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TOPICS

徒然日誌


2014.12.26(金)【創造の翼】(金子登志雄)

 登記所は今日で終わりですから、司法書士事務所も仕事納めですね。

 さて、今年の当事務所の成績は、改正会社法が確定したため、著書の改訂版
を出せましたし、企業活動が活発になったせいか、相変わらず子会社の合併や
再編業務なども順調に受託することができ、悪い年ではありませんでした。き
っと商業登記専門事務所はみな同じでしょう。

 得意の「ラフに入ったボールをフェアウエイに出す仕事」、会社又は担当司
法書士が手詰まりになった「かけこみ寺業務」の仕事も少なくなく、これは自
分の存在価値を再認識させてくれるので、やり甲斐を感じる仕事でした。

 年齢の割に頭の柔軟さだけは自信があります。世間の常識とは別の方向から
考えることが多いからです。ここに何度か書きましたが、冷静に考えてみれば、
「鬼退治(異国侵略)の桃太郎よりも熊や自然との共生をはかる金太郎のほう
が正しい路線だ。公の席で無抵抗な老人に刃物を振りかざした乱暴者の主君の
仇討に徒党を組んで真夜中に押し込み殺人をするなど忠臣とはいえない。捜査
官と裁判官を兼ねる遠山の金さんは公平なジャッジができない。最後は権威を
カサにして威張る水戸黄門は尊敬できない」などというひねた見方もしてみる
ことが重要だと思っています。

 京の五条の橋では、大の男の弁慶が幼い牛若丸にわざと負けて遊んであげた
のだと解釈したのは著名な映画評論家でしたが、こういう角度を変えた見方が
仕事でのノウハウやアイデアを生み出しますから、皆様も時には創造の翼を広
げてみてはいかがでしょうか(「【想像】の翼」はどこかで聞きましたね)。

 来年も、若い人に負けずに、柔軟な発想で仕事に取り組みたいと思っていま
すので、ぜひ多くの課題や難問をご紹介ください。

 最後になりましたが、皆様にとって、来年もよい年になることを祈念してお
ります。



2014.12.25(木)【建前と本音】(金子登志雄)

 22日の月曜日に、東京都内の司法書士に、本年9月3日に東京司法書士会
と東京法務局(本局)との間で行われた「東京登記実務協議会」結果が回って
きました。

 商業登記に関して、それによると、
1.条件付委任状は現時点では認められない。
2.株主総会と普通株主の種類株主総会が共催された場合、議事録は2種類に
しないと不可。
 とありました。

 2については、平成19年に同一の回答をしたので、いまさら【公式には】
OKとはいえないのでしょう。

 東京法務局(本局)では経験はありませんが、東京以外の法務局で私は2に
つき1つの議事録で何度か登記を終わらせていますし、他の司法書士によると
東京法務局管内(本局以外)でも「同じものを2枚出してくれればよい、1つ
は株主総会議事録、1つは種類株主総会議事録として扱う」といわれたことも
あるようです。

 要するに、正面から質問すれば、東京法務局(本局)も建前で答えるが、申
請者が1つの議事録でいざ申請してみると、受理されてしまうことが多々ある
のです。板挟みになると、同じものを2つ出してくれとなるようです。

 法務局に限らず行政官庁というところは、まず従前の取扱いを改めません。
きっと、現在の東京法務局も本音では1も2もOKにしたいのでしょうが、昔、
先輩方がノーにしてしまったため、それを仕方なく踏襲しているだけでしょう
(なお、名古屋法務局は2につき肯定の回答をしています)。

 これに対して東京司法書士会の立場は、あの時はあの時、今は今です。平成
19年には、2につき「2種類にしないといけませんよねぇ」と質問しながら
(誰だ!こんな司法書士に不利な質問した奴は!)、今回は「議事録は会社が
任意に作るもので、必要事項が記載されていれば、まとめて1種類でよいはず
だ」と質問しているのです。

 矛盾していますが、あの時のメンバーと、この時のメンバーは違うわけです
から、これでよいのです。東京法務局も、先輩方の回答に拘束されずに「あの
時は当時の担当者がだめと答えたが、現時点では認める。今後、人が変われば、
だめになることも可能性としてはあり得る」とでも答えてほしいものです。こ
んな小さなことに、行政の一貫性など持ち出す必要はないでしょうから。


2014.12.24(水)【国民審査と議決権行使書】(金子登志雄)

 先般の選挙と同時に最高裁判事の国民審査がありましたが、あれは×をつけ
ないと賛成票になります。選挙というより、リコール制度だからです。これで
リコールされた人はいません。ほとんどが白紙だからです。「白紙=棄権」で
はないわけです。

 さて、12月も9月決算会社の定時株主総会がいくつかありました。拙著の
出版社である中央経済社もそうでした(私は株主ではありません)。出版社や
本屋さん関係は9月決算が多いようです。

 この場合の議決権行使書(書面投票)ですが、会社法施行規則第66条には
各議案について「賛否(棄権の欄を設ける場合にあっては、棄権を含む。)を
記載する欄」を設けよとあるだけで、棄権の欄は設ける必要がありません。

 また、この賛否「の欄に記載がない議決権行使書面が株式会社に提出された
場合における各議案についての賛成、反対又は棄権のいずれかの意思の表示が
あったものとする取扱いの内容」として、ほとんどの会社が、白票は賛成とみ
なすと扱っています。それだけでなく、株主提案があったときは、白票は否決
とみなすのが通常です。

 これでは、まるで国民審査と同じであり、かくして権力を握る多数派は常に
勝ち、弱い少数派は戦いのリングにも上がることもできず、敗北します。

 こう考えると、先般の選挙に行かなかった人の分は、棄権したというより賛
成票扱いされるのも同然ですね。これが社会の仕組みです。



2014.12.22(月)【報道の自由度ランキング】
(金子登志雄)

 選挙が終わった17日夜には安倍総理は、朝日・毎日・読売・時事など大マ
スコミの編集幹部や論説委員と寿司屋で会食したそうですが(中にはテレビに
よく登場する人物もいました)、総理が与党の党首としてマスコミを抱きこも
うとするのは分かりますが、なぜ、報道人は、こういう報道の自由を疑われる
ようなことに平気で応じるのでしょうか。

 権力者と親しいことが自慢の種になる日本社会の風土を前提としても、報道
機関は民主主義国では「第4の権力」といわれ、権力を監視するのが使命のは
ずなのに、これでは癒着を疑われても仕方ありません。一般企業でいえば、役
員自ら目玉商品の品質を疑われるような行動をしているわけで、許されること
とは思えません。

 これに関連して、「国境なき記者団」という団体が毎年、各国の報道の自由
度ランキングを発表していますが、さて、皆さん、日本は先進国のうち何番目
くらいだと思いますか。後進国で自由がないと思われているアフリカ諸国で日
本以上に報道の自由がある国が存在すると思いますか。

 正解はこれです。

        http://ecodb.net/ranking/pfi.html

 第59位であり、もと共産圏の東欧諸国にも負け、アフリカのうち8か国は
日本より自由で、東洋の韓国と日本はほぼ同順位です。

 「まさか」と思うでしょうが、数年前までは日本は10位程度の自由な国と
評価されていましたが、東北大震災以後、報道に対する締め付けが厳しくなり、
順位が急落しました。いわゆる原子力ムラを通じたスポンサーの締め付けも増
えたのでしょう。上記は本年2月の発表ですから、現時点では、もっと下だと
思います。

 昨年は国連の拷問禁止委員会でアフリカの委員から「日本の司法は中世並」
だと批判を受け、日本の人権大使が「シャラップ!」と怒鳴りつけて顰蹙を買
いましたが、報道の自由度も人権度も世界59位が日本の真の実力で、10位
だったのが何かの間違いだったのかもしれないとさえ感じてしまいます。

 ちなみに、法務局職員は司法書士と一緒に会食することさえしていません。
我々もお誘いできない雰囲気があります。これはこれで、健全な関係だと思っ
ています。日本の暮らし良さは、末端が健全に機能しているからでしょうか。 



2014.12.19(金)【登録免許税ミス】(金子登志雄)

 改正会社法が施行されると、監査役の監査の範囲が会計に限定される旨につ
き登記事項になりますが、その旨は役員区の「役員に関する事項」に登記され
ること、その結果、登録免許税は役員変更に含まれること(資本金1億円超な
ら3万円、1億円以下なら1万円)………、もう認識済みでしょうか。

 登録免許税については、私も何度か失敗しました。資本金3億円の設立(株
式移転)なのに、21万円しか印紙を貼らなかったこともありました。3億円
の0.7%が登録免許税額であるため、単純に3×7=21と計算したわけで
すが、30×7=210万円と計算すべきでした。

 先般は、某上場会社の子会社の「増資+役員変更」で、資本金が1億円超と
いうイメージを持ってしまい、役員変更分につき登録免許税3万円で電子申請
してしまいましたが、申請直後に2万円多かったことに気づきました。

 まだ電子納付はしていません。司法書士の皆さんは、こういう場合はどうな
さいますか。取下げして再申請しますか。

 不明でしたので、電話して登記所に聞きました。「取下げして再申請すべき
ですか。そのまま申請して指示待ちにしたほうがよいですか」と。後者だそう
です。

 予定どおり補正通知が来ましたので、登録免許税額を訂正して返信しました
が、どうやって正しい額を納付するのか分かりませんでした。

 電話がかかってきて、教えてくださいました。もう1度、補正通知を出すか
ら、課税標準金額なども再記載し、既納付額を0円にして正しい額を記載し返
信するのだそうです。

 返信後に納付の欄が反応しましたので、即座に電子納付しましたが、初体験
でした。これでまた、ベテラン度が深化したようです。


2014.12.18(木)【寄親・寄子の選挙】(金子登志雄)

 現金なもので、選挙が終わった途端に日経平均株価が大きく下がりました。
介護福祉も後退しました。当てが外れたと思ってはいけません。自由主義社会
は期待したり騙されるのも自己責任・自業自得です。

 選挙結果をみるとわが郷里の大臣を辞任した先生らも楽々当選していました。
別に、ここで選挙民を非難しようというのではありません。中世・戦国時代の
「寄親・寄子(よりおや・よりこ)」制度を思い出してしまっただけです。

 戦国時代は、殿様を頂点に幹部の家来として甲乙丙がいたとすると、甲乙丙
はそれぞれ、ABC、DEF、GHIという家来を持ち、ABC………もそれ
ぞれ家来を持ちというピラミッド階層になっていましたが、ABCは甲の家来
であって、殿様の直属の家来ではありません。甲が殿様を裏切れば、ABCも
甲に従います。

 これがあるため、本能寺の変が成り立つわけですが、この関係を「寄親・寄
子」といっていました。光秀を親と思っているから、信長を打てるわけです。
これが当時の道徳観でした。

 保守政党の有力候補者には、寄子として県会議員がおり、県会議員の寄子に
は市会議員や町会議員がおり、その下の寄子に町内会長がおり………という強
固な地盤の仕組みが作ってあるので、少々の不祥事があっても、選挙区を留守
にしても落選いたしません。

 みんなの党の前党首Wさんも、かつてはこの仕組みで楽々当選したのに、今
回はなぜ落選したかというと、選挙民の政治意識が高まったためではなく、き
っと県議クラスの寄子が一斉に離れてしまったのでしょう。地盤が崩壊したわ
けです。

 選挙結果をみると、日本は政治的にはまだ中世のような気がしてなりません
が、皆様の見立てはいかがでしょうか。ちなみにわがESGは、加入していて
も何のメリットもないので、寄親・寄子関係ではありません。というより、み
な武士社会の生活が合わないのか、どこにも士官したくないようです。



2014.12.17(水)【店員さん(後篇)】
(仙台・立花宏)

 今から20年以上前のことです。

 私は、公務員になる夢に破れ、大学を卒業後、ある会社に就職しました。配
属された職場はとても忙しい職場でした。毎日、寮に帰るのは深夜でした。そ
の職場のある先輩はとても優秀な方でした。そして、とても厳しく、とても怖
い先輩でした。毎日のように怒られました。

 いつしか私は、その会社を辞めようと思うようになっていました。そして、
夜、寮に帰った後、公務員試験の勉強をするようになっていたのです。

 翌年、ある公務員試験を受験しました。すると、運よく、一次試験を突破し、
面接試験に進むことができたのです。目の前がパッと開けたような気がしまし
た。

 ところが、その開けた目の前に大きな障害が立ちふさがりました。その面接
試験の日に、大事な仕事が入ってしまったのです。面接試験に行けなければ、
公務員になることはできません。なんとか、その仕事を休みたいと思いました。

 しかし、まさか、公務員試験があるから休みます、とは言えません。どうす
ることもできないまま、面接試験の前日となりました。その日、あの怖い先輩
と二人で、残業をしていました。きっと、私は、いつも以上に浮かない顔をし
ていたのでしょう。先輩が声をかけてきました。

 「どうしたんだよ。浮かない顔して」
 「いえ、なんでもありません」

 「そんなことないだろ。どうしたのか言ってみろよ」

 先輩から強い口調で言われ、私は少し、むっとしました。なぜ、仕事に関係
のない、個人的な悩みまで、話さなければならないのか。私は、もう、どうで
もいいや、という気持ちになり、先輩に伝えました。公務員試験を受けている
こと。一次試験は通ったが、面接試験が明日の仕事と重なってしまったこと。
そして、自分の夢をあきらめなければならないこと。

 すると、先輩は急に立ち上がり、怒鳴りました。

 「ばかやろう。なんで言わないんだよ」

 私は、ふてくされて、言いました。

 「仕事があるんだから、仕方ないじゃないですか」

 すると、先輩は私の両肩をぐっとつかみ、私の目をしっかりと見据え、さら
に大きな声で言いました。

 「お前の一生がかかっているんじゃないか。公務員はお前の夢なんだろう。
簡単にあきらめるなよ。お前の穴は、俺が埋めてみせる。遠慮しないで行って
来い」

 私は先輩の言葉に驚きました。怒られると思っていたからです。先輩が私の
一生ことを考えてくれるとは思ってもみませんでした。それに、先輩がいろい
ろな仕事を抱えており、これ以上、仕事を受けるのが無理なのは、隣にいてわ
かっていました。そんな状態なのに、私の仕事を肩代わりしてくれるというの
です。会社を辞めようとしている私のために。

 「いいな。明日はそっちに行け。仕事のことは気にするな」

 そういって、先輩は仕事に戻りました。

 その日、仕事を終え、深夜、先輩とともに、会社の寮に帰りました。私はな
かなか、寝つけませんでした。

 翌日、私は、電車に乗り、緊張しながら、目的の駅で電車を降り、目的の建
物に向かいました。そして、緊張しながら目的の部屋のドアを開けました。

 「先輩、おはようございます」

 「立花、お前、どうして・・・」

 「先輩。私はもう少し、先輩と一緒に仕事がしたいと思いました。私も先輩
のような○○(会社名)マンになろうと思います。これからも、よろしくお願
いします」

 先輩はあきれたように、そして、なぜか嬉しそうに言いました。

 「○○マンはつらいぞ」

 それから15年後、私は会社を辞め、司法書士になりました。ありがたいも
ので、今でも、先輩や、その会社の方から、仕事のご依頼をいただきます。

 私はまだ○○マンのつもりであり、その会社の方もまだ私を○○マンだと思
ってくださっているのかもしれません。

 そんなことを考えていると、ようやく、お店のシステムが復旧したようです。
店員さんは、レジへの案内してくれました。

 レジの担当は別の方でしたが、店員さんは、支払い等が終わるまで、そばに
いて、すべての手続きが終わるまで付き添い、最後まで見届けてくれました。

 そして、深々とお辞儀をして、売場を去る私を見送ってくれました。

 その店員さんの未来がどういうものなのか、私にはわかりません。将来、公
務員になっているのか、それとも、そうではないのか。でも、明るい未来であ
ってほしい。そう思わずにはいられませんでした。


2014.12.16(火)【店員さん(前篇)】(仙台・立花宏)

 先日、ノートパソコンを購入するため、電気店に行きました。これまで5年
ほど使用してきたノートパソコンの調子が悪くなり、思い切って買い替えよう
と思ったのです。

 しかし、パソコンに不案内な私が、なんの予備知識もなく、いきなり電気店
に行ったのです。どのノートパソコンを選んでよいのか、さっぱりわかりませ
ん。売場にあるパソコンには、それそれ、性能等が表示してあります。しかし、
それを読んでも、自分に必要な性能等がどのくらいなのかが検討がつかないの
です。値段の高い方が性能等がよいのでしょうけど、予算には限りがあります。

 どうしたものかと売場をうろうろしていると、何人かの店員さんが話しかけ
てくれました。みなさん、とても丁寧に、そして流暢に説明してくださいます。
それぞれのパソコンの良さや、値引きの可能性等がよくわかりました。しかし、
なんとなく、ピンとこないのです。申し訳なく思ったのですが、その都度、お
礼を言い、もう少し検討したい旨を伝えました。

 その日の購入をあきらめ、後日、また来店しようと、売場を離れようとした
ときのことです。別な店員さんが話しかけてきたのです。女子高を卒業したば
かりの新人さんといった雰囲気です。もう、その日は購入をあきらめたつもり
だったので、その旨を伝えようと思いました。話を聞いても、その日は購入す
る気持ちになれないと思ったのです。しかし、その店員さんの様子をみて、も
う少し話を聞いてみようという気持ちになりました。

 その若い店員さんの説明は、それまでの店員さんと違い、流暢ではありませ
んでした。たどたどしくさえ感じられました。しかし、こちらの使用目的など
を丁寧に聞いてくれ、一生懸命、応えようとしてくれるのです。とても好感が
もてました。パソコンに不案内な私にとっては、その説明のリズムが合ってい
たのかもしれません。いつのまにか、その若い店員さんの勧めるノートパソコ
ンを購入することに決めていました。

 いろいろな手続を終え、その店員さんとともに、レジへ向かいました。しか
し、レジは大混雑していました。どうやら、そのお店のシステムかなにかのト
ラブルがあり、レジでの支払いができない状況のようでした。その店員さんは、
申し訳なさそうに、イスのある場所に案内してくれました。そのイスで、レジ
が復旧するまで待つことにしました。

 待たせることを申し訳なく思ったのか、その店員さんは、隣に立ちながら、
いろいろな話をしてくれました。はじめは、パソコンの性能等の話でしたが、
時間がたち、間が持たなくなってきたのでしょう。徐々に、自分自身のことを
話してくれました。高校を卒業し、一昨年、地方から仙台に出てきたこと。公
務員をめざし、専門学校に通っていたが、公務員試験の結果は残念なものだっ
たこと。早く社会人になって、女手一つで育ててくれた母親を安心させたかっ
たため、今の会社に就職したこと。就職後、パソコンの売場の担当をしている
が、とても忙しく、仕事が大変であること。なかなか、休みがとれず、正月も
帰省できるかどうか、わからないこと。そして、公務員の夢を捨てきれず、夜
遅く、会社の寮に帰った後、勉強を続けていること。

 その話を聞き、私は、今から20年以上前、ある会社に就職したときの、自
分自身のことを思い出していました。

 (明日につづく)


2014.12.15(月)【テレビ会議の普及度】(金子登志雄)

 衆院選は、マスコミの予想どおり、惨敗の沖縄を除いて与党の圧勝でした。
消費税アップ(や憲法改正など)を堂々と掲げての勝利でしたからお見事とい
うしかありません。

 強い者(与党)はますます強く、弱い者(弱小政党)はますます弱くなると
いう自然界(自由社会)の掟のような結果でしたが、どうやら、日本社会は、
この路線を選択したということでしょう。経済社会でも「寄らば大樹の陰」の
動きが加速するでしょうが、われわれ個人事業者は、それもできませんので、
創意工夫で特色を出して生き残りをはかるしかなさそうです。頑張りましょう。

 さて、某上場会社の100%子会社が取締役会をテレビ会議でいたしました。
議事録には、開催した本店会議室と支店会議室の記載はありましたが「テレビ
会議方式で行う」としか書いてなく、取締役の誰がどこの場所にいたかも書い
てありませんでした。

 TV会議方式は相当浸透しているので私も何も考えずに申請したところ、補
正になりました。いわく「①取締役の誰がどこの場所にいたかも書いてほしい。
また、②出席者の音声等が即時に他の出席者に伝わり、相互に適時的確な意見
表明が可能な仕組みとなっていることも明記してほしい」とのことでした。

 先例をみると、上記のような記載のある議事録例をもって「これでよい」と
いう内容であり、上記の①②の記載が必須かは不明でしたが、必須であるとも
受け取れるので、会社の承認を得て補正に応じました。

 あと10年もしてテレビ会議が相当普及すれば、②については記載せずとも
よいことになると思いますが、まだ、その段階に至っていないということでし
ょう。皆様も、こういう方式の場合は、記載漏れのチェックをお忘れなく。


2014.12.12(金)【生活と政治】(金子登志雄)

 明後日は選挙なんですね。全く話題にもなりません。不気味ですね。

 さて、先日読んだものに「西洋では、生活=政治だが、日本では、生活と政
治は別のものだと思う国民が多い」とありました。

 確かに、消費税も円安物価高も原発問題も生活に密着しており、反対する意
見が多いのに、選挙になるとなぜか全く別の行動をとる方が少なくありません。

 勝手な想像ですが、江戸300年の長い平和な時代がそうさせたのでしょう
か。西洋の歴史では、権力の圧制が始終ありましたが、日本社会の権力闘争は、
侍(一種の地方公務員)の間でしかなされず、一般庶民は、それとは無関係に
生活してきました。

 また、日本では、消費税もフクシマも自然災害と同じように受けとめ、為政
者の責任追及に発展しません。ドイツでは戦後何十年もナチスの残党狩りに南
アメリカまで追いかけるしつこさがありましたが、日本では、あの戦争は一億
総懺悔で、みんなの責任にされてしまい、個に対する責任追及はなされません。
フクシマも、いつしかみんなで我慢しようということになってしまいました。

 オレオレ詐欺に騙されるようなオメデタイ国民は日本だけだといわれますが、
逆に落としたサイフが交番に届けられるのも日本だけでしょう。交番などとい
う権力の手先が市民社会に入ることさえ拒否するのが圧制に苦しんだ西洋社会
の考え方です。

 なんだかんだいっても、好人物が多く生活しやすい日本は素晴らしい国です
が、残念なのは、日本人にバランス感覚が欠けてきたように感じています。衆
参のねじれや、かつての社会党のように一定数の数を持った野党がいることに
よって、与党も暴走できない日本型のバランスの仕組みがありましたし、諸外
国が日本をどうみているかを気にする自意識過剰の傾向がありましたが、最近
は、それも薄れました。近隣諸国を馬鹿にする選民思想さえ増大中のようです。

 明後日の選挙も関心の薄い人が多いようですから、一時期流行った「チェン
ジ」はないのでしょう。私の選挙区でも行く意味に疑問がありますが、投票だ
けは国民の義務と思っていますので、必ず行くつもりです。投票もせずに世の
中を批評する人間にはなりたくありませんので。


2014.12.11(木)【パブコメにみる基本姿勢】(金子登志雄)

 商業登記規則の改正で取締役会設置会社の取締役の就任承諾書に、本人の実
在性を証明するため住民票等を添付することになりそうですが、それに対する
パブリックコメントをみると、意見提出者の姿勢がさまざまであることが分か
ります。

 就任承諾書には住所を明記させて住民票ではなく個人実印を押させて印鑑証
明書を添付させよなどという法務省商事課案以上に厳しい意見も多数耳にして
います。住民票程度では不十分だという性悪説に立脚しているのでしょうか。

 また、規制を強化したり手続を面倒にすると、素人が参入しにくくなり、わ
れわれ資格者(弁護士や司法書士)には有利に働きますが、ありのままの自由
をこよなく愛する私、民間の味方でありたいと思う私は、同じく性悪説でも、
「1万人に1人の不心得がいることによって、残りの9999人がなぜとばっ
ちりを受けなければならないのか。規制は罰則強化など事後規制で十分だ」と
考えてしまいます。

 したがって、私は、運転免許証の写しでもいいじゃないか、上場会社の取締
役候補は略歴まで総会招集通知に記載し会社が責任を持って対応しているし、
外国人も多いから例外にせよなどという手続が楽な方向で意見を提出しました。

 婚姻後の旧姓併記でも、それが記載されていないと未婚かと勘違いされる負
の効果もあろうと考えてしまいますし、商事課の管轄外ですが、夫婦別姓のほ
うが抜本的な解決策であろうにとも考えてしまいます。

 というわけで、「民」の世界では結構常識人間である私も、真面目な人の多
い法曹の社会では、相変わらず異端の司法書士のようです。


2014.12.10(水)【中間配当と事業年度】(金子登志雄)

 ちょうど今ころ、3月決算上場会社の中間配当金が送られてくる時期です。
私も予定外の臨時の小遣いが入りました。

 中間配当というと、事業年度の中間期末(3月決算なら9月30日)を基準
日として支払われる配当と思っている方が多いようですが、①取締役会設置会
社が②取締役会決議に基づき③1回に限り、④事業年度の途中で④金銭の分配
(現物は不可)をするものです(会社法454条5項)。

 非取締役会設置会社が期の途中で行う配当や、取締役会設置会社が「株主総
会」の決議によって期の途中で臨時に配当するものは中間配当とはいいません。
また、期の途中であればよく、中間期末を基準日にする必要もありません。

 もともと日本の上場会社では半年決算会社が多数で年2回の定時総会で配当
していましたが、監査役制度を大幅に改めた昭和49年の改正商法で監査期間
の延長に合わせて事業年度を1年にすることを認めたため、この中間配当制度
が商法に規定されました。

 ふと、半年決算会社も中間配当できるのかなと会社法の条文を調べましたが、
否定する理由はなさそうでした。

 事業年度が1年であることは、どこに規定されているのか調べましたら、計
算規則59条2項で、原則として1年を超えることができないとありました。

 ところが、解散後の清算事務年度については、会社法494条1項により、
1年限定の法定期間でした。

 臨時の小遣いで終わらせずに、会社法の勉強につなげるなど、会社法オタク
の私らしいですね。それだけ本欄ネタに苦労しているということです。お察し
ください。



2014.12.09(火)【常勤監査役の権利義務、補欠】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、委員会設置会社の委員についても権利義務者制度や補欠
委員制度がありました(401条2項)。執行役や代表執行役については補欠
制度がありました(403条3項、420条3項)。受験生なら知っているこ
とかもしれませんが、全国に100社もない委員会設置会社については、われ
われ実務家は関心が薄く、新鮮な発見になります。

 一方、業務執行機関ではない監査役会設置会社の常勤監査役については、権
利義務者制度も補欠制度も直接の規定は見当たりませんでした。

 しかし、常勤監査役が任期満了や辞任して、監査役としての権利義務者にな
る場合は常勤監査役としての職務継続義務があるでしょうし、補欠監査役が就
任した場合は、改めて常勤監査役を選定すれば足り、わざわざ明文規定を設け
る必要はないという意味でしょう。補欠常勤監査役についても、条件付決議に
過ぎませんから、その選定も否定されないと考えます。

 常勤監査役というのは、常勤して監査役の職務に専念する監査役で非常勤は
不可というだけで、会社を代表する監査役という意味はありません。というの
は、監査役は裁判官と同じく個々独立して監査する立場であり、業務執行取締
役のように上下関係を設けることができないからです。

 ちなみに、当事務所は会社と同じフロアにありますから、私は常「駐」監査
役ですが常勤監査役ではありません。当社の常勤監査役は社外監査役です。常
勤と常駐、社外性………、その差を勘違いしないことです。代表取締役は常勤
である必要はありませんが、社外性とは両立しません。ややこしいですね。


2014.12.08(月)【代表取締役の任期と補欠】(金子登志雄)

 だいぶ寒くなりました。私もとうとうコートを着用することにしました。

 さて、会社法351条には「代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表
取締役の員数が欠けた場合には、【任期の満了】又は辞任により退任した代表
取締役は、新たに選定された代表取締役(…)が就任するまで、なお代表取締
役としての権利義務を有する」とありますが、「あれ? 代表取締役に任期が
あるのか」と考えたことのある方はそう多くはないと思います。

 というのは、「代表取締役の任期=代表権を有する【取締役の任期】」と考
えてしまい、代表取締役独自の任期についてまで考えないことが多いからです。
しかし、基礎となる取締役の任期の範囲内であれば、代表取締役独自の任期が
肯定されます。取締役の任期を10年にしても、代表取締役は2年ごとに交代
などという場合に有益でしょう。

 条文の「欠けた場合」で思い付くのは、権利義務者制度だけでなく、補欠制
度があります。「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の
員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる」とす
る329条2項ですが、権利義務制度と相違するところは、「欠けた」理由が
「任期の満了と辞任」に限定されないことでしょうか。

 相澤哲編著『新・会社法の解説』309頁では補欠代表取締役を肯定してい
ますが、329条2項の役員である「取締役」には「会社を代表する取締役」
も含むと考えられること、351条で代表取締役が欠けた場合の権利義務制度
があることからして、補欠代表取締役は否定できませんね。

 いままで、補欠代表取締役というのは、取締役が欠けずに代表取締役だけが
欠けた場合を意味するのかとの疑問もありましたが、代表取締役たる取締役が
辞任することによって「権利義務取締役」と「権利義務代表取締役」の2つに
なり、前者には補欠取締役が就任し、後者には補欠代表取締役が就任すること
に確信が持てました。



2014.12.05(金)【選挙と選任と選定】(金子登志雄)

 衆議院議員選挙中ですが、どうも盛り上がりに欠けますね。このまま行くと
投票率が大幅に下がり固定票の多い与党側優位という見方が多いようですが、
結果はどうなるのでしょうか。

 さて、選挙の場合は、定員1名のところ1名しか立候補しないと無投票当選
になり、複数名が立候補した場合は有効投票の最も多い者が当選することにな
っていますが、取締役や監査役の選任については、株主総会で選任方法を自由
に定めてよいのでしょうか。会社法の教科書にも何も書いてないようです。

 そこで考えてみましたが、まず、会社法329条に「役員(………)は、株
主総会の決議によって選任する」とありますから、無投票当選はなさそうです。

 次に、国政選挙では自ら立候補した人からの申込みに対して選挙民が承諾の
有無の返事をする仕組みですが、役員の選任では、株主総会(会社)が申込み
側であり、被選任者が就任の承諾をする仕組みになっています。したがって、
候補者の乱立はまずありません。

 株主総会の申込みは、「ABCDの4人の方は当社の取締役になってくださ
い。有効投票の多い順に3名の方に正式に申し込みます」などという失礼な方
法は現実に無理ですから「Aさんいかが」「Bさんいかが」「Cさんいかが」
と3人に個別に申込み、順に選任可決する方法にならざるを得ません(現実に
は一括して選任することが多いのですが、3つの議案というべきです)。

 ABCさんは株主である必要がありません。日本人である必要もありません。
これに対して、代表取締役(や常勤監査役など)の「選定」は、「取締役の中
から」などという限定があります。

 可決しても、これによって取締役が非取締役の代表取締役というものになる
わけではありません。代表取締役という取締役になるだけです。したがって、
同じ選任行為でも、「人選び」というよりも、同じ立場の複数名の間で各自の
役割(担当・任務・権限)分担を決めるという性格が強いのではないないでし
ょうか。代表権付与という用語も、人選びというよりも、権限付与という意味
合いですし、会社法が代表取締役につき「定める」と規定し、「選ぶ」としな
かったのもこういう理由でしょう。


2014.12.04(木)【設立時代表取締役の選定方法】(金子登志雄)

 合同会社ではなく株式会社の設立に関してですが、会社法の規定が十分に整
備されていないためか、非取締役会設置会社の設立時代表取締役の選定方法に
迷う人が少なくないようです。

 設立後であれば、取締役会設置会社なら362条、非設置会社であれば「定
款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議」と349条に規定
されています。

 取締役会設置会社の設立時代表取締役については、47条に設立時取締役の
互選で定めるとありますが、非設置会社の場合は、どこに規定されているので
しょうか。

 38条1項に「発起人は、…、設立時取締役(…)を選任しなければならな
い」とありますので、発起設立であれば、発起人が選定できることは問題なさ
そうです。この取締役には会社を代表する取締役も含むと考えられるからです。

 次に29条には定款に任意規定を置くことができるとありますので、定款で
直接に、又は定款に「設立時取締役の互選で」などと定めることも可能です。

 これで設立後の会社法349条と並ぶ関係になりましたが、設立時代表取締
役についても349序のような規定を設けておけば、迷いも混乱も生じなかっ
たのではないでしょうか。


2014.12.03(水)【合同会社を設立して】(島根・根来川弘充)

 昨年、10月に知人らと合同会社を設立して、丸一年が経過いたしました。

 設立した理由には、さまざまなものがあるのですが、その理由の一つとして、
業務として会社のご相談を受けるのですが、会社を持っていないのに果たして、
依頼者の立場になって相談が受けられているかという不安があったという点が
ありました。

 今回、はじめての決算をおえて、本当に会社を維持することの大変さを実感
いたしました。

 中でも一番苦労した点は、人件費です。当初予定していた人件費をまかなう
には、当初予定していた以上に、売上が無いと維持できないということを痛感
いたしました。

 費用が相対的に安くできるということで、合同会社にしたのですが、その費
用を気にしているようでは、合同会社にすべきでないのかもしれません。

 すべて厄年のためと思う事にし、また一年、気持ちを切り替えて頑張りたい
と思います。


2014.12.02(火)【会社内組織と会社外組織】(金子登志雄)

 昨日に関連する話題ですが、事業部の再構成など社内組織(組織図)を変更
すると、上場会社では「組織変更のお知らせ」というものを出します。

(例)
http://www.sumirin-crest.co.jp/news/pdf/140401.pdf#search='%E7%B5%84%E7%B9%94%E5%A4%89%E6%9B%B4+%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B'

 同時に人事異動を行うこともよくあるのですが、組織「再編」が会社の外と
の関係だとすると、組織「変更」は会社内部の事業組織の再編成です。

 ところが会社法でいう組織変更は株式会社が持分会社になること、あるいは
持分会社が株式会社になることです。会社内部の組織図の変更ではなく、会社
の種類を「株式」採用会社から「持分」採用会社に変更すること、あるいは逆
のことです。

 紛らわしいので、組織「転換」とでも名づければよいのにと思うのですが、
紛らわしいと思っているには、会社法を知っている人だけですから、一般社会
には影響のないことなんでしょう。

 持分会社の特徴は株主に相当する社員の直接経営が基本であり、株式会社の
取締役のように経営の専門家(個人)を使いません。したがって、社員が法人
でも業務執行者になれます。その代表を「代表社員」といいますが、法人でも
かまいません。

 法人が経営者になると、どう運営するのかと思うでしょうが、自社の従業員
等を、その持分会社担当として選任し(職務執行者という)、その者に持分会
社の管理を任せます。出資先子会社に対する派遣社長のようなものです。

 持分会社からみれば経営従事者ですが、持分会社の社員総会にようなもので
選ばずに、社員自身が選んで派遣してくる点が実にユニークです。

 商業登記の通達では、職務執行者につき支配人に準じて社員たる会社の取締
役会で選任することになっていますが、支店は親会社の組織であるのに対し、
子会社あるいは出資先の持分会社は別会社ですから、この通達に対しては、も
う少し緩和すべきではないかという意見が実務界には少なくありません。


2014.12.01(月)【社内カンパニー制】(金子登志雄)

 少し肌寒くなってきたなと感じていましたが、本年も最後の月になりました。
事務所のある東京、自宅のある横浜はコートを着用せずともまだ過ごせますが、
皆様のところはいかがでしょうか。

 今年は改正会社法の施行が来年に見込まれるなど「変化の前触れの年」でし
たから、例年よりも、私の活躍することのできる場が増えました。著作や組織
再編、会社の設立などの依頼が例年以上にあったためです。

 先日の組織再編の相談では、「昔は社内カンパニー制を採用するところが多
かったのに、最近はそういう話を聞きませんね。どうしてですか」と質問され
ました。

 社内カンパニー制度などとは、懐かしい用語です。平成9年の独禁法の改正
で持株会社が解禁になりましたし、平成13年4月には会社分割制度が旧商法
に定められましたので、社内分社化よりも社外への分社化が主流になりました。
独立採算制がより明確になります。

 拙著にも書きましたが、平成9年以前の昔は、部分的持株会社の事業目的は
「有価証券の保有及び運用」でしたが、持株会社解禁後は、「次の事業を営む
会社の株式・持分を取得・所有することにより、当該会社の事業活動を支配・
管理することを目的とする」が主流となり、多数の事業を列挙したものでした
が、現在は、その簡易版が多いようです。平成18年の会社法施行により、類
似商号の登記の禁止が廃止されたため、細かい事業目的の記載は不要となり、
「その他適法な一切の事業」などという包括的な事業目的で済むようになった
ためです。

 こういう経済活動に関係する法制度の改正は、経済社会を大きく変えますが、
改正会社法の監査等委員会設置会社や親子会社法制の見直しは、企業から要請
された大改革とはいえませんので、法律世界にも大きな影響はないと予測して
いますが、結果はどうでしょうか。


2014.11.28(金)【定款/刺身のツマ条項】(金子登志雄)

 内藤司法書士ブログ等で、もうご存知かも知れませんが、監査役の会計監査
限定の登記は、登記簿の会社状態区ではなく役員区に登記することになったよ
うで、登録免許税3万円の負担問題は無事に解決しそうです。

 これでわれわれ司法書士もお客様から、とばっちりのクレームを受けること
がなくなりました。法務省商事課をはじめとする関係各位のご努力に感謝申し
上げねばなりません。

 これにも関連して、昨日は、改正会社法後のリーガルの商業登記基本書式集
所蔵の定款内容等の改訂箇所についての打ち合わせ会でした。施行日である来
年5月からのことを今から準備しておかねばならないわけです。共同監修者の
神崎先生や鈴木司法書士も一緒でした。

 そこで、定款の決まり文句のように存在する「質権の設定及び信託財産の表
示」や「株主の住所等の届出等」などにつき、法律的にはなくても困らない条
項ですから、削除しようかという議論になりましたが、結局は「ツマがなけれ
ば刺身は引き立たない」ということになり残存させました。

 世の中そういうことが多いと思いませんか。脇役がいるから主役が引き立つ
わけです。脇役に泉ピン子がいるからマッサンの主役女優が引き立つわけです。

 俳優の世界では、主役はすぐに賞味期限切れするが、脇役は寿命が長く、声
がかかる機会が多いため、生涯の合計収入では主役クラスより脇役のほうが多
くなると聞いたことがあります。泉ピン子さんも、昭和50年頃のテレビ番組
ウイークエンダーのしゃべり手として人気を得てから、もう40年も最前線で
活躍し続けています(当時の彼女は漫談家でした)。

 私もいずれ賞味期限切れしそうですから、そろそろ脇役の刺身のツマを目指
そうかなとも思いますが、食べられずにあっさり捨てられたくもなしで、難し
いところです。

 なお、リーガル書式集は、大きく変化し、応用力の利く内容に変化します。
バージョンアップどころか新装開店並です。ご期待を裏切らないと思いますの
で、来年の発売をお楽しみに。


2014.11.27(木)【監査役提案議案?】(金子登志雄)

 株主提案がありますと、総会招集通知は次のような書き方をします。
----------------------------------------------------------------------
<会社提案(第1号議案から第2号議案まで)>
 第1号議案 剰余金の処分の件
 第2号議案 ・・・・・・・・
<株主提案(第3号議案)>
 第3号議案 ・・・・・・・・
----------------------------------------------------------------------

 第3号議案ではなく、株主提案の第1号議案としてもよさそうですが、そう
いう記載例があるのかは知りません。紛らわしさの防止の面から、会社提案の
次の番号を付すのでしょう。

 第3号議案が剰余金処分の件で、第1号議案も第3号議案も可決したら、た
ぶん賛成多数のほうが優先するのでしょうが、これも、そういう例があるかは
不明です(修正動議で取締役選任議案には実例があります)。

 さて、取締役会設置会社を前提に、会社提案と株主提案があるなら、取締役
提案というものはないのかという当然の疑問が生じるでしょうが、株主総会の
議題の決定は取締役会決議に限定されています(会社法298条4項)。

 いわゆる書面決議の会社法319条には「取締役………が株主総会の目的で
ある事項について提案をした場合において」とあり、取締役提案を認めていま
すが、319条は株主総会そのものではないからです。

 ところが、改正会社法344条では、会計監査人の選解任等の議案内容の決
定者が取締役会ではなく監査役(会)に変更されます。

 冗談半分に証券代行に、改正会社法施行後は、定時株主総会招集通知に、会
社提案のほかに「監査役(会)提案」の項目を設ける会社も出てくるかも……
と話しましたら。「まさかぁ」という返事でした。

 きっと、総会運営の実務上は、取締役会提案も監査役(会)提案も会社提案
に一括りにされるのでしょう。


2014.11.26(水)【ネット検索勉強法】(金子登志雄)

 常連の本欄閲覧者の方には、また、あの話題かと思われてしまったことでし
ょうが、昨日は、またもや本年2月5日の東京司法書士会千代田支部セミナー
での東京法務局とのQ&Aの項目をネタにさせてもらいました。

 同じテーマでも10か月間もああでもないこうでもないと考え続けていると、
少しずつですが推理が深まってくるものです。連休中にネット検索でウシオ電
機の開示を見つけたのが考えるヒントになりました。

 連休中には、ダイキン工業の次の情報開示もよい勉強材料になりました。

   http://www.daikin.co.jp/press/2014/140627_j/index.html

 ダイキン工業の定款第7条には、会社法165条2項に基づき、自己株式の
市場買付は取締役会決議でできるとあるのです。なぜ、わざわざ株主総会に付
議するのかと不思議に思いました。

 同社のHPをみる限り、以前からそうしていたからという理由しか思いつき
ませんでしたが、同時に、会社法の条文をみたら、定款で定めても、株主総会
でも決議できるという明文の規定があることに気づきました。

----------------------------------------------------------------------
第165条【市場取引等による株式の取得】
② 取締役会設置会社は、市場取引等により当該株式会社の株式を取得するこ
 とを【取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることが
 できる】。
③ 前項の規定による定款の定めを設けた場合における第156条第1項の規
 定の適用については、………第165条第1項に規定する場合にあっては、
 【株主総会又は取締役会】………とする。
----------------------------------------------------------------------

 定款でわざわざ取締役会決議でできるとしながら、株主総会で決議すること
などダイキン工業以外にあるのだろうかと、例によって、ああでもないこうで
もないと考え続けていましたら、ハタと気づきました。

 自社株式を購入せよという株主提案が結構あるのです。これを「当社定款の
定めにより株主総会決議事項ではありませんので、あしからず」とはいえない
ことが条文上も明白です。

 ネット検索のコツは「お知らせ」と入れてください。上場会社の情報開示に
は、この用語が必ず入ります。


2014.11.25(火)【代表取締役の予選の論理】(金子登志雄)

 今日は重要な話です。司法書士各位はしっかりと理論武装してください。

 さて、登記実務の世界では、代表取締役の予選につき、予選時と就任時の取
締役会の構成メンバーが一致していなければならないという不思議な論理が支
配的ですが、その背景論理がやっとみえてきました。どうも、人的要素の強い
非取締役会設置会社の「互選代表」と同様に考えてしまうようです。

 具体例:取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社において、AB
が3月31日に辞任するので、3月20日の取締役会で4月1日からの代表取
締役としてCを予選した。3月29日の緊急株主総会(書面決議)でABの後
任としてDEを選任した。

 上場会社の子会社でよくある事例です。4月1日にCDEが集まって取締役
会を開催すれば何の問題もないのですが、4月1日は期首の多忙な時期であり、
子会社の運営は親会社次第ですから、子会社の役員は、収益を生まない形式的
な取締役会よりも商売の方を優先するため、集まれないのです。こういう事情
を公務員である当局の方は想像さえしてくれません。

 そこで予選にしたわけですが、登記実務は、予選時の取締役と就任時の取締
役が異なるから、別個の取締役会だと考えてしまうようです。つまり、Cを代
表取締役として予選したのは「ABC取締役会」であり「CDE取締役会」で
はなく、ABCの総意とCDEの総意は不一致であることが明白だから、この
予選は無効になるという思考です。まさに、心裡留保は無効だという論のごと
しです。

 代表取締役は取締役の代表だから、CDEに選ばれなければいけないとも考
えるようです。

 しかし、これは「互選代表の論理」ではないでしょうか。互選代表であれば、
選任者ABCのうちABが4月1日までに欠けてしまいますから、委任契約の
委任者死亡と同様に、予選の効力が失効したと解釈してもよいでしょう。

 本事例で予選したのは「個」としてのABCではなく、「機関」である取締
役「会」ですから、いったんなされた機関決定は、被選定者のCが取締役でな
くなった場合は目的達成不能で無効になっても、選定側のABの事後事情で効
力が否定されることはないはずです。将来の支店設置決議や簡易合併決議が取
締役の交代に影響されないのと同じです。

 社外取締役の存在を考えるまでもなく、代表取締役は取締役の代表ではなく
会社の代表です。

 そこで、説明に窮するのか、便利な「合理性」を持ち出します。構成員が変
わるなら予選する必要もなく、合理性を欠くから無効だというわけです。一見、
説得的にみえますが、ABが急死した場合にも、合理性を欠くことになるとし
ますから、運・不運に左右される合理性などあるのでしょうか。

 会社はC代表取締役でよいと思っているから(合理性があると思っているか
ら)、自己責任で登記を申請しているわけで、これに対して登記所が合理性が
ないというのは適法性審査を超えた妥当性審査ではないでしょうか。形式的審
査権も超えており、会社としては余計なお世話だと感じることでしょう。

 新取締役のDEがC代表取締役に反対であれば、Cは就任承諾を撤回するで
しょうし、就任後でもDEはCに辞任を求めることができます。辞任しなけれ
ば解任です。こういうことは会社の自治問題です。もっとも、こういう予選事
例のほとんどが上場会社の100%子会社であり、実際は親会社の指示で動い
ているだけのため、このような紛争にはなりません。世の中の大多数の実態は、
代表取締役は親会社やオーナー社長が決めるのであり、取締役会は形式的な追
認作業でしかありません。

 自分が辞めた後の後任を選べるとしたら、非取締役が代表取締役を選んだの
と同様だという論についても、そもそもCは3月20日時点でも代表取締役に
なれる立場でした。就任承諾時期が遅れたのと同様に、就任時期をちょっとず
らしただけのことです。相澤哲編著『新・会社法の解説』309頁では補欠代
表取締役を肯定していますが、これも後任の予選の1つです。

 登記先例の事案は取締役全員の任期切れ重任(定時総会)を間に挟むため、
まだ別個の取締役会(今期取締役会と次期取締役会)だということに納得でき
る方も、全員が任期中の本事案にまで、この論を持ち込むことには違和感を覚
えるはずです。大多数の学者や弁護士にも通じない論理でしょう。

 本欄を当局の方が読めば、きっと苦々しく思うことでしょうが、私は当局に
逆らっているわけではありません。登記を愛する身として、登記は異質な法律
世界と思われたくないのであり、取締役会の独立性を認める健全な法律解釈に
戻っていただきたいだけです。今後も反対し続けますので、ご了解ください。

(注)下記のウシオ電機の事例は、9月17日の取締役会で10月1日の社長
を予選しています。もし、これが代表取締役の予選だとしたら、この間に1人
でも取締役が辞任・死亡したときに、この代表取締役の予選は認められるので
しょうか。社長の場合は可で代表取締役は不可というのもおかしな話です。
 http://www.ushio.co.jp/documents/NEWS/company/20140917/20140917_01.pdf



2014.11.21(金)【合理性判断】(金子登志雄)

 昨日「商事課の立場からは、無責任でいられるわれわれ民間人と相違し、責
任あるお立場ですから、これをOKにすると際限がなくなり、さまざま問題が
生じかねないという危惧から保守的な回答をしてしまうこともあるようでした」
と書きましたが、これが合理性根拠につながるようでした。

 たとえば、代表取締役の予選をする合理性がない、合理的期間でない………
などという理由付をすることで、際限なく予選が広がることを防止したいよう
でした。そのため、商事課の多数は、代表取締役の予選については、非常に狭
く捉えている感触でした。

 即座に反論しました。合理性というのは登記官が判断することではなく、裁
判所が判断することであって、会社が合理性があると判断して決定したことを
登記官の判断で否定するのはいかがなものかと。

 登記の却下事由は、適法性判断であり、判断者によって異なる合理性などと
いう曖昧な判断は可能な限り避けていただきたいのですが、企業と直接接触す
るわれわれは、この会社なら問題ないと「個別」判断して申請しているのに対
し、商事課は一般論で判断し、問題が起きたら困るという性悪説に立脚してし
まうようでした。

 立場が変われば結論も異なるのは致し方ないことですが、19日のような座
談会で官民交流が増えれば、こういうことも徐々に改善されることでしょう。
代表取締役を予選するような会社は上場会社の100%子会社が中心であり、
問題が生じることはまずありませんので、引き続き、民間の意見を声を大にし
て伝えたいと思っています。それまでは、拙著にあるように、定款で代表取締
役は株主総会でも選定できるようにし、総会で予選しておくのが無難です。


2014.11.20(木)【素晴らしい座談会】(金子登志雄)

 昨日は、きんざいの登記雑誌「登記情報」の新年号特集用に、法務省商事課
と元登記官である神崎先生を中心とする民間側(商業登記倶楽部関係者)で、
会社法施行8年を記念し、商業登記の諸問題につき座談会がありました。商業
登記倶楽部に関係する私と鈴木龍介さんが司法書士として参加しました。

 実に有意義な座談会でした。お互いの誤解も解けました。われわれ民間側は、
法務省のお役人様達は、さぞ頭が固いのだろうという先入観を持ってしまう傾
向がありますが、商事課課長様はじめ、実に気さくで非常に話しやすく、考え
方も柔軟でした。

 外部に発表されたものをみると、その柔軟なニュアンスが通じませんが、同
じ商事課内部でもさまざまな意見が飛び交うようで、少なくともわれわれと意
見を同じくする方がいらっしゃるとのことで、ほっとし、安心しました。した
がって、現時点では、商事課内部で少数説でも、われわれ民間側と同じ意見が
明日の多数派になる可能性も十分に残されているわけです。

 逆に、商事課の立場からは、無責任でいられるわれわれ民間人と相違し、責
任あるお立場ですから、これをOKにすると際限がなくなり、さまざま問題が
生じかねないという危惧から保守的な回答をしてしまうこともあるようでした
が、われわれ民間側の意見を聞き、ごくごく通常のありふれた出来事を、なぜ、
登記で受理してくれないのかという不満であることをご理解いただきました。

 座談会の内容は雑誌に掲載されますので、ここには書きませんが、このよう
な有意義な座談会を企画してくれた登記情報編集部には、感謝です。登記情報
は月刊誌ですが、年間たったの1万円程度です。ぜひ、ご購読のうえ、新年号
の座談会を読んでください。


2014.11.19(水)【株主総会と総株主の同意】(金子登志雄)

 新保司法書士のブログ(司法書士のオシゴト)に、株式会社が合同会社に組
織変更する場合に、効力発生日を払込期日とする募集株式の発行を条件にする
ことが可能かという問題提起がなされています。
      http://blog.goo.ne.jp/chararineko

 私自身は、条件付き組織変更で午前0時に効力が発生しないこともあるが、
効力発生日の前日までに総株主の同意が必要であるため(776条1項)、募
集株式の発行を条件にすることは無理だと考えています。

 組織変更や吸収型組織再編は、株式や持分の割当てが前提とされており株主
の確定が重要であるため、資本減少や定款変更の議題と相違し、総株主の同意
や株主総会決議は効力発生日の前日までにしなければならないとされています。

 ところで、AがB株式会社を吸収合併する際に、効力発生日のBの募集株式
の発行を条件とする合併は可能です。効力発生日の前日までのBの株主総会は
基準日株主を前提としており、効力発生日の新株主を除外しても問題ないから
です(募集株主の救済は合併の効力以外で検討すべきことです)。株主総会後
にBで新株予約権が行使され新株主が登場した場合と同じことでしょう。

 以上に対し、株主総会ではなく総株主の同意という場合は基準日問題があり
ません。会議の招集も必要ありません。したがって、「前日の総株主=効力発
生日の総株主」で株主の交代や新株主の登場を予定していないと考えられます。


2014.11.18(火)【国政選挙と取締役選任】(金子登志雄)

 沖縄知事選が終わったばかりなのに、年内に衆議院の解散、総選挙がありそ
うですが、株主総会による取締役の選任方法との差を考えたことがあるでしょ
うか。

 国政選挙では各選挙民は1人1票しか有せず、多数をとった者順に当選しま
すが、株主総会では個々の信任投票になっており、議案が「取締役3名選任の
件」で候補者がABC3名であったら、「第1号議案A選任の件」、「第2号
議案B選任の件」、「第3号議案C選任の件」という3つの議案が上程された
のと同じく、株主は候補者ごとに議決権を行使することができます(実務上は、
ABには賛成、Cには反対などと議決権を行使します)。

 議案が取締役2名選任の件のとき、候補者ABCの3名であったら、3名全
員が取締役になるか、多数順になるかは解釈問題になりますが、このような事
例は株主提案がなされたなどの特殊な場合に限られます。

 この結果、就任の登記においても、個別に考えればよく、ABだけ登記し、
Cについては後日に登記することも可能であり、3名を一緒に登記しなかった
としても、登記の遺漏にはなりません。


2014.11.17(月)【パブリックコメント】(金子登志雄)

