も顧客の相談に応じられる得意科目を持ったら、本物・プロだといえましょう。本徒
然閲覧者のみなさんの「怪傑黒頭巾」の腕前は何でしょうか。

(注)映画では、「怪」傑ではなく「快」傑にしたようです。ハリマオも。
   http://www.purple.dti.ne.jp/nobuaki/untitled.htm17.htm


2008.03.24(月)【足の裏の飯粒】(金子登志雄)

 21日の昼食時に読んだ読売新聞のコラム(編集手帳)に「足の裏の飯粒」という
諺(ことわざ??)が紹介されており、思わず笑ってしまいました。はじめて聞いた
言葉でしたが、みなさまはご存知でしたでしょうか。

 「取らねば気分が悪く、取っても食えない」という意味のようです。落語の謎かけ
みたいですが、現代風にいうと、「踏みつけたガム」ということでしょうか。主に医
歯薬学系の博士号で使うことが多いようです。新聞のコラムも博士号に関するもので
した。

 司法書士資格も同じでしょうか。
 司法書士試験の受験生の掲示板などをみていますと、資格を取っても食えないなど
という投稿が多数あります。「じゃあ、受験するのをやめなよ」という批判はともか
く、不動産登記はベテランが独占して入り込む余地は少ないし、弁護士が大量に増え
る時代になると、司法書士業務に今以上の過当競争が行われるという論拠が多いよう
です。  

 しかし、資格を取れば食っていけると思うほうが大間違いであり、資格は開業の手
段にすぎません。黙って座っていれば、お客が行列してくれるものでもありません。
 ただ、博士号と相違し、司法書士資格は実業の資格です。真面目に仕事をしていれ
ば、最初のお客が次のお客を紹介し…で、徐々に顧客数も増えていくものです。

 とはいいながら、顧客数の少ない私がいっても説得力がないですね。こういうこと
は、商売繁盛でまともに昼食もとれずコンビニ弁当で頑張っているT先生やO先生の
発言でないと……。


2008.03.21(金)【多くとも少なくとも】(金子登志雄)

 合併等の効力発生日の4月1日が近づきましたので、添付書面の書き方などの質問
が増えてまいりました。

 合併で、たとえば資本金を1000万円増加する場合に、旧商法時代は、資本金増
加限度額の証明書として、合併で受け入れる資産は「少なくとも」〇〇〇万円、負債
は「多くとも」〇〇〇万円という書き方をして、受入れ純資産額が増加資本金よりも
多いことを証明していました。
 会社法では、「資本金が法令に従って計上されたことを証する書面」となったため、
従来どおりの記載法でよいのかという疑問が生じたわけです。
 私は、全く問題ないと考えています。次の理由です。

 商業登記法:資本金の額が会社法第445条第5項の規定に従つて計上されたこと
       を証する書面  
  ↓
 会社法:合併、吸収分割、新設分割、株式交換又は株式移転に際して資本金又は準
     備金として計上すべき額については、法務省令で定める。  
  ↓
 法務省令:株主払込資本変動額の範囲内で、吸収合併存続会社が吸収合併契約の定
      めに従い定めた額

 すなわち、資本金計上額が株主払込資本変動額の範囲にあることを証明すればよい
のであって、受け入れる資産や負債の具体的数値の証明までは不要です。いい換えれ
ば、資産や負債の額の証明が求められているのではありません。
 よって、少なくとも株主払込資本変動額(多くの場合が受入れ純資産額)がこれだ
けあり、それは資本金計上額以上であればよいという証明です。従来どおりの表現を
用いても何の問題もないというべきです。
 そもそも、4月1日に日々変動している資産・負債の具体的数値が決まるわけがあ
りません。「多くとも・少なくとも」と書かなくても、実際には、そういう数値を記
載するしかありません。



2008.03.19(水)【石の上にも3年】(金子登志雄)

 新銀行東京への追加出資は是か非かという話題は、お茶の間にも浸透しはじめたよ
うです。みなさんのご意見はいかがでしょうか。

 ここで時々書いていますが、「経営(者)」というのは、この世で一番むずかしい
仕事であり職業のように思います。日経新聞の「私の履歴書」でも、住生活グループ
前会長潮田健次郎氏が、重い荷物を背負って断崖絶壁を登るようなもんだといったよ
うなことを書いていました。資金繰りに長年ご苦労されたようです。

 経営のプロでさえ、こういう心境になるのに、素人の東京都主導の経営で新銀行東
京は、今後、盛り返せるのでしょうか。さらに追い銭が必要となり、傷口が大きくな
るのではないかという危惧をもってしまいます。

 「石の上にも3年」という言葉がありますが、某経営評論家によると、これは「3
年頑張ってだめなら、あきらめよ」という意味だそうです。新銀行東京も、ちょうど
3年です。

 3年かどうかは知りませんが、東芝はHD・DVD事業から撤退し、三菱電機は携
帯電話端末から撤退し、ソニーは・・・と、超一流企業が立て続けに、採算の合わな
い事業から撤退を発表しています。面子にこだわっていられないということでしょう。
 銀行業務の撤退は影響が大きいので、東京都も苦悩していることは理解できますが、
負け戦に竹やりで突っ込むことだけは避けてほしいものです。



2008.03.18(火)【英語は苦手】(金子登志雄)

 鈴木さん、投稿ありがとうございます。宣伝でも何でも当徒然をご利用ください。
ただし、閲覧者が日に80から100名程度ですから、お役に立てるかは自信があり
ません。ただ、そうそうたる方々が閲覧していることだけは確かです。

 ところで、先日お会いした際の話では、鈴木さんもファンレター(迷惑メール)で
お困りのようでしたね。私は、ついに降参し、先週、事務所のメールアドレスを変え
ました。日に50を超え、月曜には土日分を含め150以上も津波のように押し寄せ
るのですから、たまりません。
 私の場合は、全部が海外からの商品案内ですが、たぶん、海外の何かに登録されて
しまったのでしょう。英語はちんぷんかんぷんの私に送っても何の効果もないのに。

 英語といえば、30年以上前に、1人で香港を旅行したとき、たくましいおばさん
旅行者に会いました。経営している小料理店の夏休みを利用して、数日前に、たった
1人で日本を発ったようですが、そのおばさんの英語能力は、「私の若い頃は日本の
ことをジャパンといったのに、最近はジャパニーズというように変わったのですか」
というものでした。それ以来、英語はできなくとも世渡りはできると確信しました。



2008.03.17(月)【商業登記全書第5巻『株式会社の機関』】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは。
 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。
 たびたびの登場ですが、嫌がらないで下さい。
 今回は地方行脚ものではなく、書籍刊行のお知らせです。

 金子さんらとともに編集委員をしております「商業登記全書」の私の担当巻である
『株式会社の機関』がようやく発刊になりました(1年もかかってしまいました。や
はり、共著は統一性やら、何やらで大変でした。)。

 内容としては、株式会社の機関について網羅的に、かつ実務的にとりあげたつもり
です。 http://www.suzukijimusho.com/lib/book.html

 ご参考まで、本書のはしがき抜粋です。

「商業登記全書第5巻 株式会社の機関」では、株式会社の機関、役員等について商
業登記に軸足をおきながら、会社法をはじめとする実体法上の規律を実務的に整理し
ました。そのうえで機関、役員等に関する税務、社会保険、その他の許認可の分野に
ついても取り上げ、実務家が現場において活用できるものであることをこころがけま
した。

 そんなことで、日頃からお世話になっている「徒然活動日誌」の愛読者の皆様に
「定価5250円(税込)+送料」のところ、なんと20%OFFの4500円!
(税込・送料込)で特別斡旋させていただきます。
 この機会をお見逃しなく(通販番組のようになってしまいましたが・・・)

 なお、お申し込みは、直接、出版社の編集者宛にメール(またはFAX)ください。

----------------------------------------------------------------------------
 中央経済社 和田豊 様
 wadax@chuokeizai.co.jp/FAX 03−3291−5127
 著者紹介に基づき、『商業登記全書5巻 株式会社の機関』を下記のとおり
申込みます。
1.氏名
2.郵便番号
3.送付先住所
4.電話番号
5.ファックス
6.連絡先メール
7.冊数
8.その他   
 (請求書の宛先住所氏名が違う場合はその旨など)
9.備考   
  ESG

----------------------------------------------------------------------------

2008.03.14(金)【総会特別決議の定足数】(金子登志雄)

 御社の定款に、定款変更等の総会の特別決議につき、「株主の議決権の3分の1以
上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもってこれを行う」とありま
せんでしょうか。
 なければよいのですが、こういう定款は上場会社用であり、未公開中小企業では、
従来どおり定足数は「議決権の過半数」の出席でよしとすべきです。

 前者の定款で、社長と専務が対立し、前者が議決権の51%、後者が35%持って
いたとします。社長が長期海外出張中に専務が総会を開催し、特別決議で増資を実行
すれば乗っ取りが完成です(総会の招集権者等の問題は横におきます)。

 なぜ、このような定足数の緩和が認められたかというと、上場会社では総会に出席
しない一般株主が多く、定足数を充足できないこともあり、予定していた定款変更決
議もできなかったなどという事態がいくつか生じたため、平成15年4月から、定款
で定足数の緩和が認められたのです。定足数の充足で苦労していない未公開中小企業
とは無縁の制度です。

 ところが、そういう背景も意味も知らない最先端を気取る弁護士・司法書士が顧客
の定款に「定足数は3分の1以上」と定めることが実に多いのです。
 会社法を表面的に知っていても、会社の実態を知らない専門家は真のプロとはいえ
ないでしょう。心当たりのある専門家のみなさん、リカバリーも貴方の腕次第ですよ。



2008.03.13(木)【環境変化】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、個々人の文化摩擦でいえば、「転校」などがあります。転校は
子供心に大きなショックですが、経験者は少なくないようです。
 私も、小学校6年生のとき経験しました。山の中の小学校から、町の中の小学校に
転校したわけですが、いじめっ子の私が突然おとなしい優等生になりました。周囲は、
みな知らない人ばかりですから、おとなしくせざるをえません。

 驚いたのは、同じ郡部内で1つ山を越えただけなのに、カルチャーが違うのです。
毎週、朝礼で君が代斉唱がありましたし、運動会の際も、生徒の服装が違いました。
野鳥の捕り方さえ違いました。

 しかし、振り返ってみれば、この転校(環境変化)がなければ、相変わらず「お山
の大将」で、井の中の蛙だったでしょう。自分よりも成績の優秀な人が多いという環
境に移ったことで、自分の学力も向上し、世界も広がりました。

 これに対して、米国大統領候補のオバマ氏の人生における環境変化はスケールが大
きいですね。ケニア移民の父と白人の母のもとに生まれ、母親の再婚でインドネシア
で一時暮らしたり・・・、たった1度、山向こうの小学校に転校しただけの私の経験
とは雲泥の差です。  

 子供の教育で苦労なされている方は、環境を変えてあげるといいかもしれませんね。
ひょっとしてご子息が将来は日本国の首相候補になるかもしれませんよ。


2008.03.12(水)【同質社会の弊害】(金子登志雄)

 日本って、食い物はうまいし、治安もよく、ほんとに住みやすいですね。しかし、
それは私たちが日本人だからかもしれません。外国人の方にとって、日本は住みやす
い国なのでしょうか。

 日本は移民の受け入れに消極的ですが、移民を受け入れている国は、文化と文化の
対立があり、それが新しい産業を発展・活性化させているようです。
 アメリカ西海岸にあるシリコンバレーの発展も、東洋と西洋の文化だけでなく、南
北の文化の融合点となり、アップルとかインテルとかヤフーとか世界的に著名企業が
勃興したという話もよく聞かされるところです。

 イギリスもフランスも多くの移民を受け入れています。小さな島国であるアイルラ
ンドも然りです。中国は国が大きく国内での戦争の歴史も長く、多様な文化が衝突し
てきた歴史がありますし、お隣りの韓国も、分断国家の影響で、常時、異文化と対峙
しています。東アジアでありながら、キリスト教の影響も強い国です。

 これに対して、同質社会の日本は、一斉に1つの考え方になびいたり、批判がタブ
ーとされる例も多く、こんな状態で、今後、多様な各国に抗していけるのでしょうか。
かつてのイギリスのように、斜陽の老人国家に進んでいるような気がしてなりません。
 ということで、国の若さを保つには異文化の受け入れも重要だと思いますが、老人
の年齢に近い私には、どうも真剣みが生じません。私にできることは、独身のESG
諸君に、「伴侶は外国人にしたら?」とでも勧めることくらいでしょうか。



2008.03.11(火)【商業登記スペシャリスト養成塾】(金子登志雄)

 商業登記倶楽部という司法書士業界では著名な団体(有限責任中間法人)がありま
す。
 http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/Introduce.htm

 土曜日は、そこが主宰する「第1回商業登記スペシャリスト養成塾」(毎月1回、
合計10回で1日5時間講義)の終了式でした。北海道から沖縄までの中堅からベテ
ラン司法書士が最先端の会社法務の習得に集まってくるわけですから、壮観でした。

 2度ばかり講師をし、懇親会にも参加させてもらった関係で、多くの受講生の方々
と知り合いになれましたが、地方でも、合併、会社分割、株式移転と、それも上場会
社の子会社等が絡んだ大きな案件が少なくないようです。

 合併等の組織再編は、冠婚葬祭と同じで、会社の担当者も、顧問弁護士も経験がな
く、顧問税理士・会計士も会社計算規則に疎いという状態で、頼るは手続法務の専門
家・司法書士ということになり、皆さんたいへんなようでした。泥縄で(失礼!)、
猛勉強し、顧客の要求に四苦八苦で対応している姿が目に浮かぶようです。

 これでいいのです。誰も頼る人がいない文献もないという状況が最も勉強になりま
す。私の企業法務歴20年間は、ずっとそうでした。たかが合併とはいえ、個別事情
で、それぞれ違いますから、いまだに試行錯誤の連続です。
 受講生の方々には、養成塾で学んだ知識とノウハウを活かし、最後は自分しかいな
いという究極の状況で実務に対応し、失敗しても、上手にリカバリーし、おおいに飛
躍し
ていただきたいものです。


2008.03.10(月)【多忙なみなさまに】(金子登志雄)

 多くの会社が決算期である3月も半ばとなり、わがESG各メンバーも何かと気ぜ
わしく多忙なようですが、みなさまは、いかがでしょうか。

 さて、忙しい、忙しいと不平たらたらのみなさまに、次の言葉を送ります。

 「人生最大の幸福は職業の道楽化にある。富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の
愉快さには比すべくもない」

 3日付日経新聞「私の履歴書」(住生活グループ前会長潮田健次郎氏)で、野間清
治氏の「財産告白」にある内容だと紹介されていました。実にいい言葉ですね。

 この心境は私のような年齢になるとよくわかります。仕事を好きになると、疲れを
感じなくなりますし、相手が人間ではないので、裏切られることもなく、頑張れば頑
張るなりの成果もでてきて、ますます仕事が面白くなります。

 といっても、残念ながら、私は、「富も、名誉も」手にしたことがなく、「美衣美
食」にも関心が薄いので、それらと職業道楽の愉快さとを比較することができません。
きっと、富も、名誉も、美衣美食も、職業道楽の愉快さよりも、ずっとずっと甘い蜜
の味なんでしょうねぇ。

 あれれ、書いているうちに仕事は辛いねという内容になってしまいました。辛いか
ら仕事なんですよね。報酬は苦痛の対価と思い、原点に戻って、今週も我慢して真面
目に頑張りましょう。



2008.03.07(金)【基準日】(金子登志雄)

 上場会社の子会社の合併等を担当しておりますと、時々、顧問弁護士さんから「基準
日公告をしなくてよいのか」という問い合わせや異議があります。

 基準日とは、株主総会を開催するにあたり、株主が始終変動していては困りますから、
総会で議決権等を行使する株主を確定させるための制度です。たとえば、3月21日に
臨時株主総会を開催する場合には、2月末日を基準日と定め、その日の株主に限り総会
で議決権を行使させる制度です。

 株主が数百人から数万人も存在する上場会社では、基準日を定めないと収拾がつきま
せん。しかし、その子会社の場合には、株主が1人又は数人で、ここ何年も変動がない
というのが普通ですから、基準日を定める意味がありません。この場合には、総会当日
の株主が議決権行使者ということになります。

 会社法もその124条で、基準日の株主をして、その権利を行使することができる者
と定めることが「できる」と規定しており、基準日を定めなければならないとは規定し
ていません。基準日を定めなければ、当然に公告する必要もないわけです。

 顧問弁護士さんの問い合わせは、基準日というのは必ず定めるものだと思い込んでの
ものです。司法書士がちょっとばかり優越感に浸れる瞬間です。



2008.03.06(木)【えん罪】(金子登志雄)

 最近、やたらと、えん罪の報道が目につきます。昔から多かったのでしょうが、顕在
化するようになったということでしょうか。

 最近の有名な事件では、ロス疑惑の三浦氏の問題は横におくと、鹿児島県の志布志(
しぶし)事件でしょうか。鹿児島県議選で現金を配った、もらったとして志布志町民
13人が逮捕・起訴されましたが、昨年2月に鹿児島地裁で無罪になった事件です。ア
リバイが出たり、違法捜査が問題になったのに、県警の活躍が表彰されたり、鳩山法務
大臣のえん罪じゃないという発言などが問題になりました。

 えん罪というと、強盗殺人等の重罪事件で問題になることが多いのですが、小さい事
件でのえん罪はわれわれが想像する以上に多いといわれています(確か弁護士さんのア
ンケートでも、かなりの数だったと記憶しています)。
 過酷な取調べに耐えられず、また早期に釈放されたいために、捜査官の誘導に基づい
て虚偽の自白をしてしまうわけです。

 銀行勤務時代に警察周りを担当していましたが、みなさんいつもは紳士なのに、被疑
者の前にでると顔つきも変わり、怖い、怖い。私など、すぐに虚偽の自白をしてしまう
でしょう。電車に乗っても、近くに若い女性が立っていると、両手でつり革を持ち、痴
漢のえん罪に巻き込まれないように防衛していますが、同時に、「逮捕=犯人」という
先入観だけは、われわれも持たないように気をつけたいものです。


2008.03.05(水)【確定申告】(金子登志雄)

 3月になると確定申告の期限が気になります。給与生活がメインだったときも、わず
かな個人事業の収入がありましたので、もう20年以上も確定申告をしています。  

 個人の事業収入がわずかのときは、源泉されていた税金の還付になることも多く、生
活の足しになり、助かりました。
 数年前からは、個人事業(司法書士業務)での生活を主にし、兼任の役員報酬を従に
したため、また、個人事業は1人事務所にしているため経費も少なく、いまは還付とは
無縁で、せっせと税金を納めています。

 やっと人並みに税金を納められる身分になりましたので、税務調査を受けた場合のこ
とは意識しています。怠け者ですが、仕事と金銭に関することだけは、慎重な対応をし
ていますので、何も怖いことはないのですが、いかんせん、税務署が全く相手にもして
くれません。知り合いの税理士さんによると、「税務署だって忙しいし、調査は担当者
の成績にも響くので、小口を相手にしているヒマはない」ということでした。「舐めん
なよ」といいたいところですが、「ごもっとも」というしかありません。  

 ESG諸君、一番先に税務調査を受けた人には、みんなで祝賀会を開きましょう。誰
が一番先でしょうか。代表の名誉にかけて、私も一番になれるよう頑張ります。自分で
税務署に密告する禁じ手はなしですよ。


2008.03.04(火)【時計と登記報酬】(金子登志雄)

 ひょっとして、富田さんは登記申請の際に、ちらっと腕時計をみせているのではない
ですか。法務局職員に「あんな高級な腕時計をしている先生が登記申請にミスするわけ
がない」と思わせるために・・・。効果があるなら、私も、『フランクミュラー』とや
らを購入しますけど。

 効果がないと、門外漢には全く理解できません。時を正確に刻めば十分ですよ。
 また、高級時計などを腕にはめていては、傷つけてはいけないと気になって仕事等に
集中できなくなりませんか。  

 私の時計選びは、安物で電池交換が不要の1点です。数年に1度の電池交換も面倒で
す。
 私にとって、時計はメガネ以上に体の1部であって、入浴時以外は常時はめています。
残念なのは、最近のものは曜日の表示がないことでしょうか。便利だったのに・・・。

 それにしてもメガネとか時計って実に安いですね。高級時計といっても、富田さんの
想定しているのは、どうせ数十万円でしょう。それでも十分に安いですよ。60万円で
も5年間使えば、1年間で12万円、1月1万円、1日333円にすぎません。私の煙
草代よりずっと安い。車やギャンブルに凝ったり、高級ワインなどに凝るよりは、よほ
ど安上がりな趣味で、周囲からみていても安心していられます。せいぜい、たくさん集
めてください。

 あれ、この計算は便利ですね。今度、非公開会社の役員変更の話があったら、任期を
5年に延長し、60万円請求しよう。もちろん「1日333円です。安すぎましたでし
ょうか」と申し添えて・・・。
 ESG諸君、冗談でもまねしないでね。灰皿を投げつけられるかもしれないので、
15m以上離れた距離から冗談めかしていわないと、あとの責任は負えません。



2008.03.03(月)【時計と登記?】(富田太郎)

 私は、コンビニ弁当を常食とし、着ているスーツは大手量販店の安物ですが、時計だ
けは、こだわりがあり、数々のコレクションを持っています。
 顧客から、「先生、その時計は、○○ですね♪」と時計談義で盛り上がることもあり
ます。
 もっとも、いつも、有名ブランド時計をはめているわけではなく、時には、お気に入
りの「安物国産時計」を堂々とはめているときもあります。

 いつも本物の時計をはめているからでしょうか?安物の国産時計をしているときも、
「先生、その時計は、『フランクミュラー』(高価な外国時計)ですね!素晴らしい♪」
などと、よく勘違いされます(汗)。

 ところで、1月24日の本徒然「迫力の登記申請」にもありましたが、実力司法書士
Aと新人司法書士Bとが、ある「同じ内容の登記」、たとえば「合併の登記申請」をし
た場合、同じ論点について間違いをしているにもかかわらず、Aのほうは受理され、B
については補正になってしまうことが稀にあります。不公平な!!

 おそらく、Aは日頃から「素晴らしい書類」を作っており、かつ、「この申請内容で
文句あるか!」と堂々とした雰囲気?が書類から、にじみでているので、つい法務局も
「この内容は正しい(本物だ)」と錯覚してしまうからではないでしょうか?
 私も仕事の面でも、そのように思われたいものです♪ 


2008.02.29(金)【取締役社長と代表取締役社長】(金子登志雄)

 鈴木さん、再度の投稿ありがとうございます。人手の多い鈴木事務所の経営は、たい
へんでしょうね。私も、会社役員を兼任していますので、そのご苦労はよくわかります。
そのためもあって、司法書士事務所では、気楽さを優先させています。

 さて、金曜日のテーマは法律問題にしていますが、みなさんは、「取締役社長」とい
う肩書と、「代表取締役社長」という肩書を比較した場合に、どちらが偉いと感じます
か。
 私は前者です。歴史の圧倒的な重みを感じるからです。

 代表取締役は昭和25年に欧米の制度を導入したものです。それ以前は、取締役会も
なく、個々の取締役が代表権を有し、その長を取締役社長と呼んでいました。したがっ
て、昭和25年以前に設立した会社(昔の額面50円会社)では、定款でトップのこと
を「取締役社長」と定めている例が多いといえます。名立たる上場会社の多くがこれで
す。歴史のある銀行でも、トップを「代表取締役頭取」ではなく、「取締役頭取」とい
うことが多いようです。

 司法書士に対する登記の委任状でも、「取締役社長〇〇〇〇」とあると、その伝統の
重さを感じて緊張します。こういう委任状を何社からも、もらえる司法書士事務所は経
営が安定しているといえましょう。私もそうなりたいものです。



2008.02.28(木)【司法書士の事業承継】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは
 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。

 金子さん WROTE(2月21日徒然)
>いまや事業承継は、地方の名士にもなっている司法書士事務所の問題にもなりま
>した。昔の医者と同じで、試験が難しく息子が合格せず困っている事務所が多い
>ようです。  

 先般の研修会でもお話ししたのですが、
 @ 属人的才覚に基づく事業
 A 魅力のない事業(社会的に、後継者的に)
はそもそも、事業承継の対象になりません。  
「司法書士」事業はどうでしょうか?

>この対策は鈴木先生、どうアドバイスしますか。
>私なら、息子より娘に期待し、司法書士試験合格者との合コンを積極的に勧め、跡継
>ぎを引っ張ってくるようにアドバイスするかな。「息子に期待しない」、これが確実
>な事業承継対策だったりして。

 ナニワ商人方式ですね。最近は女性の合格者が増えてますので、どうでしょう(でも、
逆もありかな)。
 ちなみに東京商工リサーチの調べでは、30年前はいわゆる直系親族承継が9割だった
ところ、現在はそれが6割程度になっているそうです。
 ということもあって、当事務所は法人化していますが、結果はどうでしょう?

(おまけ)
 いわゆる、専門資格者の事業承継が一番難しいかなと思っています。
 まず、受かる保証のない試験に合格しなければならないうえ、最近では実務能力のほ
かに経営能力も要求されます。そして、大儲けなど当然できないわりに苦労が多い
(愚痴になってしまった・・・)。



2008.02.27(水)【 印紙の販売と売り捌き】(金子登志雄)

 松山さん、収入印紙は無くすおそれがあり、怖いですよ。郵便局で収入印紙を購入し、
当事務所に戻る際に、小さな橋を渡ります。いつも、そこで印紙が風に飛ばされ、川に
落ちたら・・・と想像してしまいます。多いときは 100万円以上ですからね。あのドブ
川に飛び込むかどうかと思案橋をしてしまいます。

 また、現金で印紙を買おうにも、銀行のカードでは現金引出し額に制限があるので、
緊急に大金が必要なとき、あせってしまいます。電子納付で銀行の預金通帳から自動引
き落としされ、ほっとしているところです。

 ところで、年下でも、司法書士としては、私の大先輩にあたる松山先生、昔、「印紙
の売買」や「印紙の販売」という定款目的は不可とされ、「印紙の売り捌(さば)き」
にせよなどといわれていたことをご記憶だと思いますが、なぜかおわかりですか。本徒
然閲覧の司法書士の方は、いかがでしょうか。

 売買というのは商行為であって、安く仕入れて高く売り、その利ざやを稼ぐ商売です。
ところが、印紙は額面で仕入れて、そのまま転売し、手数料収入になるので、「売買」
と言ってはいけないとされていたのです。
 意味が通じれば、どうでもいいじゃないかといいたいところですが、こういうつまら
ないことにこだわるのが登記所だったということです。登記は法律家のものではなく、
一般国民のものなのに。



2008.02.26(火)【 電子納付より印紙納付】(松山聡)

 自称、金子代表のオンライン申請私的ヘルプデスクの松山です。(笑)

 登録免許税の還付の件(2月19日の徒然)は、何ともお気の毒様でした。
 まだ、顧客に何も請求していなければ調整も可能かと思いますが、ここは一つ、一し
きり泣かれた後(?)に、笑顔で「電子申請推進還付金です!」とでもお伝えになって
はいかがでしょうか。コンビニ弁当会員(?)もそんなことで疎ましく思ったりしませ
ん。我々の結束は固いですから。

 なお、このような不測の事態に備えて(?)、登録免許税を電子納付せずに印紙納付
する方も少なくないようです。いざというときに、還付ではなく当該印紙の再使用証明
を受けて対処するためです。かくいう私も、最近は印紙納付派です。


 ところで、我々の不動産登記業務においては、証明書を添付することによって登録免
許税の軽減を受けることがよくあります。この場合は、登記完了後に証明書のつけ忘れ
に気づいても登録免許税を還付してもらうことはできません。


 一方で、今般の登録免許税最大5000円控除の根拠である租税特別措置法84条の
5は、「電子情報処理組織を使用して次に掲げる登記の申請を行う場合における当該登
記に係る登録免許税の額は〜(中略)〜控除した額とする。」と規定されています。し
たがって、該当する登記申請をすれば、当然に登録免許税が軽減されます。証明書のつ
け忘れを気にする必要はありませんが、今一度、電子申請する際には軽減があるかない
か確認した方がよさそうです。でないと、我ESG代表のように還付の憂き目にあうこ
とも。。。

 もしかしたら、登記所も気づかずに登記が完了しているものもあるかもしれませんね。
私も、1月以降の申請分を、もう一度確認してみようかな。



2008.02.25(月)【100%減資】(金子登志雄)

 土曜日は富山県司法書士会の会社法セミナーに行ってまいりました。天候には恵まれ
ませんでしたが、参加者も多く、かつ、山本会長はじめ、みなさまから、たいへん暖か
い歓迎を受け、感激しました。ありがとうございました。  

 セミナーでは100%減資の方法の質問を受けました。ホテルに戻ったら、ちょうど
私のノートパソコンにも、その質問が友人の司法書士から入っていました。ニーズが多
いのでしょうか。  

 100%減資というと全部取得条項付種類株式を利用した方法が有名ですが、株主全
員が賛同している場合には、こんな面倒な方法を使う必要がないだけでなく、減資さえ
も不要だと私は考えています。  

 100%減資の主目的は減資自体にあるのではなく、株主全員交代と、けじめの意味
で旧株の全部を消却するものですから、株主全員から無償で会社に株式を寄付してもら
い(無償のため自己株式取得規制の適用はありません)、会社保有の状態(自己株式)
とし、それを消却すると同時に新株を発行し、新たな株主を迎え入れればよいわけです。
額面株式時代と相違して、減資手続が必須というわけではないのです。

 欠損てん補のために減資が必要だとするなら、新株発行後に減資をしたほうが、欠損
をより多くてん補できるでしょう。
 どうぞ、株式の問題と資本金の問題とは、それぞれ別にご検討ください。もちろん、
減資と株式の消却を同時にしても構いませんが、同時でなければならないと思い込んで
の対策では、次の飛躍につながらないでしょう。


2008.02.22(金)【「営業」と「事業」】(金子登志雄)

 昨夜は、品川区・大田区合同セミナーの講師でした。テーマは「会社の計算」です。
支部長はじめ、みなさまお世話になりました。

 そこで、会社法には「営業」という単語がないとうっかり発言をしてしまいましたが、
これは、営業報告書が事業報告となり、営業譲渡が事業譲渡に変わるなど、営業概念が
事業に変化したという意味であって、「営業時間」と「営業所」という単語は残ってお
りますので、誤解のないよう、ここで訂正させていただきます。

 と書くと、本徒然閲覧者は、「営業」と「事業」のどこが違うのだと疑問に思うでし
ょうが、深く考える必要はありません。他の法人法制が営業よりも事業という概念を用
いることが多いので、それにあわせた程度に思っていれば十分です。

 また、個人の場合は複数の営業ができながら、会社が複数の営業を行っても、営業と
いうのはおかしいという理由から、複数の営業を包括する用語として事業にしたもので
す。

 そうであれば、「営業時間」も「事業時間」にすればよいようにも思いますが、意味
が通じなくなるため、やめたのでしょうか。真意は不明です。「地下鉄はどこから入れ
たのでしょうか。考えたら眠れなくなった」という漫才が、昔、はやりましたが、それ
と同様に、真剣に考えてはいけないテーマかもしれません。


2008.02.21(木)【事業承継の市場】(金子登志雄)  

 鈴木さん、投稿ありがとうございます。今度は、事業承継ですか。若い人は何にで
も意欲を持ててうらやましいですね。

 事業承継といえば、平成4年にプレジデント社から『新事業承継戦略』を出版しま
したが、当時では画期的な内容で一部の方には高く評価されましたが、売れ行きが悪
く、在庫を裁断処分されてしまいました。それ以来、やや遠ざかっています。

 後日、わかったことですが、真に事業承継に関心のあるのは、上場も目指さない地
方の優良企業であり、数はそうないことと、税理士さんが税務対策だけの事業承継に
関心があったため、拙著の内容(真の『事業』承継)へのニーズが少なかったようで
す。出すのが早すぎたのかもしれません。

 いまや事業承継は、地方の名士にもなっている司法書士事務所の問題にもなりまし
た。昔の医者と同じで、試験が難しく息子が合格せず困っている事務所が多いようで
す。  

 この対策は鈴木先生、どうアドバイスしますか。

 私なら、息子より娘に期待し、司法書士試験合格者との合コンを積極的に勧め、跡
継ぎを引っ張ってくるようにアドバイスするかな。「息子に期待しない」、これが確
実な事業承継対策だったりして。


