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こんにちはESG法務研究会です

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ESG法務研究会は、合併再編等会社法手続の実績は最大級!

TOPICS


1.最近の出版は次のとおりです。いずれも実務書であり、アマゾン等で、
 ご確認ください。
 (1)『募集株式と種類株式の実務〔第2版〕』…………2014年5月発売
 (2)『改正会社法と商業登記の最新実務論点』…………2015年11月発売
 (3)『論点解説/商業登記法コンメンタール』…………2017年2月発売
  (4) 『商業登記実務から見た中小企業の株主総会・取締役会』
                       …………2017年4月発売
  (5)『総務・法務担当者のための会社法入門』…………2017年10月発売
  (6)『事例で学ぶ会社の計算実務』………………………2018年9月発売
 (7)『商業登記実務から見た合同会社の運営と理論〔第2版〕』
                       …………2021年5月発売
 (8)『「株式交付」活用の手引き』………………………2021年7月発売
 (9)『親子兄弟会社の組織再編の実務〔第3版〕』……2022年9月発売
 (10)『組織再編の手続〔第3版〕』………………………2022年10月発売
  (11)『「会社法」法令集〔第14版〕』…………………2022年11月発売
 (12)『事例で学ぶ会社法実務【全訂第2版】』…………2023年2月発売
  (13) 『商業・法人登記500問』……‥‥‥‥‥………2023年7月発売
  (14) 『法人登記実務から見た労働者協同組合の運営』…2023年7月発売
 (15)『会社法務書式集〔第3版〕』………………………2023年7月発売

2.当事務所と親しい企業法務中心事務所が戦力となる人材を募集しています。
 下記に直接連絡してください。

(1)司法書士法人TOSグループ
 https://tos-group.co.jp/recruitment/

(2)東京共同司法書士法人
 http://corporate-legal-services-tokyo.com/

徒然日誌


2023.12.27(水)【本年を振り返って】(金子登志雄) 

 明日も営業日ですが、本徒然は本年最後のものにします。

 この1年を振り返ってみると、国際的には、ウクライナとガザ問題を契機に、
欧米の民主主義が偽善であり、いうこととやっていることが不一致であること
が庶民レベルでも世界中に知れてしまい、いわゆる民主主義国家内でも従来の
価値観に疑問がもたれるようになってしまいました。

 ガザ地域では米国兵器を用いたイスラエル軍により婦女子を含むパレスティ
ナ人2万人以上が惨殺され、暴力的で違法な入植活動により、子供を含むパレ
スティナ人数千人を監獄に拘束しておきながら(人質も同じ)、ハマスのテロ
から人質を救い民主主義を守るためだといわれても通じません。人道を忘れ資
本の力が支配する欧米型民主主義はもう誰も信じません。

 経済のグローバル化も価値観の植民地化として否定的に捉えられるようにな
り、これからは各地域の独自性や民族の伝統文化が重視される時代になりそう
です。負の面では各国で右翼の移民排斥運動が高まっていることは心配ですが。

 国内的にはコロナ不安の緩和で飲食店などの経営悪化が好転に向かったこと
を歓迎しています。職場近くの飲食店も金曜日はどこも盛況でした。

 個人的には事務所を千代田区から港区虎ノ門に移転したことが一番大きな変
化でした。通勤がぐっと楽になりました。

 仕事面では、常連顧客ばかりのため、例年どおりの成績だったと思います。
執筆業では上記トピックスのとおり数冊の改訂作業に従事しました。セミナー
講師は昨年はゼロだったのに本年は4回も務めました。

 ここ数年のコロナ禍は我々の生活様式さえ大きく変えてしまいました。私個
人でいえば、ネクタイなどはここ数年締めたことが一度もありません。毎週行
っていたクリーニングも数か月に1度になりました。マスクでメガネが曇るの
で外して以来もう数年です。そのメガネがいまどこにあるのかも分かりません。

 他の司法書士ブログや旧ツイッターと相違し、本ブログは主として私の意見
表明の場となっており、皆様に役立つ部分は少ないかもしれませんが、私は知
識よりも物事の本質に迫る切り口や解釈を重視していますので、明年もこの路
線を続けます。

 明年の最初の徒然は5日からにします。よいお登志雄。あ、お年を。


2023.12.26(火)【回顧2023】(東京・鈴木龍介)

 早いもので今年最後の投稿となりました。
 毎年恒例ですが、今年1年の自分のオシゴト(活動)を振返ってみたいと思
います。

 「実務(司法書士の業務)」のオシゴトについては、コロナ禍も(ほぼ)終
息し、オンラインより対面が格段に増えましたが、シチュエーションを踏まえ
てオンラインでという、良い意味でのハイブリッドが定着してきた感がありま
す。

 事務所としてはオーソドックスな組織再編や定時総会もののほか、比較的大
型の相続案件もありました。

 「話す」オシゴトについては、本(件)数的には昨年並みという感じでした。
3つ担当しています大学(院)は本年は完全対面授業となりましたが、民間主
催のセミナーは引き続きオンラインやオンデマンド方式が主流でした。

 「書く」オシゴトについては、引き続きの月刊誌連載2本を抱えるなか、ス
ポットでの寄稿が加わり、まずまず書いた感はあった1年でした。また、令和
元年改正会社法・商業登記法を受けて、これまで刊行した書籍の改訂版の執筆
もありました(刊行は来年のものもありますが)。

 「公務(日本司法書士会連合会副会長)」のオシゴトについては、2期目と
いうことで、要領も得てきた一方で、かなりハードな日々が加速している感じ
です。

 さいごに、本コーナー「ESG研究会 徒然日誌」については、話材選びに
は苦労した面はありますが、穴を開けることなく週一(毎週火曜日)での投稿
をすることができました。来年も継続し、少しでも有用な情報提供等ができれ
ばと思っています。

 以上で本年の私の〆とさせていただきますが、1年間ありがとうございまし
た。来年もどうぞよろしくお願いいたします。皆さまにとって、よき1年であ
ることをお祈り申し上げます。


2023.12.25(月)【総会決議の可決要件の記載法】(金子登志雄)

 本年最後の週になりました。〆の関係で事業年度の成績を締める定時株主総
会の議題の可決要件の話題にしてみました。

 当社(上場会社のアクモス)の定時株主総会議事録は、監査等委員である取
締役の私が作成して登記申請に利用しています。監査等委員会設置会社になる
前は監査役で作成権限がなかったため、何か不思議な感じがいまだにします。

 定時株主総会の第1号議案は普通決議の「剰余金処分の件」、第2号議案は
特別決議の「定款一部変更の件」でした。定款には「剰余金の配当等会社法第
459条第1項各号に掲げる事項については、取締役会で定めることができる」
と規定していますが、大企業でない限り、定時株主総会の承認決議にする例の
ほうが多い状況です。

 さて、皆さん、無事に可決された場合に、株主総会議事録で、どういう表現
をいたしますか。上場会社ですから「満場一致で可決した」はありません。

 おそらく、ほとんどの弁護士・司法書士は、第1号議案につき「出席株主の
議決権の過半数の賛同を得たので可決した」、第2号議案につき「出席株主の
議決権の3分の2以上の賛同を得たので可決した」とするでしょう。

 私作成の議事録は「議長は、第1号議案につき、議場に問うたところ、可決
に必要な法定多数の賛同を得られたため、本議案は原案どおり承認された。」
「第2号議案に移り、議場に問うたところ、可決に必要な法定多数の賛同を得
られたため、本議案は原案どおり承認された。」でした。

 普通決議も特別決議も「可決に必要な法定多数の賛同を得た」と同じ表現で
す。実に便利だと思いませんか。実は、某著名上場会社がこういう方法を採用
していたので、それを模倣いたしました。はじめは「法定要件を満たす多数の
賛成を得た」と登記で問題にならない確実な表現にしていましたが、徐々に慣
れてきて、いまは「法定多数」と省略系にしています。

 これで本当に大丈夫かと不安な方は、テイハン500問のQ172に書きま
したので、法務局から異議を出された場合には、それを示してください。


2023.12.22(金)【代表取締役の選定方法の並列】(金子登志雄) 

 昨日に倣い、今日は商業登記実務の択一問題まがいです。
 
 さて、株式会社の代表取締役の選定方法には、①定款、②取締役会の決議、
③定款の定めに基づく取締役の互選、④株主総会の決議の4つの方法がありま
す。これにつき、下記のクイズにつき、まずは貴方の法的センスで答えを出し、
その次に理由を考えてください。

 Q1:「当会社の代表取締役は取締役会又は株主総会の決議によって定める」
あるいは「取締役の互選又は株主総会の決議によって定める」と定款に定めて
も差し支えないですか。

 Q2:当会社の代表取締役は取締役の互選で定めると定款にある会社が株主
総会で定めてはいけないといわれていますが、定款で直接定めることはできま
すか。できると思った方は、理由もお願いします。

 Q3:定款で代表取締役を定めたときは定款を変更しない限り、代表取締役
を変更することができないといわれますが、定款の附則で定めた場合も同じで
すか。

----------------------------(回答)----------------------------------

 Q1につき不可と思った方にお尋ねします。「代表取締役は取締役会によっ
て定める。ただし、株主総会の決議で定めることを妨げない」がよくて、Q1
は不可といえますか。「又は」を使っての並列列挙は、会社法349条3項も
同じです。よって、法文も認めるとおり、Q1は問題ありません。

 Q2は回答は楽ですが、理由付けは難しいかもしれません。清算人の優先順
序と同じように考えてください。優先度の順に並べると、①定款→②定款を根
拠とする取締役会や互選→③株主総会です。②が規定されていたら、優先度の
劣る③での選定は不可ですが、より上位の定款で直接定めるのは可能です。

 Q3:定款本文で代表取締役は誰それと定めたら、憲法の天皇制や合同会社
の代表社員と同じく定款を変更しない限り、その地位は不動です。ところが、
附則で定める場合は設立時代表取締役とか、有限会社から通常の株式会社に移
行するなどの際に、最初の代表取締役と限定する定めになっていることがほと
んどであり、株主総会や取締役会の代用として定款を利用しただけですから、
定款を変更することなく代表取締役を交代させることができます。附則は時限
立法のようなものです。
----------------------------------------------------------------------


2023.12.21(木)【出席役員と清算人】(金子登志雄) 

 取締役ABC(代表取締役A)の株式会社が解散を決議し、同時に清算人と
して外部のDを選び、Dが席上直ちに就任承諾したとすると(つまり総会終結
前に解散の効力が発生したとすると)、株主総会議事録等に関して、面白い検
討課題が生じます。

 1.総会中にABCは出席役員でなくなったのに、出席役員としてよいのか。
→総会開催時点で役員だったので、私は問題ないと考えています。

 2.総会中に清算人になったDは出席役員か。
→491条で第4章第1節(株主総会及び種類株主総会等)の規定中取締役等
の規定は清算人等に適用されるとあるため、私は肯定説ですが、総会議事録の
出席役員は総会開催時点の議題に説明義務を負う役員のことだと思っています
ので、その出席役員には列挙する必要はないと考えています。

 総会中に就任承諾したら旧商法時代と同じく役員だから出席役員にも記載が
必要だとする一部に存在する文理解釈見解は、記載しないと就任承諾の効果も
ないと言い張るのでしょうか。

 3.清算人の住所は必要か。
→必要ありません。商登規則61条7項に清算人は記載されていません。

 4.清算人は代表清算人だから、その就任承諾に個人実印が必要か。
→不要です。商登規則61条4項に清算人は記載されていません。ただし、印
鑑届のために印鑑証明書は必要です。

 この関係で面倒だからと、就任承諾書又はその援用の議事録に実印を押して
印鑑証明書を付け、印鑑届には議事録に添付したものを援用するとしたら、た
まに登記所から注意勧告を受けます。

 5.代表清算人にという会社の代表者を選定したのだから、選任議事録には
旧会社代表者が会社実印を押す必要があるか。
→ありません。商登規則61条6項は適用されません。

 以上、司法書士試験の択一問題みたいですね。印鑑証明書が必要なのは印鑑
届のためであり、就任承諾書のためではないことは慣れないと迷うものですが、
いかがでしたか。


2023.12.20(水)【政治資金疑惑で国内も混乱中】(金子登志雄) 

 国際情勢がよくないのに、日本では自民党安倍派の裏金疑惑で混乱中、世の
中はどうなっているのでしょうか。

 15日本欄の「少数異見」風にいうと、保守穏健派といわれる宏池会出身の
岸田総理は、ずっと対抗勢力で傍若無人の保守強硬派安倍派潰しを狙っていた、
第1ステップとして、わざと安倍国葬を営み安倍派や安倍支持の右翼層が岸田
潰しに動かないよう工作し、かつ意識的に米国寄りの対応をした、第2ステッ
プとして、旧統一教会問題を利用し安倍派への世論の非難を放置し、安倍派の
選挙マシーン旧統一教会を解散に追い込むが、同時に安倍派に逆襲させないよ
うに、世論に反しても安倍派を政権幹部に登用した、第3ステップとして、安
倍時代に抑えられていた検察が安倍派に逆襲する時期を待っていた・・・これ
で自民党内の岸田対抗勢力が弱体化し、岸田長期政権になれる、これが岸田戦
略だというものでしょうか。

 岸田氏が小泉元総理のような喧嘩上手であったら、「安倍統一教会支配の自
民党をぶっ壊せ」と勇ましく世論を煽り立て、統一教会系安倍派候補には対立
候補を立てて結果的に自民党大勝利に結びつけたでしょうが、岸田氏はそうい
う性格ではありませんし、安倍派問題その他で自分の統治能力にさえ疑問を持
たれてしまい、支持率を大幅に下げているのですから、上記の少数異見はいさ
さか買いかぶりではないかと思っていますが、もし、少数異見のとおりだとし
たら、岸田総理は大した玉じゃないかと、見直してしまいます。

 ところで、政治資金キセイ法違反のキセイは規制ではなく規正であることを
ご存じですか。カネの問題をオープンにせよという趣旨であり、カネを集めて
はいけないという趣旨はありません。処罰されても、せいぜい罰金刑程度の軽
罪です。ただし、公民権停止になるので、政治家には重い罰則といえます。

 日本ではカネに汚い政治家への非難がすごいですが、西洋ではそうでもあり
ません。田中金脈のロッキード疑惑などは欧州では置きませんでした。米国に
なると、それはそれはケタ違いのカネの汚さですが、国民は寛容です。という
かマスコミも忖度するのか取上げません。

 政党選挙の英国では選挙にカネがかかりませんが、米国や日本では「人」を
選ぶ選挙制度のため、選挙にも政治家になった後の政策立案にも、政策を訴え
るにも資金が必要です。弱小政党のれいわ新選組の活動をみても、山本代表ら
は全国を飛び回り、街頭演説し、印刷したパンフレットを配布し、ホテルに泊
まり、………で、おカネがいくらあっても足りないだろうなと思います。

 政治家がカネを使えないと、優秀なスタッフも集められず、政策立案能力に
も欠け、結局のところ、官僚天下に対する政治主導は不可能になります。した
がって、上場会社の情報開示のように、情報さえオープンにすれば、どんなに
資金集めしようが(会社でいえば売上増大です)、もう少し寛容になるか、英
国のように政党選挙の仕組みにするか、どちらかにすべきだと私は思っていま
す。前者は米国や日本のように資本力支配に通じますから、後者型がいいです
ね。悪習の世襲もなくなるでしょうし。


2023.12.19(火)【「パブコメ」って?】(東京・鈴木龍介)

 法務分野に身を置いていると「パブコメ」という言葉をよく耳にしますが、
どういったものでしょう。

 パブコメとはパブリック・コメントの略称で、平成17(2005)年に改正され
た行政手続法により制度化された意見公募手続の制度です。なお、法制化前に
も同様の制度はありましたが、それを法律により明確化し、運用を強化したも
のといえます。

 具体的には、国などの行政機関が政令や省令等を決定しようとする際に、あ
らかじめその案を公表し、広く国民から意見・情報を募集し、その意見等を考
慮することにより行政運営の公正性と透明性の向上を図り、国民の権利利益の
保護に役立てることを目的としています。

 パブコメのおおまかな手続の流れは以下のとおりです。
  ① インターネットによる案の公示
  ②  原則30日間以上の期間を定めe-GOVサイトで意見公募
  ③  提出された意見をもとに案の修正等
  ④  結果の公示

 素材は多岐多様であり、新しいプロジェクトに関するものから既存の改正な
ど、令和5(2023)年12月時点で募集されている案件は3000件以上にのぼりま
す。なお、所管省庁別の検索や、「IT社会化推進」「都市計画」「地方自治」
といったカテゴリーからの検索のほか、キーワードによる検索も可能です。た
だし、パブコメ制度の認知度が低いことも課題であり、過去の案件をみてみる
と、意見が0件というものも少なくなくありません。そのようなことから、都
道府県等では、郵送やメールだけでなく、LINEからも受け付けるところも増え
ています。

 日本におけるパブコメと類似した制度は、欧米や中国など多くの国で導入さ
れています。2018年にEUで実施されたサマータイム制度に関する一種のパブ
コメである公開協議では、なんと460万件もの意見が集まり,その8割以上
が廃止を支持したこともあってサマータイム制度が廃止されるに至りました。


2023.12.18(月)【亡霊徘徊/就任承諾の議事録援用】(金子登志雄) 

 日本の法務局職員は実に優秀ですが、人事異動が激しいためか、商業登記に
詳しい人が減ってきているようで、最近おかしな補正が増えています。

 しばしば耳にするのは、取締役や監査役を選任し、議事録にも住所を記載し、
「被選任者は就任承諾した」と議事録に明記したのに、出席役員欄にその名前
がないと補正にされたというケースです。

 この誤った補正見解は、「登記情報」598号(平成26年9月号)85頁
の「登記官の目 就任承諾書の方程式」に自信満々に出席役員としての記載が
必要だとあったため、法務省見解かと勘違いされ、全国に浸透したものです。

 平成28年の下記の法務局職員のブログにも、補正対象として「株主総会議
事録に出席監査役として記載されていない監査役につき、『就任承諾書は議事
録の記載を援用』としている(議事録に「出席監査役」として記載していない
場合、監査役は総会に出席していないと判断しているので、援用不可)」とあ
ります。

  http://blog.livedoor.jp/houmu4180/archives/52228143.html

 しかし、これは商業登記を管轄する法務省商事課ですら否定している見解で
す。法務局職員の方は規定の趣旨に従って論理解釈せずに几帳面に杓子定規の
文理解釈をする傾向があり、必要的記載事項として「出席」役員とあるのだか
ら、ここに記載されない者は出席していないと解釈してしまうようです。

 そう思うだけなら勘違いで済みますが、上記ブログにあるように、上から目
線で、そう解釈しない資格者代理人は勉強不足だとまでいわれてしまいました
ので、反発した司法書士が多かったのか、神崎先生が主宰する商業登記倶楽部
に多数の問い合わせがあったようです。

 そこで、この誤った見解が全国に普及したら困ると商業登記倶楽部の名で、
私を含む4名で「登記情報」658号(平成28年9月号)13頁以下に「就
任承諾援用問題と株式の第三者割当問題に関する提言」で上記ブログ見解に徹
底反論いたしましたので、ぜひお読みください。

 反論の骨子は、出席役員名は議案に説明義務を負う株主総会開催時点からの
役員のことで、就任承諾の援用とは無関係である、後者は役員候補者として参
加したのであって役員として参加したわけではなく、就任を承諾したことを証
する書面としては、旧商法時代から、ずっと、その総会に出席し就任承諾した
こと
が明記されていれば、それで足りるとされてきたというものでした。

 これでお騒がせの上記ブログも更新が止まり混乱が収まったのですが、悪貨
は良貨を駆逐するのか、まだ完全には成仏していないようで、この亡霊見解が
またもや息を吹き返してきたわけです。反論しても上記のように「議事録に出
席役員として記載していない場合、他はともかく、当法務局では総会に出席し
ていないと判断しているので、援用不可」と局の運用方針を根拠に不可にして
るようです。

 応じないと登記が円滑に終わらないからと仕方なく応じる司法書士が多い現
状ですが、それをされると、その法務局は自分たちが正しいと思い込んでしま
い、他の司法書士に迷惑が及びます。上記の「登記情報」658号(商業登記
倶楽部の「解説・実務相談室」のQ54にも掲載中)を示せば、誤解を解いて
くれ即座に終わるはずなので、亡霊解釈は早く成仏させましょう。面倒な方は、
この徒然を示してもかまいません。

 ちなみに、私は単に「被選任者は就任承諾した」だけでなく、あえて「本総
会に出席中の被選任者は席上においてその就任を承諾した」と、「出席中」や
「席上」と2つも挿入し、「総会に出席していないと判断」させないようにし
ているためか、一度も補正指示を受けたことがありません。


2023.12.15(金)【少数異見あれこれ】(金子登志雄) 

 昨日は赤穂浪士が吉良邸に討ち入った旧暦の日でしたから(今の暦では1月
30日深夜の3時頃の出来事)、表題をテーマにしてみました。

 赤穂の皆様には叱られるでしょうが、これ現代風にいうと、真夜中に徒党を
組んでのテロにも等しい所業ですよね。仇討ちの大義についても、どうも赤穂
の殿様はてんかん気質だったようで、吉良のいじめが原因だというのは映画の
創作のようです。無残に殺害された被害者なのに、情報戦の敗者になったため、
いまだに悪人とされている吉良が気の毒でなりません。

 先週の8日は日本海軍による国家テロ(?)の真珠湾攻撃の日でした。日本
では大成功の奇襲攻撃とされていますが、そうでしょうか。当時の米国は欧州
が戦争中だったのに、国民の総意は他国のことに干渉せずのモンロー主義でし
たが、ルーズベルト大統領は、参戦予定でした。そこで、ターゲットを日本に
絞り、日本を挑発し、反撃してくるように仕組んだ結果です。これで、米国の
国民感情は一挙に「リメンバー・パールハーバー」一色になり、大統領の思惑
が大成功しました。

 2001年の9.11同時多発テロも米国が仕組んだものだと信じる方が米
国内を含め、いまでも多数存在します。あのビルの崩壊の仕方は爆発物による
もので飛行機の衝突によるものとしては不自然すぎるからです。真相はいまだ
に不明ですが、結果的に、これで米国にテロとの戦いという大義ができ、イラ
ク等を攻める口実ができたことだけは確かです。

 ウクライナ紛争は米国が仕組んでロシアを呼び込んだものだとみるのが世界
の多数派です。ウを利用し盛んにロを挑発していたのに、バイデン大統領は繰
り返し「米国はウに参戦しない」と公言していました。ふつう、こんな不利な
ことは口に出しません。その時、私は、これはプーチン大統領に対する「米国
は参戦しないから、安心して攻め込め」というサインに違いないとみていまし
たが、結果は周知のとおりです。

 これで米欧側は、プーチンは民主国家を侵略した悪魔だというキャンペーン
をはれるようになったわけですが、米国の物心両面の援助による暴力を含む反
米の国々に対する政権転覆のカラー革命等で繰り返し使われた手法であるため、
「陰謀の米国がまたやりおったか」と世界中にばれてしまうのも当然です。

 ガザ紛争のハマスは、パレスチナでアラファトのPLOが勢力を持っていた
ため(与党)、敵を分断し勢力をそぐため、その対抗勢力(野党)としてイス
ラエルの資金援助でできた勢力です。また、イスラエルの諜報能力は世界1だ
ともいわれていますから、10月7日のハマスの奇襲攻撃は、真珠湾と同様に
イスラエルが知っていて呼び込んだものだとの見方もあります。

 その後のガザへの攻撃でも病院など人が集まるところを集中的に空爆してい
るところをみると、イスラエルの目的は、国家防衛、テロ組織のせん滅を錦の
御旗にして、自国民を犠牲にしても、ガザからパレスティナ人全員を追い出す
か、それができないなら絶滅(ジェノサイド)させることだとしか思えないよ
うなふるまいをみると、そういう見方があっても不思議ではありません。ただ、
後講釈のきらいが強いので、いまのところ多数説にはなれていません。

 また、ガザ沖には豊富な天然ガス資源があり、それもパレスティナ人から奪
うためだともいわれています。これも付録で、主要目的かどうか………。

 いずれにせよ、民主国家では権力を維持するためには選挙での勝利や世論の
支持が重要です。そのため、大きな行動に出るためには国民感情を煽り一つに
まとめる必要があり、敵を作り「我々は被害者だ、この戦いは正義のためだ」
という大義を意図的に作り出すものです(小泉元首相の得意技で、当時の日本
国民は拍手喝采したものでした)。

 しかし、これまでは大衆操作にそれなりに成功し、異見に対しては陰謀論だ
と蔑むことで大衆の支持を得られていたのに、ガザ問題では成功していません。
情報化社会の進展で、海外の世論も容易にSNSで知ることができるようにな
り、為政者の垂れ流す情報が戦争遂行のためフェイクじゃないかと疑問を持つ
方が増えてきたためです。米国内もこれで荒れています。

 以上のうち、どれが陰謀論か知る由もありませんが、少数異見を陰謀論だと
切り捨て表の情報だけに洗脳された愚かな民にだけにはなるまいと、表情報と
裏の異見をハカリにかけて、バランスだけはとるように心がけています。


2023.12.14(木)【死亡を証する書面とは】(仙台・立花宏)

 先日、ある会社様から、役員の死亡による退任の登記のご依頼をいただきま
した。会社の担当者の方から、どのような書類を準備したらよいかと問い合わ
せをいただきましたので、登記申請には、委任状のほか、「死亡を証する書面」
として、戸籍謄本・抄本か死亡診断書の原本、あるいは、家族からの死亡届を
ご準備いただきたい旨を説明しました。

 その担当者は、準備ができたら連絡するとおっしゃいました。加えて、少し
不思議そうに「家族からの届出書でもよいのですね。公的な書類に限られるの
かと思っていました」とおっしゃいました。

 あまり意識したことはなかったのですが、言われてみると、たしかに、死亡
した旨が掲載された新聞広告では「死亡を証する書面」には該当しないとされ
ていますし(登記研究397号86頁)、①「戸籍謄本等の公的な書類」だけ
でなく、公的な書類とはいえない②「家族からの死亡届」も認められるのは何
となく不思議に感じました。

 とても気になり、いくつかの文献にあたり、調べてみると、この点について
解説している書籍(注)がありました。それによると、「死亡を証する書面」
には「死亡事実を証する書面」と「委任契約の終了を証する書面」の2種類が
あるということが書いてありました。

 その解説からすると、①は「死亡事実を証する書面」ということになります。
これは公的な書類でなければならないということだと思います。新聞広告はこ
の書面には当たらないということでしょう。

 ②は「委任契約の終了を証する書面」なのだそうです。役員に就任すると会
社とその役員との間に委任契約が成立したことになります。そして、当事者の
死亡は委任の終了原因ですから(民法653条)、役員の死亡により、その委
任契約は終了します。

 そして、その委任の終了事由は、相手方に通知したとき(あるいは、相手方
がこれを知っていたとき)でなければ、これをもってその相手方に対抗するこ
とができないとされています(民法655条)。死亡届はこの通知に該当する
ということのようです。

 ②は公的な書面ではありませんから、もちろん、「死亡の事実を証する書面」
としては不適格なのでしょう。しかし、対抗力の相手方たる会社側がそれを正
式な通知書として認め、会社代表者の届出印を押印した申請書(あるいは委任
状)とともに提出されるため、それ以上は登記官の審査権限は及ばず、取締役
の死亡による委任契約の終了を示す書類という位置づけで、「死亡を証する書
面」として認められるのだそうです。

 これを読み、そういう考え方もあるのか、と思うとともに、死亡届も、委任
契約終了の法律事実を証する書面ですし、結局のところ、「死亡の事実を証す
る書面」に変わりがないのではという疑問もわきました。

 たしかに、死亡届は、公的な書面ではありません。しかし、家族であれば、
最期の時に立ち会うことも多いと思いますし、それができなくても、なんらか
の形で、死亡の事実を直接に実感する機会があると思います。その死亡の事実
を直接に実感した家族が、故人の仕事先に対して取締役が死亡したとしてその
事実を届け出た書面は、取締役の死亡という事実について、公的な書面と同等
の証拠力を認めてもよいのではないかと思いました。
 
 いままで、深く考えたことがなかったことを恥ずかしく思うとともに、会社
の担当者の方には、この点を考える機会をいただき、感謝したいと思います。

 注)岩切雅人『Q&Aここから始める法人登記』(日本加除出版)298頁


2023.12.13(水)【平和ボケ?】(神奈川・酒井恒雄)

 数か月前に、事務所に外国人の方が訪ねてきました。私はマンションタイプ
の部屋に事務所を構えているのですが、インターホン越しに「○○という会社
はここですか?」と流暢な日本語で尋ねられました。

 ちがうと返答すると、ここに○○という会社あると聞いてきたのですがと、
ちょっと困ったような感じでした。○○の部分がハッキリと聞こえなかったこ
ともあり、「ちょっと待って」と言ってドアを開けたのですが、私が姿を見せ
た途端、すごい勢いで柱の陰に隠れてしまいました。

 その行動に私もビックリしたのですが、道案内のために私が出てきたことが
分かると、ホッとした表情でこちらにやって来ました。

 結局、その会社は隣のビル内にあることが分かり、お礼を言ってその方は去
っていったのですが、一連の出来事を振り返り、「おそらくあの方はアメリカ
人で、撃たれるかもしれないと思って身を隠したのだろう」と想像しました。

 外国に限らず、見ず知らずの人が訪ねてきたら、終始インターホン越しで対
応するのが正しい対応だったと思います。銃社会のアメリカでは、誤って見ず
知らずの人の家を訪ねてしまい、家人が強盗と勘違いして発砲してしまったと
いうような事件は珍しくないようです。

 自分も、インターホンのカメラ越しの死角にどんな凶器を持っているかもし
れない状況でドアを開けるなんて、相手からしたら常識外れの行動をしてしま
ったのだと思います。自宅だったら違う対応をしていたと思いますが、事務所
だからといって無防備な行動をとったのは、私が平和ボケしている証拠かもし
れません。

 司法書士事務所に強盗が押し入ったという話は聞いたことがありませんが、
漢字が読めない強盗なら、誤って?来る可能性もありますしね。昔はそんな心
配なんて要らなかったのになぁと、また平和ボケした考えが頭に浮かんでくる
のでした・・・。


2023.12.12(火)【「仕事」とは】(東京・鈴木龍介)

 私たちは、日々仕事をしているわけですが、仕事とはどういうものかについ
て、腑に落ちたというか、フィットしたエッセイ的な新聞記事が目に留まりま
した。特に琴線に触れたのが、“仕事とは、つまるところ『お願いされる』と
『お願いする』に行きつく”という一節です。

 私の仕事(司法書士)でいえば、たとえば、ある人(Aさん)から「会社の
設立を考えているのでサポートしてください」という「お願いをされる」とし
た場合、それに対して、私はAさんに「●●について決めて、お知らせくださ
い」と「お願いする」ことになります。

 そして、原始定款ができますと、私はAさんの代理人として公証人に認証手
続を「お願いする」ことになります。その際に、公証人から「それではAさん
に関する確認資料として▲▲を揃えてください」という「お願いがされる」こ
とになります。このような、やり取りが繰り返され、当初の依頼であるAさん
の会社の設立という仕事が完了するわけです。

 以上を踏まえますと、仕事を円滑に進めるには、上手に「お願いする」こと
が大事かなと思います。そして、上手に「お願いをされる」ように持っていく
ことも大事かなと思います。


2023.12.11(月)【誤解されない文章表現にするには】(金子登志雄) 

 8日金曜日の「単元株式からみた株式の内容と種類」につきましては、平常
の2倍近くの大勢の方が閲覧してくださり、ありがとうございました。幸先さ
んがXで取り上げてくれたためでしたが、旧ツイッターの情報拡散力はネズミ
算かと改めて驚きました。

 その後、幸先さんが参考までに該当頁の全文を示してくれたため、なぜ著者
が「1単元の株式数以外はその内容が異ならないA種類株式1000株とB種
類株式3000株とを発行し」と記載したのか、私なりに推測がつきました。

 その文章の直後に、「A種類株式とB種類株式の経済価値にはほとんど差が
ないため、遺産分割上の問題は起きにくいのではないか」とあったため、議決
権数以外は「その内容が異ならない」ことを先手を打って強調しておきたかっ
たのだと思います。

 初版第1刷では著者自身も校正の際に見落としてしまう誤字脱字や誤解表現
が避けられないものです。拙著についても、校正能力に抜群に優れた幸先さん
から必ず数個指摘されてしまいます。

 そこで、皆様が著者だったら、増刷の際に、どう手直ししますか。私だった
ら、「実質上その内容が異ならない」とか、「その内容がほぼ一致する」など
にするか、思い切って、「相続後の遺産分割を見据えて経済価値に大きな差が
生じないように、1単元の株式数以外は内容がほぼ同一のA種類株式と……」
と記載の順序まで改めるかもしれません(著者に対して僭越な内容でしたが、
以下につなげるための導入ですので、お許しいただくしかありません)。

 拙著『会社法実務〔全訂第2版〕』のQ1-1-2で、私は、「AとBであ
る。ただし、Cの場合はこの限りでない」だと、ただし書はBの場合だけを除
外したものだと誤解する人も出るので、「Cの場合を除き、AとBである」と、
文頭に「除き」としたほうが誤解されないと説明しました。定款に基準日を定
めた場合の会社法124条3項や、非取締役会設置会社の取締役就任承諾書に
住所が必要かの商業登記規則61条7項の解釈問題です。

 旧有限会社法27条3項には「定款若は社員総会の決議を以て会社を代表す
べき取締役を定め、……又は定款の規定に基き取締役の互選を以て会社を代表
すべき取締役を定むることを妨げず」でしたが、会社法349条3項は、順序
を変えて「定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によっ
て」にしてしまいました。

 この結果、「定款の定めに基づく」が「株主総会の決議」にもかかっている
と勘違いした登記所職員も現れ、定款を付けよと補正を求められた例も過去に
はありました。定款で代表者を定められることは会社法29条、株主総会では
同329条に原則的規定が存在するため、ここは「定款又は株主総会の決議に
よるほか、定款の定めに基づく取締役の互選によって」とすべきでした。

 皆様も勘違い解釈の理由を探索するだけで終わらせずに、どう修正するかま
で踏み込んでみませんか。1つの検討課題で2つや3つの成果を得られます。


2023.12.08(金)【単元株式からみた株式の内容と種類】(金子登志雄)

 拙著の共著者・幸先司法書士のXに、実に面白い話題が投稿されていました。
まずは、次をみてください。

  https://twitter.com/hiroaki_kosaki/status/1730474857228566694

 この「1単元の株式数以外はその内容が異ならないA種類株式1000株と
B種類株式3000株とを発行し(A種類株式の1単元の株式数は100株、
B種類株式の1単元の株式数は1000株)」をどういう意味だと受けとめま
したか。

 最初は私も、幸先さんと同様に「その内容が異ならない」を真に受けていた
ため、A種とB種が同一内容なら同一種類株式じゃないか、弥永見解は、同一
内容でも単元株式数を変えれば異種類にできるという斬新な見解なのか、まさ
か、そんなことができるわけがないと思っていました。

 しかし、落ち着いて、徒然なるままに、これに反論しようと考えていたとこ
ろ、A「種類株式」、B「種類株式」という名称や、A種の発行とB種の発行
を分けているのは、両者は正真正銘の異種類株式であり、「その内容が異なら
ない」は完全に同一内容という意味ではなく、部分的にわずかに変えたもので
はないかという気がしてきました。

 別々の種類株式でも同一内容に変更すれば、名称が相違するので異種類扱い
でよいといわれることもありますが、最初から同一内容で発行することは困難
でしょうから、例えば、A種には令和6年1月からB種と交換することのでき
る取得請求権あり、B種には令和6年2月からA種と交換の取得請求権ありと
しただけで、異種類でしょう。一方に解散しない限り無意味の残余財産分配優
先条項を付けただけでも異種類です。

 次に、発行済みA種は1000株、B種は3000株としか記載されていな
いことにも疑問を感じました。この合計4000株が発行済みの全数だとする
と、その200分の1の20株が単元株式数の上限になり1単元100株など
あり得ないからです。また、A種とB種があって普通株式が登場してこないの
も不思議ですから、これら以外に普通株式20万株以上があるという前提の記
述ではないかという気がしてきました。

 ということで、本書は、上記の部分だけでいうと、誤解を招きかねない舌足
らず表現が使われているため、我々も振り回されてしまった可能性が高いと思
い直しました。

 いままで、弥永見解が同一種類株式内でも単元株式数を複数定められるとい
うものと思い込んでいる間は、順不同で、以下のように反論するつもりでした。

 1.同一種類の株式の議決権数に差を設ける手段としては、会社法109条
の属人的株式を定款に定めて株主の議決権数の問題にする方法があり、わざわ
ざ、単元株式数を利用する必要はない。

 2.「株式の内容」と「株式の種類」は区別され、後者は108条1項各号
に掲げる事項について内容の異なることを要件としているため、同一内容で単
元株式数だけ異なるものは種類株式とはいえない。
 
 3.188条3項に「種類株式発行会社においては、単元株式数は、株式の
種類ごとに定めなければならない」とあり、種類株式発行会社でなければ単元
株式数は1つに限られるというのが会社法の趣旨である。

 4.登記申請しようにも「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式
の内容」に何も登記されていないのに、単元株式数の欄に「A種類株式/1単
元100株、B種類株式/1単元1000株」などとする登記は受理されない。

 5.同一内容なのに単元株式数の相違で、あたかも種類株式のように扱うの
は、「種類単元株式」の創設であって、立法論としてはともかく、現行会社法
では無理である。

 6.同一種類でありながら、1単元100株、1単元1000株を肯定する
のは、1株に0.01議決権ものと、0.001議決権ものを認めているのと
同じであり、行き着くところ、複数議決権株式を認めるのと同じことになり、
同一種類の株式間の平等原則に反する。

 7.定款変更でA種の1単元100株を10株に変更しようとした際は、議
決権の持分比率で不利益を受けるB種類株主を保護するため種類株主総会が必
要になるはずだが、B種類株式は種類株式ではないため、種類株主総会も開け
ず、322条の適用どころか、116条の反対株主の買取請求も無理である。

 う~ん、やはり、弥永本の舌足らず表現がお騒がせ原因ですね。無駄な時間
を費やしてしまったと思う反面で、幸先さんには、こういう推理が大好きなの
で、よい退屈しのぎができました、ありがとうといっておきます。


2023.12.07(木)【私の司法書士試験(回想)】(金子登志雄)

 火曜日の鈴木さんの「司法書士試験(回想)」に便乗します。司法書士にと
っては誰でも試験のことが何年経ても忘れられません。私も同じです。

 いまでは高齢者の私が20歳代の頃の司法書士のイメージは、法務局を定年
退職した老人が法務局の周囲の3坪店舗で一人で黙々とタイプを打っている姿
であり、若い人が到底あこがれる職業ではありませんでした。

 また、当時の司法書士試験は、都道府県別の一種の任官試験みたいなもので、
簡単な試験でしたが、合格後2年以内に開業しないと資格が消えたため、この
面でも受験を目指そうとする人はいませんでした。そもそも、司法書士がどう
いう仕事であるかを法学部卒の私ですら知りませんでした。

 ところが、昭和53年に司法書士試験が国家試験になったら、その後不動産
バブル期もあり、予備校が年収うん百万円の自由業だなどと宣伝し、年々人気
が高まり、受験生が殺到したのか試験の合格率も2~3%になりました。昭和
の後半から平成の初期の頃です。

 平成6年1月に私は自宅を買い換えました。その時、銀行紹介の若い司法書
士に雑談で試験について尋ねたら「書式試験は完璧にできたと思わないと合格
していません。それだけ厳しい試験でした」との返事でした。そんな質問をし
たのは、バブルの崩壊でM&Aの仕事が減り将来の生活不安を感じていたこと
と、いずれは法律を使った仕事をしたいと思っていたため、私も司法書士資格
の取得を考えはじめていたためです。

 若い頃、司法試験を経験し、法律知識の点では司法書士以上という自信があ
ったので、予備校は一切行かず、その年の7月はお試し受験でした。中年にも
なって恥ずかしいなと想像して受験会場に行ったのですが、同世代が多数おり、
安心したものでした。試験では、午前の択一は簡単でしたが、午後の書式試験
が手に負えず予想どおり敗退。使った書店で購入した問題集よりも本試験のほ
うが難しいので、これでは永久に合格は無理だと思いました。

 その後、通勤途上の渋谷駅の地下の書店で当時定評のあった司法学院という
予備校の難問問題集をみつけ、これだと思い、翌平成7年は自信満々で受験。
択一は容易にパスしましたが、またもや不動産の書式で失敗し、これでは書式
問題の運不運で3回に1回の合格確率じゃないか、合格は来年か、再来年かと
見通しもつかず、呆然としたものでした。

 確率3回のうち2回目となる翌平成8年は不動産登記書式は完璧でしたが、
得意の商業登記書式が8割の出来だったため、あ~あ、また来年かと思い、試
験発表など、もちろんみていません。ところが、数か月後に自宅から「合格は
がきが来ている」と電話がありました。このはがきがなければ、不合格と信じ
込んでいた私はいま司法書士をしていたかどうか………。

 その後の口述試験は15分のところ、すらすら回答し10分で終わりました。
残り5分は、試験官との雑談でした。

 ということで確率3分の1のうちお試し受験を除くと2回めでやっと合格し、
その年の12月に即座に登録しました。私が48歳の時でした。

 その後は会社役員との兼業司法書士で、2か月に1件程度しか司法書士仕事
がありませんでしたが、翌平成9年の合併法制の大改正、平成13年の額面株
式の廃止による無額面株式への一本化、相次ぐ商法の改正、平成18年の会社
法施行という流れにうまく乗れ、拙著をみてくれた上場会社数社の顧客もつき、
今日に至ります。

 合併も無額面株式も私の得意分野でしたし、当時の会社(社内に当事務所)
は千代田区神田神保町にあり、何と東京法務局が当事務所の近くに移転してき
て、一時は当事務所は東京法務局に最も近い事務所でした。

 こうしてみると、平成8年合格は実にグッド・タイミングで、神様がこの時
期を私のために選んでくれたように感じませんか。ただし、金子という姓なの
に、お金の神様とは無縁のようで、開業30年近くになるのに、いまだに一人
事務所です。いまは長寿の神様とのご縁をはかっている最中であり、生涯現役
を目指しているところです。


2023.12.06(水)【「年金の繰り下げ受給」と「死亡」について】
                          (島根・根来川弘充)

 先日、年金について、研修を受ける機会がありました。講師は年金事務所の
方です。

 年金制度は、あえて、大抵の人がすぐに分からないようにしているのではな
いかと思えてしまう複雑な制度だと思っており、今さらながら、はじめて知る
ことがありました。

 65才になって、70才から受け取れるよう、繰り下げ受給を申請した場合、も
し、70才になる前に亡くなったら、私は、年金は受けとることができないと思
っていました。

 ところが、65才から亡くなるまでの年金は、未支給年金として、親族は受取
ることができるのだそうです。理由は、「選択を遡らせることができるから」
ということでした。

 「長生きした場合」と「そうでない場合」と、不公平感はやむを得ない制度
だと、固定観念がありましたので、とても得した気分になりました。

 ただ、受取る親族には条件があるようです。結局は複雑な制度であることに
はかわりないのかもしれません。

 結局のところ、年金事務所にダメかもしれないと思うことでも、遠慮なく聞
く方がよいと思いました。


2023.12.05(火)【司法書士試験(回想)】(東京・鈴木龍介)

 先般、今年度の司法書士試験の結果について取り上げましたが、ふと昔のこ
とを思い出しました。

 そんなことで、今回は30数年前の私の司法書士試験(受験)を回想しつつ、
徒然してみたいと思います(かなり古い話なので多々記憶違い等がありそうで
すし、あまり参考にはならないかもしれませんが・・・)。

 当時の司法書士試験ですが、一次試験は択一、二次試験は択一プラス書式と
いう出題形式自体は今と同じです。それを一日の午前・午後で行うので結構ハ
ードで、試験の終了時にはかなりぐったりしたような記憶があります。ちなみ
に、出題分野に憲法はありませんでしたが、その他はおおむね、現行と同じか
と思います。今となっては、どのような問題が出題されたかは、まったく覚え
ていません。

 当時の合格率は2%後半から3%前半でして、私は某大学の大教室で受験し
ましたが、席に着いた時に、この教室の中で合格するのは5人くらいなんだと
思った記憶があります。

 一次・二次試験の発表は、自宅のポストに着いたハガキで知ったように記憶
しています。もちろん嬉しかったはずですが、このあたりの心持ちも、あまり
覚えていません。その後、三次試験として口頭試問があるのも今と同じですが、
事前の試験対策としては一次・二次試験に合格した仲間と軽く相互練習のよう
なものをした程度だったかと思います(基本的に全員合格するもの思っていま
したので(今も同じでしょうか?))。

 最終の合格発表は、たしか法務局の掲示を見に行ったと記憶していますが、
その頃には、司法書士になって、何をするか、どうするかという次のステップ
に気持ちは移っていたように思います。なお、受験予備校に依頼されて合格体
験記なるものをしたためたと思うのですが、元原稿を含め手元にないのは、今
となっては少し残念な気がしています。

 あらためて司法書士試験受験を振り返りますと、自分なりにではありますが、
私の生涯でもっとも勉強をしたというのは間違いないところです。そして、そ
の時に習得した知識等が30年以上を過ぎた今でもベースとなっていることも
間違いありません。


2023.12.04(月)【債務超過の簿価出資の計算】(金子登志雄)

 土日は計算の難問に挑戦しました。

 債務超過額が200万円の事業財産を簿価で現物出資した場合と、合併され
た場合で、かつ対価が新株式80株と自己株式20株(簿価1000万円)だ
った場合の計算を比較してみました。

  新株式発行分    △200の80% = △160万円
  自己株式処分分   △200の20% =  △40万円
  自己株式処分差損分 △40-1000 =△1040万円
 
  資本金等増加限度額                0円
  株主資本等変動額  △200-1000=△1200万円

 計算規則14条によると、新株式分△160万円はその他利益剰余金の減額
となり、自己株式処分差損額△1040万円はその他資本剰余金の減額です。

 合併に関する計算規則35条2項ただし書には「株主資本等変動額が零未満
の場合には、当該株主資本等変動額のうち、【対価自己株式の処分により生ず
る差損の額】をその他資本剰余金の減少額とし、その余の額をその他利益剰余
金の減少額」とあるため、【  】部分は募集株式の場合と同じく1040万
円かなと思うでしょうが違うのです。

 同じ規定が吸収型再編の吸収分割にも株式交換にも株式交付にもあり、拙著
『株式交付の手引き』で、この部分に疑問を示しましたが、昔の拙著『これが
増減資だ組織再編の計算だ!』に共著者有田会計士が説明しており、やっと理
由が分かりました。

 平成21年の計算規則改正前には、簿価でいえば受入額を意味する「吸収型
再編株主資本変動額」(現行法でいえば「株主資本等変動額に対価自己株式の
帳簿価額を加えて得た額」)と、そこから自己株式簿価を控除した「株主払込
資本変動額」(現行法の「株主資本等変動額」)という2つの用語があり、前
>者は「株主資本」の変動だから資本勘定だけでなく利益勘定をも変動させるが、
後者は「払込資本」の変動だから資本勘定しか変動させないものだとされてい
ました。

 もう1つ条件があり、
 「株主払込資本変動額=吸収型再編株主資本変動額-対価自己株式簿価」
において受入額が負の場合は吸収型再編株主資本変動額は0円として計算せよ
とあり、「0-自己株式簿価」より、株主払込資本変動額は△1000万円と
なります。言い換えれば、自己株式処分差損額が1040万円になっても、資
本勘定(その他資本剰余金)の減額は、自己株式簿価1000万円が限度だと
いうことです。そして、その余りの200万円がその他利益剰余金の減額です。

 間違っていないと思いますが、これを前提に、なぜこうなるのかが本稿の主
題です。

 勝手な想像ですが、株式を交付して資金調達したのだから、本来なら資本勘
定を1200減少させるべきだが、新株式に対応する資本勘定である資本金や
資本準備金を減少させるわけには行かないため、新株式対応分は利益剰余金の
減少とすることにし、組織再編の場合は株主資本の組換えも再編行為の1つだ
から、やたらに資本勘定を減少させるべきではないとして自己株式簿価を限度
にしたのかと思いました。

 それにしても、何の説明もなく「対価自己株式の処分により生ずる差損の額
は自己株式簿価の限度だ」と解釈せよというのは無理を要求するものですし、
「株主資本等変動額が零未満の場合」には、新株式分は正、自己株式処分分は
負(差損発生)で後者の負が大きい場合も含みますから、ここは「株主資本等
変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額が零未満の場合」とすべきで
した。バグだと確信していますが、反論のある方は、ぜひご指導ください。


2023.12.01(金)【種類株式発行会社の株主リスト】(金子登志雄)

 普通株式と議決権のあるA種類株式を発行している種類株式発行会社の資本
金の額の減少登記を申請しました。議事録関係の添付書面は種類株主総会が不
要なので、株主総会議事録だけでした。

 簡単な登記なのに、株主リストの株式数に「普通株式」という記載がないと
補正になったため、種類株主総会決議が不要なのに、なぜ必要なのかと疑問に
思いました。商業登記規則61条3項にも「当該株主のそれぞれが有する株式
の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)」
とあるではないかと反論してみました。

 登記所から検討しますという返事があったのですが、検討結果は「その前の
第2項に『株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類
及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)』とありますよ」でした。私
の敗北です。法務省のホームページにも「株式数(種類株式発行会社は,種類
株式の種類及び数)」とありました。

 規則61条3項の「登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議
を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあ
つては、その種類の株式の総株主)の議決権」を私は「種類株主総会の決議を
要する場合に限り、株主総会の場合であっても、その種類の株式の総株主」と
読んでしまったわけで、前項については目が行かなかったわけです。

 あとで思ったのですが、A種類株式が完全無議決権株式であれば私も「普通
株式〇〇株」と記載したでしょうが、普通株式もA種類株式も議決権株式だか
ら、株式の種類を記載する意味がないと無意識に思ったのでしょう。意識が覚
醒した今でも、なぜ記載する必要があるのかと思っていますが、おそらく株主
名簿の記載事項が「株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株
式の種類及び種類ごとの数)」となっているから、そうしただけでしょう。

 こういう失敗は自分でも歓迎しています。次から気をつけますし、ここの部
分は株主名簿どおりに記載することになっているという理由に気づくことがで
きたからです。理由が分ければ記憶も確実になります。


2023.11.30(木)【日本登記法学会第8回研究大会】(仙台・立花宏)

 21日(火)の本欄で鈴木龍介先生にご紹介いただきましたとおり、11月
25日(土)は、日本登記法学会第8回研究大会で「持分会社の持分相続と登
記」をテーマに発表させていただきました。このような機会への参加の道を開
いてくださった鈴木龍介先生には感謝しております。

 なお、お恥ずかしい話ですが、当日は、用意していたパワーポイントをうま
く動かすことができず、運営の皆様に助けていただき、なんとか発表を終える
ことができました。運営の皆様には、この場をお借りして、御礼申し上げます。

 また、私が発表した午前の部のモデレーターを務められた名古屋大学の中東
先生、そして、同じ午前の部で「株式会社の株式相続と登記」をテーマに発表
された日本大学の大久保先生には、私が発表を手間取り、ご迷惑をおかけした
のにもかかわらず、温かい言葉をおかけいただき、とても救われた気持ちにな
りました。お二人のような素晴らしい方とお会いすることができたことは、私
にとって、とても得難い経験だったと思います。

 そして、発表後は、質疑応答の時間があり、いくつかの質問やご指摘をいた
だきました。今後、私が合同会社をはじめとした持分会社の理解をさらに深め
ていけるような、とても貴重な内容で、ご質問やご指摘をいただいた方にも、
心より感謝を申し上げます。

 鈴木龍介先生にご紹介いただきましたとおり、私の発表のテーマは、会社法
施行前に発出された登記先例(昭和34・1・14民甲2723号回答ほか)
が合同会社にも適用されるか否かというもので、先例の内容は、持分会社の社
員(持分権者)に相続が発生し、その後、遺産分割協議が成立し、相続人のう
ち1人が承継した場合、いったん法定相続人全員を(業務執行)社員として登
記したうえで、承継者に対し、その他の相続人からの持分譲渡の登記をすべき
であるというものです。

 私の結論としては、合同会社にも適用されるというものでした。相続開始後、
相続人が業務執行にかかわり、会社債権者に対しての責任が生ずる場合があり
得ること、そして、相続人のうち誰が最終的に持分の承継者となるのかという
点について、他の社員は大きな利害関係を有しているのであり、そうした観点
から、間接有限責任社員のみで構成される合同会社についても、持分の相続に
遺産分割の遡及効はなじまないというのが実体法上の理由です。そして、商業
登記は中間省略登記を認めていないと思いますので、実体上、いったん相続人
全員が社員となり、遺産分割で持分を譲渡しているのですから、その過程を忠
実に登記する必要があり、相続人全員の登記を省略することはできないという
のが私の主張です。

 ただ、先日の鈴木龍介先生のコラムにあったように、遺産分割により持分を
承継しなかった相続人については、登記をしたくないといったニーズもあるの
だろうと思います。

 この点については、遺言の利用、そして定款規定の工夫により実現できる余
地があり、司法書士が関与する場合は、定款作成の際等に、当事者の意向をよ
く確認し、必要な対策を検討する必要があるともいえるように思いました。
 
 法務省の登記統計を見ますと、令和5年については、9月までの月別の登記
件数が公表されており、合同会社の設立数は、その時点までで3万件を超えて
います。このペースでいけば、設立数は年間4万件前後(令和4年は約3万7
千件)に増加すると予測されます。

 設立数が増えれば、当然ながら、世の中に存在する合同会社の数が増え、私
たち司法書士が、合同会社の実務に関与することが増えていくことが予想され
ます。そうすると、実務の中で、合同会社についての法制度や登記制度につい
て、どのように理解すべきなのか、悩ましく感じる事案が増えていくのではな
いかと想像します。

 皆様のお役に立てるように、これからも、少しずつでも、合同会社について
研究し、理解を深めていき、そして、また、何かの機会に、自分なりの意見を
発表していきたいと思いました。 


2023.11.29(水)【新株発行と自己株式処分の併存】(金子登志雄)

 月曜日に引き続き、セミナーでの講義内容の一部をご紹介しましょう。

 会社法では自己株式の処分も募集株式の発行等の1つとされました。「等」
が自己株式の処分のことです。念のため、会社法で株式の「発行」という場合
は新株式のことであり、株式の「交付」という場合は自己株式を含みます(会
社法2条の新株予約権の定義参照)。

 「募集株式の数 100株」と決めておき、交付する自己株式数の決定は募
集時ではなく割当時で差し支えありません。

 以上のとおり、流通株式の増加という点では新株式と自己株式は同じ効果で
も、資本金額への計上では同じ扱いはなされません。自己株式は新株式時代に
資本金を計上済みだからです。

 では、新株式80株、自己株式20株で合計100万円の出資を得た場合は、
資本金計上額の上限(資本金等増加限度額)はいくらになりますか。

 合計出資額100万円のうち株式発行割合80%に対応する出資額が80万
円、自己株式処分割合20%に対応する出資額が20万円ですが、20株の自
己株式簿価次第で次のようになります(実務では第1号議案/募集株式発行の
件、第2号議案/自己株式処分の件と2つに分けることもありますが、払込期
日が同日であれば、併存と同じ計算が可能です)。 

 ① 自己株式20株の簿価が15万円だとすると、自己株式処分差益が5万
円であり、これは、もう資本金にできず「その他資本剰余金」に計上され、資
本金等増加限度額は新株式分の80万円です。

 ② 自己株式20株の簿価が30万円だとすると、自己株式処分差損10万
円となり、これは「その他資本剰余金」の減額になるといいたいところですが、
新株式分80万円から控除され、資本金等増加限度額は70万円になります。
1つの募集行為で一方の科目をプラス、他方をマイナスにするのは不適当だか
らでしょう。

 この②につき、法務局による資本金計上証明書の書式例は次です(①の場合
は下記の⑥を0円にします。条文番号は会社計算規則による)。
----------------------------------------------------------------------
 ① 払込みを受けた金銭の額(14条1項1号)       金100万円
 ② 給付を受けた金銭以外の財産の給付価額(14条1項2号).  金0円
 ③ ①+②                       金100万円
 ④ 株式発行割合                       80%
 ⑤ ③×④                        金80万円
 ⑥ 自己株式処分差損(14条1項4号)           金10万円
 ⑦ 資本金等増加限度額(⑤-⑥)             金70万円
----------------------------------------------------------------------

 しかし、自己株式処分差損は「自己株式簿価-合計出資額×自己株式処分割
合」ですから、上記の式は、
合計出資額×株式発行割合-(自己株式簿価-合計出資額×自己株式処分割合)
=合計出資額×(株式発行割合+自己株式処分割合)-自己株式簿価
=合計出資額×1-自己株式簿価
=合計出資額-自己株式簿価
 となります。すなわち「会社への収入から会社からの支出を控除した正味の
財産増加額」のことです。100万円から自己株式簿価30万円を控除するだ
けで暗算でもできるのに、えらい複雑な計算式を求めたものです。

 登記の添付書面として、上記を作成する際に新株式81株と自己株式18株
で99万円の出資を得るような場合は、④の株式発行割合は、81/99です
が、0.818・・・などと少数にしないことが重要です。⑤の計算(99万
円×81/99)で分母が消えることがほとんどだからです。

 面白いと思いませんか。この創意工夫こそが商業登記の面白さです。

(ハマスの人質への扱い)
  https://twitter.com/ShortShort_News/status/1728586567575622041


2023.11.28(火)【立花報告について~日本登記法学会第8回研究大会】
                           (東京・鈴木龍介)

 先日、ご案内いたしました日本登記法学会の第8回研究大会(本大会)が去
る11月25日に開催され、盛会のうち終えることができました。運営者の一
人として、ご登壇・ご参加いただきました皆さま、その他関係各位に厚く御礼
申し上げます。

 本大会の午前の部(商業・法人登記関係)では、本コーナーでもおなじみの
立花さんが「持分会社の持分相続と登記~合同会社」というテーマで報告(本
報告)されましたが、今後の実務でも頻出しそうな論点ですので、ザックリと
概要を紹介したいと思います(立花さん、誤解や補足があれば、フォローお願
いしますね)。

 合同会社は会社法で創設された持分会社の一類型ですが、会社法施行前に発
出された登記先例(昭和34・1・14民甲2723号回答ほか/本先例)が
合同会社にも適用されるか否かというのが本報告の問題意識です。

 ちなみに、本先例は持分会社の業務執行社員(持分権者)に相続が発生し、
その後、遺産分割協議が成立し、相続人のうち1人が承継した場合、いったん
法定相続人全員を業務執行社員として登記したうえで、承継者がその他の相続
人の持分譲渡の登記をすべきであるというものです。

 本報告における立花さんの一応の結論としては、民法909条ただし書[遡
及効の制限]、会社法586条[持分譲渡と責任]・597条[業務執行有限
責任社員の責任]を踏まえ、合同会社にも本先例の適用があるいう見解が示さ
れました。それはそれで理屈的には納得するものでしたが、有限責任である合
同会社の特質を考慮したうえで、当事者の認識を含む実際のニーズを踏まえ、
本先例の射程を合同会社にも及ばせるのが妥当かどうかという点を、今一度考
える機会になりました。

 いずれにしましても、プレゼン資料やレジメも充実した学会報告であり、見
事でした。


2023.11.27(月)【株式の募集と割当て】(金子登志雄)

 地獄にも等しいガザ情勢における人質の交換は一抹の明るいニュースでした。
イスラエルがパレスティナ人の子供まで含む民間人多数(入植に抵抗した人な
ど4500人とか6000人とかいわれています)を長期間拘束していたことが世界中
に知れ渡ってしまい、ハマスによる人質確保を強く非難していたイスラエル支
持の欧米メディアはまたもやそのダブスタぶりで信頼を失ってしまいました。

 さて、25日土曜日の午後は、鈴木龍介さんと同じく、愛媛県司法書士会主
催によるZOOMセミナーで講師を務めました。7月に続き2度目であり、前
回が不評ではなかった証拠としてうれしく思いました(研修担当及び受講生の
皆様、今度もお世話になりました)。

 今回は、役員変更や増減資などの日常の業務に関わる勘違い解釈を主テーマ
にしました。本欄の閲覧者として司法書士試験合格者の方もいらっしゃるよう
なので、講義内容の一部をご紹介しましょう。

 非公開の取締役会設置会社が株主総会で「Aに100株を割り当てる」と募
集株式の発行を決議しました。会社法204条2項によると割当決議は取締役
会ですることになっていますが、取締役会より上位機関の株主総会で決議した
のだから、取締役会の決議は不要だとの見解もかつては存在しました。この見
解が誤りである理由(取締役会の権限を侵食するからとの理由以外のもの)を
説明してください。

 本頁の上記トピックスにある拙著『募集株式と種類株式の実務』で詳細に説
明していますが、答えは、そもそも「Aに100株を割り当てる」という株主
総会決議は、「Aに出資をお願いすることにした」というだけで募集の決議に
過ぎないからです。

 実際にはAさんの内諾を受けて募集を決議しますが、会社法の定める順序に
よると、次になります。
----------------------------------------------------------------------
募集決議は割当決議ではない。
 ① 募集の決定:Aさんだけを対象に株式の引受けを勧誘しよう。
 ② 募集行為:Aさん、出資してよ。
 ③ 申込み:Aさんが申し込む。
 ④ 割当て:Aさんに割り当てるという取締役会決議を行う。
 ⑤ 引受け:Aさんは株式引受人になる。
 ⑥ 払込み:Aさんは払込期日に株主となる。未払いは失権(208条5項)。
----------------------------------------------------------------------

 ④の割当ては契約でいうと「承諾」に該当し、⑤の引受けは契約効果であり、
⑥の払込みは契約義務の履行になります。

 なお、非取締役会設置会社では割当権限も株主総会にありますから、①と④
を同一の株主総会で決議することもできます。その際に、登記実務では「Aか
ら申込みがあることを条件とする」と議事録に記載しなければならないと一時
期いわれましたが、これは本来の条件(効力要件)でなく、契約の成立要件で
あり、申込みがなければ契約が成立せず登記申請自体もなされないため、誤っ
た見解です。いまだに、これで補正通知を受けることもあるようですが、契約
の基礎の基礎ですから補正に応じたら恥になりますので、頑張ってください。


2023.11.24(金)【情報力に関する世代格差】(金子登志雄)

 本欄の閲覧者数は平常で1日300前後(同じ人が何度閲覧しても1回計算
である点は他と相違)なのに、ここのところ400を超えているのは、たぶん、
司法書士のX(旧ツイッター)効果でしょう。AさんがXで情報提供すると、
BさんやCさんがフォローし、たちまち拡散し本欄の閲覧数にも影響します。

 産まれた時からSNSの環境下で育ったZ世代を中心とした若者は、テレビ
世代の高齢者と相違し情報をSNSで収集し、権力者による情報操作に影響さ
れないため、いま世代格差が社会問題になっています。例えば、米国では高齢
者はイスラエル支持であるのに対し、大学生など若者はパレスティナ支持です。
リベラルの多い民主党支持者が割れてしまい、聖書以外を信じないキリスト教
福音派の岩盤支持層を持つ共和党トランプ氏が有利になっています。

 当社の若手社員にいわれました「金子さんはテレビをみないため、Z世代と
同じじゃないですか」と。そうかもしれません。ただし、私の場合は、SNS
の操作もよく分からず、ノートPC世代です。机に坐れば即座にノートPCを
開き、ヒマのときは、ユーチューブでテレビニュースをみたり、さまざまな意
見表明のサイトを開いたりして、他の意見や情報を収集しています。

 PCで先般みたウクライナ情勢のテレビ番組では、コメンテーターも司会の
アナウンサーも、ごく自然に、「ロシアの侵略」といい、外国の元首プーチン
大統領を呼び捨てにしていました。米国のテレビも経営者がユダヤ系ばかりで
すから、同じようなもので、「ロシアは悪」を垂れ流しています。

 これに対し、インターネットでは、世界の多数派である非米諸国(中国やイ
スラム諸国など)の国民からの意見や情報まで溢れておりフェイク情報も満載
です。それでも、一方に偏ったテレビ情報だけの高齢者よりも、若者のほうが
バランス感覚が鍛えられているように感じました。

 高齢者で思い出しましたが、今年の司法書士試験の合格者の最高齢が82歳
には驚きました。限られた制限時間内に大量の試験問題をさばける頭の回転の
早さについてです。じっくり思考型の私にはない能力です。

 最低年齢の19歳の方には、遊びたい盛りの大学生とは思えないし、がり勉
タイプなら司法試験を目指すでしょうから、ひょっとして家庭の事情で最初か
ら大学進学ではなく資格取得を目指した方だろうかと興味が尽きません。上か
ら目線ですが、「おめでとう。ただ、試験と実務は相違するので、自分を天才
と勘違いせずに、挫折も味わって、頑張ってね」といっておきましょう。


2023.11.22(水)【これが親子合併の計算だ!】(金子登志雄)

 日曜日には、アマゾン会社法ジャンルで、拙著『会社の計算実務』が瞬間的
に第1位になりました。他の著書では何度か経験がありますが、計算本は苦手
意識を持つ方が多く売行きは芳しくないので、あり得ない出来事でした。

 犯人(?)は『会社法実務〔全訂第2版〕』の共著者である広島の幸先さん
であり、X(旧ツイッター)で勧めてくれ、TOSグループの沓脱さんもフォ
ローしてくれたためでした。幸先さんは私が世にでる切っ掛けになった「目か
らウロコ/これが○○だ!」シリーズまで紹介してくれました。

    https://twitter.com/hiroaki_kosaki
 
 このシリーズは、旧商法時代が最初でしたが、学者でも弁護士でもない無名
の私が実体法の解説本を出すのですから、内容に信頼度がなく売れるわけがな
いといわれていましたので、あえて挑発的な題名にし、中身は分かりやすい対
話調にし、「散切(ざんぎ)り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」をもじ
って、「ざんしん本書をたたいてみれば、商法解明の音がする」などといった
おふざけキャッチにしてみたり工夫したものでした。創意工夫の甲斐があり、
お陰様で何とか会社法実務家として世に認められるようになりました。

 幸先さんによると、最近、アマゾンで拙著が好調なのは、司法書士試験の合
格発表があり、実務家予備軍が受験本から実務書に切り替えたためではないか
とのことでした。であれば、その方々のために、親会社甲が100%子会社乙
を合併で吸収する事例で、「目からウロコ/これが親子合併の計算だ!」をこ
こでご披露します。

----------------------------------------------------------------------
 新人「いま親会社甲が数年前に金1000万円で設立した100%子会社乙
を吸収合併する事案に関わっていますが、甲が子会社の株主である自己に株式
を割り当てられず必然的に無対価になるため、簡易合併で問題ないですか」

 金子「子会社の純資産額はいくらですか」

 新人「300万円あり、債務超過ではありません。債務超過であれば、会社
法795条2項1号により、承継債務額が承継資産額を上回ると株主総会で説
明義務があるから、簡易合併が認められないことは承知しています」

 金子「それだと簡易合併は無理です」

 新人「え? ベテランの先生に聞いたら、債務超過でなければ、旧商法時代
から簡易合併が頻繁になされていたと聞きましたが………」

 金子「この合併で、甲の資産に計上されている乙株式1000万円はどうな
りますか」

 新人「いわゆる抱き合わせ株式(甲の有する乙株式)のことですね。合併で
乙が消滅しますので、資産から1000万円が消えます」

 金子「であれば、甲の財産は300万円がプラスされても、1000万円が
消え、減少するじゃないですか。それでも簡易合併を認めてよいのですか」

 新人「先生はそうおっしゃいますが、抱き合わせ株式消滅損は損益計算書の
特別損に計上され、決算期が到来するまで貸借対照表の株主資本に影響しませ
んから、簡易合併が可能ではないですか」

 金子「よく勉強してますね。ご指摘のとおり、こういう親子間合併は、合併
時点では貸借対照表の株主資本を変動させないのですが、会社法795条の承
継債務額、承継資産額に『法務省令で定める額』とあり、法務省令の会社法施
行規則195条には、合併と同時に『貸借対照表の作成があったものとする』
とあり、合併時点で抱き合わせ株式消滅損が貸借対照表に計上されたのと同様
に甲の純資産額が減少するとみて、簡易合併に歯止めをかけています。旧商法
時代とは解釈が相違するのです」

 新人「債務超過でなくとも抱き合わせ株式消滅損が生じる合併は簡易合併が
不可とは知りませんでした」

 金子「ですから、増資により債務超過を解消しても、抱き合わせ株式が増資
分だけアップするので簡易合併不可に変わりがありません」

 新人「難しいものですね。子会社が大儲けしている会社以外は簡易合併の可
否に気をつけることにします」

 金子「子会社が大儲けしていても、その子会社が買収子会社であれば、抱き
合わせ株式が大きくなり、消滅損が発生することもありますので、子会社だけ
をみていてはだめです」

 新人「単なる無対価合併で簡単だと思っていましたが、難しいですね。ます
ます精進します」
---------------------------------------------------------------------- 


2023.11.21(火)【令和5年度司法書士試験】(東京・鈴木龍介)

 先般、根来川さんも取り上げられていましたが、今年度の司法書士試験の結
果が発表されました。概要は以下のとおりですが、合格者情報は11月29日
付の官報に掲載されるそうです。

 7月2日に筆記試験が、10月23日に口述試験が行われ、受験者数は前年
度から645人増えて13,372人でした。合格者は前年度の660人から
35人増えて695人で、男女の内訳は男性487人、女性208人で、女性
の割合は前年度の27.6%から29.9%に増加しています。そして、合格
率は5.2%ということで、前年とほぼ同じでした。

 合格者の平均年齢は41.14歳で、前年度の40.65歳から若干ですが、
さらに上昇しました。

 合格者の最高年齢は前年度が71歳(1名)であったところ、今年度は82
歳(1名)となっています(凄い)。ちなみに前年度は2人だった70歳以上
の合格者が今年度は6名となっています。また、合格者の最低年齢は前年度が
20歳(1名)であったところ、今年度は19歳(1名)となっています(こ
れまた凄い)。

 まずは、合格者のみなさん おめどうとうございます!