 いつも貴重な情報を提供してくれる京都の内藤卓司法書士のブログで既にお
知りの方も多いでしょうが、取締役等の就任登記で住民票等が必要になるよう
で、「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関するパブリックコメント
を募集中です。

 http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/15c9c54c2567f9ec190acad75a5842e9

 私もさっそく意見を出しておきました。
----------------------------------------------------------------------
 新設される商業登記規則第61条第5項につき、表現を改めていただきたい。

 「就任を承諾したことを証する書面に記載した住所につき市区町村長その他
の………」とありますが、これでは、住所を記載しない場合は住民票等の添付
が不要であると勘違いされかねず、また、住所の記載のない就任承諾書は認め
られないという運用がなされる可能性があります。

 商業登記法では、取締役等の就任承諾書に住所の記載を要求していないため
(議事録を援用する場合も同じ。会計参与や会計監査人についても同じ)、こ
こは「就任を承諾したことを証する書面に市区町村長その他の………」とし、
「記載した住所につき」を削除していただきたい。

 なお、住民票等については自然人である会計監査人の資格証明書と同様に期
間制限がない(作成後3か月以内等)と理解しました。
----------------------------------------------------------------------

 たぶん、私の意見は捨て置かれ、通達等で「住所の記載のない就任承諾書も
有効」などと説明されるだけでしょうが、へたな面子にこだわらず、誤解を招
きやすい部分につき柔軟に対応していただくことを願っています。


2014.11.14(金)【株券不発行証明】(金子登志雄)

 本年2月の東京司法書士会千代田支部セミナーの折に、次のようなQ&Aが
なされました。回答は東京法務局です。

----------------------------------------------------------------------
Q:株券不発行の証明書に、株主の住所氏名の記載は必須か。また、代表者が
 「全株につき、全株主より不所持の申出あり」等と記載された上申書をもっ
 て、株主名簿に代えることができるか。

A:株券を発行していないことを証する書面は、株主名簿に限られます。また、
 株主名簿には、会社法第121条に規定される事項が記載され、さらに、株
 券不所持の申出又は株券不発行の事実が記載されている必要があります。
-----------------------------------------------------------------------

 上記のQは、商業登記法63条には、「株式の全部について株券を発行して
いないことを証する書面」とあるだけで、株主名簿とは限っていないので、上
申書でもよいと思うがいかがかと聞いているわけです。

 したがって、これに対しては、そのような簡易なものでは不十分であり、せ
めて株主名や、その持ち株数、不発行の有無程度の具体的な記載した証明書で
なければ受理しないと回答すればよいのに、よりによって、勇み足で「株主名
簿に限る。株主の住所も株式の取得年月日も記載が必要だ」などと商業登記法
を超えた無茶な回答をしてしまったわけです。

 この回答が全国に混乱を生じさせているようですが、今週、私は、いつもど
おりに「株主名、その持ち株数、不発行の旨」の3点しか書かず申請しました
が、登記はあっさり受理されました。

 皆さんも、回答の真意を読み取り、回答を文字どおり鵜呑みにしないよう、
お気をつけください。


2014.11.13(木)【エスカレータ大阪方式考】(金子登志雄)

 11日は大阪に行ってまいりました。大阪司法書士会(南ブロック4支部)
での会社法セミナー講師のためです(研修幹事の皆様お世話になりました)。

 ありがたいことに大阪、名古屋は進取の気性が強いのか、改正商法時代から
何度か講師に呼んでいただいております。

 それでも毎年新しい司法書士が増えているためか、金子講師ははじめてだと
いう人も少なくなかったようで、私が会社法・商業登記1本で自宅の抵当権の
抹消ですら自分でせずに、司法書士に依頼した話をすると、意外な顔をされま
した。

 宿泊でしたので、翌日は、まだ行ったことのない通天閣を見学してきました。
その近辺の新世界で大阪名物の串カツでも食べればよかったのですが、1人歩
きのため、今回はパスしました(以前、当会員の田中さんにご馳走になったこ
とがあります)。

 地下鉄の駅では、大阪名物のエスカレータの右並びを経験し、なぜ大阪だけ
なのか不思議に思い、ネットで検索しましたところ、諸説あるが「1970年
に大阪万博の時、阪急の梅田駅で混雑を防ぐ為、『お急ぎの方の為に左側をお
空けください』というアナウンスがあったから、という説が有力のようです」
とありました。

 たぶん、この説が正しいと思います。というのは諸外国では右並びが多いの
で、万博でそれに合わせたのでしょう。

 人の心臓は左にありますから、それを守るため、東京のように左並びのほう
が自然だとは思うのですが、右手を空けておくと、すぐに殴りかかかることが
できるので、礼儀作法として、右を抑制する右並びが世界標準なんでしょうか。

 ひょっとして2020年の東京オリンピック以降は、東京も諸外国に合わせ
て右並びに変わるかもしれませんね。


2014.11.12(水)【登記の抹消? 抹消の登記?】(仙台・立花宏)

 久しぶりに要件事実について体系的な勉強をしようと思い、『要件事実入門』
(岡口基一著 創耕舎)という本を読んでいます。実務について以来、要件事
実について体系的に勉強する機会があまりなかったので、とてもよい刺激にな
っています。

 同書の中に、無効な抵当権を抹消する際の訴訟物についての記載があり、
「所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消請求権」となっ
ていました。
 そして、次のような記載がありました。

 「本問の訴訟物を「~登記抹消請求権」とせず、「~登記抹消登記請求権」
と記載する例もありますが、「登記の抹消」と「抹消登記」は異なる概念であ
り、不動産登記法でも「登記の抹消」との用語を使用しています。」(※)

 確かに、不動産登記法第68条では、“権利に関する登記の抹消は、(省略)
申請することができる”(条文中、下線は筆者による)となっています。そし
て、当事者が登記の抹消を申請すると、登記官が登記を抹消するための手続を
することになります。このとき、登記の抹消をするための手続は不動産登記規
則第152条に規定されています。
“登記官は、権利の登記の抹消をするときは、抹消の登記をするとともに、抹
消すべき登記を抹消する記号を記録しなければならない”
 たとえば、登記記録の乙区には、1番抵当権設定の登記しかない不動産だと
します。当事者がこの抵当権設定登記の抹消を申請すると、登記官は、乙区の
2番に、“1番抵当権抹消”という登記(抹消の登記)をした上で、1番抵当
権の登記事項に抹消する記号を記録することになります。(なお、この抹消す
る記号は、登記事項証明書では、抹消に係る事項の下に線を付されることにな
ります(不動産登記規則第197条第5号))。

 当事者が申請することができるのは、不動産登記法第68条に基づく“登記
の抹消
”です。同書のとおり、訴訟物は「~登記抹消請求権」ということにな
るのでしょう。
 ところで、訴訟物が「~抹消登記請求権」となることはないのでしょうか。

 調べてみると、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関
する法律」(以下、「動産・債権譲渡特例法」という。)第10条第1項には
次のように規定されていました。
“譲渡人及び譲受人は、(省略)抹消登記を申請することができる”(条文中、
下線は筆者による)
 この規定によれば、当事者が申請するのは、“抹消登記”ということになり
ます。
 ということは、動産・債権譲渡特例法に基づき、動産譲渡登記や債権譲渡登
記を抹消することを請求する場合の訴訟物は、「~抹消登記請求権」となるの
だと思います。

 なお、同条第2項に、譲渡登記ファイルへの記載方法が規定されています。
抹消すべき登記を抹消する旨等を記録することとされています。(不動産登記
と違い、抹消に係る事項に抹消する記号を記録することにはなっていません。
ただし、動産・債権譲渡特例法第12条に基づき設けられる登記事項概要ファ
イルには、不動産登記と同様の記録がされます(平成17・9・30民商第
2290号民事局長通達))。

 同書を読み、法律を扱う職業に就くものとして、用語を正確に使うことの大
切さ、法律の条文の大切さをあらためて感じています。

(※)なお、同書では、さらに次のように解説されていました。
 「登記を抹消するのは登記官ですから、(省略) 正確には「登記抹消請求
権」ではなく、「登記抹消手続協力請求権」というべきものです。」


2014.11.11(火)【定款の作成「代理」】(金子登志雄)

 昨日と関連する問題ですが、電子定款の際に、われわれは発起人からの定款
作成と認証についての委任状に定款を添付したものを公証人役場に持参し、認
証してもらいます。

 この委任状と添付定款との間に契印(通称、割印)がなくても、東京や神奈
川の公証人役場では認証してくれますが(全公証人役場かどうかは不明)、埼
玉県をはじめ、それ以外の地方の公証人役場では、契印が1つでも漏れている
と認証してくれません。

 しかし、これでは、まるで、代行(子供のお使い)扱いであって、それなり
の権限を持った代理人としての扱いとは思えません。

 代理とは本人に代わって代理人が意思表示するものです。本人の意思を伝達
する使者・代行とは相違します。これが原則です。

 ただ、定款作成の代理権は、文書作成の代理権と思われますから、定款を確
定させるための合同行為の意思表示ではなく、確定した意思表示を文書定款に
どう表現するかという事実行為の代理権という側面があります。

 しかし、事実行為といっても、高度の法律知識を要する精神作用であって、
発起人が決めた定款内容を法律文書として代理表現する点で(法律文書への翻
訳権限?)、単純な事実行為と相違します。だからこそ、国家資格者のみに与
えられた作成「代理権」と表現されたものだと思います。

 行政書士法でも平成14年改正で「代理人として作成」と明確に代理行為と
されたようです。

 ちなみに「署名代理」という用語があります。銀行の支店長の記名押印を支
店長代理がするような場合に使います。これも単に「ハンコ押し代行」ではな
いでしょう。

 いずれししろ、委任状に添付する定款は、代理人である司法書士が作成した
ものですし、定款作成の代理権も代理権であり、国家資格者に与えられた代理
権ですから、委任状と添付定款との契印の有無については、もう少し代理人を
信じてもよいのではないでしょうか。東京・神奈川方式が全国に普及すること
を望んでいます。


2014.11.10(月)【定款の作成日】(金子登志雄)

 株式会社の設立手続において、本来は、定款認証後に出資金を払い込まねば
ならないが、定款作成日以降であれば、登記を受理するという取扱いがなされ
ています。

 では、11月4日に発起人全員で定款内容に合意し、5日に司法書士に電子
定款作成を委任し、司法書士も5日付でPDFで定款を作成したが、実際の電
子署名は10日にして、公証人役場に電子申請し、11日になって公証人の認
証を得たところ、登記直前に出資金の入金が7日になされていたという場合に、
登記は受理されるでしょうか。

 結論は受理されますが、先般、司法書士仲間からの情報で、某県の公証人役
場から、電子署名した日である10日が定款作成日だから、PDF定款の作成
日も5日でなく10日にすべきだといわれたそうです。

 もちろん、これでは登記に支障が生じるので、作成日は5日、電子署名の日
は10日にして認証してもらったようですが、私は定款の作成日は法の趣旨ご
とに異なり1つではなく、本件では電子署名が可能であった5日だと考えてい
ます。次の場合で説明します。

 1.発起人全員が合意し内容の確定日(内部的な効力発生日)・・・4日
 2.文書や電磁的記録として作成した日(文書化された日)・・・・5日
 3.この文書又は電磁的記録に署名した日(様式の完成日)・・・10日
 4.公証人の認証日(対外的に効力を生じた日)・・・・・・・・11日

 取締役会を開催し決議した日が4日で、取締役会議事録を作成し出席役員が
署名押印した日が5日だった場合に、取締役会の決議の日を5日だと主張する
人はいません。これと同様に定款作成日も合同行為が確定した4日だといいた
いところですが、定款の作成は「要式行為」だという特徴があります。取締役
会決議の効力発生と同視するわけには行きません。

 要式行為というのは結婚(婚姻契約)が役所への「届出」で効力を生じるの
と同じく、意思表示だけでは法律効果が発生しない行為をいいます。

 しかし、結婚と相違し、定款作成の要式行為は、押印の場合でいえば「作成
日4日、5日に押印」でも作成日は実務上4日と扱われるでしょうから、電子
定款で「作成日5日、電子署名日10日」でも、作成日は5日と扱うべきです。

 そうでなければ、5日に電子署名したのに、誤字があったので10日に電子
署名をし直した場合でも10日が作成日とされてしまいます。公証人役場で、
ここをこう直せと指示されたら、電子定款作成日が予定した日とずれてしまい
ます。

 したがって、対外的には電子署名日が定款作成日だとしても、発起人内部や
登記上は文書に記載された作成日をもって作成日と扱ってよいのではないでし
ょうか。少なくとも、定款作成と出資金入金日との関係では様式行為が完成し
た日ではなく、定款内容が書面として作成され、いつでも署名が可能になった
日として問題ないと考えます。


2014.11.07(金)【種類株主の2つの不利益】(金子登志雄)

 黒田総裁の第2弾バズーカ砲で、円がとうとう115円近くに達しました。
1ドル100円のとき、金1億円の預金をしていた方は、ドルベースでいうと、
100万ドルが87万ドルに値下がりし、逆に100万ドル預金していた方は
1億1500万円になったということです。

 私も預金が1億円もあればドル預金に鞍替えしようかなと真剣に思うところ
でしょうが、小口預金者が考えることではないですね。

 さて、昨日の形式的平等か実質的平等かの話に比べれば、会社法322条の
「ある種類株主に損害を及ぼすおそれ」の判定は、まだたやすいところがあり
ます。質的に異なるAとBを比べるのであって、量的問題である金持ちと貧乏
人の区別よりは簡単だからです。

 ただ、会社法によると、ある種類株主に不利益という場合には、2種類があ
ることにご注意ください。

 非公開会社で普通株式と(配当)優先株式を発行している会社があったとし
ます。ここで優先株式の新株を発行しようとすると、この発行が優先株式の発
行可能種類株式総数の枠内であれば、普通株式も事前に承認済みですから、会
社法322条の「普通株主に損害を及ぼすおそれ」があるとはいえません。

 ところが、同じ優先株主の範囲内で考えると、いままで筆頭株主だった者が
この新株の発行でその地位を奪われるかもしれません。つまり、同種の種類株
主の内部で持分比率が下がるという不利益がありますから、会社法199条4
項の種類株主総会が必要です。

 このように他種類との関係での不利益と同種類の枠内での不利益の2種類が
会社法に規定されています。

 したがって、普通株式のみ発行している会社において、普通株式の一部を完
全無議決権株式に変更する場合は、他種である無議決権株主がまだ不在ですか
ら、他の普通株主のみの不利益を考えれば足りますが(本例では不利益はなし
と考えられ、無議決権株式になる株主だけの同意で足ります)、完全無議決権
株式が発行済みであれば、その既存の無議決権株主の種類株式内部の持株比率
に変動が生じますので、その無議決権株主の同意も必要だということになるで
しょう。


2014.11.06(木)【2つの平等原則】(金子登志雄)

 消費税値上げ問題につき、値上げしても国民全員に平等の税率が課されるか
ら平等原則に適合しているとみるか、いや金持ちも貧乏人も同率であるのは庶
民いじめの税制で平等原則に反するとみるかについては、人によって見解が相
違するでしょう。

 前者は形式的平等、後者は実質的平等に着目した考え方ですが、同じことが
増資の株主割当てにも当てはまります。

 株主割当ては、株主に同率で平等に割り当てるのだから取締役(会)の決定
で済むと考えるか、即座に資金準備できる者とできない者とを差別することに
なるから、実質的平等の見地からは、原則として株主総会決議によるべきだと
考えるかです。

 会社法は公開会社については前者で、非公開会社については後者で規律して
います(会社法202条3項)。公開会社は、株主割当てに応じて資金準備が
できなければ、すぐに株式を売却して、株主でなくなればよいからです。

 では、日本国は公開会社か非公開会社かと考えますと、憲法22条で国籍の
離脱の自由を認めていますから、建前は公開会社ですが、現実には、そう簡単
なことではありません。明日から米国人や中国人あるいは無国籍になることが
できません。

 現実の日本国は非公開会社ですから、国民に平等に負担を与える消費税の決
定は国民総会で決めようじゃないかというのが会社法の考え方ではないでしょ
うか。お国もそうあってほしいものです。


2014.11.05(水)【戸籍と国籍】(島根・根来川弘充)

 私の住む島根では、先月の10月は千家様と典子様の結婚式で大変盛り上がり
ましたが、ふと、同職間での雑談で、「皇室に戸籍は無いから、典子様の戸籍は
どうなるのか」ということが話題になりました。

 「天皇も日本国民であり同じ国籍を有するのであれば、皇室も戸籍に記載され
ていないとおかしいのでは?」と思うのは自然な疑問です。

 念のため、戸籍法を調べてみたのですが、「日本国籍を有するものは戸籍に記
載する」といった文言はどこにもありませんでした。「国籍があるから戸籍も当
然ある」ということでは無さそうです。

 「戸籍」と「国籍」

 同じ「籍」という言葉を使っているのだから、誰がみても分かりやすい相関関
係がきっとあるだろうと思ってしまいますが、皇室のことは、「皇室典範」とい
う法律に規定されています。

 有名なのは女系天皇を認めない「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを
継承する」という第1条ですが、その第26条に「天皇及び皇族の身分に関する
事項は、これを皇統譜に登録する」とあります。この政令である「皇統譜令」の
定めによって、皇統譜という皇室専用の戸籍が作られるようです。


2014.11.04(火)【サプライズ効果】(金子登志雄)

 アベノミクスがうまく行っていないのか、先日の31日には、どでかいカンフ
ル注射が打たれました。日銀の更なる金融緩和の発表であり、通称、黒田総裁の
バズーカ砲とか異次元のサプライズなどといわれるものです。

 おかげで株価が急騰し、持ち株の含み損を抱えていた私も恩恵を受けましたが、
こういう官制相場ではマネーゲームでしかなく、自由主義経済の根幹をなす神聖
な証券市場が胴元主導のバクチ場と誤解されてしまい、素直には喜べませんでし
た。「異次元」という用語自体が胡散臭く神聖さを欠いています。

 この金融緩和が実需に繋がればよいのですが、狙いは消費税アップの側面支援
かと疑う人も多いようで、カンフル注射の最終結果が「吉」と出るかは不明です。
日銀内でも5対4の僅差での決定でした。

 証券市場のバブル化に反して、実質賃金の減少と雇用の不安定で庶民は生活防
衛に走っていますし、中小企業も原料費の高騰で厳しい経営が続き、廃業や倒産
が増えています。いわゆる円安倒産です。

 円が安ければ輸出が増えるといっても、輸出企業は海外生産にシフト済みです
し、日本の価値が下がることでもありますから、これも素人感覚では喜ぶべきこ
となのかは疑問です。海外旅行好きには、経費の増大です。

 原発問題もそうですが、最近の世相は、今がよければ明日のことは知らんとい
う風潮がはびこり、実に殺風景ですが、信用第1の農耕民族の司法書士としては、
騎馬民族のように、この時流に上手に棹さして生きるのは難しいため、いつもど
おり淡々と生きるしかありません。

 悲観的な内容になってしまいましたが、企業法務に従事する立場としては、こ
ういう企業社会の動向にも無関心ではいられませんので、ご了承ください。

 なお、「流れに棹さす」は、「流れに逆らう」という意味はありません。

http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2011_05/series_07/series_07.html



2014.10.31(金)【会社分割と併存的債務引受け】(金子登志雄)

 10月も今日で終わりです。単発のネタですが、会社分割と債権者保護の話に
しましょう。十分に理解されているとはいえないようですので………。

 さて、次の乙社から甲社への吸収分割で説明しますと、吸収分割に伴い債務の
移転が生じるBのみが債権者保護の対象であって、乙に残される債権者Aは対象
外です。

      (分割前)             (分割後)

    債権者A B            債権者A B
      / /                / \
     / /        ⇒       /   \
      乙社===⇒甲社          乙社===⇒甲社


 分社型の吸収分割であれば、乙は通常の場合に移転財産の対価を取得しますか
ら、乙の純資産額に変化はなく、残された債権者Aにも不利益がありません(無
対価の場合は横に置いておきます)。これが残存債権者に保護が不要の根拠です。

 債務が移転する債権者Bにとっては、債務者が乙から甲に変わるため、この吸
収分割に異議を出せますが、旧債務者の乙がその債務につき連帯債務を引き受け
ると(併存的債務引受けなど)、Bの不利益が消えて、依然として乙もBの債務
者になるため、この場合は、乙で債権者保護手続が必要ではなくなります。

 ここまでは会社法実務に詳しい方なら、よく知っていることですが、先般、こ
の吸収分割が分割型だとした場合に、乙が併存的債務引受けをしても、債権者保
護手続が必要かと考える事案に遭遇しました。

 分割型というのは乙が甲から受け取った対価を乙の株主に分配するものですか
ら、乙では純資産額が減少します。ですから、会社法上も、乙の債権者全員、こ
こではAにもBにも債権者保護手続が必要です。

 にもかかわらず、Bに対して併存的債務引受けをするなら、少なくとも、Bに
対しては保護手続を省略することができてもよいのかなと一瞬考えてしまいまし
た。

 しかし、分社型の場合に債務引受けをした乙は純資産額が従来のままであるの
に対し、分割型では従前よりも財産が減少した債務者による債務引受けになりま
す。極端な表現をすれば、債務者が金持ちから貧乏人に変化したかもしれないの
です。これでは、債務引受けをされても、分社型と同視するわけにはいかないで
しょう。やはり、Bに「異議あり」という権利を認めなければならないと思いま
した。


2014.10.30(木)【予選、補欠、効力発生日】(金子登志雄)

 非取締役会設置会社における業務執行は「取締役の過半数をもって決定」し
ますが(会社法348条2項)、取締役の過半数をもって代表取締役を決定す
ることを特に「互選」といいます(会社法349条3項)。

 このように役員の人事問題に関しては特殊な用語が用いられますが、では、
「予選」を通常の表現に直すとどうなるかというと、条件付あるいは期限付決
議ということになるでしょう。

 条件付決議の1つに「欠員補充の補欠」があります。これには補欠代表取締
役もあります(相澤哲編著『新・会社法の解説』309頁)。

 例えば、取締役ABC、代表取締役A、取締役が欠けた場合の補欠取締役D、
代表取締役が欠けた場合の補欠代表取締役Bと定めておいたところ、Aが突然
10月いっぱいで辞任した場合は、11月1日付でDが取締役、Bが代表取締
役に就任します(この辞任が取締役Aの任期満了退任の場合でもよいかは不明
ですが、不可とする根拠もなさそうです)。

 この場合に、新取締役のDが代表取締役の選任決議に参加していないから、
Bは代表取締役になれないという論は成り立たないでしょう。

 条件付あるいは期限付決議の1つに「効力発生日制度」があります。例えば、
取締役ABC、代表取締役Aにおいて、Bを代表取締役に定め、その選任の効
力発生日を11月1日にしておいたところ、やはり、Aが突然10月いっぱい
で辞任するというので、後任取締役Dを臨時株主総会で選任すれば、上記と同
じく、11月1日付でDが取締役、Bが代表取締役に就任します。

 これはまさしく予選ですが、効力発生日の方向から考えると、途中でDが取
締役に加わったからといって、B代表取締役の効力が発生しないのはおかしい
と感じませんか。


2014.10.29(水)【熟柿は青柿に学ぶ】(金子登志雄)

 青柿の割に歳食っている富田さん、久々の投稿、ありがとうございました。
もうすぐ熟柿の私も、「資産の総額」の登記を医療法人で経験していますが、
確かに勘違いしやすいですね。

 株式会社等の資本金は登記簿の前半に登記するのに対し、医療法人等の資産
の総額の登記は登記簿の後半に登記し、しかも、毎年数字が変化するものだか
ら、資本金と相違し、事業年度単位で登記するものだとつい思ってしまうのも
自然です。

 おかげで、いま考えている「代表取締役の予選」についても、よいヒントを
いただきました。というのは、「現在」の取締役が「次期」の代表取締役を予
選することの可否について考えていましたが、そもそも「今期」の代表取締役
や「次期」の代表取締役という表現自体にも問題があると気づいたからです。

 取締役や監査役の任期は会社法になって「定時株主総会の終結の時まで」が
基準になりましたが(会社法332条など)、任期は1年ごとであるとは限り
ませんし、特例有限会社のように任期制度自体のない場合もありますから、私
は「任期は事業年度単位」という思い込みに囚われすぎていたことに気づきま
した。医療法人の役員の任期についても、「2年を超えることはできない。た
だし、再任を妨げない」(医療法46条の2)であって、事業年度単位ではあ
りません。

 例えば、株式会社の取締役ABCD(代表取締役A)において、Aが今月末
で取締役を辞任するというので、後任の代表取締役としてBを来月1日付けで
予選することは問題がありません。

 しかし、Aが今月末に任期満了退任するという場合は、後任の代表取締役と
してBを来月1日付けで予選すると、その時点で取締役でないAが参加した取
締役会で代表取締役を選定したから違法だ、「次期」代表取締役を選定するこ
とはできないなどという論が有力に主張されているわけです。

 辞任の場合は後任の選任の効力発生時に取締役でなくてもよく、任期満了の
場合は不可というのは納得できません。ともに退任事由の1つでしかないから
です。

 「次期」代表取締役とは、「後任」代表取締役の1つに過ぎないことを昨日
の投稿により学ばせていただきました。これを「熟柿は青柿に学ぶ」といいま
すが、出典は本徒然ですので、誤解のないようお願いします。


2014.10.28(火)【青柿が熟柿弔う???】( 東京・富田太郎)

 以前、あるNPO法人の登記簿をみて驚いたことがあります。理事の変更登
記は、きちんと行われているのですが、なんと!  設立以来、『資産の総額』
の変更登記を一度もやっていない法人でした。

 そのNPO法人の理事曰く、「毎年、事業報告書等を、都庁に提出していま
す。また、顧問の専門家にも相談したところ(設立以来、増資もしていないの
で??)理事の変更登記以外は、特に(登記は)不要だと言われました。」

 勿論、皆様もご存じのように、『資産の総額』とは、『会社の資本金』とは
全く異なる概念で、資産合計から負債合計を差し引いた正味財産のことを言い、
毎年必ず「資産の総額の変更」登記をしなければなりません。この、毎年の変
更登記を忘れているNPO法人は結構あるそうです。

 富田曰く、『たぶん、その専門家とやらは、登記が苦手な方だったのかもし
れませんね・・・(やれやれ)。』

 ところで、先日、某NPO法人の登記を申請いたしました。某NPO法人、
実は休眠状態で、『資産の総額』が昨年と全く変わりませんでした(動きが全
くなく、昨年と同じ。1円の変更もない)。何も考えず、『資産の総額』の変
更登記を申請したところ、法務局より電話がありました。

 法務局曰く「昨年から変更のない場合は、登記不要です。」

 慌てて条文(組合等登記令第3条)を確認すると
----------------------------------------------------------------------
 組合等において第2項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2週間以内
に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
----------------------------------------------------------------------

 なるほど! 条文は「変更が生じたときは・・・」ですね・・・(汗)。

 理事の場合は、たとえ同一人物が再任されても「重任の登記」が必要です。
これは、一旦任期が切れ、退任後、再任されているので変更があったことにな
るからです。されど、「資産の総額」はそのような概念はなく、全く変更がな
ければ登記不要・・・。

 ≪たぶん、その専門家とやらは、登記が苦手な方だったのかもしれませんね
・・・(やれやれ)。≫ などと、偉そうに言っていた私ですが・・・五十歩百
歩ですね・・(汗)。

 ※「青柿が熟柿弔う」(「あおがき」が「じゅくし」とむらう)の意味
 『熟していない青い柿が、自分もいずれ同じ運命になるのに、熟して木から
落ちた柿を見て嘲ること。未熟者が他人に対し、あれこれ言う愚かさのたとえ』
だそうです。はい。私、富田のことです・・・(涙)。
 (出典 人形浄瑠璃『傾城恋飛脚』)



2014.10.27(月)【意思表示論】(金子登志雄)

 土曜日は学生時代のゼミのOB会があり、参加してきました。恩師は、もう
現役を引退していますが、民法専門のN先生です。

 法律解釈に必要なバランス感覚に非常に優れた先生で、この先生のおかげで
私もリーガルマインドを鍛えてもらったと今でも深く感謝しています。これは
他のOBも同じであり、毎年、恩師ご夫妻を迎えてのOB会を開催しているの
も感謝の表れでしょう。

 OBの一人が「先生のように長く夫婦円満でいられる秘訣は何か」と質問し
たところ、先生は婚姻契約から発展して契約の意思表示の性格につき、持論を
話してくださいました。

 売買契約であれば、売りたい、買いたいという意思表示の合致と説明される
が、そう単純なものではなく、売る覚悟がある、買う覚悟があるという覚悟の
表明だということです。

 これは婚姻契約につき、お互いの欠点も十分に承知の上で、結婚する意思と
覚悟がある(もし違っていたら自己責任だ?)との決意表明だとの説明から発
展したものでしたが、法律上の「意思表示」は単なる「……したい」という感
情表現ではなく、法律効果が生じる最終的な重い決断だということでしょう。

 依頼者がわれわれに登記申請を依頼する際も「貴方を信頼してお任せする」
という覚悟をもっての依頼であり、われわれの受託も、「確かに受託した。責
任をもって対処する」という覚悟の表明です。

 登記申請意思も「この公示をお願いしたい」などといった簡単なものではな
く、税金(登録免許税)まで納めて、こういう内容の公示をすることを最終決
断したという覚悟の表明ですから、安易に更正登記を求めるのは覚悟が足りな
かったことになるのかもしれません。


2014.10.24(金)【ガラパゴス世界】(金子登志雄)

 新しいものにすぐに飛びつかない私もとうとうガラケー(ガラパゴス携帯)
をやめて、スマホ(スマートフォン)に変えました。この10月からです。

 スマホは、もはや新しいものとはいえないほど浸透してきたためか、2つ折
りのガラケーで電話していると「まだ、そんなの使っているの」という周囲の
視線を感じていたこと、今はよくても2年先や3年先を考えたら、今のうちか
らスマホに慣れておいたほうがよいと思ったからです。

 さらに、地震の折、周囲の方はみな携帯電話の警報がなっているのに、私の
それは無反応であったこと、情報の即時性(例えば株価が20分遅れでなくみ
られる)の必要性を感じてきたことです。

 10年前は、喫茶店等でノートPCを開く人をモバイラーといって、最先端
を行く格好いい人の代名詞でしたが、今はダサイ人にみえるようになりました
(私はいまだにこれですけど)。

 まさにスマホの天下かというと、韓国サムソンがスマホの売上不振に苦しみ
出したとのニュースも出始めました。

 あのソニーも、あの任天堂も、いまや飛ぶ鳥落とす勢いはありません。アマ
ゾンで会社法本の売り上げでダントツ1位だった江頭本も、今は順位を下げて
います。70%以上の支持率だった安倍人気も急降下中です。

 まさに、よいことも悪いことも長く続かないものですが、ありがたいことに
私の仕事である商業登記の世界では、いまだに昭和41年先例がどうのこうの
といったガラパゴスの世界です。ここでは経験豊富な長老の活躍が可能です。
前期高齢者の私もバリバリの現役でいられます。

 ということで、今日は法律とは無関係の話題でしたが、来週からはまたガラ
パゴスの世界に戻り、皆様が生まれる前の昭和〇〇年の先例がどうのこうのと
いう話に戻しましょう。この土日は、自分の生活基盤の世界に感謝しながら、
のんびり休むことにします。


2014.10.23(木)【実務に精通する】(仙台・立花宏)

 先日、地元の司法書士会主催の研修会を受講しました。「交通事故訴訟」が
テーマでした。

 私自身は、交通事故に関する相談等の対応をしたことがなく、個人的には、
あまり馴染みのないテーマでした。

 “はたして、司法書士が交通事故に関する相談を受けることがあるのだろう
か?” 受講する前は、そんな気持ちでした。

 講師の先生のお話によれば、交通事故の件数は減少しているのだそうです。
それに対して、交通事故訴訟の件数は増加傾向にあるとのことでした。交通事
故が減少しているのであれば交通事故訴訟も減少しそうなものです。不思議に
思いましたが、講師の先生のお話しを伺い、納得しました。

 自動車を所有していらっしゃる方は、自動車保険に加入している方が多いと
思います。

 自動車保険の特約に弁護士費用特約というものがありますが、自動車保険に
その弁護士費用特約を付加することが普及してきたのが原因のひとつなのだそ
うです。

 たとえば、自動車同士の軽微な衝突で、自動車の修理が必要になったとしま
す。修理費用が10万に満たないような損害なのですが、相手が修理費用を払
ってくれないため、訴訟を起こすことを考えました。

 しかし、訴訟を起こすために弁護士に依頼して、訴訟を行い、勝訴して、そ
の10万円に満たない損害を回収できることになっても、弁護士へ依頼する訴
訟費用は、おそらく10万円より少ないことはないでしょう。訴訟に勝ったと
しても、費用倒れになってしまうのです。

 しかし、自分が加入している自動車保険に弁護士費用特約を付加していると、
弁護士費用はその自動車保険を使うことにより、自分で負担する必要がないの
です。

 そんな理由から、これまで訴訟にならなかったような額の大きくない交通事
故訴訟が増えているのだそうです。

 請求額が大きくない訴訟が増加傾向にあるため、司法書士も対応できるよう
にしておかなければならない。それが地元の司法書士会の意図だったのだろう
と思います。

 研修会の休憩時間に、スマートフォンで損害保険会社のホームページ等を閲
覧すると、弁護士費用特約は、交通事故訴訟を司法書士に依頼した場合の報酬
も対象としている会社もありました(会社により扱いが異なるようです)。

 研修会終了後の帰り道、友人の司法書士と研修会で学んだことを話しながら
歩いていて、私は突然、背筋に冷たいものが流れ、立ち止まりました。もしか
したら、顔が青くなっていたかもしれません。友人の司法書士は怪訝な顔をし
て私を見ていたと思います。

 これまで、交通事故に関する相談を受けることはありませんでした。しかし、
もし、研修会で話があったような、それほど額の大きくない交通事故訴訟の相
談を受けていたとしたら、どうなっていただろうか。弁護士費用特約のことを
意識して、適切に対応できていただろうか。もしかしたら、よく調べもせずに、
“費用倒れになるから、やめた方はいい”なんて、アドバイスしていた可能性
はないだろうか。

 司法書士法第2条に、「司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令
及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」と規
定されています。(※)。

 弁護士費用特約のことは、法令に精通していてもわからないでしょう。“実
務に精通して”いなければ、意識できないものだろうと思います。

 司法書士法第2条の、”実務に精通して”の意味を考えさせられた研修会で
した。

(※)条文中、下線は筆者(立花)による。



2014.10.22(水)【再々:代表取締役の予選問題】(金子登志雄)

 本欄で何度も取り上げております代表取締役の予選問題は、理解の難しい問
題の1つですから、繰り返し取り上げます。

 代表取締役の予選を肯定した昭和41・1・20民甲271号回答の事例は、
現代風にアレンジすると、次のような内容であり、肯定する理由に2つの見解
があります。

----------------------------------------------------------------------
 取締役ABCD(代表取締役A)の取締役会設置会社甲において、取締役全
員が10月の定時株主総会の終結と同時に任期が満了するので、その定時総会
で重任(予選)決議し、直ちに(総会終結後に次期取締役として)就任承諾が
あった後、定時総会を中断しABCDで取締役会を開催し、本定時総会終結後
の次期代表取締役としてAを再任予選し、その後無事に定時総会が終結した。
----------------------------------------------------------------------

(甲説=全員重任条件説:当局の多数派?)
 次期代表取締役Aの選定は、定時株主総会終結後に次期取締役のABCDで
行わねばならず事前に行えないが、権限のない段階の事前に行っても、権限を
有するまでの期間が短く、かつ構成メンバーが一致しているから例外的に選定
の効力を認める。

 言い換えれば、ABCDは権限のないことを決議したが、全員が権限を有す
ることになるのを条件に決議し、実際に、その条件が満たされたのだから、有
効だという解釈でしょうか。

(乙説=被選定者だけにつき重任条件説:私ほか)
 現在の取締役が任期満了後の将来のことも決議することができるのは会社の
意思決定として当然のことであり、これは人事問題でも例外ではない。したが
って、本件は、現在の取締役が有効に取締役会を開催し、その権限に基づき、
取締役Aの重任を条件に次期の代表取締役としてAを選定したのであり、予選
決議自体は当初から有効な決議である。

 甲説と乙説の現実問題としての差は、BCDが総会終結直前に死亡した場合
に生じます。甲説では、条件未達成で効力を認められませんが、私見であれば、
肯定できます。もっといえば、乙説では、選定者側のBCDはその後に他の理
由で取締役でなくなってもAの代表取締役選定の効力が否定されません。それ
で不都合が生じたときは、その後選任された取締役を含んだ取締役会でAを解
任するなりの決議をすることで調整します。


2014.10.21(火)【FAX質問にお答えします】(金子登志雄)

 本欄の読者(司法書士の甲さん=直接の面識なし)からFAXでご意見をい
ただきました。本欄9月17日の【再び代表取締役の予選】についてです。

----------------------------------------------------------------------
 先生は「重任前の現任取締役」が「現任取締役の地位で」「次期代表取締役」
を選任するのであるから問題ないかのように書かれておりますが私が調べまし
た登記研究の書きぶりは基本的には予選取締役による予選代表取締役の選任を
言っていると解釈しました。
           (中略)
 これらからするとその取締役会は、つまり予選取締役会であると言うことだ
と解釈します。商法上においても会社法上においても取締役会の構成員は現任
取締役だけですが、規定はないけれども予選取締役会を開催することは可能と
考えます。
----------------------------------------------------------------------

 上記の「中略」の部分には、登記研究416号「6117」や529号58
頁以下の内容が書いてあり、資料も添えられていました。

 甲さん、ご意見ありがとうございました。登記研究は、実体法から攻める私
には必要ないので取っておりませんでしたから、資料も面白く拝見させていた
だきました。

 直接お返事しようと思いましたが、電話番号の記載もありませんでしたので、
ここでお答えします。

1.甲さんの登記研究の読み方は正しいと思いますが、登記研究を前提にした
 甲さんの後段の意見には賛成しかねます。

  登記研究には、時々、実体法に疎い登記の実務家の意見が掲載されること
 がありますが、これもその1つだと思いました。実務家は、ついつい実体法
 を無視して、経験で判断してしまう傾向があります。

  例えば、登記研究529の座談会は、「予選決議の有効性」と「予選決議
 内容の効力の発生(代表取締役の選任)」とを混乱しているように思いまし
 た。後者を基準に考えるから、構成メンバーの一致(遡及的継続?)などの
 非法律的解釈をしてしまうのです。いったん、有効に決議されたことは、そ
 の後のメンバーの異動を問わないのが法律解釈の基本です。

2.登記研究529の67頁に要旨「現在の取締役が次期の代表取締役を選任
 できるという問題ではない。次期の取締役として予選された者による代表取
 締役の予選だ」とありましたが、予選されただけで、まだ取締役でない者が
 代表取締役を予選できないというのは、一貫した登記実務の運用です。

  この登記研究との前後は不明ですが、実務相談や商事法務には、取締役と
 して予選される前でも次期代表取締役を予選できるかのように書いてありま
 す(詳細は、登記情報631号の拙稿参照)。それも、同じ昭和41年先例
 を根拠としています。

  やはり、ここは、登記研究とは逆に、「取締役として予選された者も現任
 取締役だから、代表取締役を予選できる」が正しい説明だというべきです。

3.もし、現在の取締役が次期の代表取締役を選べないとすれば、6月の定時
 総会で任期が満了する場合は、それ以前の5月の取締役会で10月1日付の
 簡易合併を決議することができないことになりますが、上場会社は頻繁に無
 効決議を行っているのでしょうか。代表取締役の人事問題だけ例外とすべき
 ではありません。

4.もし、予選取締役会というものが肯定されるなら、会社設立前でも、有限
 会社の取締役会設置会社への移行前でも、設立後・移行後の代表取締役を予
 選取締役会で選定できることになるのではないかとの疑問もあります。

  取締役会が存在することを条件に予選取締役会を肯定するのなら、その根
 拠も必要でしょう。

5.甲さんに逆質問します。取締役ABCDの全員が10月の定時総会で再選
 予選され、次期代表取締役を予選しました。しかし、その効力発生前にDは
 急死しました。この予選は無効になるのでしょうか。

  また、ABCは再選され、Dは退任予定だとします。ABCは次期代表取
 締役を予選できますか。Dに招集通知を出さずとも有効な決議ですか。逆に
 Dが加わると構成メンバーの不一致で無効ですか。



2014.10.20(月)【会社法38条1項問題】
(金子登志雄)

 わが郷里の名産である下仁田ネギが小渕大臣のおかげですっかり有名になり
ました。この宣伝効果は大きいでしょう。

 とはいいながら、台所に立ったこともなく食いものに関心の薄い私は下仁田
ネギがどういうものか明白には知りませんでしたが、下記のとおり太いネギで
薬味よりも料理用のようです。ああ、あれかと分かった方も多いことでしょう。

    http://vegetable.alic.go.jp/panfu/negi/negi.htm

 さて、下仁田ネギほど辛くない話ですが、ただいま普通株式の一部を他種株
式にする仕事を受けています。しかし、同種株式の全部の内容を変更する場合
は会社法322条1項に規定があるのに対し、一部分の変更の場合には規定が
ありません。

 この場合は原則として株主の全員の同意があればよいとされています。会社
の所有者は株主であり、公益に反しない事項に会社所有者がよいというのに、
登記所などの部外者がダメとはいえないからでしょう。私有財産制を採用する
自由主義国家の法解釈の基本中の基本です。

 この考え方からすると、会社法に規定があっても、強い強行規定でない限り、
株主全員がOKであれば登記所が余計なお世話で否定すべきではありません。

 よく問題になるのは、株式会社を設立する際に、発起人全員が出資する前に
設立時取締役は誰々さんにすると全員で決めた場合です。

 これにつき会社法38条1項に「出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立
時取締役を選任しなければならない」とあることを根拠に、否定する登記所が
あるのです。

 しかし、この規定は出資後持分比率に応じて議決権が発生してから資本多数
決で選定するという内容に過ぎず、発起人全員がOKであれば、持分比率も無
関係であり、出資の履行が完了する前であろうと何の問題もないはずです。

 登記は行政行為という側面がありますから、法の規定どおりに運用すべきで
あるということを前提にしても、法の趣旨を考えれば、こういう明らかなケー
スは健全な常識によって判断し登記申請を受理すべきではないでしょうか。


2014.10.17(金)【322条と買取請求権】(金子登志雄)

 一昨日の続きですが、会社法立案者によると「『吸収分割をする』という用
語は、分割会社がその事業に関する権利義務を他の会社に承継させる行為を指
すものであり、吸収分割により権利義務を承継する行為を指す場合には、『吸
収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承
継』と規定している」(相澤哲編著『新・会社法の解説』181頁)とありま
す。

 つまり、吸収分割は分割行為に限られ、承継行為は含まないとの説明ですが、
私は、この説明は誤解を招くと思っています。

 例えば、会社法799条には「吸収分割をする場合」は「吸収分割承継株式
会社の債権者」は異議を出せるとあります。この場合の「吸収分割をする」は
吸収分割承継行為のことです。

 なぜ、こうなったかというと、項目ごとに担当者が異なったので、矛盾した
説明が生じたものと思われます。われわれは、立法担当者の解説だからといっ
て、鵜呑みにしないことが重要です。万事、自己責任です。

 さて、一昨日の続きのもう1つですが、一昨日は「普通株式と配当優先完全
無議決権株式の2種類を発行している種類株式発行会社が分社型新設分割で子
会社を設立した場合には種類株主総会が不要のはずだ」と説明しましたが、こ
の無議決権株主は、この新設分割により不利益を受けなくても反対株主の買取
請求権を行使することができます。

 会社法322条1項2号の株式の併合等については、同条2項の種類株主総
会を不要とするとの定款の定めがなければ買取請求を行使することができない
のですが(116条1項)、組織再編の場合は、その旨の定款の定めがあるか
どうか、損害要件を充たすかどうかに関わらず、買取請求を行使することがで
きます。

 この差については、これまで深く意識していませんでしたが、組織再編とい
うのは会社の状況が抜本的に変わるものという考え方の下に、損害要件がなく
ても買取請求ができるわけです。損害を受けなくても、嫌なものは嫌だという
わけです。いいかえれば、通常の組織再編は株主でなくなることを認めた制度
だということでしょう。


2014.10.16(木)【セミナー講師】(金子登志雄)

 昨夜は、昨年に引き続き、東京司法書士会第1ブロック(東京の中心部であ
る千代田区、中央区、文京区、港区の司法書士支部の集まり)主催のセミナー
で会社法の講師を努めてまいりました。内容は、役員変更問題の捉え方と定款
対策であり、主として定款を上手に使う方法を説明しました。

 この地域は上場会社等を顧客に持つ最先端を行く司法書士が多いため、私の
講義で最も反応がよい地域の1つになります。個人的に質問に来た方も「上場
を目指している顧客が………」という内容のものが多くありました。

 会場の関係で定員300人のところ、数日で満杯になりましたから、まだま
だ金子人気は健在でした。ありがたいことです。いつ後進に追い落とされ、人
気が急降下するかとひやひやものですけど、年は取っても、頭の柔らかさだけ
は自信がありますので、当面は大丈夫そうです。

 講義では基礎から話しました。例えば、代表取締役たる取締役が辞任すると、
「取締役は辞任、代表取締役は退任」と登記されるが、代表取締役たる取締役
が死亡すると、「取締役も死亡、代表取締役も死亡」と登記される、それは取
締役に先に登記事項が生じたとみるか、代表取締役が先で取締役が後だとみる
かの差であるなどと理由づけで説明しました。

 また、これをクイズ形式にしたので、居眠りする人もなく好評だったようで
ホッとしています。



2014.10.15(水)【分割型も新設分割か】(金子登志雄)

 日本司法書士連合会の掲示板に「普通株式と配当優先完全無議決権株式の2
種類を発行している種類株式発行会社が通常の分社型新設分割で子会社を設立
した場合に種類株主総会が必要か」という質問が掲載されていました。

 会社法322条の問題ですが、質問者は種類株主に損害を与える可能性がな
いから不要だと信じて登記を申請したところ、管轄法務局から、普通株主と無
議決権株主の種類株主総会が必要ではないかといわれたそうです。これまた、
例によって杓子定規な反応です。

 私自身は、質問者と同じく会社法322条の損害要件を充たさないので不要
であることは明らかだと思っていますが、では、なぜ、322条1項10号に
「新設分割」が規定されているのかという疑問が生じます(8号の吸収分割に
も同様の問題が生じます)。

 沿革的には旧商法346条に規定されていたから、それを会社法が踏襲した
だけだということになりますが、では、なぜ旧商法に規定されたのかというこ
とになりますが、旧商法の新設分割は人的分割を含んでいました。

 それが理由で規定されたのであろうと調べてみましたら、法務省による会社
分割制定時の「1問1問」に「数種の株式を発行する会社が会社分割を行った
場合において、たとえば、優先株主と普通株主のいずれに対しても同一の比率
で分割によって設立する会社の普通株式を割り当てるときは、優先株主が損害
を受けることになります。そこで、優先株主の利益を保護するという趣旨のも
と、商法346条により、その種類株主総会の決議を要することとしたもので
す」とありました。私の推測はどんぴしゃりでした。

 これからすると、会社法322条の「新設分割」も分割型を指していること
が分かりますが、会社法では、分割型新設分割は「新設分割+剰余金の配当等」
の2つの行為に分解されたとの説明と整合しません。

 で、どう考えるべきかですが、「新設分割+剰余金の配当等」と2つの独立
した行為に分けるのではなく、「剰余金の配当等付新設分割」として、分割型
も新設分割の一種だと考えるしかないと私なりに結論づけました。

 ちなみに、810条によると「新設分割をする場合」には分割型を規定上も
含んでいます。



2014.10.14(火)【意思決定の方法その2】(金子登志雄)

 連休中は、九州のほうでは台風で大変だったようですね。台風、地震、噴火
は日本では年中行事で困ったものです。原発事故だけは年中行事にされては困
りますので、鹿児島の川内原発も再稼働しないでほしいと祈らざるをえません。

 さて、次の3つの規定を比較して、どこが違うか探してくださいとのお願い
については、ご検討していただけましたでしょうか。

-----------------------------------------------------------------------
第47条(設立時代表取締役の選定等)
 1.設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である
  場合には、設立時取締役の中から株式会社の設立に際して代表取締役とな
  る者(「設立時代表取締役」)を選定しなければならない。
 3.設立時代表取締役の選定は、設立時取締役の過半数をもって決定する。
----------------------------------------------------------------------
第369条(取締役会の決議)第1項
   取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、
  その過半数をもって行う。
----------------------------------------------------------------------
第393条(監査役会の決議)第1項
   監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行う。
----------------------------------------------------------------------

 第1に、会議体かどうかという差に着目してください。取締役会と監査役会
は会議体ですから、招集の規定もありますが、第47条は、取締役会設置会社
であっても取締役会で選定せよとなっていません。会社の設立前には取締役会
が存在しないという前提です。こういう代表者決定方式を互選といいますが、
「互選」という用語を用いていないので、分かりにくい規定の1つです。

 第2に、設立時取締役が5名いた場合は3名の賛成で設立時代表取締役が定
められますが、会議体である取締役会の場合は、5名中3名が出席し、その過
半数の2名の賛成で代表取締役を定めることができます。こういう可決要件の
差があります。

 第3に、同じ会議体であっても、監査役会には定足数の定めがありません。
監査役が5名の場合に3名が出席し、過半数の2名が賛成しても有効な監査役
会決議になりません。この点で互選方式に似ていますが、1堂に集合し会議で
決しなければならない点で47条と相違します。非取締役会設置会社の会社法
348条2項は47条方式です。

 こういうことを意識して日々の業務を行っている司法書士は少ないようです
が、少なくとも非取締役会設置会社の意思決定は株主総会を除くと会議体では
ないことだけは確実に押さえておく必要があるでしょう。



2014.10.10(金)【意思決定の方法】(金子登志雄)

 今日は10月10日。50年前の1964年のこの日に東京オリンピックが
開催されました(だから国民の祝日が「体育の日」といいます)。台風時期も
過ぎ、スポーツするには適した時期の開催でした。新幹線もこの年に開通です。

 6年後の2020年の東京オリンピックは7月24日から8月9日までのよ
うですが、こんな真夏に開催し、大丈夫なんでしょうか。マラソン選手などは
特に大変です。熱中症オリンピックにならないことを願うしかありません。

 さて、体育の日効果で明日から3連休ですね。十分に時間があることでしょ
うから、いずれも抜粋ですが、次の3つの規定を比較して、どこが違うか検討
してください。意思決定の方法の差を比較してくださいという意味です。

-----------------------------------------------------------------------
第47条(設立時代表取締役の選定等)
 1.設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である
  場合には、設立時取締役の中から株式会社の設立に際して代表取締役とな
  る者(「設立時代表取締役」)を選定しなければならない。
 3.設立時代表取締役の選定は、設立時取締役の過半数をもって決定する。
----------------------------------------------------------------------
第369条(取締役会の決議)第1項
   取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、
  その過半数をもって行う。
----------------------------------------------------------------------
第393条(監査役会の決議)第1項
   監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行う。
----------------------------------------------------------------------

 来週に、どういう差があるかを説明いたします。



2014.10.09(木)【代表取締役の氏名抹消】
(金子登志雄)

 平成18年5月の会社法施行以来、有限会社は設立することができなくなり
減る一方ですが、まだまだ大量に残っています。私のところにも、親しい行政
書士事務所から、時々、有限会社の登記が回ってきます。

 さて、今回は、取締役AB、代表取締役Aの特例有限会社で、Bも代表取締
役にする事案が来ました。これは初体験です。

 株式会社の場合は、「取締役〇〇、住所=代表取締役〇〇」の登記のため、
そのまま「住所=代表取締役B」を追加すればよいのですが、有限会社の場合
は「住所=取締役〇〇、代表取締役〇〇」のため、全員が代表権を有した場合
には、代表取締役の登記がなされないことになっています。

 そこで、「代表取締役A」の登記を抹消することになりますが、登記簿には
単に「年月日抹消」でよかったのか、それとも「年月日氏名抹消」か、あるい
は「年月日……により氏名抹消」と理由まで登記記録に表示されるのかについ
て忘れてしまっていたため、テイハンの『書式精義〔第5版〕』や松井信憲著
『商業登記ハンドブック〔第2版〕』を調べましたが出ていません。

 やむを得ず、仲間の司法書士に確認し、登記記録上も、理由付で「年月日会
社を代表しない取締役の不存在により抹消」と記録されることを確認しました
が、権威ある登記の解説書に一言も記載がないのは、不思議でした。受験時代
に必ず学ぶ重要部分なのに………。

 ついでながら、今日は株式会社の代表取締役の住所移転登記を申請しました
が、これも「年月日移転」だったか、「年月日住所移転」だったか、いつも迷
ってしまいます。管内本店移転は、「年月日移転」ですが、ここは「年月日住
所移転」でした。


2014.10.08(水)【新株予約権の行使と自己株式の交付】(金子登志雄)

 現在、表題の登記を受託中ですが、自己株式の交付ですから、発行済株式の
総数にも資本金の額にも影響がありません。単に、新株予約権の個数等の減少
の登記をするだけです。

 ここで疑問に持ったのは、新株予約権の一部消滅による個数の減少の登記は
委任状だけで済むのに、同じ新株予約権の個数の減少の登記でも、自己株式が
交付された新株予約権の「行使」の登記の場合には、わざわざ払込みを証する
書面が必要なのかということです。