2008.02.20(水)【旅は徒然(福島編)】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは
 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。
 
 この週末は福島に行って参りました(TVの旅番組のようですが)。
 福島司法書士会にお誘いいただきましての研修の講師です。

 テーマは、「事業承継」。
 事業承継については、個人的にも関心がありまして、実務で携わることも少なくあ
りませんが、3時間の単独の演題として取り上げたのは初めてです(企業法務のお話
をするときには、大抵多かれ少なかれ触れていますが・・・)。
 荒天にもかかわらず、 100名近くの福島の先生方にご参加いただきました。熱心な
ご聴講、講師冥利に尽きます。ありがとうございました。

 今、事業承継は、まさに旬のテーマという感じで、ご存じの方も多いと思いますが、
事業承継のための法律まで、できる勢いです。
 ご関心のある方は以下をご参照ください。

 『中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律』  
 http://www.meti.go.jp/press/20080205003/20080205003.html

 また、新聞等でも毎日のように取り上げられています。  
 http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080217AT2C1501316022008.html

 ということで、流行ものには弱い私はすぐに飛びついているわけです。

 ところで、事業承継の支援って、司法書士向きの業務のような気がします。
 会社法、遺言・相続といった普段慣れ親しんでいる業務の知識や経験を生かすこと
ができますし、何よりうまくいけば、みんなハッピーになれるというところも魅力的
です(我々司法書士は平和産業ですから)。

 皆さんも、チャレンジしてみてはいかがですか。

(おまけ その1)
 今回の講演は、郡山からほど近い「磐梯熱海」で、会場は、「ユラックス」という
温泉施設の中のホールでした。
 これを聞いて、久しぶりに温泉に行ってみたくなりまして、家族も誘って磐梯熱海
の温泉宿で一泊しました。
 露天風呂から眺めた湯煙と安達太良(「あだたら」と読みます)おろしの吹雪が、
何とも良かったです。  

(おまけ その2)
 講演で地方にお伺いしますと、お土産を頂戴することが少なくありません。
 ほんとう、ありがたいことです。
 食い意地の張っている私を見越して、それぞれの地方の名産の旨いものが多いので
すが、今回は、何と「下駄」をいただきました
 (特産品だそうです。もちろん食べられません。)。  


2008.02.19(火)【電子申請と登録免許税】(金子登志雄)

 電子申請の師匠、松山先生、不肖の弟子は失敗してしまいました。  

 会社の設立の登記を電子申請で行うと登録免許税が最大で5000円安くなるとご
指導いただきました。そこで、先般、新設分割という設立の1種の登記をするにあた
り、念のため、ネットで確認しましたところ、「(新設合併、組織変更、新設分割を
除く)」とありましたので、やはり安くなるのは純粋の設立だけかと思い、所定の登
録免許税を納付いたしました。

 ところが、翌日、法務局から、「3000円還付ですよ」との電話。
 「えー、(新設分割を除く)とありましたよ」
 「それは表の1番の話。新設分割は5番にあります」

 画面をよくみると、@株式会社の設立(新設分割を除く)、A合名会社・・・の設
立、B合同会社の設立、C株式会社の設立(新設合併・・・に限る)、D株式会社の
設立(新設分割に限る)・・・とありました。
 私のパソコンの画面では@〜Cでいっぱいです。また、実際に画面でみたときは、
@からBが画面に現れたため、C以下に、株式会社の設立があるとは想像もしません
でした。@CDAB・・・の順序にしてくれないと見落としますよね。私もまだまだ
未熟ですが。  

   http://www.moj.go.jp/MINJI/online05.pdf

 この登録免許税は多くの司法書士と同様に私が立て替えています。ところが、税務
署経由での還付は申請人である会社になされます。これで司法書士のミスが顧客に知
れてしまいます。のみならず、「あとで還付されたら、戻してください」とお願いし
なければなりません。
 松山先生、今回は3000円で済みましたから、泣く泣く顧客に寄付するしかない
かなと思っていますが、いかがでしょうか。それとも、そんなことをしたら、コンビ
ニ弁当を常食としているワーキング・プア会員から疎(うと)まれ、このESGも解
体してしまうでしょうか。


2008.02.18(月)【電子申告】(松山聡)

 今年も確定申告の時期がやってきました。
 確定申告が必要な方々は、例年どのように準備されているのでしょうか。税理士の
方にお任せですか?それとも、ご自身で申告されていますか?私の場合、毎年それな
りに苦労しながらも自分で申告しています。本来、私のような零細事務所では、青色
決算や確定申告など、さっさと片付いてよさそうなものですが、要領が悪いせいか毎
年てこずっています。

 それでも、ここ数年は、家電量販店等で販売しているお手軽な会計ソフトを利用し
ていますので、従来から比べれば経理事務が楽になりました。また、昨年からは、国
税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して申告書を作成しています。この「確
定申告書等作成コーナー」ですが、会計や税務知識がほとんどない私には、基本的な
部分で苦労するところはありますが、一般的な疑問点にはQAが用意されているし、
形式的のチェックはしてくれるし、仕上がりもきれいなので、それなりに満足してい
ます。もし、申告書の作成で毎年ご苦労されている方は、一度お試しになってみたら
いかがでしょう。(ちなみに、私は国税庁の回し者ではありませんので。念のため。)

 さらに、今年は、これをオンライン申請で行うべく、現在準備中です。もっとも、
オンライン申請となると、どの手続きも不満はつきもの(?)。法務省のオンライン
申請システムで慣れているとはいいながらも、やはり、少々ストレスを感じながら準
備しています。でも、指定どおり添付したファイルが開けなかったり、本来すぐ返信
される必要のある申請に、そもそも気づいてくれなかったりと、そんな状態の「◎◎
◎オンライン申請システム」よりは、まだましなのかもしれません。
 おっと、いけない。オンライン申請の話になると、ついこんな論調になってしまい
ます。オンライン申請システムの今後の改善に期待することとしましょう。


2008.02.15(金)【株券不発行と不所持】
(金子登志雄)

 中小企業でも株式に譲渡制限を設定していない会社が少なくありません。これを公
開会社といいます。いわゆる閉鎖会社でないという意味であって、株式上場会社かど
うかとは無関係です。

 古くからある公開会社は、株券発行会社とされ、株券を遅滞なく発行する義務が課
されていますが、実際には発行していないことが多いという実態があります。
 さて、先週のセミナーで質問されました。

質:「公開会社が合併消滅会社になるのだが、株券を発行していません。それでも株
   券提出公告は必要ですか」
私:「必要ありません。219条1項ただし書です」
質:「違法未発行はそこに含まれないという説もあるので不安です」
私:「不安なら、株主から不所持申出を受けて、適法の未発行にしたらどうですか」
質:「いったん、適法に発行し、不所持申出を受けるのですか」
私:「いや、未発行のまま不所持の申出を受ければ十分です」
質:「未発行と不所持は違うのでは・・・」  

 このような「不所持申出=発行が必要」という勘違いが意外に多いようです。
 株券不所持の申出である会社法217条2項に「株券が発行されているときは」、
不所持申出に株券提出が必要だとありますから、「株券が発行されていないときは」
不所持の申出だけでよいと解釈できます。
 どうぞ、ご安心ください。


2008.02.14(木)【出腹の功罪】(金子登志雄)

 「あのK先生」とは、ひょっとして私ですか。確かに、運動は一切しませんし、ウ
エスト周りについては居直っています。食わないのに、さっぱり減らないのですから、
困ったものです。また、元に戻るという希望的観測から、着られない服も捨てられま
せん。  

 まぁ、富田さんも中年太りということですよ。年齢相応に成長している証拠です。
執筆のせいにしてはいけません。もっとも、私も夜遅くまで執筆し、夕食も夜の11
時以降ですし、思考活動の補助として、煙草に砂糖入りコーヒー三昧という不摂生を
しているので、執筆との因果関係は間違いなくあると思っていますけど。

 太目の服を買ったのは、デブ初心者が陥るミスですね。ゆとりのある服を買うと、
「ここまでは許される」と油断して、半年以内にその服がパンパンになります。ベテ
ランのデブは、常時、キチキチを着ていて、これが着られなくなったら着るものがな
い、人生おしまいだという危機感で生活しているのですから。

 でも、出腹は仕事面ではプラスですよ。生活や性格にゆとりが感じられ、お客から
大金をお預かりしても、持ち逃げするかもしれないという不安を与えないで済みます。
また、会社法の業務では、企業の重役などとお会いすることが多いですから、出腹具
合で貫禄負けせずに済みます。

 これを機会に富田さんも出腹に励み、以前の痩せた学究肌イメージや、最近の貧相
なワーキング・プアのイメージから脱却し、リッチで行列のできる司法書士のイメー
ジを持たれるといいですね。もっとも、私を含め、富田の自虐ネタを楽しみにしてい
るファンが多いので、出腹が完成するまでは、現路線でもう少し楽しませてください。


2008.02.13(水)【執筆とウエスト周りの因果関係】(富田太郎)

 先日、無理してスーツを数着ほど買いました。「リッチ?、おしゃれ?」、いえ、
とんでもありません。実はお腹がひとまわり太り、持っていたスーツが入らなくなっ
てしまったのです(恥)。

 平日は、客先、法務局等、2〜3時間以上は歩いているのに、体重はあまり変わら
ず、お腹だけ太りました。ショックです! 自分だけは、絶対にお腹がでないタイプ
だと思っていたのですが・・・(涙)。

 原因はただひとつ、「執筆活動」ではないでしょうか?
 平日は深夜遅くまで、土日は1日12時間ぐらい、ずっと座ったまま書いています。
しかも、その間、コンビニ弁当、缶コーヒー、ジャンクフードを食べながら・・・。
そして、原稿が完成すると、「締め切りからの解放感」から、知人達と飲み歩く日々♪
 これでは、お腹がでて当然ですね・・・(反省)。

 私のまわりで、執筆活動をしている人は、みなお腹がでているような気がします。
あのK先生など、運動もせず目標1mと居直っている始末です。やはり、「執筆活動
とお腹」は、因果関係があるのではないでしょうか?


2008.02.12(火)【計算規則に感謝】(金子登志雄)

 3連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。時間自由業で不規則な生活を送ってお
りますと、連休も無関係どころか、なぜ3連休かも急には思い出せない状態に陥りま
す。建国記念日だったのですね。 

 さて、金曜日は東京司法書士会の府中・調布・多摩支部合同の「会社の計算」の講
演に行ってまいりました。あの超難解な会社計算規則の講義ですから、居眠りなさる
方も多いかと覚悟していましたが、ほとんどの方が熱心に聴いてくださり、うれしく
思いました。

 いまさらですが、会社計算規則の日本語とは思えない表現はなんとかならないもの
でしょうか。
 「当該吸収型再編対象財産の時価を適切に算定する方法をもって測定することとす
べき場合には、吸収型再編対価時価(吸収合併存続会社の株式に係るものに限る)を
もって吸収型再編株主資本変動額とする」(計算規則58条2項参照)という文章に
つき、意味がすぐにおわかりでしょうか。
 念のため、「測定することとすべき場合」については、会社計算規則のどこにも、
どういう場合かについての説明はありません。

 「測定することとすべき場合」とは、いわゆる「会計基準によれば」ということの
ようです。したがって、上記の文章は、「健全なる会計慣行により吸収合併などの他
社の財産を受け入れる事業吸収型の組織再編においては、それが第三者企業同士の吸
収合併など、受け入れる財産を時価で評価するのが適切だとされている場合には、そ
の対価たる株式(交付する合併新株など)の時価をもって、財産を受け入れる会社の
資本金等(株主資本額)への影響額とする」といった意味です。  

 もっとも、私は、こういう謎解きが誰より先にできたため、あちこちで講演の声を
かけてもらえるわけで、個人的には、「こんなにむずかしくしていただきありがとう」
と御礼をいいたいところです。それでいて、何たる文章だと批判して謝礼をもらって
いるのですから、 会社計算規則の寛大なお心に感謝、感謝の日々です。
 なお、4月には、また一部改正がなされます。ありがたいことに、また難解な文章
が登場します。



2008.02.08(金)【会社分割と債権者保護】(金子登志雄)

 昨夜は東京司法書士会港支部で「組織再編の手続」について講演いたしました。
港支部はH支部長以下若い方が頑張っているので、懇親会もわきあいあいで楽しく過
ごさせていただきました。ありがとうございました。

 休憩中に、偶然、品川のU先生と文京のN先生とお会いました。お二人とも私の講
演にはよく参加してくださるありがたい友人です。Nさんからは、「分社で債務は移
転させず、不動産を担保権付きで移転させるとして、債権者保護手続が必要か」とい
う問題提起を受けていましたので、明日の徒然(つまり今日の徒然)でお答えすると
約束しました。

 さて、そういう事案があり得るのかという疑問はさておき、債務はそのままに債権
者の承諾なく担保権付で不動産を売却できるわけですから、法の原則からすれば、可
能と思われます。人的債務と物的責任が同一人に帰属していたが、それが分離し、物
的責任だけが移転したわけです。買い手(第三取得者)は、担保権の拘束を受けます
が物上保証人になるだけであって、保証「債務」を負担するわけではありません。
 (これでは買い手が不利だと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、担保権が実
行された場合には、売り手に求償できます。)

 ただ、この不動産が賃貸物件であったら、コトはそう簡単ではありません。所有権
の移転に伴い賃貸人たる地位の移転と従たる契約の保証金返還債務の承継が認定され
るでしょうから、この場合には債務が移転します。
 ただし、所有権移転を登記すれば、賃貸人たる地位を賃借人に主張できる(賃料も
請求できる)というのが判例の考え方ですから、この保証金返還債務の承継について
は賃借人の承諾が不要だとされています。主たる契約の移転に賃借人の承諾が不要な
のに、従たる債務にだけ承諾が必要だとはいえません。よって、異論も多いと思いま
すが、私自身は賃借人は会社分割における保護対象の債権者に含まれないと考えてい
ます。

 いずれにしろ、組織再編については、保護すべき債権者の範囲はどこまでかなどの
難問が多く、迷ったら、安全策を採用しておくことが重要です。本件でも、万が一を
考え、分割会社は併存的債務引受(一種の連帯債務)をし、債権者保護手続を回避し
ておく必要があるでしょう。


2008.02.07(木)【ファンレター】(金子登志雄)

 私、国内の会社法業界よりも、海外で名が知られているのか、毎日、異国からのメ
ールによる大量のファンレターの対応に追われています。
 周囲の人は、そういうのは「迷惑メール」だというのですが、英文なので、よくわ
かりません。私への贈呈商品のカタログと思えるメールが多いので、きっとほとんど
がファンからのものでしょう。
 しかし、あまりに数が多いので、せっせと送信禁止にさせてもらっているのですが、
それでも毎日別の新しいファンから20通程度が来ます。ファンから逃げるため、ア
ドレスを変えようかなと思うのですが、名刺から何から全部変えるのは面倒なので、
そのままにしています。

 ファンには秘密にしているノートパソコンには、さすがに海外からは来ないのです
が、私が異性とは無縁の生活を送っていることを心配してくれる国内のファンの方が
「突然、失礼します」などと異性との出会いを紹介してくれるファンレターを送って
くれます。こんなおじさんに、ありがたいことです。

 やはり熱烈なファンから逃げるにはアドレス変更でしょうか。それとも、人気はす
ぐに下降するので、それを待つべきでしょうか。かといって、全く来なくなると忘れ
られたかとさびしい心境になるかもしれません。
 私同様の有名人の方も多いようですが、みなさん、どうしているのでしょうか。ま
さか、サインして返信はしていないと思うのですが。


2008.02.06(水)【社名とブランド】(金子登志雄)

 ちょっと古い話ですが、松下電器産業が10月1日にパナソニックと社名変更する
ことにつき、伝統の「松下」が消えるのはさびしいとか、国際化のためやむをえない
とか、さまざまな意見が出ています。
 冷静にみて、「松下=社名」VS「パナソニック=国際的ブランド」では、後者のニ
ーズが大きいでしょう。これも時代の流れであり、松下電器の飛躍の一歩と思います。
漢字の社名の上場会社がまた1つ減少することには、ちょっと残念という思いがしま
すけど、商売繁盛が優先です。

 ところで、上場会社が社名変更するには、大金が必要だということをご存知でしょ
うか。松下クラスになると、看板、名刺、社内用便箋、不動産や車の名義変更などな
どで、うん億円の資金が必要でしょう。大きいのは意外にも株券の取替えです。早く
株券を廃止して社名変更したいというニーズは少なくありません。

 ちなみに、金子事務所がESG法務事務所に変更するとしたら、いくらかかるかと
算定したところ、算定時間は数秒で済みました。名刺とゴム版と事務所の看板だけ取
り替えれば済み、費用は1万円以内で済みそうです。実に情けない!これじゃ富田氏
や尾原氏のワーキング・プア事務所にも負けてしまいます。
 え?、事務所の封筒の取替えなど、まだまだあるだろうにですか。全く必要ありま
せん。実力で勝負の茶封筒司法書士が開業以来の私の伝統であり、ブランドです。


2008.02.05(火)【時には、むなしい思い・・・】(金子登志雄)

 先週後半から、ずっと、公告と催告、あるいは官報と電子公告で、異議期間の終期
が異なった場合の法律効果はどうかなどと司法書士仲間と議論し、自問自答を繰り返
してきましたが、時々、平均的民間人の意識がでて、むなしい思いにかられます。

 というのは、官報は債権者の多くが見るものという建前や前提にのっとり、思考し
議論しているわけですが、われわれ司法書士は、裁判官でも公務員でもない民間人で
す。つい、ふとした機会に、いったい、債権者の誰が官報をみるというのかという民
間人意識に戻ってしまうのです。

 一般の債権者は、官報というものをみたこともないでしょう。たまたま、債務者企
業のホームページをみたら合併等を知らせる電子公告が掲載されていたので、それを
注意して読んだということはあっても、わざわざ官報にも掲載されているかと調べる
物好きがいるとも思えません。

 では、なぜ合併等で官報公告が必須とされているのでしょうか。おそらく債権者が
閲覧するという仮定のもとに、債権者への情報提供義務は果たしたという「国家お墨
付きの免責効果」が官報の役割だからではないでしょうか。裁判所の掲示板の張り紙
みたいなもので、出せば、それで責任を果たせるのです。
 真に債権者保護機能を担うのは、個別の催告や電子公告であって、ここでは債権者
への周知徹底が重要ですから、催告書が宛名不完全で戻ってきたら、締切日を延長し
てでも、再度、発送することが重要です。

 こんな官報との相違は誰でもわかっているのですが、法律解釈になると、相手が法
務局や裁判所という公的機関ですから、官報公告は債権者保護のために、いかに重要
かという前提で論陣を張らないと、共通の土俵にたてません。むなしい思いでいると
土俵の外に寄り切られてしまいます。
 うん、明日からまた、官報はいかに重要かと意識を切り替えないと仕事にならんな。


2008.02.04
(月)【続・債権者異議申述期間】(金子登志雄)

 金曜日の徒然の内容については、その後も司法書士のメーリングリストで有益な議
論をさせてもらいました。議論にご参加くださった先生方、ありがとうございました。
 仲間内の司法書士からも、「登記が通るというだけでは困る。会社法上も問題ない
ということでないと上場会社には通じない」などと叱咤激励されました。

 おかげ様で、私も勉強になりました。最大の成果は、電子公告期間等と広義の債権
者異議申述期間(全手続終了時)とは明確に区別して説明する必要があることに気づ
いたことでした。

1.会社法799条2項等によると、公告も催告も「同一」の「一定の期間内」に異
 議を述べるように読めてしまいますが、794条2項3号などには、債権者異議の
 「公告の日又は催告の日のいずれか早い日」という規定があります。これは、公告
 期間と催告期間の始期は一致しないことがあることを当然の前提とした規定です。

  (参孝)債権者保護には2つの手段が必要である。
       1.公告手続・・・一定の公告期間が必要
       2.催告手続・・・一定の催告期間が必要   

2.問題は終期の一致が必要かです。これについて、たとえば会社法750条6項に
 は、債権者異議の「手続が終了していない場合」は合併の効果が生じないとありま
 す。
  この手続が終了していない場合とは、公告か催告の1つでも終了していない場合
 と考えてよいと思います。つまり、公告と催告は終期の不一致があり得るという前
 提だと思われます。
  なお、個別催告は会社に知れている全債権者個々に向けた手続であり、官報公告
 は、会社に知れていない債権者をも含む全方位の債権者異議申述手続です。両者の
 手続の性格上、終期の不一致が生じることはやむをえないでしょう。終期を一致さ
 せて催告書を発送したら、発送漏れに気づくこともありますし、追加債権者が多数
 現れたなどということもあります。

3.では、同じ公告である官報公告と電子公告(以下、新聞公告を含む)の終期の一
 致は必要でしょうか。電子公告は「知れている債権者に対する個別催告を省略する
 ための公告」(法務省民事局M氏の表現=きんざい「登記情報」544号9頁)で
 すから、個別催告との平仄で考えれば、終期の不一致は認めてよさそうです。同じ
 公告だとみても、媒体が別ですから、手続上不一致になってしまうことも多いでし
 ょう。

  (参孝)債権者保護の催告手続には代替手段がある
       1.官報公告手続・・・・・一定の公告期間
       2.電子公告等手続・・・一定の公告期間(催告省略効果)

4.とすると、官報公告をみた人と電子公告をみた人で異議を主張できる期限が違う
 のはいかがなものかという問題があります。たとえば、期限が3月20日までの官
 報公告をみたAさんと、期限が3月22日までの電子公告をみたBさんとでは、A
 さんが不利益ではないかということです(これは催告ではよくあることです)。

  この点につき、私は次のように考えました。
 *Aさんが3月21日から22日までに異議を述べるのは当然に適法な異議である。
  なぜなら、債権者異議申述手続は、まだ終了していないからである。
 *Aさんが20日までと思い込んで22日までに異議主張できなかった問題は、特
  段の事情なき限り、電子公告をみなかったAさんの不利益に帰する。会社として
  は、必要な手続を実行している。
 *債権者平等取扱いの問題は、媒体ごとに検討すればよく、公告相互の平等までは
  必要ない。そうでなければ、1つの公告の訂正は他方の訂正にまで影響してしま
  う。
 *紙媒体の官報とネット媒体では、そもそも性格が相違し、同一の鋳型に当てはめ
  る必要もない(ちなみに官報は翌日起算で電子公告は即日起算です)。    

5.減資や合併等の手続は、集団的画一的処理の手続であり、個別事情は捨象される。
 官報が入手できないとかネット環境にないなどは無視される。官報公告と電子公告
 でそれぞれ1か月以上の情報伝達を満たせば、それでよし、適法であるとするのが
 会社法の立場であって、その代わり、1つでも適法な手続が終了しなければ全部の
 効力がご破算になるという厳しい制約付です。  
  よって、各媒体による終期の不一致による不都合は当然の想定内であり、合併等
 の効力を左右する問題とは考えていないと思われます。

  (参孝)合併の効力=効力発生日に全手続が終了しているかの判断    
       1.官報公告手続・・・・・一定の公告期間は終了しているか    
       2.電子公告等手続・・・一定の公告期間は終了しているか  
       3.1と2は同一終期になっているか・・・・検討不要

6.集団的画一的処理の点で、組織法上の効力と個別取引法の効力の差を意識した方
 も多いことでしょう。このように個別事情を横においてくれないと、手続が円滑に
 進行しません。また、このように考えれば、1つの公告にミスがあっても、その公
 告だけ訂正すれば合併手続の瑕疵も治癒され、その結果生じる終期の不一致による
 不都合は、不利益を受けた者と会社との個別問題としてでも処理してもらえばよい
 ことになります。  
 とにかく、もう何十年も続いた慣習法ともいうべき手続を尊重したいものです。


2008.02.01(金)【債権者異議申述期間】(金子登志雄)  

 昨日も、電話質問がありました。一昨日もです。
 減資や合併等の債権者異議申述期間の満了日は、官報公告、個別催告、電子公告、
日刊新聞紙公告いずれにあっても一致させねばならないのかという不安神経症が一部
に流行しはじめたようです。

 そういう見解があることは私も承知していますが、登記実務は商法時代から変化し
ていませんので、どうぞご安心ください。しかし、それでも不安な方は、従来はそう
でも今後は違うかもしれないと考えてしまうようです。

 ということで、今後の登記実務が変わるとは思っていませんが、念のため、一致必
要説がいかに非現実的かを説明しておきましょう(長くなります)。

1.官報と催告期間の不一致について
  官報公告のほとんど全部が異議を「本公告掲載の翌日から1箇月以内にお申し出
 下さい」という内容です。国立印刷局の雛形を踏襲した内容だからです(実は私も
 雛形作成者の一員です。下記「決算公告のおすすめ」最終頁参照)。
  その内容で官報掲載日に催告書を発送したら、満了日が一致しません。催告の場
 合は債権者に到着するまでに時間がかかるからです。  

  http://kanpou.npb.go.jp/images/s_guide.pdf

2.催告書発送独自の問題について
  官報の掲載日の数日前に催告書を発送し、「〇月〇日(官報の公告満了日)まで
 に」とすれば満了日が一致しますが、「本書到達後1か月以内に」と書くと満了日
 は一致しません。債権者ごとに到着日が異なることも当然にあります。
  金銭債権者だけに出せばよいと思っていたら、そうではなかったので、非金銭債
 権者には数日遅れて発送するということもあるでしょう。100人の債権者に毎日
 10通ずつ10日間かかって出すということもあるかもしれません。
  官報に決算公告を同時掲載し、その頁を催告書に記載すれば催告書には貸借対照
 表の要旨の掲載は不要だと確か法務省のどなたかが何かで述べていたように記憶し
 ていますが、これは満了日の不一致を前提とした見解です。 

3.電子公告又は日刊新聞紙公告について  
  「本公告掲載の翌日から1箇月以内に」という内容で、土日に日刊新聞紙に公告
 を出すと官報と満了日が一致しません。官報は土日に出せないからです。  
  その内容で同日付で官報と電子公告に掲載し、やれやれと思っていたら、官報に
 ミスがあり、再公告したら満了日は一致しなくなります。

4.電子公告調査会社などの経営が成り立たなくなる  
  満了日が一致しないと無意味な公告になるとすると、電子公告調査会社や新聞社
 は官報公告の内容との整合性をチェックしないと、怖くて公告を受け付けできませ
 ん。  
  従業員がミスして掲載日が1日遅れになり、官報と満了日が一致しない事態が生
 じたら、依頼者は電子公告調査会社等の責任を追及することになるでしょう。上場
 会社が合併登記できなかった損害を負担できるのでしょうか。  
  官報でも同じです。代理店の従業員が掲載日を1日でも間違えたら、賠償もので
 す。

 そもそも、法文には、「一定の期間内に」異議を述べよとあるだけで、「いつまで
に」異議を述べよとはありません(反対株主の買取請求などは「効力発生日の20日
前から効力発生日の前日まで」にという内容です)。これは満了日の不一致を前提に
しているからだと思われます。
 また、法文には「債権者」とあるだけで、「債権者全員が一斉に」という内容には
なっていません。これは、催告においては、債権者個々に1か月以上の異議を述べる
かどうかの考慮期間を与えればよいという意味でしょう。公告の場合にも、官報公告
は官報公告で、電子公告は電子公告で、それぞれ1か月以上の公告期間を設けたかと
いう有効性審査で十分というべきです。

 そうでなければ、実務は「本公告掲載の翌日から1箇月以内に」という国立印刷局
の公告文例に一斉に抗議し、「〇月〇日までに」という公告文例を求めることになる
でしょう。皮肉屋(私?)は、電子公告のときでも、「本公告ではなく、これから公
告する予定の官報公告の翌日から1か月以内に」と書き、抗議の意思を表すことでし
ょう。

 もし、当局の運用が満了日が一致していないものは却下するとなったら、現状の合
併等の手続の多数が却下されます。現在、電子公告中の上場会社の〇〇も△△も却下
されてしまいます。
 立法担当者のお一人である郡谷氏が、司法書士会での講演で「会社法の目的は企業
のやりたいことを邪魔しないことだ」と高らかに述べたことがありましたが、法の執
行段階で非現実的で硬直的な運用をされては、何のための会社法でしょうか。

 世の中にはさまざまな考え方があります。1つの考え方や解釈で全国を金太郎飴で
縛ることだけはやめてほしいものです。自分の好まない異説の存在に寛大であること
が自由社会の基本中の基本です。


2008.01.31(木)【私の顔パス】(金子登志雄)

 なるほど、尾原さんは漫画喫茶が顔パスで、富田さんはビジネスホテルですか。
私の顔パスは、定食屋ですね。よく行く定食屋では、一言「いつもの」というだけで
す。そうすると、〇〇定食がでてきます。1年中、ワンパターンです。何ごとも浮気
をしない一筋の真面目人間です。

 出版社の中央経済社にも顔パスが利きます。黙って受付に顔を出すと、さっと応接
室に案内してくれます。同社からの出版は、この5年間で、会社法の条文集(ミニ解
説担当)を含めると10冊になりましたので、一般社員の間でも、目からウロコ本の著
者として知られているようです。

 うーん、情けないですね。ESGメンバーは、漫画喫茶、ビジネスホテル、定食屋、
出版社、それにコンビニですか、そういうところにしか通じないようです。それも極
めて限定された地域に限られます。全国の司法書士会や受験業界で知られていても、
顔パスにまではなっていません。講演先に講師として行き、忙しそうな受付に声をか
けようとすると、「並んでください。順番に受け付けますから」などとしかられるこ
ともよくあります。

 まぁ、顔は目立たないのが一番ですよ。国会議員になった司法書士の姫井先生も、
有名になったので新幹線の中で居眠りができなくなったのが辛いとテレビで言ってい
ましたから。


2008.01.30(水)【顔パス】(富田太郎)

 尾原さん。漫画喫茶ですか? なるほど! とても参考になります。
 さすが、ESGの「ワーキング・プア」仲間だけのことはあります♪

 私も1週間のうち、3〜4日ぐらい「ビジネスホテル暮らし」が続いた時期があり
ました。もっとも、急に泊まろうと思っても満室のことが多いですが・・・。

★ある日の電話での会話★  
 私 :「本日、泊まりたいのですが・・・・?」
ホテル:「あいにく満室で・・・・。」  
 私 :「あの〜いつも泊まっている富田ですが・・・」
ホテル:「あっ!いつもありがとうございます♪1室ご用意させていただきます。」

 私は「某新宿2丁目のビジネスホテル」では顔パスです(きっぱり!)。  

 この話を友人に自慢したところ、 「帝国ホテルや赤プリで顔パスなら凄いけれど、
よく分かんないビジネスホテルで 顔パスって言われても・・・・。」

 確かに・・・・。  
 今年こそは、「徒然」に万人から認められる自慢話を書きたいものです・・・(汗)。


2008.01.29(火)【漫喫を満喫?】(尾原之) 

 今日は深夜までかかるな〜。ホテルをとるかな〜。
 時々そんなことがありまして、インターネットで近所のホテルの空室情報を検索し
ます。
 ところが、私の事務所の近くにはビジネスホテルが1軒しかなく、しかも部屋数も
あまり多くないので、夕方頃に調べると大抵満室なのです。

 そのようなときは仕方がないので事務所で仮眠し、早朝に駅前の漫画喫茶に行きま
す。
 なぜ漫画喫茶?朝から漫画でも読むの? いえいえ、シャワーを浴びに行くのです。
シャワーを備えた漫画喫茶も結構ありまして、ドライヤーも貸してくれます。シャワ
ー・ドライヤーで約30分。その後コーヒーを飲みながら新聞やインターネットでニ
ュースを見てから事務所に戻ります。1時間の利用で約800円です。

 漫画喫茶(略して「漫喫」)を満喫?したら、すっきり頭で今日もがんばりましょ
う!