2023.11.20(月)【先住民族の悲哀と米国の友人】(金子登志雄)

 自民党の安倍チルドレン杉田水脈氏がまたもや先住民族であるアイヌ民族を
揶揄したのだとか。こういう報道を知ると、つい、同じ先住民族パレスティナ
人が押し込められ逃げ場もないガザ地域への病院や学校なども空爆対象にして
いるジェノサイドに意識が向いてしまいます(昭和20年3月の無差別殺戮の
東京大空襲では8万4000人が死亡しましたので無関心ではいられません)。

 アメリカ・インディアンも、中南米のインディオ(スペイン語、英語では、
インディアン。コロンブスがインドに着いたと勘違いしたためインディアンと
いう)も同じ目にあったのでしょうね。優れた武器を持っている侵略者に先住
民族はかないません。

 人員も兵力も不足するアイヌ民族とアメリカ・インディアンは最終的に居留
地に追いやられました。アパルトヘイト(人種隔離政策)みたいなものです。
アイヌは差別用語とはされていませんが(もっとも平成9年まで続いたアイヌ
民族保護法の名称は「北海道旧土人保護法」でした。沖縄に行った本土の機動
隊員が琉球民族を「土人」と呼んだことを思い出してしまいました)、米国で
はインディアンを差別用語とし今はネイティブ・アメリカンというようです。

 米国大陸に住んでいたネイティブ・アメリカンもインディオも我々と同じモ
ンゴロイド(蒙古民族)です。赤ちゃんのお尻に蒙古斑が出るのだとか。もっ
とも、蒙古斑が出ないモンゴロイドもあるようです。

 しばしばコロンブスが新大陸を発見したなどといいますが、それは米大陸を
欧州人が知らなかっただけで、我らの先祖は、はるか昔から知っており、ベー
リング海峡を渡って移住し、マヤ文明とかインカ文明を栄えさせました。

 であれば、我々もイスラエル建国のシオニスト運動と同じく、米大陸に渡り、
ネイティブ・アメリカンと協力して、先祖の地を奪い返し、再びモンゴロイド
帝国を作ってもいいのかと思ってしまいますが、米国内のネイティブ人口は、
1%も満たない状態に追い込まれてしまい、返り討ちにされますので、これは
無理ですね。アイヌ民族を追い詰めた先祖を持つ身ですし………。

 今となっては、モンゴロイドではありませんが、パレスティナのネイティブ
だけはバッファローのように絶滅させられないよう、停戦を求めるしかありま
せん。しかし、先般の米中首脳会談で少しは前進するかと期待していたら、会
談後に記者に質問されたバイデン氏は「習氏は独裁者だ」と答えました。国賓
として招きながら平気で侮辱する米国の倫理観や礼儀作法が信じられません。

 ところで、米中首脳会談に合わせて台湾野党である国民党(シンボルカラー
は藍色、親中派)と台湾民衆党(同・白色)の台湾総統選挙での共闘(藍白=
あいじろ?=合作)が発表されましたので、米国寄りの改進党政権が次の総統
選挙で敗れそうで、台湾有事問題の不安が遠のきました。と思ったのも束の間、
米国が露骨に民衆党に圧力をかけたようで、この先がみえなくなりました。
 
  https://news.yahoo.co.jp/expert/authors/endohomare?page=1

 ユダヤ人でもあるキッシンジャー氏の金言に「アメリカの敵になることは危
険かもしれないが、友人になることは致命的である」というものがあります。
だからイスラエルは米国の友人の顔をしながら米国をも翻弄しているのでしょ
うか。それはともかく、岸田政権も日本国民に致命傷を負わせないよう、この
金言を噛みしめ、日本をウクライナのようにしないでほしいものです。


2023.11.17(金)【電子公告の予備としての官報公告】(金子登志雄)

 電子公告を登記する際に「当会社の公告は、電子公告による公告をすること
ができない事故その他のやむを得ない事由が生じた場合には、【官報に掲載】
してする」という内容の予備的方法にする例が上場会社以外では多数です。私
も上場会社の子会社で何度もこれで登記しています。法務省の登記記録例(平
成18・4・26民商第1110号)もこれですから、何の疑問も持たずにや
ってきました。

 しかし、定款に定める公告方法を使う株主向け公告であれば何の問題もあり
ませんが、債権者保護の公告であれば、同時に官報での公告もなされますから、
電子公告できないときは、二重に官報で公告するのでしょうか。まさかですね。

 また、この予備的方法の官報公告を電子公告したのと同じだとみれば、催告
省略の効果を得られるはずですが、そうではなく、電子公告による公告をする
ことができない事故その他のやむを得ない事由が生じた場合には、当社の公告
方法は官報にするという意味ですから、催告省略の効果はないとされています。

 幸い、平成16年に電子公告制度が始まって以来、大きな事故もなく、事故
その他のやむを得ない事由が生じた事例はないようですし、最初から電子公告
が無理な状況であったら催告していたでしょうから、いままで問題視されてき
ませんでしたが、予備的方法が官報だと催告代用の効果がないことだけは意識
しておいたほうがよいでしょう。

(ジャニーズ問題で死者)
 とうとう死者まで出てしまいました。それも2名です。一人は、ジャニーズ
事務所に息子の写真等を送った母親の自責による自死、もう1つは被害者への
事務所の対応の放置が原因でした。ネットの誹謗中傷の影響もあったようです。
世界犯罪史に残る未成年者多数に対する性被害事件ですから、潔く外部の公平
な第三者委員会の手に委ねるべきでした。


2023.11.16(木)【合併・組織変更と商登法】(仙台・立花宏)

 週末に、旬刊商事法務のデータベースで過去の記事を眺めていたところ、商
法時代の商業登記法の逐条解説(注)が掲載されていたので、個人的に興味が
あるところを少し読んでみました。

 すると、9月15日(金)の本欄で、金子先生がコメントされていらっしゃ
った「商登法46条と47条の位置付け」に関連する部分の解説がありました。
内容は、金子先生が解説されたとおりの内容で、さすが、金子先生だとあらた
めて尊敬の念を抱くことになりました。

 復習のため、内容を以下に記載いたします。

【合併の登記】
 吸収合併の登記の添付書面は、当時の商登法では90条(現在の商登法80
条)に規定されていました。この中に、消滅会社において吸収合併契約が承認
されたことを証する書面(株主総会議事録等)は規定されていますが、存続会
社のそれは規定されていません。これについては、「第79条(現在の商登法
46条)の規定によって当然必要とされる」と解説されていました。

 この規定理由についても簡単に触れていました。商業登記法制定前は非訟法
が根拠規定でしたが、消滅会社の承認を証する書面については規定されていな
かったようです。しかし、合併が有効に行われたことを確認するために必要で
あり、商登法を制定するにあたって、あらたに規定されたということのようで
す。

【組織変更の登記】
 株式会社が持分会社に組織変更した場合について、組織変更の添付書面を規
定する商登法77条は、総株主の同意を証する書面が規定されていません。商
法時代は、株式会社が持分会社に組織変更をすることはできなかったと思いま
すので、比較として、株式会社から有限会社への組織変更についての規定を確
認すると、この書面について、「組織変更の場合には総株主の一致による総会
の決議が必要であるので、「第79条(現在の商登法46条)の規定により、
その株主総会の議事録の添附が必要である」と解説されていました。

 別のことを調べるためにデータベースを検索していたらその逐条解説を見つ
け、しばらく時間をとって眺めてしまい、おかげで、もともと調べたかったこ
とはその日に調べきれず、翌日も時間をとって調べることになってしまいまし
た。ただ、おかげでとても勉強になりました。

 注)「逐条解説 商登法」(味村治)(「旬刊商事法務」(商事法務研究会)
   288号9頁以下


2023.11.15(水)【ロマン】(神奈川・酒井恒雄)

 あまり人前で話すのが上手ではない私ですが、そんな私が起業セミナー等の
講師を依頼されることがあります。セミナー等では、いわゆる「つかみ」のた
めに、だいたいお決まり質問をします。

 それは、世界最古の企業が日本にあるのだが知っているか?という質問なの
ですが、大体1~2人くらいの正解者がいます。

 答は、金剛組なのですが、続けて、金剛組の社歴は?と質問をしますと、今
のところ正解者はいません。

 答えは、約1445年です。金剛組は、何度もネタとして紹介しているにも
かかわらず、どこか神話のような感じもしていて、私にはあまり実感がない存
在でもありました。

 そんな金剛組でしたが、ついに、その仕事ぶりを拝見することが出来ました。
私は、神社仏閣に参拝することが趣味ようになっているのですが、あるお寺さ
んが本堂を立て直すという情報を得ました。その工事の設計・施行主が金剛組
であるという情報を得ましたので、工事の完了を待って現地に行ってまいりま
した。

 そこには、とても立派な御堂が建っており、実際に金剛組が手掛けた成果物
を目にして、その技術力に圧倒されました。すでに撤去されていましたが、工
事中の現場には、「飛鳥から未来へ 西暦578年創業 世界最古の企業」と
いう看板が立てられていたようです。とてもロマンを感じた体験でした。


2023.11.14(火)【愛媛会 研修】(東京・鈴木龍介)

 先週の11月11日(土)に愛媛県司法書士会(愛媛会)の研修講師を務めまし
た。今回の研修会(本研修会)は、オンラインによるライブ配信形式で開催さ
れましたので、私も事務所から登壇(?)させていただきました。

 本研修会は2部制で、前半は札幌司法書士会の木曽雄高先生が改正犯罪収益
移転防止法をテーマに、後半は私が事業承継・中小M&Aをテーマに各90分
の持ち時間でお話をさせていただきました。

 前半の木曽先生のお話を拝聴しましたが、中々刺激的な内容で新鮮でした。
一方、後半の私の方の話は、「司法書士のための事業承継と中小M&A」と題
し、事業承継とM&Aの基礎知識の整理を行ったうえで、ケーススタディとし
て事業承継型M&A(株式譲渡スキーム)を取り上げました。こちらの内容と
しては、司法書士が企業法務とりわけ事業承継・M&Aに取り組むきっかけやヒ
ントをご提供することを主眼としました。

 行楽シーズンの土曜日にもかかわらず本研修会にご参加いただきました愛媛
会の先生方に御礼申し上げますとともに、皆さまの業務等に少しでもお役に立
てましたら幸いです。


2023.11.13(月)【ダブルスタンダード】(金子登志雄)

 とうとう、ガザでの死亡者は市民1万人(子供は4割)、難民支援の国連職
員100人以上だけでなく、人質のイスラエル人60人までも含まれてしまい
ました。水も食料も逃げ場もない不衛生な環境で疫病でも流行りそうな深刻な
事態ですが、イスラエルはやめそうもありません。国家防衛のためなどという
のは嘘で、この機会にパレスティナ人を残滅しパレスティナ全域をイスラエル
の領土にする大イスラエル構想を実現しようとしているとしか思えません。そ
れが国内でも不人気のネタニヤフ政権の延命にもつながるためです。

 欧米諸国、特に米国は、ウクライナ問題ではロシアのプーチン大統領を悪魔、
国際法違反の戦争犯罪人とまで罵りながら、ガザを逃げ場のない地獄にしてい
るネタニヤフ政権には支援までしています。いつものことながら、あまりのダ
ブルスタンダード(二重の基準)、その2枚舌ぶりが世界中から強く非難され
ていますが、イスラエルが傍若無人でいられるのも米国が後ろ盾になっている
ためですから、非難されても仕方ないでしょう。

 ダブスタというと憲法解釈の「二重の基準論」(基本的人権のうち表現の自
由など精神的自由は経済的自由よりも優越的地位にあり、公共の福祉によって
も制約してはならないというもの)を思い出してしまいますが、欧米では、国
会議員がパレスティナ人虐殺を非難しただけで、お前は敵の味方かと国会で非
難決議される始末ですから、本当に人権先進国なのでしょうか。

 また、欧米社会は最も重要な人権である生命・身体の保障に無頓着であり続
けました。76年前のイスラエルの入植(武力による先住民の追い出し、隣国
への難民化)からずっと放置し許容してきました。勝手な推測ですが、欧米文
化の中に、単純に「敵か味方か、善か悪か」で分けて物事を決め、敵に対して
は何をしても善で許されると思う傾向が強いような気がしてなりません。広島
長崎の原爆投下も同じですし、敵を動物に例えたイスラエル政府の高官もおり
ました。

 流行りの「文明の衝突」の面からいうと、ウクライナ問題はロシア文化の破
壊、ガザ問題はパレスティナ文化の破壊であり、欧米文化と相違する文化は悪
であり、正義は常に欧米側にあり(世界を欧米文化にというグローバリズム=
米国の一極支配=もこれか)、悪を滅ぼすには手段を選ぶ必要がないという発
想を感じてしまいます。

 こうして米国は常に戦争当事国以外にもショー・ザ・フラッグ(旗幟鮮明)
を求めるので、中立国は辟易しながら逆らえずに従ってきたのに、このウクラ
イナにおけるロシアの逆襲以降、米国に逆らっても大丈夫そうだと思ったよう
で、国連決議でも米国意見への賛同国が大きく減ってしまいました。

 結論として、ウクライナとガザ問題への米国の対応は米国の威信と信頼を大
幅に落とす大失態であり、軍需物資が売れて儲けた以上に、マイナス面が多く
世界から孤立していくばかりでしょう。自業自得ですが、ドルや株式市場だけ
でなく、エネルギー高騰による物価高のインフレなど、日本経済や我々の生活
にも大きく影響してきますので、今後も注視して行くつもりです。

(ご参考)
 伊藤貫氏が世界情勢を欧米の自分勝手な基準で判断するなと吠えています。
日本の報道がいかに底が浅いかが分かりますので、ぜひどうぞ。
   https://www.youtube.com/watch?v=bLHcs53SP2U


2023.11.10(金)【総数引受契約の総数とは】(金子登志雄)

 非取締役会設置会社では株式の募集(発行)決議も割当決議も株主総会です
から、株主総会で「100株を募集し全部をAに割り当てる」と決議すること
がよく行われています。しかし、いまだに「Aの申込みがあることを条件に」
と議事録に記載がないと補正通知を受けることもあるようです。

 これは株主総会で取締役として選任されることを条件に就任承諾しますとい
うのと同様に、申込みと承諾で成り立つ契約において、申込みよりも先に承諾
しただけであり、本来の条件(効力要件)ではありません。申込みがなければ
契約が成立しないのですから、記載する必要はありません。法律の基礎の基礎
ですから、補正に応じるのは恥だと思ってください。

 ところで、「募集株式の数 100株」と決議し総数引受契約にする際に、
100株の全部が引き受けられないと総数引受契約にならないのではないかと
勘違いする見解が多いようで、時たま質問を受けています。

 しかし、この100株は募集の上限又は予定数であり、会社法199条1項
に募集株式とは「当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に
対して割り当てる株式」、同205条1項に「募集株式を引き受けようとする
者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には」とあるように、申し込
んだ数の総数のことです。

 割当自由の原則により、20株申し込んだのに15株しか割り当てられなか
ったということがありますが、総数引受契約では20株の全部を間違いなく割
り当て引き受けますという契約です。

 「従業員募集 30人」というのは予定人数であり、応募者が申込み、採用
通知を出すのが申込みと割当てであり、これを契約にして間違いなく御社に入
社しますと契約するのが引受契約で、他の応募者ともども必ず入社しますと契
約するのが総数引受契約ということです。


2023.11.09(木)【J-KISS型新株予約権とは】(金子登志雄)

 スタートアップ時の会社が有償で発行する「J-KISS型新株予約権」に
関連する質問を受けましたので、これを多数経験している司法書士仲間に実例
見本を送ってもらい、指導を仰ぎました。正確ではないかもしれませんが、私
なりに理解した内容は、次のようなものでした。

 創業したばかりで資金需要は強いが株式価値も不明だから、募集株式の発行
を待つのではなく、とりあえず新株予約権にしておくが、新株予約権自体の価
額を大きくし、行使価額は最低単位にして会社の資金需要に応える。

 そして、この会社が1株の払込金額を決めて募集株式を発行することができ
るようになったら、その時に新株予約権を行使し株主になる・・・という仕組
みのようで、例えば、次のようにします(1例です)。

 1.新株予約権自体の1個の価額を金100万円とし、行使価額は最低単位
の1円としておく。これで会社は1個につき100万円を調達できる。

 2.行使は、1年半以内に行われる最初の募集株式の発行時とする。この募
集株式の発行が優先株式になる可能性も高いから、「新株予約権の目的たる株
式の種類」は最初は普通株式としておくが、その種類株式にも切り替えられる
ように定めておく。

 3.その最初の募集株式が1株10万円だとした場合に、新株予約権1個に
つき10株(100万÷10万)では最初に支援した意味がないから、2割引
きの1株8万円にしてもらい、12.5株にしてもらうよう定めておく。

 4.行使期間はいつでも行使できるとする。

 したがって、「新株予約権の目的たる株式の種類及び数」の「数」について
も総数か1個あたりの株数かなどという議論を超越しており、算定方法で表し
ます。ちなみに、この算定方法が条文に加わったのは会社法からです。

 なるほどと思いましたが、実例見本をみると、日本語とは思えないひどい悪
文で、会社も登記所も理解することが無理な内容でした。米国からの輸入で、
翻訳したどこかの弁護士の文章でしょうが、私に任せれば、もっと分かりやす
い文章に直したのにと思いました。登記所も意味が分からないが、悪文の実例
が多数あるので、そのまま受理しているのでしょう。

 なお、J-KISSとは、米国のベンチャーキャピタルが開発した仕組みの
Keep It Simple Security の日本版という意味だそうです。うら若き会社の株
主になる前の日本式キスの仕方かと期待したのですが、残念でした。

 司法書士仲間に聞く前にインターネット検索で知ろうとしましたが、やたら
とカタカナ語を使う分かりにくい説明でした。分かりやすい説明をするには、
私がいつもするように具体例を出して説明すべきなのに、それは見つかりませ
んでした。単に「シード期の資金調達方法」と説明するものや、シード(seed、
種の意味)期というのは、創業前の準備段階のことだから、会社設立後のアー
リー(early)期(ステージ)というべきだというのがあったりで、このあたり
も混乱していました。
 
 わがESG法務研究会の人脈には、さまざまな専門家が存在するので、電話
1本で簡単に疑問を解決することができるので、実に助かります。若手の有望
株であるMさん、Kさん、ご指導ありがとうございました。


2023.11.08(水)【司法書士試験(+お知らせ!!)】
                         (島根・根来川弘充)

 10月半ばに司法書士試験の第一次合格者を対象に二次試験が開催されました。
中国地区管内では、約20名程度の合格者だったそうです。

 数年前まで40人以上の合格者が出ていたことを考えますと、約半分になって
しまったということになります。

 大きな原因としては、都道府県単位で行われていた試験が地方単位に変更に
なったことが考えられます。

 その結果、受験者は大都市に集中したことが予想されます。そうなりますと、
合格者は、地元での開業を予定しても、おそらくは都市部で経験を積んで開業
という方が増え、わが島根県を含めた過疎化が進む地方では開業者がますます
減るのではないかと思います。

 一方で、来年から相続登記義務化を控え、現時点でも相談が増えてきていま
す。相続登記が必要な不動産は地方に多いことを考えますと、合格者の方には
一人でも多く過疎地方での開業を考えてほしいと思います。

【お知らせ】
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 「快計電卓」アプリ販売開始(iPhone版のみです)

 2ヶ月前に電卓について特許権を取得したことを報告させていただきました。

 この度、iPhone版のみですが、アプリでの販売を開始しましたので、
御案内させていただきます。
    ↓
https://apps.apple.com/app/%E5%BF%AB%E8%A8%88%E9%9B%BB%E5%8D%93/id6471355210

 開発にご尽力いただきました「TecTochio」様には、心より感謝申し上げます。
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2023.11.07(火)【(再)事業承継シンポジウム2023 in 名古屋】
                         
(東京・鈴木龍介)

 先日の投稿に際し、申込フォーム等がうまく表示できなかった関係で、再度
のご案内となります。先回に続き、イベントのご案内です。

 あらためで参加申込等につきましては、以下、日司連HPからお願いいたしま
す。
   https://www.shiho-shoshi.or.jp/other/topics/event/56372/

 会場のキャパが結構大きく、まだ余裕がありますので、名古屋を含む東海地
方のみなさまには是非とも、リアル会場でご参加をご検討いただければと思い
ます。

 日時:令和5年11月22日(水)13:00~17:00
 開催形式:
  ① 会場(名古屋市中小企業振興会館 吹上ホール7階 メインホール)
  ② オンライン会議システム「Zoom」
   (後日、YouTubeによるオンデマンド配信予定)
 主 催:日本司法書士会連合会(日司連)、愛知県司法書士会(愛知会)
 概 要:
  第1部 講演 PART1
      テーマ「司法書士は事業承継において、何を見ているのか?」
      司法書士による事業承継支援業務についての取組み事例
      スピーカー:伊藤恵子(司法書士/愛知会会員)
  第2部 講演 PART2
      テーマ「事業承継に関する理解と対策」
      スピーカー:松本久敏(独立行政法人中小企業基盤整備機構
        中部本部 地域・連携支援部中小企業アドバイザー)
  第3部 パネルディスカッション
      テーマ「事業承継 何が気になる?何を見ている?」
      パネリスト:
       高橋惠子(俳優/日司連イメージキャラクター)
       長谷川敏也(税理士/名古屋税理士会会員)
       今西昭一(愛知県事業承継・引継ぎ支援センター
            統括責任者)
       井上和則(株式会社日本政策金融公庫 国民生活事業本部
            事業承継支援室長)
      コーディネーター:
       佐々木聡史(司法書士/日司連
             商業登記・企業法務対策部部委員)
      定 員:会場400名/オンライン950名
      参加費:無料


2023.11.06(月)【三重県会でセミナー講師】(金子登志雄)

 連休の狭間の4日土曜は三重県司法書士会のお招きで会社法講義でした。
平成20年に続き2度目です。会長、研修担当の皆様、たいへんお世話にな
り、ありがとうございました。

 会社法施行後17年も経過したためか、会社法自体のセミナーがここ数年
下火でしたが、セミナーネタが少なくなってきたのか、また少し復活してき
たようです。現に、私が講師となるセミナーは昨年はゼロでしたが、本年は
今回で3度目です。

 補正が増えてきたのも理由かもしれません。法務局の人事異動が激しく商
業登記担当調査官が詳しくなく、今まで補正にならなかったものまでも急に
補正にされるようになったためです。これは全国的な傾向です。

 終了後の懇親会では、三重県では大学進学につき京都に行く方が多いと聞
きました。三重県は名古屋と京都の中間に位置するというよりも、天下分け
目の関ケ原と同じく東西の境目に位置するので、両方の文化が入り混じって
おり、大学に関しては、近い西なのかもしれません。京都には、国立の京都
大学、新島襄の同志社大学、西園寺公望の立命館大学など有名大学も多く、
私も三重県人だったら、高層ビルの東京よりも情緒あふれ歴史上の舞台が多
い京都を選んでいたかもしれません。

 試しに、自分の奥様のことを「うちの嫁が」といいますかと聞きましたと
ころ、違和感がないそうです。皆様はいかがですか。関東では、テレビに登
場する吉本芸人の影響で若い人の中ではたまに使う人もいますが、大多数は
「女房が」「家内が」「妻が」です。

 ちなみに、東と西の食文化は関ケ原を境にし、「東」ではカツオダシ、肉
は豚、餅は四角、「西」では昆布ダシ、肉は牛、餅は丸餅などといわれます
が、三重県ではどうなんでしょうか。松阪牛の本場なので肉は牛でしょうが、
カレーの肉は豚(東)か、牛(西)か、ウナギの開き方は背開き(東)か、
腹開き(西)かは、機会があったら聞いてみます。

 景色や神社仏閣よりも、こういう文化に関心があるので、リアルセミナー
で地元の方々と会話できることが実に楽しみです。次回はどこでしょうか。


2023.11.02(木)【合併と許認可(2)】(仙台・立花宏)

 9月21日(木)の本欄で、合併と許認可について、とても悩ましく感じて
いることを書きました。実は、あれからも悶々としておりました。

 前回の徒然日誌では、ある雑誌に掲載された司法書士の先生の経験談として、
監督官庁の許認可が吸収合併の効力発生要件となっている場合に、事前に受け
るべき認可を受けていなかった事例で、事後認可を受けることも可能だという
ことが紹介されていました(注)。
 
 監督官庁である国の機関(省)から、つぎのような回答があったと記載され
ていました。
「合併の登記前に事前認可が必要との特別の規定は設けていない。認可書が登
記申請の際に必要なため、運用上登記前に認可している。なお、事後認可を行
った事例が存在する」

 そうすると、合併の効力発生要件となっている許認可と合併の効力の発生と
はどのような関係なるのでしょうか。

 ちなみに、許認可が合併の効力発生要件となっている場合とは、法律の条文
が、「法人の合併は、〇〇大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない」
となっているような場合です。

 おそらく、事後認可を受ける場合というのは、きわめて特殊なケースではあ
るのだろうと思いますが、そうではあっても、許認可の意味を考えると、とて
も悩ましく感じられました。

 以下は、これについての完全な私見です。まだ、確信を持てているわけでは
ないのですが、自分自身の備忘録として、まとめておこうと思いました。

 事後認可も可能ということは、この合併に対する許認可は会社法上の合併の
効力の発生に直接影響を及ぼすものではないのかもしれないと考えました。

 監督官庁は、特定の事業に関する監督権限を有しているのだろうと思います。
そうすると、前記のような条文の趣旨は、特定の会社に与えらえれた許認可事
業が合併により他の会社に承継されることについての許認可であって、許認可
がなければ、合併による事業の承継の効力が、その監督官庁に対して生じない
ということだと考えた方がよいのではないかと思いました。

 そのため、会社法上の合併の効力は、認可前であっても生じており、事後認
可を受けたのであれば、その時点で合併に伴う許認可事業の承継が監督官庁に
対しても効力が生じたということになります。

 会社法上の合併の効力は生じているのだとしても、監督官庁に対して許認可
事業の承継の効力が生じていなければ、消滅会社が解散して消滅したといえる
のかどうかが悩ましいですし、合併の手続が完了したとして申請された合併の
登記に対する信頼を失いかねないと思います。そこで、商業登記においては、
監督官庁に対して許認可事業の承継の効力が生じていない状態では、登記申請
は受理しないということではないかと思いました。

 よって、仮に効力発生日後に事後認可された監督官庁の認可書を添付して合
併の登記が申請された場合は、合併契約に規定された効力発生日に合併の効力
が生じたとして、登記は受理されるべきだと考えました。

 注)金島良和
  「商業登記掲示板泣き笑い千例集「合併登記を元に戻しなさい!」」
  (「月刊登記情報」(キンザイ)524号107頁)


2023.11.01(水)【ユダヤ民族のルーツ】(金子登志雄)

 ガザでの残酷映像がネットに多数出回っていますが、仮にガザ地域を一掃
することができても、憎悪の念は永久に深く残り、問題の根本的解決から遠
ざかるばかりです。シオニスト過激派の為政者のせいだとはいえ、今後、イ
スラエル国民は他国から白い目でみられアラブ諸国以外への旅行もしにくく
なることでしょう。孤立化は国家としても大損失のはずです。

 ところで、シオニズムとはユダヤ人の祖国であるエルサレムにユダヤ民族
の国を作ろうという運動ですが、実際には、先祖の故郷がエルサレムでない
ユダヤ人がこの運動の主役だということはご存じでしょうか。

 昔、ロシアの西南にハザール王国というトルコ系の遊牧民の国が存在し、
ここが全盛期にユダヤ教を国教とし自らユダヤ人と名乗っていたが、最終的
には他国に滅ぼされ、世界に散りぢりになったため、現在、先祖はユダヤ人
と名乗る方の多くがこの子孫で、シオニズム運動の主役となり、イスラエル
でも支配階級を占めているようです(エルサレムを故郷とするユダヤ人は西
欧に散りました)。

 ユダヤ人は優秀な人が多いことでよく知られていますが、このハザール系
(東欧系とか、アシュケナジーなどともいう)ユダヤ人のことでしょう。彼
らは、ポーランド、ドイツ、ウクライナ地域、ロシアなどに移住し、団結力
が強く、ユダヤ教の伝統を守ると同時に、それらの国の支配に多大な影響を
及ぼしていたようです。

 レーニンがロシア革命を起こした際も彼の取巻きはユダヤ人が多く、収容
所やKGBを作ったのも、この取巻きだったそうです。ロシアに変わった最
近でもアル中のエリティン大統領(妻がユダヤ人)の取巻きも大多数がこの
ユダヤ人だったそうです。ただし、このユダヤ人は共産主義者や無神論者あ
るいは金儲け主義者だったのでしょう。

 エリティン時代でしょうか、米国内のユダヤ人の資金協力で急速な民営化
を主導し、国家財産を奪い去りロシア経済をどん底に落としめたのもイスラ
エルとロシアの二重国籍を持つ、このユダヤ人(新興財閥=オルガルヒ)が
主役でした。プーチンがオルガルヒを追い出しロシアを再生させたので、国
民的人気がいまだに高いわけです。

 権力闘争でスターリンに敗れた世界同時革命主義者トロッキーもこのユダ
ヤ人で、このトロッキストが米国に亡命し、いまの世界中を民主国家にとい
う好戦的なネオコンに変質したといわれています。ブリンケン米国務長官も、
ネオコンで有名なウクライナ紛争を主導したヌーランド女史(国務次官)も、
日本の政治に必要以上に口出しするエマニュエル駐日大使もこのユダヤ人で、
米国の政治・経済への影響力は絶大です。

 ソ連時代に影響下にあったウクライナ地域やポーランドでは、ソ連に対抗
するためナチスに協力したユダヤ人も多く(現ウクライナ政権にもこの影響
が強く残っているといわれています)、ナチスとの戦いで、ソ連での死亡者
は世界一でしたから(2000万人以上で東京都の人口より多い)、ロシア
人のナチスへの憎しみや、ナチスに変わる西からの侵略に警戒心が強く、こ
れがウクライナ戦争の遠因にもなっています。

 ナチスとユダヤ問題は、いまだにガザやウクライナを通じて現代社会が引
きずっていますから、戦後はまだ終わっていないのかもしれません。しかし、
ガザ問題は民族や宗教問題を超えて、いまや人道問題です。ユダヤ民族の優
れた頭脳により、ジェノサイドではなく、共存の方向で解決策を示してほし
いものですが、もう手遅れでしょうか。


2023.10.31(火)【連載「中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント」】
                           (東京・鈴木龍介)

 今回取り上げるのは、前回に続き、現在抱えている月2本の連載のうちのも
うひとつである『月刊登記情報』(同誌/金融財政事情研究会)に寄稿してい
る「中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント」です。

 こちらは令和元(2019)年5月(690号)に同誌で連載を開始し、現在第54話
(令和5年10月号)を数えます。
      https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T/

 本連載は、「企業法務」・「中小企業」・「司法書士」の3つを切り口とし
て、その趣旨としては、同誌の中心的な読者である司法書士が、中小企業に対
する企業法務に取り組むきっかけにしていただくとともに、中小企業の経営者
との真面目な雑談ネタの引出しを作ってもらいたいというところです。

 これまで寄稿したテーマは、事業承継、バーチャル総会、脱ハンコ、社外役
員、M&A、知財、従業員持株会、SDGs、消費税など多岐にわたりますが、
2ページもの(実務の一助となればということで、関連・参考文献の紹介のコ
ーナー~いざというときの本棚~も毎回、設けています。)で気軽に読んでい
ただけることを心掛けています。他方で、取り上げるテーマは自由度が高いも
のですから、回を重ねる中でのネタ探しには結構、苦労しています。

 本連載について、現時点で回数や期限を決めておりませんが、もう少し継続
できればと勝手に考えています。そこで、まさにご笑覧いただき、忌憚のない
ご意見や感想などを直接でも編集部あてでも結構ですのでお寄せいただければ
大変、嬉しく思います。


2023.10.30(月)【登記事項と登記履歴その2】(金子登志雄)

 27日の本欄は、なぜか閲覧件数が急増していました。いつもは300弱
なのに400を超えていたのです。なぜこうなるのかは、閲覧した方が誰か
に連絡したとしか考えられません。いずれにせよ、好評だったと勝手に理解
し喜び、その続きにしようとしましたが、よいアイデアが浮かばなかったと
ころ、日曜日に登記記録をみていて閃きました。

 さて、次の事実があったのに、②を漏らしていきなり③を登記してしまっ
た場合に、これから②を登記する際は、③の次に、福岡の住所で、登記すれ
ばよいと説明しました。

  ①令和3年6月26日札幌市A重任
   (②令和4年6月27日札幌市A重任)
  ③令和5年5月28日A【福岡市に住所移転】

 ふと、①と③しか登記されていない段階のこの会社が管轄外(例えば横浜
市)に本店移転した場合は、移転先の登記記録がどうなるのかと考えてみま
した。最後の登記が住所移転ですから、そのまま移記されたら重任日が消え
てしまうじゃないかと思ったわけです。

 こういう登記は経験したか記憶がありませんが、就任日の記載のない設立
後に住所移転し、その後に管轄外本店移転した場合であれば申請用総合ソフ
トに2つ記録が残っていました。その登記後の登記記録を閲覧し、そこから
推測すると、横浜地方法務局での登記記録は次になります。

  ①令和3年6月26日【福岡市】A重任

 重任の登記では、重任時点の住所でするもので申請時点の住所ではないと
いう見解の方には、ショックな記載ですね。Aは令和3年6月26日時点で
は札幌市在住だったからです。

 さらに思い付いたのは、調べてはいませんが、移転前の現在事項も同じだ
と思います。変更され抹消されたのは登記事項である「札幌市A」の枠だけ
で、原因年月日の「令和3年6月26日重任」は確定した過去の事実であり、
変更ということがあり得ないので抹消線は引かれません。さらに、住所移転
は過去の事実であり、移転先住所しか現時点では意味がありません。そうす
ると次の算数が成り立ちます。

  札幌市代表取締役A/令和3年6月26日重任/令和3年登記 
 +福岡市代表取締役A/令和5年5月28日住所移転/令和5年登記 
 =福岡市代表取締役A/令和3年6月26日重任/令和3年登記
 
 これであれば、②の登記を追加する際には、福岡市の住所になることは誰
でも納得してくださるでしょう。やはり、公示制度(登記)では申請時点の
現時点の住所でするのが原則だという結論になります。


2023.10.27(金)【登記事項と登記履歴】(金子登志雄)

 登記事項である商号や目的を変更したら、新内容と変更日(原因年月日)
が同じ枠内で別枠に記載されるのに、吸収合併や吸収分割だと、1つの枠内
に、「令和〇年〇月〇日・・・を合併」などと変更日が本枠に記載されるこ
とに何となく不思議な感じを持っていました。会社法の条文では「2週間以
内に登記せよ」と同じ規定ぶりだからです。

 原因は商業登記規則の別表です。商号や目的では「登記すべき事項」に変
更日(原因年月日)が加わっていないのに対し、会社履歴区では、「合併を
した旨」が登記事項ですから、「いつ合併した」の年月日も本枠の登記事項
にしたためでした。会社【履歴】区という名称ともしっくりきます。ちなみ
に、登記記録区では年月日も登記事項と明記されています。

 この別表によると役員の就任日も「原因年月日」ですから、登記事項その
ものではありません。登記事項は「どこの誰」までです。しかし、任期があ
ったり氏名の変更もありますから、設立などは別として、変更日も原因年月
日として、広義の登記すべき事項として認識すべきでしょう。

 実務で問題になるのは、この登記順序です。23日本欄でも書きましたが、
例えば、次の事実があったのに、②を漏らしていきなり③を登記してしまっ
た場合に、これから②を登記するにはどうしたらよいのでしょうか。

  ①令和3年6月26日札幌市A重任
  (②令和4年6月27日札幌市A重任)
  ③令和5年5月28日A【福岡市に住所移転】

 まず、③を錯誤抹消し、②③の順序に登記し直す方法が考えられますが、
事実に反する内容ではなく錯誤があったとは思えません。また、同じ枠内で
すが、「重任」と「住所変更」は単独で登記申請ができる別の問題ですから、
時の順序に従う必要はありません。

 次に、では、③の後に②を追記するだけでよいのかというと、札幌住所で
は登記記録の履歴がおかしくなりますので、福岡の住所にします。

 これにつき、令和3年の重任時には福岡の住所ではないじゃないか、2週
間以内に登記せよというのは、当時の住所で登記せよということではないの
かと疑問を持たれる方も少なくないことでしょう。

 しかし、逆に質問しますが、今時点で「福岡市在住のA/平成2年に札幌
市の〇〇高校卒」と「札幌に在住していたA/平成2年に地元〇〇高校卒」
と、どちらが公表文書として適切ですか。公示手段の登記は現在の状況を示
さねばなりません。また、2週間以内に登記せよという意味はAの重任を登
記せよということで、その時の住所にせよという意味合いは深まれていませ
ん。原因年月日が本来の登記事項でないこともこの考え方に適合します。


2023.10.26(木)【国定忠治って誰?】(金子登志雄)

 昨日と違い、ぐっと軽い話題です(日々、ネタに苦労中です)。

 今月、当社の若い男性社員(30歳近く)と一緒に夕食をとりました。大先
輩ぶってご馳走したわけです。そこで、次のような会話がありました。

 私「海もなく山ばかりの群馬で、さらに小学校時代は農家ばかりのド田舎で
   育ったから、新鮮な魚も手に入らず、私は味音痴だ。好き嫌いはない」
 彼「山ではどこが有名なんですか」
 私「赤城山が有名かな。国定忠治って聞いたことがあるでしょ」
 彼「クニサダ・チュウジ? はじめて聞きました」

 びっくりし、翌日、彼よりもっと年長の社員に聞いてみたら、やはり「知り
ません」で、世代の差を痛感してしまいました。

 国定忠治は、遠州(静岡県)の清水次郎長や子分の森の石松などと同じく、
江戸時代の侠客(ヤクザ)ですが、浪曲や映画、大衆演劇で取り上げられる大
スターであり・・・と書いても、清水次郎長も森の石松も若い人には通じない
でしょうね。別の若い人に尋ねたら「文豪ですか」といわれてしまいました。

 いまや高齢者になった私の世代は、娯楽は時代劇やテレビの西部劇(いわゆ
るウエスタン)でしたが、多種の娯楽が存在する今は、せいぜい水戸黄門や大
石内蔵助の忠臣蔵程度ですから、知らないのも当然ですね。

 ついでながら、群馬県(上野(こうずけ)の国、上州)では、中央部の赤城
山と榛名(はるな)山、長野県境に近い西部の妙義山を上毛三山といいます。
中学・高校時代の私は、妙義山と県境の浅間山をみながら育ちました。

 上記の若い男性社員に「群馬県の名産って何ですか」と聞かれましたので、
食い物などに無関心な私は「人材です」と答えておきました。同郷の皆さん、
異議ないですよね。

(年配者には懐かしい名セリフと歌)
  赤城の山も今夜を限り、生れ故郷の國定の村や、縄張りを捨て国を捨て、
 可愛い子分の手めえ達とも、別れ別れになるかどでだ。
    https://www.youtube.com/watch?v=c2y5zxl63wo&t=36s
 
  忠治を題材にした東海林太郎の「赤城の子守歌」(NHK紅白より)
    https://www.youtube.com/watch?v=HTNp1NBQ-Mc


2023.10.25(水)【混迷深まる先進国】(金子登志雄)

 人口密集地のガザの全住民残滅作戦かとも思える病院・教会などへの無差別
空爆(WHOによるとガザの115の病院が空爆される)を切っ掛けに、イス
ラエル支持の先進国では、深刻な社会の混乱を招いているようです。

 体制側やテレビ報道で情報を得ている大人世代と、SNSで情報を得ている
若い世代との認識ギャップも影響しているのでしょう。テレビでは報道機関の
方針に従ってイスラエル庶民の被害を中心に報道しているのに、SNSでは報
道機関でない方による脚色されていないガザ情報が拡散されています。

 ハマスの攻撃を非難するとともに地獄同然のガザへの救援物資を無事に届け
られるようにする日本やフランスでさえも賛成した人道的な国連決議に対し、
米国は拒否権を行使し、世界から総すかんを食いました。

 英国では、アイスランドでパレスチナ支持の抗議活動に参加したというだけ
で元大使の自国民を「テロ防止法」で逮捕しました。報道機関でもパ支援者へ
の解雇が相次いでいるようです。

 フランスでは、アラブ系のサッカー選手が「不当で容赦ない爆撃の犠牲者で
あるガザ住民のために、私達は祈りを捧げます」とX(旧ツイッター)に投稿
しただけで、内務大臣からテロ組織と関係していると非難され、告訴騒ぎです。
治安が理由とはいえ、パレスティナ支持デモが禁止されました。

 これが日本が目標とした先進国の自由民主主義だったのでしょうか。いまや、
SNSでガザ情勢が瞬時に映像でも世界に伝わり、先進国を含め世界中でパ支
持又は停戦要求のデモが吹き荒れていますし、イスラエル国内でもシオニスト
過激派のネタニヤス政権を非難し辞任を求めた数千人のデモがありましたから、
欧米指導者の抑え込みは正気とは思えません。
  https://twitter.com/jakeshieldsajj/status/1716167377568629010

 この問題で中立だった中国がイスラエル非難に回りました。この中国が主導
する18日の北京での「一帯一路」の国際会議には、国連加盟国の78%に当
たる151か国が参加しました。先進国ではない南側の国々ですが、これだけ
多いと先進国の横暴が通じにくい世界になってきたといえそうです。

 ところが、突然に国連で51か国が中国の人権侵害非難のため、「(イスラ
ム教徒の)新疆ウイグル自治区の人権侵害に関する共同声明」を出しました。
51か国にイスラム教国は1つも入っていませんから、真偽などどうでもよく
中国非難の政治的プロパガンダを再開し、人道に反するのは中国のほうじゃな
いかと宣伝したいのでしょう。

 しかし、先進国とくに米国社会がおかしくなったのは中国やロシアあるいは
イランやパレスティナなど他国のせいではなく、内部からの崩壊が主原因です。
南側の国々は軍事よりも国民を飢えさせないための経済発展を優先しますから
(一帯一路も経済会議です)、戦争を歓迎しません。中国が軍事同盟を結んで
いる国は北朝鮮だけだそうです(北から頼まれての同盟らしいです)。そうい
えばインドも非同盟主義で有名でした。

 国民は誰でも個人として尊重されるという民主主義も建前だけで、実際は資
本の力が政治も経済もメディアも支配し、選挙のために仮想敵を作り扇動し、
実際に戦争を開始するなど資本民主主義に堕しており、これがウクライナ問題
とガザ問題を契機に顕在化してきたと私はみています。

 岸田総理は先進国の名誉白人になりたいようですが、どうもアジアの日本国
のほうが余程マシのようですから、上記のような白人先進国と行動を共にしな
いように願いたいものです。

 (代議士原口さんの意見に同意、写真は現在の新疆ウイグルとガザ)
  https://twitter.com/kharaguchi/status/1715452280630378650


2023.10.24(火)【連載「商業登記の変遷」】(東京・鈴木龍介)

 現在、月刊誌2本の連載を抱えています(こちらの「徒然」も連載ですね)。
そのうちの1つがテイハン社の『登記研究』で連載しております「商業登記の
変遷」です。こちらは、平成30(2018)年11月(849号)に連載を開始し、現在
54回目(令和5年9月号(908号)を数えます。

テイハンHP
   https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

 本連載は、我が国の商業登記制度の沿革について、時系列とトピックスの両
面からたどるというものでして、今後の制度の検討や研究の場面において、あ
る種のアーカイブになればと思っています。そのようなことから、制度創設時
の明治期からの資料にあたり、それらを論稿へ反映するとともに、当時の登記
簿等を掲載することを心がけていますところ、資料等の収集・読み込みには相
当な労力を費やしています(週末はこの作業に取り組んでいる感じです。)。

 本連載はもう少し続く予定ですが、ここまでのところの構成(目次)は以下
のとおりです。

  第1章 はじめに
  第2章 商業登記の起源と継受
  第3章 商法・会社法の歩みと商業登記
  第4章 商業登記手続法等の歩み
  第5章 商業登記に関する効力の歩み
  第6章 登記事項等に関する歩み
  第7章 商業登記に関する運用等の歩み

 本連載につきまして、商業登記制度、とりわけその歴史に関心のある皆さん
にご笑覧いただければ幸いです。そして、漏れや誤り等がございましたら、ご
指摘ご指導の程、よろしくお願いいたします。


2023.10.23(月)【重任後の住所移転】(金子登志雄)

 東京の住所の代表取締役Aが9月26日の定時株主総会で重任したのですが、
10月9日に住所を横浜市に変えるというので、登記申請の依頼を待っていた
ところ、やっと届いたとして、皆さんは、次のどちらの登記をしますか。

  ① 旧住所で9月26日重任と10月9日住所移転の2つ
  ② 新住所で9月26日重任の1つ

 私を含め、ほとんどの方が①でしょうが、②も可能です。ただ、経験がない
ため、拙著会社法実務〔全訂2版〕のQ4-10-9や、テイハン500問の
Q221では、可能だと考えますと表現しておきましたが、後記のとおり経験
しましたので、今なら、「可能です」と断言して書くことができます。

 重任というのは、ご承知のとおり「退任+就任」をまとめて登記する登記技
術であり、本来は、別々に登記するものです。

 2つに分けて登記する場合は、「旧住所9月26日退任」と「就任」の登記
になりますが、新規就任後に住所が変わった場合は、登記申請時の新住所で申
請するのが通常です。したがって、ここでも「旧住所9月26日退任」と「新
住所9月26日就任」となりますので、これをまとめて上記②にして問題あり
ません。

 上記の経験談とは、10月9日住所移転を登記したところ、後で会社から、
その前の9月26日重任の登記をしなければならなかったといわれたことがあ
ったためです。この住所移転登記は登記記録上は権利義務者に関する登記だっ
たわけです。

 時の順序に従い、旧住所での9月26日重任を登記するには住所移転登記を
抹消しなければなりませんが、錯誤はありません。経験済みの司法書士がいる
かを仲間内に尋ねても誰もいませんでした。

 ②と同じだから大丈夫だというアドバイスをくださった方もいらっしゃいま
すが、私も上記②の登記のうち住所部分だけを先に登記しただけだから、これ
から残った重任登記を新住所でするだけじゃないかと思い、念のため管轄法務
局に事前相談したところ、オッケーでしたので、初体験をいたしました。


2023.10.20(金)【証拠に対する事実認定力】(金子登志雄)

 旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への法人解散請求で、また、この
話題がネットで増えてきました。

 解散命令事由として宗教法人法81条1項1号に「法令に違反して、著しく
公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」とあるので、これ
に該当するかどうかの判断になります。

 教会の反論文「当法人に対する解散命令請求の方針を受けて」は次のとおり
です。
   https://ffwpu.jp/news/4878.html

 被害者救済に熱心な弁護士達を「左翼系弁護士団体」とレッテル貼りしたり、
「神を中心とした理想家庭をとおした世界平和実現」といいながら、多数の信
者の家庭を破壊してきたのは事実ですし、古くは霊感商法で信者を詐欺師に貶
め信者以外からカネを巻き上げてきたと思われていることにもう少し反論して
くれないと説得力もなく、皮相な反論としか思えませんでした。

 ところで、法律家を標榜する司法書士の皆さん、もし貴方が裁判官で、原告
が騙されて大金を寄附させられたと主張しているのに、被告の教会が「自由意
思で寄附したという念書があります。その時のビデオ映像もあります」と証拠
を出して来たら、どうしますか。事実認定は証拠でしなければなりません。
 
 これに関連して、いいなと思うネット記事がありましたのでご紹介します。
「認知症疑いの母から奪った1億円超えの献金は違法だ」裁判中の原告が明か
す教団との闘い。――という集英社オンライン記事で、要約すると下記です。

----------------------------------------------------------------------
 旧統一教会は寄付を受けるに際し、後日の証拠として被害者に自由意思に基
づくものだと念書を書かせたり、ビデオを撮影しているため、裁判所は、これ
に影響されてきた。ところが、消費者庁の資料では、「『返金逃れ』を目的に
個人に対して念書を作成させ、又はビデオ撮影をしていること自体が法人等の
勧誘の違法性を基礎付ける要素で、違法性をあぶりだすもの」とされた。
----------------------------------------------------------------------

 さすがは消費者庁です。鍛えられた消費者目線に感心してしまいました。

(出典)
https://news.yahoo.co.jp/articles/cf98e25d5e041180d4c6d579a5b9341fd43145e3

(ご参考:「教会と協会」「寄付と寄附」)
 旧名称は、世界基督教統一神霊協会だったため、正しくは「教会」ではなく、
「協会」だと思いますが、ここでは一般用語を採用しました。また、公用文で
は「寄付」ではなく「寄附」であり、被害者救済法も「法人等による【寄附】
の不当な勧誘の防止等に関する法律」です。ついでに、「附則、附属、附帯」
です。ネットでは、どちらでもかまいませんが。


2023.10.19(木)【増加する合同会社と司法書士実務】(仙台・立花宏)

 制度創設後、合同会社の設立数が毎年のように増加していましたが、一昨年
と昨年を比較してみると、一昨年が37,072件、昨年が37,127件で、
ほぼ同じ設立数でした。この数字だけみると、増加していた設立数も頭打ちか
と思えます。

 はたして、今年はどうなるのでしょうか。そんなことが気になり、今年の月
別の登記統計をみてみると7月分まで公表されていましたので、集計してみま
した。

 すると、一昨年と昨年の同時期までの設立数合計はそれぞれ22,188件、
21,964件だったのに対し、今年7月までの合同会社の設立数の合計は、
23,313件でした。

 今年が終わってみないとわかりませんが、今年7月時点までは設立数が増加
しているようです。もしかした合同会社の設立数は、再び増加傾向に転じたの
かもしれません(注)。

 ところで、合同会社の制度が創設されて、もう17年以上になりますが、こ
の合同会社の登記実務については、まだまだ、わからない部分も少なくないと
感じています。同じ持分会社である合名会社・合資会社については、旧商法時
代から存在し、その実務の歴史があり、合同会社の実務も、おおむね、それに
準じて考えればよいのかもしれません。

 しかし、社員が会社債権者に直接責任を負い、無限責任社員が存在する合名
・合資会社と、間接有限責任社員のみで構成される合同会社とを同じに考えて
よいのかどうか、実務では、悩ましく感じるケースも少なくありません。

 合同会社の設立数が増えてくると、司法書士がその登記実務に関与すること
が増え、それに伴い、実務で悩ましく感じるケースがますます増えていくので
はないかと、個人的には想像しています。

 10月10日(火)の本コラムで、鈴木龍介先生が、日本登記法学会第8回
研究大会の紹介をされていらっしゃいました。その記載にもありましたが、そ
の研究大会で、持分会社の持分相続について、発表させていただく機会をいた
だきました。

 実務で悩ましく感じている論点について、私なりの考えを発表させていただ
く予定です。おそらく、私と同様に悩ましく感じていらっしゃる先生方も少な
くないであろう論点です。

 今回の発表が、皆さまの登記実務に少しでもお役に立つことを祈りつつ、発
表の準備を進めていこうと思っています。

 注)参考までに、株式会社の7月までの設立数合計は、57,180件で、
  一昨年、昨年の56,580件、55,143件よりも増加傾向にありま
  した。少なくとも、今年の前半は、会社の設立数全体が、増加傾向だった
  ようです。


2023.10.18(水)【天井のない監獄】(金子登志雄)

 週の半ばのため時事問題にしました。次をみて泣けてきませんか。

 https://twitter.com/sohbunshu/status/1713300710836908292

 イスラエルのガザ地区は周囲を塀に囲まれた「天井のない監獄」といわれて
いますが、福岡市程度の面積に220万人も住んでいるのに、いまや電気も水
も止められ爆撃音が鳴り響く地獄になってしまいました。

 ガザ地区の政権を握るイスラム勢力ハマスの大規模奇襲攻撃に対する反撃と
はいえ、ガザ地区には反ハマスである住民も、外国人も国連職員も子供も病人
も人質もいるわけですから、明らかな過剰反応です。

 せっかくイスラエルへの同情が集まるところだったのに、いまは逆に非難の
ほうが優勢になってしまいました。国防相の「人間の姿をした動物」との闘い
だとの発言、ネタニヤフ首相の「ナチスによるホロコーストは、パレスチナ人
の進言だ」との過去の発言なども蒸し返され、ガザ地区の塀を人種隔離のアパ
ルトヘイトとみて、人種差別の目でコメントする人も増えてきました。

 なぜ米国はこういうイスラエルを支援してきたのかというと、米国内で金融
とメディアを支配しているユダヤ人勢力(陰謀論でいうディープ・ステイトの
1つ)が民主党や共和党のスポンサーにもなっているためです。

 昨日のネット記事によると、ハーバード大学の学生がイスラエル批判の声明
を発表したら、著名企業の経営者らが、こういう人間は一切採用しないと対応
したようですから、米国内でのユダヤ勢力の力が分かります。

 しかし、ウクライナ問題では「ロシアの侵略だ、プーチンは悪魔だ」とまで
扇動しておきながら、建国以来75年間ずっとパレスティナ人の居住地を次々
に侵奪してきたイスラエルを支援してきた米国政府や米国社会にも、今日を招
いた責任の一端があると私には思えます。

 虐げられていたとはいえ、ハマスがなぜこの時期に大規模先制攻撃をしたか
というと、多数意見は、中国の仲介で中東が安定してきたことに焦ったバイデ
ン政権が大統領選挙対策の起死回生として、アラビアとイスラエルを結びつけ
ようとしたので、立場のなくなるハマスが危機感を感じたためだというもので
すが、ハマスは米国やイスラエルからも資金援助(パレスティナ内の勢力分断
のための工作資金です。ハマスはパレスチア内で非主流派です)を受けていた
ため、少数ながらイスラエルの自作自演だとの見解もあります。

 魑魅魍魎が跋扈する国際政治は奇々怪々で、時間の経過を待たないと真相は
分かりません。力なき我々としてはハマスの早期人質解放とガザ地区の平穏を
祈るのみです。


2023.10.17(火)【事業承継シンポジウム2023 in 名古屋】
                           (東京・鈴木龍介)

 先回に続き、イベントのご案内です。

 近年、中小企業の事業承継は社会的な課題として認識されているものの、そ
れができずに廃業に至っているケースが散見されている中、司法書士をはじめ
とする専門家による支援が求められています。

 そのようなことを踏まえ、日本司法書士会連合会(日司連)では、事業承継
の当事者である事業者や、それを支援する専門家に対し、事業承継に関する意
識の向上と事業承継の支援者との連携を図ることを目指し、以下のとおり(敬
称略)シンポジウムを開催する運びとなりました。

 司法書士に限らず、事業承継に関心のある方どなたでもご参加できますので、
奮ってご参加ください。

 日時:令和5年11月22日(水)13:00~17:00
 開催形式:
   ①会場(名古屋市中小企業振興会館 吹上ホール7階 メインホール)
   ②オンライン会議システム「Zoom」
   ③後日、YouTubeによるオンデマンド配信
 主 催:日本司法書士会連合会、愛知県司法書士会
 概 要:
  第1部 講演 PART1
   テーマ「司法書士は事業承継において、何を見ているのか?」
    司法書士による事業承継支援業務についての取組み事例
    スピーカー:伊藤恵子(司法書士/愛知県司法書士会会員)
    
  第2部 講演 PART2
   テーマ「事業承継に関する理解と対策」
   スピーカー:松本久敏(独立行政法人中小企業基盤整備機構
         中部本部地域・連携支援部中小企業アドバイザー)
  第3部 パネルディスカッション(100分)
   テーマ「事業承継 何が気になる?何を見ている?」
   パネリスト:
       高橋惠子(俳優)
       長谷川敏也(税理士/名古屋税理士会会員)
       今西昭一(愛知県事業承継・引継ぎ支援センター
            統括責任者)
       井上和則(株式会社日本政策金融公庫
            国民生活事業本部 事業承継支援室長)
      コーディネーター:
       佐々木聡史(司法書士/日本司法書士会連合会
             商業登記・企業法務対策部 部委員)
 定 員:会場400名/オンライン950名
 参加費:無料

 申込みにつきましては、以下、日司連HPからお願いいたします。
 https://www.shiho-shoshi.or.jp/other/topics/event/56372/


2023.10.16(月)【情報共有その2(経由申請)】(金子登志雄)

 この10月のオンライン申請の登記で、いつもと違った経験をしたことの情
報共有その2です。

 吸収分割承継会社甲社が東京法務局(同時申請1/2)、吸収分割会社乙社
が大阪法務局管轄(同時申請2/2)だとすると、後者の「申請先」は管轄の
大阪法務局だが、申請書の「提出先」は東京法務局です。

 これを経由申請、つまり東京法務局経由での大阪法務局への申請となります。
したがって、「書面により提出した添付情報の内訳表」では「大阪法務局 御
中」になりますが、受付番号は甲の東京法務局への提出順位です。

 今回、議事録等を提出するため「書面により提出した添付情報の内訳表」を
印刷しましたら、1/2申請の甲の申請書にも「大阪法務局 御中」と印刷さ
れているではないですか。

 これはまずい。登録免許税は納付済みのため、取下げて再申請も手間だと思
い、東京法務局に問い合わせました。珍しい例なのか返答までに時間がかかり
ましたが、最終回答は、「放置すればよい」でした。東京の甲社の申請を大阪
に経由する可能性はゼロですし、受付番号も変わるわけではないからです。そ
こで「書面により提出した添付情報の内訳表」には、「間違いました。この部
分は削除です」とメモして申請し、無事に終わりました。

 こういう焦っている際に、書き入れ時だったため東京法務局の電話は何十回
かけても話し中で、ますます焦るようにできていますが、これ、何とかならな
いものでしょうか。

 上記の経由申請の場合は、経由元の法務局からの完了通知は2つになります。
東京の親会社が全国の子会社を合併で受けいれる場合は、存続会社と消滅会社
の数だけ、つまり提出した申請書の数だけ完了通知が来ます。

 全部の完了通知が来たので終わったと思い合併消滅会社の閉鎖謄本を請求す
ると、閉鎖されていない謄本が取れてしまいます。合併消滅会社の申請書が経
由先に届いていないためです。

 今回、全国の消滅会社の閉鎖謄本をみたら全て同じ日(仮に10月5日)に
登記となっていました。郵送であれば同じ日になるわけがありませんから、全
国の法務局間のネットワークで連絡するのでしょう。

 この場合でも、4月6日になっても7日になっても登記中の表示が出ないこ
とが多々ありますので、気をつけてください。あえて一度失敗すれば、記憶に
残りますので、それもよいでしょう。


2023.10.13(金)【情報共有】(金子登志雄)

 あれ、今日は13日の金曜日で不吉な日ですね。しかし、ご安心ください。
それはキリスト教国の一部でいわれているだけで、日本は無関係です。

 さて、10月2日に申請した組織再編登記や設立登記、本店移転登記につき、
急ぎでお願いしたため終了したり、終了のめどがつきました。申請前の準備期
間がたっぷりあったため、補正もほとんどありませんでした。顧客にも喜ばれ、
急ぎ処理のお願いを聞いてくれた各地の法務局に感謝しています。

 この10月登記で、いつもと違った経験をしたことを記録しておきましょう。
情報共有です。

 登記ではありませんが、設立の定款認証では認証委任状と定款との間に契印
がありませんでしたが成功しました。これで4度目であり、都内、横浜、千葉
の公証役場で成功しました(全ての公証役場で成功するとは限りません)。登
記で押印が任意化されたので、今後は全国で広まって行くことでしょう。

 民事局長通達の先例で、政令指定都市に本店があるときは都道府県を省略し
てよいとあるのに。大阪法務局堺支局に本店所在地につき「堺市〇〇区」で申
請したところ、出来上がりの登記記録には大阪府が加わっていたため、どうい
うわけかと電話したところ、堺市に限り、そういう対応をしているとのことで
した。さすがは中世に自治都市として繁栄したところですね。「堺は堺」でし
た。こういうローカルルールは、面白いので受け入れました。

 運送会社の合併では、貨物自動車関係と港湾関係で何枚も認可書を提出しま
したが、「合併認可を要しない証明書」の提出はゼロで済みました。消滅会社
の事業目的に「海上運送事業」とあり、この目的では合併認可を要する「一般
旅客定期航路事業」(海上運送法18条2項)を含むため、松井ハンドブック
4版183頁では必要説で書かれていましたが、先例(平成19・2・23民
商第451号通知)の新旧対照表では、事業目的に「一般旅客定期航路事業」
とあるが事業を営んでいない場合の内容としか読めないことと、発行を求めた
のに、運輸局のほうで、その必要性に疑問を出してきたため、その間の事情を
説明し、未提出で済ませてもらいました(9月22日本欄参照)。松井ハンド
ブックにメモしておくことをお勧めします。


2023.10.12(木)【浜の真砂は尽きるとも………】(金子登志雄)

 来年の米国大統領選にケネディ大統領の甥ロバート・ケネディ・ジュニア氏
が所属する民主党ではなく、無所属で立候補すると発表しました。子供の頃か
ら、伯父と父親が暗殺されたのに真犯人(彼は諜報機関を想定しているはず)
を不明のままにされた米国社会に強い恨みがあり、ネオコン(軍事力や陰謀を
使っても世界を米国型民主主義国にしようとする過激派)のバイデン政権に対
しても猛批判者と知られています。

 大統領選が面白くなりそうです。現職のバイデン氏も、ただでさえ高齢で認
知症気味なのに、トランプ氏とケネディ氏に挟み撃ちされ、大苦境でしょう。
願わくは、候補者のどなたも暗殺されませんように………。

 さて、米国で下院議長が解任されました。史上初だそうです。共和党なのに
予算審議につきバイデン民主党と妥協してきたことが、共和党トランプ派の怒
りを買ったためであり、これでウクライナ支援予算の成立が一時的にストップ
してしまいました。共和党は、この資金支援に反対の立場です。

 米国社会は混迷中です。日本でいうアベノミクスである新自由主義経済政策
により貧富の差が急拡大、国家財政の大幅悪化、LGBTや人種・移民問題へ
の対応で価値観の混迷、大統領選挙での不正疑惑、政府機関によるそのもみ消
し、怒った大衆による議事堂襲撃、何かあると陰謀だと相手を責めるばかりで
検証もしない、SNSへも情報統制、従わなければ解雇や抹殺・・・中南米型
の無秩序国かのようです。大都市では集団略奪が横行中です(下記)。これで
米国型民主主義を世界に普及しようなんて冗談はやめてほしいものです。

   https://www.youtube.com/watch?v=xsruIRGsRAQ
   https://twitter.com/i/status/1708225905846546934

 足元の日本では「ロシアが勝つ」と発言した鈴木宗男氏に非難轟轟ですが、
バイデン氏らネオコン一派も、圧倒的な国力差からしてウクライナが軍事的に
敗北することは想定内であり、鈴木氏と同じ見解のはずですから、日本でも、
鈴木氏に対して、もう少し冷静に接してほしいものです。

 軍事的に押され停戦しそうな時期もあったのに、英米が停戦させず戦争を継
続させてきたのは、戦争を長引かせて経済制裁も行い、ロシアを疲弊消耗させ、
あわよくばプーチン政権を転覆させ、米国の世界一極支配をはかろうとする戦
略だったからです。しかし、敵もさるもの、さっさと欧州よりもブリックス側
との関係強化にシフトしてしまい、経済制裁は失敗してしまいました。