 商業登記法57条2号によると「金銭を新株予約権の行使に際してする出資
の目的とするときは、会社法第281条第1項の規定による払込みがあつたこ
とを証する書面」を添付せよとあります。

 この「出資の目的」を資本金増加の目的と解釈すれば、払込みを証する書面
は不要でしょうが、これはちょっと屁理屈でしょう。

 しかし、新株予約権の個数減少の登記を目的とした申請だと考えれば、新株
予約権の消滅の登記とのバランス上、払込みを証する書面までは不要だという
理屈は十分に成り立つと思います。

 法務局とひと悶着ありそうですね。会社には払込証明を準備するよう伝えて
おきましょう。



2014.10.07(火)【定期預金の現物出資】(金子登志雄)

 皆さんに質問ですが、定期預金は現物出資の対象にすることができますか。
定期預金には譲渡禁止特約が付いているのが普通ですが、銀行の承諾があるこ
とを前提にした質問とご理解ください。

 銀行が承諾するわけがないと思うかもしれませんが、個人事業の法人成りや、
親会社が完全子会社に出資するような場合で、かつ出資者が銀行にとって優良
大口顧客であれば、銀行も承諾することがあるようです。

 こういう前提での質問ですが、最初は多くの方が分からないと答えます。登
記所の相談コーナーでもそうでした。

 最初に疑問に感じることは、定期預金は「預けるもの(預託金)」だから、
通常の金銭債権とは違うと感じるようです。しかし、これは契約の性質でいえ
ば、金銭消費「貸借」ではなく、金銭消費「寄託」だというに過ぎず、返還請
求権が金銭債権であって指名債権であることには変わりがありません。

 譲渡禁止特約付についても、それが理由でダメだとしたら、譲渡制限株式で
すら出資することができないことになります。

 ものの本によりますと、現物出資の対象となる財産は貸借対照表の資産とし
て計上できるものなら何でもよいとされています(例えば、松井信憲著『商業
登記ハンドブック〔第2版〕』74頁)。定期預金は典型的な資産項目です。

 ということで、私は現物出資の対象になることに全く問題ないと考えました。
インターネットで検索しても、商業登記に詳しい司法書士仲間に聞いても、有
力法務局に聞いても、銀行が承諾しているのなら問題ないでしょうという答え
でした。

 しかし、いざ実行しようとしたら、肝心の管轄法務局の1人の幹部が認めな
かったようで(理由は不明)、交渉する時間もなく、やむを得ず断念したこと
がありました。本年のことで、某有力法務局でした。

 他の方法で代用しましたので実害はありませんでしたが、昨日書いた吸収分
割の登記方法と同じく、こういう幹部がいる法務局に申請するときは、余計な
苦労をさせられてしまます。


2014.10.06(月)【同時申請】(金子登志雄)

 10月1日申請のやっかいな組織再編(合併と吸収分割)も無事に終わる見
込みがつき、一安心しているところです。

 司法書士業務は委任契約ですが、登記に関しては事実上「請負」扱いされ、
無事に登記が完了しない限り、仕事を果たしたことにならないので、どんなに
経験を積んでも、登記の申請後には試験合格発表待ちのような不安な心理にな
るものです。

 逆にいえば、このような心理にならなくなったら、大きなミスをしてしまう
ことでしょうから、不安になるということは、いいことだと思っています。

 さて、今回のAからBへの吸収分割は、①B→A、②A→Cという商号変更
付でした。ここで、Bの吸収分割承継の登記につき「Cから分割」と表記でき
るかという論点があります。

 私は、同時申請のため①②の前後は問わないという意見ですが、平成23年
に東京法務局に念のため問い合わせたところ、相談窓口ではOKでしたが、そ
の後ろにいる上司(登記官?)は「同時申請でも受付番号順に登記するから不
可だ」という見解でした。受付番号順だったら同時の申請にならないと思うの
ですが、昨年の東京司法書士会千代田支部セミナーでの東京法務局の説明でも
否定説でした。

 しかし、本年の東京法務局見解は肯定説に変わっています。おそらく否定説
の幹部が転勤したのでしょう。この否定説論者が他の法務局に転勤し商業登記
の担当になっていたとしたら、今度はその法務局での取扱いが否定説に変わっ
ているかもしれません。転勤先が私がよく申請する法務局でないことを祈るし
かありません。


2014.10.03(金)【M&Aと司法書士】(金子登志雄)

 直近の「登記情報」635号に、全国司法書士法人連絡協議会で行われた司
法書士のM&A業務に関するパネルディスカッションが掲載されていましたの
で、M&A業界出身の司法書士である私としては興味深く読ませていただきま
した。

 第1に、「司法書士法人」というのは経営に関心のある司法書士が作るもの
であるのに対し、全国の個人事業者である司法書士は、私同様に、経営者タイ
プではなく、人並みに生活ができればいいという「職人タイプ」が多いことで
しょうから、経営に疎い平均的な司法書士にはM&Aコンサルは無理でしょう。

 第2に、会計事務所や経営コンサル事務所は日常的に顧客企業の懐具合にま
で入り込んでおり、社長から経営や個人問題まで相談を受ける立場ですが、わ
れわれ司法書士は数年に1度だけ総務部長等が応対するスポットの仕事です。
M&Aに意見を出せる機会は少ないでしょう。

 第3に、司法書士がM&Aに関与するとしたら、座談会にもありましたが、
話がまとまった後の手続業務であり、株式譲渡や役員変更などです。これには
司法書士は大いに関与すべきです。

 実際にM&A業務に関与してみれば分かりますが、経営者の気持ちが朝令暮
改で変化したり、ドタキャンが日常茶飯事です。ですから、上記の第3を超え
て関与するのは非効率ですし、相当難しいでしょう。

 同業者のM&Aなら大丈夫かもしれません。そのうち金子事務所を売り出す
かもしれませんから、同業者の皆さん、いまから申し込みませんか。最低でも、
うん千万の価値になるよう私もこれから頑張りましょう。


2014.10.02(木)【消える!?相続放棄】(島根・根来川弘充)

 法律上の「相続放棄」とは、口頭でいうだけでは駄目で、家庭裁判所で受け
付けてもらわないといけません。

 そして、不動産の登記や、金融機関の手続きでは、家庭裁判所で受け付けら
れたという証明書が必要になります。

 ところが、家庭裁判所には書類保存期間というものがあります。もし、保存
期間が過ぎ、提出した書類が廃棄されてしまった場合、証明書が発行されない
ということになります。

 証明書がなければ、相続放棄がなかったことになってしまいます。つまり、
「相続放棄」は、消えてしまうのです。

 実務家としては、こういった事案の依頼を受けた場合、改めて法定相続人間
で遺産分割をすることくらいしか助言できません。

 もし、皆さんが相続放棄をする機会があった場合、証明書は、一部は手元に
大事に保管されることをお勧めします。


2014.10.01(水)【白蓮から学ぶ】(金子登志雄)

 10月1日です。4月1日に続いて組織再編登記の書き入れ時ですね。私も
いくつか抱えておりますが、今日は別の話題にします。

 さて、テレビはほとんどみない私ですが、NHKの朝ドラ「花子とアン」な
どはみていました。他との話題について行くためというよりも、いったん見始
めたら、途中でやめられなくなったというのが正確です。

 やめられなくなった大きな理由の1つが、主人公の「腹心の友」である仲間
由紀恵さん演じる「柳原白蓮」に、興味を持ってしまったためです。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E5%8E%9F%E7%99%BD%E8%93%AE

 姦通罪のあるあの時代に、華族及び億万長者夫人の地位を捨て、命懸けで年
下の若い男(迎え入れた本人及び親も実に偉大な人でした)と駆け落ちしたと
は驚きですが、それ以上に、料理さえしたことのないお姫様が一般家庭の主婦
になり、しかも亭主は結核持ちで収入のない生活によく耐えられたものだと思
います。

 しかし、何となく分かります。豊かに育った人は物欲はありませんし、貧乏
生活に対し、こういうものかと思い、意外に平気だからです。「やっかみ」と
いう貧乏人の品性とは無縁なお姫様が新鮮な庶民生活を楽しんだ部分もあるこ
とでしょう。

 白蓮事件をみていると、人の幸せは何かと考えさせられます。身分やカネで
はなく、愛する人との生活そのものでもなく、束縛されず自分の自由な意思に
従って生きることではないでしょうか。

 ・・・何だ、私の生き方じゃないですか。私は、幸せなんでしょうか。いや
いや、「やっかみ」や世間体という貧乏人の悲しき品性からは卒業することが
できておりません。


2014.09.30(火)【中間期末】(金子登志雄)

 3月決算会社にとっては中間期末ですね。この期間の業績が各社から11月
初旬に発表されますが、消費税で落ち込んだ第1四半期の売上がどの程度回復
したかが問題になりそうです。

 株価だけをみていると、いかにも景気がよくなっているようにみえますが、
やや強引な官制相場の傾向があり、公的資金なども株式市場に投入されている
ため、景気の実態と株価が連動しているのかは、私個人は疑問に思っています。

 企業業績はそれなりに好転したようですが、各種の経済指標(GDPや貿易
収支)も実質賃金の減少で一般庶民の生活も悪化していますから、全体として
みれば、景気がよいとはいえないと感じています。

 翻って、司法書士界の景気動向を探るため、インターネットで検索しました
ら、相も変わらず、「司法書士では食えない」という内容ばかりでした。おそ
らく、ベテラン受験生のうっぷん晴らしでしょうが、少々、度が過ぎた内容が
多いようでした。

 平素は、どんな商売だって座っているだけで食えるわけがないじゃないか、
仕入れも設備投資もいらない恵まれた仕事なのに、何が不満なのかと冷やかに
みているだけですが、やはり、開業時から人脈があるとか、ゼロで開業しても
数年を経たなどという事情がないと、生活できないのは当然でしょう。

 著作等で名前が知れている私のところにも、一見(いちげん)のフリの客は
全くありません。新規のお客様は、知り合いの司法書士や会計事務所などの紹
介がほとんどです。お客の立場からしても、一般論ですが、ツテがないと信頼
できる人物かなどという不安が芽生えて、頼みにくいことでしょう。

 人脈というと大げさですが、自由業は、仕事を紹介してくれる知り合いが多
いか少ないかによって、生計が成り立つかどうかが決まります。友人・知人の
少ない私ですら、いったん知り合ったお客様がリピーター客になってくれるた
め、開業数年で、人並みの生活を維持できるようになりました。



2014.09.29(月)【商業登記基本書式集】(金子登志雄)

 多数の被災者が出た木曽の御嶽山(おんたけさん)の噴火にはびっくりしま
した。ご冥福を祈るとともに、日本は地震国で火山国であることを再認識させ
られました。

 信州(長野県)に近い上州(群馬県)の片田舎で育った私は、子供の頃(昭
和33年)に経験した県境にある浅間山(あさまやま)の大噴火をよく覚えて
います。屋根には数センチの火山灰が積り、山頂からは噴煙がたなびき、自然
の脅威を感じたものでした。

 こんな国で原発を推進するなど狂気の沙汰だと思うのですが、いわゆる原子
力ムラがその資金力で政界やマスコミ界に隠然たる影響力を持っていますので、
世論もそれに動かされ、反原発が圧倒的多数派になれていません。同じ敗戦国
でもドイツとの相違は大きいようです。

 さて、土日は、リーガルの商業登記基本書式集の見直しを行っていました。
まだ先のことですが、会社法の改正を機に改訂版にするためです。

  http://www.legal.co.jp/products/h20/h20_1.html

 8年前の会社法施行当時は、会社法に準拠した基本的パターンの普及が最重
要でしたが、会社法に慣れた今日では、その応用型や発展形が重要になりまし
たので、そのニーズに応えた内容にしたいと思っています。

 いわば入門レベルから応用レベルに利用者が進化していますので、書式集も
グレードアップをはかります。私自身にとっても利用価値の大きいものを目指
していますので、出来上がりが楽しみです。


2014.09.26(金)【退任を証する書面】(金子登志雄)

 昨日は6月決算である当社(アクモス)の定時株主総会でした。昨年以来、
アベノミクス効果で株式投資に関心を寄せる方が増えたのか、出席者が急増し
ており、本年も一昨年の2~3倍の株主が参加しました。来年はより広い会場
にしなければならないのかを考えねばなりません。

 株主総会の議案は、剰余金処分の件、定款一部変更の件、監査役1名選任の
件の3つであり(会計監査人設置会社のため計算書類は報告事項です)、取締
役の改選議案はありませんでしたが、2年前の定時株主総会で再選された取締
役1人Mが任期満了退任いたしました。

 当社の定款には、増員や補欠取締役の任期短縮規定はなく、「取締役の任期
は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総
会の終結の時までとする。但し、株主総会の選任決議をもって、その任期を短
縮することを妨げない」とあるだけです。

 さて、司法書士の皆さん、この取締役の退任登記の申請にあたり、退任を証
する書面として定款の添付が必要でしょうか。

 株主総会中は、任期満了を証するため定款を添付しなければならないな、面
倒だなという意識しかありませんでしたが、当社は公開会社で、しかも上記の
とおり、任期は原則として法定任期です。

 であれば、退任を証する書面は退任日を証するため定時株主総会議事録だけ
で済みますね。ただ、法務局から定款の添付がないと電話がありそうなので、
登記の委任状に「Mの退任は法定の任期満了(定款の任期も法定どおり)によ
るものであり、定款の添付は不要と考えます」とメモ書きして申請しようと思
っています。

 なお、定款を添付して、株主総会の選任決議をもって、その任期を短縮して
いないことを証明する必要があるのではないかと思われた方もいらっしゃるか
もしれませんが、「(して)いないこと」の証明は不要です(清算人の登記に
は例外規定あり)。


2014.09.25(木)【AがダメならBで】(金子登志雄)

 これで問題ないはずだと思いつつ、一抹の不安があるので、安全を期して、
管轄法務局に事前相談すると、一抹どころか全面否定された経験が司法書士な
ら誰でも何度かあるでしょうが、昨日の私がそうでした。

 多くの場合が、その法務局にとっては初体験の「みたこともない登記申請事
案」の場合ですが、私にとっては、まさに想定外の反応でした。当然に通じる
と思っていたことが通じないのです。

 まだ登記申請前なので詳細は書きませんが、こういう時は、ほんとに困りま
す。東京法務局など他の有力法務局に確認しても問題ないというし、知り合い
の優秀な司法書士全員が問題ないと答えても、肝心の管轄法務局が「他が何と
言おうが、ここはここだ」と固執する限り、何をいっても無駄です。

 よくありますよね。昔、某地方法務局で「東京法務局が何と言おうと、大阪
法務局が何といおうと、ここは〇〇だ」といわれたこともあります。もちろん、
〇〇の勘違いです。

 こういうとき、並の司法書士は「登記は無理だそうです」と会社に報告して
終わらせますが、私は引き受けた以上、そう簡単には引き下がりません。

 その際の動きですが、多くの司法書士は、これで何とかせよと粘ったり、お
願いしたりで頑張るようですが、私の場合は、AがどうしてもダメならBでど
うだ、Cという方法だったらどうかと、別の方法を提案します。

 取締役会による代表取締役の予選に法務局が否定的であれば、代表取締役は
株主総会で選定できるように定款を変更してしまうのも、この一環です。

 登記だけで考えるとアイデアは浮かびませんが、実体法の知識を総動員する
と、何かみつかるものです。皆さんも、たまには、「AがダメならBで」を検
討してみてはいかがでしょうか。


2014.09.24(水)【代表予選は凧か矢か】(金子登志雄)

 休日の秋分の日になると、中学校時代の市内全校の陸上競技大会が思い出さ
れます。確かその日に開催されたからです。

 いまでは誰も信じてくれませんが、200m競争では、私が市内の中学3年
生で1番速く走れました。わが人生の体力のピークであり、その後は長期下落
中で、現在は昇りの坂道も階段も避けて過ごすテイタラクですけど。

 その代わり、頭脳の運動が好きになり、いつも何らかにつき、ああでもない、
こうでもないと考えている生活になりました。

 昨日は、今後のセミナーのレジュメを作りながら、代表取締役の予選はヒモ
付の凧型ではなく、弓矢型だと説明するのがよいかななどと考えていました。 

 例えば、本日の現任取締役ABCDが10月1日付でBを代表取締役に予選
したとします。これにつき、10月1日時点でも取締役がABCDでないと予
選の効力を認めないなどという愚かな見解が少数ながら登記現場にあるのです。
つまり、本日から10月1日まで、ずっとヒモ付で、取締役の構成が変わって
はいけないというわけです。これでは誰も辞任できません。

 私は、本日の予選が有効に決議されたなら、放たれた弓矢と同じで、あとは
矢が地面に落ちるかどうかであり、選任者のその後(辞任や死亡、任期満了退
任)を問うものではない。矢が地面に落ちるのは、被選任者Bが10月1日ま
でに取締役でなくなった場合だと考えています。

 ヒモ付凧型解釈からすれば、取締役会の議長につき、社長に事故あるときは
第1順位が副社長、第2順位が専務取締役などと取締役会で定めた場合に、社
長が死亡すると、構成メンバーが変化したので、副社長は議長になれず、改め
て議長を選任しなければならないとでもいうのでしょうか。

 任期切れする定時株主総会の前に10月1日付簡易合併を取締役会で決議し
た場合に、取締役の構成の変化を問わないのに、代表取締役の予選のときだけ、
これを問うのは、まっとうな法律解釈とはいえないでしょう。


2014.09.22(月)【合同会社セミナー】(金子登志雄)

 休日のハザマで、中途半端な日ですね。今日は、登記の仕事はなく来客によ
る相談案件だけです。

 さて、20日の土曜日は、全国の司法書士が会員である一大組織「商業登記
倶楽部」(神崎先生主宰)が中央経済社の講堂で、3日間にわたり「商業登記
スペシャリスト養成塾 合同会社完全マスターコース」を開校したので、平素
の御礼を兼ねて、その懇親会に参加してまいりました。

 参加者は北海道から沖縄まで50名近くがいらっしゃいましたから、みなさ
んの熱心さには頭が下がります。仙台の立花さんなど、各地の司法書士会の研
修担当者とも久々に再会いたしました。

 懇親会では私も講師をすればといわれましたが、合同会社や一般社団につい
ては詳しくありません。医療法人なども詳しくなく、私は司法書士でありなが
ら、司法書士業務のうち株式会社法しか分からない狭い人間だなと再認識させ
られました。株式会社の多い都心部でしか生きられない司法書士です。

 しかし、それが金子司法書士の特徴であり、会社の計算も組織再編も種類株
式も、上場会社の運用実務も、株式投資も………それなりに語れる司法書士は、
そうはいないでしょう。

 もっとも、私もお金を貯めて、賃貸マンションを保有したり、株式運用をす
る会社など対外的活動をしない(名刺を作る必要がない)会社を作るとしたら、
やはり株式会社ではなく合同会社にすると思います。出資金の半分以上を資本
金にせよという制約もなく、役員に任期がないのは、大きな魅力です。

 早く私も自分のために合同会社を作れる身分になれますように………。


2014.09.19(金)【合格発表】(仙台・立花宏)

 「そろそろ、時間じゃないか。遠慮しないで、はやく行きなさい」

 上司に言葉をかけられ、お礼の言葉を述べて、職場をあとにしました。その
日、早退することは以前から上司に伝えてあったのです。

 勤務先を出ると、電車とバスを乗り継ぎ、地元の法務局へと向かいました。 
法務局への向かう車中、窓の外を流れていく景色は、いつもと違い、つめたく、
そして硬質な印象を受けました。

 窓の外は、澄み切った秋晴れの景色でした。窓の外の景色のつめたく、そし
て、硬質な印象は、おそらく私の心の中の緊張感が窓に映し出されていたのだ
と思います。

 その年、私は3度目の司法書士試験を受験しました。結果はどうあれ、その
年で最後にするつもりでした。次の年は人事異動の年で、私は社内でも非常に
多忙といわれる部署への異動の内示を受けていました。おそらく、司法書士試
験の勉強を続けるのは難しく、これが最後のチャンスだと思っていたのです。

 その年の4年前、私は勤務先の関連会社への出向を命じられました。数年後
には勤務先に戻ることが約束されている、いわゆる“在籍出向”という立場で
す。出向先のポストも、当時の私の年齢等を考えれば、けっして不満を持つべ
きものではありませんでした。

 しかし、私は出向という人事に落胆していました。

 “自分は勤務先にとって必要のない人間なのだろうか”“勤務先を見返した
い”

 それが、私が司法書士試験を志したきっかけだったのかもしれません。

 その年に異動の内示を受けた次の職場は、望外な、勤務先でも重要な役割を
担うポストでした。その異動の内示を受けた時、私は自分が抱いていた思いを
とても恥ずかしく思いました。

 法務局での用件を済まし、外にでると、つめたく、そして、硬質な印象を受
けていた外の景色は、とてもあたたかく、そしてやわらかい表情にかわってい
ました。

 翌日、私は法務局で見た結果を、上司に伝えました。

 「おめでとう。異動先とあわせて、二重のお祝いだな」

 唯一、司法書士試験を受験していることを打ち明けていた上司は、我がこと
のように喜んでくださいました。
 
 あれから、10年になります。
 もうすぐ10月1日。今年の司法書士試験筆記試験の合格発表日です。

 受験生の皆さんは、いろいろな思いを抱いて発表を待っていらっしゃること
と思います。

 皆さんが見る景色が、あたたかく、そしてやわらかいものとなるよう、心よ
りお祈りしております。 


2014.09.18(木)【負と正の老】(金子登志雄)

 昨日は「『次期』取締役として予選された取締役が、取締役として重任の効
果が生じる定時株主総会終結時の到来を条件に、『次期』代表取締役を予選し
たのではなく、『現任』取締役が『次期』代表取締役を予選したのだと説明し
ました。

 これにつき、仙台の立花司法書士から、松井信憲著『商業登記ハンドブック
〔第2版〕』386頁にも「改選前の取締役が新代表取締役を予選することに
ついては」とあったことを教えてくれました。これで間違いないようです。

 さて、昨日は10月1日合併の準備をいたしましたが、老眼なので外字には
慎重に対処いたしました。1点しんにょうの「ツジ」、徳の心の上に横棒……、
こういうのはすぐに分かりましたが、葛飾区の「葛」や、茨城県の「茨」が外
字であるときは見過ごしやすいので気をつけています。

 先般もお客様から、「濱」ではない「濵」だと注意されてしまいましたが、
前者の「濱」だと思い込んでいたので、文字を拡大して確認することを怠って
しまいました。今後は、すべての場合に確認するようにしないといけないなと
反省した次第です。

 ついでながら、「茨城」県や大阪の「茨木」市は、何と読むと思いますか。
正しくは、いばら「き」です。こういうのは、「正の老(年の功)」ですね。


2014.09.17(水)【再び代表取締役の予選】(金子登志雄)

 連休中は、代表取締役の予選問題を考えていましたが、やっと考えがまとま
ってきました。その詳細は、いずれ何らかの形で発表しましょう。

 さて、代表取締役の予選を肯定した昭和41・1・20民甲271号回答の
事例は、現代風にアレンジすると、次のような内容でした。

----------------------------------------------------------------------
 取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社甲において、取締役全員
が3月26日の定時株主総会の終結と同時に任期が満了するので、その定時総
会で重任決議し、直ちに就任承諾があった後、定時総会を中断しABCで取締
役会を開催し、本定時総会終結後の代表取締役としてAを再任予選し、その後
無事に定時総会が終結した。
----------------------------------------------------------------------

 これにつき、「次期」取締役として予選された取締役が、取締役として重任
の効果が生じる定時株主総会終結時の到来を条件に、「次期」代表取締役を予
選したのだから、先例で肯定された――と、つい思ってしまいますが、予選と
はいえ取締役でない者が代表取締役を選任することはできません。

 したがって、これは「現任」取締役が「次期」代表取締役を予選したと考え
るしかないと思うようになりました。

 そうすると、次なる問題として、取締役として任期切れするのが分かってい
るのに次期代表取締役を予選することなどできるのか、次期取締役の選任権限
を侵害することにならないのかと考えてしまいませんか。

 しかし、任期切れ以後の将来の支店設置などを決議することができて、代表
取締役の予選だけができないわけがない、次期取締役がそれにつき不満があっ
たら、予選を撤回したり、新代表取締役を解任すればよいと考えるほうが正し
いと思いました。

 例えば、任期中であっても、取締役ABCがA表取締役を予選したところ、
その効力発生前に株主総会で増員取締役としてDEFGを選任することは可能
ですが、DEFGの代表取締役の選任権限を侵害したので予選が無効だと考え
るのではなく、不都合があったら、DEFGの就任後に取締役会を開催し、代
表取締役を解任するのが筋でしょう。といったようなことを考えて過ごしたわ
けです。


2014.09.16(火)【スパイ扱い】(金子登志雄)

 連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。私の世代は、おおむね、子供も巣
立っているため、いつもながらの退屈な日々だったようです。私も同様でした。

 そんな時は、テレビドラマでもみるしかありませんが、NHK朝ドラの「ア
ンと花子」では、東京大空襲や英語翻訳を生業とし外国人とも知り合いの多い
主人公が近所の人達からスパイ扱いをされる場面をやっていました。

 外国人と知り合いがいるというだけで非国民のスパイ容疑を受けることなど
は、若い人には信じがたい世界でしょうが、戦争状態になると、こういう狂気
がはびこります。

 これで思い出しましたが、ちょうど40年前、当時の韓国朴大統領が在日韓
国人に襲撃され、奥様が殺害された1週間後に韓国に1人旅行した際に、ホテ
ルのボーイさんと親しくなりました。日本語を勉強したいようです。翌日、観
光案内をしてくれるというので、ロビーで待ち合わせしましたが、いませんで
した。

 ホテルを出たら、隠れていた彼が登場しました。「なぜ、約束のロビーにお
らず、ホテルの外で人目を忍んで待っていたのか」と質問しましたら、「外国
人と親しくしていることを知り合いにみられると、スパイと勘違いされてしま
う」との返事でした。

 デパートのお土産売り場では、豊臣秀吉が侵略者として悪役として描かれて
いました。「お国のため」とは、相手国からみると、日本が悪役の敵になるこ
とが、こういうちょっとした体験でもよく分かります。

 最近の日本社会も、マスコミが一方的な大本営発表しかしないため、こうい
う嫌な社会に近づいているような気がしていますが、皆様は感じませんか。自
由気ままを愛する者は、いつの世も、非国民とされてしまいます。


2014.09.12(金)【引当金の承継】(金子登志雄)

 会社法の定義によりますと、合併は「消滅会社の権利義務の全部」を承継さ
せるもので、会社分割は「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」を承
継させるものです。

 では、貸倒引当金や退職給与引当金は権利義務といえるのか、これらを引き
継げるのかという当然の疑問が生じます。

 ネットで調べますと、どうも支配取得に該当する場合は「買収」だから時価
で計算するため引き継げないが、そうでない場合は簿価引継ぎになるため引き
継げるということのようです。

 引き継げるとすると、引当金も会社法上の権利義務の一種と考えるのだろう
と素朴に思っていました。つまり、この場合の権利義務とは、対応する権利者
や義務者が存在する場合の狭義の権利や義務ではなく、貸借対照表の資産や負
債に計上することのできるものといった意味であろうと考えていたわけです。

 しかし、いまは、権利義務は財産権であって引当金は含まれないが、合併や
会社分割の会計処理は、財産権を承継した後に、会計帳簿にどう計上すべきか
という問題だから、承継した財産を貸借対照表に計上する際に引当金等も一緒
に計上して計上する科目を調整してよいということであろうと考えるようにな
りました。

 このように承継する財産権(権利義務)とその後の会計処理とは別に考える
べきであって、会計処理で認められているから、権利義務でないものも合併や
会社分割で引き継がれると考えるべきではないと思うようになりましたが、こ
の私の見方はいかがでしょうか。


2014.09.11(木)【金銭と金銭以外】(金子登志雄)

 ここ数日、仕事場の東京でも居住地の横浜でも、1時間程度の集中豪雨が何
度かありました。

 仕事場にいるときは、帰宅時間を1時間も遅らせれば、豪雨も止み、傘も差
さずに帰れますが、帰宅途中の駅などで、これに遭遇すると、タクシー乗り場
には長い行列ができていますから、1時間も駅で待つ気にもなれません。仕方
なく、豪雨に突撃しますが、靴の中まで水浸しになり、嫌なものです。

 さて、「金銭」と「金銭以外」の微妙な差について、考えてみました。

 不思議なもので、募集株式の発行において、金銭を出資するときは、払込み
があったことを証する書面が登記の添付書面になりますが、金〇〇円の普通預
金債権の出資だと金銭債権の(現物)出資となり、払込みにはなりません。

 合併等対価として金銭が選択された場合に、効力の発生と同時に現金を交付
することはなく、効力発生日以降に振込み手続等がなされるのが通常です。こ
れでは効力発生日に全てが完了していないじゃないかと思うでしょうが、これ
は現金を対価にしたのではなく、金銭交付請求権を対価にしたと考えるしかな
いでしょう。

 剰余金の配当決議においても、配当財産を金銭としながら、実際には金銭と
の引換券(配当金領収証)を送付するだけです。

 預手(ヨテ。預金小切手のことで現金同等の価値がある)の交付は、通常の
売買取引であれば対価の交付として完璧な有効性が認められるでしょうが、募
集株式の発行に応じた出資として利用される場合は、現物出資の扱いになるも
のと思われます。

 こうしてみると、厳密に「金銭」にこだわるのは募集株式の発行等の場合だ
けで、その他の場合は、金銭同等物も金銭として扱われているように思います
が、皆様はいかがお考えですか。


2014.09.10(水)【天下取りの気分】(金子登志雄)

 昨日は港区の高層ビルにある某社を訪ねました。そこからは、何と、東京タ
ワーの大展望台(高さ150m)が眼下にみえるじゃないですか。素晴らしい
パノラマでした。

 昔は東京タワーの大展望台(タワーの中間にある展望台)が、豊臣秀吉の大
阪城と同じく、どこからも見える天下取りの象徴的な場所のようにも思えたも
のですが、いまや東京タワーのある港区には多くの高層ビルが立ち並び、ビル
の影になってしまい同じ港区でも東京タワーのみえない場所が増えました。

 昨日訪問した高層ビルのエレベターは通常よりちょっと広い程度でしたが、
港区の某高層ビルのエレベーターは、小型トラックでさえ乗せられるスペース
がありました。上には上があるものです。

 こういう高層ビルの高い場所に会社があると、豊臣秀吉のように天下を取っ
た気分になれるかもしれませんね。金子事務所もこうありたいものですが、家
賃も払えないでしょう。

 話がちょっと変わりますが、某小学校教諭によると、高層マンションで育っ
た子供は高さに対する本能的恐怖がなくなるそうです。将来、とび職になるの
ならともかく、本能まで退化してしまうとは怖い話だと思いませんか。

 ちなみに金子事務所はビルの4階です。天下取りの気分にはなれませんが、
高さに対する恐怖と庶民感覚だけは忘れずに済みます。


2014.09.09(火)【決算報告とは】(金子登志雄)

 5日のセミナーでは、株式会社の解散に関わる質問を受けました。決算報告
の書き方の問題です。会社の解散は、意外に多く、私も毎年、数件を経験して
います。今月も清算結了が1件予定されています。

 さて、決算報告というと、つい資産ゼロ、負債ゼロの貸借対照表でも作る必
要があるように思えてしまいますが、会社法施行規則150条によれば、次に
掲げる事項を内容とするものでなければならないとされています。
 1 債権の取立て、資産の処分その他の行為によって得た収入の額
 2 債務の弁済、清算に係る費用の支払その他の行為による費用の額
 3 残余財産の額(略)
 4 1株当たりの分配額(略)

 これでは、決算報告というより清算事務報告というべきだと思いますが、旧
商法時代からの慣例なのか、決算報告と表現されています。

 事業を営んでいる間は、決算といえば「計算書類及び事業報告」の2つを表
す用語だと思うのですが、清算が結了すれば、貸借対照表を作る意味もありま
せん。そこで、清算事務報告だけを決算報告というのでしょうが、この用語の
ために、貸借対照表を作成しなければならないと思い込み、債務免除された清
算結了直前の親会社からの負債が計上されたものを作成し、登記所から補正を
受ける司法書士が少なくないようです。清算結了した内容のものにするか、貸
借対照表は作成しないか、いずれかにするべきですので、気をつけましょう。


2014.09.08(月)【計算の目(視点)】(金子登志雄)

 5日の金曜日は、静岡県司法書士会富士支部で「会社の計算」をテーマに講
師を務めてまいりました。夕方だったため富士山こそみられませんでしたが、
東京から近いので、楽な日帰りツアーでした。研修担当のU先生、支部長G先
生ほか、皆様、お世話になりました。

 都内を別にすると、支部単位の研修会講師はめったに依頼されませんが、金
子限定でご指名いただいた場合には、喜んでどこにも参上しています。

 金子限定ではなく、ちょうど司法書士会の研修時期になったので、講師は誰
でもよいというニュアンスで依頼された場合は、全てお断りさせていただいて
おります。講師業は、仕事とは思っていませんので………。

 「計算」がテーマの講義は久々でしたが、計算のことが分かってくると、減
資や組織再編に対する新しい視点ができて、全体像がよくみえてきます。

 法律のどこが面白いのだと感じる人は多いようですが、世の中の事象や出来
事について、一般人の感覚だけでなく、「法律の目」からも捉えられるように
なれることが面白い理由の1つです。

 例えば、法律を勉強すれば、万引きについては「窃盗」、キセルは「詐欺」、
人身交通事故は「業務上過失」などという視点でも考えるようになりますが、
会社の計算を勉強すると、単なる合併も共通支配下関係で簿価取引になって…
……などと新しい視点やアプローチをするようになれます。

 講義でもいいましたが、貸借対照表に関する常識的知識と中学校1年生レベ
ルのプラス・マイナスの計算ができれば、計算規則の読解も難しくありません。
東京司法書士協同組合編『事例で学ぶ会社法実務【会社の計算編】』はそのお
手伝いをする本としては最適だと自負していますので、お持ちでない方は、ぜ
ひどうぞ(本HP上の左の回転盤にあります)。


2014.09.05(金)【似非合併】(金子登志雄)

 司法書士連合会の掲示板で、親会社が100%子会社を吸収合併する際の会
計処理は無対価の合併だから計算規則36条2項だとの主張がありましたので、
いや違う、その規定は100%子会社間合併という「横型」の合併で株式交付
省略型だから、親子間の「縦型」合併には適用されないと説明しておきました。

 100%子会社を吸収合併する際に株式を発行すると、子会社の株主は親会
社自身ですから、自分が自分に株式を割り当てることになりますので、会社法
では合併対価の交付を禁止しています(749条1項3号かっこ書)。当然で
しょう。これが認められば、自己割当て増資さえ認めねばなりません。

 私は、合併とは合併対価を交付するかどうかは別として対価を交付しようと
思えばそれができるものをいい、親子間合併のように対価を交付したくてもで
きないものは本来の合併ではないと考えています。

 合併とは「他人」の財産を受け入れるものです。100%子会社には他人性
がありません。家の中の子(1事業部門)を外の子にしていただけです。

 したがって、会計処理も財産の増減=株主資本の変動=はなく、子供に旅を
させた結果としての費用処理=損益計算書の問題=とされています。

 というわけで、100%子会社の吸収合併は、ニセモノの合併だと私は考え
ています。


2014.09.04(木)【445条4項は剰余金の処分か】(金子登志雄)

 昨日、某社の定時株主総会招集通知案をチェックしていましたら、次のよう
にありました。下記の2(その他の剰余金の処分に関する事項)は、剰余金の
配当の際には、その1割を準備金に積み立てよという会社法445条4項のこ
とです。

----------------------------------------------------------------------
第2号議案 剰余金処分の件
 当期の剰余金の処分につきましては、次のとおりといたしたいと存じます。
 1.期末配当に関する事項  (略)
 2.その他の剰余金の処分に関する事項
  ① 減少する剰余金の項目およびその額
     繰越利益剰余金〇〇〇円
  ② 増加する剰余金の項目およびその額
     利益準備金〇〇〇円
----------------------------------------------------------------------

 会社法445条4項は法律に基づく強制であって、決議する必要はないので
すが、この内容は狭義の剰余金の処分に含まれるのかにつき、考えてしまいま
した。

 拙著『事例で学ぶ会社法実務【会社の計算編】』(中央経済社)の29頁に
は、次のように書きました。

----------------------------------------------------------------------
 会社法452条に「損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分
(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを
除く。)」とあります。カッコ内も剰余金の処分ですから、次のとおりです。
 ① 剰余金の資本組入れ、準備金組入れ(前目に定めるもの)
 ② 剰余金の配当ほか財産処分を伴うもの
 ③ 財産処分を伴わない損失の処理、任意積立金の積立てその他の処分
 狭義では、③のみをいうと理解してよいでしょう。
----------------------------------------------------------------------

 会社法445条4項は上記①には該当しません。意思に基づく組入れではな
いからです。かといって、会社法445条4項では、会社財産が会社外に流失
しませんから、③なのか………と考えてしまったわけです。

 いまこれを書きながら、②であると結論づけました。剰余金の配当と会社法
445条4項は、不即不離の一体のものであって、「剰余金の配当」と「準備
金への1割積立て」という別々の2つではないと考えたためです。たぶん、正
しいと思っていますが、これにつき触れた文献は見つかりませんでした。


2014.09.03(水)【親等の計算】(金子登志雄)

 29日の本欄で「親戚のおじさんやおばさんなど名義貸し取締役も社外取締
役として……」と書きましたが、改正会社法が施行された後も、これらの親戚
は社外性を喪失しません。社外役員になれないのは、取締役等の「配偶者又は
2親等内の親族」までです。おじさん・おばさんは3親等ですから対象外です。

 ところで、本欄閲覧の非法律関係者の方は、親等の計算方法をご存知ですか。
これは、世代数で数えます。

1.縦線(直系)の関係
 父母や子供は自分からみて1世代の差ですから1親等、祖父母や孫は2世代
の差ですから2親等です。

2.横線(傍系)の関係
 兄弟など横の関係は共通の先祖まで上がって、また対象者まで下がります。
兄弟姉妹は2親等です。おじさん・おばさんは、祖父母まで2世代上って、ま
た1世代下がりますから3親等です。いとこは4親等です。

 民法によると「直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることが
できない」とされていますから(養子関係に例外あり)、いとこ同士は可能です。

3.配偶者と血族、姻族
 配偶者とはゼロの関係です。私の妻の親は、私と1親等の親族ですが、血族
ではなく姻族といいます。配偶者は自分の配偶者だけを指し、私と「兄弟の配
偶者の両親」は姻族になりません。

 民法によりますと、親族の範囲は「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻
族」とされていますから、私と「妻のいとこ」などは親族になりません。また、
相互の扶養義務は原則として「直系血族及び兄弟姉妹」とされていますから、
私は兄弟の子である甥や姪(3親等の「傍系」血族)には、老後の扶養をせよ
と請求できそうもありません。


2014.09.02(火)【豪雨災害】(島根・根来川弘充)

 先般、広島県で大きな水害がありました。被災された皆様には、心よりお見
舞い申し上げます。

 さて、東北大震災では、海岸沿いが危ないことを認識させられました。今回
の水害では、山間部も危ないことを認識させられました。

 被害の規模が違うとはいえ、大雨によるおおきな水害は、ここ近年、増えて
いると感じます。そうすると、大地震にも匹敵する災害ではないかとも思え、
大変、不安になります。

 自然災害に向き合うとき、自分でも想像がつかない状況が起こることを想定
した上で、どう対処するか考えなければならないということは、雲をつかむよ
うな話にも思えます。

 しかし、今回の災害で、日本に安全な場所がないのだと思えば、答えが出な
いであろうことを、あきらめずに考えることが大事に思います。


2014.09.01(月)【不審メールにご注意】(金子登志雄)

 9月に入りました。東京では、半そでYシャツでは少し寒くなり、晩夏から
秋の気配に移り変わりつつあります。

 さて、最近、当社はおかしなことでネットに名前が出てくるようになりまし
た。下記です。こんなことで会社が知られるのは残念でなりません。

 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13134685668

 当社は「アト株」なのに、この不審メールでは「マエ株」になっているため、
言い逃れができるようにしたのかなと思っていましたが、全く同じ電話番号で、
トライアイズさんも被害を受けており、こちらは正しく「マエ株」になってい
ましたから、単なる犯人の間違いのようです。

  http://www.triis.co.jp/pdf/2014/2014_0821.pdf

 こういう不審メールを撲滅するには、「またか」と思うほどの慣れが必要で
すが、ネットに慣れていない善良な市民は、つい反応してしまうものです。反
応すると「カモリスト」に掲載されてしまうようですので、少なくともネギま
では渡さないようご注意ください。

 防衛策としては、自由にカネを動かせないようにしておくのがよいでしょう。
私の親戚縁者にもオレオレ詐欺の電話がありましたが、幸いというか、恥ずか
しながらというか、渡せる預金もなく、被害を免れています。


2014.08.29(金)【社外取締役の登記】(金子登志雄)

 たまに「社外取締役として選任したい」などという株主総会議事録をみます
が、「社外」であるかどうかは、正しくは取締役の出自ないし経歴の問題であ
って事実の問題ですから、一定の役割を持った取締役として選任したいという
意味合いは、本来はありません。

 しかし、これでは、親戚のおじさんやおばさんなど名義貸し取締役も社外取
締役として登記することになってしまいますので、現行法では、責任限定契約
を締結するような業務執行監視役の任務が期待される社外取締役だけを社外取
締役として登記すればよいと解釈されています。

 ところが、改正会社法によると、この責任限定契約と社外役員との関係が切
断され、監査役設置会社では原則として社外取締役が登記事項でなくなります。

 例えば、当社(アクモス)には、取締役6名中2名の社外取締役がおり、登
記されていますが、それは定款に社外取締役に関する責任限定契約の定めが置
かれ登記されているためであり、改正会社法が施行されますと、この社外取締
役の登記を抹消しなければなりません。

 登記簿上は社外取締役がいない会社になりますが、改正会社法の趣旨に反し
ないのでしょうか。

 ところで、改正会社法によると責任限定契約は社外取締役に限らず、非業務
執行取締役等に拡大されます。その定款の定めは登記事項です。

 改正会社法の経過措置(22条2項)には、「この法律の施行の際現に旧会
社法第911条第3項第25号の規定による登配(注:社外取締役の登記)が
ある場合は、当該株式会社は、当該登記に係る取締役の任期中に限り、当該登
記の抹消をすることを要しない」とあります。

 この文面からすると、定款から社外取締役の責任限定の定めを削除しても社
外取締役の登記は抹消しなくてもよいのか、旧法に従い存在根拠を失うから抹
消しなければならないのか、旧責任限定契約の定めを非業務執行役員を含む新
責任限定契約の定めに改めた場合も「旧会社法第911条第3項第25号の規
定による登配」と扱われるのか、はっきりしません。

 こういう細かい部分は登記の通達が出て、質疑応答でもなされないうちは、
不明のままですね。改正会社法と登記の解説書などは、現段階では書けません。



2014.08.28(木)【決算期の運・不運】(金子登志雄)

 26日付け本欄でお知らせしましたが、改正会社法附則4条には「この法律
の施行の際現に旧会社法……に規定する社外取締役又は社外監査役を置く株式
会社の社外取締役又は社外監査役については、この法律の施行後最初に終了す
る事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、新会社法……の規定にか
かわらず、なお従前の例による」とあります。

 改正会社法の施行日が平成27年4月か5月の場合は、3月決算会社に社外
役員の新法が適用されるのは、「この法律の施行後最初に終了する事業年度」
である平成28年3月末日「に関する定時株主総会の終結の時」からですから、
平成28年6月定時株主総会終結時からです。

 ところが、当社のような6月決算会社では、「この法律の施行後最初に終了
する事業年度」が平成27年6月末日ですから、それ「に関する定時株主総会
の終結の時」は平成27年9月定時株主総会終結時からです。

 3月決算会社よりも5月末日や6月末日決算会社のほうが先に改正会社法を
研究しておかねばならないことになりそうです。

 いつもは、何か新しい事態が生じても、当社のような6月決算会社は3月決
算会社の苦労の成果をマネをすれば済んだのですが、今度の改正会社法につい
ては、斥候役を演じねばならないということです。

 一番大きい問題は定款変更でしょうが、証券代行会社の信託銀行等が見本を
作ってくれますので、これに右に倣えをすれば済むと思うのですが、この見本
に問題があると全国津々浦々に浸透してしまいます。過去にも問題事項があり
ましたので、私も注意しなければ………。


2014.08.27(水)【社外取締役を置かない理由】(金子登志雄)

 改正会社法によると、上場会社(大会社に限る)は「社外取締役を置くこと
が相当でない理由」を必ず定時株主総会で説明しなければなりません。事実上
の強制に近いといえます(新327条の2)。

 社外監査役が存在するため社外役員はこれで十分だというのは「相当でない
理由」としては不十分だといわれています。この「相当」は「適当」や「妥当」
という意味のようです。

 確かに業務執行の監督には人事権と取締役報酬の決定権を持たせることが重
要ですから、社外監査役よりは社外取締役のほうが監督の実行性という意味で
は強力でしょう。

 しかし、商法時代に監査役の権限を繰り返し強めて来ましたが、効果はあり
ませんでした。社外取締役を増やして効果が生じるのかは、私は疑問に思って
います。

 現状の社外取締役も、社長の知り合いやオトモダチであることが多く、そう
でない場合でも、経営のことを知らないヤメ検や弁護士などですから、取締役
会で上程される議題の適法性については審査できても、裏でなされる行為につ
いて十分に監督することができるかは疑問です。

 また、上場会社といっても、国際的に活躍する企業から近所の中小企業と大
差のない会社もあります。後者の株主総会では「監査役が4人は多すぎる。無
駄な出費だから1人減らせ」というのが株主の意見です。

 私の持論ですが、社外取締役が根付くまでは、上場会社全てではなく、株主
数がうん万人以上の会社に限定したり、会計監査人のように外部の業務監査人
の制度を設けたほうが効率的ではないでしょうか。


2014.08.26(火)【社外役員の経過措置に注意】(金子登志雄)

 改正会社法によると、親会社の取締役や従業員等は子会社の社外監査役にな
れなくなります。これは、もうご存じだと思います。

 ある大手法律事務所の改正会社法解説本にも、「改正会社法が施行されると、
その日以降に株主総会で選任する取締役、監査役の社外要件については改正会
社法によることになります。したがって、平成27年4月1日施行とすれば、
4月総会から親会社の財務部長を子会社の社外監査役としては選任できないこ
とになります」などと説明されていました。

 しかし、これは社外役員が施行時も不在の会社にしか通じない内容であるこ
とが、直近の商事法務2040号で明らかになりました。これは、経過措置に
関する改正会社法附則4条の解釈問題です。

 改正会社法附則4条には「この法律の施行の際現に旧会社法第2条第15号
に規定する社外取締役又は同条第16号に規定する社外監査役を置く株式会社
の社外取締役又は社外監査役については、この法律の施行後最初に終了する事
業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、新会社法第2条第15号又は
第16号の規定にかかわらず、なお従前の例による」とあります。

 これを施行時の社外監査役は当分そのままでよいが、新規に選任される者の
社外要件は新法によると読めば、前記の弁護士本は正しいことになりますが、
そうではなく、社外役員が存在する会社にあっては、当分、旧法の規定が適用
されるという意味であって、人単位ではなく、会社単位の規律であると法務省
のお役人が明言していました。

 したがって、改正法施行時に社外役員が存在する場合において、平成27年
4月1日施行とすれば、4月総会で親会社の財務部長を子会社の社外監査役と
して選任できるということになります(ただし、施行後最初に終了する事業年
度に関する定時株主総会の終結の時以降は社外性を喪失します)。

 改正法の解説本は、早く出すことに意義がありますから、上記弁護士本には
責任がありません。とはいうものの、著者はいま頃「しまった!」との思いで
いっぱいでしょう。出版というのは、いつもこういう危険と隣り合わせでいま
すから、私には他人事とは思えません。後講釈で、あの本は間違いだと批判す
るのは、安全地帯にいながら、前線で戦っている人を論評する無責任な評論家
と同じです。


2014.08.25(月)【社外役員の呼称】(金子登志雄)

 全国各地で豪雨災害が発生してますが、皆様のところは大丈夫でしょうか。
被災者の皆様にはお見舞い申し上げます。

 さて、土曜日の23日は、当社(アクモス)の創立23年目でした。私が司
法書士になる前の平成3年の創立です。例年、内輪だけで表彰式などちょっと
したパーティーを行っているため、役員として出席してまいりました。

 いまは監査役ですが、こういう内輪の会合では「金子監査役」と呼ばれるこ
とはめったになく、「金子さん」あるいは私が司法書士であることを知ってい
る社員からは「先生」と呼ばれることがほとんどでした。

 考えてみれば、社長、専務、常務などの業務執行役員には、そのまま氏名を
付けずに役職のみで呼ぶことが多いのに、社外取締役・監査役などの非業務執
行役員に対するよい呼称はないようです。

 仕方なく「〇〇取締役、〇〇監査役」と氏名入りで声をかけることはあって
も、単に「取締役」などとは声をかけないでしょう。相手が弁護士等の士業だ
ったら、「先生」と呼ぶことが多いのではないでしょうか。

 「〇〇取締役、〇〇監査役」という呼び名にも違和感があるのは氏名以外が
3文字だからでしょうか。社長、専務、常務、先生も、所長も奥様も、自然な
呼称は2語で成り立っています。

 こうしてみると、法務省も社外取締役を増やしたいなら、「理事」のように
2文字の役名にするとよいかもしれませんね。業務執行の監督・監視役ですか
ら、「監与」などという呼称はいかがでしょうか。「客分」はイメージが悪そ
うですから、「目付」もよいかもしれません。従業員上がりの非常勤取締役は
直参目付で、社外取締役は外様目付というところでしょうか。


2014.08.22(金)【法解釈の姿勢】(金子登志雄)

 まだ世間知らずの中学高校時代は、何が正しいのか分かりませんでしたが、
長じてくると、結局は、どの立場に立つかによって正しさの概念が相違してく
ることが分かってきました。

 単純な論理でいえば、労働者にとっては賃金の向上が「正」ですが、資本家
にとっては経費削減が「正」で賃金のアップは「悪」です。

 そこで、法律の解釈についても、企業の側に立つか、企業を指導・管理しよ
うという立場に立つかによって、答えが違ってきます。

 新保司法書士のブログ(司法書士のオシゴト)にもありましたが、後者に立
つと「1か月以上先の本店移転決議は認められない」と企業活動の自由を拘束
する考え方を平気でするのに対し、前者の立場に立つと、そんな規定がどこに
あるかという主張になります。

 徒然なるままに定款変更不要の本店移転は1か月先でもよいかにつき実例を
ネット検索してみました。

 取締役会決議5/13、移転日9/16(約4か月先)
http://www.sumitomo-soko.co.jp/images/topics/1399954694/1399954694_12.pdf#search='%E6%9C%AC%E5%BA%97+%E7%A7%BB%E8%BB%A2+%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B'

 取締役会決議2/12、移転日5/7(約3か月弱先)
http://ir.adways.net/irnews/140212.pdf#search='%E6%9C%AC%E5%BA%97+%E7%A7%BB%E8%BB%A2+%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B'

 こういう実例が多数あるのに、「1か月以上先は不可」などと主張する法律
家は、立場の論理以前に、「世間知らず」といわれても仕方ないでしょう。


2014.08.21(木)【無対価吸収分割の捉え方】(金子登志雄)

 着眼点がユニークといわれる私は、これまでに、吸収合併は合併して解散す
るのではなく解散が先で合併が後だ、旧商法時代の100%減資は減資して増
資するのではなく増資してから減資するのと同じだ(当時の最低資本金違反に
ならない)などと説いてきました。

 その延長で、分割型吸収分割についても、吸収分割して受領した株式を配当
するのではなく、剰余金の配当が先だと考えてみました。

 例えば、丙の100%子会社である甲が同じく丙の100%子会社乙に分割
型吸収分割することは、甲が株主丙に甲の事業財産を配当し、同時に丙が乙に
その配当された事業財産を新たに現物出資したと考えてもよいのではないでし
ょうか。配当は当然に無対価行為です。

      丙
     / \     
    甲   乙

 こう考えれば、甲から乙への無対価吸収分割の会計処理が株式を発行した場
合とほぼ同一処理であることが理解できます。

 では、親丙、その完全子会社甲、その完全子会社(孫)乙において、甲から
乙に対する吸収分割の場合はどうでしょうか。

      丙
     /
    甲
     \
      乙

 この場合は株式を対価にすると、丙が乙の株式を有することになり、甲が乙
の100%親会社ではなくなるので、分割型吸収分割はなされることはまずあ
りませんが、無対価であれば、その問題が生じないため、実行されています。
親丙の財産状況に変化がないことも同じです。

 なお、これにつき、もっと簡単に、分社型と構成し、現物出資の株式発行省
略型だと構成すれば十分ではないかという意見があります。現に、そのような
会計処理をした会社もあるようです。

 しかし、これを認めると、行く着く先は株主割当増資では株式を発行する必
要がないということになりそうで、現時点では認められた会計処理にはならな
いでしょう。



2014.08.20(水)【株主資本が変動する場合】(金子登志雄)

 今日は会社の計算の話で、とっつきにくいかもしれませんが、お付き合いく
ださい。

 さて、貸借対照表の純資産の部に「資本金」などが定められていますが、こ
らの項目の合計額を株主資本といいます。とりあえずは、「資本金や準備金
等のこと」とでも思ってください。