2008.01.28(月)【資格の弊害】
(金子登志雄)

 26日(土)は三重県司法書士会と三重県青年司法書士協議会共催の「会社法研修
会」に行ってまいりました。新谷会長・水谷会長はじめ、みなさんお世話になりまし
た。

 講演では、事前に金子はどうやって会社法務に強くなったのかというような質問を
受けていましたので、M&A業界から司法書士業界に飛び込んだ私の経験から、単な
る法律知識だけでは不十分で、企業の実体や経営者心理に強くなることが必要だと強
調させていただきました。同じアドバイスでも、相手企業の規模や業種によって、ケ
ースバイケースで対応してこそプロだと思っています。  

 ほんとに社長業は辛いものです。自宅まで担保に入れ業績が悪くなると夜も眠れま
せんし、冷酷に従業員に解雇通告もしなければなりません。儲かっているときは、税
金のことや、事業拡張のための借入れに頭を痛めます。平穏な日は、年に何日あるの
でしょうか。

 M&A業務を通じて社長業の辛さを長年みてきた私としては、業務においても、常
に企業活動を少しでも支援できるよう努力しているつもりですが、同業者や弁護士の
方の中には、法律解釈においても、無意識に企業に不都合な解釈をしたり、経営者よ
りも偉そうな態度をとる方が少なくないように思います。資格は、自分を選ばれた存
在で、民を裁く裁判官や愚かな民を指導する行政官と錯覚させてしまうのでしょうか。
そうだとしたら、資格はその人にとって弊害というべきでしょう。



2008.01.25(金)【新設分割と同一商号】
(金子登志雄)

 毎年、4月1日は、合併や会社分割の効力発生日の最盛期ですが、やっとその準備
で企業担当者もあせりはじめてきたようです。

 会社分割では、また同一住所・同一商号の分割がいくつか出てくることでしょう。
これは、株式会社ABCが同一住所に株式会社ABCを設立するものですが、同時に
分割会社の商号を変更するか、本店移転させるので問題はありません。

 では、ABC株式会社を設立する場合も、分割会社は商号を変更するか、本店を移
転させる必要があるでしょうか。
 会社法施行直後は、同一住所・同一商号以外はすべて許容されるとしても、株式会
社が前につくか後につくかだけでは同一商号といえるだろうとの否定的な見解が少な
くありませんでした。

 しかし、会社法の思考は全面解禁です。同一住所・同一商号ですら解禁したいが、
これを許容すると不動産登記等で所有者の区別がつかないという不都合が生じるので
同一住所・同一商号に限り禁止したものです。例外を拡大解釈すべきではありません。
よって、株式会社ABCは商号変更や本店移転せずに、ABC株式会社を分割するこ
とができます。


2008.01.24(木)【迫力の登記申請】(金子登志雄)

 「正しい申請のつもりだが補正を指示された」という電話相談が時々あります。不
思議です。私が同じ内容で申請すると、補正にならないのです。

 何度かこのような質問を受けて気づきました。これでいいのかなとおろおろドキド
キして申請すると、それが申請書から感じられ、法務局サイドも、この申請はどこか
おかしいと思い、ここに違いないと思って補正にするのではないでしょうか。
 ベテランの私の場合は、自信満々で申請していますので、逆に間違っていても登記
が受理されてしまい、あとであわててしまうことさえあります。

 小学生の頃、いじめっ子でしたが、私はいじめる気はないのに、いじめらっ子は私
の顔をみると、またいじめられるのではないかという目つきをしてきました。私とし
ては期待に応えてあげないといけないような心境に陥り、ついまたいじめてしまいま
した(大昔のいじめですから、程度はしれています)。
 例えは悪いですが、これと同様に、また補正になるじゃないかという自信のない目
つきが申請書に現れると、法務局としても、申請人の期待に応えなければならないと
いう義務感(?)が生じてしまうのでしょう。
 自信のない方、どうぞ、カラ元気で結構ですから自信をもって申請してください。
たかが登記です。命までは奪われません。


2008.01.23(水)【補正】(金子登志雄)

 事務所が法務局に近いと、登記申請書類の手直しにあたり、すぐに対応できるメリ
ットがあります。この手直しのことを、われわれは「補正」と呼んでいます。

 私も、時々、補正の連絡を受けます。正月早々の補正は、議事録に「〇〇県〇〇軍」
とあったのに気づかず、そのまま添付してしまったことでした。顧客の許可を得て訂
正印を利用し、すぐに「郡」に直したのはもちろんです。  
 
 その他、「荻」原を「萩」原にしてしまった、印鑑もれがあった、印鑑相違だった
(これは顧客の責任)、議長名が違う・監査役名が違う(これはA社の議事録をB社
の議事録に再利用して上書きしたためのミス)など、司法書士なら誰でも経験済みで
しょう。

 それにしても、補正というのはありがたい制度です。税理士さんの業務である税務
申告などは、黙って書類を受け取り、数年後に強烈なしっぺ返しが来たりしまが、司
法書士にはそのようなことがありません。

 もっとも、あとで登記申請漏れを発見することもあります。そのときは、なぜあの
とき補正にしてくれなかったのかと身勝手な心境になるのも、司法書士なら誰でも経
験済みのことでしょう。
 会社法になって、法務局も気づかない登記漏れが増えましたが、それは、またの機
会にしましょう。


2008.01.22(火)【法務局を呼び寄せた男】(金子登志雄)

 12日(土)の商業登記倶楽部主催のセミナーの講師として、司法書士連合会の佐
藤会長とご一緒しました。
 講師陣での懇親会のときの話では、佐藤会長の事務所は横浜地方法務局に最も近く、
数年前に法務局のほうが移転してきたということです。さすがです。法務局のほうが
にじり寄ってきたのですから。

 この点は私も大いに自慢できます。大手町にあった東京法務局が数年前に私の事務
所の近くに移転してきたのですから・・・。現在でも、東京法務局に一番近い司法書
士の地位は誰にも明け渡していません。

 そのせいか、一時(電子化される前)は、地方の司法書士から、「謄本をとって」
という依頼電話がよくありました。全国の司法書士名簿で東京法務局に最も近い司法
書士として選ばれたわけです。もちろん、全部断りました。口では丁重にお断りしま
したが、心は「無礼者め!東京法務局を呼び寄せたほどの司法書士に謄本取りを頼む
なんて失礼じゃないか」と叱りつけたい心境でした(実際は、兼任司法書士で対応困
難という理由でしたが)。


2008.01.21(月)【新人とベテランとPDF】(金子登志雄)

 先週17日(木)は私の所属する東京司法書士会千代田支部の新年会でした。
ご苦労されているN支部長のお誘いを受け、初めて参加しましたが、大先輩から新人
まで多数の参加があり盛況でした。

 新人司法書士は、平成17年合格が多かったため、平成18年5月施行の会社法で
の受験組ではありません。来年になると会社法受験組司法書士も現れ、会社法受験で
の弁護士も多数登場するでしょうから、企業法務や商業登記の世界も、ちょっとばか
り変化するかもしれません。「そんなことも知らないのですか」と旧商法受験組司法
書士がからかわれる場面が登場するのでしょうか。本徒然閲覧者の司法書士の方は、
大丈夫ですか。

 もっとも、知識としての会社法と実務としての会社法は異なります。会社法の知識
はなくとも、ベテランの力はあなどることはできません。ここまでは許されるが、こ
れ以上だと法務局という関所を無事に通過できないという微妙な実務感覚は、ベテラ
ン経験者の財産です。

 ただ、ベテランが新人に勝てないのは、パソコン能力です。電気と電子の相違は、
商法と会社法より大きいことでしょう。わがESGメンバーの中年族も、昨年からは、
ファックスを卒業し、生意気にも、PDFファイルなるものを添付したメールを送っ
てくるようになりました。
 ところで、この便利なPDFというのは、ポスト(郵送)も、でんぽう(電報)も
FAXも不要という意味ですか。


2008.01.18(金)【合併差損と抱合わせ株式消滅損】(金子登志雄)

 1000万円で子会社Aを設立したのに、子会社の業績が悪く純資産が100万円
に減少してしまいました。簿価純資産額1000万円の会社Bをその将来性を評価し
て3000万円で全株を買収して100%子会社にしました。
 さて、子会社AとBを親会社が吸収合併する際に、株主総会の開催は必須でしょう
か。

 最近までは、債務超過会社を吸収合併するわけではないから、株主総会の開催が不
要な簡易合併の典型例と考えられていました。会社法第796条でも、「承継債務額
が承継資産額」を超えない限り、株主総会の開催は不要とあるからです。

 しかし、法務省令によれば、この承継資産額とは、合併直後の資産から合併直前の
資産を控除したものだとされています。これを普通に解釈すると、合併により子会社
ABが解散し、その株式価額(1000万円と3000万円)が消えてしまうため、
合併直後の資産にこれが含まれないということになります。いわゆる抱合わせ株式消
滅損(Aでは900万円、Bでは2000万円)が生じる合併です。

 商法時代は合併差損は純粋に承継する資産と負債の差額と考えられていましたが、
会社法では合併の結果として生じる抱合わせ株式消滅損も合併差損に含まれると解釈
したほうがよさそうです。
 総会を開催すればよいとはいえ、上場会社では買収子会社の吸収合併を機動的に実
行することが困難となりました。


2008.01.17(木)【氏の書き方】(金子登志雄)

 昨年の【氏の読み方】が好評のようでしたので、今日は、氏の書き方でも・・・。
 よく知られた事実ですが、「さいとう」さんには、斉藤、斎藤、齊藤、齋藤などが
あり、「わたなべ」さんには、渡辺、渡邊、渡邉など多種類があります。
 なぜ、このような状況が生まれたかというと、多くの場合が昔の戸籍吏員の転記ミ
スではないかと私は思っています。

 昔、ふとした興味で身内の戸籍を遡って調査したことがありましたが、実に面白い
事実を発見いたしました。
 1.青柿さんが、戸籍の転記で、ある日突然、青柳さんに改姓(?)していました。
  親の氏名の欄だったので、ご本人も最後まで気づかなかったようです。
 2.戸籍上は、たとえば宏「一」なのに、墓碑は、宏「和」でした。  
  これは珍しいことではないようで、いくつかありました。
 3.明治時代(初期)の親は、婚姻届を出さないことが多かった。  
  そもそも当時の庶民は役所と無関係に生きていました。  

 昔はコンピュータもワープロもなく、戸籍への記載は、毛筆で戸籍吏員が行ってい
ました。達筆あるいは字のへたな人が記載したものは、次代の担当者が読み違いし、
間違ったまま新戸籍に転記しました。真面目な戸籍吏員は、こんな字があるのかと思
いながら、みたまま、1本棒を入れたり、点を入れたりして写しました。これが数度
繰り返されると、1つの「さい」の字が「斉」、「斎」、「齊」、「齋」に変化しま
す。昔は鷹揚だったのです。そんな小さなことに誰もこだわらなかったのです。何せ、
お上がなさることであって、庶民には「そんなの関係ねぇ」だったのでしょう。
 年金問題の社保庁は、いまだに江戸・明治時代の鷹揚さが残っているようですが・
・・。


2008.01.16(水)【初の女性米国大統領か】(金子登志雄)

 米国の大統領選挙は、お祭りですね。現ブッシュ大統領(共和党)は、人気が落ち
目のようですから、今度は民主党の大統領でしょうか。

 現状のまま推移すると、オバマ氏かヒラリー・クリントン氏になるようです。どち
らがなっても、初のアフリカ系大統領、初の女性大統領ということになります。先般
のニューハンプシャー州の予備選では、劣勢な事前予想をヒラリと身をかわし、涙で
勝ち栗を手にしたのは、クリキントン氏でした(いけない、まだ正月気分が抜けてい
ない!)。

 ヒラリー氏が大統領になると、夫のビル・クリントン氏とともに、初の夫婦で大統
領ということにもなります。ブッシュ氏や福田首相のように親子でトップという例は
多くとも、夫婦でのトップは、アルゼンチンのペロン大統領くらいしか思い当たりま
せん。

 日本でも、女性にもっともっと頑張ってほしいですね。夫としては、家庭内で強権
を発動されるよりは、外で多忙になってくれるほうが助かります。ヒラリー氏の当選
を誰よりも願っているのは、夫のビル氏だったりして・・・。


2008.01.15(火)【不動産登記のオンライン申請】(松山聡)

 不動産登記に関する政省令のあわただしい改正を経て、いよいよこの15日から不
動産登記のオンライン申請が本格的に(?)稼動します。いままでは、申請書はもと
より、住民票や印鑑証明書等々の添付書面のすべてが電子化されていないとオンライ
ン申請ができませんでした。しかし、今回の改正で、申請書のほか、一定のものをオ
ンラインで申請すれば、残りはほとんど「紙」のまま提出することが認められるよう
になったのです。
 また、今年の一月からは、オンライン申請を利用した登記の登録免許税が、一定の
ものに限り5000円を限度として軽減されています。会社の設立登記や不動産の所
有権移転登記などが軽減対象の登記です。これらの相乗効果により、これからは、ど
んどんオンライン申請が利用されることになるでしょう。と、当局の方々はお考えの
ようですが。。。
 利便性に優れ、コスト面でもメリットが大きく、システムも安定しているのであれ
ば諸手を挙げて歓迎します。が、すでに利用している商業登記のオンライン申請をみ
ても、まだまだ改善すべき部分が多いのです。
 おっといけない、つい愚痴ってしまいました。改正後の不動産登記オンライン申請
は、まだ、始まったばかりです。悪い部分は改善すればいいのです。魅力的なオンラ
イン申請はいつか(いや、そのうち)実現するはずです。
 まずは、5000円軽減のメリットを依頼人の方に受けてもらうため、我々司法書
士は積極的にオンライン申請を利用しましょう。


2008.01.11(金)【行為無価値論と結果無価値論】(金子登志雄)

 金曜日は法律に関係する話ですが、今日は私の専門の会社法ではなく、刑法学説の
話です。というのは、日本経済新聞のグリーンスパン氏の「私の履歴書」に、「個人
の自由を尊重し、国家の介入を厭(いと)う、リバタリアニズムが私の価値観だ」と
あり、つい、わが意を得たりと思い、表題の論争を思い出しました。

 行為無価値論は、倫理道徳に反する価値のない行為をしたら処罰されねばならない
とする考え方であり、結果無価値論は無価値な行為でも法益という結果を侵害しない
限り処罰してはならないという考え方です。後者は、倫理道徳というものは時代によ
って変遷するものであるし、国家が倫理道徳に口出ししてはならないという立場です。  

 私が法律を勉強しはじめた頃は、行為無価値論寄りの学者の教科書しかなく、微妙
な問題になると、人それぞれの価値観で違法かどうかの判断が分かれそうで、どうも
なじみにくい学説だなと思っていましたところ、そこに平野東大教授(当時)の結果
無価値論による刑法の教科書が出現し、目を洗われるような感動を覚えたことがあり
ます。何せ、法益を侵害したかしないかという基準ですから、倫理道徳や感情をいれ
ずに、極論すれば違法性を客観的に判断できるからです。

 リバタリアニズムも結果無価値論も、憲法13条の「個人の尊厳」に根ざした思想で
あり、自律や自己責任などと同様に自由主義の根幹です。
 わが会社法は、不況対策立法の色彩もあり、自由主義・自己責任の思想に近づいた
とはいえ、過剰な法令委任は、国会でなく法務省が事実上の立法を行えるという点で、
時代の変化に即応でき機動性には富んでいますが、民主的という意味では、課題を残
しました。  


2008.01.10(木)【ぽち袋】(金子登志雄)

 1月も10日になり、年賀状の返事も終わり、そろそろ正月気分も薄れる頃でしょ
うか。2通以上も同じ年賀状をくださったご丁寧な方、1通しか出さなくてごめんな
さい。また、差出人名のない数人の方、返事を出さなくて済むようにしていただき、
そのご配慮に感服しております。ありがとうございました。
 さて、今年の正月で例年と相違してよかったなと思う点は、数少ない甥や姪が巣立
って、残った4名にお年玉を渡しただけで済んだことでしょうか。私の一族は繁殖力
が弱いもので、こういうときは助かります。
 面倒くさがり屋の私は、対象者に会うと、相手が高校生以上であるため、財布を開
けて生の現金を渡してしまいますが、皆様は、ちゃんと、ぽち袋に入れて渡したこと
と思います。
 そのぽち袋ですが、正月のテレビ情報によると、「ぽち」とは、「これぽっち」と
同様に、「小さい」という意味のようです。小さい突起を「ぽち」ということもあり
ますね。犬の名前に、「ポチ」とつけることが多いようですが、これもひょっとした
ら、「チビ」と いう意味の愛情を込めた命名かもしれません。
 早速、私も、モバイルのマウスに、「ポチ」と名づけました。事務所のパソコンの
マウスは、もちろん「ミッキー」です。マウスは、今年のESGには象徴的意味があ
ります。何せ、本年の課題が「目指せ、ミッキーマウス」ですから。


2008.01.09(水)【初詣はのんびりと】(金子登志雄)

 福袋や初詣にも予約があるとは、驚きました。でも、福袋はともかく、初詣は一般
の参拝はできるわけですから、まだマシですね。
 下崎さんは、初詣で仏教式に手を合わせて拝みませんでしたか。神式は拍手を2回
打つのですよ(2回も拍手喝采しないでください。手ヘンでもカシワデと読みますか
ら)。昔、これを間違った人が、「ああ、今年はもうだめだ。お賽銭も少なかったし
・・・」と悩んでいましたが、大丈夫です。そんなことで差別をするなら、神様とは
いえません。愛情のあふれるホントの神様は、初詣しない人にもお賽銭の少ない人に
も、平等に愛と幸せを与えてくれます。
 という勝手な論理で、私は、もう何年も正月には初詣していません。表向きは、「
病院での院内感染と同様に、不運の人が大勢集まるところには行かない主義だ」とか
「大勢の人がお参りしたら、神様も、『この願いは誰のだっけ?』と混乱するから」
と答えていますが、要するに、マイペース人間の私は、混雑しているところが苦手な
んです。混雑のピークが過ぎたときに、のんびり行けば、神様を独り占めでき、ご利
益もたっぷりあると思いませんか。
 下崎さんから、「予約」というよい手があることを教えてもらいましたので、今年
の初詣は同時に2回し、「この2回目の参拝は明年1月1日に効力を発生します」と
条件付にすることにいたしました。これなら、明年の1番くじを引けますね。ついで
だから、再来年の分までお願いしてしまおうかな。


2008.01.08(火)【予約】(下崎ゆかり)

 新年おめでとうございます。ESG隠れ広報の下崎です。
 皆様はどんな新年をお迎えでしょうか。

 さて、私の新年の恒例行事といえば、「初詣」と「福袋」です。男性諸氏には、す
こぶる評判の悪い「福袋」ですが、新年の運試しとしてのささやかなワクワク感は捨
てたものではありません。福袋の値段に比して「良いもの」が入っていると単純です
が「今年はついてる!」と思うものです。

 福袋戦争に「いざ、出陣!」と意気揚々とデパートに駆け込むと「当店の福袋の予
約は、年内に終了いたしました・・・」と申し訳なさそうな店員の言葉。
「何?予約?」そうか、最近は福袋も予約制があるのね。

 では・・・と気を取り直して、今年一年の商売繁盛を祈願しようと地元の神社にお
参りし、昇殿祈願をお願いすると「すみません、本日と明日は、企業のご参拝で予約
がいっぱいなんです・・・。」とまたまた申し訳なさそうな巫女さんの言葉。
「何??また、予約??」今の世の中、初詣ですら予約の時代なんですね。

 新年早々、ガックリ続きでの幕開けでしたが、まだまだ1年始まったばかり、今年
は我が事務所も「予約でいっぱい」となるべく、決意も新たに頑張ろう!さぁ、まず
は福袋の挽回に、新春バーゲンに繰り出そうっと。


2008.01.07(月)【目指せ、ミッキーマウス】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。
 さて、正月休暇はいかがお過ごしでしたでしょうか。帰省した方、旅行した方、寝
正月だった方と、それぞれだったと思いますが、当ESGの中心メンバーは、数日の
休暇をとった後は、相変わらずの原稿書きや仕事の整理でコンビニ弁当生活だったよ
うです。
 司法書士のような(時間)自由業の場合は、平日と休日の垣根がないのも同様です
が、それでも、休日のときだけはマイペースで仕事ができますので、正月休暇などは
助かります。帰省中も旅行中も、原稿の構想を練ったり、次の仕事の段取りを考えた
りしますが、マイペースのため苦痛ではありません。充電し英気を養えます。
 充電し元気になったところで、今年はネズミ年にあやかり、当ESGをネズミ算式
に拡張したいのですが、コンビニ弁当頼りのホームレス・ドブネズミが増えてもパワ
ーにはなりませんね。現メンバーを裕福な家ネズミにすることのほうが優先課題です。
水木しげるの漫画に登場する身勝手なネズミ男ではなく、いつまでも若々しく、世界
中で愛され、稼ぎもすごい、ディズニーのミッキーマウスでも目標にしましょうか。
メンバー諸君、それには、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が特に重要です。あれ、
ポパイじゃなかった。

※合併再編が全国的に増えているため、本年から、実験的に私設の有料相談窓口

 を設けてみました。お困りの際は、ぜひご利用ください。

(2007年度)

2007.12.28
【徒然大晦日】(金子登志雄)

 早いもので、本年の仕事納めの日になりました。
 本徒然も、4月にスタートして以来、何とか今日まで穴も空けずに続けてまいりま
したが、少しはお役に立ったり、お楽しみいただけましたでしょうか。
 いったいどなたが閲覧なさっているのか、最近は平均で80名前後の方が閲覧して
くださっているようです(1台のPCでは何度閲覧しても1回しかカウントされません)。
 週に最低1度は主に会社法や登記の真面目な話題を取り上げていますが、それ以外
は、意識的に軽い内容で、当ESGメンバーの人間くささが表に出るような内容にし
てまいりました。
 そのせいでしょうか、富田氏などは、学究肌のイメージが崩れてしまったと大層嘆
いていますが、「あるときは、貧相なコンビニ弁当生活のホームレス中年、あるとき
は閉じこもりの時計オタク、あるときは・・・、しかしてその実体は、正義と真実の
三ツ星司法書士だ!」という多羅尾伴内流の七変化の生き方も面白いのじゃないかと
慰めております。
 私も、「あるときは不動産登記を知らない偽装司法書士、あるときはABLも知ら
ない似非企業法務家、あるときは・・・、しかしてその実体は、・・・」といえるよ
うがんばりたいと思っております。
 来年も、正月7日より、この路線で走りますので、どうぞよいおトシオ。
 
 多羅尾伴内(タラオ・バンナイ)については、次をどうぞ。「あるときは片目の運
転手、あるときは・・・」が当時は有名なせりふでした。
  http://www.purple.dti.ne.jp/nobuaki/untitled.htm60.htm


2007.12.27【湯桶読み】(大戸早規子)

 「早規子」が「さっきこ」と促音便化しなくてよかったと安堵している大戸です。
 「早急」にお答えせねばならないことがありますもので、再び登場いたします。
 25日の私の投稿の「おおコ、おおゴ」の読み方は、「湯桶・ゆトウ」読みでした。
漢字の熟語の上を「訓」で読み、下を「音」で読むことです。遠い昔に習った記憶は
あるのですがド忘れしてしまい、「ゆ」の字も出てきませんでしたが、そこは国語辞
典の便利さです。重箱読みの反対語として、ちゃんと出ていましたから。
 ところで、辞書でも条文でも、何かひとつのことを調べてそこに書いてあることを
読んだら、さらに関連したことを芋づる式に調べたくなり、あっちを開いたりこっち
を開いたりということはありませんか。自分が手にしているペンや大事なメモまでも、
栞(しおり)代わりにはさみこんでしまって。決まってそんな時に電話がかかってき
て、用件を書き留めようようにも、「おっと、さっきペンがあったはずなのに、どこ
にいったのか」と探しまくる、おっとさっきこでした。



2007.12.26【「早急」の読み方】(金子登志雄)

 「おっと」さん、久々の投稿ありがとう。一戸(いちのへ)から九戸(くのへ)ま
でしかないはずなのに、「おおのへ」は意外でした。この際、ご主人は「おおと」で
も、司法書士の大戸さんは、「おおのへ」にしたらいかがですか。合法的夫婦別姓の
最先端ですよ。
 ところで、大戸さんの「早規子」の「早」ですが、早苗とか早百合、早乙女などで
は、確かに「さ」と読みます。
 では、「早急」は何と読むでしょうか。
 「さきゅう」は×、「さっきゅう」は〇、「そうきゅう」も〇です。
 なぜ、「さっきゅう」と「そうきゅう」という2つの読み方があるのでしょうか。
 これ、高校1年生のときに国語の先生が「そうきゅう」と読んだので、「NHKの
アナウンサーは『さっきゅう』と読むが、どちらが正しいのか」と聞いたことがあり
ます。
 さすがは国語の先生です。あわてず騒がず、「うーん、『さふきゅう』の『ふ』が
落ちて、促音便(そくおんびん)化し、『さっきゅう』になったのではないか」との
答えでした。
 この国語教師だったと思いますが、『ふ』の字だけでなく、私の古文の単位まで落
としてしまいました。それ以来、私は、国語嫌いの「ふぬけ」になりました。



2007.12.25【続々・氏の読み方】(大戸早規子)

 みなさま、メリークリスマス♪ 大戸です。
 さて、19日の「氏の読み方」は私の笑いのツボにバッチリはまってしまい一人で
大爆笑でした。
 ところで、私の氏はいったいどのくらいの読み方があるのかしら?  
 「大」:ダイ・タイ・おお(きい)  
 「戸」:コ・と
 次は、算数の組み合わせ。3x2の6種類。
  1 ダイコ・タイコ
  2 おおコ
  3 ダイと・タイと
  4 おおと
 「コ」も「と」も濁ることを考えると全部で12種類になりました。
  1 ダイコ・タイコ・ダイゴ・タイゴ
  2 おおコ・おおゴ
  3 ダイと・タイと・ダイど・タイど
  4 おおと・おおど

 こだわりの大戸が上記のように4種類に分類したのは理由があります。1は音音、
3は重箱読み、4は訓訓。アレッ、2は何だったっけ?どなたか、明日の徒然に答え
を書いてくださいね。
 おっといけない。こんなことをしている場合ではない。重箱読みで思い出しました。
正月用のお重箱を引っ張り出さなくては・・・。
 念のため、私の氏は「おおと」です。自他共に認めるあわてものですが、「おっと」
ではありません。ご期待にそえず申し訳ありません。

 追伸:そういえば、「おおのへ」さんと呼ばれたこともありました。やっぱり
「氏の読み方」は奥が深いです。東北地方に引っ越しましたら、これにします。



2007.12.21【枠超え新株予約権】(金子登志雄)

 発行済株式の総数が1万株だとすると、公開会社(株式譲渡制限会社以外の株式会
社)の発行可能株式総数(株式を一度に発行できる枠)は4万株が限度です。すなわ
ち、取締役会の権限で発行できる新株式数は3万株(4万−1万)が上限です。新株
予約権を発行するときも、その行使の結果として株数が増えますから、この制限が及
び、3万株までしか新株予約権(直ちに株式に変えられる内容であることが前提)を
発行できません。
 では、全部行使すると3万5000株となる新株予約権の発行は無理でしょうか。
 100人中100人が無理だと答えるでしょうが、某上場会社はこれを可能とする
決議を可決しました。さて、どうしたのでしょうか。
 答は、株式併合です。本例で言うと、株式併合により、発行済株式の総数を10分
の1の1000株に変更してしまったのです。商法時代は、株式併合により発行可能
株式総数も自動的に同率で減少し4000株になったのですが、会社法では、発行可
能株式総数を変更する定款変更決議をしない限り、減少するものではないとされてい
ます。4万株のままです。
 とすると、取締役会の権限で発行できるのは、「4万株−1000株=3万900
0株」となり、初期の目的を達成できるわけです。
 10株未満の株主は、株式併合で株主ではなくなるため、
問題のある決定ですが、 全
株主が10株の倍数の株式を保有していた場合には、使えるテクニックかもしれません。



2007.12.20【続・氏の読み方】(金子登志雄)

 豊田、吉田は「ダ」で、富田、有田は、なぜ「タ」なのでしょうか。大島、中島、小
島は、大島だけが「シマ」で「ジマ」とはいいません。
 これらから考えると、周囲の人がそう呼び続けた結果、そうなったのであり、氏の読
み方には、確たるものがないような気がします。
 上野、下野も、「ウエノ、シタノ」でも、「カミノ、シモノ」でもなく、「ウエノ、
シモノ」というのが普通ですから、合理性よりも、周囲からの呼びやすさが原因でしょ
う。
 『組織再編の手続』の編集代表である神崎先生は、「コウザキ」なのに、公明党の神
崎元委員長は、「カンザキ」でした。これはおそらく、「カミザキ」が呼びにくいので、
「カフザキ」→「コウザキ」とか、「カムザキ」→「カンザキ」と変遷したのでしょう。
 ついでながら、「ニッポン」→「ヤポン」→「ジャポン」→「ジャパン」、チャイナ
は、「清」→「CHIN]→「CHINA」(支那もこれか)と変質したのかもしれないというの
が私の勝手な推理です。学問的裏づけは全くありませんが、「なぜこうなったのか」と
いう勝手な推理は、結構楽しいものです。会社法解釈にも、応用できますよ。



2007.12.19【氏の読み方】(金子登志雄)

 日経新聞の「私の履歴書」の執筆者は、女優の森光子さんですが(なんと87歳)、
そこに嵐寛寿郎(アラシ・カンジュロウ)、片岡千恵蔵、東海林太郎(歌手)などとい
ったオールドファンには懐かしい名前が次々と登場していました。
 アラカンは鞍馬天狗、片岡千恵蔵は桜吹雪の大岡越前の守(有名な啖呵を切るときに、
舌が回らず何をいっているのかわからないのが魅力的だった)、東海林太郎は、直立不
動で赤城の子守唄といえば、中年以上の方はおわかりでしょう。
 「東海林太郎」・・・この氏を読めますか。そう、「ショウジ」と読みます。しかし、
地域によっては、「トウカイリン」さんもいるようです。
 久間さんも元防衛庁長官の「キュウマ」さんだけでなく、「クマ」さんもいます。黛
さんも「マユズミ」さんと、「マユスミ」さんがいます。真下さんは、「マシタ」さん
が多いようですが、私の小学校の同級生は「マシモ」さんでした。
 しかし、戸籍にはカナがふってありません。親から、うちはマシモだといわれたから、
そう信じているだけで、実際にはマシタかもしれないし、マシタさんも、自分の子供に
「うちはマシモだ」といい続ければ、子孫は、うちはマシモだと思い込むでしょう。
 米国元大統領のレーガン氏は、カルフォルニア州知事時代は、「リーガン」と呼ばれ
ていたのですが、ご本人の「オレはレーガンだ」で大統領以降は、レーガンになりまし
た。
 私も、実験したいのですが、「オレはキンスだ」といっても、信憑性がありません。
富田さんなら、明日から周囲に「オレはトミダだ」と宣言すれば、トミダさんになれま
す。豊田も吉田も、トヨ「ダ」、ヨシ「ダ」さんですから・・・。もっとも、『計算規
則』本の共著者である有田さんが「オレはアリダ」というと、「アリじゃなくてキリギ
リスでしょう」といわれかねないかな。



2007.12.18【講演は冷や汗の連続】(金子登志雄)  

 鈴木さん、投稿ありがとうございました。
 講演が1年に28回もですか。驚きました。会社法に、不動産に、信託に、ABLに
・・・と領域が広いから、もてもてですね。平素のご努力の賜物です。
 私もまねして講演・セミナー数を計算してみましたところ、会社法一本で16回でし
た。東の関脇か小結くらいにはなれるでしょうか。一番の遠方は鹿児島県でした。
 こんな数でしかないのに、講演先で、「先生は、本を書いたり、講演が多いようです
が、実務はなさっているのですか」と、とんでもない質問を受けることが少なくありま
せん。稼ぎの大部分が地道な司法書士業務(登記)なのですが、なぜか、そう思っても
らえません。
 きっと、講演などは、汗を流さず、うらやましい商売と思われているのでしょう。確
かに、熱い汗は流しませんが、冷や汗は大量にかいているのにね。「ABLとは、A体、
B体、Lサイズという服のサイズの話じゃない」としゃべって、笑ってもらえなかった
ら、鈴木さんも、冷や汗が止まらず、支離滅裂になってしまったことでしょう。
 さて、来年度は、当ESGでも、大事務所の経営者である鈴木先生に、ぜひ講演をお
願いしたいと思っています。テーマは、もちろん、「ワーキングプアから脱出して大事
務所を作る方法」です。よろしくお願いします。



2007.12.17【旅は徒然(鳥取編)】(鈴木龍介)

 みなさん こんにちは
 会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。

 旅は徒然ということで、地方行脚とくれば「徒然活動日誌」です。この土曜日は、鳥
取に行ってきました(初めてです)。鳥取司法書士会にお声をかけていただいて研修の
講師です。テーマは、島根と同じく「ABL」。

 講演のご経験がある方はわかると思いますが、冒頭の出だし、いわゆる、「つかみ」
っていうやつが講演では大事なんです。特に私の場合、「つかみ」がうまくいったとき
は、最後まで大体うまくいきます(自己評価ですが)。
 そこで、今回も往きの飛行機の中であれこれ考えまして、以前、金子さんに教えてい
ただいた(?)、「A体、B体、Lサイズ」(徒然活動日誌2007.10.24参照)ではいって
みました(すべったら、結構ダメージのある「つかみ」だなと思いつつ・・・)。
 結果、心優しい鳥取の先生方、ちゃんと笑ってくれました。ありがとうございました。
その後、少なくともしゃべっている私には楽しい3時間でした。

(おまけ その1)
 ところで、今回で今年の講演、セミナー活動も終了です。
 我ながらよくやったなと思って、数えたら28回。
 おそらく、司法書士業界の東日本チャンピオンでは(関西には
 強敵がいるので・・・)???