 結局この戦争は民主か専制かではなく、米国一極支配主義か、ブリックス型
多極主義(各国の文化伝統を尊重し相互に内政干渉せず)かのイデオロギーの
対立であるため、前者も引き下がれず、バイデン政権が交代するまで終わらな
いでしょう。敗北を認めたら大統領選にも影響してしまいます。

 パレスティナでも火が噴き、今後の情勢変化は不透明ですが、浜の真砂は尽
きるとも世に紛争の種は尽きまじの弱肉強食が世の習いであり、人類の英知で
ある共存共栄は絵に描いた餅に過ぎないのでしょうか。


2023.10.11(水)【株主総会の運営】(金子登志雄)

 ジャニーズ事務所の先日の記者会見は相当荒れたようですね。6名の写真付
のNGと指名候補のリストを作成し、辛辣な質問をする東京新聞望月衣塑子記
者や旧統一教会追及の鈴木エイト氏らが会場の前方の席に坐って質問の手を上
げ続けているのに、全く質問させなかったのだとか。

 のみならず、逆に八百長を知らなかったはずがない主催者が「ルールを守り
ましょう。子供たちがみていますので、静かに」と子供を理由に会場を説得し、
主催者側の参加者や何も知らない人から拍手をもらい、騒ぎ出した望月氏らが
悪いという印象に誘導したような結果になってしまいました。

 驚くほどヘタクソですね。会場の後ろの方やマスクの人しか指名しなければ、
八百長がすぐにばれるのは明白ですし、主催者が無関係だったのなら、司会者
に「なぜ前席の方を指名しないか。公平にやれ」と叱りつければ済んだのに、
「子供たちが」と火に油を注ぐとは………。
 
 上場会社の株主総会の運営も、かつての総会屋時代は荒れていました。総会
運営の担当者は事前に総会場の近くの警察署に挨拶しておくのが慣例であり、
私も麹町警察署に挨拶に行ったものでした。

 当時勉強した総会運営のテクニックは次でした。

 1.議長の社長が営業上がりや技術畑で質問に答えられないことがあったら、
「その件に関しては担当役員の〇〇からご説明させます」と担当役員に振るこ
と。もっとも当時は、社員株主が前列を占拠し、「議事進行!、議事進行!」
と喚き、質問を一切させない会社も少なくありませんでした。こんな会社の総
会には2度と行くものかと証券代行に話したところ、「会社としては大成功で
すよ。総会に来てほしくないのだから」といわれてしまいました。

 2.新人役員いじめとして「〇〇監査役に、これこれを質問したい」と意地
悪な質問があったら、議長は常勤監査役を指名して答えさせ、「それではご指
名ですので、〇〇監査役にお応えさせます」と〇〇を指名する。〇〇は「ご指
名ですので、私からお応えします」。「先ほど常勤監査役がお応えしたとおり
でございます」とだけ答える。

 3.総会が荒れそうだったら、1号議案につき説明し議決し、2号議案につ
き説明し議決・・・では、2号議案の審議で、また同じことで荒れる可能性が
あるから、全議案を先に説明し、まとめて各議案に質問を受け、一時間程度し
たら、「既に十分に審議を尽くしたと思いますので、採決に移ります」と審議
を強制終了すれば決議取消の訴えも避けられる。

 1と2をいま思うと株主主権の時代ではなかったわけです。3は一括上程審
議主義などといいますが、たぶん、現在でも主流の方法だと思います。非公開
会社でも、荒れそうな場合は役立つ運営方法です。

 ただし、当時から、総会屋が来ると「ようこそ。前の方にどうぞ」と堂々と
した会社もありました。拍子抜けした総会屋も「面白い経営者だ」と思い、騒
がなかったとか。総会屋は過去のものになりましたので、いまの時代は原則と
してこれでなければなりません。2時間でも3時間でも審議に応じる気概をも
って誠心誠意に対応することこそが王道です。といいながら、お土産を廃止す
る会社が多く、株主の出席者は激減してしまいました。


2023.10.10(火)【日本登記法学会 第8回研究大会】(東京・鈴木龍介)

 早いもので毎年、恒例となっております日本登記法学会(当学会)の研究大
会(本大会/今回で8回目となります。)のご案内です。なお、本大会につい
ては、昨年同様、リアルでの会場とオンラインによる参加ができる、いわゆる
ハイブリッド方式による開催となります。

 プログラム等は以下のとおりですが、参加ほか詳細につきましては当学会の
HPをご覧ください。
      https://www.toukihou.jp/news.html

 日  時:令和5年11月25日(土)10:00~17:30
 開催形式:①会場(「日司連ホール」
       司法書士会館地下1階/東京都新宿四谷本塩町4-37
      ②オンライン会議システム「Zoom」
 共  催:日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会、
      日本登記法学会
 内  容:
  〇商業・法人登記(午前の部)
      テーマ「株式相続・持分相続と登記」
   報告① 大久保 拓也氏(日本大学大学院法学研究科教授)
      「株式会社の株式相続(仮)」
   報告② 立花 宏氏(司法書士)
    「持分会社の持分相続(仮)」
   モデレーター 中東 正文氏(名古屋大学大学院法学研究科教授)

 昼:日本登記法学会 定時総会

  〇不動産登記(午後の部)
    テーマ「不動産の相続と登記」
   報告① 松尾 弘氏(慶応義塾大学法科大学院教授)
      「相続登記の促進と民法・不動産登記法の改正(仮)」
   報告② 北詰 健太郎氏(司法書士)
      「相続登記の申請の義務化と司法書士実務(仮)」
   報告③ 丸山 晴広氏(土地家屋調査士)
      「不動産の相続と土地家屋調査士の実務(仮)」
   モデレーター 水津 太郎氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
   コメンテーター 荒井 達也氏(弁護士)

 定  員:会場80名/オンライン250名(当学会会員のみ)
 参加費用:無料(当学会の年会費として3,000円が別途必要となりますので、
    未入会の方は当学会のホームページから入会手続をお願いします。)


2023.10.06(金)【建設業許可と取締役の退任】(仙台・立花宏)

 前回、合併と許認可についての話題を書きましたが、許認可は、商業登記に
も影響することがありますから、新しい関与先様から会社の登記のご依頼をい
ただいたときは、許認可の関係も意識するようにしています。

 せっかくですので、今回も許認可の関係する商業登記の話題を徒然したいと
思います。

 たとえば、建設業許可を受けている会社から、「取締役が辞任する予定なの
で、辞任した際は登記をお願いしたい」というお話をいただいた場合、必ず、
その辞任が建設業許可に影響しないかどうかを確認するようにしています。こ
れは、私だけの話ではなくて、そういう意識を持っている司法書士は少なくな
いだろうと思います。

 というのは、辞任する取締役が経営管理責任者で、辞任により、その会社に
経営管理責任者が不在になったりすると、その会社は、建設許可の要件を欠く
ことになってしまうからです。そうなると、仮に後日、経営管理責任者として
後任の取締役を選任したとしても、いったん廃業したうえ、あらたに建設協許
可を受ける必要が生じてしまいます。

 そのため、こうした場合は、その会社の担当者様に、経営管理責任者が不在
とならないよう、行政書士の先生と対応を協議していただくようにお願いして
います。

 ところで、これまで関与していなかった、建設業許可を受けている会社様か
ら役員の改選(全員再任)のご依頼を受けた場合に、定款等を確認すると、取
締役の任期がだいぶ前に満了しており、権利義務承継状態のこともあります。
この場合はどうなるでしょうか。

 権利義務を承継しているのですから、後任の取締役を選任(再選を含む。)
すれば、経営管理者は不在とはならないため、建設業許可には影響しないよう
に思えます。

 しかし、インターネットで検索してみると、この場合でも、経営管理責任者
の不在により、建設業許可要件を欠いた状態だという扱いの県もあるようです。

 それに対して、経営管理責任者である取締役の履歴書に、権利義務承継状態
だった旨の内容が記載されていれば問題ない、という扱いをしている都道府県
もあるようです(注1)。

 ちなみに、私が業務を行っている宮城県ではどうかと思い、権利義務承継状
態の取締役が再選された場合の扱いを担当部署に確認したところ、権利義務承
継状態だった場合でも、経営管理責任者である常勤役員が再選されているので
あれば、許可の取消しまでには至らないという回答でした。ただし、許可更新
等の場合に、登記事項証明書から、経営管理責任者である取締役に空白期間が
判明する場合には、その期間における常勤性を確認するために、追加資料の提
出が求められるようです。

 都道府県によって、扱いが異なっているのかもしれません。

 実は、建設業許可以外の許認可等の場合にも、都道府県によって、扱いが異
なっていたりする場合があるので、これまで関与していなかった、宮城県以外
の会社・法人様から、はじめて、登記のご依頼をいただいたときは、影響する
許認可がないかどうか、ある場合は、行政書士の先生に相談しているか、とい
った点に注意するようにしています。

 注1)相原利行「商業登記掲示板 建設業許可と役員変更登記」
   (「月刊登記情報」(キンザイ)631号84頁)


2023.10.05(木)【伊藤貫ウオッチ】(金子登志雄)

 伊藤貫という米国在住の国際政治アナリストの名前は、私が評価する中国問
題研究家の遠藤誉氏のコラムに、ウクライナ問題につき別方向から同じ意見に
達した人として名前だけ紹介されたことがあったため知っていましたが、それ
以上は知りませんでした。ところが、最近、「時の人」になったのかと思うほ
ど、急にユーチューブ等に頻繁に登場するようになりました。やっと堂々と登
場することのできる環境になったということでしょうか。興味があったので、
ここ2週間ほど、伊藤貫ウオッチをしてみました。

 博識の方でした。外国の優れた本を原書で読んでいるようです。日本の核武
装まで主張する過激さには驚かされましたが、極右ではなく、遠藤氏と同じく、
現実主義者で日本は米国のいいなりになるな、だめになるばかりだと主張する
愛国保守であり、大多数の親米保守、とくに米国の文化や制度を日本に輸入し
ようとする西洋かぶれを猛批判する立場でした。

 学究肌で真実を重視する方であるため、遠藤氏と同じく、ウクライナ問題で
はウクライナを利用した米国のロシア潰し(国の破壊)だからロシアは被害者
だとみる見解でした。これでは、テレビなど西側諸国のマスコミには登場させ
てもらえるわけもなく、彼を知らない人が多いのも当然でした。
 
 彼が登場するユーチューブで、既に26年前にウクライナ戦争を予見してい
たロシアの軍師(?)セルゲイ・カラガノフ教授を紹介していました。文明論
にまで至る内容で、西洋のグローバリズムは各国の文化を破壊するといいたい
ようで、非常によい内容でした(サイトは最後に紹介しています)。

 ロシアの国民性は、個人よりも家族、祖国、神を愛する集団主義だというこ
とですから、日本人に似ているようです。差は軍国主義で不自由だった日本で
はマッカサーのGHQを歓迎したのに、ロシアでは逆にソ連邦崩壊後に米国に
騙され、ひどい目にあってきたため反米感情が根強いことでしょうか。

 1962年のキューバ危機(キューバが米国からの防衛上、旧ソ連に要請し
ソ連製ミサイルが同国に配備された最初の核戦争危機)の際に、米国の危機感
や怒りがすさまじかったのと同様に、ロシアでは反プーチン派も、ウクライナ
に関してはプーチン支持です。米国はこの点でも自分が怒るのは正しいことだ
が、ロシアが怒るのは悪だいう身勝手なご都合主義です。

 カラガノフ教授が6月13日に発表した核使用に関する衝撃的な論文「難し
いが必要な決断」で次のように述べていました(伊藤氏のユーチューブ込みの
内容で私なりの意訳です)。

 1.いまの西側のグローバリズムは「新しいファシズム」だ。この75年間、
世界が平和だったのは核戦争の恐怖という自己保存本能があったからだが、最
近の西側の指導者は、ロシアが何度も警告しているのに全く聞く耳を持たず、
ロシアが核を使うことなどあり得ないと思い込んでいる。

 2.核戦争の恐怖に鈍感な西側の指導者の目を覚まさせるためにも、ロシア
はNATOに対抗して核を使うことを厭わない。ただし、事前に警告し住民が
いない場所を狙う(広島や長崎のような人道にもとる無差別殺戮はしないとい
うことをいいたいのでしょう)。また、そうしたからといって、米国は絶対に
参加してこないから、核の傘で同盟国を守るという米国の真っ赤なウソがばれ、
米国への安全保障への信頼度が地に落ちるだろう。

 この論文は、ロシアを見下していた米国支配層に大きなショックを与えたよ
うです。日本では、読者受けを狙い、ロシアは核使用で脅かしてくる凶暴な国
だと報道されていますが、ロシアからすれば、核戦争の可能性があるのにロシ
ア潰しに突き進んでくる米国ネオコン一派及びその協力国は、正常な感覚の持
主なのかといいたいようでした。

 田中角栄元首相の名言「戦争を知っている世代が社会の中核にある間はいい
が、戦争を知らない世代ばかりになると日本は怖いことになる」は、日本に限
ったことではないといえそうです。

    https://www.youtube.com/watch?v=AMn97JxtOCQ&t=10s
    https://karaganov.ru/en/


2023.10. 04(水)【運送業の合併認可書】(金子登志雄)

 ジャニーズ事務所は、結局、廃業を決断したようですが、今後は被害者救済
に特化するのなら、新社名の「SMILE-UP.」は実に軽率でした。スマ
イルでは、反省していませんと受けとめられてしまいます。

 また、先日の記者会見では、辛らつな質問をする記者を指名せず質問させな
かったらしいのですが、誠心誠意を疑われるようなことは避けるべきでした。

 さて、組織再編の書き入れ時の10月2日は、零細な当事務所にも合併、吸
収分割がありました。

 合併は運送事業の親会社Pが子会社数社(ABCとする)を吸収する案件で
あり、認可書を提出しました。

 この合併は、PAとPBとPCの3つの合併だから、認可書も3つになるか
と思っていましたら、PABC(合併法人P、被合併法人ABC)で1枚でし
た。一般貨物自動車運送事業も第2種貨物利用運送事業もそうでした。認可者
は国土交通大臣になっていました。

 ご承知のとおり、会社法では合併するのはABCなのに、合併される被合併
法人とはこれいかに?、と突っ込みたいところですが、法人税法でもPが合併
法人で、ABCは被合併法人ですね。縦割行政の結果でしょう。

 この会社は港湾運送事業も営んでいました。ところが、この場合の認可書は
運輸局長名義であり、PA、PB、PCごとの認可でしたといいたいところで
すが、Aが3つの港をテリトリーにしていた場合は港ごとの認可でした。おか
げで、認可書の枚数が多くなってしまい、実に面倒でした。

 もし、Aが甲港、乙港、丙港をテリトリーにし、丙港の認可書を提出しなか
ったら、このPA合併は無効になるのでしょうか。港湾運送事業法18条2項
の「港湾運送事業を経営する法人の合併は、国土交通大臣の認可を受けなけれ
ば、その効力を生じない」からは、そう解釈するしかありませんが、納得する
ことができません。港湾運送事業についても、貨物運送と同様に、PABC合
併で1枚の認可書にすべきだと思いました。

 ちなみに、簡易ガス事業で認可が必要な頃、認可書が40枚程度になりまし
た。合併認可を要しない証明書の要否とともに、見直す時期だと思いました。


2023.10.03(火)【『詳細登記六法 2024年版』】(東京・鈴木龍介)

 早いもので、今年も私が編集代表の一人として関与しております『詳細登記
六法2024年版』(金融財政事情研究会/本六法)が発刊されました
       【Amazon】
         http://urx.blue/wFOj

 本六法でまず目を引くのは体裁面でして、これまでよりひと回り大きなA5
サイズとしたうえで、2分冊というかたちになりました。また、紙面について
は3段組だったところ4段組へ変更しました。とりわけ2分冊とすることにつ
いては、ここ何年か編集委員の間でも相当に議論したところでしたが、近時の
多数にのぼる法令改正等により収録すべき法令も増加の一途をたどり、もはや
1冊に収めることが物理的に困難となり、今回の運びとなりました。

 現に『判例六法Professional』(有斐閣)等分冊となっている六法もありま
すし、昨年までのものも本冊とともに、旧法や登記先例を収録した別冊の2冊
構成となっていましたので、逆にスッキリしたように思っています。

 2分冊とした場合の問題として、どの法令を2冊のうちどちらに収納するか
ということでしたが、ひとまず以下のとおりの収録としました。これについて
は、おそらく正解はないと思われますが、ユーザーのみなさんの声を聞き、見
直し等を図っていければと思っています。

Ⅰ 憲法編、民法編、不動産登記法編、不動産登記関係先例編、
  司法書士法・土地家屋調査士法編、税法編
Ⅱ 商法・会社法編、商業登記法編、商業登記関係先例編、民事訴訟法編
  供託法編、供託関係先例編

 内容面としては、令和6(2024)年4月1日に施行される相続登記申請
の義務化に関する各種法令を網羅するとともに、民事関係手続デジタル化関連
法にも対応しています。くわえて、「相続土地国庫帰属制度事務処理要綱」ほ
か最新の不動産登記・商業登記・供託に関する重要先例を追加収録しています。

 法令については、「法令データ提供システム」等のデジタル媒体でチェック
することも多くなってきたと思われますが、打合わせやセミナー講師などを務
める際には、手元に置ける紙媒体の六法は必要です。そして、本六法は、実務
家や受験生を対象とした、いわゆる登記専門六法という位置づけですが、司法
書士界としては今後も存続できればと願っております。

 本六法につきまして、バグや改良点等ございましたら出版社までお寄せいた
だけますと幸いです。


2023.10.02(月)【「良いものだから….」に要注意!】
                         (島根・根来川弘充)

 私は、消費者問題に割と取り組んでいる司法書士だと思っています。先日の
相談で、あらためて、ふと思ったことを今回触れたいと思います。

 悪徳業者は、「良いものだから…」と言って、商品やサービスを勧めてきま
す。大抵の方は、この言葉に対して「いいえ結構です。」とは言えないのでは
ないでしょうか。

 それだけ、断りにくい言葉なのだと思います。しかし、そもそも「良いか、
悪いか」は、お客が決めることであって、業者に決めてもらうことではありま
せん。

 業者の立場から考えますと、自らが良いと思う点を説明し、それについて、
どのような考えるかをお客に検討する機会をあたえるべきだと思います。

 おそらくですが、大半が「どうでもいい」と思う商品やサービスではないか
と思います。

 悪徳業者は、まさにこの「どうでもいい」という選択肢を奪うことによって、
騙そうとしてきます。

 「良いものだから」という、この言葉のみで、商品やサービスを勧めらえた
際には、是非、ご注意くださいませ。


2023.09.29(金)【総会中に就任承諾すると出席役員か】(金子登志雄)

 昨日28日は私が創業時から役員を務める6月決算の当社(上場会社のアク
モス)の第32回定時株主総会でした。この時期は、10月1日付け組織再編
などで零細の当事務所も久々に多忙になる時期ですが、非常勤とはいえ役員が、
たった年1回の大イベントを欠席するわけにはまいりません。

 監査等委員会設置会社ですから、監査等委員でない取締役は任期1年のため、
毎年改選です。今回は既存のABC3名にD1名追加の4名選任でした。

 さて、株主総会終了前にABCDの全員が就任承諾し、仮に、まだ次の議案
(例えば2年任期の監査等委員である取締役の改選議案)が残っていたとする
と、株主総会議事録の出席役員欄にDの記載が必要でしょうか。

 会社法施行後10年間程度は、総会の途中で就任承諾し役員になったのだか
ら、当然に記載が必要だという見解も有力でしたが、いまはだいぶ廃れたので
はないでしょうか。

 株主総会の現場をお考え下さい。ABCは役員席(いわば雛壇)に坐ってい
るのに対し、取締役候補者のDは株主席の目立つ場所(例えば席の一番前)に
坐って待機しているだけです。仮に、総会の途中で役員になったとしても、役
員席に席を移動することはありません。ましてや、株主からDに対して、総会
議案の説明義務の履行を求められることもありません。

 そもそも総会の途中から役員だという考え方そのものを現実の実務では致し
ません。ABCが総会終結時まで任期があり終結時に重任になるため、Dも総
会中に就任承諾しても、ABCと同様に総会の終結時から役員になるという意
識でいます。出席株主・役員がみなその意識です。

 民間の実務に詳しくない登記所職員の杓子定規な対応に反論するには、実務
の現場をよく知ることも重要です。


2023.09.28(木)【米国とロシアへの好感度が急変化】(金子登志雄)

 いまだに続くウクライナ紛争には無関心でいられませんが、米国がロシア国
内を狙うミサイルをウクライナに供与すると発言し、レッドラインを超えそう
です。この発言は、ウクライナが劣勢であることを認めたのと同じですが、そ
れでは来年の大統領選でバイデン氏が困るので、ロシアとNATOとの間で直
接戦争になるよう仕向けたとしか思えませんでした。

 さて、かわいそうな小国ウクライナと邪悪な大国ロシアと思い込んでいる方
々には信じがたいことでしょうが、英国ケンブリッジ大学のウクライナ戦争後
のロシアへの好感度調査によると、中国では83%、インドやパキスタンでは
76%、サウジアラビアでは60%に跳ね上がったそうです。中南米やアフリ
カ諸国でも同じでしょう。逆にこれらの国では米国に対する好感度が急減した
ことになります(以下、固有名詞に敬称を省略します)。

 民主国家対専制国家という単純な対立図式で、敵味方を分け、第2のCIA
といわれるNED(全米民主主義基金)の資金援助で世界中にカラー革命等を
焚きつけ、政権転覆や混乱を起こさせる米国式世界支配戦略が警戒されてきた
ためで、民主化歓迎気運の強かった数十年前とは様変わりです。リビアやイラ
クの政権転覆では飽き足らず、とうとう核大国のロシアまでをターゲットにし
たため、行き過ぎであることは誰の目にも明らかです。

 米国が嫌われた理由は価値観の押し付けだけでなく、経済制裁に石油のドル
決裁システムをロシアに使わせないことにしたことも大きいのだそうです。こ
れで他国は、米国に逆らうと自国も同じ目にあうのかと警戒し、自国防衛のた
め一斉にドル支配から抜け出し世界の多極化を目指すプーチンと歩調を合わせ
るようになったわけです。米国寄りのサウジアラビアでさえドル決済を止め、
露中に接近してしまいました。

 米国には共和党と民主党という2大政党があり、昔は、金持ちのための共和
党に対して労働者のための民主党というイメージがありましたが、最近はそう
でもありません。次の動画はたった1分で終わりますから、共和党と民主党の
イメージの差をご確認ください。
   https://embed.nicovideo.jp/watch/sm42748431?autoplay=1

 要するに、民主党には表の顔と裏の顔があり、共和党と比較して、ずる賢い
ということでしょう。粗野な共和党トランプと比較して民主党のクリントン、
オバマ、バンデンなどは岸田総理と同じく誠実な紳士の印象であるため、私も
騙されてきた一人です。約束違反のNATOの東側への拡大はクリントンが始
めましたし、正当な選挙で選ばれたウクライナ政権をマイダン革命で暴力的に
倒したのはオバマ時代(主導はバイデン副大統領)でした。

 冒頭の好感度調査によると、西側の欧州ではロシアへの好感度が34%から
15%に減少、米国では22%が15%に、日本では16%が8%にまで下が
りました。この調査結果をみても集団主義の日本世論は一斉に同じ方向に向い
てしまう危険な体質であることが分かりますが、それでもマスコミ報道に影響
されない割合が8%もあるのかと驚きです。欧米で15%もあるのは、さすが
は多様な意見を尊重する自由の国だと思いました。

 西側から極悪人扱いのプーチンもソ連崩壊後の民営化で、アル中エリティン
大統領の無策とハゲタカの米国やユダヤ資本の国家資産の略奪、それに協力し
たオルガルヒの登場で著しく困窮化したロシア経済(上記動画に登場する伊藤
貫氏によると、病院にも行けずロシア人の平均寿命が10歳も下がるほど悲惨
な状況だったとか)の救世主としてプーチンが現れ、ロシア経済を立て直し、
ロシア人の誇りを回復したわけですから、国内ではいまだに大変な人気です。

 頭もよく4時間以上の記者会見でも原稿も資料もないのに回答するのだとか。
ウクライナ問題でも当初は「プーチンは米国の罠にはめられた」という見解が
多かったのに、最近では「罠にかけられたとみせかけ、世界の多極化のために
米国を罠にはめたのでは」という見解がいくつか登場しはじめてきました。

 わずか1年ちょっとで、こうも評価が激変してしまうとは、誰が予想したで
しょうか。
 
 参考までに、オバマとプーチンの人柄が垣間見えるミニ動画を再掲載します。
       https://is.gd/n5oKU5


2023.09.27(水)【蛮族とSLAVE】(金子登志雄)

 水曜日担当の酒井先生が不定期投稿に変わったため、また私が週3、4日を
担当することになりました。会社法ネタ収集に苦労してますので、会社法以外
の話題を織り交ぜて頑張りますので、引き続きお付き合いください。

 さっそく、会社法以外の話題ですが、韓国の時代劇をアマゾンプライムなど
でみていると、必ず、他国を蛮族と呼んでいました。皇帝陛下は天子ですから、
どこの国でも、自国は神の国であり、他国は蛮族になるのでしょう。

 中国や朝鮮の諸国からみて蛮族の日本は「倭」と呼ばれていました。ネット
で調べたら、日本がそれを嫌がり、自ら「日のいずる国」「日の本」といい出
し「日本」となったのだそうです。

 これと関係しているのか、先般のG20ニューデリー・サミットで、インド
がヒンズー語のバーラトと名乗っていたため、植民地時代の国名を変更するの
ではないかといわれています。

 インド国内では両方とも使われているようですが、世界で最も多い14億の
人口を要し、いずれは米国や中国をも追い抜く大国になるでしょうから、その
可能性は高そうだと思いました。政治的にも米国の要求をはねのけてロシア非
難を宣言に盛り込みませんでしたから(経済会議なのに米国はあらゆる手段を
使い他国を巻き込んで敵と味方を区別する困った習性があります)、いまでも
十分に堂々と自己主張する大国です。

 話変わって、奴隷の「SLAVE」の語源はスラブ人から来るとネットで知
り驚いたことがありました。蛮族どころではありません。欧州の民族を大別す
るとゲルマン人(北欧州、宗教はプロテスタント系)、ラテン人(南欧州、西
ローマ帝国のカトリック系)、スラブ人(東欧州、東ローマ帝国のギリシャ正
教系)ですが、先に発展したラテンやゲルマンと比較して、その地位は低くみ
られているのかもしれません。

 ウクライナはスラブ人の国ですが、西部地域がカトリックでウクライナ語使
用、東部はギリシャ正教でロシア語使用であり、昔から不仲です。西側は公用
語としてロシア語を禁じ公務員からも排除するなど東を徹底的に弾圧し、かつ
虐殺までしていました。いわば内戦状態です。その延長でNATOに加わり、
ロシアを牽制しようとし、ロシアを挑発し続けたのが、いまのウクライナ紛争
の原因の1つです。少なくとも東地区の住民はロシアの介入を歓迎したことは
間違いないでしょう。

 ネットで様々な見解をみた限り、ウクライナは、同一民族の朝鮮半島の南と
北以上に対立の根は深そうですから、ロシアの介入とは無関係に2つの国に分
断しないと平穏な住民生活は無理のように思いました。

 それにしても、他との協調性が全くない一神教の宗教対立は根深いですね。
八百万(やおろず)の神を信仰し、七五三は神社、結婚式はキリスト教、葬式
は仏教、家には神棚と仏壇の無節操な日本文化は偉大な平和文化です。


2023.09.26(火)【大学での授業2023年~秋学期のスタート】
                          (東京・鈴木龍介)

 今年は猛暑でしたが、いまだ秋とは思えない暑さが続いている中、先週、今
週と非常勤で講師を務める大学(A)と大学院(B)で今年度の秋学期の授業
(いずれも選択科目)が始まりました。ちょうどコロナとインフルエンザが流
行しているところですが、両校ともに従来に戻っての対面オンリーの授業形式
です(今のところ)。

 A大学については、月曜日の1限の授業ということもあって例年どおり25
名程度の受講(履修登録)でしたが、もう1つのB大学院については、過去最
高の50名超の受講(履修登録)となりました。ありがたいことですが、試験
や評価のことを考えると若干、憂鬱なところです・・・

 両校ともに数年来継続して開講しているものなので、授業自体のコンセプト
や内容等に大きな変更等はありませんが、受講生はあらたに迎えることになり
ますので、私自身もフレッシュな気持ちで取り組みたいと思っています。そし
て、実務家教員として、受講生のみなさんに少しでも実務現場の空気のような
ものがお届けできればと思っています。

 ちなみに、大学で教鞭をとっている司法書士の方々少なくないように思われ
ますが、一度、リサーチしてみると面白いかもしれません。


2023.09.25(月)【ガス事業と産業廃棄物業者の合併】(金子登志雄)

 来週の10月1日は組織再編の書き入れ時ですが、合併と許認可では私の経
験では運送関係以外は気にしなくても大丈夫です。

 一時、液化石油ガスで認可を要するものがありましたが、いまは一般ガスで
なければ認可対象ではありません。

 ちなみに、ガス事業法42条2項に「一般ガス導管事業者たる法人の合併及
び分割(略)は、経済産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない」
とありますが、一般ガスとは都市ガス(メタンを主原料とする天然ガス)のこ
とで、一般社団法人日本ガス協会が一般ガス導管事業者一覧を公表しており、
そこに含まれていないかぎり大丈夫です。
    https://www.gas.or.jp/jigyosya/ichiran/

 これに対して、プロパン・ブタンを主原料にする液化石油ガス(LPガス=
liquefied petroleum gas)については、「液化石油ガスの保安の確保及び取引
の適正化に関する法律」があり、その10条や42条によると、合併の効力を
左右いたしません。

 ついでですが、産業廃棄物については、認可施設設置者であれば認可が必要
ですが、次をみる限り、一種の営業免許です、
(合併及び分割)
 第9条の6 許可施設設置者……である法人の合併の場合……において当該
合併……について都道府県知事の認可を受けたときは、合併後存続する法人若
しくは合併により設立された法人又は分割により当該一般廃棄物処理施設を承
継した法人は、許可施設設置者等の地位を承継する。


2023.09.22(金)【認可を要しない証明は行き過ぎでは】(金子登志雄)

 昨日の立花投稿の続きです。

 事業目的に「貨物利用運送事業」とあると、「合併認可を要しない証明書」
が必要だとされていますが、合併の効力を左右するのは、貨物利用運送事業法
29条2項により「第二種貨物利用運送事業者たる法人の合併及び分割」に限
られていますから、「原則不要、例外必要」なのに例外がないことを証明する
なんて証明原則の基本原則からして行き過ぎではないのでしょうか。少なくと
も、「当社は第二種貨物利用運送事業者ではない」という上申書でなぜ足りな
いのかと疑問に思っています。

 同じことが「海上運送事業」でもいえます。海上運送法18条2項では「一
般旅客定期航路事業を経営する法人の合併及び分割は、国土交通大臣の認可を
受けなければ、その効力を生じない」とあるだけで、海上運送事業では原則と
して認可不要だが、例外的に一般旅客定期航路事業だけ必要だとされているの
に、この場合も運輸局から「合併認可を要しない証明書」をもらわねばなりま
せん。

 運輸局に問い合わせしたことがありますが「登記に必要だからと求められて
いるので出しています」とのことでした。乗客を乗せる定期航路の一般旅客定
期航路事業なら商号も「〇〇観光」などとし「〇〇運送」などとはしないもの
ですが、登記では少しでも可能性があれば、それを否定する証明書を求めてき
ます。

 こうなったら我々のほうで防衛しなければなりません。事業目的に「貨物利
用運送事業(第二種貨物利用運送事業を除く)」「海上運送事業(一般旅客定
期航路事業を除く)」とするか、一般的に「運送事業(合併や会社分割の効力
を左右する認可事業を除く)」とすればよいと思うのですが、いつ合併や分割
するかも分からないのに、ここまでする会社はないようです。合併前に定款変
更する際に提案してみようとは思っていますけど。


2023.09.21(木)【合併と許認可】(仙台・立花宏)

 私の事務所は、補助者もいない零細事務所ですが、それでも、ありがたいこ
とに、年に数件は合併等の組織再編の登記のご相談をいただきます。

 その手続の中でも、債権者保護手続の公告等にミスがあると、とり返しがつ
かないことになりかねませんから、文案の作成の際は、とても緊張します。ま
た、そのほかに、当事者である会社が許認可等を取得していないかどうかにも
気を使います。許認可が、組織再編の効力発生に影響がある場合があるからで
す。

 もっとも、幸いなことかどうかわかりませんが、そうした許認可が必要とな
る合併等は、私自身は経験したことがありません。ただ、目的には許認可が必
要な事業を掲げながら、実際には、許認可を受けていない、いわゆる目的上事
業者が関係する合併等は何度か経験があります。ご承知のとおり、この場合は、
登記申請の際、合併等に許認可を要しない旨の主務官庁の証明書等を添付する
ことになります。

 もちろん、許認可が合併等の効力発生要件となっている場合には、当該合併
の登記の申請に、許認可の原本等を添付しなければなりません。

 ところで、許認可が合併等の効力発生要件となっている場合に、許認可を得
ずに合併等の登記を申請してしまった場合は、当然、受理されないはずですが、
万が一、受理されてしまったらどうなるでしょう。

 その合併は効力が生じていませんから、合併の登記を抹消する必要があるよ
うに思えます。では、そのためには、どのような添付書面が必要になるでしょ
うか。

 実は、この場合は、添付書面がなにか、というよりも、抹消の登記申請は受
理されないと思われます。というのは、その旨の先例があるからです(注1)。
合併等の会社の組織に関する行為の無効の訴えは、訴えをもってのみ主張する
ことができるとされていることが理由です(会社法828条)。そして、訴え
に係る請求が認容された場合には、裁判所書記官が登記を嘱託しますので、当
事者である会社が申請することは、そもそも予定されていないのだろうと思い
ます。

 ちなみに、この訴えには提訴期間がありますから、その期間を経過してしま
うと、登記を抹消することすらできなくなってしまうのだろうと思われます。

 許認可を受けなければ、合併等の効力が生じないというケースなので、そう
すると、この合併等は、許認可を受けなくても効力が生じたことになるのでし
ょうか。

 なお、こうしたケースの場合に、事後認可を行った事例があるようです(注
2)。特殊な事例なのだろうと思いますが、個人的には、事後認可を受けたか
らといって、はたして、その効果が、合併の効力発生日にさかのぼるのだろう
かと、とても悩ましく感じました。

 このようなことがないように、合併等の手続はもちろん、その他の案件の場
合にも、許認可等については、細心の注意を払わなくてはならないと、あらた
めて思いました。

注1)昭和34年4月22日民事甲1330号回答
注2)金島良和「商業登記掲示板泣き笑い千例集「合併登記を元に戻しなさい
  !」」(「月刊登記情報」(キンザイ)524号107頁)


2023.09.20(水)【(連載)まとめ】(神奈川・酒井恒雄)

 日本はキャリアブームの真っ只中です。とはいえ、それは国の政策に引きず
られている感があります。生徒へのキャリア教育が進んでいる学校もあれば、
形だけ導入している学校もあり、社員へのキャリア構築支援が進んでいる会社
もあれば、パフォーマンスだけの会社もあります。

 ただ、キャリア論を無視できない状況になっているのは確かなことかと思い
ます。今まで、キャリアとか転機とか、いろいろ司法書士業務には関係なさそ
うなことを長々と書いてきましたが、世の中の流れを捉えて考えてみるなら、
キャリアと撤退支援の融合(これはキャリアと起業支援の融合に繋がるのです
が)について、いろいろ試して実践してみる価値はあろうかと思っています。

 私が、そんなことを考えるのは、自分自身が置かれている執務環境が大きく
影響していると思います。「事業に失敗したら人生も終わる」「起業したら絶
対に後にはひけない」といった言葉は、私が受けた起業相談や実際に起業して
いる人たちの相談において、度々登場してくる言葉です。

 起業を目指す人や、すでに起業して思うように事業展開できていない人に対
しては、成功する人より失敗する人の方が多いという現実から目を背けず、起
業した後に事業をやめて会社を解散させ、また別の人生キャリアの選択をする
場面もあって当然ということを伝えるようにしています。

 中には、あきらめなければ絶対成功するという言葉を、そっくりそのまま受
け止めている人もいるので、その誤解を解くことも大事だと思っています。引
き続き現場で司法書士として新たに貢献できることを探りつつ、キャリア視点
を交えた支援業務も実践していきますので、また何かご報告できればと思って
おります。(終わり)


2023.09.19(火)【ファミリーオフィス】(東京・鈴木龍介)

 最近、「ファミリーオフィス」なる言葉を耳にすることがありますが、いか
なるものでしょうか?

 ファミリーオフィスとは、裕福な一族の投資や資産の管理等を行う非上場会
社のことを指し、そのルーツは6世紀のヨーロッパの王族のようです。ファミ
リーオフィスという概念が生まれたのは、19世紀に入ってからで「モルガン
家」や「ロックフェラー家」が先駆けとされています。

 そして、21世紀に入ってIT業界の隆盛もあり、超富裕層の数が増加する
のに伴い、ファミリーオフィスも増加し、現在米国では6,000社以上、世
界でみると1万社以上が存在するといわれています。

 もう少し具体的に見てみると、おおむね100億円以上の資産を保有する一
族が投資の管理や資産の運用などを行い、その資産を後の世代に継承し、一族
が永続的に繁栄できることが、その目的とされています。

 有価証券や不動産といった有形資産の管理・運用だけではなく、税金や法律
問題への対応、親族間の人間関係の調整、ボーディングスクール(全寮制学校)
の手配などといった後継者育成に関する事業も行っていることも少なくありま
せん。

 一方で、近年は、資産を有効活用したサスティナブルな社会貢献活動の実現
に向けて、公益的な団体の設立支援や運営サポートなど、フィランソロピーを
支援する活動においても重要な役割を担う存在となっています。

 欧米の富裕層には浸透しているファミリーオフィスですが、日本ではGHQ
による財閥解体が行われた影響でファミリーオフィス自体がほとんど存在して
いないといわれています。一方で、日本では家族経営で行うファミリービジネ
スの数が欧米と比べて多くあることを踏まえ、ファミリーオフィスへの関心や
期待が高まりつつあるようです。

~参考~
「日本におけるファミリーオフィスへの期待」商事法務2335号(2023年)90頁。


2023.09.15(金)【商登法46条と47条の位置付け】(金子登志雄)

 商登法46条や47条は次の内容ですが、同時申請2分の2となる組織再編
の消滅会社等の側に46条は適用されるでしょうか。株式会社が持分会社にな
る組織変更の2分の2申請の株式会社の場合は、どうでしょうか。
----------------------------------------------------------------------
(添付書面の通則)
第46条 登記すべき事項につき株主全員若しくは種類株主全員の同意又はあ
 る取締役若しくは清算人の一致を要するときは、・・・・
2 登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算
 人会の決議を要するときは、・・・(以下略)
(設立の登記)
第47条 設立の登記は、会社を代表すべき者の申請によつてする。
2 設立の登記の申請書には、・・・・
----------------------------------------------------------------------

 会社分割の例でいうと、消滅会社側の議事録につき吸収分割では85条6号
・7号、新設分割では86条6号・7号に規定されており、2分の1の申請会
社の議事録については、それらに規定されていません。

 つまり分割会社も同時申請2分の2で申請人にはなるが、同一管轄であって
も添付書面は2分の1に添付されるため、分割会社には上記46条が適用され
ません。

 なるほどなと思えど、不思議なことに、株式会社が持分会社になる組織変更
の場合は株式会社が申請人にならないのに、総株主の同意を証する書面が77
条に規定されていません。根拠が46条1項だとすると、組織再編の同時申請
と整合しません。

 さまざま思考した結果、どうも商登法は組織変更については株式会社の商号
変更の登記という前提で規定しており、46条適用も当然視しているとしか思
えませんでした。組織変更の77条が持分会社の登記ではなく「第五節 株式
会社の登記」に規定されているためです。

 次に、新設分割で新設会社の本店所在場所等を決定するのは分割会社の取締
役会だとされていますが、小川・相澤編著『通達準拠/会社法と商業登記』で
は46条2項を根拠にしています。これも組織再編の同時申請と整合しません。
私見は分割計画承認決議の附属として86条か、設立発起人の決定書に準して
47条準用説です。

(土日にどうぞ)
 私が評価している遠藤誉おばさんの次の記事で、
    https://is.gd/OSnGlb
 下記を紹介していました。米国在住の日本人国際政治学者のユーチューブで
したが、勉強になりました。米国のウクライナ援助の半分以上が盗まれており、
その盗人リストをゼレンスキーに米国が示したが、盗人の筆頭の名前はゼレン
スキーとあったのだと後半にありました。
    https://www.youtube.com/watch?v=N8a-w7S3s8A


2023.09.14(木)【盛者必衰の理】(金子登志雄)

 ネットの話題はジャニーズ事務所一色に近いですね。芸能界のことには全く
関心のない私ですが、この事件は数百人(あるいは千人以上)の抵抗も困難な
少年に対する口にするのもおぞましい人権侵害・性加害ですから、無関心では
いられませんでした。

 被害者は30代、40代になっても深い心の傷になっており、記憶がフラッ
シュバックするのだとか。業界内では、これまで何度も話題になっていたのに、
全て表ざたにならないように握り潰されていたようで、それに協力した経営陣
及びみてみぬふりをしてきたマスコミの責任は非常に大きいといえます。

 旧統一教会問題もずっとマスコミは触れませんでした。過去には江副さんの
リクルート問題など犯罪ともいえないことにはキャンペーンを張り名経営者の
江副さんを潰してしまうとか、最終的に不起訴になった小澤陸山会事件などは
面白がって大火事にしたくせに日本のマスコミは実に罪深い存在です。

 ジャニーズのお詫び記者会見を半分ほど視聴しましたが、社長が交代すると
いっても代表取締役のままですし、貧乏くじをあえて引いた新社長の東山さん
も体制側(隠蔽側)の幹部の一人と思われていますから、会社としては全く反
省していないようにみえてしまい、ジャニーズの再建は無理だと思いました。

 会社の再建策と同様に、潔く解散を表明し、切り売りするしかありません。
いずれはそうなるでしょうから早くすべきです。テレビ等のマスコミの忖度に
より再建をしたいのでしょうが、もうスポンサーがつかないでしょう。所属タ
レントに罪はありませんが、ジャニーズの看板で仕事をする限り、大ぴらな応
援は困難です。所属タレントも早期にリセットするしかありません。

 自業自得とはいえ「盛者必衰」の典型例ですね。逆にいえば、盛者だからこ
そ何をしても隠蔽できるという驕りが生じてしまうわけですから、彼らに罪を
おかさせないためにも周囲の監視が必要だったわけです。

 周囲に茶坊主しか置かない独裁は必ずこうなります。いま我が世の春の成功
者の方々は明日は我が身と気をつけるしかありません。


2023.09.13(水)【司法書士の出番?】(神奈川・酒井恒雄)

 起業活性化のサイクルを構築するには、事業のやめ方が大きく影響すると思
っています。事業をやめる際の具体的な支援としては、やめどきの判断、納得
のいくやめ方、転機の乗り越え方等に関して対話や相談を受ける支援と、法人
形態で起業した場合の解散・清算手続きの支援が考えられます。

 この中で、解散・清算手続きの支援の適任者は司法書士以外にいないのでは
ないでしょうか? 設立時に関与する士業専門家は様々で混沌とした状況です
が、任意に解散・清算手続きを行う法人に関与するのは、その殆どが司法書士
と税理士です。

 さらに、職権解散について問題意識を持っている専門家となれば、司法書士
しかいませよね? そうなりますと、我々が支援の中心にならない理由が見当
たりません。

 では、具体的にどのように事業撤退の支援をしたらよいかといえば、とにか
く可能性のある方法をどんどん試してみるしかないと思っています。

 休眠届制度について課税の扱いの足並みを揃えるよう働きかけるのも一つの
方法かもしれません。解散・清算手続を破産と同一視している人や、莫大な費
用がかかると誤解をしている人もいますので、誤解を払拭する活動もありかと
思います。そして、起業ブームに乗って事業をはじめた人には、私が述べてき
たようなキャリア視点で考えて支援する方法も有用ではないかと考えています。
(つづく)


2023.09.12(火)【日本の経済三団体】(東京・鈴木龍介)

 日本の経済関係の団体といわれるものはさまざまなものがありますが、代表
的な団体としては、日本経済団体連合会(経団連)、経済同友会(同友会)、
日本商工会議所(日商)の3つが「経済三団体」と称されています。

 この三団体は、国・公賓や諸外国の要人の歓迎会、新年祝賀会など事業を行
うとともに、経済界における重要課題の解決等に向けた活動を展開しています。
司法書士としても企業法務の担い手という観点で、それぞれの団体の特徴等の
概要は知っておいてもよいかなと思います。

 日本経済団体連合会(経団連)
 主に大手企業で構成される一般社団法人です。とくに、経済政策や労使関係
の調整などビジネス界の立場から政策提言を行い、企業の成長と国際競争力の
向上を支援しています。
     https://www.keidanren.or.jp/

 経済同友会(同友会)
 中小企業を含む幅広い分野の経営者で構成される公益社団法人です。とくに、
ビジネスリーダー同士の交流を通じて、経済政策や社会課題に対する意見等の
発信を行っています。
     https://www.doyukai.or.jp/

 日本商工会議所(日商)
 日本全国の商工会議所が会員とする商工会議所法に基づく、いわゆる特殊法
人です。とくに、地域経済の健全な発展や中小企業の成長をサポートするため
に、政府や自治体との連携を図り、経済政策の提案や事業の支援を行っていま
す。
     https://www.jcci.or.jp/


2023.09.11(月)【親会社に催告は必要か】(金子登志雄)

 先週7日の本欄(決算公告義務に関する議論)は、法解釈はもっと現実に則
したようにということでしたが、減資や合併の債権者に対する催告につき、債
権者が親会社や社長のみという場合に、皆さまは催告していますか。

 私は、もう30年以上も「債権者は親会社1社だけであり催告する必要があ
りませんでした」などいう証明書を提出して済ませてきました。私の著作でも
その例を示してきました。

 ところが、10年程度前でしょうか。読者から、そのとおりにしたら補正を
受けたと連絡がありました。杓子定規でおろかな法務局もあるものだと思って
いましたが、2、3年前に地方の某大手法務局の担当者から、上司がこれでは
困る、法律上は例外なく全ての債権者に催告することになっていると頑ななの
で、もう少し上司も納得せざるをえないように書いてほしいという電話があり、
補正にした法務局はここだったのかと分かりました。

 全く問題ないと思い込んでいたことに、こういう想定外の質問があると上手
に反論できないものです。「親会社が株主総会で同意したことが明らかなのに
催告などするわけないじゃないですか」とか「30年以上これでやってきて、
一度も何もいわれず受理されてきた。貴法務局はおかしいんじゃないの」程度
しか反論できませんでした。ただ、担当者も私に賛成であり、細かいことをい
う上司を説得したいだけのようでしたので、催告をしない理由をより詳細な内
容に差替えて済ませ、手打ちをしました。

 この経験があるので、テイハン500問では、理論武装し、債権者には催告
する側の内部債権者と外部の債権者の2種類がある。減資や組織再編を決めた
親会社やオーナー社長は前者だから催告する意味がないと理由付けを書いてお
きました。

 ちなみに催告の問題ではありませんが、略式合併などでは、子会社が効力発
生日の20日前までにする株主に対してする通知は、特別支配会社である親会
社には不要だといういう規定があります(785条3項、797条3項)。そ
れはそうですよね。略式再編というのは親会社との間で行うもので、相手に再
編を知らせる必要もありません。催告でも同じはずです。再編相手の親会社が
債権者として異議を出すわけがありません。

 法務局内の人事異動が頻繁なのか、ここ数年、今まで何の問題もなく受理さ
れていたことが突然、経験不足の調査官によって補正にされる事例が増えてき
ていますので気を付けましょう。


2023.09.08(金)【持分の相続承継の定めとその効果】(仙台・立花宏)

 先日、知り合いの司法書士から、合同会社の持分承継の定め(会社法608
条)について、次のような質問を受けました。

 「持分承継の定めが、『社員が死亡した場合は、その相続人は、持分を承継
して社員となることができる』となっていた場合、『できる』とあることから、
相続人が持分を承継するには、相続人がそれを希望することが必要だと考える。
そうすると、相続人が社員となるのは、相続人が希望した日と考えればよいか」。

 そういう見解もありますが、この点について、判例は、相続人は、相続開始
時にさかのぼって社員になるとしています(注1)。入社時期を遡及させるこ
とは会社の内部関係事項であるから、定款で定めることが可能であることが理
由だとされています。

 ただ、持分を承継するには、相続人が希望することが必要だとされており、
希望したのは相続開始後ですから、知り合いの司法書士の疑問もわかるような
気がします。

 会社の内部関係事項といっても、たとえば、あらたな出資による社員の加入
の場合は、定款で定めたからと言って、加入契約・出資・定款変更の手続が完
了する前にさかのぼって社員になったとすることはできないだろうと思います。
なぜ、相続による承継については、相続開始時にさかのぼることができるので
しょうか。

 前記の定款規定により必要とされる相続人の希望は、相続承継の定めの効力
発生のための条件のようなものと考えれば、説明できるのではないかかと考え
ました。条件が成就した場合の効果は、当事者の意思により、その成就した時
以前にさかのぼらせることができます(民法127条3項)。前記の相続承継
の定めには、条件が成就(相続人が希望)した場合には、その効果は相続開始
時にさかのぼるという内容が含まれているのだと考えられると思います。

 そもそも、この承継は、相続による承継だと思いますので、相続開始後に承
継するということはありえず、承継時は当然に相続開始時ということになるで
しょうし、その時に社員になると考えるのが自然なことなのだろうと思います。
 
 ただ、これまでの話と矛盾するようですが、他に社員が存在することを前提
として、相続人が希望した日(相続開始後)に社員になることも可能だとも思
います(注2)。ただし、これは、前記の定款規定による相続承継ではなく、
相続人が持分払戻請求権を出資として社員として加入する行為であり、この場
合は、他の社員の同意(加入契約)と定款変更の手続が必要になると考えます。

 注1)大判昭和2年5月4日新聞2697号6頁
 注2)他に社員がいないと、社員の死亡退社により、社員が不在となり、
   この会社は解散してしまいます。


2023.09.07(木)【決算公告義務に関する議論】(金子登志雄)

 たまに、すべての株式会社には決算公告義務が課せられているのだから、
この義務を果たさない会社には罰則を課すべきだとの主張をみますが、もう
少し実情を知ってほしいものです。

 そう主張する方も、自分で株式会社を設立したら、きっと、自社のような
小規模会社が全国に向けて決算公告する意味もないと、自分を納得させて、
ほぼ間違いなく決算公告をしないでしょう。

 資本金100万円程度の小規模会社で大きな取引もしない多数の庶民経営
の株式会社にとっては、毎年7万円程度の決算公告費用(官報の場合)はか
なりの負担です。

 そもそも、決算公告は何のためにするのでしょうか。株主や債権者は計算
書類の閲覧権があります。これから合併等をしようとする場合には、計算書
類等が事前開示されますし、合併公告等でも貸借対照表の要旨が開示されま
す。したがって、主として、これから投資しようとする人や融資しようとす
る人向けでしょうが、そのような方々は、公告以上に詳しい内容を要求しま
すから、結局、決算公告は単なる一般人に向けた情報開示の1つに過ぎない
わけです。小規模会社には意味の少ない制度です。

 旧商法では株式会社はもともと公開会社の大規模会社を想定していました
から決算公告義務を課していたのは自然です。しかし、有限会社より株式会
社のほうが信用があり、取引上有利ですから、小規模会社の多数が株式会社
として設立され、その要請により昭和41年改正で譲渡制限会社である株式
会社が認められました。この小規模会社は決算公告はしませんでした。行政
の方もみてみぬふりをしていました。

 平成15年の会社法制現代化要綱試案では、有限会社も株式会社に取り込
み、ますます小規模株式会社が増大するため、試案では次の5案(抜粋)が
提起されていました。
--------------------------------------------------------------------
a案 株式会社・有限会社のすべてについて、決算公告を義務付ける。
b案 現行制度に準じ、一定の範囲の会社について、義務付ける。
c案 会計監査入による会計監査を受ける会社について、義務付ける。
d案 会計監査人の設置が義務付けられる大会社について、義務付ける。
e案 義務付けを廃止する。
---------------------------------------------------------------------

 つまり、会社法立案者は全ての株式会社に決算公告を義務付けるのは行き
過ぎだし、ほとんどの株式会社が守れないような法制度は適当ではないと思
っていたわけです。

 ところが、中小企業団体の委員が会計限定の監査役を認めよという圧力を
かけることばかりに集中し、この決算公告については、情報開示はよいこと
だとも思ったのか、どうせ誰も守らないし、過料にされた事例もないと現状
を肯定していたためか、本件については特段の要請もせず、当時の現状のま
まb案採用に終わりました。c案以降を希望すれば、そうなったのに、中小
企業団体の大ミスだと私は当時強く感じたものでした。

 もし、決算公告義務を果たさない株式会社に例外なく過料を課したらどう
なるでしょうか。中小企業団体があわてて自民党を動かし、c案以降に会社
法の改正を求めるでしょうし、新規設立は株式会社が激減し、みな合同会社
にするはずで、経済の活性化に水を差すことになり、経産省も決算公告義務
につき法務省に改正を求めることでしょう。

 こういう現状認識をもって決算公告義務を議論すべきだというのが私の考
え方ですが、本欄閲覧の司法書士各位の顧客は決算公告していますか。


2023.09.06(水)【起業経験とキャリア】(神奈川・酒井恒雄)

 起業したことを黒歴史と捉えている限り、その人が再チャレンジすることは
なかなか難しいのではないでしょうか。以前書きましたが、起業の先進国では、
初めて起業する人に投資するケースは少なく、何度か失敗の経験を積んだ人に
投資する傾向にあります。その理由は、失敗を重ねることで経験知(値)が上
がり、成功する可能性も上がっていると考えるからです。

 これがスタートアップ企業への投資の原則であるならば、日本が起業先進国
に追いつくことは、かなり絶望的な状況かもしれません。そう思う理由として、
起業支援が飽和状況にあるにもかかわらず、事業撤退支援が追いついていない
こと、依然として職権解散の数が減少する傾向にないこと等が挙げられるかと
思います。

 起業の活性化は、まずは起業者が失敗の経験を負と捉えずに、その経験が自
分のキャリア構築に生かされたと考えることが重要かと思います。さらには、
長い月日をかけて失敗に向き合うのではなく、良い転機の乗り越え方を実践し、
引き続き人生キャリアを構築して、さらには再チャレンジという選択肢も考え
ておけるようになれば、なかなか良いサイクルが生まれるのではないかと考え
ています。

 真の起業活性化を実現させるためには、事業撤退の支援も活性化させないと、
起業ブームが訪れて、やがて起業の熱は冷めていくといったサイクルの繰り返
しになる恐れがあると思います。(つづく)


2023.09.05(火)【譲渡担保と不動産登記】(東京・鈴木龍介)

 譲渡担保とは、担保の目的物の所有権を債務者から債権者に移転する形態の
約定・非典型担保です。譲渡担保は判例で認められたものですが、法制審議会
で立法化の検討が現在進行中です。

 譲渡担保の実務での利活用を見てみますと、担保の目的物については、在庫
商品等の動産や売掛等の債権が対象になることが多いのですが、抵当権が原則
として不動産であるのとは異なり、格別に制約はありません。ですから不動産
も対象にできるわけですが、実際に利用されているケースは少ないと思います。

 譲渡担保は、いわゆる所有権的構成に基づき公示されることとなりますので、
不動産については譲渡担保を原因とした所有権移転登記をすることになります
が、登記を見ただけでは債権の内容等はわかりませんし、果たして担保の状態
なのか、債権者に確定的に所有権が移転されたのかもわかりません。また、確
定的に所有権が移転されたものの清算が未了のケースであっても登記上は何も
公示されません。このあたりのわかりづらさが利用されていない一因のような
気がします。

 一方、譲渡担保に基づく所有権移転(登記)後の不動産に対し、抵当権設定
(登記)ができるかという問題があります。弁済期の前後によって譲渡担保権
者の処分権能が変容すると解されていることから、実体上は疑義が生じるわけ
です。形式的な審査である登記の場面においては、弁済期の前後が不明である
ことから登記は許容されるのか、逆に、登記申請に添付する登記原因証明情報
に譲渡担保権者に処分権限がある――抵当権設定行為ができる――ことを明ら
かにしなければならないのかということですが、どのように思われますでしょ
うか。

 くわえて、譲渡担保の被保全債権が弁済等により消滅した場合、譲渡担保も
消滅するのは抵当権と同じです。抵当権の場合ですと、「弁済」等を原因とし
て抵当権抹消登記を行うことになりますが、譲渡担保については、所有権登記
の抹消と譲渡担保権者から譲渡担保権者への所有権移転登記の2通りのやり方
ができます。


2023.09.04(月)【特許取得!】(島根・根来川弘充)

 三年前の三月頃に遡ります。時期は決算期であり、いろいろな団体の事務局
を引き受けていたので、会計作業が重なりました。

 帳簿はエクセルで作成してたとはいえ、最終的には電卓による計算が必要で
した。電卓では、単純な足し算作業が主になるのですが、数字を打ち間違える
と一からの作業になることにとてもストレスを感じました。

 パソコンのエクセルやワードであれば、「戻る」ボタンがありますから、当
然、電卓もあるだろうと考え、電気屋さんに行ったり、インターネットで探す
のですが、まったく見つかりません。そのとき、ふと「特許申請できるのでは」
と思い、「しまね産業振興財団 しまね知的財産総合支援センター」に相談し
ました。

 そして、ここから弁理士の先生をご紹介いただき、ご相談させていただきま
した。新型コロナによる移動制限が全国的にはじまり、私の中では最初に行っ
たWEB会議だったと記憶しています。

 弁理士の先生のお力添えをいただき、その年の7月には特許申請をすること
ができました。 そして、今年8月、「特許査定」が出ました。

  https://is.gd/aplbj0

 正式には、特許料を納付して特許の取得になりますので、すこしフライング
気味ではありますが、この場をお借りして、御報告させていただくとともに、
「しまね産業振興財団 しまね知的財産総合支援センター」の皆様とじんざい
国際特許事務所の弁理士河野誠先生、そして河野生吾先生に、心より御礼申し
上げます。

(金子より)
 根来川さん、快挙じゃないですか。おめでとうございます。私も電卓では苦
労しています。次には、ぜひ、登記の電子申請後、審査開始前なら「戻る」ボ
タンで訂正できるようにすることと、失敗続きの人生の「戻る」ボタンの開発
をお願いします。


2023.09.01(金)【テレビ・電話会議とリモート出席】(金子登志雄)

 テレビ・電話会議の際に旧商法時代は「本会議システムは、出席者が一堂に
会するのと同等に適時・的確な意見表明が互いにできる状態となっていること
を確認した後、議案の審議に入った」などと記載しないと補正になったもので
すが、最近は、私もそれを記載せずに申請していますが、無事に受理されてい
ます。

 というのは、昔のテレビ・電話会議は、本社と支社あるいは親会社と子会社
をテレビや電話でつなぎ、各取締役がいずれかに参加して会議をしていました
が、いまは出張中あるいは自宅で病気療養中の取締役だけがリモート出席する
などで会議方式というよりも出席方式扱いに変わったためだと思います。

 言い換えれば、昔の会議は会議の場所が複数存在し、そのいずれかに出席す
る方式でしたが、いまは会議場所は本社会議室1つで、それ以外の参加はリモ
ート式と扱うようになってきたためです。

 そのためか昔の方式でも、いまは会議場所は1つで、支社や子会社の会議室
参加者は全員をリモート出席扱いにして議事録を作成しているためでしょう。

 昔のテレビ・電話会議はその設備が必要で、大手の会社しか設備を持ってい
ませんでしたが、いまのリモート参加はパソコンさえあれば、どこからも可能
です。スマホでさえ、スピーカー機能を利用すれば、会議が可能です。

 こういう時代に「本会議システムは、出席者が一堂に会するのと・・・」な
どと記載がないと補正だなどという昔の解説を持ち出す頭の固い登記官がいた
ら、「時代遅れ!」と返せばいいと友人の司法書士に教わりました。

 いまの登記所の職員は一人残らず私より年下ですから、高齢の私から「時代
遅れ!」といわれたら、どういう反応をするかと、私も楽しみに待っているの
ですが、なぜか、私を補正にしてくれません。


2023.08.31(木)【実質的支配者リスト】(金子登志雄)

 8月最後の日になりました。今月は、お盆休みもあり、仕事は暇で、テレワ
ーク中心でしたが、その結果、運動嫌いで、いつも運動不足なのに、今月は、
さらに「出腹度」が増してしまいました。実に不経済で、着れなくなった服ば
かりです。登記所への出頭主義時代には、太らなかったことを思い出し、便利
さは健康の敵ですね。

 さて、皆さんは「実質的支配者リスト」というものをご存じですか。今月、
顧客から「地方の支店で銀行口座を新設するにあたり、株主名簿か商業登記庁
が発行する実質的支配者リストを求められているが、後者にするので手配をお
願いしたい」というメールをいただきました。

 恥ずかしながら私は「実質的支配者リストというのは定款認証の際に求めら
れるもので、登記所ではなく公証役場ではないですか」と返信しようとしまし
たが、この会社は最近設立した会社ではありませんし、わざわざ商業登記庁が
が発行するものと記載がありましたので、ネットで確認しましたところ、下記
がありました。昨年1月から始まった制度でした。

  https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html

 これ、利用されているのでしょうか。私にとっては、株主というものは始終
変わるものだし、金融機関に求められたら、株主名簿を提出するほうがよほど
楽だと思い、顧客には「御社は株主1名なので、株主名簿の提出のほうが楽で
す。私が作成しましたので、これに押印して銀行に提出してください」と返信
し、終わりにしました。

 手間暇を考えると流行らない制度だと思うのですが、利用した司法書士は、
いるのでしょうか。


2023.08.30(水)【通過儀礼】(神奈川・酒井恒雄)

 転機を上手く乗り越えるためには、「通過儀礼」が重要な役割を果たすと言
われています。例えば、成人式、入社式、結婚式のほか、葬式も重要な通過儀
礼です。葬式は、故人を供養する儀式であると同時に、送り出す人達の気持ち
の整理をする機能もあると言われています。ひとつの区切りをつけるための儀
式ですね。

 会社の解散は、起業家・経営者の心情面からすれば、「認めたくない会社の
死」である場合が多いかと推測します。そうなりますと、そう簡単には心の整
理ができないでしょうから、その手助けとして通過儀礼が有用となります。

 株式会社や合同会社で事業活動をしていたなら、「解散登記」「官報公告」
「清算結了登記」が通過儀礼に該当するのではないでしょうか。ところが、以
前も書きましたとおり、事業活動を断念したにもかかわらず、税務署等にいわ
ゆる休眠届を提出して、会社を放置してしまう人が後を絶ちません。

 株式会社の場合、年間の解散件数の約6割が職権解散という現状です。登記
制度の弊害も憂慮すべきですが、それより、このようなやめ方をした人達が、
区切りをつけずに、次の人生ステップにスムーズに進めたかと考えると、はな
はだ疑問です。実際にインタビューしたこともありますが、起業した経験を負
の経験だと捉え続けている人も少なくないのです。(つづく)


2023.08.29(火)【専門業務型裁量労働制】(東京・鈴木龍介)

 昭和62(1987)年の労働基準法の改正で導入された「裁量労働制」とは、
実際に働いた労働時間の長短にかかわらず、あらかじめ労使間で決めた労働時
間を働いたものとみなす、労働基準法上の「みなし労働時間制」の一つです。

 裁量労働制を適用する労働者については、たとえば労使協定等で「1日8時
間働いたものとみなす」と決めた場合には、実際の労働時間が10時間であっ
ても、あるいは3時間であっても、「8時間労働したもの」とみなされて賃金
が支払われることになります。

 裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の
2つがありますが、「専門業務型裁量労働制」の対象となるのは、現時点では
19種類の業務に限定されています。限定された業務として弁護士、公認会計
士や税理士といった各士業が列挙されていますが、なぜか司法書士は対象とな
っていません。具体的な理由は示されていませんが、司法書士の業務の内容や
成果を明確に定量化するのが難しいということかもしれません(いかがでしょ
う?)。

 ちなみに、今般の法改正(2024年4月施行)により新たに「銀行又は証
券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合
併及び買収に関する考案及び助言の業務」(いわゆるM&A業務です。)が加
わることになりましたが、引き続き司法書士は対象となっていません。

【参考:厚生労働省労働基準局監督課】
    https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/


2023.08.28(月)【定款に対する感覚差】(金子登志雄)

 先月は久々に設立に関与しました。場所は横浜市です。

 依頼者から送られた定款認証と定款案との間には契印がありませんでした。
これでも都内の公証役場と横浜の公証役場で認証された経験がありましたの
で、今回はどうかと電話問い合わせしたところ、不可でした。

 電子定款の作成者は司法書士だとされていますし、司法書士が依頼者の要
請を無視して勝手に作成することはないのですが、公証役場は相変わらず頑
なでした。

 ご承知のとおり、中小企業の経営者の感覚では、「定款? どこに保管し
たかなぁ。司法書士事務所だったかな」ですが、元裁判官、元検察官の多い
公証人の世界では、定款とは会社の憲法であり、大事に大事に扱うものだと
いう感覚なので、別世界に住んでいる感覚です。

 この差は株主数の多寡です。我々は同族企業を相手にしたり、株主が1名
の会社を相手にしているため、いつでも(今日でも)定款の全面変更が可能
だという感覚でいますが、公証人は株主数の多い会社を前提に、会社組織の
根幹を定めたものと発想しているためでしょう。

 郷に入れば郷に従え、建前社会と本音社会の相違ではありませんが、我々
も公証役場では公証役場のルールを尊重し、法務局や裁判所に行けばそこの
ルールを尊重し、職務上円満に課題を解決していますが、不慣れな一般の方
は、書式は?、押印の有無は?、押印は実印か?と、いろいろ大変でしょう。
この面倒さが我々の生活を支えているのですから、痛しかゆしです。


2023.08.25(金)【組織変更と公告方法】(仙台・立花宏)

 先日、神﨑満治郎先生が主宰者である商業登記倶楽部の実務相談室に気にな
る相談内容があったので、自分なりに検討をしてみました。というのは、私の
専門分野のひとつとなった(と思っている)労働者協同組合にも関係する内容
だったからです。

 実務相談室にあった相談内容は、事業協同組合から株式会社への組織変更の
際の債権者保護手続についてでした。相談者は、官報と定款に定めた公告方法
による、いわゆるダブル公告をする意向だったようです。神﨑先生が疑問に感
じていらっしゃったのは、その組合の公告の方法で、次のように定めてあった
点です。
  「本組合の掲示場に掲示し、かつ、必要があるときは、
   〇〇新聞に掲載してする」

 さて、こうした公告の方法の定めは問題ないのでしょうか。また、問題がな
い場合、定款の定めの「必要があるとき」に該当し、官報のほか、「必要があ
るとき」として、〇〇新聞に公告すれば、ダブル公告として有効なのでしょう
か。

 実は、労働者協同組合法により、同法施行後3年間は、事業協同組合と同じ
法律を根拠法とする企業組合から労働者協同組合に組織変更をすることが可能
で、実務で同様の疑問が生ずる可能性があり、とても気になりました。

 まず、こういう公告の方法の定め方は問題はないのか、という点について、
調べてみました。参考までに、組合の指導的立場にある、都道府県の中央会の、
さらに、その指導的立場にある、全国中小企業団体中央会も、同様の公告の方
法が登記されていました。

 商業登記ハンドブック第4版を見てみると、20~21頁にかけて、公告の
方法の種類につき法令の規律がある法人については、このような定めは相当で
なく、登記することができないという記載がありました。

 そうすると、事業協同組合や企業組合の根拠法である中小企業等協同組合法
では、公告の方法につき、店頭に掲示する方法のほか、官報、日刊新聞紙、電
子公告の方法を定めることができるとされ(中小企業協同組合法33条4項)、
公告の方法の種類につき法令の規律がある法人ですから、このような定めはで
きないはずです。

 なお、公告の方法の種類につき法令の規律がない法人、たとえば、社会福祉
法人では、所管庁である厚生労働省が定めるモデル定款の公告方法が、「掲示
場に掲示するとともに、官報、新聞“又は”電子公告に掲載して行う」となっ
ており、選択的な定めとなっています(ただし、登記事項ではありません。)。
法令の規律がない場合には、こうした定めも可能なのでしょう。ただ、社会福
祉法人の場合、合併等で債権者保護手続をする場合でも、いわゆる、ダブル公
告による個別催告の省略を可能とする法律の規定はありません。

 さらに調べてみると、中小企業等協同組合法に基づく法人についても、以前
は、社会福祉法人と同様に、公告の方法の種類につき法令の規律がなく、また、
いわゆるダブル公告が許容されず、個別催告の省略はできなかったようで(注)、
平成19年4月1日施行の法改正により、公告の種類やダブル公告の規定が設
けられたようです。

 この改正以前から存在していた中小企業等協同組合法に基づく法人の中には、
前記のような定款規定を設けていた法人が少なくないのかもしれませんが、そ
うした法人は、本来は、この法改正の時点でこの規定を見直す必要があったの
かもしれません。

 個人的には、こうした規定を設けている企業組合が労働者協同組合に組織変
更をする場合は、その定めの有効性に疑義がありますから、個別催告を省略を
せずに手続を行うか、認可手続は必要となりますが、公告の方法を見直す定款
の変更をしたうえで、ダブル公告を行うのが無難なのではないかと思いました。

 前記のような定款規定を設けている法人は少なくないのだろうと思います。
商業登記倶楽部の案件は、管轄の法務局と打ち合わせをした結果に従い、手続
を行うようです。ただ、法務局によって、こうしたケースへの対応方法が異な
る場合もあるかもしれません。事前に管轄の法務局に照会(相談)するのが望
ましいのだろうと思います。

 注)ただし、信用協同組合等については許容されていたようです(旧金融機
  関等の組織再編成の促進に関する特別措置法第32条、松井信憲「会社法
  整備法の施行に伴う各種法人登記事務等に関する改正の概要(下)」
  (「登記研究」693号18頁以下)


2023.08.24(木)【ご縁(出会いの感性)】(金子登志雄)

 昨日の8月23日は当社(アクモス)の32回目の創立記念日でした。会
社は休みでしたが、ある社内パーティーがあり、数十名が参加し、役員であ
る私も出席してまいりました。

 その中で創業時から残っているのはI会長(公認会計士)と私の2人だけ
でした。32年の間には多くの人が入れ替わりましたが、私だけ残ったのは、
仕事は過酷でも居心地がよくトップのIと相性が合ったのが最大の理由です。

 このIと出会ったのは、確か昭和61年でした。その時、この人と一緒に
仕事をしたいなと思い続けていたところ、ある切っ掛けで、雇ってもらえる
ことになり、それ以来の付き合いです。

 私への仕事は過酷(?)でした。I事務所への入所直後に彼は「医療経営
コンサルタントグループを立ち上げたので、会報を作ってくれ」と医療のイ
の字も知らない私に丸投げしてくるのです。

 翌年の昭和62年にはIを含む9名の会計士と無資格だった私で日本最初
のM&Aコンサルタント会社(日本M&A研究所)を設立し、M&A本を作
ることになりましたが、この時も代表者の一人だったIは、M&Aの素人で
ある私を編集責任者にし、丸投げしてきました。

 上記の医療会報もM&A本も腹を括って、自分の過去の経験を前提にした
持ち前の推理力で執筆したところ、両方ともプロから絶賛されました。これ
で私が新しい課題に対する推理力や執筆力に自信を付けたのはいうまでもあ
りません。

 Iが私の才能を開き、育ててくれたわけですが、彼の指導は「長所だけ伸
ばせ」であり、私が苦手とする分野には最初から要求もしてこないので、私
も居心地がよく32年間の付き合いになったわけです。

 昭和62年には新設したばかりの日本M&A研究所に、Sという銀行マン
が営業に来ました。非常に好感を持てる方で、この時も私はこの人と一緒に
仕事をしたいなと感じました。

 それから5年後の平成4年に他の数社と合弁でM&Aの新会社を作ったと
ころ、ある出資者から派遣された常駐の新役員候補とお会いしたところ、な
んと、このSでした。それ以来の付き合いですが、有能な方なので数年前か
らは当社の社外役員に就任してもらっています。

 ご縁というのはあるものですね。


2023.08.23(水)【トランジション②】(神奈川・酒井恒雄)

 ウィリアム・ブリッジズ氏が研究した、転機を乗り越えるためのプロセスは、
「終わりがなければ始まりはない。」というものです。そして、終わりと始ま
りの間には、ニュートラルゾーンという過渡期があるとしています。

 まず、過去との決別を行う必要があります。「これまでの何かが終わった」
といったことを真摯に受け止め、気持ちの切り替えを行うことが必要になりま
す(終わり)。

 とはいえ、そう簡単に気持ちの切り替えなどできませんから、気持ちを整理
して内省をする期間が必要になります(ニュートラルゾーン)。そして、ニュ
ートラルゾーンを経て、次のキャリアに進む準備ができたら、行動を起こす
(始まり)というプロセスがあり、これらを知っておくことが大事だとしてい
ます。

 そして、転機を乗り越えるには「通過儀礼」が重要な役割を果たすとも言っ
ています。具体的にいいますと、結婚式とか入社式が該当しますが、ちょっと
面倒だなと思いつつも(結婚式を面倒だと思う人もいますよね?)、式を通じ
て、一つの区切りができ、気持ちも新たになることが多いかと思われます。
(つづく)



2023.08.22(火)【ベース・レジストリ】(東京・鈴木龍介)

 最近、「ベース・レジストリ」なる言葉を耳にすることがありますが、いか
なるものでしょうか?