 この資本金等の合計額である株主資本は、商法時代からずっと「株式を発行
しない限り変動しない」という原則で成り立っています。

 しかし、株式を発行しないのに株主資本が変動(増減)することがあります
(資本組み入れなどは、コップの中の変動で、合計額の変動にならないので、
除外されます)。

 その1は、自己株式の取得です。
 自己株式の取得は発行した株式の回収行為のようなものですから、一種の株
式の発行の解除として、原則の裏返しであり株主資本が減少することにつき理
解することができると思います。

 その2は、剰余金の配当です。
 これも、考えようによっては、発行した株式の現在価値に対して、一部を払
い戻すようなものだと考えれば、やはり株式の発行の一部解除として、株式発
行の原則の裏返しとして理解することができます。

 その3は、分割型会社分割です。
 これは、発行した株式を複数の会社支配に分割したようなものですから、元
の会社の株主資本が減少するのは当然だといえましょう。

 その4は、無対価吸収合併です。
 100%子会社同士の吸収合併で認められていますが、これは株式交付を省
略した場合だと解されていますから、原則の変形と理解することができます。

 その5は、無対価吸収分割です。
 これにつき、分割会社が分割事業財産を株主に配当し(当然に無対価です)、
続いて株主がその受け取った財産を分割承継会社に現物出資したと考えれば、
分割会社の株主資本が減少するのは当然だということになるでしょう。

 以上のように考えると、根源はやはり「株式の発行=株主資本」あるいは、
「株式会社と株主との取引による変動」のようです。


2014.08.19(火)【勉強】(仙台・立花 宏)

 先週の月曜日11日に「専務取締役」という寄稿をさせていただきました。
もし、お読みいただき、覚えていてくださった方がいらっしゃったとしたら、
とてもうれしく思います。ありがとうございます。

 この「専務取締役」という投稿の内容ですが、実は掲載された内容は、最初
に予定していた内容とは異なっています。というのは、最初に予定していた内
容には問題点があったのです。私の法律を読む上での基礎知識がたりなかった
ことが原因で、内容に勘違いがありました。その点を金子先生やESG法務研
究会の諸先生方がご指摘をくださり、掲載時にはその問題点を解消した内容と
なっていたのです。

 私が、「代表取締役」という言葉が、法律上、いつ頃から使われていたのか
を調べるため、会社法旧法令集(信山社)という書籍を調べていた時のことで
す。明治44年改正時の商法第170条の見出しに【取締役の代表権、代表取
締役、共同代表】と記載されていました。本文には代表取締役という言葉が記
載されていなかったのですが、見出しに記載してありました。私はこれを見て、
「代表取締役」という言葉が当時も使用されていたのだと勘違いしたのです。

 原稿を書き上げ、寄稿したところ、先ほど記載したように、金子先生をはじ
め、ESG法務研究会の諸先生方よりご指摘をいただいたのです。
 「古い法律には、見出しはないはずだよ」と。
そのご指摘を受け、先日、掲載された投稿内容となったのです。

 後日、調べたところ、分かりやすい法律・条文の書き方[改訂版]という書籍
に、以下の記載がありました。

 “六法全書の中には、丸括弧でなく、かぎ括弧【 】で見出しが表示されて
いる法令がある。これは、古い法令で見出しがないため、編集者が便宜付加し
たものである”

 前述の会社法旧法令集をみてみると、先ほどの明治44年改正時の条文の見
出しはかぎ括弧で表示されていました。同じ会社法旧法令集でも、現在の会社
法の条文の見出しは丸括弧で表示されていました。

 法令の条項を読む上では、いろいろ、注意しなければならない点があるのだ
と反省させられました。そして、それを素早く指摘してくださった金子先生や
ESG法務研究会の諸先生方の深い知識に感心させられました。自分ひとりで
勉強していると、自分が勘違いしていることも気づかずに過ぎてしまうことが
あります。今回のことで、金子先生やESG法務研究会の諸先生方にご指導い
ただけることの幸せを実感いたしました。

 金子先生、ESG法務研究会の諸先生方、本当にありがとうございました。

 参考文献
  会社法旧法令集(信山社)
  分かりやすい法律・条例の書き方[改訂版](ぎょうせい)


2014.08.18(月)【入門書を読んでみた】(金子登志雄)

 アマゾンの会社法本ベストセラーで、江頭本と1、2位を争っている本があ
ります。

http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/books/500196/ref=pd_zg_hrsr_b_1_5_last

 近藤光男著『会社法の仕組み』(日経文庫)ですが、売れているのは値段だ
けが理由ではなさそうだと思ったことと(税込み929円)、知識よりも「モ
ノの見方、考え方、捉え方」を重視する私には、題名に「仕組み」とあること
に興味を持ったため購入して、お盆休み中に読んでみました。

 読後感ですが、一言でいえば、上手にまとめた概説書でした。「仕組み」と
いう題名には特別の意味はなかったようです。むずかしいことを易しく説明し
てあるので、評価が高いのだと思いました。年配の人にだけ通じる表現をする
と、民法のダットサン(我妻栄著)といったところでしょうか。

 私も、目指せ1万部で、こういう売れる入門書を書こうと挑戦したこともあ
りましたが、書いているうちに論じ始めてしまい、入門書の域を超えてしまい、
やめました。また、私のイメージ(独特な視点で論点につき解説する人)にも
合わないでしょう。拙著の読者は各論重視の実務家なので、その期待を裏切る
体系的入門書を書くべきではないと思い直しています。

 なお、本欄閲覧の初学者の方で、この本を読んだ方にアドバイスするなら、
「いま、あなたは会社法が分かったような気分でいるだけで、何も身について
いません。さらにステップアップするには、読むことよりも、やさしい問題集
を手に入れ大量の問題を解いてください。さすれば、知識が実感として身につ
いてきます」といったところでしょうか。

 読むという「受け」だけでは不十分です。判断する、書く、という「攻め」
が実務では大事です。自分の口で自分流の表現で「〇〇とは」と語れるように
ならないと、実戦では使えません。

 実務家の司法書士各位も、そろそろ「監査等委員会設置会社とは」と自分の
口で語れるようにしないといけないですね。



2014.08.12(火)【役員変更登記業務】
(金子登志雄)

 昨日の立花さんが提示した旧商法につき、仲間内で話題になり、古い規定に
つき調べましたら、何と昭和25年から昭和49年までは監査役の任期が1年
でした。毎年、役員変更登記が必要だったのです。当時の司法書士にとっては、
ありがったことでしょう。

 旧商法では、昭和25年以降に限って言えば、監査役の任期が1年→2年→
3年→4年と変化してきたのに対し、取締役の任期は、ずっと2年でしたが、
ご存じ、司法書士つぶし(?)の会社法の施行(平成18年5月)で、非公開
会社では任期を10年まで延長することができるようになったため、ただでさ
え会社数の少ない地方では、商業登記の件数がめっきり減ってしまいました。

 いま、任期1年といえば、会計監査人ですが、会計監査人設置会社は上場会
社程度ですから、役員変更登記の減少の歯止めにはなっていません。

 こうして商業登記に詳しい司法書士も減少し、商業登記は司法書士なら誰で
も扱える仕事から、徐々に特殊な専門家の仕事に変化してきました。種類株式、
新株予約権、合併再編等まで扱えないと商業登記だけでは暮らしが成りたたな
くなってきました。

 商業登記を扱う司法書士は専門家・プロ化してきたのに、この申請を審査す
る法務局側は、公務員の人事異動で、専門的でない調査官や登記官が増えたの
か、最近は、各地で小さな衝突が生じているようです。法務局によって、人に
よって、聞く時期によって回答が異なるのですから、困ったものですが、これ
をいかに説得しクリアするかも、われわれの腕ですから、頑張りましょう。決
して妥協しないことです。他の人に迷惑が及びますから。

 さて、13-15日の本欄はお休みします。私自身は年中無休のコンビニエ
ンス司法書士ですから休みませんが、本欄の管理者も会社もお盆休みのため、
私一人が出勤する気にもなれないので、仕事については、自宅にて携帯電話と
メールで対応いたします。ご遠慮なくどうぞ。



2014.08.11(月)【由緒ある肩書―専務取締役】(仙台・立花 宏)

 先日、大学時代の友人とお会いする機会がありました。彼は、大学卒業後、
東京に出てサラリーマンとなりましたが、現在は実家に戻り、家業を手伝って
いるそうです。名刺をいただいたところ、肩書が“専務取締役”となっていま
した。

 「専務取締役か。格好いいね」
 「実家の小さい会社の役職だよ。実態は親父の会社の単なる従業員さ。でも、
たしかに、専務取締役って、歴史のありそうな肩書で格好はいいな」
 「たしかに、歴史のありそうな肩書だな」

 友人の謙遜しながらも、まんざらでもない様子を眺めながら、“専務取締役”
という言葉は、はたしていつ頃から使われていたのだろうか、ということが気
になりはじめました。たしか、平成18年に施行された会社法(以下、「会社
法」という)の表見代表取締役のところに、その名称が使われていたはず、と
思いながら、自宅に戻りました。

 自宅に戻り、会社法の条文を見てみると、第354条(表見代表取締役)の
条文には、使われていると思っていた“専務取締役”という言葉は使われてい
ませんでした。どうやら、会社法では、表見代表取締役の条文から“専務取締
役”という言葉は削除されていたようです。いままで気付かなかったことを恥
ずかしく思いました。

 気を取り直して、本棚から会社法施行前の六法を取り出し、会社法施行前の
商法(以下、「商法」という)第262条の表見代表取締役の条文を見ると、
“専務取締役”という言葉が使われていました。昭和13年に本条追加となっ
ていますから、どうやら昭和13年には“専務取締役”という言葉は、会社の
役員の役職名として使われていたのでしょう。

 会社法旧法令集(淺木槇一編 信山社)という書籍でさらに調べてみると、
明治23年に制定された商法(以下、「旧商法」という)の第185条第2項
に規定がありました。

 “取締役ハ同役中ヨリ主トシテ業務ヲ取扱フ可キ専務取締役ヲ置クコトヲ得
(以下、省略、)”(条文中、下線は筆者による)

 この旧商法は、日本で最初の商法典です。その後、旧商法は明治32年に一
部を除き廃止され、新しい商法典が制定されたのだそうです。この明治32年
に制定された商法が、商法の原型です。探してみましたが、その明治32年に
制定された際の商法では、“専務取締役”という言葉は使われていませんでし
た。

 ちなみに、“代表取締役”という言葉は、いつから条文に登場したのでしょ
うか。前述の会社法旧法令集を見てみましたが、“専務取締役”が記載されて
いた旧商法には見つけることができませんでした。さらに探してみると、明治
44年に改正された商法第170条の表題に、はじめて見つけることができま
した。

 この表題(条文の見出し)は、当時は法律に属さないものでしたが、当時か
ら代表取締役と表現していたものとすると、日本の法律上は、“専務取締役”
の方が“代表取締役”より古い肩書といえるかもしれせん。そんな由緒ある肩
書をもった友人をちょっぴり羨ましく思いました。

 参考文献
 「会社法旧法令集」 淺木槇一編 信山社
 「新訂版 商法改正の変遷とその要点」 秋坂朝則著 一橋出版



2014.08.08(金)【会社分割と譲渡承認】(金子登志雄)

 分割型吸収分割というのは、A社が事業財産をB社に吸収分割し、見返りに
取得したB社株式をA社の株主に現物配当するものです。

 B社が非公開会社である場合は、A社からA社株主へのB社株式の配当につ
いても、B社で譲渡承認決議が必要だとされています(相澤哲ほか編著『論点
解説 新・会社法』Q898)。

 ここまではよいのですが、先般、甲社が乙社を新設分割する分割型新設分割
を経験した際に、乙社の譲渡制限承認はどうやってするのかと迷ってしまいま
した。乙社は非取締役会設置会社で株式の譲渡承認は株主総会の権限になって
います。

 迷った理由は、この現物配当は乙社の成立と同時です。承認したとしても事
後承認にならざるをえませんが、それでは、会社成立の日に法的な瑕疵なく配
当したことになりません。また、株主総会で承認しようにも乙社の株主が現物
配当後のA社の株主とみるのは自己矛盾です。配当が有効であることを前提と
しているからです。乙社の株主を分割会社甲とみれば、乙社の成立と同時の現
物配当になりません。

 結局、承認は不要だと判断しましたが、振り返って分割型吸収分割でも不要
だと考えるべきではないでしょうか。吸収分割承継会社であるB社でも株主総
会あるいは取締役会で分割型の会社分割であることを承認しているわけですか
ら、この上さらに、株式の譲渡だけを取り出して別途承認せよというのもおか
しな見解です。

 会社分割は承認したが、株式配当は承認しないことができるのでしょうか。
できるわけがありません。また、譲渡制限株式の発行・交付となる関係で、吸
収分割承継会社の会社分割承認決議は株主総会の特別決議になります。それで
分割型であることを承認しているわけですから、別途、株主総会の普通決議や
取締役会決議による譲渡承認は不要というべきでしょう。

 分割型新設分割との均衡からしても、分割型会社分割における株式の配当は
株式譲渡制限の承認は不要だと解釈すべきではないでしょうか。


2014.08.07(木)【この時期に思うこと】(金子登志雄)

 昨日は原爆記念日でした。広島も長崎も平和記念館を訪問したことがありま
すが、まさにピカドンによる地獄絵図でした。

 国内3回目の被ばく(被爆ではなく被曝ですが)はフクシマでしたが、地震
国日本では、いつ4回目が起こるか分かりませんし、全国各地の原発がテロで
狙われることも、今後は可能性としてありそうです。

 いま世界では、イスラム国家、中南米諸国、ロシア、中国と米国と親しくな
い国のほうが多いのに、集団的自衛権で米国の戦争に駆り出されては、まき沿
いを食う可能性のほうが大きいと思うのですが、日本は沖縄以外に自国内で外
国と戦った経験がないせいか、危機感もいまいちのようです。前期高齢者の私
自身も戦争を知らない戦後生まれですから、平和ボケでしょうか。

 一時はエコノミックアニマルといわれた日本国民は、平和よりも金儲けの話
になると急に熱心になりますが、ちょうど今、3月決算会社の第1四半期(4
-6月)の業績発表が開始されはじめた時期に当たります。

 その発表で株価が急騰したり急落しているため、庶民投資家は一喜一憂とい
うところでしょうか。昨年は投資すれば誰でも儲けられる相場でしたが、今年
は儲けている人は少ないでしょう。

 脱線しましたが、いつもの会社法の話に戻しますと、この四半期決算は年次
決算ではなく正式なものではありません。したがって、4-6月に大きな利益
が出ても、また大きな損失が生じても、これは「期間損益」という損益計算書
上の損益であって、正式な年度決算の貸借対照表の「その他利益剰余金」では
ありませんから、利益の資本組入れも、損失の処理の対象にもなりません。拙
著で繰り返し説明していることですが、もう大丈夫ですか。


2014.08.06(水)【本箱必備本】(金子登志雄)

 月曜日は出版社の担当者と飲みました。拙著の出版が一段落したためです。

 彼の話によると、いまは書店の売行きよりもアマゾンなどのネット販売によ
る売行きのほうが多いそうです。書店のテリトリーは狭く、わざわざ足を運ば
ねばなりませんが、ネットは全国規模でパソコンの置かれた部屋の全部が売り
場ですから、こればかりは仕方ないことですね。

 出版社近くの大手書店にも立ち寄ってみましたが、その1つでは法律書の販
売を取り止めにしたようで、売り場がありませんでした。これも時代の流れで
しょうか。

 幸いにも拙著は発売したばかりのため、ネット販売での売行きは現時点では
まぁまぁの状況であり、たまにはアマゾンの会社法本売行きベストセラーの第
1位を占めることもありました。

 しかし、完全に3日天下でした。突然、大型台風が押し寄せてきたからです。
そう、江頭第5版の発売です。

http://www.amazon.co.jp/gp/bestsellers/books/500196/ref=pd_zg_hrsr_b_1_5_last

 江頭本は体系書のため司法書士業務に直接役立つかどうかはともかく、この
本を持っていないと一人前の法律家とはいえないイメージがありますから、私
も改訂のつど購入してきました。著書に「江頭〔第何版〕何頁参照」などと書
く必要もあり、旧版の頁数ではまずいためです。

 このように、読む読まないは別として、本箱に置いてないと一人前の法律家
とはいえないといわれるような本を書いてみたいものです。


2014.08.05(火)【DNA鑑定と親子関係】(島根・根来川弘充)

 先日、DNA鑑定を有力な証拠とする親子関係不存在の訴えについて、最高
裁の判決が出されました。

 判決は複数ありましたが、いずれもDNA鑑定で親子関係が否定されても、
それだけでは、法律上の親子関係を否定できないという判決要旨でした。

 医学の進歩がすすみ、子の出生にも様々な形態が出てきています。民法が制
定された当初予想されなかったことなので、一刻も早く法整備が望まれるとは
思うのですが、今後さらに急激に進歩することも予想され、いたちごっこにな
ってしまうのではとも思います。

 もし最高裁が、親子関係が無かったことを認め、例外事例を増やしたならば、
今後、下級審の判決で、判断が分かれる判決を増やすことになり、混乱にもつ
ながると思われますので、今の法律により、一線を引いた今回の最高裁の判決
は、大いに意味があったことと思います。

 社会事実から法が成立するので、今の社会が法とかけ離れているのであれば、
新たな法律をつくる必要があると思いますが、一方で、法が理想とする社会を
考えることも重要かと思います。

 今回の判決は、いろいろな方向から考えさせられる判決でした。



2014.08.04(月)【会社法124条3項ただし書】
(金子登志雄)

 会社法124条3項に「株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の
2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなけれ
ばならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるとき
は、この限りでない」とあります。

 このただし書につき、相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』187頁か
ら推測すると「定款に定めがあるときは公告する必要がない」というだけでな
く、「定款に定めた基準日までに2週間を空ける必要がない」という解釈にな
るはずですが、「当該定款の定めは、基準日の2週間前までに存在することが
必要である」との見解が判旨の1部として東京地裁から出ました(直近の商事
法務2039号17頁)。この見解だと、株式分割を1日でできなくなってし
まうが、どう思うかと電話質問を受けました。

 実は私も基準日というのは名義書換えをしていない実質株主に早く名義書換
えをしないと権利行使できないぞと知らせる機能を持った株主を固定化させる
制度ですから、これから定款で基準日を定める場合も2週間空けないとまずい
だろうと思ったこともありますが、法令解釈としては、以下の理由で東京地裁
説には無理があると思っています。

 1.ここは定款の効力の問題であり、明文がないのに、定款の定めの効力に
  条件や期限を付すのは妥当ではない。

 2.基準日は定めずともよく、定めたときに2週間前の公告が必要だとされ
  ているため、その中間領域(2週間を空けない基準日)があってもよいは
  ずである。

 3.東京地裁の考え方だと、3月30日に新設した株式会社の定款に定める
  定時株主総会の議決権の基準日が3月31日だとすると、この会社の第1
  回定時株主総会では議決権につき基準日を定めていたことにならないが、
  それでよいのか。

 いずれにしろ、この地裁の事案は種類株主総会の基準日につき公告もせず、
定款にも定めていなかったケースでしたし、地裁段階ですから、登記実務を左
右するほどの影響力はないでしょう。『論点解説 新・会社法』に従って問題
は生じないと考えます。


2014.08.01(金)【仮会計監査人が本会計監査人に】(金子登志雄)

 6月下旬から7月いっぱいは6月定時株主総会の結果を受けて役員の改選な
どの登記があり、商業登記の書き入れ時でしたが、残念ながら終わってしまい
ました。今日から暇なニッパチが始まります。

 この書き入れ時に「仮会計監査人A監査法人」を定時株主総会で正規の会計
監査人に選任する事案がありました。

 仮会計監査人がAであるのに、正規に会計監査人Bを選任し、Bの就任登記
をすれば仮会計監査人Aは退任の登記になると思った方も多いでしょうが、そ
うではなく登記所が仮会計監査人の登記を職権で抹消します(商登規則68条
1項)。申請ではAについて何もする必要がありません。

 しかし、「仮会計監査人A監査法人」が正規の会計監査人になったときは、
「重任」などの登記の可能性もあるのかなと思って調べましたら、上記のBに
なったときと何も変わりませんでした。

 「仮会計監査人A監査法人」の部分に抹消線が引かれ、順序どおり、その次
の枠に「会計検査人A監査法人」という登記がなされるのかと思っていました
が、実例をみると逆で、「会計検査人A監査法人」が「仮会計監査人A監査法
人」より前の枠に記録されていました。取締役が監査役より前の位置に登記さ
れるのと同様に、正規の会計監査人が仮会計監査人よりも前の位置に登記する
仕組みになっているようです。


2014.07.31(木)【持分会社と株式会社】(金子登志雄)

 毎日、すごい暑さですね。東京法務局に行きましたが、徒歩を避けて、タク
シー利用の人が多かったようです。私も同じです。タクシーの運転手さんと、
こんな暑い時期に6年後の東京オリンピックを開催したら、海外からのお客が
熱中症になり、日本に嫌な印象を持って帰るのではないかなどと雑談してしま
いましたが、本気でそう思います。

 さて、昨日ご紹介しましたとおり、会社法331条2項本文には、「株式会
社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない」と
あっても、株主自ら取締役になることが少なくありません。

 しかし、法人株主は自ら取締役になれません(331条1項1号)。そこで、
株主たる法人(会社)の役員や従業員が子会社の取締役・代表取締役に選任さ
れます。

 これに対して、合名・合資・合同という持分会社にあっては、社員自ら直営
ですから、法人も業務執行社員・代表社員になれます。しかし、肉体がないの
で、職務執行者という者を選任しその者に担当させます(598条)。

 実質的には似たようなものですが、株式会社の取締役は子会社の株主総会で
選ばれる間接統治形態であるのに対し、持分会社の職務執行者は親会社の取締
役会などで選任される直接統治形態という差があります。

 株式会社の親会社と子会社は、株式保有という赤い糸で結ばれているだけで、
株式の売却によって、いつでもこの糸を切断できるが、持分会社の親子関係は
親権者と未成年の同居の子の関係のように、不即不離で結ぶ糸の入り込む余地
がありません。

 こうして考えると、持分会社は個人事業あるいは個人間の共同事業に過ぎず、
株式会社のように独立した法人といえないような気がしませんか。民法上の組
合と独立法人との相違でしょうか。

 ここ数日、何となく持分会社と株式会社の相違のイメージが深化したような
気がしています。


2014.07.30(水)【所有と経営の分離】(金子登志雄)

 会社法331条2項に「株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を
定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、
この限りでない」とあるのに対し、会社法590条1項には「社員は、定款に
別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する」とあります。

 つまり、持分会社では、「企業所有者=経営者」が原則だが、株式会社では
「企業所有者≠経営者」であり、所有と経営は分離しています。

 ここまではよく知られた内容ですが、取締役は企業所有者から選ばれて経営
を委任される立場だから、そこに委任契約があり、選任行為と就任承諾行為と
いう2つの法律要件事実が必要だが、業務執行社員は法律上当然の地位であっ
て、原則として選任行為がないため、就任承諾も原則として必要ないというこ
とに気がつきました。

 会社法593条は会社と業務執行社員との関係を委任に準じた関係とみて善
管注意義務などを課していますが、これは共有者の一員として共有物の管理だ
からでしょう。

 言い換えれば、AB夫婦共有の自宅をAが管理するのは当然であり、管理者
になることに就任承諾は不要だが、AがAB夫婦から第三者の立場で管理を委
任された場合には就任承諾が必要だということのようです。

 持分会社の業務執行社員や代表社員は「当事者的地位」、取締役は「第三者
的地位」ということでしょうか。

 持分会社の仕事は私にはめったにないので、こんな基本中の基本に意識が及
ぶことが少なかったのですが、持分会社の仕事が多い同業者は、意識している
のでしょうか。


2014.07.29(火)【期間不明天下】(金子登志雄)

 取締役Aが7月31日24時に任期満了して退任という場合は、「平成26
年7月31日退任」という登記がなされ、同時に重任すると「平成26年8月
1日重任」という登記になります。

 日付が変わりますが、これは「終了(退任)は期間の末日だが、開始(重任
=就任)はその終了日の翌日である期間の始まりの日を登記する」ということ
でしょう。同様に、旧商法時代の減資、例えば資本金5000万円を1000
万円にする場合で、債権者異議申述公告の期間満了日が7月31日だったとす
ると、「8月1日変更」という登記になりました。7月31日時点では資本金
5000万円であり、資本金1000万円が開始したのは8月1日だからです。

 では、新株予約権の行使期間が7月31日(24時)までだったとすると、
この新株予約権の行使期間満了による抹消の登記の日付は、いつになるでしょ
うか。また、定款に定める会社の存続期間が7月31日までだとすると、この
存続期間満了による解散の登記の日付はいつになるでしょうか。

 上記の「終了の登記は期間末日、開始の登記はその翌日」という原則からす
ると、7月31日付のはずですが、登記実務では「8月1日行使期間の満了」、
「8月1日存続期間の満了による解散」とされています。

 しかし、上記の重任や減資の場合と相違し、これらには登記事項の「開始」
がありません。8月1日は新株予約権でないことの開始であり、清算の開始で
あって解散の開始ではありません。解散は登記事項でも、清算の開始は登記事
項ではありません。解散が8月1日なら清算事務年度の開始は8月2日だとで
もいうのでしょうか。

 いつからこういう誤った登記になったのか不明ですが、これはいまだに天下
取りをしています。本年1月末発売の「登記情報627号(2月号)」でこれ
を指摘しましたが、いつか改められる日が来ることでしょう。


2012.07.28(月)【50年天下】(金子登志雄)

 お約束どおり、50年間も天下取りをしていた悪玉解釈の紹介ですが、おそ
らく、どなたも私が何を題材にするかを予想できなかったことでしょう。

 昔むかし、監査役につきA1人の会社(取締役会設置会社)がありました。
Aは任期を1年残して辞任したたため、後任の補欠としてBを選任しました。
このBの任期は残り何年でしょうか。なお、当時の法律では、監査役の任期は
次のようになっていたとします(その後3年や4年に延期されましたが)。

-----------------------------------------------------------------------
旧商法第273条(監査役の任期)
 1 監査役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の
  時迄とす
 2 (略)
 3 前2項の規定は定款を以て任期の満了前に退任したる監査役の補欠とし
  て選任せられたる監査役の任期を退任したる監査役の任期の満了すべき時
  迄と為すことを妨げず
-----------------------------------------------------------------------

 Bは補欠として選任されたのだから、前任者Aの任期を引き継ぎ、あと1年
に決まっているじゃないかと思いませんでしたか。

 そのとおりです。昔は、正しくそう考えていました。しかし、昭和30年代
におかしな先例で出て、「補欠規定は全員の任期を同時に満了させるためのも
のだから、本件のように全員が辞任する場合には適用されない」とされ、Bの
任期は、新規の就任と同様にあと2年だとされてしまいました(昭36・8・
14民事甲2016号回答参照)。

 若い人は「うそだ~!」と思うかもしれませんが、ベテラン司法書士に聞い
てみてください。きっとベテランさんは、「オレもそう信じ込んでいた」と答
えることでしょう。

 登記とは別の場所からこの世界に入った私は、最初から、「この登記慣例は
おかしいぞ~」と思っていましたが、誰1人として私に賛同してくれる人はい
ませんでした。法務局に「それは慣例ですよね。商法の解釈ではなく」と尋ね
たときも、「いや、商法の正しい解釈ですよ」といわれる始末でした。

 補欠は前任者の任期を引き継ぐものであって、他の役員と任期を合わせるも
のは増員です。他の役員がいない場合は増員とはいいませんが補欠にはなり得
るのです。

 会社法が施行され、このおかしな解釈は否定され、昭和30年以前に戻りま
したが、不思議なのは、それ間の50年間、法務省の担当部門をはじめ誰一人
として、この解釈に疑問を抱かなかった点です。その世界にどっぷり漬かって
しまうと、こうなってしまうようです。

 このおかしな先例も会社法の施行という外圧がなければ未だに改められない
ままだったことでしょう。期限付解散の例をみても、自主的改革を期待するほ
うが無理なのかと悲観的になってしまいます。

 しかし、会社法及び登記をこよなく愛する私はそう思いたくないのです。奇
人変人扱いされても、おかしいものはおかしいと今後も言い続けることにしま
しょう。今日の少数派も明日の多数派になれるのですから。


2014.07.25(金)【10年天下】(金子登志雄)

 昨日は3日天下の話でしたから、今日は10年以上も天下取りをしていた悪
玉解釈の話題にしましょう。

 資本金1億円の会社Aが資本金1000万円の会社Bを吸収合併するときの
合併公告ですが(ABが完全親子関係であっても同じ)、昭和60年頃までと
平成9年以降は「AはBを合併しBは解散するが異議のある債権者は述べよ」
という合併公告内容ですが、昭和60年頃から平成9年までの間は「資本金の
合算額1億1000万円を1000万円減少するが、これにも異議がないか」
と「合併並びに資本減少公告」が必要だとされていました。

 実におかしなことですが、法務省の担当官が商事法務という雑誌に、合併と
は2つ以上の会社が1つになることだから、資本金も合算されるのであり、資
本金をそのままにしたければ同時に資本減少公告も必要だという論文を発表し
たために全国の法務局が「お上のお達しが出た」と右に倣えをしてしまったの
です。通達でもない単なる1論文なのに、です。

 たった1人の少数説の私見がその地位の力で全国を席巻してしまったわけで
すから驚きです。今度の期限付解散も事務連絡ですが同じようなもので、全国
の法務局も、不承不承、お上のお達しに従っているだけのようです。

 この悪玉解釈は平成9年の合併法制の改正で完全否定されました。こういう
法制の改正でもないと、非常識な解釈が改まらないという縦型社会も困ったも
のです。右か左かという思想の問題ではないのですから、もっと気楽に改めて
もよいと思うのですが、いかがでしょうか。

 ちなみに会社法立案担当者は軽いですよ。自分で作った法務省令を知らん顔
して改めてしまったことも何度かありました。

 会社法は、改めることを躊躇しない時代即応型の新興国であり、商業登記は
法令の変更や判例などの外圧でもない限り、決して改めない歴史のある重厚型
の守旧国家のごとくです。目まぐるしく社会が変化している今日、前者のほう
が支持を集めやすいといえるでしょう。

 月曜日はもっとすごい50年天下の話にしましょう。



2014.07.24(木)【登記における3日天下】(金子登志雄)

 NHKの軍師官兵衛は、中国大返しから光秀の3日天下の時期に入りそうで
すが、登記の先例にも3日天下だったものがいくつかあります。

1.会社を解散したら「株式を譲渡により取得するには【取締役会】の承認を
 得なければならない」も定款変更し登記申請しなければ解散登記は受け付け
 られないとする誤った取扱い(正しくは定款の文言が空振りするだけです)
 は、全国を不安に陥れましたが、1日天下もなかったようです。全国から反
 発の大返しがあったためです。私も無視して申請したものでした。

2.株主総会と普通株主の種類株主総会を共催した場合は議事録を分けねばな
 らないという回答も1日天下もなかったようです。それはそうでしょう。議
 事録の作成法まで干渉する権限は法務局にはないからです。他の法務局から
 も異論が出て、天下取りはできませんでした。

3.新株予約権の1株当たりの行使価額を議事録に「平成○年6月各日の平均
 市場価額に1.05を乗じた価格」と決めていた場合は、この具体的価格が
 〇〇円と決まっても、算定方式のまま登記せよという回答は、数か月間天下
 を取りました。しかし、従前の取扱いに対する謀反は明らかでしたから、や
 はり全国から反発の大返しがあり、現在は旧に返っています。

 上記はいずれも大手法務局に人事異動があり、新登記官が張り切って出した
新取扱いですが(と推測しています)、いくら権限があっても、それが独裁的
かつ独善的決定であり、過去の取扱い例や法律の趣旨をじっくり検討した上で
の変更でない限り、支持されないことを表しています。支持されないどころか、
法的センスを疑われるようなことをしては権威が失墜するばかりでしょう。新
登記官さんは部下のベテラン職員さんの意見に耳を傾け、張り切りすぎないこ
とが重要です。

 さて、今日あたりから「事例で学ぶ会社法実務【設立から再編まで】」がぼ
ちぼち発売されます。上記についてもふれていますので、ぜひ参考にしてくだ
さい。
http://www.amazon.co.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%A7%E5%AD%A6%E3%81%B6%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%B3%95%E5%AE%9F%E5%8B%99%E3%80%90%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E3%81%8B%E3%82%89%E5%86%8D%E7%B7%A8%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%80%91-%E9%87%91%E5%AD%90-%E7%99%BB%E5%BF%97%E9%9B%84/dp/4502107611/ref=zg_bs_500196_7


2014.07.23(水)【選定・解職】(金子登志雄)

 本を書くときに、いつも迷うのが代表取締役につき「選任」とするか「選定」
とするかです。

 「選定」とは選ばれた者の中から更に選ぶことだとされていますから、「取
締役の中から代表取締役を定める」場合には素直に「選定」と書けるのですが、
最初から「各自代表」の場合には、選定行為がないじゃないかと抵抗があるわ
けです。

 それ以上に使いにくいのが「解職」です。代表取締役の解職とは一般にも使
わないため、書籍の多くは「解任」にとどめているのではないでしょうか。

 上場会社ではどうしているのかなとネット検索してみましたら、オリンパス
や川崎重工は「解職」、セイコーホールディングスは「解任」でした。意外に
使われているというよりも、会社法用語がそうなっているので、正式文書には
その用語を使ったまででしょう。

 いずれにしろ、各自代表は選定なのか解職なのか、いまだに分かりませんと
いいたいところでしたが、念のため、相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』
を調べましたら、「非取締役会設置会社における代表取締役の選【任】登記」
などとありましたから(288頁)、立法担当者は選定されない各自代表の場
合には「選任」を使っているようです。



2014.07.22(火)【代表取締役の定め方】(金子登志雄)

 3連休でしたが、いかがお過ごしでしたか。私は、することもなく退屈な日
々でした。ワークホリックのつもりはないのですが、無趣味人間のため、原稿
書(ネタ切れです)など集中するものがないと、どうも退屈でなりません。

 さて、会社法349条3項には「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、
①定款、②定款の定めに基づく取締役の互選又は③株主総会の決議によって、
取締役の中から代表取締役を定めることができる」と3つの方法があることを
規定していますが、取締役会設置会社では、どんな方法があるでしょうか。

 1.取締役会………根拠は362条3項
 2.定款……………根拠は29条
 3.定款の定めに基づく株主総会………根拠は295条2項、29条

 これだけでしょうか。

 4.定款の定めに基づく種類株主総会………商登規則61条4項1号参照
 5.定款の定めに基づく取締役の互選………根拠は会社法29条

 この5も私は可能だと考えています。設立の段階ではこの方法です(47条
1項)。1との相違点は、会議を経る必要がないという点です。その他、定款
の定めに基づく取締役間でのくじ引きでも、最年長者にするでも違法とはいえ
ないでしょう。

 旧商法時代は、学説の多数が3を肯定していましたが、登記実務が否定説で
運用されていたため、いまだに設立時で定款の附則で定めることを除き、代表
取締役は取締役会以外では選定することができないと凝り固まった頭脳の持ち
主が多いのですが、会社法は選択肢を大幅に広げているのです。

 NHKの朝ドラではありませんが、「想像の翼を広げて」会社法に接し、時
代遅れといわれないようにしましょう。想像が創造に発展すれば、新先例を出
してもらえるようになります。


2014.07.18(金)【本年の出版】(金子登志雄)

 この7月には出版が重なりますので、上記トピックスの5のとおり整理して
おきました。普通は、たった2か月程度で4冊も出せるわけがないのですが、
いずれも改訂版か焼き直しでしたから出来たわけです。

 お客様や友人の中には、金子から例年どおり贈呈されると期待している方も
おられるでしょうが、改訂版なので、それはしていません。今回は、悪しから
ず、ご了承ください。

 上記の(4)には、会社法29条と会社法295条2項を利用したテクニッ
クを書いておきました。

 昨日もありましたが、非取締役会設置会社には新取締役が就任すると印鑑証
明を用意しなければならない面倒さがあります。これに対して取締役会設置会
社は、代表取締役の選定にも本店移転先の決定にも、いちいち取締役会を開催
しなければならないという面倒さがあります。

 しかし、後者であっても定款に「当会社の株主総会は、会社法第295条第
2項に基づき、代表取締役の選定のほか業務執行行為の全てにつき決議するこ
とができる」と定めてしまえば、株主総会の開催だけで済みます。

 その代わり、定款添付という面倒さがありますので、そう思ったときは、取
締役会を開催すればよいのです。株主総会でも取締役会でも決定することがで
きるので、私は、この手法は今年、相当流行るとみています。

 なぜ、流行るようになったのかは、代表取締役の予選などで登記所の対応が
厳しくなってきたので、民間が知恵を働かせた結果でしょう。皮肉なものです
ね。ご興味のある方は、(4)の発売をお待ちください。



2014.07.17(木)【期限付解散の事務連絡】
(金子登志雄)

 司法書士の手による「商業登記全書」第8巻がやっと出るようです。その
巻の編者である内藤司法書士のブログにも掲載されていました。

http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/e/c7efe6f5d7c569176da6d45bfd84708b

 出版前ですが、昨日、中央経済の方とあった際に、みせてもらいました。
その6頁に、平成22年11月25日付の「期限付解散の決議に基づく登記
の申請(土手補佐官事務連絡)」が掲載されていました。2週間以上先の期
限付解散は認められないとしたものです。

 その最初の文章は「解散日を数箇月後の日とするいわゆる期限付解散決議
をした株式会社が当該決議に係る株主総会議事録を申請書に添付して解散の
登記を申請した場合、当該解散の登記は、することができる旨の見解が掲載
された書籍・雑誌(商業・法人登記300問(テイハン)310頁、月刊登
記情報570号59頁)を根拠として、当該解散の登記が可能ではないかと
の相談が幾つかの法務局にされています」が、認められないという内容です。

 さて、この文章で目の敵にされたテイハン300問や登記情報570号の
書き手は誰でしょうか。

 もうお分かりですね。商業法人登記総合研究5人委員会(神崎代表)を代
表して私が筆を執りました。

 旧商法時代から、無対価合併の可否など、さまざま登記の新先例に貢献し
てきましたが、私見が潰されたのは、これが初めてです。

 しかし、10年後になるか、20年後になるか分かりませんが、この問題
に関しては、いずれ必ず肯定されるという自信があります。現時点では注釈
会社法の平出見解(否定説)が大手をふるっていますが、否定説論者の方が
声が大きいというだけで、声なき声の多数派は当方側にあると信じています。
その証拠に、そういう登記申請が頻出したわけです。

 9か月先の合併による解散や会社を抜け殻とする吸収分割が期限までに何
の登記もせずに許容されていながら、1か月先の期限付解散は存続期間の登
記をしないのは不当だという論に説得力があるとは思えません。


2014.07.16(水)【各庁混雑比較】(金子登志雄)

 7月1日に申請した組織再編で2つの法務局に関わるものが、2週間以上
も経つのに、まだ終わっていません。単に「合併し解散」とか「………に分
割」と記録するだけのことですが、繁忙期のため、順番待ちのようです。

 われわれ司法書士の感覚だと、もっと早く終わってもよいと思えるのです
が、申請はプロの司法書士がするとは限りません。税理士さんや行政書士さ
んが本人申請を代行したり、純粋の本人申請があると、間違い登記が多いの
で、これらにも対応しなければなりません。時間がかかるのも無理ないこと
でしょう。

 お客様から「まだか、まだか」とせかされている司法書士も多いことでし
ょう。そこで、いかに全国的に混雑しているかを、大手法務局につき調べて
みました。下記のとおりです。

 7/15午後申請で一番早い7/18の完了予定日が高松、一番遅いのが
仙台の7/28でした。7/22は広島、7/23は名古屋、7/24が札
幌、東京、大阪で、7/25が福岡でした。

 会社数の多さや法務局の人員数で1日か2日の誤差がある程度で、全国的
に真夏日であることが分かります。しょうがないですね。


2014.07.15(火)【期限付解散とみなし定款変更】(金子登志雄)

 日本司法書士連合会の掲示板に「1か月先の期限付解散の可否」について
質問が載っていました。もちろん、なぜ認められないのかという自然な疑問
です。

 この問題につき、登記実務や江頭本では、解散の決議と定款変更の決議は
ともに株主総会の特別決議だから、2週間を超える期限付解散は存続期間の
定めを定款に設けたものとみなす考え方を採用しています。

 しかし、会社法になってからは、株式併合の場合も株式の消却の場合も自
動的に発行可能株式総数が減少するような解釈は一切認めておらず、改正会
社法においても、株式併合の際に発行可能株式総数の変更を定めた場合には、
これをもって「定款の変更をしたものとみなす」と、わざわざ明文をもって
定めています(新182条2項。その他「みなし廃止」として112条)。

 会社法は「AはA、BはB」という考え方であり、AとBとの関係につい
ては、勝手に解釈してはならず、明文なき限り、無関係という建付けです。

 にもかかわらず、登記実務の運用は、会社法に明文もないのに、定款の変
更をみなすもので、会社法の趣旨に反すると私は考えていますが、このあた
りに関しては、全く説明がなされていません。

 よく『実務相談株式会社法』も消極説だといわれますが、それは旧商法時
代の内容ですし、その書き手は、斉藤一道さんという当時宮崎地方法務局登
記部門登記相談官の方でした。つまり、登記実務の立場を述べたものに過ぎ
ません。

 期限付解散を決議したのに登記しないのは困るように主張してますが、数
か月後の合併解散であっても、登記がなされません。

 ぜひ、会社法立案担当者の意見を聞いてみたいものですが、残念ながら、
葉玉ブログにも、相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』にも載っていま
せん。この問題は、いつ解決に至るのでしょうか。この際、会社法解釈の担
当部門である法務省参事官室と商業登記を管轄する商事課でご協議のうえ、
早期に時代遅れの解釈・運用を改めてほしいものです。


2014.07.14(月)【親子本第2版も近々発売】(金子登志雄)

 アマゾンで「事例で学ぶ会社法実務【会社の計算編】」をみたら、まだ発
売もされていないのに、ご注文をいただいているようです。中身もみないで
注文してよいのかと心配になりましたが、信頼されているようで、うれしい
ことです。

 それ以上に驚いたのは、「親子兄弟会社の組織再編の実務〔第2版〕」が
予約受付中で、もう注文が入っているようです。

http://www.amazon.co.jp/%E8%A6%AA%E5%AD%90%E5%85%84%E5%BC%9F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E7%B5%84%E7%B9%94%E5%86%8D%E7%B7%A8%E3%81%AE%E5%AE%9F%E5%8B%99%E3%80%90%E7%AC%AC2%E7%89%88%E3%80%91-%E9%87%91%E5%AD%90-%E7%99%BB%E5%BF%97%E9%9B%84/dp/4502107719/ref=pd_sim_sbs_b_1/378-4900906-5014137?ie=UTF8&refRID=0DGM8BBGHZVTB70JBSWN

 著者の私は、まだこの本の第2版の見本さえ手にしていないどころか、発
売予定日が7月19日であることも知りませんでした(単に私が聞こうとも
していなかっただけで出版社の責任ではありません)。

 情報化社会とはいえ、本人も知らないことがネット上に出ているなんて、
新鮮な驚きでした。すごいことですね。

 親子本の第2版は背景色を山吹色にしてもらいました。青系や緑系は、本
の背景色としてはイマイチなので、白系や黄色系、クリーム色系が個人的に
は好みですが、初版がそれだったので、今回は山吹色にしてもらいました。

 山吹色というと、女性の和服に多いのですが、時代劇では「小判」を指す
のか、先般のテレビ時代劇では、「あの奉行は山吹色がことのほか好きで」
などとやっていました。悪人が好きな色なのでしょうか。

 隠れて皆様に山吹色を送ることはできませんが、ぜひ、本屋で山吹色を手
にしてください。何せ「グループ再編のバイブル」ですから(中央経済さん
もうれしい標語をつけてくれたものです)。



2014.07.11(金)【書き入れ時が過ぎて】(金子登志雄)

 6月下旬からの登記の書き入れ時を振り返って、今回は意外に上書きミス
などの補正がないなと思っていました。登記簿などを紙で印刷し、それと照
らし合わせるなどの慎重なチェックをしていたからです。

 しかし、先日は登記完了後に登録免許税の過誤納に気づきました。上書き
ミスです。やはり、人間の行為では、こういうケアレスミスが避けがたいで
すね。簡単な役員変更登記でしたから、慎重にも慎重を重ねてと自分に言い
聞かせていても、無意識で、慎重さを欠くようです。

 その代わり、複雑な登記には、無意識に(?)慎重になりますから、ミス
は生じません。今回も、合併・吸収分割・商号変更………本店移転など6連
件再編がありましたが、まだ終わっていませんけれど、本店移転前登記所の
審査は無事に済みました。

 車の運転でいうと、くねくれした複雑な道だと事故を起こさないが、真っ
直ぐな道だと事故を起こすというのと同じですが、思い起こせば、初心者の
時は真っ直ぐな道でもおっかなびっくりの慎重運転でした。慣れの副作用と
いうことでしょうか。

 さて、お待たせしました。「事例で学ぶ会社法実務【会社の計算編】」が
やっとネットに登場しました(アマゾンにも登場しています)。

http://www.biz-book.jp/%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%A7%E5%AD%A6%E3%81%B6%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%B3%95%E5%AE%9F%E5%8B%99%E3%80%88%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%AE%97%E7%B7%A8%E3%80%89/isbn/978-4-502-10531-9

  協同組合本を購入し漏れた方は、ぜひどうぞ。通読せずとも、各事務所に
1冊は必要な本と思っています。


2014.07.10(木)【高校野球】(仙台・立花宏)

 先日、テレビを見ていたら、地元の高校野球地区予選会の結果を伝えてい
ました。

 もう、そんな季節になったのか、とテレビに見入っていたところ、ある高
校球児が涙をこらえることができず、泣き崩れている姿が映りました。最上
級生でしょうか。きっと残念な結果だったのでしょう。多くの高校球児にと
って、甲子園大会出場が目標であり、そして、甲子園から優勝旗を持ち帰る
のが夢なのだと思います。その目標や夢に向かい、一生懸命に打ち込んでき
たからこそ、涙を抑えることができなかったのでしょう。

 高校球児の中で栄冠をつかむことができるのは、ほんの一握りの人間だけ
です。多くの高校球児は、最上級生としての最後の試合に敗れた時、甲子園
大会への出場という目標への道が閉ざされ、高校野球の活動を終えることに
なります。泣き崩れていた高校球児にとって、高校野球での経験は、これか
らの人生でどのような意味を持つことになるのでしょうか。

 私も高校時代、野球ではありませんが、あるスポーツをやっていました。
最上級生として臨んだ最後の試合に敗れた時、やはり、なんともいえない虚
脱感におそわれました。しかし、本当につらかったのは、試合に敗れた翌日
からでした。もう、練習をする必要はありません。部活動に行く必要もあり
ません。目指すべき目標もなくなりました。何とも言えないさびしさだけが
残りました。

 大学に進学してからも、そのスポーツをやる気にはなれませんでした。再
びそのスポーツをプレーしたのは、社会人になってからでした。私が就職し
た会社の業界では、私がやっていたスポーツの対抗戦がありました。入社し
て少したったころ、会社の先輩が、私がそのスポーツをやっていたことを知
り、4年間のブランクがあるのを承知の上で、試合にでないかと誘ってくれ
たのです。

 4年間のブランクは大きかったと思います。思うようにはプレーできませ
んでした。しかし、久しぶりにするプレーはとても気持ちがよく、楽しいも
のでした。試合もなんとか、勝ち越すことができました。

 「すごいじゃないか!」と先輩は褒めてくださいました。あとで聞いた話
ですが、先輩は、入社したばかりの私が、あまり元気がなかったため、会社
でやっていけるかどうかを心配していたようです。なにか自信をつけさせた
い、という気持ちで、試合に誘ってくださったのだそうです。

 その試合に出たことがきっかけで、私は正式に会社のクラブに入りました。
そして、その後もたくさんの試合に出場し、会社の内外で、たくさんの友人
を得ることができました。

 あの、泣き崩れていた高校球児は、これからも野球を続けるのだろうか。
続けるにしても、続けないにしても、きっと、今までの経験はいつか役に立
つ。君にとって、今までの経験はとても大切な財産だよ。いつの間にか、私
はそんな言葉を、テレビの画面に語りかけていました。



2014.07.09(水)【登記中の追加申請】(金子登志雄)

 今日は司法書士にしか通じないネタですが、オンラインで登記を申請する
場合に、まずは「会社・法人情報」で対象のA社を探し出して、A社の情報
(商号・本店・法人番号)を取り込みますが、その際にA社が登記手続中だ
と、情報が取り込めません。さて、どうしましょう。

 昨日、これを初体験しました。過去にA社の登記をしたのが残っていたの
で、それを再利用して即座に申請しましたところ、申請直後に、同じ区内で
本店を移転していたことに気づき、あわてて取下げを申請いたしました。

 改めて、A社の登記を申請するため、正しい本店を入力するため、A社を
検索したら「登記手続き中」の表示です。自分で自分のクビを締めてしまい
ました。

 「これじゃ、今日中に登記申請できないじゃないか」とあせってしまい、
法務局に電話し、新しい申請をどうするのか尋ねましたら、丁寧に「登記・
供託オンライン申請システム操作サポートデスク」の電話を教えてくれたの
で、そこに電話し、方法を教わりました。

 何のことはない、「会社・法人情報」を利用せずに、直接、手入力して申
請するだけでした。

 いま、ある会社の吸収分割に関わっていますが、その会社は同時に3つの
吸収分割をしています。3つの承継会社ごとに司法書士が違いますが、最初
に申請したのは私でした。きっと、残り2名は「あれ、登記手続き中じゃな
いか。どうやって会社情報を取り込んで申請したらよいのか」とあせったこ
とでしょう。

 本欄閲覧の司法書士の方は、いつか同じ場面に遭遇するでしょうが、もう
大丈夫ですね。


2014.07.08(火)【1株6円25銭の配当金】(金子登志雄)

 上場会社では、定時株主総会が無事に終了すると、株主に期末配当金を支
払う手続がありますが、銀行振込みの手続をしていない株主には、「期末配
当金領収証」というものを送付し、それを持って郵便局で現金にする方法が
採用されています。

 私のところにきたそれには、1株当たりの配当金として6円25銭と記載
されていました。1000株の株主Aさんには税込みで6250円です。

 さて、1001株所有の株主Bさんには、6256円25銭という計算に
なりますが、この端数の25銭についてはどうすると思いますか。

 切り捨ててしまえ――25銭とはいえ、他人の財産にそんなことはできま
せん。

 切り上げてしまえ――決議済みの配当金総額が変化してしまいませんか。

 結論から言うと、切上げでBさんには、6257円を支払います。たった、
75銭ですから、株主平等原則を問題にするほどの金額でもありません。

 会社の経理上は、配当金総額はそのままにし、この追加額は雑損処理しま
す。75銭を得した株主が1万人いたとしても、7500円の雑損に過ぎま
せん。

 以上については、東京司法書士協同組合での本に書いたため、そのリニュ
ーアル版・中央経済社刊『事例で学ぶ会社法実務(設立から再編まで)』に
記載してあります。今月中には発売になるでしょう。『事例で学ぶ会社法実
務(会社の計算編)』は、来週には発売される見込みです。



2014.07.07(月)【可決?否決?】(金子登志雄)

 ある証券代行さんに教わったのですが、今年の上場会社の定時株主総会で、
非常に珍しい決議がありました。会社提案の取締役5名(ABCDE)選任
の件が可決した後に、株主提案の取締役2名(FG)選任の件を決議したと
ころ、FGも過半数の賛同を得たというのです。

 通常であれば、取締役はABCDEFG7名ということになりますが、こ
の会社の定款には、「取締役は、5名以内とする」と定めてありました。

 さて、どうするのかと思いましたら、賛成数の多い順にし、最終的にはA
BCDEが選任され、FGは否決ということになりました。調べましたとこ
ろ、5位は144,657票、6位は144,445票で、たった212票
の差でした。この会社の株価でいうと120万円弱ですから、1人の株主で
も結果を左右することができたわけです。

 こんなこともあるのですね。もし、定款の定めがなかったら、もし、1人
でも会社側の株主が議決権行使を怠っていたらと思うと、経営陣は冷や汗も
のだったでしょう。

 なお、上場会社に対する外国人の持株比率は、30%を超えたようです。
これじゃ、社外取締役を増やせという黒船の圧力に抗しきれませんね。その
圧力回避のため、監査等委員会設置会社に移行する上場会社も、私の当初の
見立てに反して増える見込みだそうです。勉強しなければ………。



2014.07.04(金)【解釈グレーゾーン】(金子登志雄)

 7月第1週となり、6月定時総会後の登記も山場を過ぎたようです。仕事大
好き人間の私としては、また退屈な日々が続きそうです。

 さて、司法書士なら誰でも、微妙な事例につき登記所と見解の相違で困った
ことがあるでしょう。そんなとき、多くの司法書士は、登記が遅れては困るた
め、不承不承、登記所に従うものですが、私は「全国の司法書士の代表」とい
う意識がありますから、そう簡単には引き下がりません。ましてや著作に書い
たことが否定されては、私の立場がありません。

 時には「司法書士生命をかけてもよい」とまでいい、頑張りますが、先例や
実例がない事案のときは、どうもやりにくくて仕方ありません。仮に、権威あ
る書籍の見解であっても、それは「〇〇の私見に過ぎない」といわれたら、不
毛の論争になってしまいます。