(おまけ その2)
 今回の鳥取は、日帰りでした。
 これまでの泥酔、二日酔いの教訓を生かしてといいたいところですが、
 単に、実務&原稿の月曜朝締切がいくつかあって・・・どうにもならなかっただけで
す。
 でも行程は結構ハードで、走って飛行機のチェックインしました。砂丘も
 もちろん見られませんでした(でも、ちょっと寂しい・・・)。


2007.12.14【仮取締役か一時取締役か】(金子登志雄)

 昨日の徒然では「仮取締役」と書きましたが、「一時取締役」というべきではないかと
いう見解が少なくありません。会社法346条2項には、「裁判所は、必要があると認め
るときは、利害関係人の申立てにより、★一時役員の職務を行うべき者★を選任すること
ができる」と規定されていますので、そう思われても致し方ないでしょう。
 しかし、民法56条は、「裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、★仮理事★
を選任しなければならない」です。旧非訟事件手続法139条4号には、「取締役・・・
ノ職務ヲ★一時行フベキ者★」とありました。会社法937条1項2号イでは、「一時取
締役、会計参与、監査役・・・の職務を行うべき者」とあり、「一時取締役、一時会計参
与、一時監査役・・・」という書き方をしていません。
 これらから、「一時」は明らかに副詞であり、「一時取締役」で1語とはいえません。
従来どおり、仮取締役とか仮監査役とかいう表現が正しいというべきです。
 どうでもよいといえば、そのとおりですが、旧非訟事件手続法139条4号のように、
副詞の位置を「行う」という動詞の前におくか、あるいは、「一時」ではなく「一時的に」
と規定すれば、この混乱はなかったことでしょう。
 (注)なんと、裁判所の書式見本は、一時取締役でした。
  http://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/tetuzuki/pdf/shosiki28.pdf



2007.12.13【一人取締役の死亡】(金子登志雄)

 表題の件は、昔は有限会社の話でしたが、現在では、株式会社の話です。会社法では株
式会社にあっても、取締役は一人でよく監査役を置かなくともよくなりましたから、たっ
た一人の取締役が死亡するという事態が生じます。船長がいなくなり、この船の行き先は、
どうなるのでしょうか。
 考えるまでもありません。株主全員(相続人ということも多いでしょう)が集合して株
主総会を開催し(古くから「全員出席総会」として認められています)、新たに船長を選
ぶだけです。必要なき限り、裁判所に仮取締役の選任を申請する必要はありません。
 ところで、ある市販の文献に、取締役の死亡の登記にあたり、死亡時期が記載された住
民票は証明書類にならないとありました。上り坂と下り坂以外のもう1つの坂(まさか)
と思い、メンバーの富田さんに話しましたところ、調べていただき、その後、先例変更さ
れていることがわかりました。
 私は一般常識で考えて意見をいうだけですが、”まめ”な富田さんは、すぐに調べ、数
分後に調査結果を教えてくれます。本当に助かります。高級時計のバロン(気球)ブルー
は買ってあげられないけど、バロン(男爵)の称号を与えたいくらいです。富田さん、ま
ぁまぁ、そうブルーにならないように。


2007.12.12【仕事マニア向けの手帳】(田中利和)  

 なるほど。”時計マニア”の富田さんが時計にこだわるのは、昔の上司の方からの言葉
でしたか。 確かに、清潔感・見た目は、全ての業種・仕事に当てはまりますよね。
 先日、”まめ”な富田さんを見習うべく、どんな些細な情報も手帳に書き込み、「役立
てるぞ!」と思い、来年の仕事に向けて手帳を購入しようと、本屋に立ち寄りました。所
狭しと、色々な種類の手帳が置いてありましたが、そのほとんどは「月曜日始まり」です。
カレンダーは日曜日から始まっているのに・・・。私、個人的には、カレンダーと同じ「
日曜日始まり」が好みですが、ごくわずかしか売っていません。一般的には、土曜日・日
曜日は休みで仕事は月曜日から始まるため、ビジネス手帳のほとんどが「月曜日始まり」
なのでしょう。 
 あっ、すいません。仕事マニアでもある富田さんは、土曜日も日曜日も、ほとんど関係
ありませんでしたよね。毎日、仕事・仕事・仕事・・・・。月・月・火・水・木・金・金。
さすがに、月が2回、金が2回の手帳は売ってませんね。でも、ごく一部の”仕事マニア”
(別名『ワーキングプア』)の方には売れるかもしれませんね。「月曜日2回始まり、金
曜日2回終わり」とか(笑)。


2007.12.11【めざせ!三ツ星司法書士への道 パート2】(富田太郎)  

 「幸せの青い時計は、ひとつに限らない」、田中さんは、うまいことをいいますねぇ。
 ご推察のとおり、実は、今、欲しい時計があります。某社の「バロン ブルー」という
「金と銀のコンビで、リューズが青い時計」です。邦訳すれば「青い風船」という優雅な
名前の時計です。田中さんの投稿の時計マニアの口癖流にいえば、「今度こそ、これさえ
あれば、もう欲しい時計はありません。この時計さえあれば、三ツ星司法書士に必要な品
格も、つくような気がします」ということです。
 それは冗談として、私が時計にこだわるようになりましたのは、前職のサラリーマン時
代(金融機関)の「上司の言葉」からでした。  
 『金融機関は信用第一です。お客様は、「信用」を見た目からも判断されます。その時、
よくチェックされるのが「全体の清潔感」「時計」「靴」です。決して華美で高価なもの
でなくてもよいから、注意しなさい。』
 「なるほど・・・」と実感したものでした。
 清潔感・見た目も必要! 全ての業種・仕事に当てはまることではないでしょうか。
 ところで、先日、某雑誌に「女性OLからみたダサい男性」の特集記事が掲載されてい
ました。『時計だけは一流で、背広等が量販店の安物・・・。これがダサい男の典型。特
に、「金と銀のコンビの時計」が最悪・・・』
 これって、まさに私のことみたいですね。気をつけます。


2007.12.10【時計オタクの傾向】(田中利和)

 みなさん、こんにちは。ESGプロダクションの大阪からデビューした田中です。
 私も時々、この徒然を書いているのですが、ボツにされたりで、なかなか舞台に立た
せてもらえません。人気者の富田ネタなら、ツボにはまった内容となり、晴れ舞台に立
たせてくれそうだと、やっと気がつきました。
 富田さんがお客様にも、コンビニの店員にも愛されるのは、”まめ”だからだと思い
ます。私の方は、女性には”まめ”なのですが、仕事となると、そうでもありません。
お客様にも、”まめ”に接しなければならないのですが、年賀状も”筆まめ”にがんば
ってもらうことにして、私は楽をしたいと思っています。
 ところで、時計オタクの富田さんのこと、新年に向けて、また新時計を物色されてい
るのではないでしょうか? 時計マニアの口癖は、「これさえあれば、もう欲しい時計
はない!」又は「これが最後の時計だ」といいつつ、新しい時計を買って一週間もしな
いうちに、次の時計を物色しはじめますよね。私の周囲にも、こういうマニアがいます
が、幸せの青い時計は、1つには限らないのでしょうか。
 まぁ、富田さんの場合はギャンブルするわけでもなく、車のような高価なものに夢中
なわけでもありません。たかが時計の1つで、仕事に集中できるわけですから、三ツ星
司法書士を目指す張り合いのためにも、せいぜい新時計を買い集めてください。いつか
お下がりが私のところにもまわってくることでしょう。質屋でウン万円にはなるかな。



2007.12.07【種類株式発行会社の合併】(金子登志雄)

 金曜日ですので、真面目な話題にします。11月30日に【種類株主総会との共催】
で書いた内容を吸収合併で経験いたしました。
 合併存続会社を甲、消滅会社を乙とし、合併新株(普通株式)を100株発行し、乙
の株主に割り当てる事案でした。甲は、普通株式とA種株式を発行できる種類株式発行
会社でしたが、A種株式は実際には未発行でした。普通株主しか存在しません。
 規定どおりに行くと、@全体の合併承認総会とA会社法797条4項を根拠とする普
通株主の種類株主総会が必要ですが、A種株主が存在しないため、@とAは構成員が完
全に一致しました。
 よほど、従来どおり「臨時株主総会議事録(普通株主による種類株主総会を兼ねる)」
という1つの議事録を提出し、法務局の対応を探ろうと思いましたが、顧客を巻き沿い
にできないので、致し方なく、@とAの2つの議事録を顧客に作っていただき提出しま
した。
 実にむなしい思いでした。
 別件で100%親子の合併も申請しましたが、100%子会社を吸収合併するのに、
子会社で株券提出公告をしない理由書を提出しました。商法時代は解釈で不要とされて
いた事案です。会社法でも解釈は変わらないはずですが、必要だというのが現在の運用
です。
 会社法施行後、本来の立法趣旨を斟酌しない杓子定規な運用が増えたように思います。
法律解釈の余地が少なくなり、寂しいことです。やはり、会社法は純法律から行政法規
になったのでしょうか。


2007.12.06【ESGプロダクションの将来性】(金子登志雄)  

 時計で勝負するのはよいけれど、富田さんは、それをみせびらかしたのでしょう。そ
うだとしたら、品位を欠きますね。昔から、「きんきらきんでさりげなく」と歌われて
いたように、ごく自然にさりげなくしていると、相手が気づき、「あれ、富田さん、そ
の時計、素敵ですね」と言ってきますから、富田さんは、しまったという顔をして、
「いやー、お恥ずかしい。安物ですよ」と、さりげなく応じなければ、☆1つもやれな
いな。
 やはり、勝負するなら、仕事の実力ですよ。品位がなくとも横綱やボクシングチャン
ピオンになれますから、まずは実力を磨くことです。徹夜で、食事時間も惜しんでコン
ビニ弁当で日々実力を磨いているからこそ、富田ファンが差し入れしてくれるわけです
から・・・。
 あとは会社計算規則を勉強して、のれんを身につければ、富田事務所には、品格と剰
余金があふれるようになり、当ESGへの分配可能額も膨らみます。
 それを期待しているのか、他のメンバーはのほほんとして徒然に登場しないなぁ。い
つまでも、金子・富田の掛け合い漫才じゃ、ESGプロダクションの発展はありません。
当ESGの誇るアフタヌーン娘も、どこで何をしているやら。芸がなかったら、大喰い
のギャル曽根路線でもいいんだけど。安くてうまい店でもご紹介ください。


2007.12.05【めざせ!三ツ星司法書士への道】(富田太郎)

 みなさん、こんにちは。「会社計算規則」を勉強中の富田です。
 【品格と実力】面白く読みました。三ツ星司法書士になるには、実力のほか、「品位、
品格」も必要なのですね。なるほど、司法書士法第2条にも「司法書士は常に品位を保
持し〜」とありますね。

 ところで、この徒然に投稿し始めてから、「ワーキング・プア」と「徹夜」のイメー
ジが定着したのでしょうか?
 顧客の方から、差し入れの「ドリンク剤」が届くことがあります。
 また、仕事で懇意にしている某銀行に行くと、女性行員の方々から、「ちゃんと食事
をとっていますぅ?睡眠とっていますかぁ?」とよく言われます。
 私って、そんなに「みじめっぽい」のか?「睡眠不足」と「くたびれた服装」がいけ
ないのか?

 「どげんかせんといかん」!!
 ということで、先日、勝負時計(実は、私、「時計おたく」なのです)をはめて某銀
行に行きました。金と銀のコンビで、文字盤がブルーのグラデーション、そしてダイヤ
がちりばめられている私の勝負時計♪

 が・・・女子行員さん曰く、「私達は先生のこと、よく知っているからいいけど・・
・・、その時計やめたほうがいいと思うわ。知らない人が見たら・・・・品位に欠ける
と思う。」

 率直な「ご意見」ありがとうございました(涙)。品位と品格ですね・・・。
「三ツ星司法書士」・・・ああ、道は遠い。



2007.12.04【品格と実力】(金子登志雄)

 毎年恒例の流行語大賞は、ゴルフの石川選手の「ハニカミ王子」と東国原(ひがしこ
くばる)宮崎県知事の「どげんかせんといかん」に決定し、下馬評の高かったお笑いタ
レント小島よしお氏の「そんなの関係ねぇ」は、大賞からは落選したようです。ちょっ
と品位を欠いた表現のためでしょうか。トレードマークの裸も受賞には障害になったか
もしれま せん。
 ミシュランの三ツ星も、安くてうまい店は最初から圏外に置かれましたから、やはり
大賞に選ばれるためには、それなりの品格がないといけないのでしょう。一種の「のれ
ん」が必要です。
 富田さん、われわれも気をつけましょう。著作では儲からないとか、働けど働けど・
・・なんてぼやいているうちは、品格が足らず大賞候補から落選してしまいますよ。い
まさら、ハニカミ中年じゃ、気味が悪いと評価されるだけだし・・・。とにかく会社計
算規則を「どげんかせんといかん」です。「のれん」が身につきません。


2007.12.03【資本と利益の峻別】(金子登志雄)

 先週は、2箇所で会社法の講演をしましたが、その際の質問からして、税理士さんに
新しい会社法の資本と利益の峻別の思想が十分に通じていないことをいつも痛感させら
れます。たとえば、「税理士さん経由で利益剰余金の資本組入れを頼まれたが、ほんと
にできないのか」などといった質問です。
 やっかいなことに、商業登記法69条によると「できる」と書いてありますので、司
法書士から「できません」と答えるのは辛いところですが、「できない」とする会社計
算規則が手続法である商業登記法に優先しますので、登記も受理されません。
 もっとも、会社の計算に弱い司法書士側では、資本と利益の区別を十分に説明できな
い方も少なくないので、税理士さんの不勉強振りをなじることはできません。
 資本と利益の峻別は理解できても、合併等の対価の柔軟化(現金などを合併等の対価
として交付できるようになったこと)に伴い、資本取引と損益取引の境界も怪しくなり、
会社法手続がますます難しくなりました。
 難しくなれば難しいほど、会社法専門司法書士の役割が向上しますので、ありがたい
ことだと考えるようにしています。全国の会社法専門司法書士のみなさん、三ツ星司法
書士を目指して、今週も勉強や講演にがんばりましょう。


2007.11.30【種類株主総会との共催】(金子登志雄)

 普通株式とA種株式の2種を発行できる種類株式発行会社で総会決議の要否を考える
ときは、@全体の株主総会、A普通株主の種類株主総会、BA種株主の種類株主総会の
3つを検討します。
 さて、A種株式が未発行でA種株主が存在しない場合や議決権がない場合(無議決権
株式であったり自己株式になっている場合)で、@とAが必要なときは、実務上、合同
総会にします。構成メンバーが完全に一致するからです。株主総会招集通知も「臨時株
主総会招集ご通知」として「本総会は普通株主様の種類株主総会を兼ねます」と断り書
きを入れたり、「臨時株主総会及び普通株主様による種類株主総会招集ご通知」などと
します。合同総会ですから、開始時間も終了時間も一致しますし、もちろん議事録も1
つにまとめるのがこれまでの長い伝統でした。
 ところが、最近の某法務局の回答に、共催自体は問題ないが、@とAの決議はそれぞ
れにし、議事録も@とAの2つが必要だとありました。実務に詳しくない方が顧客の意
向に反して「議事録も別々にしないといけませんよね」と迷惑な質問をしたせいで、法
務局もつられて、「そのとおり」と回答してしまったものと思われますが、議事録をま
とめて作るか、別々に作るかまでを当局が干渉する権限はないと思いますので、この回
答はいずれ修正されるものと期待しています。


2007.11.29【種類株式ブーム】(金子登志雄)
 
 非公開会社でも事業承継対策等で種類株式を発行する例が増えてまいりました。
 ベンチャー企業でも優先株式等を発行する例が少なくないようです。一種のブームな
んでしょうか。
 しかし、発行すること自体は容易ですが、その後が結構たいへんです。たとえば、新
株発行や株式分割、吸収合併・・・などの都度、種類株主総会が必要かどうかで迷うか
らです。
 新株の発行や吸収合併にも種類株主総会が必要である理由は、会社法第199条第4
項や第795条第4項であり、その新株が譲渡制限株式(普通株式)である限り、原則
として普通株主の種類株主総会が必要だとされています。譲渡制限株主の持分比率の保
護のためです。新株予約権を発行するときも、新株予約権の行使で譲渡制限株式を交付
されるときは同じです。これは会社法第238条第4項です。
 わけもわからず、流行に乗って種類株式を発行してしまうと、オーナー社長でさえ御
せない会社になってしまいますので、種類株式を自在に操れる人が近くにいない限りは、
慎重に検討したほうがよいというのが私の考え方です。普通の会社から、ちょっと複雑
な会社になるためには、それなりの勉強も必要です。

※「これが計算規則だ株主資本だ」の感想文が届きました。もっとも、知人の司法書士
からのため、よいしょも一部含まれていると思います。
------------------------------------------------------------------
 遅ればせながら、計算規則の本を読ませていただいていますが、ビックリするくらい
素晴らしい本ですね!!
 読み始めたばかりですが、「のれん」の説明は明快ですし、「パーチェス法」「持分
プーリング法」などは、色々と本を読んでもさっぱり分からなかったのですが、非常に
分かりやすい説明で、ホントに、ビックリしました。
 これからさらに読み進めていきたいと思います。会社法務に携わる人の必読書のよう
に思います。みんなに勧めます!!
--------------------------------------------------------------------



2007.11.28【ミシュランガイド東京2008】(金子登志雄)  

 レストランに☆の数をつけて評価する表題の本が爆発的に売れているようです。ミシ
ュランとは世界的に有名なフランスのタイヤメーカーです。なぜレストランと関係する
のかと不思議に思っておりましたところ、テレビ情報によりますと、もともとは車での
外出を奨励すればタイヤが売れるという発想で、おいしいレストランに☆をつけて紹介
したのだとか。
 三ツ星をもらったシェフ経営者の一人がお客が少ないので廃業しようかと思っていた
ところだったという挨拶をしたのが印象的でした。真面目に仕事に集中していれば三ツ
星マークがつくということですね。
 富田事務所に三ツ星をつけると、「I was tired(疲れた)」と本人がパンクしてタ
イヤが売れなくなりますから、ぜひ金子事務所のほうに三ツ星をつけてください。働き
たくとも働きたくとも、なお仕事なしの悲惨な日が時々ありますので・・・。


2007.11.27『働けど、働けど、なお わが暮らし 楽にならざり 】(富田太郎)

 先日、漫画家の「水木しげる」氏の自伝的エッセイを読みました。
水木氏は、戦後、
『ラバウル』から復員後、「紙芝居」「貸本」作家になったものの、赤貧の生活で苦労
し、40歳後半頃、マンガ週刊誌の連載をもつようになって、ようやく生活が楽になっ
たそうです。
 ただし、喜びもつかの間、今度は「締め切り」に追われ、毎晩、毎晩、机に向かう徹
夜の毎日。唯一の楽しみは、ペンを休め、窓からみる「庭の風景」と「虫達の声」だっ
たそうです。読んだとき、思わず「水木氏は私の仲間だ」と思いました♪
 もっとも、専門書はマンガのように大儲けはできず、ただ時間に追われるだけです。
また、私の事務所(新宿二丁目)の窓から見えるのは「オカマバー」と、店から漏れて
くる「郷ひろみ」の歌声(勿論、本人ではなくCD)だけです(涙)。あぁ〜大きな違
いですね・・・。

PS

 金子先生。毎晩コンビニ弁当の私ですが、時折、店員さん達から、「これを食べて、
頑張ってください!」と「お菓子の差し入れ(店員さん達の私物)」を頂くことがあり
ます。「あれ?私が執筆活動もしていることを、なぜ知っているのだろう?尊敬されて
いるのかな♪」そんなこと、あるはずもなく、いつも徹夜で疲れきっているので、同情
されているだけのようです(苦笑)。ともかく、店員さん達、いつもありがとう♪



2007.11.26【ハイレベルの本(書評)】(金子登志雄)

 先日、出版社の中央経済社から「ビジネス法務」というプロ向けの雑誌を献本されま
した。献本される心当たりがなかったのですが、中身をみたら、拙著「組織再編の手続」
の書評が掲載されていました。その内容については、本HPの「出版物の案内」に掲載
いたしましたが、「極めて高いレベルの本」だと、たいそうお褒めの言葉をいただきま
した。ありがたいことです。「司法書士、ここにあり!」と、アピールするのがESG
の創立目的であり(研究会の概要参照)、一流のプロに評価される著作を目指しており
ましたので、このような評価を賜りますと、苦労の甲斐があったというものです。
 ちなみに評者の中西氏は、商事法務の法律座談会の司会などでおなじみの企業法務の
プロ中のプロです。氏による商事法務刊の「合併ハンドブック」や株主総会対策本など
は、私もよく参考にさせてもらいました。
 同士諸君、あとは売れ行きだけだ!・・・と声をかけたいところですが、こればかり
は、本徒然で有名な「コンビニ弁当の君」をみれば、一目瞭然です。著作で、左うちわ
はあきらめました。


2007.11.22【講演会の連荘】(金子登志雄)

 昨日は、午後は経営者セミナーで、夜は東京司法書士会千代田支部でと、講演の連荘
でした。 (連荘を読めましたか? マージャン世代なら、すぐに「れんチャン」と読め
ます。チャンは、もちろん中国語です。)
 夜の部は、言語明瞭・意味不明として名高い会社計算規則の解説でしたから、ご理解
いただけたのかと不安でしたが、終了後に受講者にインタビューしたところ、私が話し
た内容の半分以上が通じていたようなので、ほっとしました。初回で、50%以上なら
上出来です。
 あの超難解な計算規則を3時間の講義で理解できるわけがありません。とにかく、単
語に慣れることです。吸収型再編簿価株主資本額とか、吸収型再編対価簿価とあっても、
要するに、吸収合併や吸収分割における際の受入れ簿価純資産額のようなものだな、そ
の財産を受け入れた見返りに交付する対価の簿価のことを吸収型再編対価簿価というの
だなと自分で説明できるようになれば完璧です。
 そのうち、自然に覚えてしまうでしょう。中学・高校時代の英語の教科書には、1ペ
ージ当たり、大量の知らない単語が登場したわけですから、それから比べれば楽なもの
です。


2007.11.21【菓子折りが来ない】(金子登志雄)

 富田さんの「正直者のおじさん」話、実によかったですよ。では、私の「正直者のお
じさん」まがいの話。
 あるとき、官報の合併公告をみていたら、最終日が休日のため合併公告期間が足りな
い会社がありました。上場会社です。「こりゃ、たいへんだ、担当者が処分されかねな
い」と思い、その会社のHPを経由して、注意を喚起しておきました。いらぬおせっか
いとも思いましたが、上場会社が合併を公示して、それができなかったら大恥です。先
般、株式分割の公告を忘れて実行できず、失態を演じた上場会社がありましたが、それ
と同様に投資家へのお詫びが必要になったでしょう。
 メールした翌日に電話があり、いくつか質問されましたので、丁寧に対応したつもり
です。しかし、それで終わりです。ありがとうといわれた記憶もありません。別に、菓
子折りを期待したわけではありませんが、こういうことがあると、おせっかいはやかな
いほうがいいのかなという気になってしまいます。
 心当たりのある上場会社の方は、いまからでも遅くありません。小判が敷き詰められ
ている菓子折りを金庫を開けて待っております。



2007.11.20【夢のような話・・・魔法の金庫??】(富田太郎)

 みなさん、こんにちは。今週も事務所で、徹夜生活を続けています。ワーキング・プ
ア司法書士の私ですが、いつも、単行本が突然、●万部ぐらい売れないかなぁ♪所持し
ているストックオプションの発行会社が上場して、お金持ちにならないか♪・・・など
と夢ばかりみています(いい歳して・・)。
 ところで、今回は「夢のような話」をひとつ。
 今年の月のある金曜日のこと。某郵便局で、「万円の収入印紙40枚(計40万円)」
を購入しました。購入後、そのまま、事務所の金庫に保管。月曜日の朝、金庫から収入
印紙を取り出したところ、何と!「10万円の収入印紙40枚(計400万円)」に変わって
いるではないですか!
 保管しておくと、勝手に「お金が10倍になる金庫」♪ いつのまに、「魔法の金庫」
になったのだろうか・・・?
 そんな夢みたいなはずもなく、購入した某郵便局に慌てて行ったところ、やはり、郵
便局の手違いでした。郵便局長曰く「どなたに売ったのか記録もなく、もう諦めていま
した。土日も眠れなく・・・・。」
 結局、その後、某郵便局から「お礼の菓子折り」をもらって一件落着・・・。
 童話であれば、その後、「正直者のおじさん」は、大金持ちになるはずですが、数ヶ
月たった今、何の兆候もなく、ただただ、事務所でコンビニ弁当を食べながら、徹夜生
活を続けています。私のハッピーエンドはいつ来るのでしょうか・・・・・。



2007.11.19【どちらが甲でどちらが乙】(金子登志雄)

 合併公告では、存続会社を甲、消滅会社を乙として、「甲は乙の権利義務全部を承継
して存続し乙は解散することにいたしました」と表現します。事業に関して有する権利
義務を承継させる吸収分割でも、「甲は乙の〇〇事業に関する権利義務を承継し乙はそ
れを承継させることにいたしました」とするのが一般です。
 ところが、先般の官報に「乙は甲の〇〇事業に関する権利義務を承継し甲はそれを承
継させることにいたしました」という公告事例がいくつか掲載されており、おおいに目
立っておりました。もちろん、間違いではありません。どちらを甲にしようが、乙にし
ようが勝手です。
 おそらく不動産売買や事業譲渡契約書のほとんどが、譲渡人を甲、譲受人を乙として
いるため、その延長で、事業を出す側を甲にし、受入れ側を乙にしたのでしょう。甲と
乙の表記を吸収分割契約書にあわせたのかもしれません。
 しかし、公告を見慣れている者にとっては、受入れ側が乙とされ、本店所在地や商号
が甲よりも後ろに記載されると、どうも落ち着きません。
 組織再編手続一筋に20年のプロを自認する身としては、慣れないといけないので、私
も明日から、「乙は甲の権利義務全部を承継して存続し甲は解散することにいたしまし
た。甲(住所・商号)、乙(住所・商号)」とした公告を出してみようかなと思いまし
たが、二度と仕事が来なくなりそうです。
 ちなみに、最近は、合併契約書でも、信じられない内容のものが増えました。餅は餅
屋に任せたほうがいいのに・・・。


2007.11.16【おばちゃんに感謝】(金子登志雄)

 昨日は、朝から本HPの閲覧件数が増え続け、おかしいなぁ、天変地異の前触れかと
思っておりましたら、何と、かの有名な「信託大好きおばちゃんのブログ」で、「よく
わかる自己株式の実務処理Q&A」が取り上げられたためでした。

 http://shintaku-obachan.cocolog-nifty.com/shintakudaisuki/

 おばちゃん、とり上げていただき、どうもありがとうございました。
 おばちゃんのブログはすごいですね。毎日のように、役に立つあれだけの文章を書い
ているなんて驚きです。そのブログをみなれている方にとっては、当HPの徒然の軽薄
路線に驚かれたことでしょう。
 当HPには、「会社法大好きおじちゃん」の私のほか、「不動産法務大好きおじちゃ
ん」から、「プロレス大好きおじちゃん」まで、ユニーク人間が多士済々ですので、こ
れに懲りずに、どうぞ、たまには遊びに来てください。


2007.11.15【ベンチャーの財産は夢】(富田太郎)

  商業登記案件の楽しさは、いろいろありますが、中でも、ストック・オプション案件
は、個人的に大好きです。

  試行錯誤、徹夜しながら満足のいく立案・設計をしたときの「充実感」、これに勝る
ものはありません。

  ところで、最近、私も関与先のVCやベンチャー企業等からストック・オプション
新株予約権)を頂くことがあります。 「税制非適格だし、上場しないともらっても、あ
まり意味ないなぁ…」と思っていたところ、

  ESG代表、金子先生曰く「ベンチャーの財産は夢である」
  なるほど! 蓋し名言ですね。
 夢に向かって走れ! 将来有望な関与先からストック・オプションをもらうと、しば
し、ワーキングプアの現実から逃避し、関与先と将来の夢を共有でき、その会社が上場
できるように、最大限の協力をしたい気持ちになってくるものです。



2007.11.14【ご祝儀相場】(金子登志雄)  

 おかげさまで、著書の出足は好調です。八重洲ブックセンター2階の先週の売上で
13位と18位でした(下記の2階部分をクリックしてください)。

http://www.yaesu-book.co.jp/best-seller/index.html

 6日発売ですから、上出来です。
 しかし、「これが新増減資だ株主資本だ」も出足は12位でした。翌週からは、ずっ
とランキング外でしたが・・・。株式投資の世界でいう「ご祝儀相場」みたいなもので、
景気づけにすぎません。
 新内閣もそうですね。最初は高い支持率なのに、あとは下がる一方です。読者や有権
者は、案外、浮気性です。
 全く関係ない話ですが、熱烈な巨人ファンになると、負けたことがわかっても、どこ
かの新聞に「勝った」と出てるかもしれないと、探しまくるそうです。「負け」を誤報
と思いたいわけです。きっと、私も、翌週からは、紀伊国屋、丸善、旭屋・・・と、ど
こかでランキングに載っているはずだと探しているかもしれません。


2007.11.13【抱合わせ株式】(金子登志雄)  

 抱合(だきあ)わせ株式という用語をご存知ですか。合併実務では、頻繁に登場しま
すが、司法書士相手の講演では、ほとんど通じません。税務用語だからです。
 合併存続会社が有する合併消滅会社の株式のことですが、実務では、親会社が有する
子会社株式のことをいうことが多いといえます。
 親会社甲が子会社乙を吸収合併すると、乙は解散消滅しますから、甲の有する乙株式
も消滅します。そこに損益が生じます。たとえば、甲が1000万円で子会社乙を設立
し、乙の純資産額が1200万円になったところで吸収合併すると、甲に差引き200
万円の抱合わせ株式消滅「益」が生じます。乙の純資産額が800万円なら、抱合わせ
株式消滅「損」です。特別損益に計上されます。
 たったこれだけのことですが、どこの業界にも、その業界にしか通じない用語がある
ものです。司法書士が税理士に向かって、「抱合わせ株式・・・」といえば、それだけ
で「お主、できるな」とか、「舐めてかかっては、まずい」と思ってもらえることでし
ょう。早速、今日から、税理士さんとの会話で「抱合わせ株式」と使ってみてください。


2007.11.12【小さな事務所2】(松山聡)

 小さな事務所自慢(?)では負けない松山です。
 そんな小さな事務所ですから、油断するとすぐに書類であふれてしまいます。メモ用
紙から始まって郵便物や資料のコピー等々。メインの仕事の書類が、ほんの僅かしかな
いのが寂しいところですが。。。。ちなみに、お客様の書類はきちんと管理しています
ので(念のため。)
 最近では、複合機タイプのスキャナーを活用して、まめに電子ファイルしているので
すが、これはこれで、キチンと整理してファイルしようとすると結構面倒だったりしま
す。ともすれば、電子ファイルしたこと自体を忘れて、あわてて書類を探しまくったり
することも。私の場合、まずは自分の頭の中を整理することが必要なようです。
 ところで、相変らずオンライン申請ネタで恐縮ですが、来年の1月からは、不動産登
記のオンライン申請をするためにスキャナーが必須となります。正確には、オンライン
申請利用促進策(案)に基づく、不動産登記の半ライン(半分だけオンラインの)申請
の場合に必要となるのですが、司法書士の皆さん、ご準備は大丈夫ですよね?