 デジタル庁のWEBサイトによりますと、以下のとおりの説明がなされてい
ます(下線は私がポイントかなと思ったところです)。
    https://www.digital.go.jp/policies/base_registry/

 「ベース・レジストリとは、公的機関等で登録・公開され、様々な場面で参
照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データであり、正確性
や最新性が確保された社会の基盤となるデータベースです。

 行政手続のワンスオンリーを実現するなど社会全体の効率性の向上を図ると
ともに、スマートシティ等の新しいサービスの創出を図るためには、マイナン
バーや地理空間情報など社会全体の基盤となるデータを整備・活用することが
必要です。

 そこで、まずはベース・レジストリを、「公的機関等で登録・公開され、様
々な場面で参照される、人、法人、土地、建物、資格等の社会の基本データで
あり、正確性や最新性が確保された社会の基盤となるデータベース」と定義し、
その整備を推進することとしております。

 具体的には、2021年5月26日に「ベース・レジストリの指定」(PDF/803KB)
を決定し、この決定文書にのっとり、ベース・レジストリの整備を推進してお
ります。

 なお、令和3年5月19日に公布されたデジタル社会形成基本法においては、第
31条(公的基礎情報データベースの整備等)に、デジタル社会の形成に関する
施策の基本事項として、公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)の
整備及びその利用を促進するための取組について規定しています。

 ちなみに、令和5年7月7日に公布されたデジタル庁告示12号において、商業・
法人登記簿がベース・レジストリに指定されました。つまり、会社・法人の登
記が社会のインフラとしての基本データベースになるということであり、今後、
商業登記の在り方について検討を進めるうえで不可欠な視点になるものと思い
ます。


2023.08.21(月)【登記の錯誤とは】(金子登志雄)

 先週は、表題につき仲間の司法書士をも巻き込み検討していました。

 さて、更正登記に関する商登法132条に「登記に錯誤又は遺漏があるとき
は」とありますが、この錯誤は「事実と登記との不一致」だとされています。

 ここまではどの解説書にも記載されていますが、注意すべきは、公示手段の
登記での錯誤であるため、私人間の取引を前提とした民法の意思表示上の錯誤
(意思又は動機と表示の不一致)と相違し、錯誤原因を問わないことです。

 例えば、戸籍上の「髙」橋を意識的に「高」橋で申請し、申請意思に全く錯
誤がなくとも錯誤は認定され更正登記が認められます。

 また、会社の本店所在場所につき、賃貸借仲介業者の重要事項説明書に所在
地「〇町23番地」とあったので、これが住所だと勘違いし(動機の錯誤)、
そのまま登記したところ、住居表示が実施されており、正しくは「〇町一丁目
2番3号」だった場合も、更正登記が認められます。「住居表示に関する法律」
により、公簿である法人登記簿での住所は住居表示で表すことになっているた
めです(この法律の存在は立花司法書士に教わりました)。

 この旧表示の本店所在場所の例でいうと、
  ① 決定した特定場所を表記した点では登記と事実に不一致はない。
  ② その住所表記では、登記と事実に不一致がある。 
ということになります。

 ②ですが、決して、住所部分が無効として扱われるわけではなく、表示とし
ては不備があるので、正す義務があるというに過ぎません。いわば不完全有効
ともいうべき表示です。

 その正し方ですが、必ずしも、錯誤を証する書面を添付しての更正に限られ
るものではなく、議事録等を添付しての変更登記でもよい場合もありますので、
以下、想定事例で検討します。
----------------------------------------------------------------------
【例1】 「〇県〇市〇町一丁目2番13号」
    →「〇県〇市〇町一丁目2番3号」に改める例
 異なる場所を表記してしまった場合には、更正によるしかありません。

【例2】 「〇県〇市〇町1-2ー3」
    →「〇県〇市〇町一丁目2番3号」に改める例
 住居番号に変化はなく完全に有効な表記として扱われていますから(公簿で
ある運転免許証はこの方法です)、単なる表記の変更として変更登記になりま
す。ちなみに、住居番号は「2番3号」であり「〇町一丁目」は町名です。

【例3】 「〇県〇市〇町一丁目2番地3号」
    →「〇県〇市〇町一丁目2番3号」に改める例
 「2番3号」や「2番地3」を勘違いしたものと推察されますが、同一場所
を示していることが明らかなため、例2と大差なく、わざわざ本店を定めた当
時に遡って錯誤があることを証する書面を準備せずとも、変更でもよいと考え
ます(経験済みです)。

【例4】 「〇県〇市〇町23番地△△ビル5階」
    →「〇県〇市〇町一丁目2番3号」に改める例
 更正(町名及び番地部分)と変更(ビル名以下の削除)が併存する例ですが、
本例の更正は変更の一種とも思えるため、一括して変更を決議し登記すること
ができます(目的変更の際に誤記修正する例と同じ)。

【例5】 「〇県〇市〇町23番地」
    →「〇県〇市〇町一丁目2番3号」
 更正での申請が多いでしょうが、会社から送付された取締役会議事録に「現
在の登記上の住所は土地の地番になっているため、正しく住居表示上の住所に
変更する」とあったものを、そのまま利用したところ、無事受理されました。
 おそらく、本店の登記は「住所」ではなく「所在場所」を決定して登記せよ
とされているとおり(会911条3項)、「〇ビル内」「〇株式会社内」など
の表示も可能であることや、地番表記も不完全とはいえ無効とまではいえない
ため、会社の意思決定が尊重されたのでしょう。
----------------------------------------------------------------------

(3)個人問題は更正登記で
 個人である代表取締役の住所につき旧住所でなされることは、まずないと思
いますが、なされていた場合は、仮に登記後数年を経ていても、更正登記をお
勧めします。個人の場合は、本店や目的など会社が任意に決定したわけではな
く、客観的な事実の表記を優先すべきだからです(ブログで知られる新保司法
書士からのアドバイスでした)。


2023.08.18(金)【『会社法務書式集第3版』の利用法】(金子登志雄)

 15日火曜日の本欄で、表題本を鈴木さんからご紹介いただきましたが、書
式集というのはニーズが高く、アマゾンでも高順位を維持しています。

 さて、本書に限らず「書式集」の利用法につき、そのまま丸写しをする方も
多いようですが、これでは成長がありません。「人をみて法を説け」といいま
すが、「個別事案をみて創意工夫せよ」と主張したいです。

 例えば、株主総会議事録につき
----------------------------------------------------------------------
3.出 席 者:発行済株式の総数        【発行済株式数】株
       この議決権を有する総株主数   【株主総数】名
       この議決権の総数        【総株主の議決権数】個
       本日出席株主数(委任出席を含む)【出席株主数】名
       この議決権の個数        【出席株主の議決権数】個
----------------------------------------------------------------------
という書式も、株主が1名であれば、次で十分です。
----------------------------------------------------------------------
3.出 席 者:議決権を有する総株主数1名中全員出席
       議決権総数〇〇〇個中全数出席
----------------------------------------------------------------------

 会社法319条の書面決議で株主が個人1人であれば、次も可能です。
----------------------------------------------------------------------
 当社の株主は取締役の法務太郎一人であるため、本書記載事項を自ら提案し、
自ら同意したので、会社法第319条第1項により株主総会の決議があったも
のとみなされた。よって、会社法施行規則第72条第4項第1号に基づき、以
下のとおり議事録を作成する。
----------------------------------------------------------------------

 株主リストも簡易再編を証する書面も資本金計上証明書も私は法務省の面倒
な書式どおりにせず、より簡単なものを自作しています。この創意工夫こそが
商業登記の面白さです。行数で値段が変わる官報公告も、いかにして行数を減
らすかと工夫してみると楽しいものです。


2023.08.17(木)【一般財団法人の原始定款】(東京・古山陽介)

 幽霊部員ならぬ幽霊執筆となってしまっていてお恥ずかしい限りです。
 金子先生をはじめとしまして商業登記に精通していらっしゃる先生方とは連
絡はとっておりますが、いざ記事の作成となると腰が重くなってしまい、忙し
さを言い訳にズルズルと先延ばしとなっておりました。

 さて、本題です。
 株式会社の登記で、取締役の互選で代表取締役を選定する場合、書面決議に
よる取締役会議事録を添付する場合など定款を添付書類とする場面がいくつか
あります。この場合、定款に原本証明して提出します。

 つい先日、一般財団法人のとある変更登記の時に法務局から「原始定款」を
添付せよと指摘を受けた案件がありました。

 この時点でピンときた方は、一般財団法人の登記をけっこう経験していると
思われます。

 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第200条」にこんな規定が
あります。
(定款の変更)
第200条
 1.一般財団法人は、その成立後、評議員会の決議によって、定款を変更す
ることができる。ただし、第153条第1項第一号及び第八号に掲げる事項に
係る定款の定めについては、この限りでない。
 2.前項ただし書の規定にかかわらず、設立者が同項ただし書に規定する定
款の定めを評議員会の決議によって変更することができる旨を第152条第1
項又は第2項の定款で定めたときは、評議員会の決議によって、前項ただし書
に規定する定款の定めを変更することができる。
 3.一般財団法人は、その設立の当時予見することのできなかった特別の事
情により、第一項ただし書に規定する定款の定めを変更しなければその運営の
継続が不可能又は著しく困難となるに至ったときは、裁判所の許可を得て、評
議員会の決議によって、同項ただし書に規定する定款の定めを変更することが
できる。

 この条文で理解された方もいらっしゃるかと思います。とある変更登記とは、
「目的・事業」の変更登記であります。

 一般財団法人の目的・事業の変更については、原則、設立者が評議員会で変
更できる旨を定款に定めた場合に限りできます。

 設立者が定めた規定がどうか形式的に判断することができるのは、原始定款
のみとなりますので、原始定款の添付が求められたということになります。い
つものように、現在の定款に原本証明では足りないとする理屈が理解できます。

 一般財団法人に関しては、設立者が遺言で定款を作成することができるとい
うこともあり、株式会社の発起人や一般社団法人の社員とは異なり、定款作成
者である設立者の意思はより尊重されることになります。

 改めて、一般財団法人の原始定款の重要性は、他の会社や法人より高いこと
を認識させられました。


2023.08.16(水)【トランジション】(神奈川・酒井恒雄)

 会社の解散について相談したいと言われたとき、本人は解散した後の人生キ
ャリアについて何か考えているはずです。(この先どうしたらいいかも分から
ないというケースが全くないとは言えませんが、ここでは省略します……。)

 「仕事(Jоb)」という視点で見れば、転職することも、事業をやめること
も、次の人生キャリアの選択肢のひとつを選んだということになろうかと思い
ます。

 転職は、それが転機となるのか環境の変化となるのかは、本人の捉え方次第
ということになるかと思いますが、事業をやめて他の職に就く、あるいは別の
生活手段を選択する場合には、それを環境の変化だと捉える人は少ないと思わ
れます。

 起業が身近になったとはいえ、いざ起業するとなると、まだまだ覚悟が必要
というのが現実かと思いますし、意を決して飛び込んだ起業家(企業家)の世
界から、また別の世界に移るというのは、同じように覚悟が必要かと思います。

 そうであれば、転職のときとは少し違う転機の乗り越え方を考える必要があ
るかと思われます。そこで有用だと思われるのが「通過儀礼」です。

 通過儀礼の有用性は、以前に紹介した4Sのナンシー・シュロスバーグ氏も
言及していますが、最も強調して言及しているのはウィリアム・ブリッジズ氏
です。(つづく)


2023.08.15(火)【『会社法務書式集 第3版』】(東京・鈴木龍介)

 このところ、書籍等の案内が多くて恐縮ですが、このたび、私が執筆に携わ
りました『会社法務書式集 第3版』(本書)が中央経済社から発刊されまし
た(先日、本コーナーの主宰者であり、本書の共著者でもある金子さんも取り
上げていらっしゃいましたが・・・)。
     https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-46531-4 

 本書は2010年に初版を発刊後、2016年に平成26年改正会社法を反
映した第2版が発刊され、多くの皆様にご好評をいただいてまいりました。

 第2版の発刊後、次のとおりの改正等がありましたことを踏まえ、今般7年
ぶりに改訂いたしました。
 ・「株主リスト」が登記申請の添付書面となりました。
 ・定款認証時に実質的支配者の申告が導入されました。
 ・印鑑の提出が任意化されました。
 ・令和元年改正会社法が施行されました。

 そのほかに商業登記規則の改正によりオンライン申請の利便性が向上すると
ともに、定款や取締役会議事録等の法令の規定により押印を要する書面以外に
は押印が任意となりました。くわえて新型コロナ感染症の影響もあり、取締役
会等の会議の運営にオンラインを用いる方式も珍しくなってきました。

 本書が司法書士をはじめとする専門家や企業の法務担当者といった方々の業
務の一助となれば幸いです。

 引き続きのご愛顧のほど、よろしくお願いします。


2023.08.14(月)【アメリカ脳の日本社会】(金子登志雄)

 今週からお盆又は夏季休暇の会社又は総務担当者も多く、商業登記の仕事
は激減しますが、我々司法書士は法務局が開いている限り休めません。仕方
なく、パソコン相手に時間をつぶす日々になりそうです。

 アマゾンプライムで、1話1時間で100話もある「淵蓋蘇文(ヨンゲソ
ムン)」という韓国高句麗時代の時代劇をやっと見終わりました。3週間は
かかりました。韓国は国策として芸能に力を入れてきましたので、このドラ
マも見ごたえ十分でした。

 中国史でいうと隋・唐の時代であり、高句麗との覇権争いを中心とした内
容でしたが、高句麗征伐に出向いた隋や唐の軍隊は100万人以上でしたか
ら、天下分け目の日本の関ケ原(双方で15万人)などは、大陸諸国からみ
れば小競り合い程度の扱いでしょう。

 勝利者は圧倒的少数派の高句麗でしたが、高句麗では有能な人物が偉くな
れたようで、このドラマをみても敗北側の原因は大将(皇帝を含む)にあり
「馬鹿な大将、敵より怖い」そのものでした。ただし、最終的には内紛によ
り高句麗は滅亡しましたから、長い目で見れば国力差で勝負が決まることに
変わりはありませんでした。

 こういう異国や異民族との絶え間ない紛争がある大陸諸国の歴史をみてい
ると、一民族の島国日本は本当に平和で幸運だったと感じます。ただし、そ
れがために、日本人の世界をみる目が国際感覚と大きくずれてしまっている
ことや、号令一下で一斉に同一方向を向いてしまう統制の取れた危険な体質
が日本の課題です。

 下記によると政治評論家(元都知事)の舛添氏でさえ、アメリカやイギリ
スはうそをつくのがとてもうまいから、その情報操作を鵜呑みにしないよう
にと警告を発し、日本人の感覚につき「このままいくと国が亡びるというほ
どに深刻」だと嘆いていました。
        https://is.gd/Vm4TnN

 私がその分析力を高く評価している遠藤誉さんも、「アメリカ脳からの脱
却を!」と洗脳された日本人の国際感覚に警告を発していました。
        https://is.gd/9buNKo

 私の世代でいえば、小学校時代はパン食の給食が始まり、中学生時代に普
及したテレビでは、野蛮な悪のインディアン(今でいうと中国やロシア)と
戦う西部劇など米国のテレビ番組ばかりが垂れ流されてきたため、知らず知
らずのうちにアメリカ脳に洗脳されてきましたので、今は、意識的にバラン
スをとるようにしています。若い皆様の脳は、バランスがとれていますか。


2023.08.10(木)【ハンコ文化の今昔】(金子登志雄)

 登記の世界でもデジタル化の推進の一環か、ハンコ至上主義文化が見直さ
れましたが、ハンコ主義の時代を知るベテランの司法書士にとっては、革命
と思うほどの変化です。

 昔は次でした。
 1.シャチハタはゴム判だとされ、認められませんでした。
 2.認印のような印鑑で市役所に印鑑届して印鑑証明をもらおうとすると
  拒否されました。
 3.ベテラン司法書士は印鑑箱に溢れるほど認印を持っていました。私も、
  箱いっぱいの認印を今でも持っていますし、「何でも印」といい、氏が
  誰でも使える文字不明の認印も持っている司法書士も多数存在しました。

 偽造書類を作成していたわけではありません。緊急のためご本人や会社の
了解を得ての押印であれば合法です(法律的には金子の氏名でハンコは鈴木
でも合法です。代表取締役金子の印鑑届として鈴木印にすることも認められ
るのと同じです)。

 以上からもお分かりのとおり、押印があればよいという取扱いは実印を押
し印鑑証明書を添付する場合以外は誰でもできるため意味がありません。

 本人確認証明書や資本金計上証明書に会社実印を押させるのは書面の真正
担保という意味合いがありましたが、委任状に実印を押すのに添付書面まで
押す必要があるのか、法律上の根拠がないじゃないかという問題がありまし
たので、これも押印が任意とされ、すっきりしました。

 波及効果として、押印以外で法律上の根拠のない補正についても、「法律
上の根拠を示してください」「どの却下事由ですか」と反論しやすくなりま
した。

 法務局の人事異動が早いためか、詳しくない者が担当し、間違った補正指
示が急増していますので、うっかりと指示に従わないようお願いします。素
直に補正指示を認めると、それで調査官は自分が正しいと思い込んでしまい、
他の司法書士に迷惑になりますので、よろしくお願いします。


2023.08.09(水)【4Sモデル②】(神奈川・酒井恒雄)

 転機を乗り越えるための「4S」は、Situation(状況)、Self(自己)、
Support(支援)、Strategies(戦略)でした。

 例えば、自分が全国展開する司法書士事務所の主たる事務所に雇用形態で勤
務しているとします。このたび、新しく従たる事務所を設置することになり、
その事務所で働くよう要請されたとします。会社でいえば転勤です。

 聞くところよれば、その従たる事務所は不動産決済が主たる業務になるとの
こと。自分が企業に就職しなかったのは転勤が嫌だからという理由もあったの
で、まさか司法書士になって転勤を打診されるとは思ってもいなかった。急に
そんなことを言われて、ちょっと焦っている(Situation)。

 転勤すること自体も嫌だけど、よく考えてみたら、最近、徒然日誌の金子先
生の投稿に刺激を受けて、自分も会社法・商業登記の分野で活躍したいという
気持ちが大きくなっていることに気づいた。転勤したら商業登記業務ができな
くなる可能性が大きいので、気が進まないことにも気づいた(Self)。

 いっそ、これを機に独立しようかと考えた。一人立ちするには不安があるの
で、協力してくれる仲間や相談相手がいるか考えてみたところ、意外と多くの
仲間がいることに気づいた。困ったときには、金子先生も快く相談に乗ってく
れるみたいだ(Support)。改めて徒然日誌を読んでみたら、司法書士仲間を
募集している商業登記に特化した事務所もある。よし、転勤は断ろう。そして、
これを機に今の事務所も辞めて、独立開業か企業法務分野専門の司法書士事務
所へ転職するか、どちらかの道に進もう。開業資金や事務所の場所を考えると
同時に、司法書士事務の見学をさせてもらうことにしよう(Strategies)。
・・・という感じです。

 出来過ぎたストーリーには目をつむってもらうとして、大事なことは、自分
自身の理解を深め、次に進む選択肢を複数用意すると共に、転機に対して主体
的に取り組むことだとされています。(つづく)


2023.08.08(火)【書籍『法人登記実務から見た労働者協同組合の運営』】
                         
(東京・鈴木龍介)

 本コーナーのレギュラー(?)である立花さんが、私の旧知でもある司法書
士の西山義裕さんと共著のかたちで『法人登記実務から見た労働者協同組合の
運営』(中央経済社/本書)を上梓されました。
    https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-46881-0

 本書の刊行をお喜び申し上げますとともに、僭越かつ雑駁ながら本書のご紹
介させていただきます。
 
 本書は,令和4(2022)年10月1日に施行された労働者協同組合法に
より創設された「労働者協同組合」について、登記実務を含む法務手続を網羅
的に解説した類書のない1冊です。

 本書を一読させていただきましたが、まだまだ資料等の少ない中、立花さん
らしい丹念なリサーチを踏まえた丁寧な説明が随所に見受けられます。また、
各種の書式サンプルが掲載されているのは、実務家として具体的なイメージを
持つことができ、有用有益です。

 私自身、現時点で「労働者協同組合」の依頼等を受けたことはありませんし、
どのように利活用されるかの整理ができていませんが、いざ問合せがあった時
には頼りになる“いざ本”として、書棚に備えておくべきお薦めの1冊です。


2023.08.07(月)【久々の福岡】(金子登志雄)

 いま日曜日の夜の10時過ぎ、福岡市の博多駅近くのホテルでこれを書い
ています(福岡県には福岡駅はありません)。福岡県青年司法書士協議会の
ご招待で会社法講義でした。

 相手が若い青年司法書士中心なので知識よりも理論の勉強をしましょうと
商業登記にどう対応するかを3時間ほど話しました。

 福岡はもう4度目くらいの講義になりますが、実に久々なので(コロナの
せいで飛行機に乗ったのも久々でした)、青年会の会員でないベテランも数
多く参加してくださり、旧知の方々とお会いでき、懇親会を含め楽しい時間
を過ごせました。研修担当の山倉先生ほか皆様、ありがとうございました。

 研修担当者の方によると例年になく集まったとのことですが、旧知の元司
法書士で「株式会社法科村塾」の代表丸田幸一先生によると、集まりが十分
でないとのことですから、会社法で取締役等の任期が10年まで延長できる
ようになったため、商業登記案件が会社数や会計事務所の多い都市部の一部
の司法書士に偏ってしまい、商業登記と無縁の若い司法書士が増えたのでし
ょう。

 したがって、種類株式や組織再編などを経験した方は私の講義を面白がっ
てくださったようですが、未経験の方にとっては実感がわかなかったことで
しょう。さりとて、レベルを下げると、講師は私である必要がないため、痛
しかゆしです。未経験の方に少しでも刺激を与えられたのなら幸いです。

 最後にレジュメから意外に難問だったらしい問題を2つ出します。回答は
自分の頭で考えてください。

 Q:株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、辞任届、
株式申込証、総数引受契約書、払込証明書、資本金計上証明書、原本証明文、
登記委任状のうち押印不要のものはどれですか。

 Q:定款に「当会社の代表取締役は株主総会の決議又は定款の定めに基づ
く取締役の互選で定める」と置くことができますか。「当会社の代表取締役
は取締役会又は株主総会の決議によって定める」はいかがですか。「当会社
の代表取締役は取締役会で定める。ただし、株主総会の決議で定めることを
妨げない」であったら、いかがですか。


2023.08.04(金)【組織の変更と業務執行の決定】(金子登志雄)

 吸収合併など組織再編は組織法上の行為として取引法上の行為とは区別さ
れていますが、「業務執行の決定」との関係ではどうなのかが仲間内で問題
になりました。

 また、立花さんによると、松井ハンドブック4版190頁には本店移転の
決定は「重要な組織の変更」であり業務執行の決定だから、取締役への委任
は不可とあるとのことで、何が何だか混沌としてまいりました。

 というわけで、この問題の整理に挑戦してみました。

 1.組織の基本構成と、その組織の運営管理である業務執行は区別すべき
であり、運営者(取締役など業務執行機関)や、その監視役(監査役など)
の選任は、組織の一部である「機関」の選任であり業務執行ではありません。
運営主体の長である代表者の選任も同じです。代表取締役を取締役会で選定
しても、法の定めや定款の定めに基づき、そういう仕組みにしただけで、業
務執行の決定ではありません。

 2.会社法828条の「会社の組織に関する行為の無効の訴え」をみると、
株式等の発行や減資、組織再編があげられており、これらが組織の問題であ
ることは明白ですが(比喩でいえば建物の増改築であり建物の利用行為では
ない)、一方で、公開会社の募集株式の発行は社債の発行と同様に資金調達
手段と大差なく、業務執行機関の決定とされていますし、会社法399条の
13第4項・5項や416条4項によると、吸収合併等の契約内容の決定を
重要な業務執行の決定にしています。

 しかし、公開会社の募集株式等の発行も株主への情報開示がなされ株主の
意向を問う制度設計がなされていますし、吸収合併契約等の承認も株主総会
の権限とされています。

 以上を整理すると、組織問題であっても、それをどう変更するかについて
は業務執行の決定とされているが、その最終決定は企業所有者の権限に属す
ことが分かります。誤解を招く表現ですが、組織の変更も起案は業務執行の
決定であり、それを確定させるのが企業所有者であり、取締役等の機関を選
任しても全面的に組織の変更の決定を委ねていないことが分かります。

 したがって、次のようにいえると思いました。
① 合併契約の内容(組織の変更)の決定は業務執行の決定だが、株主総会
 の承認を条件とした決定である。
② 相手のない資本金の額の減少(組織の変更)などは、株主総会の議案決
 定までが業務執の決定で、同じく最終的には株主総会で決定。
③ 管轄外本店移転の決定も業務執行の決定だが、株主総会で本店所在地の
 変更決議を条件とした決定である。

 ここで③につき法人社員が多い合同会社の本店移転の決定は、職務執行者
が決定してよいのかという問題に発展しますが、本店所在地に定款変更が必
要のため、その部分については法人代表者の同意を要するので、教科書的回
答としては、本店所在地の決定は法人代表者の権限で、移転日と本店所在地
内の移転場所の決定は職務執行者ということになると思います。


2023.08.03(木)【花火大会】(島根・根来川弘充)

 新型コロナウイルス感染症が第5類感染症となり、はじめての夏になります。
全国各地で、花火大会の人手が大幅にふえることから、大きな事故への対策を、
主催者が取り組んでいるとのことでした。

 私の事務所がある松江市では、8月5日と6日に花火大会があります。島根
県で一番大きな規模の花火大会で、多くの人手が予想されています。大きな事
故や混乱もなく、開催されれば、今後の開催にも大きな自信となると思います。

 新型コロナウイルスにより、市内の繁華街では多くの飲食店が閉店しました。
もし、現在も存在していたら、こうした大きなイベントがあると、その経済効
果をより大きくしていただろうと思います。

 業種によって、また、町の規模によってなされていた自治体の規制には、や
はり不公平感を感じます。将来の損失は、これからの各地域の経済活動によっ
て少しずつ明らかになるだろうと思います。私なりに、今後、注意して見てい
きたいと思います。


2023.08.02(水)【4Sモデル】(神奈川・酒井恒雄)

 ナンシー・シュロスバーグ氏の転機を乗り越えるための「4Sモデル」では、
転機に直面した際、それを乗り切るために利用できる内的資源を4つに分類し、
それぞれを点検することを推奨しています。

 4つの資源とは、Situation(状況)、Self(自己)、Support(支援)、
Strategies(戦略)であり、この頭文字をとって4Sモデルと呼んでいます。

 まずは、転機を見定め、これら4つのリソース(4S)の点検をし、対処す
ることで、スムーズに次のステージに移ることができると提唱しています。

 具体的には、自分が望んでいたか、望んでいなかったかに関わらず(正確に
は望んでいたけど起きなかったこと等もある)、自分にとって重大な出来事が
発生したとき、今起きている出来事の原因や状況を把握し(Situation)、そ
の出来事に対する自分の気持ちや自分の使命などを把握し(Self)、周りの人
の支援をどれくらい受けられそうか把握し(Support)、そのうえでどういっ
た行動をとったらいいか(Strategies)という戦略を立てるというものです。

 何やら大げさな感じもしますが、実例に当てはめてみると、案外ちゃんと4
Sで行動していたりします。ただし、それを何となくやっているのか、きちん
と認識したうえで行動しているのかでは、後者の方が断然いいよねというもの
です。(つづく)


2023.08.01(火)【『商業・法人登記500問』】(東京・鈴木龍介)

 先般、金子さんも本コーナーで取り上げておられましたが、私も編著者の末
席として『商業・法人登記500問』(本書)のご案内(PR)をさせていた
だきたいと思います。

 本書は、平成21年12月に『商業・法人登記300問』(300問)とし
て発刊され、その後の平成30年4月に300問を増補改訂した『商業・法人
登記360問』(360問)の後継となるシリーズ最新版という位置づけにな
ります。

 本書は、近時の会社法・商業登記法・商業登記規則等重要な法令の改正や先
例の発出がなされたことを受け、360問に所要の見直しをしたものです。く
わえて、執筆陣にあらたなメンバーを迎え、設問も大幅に増やし(ページ数は
創意工夫により微増にとどめることができました。)、より現場の実務に役立
つ1冊を目指しました。

 また、外観もこれまでのハードカバーからソフトカバーにモデルチェンジし
ました。なお、出版元であるテイハンのご理解とご尽力により価格は360問
と同じ5,400円(税別)に据え置くことができました。

 本書につきまして、300問、360問と同様にご愛顧いただけますと編著
者として、大変嬉しい限りです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
   https://www.teihan.co.jp/book/b10032762.html
   https://www.suzukijimusho.com/lib/books/


2023.07.31(月)【登記所事務能力の優秀さ】(金子登志雄)

 6月下旬の多数の定時株主総会の処理月であった7月も最終日になりまし
た。一人事務所のためか、相変わらず、かわいらしい補正をいくつか指摘さ
れました。

 4月下旬に当事務所が東京都千代田区から港区虎ノ門に変わったのに、登
記の委任状が千代田区のままになっており、申請書の代理人住所と相違する
というミスがいくつかありました。

 住所の「号」が「郷」になっている誤記もありました。さすがだと思った
のは代表者交代で新代表者の印鑑証明書では問題なかったが、印鑑届用とし
ては過去3か月以内になっていないという指摘でした。よくみているもので
す。

 以前も、本人確認証明書の運転免許証が数日前に失効しているという指摘
に、そこまでチェックしているのかと驚嘆したものでした。
 
 これらのチェックを日常的に行っているためとはいえ、法務局職員のチェ
ック能力は実にすごいです。

 ただし、法務内容の指摘能力には疑問に感じることが少なくありません。
上場会社の定時株主総会で議案の最後に「議長の指名に基づき、再選された
役員全員は一人ひとり立ち上がって就任の挨拶をした」とあるのに、「これ
では就任承諾書の援用として認められない」といわれたときには、あっけに
とられ、「いままで何度も経験済みだ」と反論し、最後は受理されましたが、
ふだんみかけない内容が来ると急に拒否反応を示す職員もいるようです。


2023.07.28(金)【最近の時事問題雑感】(金子登志雄)

 猛暑ですね。昨日はタクシーを拾おうと大通りで15分待ったのですが、
乗車中ばかりで空車は来ず、仕方なく歩きました。こんな経験は久々です。
岸田総理は支持率が急落し、背筋が寒く、きっと暑くないのでしょうが、そ
もそもタクシーを拾わずに済む身分ですね。ということで、よい会社法ネタ
が思い浮かばないので、最近の時事問題にしてみました。

 1.ウクライナで、汚い爆弾の典型例であるクラスター爆弾が使用されま
した。放射能汚染の危険がある劣化ウラン弾をウクライナに供与した英国で
すら反対したのに米国が供与したためです。この爆弾は散弾銃と同じで中の
子爆弾が四方八方に散り無差別殺戮になるのと、不発率が高く地雷のように
長期に残る怖い存在だそうです。

 昨年は米国大統領府の報道官が「この爆弾を使用するのは戦争犯罪だ」と
断言し暗に「ロシアが使ったら許さんぞ」といっていたのに、自分の方が先
に使い出すとは、米国らしいですね。米国がするのは善だという理屈です。
 https://twitter.com/sohbunshu/status/1680740973473677312

 米国はイラク戦争でもこの爆弾を使っていましたが、白人国の欧州でもこ
こまでするということは、ウクライナ側が劣勢な証拠だと思うのが通常の感
覚だと思うのですが、日本のマスコミは反転攻勢と報道しています。

 2.木原官房副長官への文春砲スキャンダル(長官の奥様の元夫の不審死
と警察捜査への介入疑惑)は故人の親族が真実解明要請の記者会見まで開い
たのに、大手新聞やテレビは全く報道していないようですね。権力への忖度
ですが、これが日本のマスコミの実態です。

 忖度といえば、いま米国ではトランプがさまざま検察に起訴されているの
に、バイデン民主党による検察の政治利用・選挙妨害だとして逆にトランプ
支持が増えているのだとか。日本では過去の小澤民主党捜査(最後は不起訴)
に報道も国民も拍手喝采し、明らかに政治的思惑で動く地検特捜部を正義の
味方として扱いました。権力を信じない世界標準の米国と権力を信じる日本
の民主主義の差ですね。フェアの感覚は、欧米に学びたいものです。

 3.ジャニーズ事務所の性加害問題は国連までが調査を開始したようで、
ジャニーズ応援のデヴィ夫人のツイッター投稿が2次レイプも等しいと非難
されました。性に無知な中学生程度のタレント数百人(ひょっとして4桁ま
で)が被害を受けたようで、国際的な大事件になりかねません。

 4.旧統一教会問題や政治家女子48党問題は、今は少し下火になってい
ます。スポーツ新聞はN国党側での報道が多いのですが、新聞ネタを提供し
てくれるからでしょうけど、そういう基準で動くのかとあきれています。大
マスコミでもいえますが、日本のジャーナリストは取材対象と親しくなって
ネタをもらおうとする傾向があり、ジャーナリスト失格です。

 みな身勝手に生きており日本社会も殺伐としてきました。小泉総理以来の
米国式新自由主義の弊害でしょうか。日本式の終身雇用制でジャパン・アズ
・ナンバーワンといわれたバブル時代が懐かしいです。


2023.07.27(木)【労働者協同組合と労働法】(仙台・立花宏)

 先日、他の士業の先生方とお話しする機会があったので、労働者協同組合の
ことを話題にしてみたのですが、ご存じない方も少なくありませんでした。ま
だ、法人数が多くありませんので、専門家として、相談を受ける機会があまり
ないからかもしれません。

 しかし、法人数が増えていけば、専門家が相談を受ける機会も増えていくこ
とでしょう。この労働者協同組合には、他の法人にはない難しさがあると感じ
ています。登記の関係の話ではありませんが、こんな相談を受けたら、どのよ
うに回答すべきでしょうか。

 「知り合いから誘われ、同業者でつくる労働者協同組合に加入しようと思っ
ています。労働者協同組合は、組合員が出資者であり、労働者であるほかに、
経営者であると聞きました。加入して働く場合、労働法による保護は受けられ
るのでしょうか」

 司法書士は、労働法の専門家ではありませんし、私自身はあまり労働法関係
は詳しくはありません。

 ただ、労働者協同組合法制定前のものですが、これに関連し、中小企業等協
同組合法に基づく企業組合として法人化されていた労働者協同組合として性質
を有する団体に関する裁判例(注1)があります。この裁判例では、おおざっ
ぱにいえば、使用従属性が認められたとしても、事業運営への主体的参加が認
められているのであれば、事業者性が肯定されるとして、労働諸法令の適用が
受けられないとしたものがありました。
 
 この点については、労働者協同組合法の立法過程で、いろいろ検討がなされ
たようです。もともとは、この「出資・労働・経営」を基本原理とする法人が
想定されていました。しかし、労働者=経営者となると、労働法でいう労働者
に該当しないのではないかという指摘等があり、「出資、労働、共益権の行使
を通じての経営への参画」という基本原理になったようです。共益権の行使を
通じての経営への参画というのは、株式会社でいえば、株主総会での議決権の
行使のイメージです。株主総会で議決権を行使したからといって、経営者にな
ったとは言えないでしょう。

 また、理事等、一定の者を除き、組合員は労働者協同組合との間で、労働契
約を締結します。これにより、労働者協同組合法では、組合員が労働者である
ことを明確にしているといえるでしょう。

 運営に主体的に参加する組合員であっても、労働者協同組合の指揮命令に服
して労務を提供する場合には、労働者として、労働諸法令による保護が認めら
れるという新しい働き方が、この法律によって創設されたという見解もありま
した(注2)。
 
 これに対し、労働者協同組合の組合員には、議決権の行使による意見の反映
だけでなく、意見反映原則(労協法3条1項3号)に基づき、定款には、組合
員の意見を反映させる方策に関する規定を設けなければならず(労協法29条
1項12号)、その実施状況は通常総会に報告しなければなりません(労協法
66条1項)。この意見を反映させるための方策の内容によっては、事業者性
が認定され、労働諸法令による保護が否定される可能性もないとはいえないと
いう見解もあります(注3)。

 個人的には、立法趣旨から、組合員は、原則として、労働諸法令による保護
があるのだろうと思っていますが、組織の実態によっては、否定される可能性
もありえるのかもしれません。そうした点にも注意しながら、法人の中身をど
ういう組織形態にしていくのかを検討する必要があると考えています。
 
 この新しい法人制度が円滑に利用されていくには、司法書士のほか、社会保
険労務士や税理士の先生等、多くの専門家の方々が、この法人制度への理解を
深めていく必要があるのだろうと思います。

 ぜひ、拙著『法人登記実務から見た労働者協同組合の運営』(中央経済社)
をご活用いただければ幸いです(参考までに、前記の論点も少しだけ、触れて
おります)。

 注1)東京高判令和元・6・4
 注2)橋本陽子「労働者協同組合法-新しい法制度の概要と理論的課題」
  (「ジュリスト」(有斐閣)1558号75頁以下)
 注3)水野英樹「労働者協同組合法の内容と問題点」(「季刊・労働者の
   権利」(日本労働弁護団)340号48頁以下)


2023.07.26(水)【転機の乗り越え方】(神奈川・酒井恒雄)

 転機は、上手く乗り越えることができれば、希望と意欲をもって前に進むこ
とができますが、上手く乗り越えることができないと、前に進むことが困難に
なったりします。

 「心機一転」で次のスタートができないと、新しい環境に飛び込んでも、な
かなか現状を受け入れられずにフラストレーションが溜まったりして、心身の
状況にも好ましくない時間が続く可能性もあります。いかに上手に転機を乗り
越えるかということは、のちの人生にも影響を与えますので、転機の乗り越え
方については、多くの心理学の研究がなされています。

 中でも、ウィリアムズ・ブリッジス氏が構築した「トランジション理論」や、
ナンシー・シュロスバーグ氏の「4Sモデル」が有名です。「4Sモデル」は、
どちらかというと日常生活の延長線上にある転機に有用な理論であり、「トラ
ンジション理論」は非日常的な転機について有用という感じです。

 こういった研究は、アメリカで盛んに行われています。基本的に狩猟採集的
な行動文化を持ち、定職や定住という考え方をしない国だからこそ盛んに研究
されているのでしょう。

 十数年前なら、アメリカらしいねという感想で終わっていたかもしれません
が、終身雇用制度の崩壊や不安定な経済情勢など、仕事にしろ生活にしろ、日
本においても転機の乗り越え方についてはかなり関心が寄せられているようで
す。先日ふらっと立ち寄った本屋でも、今までは専門書の片隅に置いてあった
ようなウィリアム・ブリッジス氏の本が、推薦図書として掲示されているのに
は驚きました。(つづく)


2023.07.25(火)【全国の司法書士法人の集い】(東京・鈴木龍介)

 去る7月22日(土)、一般社団法人全国司法書士法人連絡協議会(法人協)
の一大イベントである「第12回 全国の司法書士法人の集い」が東京・四谷
の司法書士会館の地下にあります日司連ホールで開催され、私も来賓として出
席させていただきました。

 第一部は、法人協の荻野理事長の開会の挨拶で始まり、日本司法書士会連合
会の小澤会長を筆頭に来賓の方々から祝辞が述べられました。なお、私も僭越
ながら一言お祝いを述べさせていただきました。

 次いで、法人協の執行部から事業報告と事業計画の説明が行われた後、法人
協の上野副理事長による「司法書士主導による日本版エスクロー最新情報」と
題した講演が行われましたが、台湾の不動産取引の実情等を知ることができま
した。

 休憩をはさみ、司法書士事務所とアライアンスしているトリニティ・テクノ
ロジー株式会社による「士業からみたエンジニアの世界、エンジニアからみた
司法書士の世界~このコミュニケーションで世界をガラリと変える。」と題し
た講演が行われましたが、今、話題の生成AIの現状や業務での活用といった
ヒントをいただくことができました。

 両講演に対する質疑応答も活発に行われたところで盛会裏に第一部は終了し、
16時30分からホテルグランドヒル市ヶ谷で第二部の懇親会が開催され、そ
ちらにも参加させていただきました。ご無沙汰していた旧知のみなさんにお目
にかかることができたとともに、あらたな出会いもあり、楽しく、かつ有意義
なひとときでした。

 今回は、私が知る限り、過去最大の参加員数(80名超)であり、大変な盛
り上がりでした。私も法人協の前理事長として大変嬉しく思うとともに、今後
の法人協の活動にも大いに期待を持たせていただくことができました。

 運営に携わられた方々、そして参加されたみなさま、ありがとうございまし
た&お疲れさまでした。


2023.07.24(月)【選任懈怠と登記懈怠】(金子登志雄)

 土曜日の午後は愛媛県司法書士会でZOOM研修の講師でした。テーマは
組織再編で、組織再編、種類株式、会社の計算などが題材になると、私もま
だまだ講師価値があるようで、お声をかけていただきました。

 ZOOM研修は東京会で東京会のパソコンを使用しての講義経験はあるの
ですが、今回は愛用のノートパソコン発でしたから、故障したらどうしよう
かと気がかりでしたが、何とか無事に終わりました。研修担当の先生及び受
講生の皆様、少しはお役に立てたでしょうか。お世話になりました。

 さて、金曜日の話題の続きですが、役員(取締役・会計参与・監査役)が
任期満了したのに再選など後任を選任しないで放置しておくことを「選任懈
怠」、後任を選任したのに登記を怠っていることを「登記懈怠」といいます
が、選任懈怠の場合は解散しても後任を選任していないのだからそのままだ
が、登記懈怠の場合は、その登記申請義務を怠っているので、解散後であっ
ても登記申請が必要です。

 これをみると、選任懈怠の方が登記懈怠よりも罪が軽いですね。なぜかを
考えてみました。

 選任懈怠の場合は、不作為であって会社が積極的に定款違反の意思決定を
したのではないし、会社法も権利義務者の存在を認めているため、登記所と
しても、これを認めざるをえないが、登記懈怠の場合は会社が積極的に意思
決定したのに、登記をしないのは明らかに違法だから、登記をさせねばなら
ないということでしょうか。
 
 これに関連して、会社法第338条には「①会計監査人の任期は、選任後
一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結
の時までとする。②会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議
がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす」
とあります。

 会社法施行直後は、本規定があるので会計監査人は自動的に重任扱いされ
るため、登記は不要だと勘違いされ、未登記が続出しました。無理もありま
せん。

 しかし、本規定は、任期を延長したものではなく、再選がみなされただけ
ですから、重任登記は避けられません。役員でもない外部機関の会計監査人
には権利義務者の制度も規定されていません。重任登記を漏らしたら、過料
の制裁があります。

 登記懈怠は、会社法第976条第1号の「この法律の規定による登記をす
ることを怠ったとき」に該当し過料対象になりますが、選任懈怠は登記する
ことを怠ったわけではないので過料対象にはならないという見解もネットで
みつけましたが、第22号に「この法律又は定款で定めたその員数を欠くこ
ととなった場合において、その選任の手続をすることを怠ったとき」に該当
しますね。ちょっと期待してしまいましたが、残念です。


2023.07.21(金)【選任懈怠と解散】(金子登志雄)

 実務家が、一瞬迷う事例なので、質問されたのを機に徒然にしてみました。

(1)一人理事の一般社団の解散(株式会社に置き換えて思考ください)
 理事はA一人で「令和2年6月26日重任」と登記された一般社団の解散
の相談を受けました。任期は2年なのに、その後の選任はしていません。い
ま再選したら、本年の就任登記と定款の定めにより令和4年6月30日退任
の登記が必要な事案です。

 しかし、再選せずに、そのまま解散させ、Aを法定清算人にするか、総会
で清算人に選任することにしましたが、さて、皆さん、解散する場合でも、
令和4年6月30日退任の登記申請が必要でしょうか。

 私は当然に不要だとお答えしましたが、「いや、必要だという見解がある
から質問したのだ」と必要説を示されて反論されてしまいました。 

 それによると、後任の選任ができないことに確定し登記が可能な状況にな
ったのだから、するのが正しい方法だ(中間省略登記のようなことは望まし
くない)という実に生真面目な見解でしたが、これは無理です。

 例えば、本件で解散したら、「理事A 令和2年6月26日重任」(代表
理事も同じ)の氏名部分に職権で抹消線が引かれるのに、わざわざ、その登
記を復活させて「理事A 令和4年6月30日退任」と追加登記を申請する
ことを登記所が認めるわけがありません。まるで職権抹消の更正登記です。

 もし、この登記がなされたら、理事は令和4年6月30日付でゼロになり、
解散時点では理事(権利義務者を含む。以下同じ)不在の外観になってしま
います。せっかく、登記所が【法令に従い最後の就任に抹消線】を引き、こ
の理事が解散時点の最後の理事権限者で法定清算人候補だった者だと公示し
たのに、その公示を無にしてしまいます。

 反対説の論理でいうと、任期中の解散であっても解散によって理事が退任
したのだから退任日(解散日)を含めて退任登記すべきだということになり
そうですが、通常解散は事業法人から清算法人に移行した旨の登記であり、
その結果として業務執行機関が権限を永久に喪失したのであって、事業法人
時代の役員としての退任ではないため、登記も不可能です。

 つまり解散があって、その解散の効果として、理事も職権抹消され登記上
はいないことにされるわけですから、解散後に、退任登記をしようにも、対
象者が存在せず受理されるわけがないのです。

 私見だけでは、また金子の独自見解かと不安がられるかなと思っていたと
ころ、仙台の立花さんが助っ人に参加してくださり、加除出版の『不動産・
商業・法人登記実務事例集』(執筆者は現場登記官)の173頁に「みなし
解散前に取締役が辞任し法律又は定款に定めた員数を欠くことになったがそ
の後任者を選任していない場合ですが、辞任の登記をすることはできず、権
利義務を承継する取締役として法定清算人となるものと思われます」とある
ことを示してくださいました。みなし解散でなくても同じです。

 勉強家の立花さんには資料でいつも助けられています(私は自分の頭だけ
で勝負するものぐさなので、資料は持っていないことが多いため)。

(2)選任懈怠解消の株式会社の解散
 株式会社乙の株主も取締役もA一人のところ、本年死亡し、Bが相続し、
直ちに解散を決議しました。清算人はBが就任しました。
 
 この場合は死亡のため、解散時には権利義務者でもなく、選任懈怠の任期
満了退任登記(上記の例では、令和4年6月30日退任)を解散以前に申請
することができる状況にあったため(登記申請人がいなかったという問題は
別問題です)、それを清算人から申請しなければなりません。法定清算人候
補不在の事例になります。

 この(2)事例は、類似事案につき、先般申請し昨日無事完了しましたが、
初体験でした。たぶん、司法書士でもかなりの割合で、Bを後任取締役に選
任し、その後に解散した形にしたのではないでしょうか。

(追記)
 取締役権利義務者と取締役は同一権限で同視すべき存在です。法定清算人
の478条1項1号には「取締役」としかありませんが、この取締役には権
利義務者を含みます。477条5項には「監査等委員である取締役が監査役
になる」とありますが、この取締役に権利義務者を含みます。480条2項
によれば、監査役の権利義務者も任期の定めのない清算株式会社の正式な監
査役になります。
 つまり、事業会社から清算会社に移行したら、組織変更と同様に新しい会
社のステージに変わるのであって、すでに事業会社ではないのです。
 事業会社時代に死亡し権利義務者ではないとか、氏名を変更していたとか、
解散と同時に譲渡制限の取締役会の承認を株主総会に変更したなどは、事業
会社時代にも申請できることですから、清算後も申請しなければなりません
が、権利義務者の場合は、事業会社時代に退任登記ができなかったことで、
清算会社になったらできるようになったとの考え方には無理があります。


2023.07.20(木)【桃太郎型の欧米と金太郎型の中露】(金子登志雄)

 仕事の書き入れ時もピークが過ぎたため、たまには、政治の話題にしてみ
ました。力のない老人のボヤキですが、「ものの見方・考え方・捉え方」あ
るいは「生き方」の1つとして受けとめてくだされば幸いです。

 岸田総理は米国と同様に「正義の民主国家」対「悪の専制国家」の単純な
対立図式でウクライナを訪問したり中露批判をしていますが、このたび友好
訪問した西側のサウジアラビアは専制国家ではないのでしょうか。

 先進国は民主主義度が高いといっても、現実には情報は一部の支配層に握
られ、操作された情報が発信されているだけだともいえますから、私の定義
では、「力や権威(恐怖)」で支配する国が専制国家で「情報(洗脳)」で
支配する国が民主国家ですが、当たらずとも遠からずだと思っています。

 なお、中露に長年居住している日本人のユーチューブ動画などをみる限り、
結構自由で住みやすそうですが、ここでは専制国家扱いしておきます(ロシ
アは旅行したことがありますが、日本と変わらない日常風景でした)。

 さて、民主国家の住民である私は、基本である選挙の負の側面や一方的な
情報操作が気になって仕方ありません。

 安倍元総理は祖父や父親と違い、日本を蔑む旧統一教会とは一線を画して
いましたが、第2次安倍政権になってからは背に腹を変えられないと、選挙
対策に旧統一教会を利用し、旧統一教会など岩盤保守支持層だけが選挙に行
く選挙の争点のない時期(投票率の低さ)を狙って解散し連戦連勝でした。
しかし、最終的には、これが不幸な事件の引き金になりました。

 ウクライナ問題の遠因は、ゴルバチョフとの約束を破りNATOが東方拡
大をはかったためですが、その端緒を作ったのは米国のクリントン政権でし
た。国内での支持率が下がったので、旧ソ連あるいはロシア憎しの東欧諸国
からの移民の票欲しさの選挙対策のためだったといわれています。クリント
ン大統領としては「僕は約束していません」ということでしょうか。

 バイデン大統領がウクライナにのめり込んでいるのも、それが米国の利益
になり、大統領選に有利だからです。米国人は死なないようになっています
し、時々米国に逆らうドイツの疲弊も米国の利益です。安いロシア産天然ガ
スをドイツに供給する海底パイプラインも誰かに爆破されました。ドイツへ
の圧力をはかった勢力でしょう。

 米国のニクソン大統領が米中国交回復し、台湾は中国の一部と約束したの
に、政権が変わり民主党政権になると、「そんなの知らない」と約束を反故
にするのも米国のお家芸です。いや民主国家の特徴かもしれません。日本で
も自民党は、それは民主党が勝手にやったこととよくいいます。ある意味で、
民主主義は実に都合のよい無責任な仕組みではないかという気もします。

 こうして戦争経済で潤う米国は民主主義の普及の美名のもとに、毎年のよ
うに世界のどこかで戦争をしていますし、悪魔の中露が攻めてくるぞと情報
発信し続けていますが、言論世界の民主国家はこういうプロパガンダが実に
巧みです(もちろん広報宣伝会社のプロを使います)。政権の中枢のAが中
露を過激に罵れば、他のBがそれは当政権の総意ではなく、彼の個人的感想
に過ぎないと否定し、情報を揺さぶったりします。この無責任が通用するの
も多様な意見に寛大な民主国家の特徴です。

 これに対して専制国家といわれる中露その他は選挙があっても西側の選挙
と相違しますし、北朝鮮など一部を除き国力増進のため軍事よりも経済の発
展を優先しますから、外交的には他国との共存共栄のスタンスです。政権交
代がないので原則として主張は一貫しています。

 いま世界で多くの国が専制国家です。当然です。各国の歴史が相違し、い
まだ日本でいえば明治や大正時代の国も多いためです。そういう国々の反体
制組織に対して、全米民主主義基金(NED)を通じて資金提供しカラー革
命やテロを起こさせるのですから(結果は民主化ではなく国の荒廃)、米国
が嫌われ警戒されているのも当然です。後記する遠藤誉さんによると、中国
のスパイ防止法も忍び寄るNED対策なのだとか。

 それでも多くの国が米国に逆らうとあとが怖いと逆らわなかったのに、ウ
クライナでロシアが軍事面でも予想以上に強く、中国の経済大国化もあり、
米国に逆らえる環境が整ってきたようで、いま世界は急速に米国の一極支配、
ドル支配から抜け出そうという動きをしています。株の世界でいうと米国株
が天井を打ったので、成長株のブリックスに乗り換えようという動きです。

 岸田総理のサウジアラビア訪問も、米国に頼まれ、西側に残るように説得
に行ったのでしょうが、いま中東は、パワハラとモラハラの米国よりも内政
干渉をしてこない中露側のほうが信頼できると、そちらに接近しています。

 私のような末端の末端でも、この程度のことはみえるのに、日本の報道も
政治家も米国のほうしか向いていないのは、時間をかけて、そういうふうに
飼いならされてしまったとしか思えません。

 米国の統治は日本で大成功したわけですが(おかげさまで私も徴兵されず
に済みました)、好戦的なネオコンが米国を支配し続けるようになった今日、
巻き沿いのリスクのほうが大きくなりましたので、そろそろ現実世界を直視
しないと日本の将来が不安です。

 私も専制国家は真っ平ですが、他国がそうであるなら認めます。あえて桃
太郎流に鬼退治して民主化させよとも思いません。熊とも仲良くする金太郎
流の平和外交のほうが和を大事にする日本には適していますので、桃太郎の
犬になってほしくはありません。

 お時間がある方は、私がその調査力と分析力を高く評価している遠藤誉氏
のご意見も参照してください。理系頭で実に論理的です。理系は事実と論理
を重視するためでしょう。
   https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare


2023.07.19(水)【転機とは】(神奈川・酒井恒雄)

 起業は人生における転機となるかもしれません。学校に入学するとき(学生
になる)、就職をするとき(社会人になる)、結婚をするとき(家庭を持つ)、
転職をするとき(人生設計を変える)等は、生きていく過程の一つの区切りで
あり、いずれも人生の転機であったかもしれません。

 これらの出来事は、単に環境の変化とも捉えることができますが、転機であ
ったかどうかは、いわば「心機一転」と捉えるか否かによるようです。分かり
やすい例は「年越し」かと思います。

 アメリカでは年越しを転機と捉える人はあまりいないようです。アメリカで
年越しをした人の話によれば、年越しのカウントダウンは、カウント・ゼロに
なった瞬間に大騒ぎして、カップルや夫婦等は一斉にブチューとキスをするの
だそうです・・・。

 転機に関する研究をしたアメリカ心理学者も、書籍の中で年越しは単なる変
化だと書いていましたので、パーティー感覚なのでしょうね。

 ところが日本の場合、どちらかといえば厳かに年が明けるかと思います。初
詣にも多くの人が集まり、昨年のお礼や今年一年のお願いをして、新しい年に
向けての「区切り」をつけます。まさに心機一転だと思うのですが、そのせい
か初日の出に照らされた街の景色は、前年とは全く違うように清々しく見えた
りします。実際には前年から6時間くらいしか経過していないのですけれど、
昨年とは別の世界になったように感じられたりもします。(つづく)


2023.07.18(火)【商業登記倶楽部創立30周年記念セミナー】
                         
(東京・鈴木龍介)

 去る7月15日(土)、商業登記倶楽部(本倶楽部)の創立30周年記念セ
ミナー(本セミナー)が東京・四谷の司法書士会館の地下にあります日司連ホ
ールで開催され、私も参加いたしました。

 まず、本倶楽部の会長である佐藤純通先生(元日本司法書士会連合会(日司
連)会長)の開会の挨拶を皮切りに、次いで日司連の小澤吉徳会長と東京司法
書士会の千野隆二会長から祝辞が述べられました。

 セミナーの第一部として、福原紀彦先生(前中央大学学長、日本私立学校振
興・共済事業団理事長)が登壇され、『事業組織法務における登記の現代的役
割と司法書士への期待――DX推進と法人ガバナンスの強化』と題した基調講
演が行われました。

 商業・法人登記とガバナンスの関係を中心とする大変、興味深い内容でした。
なお、講演の冒頭でご紹介いただいた、イギリスの歴史家であるエドワード・
パレット・カーの言葉が印象に残りましたので、備忘的に以下のとおりメモし
ておきます。

 “誇るべき歴史と伝統があればこそ語ることができる現在があり、築くこと
ができる未来がある。”

 第二部として、神﨑満治郎先生(本倶楽部主宰者、日司連顧問)による『商
業・法人登記の諸問題』と題した講演が行われました。久しぶりに「神崎節」
を拝聴しました。法人登記を中心とする内容でしたが、法人登記に関するデー
タベース等ヒントをいただきました。

 本セミナー終了後、17:30よりホテルグランドヒル市ヶ谷で懇親会が開
催され、そちらにも参加させていただきました。ご無沙汰していた旧知のみな
さんにお目にかかることができたとともに、あらたな出会いもあり、楽しいひ
とときでした。

 神崎先生をはじめ運営に携わられた方々、そして参加されたみなさま、あり
がとうございました。


2023.07.14(金)【テイハン500問】(金子登志雄)

 雑誌「登記研究」で知られるテイハンの『商業・法人登記360問』をお
持ちの方も多いでしょうが、このたび大幅に設問を増やして500問と題名
変更し出版されました。お仲間の沓脱司法書士がツイッターで紹介してくれ
ました。垢抜けたソフトカバーが好印象ですね。アマゾンでは、まだ表紙画
像も出ていませんが、売行き順位をみると好調なスタートです。

 https://twitter.com/teihanofficial/status/1676765466088583168

 拙著の中央経済社刊『会社法実務〔全訂第2版〕』は株式会社の論点専用
ですが、500問は、倒産も合同会社も一般社団も外国会社関係も含まれて
いますし、テイハン本は法務局で常備することが多いので、何かありました
ら、500問の何頁をご参照くださいで話が通じますので便利です。

 500問の株式会社部分は初版から私が担当してきましたので、当局の説
明に異論を述べた箇所も多々ありますし、最近の論点についても、私独自の
解説をしています。

 この独自性が私見の特徴であり、金子節とか金子ワールドなどといわれて
いますが、当の私の立場からは、単に素直な常識的解釈をしただけだと思っ
ています。現実の社会では、虎の威を借りて物事を解釈する方のほうが多い
ので、私見がユニークにみえてしまうのでしょう。

 例えば、一時期、非取締役会設置会社が「募集株式の発行及び割当の件」
の議案で「Aに割り当てる」と決議した場合に、法務局の書式も松井ハンド
ブックも「Aの申込みがあることを条件として」と記載されていたため、飛
躍して、これを記載漏れしたら補正だとブログで堂々と全国に向けて主張す
る登記所職員もいました。

 素直な(?)私は、契約は申込みと承諾(ここでは割当て)の合致で成立
し、事前割当てにしても申込みがなければ契約が成立しないのだから、「申
込みがあることを条件とする」の記載は必須ではないと反論したものでした。

 法務局の書式も松井本も、ちょうど「株主総会で選任されることを条件に
就任を承諾します」という表現と同じく契約成立の前提条件を記載しただけ
であり、これは停止条件や解除条件などの効力要件である本来の条件ではあ
りません。難関な試験に合格した司法書士各位には、基礎の基礎を大事にし
て受け売りの解釈はせず自分の頭で思考していただきたいものです。思考の
主人は貴方です。


2023.07.13(木)【法人登記実務から見た労働者協同組合の運営】
                           (仙台・立花宏)

 大変恐縮ですが、今日は、本欄をお借りして、新しく出版される本の宣伝を
させていただきます。

 『法人登記実務から見た労働者協同組合の運営』という書籍で、7月19日
に中央経済社様から発刊の予定です。札幌司法書士会の西山義裕先生との共著
となります。実際に書店等に並ぶのは、おそらく7月21日以降になると思い
ます。

 新しい法人類型である労働者協同組合について勉強してきたことを、以前か
ら本欄で紹介させていただいておりました。そうした内容も含め、労働者協同
組合の登記実務とその周辺をまとめたものです。司法書士の皆様には、今年の
3月3日に開催した日本司法書士会連合会主催の研修会「労働者協同組合に関
する研修会」で、法律の概要や、法施行直後の登記実務とその周辺の実務知識
についてを説明させていただきましたが、本書籍は、労働者協同組合法の制定
目的等から解説しているほか、登記実務に関連した、行政庁へ届出関係まで解
説しております。
 