 グレーゾーンに関する登記所の言い分は「受理するという先例がないから応
じられない」であり、私の言い分は「ダメ(黒)だという先例がないから、純
粋に法律解釈をして白と思えるなら受理してよいはずだ」です。

 しかし、我々の交渉相手は、1事務官であったり1登記官です。彼らは行政
機関の一員として、全国に影響する新実例を作ってはいけないと思考しがちな
立場にあるため、そう無理もいえません。

 やはり大手法務局や登記を管轄する法務省と交渉し、新しい先例や実例を作
るのが商業登記の最先端を行く司法書士の役割でしょう。幸い、当業界一大勢
力の商業登記倶楽部主宰者の神崎満治郎先生はじめ登記所OBの方々も、現役
でご活躍中ですから、そのご意見も取り入れて、商業登記実務をさらに発展さ
せるため、頑張るしかないようです。



2014.07.03(木)【補欠の補欠】(金子登志雄)

 なぜか今年の仕事は監査役の任期満了退任が少なくありませんでした。そ
れも、昨年や今年に就任したばかりの監査役です。

 一見、任期中じゃないかと思いましたが、履歴事項をみると、平成22年
6月定時総会で監査役Aが重任したが、平成24年6月定時でAは辞任し補
欠としてBが就任したところ、今度はBが平成26年3月で辞任し、その補
欠としてCが就任していたので、Cが本年の定時総会で任期満了だというわ
けです。

 何年も上場会社の子会社の役員変更に従事してきましたが、補欠の補欠の
任期満了退任がいくつも集中したのは今年が初めてでした。

 昨日申請した事案は本店移転しているので、その新法務局にある登記簿で
は上記の過程がみえません。私は本店移転前の履歴事項で確認しましたが、
新登記所ではここまでしないでしょう。

 一瞬、サービスで本店移転前の閉鎖事項を添付してあげようかと思いまし
たが、株主総会議事録に「当社定款の定めによりCは本総会終結と同時に任
期満了退任するので」であったので、これでよしとしました。

 こういう事例が多いと、任期計算を勘違いしてしまう会社も多いことでし
ょうが、自己責任でよいのではないのでしょうか。仮に任期満了でなくとも、
退任を本人も認めていたなら、辞任が退任として登記されただけですから。


2014.07.02(水)【相続登記と電子メール】(島根・根来川弘充)

 不動産を相続する登記をする際、遺産分割協議書を作成するケースが、かな
りあります。その協議書には記名押印した法定相続人の印鑑証明書が必要にな
りますが、法定相続人の方で海外に住所を移転されている場合、印鑑証明書が
取得できないので、大使館または領事館で署名証明書と在留証明書をいただく
ことになります。(他にも方法がありますが、ここでは省略します。)

 このうち署名証明書ですが、遺産分割協議書に署名をし、その署名に認証を
いただくことになるので、遺産分割協議書を大使館または領事館に持参してい
ただかなければなりません。

 約10年前、初めて署名証明書が必要な相続登記の依頼を受けたのですが、
依頼を受けてから登記が完了するまでに、かなり時間がかかったことを覚えて
います。特に問題があった事案ではないのですが、海外の法定相続人の方とは、
日本にいる法定相続人を通じて、連絡をとっていただいたのですが、時間を時
差の問題で電話連絡をとる時間に制約ができたり、エアメールでの書類の往復
に、かなり日数を要したりしたためでした。

 つい昨今、久しぶりに署名証明書が必要な相続登記の依頼を受けました。
10年前と決定的に違うのは、電子メールが普及したことです。今回は、海外
におられる法定相続人の方とは、直接、電子メールでの打ち合わせが何度もで
き、また、遺産分割協議書もpdfファイルの形で送付できましたので、はじ
めて連絡をとってから約半月で、登記申請をすることができました。こちらか
ら郵送する費用も削減でき、時間と費用のコストを大きく削減ももちろんなの
ですが、電子メールでのやり取りが頻繁に出来たことに、大変便利さを感じま
した。こちらにおられる法定相続人の方より、より多く打ち合わせをしたかも
知れません。


2014.07.01(火)【学者VS実務家】(金子登志雄)

 会社法319条1項に「取締役又は株主が株主総会の目的である事項につい
て提案をした場合において、当該提案につき株主(略)の全員が書面………に
より同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議が
あったものとみなす」とあります。いわゆる書面決議です。

 これにつき会社法の大権威である江頭憲治郎著『株式会社法〔第4版〕』の
341頁には「書面決議は、本来会議を経た上で決議することを要するケース
につき、議事の省略を認めるものに過ざない。したがって、取締役会設置会社
において取締役が取締役会の決議を経ないで提案した場合には、決議取消事由
となる」とありますが、会社法立案担当者は「取締役会の決議は不要」と説明
しています(相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』487頁の表参照)。

 さて、あなたは、どちらの見解を支持しますか。

 私の場合でいうと、世間知らずの学生時代や若い頃は、学者の方が実務家よ
り深く研究していると錯覚していましたから、学者見解を優位にあると思った
ことでしょうが、今は、実務家には学者を超える人が多いことを知っています
ので、どちらかといえば実務家に肩入れしてしまいます。

 この問題については、原田司法書士のブログの連載が面白いので、ぜひみて
ください。
      http://shihoushoshi.main.jp/blog/

 そもそも会社法319条は、会議体ではありません。議論不要の各自同意方
式であって、極論すれば、提案者など誰だってかまいません。株主全員の同意
がポイントであって、これは組織変更の総株主の同意や、持分会社の社員全員
の同意と同じ方式です。

 非会議体方式で「議論して決議」したわけでないのに、「決議」取消事由に
なるなどあり得ないことですし、仮に該当するとしても、株主や取締役がそれ
を訴えるわけがありません。

 一部の顧問弁護士が江頭見解に立って、企業に取締役会を開催せずに提案し
た場合の会社法319条のリスクを説くのは、自らの世間知らずぶりをアピー
ルしているだけのように私には思えてしまいます。その原因は、その方は日常
的に企業法務に従事していないため、実務書を読んでいないからでしょう。実
務の定説を知らずに学者の権威に寄りかかっているとしたら恥ずかしいことで
す。



2014.06.30(月)【総会での代表者選定】
(金子登志雄)

 定時株主総会のピークである6月も最後の日になりました。商業登記書き入
れ時の山場が続いていますが、法務局もコンピュータ化に慣れたのか、登記の
出来上がりも数年前より早くなったようです。昔は、2週間も待たされたもの
でしたが………。

 定時株主総会による定例の人事異動以外に、6月30日付で代表者が取締役
を辞任し、7月1日付で新取締役及びその者を新代表取締役にしたいという事
案がいくつかありました。

 このような場合に、同族の中小企業であれば、7月1日に取締役会を開催し
新代表取締役を選定するのは容易ですが、上場会社の子会社のように取締役が
全国に散っている場合は、この方法は無理です。そこで各社とも取締役会の書
面決議などを工夫していましたが、私の提案で、定款で「株主総会で代表取締
役を選定することができる」と定め、それを実行した会社がいくつかありまし
た。もちろん、後任を選任する臨時株主総会は会社法319条の書面決議です。

 これであれば7月1日午前0時から新社長が就任するため、会社も喜んでい
ましたから、100%子会社のように、所有と経営が分離していない会社では、
メジャーな方法になることでしょう。


2014.06.27(金)【頻繁な役員改選】(金子登志雄)

 今週は、サッカーW杯一色でした。マスコミ上は、サッカーに関心を示さな
い者は非国民だという雰囲気でしたが、私の周囲では全く話題にも出ませんで
した。

 もう1つ、今週は3月決算会社の定時株主総会のピークの週でしたから、私
のところにも、役員改選登記の依頼が少なくありませんでした。

 そこで発見したのですが、上場会社及びその子会社では、監査役につき補欠
任期の者がほとんどだったということです。

 例えば、監査役ABのうち、Aが任期途中に辞任した場合の後任Cにつき、
私ならCの任期を満期の4年にすると思うのですが、上場会社やその子会社は
Aの任期を引き継ぐように決議していたということです。

 おそらく上場会社系は頻繁な人事異動を行うので、取締役や監査役について
も任期は短い方が好都合だという発想でしょう。子会社の役員には、親会社の
従業員を兼任している者が多いため、従業員の人事異動に合わせて子会社の役
員を改選しているのでしょう。

 最近は親会社に合わせて取締役の任期を1年にする会社も増えたように思い
ます。われわれ司法書士の感覚では、毎年、任期満了による役員改選の登記で
は登録免許税がもったいないじゃないかと思いますが、任期が2年であっても、
必ず定時株主総会の際に誰かが辞任していましたから、登録免許税の結果は同
じです。


2014.06.26(木)【一日一日を大切に】(仙台・立花宏)

 「僕たちは、一日一日をとても大切に生きているんだよ。」
 先日、発売になったばかりのDVD「風立ちぬ」(宮崎駿監督作品)を購入
し、視聴しました。映画館で公開された際は残念ながら見ていなかったので、
これが初見です。これから視聴される方もいらっしゃるでしょうから、ストー
リーについての詳細な紹介は避けたいと思います。ただ、個人的な感想として
は、とても印象深い、すばらしい作品だと思いました。冒頭の一文は、「風立
ちぬ」の中に出てきた、主人公のセリフのひとつです。

 「風立ちぬ」は大正末期から昭和初期の時代設定です。
 当時は、関東大震災後、金融恐慌、世界恐慌があり、そして、戦争に向かっ
ていくという時代でした。そのような時代背景の中、主人公が、美しい飛行機
を造りたいという自分の夢に向かい、まっすぐに歩んでゆく姿を描いたアニメ
ーションです。
 
 その頃の産業別人口構成をみると、日本は、当時の資本主義諸国の中では、
際立って第一次産業(農業等)の就業者数の比率が高かったようです。他の資
本主義諸国(アメリカ、ドイツ等、以下同じ)は第一次産業の就業者数の比率
が30%前後であったのに対し、日本のそれは55%程でした。農業国であっ
たといってよいでしょう。それに対し、第二次産業(工業等)の就業者数の比
率は、他の資本主義諸国が30%以上であったのに対し、日本は22%程でし
た。しかも、日本の第二次産業は、他の資本主義諸国と比較し、金属・機械工
業の比率が低く、繊維工業の比率が高いという構成でした。

 そのような状況の中、他の交通産業(自動車等)の国産化が遅かったのと比
べ、航空機産業の国産化は早かったようです。当時、自動車は輸入等に頼って
いました。それに対し、航空機産業については、陸海軍の要請に応えて、各企
業が1920年代には外国の模倣をしながら技術を習得し、1930年代には
技術的に自立し、そして、次第に世界水準の製品を製造するにいたったのだそ
うです(※)。

 「風立ちぬ」でも、企業が製造した航空機を、牛が引いて運ぶシーンがあっ
たのですが、こういった時代背景を象徴していたのかもしれません(舗装され
た道路が少なかったこともあるのかもしれません)。

 厳しい経済状況の中でも、列強に追いつこうと努力する人々の姿、そして、
主人公が自分の夢に向かってひたむきに歩んでいく姿がとても印象的でした。
自分の夢が、戦争の道具になることに迷いを覚えながら・・・。

 はたして、自分の夢はなんだろうか。私はその夢にむかって、一日一日を大
切に生きているだろうか。そして、その夢の先にあるものは何だろうか。そ
んなことを考えさせられました。

(※)参考資料 「概説日本経済史 近現代」(三和良一著)東京大学出版会


2014.06.25(水)【とばっちり】(金子登志雄)

 富田さん、「6か月経った今は、特に吸いたいと思わなくなり、また、人が
吸っていても気にならなくなりました」――、全く信じていませんので、まだ
まだ飲み会のお誘いは控えますね。

 最初から吸わない人は喫煙者に寛大ですが、こういう途中でやめた人が実に
うるさく、喫煙者を犯罪者か麻薬中毒者のように扱う傾向が高いといえます。
富田氏にも、その傾向が少し出始めたのかと心配になりました。
 
 今や喫煙者はアイヌやインデアンのような少数民族と同じく、へき地に追い
詰められており、肩身の狭い日々を送っていますが、先般の都議会でのセクハ
ラヤジについても私の年代は、とんだとばっちりを受けています。

 先日は少し酔いのまわった中年女性から、「金子さんの年代は、ヤジを飛ば
さなくても、オンナは家にいて子供を育てるのが仕事だと思っている年代よね。
オンナは男の前を歩いてはいけない、オンナは男に逆らってはいけないと思っ
ており、オンナに逆らわれると男のプライドが傷つけられたと思うのよね」と
ネチネチと絡まれてしまいました。まるで喫煙者と同じく、わが世代の存在自
体が社会悪かのようでした。

 こういう攻撃は、私よりもっと上の石原慎太郎さんの世代に向けてほしいと
思って聞いていましたが、酔っ払い相手でしたから、決して反論もせず、ノー
コメントに徹しました。やはり、天気の話と会社法の話がトラブルにならなく
てよさそうですね。次回から、また、話を戻しましょう。


2014.06.24(火)【タバコは必需品だった(過去形)??】(富田太郎)

 私が司法書士になった頃、「職業柄、タバコは司法書士の必需品だなぁ~」
と思ったことがあります。

 不動産取引の決済の時、書類確認後、融資の実行・抹消銀行の着金確認まで
時間がかかるため、「では、お開き~!」となるまで、待ち時間がかなりあり、
業者さん(不動産業者)が売主、買主などの場合は、喫煙者が多いのか、部屋
は「濛々たるタバコの煙の渦」になっていました。

 しかし、今や、決済場所である銀行などはタバコが吸えないことが多くなり、
そのような光景も過去の話となりつつあります・・・。

 さて、前置きが長くなりましたが、私、富田も本年1月8日付の本徒然で
「私的 禁煙宣言」に書いたとおり、昨年末から、禁煙を始めましたが、6か
月経過現在、何とか禁煙を継続中です♪

 思えば、好奇心から高校2年生の頃から喫煙をはじめ、それから38年!
当初、1箱150円だったマイルドセブン(現 メビウス)も、今や430円!
(禁煙中に、消費税値上がりにより410円から430円へ!)毎日、高価な
煙を吸っていたことになります・・・。

 禁煙中、辛かったのは、最初の1週間と3か月目でした
----------------------------------------------------------------------
◎《最初の1週間》
 頭がスポンジのようにスカスカになり、思考能力がゼロになる。ひたすら、
「タバコ吸いたい!」という思念のみが駆け巡る。
          ↓
 しかし、それを過ぎると、ニコチンが体から抜けたのか、気にならなくなっ
たのですが、-----------------------

◎《3か月目》
 またもやタバコが吸いたくなり、血眼になって事務所の押入れ、キャビネッ
トに1本ぐらいタバコが落ちていないか、1時間ぐらい探しました。幸か不幸
か・・1本も見つからず・・・(号泣)。
----------------------------------------------------------------------

 まさに、タバコは麻薬だと思いました・・・(汗)
6か月経った今は、特に吸いたいと思わなくなり、また、人が吸っていても気
にならなくなりました・・・(やれやれ)。

 この「人を魅了する♪タバコ」、歴史書を紐解くと、もともと、中央アメリ
カのマヤ族の風習で、コロンブスが第1回航海(1492年)からの帰国後、
ヨーロッパにタバコをもたらし、その100年後の1592年に、日本にも葉
タバコが伝わったそうです。

 秀吉・淀君などが喫煙者となり、あっという間に庶民にも広がり、タバコ伝
来?から15年後の、1607年、時の将軍「徳川秀忠」が日本で最初の禁煙
令を出しています。

 伝わってから15年目で禁煙令? もの凄い早さで、広まったことがわかり
ます。う~ん。まさにタバコは人を魅了する嗜好品だったことが分かります。

 禁煙6か月目、なんとか、このまま成功させたいものです。

PS。
 ちなみに我がESGでも、喫煙者はK先生(ヘビースモーカー)、Sさんぐ
らいかと思います。司法書士も今や、非喫煙者が多くなり、時代は変わりまし
た。


2014.06.23(月)【会社法の改正】(金子登志雄)

 会社法の改正が決まったようですね。日常の業務に関係する部分は少ないの
で、私の周囲の関心はイマイチのようですが、条文の分量が増え、国家試験の
受験生は気の毒です。

 さて、改正の目玉である監査等委員会設置会社を理解するには、その前に株
式会社には2系統があることを知っておくとよいでしょう。

 第1は、立法・行政・司法の三権分立型の監査役制度採用会社です。立法が
株主総会、行政が取締役、司法が監査役であり、相互に抑制しあう関係です。
取締役会と代表取締役は議院内閣制でしょうか。

 第2は、米国型の委員会設置会社です。監査役制度はなく、取締役を業務執
行担当取締役と社外取締役に分ける統治機構です。

 周知のとおり、日本の会社はドイツ系統で第1の型でしたが、統治機構の監
視を強化するため、監査役の任期を取締役より長くしたり、社外監査役を設け
たりで監査役機能を強化してまいりましたが、十分に機能してこなかったこと
から、平成14年の改正で委員会設置会社が日本に導入されました。会社法改
正案の監査等委員会設置会社も監査役を置けない会社ですから、第2類型に属
し、この改正の流れの中にあります。

 第1類型か、第2類型かは企業の選択に委ねればよいことですが、最悪なの
は、第1類型なのに社外取締役を増やせという会社法改正動向です。A型の血
液にB型を輸血するようなもので、うまく適合するのでしょうか。

 コンプライアンスや情報開示の面からみれば、冤罪・不祥事多発の日本の司
法機関よりも、民間上場会社のほうが余程厳しいといえます。欧米と比較して
足りないのは、日本がまだ民度を含めて本物の先進国ではないためでしょう。

 社外取締役の増強は、わが国の現状では、経営に疎い官僚やヤメ検の天下り
先を増やすだけに終わらないかと危惧してしまいますので、この際、社外取締
役には、コトをなぁなぁで済まさない外国人を選任したほうが効果が大きいの
ではないでしょうか。株主である外国のハゲタカから社外役員を迎え入れる度
胸ある会社はないものでしょうか。



2014.06.20(金)【単元株式の歴史】(金子登志雄)

 株式分割しても同時に単元株式で同率で議決権を制限すれば、議決権の個数
が増加しません。13日の本欄で「A種株式につき1株を2株に分割し、1単
元2株とすれば優先株式にする必要もありません」と書いたとおりです。

 これは上場会社が推進していた「1株を100分割、1単元100株」と全
く同じ手法であり、われわれの間では常識的知識ですが、昔を知らない若い方
(特に会社法だけで育った若手)は、単元株式については、どうも苦手なよう
です。

 そこで、単元株式の歴史について触れてみることにしました。

(第1期:額面5万円全盛時代)
 昭和56年商法大改正で額面株式の額面の最低額が5万円になりました。そ
れまでの額面50円会社(主に上場会社)や額面500円会社は、原則として
1単位(=1議決権)が5万円になるように、議決権につき1単位1000株
や1単位100株にすることができるようになりました。まさに「5万円にあ
らずんば株式にあらず」の思考でしたが、同時に、単位未満株に合わせて額面
5万円会社は端株制度(0.01単位まで)が設けられました。

  額面5万円未満・・・単位株制度
  額面5万円以上・・・端株制度

 単位株制度は純粋に議決権の個数の問題でしたが、端株制度は自益権の権利
も有する内容でした。

 ちなみに、現在の1単元の株式数は、会社法施行規則34条において、数に
おいて1000株以下とされているのは、額面50円会社の影響であり、率に
おいて発行済株式総数の200分の1以下でなければならないのは、旧・最低
資本金1000万円を最低額面5万円で除した値です。こういう歴史的背景が
あります。

(第2期:額面廃止)
 いわゆる金庫株大改正で平成13年10月から額面株式が廃止され、株式の
小口化が全面的に自由化されました。革命です。それまでは株式分割後も1株
5万円の純資産がなければ株式分割さえできないとされていたのに、大変革で
した。

 単位株は単元株と名称が変わり、全ての株式会社で定款で単元株式制度を採
用できるようになりました。定款で端株制度の廃止も可能になりました。

(第3期:会社法時代)
 会社法によって、端株制度と単元株式制度が統合され、新・単元株式制度が
設けられました。単元未満株式に自益権が認められるのはこのためです。

 現在、全ての上場会社に単元株式制度が強制されましたから、今後は「単元
株式制度採用会社=上場会社」というイメージが膨らむのではないでしょうか。


2014.06.19(木)【多忙という自覚症状】(金子登志雄)

 定時株主総会時期のためか、都市部の商業登記中心事務所は超多忙のようで、
ブログの更新も進んでいないようです。全く、うらやましい限りです。

 商業登記中心事務所の典型例である当事務所は、なぜ、書き入れ時の現在で
もヒマそうにしているのでしょうか。

 流行っていない事務所で仕事が少ない点が第1の理由ですが、それ以外でい
うと、仕事は事務所ではなく自宅で夜にしているからだと思います。完全な夜
行性動物になっており、日中はボーとしています。

 夜になると、メールの添付ファイルで来た総会招集通知案や定時総会議事録
案の相談やチェックに応えたり、代わりに議事録案を作成したりで、次々と仕
事を片付けます。好きな仕事で慣れていますから、平均的司法書士の数倍は早
いのですが、夜は営業時間の制限がないので、追いかけられているという自覚
はありません。必要なら、夜の3時や4時まででも頑張ります。

 仕事を先延ばしにすると忘れたり、期限を徒過するおそれがありますので、
「今日できる仕事は決して明日に回すな」を実践しており、すぐに依頼仕事を
片付け、その仕事のことは忘れます。

 それはよいことなんでしょうが、お客様から1週間後あたりに「あの増資の
件で質問」といわれても、何の増資だったか思い出せないこともしばしばあり
ます。そんなときは、自分では気づかなくても私もひょっとして忙しいのかな
と思ってしまいますが、自覚症状は全くありません。これは、きっと、幸せな
んでしょう。いや、老化現象でしょうか。


2014.06.18(水)【議決権行使書】(金子登志雄)

 旬ですね。3月決算上場会社の定時株主総会招集通知が何社か届きました。
ハガキ台の大きさの議決権行使書をみると、小さい文字ですが、実にうまく
出来ています。

 取締役候補者がABCD………と10名もいた場合に、会社法施行規則に
よると「2以上の役員等の選任に関する議案である場合」は「各候補者の選
任」につき、賛否を表示できるようにせよとありますから、10名の名前を
列挙するのかと思うでしょうが、一括して賛否の欄があり、その横あるいは
下に「次の候補者を除く」とあります。賛否の「賛」に〇をして、その欄に
Bと書けばBには反対となり、「否」に〇をしてBと書けばBには賛成とな
ります。

 賛否に反応せずそのまま送付すると、棄権扱いになるのでしょうか。小さ
い文字で「各議案につき賛否の表示をされない場合は、賛成の表示があった
ものとして取り扱います」などとあります。あれ「賛成の意思表示」ではな
く、なぜ「賛成の表示」なのだろうかと思いましたら、各証券代行(信託銀
行が多い)によって流儀が異なるようでした。

 面白いなと思ったのは、株主番号であり、8桁と9桁の会社がありました。
たぶん、証券代行の相違だと思います。9桁ということは、株主が10億人
直前まで大丈夫ということでしょうが、株を売った人の株主番号を欠番にし
たとしても、日本の人口から考えると、そこまでは必要ないのでは、と感じ
ました。

 早く欠番になりたいものです。こういう長期に売れない状況を「塩漬け」
といいます。


2014.06.17(火)【清算会社の監査役の任期】(金子登志雄)

 会社法480条2項には、「第336条【監査役の任期】の規定は、清算株
式会社の監査役については、適用しない」とあります。

 しかし、登記のバイブル本的存在の松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第
2版〕』509頁には、「清算手続中の監査役については、法律上の任期の上
限はないが、通常の会社は定款で任期を定めているため、当該定款の定めに従
い、監査役は退任する(監在役の任期に係る定款の定めが解散により当然に無
効となるとみることは、条文上困難に思われ、会社の定款自治に属する事項と
して、会社の意思により監査役の任期を無期限とすることができるものと解す
るのが穏当ではなかろうか。実務相談5・426頁参照)」とありました。

 これにつき、司法書士連合会の掲示板で「解散前からの監査役は清算中に任
期切れするのか」について議論されていました。

 私は次のように意見を表明しました(要約です)。
----------------------------------------------------------------------
 恥ずかしながら松井見解(任期の適用有)を知りませんでしたが、私は下記
の理由で反対です。
1.監査役の任期は「事業年度」基準なのに対し、清算株式会社には事業年度
 がなく、「清算事務年度」である。任期計算ができない。
2.「(事業)株式会社」の監査役と「清算株式会社」の監査役は別のもの。
3.会社法480条2項により、会社法336条を根拠にした定款の任期伸長
 規定も当然に適用されない。
4.商事法務刊「実務相談」は機関構成の変化に無頓着な旧商法時代の解釈で
 あり、会社法下では前提とすべきではない。
5.任期切れがあるなら、清算結了や会社継続の際に、監査役の登記漏れ過料
 を科せられる会社が増え、好ましくない。
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 その後、ESGの富田氏から、小川・相澤編著『通達準拠/会社法と商業登
記』257頁に「旧商法では、………清算会社の監査役であっても、営業活動
中における監査役と同様に、任期満了によって登記事項に変更を生じた場合に
は、その旨の変更登記を要するとされていた。これに対し、会社法では、……
…監査役の任期は、清算会社の監査役については適用されない」(要約です)
と記載されていると連絡がありました。

 通達作成者の松井氏と通達準拠本と見解が相違するとは面白い現象ですが、
どうも、この論点は後者の内容で決着済みのようです。


2014.06.16(月)【代表取締役の予選関連4】(金子登志雄)

 法人である「事業協同組合」の代表理事の予選は、業界がそれを雛形として
公表しているという情報がありましたので、ネットで調べましたら、下記がヒ
ットしました。

  http://www.chuokai-niigata.or.jp/syosiki/pdf/272.pdf#search=

 上記の最後の部分に次のような注記があります。
---------------------------------------------------------------------
(注)総会における役員選挙の結果、当選した理事が旧理事と異なることにな
った場合、総会を中断して理事会を開催し、代表理事の予選を行うことはでき
ません。総会が終結した後、理事会を開催し、代表理事を選定しなければなり
ません。
----------------------------------------------------------------------

 総会で理事予選の決議が済んだら、総会を中断し代表理事を予選してよいが
理事の全員が重任の場合に限るということのようです。

 もうお分かりのとおり、この注記は、代表取締役の予選に関する昭和41年
先例を前提にしたものでしょうが、確かにこの先例は取締役重任予選者が代表
取締役を予選した事例でしたが、一部でも就任予選の新役員が含まれていた場
合には不可だとまでは一言も述べていません。

 たまたまそういう事例であって、それに回答しただけなのに、勝手に余計な
条件を付け加えるのはいかがなものでしょうか。 

 先例の紹介には、こういう独自の解釈が多すぎるように思っています。その
ように解釈するのは勝手ですが、その解釈を公表するなら、他にも影響するこ
とですから、なぜいまだ役員にもなっていないのに、重任予選はよくて就任予
選は不可なのかを納得できるように説明すべきではないでしょうか。

 期限付き解散の3日先の解散は受理できるという昭和34年先例についても、
1か月後や3か月後はだめだとは一言も書いてないのに、いつしか2週間後は
不可とされてしまいました。これについては、その後、一応の説明がなされて
いますが、これを含め、先例というのは必ずその背景事情がありますから、勝
手に背景事情を拡大し、これもだめ、あれもだめとする解釈は大いに問題があ
ると感じています。法律解釈の王道に反しています。



2014.06.13(金)【配当「優遇」株式?】
(金子登志雄)

 「A種株式には普通株式の2倍を配当する」という優先株式を定めたいとい
う相談を受けました。今年、2回ほど質問を受けたように思います。

 定めることはもちろん可能ですが、こういうのは伝統的な配当「優先」株式
とはいえません。

 配当優先というのは、先取特権のようなもので、配当する財産が1000だ
とすれば、そのうち200を優先的に取得し(先取りし)、残りの800につ
いても参加できるものを参加的優先株式、参加できないものを非参加的優先株
式といいます。200を配当されないときに、翌年に繰り越すのが累積的、繰
り越さないのが非累積的優先株というものです。

 ところが、質問された案は、配当率では優遇されていても先取りする優先部
分がありません。金額が確定していないので、配当されない場合に翌年に繰り
越す累積的定めも不可能です。

 A種株式につき1株を2株に分割し、1単元2株とすれば優先株式にする必
要もありません。やはり、こういう配当「優遇」株式の定めは避けるべきでは
ないでしょうか。



2014.06.12(木)【代表取締役の予選関連3】(金子登志雄)

 代表取締役の予選がなぜ生じるかは、実際に会社の総務部員などの立場で議
事録案でも作成してみるとよく分かります。

 例えば、募集株式の発行の議事録案を作る際に、「臨時総会招集のための取
締役会開催→臨時株主総会→募集株式割当ての取締役会」では取締役会が2度
手間なので、総会招集のための取締役会の段階で条件付きで割当決議をしてし
まおうと考えるのが通常です。

 同様に、「定時総会招集のための取締役会開催→定時株主総会→代表取締役
の選定取締役会」………、こんな議事録案を作っていると、なぜ、取締役会を
2回も開催しなかればならないのか、総会招集を決定する取締役会の段階で条
件付きで代表取締役を選定しまえばよいではないかと思ってしまうものです。

また、本欄閲覧の非法律家の方は同意してくれると思いますが、誰にも迷惑
がかからないし、実に効率的なアイデアなのに、なぜ金曜日の事案がいけない
のかと不思議に感じていることでしょう。

 私もそう思っています。会社法というのは会社に関係する株主や債権者・取
引先らの利害を調整する規律であって、利害調整の必要がない事案は肯定する
のが正しい法律家の姿勢です。

 ところが、車が全く走っていない無人島でも赤信号のときは信号を渡っては
いけないと幼い子供を指導するように融通の利かない真面目人間(?)が公務
員には多いのです。愚かな民とそれを指導するお上という構図でしょうか。

 昔、著書に「法律(規制)の役割を考えよ。無人島だったら赤信号は無視し
てもよいのだ」と書きましたら、出版社の校正者から「無人島には信号があり
ませんが、この記載はどうしましょうか」と揚げ足をとられてしまいました。
民間でこういう内ゲバをしているからいけないところもありますね。

 不利益を被る人がいない限り、よきに計らえ――法律以前の自然法です。


2014.06.11(水)【キャッシュアウト法制】(金子登志雄)

 合併等対価の柔軟化で吸収合併や株式交換でも現金を対価にすることが可
能になっていますが、現実には、効力発生日に支払われる例はほとんどあり
ません。

 これでは、効力発生日までに全てが完了していないので効力が発生してい
ないというべきではないかと思われるでしょうが、「速やかなる現金交付請
求権」という請求権が対価だと考えれば完了しています。

 では、みなさん、効力発生日が過ぎて何日経っても支払われなかったら、
多数決で株をとられた(?)少数株主はどう対応すべきだと思いますか。

 民法では、同時履行の抗弁権といって、相手が金を支払わない限り、こち
らも株を渡す必要がありません。しかし、会社法では、そのような規定もな
く、先に株の権利が相手に行ってしまいます。

 反対株主の買取請求もそうです。効力発生日に株の権利は会社に渡ってし
まったのに、会社が一向に代金を払ってこない可能性もあります。

 もっとも、以上は、会社と株主との関係ですし、相手会社の支払い能力も
情報開示されていますから、支払われない可能性は少ないでしょう。そのた
め、いままで問題視されることもありませんでした。

 ところが、個人を含む大株主からの売渡し請求の場合には、この可能性が
高くなります。そう、会社法改正案の特別支配株主からの売渡請求のケース
です。

 もうご存知の方も多いでしょうが、参議院の会社法改正の審議で野党の小
川元法務大臣がこの点を追及したところ、政府側も「支払われない場合は契
約解除もあり得る」などという素人目にもおかしな答弁をし、しどろもどろ
でした。個別取引ではないのに契約解除とは………。

 というわけで会社法改正案の行く末が不透明になってしまいました。たぶ
ん、法務省令で対策することで政府側は逃げ切ると想像しますが、キャッシ
ュアウトに関する支払保証制度が今後の会社法改正あるいは法務省令の改正
の大きなテーマとなることは間違いなさそうです。


2014.06.10(火)【代表取締役の予選関連2】(金子登志雄)

 先週の金曜日の話題にこだわっていますが、増員見込みの取締役が加わった
次期取締役で構成される取締役会で次期代表取締役の予選が可能かについて、
どうやって登記所に分かってもらおうかとさまざま検討しているのですが、何
か妙案はありませんか。

 設立手続だって、会社が成立前に代表取締役を選定しているじゃないか――
この論は通じにくいでしょう。登記を効力要件とする設立、新設型再編、特例
有限会社の株式会社への移行では、登記前には取締役会が法律上の概念として
も存在しないとされているからです。設立を条件にすればよさそうにも思いま
すが、ここまで緩和した解釈はないようです。

 通常の株式会社で、取締役全員が任期満了退任する定時株主総会の終結を跨
ぐ場合は、今期取締役で構成される取締役会と次期取締役で構成される取締役
会の差はあっても、取締役会が存在する株式会社を前提とした議論です。

 ここで、今期取締役しか取締役に出席できないのは当然ではないかと考える
と、増員取締役は出席の余地がありません。しかし、昭和41年先例などの趣
旨は、次期取締役候補が全員出席することに重点を置いており、今期取締役で
あることに主眼があるとは思えません。

 設立との対比でいうと、ここは定時株主総会という「効力発生日」の前に効
力発生日現在の取締役が効力発生日前に代表取締役を予選しても、そのままメ
ンバーが変更せずに効力発生日が到来した場合は、これを認めてよいかの問題
です。

 付属中学の3年生のクラスが高校1年生のクラス替え案が決まった後に、ク
ラス委員長を予選するのはだめだが(設立や移行の場合)、中学2年生のクラ
スが中学3年生のクラス編成案が決まった後に、クラス全員が集まって3年生
時の委員長を予選しても、そのとおりクラス編成が実行されれば、これを認め
てよいというのが先例の趣旨だと私は思っているですが・・・。


2014.06.09(月)【出版予告と不安】(金子登志雄)

 土日は相変わらず著書の校正三昧でした。会社法が変わるだけでなく、会計
基準も一部改正がありますので、それにも対応しなければなりません。つくづ
く改訂不要の小説家がうらやましくなります。部数も当方の実務書は数千部が
限度なのに、万人を対象とする小説は売れれば数十万部の世界です。NHK朝
ドラ(モデルは赤毛のアンの翻訳者)をみながら、私も童話作家に転身しよう
かななどと思ってしまいます。

 さて、今年の出版は下記を予定しています。

1.『「会社法」法令集』第10版………既に販売中
2.『募集株式と種類株式の実務』第2版………既に販売中
3.仮題:『事例で学ぶ会社法実務〔会社計算編〕』………7月初旬予定
4.仮題:『事例で学ぶ会社法実務』………7月中旬予定
5.『親子兄弟会社の組織再編の実務』第2版………7月中・下旬予定

 3・4は東京司法書士協同組合から司法書士向けに出版した3冊の焼き直し
ですが、中央経済社のお力で非司法書士にも販売する目的で組合編で出版いた
します(4には新しい論点も盛り込みました)。

 ということで、いずれも改訂版のようなものですが、初版で終わる作品が多
い中、改訂版が出せるということは、著者としてはこの上ない喜びです。

 しかし、出版したら出版したで大きな不安があります。中央経済社での最初
の作品『これが新商法だ!これが新登記だ!』の出版の際に、共著者とともに
「印税はいらぬ。全部本をくれ」といい、初版が売れ残り在庫の山となり出版
社に迷惑をかけないことだけを強く願った初心はいまも決して忘れていません。
改訂版が在庫の山になりませんように………。


2014.06.06(金)【代表取締役の予選関連】(金子登志雄)

 昨日は、私が雑誌「登記情報」に下記などの代表取締役の予選について投稿
していることも知らない地方の司法書士さんから問い合わせを受けました。

----------------------------------------------------------------------
 Q:3月決算で取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社(甲)に
おいて、6月1日の決算承認取締役会において、きたる6月28日付定時株主
総会の終結時にABC全員が任期満了し退任するため、ABC全員を重任させ
ることとし、同時に、重任後の代表取締役としてAを予選した。
 さて、6月28日の定時株主総会で予定どおりABCを取締役に再選し全員
が重任したが、Aの代表取締役就任登記も無事に受理されるか。
----------------------------------------------------------------------

 質問内容は上記の例でいうと、取締役候補に増員のDEがおり、6月1日の
取締役会で、ABCDEで次期代表取締役を予選したが、問題ないでしょうね
という確認でした。皆様はどうお考えですか。

 先例や肯定されている例は、「再選」条件付き代表取締役の予選であって、
増員という再選でない者が加わっていては無理だろうと思う方が多いと想像し
ますが、再選も「退任+新規選任」ですから、法律論からしたら、肯定すべき
だと思います。予選時とその効力発生時である総会時と構成メンバーも変わり
ません。

 再選を前提とした場合はABC出席の正式な取締役会といえるが、ここにD
Eが加わったら正式な取締役会といえないとの主張も考えられますが、前者で
あっても、まだ議決権のないことを議決しているのであって、ABCとDEの
身分に差があるとは思えません。ともに次期の取締役候補者にすぎません。

 ただ、ここに何度も書いていますが、法務局は行政官庁の1つでもあり、裁
判所と違い個別案件ごとに融通を利かせることが困難で、先例のないことには
拒否反応を示すところがありますから、円滑に登記受理になるかどうかは不明
です。私が登記官なら、もちろん受理します。


2014.06.05(木)【計算本のニーズ】(金子登志雄)

 昨日は、「会社の計算」本の最後の校正が終わり、出版社の中央経済社に
渡しました。順調に行けば7月初旬頃には出版することができると思います
ので、もうしばらくお待ちください。たぶん、書名は「事例でみる会社法実
務〔会社の計算〕」あたりに落ち着くと思います。

 この本は、東京司法書士協同組合から出した本とほぼ同一内容ですが、評
判が広がったか、最近になって、弁護士事務所や証券会社から、著者の私な
ら1冊くらい持っているだろうとの問い合わせがいくつかありました(私も
自分用の1冊しか持っていません)。

 不思議に税務会計事務所からの問い合わせはありません。現場の会計実務
家は税制適格かどうかしか関心がなく、会計処理に関心が薄いようです。

 したがって、合併の会計処理などは、司法書士の方が町の税理士より詳し
い状況であり、「会社の顧問税理士がこう言っているが、どう思うか」とい
う司法書士からの問い合わせが少なくありません。会社の計算に関心がなく
とも「会社計算規則」は会社法の一部という意識が司法書士にはあるので、
司法書士はそれを無視することができないのでしょう。

 弁護士や証券会社は上場企業に対してコンサルティングをする関係で、会
計のことを知りたいようです。幸か不幸か、素人向けの会社計算規則の解説
本がほとんどありません。

 会計のド素人である私が書いた計算本にニーズがあるとは、私自身もびっ
くりですが、非専門家と同じ目線で書いているのがよかったのでしょうか。
いずれにしろ、私の手から離れました。あと1か月お待ちください。


2014.06.04(水)【定款の工夫1(商号)】(金子登志雄)

 会社の設立の定款案などをみせられる機会が多いのですが、素人作成のも
のは論外として、司法書士の作成するものも、あまりに既存書式のマネが多
すぎるように感じます。これでは、臨機応変の対応の頭脳の訓練になりませ
ん。私は、習性として、相手次第でさまざま変化させます。

 そこで、定款ネタにしますが、今日は定款第1条(商号)を取り上げます。

 定款第1条は、ほとんど全部が「当会社は、〇〇〇株式会社と称する」で
すが、「当会社の商号は、〇〇〇株式会社とする」や「当会社は、〇〇〇株
式会社と名乗る」が、なぜないのか不思議でなりません。

 山梨県甲府の会社であったら、「オラ達の会社のことは、〇〇〇株式会社
と呼んでくりょう」でもいいのではないでしょうか(NHK朝ドラを視聴し
ていない人には通じませんね)。

 その後に、「英文では………」と続くことも多いのですが、先般は「英語
では」となっていたので、珍しいなと思いました。ドイツ語では、フランス
語では………は、まだお目にかかったことがありません。

 末尾は、「Co., Ltd.」「Inc.」「Corporation」と
いろいろありますが、日本社名と英文社名の一致は必要ありません。合併前
の新日本製鐵は、NIPPON STEEL CORPORATIONでした。

 株式会社の位置は、「アト株」が多いようです。「AB株式会社」であれ
ば、社名を聞かれたときに、「ABです」といえても、「株式会社AB」だ
と、マエの部分を省略して「ABです」といいにくいからでしょうか。


2014.06.03(火)【憲法9条とノーベル平和賞】(島根・根来川弘充)

 先日、「憲法9条を守ってきた日本国民にノーベル平和賞を」という運動を
テレビで見ました。

 もともと一主婦の発案なのだそうですが、その受賞には現実性が出てきてお
り、もし、受賞した場合、憲法9条改正に積極的な安部総理が国民の代表にな
るのでは、などと憶測もでているそうです。

 「日本国民が受賞ということは、私自身も受賞者になれるのか」と思います
と、ノーベル賞を身近に感じてうれしいところはあるのですが、ただ、不安な
ところもあります。

 それは、平和賞受賞者が、戦争を引き起こしている例が過去にあることです。
旧ソビエト連邦のゴルバチョフ初代大統領や、アメリカのオバマ大統領は、受
賞後に他国に軍隊を派遣しました。

 もっとも、そうでない受賞者も多数おられるので、例外かもしれません。た
だ万が一にも、将来、日本が平和をおびやかすことが将来あるのであれば、受
賞したことを後悔することになる気がします。

 重大な責任を隠すように「受賞」という言葉だけが、一人歩きにならないよ
うになってほしいと思います。


2014.06.02(月)【校正】(金子登志雄)

 土日はこれから出す著書の校正三昧でした。事前に出版社のエディターチェ
ックがあるのですが、この頁は「数か月」なのに、この頁は「数ヶ月」になっ
ているとか、「もって」と「持って」、「おります」と「います」、「致しま
す」と「いたします」と「します」、「過ぎる」と「すぎる」が、何頁と何頁
で違っているなどの指摘のほか、「一人」ではなく「1人」だとか、引用文だ
ろうがおかまいなしに細かい点を散々指摘され、少々、辟易気味です。

 「行く」も「いく」にされましたが、これは無視しました。不思議に「いう」
と「言う」は、ほとんど指摘されませんでした。エディターさんにも個性があ
るものです。

 しかし、こういうことにこだわることは必要です。定款で、「及び」と「お
よび」、「又は」と「または」が無秩序に混在していることがよくありますが、
度を過ぎるとみっともない定款になります。

 上場会社では、いま定時株主総会招集通知の文案の校正中でしょう。エディ
ターチェック以外に気になるのは、「当期のわが国経済は………」で始まる文
章でアベノミクスにどう触れるかがが悩みの種ではないでしょうか。

 アベノミクスに賛意を示せば、反安倍の株主の反発があるでしょうし、触れ
ないわけにも行かずで、いかに誰からも反発されない表現をするかが招集通知
担当者の腕の見せ所でしょうか。

 なお、6月1日より当事務所所在のビル名が野村不動産神田小川町ビルから
常和神田小川町ビルに変わりました。常和はジョウワと読みます。常和ホール
ディングスという上場会社がありますが、その系列です。今後はビル名が変更
せずに常に平和でありたいものです。


2014.05.30(金)【拙稿紹介】(金子登志雄)

 上記トピックスの6のとおり、「登記情報」に拙稿「代表取締役の予選」が
掲載されましたので、ぜひ、ご覧ください。

 次の3つのQに回答しています。
----------------------------------------------------------------------
Q1:取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社(甲)において、親
 会社の意向でAは甲の取締役を事業年度末日の3月31日付で辞任すること
 になった。そこで、甲は、3月20日の取締役会において、取締役Bを4月
 1日付で代表取締役に予選するとともに、3月29日に臨時株主総会を招集
 し、Dを4月1日付でAの後任として取締役に選任した。さて、予選決議時
 点の取締役はABC、代表取締役就任時点の取締役はBCDという構成にな
 ったが、Bの代表取締役の就任は認められるか。
----------------------------------------------------------------------
Q2:3月決算で取締役ABC(代表取締役A)の取締役会設置会社(甲)に
 おいて、6月1日の決算承認取締役会において、きたる6月28日付定時株
 主総会の終結時にABC全員が任期満了し退任するため、ABC全員を重任
 させることとし、同時に、重任後の代表取締役としてAを予選した。さて、
 6月28日の定時株主総会で予定どおりABCを取締役に再選し全員が重任
 したが、Aの代表取締役就任登記も無事に受理されるか。
----------------------------------------------------------------------
Q3:Q1の事例で、Bではなく、3月下旬の臨時株主総会で選任するDをA
 の後任として4月1日付で取締役及び代表取締役にしたいが、4月1日に取
 締役会の開催が困難の場合に、どのような方法があるか。
----------------------------------------------------------------------

 Q1は、いまホットな問題です。Q2は、先例があると思い込んでいる方が
多いのですが、その昭和41年先例は事案が違います。Q3は、今後、徐々に
流行っていくであろう方式を紹介しました。


2014.05.29(木)【ホヤ】(仙台・立花宏)

 先日、友人に誘われ、久しぶりに国分町に出かけました。国分町は仙台の最
大の歓楽街です。あまり人付き合いの良くない私にとっては、どちらかという
と縁のない場所といえるかもしれません。

 東日本大震災のあと、仙台には、全国から多くの方が震災からの復興のため
に応援に来てくださっています。その影響もあり、仙台は景気が上向いている
といわれています。久しぶりに見た国分町は多くの人々が往来し、とてもにぎ
わっているように感じました。

 待ち合わせのお店に入ると、友人は先に到着していました。
「おう、久しぶり。待たせてしまったかな。スマン」
「いや、俺も今、来たばかりさ。ちょうどよかったよ。飲み物は生ビールでい
いか?」

 そんなやりとりをしながら、飲み物と2、3のつまみを注文しました。
「最近、不動産登記の依頼も多いし、会社の登記も少し増えているかな。設立
登記とか」

 司法書士である友人との会話なので、仕事の話題が多くなります。
「そうだな。たしかに、設立登記の依頼を受けることが増えたような気がする」

 実際、仙台では、設立の登記も増えているようです。法務省のHPで統計を
みてみたところ、仙台法務局管内(宮城県内)における株式会社の設立登記の
件数は、平成22年には1,071件でしたが、平成24年には1,545件
と、約1.5倍に増えています。

 全国の合計をみると、平成22年には80,535件であったのに対し、平
成24年は80,862件でほぼ横ばいでした。それとくらべると、仙台法務
局管内(宮城県内)の設立登記の件数は、増加傾向にあることがうかがわれま
す。

「でも、依頼を受けるのは、仙台の中心部の案件がほとんどかな。沿岸部の市
町村はどうなのだろう」

 友人も私も仙台の中心部で仕事をしています。沿岸部の市町村の案件を受任
することは多くはありません。しかし、東日本大震災の際、津波で被害を受け
た沿岸部の市町村では、まだまだ、仙台の中心部と比べて復興も進んでいない
のではないか、設立登記の件数も増えていないのではないか、という気持ちが
ありました。残念ながら、法務省のHPにはそこまで詳しいデータは掲載され
ていませんでした。

 そうしているうちにお通しが運ばれてきました。気仙沼産のホヤの酢の物で
した。気仙沼は、東日本大震災の際に津波で大きな被害を受けた、仙台から車
で3時間程の沿岸部の都市です。気仙沼産のホヤを見て、私たちはとてもうれ
しい気持ちになりました。

「きっと、沿岸部の市町村でも、設立登記は増えてくるさ」

 その気仙沼産の新鮮なホヤの酢の物を口に運びながら、私と友人は、そんな
ことを語り合いました。



2014.05.28(水)【株券不発行証明その後】(金子登志雄)

 昨日は、株主名簿管理人である某信託銀行主催のベンチャー企業向けセミナ
ーで講師を努めました。そこで、ある信託銀行マンから、「先日、法務局の相
談窓口で株券不発行証明書は株主名簿に限られ、株主の住所も株式の取得年月
日も必要だといわれましたが、本当でしょうか。当社としては、無理な相談な
んですが………」といわれてしまいました。

 4月17日の本欄で、次のように書いたことが証券代行にまで飛び火してい
るとは驚きました。
--------------------------------------------------------------------- 
 先般(2月5日)の千代田支部セミナーにおける東京法務局の回答では「株
券を発行していないことを証する書面は、株主名簿に限られます。また、株主
名簿には、会社法第121条に規定される事項が記載され、さらに、株券不所
持の申出又は株券不発行の事実が記載されている必要があります」というもの
でした。

 どうして、こういう回答になるのでしょうか。会社法121条に従って株式
取得日まで書けというのは、中小企業では無理な話ですし、そこまで要求する
意味もありません。株主の住所の記載もプライバシー保護の点から顧客は嫌が
ります。書いたところで、調べるわけでもないため、意味がありません。
 (中略)

 また、基本通達に「株主名簿その他の当該場合に該当することを証する書面」
とあり、株主名簿そのものに限っていませんから、株主名簿に準じた株主名と
株主ごとの持ち株数と株券番号記載欄に不発行である旨を記載した自己証明書
面で十分だというべきでしょう。

 東京法務局の回答の真意も、私と同じだと思うのですが、こういう不用意な
回答があると、杓子定規に「株主の住所が記載されていない」「取得日が記載
されていない」と言い出す生真面目な(?)法務局職員が出てくるので、もう
ちょっと慎重に回答してほしいものです。
----------------------------------------------------------------------

 都内の某法務局でも、「今回に限り従前の形で受け付けるが、次回から株主
名簿そのものをつけるように」といわれ、法務省の基本通達よりも東京法務局
見解が上位にあるのかと驚いたという司法書士仲間もいます。

 そもそも、株券を発行していないことを証する書面は、株主名簿に限られま
せん。株主名簿管理人や公平な第三者である弁護士の証明書であってもよいは
ずです。

 上記のように、基本通達を前提にすれば、東京法務局の真意は、住所や株式
取得年月日の記載まで必要だというものとは思えませんので、司法書士各位は、
委縮しないことです。単に聞かれたから「株主名簿をつけてください」と答え
た程度のことだと私は確信しています。現に多数の法務局で従来どおりの書式
で受け付けられています。


2014.05.27(火)【司法書士の権威】(金子登志雄)

 昨日、経験豊富な司法書士と経験の少ない法務局職員との差を年季差・格闘
技戦と表現しましたが、昔は司法書士の意見は権威がありませんでした。

 登記研究という雑誌をご存じだと思いますが、あの登記相談の回答は当局の
方です。だから、疑問に思える意見でも全国に通じます。

 登記情報というキンザイの雑誌をご存じだと思いますが、われわれ司法書士
が論文を投稿したり、相談室の回答をしています。

 実は昔は司法書士の回答など権威がないとされ(単なる1個人の意見でしか
ない)、相手にされていませんでした。ですから、当然に、雑誌で司法書士が
実務相談の回答をすることなどあり得ないことでした。

 変わってきたのが平成13年の金庫株改正あたりからです。額面株式が廃止
され、伝統的な登記実務が通じなくなり、当局の回答にも???と思うものも
出てきました。

 いまでも思い出すのが平成13年の金庫株改正時に、合併比率1:0.5な
どの場合は、消滅会社で2株を1株に併合して合併比率1:1にしてからでな
ければ合併することができないから、株式併合の先行登記が必須だなどという
信じがたい回答もあり、これが全国を席巻(せっけん)しそうでしたので、組
織再編のプロを自認する私は1人で猛然と反対したものでした(最終的には不
要ということになりました)。

 ところが、当時は、司法書士が雑誌で意見を出せる場面がありませんでした。
そこで、私が、登記情報の編集長に提案したのが、「泣き笑い」でぼかして回
答すれば、当局の面子も立つでしょうということで、商業登記「泣き笑い掲示
板」を始めました。おかげ様で、10年以上も経た今でも同誌に連載中です。

 こういう経緯や実績を経て、平成21年からは、全国の一大組織である商業
登記倶楽部(神﨑代表)の強力なご支援を得て、商業登記総合5人委員会の名
前で実務相談の回答を登記情報に出せるようになり、司法書士あるいは民間の
意見も全国的に通じるようになりました。最初の投稿は、補欠監査役は欠員が
生じた場合に限らないという内容で、今では当然視されていますが、当時では
通じにくい意見でした。

 平成13年から始まった相次ぐ商法の改正から平成18年の会社法施行まで
の改革が、今では会社法は弁護士よりも司法書士のほうが詳しいといわれるよ
うになり、司法書士の権威を高めたわけです。雑誌・登記情報の果たした役割
は大きかったと感謝しております。編集長が若く、さまざまな実験をしてくれ
たおかげです。

 今度の登記情報には、全国で混乱中の「代表取締役の予選」につき、5人委
員会の名前で、回答していますが、皆様もご意見がありましたら、同誌に投稿
してみてはいかがですか。明日の多数説になり得る見解であれば、掲載が適う
でしょう。


2014.05.26(月)【少なくとも】(金子登志雄)

 簡易合併を証する書面や資本金計上証明書を作る際に、会社の人に純資産額
を教えてくれ、株主資本等変動額を教えてくれといっても、「まだ数字が固ま
っていません」といわれることがほとんどです。