2007.11.09【小さな事務所】(金子登志雄)  

 受験業界で有名な天下の富田先生も書斎並みの小さな事務所ですか。「な〜んだ、た
いしたことないのですね」といいたいところですが、金子事務所は、もっと小さく犬小
屋並みです。
 地方講演に行くと、よくいわれます。「電話かけると、いつも金子先生がでるのです
が、事務員さんには電話をとらせないのですか」。東京の法務局で司法書士に会うと、
「あれ、金子先生、自ら登記申請に来るのですか。事務員さんに提出を頼めばいいのに
・・・」。余計なお世話です。それとも、皮肉でしょうか。金子事務所は1人しかいな
いことを知ってのうえで・・・。
 しかし、零細一人事務所のためか、羨望の目でみられずに済んでいます。「あの金子
よりもオレのほうが事務所は大きいし、稼いでいるんだ」という優越感を皆様に与えて
いるのでしょうか。
 富田さん、われわれは他の司法書士に幸せを振りまいているんですよ。書斎並み事務
所に誇りを持ちなさいよ。
 前に書きましたが、私の適職は気ままな傘張浪人です。傘張技術だけは、誰にも負け
たくないという自負はありますが、それ以外は重視していません。そもそも、私の専門
である合併等の組織再編手続のような面白い仕事を人任せにする気はありません。
 富田さん、お互い、性格が災いして、いつまでも裕福になれないね。その代わり、気
楽ですから、健康1番、裕福2番、3時に昼寝でいきましょう。



2007.11.08【実務と執筆】(富田太郎)

 先日、某年配司法書士から、ご意見をいただきました。
 「富田さん。そろそろ執筆活動をやめて、本業に専念したらどうかね。本来、執筆と
は、実務をやらない司法書士のすることだよ。」
 そうかなぁ・・・、まあ、賛否両論というところかもしれませんが・・・。
 ところで、執筆活動は、私にとって、実務に役立っています。単行本を執筆するため、
いろいろな資料を読み込みこむことにより、最新の知識を得ることができます。
 さらに、自分の言葉で書くことにより、もう一段上の理解を得ることができたり、新
たな発見があったりで、非常に有益です。しばらくは、実務と並行してやっていくつも
りです。もっとも、締め切りは、あいかわらず守れませんが・・・(汗)。

(閑話休題)
 私の事務所は新宿のマンションの一室にあります。単行本を執筆したり、VCの社外
監査役を勤めているので、上場会社の方々は、もっと大きな事務所と思われる方々が大
半です。
 初めて事務所にこられる上場会社の方など、想像していたより小さな事務所なので、
「あれ??ここは先生の書斎ですか?」とか失礼なことを言われる方もいます(笑い)。
本当に、失礼な方々です(苦笑)。

(PS)
 金子先生。代表をお辞めになるときは、お留めは致しません。そのときは一緒に辞め
て、『新会派』を立ち上げましょう(笑)。

 ※年配司法書士さんへ(金子の反論)
 われわれの執筆は実務本です。実務を知らずして執筆できませんし、執筆することに
よって実務能力は、さらに深化します。富田さんが実務に詳しいのも、執筆しているか
らこそだと思いませんか。



2007.11.07【情報操作と民主主義】(金子登志雄)

 今週は小沢民主党党首と福田首相の大連立構想とその後の辞任劇で、安部問題も、亀
田問題も吹っ飛んでしまったようです。
 その問題はともかく、どちらが大連立を持ちかけたかで、小沢さんがマスコミの姿勢
に激怒した辞任会見が気になりました。
 確かに、「事実」の報道がマスコミの役割とはいえ、そこに記者の推測やコメントが
挿入され、「ほんとは小沢が大連立を持ちかけた」などと一斉に報道されると、庶民は、
その情報を鵜呑みにしてしまいます(真偽は不明ですが)。
 亀田問題でもそうでしたが、全マスコミが一斉に一方向に向く姿勢をみると、大政翼
賛はマスコミのほうでないかという気もします。天邪鬼でもよいから、1社くらい、亀
田父はえらいとほめるマスコミがあったほうが健全な社会といえるでしょう。あれだけ
ボクシングへの関心を高め、内藤チャンピオンの知名度を向上させた功績は大なるもの
がありますから、負の面だけの報道は残念です。
 その意味では、党首のいうことを全く聞かないで、横向く人も下を向く人もいる民主
党が一番民主的政党かもしれません(派閥政党の自民党も同じように民主的ですけど)。
 わがESGも超民主的です。代表の私のいうことなど誰も聞いてくれません。小沢さ
んの心情はよくわかります。私も辞任してみようかな。富田副党首は、慰留してくれる
かなぁ。



2007.11.06【計算規則を知らずして、会社法を語る勿れ??】 (富田太郎)  

「ワーキング・プア」司法書士の私ですが、VCの社外監査役も勤めているせいか、
クライアントのベンチャー企業から社外監査役就任の依頼が時折あります。  
「会計のプロでない司法書士が監査役に?」。いえ、私の役割は、法務に関する業務
監査のため、何とか務まっています・・・(汗)。
 ところで、昨年、「中小企業の会計に関する指針」の会社法対応版が発表され、会計
基準も大きく変わったようです。
 非上場会社も発生主義・実現主義・時価会計を適用?なにやら、私には全く「ちんぷ
ん、かんぷん」。慌てて「会計の本」を読みまくっています(勿論、入門書レベルです
が・・・)。
 私のような会計の知識がない人間でも、簡単に理解できる入門書がありました。
 @会社法対応「会計のことが面白いほど分かる本」基礎の基礎編
 A会社法対応「会計のことが面白いほど分かる本」会計基準理解編
      −以上 天野敦之著 中経出版−
 上記書籍、会社法対応版前の旧版は、各25万部、20万部ほど売れたそうです。
凄い・・・。私の著作とは、ずいぶん違います・・・(汗)。

(PS)あとは、あの難解な「会社法計算規則」かぁ・・・と悩んでいたところ、この
ほど、ESG法務研究会の金子先生が、公認会計士の有田さんと
   「これが計算規則だ 株主資本だ」中央経済社 2310円
                        を出版されるとのことです。
 あの意味不明な「会社法計算規則」が、私のような企業会計知識のない人間でも読め
る内容のようです。
 計算規則を知らずして、「会社法」が分かったとは言えない??(汗)
 早く読みたいです・・・。


2007.11.05【専門外に挑戦】(田中利和)

 金子先生、「これが計算規則だ・・・」は、仕訳の知識がなくても読めるのですか。
簿記3級でさえ挫折した私にはうってつけです(笑)。数年前、簿記3級の試験も受けま
したが試験途中で、とっとと帰りました(^_^;)。といっても、他の受験生(高校生と思
われる)は、私が帰るまでに、さっさと解答して教室から出て行ってましたが(笑)。
 こんな私ですが、過日、会社計算規則の理解に何か役に立つのではと考えて、大阪の
某所で開催された「決算書がスラスラわかる/財務3表一体理解法」の著書で有名な國
貞克則氏のセミナーに参加して参りました。
 セミナーの内容は、会社設立から剰余金の配当まで流れを簡単な事例にして、BS(
貸借対照表)・PL(損益計算書)・CS(キャッシュフロー計算書)に落とし込んで
いくというものです。最後は、純資産の部の話をサラッと話して、セミナーは終わりま
した。純資産の部の話を詳しく聞きたかったのですが・・・。
 氏によると、「私は簿記の知識もなく、仕訳もできない」と話されていました(まぁ、
まったくできないとは思えませんが・・・)。なんと、本業は「竹とんぼ屋」だそうで
す。竹とんぼを販売しているそうです。日本一の竹とんぼ屋だ(笑)と話されていました。
 司法書士や竹とんぼ屋さんが会計の本を書く。私も「実は本業は司法書士で・・・」
とか言って、何かを書いてみたいものですね。ということで「徒然の原稿」を書いてみ
ましたが(笑)。



2007.11.02【「しわけでんぴょう」を漢字で書くと】(金子登志雄)

 「しわけでんぴょう」を漢字で書いてくださいというと、おそらく法務人間(弁護士
や司法書士)の過半数が「仕分伝票」と書くことでしょう。先般、拝見した主要法務局
のコメントにも「仕分伝票、現金出納帳、買掛元帳・・・」とありました。
 実は、私も、「これが計算規則だ・・・」の最初の原稿に、盛んに「仕分」と書き、
共著者(公認会計士)の有田賢臣(まさおみ)氏に笑われてしまいました。簿記では「
仕訳」と書くからです。
 その程度のド素人が会社計算規則の解説本を書いてしまったのですから、どんな印象
をもたれるかと気になります。「ド素人の解説のようだから、買う気がしない」という
反応になるのか、「素人の解説だから、きっとわかりやすい内容に相違ない」という好
意的反応なのか・・・。
 しかし、会社計算規則は法令です。会計の専門家よりも法務人間が書くべきだと思っ
ています。そもそも簿記の「仕訳」が間違いで、「仕分」が正しいと思いませんか。
「仕分」と書かないのには「訳」があるというなら、説明してほしいものです。



2007.11.01【これが計算規則だ株主資本だ】(金子登志雄)

 やっと、出版社のHPに掲載されました。11月6日発売です。
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-95860-1

 内容につきましては、表紙の折り返し部分(下記)を援用します。
 ぜひ、お知り合いの司法書士や会計事務所にご紹介ください。
----------------------------------------------------------------           
           <計算規則が読める・わかる本>
 会社計算規則がさっぱりわからないという声が蔓延しています。確かに、独特な用語
や表現の仕方が従来の法令と大きく相違し、「言語明瞭・意味不明」の様相を呈してい
ます。
 しかし、合併等の組織再編だけでなく、資本金の額の減少、株式募集等でも、会社計
算規則の理解が不可欠ですから、早期にマスターする必要があります。
 本書は、やはり会社計算規則がわからなかった司法書士の著者が自己流の方法で理解
できるようになった成果をまとめた「計算規則が読める・わかる本」です。
 計算の専門家による解説書ではありませんので、どなたにもわかる内容です。いわゆ
る企業会計基準の知識も仕訳の専門知識も必要ありません。貸借対照表と中学校の数学
程度の素養があれば、会社計算規則を容易に攻略できます。
 本書によって、会社計算規則が意外にも「知恵の輪」のように面白いものだと思って
いただけましたら幸いです。
           <本書の構成>
第1章 貸借対照表と組織再編取引(会社計算規則を理解する導入部分です)
第2章 のれんと株主資本変動額(のれんと株主資本変動額の相違を解説)
第3章 吸収型再編/のれんと株主資本(吸収合併等ののれんと株主資本を解説)
第4章 新設型再編/のれんと株主資本(新設分割等ののれんと株主資本を解説)
第5章 事業の現物出資/のれん(事業の現物出資も企業結合の1つです)
第6章 組織再編と株式の特別勘定(株式評価が負になったときの計上方法)
第7章 増減資、自己株式、資本金等(その他の必要不可欠の計算知識を解説)
------------------------------------------------------------------
 なお、共著者の有田氏がメインで私がサブの本も同日発売です。ただし、これは会計
事務所向けです。  

自己株式の実務処理Q&A
https://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-27900-3


2007.10.31【 「NPO法人」 その他事業にご注意!】(富田太郎)

 私の事務所は、オカマ街で有名な新宿2丁目にあります。事務所のそばには、新聞・
TV報道で騒がれた「エル・アンド・ジー(L&G)」があり、一時期は報道関係者で
ごった返していました。報道によれば、NPO法人を悪用した商売を行っていたようで
す。
 ところで、そのNPO法人ですが、営利活動を目的としない「特定非営利活動」を行
う団体のことをいいます。ただし、全く収益事業ができないわけではなく、特定非営利
活動事業に支障が生じない範囲内であれば、活動資金を得るために行う「その他事業(
収益事業等)」は、認められています。
 注意しなければならないのは、「その他事業(収益事業等)」を行う場合には、必ず、
定款の目的等に、その旨を定めていなければなりません。定めていなければ、収益事業
はできません。設立当初は、やる予定がなくても、とりあえず入れておくことが賢明で
すね。

 PS
 NPO法人のお薦め資料♪ 「特定非営利活動法人ガイドブック」(東京都)
P204 490円 都庁で販売しており、市販の専門書より、ずっと分かりやすく、実践
的な資料です。


2007.10.30【うどん自慢】(佐藤典子)

 会友に加えていただいておりますCSSおかやまの佐藤典子と申します。
 10月24日付けの記事にうどん自慢をどうぞと書いてありました。身に覚えがあり
ますので、勇気を出して投稿させていただくことにしました。
 岡山市は人口の割りにラーメン店が多く、人気店がしのぎを削っています。人間は、
無いものねだりなのでしょうか?私の回りにはうどん好きの司法書士が多く、ときどき
瀬戸内海を越えてツアーを組んで讃岐うどん店のはしごをします。先週も行って参りま
した。20年前に岡山県と香川県は、夢の架け橋、瀬戸大橋(橋の長さは約13キロメ
ートル)で結ばれたので交通の便はよいです。
 香川県は、朝9時から開いているうどん店も多くあり、まさにうどん天国です。
「100円〜200円でおいしいうどんが食べられるのよ!」と岡山の友人に自慢した
ところ、「瀬戸大橋代をカウントしてないじゃろ!」と岡山弁で夢のないセリフが返っ
て来ました。そうです、瀬戸大橋料金は片道約5000円です(笑)。遠方の方は、どう
ぞそのおいしさを目で味わってください。
 http://yuminotyou.cocolog-nifty.com/photos/udonn/


2007.10.29【入り口と出口】(田中利和)  

 みなさん、こんにちは。大阪の田中です。
 先日読んだビジネス雑誌に「事業者たるものは、その事業の入り口も出口も知って
いなければならない」とありました。これは、企業法務手続でも同じですね。合併手
続でもゴールたる登記がどうなるのか、税務のゴールは適格合併なのかなどといった
出口を見据えて入り口に入らないと、途中で遭難してしまいます。弁護士さんだけだ
と、合併手続等で失敗することが多いのは、「出口」が見えないのに、スタートして
しまうためでしょう。これは霧の中でゴルフをするのと同じで、ゴールの方向さえみ
えないのに、ドライバーショットするようなものです。OBは間違いないでしょう。
 ところが、会社法になりましたら、われわれ自身も、出口どころか入り口さえみえ
ない事態が生じました。読んでもさっぱり理解できない会社計算規則という「迷路」
が大きく立ちはだかってきたからです。このため失敗を恐れず打たれ強いと自負して
いる私も、怖くてドライバーショットさえできません。幸い、わがESGの代表の金
子先生が11月初旬に攻略本(これが計算規則だ株主資本だ)を出版されるようなの
で、打たれ強い私も復活できそうで、ほっとしています。




2007.10.26【ESGの自慢話???】(富田太郎)

 松山さん。貴重な情報ありがとうございます。紆余曲折があったようですが、いよ
いよ 本決まりですか・・・。
 最近、お客様も、インターネットの普及により、事前にさまざまな情報を入手して
いるようです。設立登記依頼の際に、「定款を電子定款にして印紙代も節約してくだ
さい」と言ってこられる方も増えてきました。
 いずれにせよ、これからは最新の情報入手がますます必要になってきますね。
 ESGメンバーは、それぞれ専門領域をもつ職人肌タイプ(自称、学究肌)が多い
ので、貴重な情報を入手でき、いつも助けられています。
 えっ???そんな勉強会、巷にもたくさんあるって?? いえ、「仕事人間」?「
ワーキング・プア」?が多いのか、土日に質問しても、必ず誰かから即答がきます(
きっぱり!)。あまり自慢になりませんね・・・。
 
 追伸 鈴木さんWROTE
 〈「締め切りに迫られた原稿を泣きながら書きました(富田さんみたい?失礼)。」
 いえ、失礼ではありません。私の場合、「締め切りに迫られて」ではなく、「とう
に締め切りの過ぎた」原稿をいつも書いています(きっぱり!)。
 これも、あまり自慢になりませんね・・・・(汗)。



2007.10.25【オンライン申請推進】(松山聡)

 今日は(?)チョッとだけまじめなお話です。
 来年の1月から、会社設立登記の登録免許税が軽減されます。
 といっても全ての設立登記に一律ではなく、登記を電子申請で行った場合に限り、
登録免許税額から10%を控除するというものです。(ただし、上限は5000円。
なお、不動産登記にも登録免許税が軽減される登記があります。)  
 「な〜んだ、私には関係ないや。」などと仰らないで、来年から、司法書士に登記
を依頼するときには、一言「オンライン申請でお願いします。」とつけ加えてみてく
ださい。設立の場合は定款も電子定款にして印紙代も節約です。(むろん電子定款は、
現在でも好評活用中です。)
 最後に、念のためですが、司法書士の皆さん、対応はバッチリですよね。


2007.10.24【ABLと鈴木事務所】(金子登志雄)

 鈴木さん、投稿ありがとう。
 ABLもよくわかりました。私は、A体、B体、Lサイズと、服のサイズの話かと
思っていましたけど、違うのですね。
 さて、ご存じない方のために説明しますと、司法書士法人鈴木事務所は大手司法書
士事務所の1つであり、所長の鈴木さんは若手でありながら、司法書士界ではかなり
の有名人です。
 当ESGメンバーは、会社法、不動産登記、電子申請、プロレス(?)…と、それ
ぞれ専門領域をもつ職人肌タイプ(自称、学究肌)が多いのですが、鈴木事務所は、
会社法も不動産もABLも…という総合病院を目指しており、方向が違うので、ライ
バル心もおきず、懇意にさせてもらっています。
 大酒を飲んだあとに原稿を書くなんて、自己診断をしている病院長でなければでき
ない芸当です。また、神社に長居し、へたをすると不運が院内感染するので、15分
で立ち去るなどといったリスク管理も病院経営者ならではの芸当です。さすがです。
 鈴木さん、また、投稿をお願いしますね(勤務医さんもどうぞ)。他の会友さんも、
酒自慢、うどん自慢(内輪の話です)をお待ちしていますね。


2007.10.23【ABL】(鈴木龍介)

 皆さん、こんにちは。会友の司法書士法人鈴木事務所の鈴木龍介です。

 もしかして、会友としては初めての登場(おおむね、これまでの「徒然」は全部読
んでるつもりですが・・・)???
 さて、この土曜日は島根に行ってきました。出雲大社に縁結びのお願いにというわ
けもなく、島根司法書士会からお声をかけていただき、「ABL」の研修の講師をし
てきました。
 皆さん「ABL」ってご存じですか?「ADR(裁判外紛争解決」」ではありませ
んよ。
「Asset Based Lending」の頭文字をとったもので、直訳すると、
「資産を基にした貸出」ということになるんですが、経産省あたりの定義付けですと
「企業の価値そのものに着目し、事業に基づく様々な資産の価値を把握しての貸出」
なんて言われています。不動産担保融資に代り、動産(在庫等)や債権(売掛等)を
担保(譲渡担保)にしての融資という捉え方をされている方もいますが、在庫と売掛
を把握するということは、まさしく事業を担保にとるというで、私としては「LBO
(レバレッジド・バイアウト)の考え方に近いかなと思っています。
 新しい取り組み(実は古くからありますが・・・)なので、諸々問題はあると思い
ますが、個人的には、とりあえずは、チャレンジ&ポジティブなスタンスでと思って
います。
 ところで、地方に行くと、大酒を飲んでしまいます(東京でもという話しはありま
すが・・・)。島根でも結局3軒、午前1時までやってしまいました。遅くまで、そ
して長時間にわたりお付き合いいただきました島根司法書士会の先生方、この場を借
りて、御礼申し上げます。

(おまけ)
 1時にホテルに帰って、締め切りに迫られた原稿を泣きながら書きました(富田さ
んみたい?失礼)。
 そんなわけで、朝は起きられず、でも折角だからということで出雲大社を15分で
詣でて、15分で出雲そば(大盛)をかっこみ、帰路に着きました。間違いなくご利
益はないでしょう。



2007.10.22【傘張り浪人】(金子登志雄)

 20日の土曜日は司法制度の確立に尽力したことで有名な江藤新平の出身地である
佐賀県の司法書士会で会社法の講演してまいりました(K先生はじめ、幹事のみなさ
ん、たいへんお世話になりありがとうございました)。
 講演には、虚実皮膜勝負で覆面をかぶって登場する予定でしたが、私の鼻の下の長
さに合う有田焼の覆面はないとのことでしたので、仕方なく素顔での講演でした。
 もっとも、事務所の封筒さえ作っておらず、「茶封筒司法書士」を標榜しているマ
イペース人間の私には虚実皮膜勝負など、もともと無理な話です。
 昔から、あこがれの職業は「傘張り浪人」でした。長屋に住んで、どこにも仕官せ
ず、自由気ままで、傘張りの仕事がないときは、やむをえず道場破りか、寺子屋で代
理講師・・・、こういう気ままな自由人が私にあっています。
 こんな妄想をいえるのも健康だからですが、どうしても傘張り浪人の域に達しえな
いのがウエスト周りです。出腹浪人なんぞ、ありえないのに・・・。



2007.10.19【虚実皮膜勝負】(金子登志雄)

 なるほど。「真剣勝負だけなら誰でもできる」というのは、そのとおりですね。
プロレスは、みせるスポーツをも含んだ芸術ということですね。
 ランクをつけてみました。程度の低い順です。  
 1.竹刀勝負・・・これではプロといえない。
 2.真剣勝負・・・これぞプロ。ESGの諸君、真剣勝負で仕事してますか。
 3.虚実皮膜勝負・・・これぞプロ中のプロ。
 反省しています。これまで私は2の段階でした。これからはプロの中のプロを目指
し、講演のときは、覆面をかぶったり、派手な衣装でミュージック付で登場します。
お客への請求書は豪華サイン付にします。



2007.10.18【虚実皮膜の芸術】(富田太郎)

 亀田一家の反則行為は、「本当の反則行為」だから問題になったのでしょうね。
「パフォーマンスとしての反則」だったら、その後の展開が異なったでしょう。
 ところで、プロレスですが、ショー的要素があるからこそ真剣勝負より難しい側面
があります。街の酔っ払い同士の喧嘩も真剣勝負。極端な話、誰でもできます。
 かといって、パフォーマンスだけでは厭きられます。「虚と真」を織り交ぜながら、
ギリギリのところを演じるのがプロレスです。まさに虚実皮膜の世界です。  
 近松門左衛門は「虚実皮膜論」という芸術論を持ち、芸の真髄は「虚と真」との皮
膜 にあると唱えましたが、これに通じる部分がありますね。
 それに・・・、あっ・・・誰も興味がない・・・ですね。失礼致しました・・・(汗)。



2007.10.17【スポーツとショー】(金子登志雄)

 ふだんは全くスポーツに関心がない人でも、WBCフライ級タイトルマッチでの亀
田一家の反則行為については、関心をそそられるようです。私も、テレビ観戦すらし
ていませんが、その勝敗結果には関心をもっていました。
 野次馬の立場から言うと、純スポーツにショーマンシップを持ち込み、自らヒール
役(悪役)を演じるなど、亀田一家がボクシングへの興味を呼び込んだ功績は大きい
のですが、場外でのショーあるいは派手なパーフォーマンスを神聖なる本番に持ち込
んでしまったのは最悪でした。それも世界戦ですからね。対するチャンピオンの内藤
選手は沈着冷静、最後まで実に立派でした。
 この点で、プロレスはスポーツというよりショーですかね。これ以上言うと、わが
ESG のプロレスオタクから何か言われそうなので、やめておきましょう。



2007.10.16【従業員に株を持たせる理由】(金子登志雄)

 昔、昔、先輩に誘われて一緒に会社を作りました。一緒にといっても、私の立場は
実質従業員です。しかし、先輩が1000万円を出資し、「君も共同経営者だ。株を
持つべきだ」といわれ、毎月、給与から数万円を天引きされ、先輩の持株を買わされ
ました。先輩としては、私にやる気を起こさせようと思ったのでしょうが、私として
は、「この会社で一緒に働く限りは、お前もカネを出せ」といわれたようなものです。
 株というのは、その会社が高率配当しているとか、数年後の上場がみえるほど成長
中だという場合でないと、少しくらい持っても何の意味もありません。幸い、退職時
に引き取ってもらえましたが、もし、放置されたら、手の打ちようがありませんでし
た。先輩社長にも、会社にも、法律上の引き取り義務がないからです。
 さて、最近、従業員にやる気を起こさせるため株を持たせたいが、退職したときに
は会社が引き取れるように種類株式にしたい・・・という相談を司法書士や税理士経
由で受けることが増えました。退職後も元従業員に株を持たれると面倒だという理由
です。
 しかし、社長さん、配当もしていない、将来上場も予定していないという状況では、
退職時に株を引き取ってほしいのは従業員のほうですよ。ちゃんと、従業員が退職時
に株を引き取れるように、よい会社にしてくださいね。



2007.10.15【債務超過と自己責任】(金子登志雄)

 未公開の技術系ベンチャー企業は、債務超過であることがほとんどです。債務超過
でないと、ベンチャーといってはいけないような気にもなってしまいます。
 つい先日、受託したベンチャー企業の増資は1株あたり10万円を超えていました。
めずらしいことではありません。将来性があれば、ベンチャーキャピタルは15万で
も20万円でも喜んで出資します。
 ところが、こと法律の世界では、長い間、「債務超過会社を合併できない」「債務
超過事業を会社分割できない」などと事業の将来性よりも、現状の財務状況を重視す
る傾向がありました。銀行と同様に質屋の発想をしてきたわけです。
 これに対して会社法は、当事者が合併したいなら好きにさせればよいという立場で
す。債権者の立場よりも株主の意向を重視するようになりました。
 会社法は定款自治を重視し自己責任原則を強化したといいますが、債権者にとって
も自己責任ですね。あんな会社に貸したお前が悪い、見る目がなかった・・・。
 これも自由主義の原理ですね。



2007.10.12
【定款選任の代表取締役の就任承諾書】(金子登志雄)

 取締役会非設置会社の設立定款あるいは既存株式会社が取締役会を廃止する際の定
款に「代表取締役は取締役の互選による」と定めながら、定款の附則で「代表取締役
をAにする」と定めることができます。
 問題は、このAに取締役としての就任承諾以外に、代表取締役としての就任承諾が
必要かです。互選で選任された場合には必要ですが、定款で選任された場合には不要
だというのが伝統的な解釈です。
 しかし、元法務省民事局商事課におられた松井信憲氏の「商業登記ハンドブック」
98頁に、「会社の意思としては基本的に互選代表制を採用していること、従来の実
務では、設立時代表取締役を成立後の代表取締役と区別しておらず、このような場合
は互選代表制とみたものと考えられること等から、少なくとも、会社成立後に代表取
締役の地位と取締役の地位とが分化している場合には、設立時代表取締役の就任承諾
を別途要すると考えるのが穏当であるように思われる」とあることを根拠に、一部の
司法書士の間で代表取締役としての就任承諾書を登記申請の際に添付しないといけな
いのかという不安が生じているようです。
 しかし、これは「穏当であるように思われる」とあるとおり、松井氏の個人的意見
であり、法務当局の確定した意見ではありません。また、定款内容に互選規定があっ
ても、あえて定款の附則で代表取締役を定めたわけですから、会社の意思としては、
「定款本文にもかかわらず最初の代表取締役は定款で選任する」と解釈するのが穏当
ではないでしょうか。私は、従来どおりの運用に賛成です。もちろん、就任後は定款
の本文に従い互選代表制の規律に従います。


2007.10.11【事業統合】(金子登志雄)

 最近やたらと上場会社同士の事業統合の報道が目に付きます。有名なのは、デパー
トの伊勢丹と三越の事業統合でした。
 事業統合といっても、いきなりは合併しません。給与体系、就業規則、社風その他
の相違がありますから、とりあえずは共同持株会社を設立し、兄弟関係になり、交際
を深めます。 
 持株会社といっても、株式を保有するだけでよいとはいえず、子会社の管理のため
の人員やグループ全体のIR要員等が必要ですから、実質は、子会社管理「事業会社
」といえます。にもかかわらず、配当収入以外に収益源がないのは業務に支障が生じ
ますから、いずれは合併したり、事業持株会社に移行する可能性も高いことでしょう。
 逆に、自ら事業の全部を分社し持株会社になる企業もあったりで、グループ経営も、
固定したものといえず、企業の成長や時代とともに変化し、面白いものです。


2007.10.10【合併公告の任意記載事項】(金子登志雄)

 土曜日は京都で組織再編の講演をしてまいりました(幹事のみなさん、たいへんお
世話になりました)。
 その際、合併と同時に商号変更したりする場合に、合併公告にもその旨を明記すべ
きかどうかとという質問をいただきました。
 合併公告というのは、債権者に「この合併に異議がないか」と問うことであって、
この商号変更に異議がないかまでを含むものではありませんから、公告に掲載しても
しなくても自由です。いわゆる任意的記載事項です。
 そこで思ったのですが、今度、合併公告を掲載するときは、顧客にお願いし、「な
お、この合併手続はESG法務研究会所属の司法書士にお願いしております」と公告
文に掲載してもらおうかなということです。
 このせいで、「いつも自慢ばかりのESGを外せ」と、異議がでたりして・・・。
「人間もっと、謙虚にならなければ」ね。



2007.10.09【謙虚さとは・・・】(富田太郎)

 先日、顧問先の某社長に連れられて、『六本木ヒルズ倶楽部』に行ってきました。  
 日頃、原稿に追われ、「コンビニ弁当生活」の私にとって、料理は美味しく、夜景
を見ながらの美酒は、口の中が輝くようでした。
 また、某社長との会話も楽しく、久々にリラックスした気分になりました。 
 いつも思うことなのですが、ある分野で成功した方は、「決して自慢しない。人を
見下した態度をとらない」ということです。  
 これは、屈折した劣等感もなく、自分自身に自信があるからではないでしょうか?
 我々、司法書士のような先生稼業は、まわりから「先生」と言われ、つい、勘違い
をして、人に対して横柄な態度をとりがちです。この点は肝に銘じる必要があります
ね。
★後日談★
 昨日、いつも自慢ばかりで、私の嫌いな某司法書士と偶然会いました。  
某氏 「富田さん  いつも どこで飲んでいるの?」  
私  「そうね・・・。『六本木ヒルズ倶楽部』なんかで、時々飲んでいるね。」
某氏 「えっ!そうなんだぁ・・・・。単行本とか出版していると、やっぱり・・・
・・」

 たった2回しか行ったことないけれど、心は常連です(笑い)。あぁ〜 まだまだ
修行がたりません・・・人間もっと、謙虚にならなければ・・・・・・(反省) 。


2007.10.05【三角合併その2】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、さて、CJHは日興株主に交付する大量の親会社株式をどうや
って調達するのでしょうか。金額にすると5300億円相当だそうです。そんな資金がC
JHに存在するのでしょうか。
 この疑問につきあたり、出た結論は、親子間相互割当による募集株式の発行でした。
 まず、CJHは親会社を割当先として5300億円の増資をし、親会社から資金を調達
する。次に、親会社は子会社のCJHを割当先として5300億円分の新株を発行し、資
金を回収する。これで、CJHは、5300億円分の親会社株式を取得できます。
 子会社を割当先として新株を発行できるのかという疑問をお持ちの方も多いでしょ
うが、会社法800条に、三角合併のためなら親会社株式を「取得することができる」
とあります。
 いままで、この「取得」につき、新株の割当を含むということまで考えませんでし
たが、当然に含むと考えざるをえないでしょう。含まないとしたら、親会社がダミー
に割り当てて、CJHはそのダミーから買い取ればよい訳ですから。
 以上は日本法によった場合の話です。米国流の方法が別にあるのかもしれません。



2007.10.04【三角合併】(金子登志雄)
 
 日経新聞のトップに、日興コーディアルグループが三角合併(実際は株式交換)す
る旨が掲載され、株価もストップ高でした。投資家に好感されたようです。
 三角合併とは、甲が乙を合併するときに、甲の株式ではなく、甲の親会社の株式を
交付することです。これで、乙の株主は、甲の親会社の株主になります。
 日興コーディアルは、この乙であり、甲は、シティーグループ・ジャパン・ホール
ディングス(CJH)という日本の会社です。日興の親会社ですが、株式交換で日興
を100%子会社にするため、日興と株式交換し、その際に、残りの株式を取得する
対価として、CJHの親会社である米国のシティグループの株式を保有しておき、そ
れを交付するという仕組みです。これでCJHは、シティグループの100%子会社
のままでいられます。
 日興の株主は、米国の会社の株主になりますが、いずれシティーグループも日本で
上場するようですから、株式の転売には面倒さはないでしょう。
 それにしても、コムスンといい、日興といい、わがESG法務研究会に一言の相談
もないとは残念なことです。同志諸君、広報活動が足りないよ。

https://www.release.tdnet.info/inbs/2a020ab0_20071002.pdf



2007.10.03【歴史に残る多数社吸収分割】(金子登志雄)