 本書籍は、労働者協同組合法の施行間もない時期の設立やNPO法人・企業
組合からの組織変更等の手続に関し、司法書士やその他の実務家、実務担当者
の皆様が実務で必要となるであろう情報を提供することを主要な目的としてお
りますが、組織の運営、各種変更登記のほか、解散や合併の手続・登記実務ま
でを網羅しており、労働者協同組合の登記実務等に関与される皆様に、永くご
利用いただけるに足る内容であると考えております。

 労働者協同組合は、法律施行後、間もないためか、利用はそれほど進んでは
いないようです。今後も、利用数が急増するという性質の法人類型ではないか
もしれません。しかし、労働者の働き方が、従来と変容しつつあるようにも思
える日本社会において、社会的に意義のある法人類型だと思います。市民が協
同して出資して組合員となり、主体的に経営に参加しながら、労働者として事
業に従事するという、その趣旨が理解され、社会に共有されていけば、この法
人類型の利用は進んでいくものと思っております。

 司法書士をはじめとした実務家、そして、実務担当者の皆様が、実務で必要
になった時に備え、ぜひ、手にお取りいただけたらと思っております。多くの
実務家、実務担当者の皆様にご利用いただき、実務のお役つことを祈っており
ます。


2023.07.12(水)【次のキャリアのために】(神奈川・酒井恒雄)

 自主的なキャリア選択の結果、起業という道を選んで進み、結果として事業
が上手くいかなかったとしても、そこでキャリアがストップすることはありま
せん。

 キャリアとは、人生を構成する一連の出来事であり、仕事・他の役割の連鎖
であるからです。人生キャリアを充実したものにするためには、近視眼的にも
のごとを捉えてはいけないと思います。

 起業に失敗したとして、それを失敗したという認識だけで終わらせてしまう
と、自己肯定感を下げてしまう可能性もあります。ある人は、起業に失敗して
3年くらい落ち込んでいたと言っていました。

 特に、同じ時期に起業した人が順調に業績を伸ばしていたので、その人と接
するのが辛かったそうです。仮に、きちんと経験の棚卸しをしていたならば、
自分にとって起業はどういう意味があったのか、どれくらい経験値が上がった
のか、どんな発見や気づきがあったか、といった振り返りを経て、負の感情は
かなり軽減されていたのではないかと思います。

 そして、自ら終わりを創出することで、もっと早く次のキャリアに集中でき
るようになったのではないかと思います。(つづく)


2023.07.11(火)【独禁法とは?】(東京・鈴木龍介)

 今回は「独禁法」(正式法律名:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関す
る法律/昭和22年法律54号)について、少々調べる必要がありましたので、ベ
ーシックなところを備忘的にアップさせていただきます。

 独禁法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自
由に活動できるようにすることとされています。つまり、市場のメカニズムが
正しく機能していれば、事業者は自らの創意工夫によって、より安価に優れた
商品を提供して売上高を伸ばそうとしますし、消費者はニーズに合った商品を
選択することができ、事業者間の競争によって、消費者の利益が確保されるこ
とになります。

 ちなみに、このような考え方に基づいて競争を維持・促進する政策は「競争
政策」と呼ばれています。また、独禁法を補完する法律として、下請事業者に
対する親事業者の不当な取扱い等を規制する、いわゆる「下請法」があります。
独禁法では、不当な独占行為や不公正な競争制限行為(カルテルや入札談合)
を禁止しており、事業者同士の共同、企業の結合を規制しています。

 独禁法を運用している行政機関は内閣府の外局である公正取引委員会ですが、
具体的な職務に関しては内閣総理大臣等の指揮命令を受けない「独立行政委員
会」という位置づけです。

 独禁法の違反行為に対しては、公正取引委員会が監督等をしており、排除措
置命令や課徴金納付命令などの措置が講じられます。

~参考~
 公正取引委員会「知ってなっとく独占禁止法」
   https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/dokkinpamph.pdf


2023.07.10(月)【代表者選定方法の優先度】(金子登志雄)

 某政党の代表者変更騒動を題材として株式会社の場合につき、徒然なるま
まに検討してみました。次の質問につき、ご回答ください。

 Q1:定款に「当会社の代表取締役はAとする」とあった場合に、株主総
会や取締役会の決議で解任することができますか。
 Q2:定款の附則に「最初の代表取締役はAとする」とあった場合はいか
がですか。

 Q1ですが、定款と株主総会決議とでどちらが優先するかといえば定款で
すので解任はできません。ただし、定款よりも会社法のほうが優先しますか
ら、株主総会決議で定款を変更すれば実質的に解任が可能です。また、会社
法の任期の定めの拘束を受けます。

 定款で特定人を代表者として定めたというのは、ちょうど憲法で天皇を定
めたのに似ており、それを改変しない限りは、その地位の剥奪は無理であり、
某政党の代表者変更登記申請はこの点でも無理があったと私はみています。
ただし、解任決議を規約変更決議と扱えば異なった結論になりますが、規約
変更の適正手続を要します。

 これに対して、Q2の場合は定款で代表取締役を定めたといっても、株主
総会や取締役会による選定の代用として定款を一時的に利用しただけですし、
選定行為の代用であって、選定後の地位のことまでは規定していないため、
私は解任が可能だと考えています。

 応用問題です。
 Q3:定款に「当会社の代表取締役は取締役の互選で定める」とあった場
合に株主総会で定められますか。
 Q4:定款に「当会社の代表取締役は取締役の互選で定める」とあった場
合に定款で定められますか。

 Q3については無理だといわれていますが、理由まで分かりやすく書いて
あるものをみたことがありません。もうお分かりかもしれませんが、定款の
定めは株主総会決議よりも優先するために否定されます。Q4は定款で選定
方法を定めた効力よりも、直接に代表取締役はAだと定款で定めたほうが優
先しますので肯定されます。

 以上については、会社法478条の清算人の優先順位が参考になります。


2023.07.07(金)【総会議事録のない株主リスト】(金子登志雄)

 皆さん、ご存じでしょうか。「株主全員の同意があつたことを証する書面」
には株主全員の署名や記名押印が古くから不要だとされていることを。

 旧商法時代に新株の発行だったかで払込期日までに2週間を要するところ、
期間短縮の同意書があれば、これを短縮できたので、几帳面に株主全員の連
記した書面を準備していたところ、他人が作った株主全員参加の株主総会議
事録の議案の1つに、「第〇号議案 期間短縮同意の件」とあり、これで済
ませているのをみて、こんな方法があるのかと驚いたものでした。

 いまでは普通株主全員同意の株式内容の変更(異種類株式化)も全員出席
の株主総会で、この方法を使っていますが、株主総会ではなく総株主の同意
が必要な株式会社を持分会社にする組織変更でも法務局のホームページにあ
る見本は、株主全員参加の株主総会議事録にしています。

 先般は株主総会決議方式が使いにくい案件で、「同意があったことを証す
る書面ー同意書見本ー同意株主の一覧表」で押印もないものを作り、これで
対応しましたが、何の問い合わせもなく、無事に終わりました。

 しかし、商業登記規則61条2項の株主全員リストは別途必要なので提出
しましたが、株主総会議事録が添付書面になっていないのに株主リストを添
付した経験ははじめてでした。


2023.07.06(木)【相続登記の義務化】(島根・根来川弘充)

 来年4月1日から相続登記が義務化されます。このことが影響してるのかも
しれませんが、今年に入って相続登記のご依頼が増えた気がします。

 依頼の大半が、依頼者自身が登記名義人になりたいというケースです。法定
相続人が複数おられる場合、遺産分割協議書が登記申請に必要な書類として、
一番多く用いられていると思います。

 あくまで「協議書」ですので、「協議が成立している」ということが、大変
重要になるのですが、この事実確認をどのようにするかは、司法書士の間でも
違う点がある所です。

 たとえ依頼者から協議は成立していると聞き取りをしたとしても、万が一、
他の相続人が知らなかったということがあったら、大変です。知らなかった相
続人にとっては、依頼者そして司法書士に不信感を持つことでしょう。不信感
をあたえてしまったら、協議までの道のりはとても長いものになります。

 相続登記を促進するための法律が、逆に相続登記を遅らせる結果にならない
よう、十分に注意しなければなりません。

 登記が先行して、協議(実体)が軽視されることがないよう、専門家として
気を引き締めたいと思います。


2023.07.05(水)【経験の棚卸し】(神奈川・酒井恒雄)

 事業活動をやめる際には、起業経験の棚卸しをすべきだと思います。そうし
ないと次のキャリアに起業の経験を活かすことができません。

 事業をやめたとしても人生はまだまだ続きます。一旦再就職して、もう一度
起業するとうこともあり得ますし、実際そのようなキャリアを構築している人
もいます。

 海外のベンチャー向けの投資家は、初めて起業する人よりも、一度失敗して
再度起業する人に対して投資をする傾向にあるようです。どんなに事業計画が
素晴らしくても、その人が遂行できるかどうかは分かりません。それよりも、
一度失敗をしている人の方が、実際の行動を通して様々なことを学んでいるは
ずであり、次に同じ失敗を繰り返する確率は低くなる。だから、成功の確率も
上がるだろうと、彼らは考えているようです。

 個人でも組織でも、失敗に真正面から取り組めば成長できるが、逃げれば何
も学べない。失敗から学べる人と学べない人との違いは、突き詰めて言えば、
「失敗の受け止め方」の違いだとも言われています。そうであれば、きちんと
会社を解散させて、起業経験の棚卸しをして、次のステップに進むというプロ
セスは、非常に大事なことであると思います。(つづく)


2023.07.04(火)【定時総会2023】(東京・鈴木龍介)

 ご承知のとおり、我が国の上場会社は、いわゆる3月決算・6月総会が多数
を占めます。今年(2023年)の上場会社の定時株主総会(本年総会)は、
先週(6月26日~6月30日)、開催されたところがほとんどですが、最集
中日6月29日(木)で、全体の約26%ということです。

 本年総会は、多くの会社で出席自粛要請ほかコロナ禍の規制のないかたちで
開催されているようですが、出席株主数等はコロナ前に戻ったとまではいえな
いような感じがしています。ちなみに、このコロナ禍を勘案してか、いわゆる
お土産を廃止した会社も少なくないことから、その影響もあるような気がしま
す。

 実質的なところとしましては、株主提案の件数が過去最高となった模様です。
具体的には、気候変動関連のものが多く見られるとともに、増配や自社株買い
といった株主還元に関するものも散見されます。また、議決権行使助言会社に
よる会社提案への賛否の助言に対して、会社側が反論する動きも見られます。

 なお、本年総会は法令等の改正の影響はあまりなかったところ、総会資料の
電子提供については、本年総会が実質的なスタートということになりましたが、
いわゆるフルセット(電子+紙)で対応した会社も多く、目だった混乱はなか
ったようです。

 去る6月27日(火)、私が社外取締役を務めております会社の本年総会が
開催され、すべての議案が可決承認されました。ご参加いただきました株主、
そして関係者の皆様方に、この場をお借りして御礼申し上げます。


2023.07.03(月)【議事録等チェック】(金子登志雄)

 7月に入りました。相変わらず6月下旬の定時株主総会での役員変更登記
が続いています。お客様から送られた、あるいは持参された議事録等を登記
申請前に最終チェックしていると、結構、勉強になります。上場会社の子会
社は議事録等を独自に作成してきますので、このチェックが避けられません。

 親会社の方針で必ず就任承諾書を準備し、議事録には「席上就任承諾した」
を決して記載しない会社もありますし、「別紙参考資料のとおり」で、議事
録本文には役員候補者名を記載しない会社もあります。

 1.法律上押印が義務付けられていない書類には押印がなくとも合法です
と伝えていたためか、A社は、就任承諾書につき重任取締役4名を連記し、
押印なくして送ってきました。ちょっとやり過ぎかなと思いましたが、その
まま添付したところ、当然ながら無事に終わりました。認印が押されても、
それでは誰でも三文判を買ってきて押せるため、押印に意味がないためです。

 また、押印があっても、明らかにシャチハタだと分かるものが多いのです
が、いまはフリーパスです。

 2.B社は、私の指示(代表者選定の議事録では重任代表者の横は会社実
印)どおりにしてくださいましたが、他の取締役に押印がありませんでした。
これはまずいですね。1のとおり、認印では意味がないのですが、取締役会
議事録は、出席者に法律上押印が義務付けられている書類だからです。

 3.C社は「取締役4名が本総会終結と同時に任期満了退任するため、次
の取締役4名を選任する」という総会議事録(みなし総会議事録)で、4名
の重任者の氏名が列挙されていましたが、何か問題があるでしょうか。

 全員重任ですから私は問題ないと思い、そのまま申請したのですが、これ
では「退任者が誰か不明だから、提案書も送ってくれ」と登記所から要請が
ありました。登記所の言い分も一理ありますので、会社に電話し、「次の取
締役4名が本総会終結と同時に」と「次の」を前に挿入していただき、議事
録を差替えましたが、登記調査官はよくみているものです。もし、「選任す
る」でなく「再選する」だったら、あるいは「取締役4名全員が」と「全員」
が挿入されていたら、きっと大丈夫だったでしょう。

 4.D社は監査役が複数でしたが、総会議事録には「監査役1名が本総会
と同時に任期満了退任するため、後任として」とありましたが、誰が退任か
は記載されていませんでした。

 しかし、次の議案が「退任監査役に対する退職慰労金支給の件」で、そこ
に「本総会終結と同時に任期満了退任する監査役〇〇〇〇氏」とあったので、
鉛筆で、退任する監査役1名が誰かは議事録全体で明らかですので、退任を
証する書面として有効だと思いますとメモ書きしておきましたが、たぶん、
受理してくださるでしょう。

 5.E社は3につき「監査役1名選任の件」としかなく、次の議案の退職
慰労金支給の件が上記と同じでしたが、さすがに、これをもって退任を証す
る書面にするのは無謀だと思い、会社の承諾を得て、選任議案のところに、
退任の旨を挿入いたしました。

 以上のとおり、日々、「補正」と「受理」の境界の壁を歩いていますが、
私自身のチェック能力が審査されており、これが商業登記事案の面白いとこ
ろでもあります。


2023.06.30(金)【商業登記での立会い経験】(金子登志雄)

 今週は何年ぶりかで商業登記で取引の立会いをいたしました。といっても
不動産取引の立会いと相違し、株式買収のM&Aのクロージングに立会い、
役員変更の書類を確認しただけです。

 会場は大手のM&A仲介会社の会議室で、まるで結婚式かのように記念写
真をとっていました。いまの業者はそういうこともしています。

 旧商法時代だったと記憶していますが、不動産を含めた大きな取引に立ち
会ったこともあります。100人は入れる大きな会議室に売り手側と買い手
側が向かい合い、双方に用心棒(?)の大手法律事務所が陪席し、会議室の
中央部分にはテーブルがあり、そこに多数の不動産資料が山積みされ、某大
手事務所の司法書士多数がその不動産資料をチェックしていました。登録免
許税だけで数億円だったそうです。

 私は売り手側の法律事務所に呼ばれ、単に合名会社の役員交代登記を申請
するだけでしたが、相手側の大法律事務所の弁護士数人が私が来ていること
を知り、わざわざ挨拶に来て下さったのはよい気分でした。一等地にあるそ
の大手法律事務所の各階の本箱に拙著が備えられているとのことでした。

 合名会社の管轄法務局はその取引場所から電車で30分か、40分のとこ
ろでしたが、私がちゃんと申請するかを見届けるため、相手側の大法律事務
所勤務の女性司法書士が私に着いてきました。ここまでするのかとは思いま
したが、若い女性でしたので、私も大歓迎で一緒に登記所に行きました。


2023.06.29(木)【業務執行社員の登記(2)】(仙台・立花宏)

 前回(6月15日(木)本欄)からの続きで、業務執行社員の登記の話です。

 前回、合同会社の業務執行社員は、業務執行者の地位で責任を負う場合があ
るため、登記事項として公示する必要があるという趣旨の内容を記載しました。
ちなみに、合同会社が解散すると、業務執行社員の登記が職権で抹消されるの
も(商業登記規則91条)、業務執行者としての登記であることを示している
のだと思います。解散後であっても、定款で定められた業務執行社員は清算人
を選任する権限があるから(会社法647条1項3号かっこ書)、業務執行社
員であることに違いはありません。しかし、これは社員としての権限であり、
業務執行者としての権限ではないため、公示する必要性は小さいということな
のだと考えます。

 ところで、社員1名のみの合同会社を想定するとわかりやすいと思いますの
で、その会社の唯一の社員甲に相続が発生し、定款の規定に基づき、相続人A
Bが持分を承継したものとします。ABは遺産分割協議を行い、Aがこの持分
を承継し、Bは持分を承継しないことを決定しました。

 この場合、登記先例(昭和34年1月14日民事甲2723号)の扱いでは、
ABの業務執行社員加入(代表社員就任)の登記をしたうえで、持分譲渡によ
るBの退社の登記をすることになります。

 このような扱いを求める理由はふたつだとされており、ひとつは、持分譲渡
の登記前に生じた会社債務につき従前の責任に従って弁済責任を負う関係で、
遺産分割の効力は遡及しないというもので、もうひとつは、遺産分割時までに
他の共同相続人が会社を代表してした行為の効果が遡及的に消滅することが適
当でないというものです(注1)。

 この扱いについては、合同会社については妥当しないという見解があります
(注2)。合同会社の社員は債権者に直接責任を負わないことが理由です。

 前者についてはそうでしょう。しかし、後者についてはどうでしょうか。た
とえば、遺産分割前にAが会社を代表して行為をしたとします。合同会社の業
務は、社員の過半数で決定しますから(会社法590条)、A及びBが同意し
て決定したはずです(注3)。Bが社員とならなかったのであれば、意思決定
が無効になり、この決定やそれに基づいた行為の効果が遡及して消滅すること
になるということだと思います。

 合同会社については妥当しないという見解は、こうした場合に、第三者に損
害が生じたとしても、合同会社の社員は間接有限責任ですから、社員としての
責任を負わないので問題はないということなのかもしれません。

 しかし、Aの職務に悪意又は重大な過失があったとしたらどうでしょう。こ
の場合、業務執行社員として、会社法597条の責任を負うことになります。
そして、Aが行為をしたとしても、AとBで1人の社員であり、Aは法人社員
の職務執行者のようなイメージで、業務を行ったと考えるべきだと思います。

 そうすると、相続財産として持分を一般承継し、相続人として準共有してい
たBも、業務を執行した社員なのであり、個人的には、責任を負うべき立場だ
と考えました。

 そういうこともあるため、Bも、会社法586条の責任を負い、一度、加入
の登記をしたうえで、持分譲渡により退社の登記をするのが妥当ではないかと
考えました。

 これに対し、そうであっても、相続後、遺産分割までの間、相続人全員が社
員として、一切業務に関与していないのであれば、責任を負うことがないのだ
から、登記をする必要はないという考え方もあるだろうと思います。

 しかし、これについては、関与していないという実体上のことを、書面審査
を前提としている法務局が判断するのは難しいのではないかと思います。また、
前回、記載したように、登記されていなければ、仮に責任を問う訴訟を起こそ
うとしても、その時、業務に関与した者が誰かについて、訴訟提起をする者が
調べるのが困難になります。まして、合同会社の場合は、社員が登記されませ
ん。従来の登記実務の見解に従い、いったん、AとBを業務執行社員として登
記し、持分譲渡によりBの退社の登記をする必要性は大きいと個人的には考え
ました(注4)。

 注1、2)松井・ハンドブック第4版657頁
 注3)もっとも、AとBは持分を準共有しており、AとB2人で1人の社員
  ということになります。AとBの同意は、社員としての意思決定過程とい
  うことになると思います。
 注4)この先例についての解説(明田川昌幸「合資会社の有限責任社員の死
  亡と相続人数人中の1人のみによる入社登記申請の受否」「別冊ジュリス
  ト124商業登記先例判例百選」184頁)では、合資会社の有限責任社
  員について、出資全額を履行済みでも、利益がないのに配当を受けた場合
  には責任を負う場合があり得るので(会社法でいえば623条)、先例ど
  おりの登記方法となるとしています。


2023.06.28(水)【終わりを創出する】(神奈川・酒井恒雄)

 起業して、たとえ志半ばで事業活動をやめることになったとしても、貴重な
起業の経験を、嫌な記憶(失敗)と一緒に忘れてしまうのは勿体ない、せっか
くの経験だから棚卸しをしないと勿体ない、そう私は思っているのですが、よ
く考えてみますと、経験の棚卸しをする絶好のタイミングがあります。それは
会社解散後の清算期間です。

 債権者との調整や財産目録の作成に多くの時間をとられてしまう場合は別で
すが、休眠放置会社になるような会社は、2カ月以上もある清算期間のうち、
果たしてどれだけ清算事務に時間を使うでしょうか。いわば待ち時間のような
この期間に、起業の経験の棚卸しをすれば、まだ記憶が新しいうちに様々な振
り返りができるかと思います。

 また、経験の棚卸しをするにあたっては区切りも必要になってきます。まだ
諦めていないんだ、とりあえず一旦休むんだ、という気持ちがあるうちは、お
そらく過去を振り返る気にならないでしょう。

 そうなると明確な区切りをつけて、「終わり」を創出する必要があるかと思
いますが、会社であれば解散手続きが、終わりを創出することになるかと思い
ます。(つづく)


2023.06.27(火)【日司連 第88回定時総会】(東京・鈴木龍介)

 先週の6月22日(木)・23日(金)の2日間にわたり日本司法書士会連
合会(日司連)の第88回定時総会」(本総会)が東京・渋谷のヒカリエホー
ルで開催されました。

 本総会は、いわゆるコロナによる制限のないかたちでの開催ということで、
組織員(今回は309名)と日司連執行部ほか関係者約500名がリアルでの
参集となりました。

 初日の来賓挨拶等のセレモニーにはじまり、事業報告を経て、組織員からの
提案のものを含め合計27件の議案が提出されました。私も副会長として、議
案の上程、質疑への答弁を行いました。2日目に各議案の審議がなされ、すべ
ての議案が可決承認されました。

 日司連は、本総会を経て、あらたな1年のスタートを切ることになります。
私も再任されました2期目の副会長として真価と進化が問われる中、司法書士
制度の発展のため“焦らず、弛まず、怠らず”会務に取り組む所存です。引き
続きのご支援のほど、よろしくお願いいたします。

 あらためまして組織員ほか関係者のみなさん、お疲れさまでした。そして、
ありがとうございました。


2023.06.26(月)【代表取締役の予選期間】(金子登志雄)

 5月1日付本欄で、代表取締役の予選期間が2か月以上もある上場会社の
事例(3月24日の取締役会で6月1日付で代表取締役を予選)を紹介しま
したが、ふと思い出して土曜日に「登記情報提供サービス」で調べたところ、
予想どおり、無事に登記が終わっていました。

 6月1日付とは変わった日だなと思い、調べましたら、5月末決算の会社
でした。3月決算会社に焼き直すと、1月24日の取締役会で、次期事業年
度開始日の4月1日付で新社長を予選したことになります。

 社長だった方は代表取締役会長に変わったので、取締役会決議時と効力発
生時点で取締役構成に変化がありませんし、次期事業年度開始日から新社長
体制にしようというのは合理的な決定ですから、予選期間が2か月以上空い
ても少しも異議を出す必要もありません。

 登記実務が予選期間につき短期間を要求しているのは、長期だと気が変わ
ることもあり、その間に選任者側に変動が生じることもあるためでしょう。
したがって、現在の登記実務は予選決議時と効力発生時期で取締役構成に変
化がないことを求めています。

 しかし、それを受けて改めて新代表者の選定を決議し、別人が選定される
可能性があるなら、現代表者は取締役を辞任する時期を変更したでしょうし、
新たに選任された取締役も予選された結果を了承のうえで就任承諾している
はずです。

 私は講義の際にこういう事例につき就任時期が来るまでに取締役は誰も死
んではいけませんよ、構成メンバーが変わってしまうからと冗談半分に実務
のおかしさを批判していますが、もともと、こういう実務は取締役の任期が
2年に固定されていた時期のものです。

 例えば、3月決算で取締役の任期を7月1日から2年後の6月30日まで
にしていた会社が6月下旬の定時株主総会で7月1日からの取締役を予選重
任し、その重任予定の取締役が7月1日からの代表取締役を予選した場合で
す。このように、まだ次期取締役になっていない者が次期代表取締役を予選
した場合であれば、構成メンバーの一致を要求する実務も理解することがで
きますが、現時点の取締役が正式な取締役会で期限付決議をしただけなのに、
議案が代表取締役の予選の場合に限り構成メンバーの一致を要求するのは、
会社自治への無用な干渉のように思えてなりません。


2023.06.23(金)【短期勝負の充実した日々】(金子登志雄)

 今週も何とか無事に終わりそうですが、3月決算会社の定時株主総会時期
のピークが近づいたためか、毎日のように株主総会議事録案等がメールの添
付ファイルで送られ事前チェックの依頼があり、うれしい悲鳴、いや、稼ぎ
時の多忙バンザイ!の充実した日々を送っています。

 私の主要顧客はほとんどが3月決算会社ですから、私が多忙なのはこの時
期と組織再編や人事異動の多い4月1日前後と10月1日前後しかありませ
ん。情けないもので、まさに季節労務者です。繁忙期でない時期は出稼ぎし
たいくらいの心境でいますので、ぜひ手伝いの声をかけてほしいものです。

 上場会社をいくつか担当していますが、それだけでは多忙にはならないの
ですが、その子会社も親会社に合わせて3月決算にし、しかも取締役の任期
も親会社に合わせて1年にしているため、親子そろっての依頼のため多忙に
なるわけです。

 上場会社だけなら楽なものです。定時株主総会の2、3週間前から総会招
集通知がホームページ等で公開されますので、それをみて、申請書案を事前
に作れます。

 6月が定時株主総会なのに実際の登記依頼は7月になる会社も少なくあり
ません。その理由の多くは、取締役会議事録に取締役等ご本人の押印を求め
る会社です。

 これを避けるため電子署名にする会社もありますが、代表印まで登記所の
電子署名を準備している会社は少なく、結局、紙が便利だと元に戻る会社が
少なくありません。

 手慣れた会社は取締役個々の印鑑を総務部や秘書課が預かっているのか、
それで素早く議事録に押印しています。違法ではありません。ご本人が議事
録の内容を確認し、押印の代行を許可しているからです。手形法ではこれを
署名代理などといっていましたが、最近は約束手形を使うこともほとんどな
いのか、耳にすることもなくなりました。


2023.06.22(木)【連件申請の登録免許税一括納付】(金子登志雄)

 電子申請をしている方はお気づきかもしれませんが、今年から連件申請の登
録免許税納付が一括方式に変更されました、今年のいつからかは調べておらず
知りませんが、4月当初の吸収合併登記申請などがそうでした。

 例えば、A社が100%子会社のB社とC社を合併で吸収する際は、①A社
の吸収合併による変更、②A社に合併しB社解散、③A社に合併しC社解散の
3連件になりますが、従前は①②③それぞれで3万円の納付手続が必要でした
が、いまは①で合計額の9万円を納付します。

 同じ納付作業を3回も繰り返す手間が省けてだいぶ楽になりましたが、もし
②で登録免許税を間違って2万円と記載した際は、②の補正と①での追加納付
の2つになるのかは経験もなく分かりません。

 これも調べればよいのでしょうが、生来の無精者のため、そうなったら関係
先に問い合わせればよいと思い、サボっています。

 こうも怠惰だと、将来は認知症になるかもしれないなと密かに思っています
が、認知症といえば米国のバイデン大統領(80歳)が全く無関係なテーマの
演説の最後に「女王陛下バンザイ!(God Save the Queen, man!)」と叫び、
認知症疑惑をほぼ確定的にしてしまいました。核のボタンを握る大統領がこれ
でよいのでしょうか。昨日はブリンケン国務長官が訪中したばかりだというの
に習国家主席を独裁者呼ばわりしましたが、冷静な判断だとは思えません。
    https://www.youtube.com/watch?v=E1cpgXkv68k

 もし、私が会社法セミナー講師の際に「司法書士女王バンザイ!」とでも叫
んだら、すぐに無理やりにでも引退させるよう当研究会のお仲間に依頼してお
きましょう。懲戒処分のボタンをいつ押すか分かりませんので………。


2023.06.21(水)【嫌なことは忘れたい?】(神奈川・酒井恒雄)

 経営者に、解散・清算手続は「無駄な費用」がかかるという認識を変えても
らい、有用なプロセスであるという認識を持ってもらえるような方法はないも
のでしょうか・・・。

 以前に、会社を放置してしまう人の多くは、成功体験がないまま、事業から
撤退せざるを得なくなったケースに当てはまるのではないだろうかと書きまし
た。そして、今の起業ブームは、自主的なキャリア選択をする人が増えて、も
ともと高かったキャリアへの関心が、単に関心だけではなく具体的な行動へと
変化した結果を反映しているかもしれないとも書きました。

 どうしてそのようなことを考えるのかといえば、私の周りの環境が大きく影
響しているかもしれません。私は、起業家支援拠点で、まだ起業に興味がある
だけという段階の人から、すでに起業の意思は固まっていているという人の話
を聞いたりしていますが、「人生キャリア」を真剣に考えている人ほど、起業
に興味を持つ傾向にあると感じています。

 しかし、起業したとしても成功するかどうかは分かりませんし、もし失敗し
たとしたら、「よい経験をした」と捉えるのは少数で、多くの人は、「敗者に
なった」とか「黒歴史ができた」というネガティブな捉え方をするでしょう。

 しかし、口先だけで起業を語る人より、実際にやって失敗した人の方が得る
ものは多いはずです。起業の経験の棚卸しをすれば、思いもよらなかった発見
があるかもしれません。ただ、事業活動をやめたあとに会社を放置してしまう
と、こうした貴重な経験の記憶は時とともに失われていくことになります。嫌
なことは忘れたいと思うのが人の常です・・・。(つづく)


2023.06.20(火)【選挙結果】(東京・鈴木龍介)

 本欄でも何度か取り上げております日本司法書士会連合会(日司連)の役員
選挙につきまして、去る6月15日に投票(オンライン)、翌日の6月16日
に開票があり、結果が判明しました。

 今回、私が立候補しました日司連・副会長選挙につきましては、かなりの激
戦ではありましたが、何とか当選することができました。ご協力・ご支援いた
だきましたみなさまには、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 これからの2年間、司法書士制度の健全な発展のため力を注ぐ所存ですので、
何卒ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。


2023.06.19(月)【〇〇道雑感】(金子登志雄)

 今月の暇つぶしはアマゾンプライムで「商道」とか「客主」という商(あ
きない)の道をテーマとする長編の韓国時代劇を視聴していました。そこで、
今回は、「〇〇道」を取り上げてみました。

 ドラマのように「王道」を歩んでこそ、成功するという広い意味で「道」
を使うことには抵抗がないのですが、日本の武道や体育会系の世界では、表
面的な礼儀作法と結び付けられることが多いようです。学生時代にちょとだ
け空手道場に入門してみましたが、道場内にある神棚に最敬礼させられたり、
先に入門した小学生に先輩格を吹かされたりで、お金を払って入門したのに、
パワハラ世界そのものでした。

 M&A手続コンサルタント時代にはお客の金融機関の方から、「サラリー
マン道とは、遅刻せず、時間を守り、二日酔いでも定時には出社し、あとは
保険室で寝ていることだ」と教えていただきましたが、サラリーマン経験の
ある方は、この価値観がよく分かると思います。

 我々の司法書士道は、司法書士法1条と2条によると、「法律事務の専門
家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与す
ることを使命とし、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通し
て、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」ということですが、
これなら私も守れていると思っています。 

 弁護士業界の場合は、弁護士同士で名刺交換する際には「何期ですか」で
はじまり、お互いの距離感をはかりますが、資格取得に学歴不問で、さまざ
まな業界出身者で構成される我が業界には、これがありません。弁護士はお
互いが敵味方に分かれることの多いストレスの多い仕事なのに、司法書士は
それが少なく、ある意味では仲良し業界ですから、司法書士道も守れずに懲
戒処分を受けるようでは、他の社会でも通じないことでしょう。


2023.06.16(金)【一括申請と管轄外本店移転】(金子登志雄)

 「役員変更等と管轄外本店移転を登記申請する場合に、旧管轄での申請は役
員変更等と本店移転を同一申請書で一括申請してもよいのですか」という質問
に、皆様であったら、どうお答えしますか。

 私は全く問題ないし、何度も経験済みですとお応えしていますが、最近の情
報によると、某大手法務局だけはシステム上ややこしくなるので別申請にして
ほしいと要請してくるとのことで驚いています。

 これにつき、たまたま東京法務局の相談官のお一人と電話で話す機会があり
ましたので(別の相談があったため)、ついでに、お尋ねしたところ、東京法
務局では全く問題ないし、代表者の住所移転と同一場所への本店移転などがよ
くなされているとのお返事でした。

 ただ、別々に申請しても登録免許税が高くなるわけではないので、東京法務
局であろうと、吸収合併と管轄外移転などでは、混乱防止のため、
 ① 吸収合併による変更(委任状は旧住所で)
 ② 吸収合併による解散
 ③ 旧管轄で本店移転(委任状は新住所で)
 ④ 新管轄に本店移転
と、4連件でするのが通常です。

 ここで私は長い間、①②は同時申請、③④は同時申請と商業登記法で規定さ
れているが、②と③(あるいは①②と③④)との間は同時申請とされていない
ので、1/4、2/4、3/4、4/4という連件にし、オンライン申請で、
半角の1、2、3、4を付してよいのかという疑問を持っていましたが、これ
も問題なく、①役員変更等、②旧管轄での本店移転、③新管轄に本店移転の3
連件にしてよいどころか、①役員変更、②募集株式の発行などでも、連件番号
を付してよいのだそうです。

 優秀な司法書士仲間数人にこの話題を提供したところ、某司法書士がが商業
登記規則37条(数個の同時申請)1項に「同一の登記所に対し同時に数個の
申請をする場合において、各申請書に添付すべき書類に内容が同一であるもの
があるときは、一個の申請書のみに一通を添付すれば足りる」とあり、前件添
付、後件添付とすればよいのだから、連件申請は法律上の同時申請に限らない
という意見でしたが、なるほどです。

 ただ、役員変更等と管轄外本店移転の場合は、役員変更等の申請人住所は旧
住所にし、本店移転は移転先住所にしなければなりません。これは面倒なので、
私は今後も①役員変更等及び旧管轄での本店移転、②移転先での本店移転で申
請するつもりです。

 また、上記吸収合併と管轄外本店移転事案でも③に添付した委任状に「吸収
合併による変更」と記載し、①で「委任状(後件添付)」としてもよいのだろ
うと思いました。もちろん、申請書の申請人は旧住所でなければなりません。


2023.06.15(木)【業務執行社員の登記(1)】(仙台・立花宏)

 今日は、持分会社の登記事項の中で、合同会社に特有の登記事項、業務執行
社員の登記について考えてみました。ご承知のとおり、合同会社については登
記事項ですが(会社法914条6号)、合名会社、合資会社については、登記
事項ではありません。

 しかし、合名会社、合資会社に業務執行社員がいないわけではありません。
持分会社の種類にかかわらず、社員には、原則として、業務執行権があり、定
款で、業務執行社員を定める(他の社員の業務執行権を制限する)ことができ
るという規律になっています。

 では、どうして、合同会社だけ業務執行社員を登記するのでしょうか。これ
については、合同会社の社員は、社員となる前に出資の履行を済ませ、債権者
に直接責任を負わない間接有限責任社員であるのに対し、合名会社、合資会社
の社員は、債権者に直接責任を負う立場であることが理由だと解説されていま
した(注1)。合同会社では、債権者に対して直接責任を負わない社員自体は
公示対象ではないため、業務執行権のある社員を公示対象するということだと
思います。

 ちなみに、私見は、社員には、会社の所有者としての地位と、業務執行者と
して地位の2つの地位があると考えています。合同会社においては、社員が債
権者に直接の責任を負わないといっても、それは前者としての責任であって、
この意味では登記事項とする必要はないでしょう。しかし、後者としては責任
を負う場合があるので(会社法597条、注2)、登記をして公示する必要が
あるということだと考えました。

 そうすると、社員として登記される合名会社と合資会社の登記は、前者の地
位のみを公示する登記のようにも思えますが、私見は、前者だけでなく、後者
の地位をも公示しているのだと考えています。ただ、そうすると、前記のとお
り、持分会社においては、定款で特定の社員の業務執行権を制限できるところ、
合名会社、合資会社では、その制限されていることは公示されないということ
になります。

 そんなことを考えていて、ふと、こうした違いから、訴訟手続についても、
手続に違いがでるのではないかと考えました。業務執行社員に対する責任を問
う訴訟を起こす場合の要件事実です。合同会社甲の業務執行社員Aに対する責
任を問う場合は、次のようなイメージでしょうか。
 ①Aが合同会社甲の業務執行社員であること。
 ②Aに、合同会社甲の業務執行において、任務懈怠行為があったこと。
 ③悪意又は重大な過失があったことの評価根拠事実
 ④損害の発生及び損害額
 ⑤損害と②との間に因果関係があること

 では、Aが合資会社甲の業務執行社員だった場合はどうでしょうか。この場
合、①のところが変わってくるかもしれないと考えたのです。合同会社の場合
は、業務執行社員は登記事項ですので、原告は、Aが業務執行社員だと主張し、
その根拠資料として登記事項証明書を示せばよいと思います。

 しかし、合資会社の場合、業務執行社員は登記事項ではありません。また、
株式会社と異なり、会社法上、債権者が定款を閲覧することができる旨の規定
もありません。原告が、Aが業務執行社員だと主張するとした場合、原告にそ
れを立証することを求めるのは酷ではないかと思いました。

 持分会社の社員は、原則として業務執行権がありますから、合資会社の場合
は①で、Aが社員であることを主張し、登記事項証明書を示せばよく、Aが、
自身が業務執行社員であることを否定したい場合は、①の抗弁として、業務執
行権が制限されていると主張させ、定款を提出させることにより、それを立証
させるのが公平にかなうのではないかと考えたのです。

 この点、要件事実の書籍(注3)をみたところ、合同会社と他の持分会社で、
①を区別していないようでした。実務上も、そのように扱われているのでしょ
うか。

 注1)奥島孝康ほか編『新基本法コンメンタール会社法3【第2版】』
   (日本評論社)532頁
 注2)株式会社の取締役の責任(会社法429条)には、、不法行為責任
   特則説と法定責任説の見解があるようで、持分会社の業務執行社員の
   責任にも同様に、複数の考え方があり得るのだろうと思いますが、本
   コラムでは、この点は深入りしないこととさせていただきます。
 注3)大江忠『要件事実会社法(3)』(商事法務)91頁


2023.06.14(水)【解散のお金がないとは?】(神奈川・酒井恒雄)

 事業活動をやめざるを得ない状況になり、会社を解散させようかと思ったと
きに、こんなことを考える経営者も少なくないのではないでしょうか?

 「解散・清算手続きを自分でやるのは難しそうだな。でも専門家に依頼する
お金はないから、休眠届だけ出しておくかな・・・。」

 実際、本人からの相談にしろ、顧問税理士からの相談にしろ、解散手続きに
関する問い合わせは、まず「解散・清算の費用はどれくらいか?」ということ
から始まります。

 そして「あまりお金がないのですけれど・・・」という説明が続くことが多
いです。たしかに、事業活動をやめなければいけない状況ですから、資金的に
余裕がないかもしれません。

 しかし、本当に専門家に解散・清算の手続き費用を支払うこともできないの
かといえば、必ずしもそうでは場合も少なくないと思います。つまり、「あま
りお金がない」という言葉には、「本当に資金がない」場合と、今まで多くの
事業資金をつぎ込んできたので、「これ以上の出費はしたくない」という場合
の2種類があるようです。

 そして後者については、多くの場合「無駄な出費」は避けたいという意識が
強いのではないでしょうか。そうなりますと、自主的に解散手続きをするか否
かは、解散・清算のプロセスが有用なものであるという認識を持ってもらうこ
とが必要かと思われます。

 有用なプロセスという言い方も何か変な気がしますが、法律で決められてい
るといった理由ではおそらく相手に届かないので、何か別の視点から説明でき
ないかということです。(つづく)


2023.06.13(火)【選挙】(東京・鈴木龍介)

 先週の本欄では金子さんから過分なお褒めの応援(文)を頂戴し、たいへん
恐縮しております。
 
 さて「選挙」について、振り返ってみると、投票したことは当然ありますが、
候補者となるのは初めての経験です。慣れていないこともありますが、肉体的
にも精神的にも相当ハードです。

 とはいえ、普通ではできないことを経験させてもらっているという、ある種
の充実感はあります。また、選挙は一人ではないできないものというのを痛感
しておりまして、応援団や理解者の皆さんとともに、一緒に選挙戦を戦ってい
ます。

 日本司法書士会連合会(日司連)の役員選挙は全国区ということで、各地を
行脚し、所信等を開陳させていただくとともに、有権者の皆さまには電話等で
コンタクトをとらせていただいております。お忙しいところお時間を頂戴した
方々には、この場を借りて御礼申し上げます。

 今回の日司連の副会長選挙は3人枠のところに、私を含めた4人が立候補し
ております(つまり、1人が落選することになります)。

 投票日は来る6月15日(木)で、開票は翌6月16日(金)です。選挙戦
は投票日の前日の6月14日までですが、精一杯できることをやりきりたいと
思っております。

 ご支援のほど、よろしくお願いいたします。


2023.06.12(月)【監査役の改選議事録】(金子登志雄)

 9日金曜日の「書き入れ月」につき、感想を寄せてくださった方がいらっし
ゃいましたので、第2弾として表題にしました。

 監査役改選の件で「本総会終結をもって監査役が任期満了退任するので」と
あっても、就任後3年目になっていたり、5年目になっていることがあります。

 前者は補欠就任かなと推測し過去の議事録を確認したり、それが保管されて
いないときは会社に問い合わせて対応しています。

 著書にも書きましたが、履歴事項をみたら、監査役が1名なのに令和3年に
重任し、また令和4年の定時総会で、また重任したものもありました。一瞬、
あり得ないことだと思ってしまいますが、令和4年の定時総会で、監査役の監
査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止したり、公開会
社に移行した場合には、こういうことも生じます(336条4項参照)。

 例年は4年ごとになっているのに、急に5年目になっている事案があり、問
い合わせたら、定款変更で任期を伸長したというので、納得し、そのまま申請
いたしましたところ、登記調査官から「上司が例年4年ごとなのに、急に5年
になっているのはおかしいから定款を示すようにといわれた」という電話があ
ったことがあります。

 補正ではないので、素直に「定款を取り寄せてFAXしましょうか」とでも
愛想よく答えればよかったのでしょうが、思わず「そういう実質審査権限があ
るのですか」と逆質問しましたところ、「分かりました。ガチャン」と電話を
切られてしまったこともありました。これはきっと、私に対する怒りではなく、
余計な干渉をしてきた上司に対してイライラが募っていたのでしょう。

 役員変更は最もメジャーな登記ですが、決して易しい登記ではありません。
議事録に「本総会終結をもって監査役が任期満了退任するので」と記載すべき
ところ、会社の議事録が「議長は、監査役の改選の必要がある旨を述べ、次の
者を」とあるだけなのに、見落とせば定款を添付せよと補正になるでしょう。
たかが役員変更、されど役員変更です。


2023.06.09(金)【書き入れ月】(金子登志雄)

 6月は3月決算会社の定時株主総会時期であり、私も久々に多忙になる時期
です。

 すでに上場会社の子会社の役員変更登記をいくつか経験しましたが、私の常
連顧客からの依頼方法については、下記の①②③のタイプがあります。

 ① 定時株主総会が終わったので、登記書類を送りましたとメールしてくれ
るタイプの会社
 私にとっては楽な会社ですが、書面決議総会議事録に、定款一部変更の件と
か、取締役3名選任の件とあっても、議案内容が記載されていなかったり、取
締役会の書面決議では定款が添付されていないなどもよくあります。

 ② 事前に議事録等一式をメールの添付ファイルで送ってきて、事前チェッ
クを求めてくる会社
 確実な会社ですが、登記記録や定款もパソコンに保存しているものとパソコ
ン画面で照らし合わせますので、見落としがないかと、チェックに結構時間が
かかります。

 ③ これこれこういう内容で定時株主総会を開催するから、議事録案等を作
ってくれという会社
 これは私にとっては結構楽です。案を私が作るので、あとでチェック時間を
節約することができるからです。

 ありがたいことに、上場会社の子会社とはいえ、規模が大きいと会計監査人
設置会社ですから毎年登記が必要ですし、最近は、親会社に合わせて子会社も
取締役の任期を1年にするところが多く、助かっています。

 取締役任期の定めとしては、私の顧客では、次の3つの型があります。

 A型
  1 取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のも
のに関する定時株主総会の終結の時までとする。
  2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任され
た取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

 B型
  上記1項のみ。

 C型
  取締役の任期は、選任後最初の定時株主総会の終結の時までとする。 

 上場会社の子会社では、4月1日の人事異動で子会社の取締役が交代してい
ることが多く「令和5年4月1日就任」の者は、B型では任期満了で退任しま
せんので、必ず定款をチェックしなければなりません。


2023.06.08(木)【株主割当の添付書面】(金子登志雄)

 昨日、株主割当のことを書いたら、偶然にもその日に株主割当の登記依頼
が入りました。すっかり忘れていましたが、私が前々から相談にのっていた
案件でした。

 株主が20名程度いますので、第三者割当方式・総数引受契約にせよとは
助言しませんでした。当初から会社が株主割当という前提で社内外に話して
いた面もあります。

 この会社は旧商法時代から存在する会社でしたが、定款にも「当会社の株
式(自己株式の処分による株式を含む。)及び新株予約権を引き受ける者の
募集において、株主に株式又は新株予約権の割当てを受ける権利を与える場
合には、その募集事項、株主に当該株式又は新株予約権の割当てを受ける権
利を与える旨及び引受けの申込みの期日は取締役会の決議によって定める」
と規定されていました。

 この定款は添付書面に必要ですね。原則は取締役会設置会社でも非公開会
社であれば株主総会決議によるというのが会社法の規定だからです。

 もう1つ忘れてはならないのは、決議から払込期日までの期間が2週間に
満たない場合は、株主全員から期間短縮の同意書をもらわねばなりません。

 ここまでは気づく方も多いでしょうが、忘れやすいのは株主全員リストが
必要なことです。

 株主全員の住所氏名まで登記所に提出するなら、株式申込証と同じように、
「代表者による証明書ー書式見本ー期間短縮に同意した株主全員の住所氏名」
で期間短縮の同意証明になると思い、試しに実験してみることにしました。


2023.06.07(水)【初めての株主割当とみなし定款】(金子登志雄)

 会社法が施行されて初めて株主割当ての登記を申請しました。100%子
会社(B社)に親会社(A社)が出資する事例でした。それも現物出資で、
1株当たりに価額が割り切れない面白い事例でした。

 なぜ、初めてかというと、私が相談を受けた場合には、「A社に割り当て
る」という第三者割当方式の総数引受契約にし、いわゆる株主全員同意の期
間短縮の同意者など面倒な手続を回避するためです。

 この方式はノウハウに長けた司法書士の間では、旧商法時代からよく行わ
れていました。主要な方法は、縁故募集の議事録にし、たまたま親会社が申
し込んできたとするものでしたが、私は特定の第三者割当で行っていました。
たぶん、私が日本で最初だったと思います(旧商法時代の著書で解説済み)。

 株主割当てというのは会社法の条文で説明すると、「株主に株式の割当て
を受ける権利を付与してなすもの」であって(会202条1項)、その権利
を付与しなければ相手が100%親会社であろうと株主割当てにならないか
らです。株主割当ては単独行為であって、第三者割当ては割当契約という相
違もあります。

 依頼会社(取締役会設置会社)のB社は、会社法202条3項の原則どお
り株主総会で決議してきました。しかし、B社は旧商法時代から存在する歴
史のある会社でしたから、整備法76条により、株主割当てについては取締
役会の権限であると定款に定めがあるとみなされています。

 いまも定款にみなされたままかは定款に何も記載されていないので分かり
ません。しかし、会社法施行後、もう17年も経過していますし、会社が株
主総会で決議してきたということは、みなし定款を廃止したという推定が成
り立つでしょう。

 それでも登記所がどう判断するかは不明でしたので、会社にお願いし、議
事録に「当社では株主に株式の割当てを受ける権利を付与してなす募集株式
の発行は株主総会の決議事項とされているため」という文章を挿入して対応
いたしましたところ、無事に終わりました。


2023.06.06(火)【四国ブロック会 定時総会】(東京・鈴木龍介)

 司法書士は、事務所の所在地をベースに50の司法書士会(単位会)のいず
れかに必ず入会する必要があります。それらの単位会を構成員とする全国的な
組織として日本司法書士会連合会(日司連)があります。

 そして、日司連とは別に全国を8つのブロックに分け、それぞれのエリアに
ある単位会と、その会員(司法書士)で構成される、いわゆる「ブロック会」
というものが設けられています(ちなみに各ブロック会で名称はまちまちです)。

 そのブロック会の1つである日本司法書士会連合会四国ブロック会(四国ブ
ロック会)の令和5年度定時総会(本総会)が去る6月3日(土)に「土佐御
苑」(高知県高知市)で開催され、私も日司連の副会長として臨席させていた
だきました。

 本総会の目的事項のうち決議事項については、すべて異議なく可決承認され
ました。また、活発な質疑応答、意見・情報交換が行われました。その後のセ
レモニーでは法務局長表彰等が行われ、盛会のうち閉会となりました。

 その後、夕刻から開催されました懇親会にも出席させていただき、多くのみ
なさまと懇親を深めることができました。

 少々飲みすぎましたが、翌日のフライトで無事、帰京いたしました。四国ブ
ロック会の執行部、構成員ほか関係者のみなさん、お疲れさまでした&ありが
とうございました。


2023.06.05(月)【鈴木さんへの応援文】(金子登志雄)

 5月30日(火)本欄で鈴木龍介さんが、次期日司連副会長選に立候補す
ることを表明なさいました。

 日司連というのは個々の司法書士を会員とするものではなく、各単位会を
構成員とする連合会ですから、各単位会で選ばれた代議員の選挙で役員を選
び、我々個々には選挙権がなく、歯がゆいところです。

 私は、当社(アクモス株式会社)の取締役管理部長だった48歳のときに
司法書士を登録し、会社の仕事をメインとした兼業だったため、会の活動に
誘われることもなく、こういう選挙とは無縁に生きてきましたが、親しい鈴
木さんが立候補した限り、何らかのお手伝いをしたいのですが、誰が代議員
かも知りません。

 そこで、鈴木さんの優秀な能力について書くことで応援に変えます。

 1.極めて優れているのはバランス能力と交際範囲の広さです。
 経歴にあるとおり日本登記法学会理事や著名大学の講師まで幅広く兼務し
ています。司法書士などプロ相手の講義ではノウハウをメインにする私の講
義は好評ですが、大学生など素人向けの講義では、彼の講義の方が圧倒的に
分かりやすいと好評です。相手の力量に合わせて語る能力に秀でています。
人の名前を覚える能力も悪くなく、組織のまとめ役として適任です。

 2.同じく幅広い知識を吸収しようと努力している点が素晴らしいです。
所信ページをみましたか。デジタル化に決して詳しいとは思えませんが、そ
の努力は買います。本欄でもやたらにカタカナ語を解説してくださいました。

 また、一介の司法書士法人でありながら、こういうページを作れるのでし
ょうか。動画も同じです。少なくとも、こういう方面の人脈もあり、多彩な
交際範囲だけでなく、才能、意欲、努力を感じました。

 詳しい年齢までは知りませんが、デジタル化にも抵抗のない油の乗り切っ
た年代であることが動画からも分かります。動画の写りを意識して赤いネク
タイにするなど心配りまでする円熟さを感じました。

 3.共著でも率先して非中心部分を担当してくださいました。
 例えば、7月にでるテイハンの現360問の改訂版(500問に改題)で
もメインの株式会社や合同会社は私や立花さんに譲り、我々の弱い倒産関係
や渉外関係は、彼がマネージャー能力を発揮し、彼の人脈で完成させてくれ
ましたし、書籍の構成その他面倒な部分も彼が担当してくださいました。何
かをするのに際し、かけがえのない人材であることは間違いなく、日司連会
長を補佐する副会長としてもうってつけです。

 まとめていえばマネージャー能力に秀でていますので、彼は当法務研究会
の会友であり会員ではありませんが、いまや事実上共同代表も同じです。当
会は選挙への力は全くありませんが、全国的知名度だけはありますので、大
いに活用してください。


2023.06.02(金)【古本屋】(島根・根来川弘充)

 新型コロナウイルスによる行動制限から、ようやく解放されました。

 5月下旬に、仕事のため東京に行きました。空港も電車も街も、大変にぎわ
いを感じました。

 観光というほどでもありませんが、一つ探し物をしたく、神保町に行って古
本屋をいくつかまわりました。書棚によっては、昭和後半から平成前半にかけ
てのものが並んでおり、「もうこのような本が古本なのか」と思いましたが、
学生時代に見た本屋の光景とも重なり、気持ちが高ぶってしまい、いろいろな
本を手にとっては、懐かしい思い出に浸りました。

 案の定、当初の目的をすっかり忘れてしまい、関係のない本を2、3冊購入
してしまいました。

 時間も場所も大きく移動できた大変良い旅になりました。


2023.06.01(木)【解散の登記と代表社員の登記の抹消】(仙台・立花宏)

 合同会社が解散すると、清算人が就任し、清算人は解散した合同会社の業務
を執行することになります(会社法650条1項)。そのため、社員の業務執
行権や代表権は行使することができなくなります。

 こうした理由から、登記上は、合同会社は、解散の登記がなされると、業務
執行社員と代表社員の登記は、登記官が職権で抹消の記号を記録します(商業
登記規則91条)。
 
 株式会社も同様の手続があり、株式会社について解散の登記がなされると、
取締役や代表取締役の登記のほか、取締役会設置会社である旨等、解散後に効
力を失う定款規定の登記等は抹消されることになります(商業登記規則72条)。

 ところで、合名会社と合資会社は、会社を代表しない社員がいる場合に限り、
代表社員の登記をしますが(会社法912条6号、913号8号)、代表社員
の登記がされているこれらの会社が解散し、その登記がなされた場合も同様に、
代表社員の登記は登記官の職権で抹消されるでしょうか。

 ぱっと考えると、当然、同様に抹消されるように思えます。しかし、合名会
社と合資会社においては、解散の登記がなされただけでは、代表社員の登記は
抹消されません。

 条文を見てみると、その違いがよくわかります。
 合同会社の場合は、「解散の登記をしたとき」は、代表社員の登記を抹消す
るものとされていますが、合名会社と合資会社の場合は、「清算人の登記をし
たとき」は、登記官が代表社員の登記を抹消するものと規定されています(商
業登記規則86条、90条)。

 つまり、合名会社と合資会社の場合は、解散の登記がなされただけでは代表
社員の登記は抹消されず、その登記後、清算人の登記がなされて、はじめて、
代表社員の登記が抹消されるということです。

 なぜ、このような違いがあるのでしょうか。
 それは、合名会社と合資会社には、任意清算(会社法668条~671条)
があるからだと思います。これらの会社が解散した場合、合同会社と同様の清
算方法(法定清算)を選択することもできますが、任意清算の方法を選択する
ことも可能です。

 そして、任意清算の方法を選択した場合、清算人の就任に関する規定は適用
されません(会社法668条、646条)。そのため、解散前の代表社員がそ
のまま解散した会社の業務を行うことになり、合名会社と合資会社は、解散し
たからといって、代表社員の代表権が失われるとは限らないということになり
ます。

 よって、合名会社と合資会社については、解散の登記がなされたときに、登
記官が職権で代表社員の登記を抹消するのは適切ではないということになりま
す。

 こうした違いから、前記のような代表社員の抹消の規定に違いがあるのだろ
うと思いました。


2023.05.31(水)【設立状況再び②】(神奈川・酒井恒雄)

 株式会社の設立登記件数は、平成30年に前年比で約4,000件の減少が
あったようです。この背景には、おそらく働き方改革関連法案成立の影響があ
ったのではないかと推測しています。日本においても多様性のある働き方が推
進されることにより、現在の就業環境の改善にも期待が寄せられたのではない
でしょうか。

 ただし、この頃はまだ政府も副業・兼業について具体的な推奨はしていませ
んでしたので、起業を視野に入れていた人たちも、一旦は社内の就業環境がど
のように変わるか様子見をしたのかもしれません。

 そして、一番の注目すべき変化は、令和3年の設立登記件数です。約9万
5,000件の設立登記があり前年比約1万件の増加がありました。ここまで
急激な設立登記の件数増加があったのは、会社法施行後の数年間以来のようで
す。

 コロナ禍の影響で、仕事を見つめ直す機会が増えると共に、政府が積極的に
副業・兼業の後押しをはじめたことが影響したと推測しています。自分の人生
は自分で決めようという「自主的なキャリア選択」をする人が増えて、もとも
と高かったキャリアへの関心が、単に関心だけではなく、具体的な行動へと変
化したのかもしれません。

 ちなみに昨年も同じ数くらいの設立登記件数があったようですので、しばら
くは年間9万5,000件くらいの株式会社が誕生することになるかと予想し
ています。

 以前書いたことと重複しますが、今、日本は起業ブームで、その背景には
「キャリア」は大きく影響していると推測しています。この推測がまったくの
的外れでなければ、キャリアというキーワードも、休眠放置会社について考え
る場合の重要なポイントのひとつになるのではないか?と考えています。
                              (つづく)


2023.05.30(火)【日司連 副会長 立候補】(東京・鈴木龍介)

 現在、私は日本司法書士会連合会(日司連)の副会長を務めておりますが、
来る6月23日の定時総会をもって任期満了となります。次期どうするかにつ
いて、関係者とも相談した結果、ふたたび日司連の副会長に立候補することと
いたしました。

 この2年間の経験をもとに、取捨選択と優先順位を見極め、日司連として対
応すべき以下の課題を中心に、しっかりと歩みを進めていきたいと思っていま
す。

 1.デジタル化の推進
 コロナ禍が収束しつつある今、我が国全体として真のデジタル化が求められ
ています。そのような社会のニーズをとらえ、司法書士の具体的な業務のDX
(デジタルトランスフォーメーション)を主導し、支援することは日司連の責
務であると考えています。

 2.法改正の対応
 本年4月に原則施行された改正民法・不動産登記法や、来年にも施行が予定
されている改正犯罪収益移転防止法など、国民生活においても重要な改正が目
白押しです。そのような法改正を国民に対してナビゲートするのは司法書士の
重要な役割であり、それを業界全体の動きとして展開することは日司連の責務
であると考えています。

 3.連携・協働の強化
 司法書士を取り巻く環境も激変する中、政界・官界・財界・学会・他士業と
連携し、協働することは、制度を守り、発展させるために不可欠といえます。
そのような連携・協働を通して司法書士としてのあらたな展望を見出し、それ
をリードし、道すじをつけることは日司連の責務であると考えています。

 ちなみに副会長の立候補枠の定員は3人でして、投票日(電子投票)は6月
15日で、翌日には結果が判明します。

 以下は私の所信、経歴になりますので、ご高覧いただけますと幸いです。

  所信ページ
https://www.suzukijimusho.com/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e5%8f%b8%e6%b3%95%e6%9b%b8%e5%a3%ab%e4%bc%9a%e9%80%a3%e5%90%88%e4%bc%9a%e3%80%80%e5%89%af%e4%bc%9a%e9%95%b7%e7%b%8b%e5%80%99%e8%a3%9c/
 (短縮 https://is.gd/sCSRj8 )

  所信動画
 https://www.youtube.com/@01-rc4tz
 関係各位のご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。


2023.05.29(月)【現実社会の力関係】(金子登志雄)

 広島のG7サミットに米国大統領のバイデン氏だけは正規のルートである
広島空港に降りずに、米軍岩国基地経由でした。入国チェックもなされなか
ったわけで、日本を独立国とみていない証拠です。原爆記念館にも核のボタ
ンが入ったカバンを持ち込みましたが、原爆被災者に対する冒涜としか思え
ませんでした。

 これを黙って受け入れた広島出身の岸田政権もマスコミも情けないもので
すが、これが米国と日本の力関係の現実です。米国にちょっとでも逆らうと
田中政権や鳩山政権のように米国や日本の愚かなマスコミに潰され長期政権
になれないからです。

 しかし、こういう問題であれば、同盟国に敬意を示すように強く主張して
も、政権潰しまではなされないでしょうし、米国大使館も日本国民を刺激し
ないようにと本国に要請するはずです。また、日本国民は弱腰の岸田政権に
対しても怒るべきですが、このサミットで岸田政権の支持率が逆にアップし
ました。これもテレビに登場する回数が増えると頑張っているようにみえて
支持してしまう日本社会の現実があります。

 力関係といえば、合併や減資の催告先リストでも、これが如実に表れます。
会社のほうが債権者である銀行や取引先よりも優越的地位にあれば、異議を
出される心配も無効の訴えを出される心配もないため、催告先は少なくなり、
そうでない場合は安全のため多くなります。

 登記所に相談すると、債権者に限定はないので全ての債権者に催告しなけ
ればならないと教科書的な回答がなされますが、債権者には、①親会社など
催告側の債権者、②賃料や光熱費などの定期的に生じる債権者(従業員も給
与債権者です)、③買掛金などの取引上の債権者(下請けかどうかの差で、
この内部にも力関係があります)、④銀行など金銭消費貸借上の債権者など
さまざま存在しますので、どこかで線引きしないとキリがありません。

 この線引きが面倒なため、債権者が多い会社は中小企業であっても公告方
法を官報から日刊工業新聞に臨時に変更したりする例が増えました。余計な
費用がかかりますが、これが最も安全です。

 つい、米国株式会社は、どこかを併合する際も、蔑んでいる大口債権者の
日本には催告してこないだろうなと思ってしまいました。

 横道にそれますが、「サンドマン作戦」ってご存じですか。中東オペック
が石油取引でドルを使わないことにするなど、グローバルサウス諸国が一斉
に海外取引でドル決済をやめることです。一斉になされるとは思えませんが、
ドルが世界支配の武器になっているので、いまそれを見直そうという動きが
急速に進んでいます。人も国も現実を直視せず横柄では嫌われてしまうわけ
で、これはバイデン米国の自業自得です。

 ただ米国内も一枚岩ではなく、好戦的で非現実的なバイデン戦略に対する
批判も大きく米国の活力を感じさせてくれますが、一億総〇〇で進む日本は、
保険もかけずに丁半ばくちで国の行く末をかけているようにしか思えません。
これも我々が選挙で選んだのですから、我々国民の自業自得でしょうか。


2023.05.26(金)【司法書士業の多様化ほか】(金子登志雄)

 昨日は、当事務所に関西地方の企業法務中心司法書士法人の代表の方と、そ
こに勤務する私によく質問してくる若手司法書士のお二人が訪問してください
ました。メールでは連絡しあっていますが、直接お会いしたのは初めてであり、
虎ノ門に事務所を移転して1か月、最初のお客様でした。

 ここ数年、都市部では、企業法務専門を標榜する司法書士法人が急増しまし
た。多数の職員の生活を維持するには、採算のよい企業法務を重視せざるをえ
ないのでしょう。また、個人開業の司法書士も、不動産専門、企業法務専門、
成年後見中心・・・などと、ますます専門分化(多様化)が進みました。

 都市部限定ですが、「司法書士=街の法律家」から「企業社会の手続法務の
担い手」が抜け出した感じです。子会社を多数抱える大企業であれば頻繁なグ
ループ再編、IPOを目指す新興企業であれば度重なる資金調達の増資や新株
予約権の発行、種類株式の発行などがありますし、会計監査人設置会社になれ
ば毎年その変更登記が必要ですから、市場規模は大きいといえます。

 司法書士業の多様化で思い出しましたが、先般の広島G7サミットについて
はがっかりした方が少なくないようです。まるで反ロシア・アピールの会議で
あり、平和の町広島に相応しくない好戦的な会合だったからです。

 西側G7の白人国は、LGBTなど個人の多様性(個性)については寛大で
人権重視の尊敬すべき先進国ですが、国の多様性については実に偏狭で、他国
を独裁国家として非難し、成敗し、自分の色に染めようと、その国の戦闘員で
ない国民をも容赦なく空爆で殺戮する傾向にあり、この点では野蛮国家です。
他国民の生命、身体や財産に対する保護の意識は希薄のようです。イラクなど
いまだに破壊されたままで復興していません。

 なぜ国々の多様性を認めないのでしょうか。一神教のキリスト教の十字軍思
考でしょうか。それとも、よくいわれるように、戦争がないと軍需産業の在庫
が陳腐化し儲からないから在庫一掃の戦争が不可欠の産業構造になっているせ
いでしょうか。

 いずれにせよ、唯一のアジアの非白人国の日本はG7の白人国の好戦的な世
界観に巻き込まれないことを祈るばかりですが、もう遅いでしょうか。新たな
戦前の社会環境になってまいりました。

(追記)
 上記を記載後に、久々に遠藤誉さんの記事を読みました。日本の報道や専門
家のコメントが憶測や希望的観測に基づくフェイクに近いことがよく分かる内
容でした。土日に、いくつか目を通してみてください。

  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare


2023.05.25(木)【ツイッターの功罪】(金子登志雄)

 最近、親しい司法書士がツイッターをはじめました。たちまち、知り合いの
司法書士の間にそれが伝わりました。私も広めた一人ですが、まるでねずみ算
式の伝染力でした。トランプさんがツイッターで支持者を増やしたことからも
お分かりのとおり、その発信力というか伝染力というかすごいものがあります。
まさに、SNSの時代です。

 私は、他人のツイッターをよくみますが、自分ではしていません。もともと
そういう方面の知識はありませんし、つぶやく内容もありません。また、それ
以前に、私の世代は目立つことが大の苦手です。そういうふうに育てられたの
です。私の顔写真がインターネット上に登場しないのも、何か恥ずかしいため、
意識的に避けているためです。

 つい先日、水道橋博士が他人のツイッターをリツイートしただけなのに、著
名人の発信力がアダとなり、維新の松井氏に名誉棄損の損害賠償請求裁判を起
こされ負けてしまいました。かつては、著名なジャーナリストだった岩上安身
さんも同じ目にあいました。訴えたのは橋下徹氏でした。スラップ訴訟じゃな
いかという意見もあります。

 橋下さんや維新の関係者、また旧NHK党は、新しい時代の宣伝の武器であ
るSNSの影響力や利用法を熟知しているので、急成長したのでしょう。立憲
民主党はこの点で最も下手であるのが凋落の一因だと思っています。連合など
関係先にどう評価されるかという自意識過剰の政党は今の時代は取り残される
のみです。

 ツイッターではありませんが、私が上場会社の常勤役員の頃は、ちょっとし
たことで私の言動がヤフーの株式掲示板で取り上げられ、褒められたり叩かれ
たりしましたので、私はSNSへの警戒心が強くなりました。著書が増え、そ
れなりに名前が知られるようになった司法書士としての私も、下手をしたら、
司法書士会や出版社に迷惑がかかると思い、目立たないようにしていますが、
私も新時代に着いて行けない自意識過剰なのかもしれません。