 そんなときどうするかですが、簡易合併を証する書面であれば、5分の1以
下を証するため、資本金計上証明書であれば、増加資本金額よりも株主資本等
変動額のほうが大きいことを証明すれば十分ですから、概算額を書けば十分で
す。

 それでも生真面目な会社の担当者は、「概算でも分かりません」と答えてき
ます。さぁ、どうしましょう。

 簡単です。単位を100万、億と上げていけばよいのです。これで答えられ
ない人はいないでしょう。1億9999万円でも切り捨てで概算1億円でよい
のです。

 この概算額の記載に後ろめたい場合は、旧商法時代の法務省の書式のように
「少なくとも」・「多くとも」と前に付ければよいのですが、最近は、これを
付けると、「こんなのみたことない」と拒絶反応を示す登記所もあるようです。

 つまり、最近の登記調査官は人事異動で担当になっただけで、旧商法時代の
ことを知らないのです。司法書士のように、この道一筋うん十年で生活してき
た人が、つい最近担当になったばかりの調査官に「これはだめだ」といわれる
のですから、たまに、年季差の格闘技戦が生じるのも仕方ないですね。


2014.05.23(金)【契約書名義】(金子登志雄)

 募集株式の総数引受契約書案の契約者名義が「A株式会社〇〇事業部長C」
となっていたので、管轄法務局に確認しましたら、押印までは調査しないが名
義は代表取締役でないと困るとの回答でした。予想どおりでした。

 しかし、不思議なもので、株式申込書になると、実務では、そうこだわりま
せん。カネさえ出せば誰でもいいといった雰囲気です。添付書面として「株式
の引受けの申込みを証する書面」とあるせいかもしれません。任意組合でもよ
いためかもしれません。

 また、契約書の場合も「A株式会社代表取締役B/代理人〇〇事業部長C/
C印」であれば、委任状も必要なく、受理される法務局がほとんどでしょう。
名義は代表者ですから。

 こういう場合は、代理人である事業部長名を省略して、「A株式会社代表取
締役B/Cの印」が最も通りやすいと私は思っていますが、まだ実例をみたこ
とはありません。

 では、合併契約書などでは、どうでしょうか。

 想像ですが、「A株式会社代表取締役B/代理人〇〇事業部長C/C印」で
あれば、委任状を要求されることもありそうですが、「A株式会社代表取締役
B/C印」なら、書面審査上、印鑑までは調査しませんから、無事に受理され
るはずです。

 何か建前社会のようですが、これが一般社会のルールということでしょうか。
こういうことに疎いと、商業登記に強い司法書士になれないことも事実です。


2014.05.22(木)【資本金計上「証明者」】(金子登志雄)

 法務省のHPによると、新設合併の際に提出する資本金計上証明書には、新
設会社の代表者が登記所に届け出る印鑑を押すことになっています。

   http://www.moj.go.jp/content/000057790.pdf

 ところが、新設分割や株式移転では、代表者が登記所に届け出ている印鑑を
押せとあります。

   http://www.moj.go.jp/content/000057791.pdf
   http://www.moj.go.jp/content/000057792.pdf

 これが混乱の種で、Aが新設分割でBを設立した際は、Aの届出印を押すの
であってBではいけないのではないか、AがBの管轄外だったら印鑑証明書を
付けないと届出印かどうか不明だがどうするのか、甲乙が丙を新設分割する際
の共同分割では甲乙2社で押印するのかなどの疑問が生じてしまい、法務局自
身も混乱しているところがあります。混乱した司法書士は、設立会社との連名
で押印する者もいるようです。

 結論から言うと、AでもBでも、どちらでもかまいません。考え方としては、
新設分割の登記申請人であるBが自ら添付書面を準備するのが原則だから、B
作成のもので十分だが(私はこの方法を採用しています)、提出者がBであれ
ば、証明者はAであってもよいということです。

 これは、合併の際に提出する消滅会社の債権者に催告したことを証する書面
につき、催告者である消滅会社が証明して、それを存続会社が提出しても、合
併登記申請人である存続会社が自ら消滅会社の分まで証明してもよいのと同じ
ことです(私は後者方式です)。

 したがって、法務省のHPは、新設合併では消滅会社は消滅しているという
前提だから「届け出る」印鑑としただけで、また、新設分割の際に「届け出て
いる」としたのは、商業登記法20条に「登記の申請書に押印すべき者は、あ
らかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない」とあることを前提と
したためか、あるいは、ABどちらでもよいという趣旨を匂わせたもので、深
刻に考えるほど深い意味はないというべきでしょう。

 AとBの管轄が相違し、A作成の証明書をBが提出する際は、Aの印鑑証明
書を添付してAの届出印である旨を証明する必要もありません。証明書の例の
1つであって「ねばならない」ものではないからです。


2014.05.21(水)【本店ビル名変更】(金子登志雄)

 当社は現在「千代田区神田小川町三丁目26番地8野村不動産神田小川町ビ
ル」で本店登記をしていますが、ビルの売却があったようで、この6月1日か
ら「常和神田小川町ビル」とビル名が変更になります。

 そこで、本店登記につき、3つの選択肢があります。
(1)現状のまま放置する
(2)ビル名変更を登記する
(3)ビル名削除の登記をする。

 (2)に関しては東京法務局は委任状だけで済みますが、取締役会議事録を
要求する法務局もあるようです。後者については、この程度のことが重要な業
務執行の決定に該当するという判断でしょうか。私には疑問です。

 委任状だけで済む理由は行政区画の変更など会社の決定によらない外部事実
の変化だからなのか、それとも取締役会ではなく代表取締役の決定でよいとい
う意味なのかは不明です。

 代表取締役や取締役会の決定を要するとすると、(1)であっても、決定す
るまでは登記しなくても違法ではないことになります。来年の4月1日付けで
決定すれば、その日から2週間以内に登記すれば足り、本年6月1日から10
か月遅れの登記ということにはなりません。会社にとっては、こちらの解釈の
ほうが助かります。

 (3)については、取締役会の決定が必要だというのが東京法務局見解です。
この場合は、どこまで詳細に表示するかは会社の決定次第ということでしょう。

 結局、当社は(3)を選択しました。こういうことがあるから、本店登記に
はビル名は記載しない会社が増えそうですね。私も設立登記では、そのように
アドバイスすることにしました。


2014.05.20(火)【異種格闘技戦】(金子登志雄)

 旧商法の古い時代には、法務局で大声を出して喧嘩しているのは、弁護士や
会計士さんが少なくありませんでした。法律や会社には強いという自負があっ
たため、補正に納得できないことと、法務局職員の態度にカチンときたせいで
しょう。

 昔の法務局は、サンダル履きのお兄さんが受付に立っていましたし、お上意
識もありました。いまの若い人には信じられないでしょうが、登記官が転勤で
引っ越しをしようものなら、司法書士がお手伝いに行っていた時代もありまし
た。私が司法書士になる前の昭和時代の話です。公務員上がりで昔からの司法
書士さんに「貴方のように法務省の参事官室にまで商法の質問の電話をするの
は相手に失礼だ(頭が高い)」と叱られたこともありました。

 それが司法書士試験が国家試験になり、法務局の付属機関というイメージが
すたれ、平成時代になると、小泉改革等の成果で、窓口では「金子サマ~」と
呼ばれるようになり、お昼休みも申請を受け付けるようになり、8時半から営
業開始になり………と、行政サービス機関になってからは、窓口での喧嘩を目
の当たりにすることがなくなりました。

 弁護士・会計士の側も法務局や司法書士に敬意を払うようになり、代書屋風
情との見下しはなくなりました。昔の司法書士は、都道府県単位の簡単な試験
で合格でき(会員番号が全国共通でないのはこのためです)、法務局の周囲の
3坪店舗で、法務局を定年退職した人がひっそりと商売する代書屋イメージに
ぴったりでしたが、いまはビルの中や住宅街に事務所を設け、国家試験予備校
が年商1000万円を超える有望な資格などと宣伝したため、イメージがだい
ぶ変わりました。

 いまや、大法律事務所の職員さえ登記相談窓口に頻繁に訪れるようになり、
異種格闘技戦はなくなりました。司法試験崩れの私は、弁護士の言い分も法務
局の言い分も両方とも背景や原因まで分かりましたから、この異種格闘技戦が
なくなったのは、少々、寂しい気もします。この異種格闘技戦があったから、
法務局も弁護士側もよい方向に変わってきたわけですから、先人の努力の1つ
といえましょう。



2014.05.19(月)【法務部と司法書士】(金子登志雄)

 16日金曜日は、顧客上場企業某社の法務部の方々との久々の懇親会でした。
ありがたいことです。自分が役立っていると意識させてもらえますし、司法書
士冥利につきます。

 某社では私が関与するまでは、自社で法務局に相談に行っており、そこでだ
いぶ苦い思いもしたようですので、法務局に通じる独特の言語で法務局と交渉
してくれる代弁?司法書士の存在価値を高く評価してくださいます。

 この登記が無事に通るかどうかで企業には、莫大な損益に影響することもあ
るといわれましたが、この視点は、法務局やわれわれの側には、少ないようで
す。あっさりと「それは無理ですね」と返してしまう相談官や司法書士も少な
くありません。本当にダメでも他の方法を考えるのがプロですから。

 登記が無事に通ることが最重要ですから、私のように、時たま法務局に「納
得できません」と逆らう司法書士はまずいのではないかとひそかに思っていま
したが、さすがに一流企業の法務部でした。自社で十分に法律的検討を経た結
果を上手に説明してくれる司法書士を求めていたようです。

 法務局に通じる独特の言語………深い意味はありません。重任、補正、却下
事由、取下げ、調査、校合、記帳、商業登記ハンドブック、商事法務、登記研
究、登記情報などという業界人であればすぐに通じる用語を会話のはしばしに
出すことで、「この人は登記のプロだ。十分に検討してきたであろうから、う
っかりした返答をしてはいけない」と思ってもらい、プロ同士の会話をするこ
とが重要なわけです。結論よりも論理過程や理由づけが重要です。

 法律に精通していても弁護士さんや法務部とでは、このあたりがわれわれと
の相違点のようです。言い換えれば、法律世界の土俵と登記世界の土俵とでは、
ちょっと違うということでしょう。われわれであれば、ガチンコ勝負でも異種
格闘技戦になりませんから。


2014.05.16(金)【募集株式と種類株式〔第2版〕】(金子登志雄)

 お待たせしました。表題の改訂版が5月20日に発売されます。初版をお持
ちの方は、わざわざ購入しなくてもよいでしょうが、お持ちでない方に、ぜひ
ご紹介ください。

 偶然ですが、昨日も、司法書士から「種類株式発行の仕事を受けたけど、こ
の本で助かった。種類株式を初めて発行するときに、登記では年月日設定では
なく年月日変更とするなど、実務家でなければ気づかない視点であり、かゆい
ところに手の届くよい本だ」とお褒めの言葉をいただいたばかりです。

 全く別件ですが、昨日、社外役員の責任軽減の登記のことを聞かれ、当社の
登記簿をみたら定時株主総会の日付で「平成18年9月27日変更」とありま
した(当社は6月決算です)。

 おかしいな、会社法制定後に定めたのだから、「設定」のはずだがと思って
しまいましたが、理由が分かりません。本欄閲覧の皆様で瞬時に分かった方は
いらっしゃいますか。

 たまたま存在した過去の謄本をみたら、旧商法時代も社外役員の責任軽減の
登記があったため、それを変更したから、「年月日変更」の登記になっただけ
でした。あれから、7年以上、すっかり忘れていました。

 話を戻しまして、「募集株式の発行等」という用語があるなら「募集によら
ない株式の発行等」もあるはずですが、何だと思いますか。

 取得請求権付株式・取得条項付株式・全部取得条項付種類株式の対価として
株式が交付される場合、株式無償割当てをする場合、新株予約権の行使があっ
た場合、組織再編として実行される場合などです。計算規則13条2項に書い
てあります。

 「募集によらない」とは、募集決議が不要だという意味でもあります。新株
予約権が行使されて、わざわざ新株発行の決議をしないのはこのためです。


2014.05.15(木)【承継自己株式対価】(金子登志雄)

 100%子会社が親会社を吸収合併する際には、旧商法時代の古くから合併
で自己株式となった子会社株式を合併対価として用いており、実例も多数ある
のですが、弁護士から「リスクがあるからやめよ」といわれたという情報があ
るMLに載っておりました。

 大法律事務所である長島・大野・常松法律事務所による商事法務刊『合併ハ
ンドブック』85頁が根拠だそうです。そこには、次のようにありました。

----------------------------------------------------------------------
 消滅会社が存続会社の株式を保有している場合に、合併により存続会社が承
継する自己株式を合併対価として消滅会社の株主に交付することができるかと
いう点についてはあまり議論がされていないと思われるが、会社法は、新設合
併における合併対価として新設会社の株式、社債または新株予約権のみを認め
ており(法753条1項6号~11号参照)、新設会社が消滅会社から承継す
るその他の資産を合併対価とすることは認めていないこととの均衡からは、吸
収合併の場合についても、合併により存続会社が承継する自己株式を合併対価
として消滅会社の株主に交付することを認めることには、疑義があるところで
ある。
----------------------------------------------------------------------

 つまり、新設合併では承継した財産を合併対価としていないのだから、それ
との均衡上、吸収合併においても、承継財産(本件では自己株式)を対価とす
るには疑義があるということのようです。

 しかし、これは会社法の制定過程を無視した見解です。商事法務1752号
8頁には「対価の柔軟化が認められるのは、吸収型再編のみである。新設型再
編は、………新たに会社を設立するという性質を有するものであり………」と
し、新設型再編には対価の柔軟化を否定しているのに、それとの均衡を根拠に
しても意味がありません。吸収型再編と新設型再編は性質の異なる制度であっ
て、均衡を議論する対象になりません。

 承継自己株式を合併対価にするのは、全く問題なしというべきです。旧商法
時代の大昔から、繰り返しなされています。


2014.05.14(水)【2つの代表取締役の予選】(金子登志雄)

 せっかくですから、連休中に書いた代表取締役の予選問題のエッセンスを
ご紹介しておきます。

 取締役ABC(代表取締役A)、3月決算、6月28日の定時総会終結で
全員が任期切れを前提にします。

(1)6月28日定時総会中の午前にABC再選、重任承諾、総会休憩中の
お昼休みにABCは会合をもって次期代表取締役としてAを予選。定時総会
は午後2時に無事終了。

 ABCは午後2時に次期取締役になるのに、その前に代表取締役を予選し
ていますが、予選時と次期取締役が同一メンバーであり、短期間だから予選
は肯定されます。これが昭和41年先例事案です。

(2)6/1決算取締役会で6/28の議題として取締役ABCの再選を決
議し、 ついでに、ABCで次期代表取締役としてA予選。6/28定時総
会で予定どおりABC再選。

 この場合は、(1)と相違し、次期取締役として予選もされていないのに
次期代表取締役を予選しています。先例がある(1)の趣旨から肯定するの
が多数ですが、次期取締役に予選されていないことを理由に否定する登記所
もあるようです。

(3)3/20取締役会で4/1付けでBを代表取締役に予選。3/31に
Aは取締役辞任、4/1付けで後任としてD選任

 このケースは、(1)(2)と相違し、取締役の任期満了を跨いだ代表取
締役の予選ではありません。任期中の代表取締役の交代でしかありません。

 ところが何を勘違いしたのか、3/20と4/1の取締役会の構成メンバ
ーが相違するから予選は不可とされることがあるようです。

 (1)と(2)は、その期の取締役がその期の代表取締役を選任していな
いので、取締役会の構成メンバーが選任権限を正式に有するまで同一メンバ
ーかを問題にする必要がありますが、(3)は既に権限を有しているので、
予選時と効力発生時のメンバーの同一性は問題外です。余計なお世話解釈に
引っかからないようにしましょう。 


2014.05.13(火)【余計なお世話その3】(金子登志雄)

 古い登記研究に、取締役の予選中に新株の発行があると、新株主の取締役
選任権を侵害するから取締役の予選はできないという意見が掲載されている
のですが、どう思いますか。

 私はこれも余計なお世話だと思っています。どこの法律にもダメだと書い
てないのに、勝手にダメにされては、登記所は国会や裁判所以上の権限を持
つ機関になってしまいます。

 妥当でないことは十分に分かりますが、事前に情報を開示して新株主も承
知の上で株式を引き受けるでしょうし、それをしなかったら、会社と株主と
の信頼関係が崩れ、取締役の解任騒ぎになったり、騙し討ちだ株を引き取れ
という問題に発展します。

 そういう事後処理の自治に委ねるのが正しく、決定した事項を根拠なく無
効にするのは、法律解釈とはいえません。

 登記できないというなら、先に取締役変更の登記をし、間を空けて新株発
行の登記をするだけです。申請単位での審査ですから、これなら問題なく登
記が可能です。

 幸い、本件の内容は先例扱いまでされておりませんが、登記に関係する雑
誌に掲載された当局担当者の意見や現場の取扱いには、こういう法律を超え
たものが多すぎます。

 それは、われわれ司法書士に「おかしいじゃないか」と反論するほどの知
識も能力もなかったことも一因です。試験に合格した時が実力のピークだと
いう人が多いせいでしょう。

 しかし、こういう問題は知識ではありません。貴方の法律的感性(リーガ
ルマインド)の問題です。それを侵害されておとなしく引き下がるようでは、
情けないと思いませんか。



2014.05.12(月)【余計なお世話その2】(金子登志雄)

 金曜日の「余計なお世話(解釈)」は、我ながら気に入った表現です。今
後は全国に流行らせたいと思っていますので、皆さんもぜひ使ってください。
登記の審査は却下事由に該当するかどうかだけの適法性審査にとどめ、妥当
かどうかなどの余計なお世話はしないでくれという場合に使いましょう。

 さて、3月20日に4月1日付で代表取締役の選任を決議し、3月20日
から31日の間に、その日付で司法書士に「代表取締役変更」の登記申請委
任状を作って渡したとすると、この登記は無事に受理されるでしょうか。

 先日一緒に飲んだ司法書士さんによると、ほとんどの登記所で受理される
が、某管内では補正になるとのことでした(どこかわかる人は、商業登記の
相当な「通」といえます)。この司法書士は私と同様に、納得できないこと
は納得できないといい、登記所の能力向上に貢献(?)している方です。

 この委任状は違法といえるでしょうか。まず9割以上の法律家が適法だと
答えるでしょう。にもかかわらず、登記の受理を拒否されて補正になるとし
たら、これも、「適法」審査ではなく余計なお世話の「妥当性」審査の1つ
といえます。

 補正指示する登記所としては、登記というのは原則として全てが完了後に
報告として登記するものだから、全てが完了する前に委任するのは筋が通ら
ず妥当とは思えないという解釈でしょう。

 しかし、妥当かとか筋が通らないという問題は登記所に審査権がありませ
んし、そういうことは人によって判断が異なることです。登記申請する司法
書士も「登記というのは原則として全てが完了後に報告として登記するもの」
というのは十分に承知しているから、上記の例でいえば、4月1日以降に申
請しているのであって、3月日付の委任状だからといって、3月に申請した
わけではありません。

 就任承諾書は、「きたる3月20日の取締役会で4月1日付で代表取締役
に選任されました場合は、その就任を承諾します」も有効です。なぜ、登記
の委任状だけはいけないのでしょうか。余計なお世話解釈としかいえません。


2014.05.09(金)【余計なお世話】(金子登志雄)

 代表取締役の予選をテーマとする原稿の資料として、古い登記研究という
雑誌の内容などを仲間から送ってもらいましたら、「合理的な期間内(たと
えば1か月)内であれば、取締役会において、次期の代表取締役をあらかじ
め選任することができる」などといった見解にお目にかかりました。

 若い頃は、「ふ~ん、そういうものか」としか思いませんでしたが、それ
なりの経験を積んでくると、「何たる余計なお世話だ」という感想しかあり
ません。

 会社によっては、3か月先が都合がよいこともありますし、3か月後に代
表取締役が無事に就任し、会社もそれでよいといっているのに、1か月を超
えるから登記は受理できないなどということがあったら、まさに余計なお世
話であり、企業活動への妨害です。

 株主総会の開催は手間暇がかかるが、取締役会の開催は容易だから1か月
もあれば十分だなどと書いてありましたが、株主が1名で取締役が5名であ
ったら、株主総会の開催のほうが5人も集まらなければならない取締役会の
開催よりも、ずっと容易です。私の顧客の中には、株主は1名なのに、取締
役が30名という会社さえあります。

 そもそも却下事由に該当するかどうかの登記審査において、なぜ、予選期
間が1か月を超えている・いないなどといった非法律的判断を加えるのか、
私には信じられません。合理的期間などという美しい表現を使っていますが、
その論理は実に非合理的です。

 日本の法律関係者には、こういう企業に余計なお世話を焼く非合理主義者
が少なくありません。それをぶち壊したのが、革命家の会社法立案者であり、
会社の好きにおやりなさいという会社法を作ってくれたのですが、現実の運
用には、まだまだ壁があります。

 困ったものですが、人の意識はそう簡単に変わらないので、仕方ないので
しょうか。


2014.05.08(木)【期限付決議と予選】(金子登志雄)

 どこにも出掛けなかった連休中は、ヒマつぶしに原稿を1つ仕上げました。
テーマは「代表取締役の予選」です。そのうちキンザイ「登記情報」さんに
掲載してもらうつもりです。

 いつも思うのですが、役員の予選だって期限付又は条件付決議の1つなの
に「人」の問題になると登記所も急に厳しくなります。なぜでしょうか。

 商号や目的という定款変更であれば9カ月先であっても肯定されているの
に、「人」の予選になると、せいぜい3か月先までといわれています(規定
があるわけではありません)。

 条件付決議の1種である補欠役員の規定があるため、それとの関連で制約
を受けるのは理解することができるのですが、補欠役員ですら次の定時株主
総会開始までの原則1年先が許されるのですから(定款で定めれば延長可)、
半年先程度の予選も許されてよいと思うのですが、いかがでしょうか。

 人の気持ちは変化するので、半年先までは約束することができないという
のなら、就任承諾書に限り就任日の3か月以内にすればよいことで、選任行
為自体を短期間に制約する理由はありません。

 困るのは3か月と1日先の場合はどうか、4カ月先は完全に不可かの基準
がなく、現実には登記所の裁量に委ねられてしまうことです。そして、あの
登記所はOKだが、ここの登記所は不可だというローカルルールが生じます。

 この際、土地管轄を外して、どこの登記所でも申請を受け付けるように制
度を変更してくれれば、ミシュランさんが☆をつけに来て、人気登記所と不
人気登記所が生じ、サービス合戦をしてくれるのになと思いましたが、原稿
書に疲れ、夢をみてしまったようです。


2014.05.07(水)【憲法の日】(金子登志雄)

 連休中はいかがお過ごしでしたか。私はどこにも出掛けず、会社法におけ
る企業統治の問題などを考えながら、原稿書などでのんびり過ごしました。

 「そもそも企業経営は、株主の厳粛な信託によるものであつて、その権威
は株主に由来し、その権力は株主の代表者である取締役がこれを行使し、そ
の福利は株主がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この会社法
は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の法令及び
通達を排除する」。

 お分かりですね。憲法の日にちなんで、憲法の前文の「そもそも国政は、
国民の厳粛な信託によるものであって………」を会社法ならこうなるかなと
思って書き直しただけです。もちろん、「株主に由来し」は株主が主役のこ
とで、「福利は株主が享受する」は、株主配当のことになります。

 このように「会社は株主のモノ」というのが基本ですが、会社に関わる人
には債権者も従業員も新株予約権者もいるので、その利害調整が会社法の解
釈学になりますが、中小企業の現実では、税務署や許認可権を有する監督官
庁との利害調整のほうが難問であり、憲法や会社法の理屈どおりに行かない
ことが多いことでしょうか。

 日本国憲法に対しては、最近、再軍備の方向への解釈改憲の動きが強まっ
ておりますが、この憲法が存在したから、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも参
戦せずに済み、赤紙1枚で徴兵されることもなく、いいたいこともいえ、企
業も自由活動が保障され、日本経済の発展の礎になったということを考えて
ほしいものです。まずは、格調高い日本国憲法を味わってみましょう。
    http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html


2014.05.02(金)【景気の受け止め方】(金子登志雄)

 昨日お会いしたお客様(上場企業の総務部員で新卒の採用も担当)の話だ
と、今年は売り手市場で、優秀な新卒社員の採用が難しく、昨年とは雲泥の
差だとか。生まれた年がたった1年違うだけで、こうも運・不運の開きがあ
るのでしょうか。

 しかし、そんなに景気がよいのでしょうか。大手マスコミは完全に政府の
広報機関に成り下がっているので(政権トップと新聞社の社長が個人的に会
食したりゴルフをするのは、私には職業倫理の面から信じられません)、よ
いことばかり書きたてますが、結論から言うと、政府の大手企業優遇策によ
って、大手にはよくて、中小企業には先行き不安が大きいというのが大方の
見方のようです。

 消費税が典型例ですが、庶民から薄く広く税金を取り、大手企業には減税
等の優遇策で応じ国際競争力をつけさせようということのようですから、い
ずれは日本も韓国のように少数の大手企業だけが生き残り、中堅企業が減っ
てしまうのでしょう。

 バブル時代には、日本の強さは、特別な大金持ちも極貧も少なく中流階級
が多いことだといわれていましたが、いまや格差社会にまっしぐらというと
ころでしょうか。

 司法書士サイドからいうと、ここ10数年、解散・清算の仕事が増えてい
ますし、中間層の減少で、住宅ローンによる持家率が減ってきたように感じ
ていますが、他の司法書士の受け止め方はどうなんでしょうか。

 決算期の過ぎた上場会社の事業報告書をみても、業種によって、いまの景
気の受け止め方が随分と異なります。
 
 これから3月決算会社の定時株主総会招集通知のチェックの仕事が増えま
すが、ご承知のように上場会社の事業報告書は「当期における我が国経済は
………」で始まりますから、各業種によって、表現の微妙なニュアンスに注
目してみたいと思っています。



2014.05.01(木)【解約と書面】(島根・根来川弘充)

 先般、建物の借主の相続人という方から相談をうけました。

 相談内容は、「建物は故人一人暮らしで、相続人は複数いるが、誰も住ま
ないので解約をしたい。しかし、その旨を大家さんに相談をしたら、『相続
人を確定する戸籍と、相続人間で借主が1人になった旨の遺産分割協議書と
解約書面を作成するまで、解約にならない』と言われた。協議書や解約書面
とはどのようなものか。」というものでした。

 賃借権も相続財産の一部で、遺産分割協議の対象となるというのは、もっ
ともだと思います。

 しかし、通常の賃貸借の解約だったら、解約書面などつくらず、鍵を渡し
て終了というのが、一般的ではないでしょうか。

 それが、これから使用することが無い建物について、遺産分割協議書や、
解約の書面まで必要だと言われているのですから、賃借人にとっては、あま
りに過度な負担と思えます。

 相談者の話では、「大家さんは、専門家からそのようなアドバイスを受け
た」とのことです。

 専門家が入って話が複雑になったのなら、専門家の意味がないのではない
かと思います。同じ専門家として、そのようなことがないよう、つとめたい
と思います。



2014.04.30(水)【昭和】(金子登志雄)

 昨日の「昭和の日」は、著作原稿の校正三昧でした。会社法795条2項
の「合併差損」のところで考え出してしまい、ほとんど進まなかったどころ
か、しまいには文字もかすんでみえてきたので切り上げました。昭和の日を
(昭和)天皇誕生日と言い換えないと、ぴんと来ない古い昭和生まれですか
ら老化現象でしょう。

 といっても、平成生まれが会社の社長になるのはまだ少し早いようです。
登記の際に示される印鑑証明書をみても、まだ生年月日に「平成」のつくの
をみた記憶がありません。平成生まれの社長がいる会社の登記は何度か経験
しましたが、設立や代表取締役の変更には関与していないためです。

 ところで、上場企業の中には社内文書を西暦表記に統一しているところも
少なくないようです。国際企業として、海外に支店や子会社があるのに、和
暦では困るのでしょう。西暦のほうが情報通信(コンピュータ)に合うとい
う面もあるかもしれません。日本語の社内文書なのに、横書にしているのと
同じようなものです。

 また、「昭和」というと戦争被害を受けた中国や韓国の国民によい印象を
与えないようです。豊臣秀吉や伊藤博文は日本では英雄でも、韓国にとって
は侵略者になるのと同じです。

 かといって、高校卒業年度や司法書士合格年度を西暦でいえといわれても
私にはいえません。近代では、私の誕生年だけ西暦でいえる程度です。ニッ
サンのゴーン社長は自分の誕生年を昭和29年といえるのでしょうか。



2014.04.28(月)【何じゃこれは!】(金子登志雄)

 土日は、「会社の計算」本の校正作業をしていました。東京司法書士協同組
合から出した本が好評で売り切れているため、今度は組合編で中央経済から出
すことになりました。組合本を買いそびれた方は、しばらくお待ちください。

 それにしても「会社の計算」は実に楽しい規定です。

 会社法でいう剰余金が「その他資本剰余金とその他利益剰余金のこと」であ
ることは、もう十分にお分かりでしょうが、会社法446条1項1号に次のよ
うにあります。「イ+ロ-ハ-ニ-ホ」です・・・・・・・・・・・・・①
-----------------------------------------------------------------------
 最終事業年度の末日におけるイ及びロに掲げる額の合計額からハからホまで
に掲げる額の合計額を減じて得た額
  イ 資産の額
  ロ 自己株式の帳簿価額の合計額
  ハ 負債の額
  ニ 資本金及び準備金の額の合計額
  ホ ハ及びニに掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上し
た額の合計額
----------------------------------------------------------------------

 ところが、このホの法務省令である会社計算規則149条には、次のように
あります。
----------------------------------------------------------------------
 法第446条第1号ホに規定する法務省令で定める各勘定科目に計上した額
の合計額は、第1号に掲げる額から第2号から第4号までに掲げる額の合計額
を減じて得た額とする。
  1 法第446条第1号イ及びロに掲げる額の合計額
  2 法第446条第1号ハ及びニに掲げる額の合計額
  3 その他資本剰余金の額
  4 その他利益剰余金の額
----------------------------------------------------------------------

 つまり、「1-2-3-4」、すなわち「(イ+ロ)-(ハ+ニ)-その他
資本剰余金の額-その他利益剰余金の額」です・・・・・・・・・・・・②

 この②式を①式に代入すると、次のようになります。
----------------------------------------------------------------------
 イ+ロ-ハ-ニ-((イ+ロ)-(ハ+ニ)-その他資本剰余金の額-その
他利益剰余金の額)
 =その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額
----------------------------------------------------------------------

 何じゃこれは、馬鹿にするのもいいかげんにせい! と思いませんでしたか。

 お腹立ちはもっともですが、これが易しいことを難しく説明する「会社の計
算」規定なんです。私は、こういう人を食った説明が面白くて仕方ありません。


2014.04.25(金)【スクイーズアウト】(金子登志雄)

 オバマさんで、すっかり有名になったミシュラン3つ星の寿司店「すきやば
し次郎」のお任せコースは「3万円~」のようです。

  http://www.sushi-jiro.jp/contents/oshinagaki.html

 寿司ネタは調理していないわけですから、きっとネタの品質とその管理が秀
でているのでしょう。3万円の「~」が気になりますが、私でもたまには行け
そうな金額です。ただ、味音痴ですから、カ「ネコ」に小判でしょう。ミシュ
ラン3つ星よりも、場末のおばちゃんの食堂のほうが私には似合っています。

 それよりも、司法書士事務所に星をつけてくれるミシュランはいないのでし
ょうか。5つ星をつけてもらえる自信がありますので、ホームページに「お任
せコース100万円~」と書いてみたいものです。司法書士報酬は新人もベテ
ランも大差ないので、ミシュランさんに風穴を開けてもらいたいものです。

 さて、自称5つ星司法書士としては、種類株式の全部取得条項付種類株式だ
けが未経験だったため、歯がゆい思いでしたが、今年は、少数株主の締出し策
(スクイーズアウト)として経験させてもらいました。端数処理の裁判所手続
も実行しました。これは生涯で2度目です。

 中小企業でも少数株主が元従業員で会社に恨みをもっていると金額如何にか
かわらず株式を売却してくれませんし、少数株主が行方不明や認知症というこ
ともありますので、こういう場合はスクイーズアウトも仕方ないことでしょう。

 会社法改正案では、大株主が行うスクイーズアウトとして「特別支配株主に
よる株式の強制売渡請求」が認められますから、改正後は、それによる事例が
増えることでしょう。何年後になるか分かりませんが、いずれは、これも経験
したいものです。


2014.04.24(木)【今でしょ!のリスク】(金子登志雄)

 いつものことながら、4月の登記も役員変更などのやさしい(簡単な)登記
は、上書きミスを中心として内容面以外の部分で初歩的ミスをいくつかしてし
まいましたが、難しい登記はこれまたいつもどおり完璧でした。

 やさしい登記も慎重に扱っているつもりなのに無意識に緊張度が違うのかと
今までは思っていましたが、そうではなく、やさしい登記の多くが顧客からの
事前相談もなく、郵便物等で届けられたら即座に申請するのに対し、難しい登
記は事前打ち合わせなどがあるため時間をかけているのでミスがないのだとい
うことに気づきました。

 人を待たせるのも待たされるのも大嫌いですから、登記依頼の郵便物が届け
ば即座にチェックし申請します。予備校の林先生の「いつやるか。今でしょ」
を、とうの昔から実践しています。

 可能な限り同じミスをしないよう対策をとっていますが、試験であれば80
点をとれば間違いなく合格点であるのに対し、登記では100点を要求される
ため、今後もしてしまいそうです。

 それにしても、登記所はすごいですね。適法かそうでないかの判断ミスは多
いのに、誤字脱字などの小さいミスの発見能力は感嘆してしまいます。きっと、
自分の作ったものはだめでも人の作ったものは、すぐに気づくのでしょう。こ
れはわれわれも同じですから。


2014.04.23(水)【バランス栄養食】(仙台・立花宏)

 先日、仕事で何箇所かをまわる必要があり、車で出かけたときのことです。
道路が混雑していたために移動に時間がかかり、なかなか昼食をとる時間がと
れませんでした。

 午後3時過ぎにようやく少し時間がとれたので、国道沿いのコンビニエンス
ストアに寄り、食事をとることにしました。しかし、次のアポイントの時間が
せまっていました。なるべく早く食べられるものと思い、店内を見回しました。
すると、ある食品が目に留まりました。黄色い箱に入った、「バランス栄養食」
と呼ばれている食品です。その食品をみると、なにかとても懐かしく感じまし
た。

 この「バランス栄養食」は、数十年前、たしか私が高校時代に発売になった
と記憶しています。当時は、その食品を食べることがとても恰好よく感じまし
た。

 高校時代、私はある運動部に所属していました。個人戦もあるスポーツで、
大会に参加し、勝ち進むと1日で何試合かをすることになります。

 同じ部に所属していた友人は県内ではトップクラスの腕前で、大会に出場す
るといつもトーナメントを勝ち進んでいました。勝ち進むと食事をするタイミ
ングにも気を使います。試合の前におなかいっぱいに食べてしまうわけにはい
きません。私の友人は、発売になったばかりのこの「バランス栄養食」を試合
の合間にすこしずつ食べ、コンディションを調整していました。

 当時はそれがとても先進的に見えました。私もマネをして、大会のたびにか
ばんの中に「バランス栄養食」をしのばせていました。しかし、たいてい、午
前中のうちに負けてしまい、試合の合間ではなく、試合後のおやつ(?)とし
て食べることになりました。

 それから数十年たちました。私はその「バランス栄養食」を購入し、コンビ
ニエンスストアの駐車場に停めた車の中で食べました。とても懐かしい味に感
じました。

 高校時代は、試合後のおやつとして食べ、試合の合間に食べることはありま
せんでした。しかし、今回は仕事後のおやつとしてではなく、仕事の合間に食
べています。

 仕事はある意味、お客様との真剣勝負の場であるのかもしれません。おなか
いっぱいに食べて、眠たい顔でその場に臨むわけにはいきません。

 私はその「バランス栄養食」を食べ終えると、まるで、これから決勝戦に臨
むような気持ちになり、次の仕事場へと向かいました。



2014.04.22(火)【たかが名刺されど名刺】(金子登志雄)

 ヨロズヤで思い出しましたが、司法書士の名刺をみると、「司法書士・土地
家屋調査士」あるいは「司法書士・行政書士」という名刺をよくみます。

 これ、専門化している都会では、逆効果だと私は思っています。もし、私が
「司法書士・土地家屋調査士」という名刺をいただいたとしたら、私は、「こ
の方は不動産専門で会社関係は詳しくないのだな」と無意識に思ってしまうこ
とでしょう。

 「司法書士・行政書士」も、「ボク、何でも屋で専門分野がありません」と
宣伝しているように感じてしまいます。

 「公認会計士・税理士」も「ボク、監査や企業評価は不得手です」というイ
メージがあります。

 は? 私の名刺ですか。「合併・企業再編他.会社法務専門」と付けていま
す。これは専門分野を宣伝しているというよりも、「不動産登記や成年後見、
訴訟などのことをボクに聞かないでね」という暗黙のアピールです。

 建設関係専門などと名刺につけている行政書士さんも、きっと建設には自信
があると宣伝しているだけでなく、「建設以外は聞いてくれるな」という効果
を狙っているのでしょう。

 たかが名刺で仕事が増えたり減ったりすることはないでしょうが、少なくと
も会社関係中心の業務を目指す限りは、会社員や社長業のお客が自分の名刺を
みて、どういうイメージを持つかにつき、配慮が必要と思いますが、同業者の
皆さんはいかがですか。


2014.04.21(月)【登記の急所】(金子登志雄)

 韓国船の遭難で被災者が当局に猛烈に抗議している姿をテレビでみるにつけ、
その痛ましさに胸が締め付けられる思いですが、同時にフクシマはじめ日本人
は何ておとしい国民なんだろうと感じてしまいます。「怒り」こそ民主主義の
発展なのに、何でも受容してしまう従順な国民性は宗教観の相違でしょうか。
不思議です。

 さて、某所より社会人向けの商業登記の講演を依頼されましたが、講師が司
法書士のためか「登記の急所」を話してほしいようです。

 登記の「要点」といった意味に過ぎないのでしょうが、改めて登記の「急所」
とは何だろうかと自問してみると、意外に難問です。というのは、商業登記の
難しさ・面白さは、登記申請行為ではなく、登記というゴールに向けた前段階
の手続にあるからです。

 増資手続でも、会社法の規定どおりの正規の手続で行くか、総数引受けで行
くか、総会議事録は319条の書面決議で行くか、自己株式を利用するか、払
込期間で行くか………、その時々の状況に応じて適切なアドバイスをすること
がわれわれの仕事(商業登記の醍醐味)であり、登記自体にはないからです。

 司法書士は登記する人と思われていますが、仮に登記するだけの場合も、こ
の前段階の手続が登記申請に耐えられるだけの適法性を十分に備えているかを
チェックしますから(私の場合はお節介にも手続の適切さまでチェックしてし
まいます)、単なる御用聞き的な代行業ではありません。

 講義では、第1には、登記を軽んじ本人申請するリスクについて、第2には、
医者に内科・外科・小児科・産婦人科………と各専門分野があるように、弁護
士や司法書士にも専門分野があるから、相談する人を間違わないようにと話す
つもりです。少なくとも都会地では、ヨロズヤは少ないですから。


2014.04.18(金)【ないことの証明】(金子登志雄)

 株券不発行の証明以外に「ないことの証明」がもう1つあります。清算人の
登記にあたり、定款に清算人会の定めがあるかないかを証明するため、定款の
添付が必要とされていることです(商業登記法73条1項)。

 しかし、本来、証明というのは「ある」ことを証明するものであって、「な
い」ことを証明するものではありません。刑事事件でも「有」罪を証明するの
であって、被告人が「無」罪であることを証明するものではありません(日本
の司法の現実は違うようですが)。

 非取締役会設置会社で取締役の互選で代表取締役を定めたら、互選規定が定
款に「ある」ことを証明しなければなりませんが、株主総会で代表取締役を定
めた場合に、互選規定が「ない」ことを証明する必要はありません。

 先般、有限会社の清算人登記の依頼を受けましたが、この場合は整備法33
条で有限会社には清算人会を設けられないので、定款の添付は不要です。整備
法という法律が「ない」ことを証明してくれているわけです。

 通常の株式会社の解散・清算人登記のたびに定款を準備するのは面倒なもの
ですから、せめて、「当社の定款には清算人会の定めは存在しません」という
自己証明で済ませられるように立法的解決をしてもらいたいものです。


2014.04.17(木)【株券不発行証明】(金子登志雄)

 「議事録は原本でなく原本証明付写しではだめか」と顧客に質問されたこと
のある司法書士は少なくないでしょう。

 「だめ」と答えるのは簡単ですが、理由まで答えていますか。理由は、条文
がそうなっているのです。

----------------------------------------------------------------------
商業登記法第46条(添付書面の通則)
1.登記すべき事項につき株主全員若しくは種類株主全員の同意又はある取締
 役若しくは清算人の一致を要するときは、申請書にその同意又は一致があつ
 たことを証する書面を添付しなければならない。
2.登記すべき事項につき株主総会若しくは種類株主総会、取締役会又は清算
 人会の決議を要するときは、申請書にその議事録を添付しなければならない。
----------------------------------------------------------------------

 つまり、1項では「………あったことを証する書面」でよいのですが、2項
では、議事録そのものが必要です。

 原本が必要なのは、金銭債権の現物出資(いわゆるDES)の債権の存在を
証する「会計帳簿」も同じです(商登56条3号ハ)。

 勘違いされているのは、株券不発行証明用の「株主名簿」です。条文上は、
「株券を発行していないことを証する書面」(商登63条)ですから、株主名
簿の原本自体である必要はありません。

 ところが先般(2月5日)の千代田支部セミナーにおける東京法務局の回答
では「株券を発行していないことを証する書面は、株主名簿に限られます。ま
た、株主名簿には、会社法第121条に規定される事項が記載され、さらに、
株券不所持の申出又は株券不発行の事実が記載されている必要があります」と
いうものでした。

 どうして、こういう回答になるのでしょうか。会社法121条に従って株式
取得日まで書けというのは、中小企業では無理な話ですし、そこまで要求する
意味もありません。株主の住所の記載もプライバシー保護の点から顧客は嫌が
ります。書いたところで、調べるわけでもないため、意味がありません。

 なぜ、株主名簿が証明に適しているかといえば、株券が発行されていれば、
株主名簿に株券番号を記載することになっているので(121条4号)、その
部分だけを示し、「ほら、株券番号が書いてないでしょ」と証明すれば十分な
はずです。

 また、基本通達に「株主名簿その他の当該場合に該当することを証する書面」
とあり、株主名簿そのものに限っていませんから、株主名簿に準じた株主名と
株主ごとの持ち株数と株券番号記載欄に不発行である旨を記載した自己証明書
面で十分だというべきでしょう。

 東京法務局の回答の真意も、私と同じだと思うのですが、こういう不用意な
回答があると、杓子定規に「株主の住所が記載されていない」「取得日が記載
されていない」と言い出す生真面目な(?)法務局職員が出てくるので、もう
ちょっと慎重に回答してほしいものです。


2014.04.16(水)【本店移転と電子申請】(金子登志雄)

 司法書士なら誰でも知っていることですが管轄外への本店移転は移転先の登
記所から移転元の登記所に完了通知があってはじめて全部が完了します。

 今回の東京から神戸への本店移転の例でいいますと、4月1日の申請で4月
9日に東京法務局で審査を終え、同日に東京法務局は神戸地方法務局に本店移
転書類を送付しました。たぶん10日か11日には神戸に到着したのでしょう。
神戸で審査が終わったのは4月14日でした。その連絡が東京に届いたのは昨
日の4月15日でした。

 さて、司法書士の皆さん、申請代理人の私が本店移転先の神戸の謄本を取得
することができる日はいつでしょうか。

 全部が終わったのが15日なら15日に決まっているじゃないかと思う方は
ベテランとはいえません。東京が終わらなくても神戸では14日に終わってい
るのですから神戸の謄本であれば14日に取得することができます。

 紙申請だと神戸の完了がすぐに分からないのですが、電子申請の謄本取得だ
と社名をいれて常時チェックしていると、神戸で14日に終わったことが判明
しますので、東京法務局からの全部の完了通知を待つまでもなく、謄本がとれ
るわけです。

 電子申請で調べると、同じ法人番号の会社が2つ登場し、神戸のものはすぐ
に謄本がとれるようになっており、東京は登記中の表示がでます。不思議な感
覚です。一瞬、東京法務局に神戸のものを申請すると、同じ法人番号だから、
東京住所のものが送られてくるかと不安に駆られましたが、東京は登記中の表
示のままなので謄本は取れませんね。安心して14日に申請し顧客のもとには
謄本が届いていますが、その後の15日の夕方になって全部の完了通知が来ま
した。

 急ぎの謄本取得の場合は、これを知っていると便利ですよ。


2014.04.15(火)【本店と支店の意味】(金子登志雄)

 4月1日申請案件がほぼ終わりました。残ったのは2か所の登記所に関わる
本店移転登記だけになりました。

 ところで、会社であれば、本社・支社というべきで、なぜ本「店」、支「店」
というのかと考えたことはありませんか。

 勝手な想像ですが、江戸時代の農業国家のときは、「お主も悪よのう」の越
後屋とか上州屋とか、販売業の「商店」のみが存在し広域の製造業などがなか
ったため本「店」というのであり、また、電話やFAXもないため、地域割り
し、その地域を統括する販売拠点が必要だったため、本店も支店も「場所」を
示すのではないでしょうか。

 会社によっては、本店と同じ場所に支店があるところもあります。本社機能
と営業拠点を分けているせいでしょうが、これは伝統的な地域割りに反するよ
うに思います。同じ場所に支店が2つあることもあります。業種別でしょう。
インターネット支店などというものもあるようです。

 現状では、製造業はほとんど支店を登記していません。トヨタもニッサンも
登記上の支店はありません。これに対して金融機関は支店が多数です。手形取
引や取立てなどに裁判の代理権を有する支店長が必要だからでしょうか。

 こうなれば、支店長を置く営業所を支店と定義したほうが時代にマッチして
いるといえないでしょうか。


2014.04.14(月)【会社法が難解な理由】(金子登志雄)

 もう来年卒業生の面接採用が行われているようですね。まだ1年も先なのに。

 医学部や理工系の学生は就職先が限られますが、法学部出身者など文科系は、
どんな業種にも進めるので、かえって「どういう業種に行こうか」と進路で悩
んでしまうものです。金融系か、製造業か、サービス業か………、だから数年
で退職し転職する人も増えます。私も長続きしませんでした。

 これと同様に、旧商法は合併対価も株式に限定されていましたし、その手続
もパターン化されており、知識があればマニュアル本を横におきながら手続が
可能でしたが、会社法では対価は株式に限定されず、多くの手続も順序を問わ
ず………で、選択肢が大幅に拡大したため、さて、どれを選択すべきかと悩む
文科系学生並になってしまいました。

 進路のように個人問題であれば、全て自己責任で何を選択しようが自由です
が、会社からの仕事の依頼に対して、「Aにしましょう」といえば、「なぜ、
BやCはいけないのですか」などという質問を受け、返答に窮したことのある
同業者も多いことでしょう。

 和食も洋食も中華も「何でもあり」の会社法だからこそ、選択肢は多くなけ
ればなりません。インド料理もタイ料理もなければいけません。全く使われて
いない特別取締役制度も誰かが必要とするかもしれないので廃止しませんし、
どこの会社が採用するのかと思われる監査等委員会設置会社という機関構成も
改正で選択肢に加わりそうです。

 この「何でもあり」が会社法の難しさではないかと感じるようになりました。
言い換えれば、会社が作った書類をもとに申請代行するだけでは不十分で、こ
の場合は、カロリーの少ない和食がいいとコンサルできないと満足した仕事に
ならなくなってきたわけです。

 何が重要かのメリハリをつけた勉強をするには、それなりの人生経験が必要
ですから、若い人には会社法が難しいかもしれません。
 
 こんなに面白い法律はないとまで、私は思っているのですが、ここでは結論
として、何をするにも一筋縄ではいきませんよということにしておきましょう。


2014.04.11(金)【「会社法」法令集】(金子登志雄)

 上記トピックスでご案内のように、「会社法」法令集が第10版になりまし
た。まだ書店には並んでいないかもしれません。

 手前味噌ですが、この法令集の青字のミニ解説は、判例付六法と同じように
結構役立ちます。書いた本人の私も、忘れていたことを、ああそうだったのか
と再認識させられ重宝しています。

 ひよっこ支部長ブログの原田先生からは以前「金子さんは、かつては目から
ウロコ(本)の先生と呼ばれていたが、いまは若い人から青字の先生といわれ
ている」といわれたこともありました。若い人が受験時代に、条文読み込みの
択一試験用に使ってくれていたのでしょう。著名会社法学者の先生からも出版
社にお褒めの言葉があったと聞いております。

 おかげさまで、会社法条文集のシェアとしては、筆頭の地位のはずですが、
意外にも、地方のセミナーへ行くと、存在すら知らない人が多いことに驚かさ
れます。都会と違って、商業登記案件が少ないことと、ネットや横の情報網が
都会地ほど活発でないことが原因のようです。

 改訂版になる都度購入する必要はありませんが、10版には改正案が掲載さ
れていますので、ぜひご利用ください。

 なお、この本は私の著作では最も売れている本ですが、下記には到底かない
ません。無料配布に勝るものなしですね。下記は法務局の窓口にあるかと思い
ますので、こちらもどうぞ。

  http://kanpou.npb.go.jp/images/s_guide.pdf


2014.04.10(木)【代文業】(金子登志雄)

 丸田さん、素晴らしい内容の投稿ありがとうございました。裁判の相手方か
らも仕事の依頼があるなんて、すごいですね。きっと、「勝った・負けた」と
いう下世話な結果ではなく、事件の真の「解決」を求めているのがよい結果を
産んでいるのではないでしょうか。

 私は会社法・商業登記専門ですが、幸いなことに、合併等の再編だけでなく、
「種類株式などの考案、株主総会の招集、株主への通知」などという1、2か
月程度の時間を要する仕事が多いため、何となく、事件を扱っている気分には
なっています。

 顧客が言っていましたが、弁護士さんは法律的事件でコメントは出してくれ、
そこで終わるが、司法書士は、種類株式案、総会招集通知案まで作ってくれ、
目にみえる形でたたき台を作ってくれるので、稟議を書く立場からは非常に助
かると。

 こういう仕事は、課題を解決するための創造力、それを表現する文章力が必
要ですから、少なくとも商業登記専門は、代「書」屋というより、代「文」業
でしょう。

 お互い、お客様に感謝されるのが一番うれしいと思うタイプのようですから、
代書業、代言業、代文業に励みましょう。丸田さんの次の投稿を楽しみにお待
ちしております。

 閲覧の皆様、上記、トピックス4もご検討ください。



2014.04.09(水)【法務局は敵ではなく商業登記実務の同志】(福岡・丸田幸一)

 私も金子先生と同様の感覚を感じています。法務局はもちろんのこと、紛争
解決業務においては、裁判官・書記官・相手方代理人弁護士そして相手方本人
も、みんな「紛争解決の同志」だと思っています。

 自分の依頼者の納得だけでは物足りない私は、関係各位の全員がより納得の
いく判決や和解を目指します。さらに、第三者や社会から見たときにも「なる
ほど」と頷かせる紛争解決をしたいと常々考えています。

 その「想い」は、多分私の訴状や準備書面、そして法廷実務に顕れていると
思います。なので、本人訴訟においてさえ、傍聴席の私に質問をするなど裁判
官は十分に私を活用してくれますし、弁論準備手続も当然のごとく傍聴させて
いただきます。

 高裁の上告審の傍聴席から喋りまくったり、同じく高裁の上告審の和解期日
に傍聴させていただいたこともあります。

 要は、裁判官や相手方代理人が「この司法書士なら上質な審理に貢献してく
れる。」と思うかどうかではないでしょうか。

 また、ガチンコ裁判や示談交渉が終わった数か月後に、相手方本人から「丸
田さん、別件で相談があるんですが。」という電話をいただくことがあります。
決して安易に譲歩しているわけではありませんが、何故か相手方本人とも信頼
関係ができてしまったりするのです。利益相反の関係上、受任はしにくいです
が・・・。

 勿論、私の依頼者との水平な信頼関係の構築については、ほかのどの司法書
士にも弁護士にも負けたくありません。

 要するに、関係各位の全員が、私にとっては「より上質な紛争解決を実現す
るための同志」なんです。

 ちなみに、以上は「業者事件を除く民事一般事件」の話です。

 話を商業登記に戻します。時々、「資本金の額」の減少や「発行済株式の総
数」の変更の依頼をいただきます。今も1件準備中です。

 その度に、金子先生の書籍を読み返しては取り組んでいるのですが、何度や
っても雲をつかむような感覚になります。いわゆる「減資」の目的(欠損填補
? 株主への払い戻し?)や、有償無償の選択、準備金・剰余金の動き、自己
株式の取得と消却などなど事案ごとに税理士と実体確認をし、議事録を作るの
ですが、どこかしっくりこないんです。