 9月28日の日経新聞でのコムスンの吸収分割公告には驚きました。1頁では足り
ない数の多数社吸収分割だったからです。同日の官報公告で数えましたところ、公告
数は52個でした。その日の電子公告にも45個の公告が掲載されていました(コム
スンでの検索結果です)。 http://e-koukoku.moj.go.jp/
 各県ごとに事業を分割したため、大量の数になったわけですが、中身をみますと許
認可事業のため先に受け皿会社を設立しておくなどの工夫のあとが感じられ ます。
 司法書士の立場からは、こういう歴史に残る手続をぜひとも企画し受託してみたい
ものですが、そのためには、オレだったら、こうするのにというアイデアをが出せね
ばなりません。日々研究です。
 え? 研究しても、仕事が来なかったらどうするのかですって・・・。
さぁ、どうしましょう。



2007.10.02 【めざせ!脱「ワーキング・プア」生活】(富田太郎)

 先日、私が社外監査役を勤めるVCの「役員」の別荘(千葉県富津市)で、パーテ
ィーがありました。
 素晴らしい別荘でした。
 窓から、海が一望でき、長々と続く水平線・・・、行き交う、漁船・ヨット・観光
船・・・。 眺めているだけで、心が丸くなります。
 平日は事務所で仕事、ウィークエンドは、こんな別荘で優雅に原稿を書けたら最高
だと思いました。
 私も、めざせ!脱「ワーキング・プア」生活です!こんな別荘で優雅に原稿を書き
たい♪そのためには、今以上に、仕事もやり、土日返上で、ガンガン単行本を書き、
そして ・・・・。
 あぁ・・・、これでは「ワーキング・プア」生活のままですね・・(涙)。
 
 PS   現在、土日返上で「楽学 商業登記法」(住宅新報社)の執筆中です。読者
の皆さん、しばらくお待ち(そっとしておいて)ください。

(金子)
 「楽学 商業登記法」が出版されるまでは、別名「苦学 商業登記法」といわれる
「これが新増減資だ種類株式だ」をご参照ください。受験本とは1味違いますよ。



2007.10.01【金融商品取引法の施行】(金子登志雄)

 まだまだ先だと思っていた金融商品取引法(旧・証券取引法)が昨日付で施行され
ました。略称は、金取法というと品がないのか(?)、金商法というようです。
 従来の慣例ですと、10月1日とか4月1日が施行日なのですが、なぜ月末の日曜日
を施行日にしたのかは興味のあるところですが不明です。
 金商法は投資家保護の法律であり、非上場会社相手の司法書士には、あまり縁があ
りませんが、各種の届出などに影響してくるので、業務に関係する部分はチェックし
ておかねばなりません。
 合併・企業再編がらみでは、移動する純資産が1億円を超えても有価証券通知書の
提出が不要になったようです。金融庁から4月中旬に、企業内容等の開示に関する内
閣府令改正案(第6条の廃止を含む)が出されていました。もっと早く出してくれれ
ば、拙著(「組織再編の手続」)の校正に間に合ったのですが、金商法の施行日が閣
議決定されたのも拙著出版後の7月31日ですから、こればかりは仕方ありません。    http://www.fsa.go.jp/policy/kinyusyohin/pamphlet.pdf
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20070731-7/01.html    
↑この【別紙9−2】は次です。   
http://www.fsa.go.jp/news/18/syouken/20070413-3/09-2.pdf


2007.09.28【新著の題名】(金子登志雄)

 現在、校正段階にある「会社計算規則」を解説した新著の題名につき、「これが計
算規則だ・〇〇〇〇だ」とする予定ですが、公認会計士の共著者や仲間に「攻略解説
だ」としたいが、それがボツだとした場合に、何がいいかと聞いてみましたら、さま
ざまな意見が飛び交いました。
 計算規則は専門家のはずの会計士自身も理解困難な難物ですが、インパクトのある
題名を重視する方は、「迷路脱出だ」「迷宮脱出だ」「解明新書だ」・・・などを主
張し、オーソドックス派は「簡明解説だ」「実用解説だ」「本格解説だ」「徹底解明
だ」・・・などを主張してきました。「日本語訳だ」という皮肉な題名も案に浮かび
ましたが、もちろん、これはボツです。
 私個人は、難攻不落の計算規則(の城)を攻め落としたぞという意味で、「攻略解
説だ」が好みでしたが、出版社との協議で、最終的には上記のいずれも採用せず、「
安定感」を求めるご時勢にあわせて、従来の著書同様に、新著の内容から、4文字を
選択することになりそうです。小泉・安部政権時代でしたら、「これが計算規則だ・
解読 劇場だ」も面白いのでしょうが、福田政権時代ですから、安定重視です。
 10月下旬あるいは11月初旬には出版できると思います。


2007.09.27【PBR(株価純資産倍率)】(金子登志雄)

 昨日は、私の関与するジャスダック上場会社の定時株主総会でした。1年に1度の大
イベントですが、無事に終了し、ほっとしています。
 上場会社がこの定時株主総会に費やすエネルギーは、相当なものがあります。招集
通知のチェックだけでも大勢で何度もチェックします(書籍の校正の数十倍の労力で
す)。
 そういうことを知らなかった若い頃は、株式投資先から招集通知がくると、議案の
全部に×をつけて、「株価を上げよ」などというコメントをつけて送り返していたも
のですが、いざ自分が会社側に立つと、株価を会社が動かせるわけでもなく、ご担当
者の苦労も省みず、申し訳ないことをしたなと反省しております。
 なお、当社を含め、新興市場の企業のほとんどが株価純資産倍率(PBR)につき、
1を割っています。これは1株の解散価値より市場価格が低いということですから、
全株を買収して解散すると大儲けができることになります(実際には買占め中に株価
が急騰しますので無理ですが)。



2007.09.26【優秀な後輩】(金子登志雄)

 やっと、福田内閣の組閣が終わり、安部辞任劇も幕を閉じたようです。新防衛相に
なった石破茂氏は大学のゼミの後輩ですから(面識はありません)、たいへんな時期
に重責を担ったものだと気になります。
 年金問題で名を売った民主党の長妻昭氏も同じゼミですが、お2人に限らず、後輩
には優秀な方が多く、先輩としては肩身が狭く、OB会への足も遠のきます。
 私の学生時代は、学生運動が活発な時期で、かつマージャンの全盛期でしたので、
大学にはほとんど行けませんでした。私としては、行く気が十分にあったのですが、
なぜか、駅と大学の間に雀荘があるので、大学まで辿り着けなかったわけです。
 あの頃、マージャンが流行っていなかったら、私も町会議員くらいにはなれたのに
・・・。



2007.09.25【ファン心理】(金子登志雄)

 連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。私は用事があったので、墓参りにも出か
けず、家にいました。ふだんはテレビをみないのですが、家族がみているプロ野球を
一緒にみたりしました。
 セ・リーグでは巨人、中日、阪神が三つ巴で優勝を争っていますので、ファンの方
は、さぞ、やきもきしていらっしゃることでしょう。
 昔、熱烈な阪神ファンの後輩に聞いてみました。「もし、いまの阪神ナインが全部
巨人にトレードされ、逆に巨人ナイン全部が阪神にトレードされた場合、君はどちら
を応援するのですか」。答えは、迷わず「もちろん、阪神です」というものでした。
この方は、ナインが誰であろうと、チームを応援しているのでしょう。関西居住の方
でしたので、地元チームを応援するという気持ちだったのかもしれません。
 今度、お会いしたら、聞いてみますね。「阪神が東京に移り、巨人が関西に移った
ら、君はどちらを応援するのですか」。



2007.09.21【甲・乙・丙の合併】(金子登志雄)

 なぜか、吸収合併では存続会社を甲、消滅会社を乙で表すことが昔からの流儀です。
3社合併なら、甲、乙、丙です。では、10社だったら?
 甲、乙、丙、丁、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸
(き)と正確にいえる方は少ないでしょう。私も、忘れることが多いので、こういう
多数社合併の場合は、A、B、C、D、E、・・・とアルファベットを使ってしまい
ます。
 しかし、ときには50社合併などという事案もあります。こういうときは、窮余の策
で、甲、乙1、乙2、乙3・・・とする方が多いようです。
 先般、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、子、丑・・・という珍しい表記
の事例を目にし、これなら22社まで大丈夫だと思いました。
 α(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)・・・うーん、次がわからない。今
度は、日本流に、い、ろ、は、に、ほ、へ、と・・・にいたしましょう。



2007.09.20【合同会社の設立】(金子登志雄)

 たまには登記のことも書きましょう。ただいま合同会社の設立を担当しています。
実際に経験するのははじめてです。結構面白いですね。株式会社の場合の「登記の事
由」は「年月日設立手続の終了」なのに、合同会社は年月日が不要です(会社法911条
参照)。また、代表社員を定款に記載しても、その就任承諾書が不要です。社員が業
務執行を担当するからでしょう(所有と経営が分離していない)。
 あれ?と思ったのは、登記の通達に添付書類として「出資に係る払込み及び給付が
あったことを証する書面(商登法第117条)具体的には、金銭の払込みについては、株
式会社の発起設立の場合に添付すべき払込みがあったことを証する書面等が、・・・
これに当たる」とあったことです。
 株式会社の発起設立と相違し銀行など関与するわけがないはずだと思って条文を確
認しましたら、案の定、株式会社に関する会社法34条には、その2項で銀行等が関係す
る旨を規定していますが、合同会社に関する578条にはそのような規定があ りません。
 通達は「書面【等】」でぼかしていますが、誤解を招く説明ですね。誤解した内容
で出版している例があることを某会員から教わりましたし、某会友からの情報だと勘
違いしている法務局もたまにあるようです。



2007.09.19【偉大なる祖父】(金子登志雄)

 今週の週刊誌は安部首相辞任特集のようですが、某週刊誌を購入してみたら、安部
首相の祖父である岸信介元首相は「妖怪」といわれるほど胆力があったとか、麻生候
補の祖父である吉田茂元首相はどうのこうのと、あたかもおじいさま特集のようでし
た。
 福田候補の父親は誰でも知っていますが祖父は有名人でなかったのか、おじいさま
特集では福田候補の完敗でした。麻生候補の義父である鈴木善幸元首相も週刊誌では
影が薄い存在でした。
 しかし、なぜ父親でなくて祖父を問題にするのでしょうか。きっと祖父の活躍した
時代が激動の時代であり、歴史上の人物になっているからでしょう。麻生候補や福田
候補の子孫の時代にも、鈴木善幸元首相や福田赳夫元首相は影が薄いとしたら、平和
な時代に活躍したばかりにお気の毒というしかありません。



2007.09.18【安定感】(金子登志雄)

 どうも次期自民党総裁(総理大臣候補)は福田康夫氏に決まりそうです。国民を巻
き込んだ小泉、安部と派手好み政権が続き、自民党もすっかり疲弊し、お父さんはや
はり落ち着きのある人がよいといったところでしょうか。「生まれはよいが育ちは悪
い」と自称する麻生氏のほうが野次馬としては面白そうですが、振り子の論理からす
ると、今度は安定感のある福田氏の順番でしょうか。
 福田氏は71歳のようです。昨日は敬老の日でしたが、敬老をお祝いする気になれな
いほど、実にお若い。ああいうふうに歳をとりたいものですが、政治家は人を食って
いるから若いのかもしれませんね。



2007.09.14【ストレスの発散】(金子登志雄)

 安部首相はストレス過多で機能性胃腸症とか。つい朝青龍を思い出してしまいまし
たが、トップに立つ者のストレスは、凡人にはかりしれないものがあるのでしょう。
 社長業も同じです。自宅まで担保に入れていますから会社の業績が悪化すれば夜も
眠れず夜逃げを考える日々でしょうし、儲かっているときは税金で頭がいっぱい・・
・常時ストレスで、切り替えが上手でないと、機能性胃腸症になってしまいます。
 神経が図太いかどうかよりも、この切り替えが上手かどうかが大きく左右するよう
です。倒産寸前の社長と一緒にカラオケに行けば、上手にストレスを発散している姿
をみられます。小泉前首相もオペラ鑑賞などでストレスを発散していました。
 安部首相はストレス発散が下手だったのでしょう。私もそうです。だから私はスト
レスに近づかないようにしています。雑誌の連載・・・冗談じゃない。締切りに追わ
れるワーキングプアになるものか。


2007.09.13【唐突の辞任】(金子登志雄)

 
昨日は驚きました。内閣改造、所信表明演説から日がないのに突然の安部首相の
辞意表明・・・。これでは批判されても仕方ないでしょう。
 小泉という創業ワンマン社長からバトンタッチされた二代目社長として、何かと先
代と比較され、独自性も出しにくく、気の毒な面はありましたが、最悪のタイミング
の辞任表明でした。
 次の総理はどなたになるのかわかりませんが、企業なら先代の復帰という局面でし
ょうか。しかし、ねじれ現象の国会運営は、小泉型強権運営とあいません。かつては
社会党まで取り込んだ自民党の腹芸は、小沢民主党には通じないでしょうし、今後ど
ういうことになる やら・・・。



2007.09.12【電子申請】(金子登志雄)

 司法書士のメーリングリスト等で現在510箇所ある商業登記管轄庁を4年後には80
箇所にするという報道が話題になっています。1県1庁といったところでしょうか。
長所としては、複雑で専門的になった商業登記につき専門的サービスが期待できると
いうことですが、短所としては、地方の便宜が損なわれるということでしょうか。
 登記申請は電子申請や郵送申請にすれば影響が少ないとはいえ、法務局が遠方では
気楽に事前相談ができませんし、申請にミスがあった場合に、わざわざ遠方まで出か
けざるをえないということも少なくないでしょう。司法書士自身の能力も高めなけれ
ばなりません。
 電子申請でかなり前から困っているのは外字です。新株予約権の行使条件等は、
@・・・A・・・B・・・となっていることが多いのですが、この@ABも外字扱い
のため、そのままではエラーとなってしまい申請ができません。かといって外字の作
り方も面倒そうなので、私は新株予約権の登記だけは電子申請したことがありません。
 どこか余白に、「行使条件の1、2、3はマル1、マル2、マル3・・・でお願い
します」と書けばOKにしてくれればいいのですが・・・・・。


2007.09.11【一般社団法人という名称】(金子登志雄)

 なるほど。社団型の中間法人は「一般社団法人」ですか。社団(人の集合体)には
公益社団と営利社団(会社のこと)のほかに、公益も営利も目的としない中間型があ
るとされていましたが、今後は一般社団法人、公益社団法人、会社に大分類されるわ
けですね。
 しかし、なぜ「一般」と名づけたのでしょうか。「『普通』社団法人」あるいは
「『非公益』社団法人」と名づけなかった理由を知りたいですね。単なる気まぐれで
しょうか。
 会社法のときも、譲渡制限株式、取得請求権「付」株式、取得条項「付」株式、全
部取得条項「付」種類株式、議決権制限株式(115条)などという名称を前にして、
この「付」をつける場合とつけない場合に何か深い意味があるのかと真剣に考えまし
たが、蓋を開けてみれば何の意味もありませんでした。それなら、混乱回避のため譲
渡制限「付」株式、議決権制限「付」株式という名称にして統一してほしかったので
すが、立法者は、私のようなこだわり人間がいることを想定していないようです。



2007.09.10【某月某日、某ホテルにて】(富田太郎)

 朝から「某中間法人」の臨時社員総会(出席者400名ほど)に、顧問税理士、顧問
弁護士と一緒に出席していました(質問が出た場合に備えて待機)。

 法人の理事の方々から、「先生方、総会が紛糾した場合、頼みますよ!」とのこと。
 なにやら「時代劇の用心棒」みたいな気分でした♪

 が、総会は紛糾せず、私は、「昼食の弁当を食べ、ただ、ひたすらコーヒーを飲み、
デザートを食べただけ」の一日でした。


 ところで、「有限責任中間法人」は、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法
律」(平成18年法律第48号。平成2012月1日施行)が、施行されると、何ら手続き
を要せずに、「「一般社団法人」になります。
 なお、施行日の属する事業年度が終了した後、最初に招集される定時社員総会の終
結の時までに、その名称に「一般社団法人」という文字を使用する旨の定款変更を行
なわなければなりません(その旨の登記申請も必要です)。

 ちなみに、一般社団法人のうち、公益性のある法人は所定の手続きを行い、認定さ
れると「公益社団法人」となり、税制上の優遇措置をうけることになります。


 次回の定時社員総会(平成202月開催予定)においては、まだ法施行されていな
いので、私の出番も少なく、ただひたすら、飲み食いしているだけになりそうです・
・・(汗)。



2007.09.07【総会議事録と監査役】(金子登志雄)

 会社法施行後は、株主総会議事録につき、出席役員名を列挙し、最後に議事録作成
者が記名すればよいことになっています(施行規則72条)。
 ところが、いまだに商法時代と同様に、最後に出席取締役が記名押印する形式での
作成が多数です。監査役は記名押印しませんから、この商法方式だと監査役が出席し
ていたのかどうか不明となります。
 通常の議案なら問題が生じませんが、定時株主総会等で監査役の再任議案が含まれ
ていたときに、「被選任者は直ちにその就任を承諾した」と議事録に記載されていて
も、また、「計算書類を綿密に調査した旨を監査役が議場に報告した」とあっても、
登記実務上は、役員として出席したことが明瞭な記載ではないという扱いがなされる
ことが多いようです。
 要は、商法方式の議事録でも、出席役員の名前をどこかに列挙しておくのが無難と
いうことです。


2007.09.06【下戸は出世しない?】(金子登志雄)

 仕事がら企業の幹部にお会いすることが少なくありません。飲食に誘われることも
あります。そこでいつも感心することは、皆さん、アルコールにめっぽう強い、胃袋
も丈夫だということです。
 還暦に近い方でも、肉類でも何でも、平気で平らげてしまいます。ビジネスでは接
待の機会も多いでしょうから、そうでないと出世争いにも脱落してしまうのでしょう。
これは高級官僚にも いえそうです。
 私は下戸に近いですから、信託銀行を辞めずにそのまま勤めていたとしても、窓際
以外に居場所がなかったかもしれません。
 みなさんの息子さんが下戸だったら、司法書士を目指すようお伝えください。自由
業は下戸でも務まります。



2007.09.05【代書屋】(金子登志雄)

 司法書士は概して「代書屋」といわれるのを嫌がりますが、私は嫌いではありませ
ん。昔は、訴訟当事者の社長に代わり、裁判所への陳述書をよく代書したものですが、
「そうなんです。私のいいたかったことはこういうことです」といわれると、してや
ったりとうれしくなったものです。
 私にとって「代書」は「代文」です。単に書面を作ることではなく、顧客から「わ
が意を得たり」といわれる文章を作ることです。弁護士が代「言」業なら、こちらは
代「文」業と思い、文章では負けないことを意識していました。
 学校の国語は苦手でしたが、「書く」ということは、創造性があって楽しいもので
す。



2007.09.04【大臣辞任】(金子登志雄)

 また大臣が辞任しました。こんなに簡単に辞めてよいのなら、私も大臣になりたい
ですね。法務大臣がいいですね。大臣室から、「君、こんどの省令、もう少しわかり
やすくできないの」とか、「君、あの登記先例おかしいと思わない」などと、電話を
しまくります。事前準備させてくれれば1日だけの大臣で十分です。
 昔、名刺交換した方の肩書に「元衆議院議員」とありました。私も「元法務大臣・
司法書士」という名刺を作り、有効活用(?)します(胡散臭いですね)。
 身体検査には自信があります。お金には無縁ですし、下半身のスキャンダルは本人
の意欲に反して皆無です。先日お会いした若い女性からは、「金子さんは私の父より
〇歳上」といわれてしまいました。
 冗談はさておき、辞任対策として、不祥事で辞任した方からは、高額の罰金をとっ
て福祉団体に寄付してほしいですね。さすれば、国民の怒りも和らぐのですが。



2007.09.03【ワーカホリック】(金子登志雄)

 先週は計算規則の原稿を出版社に渡しました。出版社には「これで毎日の書く楽し
みがなくなってしまった。どうしてくれるんだ」と一言付け加えました。結構、書く
のは好きなほうです。のんびり完成させるつもりでしたが、秋の出版にするには、8
月中に原稿を渡す必要があったからです。これで当分の間、深夜の書き物という楽し
みがなくなってしまいました。
 気が緩んだせいもあり風邪を引いてしまいました。気の緩みを直すには、また何か
に挑戦しなければなりませんが、ネタが限られてきました。
 私、ワーカホリック(仕事中毒)でしょうか。書き物は仕事だという意識がないの
で(収入も時間給にしたらパート並みですし)、自覚症状はありません。アル中は自
覚症状がないようですから、相当重症のワーカホリックでしょうか。
 まぁ、ワーキングプアよりましですね。こちらから主体的に仕事を追いかけている
のですから。目くそは鼻くそよりましだ。



2007.08.31【お小遣いと新株予約権の行使期間】(金子登志雄)

 ある家では、子供の小遣いはお父さんが決めることになっています。お父さんは子
供のお小遣いを1日あたり200円と決めました。しかし、お小遣いを渡す役割のお母さ
んは、まだ子供が小さいからと思い、1日100円しか渡しません。
 このお母さんの決定は家訓に反するでしょうか。
 お父さんの決定が200円を1円足りとも欠いてはならないというのなら、お母さんの
決定は家訓違反でしょうが、お父さんの決定は、200円を超えてはいけないという意味
でしょうから、お母さんの決定を問題視するほうがおかしいでしょう。
 法務省見解の「株主総会の決議によって新株予約権の行使期間を定めるに当たって
は、取締役会の裁量を入れない客観的な期間を定める必要がある」も、総会で決めた
範囲を超えて取締役会の裁量を入れてはならないという意味であって、総会の決定の
枠内なら問題なしと考えたいものです。
 取締役報酬だって、年1000万円と決めたら、取締役会で800万円にしてはいけないわ
けでもないのに…。



2007.08.30【ストックオプションの行使期間】(金子登志雄)

 7月20日から7月27日までに本徒然でキャンペーンをはったストックオプショ
ンの行使期間につき、法務省の見解が直近の「登記情報」550号に掲載されました。
 残念ながら、次の内容でした。
-------------------------------------------------------------------
*株主総会の決議によって新株予約権の行使期間を定めるに当たっては、★取締役会
 の裁量を入れない客観的な期間★を定める必要がある。
*株主総会の決議によって割当日の決定を取締役会に委任することは可能だから、
 「発行日から5年間」、「発行日から2年を経過した日を始期としてその後5年間」
などは可能。
-------------------------------------------------------------------
 以上の基準からすると、「招集通知・議案の記載事例」(平成19年版)別冊商事法
務編集部編に掲載されている「割当日から7年以内の範囲で、別途取締役会において
定める」も「割当日の翌日から5年以内の期間を新株予約権発行に係る取締役会決議
時において定める」も、本徒然に記載したコロムビアミュージックエンターテイメン
ト、野村ホールディングス、日本ハムも不可となります(たぶん、登記は終わってい
るでしょうけど)。
 しかし、いまさら総会をやり直すわけにもいきませんし、昨日までよかったことが
突然にだめということになると、現場の登記官は板ばさみで困ることでしょう。役員
報酬の決定などは取締役会に委任することを認めておきながら、こういう些細なこと
は委任できないという解釈も一般の方が納得してくれるでしょうか。実に困りました。



2007.08.29【雷鳴と蝋燭】(金子登志雄)

 昨夜の東京では、短時間でしたが、久々に懐かしい雷の音でした。ゴロゴロでなく、
バリバリ〜ンです。故郷(群馬県)の名産ですから、この音を聞くと、元気がでます。
 子供の頃は日常茶飯事の記憶があり、近くの電柱のトランスに落ち、停電となり蝋
燭を探したものですが、いま蝋燭の置いてある家庭はあるのでしょうか。
 蝋燭だけでなく、庭の桶の氷、屋根からのツララ、歩けば霜柱を踏み、雨が降れば
洗面器の用意・・・なんてのは、死語になりそうです。
 ちなみに、宇都宮で勤務していたことがありますが、栃木県では、雷のことを「ラ
イ様」ともいいます。隣県の群馬では通じません。
 そうそう、関東以外の皆様、年賀状等で「郡」馬県とは書かないでくださいね。



2007.08.28【全部取得条項付株式】(金子登志雄)

 表題の「全部取得条項付株式」という用語が私も所属するメーリングリストで話題
になりました。取得条項付株式(会社が強制的に株主から取得できる株式)には、種
類株式でない場合(会社法107条)と種類株式の場合(同108条)とがありますから、
「全部」とついたら、前者を意味するのではないかという議論です。
 実は、人騒がせなことに、これは種類株式である「全部取得条項付種類株式」を間
違って表現したものです。
 正しく「全部取得条項付種類株式」と表現できるかどうかで、その方が会社法に慣
れているかどうかを判別できます。



2007.08.27【株主資本変動額】(金子登志雄)

 先週は、税理士さん向けと司法書士向けの研修講師を担当しましたが、会社計算規
則の説明部分は思ったとおりむずかしいという反応が少なくありませんでした。
 それというのも、計算規則の難解用語が理解を妨げているためです。
 「吸収合併において、吸収型再編簿価株主資本額に対して株式のほかに吸収型再編
対価簿価として現金を交付したら、吸収型再編株主資本変動額はいくらになるか」と
いわれて、何をいわれているか即座に理解できる方は少ないでしょう。
 これを商法時代の用語に直しますと、「吸収合併において、消滅会社から簿価純資
産を受け入れて、株式のほかに合併交付金を交付したら、合併存続会社の資本金増加
限度額はいくらになるか」となります。
 会社法時代の用語を使い慣れるには、時間が必要です。


2007.08.24【出版社に缶詰】(富田太郎)

 なんだ、金子先生は、出版社に缶詰にされたことがないのですか。私は、自慢では
ありませんが、先生より先に経験しています。
 ただし、「ホテル」ではなく、風呂設備もないところでした。世間では「印刷所」
というようです。早い話が、単行本の締切りが間に合わなく、「印刷所」で原稿の校
正をさせられたわけです・・・(涙)。 (私の単行本のために)出版社の編集部全員
が来て、黙々と校正作業していましたので、「これから、本業の仕事があるので、私
はこれで失礼します・・・」 とも言えず(汗)、冷たい視線の中、缶詰になって作業
をさせられました・・・。
 「針の筵(むしろ)」でした。缶詰だけはこりごりです・・・(苦笑)。



2007.08.23【目指せウン10万部】(金子登志雄)

 富田さん、会社法をどうマンガにしたのか、みるのを楽しみにしています。マンガ
ならいつもより本が売れるかもしれませんね。
 10冊も著書があると、お互い1度でいいから、ウン十万部なんてのを経験してみ
たいものですね。流行作家並みに出版社にホテルに缶詰にされて、まだかまだかと督
促されてみたいものですが、数千部で上出来の専門書では無理でしょうね。
 しかし、昔(昭和40年代)、佐賀潜という作家(本業は弁護士でテレビにもよく
登場)が書いた「民法入門」や「刑法入門」(カッパブックス)は、ウン十万部行っ
たと思います。筆の力の差でしょうか、それとも知名度の差でしょうか。
 富田さんがマンガで来たのなら、他のメンバーは協力して「写真誌/会社法入門」
に挑戦しましょう。今日から鏡の前でポーズの練習をしておくように!
 
 初瀬さんの「ズバリ!司法書士」も、現役司法書士が写真入りで登場するのは、い
いアイデアでした。ぐっと親しみがわきます。



2007.08.22【働けど、働けど、我が暮らし楽にならず・・・・】(富田太郎)

 昨日のお知らせにありましたとおり、このたび、下記書籍を出版しました。   

  「マンガ はじめて司法書士 会社法」(住宅新報社)    
   http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31938681

 私にとって、10冊目の単行本(共著含む)になります。
 今でも、初めて単行本を出版したときのことを、おぼえています。うれしくて、夜
も眠れず、何度も、何度も、本の表紙を眺めていたことを・・・・。
 が・・・、今や、当初の初々しい思いはなく、出版社からの督促、逆鱗からの解放
感しかありません。
 いつも、何かに追い立てられているようです(締切りを守らない私が悪いのですが
・・)。     
 働けど、働けど、我が暮らし楽にならず・・・・(涙)。
 早く、楽しみながら執筆できる余裕が欲しいものです。


2007.08.21【印鑑証明の還付/マンガはじめて司法書士会社法】(金子登志雄)

 今日は会社の解散・清算人就任の登記を申請しました。お盆休暇開けで法務局も空
いていました。
 さて、代表取締役の交代のときは、新代表者の就任承諾書の印に個人の印鑑証明書
が必要ですが、清算会社の代表者には不要です。にもかかわらず、印鑑届けのほうで
印鑑証明書の添付が必要です。この関係を間違って、印鑑証明書を就任承諾書に添付
してしまう方が少なくないようです。
 また、この印鑑届用の印鑑証明書も、コピーを提出し、原本そのものを回収できま
すが、それが可能であることにつき意外に知られていないようです。古い先例で原本
還付できないというものがあるため、そう思い込んでいる方が多いわけです。今日も
無事に還付してまいりましたので、勘違い中の方も安心して還付してください。単な
る改印届けでも同じです。

※お知らせ 今度は、会員の富田太郎司法書士が
「マンガはじめて司法書士会社法」を上梓しました。
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=31938681


2007.08.20【執筆三昧/ズバリ!司法書士】(金子登志雄)

 お盆休暇はいかがでしたでしょうか。帰省なさったり、寝転んでテレビで高校野球
観戦などという方が多かったのではないでしょうか。
 わがESGのワーキングプア一族は、相変わらず事務所にでて、あれこれやっていた
ようですが、私は、ノートパソコンという文明の利器を活用し、土日を利用し帰省し
たり、自宅で 原稿書き三昧の生活でした。来客もないので、はかどりました。10月
には新著を出せると思います。今度は、会計士に助っ人を頼み、会社計算規則をター
ゲットにしました。
 会計士がずうずうしく非専門の会社法の本を出すのですから、司法書士が非専門の
会計の本を出しても許されるでしょう。

※お知らせ 会員の初瀬智彦司法書士が「ズバリ!司法書士」を上梓しました。 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4845005581.html



2007.08.10【自動販売機商法】(金子登志雄)

 来週からお盆休みの方が多いようです。サービス業の司法書士も、この時期にはお
休みという方も少なくありません。私は、自動販売機商法に徹していますので、停電
にならない限り休みません。自動販売機のように、24時間年中無休、お金を入れれば
すぐに要求したものがでてくる司法書士を目指しています。
 ワーキングプアのお仲間たちはどうしますか。聞いても無駄ですね。ひたすらプア
街道を前進してください。商業も不動産も何でもというコンビニエンス商法の会友の
〇〇先生たちはどうしますか。休むとコンビニエンスとはいえませんよ。
 さて、私は休みませんが、HP担当の事務局には休みをとらせます。この徒然も来
週いっぱい休ませていただきますので、ご了承ください。え、お前がHPを更新すれ
ばよいではないかですか。会社法務一筋の私に、そんなことができるわけがありませ
ん。



2007.08.09【無対価合併と資本金】(金子登志雄)

 A社の100%子会社としてBとCがあったとします。BがCを吸収合併する際に、株
式も発行せず資本金も増やさないのがここ数年の流行です。親会社からみれば、子会
社Bの価値が「B+C」になっただけで不利益もなく、債権者にも不利益がないためです。
 こういう合併を「無対価合併」といいますが、会社法になってから、一時、会計処
理に行き詰まりました。法務省令の計算規則が、株式を発行しない限り、合併会社Bで
は、その他資本剰余金さえ増やせない内容だったからです。しかし、いまは計算規則
も改正され、Cの資本金・資本準備金・その他資本剰余金の合計がBのその他資本剰余
金に加算され、Cの利益準備金・その他利益剰余金の合計がBのその他利益剰余金に加
算してよいとされました。 計算規則59条です。
 ここまではよいのですが、最近は、親会社が100%子会社を吸収合併する無対価
合併でも、これをしようとする会計事務所が増えているようです。これは間違いだと
思います。詳細は省略しますが、親子間の無対価は株式を発行しようにも発行できな
いための義務的無対価であり、兄弟会社の合併における任意的無対価とは相違します。
そもそも投資が継続しているという前提の規定である59条の制度趣旨に反します。
 会計事務所のみなさま!いまのところ、司法書士のほうが計算規則に強いようです
から、ぜひ司法書士にご相談ください。 