 ということで、これからの若い方には広報宣伝の強力な武器であるSNSの
活用を私もお勧めしますが、その一方で、その文章力や知識・能力・人柄まで
ウオッチされていますので、それを覚悟のうえで頑張ってくださいというしか
ありません。


2023.05.24(水)【設立状況再び①】(神奈川・酒井恒雄)

 以前に、株式会社の設立登記件数は、前年比でみると約1,000件の「増」
・「減」を繰り返していると書きました。こうした変化は、株式会社の設立件
数が社会環境に左右される傾向にあると見ることもできるかと思います。

 そこで、あくまで私的な推測に過ぎない部分もありますが、株式会社設立の
増減の背景について観察をしてみたいと思います。

 登記統計によりますと、まずは平成18年に前年比約5万件の増加がありま
した。この増加の原因は容易に想像がつくと思いますが、会社法施行により株
式会社設立の諸々要件が緩和され、起業のハードルが下がったためであると推
測されます。

 平成20年には、設立登記件数が一旦減少しました。これは会社法施行によ
る設立ラッシュが落ち着きを見せたと推測するのが素直かもしれません。ただ
し、ちょうどこの頃は、世の中はリーマンショックの影響で混乱が生じていた
時期でもあります。会社経営に危機感を覚えて、独立起業に躊躇する人も少な
くなかったと思いますので、それが新規設立の数字にあらわれた可能性もあり
ます。

 ちなみに、平成21年頃には、国内で空前のドラッカーブームが到来しまし
た。本屋に行くと、どこでもドラッカーの本が平積みになっていたのを覚えて
います。(「もしドラ」という言葉も流行ったりしました。)会社が生き残る
ためには、健全な会社組織の構築が必要だという認識が広まっていた時期でも
あったかと思います。

 次に、平成26年には前年比で約5,000件の増加があったようです。こ
の年は、消費税率が5%から8%に引き上げとなった年ですので、税金対策的
な視点で設立件数が増えたのではないかと推測しています。(つづく)


2023.05.23(火)【東京司法書士会 令和5年定時総会】
                          (東京・鈴木龍介)

 去る5月20日(土)午後1時から東京司法書士会(東京会)の令和5年定
時総会(本総会)」が新宿住友ビル・住友ホールで開催され、私も本総会の組
織員として出席いたしました。

 東京会の総会の場合、東京会所属の司法書士の中から所属する支部ごとで選
任された者が組織員となる代議員制を採用しています。

 本総会は、組織員総数447名であるところ委任状を含む402名が出席と
いうことでしたが、会場には250名程度の皆さんが参加されていました。

 まず、議事に入る前に日本司法書士会連合会(日司連)会長ほかの来賓から
の挨拶と、東京法務局表彰といったセレモニーが行われた後、2件の報告を経
て、17件の議案の審議がなされ、すべての議案が異議なく可決承認されまし
た。

 とりわけ、改正犯罪収益移転防止法に対応するための会則改正が無事、承認
され、本件を日司連で担当している身としては、安堵しました。

 最後に恒例の万歳三唱で、午後5時45分に盛会のうち閉会となりました。
執行部、事務局、組織員ほか、関係者のみなさん、お疲れさまでした。


2023.05.22(月)【株式の割当比率と剰余金の配当比率】(金子登志雄)

 最近、なぜか配当優先株式の質問が続いています。ほとんどが、1株10円
の優先配当額と定めた場合に、業績が悪いので、今期は1株8円にすることが
できるかなどといったものです。

 結論からいうと不足した2円につき翌年度に繰り越すなどの累積的定めがあ
るごとく肯定されると考えていますが、上場会社の例では、そもそも10円も
配当できないような会社は配当優先株式を定めていません。

 したがって、未公開中小企業にあっては、優先配当額を先取りする配当優先
株式ではなく、「1株当たりA種株式は普通株式の1.2倍の剰余金の配当を
受けることができる」などといった定めのほうが適しています。

 それでも、質問者は、1.2倍という確定額でなく、事業年度の業績次第で、
やむを得ず普通株式と同額配当にしたいということも、1.1倍にしたい場合
もあろうから、さらに融通の利く方法はないかと思うようです。

 そこで、種類株式であれば種類ごとに異なる定めも可能なはずだから、定款
で「①剰余金の配当については、株主総会の決議で、普通株式とA種株式につ
き、それぞれ異なる配当額を定めることができる。②前項の決定にあたっては、
配当額で不利益を受ける種類株式の種類株主総会の承認を要する」としたら、
便利ではないかと考えました。

 これなら、普通株式が基準にならず、A種の配当額が普通株式より少ない場
合も適用範囲になり、相対的内容とはいえ融通が利きますが、ここで障害が生
じました。この種類株主総会は法定の種類株主総会ではなく、種類株式間の格
差を是正する322条の列挙事由に掲載されていないためです。

 そこで、改めて、種類株式相互間の平等を考えた結果、剰余金の配当とか、
議決権などの差については株式の内容として定め、株式分割や募集株式の発行、
合併による割当てなど種類株式数の増加については322条で格差の是正を定
めていることに気づきました。

 322条の事由には限定列挙説と例示列挙説がありますが、株式の割当ても
剰余金配当の割当ても大差がないとはいえ、後者であっても、剰余金の配当に
ついては株式の内容にしないといけないでしょう。

 とすると、剰余金の配当額に差を設けることだけで足りるのか、1.2倍と
か確定した差にしないといけないのか、普通株式を基準にそれ以上多い額ある
いは少ない額のどちらかにしなければならないのか、また、定款の定めによる
種類株主総会では、あたかも拒否権条項として扱うのかなど、検討課題が多す
ぎました。

 最終的には、面倒になり検討するのをやめましたが、「種類株式であれば種
類ごとに異なる定めも可能なはず」というのは、株式の割当比率などにしか通
じず、剰余金の割当額や配当の割当比率には通じないことを明白に意識できた
ことで無駄な苦労ではありませんでした。


2023.05.19(金)【補正通知への対応】(金子登志雄)

 軽微な補正の場合は、電話もかかってこないことがあります。単純に「登記
の事由に『代表取締役の変更』が漏れている」などの指摘では、単に追記して
応じればよいだけです。

 この時、皆さんは、連絡事項に「登記の事由に、〇〇を追記しました」とか
記載しますか。私はケースバイケースです。それをしないと補正箇所がすぐに
伝わるのかが不明のためです。

 次に「株主リストに株主は2名とあるが、株主総会議事録からすると明らか
に1名の間違いないので差替えてくれ」などいという添付書面の差替えの補正
の場合は、どうしていらっしゃいますか。電話がない場合のことです。

 押印が必要な時代には、こちらから電話し「明らかな誤記ですから無視する
か、そちらで訂正していただけませんか」などと依頼したこともありましたが、
いまは、押印のない書面を作成し差替えれば済むため、だいぶ楽になりました。
この際に補正通知に対して「ただちに差替えます」とか返信するのか、返信せ
ずに黙って単に差替書面を送付するだけでよいのか、つい迷ってしまいます。

 他の司法書士数人に聞いてみましたら、私を含めて返信しない人が多いよう
ですが、前回は返信してみました。登記書類を郵送で顧客から受領しても「届
きました」と連絡しないと、「先日、送付したものは無事に着いているでしょ
うか」などのメールが来るので、登記所でも補正通知をちゃんとみてくれただ
ろうかなどと不安に思うかもしれないから、礼儀として返信したほうがよいの
かといまだ迷い中です。

 これに関連して「原本証明文が漏れている」という補正通知には、「こんな
ことでわざわざ登記所に行くのは辛いので何とかなりませんか」と電話したら、
「原本に相違ない。司法書士〇〇」と書いた紙を送ってくれればよい、いまは
押印も不要だからといわれました。

 なるほどです。こういう「ノウハウ?」は補正を経験してみないと分からな
いものですね。


2023.05.18(木)【労働者協同組合の理事会の決議・報告の省略】
                          
(仙台・立花宏)

 久しぶりに、労働者協同組合の話題です。厚生労働省のHPをみたところ、
5月1日時点の設立状況は、合計39法人(新規設立30、組織変更9)のよ
うで、まだまだ、利用数は進んでないようです。急増するような法人類型では
ないと思いますが、個人的には、この法人制度が社会認知されていけば、徐々
に利用が進んでいくだろうと思っています。その時に備えて、勉強を進めてい
ます。

 さて、今日は、労働者協同組合の理事会の関係です。労働者協同組合には、
必ず理事会という機関が置かれます。理事全員が構成員であり、監事が設置さ
れる場合は監事も出席権限・義務があります。しかし、組合員が少数(20人
以下)の場合には、監事を置かないことができ、この場合には、理事以外の組
合員で組合員監査会という組織を構成します。組合員監査会のメンバー(監査
会員)は、理事会に出席する権限があります。

 ところで、理事会は会議体ですから、構成員が実際に集まって、議論をして
様々なことを決定するのが原則です。しかし、理事が目的事項を提案した場合
において、提案につき、議決に加わることができる理事の全員が書面等で同意
の意思表示をしたときは、理事会の決議があったものとみなす旨を定款に定め
ることができます(労働者協同組合法40条4項)。ただし、監事が当該提案
について異議を述べた場合は、決議があったものとみなすことはできません。
決議の省略、いわゆる、みなし決議の制度です。監事を置かず、組合員監査会
が置かれた場合は、この監事の部分は、組合員監査会と読替えることになりま
す(労働者協同組合法57条)。

 そして、理事又は監事が理事及び監事の全員に対して理事会に報告すべき事
項を通知したときは、当該事項を理事会へ報告することを要しないものとされ
ています(労働者協同組合法40条5項)。いわゆる、報告の省略です。

 ここで悩ましいと思ったのは、決議の省略の場合と違い、労働者協同組合法
には、監事の部分を、組合員監査会や監査会員と読替える規定がないことです。
読替規定がないので、組合員監査会、あるいは監査会員には通知する必要がな
いのか、それとも、組合員監査会設置組合では、報告の省略の制度が利用でき
ないのか。

 個人的には、組合員監査会設置組合でも決議の省略ができますから、報告の
省略も当然に可能なように思えました。この点を、厚生労働省に問い合わせて
みたところ、やはり、可能だという回答でした。労働者協同組合法54条で
383条2項及び3項(監査役による理事会の招集の請求及び招集)を組合員
監査会について準用しているため、報告の内容により必要と考える場合は、組
合員監査会が理事会の招集の請求等をすることになるということのようです。
ただし、組合員監査会を置く労働者協同組合は、組合員が少数であることから、
理事会は省略せず、議論する機会を設けることが望ましい、という回答でした。

 つまり、決議の省略も報告の省略も、理事会の目的事項の提案や報告事項の
通知は、当然に構成員全員に対して行われることを前提に規定されているとい
うことなのだろうと思いました。

 労働者協同組合の利用が進むと、実務でこうした疑問が出てくるだろうと思
います。頭の中で、実務を想定しながら、そうした相談にも対応できるよう、
準備をしていこうと思っています。


2023.05.17(水)【自主的な行動を起こしてもらうには?】
                        
(神奈川・酒井恒雄)

 具体的に休眠放置会社を減少させるための対応策を考えてみますと、結構色
々なことが頭に浮かんできます。会社の種類や規模、そこに関わる人達の属性
など、会社の数だけ対応策があるといってもいいかもしれません。

 しかし、そうなりますと、様々なアイデアがある一方で、結果的に、「まぁ、
それぞれやりようはあるよね。」という煮え切らない答えに落ち着いてしまう
おそれもあります。

 それに、解散手続きをする場合、その決定は株主や社員等の意思に委ねられ
ることになるでしょうから、会社の外部の者があれこれ口出しをして、解散手
続きを行うよう促すことは困難にも思えます。

 しかし、よく考えてみますと、休眠放置会社の殆どは、事業活動を停止して
も、その影響を受ける利害関係人がいない会社のはずです。会社の内部や、会
社の外部に関する様々な調整に頭を悩ます状況にはないはずなので、実質的に
は経営者の意思次第ということになりそうです。そうなりますと、何が経営者
の「自主的な行動につながる動機」になるか?ということを考えてみることが、
一つの答えにたどり着ける足掛かりになるかと思います。

 自主的な行動につながる動機となり得るには、経営者に響く何かが必要です。
果たして、どんなことが響くでしょうか・・・。また、休眠放置会社となる会
社の多くは、「事業が軌道に乗る前に事業活動を停止せざるを得なかった会社」
であることが少なくないと推測しています。つまり、成功体験がないまま、事
業から撤退せざるを得なくなったケースが多いと思いますので、そういったこ
とも視点に入れる必要があるかと思います。(つづく)


2023.05.16(火)【副業・兼業】(東京・鈴木龍介)

 今回は、「働き方改革」の一環として、注目を集めている「副業・兼業」に
ついて取り上げたいと思います。

 副業・兼業とは、2つ以上の仕事を掛け持つことですが、「副業」は2つ以
上の仕事に主従の関係があり、「兼業」は2つ以上の仕事に主従の関係はない
ものと整理できます。

 副業・兼業には、企業に雇用されたかたちで行うもの、自ら起業して事業主
として行うもの、請負や委任といったかたちで行うものなど、さまざまな形態
があります。

 副業・兼業を行うことの労働者側のメリットとしては、現職を辞めずに別の
仕事に就くというなかで、あらたなスキルや経験をもとにキャリア形成につな
げることができたり、所得の増加も期待できます。デメリットとしては、就業
時間が長くなることによる健康への影響や、それぞれの仕事における競業や秘
密管理の問題があげられます。

 ただし、そもそも副業・兼業ができるかどうかは、現職である企業等の就業
規則や労働契約を確認する必要があります。司法書士事務所などは、そのあた
りはノーケアのような感じがしますが、どうなっているのでしょう?

 一方、企業サイドとしては、労働時間以外の時間をどのように利用するかは
基本的に労働者の自由ですので、副業・兼業を認める方向で検討するのが適当
とされていますし、副業・兼業による労働者のスキルアップは現職へも好影響
が期待できそうです。ただし、先ほどのデメリットを踏まえ、労務管理を適切
に行うために届出制など副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設
けておくことが望ましいとされています。

 さてさて、国としては副業・兼業を促進する方針のようですが、みなさんは
どうお考えでしょう(やるorやらない/認めるor認めない)?

~参考~
 厚生労働省:副業・兼業
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html


2023.05.15(月)【私は16周年】(金子登志雄)

 京都の内藤司法書士は「ブログ開設19年」で、新保さゆりさんは「14周
年」だとか。すごいなと思って、この徒然はどうかとみましたら、お二人の真
ん中の16周年でした(ブログ形式ではありませんが)。

 ESG法務研究会として会員の意見表明の場(宣伝の場)にするつもりでし
たが、原稿を寄せる方が少なく、結局、金子個人意見表明の場みたいな状態が
長く続いてしまいましたが、いまは、鈴木さん、酒井さんが毎週原稿を寄せて
協力してくださいますし、立花さんも2週間に1度程度のペース、古山さんも
たまに協力してくださいますので、だいぶ楽になっています。

 ブログを続けるのは大変ですが、最近はツイッターとかユーチューブのほう
が司法書士にとっては手っ取り早いようです。とくに、ユーチューブは収入に
もなるようで、ユーチューバーとして名をあげている司法書士もいます。

 世代の差でしょうか。最年長の私はブログを使えませんし、本徒然も弟が管
理しています。内藤さんや新保さんがツイッターやユーチューブに乗り出さな
いのも画像よりも文章のブログ世代のせいかもしれません。

 16周年もよく続いたものですが、新聞の漫画(昔のサザエさんとか)から
比べればずっと楽ですから、今後も、勉強不足で知識のない私は、興味がある
「ものの見方・考え方・捉え方」を中心に、発信して行きましょう。

 過去徒然の2012年の本欄では、次のようなことを書いていました。
----------------------------------------------------------------------- 
 皆様も、ぜひ、さまざまな視点からみる習慣をつけてください。想像力だけ
ですから、お金は一切かかりません。
 例えば、次のような裏側から視点も、たまにはいかがですか。
 1.忠臣蔵………真夜中に徒党を組み無関係な人にも残虐なことをした集団
 2.水戸黄門……最後には権威をかさにして威張り出すおじいちゃん
 3.桃太郎………異国に攻め入り、財産を奪った乱暴者
 4.牛若丸………京の五条の橋の上で弁慶おじさんに遊んでもらった幼児
 5.金太郎………動物しか遊び相手のいない孤独な子供
------------------------------------------------------------------------

 誠に勝手なことを書いているものですが、金太郎は、威張らない、残虐行為
をしない、他国に侵略しない点で、一番の平和主義者であり私の理想です。わ
が愛する日本国にも、あの好戦的な桃太郎国家に煽られて、東ヨーロッパの次
は東アジアの鬼退治をしようと戦争を煽るのではなく、平和で穏やかな金太郎
国家を維持し続けてほしいと思っています。


2023.05.12(金)【定款で定めた代表者の地位】(金子登志雄)

 党の規約で代表者はAと定めた某政党の内紛をヒントに、会社の場合はどう
かと次の問題を作ってみました。

 Q1:定款本文に「第X条/当会社の代表取締役はAとする」と定めた株式
会社、あるいは「第Y条/当会社の代表社員はBとする」と定めた合同会社に
おいて、ABを解任することができますか。

 Q2:設立定款の附則に「当会社の最初の代表取締役はAとする」と定めた
場合はいかがですか。

 Q3:何かのついでに、定款の附則に、例えば「当会社の取締役会設置後の
代表取締役はAとする」、あるいは「期首である令和5年6月1日からの代表
取締役はAとする」と定めた場合はいかがですか。

 定款の本文も附則も効果としては同じです。しばしば、定款で代表者を定め
た場合は定款を変更しない限り他の者に変更することはできないと説明されて
いますが、本文で定めようと附則で定めようと、その定めた趣旨あるいは意味
によって効果を考えなければなりません。

 Q1は、憲法で天皇を定めたのと同様に、原則として(定款に任期があるな
どを除く)未来永劫、当社の代表者は誰それと定めたのと同じですから、辞任
はできても解任はできず、定款を変更しない限り、その地位は安泰です。

 これに対してQ2やQ3は、「最初の」とか条件を設定しているので、限定
的なものであり、いわば株主総会や取締役会の選定の代用として定款で選定し
ただけですから、適正な手続で解任も可能です。

 代表者ではありませんが、先般、取締役の解任登記を経験しました。依頼者
に登記記録に「解任」とでると、内紛があったと誤解されかねませんがよいの
ですかと尋ねたところ、本人も納得づくだというので、そのまま申請しました。
というのは、解任は無色透明用語であり、不祥事があったので辞めさせたとい
う趣旨はないからです。取締役のリストラだったのでしょうか。


2023.05.11(木)【胡蝶蘭】(島根・根来川弘充)

 私は、昨年1月に事務所を移転しました。その際、お祝いに胡蝶蘭の鉢植え
を頂戴しました。

 自分がお祝いに贈ることはあったのですが、頂戴したことがなく、ただ、高
価はお花というイメージしかありませんでした。

 しかし、実際、頂戴すると一月前後、観賞することができ、大変リーズナブ
ルなお花であることに気づかされました。

 お花が散った後、是非、自分で咲かせてみたいと思い、YouTubeや、
検索サイトで調べて、鉢替えに挑戦してみました。

 私は園芸をしたことが、まったくございません。園芸好きの母からは、「胡
蝶蘭を育てるのはとてもむずかしい。」(『やめときなさい』と受け取れる口
調で)と言われました。

 初挑戦なので、失敗して当然と思っていたのですが、3月ごろから芽が伸び
はじめ、いまでは、蕾がいくつかでてきております。支柱も立てていなかった
ので、少し不格好なのですが、無事に咲いてほしいと思います。


2023.05.10(水)【休眠届の制度廃止?】(神奈川・酒井恒雄)

 休眠放置会社を生み出さないようにするためには、どうしたらよいでしょう
か? 手っ取り早いのは休眠届の制度を無くしてしまう方法があろうかと思い
ます。とはいえ、必ずしも「休眠届=会社の放置」になるとは限りませんので、
制度の廃止は難しそうです。

 では、休眠届を提出しても法人住民税等の請求は止まらない運用にしたらど
うでしょうか?

 本来であれば、休眠中でも法人住民税等の支払い義務はあるようですから、
全額とは言わないまでも、半額や3分の1の金額にあたる法人住民税等の支払
いは免除されないという運用にしてはどうでしょうか?

 あるいは、課税が停止するのは休眠届提出後3年間に限るとか・・・。思い
つく案はありますけど、制度自体になんらかの変更を求めるというのも、現実
的ではないように思います。

 もっとも、今後はますます休眠放置会社や職権解散の対象となる会社が増え
るでしょうから、いずれは何らかの対応策が講じられる可能性もあるかもしれ
ません。

 ところで、いわゆる職権解散についてですが、法務省のホームページには、
休眠会社の整理を行う理由が記載されています。具体的には、事業活動をして
いない会社が放置されることで、「登記制度の信頼性が低下する」「休眠会社
が悪用される」といった説明がされています。

 休眠放置会社を減少させるためには、こうした情報の周知活動をもっと積極
的に行うという方法もありそうです。ほかにも、何かできそうなことないでし
ょうか? いざ考えてみると、結構いろいろなことが頭に浮かんできたりしま
す。(つづく)


2023.05.09(火)【消費税とは?~その2~】(東京・鈴木龍介)

 前回に続き「消費税」ですが、計算方法と納税を取り上げたいと思います。

 消費税(地方消費税を含む。)の納付税額の基本的な算式は、売上(課税売
上)に対する消費税額から仕入(課税仕入)に対する消費税額を控除した額が
納税額となります。

 シンプルな取引を例にしますと、文具店が消費税込みで110円で鉛筆を販
売した場合、うち10%である10円が消費税となりますが、その鉛筆を55
円で仕入れをしたとすると、うち10%である5円が消費税となり、その差額
(10円-5円)である5円を事業者である文具店が消費税として納付するこ
とになります。

 これが、いわゆる「一般課税」(または「原則課税」)といわれるものです。
ただし、消費税に関する取引には、「課税取引」のほか「不課税取引」(たと
えば、給与)、「非課税取引」(たとえば、土地の売買)、「免除取引」(た
とえば、輸出)というものがあり、単純な差し引き計算ですむものだけではあ
りません。

 そのような点を踏まえ、事業年度の1年分の課税売上が5,000万円以下
の事業者については、一般(原則)課税ではなく「簡易課税」という方式を選
択することができます。簡易課税とは、売上(課税売上)に対する消費税額か
ら売上(課税売上)に対する消費税額にみなし仕入率(業種によって40%~
90%)を乗じたものを控除した額を消費税の納付額とするものですから、経
理の事務作業としてはシンプルになります。ただし、一般(原則)課税より簡
易課税の方が必ずしも納税額が少ないとは限りません。なお、簡易課税の適用
を受けるために届出が必要になります。

 消費税の納税は、課税期間――一般的に、個人事業主の場合は毎年1月1日
から12月31日、法人の場合は事業年度――の末日から2か月以内に消費税
・地方消費税の確定申告書を提出し、納付することになります。なお、直前期
に一定の納税額がある場合には所定の中間申告・納付する必要があります。

 消費税については、課税事業者と免税事業者という区分があります。免税事
業者とは、政策的に消費税の納税が免除される事業者です。ザックリいうと、
前々期の上半期の売上が1,000万円以下の場合、免税事業者となります。
ですから、通常、新規に設立した会社は免税事業者ということになります。た
だし、課税仕入が多いケースなど、免税事業者ではなく課税事業者となる方が
有利になることがあります。そのようなケースでは、届出によって課税事業者
を選択することもできます。

 免税事業者の場合、消費税の納税義務がありません。一方、売上に消費税を
のせることは認められています。つまり、その差額が、いわゆる「益税」とい
うことになってしまうわけですが、それにメスを入れるのが「インボイス」制
度なのです。

~参考:国税庁~
■消費税のあらまし
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/01.htm


2023.05.08(月)【政治はケンカだ! 明石市長の12年】(金子登志雄)

 政治に少しでも関心のある国民から、いま最も日本の総理大臣にしたい男と
思われている泉房穂(明石市長)氏へのインタビュー本が発売早々にアマゾン
でベストセラーになりました。私も、どういう人かを知るため、この連休に読
みました。
        https://is.gd/MctSSN

 父親は小卒、母親は中卒の極貧の漁師の子として生まれ、弟は障碍者という
悲惨な環境に育ったため、弟に冷たい明石市を憎み、市長になって住みよい街
作りをすると決意したのが10歳で、以後、闘いの連続のすごい人生でした。

 無党派の一匹狼で市長選に立候補し勝利したためか、市長になっても市役所
職員や議会の抵抗で四面楚歌状態でしたが、妥協するどころか、本書の53頁
では、『私、四字熟語でいちばん好きなのが「四面楚歌」。四面を敵に囲まれ
てしまつても、まだ空と地下が残つてる。そういう状況、ホンマに好き。「ま
だまだ行けるとこあるぞ」と、体中からエネルギーが湧いてくる』と述べてい
ました。恐れいりましたです。

 ぜひ、皆様にもお勧めしますが、勧める理由は、勇気をくれるその生き様の
ことよりも、日本社会の構造的な歪み、制度疲労がよく分かることと、その処
方箋(日本社会のバージョンアップ)についても触れているからです。
 
 例えば少子化対策でも、子供に給付金を渡すのだから親の年収は関係ない、
親に渡したり、業界団体経由にすると中抜きされ、政治家が関与し利権がはび
こるなどと、常に末端の当事者主義に立脚している点は、経営にも役立ちます。
明石市は日本で最も成功した市で住みやすい市の筆頭にしたのは、この泉氏で
すから実に説得力がありました。目次は以下です。

 第1章 闘いの日々
 第2章 議会論
 第3章 政党論
 第4章 役所論
 第5章 宗教・業界団体論
 第6章 マスコミ論
 第7章 リーダーシップ論
 
 末端の公務員に冷たい大阪維新の橋下徹氏とは対極の人物と思っていました
が、何と司法修習生の同期だそうです(泉氏は東大法学部卒の弁護士)。旧態
依然とした既成秩序の破壊者という点では共通点があります。

 明石市役所には雇用弁護士が10人程度いるようです。この人達が、不当な
政治的圧力の防波堤になっているのかもしれないと思い、よい方法だなと思い
ました。市営住宅の滞納もなくなったようです。市政での「法の支配」の徹底
ですが、こういう面では我々も行政に役立つ人材かなと思いました。

(追記)
 下記の紹介文も参考にしてください。ここに「おそらく全国でも、いまの明
石市民ほど、自分の1票の持つ力を信じている市民はいないのではないでしょ
うか。あの日私たちは、私たちの手で、私たちの未来を変えたのです」とあり
ましたが、私も日本の未来をよくしたい。
        https://is.gd/UzQ1jE


2023.05.02(火)【消費税とは?~その1~】(東京・鈴木龍介)

 以前、「インボイス」を取り上げましたが、その元となる「消費税」につい
て整理しておきたいと思います。

 消費税とは、日本国内で行われる、ほとんどの物の販売やサービスの提供と
いった取引にかかる間接税(=納める人と負担する人が異なる税金/⇔直接税
(ex.所得税))です。

 物の販売等の対価として消費者が支払う代金の中に消費税相当額が含まれて
いるので、消費者に広く、公平に課税できるのが特徴です。原則として、消費
税を負担するのは消費者ですが、納税するのは物の販売等をする事業者です。

 消費税は世界160か国で採用されている税制ですが(類似するものを含み、
付加価値税などと呼ばれています。)、日本では昭和63(1988)年に消費税
法が成立し、平成元(1989)年4月から3%の消費税が導入されました。平成
9(1997)年には5%、平成26(2014)年には8%と段階的に税率が引き上
げられ、令和元(2019)年からは標準税率が10%となっています。

 消費税には、標準税率と軽減税率というものがあります。軽減税率とは政策
的に負担軽減を図るというもので食料等が対象となっていて、現行では標準税
率が10%のところ8%となっています。また、国に納付する消費税と都道府
県に納付する地方消費税とがあり、現行の標準税率では前者が7.8%、後者
が2.2%です。くわえて、一般消費税と個別消費税というものがあり、個別
消費税とは、特定の物の販売等に課されるもので、酒(酒税)やたばこ(たば
こ税)などが対象となります。

 少々長くなりそうなので、消費税の計算と納税については、次回にしたいと
思います。

~参考:国税庁~
■消費税のあらまし
  https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/aramashi/01.htm


2023.05.01(月)【2種類の代表取締役の予選】(金子登志雄)

 代表取締役の予選につき取締役会で2か月以上前に予選したが、登記が無事
に通るか心配だという相談を受けました。確かに、ものの本やインターネット
検索によると、予選期間は1か月を超えると受理されるか不明だとあります。

 しかし、私は某上場会社で2月17日の取締役会で4月1日付の代表取締役
増員を決議したので、その登記を4月3日に申請しましたが、予選期間が1か
月を超えることには全く無頓着でした。受理されることに何の疑いも持ってい
なかったからです。東京法務局でしたが、案の定、無事に終わりました。

 勘がよい方はお気づきでしょうが、代表取締役の予選問題には2種類があり
ます。すなわち、株主総会を挟んだ予選(取締役としての任期切れを目の前に
した予選)と、上記のように挟まない予選です。

 前者は例えば、次のような事例です(昭41・1・20民事甲第271号民事局長回
答事案に類似した例です)。
----------------------------------------------------------------------
 ① 3月決算で取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社(甲)に
おいて、6月初旬の決算承認取締役会において、きたる6月下旬の定時株主総
会の終結時にABC全員が任期満了し退任するため、ABC全員を重任させる
こととし、同時に、取締役重任を条件に代表取締役としてAを予選。
 ② 3月決算で取締役の任期を3月31日までと定款に定める取締役ABC
(代表取締役A)の取締役会設置会社(乙)において、3月初旬の臨時株主総
会招集の取締役会決議において、3月下旬の臨時株主総会でABC全員を4月
1日付で重任させることを条件に、4月1日付で代表取締役としてAを予選。
----------------------------------------------------------------------

 このような場合は、まだ【次期の取締役にもなっていない者が次期の代表取
締役を予選】しているのですから、だれでも「こんなのいいのか」と思う例で
あるため、予選期間が1か月未満で構成メンバーに変更がないのならいいじゃ
ないかと私も思います(昭和41年先例に同意します)。

 これに対して上記上場会社事例は【現取締役】が1か月以上前の取締役会で
代表取締役を予選しただけです。私は何の問題もないし(さらに私見では構成
メンバーの事後の変更も問わないと思うのですが当局は否定)、登記所で却下
したら経済界で大騒ぎになるでしょう。弁護士会も黙っていないでしょう。

 次のように2か月以上も前の例もあります。もし、皆様が大阪法務局の登記
官だったとしたら、この事例(上場会社で監査等委員会設置会社)につき、こ
んなに予選期間が空いていたらだめだと却下しますか。却下の影響は甚大です
が、株主総会も必要としない会社の内部問題に口出しし、責任とれますか。

  https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230324535691/

 以上のとおり、同じ予選でも株主総会による予選となる取締役の予選と取締
役会による代表取締役の予選の合理的期間が異なるだけでなく、後者でも任期
切れの株主総会を挟んだ予選と任期中の取締役が行う予選とでは、それぞれ判
断に差が生じますので、一律に予選期間は1か月が限度などと主張する狼少年
風の見解には自重を求めたいと思っています。


2023.04.28(金)【印鑑証明書と住所】(金子登志雄)

 新社長は日本人だが中国に在留しているため、日本の印鑑証明書が取得でき
ないため、いわゆるサイン証明書を取得してもらいましたが、これでは住所の
証明にならないため在留証明書も必要だとするのが登記実務です。

 つい先日、この登記申請を担当しましたが、この実務は、外国居住者に明文
もないのに印鑑証明書と本人確認証明書を二重に要求しているのか、それとも、
日本における印鑑証明書は「印鑑及び住所」証明書だからだということでしょ
うか。

 しかし、日本の登記法では住所までの証明を要求していません。住所移転の
際に新住所につき何らの証明も要求されませんし、本人確認証明書も本人の実
在性と就任承諾者と本人確認証明書の人物が同一であることを証明するもので
あって、住所自体を証明するものではありません。

 印鑑証明書も本人の実在性と就任承諾者と印鑑証明書上の人物が同一である
ことを証明するためのものです。その証拠に印鑑証明書にも本人確認証明書に
も有効期限がありません。取締役会設置会社を廃止し各自代表会社に変更し、
代表権付与がなされる際は、住所は本人申告で足り、印鑑証明も本人確認証明
も不要です。

 登記における住所は本店所在場所と同様に申請会社が「ここの住所」のこの
人と申請した場所のことだというのが私見ですが、外国居住者になるとそうで
ない運用には疑問が尽きません。


2023.04.27(木)【職務執行者の選任機関】(仙台・立花宏)

 今さらながらではありますが、取締役会を設置している株式会社が100%
子会社である合同会社を設立し、代表社員(業務執行社員)となる場合、職務
執行者を選任する必要があります。さて、どの機関で選任する必要があるでし
ょうか。

 異なる見解もありますが(注1)、ご存じのとおり、登記実務上、取締役会
の決議で選任する必要があると解釈されています。「職務執行者は、法人たる
代表社員に代わり、持分会社の業務を執行することとなり(会社法第598条)、
職務執行者が職務を行い、又はその職務を懈怠すれば、それは法人たる代表社
員が自ら行ったものと評価されることになるところ、このような個別の委任な
しに包括的な権限を有する者は、会社の支配人に準ずる地位にあるといえる」
(注2)ことが理由だとされています。

 個人的には、異なる見解の立場です。しかし、登記実務は、添付書面として
取締役会議事録を求めており、実務上はそうすることになるでしょう。

 ところで、この株式会社が監査等委員会設置会社であって、取締役の過半数
が社外取締役である、あるいは定款に重要な業務執行の決定(会社法399条
の13第5項各号に掲げる事項を除く。)を取締役に委任できる旨の規定があ
るとします。この会社が、合同会社の設立を決定した取締役会において職務執
行者の選任は代表取締役に委任する旨の決議をしていた場合はどうでしょうか。

 通常の取締役会設置会社であれば、支配人の選任は取締役に委任することが
できないものとされていますので(会社法362条4項3号)、職務執行者も
同様に解釈されているのだろうと思います。しかし、監査当委員会設置会社に
おいては、前記の場合であれば、支配人の選任も取締役に委任することができ
るはずですので(会社法399条の13第5項、第6項)、職務執行者の選任
についても、可能だろうと思います。

 では、この場合に、職務執行者の選任を証する書面は、何を添付することに
なるでしょうか。

 まず、取締役の過半数が社外取締役の場合は、委任を決定した取締役会議事
録のほか、代表取締役の決定を証する書面が必要になります(商業登記法46
条4項)。社外取締役が過半数である必要がありますが、監査等委員会設置会
社では、社外取締役であることは登記事項ですので、この点については、特に
添付書面は不要だと思います。

 次に、重要な業務執行の決定を取締役に委任できる旨の規定を定款に置いた
場合です。代表取締役に決定権限が委任されたことを証する必要があるでしょ
うから、それを決定した取締役会議事録は必要になると思います。それに加え、
代表取締役の決定を証する書面が必要となります。

 次に、定款規定を証するために、定款の添付が必要かどうかです。この規定
については、登記されますから、定款の添付は不要なように思えます。

 しかし、登記されるのは、「定款に定めがあるときは、その旨」であって
(会社法911条3項22号ハ)であって、定款規定そのものではありません。
会社法399条の13第6項では、全部又は一部を委任することができる旨を
定めることができるとされており、会社が、定款に委任する範囲を定める可能
性も否定できません。この場合には、委任の範囲までは登記されないと思いま
す。よって、登記所から、代表取締役の権限を証する書面の一部として、定款
の添付を求められる可能性もあり得るかもしれません。そのため、定款も準備
しておくほうが安全だろうと思いました。

 私自身の考えは、以上のとおりですが、実務はどのように扱われているので
しょうか。

 注1)神﨑満治郎・金子登志雄・鈴木龍介編著『論点解説 商業登記法コン
   メンタール』(金融財政事情研究会)388頁以下
 注2)小川秀樹・相澤哲編著『通達準拠 会社法と商業登記』(金融財政事
   情研究会)291頁


2023.04.26(水)【休眠放置会社】(神奈川・酒井恒雄)

 いわゆる休眠届を提出した会社のうち、事業活動を再開することなく放置さ
れてしまう会社のことを「休眠放置会社」と呼んでみたいと思います。

 休眠放置会社が株式会社であれば、その殆どは職権解散の対象になるかと思
われます。

 では、実際に職権解散の対象となった株式会社の数はどれくらいでしょう?
公表されているデータを調べてみたところ、過去3年くらいは年間約3万社が
職権解散となっているようです。

 一方、申請による解散登記件数は年間約1万8,000件くらいなので、大
雑把に計算しますと、1年間の株式会社の解散数の約6割は職権解散によるも
のとうことになります。実務の肌感覚からして、それくらいだろうねと思った
方もいるかもしれませんが、想像以上に多くて驚いた方も少なくないかと思わ
れます。

 これに合同会社の数を加えたら、放置会社天国と言っていいような数字にな
るに違いありません。ご存じのとおり合同会社には職権解散の制度がありませ
んが、その設立登記件数は会社法施行以来ずっと上昇しています。株式会社の
設立登記件数は、「増」「減」を繰り返えしているのに対し、合同会社の設立
登記件数はずっと右肩上がりの増加です。

 休眠放置会社は、休眠届の制度を歪んだかたちで利用していることになりま
すが、当の本人は、そんな意識がないかもしれません。何故なら、「このまま
終わるのは不本意なので、いつかまたリベンジしてやる!」と思っている人も
少なくないと思うからです。しかし、そういった悔しい気持ちや野望も、年月
が経てば薄れていくものですよね・・・。そして、その「いつか」は来ないの
であって、結局は職権解散の対象になってしまうというストーリーが定番にな
っているのではないかと思われます。(つづく)


2023.04.25(火)【千代田支部総会】(東京・鈴木龍介)

 去る4月21日(金)18時から「東京司法書士会千代田支部」の令和5年定時
総会(本総会)が竹橋の「四季交楽 然」にて開催されました。私も千代田支
部会員として本総会に出席して参りました。

 そもそも司法書士会(単位会)の支部というのは、東京司法書士会(東京会)
等の各単位会で地域ごとでの活動等を行うために設けられた組織体です(ちな
みに支部を設けていない単位会もあります。)。なお、日本司法書士会連合会
は50の単位会の集合体組織ということになります。

 東京会は総会員数(個人の司法書士ベース)が4500名を超える大規模単位会で、
29の支部が設置されています(https://www.tokyokai.jp/about/chart.html)。
その中でも千代田支部は個人会員が661名、法人会員74からなる東京会で最大
の支部です。

 本総会は、新型コロナ感染症拡大に配慮しつつ、3年ぶりの時間短縮のない、
かつ組織員のリアル出席を抑制することないかたちでの開催となりましたが、
委任状出席を除く、リアル出席は60名でした。

 本総会の目的事項は、役員改選等もりだくさんでしたが、すべて満場一致で
可決承認されました。その後、同会場で立食形式による懇親会もあり、盛会の
うち20時に散会となりました。

 支部役員ほか関係者のみなさん、お疲れさまでした。そして、ありがとうご
ざいました。


2023.04.24(月)【新事務所で業務開始】(金子登志雄)

 22日土曜日に荷物を旧事務所から運び出し、23日日曜日に新事務所に運
び込み本日24日から業務開始です。会社の荷物量が多いためか、荷物はコン
テナ車両で1夜を過ごすのだとか。小さいながらも民族大移動を感じました。

 会社の本店移転で移転日は引っ越した日か、営業開始日かという小論点があ
りますが、通常は後者の日にします。ただし、業務執行機関が22日あるいは
23日と決定したのなら、その日になります。

 移転先につきビル名や階数あるいは部屋番号を記載すべきかについては、ま
ちまちで、郵便物が届くことを優先する会社は階数や部屋番号まで登記し、そ
れなりの会社は、登記上はビル名も記載せず、会社の封筒やゴム印にのみビル
名等を記載します。

 上場会社で本店所在場所にビル名まで記載しているところがほとんどないの
は、会社が大きく知名度があるため、郵便物が届くためでしょう。私が子供の
頃には「東京都 長嶋茂雄様」でもファンレターが届くと聞いたことがありま
すが、超有名人や会社は、これで十分なわけです。

 旧事務所につき、私は司法書士会に「野村不動産ビル4階」で登録しました
ところ、ビルが売却され「ユニゾ神田小川町三丁目ビル」に変わったため、登
録し直さなければならなくなり、ビル名を削除し登録したところ、一時的に郵
便物が不着になりました。この問題は郵便配達人が了知したため、すぐに解消
し、その後、またビルが売却されビル名が単に「神田小川町三丁目ビル」に変
わったため、ビル名を登録しない私の決定は正解でした。

 今度の移転先である「東急虎ノ門ビル8階」はビル名が変わる可能性が極め
て低いため登録先に加えます。私の名前では超有名人の長嶋茂雄さんのように
はなりませんから。

 東京司法書士会に「事務所移転」の登録を移転日以前に予約で通知してよい
かと尋ねましたら不可でした。移転登録の用紙の日付を移転日の24日にして
おくならよいではないかと申し上げましたが、事務処理上、無理なようです。

 登録変更が済まないのに新事務所の住所で登記申請してよいのかと思いまし
たが、登記と同じく登録変更も結果報告であって、登録が効力要件ではなさそ
うですから、登録前ですが、本日午前8時30分より気分を新たに新住所で登
記申請することにいたしました。


2023.04.21(金)【引っ越し準備】(金子登志雄)

 昨日の補足ですが、議事録は会社が作るもので、登記だけに使うものではな
いため、登記所に記載方法につき、とやかくいわれる筋合いはないとの反論も
可能だなと思いました。それなりの会社になると、議事録についても顧問弁護
士のチェックが入ったりしています。

 前にご紹介したと思うのですが、資本金の額の減少公告で減少額が確定額で
ない公告も事前相談すると登記所で不可といわれるのに、提出してみると受理
されるのは国立印刷局が合法的な公告だとして受け付けたものを登記所がこの
公告では不可だとはいえないのかもしれません。登記所も印刷局とは争いたく
はないでしょう。

 さて、今週は引っ越し準備でした。土日に引っ越し、24日月曜日から当事
務所は、「東京都港区虎ノ門一丁目21番19号東急虎ノ門ビル8階」に変わ
ります。東京司法書士会千代田支部の皆様、お世話になりましたですが、隣組
に移転するだけですので、今後もよろしくです。

 引っ越し作業では、荷物になるので、司法書士開業時に自分へのご褒美とし
て買い求めた「実務相談株式会社法」全5巻も内容をパソコンに取り込み廃棄
しました。

 旧商法時代に著作のために苦労して集めた実例資料多数も、廃棄しました。
大事な資料という意識はあるのですが、会社法になって1度もみていないので、
思い切って捨てました。

 この結果、意外だったのは、常日頃、申請書類を郵送する際に挟むファイル
が少ないなと思っていたのですが、資料の中身を廃棄し、ファイルだけ残した
ら、数えてはいませんが、間違いなく1000枚以上になりました。ダブルク
リップも300は残りました。

 ところで、日曜日は選挙ですね(神奈川県民の私は9日に終わっています)。
日本は民主主義国だ、ロシアと中国とは違うのだと叫んでいる愛国者の方々は、
ぜひ、その主張をホンモノにし、世襲議員とか、マスコミやユーチューバーで
有名になっただけの軽い候補者に投票しないようお願いします。日本の劣化の
原因ですから。


2023.04.20(木)【WEB会議の必要的記載事項】(金子登志雄)

 4月3日に登記申請したものの1つに、取締役会決議をWEB決議でしたも
のがありましたが、誰がWEB参加だったかも、「本会議システムは、出席者
が⼀堂に会するのと同等に適時・的確な意⾒表明が互いにできる状態となって
いることを確認した」の記載もありませんでした。

 会社法施行規則101条3項1号に議事録の記載事項として「取締役会が開
催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、・・・が取締役会に出席
をした場合における当該出席の方法を含む)」とあるため、誰がWEB参加か
は記載しないといけないと思うのですが、「本会議システムは、出席者が⼀堂
に会するのと同等に・・・」の記載については、必須でしょうか。

 2月24日千代田支部セミナーでの東京法務局登記官は次の質問(質問者は
私です)に対して、必要説でした。
----------------------------------------------------------------------
 質問:従来は「本会議システムは、出席者が⼀堂に会するのと同等に適時・
的確な意⾒表明が互いにできる状態となっていることを確認した後、議案の審
議に入った」などの記載がないと、登記所から記載を求められることもありま
したが、いまは、リモート会議システムが発展し、それができるのは当然視さ
れています。また、確認したから会議が開催され、仮に途中でそれが中断して
も、無事に再開したから会議が終了したわけですから、この記載のない議事録
も有効であり、登記申請に支障がないと考えますが、いかがですか。会社法施
⾏規則上も必要的記載事項とは思えません。
----------------------------------------------------------------------

 登記官が必要な根拠として挙げたのは、WEB会議が肯定された旧商法時代
の古い古い解説でした。

 当時は本社と支店との間でテレビ会議の設備があり、それで会議をしたもの
ですから、議事録にこのような記載をするのが自然でしたが、いまは、極端に
いえば、スマホのスピーカー機能で会議も可能ですし、ZOOM飲み会なども
頻繁に行われており、設備など問題にされない時代になっています。一人だけ
が自宅からWEB参加ということもありますが、この場合でも記載せよという
のでしょうか。 

 したがって、補正通知を受けたら「時代遅れもはなはだしい。法的根拠のな
い押印が不要になったのと同時に、法的根拠を示していただけなければ応じら
れない」と抵抗する予定でしたが、何の連絡もなく、あっさり受理でした。

 千代田支部セミナーでの回答には「東京法務局管内の商業登記所における統
⼀的な⾒解を⽰すものではありません」との断り書きがありましたが、東京法
務局(本局)管内でも統一的な見解ではないようで、安心しました。

 ちなみに、法務局の人事異動は頻繁であり、登記官といえども商業登記歴が
数年しかない方も多いようです。その関係か、従来はあっさり受理されていた
ものが急に補正にされた事例が増えました。商業登記歴20年、30年の司法
書士各位は、登記官によく説明してあげてください。


2023.04.19(水)【休眠会社の増加】(神奈川・酒井恒雄)

 日本は起業ブーム真っ只中ですが、起業した人の全員が事業に成功するわけ
ではありません。そんなことは私が言うまでもありませんが、成功する人より
失敗する人の方が多いというのが現実ですよね。

 だから、起業支援策には、失敗しても再チャレンジできる土壌の醸成も必須
となります。一応、再チャレンジできる社会に!という掛け声は聞こえてきま
すが、具体的な方策が追いついていない、つまり、失敗をした人に対するケア
は手薄のまま、どんどん起業を後押しする風潮が強まっていると感じます。そ
の結果、どのようなことが起きているかといえば、その際たる現象は、「休眠
会社の増加」ではないでしょうか。

 休眠会社とは開店休業状態の会社のことでが、そのような会社は、税務署等
に休業する旨を記載した異動届出書を提出すれば、多くの場合、本来は納付し
なければならない法人住民税等の支払いが停止します。この届出は、通称「休
眠届」といわれています。本来であれば、休眠届は一旦事業を停止する場合に
利用できるものなのですが、実際には、もう事業を再開する意思がない場合に
おいても利用されているようです。(つづく)


2023.04.18(火)【インボイスとは?】(東京・鈴木龍介)

 最近、耳にすることが多いインボイスとはどのようなものでしょうか?
正式には「適格請求書等保存方式」というようですが、令和5(2023)年10月
からスタートする、事業者が納付する消費税額の計算に関する新たな制度です。

 そもそも消費税の納税額の計算は、「売上時に預かった消費税」から「仕入
や経費で支払った消費税」を差し引きするのが原則ですので、預かった消費税
額と支払った消費税額を明確にする必要があるのですが、これまで取扱いがあ
いまいなところがありました。

 そこで、今般、事業者は「登録番号」や「税率ごとに区分した消費税額」な
どを記載したインボイス(適格請求書)を発行等することで、そのあたりをク
リアにするというのがこの制度の趣旨です。

 インボイスを発行するためには、税務署への事前の登録が必要でして、登録
された事業者が「適格請求書発行事業者」として発行した請求書等に基づき消
費税の計算上の差し引きができることになります。言い換えると、適格請求書
発行事業者でない事業者が発行する請求書等では差し引きの計算はできず、納
税額がその分増えるという整理です。

 司法書士事務所(司法書士法人)も対象ですし、実際の影響も少なくないと
思われますので、運用の開始までにもう少し勉強しておこうと思っています。

~参考:国税庁~
 ■適格請求書発行事業者 公表サイト
   https://www.invoice-kohyo.nta.go.jp/
 ■インボイス制度 特集サイト
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm


2023.04.17(月)【なかった旨の証明書3点】(金子登志雄)

 商業登記における「ない旨の証明書」には、お上の証明書を要求する場合か
ら全く要求されない場合まで大きな差があります。この4月の登記申請で、全
部を経験しました。

1.合併認可を要し【ない旨】の証明書
 合併消滅会社の事業目的に貨物利用運送業などと記載されていれば、事業を
営んでいなくても、運輸局からこの証明書を発行してもらう必要があります。
添付を漏らした場合でも補正を受けた後に運輸局から発行してもらい提出すれ
ば足ります。

 一種の「認可が必要な登録業者ではありません」といった不思議な証明書で
すが、会社の代表者の自己証明では不十分なんでしょうか。

2.異議を述べた債権者がい【ない旨】の証明書
 商業登記法では、異議を述べた債権者が【ある】ときは。これこれを出せと
あるだけですから、なければ何もしなくてよいはずですが、異議を述べた債権
者があったのか・なかったのかは登記所には分かりません。そこで申請書の添
付書面の欄に「異議を述べた債権者はいない」と記載する慣例であり、最近は
申請書でなく上申書的な文書を添える例が増えました。

3.簡易合併の手続に株主の反対が【なかった旨】の証明書
 無対価合併の際は簡易要件を満たす旨の証明書は不要(合併契約書を援用)
とされています。ところが、商業登記法でいう簡易合併を証する書面としては、
「会社法796条3項の規定により吸収合併に反対する旨を通知した株主があ
る場合にあっては、同項の規定により株主総会の決議による承認を受けなけれ
ばならない場合に該当しないことを証する書面を含む」とされています。

 この関係で当局が認める「添付不要」とは、この書面をも不要という意味か、
無対価と株主の反対がなかったこととは連動しないので、この書面については
2の場合と同様に、申請書への記載を求めてくる場合(お願いベース)もあり
登記所の担当者次第です。今回は、補正でお願いされてしまいました。補正と
は大げさだなと思いましたが、単に電子申請書に書き込むだけで、新たな添付
書面を要求されたわけでなく、しかも「お願いします」とあったので、素直に
応じました。

 簡易合併要件の純資産額が減少しない合併である旨の証明を要求する見解は
ありません。これは簡易合併を申請しているということは純資産額が減少しな
い合併だと推定されるからでしょうが、必要数の株主の反対がなかったことは、
もっと推定が容易でしょうから、不要とは、この場合も含むという解釈も十分
に成り立つでしょう。外部の債権者の反対と内部の株主の反対という差も解釈
上大きい差になります。いずれにせよ、担当者次第と思っておくのが無難です。


2023.04.14(金)【事務所移転雑感】(金子登志雄)

 先般、メールで各所に事務所移転をお知らせしましたら、「下町からビジネ
スセンターへの移転ですね」といわれ、なるほどと思いました。

 現在の場所は神田本屋街の近くで明治大学や日大病院の近くですが、確かに
古くから栄えた場所ですが、移転先は虎ノ門ヒルズで有名なように最近急速に
ビジネス街になった地域です。

 そういうところなら、司法書士事務所は少ないだろうと日本司法書士連合会
のサイトで検索しましたところ、「虎ノ門」地域で56人、移転先の「虎ノ門
1丁目」では20人もいました。面識のある方はいませんでしたが、お一人だ
け質問メールを受けたことがありました。

 例の司法書士のオシゴトブログの新保さゆりさんの事務所は新橋ですが、歩
いて15分以内の距離です。渉外案件と電子申請にお強いので、よく質問させ
てもらっています。

 ところで、地方の皆様は神田本屋街とか虎ノ門といってもピンとこないでし
ょう。上州(群馬県)育ちの私も東京のことはほとんど知らなかったため、高
校2年生の冬休みに東京で下宿していた兄のところに転がりこみ東京見物しま
した。高田の馬場とか小伝馬町などという時代劇で知っていた名前の駅がある
ので、びっくりしたものです。

 私も大阪や京都には数回お伺いしているのですが、いまだに方向感覚があり
ません。札幌も仙台も福岡も同じです。これは地元の人に案内されているから
でしょう。高校2年生のときの私のように一人で右往左往していたら、感覚が
ついていたと思います。

 仕事でも勉強でも同じです。誰も教えてくれない独学は受験には非効率です
が、その試行錯誤がのちに大いに役立ちます。私の思考がユニークといわれる
のも独学オンリーだったためだと思っています。

 大先生の権威にも影響されない「我流」ですが、商業登記事務所の経営者に
いわせると、学校の勉強はでき司法書士試験にも簡単に合格したのに、パター
ン化されていない商業登記には、ついていけない方が少なくないそうです。

 もっとも、こういう方も好きなことには様々なアイデアを出したりしますか
ら、詰まるところ、商業登記に興味が湧かないのでしょう。人それぞれ能力も
適性も興味も相違しますから、早く自分にあった仕事を探すことです。

(土日を前に「弾薬のない第三次世界大戦がはじまる」)
 トランプの言だそうです。ウクライナ戦争は局地的には軍事紛争だが大局的
にはハイブリッド型で、平家の金融の西側G7対源氏の資源国のBRICSと
の経済戦争でもあり、虐げられていた源氏勢力が団結して対抗してきていると
の危機感からネオコン(戦争屋)のバイデンの統治能力を非難した発言です。
 大統領選に立候補予定のロバート・F・ケネディJrもネオコンのせいで米
国の威信と信頼を貶めたと批判していますし、フランス大統領のマクロンも、
これ以上米国に巻き沿いにされたくないと中立的スタンスに変えてきました。
 日本は総理もマスコミも世論も米国に従っていれば間違いないと信じ込んで
いるとしか思えませんが、欧州の独仏伊などのように本音は米国に巻き沿いに
されるのは真っ平だという危機感はないのでしょうか。


2023.04.13(木)【退社に伴う持分の払戻額について】(仙台・立花宏)

 先日、ある方から、合同会社の社員の退社に伴う持分の払戻額について、定
款に任意規定を設けることは可能か、という質問をいただきました。たとえば、
社員が退社する場合の持分払戻額は、定款に記載された出資額を限度とする、
という内容です。

 その方は、会社法611条2項では、「退社した社員と持分会社との間の計
算は、退社の時における持分会社の財産の状況に従ってしなければならない」
と規定されており、定款で別段の定めを可能とする規定がないので、消極とお
考えのようでした。

 これと比較するために、中小企業等協同組合法20条には、脱退者の持分の
払戻について、次のような規定があります。
 「組合員は、(略)脱退したときは、定款の定めるところにより、その持分
の全部又は一部の払戻を請求することができる。」

 この条文の定め方によれば、定款で規定すれば、たとえば、持分の時価が
100だとしても、払戻額はその一部である50を限度とすることができるこ
とになります。

 しかし、会社法は、そうした定め方をしていないため、定款で、前記のよう
な任意規定を設けることはできないのではないか、という疑問をお持ちになっ
たようです。

 これについては、会社法立案担当者の解説(注1)として、次のようなもの
があります。
 「退社に伴う払戻し財産の価額の計算方法については、規定が設けられてい
るが(611条)、各社員が払戻しを受ける額、すなわち当該社員の持分相当
分を算定する方法については、特に規定がない。これについては、定款に別段
の定めがなければ、出資の価額に応じることとなり、定款に定めがあればこれ
に従うことになる」

 つまり、会社法611条2項で規定しているのは、持分の払戻額の計算をす
るにあたり、会社の財産の算定をする場合には、退社の時を基準日として、時
価で算定するということであって、退社した社員が有する持分(払戻しを受け
る額)の計算方法は定めておらず、これについては、定款に自治に委ねられて
いるということです。

 社員の退社は、会社の一部解散といえます。会社が全部解散した場合は、原
則として出資の価額に応じて残余財産の分配をすることになりますが、この割
合は、定款で別段の定めが可能です(会社法666条)。一部解散の持分の払
戻しも、ある意味、一部解散の残余財産の分配だといえますから、定款に別段
の定めができない理由はない思います。
 その方にも、その旨を回答いたしました。
 
 ただ、この定款の定めがどこまで許容されるでしょうか。、除名された場合
は、持分の払戻請求権を失う旨の定款規定を有効だとした裁判例もあるようで
す(注2)。しかし、除名以外の場合にまでそうした定款規定を設けることが
できるかどうかについては、慎重に検討する必要があるのではないかと思いま
した。

 注1)相澤哲ほか『論点解説 新・会社法 千問の道標』(商事法務)
    590頁
 注2)昭和40年9月28日東京高裁


2023.04.12(水)【起業ブーム】(神奈川・酒井恒雄)

 日本は今、起業ブームの真っ只中であり、まだまだこの傾向は続くと思って
います。

 法務省公表の登記統計によれば、株式会社の設立登記件数は、ここ十数年間
では年間8万件くらいで、前年比でみると約1000件の「増」「減」を繰り返し
ていたようです。

 ところが、令和3年には前年比約1万件の増加が見られました。ここまで急
激に設立登記の件数が増加したのは、会社法が施行された直後の約2年間を除
いてありません。

 会社法施行時までとは言いませんが、かなり大きな起業ブームが到来してい
ると捉えていいかもしれません。ちなみに合同会社は、会社法施行後からずっ
と右肩上がりで設立登記件数が増加しています。

 こうした設立登記件数の増加は、キャリアに対する意識の変化を表している
のではないかと推測しています。政府が積極的に副業・兼業の推進をしていま
すし、コロナ禍における働き方の多様性が広まったことも大きく影響している
でしょう。

 起業という「自主的なキャリア選択」をして、起業に関心を持つたけでは留
まらず、具体的な行動へ移す人が増えているようです。


2023.04.11(火)【『株主総会ハンドブック(第5版)』】
                          (東京・鈴木龍介)

 前回に続き、新刊書籍のご案内となり恐縮ですが、このたび『株主総会ハン
ドブック(第5版)』が商事法務から刊行されました。
  https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=20092350

 本書の第4版の発刊が2016年でしたので7年ぶりの改訂です(初版から数え
ますと15年になります。)

 今般の改訂は、主に令和元年会社法改正、令和3年コーポレートガバナンス
・コード改訂ならびにデジタル化の進展を踏まえたものでして、あらたな章と
して、株主総会資料の電子提供とバーチャル総会が加わっています。ちなみに、
頁数も第4版の736頁から860頁と大幅増となっています。章立て目次は以下の
とおりですが、株主総会の主要な論点はおおよそ網羅されていると思います。

 第Ⅰ編  定時株主総会の流れ
   第 1 章 株主総会とは
   第 2 章 定時株主総会のスケジュール
   第 3 章 株主総会の準備
   第 4 章 株主総会の議題
   第 5 章 株主総会の招集の決定
   第 6 章 狭義の招集通知
   第 7 章 事業報告
   第 8 章 計算書類(含 連結計算書類)
   第 9 章 監査報告
   第10章 株主総会参考書類
   第11章 招集通知の発送
   第12章 株主総会資料の電子提供
   第13章 招集の撤回・延期、議案の修正・撤回等
   第14章 計算書類等の備置
   第15章 事前質問への対応
   第16章 議決権の事前行使等
   第17章 有価証券報告書の定時株主総会前提出
   第18章 直前の準備事項・緊急対応
   第19章 株主総会の受付
   第20章 議事の進行
   第21章 株主総会の議長
   第22章 株主の質問と説明義務
   第23章 延会・継続会
   第24章 採決
   第25章 株主総会後の手続
   第26章 株主総会と登記
   第27章 バーチャル株主総会
 第Ⅱ編  例外的手続
   第 1 章 書類の閲覧謄写請求
   第 2 章 株主提案権
   第 3 章 少数株主による招集
   第 4 章 株主総会検査役
   第 5 章 株主による委任状勧誘
   第 6 章 種類株主総会
 第Ⅲ編  株主総会をめぐる紛争
   第 1 章 株主総会と仮処分
   第 2 章 本訴
   第 3 章 株主総会と刑事事件

 ちなみに、私は、初版から引き続き「第Ⅰ編 第26章 株主総会と登記」
を担当しております。

 本書は株主総会に関する定番実務書として版を重ねて参りましたが、第5版
におきましても皆さまの実務の一助となれば幸いです。


2023.04.10(月)【事務所を移転します】(金子登志雄)

 2週間後の4月24日に、同居している当社(アクモス株式会社)の本社機
能の移転に伴い、当事務所も移転することにいたしました。最寄り駅は、地下
鉄日比谷線「虎ノ門ヒルズ」駅と銀座線「虎ノ門」駅であり、有名な虎ノ門ヒ
ルズ・タワーのすぐ近くです。

  (4月24日からの新事務所)
   〒105-0001 東京都港区虎ノ門一丁目21番19号
    東急虎ノ門ビル8階
    
 これで会社の移転に伴う事務所移転は3度目です。2度目は東京法務局に最
も近い事務所で実に便利でした。現事務所は徒歩20分程度、今後の場所は電
車と徒歩で40分程度でしょうか。港出張所へは徒歩で30分程度です。贅沢
はいってられませんね。車が必須の地方の司法書士と比べれば都内23区内の
司法書士は恵まれています。
 
 いまは非常勤ですから、会社と別行動をとることも可能でしたが、会社には、
一緒に苦労してきた仲間が大勢おり、この長年の腐れ縁を切りたくありません
し、社内には会計士、税理士、M&Aコンサル、英会話堪能者もおり、会社が
IT系のため、パソコン操作でも私の業務に大いに貢献してもらっています。

 なお、いまでは司法書士の金子が知り合いの会社の非常勤役員にもなったと
思われていますが、逆であり、取締役管理部長であった私が資格を取得し司法
書士業を兼任するようになったものです。会社の母体がM&Aコンサル会社で
したから、兼任も全く問題なしでした。ということで、私の現住所は司法書士
ですが、私の愛する故郷はM&A仲間がいる会社にあります。

 こういう経歴かつ執務姿勢ですから、金子事務所が大手事務所になる可能性
はありません。司法書士歴30年近くなのにいまだに一人事務所です。しかし、
私のように司法書士一本でもなく、さりとて組織内司法書士でもない、二股司
法書士がいてもよいのではないでしょうか。会社の実態が肌で分かり、相乗効
果もあります。


2023.04.07(金)【書き入れ時の余韻時期】(金子登志雄)

 4月3日は多忙でしたが、いまは、その日に登記書類が揃わなかった会社か
らの役員変更登記がぼちぼち入ってくる時期に変わりました。

 やはり3月31日に代表取締役が取締役を辞任し、4月1日から新代表取締
役にする上場会社の子会社は印鑑証明の準備に苦労していました。後任代表者
を決めた後の4月1日辞任にすれば何の問題もないのですが、事業年度末日を
超えた辞任は会社の方針に合わないようです。

 事業年度が12月31日までの会社の定時株主総会が3月にあり、その登記
もいくつかありました。その原本還付で「原本に相違ない」の記載を漏らして
しまい、昨日は補正通知をもらってしまいました。こんなことでわざわざ電車
に乗り登記所に行くのは面倒だなと思っていたら、「原本に相違ない。司法書
  士金子登志雄」と記載したものを送ってくれればよいとのことで助かりました。
契印不要の効果です。

 登記とは無関係ですが、また株式市場が乱高下しはじめました。米国の撤退
で平和になった中東地域の石油国が米国離れをし中露に接近してドル決済を止
めたため、ドルによる米国の世界支配が危うくなってきたためです。同時に、
米国の要求で中国貿易や資源、食料の輸入に支障が生じてきたためでしょう。
食糧危機に備え、コウロギなどの昆虫食の話題までネットに大きく出るように
なりました。

 これもウクライナ戦争の波及効果です。経済のグローバル化とは実は米国の
世界支配のことだと反発してきた反グローバルの国々が団結し、非ドル決済の
多極化を目指してきたため、西側の経済が混乱しはじめたためです。西側G7
対ブリックス(Bブラジル・Rロシア・Iインド・C中国・S南アフリカ)の
経済戦争の開始です。


2023.04.06(木)【灯台もと暗し】(島根・根来川弘充)

 私は、昨年、島根県司法書士会に対して、総会議事録開示請求権を根拠に訴
訟を行いました。(諸々の事情は省略させていただきます。)

 島根県司法書士会の会則(規則・規程も含む)においては、会員に対して明
確にこの議事録開示請求権を認めた規定はありません。

 しかし、私が、仮に、この規定がない規約や定款がある任意団体等で、相談
を受けた場合、間違いなく「当然開示請求できる。」とアドバイスしたことで
しょう。総会で議決権を有する以上、これに付随する権利と考えたためです。

 先月、この訴訟の判決がでました。結果、私の請求は残念ながら認められま
せんでした。

 しかし、私は悲観しておりません。司法の判断で無く、司法書士会のコンプ
ライアンスにより、早急に会則や規則の変更により、解決する問題だと考えて
いるためです。

 他県の司法書士会もおそらく同様だと思います。私の考えに賛同いただける
司法書士には、判決等情報提供させていただきますので、ご遠慮なく、御連絡
くださいませ(since2001matsue.yasugi@gmail.com)。


2023.04.05(水)【働き方】(神奈川・酒井恒雄)

 「自立性、主体性の生かされる働き方、自己決定、自己選択のできる働き方」
といって思い浮かぶのは、どのような働き方でしょうか?