 以前に「資本金」と「株式数」が無関係になった影響もあるでしょうし、
「資本金」が単なる係数であるというのも原因のようです。

 そんな、もやもやを解消しようとこのテーマで資料を作って講義をしたりも
しましたが、その後も事案が来るたびに雲をつかんでいます。

 私が作った議案の流れでいいんだろうか、税理士は本当にそれを理解し確認
してるんだろうか、などと思いながら、今日も一日が過ぎていきます。

 最後に余談ですが、以前、このブログに投稿させていただいて以来、金子フ
ァンの皆様に時々私のブログにもアクセスいただいているようです。この場を
借りて御礼申し上げます。

(以下、金子が追加)
http://shi.shigyo.info/maruta/


2014.04.08(火)【中間領域の会社】(金子登志雄)

 定款に「代表取締役は株主総会で定めることもできる」とか「支店の設置を
株主総会で決定できる」と定めた場合は、この取締役会設置会社は非取締役会
設置会社に近づいたことになります。

 一方、「代表取締役は取締役の互選で定める」と定めた非取締役会設置会社
は意思決定において取締役会設置会社に近づいたことになります。

 こうして、典型的非取締役会設置会社と典型的取締役会設置会社との間には
多数の中間形態があるのが分かります。

 代表者選任方法を中心に登記上問題となるのは、この中間領域ですが、こう
してみると、取締役会設置型か非取締役会設置型かとこだわるのが、ばかばか
しくなりませんか。

 今後、この中間領域につき、もう少し検討しようと思っています。


2014.04.07(月)【最先端の法務部】(金子登志雄)

 4日金曜日に「会社法29条と295条2項」のことを書きましたら、何た
る偶然か、定款に「代表取締役は株主総会で定めることもできる」と定めた取
締役会設置会社A社から代表取締役変更の登記依頼がありました。

 A社は某一流上場企業の孫会社ですが、その議事録が会社法及び商業登記法
の最先端のテクニックを駆使した素晴らしいものでした。A社の担当者の話に
よると、この議事録案は、上場会社の法務部の指示で作ったものだそうです。
定款内容も同じでしょう。

 どんなテクニックかは、まだ登記申請中であり、法務局の反応も不明なため、
ここには書きません。というのは、最近の法務局は、法務局というより行政局
といったほうがよいほど、一部の職員が、適法かどうかよりも、通達や先例に
準拠した内容かどうかを基準に判断し、「経験したことのない登記」に拒絶反
応を示す傾向があり、運悪く、そういう職員に当たると、この登記の受理に苦
労しそうだからです。

 わがESGのお仲間からも、こんなメールをいただきました。
----------------------------------------------------------------------
 金子先生は例外ですが、多くの司法書士は、「法務局に何か言われれないよ
うに無難な書類、無難な書類~」を作ってしまいます。そして、法務局もそれ
に慣れ見たこともない書類だと、???? 「これ、見たこともない。ダメだ
よぉ~」となりがちですね・・・。
----------------------------------------------------------------------

 法務局OBで商業登記の神様といわれる神崎満治郎先生が、「法務局の言い
なりにならないことが法務局を育てることになり、商業登記を発展させ、司法
書士にも法務局にもよい結果を産む」とおっしゃっていましたが、私も同じで
あり、法務局は敵ではなく商業登記実務の同志だと思っていますので、異論が
あったら、「適法な内容であることに司法書士生命をかけてもいい。再検討し
てほしい」と反論したこともあります。

 しかし、上場企業の法務部が登記のテクニックについても急速に進化してい
るのに、わが司法書士界、法務局は、それに着いて行けているのでしょうか。
今後、あちこちで、最先端の法務部と先例主義の法務局職員との間に挟まれて、
双方から疎まれる司法書士が増えそうな気がしています。プロの司法書士にな
るか、法務局出入り商人に陥るか、あなたの生き様が問われています。


2014.04.04(金)【会社法29条と295条2項】(金子登志雄)

 会社法29条によると「株式会社の定款には、………この法律の規定に違反
しないものを記載し、又は記録することができる」とあります。

 事業年度が典型例ですが、定款で代表取締役を定めることもできます。取締
役会設置会社でも同じです。非設置会社から設置会社に移行する際に、よく利
用しているとおりですが、この根拠条文が29条です。

 登記情報539号19頁に、会社法立案担当者が「代表取締役の選定につい
て、取締役会設置会社においては、取締役会決議による方法(会社法362条
3項)、★定款をもって直接選定する方法(会社法29条)★及び定款にその
旨の定めを設けることによる株主総会決議による方法(会社法295条2項)
があり………」と書いているとおりです。

 本規定は設立の章に置かれていますが、上記からも、定款記載事項一般につ
いての規定であることは明らかです。
 
 上記の会社法295条2項は「取締役会設置会社においては、株主総会は、
この法律に規定する事項及び★定款で定めた事項★に限り、決議をすることが
できる」という内容です。定款で定めれば、株主総会で代表取締役を定めるこ
とができますが、取締役会の選定権限を奪うことができませんので、権限は併
存します(相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』265頁)。

 もうお分かりでしょうが、定款で直接定めるのが29条で、株主総会という
ワンクッションを置く間接方式が295条2項ですが、この関係がまだ十分に
理解されていないようです。

 他の例でいいますと、取締役会設置会社が定款で「平成26年4月1日をも
って大阪市………に支店を設置する」と直接定めるのが29条で、定款で「株
主総会で支店を設置することができる」と定め、株主総会で「平成26年4月
1日をもって大阪市………に支店を設置」と決議するのが295条2項です。

 定款の本文に定めようが附則に定めようが、定款の効力に差はありません。
ネット情報によると、間接方式はよいが直接方式は無理と思っている公証人な
どもおられるようですので、ネタにした次第です。


2014.04.03(木)【さよなら特例民法法人】(島根・根来川弘充)

 2008年12月に特別法が施行されてから、それ以前に成立した民法法人
は「特例民法法人」と言われ、公益法人、もしくは、一般法人とは、区別され
ていました。

 特例民法法人は、昨年11月末までに公益法人か一般法人に移行しなければ、
解散したことになってしまいます。

 移行の登記は、主務官庁の認可(もしくは許可)を受けてから、主たる事務
所で2週間以内にすれば良いことになっているのですが、3月も半ばを過ぎて
から、「一般法人への認可を受けたので、移行の登記申請をしてほしい」とい
う依頼を受けました。

 私は、昨年11月以降、特に相談を受けたこともなかったので、特例民法法
人について何か申請することは、もうないだろうと思っていただけに、私とし
ては、最後の申請になるかと思うと、何か感慨深いものを感じました。

 今まで、特別法施行前から、会社以外の法人の登記を多くしたというわけで
はありません。ですので、たまに依頼を受ける法人の登記と言えばそれまでで
すが、それでも、制度上、無くなってしまうのかと思うと、やはり、さびしい
ものを感じています。

 一方で、無事に、公益法人もしくは一般法人に、移行できた特例民法法人は
どのくらいの割合であるか、気になっています。今後、無事に移行できなかっ
た特例民法法人から、相談を受けることが無いことを、祈るばかりです。


2014.04.02(水)【本は知識の宝庫・心の栄養ですね♪】(富田太郎)

 昨年に続き(2013.11.07付本徒然参照)今年の初めに、またもや、
「旧根抵当権」の案件がありました。

 もっとも、今回は、不動産の量も多く、事案がより複雑で、平成に入って司
法書士となった私には、未知&神話の世界?でした。

 現在の根抵当権は、昭和47年4月に法制化されたもので、それ以前の根抵
当権はいわゆる「旧根抵当権」と言って、今の法律の根抵当権とは内容が異な
るため、現行法の根抵当権に変更しなければならないのです。

 詳細は省略しますが、主登記で極度額増額登記がされていたので、分割の登
記を入れたり、債権の範囲等を変更したり、物件も多く、また、通達では触れ
られていない論点もあり、ちょっと苦戦しました・・・・。

 どちらかというと、商業登記中心の私ですが、何故、旧根抵当権案件が、零
細「富田事務所」に来るのか?しかも、かなり癖のある案件・・・・。わが身
を嘆きました。

 以前も書きましたが、そんなとき役に立つのは資料・本です。ESGにはい
ろんな経験をされている司法書士がおり、渡部さん、鈴木さん、から紹介され
た下記本には、今回も助けられました♪

 ① 根抵当登記実務一問一答 金融財政 昭和52年発行
 ② 例解 新根抵当権の実務 商事法務 昭和47年発行

 それから、比較的新しい本ですが、

 ③ 根抵当権の実務 社団法人地方銀行協会編 金融財政 平成13年発行

などは、旧根抵当権から新根抵当権に変更するための「根抵当権分割」等の変
更契書式例まで記載されており、本当に重宝しました。

 40年前の法改正案件であっても、専門書等を読めば理解できる♪ 本って、
素晴らしいですね♪

★追伸★――――――――――――――――――――――――――――――
 ESGの仲間(鈴木隆介さん&山本浩司さん)と下記本を出版しました。
ご興味のある方は、是非!ご覧ください♪

 『もう知らないではすまされない 著作権』中央経済社 1700円+税

 奥田百子(監修)鈴木隆介・山本浩司・富田太郎著
――――――――――――――――――――――――――――――――――

 本は素晴らしいですね♪

 えっ?上記、新刊本のことを書きたかったから、無理やり本を題材にした徒
然を、書いたのでは・・・・・って??
 いぇ・・・・違います・・・・(汗)。



2014.04.01(火)【司法の民主化は遠い】(金子登志雄)

 新年度が始まりました。コートを着ている人がめっきり少なくなりました。
外では桜が咲いています。春は気持ちがいいですね。

 これから何かよいことが始まるような陽気なのに、袴田事件が即時抗告され
ました。逃げも隠れも証拠隠滅もしないでしょうから、裁判の確定をなぜ待た
ないのでしょうか。

 袴田事件は昭和41年だそうですから、前期高齢者の私が高校生時代です。
あれからずっと、いつ死刑が執行されるかと恐怖に怯える毎日だったことでし
ょう。信じがたい生涯です。

 冤罪の可能性が非常に高いので、法務大臣は誰もゴーサインを出さなかった
ようですが、袴田氏はそのことを知らずに生きてきました。いまでも車いすを
勧められると、執行の場に連れていかれると恐怖におののくとか。

 数年前にはずっと冤罪を主張していた方が死刑執行されました。ほんとは無
実だったかもしれません。死刑に至らない軽罪の冤罪(痴漢や政治事件)は、
相当な数にのぼるようです。「執行猶予だからこの辺で妥協しないと周囲に迷
惑がかかる」と計算させて嘘の自白をしてしまうようです。これは教養の高い
人を落とす方法です。

 刑事犯罪の冤罪の多くは、無職でちょっと知能程度が低く、世間から気持ち
悪がられている男がターゲットに狙われ、自白を強要されてしまうことが多い
ようです。世間もあの人なら、やりかねないと思っているので、当局も正義の
味方のつもりになれるのでしょう。こういう人は、恫喝されれば3日も持たず、
迎合してやっていないこともやりましたといってしまう傾向があるようです。

 PC遠隔操作事件の片山氏は、取り調べの様子を可視化してくれれば何でも
しゃべると上手にがんばったため、拷問まではされなかったようですが、その
代わり、1年以上も外に出してもらえませんでした。

 小沢秘書の石川さんは自殺の恐れ(証拠隠滅)がないのに、勝手にそういう
ことにされ国会議員でありながら逮捕されてしまいました。猪瀬前知事やみん
なの党の渡辺氏は全く逮捕される様子もありません。あの非民主的な魔女狩り
の猛威のようだった無実の小沢バッシングと比較して、司法の不平等を責める
マスコミはありません。わが国における司法の民主化は道遠い………。


2014.03.31(月)【期末の辞任】(金子登志雄)

 今日は3月決算会社の事業年度末日ですから、人事異動で「辞任」の登記
がいくつかあります。後任の就任が新年度の4月1日ですから、実際の登記
は明日になります。

 中小企業であれば「辞任」は、「あれ、内紛でもあったかな」と思うこと
もありますが、上記はほとんどが上場会社の役員や子会社の役員のことです
から、定例の人事異動です。サラリーマン世界の話です。これがあるから、
私の仕事も成り立っているわけで、ありがたいことです。

 中には、子会社の社長の交代もあります。新社長の印鑑証明書をみると、
近県の通常のマンションに住んでいるらしいことが分かります。

 「社長=高級一戸建て居住」ではないのです。上場会社の役員も、子会社
の社長も、オーナー社長でない限り、われわれと同じ長屋生活です。仮に運
転手付の自動車に乗っていてもそれは会社の財産であって個人のものではあ
りません。

 定年辞任もあるでしょう。安倍さんのオトモダチになればNHKの委員に
してもらえて失言でもしていればよいのでしょうが、そういう後ろ盾がない
と庭いじりで時間をつぶそうにも長屋生活では庭もありません。・・・つい
つい、定年辞任する方の今後の退屈な生活を想像してしまいました。お暇だ
ったら、司法書士試験でも挑戦しませんか。


2014.03.28(金)【資本金の多寡とゼロ】(金子登志雄)

 昨日は減資(いまは資本金の額の減少といいます)の登記を申請しました。
資本金数億円を1億円以下にして外形標準課税対策にしようとするものです。

 これに対して、今日は、利益剰余金の資本組入れの登記申請があります。
今日の会社は許認可の関係で資本金が大きいほど都合がよいようです。

 ということで、業種によって資本金の価値が異なりますが、ふと、日本で
1番資本金の大きい会社はどこかと調べてみましたが、どこだと思いますか。

 上位3つは、案の定、銀行系でした。1位が(株)三井住友フィナンシャル
グループの2兆3378億円で、2位はみずほ、3位が三菱UFJでした。
4位になってはじめて事業会社が登場しますが、東京電力でした。ここまで
が1兆円以上で、5位以下は単位が1桁相違しました。

 逆に上場会社でありながら、資本金が1億円に満たない会社も17社あり
ました。上場の際に公募したはずですから、途中で減資でもしたのか理由は
不明です。

 さすがに資本金0円はないようです。現在は、これが許されます。資本金
以外でゼロが許されるのは、100%減資の際の発行済株式の総数でしょう
か。それ以外にも、たまに、「普通株式〇〇〇株、A種種類株式0株」など
という登記簿をみますが、こういう場合のゼロは登記すべきではないと思っ
ています。何も書いてないことで、ゼロだと分かりますから。


2014.03.27(木)【日本語講師】(金子登志雄)

 昨日は久々の会社法講師で、まだ雪の残る山形県米沢市に行ってまいりまし
た。地酒とともに松阪牛・神戸牛と並んで日本三大和牛に数えられる米沢牛を
ご馳走になってまいりました。味覚音痴の私にはもったいないことでしたが、
セミナー担当のT先生ほか皆様お世話になりました。

 セミナーでは全問をQ&Aにしてみました。眠くならずに済むからです。

 簡単な問題を1つご紹介しましょう。

 会社法349条には、「定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決
議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる」とあるので、
文字どおり、株主総会で代表取締役を定めた場合も定款の添付が必要となり、
また取締役全員を代表取締役に定めることはできない―――〇か×か。

 この前段を「定款の定めに基づく取締役の互選又は定款の定めに基づく株主
総会の決議」、後段を「取締役の中から適任者を選び出す」と解釈してしまう
方がおられるので、Qにしてみましたが、本欄閲覧の方は大丈夫ですか。

 非取締役会設置会社の株主総会は万能で何でも決められますから、定款の定
めは不要です。条文は「株主総会の決議又は定款の定めに基づく取締役の互選」
という配列にすべきでした。

 「取締役の中から代表取締役を定める」は、取締役の中から一部の適任者を
選ぶという意味ではなく、代表取締役は取締役でなければならないという意味
ですから、取締役全員を代表者にすることもできます。会社法362条3項の
「取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない」も同じ
解釈であり、全員を代表者に選定することが可能です。

 これじゃ、まるで日本語講師ですね。立法担当者は誤解を招かない日本語の
文章に疎かったようです。


2014.03.26(水)【割当てもどき】(金子登志雄)

 21-23日の3連休は拙著『募集株式と種類株式の実務』(前身は『これ
が新増減資だ種類株式だ』)の改訂版作業をしておりました。会社法改正案が
落ち着いたため、やっと改訂版に着手することができました。

 2年以上経て読み直してみましたが、(手前味噌ですが)我ながら濃い内容
に驚きました。もうちょっと平易な内容の本と思っていましたが、論文かのよ
うでした。

 この本の最大のインパクトは。募集と割当ての相違を明らかにしたことでし
た。それまでは、第三者割当てを株主総会で決議したのに、なぜ取締役会で再
度割当決議をする必要があるのかと疑問に思われていたからです。

 そこで私は株主総会で決議したのは募集行為の1つの「割当てもどき」であ
って、割り当てられる権利を付与した真の割当てではないと説明しました。

 すなわち、親戚知人に「出資しませんか」と声をかけるのが縁故募集だとし
たら、特定のAさんやBさんに「あなた達だけにお願いします。出資しません
か」と出資を勧誘するのが世間でいう第三者割当てであって、これはAさんや
Bさんが申し込んできても自動的に割り当てたことになる「割当てを受ける権
利」を付与したわけではないので、「割当てもどき」だと説明しました。

 ですから、株主をその持ち株比率に応じて平等に扱う場合でも、株主に「割
当てを受ける権利」を付与しなければ、これは第三者割当てであって、総数引
受契約でも実行することができます。

 いまは100%子会社での増資はほとんどこれでしょう。その先鞭をつけた
本として、私にとっても愛着のある本でした。改訂してもニーズがあるか不安
ですが、なるべく早く出したいと思っています・


2014.03.25(火)【解散と清算株式会社】(金子登志雄)

 3月31日が近づきました。例年、この日に解散する会社が多く、4月1日
の官報には多数の解散公告が掲載されます。

 先日、3月31日をもって解散と事前に決議した場合は、31日24時の解
散だから4月1日付解散になるのかと質問されました。私の返答は、「会社が
どういうつもりで解散したか次第でしょう。午前0時に解散のつもりだったか
もしれませんし……。また、たとえ24時解散だとしても、4月1日付けでは、
会社の意思に反すると思う。清算会社の事務年度の開始時期が解散日の翌日に
なっているため(494条1項)、会社としては3月31日に解散し、4月1
日から清算会社という意向だから」というものでした。

 その質問の中に株主総会で同時に選任した清算人の就任は登記事項ではない
が4月1日になるのかというものがありました。

 しかし、31日午後5時に解散しても、清算事務年度は4月1日からになり
ますから、会社法494条1項は、事務年度を日の単位で区切っただけであり、
「解散時点=清算会社への移行時点」は、やはり午後5時というべきです。

 こう考えると、清算人の株主総会での選任は常に「予選」になりますね。本
例で清算会社になった4月1日以降に清算人を選任してもよさそうに思います
が、この場合は、「法定清算人→株主総会選任清算人」ということになるでし
ょう。持分会社から株式会社に組織変更した場合は、組織変更後に取締役の就
任承諾があれば足りますが、清算人の場合は解散後では無理のようです。

 通常の会社から清算会社になることは、組織変更とは似て非なるものと思い
ました。



2014.03.24(月)【ゴーストバスター】(金子登志雄)

 合資会社は無限責任社員と有限責任社員で成り立ち、合同会社は有限責任社
員だけで成り立つ会社です。たった1人の無限責任社員が死亡し相続人がその
地位を承継しないと、合資会社とはいえなくなります。

 そこで、会社法639条2項は「合資会社の無限責任社員が退社したことに
より当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社
は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなす」と規定しています。

 この規定をみれば誰でも、無限責任社員の死亡の日が3月1日であれば、そ
の日に「合同会社となる定款の変更をした」と解釈するでしょう。これが常識
的解釈というものです。

 ところが、数年前の1時期、東京法務局で「合同会社〇〇」と商号まで決め
なければならないから、それを決めた日(例えば3月10日)が合同会社にな
った日だという見解が出されました。どうも、その見解が全国の法務局に伝染
していたようで、いまだにその亡霊が生き残っていることを知りました。地方
の某大手法務局で、3月1日付けで申請したら10日に訂正させられてしまっ
たという情報が司法書士連合会のネットに載っていたからです。

 この見解では、新商号等を決めるまでずっと無限責任社員が存在しないのに
合資会社のままになってしまうじゃないか、法務省の担当者の著書である『商
業登記ハンドブック』や『通達準拠/会社法と商業登記』の見解に反するじゃ
ないかと書いた2年前の拙稿(一昨年の登記情報605号55頁)を示しても
効き目がなかったそうです。

 拙稿には、商号が決まらないうちは合同会社といえないのなら、3月1日に
生まれた乳児は親が名前をつけるまで人間ではないのかとまで皮肉を込めて書
いたのに、通じなかったようです。理屈ではなく、その法務局の統一方針とい
う行政の論理が優先したとのことです。

 しかし、少なくとも、この亡霊見解の発信元である東京では、この見解は生
き残っていないはずです。現在でも生き残っているのは、たぶん、その大手法
務局だけだと思いますが、登記官の個人的意見ではなく、その法務局の統一見
解というのなら、全国的にも影響するため、地元の司法書士会さん、早めに退
治をお願いします。


2014.03.20(木)【隠ぺい文化】(金子登志雄)

 最近の刑事ドラマは、警察内部で不祥事が起こると幹部が隠ぺいをはかり、
正義の主人公がそれを阻止するという内容が多いように感じていますが、昔か
らだったでしょうか。

 さて、一昨日は、ネットで、恐ろしいドキュメンタリー番組を見てしまいま
した。フランスの報道番組のようです。

https://www.youtube.com/watch?v=6JdXl7Ol5_U&feature=player_embedded#t=137

 最もショックな部分は、フクシマの学校に置かれている放射能測定器の値が
低くなるように測定会社に国が圧力をかけていたことでした。また、28年前
になるチェルノブイリ時代のソ連よりも、先進国?の日本の現状の安全基準が
圧倒的に低いということでした。ソ連政府では居住を許さない場所に、いまで
も日本人が安全だといわれて住み続けているとのことです。まるで、人体実験
じゃないですか。

 国民は無知だから不安をあおってはいけない、真実は一部の支配階級が知っ
ていればよいというのは後進国の論理です。事実を知らねば正しい判断は誰も
できません。また都合の悪いことは隠せという隠ぺい体質は、ムラ社会の論理
であって、ムラの外にとっては、えらい迷惑です。

 もっと取り締まりを強化せよと思う人もいるでしょうが、隠ぺい体質は日本
全体のもので、国の組織である警察や検察組織のほうが一般社会以上にひどい
状態ですから、絶望的気分です。

 こういうときこそ真実の情報を求めるマスコミの出番ですが、日本にはまと
もな報道機関がありません。社長が政権幹部と夜の宴席を共にし、親交を深め
ている国です。先進国並みの覚醒した国民による民主国家への道はまだまだ先
のようです。



2014.03.19(水)【ハンコ文化】(金子登志雄)

 流行っている事務所は12月決算会社の定時株主総会でご多忙なようですが、
当事務所の顧客には、12月決算会社がほとんどありません。ほとんどが3月
決算会社です。

 したがって、今あるのは、3月31日付け辞任と4月1日付け役員就任の手
続の相談が中心になっています。代表取締役の交代もあります。

 それらの相談過程で議事録案を作ることが多いのですが、100%子会社な
ら株主が1名ですから、会社法319条のみなし総会(株主全員の同意による
書面決議)が最も容易ですが、お客様の中には、ちゃんと取締役会を開いて、
臨時株主総会を招集して……という手続にしないと困るという会社もあります。

 取締役会を開催して議論してハンコを押さないと、役員の仕事を全うした気
分になれないのかもしれません。われわれも登記申請書にハンコが不要といわ
れたら、きっと有難味がなくなり、寂しい気分になることでしょう。

 ところで、最近の代表取締役就任者等の印鑑証明書をみると、これで実印か
と感じるものが増えました。三文判と大差がないのです。実印らしい印影も多
いのですが、正式(?)に氏名全部の入った実印をみる機会が減りました。

 きっと、急に実印を登録しなければならないことが過去にあり、急遽、いつ
も使っていた身近にあるハンコを登録して、そのままにしているのでしょう。

 「他と識別できるその人独自の印影のもの=実印」という概念は廃れつつあ
るように感じていますが、他の司法書士さんはどうでしょうか。インターネッ
ト時代ですから、仕方ないとはいえ、100年後の日本にハンコの習慣や文化
が残っているのか疑問に感じています。


2014.03.18(火)【毎月末日現在】(金子登志雄)

 新株予約権が2月中に6個(4日に1個、5日に2個、14日に3個)行使
されたとすると、3つの登記を個別に申請するのが原則ですが(3つを同時に
申請することもできます)、会社法915条3項に「毎月末日現在により、当
該末日から2週間以内にすれば足りる」とあるため、例外的に2月末日付で一
括して6個の行使があったと登記することもできます。実務上は、この一括登
記のほうが主流です。

 さて、この新株予約権の行使期間が「平成26年2月20日」までになって
いたら、2月末日付では登記できません。そこで、原則に戻って、個別に登記
するしかないのか、行使期間満了日の20日付なら一括登記も受理されるのか
という質問が商業登記倶楽部にありました。

 私は、行使期間満了日付の一括登記が可能だと思うと回答しましたが、これ
に対して、都内A法務局では一括登記を認められなかった経験があるとの情報
が商業登記倶楽部に寄せられたとのことです(矛盾したことに14日に全部行
使がなされた場合は一括登記を肯定するのだとか)。こういう情報が多く寄せ
られることは、ありがたいものです。

 想像ですが、A法務局では、上記のようなケースは明文がないのだから原則
どおり個別でしか申請できないと考えたのでしょう。

 しかし、この条文の「毎月末日現在により」とは、月次決算と同様に毎月月
末締めで、その月の分をまとめて登記してよいというものでしょう。重要なこ
とは、一括登記が可能だということであって、毎月末日は、行使期間中の通常
の場合を意味するだけだとみるのがリーガルマインドではないでしょうか。

 2月末日で締めたら、6個の行使があったので、行使期間の満了日が20日
だったため、その日付で一括登記したいというのが自然な流れです。

 たぶん、上記の法務局と同じA法務局だと思うのですが、地元のある有力司
法書士さんが、つい最近、A法務局に尋ねたところ、「当法務局では一括登記
を受理する」との回答でした。一時的にNOと答えても、落ち着いて考えれば、
肯定説になるものです。

 あるいは、聞く人によって、回答する人によって、内容が異なり、法務局を
代表した見解でないこともよくあります。また、単に、YESかNOかと聞く
のではなく、私はこれこれの根拠でこう考えましたが、これでよいでしょうか
と聞かないと、おかしな回答になることが少なくありません。

 重要なことは法務局の誰かさんがどう答えたかではなく、自分がどう考えた
かではないでしょうか。



2014.03.17(月)【専門家格差】(金子登志雄)

 土日は会社法の講演レジュメを作っていましたが、改めて商業登記の専門化
傾向を確認しました。年々、私の作るレジュメのレベルを下げざるを得なくな
ってきているからです。旧商法時代には当たり前のように通じた話が通じにく
くなってきました。

 第1に、地方では商業登記を扱う登記所が1県1か所程度になったため、商
業登記知識の普及度が減少し、扱う人が減少してきたこと。この結果、扱う人
と扱わない人とのレベル差が拡大したこと。このまま行くと、平均的司法書士
の会社法知識が税理士並に落ちるのではないかと危惧してしまいます。

 第2に、会社法改正動向をみるまでもなく、多機能化のバージョンアップが
進み、分量が増えてきたこと。現行会社法がウインドウズXPとすれば、改正
会社法は8.1です。ますます?使いにくくなります。監査等委員会など、採
用する会社が日本全体でも何社になるのでしょうか。現行委員会設置会社です
ら100社に達していません。特別取締役制度採用会社など聞いたこともあり
ません。機能ばかり増えて、無用な機能を排除しないのですから、六法も厚く
なります。どうせなら、枕に代用できるほど厚くしてほしいくらいです。

 第1の部分に関しては、都市部でも同じであり、種類株式・新株予約権・組
織再編あたりの論点を電話だけで議論できる司法書士は限られてきました。会
社法が改正後には、さらに進むでしょう。

 アベノミクスは、米国並に1%の金持ちと99%の平民を作る経済政策です
が、このまま行くと、司法書士も1%の会社法・商業登記のプロと99%の平
民司法書士に分化しそうです。1%側の私にとっては一見ありがたいことのよ
うですが、肝心の収入の面では99%の側ですから、少しもありがたくありま
せん。もっともっと議論できる司法書士が増えてくれたほうが、楽しみが増え
るというものです。


2014.03.14(金)【ゴーストライター】(金子登志雄)

 立花さん、投稿ありがとう。相変わらず、書き出しが上手ですね。ゴースト
ライターでも、開業したらいかがですか。

 私は、ゴーストライターにさほど違和感を持っていません。りっぱな職業で
あり、本人のへたくそな文章を読むくらいなら、ゴーストライターの分かりや
すい文章を読むほうがよほどマシだと思っています。

 あの作曲家の問題でも、製造と販売を分担していただけなのに、もう少し、
上手な着地があってもよかったのではないでしょうか。

 日経新聞に「私の履歴書」というのがありますが、私は、あれは新聞記者が
書いている、あるいは相当に手を入れていると思っています。内容が分かりや
すすぎます。素人はもっと下手な文章を書くはずですし、あの枠内に字数ぴっ
たりに終わらせることは無理です。

 それでも本人が「このとおりでした。これで結構です」と納得すれば、それ
で十分ではないでしょうか。総理大臣や社長の演説原稿を部下や取り巻きが作
文しているのと大差ありません。

 ところで、3.11問題ですが、なんと、あの放射能地域に取り残された犬、
猫、牛、だちょうを世話している方がいるのをご存じですか。最も放射能汚染
を浴びている方になります。外国メディアでは有名人のようですが、原発推進
の日本のメディアはわざと無視しているのでしょうか。下記サイト中段のドイ
ツ新聞の翻訳をご覧ください。

    http://ganbarufukushima.blog.fc2.com/


2014.03.13(木)【闇】(仙台・立花宏)

 その日、私は仕事が終わると、明るい街の中を避けるように帰宅しました。
帰宅後、電灯はつけず、暗い部屋の中で、懐中電灯の明かりを頼りに夕食をと
りました。夕食といっても、メニューは家に残っていたせんべいやビスケット、
そして、冷蔵庫に入っていた牛乳です。

 まだ、寒い季節ですが、暖房も使いませんでした。暖房のない自宅の部屋で
の生活はこんなにも寒いものだったのだと不思議な感慨を覚えました。テレビ
はつけず、携帯ラジオからの声に耳を澄ませていました。

 「あの日から3年、経ったのだな。」
 そうです。その日は3月11日。その日からちょうど3年前、東日本大震災
が発生しました。その日、私は、東日本大震災が発生した3年前のあの日の夜
の生活をあらためて体験してみようと、電気やガス等を使わずに過ごしてみた
のです。ほんの数時間ですが、電気やガス等を使わない生活というのは、非常
に不便なものだと実感しました。なによりも感じたのは、真っ暗な部屋の中で
の生活というのは、なんともいえない不安な気持ちになるものだということで
す。

 先日、週刊将棋新聞という新聞に、将棋の名人になったことがある故米長邦
雄氏の言葉が紹介されていました。「私は教育で一番大事なことは、子どもに
“闇を与える”ことだと思っています。例えば明かりひとつない森の中に子ど
もたちをぽんと放り出すと、怖いから誰かの手を握ろうとします。それが連帯
感になるんです。そして、自然に対する畏敬の念が生まれ、健全な心が育つん
です。しかし今は電気が24時間ついていて、画面を見ながらピコピコやって
います。それでは連帯感が生まれないし、親子関係もおかしくなります」

 あの日、私たちは天から“闇を与えられ”ました。単に明かりがない、とい
うだけの意味ではありません。将来が見えない状況という“闇”です。その闇
の中、私たちは不安な気持ちを抱えて生活していたはずです。当時、その“闇”
の中を生きていくために、皆、お互いを思いやり、助け合いました。連帯感が
ありました。

 そして今、街の中には再び、光が溢れるようになりました。スイッチを押せ
ば、電灯も、テレビも、そしてパソコンも使えます。溢れる光は、今だけでな
く、将来までも照らしているような感覚になります。

 子どもだけではありません。大人だって、24時間、光に照らされた生活が
当たり前になってしまうと、自然への畏敬の念が薄れ、感覚がおかしくなりか
ねません。

 あの日の“闇”だけは、けっして忘れないようにしよう。私は、そんな気持
ちで、その夜を過ごしました。


2014.03.12(水)【自己株に出資】(金子登志雄)

 先日は、司法書士連合会の掲示板の質問に間違って答えてしまいました。

 質問内容は、金銭で新株予約権の行使がなされ、全て自己株式が交付された
のだが、金銭の払込みに関する証明書が必要かというものでした。

 旧商法時代の私の記憶では、間違いなく(?)不要だったので、「自己株式
が交付された場合は発行済株式数も資本金も増えないのだから不要です。通達
で添付書面の部分をご確認ください」と答えてしまいました。

 通達のその部分には、「金銭を新株予約権の行使に際してする出資の目的と
するときは払込みがあつたことを証する書面」とありましたので、やはり「資
本金額が増加する出資の目的」がない限り不要であることに間違いないと事前
に確認していました。

 ところが、あとで質問者から結果は必要だったといわれ、「まさか!」と思
い、あわてて調べましたら、私自身も旧商法時代に「銀行の保管証明書が必要
だから気をつけましょう」とお客に説明していた資料まで出てきました。

 いつから、なぜ間違った思い込みをしてしまったのかは、いまだに不明です。
なぜか、自己株のときは、銀行も保管証明さえ出してくれないと間違った思い
込みをしていました。

 それ以上に、驚いたのは上記の「出資の目的」です。新株の発行と自己株式
の処分を規定している会社法199条にも、「金銭以外の財産を出資の目的と
するときは」などとありますから、この「出資の目的」は、発行済株式数や資
本金の増加を目的とすることではなく、単なる出資の対象という意味で、財産
の種類を表すだけでした。

 間違った思い込みをしていると、見慣れた表現さえ異なった受け止め方をし
てしまうものだと妙に不思議な感覚でいます。



2014.03.11(火)【あれから3年】
(金子登志雄)

 あれから3年ですね。

 被災者はいまだに故郷に帰れず、放射能の後遺症や2次被害に苦しんでいる
というのに、責任追及はうやむやにされ、「絆」・「ひとつになろう日本」な
どという標語のもとに、いつしか日本人全体の総ざんげ問題にされてしまい、
それを理由に消費税アップの口実に使われてしまいました。

 今や、のど元過ぎればで、東京オリンピックの開催決定やソチオリンピック
のお祭り騒ぎや、反韓・反中国に目を向けさせられで、政権及び大マスコミの
国民誘導作戦は大成功のようです。被災地の人は、東京オリンピックのせいで
復興が遅れると困惑しているようですね。

 この4月からは消費税が大幅にアップしますが、「消費税アップ→国の税収
増加→官僚が使えるカネが増える→利権の拡大と公務員天国→庶民は地獄」と
私は思っていますので、これで「→更なる不況の深化→失業の増大→無差別殺
人や放火の増大、他国蔑視の右翼思想の拡大」がますます増えるのではないか
と心配しています。

 生活が苦しくなると、精神も劣化し、俺が不幸なのは世の中が悪いからだと
思い犯罪が増えますし、精神のバランスを保つため、他を蔑視する傾向が生じ
ます。

 生活の底上げこそ平和社会につながると私は思っていますが、被災者や弱者
切り捨ての格差社会が今後も続きそうですから、庶民の我らは、生活防衛に努
力するしかないのでしょうか。若者は、弁護士や司法書士よりも公務員を志望
するようになりそうです。


2014.03.10(月)【確定申告と著作の改訂】(金子登志雄)

 今週は、個人の確定申告のピークで、会計事務所に雑談の電話でもしようも
のなら、怒鳴られても仕方ない時期です。

 私は、面倒な経理や税務申告は親族に任せているので、確定申告ももう済み
ました。

 結果は、前年よりも納めなければならない税金が大幅に減りましたが、これ
は、喜んではいけませんね。収入が減ったという意味ですから………。

 固定顧客中心の司法書士業務は、例年どおりでしたが、印税や講演料という
余禄(?)の雑収入が会社法バブルの崩壊で、いまだに減少し続けています。

 しかし、たぶん、昨年で底打ちしたでしょう。今年あたりから、会社法の改
正を前提に、著作の改訂版を出す時期になるからです。

 著作の改訂は校正と同様に見直し作業に似ており、自由な創造力を十全に発
揮できる場面ではないので、意欲はわきませんが、改訂版を出せるという意味
は、自分の作品がまだ世の中から利用価値を認められているという証拠ですか
ら、うれしいことでもあります。

 いまや伝説の名著(?)になった『組織再編の実務』(商業登記全書)も、
今年か来年には改訂版を出したいと思っています。


2014.03.07(金)【募集によらない新株の発行】(金子登志雄)

 司法書士駆け込み寺の当事務所では、この時期、全国からの問い合わせが増
えますが、近年は、種類株式の質問が増えてまいりました。

 さて、次のように株式が発行されており、甲種株式は、甲種株式1株を会社
に取得請求すると、普通株式1株が交付される内容だとして、いま100株を
取得請求したら、次はどう変化するでしょうか。

  普通株式        1000株
  取得請求権付の甲種株式  100株

 甲種株式が0株になって、普通株式が100株増えると思い込みしている人
(登記官を含む)が多いのですが、取得請求というのは、甲種が普通株式に転
換(変身)することではなく、甲種は会社が取得して自己株式となり、その取
得の対価が交付されるという物々交換方式です。よって、甲種株式数はそのま
まで、普通株式が100株増えます(新株の交付の場合)。

 続いて、新株の普通株式が100株増えることに、新株の発行決議が必要だ
と思い込んでいる方が少なくありません。

 この新株は募集株式ではなく、募集によらない甲種株式との引換株式ですか
ら、新たに発行決議をする必要がありません。自動発行です。株式の無償交付
も株式分割も、募集によらない新株の発行だから、資本金が増えないのです。


2014.03.06(木)【ソチオリンピック】(根来川弘充)

 2月に無事開催を終えたのソチオリンピックに大変興奮いたしました。私は、
昔スキーに真剣に取り組んだ時期があるのですが、人間、板一枚、思い通りに
扱えないものだということを、身にしみて感じております。

 もし、間違って自分が同じ場所に立っていたなら、雪山の斜面も、スケート
リンクも、まともに立つ事さえできないだろうと思います。

 そんな場で、競技をしている選手を見るだけで、とても興奮してしまい、仕
事に支障が出るとは思いつつも、ついつい遅くまでテレビを見てしまいました。

 ところで、このオリンピックについて、「メダルがとれない選手は、税金の
無駄遣いだ」という意見をインターネットの記事で目にし、すこし考えさせら
れました。

 税金を使ってスポーツをする場が他にないかと考えて浮かびましたのは、学
校の体育です。こちらは、憲法が義務づける教育の場だから、当然なのでしょ
う。

 私は、教育の資質の向上につながるのだから、オリンピック選手に税金を使
うことは、メダル獲得の有無に関わらず、必要だと思っています。

 しかし、何か少し説得力に欠ける気もしています。今は小さい記事かもしれ
ませんが、立法的な解決も必要なのかもしれないとも思いました。



2014.03.05(水)【縁起のよい会社】(金子登志雄)

 平成16年6月の定時総会で就任した取締役が平成18年6月の任期満了直
前の定時株主総会で任期を10年に延長したとすると、本年に任期満了です。

 やっと会社法によって任期が10年に延長された取締役の任期満了に遭遇し
そうです。今年は、こういう案件がぼちぼち入ることでしょう。

 通常は、途中で辞任したり死亡があるので、あるいは目的などの変更がある
ので、10年間登記しない会社は少ないのですが、もし、10年間全く登記せ
ずに済んだ会社があったら、実に縁起のよい会社といえましょう。誰も死なな
かったし、解任騒ぎもなかったということですから………。

 そういう会社は身近にはなく思い出せませんが、他の司法書士はいかがでし
ょうか。

 10年前の事件記録をみれば、いくつか出てくるでしょうが、とっくに他の
司法書士のところで役員変更をしている可能性のほうが大きいでしょう。

 私に限らず常連客以外のお客様は、その時々で司法書士を変えることが少な
くありません。

 先般の千代田支部の懇親会でも、ベテランの司法書士さんから「金子さんに
電話で相談したら、株式交換ができるといわれた人が、うちに依頼に来たよ」
といわれてしまいました。

 なぜ、当事務所に来なかったのか不明です。へたに名前が知られてしまった
ために報酬が高いとでも勘違いされたのでしょうか。それとも、不明点だけ解
決すれば、依頼する司法書士は近くの方で十分だと思ったのでしょうか。見知
らぬ人からの電話相談の場合は、こういうことも、たまにあります。



2014.03.04(火)【ハンコの押し方】(金子登志雄)

 今日はどうでもいい話かもしれません。

 さて、司法書士業務は押印する機会が多いのですが、角印である職印(司法
書士金子登志雄印)は文字数も多く10年以上も使っていたため、目詰まりし、
印影が汚くなったため、ネットで調べて、石鹸水を付け、歯ブラシで目詰まり
を除去し、同時に朱肉を変えました。

 朱肉を購入する際に、上手に押す方法を印鑑屋さんに聞きましたら、朱肉に
ドブっと浸すな、軽くポンポンと3度くらい叩き、押すときは「の」の字を書
くように、全部に均等に圧力をかけよ、とのことでした。どの世界にもノウハ
ウというものがあるものですね。

 さっそく実行してみましたら、新しい朱肉のおかげで、見違えるような印影
になりましたが、圧力のかけ方で、ムラが生じることもありました。

 ところで、まるでスタンプ印かのように文字がよく読める印影の委任状等を
もらうことがあるのですが、これ、たぶん、朱肉ではなく、朱色のスタンプ台
を使ったのではないでしょうか。

 押印は朱肉をつけよという決まりはないでしょうから、試しに私も朱色のス
タンプ台を入手し、使ってみましたら、やはりくっきりした印影が現れました。
新しい朱肉と新しい朱肉色のスタンプ台での印影は、私の目には、区別がつき
ませんでした。

 朱肉のほうが長持ちし、スタンプの場合は変色するそうですから、朱肉にし
ますが、多忙のときは、スタンプにし、黙っていることもあるかもしれません。


2014.03.03(月)【権威】(金子登志雄)

 今日はひな祭りですね。兄弟姉妹も子供も男ばかりの私には、ずっと無縁の
お祭りです。

 さて、上記トピックスの登記情報への投稿は、伝統的な登記実務への異論で
あり、ビジネス法務へのものは大手法律事務所や信託銀行の見解に対する異論
でしたから、私のことを「権威に逆らう人」と思う方も出てきそうです。

 これまでも、一般的見解に異論を唱えることが多かったので、そう思われて
も仕方ありませんが、当方としては全くその気がなく、法務局も大手法律事務
所等も、ともに会社法や商業登記を研究し発展させる同志であり、切磋琢磨す
る同業者としか思っていません。

 しいて言えば、私が逆らうのは日本の学者様に対してです。欧米の学者は実
務の研究にも熱心なのに、日本の学者は、机の上でしか研究しません。外国法
と比較して、日本法を論じているだけです。会社法学者でありながら、会社の
経営者の苦労を知ろうともしません。そういう方の主張に実務家の立場から反
発することが多いというだけです。

 20代、30代の頃は、権威ある学者本の見解と自分の見解が違うと、自分
の勉強が足りないと思いました。40代の頃は、お互いの立場が違うと感じま
した。50代を過ぎると、自分の見解に自信がつき、学者見解を批判すること
ができるようになりました。学者見解の背景までみえるようになったからです。

 歳をとるのも悪いものではありません。経験が増えると、みえないものもみ
えるようになります。権威に対して、従順にならずに済みます。


2014.02.28(金)【同時公告】(金子登志雄)

 今日は、4月1日合併等の公告掲載の最終日です。4月1日は組織再編の効
力発生日のピークですから、ここ数日、大量の公告が官報に掲載されています
ので、インターネット官報でも、ご覧ください。

 同時公告は官報の号外に掲載されますが、27日付官報でも大量に掲載され
ていました。組織再編よりも資本金の額の減少の方が多い印象でしたが。

http://kanpou.npb.go.jp/20140227/20140227g00039/20140227g000390112f.html

 しかし、こんなに同時公告があるということは、言い換えれば、いかに決算
公告をしていない会社が多いかということでしょう。

 無理もありません。北海道の片田舎の小さな株式会社でも全国に向けて決算
公告をせよというほうが無茶というものです。

 会社法制定時には、決算公告を大会社に限定しよう、公開会社に限定しよう
という動きがあったのですが、中小企業団体の代表が情報開示はいいことだと
いう発想で、決算公告の制限の緩和を要求しなかったため、旧商法時代と同様
に、すべての株式会社に必須のものとされてしまい、今日に至ります。

 最低資本金制度のない会社法の下では、資本金1円の会社も設立することが
できます。この会社も決算公告するときは約6万円の費用がかかります。資本
金の6万倍の費用負担ということになります。これでは、合併等の公告をする
ときだけ決算公告をするという会社が圧倒的多数になるのも無理ありません。

 なお、昨日「官報を決算公告掲載場所としている会社にあっては、同時公告
を行うことによって、結果的に決算公告をしたことになる」と説明しましたが、
これは通常の場合であり、当然ながら、損益計算書も公告しなければならない
大会社には通じません。大会社は決算公告しているところが多いので、ほとん
ど問題になりませんけど。


2014.02.27(木)【同時公告後の催告】(金子登志雄)

 ネタがなくなったら、先般の千代田支部セミナーです。

 そこの質問4に、次のようにあるのですが、東京法務局の回答は例によって
「後日回答」でした。

----------------------------------------------------------------------
 組織再編における債権者への催告書の記載内容について

 合併等組織再編の際にいわゆる同時公告(合併等の公告とB/S要旨公告を
同時に掲載)をした場合、債権者への催告書にはB/S要旨を掲載すべきか。
----------------------------------------------------------------------

 確認しましたところ、これは、公告方法を官報とする会社が、次のような同
時公告をした場合、催告書の発送の場合は、貸借対照表の要旨を掲載せずに、
この官報の頁を記載するだけでよいかという質問のようです。

 http://kanpou.npb.go.jp/20140226/20140226g00038/20140226g000380083f.html

 拙著『親子兄弟会社の組織再編の実務』51頁には、「官報を決算公告掲載
場所としている会社にあっては、同時公告を行うことによって、結果的に決算
公告をしたことになる。したがって、この場合には、同時公告後に催告する場
合には、貸借対照表の要旨を催告書に記載せずに、その官報の掲載頁を催告書
に記載することによって、有効な催告となる」と説明していますから、後日回
答の結果が「その方法は不可」となれば、私の信用問題です。

 商事法務1766号72頁で、会社法立案者の相澤哲・和久友子氏が「なお、
この公告は、会社の公告方法を官報で行うこととしている場合には、以後決算
公告として取り扱うことができるが、電子公告や日刊新聞紙である場合には、
別途決算公告をしなければならない」と書いているとおり、われわれ商業登記
のプロの間では常識的知識です。

 なのに、なぜ、いまさら、東京法務局が、こんな程度の質問を法務省照会に
回し、「後日回答」としたのかは、分かりません。


2014.02.26(水)【強制辞任届】(金子登志雄)

 昨夜のニュースによると、失言でおなじみのNHK会長が全理事から日付空
白の辞表を集めていたようですが、非民主的なワンマン社長のよくやる手です。
おれのいうことを聞かないと、いつでもやめさせるぞということでしょう。

 こういう辞表に勝手に日付を入れるのは私文書の変造にならないのでしょう
か。

 そういうおそれがあっても、本人の署名押印付であれば、真意に基づかない
辞任であることの証明が難しいでしょうし、白紙委任した手前、辞任させられ
たご本人も戦うことに後ろめたさが残ることでしょう。

 こういう手法は、ソフトウェア開発とか、コンサルタント会社のように、各
自の創意工夫が必要な頭脳系の業種では使えません。体育会系の効率を重視す
る業種だけに有効です。ブラック企業といわれる会社(居酒屋や小売り業種)
もそういう業種です。

 NHKのような報道機関は、つい頭脳系の組織と思ってしまいますが、実態
は体育会系なのかもしれません。辞表を提出した理事も理事ですから。

 最近は、ケネディ米国大使が偏向したNHKの取材を拒否したり、欧米のマ
スコミがNHKらの姿勢を批判しているのに、またもや自分でニュースのネタ
を提供するとは、あきれた報道機関ですが、受信料集金のおじさんも、さぞや
やりにくいことでしょう。私は口座の自動引き落としですから、集金のおじさ
んに嫌味もいえませんが。


2014.02.25(火)【民法規定140条ただし書】(金子登志雄)

 上記のお知らせ3のとおり、中央経済社の「ビジネス法務」に、「吸収型再
編の効力発生日と期間計算に関する考察」を掲載してもらいましたので、ぜひ、
ご覧ください。

 内容は、昨年の11月、12月の本欄に書いたことをさらに発展させてまと
めたものです。新保さゆり司法書士の「司法書士のオシゴト」の中の「期間の
ハナシ」を発端としたもので、ご本人の了解を得て掲載しました。

http://blog.goo.ne.jp/chararineko/s/%B4%FC%B4%D6%A4%CE%A5%CF%A5%CA%A5%B7

 中心的内容は、吸収合併等の効力が効力発生日の午前0時に生じたとしても、
期間計算の面では民法140条ただし書(初日算入)で計算すべきではないと
いうもので、一般的見解に対して異論を唱えました。

 上記のお知らせ2も、登記実務の運用に疑問を提起したものですが、ほんと
期間計算については、学説も十分ではなく実務に混乱が生じている部分です。

 司法書士連合会の掲示板でも、民法580条の「買戻しの期間は、10年を
超えることができない」の期間計算では、戦前の判例を根拠に、初日を算入し
て計算すべきだという意見が掲載されていました(私は反対意見)。

 民法140条ただし書は、お騒がせ規定になっていることだけは確かです。


2014.02.24(月)【株式分割と行使価額の調整】(金子登志雄)

 土日は、講演レジュメ作業をしていました。

 さて、上場会社は本年4月までに「1単元100株」とするため、単元株式
制度未採用の会社が、1株を100株に分割し、1単元100株を定めていま
すが、その際に、案の定、新株予約権の行使価額でびっくりしているようです。

 拙著でも本欄でも「新株予約権は『個』で数えるものであって、株数基準で
はないから、行使価額も1個当たりにすべきだ」と説明しているのですが、右
に倣えの上場会社のほとんどが行使価額につき1株単位で定めています。次の
とおりです。

----------------------------------------------------------------------
 新株予約権の行使に際して出資される財産の価額は、新株予約権の行使によ
り交付を受けることができる株式1株当たりの払込金額(以下「行使価額」と
いう)に付与株式数を乗じた金額とする。
 なお、新株予約権発行後、当社が株式分割または株式併合を行う場合、次の
算式により行使価額を調整し、調整による1円未満の端数は切り上げる。
                    1
 調整後行使価額=調整前行使価額×―――――――――
                 分割・併合の比率
----------------------------------------------------------------------

 この1株当たりの行使価額が1234円だったとすると、1株を100株に
分割すると、1株当たり12.34円になるところ、端数切り上げで13円に
なります。「1個1株」だったとすると、分割後が「1個100株」になりま
すから、1234円が1300円になり66円の値上がりです。

 1000個でも6万6000円の増加ですから、気にする金額ではないとは
いえ、新株予約権の設計ミスでしょう。もっとも、「赤信号、みんなで渡れば
怖くない」で上場会社のほぼ全部がこういう設計になっています。



2014.02.21(金)【先端手続と意識】(金子登志雄)

 昨日、本欄で、組織再編の仕事がないと嘆きましたら、偶然にも電話があり、
近々に依頼されそうです。グッドタイミングでした。こういうお客様は、大事
にしないといけないですよね。

 さて、仲間内の司法書士同士の会話でも「お客が『資本金÷株数=整数』で
ないと気持ち悪いようだ」などと、いまだに額面株式の発想から抜けきれない
ことを話題にすることが少なくありません。

 株主総会等の書面決議(会社法319条)を受け入れることのできない顧客
もあります。正式に株主総会を開催しても、出席取締役が議事録に押印しない
ことに抵抗をもたれる顧客もあります。

 せっかく会社法が簡易で便利な方法を定めても、長年しみついた意識がそれ
について行けないわけですが、こればかりは世代の問題もあって、いかんとも
しがたい部分があります。

 当の私も、スマホなどという便利なものを拒否し、いまだにガラケー(ガラ
パゴス携帯という意味らしいですね)ですし、私と同世代の友人司法書士は、
インターネットやメールさえ使っていません。司法書士は個人事業主ですから、
パソコンの操作を教えてくれる上司もいませんし、それで仕事上、何も困って
いないのであれば、パソコンを覚える必要もないでしょう。

 商業登記を仕事の中心に置く限りは、パソコンは必須です。情報収集に役立
ちますし、インターネットで、官報をみることもできます。下記の日新製鋼の
合併公告はいかがですか。

 http://kanpou.npb.go.jp/20140220/20140220h06233/20140220h062330027f.html

 自己株式を承継することにも触れているのは、株主向けの公告内容ですから、
債権者向けの官報公告には記載不要ですが、情報開示の一環として任意に開示
しているものです。また、日新製鋼ホールディングスが純粋持株会社をやめて
事業会社に戻ることが分かります。


2014.02.20(木)【場数を踏む】(金子登志雄)

 2月中旬が過ぎたというのに、予定を書き込みしている司法書士手帳は連日
真っ白の状態です。4月の組織再編の仕事は今のところありません。これで組
織再編専門司法書士といえるのでしょうか。