2007.08.08【参院正副議長候補】(金子登志雄)

 新聞報道によりますと、参議院の議長に民主党の江田五月氏、副議長に自民党の山
東昭子氏でほぼ決まりのようです。
 私の世代(団塊世代)には、社会党の右派といわれていた江田三郎さんの裁判官の
息子さんに、女優の山東昭子さんかという印象のほうが強いです。ネットで調べまし
たら、お二人とも戦前生まれでしたが、山東さんは(写真で見る限り)実に若い。さ
すがは元女優さんです。
 レーガン大統領の例をみるまでもなく、俳優と政治家は、人にみられる商売として
共通性がありそうですね。私も、昔は政治家になろうなんて漫然と思ったこともあり
ましたが、人にみられる商売は向いていません。のみならず、あの暑いさ中に街頭で
演説し続けるなんて信じがたいことです。それだけで尊敬してしまいます。

 ※、「これが新増減資だ、種類株式だ」につき、読者から感想が届きました。
----------------------------------------------------------------------------
 「これが新増減資だ、種類株式だ」は実に心強い支えです。
 それにしてもどうして、いつも、このシリーズは痒いところに手が届いてしまうの
でしょうか。
 「募集」「第三者割当ての割当て」を、深く考えたことはありませんでした。何と
なく分っているような気分になっていただけで、でも、今さら誰かに聞く事もできな
かったし、この本を読んでいて、目からウロコがボロボロ落ちていくんです。払込期
日と払込期間にしても然りです。
 金子先生、富田先生、本当にありがとうございます!!!
 このシリーズの大ファンより。
----------------------------------------------------------------------------
★読者感想、歓迎です。「お問い合せ」の連絡先にお願いします。
本欄に掲載させてもらうことがありますのでご了承ください(匿名にしますのでご承
諾を得ずに行います)。



2007.08.07【自己割当ては禁止】(金子登志雄)

 ここのところ、立て続けに、100%子会社を吸収合併するのに、株式を発行でき
ないのか、 資本金を増やせないのかという質問をいただきました。
 商法時代には、解釈で「できる」とされていましたが、会社法では禁止されていま
す。子会社の株主である自己に新株を発行しても財産が増えるわけでもありませんか
ら、これは会社法が正しいというべきです。もし、「できる」とするなら、自己割当
て増資もできてよいはずですし、株式交換で100%子会社にした後に、もう1度、
株式を発行する吸収合併ができてしまいます。
 なお、消滅会社の自己株式にも割り当てられません。これは財産価値がないからで
しょう。



2007.08.06【暑中お見舞い申し上げます】(金子登志雄)

 暑中お見舞い申し上げます。
 お見舞い状を何通かいただきました。また、お中元もいただきました。いつもあり
がとうございます。また、当方からはいつもご無礼ばかりしており、申し訳ありませ
ん。どうも、こういうことにうとく、もう何年も、年賀状以外はどなたにも出したり、
送ったりしていません。確たる思想に基づくものではありません。夏も冬も、平日も
休日も、昼も夜も無関係に、年中無休、24時間営業中で、季節に対するセンサーが
退化してしまっているのです。小学校の頃から、俳句の「季語」が苦手でしたから、
生まれつきかもしれません。そのために、脱(落)サラとして、自由業の世界に入っ
たともいえます。来年も、結果的に、ご無礼してしまうと思いますので、ご了承くだ
さい。
※「組織再編の手続」につき、読者から感想が届きました。ご本人の了解を得られま
したので、掲載します。
--------------------------------------------------------------
 現在、簡易新設分割をしており、本当に重宝しております。
 とくに、人的分割のときに、剰余金の分配をする必要があるのに、書いてある本が
ないなと思っていたら、この本だけに書いてありました。
 実際に組織再編に苦しんだ人でないとこの本の良さはわからないかもしれませんが、
資本計上証明書の雛形といい、他の本とは桁違いの良さです!!!!
 ありがとうございます。研修などの機会には広く宣伝しておきたいと思います。
--------------------------------------------------------------



2007.08.03【ユーズド商品】(金子登志雄)

 アマゾンという書籍のネット販売会社がありますが、そのネットをみていると、新
著が出た瞬間に、ユーズド商品が出てきます。当初は「間違って2冊購入した方が1
冊を売りに出したのだろうか」「読んだけどつまらないと思い、中古品として販売に
出したのだろうか。著者としては辛いな」などと思っておりました。しかし、よくよ
くみると、新品より高価な値段がついているのです。定価の2倍以上の値がついてい
ることもあります。出したばかりの本にプレミアムがつくわけがありません。ひょっ
として、在庫切れを狙った小遣い稼ぎ(中古品商売)でしょうか。


2007.08.02【在庫処分】(金子登志雄)

 新著を出したばかりのため、つい売れ行きが気になってしまいます。
 昭和63年に編著者としてはじめて出した「実戦M&A事典」(共著)は、共著者に
も恵まれ、非常によく売れました。当時「M&Aのバイブル」との評価もいただきま
した。
 気をよくして、次に出した「新事業承継戦略」は、何と、全く売れません。その本
をきっかけに親しくなった読者とはいまだにお付き合いがありますから、内容の問題
ではないようです。
 2年後だったでしょうか、出版社から「残念だが、売れ残り在庫を裁断処分させて
もらう」との通知を受けてしまいました。出版社に損害を与えてしまったわけで、そ
れ以来、最悪の場合は、売れ残り品を全部引き取るという決意で出版に臨んでいます。
いまのところ、その事態には至らずに済みそうです。



2007.08.01【親子会社の表記】(金子登志雄)

 1年前の話ですが、ある会社法の解説書に、「親会社をPとし、子会社をS1と
S2としたとき」などという説明があったので、ある人に「ABCで表記すればよい
のに、いかにも英語が堪能なことをみせつけるかのようで、こういう書き方は読者の
反発を招かないでしょうか」と聞いたところ、「Sは息子のサンでしょうから、読者
に通じるので問題ないでしょう」と言われました。
 当時の私は、Sが何を示すのかわかりませんでしたので、思わず「え、子会社は男
の子なんですか。じゃあ、Pはペアレントではなく、パパかもしれませんね」などと
軽口をたたいていました 。
 すぐさま、ヤフーの「翻訳」で調べましたところ、
   親会社については、「A parent company」と ありましたが、
   子会社は「A subsidiary」ということのようです。
 「従属」の「sub」ですね。子会社というより従属会社とみるようです。
 やはり、日本人なら、甲乙丙あるいはABCで表記してほしいものです。


2007.07.31【選挙明け】(金子登志雄)

 与党大敗の報道を受けて、株価や世の中の反応がどうでるかと注視していましたが、
案の定というか、実に静かなものでした。それだけ自民党と民主党の距離が近づいた
のでしょう。
 小沢代表も鳩山幹事長も、また最高顧問の羽田孜・渡部恒三両氏も元自民党ですか
ら、国民も安心して民主党に投票したのでしょう。自民党時代の小沢氏はこわもてで
有名でしたが、最近は好感度も増したようで、あの人なら何かしてくれるというイメ
ージがあったのでしょう。
 これをきっかけに英米のように2大政党制に進展してくれれば、腐敗やスキャンダ
ルにも敏感になる政治家が増えて歓迎なんですが・・・。



2007.07.30【選挙結果】(金子登志雄)

 参院選挙の大勢が決まったようです。野党の圧勝でした。これは、衆院という株主
総会で与党が勝利しても、参院という種類株主総会でノーといわれることですから、
安部政権の政局の舵取りもむずかしくなったことを意味します。定款変更で種類株主
総会の決議を不要にしようにも、国の定款は憲法ですから、事実上不可能です。
 聞くところによりますと、「姫の虎退治」などといわれ一躍注目を浴びた岡山選挙
区の姫井由美子氏は司法書士だとのこと。司法書士会の名簿で調べましたら、そのと
おりでした。初の司法書士国会議員かも知れません。
 本HPの「研究会の概要」に書きましたが、司法書士が政界に実業界に・・・と進出
することはいいことです。ちなみに、私は、たぶん司法書士初の上場会社役員だと思
いますが、いまは司法書士が社長を務める上場会社まで存在しますから(株式会社
山田債権回収管理総合事務所)、価値はありません。
 次は司法書士初の宇宙飛行士でも狙うしかありませんが、誰かどう?


2007.07.27【日本ハムの場合】(金子登志雄)

 今週の「徒然」は新株予約権の行使期間を株主総会で、いつからいつまでと確定的
に定めなければならないという見解に対する反論キャンペーンを展開しています。
 日本ハム(大阪市)の場合の定め方は次でした。執行役員を対象者とする内容です。
--------------------------------------------------------------------------
★平成19年6月27日定時株主総会
 新株予約権を行使することができる期間  
 新株予約権を割り当てる日の翌日から平成39年6月30日までとする。
★平成19年7月11日取締役会決議  
 募集新株予約権を割り当てる日  
 平成19年年7月26日  
 新株予約権行使することができる期間  
 平成19年8月1日から平成39年6月30日まで
--------------------------------------------------------------------------
 総会では「新株予約権を割り当てる日の翌日から」と決めたのに、それより始期を
遅くしています。総会の決定の枠内だから問題ないと私も思います。
 ちなみに、「招集通知・議案の記載事例」(平成19年版)別冊商事法務編集部編に
は、次のような例がありました。
--------------------------------------------------------------------------  
*新株予約権の割当日の翌日から〇年以内とする。  
*割当日から7年以内の範囲で、別途取締役会において定める。  
*割当日の翌日から5年以内の期間を新株予約権発行に係る取締役会決議時において
定める。
--------------------------------------------------------------------------


2007.07.26【オリックスの場合】(金子登志雄)  

 今週の「徒然」は新株予約権の行使期間を株主総会で確定的に定めなければならな
いという見解に対する反論キャンペーン週間です。
 オリックス(東京都港区)の場合の定め方は次でした。
--------------------------------------------------------------------------
★平成19年6月22日定時株主総会
 新株予約権を行使することができる期間
 当社取締役会の委任を受けてなされる当社の執行役による新株予約権の募集事項に
関する決定が行われた日後2年を経過した日(以下、「2年経過日」という。)
から平成29年6月22日までとする。ただし、2年経過日以前であっても、新株予
約権発行日後に、新株予約権の割当を受けた者(以下、「新株予約権者」という。)
が、当社または当社子会社等の取締役、執行役、監査役または使用人のいずれの地位
も失った場合には、当該地位を失った日の翌日より新株予約権の行使を可能とする。
★平成19年7月4日執行役決定
 新株予約権の割当日(発行日)   
    2007年7月19日  
 新株予約権行使することができる期間  
 2009年7月5日から2017年6月22日までとする。
 ただし、2009年7月4日以前であっても、・・・・(総会決議と同じ)
-------------------------------------------------------------------------
 こういうのは、「執行役の決定した日後2年」とあるが、確定的に定めてあるとみ
るのでしょうか。これがよいのなら、「いつからいつまでの間で取締役会で定める」
も、確定的内容ですよね。


2007.07.25【続続・ストックオプションの行使期間】(金子登志雄)  

 しつこく表題の件を問題にします。少数意見が法務当局の大勢意見になっては、企
業及び実務家が困りますから、キャンペーンのつもりです。
 新株予約権の行使期間は総会で確定的に定めなければ不可(「〜期間の範囲で取締
役会で定める」なども不可)という少数意見の根拠は、会社法239条1項1号が「募集
新株予約権の内容」は株主総会で定めるとあり、同236条で新株予約権の行使期間は新
株予約権の内容とされていることのようです。会社法になって、そう規定されたのだ
から、従えということでしょう。
 しかし、商法ではどうだったかというと、旧商法280条ノ21(有利発行)によると、
「前条第2項 第1号、第2号及び第4号乃至第8号に掲ぐる事項」は総会の特別決議を要
すとあります。この「第4号乃至第8号」というは「第4号から第8号まで」という意味
ですから、第5号も第6号も入ります。第5号は新株予約権の行使期間であり、第6号は
行使条件です。つまり、行使期間や行使条件は総会の特別決議で定めるものだと明記
されていたわけです。ところが、実務では、その他の行使条件は取締役会で定めると
か、総会の決めた行使期間の範囲で取締役会で具体的行使期間を定めていました。
 ですから、会社法になって規定内容が変わったとはいえません。いままでよかった
ものを急にだめだといわれるとむち打ち症になります。行政の継続性、従前どおりの
運用を切に望みます。


2007.07.24【続・ストックオプションの行使期間】(金子登志雄)

 20日の「警告!ストックオプションの行使期間」については、閲覧数が確か80を超
え、びっくりしました。司法書士MLで知らしめたためでしょう。
 そこで、大阪の某司法書士の方から、上場会社のコロムビアミュージックエンター
テイメントの事例を教えていただきました。株主総会でどのような決議をしているか
と調べましたところ、6月29日の定時総会で、「新株予約権を行使することができる
期間」につき、「平成19年6月29日または新株予約権の割当日のいずれか遅い方の日
から、10年後の応当日までの期間で新株予約権割当契約書に定めるところによる」と
決議しており、特定日から特定日という決議ではありませんでした。
 もう1つ、昨日、野村ホールディングスの開示資料を調べましたら、6月27日の定
時総会で「新株予約権の割当日から7年を経過する日までの範囲内で、当社取締役会、
または取締役会の決議による委任を受けた執行役が決定します。ただし、新株予約権
は、募集事項の決定後、原則として2年間は権利行使できないものといたします」と
決議していました。
 著名上場会社も私と同様の考え方だと知り、うれしく思いました。まさか、法務局
も登記拒否はしないでしょう。
 ちなみに、株主総会対策で有名な久保利英明弁護士は野村HDの取締役なんですね。
役員重任候補に掲載されていました。



2007.07.23【これが新増減資だ・種類株式だ】(金子登志雄)

 お待たせしました。ESGの「これが〜」シリーズを2年ぶりに出版しました。
第6弾です。今週あたりから全国の書店にも並ぶものと思います。    

http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31925044


 以前は固定ファンが多かったので、強気の増刷を繰り返しましたが、今度は出版社
も模様眺めです。金子・富田コンビも、この2年間で過去の人になっていないことを
望んでいます。
 なお、ある司法書士読者から送られた感想文です。
☆-------------------------------------------------------------------☆
 まだ第1、2、5、7話しか読んでないのですが、今回の「これが」は、凄いです。
随所で目からウロコです。前回の「新会社法」は、後でよさがじわ〜っとわかる感じ
でしたが、今回は「正にこれだ!」という感じがします。
 7話に「たとえ話にいつもの切れ味がない。」というセリフがありますが、たとえ
話のレベルもかなり高度なものを追求されているのですね(驚)。
 難しい話(計算等)をこんなにわかり易く書けるのは、金子・富田マジックならで
はですね。
 3、4話の「種類株」も期待して読み進めます。



2007.07.20【警告!ストックオプションの行使期間】(金子登志雄)

 ここのところ、急にストックオプション(新株予約権)の行使期間につき、混乱が
生じはじめました。たとえば、昨年の定時総会で、行使期間を「平成20年7月1日
から 平成28年5月31日まで」と定めたとします。決議から2年経過後でないと、
税制適格がないからです。
 いよいよ、発行しようとして今月の取締役会で割当日を平成19年7月20日と定
めたとします。

1.従来は税制適格の新株予約権であるためには、株主総会決議後2年以降の行使で
あることとされていたのですが、租税特別措置法施行令19条の2第1項の総会の決
議の後に、(取締役会決議を含む)というカッコが挿入されたために、取締役会決議
からも2年経過した後に行使しないといけないという解釈が税務署あたりから出され
ています。
 しかし、その第1項の規定は、税制適格の対象となる新株予約権を定義しているだ
けなので、総会で決議した場合には総会決議後からと解釈すべきではないでしょうか。
至急に当局の解釈をはっきりさせてほしいものです。答える人によって解釈が異なる
のは困ります。

2.税制適格の点で不安だから、上記につき、実務では取締役会で、行使期間をたと
えば平成21年8月からなどと始期をずらしています。取締役会決議後からも2年経
過していれば問題ないだろうとの安全策です。
 このように行使期間を短縮することに、従来は何の問題もありませんでした。株主
総会は大枠を決めるところで、総会の決議の範囲内で取締役会で詳細を決定してよい
ことは、総会と取締役会の権限分配の基本中の基本だからです。
 ところが、会社法239条1項に、総会では新株予約権の「内容」を決めてから取
締役会に委任しなければならないという規定を杓子定規に捉えて、総会で行使期間を
決めたら、それを短縮も出来ないという考え方が一部の法務局の担当者からでてきた
ようです。この考え方は、総会と取締役会の権限分配の基本原理に反すると私は考え
ます。

3.税務署と法務局にはさまれて、われわれ実務家は困っています。当局の方よ、何
とかなりませんか。



2007.07.19【ランニング・ホームラン】(佐々木大介)

 大リーグのオールスターゲームで、イチローがランニングホームランを打ちました。
大リーグオールスターゲーム史上初というおまけ付です。
 私も驚いたので、妻に話しました。
「イチローがオールスターゲームでランニングホームラン打ったんだって!」
「へぇ〜、ランニングホームランて、走りながらホームラン打つこと?」
……そんなわけないでしょ!!(妻は野球を知りません)。
 とはいえ、「ジャンピングキャッチ」といったら、「飛んで捕る」ことですから、
妻の解釈も、間違いとは言えない気がします。



2007.07.18【アオジの人】(金子登志雄)

 先週の金曜日は、東京司法書士会の港区の支部で呼ばれ、会社法の講演でした。
 港区は会社数も多く、会社法に詳しい人が多いため、講演していても、張り合いが
あります。眠っている人は1人もいませんでした。さすがは、港支部です。
 講演後、支部長に「金子さんたちのことを若い司法書士はアオジの人といっていま
す」といわれ、はじめは何のことかわかりませんでした。どうも、わがESGが担当
している中央経済社の「会社法法令集」のミニ解説が「青字」なので、「青字の人」
ということのようです。
 わがESGも、若い司法書士からすれば、目からウロコの「これが〜」シリーズの
ESGではなく、ベストセラー条文集に青字で解説している人たちとして知られてい
るようです。
 赤い字でなくてよかったね。ワーキング・プアのメンバーたちよ。



2007.07.17【台風・地震お見舞い】(金子登志雄)

 連休は、台風と地震で行楽どころでなかった方も多いことでしょう。被災者の皆様
に、お見舞い申し上げます。
 私は台風前の14日に群馬に帰省し、15日の台風の日は田舎で原稿書き、台風の
通り過ぎた16日に東京に戻る予定でした。3連休ですと、いつもは新幹線がとれな
いのですが、14日に行き帰りも指定席がとれました。
 これはラッキーと思ったのですが、思いもかけない地震で帰りの新幹線のダイヤが
大幅に乱れ、指定席どころか、来た新幹線に押し込められ、ずっと立ったまま東京駅
までということになりました。
 群馬は東京に近いので、1時間の我慢で済みましたが、小さいお子さんを連れた方
はほんとにお気の毒でした。


007.07.13
【名台詞?】(尾原祥之)

「昨夜どこにいたの?」

「そんなに昔のことは憶えてないね」

「今夜会ってくれる?」

「そんなに先のことはわからない」

この台詞でピンときた方もいることでしょう。

そう、あの名画「カサブランカ」での有名な1シーンでの台詞です。

久しぶりに見ました。

やはりボギーは格好いいです。イングリッド・バーグマンも綺麗です。

先日、私と友人とで交わした会話です。

友「昨夜どこにいたの?」

尾「事務所だよ」

友「今夜あたり一杯どう?」

尾「ムリ…」

やはりボギーにはなれそうにありませんね(苦笑)

君の瞳に乾杯!



2007.07.12【名言その4】(田中利和)

 私の心に響いた「名言」を一つ紹介します。
「求めなければ何も得られない」。
 最近、巷の本屋に行きますと、仕事に関する「HOW TO 本」が盛りだくさん
並んでいます。 
 実際に、それらの本に書かれたことを実践したところで、大したことはできないと
思います。
 他人から何かを吸収したい、何かを得たい、何かを盗みたい、と思ったのなら、相
手の懐に飛び込んで、遠慮せずに求めれば、何かが得られるように思います。
私? もちろん得ましたよ。何を得たかは、秘密です。

 金子:「仕事に関する」という条件付ですよね。仕事以外は、愛も合格も
「求めたからといって得られるとは限らない」ですよね。ねぇ、〇〇さん。



2007.07.11【名言その3】(金子登志雄)

 「アイ・シャル・リターン(私は帰ってくる)」…こんな程度の言葉は、私もよく
使います。外出時に家族から「今日は、帰るの?」、「帰るよ(アイ・シャル・リタ
ーン)」。これで、なぜ、名言なんですかね。
 有名な「少年よ、大志を抱け」だって、「諸君、でっかい夢を持って生きようよ」
といっただけなのに、誰かが、格好良く翻訳してしまった。
 あの「山のあなたの空遠く、幸い住むと人のいう」(カール・ブッセ)だって、翻
訳者の上田敏が格好良く翻訳しただけでしょう。
 ESG諸君、君たちの役割は、私がいいかげんに語ったことを上手に美化して世間
に広めることだ。  

 ※お知らせ
「組織再編の手続」、今週か来週には書店に並びます。
まだ、出版社のHPにしか開示されていません。
 ↓の8番目です。
https://shop2.genesis-ec.com/search/result.asp?shopcd=17262&sort2=itemkb1&line=50&kwd=200707


2007.07.10【名言その2】(富田太郎)

 
ところで、我がESGにも名言があります。
ESG代表金子先生曰く「原稿の締切日は、手形の支払期日といっしょですよ!」
うっっ・・・。締切りに追われる私としては胃の痛くなる言葉です(汗)。
 もっとも、元金融機関出身の私に言わせれば、どうしても資金繰りのメドがつかな
い場合、「手形ジャンプ」といって、支払期日を延ばすケースが、ままありました。
 確かに、原稿の締切りは、手形といっしょです。「締切りは、手形と同じでジャン
プすることもできる」。
 そうです♪名言とは、そのときの状況によって、解釈が変わっていくものなのです。

PS
 以前、この理論を、金子先生に、お話したところ、「プロとして、そんな理論は許
されませんよ(怒、怒)」と激怒されましたが・・・(汗)。
 うちの代表、真面目なんだから・・・。


2007.07.09
【名言?迷言?とは】(富田太郎)

 私も「マッカーサー」ネタをもうひとつ。
 
「アイ・シャル・リターン私は帰ってくる)」
 これは、太平洋戦争時代、日本軍のフィリピン攻略戦に敗れたマッカーサーが、捲
土重来を期して、撤退した時の言葉です。
 実はこの名言、一時期「ウイ・シャル・リターン(我々は帰ってくる)」という言
葉に代えられていた時期がありました。要は、米軍全軍の士気を鼓舞するために、
「私(マッカーサー個人)」でなく「我々(米軍全員)」に作為的に代えられていた
のです。
 このように、名言とは、時代の背景、そのときの状況によって変わっていくものな
のかもしれません。



2007.07.06
【マッカーサー元帥】(金子登志雄)

 マッカーサー元帥とは、太平洋戦争の連合国軍最高司令官であり、日本占領の進駐
軍の親玉です。
 子供の頃は、写真をみても怖いイメージがありましたが、法律を学んだ後は、平和
憲法で知られる日本国憲法制定に強く影響のあった平和主義者という印象の方が強い
です。戦後の日本の驚異的でマサカーの発展を遂げた原点のような人で、今の熟年世
代が徴兵されずに済んだのも、この人の影響力でしょう。
 朝鮮戦争の件で時のトルーマン大統領から更迭され(人物評にはいろいろあるよう
です)、最後の演説が「老兵は死なず・・・」となったわけです。
 念のため、更「迭」は、更「送」の誤字ではありません。コウテツと読むことは、
一昨日の新聞の1面にも出ています。


2007.07.05【老兵から君子に】(金子登志雄)

 富田さん、40代で「老兵」なんていわないでよ。50代後半の私なんか生きてて
はいけないような気分ですよ。
 試験問題の解答及び解説では、富田さんはじめ、みなさん、ご苦労様でした。正誤
微妙な問題もあったでしょうから、肉体よりも心労が大きかったと思います。
 それも、時間制限という締切りのプレッシャーのもとでの作業でしたから、疲れた
ことでしょう。
 しばらくの間は、老兵から君子になって、プレッシャーやストレスに近づかないこ
とですね。お大事に。
 念のため、若い方の中には、「老兵は死なず・・・」をはじめて聞いた方も多いこ
とでしょう。政治家の野中広務さんの著書のことではありません。マッカーサー元帥
の引退宣言の最後の言葉として知られるようになった言葉です。
 え、マッカーサー元帥って、誰かですか。明日の徒然にします。



2007.07.04【老兵は死なず、ただ消えゆくのみ・・・。】(富田太郎)

 7日は、司法書士本試験でした。
 「ESG
 受験指導部」も 某出版社の解答解説のため、徹夜作業でした。
 もともと、この出版社の解説は、元登記官、学者、カリスマ予備校講師とそうそう
たる方々が執筆されていましたが、今や淘汰され?ESG
の面々が主流をしめていま
す。


 問題入手から、ほぼ
日で解説を書かなければならず、本業をかかえながらの執筆
作業は
肉体的にもハードです。
 私も解説を書き始めてから
年、ベテラン執筆者です。ただ、昨年あたりから、頑
張りがきかなくなってきました。もう私も若くはない・・・。

 あっ
 辞めていった元解説者の方々も、我々に淘汰されたのではなく、肉体的にきつくな
って、自発的に辞めていっただけなのでは・・・・! 
 なるほど・・・・確かに、若くなくては、こんな仕事できません。
そろそろ私も・・・・。「
老兵は死なず、ただ消えゆくのみ」・・・なのでしょうか。



2007.07.03【私もじっくり型】(大戸早規子)  

 そうなんです!  
 「じっくり型」の私が司法書士試験の合格を手にするのにはかなりの年月を要して
しまいました。

 一つの論点を、何でこうなるのかと自分なりの理論づけをして納得し、さらにあの
場合はこの場合はと発展的に考えていき、有機的に知識を結びつかせておく。すると、
ひとつのキーワードから芋づる式にいろいろなことが頭の中に蘇ってくる(ハズ・・・)
 若い人のように記憶力に頼ることは絶対に無理ですので、私にはこれしかないと信
じていました。

 勉強を進めていく上では確かにいい方法でした。

 しかし、試験本番、それが仇になってしまい、簡単に答えが出せた後もアレヤコレ
ヤと考えてしまい、結局、時間が足りなくなって・・・。

 その後、合格するためには戦略が必要だということを痛感し、試験本番のときだけ
は本来の自分には隠れていてもらうことにして、感覚ですばやく解答することを意識
してみました。

 合格後、本来の自分がしゃしゃり出ています。
 でも、私思うんです。
 「じっくり型」を通り越して「こだわり型」のおかげで、こうしてESG に参加でき
るんだろうなぁって。ですよね、金子先生?

 金子:そのとおりですよ。大戸さんの「こだわり」質問で、私もさらに深い理解に
    至ったことが何度もあります。実務では、「じっくり慎重型」こそ貴重です。


2007.07.02【司法書士試験】(金子登志雄)

 昨日は司法書士試験日だったようです。ESGの受験指導部のお仲間は、休日出勤
でがんばっていました(いつもどおりですが)。
 会社法の書式問題は書く分量が多すぎて、制限時間内に書ききれなかったのではな
いだろうかとの意見が多数でした。そうであれば、私が受験しても間違いなく不合格
です。
 昔、私が司法試験をあきらめたのも制限時間内に解答できないように試験傾向が変
わったためでした。とうとう司法書士試験まで、じっくり型は合格できないようにな
ってきたようです。感覚ですばやく解答できるのも才能の1つですが、実務は確実性
重視です。
 最近の合格者はマニュアル人間で応用が利かないという声をよく聞きます。ますま
す、感覚的なマニュアル人間が増えるばかりで、こんな試験でいいのでしょうか。



2007.06.29【私も健忘症】(富田太郎)

 私も、最近、物忘れが酷いです・・・。  
 特に 人の名前・・・。  

 銀行に仕事で訪問した際も、女性行員の方に、「あそこにいる・・・、ほら、背中
をこちらに向けている・・・お名前はなんと言いましたっけ???」
 「あぁ〜、富田さん、また名前忘れたんでしょう・・・。あっ!私の名前は、
覚えてますよね(怒、怒)??」


2007.06.28【健忘症】(松山聡)
 
 最近、人の名前が、すぐに出てきません。  
 先日も、初対面の「コジマ」さんのお名前(苗字)を忘れてはいけないと、家電量
販店の「コジマ」に関連付けて「家電のコジマさん」で憶えました。
 これでバッチリと思いきや、次に、その方とお会いしたとき、つい「ヤマダ」さん
と呼びそうになってしまいました。
 「コジマ」さんとは似ても似つかぬ「ヤマダ」さんと呼ばれたら、当人もさぞ驚く
でしょうし、この司法書士さん大丈夫かな?ってことにもなりかねないですね(~_~;)
(あれ?もしかして、これって一部の人にしか通じない話ですか?同じ家電量販店の
「ヤマダ電機」と間違えたのです(^^ゞ)
 
 なお、私は家電量販店の回し者ではありませんので、念のため。


2007.06.27【定時総会】(金子登志雄)

 ただいま、3月決算期の会社の定時総会があちこちで行われています。商業登記専
門の司法書士が最も多忙な時期でしょう。
 しかし、昨年は、監査役会設置会社、会計監査人設置会社、会社法準拠の定款変更
などという会社法特需がありましたが、今年は役員変更オンリーです。
 中小企業では任期を延長したので、今年の登記はありません。去年の特需は、きっ
と商業登記専門司法書士への転職奨励金だったのかも。
 同志諸君、ワーキング・プアでも仕事があるのは幸せなことなんだよ。


2007.06.26【夢は印税生活?】(金子登志雄)

 富田さん、法律専門書は儲からないのですか。やはり、印税で老後を支えるのは無
理でしょうかねぇ。
 ちなみに、一般論ですが、法律専門書は累計でも2000部売れればよいといわれてい
ます。1割が印税で、1冊書くのに最低2〜 3ヶ月は必要でしょうから、お暇の方は、
時給計算してみてください。
 ただ、「一人でできる会社設立」などといったマニュアル本は、相当売れているよ
うです。山田真哉会計士の「つまみ食い新会社法」は、うん万部だとか。
 こういう本なら、1ヶ月以内に書ける自信がありますから、よし、明日から「3時
のおやつの会社法」を書こうなどと思えど、いざ書き始めると、つい論じてしまいま
す。この性格が災いして、ワーキング プアになってしまうのでしょうか。
 ESGメンバーで、「私はこうしてワーキング・プアから脱出した」という本は、
誰が先に書けるやら。

※著作情報 
会社法法令集が第4版になりました。今週後半あたり発売になります。    http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31913353

 中央経済社の商業登記全書「組織再編の手続」(拙著)の発売時期は 7月10日あた
りの見込みです。本体価格は5200円(税込み5460円)だそうです(頁数の関係です)。



2007.06.25【登録免許税悲話?】(富田太郎)

  不動産登記にせよ、商業登記にせよ、登記申請には、登録免許税(登記申請の際に
支払う国税)が必ずかかります。たとえば、増資額が1000万円ならば、7万円の
登録免許税を払わなければなりません。

 初めて、登記を依頼される方は、これも司法書士の報酬かと思い、驚かれる方もい
ます。

閑話休題。
 以前、某証券会社の「巨額の増資案件」でのこと。
登録免許税だけで、●000万円となるため、当然立て替えるわけにもいかず、事前
に、某証券会社から私の口座に振り込んでもらいました。ところが、書類の不備等も
あり、なかなか登記申請できず、しばらく私の口座に塩漬け。


 そんなある日、懇意にしている某銀行の支店長さんが、菓子折り片手に突然訪ねて
来られました。

支店長 「富田先生、最近 執筆等で活躍されていますね?印税も凄いでしょう?」
 私  「えっ???まぁ それほどでも♪」(←勿論 見栄です)
支店長 「ところで 先生!最近、かなり財テクをやっていらっしゃるようですね?
    是非、当行で資産運用でも・・・△■●〜」


 えっ???私が、財テク???
よくよく聞いてみると、「塩漬けになっている登録免許税」を「私のお金」と勘違い
されていたようでした。事情を聞き、哀れ支店長さん、肩を落として帰っていかれま
した・・・。

 その後、登記申請は無事済みましたが、なんとも複雑な心境でした・・・・。

 ちなみに、「支店長さん! 今だから言いますが、『専門書の執筆』は、『マンガ
や小説本』と違って、全く儲かりません!」

 よく覚えておいてくださいね(怒、怒)!