 多くの方は、「起業」が思い浮かんだのではないかと推測します。実際、学
生や会社員の人達と話をしてみると、働き方の選択肢の一つとして、「起業も
ありだよね。」という言葉が当たり前のように出てきます。

 もちろん、それが単なる憧れである場合もありますが、真剣に考えている人
も少なくないようです。会社員の場合、転職か起業か迷っているという話もよ
く聞きます。

 転職といえば、今まではネガティブなイメージが強かったと思いますが、現
在はまったくそのようには捉えられていません。給与面に関しても、以前は転
職をすると収入が減少する傾向にあったようですが、今では転職をした場合の
方が収入が増加する傾向にあるようです。

 テレビをつけますと、転職のサポートをする会社のCMが頻繁に流れてきま
す。それだけサービスの利用者が多い、あるいは見込みがあるということなの
でしょう。そして、起業に対する意識も大きく変化し、カリスマ的な起業家の
イメージ像はどんどん薄れ、自分がその立場になるという場合も含めて、起業
がごく身近なものになっているようです。(つづく)


2023.04.04(火)【『渉外法務書式集』】(東京・鈴木龍介)

 このたび、私が編集に携わりました『渉外法務書式集』の追録版がリーガル
社から発行されました。

 https://www.legal.co.jp/products/shougaihoumu/shougaihoumu_1.html

 本書式集は書籍+CD-ROMで構成されていますが、2017年に初版の
発行後、渉外法務関連の書式集として、司法書士をはじめとする多くの方々の
支持を得て、ご利用いただいて参りました。あらためて御礼申し上げます。

 新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、全世界的にグローバルな活動が差
し控えられていましたが、ここに来て、いわゆるWithコロナや円安を背景
とし、再度インバウンド需要が増加する傾向が見られます。

 一方、近時は民法や会社法などの法律改正のほか、デジタル化社会の進展を
受けての登記や外為法に関する実務の見直しが相次いでなされてきました。そ
のようなことから、今般、本書式集の追録版を発行するはこびとなりました。

 追録版の主な内容は、以下のとおりです。
 ・民法(債権法)の改正に伴う売買契約書や重要事項説明書の改訂
 ・定款認証に関する「実質的支配者となるべき者」の申告書の追加
 ・商業登記申請に添付する議事録等への押印規定の見直しへの対応
 ・外為法関連書式の改訂
 
 本書式集が引き続き、渉外法務の担い手である弁護士・司法書士・税理士・
行政書士といった専門家はもとより、外国人等の不動産売買に携わる不動産業
者の方々の業務の一助となれば幸いです。


2023.04.03(月)【原本と押印】(金子登志雄)

 登記の添付書面として必要だから議事録と官報を送ってくださいというと、
20件に1件程度の割合で、議事録や官報の写しが送られてくることがありま
す。これで登記が予定の日に申請することができなかったという例は皆様も何
度か経験なされていることでしょう。

 会社に連絡すると、まさかという対応をされてしまいます。きっと、原本は
会社が保管し門外不出のものであり、登記などは内容が分かればよいので、そ
の写しでよいはずだと思われているのでしょう。

 この意味で、株主総会議事録など押印が任意の書面は助かります。押印なし
のものを添付ファイルで送ってもらい、会社の承諾を得て私が印刷すれば原本
になるからです。

 私は、この押印なしの原本もコピーし原本還付していますが、皆様はどうさ
れていますか。押印書類だけ原本還付し、押印不要書類は原本提出だとするの
も当然に可能ですが、顧客に添付書面一式を返却するためには私のようにする
しかありません。

 上場会社やその子会社では取締役会議事録がへたをすると1センチ以上の厚
さになります。議案数が多いからです。そこで、必要な議案だけの抜粋議事録
を作成し原本にすることもありますが、各役員の押印があれば、登記所も何も
いいません。抄本という文字が明記されていても同じですが、抄本とか謄本と
いうのは「原本ではありません」と白状しているようなものですから、これは
顧客に避けるようにお願いしています。

 押印についても朱肉ではなく赤のスタンプを利用したもの、中にはシャチハ
タに間違いないと思えるものがありますが、これも、かつては正式な押印では
ないとされていましたが、最近はこだわらないようです。朱肉を使えば押印と
いうのも、そんな決まりはないでしょうから、これも自然な流れです。

 官報については、原本は組織再編の相手方が持っているという理由で、原本
の入手が予定した日に困難なこともありましたが、いまは電子官報で済むよう
になったので、この心配がなくなりました。登記実務も年々変化しています。

(金曜日の追加)
 金曜日に台湾世論調査を紹介しましたが、この3月にまた行われたようです。
台湾が米国の干渉を迷惑がっているのは明白でした。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230401-00343774
 ついですが、習近平がロシア訪問時にゼレンスキーと和平につきビデオ会議
するはずだったのに、その報道がないなと思っていましたら、岸田総理のウク
ライナ訪問でご破算でした。世界の日本をみる目も厳しいでしょう。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230330-00343432


2023.03.31(金)【書き入れ時準備】(金子登志雄)

 いよいよ3月決算会社の期首である4月1日が明日に迫りました。商業登記
の書き入れ時です。

 私も4月1日付け吸収合併、吸収分割、恒例の人事異動(3月31日付辞任
と4月1日付就任)の登記依頼を10件以上も抱えており、4月3日の月曜日
に申請します。そのため、平素は事務所にも行かないことも多いのに(身内が
留守番をしてくれているので仕事に支障はありません)、ここ数日は真面目に
出勤し、登記書類のチェックや原本還付の準備をしています。

 合併承認議事録ですが、私なら「別紙〇〇会社との合併契約を承認する」と
しか記載しませんが(添付書面の議事録は1枚だけ)、上場会社の子会社では、
登記のことなど考えませんから「参考書類のとおり〇〇会社との合併契約を承
認する」などと記載するため、参考書類、それも合併契約内容まで添付しない
と議事録として完成しないため、原本還付のためのコピーが面倒でなりません。

 中には私の負担を軽減するため会社でコピーして写しを一緒に持参してくだ
さるお客様もあります。ありがたいことです。ただ、先日受領したのはカラー
印刷の写しでした。高額なコピー機なのか、あまりに鮮明で、どちらが原本か
写しか区別しにくくて取扱い注意でした(印鑑証明書の場合はコピーという表
示が出るので安心です)。

 4月1日は土曜日のため、月曜の3日に一斉に申請しますが、ここでコロナ
感染ダウンでは元も子もありませんので、気をつけます(「元も子も」とは、
元金も利子もという意味だそうです)。

(土日を前に別の話題)
 ネットに、日本人は野球などスポーツには熱心なのに、政治や経済のことに
なると、とたんに無関心になる、これでは日本は落ちぶれるばかりだと嘆く投
稿がありました。私も反省しなければなりません。そこで、日本人の多くが認
識を改める必要があることを書いてみようと思いました。

 台湾有事問題に関する台湾の世論結果を遠藤誉氏が示していました。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230120-00333655

 この中の「Q10」を日本に置き換えると、「アメリカを信頼し、親米になっ
てこそ日本を防衛できると言う人がいますが、あなたはこの主張に賛成します
か」ですが、台湾では62%が反対でした。報道が偏っている日本では真逆で
しょう。

 ご近所の西側陣営である台湾と韓国ですが、一人当たりの実質GDPで台湾
は世界14位、韓国30位、日本35位、報道の自由度では台湾38位、韓国
43位、日本71位です(ネットでご確認ください)。意外に思うでしょうが、
これが現実であり、日本の急速な劣化は事実です。


2023.03.30(木)【相続承継のない会社における相続人の加入】
                          
(仙台・立花宏)

 社員がABCの3名、出資額は各100、合計300で、すべて資本金に計
上されています。この合同会社において、Cに相続が発生しました。なお、こ
の合同会社の定款には、社員が死亡した場合に、相続人がその持分を承継する
旨の定め(会社法608条1項)はありません。Cの唯一の相続人Dは、持分
を引き継ぎ、社員として加入したい意向です。AとBもこれに同意しています。
 さて、Dが社員となるためには、どのような手続が必要でしょうか。

 定款に相続承継の規定がないため、相続による加入はできません。そのため、
原則どおり、加入契約と、Cを社員に加える定款変更が必要となります。問題
は出資をどうするかです。Cの持分の払戻しを行い、そこから、あらためて、
100を出資する必要があるでしょうか。Dは、Cの持分を相続承継して社員
となったわけではないのですから、原則的に言えばそうなるのかもしれません。

 しかし、前回(令和5年3月17日)のコラムに記載したとおり、社員の退
社は、会社の一部解散であり、個人的には、Cの持分は、退社したからといっ
て、すぐに消滅するものではないと考えています。つまり、Cの持分は、実際
に払戻しが行われるまでは、清算の目的の範囲で存続するのだとイメージして
います。前記のようなケースでは、払戻しと現実の出資の履行が必要と考える
のではなく、清算中の持分の相続人の意思と他の社員の同意により、持分の継
続をすることができるような解釈ができないものかと考えていました。
 
 そのことを金子先生に相談したところ、それを可能としている判例(大判大
6・4・30)や文献(青山修『持分会社の登記実務』(民事法研究会))が
あることを教えていただきました。ちなみに、判例の大雑把な要旨は「被相続
人の持分は消滅し、相続人はその持分払戻請求権を出資として加入し、これに
より新たなる持分を取得する」というものです(注)。

 相続承継の規定によるものではないため、加入契約と定款変更のための社員
の同意が必要であり、社員となる日は相続発生日ではなく、それらの手続が完
了した日ということになります。
 
 ただ、疑問点が2つ出てきました。
 1つは、添付書面は何が必要かという点です。まず、新たな出資による加入
の場合と同様、加入契約と定款変更を証する書面(総社員の同意書)は必要と
なります。そして、前記の加入契約の内容として、持分払戻請求権を出資とす
る旨の内容が必要なのではないかと思います。また、持分払戻請求権を承継し
たことを証するために相続証明書が必要になるのではないかと思います。ただ、
加入契約から持分払戻請求権を出資したことが分かれば、相続証明書は不要と
いう可能性もあるかもしれません。

 もう1つは、計算の部分です。たとえば、被相続人の退社時の持分が、資本
金100、利益剰余金100の合計200だったとします。これをそのまま引
き継ぐことができるのかどうかです。判例のいう「新たなる出資」という言葉
からすると、出資払戻請求権を現物出資したと考え、200を資本金と資本剰
余金(出資勘定)に振り分けることになるようにも思えます。

 しかし、当事者の意思としては、被相続人の資本金や利益剰余金をそのまま
引き継ぐというものでしょうし、加入契約の内容として、当事者間でそのよう
な合意がなされたのであれば、あらたな出資ではなく、一部解散した会社を継
続したと考え、資本金、資本剰余金、利益剰余金の内訳は変わらないと考える
こともできるのではないかと考えました。

 以上はあくまでも私見であり、実務でこのような案件を受任した場合には、
法務局と相談しながら手続を進めた方がよいのだろうと思いました。

 注)民法の組合に関するものとして、「死亡組合員の相続人は、その持分払
戻請求権を相続するから、これを一括して-すなわち具体的に持分払戻手続を
とらずに-出資として、残存組合員と加入契約を締結することはさしつかえな
い。そして、その場合には、脱退と加入を生ずるが、組合の同一性は維持され
る。従って、相続人が組合員の持分を承継するのと結果においてはほとんど差
はない。」とするものがあります(我妻榮『債権各論中巻二(民法講義V8)』
(岩波書店)830頁)。


2023.03.29(水)【キャリアとは何か?再び】(神奈川・酒井恒雄)

 キャリアの定義には様々なものがあると前々回に書きましたが、学者や研究
者ごとに定義が違うといっても過言ではありません。

 ちなみに、日本では次のような定義が公表されています。
 ・「経歴・経験・発展さらには、関連した職務の連鎖等と表現され、時間的
  持続性ないし継続性を持った概念」(厚生労働省職業能力開発局・キャリ
  ア形成を支援する労働市場政策研究会の報告書)
 ・「個々人が生涯にわたって遂行するさまざまな立場や役割の連鎖およびそ
  の過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」(文部科
  学省・キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議報告書)

 またもや乱暴な意訳をしてしまいますと、「生きることと仕事って密接に関
係しているよね。」「働き方は生き方であるともいえるよね。」という感じで
しょうか。

 日本でキャリアという言葉がポピュラーになったのは1990年頃からだっ
たようですが、日常の会話に溶け込むほど身近になったのは、ここ数年のこと
ではないかと思います。

 そして今、日本で使われているキャリアという言葉には、「自立性、主体性
の生かされる働き方、自己決定、自己選択のできる働き方」という意味あいが
強いようです。キャリアについて考えたいという場合には、このような意味で
キャリアという言葉が会話の中で使用されることが多いかと思います。
(つづく)


2023.03.28(火)【役員任期の変遷~その2~】(東京・鈴木龍介)

 祝日の関係もあり、間が空いてしまいましたが、株式会社の役員任期の変遷
の続きで、監査役と会計監査人を取り上げます。

 監査役の任期ですが、いわゆる旧商法では2年以内とされていたところ(旧
商法191条)、明治32年に制定された商法では1年の確定任期に短縮されました
が(同法180条)、明治44年の商法改正で再び2年以内とされたとともに(同改
正法180条)、取締役と同様に、いわゆる確定型の任期を原則としつつも、定款
の定めにより最終の決算期に関する定時株主総会の終結まで伸長することが許
容されました(同改正法189条/166条但書準用)。

 昭和25年の商法改正において、取締役の任期が3年以内から2年以内に短縮
されたことを踏まえ、監査役の任期も1年以内に短縮されました(同改正法273
条)。なお、引き続き、定款の定めによる伸長型の任期は維持されました(同
改正法280条/256条3項準用)。

 昭和49年の商法改正において、監査役の任期が1年から2年に伸長されると
ともに、いわゆる伸長型の任期に固定され、定款の定めによる短縮も伸長も認
めないこととされました(同改正法273条1項)。なお、設立後最初の監査役の
任期は、取締役と同様、1年とする特則が設けられました(昭和49年改正法
273条2項)。

 その後の平成5年の商法改正では3年に、さらに平成13年の商法改正では4
年に伸長されました。

 会社法においては、4年の伸長型の任期が維持されましたが(会社法336条1
項)、設立後最初の監査役の任期の特則は廃止されました。一方、非公開会社
に関しては、取締役と同様に、定款の定めにより10年まで任期を伸長すること
ができる特則が設けられ(会社法336条2項)、現在に至ります。

 昭和49年の商法改正に際して制定された「株式会社の監査等に関する商法の
特例に関する法律」(監査特例法)において会計監査人による監査が導入され
ましたが、その任期は適宜、監査契約で定めれば足り、格別の規定は設けられ
ませんでした。

 昭和56年の監査特例法の改正では、会計監査人の選任機関を株主総会とする
とともに、その任期を就任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結
の時までとしたうえで、当該定時総会で別段の決議がなされなかったときには
再任されたものとみなすこととされた(同改正法5条の2第1項・2項)。

 会社法では、他の役員と同様、任期の起算時を就任から選任に修正した点を
除き、従来の規定を踏襲し(会社法338条1項・2項)、現在に至ります。


2023.03.27(月)【台湾有事問題に思う】(金子登志雄)

 急に世の中がきな臭くなってまいりましたので、今回は表題に関する私の見
方、考え方にしました。残念ながら、同調圧力が強い日本では少数意見であり、
しょせん、力なき者の遠吠えですが、こういう視点もあるのかという意味では、
無関係な業務にも少しは役立つと思います。

 日本を含め自由主義国では、世論形勢に広告宣伝会社が関与し、マスコミ報
道でも報道機関やスポンサーあるいは時の権力の意向にそってコメンテーター
がシナリオどおりに語るだけのため、真実の報道ではなく広報報道になってお
り、それを信じた世論が一方に偏りやすいため、危機感を感じています。

 さて、岸田総理は池田・大平首相の流れを組む宏池会(ハト派)だと思って
いたら、ウクライナに「必勝しゃもじ」を持参し、累計約1兆円の支援を行い、
「ウクライナは明日の東アジア」と台湾有事を煽りました。

 台湾有事をバイデンは「台湾破壊計画」と発言したようです。ホワイトハウ
スは否定していますが、彼のニックネームは「失言(gaffe)マシーン」ですか
ら、思わず本音を漏らしてしまったのでしょう。

 「台湾破壊計画」とは、ウクライナと同様に米国が火を付け中国に武力侵攻
させ、大々的に反中国キャンペーンを行い中国潰しをする計画のことです。こ
ういう米国の手法は昔からなので(ベトナム戦争の契機のトンキン湾事件は米
国の陰謀で、イラク戦争の大量破壊兵器保有は虚偽だったなど)、ウクライナ
でも、世界世論の多数が「性懲りもなく、また米国がやらかしたか」と、ロシ
アも悪いが米国はもっと悪いと冷ややかにみているわけです。

 NATOは1ミリも東に拡大しないというゴルバチョフとの約束も、台湾は
中国の一部と認めたニクソンとの約束も反故にし、世界秩序の現状を決めるの
は米国だという傲慢さは相変わらずです(念のため、米国も日本も台湾との国
交はありません。台湾有事とは台湾独立という中国の内政問題です)。

 台湾有事(独立戦争)の際は、日本が内政干渉の前線基地になり、米国は兵
器を提供するだけです。この点、台湾の世論は、よく分かっているようで、中
国寄りの国民党(野党)の支持率が米国寄りの民進党(与党)を上回ってしま
いました。国民党は米国の煽りに感謝していることでしょう。また、民進党が
2016年に政権をとって以来、中国敵視策の加担を避けて国交を断絶した国
が9か国(22か国中)もあります(最近は中米ホンジュラス)。

 そもそも、当事者である台湾の世論が、米国に余計なお世話をしてくれるな、
迷惑だというもので、現状維持を望み、中国との紛争を望んでいません。中国
との経済交流や人事交流も活発で、台湾経済にとって中国はよい市場になって
います。なぜ、そっとしておかずに、ペロシ台湾訪問などで、紛争(独立)を
煽るのでしょうか。答えは米国の覇権維持であり、急成長中の中国封じ込めで
す。まるで、副社長の急成長を陰謀で妨害する社長のようなものです。

 中国経済の発展は日本にも有益ですし、台湾世論を踏まえて岸田総理には、
東アジアは東アジアに任せてくれと米国に要求すればよいのに、米国の覇権を
守る戦争に協力してよいことがあるのでしょうか。西側でも英米、ポーランド、
日本だけがウクライナ支援に積極的であり、他の欧州各国はそれほど乗り気で
もないこと(ウクライナ問題のもう1つの側面は、ドイツの急成長が米国に目
障りのため、ドイツ潰しも兼ねているといわれています)や、米国共和党も消
極的であり、バイデンは次の選挙で敗北見込みであることも考慮すべきです。

 もっとも、ごく少数ながら別の見方もあります。中国は安倍総理を毛嫌いし
ていましたが岸田総理には好意的です。ロシアとの取引もほそぼそと続いてい
ますから、表向きは米国に寄り添い、党内の右派勢力で最大派閥の安倍派から
妨害されないようにしており(国葬も同じ)、安倍派の力が弱まるまで右翼的
姿勢を意識的に採用し、じっと時を待っているという見方です。そうだとした
ら、岸田総理も曲者です。

 中曽根、安倍内閣が長期政権になれたのは米国に従属したためで、国益を重
視し独自の外交をした田中、鳩山内閣、総理直前の小澤氏がマスコミと検察を
利用されて大キャンペーンで潰されたので、おそらく岸田総理も前者を選んだ
のでしょうけど、日本の官僚のお家芸である面従腹背は岸田総理も得意そうで
すから、ぜひ、それで反戦平和の国是を守ってもらいたいものです。また、防
衛力増強なら日本のためにし、使い物にならない米国兵器を高額で買わされる
ためでないことを祈るしかありません。

 最後に、中国のことは、情報収集力と分析力に長けた次の遠藤誉氏のコメン
トが参考になります。中国要人にも電話取材するほど中国通であり、マスコミ
報道やコメンテーターがいかに無知でいい加減かが分かります。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare


2023.03.24(金)【2021年度末確定決算額とは】(金子登志雄)

 3月決算会社を前提に「2021年度末確定決算額」というと、いつの決算
だと思いますか。

 先日、ある上場会社の最新の定時株主総会招集通知をみようと東京証券取引
所のサイトを開いたら、該当会社の最後の招集通知名が「2021年度定時株
主総会招集ご通知」とあったので、「何だ、昨年度の招集通知が開示漏れじゃ
ないか、困った会社だ」と一瞬思ってしまいましたが、そんな会社でないので、
よくよく確認したら、2022年6月開催の定時株主総会招集通知でした。

 紛らわしいことに「2021年度」定時株主総会とは、「2021年4月か
ら2022年3月末までの事業年度」における定時株主総会のことでした。ネ
ット検索したら、三菱商事や商船三井なども、この方式でした。

 したがって、「2021年度末」確定決算額というのは「2022年3月期」
の確定決算額のことです。根拠は「事業年度」を表す「年度」ですが、別の時
に、私は、2021年度「未確定決算額」と読んでしまい、話が通じないこと
がありました。老眼のせいで、「末」を「未」と読んでしまったわけです。

 昔は、三省堂の模範六法を愛用していましたが、いまでは老眼で全く読めま
せん。あんな小さい字が読めていたのかと不思議な気がします。通常は、この
後に「歳をとりたくないものだ」が続きますが、経験による判断力は増してき
ていますから、悪いことばかりではありません。


2023.03.23(木)【払込期日と払込期間】(金子登志雄)

 WBC優勝は実に誇らしいニュースでした。もう1つのネットの大きな話題
は、岸田総理の電撃的なウクライナ訪問でした。

 いま世界はウクライナとも友好関係にある中国の和平案の行方に注目してい
ます。和平が成立したら米国の面子が潰れるので、先手を打って戦争を終結さ
せるかもしれないとの観測もあります。こんな微妙な時期に、日本が一方に肩
入れし和平に水を差すような訪問は実にタイミングが悪く、世界の目にどう映
るかと私は気掛かりですが、岸田さんは気にならなかったのでしょうか。
  
  (ご参考:英国ケンブリッジ大学の昨年の世界世論調査)
   https://sputniknews.jp/20221102/13607569.html

 さて、会社法第915条によると、変更登記事項が生じたときは、2週間以
内に申請しなければならないが、払込期間を定めた募集株式の発行では期間の
末日から2週間以内にすれば足りるとあります。

 では、1株の払込金額11円(資本組入れ額6円)で払込期間を10日まで
とする募集株式の発行で、最初の6日に1件1株、7日に3件3株、8日に2
件2株の合計6件の払込みがあった際に、これを一括して申請する際の資本金
計上額の最低額は、どう計算すべきでしょうか。

 ① 行使の都度、変更登記事項が生じたのだから、資本金計上額は、6件分
の合計36円だ。
 ② 1日単位で計算すべきであり、資本金計上額は6日分6円、7日分17
円(33円÷2)、8日分11円(22円÷2)だから、合計34円だ。
 ③ 払込期間合計で1つの募集行為があったのだから、一括して計算してよ
く合計66円の払込みで資本金計上額は33円だ。

 現実には①はなく、②か③かで迷う方が多いようですが、募集株式の発行で
払込期日を定めた意味は、その期日に何度も払込みがなされても、一括するで
しょうから、同じく払込期間を定めた際も期間全部を払込期日1日と同視して
よいということだと考えます。よって③説に賛成ですが、②で計算しても登記
は受理されているようです。


2023.03.22(水)【無駄な出会いはない】(神奈川・酒井恒雄)

 私が仲良くさせて頂いている起業家支援拠点で、飲食可能なスペースを利用
して、支援者たる専門家が「飲み屋のママ」になるという企画があります。

 「ママ」といっても、女装するわけではなく、一応中心的な存在として交流
の場を仕切るような役目をするのですが、先日、私がママの担当になりました。

 参加者に自己紹介をしてもらうにあたり、コロナ禍で会合の機会もなかった
ことから、改めて2022年がどうたったか話すということになりました。口
火を切って、私が話をすることになりましたが、参加者は起業している人か、
起業を目指している人達ですので、仕事に関することを中心に振り返ってみま
した。

 そういった視点で振り返ってみますと、昨年は「捲いた種がついに花を咲か
せ始めた年」でした。昨年は開業(登録)23年目でした。司法書士の仕事は
様々な分野がありますが、開業10年目頃に商業登記分野に特化することを決
めました。

 そう決めて仕事の軸足を商業登記に移していく過程で売り上げが激減してし
まい、再びオールマイティーな業務に戻そうかと悩んだこともありました。そ
んな中で出会った様々な人達がいて、そのときは特に具体的な仕事関係の交流
には発展しなかったものの、今になってその出会いが仕事に繋がり、そして発
展していることを改めて認識しました。

 「無駄な出会いはひとつもない。」「無駄な経験などひとつもない。」とい
う言葉をいろいろなところで耳にしますが、「本当にそうだな・・・。」と、
しみじみ思った次第です。

 話をしているうちに何だか嬉しくなってしまい、以降、ママという立場をす
っかり忘れて、ただの酔っ払いオヤジになって交流の場に埋もれていきました
・・・。


2023.03.20(月)【どうする日本】(金子登志雄)

 先般、2つの国際的大ニュースがありました。親米だったサウジアラビアが
敵対するイランと中国の斡旋で国交正常化に合意したことと、米国で大きな銀
行破たんが生じたことです。証券市場も乱高下中です。

 世界各地で紛争を煽り、他国が力を付けないようにする米国流の統治術が限
界に達し、経済的にもドル一極支配が崩れ始めてきたということで、軍事中心
の米国の凋落と経済中心の中国の台頭の象徴的ニュースだと感じました。

 ウクライナ問題につき、西側では意図的に「善の小国と悪の大国」の図式で
報道されていますが、西側以外では、ロシア潰しを狙う米国主導のNATOと
ロシアとの代理戦争で、「ロシアも悪いが米国はもっと悪い」という見方のほ
うが多い印象です。東西問題というより南北問題に近く、驕る北の都の平家に
対し、南の田舎の源氏勢力(資源国)が団結し対抗してきたかのようです。

 ベトナムでもアフガンでも中東でも、皮肉なことに米国が撤退すると平和に
なり、その空白に中露の勢力が浸透してしまいますし、ロシアへの経済制裁も
結果的にドル支配を弱体化させていますから、英米流の他国の価値観を認めず
経済封鎖で庶民の生活にも影響させ、国内に混乱や反乱を起こさせるハイブリ
ッド戦略は成功しているとは思えません。

 古くはキューバのカストロも腐敗政府を革命で倒しただけで共産主義者でも
なく反米でもありませんでした。プーチンも当初はゴルバチョフと同じく西側
に親和的でした。開放時代の中国も同じです。ところが、米国がそれを受け入
れず、結果的に反米に追いやったようなものでした。独善的な米国外交はいま
だに変わりません。もっと相手にリスペクトを持って上手に付き合えばよいの
にと思うのですが、自分達だけが正義と思うその傲慢さはアングロサクソン民
族の特徴なのか、一神教のキリスト教の十字軍主義なのかと考えていますが、
まだ分かりません。

 西側が誇る選挙民主主義は偉大な制度であることは誰もが認めるところです
が、現実にはカネの力で報道を支配し情報操作を行える勢力が常に勝者になる
仕組みであるため、決して欠点のない制度とはいえません。

 また、民主国家では選挙で勝つことが支配の根源ですから、アフガン撤退が
未熟過ぎて支持率が急落したバイデンが起死回生のため中間選挙対策でウクラ
イナ紛争を煽ったように、選挙対策のために戦争が起こされるという負の側面
が選挙制度にはあります。
 
 中東の安定の次はウクライナですが、和平が成ろうとすると英米の高官がキ
ーウを訪問し和平に反対し、露軍が撤退した後の死者の真偽不明の放置写真が
世界中に流されたり、露独をつなぐ天然ガスのパイプラインが爆破されたりし
てきましたが、今回もウクライナとも友好的な中国首脳がモスクワに飛びウク
ライナ和平につき協議しようとしているタイミングを見計らったかのように、
国際刑事裁判所がプーチンに逮捕状を出す決定をするなど、国際情勢は我々の
想像を越える謀略や陰謀が渦巻いているとしか思えません。

 魑魅魍魎が跋扈する国際情勢ですが、岸田総理には、日本は驕らない平家で
ある点を強調し、日本国のかじ取りを誤らないよう願うしかありません。

 最後に、実に面白いツイッターがありましたので、ご紹介します、字幕だけ
お読みください。日本もこれをいえる独立国になれるのはいつでしょうか。
  https://twitter.com/sohbunshu/status/1635565085627412480


2023.03.17(金)【社員退社後の持分】(仙台・立花宏)

 社員がABC3名、出資額は各100、持分割合も各3分の1の合同会社で
あることを前提とします。この合同会社からCが退社し、持分の払戻しの請求
をしました。払戻額は100(会社財産の時価300)とします。出資額は全
額、資本金に計上されていたため、これから、資本金の額の減少手続を行いま
す。

 さて、この時点の持分はどうなっているでしょうか。

 これに関連する合名会社の裁判例として、昭和40年9月28日東京高裁判
決があります。除名された社員に対する持分の払戻しに関するものですが、そ
の理由中で、「合名会社のある社員が退社し、会社が他の社員を構成員として
存続するとき、合有の性質を有する会社財産についての残存社員の持分は当然
に拡張する。(略)(従って、退社の場合の退社員の持分が積極であるときに
行われることのあるべき払戻は、財産の分割の性質に出るものではない。)。」
としています。
 
 つまり、前記の例でいえば、残存社員であるAとBの持分は、各3分の1か
ら各2分の1に拡張し、持分の価額は各150になるということです。ただ、
これだと、CからAとBに各50の財産権が移転してしまうので、その清算が
必要で、これが持分の払戻しだということなのだろうと思います。持分の払戻
しの請求は、解散後もCの持分100が残っていて、Cが共有物の分割請求を
すると考えるのではないということになります。

 これについて、私は少し違った見方をしています。社員の退社は、会社の一
部解散であり、持分の払戻しは、その残余財産の分配のように考えることもで
きるのではないかと思っています。

 そのため、退社したと同時にAとBの持分が2分の1に拡張するのではなく、
会社が全部解散した場合と同様に、退社前にCが保有していた持分は、退社
(一部解散)後も、持分の払戻しが行われるまで、清算の目的の範囲で存続す
るというイメージすることもできるのではないかと思っています。 

 会計処理もそのような流れになっていると思います。社員が退社しても、貸
借対照表の数字はその時点では動きません。これは、退社社員Cに計上されて
いた、たとえば資本金100が、AとBに50ずつ移転したというわけではあ
りません(注)。

 Cへの払戻しが行われると、Cに計上されていた資本金(と資本剰余金)は
0となり、Cに計上されていた資本金、資本剰余金、利益剰余金の合計額と、
払戻額に差額がある場合は、会社の(つまり、他の社員の)利益剰余金で調整
されることになります。
 
 念のため、私は、持分の払戻しを財産(共有物)の分割請求だと考えている
わけではありません。あくまでも、持分の清算手続だと考えています。Cの持
分はすぐに消滅するのではなく、清算の目的の範囲で、手続が終わるまで存続
すると考えているだけです。

 仮に、財産(共有物)の分割だと考えるのだとすると、現物分割(会社分割)
が原則となってしまいそうです。それを会社法で、特則を設け、現物分割では
なく、代償分割(持分の払戻し)をすることにしたと考えることになるのでは
ないでしょうか。

 いろいろ考えると難しいものです。

注)Cが持分の払戻請求権を放棄するとそうなると思います(民法255条)。


2023.03.16(木)【「ひな形+リスト」処理の適用範囲】(金子登志雄)

 引き続き、2月21日の会社法講義レジュメからの題材です。

 さて、IT系の会社が従業員数十人にストックオプションとして新株予約権
を交付したが、従業員各自と締結した新株予約権割当契約は、他の権利者とと
もに総数を引き受けるという各人別の総数引受契約で、しかもIT系の会社ら
しく全部が電子契約でした。この場合に、先例に従い、この契約内容を紙に落
としたものを契約見本とし、割当先リストを付けて、代表者が証明したもので
も登記の添付書面として使えるでしょうか。

 論点1は、電子契約なのに、紙のひな形でも、先例が認めるひな型処理がで
きるかです。これでは電子署名の有効性がチェックできないからと、がんと否
定した大手法務局が存在しました。

 セミナーでの私の回答は、ひな形とは実物そのものではないこと、もしこれ
を否定したらEメールによる債権者保護手続もひな形処理が否定され不都合で
あること、株主総会の書面決議(会社法319条)では同意書が電磁的記録に
もかかわらず議事録は紙でよいことなどとのバランスから、ひな形処理は肯定
されるべきだというもので、念のため、東京法務局の相談コーナーに問い合わ
せたところ、肯定説でした。普通に考えれば肯定ですよね。
(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q3-1-10に所蔵)。

 論点2は、元法務省商事課勤務の櫻庭氏の論文に「総数引受契約にはひな形
処理は認められない」とありますが、この事例でも否定でしょうか。
 
 私の回答は、櫻庭論文以前は肯定されていたし、櫻庭論文以降も固定する最
先端の都内登記所も複数あり、否定する対応は櫻庭論文を誤読したものと思わ
れるというものでした。現在は令和4年3月28日付法務省民商第122号が
発出され、全国的に肯定されています。
(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q3-1-11に所蔵)。

 以上、いずれも私の実体験です。私に対して上から目線で「できないのは当
然だ」とおしゃっていた登記所職員様は、いまどうしているのでしょうか。忘
れられない体験でした。


2023.03.15(水)【キャリアの定義】(神奈川・酒井恒雄)

 「キャリア」の定義には、様々なものがあります。

 もともと、キャリアという概念は日本には無かったのですが、諸外国におい
てもそれは同じだったようです。アメリカでは、人間の働くという行動を概念
化し、測定しようとした研究は1950年代に始まりました。そして、その複
雑な人間の職業行動を統合して表現する概念として「キャリア」という言葉が
用いられるようになりました。

 単なる職業からキャリアという考え方への転換が始まるわけですが、その推
進者の1人がドナルド・E・スーパーという人でした。そのスーパー氏は、次
のようにキャリアを定義しています。

 「①人生を構成する一連の出来事。②自己発達の全体の中で、労働への個人
の関与として表現される職業と、人生の他の役割の連鎖。③青年期から引退期
にいたる報酬、無報酬の一連の地位。④それには学生、雇用者、年金生活者な
どの役割や、副業、家族、市民の役割も含まれる。」

 ちょっと難解な感じがしますので、私なりに乱暴な意訳をしてしまえば、
「人って生きていくには働かなきゃいけないけど、仕事をするにもやりがいが
なければ続かないし、そもそも働くってことは仕事だけしていればいいという
ことではないし、仕事をしていないときも生活しているんだから何かしらの社
会的な役割もあるし、結局、働くっていうことは相当深い意味があるよね。」
ということになるかと思います。

 皆さんなら、どのように説明しますか?(つづく)


2023.03.14(火)【熊本県司法書士会 研修】(東京・鈴木龍介)

 先週の3月11日(土)、熊本県司法書士会(熊本会)にお招きいただき、研
修の講師を務めて参りました。熊本会で研修講師としてお話しさせていただく
のは2007年以来、2度目となります(当時は会社法施行直後ということも
あり株式会社の増資・減資についてのお話をさせていただきました)。

 今回のテーマは「司法書士のための事業承継と中小M&A」というものでし
たが、熊本県県立劇場大会議室での参集とオンラインによるハイブリッド形式
で開催されました。会場には50名を超える先生方にご参加いただきました。

 具体的には、以下の2部構成で、あっという間の2時間でした(いつもなが
ら、話している方はですが・・・)。

 パート1:前提知識の整理~司法書士のための事業承継と中小M&A
 パート2:ケーススタディ~事業承継型M&A(株式譲渡スキーム)

 研修終了後、熊本会の執行部のみなさまに懇親会を催していただき、夜の熊
本も堪能いたしました。

 翌朝はすっきり目覚めることができ、老舗の中華料理店で、熊本名物の太平
燕(タイピーエン)を食し、修復を終えた熊本城をダッシュで見学しまして、
無事帰京いたしました。

 個人的には充実の二日間でしたが、本研修の運営に携われた先生方ならびに
参加された先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。


2023.03.13(月)【4月1日代表取締役交代のテクニック】(金子登志雄)

 3月決算の上場会社の子会社から、親会社の指示による4月1日付人事異動
の相談が舞い込み始めました。

 例えば、現状は取締役ABC(代表取締役A)において、Aを3月31日付
で取締役についても辞任させ、後任として取締役Dを3月27日の臨時株主総
会で4月1日付で取締役に選任するが、同日付でDを代表取締役に選定したい
という恒例の人事異動です。

 例年は生真面目に4月1日に取締役会を開催しDを代表取締役に選定し、選
定議事録に出席役員の個人実印を押して対応する会社が多いのですが、本年の
4月1日は土曜日です。

 さて、「どうする家康」の場面ですが、例年は金子方式だと定款変更が必要
だからとして採用が躊躇されていましたが、今年は採用してくれる会社が増え
ると期待しています。

 株主1名ですから、臨時株主総会は書面決議にし、議案を次のようにします。
-----------------------------------------------------------------------
 第1号議案 臨時的措置として定款一部変更の件
 2023年4月1日をもって代表取締役を交代させるにあたり、同日は土曜
日であり、また、このコロナ禍において可能な限り会合を避けるため、臨時的
措置として、次のとおり定款に附則を定める。
 附則 1.2023年4月1日からの代表取締役は会社法第295条第2項
     に基づき、株主総会で選定することができる。
    2.本附則は前項の登記完了後に自動的に削除される。
 第2号議案 取締役1名選任の件
  2023年4月1日付で、Dを取締役として選任する。
 第3号議案 代表取締役選定の件
  前各号議案の可決及び前号議案の就任承諾があることを条件に、2023
 年4月1日付で、Dを代表取締役に選定する。
-----------------------------------------------------------------------

 議題に「臨時的措置として」とか、議案に「土曜日だ」とか「コロナ禍だか
ら」などは理由であって記載不要ですが、親会社で定款変更は稟議事項だと反
対する人がいるかもしれませんので、その対策です(私は議事録案は全て個別
対応にし、市販の書式どおりにしません。この創意工夫こそ商業登記事案の面
白さです)。

 以上については、拙著『会社法実務〔全訂第2版〕』Q4-10-3及び4、
4-16-14、1-1-9その他に記載していますので、ご確認ください。


2023.03.10(金)【代表権付与か就任か】(金子登志雄)

 会社法第349条第1項に「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に
代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない」と
あります。

 では、当初は他に代表権を有する取締役を定めていたが、途中から、そうで
なくなった場合はどうなるのでしょうか。例えば、取締役がAB2名、代表取
締役Aとある会社でAが死亡や取締役を辞任したときです。

 通常は、いったん選定代表制を定めた限り、本件のBが自動的に代表者にな
ることはないと考えられています。代表者の器でないから、Bを代表者にして
いないのに、偶然の事情で代表者にするのは会社の意思に反するからです。と
いうことであれば、「他に代表取締役を定めた場合」とは現実に他に代表取締
役が存在する場合に限らず、選定代表制を採用した場合ということになります。

 では、定款に「①取締役が2名以上いるときは、代表取締役を1名置き、取
締役の互選によって定める。/②取締役1名のときは、当該取締役を代表取締
役とする」と定めていた場合はどうでしょうか。

 松井ハンドブックは、この第2項を「取締役1名のときは、会社法349条
1項本文を適用する」あるいは第1項の選定代表制が無理になったときは原則
どおりになると読み、定款の定めで選定されない代表取締役を認めたものとし
て「代表権付与」だとします。

 私は、この第2項を「取締役1名のときは、その者を本定款で代表取締役と
して定める」という定款での選定規定だと解釈し、登記原因は「就任」でよい
と主張しています(取締役1名のときに代表権付与を持ち出すことにも違和感
を持っています)。

 つまり、松井見解は、取締役が複数のときは選定代表制で単数のときは法定
代表制という二者択一を定款で定めているとみたのに対し、私は取締役が複数
でも単数でも選定代表制を定めたのであり、複数のときは互選代表制、単数の
ときは定款選定制だとみたわけです。ちょうど、取締役が1名になることを停
止条件にした補欠代表取締役みたいなものです。

 両説とも成り立ちますが、定款の定めが「取締役は代表取締役とする。ただ
し、取締役が2名以上いるときは、代表取締役を1名置き、取締役の互選によ
って定める」という内容であれば、法定代表制を原則として採用したわけです
から、代表権付与も理解することができますが、前記の定款は選定代表制を原
則にしているため、原則は互選代表制、互選の不可能を条件に定款選定制を定
めているとみるのが自然ではないでしょうか。

 登記実務上は就任で申請するとひと悶着はあっても受理されていると聞いて
いますが、中には代表権付与にしないと補正にする頑固な登記所もあるようで
す。しかし、松井ハンドブックは先例ではなく一見解なのですから、この補正
指示は明らかに行き過ぎた対応というべきです。権力の横暴です(6日本欄参
照)。皆さんも、商業登記のプロを自認するなら、権力に従順な素直なよい子
になってはいけません。


2023.03.09(木)【代表取締役と就任承諾】(金子登志雄)

 2月27日の本欄で、就任承諾には、①委任契約に基づく受任承諾に該当す
るものと、②登記上の要請に基づく委任によらず本人の意思確認に基づくもの
の2つがあると説明しながら、株式会社である代表取締役の就任承諾につき取
り上げなかったのは、どちらでも結果的に必要だからです。

 ご承知のとおり、旧商法時代は株式会社法(旧商法会社編)と有限会社法の
2つがあり、前者は取締役会設置会社のため、取締役と代表取締役の地位の2
つが意識されましたが、後者では各自代表が原則で、「取締役=代表取締役」
が原則でした。つまり、代表取締役には株式会社のそれと有限会社のそれとい
う2種類がありました。

 有限会社法では定款と社員総会による方法以外に、定款の定めに基づき取締
役の互選で代表取締役を定められましたが、これは互選の場合を含めて理論的
には代表権を制限するものでしたが、旧商法の株式会社である取締役会設置会
社との類似性から、定款で取締役の地位と代表取締役の地位を分離したものと
説明され、登記での考え方として今日に引き継がれています。

 会社法施行以前の旧商業登記法が商法時代の株式会社につき取締役・代表取
締役にそれぞれ就任承諾書を要求し、その規定を有限会社にも準用していたた
め、取締役の互選で有限会社の代表取締役を定める場合にも、互選で代表権を
制限したのではなく、取締役会設置会社と同じく、取締役の互選で代表権を追
加するのだと理論づけたためだと私は推測しています。

 しかし、会社法は旧商法会社編と有限会社法を統合し、2種類の代表取締役
ではなく、会社法349条でお分かりのように、各自代表制を原則にしました
から、定款で取締役会を任意設置した場合でも、定款で代表権を制限したもの
とみるのが正しいというべきです(詳細は商事法務1778号4頁以下の葉玉解説
参照)。

 したがって、この実体法である会社法重視の見解からは、取締役だけが上記
①の委任に基づく就任承諾であり、互選代表どころか取締役会設置会社の代表
の就任承諾ですら、上記②の就任承諾になります。

 ただ、商業登記法が会社法の原則どおりに改正されなかったので(非取締役
会設置会社の取締役の就任承諾に印鑑証明を要求しながら取締役会設置会社で
要求していない、登記記録が取締役と代表取締役の欄の2つに分離され代表取
締役だけに住所記載が必要など)、登記の面からは、いまだに取締役と代表取
締役の2つの地位で説明すると分かりやすいため、現在でも、それで説明され
ることが多いというだけです。

 互選代表の就任承諾書には印鑑証明が不要で、取締役会代表には必要だとい
うも会社法の面からは矛盾しているのですが、登記法の面からは何の疑問も持
たれていないのはこのためです。

 以上、2種類の就任承諾があっても持分会社と相違し、株式会社では①か②
いずれかの就任承諾が必要であるため、就任承諾の要否の点では議論する必要
がないので、実務では大きな問題になっていません。


2023.03.08(水)【キャリアとは何か?】(神奈川・酒井恒雄)

 ところで「キャリア」って何でしょう?

 キャリアという言葉から、真っ先に連想される言葉はどのようなものですか?
キャリア組、キャリアウーマン(あえて古い表現で。)、キャリア構築、人生
キャリア・・・。

 おそらく、前から2つ目までの言葉を思い浮かべた方が多いのではないでし
ょうか。

 それもそのはず、この言葉が日本に輸入された当時、欧米では競争に勝って
前進していく生活を指してキャリアと呼んでいたそうです。その典型例が高級
官僚とか専門職についた人だったので、日本ではキャリア組とかキャリアウー
マンというような言葉の使い方が定着したそうです。

 近年は、キャリアという用語は、職業だけではなく、広く生き方の全体を含
め、個人の生活の向上を意味するようになっていますが、職業上の勝ち組的な
イメージはまだ残っているかと思います。

 では、改めてキャリアの意味を考えてみますと、答えるのは非常に困難です。
「キャリア」の名詞・動詞としての意味には、「前進」「行程」「軌跡」「通
過点」「進行」「退行」「回帰」「漂流」「職業」「使命」「専門職」「生涯
の仕事」「猛進」「達成された状態」など、様々なものがあるそうです。

 こうしてみると、何となく「キャリアってそういうものだよねぇ。」という
イメージは沸いてきますが、それをまとめて説明するのは難しいですよね。そ
れゆえ、キャリアはキャリアとしか言いようがなく、キャリアという用語は使
う人によって全く違う意味になっていたりもするようです。(つづく)


2023.03.07(火)【役員任期の変遷~その1~】(東京・鈴木龍介)

 株式会社と役員の関係は、期限――任期――の定めのある委任契約であり、
明治期に商法が制定されて以来、その任期は法定されていますが、現行どおり
ではなく、幾度かの見直しがなされてきたという経緯があります。

 役員の任期については、登記実務上も非常に重要なところですので、今回は、
そのあたりを備忘的に徒然してみたいと思います。

 まず、取締役の任期ですが、いわゆる旧商法では3年以内とされ(旧商法
185条1項)、明治32年に制定された商法においても同様とされました。
明治44年の商法改正において、いわゆる確定型の任期を原則としつつも、定
款の定めにより定時株主総会の終結まで伸長することが許容されました(同改
正法166条)。

 また、任期との関係の深い「権利義務承継」役員の規定が新設されました
(同改正法167条ノ2)。

 昭和25年の商法改正において、その任期が3年以内から2年以内に短縮さ
れるとともに、設立後最初の取締役の任期を1年とする特則が設けられました
(同改正法256条1項)。なお、引き続き、定款の定めによる伸長型の任期
は維持されました(同改正法256条2項)。

 平成17年に制定された会社法において、2年の伸長型の任期が原則となる
とともに(会社法332条1項)、非公開会社に関しては、定款の定めにより
10年まで任期を伸長することができる特則が設けられ(会社法332条2項)、
現在に至ります。

 長くなりそうなので、監査役ほかについては別途、お届けしたいと思います。


2023.03.06(月)【当局の決定への要望】(金子登志雄)

 2月3日の本欄で、次のように記載しました。
---------------------------------------------------------------------- 
 株式会社が解散し事業株式会社から清算株式会社に移行したら「目的」のと
ころに「当会社は、会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを
目的とする」との登記が可能かと新保先生のブログで問題にしていました。
           (中  略)
 これにつき、清算目的では営利事業でないから登記できないのだとの見解も
あるようですが、営利事業の後始末も営利事業です。そうでなければ、清算株
式会社は非営利法人になってしまいます。

 次に、意味のないことは登記できないとの見解がありますが、1株1議決権
が種類株式の内容で登記されている例は多いといえます。「適法な一切の事業」
とか「商行為」という事業会社の目的は意味がないのに登記されています。

 もっとも清算目的を登記しなくても、2週間以内の登記義務違反で過料とい
うことにはならないでしょう。清算人の登記の存在によって清算会社であるこ
とは十分に分かるためです。結論として登記すべき法的義務(拘束力)までは
ないが、申請すれば登記されるべきだというところが穏当な解釈でしょうか。
-----------------------------------------------------------------------

 ところが、先般の新保ブログによると、穏当な解釈はなされず、申請したと
ころ東京法務局管内では受理されず取下げせざるをえなかったとのことでした。

https://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/8690836b42d94d1a7cdb9858ae7aad3e

 私には上記の清算目的のほうが「適法な一切の事業」とか「商行為」という
より明確性があると思えますし、債権者にとっては債権が回収できるかどうか
が関心ごとであって、目的変更に異議を出せる立場とはされていませんので、
受理できないという理由を理解することができませんでした。

 こういう硬直した取扱いですが、東京法務局(本局)内の登記官が協議して
多数決で決定するのでしょうが、上記の私のような考え方の登記官が多数のと
きに決定すれば、却下事由には該当しないので受理せざるをえないという結論
になるでしょう。要するに、人が変われば結論が異なる可能性もあることにつ
き、一方に断定して将来の変化を拘束してしまうことにも配慮してほしかった
と思います。 

 かつて東京法務局は本人確認証明書に関する商業登記規則の改正の際に、非
取締役会設置会社の取締役にも住所記載が必要になったと決定しましたが、私
はこの見解に当初から納得しておりません(『会社法実務〔全訂第2版〕』Q
4-17-9、テイハン『360問』Q130参照)。これも東京法務局のメ
ンバーが変われば、変更される可能性が大の内容ですし、私と同じ考え方の現
場の登記官も少なくなく、板挟みで苦労されています。

 法務省の決定でも同じです。組織再編の株主リストや資本金計上証明書の作
成者につき、債権者保護手続の証明書面と相違し、一方当事者に決める必要が
あったのか、いまだに疑問です。従来の運用に詳しくない方が担当になると、
おかしな運用に決定されてしまいます。

 かつて(昭和59年)、法務省の一担当者が商事法務に、いまでいう無対価
合併も合併当事者の資本金合算額よりも合併会社の資本金が少ないので減資に
もなるという論文を発表したため(いわゆる須藤論文)、従来の登記実務が変
更され、合併公告は「合併並びに資本減少公告」としなければならないとされ
てしまい、この信じがたい運用が平成9年の合併法制の改正まで続きました。

 旧商法時代は条文に会社法と同様に「総会は本法又は定款に定むる事項に限
り決議を為すことを得」とあったため、定款で定めれば代表取締役を株主総会
で定められると解釈されていましたが、登記では、がんとして認めませんでし
た。いったん不可と決定したものに縛られ変更することができなかったわけで
すが、会社法の制定という革命によって、やっと正常化されました(いまだに
正常な運用に戻っていないと私が思っているのは、期限付解散と代表取締役の
予選問題に関する登記実務の運用です)。

 公務員世界(行政行為)は前例踏襲の先例主義ですから仕方ない面もありま
すが、だからこそ先例の内容には、人が変われば、あるいは時代が変われば変
更されることもありそうなことについては、そのときの担当者が黒白を決する
ことなく(そういう問題は学者や裁判所に任せて)、慎重な対応をしてほしい
ものです。

 大袈裟な表現ですが、これも一種の権力行使ですから、抑制的であってほし
いということです。具体的には、見解の相違があるものにはあえて結論を出さ
ず、申請人の見解を尊重し、どちらでも受け付けるという穏当な対応を強く望
みます。


2023.03.03(金)【合同会社の合併と合併比率】(仙台・立花宏)

 先日、法務省の登記統計をみたところ、昨年の月ごとの集計が、12月分ま
で、掲載されていました(年度の合計は5月頃に公表だと思います)。

 手集計してみましたので、参考までに報告しますと、昨年の合同会社の設立
数は37,127件で、一昨年より55件増でした。ほぼ同数ということにな
ります。なお、株式会社の設立数は92,371件で、2,851件減少でし
た。

 さて、2月1日の本欄で、合同会社の合併と対価の割当てを取り上げました。
今日は合併比率について考えてみます。次のような事例を想定します(事案を
簡略化しています)。

想定事例
 合同会社Aと合同会社Bが吸収合併します(存続会社はA)。Aの社員は甲
社のみで、定款上の出資の価額は100です。Bの社員は乙社のみで、定款上
の出資の価額は100です。両社の社員資本の状況は次のとおりで、両社の会
社の時価評価は同じだとします。つまり、甲の持分と乙の持分の時価は同じと
いうことです。

  合同会社A            合同会社B
   資本金      100     資本金   100
   利益剰余金    100     利益剰余金 100
  (甲社の出資の価額 100)    (乙社の出資の価額 100)

 合併に際し、乙社はAの社員となり、持分以外の金銭等の交付はありません。
この場合、Aの社員となる乙社の名称及び住所並びに出資の価額を合併契約書
に記載する必要があります。乙社の出資の価額はいくらと記載するのが妥当で
しょうか。

 もちろん、正式な合併比率は、会計の専門家にお任せするべき内容だと思い
ますが、方向性としてどう考えるべきなのかという問題です。

 これが株式会社同士の合併だとします。甲社が100株のA株式を保有して
いると仮定して、他の要素を考えず、会社の時価だけを考えれば、A株式
100株を乙社に交付すると考えることになるのだろうと思います。

 ところで、これは合同会社同士の合併です。合併契約書に記載する乙社の出
資の価額をいくらにするかですが、株式会社と同じように考えると、出資の価
額は、甲社と同じ100にするのが妥当なように思えます。

 はたして、そう考えてよいでしょうか。
 私見は、原則として、出資の価額は200とするのが妥当なのだろうと考え
ています。というのは、この吸収合併を、乙社が、合同会社Bを現物出資した
行為だと考えれば、時価200の財産を現物出資したことになるからです。
 
 株式会社の場合と比較すると、なんとなく違和感があります。
 しかし、会社計算規則35条により、合併後の社員資本が次のようになった
と考えると、わかりやすいかもしれません。株主資本等変動額はすべて資本金
に計上したとの想定です。

 合同会社A            
   資本金      300   
   利益剰余金    100

  持分管理表は次のようになります。

         資本金    利益剰余金
   甲社    100     100
   乙社    200       0
 
 合併前に、Aに計上されていた利益剰余金100は、甲社に分配済です。そ
のため、合併により乙社が加入したとしても、乙社はこの利益剰余金には権利
がないため、0となっています。

 ただ、甲社と乙社には、共通の完全親会社があるとしたらどうでしょう。共
通支配下の取引として、会社計算規則36条1項により、引継ぐ処理が可能で、
合併後の社員資本を次のようにすることも可能なように思えます。

 合同会社A            
   資本金      200   
   利益剰余金    200

 そして、この場合は、乙社の出資の価額を100にし、持分管理表を次のよ
うにすることになるのだろうと思いました。合併は奥が深く、難しいですね。

         資本金    利益剰余金
   甲社    100     100
   乙社    100     100


2023.03.02(木)【年月日死亡】(島根・根来川弘充)

 この言葉は、戸籍の身分事項の欄では、最後に記載される言葉です。

 淡々とした事実であり、冷たささえ感じる言葉ですが、「有名無名」や「老
若男女」にかかわらず、お亡くなりになられ方には、必ず記載される言葉であ
り、私には、この公平さに温かさを感じます。

 今月、私が大変お世話になった方が亡くなられました。

 私より、五つくらい年上の方でしたが、「インフルエンザにかかったことが
ない。」とお話されるくらいとてもお元気な方でしたが、残念ながら病魔に勝
てませんでした。

 戸籍に記載される事実だけでなく、大変お世話になった人間がいるという事
実も残したいという、私の勝手な思いから、この場を借りてお礼を申し上げた
いと思います。

 故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


2023.03.01(水)【キャリアコンサルタント】(神奈川・酒井恒雄)

 キャリア相談の技法に興味を持つまでは、キャリアコンサルタントという専
門職の存在を知りませんでした。

 はじめは、「コンサルタント」という名称が持つイメージで、なんだか怪し
い資格だな・・・と思ったのですが、後に平成28年4月1日施行の改正職業
能力開発促進法により国家資格となった専門職であることを知りました。

 大学時代の同級生が、資格ホルダーであることも思い出し、アポイントをと
って、どのようなことを学ぶのか、どのような教育機関があるのか教えてもら
いました。

 そして、教えてもらった教育機関のうちの一つで、授業を受けることにしま
した。久しぶりにクラス形態で学んで、新鮮な気持ちになれたのも楽しかった
ですが、何より、様々なバックグラウンドを持つ人達と、垣根を取り払った交
流ができたことが一番の財産となりました。

 キャリア相談の練習で相談者役になるときは、包み隠さず自分の悩みや不安
について話しをしますので、お互いのリアルな悩みや不安を共有することにな
ります。

 授業では、「こんな話、誰にも言ったことがなかった。」とか、「自分がそ
んなこと思っているなんて初めて知った。」といった感想があちらこちらで聞
かれました。

 ちなみ、私は「語りの中に「責任」という言葉が頻出する。」と指摘されま
した。おそらく職業柄、知らないうちに「責任」を意識しているのでしょうね。

 司法書士は責任の割に報酬が安いとか、事前の相談なしに物事が進んでいた
としても、最終的に登記できないとなれば、登記の専門家である司法書士が何
とかしてくれと責任を負わされそうになるとか、責任というものについて、あ
まり良い意味付けをしていないことにも気づいたりして、ハッとさせられまし
た。(つづく)


2023.02.28(火)【夫婦財産契約登記】(東京・鈴木龍介)

 夫婦財産契約とは、夫婦となる者が婚姻の届出前に、その財産について法定
財産制(民法760条〜762条)と異なった定めをするというものです(民法755条)。

 夫婦財産契約については、婚姻の届出前に夫婦財産契約登記をしなければ、
夫婦の承継人や第三者に対抗することができません(民法756条)。

 夫婦財産契約登記は、「外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法
律」に基本的な事項が規定され、その細則として「夫婦財産契約登記規則」が
設けられています。

 夫婦財産契約登記は夫または妻となる者の居住地を管轄する法務局が所管し、
夫婦財産登記簿には、
 ⅰ)契約者欄として夫婦となる契約当事者の氏名・住所、
 ⅱ)夫婦財産契約欄として登記の目的・原因と原因日付・契約の内容、
 ⅲ)登記記録欄として登記記録を起こした事由等とその年月日
を記録するものとされています(夫婦財産契約登記規則 1条・別表)。

 夫婦財産契約登記の登記簿はコンピュータ化されておらず、縦書きの紙ベー
スです。

 登記申請の添付書類は
 ⅰ)登記原因証明情報(夫婦財産契約書等)、
 ⅱ)戸籍謄本(婚姻前の夫婦のもの)、
 ⅲ)住民票(婚姻前の夫婦のもの)、
 ⅳ)印鑑証明書(婚姻前の夫婦のもの)
で、登録免許税は18,000円です。

 ちなみに夫婦財産契約登記はかなりレアな登記でして、どのくらいレアかと
いうと令和3年の全国での登記件数は21件でした(法務省・登記統計)。


2023.02.27(月)【代表社員と就任承諾の要否】(金子登志雄)

 21日の東京会セミナーが終わるまでは、そこで話す内容を本欄のネタにし
ては講義での新鮮さがなくなるため、別のネタ探しに苦労していましたが、や
っと解放されました。少しずつ講義で取り上げたネタを徒然いたしましょう。

 さて、セミナーで私が最も重視した論点は、他の書籍にはほとんど触れられ
ていないことで、就任承諾には、①委任契約に基づく受任承諾に該当するもの
と、②登記上の要請に基づく委任によらず本人の意思確認に基づくものの2つ
があるということでした。持分会社で要求されるものは全て②です。

 社員ABCの合同会社でいうと、社員の地位に業務執行権・代表権が含まれ
るため、定款で業務執行社員ABC、代表社員Aと定めても、Aに代表権を授
権したのではなく、BCの代表権を制限したものに過ぎないため、会社とAと
の間には委任契約関係がありません。非取締役会設置会社の株主総会で代表取
締役を選定した場合と同じく、就任承諾は不要です。そのため商業登記法には、
持分会社の代表社員の登記に就任承諾書の添付を要求する規定がありません。

 ただし、登記の基本通達(H18・3・31民商第782号)により、定款の定めに
基づく社員の互選で代表社員を定めたときに限り、例外としてAの意思確認の
ため上記②の就任承諾書を要求しています。社員の過半数で決定する互選書で
は本人の意思が不明確なこともあり、虚偽登記防止のためのものです(法務省
見解、登記情報701号29頁参照)。互選書の不十分さを補完するものです
から、商業登記法の規定に反するとまではいえません(以上につき、立花合同
会社本第2版Q4-1-2に詳しいのでご確認ください)。

 以上ですが、実務でしばしば問題になるのは、松井ハンドブック4版640
頁に「定款で代表社員を定めた場合には、……定款により代表社員が誰かを判
断することができ、各社員が定款に記名押印している以上、別途、代表社員の
就任承諾書は要しない」とあるため、これをどう解釈するかです。

 松井氏は基本通達の作成者ですから、基本通達を逸脱した見解を出すはずは
なく、私は、これを適正に作成された定款で代表社員を定めたときはという意
味だと善解していますが、一部の少数の登記官は、定款で定めた場合に就任承
諾書が不要なのは、各社員が記名押印しているからだと解釈してしまうようで
す。そのため、司法書士が代理作成した電子署名付原始定款では社員が押印し
ていないから定款で代表社員を定めたときは別途就任承諾がいるとし、補正に
された例もあると聞いています。

 しかし、押印を根拠にするのは、株主総会議事録や社員の同意に署名や押印
を求めていない会社法の原則に反しますし、現行の登記実務は法の規定に基づ
くもの以外の添付書面には押印を要求しておらず、押印主義は時代遅れです。

 この見解は、定款に押印が不要な変更定款で代表社員を定める際に暗礁に乗
り上げます。例えば、定款に「令和5年4月1日からの代表社員はBとする」
とあったとき、4月1日以降に、この登記を申請するには、代表社員Bの名で
原本証明付定款を添付することになりますが、この場合も原本証明は信用に値
しないとして、就任承諾書が必要になるのでしょうか。

 会社設立後に定款で新たに代表社員としてCを定める場合に、定款変更の同
意書にCが押印しないと、別途就任承諾書が必要になるとしても、この就任承
諾書にはCの押印が不要です。押印がないから別の押印がない書面を提出せよ
では、説得力がありませんし、これでは、非取締役会設置会社で定款の附則や
株主総会で代表取締役を定めた際に就任承諾書が要求されていないことと整合
性が取れません。

 以上のとおり、押印根拠説は、定款で代表社員を定めた際は就任承諾不要と
いう大原則を空文化するもので、商業登記法や基本通達に反し、到底採用する
ことができません。登記所内でも多数意見になっていないのはこのためです。

 最後に、商業登記法や通達の範囲を超えた運用をされては、われわれ申請人
側に予測できない不意打ちの運用となり、法に従った適正手続ともいえません
ので、本欄閲覧の司法書士の皆さんには、司法書士代理作成定款は信用できな
いといわれたのも同様の補正要求には、「何だ、押印のない就任承諾書を提出
すればよいのか、簡単なことだ」と素直に応じずに、司法書士の地位を守るた
めにも、登記官にご再考を求めるようお願いします。


2023.02.24(金)【講義の補足(総株主の範囲)】(金子登志雄)

 21日は東京会で久々の会社法講義(テーマは「商業登記実務の最近の諸問
題」)でした。研修委員の方、大変、お世話になりました。

 私の講義は、知識の啓蒙ではなく、知識があることを前提に、プロの皆さん
に、この課題をどう受け止め、どう対処するかという実戦が基本であり、先例
を踏襲する対応では進歩がないと批判することが多いので、初めて受講した方
は驚いたことでしょうが、1つでもお役に立つものがありましたら、講義した
甲斐がありました。

 講義後に、特例有限会社に関する整備法第14条第3項「総株主の半数以上
であって、当該株主の議決権の4分の3以上に当たる多数」の総株主に自己株
主を含むかという質問を受けました。質問者は含まないで計算したら、補正に
されてしまったのだそうです。

 私は質問者と同じで、会社法実務〔全訂第2版〕Q4-3-6でも含まない
と書きました。

 試行錯誤した結果、現時点は次です。

 1.総株主の同意(組織変更や責任免除)には、自社(自己株主)を含めて
も同意することが間違いないため、含めても含まなくても問題ない。

 もっとも、責任免除議案のときに自社に賛否を求めるのはいかがなものかと
いう気がしますが、自社だけが反対で組織変更も責任免除もできないときは解
任すればよいので、実務で支障は生じないでしょう。

 2.総株主の半数以上の同意の場合は多数決となり自社の1票で結論を左右
するのはいかがなものか。

 例えば株主が3名200株(A100株、B50株+自社50株)のとき、
A賛成、B反対又は棄権のとき、自社を含めると特別決議が可決しません。
(A50株、B100株+自社50株)のときは自社が賛成でも、当該株主の
議決権の4分の3以上にならないので、自社を含めても結論を左右しませんが、
(A100株、B50株+自社50株)のときは、会社の運営に大きな影響を
与えます。

 やはり私見は自社は総株主にカウントすべきではないというものですが、明
確な先例でも出ない限り、管轄登記所が文理を重視しカウントするのもやむを
えない面があります。拙著にも増刷の際に「実務では文理を優先し含めておく
ことが無難」と挿入しておきましょう。


2023.02.22(水)【答えは自分の中に】(神奈川・酒井恒雄)

 全ての相談者にフラットに接するということは、ともすると淡々と業務手続
きを進めることにも繋がります。時折、果たしてそれでいいのだろうか? 
というモヤモヤ感を覚えていました。

 そして、余計な口は挟まないと決めはしたものの、やはり何か言いたいとき
がありました。

 リーマンショックの影響下、学生たちが就職難になった時期があったのです
が、そのときに何回か受けた相談の中で出てきたのが「仕方ないから起業する」
という言葉。ひとつも内定が取れそうにないから、とりあえず起業するしかな
いという「後ろ向きの姿勢」での起業相談です。

 さすがに、そんな姿勢では成功するはずがないと考え、気乗りしないなら法
人は設立しない方がいいと助言したりしました。

 その助言が本人のためになっていたらいいのですが、「成功するはずがない」
と考えたことが、相談者の可能性を潰す結果になったかもしれません。

 「いったい、どう対応すればいいのだろう・・・」と、またモヤモヤしてい
たところ、偶然に何かの本(ネット記事だったかもしれません)で、キャリア
コンサルティングに触れている箇所を目にしました。

 「答えは必ず本人が持っているから、アドバイスするという姿勢ではなく、
その答えを本人に気づかせることを一番に考える。」といったことが書いてあ
ったと記憶しています。

 これを読んだとき「これだ!」と思い、キャリア相談の技法を学びたいと思
ったのでした。(つづく)


2023.02.21(火)【リスキリング+チャットGPT】(東京・鈴木龍介)

 最近、「リスキリング(Reskilling)」という言葉をよく耳にしますが、ど
のようなものでしょうか? これまた今、話題の「チャットGPT」に“リス
キリングについて教えて”と入力したところ、以下のような回答が返ってきま
した。

 ちなみに、チャットGPTとは OpenAI(EV自動車「テスラ」で有名な
イーロン・マスクが運営等に参画している人工知能研究所)がリリースした、
AI(人工知能)によって文書を生成するというサービスです。

===================================
 「リスキリング(Reskilling)」とは、従業員が現在の職務に必要なスキルに
加えて、新しいスキルや能力を習得することを指します。これは、新しい技術
の導入、ビジネスモデルの変化、市場環境の変化などの要因によって、従業員
が求められるスキルが変化する場合に役立ちます。
===================================

 なお、リスキリングについてのNHKの解説は次のとおりです。
 “リスキリング”とは ~これからの日本に必要な“リスキリング”のカタ
チ~ ―NHK みんなでプラス
   https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0020/topic057.html

 まあ意味内容としては、あたらずとも遠からずというところですが、文章
(少なくとも日本語の文章)としてはまだまだという感じがします。
なお、AIが常に学習を続けるので、同じ質問に対しても回答は異なってくる
ようです。