 しかし、不思議なもので、突発的な質問が電話やメールで寄せられ、事務所
に行けば、登記依頼の郵便物が舞い込んでいたりで、ここ毎日、バタバタして
おります。

 司法書士駆け込み寺の業務は、時節柄、盛況です。その半分以上がお金にな
らない相談ですが、質問されるのは自分の勉強にもなり好きですし、人の役に
立っているという意識を持てますので、生きがいの少ない老人の身としては、
うれしいものです。

 質問は新株予約権や種類株式に絡むものが多いのですが、最近は、新株予約
権付社債や全部取得条項付種類株式による少数株主排除策など、高度な質問が
増えてきたので、結構、喜んで質問を受けています。

 ほとんどが経験済みですが、仮に未経験の質問でも、類似事例を経験してい
たり、質問等により疑似体験をしていますので、場数だけは私の財産だと思っ
ています。

 登記は、習うより慣れろとは、よくいったものです。慣れただけで学習しな
ければ応用力がつきませんけど。


2014.02.19(水)【任期の起算点問題その2】(金子登志雄)

 昨日の続きです。

 任期の起算点である「選任後」というのは、任期の満了日を示す基準だとの
私の説明から、会社法立案者が「この選任というのは選任決議時のことであっ
て、株主総会で選任の効力時点を定めても不可」と説明していることが何とな
く理解できませんか。

 松井信憲著『商業登記ハンドブック〔第2版〕』435頁などは、取締役の
任期につき株主総会のコントロールを及ぼすという立法趣旨からすると、やや
硬直的すぎると批判していますが、登記実務上は、「選任の効力を〇〇日から」
と株主総会で定めても、任期は決議時から起算する運用になっています。

 例えば、3月決算の上場会社(公開会社)が平成25年6月の定時株主総会
で、平成26年4月1日を合併の効力発生日として、その日から甲を取締役と
定めても(選任の効力発生日をその日と定めても)、甲の任期は合併効力発生
日から2年ではなく、平成25年の定時株主総会の決議時から2年になります。

 こうしてみると、やはり任期の短縮というのは、起算日を後ろにずらすこと
よりも満了時点を手前に移動させることだと立法担当者は考えていたといえる
のではないでしょうか。

 たぶん、ここが立法担当者と松井氏との認識ギャップでしょう。


2014.02.18(火)【任期の起算点問題】(金子登志雄)

 会社法332条1項によりますと、「取締役の任期は、選任後2年以内に終
了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げな
い」とあります。そして、2項により、非公開会社であれば、選任後10年以
内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで
伸長することができます。

 この任期の起算点である「選任後」を旧商法時代と同様に「就任後」とする
ことができるのかという論点があります。旧商法時代は「就任」時基準でした。

 この問題を考える際には、会社法332条は、期間の満了日を規定している
だけだということを忘れないでください。同条には、任期の起算点につき「選
任後」とありますが、これは満了時点を定めるための起算点であって、具体的
に任期が開始するのは就任後です。取締役と会社との関係は委任契約ですから、
委任の承諾があったときから始まるのは当然のことです。

 「選任後」を「就任後」に変えると、期間の満了時点が動いてしまうことが
あります。たとえば、3月決算の公開会社で、本年3月31日に選任された取
締役は、平成27年5月か6月の定時株主総会の終結時までの任期であるのに、
4月1日に就任承諾し、就任を基準に計算すると、平成28年5月か6月の定
時株主総会の終結時までになり、この定款規定は無効になります(下記図の①
と②の関係です)。

(満了日が伸びるのは原則として不可)
 ① 選任後――――――――――――――――――――――→|
 ②  ×就任後――――――――――――――――――――――――→|
 ③  〇就任後――――――――――――――――――――→|

 しかし、上記の×印の②も、非公開会社であれば、任期の上限の枠内ですか
ら、任期延長規定として無効とはいえません。公開会社であっても「就任後1
年以内に………」であれば、合法です。

 また、決算期前に選任され決算期後に就任承諾したような特殊例を別にする
と、通常の場合は、選任後も就任後も任期の満了時点は同じです。①と③の関
係だからです。

 いずれにしろ、「選任後」を「就任後」と定款変更したいという場合に、上
記のことを十分に分かっているのか疑問です。③の意味での定款変更であった
ら、意味がありません。

 結局のところ、任期の短縮は任期の満了時点を短縮することができるという
のが本意ですから、起算点を「就任後」と定める意味は、大きいものではあり
ません。


2014.02.17(月)【本店ビル名の変更】(金子登志雄)

 世はオリンピック一色ですね。たぶん、こういう状況になるのは、世界で日
本と韓国くらいでしょう。

 さて、金曜日に続いて第2弾です。

 先般の東京法務局をお迎えしての千代田支部セミナーに、次のような質問項
目がありました。

----------------------------------------------------------------------
 本店所在のビル名が変更されたことを原因として本店又は主たる事務所の変
更登記の添付書類として取締役会議事録は必要か。
----------------------------------------------------------------------

 東京法務局の回答は、「後日回答」でしたが、この問題は、外部の事実の変
化に過ぎないから、委任状に記載すればよいと長い間実務で運用されてきたこ
となのに、その慣例に疑問でも生じたのでしょうか。

 こんなことまで本省照会する必要はなく、東京法務局見解を堂々と出してほ
しいものです。法務省と見解が相違しても、法律解釈ではよくあることですか
ら、何の問題もないと思うのですが………。

 そもそも、本店所在場所は、現実に存在する場所の中から「ここを本店所在
場所にする」に選択したということであって、現実にあり得ない場所を選ぶこ
とはできません。東京タワー頂上から100メートル上などという本店を定め
たら却下されることでしょう。

 本店が△△町にあったのに、これが〇〇市に合併されたら、取締役会決議と
は無関係に、本店所在場所は〇〇市になります。本店ビル名の変更も同様であ
り、会社の意思と無関係に外部要因で変更が生じたのですから、取締役会決議
など無関係のはずです。

 取締役会決議必要説は、取締役会で決議したものだけが本店所在場所だとい
う発想ですから、東京タワー頂上も取締役会決議で定めれば本店場所になれる
という思考でしょうか。

 「後日回答」………合格発表を待つような、長年培ってきた登記実務の伝統
が壊されていく不安を持たせる表現です。


2014.02.14(金)【質問の仕方】(金子登志雄)

 先般の東京法務局をお迎えしての千代田支部セミナーに、次のような質問項
目がありました。

----------------------------------------------------------------------
 定時改選時に代表取締役を予選することについて、改選前後(選定時と代表
取締役就任時)における取締役に変動が生じない場合は許容されているところ
(★)、改選時ではなく、次の事例のように任期途中で辞任する代表取締役の
予選についても、同様に許容されるか。

 12月10日付取締役会(取締役ABCD4名)
 ---12月31日付をもって取締役辞任予定の代表取締役Aの後任として、
1月1日付をもってBを代表取締役に選定。

 12月20日付株主総会で取締役Cが辞任。後任の取締役としてXを株主総
会で選任・就任。

 1月1日代表取締役B就任(取締役BDX)
----------------------------------------------------------------------

 東京法務局の回答は、慎重を期して「後日回答」でしたが、このどこが問題
なのか私には理解できません。精鋭揃いの東京法務局らしくありません。

 おそらく代表取締役B選任時の取締役会メンバーと効力発生時のそれが相違
してもよいのかという疑問でしょうが、では、この12月10日の取締役会で
「きたる1月1日をもって、………に支店を設置する」と決議したら、この支
店設置は無効とでもいうのでしょうか。代表取締役の選定も同じであり、12
月10日の取締役会決議は有効であり、私は何の問題もないと考えています。

 構成メンバーの相違は問題外です。上記★部分は、ABCDが重任前に重任
後の代表取締役を予選した場合であり、本件とは相違します。

 また、本件で、A辞任、B代表取締役就任を先に登記し、日を空けてC辞任
及びX就任を申請すれば、どこの登記所でもフリーパスです。

 一昨年のことでしたが、新日鉄と住金は、株式交換して同日に子会社となっ
た住金を吸収合併いたしました。吸収合併を決議したときの住金の株主と効力
発生時の株主は全員が交代しています。

 株主が決議時点と効力発生時点で異なることは、組織再編でよくあることで
す。なぜ、取締役会の場合は、だめだと思うのか不思議でなりません。

 質問者も質問者です。こういう質問をするときは、「代表取締役の選定と支
店の設置を一緒に決議したのですが、両方とも有効だということで問題ないで
すよね」と、上手に質問すればよいのに、わざわざ「ノー」の回答を出しやす
い質問形式にしています。

 まさか、だめという回答がでることはありえないと思っていますが、一抹の
不安がありますので、この徒然で先手を打って取り上げてみました。当局の皆
様がみてくれているかは、はなはだ疑問ですが………。


2014.02.13(木)【オリンピック】(仙台・立花宏)

 いよいよソチオリンピックが開幕し、毎日、熱戦が繰り広げられています。

 オリンピックは4年に1度しか開かれない大会。選手たちはこの大会に向け
て最善の調整してくるはずです。その大会のなかでは、いろいろなドラマも生
まれます。そして、そのドラマの強い印象は、人々の心に様々な思いを残すこ
ともあります。皆さんは、オリンピックにどんな思い出がありますか。

 私が冬季オリンピックで思い出すのは、黒岩彰さんというスピードスケート
短距離の選手です。1984年、私が思春期だったころ、黒岩選手はサラエボ
で開催されたオリンピックに出場しました。前年の世界選手権で総合優勝して
おり、そのオリンピックでも500mの優勝候補の筆頭にあげられていました。

 日本中が優勝を期待していたと思います。というより、多くの人々が、当然、
優勝するものと思っていたように思います。黒岩選手には大きなプレッシャー
がかかっていたことでしょう。

 当時の500mは、一発勝負でした。インスタートとアウトスタートがあり、
アウトスタートは後半のコーナーがイン側で、スピードが落ちやすく、不利と
いわれていました。

 サラエボオリンピックでの黒岩選手のスタート順は、抽選の結果4組のアウ
トスタートでした。また、天候の影響でスタートが遅れたりしたそうで、アウ
トコーススタート以外にも不利な状況があったといわれています。

 結果は、10位。日本中が落胆したと思います。

 黒岩選手の心中はどのようなものだったでしょう。私は、結果よりも黒岩選
手がどんな気持ちなのかが気になりました。どのような心境で帰国するだろう。
周囲の人たちにどのような顔をするのだろう。スケートは続けるのだろうか。

 もちろん、黒岩選手になんの責任があるはずもありません。しかし、時とし
て人の期待は、それに応えられなかった者に、大きな心の傷を与えることがあ
ります。帰国した黒岩選手は一言も言い訳をしなかったと思います。

 そして4年後、黒岩選手はカルガリーで開催されたオリンピックの舞台に帰
ってきました。4年間、きっと、ひたむきな努力を積み重ねてきたはずです。

 この大会も一発勝負。スタート順の抽選がありました。その結果、なんと黒
岩選手のスタート順は4組のアウトスタート。4年前と同じです。なんという
因縁でしょう。これは、悪夢の再来なのか。それとも、神様が準備してくれた
雪辱の舞台なのか。

 結果は見事、銅メダルを獲得。私は不覚にも、目頭が熱くなった記憶があり
ます。

 先日、地元の新聞のコラムに、フィギアスケートの金メダリスト、荒川静香
さんのコーチの言葉が紹介されていました。

 「オリンピックはゲームなのだから楽しまなくてはいけない。しかし、本当
に楽しむ権利を獲得できるのは、死ぬほど苦しんで準備した人だけだ。」

 私はこれまで、黒岩選手にとって、栄光の舞台であるはずのオリンピックは、
はたして楽しいものだっただろうか、と思い悩んでいました。しかし、この記
事を読んで、ようやく確信しました。黒岩選手はオリンピックに向けて死ぬほ
ど苦しんで準備をしたはずです。楽しむ資格はあったはず。いや、きっと楽し
かったはずだと。

 ※この記事を書き終えたあと、スキー女子ジャンプの高梨選手の結果を知り
ました。高梨選手にとって、これからの4年間は何物にもかえがたい貴重な4
年間になるはずです。
 きっと、神様が、オリンピックの本当の楽しさを4年後にとっておいてくれ
たのだと思います。



2014.02.12(水)【職務執行者の辞任就任登記】(金子登志雄)

 都知事選の結果を受けて、政府は早速、大多数の「民意」で肯定されたとし
て、原発再稼働の動きに入ったようです。手抜き工事をしないことと、地震が
来ないことを祈るのみです。
  
 (マスコミが伝えない反原発候補の敗戦の弁)
  http://tanakaryusaku.jp/2014/02/0008741

 さて、合同会社など株式会社ではない会社(持分会社)では、法人も役員に
なれます。業務執行「社員」、代表「社員」であり、法人株主がそのまま業務
執行機関になるのと同じです。

 ただ、法人は肉体がありませんから、手足用に「職務執行者」を選任し、そ
の者に合同会社の経営を担当させます。登記簿では「社員に関する事項」の部
分に次のように記録されます。

 住所・・・・
   代表社員 甲株式会社
 住所・・・・
   職務執行者 A

 Aの就任承諾書も選任機関である甲株式会社に対してするものであり、担当
する合同会社に対してするものではありません。

 では、このAが辞任し、甲株式会社がBを選任した場合は、どんな登記にな
るでしょうか。

 通常の思考であれば、「A辞任」と「B就任」という2つの登記でしょうが、
社員自体が交代したわけではありません。したがって、一括して「代表社員変
更」の登記がなされます。重任登記と同じく別枠を作りません。

 初体験の登記でしたが、登記記録はよくできているものだと改めて感心いた
しました。


2014.02.10(月)【設立時役員選任時期】(金子登志雄)

 土曜日の大雪の際に、これで都知事選の投票率が大きく下がり、公明党など
の組織票で有利な舛添さんの勝利は間違いなさそうだ、安倍政権は、まだまだ
運が味方しているようだと思っていましたら、そのとおりになりました。

 小泉さんの2月5日のツイッターには「テレビや新聞の都知事選報道が限定
的、時には一方的だと感じるのは僕だけだろうか。原発の争点隠しにも見える」
とマスコミ批判をしていましたが、さすがの小泉劇場も、マスコミの意図的無
視には勝てなかったようです。

  https://twitter.com/J_Koizumi_Japan

 日本の行く末を決める大事な選挙でしたから、投票率の低さには情けない思
いですが、長いものには巻かれるのが江戸300年からの日本人の伝統文化み
たいなものですから、仕方ないのでしょうか。

 こういう話をすると私も日本の将来に悲観的になるので、いつもの会社法の
話に戻しますと、日司連ネットに「会社法の条文では、資本金入金後に役員を
選任することになっているが、事前に選任してもよいのではないか。法務局に
よって対応が違うようだが」という投稿がありましたので、私も次のように投
稿しておきました。

----------------------------------------------------------------------
 東京本局では補正になります。「発起人1名の事例だったら資本多数決と無
関係で問題ないはずですが」と反論しても、「条文どおり」と言われます。裁
判所であれば立法趣旨から個別対応ができても、法務局では通達でもないと限
界があるのでしょう。某地方法務局では何もいわれずに受理されましたけど。

 こういうのは、へたに統一しないほうが私はよいと思っています。「今回に
限り……」という対処が無理になり、われわれのクビをしめてしまいますから。

 もし、日付を訂正できないのであれば「なお、この選任は出資を条件に効力
が生じる」と挿入したら受理されるかもしれません(保証はできません)。ま
た、非取締役会設置会社の代表取締役は発起人が選べるのに、取締役は選べな
いのかと聞いたら、どういう反応があるのでしょうか。

 定款での選任は認められ、その定款を作った発起人が選んだらダメというの
もおかしな論理だと思っていますが、いずれにしろ、グレーはグレーで、白黒
つけないのもいいものですよ。
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2014.02.07(金)【職務執行者の変更】(金子登志雄)

 昨日も東京は非常に寒かったです。都知事選候補者は大変だったでしょう。
私は、優雅に外出時はタクシーを使いました。たまには、この程度のぜいたく
も許されるでしょう。

 それだけ久々にバタバタと動き回りました。その中の1つに、合同会社の代
表社員の職務執行者ABをCDに交代させる登記申請がありました。

 申請書を作成中に登録免許税(別表)を確認しましたら、職務執行者の変更
がないのです。まさか、会社の支配人に準じて3万円ということはないだろう
と思いましたが、ふと、登記簿謄本をみたら、職務執行者は法人代表社員の登
記の1部になっていることに気づき、「職務執行者の変更の登記=代表社員の
変更の登記」だと分かりました。これなら、通常の役員変更と同じに考えれば
よいわけです。

 さて、都民の皆さん、いよいよですね。日本の行く末を決めるような重要な
都知事選ですが、残念ながら、私は都民ではなく投票権がありません。

 投票には必ず行きましょう。行かないと、後日、「あの人に投票して正解だ
った」とか、「あんな奴を書かなければよかった」などという反省も感想もわ
きません。マスコミによって作られた空気で動かずに、自分の頭で選択するこ
とを期待しています。


2014.02.06(木)【ヤブヘビ】(金子登志雄)

 昨日は東京司法書士会千代田支部において、東京法務局の相談官等を講師と
したセミナーがありました。主として、事前質問に答える形式で進みましたが、
法務局の考え方が分かるので、こういうセミナーは助かります。企画をしてく
れた支部役員に感謝です。

 詳細は支部からそのうち公表されるでしょうから、ここには記載しませんが、
事前質問の中には、「後日回答」というのがいくつかありました。1法務局だ
けでは決められないと判断したり、法務局内部で意見が分かれたりしたのでし
ょう。上位機関(法務省)に確認をするなど、他と調整のため後日となったわ
けです。

 このように、登記の世界でも、登記官によって意見が違うことが多々ありま
すし、法務省内部でも、その担当役席が現在は誰かになっているかによって意
見が異なったりします。

 これらは、人間社会では致し方ないことですから、われわれベテラン司法書
士は、それを知りながら上手に世渡りしてきたわけです。

 ですから、この質問に対して、自分が長年実行している実務慣行と違う回答
がでたら困ると思えるような「ヤブヘビ」の質問をみると、「そっとしてくれ
ればよいのに、これで今までの緩やかな運用が厳しい運用になりかねない」な
どと心配してしまうわけです。

 われわれ司法書士は、これ専業で何十年と生きてきましたから、実務の長年
の慣行や運用をよく知っています。ところが、法務局や法務省は国家公務員の
世界ですから、人事異動で昔のことや実務慣行を知らない人も偉くなって赴任
してきます。そういう方が回答すると、長年の実務慣行に反した回答が生じて
しまうので、「ヤブヘビ」の質問だけはしてほしくないと思ってしまうわけで
す。


2014.02.05(水)【2種類の登記官】(金子登志雄)

 昨日の東京は雪交じりで非常に寒かったです。日経平均(ダウ)は610円
という信じがたいほどの暴落でしたし、世の中の変わり目かと思わせるものが
ありました。ひょっとして、小泉劇場の再来を起こさせないようにしているマ
スコミの都知事選に関する情報操作に対して、お天道様がお怒りなのかもしれ
ません。そのせいか、盛り上がらないですね。まだ選挙カーにすら遭遇したこ
とがありません。

 さて、昨日の登記の仕事は設立1件だけでした。大安だったせいでしょうか。
場所は東京法務局でしたが、そこに行ったついでに、知り合いの職員の方に偶
然鉢合わせしたため、「東京法務局で種類株主総会と共催しても議事録を分け
よといわれた人がいる」「〇〇について、東京法務局で取り下げさせられた人
がいる」などと最近の情報をお伝えしましたら、却下はできないから受理せざ
るをえないと思うとの返答でした。

 そうなんです。前にも書きましたが、登記調査官には2種類があり、却下事
由に該当するかどうかと適法性を基準に考える人と、先例どおりの申請かどう
かという書式重視派があり、後者の方は、「こんな登記初めてだ」となると、
受理に抵抗します。

 私のように「日本初」を喜ぶ司法書士にとっては、前者はお仲間であり、面
白いこと考えたねぇと評価してくれますが、後者の方に遭遇したときは、説明
に骨が折れます。もう慣れてしまい、説明書や類似事例を一緒に添付するよう
にしてますが……。幸い、ネット検索が上手になり、そういう資料を探すのに
苦労しなくなりました。


2014.02.04(火)【種類株主総会との共催】(金子登志雄)

 群馬司法書士会のメンバーの方から、拙著に従い臨時株主総会と種類株主総
会を共催し、1枚の議事録に両方の内容を織り込んだところ、某大手法務局か
ら「共催はよいが、議事録は2つにしてほしい」といわれたと聞きました。

 もっとも、同じものを2枚出してくれれば、それでよいとなったようですが、
まだ、そんなことをいう担当者が残っているとは驚きです。

 次の招集通知をみてください。

http://www.mxmobiling.co.jp/html/news/articles/topics/pdf/2013-08-01_01.pdf

 共催ですから、臨時総会も種類株主総会も同時に開催され、種類株主総会独
自の開始時間などはどこにも書いてありません。これで、2つの議事録にせよ
というのは、無理というものです。「臨時株主総会議事録 兼 種類株主総会
議事録」でも、1枚に2つの議事録があるので、何の問題もないはずです。

 旧商法時代は臨時株主総会議事録の中に「本総会は種類株主総会を兼ねる」
と書くだけで済みました。

 上記のように2つに分けよとなったのは、実に迷惑なことに、愚かな人が相
談コーナーで「2つに分けないといけませんよね」と質問し、東京法務局が「
ご意見のとおり」と答えてしまったのが最初でした。

 余計な質問をしてくれたもので、東京法務局も「まぁ、それでいいんじゃな
い」と気楽に答えただけでしょう。「ねばならない」という回答とは思えませ
ん。現に、私は、何度か、これで登記を終わらせています。

 というわけで、とっくに改められたと思っていましたが、いまだに亡霊のよ
うに生き残っているようですから、早期に改善してもらいたいものです。


2014.02.03(月)【久々の前橋訪問】(金子登志雄)

 金・土曜日は、久々に群馬の県庁所在地である前橋市に行ってまいりました。
群馬司法書士会のお招きにより、会社法の講義のためでした。

 土曜日の開催なのに、会員300名強のところ100名以上の参加がありま
したので、ありがたいことでした。研修担当のK先生ほかのご努力のたまもの
です。お世話になり、ありがとうございました。

 「会社法の勉強はあきらめて、仕事は拒否せず、あっせんに徹したら……」
などというメチャクチャな話をしてきましたが、4時間の間、眠り続ける方が
少なかったので、まぁまぁ、好評だったのではないかと思っています。

 群馬県は私の故郷ですが、群馬では西と東で学区制が敷かれており、西の住
民であった私が東の前橋を訪問することは、それほど多くはありません。

 それでも司法書士や弁護士を営む旧友がいますし、父親の墓もありますので、
自己費用で前泊して、30年ぶりに旧交を暖め、数年ぶりに墓参りしてきたわ
けです。

 旧友も古くからの知人もみな元気で、現役で仕事をしており車の運転もして
いました。定年退職のない司法書士・弁護士は、車の運転ができる限りは現役
を続けることができ、ありがたいものだと再認識した次第です。いまだに熱心
にタバコ税を納めている元気者は私1人でしたけど。


2014.01.31(金)【株式の交付と発行ほか】(金子登志雄)

 ある吸収分割契約書に、「甲は、乙に対して、分割対価として金銭400万
円のほか、株式200株を交付する」とあったとします。

 この株式200株の交付が甲で200株の新株を発行することであろうと、
ぴんと来るでしょうか。

 慣れないと難しいと思いますが、会社法2条21号に、新株予約権とは「株
式会社に対して行使することにより当該株式会社の【株式の交付】を受けるこ
とができる権利をいう」とあるように、「株式の交付」という場合は、新株の
発行と自己株式の交付の2つの場合がありますが、自己株式を保有している会
社は少ないので、通常は新株の発行を意味します。

 次に、このケースにおいて、移転する純資産額が簿価でも時価でも1000
万円だとした場合に、この甲における株主資本等変動額(=現物出資額のよう
なもの)は、いくらになるでしょうか。

 1000万円と答える方が多いのですが、甲における純財産増加額は、ここ
から400万円を控除したものですから、600万円です。

 このうち半分(300万円)以上を甲の資本金に計上しないといけないよう
に思っている方が少なくありませんが、組織再編ですから、資本金増加額はゼ
ロ円でかまいません。

 以上のようなことを会社の方や担当会計事務所さんが分かっていないことが
少なくないようですので、気をつけてアドバイスしましょう。


2014.01.30(木)【専門化する商業登記】(金子登志雄)

 昨日の続きですが、商業登記を行政書士にも開放せよという行政書士会の動
きがある一方で、商業登記から離れる司法書士もいます。前者は商業登記の大
衆化であり、後者は専門化ですから、相反する動きだといえましょう。

 一部の行政書士さん(もともとは司法書士事務所の補助者だった方が多い印
象です)がいう「商業登記は簡単で誰でもできる」という論は、「書式に従っ
て必要箇所を穴埋めするくらいは誰でもできる」という論ですから、無茶な話
です。

 ネットで会社の設立を安価で引き受けている事務所は、そういう事務所であ
り、「質問は禁止です。答えられませんから」という意味を含んでいるとみて
よいでしょう。

 種類株式発行会社の設立手続ができるのかなどと嫌味をいうまでもなく、監
査役に業務監査権限がある場合とない場合で定款の文章のどこがどう変わるの
かを答えられないのなら、設立手続に関与すべきではありません。

 子会社の設立であっても、会社の担当者から、必ず10回以上も質問されま
す。彼・彼女が稟議を書く際に、理解していないといけないからです。それだ
け、本来は内容が深いものです。

 それに即答することのできる人は専門家のはずの司法書士であっても、誰で
も可能ではありません。弁護士さんであれば、なおさら答えられません。普段、
会社法の業務とは付き合っていないからです。

 商業登記を取り扱う法務局の減少及び会社法の複雑化の改正方向に伴い、商
業登記が徐々に専門家の仕事というイメージが強化されているように思います。
そのため、多くの司法書士にとっては「商業登記の開放は、俺の仕事には関係
ない」と思うか、「ますます開放は無理になった」とみるか、どちらでしょう
か。



2014.01.29(水)【商業登記を担う司法書士の減少】(金子登志雄)

 冬になると、当事務所には、みかんの入った段ボール箱が置かれ、気分転換
に食べていますが、ネット情報によると、エアコンの普及でコタツが減り、そ
れに伴い、みかんの消費量が急減しているのだとか。

 まるで、風が吹けば桶屋が儲かるの類の話ですが、わが業界では、商業登記
を取り扱う法務局が1県1か所程度に集約化されてしまいましたので(東京だ
けはまだですが)、商業登記を扱う司法書士が減少傾向のようです。

 理由としては、近くの登記所の窓口で相談しながら行うことができなくなっ
たこと、パソコンに弱い高年齢者が電子申請することができず、紙による郵送
申請では補正が生じた場合のことを考え、どうせ商業登記案件が少ないのだか
ら、今後は不動産一本で行こうなどと考えたためではないでしょうか。

 中小企業の役員の任期が10年まで延長できるようになったこと、新しい会
社法に着いていけなくなったことなども大きいことでしょう。

 そうすると、会社の登記としては設立がメインになりますが、この分野は税
理士や行政書士が本人申請で対応してしまうことも多いので、ますます、やる
気がなくなってしまうのかもしれません。

 しかし、この状態は、商業登記を担う司法書士制度の危機でもあります。せ
めて、仕事を受託し商業登記に詳しい人に任せるべきです。共同受託であろう
と、復代理であろうと方法は問いません。受託せずに、周旋に徹してしまうの
もよいかもしれません。

 せっかくお客がいるのに「モッタイナイ」ですから、「オモテナシ」の心で
顧客に接しましょう。


2014.01.28(火)【安全確認と事故その2】(金子登志雄)

 県庁所在地に原発があるのは島根だけみたいですが、もともとは郡部地区に
あったのが、市町村合併で県庁所在地になったとネットで知りました。

 しかし、日本の原発が県庁所在地に置かれていないということは、安全に不
安がある証拠でしょう。ほんとに安全であれば、国会議事堂や都庁の横におい
てもよいわけです。少なくとも、電力会社の本社の敷地に置くくらいの覚悟を
示してくれないと困ります。

 原発のない関東人としては、フクシマやハマオカが脅威であり、地震が起き
るたびに、震源地はどこだとビクビクしてしまいます。原発賛成者は、怖くな
いのでしょうか。自分のことより、子孫のことが心配です。

 それにしても「原子力ムラ」といわれる電力会社の資金力によるマスコミ支
配はものすごいですね。相変わらず、都知事選を前に、手の込んだ世論誘導を
していますが、そうして作られた空気でモノを判断しない賢い有権者として投
票に臨んでほしいものです。

 話変わって、下記のような運動があるようです。私も賛同し署名しました。
私や息子が徴兵されなかったのも、この憲法のおかげですから。

(日本国憲法第9条を保持している日本国民にノーベル平和賞を授与して)
   ネット署名:http://chn.ge/1bNX7Hb


2014.01.27(月)【安全確認と事故】(島根・根来川弘充)

 皆様、こんにちは。本年2回目の登場です。

 さて、都知事選でも論点と言われている原発問題ですが、私の住む島根県で
は、県庁所在地に原発があり、その再稼働について、昨今、大きく論じられて
います。

 ここで、知事や各市町村長が、その再稼働の条件として、「事故をおこさな
いという、安全が確認されれば・・・」という意見を良く耳にするのですが、
私は、この意見には、どうしても違和感を覚えます。

 そもそも、原発に限らず、「(人間が)安全を(事前に)確認できる事故」
など、存在するのでしょうか。人間が細心の注意をはらっても、おこってしま
うのが、「事故」であり「災害」なのではないかと思います。

 事故は発生することを前提として、議論がされれば、これによる危険とはな
にか、発生する損害の規模はどのくらいなのか、そして、その損害が回復、も
しくはそれを代償できるのかといった点が、もっと論じられても良いと思うの
ですが、あまり目にすることがありません。

 議論がすり替わっているようで、そのこと自体に、とても不安に感じます。


2014.01.24(金)【変更と消滅登記】(金子登志雄)

 会社法909条に「登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したと
きは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない」
とあります。

 この変更の登記と消滅の登記とは何でしょうか。広義では、設立など創設の
登記以外を変更の登記といい、消滅の登記も含みますが、狭い意味で使う場合
です。

 まず間違いなく、狭義の変更の登記は「AがBに変わった」という登記で、
消滅の登記は「Aのまま消えた」ということでしょう。消滅の結果は登記簿か
ら抹消されることでしょうから、取締役の退任や支店の廃止も含むと考えます。

 「変更」を分析すると「Aが消えてBに生まれ変わったこと」といえます。
これが同日であれば何の問題もありませんが、Aが消えたのが3月31日24
時で、Bが誕生したのが4月1日午前0時だという場合に、「3月31日A消
滅」「4月1日B誕生」という2つの登記をせずに、まとめて「4月1日Bに
変更」と登記するのが一般的です。

 ですから、廃止や消滅の登記は、その半分の「3月31日A消滅」のみの消
滅日を記載した登記です。

 やはり、「3月31日行使期間満了(により新株予約権消滅)」が正しく、
「4月1日行使期間満了」は正しくないというべきでしょう。

 ちなみに、民法140条には「期間は、その末日の終了をもって満了する」
とありますが、どう読んでも、「満了日=期間の末日」としか読めないように
思いますが、いかがでしょうか。



2014.01.23(木)【縁起の悪い日?】(金子登志雄)

 今日は仏滅ですね。会社の設立は少ないでしょう。

 会社の設立を受託したときは、かならず設立日を選ぶかどうかを確認してい
ます。大安を選ぶかどうかなどです。

 仏滅の設立でも数日を経れば、みな忘れてしまいますから、どうでもいいこ
とだと思いますが、子会社の設立の場合と相違し、個人での設立の場合は、い
つでもいいなら仏滅は避けるという結論になることが少なくありません。

 念のため、これ仏教とは縁もゆかりもないどころか、仏教では気にすること
を戒めているそうです。
----------------------------------------------------------------------
 仏滅や友引という、仏事と関連のあるように見える言葉が多く使われている
が、仏教とは一切関係ない。仏事と関連のあるように見える言葉が多いのは、
まったくの当て字による。釈迦は占いを禁じている。また、浄土真宗では親鸞
が「日の吉凶を選ぶことはよくない」と和讃で説いたため、迷信、俗信一般を
否定しており、特にタブーとされている。仏教においては本質的に因果関係に
よって物事が決まり、六曜が直接原因として物事を左右することはない。
----------------------------------------------------------------------
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AD%E6%9B%9C

 ついでですが、13日の金曜日が縁起が悪いというのは、一部の国だけだそ
うです。
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 キリスト教の影響が強い国であっても、イタリアで不吉な日は17日の金曜
日であり、スペイン語圏では13日の火曜日が不吉だとされている。13日の
金曜日を不吉とするのは、英語圏とドイツ、フランスなどに限られる。ただし
フランスでは宝くじの売り上げが急上昇する、幸運な日でもある。
----------------------------------------------------------------------
http://ja.wikipedia.org/wiki/13%E6%97%A5%E3%81%AE%E9%87%91%E6%9B%9C%E6%97%A5

 13日金曜日で仏滅の日に設立が依頼されたら、報酬は半額にしてあげたい
くらいです。


2014.01.22(水)【PCの餅屋】(金子登志雄)

 昨年末に、ウインドウズ8.1のノートパソコンを購入したのですが、全く
手に終えなかったため、いらいらが募りましたので、そのまま放置し、私のパ
ソコン顧問である司法書士ソフトのリーガルさんにお願いして、昨日、担当の
営業マンさんに来てもらい、動かせるようにしてもらいました。もちろん有料
です。

 さすがはプロですね。デスクトップ上のフォルダーやメールまで、素早く新
しいパソコンに移してくれただけでなく、登記の電子申請から定款の電子認証
まで出来るようにしてくれました。

 インターネットの「お気に入り」まで、そのままですから、あとは、パスワ
ードなどを私の手で再設定するだけです。

 登記のお客様にも申し上げているのですが、怪我したのに内科医に行く人は
いないのと同様に、何ごともプロの専門家にお任せなさい、合併手続でも慣れ
ない司法書士が10日かかるところを私なら半日でできる、その代わり、その
司法書士が半日で終わらせる不動産登記を私は数日かかると話していますが、
このパソコン問題も同じですね。

 数年前までは私でも何とかなったのですが、この8.1だけは無理でした。
営業マンさんによると、機能の変化が早いため、専門家でも追いつくのが大変
で、依頼も多いとのことでした。

 それにしても助かりました。皆さんも、8.1に四苦八苦するくらいなら、
プロを呼んだらいかがですか。皆さんの「時給×時間」の数分の1で済みます。
私の場合は、時間が人一倍多いでしょうから、数十分の1で済みました。


2014.01.21(火)【午後12時はいつ?】(金子登志雄)

 「午後12時」といわれた場合に、瞬間的に、お昼の時間と思いませんでし
たか。午後12時は正確には24時のことで、お昼は「午前」12時です。

 「午後13時に会いましょう」という表現は受け入れられますか。午後1時
は「午前」13時のことです。

 きのうの問題につき、「3月31日24時に行使期間が満了すると、これを
4月1日午前0時であることに着目して、『4月1日行使期間満了』と登記す
る」………、以上の表現につき、仙台の立花さんより、24時のときは午前・
午後に触れずに、0時のときだけ午前と断るのはいかがなものかというご意見
を出されたことがあります。

 理屈上は全くそのとおりなんですが、0時の場合は午前か午後かはっきりさ
せないと誤解を招きますが、24時であれば誤解を招かないということで、私
は0時のときだけ午前をつけるようにしています。

 ちなみに、24時は「午前」の24時のことです。午後24時は、お昼の午
後0時、午後1時・・・と進んで24時間後ですから、翌日のお昼の午前12
時のことです。

 「今日の24時は翌日の0時」………これで、登記の日は今日付けか翌日付
けかという難しい問題に発展してしまうわけですが、昨日の結論のように、終
了を登記する際は今日付けで、効力の発生を登記する際は翌日付けだというの
が私の結論です。「消滅」は前者であって、消滅の効力発生と捉えるべきでは
ありません。  



2014.01.20(月)【新株予約権の行使期間満了】(金子登志雄)

 新株予約権の話題が出たついでですが、新株予約権の行使期間が「平成26
年3月31日まで」あった場合に、現行の登記実務では翌日付で「平成26年
4月1日行使期間満了」と登記します。

 これにつき、本欄10月28日には、これは新株予約権の消滅の開始の登記
だから4月1日付けになるのだろうと松井信憲著『商業登記ハンドブック』第
2版を引用して説明しましたが、どうも煮え切らない結論で、登記の慣例とい
うことにしてしまいました。

 しかし、今は、4月1日には新株予約権ではないのに、その日に消滅したと
いう登記は、やはり無理があると思うようになりました。

 平成26年4月1日から中学生になる場合を「平成26年4月1日中学生」
という表現は正しくても、「平成26年4月1日小学生期間満了」では、4月
1日も小学生だったように思いませんか。

 終了の登記と効力発生の登記の2つがあるとすれば、新株予約権の行使期間
満了は終了の登記であって、消滅の開始の登記ではありません。消滅したなら
新株予約権ではなくなっており、非新株予約権は登記事項ではないのですから、
4月1日付けは、やはり無理があると思います。

 当面は登記の慣例ということで4月1日にせざるを得ませんが、そのうち実
務が変わるような予感がします。


2014.01.17(金)【社債付新株予約権】(金子登志雄)

 本年最初の仕事は、年末に申請した新株予約権付社債の登記の添付書面を某
地方法務局に届けに行くことでした。9連休でしたから、さすがに郵送は、は
ばかれました。大事な議事録や総数引受契約書を放置するような気がしたから
です。

 新株予約権付社債は社債なのに、なぜ登記が必要かと考えたことはありませ
んか。社債であれば登記不要です。社債付新株予約権と考えることによって、
これは新株予約権だから登記が必要だということになります。

 一般的には、新株予約権の名称を単に「第何回新株予約権」とせず、「第何
回無担保転換社債型新株予約権付社債に付された新株予約権」などと「新株予
約権付社債に付された新株予約権」であることを登記でも明記します。

 「転換社債型」というのは、新株予約権の行使にあたり、セットされている
社債を現物出資するということですから、新株予約権の登記申請に際しては、
金銭出資の場合と相違し、「金銭以外の財産を各新株予約権の行使に際して出
資する旨並びに内容及び価額」という項目が追加されます。

 この項目は新株予約権の発行要綱には、そのものずばりでは記載されておら
ず、「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法」の
部分から抜き出して記載することになります。

 ついでながら、金融用語で、転換社債のことをCB、新株予約権付社債のこ
とをWB(ワラント債)ともいいましたが、転換社債型新株予約権付社債のこ
とは何というのでしょうか。CWB?


2014.01.16(木)【五無斎時代】(金子登志雄) 

 そうか、13日は成人式でしたね。還暦を過ぎると、成人式の思い出を書こ
うという発想さえなくなってしまい、立花さんとの年齢差を感じてしまいます。

 私が、一番、年齢を意識する時は、どんなときだと思いますか。目が遠くな
った、坂道が辛いなどは、40代の頃からですから、それではありません。

 中学時代の同窓会などに出たものなら、「孫が……、孫が……」という挨拶
ばかりで、嫌になってしまいますが、これでもありません。

 30代の人と話していて、その父親の年齢の話になった時です。なんと、会
話相手の父親が私より年下ではないですか。ボーゼンとしてしまいます。相手
との間にベルリンの壁ができてしまいます。

 私は晩婚だったせいで、子供も未婚であり、まだ孫はおりません。そのせい
か、まだ若い意識でいるのです。

 30代半ばまでは、独身でフリーターみたいな自由人で生きてきました。親
はあっても「妻無し子無し版木(はんぎ=仕事)無し金も無けれど死にたくも
無し」の五無斎を気取っていました。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q148615674

 なぜか、その頃も少しもあせりませんでした。高度成長期に青春を送ってい
ますから、真から、生活その他につき、そのうち何とかなるさと思っていまし
たし、人が70歳まで生きるなら、オレは80まで生きる、だから今は20代
と同じだと勝手に思っていたからです。

 幸い、友人・知人に恵まれ、何とかなりました。車も家も持てました。家の
中にトイレがあり、蛇口をひねるとお湯が出てきます。これだけで、農業が主
の田舎で育った私の世代にとっては、快適な文化生活です。

 定年のない自由業(司法書士)にもなれました。仕事があって、自分が人の
役に立っていると思えること(必要な存在であると思えること)が、どれほど
幸せなことでしょうか。自由な五無斎時代には、味わえない喜びでした。



2014.01.15(水)【成人式】(仙台・立花宏) 

 先日、地元、仙台市で成人式が開催されました。全国各地でも、成人式が行
われたようです。成人された皆様には心からお祝いを申し上げます。

 テレビに流れる成人式のニュースを見ながら、自分自身が成人を迎えた頃の
ことを思い出しました。当時ももちろん、成人式はありましたが、私は出席し
ませんでした。

 当時、私は学生でした。卒業はまだ先で、自立するめどもたっていない身で
したから、成人といわれてもピンとこなかったのです。

 それに、成人式に出席するために着る背広を買う余裕がなかったこともあり
ました。まあ、成人式に出席するのに、背広が必須ではなかったのでしょうが、
恰好をつけたかったのだと思います。

 多少のアルバイトはしていましたが、ほとんどは書籍の購入や生活費に使い
ました。正直なところ、成人式が終わったあと、しばらく着る予定もない背広
を買うお金があれば、その分、書籍代や生活費に充てたいという気持ちがあり
ました。これは、私に限ったことではなく、当時はそういった学生も多かった
と思います。

 当時、成人式の日、私は大学の図書館にいました。たぶん、提出期限がせま
っていたレポートか何かを書いていたのだと思います。図書館には、同じ学部
の仲間が何人もいました。彼らも成人式は欠席です。私と同じようにレポート
を書いたり、調べものをしたりしていたようでした。

「おう、立花。おまえも成人式に行かないのか?」
「ああ。将来、自分自身が一人前になったと思えたら、自分自身で成人式をや
るさ。」

 仲間の問いかけに、そんな強がりを言っていたかもしれません。

 夜、暗くなった夜空を見ながら、いつものように自転車に乗り、いつものよ
うに自宅に帰った記憶があります。そして、いつものように着替えて食卓に行
きました。すると、テーブルの上にお赤飯とケーキがありました。両親が成人
のお祝いにと準備してくれていたのです。

 両親は、私と私の兄、あわせて2人の学生を養っていました。けっして家計
は楽ではなかったはずです。そんな中、きっと、精一杯のお祝いだったのだろ
うと思います。いつか、いつか、きっといつか、このお赤飯とケーキにふさわ
しい成人になろう。そんな気持ちになったと思います。

 それから二十数年がたちました。果たして、自分は、成人式の日に友人に強
がったように、一人前になったと思える自分になれただろうか。あの時、両親
が用意してくれたお赤飯とケーキにふさわしい成人になれただろうか。

 成人式のニュースを見ながら、ぼんやりとそんなことを考えました。



2014.01.14(火)【共存共栄】(金子登志雄) 

 年末・正月の9連休は実に退屈でしたが、こう休みが続くと、9日分の仕事
がまとめて来て、たまには当事務所も忙しくなるということを発見した正月明
けでした。この3連休も、原稿書き等で、退屈せずに済みました。

 さて、岡山の宮川さんは新年早々に事務所の開設だとのこと。おめでとうご
ざいますといいたいところですが、これからがたいへんですね。顧客数は積み
重ねですから、数年間は辛抱しなければなりません。

 私も、開業後数年間は、年間数十件(いや十数件だったか)の仕事しかあり
ませんでした。確定申告の際に、月別の売上高を書く欄がありますが、半分以
上の月が月商ゼロ円でした。もっとも、当時は、会社の取締役管理部長の仕事
がメインで、司法書士は副業みたいのものでしたが………。

 雑用業務中心の管理部長の仕事と相違し、法務の仕事は好きでしたし、ヒマ
でしたから、それまでのM&Aや法務コンサルの経験をベースに本が書けたと
もいえます。

 その内容が従来の司法書士の先例紹介の登記手続の本と相違し、登記に至る
までの実体法のテクニックが中心だったので、風変わりな司法書士が現れたと
評判になり、徐々に講演等を依頼されるようになりました。

 その講演を聞いた司法書士が「こういう面倒な仕事は、金子が相応しい」と
仕事を回してくれるようになり、今日に至りますから、私にとっては、他の司
法書士は同業者のライバルではなく、ありがたい顧客紹介先です。上場会社の
商業登記を紹介されたこともあります。

 本やHPをみてお客が飛び込みで来たということはありません。債務整理な
どの個人客と相違し、企業は、人の紹介でもない限り、司法書士や弁護士に依
頼することがないからです。

 宮川さんも、会社法や消費者関係業務に詳しいため、県内の同業者から面倒
な仕事を回してもらえるようになることでしょう。そういう奇特な司法書士は、
当然ながら不動産等の日常の仕事で潤っており、生活にゆとりのある方に限ら
れます。そういう事務所と親しくなれば、きっと専門分野で頼りにされること
でしょう。同業者はライバルではなく、持ちつ持たれつの関係です。


2014.01.10(金)【事務所開設】(岡山・宮川康弘)

 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 さて、私事ですが,この正月には,年明けのほかに,もう1つめでたいこと
がありました。それは,この1月6日に,地元岡山県で,自分の事務所を開設
したことです。

 勤務司法書士4年7ヶ月,消費者庁での任期付公務員4年を経て,やっと自
分の事務所を開設することになりました。それ以前の法務局での登記コンピュ
ータ化のアルバイトや,司法書士事務所の補助者時代を含めると,本当に長過
ぎる?道のりでした。

 まだ開業したてですし,最近まで岡山を離れて東京に住んでいた関係で,仕
事を依頼してくる人も少なく,まずは新築の事務所で,ゆっくりとコーヒーを
楽しんでいます。

 「今,私に事件を依頼すると,会社法務と消費者法務に経験豊富な司法書士
が,時間をかけてじっくりとスキーム等を検討することができます。」……な
どとこの場に書いてみたりして,初めての経営者兼営業担当者の気分も楽しん
でいます。

 この開業当初の余裕(?)がいつまで続くか分かりませんが,今年も,仕事
も勉強も頑張っていきたいと思います。

 皆様,よろしくお願いいたします。



2014.01.09(木)【ブラック企業】
(金子登志雄) 

 愛煙家の富田センセも禁煙ですか。愛煙仲間が減って寂しいなどとはいいま
せんから、頑張ってください。

 というのは、私の毎年の目標は「平常心」だからです。心を動かされるのは、
喜怒哀楽の「喜怒楽」の場合に限定し、「哀」などのマイナス感情は持たない
ようにしているからです(つい持ってしまうから、持たないように心がけてい
るともいえますが)。

 自由業になって本当によかったと思えるのは、この平常心でいられることで
しょうか。「嫌だ。ノーだ」といえる幸せです。勤務していた頃は、会社の方
針、上司の指示で、気乗りしないこともしなければなりませんでしたが、自由
業の場合は、自分が経営者ですから、そういう問題が生じません(明日の飯に
ありつけるかという別の心労に悩まされますが、これは自己責任です)。

 昔(30代のフリーター時代)、生活のため、何も知らずに新聞の求人広告
をみてブラック企業に勤めてしまったことがありましたが、一言、反抗的意見
をいったところ、翌日に解雇されました。たったの2週間の勤務でした。

 こういうブラック企業の共通点は、経営者がワンマンで理不尽な恐怖政治を
敷くことでしょうか。人を育てようなどという発想は全くなく、使い捨てます
から、従業員の個性を重視しない小売業や飲食業に多いのも頷けます。

 人は意思を持ち生きがいをもって動きますから、これを制約したところで、
うまく行くわけがなく、ブラック企業が長続きするとは思えません。従業員だ
けでなく、顧客も社会も離れます。私が勤務した会社も、先ほどネット検索し
たところ、業績不振で買収され、いまは存在しませんでした。

 富田センセも、正月2日から働くのような自身の体にブラックを続けていて
は禁煙の効果も怪しいものです。私のように、疲れることは一切しない「箱入
り体」にしておけば、きっとホワイト仕事の良縁が舞い込むでしょう。



2014.01.08(水)【私的「禁煙宣言」!
        (但し、禁煙ファシズムには断固反対!)】
(富田太郎) 

 今年もよろしくお願いいたします。

 皆様も今年の目標をたてられた方もいらっしゃるかと思いますが、私、富田
も昨年末から、あることを目標にしています。

 それは、
----------------------------------------------------------------------
★企業統治の強化策を盛り込んだ『会社法改正案』(2013年11月29日
 国会提出)
★「産業競争力強化法案」(国立大学法人等によるベンチャーキャピタル等へ
 の出資の特例に関する法案)
----------------------------------------------------------------------
これらの条文・内容等のマスター???
いえ!違います。

 実は、今年の目標は、『禁煙』なのです。昨年末から、禁煙をしております。

 思えば、高校3年の頃、映画『灰とダイヤモンド』の主人公、マチェックや
『カサブランカ』のボギーのタバコの吸い方に魅せられ、タバコを吸うように
なりました。

 当時、私は『名古屋の進学高』から『都立高校』に転校したばかりで、都立
高校には制服などなく、私服で学校に通っており、街で吸っていても注意され
ることもありませんでした。

 また、転校した都立高校は、暴走族の集まりのような2流高校で、その中、
私は『文学と知性』を愛する文学青年であり、タバコを吸っていても、特に教
師からも注意を受けたこともありませんでした。

 さらに、自宅で隠れて吸っていても、親が危ないと思ったのか、黙って机に
灰皿を置いてくれました。以来、自室でも堂々と吸っていました。

 あれから、37年・・・・タバコを吸い続けていましたが、今年こそ、禁煙
することに致しました。

 ただし、禁煙に成功しても、禁煙ファシズムの風潮(注)には染まらないつ
もりです。

 (注)NPO法人日本映画学会なる団体が、昨年アニメ『風立ちぬ』の喫煙
シーンに苦言を呈していました。巷では、芸術美学を知らない野暮な「たばこ
バッシング」(禁煙ファシズム)が多いですね。

 しかし・・・本当に禁煙できるでしょうか・・・(汗)。それが問題ですね
・・・。

 もし、皆様が本局あるいは港の法務局の喫煙所で、私、富田を見かけた場合
は、タバコを吸っているのではなく、禁煙パイポを吸っているのだと思ってく
ださいね・・・。



2014.01.07(火)【日本の顔】(島根・根来川弘充)

 新年おめでとうございます。

 2013年もあっと言う間にすぎてしまいました。
2013年の大きな出来事を考えますと、やはり、東京へのオリンピック招致
をあげたいと思います。

 ところが、その東京では某知事が失脚するという事態になってしまいました。
テレビでの某知事の弁明は、誰がみてもお粗末だったと思います。やはり、権
力とお金は切り離せないものだと、国民に知らしめる結果となったことは、と
ても残念です。

 ところで、新たな知事がこれから選ばれることになるのですが、東京五輪開
催時の知事になる可能性が高いのではないでしょうか(私の勘でしかないので
すが・・・)。

 そうすると、今度の選挙の候補者の中から、選ばれることになります。島根
県民である私には、残念ながら投票権がありません。都民の皆様には、是非、
この点も考えて投票していただきたいと願います。

 また、この時の総理大臣は一体だれになっているだろうかとも、ふと、思い
ました。

 現在のA総理大臣が、つづけているとは、いままでの総理大臣の任期から推
測すると、少し考えにくいです。

 こちらは、間接的ながら、選ぶ権利があるのかと思いつつも、ひょっとする
と、憲法が変わって大統領制みたく、直接投票になっているかもしれないとも
思いました。直接投票によって選べる日が来る方が怖い気がします。

 いずれにせよ、先を考えると不安がますばかりです。目の前のことに、一所
懸命取り組んでいきたいと思います。

 本年が、皆様にとって良い年でありますように。



2014.01.06(月)【謹賀新年】(金子登志雄)

 新年おめでとうございます。

 年末および正月休暇、最長9連休は、いかがお過ごしでしたでしょうか。私
は、例年であれば、上州(群馬県)の田舎に帰省していたところですが、今回
は都合により久々に横浜の自宅で正月を迎えました。近くのコンビニに行った
以外は、どこにも出かけませんでした。

 お年玉を渡す甥や姪ももう社会人ですから、そのような対象者もなく、何も
することのない中途半端な立場でしたので、会社法改正案を1読したり、原稿
や講演レジュメの再チェクをしたり、テレビをみたりの怠惰な生活でした。た
ぶん、1、2キロは太ったでしょう。

 今年は太った「豚年?」ではなく「午年」のようですが、なぜ「午」が「馬」
になるのかとネットで調べましたら、訓読みで似ていたから「馬」を当てただ
けで、全く関係ないようです。

 「午」は「正午」でお分かりのとおり、12支の真ん中(7番目)を意味す
るようです。真ん中は「6」で「7」ではないじゃないかと思われるでしょう
が、中間は「6の終わり時点=7の始まり」のため、「7」で正しいわけです。

 我が人生は、年齢でいえば、とうに真ん中を過ぎてしまっていますが、コト
司法書士業務では、経験が増せば増すほど有利になりますので、今が旬(しゅ
ん)の「午」かもしれません。

 本年も経験を増やし、腕を磨き、どんな暴れ馬でも乗りこなせるよう準備し
ておきますので、相変わりませず、当ESG法務研究会をよろしくお願い申し
上げます。

過去徒然

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