2007.06.22【髪に見捨てられない程度に】(佐々木大介)  

 田中さんは、腕立て伏せ50回もできるんですか!!私の回数の10倍です。こん
な才能もあるとは、知りませんでした!
 
 早速、田中さんの頭痛解消法を試してみました。しかし、私は髪が短いので、上手
につかめませんでした。何とか、後頭部の短い髪を鷲掴みにして、そのまま垂直に、
可能なかぎり、思いっきり、ひっぱってみました。
 すごく痛いですね。我慢して続けてやってみましたら、ほんとスーとして気持ちよ
くなりました。  
 しかし、思いっきりやりすぎたのか、髪の毛がだいぶ抜けた気がします。この頭痛
解消法を試すときは、髪に見捨てられないよう、気をつける必要がありそうです。
 皆様にも髪のご加護がありますように・・・。



2007.06.21【頭痛解消法】(田中利和)

 佐々木さん、ちなみに、私は腕立て伏せ50回はできます。
確かに首のこり、肩こりは辛いですよね。
 本日は、この”こり”からくる頭痛解消法をみなさんに伝授しましょう。
原因のひとつとして、首すじ、肩がこっていることが考えられます。
その部分がこっているため(筋肉が収縮して)、脳への血の巡りが悪くなって頭痛を
発生させるようです。

 まず、首すじから後頭部のあたりの髪を両手でグィッとわしづかみにして(なるべ
くたくさん)、そのまま垂直に(天井に向かって)、可能なかぎり、思いっきり、ひ
っぱってください(後頭部に対して直角にひっぱるのではありません)。

 これを、5分〜10分くらいやってみてください。後頭部・首スジのあたりの筋肉
がひっぱられて、血のめぐりがよくなります。たぶん・・。

 試してみてください。私もします。効いている感じがします(笑)

 以前、この模様をテレビで見ました。このときは、頭痛のする女性の髪を全て頭上
で結び、それを垂直に10分程度ひっぱっていました。
すると、どうでしょう。「いや〜、うそのように治りました!」と女性はインタビュ
ーに答えていました(笑)
 おもいきりやってください。声を出してやれば、気が狂ったと思われますのでご注
意を(笑)


2007.06.20【腕立て伏せ】(佐々木大介)  

 先週から、首が回らなくなってきました。といっても借金が原因ではありません。
パソコンとにらめっこ(仕事)をして、目が疲れたのが原因だと思います。家族に肩
をもんでもらいましたが、もはや焼け石に水でした。ところがある人から、運動を勧
められたので、昨日、試しに腕立て伏せをしてみました。

 何回できたかといいますと……実は、たったの5回でした。
昼過ぎに5回、夜にまた5回、腕立て伏せをしました。
するとどうでしょう、……今日は、首がよく回るようになりました!

 たった10回の腕立て伏せで、これほどまでの違いがあるのかと、驚きました。その
効果が持続するかは、継続した腕立て伏せにかかっていると思います。
 皆さんは、連続何回腕立て伏せができますか?


2007.06.19【条文がない】(金子登志雄)

 インターネットで条文をみながら仕事をすることが多いのですが、先日は一瞬、あ
わててしまいました。いくら調べても、某法律の18条が4項で終わり、5項がない
のです。来月発売になる著作に18条5項と書いた部分がいくつかありましたので、
あわててしまいました。手元の条文集にはあるのですが、インターネットで調べた3
つには、存在せず、改正案にもないのです。翌朝、法律公布の官報を調べましたら、
ありましたので、安心しましたが、ネットの法律には注意しないといけませんね。ど
うせ条文を漏らすなら、税法にしてほしいものです。



2007.06.18【私の司法書士イメージ】(金子登志雄)

 私の世代(団塊世代)の司法書士イメージは、法務局の近くの3坪店舗で一人で
黙々と事務作業しているおじさんというところでしょうか。法務局退職者の余生の
仕事というイメージです。
 昔は、このように実に地味な存在で、若い人のあこがれるような職業ではありま
せんでした。というより、職業自体が知られていなかったし、いまだに行政書士と
区別がつかない方が圧倒的多数です。
 ところが、昭和50年代に国家試験になってからは、不動産バブルの追い風もあり
急に「目指せ、司法書士」の風潮が出てきました。合格率2%程度の超難関試験に
なりました。最近の若い人からは、闇金と戦う正義の味方というイメージもあるよ
うです。
 いずれにしろ、他士業からすると地味すぎることは間違いないでしょう。弁護士
さんのように政治家になったり、逮捕でもされて新聞ダネになる人が増えないと(
???)、知名度の向上はむずかしいかもしれません。イメージの向上以前に知名
度の向上です。ESGもがんばらねば。



2007.06.15【司法書士のイメージ】(下崎ゆかり)

 昨日、瀟洒なバックに対する憧れを綴りましたが、顧客のもとに行くと、今でも
時々、「へぇ〜。司法書士さんなの?最近は、司法書士さんも随分イメージが変わ
ったんですね。」というお言葉をいただくことがあります。
 私  「司法書士って、どんなイメージだったのですか?」
 顧客 「ねずみ色のスーツ着て、がま口みたいにパカって口が開く大きくて高そ
うなカバンもった年配の先生。あのカバンって、どこで売ってるのかね〜?」
 私「・・・・・・」
 大きなカバン=司法書士のイメージなのでしょうか?そういえば、駅から法務局
へ向かう道のりで大きな黒カバンをもった女性は、大抵、法務局内へ入っていくよ
うな気もします。重要書類を預かる職務上、仕方ないとはいえ、政府が進めるIT
化が進めば、私どものカバンも小さくなる日がくるのでしょうか。
 皆様の司法書士のイメージってどんなかんじなのでしょうか。司法書士イメージ
向上戦略も必要なのかもしれませんね。


2007.06.14【ちょっとしたパーティー】(下崎ゆかり)

 6月…株主総会集中月を迎え、株主総会招集通知の作成に追いかけられている自
称ESGのマドンナ(??)こと下崎です。
 最近では、総会開催後に「株主懇親会」というパーティーを開催する会社も多い
ようですね。
 司法書士業務を始めたばかりの頃、大先輩の女性司法書士が、ちょっとしたパー
ティー用ということで、瀟洒な小さい白いバックを持っていたのを思い出します。
 パーティーといえば、結婚式の招待くらいしか思い浮かばなかった当時の私にと
って、「ちょとしたパーティー」何故かこの言葉にとっても惹かれたのを覚えてい
ます。
 あれから、3年・・・ちょっとしたパーティーのお誘いが来る日を心待ちにして
いますが、瀟洒(しょうしゃ)なバックを持つこともなく、今日も書類の詰まった
ズッシリ重い大きな黒バックを抱え、肩こりに悩む日々が続きます。


2007.06.13【誘導】(大戸早規子)

 半蔵門線の九段下の駅には切符の精算機が2台並んであります。
整然と並べるようにとの配慮でしょうか、その各々の前にラインが引か
れています。でも今は「フォーク式」(銀行のATMでお金を引き出すとき
のように一列に並び、順番に空いたところに進む方式)の時代です。
ラインを無視して2台の丁度真ん中に並び、「左」が空いたので進み出
ようとしたその瞬間、私のさらに左側から、若者がすっと出てきて、先に
切符を投入してしまいました。
 ラインを無視した私が悪い?それとも時代遅れの若者が悪い?いいえ、
無意識のうちに人を誘導しているあのラインがいけないのかもしれません。
だって、絶対に「フォーク式」の方がストレス溜まらないと思いません?


2007.06.12【司法書士という職業】(田中利和)

 司法書士という職業は、女性に向いているのではないか、とつくづく
思う今日このごろです。なぜかと申しますと、司法書士に求められるの
は、@仕事の正確性、A迅速な事務処理能力、B愛想の良さ、これ以
外にも豊富な知識等々、あげればきりがありません。
 私の持論ですが、女性は男性に比べて几帳面な方が多いように感じ
ますし、愛想の良さでも女性が一枚うわてのような気がします。
 なぜ、こんなに持ち上げるかと申しますと、ESGが誇る女性司法書士
がこの徒然に登場していないのです。たぶん明日から登場してくれるで
しょう。いや、きっとかな・・・。


2007.06.11【ワーキング・プア】(富田太郎)

 先週、ESGの仲間であるO君(やはり「原稿の多重債務者」兼「徹夜生活常習犯」)、
知り合いの美女?3人で、優雅に「イタリアレストラン」に行きました。たまには、
ワインを片手に優雅な生活です。

私 「やっぱり 温かい食べ物は美味しいね♪ ところでA出版社の締切り大丈夫?」
O君「昨日、なんとか原稿提出しました♪ でも、私と富田さんって、健康で文化的な
  最低限の生活ができてない気がしますね・・・。」  

 会話がプアですね・・・。『ワーキング プア』(働く貧民層)、我々二人にぴった
りの言葉です・・。


2007.06.08【M&A】(田中利和)

 最近の新聞・テレビ・雑誌、どこを見ても、「M&A」の3文字を見ない日はありま
せん。何かの略です。何かとは、ここでは詳しく申し上げません(^_^;)。企業買収・組
織再編とかいう意味です。あまり良い表現ではありませんが、「企業が企業を喰う」と
いうイメージもあるでしょう。
 つい先日、関西出身の芸能人の披露宴が神戸の某所にて行われました。出席した芸
能人が、披露宴の挨拶で、「このカップルは”吸収合併”みたいなもんや」と言われ
ていました。どういう意味か分かりませんが気になります(笑)。
 M&A・・・、企業だけではなく、とうとう人間の世界にも・・・。

金子:M&Aとは、Merger(合併)& Acquisition(買収) の略で、経営支配権を取得
 することです。誰とはいいませんが、ESGの男どもは概して奥方にM&Aされています。
 ごまと夫はしぼればしぼるほどアブラがでます、これが誰かさんの脂症の原因かも。



2007.06.07 【スキンケア】(田中利和)

 ESGのお仲間は油切れしている方が多いようですが、私は、最近、顔が脂ぎって
いることが多く、やはり、若さからきているのかと(?)、半ば諦めていました
ところ、ある女性から「男性の方もお肌の手入れが必要ですよ!」と言われました。
 そこで、洗顔後、その女性から化粧水をもらって顔につけてみたところ、なんと、
半日たっても、顔から脂が浮いてこないではありませんか!
 原因はよく分かりませんが、要は、何にでも手入れが必要だということでしょうか。
おかげさまで、”かっこ”を気にすることもなく、仕事で油を売ることもなくなりまし
た。ぜひ、スキンケアをお試しください。


2007.06.06【地位が人を作る】(富田太郎)

「ステータス」なんと優雅な言葉であろうか・・。
 このところ、私も数々の方々から「パーティー」、「クルージング」などの
お誘いを受けるようになりました。

 地位が人を作る・・・。仕事と原稿に追われ、「冷えたコンビニ弁当と徹夜
生活」から脱却し、私もそろそろ「きらびやかな世界」へデビューしたいです♪

 某日「某会社の合併パーティー」でのこと
 華やかな淑女、紳士が楽しく集うパーティーの会場で、私は、登記申請書類
を完成させるため、「議事録と朱肉」をもって、パーティーに来ているはずの役
員達を探しまわっていました・・・。なんか、私にぴったりの情けない光景でした。


2007.06.05【早稲田優勝】(尾原祥之)  

 東京六大学野球は早稲田大学が優勝しましたね。
 大きく報じられていたのでご存知の方も多いと思います。
 早稲田が優勝すると名物(?)のちょうちん行列が行われます。
現役の学生はもとよりOB・OGの方々も楽しみにしているようで、
友人(早稲田出身)の司法書士も見に行ってました。
 そしてもう一つの名物(?)が、高田馬場駅界隈のお祭り騒ぎです。
私の事務所から高田馬場駅までの間に飲み屋街があるので、この
お祭り騒ぎに巻き込まれぬよう、当日は早めに退散しました。
 優勝が決まったのは日曜なのに、なぜ事務所に?
聞かないで下さい…(涙)
 とにかく早稲田優勝おめでとうございます。


2007.06.04【運転教習所】(田中利和)

 先日の新聞に、タクシーの初乗り運賃に関する記事が掲載されていました。
「規制緩和をしたため、タクシー会社間において、運賃値下げの競争が起こった。
売り上げを伸ばしたい会社がタクシーの数を増やしたため、街中にはタクシーが
溢れている。しかも、客が指定した行き先の行き方もろくに知らない運転手が多
くなってきた」といった内容でした。

 しかし、最後の部分は、どこの業界にもいえることです。客がこうしてほしいと
いうのに、その方法さえ知らない司法書士が多くなってきています。だから、私は、
大阪から、ESG運転教習所に通っているわけです(今日は褒めておかないと、
あとが怖そう・・・。小舅がESGにも多いんだから)。



2007.06.01【鉄ちゃん】(田中利和)

 みなさん、こんにちは。大阪の田中です。ESGには途中参加組の新人です。
 ESGのEというのは、エキスパートの意味のようですが、確かにESGメンバー
のエキスパートぶりは尋常ではありません。
 時刻表オタクの俗にいう「鉄ちゃん」に、腕時計オタクに・・・(これ以上いうと
除名されそうです)、 こういうメンバーばかりの中で、まともに生きていくのは
たいへんですが、ひとり大阪で頑張っています。

 金子:Eがエキスパートというのは建前でして、裏の意味はエキサイティング
です。仕事にも趣味にも熱中しなければ・・・。



2007.05.31【IPO】(金子登志雄)

 一昨日は、役員を務めるアクモス株式会社の社内セミナーがあり、1日中、
司法書士業務から離れました。ジャスダック市場の方を講師とするセミナー
はなかなか興味深いものがありました。その内容をご紹介するスペースは
ありませんが、新規上場数は全市場で昨年188社、その前年が158社だ
そうです。IPO(上場)を目指す企業が多いのですが、相変わらず狭き門です。



2007.05.30【リース物件】(金子登志雄)

 昨日は、社員名簿というものはないと書きましたが、法律の専門家でも
知らない人が多いようです。持分会社には、社員総会もありません。社員
全員の同意あるいは過半数の同意が必要とされることはあっても、社員
総会の決議ではありません。
 こんな知ったかぶりをしながら、先日は、リースのコピー機を現物出資の
対象にすると手続が面倒そうだと発言しましたら、もとリース会社出身の
富田さんに「所有権はリース会社にありますよ」と笑われてしまいました。
 リース会社出身者でないと、おそらく瞬時には気が付かない間違いだと
思うのですが、いかがでしょうか。


2007.05.29【社員名簿】(金子登志雄)

 合名会社・合資会社・合同会社を総称して「持分会社」といいますが、その
株主に該当する構成員のことを「社員」といいます。
 さて、株式会社を合併するときは、「(合併)効力発生日前日最終の株主名
簿に記載された株主に対して」、1株に1株を割り当てるなどと定めますので、
持分会社を合併するときは、「効力発生日前日最終の社員名簿に記載された
社員に対して」と、つい著作に書いてしまいました。
 校正中に気がつきました。持分会社では社員の氏名は定款に記載されます
ので、社員名簿というものがないのです!。昔は「社員名簿=有限会社」でし
たが、いまはそれもなくなりました。



2007.05.28【休日と風邪】(金子登志雄)

 季節の変わり目か、風邪を引く人がちらほら。私も金曜日のくしゃみから
はじまり、土曜日をピークとする風邪を引いてしまいました。休日に風邪を
引きお客様に迷惑をかけないなど、働く者の鏡だと自分を褒めております。
 ただ、風邪は個人差があります。私の場合は、小さい頃からお友達付き
合いをしており、病気とは思っていませんが、ほんとに辛い人も多いようです。
 そういう人からみると、私は病人に冷たい人にみえるようです。
 さぁ、月曜日です。今週も元気にスタートできます。



2007.05.25【バイリンガル】(金子登志雄)

 商法では増資のことを「新株の発行」といいましたが、会社法では「募集株式
の発行」と表現します。出資者が1名でも、募集株式の発行です。
 ところが、証券取引法では、「募集」は50名以上に勧誘することですから、会
社法と証取法が遭遇するときは、ちょっとした混乱が生じます。
 たとえば、財務局に「株式の募集をするので書類を提出したい」と電話すれば、
50名以上の出資者と受け取られてしまい、提出書類が違ってきます。
 いつも思うのですが、イギリスに行ったら英語を使い、フランスに行ったらフラ
ス語を使うのと同様に、法務省では法務省用語を使い、財務省では財務省用語
を使いこなせないと、一人前のバイリンガルとはいえません。


2007.05.24【ルールブック】(金子登志雄)

 3月決算会社が6月定時総会を前にして、非公開企業でも事業報告書の記載で
頭を悩ませています。
 会社施行規則124条に「会社役員のうち社外役員である者が存する場合には、
株式会社の会社役員に関する事項には、第121条に規定する事項のほか、次に
掲げる事項・・・」とありますが、これが最大の難所で、何をどう書くのかという質問
が多いのですが、実は、この規定は、公開企業(譲渡制限のない会社)限定です。
 この文章から、それを読み取れる人は、まずいないでしょう。不親切な条文の1つです。
 私の答えはいつも1つです。「わからないときは、あなたがルールブックだ」。



2007.05.23【のれん】(金子登志雄)
 
 昨日は、日比谷公会堂で行われた東京税理士会主宰の会社計算規則の
セミナーに出席してきました。東京司法書士会との提携で司法書士も参加で
きます。会場にはESG会員の佐々木も大戸も来ており、一緒に聴講しました。
 講師は小林進税理士があり、具体例でわかりやすく、のれんと組織再編の
関係を説明してくれました。公認会計士を含め、ここまでやさしく説明できる人
も少ないであろうと思い、出席してよかったと思っています。
 しかし、やはり会社計算規則の「のれん」の規定は実に難解です。実感として
把握できません。きっと名称がよくないのでしょう。のれんに腕押し。


2007.05.22【ゼロ】(金子登志雄)

 ただいま、当ESGの誇る「会社法法令集」第4版のミニ解説の校正中です。
縦書きのため、0円を○円としていましたが、第4版からはゼロ円と表記することに
いたしました。法令では「零」と書きますが、ゼロのほうが一般的だという判断です。
 横書きのときも、0はやっかいです。ゼロなのか、平成〇年〇月〇日などと同様に
単なる丸(マル)なのかが区別しにくいからです。
 「丸」というとお金に関係するためか、社名に「丸」のつく証券会社が多いのです
が、あれはゼロの意味を含むのでしょうか、それとも無限大に儲かるという意味で
しょうか。



2007.05.21【選挙】(金子登志雄)

 5月はあちこちで選挙です。土曜日には司法書士会の選挙がありまし
た。27日には居住中のマンションの管理組合の役員選挙です。
 国政選挙でもそうですが、日本人は立候補できないという法律にしたら、
世界中から優秀な人材を集められるのにと、時々思います。日産自動車
のゴーンさんの例もありますし・・・。大相撲と同じで、氏名は日本名を使う
ことにしてもらえば違和感も薄れることでしょう。
 司法書士会の選挙も司法書士は立候補できないとするか、あるいは、
委員会設置型に改組し、外部の人間を代表執行役として選定すれば、
もっともっと発展成長すると思うのですが、いかがでしょうか。


2007.05.18【喫煙率】(金子登志雄)

 昨日の日経新聞に喫煙率が4割を切ったと出ていました。まだそんなに
喫煙者が残っているのかというのが正直な感想です。ESGの中では2割
程度でしょうか。私はその一人で、40年間の筋金入りです。
 しかし、最近は場所を問わず居心地が悪くなりました。どこもかしこも敵
(嫌煙者)ばかりです。このご時勢では多数派である敵と戦っても負けるの
は目にみえていますから、時々、城を枕に討ち死にする覚悟で籠城作戦を
決行します。敵が決して入れない部屋に一人で閉じこもり、思う存分、煙と
たわむれます。
 部屋にはテレビもないので、仕方なくノートPCで原稿書きをはじめます。
これだから、原稿の締切りを守れるわけで、敵に感謝すべきでしょうか。  



2007.05.17【ストレス犬】(初瀬智彦)

 みなさん、はじめまして。初瀬です。
 先日、近所の犬が逃げ出し暴れだしたため、一緒に捕まえましたが、噛まれてしま
い、同じ目にあった近所の人ともに救急車初体験をいたしました。
 こういう場合、飼い主に落ち度があると過失傷害罪になります。逆に、こちらが悪く
犬を傷つけたとすると何と器物損壊罪です。犬は法律上、物として扱われます。
 刑法261条には「他人の物を損壊し、又は傷害した者は・・・」とせっかく
「傷害」とあるのですから、「他人の物を損壊し、又は他人の動物を傷害した者
は・・・」とすればよいのにと一瞬思ったのですが、小鳥や金魚は「物」か「動物」
かという議論になりそうですね。かぶと虫はどちらでしょうか。


2007.05.16【有限会社と株券】(松山聡)  
 
 真っ赤な嘘も、誠心誠意な嘘も、素直に信じる、まだまだ修行が足り
ない(?)松山です(^_^;)
 電子申請と顔文字ならESGの中では誰にも 負けないのですけど(~_~;)
 さて、有限会社は、いま株式会社の一種になりました。株券も発行でき
ます。(^o^)
 調べましたところ、たとえ有限会社といえども株券を発行
する際には、社員総会ではなく株主総会により定款を変更してその旨を
定めるだけでなく、登記も必要のようです。φ(..)メモメモ
 定款には、「当会社は、株式に係る株券を発行する」と定める例が多い
のですが、この際、「当株式会社は、・・・」としてみようかなと思っている
のですが、おかしいでしょうか。^m^



2007.05.15
【真っ赤な嘘】
(金子登志雄)

 再び富田文章をみながら、なぜ嘘は真っ赤なんだ、真っ黒のほうがふさわしいのにと
思ってしまいました。赤は激しい色で疑義がないからでしょうけど、黒も同じです。
 調べましたところ、真っ青が血の気が引いた後ろめたい状況ですから、それだと嘘が
ばれてしまうので、俺の言うことが信じられないのか!と、怒り狂った真っ赤な顔をして
嘘をつくと、嘘が真実になるのだそうです。これが語源のようです。
 そうではなく、嘘というものは、静かに誠心誠意つかなければならないものだと、昔、
著名な政治家がいっていました。
 以上、誠心誠意、嘘をついたつもりですが、信じていただけましたでしょうか。


2007.05.14【書き出し】(金子登志雄)

 「私の一日は、一杯の珈琲からはじまる」。うん、実にいい書き出しだ。
読み手をぐっと引きつける。「一日」と「一杯」と「はじまる」の対もよい。
さすがは富田さん、文章はこれでなくてはいけない。
 文章の書き出しは、人でいえば初対面の印象であり、最初が悪ければ、
あとでよくなってもだめ。野球でいえば、一番バッターが塁に出なければ
勝負がはじまらない。
 「私の一日は、一度トイレに行くことからはじまる」と正直に書いては
いけないのだ。わかったかな、文章修行中の〇〇さん。



2007.05.11
【HP開示しました】
(富田太郎)

 
私の一日は、一杯の珈琲からはじまる。
 午前中は、クライアントとの打ち合せ。
 午後は、資料を読みながら、静かに執筆・・・・・・。
 脱サラから、はや10年・・・・・・。司法書士・執筆業のような「自由業」は優雅です。

 というのは真っ赤な嘘で・・・・・・、そんな甘い世界が、あるはずもなく、
 平日は、顧客・登記所を走りまわり、夜は、規則正しく「コンビニ弁当」。
 夜半、自宅に戻れば「出版社」から怒りの督促電話・・・・・・。
 土日も、(原稿の)多重債務者の私は、殺風景な事務所で原稿を書いています・・・・・・。
 どうみても「自由業」ではなく「不自由業」です(苦笑)。 

 さて、遅れに、遅れましたが
 やっと、「富田の部屋」につき債務を履行できました。とりあえず無難路線でまとめましたので、よろしくお願いいたします。



2007.05.10
【印籠の効き目】
(大戸早規子・金子登志雄)

大戸 株式の譲渡制限の定め方ですが、
    定款*条 当会社の株式を譲渡により取得するには、
         当会社の承認を受けなければならない。
       A 前項の承認機関は取締役会とする。     
    とした場合に、2項は登記しなくてよいのですよね。
金子 当然です。きんざい「登記情報」昨年8月号で、ESGを
   代表して私は次のように説明済みですよ。
   株式の譲渡制限は「株式の内容」になった。(中略)この
   株式の内容としては、「会社の承認」を要することまでで
   あって、承認機関が取締役会か株主総会かなどは含ま
   れない。したがって(上記第2項)の部分は登記申請から
   除外しても差し支えない。
大戸 でも、地方の法務局で登記せよといわれた方がいるよう
   なのです。
金子 そういうローカルルールは困りますね。ESGの印籠じゃ
   通じないでしょうけど、今なら法務省か東京法務局の回
   答集にもあると思うので、それを印籠として示したら?
大戸 私、一度言ってみたかったんです。「皆の者、頭が高い!!!」
   でも、私、女です。助さんや格さんを演じられるでしょうか。

*会員紹介に【初瀬智彦】をアップしました。どうぞ、よろしく。



2007.05.09
登記簿謄本が法務局にない】(松山聡・金子登志雄)

松山 つい、登記簿謄本といってしまいますが、いまは「登記事項証明書」
   ですよね。
   税務署から謄本が必要だといわれ法務局に行ったら、謄本の申請書が
   ないので帰ってしまった人もいるようですよ。
金子 そんなのまだいいほうですよ。法務局の前で、「登記所がここだと聞
   いてきたのに、ここは法務局じゃないですか」と怒っていた人もいま
   すから。
松山 「謄本の写し」という表現もおかしいですね。謄本自体が原本の写し
   ですから。
金子 われわれも、戸籍謄本をコピーして、そのコピーに「『原本』に相違
   ありません」と証明しますから、人のことはいえないですよ。


2007.05.08
【登記は省略がお好き】(松山聡・金子登志雄)

松山 不動産の共有登記ですが
   AとBの共有でも「持分2分の1A」「2分の1B」と持分
   という用語は最初の人だけにしか付けないですね。
金子 登記は省エネが多いですからね。繰り返しは避けます。
松山 コンピュータ化されたのですから、省略しなくても面倒さはないと思います
   が・・・。見栄え優先ですよ。
金子 見栄えを優先すると、謄本のページ数が増え、謄本代が高くなりますが、
   責任をとってくれますか。
松山 撤回します。登記も司法書士も、見栄えじゃないですよ!。


2007.05.07【GWと自由業】(金子登志雄)

 とうとうGWも終わってしまいましたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。
家族サービスや帰省など、それぞれだったと思いますが、わがESGの主要
メンバーや会友のお仲間からは、GW中もメールが来ていましたから、それ
ぞれ休日仕事に精を出していたようです。私も同様でした。
 自由業の場合は、平日と休日の切れ目がありません。休日になると、
たまった仕事の整理だとか、平日にできないことをします。原稿書きなどは、
数時間集中的に行う作業ですから、休日が適しています。行き過ぎると、
締切り原稿の多重債務者である不自由業者になってしまいますが、該当者の
Tさんも、取立屋さんが休みだったため、少しはのんびりできたことでしょう。



2007.05.02【新・登記記録例】(松山聡・金子登志雄)

ある日のメール会話です。
松山 :定款に「当会社の公告方法は、官報に掲載する方法とする」などとあるとき、
  私は「官報に掲載する方法」と略すこともありますが、慣例なのか、「官報に掲載
  する方法とする」と述語まで記載する例が圧倒的多数ですね。なぜでしょう。
金子:登記簿の見出しに「公告をする方法」とあるのですから、単に 「官報」とだけ
  記載してもよいと思うのですが、そういう例はみたことがないですね。
松山:「発行可能株式総数」は「〇〇株」だけで、「とする」としないですよね。
金子:「取締役会設置会社に関する事項」は、定款に「取締役会を置く」と定めても、
  登記は「取締役会設置会社」とします。これは理屈じゃないですね。
松山:電子化をさらに進めて将来は、「取締役会設置会社に関する事項」につき、
   「〇」なんて記号になるかもしれませんね。
金子:私はそういう無味乾燥は嫌いですから、「貴見のとおり」「はい!」などという
  記載も認めてほしいのですが、受け付けてくれるでしょうか。



2007.05.01【電子申請と職権登記】(松山聡)

 みなさん、こんにちは。松山聡です。
 ESGの中では電子申請を担当しています。
 電子申請で困るのは、法務局が職権登記を忘れやすいことでしょうか。
 たとえば、有限会社を株式会社に移行させる登記では、役員の就任年月日の記載は登記官の役割です。これがよく忘れられます。
 われわれも、来た手紙にはメモを加えたりしますが、メールを加工しようとは思いもしませんので、電子申請に内在する問題かなと思っていますけど。

2007.04.27
【多重債務者】
(富田太郎)

 みなさん、こんにちは。富田太郎です。
 富田太郎の部屋がいつまでも工事中で申し訳ありません。
 ただいま、受験雑誌の原稿の締切りに追われる多重債務者ですので、いましばらくお待ちください。
 先日、事務所が入居しているマンションの管理人さんに言われました。「土日も夜遅くいるようですが、本当は住んでるんですか??」



2007.04.26【「法人等」→「もの」】(金子登志雄)

 昨日公布された会社法施行規則の改正部分がパブリックコメント案とどこが相違するのか、 早速チェックしてみました。
 次のような修正がありました。
 (原案)当該法人等が会社以外の【法人等】である場合にあっては、最終事業年度に相当するもの
 (修正)当該法人等が会社以外の【もの】である場合にあっては、最終事業年度に相当するもの
 「法人等」を「もの」と修正しただけですが、たぶん、文章表現として同一語が並ぶのは適当でないという配慮でしょう。それだったら「である場合にあっては」も同じだと思うのですが・・・。
 ということで、次ではいかがでしょうか。
 (修正)当該法人等が会社以外である場合には、最終事業年度に相当するもの



2007.04.25【改正に改正】(金子登志雄)

 本日の官報で会社法施行規則の一部の改正が公布されました。
 三角合併などの施行(5月1日)を前にして、情報開示事項を整備したものです。
 23日には合併登記などに影響する「登録免許税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令」が公布されました。  改正の都度、執筆中や校正中の原稿を改めねばなりません。辛い改正が続きます。5月1日になれば、少しは落ち着くでしょうが、まだまだ油断はできません。



2007.04.23 【福岡のソーシャル司法書士事務所】 (金子登志雄)

*先週のESGは、司法書士受験問題の作成・完成週間でした。
 作成者本人が全く気づかない誤植などがあるため、相互にチェックしました。
 こういう作業をしておりますと、法律案の誤植の少なさに驚きます。

*会友に福岡のソーシャル司法書士事務所を追加しました。
 ちょうど1年前、福岡で会社法を講演した際、丸田さんに太宰府天満宮を案内していただきました。



2007.04.14 【添付書面と添付書類】 (金子登志雄) 
 
 ただいま、中央経済社から出版する「商業登記全書」の私の担当である第7巻(組織再編)の校正中ですが(6月には出版予定)、急に添付書面と添付書類の使い分けに迷ってしまいました。
 商業登記法も登記通達も「添付書面」となっていますが、なぜか法務省のホームページの商業登記申請書の見本は「添付書類」となっています。著書にそのまま記載すると、読者から誤植がみつかっ たと連絡がありそうなので、ここは商業登記法に従い添付書面で統一すべきところでしょうか。
 なお、前々から指摘していることですが、株券「提出」公告というべきなのに、登記通達では伝統的に株券「提供」公告と表現しています。語呂がいいからでしょうか。もの書き作業では、読者から誤植の指摘を受けないように、つい、こういうことが気になってしまいます。


2007.04.13 【税理士会で講演】 (金子登志雄)

*5日前にカウンターをつけたら、もう100を超えていました。ほとんど仲間内の閲覧でしょうけど。

*今日は、埼玉県の某税理士会で会社法の講演でした。
 「登記原因情報通知書」とは何だという事前質問があったので、「そういうのは司法書士さんに聞いてください」と答えて笑われてしまいました。会社法が面白く、不動産登記の勉強はもうだいぶ離れてしまっています。

*謄本をオンラインで申請しようと昨日から挑戦しているのですが、さっぱりログインできません。今日も朝からだめで、夜の7時過ぎにやっとつながりました。しかし、「登記情報提供サービス」はこの時間では利用できないので、申請内容を直接入力しなければなりません。受付もされないので手数料も納められない。早期の改善をはかってほしいものです。