 関連して、このようなものも登場するようです。司法書士の業務にも影響が
でるかもしれません。

 「「チャットGPT」で法律相談 弁護士ドットコム、
 今春開始へ・Yahooニュース
   https://is.gd/OMoXgX


2023.02.20(月)【カーブアウトM&Aとは】(金子登志雄)

 拙著『会社法実務〔全訂第2版〕』は、改訂版にもかかわらず、アマゾンの
会社法部門の人気ランキングで、ここずっと、「時間」単位では1位でないこ
ともありましたが、「日」の単位では、第1位を維持し続け、司法書士の地位
向上(司法書士は会社法手続の専門家という広報)に私なりに寄与してきたつ
もりですが、連続20日程度の天下で終わりました。

 3月22日に商事法務が『カーブアウトM&A』という書籍を発刊するよう
で(編著者は長島・大野・常松法律事務所)、その予約販売がここ数日間、拙
著を抑えて第1位の地位を占めてしまったためです。

   (現時点ではどうでしょうか)
           https://is.gd/QhYD5G

 ところで、「カーブアウトM&A」という用語は、私がM&A業務に従事し
ていた昭和後半には聞いたことがありませんが、どういう意味だと思いますか。

 変化球(野球の curve)で相手をアウトにして乗っ取ることではなく、切り
離すという意味の carveでした。要するに、将来性のあるベンチャー事業部門
を会社分割や事業譲渡(や現物出資)で切り離し、ここに外部資本なども投入
し、成長を図ることのようです。

 しかし、M&Aとは経営支配権を他に渡すことなのに、これは子会社のまま
でもよく、その方が多いようですから、事業再編の手法であって本来のM&A
とは思えません。それに、採算事業部門を会社分割で切り離し、不採算部門を
清算する会社分割を「第2会社方式」といってきたのですから、ここも日本語
を使い「戦略型第2会社方式」とか「第3会社方式」といってほしかったなと
思いました。

 もっとも、『カーブアウトM&A』という題名だからこそ、目を引いたわけ
で、拙著も今度改訂する際は目立つように『異次元の会社法実務』とでも改題
しましょうか。


2023.02.17(金)【認知バイアス(少子化問題で)】(金子登志雄)

 13年前に野党自民党の女性議員が政権党である民主党の少子化対策につき、
「愚か者め!」と口汚く罵倒したのに、いまや岸田総理自身が「異次元の少子
化対策」を主張しています。前から分かっていたことですが、それほど少子化
は深刻な問題になっています。

 酒井さんの投稿に「認知バイアス」(思い違いといったような意味)が登場
しましたので、これの多い少子化問題を取り上げてみました。ものの見方・考
え方・捉え方は、私の最も関心のあるところです。

 まず、なぜ少子化が問題なのかです。人口の少ない方が競争もなく取り分が
多くなり、人々は幸せになるのではないかという認知バイアスに陥りやすいの
ですが、国力という面では、生産人口や消費人口が多いほど経済活動が活発に
なります。簡単にいえば、都市部の雑踏と過疎地のどちらを選ぶかということ
ですが、過疎地では司法書士は失業してしまいます。

 少子化対策には、
  ①教育費の無償化、
  ②女性の子育て負担の軽減、
  ③性差への寛大さ
の3つが必要だといわれています。

 もう1つ、成田悠輔とかいう若手論客の「高齢者は集団自殺すればよい」と
いう提言もありますが、これは成田君が高齢者になってから見本を示してもら
うことにいたしましょう。

 ①は先進国になるほど学歴が重視され、家庭における教育費負担が深刻にな
るためです。子供3人全員を塾に通わせ大学に進学させるのは無理だと思い、
子供を2人以内にし十分な教育を受けさせたいというのが親心です。よって、
文明国ほど少子化になるというのは認知バイアスであり、教育に対する国の政
策が原因だということです。高校の無償化などが必要です。

 ②は子供は親が育てるものではなく国や社会が育てるものという国の政策、
具体的には保育園や学童保育の充実等を図らないと達成することができません。
こうすれば女性も活躍でき家や子供に縛られません。

 女性の地位が向上すれば少子化になるというのは認知バイアスです。先進国
では女性の地位が高くなっても少子化になっていません。なっているのは、女
性の地位が比較的に低いドイツや日本、韓国です。ドイツでは移民受入れ策を
採用していますが、日本及び韓国では封建的な家父長制や家制度の文化(オン
ナ子供は黙っておれのオヤジ文化)があり、女性の地位の向上が不十分です。

 ③は、家制度文化の影響か、未婚の母や母子家庭に対する差別も少子化を招
きます。子供は国や社会の宝であるなら、未婚の母あるいは母子家庭がありふ
れた社会になってもいいはずですが、シングルマザーは派遣労働にしか就けず、
母子家庭の貧困率は世界でも日本は突出しています。

 関連して、LGBTや同性婚に対する性問題への不寛容社会は、逆に少子化
を招きます。親族以外から養子を迎えない文化も、この延長でしょうか。

 結論として、いまだに家父長制の価値観が色濃く残り、移民等に不寛容な社
会風土や政権党では日本は衰退一直線を避けられませんので、「異次元の少子
化対策」のためには、岸田総理にも女系天皇制さえ否定する党内の勢力と戦う
気骨でもみせると同時に、米国の言いなりになる軍事力中心の強化よりも国力
全体の向上に意を注いでほしいものです。

 蛇足ですが、国会議員の後継ぎの若い息子が公式サイトに家系図を掲示し、
家柄自慢をしたのには驚きました。同時に「他山の石」で、私も昭和オヤジの
価値観を自省しなければなりません。


2023.02.16(木)【合同会社の利益の配当の制限】(仙台・立花宏)

 今日は、合同会社の利益の配当の制限について考えてみたいと思います。

 Aが唯一の社員(出資100)として設立した合同会社において、最初の決
算で200の損益が発生しました。

 翌期に、Bが100を出資して加入しました。その期の決算の損益は100
の赤字(100の損失)でした。この赤字は、Aに50、Bに50が分配され
ました。この結果、現在の各社員の持分の状況は以下のようになっているもの
とします。

    社員    資本金   資本剰余金   利益剰余金
    A     100      0      150
    B     100      0      ▲50
     合計   200      0      100

 この状態の合同会社に対して、Aが150の利益の配当を請求しました。合
同会社はこの請求に応じることができるでしょうか。Aには150の利益が分
配されているのであり、可能なようにも思えます。

 結論としては、できないということになります。会社法628条に、配当を
する日の利益額を超える場合は、配当をすることができないとされているから
です。なお、この利益額は、意訳すると、会社全体の利益剰余金(①)と配当
請求をした社員に計上されている利益剰余金(②)のいずれか少ない額です
(会社計算規則163条)。

 上記の持分管理表から、①は100、②は150であり、いずれか少ない額
は①の100ということになります。配当請求額された額は150ですから、
これを超えているため、配当をすることができないということになります。

 ①と②の数字の意味ですが、①は会社債権者との関係での制限、②は他の社
員との関係での制限ということになります。

 もし、この制限に違反して配当をしてしまった場合、配当を受けた社員は、
合同会社に対して、配当額に相当する金銭を支払う義務を負います。

 配当の業務を執行した社員についても、原則として、合同会社に対して、配
当を受けた社員と連帯して、当該配当額に相当する金銭を支払う義務を負いま
す。ただし、この業務を執行した社員の責任は、①の額を超える部分について
は、総社員の同意があれば免除することができます(会社法629条2項、会
社計算規則163条)。

 ①の額を免除できないのは、会社債権者に対する関係での制限の部分だから
であり、②は、他の社員との関係での制限の部分であるため、総社員の同意が
あれば、その責任を免除することを可能としたのだと思われます。

 配当を受けた社員(A)が、合同会社に対し、前記の義務を履行した場合、
これにより合同会社の利益150が生じます。これにより増加する利益剰余金
150はどのように充当されるのでしょうか。

 原則通り、出資の価額に応じて分配されるのであれば、AとBに均等に分配
されることになります。これについて、会社法立案担当者の解説(注)によれ
ば社員全員に分配されるのではなく、義務を履行した社員、すわなち、配当を
受領した社員(A)の利益剰余金を増加させることになるそうです。利益の配
当の前の状態に戻すという意味なのだろうと思います。

 ただし、利益剰余金の増加原因(会社計算規則32条1項)ではないので、
損益計算書を通して、決算を経て計上されるのだと想像しますので、翌期の損
益の分配の際は注意が必要だと思います。それに、配当を行う際は、所得税の
源泉徴収をしていると思いますので、いろいろと悩ましい問題も出てくると思
います。

 こうした法令違反の配当をすることがないよう、十分、注意が必要だと思い
ました。
 
注)「立案担当者による新会社法関係法務省令の解説」(商事法務)167頁


2023.02.15(水)【認知バイアスとか】(神奈川・酒井恒雄)

 私が起業相談において犯していた大きな間違いは、「おそらく失敗するだろ
う」と考える判断基準が、根拠の乏しい基準、つまり自分が勝手に作りあげた
基準だったということです。

 いわゆる認知バイアスというやつです。緻密な事業計画を立て、プレゼンテ
ーションも上手な人は、「よく考えているな、この人は成功するに違いない。」
と思い、事業計画に甘さがあり、話の内容も今一つピンとこない人は、「ちょ
っと危険だな、おそらく失敗するな。」などと思っていました。

 前者には、「起業すべき!」と後押しし、後者には「もう少し考えた方がい
いかもね。」という感じの対応をしていたのです。しかし、実際どうだったか
と言いますと、結論としましては「やってみなければ分からない。」という一
言に尽きます。

 皆さんも経験があるかもしれませんが、実際に起業してみると、有望視して
いた人が全く駄目で、ノーマークだった人が成功するといったケースも珍しく
ないですよね。

 そして、「私には起業を勧める権利も、起業を思いとどまらせる権利も、ど
ちらもなし!」という考えに至りました。こうして書くと当たり前のことです
けど、相談者を前にすると、つい口出しやアドバイスをしたくなるものです。
(相手がアドバイスを求めている場合はいいですけど・・・。)何回か予想が
外れるケースを見て、以降、相談者には全てフラットに接するということにし
たのですが、そこでまた葛藤が起こりました。(つづく)


2023.02.14(火)【企業とプライバシー】(東京・鈴木龍介)

 前回に引き続き「プライバシー」関連を取り上げてみたいと思いますが(だ
いぶ徒然な感じですが・・・)、企業にはプライバシーというものがあるでし
ょうか。

 「他人の干渉を許さない、各個人の私生活上の自由」というプライバシーの
定義を踏まえると対象はあくまで自然人で、法人等の企業は対象とはならない
といえそうですが、少し見方を変えて“プライバシー≒秘密”というかたちで
広くとらえますと、企業にも当然、秘密はありますので、プライバシーもあり
ということになりそうです。ちなみに、企業が有する秘密(企業秘密)の一般
的な定義としては、「企業活動に関する公表されていない(公表を欲しない)
もので、経済的価値を持つ情報」とされ、英語ではtrade secretとなります。

 前述と異なり企業秘密を狭く解釈したとして、例えば企業の保有する顧客名
簿はおおよそ企業秘密に該当するわけで、そこには顧客のプライバシーを含む
ケースも少なくありません。仮にそれがプライバシーにあたらないとしても個
人情報であることは間違いありませんので、企業としては保護等することが求
められており、万が一、企業が顧客名簿――プライバシーを含む個人情報――
を流出させてしまったような場合には大きな打撃を受けることになります。

 なお、個人情報とは、本人の氏名・住所・生年月日等により特定の個人を識
別できる情報ということになりますが、日常生活においては、プライバシーと
区別せずに用いられているような気がします。

 個人情報を保護等することを目的とした法律は「個人情報(の)保護(に関
する)法(律)」ということになりますが、あくまで企業等が「個人情報」を
適切に取り扱う方法等を規律したものであり、プライバシーの保護を直接の目
的とはしていません。ただし、個人情報保護法が遵守されることによって、意
図しない「個人情報」の取扱いが抑制され、結果的にはプライバシーも保護さ
れるということにつながっていくわけです。

 また、Pマーク(プライバシーマーク)というものを耳にしたことがあると
思いますが、これは企業等が個人情報を取り扱うときの仕組みや手続、そして、
それを運用する体制が制度で求める基準を満たしているかを評価し、適合した
企業等にプライバシーマークの使用を認めるという制度です(付与された企業
等は約17,000社)。

 以上を踏まえると企業秘密とプライバシーはイコールの関係でないにせよ、
密接関連したものといってよさそうです。


2023.02.13(月)【事業承継、M&A、IPO】(金子登志雄)

 本欄で鈴木さんや酒井さんから表題が話題として出されましたので、私の感
覚と姿勢について書いてみます。

1.事業承継
 税理士中心の士業がこれを口にするのは、資産家の相続税対策の意味での事
業承継です。分割型分割で分社したり、属人的種類株式を定めたりです。司法
書士としては、その法務手続をお手伝いするだけです。税理士との付き合いの
広い方は、この仕事が多いことでしょう。税理士作成のスキームに、こうした
らどうかと提案することができるセンスがあるかどうかの勝負です。

2.M&A
 これも今や専門業者が多数存在し、司法書士が主導で動くことはありません。
業者が企画したスキーム(株式譲渡か株式交換か株式交付か)や手続日程につ
き、M&A当事者である顧客から、これに応じてよいかと相談を受けることが
ある程度です。

 M&A業者と人脈を築けば、この仕事が多いかというと、不動産屋と同じで
業者自体が業務知識を持っていますし、社内に弁護士などもいるため、これは
期待薄だと思います。また、登記事項の発生が少ないので、M&A後の状況に
対する見通し力が勝負です。

3.IPO(株式の上場)
 たび重なる増資や株式分割、定款変更、株主総会の運営などに関われるので、
もっともやりがいのある仕事だと思いますが、これは上場を目指すベンチャー
企業を顧客にしていないと相談を受けることはまずないでしょう。
 
 IPOもだいぶ楽になったとはいえ、狭き門であることに変わりがありませ
んし、それ以前に現在の事業が順調に成長するとは限りません。数社あった私
のベンチャー企業の顧客もすでに解散済みです。

4.結論
 結局のところ、上記のような案件に巡り合うには人脈が必要であり、営業力
が必要です。また、営業力があっても、専門能力が不十分では対応できません。
さらに、ビジネス社会は厳しい世界ですから、ぬるま湯にどっぷり浸かった司
法書士によいコンサルができるのかという「職種適性」の問題があります。

 以上、辛口コメントで、揚げ足をとるような内容になりましたが、企業法務
に従事するとはビジネス社会と接触することです。経験を積んで行けば上記の
ような仕事が舞い込むことでしょう。顧客を講師と思い大いに経験を積んでく
ださい。

5.ついでに、ビジネス社会「感度」チェック
 株主総会で取締役に選任され「席上就任」したら、出席役員に名前を載せる
べきだと思いますか。
 イエスと答えた方は登記世界の井の中の蛙です。現実の株主総会は、取締役
席(議長席を含む)と株主席の2つであり、取締役候補者は株主席の最前列に
座っています。そこで「席上就任」しても、壇上の取締役席に席を移動するわ
けではありません。取締役になったのだから議案の説明義務を負うのですか。
負うわけがありません。これでも株主総会議事録に記載する出席役員といえま
すか。
 ビジネス社会の常識を鍛えて公務員世界の登記所職員を説得するのも企業法
務従事司法書士の重要な役割です。


2023.02.10(金)【期限付解散事例】(金子登志雄)

 先週の金曜日にお知らせした。解散を決議し定款における目的を「当会社は、
会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを目的とする」と変更
しながら登記まではしていない中部金融証券株式会社は、平成29年6月26
日の定時株主総会において、「平成29年9月30日を効力発生日として」解
散しています。

 https://fs2.magicalir.net/tdnet/2017/8513/20170606498088.pdf

 ぴんと来た方もいらっしゃるでしょうが、期限付解散です。登記実務では、
明文の根拠もないのに存続期間の定めの登記が必要です(株式併合で自動的に
発行可能株式数が減少しないとされたことからもお分かりのとおり、会社法下
での定款変更は明文の根拠が必要のはずです)。

 私は、「平成29年9月30日を効力発生日として」を3月決算会社が半期
終了をもって解散するというのだから、9月30日24時に解散と受けとめた
ため、存続期間は「平成29年9月30日まで」と登記したいところですが、
これでは登記実務上、翌日の「10月1日存続期間満了により解散」となって
しまうため、知恵者が「9月30日午前0時解散という意味だ」ということに
したのでしょうか、登記では存続期間「平成29年9月29日まで」とされ、
翌日の「9月30日存続期間満了により解散」となっていました。 

 念のため、拙著を読んでいる方はお分かりでしょうが、存続期間の満了日の
翌日付で登記せよという登記実務が間違いです。9月30日付株主総会で本日
の終了時に解散すると決議した場合と同様に、終わりを示す登記の場合は、存
続期間の満了日を解散の日にすべきだからです。

 それはともかく、この会社の登記記録をみると、存続期間「平成29年9月
29日まで」につき「平成29年7月4日設定」とありました。その日に臨時
株主総会を開催したとは思えませんので、これが何を意味するのか不明です。
設定日は、解散を決議した定時株主総会の平成29年6月26日ではないので
しょうか。

 司法書士仲間に、これは何だと思うかと質問しても、答えはありませんでし
た。予想どおりですが。たぶん、期限付解散は不可だと知り、あわてて7月4
日の取締役会で決議したのだろうと推測しますが、不思議な登記でした。


2023.02.09(木)【再登場】(神奈川・酒井恒雄)

 皆様大変ご無沙汰しております、神奈川の酒井です。久しぶりに投稿させて
いただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 徒然日誌を読まれている方は、おそらく会社法や商業登記分野に関心をお持
ちの方が多いと思います。より具体的には何について関心をお持ちでしょうか?
M&A?それとも事業承継?、起業支援?あるいはIPO支援?

 いずれの関心も、純粋な興味はさておき、執務環境に大きな影響を受けてい
るのではないでしょうか。私の大きな関心ごとは「キャリア」についてです。

 「それって司法書士業務と何の関係があるの?」と思われるかもしれません。
これを話すと長くなりますので割愛します・・・というのが流れかもしれませ
んが、この場を借りて、その長い話をさせていただこうかと思います。

 思い返せば、キャリアに関心を持ったきっかけは、学生の起業相談だったと
思います。以前、某大学の学生団体から、起業の際の相談者として紹介を受け
ていた時期がありました。残念ながらこの学生団体は解散してしまったのです
が、沢山の相談を受けて色々と勉強をさせてもらいました。始めのうちは、相
談者に対して、「学生なのだから、どんどんチャレンジしてごらん!」という
スタンスで臨んでいたのですが、徐々に意識が変わってきて、背中を押してあ
げたいと思う一方で、「安易に起業の後押しをするのは無責任なのでないか?」
という葛藤が起こり始めました。

 私が言うまでもありませんが、現実は厳しく、成功する人より失敗する人の
方が多いのです・・・。そこで、「このまま起業させたら失敗する確率が大き
いな・・」と思った相談者には、「もう少しよく考えてみたら?」などと言っ
て、起業を思いとどまらせるような助言をしたりもしました。しかし、これが
大きな間違いであることに間もなく気づきました。(つづく)


2023.02.08(水)【インターネット版官報が添付書面に】(金子登志雄)

 数年前に合併(だったか減資だったか)の登記を申請しようと準備していた
ら、官報がみつからず焦ってしまったことがありました。

 慌てて四方八方に電話し、持っていないかを確認し、あるところから余りが
あるともらい、その場を凌ぎましたが、もうこの心配をする必要がなくなりま
した。インターネット版官報の提出が認められたためです。

 では、どうやって添付するのかということですが、必要になったら、書式集
の共著者である司法書士ソフトのリーガル社の重松取締役を頼ればいいやとの
んびり構えていたところ、同社のHPに既に掲載されていることを知りました。
下記の「リーガル社員のここだけの話」です。

  http://legal.blogat.jp/legal_blog/2023/02/pdf-e476.html

 さっそく、4月1日合併で公告した1月6日の合併公告で試してみようと思
ったら、過去30日を過ぎており、使えませんでした。他社事例の公告をエッ
ジで開き、上書保存をして試してみました。上書保存というのは元の場所に保
存で上書きするものと思い込んでいましたが、無事にパソコンに保存すること
ができました。

 クロムとエッジで官報を開いた際の画面が相違するとか、国立印刷局のファ
イルなのに公文書ではないとか(設立時電子定款は公文書フォルダですから、
ファイルとフォルダの相違でしょうか)、こういうことに疎い私ですが、いま
だに電子申請さえしていない司法書士が多数のようなので、私は平均的司法書
士でしょう。沓脱司法書士のようにツイッターまで自在に使いこなす司法書士
とは世代の差を感じてしまいますが、環境ですね。日常生活でも電子化の進ん
だ中国では老人でもスマホを使いこなしています。

 しかし、登記の電子問題は気にしていません。なぜなら、電子文書を作成す
るのは顧客であり、我々はその認証方法だけ知っていれば済むからです。それ
で困ったら、リーガル社などに駆け込めば済みます。こういう人脈も持ってい
ることが重要で全ての専門家になる必要はないでしょう。会社法・商業登記の
駆け込み寺は当事務所で引き受けていますので、どうぞご安心ください。

(東京司法書士会の皆様へ)
 困ったときの駆け込み寺本の拙著「会社法実務〔全訂第2版〕」は東京司法
書士協同組合編なのに、組合のHPに出ないなと思っていましたら、「協力会
社・提携先からのお知らせ NEW」の2月3日付に出ていました。ここは誰もみ
ないので見過ごしてしまうところですが、ぜひ開いてみてください。
 また、東京司法書士会のHPに私を講師とする2月21日付セミナーの案内
が出ていますので、こちらもよろしくお願いします。
 なお、拙著は既に発売中です。アマゾンは人手不足なのかいまだに「予約受
付」の表示です。実売に影響はないと信じますが、登記なら補正ですね。


2023.02.07(火)【プライバシー】(東京・鈴木龍介)

 「プライバシー」は英語の privacyをカタカナ表記したものですが、すっか
り日本語として定着しています。日本においては比較的新しい概念で、アジャ
ストする和訳がなかったせいか、英語のまま用いられたのかもしれません。

 プライバシーについて、国語辞典を紐解いてみると「他人の干渉を許さない、
各個人の私生活上の自由」という説明がなされています(広辞苑[第7版])。
類似した用語として「プライベート」というのがあります。こちらも英語の
privateをカタカナ表記したものですが、私事とか非公開という和訳が充てられ
ています。プライベートの対義語としてはパブリック(public)ということで、
プライバシーとは少し意味内容が異なって使われていると思います。

 プライバシーとは“守られるもの”という見方ができるかと思いますが、法
律的に整理すると「プライバシー権」ということになります。具体的には、個
人の姿や情報などの私生活上の事柄を守るための権利として、日本国憲法13条
で保障される基本的人権の一内容であるとされていますが、民法等で明文化さ
れたものではなく、解釈や判例(たとえば“『石に泳ぐ魚』事件”)による権
利になります。

   https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=76093

 しばしば芸能人などが主張する「肖像権」(自分の顔や姿態をみだりに撮影
や公表されたりしない権利)は、プライバシー権の一種とされていますが、プ
ライバシー権の侵害にあたるかどうかの線引きは難しい面があります。最近で
はSNSでの書き込みがプライバシー権の侵害にあたるものとして、大きな社
会問題にもなっています。


2023.02.06(月)【元気な老人達】(金子登志雄)

 「会社法実務〔全訂2版〕」はアマゾンで、まだ予約販売になっていますが、
今週には書店に並ぶことでしょう。しばらくお待ちください。

 さて、ウクライナ問題に関する見解の相違で、デヴィ夫人(83歳)と鈴木
宗男氏(75歳)によるお互いを「老害」と罵りあうほどのバトルは、まだま
だ若いなと世間にアピールしているようで、ほほえましく感じてしまいます。

 デヴィ夫人といってもテレビにタレントとして登場するセレブの女性としか
若い人は思わないでしょうが、私の世代からは、苦労人であり、赤坂のクラブ
ホステス時代に、インドネシアの建国の父スカルノ大統領の第3夫人になった
ものの不幸にも政変でスカルノが失脚し、若くして海外生活を余儀なくされる
など苦労の絶えない人というイメージです。それでも、あの威厳と輝きは、り
っぱなものです。

 鈴木宗男氏も北海道の田舎で家の中まで雪が吹き込む貧困家庭に育ち、国会
議員にまでなった人ですから、りっぱなものです。

 お二人の偉いところは信念で行動するところでしょうか。もっとも、なぜ、
あの共産主義までも認めていたスカルノの夫人が超右翼的な立場や言動を繰り
返すのか、鈴木氏は、ブログでの発言は素晴らしいのに、維新の国会議員であ
るのはなぜか、自慢の一人娘が自民党に鞍替えしたのはなぜかと私には到底理
解することができませんが、彼女・彼の内部では矛盾がないのでしょうから、
支持はしていませんが、認めてはいます。

 デヴィ夫人と鈴木氏のバトルであるウクライナ問題も、ゼレンスキーが大統
領でなかったら、バイデンが米国大統領でなかったら、プーチンがロシア大統
領でなかったらの3つのうち、デヴィ夫人は西側諸国の多数派であるプーチン
に原因があるといい、鈴木氏は西側では少数意見(世界的には多数派)のゼレ
ンスキーやバイデンに原因があると主張しているわけですが、私が残念に思う
のは、米国内ですら鈴木意見がそれなりに主張されているのに、日本国内では
少数意見を非国民扱いする同調圧力がものすごいことです。多民族国家でない
ためでしょうが、もう少し異なるものに対して慣れてほしいものです。

 私個人としては、「馬鹿な大将、敵より怖い!」で、為政者のせいで戦争に
巻き込まれるのはまっぴらご免という意味で、岸田総理にも、ゼレンスキーの
ように隣国を挑発し戦争を呼び込んでほしくないですし、台湾有事という米国
だけが戦争特需で儲かる戦略(誘い)にも乗らずに、10年先、20年先をみ
て日本の安全のために行動してほしいというもので、日本では少数意見です。


2023.02.03(金)【解散、清算と空振り規定】(金子登志雄)

 株式会社が解散し事業株式会社から清算株式会社に移行したら「目的」のと
ころに「当会社は、会社法第2編第9章に定めるところにより清算することを
目的とする」との登記が可能かと新保先生のブログで問題にしていました。

 昔(平成20年頃)、解散したら取締役や取締役会は職権抹消されるのだか
ら(規則72条)、株式の譲渡制限規定に登記されている「株式の譲渡による
取得は【取締役会】の承認を受けなければならない」についても、定款変更の
義務があると当局の一部から主張され、我々は猛反発したものです。登録免許
税が3万円も余計にかかり、零細企業いじめの解釈だからです。私も責任免除
規定の取締役会も変更義務があるのか、そこまで主張するなら目的も「清算目
的」に変更義務があると主張すべきだと皮肉を込めて主張していたものです。

 この当局の一部の解釈は実務の多数派になれませんでした。定款変更決議し
ない限り、「譲渡制限承認機関である取締役会」は有効に存在するという前提
で思考しており、法解釈の原則である「目的達成不能の確定=無効」という思
考を欠いていたからです。

 つまり、解散決議というのは事業会社の閉店を決議したわけですから、その
効果として業務執行機関である取締役や取締役会は自動的に失職・閉鎖になる
のは当然のことであり、定款のその部分は、形式上存在しても無意味な「空振
り」文言になり、定款の文言を直す必要はあっても、そうすべき法的義務まで
はないというべきだからです。義務があるなら、失職した取締役は義務違反で
過料対象でしょうが、それでよいのでしょうか。

 この定款変更は清算株式会社の定款変更ですから、清算人がその定款変更義
務を負うかというと、清算人の職務である「現務の結了」に含まれるとも思え
ません。会社継続の可能性もあり、その定款文言は冬眠させておけば済むこと
です(会社法を根拠に株主総会と読み替えられるので支障はありません)。

 以上に対して、事業会社時代に解散決議すると同時に譲渡制限規定の取締役
会を「株主総会」や「清算人」に変更したら、定款の文面を有効に変更したわ
けですから、これは登記義務があり、清算人はその義務を負うと考えます。

 同様に、目的も「清算目的」に変更したのなら、登記義務があると私は思う
のですが、なぜか、銀行や証券など金融関係の会社の解散では、定款変更はし
たのに、登記まではしていません(例えば、中部証券金融株式会社)。私の推
測ですが、金融庁の指導があったのではないかと疑っています。

 これにつき、清算目的では営利事業でないから登記できないのだとの見解も
あるようですが、営利事業の後始末も営利事業です。そうでなければ、清算株
式会社は非営利法人になってしまいます。

 次に、意味のないことは登記できないとの見解がありますが、1株1議決権
が種類株式の内容で登記されている例は多いといえます。「適法な一切の事業」
とか「商行為」という事業会社の目的は意味がないのに登記されています。

 もっとも清算目的を登記しなくても、2週間以内の登記義務違反で過料とい
うことにはならないでしょう。清算人の登記の存在によって清算会社であるこ
とは十分に分かるためです。結論として登記すべき法的義務(拘束力)までは
ないが、申請すれば登記されるべきだというところが穏当な解釈でしょうか。


2023.02.02(木)【スポーツのTV観戦】(島根・根来川弘充)

 昨年、サッカーのワールドカップでは日本の活躍で大変盛り上がりました。
しかし、放映権の関係で、テレビでの取扱いがいままで以上に少なくなってい
ました。

 一方でインターネットでは、他国の試合もすべて見ることができ、見る側の
利便性はよくなりました。

 ただ、今回の大会は無料で見ることができましたが、これからは、お金がか
かるだろうと思いました。

 サッカーだけでなく、あらゆるスポーツを視聴する度に、お金を気にする必
要があるかと思うと、いままでテレビで無料で視聴していた時代を生きた人間
としては、何か複雑な思いになります。

 大相撲の話になりますが、今年の1月場所で、島根県出身の唯一人の関取で
あった隠岐の海関が引退しました。テレビでスポーツを見る機会がまた少なく
なりそうです。


2023.02.01(水)【合同会社の合併と対価の割当て】(仙台・立花宏)

 先日、知り合いの司法書士から、株式会社と合同会社の合併について、次の
ようなご相談をいただきました(事案を簡略化しています)。皆様なら、どう
回答されるでしょうか。

相談内容
 株式会社Aと合同会社Bが吸収合併する(存続会社はA)。株式会社Aの株
主は甲と乙で、持株比率はそれぞれ8割と2割。合同会社Bの社員も甲と乙で、
出資額はそれぞれ80と20。両社の株主(社員)資本の状況は次のとおりだ
が、この合併で、株式10株を発行し、出資比率どおりに、甲と乙にそれぞれ
8株と2株を割り当てようと思うが、問題はないか。

 株式会社A            合同会社B
  資本金      100     資本金   100
  その他利益剰余金 100     利益剰余金 100
 
 特に問題はないようにも思えますが、いかがでしょうか。なお、関与してい
る会計事務所とは、後日、詳しく打ち合わせをする予定のようです。

 私は、ちょっと気になることがあり、その知り合いの司法書士に確認してい
ただいたことがありました。それは、利益剰余金の状況です。ご承知のとおり、
合同会社においては、利益剰余金は、社員ごとに管理する必要があります。決
算が行われ、損益が確定すると、社員に分配されます。分配された利益につい
ては、各社員が配当を請求することができます。つまり、分配された利益(剰
余金)は、各社員の持分の一部となっているのです。

 会社設立後、利益の配当はなされていないそうですが、登記の内容を確認し
たところ、合同会社Bの社員乙は、会社設立後に加入したことが読み取れたの
です。そのため、利益剰余金については、甲と乙がそれぞれ8割と2割の比率
で権利を持っているとは限らないと思えたのです。

 会社の担当者に確認してもらったところ、利益剰余金100は、乙の加入前
に生じたものだということがわかりました。そうすると、合同会社Bの社員資
本200のについて、それぞれの持分は、甲が180(資本金80+利益剰余
金100)、乙が20(資本金20)ということになります。

 個人的には、存続会社株式会社甲が割り当てる株式数は、あくまでも、帳簿
価額基準で考えれば、それぞれ、9株と1株とするのが妥当と考えることもで
きるように思えました。もっとも、実際にそれぞれの持分割合を計算する場合
は、合同会社乙の最終の決算期後の業績の変動も加味した時価基準で計算する
のが妥当とも考えられ、割当ての比率の検討は、もっと複雑なのだろうと思い
ます。

 私は、相談をくださった知り合いの司法書士に、以上のことを説明し、会計
事務所との打ち合わせでは、そうした点も考慮して、会計事務所に割当ての比
率を検討してもらったほうがよいのではないか、とアドバイスしました。
 
 なお、参考までに、乙が株式会社であれば、割り当てる株式数は、その有す
る株式数に応じて割り当てる必要があります(会社法749条3項)。しかし、
条文上は、合同会社については、そうした制約は規定されていません。そもそ
も、合同会社の場合は、原則として、総社員の同意が必要であり、割当ての比
率は、出資比率に応じる必要はないのだろうと思います。

【ご案内】
 司法書士の皆様向けのご案内になります。これまで、何度か、この徒然日誌
で、新しい法人類型である「労働者協同組合」について、ご紹介してきました。
このたび、日本司法書士会連合会が主宰する研修会(開催日:3月3日(金))
において、この労働者協同組合に関する研修会の講師を務めさせていただくこ
とになりました。同研修会では、日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連
合会のご担当者による制度創設の背景等のご講演もいただく予定です。今後、
登記関係のご相談も増えていくものと思います。日司連研修総合ポータルで募
集しておりますので、ご興味のある方は、ぜひ、お申込みください。


2023.01.31(火)【大阪司法書士会 研修】(東京・鈴木龍介)

 先週の1月28日(土)、大阪司法書士会(大阪会)にお招きいただき、研
修の講師を務めて参りました。大阪会は東京司法書士会に次ぐ大規模会(会員
数約2450名)ですが、研修講師としてお話しさせていただくのは2014
年以来です。

 今回のテーマは「司法書士のための事業承継とM&A+α」というもので、
旧知の大阪会の北詰健太郎さんにジョインいただきました。

 本研修会は、大阪会の会館とオンラインによるハイブリッドの形式で開催さ
れましたが、極寒の中(道中の米原あたりは完全に雪景色でした)、会場には
30名を超える先生方にご参加いただきました。ありがとうございました&お
疲れさまでございました。

 司法書士会での企業法務関係の研修の講師は久しぶりでして、具体的には、
以下の3部構成で、あっという間の4時間でした(話している方はですが)。

 パート1:前提知識の整理~中小企業の事業承継とM&A
 パート2:ケーススタディ~事業承継型M&A(株式譲渡スキーム)
 パート3:ディスカッション~中小企業法務のエッセンス

 研修終了後の懇親会では、大阪会の執行部をはじめ担当委員会の皆さまに過
分なおもてなしをいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。


2023.01.30(月)【短時間の天下でしたが、拙著が快挙!】(金子登志雄)

 27日金曜日は生涯忘れられない記念の日になりました。夜中の8時半に、
アマゾンで会社法本の売行きランキングをみましたら、目を疑いました。
  第1位:会社法実務〔全訂第2版〕
  第2位:親子兄弟会社の組織再編の手続〔第3版〕
  第3位:株式交付活用の手引き
であり、拙著が金銀銅の独占でした。

 しかも、組織再編の手続〔第3版〕が従来どおり会社法カテゴリーに加わっ
ていたら、「第1位:組織再編の手続〔第3版〕」となり、第4位まで独占で
した。もちろん、奇跡であり、こんなことは2度とありえないことですので、
印刷して保存しました。案の定、短時間の天下でした。
     (現時点のランキング)
        https://is.gd/QhYD5G

 こんなこともあるのですね。きっと、どこかの大手法律務所や図書館などが
改正会社法施行後の書籍を備え置くためにまとめ買いしたのでしょうが(他書
は改訂が済んでいない可能性が高い)、詳細は不明です。それでも、快挙は快
挙です。ありがたく結果を受け入れさせていただきます。

 改めて20年前に私の出版を受け入れてくれた中央経済社に感謝です。当時
は司法書士の地位がまだまだ低く、受験参考書以外に司法書士が出版した本は
なく、権威を重んじる出版社は司法書士が実体法(当時は商法)の本を出して
も売れるわけがない、あるいは出版したら出版社の格が落ちるとでも考える傾
向が強く、司法書士による実体法解説の出版は容易ではありませんでした。

 そこで、会計税務中心の世界は開放的なので、思い切って、当事務所の近く
の中央経済社のHPの連絡先にメールしたら、法律編集部の編集長がわざわざ
訪ねてくれ、私の原稿をちらっとみただけで、これは面白いと一存で快く引き
受けてくださいました。このS編集長(定年退職済み)は私の恩人の一人です。
S編集長の社内の立場を悪くしては申し訳ないと、売れやすいように題名を挑
発的にしたり、縦書の対話調にしたりと練りに練った結果、数か月間連続増刷
という快挙でした。平成15年2月に出版した『これが新商法だ!これが新登
記だ!』のことでした。

 同社とはそれ以来の付き合いですが、アマゾン会社法カテゴリー上位100
位以内に、拙著が常時数冊入るようになりましたし、今回の快挙のようなこと
があると、私もS編集長や中央経済に恩返しができたような気持になれ、気が
休まります。見知らぬご注文主に深く厚く御礼申し上げます。


2023.01.27(金)【職務執行者変更登記の手法の差】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、調べたら、平成25年に私が合同会社の設立登記をして
おり、当初から職務執行者はABの2名であり、Aの部分だけで5人も交代し
ていました。4人までの交代は無事に「代表社員変更」で済みましたが、5人
目で「職務執行者辞任・就任」だといわれたわけです。

 私の思考は、単なるAの辞任、C就任の場合は「職務執行者辞任・就任」で
あり、Aの辞任に伴い後任のC就任の場合は、A枠の代表社員変更だというも
ので、ずっとそれで通してきました。つまり、単なる減員、増員、減員と増員
の同時のほかに、交代という概念を持ち込んだわけです。

 私見によれば、ABが同時に辞任し、CDを追加した場合は、原則は、2名
減員(職務執行者辞任)と2名増員(職務執行者就任)だが、Aの後任(交代
要員)としてC、Bの後任としてDという場合は、A枠とB枠の代表社員変更
が妥当だというものです。

 もっとも登記原因が「職務執行者辞任・就任」であっても、それは「職務執
行者辞任・就任に伴う【代表社員変更】」の登記であることに変わりがありま
せん。職務執行者自身は独立の登記事項ではなく、代表社員の住所などと同じ
く代表社員の登記事項の部分でしかないからです。結局は、どう登記するかの
問題ですが、分かりやすさからいうと「職務執行者辞任・就任」、実体法理論
からいうと「代表社員変更」でしょう。

 代表社員変更のほうがA枠が残され、代表社員の就任日が残され、登記記録
上も有利だと思っていましたが、昨日、登記記録をみていたら、そうではない
ことに気づきました。

 例えば、代表取締役であれば、9年前の平成25年就任で任期10年であれ
ば、いままで何度も住所を移転しても「平成25年就任」は登記記録に残るの
に、代表社員の職務執行者の変更の場合は、それが消されてしまい、「年月日
変更」だけが残されていました。あたかも、代表社員が重任したかのように、
過去記録が履歴事項から閉鎖事項に移されていました。どうも、同じ代表社員
の登記事項の一部分でも住所の変更の場合と人物の変更の場合は登記システム
の取扱いが相違するようです。


2023.01.26(木)【職務執行者複数の一部変更登記】(金子登志雄)

 合同会社で「法人社員、職務執行者」といえば、外資系が中心でほとんどが
東京都港区に所在します。Apple Japan合同会社などです。法人社
員は外国に所在する会社です。

 千代田区に事務所のある当事務所では、こういう会社からの依頼はないので
すが、唯一、法人社員も日本法人である会社が顧客に1社あります。職務執行
者が交代するときだけ数年に1度程度の割で仕事が来ます。

 こういう会社の法人社員が甲株式会社だとすると、職務執行者はほとんどが
複数存在し、登記記録では、次の(1)と(2)の2つが登記されています。
 (1)代表社員甲
    職務執行者A
 (2)代表社員甲
    職務執行者B
 2つとも代表社員甲の登記であり、職務執行者自身の登記ではないのですが、
印鑑届などが職務執行者単位なので、取締役の登記のように職務執行者ごとに
登記されます。登記システム上の理由です。

 さて、この会社で職務執行者AをCに交代させる場合の登記はどうするかと
いうと、通常は(1)を「年月日職務執行者辞任」で抹消し、次の(3)を追
加します。ちょうど、取締役ABにおいてAが辞任したのでCを選任した登記
とほぼ同様です。
 (3)代表社員甲
    職務執行者C

 しかし、私は、職務執行者がAからCに交代したことを登記記録に表したい
し、職務執行者は代表社員の住所と同じく代表社員の属性にすぎないのだから、
(1)につき「年月日(代表社員)変更」で登記する方法を採用してきました。
過去2回これで何もいわれず受理されていました。

 ところが3度目の今回は、職務執行者が1名であれば代表社員変更でよいが、
複数の時は職務執行者辞任・就任で登記すべきだと補正を受けてしまいました。

 登記記録例をみる限り、そう思うのも自然ですから、普通の方法でないので
引っかかったようです。しかし、職務執行者ごとに登記するのは登記システム
上の都合にすぎず、本来は代表社員変更のはずだと、登記情報691号50頁
以下の「職務執行者複数の変更登記」を添付し説明しましたところ、あっさり
受理されました。

 たぶん、職務執行者辞任・就任でなく、代表社員変更で登記しているのは私
1人でしょうが、これは私が登記法よりも実体法を重視しているせいでしょう。
面白い経験でした。


2023.01.25(水)【分割型新設分割の構造】(金子登志雄)

 正月4日に申請した登記も全て終わり、退屈な日々が続いています。

 さて、4日には面白い登記をしました。分割型新設分割なのですが、新会社
には一切の債務を移転しないのです。分割型新設分割は会社法の下では、次の
構造を有します。

 「分割型新設分割=①分社型新設分割+②受領新会社株式の配当」

 この場合、①と②は別々に決議してかまいません(会規205条2号ロ)。
①が簡易分割なら取締役(会)の決定だけで済み、②の株主総会決議に合わせ
る必要もありません。

 ここで、ふといたずら心が生じ、新設分割計画を①と②に分断し、②は登記
事項ではないから、債務が移転しない新設分割として、①だけを債権者保護手
続が終わる前に登記してしまったら、登記が受理されるだろうと思いました。
新設分割ですから効力発生日もありません。

 ただ、①と②が完全に別個の行為であれば、そもそも分配可能額の枠内であ
れば、債権者保護手続が不要です。

 では、その場合にもなぜ債権者保護手続が必要だとされているかというと、
会社財産が減少するからですが、それなら、通常の配当でも同じじゃないかと
いいたくなります。

 結論として、①と②の2つの行為で決議は別々になされても、分割型新設分
割という1つの合成行為だから、以上の考え方は無理です。

 第1に、①も②も同じ条文に規定されています。
 第2に、旧商法の人的分割を合成行為に変更しただけです。
 第3に、完全に別個であれば、②について異時でもよく債権者保護も 不要
のはずだが、そうなっていない。これは分配可能額だけの問題とは思えない。
つまり、債権者保護は ②についてではなく、合成行為自体に必要になってい
る、という理由です。

 きっと税務問題にも影響するのでしょうが、こと法務問題としては、分配可
能額の枠内である限り、①が終わり、異時に②を単独で行ったほうが、債権者
保護手続が不要になる点で便利ではないかと考えました。


2023.01.24(火)【株式会社の区分の変遷】(東京・鈴木龍介)

 昭和49年の商法改正に際し、新たに制定された「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」(監査特例法)により「資本金」を基準として監査の観点から株式会社を以下のとおり3つに区分することとなりました。なお、当該区分については、登記事項とはされませんでした。

 

資本金

監査役の権限

会計監査人
監査

大会社

5億円以上

会計監査+業務監査

強制(※1)

中会社

1億円超5億円未満

会計監査+業務監査

任意(※2)

小会社

1億円以下

会計監査

不可

(※1)上場会社以外の会社については資本金10億円以上が対象とされました。
 (※2)会計監査人監査を任意で導入した中会社については「みなし大会社」と称されました。

 昭和56年の監査特例法の改正により、その区分の基準については「資本金」のほかに「負債」が加わり、負債総額200億円以上の会社は大会社とされました。 

平成17年に制定された会社法の制定により、同法の施行とともに監査特例法は廃止となり、それまで3つに区分していたものを以下のとおり2つに区分することになりました。あらたな区分では、監査の観点だけでなく、機関設計等多面的に株式会社を区分する指標となりましたが、引き続き登記事項とはなっていません。

 

資本金等

監査役の権限

会計監査人
監査

大会社

資本金5億円以上または
負債200億円以上

会計監査+業務監査

強制

非大会社

資本金5億円未満

公開会社

会計監査
+業務監査

任意

非公開会社

業務監査限定可

 

2023.01.23(月)【思い込み禁止】(金子登志雄)

 金曜日に「会社法実務〔全訂第2版〕」の予約販売がアマゾンに登場したと
書きましたら、一時的でしたがアマゾンで急に売上順位があがりました。本欄
の閲覧者が注文したものと思われ、厚く御礼申し上げます。

 本欄の閲覧者は大部分が司法書士だと想像していますが、企業法務専門事務
所かどうかは分かりません。試しに、ネットで「企業法務 専門 司法書士事
務所」と検索しましたら、多くの事務所がヒットしましたが、知らない事務所
ばかりでした。

 企業法務事務所でそれなりに知られている当事務所や鈴木龍介事務所、また、
電子署名に詳しい新保さゆりさん、渉外法務に詳しい草薙智和さん、合同会社
に詳しい立花宏さん、早くから企業法務に専念していた古山陽介さん、老舗の
〇〇事務所、新興の沓脱事務所など、お互いに面識があり、何かあると、これ
これについて経験者はいませんかとか、補正になったが他の法務局ではどうか
などといった情報及び意見交換していますが、そうでない事務所はどうなさっ
ているのでしょうか。テイハンの登記研究を仔細に調べても松井ハンドブック
をみても掲載されていない論点は大量にあります。

 勝手な想像で申し訳ありませんが、登記というのは知識がなくとも書式を真
似したり登記所と相談しながらすれば受理されてしまいます。したがって、難
解な種類株式や新株予約権を経験したと誇られても、少しも驚きません。

 雇用司法書士数の多い企業法務専門事務所が扱った案件に上場寸前にミスが
みつかり、証券代行経由で後始末をしたことが何度もあります。せめて、企業
法務専門事務所を名乗るなら、十分に理解してから申請し、同事務所の複数人
でチェックすることを怠らず、独りよがりの思い込みのまま申請することを避
け、単なる代行屋でないことを示してください。

 ところで、思い込み禁止につき、よい時事ネタがありました。日本国内では、
ウクライナの次は「台湾有事だ」などといわれていますが、台湾の民衆は米国
や日本の軍事支援をどの程度求めていると思いますか。100のうち、70で
すか、80ですか、90ですか。

 下記サイトの円グラフだけでもみてください。100のうち50にも達して
いませんでした。ペロシの訪台は逆に台湾を中国に近づけてしまったこと、米
国と距離をおいてこそ台湾の安全が保たれるという意識が多数でした。
  https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20230120-00333655


2023.01.20(金)【会社実務改訂版発売と東京会セミナー講師】
                            (金子登志雄)

 本日は表題の宣伝にさせてください。

 さて、昨日、私に質問メールを送ってくださった司法書士さんから「事例で
学ぶ会社法実務(全訂第2版)をアマゾンで予約しました!」と知らされ、び
っくりしてしまいました。かなり前からアマゾンに登場していたのだとか。
       
        https://is.gd/bUOEbU

 会社法ジャンルしかチェックしない著者の私は、全く気づきませんでした。
実は、従来は出版社がアマゾンに会社法と登記と〇〇のジャンルでも見られる
ようにと希望すればかなえられたのですが、最近はそれが通じなくなったよう
です。したがって、拙著の親子本改訂版は会社法の売れ筋ランキングに登場す
るのに、組織再編の手続は登場しません。どちらが売れ筋かは、全部のジャン
ルの順位で比較しないと分かりません。

 ひどいのは「会社法」法令集第14版です。「会社法」という名がつくのに、
会社法ジャンルに加わっていないのです。これだけで売行きに影響するのに、
アマゾンは商売っけがないのか、単なる担当者次第なのかは分かりません。

 親子本や組織再編の手続は組織再編に特化していますが、会社法実務(全訂
第2版)は株式会社限定ですが設立も、株式も、機関も全部を対象としており、
日常実務に役立つ内容ですが、この改訂で80問も追加しました。会社法実務
百科事典を目指しておりますので、私の著書の中では一番利用度が高いと思い
ますので、ぜひご購入をご検討ください。

 この中の新論点のいくつかは、2月21日開催の東京会の専門研修(ズーム
研修)で話しますので、東京会の司法書士はこちらの出席もご検討ください。

 募集定員は980名のようで、無理だと焦ってしまいました。他の研修だと
募集定員が480名程度であり、満杯の応募があったといわれてよい気持ちに
なっていましたが、980名では無理です。

 ということを研修担当に話したら、専門研修はテーマや講師と無関係にいつ
も定員を980名にしているだけだと説明され、ほっとしました。

 いずれにせよ、会社法の研修はブームが過ぎてしまったため、私がセミナー
講師を務めるのは2年ぶりです。他では味わえない会社法の切り口をテーマに
しますので、こちらもよろしくお願いします。


2023.01.19(木)【自由な発想】(金子登志雄)

 昨日ご紹介した沓脱司法書士のツイッターに「私の会社法の基礎と自由な思
考は金子先生に教わりました」とありました。

 私、根がものぐさなので勉強家ではありません。その代わり、いつも与えら
れた課題について、ああでもないこうでもないと自由な発想で様々な角度から
自問自答しており、そこで条文を確認したり、文献を調べたりしていますが、
分からないままでも、ふと何かの拍子に答えがでることがあります。ちょうど
数学の応用問題が解けなかったのに、あるときふとひらめくのと同じです。沓
脱さんは理工学部出身なので、私の思考方法に違和感がないのでしょう。

 沓脱さん達に「イギリスではバターはパンを食べるためにあるのではなく、
バターを食べるためにパンがある(=パンはバターの欠片を乗せる台にすぎな
い)という話を聞いたことがあるが、これと同様に、醤油をおいしく食べるた
めに寿司があると考えてみることも重要だ」と話したら、こういう思考方法を
面白がってくれました。風呂場でも私は、いま自分は体を洗濯台にしてタオル
を洗っているのだと意図的に思考してみたりします。

 この思考で、合併は合併して解散するのではなく、解散して合併するのだ、
現物出資説が正しい、100%子会社同士の合併は、株主割当と同じく合併比
率を問わないのだから、合併比率1対0でもいいじゃないかと思い、無対価合
併を旧商法時代に考案しました。いずれも、顧客から、こうすることができな
いかと聞かれたり、法務局の補正などがあったときに、必要により考え付いた
ものです。これが昨日の漫画の「顧客は最良の教師」の意味です。

 自由な発想といえば、れいわ新選組が鬱病で参院議員を辞職した水道橋博士
の後任として5人を1年ごとのローテーションにしたことに感心してしまいま
した。比例の当選で、党への支持ですから、違和感もありません。これで国会
議員の経験者が増えれば党の発展にも有利でしょう。いいことずくめです。
(注)いいこと「づ」くめは誤りのようです。「ずくめ」と「づくし」の相違
のようです。

 5人の1人である辻恵弁護士=機動隊と学生が1967年に衝突した羽田闘争で
死亡した山崎君の高校の同級生で彼の死亡にショックを受け政治家になった人
=のツイッターによると、ドイツの緑の党で実例があるそうですから、山本代
表が最初に発見したとはいえないようですが、それでもすごいことです。

 れいわの山本代表は高校中退で芸能界に入りましたから、自ら学歴は中卒だ
と説明しています。ユーチューブで彼の演説や質疑応答を視聴してみると、た
いへんな勉強家であるだけでなく、発想が自由です。特別枠で障碍者の方を国
会に送るなど誰が気づいたでしょうか。へたに高校や大学に進まなかったのが、
自由な発想のためにはよかったのかもしれません。


2023.01.18(水)【新時代の司法書士像のご紹介】(金子登志雄)

 いま、キンザイ登記情報誌の下記がじわじわと評判を呼んでいます。
        https://is.gd/CB66ei

 書き手は下記の方で私もよく知っている明日の司法書士業界のホープの一人
である沓脱司法書士です。
       https://tos-group.co.jp/company

 ツイッターもやっていますので、そちらから引用すると彼の言いたいことは、
次でしょう。彼の事務所に入社した司法書士への感想です。
-----------------------------------------------------------------------
 司法書士業界からの転職メンバーが入社して最初にぶつかる壁が「登記思考」
です。最適な選択肢かどうか検討せず依頼のまま処理しようとしてしまう。実
体法やビジネス視点の考察ができない。思考しない癖がついてしまっているの
だと思います。この壁を壊し本来の能力を発揮できる環境が弊社にはあります
-----------------------------------------------------------------------

 司法書士はこれまで苦労せずに生活できたため、創意工夫の訓練ができてい
ない、能力を発揮できず、実にもったいないといいたいようです。

 たぶん、同じ繰り返しの不動産登記のことだと思うのですが、商業登記でも
同じ繰り返ししかしない同業者も多く、そういうものだと思い込んでしまった
のでしょう。しかし、私は、たかが役員変更登記でも、全て個別対応で最も適
切な方法を考え、議事録案にも創意工夫を凝らし、毎回毎回楽しんでいます。

 M&A手続コンサルタントから27年前に司法書士を兼業した私は、当時に
おける新時代の司法書士でした。登記よりも、登記前の合併契約書の作り方、
議事録の作り方などを重視し、登記法よりも実体法を優先する司法書士でした。
実体法(商法)の実務書を出版したのも司法書士では、たぶん最初でした。
       
 あれから27年、後続が次々と増えてきたと思ったら、沓脱司法書士はさら
に業務範囲を拡大し、企業のIPO等の支援事業まで拡大しており、恐れいり
ましたというしかありません。登記知識だけではできない仕事です。そのチャ
レンジャー精神に感心してしまいます。

 難しい試験に合格し、司法書士になったのに、こんなはずではなかったと、
下記の漫画のように、がっかりしている方は、廃業して会社勤務になるよりは、
上記トピックスで募集していますので、沓脱事務所など企業法務専門事務所に
勤務してみてはいかがですか。いまや大都市には必ずあります。
    (顧客こそ最良の教師)      
       http://esg-hp.com/manga.pdf

 ただし、何事にも適性があります。上から指示されないと動けない人や、頭
の固い人は新環境に適合できず、自信を喪失しかねませんので、創意工夫を面
白い、楽しいと感じる方に限ります。
        

2023.01.17(火)【『調停等の条項例集―家事編―』】(東京・鈴木龍介)

 昨年、令和4(2022)年は調停制度が創設されてから100年を迎える
年でした。

「そのお悩み、裁判所の調停で解決しませんか?(調停制度発足100周年)」

 https://www.courts.go.jp/saiban/wadai/202201tyoutei100-1/index.html

 そのような中、『調停等の条項例集―家事編―』(本書)が司法協会から刊
行されました。
       http://www.jaj.or.jp/books/

 本書は、家事調停のメインともいえる離婚と相続に関する調停調書の条項記
載例集です。経験豊富な元裁判官で、弁護士である筆者による丹念な検証等が
なされた本書は、登記実務という観点においても有用有益であり、司法書士と
しても、いざという時に頼りになる一冊として手元に置いておいて損はないの
ではないかと思います。

 私自身、けっして得意とはいえない分野でしたが、ご縁があって微力ながら
監修というかたちで携わらせていただき、たいへん勉強になりました。

 本書は全179ページとコンパクトですが、内容的(以下、目次)にはさま
ざまケースを想定したものとなっています。

 第Ⅰ章 調停離婚等の条項例
  第1 管轄が問題となる事例の条項例
  第2 離婚調停条項例
  第3 離婚に関連する条項例
  第4 夫婦間の紛争に関する条項例
  第5 親子関係の紛争に関する条項例
  第6 扶養等に関する条項例
  第7 男女間の紛争に関する条項例
  第8 婚姻外の男女関係に関する条項例

 第Ⅱ章 相続の条項例
  第1 遺言に関する条項例
  第2 相続人に関する条項例
  第3 相続分に関する条項例
  第4 遺産の範囲等に関する条項例
  第5 遺産分割に関する条項例
  第6 遺産分割の方法に関する条項例
  第7 寄与分・特別の寄与に関する条項例
  第8 遺留分侵害に関する条項例
  第9 配偶者居住権に関する条項例


2023.01.16(月)【労働者協同組合への組織変更の添付書面】
                           (仙台・立花宏)

 皆様、今年はじめての投稿です。今年も時々ですが、投稿させていただくと
思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新年の最初の投稿は、昨年、創設された労働者協同組合の話題です。
昨年10月27日の本欄で、企業組合とNPO法人が、労働者協同組合法施行
後3年間に限り、労働者協同組合に組織変更をすることができることを紹介し
ました。

 組織変更をするには、組織変更計画書を作成し、総会で承認を受けなければ
なりません。ところで、組織変更の登記をする際、この総会の議事録の添付は
必要でしょうか。

 実は、10月27日の投稿の注でもこの点に触れています。組織変更の登記
の根拠法である労働者協同組合法施行令では、組織変更計画等の添付について
は記載されているのですが、組織変更計画を承認した総会の議事録の添付につ
いては触れられていません。労働者協同組合の登記については、令和4年9月
21日法務省民商第439号通知が発出されていますが、その通知にも、“当
初は”触れられていませんでした。

 よって、添付は不要とも思えたのですが、他の組織変更の登記では添付が必
要であり、私見は、添付はした方がよいのだろうと前記投稿では記述していま
した。

 しかし、最近、法務省のHPの通達にある前記通知をみたところ、組織変更
の登記の代表理事の就任についての添付書面(通知の36ページ)について、
次のような記載がありました。

「組織変更計画において、定款に定める事項として代表理事の氏名を記載した
場合は、(略)、総会の議事録並びに代表理事が理事及び代表理事に就任を承
諾したことを証する書面の添付が必要となる。
 また、組織変更の効力発生日以降に開催する理事会で代表理事を選定する場
合は、総会の議事録、当該理事会の議事録並びに代表理事が理事及び代表理事
に就任を承諾したことを証する書面の添付が必要となる。」
(下線は筆者による)

組織変更計画を承認した総会の議事録とは書いてありませんが、代表理事が
理事に就任したことについての総会の議事録の添付が求められており、理事は
組織変更計画に記載され、それが承認されることにより選任されるのですから、
実質的に組織変更計画を承認した総会の議事録の添付が必要ということになり
ます。

 これを読むと、総会の議事録の添付が必要であることが明らだということに
なります。

ただ、当初の通知の記載とはちょっと違うように感じ、当初の通知の同じ個
所を確認してみたところ、次のようになっていました。

「組織変更計画において、定款に定める事項として代表理事の氏名を記載した
場合は、(略)、代表理事が理事及び代表理事に就任を承諾したことを証する
書面の添付が必要となる。
また、組織変更の効力発生日以降に開催する理事会で代表理事を選定する場
合は、理事を選任した総会の議事録、当該理事会の議事録並びに代表理事が理
事及び代表理事に就任を承諾したことを証する書面の添付が必要となる。」
(下線は筆者による)

 前記した通知の下線部と見比べてみていただければと存じます。少し、修正
になっているようです。

 当初の通知では、少なくとも前段部分では、総会議事録の添付を求めていま
せんでしたから、10月27日の投稿では、その添付が必要なのかどうかの疑
義を記述していました。それに対し、修正された通知では、添付が必要である
ことがはっきりしているということです。

 通知は法務省の内部文書でしょうから、内部では、修正の手続がとられたの
かもしません。登記の場合、誤った申請をして更正登記をした場合は、登記事
項証明書にもそれが記載されてきます。通知は、HPに掲載され、公示されて
いるのですから、修正があったのであれば、その旨がわかるようにしていただ
けたらありがたいと思いました。


2023.01.13(金)【押印規定の見直し】(金子登志雄)

 印鑑提出任意化に関する令和3年1月29日民商第10号通達に「法令等又
は慣行により,国民や事業者等に対して押印を求めている行政手続については、
「経済財政運営と改革の基本方針2020」(略)及び「規制改革実施計画」
(略)に基づき、各府省は,原則として全ての見直し対象手続について、令和
2年中に,順次必要な検討を行い,法令,告示,通達等の改正を行う(略)こ
ととされた」とありました。

 なるほど外からの圧力で変えたわけですね。前々から、法律を適用するのが
行政官庁のはずなのに、資本金計上証明書や株主リストに届出印を押さないと
受理しないなど、何のために委任状に届出印を押させているのか、二重ではな
いか、登記所が法律を作っているのと同じではないかと不思議な気がしてなり
ませんでした。これですっきりです。

 特に下記の組織再編の株主リストにつき違和感がありました。債権者保護の
催告したことを証する書面であれば、申請会社が非申請会社分まで証明しても
よいのに下記では作成者を指定しているのです。法律上の根拠があるのでしょう
か。
     https://www.moj.go.jp/content/001214713.pdf

 新保さんのブログで気づいたのですが、会社計算規則49条2項には「新設
分割設立会社の資本金及び資本剰余金の額は、株主資本等変動額の範囲内で、
【新設分割会社が】新設分割計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし」とあり、
52条2項には、「当該株式移転設立完全親会社の設立時の資本金及び資本剰
余金の額は、株主資本変動額の範囲内で、【株式移転完全子会社が】株式移転
計画の定めに従い定めた額とし」とあるのに、基本通達(民商第782号)で
は、申請会社(新会社)の添付書面になっているのですね。

 これを根拠に小川・相澤編著『通達準拠/会社法と商業登記』などは申請会
社が証明者だと説明していますが、これは通達の勘違い読みだと思います。通
達には合併消滅会社の催告したことを証する書面も新設分割会社のそれも分割
会社の手続書面とされていますが、登記申請では申請会社に添付します。

 つまり、分割会社が作成しようが株式移転子会社が作成しようが申請会社の
申請の添付書面です。通達は作成者についてまで定めていません。法律上の根
拠のない運用は、押印と見直しと同様に見直すべきではないでしょうか。


2023.01.12(木)【謹賀新年】(金子登志雄)

 本年は、鈴木さんにトップバッターを引き受けていただきましたが、私から
も、新年おめでとうございます。

 さて、今年はどんな年になるのかと聞かれ、タモリさんが「新しい戦前」と
答えたことがネットで話題になっていますが、彼の着眼は鋭いですね。現在の
世相をみごとに捉えています。歴史は繰り返すのでしょうか。

 昔、日中国交回復などで米国の逆鱗に触れた田中角栄首相が「戦争を知って
いる世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もな
い。だが戦争を知らない世代が政治の中枢になった時はとても危ない」といっ
ていましたが、安倍さんという戦争を知らない世代が日本のトップになってか
ら、この傾向が急加速しました。

 いざ戦争になったら、きっと隣国の中国、北朝鮮、ロシアから、日本にある
原発と米軍基地にミサイルが飛んでくることでしょう。それで日本は終わりま
すが、中国やロシアは領土が広大なので、逆襲の効果は限定的でしょう。どう
みても日本に有利な面はないと思うのですが、こういうことを言い出すと叩か
れてしまう世相になってしまいました。

 国益重視の田中角栄氏なら北京に飛び外交努力に勢を出したことでしょう。
エネルギー問題でも国益を考え中東に飛びました。これらが米国の逆鱗に触れ
てしまい、その後の中曽根首相以降は、国益よりも米国の利益を優先しないと
長期安定政権になれないと学習してしまいました。これが残念ながら日本の戦
後史です。いや敗戦国の生きる道だったのかもしれません。

 正月には相応しくない内容になってしまいましたが、本年も、依頼者の利益
を優先し、法務局と見解の相違があっても上手な交渉を心掛け、自己主張して
まいりますので、よろしくお願い申し上げます。


2023.01.11(水)【東日本大震災から12年】(島根・根来川弘充)

 皆様、あけましておめでとうございます。

 本年はうさぎ年ですが、12年前のうさぎ年の3月に東日本大震災がありま
した。

 私の感覚としかいいようがないのですが、東日本大震災とうさぎ年を結びつ
けて記憶をしています。

 当時、福島原発の事故は、チョルノービリ(チェルノブイリ)の事故以来の
大きな原発事故として取り上げられました。

 まさか、12年たたないうちに、チョルノービリをはじめとするウクライナ
の原発に世界が注目するとは、当時だれも予想しなかったでしょう。そして私
自身も、原発に対して否定的な考えが、今は肯定的な考えに変わりました。

 私の視野が広がったのか、人生経験がそうさせたのかは、わかりませんが、
考えることは年々増えてきている気がします。

 次のうさぎ年で、また考えが変わるかもしれませんが、いろいろ考えた結果
だとは思いますので、気にせずこれからの日々を大切にして生きていけたらと
思います。

 2023年のうさぎ年がみなさまにとって、良い年になりますようご祈念申
し上げます。


2023.01.10(火)【謹賀新年2023年】(東京・鈴木龍介)

 令和5(2023)年の最初の登場ということで、まずは
“明けましておめでとうございます。”

 今年のお正月は、地域差があるかもしれませんが天候にも恵まれ、なんとな
くゆっくり過ごすことができました。毎年、元旦から原稿書きに勤しんでいま
したが、この年末年始の12月31日から1月2日までの間はパソコンも開か
ず(iPadでメールチェックはしましたが・・・)、シゴトと全く関係のない読
書をしたり、映画(自宅でDVDですが)を見たりしていました。

 さて、今年はどうかというとマクロ的な観点としては、終わりのない(?)
コロナ禍に、これまた先の見えないウクライナ侵攻、くわえて円高や利上げと
いった感じで、あまり明るい兆しが見えません。そのような中で少しでも世界
がよい方向に向かうためにどう対処すべきかを1人1人が考える必要があると
思っています。

 個人的な関心としては、改正民法・不動産登記法が本年4月に施行になりま
すので(相続登記の義務化については令和6年4月1日施行)、司法書士とし
て具体的かつ本格的に取り組む必要があると思っています。また、担保法制の
見直しに関する法制審議会の議論も大詰めを迎え、目が離せないところです。
 
 私個人としては、例年のごとく夢はもとより格別の目標などもありませんが、
目の前のことを1つずつきちんと丁寧に対応し、少しでも皆さんのお役に立て
ればと思っています。

 最後になりますが、数年前より公私ともに年賀状を廃止しました関係で、年
賀状を頂戴いたしました方々には、この場を借りまして御礼と欠礼のお詫びを
申し上げます。

 本年も毎週火曜日を担当したいと思っておりますので(金子さん、よろしい
でしょうか?)、どうぞよろしくお願いいたします。

過去徒然

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